(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-14
(54)【発明の名称】シリコーンエマルジョン及びその使用
(51)【国際特許分類】
C08L 85/00 20060101AFI20231207BHJP
C08K 5/5415 20060101ALI20231207BHJP
C08L 83/06 20060101ALI20231207BHJP
C08G 77/42 20060101ALI20231207BHJP
C08G 79/00 20060101ALI20231207BHJP
【FI】
C08L85/00
C08K5/5415
C08L83/06
C08G77/42
C08G79/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023526065
(86)(22)【出願日】2021-11-16
(85)【翻訳文提出日】2023-04-27
(86)【国際出願番号】 US2021059445
(87)【国際公開番号】W WO2022108894
(87)【国際公開日】2022-05-27
(32)【優先日】2020-11-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】590001418
【氏名又は名称】ダウ シリコーンズ コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100128761
【氏名又は名称】田村 恭子
(72)【発明者】
【氏名】グッベルス、フレデリック
(72)【発明者】
【氏名】ディミトロヴァ、タチアナ
【テーマコード(参考)】
4J002
4J030
4J246
【Fターム(参考)】
4J002AB014
4J002AB044
4J002AB054
4J002BG014
4J002BG134
4J002CH024
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4J002EG057
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4J002FB239
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4J246GB02
4J246GC17
4J246HA56
(57)【要約】
触媒としてチタン系反応生成物を利用して硬化する水性シリコーンエマルジョン組成物、それを調製するプロセス、及びそれらの使用。組成物は、
(a)チタン系反応生成物と、(b)1分子当たり少なくとも2個、あるいは少なくとも3個のヒドロキシル基及び/又は加水分解性基を有する1種以上の含ケイ素化合物と、(c)1種以上の界面活性剤と、(d)水とを含む。チタン系反応生成物(a)は、
(i)第1の構成成分である2~4個のアルコキシ基を有するアルコキシチタン化合物を、第2の構成成分である1分子当たり少なくとも2個の末端シラノール基を有し、かつ25℃で30~300000mPa.sの粘度を有する直鎖状又は分岐状ポリジオルガノシロキサンと混合する工程、
(ii)真空下で撹拌することによって第1の構成成分と第2の構成成分を反応させ、反応生成物を形成させる工程、並びに、
(iii)工程(ii)の反応生成物を回収する工程を含むプロセスから得られるか、又は取得可能である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水性シリコーンエマルジョン組成物であって、
(a)チタン系反応生成物であって、
(i)第1の構成成分である2~4個のアルコキシ基を有するアルコキシチタン化合物を、第2の構成成分である1分子当たり少なくとも2個の末端シラノール基を有し、かつ25℃で30~300000mPa.sの粘度を有する直鎖状又は分岐状ポリジオルガノシロキサンと混合する工程と、
(ii)真空下で撹拌することによって前記第1の構成成分と前記第2の構成成分を反応させ、反応生成物を形成する工程と、
(iii)工程(ii)の前記反応生成物を回収する工程と、を含むプロセスから得られるか、又は取得可能な、チタン系反応生成物と、
(b)1分子当たり少なくとも2個、あるいは少なくとも3個のヒドロキシル基及び/又は加水分解性基を有する1種以上の含ケイ素化合物と、
(c)1種以上の界面活性剤と、
(d)水と、を含む、水性シリコーンエマルジョン組成物。
【請求項2】
前記成分(a)の調製方法における前記第1の構成成分は、Ti(OR)
4、Ti(OR)
3R
1、Ti(OR)
2R
1
2、又は2個のアルコキシ(OR)基が存在し、チタン原子に2回結合しているキレートがあるキレート化アルコキシチタン分子であり、式中、Rは、1~20個の炭素を有する直鎖状又は分岐状アルキル基であり、各R
1は同じであっても異なっていてもよく、それぞれの場合において10個までの炭素を有するアルキル基、アルケニル基又はアルキニル基から選択される、請求項1に記載の水性シリコーンエマルジョン組成物。
【請求項3】
前記成分(a)の調製方法における前記第2の構成成分は、ジアルキルシラノール末端ポリジメチルシロキサンである、請求項1又は2に記載の水性シリコーンエマルジョン組成物。
【請求項4】
前記第2の構成成分は、25℃で70~20,000mPa.sの粘度を有する、請求項1~3のいずれか一項に記載の水性シリコーンエマルジョン組成物。
【請求項5】
前記成分(a)の調製方法は第3の構成成分を利用し、1分子当たり1個の末端シラノール基を有するポリジアルキルシロキサンは工程(i)で導入される、請求項1~4のいずれか一項に記載の水性シリコーンエマルジョン組成物。
【請求項6】
成分(b)は、1分子団当たり少なくとも2個の加水分解性基、あるいは少なくとも3個の加水分解性基を有するシラン、又は1分子当たり少なくとも2個のヒドロキシル基若しくは加水分解性基を有する次式のオルガノポリシロキサンポリマーから選択され、
X
3-n’R
3
n’Si-(Z)
d-(O)
q-(R
4
ySiO
(4-y)/2)
z-(SiR
4
2-Z)
d-Si-R
3
n’X
3-n’ (7)
式中、各Xは、独立して、ヒドロキシル基又は加水分解性基であり、各R
3はアルキル、アルケニル又はアリール基であり、各R
4はX基、アルキル基、アルケニル基又はアリール基であり、Zは、二価有機基であり、
dは、0又は1であり、qは、0又は1であり、d+q=1であり、n’は0、1、2又は3であり、yは0、1又は2、好ましくは2であり、zは前記オルガノポリシロキサンポリマーが25℃で50~150,000mPa.sの粘度を有するような整数である、請求項1~5のいずれか一項に記載の水性シリコーンエマルジョン組成物。
【請求項7】
前記組成物は、充填剤、増粘剤、防腐剤及び殺生物剤、pH調整剤、接着促進剤、無機塩、染料、香料、並びにこれらの組み合わせから選択される1種以上の添加剤を更に含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の水性シリコーンエマルジョン組成物。
【請求項8】
前記エマルジョンの連続水相中の分散油相の平均体積粒径は0.1μm~150μmである、請求項1~7のいずれか一項に記載の水性シリコーンエマルジョン組成物。
【請求項9】
成分(b)はチタンを含まない、請求項1~8のいずれか一項に記載の水性シリコーンエマルジョン組成物。
【請求項10】
成分(a)~(d)を含有する1液型エマルジョンであるか、又は、
(i)成分(a)、(c)及び(d)を含有するが成分(b)を含有しないエマルジョンJ、並びに
成分(b)、(c)及び(d)を含有し、成分(a)を含有しないエマルジョンK、若しくは
(ii)成分(a)、(c)、(d)と、成分(b)の一部と、を含有するエマルジョンJ、並びに、成分(b)の残りと、(c)と、(d)と、を含有するエマルジョンKを含む、2液型エマルジョンである、請求項1~9のいずれか一項に記載の水性シリコーンエマルジョン組成物。
【請求項11】
水性シリコーンエマルジョン組成物を調製する方法であって、
(i)第1の構成成分である2~4個のアルコキシ基を有するアルコキシチタン化合物を、第2の構成成分である1分子当たり少なくとも2個の末端シラノール基を有し、かつ25℃で30~300000mPa.sの粘度を有する直鎖状又は分岐状ポリジオルガノシロキサンと混合する工程と、
(ii)真空下で撹拌することによって前記第1の構成成分と前記第2の構成成分を反応させ、反応生成物を形成する工程と、
(iii)工程(ii)の前記反応生成物を回収する工程と、を含むプロセスから、チタン系反応生成物(a)を調製することと、
反応生成物(a)と、
(b)1分子当たり少なくとも2個、あるいは少なくとも3個のヒドロキシル基及び/又は加水分解性基を有する1種以上の含ケイ素化合物と、
(c)1種以上の界面活性剤と、
(d)水と、を混合して、エマルジョンを形成することと、を含む、水性シリコーンエマルジョン組成物を調製する方法。
【請求項12】
前記エマルジョン組成物は、2液型で調製され、
成分(a)を成分(c)と混合し、十分な量の水(成分(d))と混合してエマルジョンを形成することによるエマルジョンJ;前記エマルジョンの更なる剪断混合及び/若しくは前記成分(d)による前記エマルジョンの希釈は、行われてよく;
成分(b)は別個に、成分(c)及び(d)と、同様に混合され、乳化されてエマルジョンKを形成する;又は
成分(b)の一部は、成分(a)と混合され、同時に若しくはその後に、十分な量の水(成分(d))と混合された成分(c)と混合され、エマルジョンJを形成し;前記エマルジョンの更なる剪断混合及び/若しくは前記成分(d)による前記エマルジョンの希釈を行って、エマルジョンJの形成をもたらしてもよく、
成分(b)の残りは別個に、十分な量の水(成分(d))と混合された成分(c)と混合されて、エマルジョンKを形成し;前記エマルジョンの更なる剪断混合及び/若しくは前記成分(d)による前記エマルジョンの希釈は、行われてよい、請求項11に記載の水性シリコーンエマルジョン組成物を調製する方法。
【請求項13】
後に、前記2つのエマルジョンJ及びKが、任意の適切な重量:重量比で混合されて、前記エマルジョン組成物を形成する、請求項12に記載の水性シリコーンエマルジョン組成物を調製するための方法。
【請求項14】
水を除去した際の請求項1~10のいずれか一項に記載の組成物からの生成物であるエラストマー。
【請求項15】
布地ケア、パーソナルケア、ビューティケア、ホームケア及び/又はヘルスケア、建築及び自動車用途に使用するための、シーラント、接着剤、感圧接着剤、コーティング、化粧料、硬化物品を配合するための、請求項1~10のいずれか一項に記載のエマルジョンの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、触媒としてチタン系反応生成物を利用して硬化する水性シリコーンエマルジョン組成物、それを調製するプロセス、及びそれらの使用に関する。
【0002】
例えばコーティング用途、医薬品用途、ヘアケア及びスキンケアなどのビューティケア用途、並びに布地ケア及び泡沫制御などの家庭用ケア用途を含む多くの用途において、エマルジョンの形態でシリコーン製品を提供及び/又は送達することはしばしば好ましく、時には必要でさえある。水性シリコーンエマルジョンは、硬化性/反応性組成物として、又は当該水性反応性シリコーンエマルジョン中の成分の硬化から得られる予備形成エラストマーとして調製することができる。
【0003】
エマルジョンは、均質に見える不混和性液体の混合物である。液体の一方は液滴の形態で他方の中に分散され、これは、エマルジョンの貯蔵寿命を通してそれらの完全性を保持する。乳化剤は、エマルジョン内の液滴を被覆し、それらが互いに融合又は合体するのを防止する。合体は、エマルジョン安定性にとって破局的な事象であり、不混和性液体の分離をもたらす。
反応性水性縮合硬化シリコーンエマルジョン組成物の場合、硬化剤中の触媒として又は硬化剤としての1種以上のチタネートの使用は、チタネートが水と直接接触することを必要とし、製造中又はその後の貯蔵中に触媒の完全な不活性化をもたらし得るので、困難である。
【0004】
アルキルチタネートとも称されるアルコキシチタン化合物が水分硬化性シリコーン組成物に適した触媒であることは、当業者に周知である(参照文献:Noll,W.;Chemistry and Technology of Silicones,Academic Press Inc.,New York,1968,p.399、及びMichael A.Brook,silicon in organic,organometallic and polymer chemistry,John Wiley&sons,Inc.(2000),p.285)。チタネート触媒は、シリコーンエラストマーを硬化させるためのそれらの使用について広く記載されている。
【0005】
最近まで、水性反応性エマルジョン組成物は、一般に、硬化剤中に又は硬化剤としてチタン系触媒、すなわち、テトラアルキルチタネート(例えば、Ti(OR)4、式中、Rは、少なくとも1個の炭素を有するアルキル基である)又はキレート化チタネートを使用していなかったが、これは、それらが、それぞれ水若しくはアルコールの存在下での加水分解(例えば、水との反応による官能基中の結合の切断)又はアルコール分解に感受性であることが周知であったためである。水中で、テトラアルキルチタネートは急速に反応し、チタンに結合したアルコキシ基に対応するアルコールを遊離する。例えば、水分の存在下では、テトラアルキルチタネートは、完全に加水分解し、チタン(IV)水酸化物(Ti(OH)4)を形成することができ、これは、シリコーン系組成物中での溶解度が限られている。重要なことに、チタン(IV)水酸化物などのチタン水酸化物の形成は、硬化性縮合硬化性シリコーン組成物に対するそれらの触媒効果に劇的に悪影響を及ぼす可能性があり、未硬化又はせいぜい部分的にのみ硬化された系をもたらす。
【0006】
スズ(IV)触媒は、例えば水によって同様に影響を受けないので、この問題はスズ(IV)触媒では見られない。したがって、スズ触媒又は亜鉛触媒などの他の硬化触媒、例えばジブチルスズジラウレート、スズオクトエート及び/若しくは亜鉛オクトエートが一般的に使用されている(Noll,W.;Chemistry and Technology of Silicones,Academic Press Inc.,New York,1968,p.397)。典型的には、硬化剤中で又は硬化剤としてチタネート触媒を使用する場合、縮合硬化シリコーンはかなり急速に網状化(網状又は網状組織に似たように分裂)し、したがって効率的な乳化を妨げ、チタネート触媒は、それらの加水分解のために水の存在下で不活性化される。
【0007】
最近、歴史的な予想に反して、場合によっては、チタン系触媒が、シリコーン系組成物の縮合「バルク硬化」のために設計された多液型、例えば水性反応性エマルジョン及び/又は2液型組成物において利用され得ることが見出された(例えば、国際公開第2018024861号及び同第2016120270号)。これは、多くの使用者にとって有用である。なぜなら、スズ硬化縮合系は、80℃を超える温度で逆反応(すなわち、解重合)を受け、したがって、特に、硬化エラストマーが熱に曝露されることになるいくつかの用途、例えば電子機器用途では、スズ(IV)触媒の使用は望ましくないためである。しかしながら、これは重要な利点であるが、チタン系触媒は、当該2液型組成物中で使用される場合、スズ(IV)触媒で得られる硬化速度に匹敵することができない。
【0008】
(予備)硬化エラストマーの乳化は非常に困難であり、非常に高い剪断の適用を必要とする場合がある。硬質弾性エラストマーからの変性プロセスは、材料上の弾性が乳化のために供給されるエネルギーの吸収を引き起こし、その結果、エラストマー材料の液滴への破壊を防止するので、非常に非効率的である。したがって、エラストマー材料で作製されたエマルジョン液滴又は合体時にエラストマーを生成するエマルジョン液滴をもたらす、エネルギー効率が高く堅牢な工業プロセスを見出すことが望ましい。
【0009】
したがって、チタネート触媒を含有する標準的な縮合硬化シリコーン組成物を使用して、合体時に弾性フィルムを生成する「軟質」水中エラストマー型エマルジョン液滴を、反応性シリコーンエマルジョンの硬化剤配合物中で使用することができ、及び/又は液滴中(乳化後)若しくは合体後のいずれかでエラストマーを網状化/架橋して水性マトリックスから硬化エラストマーシリコーンフィルムを提供するために使用することができる加水分解安定性チタネートを特定することによって、生成することに対する需要がある。
【0010】
本明細書では、水性シリコーンエマルジョン組成物であって、
(a)チタン系反応生成物であって、
(i)第1の構成成分である2~4個のアルコキシ基を有するアルコキシチタン化合物を、第2の構成成分である1分子当たり少なくとも2個の末端シラノール基を有し、かつ25℃で30~300000mPa.sの粘度を有する直鎖状又は分岐状ポリジオルガノシロキサンと混合する工程と、
(ii)真空下で撹拌することによって第1の構成成分と第2の構成成分を反応させ、反応生成物を形成する工程と、
(iii)工程(ii)の反応生成物を回収する工程と、を含むプロセスから得られるか、又は取得可能なチタン系反応生成物と、
(b)1分子当たり少なくとも2個、あるいは少なくとも3個のヒドロキシル基及び/又は加水分解性基を有する1種以上の含ケイ素化合物と、
(c)1種以上の界面活性剤と、
(d)水と、を含む、水性シリコーンエマルジョン組成物を提供する。
【0011】
本明細書では、水性シリコーンエマルジョン組成物を調製するための方法であって、
(i)第1の構成成分である2~4個のアルコキシ基を有するアルコキシチタン化合物を、第2の構成成分である1分子当たり少なくとも2個の末端シラノール基を有し、かつ25℃で30~300000mPa.sの粘度を有する直鎖状又は分岐状ポリジオルガノシロキサンと混合する工程と、
(ii)真空下で撹拌することによって第1の構成成分と第2の構成成分を反応させ、反応生成物を形成する工程と、
(iii)工程(ii)の反応生成物を回収する工程と、を含むプロセスから、チタン系反応生成物(a)を調製することと、
反応生成物(a)と、
(b)1分子当たり少なくとも2個、あるいは少なくとも3個のヒドロキシル基及び/又は加水分解性基を有する1種以上の含ケイ素化合物と、
(c)1種以上の界面活性剤と、
(d)水と、を混合してエマルジョンを形成することと、を含む、方法が更に提供される。
【0012】
また、上記組成物の硬化物であるエラストマーも提供される。好ましくは、上述の水性シリコーンエマルジョン組成物は、水の除去(例えば、蒸発)時にエラストマーを生じる。
【0013】
本明細書のエマルジョンは、水中油型エマルジョンである。「水中油型」エマルジョンという用語は、水不溶性液体(油)が連続水相中に液滴の形態で分散している状況を指す。
【0014】
成分(a)の反応生成物は、チタン分子の触媒的性質を加水分解に対してより安定(水に対して安定)にするように見えるだけでなく、第2の構成成分が一般に1分子当たり少なくとも2個のSi-OH基を有するので、反応生成物は、反応に利用可能なSi-O-Ti又はSi-OH基を有し、したがって成分(a)は硬化プロセスに関与することを理解されたい。したがって、縮合硬化性シリコーンエマルジョン組成物において利用される場合、成分(a)である反応生成物は、触媒としても、架橋性オリゴマー/ポリマーとしても機能する。
【0015】
成分(a)は、本明細書に記載されるように、第1の構成成分である2~4個のアルコキシ基を有するアルコキシチタン化合物と、第2の構成成分である1分子当たり少なくとも2個の末端シラノール基を有しかつ25℃で30~300000mPa.sの粘度を有する直鎖状又は分岐状ポリジオルガノシロキサンとの間の反応から得られる反応生成物である。本明細書に記載のプロセスの第1の構成成分は、2~4個のアルコキシ基を有するアルコキシチタン化合物、例えばTi(OR)4、Ti(OR)3R1、Ti(OR)2R1
2、又は2個のアルコキシ(OR)基が存在し、チタン原子に2回結合しているキレート(a chelate bound twice to the titanium atom)があるキレート化アルコキシチタン分子であり、式中、Rは、1~20個の炭素、あるいは1~15個の炭素、あるいは1~10個の炭素、あるいは1~6個の炭素を有する直鎖状又は分岐状アルキル基であり、存在する場合、R1は、1~10個の炭素原子を有するアルキル基、2~10個の炭素原子を有するアルケニル基、2~10個の炭素原子を有するアルキニル基、3~10個の炭素原子を有するシクロアルキル基、若しくは6~20個の炭素原子を有するフェニル基、又はこれらの組み合わせなどの有機基である。
【0016】
各R1は、例えば、塩素又はフッ素などの1個以上のハロゲン基で任意選択的に置換された基を含有してもよい。R1の例としては、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ビニル、シクロヘキシル、フェニル、トリル基、塩素若しくはフッ素で置換されたプロピル基(例えば、3,3,3-トリフルオロプロピル)、クロロフェニル、β-(ペルフルオロブチル)エチル又はクロロシクロヘキシル基が挙げられ得るが、これらに限定されない。しかしながら、典型的には、各R1は同じであっても異なっていてもよく、アルキル基、アルケニル基又はアルキニル基、あるいはアルキル基、アルケニル基、あるいはアルキル基から選択されてもよく、各場合において、基当たり10個までの炭素、あるいは6個までの炭素を有する。
【0017】
上記のように、Rは、1~20個の炭素を有する直鎖状又は分岐状アルキル基であり、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、第三級ブチル及び分岐状第二級アルキル基(例えば、2,4-ジメチル-3-ペンチル)が挙げられるが、これらに限定されない。Ti(OR)4である場合の第1の構成成分の好適な例としては、例えば、テトラメチルチタネート、テトラエチルチタネート、テトラn-プロピルチタネート、テトラn-ブチルチタネート、テトラt-ブチルチタネート及びテトライソプロピルチタネートが挙げられる。第1の構成成分がTi(OR)3R1である場合、R1は典型的にはアルキル基であり、例としては、トリメトキシアルキルチタン、トリエトキシアルキルチタン、トリn-プロポキシアルキルチタン、トリn-ブトキシアルキルチタン、トリt-ブトキシアルキルチタン及びトリイソプロポキシアルキルチタネートが挙げられるが、これらに限定されない。
【0018】
第1の構成成分、すなわち、2~4個のアルコキシ基を有するアルコキシチタン化合物は、[第1の構成成分+第2の構成成分]の総重量の0.01重量%(wt.%)~20重量%の量で存在し得る。
【0019】
第2の構成成分は、1分子当たり少なくとも2個の末端シラノール基を有しかつ25℃で30~300000mPa.sの粘度を有する直鎖状又は分岐状ポリジオルガノシロキサンである。第2の構成成分は、式(1)の複数のシロキサン単位を含むオリゴマー又はポリマーを含んでもよく、
-(R2
sSiO(4-s)/2)- (1)
式中、各R2は独立して、塩素又はフッ素などの1個以上のハロゲン基で任意選択的に置換された1~10個の炭素原子を有するヒドロカルビル基などの有機基であり、sは0、1又は2である。一代替例において、sは2であり、したがって、直鎖状又は分岐状ポリジオルガノシロキサン骨格は直鎖状であるが、sが1である基の小さな割合が分岐を可能にするために利用され得る。例えば、R2は、アルキル基(例えばメチル、エチル、プロピル、ブチル)、アルケニル基(例えばビニル、プロペニル、ブテニル、ペンテニル及び/又はヘキセニル基)、シクロアルキル基(例えばシクロヘキシル)及び芳香族基(例えばフェニル、トリル基)を含むことができる。一代替例において、R2は、アルキル基、アルケニル基及び/又はフェニル基(例えばメチル、エチル、プロピル、ブチル)、アルケニル基(例えばビニル、プロペニル、ブテニル、ペンテニル及び/又はヘキセニル基)、シクロアルキル基(例えばシクロヘキシル)及び芳香族基(例えばフェニル、トリル基)を含んでもよい。好ましくは、ポリジオルガノシロキサン鎖は、ポリジアルキルシロキサン鎖、ポリアルキルアルケニルシロキサン鎖又はポリアルキルフェニルシロキサン鎖であるが、これらのいずれか2つ以上のコポリマーも有用であり得る。第2の構成成分がポリジアルキルシロキサン鎖、ポリアルキルアルケニルシロキサン鎖及び/又はポリアルキルフェニルシロキサン鎖を含有する場合、アルキル基は通常1~6個の炭素を含み、あるいはアルキル基はメチル及び/又はエチル基であり、あるいはアルキル基はメチル基であり、アルケニル基は通常2~6個の炭素を含み、あるいはアルケニル基はビニル、プロペニル、ブテニル、ペンテニル及び又はヘキセニル基であってもよく、あるいはビニル、プロペニル及び/又はヘキセニル基であってもよい。一代替例において、ポリジオルガノシロキサンは、ポリジメチルシロキサン鎖、ポリメチルビニルシロキサン鎖若しくはポリメチルフェニルシロキサン鎖、又はこれらのうちの2つ若しくは全てのコポリマーである。
【0020】
誤解を避けるために記すと、ポリジオルガノシロキサンポリマーは、高分子量(一般に、10,000g/モル以上の数平均分子量を有し、多数の-(R2
sSiO(4-s)/2)-単位を含み、ポリマー様特性を示す分子で構成された物質を意味し、1つ若しくは2~3つの単位の付加又は除去が、そうした特性に与える影響は無視できる。対照的に、ポリジオルガノシロキサンオリゴマーは、平均分子量が低すぎる規則的な繰り返し構造-(R2
sSiO(4-s)/2)-単位を有する化合物であり、例えば、少数のモノマー単位からなる分子、例えば二量体、三量体及び四量体は、例えばそれぞれ2個、3個及び4個のモノマーからなるオリゴマーである。
【0021】
直鎖状である場合、第2の構成成分の各末端基は、1個のシラノール基を含有しなければならない。例えば、ポリジオルガノシロキサンは、ジアルキルシラノール末端、アルキルジシラノール末端又はトリシラノール末端であり得るが、好ましくはジアルキルシラノール末端である。分岐状である場合、第2の構成成分は、1分子当たり少なくとも2個の末端Si-OH結合を有していなければならず、したがって、ジアルキルシラノール基、アルキルジシラノール基及び/又はトリシラノール基であるが、典型的にはジアルキルシラノール基である少なくとも2個の末端基を含む。
【0022】
典型的には、第2の構成成分は、25℃で30~300000mPa.s、あるいは70~100000mPa.s程度の粘度を有する。粘度は、任意の好適な手段、例えばAnton Paar GmbH(Graz、Austria)製のModular Compact Rheometer(MCR)302を使用して、関係する粘度に最も好適な設定及びプレートを使用して、例えば、1s-1の剪断速度で0.3mmのギャップを有する直径25mmの回転プレートを使用して測定され得る。
【0023】
シリコーンの数平均分子量(Mn)及び重量平均分子量(Mw)は、ポリスチレン標準較正を使用してゲル浸透クロマトグラフィ(Gel permeation chromatography、GPC)によって決定することもできる。この技法は標準的技法であり、Mw(重量平均)、Mn(数平均)及び多分散指数(polydispersity index、PI)(PI=Mw/Mn)の値が得られる。
【0024】
本出願で提供される任意のMn値は、GPCによって測定されており、使用されるポリジオルガノシロキサンの典型値を表す。GPCによって提供されない場合、Mnはまた、当該ポリジオルガノシロキサンの動的粘度に基づく計算から得ることができる。
【0025】
上記の反応は、任意の適切な温度で行うことができるが、典型的には室温で開始するが、反応プロセス中の撹拌により上昇する。
【0026】
反応は、反応中に生成されたアルコール性副生成物の総重量の少なくとも50重量%、あるいは少なくとも75重量%、あるいは少なくとも90重量%を除去する目的で、真空下で行われる。上記の測定は、いくつかの分析技術によって行うことができるが、最も単純なものは、反応生成物からの重量損失を測定することである。
【0027】
現在の理解に束縛されるものではないが、第1の構成成分がTi(OR)4である場合の上記反応の主な反応生成物は、
(RO)nTi((OSiR2
2)m-OH)4-n (2)
の混合物であると考えられ、式中のnは0、1又は2、あるいは0又は1であるが、好ましくはnは0であり、すなわち、主な生成物は、
Ti((OSiR2
2)m-OH)4 (3)
の混合物であると考えられる(式中、mは第2の構成成分の重合度であり、第2の構成成分の粘度を示す(相応する(commensurate))整数である)。
【0028】
同様に、第1の構成成分が実質的にTi(OR3)R1である場合、aが0又は1である上記反応の主な反応生成物は、
R1(RO)aTi((OSiR2
2)m-OH)3-a (4)
であると考えられるが、好ましくはaは0であり、すなわち、主な生成物は、
R1Ti((OSiR2
2)m-OH)3 (5)
であると考えられる(式中、mは第2の構成成分の粘度を示す(相応する)整数である)。
【0029】
任意選択的に、第3の構成成分が存在してもよい。存在する場合、第3の構成成分は直鎖状又は分岐状ポリジオルガノシロキサンであり、第2の構成成分について記載したようなオリゴマー又はポリマーであってもよいが、第1の構成成分とSi-O-Ti結合を形成するために上記の反応において使用するための1分子当たり1個の末端シラノール基を有するが、シラノール基を含有しない少なくとも1個の末端基も含む。シラノール基を含有しない末端基は、上で定義された3つのR2基、あるいはアルキル及びアルケニルR2基の組み合わせ、あるいはアルキルR2基を含んでもよい。例としては、トリアルキル末端、例えばトリメチル若しくはトリエチル末端、又はジアルキルアルケニル末端、例えばジメチルビニル若しくはジエチルビニル若しくはメチルエチルビニル末端などが挙げられる。
【0030】
典型的には、第3の構成成分はまた、25℃で30~300000mPa.s、あるいは70~100000mPa.s程度の粘度を有する。粘度は、任意の好適な手段、例えばAnton Paar GmbH(Graz、Austria)製のModular Compact Rheometer(MCR)302を使用して、関係する粘度に最も好適な設定及びプレートを使用して、例えば、1s-1の剪断速度で0.3mmのギャップを有する直径25mmの回転プレートを使用して測定され得る。
【0031】
第3の構成成分は、第1、第2及び第3の構成成分の重量の組み合わせの75重量%までの量で存在してもよく、それによって第3の構成成分は等しい割合の第2の構成成分に置き換わる。しかしながら、好ましくは、第3の構成成分は、存在する場合、第1、第2及び第3の構成成分の重量の50重量%以下、あるいは25重量%以下の量で存在する。第3の構成成分が存在する場合、構造(2)、(3)、(4)又は(5)中の1個以上の-OH基は、R2基、あるいはアルキル基又はアルケニル基、あるいはアルキル基によって置換されてもよい。例えば、構造(2)の場合、反応生成物は以下の構造(2a)に示すものであってもよい。
(RO)nTi((OSiR2
2)m-R2)p((OSiR2
2)m-OH)4-n-p (2a)
式中、nは0、1又は2、あるいは0又は1であり、pは0、1又は2、あるいは0又は1であり、n+pは4以下であり、mは上で定義したとおりである。
【0032】
プロセスでは反応物として第3の構成成分を含まないことが好ましいが、これは、構造(2)、(3)、(4)又は(5)に示されるタイプのチタン系反応生成物が存在する場合、末端シラノール基は、硬化シリコーンネットワークの形成に関与するために潜在的に利用可能であり、完全に配合されたエラストマーにおいてそれらは有用になるためである。このことは明らかに、本明細書で成分(a)として提供されるチタン系反応生成物を製造するためのプロセスで、より多量の第3の構成成分が出発構成成分として使用される場合には、生じ難いであろう。しかしながら、いくつかの第3構成成分出発物質の存在は、本明細書に記載のプロセスの生成物を使用して硬化されたエラストマーの必要な弾性率を得やすくするために有用な場合がある。
【0033】
本明細書の組成物の成分(a)の調製に使用されるプロセスにおける出発構成成分が第1及び第2の構成成分である場合、シラノール基:チタンのモル比は、2:1以上の任意の好適な比であってもよい。しかしながら、この比は5:1~15:1、あるいは7:1~15:1、あるいは少なくとも8:1~11:1の範囲内であることが好ましい。より低い比は、より粘稠な反応生成物の存在をもたらすようであり、より少ない第1の構成成分の存在は、より遅いゲル化時間をもたらす。任意の出発構成成分のモル量を、以下の計算を用いて求めた。
【0034】
【数1】
したがって、単に例として、構成成分1がテトラn-ブチルチタネート(TnBT)であるとき、構成成分1及び構成成分2が10:1の重量比で混合された場合、すなわち、1重量部の構成成分1当たり10重量部の構成成分2が混合された場合、TnBTの分子量を340とすると、計算は、以下のとおりである。
【0035】
【0036】
代替的実施形態では、第2の構成成分を第1の構成成分内に導入してもよい。以下の化学反応(6)に従って揮発性アルコール(R-OH)が生成される第1の構成成分として使用されるタイプのチタネートは、実質的に常にいくらかのアルコール残留物を含有するので、環境からの水分により一般に可燃性であるので、この実施形態は、上記よりも不便である。チタン触媒の引火点は、アルコール燃焼性に依存する。
Ti-OR+H2O(空気からの水分)→Ti-OH+R-OH
Ti-OR+Si-OH→Ti-O-Si+R-OH (6)
したがって、この方法は、防爆製造プロセスを必要とし、第2の構成成分は、徐々に測定される方法で第1の構成成分に導入されなければならない。この経路は、少なくとも最初は、第2の構成成分の含有量が徐々に増加するまで、より濃縮された触媒をもたらす可能性が高い。この実施形態はまた、アルコール性副生成物を首尾よく除去することがより困難であり、第2の構成成分の含有量が一般に第1の構成成分よりも重量及び体積ではるかに多いため、あまり好ましくない。
【0037】
しかしながら、反応生成物は、縮合硬化性2液型シリコーンエラストマー組成物中の触媒として、又は縮合硬化性2液型シリコーンエラストマー組成物用の硬化剤として分離することなく非常に良好に機能するので、特定のチタン種を単離するために複雑な分離技術を使用する必要がないことが見出された。
【0038】
成分(a)は、典型的には、最終エマルジョン組成物の油相中に、エマルジョン組成物の油相の5重量%~95重量%、あるいは10重量%~95重量%、あるいは15~80重量%、あるいは20重量%~70重量%の量で存在する。
【0039】
水性シリコーンエマルジョン組成物の成分(b)は、1分子当たり少なくとも2個、あるいは少なくとも3個のヒドロキシル基及び/又は加水分解性基を有する1種以上の含ケイ素化合物である。成分(b)は架橋剤として有効に機能し、したがって、1分子当たり最低2個、好ましくは3個以上の加水分解性基を必要とする。場合によっては、成分(b)は鎖延長剤とみなすことができる(すなわち、反応生成物(a)が1個又は2個の反応性基のみを有する場合)が、反応生成物(a)が1分子当たり3個以上の反応性基を有する場合(この場合、典型的には標準であると予想される)には、架橋剤として使用することができる。したがって、成分(b)は、成分(a)反応生成物中のシラノール基に対して反応性である、1分子当たり2個、あるいは3個以上のケイ素結合縮合性(好ましくはヒドロキシル及び/又は加水分解性)基を有することができる。
【0040】
一実施形態では、本明細書の組成物の成分(b)は、1分子当たり少なくとも2個のヒドロキシル基又は加水分解性基を有するポリオルガノシロキサンポリマーであり、例えば、次式のものであり、
X3-n’R3
n’Si-(Z)d-(O)q-(R4
ySiO(4-y)/2)z-(SiR4
2-Z)d-Si-R3
n’X3-n’ (7)
式中、各Xは、独立して、ヒドロキシル基又は加水分解性基であり、各R3はアルキル、アルケニル又はアリール基であり、各R4はX基、アルキル基、アルケニル基又はアリール基であり、Zは、二価有機基であり、
dは、0又は1であり、qは、0又は1であり、d+q=1であり、n’は0、1、2又は3であり、yは0、1又は2、好ましくは2であり、zは当該ポリオルガノシロキサンポリマーの粘度に相応する整数である。
【0041】
成分(b)は、ポリオルガノシロキサンポリマーである場合、25℃で50~150,000mPa.s、あるいは25℃で10,000~80,000mPa.s、あるいは25℃で40,000~75,000mPa.sの粘度を有する。粘度は、任意の好適な手段、例えばAnton Paar GmbH(Graz、Austria)製のModular Compact Rheometer(MCR)302を使用して、関係する粘度に最も好適な設定及びプレートを使用して、例えば、1s-1の剪断速度で0.3mmのギャップを有する直径25mmの回転プレートを使用して測定され得る。したがって、zの値は、そのような粘度を可能にする(相応する)整数であり、あるいはzは、100~5000、あるいは300~2000、あるいは500~1500の整数である。yは0、1又は2であるが、実質的にy=2であり、例えば、(R4
ySiO(4-y)/2)z基の少なくとも90%、あるいは95%はy=2で特徴付けられる。成分(b)は、最終エマルジョン組成物の油相中に、最終エマルジョン組成物の油相の10~90重量%、あるいは15~85重量%、あるいは10~80重量%、あるいは15~65重量%、あるいは15~65重量%の量で存在する。エマルジョンが2液型で貯蔵される場合、成分(b)を含有する部分は、典型的には、成分(b)を含むエマルジョンの40~90重量%を含む。
【0042】
オルガノポリシロキサンポリマーである場合、成分(a)の各X基は、同じであっても異なっていてもよく、ヒドロキシル基、又は縮合性若しくは加水分解性基であり得る。用語「加水分解性基」は、室温で水によって加水分解されるケイ素に結合した任意の基を意味する。加水分解性基Xは、式-OTの基を含み、式中、Tは、メチル、エチル、イソプロピル、オクタデシルなどのアルキル基、アリル、ヘキセニルなどのアルケニル基、シクロヘキシル、フェニル、ベンジル、β-フェニルエチルなどの環状基、2-メトキシエチル、2-エトキシイソプロピル、2-ブトキシイソブチル、p-メトキシフェニル、又は-(CH2CH2O)2CH3などの炭化水素エーテル基である。
【0043】
最も好ましいX基は、ヒドロキシル基又はアルコキシ基である。例示的なアルコキシ基は、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、イソブトキシ、ペントキシ、ヘキソキシ オクタデシルオキシ、及び2-エチルヘキソキシ、メトキシメトキシ又はエトキシメトキシなどのジアルコキシ基、エトキシフェノキシなどのアルコキシアリールオキシである。最も好ましいアルコキシ基は、メトキシ基あるいはエトキシ基である。d=1の場合、n’は、典型的には、0又は1であり、各Xは、アルコキシ基、あるいは1~3つの炭素を有するアルコキシ基、あるいはメトキシ又はエトキシ基である。このような場合、ポリオルガノシロキサンポリマーである場合、成分(b)は以下の構造を有し、
X3-n’R3
n’Si-(Z)-(R4
ySiO(4-y)/2)z-(SiR4
2-Z)-Si-R3
n’X3-n’
式中、R3、R4、Z、y及びzは、以前に上で特定されたのと同じであり、n’は0又は1であり、各Xはアルコキシ基である。
【0044】
各R3は、アルキル基、あるいは1~10個の炭素原子、あるいは1~6個の炭素原子、あるいは1~4個の炭素原子を有するアルキル基、あるいはメチル又はエチル基;アルケニル基、あるいは2~10個の炭素原子、あるいは2~6個の炭素原子を有するアルケニル基、例えば、ビニル、アリル、及びヘキセニル基;芳香族基、あるいは6~20個の炭素原子を有する芳香族基、3,3,3-トリフルオロプロピル基などの置換脂肪族有機基、アミノアルキル基、ポリアミノアルキル基、及び/又はエポキシアルキル基、から個別に選択される。
【0045】
各R4は、X又はR3からなる群から個別に選択されるが、但し、1分子当たり累積で少なくとも2個のX基及び/又はR4基は、ヒドロキシル基又は加水分解性基である。いくつかのR4基は、ポリマー主鎖からの、シロキサン分岐であり得、その分岐は、先に記載されたような末端基を有し得ることが可能である。最も好ましいR4は、メチルである。
【0046】
各Zは、独立して、1~10個の炭素原子を有するアルキレン基から選択される。一代替例において、各Zは、独立して、2~6個の炭素原子を有するアルキレン基から選択され、更なる代替例において、各Zは、独立して、2~4個の炭素原子を有するアルキレン基から選択される。各アルキレン基は、例えば、エチレン、プロピレン、ブチレン、ペンチレン、及び/又はヘキシレン基から個別に選択され得る。
【0047】
加えて、n’は0、1、2又は3であり、dは0又は1であり、qは0又は1であり、d+q=1である。一代替例において、qが1である場合、n’は1又は2であり、各XはOH基又はアルコキシ基である。別の代替例では、dが1である場合、n’は0又は1であり、各Xはアルコキシ基である。
【0048】
オルガノポリシロキサンポリマーである場合、成分(b)は、式(7)によって表される単一のシロキサンであり得るか、又は上記式によって表されるオルガノポリシロキサンポリマーの混合物であり得る。したがって、成分(b)に関する「シロキサンポリマー混合物」という用語は、任意の個々の成分(b)又はオルガノポリシロキサンポリマーの混合物を含むことを意味する。
【0049】
重合度(Degree of Polymerization、DP)(すなわち、実質的に上記式におけるz)は、通常、シリコーンの巨大分子若しくはポリマー又はオリゴマー分子中のモノマー単位の数として定義される。合成ポリマーは常に、異なる重合度、したがって異なる分子量の巨大分子種の混合物からなる。異なる実験で測定することができる異なるタイプの平均ポリマー分子量が存在する。2つの最重要のものは、数平均分子量(number average molecular weight、Mn)及び重量平均分子量(weight average molecular weight、Mw)である。シリコーンポリマーのMn及びMwは、ポリスチレン標準較正を使用してゲル浸透クロマトグラフィ(GPC)によって、約10~15%の精度で測定することができる。この技術は標準的であり、Mw、Mn、及び多分散指数(PI)が得られる。重合度(DP)=Mn/Muであり、式中、MnはGPC測定からの数平均分子量であり、Muはモノマー単位の分子量である。PI=Mw/Mnである。DPは、Mwによりポリマーの粘度に関連し、DPが高くなるほど粘度が高くなる。
【0050】
代替的実施形態では、成分(b)は、
- 1分子団(molecule group)当たり少なくとも2個の加水分解性基、あるいは少なくとも3個の加水分解性基を有するシラン、及び/又は
- 少なくとも2個のシリル基を有するシリル官能性分子であって、各シリル基が少なくとも1個の加水分解性基を含有する、シリル官能性分子であり得る。
【0051】
本明細書の開示の目的で、シリル官能性分子は、2個以上のシリル基を含有する、シリル官能性分子であり、各シリル基は、少なくとも1個の加水分解性基を含有する。したがって、ジシリル官能性分子は、それぞれ少なくとも1個の加水分解性基を有する2個のケイ素原子を含み、これらのケイ素原子は、上述していない有機鎖又はシロキサン鎖によって分離されている。典型的には、ジシリル官能性分子上のシリル基は、末端基であってもよい。スペーサーは、ポリマー鎖であってもよい。
【0052】
シリル基上の加水分解性基としては、アシルオキシ基(例えば、アセトキシ基、オクタノイルオキシ基、及びベンゾイルオキシ基);ケトキシミノ基(例えば、ジメチルケトキシモ(ketoximo)基及びイソブチルケトキシミノ(isobutylketoximino)基);アルコキシ基(例えばメトキシ基、エトキシ基、及びプロポキシ基)、並びにアルケニルオキシ基(例えば、イソプロペニルオキシ基及び1-エチル-2-メチルビニルオキシ基)が挙げられる。場合によっては、加水分解性基はヒドロキシル基を含んでもよい。
【0053】
シラン成分(b)としては、アルコキシ官能性シラン、オキシモシラン、アセトキシシラン、アセトンオキシムシラン及び/又はエノキシシランを挙げることができる。
【0054】
架橋剤がシランであり、シランが1分子当たり3個のケイ素結合加水分解性基のみを有する場合、第4の基は、好適には、非加水分解性のケイ素結合有機基である。これらのケイ素結合有機基は、好適には、フッ素及び塩素などのハロゲンによって任意選択的に置換されたヒドロカルビル基である。このような第4の基の例としては、アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、及びブチル基);シクロアルキル基(例えば、シクロペンチル基及びシクロヘキシル基);アルケニル基(例えば、ビニル基及びアリル基);アリール基(例えば、フェニル基及びトリル基);アラルキル基(例えば、2-フェニルエチル基)並びに前述の有機基中の水素の全部又は一部をハロゲンで置き換えることにより得られた基が挙げられる。第4のケイ素結合有機基は、メチル基であってもよい。
【0055】
典型的なシランは、式(8)
R’’4-rSi(OR5)r (8)
(式中、R5は、上記のとおりであり、rは2、3又は4の値を有する)によって記載することができる。典型的なシランは、R’’がメチル、エチル又はビニル又はイソブチルを表すものである。R’’は、直鎖状及び分岐状のアルキル、アリル、フェニル、及び置換フェニル、アセトキシ、オキシムから選択される、有機基である。場合によっては、R5はメチル又はエチルを表し、rは3である。
【0056】
別の種類の好適な成分(b)は、Si(OR5)4(式中、R5は上記のとおり、あるいはプロピル、エチル又はメチルである)の種類の分子である。Si(OR5)4の部分縮合体も考えられ得る。
【0057】
一実施形態において、成分(b)は、それぞれ少なくとも1個で最大3個の加水分解性基を有するシリル基を少なくとも2個有するか、あるいは各シリル基が少なくとも2個の加水分解性基を有する、シリル官能性分子である。
【0058】
成分(b)はジシリル官能性ポリマー、すなわち、各々が少なくとも1つの加水分解性基を有する2個のシリル基を含有するポリマーであってもよく、例えば、下記の式(4)
(R6O)m’(Y1)3-m’-Si(CH2)x-((NHCH2CH2)t-Q(CH2)x)n’’-Si(OR6)m’(Y1)3-m’(4)
(式中、R6はC1~10アルキル基であり、Y1は1~8個の炭素を含有するアルキル基であり、
Qは、孤立電子対を有するヘテロ原子を含有する化学基、例えば、アミン、N-アルキルアミン又は尿素であり、各xは、1~6の整数であり、tは、0又は1であり、各m’は独立して1、2又は3であり、n’’は0又は1である)により記載される。
【0059】
シリル(例えば、ジシリル)官能性成分(b)は、シロキサン又は有機ポリマー主鎖を有してもよい。好適なポリマー成分(b)は、成分(a)の構成成分(ii)及び/又は成分(b)として特定されるシロキサンと同様のポリマー主鎖化学構造を有してもよい。あるいは、シリル(例えば、ジシリル)官能性成分(b)のポリマー主鎖は、有機であってもよく、すなわち、成分(b)は、代替的には、シリル末端基を有する有機系ポリマー、例えばシリルポリエーテル、シリルアクリレート及びシリル末端ポリイソブチレンであってもよい。シリルポリエーテルの場合、ポリマー鎖はポリオキシアルキレン系単位をベースとする。このようなポリオキシアルキレン単位は、好ましくは、平均式(-Cn’’’H2n’’’-O-)y(式中、n’’’は2~4の整数であり、yは少なくとも4の整数である)により表される、繰り返しオキシアルキレン単位(-Cn’’’H2n’’’-O-)からなる、直鎖状の主としてオキシアルキレンのポリマーを構成する。同様に、粘度は、25℃ mPa.sで1000以下、あるいは25℃で250~1000mPa.s、あるいは25℃で250~750mPa.sであり、存在する各ポリオキシアルキレンポリマーブロックの好適な数平均分子量を有する。粘度は、任意の好適な手段、例えばAnton Paar GmbH(Graz、Austria)製のModular Compact Rheometer(MCR)302を使用して、関係する粘度に最も好適な設定及びプレートを使用して、例えば、1s-1の剪断速度で0.3mmのギャップを有する直径25mmの回転プレートを使用して測定され得る。更に、オキシアルキレン単位は、必ずしもポリオキシアルキレンモノマー全体にわたって同一でなく、単位ごとに異なっていてもよい。ポリオキシアルキレンブロック又はポリマーは、例えば、オキシエチレン単位(-C2H4-O-)、オキシプロピレン単位(-C3H6-O-)、若しくはオキシブチレン単位(-C4H8-O-)、又はこれらの混合物が挙げられる。
【0060】
他のポリオキシアルキレン単位としては、例えば、構造
-[-Re-O-(-Rf-O-)w-Pn-CRg
2-Pn-O-(-Rf-O-)q-Re]-
(式中、Pnは1,4-フェニレン基であり、各Reは同一であるか又は異なり、2~8個の炭素原子を有する二価の炭化水素基であり、各Rfは同一であるか又は異なり、エチレン基又はプロピレン基であり、各Rgは同一であるか又は異なり、水素原子又はメチル基であり、下付き文字w及びqの各々は3~30の範囲の正の整数である)の単位を挙げることができる。
【0061】
本出願の目的で、「置換」とは炭化水素基中の1個以上の水素原子が別の置換基で置換されていることを意味する。このような置換基の例としては、塩素、フッ素、臭素及びヨウ素などのハロゲン原子;クロロメチル基、ペルフルオロブチル基、トリフルオロエチル基、及びノナフルオロヘキシル基などのハロゲン原子含有基;酸素原子;(メタ)アクリル基及びカルボキシル基などの酸素原子含有基;窒素原子;アミノ官能基、アミド官能基、及びシアノ官能基などの窒素原子含有基;硫黄原子;並びにメルカプト基などの硫黄原子含有基が挙げられるが、これらに限定されない。
【0062】
このようなシロキサン又は有機系架橋剤の場合、その分子構造は、直鎖、分岐状、環状又は巨大分子状であってよく、すなわちアルコキシ官能性末端基を有するシリコーン又は有機ポリマー鎖は、少なくとも1個のトリアルコキシ末端を有するポリジメチルシロキサンを含み、そのアルコキシ基はメトキシ基又はエトキシ基であってもよい。
シロキサン系ポリマーの場合、架橋剤の粘度は、25℃で約10mPa.s~80,000mPa.sの範囲内にある。粘度は、任意の好適な手段、例えばAnton Paar GmbH(Graz、Austria)製のModular Compact Rheometer(MCR)302を使用して、関係する粘度に最も好適な設定及びプレートを使用して、例えば、1s-1の剪断速度で0.3mmのギャップを有する直径25mmの回転プレートを使用して測定され得る。
【0063】
上記の加水分解性基のいずれも好適であるが、加水分解性基は、アルコキシ基であり、そのようなものとして、末端シリル基は、-RaSi(ORb)2、-Si(ORb)3、-Ra
2SiORb又は-(Ra)2Si-Rc-SiRd
p(ORb)3-p(式中、各Raは独立して、一価のヒドロカルビル基、例えば、アルキル基、特に1~8個の炭素原子を有するものを表し(好ましくはメチルであり)、各Rb及びRd基は、独立して最大6個の炭素原子を有するアルキル基であり、Rcは、最大6個のケイ素原子を有する1個以上のシロキサンスペーサーにより介在され得る二価の炭化水素基であり、pは値0、1又は2である)などの式を有することが好ましい。典型的には、各末端シリル基は、2個又は3個のアルコキシ基を有する。
【0064】
したがって、成分(b)としては、メチルトリメトキシシラン(MTM)及びメチルトリエトキシシランなどのアルキルトリアルコキシシラン、テトラエトキシシラン、部分縮合テトラエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン及びビニルトリエトキシシランなどのアルケニルトリアルコキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン(iBTM)が挙げられる。その他の好適なシランとしては、エチルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、アルコキシトリオキシモシラン、アルケニルトリオキシモシラン、3,3,3-トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、メチルトリアセトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、エチルトリアセトキシシラン、ジ-ブトキシジアセトキシシラン、フェニル-トリプロピオノキシシラン、メチルトリス(メチルエチルケトキシモ)シラン、ビニル-トリス-メチルエチルケトキシモ)シラン、メチルトリス(メチルエチルケトキシイミノ)シラン、メチルトリス(イソプロペノキシ)シラン、ビニルトリス(イソプロペノキシ)シラン、エチルポリシリケート、n-プロピルオルトシリケート、エチルオルトシリケート、ジメチルテトラアセトキシジシロキサン、オキシモシラン、アセトキシシラン、アセトンオキシムシラン、エノキシシラン及びその他の3官能性アルコキシシランなど、並びにこれらの部分加水分解縮合生成物;1,6-ビス(トリメトキシシリル)ヘキサン(あるいは、ヘキサメトキシジシリルヘキサンとしても知られている)、ビス(トリアルコキシシリルアルキル)アミン、ビス(ジアルコキシアルキルシリルアルキル)アミン、ビス(トリアルコキシシリルアルキル)N-アルキルアミン、ビス(ジアルコキシアルキルシリルアルキル)N-アルキルアミン、ビス(トリアルコキシシリルアルキル)尿素、ビス(ジアルコキシアルキルシリルアルキル)尿素、ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)アミン、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)アミン、ビス(4-トリメトキシシリルブチル)アミン、
ビス(4-トリエトキシシリルブチル)アミン、ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)N-メチルアミン、
ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)N-メチルアミン、ビス(4-トリメトキシシリルブチル)N-メチルアミン、ビス(4-トリエトキシシリルブチル)N-メチルアミン、ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)尿素、
ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)尿素、ビス(4-トリメトキシシリルブチル)尿素、ビス(4-トリエトキシシリルブチル)尿素、ビス(3-ジメトキシメチルシリルプロピル)アミン、ビス(3-ジエトキシメチルシリルプロピル)アミン、ビス(4-ジメトキシメチルシリルブチル)アミン、ビス(4-ジエトキシメチルシリルブチル)アミン、
ビス(3-ジメトキシメチルシリルプロピル)N-メチルアミン、ビス(3-ジエトキシメチルシリルプロピル)N-メチルアミン、ビス(4-ジメトキシメチルシリルブチル)N-メチルアミン、ビス(4-ジエトキシメチルシリルブチル)N-メチルアミン、ビス(3-ジメトキシメチルシリルプロピル)尿素、ビス(3-ジエトキシメチルシリルプロピル)尿素、ビス(4-ジメトキシメチルシリルブチル)尿素、ビス(4-ジエトキシメチルシリルブチル)尿素、ビス(3-ジメトキシエチルシリルプロピル)アミン、ビス(3-ジエトキシエチルシリルプロピル)アミン、ビス(4-ジメトキシエチルシリルブチル)アミン、ビス(4-ジエトキシエチルシリルブチル)アミン、ビス(3-ジメトキシエチルシリルプロピル)N-メチルアミン、ビス(3-ジエトキシエチルシリルプロピル)N-メチルアミン、ビス(4-ジメトキシエチルシリルブチル)N-メチルアミン、ビス(4-ジエトキシエチルシリルブチル)N-メチルアミン、ビス(3-ジメトキシエチルシリルプロピル)尿素、ビス(3-ジエトキシエチルシリルプロピル)尿素、ビス(4-ジメトキシエチルシリルブチル)尿素及び/又はビス(4-ジエトキシエチルシリルブチル)尿素;ビス(トリエトキシシリルプロピル)アミン、ビス(トリメトキシシリルプロピル)アミン、ビス(トリメトキシシリルプロピル)尿素、ビス(トリエトキシシリルプロピル)尿素、ビス(ジエトキシメチルシリルプロピル)N-メチルアミン;ジ又はトリアルコキシシリル末端ポリジアルキルシロキサン、ジ又はトリアルコキシシリル末端ポリアリールアルキルシロキサン、ジ又はトリアルコキシシリル末端ポリプロピレンオキシド、ポリウレタン、ポリアクリレート;ポリイソブチレン;ジ又はトリアセトキシシリル末端ポリジアルキル;ポリアリールアルキルシロキサン;ジ又はトリオキシイミノシリル末端ポリジアルキル;ポリアリールアルキルシロキサン;ジ又はトリアセトノキシ末端ポリジアルキル又はポリアリールアルキルが挙げられる。使用される成分(b)はまた、上記の2つ以上の任意の組み合わせを含んでもよい。
【0065】
好ましくは、成分(b)はチタンを含まない。好ましくは、本明細書の組成物の成分(b)は、1分子当たり少なくとも2個のヒドロキシル基又は加水分解性基を有するポリオルガノシロキサンポリマー、特に上記の式(7)に示されるタイプのポリオルガノシロキサンポリマーである。
【0066】
本明細書の水性シリコーンエマルジョン組成物の成分(c)は、1種以上の界面活性剤である。界面活性剤は、両親媒性有機化合物であり、水に不溶性である傾向がある疎水性基(尾部と称される)及び水溶性である傾向がある親水性基(頭部と称される)の両方を含有する。それらは、液体/気体界面又は非混和性液体の場合には液体/液体界面で吸着することによって液体の表面張力を低下させ、あるいは乳化剤、エマルジェント(emulgent)又はテンサイド(tenside)と称され得、例えば界面活性剤は、エマルジョンを安定化させるために使用される場合、乳化剤と称されることが多い。界面活性剤は、頭部の性質(例えば、キャプショニング、非イオン性、アニオン性及び両性)に応じて分類され、本明細書の成分(c)は、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、両性界面活性剤又はこれらの混合物であってもよい。
【0067】
アニオン性界面活性剤の例としては、高級脂肪酸のアルカリ金属、アミン又はアンモニウム塩、アルキルアリールスルホネート(例えば、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム)、脂肪アルコールスルフェート、エトキシ化脂肪アルコールのスルフェート、オレフィンスルフェート、オレフィンスルホネート、硫酸化モノグリセリド、硫酸化エステル、スルホン化エトキシ化アルコール、スルホスクシネート、リン酸エステル、アルキルサルコシネート、アルカリ金属のアルキルエステルスルホネート(例えば、ジオクチルナトリウムスルホスクシネート)、アルキルグリセリルスルホネート、脂肪酸グリセロールエステルスルホネート、アシルメチルタウレート、アルキルコハク酸、アルケニルコハク酸及び対応するエステル、アルキルスルホコハク酸及び対応するアミド、スルホコハク酸のモノエステル及びジエステル、アシルサルコシネート、硫酸化アルキルポリグルコシド、アルキルポリグリコールカルボキシラート、ヒドロキシアルキルサルコシネート及びこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0068】
カチオン性界面活性剤の例としては、アルキルアミン塩、第四級アンモニウム塩(例えばヘキサデシル-トリメチル-アンモニウムクロリド);スルホニウム塩、及びホスホニウム塩(例えばトリブチルテトラデシル-塩化ホスホニウム)が挙げられる。
【0069】
両性界面活性剤の例としては、イミダゾリン化合物、アルキルアミノ酸塩、ベタイン及びこれらの混合物が挙げられる。
【0070】
非イオン性界面活性剤の例としては、ポリオキシエチレン脂肪アルコール、例えばポリオキシエチレン(23)ラウリルエーテル、ポリオキシエチレン(4)ラウリルエーテル;エトキシ化アルコール、例えばエトキシ化トリメチルノナノール、C12~C14二級アルコールエトキシレート、エトキシ化C10ゲルベアルコール、エトキシ化イソC13アルコール;ポリ(オキシエチレン)-ポリ(オキシプロピレン)-ポリ(オキシエチレン)トリブロックコポリマー(ポロクサマーともいう);プロピレンオキシド及びエチレンオキシドをエチレンジアミンに連続付加することで誘導される、四官能性ポリ(オキシエチレン)-ポリ(オキシプロピレン)ブロックコポリマー(ポロキサミンともいう)、シリコーンポリエーテル、及びこれらの混合物が挙げられる。
【0071】
典型的には、界面活性剤は、エマルジョン組成物の油相中に、エマルジョン組成物の油相の総重量に基づいて、0.1~10重量%、あるいは0.5~8重量%、あるいは1~5重量%の量で存在する。
【0072】
成分(d)は水である。水は、水道水、井戸水、精製水、脱イオン水及びこれらの組み合わせなどの分子水(H2O)を含んでもよい。一実施形態では、エマルジョンの水は、分子水から本質的になり、有機化合物、酸などのいかなる他の希釈剤も含まない。別の実施形態では、エマルジョン組成物の水は精製水などの分子水からなる。当然のことながら、精製水は、微量不純物を依然含んでもよいことを理解すべきである。本明細書の乳化処理で使用される水は、軟化され、脱塩された。
【0073】
典型的には、水は、エマルジョン中に、エマルジョンの総重量に基づいて、5~95重量%、あるいは20~80重量%、あるいは10~45重量%の量で存在する。
【0074】
前述の水性シリコーンエマルジョン組成物はまた、添加剤を含んでもよい。添加剤は、エマルジョン組成物の意図される最終用途に依存するが、充填剤、増粘剤、防腐剤及び殺生物剤、pH調整剤、接着促進剤、(無機)塩、染料、香料、並びにこれらの混合物を含んでもよいが、これらに限定されない。
【0075】
添加剤は、当業者によって選択される任意の量でエマルジョン組成物の連続水相又は分散相のいずれかに存在してよい。様々な実施形態では、添加剤は典型的には、エマルジョンの総重量に基づいて、約0.0001~約25重量%、あるいは約0.001~約10重量%、あるいは約0.01~約3%の量で存在する。
【0076】
水性シリコーンエマルジョン組成物は、より高い剪断速度ではエマルジョン組成物の流動特性を維持しながら、低い剪断速度でエマルジョン組成物の粘度を増加させるために増粘剤を含んでもよい。好適な増粘剤としては、ポリアルキレンオキシド、例えばポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、ポリブチレンオキシド及びこれらの組み合わせ、アクリルアミドポリマー及びコポリマー、アクリレートコポリマー及びこれらの塩、例えばポリアクリル酸ナトリウム;天然及び合成多糖類セルロース、アルギン酸塩、デンプン、ガム及びそれらの誘導体が挙げられるが、これらに限定されない。非限定的な例としては、メチルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリプロピルヒドロキシエチルセルロースナトリウムアルギネート、アラビアガム、キサンタンガム、カシアガム、グアーガム及びそれらの誘導体、クレイ、例えばヘクトライト又はEckhartから市販されているLaponite(商標)及びそれらの誘導体、並びにこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。存在する場合、増粘剤は、エマルジョンが形成される前に、水又は「油」と組み合わされてもよい。典型的には、増粘剤は、エマルジョンが生成される前に水と組み合わされる。存在する場合、増粘剤は、典型的には、エマルジョンの総重量に基づいて、0.001~6重量%、あるいは0.05~3重量%、あるいは0.1~3重量%の量で存在する。
【0077】
水性シリコーンエマルジョン組成物は、1種以上の充填剤を含み得る。存在する場合、充填剤は、1種以上の補強性充填剤又は非補強性充填剤であってもよい。補強性充填剤の場合、これらは、例えば、沈降式炭酸カルシウム、粉砕炭酸カルシウム、ヒュームドシリカ、コロイドシリカ及び/又は沈降性シリカであってもよい。典型的には、補強性充填剤の表面積は、ISO 9277:2010に準拠してBET法によって測定して、沈降性炭酸カルシウムの場合、少なくとも15m2/g以上、あるいは15~50m2/g、あるいは15~25m2/gである。シリカ補強性充填剤は、少なくとも50m2/gの典型的な表面積を有する。シリカ充填剤は、沈降性シリカ及び/又はヒュームドシリカであってもよい。高表面積ヒュームドシリカ及び/又は高表面積沈降性シリカの場合、これらは、ISO 9277:2010に準拠してBET法を使用して測定して75~450m2/gの表面積を有することができ、あるいはISO 9277:2010に準拠してBET法を使用して100~400m2/gの表面積を有することができる。
【0078】
典型的には、充填剤は、選択された充填剤に応じて、組成物の約5~45重量%、あるいは組成物の約5~30重量%、あるいは組成物の約5~25重量%の量で組成物中に存在する。
【0079】
補強性充填剤は、例えば、1種以上の脂肪酸、例えば、ステアリン酸などの脂肪酸若しくはステアレートなどの脂肪酸エステルを用いて、又はオルガノシラン、オルガノシロキサン若しくはオルガノシラザンヘキサアルキルジシラザン、若しくは短鎖シロキサンジオールを用いて、疎水性処理を行って補強性充填剤(複数可)を疎水性にし、ひいては他の接着剤成分との均質混合物を処理すること、またそれを得ることをより容易にし得る。充填剤の表面処理により、それらは成分(a)又は(b)で容易に湿潤される。これらの表面改質充填剤は、固まらず、成分(a)中に均質に組み込まれ得る。これにより、未硬化組成物の室温での機械的特性が改善される。充填剤を、前処理してもよく、又は成分(a)及び/又は(b)と混合する際にin situで処理してもよい。
【0080】
pH調整剤の例としては、任意の水溶性酸若しくは塩基又は可溶性塩が挙げられる。例としては、カルボン酸、塩酸、硫酸及びリン酸、モノカルボン酸(例えば、酢酸及び乳酸)、並びにポリカルボン酸(例えば、コハク酸、アジピン酸、クエン酸)、並びにこれらの混合物を含む酸が挙げられるが、これらに限定されない。例としては、水酸化ナトリウム、アンモニアなどの塩基が挙げられるが、これらに限定されない。例としては、アルカリ炭酸塩、アルカリ炭酸水素塩、アルカリリン酸塩、アルカリリン酸水素塩及びこれらの混合物などの塩が挙げられるが、これらに限定されない。
【0081】
本発明の目的のために、「防腐剤及び殺生物剤」は、タイプ(例えば、真菌、細菌、白カビ(mildew)など)にかかわらず、微生物増殖を防止及び/又は抑制する物質である。防腐剤及び殺生物剤の例としては、パラベン誘導体、ヒダントイン誘導体、クロルヘキシジン及びその誘導体、イミダゾリジニル尿素、フェノキシエタノール、銀誘導体、サリチル酸塩誘導体、トリクロサン、シクロピロックスオラミン、ヘキサミジン、オキシキノリン及びその誘導体、PVP-ヨード、亜鉛塩及び亜鉛ピリチオンなどの誘導体、グルタルアルデヒド、ホルムアルデヒド、2-ブロモ-2-ニトロプロパン-1,3-ジオール、5-クロロ-2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オン、2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オン、フェノキシエタノール、塩化ベンザルコニウム、並びにこれらの混合物が挙げられる。
【0082】
任意選択的に、成分(a)及び/又は成分(b)は、ポリオルガノシロキサンポリマーの場合、希釈剤の存在下で調製されてもよい。希釈剤の例としては、ケイ素含有希釈剤(ヘキサメチルジシロキサン、オクタメチルトリシロキサン等)、及び他の短鎖直鎖状シロキサン(オクタメチルトリシロキサン、デカメチルテトラシロキサン、ドデカメチルペンタシロキサン、テトラデカメチルヘキサシロキサン、ヘキサデカメチルヘプタシロキサン、ヘプタメチル-3-{(トリメチルシリル)オキシ}トリシロキサン等)、環状シロキサン(ヘキサメチルシクロトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン等);有機希釈剤(例えば酢酸ブチル、アルカン、アルコール、ケトン、エステル、エーテル、グリコール、グリコールエーテル、炭化水素、ヒドロフルオロカーボン)、又は成分の材料のいずれかに悪影響を及ぼすことなく組成物を希釈することができる、任意の他の材料が挙げられる。希釈剤は、2種類以上の希釈剤の混合物であってよい。炭化水素としては、イソドデカン、イソヘキサデカン、Isopar L(C11~C13)、Isopar H(C11~C12)、水素添加ポリデセン、鉱油、特に水素添加鉱油若しくはホワイト油、液状ポリイソブテン、イソパラフィン系油、又は石油ゼリーが挙げられる。エーテル及びエステルとしては、イソデシルネオペンタノエート、ネオペンチルグリコールヘプタノエート、グリコールジステアレート、ジカプリリルカーボネート、ジエチルヘキシルカーボネート、プロピレングリコールnブチルエーテル、エチル-3-エトキシプロピオネート、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、トリデシルネオペンタノエート、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート(PGMEA)、プロピレングリコールメチルエーテル(PGME)、オクチルドデシルネオペンタノエート、ジイソブチルアジペート、ジイソプロピルアジペート、プロピレングリコールジカプリレート/ジカプレート、及びオクチルパルミテートが挙げられる。更なる有機希釈剤としては、脂肪、油、脂肪酸、及び脂肪族アルコールが挙げられる。希釈剤の混合物もまた使用できる。
【0083】
エマルジョン組成物が化粧料組成物又はヘアケア組成物などのビューティケア組成物としての使用に適合される場合、エマルジョン組成物は、少なくとも1種の適切な化粧料構成成分を組み込む。
【0084】
エマルジョン組成物がヘルスケア組成物での使用に適合される場合、エマルジョン組成物は、少なくとも1つの適切なヘルスケア構成成分を組み込む。ヘルスケア構成成分の例としては、抗ざ瘡剤、治療活性剤、外用鎮痛剤、抗生物質、消毒剤、抗炎症剤、収斂剤、ホルモン、禁煙組成物、心血管剤、抗不整脈剤、鎮痒剤などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0085】
本明細書のエマルジョン組成物の油相は、
成分(a)が、組成物の20~90重量%、あるいは組成物の20~70重量%、あるいは組成物の30~65重量%、あるいは組成物の35~55重量%の量で存在し、
成分(b)が、組成物の15~70重量%、あるいはエマルジョン組成物の油相の30~65重量%、あるいは35~55重量%の量で存在し、
成分(c)が、エマルジョン組成物の油相の総重量に基づいて、0.1~10重量%、あるいは0.5~8重量%、あるいは1~5重量%の量で存在し、エマルジョン組成物の油相が、エマルジョン組成物の98~5重量%、あるいはエマルジョン組成物の98~20重量%、あるいはエマルジョン組成物の98~55重量%、あるいはエマルジョン組成物の98~70重量%であり、
成分(d)が、エマルジョンの総重量に基づいて、2~95重量%、あるいは2~80重量%、あるいは2~45重量%、あるいは2~30重量%の量で存在することを含み得る。
【0086】
典型的には、添加剤は、エマルジョン組成物の約10重量%の累積総量で存在するが、この値は、エマルジョン組成物の最終用途に応じて変化し得る。組成物の総重量%が常に100重量%であるという条件で、上記の任意の組み合わせを利用することができる。
【0087】
前述したように、本明細書では、水性シリコーンエマルジョン組成物を調製する方法であって、
(i)第1の構成成分である2~4個のアルコキシ基を有するアルコキシチタン化合物を、第2の構成成分である1分子当たり少なくとも2個の末端シラノール基を有し、かつ25℃で30~300000mPa.sの粘度を有する直鎖状又は分岐状ポリジオルガノシロキサンと混合する工程と、
(ii)真空下で撹拌することによって第1の構成成分と第2の構成成分を反応させ、反応生成物を形成させる工程と、
(iii)工程(ii)の反応生成物を回収する工程と、を含むプロセスから、チタン系反応生成物(a)を調製することと、
反応生成物(a)と、
(b)1分子当たり少なくとも2個、あるいは少なくとも3個のヒドロキシル基及び/又は加水分解性基を有する1種以上の含ケイ素化合物と、
(c)1種以上の界面活性剤と、
(d)水と、を混合してエマルジョンを形成することと、を含む、方法が提供される。
【0088】
好ましくは、水性シリコーンエマルジョン組成物は、水の除去後の合体時にエラストマーを生じる。
【0089】
エマルジョンは、任意の既知の方法によって調製されてもよい。エマルジョンは、成分(a)~(d)を含有する1液型エマルジョンであってもよく、あるいは以下の2液型、すなわち
(i)成分(a)、(c)及び(d)を含有するが成分(b)を含有しないエマルジョンJと、
成分(b)、(c)及び(d)を含有し、成分(a)を含有しないエマルジョンK;又は、代替的には、
(ii)成分(a)、(c)、(d)と、成分(b)の一部とを含有するエマルジョンJと、成分(b)の残りと、(c)と、(d)と、を含有するエマルジョンK、で提供されてもよい。
2液型で存在する場合、2つの部分は、使用前に任意の好適な重量比で混合されてもよい。
【0090】
1液型エマルジョンの場合、成分(b)を成分(a)と混合し、同時に又はその後に成分(c)を混合し、十分な量の水(成分(d))を混合してエマルジョンを形成する。適切であるとみなされる場合、エマルジョンの更なる剪断混合及び/又は成分(d)によるエマルジョンの希釈を行うことができる。任意の追加の剪断混合を行って、粒径を減少させ及び/又は長期保存安定性を改善する。この実施形態では、成分が一緒に混合されると硬化が開始するが、標準的なチタン系触媒を使用する硬化よりも速く機能する。
【0091】
エマルジョン組成物が2液型で調製される実施形態(i)の場合、エマルジョンJにおいて、成分(a)は成分(c)と混合され、十分な量の水(成分(d))と混合されてエマルジョンを形成する。ここでも、適切であるとみなされる場合、エマルジョンの更なる剪断混合及び/又は成分(d)によるエマルジョンの希釈を行うことができる。成分(b)を同様に成分(c)及び(d)と別々に混合し、乳化してエマルジョンKを形成する。
【0092】
エマルジョン組成物が2液型で調製される実施形態(ii)の場合、ある割合の成分(b)が成分(a)と混合され、同時に又はその後に、十分な量の水(成分(d))と混合された成分(c)と混合されて、エマルジョンJを形成する。ここでも、適切であるとみなされる場合、エマルジョンの更なる剪断混合及び/又は成分(d)によるエマルジョンの希釈が行われ、エマルジョンJを形成し得る。成分(b)の残りを別個に、十分な量の水(成分(d))と混合された成分(c)と混合してエマルジョンKを形成する。ここでも、適切であるとみなされる場合、エマルジョンの更なる剪断混合及び/又は成分(d)によるエマルジョンの希釈を行うことができる。
【0093】
両方の実施形態(i)及び(ii)において、続いて、2つのエマルジョンJ及びKを、任意の適切な重量:重量比で一緒に混合して、本明細書で前述したエマルジョン組成物を形成する。同様に、エマルジョンJ及びKは、その後、任意の適切な重量:重量比で一緒に混合されて、上記のエマルジョン組成物を形成する。
【0094】
2つのエマルジョンが調製され、互いに独立して貯蔵される実施形態(i)及び(ii)において、硬化は、2つのエマルジョンを混合し、水を蒸発させるか又は蒸発させておいた後にのみ起こる。任意選択的に、2つのエマルジョンは、任意の適切なプロセス(例えば、液滴合体)によって混合され得る。
【0095】
上記のいずれかにおける混合は、当該技術分野において既知の任意の好適なプロセスによって、例えばバッチ、半連続又は連続プロセスによって達成することができる。混合は、例えば、チェンジカンミキサー、ダブルプラネタリーミキサー、コニカルスクリューミキサー、リボンブレンダー、ダブルアーム又はシグマブレードミキサーを含む、中/低剪断によるバッチ混合装置;Charles Ross&Sons(NY),Hockmeyer Equipment Corp.(NJ)により製造されたものを含む、高剪断高速ディスペンサーを備えたバッチ装置;Banbury型(CW Brabender Instruments Inc.,NJ)及びHenschel型(Henschel mixers,America(TX))を含む高剪断作用を持つバッチ装置;例えばSpeed Mixer(登録商標)(Hauschild&Co KG,Germany)のような遠心力型高剪断混合装置を用いて行うことができる。連続ミキサー/コンパウンダ-の実例としては、Krupp Werner&Pfleiderer Corp(Ramsey,NJ)及びLeistritz(NJ)により製造されたものなどの、単軸押出機、二軸押出機、及び多軸押出機、同方向押出機;二軸異方向押出機、二段階押出機、ツインローター連続ミキサー、動的若しくは静的ミキサー、又はこれら装置の組み合わせが挙げられる。
【0096】
必要に応じて、例えば、エマルジョンの形成をもたらす高剪断混合を提供するための当該技術分野で公知の任意の好適な技術を利用してもよい。そのような高剪断混合技法の代表的なものには、ホモジナイザー、ソノレーター及び他の類似の剪断装置が挙げられる。
【0097】
混合が生じる温度及び圧力は重要ではないが、一般に、周囲温度(20~25℃)及び圧力で行われる。典型的には、混合物の温度は、そのような高粘度材料の剪断に伴う機械的エネルギーのため、混合プロセス中に上昇する。
【0098】
本開示のエマルジョンは水中油型エマルジョンである。本発明の水中油型エマルジョンは、連続水相中に分散した(油)相の平均体積の粒子により特徴付けることができる。粒径は、例えばISO13320:2009に従って、エマルジョンのレーザー回折により測定することができる。適切なレーザー回折技術は、当該技術分野において公知である。粒径は粒径分布(particle size distribution、PSD)から得られる。PSDは、体積、表面、長さを基準に決定することができる。体積粒径は、所定の粒子と同じ体積を有する球体の直径と等しい。用語Dvは、分散粒子の平均体積粒径を表す。Dv0.5は、体積をもとに測定された粒径のうち、累積粒子集団の50%に相当するものである。換言すると、Dv0.5=10μmである場合、50%の粒子は、10μmを下回る平均体積粒径を有し、50%の粒子は、10μmを超える体積平均粒径を有する。特に記載のない限り、全ての平均体積粒径は、Dv0.5を使用して計算される。
【0099】
エマルジョンの連続水相中に分散した(油)相の平均体積粒径は、0.1μm~150μmの間、又は0.1μm~30μmの間、又は0.2μm~5.0μmの間で変動できる。
【0100】
上記組成物の製品は、布地ケア、パーソナルケア、ビューティケア、ホームケア及び/又はヘルスケア、建築及び自動車用途で使用するための、シーラント、接着剤、例えば構造用接着剤及び感圧接着剤、コーティング、化粧料、硬化物品(cured article)を配合するために利用することができる。
【0101】
一実施形態では、本明細書のエマルジョン組成物は、水を除去するとエラストマーを生じる。本発明の目的のために、水を除去するとシリコーンエラストマーを付与する水性シリコーン組成物は、50℃で少なくとも4週間貯蔵した場合に安定であると考えられ、水を除去してもエラストマー形態の外観も特性も変化させない。
【0102】
シリコーン系材料を含む布地ケア組成物の使用から得られる利点としては、布地柔軟化及び/若しくは感触増進(若しくはコンディショニング)、衣料形状保持及び/若しくは回復及び/若しくは弾性、アイロン掛けの容易性、カラーケア、磨耗防止、ケバ立ち防止、又はこれらの任意の組み合わせのうちの1つ以上の利点が挙げられる。
【0103】
本明細書に記載される製品は、化粧料組成物における使用のために提供され得る。化粧料組成物は、クリーム、ゲル、粉末(流動性粉末又はプレス状)、ペースト、固体、自由に注ぐことができる液体、エアゾールの形態であり得る。化粧料組成物は、単相系、二相系又は別の多相系、エマルジョンの形態であってもよい。スキンケア組成物としては、シャワージェル、石鹸、ヒドロゲル、クリーム、ローション及びバーム;制汗剤;デオドラントスキンクリーム;スキンケア用ローション;身体及び顔用洗浄剤;プレシェーブ及びアフターシェーブローション;シェービングソープが挙げられる。スキンケア組成物からは貼付剤を除外する。ヘアケア組成物としては、シャンプー、コンディショナーが挙げられ、ネイルケア組成物としては、カラーコート、ベースコート、ネイルハードナー及びこれらのキットが挙げられる。
【0104】
本明細書に記載される製品は、ヘルスケア組成物又は薬剤における使用のために提供され得る。ヘルスケア組成物は、軟膏、クリーム、ゲル、ムース、ペースト、密封包帯、フォーム及び/又はエアゾールなど、にきび予防、歯科衛生、抗生物質、治癒促進を含む医薬クリーム、ペースト、スプレー(これらは、予防及び/又は治療用医薬であってよい)、並びにこれらのキットの形態であってよい。ヘルスケア組成物からは貼付剤を除外する。
【0105】
あるいは、上記の組成物から製造される硬化シリコーンは、蒸気透過性であり、皮膚に対して不活性であり、皮膚への接着を提供するように配合することができ、したがって、化粧用パッチ、薬物放出パッチ(ヒト及び動物の両方のための)、創傷包帯(ヒト及び動物の両方のための)などのための接着剤としての候補となる。これらの組成物が汗又は他の体液を吸収することが望ましい場合がある。
【実施例】
【0106】
全ての粘度測定は、Anton Paar GmbH(Graz、Austria)製のModular Compact Rheometer(MCR)302を使用して、1s-1の剪断速度で0.3mmのギャップを有する直径25mm直径の回転プレートを使用して行った。特に明記しない限り、全ての粘度は25℃で測定した。本明細書の乳化処理で使用される水は、軟化され、脱塩された。
【0107】
以下の構成成分を実施例において使用し、以下の表において短い用語を使用して言及する。
ポリマー1:約803mPa.sの粘度を有する実質的に直鎖状のジメチルシラノール末端ポリジメチルシロキサン、
ポリマー4:約63,000mPa.sの粘度を有するトリメトキシシリル末端ポリジメチルシロキサン、
ポリマー3:約60,000mPa.sの粘度を有するトリエトキシシリル末端ポリジメチルシロキサン、
TiPT:テトライソプロポキシチタン、
TtBT:テトラt-ブトキシチタン、
Lutensol(商標)XP79は、C10-ゲルベアルコール及び1分子当たり平均7個のエチレンオキシド(EO)基を含有する非イオン性界面活性剤であり、BASFから市販されている、及び
Brij(商標)L3及びBrij(商標)L23は、それぞれ平均で3個及び23個のエチレンオキシド基を有する、ラウリルアルコールに基づくエトキシル化天然脂肪アルコールを含有する非イオン性界面活性剤であり、CRODAから市販されている。
【0108】
チタン系反応生成物の調製
3種の成分(a)反応生成物RP1、RP2及びRP3を実施例で使用するために調製した。それらの調製に使用した構成成分を以下の表1に示し、各場合に従ったプロセスはそれ以外では同一であり、したがって、RP1の調製で以下に例示する。
【0109】
【0110】
RP1の調製
199.997gのポリマー1を、Hauschild&Co.KG(Germany)製のDAC600FVZ/VAC-P型SpeedMixer(商標)のプラスチック容器に入れた。次いで、0.801gのTiPTをポリマー1に添加した。蓋を容器上に置き、構成成分、容器及び蓋の初期重量を一緒に秤量した。混合中、約160mbar(16kPa)の真空を適用した。容器の蓋に5つの小さな穴を開けて、揮発性化合物が混合物から出るようにした。
【0111】
次いで、構成成分を、Hauschild&Co.KG(Germany)製のDAC600FVZ/VAC-P型SpeedMixer(商標)中で、真空下にて2350rpmで4分間、6回混合した。
【0112】
上記混合レジームの完了後、容器、蓋、得られた反応生成物を再秤量して、揮発性アルコールの抽出による重量損失を決定した。重量損失は0.662gであると決定された。得られた0.662gの重量損失は、第1の構成成分と第2の構成成分との間の反応の副生成物として抽出可能なアルコール含量の約97.9%を占めた。ポリマーの数平均分子量を約14,800と仮定すると、計算されたSi-OH/Tiモル比は約9.6:1であった。
【0113】
次に、1s-1の剪断速度で0.3mmのギャップを有する直径25mm直径の回転プレートで、Anton Paar GmbH(Graz、Austria)製のModular Compact Rheometer(MCR)302を使用して、上記プロセスによって生成したRP1の粘度を測定したところ、18,000mPa.sであった。次に、RP1をガラス瓶に入れて室温で28日間貯蔵した後、同じ試験プロトコルを用いて粘度を再測定したところ、ほぼ一定のままであることがわかった。
【0114】
第1に2液型エマルジョン組成物を使用し、第2に1液型エマルジョン組成物を使用して、2つの連続する実施例を調製した。
【0115】
2液型エマルジョン組成物
一連の2液型(K及びJ)エマルジョンを調製した。K型エマルジョンは、成分(b)、(c)及び(d)を含有するが、成分(a)を含有しない。調製したK型エマルジョンの組成を、表2aに実施例1~6(E1~6)として示す。J型エマルジョンは、成分(a)、(c)及び(d)を含有するが、成分(b)を含有しない。調製したJ型エマルジョンの組成を、表2bに実施例7~10(E7~10)として示す。
【0116】
K型エマルジョン及びJ型エマルジョンは、Hauschild&Co.KG(Germany)製のSpeedMixer(商標)DAC150.1FVを使用して、2つの代替プロセス、プロセス1又はプロセス2のうちの1つを使用して調製した。
【0117】
プロセス1
工程1:それぞれの成分(a)又は成分(b)をミキサーに入れ、次いで(複数の)界面活性剤を添加し、組み合わせを3500rpmで35秒間混合して油相を生成した。
工程2.工程1の油相生成物に、3重量%以下(エマルジョンの全重量に対して計算)の分量を用いて段階的に水を入れた。各添加の後、3500rpmで35秒間混合し、これを、水中に容易かつ完全に分散可能な水中シリコーンエマルジョンが得られるまで繰り返した。
工程3.次いで、希釈水を、5~15重量%(エマルジョンの全重量に対して計算)の分量で、上記の工程2から得られたエマルジョンに段階的に添加した。これを、エマルジョンの70~80重量%(エマルジョンの全重量に対して計算)である油相からなる水中シリコーンエマルジョンが得られるまで続けた。
【0118】
プロセス2
工程1:それぞれの成分(a)又は成分(b)をミキサーに入れ、次いで(複数の)界面活性剤を添加し、組み合わせを3500rpmで35秒間混合して油相を生成した。
工程2.水中シリコーンエマルジョンを得るのに十分な水を一工程で添加し、続いて3500rpmで35秒間混合した。
工程3.次いで、希釈水を5~15重量%(エマルジョンの全重量に対して計算)の分量で、上記の工程2から得られたエマルジョンに段階的に添加した。これを、エマルジョンの70~80重量%(エマルジョンの全重量に対して計算)である油相からなる水中シリコーンエマルジョンが得られるまで続けた。
【0119】
表2a及び表2bの両方において、以下の実施例で強調された「水」値は、プロセスにかかわらず、工程2において添加された最後の水の量を指す。
【0120】
【0121】
【0122】
表2aからの2つのK型エマルジョン、すなわちE5及びE6、並びに表2bからの2つのJ型エマルジョン、すなわちE8及びE10についての典型的なエマルジョン粒径を、Malvern Pananalytical Ltd(Malvern,U.K.)製のMasterziser3000を使用して決定した。試験を行って、D10(μm)及びD50(μm)を決定した。誤解を避けるために、D10(μm)は、試料中の粒子の10%が、μmで与えられた値よりも小さいことを意味し、同様に、D50(μm)(又は上記で特定されたD0.5)は、試料中の粒子の50%が、与えられた値よりも小さいことを意味する。更に、組成物E6及び組成物E8を混合して最終組成物を得て、当該混合物の粒径も評価した。結果を以下の表3に提供する。
【0123】
【0124】
この実施例は、得られたエマルジョンが0.3~5μmの範囲内の平均粒径(D50)を有することを示す。
【0125】
混合2液型エマルジョンのフィルム形成
以下の表4に示すように、4つの混合エマルジョン、ミックス1~ミックス4を調製した。各ミックスにおいて、K型及びJ型エマルジョンを一緒に混合した。数百マイクロメートル厚のフィルムをポリエチレン基材上に適用し、放置して乾燥させ(すなわち、水を4時間、次いで1週間蒸発させ、フィルムの触覚特性を粘着性について評価した。コーティングを指で穏やかに触れ、コーティングを互いに比較することによって、粘着性を調べた。未硬化フィルムは、指又はスパチュラで触れたときに長い糸を生じる。硬化したフィルムは、粘着性のレベルにかかわらず、自立(self-standing)していた。フィルムが硬化しているならば、フィルムの粘着性は、それが使用される用途の所望の効果を満たすように変化させることができる。
【0126】
【0127】
ミックス1~4の2液型の性質を考慮すると、エラストマーの硬化時間及び得られるフィルムの特性を調整することができるように、エマルジョンK対エマルジョンJの比を変更することができることが理解されるであろう。
【0128】
2液型エマルジョンの安定性
実施例E3、E6、E8のエマルジョンを、50℃のオーブンで4週間貯蔵することによって加速エージングさせた。全ての試料は、容易に分散可能なままであり、合体又はクリーム化は観察されず、したがって、K型及びJ型エマルジョンの両方は、経時的に安定なままであり、したがって、エマルジョンの組み合わせの混合及び形成の前に貯蔵され得る。
【0129】
1液型エマルジョン組成物
Hauschild&Co.KG(Germany)製のSpeedMixer(商標)DAC150.1FVを使用して、2つの代替プロセス、プロセス1又はプロセス2のうちの1つを使用して、一連の1液型エマルジョンも調製した。同じプロセス1及び2を利用したが、工程1ではわずかに異なっていた。両方のプロセスの工程1において、それぞれの成分(a)及び成分(b)を最初にミキサーに入れ、次いで、3500rpmで35秒間混合した後、(複数の)界面活性剤を入れた。それ以外は、同じプロセスを利用した。
【0130】
表5a及び表5bの両方において、以下の実施例で強調された「水」値は、プロセスにかかわらず、工程2において添加された最後の水の量を指す。
【0131】
【0132】
【0133】
いくつかの1液型エマルジョンE11、E12、E13、E18及びE19のそれぞれの数百マイクロメートル厚のフィルムをポリエチレン基材上に塗布し、4時間放置して水を蒸発させた。各場合において、4時間(h)後に、異なる粘着性の自立性弾性フィルムが形成された。4時間後、場合によっては1週間後にもオペレーターが粘着性を評価し、得られた各フィルムの触覚特性を記録した。粘着性は、上記と同じ方法で測定した。
【0134】
【0135】
上記の結果は、実施形態(1)における本明細書の1液型エマルジョン中の異なる成分の量の比を変更することによって、エラストマーの硬化時間及び得られるフィルムの特性を調整できることを示す。
【0136】
1液型エマルジョンの安定性
2つの1液型エマルジョンE18及びE19の試料を、50℃のオーブンで4週間貯蔵することによって加速エージングさせた。全ての試料は容易に分散可能なままであり、合体又はクリーム化は観察されず、したがって、本明細書の1液型エマルジョンも経時的に安定なままであり、したがって適用前に貯蔵することができることがわかる。
【0137】
比較例
2つの比較エマルジョンを調製した。
【0138】
エマルジョンCE1は、2液型エマルジョン組成物用の比較用J型エマルジョンであり、すなわち、成分(a)を予め調製せず、構成成分1(チタネート)及び構成成分2(1分子当たり少なくとも2個の末端シラノール基を有する直鎖状又は分岐状ポリジオルガノシロキサン)を別々に導入するエマルジョンである。この場合、エマルジョンプロセス1と類似のプロセスを使用したが、以下の点で異なっていた。
(i)未反応ポリマー1をプロセスの工程1において成分(a)の代わりに導入すること、及び
(ii)工程3の完了後にTiPTが添加され、続いて3500RPMで35秒間混合されたこと。
エマルジョンCE1は、上記E8に対する比較であることが意図されている。
【0139】
エマルジョンCE2は、エマルジョンプロセス2に従って調製された1液型エマルジョンであり、E19との比較を意図している。プロセス1について上述したのと同じ変更をプロセス2について行い、1液型エマルジョンCE2を調製した。
【0140】
比較例を作成するために使用した組成を以下の表7に示す。
【0141】
【0142】
次に、上記で調製した2つの比較エマルジョンを試験して、それらがフィルムを提供するかどうかを調べ、それらの粘着性を評価した。それぞれの場合において、2液型エマルジョン(E3及びCE1)及びCE2のそれぞれの数百マイクロメートル厚のフィルムをポリエチレン基材上に塗布し、4時間放置して水を蒸発させた。4時間後の各場合において、いずれの比較エマルジョンも硬化せず、4時間後に異なる粘着性の自立性弾性フィルムを提供した本開示に記載のエマルジョンとは異なっていた。2液型エマルジョンの結果を表8に示し、1液型エマルジョンの結果を表9に示す。
【0143】
【0144】
【0145】
表8及び表9から、両方の場合において、比較エマルジョンは4時間後に硬化しなかったことがわかる。
【手続補正書】
【提出日】2023-06-21
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水性シリコーンエマルジョン組成物であって、
(a)チタン系反応生成物であって、
(i)第1の構成成分である2~4個のアルコキシ基を有するアルコキシチタン化合物を、第2の構成成分である1分子当たり少なくとも2個の末端シラノール基を有し、かつ25℃で30~300000mPa.sの粘度を有する直鎖状又は分岐状ポリジオルガノシロキサンと混合する工程と、
(ii)真空下で撹拌することによって前記第1の構成成分と前記第2の構成成分を反応させ、反応生成物を形成する工程と、
(iii)工程(ii)の前記反応生成物を回収する工程と、を含むプロセスから得られるか、又は取得可能な、チタン系反応生成物と、
(b)1分子当たり少なくとも2個、あるいは少なくとも3個のヒドロキシル基及び/又は加水分解性基を有する1種以上の含ケイ素化合物と、
(c)1種以上の界面活性剤と、
(d)水と、を含む、水性シリコーンエマルジョン組成物。
【請求項2】
前記成分(a)の調製方法における前記第1の構成成分は、Ti(OR)
4、Ti(OR)
3R
1、Ti(OR)
2R
1
2、又は2個のアルコキシ(OR)基が存在し、チタン原子に2回結合しているキレートがあるキレート化アルコキシチタン分子であり、式中、Rは、1~20個の炭素を有する直鎖状又は分岐状アルキル基であり、各R
1は同じであっても異なっていてもよく、それぞれの場合において10個までの炭素を有するアルキル基、アルケニル基又はアルキニル基から選択される、請求項1に記載の水性シリコーンエマルジョン組成物。
【請求項3】
前記成分(a)の調製方法における前記第2の構成成分は、ジアルキルシラノール末端ポリジメチルシロキサンである、請求項1又は2に記載の水性シリコーンエマルジョン組成物。
【請求項4】
前記第2の構成成分は、25℃で70~20,000mPa.sの粘度を有する、請求項1又は2に記載の水性シリコーンエマルジョン組成物。
【請求項5】
前記成分(a)の調製方法は第3の構成成分を利用し、1分子当たり1個の末端シラノール基を有するポリジアルキルシロキサンは工程(i)で導入される、請求項1又は2に記載の水性シリコーンエマルジョン組成物。
【請求項6】
成分(b)は、1分子団当たり少なくとも2個の加水分解性基、あるいは少なくとも3個の加水分解性基を有するシラン、又は1分子当たり少なくとも2個のヒドロキシル基若しくは加水分解性基を有する次式のオルガノポリシロキサンポリマーから選択され、
X
3-n’R
3
n’Si-(Z)
d-(O)
q-(R
4
ySiO
(4-y)/2)
z-(SiR
4
2-Z)
d-Si-R
3
n’X
3-n’ (7)
式中、各Xは、独立して、ヒドロキシル基又は加水分解性基であり、各R
3はアルキル、アルケニル又はアリール基であり、各R
4はX基、アルキル基、アルケニル基又はアリール基であり、Zは、二価有機基であり、
dは、0又は1であり、qは、0又は1であり、d+q=1であり、n’は0、1、2又は3であり、yは0、1又は2、好ましくは2であり、zは前記オルガノポリシロキサンポリマーが25℃で50~150,000mPa.sの粘度を有するような整数である、請求項1又は2に記載の水性シリコーンエマルジョン組成物。
【請求項7】
前記組成物は、充填剤、増粘剤、防腐剤及び殺生物剤、pH調整剤、接着促進剤、無機塩、染料、香料、並びにこれらの組み合わせから選択される1種以上の添加剤を更に含む、請求項1又は2に記載の水性シリコーンエマルジョン組成物。
【請求項8】
前記エマルジョンの連続水相中の分散油相の平均体積粒径は0.1μm~150μmである、請求項1又は2に記載の水性シリコーンエマルジョン組成物。
【請求項9】
成分(b)はチタンを含まない、請求項1又は2に記載の水性シリコーンエマルジョン組成物。
【請求項10】
成分(a)~(d)を含有する1液型エマルジョンであるか、又は、
(i)成分(a)、(c)及び(d)を含有するが成分(b)を含有しないエマルジョンJ、並びに
成分(b)、(c)及び(d)を含有し、成分(a)を含有しないエマルジョンK、若しくは
(ii)成分(a)、(c)、(d)と、成分(b)の一部と、を含有するエマルジョンJ、並びに、成分(b)の残りと、(c)と、(d)と、を含有するエマルジョンKを含む、2液型エマルジョンである、請求項1又は2に記載の水性シリコーンエマルジョン組成物。
【請求項11】
水性シリコーンエマルジョン組成物を調製する方法であって、
(i)第1の構成成分である2~4個のアルコキシ基を有するアルコキシチタン化合物を、第2の構成成分である1分子当たり少なくとも2個の末端シラノール基を有し、かつ25℃で30~300000mPa.sの粘度を有する直鎖状又は分岐状ポリジオルガノシロキサンと混合する工程と、
(ii)真空下で撹拌することによって前記第1の構成成分と前記第2の構成成分を反応させ、反応生成物を形成する工程と、
(iii)工程(ii)の前記反応生成物を回収する工程と、を含むプロセスから、チタン系反応生成物(a)を調製することと、
反応生成物(a)と、
(b)1分子当たり少なくとも2個、あるいは少なくとも3個のヒドロキシル基及び/又は加水分解性基を有する1種以上の含ケイ素化合物と、
(c)1種以上の界面活性剤と、
(d)水と、を混合して、エマルジョンを形成することと、を含む、水性シリコーンエマルジョン組成物を調製する方法。
【請求項12】
前記エマルジョン組成物は、2液型で調製され、
成分(a)を成分(c)と混合し、十分な量の水(成分(d))と混合してエマルジョンを形成することによるエマルジョンJ;前記エマルジョンの更なる剪断混合及び/若しくは前記成分(d)による前記エマルジョンの希釈は、行われてよく;
成分(b)は別個に、成分(c)及び(d)と、同様に混合され、乳化されてエマルジョンKを形成する;又は
成分(b)の一部は、成分(a)と混合され、同時に若しくはその後に、十分な量の水(成分(d))と混合された成分(c)と混合され、エマルジョンJを形成し;前記エマルジョンの更なる剪断混合及び/若しくは前記成分(d)による前記エマルジョンの希釈を行って、エマルジョンJの形成をもたらしてもよく、
成分(b)の残りは別個に、十分な量の水(成分(d))と混合された成分(c)と混合されて、エマルジョンKを形成し;前記エマルジョンの更なる剪断混合及び/若しくは前記成分(d)による前記エマルジョンの希釈は、行われてよい、請求項11に記載の水性シリコーンエマルジョン組成物を調製する方法。
【請求項13】
後に、前記2つのエマルジョンJ及びKが、任意の適切な重量:重量比で混合されて、前記エマルジョン組成物を形成する、請求項12に記載の水性シリコーンエマルジョン組成物を調製するための方法。
【請求項14】
水を除去した際の請求項1又は2に記載の組成物からの生成物であるエラストマー。
【請求項15】
布地ケア、パーソナルケア、ビューティケア、ホームケア及び/又はヘルスケア、建築及び自動車用途に使用するための、シーラント、接着剤、感圧接着剤、コーティング、化粧料、硬化物品を配合するための、請求項1又は2に記載のエマルジョンの使用。
【国際調査報告】