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  • 特表-廃水泡制御剤 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-14
(54)【発明の名称】廃水泡制御剤
(51)【国際特許分類】
   B01D 19/04 20060101AFI20231207BHJP
   C02F 1/00 20230101ALI20231207BHJP
【FI】
B01D19/04 B
B01D19/04 A
C02F1/00 C
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023524703
(86)(22)【出願日】2021-10-21
(85)【翻訳文提出日】2023-04-27
(86)【国際出願番号】 US2021055935
(87)【国際公開番号】W WO2022093608
(87)【国際公開日】2022-05-05
(31)【優先権主張番号】63/105,381
(32)【優先日】2020-10-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TRITON
(71)【出願人】
【識別番号】590001418
【氏名又は名称】ダウ シリコーンズ コーポレーション
(71)【出願人】
【識別番号】502141050
【氏名又は名称】ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(72)【発明者】
【氏名】モーテン、ハシーブ
(72)【発明者】
【氏名】ロゴウ、ティモシー エイ.
(72)【発明者】
【氏名】チェン、シュエ
【テーマコード(参考)】
4D011
【Fターム(参考)】
4D011CA01
4D011CB01
4D011CB02
4D011CC01
(57)【要約】
泡制御剤、及び泡制御剤を使用して、廃水処理のための泡を制御する方法に関し、泡制御剤は、少なくとも分枝アルコールを含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
廃水処理に好適な泡制御剤であって、以下の構造を有する分岐アルコールを含み、
【化1】

式中、xは2~8の整数であり、Rは1~8個の炭素原子を有するアルキル基である、泡制御剤。
【請求項2】
前記分岐アルコールの濃度は、重量に基づいて、前記泡制御剤の0.01~100重量%の範囲である、請求項1に記載の泡制御剤。
【請求項3】
前記分岐アルコールがゲルベアルコールである、請求項1に記載の泡制御剤。
【請求項4】
前記剤は、2-アルキル置換アルコールである、請求項1に記載の泡制御剤。
【請求項5】
泡制御剤の使用による廃水処理のための泡を制御する方法であって、前記剤は、少なくとも以下の構造を有する分岐アルコールを含み、
【化2】

式中、xは2~8の整数であり、Rは1~8個の炭素原子を有するアルキル基である、方法。
【請求項6】
少なくとも1つの他の泡制御剤又は疎水性材料が、添加される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
シリコーンも添加される、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記方法は、廃水処理に使用される、請求項5に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
実施形態は、泡制御剤、及び廃水処理のための泡を制御する方法に関し、泡制御剤は、少なくとも分枝アルコールを含む。
【背景技術】
【0002】
序論
廃水処理プラントにおける泡は、多くの段階で発生し得る。曝気タンク、二次清澄器、及び嫌気性消化槽はすべて、一般に泡の問題に直面する。この泡は、処理タンク等において貴重な体積を占める可能性があるとともに、こぼれる可能性があり、安全性及び清掃の問題を引き起こす。
【0003】
泡は、典型的には、廃水中の表面活性剤又は生物学的活性の2つの方法のうちの1つで生成される。表面剤は、単純な家庭用洗剤及び洗浄剤、工業用界面活性剤若しくはポリマー、グリース及び油、又は様々な他の可能な供給源であり得る。生物学的泡は、タンパク質、多糖などの微生物活性からの副産物、及びノカルジア(Nocardia)などの廃水生物自体からの副産物によって生成され得る。
【0004】
これらのすべての理由などにより、廃水中の泡を制御する泡制御剤及び方法が必要とされている。
【発明の概要】
【0005】
実施形態は、泡制御剤、及び廃水処理のための泡を制御する方法に関し、泡制御剤は、少なくとも分枝アルコールを含む。この有機脱泡剤はまた、シリコーン脱泡剤の性能を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
様々な実施形態が、以下の「発明を実施するための形態」及び添付の図面に開示される。
図1】ポンプ試験構成要素の図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本開示は、廃水処理のための泡制御剤に関する。本開示は、予想外に、分岐アルコールが優れた泡制御性能を有することがどのように示されたかを詳述する。分岐アルコールは、2-アルキル-1-アルカノール(ゲルベアルコールとしても知られる)、好ましくは2-エチルヘキサノール(2-EH)及び2-プロピルヘプタノール(2-PH)であってもよい。これらのアルコールは、対応するアルデヒドのアルドール縮合を介して、又は第一級直鎖アルコールのゲルベ反応から合成することができる。他の製造方法も利用することができる。
【0008】
本発明では、C9~C12β-分岐アルコール(C9~C12ゲルベアルコール)が、廃水処理の様々な段階中に泡を減少させるのに驚くほど有効であることが見出された。分岐アルコールの別の利点は、それらの非常に良好な生分解性である。
【0009】
現在開示されている消泡剤の一般構造は、以下の通りである。
【0010】
【化1】

式中、xは2~8の整数であり、Rは1~8個の炭素原子を有するアルキル基である。
【0011】
泡制御剤はまた、C9~C12の2-アルキル置換アルコールを含むものとして記載されてもよい。アルコールは、主に1つの異性体(>95重量%)であるか、又はアルデヒドの混合物のアルドール縮合によって生成され得るか、若しくはゲルベ反応を介してアルコールの混合物から生成され得るアルコールの混合物であり得る。
【0012】
2-エチルヘキサノール、2-ブチル-1-オクタノール、及び2-プロピルヘプタノールを含むC8~C32ゲルベアルコール、並びにブチルアルデヒド及びバレルアルデヒドのアルドール縮合から生成されるC8、C9、及びC10アルコールの混合物が、いくつかの実施形態において好ましい。
【0013】
配合された泡制御剤中のゲルベアルコールの濃度は、消泡剤又は脱泡剤として使用される場合、0.01%~100%の範囲、好ましくは25%~100%の範囲である。ゲルベアルコールは、固体又は液体の形態であることができ、液体が好ましい。固体である場合、材料は、溶媒中に溶解又は分散され得る。当該泡制御剤は、水溶液又は有機溶媒ベースの溶液であり得る。廃水処理のための当該泡制御剤の使用量は、0.01%~5%で変化し、好ましくは0.1%~1%(50~100ppm)の範囲である。
【0014】
他の泡制御剤(例えば、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、及び/又はブチレンオキシドから構成されるコポリマー、ランダム又はブロック)又はワックス、油又はシリカなどの他の疎水性材料も、分岐ゲルベアルコール(複数可)と共に添加されてもよい。シリコーンを2-アルキルアルコールと共に使用することができる。界面活性剤、特にアルコールのアルコキシレートも使用することができる。泡制御剤としての分枝アルコールの使用は、水系又は油系であり得る。
【0015】
現在開示されている新しい泡制御剤は、固体又は液体の形態であり得る。固体である場合、材料は、泡制御剤として使用する前に溶媒中に溶解又は分散され得る。現在開示されている薬剤は、すべての一般的に使用される工業用洗浄剤の存在下で作用すると考えられる。
【0016】
化学剤は、消泡剤配合物又は脱泡剤配合物の両方で使用することができる。消泡剤配合物は、泡の形成を回避する気泡のガス-液体界面におけるポリグリコール、エステル、シリコーン、溶媒、水、及び他の化学物質の混合物によって得られる。ブロックコポリマー系の他の両親媒性化学物質も同様に使用することができる。脱泡配合物では、上記の生成物に加えて、植物油、鉱油、ワックス、及び他の油性剤を使用することができる。
【0017】
泡制御剤に含有される任意の界面活性剤又は乳化剤は、原料上の泡制御剤の相溶性を改善する、又は分岐アルコールの組成物でエマルジョンを形成するのに適するように選択される。任意の界面活性剤又は乳化剤は、分岐アルコールの組成物の0.1~30重量%の範囲の量を有する。
【0018】
任意の界面活性剤又は乳化剤は、アニオン性、カチオン性、又は非イオン性であってもよい。好適なアニオン性界面活性剤又は乳化剤の例は、アルカリ金属、アンモニウム及びアミン石鹸である。このような石鹸の脂肪酸部分は、好ましくは少なくとも10個の炭素原子を含む。石鹸は「その場で」形成することもできる。言い換えれば、脂肪酸を油相に添加し、アルカリ性材料を水相に添加してもよい。
【0019】
好適なアニオン性界面活性剤又は乳化剤の他の例は、アルキル-アリールスルホン酸のアルカリ金属塩、ジアルキルスルホコハク酸ナトリウム、硫酸化又はスルホン化油、例えば、硫酸化ヒマシ油、スルホン化獣脂、及び短鎖石油スルホン酸のアルカリ塩である。
【0020】
好適なカチオン性界面活性剤又は乳化剤は、オレイルアミドアセテート、セチルアミンアセテート、乳酸ジドデシルアミン、アミノエチル-アミノエチルステアラミドのアセテート、ジラウロイルトリエチレンテトラミンジアセテート、1-アミノエチル-2-ヘプタデセニルイミダゾリンアセテートなどの長鎖第一級、第二級、又は第三級アミンの塩;並びに臭化セチルピリジニウム、ヘキサデシルエチルモルホリニウムクロリド、及びジエチルジドデシルアンモニウムクロリドなどの第四級塩である。
【0021】
好適な非イオン性界面活性剤又は乳化剤の例は、高級脂肪アルコールとエチレンオキシドとの縮合生成物、例えばオレイルアルコールと10個のエチレンオキシド単位との反応生成物、アルキルフェノールとエチレンオキシドとの縮合生成物、例えばイソクチルフェノールと12個のエチレンオキシド単位との反応生成物、高級脂肪酸アミドと5個以上のエチレンオキシド単位との縮合生成物、モノパルミチン酸テトラエチレングリコール、モノラウリン酸ヘキサエチレングリコール、モノステアリン酸ノナエチレングリコール、ジオレイン酸ノナエチレングリコール、モノアラキジン酸トリデカエチレングリコール、モノベヘン酸トリコサエチレングリコール、ジベヘン酸トリコサエチレングリコール等の長鎖脂肪酸のポリエチレングリコールエステル類、トリステアリン酸ソルビタン等の多価アルコール部分高級脂肪酸エステル類、多価アルコール部分高級脂肪酸エステル類とそれらの分子内無水物(マンニトール無水物、マンニタンと呼ばれるもの、ソルビトール無水物、ソルビタンと呼ばれるもの)とのエチレンオキサイド縮合生成物、例えば、モノパルミチン酸グリセロールに10分子のエチレンオキサイドを反応させたもの、モノオレイン酸ペンタエリスリトールに12分子のエチレンオキサイドを反応させたもの、モノステアリン酸ソルビタンに10~15分子のエチレンオキサイドを反応させたもの、モノパルミチン酸マンニタンに10~15分子のエチレンオキサイドを反応させたもの、メトキシポリエチレングリコール550モノステアレート(550はポリグリコールエーテルの平均分子量を意味する)などの、1つのヒドロキシル基が高級脂肪酸でエステル化され、他のヒドロキシル基が低分子量アルコールでエーテル化されている長鎖ポリグリコール等である。これらの界面活性剤の2つ以上の組み合わせを使用してよい。例えば、陽イオン界面活性剤を非イオン界面活性剤と混合してもよく、陰イオン界面活性剤を非イオン界面活性剤と混合してもよい。
【0022】
泡制御剤は、1つ以上の添加剤を更に含んでもよい。添加剤の例としては、エチレンオキシド/プロピレンオキシドブロックコポリマー、ブチレンオキシド/プロピレンオキシドブロックコポリマー、エチレンオキシド/ブチレンオキシドブロックコポリマー、ワックス、又はシリコーンベースの物質が挙げられる。界面活性剤が処理工程で発泡を引き起こす他の廃水処理用途では、C32までの高級2-アルキル置換アルコールを使用することができる。
【実施例
【0023】
本開示の泡制御剤などの有効性を試験するための実験は、以下のように行うことができる。
【0024】
材料
【0025】
【表1】
【0026】
【表2】
【0027】
試験方法
ポンプ試験
泡制御性能を試験するために、ポンプ試験を利用した。ポンプ試験は、3つの構成要素から構成される:底部に弁を有する2Lの透明なジャケット付きガラス開放頂部ガラスカラム。セルヒーターは、温度を維持するためにジャケットを通してシリコーン流体を再循環させる。入口がカラムの底部弁に取り付けられ、出口が開放ガラスカラムの頂部に入って発泡媒体を再循環させる遠心ポンプ。図1は、ポンプ試験構成要素の図である。
【0028】
この試験のために、発泡媒体を、25℃に予熱した2Lのガラスカラムに注意深く注いだ。次いで、消泡剤(複数可)を、0.2グラムのシリコーン消泡剤を49.8グラムのプロピレングリコールと混合することによって調製した(ボトル中で振盪することによって混合した)。この試験ではプロピルヘプタノール及びエチルヘキサノールをそのまま使用し、すべての消泡剤をマイクロピペットに充填した。
【0029】
次いで、再循環ポンプを作動させ、ポンプによって生成された泡を、泡がカラム内で1700mLの高さに達するまで監視した。この時点で、消泡剤を再循環流に直接注入した。アルコールとシリコーンの組み合わせを利用した実施例では、2つのマイクロピペットを用いて両方を同時に再循環流に注入した。次いで、泡が最大1700mLレベルに戻るまで、又は10分が経過するまでのいずれか早い方まで、泡体積を監視した。
【0030】
振盪試験
泡制御性能を更に試験するために、振盪試験を行った。この試験のために、8 oz(240mL)フレンチスクエアボトルを収容するのに適したクランプを備えているBurrell WRIST-ACTION Model AAが、利用される(Burrell Corp.,Pittsburgh,PA,Cat.第75-755-04号)。シェーカーアームは、5-1/4+/-1/16インチ(13.34+/-0.16cm)で測定された。これは、シェーカーシャフトの中心からボトルの中心まで測定される。ボトルを垂直位置に保持するために、シェーカーアームは静止位置で水平であった。振盪弧は約16度であり、振盪頻度は約350ストローク/分であった。
【0031】
この試験のために、以下の工程を行った。最初に、100mLの発泡媒体(複数可)を8オンスのフレンチスクエアボトルに注いだ。シリコーン消泡剤化合物を利用した試料については、これらの試料をプロピレングリコールを用いて希釈した。20PPM試験のために、0.2グラムのシリコーン化合物を49.8グラムのプロピレングリコールと組み合わせ、振盪することによって完全に混合した。50PPM試験では、0.5グラムのシリコーン化合物を49.5グラムのプロピレングリコールと混合し、振盪することによって完全に混合した。
【0032】
次いで、0.5グラムのシリコーン化合物及びプロピレングリコール混合物を、1%Triton X-100溶液(ボトル中)の表面に添加した。次いで、必要量のプロピルヘプタノール又はエチルヘキサノール(使用する場合)を、(ボトル中の)溶液の表面に直接添加した。次いで、フレンチボトルに蓋をし、撹拌/混合のためにシェーカーアーム上のクランプに配置した。次いで、シェーカーを30秒間作動させ、振盪を停止した後、泡が崩壊するまでの時間(泡の高さが表面の大部分にわたって0.5cm以下に低下したとき)を記録した。
【0033】
結果
泡制御剤の泡制御性能を表3~4に示す。表3~4に示されるように、1%Triton X-100中の0.25%(2500ppm)2-PH及び0.5%(5000ppm)2-PHは、プロピレングリコール中のシリコーンベースの泡制御剤1400と比較して、泡ノックダウンにおける有意な改善を提供する。2-PHアルコールはまた、良好な持続性性能を示す。シリコーン消泡剤への2-PHの添加はまた、プロピレングリコール中のシリコーンベースの泡制御剤と比較して改善されたノックダウンをもたらす。
【0034】
【表3-1】
【0035】
【表3-2】
【0036】
【表4】
図1
【手続補正書】
【提出日】2023-07-05
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
泡制御剤の使用による廃水処理のための泡を制御する方法であって、前記剤は、少なくとも以下の構造を有する分岐アルコールを含み、
【化1】

式中、xは2~8の整数であり、Rは1~8個の炭素原子を有するアルキル基であり、前記アルコールは9~12個の炭素原子を有する、方法。
【請求項2】
少なくとも1つの他の泡制御剤又は疎水性材料が、添加される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
シリコーンも、添加される、請求項1に記載の方法。
【国際調査報告】