(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-14
(54)【発明の名称】電界放出カソードを形成するための方法
(51)【国際特許分類】
H01J 9/02 20060101AFI20231207BHJP
C08L 101/12 20060101ALI20231207BHJP
C08K 3/04 20060101ALI20231207BHJP
C08L 65/00 20060101ALI20231207BHJP
C08L 25/18 20060101ALI20231207BHJP
C08K 3/22 20060101ALI20231207BHJP
H01J 1/304 20060101ALI20231207BHJP
【FI】
H01J9/02 B
C08L101/12
C08K3/04
C08L65/00
C08L25/18
C08K3/22
H01J1/304
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023528967
(86)(22)【出願日】2021-11-16
(85)【翻訳文提出日】2023-07-14
(86)【国際出願番号】 IB2021060611
(87)【国際公開番号】W WO2022106996
(87)【国際公開日】2022-05-27
(32)【優先日】2020-11-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523115368
【氏名又は名称】エヌシーエックス コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】セン,チェン
【テーマコード(参考)】
4J002
5C227
【Fターム(参考)】
4J002BC12X
4J002CE00W
4J002DA016
4J002DE097
4J002DE107
4J002DE137
4J002DE147
4J002DJ017
4J002FD116
4J002FD207
4J002GF00
4J002GQ00
4J002HA06
5C227AA02
5C227AA03
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5C227AA07
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5C227AB09
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5C227HH62
5C227HH63
5C227HH69
5C227HH84
(57)【要約】
電界放出カソードを作製するための方法であって、電界放出カソードは、それと係合された電界放出材料層を有する基板を含み、電界放出材料は、カーボンナノチューブ材料および金属酸化物を組み込む、方法。電界放出材料は、電界放出カソードおよびそのようなカソードを実装する電界放出カソード装置の電界放出特性を改善するために、ゾルゲルプロセスを介して生産される。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電界放出カソードを形成する方法であって、
ベース混合物を形成するために特定の比率で複数のカーボンナノチューブと溶液を混合することであって、前記溶液は、液体媒体中に水に安定な導電性ポリマーを含む、混合することと、
1W/cm
2超の出力でおよび20~50kHzの周波数で超音波分散プロセスに前記ベース混合物を呈することと、
電界放出材料前駆体を形成するために前記ベース混合物に金属酸化物ゾル溶液を導入することと、
前記電界放出材料前駆体の安定な溶液を形成するために1W/cm
2未満の出力でおよび50kHz超の周波数で超音波分散プロセスに前記電界放出材料前駆体を呈することと、
最終電界放出材料前駆体として最終ゾル溶液を形成するために前記電界放出材料前駆体の前記安定な溶液中に極性添加剤を導入することと、
基板の少なくとも一部の上に前記最終電界放出材料前駆体の層を堆積させることと、
前記最終電界放出材料前駆体の前記層が基板上に均一なゲル層を形成するように大気下でまたは真空下で30℃~150℃の温度にて前記最終電界放出材料前駆体の前記層および前記基板を乾燥させることと、
前記ゲル層が電界放出材料を形成するように真空下で500℃~1000℃の温度にて前記ゲル層および前記基板をアニールすることと、
前記電界放出カソードを形成するために前記電界放出材料を活性化すること
を含む、方法。
【請求項2】
前記複数のカーボンナノチューブと前記溶液を混合することは、前記複数のカーボンナノチューブとポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)-ポリ(スチレンスルホン酸)(PEDOT:PSS)ポリマーおよび前記液体媒体を含む前記溶液を混合することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記複数のカーボンナノチューブと前記溶液を混合することは、カーボンナノチューブ対PEDOT:PSSポリマー溶液の前記特定の比率が重量で10:1~1:10であるように前記複数のカーボンナノチューブと前記PEDOT:PSS溶液を混合することを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記複数のカーボンナノチューブと前記溶液を混合することは、前記溶液の前記液体媒体が水を含んで、前記複数のカーボンナノチューブと前記溶液を混合することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記基板上に前記最終電界放出材料前駆体の前記層を堆積させることは、浸漬コーティング、スピンコーティング、エアナイフコーティング、グラビアコーティング、スロットダイコーティング、インクジェット印刷、スプレーコーティング、メイヤーバーコーティング、リソグラフィコーティング、フレキソ印刷コーティング、またはそれらの組み合わせを介して前記基板上に前記層を堆積させることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記ベース混合物に前記金属酸化物ゾル溶液を導入することは、酸化アルミニウム(Al
2O
3)、二酸化ケイ素(SiO
2)、二酸化チタン(TiO
2)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化マグネシウム(MgO)、酸化バリウム(BaO)、二酸化鉛(PbO
2)、二酸化ジルコニウム(ZrO
2)、二酸化モリブデン(MoO
2)、酸化銅(CuO)、五酸化バナジウム(V
2O
5)、二酸化スズ(SnO
2)、酸化インジウムスズ(ITO)、酸化インジウム亜鉛(IZO)、および酸化アルミニウム亜鉛(AZO)、またはそれらの組み合わせからなる群から選択される前記金属酸化物ゾル溶液を導入することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記安定な溶液中に前記極性添加剤を導入することは、前記安定な溶液中に、アルコール、ポリオール、エチレングリコール、グリセロール、メソエリスリトール、キシリトール、およびD-ソルビトール、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルスルホン(DMSO
2)、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、イオン液体、またはそれらの組み合わせからなる群から選択される、前記極性添加剤を導入することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記基板上に前記最終電界放出材料前駆体の前記層を堆積させることは、金属、ステンレス鋼、合金、導電性ガラス、またはセラミックを含む前記基板上に前記最終電界放出材料前駆体の前記層を堆積させることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記電界放出材料の層を活性化することは、
前記電界放出材料の表面に接着テープを適用することと、
前記表面から前記接着テープを除去すること、
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記電界放出材料の層を活性化することは、
前記電界放出材料の表面に硬化性接着剤を適用することと、
前記接着剤を硬化させかつ接着剤フィルムへと前記接着剤を形成するために熱源または紫外線に前記接着剤を曝露することと、
前記表面から前記接着剤フィルムを除去すること、
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
電界放出材料前駆体を形成する方法であって、
液体媒体中に複数のカーボンナノチューブを導入することと、
前記複数のカーボンナノチューブを含む前記液体媒体中に水に安定な導電性ポリマーを導入することであって、前記複数のカーボンナノチューブは、前記液体媒体と前記ポリマーを含む溶液に対して特定の比率で存在する、導入することと、
ベース混合物を形成するために1W/cm
2超の出力でおよび20~50kHzの周波数で超音波分散プロセスを介して前記液体媒体中の前記複数のカーボンナノチューブと前記水に安定な導電性ポリマーを混合することと、
前記ベース混合物中に金属酸化物ゾル溶液を導入することと、
電界放出材料前駆体の安定な溶液を形成するために1W/cm
2未満の出力でおよび50kHz超の周波数で超音波分散プロセスに前記金属酸化物ゾル溶液を含む前記ベース混合物を呈することと、
最終電界放出材料前駆体を形成するために前記電界放出材料前駆体の前記安定な溶液中に極性添加剤を導入すること、
を含む、方法。
【請求項12】
前記液体媒体中に前記複数のカーボンナノチューブを導入することは、水中に前記複数のカーボンナノチューブを導入することを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記水に安定な導電性ポリマーを導入することは、前記液体媒体中にポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)-ポリ(スチレンスルホン酸)(PEDOT:PSS)ポリマーを導入することを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記複数のカーボンナノチューブと前記溶液を混合することは、カーボンナノチューブ対PEDOT:PSS溶液の前記特定の比率が重量で10:1~1:10であるように前記複数のカーボンナノチューブと前記PEDOT:PSS溶液を混合することを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記ベース混合物に前記金属酸化物ゾル溶液を導入することは、酸化アルミニウム(Al
2O
3)、二酸化ケイ素(SiO
2)、二酸化チタン(TiO
2)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化マグネシウム(MgO)、酸化バリウム(BaO)、二酸化鉛(PbO
2)、二酸化ジルコニウム(ZrO
2)、二酸化モリブデン(MoO
2)、酸化銅(CuO)、五酸化バナジウム(V
2O
5)、二酸化スズ(SnO
2)、酸化インジウムスズ(ITO)、酸化インジウム亜鉛(IZO)、AZO化合物、またはそれらの組み合わせからなる群から選択される前記金属酸化物ゾル溶液を導入することを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項16】
前記安定な溶液中に前記極性添加剤を導入することは、前記安定な溶液中に、アルコール、ポリオール、エチレングリコール、グリセロール、メソエリスリトール、キシリトール、およびD-ソルビトール、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルスルホン(DMSO
2)、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、イオン液体、またはそれらの組み合わせからなる群から選択される前記極性添加剤を導入することを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項17】
電界放出カソードを形成する方法であって、
基板の少なくとも一部の上に請求項11に記載の最終電界放出材料前駆体を堆積させることと、
前記最終電界放出材料前駆体が基板上に層を形成するように大気下でまたは真空下で30℃~150℃の温度にて前記最終電界放出材料前駆体および前記基板を乾燥させることと、
前記層が電界放出材料を形成するように真空下で500℃~1000℃の温度にて前記層と前記基板をアニールすることと、
前記電界放出カソードを形成するために前記電界放出材料を活性化すること、
を含む、方法。
【請求項18】
前記基板の前記少なくとも一部の上に前記最終電界放出材料前駆体を堆積させることは、金属、ステンレス鋼、合金、導電性ガラス、またはセラミックを含む前記基板の前記少なくとも一部の上に前記最終電界放出材料前駆体を堆積させることを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記基板の前記少なくとも一部の上に前記最終電界放出材料前駆体を堆積させることは、浸漬コーティング、スピンコーティング、エアナイフコーティング、グラビアコーティング、スロットダイコーティング、インクジェット印刷、スプレーコーティング、メイヤーバーコーティング、リソグラフィコーティング、フレキソ印刷コーティング、またはそれらの組み合わせを介して前記基板の前記少なくとも一部の上に前記最終電界放出材料前駆体を堆積させることを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記電界放出材料を活性化することは、
前記電界放出材料の表面に接着テープを適用することと、
前記電界放出材料から前記接着テープを除去すること、
を含む、請求項17に記載の方法。
【請求項21】
前記電界放出材料を活性化することは、
前記電界放出材料の表面に硬化性接着剤を適用することと、
前記接着剤を硬化させかつ接着剤フィルムへと前記接着剤を形成するために熱源または紫外線に前記接着剤を曝露することと、
前記表面から前記接着剤フィルムを除去すること、
を含む、請求項17に記載の方法。
【請求項22】
請求項17~21のいずれか一項に従い作製された電界放出カソードを含む電界放出カソード装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
開示の分野
本出願は、電界放出カソード装置を作製する方法、より具体的には、カソードおよびそのようなカソードを実装する電界放出カソード装置の電界放出特性を改善するために、ゾルゲルプロセスを利用して、カーボンナノチューブおよび金属酸化物を組み込む電界放出カソードを形成する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
関連技術の説明
電界放出カソード装置は概して、カソード基板(通常、合金、導電性ガラス、金属化セラミック、ドープシリコンなどの金属または他の導電性材料で構成される)、その基板上に配置される電界放出材料(例えば、ナノチューブ、ナノワイヤ、グラフェン)の層、および必要に応じて、基板と電界放出材料の間に配置される接着材料の追加の層を含む。電界放出カソード装置のいくつかの典型的な用途としては、例えば、真空環境で動作可能な電子装置、電界放出ディスプレイ、およびX線管が挙げられる。
【0003】
カーボンナノチューブは、冷電界放出カソードの作製において使用され得る。しかしながら、カーボンナノチューブは典型的には、良好に分散せず、かつ/または現在の電気泳動プロセスの間安定ではなく、カソード表面上のエミッタの乏しい均一性およびカソードの大きなバッチ間変動をもたらす。さらに、電気泳動堆積法によって作られるカソードは概して、電気泳動堆積プロセスに使用される懸濁液中の成分の濃度変化のため、バッチにより異なる。これは、大規模工業生産プロセスにとって大きな欠点である。
【0004】
さらに、あるプロセスは、マトリックス粒子を含むより均質な層材料前駆体を作ることによって、カソード表面上のエミッタの均一性を改善しようと試みている。層材料前駆体に使用される粒子は、幅広いサイズ分布(例えば、300ナノメートル~3マイクロメートル)により大きさが均一ではないため、アニールおよび活性化のステップ後に、層の表面粗さが高く、カソードの表面全体にわたって異なる高さレベルの幅広いエミッタ分布をもたらす。より低いレベルのものは電気的に遮蔽され電子を効果的に放出できないため、最も高いレベルのそれらのエミッタのみが、電子の放出に寄与できる。さらに、非固着の(loose)粒子は、より低いレベルのままであり、活性化ステップで完全に除去できず、低い放出電流、高いターンオン電圧、短い放出寿命、および大きいバッチ間変動などの、限られた放出特性をもたらす。
【0005】
したがって、電界放出マトリックス材料の生産を改善して高い均一性および低いバッチ間変動でカソード表面上に分布した高密度のエミッタを有する電界放出カソードを得、それにより放出電流、ターンオン電圧、および放出寿命などの、カソードの電界放出特性を改善するためのプロセスの必要性が存在する。
【発明の概要】
【0006】
上記のおよび他の必要性は、本開示の態様によって満たされ、それは、非限定的に、以下の例示的実施形態、および1つの特定の態様ではゾルゲルプロセスを使用することによって表面粗さの低い電界放出カソードを形成する方法を含み、方法は、複数のカーボンナノチューブと、水に安定な導電性ポリマー(例えば、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)-ポリ(スチレンスルホン酸))を含む水溶液を、カーボンナノチューブ対ポリマー溶液の特定の比率(例えば、重量で約1:10~約10:1)で混合してベース混合物を形成することと、ベース混合物を強力な超音波分散法(例えば、1W/cm2超の出力および約20~50kHzの周波数)に呈することと、金属酸化物ゾル溶液をベース混合物に導入して電界放出材料前駆体(すなわち、調整ベース混合物)を形成することと、電界放出材料前駆体を穏やかな超音波分散法(例えば、1W/cm2未満の出力および50kHz超の周波数)に呈して電界放出材料前駆体の安定な溶液を形成することと、極性添加剤を電界放出材料前駆体の安定な溶液中に導入して最終電界放出材料前駆体として最終ゾル溶液を形成することと、基板の少なくとも一部の上に最終電界放出材料の層を堆積させることと、層および基板を約30℃~約150℃の温度で大気下または真空下で乾燥させることと、層および基板を約500℃~約1000℃の温度で真空下でアニールして電界放出材料を形成することと、電界放出材料を活性化して電界放出カソードを形成することによって電界放出材料を形成することを含む。
【0007】
別の例示的態様は、電界放出材料前駆体を形成する方法を提供し、方法は、複数のカーボンナノチューブと、水に安定な導電性ポリマー(例えば、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)-ポリ(スチレンスルホン酸))を含む溶液を、液体媒体にカーボンナノチューブ対ポリマー溶液の特定の比率(例えば、重量で約1:10~約10:1)で導入することと、複数のカーボンナノチューブおよび溶液を強力な超音波分散法(例えば、1W/cm2超の出力および約20~50kHzの周波数)を介して混合してベース混合物を形成することと、金属酸化物ゾル溶液をベース混合物中に導入して調整ベース混合物を形成することと、金属酸化物ゾル溶液を含む調整ベース混合物を穏やかな超音波分散法(例えば、1W/cm2未満の出力および50kHz超の周波数)に呈して電界放出材料前駆体の安定な溶液を形成することと、極性添加剤を電界放出材料前駆体の安定な溶液中に導入して最終電界放出材料前駆体として最終ゾル溶液を形成することを含む。
【0008】
別の例示的態様は、電界放出カソードを形成する方法を提供し、方法は、基板の少なくとも一部の上に電界放出材料前駆体(例えば、最終電界放出材料前駆体)を堆積させることと、最終電界放出材料前駆体が層を基板上に形成するように電界放出材料および基板を約30℃~約150℃の温度で大気下または真空下で乾燥させることと、層が電界放出材料を形成するように最終電界放出材料前駆体層および基板を約500℃~約1000℃の温度で真空下でアニールすることと、電界放出材料を活性化して電界放出カソードを形成することを含む。これらの方法は、大量生産プロセスにおける減少されたカソードのバッチ間変動を提供する。
【0009】
さらに別の例示的態様は、電界放出カソード装置を提供し、電界放出カソードは前述の態様のいずれか1つに従って作製されてカソード装置を得る。カソードは、カソード表面上の改善された電界エミッタの密度および均一性を有し、それにより、高い放出電流、低いターンオン電圧、およびより長い放出寿命などの、改善された電界放出特性を有するカソード装置をもたらす。
【0010】
本開示はしたがって、以下の例示的実施形態を、非限定的に含む:
【0011】
例示的実施形態1:電界放出カソードを形成する方法であって、ベース混合物を形成するために特定の比率で複数のカーボンナノチューブおよび溶液を混合することであって、溶液は、液体媒体中に水に安定な導電性ポリマーを含む、混合することと、1W/cm2超の出力および20~50kHzの周波数で超音波分散プロセスにベース混合物を呈することと、金属酸化物ゾル溶液をベース混合物に導入して電界放出材料前駆体を形成することと、1W/cm2未満の出力および50kHz超の周波数で超音波分散プロセスに電界放出材料前駆体を呈して電界放出材料前駆体の安定な溶液を形成することと、電界放出材料前駆体の安定な溶液中に極性添加剤を導入して最終電界放出材料前駆体として最終ゾル溶液を形成することと、基板の少なくとも一部の上に最終電界放出材料前駆体の層を堆積させることと、最終電界放出材料前駆体の層が均一なゲル層を基板上に形成するように30℃~150℃の温度で大気下または真空下で最終電界放出材料前駆体の層および基板を乾燥させることと、ゲル層が電界放出材料を形成するように500℃~1000℃の温度で真空下でゲル層および基板をアニールすることと、電界放出材料を活性化して電界放出カソードを形成することを含む、方法。
【0012】
例示的実施形態2:複数のカーボンナノチューブおよび溶液を混合することは、複数のカーボンナノチューブと、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)-ポリ(スチレンスルホン酸)(PEDOT:PSS)ポリマーおよび液体媒体を含む溶液を混合することを含む、いずれかの先行する例示的実施形態またはその組み合わせに記載の方法。
【0013】
例示的実施形態3:複数のカーボンナノチューブと溶液を混合することは、カーボンナノチューブ対PEDOT:PSSポリマー溶液の特定の比率が重量で10:1~1:10であるように、複数のカーボンナノチューブとPEDOT:PSS溶液を混合することを含む、いずれかの先行する例示的実施形態またはその組み合わせに記載の方法。
【0014】
例示的実施形態4:複数のカーボンナノチューブと溶液を混合することは、溶液の液体媒体が水を含んで、複数のカーボンナノチューブと溶液を混合することを含む、いずれかの先行する例示的実施形態またはその組み合わせに記載の方法。
【0015】
例示的実施形態5:基板に最終電界放出材料前駆体の層を堆積させることは、浸漬コーティング、スピンコーティング、エアナイフコーティング、グラビアコーティング、スロットダイコーティング、インクジェット印刷、スプレーコーティング、メイヤーバーコーティング、リソグラフィコーティング、フレキソ印刷コーティング、またはそれらの組み合わせを介して基板に層を堆積させることを含む、いずれかの先行する例示的実施形態またはその組み合わせに記載の方法。
【0016】
例示的実施形態6:ベース混合物に金属酸化物ゾル溶液を導入することは、酸化アルミニウム(Al2O3)、二酸化ケイ素(SiO2)、二酸化チタン(TiO2)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化マグネシウム(MgO)、酸化バリウム(BaO)、二酸化鉛(PbO2)、二酸化ジルコニウム(ZrO2)、二酸化モリブデン(MoO2)、酸化銅(CuO)、五酸化バナジウム(V2O5)、二酸化スズ(SnO2)、酸化インジウムスズ(ITO)、酸化インジウム亜鉛(IZO)、および酸化アルミニウム亜鉛(AZO)、またはそれらの組み合わせからなる群から選択される金属酸化物ゾル溶液を導入することを含む、いずれかの先行する例示的実施形態またはその組み合わせに記載の方法。
【0017】
例示的実施形態7:安定な溶液中に極性添加剤を導入することは、安定な溶液中にアルコール、ポリオール、エチレングリコール、グリセロール、メソエリスリトール、キシリトール、およびD-ソルビトール、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルスルホン(DMSO2)、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、イオン液体、またはそれらの組み合わせからなる群から選択される極性添加剤を導入することを含む、いずれかの先行する例示的実施形態またはその組み合わせに記載の方法。
【0018】
例示的実施形態8:基板上に最終電界放出材料前駆体の層を堆積させることは、金属、ステンレス鋼、合金、導電性ガラス、またはセラミックを含む基板上に最終電界放出材料前駆体の層を堆積させることを含む、いずれかの先行する例示的実施形態またはその組み合わせに記載の方法。
【0019】
例示的実施形態9:電界放出材料の層を活性化することは、電界放出材料の表面に接着テープを適用することと、表面から接着テープを除去することを含む、いずれかの先行する例示的実施形態またはその組み合わせに記載の方法。
【0020】
例示的実施形態10:電界放出材料の層を活性化することは、電界放出材料の表面に硬化性接着剤を適用することと、熱源または紫外線に接着剤を曝露して接着剤を硬化させ接着剤フィルムへと接着剤を形成することと、表面から接着剤フィルムを除去することを含む、いずれかの先行する例示的実施形態またはその組み合わせに記載の方法。
【0021】
例示的実施形態11:電界放出材料前駆体を形成する方法であって、液体媒体中に複数のカーボンナノチューブを導入することと、複数のカーボンナノチューブを含む液体媒体中に水に安定な導電性ポリマーを導入することであって、複数のカーボンナノチューブは、液体媒体とポリマーとを含む溶液に対して特定の比率で存在する、導入することと、1W/cm2超の出力および20~50kHzの周波数で超音波分散プロセスを介して液体媒体中の複数のカーボンナノチューブおよび水に安定な導電性ポリマーを混合してベース混合物を形成することと、ベース混合物中に金属酸化物ゾル溶液を導入することと、1W/cm2未満の出力および50kHz超で周波数の超音波分散プロセスに金属酸化物ゾル溶液を含むベース混合物を呈して電界放出材料前駆体の安定な溶液を形成することと、電界放出材料前駆体の安定な溶液中に極性添加剤を導入して最終電界放出材料前駆体を形成することを含む、方法。
【0022】
例示的実施形態12:液体媒体中に複数のカーボンナノチューブを導入することは、水中に複数のカーボンナノチューブを導入することを含む、いずれかの先行する例示的実施形態またはその組み合わせに記載の方法。
【0023】
例示的実施形態13:水に安定な導電性ポリマーを導入することは、液体媒体中にポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)-ポリ(スチレンスルホン酸)(PEDOT:PSS)ポリマーを導入することを含む、いずれかの先行する例示的実施形態またはその組み合わせに記載の方法。
【0024】
例示的実施形態14:複数のカーボンナノチューブと溶液を混合することは、カーボンナノチューブ対PEDOT:PSS溶液の特定の比率が重量で10:1~1:10であるように、複数のカーボンナノチューブとPEDOT:PSS溶液を混合することを含む、いずれかの先行する例示的実施形態またはその組み合わせに記載の方法。
【0025】
例示的実施形態15:ベース混合物に金属酸化物ゾル溶液を導入することは、酸化アルミニウム(Al2O3)、二酸化ケイ素(SiO2)、二酸化チタン(TiO2)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化マグネシウム(MgO)、酸化バリウム(BaO)、二酸化鉛(PbO2)、二酸化ジルコニウム(ZrO2)、二酸化モリブデン(MoO2)、酸化銅(CuO)、五酸化バナジウム(V2O5)、二酸化スズ(SnO2)、酸化インジウムスズ(ITO)、酸化インジウム亜鉛(IZO)、AZO化合物、またはそれらの組み合わせからなる群から選択される金属酸化物ゾル溶液を導入することを含む、いずれかの先行する例示的実施形態またはその組み合わせに記載の方法。
【0026】
例示的実施形態16:安定な溶液中に極性添加剤を導入することは、安定な溶液中にアルコール、ポリオール、エチレングリコール、グリセロール、メソエリスリトール、キシリトール、およびD-ソルビトール、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルスルホン(DMSO2)、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、イオン液体、またはそれらの組み合わせからなる群から選択される極性添加剤を導入することを含む、いずれかの先行する例示的実施形態またはその組み合わせに記載の方法。
【0027】
例示的実施形態17:電界放出カソードを形成する方法であって、基板の少なくとも一部の上に、いずれかの先行する例示的実施形態またはその組み合わせに記載の方法による最終電界放出材料前駆体を堆積させることと、最終電界放出材料前駆体が層を基板上に形成するように30℃~150℃の温度で大気下または真空下で最終電界放出材料前駆体および基板を乾燥させることと、層が電界放出材料を形成するように500℃~1000℃の温度で真空下で層および基板をアニールすることと、電界放出材料を活性化して電界放出カソードを形成することを含む、方法。
【0028】
例示的実施形態18:基板の少なくとも一部の上に最終電界放出材料前駆体を堆積させることは、金属、ステンレス鋼、合金、導電性ガラス、またはセラミックを含む基板の少なくとも一部の上に最終電界放出材料前駆体を堆積させることを含む、いずれかの先行する例示的実施形態またはその組み合わせに記載の方法。
【0029】
例示的実施形態19:基板の少なくとも一部の上に最終電界放出材料前駆体を堆積させることは、浸漬コーティング、スピンコーティング、エアナイフコーティング、グラビアコーティング、スロットダイコーティング、インクジェット印刷、スプレーコーティング、メイヤーバーコーティング、リソグラフィコーティング、フレキソ印刷コーティング、またはそれらの組み合わせを介して基板の少なくとも一部の上に最終電界放出材料前駆体を堆積させることを含む、いずれかの先行する例示的実施形態またはその組み合わせに記載の方法。
【0030】
例示的実施形態20:電界放出材料を活性化することは、電界放出材料の表面に接着テープを適用することと、電界放出材料から接着テープを除去することを含む、いずれかの先行する例示的実施形態またはその組み合わせに記載の方法。
【0031】
例示的実施形態21:電界放出材料を活性化することは、電界放出材料の表面に硬化性接着剤を適用することと、熱源または紫外線に接着剤を曝露して接着剤を硬化させ接着剤フィルムへと接着剤を形成することと、表面から接着剤フィルムを除去することを含む、いずれかの先行する例示的実施形態またはその組み合わせに記載の方法。
【0032】
例示的実施形態22:いずれかの先行する例示的実施形態またはその組み合わせに記載の方法に従い作製された電界放出カソードを含む電界放出カソード装置。
【0033】
本開示のこれらのおよび他の特徴、態様、および利点は、以下で簡単に説明される添付の図面とともに以下の詳細な説明を読むことで明らかとなろう。本開示は、本開示に記載される2つ、3つ、4つのまたはそれより多い特徴または要素の任意の組み合わせを、そのような特徴または要素が、本明細書の特定の実施形態の説明において明示的に組み合わされるか、またはその他の方法で記載されるかに関係なく、含む。本開示は、総合的に読まれることを意図され、それにより本開示のいずれかの別個の特徴または要素は、その態様および実施形態のいずれかにおいて、本開示の文脈上明白に別段の指示がない限り、意図される通りに、すなわち組み合わせ可能であると見なされるべきである。
【0034】
本明細書の概要は、本開示の基本的な理解を提供するために、単にいくつかの例示的態様を要約する目的で提供されることが理解されるであろう。したがって、上記の例示的態様は、単なる例であり、本開示の範囲または趣旨を狭めるものと決して解釈されるべきではないことが理解されるであろう。本開示の範囲は多くの潜在的態様を包含し、その一部は、本明細書で要約されたものに加えて、以下にさらに記載されることが理解されるであろう。さらに、他の態様、および本明細書に開示されるそのような態様の利点は、記載される態様の原理を例として示す添付の図面と併せて以下の詳細な説明から明らかとなろう。
【0035】
このように、本開示を一般的な用語で記載してきたが、ここで、必ずしも正確な縮尺率ではない、添付の図面を参照する。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【
図1】本開示の1つ以上の態様に係る、電界放出カソードおよびカソード基板と係合された電界放出材料堆積層の性質の例を概略的に示す。
【
図2】本開示の1つ以上の態様に係る、電界放出材料前駆体を形成する方法の一例を示す。
【
図3】本開示の1つ以上の態様に係る、電界放出カソードを形成する方法の一例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0037】
開示の詳細な説明
本開示はここで、添付の図面を参照しながら以下により完全に記載され、本開示の全てではないが一部の態様が示される。実際に、本開示は、多くの異なる形態で具現化されてよく、本明細書に記載される態様に限定されると解釈されるべきではなく、むしろこれらの態様は、本開示が適用される法的要件を満たすように提供される。同様の符号は、全体を通して同様の要素を指す。
【0038】
図1は、基板102、および基板102上に配置される電界放出材料104の層、および必要に応じて、基板102と電界放出材料104の間に配置される接着材料の追加の層(図示せず)を含む、電界放出カソード100の一例を示す。基板102は、固体金属もしくは合金(例えば、ステンレス鋼、ドープシリコン)などの金属材料、導電性ガラス(例えば、酸化インジウムスズ(ITO)コーティングガラスもしくは表面上に導電性コーティングを有する他の溶融ガラス)、または導電性セラミック(例えば、酸化アルミニウム、酸化ベリリウム、および窒化アルミニウムなどの金属化セラミック)などの、導電性材料で作られ得る。電界放出材料104は、マトリックス材料内に配置される複数のカーボンナノチューブ(CNT)を含む。典型的なCNT/マトリックス電界放出材料は、高い表面粗さ、例えば、カソードの表面にわたって異なる高さの層に配置されるエミッタ、およびより低い高さの層に配置されるエミッタの混入を含む表面を有し、なぜなら多くの非固着粒子は、活性化プロセスの間にそこから除去されないためである。
【0039】
ゾルゲルプロセスを介して電界放出材料104’の層を形成することおよび金属酸化物ゾル溶液を組み込むことにより、ナノメートルの複合構造中のCNT/PEDOT:PSS/金属酸化物マトリックスのゲル層をもたらし、これは、テクスチャが均一であり、基板102の表面上に形成される。乾燥すること、アニールすること、および活性化の後に、電界放出材料層の粗さがより少なく、高エミッタ密度、高放出電流、低ターンオン電圧、および長寿命の特性を有する、電界放出カソードが得られる。特に、マトリックス粒子の代わりに金属酸化物ゾル溶液を組み込むことは、基板表面上に堆積され得る均質な前駆体溶液をもたらす。基板102上への電界放出材料の堆積は、本明細書に開示されるコーティングプロセスのいずれかを介して行われ得る。活性化後に、カソードの表面は、低い表面粗さを有する(例えば、エミッタの高さのばらつきがより少なく、非固着粒子の大部分が除去されている)。2つの層(高い粗さの層104および低い粗さの層104’)が、比較のために
図1で示される。
【0040】
したがって、カソードは、エミッタの高い密度および均一性だけでなく、工業用途のための大量生産の要件を満たすことができる低いバッチ間変動を備える改善された電界放出特性も有する。
図2は、カーボンナノチューブおよび金属酸化物を含む電界放出材料前駆体を形成する方法200を示す。方法の一態様では、水などの液体媒体が提供され(ステップ210)、その中に、複数のカーボンナノチューブおよびポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)-ポリ(スチレンスルホン酸)(PEDOT:PSS)ポリマーが、例えば、重量で約10:1~約1:10の範囲の、液体媒体およびポリマーを含む溶液に対する複数のカーボンナノチューブの比率などの、特定の比率で導入される(ステップ220)。いくつかの実施形態では、水に安定な導電性ポリマーを含む他の液体媒体が、使用され得る。ステップ230で、複数のカーボンナノチューブおよびPEDOT:PSSの溶液は、強力な超音波分散プロセスを介して混合されてベース混合物を形成する。混合は、約1分~約30分の範囲の期間、低周波数(20~50kHz)および高出力(>1W/cm
2)で行われ得る。次に、金属酸化物ゾル溶液が、ベース混合物中に導入されて(ステップ240)調整ベース混合物を形成する。調整ベース混合物(すなわち、金属酸化物ゾルを含む)は、穏やかな超音波分散プロセスを受けて、電界放出材料前駆体の安定な溶液(すなわち、均質な前駆体ゾル)を形成する(ステップ250)。穏やかな超音波分散プロセスは、高周波数(>50kHz)低出力(<1W/cm
2)で、約30分~約24時間の範囲の期間行われ得る。ステップ260で、極性添加剤が、安定な溶液に導入されて、最終電界放出材料前駆体として最終ゾル溶液を形成する。様々な実施形態では、最終電界放出材料前駆体は、カーボンナノチューブ、PEDOT:PSS、金属酸化物ゾル、および1つ以上の添加剤を含み得る。
【0041】
具体的な組成および成分の量は、特定の用途に適するように変化し得る。例えば、いくつかの実施形態では、金属酸化物ゾル溶液は、例えば、酸化アルミニウム(Al2O3)、二酸化ケイ素(SiO2)、二酸化チタン(TiO2)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化マグネシウム(MgO)、酸化バリウム(BaO)、二酸化鉛(PbO2)、二酸化ジルコニウム(ZrO2)、二酸化モリブデン(MoO2)、酸化銅(CuO)、五酸化バナジウム(V2O5)、二酸化スズ(SnO2)、酸化インジウムスズ(ITO)、酸化インジウム亜鉛(IZO)、および酸化アルミニウム亜鉛(AZO)を含む。金属酸化物ゾルは、総液体媒体の約0.1wt%~約20wt%でベース混合物中に分散され得る。様々な実施形態では、極性添加剤は、アルコール、エチレングリコール、グリセロール、メソエリスリトール、キシリトール、およびD-ソルビトールなどのポリオール、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルスルホン(DMSO2)、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、イオン液体、またはそれらの組み合わせの1つ以上を含み得る。極性添加剤の濃度は、総液体媒体の約0.1wt%~約20wt%であり得る。カーボンナノチューブは、化学気相成長プロセス、レーザーアブレーションプロセス、および/またはアーク放電法によって製造され得る。
【0042】
最終電界放出材料前駆体が安定なゾル溶液中で作り出されたら、最終電界放出材料前駆体は、基板の少なくとも一部の上に堆積され得る(ステップ270)。最終電界放出材料前駆体の層は、浸漬コーティング、スピンコーティング、エアナイフコーティング、グラビアコーティング、スロットダイコーティング、インクジェット印刷、スプレーコーティング、メイヤーバーコーティング、リソグラフィコーティング、フレキソ印刷コーティング、またはそれらの組み合わせを介して基板上に堆積される。基板は、金属、ステンレス鋼、合金、導電性ガラス、またはセラミックを含み得る。基板は、例えば、ロボット材料ハンドリングシステムを介して、またはユーザにより手動で、適切な設備に提供され得る。基板は、その上に最終電界放出材料前駆体の層を受け取るように構成される。
【0043】
ゾル層は、基板上への堆積後に、乾燥、アニール、および活性化プロセスなどの1つ以上の他のプロセスに供されてよい。乾燥後に、CNT/PEDOT:PSS/金属酸化物マトリックス材料の均一なゲル層が、基板表面上のゾル層から形成され、それは次いでアニールされる。電界放出カソードは、基板上の堆積層を活性化させて電界放出材料を形成した後に形成される。
【0044】
図3は、カーボンナノチューブおよび金属酸化物を含む電界放出材料を使用して電界放出カソードを形成する方法300を示す。方法の一態様では、上に記載されたものなどの基板が、堆積プロセスを行うために構成された設備に提供される(ステップ310)。方法は、電界放出材料前駆体から電界放出材料を形成すること(ステップ320)をさらに含む。場合によっては、電界放出材料は、基板が提供される前に電界放出材料前駆体として、例えば、本明細書に開示される最終電界放出材料前駆体として作り出される。最終電界放出材料前駆体の層が、基板の少なくとも一部の上に堆積される(ステップ330)。基板は、ステンレス鋼などの金属、合金、導電性ガラス、または金属化セラミックで作られ得る。基板は、例えば、ロボット材料ハンドリングシステムを介して、またはユーザにより手動で、適切な設備に提供され得る。
【0045】
基板およびその上に堆積された最終電界放出材料前駆体の層は次いで、乾燥プロセス(ステップ340)およびアニールプロセス(ステップ350)を受けて、電界放出材料を形成する。乾燥プロセスは、大気下または真空下で約30℃~約150℃の温度にて行われ得る。アニールプロセスは、真空下で約500℃~約1000℃の温度にて行われ得る。ステップ360で、電界放出材料の層は活性化されて、電界放出カソードを得る。活性化は、電界放出材料の層の表面に接着剤(例えば、接着テープまたは硬化性接着材料)を適用すること、および電界放出材料の層から接着剤を除去することによって行われ得る。
【0046】
ステップ370は、電界放出材料前駆体を形成する方法の一例を示す。ステップ370で、複数のカーボンナノチューブおよびPEDOT:PSSポリマーは、液体媒体およびポリマーを含む溶液に対する複数のカーボンナノチューブの特定の比率(例えば、重量で約1:10~約10:1)で、水などの液体媒体中に混合される。成分は、上に記載されたように、強力な超音波分散プロセスを介して混合されてベース混合物を形成できる。次に、金属酸化物ゾル溶液が、ベース混合物中に分散される。調整ベース混合物は、上に記載されたように、穏やかな超音波分散プロセスを受けて、電界放出材料前駆体の安定な懸濁液を形成できる。次に、極性添加剤が、安定な溶液に加えられて、最終電界放出材料前駆体として最終ゾル溶液を形成する。様々な実施形態では、最終電界放出材料前駆体は、カーボンナノチューブ、PEDOT:PSS、金属酸化物ゾル、および1つ以上の添加剤を含み得る。
【0047】
具体的な組成および成分の量は、特定の用途に適するように変化し得る。例えば、いくつかの実施形態では、金属酸化物ゾル溶液は、例えば、酸化アルミニウム(Al2O3)、二酸化ケイ素(SiO2)、二酸化チタン(TiO2)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化マグネシウム(MgO)、酸化バリウム(BaO)、二酸化鉛(PbO2)、二酸化ジルコニウム(ZrO2)、二酸化モリブデン(MoO2)、酸化銅(CuO)、五酸化バナジウム(V2O5)、二酸化スズ(SnO2)、酸化インジウムスズ(ITO)、酸化インジウム亜鉛(IZO)、AZO化合物、またはそれらの組み合わせを含む。金属酸化物ゾルは、総液体媒体の約0.1wt%~約20wt%でベース混合物中に分散され得る。様々な実施形態では、極性添加剤は、アルコール、エチレングリコール、グリセロール、メソエリスリトール、キシリトール、およびD-ソルビトールなどのポリオール、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルスルホン(DMSO2)、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、イオン液体、またはそれらの組み合わせの1つ以上を含み得る。極性添加剤の濃度は、総液体媒体の約0.1wt%~約20wt%であり得る。カーボンナノチューブは、化学気相成長プロセス、レーザーアブレーションプロセス、および/またはアーク放電法によって製造され得る。
【0048】
前述の方法は、ナノメートルの複合構造のCNT/PEDOT:PSS/金属酸化物マトリックス材料の層を提供し、これは、基板の表面上に形成されるとテクスチャにおいて均一である。真空下での乾燥およびアニールの後に、得られた電界放出カソードは、活性化される。カソードの形成された電界放出材料層は、表面粗さが低く、高エミッタ密度、高放出電流、低ターンオン電圧、および長寿命の特性を有する。カソードのバッチ間変動は著しく減少され、これは、工業化された生産および用途にとって重要である。
【0049】
本明細書に記載された本発明の多くの修正および他の実施形態が、当業者には思い浮び、それに対しこれらの開示された実施形態は、前述の説明および関連する図面に提示された技術の利益を有して関係する。したがって、本発明の実施形態は開示された特定の実施形態に限定されず、修正および他の実施形態が本発明の範囲内に含まれるよう意図されることを理解すべきである。さらに、前述の説明および関連する図面は、要素および/または機能の特定の例示的組み合わせに関連する例示的実施形態を記載するが、要素および/または機能の異なる組み合わせが、本開示の範囲を逸脱することなく代替の実施形態によって提供され得ることを理解すべきである。この点で、例えば、上に明示的に記載されたものと異なる要素および/または機能の組み合わせも、本開示の範囲内であるように企図される。特定の用語が本明細書で採用されているが、それらは一般的かつ説明的な意味のみで使用され、限定を目的とするものではない。
【0050】
第1、第2などの用語が、様々なステップまたは計算を記載するために本明細書で使用され得るが、これらのステップまたは計算は、これらの用語によって限定されるべきではないことを理解すべきである。これらの用語は、ある操作または計算を別のものと区別するためにのみ使用される。例えば、本開示の範囲を逸脱することなく、第1の計算は第2の計算と呼ばれ得、同様に、第2のステップは第1のステップと呼ばれ得る。本明細書で使用される場合、「および/または」という用語および「/」記号は、関連して記載された項目の1つ以上のいずれかおよび全ての組み合わせを含む。
【0051】
本明細書で使用される場合、単数形の「1つの(a)」、「1つの(an)」、および「その(the)」は、文脈上明白に別段の指示がない限り、複数形も含むと意図される。「含む(comprises)」、「含んでいる(comprising)」、「含む(includes)」、および/または「含んでいる(including)」という用語は、本明細書で使用される場合、述べられた特徴、整数、ステップ、操作、要素、および/または構成要素の存在を指定するが、1つ以上の他の特徴、整数、ステップ、操作、要素、構成要素、および/またはそれらの群の存在または追加を除外しないことがさらに理解されるであろう。したがって、本明細書で使用される用語は、単に特定の実施形態を記載するためのものであり、限定することを意図するものではない。
【国際調査報告】