(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-14
(54)【発明の名称】クロム合金被膜付き原子燃料棒
(51)【国際特許分類】
G21C 3/06 20060101AFI20231207BHJP
G21C 3/07 20060101ALI20231207BHJP
【FI】
G21C3/06 200
G21C3/07
G21C3/06 300
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023530728
(86)(22)【出願日】2021-11-24
(85)【翻訳文提出日】2023-07-05
(86)【国際出願番号】 US2021072600
(87)【国際公開番号】W WO2022115863
(87)【国際公開日】2022-06-02
(32)【優先日】2020-11-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】501010395
【氏名又は名称】ウエスチングハウス・エレクトリック・カンパニー・エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100091568
【氏名又は名称】市位 嘉宏
(72)【発明者】
【氏名】ロバーツ、エルウィン
(72)【発明者】
【氏名】ライト、ジョナサン
(72)【発明者】
【氏名】マイアー、ベンジャミン、アール
(72)【発明者】
【氏名】ウォルターズ、ジョリエ
(72)【発明者】
【氏名】アドルノ・ロルペス、デニース
(72)【発明者】
【氏名】メッツガー、キャスリン、イー
(57)【要約】
原子燃料棒が開示されている。原子燃料棒は、基材と、基材に塗布されたクロム合金被膜層と、を含む。クロム合金被膜層は、クロム(Cr)と、イットリウム(Y)、ランタン(La)、トリウム(Th)、ジルコニウム(Zr)、チタン(Ti)、ハフニウム(Hf)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、バナジウム(V)、レニウム(Re)、ルテニウム(Ru)、コバルト(Co)、アルミニウム(Al)、炭化物、ホウ化物、金属間化合物、及びそれらの組み合わせからなる群から選択された元素又は化合物と、最大1500ppmの格子間元素とを含み、炭素(C)、酸素(O)、及び窒素(N)が各々、500ppm以下である。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
原子燃料棒であって、
基材と、
前記基材に塗布されたクロム合金被膜層と、を備え、前記クロム合金被膜層が、
クロム(Cr)と、
イットリウム(Y)、ランタン(La)、トリウム(Th)、ジルコニウム(Zr)、チタン(Ti)、ハフニウム(Hf)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、バナジウム(V)、レニウム(Re)、ルテニウム(Ru)、コバルト(Co)、アルミニウム(Al)、炭化物、ホウ化物、金属間化合物、及びそれらの組み合わせからなる群から選択された元素又は化合物と、
最大1500ppmの格子間元素とを含み、炭素(C)、酸素(O)、及び窒素(N)が各々、500ppm以下である、原子燃料棒。
【請求項2】
前記クロム合金被膜層が、
Crと、
最大2%のYと、
最大1500ppmの格子間元素とを含み、C、O、及びNが各々、500ppm以下である、請求項1に記載の原子燃料棒。
【請求項3】
前記クロム合金被膜層が、
Crと、
最大2%のYと、
最大1%のZrと、
最大1500ppmの格子間元素とを含み、C、O、及びNが各々、500ppm以下である、請求項1に記載の原子燃料棒。
【請求項4】
前記クロム合金被膜層が少なくとも2%の延性を有する、請求項1に記載の原子燃料棒。
【請求項5】
前記クロム合金被膜層が最大1200ppmの格子間元素を含み、C、O、及びNが各々、400ppm以下である、請求項1に記載の原子燃料棒。
【請求項6】
前記クロム合金被膜層が最大900ppmの格子間元素を含み、C、O、及びNが各々、300ppm以下である、請求項1に記載の原子燃料棒。
【請求項7】
前記クロム合金被膜層の厚さが最大25ミクロンである、請求項1に記載の原子燃料棒。
【請求項8】
前記基材が原子燃料を収容する被覆材である、請求項1に記載の原子燃料棒。
【請求項9】
前記被覆材が、ジルコニウム、ジルコニウム合金、又はセラミック複合材を含む、請求項8に記載の原子燃料棒。
【請求項10】
前記原子燃料がペレット形態である、請求項8に記載の原子燃料棒。
【請求項11】
前記ペレット形態の前記原子燃料が、二酸化ウラン(UO
2)、窒化ウラン(UN)、及び炭化ウラン(UC)からなる群から選択される、請求項10に記載の原子燃料棒。
【請求項12】
前記原子燃料棒が、軽水炉(LWR)、重水炉(HWR)、鉛高速炉(LFR)、ナトリウム高速炉、溶融塩炉、及びガス冷却炉からなる群から選択される炉で使用される、請求項1に記載の原子燃料棒。
【請求項13】
前記クロム合金被膜層が、物理的気相成長法、化学的方法、又はコールドスプレー法のうちの1つによって塗布されている、請求項1に記載の原子燃料棒。
【請求項14】
前記物理的気相成長法が、蒸着及びスパッタリングからなる群から選択される、請求項13に記載の原子燃料棒。
【請求項15】
前記物理的気相成長法が、陰極アーク蒸着、マグネトロンスパッタリング蒸着、及びパルスレーザー蒸着からなる群から選択される、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
原子燃料棒であって、
原子燃料を収容する被覆材と、
前記被覆材に塗布されたクロム合金被膜層と、を備え、前記クロム合金被膜層が、
Crと、
Yと、
Zrと、
最大1500ppmの格子間元素とを含み、C、O、及びNが各々、500ppm以下である、原子燃料棒。
【請求項17】
前記クロム合金被膜層が、
Crと、
最大0.5%のYと、
最大0.4%のZrと、
最大1500ppmの格子間元素とを含み、C、O、及びNが各々、500ppm以下である、請求項16に記載の原子燃料棒。
【請求項18】
前記クロム合金被膜層が最大1200ppmの格子間元素を含み、C、O、及びNが各々、400ppm以下である、請求項16に記載の原子燃料棒。
【請求項19】
前記クロム合金被膜層が最大900ppmの格子間元素を含み、C、O、及びNが各々、300ppm以下である、請求項16に記載の原子燃料棒。
【請求項20】
前記クロム合金被膜層が少なくとも2%の延性を有する、請求項16に記載の原子燃料棒。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
政府の支援
本発明は、契約第DE-NE0008824号に基づく政府の支援を受けて行われた。政府は、本発明に対して一定の権利を有する。
【0002】
関連出願 本出願は、2020年11月25日に出願された米国仮出願第63/118,097号の利益を主張し、その内容がその全体で参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0003】
本発明は、一般に、クロム合金被膜付き原子燃料棒、より具体的には、クロム合金被膜付き原子燃料被覆管材料に関する。
【発明の概要】
【0004】
様々な実施形態では、原子燃料棒が開示される。原子燃料棒は、基材と、基材に塗布されたクロム合金被膜層と、を含む。クロム合金被膜層は、クロム(Cr)と、イットリウム(Y)、ランタン(La)、トリウム(Th)、ジルコニウム(Zr)、チタン(Ti)、ハフニウム(Hf)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、バナジウム(V)、レニウム(Re)、ルテニウム(Ru)、コバルト(Co)、アルミニウム(Al)、炭化物、ホウ化物、金属間化合物、及びそれらの組み合わせからなる群から選択された元素又は化合物と、最大1500ppmの格子間元素とを含み、炭素(C)、酸素(O)、及び窒素(N)が各々、500ppm以下である。
【0005】
他の様々な実施形態では、原子燃料が開示される。原子燃料棒は、原子燃料を収容する被覆材と、被覆材に塗布されたクロム合金被膜層と、を含む。クロム合金被膜層は、Crと、Yと、Zrと、最大1500ppmの格子間元素とを含み、C、O、及びNが各々、500ppm以下である。
【図面の簡単な説明】
【0006】
本明細書に説明される実施形態の様々な特徴は、その利点とともに、以下の添付図面と併せて行われる以下の説明に従って理解され得る。
【0007】
【
図1】商用の純クロムの引張強度、圧縮強度、及び曲げ強度の温度依存性を示す。
【
図2】予変形された商用純クロムの応力-歪み曲線を示す。
【
図3】選択されたアニール済みクロム合金の延性を温度の関数として示す。
【
図4】高温での純クロム及びクロム合金の酸化を示す。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本明細書に説明され、かつ添付の図面に例示される実施形態の全体的な構造、機能、製造、及び使用の完全な理解を提供するために、多数の具体的な詳細が記載される。周知の動作、構成要素、及び要素は、本明細書に説明される実施形態を不明瞭にしないために、詳細に説明されていない。読み手は、本明細書に説明及び例示される実施形態が非限定的な例であることを理解し、したがって、本明細書に開示される特定の構造及び機能の詳細は、代表的及び例示的であり得ることが理解され得る。それに対する変形及び変更は、特許請求の範囲から逸脱することなく行われ得る。
【0009】
純クロム被膜は、通常運転時の被覆酸化を減らすとともに、冷却材喪失条件下で強度を提供し、酸化を低減するために、原子燃料被覆管に使用される。しかしながら、商用の純クロムは非常に脆い。原子炉における通常運転条件下では、純クロム被膜表面に亀裂が生じ、被膜が脆弱化し、場所によっては酸化及び水素吸収が増大する可能性がある。加えて、純クロムに窒素、炭素、及び酸素などの格子間元素が存在すると、たとえ格子間元素が非常に少量(例えば、50ppm)であっても、延性脆性転移温度(DBTT)は室温をかなり下回ることが実証されている。
【0010】
純クロムは本質的に脆く、300~400℃未満の温度では張力で容易に変形しない(すなわち、形状を変化させない)。クロムの脆さの理由の1つとして、転位として知られる結晶欠陥がクロム結晶構造内にロックされることが考えられる。転位がロックされると常に、クロムは引張荷重下で破断し易くなる。格子間不純物(すなわち、C、O、N)はクロム結晶構造内の転位に付着し易く、転位がロックされたままになる原因となる。格子間元素がなくなり、ロック解除されると、転位は増殖(multiply)しやすくなるので、延性を増大させることができる。それ故、転位から格子間要素を除去して転位をロック解除することによって、延性は向上可能である。
【0011】
延性が向上したクロム合金被膜層を形成するために、元素又は化合物が添加され得る。クロム合金の延性が向上するのは、本明細書に開示される元素又は化合物を添加すると、格子間元素(すなわち、C、O、N)がこれらの元素又は化合物に優先的に引き付けられる結果、転位が解放されるので、転位が容易に増殖し、延性を増大させるためである。理論に拘束されることを意図するものではないが、添加された元素又は化合物は、遊離格子間原子(すなわち、N、C、又はO)を窒化物、炭化物、又は酸化物の小析出物として分散させることによって、これらの格子間原子を基本クロム結晶格子から動かすことができる。遊離格子間原子が存在しないことによって、クロムのDBTTが低い値に保たれる。格子間原子が第二相析出物として捕捉されても、もはや転位に付着して転位(結晶欠陥)をロックすることはあり得ないため、原子燃料棒用のクロム合金被膜のDBTTが改善される。
【0012】
したがって、本開示の目的は、最大1500ppmの格子間元素を含み、改善された延性を保ち続けるクロム合金被膜層を備える、原子燃料棒を開発することである。
【0013】
本明細書では、原子燃料棒が開示される。原子燃料棒は、基材(すなわち、被覆材表面)と、基材に塗布されたクロム合金被膜層と、を備え得る。特定の実施形態では、原子燃料棒は、原子燃料を収容する被覆材と、被覆材に塗布されたクロム合金被膜層と、を備え得る。
【0014】
様々な実施形態では、基材又は被覆材に塗布されたクロム合金被膜層は、1つ以上の元素又は化合物をクロムに添加することによって形成され得る。クロム合金被膜層を形成するためにクロムに添加される1つ以上の元素又は化合物は、イットリウム(Y)、ランタン(La)、トリウム(Th)、ジルコニウム(Zr)、チタン(Ti)、ハフニウム(Hf)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、バナジウム(V)、レニウム(Re)、ルテニウム(Ru)、コバルト(Co)、アルミニウム(Al)、炭化物、ホウ化物、金属間化合物、及びそれらの組み合わせから選択され得る。
【0015】
様々な実施形態では、クロム合金被膜層は、最大1500ppmの格子間元素を含み得る。様々な実施形態では、クロム合金被膜層は、最大1400ppmの格子間元素を含み得る。様々な実施形態では、クロム合金被膜層は、最大1300ppmの格子間元素を含み得る。様々な実施形態では、クロム合金被膜層は、最大1200ppmの格子間元素を含み得る。様々な実施形態では、クロム合金被膜層は、最大1100ppmの格子間元素を含み得る。様々な実施形態では、クロム合金被膜層は、最大1000ppmの格子間元素を含み得る。様々な実施形態では、クロム合金被膜層は、最大900ppmの格子間元素を含み得る。様々な実施形態では、クロム合金被膜層は、最大800ppmの格子間元素を含み得る。様々な実施形態では、クロム合金被膜層は、最大700ppmの格子間元素を含み得る。様々な実施形態では、クロム合金被膜層は、最大600ppmの格子間元素を含み得る。様々な実施形態では、クロム合金被膜層は、最大500ppmの格子間元素を含み得る。様々な実施形態では、クロム合金被膜層は、最大400ppmの格子間元素を含み得る。様々な実施形態では、クロム合金被膜層は、最大300ppmの格子間元素を含み得る。
【0016】
クロム合金被膜層は最大1500ppmの格子間元素を含むことができ、C、O、及びNが各々、500ppm以下である。クロム合金被膜層は、最大1200ppmの格子間元素を含むことができ、C、O、及びNが、各々、400ppm以下である。クロム合金被膜層は、最大900ppmの格子間元素を含むことができ、C、O、及びNが各々、300ppm以下である。クロム合金被膜層は、最大600ppmの格子間元素を含むことができ、C、O、及びNが各々、200ppm以下である。クロム合金被膜層は、最大300ppmの格子間元素を含むことができ、C、O、及びNが各々、100ppm以下である。
【0017】
様々な実施形態において、クロム合金被膜付き基材中に存在する格子間原子を減らすことの有益性は、機械的試験によって測定可能である。
【0018】
元素又は化合物を添加することにより格子間元素が減る利点があっても、添加された要素又は化合物が中性子断面積(すなわち、中性子経済)に悪影響を及ぼしてはならない。それ故、様々な実施形態において、添加される元素又は化合物は、中性子断面積に悪影響を及ぼすことなくクロム合金の延性を改善するように選択される。
【0019】
本明細書に開示される元素又は化合物は、均一な均質な状態でクロム合金混合物を生成するために、クロム原子に応じて蒸着され得る。
【0020】
300℃~400℃の被膜温度で、格子間原子(すなわち、N、C、O)がクロム結晶構造固有の格子間空間を通って拡散することによって、転位ネットワークが解放され得る。低温延性に必須である転位が応力下で容易に増殖でき、クロム合金は十分な可塑性を得られるので、劈開破壊の脆弱さを回避することができる。加えて、合金は高い耐食性を維持可能であり、被膜は全ての機能要件に合致するか、又は上回ることができる。
【0021】
様々な実施形態では、クロム合金被膜層は、最大2%のYを含み得る。他の実施形態では、クロム合金被膜層は、最大1%のYを含み得る。他の実施形態では、クロム合金被膜層は、最大0.5%のYを含み得る。様々な実施形態では、クロム合金被膜層は、最大0.1%のYを含み得る。
【0022】
様々な実施形態では、クロム合金被膜層は、最大2%のLaを含み得る。他の実施形態では、クロム合金被膜層は、最大1%のLaを含み得る。他の実施形態では、クロム合金被膜層は、最大0.5%のLaを含み得る。様々な実施形態では、クロム合金被膜層は、最大0.1%のLaを含み得る。
【0023】
様々な実施形態では、クロム合金被膜層は、最大2%のThを含み得る。他の実施形態では、クロム合金被膜層は、最大1%のThを含み得る。他の実施形態では、クロム合金被膜層は、最大0.5%のThを含み得る。様々な実施形態では、クロム合金被膜層は、最大0.1%のThを含み得る。
【0024】
様々な実施形態では、クロム合金被膜層は、最大2%のZrを含み得る。他の実施形態では、クロム合金被膜層は、最大1%のZrを含み得る。他の実施形態では、クロム合金被膜層は、最大0.5%のZrを含み得る。様々な実施形態では、クロム合金被膜層は、最大0.1%のZrを含み得る。
【0025】
様々な実施形態では、クロム合金被膜層は、最大2%のTiを含み得る。他の実施形態では、クロム合金被膜層は、最大1%のTiを含み得る。他の実施形態では、クロム合金被膜層は、最大0.5%のTiを含み得る。様々な実施形態では、クロム合金被膜層は、最大0.1%のTiを含み得る。
【0026】
様々な実施形態では、クロム合金被膜層は、最大2%のHfを含み得る。他の実施形態では、クロム合金被膜層は、最大1%のHfを含み得る。他の実施形態では、クロム合金被膜層は、最大0.5%のHfを含み得る。様々な実施形態では、クロム合金被膜層は、最大0.1%のHfを含み得る。
【0027】
様々な実施形態では、クロム合金被膜層は、最大2%のMoを含み得る。他の実施形態では、クロム合金被膜層は、最大1%のMoを含み得る。他の実施形態では、クロム合金被膜層は、最大0.5%のMoを含み得る。様々な実施形態では、クロム合金被膜層は、最大0.1%のMoを含み得る。
【0028】
様々な実施形態では、クロム合金被膜層は、最大2%のWを含み得る。他の実施形態では、クロム合金被膜層は、最大1%のWを含み得る。他の実施形態では、クロム合金被膜層は、最大0.5%のWを含み得る。様々な実施形態では、クロム合金被膜層は、最大0.1%のWを含み得る。
【0029】
様々な実施形態では、クロム合金被膜層は、最大2%のVを含み得る。他の実施形態では、クロム合金被膜層は、最大1%のVを含み得る。他の実施形態では、クロム合金被膜層は、最大0.5%のVを含み得る。様々な実施形態では、クロム合金被膜層は、最大0.1%のVを含み得る。
【0030】
様々な実施形態では、クロム合金被膜層は、最大2%のReを含み得る。他の実施形態では、クロム合金被膜層は、最大1%のReを含み得る。他の実施形態では、クロム合金被膜層は、最大0.5%のReを含み得る。様々な実施形態では、クロム合金被膜層は、最大0.1%のReを含み得る。
【0031】
様々な実施形態では、クロム合金被膜層は、最大2%のRuを含み得る。他の実施形態では、クロム合金被膜層は、最大1%のRuを含み得る。他の実施形態では、クロム合金被膜層は、最大0.5%のRuを含み得る。様々な実施形態では、クロム合金被膜層は、最大0.1%のRuを含み得る。
【0032】
様々な実施形態では、クロム合金被膜層は、最大2%のCoを含み得る。他の実施形態では、クロム合金被膜層は、最大1%のCoを含み得る。他の実施形態では、クロム合金被膜層は、最大0.5%のCoを含み得る。様々な実施形態では、クロム合金被膜層は、最大0.1%のCoを含み得る。
【0033】
様々な実施形態では、クロム合金被膜層は、最大2%のAlを含み得る。他の実施形態では、クロム合金被膜層は、最大1%のAlを含み得る。他の実施形態では、クロム合金被膜層は、最大0.5%のAlを含み得る。様々な実施形態では、クロム合金被膜層は、最大0.1%のAlを含み得る。
【0034】
様々な実施形態では、クロム合金被膜層は、Crと、最大2%のYと、最大1500ppmの格子間元素とを含むことができ、C、O、及びNが各々、500ppm以下である。クロム合金被膜層は、Crと、最大1.5%のYと、最大1500ppmの格子間元素とを含むことができ、C、O、及びNが各々、500ppm以下である。クロム合金被膜層は、Crと、最大1%のYと、最大1500ppmの格子間元素とを含むことができ、C、O、及びNが各々、500ppm以下である。クロム合金被膜層は、Crと、最大0.5%のYと、最大1500ppmの格子間元素とを含むことができ、C、O、及びNが各々、500ppm以下である。クロム合金被膜層は、Crと、最大0.25%のYと、最大1500ppmの格子間元素とを含むことができ、C、O、及びNが各々、500ppm以下である。クロム合金被膜層は、Crと、最大0.1%のYと、最大1500ppmの格子間元素とを含むことができ、C、O、及びNが各々、500ppm以下である。
【0035】
様々な実施形態では、クロム合金被膜層は、Crと、最大1%のZrと、最大1500ppmの格子間元素とを含むことができ、C、O、及びNが各々、500ppm以下である。クロム合金被膜層は、Crと、最大0.75%のZrと、最大1500ppmの格子間元素とを含むことができ、C、O、及びNが各々、500ppm以下である。クロム合金被膜層は、Crと、最大0.5%のZrと、最大1500ppmの格子間元素とを含むことができ、C、O、及びNが各々、500ppm以下である。クロム合金被膜層は、Crと、最大0.4%のZrと、最大1500ppmの格子間元素とを含むことができ、C、O、及びNが各々、500ppm以下である。クロム合金被膜層は、Crと、最大0.3%のZrと、最大1500ppmの格子間元素とを含むことができ、C、O、及びNが各々、500ppm以下である。クロム合金被膜層は、Crと、最大0.2%のZrと、最大1500ppmの格子間元素とを含むことができ、C、O、及びNが各々、500ppm以下である。クロム合金被膜層は、Crと、最大0.1%のZrと、最大1500ppmの格子間元素とを含むことができ、C、O、及びNが各々、500ppm以下である。
【0036】
様々な実施形態では、クロム合金被膜層は、Crと、最大2%のYと、最大1%のZrと、最大1500ppmの格子間元素とを含み、C、O、及びNが各々、500ppm以下である。様々な実施形態では、クロム合金被膜層は、Crと、最大1.5%のYと、最大1%のZrと、最大1500ppmの格子間元素とを含み、C、O、及びNが各々、500ppm以下である。様々な実施形態では、クロム合金被膜層は、Crと、最大1%のYと、最大1%のZrと、最大1500ppmの格子間元素とを含み、C、O、及びNが各々、500ppm以下である。様々な実施形態では、クロム合金被膜層は、Crと、最大0.5%のYと、最大1%のZrと、最大1500ppmの格子間元素とを含み、C、O、及びNが各々、500ppm以下である。様々な実施形態では、クロム合金被膜層は、Crと、最大0.25%のYと、最大1%のZrと、最大1500ppmの格子間元素とを含み、C、O、及びNが各々、500ppm以下である。様々な実施形態では、クロム合金被膜層は、Crと、最大0.1%のYと、最大1%のZrと、最大1500ppmの格子間元素とを含み、C、O、及びNが各々、500ppm以下である。様々な実施形態では、クロム合金被膜層は、Crと、最大2%のYと、最大0.75%のZrと、最大1500ppmの格子間元素とを含み、C、O、及びNが各々、500ppm以下である。様々な実施形態では、クロム合金被膜層は、Crと、最大2%のYと、最大0.5%のZrと、最大1500ppmの格子間元素とを含み、C、O、及びNが各々、500ppm以下である。様々な実施形態では、クロム合金被膜層は、Crと、最大2%のYと、最大0.4%のZrと、最大1500ppmの格子間元素とを含み、C、O、及びNが各々、500ppm以下である。様々な実施形態では、クロム合金被膜層は、Crと、最大2%のYと、最大0.3%のZrと、最大1500ppmの格子間元素とを含み、C、O、及びNが各々、500ppm以下である。様々な実施形態では、クロム合金被膜層は、Crと、最大2%のYと、最大0.2%のZrと、最大1500ppmの格子間元素とを含み、C、O、及びNが各々、500ppm以下である。様々な実施形態では、クロム合金被膜層は、Crと、最大2%のYと、最大0.1%のZrと、最大1500ppmの格子間元素とを含み、C、O、及びNが各々、500ppm以下である。様々な実施形態では、クロム合金被膜層は、Crと、最大0.5%のYと、最大0.4%のZrと、最大1500ppmの格子間元素とを含み、C、O、及びNが各々、500ppm以下である。
【0037】
図1は、商用の純粋Crについて、低温では圧縮降伏応力が引張降伏応力よりも高いことを示す。引張では、Crは脆性破壊を呈し、延性がほとんど又は全くない。300℃を上回ると、商用の純粋Crはある程度の引張降伏及び延性を示す。脆性は、窒素格子間原子(及び程度は小さいが炭素)による転位の「コットレル(Cottrell)」ロッキングに起因する。
【0038】
図2は、低温変形の前に、高温でクロムに予歪みを与えること(pre-straining)によって「コットレル」ロッキングが回避され得ることを示す。しかしながら、予歪みは「コットレル」ロッキングの原理を表しているが、高温用途に適したやり方ではない場合がある。したがって、Y又はZrで合金化することにより、原子力用途の代替手段が提供され得る。このことは、クロムの延性に対する選択された合金化元素の効果を示す
図3に示される。0.1%のY、又は0.05%のYに0.4%のZrを加えた合金化により、周囲温度におけるCrの延性の増強に重大な影響が及ぼされることに留意されたい。
【0039】
Cr被膜にY又はZrを添加することで、炉の運転時に被膜付き原子燃料棒の意図されている性能に悪影響が及ぶことはない。むしろ、Cr被膜にY又はZrを添加することにより、被膜を増強することが可能である。以下の表1は、1350℃におけるCr-0.1%Yの降伏応力が、非合金クロムの2倍(5.2対2.6ksi)であることを示している。更に、純酸素中の高温酸化速度が有意に低下している。
【表1】
【0040】
図4は、1150℃で100時間後に、Cr-0.1%Y合金の酸化速度が純クロムの酸化速度よりもほぼ1桁低かったことを示す。それ故、冷却材喪失事故時の同等の温度の蒸気中で、Cr-0.1%Y合金は優れた性能を示すことになる。
【0041】
脆性クロムが亀裂発生前に示す歪は0.1%未満である。これに対し、本明細書に開示される延性クロム合金被膜層は、2%以上の延性を示し得る(すなわち、亀裂発生前の歪が桁違いに大きい)。様々な実施形態において、クロム合金被膜層は少なくとも2%の延性を有し得る。
【0042】
様々な実施形態では、クロム合金被膜合金は、通常状態にある被覆材に耐食性を提供し得る。「通常状態」は、300℃~400℃の温度を指す。例えば、通常状態は、310℃~400℃、320℃~400℃、330℃~400℃、340℃~400℃、350℃~400℃、360℃~400℃、又は375℃~400℃の温度を指し得る。
【0043】
様々な実施形態では、クロム合金被膜合金は、事故状態にある基材又は被覆材に耐食性を提供し得る。「事故状態」は、最大1200℃の正常条件よりも高い温度を指す。
【0044】
様々な実施形態では、クロム合金被膜層の厚さは、最大25ミクロンであり得る。例えば、クロム合金被膜層の厚さは、最大1ミクロン、最大2ミクロン、最大3ミクロン、最大4ミクロン、最大5ミクロン、最大6ミクロン、最大7ミクロン、最大8ミクロン、最大9ミクロン、最大10ミクロン、最大11ミクロン、最大12ミクロン、最大13ミクロン、最大14ミクロン、最大15ミクロン、最大16ミクロン、最大17ミクロン、最大18ミクロン、最大19ミクロン、最大20ミクロン、最大21ミクロン、最大22ミクロン、最大23ミクロン、最大24ミクロン、又は最大25ミクロンであり得る。特定の実施形態では、クロム合金被膜層の厚さは、1ミクロン、2ミクロン、3ミクロン、4ミクロン、5ミクロン、6ミクロン、7ミクロン、8ミクロン、9ミクロン、10ミクロン、11ミクロン、12ミクロン、13ミクロン、14ミクロン、15ミクロン、16ミクロン、17ミクロン、18ミクロン、19ミクロン、20ミクロン、21ミクロン、22ミクロン、23ミクロン、24ミクロン、又は25ミクロンであり得る。
【0045】
様々な実施形態では、本明細書に開示されるクロム合金で被覆される被覆材は、ジルコニウム、ジルコニウム合金、又はセラミック複合材を含み得る。
【0046】
様々な実施形態では、本明細書に開示されるクロム合金で被覆される基材は、ジルコニウム、ジルコニウム合金、又はセラミック複合材を含み得る。
【0047】
様々な実施形態では、Zr、Mo、Nb、Ta、又はWからなる中間層が、基材(すなわち、ジルコニウム基材、ジルコニウム合金基材)上に形成され得る。中間層は、基材とクロム合金被膜層との間に位置し得る。
【0048】
様々な実施形態では、クロム合金被膜付き被覆材に収容されるペレット形態の原子燃料は、二酸化ウラン(UO2)、窒化ウラン(UN)、及び炭化ウラン(UC)からなる群から選択され得る。
【0049】
本明細書に開示されるクロム合金被膜原子燃料棒は、軽水炉(LWR)、重水炉(HWR)、鉛高速炉(LFR)、ナトリウム高速炉、溶融塩炉、及びガス冷却炉からなる群から選択される炉で使用され得る。
【0050】
クロム合金被膜層が、物理的気相成長法、化学的方法、又はコールドスプレー法のうちの1つによって塗布され得る。物理的気相成長法は、蒸着又はスパッタリングとすることができる。より具体的には、物理的気相成長法は、陰極アーク蒸着、マグネトロンスパッタリング蒸着、又はパルスレーザー蒸着とすることができる。
【0051】
本明細書に説明される主題の様々な態様が、以下の実施例に記載される。
【0052】
実施例1-原子燃料棒であって、基材と、基材に塗布されたクロム合金被膜層と、を備え、クロム合金被膜層が、クロム(Cr)と、イットリウム(Y)、ランタン(La)、トリウム(Th)、ジルコニウム(Zr)、チタン(Ti)、ハフニウム(Hf)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、バナジウム(V)、レニウム(Re)、ルテニウム(Ru)、コバルト(Co)、アルミニウム(Al)、炭化物、ホウ化物、金属間化合物、及びそれらの組み合わせからなる群から選択された元素又は化合物と、最大1500ppmの格子間元素とを含み、炭素(C)、酸素(O)、及び窒素(N)が各々、500ppm以下である、原子燃料棒。
【0053】
実施例2-クロム合金被膜層が、Crと、最大2%のYと、最大1500ppmの格子間元素とを含み、C、O、及びNが各々、500ppm以下である、実施例1の原子燃料棒。
【0054】
実施例3-クロム合金被膜層が、Crと、最大2%のYと、最大1%のZrと、最大1500ppmの格子間元素とを含み、C、O、及びNが各々、500ppm以下である、実施例1又は2の原子燃料棒。
【0055】
実施例4-クロム合金被膜層が少なくとも2%の延性を有する、実施例1~3の原子燃料棒。
【0056】
実施例5-クロム合金被膜層が最大1200ppmの格子間元素を含み、C、O、及びNが、各々、400ppm以下である、実施例1~4の原子燃料棒。
【0057】
実施例6-クロム合金被膜層が最大900ppmの格子間元素を含み、C、O、及びNが各々、300ppm以下である、実施例1~5の原子燃料棒。
【0058】
実施例7-クロム合金被膜層の厚さが最大25ミクロンである、実施例1~6の原子燃料棒。
【0059】
実施例8-基材が、原子燃料を収容する被覆材である、実施例1~7の原子燃料棒。
【0060】
実施例9-被覆材がジルコニウム、ジルコニウム合金、又はセラミック複合材を含む、実施例8の原子燃料棒。
【0061】
実施例10-原子燃料がペレット形態である、実施例8の原子燃料棒。
【0062】
実施例11-ペレット形態の原子燃料が、二酸化ウラン(UO2)、窒化ウラン(UN)、及び炭化ウラン(UC)からなる群から選択される、実施例10の原子燃料棒。
【0063】
実施例12-原子燃料棒が、軽水炉(LWR)、重水炉(HWR)、鉛高速炉(LFR)、ナトリウム高速炉、溶融塩炉、及びガス冷却炉からなる群から選択される炉で使用される、実施例1~11の原子燃料棒。
【0064】
実施例13-クロム合金被膜層が、物理的気相成長法、化学的方法、又はコールドスプレー法のうちの1つによって塗布されている、実施例1~12の原子燃料棒。
【0065】
実施例14-物理的気相成長法が、蒸着及びスパッタリングからなる群から選択される、実施例13の原子燃料棒。
【0066】
実施例15-物理的気相成長法が、陰極アーク蒸着、マグネトロンスパッタリング蒸着、及びパルスレーザー蒸着からなる群から選択される、実施例13に記載の原子燃料棒。
【0067】
実施例16-原子燃料棒であって、原子燃料を収容する被覆材と、被覆材に塗布されたクロム合金被膜層と、を備え、クロム合金被膜層が、Crと、Yと、Zrと、最大1500ppmの格子間元素とを含み、C、O、及びNが各々、500ppm以下である、原子燃料棒。
【0068】
実施例17-クロム合金被膜層が、Crと、最大0.5%のYと、最大0.4%のZrと、最大1500ppmの格子間元素とを含み、C、O、及びNが各々、500ppm以下である、実施例16の原子燃料棒。
【0069】
実施例18-クロム合金被膜層が最大1200ppmの格子間元素を含み、C、O、及びNが各々、400ppm以下である、実施例16又は17の原子燃料棒。
【0070】
実施例19-クロム合金被膜層が最大900ppmの格子間元素を含み、C、O、及びNが各々、300ppm以下である、実施例16~18の原子燃料棒。
【0071】
実施例20-クロム合金被膜層が少なくとも2%の延性を有する、実施例16~19の原子燃料棒。
【0072】
1つ以上の構成要素は、本明細書では、「~するように構成された」、「~するように構成可能な」、「~するように動作可能/動作自在な」、「~するように適合された/適合可能な」、「~することができる」、「~するように順応可能な/順応された」などと称され得る。当業者は、文脈上別段の要求がない限り、「~するように構成された」が、アクティブ状態構成要素及び/又は非アクティブ状態構成要素及び/又はスタンバイ状態構成要素を概して包含し得ることを認識するであろう。
【0073】
当業者は、概して、本明細書、及び特に添付の特許請求の範囲(例えば、添付の特許請求の範囲の本体)で使用される用語は、概して、「オープン」な用語として意図されていることを認識するであろう(例えば、「含む」という用語は、「含むが、限定されない」と解釈されるべきであり、「有する」という用語は、「少なくとも有する」と解釈されるべきであり、「含む」という用語は、「含むが、限定されない」と解釈されるべきである、など)。導入される特許請求の範囲の特定の数が意図される場合、そのような意図は、特許請求の範囲に明示的に列挙されることになり、そのような列挙がない場合、そのような意図は存在しないことが、当業者によって更に理解されるであろう。例えば、理解の支援として、以下の添付の特許請求の範囲は、請求項の列挙を導入するための、「少なくとも1つ」及び「1つ以上」という導入句の使用を含有し得る。しかしながら、そのような語句の使用は、不定冠詞「a」又は「an」による請求項の列挙の導入が、そのような導入された請求項の列挙を含有する任意の特定の請求項を、同じ請求項が導入句の「1つ以上」又は「少なくとも1つ」及び「a」又は「an」などの不定冠詞を含むときでさえ、1つのそのような列挙のみを含む請求項に限定することを暗示するものとして解釈されるべきではなく(例えば、「a」及び/又は「an」は、典型的には、「少なくとも1つ」又は「1つ以上」を意味すると解釈されるべきである)、請求項の列挙を導入するために使用される特定の物品の使用についても同様である。
【0074】
加えて、導入された請求項の列挙の特定の数が明示的に列挙されているとしても、当業者は、そのような列挙は、典型的には、少なくとも列挙された数を意味すると解釈されるべきであることを理解するであろう(例えば、「2つの列挙」のそのままの列挙は、他の修飾子なしでは、少なくとも2つの列挙、又は2つ以上の列挙を意味する)。更に、「A、B、及びCなどのうちの少なくとも1つ」に類似している慣例が使用される、そのような事例では、一般的に、そのような構造は、当業者が、慣例(例えば、「A、B、及びCのうちの少なくとも1つを有するシステム」は、限定されるものではないが、A単独、B単独、C単独、A及びBを一緒に、A及びCを一緒に、B及びCを一緒に、並びに/又はA、B、及びCを一緒に有するなどのシステムを含むであろう)を理解するであろうという意味で意図される。「A、B、又はCなどのうちの少なくとも1つ」に類似した慣例が使用される、そのような事例では、一般的に、そのような構造は、当業者が慣例(例えば、「A、B、又はCのうちの少なくとも1つを有するシステム」は、限定されるものではないが、A単独、B単独、C単独、A及びBを一緒に、A及びCを一緒に、B及びCを一緒に、並びに/又はA、B、及びCを一緒に有するなどのシステムを含むであろう)を理解するであろうという意味で意図される。説明、特許請求の範囲、又は図面のいずれにおいても、2つ以上の代替的な用語を提示する典型的な選言的な単語及び/又は語句は、文脈が別途指示しない限り、用語のうちの1つ、用語のうちのいずれか、又は両方の用語を含む可能性を企図することが理解されるべきであることが、当業者によって更に理解されるであろう。例えば、「A又はB」という語句は、典型的には、「A」又は「B」又は「A及びB」の可能性を含むと理解されることになる。
【0075】
添付の特許請求の範囲に関して、当業者は、その中に列挙された動作が概して任意の順序で実施され得ることを理解するであろう。また、様々な動作フロー図が配列で提示されるが、様々な動作が例示されたもの以外の他の順序で実施されてもよく、又は同時に実施されてもよいことが理解されるべきである。そのような代替的な順序付けの例としては、文脈が別途指示しない限り、重複、交互配置、中断、再順序付け、増分、予備、補足、同時、逆、又は他の様々な順序付けが挙げられ得る。更に、文脈が別段の指示をしない限り、「応答する」、「関連する」、又は他の過去型形容詞などの用語は、概して、そのような変形を除外することを意図していない。
【0076】
「1つの態様」、「一態様」、「一例示」、「1つの例示」などへの任意の参照は、態様に関連して説明される特定の特徴、構造、又は特性が、少なくとも1つの態様に含まれることを意味することに留意すべきである。したがって、本明細書全体を通して、様々な場所における「1つの態様では」、「一態様では」、「一例示では」、及び「1つの例示では」という語句の出現は、必ずしも全て同じ態様を指すわけではない。更に、特定の特徴、構造又は特性は、1つ以上の態様では、任意の好適な様式で組み合わせられ得る。
【0077】
本明細書において参照され、及び/又は任意の出願データシートに列挙される任意の特許出願、特許、非特許刊行物、又は他の開示資料は、本明細書に参照により組み込まれ、その限りにおいて、本明細書に組み込まれた資料と矛盾しない。したがって、本明細書に記載の開示は、必要な範囲において、参照により本明細書に組み込まれた任意の矛盾する資料に優先する。既存の定義、記述、又は本明細書に記載された他の開示資料と矛盾するが、参照により本明細書に組み込まれると言及された全ての資料、又はそれらの一部分は、その組み込まれた資料と既存の開示資料との間に矛盾がない程度だけ組み込まれることになる。
【0078】
「備える」(並びに「comprises」及び「comprising」などのcompriseの任意の形態)、「有する」(並びに「has」及び「having」などのhaveの任意の形態)、「含む」(並びに「includes」及び「including」などのincludeの任意の形態)、「含有する」(並びに「contains」及び「containing」などのcontainの任意の形態)という用語は、オープンエンドの連結動詞である。結果として、1つ以上の要素を「備える」、「有する」、「含む」、又は「含有する」システムは、それらの1つ以上の要素を保有するが、それらの1つ以上の要素のみを保有することに限定されない。同様に、1つ以上の特徴を「含む」、「有する」、「含む」、又は「含有する」システム、デバイス、又は装置の要素は、それらの1つ以上の特徴を保有するが、それらの1つ以上の特徴のみを保有することに限定されない。
【0079】
本開示で使用される「実質的に」、「約」又は「およそ」の用語は、別段の指定がない限り、当業者によって決定される特定の値についての許容可能な誤差を意味し、これは、値がどのように測定又は決定されるかに部分的に依存する。特定の実施形態では、「実質的に」、「約」又は「およそ」という用語は、1、2、3、又は4の標準偏差以内を意味する。特定の実施形態では、「実質的に」、「約」又は「およそ」という用語は、所与の値又は範囲の50%、20%、15%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%、0.5%、又は0.05%以内を意味する。
【0080】
本明細書に列挙される任意の数値範囲は、列挙された範囲内に包含される同じ数値精度(すなわち、同じ指定された桁数を有する)の全ての部分範囲を説明する。例えば、「1.0~10.0」の列挙された範囲は、例えば、「2.4~7.6」など、「2.4~7.6」の範囲が明細書の文章で明示的に列挙されていない場合でも、列挙された最小値である1.0と、列挙された最大値である10.0との間(及びそれらを含む)の全ての部分範囲を説明する。したがって、出願人は、本明細書に明示的に列挙された範囲内に包含される同じ数値精度の任意の部分範囲を明示的に列挙するように、特許請求の範囲を含む、本明細書を補正する権利を留保する。全てのそのような範囲は、そのような部分範囲を明示的に列挙することの補正が、米国特許法第112条(a)及びEPC第123条(2)項に基づく要件を含む、記述された説明、説明の十分性、及び追加事項の要件に準拠することになるように、本明細書に本質的に説明される。また、文脈によって明示的に指定されない限り、又は別段に要求されない限り、本明細書に説明される全ての数値パラメータ(値、範囲、量、パーセンテージなどを表すものなど)は、「約」という用語が数値の前に明示的に現れていなくても、「約」という用語によって前置されているかのように読み取られてもよい。加えて、本明細書に説明される数値パラメータは、報告された有効桁の数、数値精度、及び通常の丸め技法を適用することによって解釈されるべきである。また、本明細書に説明される数値パラメータは、パラメータの数値を決定するために使用される基礎となる測定技法の固有の変動特性を必然的に有することになることも理解される。
【0081】
要約すると、本明細書に説明される概念を採用することから結果的に生じる多数の利益が説明されている。1つ以上の形態の上記の説明は、例示及び説明の目的で提示されている。これは、開示される正確な形態を網羅又は限定することを意図するものではない。上記の教示に照らして、修正又は変形が可能である。1つ以上の形態は、原理及び実践的適用を例示するために選択及び説明され、それによって、当業者が様々な形態を、及び企図される特定の使用に好適な様々な修正を用いて利用することを可能にする。本明細書とともに提出される特許請求の範囲は、全体的な範囲を定義することが意図されている。
【国際調査報告】