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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-14
(54)【発明の名称】植込型受動式平均圧センサ
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/0215 20060101AFI20231207BHJP
【FI】
A61B5/0215 Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023532576
(86)(22)【出願日】2021-11-29
(85)【翻訳文提出日】2023-07-28
(86)【国際出願番号】 US2021060990
(87)【国際公開番号】W WO2022115690
(87)【国際公開日】2022-06-02
(31)【優先権主張番号】63/119,337
(32)【優先日】2020-11-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】506192652
【氏名又は名称】ボストン サイエンティフィック サイムド,インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】BOSTON SCIENTIFIC SCIMED,INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】スターマン、ジェフリー イー.
【テーマコード(参考)】
4C017
【Fターム(参考)】
4C017AA01
4C017AB04
4C017AC03
4C017BC14
(57)【要約】
植込型圧力センサが、ハウジングと、ハウジングによって収容されるとともにハウジングの外部の外部圧力に晒される感知構成要素とを含む。外部圧力に応答して、感知構成要素は、少なくとも1分の期間にわたる外部圧力の平均圧を表す物理的変化を受けるように構成される。圧力センサは、感知構成要素に動作可能に接続される回路であって、感知構成要素の物理的変化に応答して、ある期間にわたる外部圧力の平均圧を表す平均圧信号を生成する回路を含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
植込型圧力センサであって、
前記植込型圧力センサはハウジングを備え、
前記植込型圧力センサは感知構成要素を備え、前記感知構成要素は、前記ハウジングによって収容されるとともに前記ハウジングの外部の外部圧力に晒され、前記外部圧力に応答して、前記感知構成要素は、少なくとも1分の期間にわたる前記外部圧力の平均圧を表す物理的変化を受けるように構成されており、
前記植込型圧力センサは回路を備え、前記回路は、前記感知構成要素に動作可能に接続されるとともに前記感知構成要素の前記物理的変化に応答して、前記期間にわたる前記外部圧力の前記平均圧を表す平均圧信号を生成する、
植込型圧力センサ。
【請求項2】
前記回路が、遠隔供給源からのエネルギー伝送を繰り返し受け、応答して、前記平均圧信号を前記遠隔供給源に返送するように構成される、請求項1に記載の植込型圧力センサ。
【請求項3】
前記感知構成要素が、電力供給なしに、前記期間にわたる前記外部圧力の前記平均圧を表す前記物理的変化を受けて維持する、請求項1又は2に記載の植込型圧力センサ。
【請求項4】
前記感知構成要素が、前記ハウジングの外部の前記外部圧力に晒される第1のプレートを備え、前記第1のプレートは、前記外部圧力の圧力変化に応答して移動するように構成されており、
前記感知構成要素が、前記第1のプレートから間隔を開けて前記ハウジング内に配置されている第2のプレートを備え、
前記感知構成要素が、前記第1のプレートと前記第2のプレートとの間に配置されている粘弾性材料を備える、
請求項1~3のいずれか一項に記載の植込型圧力センサ。
【請求項5】
前記粘弾性材料が非導電性材料を含み、前記平均圧信号が、前記第1のプレートと前記第2のプレートとの間の静電容量を表す、請求項4に記載の植込型圧力センサ。
【請求項6】
前記粘弾性材料が導電性材料を含み、前記平均圧信号が、前記第1のプレートと前記第2のプレートとの間の抵抗の指標を含む、請求項4に記載の植込型圧力センサ。
【請求項7】
前記感知構成要素が、液圧式感知構成要素を備える、請求項1~3のいずれか一項に記載の植込型圧力センサ。
【請求項8】
前記液圧式感知構成要素が、
前記外部圧力に晒される液圧チャンバと、
前記液圧チャンバ内に入れられている第1の流体と、
圧力チャンバと、
前記圧力チャンバ内に入れられている第2の流体と、
前記第1の流体と前記第2の流体との間に配置されているバリアと、
を備え、
前記圧力チャンバ内の圧力に対する前記液圧チャンバ内の圧力の相対的な変化により、前記バリアの移動が引き起こされる、
請求項7に記載の植込型圧力センサ。
【請求項9】
前記バリアが、高透過性材料を有する低流量弁を備える、請求項8に記載の植込型圧力センサ。
【請求項10】
ある期間にわたる平均圧値の指標をもたらす信号を提供するように構成された植込型圧力センサであって、
前記植込型圧力センサは、患者に埋め込まれるように構成されたハウジングを備え、
前記植込型圧力センサは、感知構成要素を備え、前記感知構成要素は、前記ハウジング内に配置されているが前記ハウジングの外部の環境に晒されており、前記感知構成要素は、ある期間にわたる前記ハウジングの外部の前記環境内の平均圧の指標をもたらす平均圧測定値を維持するように構成されており、
前記感知構成要素が、前記平均圧測定値を電気エネルギーなしで維持する、植込型圧力センサ。
【請求項11】
前記感知構成要素が、少なくとも1時間の時定数を有する粘弾性材料を含む、請求項10に記載の植込型圧力センサ。
【請求項12】
患者の左心耳を実質的に閉鎖するために、前記患者の左心耳内に嵌るように適合された左心耳閉鎖装置であって、
前記左心耳閉鎖装置は、拡張可能なフレームワークを備え、
前記左心耳閉鎖装置は、感知構成要素を備え、前記感知構成要素は、前記左心耳閉鎖装置が埋め込まれると、前記患者の心臓の左心房内で左心房圧に晒され、前記感知構成要素は、前記左心房圧に応答して、少なくとも1分の期間にわたる前記左心房圧の平均圧を表す物理的変化を受けるように構成されており、
前記左心耳閉鎖装置は、回路を備え、前記回路は、前記感知構成要素に動作可能に接続されるとともに、前記感知構成要素の前記物理的変化に応答して、前記期間にわたる前記左心房圧の前記平均圧を表す平均圧信号を生成するように構成される、
左心耳閉鎖装置。
【請求項13】
前記感知構成要素が、少なくとも10分の時定数を有する粘弾性材料を含み、前記粘弾性材料は、前記左心房圧に応答して、前記期間にわたる前記左心房圧の前記平均圧を表すように粘弾性的に変形する、請求項12に記載の左心耳閉鎖装置。
【請求項14】
前記感知構成要素が、低流量弁を含む液圧システムを備え、前記左心房圧の正の変化に応答して、前記感知構成要素が、前記低流量弁によって少なくとも部分的に規定される前記感知構成要素の時定数に従って、液圧抵抗下で第1の方向に前記低流量弁を通して流体を移動させる、請求項12に記載の左心耳閉鎖装置。
【請求項15】
前記左心房圧の負の変化に応答して、前記感知構成要素が、前記感知構成要素の前記時定数に従って、前記第1の方向とは反対の第2の方向に前記低流量弁を通して流体を移動させる、請求項19に記載の左心耳閉鎖装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、圧力センサに関する。より詳細には、本開示は、平均圧指標をもたらすことができる植込型圧力センサに関する。
【背景技術】
【0002】
血圧を含む様々な異なる圧力を測定するために、様々な圧力センサが開発されてきた。いくつかの圧力センサは、血圧値を提供するために体内に埋め込まれる場合がある。それらは埋め込まれるので、圧力センサに経時的に電力を提供できなくなる問題が存在することがある。さらに、圧力センサは、瞬間的な圧力指標をもたらすことができるが、典型的には、経時的な平均圧の指標をもたらすようには構成されていない。特に、経時的な平均圧の測定値を維持するために継続的な電気エネルギーを必要とせずに、経時的な平均圧の指標をもたらすことができる圧力センサが継続的に必要とされている。
【発明の概要】
【0003】
本開示は、経時的な平均圧の指標を維持するための継続的な電気エネルギーがなくても、経時的な平均圧の指標をもたらすことができる圧力センサに関する。例として、植込型圧力センサが、ハウジングと、ハウジングによって収容されるとともにハウジングの外部の外部圧力に晒される感知構成要素とを含む。外部圧力に応答して、感知構成要素は、少なくとも1分の期間にわたる外部圧力の平均圧を表す物理的変化を受けるように構成される。圧力センサは、感知構成要素に動作可能に接続された回路であって、感知構成要素の物理的変化に応答して、ある期間にわたる外部圧力の平均圧を表す平均圧信号を生成する、回路を含む。
【0004】
代替的に又は追加的に、回路は、遠隔供給源からのエネルギー伝送を繰り返し受け、応答して、平均圧信号を遠隔供給源に返送するように構成され得る。
代替的に又は追加的に、感知構成要素は、電力供給なしに、ある期間にわたる外部圧力の平均圧を表す物理的変化を受け、かつ維持し得る。
【0005】
代替的に又は追加的に、感知構成要素の物理的変化は、少なくとも1時間の時定数を有し得る。
代替的に又は追加的に、感知構成要素の物理的変化は、少なくとも12時間の時定数を有し得る。
【0006】
代替的に又は追加的に、感知構成要素の物理的変化は、少なくとも1日の時定数を有し得る。
代替的に又は追加的に、ハウジングは、患者の心臓、膀胱、脳、脊柱、眼、関節又は血管系の内部に配置されるように適合され得る。
【0007】
代替的に又は追加的に、感知構成要素は、ハウジングの外部の外部圧力に晒される第1のプレートであって、外部圧力の圧力変化に応答して移動するように構成される、第1のプレートと、第1のプレートから間隔を空けて、ハウジング内に配置されている第2のプレートと、第1のプレートと第2のプレートとの間に配置されている粘弾性材料と、を含み得る。
【0008】
代替的に又は追加的に、粘弾性材料は、非導電性材料を含み得、平均圧信号は、第1のプレートと第2のプレートとの間の静電容量を表し得る。
代替的に又は追加的に、粘弾性材料は、導電性材料を含み得、平均圧信号は、第1のプレートと第2のプレートとの間の抵抗の指標であり得る。
【0009】
代替的に又は追加的に、第1のプレートは、導電性であり得、第2のプレートは、導電性であり得る。
代替的に又は追加的に、感知構成要素は、液圧式感知構成要素を含み得る。
【0010】
代替的に又は追加的に、液圧式感知構成要素は、外部圧力に晒される液圧チャンバと、液圧チャンバ内に入れられている第1の流体と、圧力チャンバと、圧力チャンバ内に入れられている第2の流体と、第1の流体と第2の流体との間に配置されているバリアと、を含み得る。圧力チャンバ内の圧力に対する液圧チャンバ内の圧力の相対的な変化により、バリアの移動が引き起こされ得る。
【0011】
代替的に又は追加的に、バリアは、高透過性材料を有する低流量弁を含み得る。
別の例として、植込型圧力センサが、ある期間にわたる平均圧値の指標をもたらす信号を提供するように構成される。植込型圧力センサは、患者に植え込まれるように構成されたハウジングと、ハウジング内に配置されているが、ハウジングの外部の環境に晒される感知構成要素と、を含む。感知構成要素は、ある期間にわたるハウジングの外部の環境内の平均圧の指標をもたらす平均圧測定値を、電気エネルギーなしで維持するように構成される。
【0012】
代替的に又は追加的に、感知構成要素は、少なくとも1時間の時定数を有する粘弾性材料を含み得る。
別の例として、左心耳閉鎖装置が、患者の左心耳を実質的に閉鎖するために、患者の左心耳内に嵌るように適合されている。左心耳閉鎖装置は、拡張可能なフレームワークを含む。左心耳閉鎖装置が埋め込まれると、感知構成要素が患者の心臓の左心房内で左心房圧に晒され、左心房圧に応答して、感知構成要素は、少なくとも1分の期間にわたる左心房圧の平均圧を表す物理的変化を受けるように構成される。回路は、感知構成要素に動作可能に結合されており、感知構成要素の物理的変化に応答して、ある期間にわたる左心房圧の平均圧を表す平均圧信号を生成するように構成される。
【0013】
代替的に又は追加的に、感知構成要素は、左心房圧に応答して、ある期間にわたる左心房圧の平均圧を表すように粘弾性的に変形する、少なくとも10分の時定数を有する粘弾性材料を含み得る。
【0014】
代替的に又は追加的に、感知構成要素は、低流量弁を含む液圧システムを含み得、左心房圧の正の変化に応答して、感知構成要素は、低流量弁によって少なくとも部分的に規定される感知構成要素の時定数に従って、液圧抵抗下で第1の方向に低流量弁を通して流体を移動させる。
【0015】
代替的に又は追加的に、左心房圧の負の変化に応答して、感知構成要素は、感知構成要素の時定数に従って、第1の方向とは反対の第2の方向に低流量弁を通して流体を移動させてもよい。
【0016】
いくつかの実施形態の上記の概要は、本開示の各開示された実施形態又は全ての実装形態を説明することを意図していない。以下の図面及び「発明を実施するための形態」は、これらの実施形態をより具体的に例示する。
【0017】
本開示は、添付の図面に関連して以下の「発明を実施するための形態」を考慮することにより、より完全に理解することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】例示的な圧力感知システムの概略ブロック図である。
図2】例示的な圧力センサの概略図である。
図3】平均圧データのグラフ表示である。
図4】例示的な圧力センサの概略図である。
図4A】例示的な圧力センサの一部分の概略図である。
図4B】例示的な圧力センサの一部分の概略図である。
図5】例示的な左心耳閉鎖装置の斜視図である。
図6図5の例示的な左心耳閉鎖装置の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本開示は、様々な修正形態及び代替形態に適用可能であるが、その詳細が図面において例として示されており、詳細に説明される。しかしながら、その意図は、本発明を記載された特定の実施形態に限定することではないことを理解されたい。逆に、本発明は、本開示の趣旨及び範囲内に入る全ての修正形態、均等物、及び代替形態を包含するものである。
【0020】
以下に定義される用語については、特許請求の範囲又は本明細書の他の箇所において異なる定義が与えられない限り、これらの定義が適用されるものとする。
全ての数値は、本明細書において、明示的に示されているか否かにかかわらず、用語「約」によって修飾されると想定される。「約」という用語は、一般に、当業者が列挙された値と同等である(例えば、同じ機能又は結果を有する)と考えるであろう数の範囲を指す。多くの場合、「約」という用語は、最も近い有効数字に丸められた数を含むことができる。
【0021】
端点による数値範囲の記載は、その範囲内の全ての数を含む(例えば、1~5は、1、1.5、2、2.75、3、3.80、4、及び5を含む)。
本明細書及び添付の特許請求の範囲において使用されるとき、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」、及び「その(the)」は、内容が明らかに他のことを示さない限り、複数の指示対象を含む。本明細書及び添付の特許請求の範囲において使用されるとき、「又は」という用語は、内容が明らかに他のことを示さない限り、「及び/又は」を含む意味で一般に使用される。
【0022】
本明細書における「一実施形態」、「いくつかの実施形態」、「他の実施形態」などへの言及は、説明される実施形態が1つ以上の特定の特徴、構造、及び/又は特性を含むことができることを示すことに留意されたい。しかしながら、そのような記述は、全ての実施形態が特定の特徴、構造、及び/又は特性を含むことを必ずしも意味しない。加えて、特定の特徴、構造、及び/又は特性が一実施形態に関連して説明される場合、そのような特徴、構造、及び/又は特性は、特段の記載がない限り、明示的に説明されているか否かにかかわらず、他の実施形態にも関連して使用され得ることを理解されたい。
【0023】
以下の詳細な説明は、図面を参照して読まれるべきであり、図面において、異なる図面における同様の要素は同じ番号が付されている。図面は、必ずしも縮尺通りではなく、例示的な実施形態を示しており、本発明の範囲を限定することを意図していない。
【0024】
図1は、例示的な圧力感知システム10の概略ブロック図である。圧力感知システム10は、圧力センサ12及び遠隔エネルギー供給源20を含む。圧力センサ12は、患者の体内に埋め込まれるように構成され得る。場合によっては、圧力センサ12は、患者の血管系内など、圧力センサ12が患者の血液に晒され得る位置に埋め込まれるように構成され得る。例えば、圧力センサ12は、患者の心腔内に埋め込まれるように構成され得る。他の場合には、圧力センサ12は、例えば、患者の膀胱、動脈、静脈、脳、脊柱、眼、関節、又は他の位置の内部に埋め込まれるように構成され得る。
【0025】
例示的な圧力センサ12は、患者内の所望の位置に埋め込まれるように構成されたハウジング16を含む。圧力センサ12は、本明細書では、人体内での使用を意図した植込型装置として展開されるものとして説明するが、圧力センサ12は、他の用途にも同様に適用され得ることが理解されるであろう。人体内での使用を意図する場合、ハウジング16は、生体適合性ポリマー材料又は生体適合性金属材料などの任意の好適な生体適合性材料から形成され得る。場合によっては、ハウジング16は、生体適合性ではない材料から形成され得るが、ハウジング16の外部を覆う生体適合性フィルム又はコーティングを有し得る。
【0026】
圧力センサ12は、平均圧、すなわち経時的な平均的圧力値の指標をもたらすように構成されると考え得る。平均圧は、所定の時間範囲にわたって取られるローリング平均圧であり得る。すなわち、その時検出されている圧力を即座に報告する瞬間圧力センサではなく、圧力センサ12は、圧力の一時的な急上昇によって過度に影響されない平均圧測定値を生成及び維持する。例えば、人の血圧は、階段を登っている間、又は力んでいる間に急上昇する場合がある。瞬間的な血圧測定値は、特に特定の時間間隔でのみ取られた場合、人の心臓血管の全体的な健康状態を正確に提供することができない。対照的に、平均血圧測定値は、短期的な圧力急上昇を無視して、血圧の全体的な傾向をより正確に表し、より良好に役目を果すことができる。
【0027】
例示的な圧力センサ12は、感知構成要素18を含む。感知構成要素18は、ハウジング16の外側の環境の経時的な平均圧を表す平均圧の指標を生成及び維持するように構成され得る。そのために、ハウジング16は、感知構成要素18又は感知構成要素18の少なくとも一部分をハウジング16の外側の環境に晒すことを可能にするように構成され得る。場合によっては、感知構成要素18は、粘弾性材料を含み得る。粘弾性材料は、その応力と歪みとの関係が時間に依存し、粘性材料及び弾性材料の両方の特性を含む材料である。粘性は、流体の流動に対する抵抗の尺度であり、弾性は、材料が力を加えられた後に元の形状に戻る能力の尺度である。負荷の下で液体のように流動する高度に減衰された粘弾性高分子固体であるソルボセイン(登録商標)は、粘弾性材料の一例である。ソルボセイン(登録商標)は、熱硬化性のポリエーテル系ポリウレタン材料である。形状記憶発泡体は、別の例示的な粘弾性材料である。他の例示的な粘弾性材料としては、ある種のポリマー、半結晶性ポリマー、バイオポリマー、ネオプレン、及びビチューメン材料が挙げられる。これらの材料は、所望の用途に合った所望の時定数を有するように調整することができる。
【0028】
粘弾性材料を使用するのではなく、感知構成要素18は、経時的な圧力の平均又はローリング平均を追跡できる液圧システムとして実装され得る。他のシステムも使用し得る。いずれにしても、感知構成要素18は、平均圧の指標を生成及び維持するために電源を必要とせずに、経時的な平均圧の指標を維持するように構成されると考えることができる。その結果、圧力センサ12は、電池などの搭載電源を必要としない。むしろ、圧力センサ12は、遠隔電源20から送られる電力を周期的に受け取るように構成され得る。圧力センサ12が遠隔電源20から送られる電力を受け取って利用できるようにするために、圧力センサ12は、感知構成要素18に動作可能に接続された回路22を含む。
【0029】
例示的な回路22は、遠隔電源20から電気エネルギーを受け取るように構成されたアンテナ24を含む。回路22は、適切な場合、電気エネルギーを適切な形態に変換し、このエネルギーを使用して感知構成要素18からの信号を要請するように構成される。次いで、回路22は、感知構成要素18によって経時的に測定された平均圧の指標をもたらす信号を遠隔監視装置26に送信する。場合によっては、単一のアンテナ24により、遠隔電源20によって送信される電気エネルギーの受け取りと、遠隔監視装置26との通信との両方が可能である。いくつかの事例では、アンテナ24は代わりに、遠隔電源20によって送信された電気エネルギーを受け取るように構成された第1のアンテナと、遠隔監視装置26に信号を送信するように構成された第2のアンテナとに相当し得る。遠隔電源20と遠隔監視装置26を別個の装置として示すが、場合によっては、遠隔電源20と遠隔監視装置26とは、単一のハンドヘルド装置に組み込まれてもよいことが理解されるであろう。
【0030】
遠隔電源20から圧力センサ12に提供される電気エネルギーは、経時的な平均圧測定値の指標を生成又は維持するために使用されないことに留意されたい。むしろ、経時的な平均圧測定値の指標は、継続的な電気エネルギーを必要とせずに、感知構成要素18によって経時的に生成及び維持される。この例では、遠隔電源20によって提供される電気エネルギーは、経時的な平均圧測定値の指標について感知構成要素18に問い合わせ、経時的な平均圧測定値の指標を表す信号を遠隔監視装置26に送信するためにのみ使用される。
【0031】
場合によっては、感知構成要素18は、ハウジング16の外側の外部圧力に晒されることに応答して、物理的変化を受けるように構成されると考えることができる。物理的変化は、少なくとも1分の期間にわたる外部圧力の平均圧を表すものと考えることができる。短時間の圧力急上昇は、ほとんど無視することができる。感知構成要素18の物理的変化は、少なくとも1時間の時定数を有すると考えることができる。感知構成要素18の物理的変化は、少なくとも12時間の時定数を有すると考えることができる。感知構成要素18の物理的変化は、少なくとも1日の時定数を有すると考えることができる。ここでの時定数は、感知構成要素18が入力圧力の変化に応答できる速度を表し、ここでは、感知構成要素18によって報告される平均圧が入力圧力の段階的な変化に応答して1-1/e(約0.6321)の係数だけ変化する時間として定義される。すなわち、1日の時定数の場合、入力圧力Pが、時間「t」でP/2に半減し、1日の間P/2に維持される場合、感知構成要素18は、P-(P/2(1-1/e))≒0.68Pの平均圧を1日後に報告する。これは単なる例である。
【0032】
場合によっては、平均圧測定値の測定を容易にするために、圧力増加の時定数(例えば、圧縮時定数)は、圧力減少の時定数(例えば、膨張時定数)とほぼ等しくなるように構成され得る。場合によっては、圧力増加の時定数と圧力減少の時定数とは等しくない場合がある。例えば、より高い若しくはより低い圧力に測定値を偏らせること、又は両方の時定数が生物学的効果(例えば、組織被包)を説明するように調整される場合が所望される場合がある。
【0033】
場合によっては、感知構成要素18によって提供される平均圧測定値を表す、回路22によって提供される信号は、センサヒステリシスに対して補正され得る。この補正は、回路22の計算要件を低減するために遠隔監視装置26内で行われてもよいが、場合によっては、回路22自体がセンサヒステリシスを補正し得る。いくつかの事例では、圧力センサ12によって提供される平均圧測定値に加えて、所望に応じて瞬間測定値を提供するために、第2の又は追加の圧力センサ(単数又は複数)(図示せず)を患者内に埋め込んでもよい。第2の又は追加の圧力センサ(単数又は複数)は、圧力センサ12の一部であり得、回路22に動作可能に結合され得る。代替的に、追加の圧力センサ(単数又は複数)は、別個に収容され得る。追加の圧力センサ(単数又は複数)は、圧力センサ12を較正するために使用され得る。代替的に、圧力センサ12は、瞬間圧力センサを較正するために使用され得る。圧力センサ12(及び任意の追加の圧力センサ)は、人体内の血管内又は腔内でかかる圧力の範囲内で動作するように構成され得ることが理解されるであろう。例えば、左心房内で想定される絶対圧力範囲は、450~950ミリメートル(mm)Hgである。左心房内で想定されるゲージ圧は2~90mmHgである。
【0034】
図2は、可変圧力を有する環境30に晒される例示的な圧力センサ28の概略図である。圧力センサ28は、圧力センサ12の例と考えることができる。環境30は、患者の心臓を含む患者の血管系又は患者の膀胱若しくは他の腔の一部を表し得る。例示的な圧力センサ28は、第1のプレート34と第2のプレート36との間に形成されたチャンバ32を含む。ハウジング38は、図1に示したハウジング16の例示と考えることができ、チャンバ32に側部及び底部を提供し得る。第1のプレート34は、環境30内の圧力の変化が、環境30内の外部圧力が増加したときに第1のプレート34を(図示の向きで)下向きに撓ませることができ、環境30内の外部圧力が減少したときに第1のプレート34を(図示の向きで)上向きに撓ませることができるように配置されている。この例では、チャンバ32には、粘弾性材料40が充填されている。
【0035】
第1のプレート34及び第2のプレート36は、導電性であると考えることができる。場合によっては、粘弾性材料40が導電性ではない場合、粘弾性材料40に経時的に生じた物理的変化は、第1のプレート34と第2のプレート36との間の静電容量を検出することによって示され得る。他の場合では、粘弾性材料40が導電性である場合、粘弾性材料40に経時的に生じた物理的変化は、第1のプレート34と第2のプレート36との間の抵抗を検出することによって示され得る。これらは単なる例である。
【0036】
図3は、経時的な平均圧測定値を追跡するために粘弾性材料をどのように使用できるかを示すグラフ表示50である。この特定の例は、5週間の期間にわたって左心房圧を追跡しており、左心房圧を縦軸に示し、時間を横軸に示す。この圧力データは、患者から取られた実際の圧力データではなく、むしろ、経時的な平均圧測定値が、一時的な急上昇及び測定値の欠落をどのように無視できるかを例示するために生成されている。この例は、感知構成要素18の一部として粘弾性材料を使用することに特化しているが、この例によって教示される教訓は、液圧システム又は他のシステムなどの他の種類の感知構成要素18にも等しく適用可能であることが理解されるであろう。
【0037】
グラフ線52は、周期的な瞬間測定値56によって求められる平均左心房圧(mean left atrial pressure)を示す。場合によっては、グラフ線52は、瞬間測定値が悪いタイミング(例えば、短期間のピーク)で取られる場合、周期的な瞬間測定値56によって求められる平均左心房圧が歪められることがあることを示す。例えば、いくつかの周期的な瞬間測定値58は、運動中に瞬間測定値が取られたときなど、望ましい平均圧測定を妨げる状態に起因して高い左心房圧値を示す。グラフ線52はまた、サンプル60の欠落のように瞬間測定値が欠落している場合、周期的な瞬間測定値によって求められる平均左心房圧が歪められる場合があることを示す。グラフ線62は、患者の実際の左心房圧の表示を提供する。グラフ線62は、周期的な瞬間測定値56、タイミングが悪い瞬間測定値58、及び欠落した瞬間測定値60のそれぞれを通過することが分かる。実際の圧力は、周期的に急上昇することがあることが分かる。
【0038】
グラフ線64は、粘弾性材料を使用して求められる平均左心房圧の表示を提供する。グラフ線64は、グラフ線62によって示される実際の左心房圧を全体的に追跡しており、グラフ線64は、タイミングが悪い瞬間測定値58又は欠落した瞬間測定値60による影響を受けていないことが分かる。このことは、頻繁な瞬間測定を必要とせずに、血圧性能の信頼できる指標として、平均圧測定値をどのように使用できるかを示す。このことはまた、経時的な平均圧の指標を生成又は維持するために電気エネルギーを必要としない方法で、経時的な平均圧の指標をもたらすために粘弾性材料をどのように使用できるかを示す。
【0039】
図4は、可変圧力を有する環境30に晒される例示的な圧力センサ70の概略図である。圧力センサ70は、圧力センサ12の例として考えることができ、液圧で動作し得る。圧力センサ70は、環境30内の外部圧力に晒される液圧チャンバ72を含む。液圧チャンバ72は、環境30と液圧チャンバ72との相対的な圧力差に応答して、曲がって撓むように構成されたチャンバ壁74を含む。液圧チャンバ72は、第1の流体を含む。圧力センサ70は、第2の流体を含む圧力チャンバ76を含む。第2の流体は、第1の流体と同じであり得る。場合によっては、第1の流体は液体であり得る。場合によっては、第2の流体は液体であり得る。バリア78が、液圧チャンバ72と圧力チャンバ76との間に流体結合されている。液圧チャンバ72は、環境30と液圧チャンバ72との間の比較的小さな圧力差がバリア78の検出可能な移動をもたらすように、移動増倍器として機能すると考えることができる。
【0040】
図示の例では、バリア78は、高透過性材料を有する低流量弁を含む。環境30内の外部圧力が変化すると、液圧チャンバ72と圧力チャンバ76との間に流体的に配置されているバリア78は、外部圧力の変化に応答して移動する。また、維持された外部圧力により、流体の一部が低流量弁を通ってゆっくりと流れ、液圧チャンバ72と圧力チャンバ76との間を移動する。バリア78の低流量弁を通る流量は、圧力センサ70の時定数を設定するように選択され得る。バリア78のこの物理的変化及び液圧チャンバ72と圧力チャンバ76との間の流体の移動は、平均外部圧力を表す。平均圧値を読み取るために、バリア78にコイル80を結合し得る。バリア78が圧力変化に応答して移動すると、コイル80のインダクタンスが変化する。従って、コイル80のインダクタンスを測定することにより、液圧チャンバ72、圧力チャンバ76、及びそれらの内部の流体が非導電性であるときに、平均圧測定値の指標をもたらすことができる。
【0041】
図4Aは、平均圧の指標をもたらすために静電容量を使用する圧力センサ70のバージョンを示す。図4Aでは、第1のプレート90及び第2のプレート92が、導電性であり、低流量弁を有するバリア78(図4)として機能する。場合によっては、第1のプレート90は、平均圧の変化に応答して移動するが、第2のプレート92は移動しない。第1のプレート90と第2のプレート92との間の距離が圧力変化によって変化するので、第1のプレート90と第2のプレート92との間の静電容量を平均圧測定値の指標として使用することができる。図4Aでは、第1及び第2の流体は、非導電性又は実質的に非導電性である。ここで、実質的に非導電性とは、流体が静電容量測定を妨げるほど十分に導電性でないことを意味する。図4Bでは、導電性の液体が使用され、第1のプレート90と第2のプレート92との間の抵抗の変化を平均圧測定値の指標として使用することができる。
【0042】
図5は、例示的な左心耳閉鎖装置100の斜視図であり、図6は、閉塞要素104を含む左心耳閉鎖装置100を示す、その側面図である。左心耳閉鎖装置100は、(送達のための)折り畳み構成と、図示するような拡張構成との間で変形するように構成された拡張可能なフレームワーク102を含む。いくつかの事例では、拡張可能なフレームワークは、順応性を有してもよく、拡張構成において左心耳の側壁及び/若しくは小孔の形状及び/若しくは幾何学形状に実質的に適合してもよく、並びに/又はそれらと密閉係合し得る。左心耳閉鎖装置100は、左心耳の周囲組織及び/又は側壁によって決定されるような最大非拘束範囲よりも小さいか又は最大非拘束範囲とは異なるサイズ、範囲、又は形状に拡張し得る。拡張可能なフレームワーク102の様々な要素の厚さを減少させることにより、拡張可能なフレームワーク102及び/又は左心耳閉鎖装置100の可撓性及び順応性を増加させることができ、それによって、組織を拡張可能なフレームワーク102及び/又は左心耳閉鎖装置100に適合させるのではなく、拡張可能なフレームワーク102及び/又は左心耳閉鎖装置100をその周囲の組織に適合させることが可能になる。
【0043】
場合によっては、図6に示すように、左心耳閉鎖装置100は、任意で、拡張可能なフレームワーク102の少なくとも一部分の上に配置された、それを覆って配置された、その周囲に配置された、又はそれを被覆する、閉塞要素104(例えば、メッシュ、織物、膜、及び/又は他の表面処理)を含み得る。いくつかの実施形態では、閉塞要素104は、拡張可能なフレームワーク102の外側(又は外側を向いた)面の少なくとも一部分の上に配置されてもよく、それを覆って配置されてもよく、その周囲に配置されてもよく、又はそれを被覆し得る。
【0044】
いくつかの実施形態では、拡張可能なフレームワーク102は、拡張構成にある拡張可能なフレームワーク102の周囲に配置された複数のアンカー部材106を含み得る。複数のアンカー部材106は、拡張可能なフレームワーク102から半径方向外向きに延びてもよい。いくつかの実施形態では、複数のアンカー部材106のうちの少なくともいくつかがそれぞれ、本体部分と、先端部分と、そこから周方向に突出するもどりとを有してもよく、かつ/又は含み得る。いくつかの実施形態では、複数のアンカー部材106のうちのいくつか及び/又はそれぞれが、そこから周方向に突出する少なくとも1つのもどりを有する。複数のアンカー部材106は、患者の解剖学的構造(すなわち、例えば左心耳)内の標的部位に左心耳閉鎖装置100を拡張構成において保持するのを助けるためのアンカー機構を提供し得る。しかし、もどりは、標的部位における周囲組織とのもどりの係合が最小限に抑えられるように、構成、位置決め、及び/又は配置され得る。例えば、もどりは、拡張構成において周囲組織を穿刺、貫通、及び/又は周囲組織中に延びていなくてもよい。加えて、いくつかの実施形態では、複数のアンカー部材106は、閉塞要素104を拡張可能なフレームワーク102に固定するための取り付け機構を提供し得る。
【0045】
左心耳閉鎖装置100は、拡張可能なフレームワーク102の少なくともいくつかの構成要素がそこから延び得る、中央ポスト108を含み得る。いくつかの事例では、図6に最もよく見られるように、中央ポスト108は、中央ポスト108内に配置された圧力センサ110を含み得る。この場合、中央ポスト108は、圧力センサ110のハウジングとして少なくとも部分的に機能し得る。概略的に示しているが、圧力センサ110は、図1に示す圧力センサ12を表すことができる。圧力センサ110は、図2に示す圧力センサ28を表すことができる。圧力センサ110は、図4に示す圧力センサ70を表すことができる。圧力センサ110を中央ポスト108内に配置すること、又は圧力センサ110を左心耳閉鎖装置100の任意の他の部分に固定することにより、左心房の経時的な平均左心房圧測定値を得ることが可能であることが理解されるであろう。場合によっては、圧力センサ110は、中央ポスト108の長さの相当な部分に延びてもよいが、これは必須ではない。
【0046】
内皮化により、左心耳閉鎖装置100の除去が困難になるので、搭載電源を必要とせずに、経時的な平均左心房圧の指標をもたらすことができる圧力センサ110などの圧力センサを有することは、例えば、電池寿命に関する懸念がないことを意味する。医師又は他の医療専門家は、単に遠隔電源20(図1)を使用して、電力センサ110内の回路に十分な電力を周期的に供給して、圧力センサ110内に存在するいかなる感知構成要素によって示される左心房平均血圧測定値をも確認することができる。この左心房平均血圧測定値は、遠隔監視装置26に通信され、患者を監視、診断及び/又は治療する際に医師などによって使用され得る。
【0047】
本開示は、多くの点で例示にすぎないことを理解されたい。本開示の範囲を超えることなく、詳細に、特に形状、サイズ、及び工程の構成に関して変更を行うことができる。これは、適切な範囲で、1つの例示的な実施形態の特徴のいずれかを他の実施形態で使用することを含むことができる。本発明の範囲は、当然のことながら、添付の特許請求の範囲が表現される文言で定義される。
図1
図2
図3
図4
図4A
図4B
図5
図6
【国際調査報告】