(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-14
(54)【発明の名称】癌の診断、予後診断および療法に関連するバイオマーカーの新規ソースとしてのリボソームRNAの2’O-メチル化
(51)【国際特許分類】
C12Q 1/6869 20180101AFI20231207BHJP
A61P 35/00 20060101ALN20231207BHJP
A61K 45/00 20060101ALN20231207BHJP
【FI】
C12Q1/6869 Z
A61P35/00
A61K45/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023532671
(86)(22)【出願日】2021-11-29
(85)【翻訳文提出日】2023-07-21
(86)【国際出願番号】 EP2021083429
(87)【国際公開番号】W WO2022112578
(87)【国際公開日】2022-06-02
(32)【優先日】2020-11-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523197249
【氏名又は名称】サントル、レオン、ベラール
【氏名又は名称原語表記】CENTRE LEON BERARD
(71)【出願人】
【識別番号】594016872
【氏名又は名称】サントル、ナショナール、ド、ラ、ルシェルシュ、シアンティフィク、(セーエヌエルエス)
(71)【出願人】
【識別番号】507002516
【氏名又は名称】アンセルム(アンスティチュート・ナシオナル・ドゥ・ラ・サンテ・エ・ドゥ・ラ・ルシェルシュ・メディカル)
(71)【出願人】
【識別番号】511196870
【氏名又は名称】ユニベルシテ クロード ベルナール リヨン プルミエ
(74)【代理人】
【識別番号】110003421
【氏名又は名称】弁理士法人フィールズ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ジャン、ジャック、ディアーズ
(72)【発明者】
【氏名】ヴィルジニー、マルセル、テリエ
(72)【発明者】
【氏名】ジャニス、キエルバッサ
(72)【発明者】
【氏名】フレデリック、カテー
【テーマコード(参考)】
4B063
4C084
【Fターム(参考)】
4B063QA19
4B063QQ02
4B063QQ03
4B063QQ54
4C084AA17
4C084NA20
4C084ZB26
(57)【要約】
本発明は、癌診断、予後診断および/または療法において潜在的に関連するマーカーを同定するための方法に関し、その方法は、生体サンプル中のリボソームRNAのメチル化の変動の検出に基づく分析アプローチを含む。本発明はまた、癌に罹患している患者の癌サブタイプおよび/または予後を決定するため、そのような患者における処置の利益を推定または評価するためだけでなく、癌の処置に有用なリボソームを標的とする1以上の治療薬を選択するためのこの分析アプローチのいくつかの応用に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
癌診断、予後診断および/または処置利益の推定および/または療法において潜在的に関連するマーカーを同定するための方法であって、
a)癌に罹患している患者の代表的な集団からの生体サンプル中のリボソームRNA(rRNA)の2’O-リボースメチル化位置の2’O-リボースメチル化レベルを測定すること、
b)各2’O-リボースメチル化位置について測定された2’O-リボースメチル化レベルの、前記代表的な集団の患者の各サンプル間の変動性を決定することにより各2’O-リボースメチル化位置の個々のメチル化状態を評価すること、
c)前記個々のメチル化状態が「可変状態」である2’O-リボースメチル化位置のセットを選択すること
を含んでなる、方法。
【請求項2】
前記2’O-リボースメチル化位置の2’O-リボースメチル化レベルが、RiboMeth-seq法を使用して計算されたCスコアによって決定される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
工程b)が、
b1)各2’O-リボースメチル化位置について測定された2’O-リボースメチル化レベルの、前記代表的な集団の患者の各サンプル間の変動性を決定すること、および
b2)前記代表的な集団間の全ての2’O-リボースメチル化位置の変動性を比較することにより各2’O-リボースメチル化位置のメチル化状態を決定すること
によって行われる、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記メチル化状態を評価するために決定される各2’O-リボースメチル化位置の2’O-リボースメチル化レベルの変動性が、各2’Ome位置についての各rRNA 2’Omeレベルの、前記代表的な集団の患者の各サンプル間の変動性を独立に比較可能な統計的アプローチによって決定され、次に、各2’O-リボースメチル化位置のメチル化状態が、1つの特定の位置での2’O-リボースメチル化レベルの変動性の最小値に対応する閾値に関して決定され、それが前記代表的な集団間の他の2’O-リボースメチル化位置の2’O-リボースメチル化レベルの変動性の値からの偏差を示す、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
工程c)で選択されたセットが、前記患者がどのような癌に罹患していたとしても、rRNAの106個の2’O-リボースメチル化位置のうち5~50個の2’O-リボースメチル化位置を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
工程c)で選択されたセットが、rRNAの106個の2’O-リボースメチル化位置のうち次の34個の位置:
【化1】
を含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
患者が乳癌に罹患しており、工程c)で選択された2’O-リボースメチル化位置のセットが、rRNAの106個の2’O-リボースメチル化位置のうち40~50個の2’O-メチル化位置、好ましくは46個の2’O-リボースメチル化位置:
【化2】
を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
患者が神経膠腫に罹患しており、工程c)で選択された2’O-リボースメチル化位置のセットが、rRNAの106個の2’O-リボースメチル化位置のうち30~40個の2’O-メチル化位置、好ましくは32個の2’O-リボースメチル化位置:
【化3】
を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
処置に関係なく、癌に罹患している患者の予後を決定するための方法であって、
a)予後を決定すべき、「検査対象患者」と呼ばれる癌に罹患している患者からのサンプル中のリボソームRNA(rRNA)の2’O-リボースメチル化位置の2’O-リボースメチル化レベルを測定すること、
b)測定されたリボソームRNA(rRNA)の2’O-リボースメチル化位置の2’O-リボースメチル化レベルと、臨床転帰がわかっている、「検査対象患者」と同じ癌に罹患している患者の代表的な集団のものとを比較すること、
c)「検査対象患者」の予後を、前記代表的な集団から「検査対象患者」のものに近い2’O-リボースメチル化レベル測定値を有する患者群に相当するものを同定することによって決定すること
を含んでなる、方法。
【請求項10】
工程b)での比較が、2’O-リボースメチル化位置ごとの解析を使用してまたは全ての2’O-リボースメチル化位置の全プロファイル解析を使用して行われる、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記患者が乳癌に罹患しており、前記2’O-リボースメチル化レベルの比較が、4個の2’O-リボースメチル化位置:18S-Gm1447;28S_Gm1316;28S_Gm4618および18S-Am576の少なくとも1個に限定された2’O-リボースメチル化位置ごとの解析を用いて行われる、請求項9または10に記載の方法。
【請求項12】
癌に罹患している患者における処置の利益を推定するための方法であって、
a)特定の処置の利益を決定すべき、「検査対象患者」と呼ばれる癌に罹患している患者からのサンプル中のリボソームRNA(rRNA)の2’O-リボースメチル化位置の2’O-リボースメチル化レベルを測定すること、
b)測定されたリボソームRNA(rRNA)の2’O-リボースメチル化位置の2’O-リボースメチル化レベルと、1以上の特定の処置の利益がわかっている、「検査対象患者」と同じ癌に罹患している患者の代表的な集団のものとを比較すること、
c)「検査対象患者」についての特定の処置の期待される利益を、前記代表的な集団から「検査対象患者」のものに近い2’O-リボースメチル化レベル測定値を有する患者群に相当するものを選択することによって決定すること
を含んでなる、方法。
【請求項13】
前記比較が、2’O-リボースメチル化位置ごとの解析を使用してまたは全ての2’O-リボースメチル化位置の全プロファイル解析を使用して行われる、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
癌の処置に有用な、リボソームを標的とする1以上の治療薬を選択するための方法であって、
・2’O-リボースメチル化レベルが癌に関連していることが知られている1以上の2’O-リボースメチル化位置を含むリボソーム領域に対応するリボソーム上の標的領域を決定すること、および
・前記標的領域に向けられた、抗生物質を含む1以上のリボソーム標的薬物を同定すること
を含んでなる、方法。
【請求項15】
癌に関連している2’O-リボースメチル化位置が、
a)癌に罹患している患者の代表的な集団からの生体サンプル中のリボソームRNA(rRNA)の2’O-リボースメチル化位置の2’O-リボースメチル化レベルを測定すること、
b)各2’O-リボースメチル化位置について測定された2’O-リボースメチル化レベルの、前記代表的な集団の患者の各サンプル間の変動性を決定することにより各2’O-リボースメチル化位置の個々のメチル化状態を評価すること、
c)前記個々のメチル化状態が「可変状態」である2’O-リボースメチル化位置のセットを選択すること
によって同定される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
癌に関連している2’O-リボースメチル化位置が、
a)癌に罹患している患者の代表的な集団からの生体サンプル中および癌に罹患していない対照患者集団からの生体サンプル中のリボソームRNA(rRNA)の2’O-リボースメチル化位置の2’O-リボースメチル化レベルを測定すること、
b)前記2集団の患者の各サンプル間の、各2’O-リボースメチル化位置について測定された2’O-リボースメチル化レベルの変動性を決定することにより各2’O-リボースメチル化位置の個々のメチル化状態を評価すること、
c)前記個々のメチル化状態が、前記癌に罹患している患者の代表的な集団で「可変状態」であり、癌に罹患していない患者集団で「可変状態」でない2’O-リボースメチル化位置のセットを選択すること
によって同定される、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
リボソーム上の標的領域が、次のアプローチ:
・患者の2’Omeの解析
・特定の分子癌サブタイプ/予後不良および/または利用可能な処置の利益がないかもしくは少ないことおよび/または腫瘍の表現型形質を予測する可変部位の同定、これらは、前記2’O-リボースメチル化位置に対応し、この2’O-リボースメチル化レベルは癌と関連していることが知られている、
・リボソームの構造上のこの/これらの可変部位の位置特定、
・リボソームの構造上のこの/これらの可変部位とリボソーム標的薬物のポケット結合の位置との間の距離の決定
によって決定され;
1以上のリボソーム標的薬物が、リボソーム内のポケット結合が、特定の分子癌サブタイプ/予後不良および/または処置の利益がないかもしくは少ないことおよび/または腫瘍の表現型形質を予測する1以上の可変部位までの最小かつ等しい距離を示す、リボソーム活性の阻害を可能にする1つまたは複数のものを同定することによって同定される、請求項14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の技術分野
本発明は、医療分野、特に癌バイオマーカーおよび療法の分野に属する。
【0002】
本発明は、癌診断、予後診断および/または処置および/または療法の利益の推定において潜在的に関連するマーカーを同定するための方法に関し、その方法は、生体サンプル中のリボソームRNA(rRNA)の2’O-リボースメチル化の変動の検出に基づく分析アプローチを含む。本発明者らは、そのような変動の中で、癌における臨床的重要性と関連していることから関連マーカーとなるものがあることを実際に実証した。
【0003】
本発明はまた、癌に罹患している患者の予後を決定するため、そのような患者における処置の利益を推定または評価するためだけでなく、癌の処置に有用な、リボソームを標的とする1以上の治療薬を選択するためのこの分析アプローチのいくつかの応用に関する。これらの応用のそれぞれは、いくつかの特定のケースでは、特に、分子癌サブタイプを同定することによる診断目的も有する場合がある。
【0004】
本発明はまた、癌における臨床的重要性と正確に関連する関連マーカーを含むrRNA上の修飾された領域を特異的に認識することができる分子を含むキット、ならびに診断、予後診断、処置および/または療法の利益の推定におけるその使用;好ましくは、乳癌および神経膠腫の場合は、これらの全てに関する。
【背景技術】
【0005】
発明の背景
遺伝子発現は、細胞表現型を細かく形作る多段階プロセスである。最近まで、クロマチンアクセシビリティ(すなわち、エピジェネティック)と転写の両方の制御を含むDNAからのmRNA合成は、なお最も研究されている段階である。しかしながら、mRNAからタンパク質への翻訳も厳密に制御でき、癌の場合を含む特定の表現型の獲得に直接寄与していると思われる(Truitt and Ruggero, Nat Rev Cancer 2016)。翻訳を調節する種々の機構の中で、リボソーム自体が直接翻訳の役割を果たすという予期せぬ考えを裏付ける証拠が増えてきた。具体的には、新たに出現した証拠は、ヒトリボソームにおけるリボソームRNA 2’O-リボースメチル化(rRNA 2’OMe、rRNA 2’Omeまたはその後のrRNA 2’O-メチル化)の変化が翻訳を調節する重要な役割を果たし(すなわち、rRNAエピトランスクリプトミック)、それによって、癌細胞の特徴などの特定の表現型の設定に貢献していることを裏付けている(1-3)。
【0006】
歴史的には、主に、長年にわたって使用されてきた歴史的原型の真核生物モデルである酵母とアフリカツメガエル(Xenopus laevis)の両方のモデルで数多くの研究が行われており、rRNAの転写、化学修飾、およびプロセシングの非常に複雑な分子機構が詳細に解明されている(4)。これらの研究により、rRNA 2’O-メチル化部位のマッピングが可能になっただけでなく、生命が依存するリボソームの保存された固有の活性における2’O-メチル化の重要性の実証も可能になった。実際、酵母のいくつかのrRNA部位における2’O-メチル化の喪失はリボソーム機能にとって重要であり、細胞死を誘導すると思われる(4-5)。しかしながら、より最近の発見では、酵母では、他の部位でのrRNA 2’O-メチル化の喪失はほとんどまたは全く影響を及ぼさないことが示されている。
【0007】
実際、ここ10年間で、rRNA 2’O-メチル化が遺伝子発現制御の追加の層であることが明らかになり、リボソームが翻訳制御の新たな役割を果たすことが強調されている。最近明らかになったこの新しい遺伝子発現制御層は、エピトランスクリプトミクスとして知られる分野である、転写後プロセスを調節するコードRNAおよび非コードRNAの両方の化学修飾についての多数の記述に加わっている(5-6)。
【0008】
今日まで、この重要な発見は、排他的ではないにしても、主に細胞モデルから得られた証拠に基づいており、それらのほとんどは癌細胞株または実験的に改変されたイン・ビトロ(in vitro)モデルを表し、後者は、前癌段階、腫瘍発生または腫瘍進行を模倣するために遺伝的アプローチまたは分子生物学アプローチを使用して確立されている(3、5)。さらに、現在利用可能な技術は部位特異的アプローチであったため、細胞モデルの全ての位置におけるrRNA 2’O-メチル化の変動性の包括的概観を得ることは困難であった。従って、現時点では、rRNA 2’O-メチル化がヒトにおいて変化するかどうかは不明である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
遺伝学、ゲノミクス、エピジェネティクス、トランスクリプトミクスおよびプロテオミクスによって分子レベルでの腫瘍の不均一性が明らかになったが、新規分子層の同定は、患者間の変動性全てを完全に捉えるために必要であり、臨床応用の開発には不可欠である。実際、全てではないにしても、これらのアプローチの全てが転写制御に焦点を合わせていた。しかしながら、癌を含むいくつかの生理病理学的状態では、トランスクリプトームはトランスラトームとは明らかに異なり、細胞表現型の形成において翻訳制御がまだ過小評価されている役割を果たしていることが示されている。これらの転写中心のアプローチの中で、エピジェネティクスは、診断(すなわち、患者の分類)、予後診断または処置を改善するための有望な追加の分子フィンガープリントのように思われる。エピジェネティックは、主にDNA内のシトシンヌクレオチドの塩基メチル化に対応し、この塩基メチル化は、転写因子との連携により異なるメチルトランスフェラーゼによって配列特異的に追加され得、追加のタンパク質によって解釈され、転写が調節され得る。トランスクリプトミックおよびエピジェネティックの両方に特化したオミック(-omic)アプローチのアクセシビリティから、細胞表現型の形成におけるこれら2つの分子機構の重要性が数多くの研究によって実証された。しかしながら、転写制御に着目しただけでは癌表現型の不均一性全てを説明することはできない。癌の分子ポートレートにおいて、RNAエピトランスクリプトミクス、特にrRNA 2’O-メチル化は、これまで調査されていなかった。
【発明を実施するための形態】
【0010】
発明の詳細な説明
rRNA 2’O-メチル化のプロファイリングに特化したRNA-seqに基づいたアプローチの開発を含む技術的課題の最近の解決により(3、7-9)、本発明者らは、ヒトサンプルにおけるrRNA 2’O-メチル化プロファイリングを達成し、それが癌における分子フィンガープリントを提供し得るかどうかを判断した。これらのデータは、ヒト腫瘍間の特定のrRNA位置にのみ2’O-メチル化の特異的な調節が予想外に存在することを明らかにしており、意外にも臨床転帰および生物学的特徴と関連している。
【0011】
具体的には、ヒト乳房腫瘍および神経膠腫の最初のrRNA 2’O-メチル化プロファイリングは、ヒト臨床サンプルのハイスループット分析の実行に適した革新的なRiboMeth-seq技術を使用して確立された。
【0012】
本発明者らは、ヒトリボソーム構造の機能的に重要な部位に位置する、2’O-メチル化レベルの患者間の変動性が限られていることを示す安定部位の存在を明らかにした。これらの安定部位は、ヒトリボソーム構造の2番目のヌクレオチド層に位置する可変部位に囲まれている。本発明者らのデータは、腫瘍組織および健康なヒト組織では、rRNA分子内の一部の位置で2’O-メチル化の欠如が許容され得ることを実証している。これらのデータはまた、rRNA 2’O-メチル化が、異なるタイプの腫瘍、特に、乳房腫瘍および神経膠腫腫瘍において患者内および患者間の変動性を示すことも明らかにしている。実際、rRNA 2’Omeレベルは、乳癌および神経膠腫のサブタイプおよび腫瘍悪性度と差異的に関連している。
【0013】
大規模ヒトサンプルコレクションのrRNA 2’O-メチル化プロファイリングを提供する本発明は、リボソーム変動性がヒトで生じ、rRNA 2’O-メチル化が臨床で有用な腫瘍生物学の関連要素を表すという最初の有力な証拠を示す。分子レベルでのこの新規な変動性に基づく本発明は、癌の不均一性を捉えるための追加の層を提供し、腫瘍生物学の特定の特徴と関連付けることにより、癌における新規な標的化可能な分子シグネチャーを提供する。
【0014】
本発明により、本発明者らは、rRNA 2’O-メチル化関連シグネチャーが、全ての2’O-メチル化rRNA部位に基づく全体的な2’O-メチル化シグネチャーまたは起源が可変部位のみに対応する部位特異的シグネチャーのいずれかに対応し、それぞれ、臨床情報を有することを示した。個別あるいは固有の目的部位を特定するという利点により、診断、予後診断および/または治療目的のみで特定の部位における2’O-メチル化レベルを決定するために、臨床での日常使用に好適な安価な技術の使用が可能になる。
【0015】
実際、本発明者らは、rRNA分子が、ヒトの全ての2’O-メチル化位置において完全かつ均等に2’O-メチル化されていない分子としてヒトにおいて天然に存在することを初めて示した。本発明者らは、構造/機能および進化エンリッチメント分析(evolution enrichment analyses)ならびに生物学的特徴との差異的関連を用いて、少なくとも2つのクラスのrRNA 2’O-メチル化部位が、この化学修飾を許容する(すなわち、可変部位)または許容しない(すなわち、安定部位)能力に応じて、ヒト癌において一致することを実証した。ヒトサンプルの比較により得られたこの独自の発見は、特定のrRNA位置において安定した2’O-メチル化および可変の2’O-メチル化が共存することを実証している。
【0016】
従って、rRNAエピトランスクリプトミクスは、独自の特異性を示す、遺伝子発現の追加ステップを考慮する機会を提供する。実際、rRNAエピトランスクリプトミックは、エピジェネティックとは対照的に、rRNAの全ての種類のヌクレオチドのリボースメチル化にほぼ対応し、その95%は、独自のメチルトランスフェラーゼであるフィブリラリン(FBL)によって追加され、配列依存的に非コードRNA(またはsnoRNA)によって誘導される。rRNAにおいてその活性に影響を与える特定の構造を形成するには、2’O-メチル化の存在が必須であると長い間考えられていたが、意外にも、rRNA 2’O-メチル化の有無がmRNA翻訳の制御に直接影響を与える可能性があることが分かってきている。その翻訳活性に影響を与えることに加え、その構造を修飾することによって、単一のrRNA位置における2’O-メチル化の有無だけで抗生物質などの小分子の結合に影響を与えるのに十分である可能性がある。実際、細菌の抗生物質に対する耐性の一部は、新しいrRNA位置における2’O-メチル化の出現に依存していることが示されている。従って、分子の結合領域付近の位置におけるrRNA 2’O-メチル化の有無は、その有効性に大きく影響する可能性がある。これらの観察は、rRNA 2’O-メチル化が、翻訳制御の変化を反映する癌の特性評価の追加の層を提供するだけでなく、癌リボソームを標的とする分子を同定するための合理的な説明も提供するという考えを裏付けている。
【0017】
従って、第1の態様において、本発明は、癌診断、予後診断および/または処置利益の推定および/または療法において潜在的に関連するマーカーの同定方法であって、
a)癌に罹患している患者の代表的な集団からの生体サンプル中のリボソームRNA(rRNA)の2’O-リボースメチル化位置の2’O-リボースメチル化レベルを測定すること、
b)各2’O-リボースメチル化位置について測定された2’O-リボースメチル化レベルの、前記代表的な集団の患者の各サンプル間の変動性を決定することにより各2’O-リボースメチル化位置の個々のメチル化状態を評価すること、
c)前記個々のメチル化状態が「可変状態」である2’O-リボースメチル化位置のセットを選択すること
を含んでなる方法に関する。
【0018】
具体的には、本発明の全体の文脈において、ならびに上で定義した工程b)に関して、メチル化状態の評価は、
b1)各2’O-リボースメチル化位置について測定された2’O-リボースメチル化レベルの、前記代表的な集団の患者の各サンプル間の変動性を決定すること、および
b2)前記代表的な集団間の全ての2’O-リボースメチル化位置の変動性を比較することにより各2’O-リボースメチル化位置のメチル化状態を決定すること
によって行われ得る。
【0019】
本発明の方法は、癌に罹患している患者の管理のために、臨床で有用な潜在的に関連するマーカーのセットの同定を可能にする。このセットは、分析対象のrRNA内の潜在的に関連するメチル化位置に対応し、メチル化状態を参照集団のものと慎重に比較することにより、臨床的重要性を正確に有するものを選択し得る。
【0020】
上記の本発明による方法は全て、イン・ビトロ法またはエクス・ビボ(ex vivo)法である。
【0021】
本明細書で使用する場合、「腫瘍」という用語は、悪性腫瘍を指すため、「腫瘍」と「癌」という用語は、互換的に使用され、同じ定義を有する。
【0022】
本明細書で使用する「代表的な集団」という用語は、ある特定の癌タイプの臨床的特徴を要約するヒト患者の集団を意味することを意図している。診断、予後決定、処置利益推定のための、本明細書に後述する本発明の応用方法全てにおいて、「代表的な集団」は、特化したそれぞれの用途に適合するように選択される。例えば、診断目的では、「代表的な集団」は、癌サブタイプが分かっている患者の集団で構成される。例えば、予後診断目的では、「代表的な集団」は、予後が分かっている患者の集団で構成される。処置利益を推定する場合、「代表的な集団」は、その処置の利益が分かっている患者の集団で構成される。従って、これらの場合、「代表的な集団」は、「参照集団」に相当する。しかしながら、リボソームを標的とする治療薬を選択するための本発明の方法の実施形態の1つのように、実行する比較が癌に罹患していない患者の集団とのものである場合、「代表的な集団」はどちらかといえば「対照集団」に相当する。
【0023】
本発明において使用する場合、「診断」という用語は、癌サブタイプの同定、すなわち、同じ臓器に由来する単一の癌タイプ内での同定、共通の生物学的特徴を示す同様の解剖病理学的または分子的形質を示す異なる腫瘍群の同定に限定される。具体的には、分子癌サブタイプによる腫瘍の分類により、同じ臓器に由来するが固有の分子特性を備えている腫瘍を区別することが可能であり、適合した治療プロトコールを提供することにより患者管理を改善することが可能である。
【0024】
本明細書では、「生体サンプル」および「サンプル」という用語は互換的に使用される。全てのタイプの生体サンプルを本発明の方法で使用し得る。好ましくは、本発明の方法で使用される生体サンプルは、組織(すなわち、手術片、生検組織、ホルマリン固定パラフィン包埋組織)および生体液(すなわち、血液サンプル、喀痰、尿など)の中から選択され、生検組織が使用するのに好ましい生体サンプルである。
【0025】
「2’O-リボースメチル化」、「2’O-メチル化」、「2’Ome」、「2’O-me」、「2’OMe」、「2’-O-Me」または「2’O-Me」という用語は、本明細書において互換的に使用され、同じ定義を有し、リボースの2’O位におけるメチル化を指す。
【0026】
「部位」および「位置」という言葉は、互換的に使用され、同じ定義を有し、2’O-メチル化を有するヌクレオチドを指す。
【0027】
リボソームRNAまたはrRNAは、4つのリボソームRNA 5S、5.8S、18Sおよび28Sを意味する。4つのrRNAの合計サイズは、7.2kbである。rRNA 28S、18Sおよび5.8Sは、単一のpre-rRNA前駆体の切断後に生成される。
【0028】
従って、「メチル化位置」、「メチル化部位」、「2’O-リボースメチル化位置」、「2’O-リボースメチル化部位」、「2’Ome位置」、「2’Ome部位」、「2’OMe位置」、「2’OMe部位」、「メチル化位置」および「メチル化部位」という用語は、本明細書で使用する場合、同じ定義を有し、リボースが2’Oでメチル化されている可能性があるrRNAの全てのヌクレオチドを指す。
【0029】
本発明によれば、「2’O-リボースメチル化レベル」、「2’O-メチル化レベル」、「メチル化レベル」、「2’O-リボースメチル化のレベル」、「メチル化のレベル」または「メチル化のレベル」という用語は、同じ意味を有し、互換的に使用することができる。これらの用語は全て、相対的尺度の決定を指す。
【0030】
rRNAの異なるメチル化部位の「メチル化のレベル」は、当技術分野で公知の任意の関連技術により検出されるべきである。具体的には、このメチル化レベルは、リボースの2’O位がメチル化されているかどうかを決定できる任意の方法によって決定される。好ましい実施形態において、前記メチル化レベルは、非配列決定法(RNAフィンガープリンティング、プライマー伸長に基づいたアプローチ、質量分析法、RP-HPLC、X線結晶構造解析およびクライオ電子顕微鏡法(cryo-EM))および配列決定に基づくハイスループット法(2OMe-seq、RimSeq、CLIP-seq、RibOxi-seq、Nm-seq、RiboMeth-seq)によって決定される(3、9)。
【0031】
本発明の方法の好ましい実施形態において、2’O-リボースメチル化位置の2’O-リボースメチル化レベルは、RiboMeth-seq法を使用して計算されたCスコアにより決定される。
【0032】
RiboMeth-seq技術は、全てのメチル化位置のそれぞれについて2’Omeレベルを個別に計算する。このレベルは「Cスコア」と呼ばれ、位置nにおける5’および/または3’末端リードの生カウントとローカルリード対象の比率から計算され、後者は隣接位置の5’および/または3’末端リードの生カウント(すなわち、k=nの上流および下流に位置するx個のヌクレオチド)から推定される(8)。これは絶対値に対応しておらず、相対比較のみ可能である:
・位置nにおいてCスコア=1の場合、サンプル中の全てのrRNAは位置nにおいて2’Omeである
・位置nにおいてCスコア=0の場合、位置nにおいて2’OmeであるrRNAはサンプル中に存在しない。
・位置においてCスコアが0~1である場合、サンプル中に2つのタイプのrRNA、位置nにおいて、(1)2’Omeを有するrRNAおよび(2)2’Omeを有していないrRNAが様々な割合で存在する。
【0033】
従って、この実施形態によれば、メチル化位置の完全性のCスコアに対応するデータセットは、各サンプルについて、2’Ome部位につき1個のCスコアで得られる。
【0034】
本発明の基礎となる一般的なアプローチは、全ての利用可能なサンプルからのデータを用いて全てのメチル化部位のそれぞれにおいて計算された2’Omeレベル、好ましくはCスコアの変動性の比較である。「安定」部位および「バリアント」(または「可変」)部位を識別するための閾値は、全ての部位の大部分からの逸脱が観察される変動性値に相当する。
【0035】
各2’O-リボースメチル化位置のメチル化状態は、1つの特定の位置での2’O-リボースメチル化レベルの変動性の最小値に対応する閾値に関して決定され、それは前記代表的な集団間の他の2’O-リボースメチル化位置の2’O-リボースメチル化レベルの変動性からの偏差を示す。従って、この閾値により、「安定」状態または「可変」状態のいずれかに対応するメチル化状態を指定することができる。
【0036】
従って、本発明の方法の好ましい実施形態において、前記メチル化状態を評価するために決定される各2’O-リボースメチル化位置の2’O-リボースメチル化レベルの変動性は、各2’Ome位置についてのrRNA 2’Omeレベルの、前記代表的な集団の患者の各サンプル間の変動性を独立に比較可能な統計的アプローチによって決定される。変動性の推定には、ばらつきの範囲(最大値と最小値の差)、四分位範囲(IQR)、分散、標準偏差または四分位係数などの2’O-メチル化レベルのばらつきを示す通常の統計的手法が含まれる。
【0037】
次に、各2’O-リボースメチル化位置のメチル化状態が、1つの特定の位置での2’O-リボースメチル化レベルの変動性の最小値に対応する閾値に関して決定され、それは前記代表的な集団間の他の2’O-リボースメチル化位置の2’O-リボースメチル化レベルの変動性の値からの偏差を示す。偏差の推定には、変動性推定量の上昇値からの線形回帰または直線などの通常の数学的および統計的手法が含まれる。2’O-メチル化レベルの変動性推定量としてのIQRの使用に関連する後者の例では、カットオフ位置は、2つの連続する位置間のIQRの増加がもはや一定ではなくなる位置と定義した。IQR値が閾値を下回る2’O-メチル化位置を「安定」と呼び、一方、IQR値が閾値を上回る位置を「可変」に指定した。
【0038】
従って、前記メチル化状態には、2つの可能な状態:
・安定状態:特定部位における2’Omeの変動性が上で定義したように閾値を下回る場合、および
・可変状態:特定部位における2’Omeの変動性が上で定義したように閾値を上回る場合
が含まれる。
【0039】
これら2つの状態間の区別は、それらの間での比較であるため、定義上相対的なものである。「安定」2’Ome部位と「可変」2’Ome部位との間のこの区別は統計的アプローチに基づくことが好ましくい。
【0040】
癌の予後診断および/または処置利益の推定および/または療法において潜在的に関連するマーカーのセットを構成する、本明細書において「可変部位」または「バリアント部位」とも呼ばれる、可変状態を有する全ての部位がrRNA 28S、18S、5.8Sに含まれる。同様に、本明細書において「安定した部位」とも呼ばれる、安定状態を有する全ての部位が、rRNA 28S、18S、5.8Sに含まれる。しかしながら、これらの部位は、それ自体に、臨床情報、関連性または重要性はない。
【0041】
従って、これに関連して、本発明の方法は、生物学的/臨床情報を有していない、患者間で安定したメチル化状態を有する2’Ome部位を意味する「安定」2’Ome部位の同定を可能にし、生物学的/臨床情報を有する、患者間で可変のメチル化状態を有する2’Ome部位を意味する「バリアント」2’Ome部位の同定を可能にする。
【0042】
2’O-リボースメチル化(2’Ome)に関する情報
106個の2’Ome部位は、28S、18Sおよび5.8S リボソームRNAのみに広がっていることが知られており、これらは、2’Omeの7067個の推定キャリアーのうち現在までに同定されている106個のヌクレオチドに相当する。
【0043】
2’O-リボースメチル化に対応する2’Ome位置のそれぞれは、正規化法(11)に従って、次の情報に基づいてこの順序で同定される:
・rRNA名(28S、18Sおよび5.8Sのみ)
・アンダースコアまたはハイフン
・修飾ヌクレオチドの性質(「C」、「A」、「G」、「U」)
・2’Ome化学修飾=「m」
・参照配列NR_046235.3(NCBI、2017年3月10日)に対する修飾ヌクレオチドの位置、ヌクレオチド1は、目的の各rRNA、28S(配列番号1)、18S(配列番号2)および5.8S(配列番号3)のいずれかをコードするヒト配列の1番目のヌクレオチドに相当する。
【0044】
例えば、「5.8S_Um14」とは、5.8S rRNAの14位のUウリジンに相当するヌクレオチドにおける2’Omeを指す。
【0045】
この命名法は、特に酵母との比較を可能にするために公表のために存続している「祖先」命名法であるため、一部の部位には有効でない。
【0046】
リボソームRNAの合計106個のメチル化部位を以下の表1に挙げる。ここで、各列は次の意味を有する:「図面」は、添付の図面で使用される命名法であり、その凡例についてはこの後説明する、「NR_046235.Genomic_Position」は、参照配列に対する修飾ヌクレオチドの位置であり、「公式命名法」は、正規化法としての上記のものである。
【0047】
【0048】
上述したように、本発明の方法は、臨床情報を有するrRNA 2’O-メチル化関連シグネチャーの同定を可能にし、これらのシグネチャーは、(i)安定部位および可変部位の両方を含む全ての2’O-メチル化rRNA部位に基づく全体的な2’O-メチル化シグネチャー、または(ii)起源が一部の可変部位のみに対応する部位特異的シグネチャーのいずれかに対応する。
【0049】
本発明の文脈において、2’O-リボースメチル化のレベルは、関連情報を提供するために2つの異なる方法で使用され得る:
(1)全ての部位に関する情報を統合する2’Ome全プロファイル:所定のサンプルについて、全ての部位の2’O-リボースメチル化のレベルが使用され、そのサンプルに固有のシグネチャーを確立することが可能になる。このシグネチャーは、メチル化レベルの全ての値、従って、全ての部位のメチル化レベルの全ての組み合わせを含み、2’Omeプロファイルに基づいてサンプルを互いに比較可能にする。このような分析を、本明細書では「全プロファイル解析」と呼ぶ。
(2)所定の部位における2’O-リボースメチル化のレベル:所定のサンプルについて、目的の位置における2’O-リボースメチル化の個々のレベルを使用して、サンプルを互いに比較する。この場合、情報を有するのは、目的の位置におけるサンプル間の2’O-リボースメチル化のレベルの相対的変動である。このような分析を、本明細書では「位置ごとの解析」と呼ぶ。
【0050】
本発明者らは、2’Ome値(すなわち、全ての部位の値=個々の2’Omeプロファイルまたは1つの値=目的の2’Ome部位)のこれらの2つの分析を、この後説明する、診断のため、予後決定のため、処置利益の推定のための本発明の方法の応用において使用することができることを実証した。
【0051】
本発明の方法を、それぞれが1つの癌タイプを代表するいくつかの患者集団に適用することによって、本発明の方法を実行することにより同定される潜在的に関連するマーカーのそれぞれの選択を比較することによって、癌タイプに固有ではない共通の可変部位を含むある種の「普遍的な」シグネチャーも見つけることができる。
【0052】
従って、有利な実施形態によれば、本発明の方法の工程c)で選択された可変部位のセットは、前記患者がどのような癌に罹患していたとしても、rRNAの106個の2’O-リボースメチル化位置のうち5~50個の2’O-リボースメチル化位置を含む、より好ましくは、工程c)で選択された可変部位のセットは、5~10個、5~15個、5~20個、5~25個、5~30個、5~35個、5~40個、5~45個、5~50個、10~15個、10~20個、10~25個、10~30個、10~35個、10~40個、10~45個、10~50個、15~20個、15~25個、15~30個、15~35個、15~40個、15~45個、15~50個、20~25個、20~30個、20~35個、20~40個、20~45個、20~50個、25~30個、25~35個、25~40個、25~45個、25~50個、30~35個、30~40個、30~45個、30~50個、35~40個、35~45個、35~50個、40~45個、40~50個、45~50個を含む。
【0053】
癌の予後診断および/または処置利益の推定および/または療法において潜在的に関連するマーカーとして本発明の方法によって選択される2’Ome位置のセットは、癌タイプを問わず、rRNA上の全ての2’Ome位置の、好ましくは、表1に挙げている106個の位置の5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%または50%を含む。
【0054】
好ましくは、上述した可変位置の範囲および割合は、本発明の方法の工程c)で選択されたセットに適用され、少なくとも次の3つの癌タイプ:乳癌、Bリンパ腫およびAMLで共通する可変部位の数を指す。
【0055】
本発明の方法は、あらゆる癌タイプに関連する。
【0056】
しかしながら、本発明の方法が有利に関連する癌は、成人の固形癌および血液癌ならびに小児癌の中から選択される。
【0057】
1つの好ましい実施形態において、本発明の方法は、固形癌、より好ましくは乳癌、神経膠腫、より好ましくは星細胞腫、膠芽腫または乏突起神経膠腫、リンパ腫、より好ましくはBリンパ腫、または白血病、より好ましくは急性骨髄性白血病(AML)、および小児癌、より好ましくは横紋筋肉腫およびびまん性橋膠腫(DIPG)に罹患している患者の代表的な集団に対して行われる。
【0058】
本発明の方法が適用される最も好ましい代表的な集団は、乳癌または神経膠腫に罹患している患者集団である。
【0059】
好ましくは、本発明による方法の工程c)で選択されたセットは、rRNAの106個の2’O-リボースメチル化位置のうち11個の位置、より好ましくは、表1で詳説する、添付の図面で使用される命名法に従う次の11個の位置:
【化1】
を含む。
【0060】
別の言い方をすると、公式命名法によれば、上記の好ましいセットは11個の2’O-リボースメチル化位置:
【化2】
を含む。
【0061】
このセットは、乳癌、Bリンパ腫またはAMLに罹患している患者における診断、予後診断および/または治療法に潜在的に関連するマーカーであるため、特に有利である。
【0062】
同様に好ましくは、本発明による方法の工程c)で選択されたセットは、rRNAの106個の2’O-リボースメチル化位置のうち13個の位置、より好ましくは、表1で詳説する、添付の図面で使用される命名法に従う次の13個の位置:
【化3】
を含む。
【0063】
別の言い方をすると、公式命名法によれば、上記の好ましいセットは、13個の2’O-リボースメチル化位置:
【化4】
を含む。
【0064】
このセットは、乳癌またはAMLに罹患している患者における診断、予後診断および/または治療法に潜在的に関連するマーカーであるため、特に有利である。
【0065】
さらに好ましくは、本発明による方法の工程c)で選択されたセットは、rRNAの106個の2’O-リボースメチル化位置のうち34個の位置、より好ましくは、表1で詳説する、添付の図面で使用される命名法に従う次の34個の位置:
【化5】
を含む。
【0066】
別の言い方をすると、公式命名法によれば、本発明による方法の工程c)で選択されたセットは、次の34個の位置:
【化6】
を含む。
【0067】
このセットは、乳癌およびBリンパ腫に罹患している患者における診断、予後診断および/または治療法に潜在的に関連するマーカーであるため、特に有利である。
【0068】
好ましい実施形態によれば、本発明の方法は、乳癌に罹患している患者の代表的な集団からの生体サンプル中のrRNAの2’O-リボースメチル化位置の2’O-リボースメチル化レベルを測定することを含む。この好ましい実施形態において、工程c)で選択された2’O-リボースメチル化位置のセットは、rRNAの106個の2’O-リボースメチル化位置のうち40~50個の2’O-メチル化位置、より好ましくは、表1で詳説する、添付の図面で使用される命名法に従う46個の2’O-リボースメチル化位置:
【化7】
を含む。
【0069】
別の言い方をすると、公式命名法によれば、上記の好ましいセットは、46個の2’O-リボースメチル化位置:
【化8】
を含む。
【0070】
同様に好ましい実施形態によれば、本発明の方法は、神経膠腫に罹患している患者の代表的な集団からの生体サンプル中のrRNAの2’O-リボースメチル化位置の2’O-リボースメチル化レベルを測定することを含む。この好ましい実施形態において、工程c)で選択された2’O-リボースメチル化位置のセットは、rRNAの106個の2’O-リボースメチル化位置のうち30~40個の2’O-メチル化位置、より好ましくは、表1で詳説する、添付の図面で使用される命名法に従う32個の2’O-リボースメチル化位置:
【化9】
を含む。
【0071】
別の言い方をすると、公式命名法によれば、上記の好ましいセットは、32個の2’O-リボースメチル化位置:
【化10】
を含む。
【0072】
乳癌および神経膠腫に罹患している患者の代表的な集団に関するこの好ましい実施形態において、最も可変の2’O-リボースメチル化位置は18S_Gm1447である。
【0073】
本明細書に後述する本発明の応用方法全てにおいて、「代表的な集団」は、特化したそれぞれの用途に適合する必要がある。例えば、診断目的では、「代表的な集団」は、癌サブタイプが分かっている患者の集団で構成される。予後診断目的では、「代表的な集団」は、予後が分かっている患者の集団で構成される。処置利益を推定する場合、「代表的な集団」は、その処置の利益が分かっている患者の集団で構成される。従って、これらの場合、「代表的な集団」は、「参照集団」に相当する。
【0074】
第2の態様において、本発明は、処置に関係なく、癌に罹患している患者の予後を決定するための方法であって、
a)予後を決定すべき、「検査対象患者」と呼ばれる癌に罹患している患者からのサンプル中のリボソームRNA(rRNA)の2’O-リボースメチル化位置の2’O-リボースメチル化レベルを測定すること、
b)測定されたrRNAの2’O-リボースメチル化位置の2’O-リボースメチル化レベルと、臨床転帰がわかっている、「検査対象患者」と同じ癌に罹患している患者の代表的な集団のものとを比較すること、
c)「検査対象患者」の予後を、前記代表的な集団から「検査対象患者」のものに近い2’O-リボースメチル化レベル測定値を有する患者群に相当するものを同定することによって決定すること
を含んでなる方法に関する。
【0075】
「予後」とは、例えば、生存、疾患の進行、特に局所または遠隔再発の決定、腫瘍悪性度およびサイズ、リスク層別化、癌サブタイプの観点から測定することができる疾患進行の推定を意味することを意図している。特定の転帰を伴う癌のサブタイプの同定は、例えば、女性のホルモン依存性癌またはIDH突然変異状態依存性神経膠腫における、遺伝子および/またはゲノムの変化、染色体変化または特定の遺伝子発現を含む分子的考察に基づく場合がある。
【0076】
生存を本発明の方法によって決定する場合、生存には、全生存、無病生存、無増悪生存、無再発生存、原発性腫瘍部位について局所的もしくは遠隔的の両方、ハザード比またはオッズ比が含まれ得る。
【0077】
本発明による患者の予後を決定するための方法を実行することにより、予後を決定するか、またはより正確に定義し得る。例えば、診断時の腫瘍サイズが小さい(<20mm)乳癌患者は、通常、診断時の腫瘍サイズが大きい患者と比較して良好な転帰を示すが、腫瘍サイズは小さいが、腫瘍が大きい患者と同じくらい転帰不良の患者を識別するのを支援するために分子マーカーが必要である。同様に、診断時に高悪性度の腫瘍(>ステージIII)を有する神経膠腫患者は、通常、全ての神経膠腫患者と比較して最も不良の転帰を示すが、高悪性度の腫瘍を有するが、他の高悪性度神経膠腫患者より良好な転帰を示す患者の識別を支援し、治療戦略を適応させるために分子マーカーが必要である。
【0078】
本発明による患者の予後を決定するための方法を実行することにより、予後は腫瘍の悪性度およびサイズならびに/または癌サブタイプに関するものであり、前記方法は、前記患者の診断段階に組み込み得るため、診断方法として定義し得る。実際、腫瘍の悪性度およびサイズならびに/または分子癌サブタイプは、患者の癌の診断に属することが非常に多い。従って、予後の意味は癌サブタイプの診断を包含する可能性があるため、本発明の文脈における患者の予後の決定に関する本明細書の全ての詳細および実施形態は、癌サブタイプの診断にも適用される。
【0079】
本発明による予後を決定するための方法において、2’O-リボースメチル化のレベルは、関連情報を提供するために2つの異なる方法で使用され得る:
(1)全ての部位に関する情報を統合する2’Ome全プロファイル:所定のサンプルについて、全ての部位の2’O-リボースメチル化のレベルが使用され、そのサンプルに固有のシグネチャーを確立することが可能になる。このシグネチャーは、メチル化レベルの全ての値、従って、全ての部位のメチル化レベルの全ての組み合わせを含み、2’Omeプロファイルに基づいてサンプルを互いに比較可能にする。このような分析を、本明細書では「全プロファイル解析」と呼ぶ。
(2)所定の部位における2’O-リボースメチル化のレベル:所定のサンプルについて、目的の位置における2’O-リボースメチル化の個々のレベルを使用して、サンプルを互いに比較する。この場合、情報を有するのは、目的の位置におけるサンプル間の2’O-リボースメチル化のレベルの相対的変動である。このような分析を、本明細書では「位置ごとの解析」と呼ぶ。
【0080】
本発明者らは、2’Ome値(すなわち、全ての部位の値=個々の2’Omeプロファイルまたは1つの値=目的の2’Ome部位)のこれらの2つの分析を、予後予測として、好ましくは、患者の生存もしくは腫瘍悪性度を決定するために、または分子癌サブタイプの診断として使用することができることを実証した。
【0081】
従って、予後決定のための方法の好ましい実施形態において、
工程b)での比較は、2’O-リボースメチル化位置ごとの解析を使用してまたは全ての2’O-リボースメチル化位置の全プロファイル解析を使用して行われる。
【0082】
本発明による潜在的に関連するマーカーを同定するための方法について上述したように、rRNAの異なるメチル化部位の「メチル化のレベル」は、当技術分野で公知の任意の関連技術により、特に、リボースの2’O位がメチル化されているかどうかを明確に決定することを可能にする任意の方法により、例えば、上述の方法のいずれか1つにより検出されるべきである。
【0083】
本発明の予後決定のための方法の好ましい実施形態において、2’O-リボースメチル化位置の2’O-リボースメチル化レベルは、RiboMeth-seq法を使用して計算されたCスコアにより決定される。
【0084】
より好ましくは、2’O-リボースメチル化のレベルは、表1に挙げる106個の部位について測定される。従って、2’Ome値の上述の2つの分析は、個々の2’Omeプロファイルとして106個の値または所定の目的の2’Ome部位の1つの値で構成され、予後予測として、好ましくは、患者の生存もしくは腫瘍悪性度を決定するために、または分子癌サブタイプの診断として使用することができる。
【0085】
本発明による予後を決定するための方法の別の特に好ましい実施形態において、工程b)での比較は、可変位置の1~6の2’O-リボースメチル化位置ごとの解析を使用して行われ、これらは、特定の癌タイプの予後に関する正確なマーカーであり、好ましくは、可変位置の1、2、3、4、5または6は、特定の癌タイプの予後に関する正確なマーカーである。
【0086】
特に有利な実施形態において、本発明の方法は、乳癌に罹患している患者の予後を決定するためのものであり、4個の2’O-メチル化位置18S-Gm1447;28S-Gm1303;28S-Gm4588および18S-Am576の少なくとも1個に限定された、好ましくは4個の2’O-メチル化位置の2’O-メチル化位置ごとの解析を用いた前記2’O-メチル化レベルの比較を含む。
【0087】
別の言い方をすると、公式命名法によれば、本発明の方法は、乳癌に罹患している患者の予後を決定するためのものであり、4個の2’O-メチル化位置18S-Gm1447;28S_Gm1316;28S_Gm4618および18S-Am576の少なくとも1個に限定された、好ましくは4個の2’O-メチル化位置の2’O-メチル化位置ごとの解析を用いた前記2’O-メチル化レベルの比較を含む。
【0088】
この実施形態において、本発明の方法は、生存、好ましくは、全生存、腫瘍悪性度、乳癌サブタイプ(好ましくはエストロゲンおよびプロゲステロンの状態も含まれる)の中から選択される患者の予後を決定するのに特に関連する。
【0089】
予後を決定するための方法は、これらの方法で進行する患者のリスクの指定であるリスク層別化を決定するのに特に関連する。従って、この実施形態において、前記方法により、腫瘍の悪性度およびサイズを含む腫瘍の分子サブタイプ決定または解剖病理学的特徴から生じるリスク層別化を決定することが可能である。
【0090】
予後を決定するための本発明の方法の工程b)を、rRNAの2’O-リボースメチル化位置の2’O-リボースメチル化レベルと、臨床転帰がわかっている、「検査対象患者」と同じ癌に罹患している患者の代表的な集団のものとの比較に関連して、実行するために、2つの選択肢が利用可能である:
・前記代表的な集団における2’O-リボースメチル化レベルの測定値は、これまで利用可能であったか、
・または、前記代表的な集団における2’O-リボースメチル化レベルの測定値は、「検査対象患者」からのサンプルにおいて前記方法の工程a)で測定されたものと並行して行われる追加の工程として得られる。
【0091】
第3の態様において、本発明は、癌に罹患している患者における処置の利益を推定するための方法であって、
a)特定の処置の利益を決定すべき、「検査対象患者」と呼ばれる癌に罹患している患者からのサンプル中のリボソームRNA(rRNA)の2’O-リボースメチル化位置の2’O-リボースメチル化レベルを測定すること、
b)測定されたrRNAの2’O-リボースメチル化位置の2’O-リボースメチル化レベルと、1以上の特定の処置の利益がわかっている、「検査対象患者」と同じ癌に罹患している患者の代表的な集団のものとを比較すること、
c)「検査対象患者」についての特定の処置の期待される利益を、前記代表的な集団から「検査対象患者」のものに近い2’O-リボースメチル化レベル測定値を有する患者群に相当するものを選択することによって決定すること
を含んでなる方法に関する。
【0092】
処置の利益は、本明細書では、腫瘍反応の増加、ならびに/または、特に、全生存、無病生存、無増悪生存、無再発生存、原発性腫瘍部位について局所的もしくは遠隔的の両方、ハザード比またはオッズ比だけでなく、奏効率、疾患の進行、特に、局所的もしくは遠隔的再発の決定を含む生存の観点から測定することができる治療を受けた患者の寿命および/もしくは生活の質として定義される。
【0093】
本発明による方法における処置の利益の推定は、患者における処置の利益の定義、評価または追跡を意味することを意図している。
【0094】
癌の最終段階では、患者における処置の利益を推定するための方法は、治療を受けた患者の生活の質を考慮するために厳密に制限される場合があり、これは、治療効果の利点に関連する他の測定値は無視されるためである。
【0095】
好ましい実施形態において、患者における処置の利益を推定するための方法は、処置有効性欠如状態にある患者における処置の利益を評価するために実行される。「処置有効性欠如」とは、少なくとも1つの前処置に対して反応が不十分であった患者を意味するが、少なくとも1つの前処置に対して満足のいく反応を示したが、前処置中に処置の中止が必要となる中等度から重度の強度の有害事象を少なくとも1つ呈した患者も意味する。「少なくとも1つの前処置に対して反応が不十分である」とは、1以上の前処置に対して陽性の治療反応を示さなかった患者を意味する。
【0096】
別の好ましい実施形態において、まだ治療を受けておらず、最も有望な一次処置を決定すべき患者における処置の利益を推定するための方法は、患者における処置の利益を評価するために実行される。この実施形態において、前記方法は、前記患者の診断段階に組み込み得るため、診断方法として定義し得る。
【0097】
本明細書で使用する場合、「処置」という単語は、あらゆる抗癌療法を意味する。
【0098】
本明細書で使用する「1以上の処置」という表現は、「利用可能な処置のうちの1以上」、特に「従来使用されている利用可能な処置のうちの1以上」を意味する。これに基づいて、ある癌タイプに対して利用可能な処置が1つだけの場合、その方法は、実行されると、患者は、この独自の利用可能な処置の恩恵を受けず、それによる治療を受けるべきではないという結論に結びつく可能性があることは明らかである。しかしながら、その特定の場合には、従来の処置に代わる方法は、例えば、本発明によるリボソームを標的とする1以上の治療薬を選択するための方法により同定され得るものとして、以下に記載されるように考慮され得る。
【0099】
予後決定のための方法について上述したように、それは癌に罹患している患者における処置の利益を推定するための方法の好ましい実施形態であり、工程b)での比較は、2’O-リボースメチル化位置ごとの解析を使用してまたは全ての2’O-リボースメチル化位置の全プロファイル解析を使用して行われる。
【0100】
また、上述したように、rRNAの異なるメチル化部位の「メチル化のレベル」は、当技術分野で公知の任意の関連技術により、特に、リボースの2’O位がメチル化されているかどうかを明確に決定することを可能にする任意の方法により、例えば、上述の方法のいずれか1つにより検出されるべきである。
【0101】
本発明による処置の利益を推定するための方法の好ましい実施形態において、2’O-リボースメチル化位置の2’O-リボースメチル化レベルは、RiboMeth-seq法を使用して計算されたCスコアにより決定される。
【0102】
より好ましくは、2’O-リボースメチル化のレベルは、表1に挙げる106個の部位について測定される。従って、2’Ome値の上述の2つの分析は、個々の2’Omeプロファイルとして106個の値または所定の目的の2’Ome部位の1つの値で構成され、本発明による患者における処置の利益を推定するために使用することができる。
【0103】
本発明による患者における処置の利益を推定するための方法の別の特に好ましい実施形態において、工程b)での比較は、可変位置の1~6の2’O-リボースメチル化位置ごとの解析を使用して行われ、これらは、特定の癌タイプの予後に関する正確なマーカーであり、好ましくは、可変位置の1、2、3、4、5または6は、特定の癌タイプの予後に関する正確なマーカーである。
【0104】
処置の利益を推定するための本発明の方法の工程b)を、rRNAの2’O-リボースメチル化位置の2’O-リボースメチル化レベルと、この特定の処置の利益がわかっている、検査対象患者と同じ癌に罹患している患者集団のものとの比較に関連して、実行するために、2つの選択肢が利用可能である:
・前記代表的な集団における2’O-リボースメチル化レベルの測定値は、これまで利用可能であったか、
・または、前記代表的な集団における2’O-リボースメチル化レベルの測定値は、「検査対象患者」からのサンプルにおいて前記方法の工程a)で測定されたものと並行して行われる追加の工程として得られる。
【0105】
上記を考慮すると、この方法は、癌に罹患している患者を処置するための方法であって、
a)処置が必要な、癌に罹患している患者からのサンプル中のリボソームRNA(rRNA)の2’O-リボースメチル化位置の2’O-リボースメチル化レベルを測定すること、
b)測定されたrRNAの2’O-リボースメチル化位置の2’O-リボースメチル化レベルと、いくつかの特定の処置の利益がわかっている、処置が必要な患者と同じ癌に罹患している患者の代表的な集団のものとを比較すること、
c)前記代表的な集団から、処置が必要な患者のものに近い2’O-リボースメチル化レベル測定値を有する患者群の1つに対応する特定の処置を選択すること、
d)処置が必要な患者に選択した特定の処置を施与すること
を含んでなる方法としても定義し得る。
【0106】
本明細書で使用する「特定の処置」という用語は、癌タイプを考慮して適合された、癌療法に有用な処置を意味する。
【0107】
この処置方法において、工程c)で選択された特定の処置が、処置が必要な患者に施与されるが、2’O-リボースメチル化レベル測定値が、処置が必要な患者のものに近くない各代表的集団のものに対応する他の特定の処置は、処置が必要な患者には施与されない。
【0108】
第4の態様において、本発明は、癌の処置に有用な、リボソームを標的とする1以上の治療薬を選択するための方法であって、
・2’O-リボースメチル化レベルが癌に関連していることが知られている1以上の2’O-リボースメチル化位置を含むリボソーム領域に対応するリボソーム上の標的領域を決定すること、および
・前記標的領域に向けられた、抗生物質を含む1以上のリボソーム標的薬物を同定すること
を含んでなる方法に関する。
【0109】
本発明のこの態様において、治療に関連する可変部位を決定するためのアプローチは、2’O-リボースメチル化位置ごとの解析を使用して行われる。
【0110】
本発明者らは、実際に、個々のレベル(部位ごとまたは位置ごと)での2’Omeの分析も治療標的化にとって非常に興味深いものであることを実証した。実際、1以上の可変部位が、診断特性もしくは予後特性または処置利益の推定あるいは腫瘍関連の表現型形質に関連していることがわかっている場合、それにより、リボソーム内の目的の領域を特定して、これらの特定の変化を示すリボソームを特異的に標的とすることが可能になる。
【0111】
本発明による1以上の治療薬を選択するための方法において、リボソーム上の標的領域の決定は、当技術分野で公知のリボソームの3D構造、特に、クライオ電子顕微鏡法(Cryo-EM)により解決されたヒトリボソーム構造に対応する公開データベースへのアクセスによって利用可能な情報の使用に基づく(14-15)。
【0112】
この方法は次の一般的なアプローチに基づく:
・患者の2’Omeの解析
・特定の分子癌サブタイプ/予後不良および/または利用可能な処置の利益がないかもしくは少ないことおよび/または腫瘍の表現型形質を予測する可変部位の同定、これらは、前記2’O-リボースメチル化位置に対応し、この2’O-リボースメチル化レベルは癌と関連していることが知られている、
・リボソームの構造上のこの/これらの可変部位の位置特定、
・リボソームの構造上のこの/これらの可変部位とリボソーム標的薬物のポケット結合の位置との間の距離の決定;および
・リボソーム内のポケット結合が、特定の分子癌サブタイプ/予後不良および/または処置の利益がないかもしくは少ないことおよび/または腫瘍の表現型形質を予測する1以上の可変部位までの最小かつ等しい距離を示す、リボソーム活性の阻害を可能にする1以上のリボソーム標的薬物の同定。
【0113】
従って、本発明による、癌の処置に有用な、リボソームを標的とする1以上の治療薬を選択するための方法は、好ましくは、以下である、
リボソーム上の標的領域が、次のアプローチ:
・患者の2’Omeの解析
・特定の分子癌サブタイプ/予後不良および/または利用可能な処置の利益がないかもしくは少ないことおよび/または腫瘍の表現型形質を予測する可変部位の同定、これらは、前記2’O-リボースメチル化位置に対応し、この2’O-リボースメチル化レベルは癌と関連していることが知られている、
・リボソームの構造上のこの/これらの可変部位の位置特定、
・リボソームの構造上のこの/これらの可変部位とリボソーム標的薬物のポケット結合の位置との間の距離の決定
により決定され;
1以上のリボソーム標的薬物が、リボソーム内のポケット結合が、特定の分子癌サブタイプ/予後不良および/または処置の利益がないかもしくは少ないことおよび/または腫瘍の表現型形質を予測する1以上の可変部位までの最小かつ等しい距離を示す、リボソーム活性の阻害を可能にする1つまたは複数のものを同定することにより同定される。
【0114】
「処置の利益がない」という表現は、利用可能な処置に対する反応が欠如していることを意味することを意図している。
【0115】
「腫瘍の表現型形質」という表現は、イン・ビトロ癌モデル、in cellulo癌モデルまたはイン・ビボ(in vivo)癌モデルにおいて腫瘍の発生または進行を促進することが示されている2’Oメチル化部位を意味することを意図している。
【0116】
この方法の別の特に好ましい実施形態において、治療に関連する可変部位を同定するためのrRNA 2’Omeの分析は、可変位置の1~6の2’O-リボースメチル化位置ごとの解析を使用して行われ、これらは、特定の癌タイプの予後に関する正確なマーカーであり、好ましくは、可変位置の1、2、3、4、5または6は、特定の癌タイプの予後に関する正確なマーカーである。
【0117】
本明細書で使用する場合、「癌と関連していることが知られている」という表現は、予後不良および/または処置の利益がないかもしくは少ないことなどの診断特性もしくは予後特性を予測すること、かつ/あるいは例えば、実験モデルにおいて癌の発生および進行に関連する表現型形質を促進することが示されていることが知られていることを意味する。
【0118】
治療に関連する可変部位を同定するための2’Omeの分析は、好ましくは、本発明に従って上記したように、癌に罹患している患者における予後を決定するためおよび/または処置の利益を推定するための方法によって実行される。本発明の異なる態様で使用される、上で詳述した分析を実行することにより、そのメチル化レベルによって特定の分子癌サブタイプ/予後不良および/または処置の利益がないかもしくは少ないことが予測される2’O-リボースメチル化位置が決定されるため、これらの予測部位の位置に応じてリボソーム上の対応する標的領域が同定され得る。
【0119】
本明細書で使用する場合、「リボソーム標的薬物」という用語は、リボソームに結合し、その翻訳活性を障害する、または完全に阻害もしくは調節もしくは修飾する小分子を指す。
【0120】
リボソーム内の上述の標的領域に向けられた1以上のリボソーム標的薬物の同定は、その標的環境がリボソーム活性の障害、または完全な阻害もしくは調節もしくは修飾を可能にし、治療に関連するバリアント部位の少なくとも1つを含む1つまたは複数のものを選択することによって行われる。これは、特に、公開データベースへのアクセスによって利用可能な情報を使用して行われ得る。標的環境は、標的領域に位置する可変部位の少なくとも1つを含む特定のヌクレオチドおよび/またはアミノ酸によって構成される。
【0121】
好ましくは、リボソーム内の上述の標的領域に向けられた1以上のリボソーム標的薬物を同定することに加えて、癌の治療に有用な最も適当なリボソーム標的薬物の選択は、すでに市場で承認されているかまたは医療用途に必要な特性を持ちやすいものの間で行われる。
【0122】
好ましい実施形態において、癌の処置に有用な1以上のリボソーム標的薬物の同定は、抗生物質または抗生物質群の間で行われ、より好ましくは、アミノグリコシド、テトラサイクリン、マクロライド、クロラムフェニコール、リンコサミド、リネゾリドおよびストレプトグラミンの間で行われる。
【0123】
上述したように、rRNAの異なるメチル化部位の「メチル化のレベル」は、当技術分野で公知の任意の関連技術により、特に、リボースの2’O位がメチル化されているかどうかを明確に決定することを可能にする任意の方法により、例えば、上述の方法のいずれか1つにより検出されるべきである。
【0124】
本発明によるリボソームを標的とする1以上の治療薬を選択するための方法の好ましい実施形態において、2’O-リボースメチル化位置の2’O-リボースメチル化レベルは、RiboMeth-seq法を使用して計算されたCスコアにより決定される。
【0125】
より好ましくは、2’O-リボースメチル化のレベルは、表1に挙げる106個の部位について測定される。従って、2’Ome値の上述の2つの分析は、個々の2’Omeプロファイルとして106個の値または所定の目的の2’Ome部位の1つの値で構成され、リボソームを標的とする1以上の治療薬を選択するためのこの方法において使用することができる。
【0126】
本発明による、癌の処置に有用な、リボソームを標的とする1以上の治療薬を選択するための方法の好ましい実施形態は、次のより具体的なアプローチに基づく:
・患者の2’Omeの解析、より好ましくはRiboMeth-seq技術による、
・特定の分子癌サブタイプ/予後不良および/または処置の利益がないかもしくは少ないことおよび/または腫瘍の表現型形質を予測する可変部位の同定、これらは前記2’O-リボースメチル化位置に対応し、この2’O-リボースメチル化レベルは癌と関連していることが知られている、
・リボソームの構造上のこの/これらの可変部位の位置特定、
・リボソームの構造上のこの/これらの可変部位と抗生物質のポケット結合の位置との間の距離の決定、
・そのポケットが、リボソーム活性の障害、または完全な阻害もしくは調節もしくは修飾を可能にし、リボソーム内のポケット結合が、特定の分子癌サブタイプ/予後不良および/または処置の利益がないかもしくは少ないことを予測する1以上のバリアント部位までの最小かつ等しい距離を示す抗生物質の同定。
【0127】
本発明による、癌の処置に有用な、リボソームを標的とする1以上の治療薬を選択するための方法において、2つの方法論を使用し得る:
・この方法を、癌に罹患している患者の代表的な集団に対して実行して、予測可変位置を同定し、従って、リボソーム内の関連する標的領域を同定すること、
・この方法を、癌に罹患していない患者で構成される「健康な」集団と、癌に罹患している患者で構成される代表的な病的集団との比較により実行して、代表的な病的集団に特有の可変位置を同定し、従って、リボソーム内の関連する標的領域を同定すること。この実施形態において、癌に罹患していない患者の集団と比較が実行される場合、「健康な」集団は実際には「対照集団」に相当する。
【0128】
これが、本発明による、癌の処置に有用な、リボソームを標的とする1以上の治療薬を選択するための方法の好ましい実施形態において、癌に関連する2’O-リボースメチル化位置が以下によって同定される理由である:
a)癌に罹患している患者の代表的な集団からの生体サンプル中のリボソームRNA(rRNA)の2’O-リボースメチル化位置の2’O-リボースメチル化レベルを測定すること、
b)各2’O-リボースメチル化位置について測定された2’O-リボースメチル化レベルの、前記代表的な集団の患者の各サンプル間の変動性を決定することにより各2’O-リボースメチル化位置の個々のメチル化状態を評価すること、
c)前記個々のメチル化状態が「可変状態」である2’O-リボースメチル化位置のセットを選択すること。好ましくは、メチル化状態の評価は、上記で特定したように、工程b1)およびb2)に従って行われる。
【0129】
また、本発明による、癌の処置に有用な、リボソームを標的とする1以上の治療薬を選択するための方法の別の好ましい実施形態において、癌に関連する2’O-リボースメチル化位置が以下によって同定される:
a)癌に罹患している患者の代表的な集団からの生体サンプル中および癌に罹患していない患者集団(対照集団)からの生体サンプル中のリボソームRNA(rRNA)の2’O-リボースメチル化位置の2’O-リボースメチル化レベルを測定すること、
b)前記2集団(癌に罹患している患者の代表的な集団および癌に罹患していない患者の対照集団)の患者の各サンプル間の、各2’O-リボースメチル化位置について測定された2’O-リボースメチル化レベルの変動性を決定することにより各2’O-リボースメチル化位置の個々のメチル化状態を評価すること、
c)前記個々のメチル化状態が、前記癌に罹患している患者の代表的な集団で「可変状態」であり、前記対照集団で「可変状態」でない2’O-リボースメチル化位置のセットを選択すること。好ましくは、メチル化状態の評価は、上記で特定したように、工程b1)およびb2)に従って行われる。
【0130】
別の言い方をすると、この工程c)は、個々のメチル化状態が、癌に罹患している患者の代表的な集団では「可変状態」であるが癌に罹患していない患者集団では「可変状態」ではない2’O-リボースメチル化位置のセットを選択することである。
【0131】
本発明による方法によって、癌の処置に有用な、リボソームを標的とする最も有望な治療薬が選択されると、全体的な処置効率を改善する目的で、リボソームに基づく薬物が単独で、または従来の処置と組み合わせて使用され得る。本方法の特定の実施形態では、その方法により、抗生物質、好ましくは、上述の抗生物質群の間で選択されたものが選択され得、これらは、単独で、または従来の処置と組み合わせて使用され得る。
【0132】
本発明の全ての方法において、メチル化レベル、メチル化状態、可変状態の決定を含む分析アプローチに関して潜在的に関連するマーカーを同定するための方法について述べた全ての好ましい実施形態は、それに基づく本発明の他の全ての方法にも、特定の分子癌サブタイプ、予後、処置の利益およびリボソームを標的とする治療薬の選択または患者の臨床追跡調査おける他の関連する応用を決定するために適用される。
【0133】
本発明の文脈において、癌における臨床的重要性と正確に関連する関連マーカーを含むrRNA上の修飾領域を特異的に認識することができる分子を含むキットも記載される。目的の2’Ome部位を含む修飾領域を特異的に検出することができるいかなる種類の分子も、例えば、癌における臨床的重要性と正確に関連している2’Ome部位の少なくとも1つを特異的に検出するプライマー、プローブまたは抗体もしくはそれらのフラグメントは本発明のキットに含まれ得る。
【0134】
1つの好ましい実施形態において、本発明のキットは、乳がんを患っている患者に対して、上記の全ての適用方法において予測可能であり、診断、予後診断、処置に対する利益およびリボソームを標的とする治療薬の選択に関する4個の2’O-メチル化位置18S-Gm1447;28S-Gm1303;28S-Gm4588および18S-Am576のうちの少なくとも1個を特異的に認識するまたは検出することができる分子を含む。好ましくは、このキットは、これらの予測可変部位のうちの2個、3個または4個を特異的に検出することができる分子を含む。
【0135】
本明細書で使用する場合、1以上の可変部位を「特異的に標的とするプライマー」という表現は、様々な配列を有し、前記予測可変部位を含むヌクレオチドrRNA配列の部分を包含するアンプリコン特異的に生成することができる一対のプライマーを意味する。
【0136】
本明細書で使用する場合、「プライマー」という用語は、rRNA上の関連する標的領域の5’または3’領域に特異的にハイブリダイズするまたはアニールすることができる核酸分子を指す。一般に、それらは約18~22ヌクレオチドの長さであり、約60~120ヌクレオチド長の領域の両端でアニールする。それらは対で使用する必要があるため、「プライマー対」または「プライマーセット」と呼ばれる場合も多い。
【0137】
本明細書で使用する場合、「プローブ」という用語は、目的のrRNA領域を特異的にハイブリダイズすることが可能な分子を指す。
【0138】
好ましい実施形態において、本発明のプローブは、2’O-メチル化位置18S-Gm1447;28S-Gm1303;28S-Gm4588および18S-Am576に相補的である少なくとも20個の連続したヌクレオチドを含む。より好ましい実施形態において、本発明によるプローブとして使用することができる分子は、合計19ヌクレオチドの最小サイズを有する。さらにより好ましい実施形態において、これらの分子は、18~20個のヌクレオチド(合計)を含む。
【0139】
本発明によるキットの実施のために使用され得る技術の中で、RT産物を定量するためのPCRに基づいたアプローチ(例えば、RT-PCR、RT-qPCRまたはddPCR)を用いる技術が挙げられ、これは、低dNTP濃度での2’O-メチル化による逆転写反応の阻害、および高dNTP濃度での逆転写による内部参照としての全rRNAの検出に依存する。例えば、本発明のキットの実施は、Belin et al, Plos One 2009(10)に記載されているとおり、具体的には
図4、特に
図4Aに基づいて行い得る。
【0140】
当業者は、プライマーまたはプローブが目的の予測可変部位を含むrRNAの増幅またはハイブリダイゼーションを可能にする適当な条件および適当な試薬を十分に認識し、知っている。当業者はまた、本発明のキットに含まれ得る、目的の2’Ome部位を含む修飾領域に対して特異的に向けられた抗体を生成するための知識を有する。
【0141】
本明細書で使用する場合、「キット」という用語は、材料を送達するための任意のシステムを指す。本発明の文脈において、これには、反応試薬(例えば、適当な容器内のオリゴヌクレオチド、酵素、および/またはある部位から他の部位への陽性および陰性対照など)および/または支援材料(例えば、バッファー、アッセイを実行するための書面による指示など)の保管、輸送、または送達を可能にするシステムが含まれる。例えば、キットには、関連する反応試薬および/または支援材料を含む1以上のエンクロージャー(例えば、箱)が含まれる。本キットはまた、1以上の試薬、バッファー、ハイブリダイゼーション培地、核酸、プライマー、ヌクレオチド、プローブ、分子量マーカー、酵素、ビーズなどの固形支持体、データベース、生データを分析するためのコンピュータプログラムおよび/または本方法の実施を容易にするために、マルチウェルプレートなどの使い捨ての実験装置も含み得る。本キットに含めることができる酵素には、ヌクレオチドポリメラーゼなどが含まれる。2’Omeを含むまたは含まない安定した部位または合成RNAを特異的に検出することができる分子を、本発明のキットの対照として使用することができる。
【0142】
好ましくは、乳癌に罹患している患者に対する上記の全ての適用方法(診断、予後診断、処置に対する利益およびリボソームを標的とする治療薬の選択)に有用な本発明のキットまたはシステムは、上述の4つの位置以外の可変部位を特異的に標的とする、認識するまたは検出する他の分子を含まない。
【0143】
加えて、乳癌に罹患している患者における、上記の方法で定義された異なる用途、分子癌サブタイプ診断、予後決定、処置利益の推定およびリボソームを標的とする治療薬の選択のためのこのキットの使用も記載される。これらの異なる適用方法について記載した全ての好ましい実施形態は、患者が乳癌を患っている限り、このキットの使用にも適用される。このような使用は「イン・ビトロ」または「エクス・ビボ」で実行される。
【0144】
このようなキットおよびその使用は、本発明の追加の態様を表す。
【図面の簡単な説明】
【0145】
【
図1】
図1は、ヒト生体サンプルを配列決定する場合のRiboMeth-seq技術の再現性およびロバスト性を表している。20個のヒト乳房腫瘍の技術的複製物間の3つのrRNAについてのr2相関係数は、累積レベルとして示している。5.8S、18S、および28S rRNAそれぞれについて、技術的複製物の50%、85%、および65%以上がr2>0.8を示し、5.8S rRNAで最も小さな相関が観察された。これは、おそらく18Sおよび28Sと比較してサイズが小さいためである(1875または5035bpそれぞれに対して157bp)。
【
図2a】
図2は、乳房腫瘍間のrRNA 2’O-メチル化レベルの安定性および変動性を表している。195個の原発性ヒト乳房腫瘍のシリーズにおいて、RiboMeth-seqを使用して、106個のrRNA 2’O-メチル化部位におけるrRNA 2’O-メチル化のレベル(すなわち、Cスコア)を決定した。(a)データを階層的クラスタリングとして示し、各腫瘍(行)の各位置(列)のCスコアを示している(グレースケールの影付き)。デンドログラムは、乳房腫瘍サンプル4群(右のパネル、G1~G4)を識別するrRNA 2’O-メチル化プロファイル(左のパネル)に基づいて、または腫瘍間の所定の部位におけるrRNA 2’O-メチル化レベル(上のパネル)において乳房腫瘍間の類似性の関係を表す。
【
図2b-1】
図2は、乳房腫瘍間のrRNA 2’O-メチル化レベルの安定性および変動性を表している。195個の原発性ヒト乳房腫瘍のシリーズにおいて、RiboMeth-seqを使用して、106個のrRNA 2’O-メチル化部位におけるrRNA 2’O-メチル化のレベル(すなわち、Cスコア)を決定した。(b)は、上記(a)の各RNA 2’OMe部位をX軸の左から右にリストアップした表である。
【
図2b-2】
図2は、乳房腫瘍間のrRNA 2’O-メチル化レベルの安定性および変動性を表している。195個の原発性ヒト乳房腫瘍のシリーズにおいて、RiboMeth-seqを使用して、106個のrRNA 2’O-メチル化部位におけるrRNA 2’O-メチル化のレベル(すなわち、Cスコア)を決定した。(b)は、上記(a)の各RNA 2’OMe部位をX軸の左から右にリストアップした表である。
【
図2b-3】
図2は、乳房腫瘍間のrRNA 2’O-メチル化レベルの安定性および変動性を表している。195個の原発性ヒト乳房腫瘍のシリーズにおいて、RiboMeth-seqを使用して、106個のrRNA 2’O-メチル化部位におけるrRNA 2’O-メチル化のレベル(すなわち、Cスコア)を決定した。(b)は、上記(a)の各RNA 2’OMe部位をX軸の左から右にリストアップした表である。
【
図3a】
図3は、乳癌における可変rRNA 2’O-メチル化レベルの生物学的関連性を表している。(a)106個のrRNA 2’O-メチル化部位の各々における195個のヒト原発性乳房腫瘍間のCスコア変動を、四分位範囲(IQR)の増加によってランク付けした。IQRの相違に基づいて、2つのクラスのrRNA 2’O-メチル化部位を定義した:最も安定したCスコアを有する部位および最も可変のCスコアを有する部位。
【
図3b-1】
図3は、乳癌における可変rRNA 2’O-メチル化レベルの生物学的関連性を表している。(b)は、上記(a)の各RNA 2’OMe部位をX軸の左から右にリストアップした表である。
【
図3b-2】
図3は、乳癌における可変rRNA 2’O-メチル化レベルの生物学的関連性を表している。(b)は、上記(a)の各RNA 2’OMe部位をX軸の左から右にリストアップした表である。
【
図3b-3】
図3は、乳癌における可変rRNA 2’O-メチル化レベルの生物学的関連性を表している。(b)は、上記(a)の各RNA 2’OMe部位をX軸の左から右にリストアップした表である。
【
図4】
図4は、乳癌において最も高い変動性を示すrRNA 2’O-メチル化部位18S-Gm1447におけるrRNA 2’O-メチル化レベルの変動性の例を表している。このプロットは、このrRNA 2’O-メチル化部位における195個のヒト原発性乳房腫瘍の各々(x軸)についてのCスコア(y軸)を示している。点線は、原発性乳房腫瘍の95%を包含する平均±2標準偏差を示す。
【
図5a】
図5は、195個のヒト原発性乳房腫瘍間でのrRNA 2’O-メチル化レベルの変動性を表している。四分位範囲(IQR)によって測定されたCスコアの患者間変動性に基づく患者間のレベル変動性に基づいて、2つのクラスのrRNA 2’O-メチル化部位を定義している。このプロットは、106個のrRNA 2’O-メチル化部位の各々における195個のヒト原発性乳房腫瘍を使用して計算されたCスコアのIQRを、IQRの増加によってランク付けして表している。カットオフ部位は、IQR値がこの直線上に存在しなくなる、すなわち、この部位を超えると、直線がそれらを通るようにするには傾きを変える必要がある部位である。これにより、2つのクラスのrRNA 2’O-メチル化部位を決定することができた:最も安定したCスコアを有するもの;および最も可変のCスコアを有するもの。全体として、これらのデータは、rRNA 2’O-メチル化部位の60%が、ヒトにおけるrRNA 2’O-メチル化レベルが保存された化学修飾ヌクレオチドに相当し、一方、これらの部位の40%は2’O-メチル化されている場合もされていない場合もあることを示している。
【
図5b-1】
図5は、195個のヒト原発性乳房腫瘍間でのrRNA 2’O-メチル化レベルの変動性を表している。四分位範囲(IQR)によって測定されたCスコアの患者間変動性に基づく患者間のレベル変動性に基づいて、2つのクラスのrRNA 2’O-メチル化部位を定義している。このプロットは、106個のrRNA 2’O-メチル化部位の各々における195個のヒト原発性乳房腫瘍を使用して計算されたCスコアのIQRを、IQRの増加によってランク付けして表している。カットオフ部位は、IQR値がこの直線上に存在しなくなる、すなわち、この部位を超えると、直線がそれらを通るようにするには傾きを変える必要がある部位である。これにより、2つのクラスのrRNA 2’O-メチル化部位を決定することができた:最も安定したCスコアを有するもの;および最も可変のCスコアを有するもの。全体として、これらのデータは、rRNA 2’O-メチル化部位の60%が、ヒトにおけるrRNA 2’O-メチル化レベルが保存された化学修飾ヌクレオチドに相当し、一方、これらの部位の40%は2’O-メチル化されている場合もされていない場合もあることを示している。
【
図5b-2】
図5は、195個のヒト原発性乳房腫瘍間でのrRNA 2’O-メチル化レベルの変動性を表している。四分位範囲(IQR)によって測定されたCスコアの患者間変動性に基づく患者間のレベル変動性に基づいて、2つのクラスのrRNA 2’O-メチル化部位を定義している。このプロットは、106個のrRNA 2’O-メチル化部位の各々における195個のヒト原発性乳房腫瘍を使用して計算されたCスコアのIQRを、IQRの増加によってランク付けして表している。カットオフ部位は、IQR値がこの直線上に存在しなくなる、すなわち、この部位を超えると、直線がそれらを通るようにするには傾きを変える必要がある部位である。これにより、2つのクラスのrRNA 2’O-メチル化部位を決定することができた:最も安定したCスコアを有するもの;および最も可変のCスコアを有するもの。全体として、これらのデータは、rRNA 2’O-メチル化部位の60%が、ヒトにおけるrRNA 2’O-メチル化レベルが保存された化学修飾ヌクレオチドに相当し、一方、これらの部位の40%は2’O-メチル化されている場合もされていない場合もあることを示している。
【
図5b-3】
図5は、195個のヒト原発性乳房腫瘍間でのrRNA 2’O-メチル化レベルの変動性を表している。四分位範囲(IQR)によって測定されたCスコアの患者間変動性に基づく患者間のレベル変動性に基づいて、2つのクラスのrRNA 2’O-メチル化部位を定義している。このプロットは、106個のrRNA 2’O-メチル化部位の各々における195個のヒト原発性乳房腫瘍を使用して計算されたCスコアのIQRを、IQRの増加によってランク付けして表している。カットオフ部位は、IQR値がこの直線上に存在しなくなる、すなわち、この部位を超えると、直線がそれらを通るようにするには傾きを変える必要がある部位である。これにより、2つのクラスのrRNA 2’O-メチル化部位を決定することができた:最も安定したCスコアを有するもの;および最も可変のCスコアを有するもの。全体として、これらのデータは、rRNA 2’O-メチル化部位の60%が、ヒトにおけるrRNA 2’O-メチル化レベルが保存された化学修飾ヌクレオチドに相当し、一方、これらの部位の40%は2’O-メチル化されている場合もされていない場合もあることを示している。
【
図6】
図6は、3つの異なる癌タイプ:乳癌、急性骨髄性白血病(AML)またはB細胞リンパ腫に相当する脾辺縁帯リンパ腫(SMZL)に罹患している患者から得られた腫瘍サンプルで確認された可変部位のリストの比較を表している。
【
図7】
図7は、乳癌における可変rRNA 2’O-メチル化部位の生物学的および臨床的関連性を表している。乳癌サブタイプ、ホルモンおよびHER2受容体、ならびに腫瘍悪性度間で2’O-メチル化レベルが有意に異なる4つの可変rRNA部位の概要。ER:エストロゲン受容体;PR:プロゲステロン受容体;ルミナール:ER+ PR+/- HER2-;HER2+:ER- PR- HER2+;TNBC:ER- PR- HER2-;G:悪性度。
【
図8】
図8は、部位18S-Gm1447におけるrRNA 2’O-メチル化レベルと乳癌患者の転帰との関連を表している。カプラン・マイヤー曲線によって、部位18S-Gm1447における低レベルの2’O-メチル化を特徴とする乳房腫瘍を有する患者が最も悪い全生存を示すことが示唆された。
【
図9】
図9は、部位18S-Gm1447におけるrRNA 2’O-メチル化レベルと乳癌の進行との関連を表している。カプラン・マイヤー曲線によって、部位18S-Gm1447における低レベルの2’O-メチル化を特徴とする乳房腫瘍を有する患者が最も悪い無増悪生存を示すことが示唆された。
【
図10】
図10は、rRNA 2’O-メチル化プロファイルと乳癌患者の転帰との関連を表している。カプラン・マイヤー曲線によって、G2 rRNA 2’O-メチル化プロファイルを特徴とする乳房腫瘍を有する患者が最も悪い全生存を示すことが示唆された。
【
図11】
図11は、rRNA 2’O-メチル化プロファイルと内因性乳癌サブタイプとの関連を表している。乳癌サブタイプに関しては、4群間の割り当てに有意差が観察された。具体的には、閉じたrRNA 2’Omeプロファイルを示すG2群は、他のものと比較してHER2+乳癌サブタイプの頻度が低いことを示す。ルミナール:ER+ PR+/- HER2-;HER2+:ER- PR- HER2+;TNBC:ER- PR- HER2-。
【
図12】
図12は、rRNA 2’O-メチル化プロファイルと腫瘍悪性度との関連を表している。腫瘍悪性度に関しては、4メチル化群間の割り当てに有意差が観察された。具体的には、閉じたrRNA 2’Omeプロファイルを示すG1群は悪性度1の乳房腫瘍がない。
【
図13】
図13は、診断時のサイズおよび2’Omeプロファイルの両方に関するそれらの腫瘍の状態に応じた乳癌患者の転帰を表している。カプラン・マイヤー曲線によって、G2 rRNA 2’O-メチル化プロファイルを特徴とする小さな乳房腫瘍を有する患者が大きな乳房腫瘍を有する患者と同様に低い全生存を示すことが示唆されており、通常、小さなサイズの腫瘍は大きなサイズの腫瘍と比較して良好な予後と関連している。
【
図14】
図14は、rRNA 2’O-メチル化プロファイルと、手術および補助放射線療法/ホルモン療法で処置した乳癌患者の生存との関連を表している。カプラン・マイヤー曲線によって、閉じたrRNA 2’O-メチル化プロファイルを特徴とする乳房腫瘍を有する患者が異なる転帰を示すことが示されている(P=0.0665)。具体的には、手術+放射線療法/ホルモン療法で処置した集団全体(黒線)と比較して、G2 rRNA 2’O-メチル化プロファイルの腫瘍を有する患者は、G3 rRNA 2’O-メチル化プロファイルの腫瘍を有する患者よりも良好な全生存を示している。
【
図15】
図15は、rRNA 2’O-メチル化プロファイルに基づいた神経膠腫腫瘍のクラスタリングを表している。6人の健康なドナーから得られた46個の脳サンプルのコホート(四角内のx)を分析した、13個の乏突起神経膠腫(四角)、13個の星細胞腫(丸)および14個の膠芽腫(三角)。2つの内部対照を使用して、技術的課題を評価した(X、内部対照RNA1およびRNA2)。このコホートを使用して、主成分分析(Principal Component Analysis)(PCA)法により、同様のrRNA 2’O-メチル化プロファイルを示す2つの神経膠腫腫瘍群を特定し、そのうちの1つは14個の全ての膠芽腫で構成されていた(白抜きの黒丸)。
【
図16】
図16は、rRNA 2’O-メチル化プロファイルと、神経膠腫患者の全生存および無増悪生存ならびに神経膠腫腫瘍の有糸分裂との関連を表している。PCA法の次元によって分けられた異なるrRNA 2’O-メチル化プロファイル(
図15)と臨床データとの相関分析は、相関r2係数および関連するp値として示されている。次元2で特定されたrRNA 2’O-メチル化プロファイルの類似性に基づいた2群の神経膠腫腫瘍のクラスタリングは、全生存、無増悪生存および有糸分裂と有意に関連しており、これらの全ての特徴は浸潤性神経膠腫腫瘍を特定するためのゴールドスタンダード基準となる。
【
図17】
図17は、上皮細胞と比較した間葉細胞における可変rRNA 2’Ome部位の同定を表している。上皮hMEC細胞株および間葉hMEC-ZEB1細胞株の106個の位置におけるrRNA 2’Omeレベルを、RiboMeth-seqを使用して分析した(n=5)。rRNA 2’Omeレベルの有意な変動が2つの部位で観察され(p値<0.05):28S-Um2402および28S-Gm4588、それぞれの2’Omeレベルは、上皮細胞と比較して、間葉細胞で減少および増加している。
【
図18】
図18は、間葉細胞における可変rRNA 2’Ome部位を包含する抗生物質結合領域の同定を表している。2’Ome部位(球状ドット)および周知の真核生物特異的抗生物質の結合ポケット(点線の丸)は、クライオ電子顕微鏡法(Cryo-EM)により解決されたリボソームの利用可能なヒト構造に位置していた(PDB、AUG0)。28S-Um2402および28S-Gm4588位置は、間葉細胞と上皮細胞の間で2’Omeレベルが異なり、アニソマイシン抗生物質の結合ポケットの近くに存在する。
【
図19】
図19は、上皮細胞と比較して、抗生物質処置に対する間葉細胞の感受性が増加していることを表している。アニソマイシンの濃度の増加に応じて、上皮細胞および間葉細胞の細胞生存率を、リアルタイムモニタリングシステムを使用してモニタリングした。hMEC-ZEB1間葉細胞は、hMEC上皮細胞よりもアニソマイシン処置に対する感受性が高い。
【実施例】
【0146】
実施例1-乳癌に罹患している患者のヒトサンプル(固形腫瘍)における2つのクラスのrRNA 2’O-メチル化部位の同定
材料および方法
ヒトサンプル. 195個の女性の原発性乳房腫瘍のシリーズは、1997年から2011年まで収集され、倫理審査の承認を受けて(REC Reference 07/S1402/90)、Tayside Tissue Bank(TTB、ダンディー、スコットランド、UK)によって維持されたものである(19)。原発性乳房腫瘍のこの遡及的なシリーズは、非浸潤性(45%)と浸潤性(55%)の両方のリンパ節腫瘍で構成されている。すでに記載したように(19)、全RNAはTTBサービスによって凍結組織から抽出された。このシリーズは、特に、全生存と、腫瘍サイズ(P<0.0001***)、リンパ節浸潤(P=0.0079**)、悪性度(P=0.0151*)および乳癌サブタイプ(P=0.0569)との関連に関して、予想された臨床的特徴を示した。ヒトRNA参照サンプル(すなわち、RNA参照)は、20個の異なるヒト成人および胎児の正常主要臓器から調製したrRNA(Human XpressRef Universal Total RNA、Qiagen)の校正されたソースとして使用した。
【0147】
RiboMeth-seq. 106個のrRNA 2’O-メチル化部位におけるrRNA 2’O-メチル化のレベルを、RiboMeth-seqによって決定した(7-8、13)。2’O-メチル化の存在により、2’O-メチル化ヌクレオチドの3’に位置するホスホジエステル結合がアルカリ加水分解から保護される。従って、所定のヌクレオチドnにおける2’O-メチル化の存在により、ヌクレオチドn+1で始まり位置nで終わるRNA断片の提示不足が誘導され、対応するヌクレオチド位置における2’O-メチル化レベル(またはCスコア)(0から1まで変化する)の計算が可能になる(8):Cスコア0は、全てのrRNA分子が所定の部位において2’O-メチル化されていないことを意味し、Cスコア1は、全てのrRNAが所定の部位において完全に2’O-メチル化されていることを示し、0<Cスコア<1は、サンプルの所定の部位において2’O-メチル化rRNA分子と非2’O-メチル化rRNA分子が混在していることを意味する。RiboMeth-seqは、Illuminaシーケンシング技術を使用して実行し、生データは前述のように加工した(7、13)。トリミング後の総リード数の中央値は720万に達し、これらのリードは7.2kb長のrRNA配列上に整列されており、これは最適なシーケンシングデプスに相当する(7、13)。
【0148】
乳癌シリーズの分析. 214個の原発性乳房腫瘍の初期シリーズうち、195個の原発性乳房腫瘍サンプルのRiboMeth-seqデータがQC基準に合格した(初期シリーズの91%に相当)ため、下流の分析のために保存した。195個のサンプルの個々のrRNA 2’O-メチル化部位106カ所のCスコアを使用して、教師なしデータ分析(階層的クラスタリングおよび主成分分析)を実行した。rRNA 2’O-メチル化プロファイルは、箱ひげ図、折れ線グラフまたは棒グラフのいずれかで示した。rRNA 2’O-メチル化部位の「安定」クラスおよび「可変」クラスへの分類は、部位の変動性(四分位範囲、IQRに関して)に基づいて経験的に行い、カットオフ部位は、IQR値がこの直線上に存在しなくなる部位である。閾値より低いIQR値を有する2’O-メチル化部位を「安定」と呼び、閾値を超えるIQR値を有する部位を「可変」と指定した。統計分析およびグラフ表示は、R v3.6.3またはGraphPad Prism v7.0aソフトウェア (GraphPad Software、Inc) を使用して実行した。
【0149】
rRNA 2’O-メチル化の進行およびマッピング. rRNA 2’O-メチル化部位を、クライオ電子顕微鏡法(Cryo-EM)によって決定されたHeLa癌細胞ヒトリボソームの構造上にマッピングし(14-16)、画像はPyMolソフトウェアを使用して描画した。観察は、すでに議論されているように(参考文献14-16)、以前に報告されたtRNAまたはリボソーム関連因子の3D分子ドッキング分析に基づいた。
【0150】
結果
ヒトサンプルに対するRiboMeth-seq技術の最適化
ヒト原発性乳房腫瘍におけるrRNA 2’O-メチル化をプロファイリングするために、RiboMeth-seq技術を使用した。RiboMeth-seq技術による2’O-メチル化レベルの測定は、rRNAホスホジエステル結合の部分的アルカリ加水分解に依存し、隣接するリボースが2’位でメチル化されると加水分解に反応しにくくなる(7、8、13)。RiboMeth-seq処理により、106個のrRNA 2’O-メチル化位置のそれぞれで、2’O-メチル化のレベルを反映するスコア(すなわち、Cスコア)が得られる。
【0151】
rRNA 2’O-メチル化プロファイリングは、大規模シリーズのヒトサンプルに対して実行されたことがないため、数多くの指標に基づいたRiboMeth-seqに特化した広範な品質管理を開発した。20個の異なるヒト成人および胎児の正常主要臓器と20個の原発性乳房腫瘍サンプルの試験セットの混合物で構成されるヒトRNA参照サンプルを使用して、技術的反復間のCスコアにおける強い相関を示している(
図1)。全体として、我々のデータは、凍結腫瘍生検材料などのデリケートな生体材料を配列決定する場合でも、ハイスループットRiboMeth-seq技術は再現性があり厳格な技術であることを実証している。
【0152】
2つのクラスのrRNA 2’O-メチル化部位の同定
次に、RiboMeth-seqを使用して、浸潤性腫瘍および非浸潤性腫瘍の混合物から構成される195個の原発性乳癌のシリーズにおけるrRNA 2’O-メチル化をプロファイリングした(12)。教師なし統計分析により、rRNA 2’O-メチル化レベルの変動性が明らかになった(
図2)。まず、所定の腫瘍について、106個のrRNA 2’O-メチル化部位間で2’O-メチル化レベルが0~0.98で変動することが示された。これは、単一のヒト腫瘍サンプルにおいて、全てのrRNA分子が106部位において完全かつ均等に2’O-メチル化されていないことを実証している。
【0153】
階層的クラスタリングにより、195個のヒト腫瘍を比較すると、所定のrRNA部位では、2’O-メチル化レベルが異なることも明らかになった(すなわち、患者間の変動性)(
図2)。患者間の2’O-メチル化レベルの変動性に基づいて、rRNA 2’O-メチル化部位の2つのクラスを定義した(
図3)。これらの2つのクラスへの分類は、部位の個体内の変動性(特定部位における四分位範囲、IQRに関して)に基づいて経験的に行った(
図4-5)。第1のクラスには、60個のrRNA 2’O-メチル化部位(全てのrRNA 2’O-メチル化位置の56.6%)が含まれ、これらのシリーズが乳癌サブタイプのフルスペクトルを表すにもかかわらず、そのレベルは195個の腫瘍サンプル間で低い患者間の変動性を示す(
図2-3)。その後、それらは195個の腫瘍間で最も安定したCスコアを示すため、「安定」部位と呼ぶ。第2のクラスは、2’O-メチル化レベルにおいて高い患者間の変動性を示す、限られた数のrRNA 2’O-メチル化部位(46部位、rRNA 2’O-メチル化位置のおよそ43.4%)に相当する(「可変」部位)。それらの中で、28S-Am1313、28S-Cm2352および28S-Gm3723部位は重要な患者間の変動性を示し、Cスコアは0から>0.90の範囲であり、異なる腫瘍ではヌルCスコアが観察された(
図3)。これらのデータは、rRNA 2’O-メチル化がヒトサンプル間で変動することを示し、ヒトサンプル内に安定クラスと可変クラスのrRNA 2’O-メチル化部位が共存していることを実証している。
【0154】
実施例2-異なる癌タイプにおけるバリアント部位の比較
材料および方法
ヒトサンプル. 急性骨髄性白血病(AML)患者から得られた6サンプルのシリーズを使用した。サンプルは、骨髄および/または血液サンプルから精製したCD34+細胞に相当するものであった。全RNA精製は、Bourdon et al.によって記載されているように実行した(12)。
【0155】
脾辺縁帯リンパ腫(SMZL)患者から得られた33サンプルのシリーズを使用した。SMZLは、B細胞リンパ腫に相当するものであった。全RNA精製は、供給業者の説明に従って、NucleoSpin Tripepキット(Macherey-Nalgen)を使用して実行した。
【0156】
上記実施例1に記載したように、RiboMeth-seq分析を適用した。
【0157】
結果
異なる癌タイプにおける共通のrRNA 2’Ome部位を特定するために、まず、固形癌のコホート(乳癌、n=195)および2つのシリーズの血液癌(AML、n=6;B細胞リンパ腫、n=33)において、RiboMeth--seqを使用して、rRNAの106個の2’Ome部位のrRNA 2’Omeレベルを測定した。各癌タイプについて、各rRNA 2’Ome部位のメチル化状態(すなわち、安定か可変か)を、(上記実施例1に記載したように)IQRを使用して腫瘍サンプル間のrRNA 2’Omeレベルの変動性を分析することにより決定した。結果を
図6に示している。
【0158】
可変部位の数は癌タイプに依存し、乳癌およびBリンパ腫は46個の可変部位に関連し、AMLは33個に関連していると思われた。この差が、AML癌タイプで利用可能なサンプル数が少ないことに起因する可能性を排除することはできない。次に、ベン図を使用して、可変部位の3つのリストをつき合せて、3つの癌タイプ、2つの癌タイプのみまたは特定の癌タイプに特有のいずれかに共通する可変部位を特定した。この分析により、3つの癌タイプに共通する11個の可変rRNA 2’Ome部位、2つの癌タイプに共通する2~23個の可変rRNA 2’Ome部位(AML-乳癌、n=2;AML-Bリンパ腫、n=8;乳癌-Bリンパ腫、n=23)、および各癌タイプに特有の4個から13個の部位(AML、n=13;乳癌、n=10;B細胞リンパ腫、n=4)を特定した。
【0159】
実施例3-rRNA 2’O-メチル化レベルと生物学的特徴および臨床的特徴との関連
材料および方法
ヒトサンプル. 脳サンプルから得られた46サンプルのコホートを構築した。このコホートは、6個の健康なドナーサンプルと、3つの異なる解剖病理学的サブタイプを表す40個の神経膠腫サンプル(悪性度III~IV)(13個の乏突起神経膠腫、13個の星細胞腫および14個の膠芽腫)で構成された。全RNA精製は、供給業者の説明に従って、Maxwell RSC SimplyRNA Tissue Kit(Promega)を使用して実行した。
【0160】
上記実施例1に記載したように、RiboMeth-seq分析を適用した。
【0161】
統計分析. 群間の比較は、カテゴリーデータについてはフィッシャーの正確確率検定を使用して、定量的データについてはマン・ホイットニー検定を使用して実行した。多重比較にはボンフェローニ補正法またはFDR(偽発見率(False Discovery Rate))補正法を適用した(調整P値)。全てのp値は両側p値に相当した。調整p値<0.05およびΔCスコア(Cスコア条件1-Cスコア条件2)>0.05の場合に、有意な関連性があるとみなされた。バブルプロットを使用して結果を要約した。バブルプロットでは、-log10(調整P値)をグレースケールで表し、目的の2つの条件間のCスコアの絶対差を丸のサイズによって表している。
【0162】
関連ログ・ランク検定を用いた全生存(OS)の生存曲線を、カプラン・マイヤー法を使用して作成した。OSは、診断日から死亡日または打ち切り患者の最後の追跡調査日までのタイミングに相当した。生存中央値を、逆カプラン・マイヤー法を使用して推定した。教師なしデータ分析は、個々のrRNA 2’O-メチル化部位のCスコアを使用し、主成分分析(PCA)法を使用して実行した。異なるrRNA 2’O-メチル化プロファイルを反映する主成分分析の異なる次元と臨床データとの相関を、ピアソン相関を使用して実行した。全てのp値は両側p値に相当した。p値<0.05の場合に、有意な関連性があるとみなされ、帰無仮説が真である確率が5%未満であることを示した。0.05<P値<0.1の場合、帰無仮説は棄却されるが、データの傾向は依然として推定上の生物学的事象を示しており、この傾向は、「境界線の関連性」を使用して特定される。
【0163】
統計分析およびグラフ表示は、R v3.6.3またはGraphPad Prism v7.0aソフトウェア(GraphPad Software、Inc)を使用して実行した。
【0164】
結果
ヒト腫瘍サンプル間で最も「安定した」2’O-メチル化レベルまたは最も「可変の」2’O-メチル化レベルのいずれかを示す2つのクラスのrRNA 2’O-メチル化位置の共存の生物学的重要性および臨床的重要性を評価するために、106個のrRNA 2’O-メチル化位置におけるCスコアの変動と原発性乳房腫瘍の生物学的特徴または臨床的特徴との間の関連性を評価した。注目すべきことに、安定rRNA 2’O-メチル化部位の間では、Cスコアの変化と乳癌の周知の特徴(すなわち、腫瘍悪性度、腫瘍サイズ、リンパ節転移、ホルモン/HER2受容体の状態、乳癌サブタイプまたはTP53 突然変異)との間に関連性はなかった。これに対して、乳癌サブタイプ、エストロゲンおよびプロゲステロンの状態、ならびに腫瘍悪性度の間でレベルが有意に異なる4個の可変rRNA 2’O-メチル化部位(18S-Gm1447、28S-Gm1303、28S-Gm4588、18S-Am576)を特定した(
図7)。さらに、部位18S-Gm1447におけるrRNA 2’O-メチル化レベルは、全生存(P=0.03
*、
図8)および無増悪生存(P=0.022
*、
図9)と有意に関連していると思われる。
【0165】
次に、同様のrRNA 2’O-メチル化プロファイルを示す腫瘍を有する乳癌患者と、乳房腫瘍の生物学的/臨床的特徴との間の関連性を評価した。階層的クラスタリングおよびPCA法により、rRNA 2’O-メチル化プロファイルに基づいて4群の乳癌腫瘍を特定した(
図2)。生存の分析により、有意な関連性は観察されなかったが、異なるrRNA 2’O-メチル化プロファイルを特徴とする乳房腫瘍を有する患者は、識別可能な全生存を示すことが示されている(
図10)。特に、G2群は最も悪い全生存を示す。このG2群は、他の群と比較して、TNBCおよび高悪性度の腫瘍が多く含まれていた(
図11および12)。G2群の腫瘍がほとんどのrRNA 2’O-メチル化部位で最も低いCスコアを示したという事実(
図2)に関して、これらのデータは、rRNA 2’O-メチル化の全体的な減少が乳房腫瘍の浸潤性と関連している可能性があることを示唆している。最後に、106個のrRNA部位における2’O-メチル化レベルに基づいた乳癌腫瘍のクラスタリングにより、診断時の腫瘍サイズは小さいが腫瘍サイズが大きい患者と同じくらい予後不良の患者が明らかになる(
図13)。実際、腫瘍サイズが小さい患者は、rRNA 2’O-メチル化プロファイルに応じて有意に異なる生存率を示す(P=0.0059
**)。このようなデータは、rRNA 2’O-メチル化プロファイルが、一般に乳癌の低リスク因子と関連している小さな腫瘍を有しているが、最も不良の転帰を示す患者を特定するのに役立つ可能性があることを示唆している。従って、そのような患者は、通常最大の乳房腫瘍を処置するために用意されているより積極的な処置プロトコールから恩恵を受ける可能性がある。
【0166】
最後に、rRNA 2’O-メチル化プロファイルが処置に対する反応と差異的に関連しているかどうかを決定した。手術および補助放射線療法/ホルモン療法の併用で処置した乳癌患者の全生存を比較した(
図14)。乳癌患者は、腫瘍のrRNA 2’O-メチル化プロファイルに応じて異なる臨床転帰を示すことを示唆する傾向が観察された(P=0.0665)。実際、G2-rRNA 2’O-メチル化プロファイルの腫瘍を有する患者は集団全体よりも良好な転帰を示す一方、G3-rRNA 2’O-メチル化プロファイルの腫瘍を有する患者は集団全体よりも不良の転帰を示す。従って、rRNA 2’O-メチル化により、特定の処置計画の利益が予測される可能性がある。全体として、これらのデータは、可変rRNA部位の2’O-メチル化レベルが生物学的特徴および臨床的特徴と関連していることを示している。
【0167】
rRNA 2’O-メチル化と臨床データとの間の関連性が別の癌タイプでも生じるかどうかを決定するために、健康なドナー(n=6)および神経膠腫患者(n=40)から得られた46個の脳サンプルのコホートを分析した。神経膠腫サンプルには、3つの高悪性度サブタイプ:乏突起神経膠腫(n=13)、星細胞腫(n=13)および膠芽腫(n=14)が含まれていた。PCA法により、rRNA 2’O-メチル化プロファイルに基づいて2つの群のクラスタリングが可能になり、そのうちの1つは14個の膠芽腫サンプルのみで構成されていた(
図15)。これらのデータは、乳癌の場合のように、rRNA 2’O-メチル化プロファイルが特定の神経膠腫サブタイプの患者を特定するのに役立つ可能性があることを示している。同様のrRNA 2’O-メチル化プロファイルを示す神経膠腫腫瘍と、特定済みの浸潤性神経膠腫腫瘍に対するゴールドスタンダード基準に対応する臨床的特徴との間の関連性を、rRNA 2’O-メチル化群識別子としてPCA次元を使用して調査した(
図16)。有意な関連性は、PCA次元2と全生存(P<0.001
***)、無増悪生存(P<0.0001
***)および有糸分裂(P<0.0001
***)との間でのみ観察された。これにより、rRNA 2’O-メチル化プロファイルに基づいてクラスター化され、次元2によって分かれた神経膠腫腫瘍の群が予後と関連付けられ、上の群が最も不良な予後と関連していることが示されている(
図15および16)。全体として、これらのデータは、可変rRNA部位の2’O-メチル化レベルが、異なる癌タイプにおいて臨床的特徴と関連しているという考えを裏付けている。さらに、rRNA 2’O-メチル化は、診断(癌サブタイプ)、予後(生存)および治療予測(処置反応)のバイオマーカーとして使用される可能性がある。
【0168】
実施例4-可変rRNA 2’Ome部位の特定は、抗生物質などのリボソーム標的薬物のリポジショニングに役立て得る
材料および方法
細胞株および細胞生存率. 上皮細胞モデルおよび間葉細胞モデルは、Alain Puisieuxのチームのご厚意により提供されたものであった(17)。簡潔には、ヒト乳房上皮細胞(hMEC)を使用して、EMT関連細胞モデルを導いた。hMEC細胞株は、hTERTの過剰発現を可能にするレンチウイルス形質導入によって不死化された上皮細胞(Lonza)に相当するものである。次に、hMEC細胞株にレンチウイルスベクターを形質導入して、ネズミEMT-TF ZEB1の安定した過剰発現を誘導し、EMTを促進して、hMEC-ZEB1間葉細胞株を生成した。hMEC細胞モデルは、0.5μg/mlヒドロコルチゾン、10ng/ml EGF、0.3U/mlインスリン、10%ウシ胎児血清、100μg/mlストレプトマイシンおよび100単位/mlのペニシリンを添加したDMEM-F12(Gibo)で維持した。hMEC-ZEB1では、選択圧をピューロマイシンで維持した。細胞生存率は、Incucyteライブセル解析システム(Statorius)を使用してリアルタイムでモニタリングした。アニソマイシン抗生物質(濃度範囲2~200nM)を添加する前に、選択圧のない状態で24時間、細胞を96ウェルプレートに播種した。DMSOを陰性対照として使用した。
【0169】
結果
可変rRNA 2’Ome部位の特定が、抗生物質などのリボソーム標的薬物のリポジショニングに役立て得るという概念の証明を行うために、まず、上皮hMEC細胞株および間葉hMEC-ZEB1細胞株における106個の位置のrRNA 2’Omeレベルを、RiboMeth-seqを使用して比較し(n=5)、間葉細胞における可変rRNA 2’Ome部位を上皮細胞と比較して特定した。結果を
図17に示している。
【0170】
rRNA 2’Omeレベルの有意な変動が2つの部位で観察された(p値<0.05*)。実際に、28S-Um2402部位のrRNA 2’Omeレベルは、hMEC-ZEB1間葉細胞において、hMEC上皮細胞と比較して有意に減少していると思われた。これに対して、28S-Gm4588部位の2’Omeレベルでは、hMEC-ZEB1間葉細胞において、hMEC上皮細胞と比較して有意な増加が観察された。
【0171】
次に、rRNA 2’Omeレベルの変化によって影響を受ける間葉系リボソームの領域を特定するために、クライオ電子顕微鏡法(Cryo-EM)により解決されたリボソームの利用可能なヒト構造(PDB、AUG0)上で、3つのrRNAの全ての2’Ome部位を位置付けた(14)。結果を
図18に示している。
【0172】
ヌクレオチド部位は球状ドットとして示している。加えて、周知の真核生物特異的抗生物質の結合ポケットを位置付けた(点線の丸)。間葉細胞と上皮細胞の間で2’Omeレベルが異なる可変部位、28S-Um2402および28S-Gm4588が、アニソマイシン抗生物質の結合ポケットの近くに存在することが観察された。興味深いことに、3次元視覚化では、28S-Gm4588が28S-Um2402よりもアニソマイシン抗生物質の結合ポケットから近いことが示され、28S-Um2402よりも28S-Gm4588のrRNA 2’Omeレベルがアニソマイシン結合に重要な影響を与える可能性があることが示される。3次元リボソーム構造を使用したこの視覚化により、可変部位によって影響を受けるリボソームの単一領域の同定が可能になり、この領域は特定の真核生物特異的抗生物質が結合する領域に近い。
【0173】
最後に、可変2’Ome部位の決定が適当なリボソーム標的薬物の選択に有用であることを実証するために、hMEC上皮細胞およびhMEC-ZEB1間葉細胞を漸増濃度のアニソマイシンで処理して、この抗生物質に対する感受性の潜在的な違いを決定した。
【0174】
細胞生存率を、リアルタイムモニタリングシステムを使用してモニタリングしたが、上皮細胞でも間葉細胞でも細胞形態の変化は観察されなかった。結果を
図19に要約する。
【0175】
6日目に、細胞生存率の違いを、細胞のコンフルエンスを読み取り値として使用して決定した。hMEC-ZEB1間葉細胞はhMEC上皮細胞よりもアニソマイシン処置に対する感受性が高いことが観察された。これらのデータは、2’Omeレベルが変化するrRNA部位を示すリボソーム領域を標的とし、抗生物質がこのリボソーム領域に特異的に結合すると、細胞生存率が低下することを示唆している。
【0176】
【配列表】
【国際調査報告】