(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-14
(54)【発明の名称】パワー半導体デバイス及び電子機器
(51)【国際特許分類】
H01L 29/78 20060101AFI20231207BHJP
【FI】
H01L29/78 652K
H01L29/78 653C
H01L29/78 652J
H01L29/78 652M
H01L29/78 656A
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023532466
(86)(22)【出願日】2021-11-23
(85)【翻訳文提出日】2023-07-06
(86)【国際出願番号】 CN2021132550
(87)【国際公開番号】W WO2022111484
(87)【国際公開日】2022-06-02
(31)【優先権主張番号】202011379684.2
(32)【優先日】2020-11-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】503433420
【氏名又は名称】華為技術有限公司
【氏名又は名称原語表記】HUAWEI TECHNOLOGIES CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】Huawei Administration Building, Bantian, Longgang District, Shenzhen, Guangdong 518129, P.R. China
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100135079
【氏名又は名称】宮崎 修
(72)【発明者】
【氏名】ワン,ホアイフォン
(72)【発明者】
【氏名】ジャン,ドォンリアン
(72)【発明者】
【氏名】ヤン,チョンジュン
(72)【発明者】
【氏名】フゥ,シャンバイ
(57)【要約】
この出願は、パワー半導体デバイス及び電子機器を提供する。当該パワー半導体デバイスは、エピタキシャル層と、2つの電界効果トランジスタとを含む。 1つのトレンチがエピタキシャル層に配置され、2つの電界効果トランジスタは鏡面対称である。各電界効果トランジスタが、直列に接続された第1のMOS構造及び第2のMOS構造を含む。第1のMOS構造の第1チャネル及び第2のMOS構造の第2チャネルがトレンチの深さ方向に沿って間隔をあけて配置されるとともに、第1のMOS構造の第1ゲート及び第2のMOS構造の第2ゲートがトレンチの深さ方向に沿って間隔をあけて配置される。上述の技術的ソリューションでは、第1ゲート及び第2ゲートがトレンチの深さ方向に沿って上下に配置され、それ故に、水平方向において各電界効果トランジスタによって占有されるサイズが減少する。第1のMOS構造及び第2のMOS構造がドリフト領域を共有し、それ故に、ドリフト領域の抵抗が低減される。さらに、2つの同じ電界効果トランジスタが並列に背中合わせで対称的に接続されることで、パワー半導体デバイスの単位面積当たりの固有オン抵抗が低減される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
パワー半導体デバイスであって、当該パワー半導体デバイスは、第1ドーピング型のエピタキシャル層と、2つの共通ドレイン金属酸化膜半導体電界効果トランジスタとを有し、前記第1ドーピング型の前記エピタキシャル層に1つのトレンチが配置され、
各共通ドレイン金属酸化膜半導体電界効果トランジスタが、前記トレンチの深さ方向に沿って配置された第1の金属酸化膜半導体構造及び第2の金属酸化膜半導体構造を有し、
前記第1の金属酸化膜半導体構造は、前記第1ドーピング型の前記エピタキシャル層に配置された第1チャネルと、該第1チャネルに接続された第1ソースとを有し、該第1ソース及び該第1チャネルは前記トレンチの同じ側に位置し、該第1ソースは該第1チャネルに接続され、該第1チャネルは、前記第1ドーピング型の前記エピタキシャル層に配置された第2ドーピング型の領域であり、
前記第1の金属酸化膜半導体構造は更に、前記トレンチ内に配置されて前記第1チャネルの導通を制御するように構成された第1ゲートを有し、
前記第2の金属酸化膜半導体構造は第2ソース及び第2チャネルを有し、該第2ソースは前記トレンチの底に位置し、該第2チャネルは、前記第1ドーピング型の前記エピタキシャル層に位置して該第2チャネルに接続され、該第2チャネルは、前記第1ドーピング型の前記エピタキシャル層に配置された前記第2ドーピング型の領域であり、
前記第2の金属酸化膜半導体構造は更に、前記トレンチ内に配置されて前記第2チャネルの導通を制御するように構成された第2ゲートを有し、
前記第1チャネル及び前記第2チャネルは、前記トレンチの前記深さ方向に沿って間隔をあけて配置され、前記第2ゲート及び前記第1ゲートは、前記トレンチの前記深さ方向に沿って間隔をあけて配置され、
前記第1ゲート及び前記第2ゲートが、それぞれ、前記第1チャネル及び前記第2チャネルをターンオンするように制御するとき、前記第1ソース、前記第1チャネル、前記第1チャネルと前記第2チャネルとの間の前記第1ドーピング型の前記エピタキシャル層の部分、前記第2チャネル、及び前記第2ソースの配置方向に沿って又はその反対方向に沿って電流が流れ、
前記2つの共通ドレイン金属酸化膜半導体電界効果トランジスタは第2ソースを共有し、前記2つの共通ドレイン金属酸化膜半導体電界効果トランジスタの2つの第1チャネルが、前記トレンチの両側に配置され、2つの前記第1ソースが、前記トレンチの両側に配置される、
パワー半導体デバイス。
【請求項2】
各共通ドレイン金属酸化膜半導体電界効果トランジスタが更に、
前記第1チャネルを前記第1ゲートから絶縁する第1ゲート酸化物層と、
前記第2チャネルを前記第2ゲートから絶縁する第2ゲート酸化物層と、
を有する、請求項1に記載のパワー半導体デバイス。
【請求項3】
前記第1ゲート酸化物層及び前記第2ゲート酸化物層は、前記トレンチの側壁上に配置される、請求項2に記載のパワー半導体デバイス。
【請求項4】
前記トレンチは、前記第1ゲート、前記第2ゲート、及び前記第2ソースを包む充填層で充たされている、請求項3に記載のパワー半導体デバイス。
【請求項5】
前記第1ドーピング型の前記エピタキシャル層に第1ソースコンタクト領域が配置され、該第1ソースコンタクト領域を介して前記第1チャネルが前記第1ソースに接続される、請求項1乃至4のいずれか一項に記載のパワー半導体デバイス。
【請求項6】
前記第1ソースコンタクト領域は、第1ドーピング型の高濃度ドープ領域と、第2ドーピング型の高濃度ドープ領域とを有する、請求項5に記載のパワー半導体デバイス。
【請求項7】
前記第1ドーピング型の前記エピタキシャル層に第2ソースコンタクト領域が配置され、該第2ソースコンタクト領域を介して前記第2チャネルが前記第2ソースに接続される、請求項1乃至6のいずれか一項に記載のパワー半導体デバイス。
【請求項8】
前記第2ソースコンタクト領域は、第1ドーピング型の高濃度ドープ領域と、第2ドーピング型の高濃度ドープ領域とを有する、請求項7に記載のパワー半導体デバイス。
【請求項9】
前記トレンチは、直線状のトレンチであり、前記第1ゲート及び前記第2ゲートは、前記トレンチの前記深さ方向に沿って上下に配置されている、請求項1乃至8のいずれか一項に記載のパワー半導体デバイス。
【請求項10】
前記第1ゲート及び前記第2ゲートは、前記トレンチの前記深さ方向に沿ってスタガード配置されている、請求項1乃至8のいずれか一項に記載のパワー半導体デバイス。
【請求項11】
前記トレンチはT字形トレンチであり、前記第2ゲートは前記T字形トレンチの底に配置され、前記第1ゲートは前記T字形トレンチの段差面に配置されている、請求項10に記載のパワー半導体デバイス。
【請求項12】
バッテリと該バッテリに接続された出力回路とを有する電子機器であって、前記出力回路は、請求項1乃至11のいずれか一項に記載のパワー半導体デバイスを有する、電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この出願は、“パワー半導体デバイス及び電子機器”と題されて2020年11月30日に中国国家知的所有権管理局に出願された中国特許出願第202011379684.2号に対する優先権を主張するものであり、それをその全体にてここに援用する。
【0002】
この出願は、回路技術の分野に関し、特に、パワー半導体デバイス及び電子機器に関する。
【背景技術】
【0003】
パワー集積回路及びデバイスの小型化に向けての技術開発に伴い、パワー集積回路のコアエレクトロニクスのうちの1つとして、パワー半導体デバイスもまた、高集積化、小型化、高性能化、及び低コスト化の開発要件を提示している。例えば、電子機器におけるバッテリ管理及び充電システムの保護回路のコアコンポーネントとして、パワー半導体デバイスは、バッテリ及び充電負荷の過放電、過充電、及び過電流から効果的に防止することができ、それにより出力短絡保護を実現し得る。
【0004】
バッテリ管理及び充電システムの保護回路におけるパワー半導体デバイスは、主に、シリコン材料で製造された金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor,MOSFET)からなるスイッチデバイスである。加えて、バッテリ管理及び充電システムの保護回路に使用される電界効果トランジスタは、リチウム電池及び負荷回路に対して双方向保護を提供するために、双方向阻止機能及び双方向ターンオン機能を持つ必要がある。業界における一般的なソリューションは、同じ構造の2つのMOSFETを共通ドレインモードで対称的に直列接続して、共通ドレインパワー半導体デバイスを形成するものである。
図1は、2つの縦型MOSFETが共通ドレインモードで直列に接続された半導体デバイスである。このパワー半導体デバイスの主要構造は、基板4と、基板4上に配置されたエピタキシャル層3とを含み、基板4はシリコン基板であり、エピタキシャル層3はシリコンエピタキシャル層である。各MOSFET構造は、エピタキシャル層3の表面上に配置されたゲート1及びソース2と、エピタキシャル層3に位置するチャネル(図示せず)とを含む。2つのMOSFETの共通ドレインとして基板の底面にバックメタルが配置される。各MOSFETに対応するドリフト領域(図示せず)がエピタキシャル層3に配置される。2つのソース2が、それぞれ、パワー半導体デバイスの入力端及び出力端として使用され、2つのゲート1が、それぞれ、入力端のMOSFET及び出力端のMOSFETをターンオン又はターンオフするように制御する。
【0005】
ターンオフの場合、出力端(又は入力端)のMOSFETのゲートはハイレベルにあり、入力端(又は出力端)のMOSFETはターンオンするが、入力端(又は出力端)のMOSFETのゲートはローレベルにあり、入力端(又は出力端)のMOS構造がターンオフして、一方の(出力端の)MOSFETのソースから他方の(入力端の)MOSFETのソースへの双方向耐電圧阻止を実現する。ターンオンの場合、入力端のMOSFETのゲート及び出力端のMOSFETのゲートの両方がハイレベルにあり、入力端のMOSFET及び出力端のMOSFETの両方がターンオンする。
図1に示す矢印によって指し示される電流の流れ方向において、電流は、一方のMOSFETのソース2からチャネル及びドリフト領域(エピタキシャル層3に位置するが図示せず)を通って基板4に流れ、そして、他方のMOSFETのドリフト領域及びチャネルを通ってソース2に流れる。
【0006】
上述のパワー半導体デバイスがターンオンするとき、電流は、エピタキシャル層3にあるドリフト領域を2回流れるとともに基板4を1回流れる。エピタキシャル層3にあるドリフト領域の抵抗及び基板4の基板抵抗は、パワー半導体デバイス全体のオン抵抗を増加させる。加えて、金属酸化膜半導体電界効果トランジスタのプロセスサイズが継続的に縮小されるにつれて、全抵抗に対する抵抗ドリフト領域の抵抗と基板の抵抗の割合も増加する。さらに、例えばゲート1及びソース2などの構造がエピタキシャル層の表面上に配置されて水平方向に配置されるため、それがパワー半導体デバイスのチップ面積の無駄を生じさせ、デバイスの単位面積当たりの固有オン抵抗及び単位面積当たりのコストを更に増加させ、パワー半導体デバイスを小型化するのを困難にする。同じデバイス面積では、バッテリ管理及び充電システム保護回路の損失及び温度上昇が増大され、充電効率が低下する。
【発明の概要】
【0007】
この出願は、パワー半導体デバイスが小型化に向かって発展するように、デバイスの固有耐電圧要求を満たしながらパワー半導体デバイスの単位面積当たりの固有オン抵抗を改善するためのパワー半導体デバイス及び電子機器を提供する。
【0008】
第1の態様によれば、パワー半導体デバイスが提供される。当該パワー半導体デバイスは、第1ドーピング型のエピタキシャル層と、2つの共通ドレイン金属酸化膜半導体電界効果トランジスタとを含み、第1ドーピング型のエピタキシャル層にトレンチが配置され、2つの共通ドレイン金属酸化膜半導体電界効果トランジスタが、並列に背中合わせで対称的に接続されてセルを形成する。各共通ドレイン金属酸化膜半導体電界効果トランジスタが、トレンチの深さ方向に沿って配置された第1の金属酸化膜半導体構造及び第2の金属酸化膜半導体構造を含み、第1の金属酸化膜半導体構造及び第2の金属酸化膜半導体構造は、ドレインを共通として直列に接続される。第1の金属酸化膜半導体構造は、第1ソース、第1チャネル、及び第1ゲートを含む。第1チャネルは第1ドーピング型のエピタキシャル層に配置され、第1ソースは第1チャネルに接続され、第1ソース及び第1チャネルはトレンチの同じ側に位置する。第1チャネルは、第1ドーピング型のエピタキシャル層に配置された第2ドーピング型の領域である。第1ゲートは、トレンチ内に配置され、ターンオンするよう第1チャネルを制御するように構成される。第2の金属酸化膜半導体構造は、第2ソース、第2チャネル、及び第2ゲートを含む。第2ソースはトレンチの底に位置し、該第2チャネルは、第1ドーピング型のエピタキシャル層に位置して第2チャネルに接続される。第2チャネルは、第1ドーピング型のエピタキシャル層に配置された第2ドーピング型の領域である。第2ゲートは、トレンチ内に配置され、ターンオンするよう第2チャネルを制御するように構成される。上述の構造が具体的に配置されるとき、第1チャネル及び第2チャネルは、トレンチの深さ方向に沿って間隔をあけて上下に配置され、第1チャネルと第2チャネルとの間の第1ドーピング型のエピタキシャル層の部分がドリフト領域であり、ドリフト領域及び第1チャネルは、トレンチの同じ側に位置し、第1チャネルと上下に配置される。第2ゲート及び第1ゲートは、トレンチの深さ方向に沿って間隔をあけて上下に配置される。第1ゲート及び第2ゲートが、それぞれ、第1チャネル及び第2チャネルをターンオンするように制御するとき、第1ソース、第1チャネル、第1チャネルと第2チャネルとの間の第1ドーピング型のエピタキシャル層の部分(ドリフト領域)、第2チャネル、及び第2ソースの配置方向に沿って又はその反対方向に沿って電流が流れる。また、2つの共通ドレイン金属酸化膜半導体電界効果トランジスタが具体的に配置されるとき、2つの共通ドレイン金属酸化膜半導体電界効果トランジスタは第2ソースを共有し、2つの共通ドレイン金属酸化膜半導体電界効果トランジスタの2つの第1チャネルが、トレンチの両側に配置され、2つの第1ソースが、トレンチの両側に配置される。上述の技術的ソリューションでは、第1ゲート及び第2ゲートがトレンチの深さ方向に沿って上下に配置されることで、水平方向において各共通ドレイン金属酸化膜半導体電界効果トランジスタによって占有されるサイズを減少させる。さらに、第1の金属酸化膜半導体構造及び第2の金属酸化膜半導体構造がドリフト領域を共有し、それによりドリフト領域の抵抗を低減させ、単位面積当たりのパワー半導体デバイスの固有オン抵抗を更に低減させる。
【0009】
特定の一実装ソリューションにおいて、各共通ドレイン金属酸化膜半導体電界効果トランジスタが更に、第1チャネルを第1ゲートから絶縁する第1ゲート酸化物層と、第2チャネルを第2ゲートから絶縁する第2ゲート酸化物層とを含み、第1ゲート酸化物層の厚さと第2ゲート酸化物層の厚さは基本的に同じである。第1ゲート酸化物層及び第2ゲート酸化物層は、ゲートのリークを低減させるため、ゲートの耐電圧能力を向上させるため、及びゲートの駆動能力を向上させるために使用される。
【0010】
特定の一実装可能ソリューションにおいて、第1ゲート酸化物層及び第2ゲート酸化物層は、トレンチの側壁上に配置される。トレンチの側壁上に配置された第1ゲート酸化物層を用いて、トレンチの深さに沿って配置された第1ゲート構造が形成され、それによってパワー半導体デバイスの水平方向のサイズが縮小される。
【0011】
特定の一実装可能ソリューションにおいて、トレンチは、第1ゲート、第2ゲート、及び第2ソースを包む充填層で充たされる。第1ゲート、第2ゲート、及び第2ソースが、充填層によって絶縁される。
【0012】
特定の一実装可能ソリューションにおいて、第2ソースは充填層の外側に露出され、充填層の外側に露出された第2ソースの部分が接続端として使用されて、外部回路への接続を容易にする。
【0013】
特定の一実装可能ソリューションにおいて、第1ソース部分は第1ドーピング型のエピタキシャル層の外側に露出され、第1ドーピング型のエピタキシャル層の外側に露出された第1ソースの部分が接続端として使用されて、外部回路への接続を容易にする。
【0014】
特定の一実装ソリューションにおいて、第1ドーピング型のエピタキシャル層に第1ソースコンタクト領域が配置され、該第1ソースコンタクト領域を介して第1チャネルが第1ソースに接続される。配置された第1ソースコンタクト領域を使用することにより、第1ソースと第1チャネルとの間の接触の効果が改善される。
【0015】
特定の一実装可能ソリューションにおいて、第1ソースコンタクト領域は、第1ドーピング型の高濃度ドープ領域と、第2ドーピング型の高濃度ドープ領域とを含む。
【0016】
特定の一実装ソリューションにおいて、第1ドーピング型のエピタキシャル層に第2ソースコンタクト領域が配置され、該第2ソースコンタクト領域を介して第2チャネルが第2ソースに接続される。配置された第2ソースコンタクト領域を使用することにより、第2ソースと第2チャネルとの間の接触の効果が改善される。
【0017】
特定の一実装可能ソリューションにおいて、第2ソースコンタクト領域は、第1ドーピング型の高濃度ドープ領域と、第2ドーピング型の高濃度ドープ領域とを含む。
【0018】
特定の一実装ソリューションにおいて、第2ソースコンタクト領域内の第2ドーピング型の高濃度ドープ領域は第2ソースのトレンチの底の下に位置し、第2ソースコンタクト領域内の第1ドーピング型の高濃度ドープ領域は第2ソースの片側に位置する。
【0019】
特定の一実装可能ソリューションにおいて、共通ドレイン金属酸化膜半導体電界効果トランジスタのサイズを小さくし、デバイスの配置密度を向上させるために、トレンチは直線状のトレンチであり、第1ゲート及び第2ゲートは、トレンチの深さ方向に沿って上下に配置される。
【0020】
特定の一実装可能ソリューションにおいて、第1ゲート及び第2ゲートは、トレンチの深さ方向に沿ってスタガード配置される。これは、第1ゲート酸化物層、第2ゲート酸化物層、第1ゲート、及び第2ゲートの配置を容易にする。
【0021】
特定の一実装ソリューションにおいて、トレンチはT字形トレンチであり、第2ゲートはT字形トレンチの底に配置され、第1ゲートはT字形トレンチの段差面に配置される。これは、第1ゲート及び第2ゲートの配置を容易にする。
【0022】
第2の態様によれば、電子機器が提供される。当該電子機器は、バッテリと、該バッテリに接続された充電保護回路とを含み、充電保護回路は、上述のパワー半導体デバイスのうちのいずれかのパワー半導体デバイスを含む。上述の技術的ソリューションでは、ドリフト領域、第1ゲート、及び第2ゲートがトレンチの深さ方向に沿って上下に配置されることで、水平方向において各共通ドレイン金属酸化膜半導体電界効果トランジスタによって占有されるサイズを減少させる。さらに、第1の金属酸化膜半導体構造及び第2の金属酸化膜半導体構造がドリフト領域を共有し、それによりドリフト領域の抵抗を低減させ、単位面積当たりのパワー半導体デバイスの固有オン抵抗を更に低減させる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】従来技術におけるパワー半導体デバイスの構造の概略図である。
【
図2】この出願の一実施形態に従ったパワー半導体デバイスの適用シナリオの概略図である。
【
図3】この出願の一実施形態に従ったパワー半導体デバイスの断面図である。
【
図4】この出願の一実施形態に従ったパワー半導体デバイスの上面図である。
【
図5】この出願の一実施形態に従ったパワー半導体デバイスの電流の概略図である。
【
図6】この出願の一実施形態に従ったパワー半導体デバイスの適用シナリオの概略図である。
【
図7】この出願の一実施形態に従ったパワー半導体デバイスのシミュレーション構造の概略図である。
【
図8a】この出願の一実施形態に従った第2のMOS構造から第1のMOS構造へのブレイクダウン特性を示している。
【
図8b】この出願の一実施形態に従った第1のMOS構造から第2のMOS構造へのブレイクダウン特性を示している。
【
図9a】この出願の一実施形態に従った第2のMOS構造から第1のMOS構造への切替スイッチ特性を示している。
【
図9b】この出願の一実施形態に従った第1のMOS構造から第2のMOS構造への切替スイッチ特性を示している。
【
図10】この出願の一実施形態に従ったパワー半導体デバイスの断面図である。
【
図11】この出願の一実施形態に従ったパワー半導体デバイスの上面図である。
【
図12】この出願の一実施形態に従ったパワー半導体デバイスの電流の概略図である。
【
図13】この出願の一実施形態に従ったパワー半導体デバイスのシミュレーション構造の概略図である。
【
図14a】この出願の一実施形態に従った第2のMOS構造から第1のMOS構造へのブレイクダウン特性を示している。
【
図14b】この出願の一実施形態に従った第1のMOS構造から第2のMOS構造へのブレイクダウン特性を示している。
【
図15a】この出願の一実施形態に従った第2のMOS構造から第1のMOS構造への切替スイッチ特性を示している。
【
図15b】この出願の一実施形態に従った第1のMOS構造から第2のMOS構造への切替スイッチ特性を示している。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、添付の図面を参照して、さらに、この出願の実施形態を詳細に説明する。
【0025】
この出願の実施形態で使用されるパワー半導体デバイスの理解を容易にするために、先ず、この出願の実施形態で提供されるパワー半導体デバイスの適用シナリオを説明する。この出願の実施形態で提供されるパワー半導体デバイスは、例えばスマートフォン、スマートウォッチ、又はタブレットコンピュータなどのポータブル電子機器のバッテリ管理及び充電保護システムに適用されることができ、あるいは、例えば保護電流変換システム及び電源ICなどの異なるシナリオに更に適用され得る。
図2に示すバッテリ保護システムのシナリオにおいて、バッテリ5は、負荷6に電力を供給するように構成され、バッテリ5と負荷6との間に保護回路が配置される。保護回路は、パワー半導体デバイス7及び制御チップ8を含み、パワー半導体デバイス7は、直列に接続された2つのMOS構造9を含む。使用時、制御チップ8は、ターンオンするように2つのMOS構造9を制御するよう構成され得る。パワー半導体デバイス7は、バッテリを過放電、過充電、及び過電流(電流が設計範囲を超える)から効果的に防ぐことができる。しかしながら、従来技術におけるパワー半導体デバイスは、過度に大きいサイズ、及び比較的大きな単位面積当たりの固有オン抵抗を持つ。これに鑑み、この出願の実施形態は、パワー半導体デバイスの小型化を容易にするとともに、単位面積当たりの固有オン抵抗を改善すべく、パワー半導体デバイスの構造及びレイアウトを適切に改善するためのパワー半導体デバイスを提供する。以下、具体的な添付図面及び実施形態を参照して、当該パワー半導体デバイスを詳細に説明する。
【0026】
この出願の実施形態で提供されるパワー半導体デバイスの理解を容易にするために、以下にて先ず、この出願に関連する用語を説明する。
【0027】
PN接合: 拡散を通じた異なるドーピングプロセスを用いることによって、同一の半導体基板(通常、シリコン又はゲルマニウム)にP型半導体とN型半導体が製造され、P型半導体とN型半導体との間の界面に空間電荷領域が形成される。空間電荷領域はPN接合(PN junction)として知られており、PN接合は一方向の導電性を持つ。
【0028】
チャネル: フィールドパワー半導体デバイス内のソース領域とドレイン領域との間の薄い半導体層。
【0029】
ドリフト領域: ドリフト運動及び拡散の両方の影響下で非常に少量のキャリアのみが存在する、パワー半導体デバイス内の高抵抗領域。
【0030】
エピタキシャル層: 基板上にエピタキシャル成長された半導体層。
【0031】
オン抵抗: 線形領域で動作しているパワー半導体デバイスの抵抗値。
【0032】
閾値電圧: 一般に、パワー半導体デバイスの伝達特性カーブにおいて、入力電圧に伴って出力電流が急峻に変わる変化領域の中点に対応する入力電圧を閾値電圧と称する。
【0033】
この出願のこの実施形態における第1ドーピング型及び第2ドーピング型は、それぞれ、P型及びN型である。例えば、パワー半導体デバイスが電子導通型である場合、第1ドーピング型はN型であり、第2ドーピング型はP型であり、あるいは、パワー半導体デバイスが正孔導通型である場合、第1ドーピング型はP型であり、第2ドーピング型はN型である。この出願の以下の例では、第1ドーピング型がN型であり、第2ドーピング型がP型である例を説明のために使用する。第1ドーピング型がP型であり、第2ドーピング型がN型である場合にも、この出願の実施形態の説明が適用可能である。
【0034】
この出願の実施形態で提供されるパワー半導体デバイスの理解を容易にするために、横方向及び縦方向を定義する。縦方向は、パワー半導体デバイスの層構造の積層方向を指し、パワー半導体デバイスの厚さ方向としても参照され得る。横方向は、縦方向に対して垂直であって、パワー半導体デバイスにおける2つの共通ドレイン金属酸化膜半導体電界効果トランジスタの配置方向に平行な方向を指す。
【0035】
図3は、パワー半導体デバイスの断面図である。当該パワー半導体デバイスは、少なくとも、基板11と、基板11上に配置されたエピタキシャル層12とを含み、基板11及びエピタキシャル層12は、パワー半導体デバイスが積層される2つの主要な層構造である。この出願のこの実施形態で提供されるパワー半導体デバイスは更に、従来から配置されている他の層構造(例えばパッシベーション層、相互接続メタル層、及びバックメタル層など)を含み得る。当該パワー半導体デバイスの構造を説明するのを容易にするため、この出願では他の層構造を省略する。
【0036】
基板11及びエピタキシャル層12は上下に配置され、基板11は第1ドーピング型の基板であり、エピタキシャル層12は第1ドーピング型のエピタキシャル層である。エピタキシャル層12にトレンチ31が配設され、トレンチ31の深さは縦方向(パワー半導体デバイスの厚さ方向)に延びる。基板11及びエピタキシャル層12はパワー半導体デバイスのデバイスボディを形成し、エピタキシャル層12はパワー半導体デバイスを担持するための主な機械的部分として用いられる。
【0037】
機能分割によれば、この出願のこの実施形態で提供されるパワー半導体デバイスは、2つの共通ドレイン金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ(略して電界効果トランジスタ)を含む。説明を容易にするために、それら2つの共通ドレイン金属酸化膜半導体電界効果トランジスタを、それぞれ、第1の電界効果トランジスタ100及び第2の電界効果トランジスタ101と呼ぶ。一例において、第1の電界効果トランジスタ100及び第2の電界効果トランジスタ101が配置されるとき、第1の電界効果トランジスタ100及び第2の電界効果トランジスタ101は、トレンチ31の中心線に沿って対称に配置され、第1の電界効果トランジスタ100及び第2の電界効果トランジスタ101が並列に接続されて、パワー半導体デバイスの1セル(
図3には示さず)構造を形成する。理解されるべきことには、
図3は1セル構造のみを示しているが、この出願のこの実施形態で提供されるパワー半導体デバイスは複数のセルを含むことができ、それら複数のセルが周期的に配置され得る。この出願のこの実施形態では、説明のための例として1つのセルのみを用いる。
【0038】
この出願のこの実施形態における第1の電界効果トランジスタ100及び第2の電界効果トランジスタ101は準対称構造のものである。従って、第1の電界効果トランジスタ100を説明のための例として用いる。
【0039】
図3を参照されたい。電界効果トランジスタ100は、第1の金属酸化膜半導体構造(1st Metal-Oxide-Semiconductor Structure,略して第1のMOS構造)及び第2の金属酸化膜半導体構造(2nd Metal-Oxide-Semiconductor Structure,略して第2のMOS構造)を含み、第1のMOS構造10と第2のMOS構造20とが直列に接続される。第1のMOS構造10及び第2のMOS構造20が配置されるとき、第1のMOS構造10及び第2のMOS構造20は上下に配置される。第1のMOS構造10と第2のMOS構造20との間に、第1ドーピング型のエピタキシャル層の部分が存在する。第1ドーピング型のエピタキシャル層の該部分は、ドリフト領域30として使用され、第1のMOS構造10及び第2のMOS構造20によって共有される。
【0040】
第1のMOS構造10は、第1ゲート51、第1ソース61、及び第1チャネル21を含み、第1ゲート51は、第1のMOS構造10に接続された制御コンポーネントとして用いられ、制御チップに接続されるように構成される。第1ゲート51は、制御チップの制御下で、第1チャネル21をオン又はオフにするように制御するよう構成される。
【0041】
第1のMOS構造10の第1ソース61は、第1のMOS構造10の接続端子として用いられ、金属材料又は金属ライクな材料(例えばTiN又はシリサイドなど)材料で製造され得る。配設する際、第1ソース61は、エピタキシャル層12の表面上に配置されてもよいし、エピタキシャル層12に部分的に又は完全に埋められてもよい。
図3は、第1ソース61がエピタキシャル層12に完全に埋め込まれた構造の概略図に過ぎない。他の方式についてここで1つずつ説明することはしない。第1ソース61がエピタキシャル層12に完全に埋め込まれるとき、第1ソース61の表面はエピタキシャル層12の外側に露出され、該表面が、他のメタル層又は相互接続メタル(
図3には図さず)に接続するために、第1ソース61の接続表面として用いられる。
【0042】
第1チャネル21はエピタキシャル層12に配置され、第1チャネル21及び第1ソース61がトレンチ31の同じ側に配置される。第1チャネル21はトレンチ31の側壁に近く、第1ソース61はトレンチ31の側壁から遠く離れている。
【0043】
第1チャネル21は第2ドーピング型の領域である。第1チャネル21が形成されるとき、トレンチ31の側壁上のエピタキシャル層12に第2ドーピング型のドープ領域が配置されて第1チャネル21を形成する。第1チャネル21は、トレンチ31の側壁に沿って縦方向に延び、ドリフト領域30に接する。第1チャネル21は第2ドーピング型の領域であり、ドリフト領域30は第1ドーピング型の領域であるので、ドリフト領域30と第1チャネル21とでPN接合を形成することができる。第1ゲート51に電圧が印加されないとき、又は第1ソース61に対して0の電圧若しくは負の電圧が第1ゲート51に印加されるとき、第1チャネル21とドリフト領域30との間のPN接合はオフとなり、それ故に、第1ソース61から第1チャネル21への及びひいてはドリフト領域30への導通チャネルが閉じられる。第1ゲート51によって印加される電圧の作用下で、トレンチ31の側壁に近い第1チャネル21の領域の部分が反転層を形成し、第2ドーピング導電型が第1ドーピング導電型に転換されることで、第1チャネル21からドリフト領域30への導通チャネルがオンとなり得る。この場合、第1ソース61、第1チャネル21、及びドリフト領域30がターンオンする。
【0044】
第1ゲート51は、トレンチ31内に配置され、第1チャネル21に対向する。第1ゲート51に電圧が印加されるとき、第1チャネル21がターンオンするように制御され得る。
【0045】
オプションの一ソリューションにおいて、第1のMOS構造10は更に、第1チャネル21を第1ゲート51から絶縁する第1ゲート酸化物層41を含む。第1ゲート酸化物層41は、トレンチ31の側壁上に配置され、第1ゲート51と第1チャネル21との間に位置する。配置された第1ゲート酸化物層41は、第1チャネル21と第1ゲート51との間でのリーク電流の増加を抑制し、ゲートの耐電圧能力を向上させる。
【0046】
オプションの一ソリューションにおいて、エピタキシャル層12に更に第1ソースコンタクト領域(図示せず)が配設され、該第1ソースコンタクト領域を介して第1ソース61が第1チャネル21に接続される。第1ソースコンタクト領域は、第1ドーピング型の高濃度ドープ領域13と、第2ドーピング型の高濃度ドープ領域23とを含む。
【0047】
第1ドーピング型の高濃度ドープ領域13は、第1ソース61とトレンチ31との間に位置して、且つ第1ソース61と第1チャネル21との間に位置して、エピタキシャル層12に配置される。第1ドーピング型の高濃度ドープ領域13は、第1ソース61及び第1チャネル21の両方と接触して、第1ソース61、第1ドーピング型の高濃度ドープ領域13、第1チャネル21、及びドリフト領域30を含む導通チャネルを形成する。第1ドーピング型の高濃度ドープ領域13のドーピング濃度は、金属が半導体に接続されるときの抵抗を改善することができるように、一般に、他のドープ領域(例えば、エピタキシャル層12)のドーピング濃度よりも少なくとも1桁高い大きさである。第1ドーピング型の高濃度ドープ領域13が第1ソース61及び第1チャネル21の両方に接続されるとき、第1ドーピング型の高濃度ドープ領域13を使用することによって、第1ソース61とエピタキシャル層12との間のオーミックコンタクト抵抗が低減され得る。
【0048】
第2ドーピング型の高濃度ドープ領域23は、第1ソース61と第1チャネル21との間に位置して、且つトレンチ31とは接触せずに、エピタキシャル層12に置かれる。第2ドーピング型の高濃度ドープ領域23は、第1ソース61及び第1チャネル21の両方と接触する。第2ドーピング型の高ドープ領域23のドーピング濃度は、一般に、他のドープ領域(例えば、第1チャネル21)のドーピング濃度よりも少なくとも1桁高い大きさである。第2ドーピング型の高濃度ドープ領域23を使用することによって、第1ソース61と第1チャネル21との間の接触が改善され得る。
【0049】
第2のMOS構造20及び第1のMOS構造10が上下に配置される。第2のMOS構造20は、第2ゲート52、第2ソース62、及び第2チャネル22を含む。第2ゲート52は、第2のMOS構造20に接続された制御コンポーネントとして用いられ、第2チャネルを制御するように構成される。第2ゲート52は、制御チップの制御下で、第2チャネル22をオン又はオフにするように制御するよう構成される。
【0050】
第2のMOS構造20の第2ソース62は、第2のMOS構造20の端子として用いられ、金属材料又は金属ライクな材料で製造され得る。第2ソース62が配設されるとき、第2ソース62は、トレンチ31内に配置され、トレンチ31の底に沿ってトレンチ31の外部まで延在し、エピタキシャル層12の表面に露出される。第2ソース62は、第2ソース62の接続表面としてエピタキシャル層12の表面まで延びる。
【0051】
第2チャネル22は第2ドーピング型の領域である。第2チャネル22が形成されるとき、トレンチ31の底の下のエピタキシャル層12に第2ドーピング型のドープ領域が配置されて、第2チャネル22を形成する。第2チャネル22は第2ドーピング型の領域であり、ドリフト領域30は第1ドーピング型の領域であるので、ドリフト領域30と第2チャネル22とでPN接合を形成することができる。第2ゲート52に電圧が印加されないとき、又は第2ソース62に対して0の電圧若しくは負の電圧が第2ゲート52に印加されるとき、第2チャネル22とドリフト領域30との間のPN接合はオフとなり、それ故に、第2ソース62から第2チャネル22、ドリフト領域30への導通チャネルが閉じられる。第2ゲート52によって印加される電圧の作用下で、トレンチ31の底及び側壁に近い第2チャネル22の領域の部分に反転層が形成され、第2ドーピング導電型が第1ドーピング導電型に転換されることで、第2ソース62から第2チャネル22、ドリフト領域30への導通チャネルがオンとなり得る。第1のMOS構造10における第1チャネル21がオンになる場合を参照するに、第1ゲート51が第1チャネル21をターンオンするように制御し、且つ第2ゲート52が第2チャネル22をターンオンするように制御するとき、第1ソース61、第1チャネル21、ドリフト領域30、第2チャネル22、及び第2ソース62を含む導通チャネルが形成される。
【0052】
第2ゲート52は、トレンチ31内に配置され、第2チャネル22に対向する。第2ゲート52に電圧が印加されるとき、第2チャネル22がターンオンするように制御され得る。
【0053】
オプションの一ソリューションにおいて、第2のMOS構造20は更に、第2チャネル22を第2ゲート52から絶縁する第2ゲート酸化物層43を含む。第2ゲート酸化物層43は、トレンチ31の側壁上及び底上に配置され、第2ゲート52と第2チャネル22との間に位置する。配置された第2ゲート酸化物層43は、第2チャネル22と第2ゲート52との間でのリーク電流の増加を抑制し、ゲートの耐電圧能力を向上させる。
【0054】
オプションの一ソリューションにおいて、エピタキシャル層12に更に第2ソースコンタクト領域(図示せず)が配設され、該第2ソースコンタクト領域を介して第2ソース62が第2チャネル22に接続される。第2ソースコンタクト領域は、第1ドーピング型の高濃度ドープ領域14と、第2ドーピング型の高濃度ドープ領域24とを含む。
【0055】
第1ドーピング型の高濃度ドープ領域14は、トレンチ31の底でエピタキシャル層12に配置され、第2ソース62の片側に位置する。第1ドーピング型の高濃度ドープ領域14は、第2ソース62及び第2チャネル22の両方と接触して、第2ソース62、第1ドーピング型の高濃度ドープ領域14、第2チャネル22、及びドリフト領域30を含む導通チャネルを形成する。第1ドーピング型の高濃度ドープ領域14のドーピング濃度は、金属が半導体に接続されるときの抵抗を改善することができるように、一般に、他のドープ領域(例えば、エピタキシャル層12)のドーピング濃度よりも少なくとも1桁高い大きさである。第1ドーピング型の高濃度ドープ領域14が第2ソース62及び第2チャネル22の両方に接続されるとき、第1ドーピング型の高濃度ドープ領域14を使用することによって、第2ソース62とエピタキシャル層12との間のオーミックコンタクト抵抗が低減され得る。
【0056】
第2ソースコンタクト領域の第2ドーピング型の高濃度ドープ領域24は、第2ソース62の底に配置され、第2ドーピング型の高濃度ドープ領域24は、第2ソース62及び第2チャネル22の両方と接触する。第2ドーピング型の高ドープ領域24のドーピング濃度は、一般に、他のドープ領域(例えば、第2チャネル22)のドーピング濃度よりも少なくとも1桁高い大きさである。第2ドーピング型の高濃度ドープ領域24を使用することによって、第2ソース62と第2チャネル22との間の接触が改善され得る。
【0057】
オプションの一ソリューションにおいて、上述のコンポーネントを絶縁して保護するために、トレンチ31が、第1ゲート51、第2ゲート52、及び第2ソース62を包む充填層42で充たされる。理解されるべきことには、充填層42がある場合、第2ソース62は、別の回路への接続を容易にするために、充填層の外側に露出される。
【0058】
図3を参照するに、分かることには、第1のMOS構造10及び第2のMOS構造20が具体的に配置されるとき、第1のMOS構造10及び第2のMOS構造20が上下に配置され、それ故に、電界効果トランジスタの横方向サイズを小さくすることができる。加えて、第1ゲート51及び第2ゲート52がトレンチ31の深さ方向に沿って上限に配置され、それ故に、第1のMOS構造10及び第2のMOS構造20が、縦方向に配置されたドリフト領域30を共有することができる。さらに、ドリフト領域30が第1チャネル21と第2チャネル22との間に位置して、パワー半導体デバイスの横方向サイズを占有しないことで、パワー半導体デバイスのサイズが更に縮小され、デバイスの配置密度が向上される。
【0059】
また、第2の電界効果トランジスタ101の構造は、第1の電界効果トランジスタ100の構造と同じである。これら2つの共通ドレイン金属酸化膜半導体電界効果トランジスタの2つの第1チャネルがトレンチの両側に配置され、2つの第1ソースがトレンチの両側に配置される。オプションの一ソリューションにおいて、配置するデバイスを小さくするために、第1の電界効果トランジスタ100及び第2の電界効果トランジスタ101は、一部のコンポーネントを共有する。
図3に示すように、2つの電界効果トランジスタは第2ソース62を共有する。また、2つの電界効果トランジスタの第2チャネル22は互いに接続され得るが、2つの異なる第2ゲート52を用いることにより、対応して2つの電界効果トランジスタの第2チャネル22は別々に制御される。
【0060】
図4は、パワー半導体デバイスの上面図である。
図3及び
図4を参照するに、分かることには、当該パワー半導体デバイスの複数のコンポーネントが横方向に配置され、互いに隣接する第1の電界効果トランジスタ100及び第2の電界効果トランジスタ101は(トレンチの中心線に沿って)鏡面対称である。第1ソース61、第1ドーピング型の高濃度ドープ領域13、第1ゲート酸化物層41、充填層42、及び第2ソース62が、横方向に沿ってエピタキシャル層12の表面上に順に広がる。隣接する2つの電界効果トランジスタが鏡面対称となってセルを形成する。複数のセルが存在するとき、それら複数のセルが横方向に沿って周期的に繰り返し配置され得る。
【0061】
図5は、この出願の実施形態に従ったパワー半導体デバイスの電流の概略図である。
図5の参照符号については、
図3における同じ符号を参照されたい。第1ゲート51及び第2ゲート52は、当該パワー半導体デバイスの制御ポートである。第1ソース61は当該パワー半導体デバイスの出力ポートであり、第2ソース62は当該パワー半導体デバイスの入力ポートである。第1ゲート51及び第2ゲート52に正電圧が印加されると、第1ソース61及び第2ソース62のレベルに対して第1ゲート51及び第2ゲート52のレベルが高くなり、第1チャネル21及び第2チャネル22の両方が開かれる。
図5に破線矢印で示すように、第1経路に沿って電流が流れることができ、第1経路は、第1ソース61、第1チャネル21、第1チャネル21と第2チャネル22との間のドリフト領域、第2チャネル22、及び第2ソース62を順に通る経路を指す。あるいは、
図5に実線の矢印で示すように、第2経路に沿って電流が流れ、第2経路は、第2ソース62、第2チャネル22、第1チャネル21と第2チャネル22との間のドリフト領域、第1チャネル21、及び第1ソース61を順に通る経路を指す。第1ゲート51に正電圧が印加されないとき、第1ゲート51のレベルは第1ソース61に対して低いレベルであり、第1チャネル21が閉じられ、あるいは、第2ゲート52に正電圧が印加されないとき、第2ゲート52のレベルは第1ソース61に対して低いレベルであり、第2チャネル22が閉じられる。
【0062】
上述の説明から分かることには、この出願のこの実施形態で提供されるパワー半導体デバイスでは、第1のMOS構造10及び第2のMOS構造20は、ドリフト領域を共有する構造であり、第2ドーピング型の2つの注入ボディ領域(第1チャネル21及び第2チャネル22)と第1ドーピング型の中間ドリフト領域とで、P-N-P共通カソードの背中合わせのダイオードを形成することができ、それ故に、第1のMOS構造10及び第2のMOS構造20は、共通ドレイン金属酸化膜半導体電界効果トランジスタを形成するとともに、双方向の耐電圧を実現することができる。この出願のこの実施形態で提供されるパワー半導体デバイスは、縦型ドリフト領域及び2つのゲートが上下に配置される構造設計を用いており、それにより、横方向において各電界効果トランジスタによって占有されるサイズが小さくなる。また、第1のMOS構造10及び第2のMOS構造20が縦型ドリフト領域を共有し、その結果、電流が流れるときに基板を通らない。従って、当該パワー半導体デバイスがオンになっているとき、当該パワー半導体デバイスは、基板抵抗を持たずに、より小さいチャネル抵抗を持ち、それにより当該パワー半導体デバイスの抵抗が低減される。
【0063】
図6は、この出願の実施形態に従ったパワー半導体デバイスの適用シナリオの概略図である。バッテリ200のカソードが、バッテリ管理及び充電保護回路を介して負荷300に接続される。この出願のこの実施形態で提供されるパワー半導体デバイスは、バッテリ300を保護するための構造として回路上に配置される。該回路内でパワー半導体デバイスの第1の電界効果トランジスタ100と第2の電界効果トランジスタ101とが並列に接続され、第1の電界効果トランジスタ100の第1のMOS構造10と第2のMOS構造20とが直列に接続される。第1のMOS構造10及び第2のMOS構造20の両方が、制御チップ400によって制御される。制御チップ400は、第1ゲート及び第2ゲートのレベルを制御して、第1のMOS構造10及び第2のMOS構造20をターンオン又はターンオフするように制御する。
【0064】
また、この出願のこの実施形態で提供されるパワー半導体デバイスは、(
図4に示したような)平面デバイス構造を使用し、WLCSP(Wafer Level Chip Scale Packaging,ウエハレベルチップスケールパッケージング)パッケージングを実現するために、第2のMOS構造20はLDMOS(Laterally Diffused Metal Oxide Semiconductor,横方向拡散金属酸化膜半導体)構造設計を用いてもよい。
【0065】
この出願のこの実施形態で提供されるパワー半導体デバイスの技術的効果を検証するために、この出願のこの実施形態で提供されるパワー半導体デバイスを、半導体TCAD(Technology Computer Aided Design,これは、半導体プロセスシミュレーション及びデバイスシミュレーションに用いられるツールである)を用いてシミュレーションする。
【0066】
15Vの双方向阻止電圧を持つN型共通ドレイン電界効果トランジスタを用いてシミュレーションを行う例において、電界効果トランジスタの構造パラメータを表1及び
図7に示す。単一の共通ドレイン効果トランジスタの横方向サイズ1は0.5μmであり、すなわち、パワー半導体デバイスのセルのサイズは1μmである。1.8e19cm
-3の濃度及び1μmの厚さ2を持つN型基板上に、1.3e17cm
-3のドーピング濃度及び3μmの厚さ3を持つN型エピタキシャル層が配設されて、パワー半導体デバイスのボディを形成する。電界効果トランジスタの該ボディの表面に、1μmの深さ12及び0.35μmのハーフ幅を持つトレンチが形成される。デバイスボディの表面に、P型イオン注入により、0.28μmのポテンシャルウェル深さ4及び0.16μmのポテンシャルウェル幅6を持つ第1のP型チャネル(第1チャネル)が形成され、注入量は1.35e13cm
-3である。N型イオン注入及びエッチングプロセスを用いて、0.15μmの深さ8及び0.1μmの幅10を持つN型高濃度ドープ領域が形成され、P型イオン注入及びエッチングプロセスを用いて、0.15μmの深さ9及び0.1μmの幅11を持つP型高濃度ドープ領域が形成される。トレンチの底に、P型イオン注入により、0.45μmのポテンシャルウェル深さ5、約0.35μmのポテンシャルウェルのハーフ幅13、及び0.18μmのチャネル長7を持つ第2のP型チャネル(第2チャネル)が形成され、注入量は1.2e13cm
-3及び6e13cm
-3ある。250Åの厚さを持つゲート酸化物層(これは
図7には記しておらず、G1/G2とトレンチの側壁との間に位置する)がトレンチの側壁上に配設され、0.35μmの深さ14及び0.18μmの幅16を持つ多結晶シリコン、並びに0.18μmの深さ15及び0.18μmの幅10を持つ多結晶シリコンが充填されて、それぞれ、ゲートG1(第1ゲート)及びゲートG2(第2ゲート)を形成する。ゲートG1とゲートG2は、0.3μmの厚さ17を持つ充填層を介して絶縁される。電力用電界効果トランジスタの閾値電圧、すなわち、当該パワー半導体デバイスの閾値電圧は、ゲート酸化物層の厚さ及びP型チャネルの濃度に依存する。電力用電界効果トランジスタのブレイクダウン電圧及びオン抵抗、すなわち、当該パワー半導体デバイスのブレイクダウン電圧及びオン抵抗は、例えばN型ドリフト領域の濃度、深さ、及び長さ、P型チャネル領域の濃度及び長さ、酸化物層の厚さ、並びにトレンチ深さなどのファクタによって決定される。
【表1】
【0067】
表1のパワー半導体デバイスについてシミュレーションを行い、シミュレーション結果を
図8a及び
図8bに示す。
図8a及び
図8bは、デバイスのブレイクダウン電圧特性のシミュレーションカーブ図である。第1ゲート及び第1ソース(ソースS1)の電位がローレベルにあるときに、第2ソース及び第2ゲートの電圧が0Vから徐々に上昇し、第2ソース(ソースS2)の電流が徐々に読み出される。第2ソースの電流が突然1μA/mmに変化するとき、対応する第2ソースの電圧が、第2のMOS構造のブレイクダウン電圧、すなわち、第2ソースから第1ソースへのブレイクダウン電圧である。
図8aから分かることには、第2のMOS構造のブレイクダウン電圧は15Vである。同様に、第1のMOS構造のブレイクダウン電圧は、第1ソースから第2ソースへのブレイクダウン電圧である。
図8bから分かることには、第1のMOS構造のブレイクダウン電圧は15Vである。
【0068】
図9a及び
図9bは、パワー半導体デバイスの切替スイッチ特性のシミュレーションカーブ図である。第1ソースの電位がローレベルにあり、且つ第2ソースが0.1Vの固定電圧に接続されるとき、第1ゲートの電流及び第2ゲートの電流が、それぞれ、0V及び0.1Vから徐々に上昇し、第2ソースの電流が徐々に読み出される。第2ソースの電流が突然1μA/mmまで上昇するときの対応する第1ゲートの電圧が、第1のMOS構造の閾値電圧である。
図9aに示されるように、第1のMOS構造の閾値電圧のシミュレーション結果は0.8Vである。第1ソース電流が突然1μA/mmまで上昇するときの対応する第2ゲートの電圧が、第2のMOS構造の閾値電圧である。
図9bに示されるように、第2のMOS構造の閾値電圧のシミュレーション結果は0.8Vである。
【0069】
また、
図9a及び
図9bに示されるように、パワー半導体デバイスのゲート-ソースバイアス電圧が3.1Vであるとき、この出願の実施形態における共通ドレインパワー半導体デバイスの固有オン抵抗は、たったの約5mΩ・mm
2である。
【0070】
上述の実験検証から分かることには、この出願の実施形態で提供されるパワー半導体デバイスにおいて、第1のMOS構造及び第2のMOS構造が縦型ドリフト領域を共有し、第1ゲート及び第2ゲートが上下に分布されると、デバイスのブレイクダウン特性は15Vを満たすことができ、単位面積当たりのオン抵抗はたったの5mΩ・mm2である。一方で、業界で現在用いられている、2つのMOSFETが共通ドレインモードで背中合わせに直列接続されるパワー半導体デバイスにおいては、ブレイクダウン電圧が12Vであるとき、パワー半導体デバイスの単位面積当たりの固有オン抵抗は10.6mΩ・mm2である(データソース: パナソニック製品データFCAB21490L - Gate resistor installed Dual N-channel MOSFET For lithium-ion secondary battery protection circuits,2016年)。従って、業界における既存のパワー半導体デバイスと比較して、この出願の実施形態で提供されるパワー半導体デバイスの単位面積当たりのオン抵抗が53%低減され得るとともに、ブレイクダウン電圧が15V又はそれより高くまで上昇され得る。
【0071】
この出願の実施形態で提供されるパワー半導体デバイスの理解を容易にするために、以下、当該パワー半導体デバイスの製造プロセスを詳細に説明する。電界効果トランジスタの形成を一例として用いる。当該パワー半導体デバイスは、従来からのディスクリートトレンチMOS又は集積BCD(Bipolar CMOS DMOS,バイポーラ・相補型金属酸化膜半導体・二重拡散金属酸化膜半導体)プロセス技術に基づいて製造され得る。
図3に示した構造を参照するに、具体的な製造方法は以下の通りである。
【0072】
N型基板11上に、特定のドーピング濃度を持つN型ドープエピタキシャル層12がエピタキシャル成長され、そして、エピタキシャル層12がエッチングされてトレンチ31を形成する。
【0073】
トレンチ31の底の下のエピタキシャル層12に、イオン注入によりP型ドープ領域が形成されて第2チャネル22を形成し、トレンチ31の上部の外側のエピタキシャル層12に、P型ドープ領域が形成されて第1チャネル21を形成する。
【0074】
熱酸化によりトレンチ31内にゲート酸化物層が形成され、該ゲート酸化物層がトレンチ31の底及び側壁を覆う。
【0075】
トレンチが多結晶シリコンで充填され、エッチングプロセスを用いて第2ゲート52が形成される。第2ゲート52は、第2チャネル22がターンオンするように制御され得るように、第2チャネル22に対向する。また、ゲート酸化物層のうち、第2ゲート52を第2チャネル22から絶縁する部分が、第2ゲート酸化物層43である。
【0076】
エピタキシャル層12に、イオン注入により、N型高濃度ドープ領域13及びN型高濃度ドープ領域14が形成される。化学気相成長によってトレンチ31内に充填層42が堆積され、CMP(化学機械研磨)プロセスを用いてトレンチ内のみに酸化物層42が埋められる。例えば、充填層42は酸化物層とし得る。
【0077】
充填層42の一部がエッチングによって除去され、エッチング後に残った充填層の表面が、第1ゲート51を担持するための表面である。充填層42がエッチングされるとき、ゲート酸化物層の一部もエッチング除去される。
【0078】
熱酸化によりトレンチ31の側壁にゲート酸化物層が再生成され、該ゲート酸化物層が第1ゲート酸化物層41である。第1ゲート酸化物層41の厚さは第2ゲート酸化物層43の厚さと基本的に同じである。トレンチ31の側壁に付与されると、配置された第1ゲート酸化物層41は、第1ゲート51を第1チャネル21から絶縁するために使用され得る。
【0079】
エッチング後に残っている充填層に多結晶シリコンが堆積され、エッチングプロセスを用いて第1ゲート51が形成される。化学気相成長及びエッチングにより、充填層はトレンチ内に連続して堆積される。
【0080】
トレンチ内のオーミックコンタクト領域の上の充填層がエッチングにより除去され、エピタキシャル層12の表面に、及びトレンチ31の底のオーミックコンタクト領域に、イオン注入により、P型高濃度ドープ領域23及びP型高濃度ドープ領域24が分離して形成される。最後に、メタルが堆積されて第1ソース61及び第2ソース62を形成する。
【0081】
P型高濃度ドープ領域23は、イオン注入によってエピタキシャル層12の表面のオーミックコンタクト領域に形成され、最後にメタルが堆積されて第1ソース61を形成する。
【0082】
図10は、この出願の実施形態に従った他のパワー半導体デバイスの構造の概略図である。
図10に示すパワー半導体デバイスの構造は、
図3に示すパワー半導体デバイスの構造に類似しており、デバイスの内部構造の配置のみが異なる。
【0083】
図10の一部の参照符号については、
図3における同じ参照符号を参照されたい。詳細をここで再び説明することはしない。
図10に示すトレンチはT字形トレンチであり、該T字形トレンチは、第1トレンチ32及び第2トレンチ33を含む。第2ゲート52はT字形トレンチの底(第2トレンチ33の底)に配置され、第1ゲート51はT字形トレンチの段差面(第1トレンチ32の底)に配置される。
【0084】
図10から分かることには、第1ゲート51及び第2ゲート52は、トレンチの深さ方向に沿ってスタガード配置されている。
図3に示したパワー半導体デバイスと比較して、第1ゲート51は、第1トレンチ32の底に直接配置されることができ、その結果、配置する際の第1ゲート51の位置決めが容易になり、第1ゲート51を配置する精度が向上される。また、
図10に示すトレンチが使用される場合、ゲート酸化物層が製造されるときに、第1ゲート51及び第2ゲート52を一度の多結晶シリコンエッチング処理によって同時に形成することができ、それにより製造プロセスを単純化し得る。
【0085】
図11は、パワー半導体デバイスの上面図である。
図10及び
図11を参照するに、分かることには、当該パワー半導体デバイスの複数のコンポーネントが横方向に配置され、互いに隣接する第1の電界効果トランジスタ100及び第2の電界効果トランジスタ101は(トレンチの中心線に沿って)鏡面対称である。第1ソース61、第1ドーピング型の高濃度ドープ領域13、第1ゲート酸化物層41、充填層42、及び第2ソース62が、横方向に沿ってエピタキシャル層12の表面上に順に広がる。隣接する2つの電界効果トランジスタが鏡面対称となってセルを形成する。複数のセルが存在するとき、それら複数のセルが横方向に沿って周期的に繰り返し配置され得る。
【0086】
図12は、この出願の実施形態に従ったパワー半導体デバイスの電流の概略図である。第1ゲート51及び第2ゲート52は、当該パワー半導体デバイスの制御ポートである。第1ソース61は当該パワー半導体デバイスの入力ポートであり、第2ソース62は当該パワー半導体デバイスの出力ポートである。第1ゲート51及び第2ゲート52に電圧が印加されると、第1ソース61及び第2ソース62のレベルに対して第1ゲート51及び第2ゲート52のレベルが高くなり、第1チャネル21及び第2チャネル22の両方が開かれる。
図5に破線矢印で示すように、第1経路に沿って電流が流れることができ、第1経路は、第1ソース61、第1チャネル21、第1チャネル21と第2チャネル22との間のドリフト領域、第2チャネル22、及び第2ソース62を順に通る経路を指す。あるいは、
図5に実線の矢印で示すように、第2経路に沿って電流が流れ、第2経路は、第2ソース62、第2チャネル22、第1チャネル21と第2チャネル22との間のドリフト領域、第1チャネル21、及び第1ソース61を順に通る経路を指す。第1ゲート51に正電圧が印加されないとき、第1ゲート51のレベルは第1ソース61に対して低いレベルであり、第1チャネル21が閉じられ、あるいは、第2ゲート52に正電圧が印加されないとき、第2ゲート52のレベルは第1ソース61に対して低いレベルであり、第2チャネル22が閉じられる。
【0087】
本発明の技術的効果を検証するために、この出願のこの実施形態におけるデバイスの構造パラメータ及び性能パラメータを、半導体TCADを用いることによってシミュレーションする。電界効果トランジスタの構造パラメータを表2及び
図13に示す。1.8e19cm
-3の濃度を持つN型基板上に、1.3e17cm
-3のドーピング濃度及び3μmの厚さを持つN型エピタキシャル層が配設されて、デバイスボディを形成する。該デバイスボディの表面に、0.6μmの深さ及び0.55μmの幅を持つ第1トレンチが形成される。第1トレンチの底を更にエッチングして、0.3μmの深さ及び0.35μmの幅を持つ第2トレンチを形成する。デバイスボディの表面に、P型イオン注入により、0.28μmのポテンシャルウェル深さ及び14μmのチャネル長を持つ第1のP型チャネル(第1チャネル)が形成され、注入量は1.35e13cm
-3であり、N型イオン注入により、0.15μmの深さ及び0.1μmの幅を持つ第1ドーピング型の高濃度ドープ領域が形成され、P型イオン注入により、0.15μmの深さ及び0.1μmの幅を持つ第2ドーピング型の高濃度ドープ領域が形成される。第2トレンチの底に、P型イオン注入により、0.55μmのポテンシャルウェル深さ及び0.21μmのチャネル長を持つ第2のP型チャネル(第2チャネル)が形成される。第1トレンチ及び第2トレンチの中に、250Åの厚さを持つゲート酸化物層が配置される。0.4μmの深さ及び0.18μmの幅を持つ多結晶シリコン、並びに0.2μmの深さ及び0.18μmの幅を持つ多結晶シリコンが充填されて、それぞれ、第1ゲート(ゲートG1)及び第2ゲート(ゲートG2)を形成する。当該パワー半導体デバイスの閾値電圧は、ゲート酸化物層の厚さ及びP型ウェル領域の濃度に依存する。当該デバイスのブレイクダウン電圧及びオン抵抗は、例えばN型ドリフト領域の濃度、深さ、及び長さ、P型チャネル領域の濃度及び長さ、酸化物層の厚さ、並びにトレンチ深さなどのファクタによって決定される。
【表2】
【0088】
表2のパワー半導体デバイスについてシミュレーションを行い、シミュレーション結果を
図14a及び
図14bに示す。
図14a及び
図14bは、パワー半導体デバイスのブレイクダウン電圧のシミュレーションカーブ図である。第1ゲート及び第1ソース(ソースS1)の電位がローレベルにあるときに、第2ソース及び第2ゲートの電圧が0Vから徐々に上昇し、第2ソース(ソースS2)の電流が徐々に読み出される。第2ソースの電流が突然1μA/mmに変化するとき、対応する第2ソースの電圧が、第2のMOS構造のブレイクダウン電圧、すなわち、第2ソースから第1ソースへのブレイクダウン電圧である。
図14aから分かることには、第2のMOS構造のブレイクダウン電圧は15Vである。同様に、第1のMOS構造のブレイクダウン電圧は、第1ソースから第2ソースへのブレイクダウン電圧である。
図14bから分かることには、第1のMOS構造のブレイクダウン電圧は15Vである。
【0089】
図15a及び
図15bは、パワー半導体デバイスの切替スイッチ特性のシミュレーションカーブ図である。第1ソースの電位がローレベルにあり、且つ第2ソースが0.1Vの固定電圧に接続されるとき、第1ゲートの電流及び第2ゲートの電流が、それぞれ、0V及び0.1Vから徐々に上昇し、第2ソースの電流が徐々に読み出される。第2ソースの電流が突然1μA/mmまで上昇するときの対応する第1ゲートの電圧が、第1のMOS構造の閾値電圧である。
図15aに示されるように、第1のMOS構造の閾値電圧のシミュレーション結果は0.9Vである。第2ソース電流が突然1μA/mmまで上昇するときの対応する第2ゲートの電圧が、第2のMOS構造の閾値電圧である。
図15bに示されるように、第2のMOS構造の閾値電圧のシミュレーション結果は0.9Vである。
【0090】
また、パワー半導体デバイスのブレイクダウン電圧が15Vであり、そのゲート-ソースバイアス電圧が3.1Vであるとき、この出願のこの実施形態における第1のMOS構造及び第2のMOS構造のどちらの固有オン抵抗も、たったの約7mΩ・mm2である。
【0091】
上述の実験検証から分かることには、この出願のこの実施形態で提供されるパワー半導体デバイスにおいて、2つのMOS構造が縦型ドリフト領域を共有し、第1ゲート及び第2ゲートがスタガード方式でずらして分布され、横方向のトレンチが使用されると、単位面積当たりのオン抵抗は7mΩ・mm2である。一方で、業界で現在用いられている、2つのMOS構造が背中合わせの共通ドレインモードで直列接続されるパワー半導体デバイスにおいては、ブレイクダウン電圧が12Vであるとき、パワー半導体デバイスの単位面積当たりの固有オン抵抗は10.6mΩ・mm2である(データソース: パナソニック製品データFCAB21490L - Gate resistor installed Dual N-channel MOSFET For lithium-ion secondary battery protection circuits,2016年)。従って、業界における既存のパワー半導体デバイスと比較して、この出願の実施形態で提供されるパワー半導体デバイスの単位面積当たりのオン抵抗が33%低減され得るとともに、ブレイクダウン電圧が15V又はそれより高くまで上昇され得る。また、第1ゲート及び第2ゲートがスタガード方式で配置される。これは、製造プロセスを単純化して生産効率を向上させることができる。
【0092】
この出願の一実施形態は更に、例えばノートブックコンピュータ、携帯電話、ウェアラブル機器、又はタブレットコンピュータなどの電子機器を提供する。当該電子機器は、バッテリと、該バッテリに接続された出力回路とを含み、該出力回路は、上述のパワー半導体デバイスのうちのいずれかのパワー半導体デバイスを含む。上述の技術的ソリューションでは、水平方向において各共通ドレイン金属酸化膜半導体電界効果トランジスタによって占有されるサイズを減少させるように、第1ゲート及び第2ゲートがトレンチの深さ方向に沿って上下に配置される。加えて、第1の金属酸化膜半導体構造及び第2の金属酸化膜半導体構造がドリフト領域を共有し、それによりドリフト領域の抵抗を低減させる。さらに、2つの同じ共通ドレイン金属酸化膜半導体電界効果トランジスタが並列に背中合わせで対称的に接続されることで、パワー半導体デバイスの抵抗が、パワー半導体デバイスが単一の共通ドレイン金属酸化膜半導体を使用する場合の抵抗の半分になり、それによってパワー半導体デバイスの単位面積当たりの固有オン抵抗が低減される。
【0093】
明らかなことには、当業者は、この出願の精神及び範囲から逸脱することなく、この出願に対して様々な変更及び変形を為すことができる。この出願は、この出願の以下の請求項及びそれらと均等な技術によって定められる保護範囲に入る限り、この出願に対するそれらの変更及び変形に及ぶことを意図している。
【国際調査報告】