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特表2023-552079リーキーガット(腸管壁侵漏)の治療におけるカプサイシン
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-14
(54)【発明の名称】リーキーガット(腸管壁侵漏)の治療におけるカプサイシン
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/165 20060101AFI20231207BHJP
   A61P 1/00 20060101ALI20231207BHJP
   A61P 31/04 20060101ALI20231207BHJP
【FI】
A61K31/165
A61P1/00
A61P31/04
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023528690
(86)(22)【出願日】2021-11-16
(85)【翻訳文提出日】2023-07-12
(86)【国際出願番号】 EP2021081795
(87)【国際公開番号】W WO2022106394
(87)【国際公開日】2022-05-27
(31)【優先権主張番号】20201253
(32)【優先日】2020-11-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】NO
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523176945
【氏名又は名称】アクシケム アクチエボラグ
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ラガー、エリック
(72)【発明者】
【氏名】アルテポスト、ルーカス
(72)【発明者】
【氏名】ヘルシング、トルステン
(72)【発明者】
【氏名】フラムロゼ、ボミ
【テーマコード(参考)】
4C206
【Fターム(参考)】
4C206AA01
4C206AA02
4C206AA03
4C206GA07
4C206GA28
4C206KA01
4C206MA01
4C206MA04
4C206MA72
4C206MA76
4C206NA14
4C206ZA66
4C206ZB35
(57)【要約】
本発明は、リーキーガットの治療に関する。より詳細には、本発明は、リーキーガットを治療する方法及び腸透過性の無症候性増加を治療する方法において使用するための化合物及びその組成物を提供する。本発明はさらに、リーキーガット症候群を治療する方法において使用するための化合物及びその組成物を提供する。本発明はさらに、リーキーガット症候群に関連する少なくとも1つの症状を改善する方法において使用するための化合物及びその組成物を提供する。本発明はまた、リーキーガットを治療する方法、リーキーガット症候群を治療する方法、及びリーキーガット症候群に関連する少なくとも1つの症状を改善する方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リーキーガット(腸管壁侵漏)を治療する方法に使用するための、式Iの化合物、又はその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物:
【化1】

式中、
Xは、酸素及び硫黄から選択され、
Rは、シクロヘキシル、フェニル及び置換フェニルを含む群から選択され;
置換フェニルは、任意の1つ以上の位置で、フルオロ;クロロ;ブロモ;ヨード、シアノ、ニトロ、トリフルオロメチル、C-C直鎖及び分岐アルコキシ、C-Cスルホキシ、-S-C-Cアルキル、C-C直鎖及び分岐アルキル、アルケニル及びアルキニル、C-C直鎖及び分岐アルケニル、C-C直鎖及び分岐アルキニル、C-Cフルオロアルキル、クロロアルキル、ブロモアルキル、及びヨードアルキル、COO-C-Cアルキル、O(CO)-C-Cアルキル、NH-C-Cアルキル、N(C-Cアルキル)、CON(C-Cアルキル)、並びにNH(CO)-C-Cアルキルを含む群から選択される1~5個の同一の又は異なる置換基で置換されており;
R’は、水素、C-C直鎖及び分岐アルキル、並びにC-Cシクロアルキルを含む群から選択され、並びに
R’’は、水素、ベンジル、及びアセチルを含む群から選択される。
【請求項2】
Rがフェニル及び置換フェニルを含む群から選択される、請求項1に記載の使用のための請求項1に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物。
【請求項3】
リーキーガット症候群に関連する1つ以上の症状を経験し、リーキーガット、リーキーガット症候群及び/又は腸透過性亢進に関連する少なくとも1つのバイオマーカの正常レベルと比較して、少なくとも1つのバイオマーカのレベルの有意な逸脱を示す対象における腸透過性の無症候性増加を治療する方法に使用するための、請求項1又は請求項2に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物。
【請求項4】
Xが酸素である、請求項1又は請求項3に記載の使用のための、請求項1又は請求項2に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物。
【請求項5】
Xが硫黄である、請求項1又は請求項3に記載の使用のための、請求項1又は請求項2に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物。
【請求項6】
R’がメチルである、請求項1又は請求項3に記載の使用のための、請求項1~5のいずれか一項に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物。
【請求項7】
R’’が水素である、請求項1又は請求項3に記載の使用のための、請求項1~6のいずれか一項に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物。
【請求項8】
化合物が、構造V:
【化2】

のフェニルカプサイシンである、請求項1又は請求項3に記載の使用のための、請求項1~7のいずれか一項に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物。
【請求項9】
請求項1又は請求項3に記載の使用のための、請求項1、2及び4~8のいずれか一項に記載の化合物又はその薬学的に許容され得る塩もしくは溶媒和物を含む組成物。
【請求項10】
少なくとも1つのバイオマーカがゾヌリンである、請求項3に記載の使用のための、請求項1、2及び4~8のいずれか一項に記載の化合物又は請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
対象がリーキーガットと診断されている、請求項3又は請求項10に記載の使用のための、請求項1、2及び4~8のいずれか一項に記載の化合物又は請求項9に記載の組成物。
【請求項12】
対象がセリアック病、IBD、潰瘍性大腸炎又はクローン病と診断されていない、請求項3及び10~11のいずれか一項に記載の使用のための、請求項1、2及び4~8のいずれか一項に記載の化合物又は請求項9に記載の組成物。
【請求項13】
リーキーガット、リーキーガット症候群、又は腸透過性の増加を治療する方法であって、有効量の式Iの化合物、又はその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物:
【化3】

(式中、
Xは、酸素及び硫黄から選択され、
Rは、シクロヘキシル、フェニル及び置換フェニルを含む群から選択され;
置換フェニルは、任意の1つ以上の位置で、フルオロ;クロロ;ブロモ;ヨード、シアノ、ニトロ、トリフルオロメチル、C-C直鎖及び分岐アルコキシ、C-Cスルホキシ、-S-C-Cアルキル、C-C直鎖及び分岐アルキル、アルケニル及びアルキニル、C-C直鎖及び分岐アルケニル、C-C直鎖及び分岐アルキニル、C-Cフルオロアルキル、クロロアルキル、ブロモアルキル、及びヨードアルキル、COO-C-Cアルキル、O(CO)-C-Cアルキル、NH-C-Cアルキル、N(C-Cアルキル)、CON(C-Cアルキル)、並びにNH(CO)-C-Cアルキルを含む群から選択される1~5個の同一の又は異なる置換基で置換されており;
R’は、水素、C-C直鎖及び分岐アルキル、並びにC-Cシクロアルキルを含む群から選択され、並びに
R’’は、水素、ベンジル、及びアセチルを含む群から選択される)、
又は式Iの化合物を含む組成物
を対象に投与する工程を含む、上記方法。
【請求項14】
請求項1、3及び10~12のいずれか一項に記載の使用のための請求項1、2及び4~8のいずれか一項に記載の化合物もしくは請求項9に記載の組成物、又は化合物もしくは組成物を経口投与及び/もしくは腹腔内投与によって対象に投与する工程を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
請求項1、3、10~12及び14のいずれか一項に記載の使用のための請求項1、2及び4~8のいずれか一項に記載の化合物もしくは請求項9に記載の組成物、又は化合物もしくは組成物を経口投与によって対象に投与する工程を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
請求項1、3、10~12及び14~15のいずれか一項に記載の使用のための請求項1、2及び4~8のいずれか一項に記載の化合物もしくは請求項9に記載の組成物、又は化合物もしくは組成物が経口投与用に製剤化される、請求項13に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リーキーガット(腸管壁侵漏)の治療に関する。より詳細には、本発明は、リーキーガットを治療する方法及び腸透過性の無症候性増加を治療する方法において使用するための化合物及びその組成物を提供する。本発明はさらに、リーキーガット症候群を治療する方法において使用するための化合物及びその組成物を提供する。本発明はさらに、リーキーガット症候群に関連する少なくとも1つの症状を改善する方法において使用するための化合物及びその組成物を提供する。本発明はまた、リーキーガットを治療する方法、リーキーガット症候群を治療する方法、及びリーキーガット症候群に関連する少なくとも1つの症状を改善する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
消化管、すなわち全ての脊椎動物及びほとんどの無脊椎動物に存在する口から肛門までの管は、消化器系の全ての器官を含む。これは、身体の内部環境と外部環境とを隔てる最も拡張された障壁である;消化管の管腔は動物の身体の外側にあり、管を裏打ちする細胞は身体と外界との間に障壁を作り出す。したがって、消化管の主な役割は栄養素の抽出であるが、それはまた、免疫系の重要な部分を形成し、ウイルス、カビ、及び細菌などの病原体が血液及びリンパ循環系に侵入するのを防ぐ。
【0003】
重症患者では、腸の完全性の喪失が循環への細菌の移動をもたらし、最終的には多臓器不全及び死亡をもたらし得ることは周知である。最近、重症ではない対象における腸バリアの完全性の重要性にますます焦点が当てられている。毒素が腸管腔から宿主への上皮バリアを通過し、局所及び全身免疫応答をもたらし得ることが示唆されている。腸粘膜傍細胞透過性の増加を含む様々な経路が議論されている。そのような腸透過性の無症候性増加はしばしばリーキーガットと呼ばれ、この現象によって引き起こされると考えられる様々な健康問題は、集合的にリーキーガット症候群と呼ばれる。
【0004】
腸は、免疫の健康及び代謝の維持において多様な役割を有する約4,000の異なる細菌株を含む、腸内微生物叢と呼ばれる広範囲の細菌の生息場所である。リーキーガット症候群は腸内微生物叢の不均衡を含む可能性があり、1つの理論は、微生物叢の不均衡が身体の免疫応答を誘発し、これが再び腸の炎症及び腸透過性の増加をもたらすことを示唆している。不安症などの生理学的ストレス要因、非ステロイド性抗炎症薬(NSAlD)の使用、アルコール摂取、並びに乳化剤及び他の食品添加物を含む食事成分を含む、リーキーガット症候群の頻繁に示唆される危険因子は、これらの因子も腸内細菌叢のバランスに影響を及ぼすことが公知であるので、リーキーガットにおける微生物叢の関与の理論に信頼性を与える。
【0005】
リーキーガットは、病原性細菌及び細菌毒素の全身循環への侵入の増強をもたらし、反復する発生が全身性炎症を誘発し、多数の疾患を引き起こすと考えられている。健康な消化管に通常存在する特定の細菌でさえも、リーキーガットの間に病原性になると考えられている。腸内の細菌間のクオラムセンシングが、リーキーガットにおける主要な因子であり得、その発症及び発達に影響を及ぼすことが示唆されている。
【0006】
腸透過性の増加は、セリアック病、クローン病、及び過敏性腸症候群(IBS)、及び炎症性腸疾患(IBD)などの特定の胃腸状態に関連することが広く受け入れられている。しかしながら、リーキーガットがこれらの状態のいずれかの原因もしくは症状であるかどうか、又は観察された関連性が前記状態又は疾患と同時に頻繁に発生するリーキーガット症候群によって説明され得るかどうかは明らかではない。さらに、リーキーガット又はリーキーガット症候群は、自己免疫疾患(狼瘡、1型糖尿病、多発性硬化症、自己免疫性肝炎)、慢性疲労症候群、線維筋痛症、関節炎、アレルギー、喘息、多嚢胞性卵巣症候群、肥満、さらには自閉症及び精神疾患を含む広範囲の他の疾病にも関連し得ることが示唆されている。そのような原因及び効果は、ヒトにおける臨床試験ではまだ確認されていない。
【0007】
他の疾病への寄与の可能性に加えて、リーキーガット症候群は、慢性下痢、便秘、膨満、ガス及び胃痙攣;ざ瘡、発疹及び湿疹などの皮膚の問題;食物感受性及び栄養不足;関節痛を含むうずき及び疼痛;頭痛、錯乱、集中困難及び疲労を含む症状を引き起こすと考えられている。症状は、身体全体の慢性炎症に寄与し得る。
【0008】
様々な制限食、栄養補助食品、及びプロバイオティクスなどの治療が提案されているが、リーキーガットに対して提供される治療が有益であるという証拠はほとんどない。抗生物質は有用とは認められていない;実際に、リーキーガットは抗生物質によって悪化することがあるようである。提案された治療はいずれも、この目的のために安全かつ有効であるかどうかを決定するために十分に試験されておらず、リーキーガット症候群の症状を治療又は管理するためのレジメンに関する公式推奨が欠如している。したがって、リーキーガットを治療するための新規化合物及び方法が必要とされている。
【発明の概要】
【0009】
本発明者らは、式Iの化合物がリーキーガットに良い影響を与えることができ、したがって、これらの化合物がリーキーガット及び/又はリーキーガット症候群を治療する方法において、並びにリーキーガット症候群に関連する少なくとも1つの症状を改善する方法において有用であることを発見した。本発明者らは、これらの化合物が、リーキーガットにおける主要な因子であると考えられているクオラムセンシングを阻害することを見出した-細菌クオラムセンシングを阻害することは、例えばバイオフィルムなどの三次構造を形成し、したがってリーキーガットに積極的に影響を及ぼすことによって、個々の細菌が病原性になることを促進するシグナル伝達を防止することにより、腸バリア機能を改善し得ることが強く示唆されている。式Iの化合物は、リーキーガット、リーキーガット症候群、及びリーキーガット症候群に関連する症状の治療のための有望な候補である。
【0010】
一態様では、本発明は、リーキーガットを治療する方法に使用するための、式Iの化合物又はその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物を提供し、
【化1】

式中、
Xは、酸素及び硫黄から選択され、
Rは、シクロヘキシル、フェニル及び置換フェニルを含む群から選択され;
前記置換フェニルは、任意の1つ以上の位置で、フルオロ;クロロ;ブロモ;ヨード、シアノ、ニトロ、トリフルオロメチル、C-C直鎖及び分岐アルコキシ、C-Cスルホキシ、-S-C-Cアルキル、C-C直鎖及び分岐アルキル、アルケニル及びアルキニル、C-C直鎖及び分岐アルケニル、C-C直鎖及び分岐アルキニル、C-Cフルオロアルキル、クロロアルキル、ブロモアルキル、及びヨードアルキル、COO-C-Cアルキル、O(CO)-C-Cアルキル、NH-C-Cアルキル、N(C-Cアルキル)、CON(C-Cアルキル)、並びにNH(CO)-C-Cアルキルを含む群から選択される1~5個の同一の又は異なる置換基で置換されており;
R’は、水素、C-C直鎖及び分岐アルキル、並びにC-Cシクロアルキルを含む群から選択され、並びに
R’’は、水素、ベンジル、及びアセチルを含む群から選択される。
【0011】
別の態様では、本発明は、リーキーガット症候群に関連する1つ以上の症状を経験し、リーキーガット、リーキーガット症候群及び/又は腸透過性亢進に関連する少なくとも1つのバイオマーカの正常レベルと比較して、少なくとも1つのバイオマーカのレベルの有意な逸脱を示す対象における腸透過性の無症候性増加を治療する方法に使用するための式Iの化合物を提供する。
【0012】
別の態様では、本発明は、リーキーガットを治療する方法に使用するための、式Iの化合物又はその薬学的に許容され得る塩もしくは溶媒和物を含む組成物を提供する。
【0013】
別の態様では、本発明は、リーキーガットを治療する方法、リーキーガット症候群を治療する方法、又はリーキーガット症候群に関連する少なくとも1つの症状を改善する方法であって、有効量の式Iの化合物又はその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物、又は有効量の式Iの化合物又はその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物を含む組成物を対象に投与する工程を含む方法を提供する。
【0014】
別の態様では、本発明は、クオラムセンシングを阻害する、腸におけるクオラムセンシングを阻害する、リーキーガットを治療する、リーキーガット症候群を治療する、又はリーキーガット症候群に関連する少なくとも1つの症状を改善するための、式Iの化合物又はその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物、又は有効量の式Iの化合物又はその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物を含む組成物の使用を提供する。
【0015】
別の態様では、本発明は、リーキーガット、リーキーガット症候群、又は腸透過性増加を治療する方法であって、有効量の式Iの化合物又はその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物を対象に投与する工程を含む方法を提供する。
【0016】
別の態様では、本発明は、クオラムセンシングを阻害するための式Iの化合物又はその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物の使用を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、サルモネラ属(Salmonella)ATCC14028に対する異なる濃度のフェニルカプサイシンの時間-殺菌曲線を示す。
図2図2は、リステリア・モノサイトゲネス(Listeria monocytogenes)ATCC11915に対する異なる濃度のフェニルカプサイシンの時間-殺菌曲線を示す。
図3図3は、カンピロバクター・ジェジュニ(Campylobacter jejuni)ATCC11168に対する異なる濃度のフェニルカプサイシンの時間-殺菌曲線を示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
特に定義されていない限り、本明細書で使用される全ての技術用語、表記及び他の科学用語又は専門用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般的に理解される意味を有することが意図されている。場合によっては、一般に理解される意味を有する用語は、明確にするため及び/又は参照を容易にするために本明細書で定義され、本明細書にそのような定義を含めることは、当技術分野で一般に理解されるものとの実質的な違いを表すと必ずしも解釈されるべきではない。
【0019】
本明細書で使用される「カプサイシン」という用語は、一般式aのカプサイシン((E)-N-(4-ヒドロキシ-3-メトキシベンジル)-8-メチルノン-6-エンアミド)のヘプタ-6-イン誘導体を指し、式中、Yは任意の置換基を表し、Zはフェニル環上の任意の1つ以上の位置の任意の1つ以上の置換基を表す。
【化2】
【0020】
読者は、当技術分野でカプサイシン誘導体に使用される命名法が一貫しておらず、カプサイシンという用語が使用されているが、読みやすくするために、一般的な化合物の群を参照する場合、N-[(4-ヒドロキシ-3-メトキシフェニル)メチル]-7-フェニルヘプタ-6-インアミド(構造V)を指す場合に十分に確立された一般名「フェニルカプサイシン(phenylcapsaicin)」が使用され、「フェニルカプサイシン(複数)(phenylcapsaicins)」は、その誘導体を指すために使用されることに留意すべきである。
【0021】
本明細書で使用される「チオアミドカプサイシン」という用語は、一般式bの、カプサイシンのアミド基ではなくチオアミド基を含むカプサイシンのヘプタ-6-イン誘導体を指し、式中、Yは任意の置換基を表し、Zはフェニル環上の任意の1つ以上の位置の任意の1つ以上の置換基を表す。
【化3】
【0022】
理解されるように、本明細書に記載される化合物のいずれも、その薬学的に許容される塩又は溶媒和物の形態で提供され得る。塩形成及び溶媒和物形成のための手順は、当技術分野において慣用的である。
【0023】
本明細書で使用される場合、直鎖及び分岐アルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシという用語は、環状であるか又は環を含む置換基を含む、所与の鎖長の全てのそのような置換基を含む。
【0024】
本明細書で使用される「誘導体」という用語は、親化合物と化学構造が異なる分子を指す。誘導体の例としては、限定されないが、脂肪族鎖の長さの違いなどの、親の化学構造と漸進的に異なるホモログ;分子断片;例えば、親化合物の1つ以上の官能基を変換することによって作製することができる、親化合物と1つ以上の官能基が異なる構造;酸の共役塩基へのイオン化などの親のイオン化状態の変化;位置異性体、幾何異性体及び立体異性体を含む異性体;並びにそれらの組合せが挙げられる。
【0025】
「治療すること」及び「治療」及び「療法」(及びそれらの文法的変形)という用語は、本明細書では互換的に使用され、1)疾患を阻害すること、例えば、疾患の予防(すなわち予防的処置、病態及び/もしくは総体症状のさらなる進展の阻止)を含む、疾患、状態もしくは障害の病態もしくは総体症状を経験しているもしくは示している対象における疾患、状態もしくは障害の阻害、又は2)疾患の症状を緩和すること、又は3)疾患を改善すること、例えば、疾患、状態もしくは障害の病態もしくは総体症状を経験しているもしくは示している対象における疾患、状態もしくは障害の改善(すなわち、病態及び/もしくは総体症状を逆転させること)を指す。これらの用語は、医薬品、医薬品有効成分(API)、食品添加物、補助食品、健康補助食品、栄養補助食品、市販の(OTC)サプリメント、医療食、及び/又は医薬品グレードのサプリメントの使用及び/又は投与に関し得る。
【0026】
本明細書で使用される場合、「組成物」という用語は、任意の製剤における、1つ以上の本発明による化合物と1つ以上のさらなる化学成分との混合物を指す。
【0027】
本明細書で使用される場合、「投与する」、「投与」、及び「投与すること」という用語は、(1)医療従事者もしくはその認可された薬剤によって、又はその指示の下で、又は自己投与によって、本開示による製剤、調製物又は組成物を提供する、与える、投与する及び/又は処方すること、並びに(2)本開示による製剤、調製物又は組成物を対象自体に導入する、対象自体によって摂取する又は消費することを指す。
【0028】
本明細書で使用される場合、「対象」は、治療又は療法のために選択された任意のヒト又は非ヒト動物を意味し、「患者」を包含し、「患者」に限定され得る。これらの用語はいずれも、医療専門家(例えば、医師、看護師、診療看護師、医師助手、病院用務員、臨床研究コーディネータなど)又は科学研究者の監督(常時又はその他)を必要とすると解釈されるべきではない。
【0029】
本明細書で使用される「治療有効用量」という用語は、任意の治療に適用可能な妥当な利益/リスク比で対象において所望の治療効果を生じさせるのに有効な本発明による化合物の量を意味する。治療有効投与量は、投与経路及び投薬形態に依存して異なり得る。
【0030】
本明細書で使用される場合、「薬学的に許容される」という用語は、化合物がレシピエントにとって生理学的に許容されなければならないこと、並びに組成物の一部である場合、組成物の他の成分と適合性でなければならないことを意味する。
【0031】
本明細書で使用される場合、「プロドラッグ」という用語は、生理学的条件下で本発明による化合物のいずれかに変換される任意の化合物を意味する。
【0032】
本明細書で使用される「症状」という用語は、疾患、任意の身体障害、又は対象においてもしくは対象によって観察される任意の病的現象もしくは構造、機能もしくは感覚の正常からの逸脱の主観的もしくは客観的証拠を指す。本明細書で使用される場合、「症状の改善」という用語又はその任意の変形は、前記症状の緩和又は改善を指す。
【0033】
本明細書で使用される場合、「リーキーガット」という用語は、腸透過性の無症候性増加を指す。リーキーガットによって引き起こされる症状は、「リーキーガット症候群」と呼ばれる。
【0034】
細菌は病原性になり、クオラムセンシング(QS)によって宿主における数が有意に増加する。クオラムセンシングは、高い集団密度に応答して差次的遺伝子発現をもたらす細胞間コミュニケーション機構である。このプロセスにより、特定の種の細菌がバイオフィルムを形成し、個々の細胞が1つのより大きな三次生物として作用し始める。このプロセスは、自己誘導物質と呼ばれるホルモン様化合物の細胞密度依存性発現によって媒介される。細菌感染の確立の成功に関与するいくつかのプロセスは、クオラムセンシング及び病原性遺伝子の発現によって媒介される。したがって、クオラムセンシングの阻害は、抗微生物作用なしに宿主内の病原性細菌の集団を減少させるための適切な標的であると考えられる。
【0035】
クオラムセンシングとバイオフィルム形成との関連性は十分に確立されており、例えば2005年の総説論文“Sociomicrobiology:the connections between quorum sensing and biofilms”(Parsek and Greenberg,Trends Microbiol.2005,13(1),27)を参照されたい。
【0036】
リーキーガット症候群が腸内微生物叢の不均衡を含むという前提に基づいて、リーキーガットがクオラムセンシングを制限することによって治療され得るという理論は、最近ますます支持を得ている。細菌クオラムセンシングを標的とすることは腸バリア機能の改善において有望であることが示されており、この理論に信頼性を与えている。例えば、(Mol.Med.Rep.2019,19,4057)において、Adiliaghdam et al.は、重要な緑膿菌(P.aeruginosa)クオラムセンシング系の阻害と、熱傷及び熱傷創感染後の腸の完全性の調節との間の堅固な関係を実証している。そこに開示されている結果は、緑膿菌(P.aeruginosa)クオラムセンシング転写因子MvfRのサイレンシングが腸バリア損傷のあまり顕著でない誘導をもたらすという証拠を提供し、論文に提示されている結果は、このクオラムセンシング系の阻害が腸透過性亢進を軽減することを示している。
【0037】
本明細書でカプサイシン(複数)と呼ばれるカプサイシンのヘプタ-6-イン誘導体は、様々な潜在的用途を有する貴重な化合物である。カプサイシンのアルケン部分を置換するアルキン部分によって天然化合物カプサイシンから区別される、これらの合成カプサイシン誘導体は、食品産業、農業、薬理学、及び海洋防汚塗料を含む様々な分野での使用が見出されている。おそらく最も広く使用されている誘導体であるフェニルカプサイシン(V)は、全身毒性が低く、遺伝子突然変異及び染色体損傷に関して安全であることが示されており(Rage Paulsen et al.,Toxicology Research and Application 2018,2,1)、欧州食品安全局によって検査され、安全であると見なされている(EFSA NDA Panel et al.,EFSA Journal 2019,17(6),e05718)。
【0038】
天然カプサイシンは、リーキーガット及びリーキーガット症候群を引き起こすか又はそれに寄与することが広く疑われており、罹患者は、カプサイシンを含有する食品を避けるようにしばしば勧められる。
【0039】
驚くべきことに、本発明者らは、構造Iの化合物が、リーキーガットを治療する方法、リーキーガット症候群を治療する方法、又はリーキーガット症候群に関連する少なくとも1つの症状を改善する方法に有用であることを見出した。
【化4】
【0040】
本発明者らの実験は、前記化合物が亜致死抗菌用量よりも低い用量で用量依存的にクオラムセンシング阻害剤であることを示した。具体的には、61.5、31.25、15.625及び7.81μg/mlの用量のフェニルカプサイシン(V)は、用量応答的に強から弱までのクオラムセンシング阻害活性を示したが、より高用量では抗菌活性を示した。(500/250/125μg/ml)。
【0041】
天然化合物カプサイシンは、非抗菌用量(31.25/15.625/7.81μg/ml)でクオラムセンシング阻害活性を示さず、本発明によるリーキーガットを治療する方法、リーキーガット症候群を治療する方法、又はリーキーガット症候群に関連する少なくとも1つの症状を改善する方法に使用するための構造Iの化合物のクオラムセンシング阻害活性の予想外の性質にさらなる信頼性を与えた。
【0042】
これらの実験からの結果は、構造Iの化合物が、細菌の病原性を低下させ、したがってリーキーガット症候群の改善を示す亜致死抗菌用量での作用機序を有することを示す。この効果は全く予想外である;全く無関係な作用機構であるTRPV1アゴニストとしてカプサイシン(複数)を使用することが以前に開示されているが、リーキーガットに対する、又は他の治療方法におけるクオラムセンシングを阻害するための構造Iの化合物の使用は示されていない。
【0043】
化合物が亜致死抗菌用量でクオラムセンシングを阻害するという事実は特に重要である。致死的抗菌効果は望ましくなく、リーキーガットの治療のための化合物にとっては有害である可能性さえあり、というのは、そのような効果は疑いなく腸内微生物叢のさらなる不均衡を引き起こし、リーキーガットの悪化につながる可能性が高いからである。これは、抗生物質がリーキーガット症候群を悪化させ得るという兆候によって支持される。
【0044】
したがって、本発明によるリーキーガットを治療する方法、リーキーガット症候群を治療する方法、又はリーキーガット症候群に関連する少なくとも1つの症状を改善する方法では、必要に応じて本発明による化合物の半減期を考慮して、いかなる致死的な抗菌効果も回避するために投与量及び投与レジメンが常に選択される。致死的抗菌効果は、当業者に公知のように、及び/又は例2に提示される実験もしくは同様の実験での所見に基づいて、十分に低用量の化合物Iを選択することによって回避される。このようにして、腸内微生物叢、したがって栄養吸収などのその有益な効果は、可能な限り妨げられない。
【0045】
本発明の患者群は、リーキーガット及び/又はリーキーガット症候群に罹患している対象、例えば、リーキーガット又はリーキーガット症候群と診断されたか又はその疑いがある患者を含む。本発明の別の患者群は、リーキーガット症候群に関連する少なくとも1つの症状を経験している対象を含む。いくつかの実施形態では、対象は、これらの患者群の少なくとも1つから選択される。
【0046】
対象は、ヒト又は非ヒト動物、例えばヒト又は非ヒト哺乳動物、好ましくはヒト患者であり得る。対象は男性であっても女性であってもよい。本発明のいくつかの実施形態では、対象は成人(すなわち18歳以上)である。特定の実施形態では、対象は高齢者である。特定の実施形態では、対象は高齢者ではない。
【0047】
リーキーガットは、その症状の多くを他の健康状態と共有する。これは、状態を識別することを困難にし得る。本発明は、対象におけるリーキーガット又はリーキーガット症候群それ自体の治療、及びリーキーガット症候群に関連する少なくとも1つの症状の改善の両方に関する。いくつかの実施形態では、対象は、リーキーガット症候群に関連する1つ以上の症状を経験し、前記1つ以上の症状がセリアック病、IBD、潰瘍性大腸炎、又はクローン病などの他の臨床診断に起因していない対象の群から選択される。
【0048】
他の実施形態では、対象は、リーキーガット症候群に関連する1つ以上の症状を経験し、リーキーガット、リーキーガット症候群及び/又は腸透過性亢進に関連する少なくとも1つのバイオマーカの正常レベルと比較して、少なくとも1つのバイオマーカのレベルの有意な逸脱をさらに示す対象の群から選択される。特定の実施形態では、後者の群は、セリアック病、IBD、潰瘍性大腸炎又はクローン病と診断されていない対象にさらに限定される。
【0049】
そのようなバイオマーカの1つは、ゾヌリンである。タンパク質ゾヌリン及びゾヌリンシグナル伝達経路の研究及び臨床試験は、腸透過性のバイオマーカとしてのゾヌリンの臨床的有効性を実証している。ゾヌリンは、細胞間密着結合を可逆的に調節することによって小腸の上皮層の透過性を増加させることが見出されている。ゾヌリンシグナル伝達経路の調節不全は、正常な腸バリア機能を破壊し、免疫応答を変化させる。結果として、高レベルの血清ゾヌリンは、腸透過性の増加の存在を指し示し得る。他の関連バイオマーカとしては、腸脂肪酸結合タンパク質(I-FABP)、可溶性CD14、インターロイキン6(IL-6)、リポ多糖(LPS)が挙げられる。
【0050】
本発明によるリーキーガットの治療方法に使用するための化合物は、商業的に、又は当業者に公知の任意の手順を使用して得られ得る。本発明による化合物を得るための手順の非限定的な例は、本出願人によって欧州特許第1670310号及びノルウェー特許出願第20200333号に開示されているものである。
【0051】
一態様では、本発明は、リーキーガットを治療する方法に使用するための式Iの化合物又はその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物を提供する。
【化5】
【0052】
さらなる態様では、本発明は、リーキーガット症候群を治療する方法に使用するための式Iの化合物又はその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物を提供する。
【0053】
さらなる態様では、本発明は、対象におけるリーキーガット症候群に関連する少なくとも1つの症状を改善する方法に使用するための式Iの化合物又はその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物を提供し、少なくとも1つの症状は、他の臨床診断に起因していない。
【0054】
いくつかの実施形態では、対象は、セリアック病、IBD、潰瘍性大腸炎、又はクローン病に罹患していない。
【0055】
さらなる態様では、本発明は、対象におけるリーキーガット症候群に関連する少なくとも1つの症状を改善する方法に使用するための式Iの化合物又はその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物を提供し、対象は、リーキーガット、リーキーガット症候群及び/又は腸透過性亢進に関連する少なくとも1つのバイオマーカの正常レベルと比較して、少なくとも1つのバイオマーカのレベルの有意な逸脱を示す。
【0056】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つのバイオマーカは、ゾヌリン、I-FABP、可溶性CD14、IL-6、LPS、及びそれらの任意の組合せのリストから選択される。特定の実施形態では、少なくとも1つのバイオマーカはゾヌリンである。
【0057】
いくつかの実施形態では、正常レベルは、集団における平均レベルである。いくつかの実施形態では、正常レベルは、対象についての平均レベルである。いくつかの実施形態では、正常レベルは、医師の共通の一般知識に基づいて医師によって決定される。
【0058】
いくつかの実施形態では、対象は、セリアック病、IBD、潰瘍性大腸炎、又はクローン病に罹患していない。
【0059】
本明細書で論じるように、リーキーガット及びリーキーガット症候群は、腸の透過性亢進などの透過性増加に関連する。したがって、別の態様では、本発明は、リーキーガット症候群に関連する1つ以上の症状を経験し、リーキーガット、リーキーガット症候群及び/又は腸透過性亢進に関連する少なくとも1つのバイオマーカの正常レベルと比較して、少なくとも1つのバイオマーカのレベルの有意な逸脱を示す対象における腸透過性の増加を治療する方法に使用するための式Iの化合物を提供する。
【0060】
腸透過性の増加は、腸透過性の病理学的増加であり得る。好ましくは、腸透過性の増加は、腸透過性の無症候性増加である。
【0061】
いくつかの実施形態では、本発明は、リーキーガット症候群に関連する1つ以上の症状を経験し、腸透過性亢進に関連する少なくとも1つのバイオマーカの正常レベルと比較して、少なくとも1つのバイオマーカのレベルの有意な逸脱を示す対象における腸透過性の無症候性増加を治療する方法に使用するための式Iの化合物を提供する。
【0062】
前記バイオマーカは、例えば、上に開示されたバイオマーカのいずれか、好ましくはゾヌリンであり得る。
【0063】
いくつかの実施形態では、対象は、リーキーガット及び/又はリーキーガット症候群と診断されている。いくつかの実施形態では、対象は、セリアック病、IBD、潰瘍性大腸炎、又はクローン病と診断されていない。
【0064】
本発明による対象におけるリーキーガット症候群に関連する少なくとも1つの症状を改善するための両方の方法について、少なくとも1つの症状は、慢性下痢、便秘、膨満感、ガス、胃痙攣、皮膚の問題、食物感受性、栄養不足;身体の任意の1つ以上の部分におけるうずき、疼痛、錯乱、集中困難、疲労、慢性炎症、及びそれらの任意の組合せのリストから選択され得る。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの症状は、慢性下痢、便秘、膨満感、ガス、胃痙攣、ざ瘡、発疹、湿疹、食物感受性、栄養不足、関節痛、頭痛、錯乱、集中困難、疲労、身体の任意の1つ以上の部分における慢性炎症、及びそれらの任意の組合せのリストから選択される。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの症状は、慢性下痢、便秘、膨満、ガス、胃痙攣、身体の任意の1つ以上の部分の慢性炎症、及びそれらの任意の組合せのリストから選択される。
【0065】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つの症状は、慢性下痢、便秘、膨満感、ガス、胃痙攣、ざ瘡、発疹、湿疹、食物感受性、栄養不足、関節痛、頭痛、錯乱、集中困難、疲労、身体の任意の1つ以上の部分の慢性炎症、及びそれらの任意の組合せのリストから選択される少なくとも2つの症状である。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの症状は、慢性下痢、便秘、膨満感、ガス、胃痙攣、ざ瘡、発疹、湿疹、食物感受性、栄養不足、関節痛、頭痛、錯乱、集中困難、疲労、身体の任意の1つ以上の部分における慢性炎症、及びそれらの任意の組合せのリストから選択される少なくとも3つの症状である。
【0066】
少なくとも1つの症状は、本発明による方法を使用しない場合と比較して、有意な量、例えば少なくとも5%、例えば少なくとも10%、例えば少なくとも20%、例えば少なくとも50%改善される。改善は、当技術分野で公知の任意の方法を使用して医療従事者によって、又は対象の自己報告アウトカム尺度を使用することによって評価され得る。
【0067】
いくつかの実施形態では、本発明は、治療の対象がセリアック病、IBD、IBS、潰瘍性大腸炎又はクローン病に罹患していない、リーキーガットを治療する方法に使用するための式Iの化合物又はその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物を提供する。
【0068】
いくつかの実施形態では、本発明は、治療が予防である、リーキーガットの治療方法に使用するための式Iの化合物又はその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物を提供する。
【0069】
いくつかの実施形態では、本発明は、リーキーガットを治療する方法に使用するための、式Iの化合物又はその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物を提供し、
式中、
Xは、酸素及び硫黄から選択され、
Rは、シクロヘキシル、フェニル及び置換フェニルを含む群から選択され;
前記置換フェニルは、任意の1つ以上の位置で、フルオロ;クロロ;ブロモ;ヨード、シアノ、ニトロ、トリフルオロメチル、C-C直鎖及び分岐アルコキシ、C-Cスルホキシ、-S-C-Cアルキル、C-C直鎖及び分岐アルキル、アルケニル及びアルキニル、C-C直鎖及び分岐アルケニル、C-C直鎖及び分岐アルキニル、C-Cフルオロアルキル、クロロアルキル、ブロモアルキル、及びヨードアルキル、COO-C-Cアルキル、O(CO)-C-Cアルキル、NH-C-Cアルキル、N(C-Cアルキル)、CON(C-Cアルキル)、並びにNH(CO)-C-Cアルキルを含む群から選択される1~5個の同一の又は異なる置換基で置換されており;
R’は、水素、C-C直鎖及び分岐アルキル、並びにC-Cシクロアルキルを含む群から選択され、並びに
R’’は、水素、ベンジル、及びアセチルを含む群から選択される。
【0070】
いくつかの実施形態では、本発明は、リーキーガットを治療する方法、リーキーガット症候群を治療する方法、又はリーキーガット症候群に関連する少なくとも1つの症状を改善する方法に使用するための式Iの化合物又はその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物を提供し、式中、
Xは、酸素及び硫黄から選択され、
Rは、フェニル及び置換フェニルを含む群から選択され;
前記置換フェニルは、任意の1つ以上の位置で、フルオロ;クロロ;ブロモ;ヨード、シアノ、ニトロ、トリフルオロメチル、C-C直鎖及び分岐アルコキシ、C-Cスルホキシ、-S-C-Cアルキル、C-C直鎖及び分岐アルキル、アルケニル及びアルキニル、C-C直鎖及び分岐アルケニル、C-C直鎖及び分岐アルキニル、C-Cフルオロアルキル、クロロアルキル、ブロモアルキル、及びヨードアルキル、COO-C-Cアルキル、O(CO)-C-Cアルキル、NH-C-Cアルキル、N(C-Cアルキル)、CON(C-Cアルキル)、並びにNH(CO)-C-Cアルキルを含む群から選択される1~5個の同一の又は異なる置換基で置換されており;
R’は、水素、C-C直鎖及び分岐アルキル、並びにC-Cシクロアルキルを含む群から選択され、並びに
R’’は、水素、ベンジル、及びアセチルを含む群から選択される。
【0071】
Rは、フェニル及び置換フェニルを含む群から選択されてもよく、前記置換フェニルは、任意の1つ以上の位置で、フルオロ;クロロ;ブロモ;ヨード;シアノ;ニトロ;トリフルオロメチル、C-C直鎖及び分岐アルコキシ;C-Cスルホキシ;-S-C-Cアルキル;C-C直鎖及び分岐アルキル、アルケニル及びアルキニル;C-Cフルオロアルキル、クロロアルキル、ブロモアルキル、及びヨードアルキル;COO-C-Cアルキル、O(CO)-C-Cアルキル、NH-C-Cアルキル、N(C-Cアルキル)、CON(C-Cアルキル)、並びにNH(CO)-C-Cアルキルを含む群から選択される1~5個の同一の又は異なる置換基で置換されている。そのような変形例はa1と表される。
【0072】
Rは、フェニル及び置換フェニルを含む群から選択されてもよく、前記置換フェニルは、任意の1つ以上の位置で、フルオロ;クロロ;ブロモ;ヨード;シアノ;ニトロ;トリフルオロメチル;C-C直鎖及び分岐アルコキシ;C-Cスルホキシ;-S-C-Cアルキル;C-C直鎖及び分岐アルキル、アルケニル及びアルキニル;並びにC-Cフルオロアルキル、クロロアルキル、ブロモアルキル、及びヨードアルキルを含む群から選択される1~5個の同一の又は異なる置換基で置換されている。そのような変形例はa2と表される。
【0073】
Rは、フェニル及び置換フェニルを含む群から選択されてもよく、前記置換フェニルは、任意の1つ以上の位置で、フルオロ;クロロ;ブロモ;ヨード;シアノ;ニトロ;トリフルオロメチル、NH-C-Cアルキル、N(C-Cアルキル)、COO-C-Cアルキル、及びO(CO)-C-Cアルキルを含む群から選択される1~5個の同一の又は異なる置換基で置換されている。そのような変形例はa3と表される。
【0074】
Rは、フェニル及び置換フェニルを含む群から選択されてもよく、前記置換フェニルは、任意の1つ以上の位置で、フルオロ;クロロ;ブロモ;ヨード;C-C直鎖及び分岐アルキル、アルケニル及びアルキニル;NH-C-Cアルキル、N(C-Cアルキル)、並びにC-C直鎖及び分岐アルコキシを含む群から選択される1~5個の同一の又は異なる置換基で置換されている。そのような変形例はa4と表される。
【0075】
Rは、フェニル及び置換フェニルを含む群から選択されてもよく、前記置換フェニルは、任意の1つ以上の位置で、フルオロ;クロロ;ブロモ;ヨード;C-C直鎖及び分岐アルキル、アルケニル及びアルキニル;COO-C-Cアルキル、並びにO(CO)-C-Cアルキルを含む群から選択される1~5個の同一の又は異なる置換基で置換されている。そのような変形例はa5と表される。
【0076】
Rは、フェニル及び置換フェニルを含む群から選択されてもよく、前記置換フェニルは、任意の1つ以上の位置で、C-C直鎖及び分岐アルキル、アルケニル及びアルキニル;並びにC-Cフルオロアルキル、クロロアルキル、ブロモアルキル、及びヨードアルキルを含む群から選択される1~5個の同一の又は異なる置換基で置換されている。そのような変形例はa6と表される。
【0077】
Rはフェニルであってもよい。そのような変形例はa7と表される。
【0078】
前記置換フェニルは、2位、例えば3位、例えば4位などに1つの置換基を有してもよい。前記フェニル環は、2位及び6位、例えば2位及び5位、例えば2位及び3位、例えば3位及び5位、例えば2位及び4位、例えば3位及び4位などに2つの置換基を有してもよい。前記フェニル環は、2位、3位及び6位、例えば2位、4位及び6位、例えば2位、3位及び4位、例えば2位、3位及び5位、例えば3位、4位及び5位などに3つの置換基を有してもよい。前記フェニル環は、2位、3位、4位及び6位、例えば2位、3位、4位及び5位、例えば2位、3位、5位及び6位などに4つの置換基を有してもよい。前記フェニル環は5つの置換基を有してもよい。
【0079】
全ての変形例a1~a7において、Rが選択される基は、シクロヘキシルをさらに含んでもよい。
【0080】
いくつかの変形例では、置換フェニル上の前記置換基の2つは互いに同一である。いくつかの変形例では、置換基の3つは互いに同一である。いくつかの変形例では、置換基の4つは互いに同一である。いくつかの変形例では、置換基の5つは互いに同一である。他の変形例では、前記置換基の全てが互いに異なる。
【0081】
R’は、水素、C-C直鎖及び分岐アルキル、並びにC-Cシクロアルキルを含む群から選択されてよい。そのような変形例はb1と表される。
【0082】
R’は、C-C直鎖及び分岐アルキル、並びにC-Cシクロアルキルを含む群から選択されてよい。そのような変形例はb2と表される。
【0083】
R’は、水素並びにC-C直鎖及び分岐アルキルを含む群から選択されてよい。そのような変形例はb3と表される。
【0084】
R’は、メチル及びエチルから選択されてよい。そのような変形例はb4と表される。
【0085】
R’’は、水素、ベンジル、及びアセチルを含む群から選択されてよい。そのような変異体はc1と表される。
【0086】
R’’は水素であってもよい。そのような変異体はc2と表される。
【0087】
Xは酸素又は硫黄であってもよい。そのような変形例はd1と表される。
【0088】
Xは酸素であってもよい。そのような変形例はd2と表される。
【0089】
Xは硫黄であってもよい。そのような変形例はd3と表される。
【0090】
本明細書に開示される各可能なX、R基、R’基、及びR’’基の各選択は、本明細書に開示される可能なX、R基、R’基、及びR’’基のありとあらゆる他の選択の1つ以上との任意の組合せで使用するために開示されていると解釈されるべきであることを理解されたい。
【0091】
したがって、いくつかの実施形態では、本発明は、X、R、R’及びR’’の選択が以下に列挙される通りである、リーキーガットを治療する方法に使用するための式Iの化合物又はその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物を提供する:
a1+b1+c1+d1、a1+b2+c1+d1、a1+b3+c1+d1、a1+b4+c1+d1、a2+b1+c1+d1、a2+b2+c1+d1、a2+b3+c1+d1、a2+b4+c1+d1、a3+b1+c1+d1、a3+b2+c1+d1、a3+b3+c1+d1、a3+b4+c1+d1、a4+b1+c1+d1、a4+b2+c1+d1、a4+b3+c1+d1、a4+b4+c1+d1、a5+b1+c1+d1、a5+b2+c1+d1、a5+b3+c1+d1、a5+b4+c1+d1、a6+b1+c1+d1、a6+b2+c1+d1、a6+b3+c1+d1、a6+b4+c1+d1、a7+b1+c1+d1、a7+b2+c1+d1、a7+b3+c1+d1、a7+b4+c1+d1、a1+b1+c2+d1、a1+b2+c2+d1、a1+b3+c2+d1、a1+b4+c2+d1、a2+b1+c2+d1、a2+b2+c2+d1、a2+b3+c2+d1、a2+b4+c2+d1、a3+b1+c2+d1、a3+b2+c2+d1、a3+b3+c2+d1、a3+b4+c2+d1、a4+b1+c2+d1、a4+b2+c2+d1、a4+b3+c2+d1、a4+b4+c2+d1、a5+b1+c2+d1、a5+b2+c2+d1、a5+b3+c2+d1、a5+b4+c2+d1、a6+b1+c2+d1、a6+b2+c2+d1、a6+b3+c2+d1、a6+b4+c2+d1、a7+b1+c2+d1、a7+b2+c2+d1、a7+b3+c2+d1、a7+b4+c2+d1、a1+b1+c1+d2、a1+b2+c1+d2、a1+b3+c1+d2、a1+b4+c1+d2、a2+b1+c1+d2、a2+b2+c1+d2、a2+b3+c1+d2、a2+b4+c1+d2、a3+b1+c1+d2、a3+b2+c1+d2、a3+b3+c1+d2、a3+b4+c1+d2、a4+b1+c1+d2、a4+b2+c1+d2、a4+b3+c1+d2、a4+b4+c1+d2、a5+b1+c1+d2、a5+b2+c1+d2、a5+b3+c1+d2、a5+b4+c1+d2、a6+b1+c1+d2、a6+b2+c1+d2、a6+b3+c1+d2、a6+b4+c1+d2、a7+b1+c1+d2、a7+b2+c1+d2、a7+b3+c1+d2、a7+b4+c1+d2、a1+b1+c2+d2、a1+b2+c2+d2、a1+b3+c2+d2、a1+b4+c2+d2、a2+b1+c2+d2、a2+b2+c2+d2、a2+b3+c2+d2、a2+b4+c2+d2、a3+b1+c2+d2、a3+b2+c2+d2、a3+b3+c2+d2、a3+b4+c2+d2、a4+b1+c2+d2、a4+b2+c2+d2、a4+b3+c2+d2、a4+b4+c2+d2、a5+b1+c2+d2、a5+b2+c2+d2、a5+b3+c2+d2、a5+b4+c2+d2、a6+b1+c2+d2、a6+b2+c2+d2、a6+b3+c2+d2、a6+b4+c2+d2、a7+b1+c2+d2、a7+b2+c2+d2、a7+b3+c2+d2、a7+b4+c2+d2、a1+b1+c1+d3、a1+b2+c1+d3、a1+b3+c1+d3、a1+b4+c1+d3、a2+b1+c1+d3、a2+b2+c1+d3、a2+b3+c1+d3、a2+b4+c1+d3、a3+b1+c1+d3、a3+b2+c1+d3、a3+b3+c1+d3、a3+b4+c1+d3、a4+b1+c1+d3、a4+b2+c1+d3、a4+b3+c1+d3、a4+b4+c1+d3、a5+b1+c1+d3、a5+b2+c1+d3、a5+b3+c1+d3、a5+b4+c1+d3、a6+b1+c1+d3、a6+b2+c1+d3、a6+b3+c1+d3、a6+b4+c1+d3、a7+b1+c1+d3、a7+b2+c1+d3、a7+b3+c1+d3、a7+b4+c1+d3、a1+b1+c2+d3、a1+b2+c2+d3、a1+b3+c2+d3、a1+b4+c2+d3、a2+b1+c2+d3、a2+b2+c2+d3、a2+b3+c2+d3、a2+b4+c2+d3、a3+b1+c2+d3、a3+b2+c2+d3、a3+b3+c2+d3、a3+b4+c2+d3、a4+b1+c2+d3、a4+b2+c2+d3、a4+b3+c2+d3、a4+b4+c2+d3、a5+b1+c2+d3、a5+b2+c2+d3、a5+b3+c2+d3、a5+b4+c2+d3、a6+b1+c2+d3、a6+b2+c2+d3、a6+b3+c2+d3、a6+b4+c2+d3、a7+b1+c2+d3、a7+b2+c2+d3、a7+b3+c2+d3、a7+b4+c2+d3。
【0092】
文字-数字の組合せは、上で定義された変形例を指し、その結果、例えば、a1+b1+c1+d1は、Rがフェニル及び置換フェニルを含む群から選択され、前記置換フェニルが、任意の1つ以上の位置で、フルオロ;クロロ;ブロモ;ヨード;シアノ;ニトロ;トリフルオロメチル;C-C直鎖及び分岐アルコキシ;C-Cスルホキシ;-S-C-Cアルキル;C-C直鎖及び分岐アルキル、アルケニル及びアルキニル;C-Cフルオロアルキル、クロロアルキル、ブロモアルキル、及びヨードアルキル;COO-C-Cアルキル、O(CO)-C-Cアルキル、NH-C-Cアルキル、N(C-Cアルキル)、CON(C-Cアルキル)、並びにNH(CO)-C-Cアルキルを含む群から選択される1~5個の同一の又は異なる置換基で置換されており(a1)、R’が、水素、C-C直鎖及び分岐アルキル、並びにC-Cシクロアルキルを含む群から選択され(b1)、R’’が、水素、ベンジル、及びアセチルを含む群から選択され(c1)、並びにXが酸素及び硫黄から選択される(d1)、等の化合物を表す。
【0093】
いくつかの実施形態では、本発明は、リーキーガットを治療する方法、リーキーガット症候群を治療する方法、又はリーキーガット症候群に関連する少なくとも1つの症状を改善する方法に使用するための式Iの化合物又はその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物を提供し、前記化合物はカプサイシンである。いくつかの実施形態では、本発明は、リーキーガットを治療する方法、リーキーガット症候群を治療する方法、又はリーキーガット症候群に関連する少なくとも1つの症状を改善する方法に使用するための式Iの化合物又はその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物を提供し、前記化合物はチオアミドカプサイシンである。
【0094】
好ましい実施形態では、本発明は、リーキーガットを治療する方法、リーキーガット症候群を治療する方法、又はリーキーガット症候群に関連する少なくとも1つの症状を改善する方法に使用するための式Iの化合物又はその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物を提供し、式中、Rは、4位に少なくとも1つの置換基を有する置換フェニルであり、前記少なくとも1つの置換基は、選択肢a1、a2、a3、a4、a5、又はa6の1つについて上に列挙した群から選択される。
【0095】
他の好ましい実施形態では、本発明は、リーキーガットを治療する方法、リーキーガット症候群を治療する方法、又はリーキーガット症候群に関連する少なくとも1つの症状を改善する方法に使用するための式Iの化合物又はその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物を提供し、式中、Rは、1つの置換基のみを有する置換フェニルであり、前記置換基は4位にあり、選択肢a1、a2、a3、a4、a5、又はa6の1つについて上に列挙した群から選択される。
【0096】
好ましい実施形態では、本発明は、リーキーガットを治療する方法、リーキーガット症候群を治療する方法、又はリーキーガット症候群に関連する少なくとも1つの症状を改善する方法に使用するための式Iの化合物又はその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物を提供し、式中、Xは酸素であり;Rは、フェニル又は上で定義された置換フェニルであり(a1、a2、a3、a4、a5、a6、又はa7);R’は、メチル、エチル又はイソプロピルであり;及びR’’は、水素、アセチル又はベンジルである。
【0097】
他の好ましい実施形態では、本発明は、リーキーガットを治療する方法、リーキーガット症候群を治療する方法、又はリーキーガット症候群に関連する少なくとも1つの症状を改善する方法に使用するための式Iの化合物又はその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物を提供し、式中、Xは酸素であり;Rは、フェニル、4-メチルフェニル、4-クロロフェニル、又は4-アセトキシフェニルであり、R’は、メチル、エチル又はイソプロピルであり;R’’は、水素、アセチル又はベンジルである。
【0098】
本発明によるリーキーガットを治療する方法、リーキーガット症候群を治療する方法、又はリーキーガット症候群に関連する少なくとも1つの症状を改善する方法に使用するための化合物の好ましい非限定的な例としては、R、R’、R’’、及びXが以下のように選択される式Iの化合物のリストが挙げられる:
-R=フェニル;R’=メチル、R’’=水素、X=酸素(フェニルカプサイシン、V)
-R=フェニル;R’=メチル、R’’=アセチル、X=酸素
-R=フェニル;R’=メチル、R’’=ベンジル、X=酸素
-R=フェニル;R’=エチル、R’’=アセチル、X=酸素
-R=4-メチルフェニル;R’=メチル、R’’=アセチル、X=酸素
-R=4-クロロフェニル;R’=メチル、R’’=アセチル、X=酸素
-R=4-メチルフェニル;R’=メチル、R’’=水素、X=酸素
-R=4-アセトキシフェニル;R’=メチル、R’’=水素、X=酸素
-R=4-メチルフェニル;R’=メチル、R’’=ベンジル、X=酸素
-R=4-アセトキシフェニル;R’=エチル、R’’=ベンジル、X=酸素
-R=シクロヘキシル;R’=メチル、R’’=水素、X=酸素
-R=シクロヘキシル;R’=エチル、R’’=水素、X=酸素
【0099】
いくつかの実施形態では、本発明は、リーキーガットを治療する方法、リーキーガット症候群を治療する方法、又はリーキーガット症候群に関連する少なくとも1つの症状を改善する方法に使用するための式Iの化合物又はその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物を提供し、ここで、化合物は、しばしばフェニルカプサイシン(複数)と呼ばれるカプサイシンのフェニル置換6-イン誘導体の群から選択され、Rは、上記の変形例a1~a7のいずれかに従うフェニル又は置換フェニルである。
【0100】
いくつかの実施形態では、本発明は、リーキーガットを治療する方法、リーキーガット症候群を治療する方法、又はリーキーガット症候群に関連する少なくとも1つの症状を改善する方法に使用するための式IIの化合物又はその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物を提供し、式中、Rは、上記の変形例a1~a7から選択されるフェニル又は置換フェニルを表す。
【化6】
【0101】
いくつかの実施形態では、本発明は、リーキーガットを治療する方法、リーキーガット症候群を治療する方法、又はリーキーガット症候群に関連する少なくとも1つの症状を改善する方法に使用するための式IIの化合物又はその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物を提供し、式中、Rは、シクロヘキシル又は上記の変形例a1~a7から選択されるフェニルもしくは置換フェニルを表し、Xは酸素である。
【0102】
いくつかの実施形態では、本発明は、リーキーガットを治療する方法、リーキーガット症候群を治療する方法、又はリーキーガット症候群に関連する少なくとも1つの症状を改善する方法に使用するための式IIの化合物又はその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物を提供し、式中、Rは、上記の変形例a1~a7から選択されるフェニル又は置換フェニルを表し、Xは酸素である。
【0103】
いくつかの実施形態では、本発明は、リーキーガットを治療する方法、リーキーガット症候群を治療する方法、又はリーキーガット症候群に関連する少なくとも1つの症状を改善する方法に使用するための式IIの化合物又はその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物を提供し、式中、Rは、上記の変形例a1~a7から選択されるフェニル又は置換フェニルを表し、Xは硫黄である。
【0104】
いくつかの実施形態では、本発明は、リーキーガットを治療する方法、リーキーガット症候群を治療する方法、又はリーキーガット症候群に関連する少なくとも1つの症状を改善する方法に使用するための式IIIの化合物又はその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物を提供し、式中、Xは酸素及び硫黄から選択される(変形例d1)。
【化7】
【0105】
いくつかの実施形態では、本発明は、リーキーガットを治療する方法、リーキーガット症候群を治療する方法、又はリーキーガット症候群に関連する少なくとも1つの症状を改善する方法に使用するための式IVの化合物又はその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物を提供する。
【化8】
【0106】
いくつかの実施形態では、本発明は、リーキーガットを治療する方法、リーキーガット症候群を治療する方法、又はリーキーガット症候群に関連する少なくとも1つの症状を改善する方法に使用するための式Vのフェニルカプサイシン又はその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物を提供する。
【化9】
【0107】
あるいは、R’、R’’及びXは、上に概説した基の任意の組合せ(b1+c1+d1、b1+c2+d1、b1+c1+d2、b1+c2+d2、b1+c1+d3、b1+c2+d3、b2+c1+d1、b2+c2+d1、b2+c1+d2、b2+c2+d2、b2+c1+d3、b2+c2+d3、b3+c1+d1、b3+c2+d1、b3+c1+d2、b3+c2+d2、b3+c1+d3、b3+c2+d3、b4+c1+d1、b4+c2+d1、b4+c1+d2、b4+c2+d2、b4+c1+d3、b4+c2+d3)から選択されてもよく、Rは、C-C直鎖又は分岐アルキル、例えばtert-ブチル、例えばシクロヘキシル、例えばシクロヘキセニル、例えばシクロヘキサジエニルから選択される。
【0108】
本発明の化合物は、1つ以上のキラル中心及び/又は二重結合を含んでいてもよく、したがって、二重結合異性体(すなわち幾何異性体)、エナンチオマー、及び/又はジアステレオマーなどの異なる立体異性形態で存在してもよい。立体異性的に純粋な形態(例えば、幾何学的に純粋、エナンチオマー的に純粋、又はジアステレオマー的に純粋)及び立体異性体混合物の両方が本発明に包含されることを理解されたい。本発明は、ジアステレオマー及びエナンチオマー、並びにラセミ混合物にまで及ぶと考えられる。本明細書に記載される化合物は、当技術分野で公知の方法を使用して、それらの幾何異性体、エナンチオマー及び/又はジアステレオマーに分割され得る。
【0109】
本発明による化合物のいずれも、プロドラッグの形態で提供され得る。「プロドラッグ」という用語は、投与後に体内で代謝されるなどの変換を受けて薬理学的に活性な薬物を放出する薬理活性化合物の誘導体を指す。プロドラッグは、必ずしもそうである必要はないが、活性化合物に変換されるまで薬理学的に不活性であり得る。プロドラッグは、活性化合物中の1つ以上の官能基を、プロ基、すなわち活性化合物内の官能基をマスクし、インビボなどの特定の使用条件下で変換を受けて前記官能基を放出する基で誘導体化することによって得られ得る。プロ基は非毒性であるべきである。広範囲のプロ基、及びプロドラッグを提供するための方法は、当業者に公知である。
【0110】
本発明によるリーキーガットを治療する方法、リーキーガット症候群を治療する方法、又はリーキーガット症候群に関連する少なくとも1つの症状を改善する方法に使用するための化合物は、従来の薬学的に許容される担体を含有する薬学的に許容される組成物などの所望の投与単位製剤中に有効成分として存在し得る。
【0111】
本発明によるリーキーガットを治療する方法、リーキーガット症候群を治療する方法、又はリーキーガット症候群に関連する少なくとも1つの症状を改善する方法に使用するための組成物は、本発明による構造Iの化合物から実質的に純粋な形態で調製される。いくつかの実施形態では、組成物を製剤化するために使用される構造Iの化合物の純度は、少なくとも約95%、例えば少なくとも96%、97%、98%又は99%である。好ましくは、化合物の純度は少なくとも98%である。
【0112】
組成物は、任意の従来の薬学的に許容される賦形剤及び/又は担体、例えば溶媒、充填剤、希釈剤、結合剤、潤滑剤、流動促進剤、粘度調整剤、界面活性剤、分散剤、崩壊剤、乳化剤、湿潤剤、懸濁化剤、増粘剤、緩衝剤、pH調整剤、吸収遅延剤、安定剤、酸化防止剤、防腐剤、抗真菌剤、キレート剤、アジュバント、甘味料、芳香剤、及び着色剤の1つ以上をさらに含み得る。当技術分野で公知の従来の製剤化技術、例えば、従来の混合、溶解、懸濁、造粒、糖衣錠製造、研和、乳化、カプセル化、封入又は圧縮プロセスを使用して組成物を製剤化し得る。
【0113】
いくつかの実施形態では、リーキーガットを治療する方法、リーキーガット症候群を治療する方法、又はリーキーガット症候群に関連する少なくとも1つの症状を改善する方法に使用するための組成物は、経口投与及び/又は直腸投与及び/又は腹腔内投与用に製剤化される。
【0114】
組成物中に存在する本発明による構造Iの化合物の量は変化し得る。いくつかの実施形態では、組成物中に存在する本発明による化合物の量は、1~50重量%、例えば1~30重量%、例えば20~50重量%である。他の実施形態では、組成物中に存在する本発明による化合物の量は、30~70重量%、例えば40~60重量%である。さらに他の実施形態では、組成物中に存在する本発明による化合物の量は、50~100重量%、例えば50~70重量%、例えば50~80重量%、例えば60~98重量%、例えば70~95重量%、例えば80~99重量%、例えば95~100重量%である。
【0115】
さらに、本発明によるリーキーガットを治療する方法、リーキーガット症候群を治療する方法、又はリーキーガット症候群に関連する少なくとも1つの症状を改善する方法に使用するための組成物は、汚染物質又は不純物を実質的に含まない。いくつかの実施形態では、組成物中の残留溶媒以外の汚染物質又は不純物のレベルは、本発明による化合物と意図される他の成分との合わせた重量に対して約5%未満である。特定の実施形態では、組成物中の残留溶媒以外の汚染物質又は不純物のレベルは、本発明による化合物と意図される他の成分との合わせた重量に対して約2%又は1%以下である。
【0116】
特定の実施形態では、本発明によるリーキーガットを治療する方法、リーキーガット症候群を治療する方法、又はリーキーガット症候群に関連する少なくとも1つの症状を改善する方法に使用するための化合物又は組成物は無菌である。滅菌は、熱、化学物質、照射、高圧、濾過、又はそれらの組合せを適用することを含むがこれらに限定されない、任意の適切な方法によって達成することができる。
【0117】
特定の実施形態では、本発明によるリーキーガットを治療する方法、リーキーガット症候群を治療する方法、又はリーキーガット症候群に関連する少なくとも1つの症状を改善する方法に使用するための化合物又は組成物は、医薬品、医薬品有効成分(API)、食品添加物、補助食品、健康補助食品、栄養補助食品、OTCサプリメント、医療食、及び/又は医薬品グレードのサプリメントとして製剤化される。
【0118】
特定の実施形態では、本発明による方法は、本発明による化合物又は組成物を対象に投与する工程を含み、化合物又は組成物は、医薬品、医薬品有効成分(API)、食品添加物、補助食品、健康補助食品、栄養補助食品、OTCサプリメント、医療食、及び/又は医薬品グレードのサプリメントとして製剤化される。
【0119】
本発明によるリーキーガットを治療する方法、リーキーガット症候群を治療する方法、又はリーキーガット症候群に関連する少なくとも1つの症状を改善する方法に使用するための化合物又は組成物は、治療有効用量で対象に投与され、化合物又は組成物は、プロテオバクテリア属(Proteobacteria)、アクチノバクテリア属(Actinobacteria)、ファーミキューテス属(Firmicutes)、バクテロイデテス属(Bacteroidetes)、バクテロイデス属(Bacteroides)、ポルフィロモナス属(Porphyromonas)、ビフィドバクテリウム属(Bifidobacterium)、乳酸桿菌属(Lactobacillus)、クロストリジウム属(Clostridium)、プレボテラ属(Prevotella)、ルミコッカウス属(Ruminococcus)、アリスティペス属(Alistipes)、ドレア属(Dorea)、ユーバクテリウム属(Eubacterium)、フィーカリバクテリウム属(Faecalibacterium)、コリンセラ属(Collinsella)、ロセブリア属(Roseburia)、コプロコッカス属(Coprococcus)、ホルデマニア属(Holdemania)などに対する抗菌効果を有さないか又は亜致死的抗菌効果を有する。
【0120】
適切な投与量は、使用される化合物、状態の病期、患者の年齢及び体重などに依存し得、当技術分野で周知の原理に従って熟達した実践者によって日常的に決定され得る。本発明による化合物の適切な1日投与量は、約0.001mg/kg体重~1.0mg/kg体重の範囲であり得る。いくつかの実施形態では、その範囲は、投与量が致死的な抗菌効果を有するべきでないという要件によって制限される。例えば、いくつかの実施形態では、1日用量は、0.001~0.01mg/kg体重、例えば0.001~0.005mg/kg体重、例えば0.003~0.008mg/kg体重、例えば0.005~0.01mg/kg体重であり得る。他の実施形態では、1日用量は、0.005~0.05mg/kg体重、例えば0.005~0.02mg/kg体重、例えば0.008~0.05mg/kg体重であり得る。他の実施形態では、1日用量は、0.01~0.1mg/kg体重、例えば0.01~0.05mg/kg体重、例えば0.03~0.08mg/kg体重、例えば0.05~0.1mg/kg体重であり得る。他の実施形態では、1日用量は、0.05~0.5mg/kg体重、例えば0.05~0.2mg/kg体重、例えば0.08~0.5mg/kg体重であり得る。さらに他の実施形態では、1日用量は、0.1~1.0mg/kg体重、例えば0.3~0.8mg/kg体重、例えば0.5~1.0mg/kg体重であり得る。
【0121】
本発明による化合物の治療有効用量は、単回用量又は分割用量で投与することができる。本発明による化合物又は組成物は、1日1回、1日2回以上、2日に1回、3日に1回、1週間に2回又は1週間に1回、又は医療専門家によって適切と判断される場合に投与され得る。特定の実施形態では、本発明による化合物又は組成物は1日1回投与される。他の実施形態では、本発明による化合物又は組成物は1日2回投与される。いくつかの実施形態では、投与レジメンは予め決定されており、患者群全体について同じである。他の実施形態では、本発明による化合物又は組成物による治療の投与量及び投与頻度は、疾患の病期、症状の重症度、投与経路、対象の年齢、体重、一般的な健康状態、性別及び/もしくは食事、並びに/又は治療に対する対象の応答を含むがこれらに限定されない因子に基づいて、医療専門家によって決定される。投与レジメンを選択するとき、致死的な抗菌効果を避けるように注意すべきである。
【0122】
いくつかの実施形態では、治療有効用量は一定の間隔で投与される。他の実施形態では、用量は、必要な場合に、又は散発的に投与される。本発明による化合物又は組成物は、医療専門家によって、又は自己投与によって投与され得る。本発明による化合物又は組成物は、製剤及び投与経路などの因子に応じて、食物と共に又は食物なしで投与され得る。いくつかの実施形態では、本発明による化合物又は組成物は、特定の時間帯に投与される。
【0123】
本発明によるリーキーガットを治療する方法、リーキーガット症候群を治療する方法、又はリーキーガット症候群に関連する少なくとも1つの症状を改善する方法に使用するための化合物又は組成物は、局所的又は全身的に投与され得る。本発明による化合物又は組成物は、経口、腹腔内、舌下、口腔内、直腸、及び経腸を含むがこれらに限定されない任意の投与経路によって投与され得る。
【0124】
いくつかの実施形態では、化合物又は組成物は、経口投与、及び/又は直腸投与、及び/又は腹腔内投与される。
【0125】
好ましい実施形態では、化合物又は組成物は経口投与される。特定の実施形態では、化合物又は組成物は、食事と共に又は食事の前に投与される。特定の実施形態では、化合物又は組成物は、腸内の時間を最大化し、薬物の代謝速度を低下させる製剤中の非抗菌用量で投与される。
【0126】
いくつかの実施形態では、本発明によるリーキーガットを治療する方法、リーキーガット症候群を治療する方法、又はリーキーガット症候群に関連する少なくとも1つの症状を改善する方法に使用するための化合物又は組成物は、腹腔内注射などによって腹腔内に投与される。
【0127】
好ましい単位投与製剤は、本発明によるリーキーガットを治療する方法、リーキーガット症候群を治療する方法、又はリーキーガット症候群に関連する少なくとも1つの症状を改善する方法に使用するための構造Iの化合物の、先に列挙したような治療有効用量又はその適切な画分を含有する製剤である。リーキーガットを治療する方法、リーキーガット症候群を治療する方法、又はリーキーガット症候群に関連する少なくとも1つの症状を改善する方法に使用するための組成物は、全ての活性成分及び不活性成分が適切な系で組み合わされ、成分が投与前に混合される必要がない単回用量として単位剤形で提供され得る。あるいは、組成物は、薬物、賦形剤及び担体が2つ以上の別個の容器(例えば、アンプル、バイアル、チューブ、ボトル又はシリンジ)で提供され、投与される組成物を形成するために組み合わせる必要があるキットとして提供され得る。キットは、本発明による1つ以上の化合物又は本発明による組成物及び他の全ての成分を単位剤形中に、又は2つ以上の別個の容器中に含み得、組成物を保存、調製、投与及び/又は使用するための説明書を含み得る。
【0128】
いくつかの実施形態では、本発明によるリーキーガットを治療する方法、リーキーガット症候群を治療する方法、又はリーキーガット症候群に関連する少なくとも1つの症状を改善する方法に使用するための化合物又は組成物の使用期間は、使用される製剤によって、並びに/又は治療される対象において検出される及び/もしくは疑われる根底にある作用機序によって、並びに/又は治療される対象が経験する特定の症状によって決定される。いくつかの実施形態では、治療は、治療される対象の症状に基づいてさらなる改善が予想できなくなるまで持続される。特定の実施形態では、本発明による化合物又は組成物による治療の期間は、少なくとも3日間、少なくとも1週間、少なくとも2週間、少なくとも1ヶ月、少なくとも3ヶ月、例えば3ヶ月、6ヶ月、9ヶ月である。いくつかの実施形態では、治療は、リーキーガットに関連する症状が緩和したときに停止される。いくつかの実施形態では、持続期間は、症状の性質及び重症度、投与経路、対象の年齢、体重、一般的な健康状態、性別及び/もしくは食事、並びに/又は治療に対する対象の応答を含むがこれらに限定されない因子に基づいて、医療専門家によって決定される。いくつかの実施形態では、治療は、リーキーガットに関連する症状の再発時に繰り返される。他の実施形態では、化合物又は組成物は、初期治療効果を長期間維持するために、急性モードとは対照的に連続モードなどで慢性的に投与される。
【0129】
特定の実施形態では、本発明による化合物又は組成物は、単独で投与される。他の実施形態では、本発明による化合物又は組成物は、1つ以上の他の治療薬と組み合わせて投与される。前記1つ以上の他の治療薬は、リーキーガットに対する効果を有することが公知であってもよく、及び/又は本発明の化合物もしくは組成物と共にリーキーガット治療に対する相加的もしくは相乗的な作用機序を有していてもよい。前記1つ以上の他の治療薬は、リーキーガットに関連する及び/もしくはリーキーガットと同時に存在する他の疾患もしくは状態に対して効果を有することが公知であってもよく、並びに/又は本発明の化合物もしくは組成物と共にリーキーガット治療に対する相加的もしくは相乗的な作用機序を有していてもよい。いくつかの実施形態では、本発明による化合物又は組成物は、併用療法の一部として投与される。本発明による化合物又は組成物を含む併用療法は、本発明による化合物もしくは組成物を1つ以上の治療薬と組み合わせて含む組成物、及び/又は本発明による化合物もしくは組成物と1つ以上の治療薬との同時投与を指し得、本発明による化合物又は組成物及び1つ以上の他の治療薬は、同じ組成物に製剤化されていない。別々の製剤を使用する場合、本発明による化合物又は組成物は、別の治療薬の投与と同時に、断続的に、交互に、その前に、その後に、又はこれらの組合せで投与され得る。併用療法を使用する場合、致死的な抗菌効果を避けるように注意すべきである。
【0130】
一態様の文脈で、例えばリーキーガットを治療する方法、リーキーガット症候群を治療する方法、又はリーキーガット症候群に関連する少なくとも1つの症状を改善する方法で使用するための化合物又は組成物を対象とする態様について記載される実施形態及び特徴は、本発明の他の態様にも適用される。
【0131】
さらなる態様では、本発明は、リーキーガットを治療する方法、リーキーガット症候群を治療する方法、又はリーキーガット症候群に関連する少なくとも1つの症状を改善する方法であって、有効量の式Iの化合物又はその任意の薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物を対象に投与する工程を含む方法を提供する。
【0132】
いくつかの実施形態では、本発明は、リーキーガットを治療する方法、リーキーガット症候群を治療する方法、又はリーキーガット症候群に関連する少なくとも1つの症状を改善する方法であって、有効量の式Iの化合物又はその任意の薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物を含む組成物を対象に投与する工程を含む方法を提供する。
【0133】
いくつかの実施形態では、本発明は、リーキーガット、リーキーガット症候群、又は腸透過性の増加を治療する方法であって、有効量の式Iの化合物又はその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物、又は前記式Iの化合物を含む組成物を対象に投与する工程を含む方法を提供し、
式中、
Xは、酸素及び硫黄から選択され、
Rは、シクロヘキシル、フェニル及び置換フェニルを含む群から選択され;
前記置換フェニルは、任意の1つ以上の位置で、フルオロ;クロロ;ブロモ;ヨード、シアノ、ニトロ、トリフルオロメチル、C-C直鎖及び分岐アルコキシ、C-Cスルホキシ、-S-C-Cアルキル、C-C直鎖及び分岐アルキル、アルケニル及びアルキニル、C-C直鎖及び分岐アルケニル、C-C直鎖及び分岐アルキニル、C-Cフルオロアルキル、クロロアルキル、ブロモアルキル、及びヨードアルキル、COO-C-Cアルキル、O(CO)-C-Cアルキル、NH-C-Cアルキル、N(C-Cアルキル)、CON(C-Cアルキル)、並びにNH(CO)-C-Cアルキルを含む群から選択される1~5個の同一の又は異なる置換基で置換されており;
R’は、水素、C-C直鎖及び分岐アルキル、並びにC-Cシクロアルキルを含む群から選択され、並びに
R’’は、水素、ベンジル、及びアセチルを含む群から選択される。
【0134】
いくつかの実施形態では、本発明は、リーキーガット、リーキーガット症候群、又は腸透過性の増加を治療する方法であって、有効量の式Iの化合物又はその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物、又は前記式Iの化合物を含む組成物を対象に投与する工程を含む方法を提供し、
式中、
Xは、酸素及び硫黄から選択され、
Rは、フェニル及び置換フェニルを含む群から選択され;
前記置換フェニルは、任意の1つ以上の位置で、フルオロ;クロロ;ブロモ;ヨード、シアノ、ニトロ、トリフルオロメチル、C-C直鎖及び分岐アルコキシ、C-Cスルホキシ、-S-C-Cアルキル、C-C直鎖及び分岐アルキル、アルケニル及びアルキニル、C-C直鎖及び分岐アルケニル、C-C直鎖及び分岐アルキニル、C-Cフルオロアルキル、クロロアルキル、ブロモアルキル、及びヨードアルキル、COO-C-Cアルキル、O(CO)-C-Cアルキル、NH-C-Cアルキル、N(C-Cアルキル)、CON(C-Cアルキル)、並びにNH(CO)-C-Cアルキルを含む群から選択される1~5個の同一の又は異なる置換基で置換されており;
R’は、水素、C-C直鎖及び分岐アルキル、並びにC-Cシクロアルキルを含む群から選択され、並びに
R’’は、水素、ベンジル、及びアセチルを含む群から選択される。
【0135】
さらなる態様では、本発明は、リーキーガットを治療する方法、リーキーガット症候群を治療する方法、又はリーキーガット症候群に関連する少なくとも1つの症状を改善する方法であって、有効量のフェニルカプサイシン(V)、又は任意のその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物を対象に投与する工程を含む方法を提供する。
【0136】
いくつかの実施形態では、本発明は、リーキーガットを治療する方法、リーキーガット症候群を治療する方法、又はリーキーガット症候群に関連する少なくとも1つの症状を改善する方法であって、有効量のフェニルカプサイシン(V)又は任意の薬学的に許容されるその塩もしくは溶媒和物を含む組成物を対象に投与する工程を含む方法を提供する。
【0137】
さらなる態様では、本発明は、クオラムセンシングを阻害するため、腸におけるクオラムセンシングを阻害するため、リーキーガットを治療するため、リーキーガット症候群を治療するため、又はリーキーガット症候群に関連する少なくとも1つの症状を改善するための、式Iの化合物又はその任意の薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物の使用を提供する。
【0138】
さらなる態様では、本発明は、クオラムセンシングを阻害するため、腸におけるクオラムセンシングを阻害するため、リーキーガットを治療するため、リーキーガット症候群を治療するため、又はリーキーガット症候群に関連する少なくとも1つの症状を改善するための、有効量の式Iの化合物を含む組成物の使用を提供する。
【0139】
さらなる態様では、本発明は、クオラムセンシングを阻害するため、腸におけるクオラムセンシングを阻害するため、リーキーガットを治療するため、リーキーガット症候群を治療するため、又はリーキーガット症候群に関連する少なくとも1つの症状を改善するための、フェニルカプサイシン(V)又はその任意の薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物の使用を提供する。
【0140】
さらなる態様では、本発明は、クオラムセンシングを阻害するため、腸におけるクオラムセンシングを阻害するため、リーキーガットを治療するため、リーキーガット症候群を治療するため、又はリーキーガット症候群に関連する少なくとも1つの症状を改善するための、フェニルカプサイシン(V)を含む組成物の使用を提供する。
【0141】
さらなる態様では、本発明は、クオラムセンシングの阻害のための式Iの化合物又はその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物、又は前記式Iの化合物を含む組成物の使用を提供する。前記クオラムセンシングは、望ましくないクオラムセンシングであり得る。前記クオラムセンシングは腸においてであり得る。使用は治療的であり得る。使用は、非治療的、例えばバイオフィルムの非治療的予防であり得る。
【0142】
本発明は、示される実施形態及び例に限定されるものではない。本開示の様々な実施形態が本明細書に記載されるが、そのような実施形態が単なる例として提供されることは当業者には明らかであろう。本明細書に記載される実施形態に対する数多くの修正及び変更、並びにその変形及び置換は、本開示から逸脱することなく当業者には明らかであろう。本開示を実施する際に、本明細書に記載の実施形態に対する様々な代替形態を使用することができることを理解されたい。
【0143】
本開示の全ての実施形態は、任意に、本明細書に記載の他の実施形態の任意の1つ以上と組み合わせることができることを理解されたい。
【0144】
本明細書に開示される各成分、化合物、又はパラメータは、単独で、又は本明細書に開示されるあらゆる他の成分、化合物、又はパラメータの1つ以上と組み合わせて使用するために開示されていると解釈されるべきであることを理解されたい。さらに、本明細書に開示される各成分、化合物又はパラメータの各量/値又は量/値の範囲は、本明細書に開示される任意の1つ以上の他の成分、化合物又はパラメータについて開示される各量/値又は量/値の範囲と組み合わせて開示されていると解釈されるべきであり、したがって、本明細書に開示される2つ以上の成分、化合物又はパラメータの量/値又は量/値の範囲の任意の組合せも、本明細書の目的のために互いに組み合わせて開示されることを理解されたい。本明細書に記載されるあらゆる特徴、及びそのような特徴の組合せは、特徴が相互に矛盾しない限り、本発明の範囲内に含まれる。
【0145】
本明細書に開示される各範囲の各下限は、同じ成分、化合物、又はパラメータについて本明細書に開示される各範囲の各上限と組み合わせて開示されると解釈されるべきであることを理解されたい。したがって、2つの範囲の開示は、各範囲の各下限と各範囲の各上限とを組み合わせることによって導出される4つの範囲の開示として解釈されるべきである。3つの範囲の開示は、各範囲の各下限と各範囲の各上限とを組み合わせることなどによって導出される9つの範囲の開示として解釈されるべきである。さらに、明細書又は例に開示される成分、化合物、又はパラメータの特定の量/値は、範囲の下限又は上限のいずれかの開示として解釈されるべきであり、したがって、その成分、化合物、又はパラメータの範囲を形成するために、本出願の他の場所に開示される同じ成分、化合物、又はパラメータの任意の他の下限又は上限又は範囲又は特定の量/値と組み合わせることができる。
【実施例
【0146】
例1-クロモバクテリウム・ビオラセウム(Chromobacterium violaceum)CV026を使用したフェニルカプサイシン(V)によるクオラムセンシング活性の阻害
フェニルカプサイシン(V)及びカプサイシンを、クロモバクテリウム・ビオラセウム(Chromobacterium violaceum)CV026を使用してそれらのクオラムセンシング阻害活性についてアッセイした。
【0147】
クロモバクテリウム・ビオラセウム(Chromobacterium violaceum)CV026は、クオラムセンシング阻害を同定するために使用されたC.ビオラセウム(C.violaceum)(ATCC31532)由来のビオラセイン陰性の二重ミニTn5変異体である。クロモバクテリウム・ビオラセウム(Chromobacterium violaceum)CV026は、自己誘導性アシルホモセリンラクトンシンテターゼを欠損しており、したがって、クオラムセンシングを受け、抗菌活性を有する水不溶性紫色色素であるビオラセインと呼ばれる天然抗生物質を産生するために、N-ヘキサノイルホモセリンラクトン(C6-HSL)の外因性添加を必要とする。
【0148】
方法:
1000ugの化合物V及びカプサイシンのストック溶液を、1000μgを100μlのエタノール及び900μlの滅菌水に溶解することによって調製した。ストック溶液を2倍体積の溶媒(10%エタノール水溶液)で連続的に希釈して、500/250/125/62.5/31.25/15.625/7.81μg/mlの試験溶液を得た。
【0149】
クロモバクテリウム・ビオラセウム(Chromobacterium violaceum)CV026を使用して、抗クオラムセンシング活性を測定した。誘導剤N-ヘキサノイルホモセリンラクトン(C6-HSL)は、Sigma-Aldrichから購入した。CV026をルリア-ベルターニ(LB)培地(LB、酵母抽出物5g、トリプトン10g、NaCl 5g、水1L)中、30℃で一晩、好気的条件下で培養した。標準的なディスク拡散アッセイを使用して、二重層培養プレートを利用することによってV及びカプサイシンの抗クオラムセンシング活性を検出した。15mlのLB培地(2.5%寒天)に、20μg/ml-1カナマイシン及び50ng/ml C6-AHLを含む50μlのC.ビオラセウム(C.violaceum)CV026を含有する15mlのLB(1.0%寒天)を重層した。試験濃度のV及びカプサイシンを滅菌ディスク(直径8mm)に添加し、寒天上に置いた。次いで、プレートを30℃で一晩インキュベートし、クオラムセンシング阻害を、増殖を示すがクオラムセンシング阻害を示す生存細胞が存在するディスク周囲の着色が少ない/無色の領域として検出した。ディスクの外縁から抗クオラムセンシング阻害領域の縁まで測定を行った。製剤溶媒(10%エタノール水溶液)を陰性対照として使用した。
【0150】
結果:
バイオセンサ株C.ビオラセウム(C.violaceum)CV026は、野生型株の突然変異体であり、それ自体のAHLシグナルを生成することができない。これは、外因性活性シグナル分子にのみ応答し、紫色のビオラセインを生成する。したがって、外因性AHLとインキュベートした場合のディスク周囲のこの紫色の喪失は、試験化合物によるQS阻害を示す。より具体的には、QS阻害の領域(ディスクを越えたmm)は、紫色ではないが細菌増殖を有する不透明なディスクをもたらす。細菌増殖の阻害(抗菌活性)は、細菌を含まない透明な阻害領域によって示される。結果を以下の表1に示しており、QSはクオラムセンシングを表す。
【表1】
【0151】
考察/結論:
このCV026細菌クオラムセンシング阻害アッセイでは、Vは、観察された亜致死抗菌用量よりも低い用量で用量依存的にクオラムセンシング阻害剤であることが示された。具体的には、61.5/31.25/15.625/7.81μg/ml用量の化合物Vは、用量応答的に強から弱のクオラムセンシング阻害活性を示したが、より高い用量では抗菌活性を示した。(500/250/125μg/ml)。
【0152】
天然化合物カプサイシンは、非抗菌用量(31.25/15.625/7.81μg/ml)でクオラムセンシング阻害活性を示さず、本発明によるリーキーガットを治療する方法、リーキーガット症候群を治療する方法、又はリーキーガット症候群に関連する少なくとも1つの症状を改善する方法に使用するための化合物のクオラムセンシング阻害活性の予想外の性質にさらなる信頼性を与えた。
【0153】
この結果は、化合物V、ひいては本発明によるリーキーガットを治療する方法、リーキーガット症候群を治療する方法、又はリーキーガット症候群に関連する少なくとも1つの症状を改善する方法に使用するための他の化合物が、細菌の病原性を低下させ、したがって、リーキーガット症候群などのGI炎症状態の改善を示す亜致死抗菌用量での新規の予想外の作用機序を有することを示す。
【0154】
例2-フェニルカプサイシン(V)の抗菌効果の調査
インビトロでのフェニルカプサイシンの抗菌効果を調査して、3つの細菌性病原体に対するフェニルカプサイシン(V)の殺菌活性を決定した。
【0155】
試験には、サルモネラ(salmonella)、カンピロバクター(campylobacter)及びリステリア(listeria)が含まれた。19ppm、56ppm、167ppm、及び500ppmの4つの異なる濃度のフェニルカプサイシンを試験した。
【0156】
試験の結果は図1、2、及び3に示されており、フェニルカプサイシン及びその誘導体の非致死用量及び亜致死用量を実験的に決定し、腸内細菌のクオラムセンシングを阻害することによってリーキーガット及びリーキーガット症候群を治療するための前記発明の化合物の有効用量を定義及び送達するために使用できることを明確に示す。
【0157】
例3-腸管病原性緑膿菌(P.aeruginosa)(ATCC(登録商標)15442)を使用したバイオフィルム形成の阻害
背景:
クオラムセンシングは、多くの細菌種が遺伝子回路の発現を集団依存的に制御するために使用する調節機構である。クオラムセンシングは、細菌集団のサイズを監視及び媒介するために自己誘導物質と呼ばれる小さな拡散性分子を使用する。細菌によって産生された自己誘導物質は、拡散して周囲環境に蓄積し、閾値濃度に達すると、拡散して細菌に戻り、その多くがさもなければ良性の細菌を病原性の細菌に変えることができる特定の遺伝子の転写を調節する。増加しつつある証拠は、細菌クオラムセンシングが、一般にリーキーガット症候群に関連するGI障害の症状をもたらすことが多い、病原性因子の遺伝子発現、胞子形成、バイオフィルム形成及び運動性などの多様な生物学的プロセスの調節に関与することを示している。
【0158】
一般的なカプセル化グラム陰性棒状細菌である緑膿菌(P.aeruginosa)によるこのアッセイで例示される商業的に重要なグラム陰性細菌では、N-アシルホモセリンラクトン(AHL)が自己誘導物質として最も一般的に使用される。クオラムセンシングシステムは、いくつかの方法で干渉され得る。細菌病原体のクオラムセンシングシステムを不活性化すると、病原性因子産生の有意な減少をもたらすことができる。クオラムセンシング阻害の1つの尺度は、このアッセイの焦点である病原性細菌によるバイオフィルム形成の阻害である。
【0159】
目的:
試験の目的は、緑膿菌(pseudomonas aeruginosa)(ATCC(登録商標)15442)細菌を使用したバイオフィルム形成阻害についてフェニルカプサイシン(V)及びカプサイシンをアッセイすることであった。
【0160】
方法:
1000ugのV及びカプサイシンのストック溶液を、1000μgを100μlのエタノール及び900μlの滅菌水に溶解することによって調製した。ストック溶液を2倍体積の溶媒(10%エタノール水溶液)で連続的に希釈して、500/125//31.25/7.81μg/mlの試験溶液を得た。
【0161】
緑膿菌(P.aeruginosa)(ATCC(登録商標)15442)を使用して、バイオフィルム阻害活性を決定した。誘導剤N-ヘキサノイルホモセリンラクトン(C6-HSL)は、Sigma-Aldrichから購入した。ATCC(登録商標)15442を、ルリア-ベルターニ(LB)培地(LB、酵母抽出物5g、トリプトン10g、NaCl 5g、水1L)中、30℃で一晩、好気的条件下で培養した。
【0162】
クリスタルバイオレット染色アッセイ
バイオフィルム形成を、変更を加えたStepanovic et al.(Journal of Microbiological Methods,2000,40(2),175-19)によって記載された方法を用いて、変更を加えて定量化した。96ウェルマイクロプレートの複製物を使用して、試験溶液を上記の選択された用量で充填した。培養物をLB中30℃で18時間増殖させ、600nmでOD 0.1に調整した。培養物20μLを各ウェルに添加し、ウェルあたり200μLまでの容量の残りをLBで満たした。蒸発を防ぐために、未使用の外部ウェルを200μLの滅菌水で満たした。
【0163】
24時間インキュベートした後、上清を廃棄し、200μLの滅菌リン酸緩衝生理食塩水(PBS)でウェルを3回洗浄した。ウェルに付着した細菌を200μLのメタノールで15分間固定し、メタノールを廃棄し、プレートを25℃で乾燥させた。
【0164】
各ウェルを、25℃で5分間、200μLの0.3%(w/v)クリスタルバイオレット溶液で染色した。過剰のクリスタルバイオレットをピペットで取り出し、滅菌PBSでウェルを5回すすいだ。200μLの33%(v/v)氷酢酸をウェルに30分間添加して、細胞壁に接着した色素を可溶化した。光学密度(OD)は、バイオフィルム形成の直接的な尺度としてマイクロプレート分光光度計を使用して595nmで測定した。3%DMSO中の緑膿菌(P.aeruginosa)を陰性対照として使用する。
【0165】
結果:
表2は、十分に特徴付けられたクオラムセンシングシステムを有する細菌である緑膿菌(P.aeruginosa)(ATCC(登録商標)15442)によるバイオフィルム形成に対するフェニルカプサイシン及びカプサイシンの効果を示す。
【表2】
【0166】
クリスタルバイオレット染色アッセイ(CVSA)で得られたOD強度に基づいて、30℃で緑膿菌(P.aeruginosa)(ATCC(登録商標)15442)によって形成されたバイオフィルムは、用量依存性は観察されなかったが、125ug/ml未満の濃度のフェニルカプサイシンによって有意に減少した。カプサイシンは、同じ濃度で、バイオフィルム形成の減少を示さなかった。
【0167】
両化合物は、500ug/mlの濃度で増殖干渉を示した。
【0168】
30℃で対照によって形成されたバイオマスはバイオフィルム試験に十分であったが、37℃でのバイオフィルムは約OD 2.9であり、バイオフィルム減少の定量化には不十分であると判断された。
【0169】
対照は、3%DMSO水溶液担体ブランクを含むLB中での細菌増殖を表す。
【0170】
示されている値は、OD 595nmでの三連アッセイの平均である。
【0171】
異なる文字が続く値は、テューキー検定によって5%の確率で異なる(P<0.05)。
【0172】
考察/結論:
このバイオフィルム阻害アッセイにおいて、フェニルカプサイシンが緑膿菌(P.aeruginosa)(ATCC(登録商標)15442)細菌におけるバイオフィルム形成の強力な阻害剤であることが示された。カプサイシンは、試験したいずれの用量でもバイオフィルム形成阻害を示さなかった。この結果は、フェニルカプサイシンが、細菌の病原性を低下させ、したがってリーキーガット症候群などのGI炎症状態の改善を示す亜致死抗菌用量での新規の予想外の作用機序を有し得ることを示す。
【0173】
例4-病原性腸管出血性細菌である大腸菌(Escherichia coli)O157:H7を使用したバイオフィルム形成の阻害
例3と同じ背景に基づいて、この試験の目的は、病原性腸管出血性細菌である大腸菌(Escherichia coli)O157:H7を使用して、フェニルカプサイシン(V)及びカプサイシンをそれらのバイオフィルム形成阻害についてアッセイすることであった。
【0174】
方法:
1000μgのフェニルカプサイシン及びカプサイシンのストック溶液を、1000μgを100μLのエタノール及び900μLの滅菌水に溶解することによって調製した。ストック溶液を2倍体積、次いで4倍体積の溶媒(10%エタノール水溶液)で連続的に希釈して、500/125/31.25(32)/7.81(8)μg/mlの試験溶液を得た。
【0175】
大腸菌(E.coli)O157:H7を使用して、バイオフィルム阻害活性を決定した。誘導剤N-ヘキサノイルホモセリンラクトン(C6-HSL)は、Sigma-Aldrichから購入した。大腸菌(E.coli)O157:H7を、ルリア-ベルターニ(LB)培地(LB、酵母抽出物5g、トリプトン10g、NaCl 5g、水1L)中、37℃で一晩、好気的条件下で培養した。
【0176】
3%DMSO中の大腸菌(E.coli)O157:H7を対照として使用して、実験3と同様にクリスタルバイオレット染色アッセイを行った。
【0177】
結果:
表3は、大腸菌(E.coli)O157:H7によるバイオフィルム形成に対するフェニルカプサイシン及びカプサイシンの効果を示す。
【表3】
【0178】
クリスタルバイオレット染色アッセイ(CVSA)で得られたOD強度に基づいて、30℃で大腸菌(E.coli)O157:H7によって形成されたバイオフィルムは、125及び32μg/mlの濃度のフェニルカプサイシンによって有意に減少したが、試験した8μg/mlの最低用量では効果がなかった。
【0179】
カプサイシンは、同じ濃度で、バイオフィルム形成の減少を示さなかった。
【0180】
両化合物は、500μg/ml濃度で増殖干渉を示した。
【0181】
緑膿菌(P.aeruginosa)(例3)と同様に、30℃で対照によって形成されたバイオマスはバイオフィルム試験に十分であったが、37℃でのバイオフィルムは約OD 2.9であり、バイオフィルム減少の定量化には不十分であると判断された。
【0182】
対照は、3%DMSO水溶液担体ブランクを含むLB中での細菌増殖を表す。
【0183】
示されている値は、OD 595nmでの三連アッセイの平均である。
【0184】
異なる文字が続く値は、テューキー検定によって5%の確率で異なる(P<0.05)。
【0185】
考察/結論:
このバイオフィルム阻害アッセイにおいて、フェニルカプサイシンは、125及び32μg/mlの中濃度で大腸菌(E.coli)O157:H7細菌におけるバイオフィルム形成の良好な阻害剤であるが、試験した最低率の8μg/mlではそうでないことを示した。カプサイシンは、試験したいずれの用量でもバイオフィルム形成阻害を示さなかった。この結果は、フェニルカプサイシンが、様々な細菌の病原性を低下させ、リーキーガット症候群などのGI炎症状態の改善を示す可能性がある亜致死抗菌用量で、新規の予想外の作用機序を有し続けることを示す。
【0186】
例5-サルモネラ・エンテリカ亜種エンテリカ血清型パラチフィC(Salmonella enterica subsp.enterica serovar Paratyphi C(ATCC(登録商標)BAA 1714(商標))を使用したバイオフィルム形成の阻害
例3及び4と同じ背景に基づいて、この試験の目的は、サルモネラ・エンテリカ亜種エンテリカ血清型パラチフィC(Salmonella enterica subsp.enterica serovar Paratyphi C)(ATCC(登録商標)BAA 1714(商標))細菌株を使用して、フェニルカプサイシン(V)及びカプサイシンをそれらのバイオフィルム形成阻害についてアッセイすることであった。
【0187】
方法:
1000μgのフェニルカプサイシン及びカプサイシンのストック溶液を、1000μgを100μlのエタノール及び900μlの滅菌水に溶解することによって調製した。ストック溶液を2倍体積、次いで4倍体積の溶媒(10%エタノール水溶液)で連続的に希釈して、500/125/31.25(32)/7.81(8)μg/mlの試験溶液を得た。
【0188】
ATCC(登録商標)BAA 1714(商標)を使用して、バイオフィルム阻害活性を決定した。誘導剤N-ヘキサノイルホモセリンラクトン(C6-HSL)は、Sigma-Aldrichから購入した。ATCC(登録商標)BAA 1714(商標)をルリア-ベルターニ(LB)培地(LB、酵母抽出物5g、トリプトン10g、NaCl 5g、水1L)中、37℃で一晩、好気的条件下で培養した。
【0189】
3%DMSO中のATCC(登録商標)BAA 1714(商標)を対照として使用して、実験3と同様にクリスタルバイオレット染色アッセイを行った。
【0190】
結果:
表4は、ATCC(登録商標)BAA 1714(商標)によるバイオフィルム形成に対するフェニルカプサイシン及びカプサイシンの効果を示す。
【表4】
【0191】
クリスタルバイオレット染色アッセイ(CVSA)で得られたOD強度に基づいて、30℃でATCC(登録商標)BAA 1714(商標)によって形成されたバイオフィルムは、32μg/ml及び試験した最低用量である8μg/mlの濃度のフェニルカプサイシンによって有意に減少した。カプサイシンは、同じ濃度で、バイオフィルム形成の減少を示さなかった。
【0192】
両化合物は、500及び125μg/mlの濃度で増殖干渉を示した。
【0193】
先のアッセイと同様に、30℃で対照によって形成されたバイオマスはバイオフィルム試験に十分であったが、37℃でのバイオフィルムは約OD 2.6であり、バイオフィルム減少の定量化には不十分であると判断された。
【0194】
対照は、3%DMSO水溶液担体ブランクを含むLB中での細菌増殖を表す。
【0195】
示されている値は、OD 595nmでの三連アッセイの平均である。(SD=/-0.7)
【0196】
異なる文字が続く値は、テューキー検定によって5%の確率で異なる(P<0.05)。
【0197】
考察/結論:
このバイオフィルム阻害アッセイにおいて、フェニルカプサイシンは、32μg/ml及び試験した最低率である8μg/mlという低い濃度でATCC(登録商標)BAA 1714(商標)細菌におけるバイオフィルム形成の良好な阻害剤であることが示された。カプサイシンは、試験したいずれの用量でもバイオフィルム形成阻害を示さなかった。この結果は、フェニルカプサイシンが、様々な細菌の病原性を低下させ、リーキーガット症候群などのGI炎症状態の改善を示す可能性がある亜致死抗菌用量で、新規の予想外の作用機序を有し続けることを示す。
【0198】
例6-種々のカプサイシン化合物を用いた、サルモネラ・エンテリカ亜種エンテリカ血清型パラチフィC(Salmonella enterica subsp.enterica serovar Paratyphi C(ATCC(登録商標)BAA 1714(商標))を使用したバイオフィルム形成の阻害
例3と同じ背景に基づいて、この試験の目的は、サルモネラ・エンテリカ亜種エンテリカ血清型パラチフィC(Salmonella enterica subsp.enterica serovar Paratyphi C(ATCC(登録商標)BAA1714(商標))細菌株を使用して、カプサイシン、フェニルカプサイシン(V)及び以下に示されるa~cと表される3つの他のカプサイシンをそれらのバイオフィルム形成阻害についてアッセイすることであった。
【化10】
【0199】
方法:
例5では、フェニルカプサイシン及びカプサイシンの両方が500μg/mlの濃度で増殖干渉(抗菌活性)を示したので、この高い割合はこのアッセイから除外された。
【0200】
500μgのフェニルカプサイシン、カプサイシン、化合物a、化合物b、化合物cのストック溶液を、500μgを100μlのエタノール及び900μlの滅菌水に溶解することによって調製した。ストック溶液を4倍体積の溶媒(10%エタノール水溶液)で連続的に希釈して、125/31.25(32)/7.81(8)/1.95(2)μg/mlの試験溶液を得た。
【0201】
ATCC(登録商標)BAA1714(商標)を使用してバイオフィルム阻害活性を決定した。誘導剤N-ヘキサノイルホモセリンラクトン(C6-HSL)は、Sigma-Aldrichから購入した。ATCC(登録商標)BAA1714(商標)を、ルリア-ベルターニ(LB)培地(LB、酵母抽出物5g、トリプトン10g、NaCl 5g、水1L)中、37℃で一晩、好気的条件下で培養した。
【0202】
3%DMSO中のATCC(登録商標)BAA1714(商標)を対照として使用して、実験3と同様にクリスタルバイオレット染色アッセイを行った。
【0203】
結果:
表5は、ATCC(登録商標)BAA 1714(商標)によるバイオフィルム形成に対するフェニルカプサイシン、カプサイシン、化合物a、化合物b、及び化合物cの効果を示す。
【表5】
【0204】
クリスタルバイオレット染色アッセイ(CVSA)で得られたOD強度に基づいて、30℃でATCC(登録商標)BAA1714(商標)によって形成されたバイオフィルムは、32μg/ml、8μg/mlの濃度及び試験した最低用量である2μg/mlの新たな低用量のフェニルカプサイシンによって再び有意に減少した。125μg/ml用量は、依然としてバイオフィルム読み取り値との抗菌干渉を示した。
【0205】
カプサイシンは、試験したいずれの用量でもバイオフィルム形成の減少を示さなかった。125μg/ml用量は、依然としてバイオフィルム読み取り値との抗菌干渉を示した。
【0206】
フェニルカプサシン類似体aは、2μg/ml用量で控えめなバイオフィルム形成阻害活性を示した。化合物b及びcはバイオフィルム形成阻害活性を示さなかった。
【0207】
先のアッセイと同様に、30℃で対照によって形成されたバイオマスはバイオフィルム試験に十分であったが、37℃でのバイオフィルムは約OD 2.6であり、バイオフィルム減少の定量化には不十分であると判断された。
【0208】
対照は、3%DMSO水溶液担体ブランクを含むLB中での細菌増殖を表す。
【0209】
示されている値は、OD 595nm(SD+/-0.66)での三連アッセイの平均である。
【0210】
異なる文字が続く値は、テューキー検定によって5%の確率で異なる(P<0.05)。
【0211】
考察/結論:
このバイオフィルム形成阻害アッセイにおいて、フェニルカプサイシンは、32μg/ml、8μg/ml及び新しいより低い2μg/mlの濃度でATCC(登録商標)BAA1714(商標)細菌におけるバイオフィルム形成の良好な阻害剤であることが再び示されている。
【0212】
試験した3つのフェニルカプサイシン類似体のうちで、aのみが、2μg/ml用量でのフェニルカプサイシンの活性の33%に近い、いくらかの控えめなバイオフィルム形成阻害活性を示した。この結果は、フェニルカプサイシン構造によるバイオフィルム阻害のQSARモデルを開発するために使用することができる。
【0213】
結果は、種々のカプサイシンが、様々な細菌の病原性を低下させ、リーキーガット症候群などのGI炎症状態の改善を示す可能性がある亜致死抗菌用量で、新規の予想外の作用機序を有することを示している。
【国際調査報告】