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特表2023-552175リチウム電池の廃棄正極材料の回収工程における不純物除去および処理方法
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  • 特表-リチウム電池の廃棄正極材料の回収工程における不純物除去および処理方法 図1
  • 特表-リチウム電池の廃棄正極材料の回収工程における不純物除去および処理方法 図2
  • 特表-リチウム電池の廃棄正極材料の回収工程における不純物除去および処理方法 図3
  • 特表-リチウム電池の廃棄正極材料の回収工程における不純物除去および処理方法 図4A
  • 特表-リチウム電池の廃棄正極材料の回収工程における不純物除去および処理方法 図4B
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  • 特表-リチウム電池の廃棄正極材料の回収工程における不純物除去および処理方法 図7A
  • 特表-リチウム電池の廃棄正極材料の回収工程における不純物除去および処理方法 図7B
  • 特表-リチウム電池の廃棄正極材料の回収工程における不純物除去および処理方法 図8
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-14
(54)【発明の名称】リチウム電池の廃棄正極材料の回収工程における不純物除去および処理方法
(51)【国際特許分類】
   C22B 7/00 20060101AFI20231207BHJP
   C22B 3/44 20060101ALI20231207BHJP
   C22B 3/04 20060101ALI20231207BHJP
   C22B 23/00 20060101ALI20231207BHJP
   C22B 26/12 20060101ALI20231207BHJP
   C22B 47/00 20060101ALI20231207BHJP
   H01M 4/525 20100101ALI20231207BHJP
   H01M 4/505 20100101ALI20231207BHJP
   H01M 10/54 20060101ALI20231207BHJP
【FI】
C22B7/00 C
C22B3/44 101A
C22B3/44 101Z
C22B3/04
C22B23/00 102
C22B26/12
C22B47/00
H01M4/525
H01M4/505
H01M10/54
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023532658
(86)(22)【出願日】2021-11-08
(85)【翻訳文提出日】2023-07-25
(86)【国際出願番号】 CN2021129320
(87)【国際公開番号】W WO2022111266
(87)【国際公開日】2022-06-02
(31)【優先権主張番号】202011347197.8
(32)【優先日】2020-11-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523196932
【氏名又は名称】清華四川能源互聯網研究院
【氏名又は名称原語表記】SICHUAN ENERGY INTERNET RESEARCH INSTITUTE, TSINGHUA UNIVERSITY
【住所又は居所原語表記】Building 2-7, Zone B, Tianfu Jingrong, Xinglong Lake, Xinglong Town, Tianfu New District Chengdu, Sichuan 610213, China
(74)【代理人】
【識別番号】110002262
【氏名又は名称】TRY国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】容 忠言
(72)【発明者】
【氏名】張 久俊
(72)【発明者】
【氏名】戴 林杉
(72)【発明者】
【氏名】隋 邦杰
(72)【発明者】
【氏名】時 一方
【テーマコード(参考)】
4K001
5H031
5H050
【Fターム(参考)】
4K001BA22
4K001DB02
4K001DB03
4K001DB04
4K001DB05
4K001DB22
4K001DB23
4K001HA10
4K001HA12
5H031BB02
5H031HH06
5H031RR02
5H050AA17
5H050BA16
5H050BA17
5H050CA08
5H050CA09
5H050GA02
5H050GA10
5H050GA12
5H050GA14
5H050HA10
5H050HA14
(57)【要約】
リチウム電池の廃棄正極材料の回収工程における不純物除去および処理方法は、室温よりも高い第1温度および一定の第1pH値で、リチウム電池の廃棄正極材料の浸出液および第1アルカリ溶液の流速を制御して鉄イオン、アルミニウムイオンおよび少なくとも一部の銅イオンを沈殿させて除去し、第1濾液を得る工程と、室温よりも高い第2温度および一定の第1pH範囲で、第1濾液、錯化剤および第2アルカリ溶液の流速を制御して、リチウムイオンを含有する第2濾液を分離し、目標物質沈殿を得る工程と、目標物質沈殿を溶解して第1溶液を得る工程と、室温よりも高い第3温度および一定のフッ素イオン濃度で、第1溶液およびフッ素含有沈殿剤の流速を制御してカルシウムイオン、マグネシウムイオンおよび少なくとも一部の鉛イオンを沈殿させて除去し、目標溶液を得る工程と、を含み、粒径が大きく、結晶度が高く、含水率が低い沈殿を得ることができ、洗浄を行い、リチウム電池の廃棄正極材料のニッケルコバルトマンガンの回収率を向上させる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リチウム電池の廃棄正極材料の回収工程における不純物除去および処理方法であって、
室温よりも高い第1温度および一定の第1pH値の安定環境において、リチウム電池の廃棄正極材料の浸出液および第1アルカリ溶液の流速を制御して鉄イオン、アルミニウムイオンおよび少なくとも一部の銅イオンを沈殿させて除去し、第1濾液を得る工程(1)と、
室温よりも高い第2温度および一定の第1pH範囲で、第1濾液、錯化剤および第2アルカリ溶液の流速を制御してリチウムイオンを除去し、リチウムイオンを含有する第2濾液を分離し、目標物質沈殿を得る工程(2)と、
前記目標物質沈殿を溶解して第1溶液を得る工程(3)と、
室温よりも高い第3温度および一定のフッ素イオン濃度で、前記第1溶液およびフッ素含有沈殿の流速を制御してカルシウムイオン、マグネシウムイオンおよび少なくとも一部の鉛イオンを沈殿させて除去し、目標溶液を得る工程(4)と、を含み、
前記不純物除去および処理方法は、連続操作可能な溢流反応槽において行われることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記室温よりも高い第1温度および一定の第1pH値の安定環境において、リチウム電池の廃棄正極材料の浸出液および第1アルカリ溶液の流速を制御して鉄イオン、アルミニウムイオンおよび少なくとも一部の銅イオンを沈殿させて除去し、第1濾液を得る工程は、
前記リチウム電池の廃棄正極材料の浸出液および第1アルカリ溶液を適宜な流速で第1反応溝内に吸入し、第1時間反応させた後に前記第1反応溝から溢れ出させ、その後に第1分離工程を行って前記鉄イオン、アルミニウムイオンおよび少なくとも一部の銅イオンを含有する沈殿および前記第1濾液を得る工程を含み、
前記第1時間内に、反応を前記第1温度で安定に行うよう維持するとともに、前記第1アルカリ溶液の流速を調整して前記反応を第1pH値で安定に行うことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
第1分離工程を行う前に、前記第1反応溝から溢れ出た混合物をエージングさせ、エージング温度を前記第1温度に維持するとともに第2次時間エージングさせる工程をさらに含むことを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記室温よりも高い第2温度および一定の第1pH範囲で、前記第1濾液、錯化剤および第2アルカリ溶液の流速を制御してリチウムイオンを除去し、リチウムイオンを含有する第2濾液を分離し、目標物質沈殿を得る工程は、
前記第1濾液、錯化剤および第2アルカリ溶液をそれぞれ適宜な流速で第2反応溝内に吸入して、第3時間反応させた後に前記第2反応溝から溢れ出させ、その後に第2分離工程を行って前記目標物質沈殿および前記リチウムイオンを含有する第2濾液を得る工程を含み、
前記第3時間内に、反応を前記第2温度で安定に行うよう維持するとともに、前記第2アルカリ溶液の流速を調整して前記反応を第1pH範囲で安定に行うことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項5】
第2分離工程を行う前に、前記第2反応溝から溢れ出た混合物をエージングさせ、エージング温度を前記第2温度に維持するとともに、第4時間エージングさせる工程をさらに含むことを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記目標物質沈殿を溶解して第1溶液を得る工程は、
前記目標物質沈殿に、還元剤、第1酸および水を少なくとも含む浸出剤を添加し、pHが第3範囲になるまで溶解し、目標物質を含有する溶液を得る工程と、
pHが第4範囲になるまで前記目標物質を含有する溶液に適量の第4アルカリ溶液を添加し、前記第1溶液を得る工程と、を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記室温よりも高い第3温度および一定のフッ素イオン濃度で、前記第1溶液およびフッ素含有沈殿剤の流速を制御してカルシウムイオン、マグネシウムイオンおよび少なくとも一部の鉛イオンを沈殿させて除去し、目標溶液を得る工程は、
前記第1溶液およびフッ素含有沈殿剤をそれぞれ適宜な流速で第3反応溝内に吸入し、第5時間反応させた後に前記第3反応溝から溢れ出させ、その後に第3分離工程を行って前記カルシウムイオン、マグネシウムイオンおよび少なくとも一部の鉛イオンを含有する沈殿および前記目標溶液を得る工程を含み、
前記第5時間内に、反応を前記第3温度で安定に行うよう維持するとともに、前記フッ素含有沈殿剤の流速を調整して、前記第3反応溝における反応物のフッ素イオンの濃度を第1濃度範囲に安定させることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項8】
第3分離工程を行う前に、
前記第3反応溝から溢れ出た混合物をエージングさせ、エージング温度を前記第3温度に維持するとともに、第6時間エージングさせる工程と、
エージングした混合物を第7時間静置する工程と、をさらに含むことを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記リチウム電池の廃棄正極材料の浸出液に沈殿処理を行う前に、
リチウム電池の廃棄正極材料に、還元剤、第1酸および水を少なくとも含む浸出剤を添加し、pHが第2範囲になるまで溶解し、その後に第4分離工程を行って第3不純物および前記リチウム電池の廃棄正極材料の浸出液を得る工程をさらに含むことを特徴とする請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記目標溶液に第3アルカリ溶液を添加して前駆体沈殿を得る工程をさらに含むことを特徴とする請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記リチウム電池の廃棄正極材料は、リチウムニッケルコバルトマンガン酸化物の電池材料、リチウムコバルトン酸化物の電池材料、リチウムコバルトマンガン酸化物の電池材料、リチウムコバルトアルミナの電池材料、リチウムマンガン酸化物の電池材料のうちの一種または二種以上を含むことを特徴とする請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記第1pH値は、pH=5.5~6.7のうちのいずれかの値であることを特徴とする請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記第1温度は、50~90℃のうちのいずれかの値であることを特徴とする請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記第1アルカリ溶液は、水酸化リチウムを含むことを特徴とする請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記第2温度は、40~70℃のうちのいずれかの値であることを特徴とする請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記錯化剤は、アンモニア水を含むことを特徴とする請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記第2アルカリ溶液は、水酸化リチウムを含むことを特徴とする請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記第1pHの範囲は、pH=10.5~11.8であることを特徴とする請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記第3範囲は、pH=0~4であることを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項20】
前記第4範囲は、pH=4.5~6.5であることを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項21】
前記第3温度は、50~90℃のうちのいずれかの値であることを特徴とする請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記フッ素含有沈殿剤は、フッ化ナトリウム溶液を含むことを特徴とする請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記第1濃度範囲は、フッ素イオン濃度が0.005~0.1mol/Lであることを特徴とする請求項7または請求項8に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
優先権情報
本発明は、2020年11月26日に出願された中国出願番号202011347197.8の優先権を主張するものであり、その全ての内容は参照により本明細書に組み込まれるものとする。
【0002】
本発明は、材料の回収技術領域に関し、特に、リチウム電池の廃棄正極材料の回収工程における不純物除去および処理方法に関する。
【背景技術】
【0003】
リチウム電池の廃棄正極材料の回収工程において、溶出されたニッケルコバルトマンガン溶液には、種々の金属不純物(例えば、FeやAl、Cu、Ca、Mg、Pbなど)が含まれることが多く、不純物を除去しなければ、上記の不純物は、リチウム電池の廃棄正極材料の回収後に合成されたリチウム電池の正極材料の品質や性能に影響を及ぼす。
【0004】
従来技術では、Fe、Al、Ca、Mgなどの金属不純物の除去方法は、沈殿を濾過、洗浄しにくい問題があるため、濾過できなかった不純物の沈殿が実際の濾液に残留し、当該不純物の沈殿が後続のステップに混入するため、最終的に三元前駆体製品における不純物の含有量が高くなる。また、沈殿を濾過、洗浄しにくいため、濾過中に濾過設備への要求が強くて、洗浄用水の需要も増えるとともに、濾過により多い時間がかかり、さらに、一部のゲル状スラグの含液率が高くて濾過材料の詰まりが生じやすいため、洗浄ができなくなり、濾過や洗浄の操作難易度を高く、ニッケルコバルトマンガン金属の回収率が低下し、回収コストが高くなる。
【0005】
また、三元正極材料の前駆体(あるいは、三元前駆体と称する)の共沈工程は、リチウム電池の正極材料の製造の重要なプロセスである。前駆体製品の性能は、正極材料の性能に直接に影響を及ぼす。前駆体共沈の設備は、価格が高く、製造が精密であるため、前駆体の生産効率の向上による全体の回収工程のコストへの影響が特に重要である。通常の三元前駆体の共沈工程では、オンラインpH計で回収工程のpH値を精度よく制御して前駆体の品質を保証する。本発明者の研究としては、リチウムイオン濃度の高い溶液において、オンラインpH計により、リチウムイオン被毒現象が生じやすいとともに、共沈工程の安定性に影響を及ぼすことの解決である。また、水酸化ナトリウムを沈殿剤として用いると、生産効率を大幅に向上させ、回収工程における水の使用量を減らし、設備の容積を小さくする。上記の2つの原因により、本発明は、三元前駆体の共沈工程前にリチウムイオンを除去し、回収工程の生産効率に顕著に影響を及ぼさない限り、反応条件を制御することで、容易に洗浄されるニッケルコバルトマンガンなどの金属の水酸化物を沈殿させる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、リチウム電池の廃棄正極材料の回収工程における不純物除去および処理方法を提供する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の実施例は、リチウム電池の廃棄正極材料の回収工程における不純物除去および処理方法を提供する。前記方法は、室温よりも高い第1温度および一定の第1pH値の安定環境において、リチウム電池の廃棄正極材料の浸出液および第1アルカリ溶液の流速を制御して鉄イオン、アルミニウムイオンおよび少なくとも一部の銅イオンを沈殿させて除去し、第1濾液を得る工程(1)と、室温よりも高い第2温度および一定の第1pH範囲で、第1濾液、錯化剤および第2アルカリ溶液の流速を制御してリチウムイオンを除去し、リチウムイオンを含有する第2濾液を分離し、目標物質沈殿を得る工程(2)と、前記目標物質沈殿を溶解して第1溶液を得る工程(3)と、室温よりも高い第3温度および一定のフッ素イオン濃度で、前記第1溶液およびフッ素含有沈殿の流速を制御してカルシウムイオン、マグネシウムイオンおよび少なくとも一部の鉛イオンを沈殿させて除去し、目標溶液を得る工程(4)と、を含む。前記不純物除去および処理方法は、連続操作可能な溢流反応槽において行われる。
【0008】
本発明の実施例は、リチウム電池の廃棄正極材料の回収工程における不純物除去および処理方法を提供する。前記方法は、第1反応溝内に適量の第1ボトム液を添加するとともに、前記第1反応溝内の反応温度を室温よりも高い第1温度に維持する工程と、リチウム電池の廃棄正極材料の浸出液および第1アルカリ溶液をそれぞれ適宜な流速で前記第1反応溝内に吸引して前記第1反応溝から溢れ出させる工程とを含む。なお、前記第1時間内に、反応を前記第1温度で安定に行うよう維持するとともに、前記第1アルカリ溶液の流速を調整して前記反応を第1pH値で安定に行う。その後、第1分離工程を行って第1不純物および第1濾液を得る。
【0009】
一部の実施例では、第1分離工程を行う前に、前記方法は、前記第1反応溝から溢れ出た混合物をエージングさせ、エージング温度を前記第1温度に維持するとともに第2次時間エージングさせる工程をさらに含む。
【0010】
一部の実施例では、前記方法は、第2反応溝内に適量の第2ボトム液を添加するとともに、前記第2反応溝内の反応温度を、室温よりも高い第2温度に維持し、その後、前記第2反応溝内に保護ガスを導入する工程と、第1濾液、錯化剤および第2アルカリ溶液をそれぞれ適宜な流速で前記第2反応溝内に吸入して第3時間反応させた後に前記第2反応溝から溢れ出させる工程と、を含む。なお、前記第3時間内に、反応を前記第2温度で安定に行うよう維持するとともに、前記第2アルカリ溶液の流速を調整して前記反応を第1pH範囲で安定に行う。その後、第2分離工程を行って目標物質沈殿および第2濾液を得る。前記第2濾液は、リチウムイオンを含む。
【0011】
一部の実施例では、第2分離工程を行う前に、前記方法は、前記第2反応溝から溢れ出た混合物をエージングさせ、エージング温度を前記第2温度に維持するとともに、第4時間エージングさせる工程をさらに含む。
【0012】
一部の実施例では、前記方法は、前記目標物質沈殿を溶解して第1溶液を得る工程と、前記第3反応溝内の反応温度を室温より高い第3温度に維持する工程と、前記第1溶液およびフッ素含有沈殿剤をそれぞれ適宜な流速で前記第3反応溝に吸入して第5時間反応させた後に前記第3反応溝から溢れ出させる工程とをさらに含む。なお、第5時間内に、反応を前記第3温度で安定に行うよう維持するとともに、前記フッ素含有沈殿剤の流速を調整して前記第3反応溝における反応物のフッ素イオン濃度を第1濃度範囲に安定させる。その後、第3分離工程を行って第2不純物および目標溶液を得る。
【0013】
一部の実施例では、第3分離工程を行う前に、前記方法は、前記第3反応溝から溢れ出た混合物をエージングさせ、エージング温度を前記第3温度に維持するとともに、第6時間エージングさせる工程と、エージングした混合物を第7時間静置する工程と、をさらに含む。
【0014】
一部の実施例では、前記不純物除去方法によれば、前記リチウム電池の廃棄正極材料の浸出液を連続に処理することができる。
【0015】
一部の実施例では、前記リチウム電池の廃棄正極材料の浸出液に沈殿処理を行う前に、前記方法は、前記リチウム電池の廃棄正極材料に、還元剤、第1酸および水を少なくとも含む浸出剤を添加し、pHが第2範囲になるまで溶解し、その後に第4分離工程を行って第3不純物および前記リチウム電池の廃棄正極材料の浸出液を得る工程をさらに含む。なお、前記浸出剤は、少なくとも、還元剤、第1酸および水を含む。
【0016】
一部の実施例では、前記リチウム電池の廃棄正極材料は、リチウムニッケルコバルトマンガン酸化物の電池材料、リチウムコバルトン酸化物の電池材料、リチウムコバルトマンガン酸化物の電池材料、リチウムコバルトアルミナの電池材料、リチウムマンガン酸化物の電池材料のうちの一種または二種以上を含む。
【0017】
一部の実施例では、前記方法は、前記目標溶液に第3アルカリ溶液を添加して前駆体沈殿を得る工程をさらに含む。
【0018】
一部の実施例では、前記第1ボトム液は、脱イオン水またはpHが前記第1pH値の溶液である。
【0019】
一部の実施例では、前記第1温度は、50~90℃のうちのいずれかの値である。
【0020】
一部の実施例では、前記第1アルカリ溶液は、水酸化リチウムを含む。
【0021】
一部の実施例では、前記第1pH値は、pH=5.5~6.7のうちのいずれかの値である。
【0022】
一部の実施例では、前記第1時間は2~10hである。
【0023】
一部の実施例では、前記第1不純物は、水酸化鉄、水酸化アルミニウムおよび水酸化銅のうちの一種または二種以上を含む。
【0024】
一部の実施例では、前記第2時間は0.5~2hである。
【0025】
一部の実施例では、前記第2ボトム液は、アンモニア水を含む。
【0026】
一部の実施例では、前記第2温度は、40~70℃のうちのいずれかの値である。
【0027】
一部の実施例では、前記保護ガスは、窒素ガスまたは不活性ガスを含む。
【0028】
一部の実施例では、前記錯化剤は、アンモニア水を含む。
【0029】
一部の実施例では、前記第2アルカリ溶液は、水酸化リチウムを含む。
【0030】
一部の実施例では、前記第1pH範囲は、pH=10.5~11.8である。
【0031】
一部の実施例では、前記第3時間は2~10hである。
【0032】
一部の実施例では、前記第4時間は0.5~2hである。
【0033】
一部の実施例では、前記目標物質沈殿を溶解して第1溶液を得る工程は、前記目標物質沈殿内に浸出剤を添加し、pHが第3範囲になるまで溶解し、目標物質を含有する溶液を得る工程と、pHが第4範囲になるまで前記目標物質を含有する溶液に適量の第4アルカリ溶液を添加し、前記第1溶液を得る工程と、を含む。
【0034】
一部の実施例では、前記第3範囲は、pH=0~4である。
【0035】
一部の実施例では、前記第4範囲は、pH=4.5~6.5である。
【0036】
一部の実施例では、前記第3温度は、50~90℃のうちのいずれかの値である。
【0037】
一部の実施例では、前記フッ素含有沈殿剤は、フッ化ナトリウム溶液を含む。
【0038】
一部の実施例では、第1濃度範囲は、フッ素イオン濃度が0.005~0.1mol/Lである。
【0039】
一部の実施例では、前記第5時間は2~10hである。
【0040】
一部の実施例では、前記第2不純物は、フッ化カルシウム、フッ化マグネシウム、フッ化鉛のうちの一種または二種以上を含む。
【0041】
一部の実施例では、前記第6時間は0.5~2hである。
【0042】
一部の実施例では、前記第7時間は0.5~2hである。
【0043】
本発明の実施例は、リチウム電池の廃棄正極材料の浸出液の処理方法を提供する。前記リチウム電池の廃棄正極材料の浸出液は、少なくとも、カルシウムイオン、マグネシウムイオンまたは鉛イオンを含む。カルシウムイオン、マグネシウムイオンまたは鉛イオンを除去する前に、前記方法は、第2反応溝内に適量の第2ボトム液を添加するとともに、前記第2反応溝内の反応温度を、室温よりも高い第2温度に維持し、その後、前記第2反応溝内に保護ガスを導入する工程と、第1濾液、錯化剤および第2アルカリ溶液を適宜な流速で前記第2反応溝内に吸入して第3時間反応させた後に前記第2反応溝から溢れ出させる工程とを含む。なお、前記第3時間内に、反応を前記第2温度で安定に行うよう維持するとともに、前記第2アルカリ溶液の流速を調整して前記反応を第1pH範囲に安定に行う。その後、第2分離工程を行って目標物質沈殿および第2濾液を得る。前記第2濾液は、リチウムイオンを含む。
【0044】
リチウム電池の廃棄正極材料から不純物を除去する前に、固相状態のリチウム電池の廃棄正極材料を溶解してリチウム電池の廃棄正極材料の浸出液を得る必要がある。具体的には、リチウム電池の廃棄正極材料に浸出剤を添加して、pHが第2範囲になるまで溶解し、その後、第4分離工程を行って第3不純物およびリチウム電池の廃棄正極材料の浸出液を得る。一部の実施例では、リチウム電池の廃棄正極材料は、リチウムニッケルコバルトマンガン酸化物の電池材料を含んでもよい。一部の実施例では、リチウム電池の廃棄正極材料は、リチウムコバルト酸化物の電池材料、リチウムコバルトマンガン酸化物の電池材料、リチウムコバルトアルミナの電池材料、リチウムマンガン酸化物の電池材料のうちの一種または二種以上を含んでもよい。一部の実施例では、浸出剤は、少なくとも、還元剤、第1酸および水を含んでもよい。一部の実施例では、還元剤は、過酸化水素溶液を含んでもよい。一部の実施例では、還元剤は、二酸化硫黄ガス、ヒドラジン水和物(N・HO)などをさらに含んでもよい。一部の実施例では、第1酸は、硫酸、塩酸、硝酸、過マンガン酸、亜硫酸、次亜塩素酸などを含んでもよい。
【0045】
一部の実施例では、浸出剤は、一定の条件で上記のリチウム電池の廃棄正極材料を溶解するために用いられてもよい。一部の実施例では、当該一定の条件は、初期溶解温度、溶解圧力および溶解pHを含んでもよい。一部の実施例では、リチウム電池の廃棄正極材料の初期溶解温度は、0℃~80℃であってもよい。好ましくは、リチウム電池の廃棄正極材料の初期溶解温度は、20℃~76℃であってもよい。好ましくは、リチウム電池の廃棄正極材料の初期溶解温度は、30℃~73℃であってもよい。好ましくは、リチウム電池の廃棄正極材料の初期溶解温度は、40℃~70℃であってもよい。好ましくは、リチウム電池の廃棄正極材料の初期溶解温度は、45℃~67℃であってもよい。好ましくは、リチウム電池の廃棄正極材料の初期溶解温度は、50℃~65℃であってもよい。好ましくは、リチウム電池の廃棄正極材料の初期溶解温度は、55℃~63℃であってもよい。好ましくは、リチウム電池の廃棄正極材料の初期溶解温度は、57℃~60℃であってもよい。一部の実施例では、リチウム電池の廃棄正極材料の溶解圧力は常圧、すなわち、101.325KPaであってもよい。一部の実施例では、リチウム電池の廃棄正極材料の溶解圧力は、他の圧力値であってもよいが、本発明においてその限りがない。一部の実施例では、リチウム電池の廃棄正極材料を溶解するpHは、第2範囲であってもよい。リチウム電池の廃棄正極材料が種々の金属元素を含むので、リチウム電池の廃棄正極材料を充分に溶解するために、リチウム電池の廃棄正極材料の溶解pHはより酸性である。例えば、第2範囲は、pH=0~2.5であってもよい。好ましくは、第2範囲は、pH=0.2~2.3であってもよい。好ましくは、第2範囲は、pH=0.4~2.2であってもよい。好ましくは、第2範囲は、pH=0.5~2.0であってもよい。好ましくは、第2範囲は、pH=0.6~1.8であってもよい。好ましくは、第2範囲は、pH=0.7~1.6であってもよい。好ましくは、第2範囲は、pH=0.8~1.4であってもよい。好ましくは、第2範囲は、pH=0.9~1.2であってもよい。より好ましくは、溶解pHは、pH=1.0であってもよい。一部の実施例では、当該一定の条件は、リチウム電池の廃棄正極材料の粒度をさらに含んでもよい。例えば、リチウム電池の廃棄正極材料を溶解する前に、リチウム電池の廃棄正極材料に粉砕処理を施し、一定の粒度よりも小さくなった後に溶解を行う。一部の実施例では、粉砕後のリチウム電池の廃棄正極材料の粒度は、0.01~2mmを含んでもよい。好ましくは、粉砕後のリチウム電池の廃棄正極材料の粒度は、0.02~1.5mmを含んでもよい。好ましくは、粉砕後のリチウム電池の廃棄正極材料の粒度は、0.04~1.2mmを含んでもよい。好ましくは、粉砕後のリチウム電池の廃棄正極材料の粒度は、0.05~0.8mmを含んでもよい。好ましくは、粉砕後のリチウム電池の廃棄正極材料の粒度は、0.06~0.4mmを含んでもよい。好ましくは、粉砕後のリチウム電池の廃棄正極材料の粒度は、0.08~0.2mmを含んでもよい。好ましくは、粉砕後のリチウム電池の廃棄正極材料の粒度は、0.1mmを含んでもよい。リチウム電池の廃棄正極材料の溶解工程では、粉砕後のリチウム電池の廃棄正極材料と浸出剤との接触面積が大きいため、リチウム電池の廃棄正極材料の溶解速度は速い。
【0046】
得られたリチウム電池の廃棄正極材料の浸出液から不純物をさらに除去して処理を行ってもよい。リチウム電池の廃棄正極材料の浸出液から不純物をさらに除去して処理を行う工程は、リチウム電池の廃棄正極材料の浸出液を沈殿させて鉄イオン、アルミニウムイオンおよび少なくとも一部の銅イオンを除去して第1濾液を得る工程(1)と、第1濾液を沈殿させてリチウムイオンを除去し、リチウムイオンを含有する第2濾液および目標物質沈殿をそれぞれ得る工程(2)と、目標物質沈殿を溶解して第1溶液を得て、第1溶液を沈殿させてカルシウムイオン、マグネシウムイオンおよび少なくとも一部の鉛イオンを除去して目標溶液を得る工程(3)とを含む。さらに、目標溶液内に第3アルカリ溶液を添加してリチウム電池の正極材料前駆体沈殿を得てもよい。
【0047】
上記の3つの不純物除去、処理工程は、いずれも安定した反応条件(例えば、測定誤差許容の範囲内の一定の反応温度(反応温度の測定誤差許容範囲が±2.5℃))、一定のpH値(pHの測定誤差許容範囲が±0.05)、一定のpH範囲(pH範囲の測定誤差許容範囲が±0.05)または一定のフッ素イオン濃度範囲(フッ素イオン濃度範囲の測定誤差許容範囲が±0.0005mol/L)で、連続に反応溝内に二種以上の反応材料を同時に吸入する。なお、材料の吸入流速は、反応溝の容積に対して小さくて、pH計、フッ素イオン計および定温設備の制御に加え、反応は相対的に安定した条件で行われるとみなされ、pH値が沈殿剤の添加に伴って、反応終了のpH値に達するまで漸次に変わるという通常の化学反応工程と異なる。二種以上の反応材料は、反応溝において継続的に反応し、一定期間(例えば、第1時間、第3時間または第5時間)反応した後に反応溝から連続に溢れ出、後続の反応は、反応材料が満たされる溢流反応溝において継続的に行われ、反応環境がより安定であるとともに、生産工程を連続に行うことを実現できる。上記の3つの反応工程は、いずれも安定した反応条件で行われるため、結晶度が高くて粒径が大きい沈殿を得ることができ、濾過、洗浄を容易にする。上記の不純物除去、処理工程は、リチウムイオンを除去する工程をさらに含み、リチウム電池の正極材料前駆体沈殿を調製する前にリチウムイオンを除去してリチウムを回収する目的を実現するとともに、後続の不純物除去工程における反応パラメータの制御への影響を抑え、後続の反応を相対的に安定した条件で行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
本発明は、実施例を例示して詳しく説明する。
図1】本発明の一部の実施例に係るリチウム電池の廃棄正極材料の回収工程における不純物除去方法の一例を示すフローチャートである。
図2】本発明の他の一部の実施例に係るリチウム電池の廃棄正極材料の回収工程におけるリチウムイオンの回収方法の一例を示すフローチャートである。
図3】本発明の別の一部の実施例に係るリチウム電池の廃棄正極材料の回収工程における不純物除去方法の一例を示すフローチャートである。
図4A】本発明の実施例1に係るスラグのSEM画像である。
図4B】本発明の実施例2に係るスラグのSEM画像である。
図5】本発明の実施例3および実施例4に係るスラグのXRDスペクトルである。
図6】本発明の実施例3に係るスラグのSEM画像である。
図7A】本発明の実施例5に係るスラグのSEM画像である。
図7B】本発明の実施例6に係るスラグのSEM画像である。
図8】本発明の一部の実施例に係る不純物除去および処理方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0049】
本発明の実施例の技術案をより明確に説明するために、以下、実施例の説明に必要な図面を簡単に説明する。明らかに、以下に説明される図面は、本発明の一例または実施例にすぎず、当業者であれば、創造的な労力を要することなく、これらの図面に基づいて本願を他の類似するシナリオに応用することができる。特に言語環境から明らかではないかまたは明記しない限り、図面において同じ符号は同じ構造または操作を表す。
【0050】
本明細書で使用される「システム」、「装置」、「ユニット」および/または「モジュール」は、異なるレベルの様々なアセンブリ、素子、部品、部分または組立体を区別するための方法であることを理解されたい。本明細書で使用される「不純物除去方法」、「処理方法」、「不純物除去および処理方法」、「リチウムイオン回収方法」または「リチウム電池の廃棄正極材料回収工程における不純物除去および処理方法」は、リチウム電池の廃棄正極材料回収工程の1つまたは複数のステップまたは工程を指す。しかしながら、他の用語が同じ目的を達成できるなら、上記用語の代わりに他の表現を用いることができる。
【0051】
本発明および特許請求の範囲に示すように、文脈が明確に別段の指示をしない限り、「1つ」、「1個」、「1種」および/または「当該」などの用語は、特に単数形を指すものではなく、複数形を含んでもよい。一般的に、用語「含む」及び「含有」は、明確に特定されたステップ及び要素のみを含むように提示し、これらのステップ及び要素は、排他的な羅列ではなく、方法又は設備は、また他のステップ又は要素を含む可能性がある。本発明に用いられる数値範囲は、この範囲に含まれる各数値を簡潔に表す。
【0052】
以下、図1図3を参照しながら、リチウム電池の廃棄正極材料の浸出液の不純物除去工程を詳しく説明する。
【0053】
図1は、本発明の一部の実施例に係るリチウム電池の廃棄正極材料の回収工程における不純物除去方法100の一例を示すフローチャートである。
【0054】
リチウム電池の廃棄正極材料の回収工程における不純物除去工程は、反応溝またはエージング溝において行われることが可能である。図8は、本発明の一部の実施例に係る不純物除去および処理方法を示す図である。図8に示すように、リチウム電池の廃棄正極材料の浸出液および第1アルカリ溶液を、それぞれフィードポンプAおよびフィードポンプBによって反応溝内に吸入し、一定期間反応させた後に反応溝の排出管Aによってエージング溝へオーバーフローさせてエージングさせる。なお、反応溝は、第1反応溝であり、エージング溝は、第1エージング溝であってもよい。
【0055】
ステップ110:第1反応溝内に適量の第1ボトム液を添加するとともに、第1反応溝内の反応温度を室温よりも高い第1温度に維持する。
【0056】
第1反応溝の容積は、製造プロセス要件または反応材料の供給量によって設定されてもよい。例えば、第1反応溝の容積は、50L、80Lまたは100Lであってもよい。第1ボトム液は、反応材料が吸入される前に第1反応溝内に配置される液体であり、pH計を浸漬してpH計の電極を液面以下に位置させる。一部の実施例では、第1ボトム液は、脱イオン水またはpHが第1pH値の溶液であってもよい。例えば、第1pH値の溶液は、ニッケルコバルトマンガン溶液であってもよい。また、例えば、第1pH値の溶液は、酸溶液(例えば、硫酸溶液)であってもよい。pHが第1pH値であることに関する詳細な内容については、ステップ120の説明を参照可能であるので、ここで詳細な説明を省略する。
【0057】
第1温度は、室温よりも高くてもよい。一部の実施例では、第1温度は、50~90℃のうちのいずれかの値であってもよい。好ましくは、第1温度は、52~88℃のうちのいずれかの値であってもよい。好ましくは、第1温度は、55~86℃のうちのいずれかの値であってもよい。好ましくは、第1温度は、58~83℃のうちのいずれかの値であってもよい。好ましくは、第1温度は、60~80℃のうちのいずれかの値であってもよい。好ましくは、第1温度は、62~78℃のうちのいずれかの値であってもよい。好ましくは、第1温度は、65~76℃のうちのいずれかの値であってもよい。好ましくは、第1温度は、67~73℃のうちのいずれかの値であってもよい。好ましくは、第1温度は、69~71℃のうちのいずれかの値であってもよい。好ましくは、第1温度は50℃であってもよい。好ましくは、第1温度は55℃であってもよい。好ましくは、第1温度は60℃であってもよい。好ましくは、第1温度は65℃であってもよい。好ましくは、第1温度は70℃であってもよい。好ましくは、第1温度は75℃であってもよい。好ましくは、第1温度は80℃であってもよい。好ましくは、第1温度は85℃であってもよい。より好ましくは、第1温度は90℃であってもよい。一部の実施例では、第1反応溝を加熱して第1反応溝内の反応温度を第1温度に維持してもよい。第1反応溝の加熱方法は、電気加熱、蒸気加熱、熱媒体油循環加熱または遠赤外線加熱であってもよいが、本発明においてこれらに限定されない。
【0058】
第1温度が常温よりも高いため、結晶化しやすくて結晶粒の大きい結晶を得る。
【0059】
ステップ120:リチウム電池の廃棄正極材料の浸出液および第1アルカリ溶液をそれぞれ適宜な流速で第1反応溝内に吸入し、第1時間反応させた後に第1反応溝から溢れ出させる。なお、第1時間内に、前記反応を第1温度で安定に行うよう維持するとともに、第1アルカリ溶液の流速を調整して前記反応を第1pH値で安定に行う。
【0060】
リチウム電池の廃棄正極材料の浸出液は、リチウム電池の廃棄正極材料を溶解して得られることが可能である。リチウム電池の廃棄正極材料の浸出液の取得に関する詳細な内容については、上記の内容を参照することが可能であるため、ここでその詳細な説明を省略する。一部の実施例では、リチウム電池の廃棄正極材料の浸出液は、リチウムイオン、ニッケルイオン、コバルトイオン、マンガンイオンなどを含有する溶液であってもよい。リチウム電池の廃棄正極材料の浸出液および第1アルカリ溶液の流速は、製造プロセス要件によって設定されてもよく、適宜な流速を設定してリチウム電池の廃棄正極材料の浸出液と第1アルカリ溶液を第1時間反応させた後に第1反応溝から溢れ出させる。例えば、製造規模によって、第1反応溝は50L、リチウム電池の廃棄正極材料の浸出液の流速は50~250mL/min、第1アルカリ溶液の流速は、反応を第1pH値で安定に行うように制御されてもよい。リチウム電池の廃棄正極材料の浸出液を第1反応溝に吸入すると、リチウム電池の廃棄正極材料の浸出液のフィード管を第1反応溝の底部に突出させてもよい。第1反応溝内に第1アルカリ溶液を吸入する場合、第1アルカリ溶液のフィード管を第1反応溝の底部に突出させてもよい。図8に示すように、リチウム電池の廃棄正極材料の浸出液および第1アルカリ溶液は、それぞれフィードポンプAおよびフィードポンプBによって反応溝(すなわち、第1反応溝)に吸入されてもよい。フィードポンプAおよびフィードポンプBは、反応溝の底部に挿入される。一部の実施例では、第1反応溝は、第1反応溝内のリチウム電池の廃棄正極材料の浸出液および第1アルカリ溶液を攪拌するための攪拌モジュールを含んでもよい。
【0061】
一部の実施例では、第1アルカリは、水酸化リチウムを含んでもよい。水酸化リチウムの濃度は、1~4mol/Lであってもよい。好ましくは、水酸化リチウムの濃度は、2mol/Lである。好ましくは、水酸化リチウムの濃度は、3mol/Lである。一部の実施例では、第1pH値は、pH=5.5~6.7のうちのいずれかの値である。好ましくは、第1pH値は、pH=5.7~6.5のうちのいずれかの値である。好ましくは、第1pH値は、pH=5.9~6.3のうちのいずれかの値である。好ましくは、第1pH値は、pH=6.0~6.2のうちのいずれかの値である。好ましくは、第1pH値は、pH=5.5であってもよい。好ましくは、第1pH値は、pH=5.8であってもよい。好ましくは、第1pH値は、pH=6.0であってもよい。好ましくは、第1pH値は、pH=6.3であってもよい。好ましくは、第1pH値は、pH=6.5であってもよい。好ましくは、第1pH値は、pH=6.7であってもよい。一部の実施例では、溶液のpHを第1pH値に安定させることは、溶液のpHを常に第1pH値に等しくしてもよいし、第1pH値との差を予め設定された値(例えば、0.05、0.10または0.15)よりも小さくしてもよい。例えば、予め設定された値が0.10、第1pH値が6.3であると、溶液のpH値が6.2、6.25、6.3、6.35、6.4であったり6.2~6.4の範囲内に変動したりすることは、いずれも当該溶液のpHを第1pH値に安定させるとみなされてもよい。第1反応溝内に第1アルカリ溶液を吸入すると、pH計によって溶液のpH値をリアルタイムに測定して第1アルカリ溶液の吸入速度を制御することで、溶液のpHを第1pH値または測定誤差範囲(例えば、pHの測定誤差許容範囲が±0.05であると、第1pH値がpH=5.45~6.75のうちのいずれかの値であってもよい)に安定させるか、または第1pH値との差を予め設定された範囲内にする。例えば、第1pH値がpH=6.3である必要な場合、第1アルカリ溶液の流速が20ml/minであると、溶液のpHを低下させ、その際、第1アルカリ溶液の流速を適切に上げて溶液のpHを6.3まで上昇させる必要があり、一方、第1アルカリ溶液の流速が30ml/minであると、溶液のpHを上昇させ、第1アルカリ溶液の流速を適切に下げて溶液のpHを6.3まで低下させる必要がある。なお、pH計によって溶液のpH値をリアルタイムに測定して第1アルカリ溶液の吸入速度を制御することは、pH計と第1アルカリ溶液のフィードポンプとを自動的に連動させることで制御されてもよい。
【0062】
一部の実施例では、第1時間は2~10hであってもよい。好ましくは、第1時間は2.5~8.0hであってもよい。好ましくは、第1時間は3.0~7.0hであってもよい。好ましくは、第1時間は3.5~7.5hであってもよい。好ましくは、第1時間は4.0~7.0hであってもよい。好ましくは、第1時間は4.5~6.5hであってもよい。好ましくは、第1時間は5.0~6.0hであってもよい。好ましくは、第1時間は5.3~5.7hであってもよい。好ましくは、第1時間は3hであってもよい。好ましくは、第1時間は4hであってもよい。好ましくは、第1時間は5hであってもよい。好ましくは、第1時間は6hであってもよい。好ましくは、第1時間は7hであってもよい。より好ましくは、第1時間は8hであってもよい。第1反応溝の容積および溢出口の位置(例えば、溢出口は、第1反応溝の中部より上方の位置に設置される)を設置することで、反応材料を第1反応溝において2~10h充分に反応させ、その後、第1反応溝から第1エージング溝に溢れ出させる。
【0063】
反応温度を第1温度に維持し、溶液のpHを第1pH値に安定させることで、反応工程における反応条件を安定させ、生成する沈殿の結晶粒および結晶形を一致させることができる。また、反応材料を第1反応溝内に2~10h停滞させて充分に反応、沈殿させ、このように沈殿して得られる結晶の結晶粒が大きく、後続に沈殿を容易に濾過、洗浄する。また、第1反応溝内に反応材料を連続に吸入して連続に反応させることで、リチウム電池の廃棄正極材料の浸出液への連続処理を実現し、工業大規模の不純物除去処理を容易に実現する。
【0064】
ステップ130:第1反応溝から溢れ出た混合物をエージングさせ、エージング温度を第1温度に維持するとともに第2時間エージングさせる。
【0065】
このエージング工程は、第1エージング溝内に行われてもよい。一部の実施例では、第1エージング溝を加熱して第1エージング溝内のエージング温度を第1温度に維持してもよい。第1エージング溝の加熱方法は、電気加熱、蒸気加熱、熱媒体油循環加熱または遠赤外線加熱を含んでもよいが、本発明においてこれらに限定されない。第1温度に関する詳細な内容については、ステップ110の説明を参照可能であるので、ここで詳細な説明を省略する。一部の実施例では、第2時間は0.5~2hであってもよい。好ましくは、第2時間は0.8~1.8hであってもよい。好ましくは、第2時間は1.0~1.6hであってもよい。好ましくは、第2時間は1.2~1.4hであってもよい。好ましくは、第2時間は0.5hであってもよい。好ましくは、第2時間は1hであってもよい。好ましくは、第2時間は1.5hであってもよい。より好ましくは、第2時間は2hであってもよい。
【0066】
充分に反応した混合物を第2時間エージングさせることで、反応した混合物における沈殿の結晶の結晶粒成長を促進させるとともに、その粒径の分布をより均一にする。
【0067】
ステップ140:その後、第1分離工程を行って第1不純物および第1濾液を得る。
【0068】
第1分離工程を行う前に、エージングした混合物を室温まで冷却させてもよい。この冷却工程は、第1バッファタンクにおいて行われ、エージングした混合物を第1バッファタンク内に吸入して冷却させてもよい。エージングした混合物の冷却方法は、自然冷却、風冷または液体冷却(例えば、水、アルコール、エチレングリコール、イソブチルアルコール、ヘキサンなどの液体冷却媒体による冷却)であってもよい。
【0069】
一部の実施例では、冷却した混合物に第1分離工程を行って第1不純物および第1濾液を得てもよい。具体的には、第1分離工程は、固液分離工程であってもよい。例えば、第1分離方法は、濾過、重力沈降、遠心沈降、加圧濾過などを含んでもよい。異なるリチウム電池の廃棄正極材料が異なる不純物の金属元素を含むため、不純物除去反応の条件は異なり、得られる第1不純物および/または第1濾液が異なってもよい。一部の実施例では、第1不純物は、少なくとも水酸化鉄を含んでもよい。一部の実施例では、第1不純物は、水酸化鉄および水酸化アルミニウムをさらに含んでもよい。一部の実施例では、第1不純物は、水酸化銅をさらに含んでもよい。一部の実施例では、第1濾液は、少なくともリチウムイオンおよびコバルトイオンを含んでもよい。例えば、リチウム電池の廃棄正極材料(例えば、リチウムニッケルコバルトマンガン酸化物の電池材料)で生成する生成物であるリチウム電池の正極材料がアルミニウム元素を含まない場合、リチウム電池の廃棄正極材料の浸出液は、リチウムイオン、ニッケルイオン、アルミニウムイオン、鉄イオン、マンガンイオン、コバルトイオンなどを含み、アルミニウムイオン、鉄イオンなどの不純物の金属元素イオンを除去するために第1pH値がpH=5.5であってもよい。この場合、第1不純物は、水酸化アルミニウム、水酸化鉄などを含んでもよく、第1濾液は、リチウムイオン、ニッケルイオン、マンガンイオン、コバルトイオンなどを含んでもよい。
【0070】
上記の方法では、リチウム電池の廃棄正極材料の浸出液および第1アルカリ溶液の第1反応溝への吸入流速、pH値、反応温度、反応時間およびエージング時間を制御することで、結晶の結晶粒を大結晶粒に充分に成長させる。また、一定のpH値で反応させると、鉄、アルミニウム、銅、ニッケルなどの金属の共沈物を得ることができ、第1分離工程を容易に行い、第1分離工程における洗浄の使用水量および洗浄時間を減らすとともに、洗浄工程におけるニッケルコバルトマンガンイオンの消耗も減少させ、ニッケルコバルトマンガンの回収率を向上することができる。
【0071】
以下、実施例1および実施例2により、リチウム電池の廃棄正極材料回収工程における鉄イオンおよびアルミニウムイオンの除去方法について、詳しく説明する。なお、実施例1および実施例2の反応条件、反応材料および反応材料の使用量は、リチウム電池の廃棄正極材料回収工程における鉄イオンおよびアルミニウムイオンの除去方法を説明するためのものにすぎず、本発明の保護範囲を限定するものではない。なお、実施例1は、リチウム電池の廃棄正極材料の浸出液の不純物除去を量産処理する方法の実施例であり、図2は、図1の不純物除去方法を用いた実施例である。実施例1は、実施例2の対照組である。
実施例1
【0072】
ステップ1:室温で50Lの第1反応溝内に30Lのリチウム電池の廃棄正極材料の浸出液を添加した。
【0073】
ステップ2:pH計によって蠕動ポンプをオンライン制御して第1反応溝内に2mol/Lの水酸化リチウム溶液を吸入し、pH値を5.5に安定させると水酸化リチウム溶液の吸入を停止するとともに、混合物を1時間反応させた。反応には、水酸化リチウム溶液を合計で4.2L消耗した。
【0074】
ステップ3:反応した混合物を200メッシュ濾布のフィルタープレスによって濾過し、濾液が流出しなくなるまで0.6MPaの高圧空気でケーキをパージした。濾過工程では、フィルタープレスの内部圧力が速く上昇すれば、例えば、2分以内に圧力が上限0.5MPaまで上昇すると、濾過の停止が必要になり、この沈殿の濾過性が悪いことを表す。圧力が0MPaまで降下した後に、濾過操作を再開する。
【0075】
ステップ4:濾過された濾液を観察し、濾液が濁ると発見されると、沈殿物が完全に濾過されないことを表す。
【0076】
ステップ5:濾過されたケーキを収集してウェットケーキ267gを得て、乾燥した後に乾燥ケーキ92.4gを得た。
【0077】
ステップ6:リチウム電池の廃棄正極材料の浸出液、乾燥ケーキ、濾液をICP測定し、乾燥ケーキをSEM測定した。
実施例2
【0078】
ステップ1:50Lの第1反応溝内に実施例1の濾液10Lを第1ボトム液として添加することで、pH計の電極を液面以下に位置させ、第1反応溝を加熱して反応温度を70℃に一定に維持した。
【0079】
ステップ2:リチウム電池の廃棄正極材料の浸出液および2mol/Lの水酸化リチウム溶液を蠕動ポンプによってそれぞれ第1反応溝内に吸入した。リチウム電池の廃棄正極材料の浸出液の吸入速度を200ml/minに制御し、水酸化リチウム溶液の吸入速度をオンラインpH計によって制御し、水酸化リチウム溶液の吸入速度を制御して混合物のpHを5.5にした。3h充分に反応させた後、第1反応溝のオーバーフロー口から混合物を溢れ出させて第1エージング溝に流入させた。この工程では、36Lのリチウム電池の廃棄正極材料の浸出液および5.04Lの水酸化リチウム溶液を吸入して反応させた。
【0080】
ステップ3:第1エージング溝を加熱してエージング温度を70℃に一定に維持し、混合物を第1エージング溝内に1hエージングさせた。
【0081】
ステップ4:エージングした混合物を第1バッファタンクにおいて室温まで冷却させた後にフィルタープレスで濾過するとともに、濾液が流出しなくなるまで0.6MPaの高圧空気でケーキを洗浄した。濾過工程では、常にフィルタープレスの圧力を0.2MPaよりも低く維持することは、この沈殿の濾過性が優れていることを表す。
【0082】
ステップ5:濾過された濾液を観察し、濾液が透明であると発見されると、沈殿物が完全に濾過されたことを表す。得られる濾液は、51.04Lであった。
【0083】
ステップ6:濾過されたケーキを収集してウェットケーキ194.4gを得て、乾燥した後に乾燥ケーキ112gを得た。
【0084】
ステップ7:濾液、乾燥ケーキをICP測定し、乾燥ケーキをSEM測定した。
【0085】
実施例1および実施例2のケーキの含水率を計算する。
【0086】
実施例1のケーキの含水率W1=(267g―92.4g)/267g=65.4%
【0087】
実施例2のケーキの含水率W2=(194.4g―112g)/194.4g=42.4%
【0088】
実施例1および実施例2の含水率の計算結果によれば、以下のことがわかった。実施例1に対して実施例2のケーキの含水率が低く、実施例2の濾過工程の固液分離がより完全に行われたことを表す。図4A図4Bの比較により、実施例2の沈殿の結晶粒が実施例1よりも大きく、一定のpH=5.5の場合に一部のニッケルイオンがアルミニウムイオンおよび鉄イオンと共沈し、水酸化アルミニウム沈殿の構造を改善してコロイド状にならないため、より濾過をしやすくなる。
【0089】
実施例1および実施例2のICP測定結果により、表1のデータを得ることができる。
<表1>ICP分析結果
【0090】
表1によれば、実施例1および実施例2の金属イオン除去率をさらに計算することができる。
実施例1のアルミニウムイオン、鉄イオン、銅イオンの除去率M=(浸出液におけるM含有量×反応参与の浸出液総容積-濾液におけるM含有量×濾液総容積)/(浸出液におけるM含有量×反応参与の浸出液総容積)×100%。アルミニウムイオンの除去率:Al除去率=(156×30L-10.8×34.2L)/(156×30L)×100%=92.1%、鉄イオンの除去率:Fe除去率=(52.6×30L-0.88×34.2L)/(52.6×30L)×100%=98.1%、銅イオンの除去率:Cu除去率=(12.5×30L-8.12×34.2L)/(12.5×30L)×100%=26%をそれぞれ算出した。
【0091】
実施例1のニッケルイオン、コバルトイオン、マンガンイオンの損失率M=(乾燥ケーキの重さ×乾燥ケーキにおけるMの含有量)/(浸出液におけるM含有量×反応参与の浸出液総容積)×100%。ニッケルイオンの損失率:Ni損失率=(92.4g×0.42)/(53700×30L/1000)×100%=2.4%、コバルトイオンの損失率:Co損失率=(92.4g×0.074)/(10700×30L/1000)×100%=2.13%、コバルトイオンの損失率:Mn損失率=(92.4g×0.006)/(8620×30L/1000)×100%=0.21%をそれぞれ算出した。
【0092】
実施例2のアルミニウムイオン、鉄イオン、銅イオンの除去率M=(浸出液におけるM含有量×反応参与の浸出液総容積-濾液におけるM含有量×濾液総容積)/(浸出液におけるM含有量×反応参与の浸出液総容積)×100%。アルミニウムイオンの除去率:Al除去率=(156×36L-0)/(156×36L)=100%、鉄イオンの除去率:Fe除去率=(52.6×36L-0.5×51.04L)/(52.6×36L)=98.65%、銅イオンの除去率:Cu除去率=(12.5×36L-6.2×51.04L)/(12.5×36L)=29.7%をそれぞれ算出した。
【0093】
実施例2のニッケルイオン、コバルトイオン、マンガンイオンの損失率M=(乾燥ケーキの重さ×乾燥ケーキにおけるMの含有量)/(浸出液におけるM含有量×反応参与の溶出液総容積)×100%。ニッケルイオンの損失率:Ni損失率=(112g×0.31)/(53700×36L/1000g/L)×100%=1.8%、コバルトイオンの損失率:Co損失率=(112g×0.028)/(10700×36L/1000g/L)×100%=0.8%、マンガンイオンの損失率:Mn損失率=(112g×0.0042)/(8620×36L/1000g/L)×100%=0.15%をそれぞれ算出した。
【0094】
実施例1および実施例2のアルミニウムイオン、鉄イオン、銅イオンの除去率の計算結果によれば、実施例1に比べて実施例2のアルミニウムイオン、鉄イオン、銅イオンの除去率がより高く、実施例2のリチウム電池の廃棄正極材料の浸出液からアルミニウムイオン、鉄イオン、銅イオンの除去効果がより優れたことがわかった。さらに、実施例1のスラグをほぼ洗浄できなかったが、実施例2のスラグをフィルタープレスにおいて一定の程度に富化させ、少量の洗清水で一度に洗浄することができ、一部のアルミニウムイオン、鉄イオン、銅イオンを回収し、アルミニウムイオン、鉄イオン、銅イオンの損失率をさらに低下させる。
【0095】
図4Aは、本発明の実施例1のスラグのSEM画像であり、図4Bは、本発明の実施例2のスラグのSEM画像である。図4Aおよび図4Bによれば、実施例1のスラグの結晶粒が小さく、ブロック状に形成され、集合組織が緻密なものであり、コンパクタビリティが高く、一方、実施例2のスラグの結晶粒が大きく、乾燥後にブロック状に形成されるが、組織が粗くてコンパクタビリティが低いことがわかった。実施例2の方法によれば、リチウム電池の廃棄正極材料の浸出液から不純物を除去して得られた沈殿の結晶粒がより大きく、含水率がより低いことを表す。
【0096】
実施例1及び実施例2の比較結果は以下の通りである。実施例1では、室温で、溶液pHが5.5、反応材料を一度に添加して1h反応させ、リチウム電池の廃棄正極材料の浸出液に不純物除去処理を行った。一方、実施例2では、反応温度を70℃に維持し、溶液のpHを5.5に維持し、連続に材料を供給して反応材料を3h充分に反応させ、1hエージングさせることで、リチウム電池の廃棄正極材料の浸出液に不純物除去処理を行った。上記比較結果によれば、実施例2では、実施例1と同じ溶液pH値で、比較的に高い反応温度に一定に維持するとともに、反応材料の添加速度を制御して3h充分に反応させて1hエージングさせることで、生成された沈殿の結晶粒が大きく、沈殿を容易に濾過、洗浄し、これにより、Al、Fe、Mn金属の除去率をより高くし、不純物除去効果をより向上させることがわかった。
【0097】
リチウム電池の廃棄正極材料の回収工程においてpH計で溶液のpHをモニターして反応工程をリアルタイムに制御するため、このpH計に高い感度が求められるほか、pH計の電極に被毒現象の発生を回避する必要がある。本願の発明者は、以下のことを発見した。リチウム電池の廃棄正極材料の回収工程における溶液のリチウムイオンが、pH>7の場合にpH計の電極を被毒させやすく、溶液の実際のpH値をモニターしにくく、反応工程における他のパラメータ(例えば、第1アルカリ溶液の流速)を制御しにくく、共沈による三元前駆体(あるいは、前駆体沈殿と称する)の調製時の反応条件の制御に不利である。また、後続のカルシウムイオン、マグネシウムイオンまたは鉛イオンの除去時に、フッ素含有沈殿剤(例えば、フッ化ナトリウム)を用いて沈殿を行う(具体的な内容について、図3の説明を参照)が、フッ化リチウムは、溶解度が低く、不純物としてカルシウムイオン、マグネシウムイオンまたは鉛イオンと共に除去され、リチウム電池の廃棄正極材料の回収工程におけるリチウムイオンの回収率を低下させる。そのため、本発明の技術案では、不純物除去工程においてリチウムイオンを回収してから、後続の不純物除去工程を行う必要がある。
【0098】
図2は、本発明の他の一部の実施例に係るリチウム電池の廃棄正極材料の回収工程におけるリチウム回収方法200の一例を示すフローチャートである。
【0099】
リチウム電池の廃棄正極材料の回収工程におけるリチウムイオン回収工程は、反応溝またはエージング溝において行われてもよい。図8に示すように、第1濾液、錯化剤および第2アルカリ溶液を、それぞれフィードポンプA、フィードポンプBおよびフィードポンプC(未図示)によって反応溝内に吸入し、一定期間反応させた後に反応溝の排出管Aによってエージング溝へオーバーフローさせてエージングさせる。なお、反応溝は、第2反応溝であり、エージング溝は、第2エージング溝であってもよい。
【0100】
ステップ210:第2反応溝内に適量の第2ボトム液を添加するとともに、第2反応溝内の反応温度を室温よりも高い第2温度に維持し、その後、第2反応溝内に保護ガスを導入する。
【0101】
第2反応溝の容積は、製造プロセス要件または反応材料の供給量によって設定されてもよい。例えば、第2反応溝の容積は、50L、80Lまたは100Lであってもよい。第2ボトム液は、反応材料が吸入される前に第2反応溝内に配置される液体であり、pH計を浸漬してpH計の電極を液面以下に位置させる。一部の実施例では、第2ボトム液は、アンモニア水であってもよい。
【0102】
第2温度は、室温よりも高くてもよい。一部の実施例では、第2温度は、40~70℃のうちのいずれかの値であってもよい。好ましくは、第2温度は、43~68℃のうちのいずれかの値であってもよい。好ましくは、第2温度は、46~66℃のうちのいずれかの値であってもよい。好ましくは、第2温度は、48~64℃のうちのいずれかの値であってもよい。好ましくは、第2温度は、50~62℃のうちのいずれかの値であってもよい。好ましくは、第2温度は、52~60℃のうちのいずれかの値であってもよい。好ましくは、第2温度は、54~58℃のうちのいずれかの値であってもよい。好ましくは、第2温度は40℃であってもよい。好ましくは、第2温度は45℃であってもよい。好ましくは、第2温度は50℃であってもよい。好ましくは、第2温度は55℃であってもよい。好ましくは、第2温度は60℃であってもよい。好ましくは、第2温度は65℃であってもよい。より好ましくは、第2温度は70℃であってもよい。一部の実施例では、第2反応溝を加熱して第2反応溝内の反応温度を第2温度に維持してもよい。第2反応溝の加熱方法は、電気加熱、蒸気加熱、熱媒体油循環加熱または遠赤外線加熱を含んでもよいが、本発明においてこれらに限定されない。第2温度が従来技術の結晶温度よりも高いため、結晶化しやすくて結晶粒の大きい結晶を得る。
【0103】
一部の実施例では、保護ガスは、窒素ガスまたは不活性ガス(例えば、ヘリウム、ネオンガスまたはアルゴンガス)を含んでもよい。
【0104】
ステップ220:第1濾液、錯化剤および第2アルカリ溶液をそれぞれ適宜な流速で第2反応溝内に吸入し、第3時間反応させた後に第2反応溝から溢れ出させる。なお、第3時間内に、前記反応を第2温度で安定に行うよう維持するとともに、第2アルカリ溶液の流速を調整して前記反応を第1pH範囲で安定に行う。
【0105】
第1濾液、錯化剤および第2アルカリ溶液の流速は、製造プロセス要件によって設定されてもよく、適宜な流速を設定して第1濾液、錯化剤および第2アルカリ溶液を第3時間反応させた後に第2反応溝から溢れ出させる。例えば、第2反応溝は50L、第1濾液の流速は40~300mL/min、錯化剤の流速は第1濾液の流速によって比率で設置され(例えば、錯化剤の流速は1~50mL/minであってもよい)、第2アルカリ溶液の流速は反応を第1pH範囲または測定誤差範囲内で安定に行うことで制御される。一部の実施例では、錯化剤は、アンモニア水、シュウ酸、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)またはクエン酸を含んでもよい。錯化剤は、第1濾液におけるニッケルイオン、コバルトイオンおよびマンガンイオンと共に錯化物を形成し、形成された沈殿の結晶粒の粒度をより均一化し、濾過分離を容易にするように作用する。
【0106】
一部の実施例では、第2アルカリ溶液は、第1アルカリ溶液と同じである。例えば、第1アルカリ溶液は水酸化リチウム溶液であり、第2アルカリ溶液も水酸化リチウムである。第1濾液および錯化剤を第2反応溝に吸入する場合、第1濾液のフィード管および錯化剤のフィード管をそれぞれ第1反応溝の底部に突出させる。一部の実施例では、第1濾液のフィード管および錯化剤のフィード管は、同じであってもよい、2つであってもよい。第2反応溝への第2アルカリ溶液の吸入は、第2アルカリ溶液のフィード管を第2反応溝の底部に突出させることであってもよい。図8に示すように、第1濾液、錯化剤および第2アルカリ溶液は、それぞれフィードポンプA、フィードポンプBおよびフィードポンプC(未図示)によって反応溝(例えば、第2反応溝)に吸入され、フィード管A、フィード管Bおよびフィード管C(未図示)は反応溝の底部に挿入される。一部の実施例では、第2反応溝は、第2反応溝内の第1濾液、錯化剤および第2アルカリ溶液を攪拌するための攪拌モジュールを含んでもよい。
【0107】
一部の実施例では、第1pH範囲は、pH=10.5~11.8であってもよい。好ましくは、第1pH範囲は、pH=10.6~11.7であってもよい。好ましくは、第1pH範囲は、PH=10.7~11.6であってもよい。好ましくは、第1pH範囲は、pH=10.8~11.5であってもよい。好ましくは、第1pH範囲は、pH=10.9~11.4であってもよい。好ましくは、第1pH範囲は、pH=11.0~11.3であってもよい。より好ましくは、第1pH範囲は、pH=11.1~11.2であってもよい。一部の実施例では、溶液のpHを第1pH範囲に安定させることは、溶液のpHが常に第1pH範囲内のある値であってもいし、第1pH範囲内に変動してもよい。例えば、第1pH範囲が10.8~11.5であると、溶液のpH値は、10.8、10.9、11.0、11.1、11.2、11.3、11.4、11.5であるか、または10.8~11.5の範囲内に変動する場合、いずれも当該溶液のpHを第1pH範囲に安定させるとみなされる。第2反応溝内に第2アルカリ溶液を吸入する場合、pH計で溶液のpH値をリアルタイムに測定して第2アルカリ溶液の吸入速度を制御することで、溶液のpHを第1pH範囲または測定誤差範囲(pH範囲の測定誤差許容範囲が±0.05であり、すなわち、第1pH範囲がpH=10.45~11.85であってもよい)内に安定させる。例えば、第1pH範囲はpH=10.7~11.6である必要があり、第2アルカリ溶液の流速が80ml/minの場合に溶液のpHを10.7よりも低くすると、第2アルカリ溶液の流速を適切に上げて溶液のpHをpH=10.7~11.6の範囲内に上昇させる必要があり、一方、第2アルカリ溶液の流速が200ml/minの場合に溶液のpHを11.6超えにすると、第2アルカリ溶液の流速を適切に下げて溶液のpHをpH=10.7~11.6の範囲内に低下させる必要がある。
【0108】
一部の実施例では、第3時間は2~10hであってもよい。好ましくは、第3時間は2.5~9hであってもよい。好ましくは、第3時間は3~8hであってもよい。好ましくは、第3時間は4.0~7.0hであってもよい。好ましくは、第3時間は4.5~6.5hであってもよい。好ましくは、第3時間は5.0~6.0hであってもよい。好ましくは、第3時間は5.3~5.7hであってもよい。好ましくは、第3時間は3hであってもよい。好ましくは、第3時間は4hであってもよい。好ましくは、第3時間は5hであってもよい。好ましくは、第3時間は6hであってもよい。好ましくは、第3時間は7hであってもよい。より好ましくは、第3時間は8hであってもよい。第2反応溝の容積および溢出口の位置(例えば、溢出口は、第2反応溝の中部より上方の位置に設置される)を設置することで、反応材料を第2反応溝において3~8h充分に反応させ、その後、第2反応溝から第2エージング溝に溢れ出させる。
【0109】
第2反応溝内に第1濾液、錯化剤および第2アルカリ溶液を連続に吸入して連続に反応させるとともに、上記の混合物を第2反応溝内に2~10h停滞させて充分に反応、沈殿させ、これにより、第1濾液の連続処理を行うことができる。
【0110】
ステップ230:第2反応溝から溢れ出た混合物をエージングさせ、エージング温度を第2温度に維持するとともに第4時間エージングさせる。
【0111】
このエージング工程は、第2エージング溝内に行われてもよい。一部の実施例では、第2エージング溝を加熱して第2エージング溝内のエージング温度を第2温度に維持してもよい。第2エージング溝の加熱方法は、電気加熱、蒸気加熱、熱媒体油循環加熱または遠赤外線加熱を含んでもよいが、本発明においてこれらに限定されない。第2温度に関する詳細な内容については、ステップ210の説明を参照可能であるので、ここで詳細な説明を省略する。一部の実施例では、第4時間は0.5~2hであってもよい。好ましくは、第4時間は0.8~1.8hであってもよい。好ましくは、第4時間は1.0~1.6hであってもよい。好ましくは、第4時間は1.2~1.4hであってもよい。好ましくは、第4時間は0.5hであってもよい。好ましくは、第4時間は1hであってもよい。好ましくは、第4時間は1.5hであってもよい。より好ましくは、第4時間は2hであってもよい。
【0112】
充分に反応した混合物を第4時間エージングさせることで、反応した混合物における沈殿結晶の結晶粒成長を促進させるとともに、その粒径の分布をより均一にする。
【0113】
ステップ240:その後、第2分離工程を行って目標物質沈殿および第2濾液を得る。なお、第2濾液内には、リチウムイオンが含まれる。
【0114】
一部の実施例では、エージングした混合物を冷却させ、冷却後の混合物に第2分離工程を行って目標物質沈殿および第2濾液を得てもよい。具体的には、第2分離工程は、固液分離工程であってもよい。例えば、第2分離方法は、濾過、重力沈降、遠心沈降、加圧濾過などを含んでもよい。一部の実施例では、目標物質沈殿は、ニッケルイオン、コバルトイオン、マンガンイオンのうちの一種または二種以上の沈殿を含んでもよい。一部の実施例では、第2濾液は、少なくともリチウムイオンを含んでもよい。
【0115】
上記の方法により、目標物質(ニッケルイオン、コバルトイオン、マンガンイオンのうちの一種または二種以上)を沈殿させることで、リチウムイオンを溶液の形態で分離してリチウムを回収する目的を達成する。
【0116】
以下、実施例3および実施例4により、リチウム電池の廃棄正極材料の回収工程におけるリチウムイオンの回収方法について、詳しく説明する。なお、実施例3および実施例4の反応条件、反応材料および反応材料の使用量は、リチウム電池の廃棄正極材料の回収工程におけるリチウムイオンの回収方法を説明するためのものにすぎず、本発明の保護範囲を限定するものではない。なお、実施例3は、図2のリチウムの回収方法を用いる実施例である。実施例4は、第1濾液からリチウムの回収を量産処理する実施例である。実施例4は、実施例3の対照組である。
実施例3
【0117】
ステップ1:50Lの第2反応溝内に10Lの脱イオン水、300mLの23.5%のアンモニア水を第2ボトム液として添加し、反応温度を50℃に維持し、窒素ガスを保護ガスとして導入した。
【0118】
ステップ2:実施例2で得られた第1濾液を60mL/minの流速で第2反応溝に吸入し、12%のアンモニア水を5mL/minの流速で第2反応溝に吸入した。4mol/Lの水酸化リチウム溶液を吸入する流速をPH計によってリアルタイムに制御し、水酸化リチウム溶液の流速を制御して混合物のpH値を10.7~11.2にした。5h充分に反応させた後、混合物を第2反応溝のオーバーフロー口から溢れ出させて第2エージング溝に流入させた。
【0119】
ステップ3:第2エージング溝を加熱してエージング温度を50℃に一定に維持し、混合物を第2エージング溝において1hエージングさせた。
【0120】
ステップ4:エージングした混合物を遠心機によって濾過し、ケーキを洗浄した。なお、100gの沈殿を洗浄するための使用水量は、1.12Lであった。
【0121】
ステップ5:濾過されたケーキを収集し、スラグをICP、XRDおよびSEM測定した。ICP測定されたリチウム含有量は、0.02%であり、ケーキが洗浄されたとみなされる。
実施例4
【0122】
ステップ1:室温で50Lの第2反応溝内に30Lの第1濾液を添加した。第1濾液は、実施例2から得られるものであった。
【0123】
ステップ2:吸入される4mol/Lの水酸化リチウム溶液の添加量をpH計によって制御し、pH値が10.5になると添加を停止した。混合物を1h安定に反応させた。
【0124】
ステップ3:反応した混合物を遠心機によって濾過し、ケーキを洗浄した。なお、100gの沈殿を洗浄するための使用水量は、2.32Lであった。
【0125】
ステップ4:濾過されたケーキを収集し、スラグをICP、XRD測定した。ICP測定されたリチウム含有量は、0.03%であり、ケーキが洗浄されたとみなされる。
【0126】
実施例3および実施例4のケーキ洗浄の使用水量によれば、以下のことがわかった。100gの沈殿を洗浄する場合、実施例3の使用水量がより少なく、実施例3の沈殿の結晶粒が実施例4よりも大きいことを表す。実施例3では、ニッケルコバルトマンガンの沈殿結晶は、1つの一定のpH範囲(例えば、10.7~11.2)で行われるため、ニッケルコバルトマンガン水酸化物の共沈を実現できる。水酸化ニッケルの沈殿開始のpH値が7.2、水酸化コバルトの沈殿開始のpH値が7.15、水酸化マンガンの沈殿開始のpH値が8.1、完全に沈殿する際のpH値も異なるため、実施例4では、ニッケルコバルトマンガン沈殿が異なるpH範囲(pH値が10.5になるまで水酸化リチウム溶液を継続的に添加する)で結晶をそれぞれ沈殿させ、ニッケルコバルトマンガン水酸化物の共沈を形成することができない。そのため、実施例3では、pHを10.7~11.2範囲内に制御することで、ニッケルコバルトマンガン水酸化物の共沈の生成に寄与し、実施例4の沈殿の結晶粒がよりも大きい。
【0127】
実施例3および実施例4のスラグのリチウム含有量の測定結果によれば、以下のことがわかった。実施例3のケーキのリチウム含有量がより少なく、実施例4のケーキのリチウム含有量が十分に少なくても、洗浄できたとみなされるが、実施例4の100gの沈殿を洗浄するための使用水量が2.32L、実施例3の100gの沈殿を洗浄するための使用水量が1.12Lであり、実施例4の使用水量が実施例3の使用水量の2倍である。また、実施例4の洗浄時間はより長い。
【0128】
図5は、本発明の実施例3および実施例4のスラグのXRDスペクトルである。図5によれば、実施例3のスラグサンプルは、2θが20°、35°および40°の場合に顕著な回折ピークを有し、実施例4の対応箇所の回折ピークより大きいことがわかった。それは、実施例3のニッケルコバルトマンガン水酸化物の、500℃での脱水素後の結晶度が実施例4よりも優れていることを表す。実施例3の方法でリチウムイオンを回収した後に得られたニッケルコバルトマンガン沈殿の結晶粒がより大きく、ニッケルコバルトマンガンの共沈を実現し、沈殿結晶粒の構造が相対的に一致し、濾過時にリチウムイオンをよりよく分離、回収することに寄与する。
【0129】
図6は、本発明の第3実施例のスラグのSEM画像である。実施例4の沈殿サンプルは乾燥された後に明らかに凝結し、結晶粒が微細な結晶粒であり、ゲル状ものに形成されると判断される。実施例3の沈殿は乾燥された後、自然に粗くて砂状になり、SEM画像から、その二次結晶粒構造が良好であることがわかった。
【0130】
実施例3と実施例4の比較結果としては以下の通りである。実施例3では、アンモニア水を錯化剤として添加し、反応温度を50℃に維持し、溶液のpHを10.7~11.2に維持するとともに、5h充分に反応させ、1hエージングさせてリチウムイオンを回収する。実施例4では、室温において、溶液pHを10.5にし、反応材料を一度に添加して1h反応させてリチウムイオンを回収する。実施例3では、実施例4と類似する溶液pH値を用い、反応温度に比較的に高くするとともに、アンモニア水を錯化剤として添加し、対象イオンと共に錯化物を形成することで、溶解と沈殿が平衡し、フィード速度を制御し、フィード時間と反応時間を延ばし、エージング時間を増やすという共同作用に達し、生成する沈殿の結晶粒を大きくし、結晶粒構造を相対的に一致させ、沈殿を容易に濾過、洗浄し、リチウムイオンの回収率を向上させる。
【0131】
図3は、本発明の別の一部の実施例に係るリチウム電池の廃棄正極材料の回収工程における不純物除去方法300の一例を示すフローチャートである。
【0132】
リチウム電池の廃棄正極材料の回収工程における不純物除去工程は、反応溝またはエージング溝において行われてもよい。図8に示すように、第1溶液およびフッ素含有沈殿剤をそれぞれフィードポンプAおよびフィードポンプBによって反応溝内に吸入し、一定期間反応させた後に反応溝の排出管Aによってエージング溝へオーバーフローさせてエージングさせる。なお、反応溝は、第3反応溝であり、エージング溝は、第3エージング溝であってもよい。
【0133】
ステップ310:目標物質沈殿を溶解して第1溶液を得た。
【0134】
一部の実施例では、目標物質沈殿に浸出剤を添加して溶解してもよい。具体的には、目標物質沈殿に浸出剤を添加し、pHが第3範囲になるまで溶解し、目標物質を含有する溶液を得てもよい。浸出剤は、少なくとも、還元剤、第1酸および水を含む。浸出剤に関するより詳細な内容については、上記の説明を参照可能であるので、ここでその詳細な説明を省略する。一部の実施例では、第3範囲は、pH=0~4であってもよい。好ましくは、第3範囲は、pH=0.5~3.5であってもよい。好ましくは、第3範囲は、pH=1.0~3.5であってもよい。好ましくは、第3範囲は、pH=1.5~3.0であってもよい。好ましくは、第3範囲は、pH=2.0~2.5であってもよい。一部の実施例では、目標物質を含有する溶液は、ニッケルイオン、コバルトイオン、マンガンイオンのうちの一種または二種以上を含む溶液であってもよい。
【0135】
一部の実施例では、目標物質を含有する溶液に第4アルカリ溶液を添加して溶液のpHを調整してよもよい。具体的には、pHが第4範囲になるまで目標物質を含有する溶液に適量の第4アルカリ溶液を添加し、第1溶液を得てもよい。一部の実施例では、第4アルカリ溶液は、水酸化ナトリウム溶液であってもよい。第4アルカリ溶液の添加量は、溶液のpHによって定められる。第4アルカリ溶液を添加する場合、溶液のpHが第4範囲内になると第4アルカリ溶液の添加を停止するよう制御してもよい。一部の実施例では、第4範囲は、pH=4.5~6.5であってもよい。好ましくは、第4範囲は、pH=4.8~6.3であってもよい。好ましくは、第4範囲は、pH=5.0~6.0であってもよい。好ましくは、第4範囲は、pH=5.2~5.8であってもよい。好ましくは、第4範囲は、pH=5.4~5.6であってもよい。第1溶液は、ニッケルイオン、コバルトイオン、マンガンイオンのうちの一種または二種以上を含む溶液であってもよい。
【0136】
ステップ320:第3反応溝内の反応温度を、室温よりも高い第3温度に維持した。
【0137】
第3反応溝の容積は、製造プロセス要件または反応材料の供給量によって設定されてもよい。例えば、第3反応溝の容積は、50L、80Lまたは100Lであってもよい。
【0138】
第3温度は、室温よりも高くてもよい。一部の実施例では、第3温度は、50~90℃のうちのいずれかの値であってもよい。好ましくは、第3温度は、52~88℃のうちのいずれかの値であってもよい。好ましくは、第3温度は、55~86℃のうちのいずれかの値であってもよい。好ましくは、第3温度は、58~83℃のうちのいずれかの値であってもよい。好ましくは、第3温度は、60~80℃のうちのいずれかの値であってもよい。好ましくは、第3温度は、62~78℃のうちのいずれかの値であってもよい。好ましくは、第3温度は、65~76℃のうちのいずれかの値であってもよい。好ましくは、第3温度は、67~73℃のうちのいずれかの値であってもよい。好ましくは、第3温度は、69~71℃のうちのいずれかの値であってもよい。好ましくは、第3温度は50℃であってもよい。好ましくは、第3温度は55℃であってもよい。好ましくは、第3温度は、60℃であってもよい。好ましくは、第3温度は65℃であってもよい。好ましくは、第3温度は70℃であってもよい。好ましくは、第3温度は75℃であってもよい。好ましくは、第3温度は80℃であってもよい。好ましくは、第3温度は85℃であってもよい。より好ましくは、第3温度は90℃であってもよい。一部の実施例では、第3反応溝を加熱して第3反応溝内の反応温度を第3温度に維持してもよい。第3反応溝の加熱方法は、電気加熱、蒸気加熱、熱媒体油循環加熱または遠赤外線加熱を含んでもよいが、本発明においてこれらに限定されない。第3温度が従来技術の結晶温度よりも高いため、結晶化しやすくて結晶粒の大きい結晶を得る。
【0139】
ステップ330:第1溶液およびフッ素含有沈殿剤をそれぞれ適宜な流速で第3反応溝内に吸入して第5時間反応させた後に第3反応溝から溢れ出させる。なお、第5時間内に、前記反応を第3温度で安定に行うよう維持するとともに、フッ素含有沈殿剤の流速を調整して第3反応溝における反応物のフッ素イオン濃度を第1濃度範囲に安定させる。
【0140】
第1溶液を吸入する前に、第3反応溝に適量のフッ素含有沈殿剤をボトム液として添加してもよい。一部の実施例では、反応中の反応溝内のフッ素イオンの濃度は、0.01~0.10mol/Lであってもよい。好ましくは、フッ素イオンの濃度は、0.012~0.09mol/Lであってもよい。好ましくは、フッ素イオンの濃度は、0.013~0.06mol/Lであってもよい。好ましくは、フッ素イオンの濃度は、0.014~0.04mol/Lであってもよい。好ましくは、フッ素イオンの濃度は、0.015~0.02mol/Lであってもよい。
【0141】
第1溶液およびフッ素含有沈殿剤の流速は、製造プロセス要件によって設定されてもよく、適宜な流速を設定して第1溶液とフッ素含有沈殿剤を第5時間反応させた後に第1反応溝から溢れ出させる。例えば、一部の実施例では、第3反応溝は50L、第1溶液の流速は40~300mL/min、フッ素含有沈殿剤の流速は、第3反応溝における反応物のフッ素イオン濃度を第1濃度範囲または測定誤差範囲(例えば、フッ素イオンの濃度範囲の測定誤差許容範囲が±0.0005mol/L、すなわち、フッ素イオンの濃度範囲が0.0095~0.1005mol/Lであってもよい)内にすることで制御され、例えば、フッ素含有沈殿剤の流速は、5~100mL/minである。第1溶液を第3反応溝に吸入する場合、第1溶液のフィード管を第3反応溝の底部に突出させてもよい。第3反応溝内にフッ素含有沈殿剤を吸入する場合、フッ素含有沈殿剤のフィード管を第3反応溝の底部に突出させてもよい。図8に示すように、第1溶液およびフッ素含有沈殿剤を、それぞれフィードポンプAおよびフィードポンプBによって反応溝(すなわち、第3反応溝)に吸入し、フィード管Aおよびフィード管Bは、反応溝の底部に挿入される。一部の実施例では、第3反応溝は、第3反応溝内の第1溶液およびフッ素含有沈殿剤を攪拌するための攪拌モジュールを含んでもよい。
【0142】
一部の実施例では、第1濃度範囲は、フッ素イオン濃度が0.005~0.1mol/Lであってもよい。好ましくは、第1濃度範囲は、フッ素イオン濃度が0.010~0.099mol/Lであってもよい。好ましくは、第1濃度範囲は、フッ素イオン濃度が0.020~0.095mol/Lであってもよい。好ましくは、第1濃度範囲は、フッ素イオン濃度が0.030~0.090mol/Lであってもよい。好ましくは、第1濃度範囲は、フッ素イオン濃度が0.040~0.080mol/Lであってもよい。好ましくは、第1濃度範囲は、フッ素イオン濃度が0.050~0.070mol/Lであってもよい。より好ましくは、第1濃度範囲は、フッ素イオン濃度が0.055~0.060mol/Lであってもよい。一部の実施例では、溶液のフッ素イオン濃度を第1濃度範囲に安定させることは、溶液のフッ素イオン濃度が常に第1濃度範囲内のある値であってもよいし、第1濃度範囲内に変動してもよい。例えば、第1濃度範囲が0.01~0.02mol/Lであると、溶液のフッ素イオン濃度は0.01mol/L、0.011mol/L、0.012mol/L、0.013mol/L、0.014mol/L、0.015mol/L、0.016mol/L、0.017mol/L、0.018mol/L、0.019mol/Lであるか、または0.01~0.02mol/Lの範囲内に変動する場合、いずれも当該溶液のフッ素イオン濃度を第1濃度範囲に安定させるとみなされる。第3反応溝にフッ素含有沈殿剤を吸入する場合、フッ素イオン計により、溶液のフッ素イオン濃度をリアルタイムに測定してフッ素含有沈殿剤の吸入速度を制御することで、溶液のフッ素イオン濃度を第1濃度範囲または測定誤差範囲(例えば、フッ素イオンの濃度範囲の測定誤差許容範囲が±0.0005mol/Lであり、すなわち、フッ素イオンの濃度範囲は0.0095~0.1005mol/Lであってもよい)内に維持する。フッ素含有沈殿剤の吸入速度は、すなわち、第5流速である。例えば、第1濃度範囲が0.010~0.015mol/L、フッ素含有沈殿剤の流速が10ml/minの場合の溶液のフッ素イオン濃度が0.010mol/Lよりも低いと、フッ素含有沈殿剤の流速を適切に上げて溶液のフッ素イオン濃度を0.010~0.015mol/Lの範囲内に上げる必要があり、一方、フッ素含有沈殿剤の流速が40ml/minの場合の溶液のフッ素イオン濃度が0.015mol/Lを超えると、フッ素含有沈殿剤の流速を適切に下げて溶液のフッ素イオン濃度を0.010~0.015mol/Lの範囲内に下げる必要がある。
【0143】
一部の実施例では、第5時間は2~10hであってもよい。好ましくは、第5時間は2.5~8.0hであってもよい。好ましくは、第5時間は3.0~7.0hであってもよい。好ましくは、第5時間は4.5~6.5hであってもよい。好ましくは、第5時間は5.0~6.0hであってもよい。好ましくは、第5時間は5.3~5.7hであってもよい。好ましくは、第5時間は3hであってもよい。好ましくは、第5時間は4hであってもよい。好ましくは、第5時間は5hであってもよい。好ましくは、第5時間は6hであってもよい。好ましくは、第5時間は7hであってもよい。より好ましくは、第5時間は8hであってもよい。第3反応溝の容積および溢出口の位置(例えば、溢出口は、第3反応溝の中部より上方の位置に設置される)を設置することで、反応材料を第3反応溝において3~8h充分に反応させ、その後、第3反応溝から第1エージング溝に溢れ出させる。
【0144】
第3反応溝内に第1溶液およびフッ素含有沈殿剤を連続に吸入して連続に反応させるとともに、上記の混合物を第3反応溝内に2~10h停滞させて充分に反応、沈殿させ、これにより、第1溶液の連続処理を行うことができる。
【0145】
ステップ340:第3反応溝から溢れ出た混合物をエージングさせ、エージング温度を第3温度に維持するとともに第6時間エージングさせる。
【0146】
このエージング工程は、第3エージング溝内において行われてもよい。一部の実施例では、第3エージング溝を加熱して第3エージング溝内のエージング温度を第3温度に維持してもよい。第3エージング溝の加熱方法は、電気加熱、蒸気加熱、熱媒体油循環加熱または遠赤外線加熱を含んでもよいが、本発明においてこれらに限定されない。第3温度に関する詳細な内容については、ステップ320の説明を参照可能であるので、ここで詳細な説明を省略する。
【0147】
一部の実施例では、第6時間は0.5~2hであってもよい。好ましくは、第6時間は0.8~1.8hであってもよい。好ましくは、第6時間は1.0~1.6hであってもよい。好ましくは、第6時間は1.2~1.4hであってもよい。好ましくは、第6時間は0.5hであってもよい。好ましくは、第6時間は1hであってもよい。好ましくは、第6時間は1.5hであってもよい。より好ましくは、第6時間は2hであってもよい。
【0148】
充分に反応した混合物を第6時間エージングさせることで、反応した混合物における沈殿結晶の結晶粒成長を促進させるとともに、その粒径の分布をより均一にする。
【0149】
ステップ350:エージングした混合物を第7時間静置した後、第3分離工程を行って第2不純物および目標溶液を得る。
【0150】
この静置工程は、第2バッファタンクにおいて行われ、エージングした混合物を第2バッファタンクに吸入して静置させる。一部の実施例では、第7時間は0.5~2hであってもよい。好ましくは、第7時間は0.8~1.8hであってもよい。好ましくは、第7時間は1.0~1.6hであってもよい。好ましくは、第7時間は1.2~1.4hであってもよい。好ましくは、第7時間は0.5hであってもよい。好ましくは、第7時間は1hであってもよい。好ましくは、第7時間は1.5hであってもよい。より好ましくは、第7時間は2hであってもよい。
【0151】
一部の実施例では、静置後の混合物に第3分離工程を行って第2不純物および目標溶液を得てもよい。具体的には、第3分離工程は、固液分離工程であってもよい。例えば、第3分離方法は、濾過、重力沈降、遠心沈降、加圧濾過などを含んでもよい。一部の実施例では、第2不純物は、少なくとも、フッ化カルシウム、フッ化マグネシウム、フッ化鉛のうちの一種または二種以上を含んでもよい。一部の実施例では、目標溶液は、ニッケルイオン、コバルトイオン、マンガンイオンのうちの一種または二種以上を含む溶液であってもよい。一部の実施例では、エージングした混合物を静置させることなく、エージングした混合物にそのまま第3分離工程を行ってもよい。
【0152】
一部の実施例では、目標溶液にさらに処理を行って前駆体沈殿を得てもよい。具体的には、目標溶液に第3アルカリ溶液を添加して前駆体沈殿を得てもよい。一部の実施例では、第3アルカリ溶液は、第4アルカリ溶液と同じであってもよい。例えば、第3アルカリ溶液は、水酸化ナトリウム溶液であってもよい。一部の実施例では、前駆体沈殿および水酸化リチウム結晶または炭酸リチウム結晶にさらに焼結処理を行ってリチウム電池正極材料を得てもよい。
【0153】
上記の方法では、第1溶液およびフッ素含有沈殿剤の第3反応溝への吸入流速、反応温度、反応時間およびエージング時間を制御することで、結晶の結晶粒を大結晶粒に充分に成長させ、第3分離工程を容易に行い、第3分離工程における洗浄の使用水量および洗浄時間を減らすとともに、洗浄工程におけるニッケルコバルトマンガンイオンの無駄を減少させ、さらに、ニッケルコバルトマンガンの回収率を向上させることができる。
【0154】
以下、実施例5および実施例6により、リチウム電池正極材料の回収工程におけるカルシウムイオン、マグネシウムイオンおよび鉛イオンの除去方法を詳しく説明する。なお、実施例5および実施例6の反応条件、反応材料および反応材料の使用量は、リチウム電池の廃棄正極材料の回収工程におけるカルシウムイオン、マグネシウムイオンおよび鉛イオンの除去方法を説明するためのものにすぎず、本発明の保護範囲を限定するものではない。なお、実施例5は、図3の不純物除去方法を用いる実施例である。実施例6は、目標物質沈殿における不純物を量産処理する不純物除去方法の実施例である。実施例6は、実施例5の対照組である。
実施例5
【0155】
ステップ1:ニッケル、コバルト、マンガンイオンを含有する目標物質沈殿用硫酸および過酸化水素水を溶解し、溶液のpH値を3.2に制御して反応させ、目標物質を含有する溶液を得て、目標物質を含有する溶液内にNaOH溶液を添加して混合物のpH値を5.2にし、第1溶液を得た。
【0156】
ステップ2:pH値が5.2の第1溶液を蠕動ポンプによって50Lの第3反応溝に添加し、流速を100mL/minに制御し、第3反応溝内の反応温度を90℃に制御するとともに、0.96mol/LのNaF溶液を20mL/minの流速で第3反応溝に添加し、30minごとにサンプルを採取し、反応液のフッ素イオンの含有量を測定し、測定値によってNaF溶液の流速を調節してフッ素イオンの含有量を0.01mol/L~0.015mol/Lに制御した。5h充分に反応させた後、第3反応溝のオーバーフロー口から混合物を溢れ出させて第3エージング溝に流入させた。この工程では、合計で30Lの第1溶液を吸入した。
【0157】
ステップ3:第3エージング溝を加熱してエージング温度を90℃に一定に維持し、混合物を第3エージング溝内において1hエージングさせる。
【0158】
ステップ4:混合物を第3エージング溝から第3バッファタンクに吸入して1h静置し、上清が清澄し、浮遊物がないことが観察された。
【0159】
ステップ5:エージングした混合物をフィルタープレスによって濾過し、ウェットスラグを収集した後にラボで洗浄を行った。
【0160】
ステップ6:濾液を収集し、得られた濾液の容積が41.5Lであった。
【0161】
ステップ7:第1溶液、濾液およびスラグをICP測定し、スラグをSEM測定した。
実施例6
【0162】
ステップ1:ニッケル、コバルト、マンガンイオンを含有する目標物質沈殿用濃硫酸および過酸化水素水を溶解し、溶液のpH値を3.2に制御して反応させ、目標物質を含有する溶液を得て、目標物質を含有する溶液内にNaOH溶液を添加して混合物のpH値を5.2にし、第1溶液を得た。
【0163】
ステップ2:pH値が5.2の第1溶液40Lを50Lの第3反応溝に一度に添加し、第3反応溝内の反応温度を90℃に安定させた。
【0164】
ステップ3:81gのNaF固体を添加して1時間攪拌し、加熱を停止して室温まで自然冷却させた。
【0165】
ステップ4:24h静置し、上清を観察し、表面に白い浮遊物があって沈殿できなかった。
【0166】
ステップ5:エージングした混合物をフィルタープレスによって濾過し、ウェットスラグを収集した後にラボで洗浄を行った。
【0167】
ステップ6:濾液を収集し、得られた濾液の容積が39.5Lであった。
【0168】
ステップ7:第1溶液、濾液およびスラグをICP測定し、スラグをSEM測定した。
【0169】
実施例5および実施例6のICP測定結果により、表2のデータを得ることができる。
<表2>ICP分析結果
【0170】
表2から実施例5および実施例6のカルシウムイオン除去率をさらに計算することができる。
【0171】
実施例5のカルシウムイオンの除去率:Ca除去率=(第1溶液のCa含有量×原液容積-濾液のCa含有量×濾液容積)/(原液のCa含有量×原液容積)=(294×30L-3.38×41.5L)/(294×30L)×100%=98.4%
【0172】
実施例6のカルシウムイオンの除去率:Ca除去率=(原液のCa含有量×原液容積-濾液のCa含有量×濾液容積)/(原液のCa含有量×原液容積)=(294×40L-21×39.5L)/(294×40L)=92.9%
【0173】
実施例5および実施例6のカルシウムオンの除去率の計算結果によれば、実施例5のカルシウムイオンの除去率が実施例6よりも高くて、実施例5の第1溶液のカルシウムイオンの除去効果がより優れたことがわかった。
【0174】
図7Aは、本発明の第5実施例のスラグのSEM画像である。図7Bは、本発明の第6実施例のスラグのSEM画像である。図7Aおよび図7Bによれば、実施例5のスラグが鮮明な立方体の結晶構造であるが、実施例6のスラグの結晶粒が微細で結晶粒の構造を識別できないことがわかった。実施例6の方法に比べて、実施例5の方法により、第1濾液から不純物を除去した後に得られた沈殿の結晶粒がより大きい。
【0175】
実施例5と実施例6の比較結果としては以下の通りである。実施例5では、反応温度を90℃に維持し、フッ素イオンの含有量を0.01mol/L~0.015mol/Lに制御するとともに、5h充分に反応し、1hエージングさせ、1h静置することで、第1溶液に不純物除去処理を行った。実施例6では、90℃で反応材料を一度に添加して1h反応させ、24h静置させることで、第1溶液に不純物除去処理を行った。この比較結果によれば、実施例5では、実施例6と同じ反応温度を用い、第1溶液を添加する供給速度およびフッ素イオンの含有量、長い反応時間、およびエージング時間を制御する共同作用により、生成された沈殿の結晶粒をより大きくし、沈殿を容易に濾過、洗浄し、カルシウムイオンの除去率をより向上させ、不純物除去効果がより優れた。
【0176】
なお、上記の図1図3の不純物除去方法およびリチウム回収の方法は、単独に実施されてもよいし、同時に実施されてもよい。実際の不純物除去工程は、不純物の種類によって定められる。例えば、リチウム電池の廃棄正極材料に含まれる不純物が鉄イオン、アルミニウムイオン、銅イオンのうちの一種または二種以上のみである場合、図1の不純物除去方法のみを実施すれば、リチウム電池の廃棄正極材料から不純物を除去することができる。また、例えば、リチウム電池の廃棄正極材料に含まれる不純物が鉄イオン、アルミニウムイオン、銅イオンのうちの一種または二種以上を有するほか、カルシウムイオン、マグネシウムイオン、鉛イオンのうちの一種または二種以上も含有する場合、図1図3の不純物除去方法およびリチウム回収方法を実施すれば、リチウム電池の廃棄正極材料から不純物を除去することができる。さらに、例えば、リチウム電池の廃棄正極材料に含まれる不純物がカルシウムイオン、マグネシウムイオン、鉛イオンのうちの一種または二種以上のみである場合、図2および図3の不純物除去方法を実施すれば、リチウム電池の廃棄正極材料から不純物を除去することができる。
【0177】
本発明の実施例による有益な効果は、以下の効果を含むが、これらに限定されない。(1)室温よりも高い反応温度および一定のpHで沈殿反応を行うことで、粒径が大きく、結晶度が高く、含水率が低い沈殿を得ることができ、沈殿濾過および洗浄工程をより効率よくかつ容易、迅速に行い、洗浄工程における使用水量を減らし、リチウム電池の廃棄正極材料の回収工程におけるニッケルコバルトマンガンの回収率を向上させる。(2)リチウム電池の正極材料前駆体沈殿を調製する前にリチウムイオンを除去することで、リチウム回収の目的を果たすことができるとともに、後続の不純物除去方法工程における反応パラメータの制御への影響を抑え、ニッケルコバルトマンガンの回収率を向上させる。なお、有益な効果は、実施例によって異なることがあり、異なる実施例によって得られる可能性のある有益な効果は、上記の効果の一種または二種以上の組み合わせであってもよいし、得られる可能性のある他の有益な効果であってもよい。
【0178】
なお、上記の実施例は、本発明の技術案を説明するためにのみ使用され、それらを限定するものではない。当業者であれば、技術案の要旨及び範囲から逸脱しなければ、本発明の技術案を修正または同等に代替することは、本発明の範囲内に包含されるものであることが理解できる。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5
図6
図7A
図7B
図8
【手続補正書】
【提出日】2023-07-25
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リチウム電池の廃棄正極材料の回収工程における不純物除去および処理方法であって、
室温よりも高い第1温度および一定の第1pH値の安定環境において、リチウム電池の廃棄正極材料の浸出液および第1アルカリ溶液の流速を制御して鉄イオン、アルミニウムイオンおよび少なくとも一部の銅イオンを沈殿させて除去し、第1濾液を得る工程(1)と、
室温よりも高い第2温度および一定の第1pH範囲で、第1濾液、錯化剤および第2アルカリ溶液の流速を制御してリチウムイオンを除去し、リチウムイオンを含有する第2濾液を分離し、目標物質沈殿を得る工程(2)と、
前記目標物質沈殿を溶解して第1溶液を得る工程(3)と、
室温よりも高い第3温度および一定のフッ素イオン濃度で、前記第1溶液およびフッ素含有沈殿の流速を制御してカルシウムイオン、マグネシウムイオンおよび少なくとも一部の鉛イオンを沈殿させて除去し、目標溶液を得る工程(4)と、を含み、
前記不純物除去および処理方法は、連続操作可能な溢流反応槽において行われることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記室温よりも高い第1温度および一定の第1pH値の安定環境において、リチウム電池の廃棄正極材料の浸出液および第1アルカリ溶液の流速を制御して鉄イオン、アルミニウムイオンおよび少なくとも一部の銅イオンを沈殿させて除去し、第1濾液を得る工程は、
前記リチウム電池の廃棄正極材料の浸出液および第1アルカリ溶液を適宜な流速で第1反応溝内に吸入し、第1時間反応させた後に前記第1反応溝から溢れ出させ、その後に第1分離工程を行って前記鉄イオン、アルミニウムイオンおよび少なくとも一部の銅イオンを含有する沈殿および前記第1濾液を得る工程を含み、
前記第1時間内に、反応を前記第1温度で安定に行うよう維持するとともに、前記第1アルカリ溶液の流速を調整して前記反応を第1pH値で安定に行うことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
第1分離工程を行う前に、前記第1反応溝から溢れ出た混合物をエージングさせ、エージング温度を前記第1温度に維持するとともに第2次時間エージングさせる工程をさらに含むことを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記室温よりも高い第2温度および一定の第1pH範囲で、前記第1濾液、錯化剤および第2アルカリ溶液の流速を制御してリチウムイオンを除去し、リチウムイオンを含有する第2濾液を分離し、目標物質沈殿を得る工程は、
前記第1濾液、錯化剤および第2アルカリ溶液をそれぞれ適宜な流速で第2反応溝内に吸入して、第3時間反応させた後に前記第2反応溝から溢れ出させ、その後に第2分離工程を行って前記目標物質沈殿および前記リチウムイオンを含有する第2濾液を得る工程を含み、
前記第3時間内に、反応を前記第2温度で安定に行うよう維持するとともに、前記第2アルカリ溶液の流速を調整して前記反応を第1pH範囲で安定に行うことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項5】
第2分離工程を行う前に、前記第2反応溝から溢れ出た混合物をエージングさせ、エージング温度を前記第2温度に維持するとともに、第4時間エージングさせる工程をさらに含むことを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記目標物質沈殿を溶解して第1溶液を得る工程は、
前記目標物質沈殿に、還元剤、第1酸および水を少なくとも含む浸出剤を添加し、pHが第3範囲になるまで溶解し、目標物質を含有する溶液を得る工程と、
pHが第4範囲になるまで前記目標物質を含有する溶液に適量の第4アルカリ溶液を添加し、前記第1溶液を得る工程と、を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記室温よりも高い第3温度および一定のフッ素イオン濃度で、前記第1溶液およびフッ素含有沈殿剤の流速を制御してカルシウムイオン、マグネシウムイオンおよび少なくとも一部の鉛イオンを沈殿させて除去し、目標溶液を得る工程は、
前記第1溶液およびフッ素含有沈殿剤をそれぞれ適宜な流速で第3反応溝内に吸入し、第5時間反応させた後に前記第3反応溝から溢れ出させ、その後に第3分離工程を行って前記カルシウムイオン、マグネシウムイオンおよび少なくとも一部の鉛イオンを含有する沈殿および前記目標溶液を得る工程を含み、
前記第5時間内に、反応を前記第3温度で安定に行うよう維持するとともに、前記フッ素含有沈殿剤の流速を調整して、前記第3反応溝における反応物のフッ素イオンの濃度を第1濃度範囲に安定させることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項8】
第3分離工程を行う前に、
前記第3反応溝から溢れ出た混合物をエージングさせ、エージング温度を前記第3温度に維持するとともに、第6時間エージングさせる工程と、
エージングした混合物を第7時間静置する工程と、をさらに含むことを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記リチウム電池の廃棄正極材料の浸出液に沈殿処理を行う前に、
リチウム電池の廃棄正極材料に、還元剤、第1酸および水を少なくとも含む浸出剤を添加し、pHが第2範囲になるまで溶解し、その後に第4分離工程を行って第3不純物および前記リチウム電池の廃棄正極材料の浸出液を得る工程をさらに含むことを特徴とする請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記目標溶液に第3アルカリ溶液を添加して前駆体沈殿を得る工程をさらに含むことを特徴とする請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記第1pH値は、pH=5.5~6.7のうちのいずれかの値であり、または前記第1pHの範囲は、pH=10.5~11.8であることを特徴とする請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記第1温度は、50~90℃のうちのいずれかの値であり、前記第2温度は、40~70℃のうちのいずれかの値であり、または前記第3温度は、50~90℃のうちのいずれかの値であることを特徴とする請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記第1アルカリ溶液は、水酸化リチウムを含むことを特徴とする請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記第2アルカリ溶液は、水酸化リチウムを含むことを特徴とする請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記第3範囲は、pH=0~4であり、または前記第4範囲は、pH=4.5~6.5であることを特徴とする請求項6に記載の方法。
【国際調査報告】