(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-14
(54)【発明の名称】圧密吸湿材料及びその製品
(51)【国際特許分類】
B27K 5/00 20060101AFI20231207BHJP
G06K 19/02 20060101ALI20231207BHJP
G06K 19/077 20060101ALI20231207BHJP
【FI】
B27K5/00 F
B27K5/00 A
G06K19/02
G06K19/077 144
G06K19/077 200
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023532656
(86)(22)【出願日】2021-11-30
(85)【翻訳文提出日】2023-07-21
(86)【国際出願番号】 EP2021083617
(87)【国際公開番号】W WO2022112610
(87)【国際公開日】2022-06-02
(31)【優先権主張番号】PCT/EP2020/083947
(32)【優先日】2020-11-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523196884
【氏名又は名称】スイス ウッド ソリューションズ アクチェンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】チャナナ、ムニシュ
(72)【発明者】
【氏名】クレール、ガスパード アントワーヌ
(72)【発明者】
【氏名】ハス、フィリップ フリードリヒ ジークフリート
(72)【発明者】
【氏名】クラウザー、オリバー フレデレック
(72)【発明者】
【氏名】ソンダーレッガー、ヴァルター ウルリッヒ
(72)【発明者】
【氏名】ヴィース、パスカル
【テーマコード(参考)】
2B230
【Fターム(参考)】
2B230AA11
2B230AA15
2B230AA18
2B230BA03
2B230BA04
2B230BA18
2B230CC04
2B230CC25
2B230CC26
2B230DA02
2B230EA01
2B230EA11
2B230EB02
2B230EB06
2B230EB13
2B230EB28
(57)【要約】
吸湿材料、特に天然吸湿材料、詳細には木材を圧密化するための方法であって、a)圧密化される吸湿材料を供給する工程、b)必要な場合に、吸湿材料の含水率を予め規定された水分範囲内の値に調整することで、吸湿材料のプレコンディショニングをする工程、c)予め規定された温度及び圧力条件下で、気密充填された吸湿材料の加熱及びプレスを同時に行い、吸湿材料の含水率を一定に維持する工程、d)圧密材料を取得する工程、を含む方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸湿材料、特に天然吸湿材料、詳細には木材を圧密化するための方法であって、
a)圧密化される前記吸湿材料を供給する工程、
b)必要な場合に、前記吸湿材料の含水率を予め規定された水分範囲内の値に調整することで、前記吸湿材料のプレコンディショニングをする工程、
c)予め規定された温度及び圧力条件下で、前記吸湿材料の加熱及びプレスを同時に行い、それによって前記吸湿材料の前記含水率を一定に維持する工程、
d)圧密材料を取得する工程、を含む、方法。
【請求項2】
前記方法が、工程c)の前に気密ケーシングに、前記プレコンディショニングされた吸湿材料を気密パッケージする更なる工程b1)を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記圧密化される吸湿材料が、植物材料、天然繊維材料、合成繊維材料、ミネラルウール、獣毛、皮膚系材料、キチン系材料、キトサン系材料、タンパク質系材料、並びに/又は例えば、草、藻類、麻繊維及び/若しくは卵殻といった、かかる材料の混合物から選択される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記圧密化される吸湿材料が植物材料から選択される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記圧密化される吸湿材料が、木材、特に材木、詳細には無垢材及び/又は単板から選択される、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記方法が、前記取得された圧密材料の密度が、前記処理前の前記吸湿材料の密度の1.01~100、詳細には1.1~50、特に1.5~20、好ましくは2~16、例えば2~3倍となるように行われる、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記圧密化される吸湿材料の表面が、特に天然ポリマー、合成ポリマー、天然樹脂、合成樹脂、ワックス、硫黄及び/又は溶融金属に含浸することで工程b)の前に化学的に処理される、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
工程b)において、前記圧密化される吸湿材料の前記含水率が5~30%、特に10~15%に調整される、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
工程c)において、前記圧力を5~50MPa、特に9~11MPaの値に上昇させ、及び/又は前記温度を120~190℃又は130℃~190℃の値に上昇させる、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
工程c)が、以下のサブ工程:
c1)前記吸湿材料を、第1の圧力にて第1の温度に予め加熱し、予め規定された第1の滞留時間にわたって維持し、好ましくは前記第1の圧力が周囲圧力と同等である、工程、
c2)前記第1の温度を維持しながら、前記圧力を、特に圧力上昇の定率にて第2の圧力に上昇させ、予め規定された第2の滞留時間にわたって維持する工程、
c3)前記第2の圧力を維持しながら、前記温度を、特に温度上昇の定率にて第2の温度に上昇させ、予め規定された第3の滞留時間にわたって維持する工程、
c4)前記温度を室温に低下させる工程、
c5)前記圧力を周囲圧力に低下させる工程、を含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
工程c1)においては、前記第1の温度が50~100℃であり、前記第1の圧力が0~2MPaであり、前記第1の滞留時間が約1分~10時間、特に5~60分、詳細には20分であり、
工程c2)においては、前記第2の圧力が5~50MPa、特に9~11MPaであり、前記圧力上昇の定率が約0.5~2MPa/分、特に0.9~1.1MPa/分であり、前記第2の滞留時間が約1~45分、特に20~30分であり、
工程c3)においては、前記第2の温度が、100~220℃又は130~190℃であり、前記温度上昇の定率が約0.5~10℃/分であり、前記第3の滞留時間が約1~120分又は1~90分である、
請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記方法が、前記圧密化される吸湿材料及び/又は前記圧密材料の表面構造及び/又は表面テクスチャをカスタム化する工程を更に含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記表面構造及び/又は前記表面テクスチャの前記カスタム化が、例えばテクスチャ加工された、及び/若しくは構造化されたプレスラムを備えた機械プレスを使用すること、並びに/又はエンボスインサートを使用することなどによって、特にエンボス加工することで、工程c)中に行われる、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記表面構造及び/又は前記表面テクスチャの前記カスタム化が、例えばレーザ彫刻及び/又はCNC彫刻など、特に彫刻によって工程c)後に行われる、請求項12又は13に記載の方法。
【請求項15】
前記表面構造及び/又は前記表面テクスチャの前記カスタム化が、予め規定された設計、パターン及び/又は画像を、前記圧密化される吸湿材料及び/又は前記圧密材料の前記表面上へと適用する工程を含む、請求項12~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記表面構造及び/又は前記表面テクスチャの前記カスタム化によって、詳細にはマイクロ及び/又はナノ構造化によって、超疎水性表面が生成され、好ましくは、前記表面の水との接触角が、標準条件下では150°以上である、請求項12~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記取得された圧密材料が半透明材料、詳細には半透明木材である、請求項1~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
工程a)において、前記圧密化される吸湿材料、特に木材系材料が、少なくとも2層を含むスタック形態で提供され、少なくとも1層、特に少なくとも2層、3層、4層、5層又はそれよりも多い層が、吸湿材料から作製され、前記スタックの全ての層が共に圧密化される、請求項1~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記吸湿材料の少なくとも1層が、植物系材料、動物系材料及び/又は木材系材料、特に紙、植物及び/若しくは木材繊維、木材チップ、木粉、セルロース、デンプン、リグニン、樹皮、木抽出物、藻類、キチン系材料、キトサン系材料、天然木材、タンパク質、石炭、木炭、カーボンブラック並びに/又は活性石炭を含む、請求項18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記スタックが更には、
(i)例えば、アルミニウム、鋼、銅、銀、金及び/若しくはチタンを含む、若しくはこれらからなる、金属及び/若しくは合金、並びに/又は
(ii)ポリマー材料、例えばPLA、PET、PP、PE、PVC及び/若しくはタンパク質などの特に合成ポリマー及び/若しくは生体高分子、並びに/又は
(iii)例えば、セラミックス、ガラス、石、クレイ、金属有機構造体(MOF)、ゼオライト、石炭、木炭、カーボンブラック及び/若しくは活性石炭といった無機材料、のうちの少なくとも1層を含む、請求項18又は19に記載の方法。
【請求項21】
前記スタックの最も外側の層が、木材系材料、特に木材、好ましくは材木、詳細には無垢材及び/又は単板から作製される、請求項18~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記スタックの層のうちの少なくとも1層が、接着剤で、特に合成接着剤、天然接着剤、化石系接着剤若しくはバイオベース接着剤で処理され、及び/又は少なくとも1つの接着箔が前記スタックの前記層間に配置され、前記スタックの前記層の全てが、積層構造を製造するために圧密化の際に共に接合される、請求項18~21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記スタックが、電子機能、磁気機能及び/又は光学ラベル、特に電線、詳細にはアンテナ及び/又は電磁コイルを含む、請求項18~22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記電子機能、前記磁気機能及び/又は前記光学ラベルが、セルロース材料の層上に、特に紙の層上に配置される、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記スタックの少なくとも2層が木材から作製され、前記層が異なる木目方向に配向される、請求項18~24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記スタックの少なくとも2層、特に前記スタックの前記最も外側の層が木材から作製される、請求項18~25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
工程b)及びc)中に、前記スタックの前記最も外側の層がプラスチック箔で被覆される、及び/又は前記スタックがプラスチック箔中に封入される、請求項18~26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
前記スタックが、異なる吸湿材料、特に木材及び紙の少なくとも2層を含む、請求項18~27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
前記スタックが少なくとも3層を含み、前記少なくとも3層のうちの前記最も外側の層の厚さが、前記最も外側の層間に位置付けられた前記1層以上の厚さよりも大きい、請求項18~28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
前記スタックのうちの前記少なくとも2層のうちの少なくとも1つの最も外側の層の表面構造及び/又は表面テクスチャが、例えばテクスチャ加工された、及び/又は構造化されたプレスラムを備えた機械プレスを使用すること、並びに/又はエンボスインサートを使用することなどによって、特にエンボス加工することで、工程c)中にカスタム化される、請求項18~29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
工程d)の後、凹み及び/又は彫刻が、少なくとも前記最も外側の層に製造され、好ましくは、前記凹み及び/又は前記彫刻が、レーザ彫刻及び/又はレーザ切断によって製造される、請求項18~30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
電子機能、磁気機能及び/又は光学ラベルが、例えば接着剤による接合で前記凹みに配置される、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記電子機能が、前記スタック中に含まれる他の電気機能、特に電線、詳細にはアンテナ及び/又は電磁コイルとの電気接点中にあるように配置される、請求項28に記載の方法。
【請求項34】
前記凹み及び/又は前記彫刻が、前記最も外側の層の真下にある層が露出し、詳細には前記最も外側の層の真下にある前記層が、前記最も外側の層の色とは異なる色を有する層であり、例えば前記最も外側の層が圧密木材の層であり、かつ前記最も外側の層の真下にある前記層が金属及び/又はプラスチックの層であるように製造される、請求項31~33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
積層構造、特に積層木材構造を製造するための方法であって、前記積層構造が請求項18~34のいずれか一項に記載の方法で製造される、方法。
【請求項36】
積層構造、特に積層木材構造を製造するための方法であって、請求項18~35のいずれか一項で規定されるような吸湿材料の層又はスタックが、請求項1~34のいずれか一項に記載の方法で圧密化され、かつ例えば接着剤による接合で少なくとも1つの更なる層に積層され、前記少なくとも1つの更なる層が:
(i)請求項1~34のいずれか一項に記載の方法で圧密化された吸湿材料の別の層、並びに/又は
(ii)植物系材料、動物系材料及び/又は木材系材料、特に紙、植物及び/若しくは木材繊維、木材チップ、木粉、セルロース、デンプン、リグニン、樹皮、木抽出物、藻類、キチン系材料、キトサン系材料、天然木材、タンパク質、石炭、木炭、カーボンブラック及び/若しくは活性石炭、並びに/又は
(iii)例えば、アルミニウム、鋼、銅、銀、金及び/若しくはチタンといった金属及び/若しくは合金、並びに/又は
(iv)ポリマー材料、例えばPLA、PET、PP、PE、PVC及び/若しくはタンパク質などの特に合成ポリマー及び/若しくは生体高分子、並びに/又は
(v)例えば、セラミックス、ガラス、石、クレイ、金属有機構造体(MOF)、ゼオライト、石炭、木炭、カーボンブラック及び/若しくは活性石炭といった無機材料、又は他の多孔質若しくは非多孔質無機材料、から作製される、方法。
【請求項37】
積層前に、電子機能及び/又は磁気機能が前記吸湿材料の前記層、又は前記スタックの凹みに配置され、積層の際に、前記電子機能及び/又は前記磁気機能が、前記積層構造内部に埋設される、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記積層構造が:
a)圧密単板又は非圧密単板の層で作製された裏面、
b)圧密単板又は非圧密単板の層で作製された表面、
c)任意には、前記裏面層と前記表面層との間に配置される、圧密単板若しくは非圧密単板又は任意の非木材系材料の1つ以上の更なる層、
d)好ましくは前記カードに埋設された、集積回路、記憶装置、追跡装置、検知装置、アンテナ及び/又は電磁コイル、
e)任意には、前記集積回路、前記記憶装置、前記追跡装置、前記検知装置、前記アンテナ及び/又は前記電磁コイルのうちの1つ以上を担持するために、前記裏面と前記表面との間に配置される、例えば、紙、圧密木材及び/又はフリースなど、セルロース材料で特に作成された支持層、を含み、
前記層が積層され、前記単板の層のうちの少なくとも1つ、詳細には前記表面層及び前記裏面層、特に前記単板の層の全てが、圧密単板から作製される、請求項35~37のいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
製品を製造するための方法であって、(i)請求項1~34のいずれか一項に記載の吸湿材料を圧密化する工程及び/又は請求項35~38のいずれか一項に記載の積層構造を製造する工程、並びに(ii)工程(i)において取得された前記圧密材料及び/又は前記積層構造から少なくとも部分的に前記製品を製造する工程、を含み、前記製品が、楽器又はその部品、家具、ドア、ドアハンドル、床材、壁紙、擁壁、自動車部品、天井用の壁紙、スポーツ用品、耐荷重性要素、カード、電子機器若しくは例えば、キーフォブといった電子機器用ケーシング、例えば、USBスティックといったデータ記憶装置又は携帯電話用ケーシングである、方法。
【請求項40】
前記製品がカードであり、特にペイメントカード、クレジットカード、デビットカード、IDカード、会員カード及び/又はアクセスカードである、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
請求項1~34のいずれか一項に記載の方法で取得可能である、又は取得される、圧密材料、特に圧密木材、詳細には圧密無垢材及び/又は圧密単板。
【請求項42】
前記圧密材料が半透明材料、詳細には半透明木材である、請求項41に記載の圧密材料。
【請求項43】
少なくとも2つの積層された層を含む、積層構造、特に積層木材構造であって、少なくとも1つ、特に少なくとも2つの前記積層された層が、請求項41~42のいずれか一項に記載の圧密材料、好ましくは圧密単板、特に半透明木材から作製され、及び/又は前記積層構造が、請求項35~38のいずれか一項に記載の方法で取得可能である、又は取得される、積層構造。
【請求項44】
請求項41~42のいずれか一項に記載の圧密材料又は請求項43に記載の積層構造を含む製品であって、好ましくは、前記製品が、楽器又はその部品、家具、ドア、ドアハンドル、床材、壁紙、擁壁、自動車部品、天井用の壁紙、スポーツ用品、耐荷重性要素、カード、電子機器若しくは例えば、キーフォブといった電子機器用ケーシング、例えば、USBスティックといったデータ記憶装置又は携帯電話用ケーシングである、製品。
【請求項45】
特に前記製品内部に含められ、及び/又は前記製品の表面に配置される、電子機能、磁気機能及び/又は光学ラベルを含む、請求項44に記載の製品。
【請求項46】
特に前記製品内部に含められ、及び/又は前記製品の表面に配置される、認識タグ及び/又はセキュリティタグを含む、請求項44又は45に記載の製品。
【請求項47】
特に電子機能を備え、請求項41又は42に記載の圧密単板の少なくとも1層を含むカードであって、好ましくは、前記カードが、ペイメントカード、クレジットカード、デビットカード、IDカード、会員カード及び/アクセスカードである、カード。
【請求項48】
前記カードの裏面又は表面のそれぞれが、単板の層、特に請求項41又は42に記載の圧密単板から作製される、請求項47に記載のカード。
【請求項49】
前記カード全体の重量に関して、前記カードが、少なくとも50重量%、詳細には少なくとも75重量%、特に少なくとも90重量%の程度までの木材、特に請求項41又は42に記載の圧密木材からなる、請求項47又は48に記載のカード。
【請求項50】
80~100mm×50~70mm×0.5~1.5mmのサイズ、詳細には85.5mm×54mm×0.8mmのサイズを有する、請求項47~49のいずれか一項に記載のカード。
【請求項51】
積層単板の少なくとも2層を含み、好ましくは前記単板の少なくとも2層の両方が、請求項41又は42に記載の圧密単板であり、前記単板の層のそれぞれの厚さが、0.1~0.3mmである、請求項47~50のいずれか一項に記載のカード。
【請求項52】
前記積層単板の少なくとも2層のうちの少なくとも2つが、異なる木目方向に配向される、請求項51に記載のカード。
【請求項53】
前記カードが、集積回路、記憶装置、追跡装置、検知装置、アンテナ及び/又は電磁コイルを含み、特に前記カード内部に埋設される、及び/又は前記カードの表面に配置される、請求項47~52のいずれか一項に記載のカード。
【請求項54】
前記集積回路、前記記憶装置、前記追跡装置、前記検知装置及び/又は前記電磁コイルが、存在する場合には、圧密単板の前記少なくとも1層の凹みに配置される、請求項53に記載のカード。
【請求項55】
カード表面にて、前記集積回路、前記記憶装置、前記追跡装置、前記検知装置、前記アンテナ及び/又は前記電磁コイルへの電気接続を確立するための金属接点パターンが配置される、請求項53又は54に記載のカード。
【請求項56】
カード表面が、特にロゴ、文字及び/又は数字の形状の彫刻を含み、好ましくは、前記彫刻が、周囲の領域の色と異なる色でコーティングされる、請求項41~55のいずれか一項に記載のカード。
【請求項57】
f)圧密単板又は非圧密単板の層で作製された裏面、
g)圧密単板又は非圧密単板の層で作製された表面、
h)任意には、前記裏面層と前記表面層との間に配置される、圧密単板若しくは非圧密単板又は任意の非木材系材料の1つ以上の更なる層、
i)好ましくは前記カードに埋設された集積回路、記憶装置、追跡装置、検知装置、アンテナ及び/又は電磁コイル、
j)任意には、前記集積回路、前記記憶装置、前記追跡装置、前記検知装置、前記アンテナ及び/又は前記電磁コイルのうちの1つ以上を担持するために、前記裏面と前記表面との間に配置される、例えば、紙、圧密木材及び/又はフリースなど、セルロース材料で特に作成された支持層、を含み、
前記層が積層され、前記単板の層のうちの少なくとも1つ、詳細には前記表面層及び前記裏面層、特に前記単板の層の全てが、請求項42又は43に記載の圧密単板から作製される、請求項41~56のいずれか一項に記載のカード。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸湿材料、特に天然吸湿材料、詳細には木材を圧密化するための方法に関する。更には、本発明は、本発明の方法によって取得可能である、又は取得される、圧密材料、詳細には圧密無垢材及び/又は圧密単板に関する。本発明の更なる態様は、圧密材料を含み、特に電子機能を伴う積層構造、製品及びカードに関する。
【背景技術】
【0002】
天然材料は一般には、自然界で見出すことができる物理物質である。通常、天然材料は、植物、動物又は地面から取得される。これらは、例えば石、木材、コルク、樹皮、果皮、茎、草、貝殻、卵殻、甲殻類の外骨格又はクチクラ、天然繊維、ゼラチン、セルロース、キチン、種々のタンパク質、リグニンなどの生体高分子などといった有機物質及び無機物質を含む。
【0003】
エネルギー及び材料の消費が高い技術分野では、例えば植物を基とする原材料などの再生可能原材料への需要は大きくかつ高まりつつある。再生可能材料は通常、有利なCO2収支を有する。これは、通常は化石原材料に基づく合成材料と比較すると大幅に有利である。
【0004】
天然材料は、建物、家具、道具などの構築を含む多くの製造努力のための材料として広範に使用されているものの、非常に高性能な合成材料と比較すると、ある特定の本質的な欠点を有している。具体的には、それらの組成及び構造といった点において、天然材料は、その物理特性及び/又は化学特性に関して合成材料よりも変動性が高いことが明らかとなっている。加えて、多くの天然材料は、水分変化に際して強い膨潤挙動及び収縮挙動を示す。更には、これらは多くの場合、生物学的分解に高い感受性を有する(腐朽菌)。このことは、例えば木材、セルロース繊維などの特に多孔質植物材料に該当する。
【0005】
したがって、多くの部品及び製品に関して、合成類似体と同等の精密性、安定性及び機能を有する天然材料からそれらを作製することは困難である。これは特に、比較的小さい、及び/又は薄い部品及び製品に該当する。例えば、クレジットカード、デビットカード、プリペイドカード、ギャランティカード、顧客カード、IDカード、アクセスカード(例えば、ドア、改札口、チェックイン端末など)を含むペイメントカードなどの共通電子カードの標準サイズは、ID-000、ID-1、ID-2、ID-3の項目下でISO/IEC 7810:2019で規定されるように、80~90mm(長さ)×50~60mm(幅)×0.65~0.85mm(厚さ)である。現在、これらのカードは通常、PVC、PET、ポリカーボネート、PLA又は他のポリマー材料などのプラスチックから作製される。PVC又はPET又は他のプラスチックを嵌め込みし(中間層)、表面及び底面の材料が非圧密木材であるセミウッドカードもまた存在する。更には、半金属カードやフルメタルカードもまた存在する。
【0006】
プラスチック材料を木材などの再生可能材料に置き換えることは、大きな注目を集めている。ただし、一般的な無垢材又は単板積層材(laminated veneer lumber、LVL)の木製カードの作製は可能性があるとは言いがたい。この理由としては、これらの木材は、電子チップ又はアンテナの統合が可能ではない(無垢材)、又はISO/IEC 7810:2019(ISO/IEC 7811、7813、7816及び14443)及び/若しくは同様のものといった種々の関連する基準に記載される厚さ、安定性、耐久性、寸法安定性(平面度、歪みへの耐性)及び機能パラメータといった点で、物理的要件及び機械的要件を満たさないことが挙げられる。
【0007】
木材に関しては例えば、機械特性及び化学特性を変性するための種々のアプローチが知られている。通常、これらのアプローチは、最初の工程として化学的含浸(液相又は気相)などの化学修飾、続いて物理処理工程を含む2段階プロセスに基づいている。物理処理工程は、異なる温度及び含水率での熱処理(例えば、木材自体又は挿入された化学物質の化学反応を誘導するため)又は物理的圧縮工程であり得る。これらのアプローチは、熱水改質(hydrothermal modification、HTM)法又は粘弾性熱圧縮(viscoelastic thermal compression、VTC)法として知られている。
【0008】
国際公開第2019/133806(A1)号は、例えば、(a)約19%未満の含水率(moisture content、MC)を有する木部材を供給する工程、(b)含水率を5重量%未満の値に減少させるために約120℃~260℃の温度で木部材を予熱する工程、(c)任意には表面水を塗布する工程、(d)圧力を印加する工程、及び任意には処理した木部材を冷却する工程、その後(e)処理後のコンディショニングを施す工程を含むプロセスを説明している。
【0009】
ただし、事前の化学修飾なく木材圧縮する場合、材料のスプリングバック効果を大幅に低減することは通常不可能であるが、圧縮方向での膨潤はむしろ高まる。
【0010】
圧密化又は圧縮された木材の寸法を安定なものとするためには、木材片を深部にわたり徹底的に(化学及び/又は物理)修飾することが求められる。米国特許第5,652,065号は例えば、少なくとも1つの主表面上に圧縮され、処理される単板の厚さ寸法に延在する木材セルの集団を有するように処理される単板を説明している。圧縮されたセルの集団によって密度の増加が付与される。これによって、未処理であること以外は同様の性質を有する単板と比較すると強度及び剛性の増加が付与される。圧縮状態のセルの集団を維持するため、処理単板は、圧縮された木材セルの集団全体にわたって点在している、負荷レベルの硬化剛性高分子熱硬化性材料を含む。ただし、これらの処理によって木材ポリマー複合材がもたらされる。このポリマーは天然又は合成材料起源であり得、通常は非生分解性製品である。
【0011】
同様に、木材を透明又は半透明な状態にするためには、通常、木材を漂白(リグニンの部分的又は完全な除去)し、その後、PMMA(ポリメチルメタクリラート、polymethylmethacrylate)などの透明及び/又は屈折率マッチングポリマーに浸透し、木材複合材料を再び得る。
【0012】
木材を傷の付きにくい状態とするためには、通常、傷を付きにくくするコーティング及びラッカーを塗布する。これによって、非木材表面、すなわち色、触感、見た目、香りといった点で本物ではない木材表面ではなく、コーティング材料の特性を有する表面が露出する。
【0013】
木材及び表面を、抗菌性(抗菌効果がある、抗真菌性、抗ウイルス性)特性を有する状態とするためには、抗菌剤を含有するコーティング(金属及び金属酸化物のナノ粒子、有機生物活性剤/医薬品)を塗布する。これによって、コーティングされた、又はラッカー処理された木材表面がもたらされる。
【0014】
木材を心地よい香り、匂い、芳香を有する状態とするためには、一般的な戦略としては、木材を香料又は香料の溶液若しくはコーティング配合物でそれぞれコーティング又は浸漬させることが挙げられる。関連する分子が通常は最初に多量に空気中に拡散することから、香り、匂い又は芳香は通常、数日~数週間継続する。したがって最初に強い香りがもたらされ、時間の経過と共に香りは減少する。
【0015】
したがって、前述の欠点を克服する、改善された解決策を提供することが求められている。特に、新規技術分野において、及び新規用途のために、合成材料に代わる可能性を提供する、改善された天然材料を利用可能とすることが強く求められている。
【発明の概要】
【0016】
圧密化された天然材料、詳細には圧密化された再生可能材料を製造するための改善された方法を提供すること、並びに改善された圧密材料及びそれで作製された有益な製品を提供することが、本発明の目的である。特に、本方法によって、未処理であること以外は同一の材料と比較すると、改善された化学的安定性及び/又は機械的安定性を有する圧密材料を製造することが可能となるであろう。好ましくは、本方法によって、必要とされる少量の合成添加剤を用いて天然材料を圧密化することが可能となり、その結果、合成成分の割合が可能な限り低量である製品が取得可能となるであろう。
【0017】
特に、好ましくは寸法安定性(例えば、スプリングバック効果若しくは形状記憶効果が低く、それぞれ湿度、水分、湿気による膨潤及び収縮が小さい)、改善された疎水性(例えば、水分量/水の吸着作用の低さ、改善された撥水性、低い濡れ性)、硬さ、傷の付きにくさ、紫外線(ultraviolet、UV)及び可視(visible、VIS)光に対する色安定性並びに/又は温度変化に関して改善された特性を有する、圧密化及び/又は圧縮された木材を提供することが本発明の目的である。
【0018】
好ましくは、本方法によって、様々な程度の半透明性を有する異なる天然色及び人工色(漂白、着色又は漂白と着色の組合せ)の半透明な木材系材料を製造することが可能となるであろう。
【0019】
特に、本方法によって、焼却が低減された、又は焼却が全く生じないレーザ彫刻及びレーザ切断が可能となり、それによってx方向、y(すなわち、横方向)方向及びz(深さ)方向にて全ての関連する長さスケール、すなわちナノメートルからマイクロメートル、ミリメートルを経て最大でメートル長さまでの長さスケールで、カスタム化され、精密な切断(滑らかなエッジ)及び表面粗さも含む精密な表面構造化が可能となる、木材系材料を製造することもまた可能となるであろう。
【0020】
特に、本発明の更なる目的は、精密な表面テクスチャ、構造化及び/又は粗さを伴う圧密化された、及び/又は圧縮された木材を提供することである。
【0021】
更には、本方法によって好ましくは、静電容量方式ディスプレイ若しくは抵抗性ディスプレイ、動作素子、制御パネル、スクリーンなどを含み、特に接触応答及び非接触といった特徴を含む、応答性素子(接触及び/若しくは非接触)並びに/又は背面発光電子素子で使用され得る圧密化された天然材料を製造することが可能となるだろう。
【0022】
特に好ましくは、本発明の別の目的は、例えば金属ワイヤ、コイル、モジュール、ダイ、チップ(NFC、RFID、UHF-RFID)、アンテナ、応答装置、誘導コイル、コンデンサ回路又は抵抗回路及びCPUなどの集積エレクトロニクスを備えた圧密木材を提供することである。
【0023】
本発明の別の目的は、1層、2層、又はそれより多い層の圧密木材を含む積層木材製品を提供することであり、特に高密度の木製単板積層材及び/又は材木を提供することである。
【0024】
本発明の別の好ましい目的は、天然木材又は木材及び/若しくは植物系材料の一体化した層を有する高密度の木製単板積層材、及び/又は材木を提供する、1層、2層以上の圧密木材中に、又はその上へと、紙、植物及び/又は木材繊維、木材チップ、木粉、セルロース、デンプン、リグニン、樹皮、木抽出物、藻類、キチン系材料、キトサン系材料並びに天然木材そのものといった1層、2層以上の木材系材料を含む、積層製品を提供することである。
【0025】
特に、本発明の別の好ましい目的は、高密度の木製単板積層材、及び/若しくは非木材系材料の一体化した層を有する材木を提供する1層、2層以上の圧密木材中に、又はその上へと、金属(例えば、アルミニウム、鋼、銅、銀、金、チタン)、プラスチック(PLA、PET、PP、PE、PVCなど)、合成若しくは天然接着剤、セラミックス、ガラス又はその他の非木材系材料といった1層又は2層以上の他の材料を含む、積層木材製品を提供することである。
【0026】
本発明の別の目的は、天然材料、特に改善された特性を有する木材に基づいて統合された電子機能を有するカードを提供することである。特に、カードは、例えばIDカードに関する基準であるISO/IEC 7810:2019など、それぞれの特定用途分野の要件によって規定されるように、寸法(厚さ、サイズ)、安定性、耐久性、機械特性及び機能パラメータといった点で物理的要件に適合するであろう。
【0027】
本発明の別の目的は、天然材料に基づいて統合された電子機能を有する木製嵌め込み(コア層)であって、特に木材、詳細にはアンテナ、ワイヤ、誘導コイル、導電層、電子チップ、モジュール、CPUなど、個別に、若しくは2つ以上の電子実体を組み合わせた状態で埋設され、又は重ねた電子実体を含む、圧密木材を提供することである。特に、嵌め込みによって、例えばIDカードに関する基準であるISO/IEC 7810:2019又は他のPCI(ペイメントカード産業、payment card industries)基準など、それぞれの特定用途分野の要件によって規定されるように、寸法(厚さ、サイズ)、安定性、耐久性、機械特性、電子的特徴及び他の機能パラメータといった点で物理的要件に適合する多層木製カードを提供する、統合された電子機能を有する木製カードの製造を可能とするであろう。
【0028】
驚くべきことに、これらの目的は、請求項1に記載の特徴によって達成可能であることが見出された。したがって、本発明のコアは、吸湿材料、特に天然吸湿材料、詳細には木材を圧密化するための方法であり、
a)圧密化される吸湿材料を供給する工程、
b)必要な場合に、吸湿材料の含水率を予め規定された水分範囲内の値に調整することで、吸湿材料のプレコンディショニングをする工程、
c)予め規定された温度及び圧力条件下で、吸湿材料の加熱及びプレスを同時に行い、吸湿材料の含水率を一定に維持する工程、
d)圧密材料を取得する工程、を含む。
【0029】
「吸湿材料」は、材料内の水を吸収及び/又は吸着及び/又は取り除くことが可能である材料を意味する。特に、吸湿材料は多孔質材料である。好ましくは、吸湿材料は成形体として存在する。
【0030】
特に、圧密化される吸湿材料は、植物材料、天然繊維材料、天然ポリマー材料、天然高分子材料、合成繊維材料、ミネラルウール、獣毛、タンパク質系材料から選択される。
【0031】
「含水率」は、材料中に含有する蒸発可能な水分の重量を、完全乾燥状態の材料の重量で割ったものとして規定されている。換言すると、含水率は、蒸発可能な水分の全てが放出されたときの材料の重量と比較して、どのくらいの蒸発可能な水分が材料中に存在しているかの尺度である。含水率は、較正された水分計で測定され得る。かかる水分計は、当業者に公知である。木材については、例えば、様々な供給業者から市販されているピン型又はピンレス型の水分計が存在している。
【0032】
工程c)では、含水率は一定に維持される。これは、含水率が、工程b)で調整された含水率から最大10%、特に5%、詳細には1%だけ外れていることを意味している。
【0033】
工程c)での加熱及びプレスは、例えば加熱装置を用いて機械プレスで行われ得る。加熱装置は例えば、プレスラム内に含まれ得る。
【0034】
詳細には、工程c)でプレスする間、圧密化される吸湿材料は、より均一な圧力分布を取得するためにプレスインサート間に配置され得る。プレスインサートは詳細には、例えばゴムといった、プレスラムに向かって配向されるより弾性のある材料と、例えば鋼といった、圧密化される吸湿材料に向かって配向される弾性が少ない材料と、を含む。特に、プレスインサートは圧密化される吸湿材料の両側に配置される。
【0035】
工程c)でのプレスは、静的様式で、又は連続様式で行われ得る。静的様式は、工程c)において、気密充填された吸湿材料の本体全体を完全に同時に処理することを意味する。対照的に、連続様式は、工程c)中に、気密充填された吸湿材料を処理領域に連続的に供給することで、又はその逆で、吸湿材料を部分ごとに処理することを意味する。可能な供給速度は、10-4mm/s~1m/sの範囲である。
【0036】
工程d)で取得される「圧密材料」は、工程a)で元々供給された吸湿材料の密度よりも高い密度を有する材料である。特に、圧密材料は圧縮された間隙を有する材料である。圧縮された間隙は、圧密化プロセスにより閉じられる間隙であることを意味する。これによって、通常は、最初に供給された吸湿材料の表面と比較すると、より滑らかであり、及び/又は液体に対する吸収が低減した表面がもたらされる。木材が吸湿材料として使用される場合には、詳細にはこれが該当する。この場合、例えば、木材表面を処理するために使用されるラッカー又は他の液体化学物質の吸収は少なく、それによって表面を処理するために必要となるラッカーが少なくなる。特に、木材が吸湿材料として使用される場合、表面粗さ(Rax)は、圧密化前に木材の粗さを少なくとも半分に低減することができる。
【0037】
詳細には、本発明のプロセスでは、吸湿性多孔質材料は、圧縮された間隙を有する高密度化材料に変換される。
【0038】
本発明のプロセスによって、最大で1,600kg/m3の最終密度を有する高密度化材料、特に圧密木材を製造することが可能となる。そのため、処理前の吸湿材料と比較すると、合成添加剤の添加がなくとも温度及びUV-Vis光に対する機械的安定性、色安定性といった化学特性及び物理特性を大幅に改善することが可能である。したがって、合成成分の有無に関わらず、高密度化され、かつ安定した材料を製造することができる。
【0039】
処理される吸湿材料として木材を使用するとき、寸法安定性、硬さ、傷の付きにくさ、紫外線(UV)及び可視(VIS)光に対する色安定性並びに温度安定性が改善され得た。更には、光源前に配置されたときに光を透過することができる半透明な木材系材料を製造することができ、特に屈折率マッチング合成ポリマーを含浸させることなく、これを製造することができる。半透明特性は、木材種、木材繊維及び年輪の配向、厚さ、天然の化学組成、化学処理、圧密化の程度、密度プロファイルによって変化する。
【0040】
本開示の方法で取得された圧密木材は、所与のレーザ強度、保持時間、供給速度、木材種、木材の色などにおいて、天然木材又は非圧密木材と比較すると、焼却が全く生じないレーザ彫刻に好適である。このことによって、圧密木材の表面構造及び/又は表面粗さをカスタム化することが可能となり、それによって、例えば疎水性やオムニフォビシティなど、カスタム化された触感及び濡れ特性が可能となる。
【0041】
結果的に、本発明の方法によって、0.01~0.05mmという薄い圧密単板を製造することが可能となる。詳細には、かかる種類の単板は、統合された電子機能を有する完全機能カードを製造するのに好適である。そのため、基準であるISO/IEC 7810:2019に規定される寸法要件及び機械的要件に適合するカードを作製することが可能である。
【0042】
理論に拘束されるものではないが、一定の水分条件下で吸湿材料を加熱及びプレスすることは、本発明の重要な特徴であると考えられている。したがって、圧縮工程中、例えば木材片といった吸湿材料を蒸気処理する必要がない。明白なことであるが、これによって高度な安定状態の圧密材料がもたらされる。これは、圧力を解放し、材料を室温に冷却した後であっても維持される。そのため、吸湿材料のスプリングバック又は形状記憶効果は、特に公知の圧密吸湿材料(例えば、通常のHTMプロセスで製造されたもの)のうちの1つと比較すると、大幅に減少され得る。したがって、本発明のプロセスは、吸湿材料を固有の様式で構造的及び/又は化学的に修飾する。
【0043】
更には、本発明の方法で取得可能である圧密木材は、抗菌剤又は香料などの活性剤を木材構造内部に封入可能である。これによって、木材内深部での活性剤の蓄積がもたらされる。活性剤はここで、時間(表面への拡散)によって、又は鋸での切断、切断、摩擦、引っかき、彫刻、洗浄剤の有無に関わらない洗浄などの物理的、化学的又は機械的衝撃を受けたときに、表面にゆっくりと放出される。
【0044】
工程c)において含水率を一定に維持することは、異なる方法で達成することができる。
【0045】
特に、圧密化される吸湿材料は、工程c)中の自体が含有される環境内に含まれる。そのため、含水率はこの環境内で一定に維持され、したがって圧密化される吸湿材料中の含水率が大幅に変化することがない。
【0046】
例えば、加熱及び/若しくはプレスに使用される装置は、自体が含有される環境内に含まれ得、並びに/又は加熱及び/プレスに使用される装置の構成は、自体が含有される環境が動作中の装置内部の例えばプレスラムなどの機械部品によって実現されるように設計され得る。
【0047】
本発明の方法の高度に好ましい実施態様によれば、本方法は、工程c)の前に気密ケーシングに、プレコンディショニングされた吸湿材料を気密パッケージする更なる工程b1)を含む。
【0048】
「気密ケーシング」は、工程c)において一般的な条件下で水蒸気について気密である、吸湿材料を完全に包む被覆物を意味する。詳細には、「気密」は、10-2mbar*l/s以下、好ましくは10-3mbar*l/s以下、特に10-4mbar*l/s以下、特に10-7mbar*l/s未満の水蒸気漏れ度を意味する。特に、気密ケーシングは気密包装及び/又は気密容器である。
【0049】
好ましくは、気密ケーシングは、工程c)の条件下で温度耐性がある、箔、バッグ及び/又は容器である。詳細には、箔はプラスチック、ゴム及び/又は金属箔である。同様に、バッグ及び容器は、プラスチック、ゴム及び/又は金属で作製され得る。特に、容器は圧縮可能であってもよい。
【0050】
工程b1)では、プレコンディショニングされた吸湿材料は、大気圧にて、減圧にて、又は高圧にて、気密ケーシングにパッケージされ得る。したがって、「気密パッケージ」は、例えば「真空パッケージ」などの方法を含む。そのため、プレコンディショニングされた吸湿材料は、大気圧未満の圧力にて気密パッケージされる。
【0051】
真空パッケージは、酸素含有量を低下させる一助となる。これによって、酸化環境の低下がもたらされる。
【0052】
好ましい実施形態によれば、工程b1)において、プレコンディショニングされた吸湿材料は、特に大気圧未満の圧力で、詳細には0.99barと10-5barの間の範囲で、好ましくは10-2bar未満、特に10-3bar未満で真空パッケージされる。
【0053】
気密ケーシング中のプレコンディショニングされた吸湿材料の気密パッケージは、材料内部で含水率を一定に維持するための高度に効果的で受動的な処置である。プレコンディショニングされた吸湿材料がより気密に充填されるほど、工程c)中の含水率はより一定になる。
【0054】
詳細には、工程c)において、吸湿材料は予め規定された圧力プロファイル及び予め規定された温度プロファイルに従って加熱及びプレスされる。「プロファイル」は、圧力及び温度の時間経過を意味する。換言すると、予め規定された圧力プロファイル及び予め規定された温度プロファイルにて、工程d)中の任意の時点にて、特定の圧力及び特定の温度に関連づけられる。これは、非常に精密かつ再現性のある様式で圧密化プロセスを制御する一助となる。
【0055】
特に、それぞれの種類の圧密化される吸湿材料については、個別に決定された圧力プロファイル及び温度プロファイルが使用される。
【0056】
好ましくは、工程b)において、圧密化される吸湿材料の含水率は5~30%、特に10~15%に調整される。
【0057】
工程c)において、好ましくは、圧力を5~50MPa、特に8~20MPa、詳細には10~15MPaの値に上昇させ、及び/又は温度を100~220℃、特に120~190℃、詳細には150℃~185℃の値に上昇させる。これは詳細には、圧密化される吸湿材料、特に木材の厚さが、0.05~5mm、特に0.2~1.2mm、特に0.2~0.6mmである場合には好適である。
【0058】
工程c)において、好ましくは、圧力を5~50MPa、特に8~20MPa、詳細には10~15MPaの値に上昇させ、及び/又は温度を100~200℃、特に120~170℃、詳細には140℃~160℃の値に上昇させる。これは詳細には、圧密化される吸湿材料、特に木材の厚さが5mmより大きい場合には好適である。
【0059】
可能な実施態様によれば、圧密化される吸湿材料の少なくとも1つ、特に2つ、詳細には全ての表面又はバルクは、特にブラッシング、圧延、噴霧、印刷、浸漬又は含浸で、詳細には真空処理又は圧力処理を用いて、工程b)前に化学物質で化学的に処理される。
【0060】
化学物質は、天然ポリマー、合成ポリマー、バイオベースポリマー、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、デュロプラスチック、エラストマー、天然樹脂、合成樹脂、ワックス、油、生物活性剤、医薬品有効成分、着色剤、顔料、接着剤、ナノ粒子(nanoparticle、NP)、微粒子(microparticle、μP)、NP及びμPのクラスタ及び/又は凝集剤、硫黄、鉱物、ガラス、セラミックス、有機金属化合物及び/又は溶融若しくは液体金属から選択され得る。これらの薬品は、液体、溶融物、溶液又は分散液であり得る。かかる処理については、圧密材料は特定の必要性に更に調整することができる。特に、化学処理が存在する場合、処理される吸湿材料の重量に対して化学物質の割合が0.01~15重量%、特に0.1~9重量%、詳細には0.5~3重量%となるように、化学物質の割合が選択される。ただし、かかる処理は任意のものにすぎない。
【0061】
高度に好ましい実施態様によれば、工程b)前に化学処理は存在せず、特に圧密化される吸湿材料の表面の含浸が存在しない。本発明の方法によって有利な圧密材料がもたらされるため、一般には圧密化される吸湿材料を化学的に処理する必要はない。
【0062】
詳細には、圧密化される吸湿材料は、植物材料、天然繊維材料、合成繊維材料、ミネラルウール、獣毛、皮膚系材料、キチン系材料、キトサン系材料、タンパク質系材料、並びに/又は例えば、草、藻類、麻繊維及び/若しくは卵殻といった、かかる材料の混合物から選択される。
【0063】
特に、圧密化される吸湿材料は、石炭、木炭、カーボンブラック及び/又は活性石炭から選択される。
【0064】
高度に好ましい実施態様によれば、圧密化される吸湿材料は木材、特に材木、詳細には無垢材及び/又は単板から選択される。
【0065】
木材といった用語は、天然木材及び改質木材を含む。木材は例えば軟質木材又は硬質木材であり得る。改質木材は、化学的に及び/又は物理的に処理された木材を意味する。例えば、改質木材は、例えばアンモニア中、木材の煙及び/又は別の気体状化学物質中といった気相にて化学的に改質された木材であり得る。あるいは改質木材は、例えばアセチル化木材又はミネラル化木材といった液相にて化学的に改質された木材である。物理的に改質された木材は例えば、熱処理木材及び/又は焼成木材を含む。特に、改質木材は、例えば油含浸木材又はアセチル化木材若しくはミネラル化木材といった、詳細には有機化合物又は無機化合物を用いて含浸された木材である。
【0066】
材木は、例えば梁、厚板及び/又は単板といった特定の形状の木材製品に加工された木材を意味する。無垢材は例えば、サイドボード、リフトカット、クォーターカットから選択され得る。単板は、円形に回転分割され、半円形に分割され、平坦に分割され、4等分に分割され、又はリフト分割された単板であり得る。
【0067】
特に、木材は、天然の森林又は人工林の、任意の種類の被子植物(例えばカエデ、カシ、ブナ、ヒッコリー、サクラ、クルミなどの硬木、花及び果樹、落葉樹)又は裸子植物(例えばトドマツ、トウヒ、マツなどの軟木、針葉樹、針状の葉、常緑樹)から選択される。更には、木/木材の部分は辺材又は心材、早材又は晩材、節こぶ/節、根、葉及び樹皮であり得る。また、緑藻、紅藻、褐藻及び他の種類の藻類を含む藻類などの海洋性セルロース材料。ただし、他の種類のセルロース材料も同様に使用され得る。
【0068】
好ましくは、本方法は、取得された圧密材料の密度が、原材料の元々の密度に応じて通常1.01~100の圧密化係数を有する材料の未加工の密度の倍数であるように行われる。圧密化係数は、詳細には1.1~50、特に1.5~20、好ましくは2~16である。特に、取得された圧密材料の密度は、詳細にはその元々の密度に応じて、少なくとも900kg/m3、特に少なくとも1,200kg/m3、詳細には少なくとも1,300kg/m3、好ましくは1,300~1,600kg/m3である。これらの圧縮度によって、通常は大幅に向上した圧密材料、特に圧密木材が生じる。これは、多くの異なる用途に好適である。それにも関わらず、他の圧縮度も同様に好適であり得る。
【0069】
特に、本方法は、圧密化された固形材料の引張強度が、処理前の圧密化される吸湿材料の引張強度の1.5~4倍、特に2~3倍の高さとなるように行われる。
【0070】
詳細には、圧密化される吸湿材料、特に木材、詳細には単板の厚さは、0.1~4.0mm、特に0.3~1.2mm、詳細には0.4~0.7mmであり、及び/又は取得された圧密材料、特に木材、詳細には単板の厚さは、0.01~2.0mm、特に0.1~0.8mm、詳細には0.15~0.3mmである。
【0071】
特に好ましくは、工程c)は、以下のサブ工程:
c1)気密充填された吸湿材料を、第1の圧力にて第1の温度に予め加熱し、予め規定された第1の滞留時間にわたって維持し、好ましくは第1の圧力が周囲圧力と同等である、工程、
c2)第1の温度を維持しながら、圧力を、特に圧力上昇の定率にて第2の圧力に上昇させ、予め規定された第2の滞留時間にわたって維持する工程、
c3)第2の圧力を維持しながら、温度を、特に温度上昇の定率にて第2の温度に上昇させ、予め規定された第3の滞留時間にわたって維持する工程、
c4)温度を室温に低下させる工程、
c5)圧力を周囲圧力に低下させる工程、を含む。
【0072】
この特定のプロセスは、特に木材が圧密化される吸湿材料として使用されるときに非常に有益であることが明らかとなった。結果的には、連続的な様式での温度及び圧力の独立した上昇によって、高度に安定した圧密材料がもたらされる。ただし、特殊な吸湿材料については、及び/又は圧密材料における特殊な特性を取得することについては、異なるプロセス制御が同様に有益であり得る。
【0073】
詳細には、工程c1)においては、第1の温度は50~100℃、特に60~80℃、詳細には65~75℃であり、第1の圧力は0~2MPa、特に0.1~1MPa、詳細には0.1~1MPaよりも大きい。0.1MPaは大気圧を意味する。すなわち、周囲空気圧とは別の追加圧力は印加されない。したがって、示されるような圧力は、詳細にはプレス装置で印加される追加圧力を意味する。
【0074】
特に、第1の滞留時間は約1分~10時間、特に1~60分、特に具体的には10~20分及び詳細には1~5分である。これは詳細には、圧密化される吸湿材料、特に木材の厚さが、0.05~5mm、特に0.2~1.2mm、特に0.2~0.6mmである場合には好適である。
【0075】
特に、第1の滞留時間は約1分~10時間、特に5~60分、詳細には20分である。これは詳細には、圧密化される吸湿材料、特に木材の厚さが5mmより大きい場合には好適である。これは詳細には、圧密化される吸湿材料、特に木材の厚さが5mmより大きい場合には好適である。
【0076】
特に、工程c2)においては、第2の圧力は5~50MPa、特に9~11MPaである。そのため、好ましくは圧力上昇の定率は、約0.5~20MPa/分、特に5~15MPa/分、詳細には0.9~1.1MPa/分である。詳細には、第2の滞留時間は約1~45分、特に20~30分、詳細には1~5分である。これは詳細には、圧密化される吸湿材料、特に木材の厚さが、0.05~5mm、特に0.2~1.2mm、特に0.2~0.6mmである場合には好適である。
【0077】
特に、工程c2)においては、第2の圧力は5~50MPa、特に9~11MPaである。そのため、好ましくは圧力上昇の定率は、約0.5~2MPa/分、特に0.9~1.1MPa/分である。詳細には、第2の滞留時間は約1~45分、特に20~30分である。これは詳細には、圧密化される吸湿材料、特に木材の厚さが5mmより大きい場合には好適である。
【0078】
工程c3)においては、詳細には、第2の温度は100~220℃、特に120~190℃、好ましくは150~185℃である。そのため、好ましくは温度上昇の定率は、約0.5~30℃/分、特に10~20℃/分、より特定的には5~10℃/分、詳細には1.5~2.5℃/分である。第3の滞留時間は、好ましくは約1~90分、特に35~55分、詳細には5~10分である。約1~120分の第4の滞留時間は、第3の滞留時間よりも低い、又は高い温度で任意には適用され得る。これは詳細には、圧密化される吸湿材料、特に木材の厚さが、0.05~5mm、特に0.2~1.2mm、特に0.2~0.6mmである場合には好適である。
【0079】
工程c3)においては、詳細には、第2の温度は130~190℃であり、好ましくは140~160℃である。そのため、好ましくは温度上昇の定率は、約0.5~10℃/分、特に1~3℃/分、詳細には1.5~2.5℃/分である。第3の滞留時間は、好ましくは約1~90分、特に35~55分である。約10~120分の第4の滞留時間は、第3の滞留時間よりも低い、又は高い温度で任意には適用され得る。これは詳細には、圧密化される吸湿材料、特に木材の厚さが5mmより大きい場合には好適である。
【0080】
工程c4)において、温度を、冷却プレスラムを介し、能動的に又は受動的に低下させる。木材片を室温に冷却した後、圧力を解放し、かつ開放する。
【0081】
上記のこれらのパラメータは、吸湿性木材を圧密化するのに特に好適であり、高度に改善された特性を有する圧密木材がもたらされる。
【0082】
好ましくは、本発明の方法は、圧密化される吸湿材料及び/又は圧密材料の表面構造及び/又は表面テクスチャをカスタム化する工程を更に含む。
【0083】
詳細には、表面構造及び/又は表面テクスチャのカスタム化は、例えばテクスチャ加工された、及び/若しくは構造化されたプレスラムを備えた機械プレスを使用すること、並びに/又はエンボスインサートを使用することなどによって、特にエンボス加工することで、工程c)中に行われる。エンボスインサートは例えば、金属、テフロン(登録商標)、セラミックス、プラスチック材料、圧密木材及び/又は天然木材から作製され得、圧密化される吸湿材料、特に木材片の片側又は両側に配置される。
【0084】
特殊な種類の3D構造化が達成され得る。この場合、構造化は木材の構造、すなわち年輪、晩材/早材の木材プロファイルに対応する。これについては、2枚の単板シートを重ね、これを薄い熱耐性プラスチック箔で分離する。2枚の単板シートは、同一の構造的特徴(木材の年輪、晩材/早材の位置など)を有するように同一の切断部を由来としなければならない。2枚の単板シートを重ねることで、両方の単板を同時にプレスする。2枚の単板シートは同一の密度プロファイルを表すため、両方の単板の低密度領域(通常は早材)は、高密度領域(通常は晩材)よりも高い程度で圧密化される。それによって、両単板シートの接触面の年輪に対応する3D表面を作成する。2枚の単板シートの対応する早材領域及び晩材領域を正確に位置決めすることで、構造的な木材パターンに従う木材表面の3D構造化を達成することができる。滑らかなアルミニウムプレートに面する両方の単板シートの外側は、完全に滑らかかつ平坦である。こうすることで、片面の表面構造化が得られる。2枚、3枚又はそれ以上の単板シートを使用することで、片面及び両面構造化された単板が取得され得る。
【0085】
好ましい実施形態によれば、表面構造及び/又は表面テクスチャのカスタム化は、例えばレーザ彫刻及び/又はCNC彫刻など、特に彫刻によって工程c)後に行われる。
【0086】
ただし、表面構造及び/又は表面テクスチャのカスタム化、並びに/又はその上で、工程c)後の更なるカスタム化を行うことも可能である。
【0087】
これらの方法によって、圧密材料、特にナノメートルからマイクロメートルを経て最大でミリメートルの範囲で制御された表面粗さを有する圧密木材を製造することが可能である。表面を疎水性(油、脂肪酸、ワックス)物質又はオムニフォビック(フッ化炭化水素又はペルフルオロカーボン)物質又はいずれかの種類の疎水性コーティング、ラッカー若しくはニスで更に処理するときには、疎水性、超疎水性、オムニフォビック又は更には滑性液体注入多孔質表面(slippery liquid infused porous surfaces、SLIP)を提供することも可能である。
【0088】
特に、表面構造及び/又は表面テクスチャのカスタム化は、予め規定された設計、パターン及び/又は画像を、圧密化される吸湿材料及び/又は圧密材料の表面上へと適用する工程を含む。
【0089】
詳細には、表面構造及び/又は表面テクスチャのカスタム化によって、詳細にはマイクロ及び/又はナノ構造化によって超疎水性表面が生成される。好ましくは、表面の水との接触角は、標準条件下では150°以上である。
【0090】
更に好ましい実施形態によれば、工程a)において、圧密化される吸湿材料、特に木材系材料は、少なくとも2層を含むスタック形態で提供される。少なくとも1層、特に少なくとも2層、3層、4層、5層又はそれよりも多い層は、吸湿材料から作製され、スタックの全ての層は共に圧密化される。このアプローチによって、例えば吸湿材料の複数の層を同時に圧密化すること、及び/又は任意には異なる材料の層を含む積層構造を製造することが可能となる。
【0091】
詳細には、スタックは少なくとも2層の異なる吸湿材料を含む。例えば、異なる吸湿材料は木材及び/又は紙である。
【0092】
好ましくは、吸湿材料の少なくとも1層は、植物系材料、動物系材料及び/又は木材系材料、特に紙、植物及び/若しくは木材繊維、木材チップ、木粉、セルロース、デンプン、リグニン、樹皮、木抽出物、藻類、キチン系材料、キトサン系材料、天然木材、タンパク質、石炭、木炭、カーボンブラック並びに/又は活性石炭を、含む又はこれらからなる。
【0093】
特に、吸湿材料は、木材、好ましくは材木、詳細には無垢材及び/又は単板を、含む又はこれらからなる。詳細には、スタックの吸湿材料の全ての層は、木材系材料を、含む又はこれからなる。
【0094】
特に、スタックは更には、
(i)例えば、アルミニウム、鋼、銅、銀、金及び/若しくはチタンを含む、若しくはこれらからなる、金属及び/若しくは合金、並びに/又は
(ii)ポリマー材料、例えばPLA、PET、PP、PE、PVC及び/若しくはタンパク質などの特に合成ポリマー及び/若しくは生体高分子、並びに/又は
(iii)例えば、セラミックス、ガラス、石、クレイ、金属有機構造体(metal-organic frameworks、MOF)、ゼオライト、石炭、木炭、カーボンブラック及び/若しくは活性石炭といった無機材料、又は他の多孔質若しくは非多孔質無機材料、の少なくとも1層を含んでもよい。
【0095】
これによって、1層、2層又はそれよりも多い層の他の材料を含む、積層構造又は製品を製造することが可能である。
【0096】
個々の層の厚さ及び寸法は、製造される構造又は製品に応じて、広い範囲内で変更することができる。好適な厚さは、例えば上記の通りである。
【0097】
例えば、ISO/IEC 7810:2019(ISO/IEC 7811、7813、7816及び14443を含む)に記載される、例えばペイメントカードなどの寸法的に安定して平坦なカードを取得することが目的の場合には、積層構造を製造する本発明のプロセスは高度に有益である。
【0098】
詳細には、本プロセスによって、例えば1層につき10μm~420μmの範囲で様々な厚さを有する、例えば木材といった異方性材料の個々の層及び/又は例えば紙、フリース、PLA、タンパク質フィルムなどといった等方性材料の個々の層の目標として設定した層の組合せ(例えば、合計で2~48層)が可能となる。この結果、高い寸法安定性、好適な寸法、及び例えばアンテナ及びチップモジュールといった電子及び/若しくは磁気機能の適切な位置付けを備えた積層構造並びに/又はカードが取得可能である。そのため、環境条件によって誘起された異方性の力は、スタックの個々の層の適当な種類、数及び厚さを選択することで均衡を保つことができる。
【0099】
具体的には、変化する環境条件下でその形状、サイズ及び平面度を本質的に維持する積層構造及び/又はカードを製造することが可能である。換言すると、かかる種類の積層構造及び/又はカードは、変化する湿度、湿気、温度及び/又は圧力条件に対して実質的には反応性がない。
【0100】
したがって、好ましい実施形態によれば、スタックの個々の層の種類、数及び厚さは、ISO/IEC 7810:2019(ISO/IEC 7811、7813、7816及び14443を含む)に記載の機械特性を有するカードを製造するために使用され得る積層構造を取得するために選択される。
【0101】
好ましくは、スタックの最も外側の層は、木材系材料、特に木材、好ましくは材木、詳細には無垢材及び/又は単板から作製される。
【0102】
詳細には、スタックの層のうちの少なくとも1層は、接着剤、特に合成接着剤、天然接着剤、化石系接着剤若しくはバイオベース接着剤で処理され、及び/又は少なくとも1つの接着箔は、スタックの層間に配置される。この結果、スタックの層の全ては、積層構造を製造するために圧密化の際に共に接合される。
【0103】
例えば、隣接する層間には接着剤及び/又は接着箔を配置する。この様式では、スタックの層の全ては、圧密化プロセスで共に接合される。
【0104】
特に、スタックは電子機能、磁気機能及び/又は光学ラベルを含む。詳細には、電子機能は集積回路、記憶装置、追跡装置、検知装置、電線、アンテナ、静電容量実体及び/又は電磁コイルである。かかる種類の電子機能は、電子機能を有する製品を製造するためにスタック中に含められ得る。ただし、最も好ましくは、電子機能は電線、アンテナ、静電容量実体及び/又は電磁コイルから選択される。機能は温度感受性が低い。
【0105】
他の機能は例えば、以下に記載される通り、圧密化後にスタックに追加され得る。
【0106】
詳細には、電子機能、磁気機能及び/又は光学ラベルは、セルロース材料の層上に、特に紙の層上に配置される。これによって、それぞれ正確に規定された配向で、かつ接地面積を取らない様式で、機能又はラベルを配置することが可能となる。ただし、機能の他の配置も同様に可能である。
【0107】
詳細には、スタックの層の全ては同じ長さと幅を有する。これによって、立方体形状の積層構造又は製品を製造することが可能となる。
【0108】
ただし、別の好ましい実施態様では、スタックの層は異なる長さ及び/又は幅を有する。これによって、本質的には任意の種類の形状を有する2次元構造又は3次元構造を製造することが可能となる。
【0109】
特に、スタックの少なくとも2層、特にスタックの最も外側の層は木材から作製される。更に好ましい実施態様によれば、スタックの少なくとも2層は木材から作製され、層は異なる木目方向に配向される。特に、全ての隣接する層は異なる木目方向を有する。これらの構成は、例えば改善された機械特性といった改善された特性を有する積層構造又は製品を取得するために使用され得る。
【0110】
例えば、異なる木目方向に配向された少なくとも2層の木目方向間の、特に隣接する層間の角度は、0°~360°、特に1°~359°、詳細には30°~45°、特に60°~90°である。
【0111】
特に、スタックは少なくとも3層、詳細には少なくとも4層を含み、好ましくは少なくとも3層のうちの最も外側の層の厚さは、最も外側の層間に位置付けられた1層以上の厚さよりも大きい。かかる構成は、特にカードの製造に好適である。
【0112】
別の好ましい実施態様では、スタックは少なくとも3層、詳細には少なくとも4層を含み、好ましくは少なくとも3層のうちの最も外側の層の厚さは、最も外側の層間に位置付けられた1層以上の厚さよりも小さい。
【0113】
別の好ましい実施形態によれば、スタックのうちの少なくとも2層のうちの少なくとも1つの最も外側の層の表面構造及び/又は表面テクスチャは、例えばテクスチャ加工された、及び/又は構造化されたプレスラムを備えた機械プレスを使用すること、並びに/又はエンボスインサートを使用することなどによって、特にエンボス加工することで、工程c)中にカスタム化される。上記の通り、エンボスインサートは例えば、金属、テフロン(登録商標)、セラミックス、プラスチック材料、圧密木材及び/又は天然木材から作製され得、少なくとも1つの最も外側の層上に配置される。
【0114】
特に、圧密化は、スタックの吸湿材料の少なくとも2層のうちの少なくとも1つ(例えば、木材)が半透明になるように行われる。詳細には、スタックの2つ以上、又は全ての層は半透明になる。木材の半透明性は、厚さ、木材の種類及び木材のリグニン含有量で制御され得る。例えば、リグニンが豊富な木材は、本発明の方法では容易に半透明となり得る。
【0115】
好ましくは、工程b)及びc)中に、スタックの最も外側の層はプラスチック箔で被覆される、及び/又はスタックはプラスチック箔中に封入される。エンボスインサートが使用される場合、プラスチック箔は、好ましくは少なくとも1つの最も外側の層とエンボスインサートとの間に配置される。更なるプラスチック箔は、エンボスインサートとプレスとの間、特にプレスラムとの間に配置されてもよい。
【0116】
更なる好ましい実施態様では、工程d)の後に、凹み及び/又は彫刻は、スタックの少なくとも最も外側の層に製造される。好ましくは、凹み及び/又は彫刻は、レーザ彫刻及び/又はレーザ切断によって製造される。これによって、更なる素子(例えば、電子機能)を受け入れる部位を供給すること、及び/若しくは少なくとも1つの最も外側の層をラベル付け及び/若しくは構造化を行うことが可能となる。
【0117】
特に、工程d)の後、電子機能、磁気機能及び/又は光学ラベルは、例えば接着剤による接合で凹みに配置される。詳細には、機能は上記の機能であり、特に集積回路、記憶装置、追跡装置、検知装置及び/又はチップから選択される。
【0118】
そのため、好ましくは、電子機能は、既にスタック中に含まれる他の電気機能、特に電線、詳細にはアンテナ及び/又は電磁コイルとの電気接点中にあるように配置される。
【0119】
特に、凹み及び/又は彫刻は、少なくとも1つの最も外側の層の真下にある層が露出するように製造される。詳細には、最も外側の層の真下にある層は、最も外側の層の色とは異なる色を有する層である。このことによって、例えば少なくとも1つの最も外側の層の色とは異なる色のロゴ、文字及び数字を高いコントラストで製造することが可能となる。別個の着色プロセスは必要とされない。
【0120】
例えば、最も外側の層は圧密木材の層であり、最も外側の層の真下にある層は、例えば金色、銀色又は銅色を有する金属及び/又はプラスチックの層である。
【0121】
更には、工程d)の後に、圧密化スタックは、特にレーザ切断、ナイフ、パンチ又は他の種類のカッタで、複数の個々の圧密化スタックのサイズに切断、及び/又は切り分けられ得る。これによって、単回の圧密化工程のみで、例えば複数の個別のスタック又は積層構造(例えばカード用)を取得することが可能となる。したがって、かかるアプローチは効率良く大量生産を行う上で高度に有益である。
【0122】
本発明の方法は、積層構造を製造するための方法の一部であり得る、又は積層構造を製造するための方法として実施され得る。
【0123】
したがって、本発明の更なる態様は、積層構造、特に積層木材構造を製造するための方法に関連し、積層構造は上記の方法で製造される。
【0124】
積層構造は、圧密化される吸湿材料が上記のようにスタック形態で提供されるとき、直接製造され得る。そのため、積層構造は工程c)における圧密化中に製造される。
【0125】
積層構造を製造するための別の可能性は、以下に記載される。すなわち、積層構造、特に積層木材構造を製造するためには、上記の吸湿材料の層又はスタックは、上記の本発明の方法で圧密化され、その後に例えば接着剤による接合で少なくとも1つの更なる層に積層される。
【0126】
そのため、少なくとも1つの更なる層は、例えば:
(i)上記の本発明の方法で圧密化された吸湿材料の別の層、並びに/又は
(ii)植物系材料、動物系材料及び/若しくは木材系材料、特に紙、植物及び/若しくは木材繊維、木材チップ、木粉、セルロース、デンプン、リグニン、樹皮、木抽出物、藻類、キチン系材料、キトサン系材料、天然木材、タンパク質、石炭、木炭、カーボンブラック及び/若しくは活性石炭、並びに/又は
(iii)例えば、アルミニウム、鋼、銅、銀、金及び/若しくはチタンといった金属及び/若しくは合金、並びに/又は
(iv)ポリマー材料、例えばPLA、PET、PP、PE、PVC及び/若しくはタンパク質などの特に合成ポリマー及び/若しくは生体高分子、並びに/又は
(v)例えば、セラミックス、ガラス、石、クレイ、金属有機構造体(MOF)、ゼオライト、石炭、木炭、カーボンブラック及び/若しくは活性石炭といった無機材料、又は他の多孔質若しくは非多孔質無機材料、から作製される。
【0127】
この第2のプロセスでは、積層構造は、少なくとも部分的には圧密化後に製造される。
【0128】
特に、項目(i)で言及された本発明の方法で圧密化された吸湿材料の層は、半透明材料の層である。詳細には、スタックの2つ以上、又は全ての層は半透明である。
【0129】
積層前に、吸湿材料の層に、又はスタックの少なくとも1つの最も外側の層に製造された凹みがある場合、電子機能及び/又は磁気機能は積層前に凹みに配置され得、この結果、積層の際に、電子機能及び/又は磁気機能が積層構造時に埋設される。これによって、例えばチップ、例えばNFC、RFID又はUHF-RFIDチップなど完全に統合された電子機能を備えた、例えば積層構造又は製品を製造することが可能となる。
【0130】
特に好ましくは、積層構造が:
a)圧密単板又は非圧密単板の層で作製された裏面、
b)圧密単板又は非圧密単板の層で作製された表面、
c)任意には、裏面層と表面層との間に配置される、圧密単板若しくは非圧密単板又は任意の非木材系材料の1つ以上の更なる層、
d)好ましくはカードに埋設された集積回路、記憶装置、追跡装置、検知装置、アンテナ及び/又は電磁コイル、
e)任意には、集積回路、記憶装置、追跡装置、検知装置、アンテナ及び/又は電磁コイルのうちの1つ以上を担持するために、裏面と表面との間に配置される、例えば、紙、圧密木材及び/又はフリースなど、セルロース材料で特に作成された支持層、
を含むように、積層構造が製造され、層は積層され、単板の層のうちの少なくとも1つ、詳細には表面及び裏面、特に単板の層の全ては、圧密単板から作製される。
【0131】
かかる構成を含む積層構造は、カード、特にペイメントカード、クレジットカード、デビットカード、IDカード、会員カード及び/又はアクセスカードに特に好適である。
【0132】
そのため、好ましくは、表面及び裏面の厚さは、1つ以上の任意の更なる層の厚さよりも大きい。
【0133】
更には、本発明の方法は、製品を製造するための方法の一部であり得る、又は製品を製造するための方法として実施され得る。したがって、本発明の更なる態様は、(i)上記吸湿材料又はスタックを圧密化する工程及び/又は上記の積層構造を製造する工程、並びに(ii)圧密材料及び/又は工程(i)で取得された積層構造から少なくとも部分的に製品を製造する工程、を含む製品を製造するための方法に関連する。そのため、製品は、詳細には楽器又はその部品、家具、ドア、ドアハンドル、床材、壁紙、擁壁、自動車部品、天井用の壁紙、スポーツ用品、耐荷重性要素、カード、電子機器若しくは電子機器用ケーシング(例えば、キーフォブ)、データ記憶装置(例えば、USBスティック)又は携帯電話用ケーシングである。
【0134】
例えば、電子機器は、例えばカード形状、立方体形状、球体形状又は環形状といった任意の形状を有し得る。電子機器は、例えばセンサ機能、アクセスタグ又は機能、識別機能、オーディオ及び/又はディスプレイ機能など、任意の種類の電子機能を特徴とし得る。
【0135】
特に、電子機器はウェアラブル機器である。これはすなわち、身体に装着する演算装置である。例えば、ウェアラブル機器は、指輪、ブレスレット、スポーツ防護用品、時計又は眼鏡として構成される。
【0136】
特に、製品はカードであり、特にペイメントカード、クレジットカード、デビットカード、IDカード、会員カード及び/又はアクセスカードである。
【0137】
特に好ましくは:
a)圧密単板又は非圧密単板の層で作製された裏面、
b)圧密単板又は非圧密単板の層で作製された表面、
c)任意には、裏面層と表面層との間に配置される、圧密単板若しくは非圧密単板又は任意の非木材系材料の1つ以上の更なる層、
d)好ましくはカードに埋設された集積回路、記憶装置、追跡装置、検知装置、アンテナ及び/又は電磁コイル、
e)任意には、集積回路、記憶装置、追跡装置、検知装置、アンテナ及び/又は電磁コイルのうちの1つ以上を担持するために、裏面と表面との間に配置される、例えば、紙、圧密木材及び/又はフリースなど、セルロース材料で特に作成された支持層、
を含むように、カードが製造され、層は積層され、単板の層のうちの少なくとも1つ、詳細には表面層及び裏面層、特に単板の層の全ては、圧密単板から作製される。
【0138】
特に、カードはISO/IEC 7810:2019(ISO/IEC 7811、7813、7816及び14443を含む)の要件を満たす。
【0139】
圧密材料、製品及びカードの更なる有益な特徴は以下に説明される。したがって、本発明の方法は好ましくは、これらの特徴が生じるように実行される。
【0140】
本発明の更なる態様は、上記の方法で取得可能である、又は取得される圧密材料に関する。
【0141】
特に、上記の方法は、以下に説明される特性を有する圧密材料が生じるように実行される。
【0142】
詳細には、圧密材料は植物材料、天然繊維材料、合成繊維材料、ミネラルウール、獣毛、タンパク質系材料に基づいている。詳細には、「に基づいている」という用語は、少なくとも50重量%、詳細には少なくとも75重量%、特に少なくとも90重量%、詳細には少なくとも99重量%又は100重量%の程度までの圧密材料がそれぞれの材料からなることを意味している。
【0143】
特に、圧密材料は木材に基づいている。好ましくは、圧密材料は圧密無垢材及び/又は圧密単板である。詳細には、木材は、天然の森林又は人工林の、任意の種類の被子植物(例えばカエデ、カシ、ブナ、ヒッコリー、サクラ、クルミなどの硬木、花及び果樹、落葉樹)又は裸子植物(例えばトドマツ、トウヒ、マツなどの軟木、針葉樹、針状の葉、常緑樹)から選択される。更には、木/木材の部分は辺材又は心材、早材又は晩材、節こぶ/節、根、葉及び樹皮であり得る。
【0144】
詳細には、圧密材料、特に圧密木材、詳細には単板の厚さは、0.05~2mm、特に0.1~1mm、詳細には0.15~0.3mmである。
【0145】
高度に好ましい実施形態によれば、取得可能である、又は取得された圧密材料は、追加成分を含まず、特に追加の天然ポリマー、合成ポリマー、天然樹脂、合成樹脂、ワックス、硫黄及び/又は溶融金属を含まない。この場合、圧密材料は純粋に、吸湿材料それ自体に基づいている。「含まない」は、追加製品の割合が1重量%未満、特に0.1重量%未満又は0重量%であることを意味する。
【0146】
特に、取得可能である、又は取得された圧密材料は半透明材料、詳細には半透明木材である。木材の半透明性は、厚さ、木材の種類及び木材のリグニン含有量で制御され得る。例えば、リグニンが豊富な木材は本発明の方法では半透明となる。したがって、圧密化は好ましくは、圧密化される吸湿材料(例えば木材)が半透明になるように行われる。
【0147】
詳細には、圧密材料が木材である場合には、引張係数又はヤング率はそれぞれ、10,000~50,000MPa、特に12,000~40,000MPa、詳細には15,000~35,000MPaである。これは詳細には、カシ、カエデ及びシラカバといった種類の木材に該当する。引張係数は、長手方向での単軸変形の線形弾性領域における材料の応力と歪みとの関係を規定する。
【0148】
好ましくは、圧密材料が木材である場合には、引張強度は40~400MPa、特に45~300MPa、詳細には50~250MPaである。これは詳細には、カシ、カエデ及びシラカバといった種類の木材に該当する。本文脈では、引張強度は、長手方向で破損する前に材料が受け入れることが可能である引張応力の最大量を意味する。
【0149】
好ましくは、圧密材料が木材である場合には、圧密木材の密度は900~1,600kg/m3、特に1,200~1,600kg/m3である。
【0150】
本発明の更なる態様は、少なくとも2つの積層された層を含む積層構造、特に積層された木材構造であり、少なくとも1つ、特に少なくとも2つの積層された層は、上記のような圧密材料から作製され、及び/又は積層構造は上記の方法で取得可能である、若しくは取得される。そのため、好ましくは圧密材料は、圧密単板の形態で存在する。
【0151】
特に、上記の方法は、以下に説明される特性を有する積層構造が生じるように実行される。
【0152】
特に、それぞれの木材層は、厚さ、木材種、木材繊維の配向、密度の程度、粗さ/滑らかさの程度、異なる木材層の相対的な木材繊維の配向(ある層から別の層に対する相対角度)といった点で異なり得る。ラミネート接着剤もまたその種類、化学組成、乾燥時の厚さ、起源(合成、天然、化石又はバイオベース)並びに物理特性、化学特性及び機械特性並びに適用技術(液体形態、ゼラチン形態又は固体形態(フィルム、箔)での接着剤の鋳込み、浸漬、ブラッシング、噴霧又は嵌め込みなど)といった点で異なり得る。詳細には、積層構造は、積層された2層、3層、4層、5層、6層、7層、8層、9層、10層以上の層を含む。そのため、好ましくは、積層された層の全ては、上記の圧密材料、特に圧密単板で作製される。同一の積層木材構造における圧密材料と非圧密材料との組合せもまた可能である。
【0153】
好ましくは、積層構造の層は、例えば接着剤及び/又は接着箔を用いて強固に接合される。
【0154】
特に、積層構造においては、上記の圧密材料の少なくとも1層は、例えば非圧密材料の層などの1つ以上の他の層と組み合わせられる。ただし最も好ましいのは、積層構造の層の全ては上記の圧密材料からなる。
【0155】
例えば、積層構造においては、上記の圧密単板の少なくとも1層は、例えば別の単板、例えば非圧密単板の層などの1つ以上の他の層と組み合わせられる。ただし、最も好ましくは、積層構造の層の全ては上記の圧密単板からなる。
【0156】
かかる種類の積層構造は、例えば改善された機械特性などの改善された特性を有する材料を取得するために使用され得る。
【0157】
特に、積層木材構造などの積層構造中の個別の層の材料が木目方向を有する場合には、例えば積層構造の少なくとも2層は異なる木目方向で配向される。
【0158】
特に、積層構造中の全ての隣接する層は、異なる木目方向を有する。
【0159】
例えば、異なる木目方向に配向された少なくとも2層の木目方向間の、特に隣接する層間の角度は、0°~360°、特に1°~359°、詳細には30°~45°、特に60°~90°である。
【0160】
別の好ましい積層製品、特に木材製品は、(i)上記の圧密材料の1層、2層又はそれよりも多い層並びに(ii)例えば金属、セラミックス、ガラス、紙、プラスチック、樹脂などの他の材料又は任意の他の非木材系材料のうちの1層、2層又はそれよりも多い層を含む。そのため、好ましくは、隣接する層の各対の間に合成接着剤及び/又は天然接着剤の層が存在する。
【0161】
特に、かかる製品は、非木材系材料の一体化した層を含む、高密度の木製単板積層材及び/又は材木である。他の材料の層は、例えばアルミニウム、鋼、銅、銀、金、チタン、プラスチック(PLA、PU、ポリアミド、ポリエステル、PET、PC、PP、PE、PVCなど)から作製され得る。
【0162】
換言すると、かかる製品は非木材系材料と圧密木材との相互組合せであり、例えば、任意の順序の種々の層中に、圧密木材、紙、金属箔(例えば、アルミニウム、金、鋼)、プレキシガラス(Plexiglas)、プラスチック箔などの層を含む積層サンドイッチ構造である。それによって、それぞれの木材層は、厚さ、木材種、木材繊維の配向、密度の程度、粗さ/滑らかさの程度、異なる木材層の相対的な木材繊維の配向(1層から別の層に対する相対角度)といった点で異なり得る。非木材系材料層はまた、組成特性、構造特性、建造上の特性、寸法特性、物理特性、機械特性及び化学特性といった点で異なり得る。ラミネート接着剤はまた、その種類、化学組成、乾燥時の厚さ、起源(合成、天然、化石又はバイオベース)並びに物理特性、化学特性及び機械特性といった点で異なり得る。
【0163】
好ましくは、上記の積層製品は本発明の方法で取得可能である、又は本発明の方法で製造され、工程a)においては、積層される層を含むスタックが取得可能である、又は製造される。そのため、好ましくは、積層される隣接する層の各対の間に合成接着剤及び/又は天然接着剤の層が存在する。この場合、積層製品は、一段階プロセスで製造される。ただし、個々の層を共に順次接合する二段階又は多段階プロセスで、積層製品を製造することも可能である。
【0164】
例えば、非木材系材料と圧密木材との相互組合せである積層製品を製造するためには、非圧密木材(例えば、単板)の少なくとも1層と別の材料の少なくとも1層とのスタックが、工程a)において供給され得る。そのため、好ましくは、隣接する層の各対の間に合成接着剤及び/又は天然接着剤の層が存在する。好ましくは、工程d)は、上記のサブ工程d1)~d4)と共に行われる。
【0165】
本発明の更なる目的は、上記の圧密材料、特に圧密木材、又は積層構造、特に積層木材構造を含む製品である。そのため、好ましくは、製品は、楽器、家具、ドア、ドアハンドル、床材、壁紙、擁壁、自動車部品、天井用の壁紙、スポーツ用品(例えば、スキー板)、カード、電子機器若しくは電子機器用ケーシング(例えば、応答装置、キーフォブ)、データ記憶装置(例えば、USBスティック)若しくは携帯電話用ケーシングである。
【0166】
例えば、電子機器は、例えばカード形状、立方体形状、球体形状又は環形状といった任意の形状を有し得る。電子機器は、例えばセンサ機能、アクセスタグ又は機能、識別機能、オーディオ及び/又はディスプレイ機能など、任意の種類の電子機能を特徴とし得る。
【0167】
特に、電子機器はウェアラブル機器である。これはすなわち、身体に装着する演算装置である。例えば、ウェアラブル機器は、指輪、ブレスレット、スポーツ防護用品、時計又は眼鏡として構成される。
【0168】
詳細には、製品は、特に製品内部に含められ、及び/又は製品の表面に配置される、電子機能、磁気機能及び/又は光学ラベルを含む。
【0169】
特に、製品は、詳細には製品内部に含められ、及び/又は製品の表面に配置される、認識タグ及び/又はセキュリティタグを含む。
【0170】
例えば、製品は、製品の表面上にホログラム及び/若しくは磁気ストリップを含み、及び/又は製品は、製品内部に埋設された放射線不透過性金属粒子及び/若しくはチップを含む。これらの特徴は、セキュリティタグ及び/又は認識タグとして機能し得る。
【0171】
好ましい実施形態によれば、上述の電子機能、磁気機能、光学ラベル、認識タグ及び/又はセキュリティタグは、本発明の方法中に、及び/又はその後に製品内部に埋設され得る、及び/又は製品の表面上に配置される。
【0172】
最も好ましくは、製品はカードであり、特に電子機能を備えたカードであり、上記の圧密単板のうちの少なくとも1層を含む。
【0173】
カードは、平坦な本体を意味しており、カードの長さ及び幅は、その厚さよりも少なくとも10倍、特に少なくとも20倍、好ましくは少なくとも50倍長い。
【0174】
詳細には、カード全体の厚さは0.5~2.5mm、特に0.6~1.5mm、好ましくは0.7~0.9mm又は0.8mmである。好ましくは、カードのサイズは80~100mm×50~70mm×0.5~1.5mmであり、詳細には90mm×60mm×0.8mmのサイズである。
【0175】
そのため、好ましくはカードは、ペイメントカード、クレジットカード、デビットカード、IDカード、会員カード及び/又はアクセスカードである。
【0176】
詳細には、圧密単板のうちの少なくとも1層、特に単板の全ての層は、カードと同一の長さ及び幅を有する。
【0177】
特に、カードの裏面及び表面はそれぞれ、上記の単板、特に圧密単板の層から作製される。
【0178】
カード全体の重量に関して、カードは好ましくは、木材の、特に上記の圧密木材の少なくとも40重量%、詳細には少なくとも50重量%、特に少なくとも75重量%又は95重量%又は99重量%の程度からなる。
【0179】
好ましい実施形態によれば、カードは積層単板の少なくとも2層を含み、好ましくは、単板の層の少なくとも2つの層の両方は、上記の圧密単板である。
【0180】
特に、積層された単板の少なくとも2層のうちの少なくとも2つは、異なる木目方向に配向される。特に、積層された単板の全ての隣接する層は、異なる木目方向を有する。
【0181】
例えば、少なくとも2層の木目方向間の、特に積層単板の隣接する層間の角度は、0°~360°、特に1°~359°、詳細には30°~45°、特に60°~90°である。
【0182】
かかる配置によって、カードの機械特性及び安定性は大幅に改善され得る。カードの長手方向軸及び横方向軸の剛性が類似することから、このことによって機械的安定性はより均一なものへと上昇する。
【0183】
詳細には、単板の層のそれぞれの厚さは、0.1~0.3mmである。このような薄層によって、単板の複数の層を有する積層構造形態のカードを提供することが可能となり、改善された機械特性がもたらされる。
【0184】
好ましくは、積層単板の少なくとも2層は、共に及び/又は接着剤を用いてカードの他の層と接合される。これによって、カードの層間での非常に均一な相互接続が可能となる。
【0185】
特定の実施形態によれば、カードは集積回路(integrated circuit、IC)、記憶装置、追跡装置、検知装置、アンテナ及び/又は電磁コイルを含み、特にカード内部に埋設される、及び/又はカードの表面に配置される。例えば、カードは、無線自動識別(radio-frequency identification、RFID)(例えば、125KHz、860~960MHz、13.56MHz又は他の周波数)、近距離無線通信(near-field communication、NFC)、データストレージ及び/又はエネルギーハーベスティング機能のうちの1つ以上を有し得る。
【0186】
これらの要素を用いて、ペイメントカード、アクセスカード、会員カードなどにより必要とされるような電子機能を備えたカードを実現することができる。
【0187】
特に、集積回路(IC)、記憶装置、追跡装置、検知装置、アンテナ及び/又は電磁コイルは、存在する場合には、圧密単板の少なくとも1層の凹みに配置される。これらの構成を用いて、電子機能全体は、任意の突出要素なしにカードを内部に含めることができる。
【0188】
特に、カードは更には、例えばPVC箔又はPET箔などのプラスチック材料、例えばポリ酪酸(poly lactic acid、PLA)などのバイオベースのプラスチック材料、ゼラチン若しくは他のタンパク質接着剤などのタンパク質系材料、又はペクチン、デンプン並びに/又は例えば、紙及び/若しくはフリースなどの任意の他のセルロース材料から作製された支持層を含む。支持層は、詳細にはカードの裏面と表面との間に配置される。支持層は、例えば集積回路、記憶装置、追跡装置、検知装置、アンテナ及び/又は電磁コイルのうちの1つ以上など、カードに含められる構成要素を担持するために使用され得る。
【0189】
本発明の更なる主題は、カードのためのコア層である。コア層はまた、カード用の嵌め込みとも呼ばれる。特に、嵌め込みは、例えば集積回路、追跡装置、検知装置、アンテナ、電磁コイル又は誘導コイル、電子チップ、トランジスタ、ダイオード、ダイ、モジュール及び/又はCPUなど、上記の電子機能を担持する圧密木材から作製された支持層である。
【0190】
電子実体は、金属線を接着、プレス若しくはステッチすること、又は導電性メタルインクを印刷すること(インクジェット、ドロップオンデマンド)などの方法で、圧密化プロセスの前後に、圧密木材に、又は圧密木材上へと統合することができる。これによって、電子木材カード用の電子嵌め込みなどの電子機能及び機能を備えた圧密木材が得られる。
【0191】
統合された電子機能を備えたカード用の木製嵌め込みは好ましくは、
(i)木材支持層上への電子機能の統合は、木材の圧密化又は工程a)の前に、特にエンボス加工、接着、印刷(インクジェット、ドロップオンデマンド)、ステッチなどを行い、続いて上記の本発明の方法に記載の圧密化によって行われること、又は
(ii)電子機能は、特に超音波支援若しくは熱支援若しくは接着剤支援によるワイヤコイルの埋設、エンボス加工、接着、印刷若しくはステッチにより、上記の本発明の方法を用いて取得された圧密木材層に、若しくは圧密木材層上へと統合されること、又は
(iii)電子機能は、例えば金属前駆体を焼結、溶融、熱分解若しくは還元することなど、特にプロセス中に高圧及び高温を使用することによって、圧密化プロセス若しくは本発明の方法中にそれぞれ作成されることであって、金属前駆体は、例えばa)金属粉末(サイズ:ナノメートル、マイクロメートル、ミリメートル)、b)金属粒子(粒子サイズ:ナノメートル、マイクロメートル、ミリメートル)分散液及び/若しくはメタルインク、c)圧密化工程前の、非圧密木材支持層への、若しくは非圧密木材支持層上への有機金属溶液から選択することができる、こと、
(iv)電子機能は、特に木材表面上への金属箔のエンボス加工若しくは接着のためのプロセス中に高圧及び高温を使用することで、圧密化プロセス中に作成されること、といった本発明の方法を用いて製造される。これは、木材と金属箔との間への接着剤の有無に関わらず行われ得る。最終的に、こうすることで、好ましくは木材片の両側に、詳細には片側のみに木材層と金属層とが積層された層がもたらされる。続いて金属層は、例えばCNCフライス盤を用いて部分的に取り除かれる。こうすることで、誘導性又は静電容量性特徴を有する所望の構造が得られ、RFID又はNFCチップ又は半導体ダイの統合が可能となる。
【0192】
特に、方法(ii)においては、超音波支援、熱支援又は接着剤支援によるワイヤコイルの埋設は有益な方法である。そのため、好ましくは表面上にポリマーの層及び/若しくは接着剤フィルムで好ましくはコーティングされる、又はポリマーで含浸される圧密単板が、本発明の方法で使用される。特に、ポリマー又は接着剤フィルムは、埋設プロセス中に柔軟な状態、又は曲げやすい状態、又は成形可能な状態であるように熱可塑性樹脂である。このため、冷却後にワイヤコイルを封入する。好ましくは、熱可塑性樹脂は、例えばPLA、PHA、PHB、PHBHV及びそれらの誘導体といったバイオベースかつ生分解性ポリマー、又はポリエステル及びポリアミドなどの生分解性ポリマー、デンプン、リグニン、ペクチン、セルロース、ケラチン、キチン、タンパク質及びそれらの誘導体などの天然ポリマーである。更には、方法(ii)においては、接着剤支援によるワイヤコイル埋設について、金属ワイヤは好ましくは、圧密木材表面に接着する接着剤を用いてコーティングされる。
【0193】
更には、積層構造を製造するための上記の両方のプロセス(すなわち、一段階(圧密化及び積層を同時に行う)プロセス及び二段階又は多段階(圧密木材の積層)プロセス)について、嵌め込みは接着剤層として使用され得る。この場合、好ましくは電子機能は、a)タンパク質、乳、骨、皮膚系接着剤などの生体接着剤、デンプン、リグニン及び/若しくはペクチン系接着剤などの植物系接着剤、並びに/又はb)ポリウレタン系接着剤、非イソシアナートポリウレタン系接着剤、エポキシ系接着剤、(メタ)アクリラート系接着剤などの合成接着剤、並びに/又は他の合成接着剤から作成された接着箔に統合される。カードを製造するためには、接着箔に集積された電子機能は、続いて木材層を積層するために使用され、必要とされる電子機能(RFID、NFC又はUHFチップ、半導体ダイ、モジュール、CPU、アンテナ、ワイヤ、誘導コイル、静電容量実体など)を統合する。
【0194】
更に好ましい実施形態によれば、カード表面にて、集積回路、追跡装置、検知装置、記憶装置、アンテナ及び/又は電磁コイルへの電気接続を確立するための金属接点パターンが配置される。かかる接点により、好適なリーダ中のカードの電子構成要素のうちの1つ以上に対するワイヤ接続を確立することが可能である。ただし、必要な場合には、接点を有さない状態でカードを提供することが可能である。
【0195】
特に、カード表面は、詳細にはロゴ、文字及び/又は数字形状の彫刻を含む。そのため、好ましくは、彫刻は周囲の領域の色とは異なる色でコーティングされる。詳細には、彫刻はレーザ彫刻で取得される。
【0196】
例えば、彫刻は、カード所有者の氏名、カード発行者の氏名、会員氏名、カードの番号、銀行口座の番号、カード発行者のロゴ、販売促進情報、実践的なアドバイス、セキュリティ情報、法律情報、説明書などを含む個人データ、法的データ及び/又は商業データを表すことができる。
【0197】
加えて、圧密木材表面、特にカード表面は、例えば連続インクジェット、ドロップオンデマンド又はバブルジェット技術に基づく、一般的なインクジェットプリンタを用いて直接印刷され得る。
【0198】
更には、所望の場合、カードは例えばワックス又はラッカーといった透明コーティングでコーティングされてもよい。
【0199】
非常に好ましいカードは:
a)圧密単板又は非圧密単板の層で作製された裏面、
b)圧密単板又は非圧密単板の層で作製された表面、
c)任意には、裏面層と表面層との間に配置される、圧密単板若しくは非圧密単板又は任意の非木材系材料の1つ以上の更なる層、
d)好ましくはカードに埋設された集積回路、記憶装置、追跡装置、検知装置、アンテナ及び/又は電磁コイル、
e)任意には、集積回路、記憶装置、追跡装置、検知装置、アンテナ及び/又は電磁コイルのうちの1つ以上を担持するために、裏面と表面との間に配置される、例えば、プラスチック層、セルロース材料の層、圧密単板といった支持層、
を含むように、カードが製造され、層は共に積層され、単板の層のうちの少なくとも1つ、詳細には表面層及び裏面層、特に単板の層の全ては、上記の圧密単板から作製される。
【0200】
詳細には、存在する場合には、支持層はPVC、PET、PC、PLA、紙、ファイバーマット又は圧密単板に基づいている。
【0201】
特に、カードは基準であるISO/IEC 7810:2019に規定される要件を満たす。
【0202】
本発明の更なる有利な構成は、例示的な実施形態から明らかである。
【0203】
実施形態を説明するために以下の図面が使用される。
【図面の簡単な説明】
【0204】
【
図1】隣接する層が異なる木目方向を有する圧密単板の4つの長方形の層からなる積層構造である。
【
図2】チップが統合され、外面に文字、数字及びロゴが彫刻された圧密単板から作製された木製クレジットカードの上面図である。
【
図3】
図2のカードの線A-Aに沿った断面の部分図である。
【
図4】電子機能を備えた別のカードの分解組立図である。
【
図5】電子機能を備えた別のカードの透視図である。
【
図6】
図5のカードの中央嵌め込み層の構造である。
【
図7】
図5に示されるカードを取得するための製造方法を示すフローチャートである。
【
図8】紙のシート上に互いに規則的に離間されている合計24個の金属アンテナを含む嵌め込みシートである。
【0205】
図面では、同一の構成要素は同一の参照符号が与えられている。
【0206】
例示的な実施形態
1.木材の圧密化
圧密単板を製造するために、以下のプロセスに従った:
第1の工程においては、厚さが約0.6mmの単板片(例えば、カエデ木材の単板片)を吸湿材料として使用し、木材水分の含水率を約12%にプレコンディショニングした。
第2の工程においては、プレコンディショニングされた単板を、気密様式にて温度耐性かつ防水の金属箔で包装した。
その後、箔で包装された単板片を、圧力がわずか1MPaである接触モードの機械プレスにて、約70℃に予め加熱した。
続いて、圧力を1MPa/分の速度で10MPaに上昇させ、事前に設定したように70℃の温度で25分間これを維持した。
その後、事前に設定した圧力を変更することなく、温度を6~8K/分の速度で約150℃の温度に上昇させ、45分間これを維持した。このプレス及び加熱プロセス後に、温度を積極的に室温に冷却し、圧力を解放した。
【0207】
このプロセスの結果として、厚さが0.3mm、密度が1,250kg/m3及び引張弾性率が27,500MPaである圧密単板を取得した。
【0208】
結果的に、圧密単板は高い色安定性を有する。具体的には、1~48時間(初期照射時間)、通常は24時間にわたるUV放射(500W/m2超、400nm未満)若しくは模擬太陽光(500W/m2超、波長190~850nm)又は6~300時間にわたる自然太陽光に曝露後の表面色差ΔE(EN ISO 11664-4による)は、UV放射への曝露前の表面色と比較すると、4未満である。初期照射時間(すなわち、1~48時間)後、表面色は本質的に安定したままである。
【0209】
別の例によれば、圧密単板を製造するために、以下のプロセスに従った:
第1の工程においては、厚さが約0.6mmの単板片(例えば、カエデ木材の単板片)を吸湿材料として使用し、木材水分の含水率を約12%~13%にプレコンディショニングした。
第2の工程においては、プレコンディショニングされた単板を、気密様式にて温度耐性かつ防水の金属箔で包装した。
その後、含水率を12~13%に調節した、箔で包装された単板片を、圧力がわずか1MPaである接触モードの機械プレスにて約70℃に予め加熱した。
続いて、圧力を15MPa/分の速度で30MPaに上昇させ、事前に設定したように70℃の温度で0.5~5分間これを維持した。
その後、事前に設定した圧力を変更することなく、温度を10~20K/分の速度で約170~185℃の温度に上昇させ、10分間これを維持した。このプレス及び加熱プロセス後に、温度を積極的に室温に冷却し、圧力を解放した。
【0210】
2.積層圧密単板の製造
図1は、上記プロセスで取得された圧密単板の4つの長方形の層11、12、13、14を積層することで製造された積層構造10を示す。この構造を、例えばポリウレタン又は任意の他の接着剤といった接着剤を用いて隣接する層11、12、13、14を共に接合することで形成した。
【0211】
図1の矢印で示すように、隣接する層の木目方向は互いに垂直である。こうすることで、可撓性が低下した、高度に安定した積層構造が得られる。
【0212】
3.木製カードの製造
以下のプロセスに従い、
図2及び
図3に示され、サイズが85.5mm×54mm×0.8mmである木製電子カード20を製造した。
上記プロセスに従って取得された圧密単板からそれぞれなる上層21(カードの表面)及び下層22(カードの裏面)を供給し、コンピュータによる数値制御レーザ彫刻及び切削機(computerized numerical control laser engraving and cutting machine、CNCL)を用いて約90mm×約60mmのサイズに切断した。
統合/接着した電磁コイル27を備えた支持シート(圧密単板)からなる中間層23を供給し、上層21及び下層22と同じサイズに切断した。
上層21及び中間層23においては、CNCLを使用し、電気表面接点24.1を備えた集積回路チップ24用の長方形開口21.1、23.1を切断した。下層22においては、長方形の凹み22.1(約0.1mmの深さ)を彫刻し、チップ24用の追加箇所を提供する。
ポリウレタン箔又はゼラチン/タンパク質接着剤シート(40~80g/m
2、木材の種類に応じた面密度)を、接着箔として上層21と下層22の内部に貼り付ける。各層21、22、23及びチップ24を慎重に位置決めして組み立て、カード20の基本構造を取得した。続いて組み立てられた基本構造を真空バッグに入れ、続いてこれを約1MPaの圧力を印加するために排気した。真空を、6時間にわたって維持した。
例えば非接触支払い機能などのカードの電子機能を検査した後に、CNCLを使用して上層21の外面に彫刻した。そのため、ロゴからなる第1の彫刻25並びに文字及び数字からなる第2の彫刻26を製造した。それに関して、木製表面の焼損を避けるため、移動速度及びレーザ出力を調整した。更なる彫刻を下層22の外面に施した(
図2及び
図3には示されていない)。
その後、CNCL(移動速度及びレーザ出力の異なるセットを使用する)を使用し、カードの最終形状に切断した。
その後、銀色のペンを使用して彫刻25、26を着色した。乾燥時間は約2時間であった。
続いて、カード20の表面21及び裏面22をはさみ、漸次細かさを上げた研磨紙(180、240、320及び600グリットサイズ)を使用して研磨した。
例えば非接触支払い及び接触支払い機能などのカード機能を検査した後には、カードは使用可能状態であった。
【0213】
図3のカード20の断面に示されるように、チップ24及び電磁コイル27をカード本体内部に完全に埋設させた。かかる構造を有するカードは、基準であるISO/IEC 7810:2019により必要とされるように、完全に機能することが明らかとなった。
【0214】
図4は、電子機能を備えた別のカード40の分解組立図を示す。カード40は、2つの積層圧密単板41a、41bからなる上部を含む。圧密単板41a、41bの木目方向は、互いに垂直である。単板41a、41bの両方は、集積回路チップ44を受け入れるための長方形開口41a.1、41b.1を含む。最も外側の単板41aは更に、外面に印刷ロゴ47を載せている。
【0215】
カード40の下部は、2枚の更なる積層圧密単板42a、42bからなる。この場合においても、圧密単板42a、42bの木目方向は互いに垂直である。
【0216】
カードの中間には、チップ44用の接点を備えた電磁アンテナ47を担持する単板からなる嵌め込み43がある。カードの層41a、41b、43、42a、43bの全ては、最終製品中に接着剤を用いて共に接合される。
【0217】
カード40は5つの圧密単板からなり、隣接する単板の木目方向は互いに垂直である。したがって、カード40は機械的観点から特に堅牢である。
【0218】
図5は、電子機能を備えた別のカード50の透視図を示す。カード50は、吸湿材料の5つの層から作製された積層構造である。具体的には、これは単板の2つの最上層51a、52a、単板の2つの薄い中間層51b、52b及び紙上のチップ用接点を備えた金属アンテナ57を含む嵌め込み層53を含む。嵌め込み層53の構造を
図6に示す。
【0219】
2つの最上部シート51a、52aは、例えば0.6mmであるが、2つの薄い中間シート51b、52bの厚さは、例えば0.2mmである。嵌め込み層53の厚さは例えば0.1mmである。
【0220】
カード40と類似のカード50は、集積回路チップを受け入れるために、開口又は凹み51.1をそれぞれ備える(
図5には示されていない)。
図5に示される対称構成は、それぞれ、直接接続又ははんだ付け(「TE-Connect(登録商標)」)、すなわち、導電性接着剤、「非対称導電箔(Asymmetric conductive foil、ACF)」、すなわち、導電性接着テープ及び「コイルオンモジュール」、すなわち誘導結合-チップ結合技術の群に属するものに好適である。また、チップ-コイル-プラグ(デュアルインターフェイスチップ及びアンテナは、同じモジュール/プラグ上にある)の埋設には、カードがISO 7816に規定される要件以上に曲げられたり変形されたりしないことから、対称構成が好適である。
【0221】
図7は、
図5に示されるカードを取得するための製造方法を示すフローチャート700を示す。具体的には、第1の工程701においては、単板の2つの最上部シート51a*、52a*、単板の2つの薄い中間シート51b*、52b*及び嵌め込みシート53*を非圧密化形態で供給する(非圧密化形態を、「*」で表記する)。シートを、
図5に示される複数のカードを並行して製造することができるように、サイズ決めする。このため、シートのサイズは例えば約650mm×約300mmである。
図8は、紙のシート上で互いに規則正しく離間されている合計で24個の金属アンテナを含む嵌め込みシート53*を示す(他の実施態様では、シート53*を、別の数のアンテナ、例えば3×16=48個のアンテナと共に製造することができる)。
【0222】
その後、工程702にでは、2つの薄い非圧密化中間シート51b*、52b*に接着剤を含浸させる。そのため、浸漬、真空含浸又はブラッシング、噴霧、巻き取りなどの表面コーティングにより、シート51b*、52b*に好適な溶媒(例えば、水、エタノール若しくは任意の他の有機溶媒、又はそれらの混合物)を溶解させた接着剤を含浸させる。タンパク質系接着剤については、20~40g/m2の割合を使用する。
【0223】
続いて、含浸させた薄い中間シート51b*、52b*を、最上部シート51a*-含浸させた中間シート51b*-嵌め込みシート53*、含浸させた中間シート52b*-最上部シート52a*といった順序のシートを含むスタック50*又はサンドイッチ構造をそれぞれ取得するために、工程703にて他のシートと共に互いの上部に重ね合わせる。中間シート51b*、52b*の木目方向は、最上部シート51a*、52a*の木目方向に対して垂直である。追加的には、最上部シートを、プラスチック箔又は非粘着性材料のシート/箔の層で覆う。
【0224】
続いて製造された非圧密化スタック50*を好適なプレスに配置し、工程704で圧密化する。圧力及び時間を、圧密化する表面、必要とされる色及び厚さに応じて調整することができる。工程704の結果として、積層構造50#を取得する。プレスにおいて均一な圧力分布を取得するため、圧密化されるスタック50*を、鋼板などのプレスインサートと、例えば数ミリメートルの厚さのゴムなどの弾性材料との間に配置することができる。そのため、弾性材料-鋼板-スタック50#-鋼板-弾性材料といったように重ね合わせた構造が存在する。
【0225】
その後、積層構造を、レーザ切断、ナイフ、パンチ又は他の種類のカッタを用いて切断705し、
図5に示される複数の個々のカード50を取得する。カードを仕上げるために、集積回路チップを配置し、カード50の凹み51.1に接着剤を用いてこれを接合する。
【0226】
圧密化プロセス、本明細書に説明される積層構造及び木製カードは、本発明の好ましい実施態様及び実施形態を構成するが、本発明はこれらの実施形態に限定されず、本発明の範囲から逸脱することなく、変更を行ってもよいことを理解されたい。
【0227】
例えば、他の種類の木材又は他の吸湿材料(例えば、上の一般的な説明にて言及されるようなもの)を用いて、上記のプロセスを実施することができる。非常に厚みのある吸湿材料、特に無垢材を用いて圧密化プロセスを実施することも可能である。また、カードの中間層の圧密木材層を紙シートに置き換えることも可能である。
【0228】
また、例えば、プレコンディショニング又はプレス前に単板処理のために化学物質を添加する工程など、追加の処理工程を実施することも可能である。
【0229】
図1に示される積層構造10に関しては、圧密単板の層のうちの1つ以上を非圧密単板及び/又は別の材料に置き換えることが可能である。ただし、少なくとも1層は圧密単板でなければならない。原理上は、所望の場合、プラスチックなどの合成材料の層を使用することも可能である。当然ながら、層の数はより少ない数又はより大きい数に変更してもよい。
【0230】
図2、
図3及び
図5の木製カード20は、異なる数の単板の層から作製されてもよい。また、圧密単板の層を非圧密単板又は別の材料に置き換えることが可能である。当然ながら、合成材料の更なる層及び/又はコーティングを同様に添加してもよい。
【0231】
更には、
図7に示されるプロセス700は、個々のカードを事前にシートから直接適切に切断する別のプロセスに置き換えることが可能である。また、スタックを形成する前に個々のシート51a*、51b*、52a*、52b*、53*を圧密化することが可能であり、続いてシートを共に積層して積層構造を取得することができる。続いてこの構造を更に加工して個々のカードを取得する。
【0232】
接着層を中間層に加える別の方法は、接着剤の薄いフィルム/箔を中間層シートの片面又は両面に付着させることである。
【0233】
更なる実施態様では、プロセス700において、例えば表面構造化木材、プラスチック及び/又は金属などの構造化シートを、最上部シート51a*、52a*の最上部に配置する。構造化シートなどは、最上部シートの外面を構造化可能であるエンボスインサートとして機能する。
【0234】
非対称導電箔チップ結合技術(ACF)については、
図5に示されている構成とは異なり、非対称構成、すなわち最上部表面により近い嵌め込み位置がより好適である。そのため、例えば、最上部から2番目の層として木材嵌め込みを有する6つの木材層又は最上部に紙嵌め込み層を有する4つの木材層と2つの紙層のいずれかを有する、6層構成を実現することができる。そのため、上記のように、例えば層あたり10μm~420μmの範囲の種々の厚さを有する、異方性材料(すなわち、木材)の個々の層及び等方性材料(すなわち、紙、フリース、PLA、タンパク質フィルムなど)の層がもたらされる。この結果、高い寸法安定性、好適な寸法を有し、アンテナ及びチップモジュールが適切に位置付けられたカードが取得され、環境条件によって誘起された異方性の力が効果的に相殺される。
【0235】
要約すると、本発明は木材などの吸湿材料を圧密化するための高度に有益なプロセスを提供する。これによって、高い寸法安定性を有する非常に薄い構造を製造することが可能となる。特に、本発明のプロセスによって、今日知られている全種類の非接触及び接触型端末に適合する完全に機能的なカードを製造することが可能となる。
【国際調査報告】