(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-14
(54)【発明の名称】インビトロ同時培養研究用のミニ臓器インサート
(51)【国際特許分類】
C12M 3/00 20060101AFI20231207BHJP
C12M 3/06 20060101ALI20231207BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20231207BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20231207BHJP
A61K 45/06 20060101ALI20231207BHJP
C12N 5/09 20100101ALN20231207BHJP
【FI】
C12M3/00 Z
C12M3/06
A61P35/00
A61K45/00
A61K45/06
C12N5/09
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023533966
(86)(22)【出願日】2021-12-07
(85)【翻訳文提出日】2023-07-25
(86)【国際出願番号】 US2021062256
(87)【国際公開番号】W WO2022125580
(87)【国際公開日】2022-06-16
(32)【優先日】2020-12-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】506115514
【氏名又は名称】ザ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ カリフォルニア
【氏名又は名称原語表記】The Regents of the University of California
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】ソラグニ,アリス
(72)【発明者】
【氏名】テボン,ペイトン ジョン
【テーマコード(参考)】
4B029
4B065
4C084
【Fターム(参考)】
4B029AA01
4B029BB11
4B029CC02
4B029CC07
4B029GA03
4B029GB02
4B029GB04
4B065AA90X
4B065BA21
4B065BC01
4B065BC41
4B065BD21
4B065CA44
4C084AA17
4C084AA20
4C084MA02
4C084NA05
4C084ZB26
(57)【要約】
一実施形態において、本開示は、複数ウェルの組織培養プレートと使用するための組織培養ウェルインサートを提供する。円筒形のウェルインサートは、組織培養ウェルに挿入されるように構成され、ウェルインサートは、肝臓細胞または他の細胞を堆積させるキャリアまたはプラットフォーム部分を含み、キャリアまたはプラットフォーム部分は、組織培養ウェルの底部から離れて吊り下げられるように、組織培養ウェル内で位置決め可能である。ウェルインサートは、インビトロ生物系を生成するために、複数の細胞型を同時培養するのに有用である。1つの具体的な用途は、インサートのキャリアまたはプラットフォーム部分により運搬される肝臓細胞または他の細胞が、組織培養ウェルの底部に堆積したか、バイオプリントされた腫瘍オルガノイドと同時培養される、ハイスループットな抗癌剤スクリーニングである。
【選択図】
図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の組織培養ウェルを含む組織培養プレートと使用するためのデバイスであって、前記組織培養ウェルに挿入されるように構成された円筒形のウェルインサートを含み、前記ウェルインサートが、前記インサートの一端にリム部分を、また前記インサートの他端に1つもしくは複数のキャリアまたはプラットフォーム部分を含み、前記キャリアまたはプラットフォーム部分もしくは複数の部分が、前記他端の周囲に配置され、前記キャリアまたはプラットフォーム部分もしくは複数の部分が、前記組織培養ウェルの底部から離れて吊り下げられるように、前記組織培養ウェル内で位置決め可能である、デバイス。
【請求項2】
前記組織培養プレートが、384ウェルプレートまたは96ウェルプレートまたは48ウェルプレートまたは24ウェルプレートまたは12ウェルプレートまたは6ウェルプレートである、請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
前記リム部分と前記キャリアまたはプラットフォーム部分との間の距離が、前記組織培養ウェルの深さより短い、請求項1に記載のデバイス。
【請求項4】
前記キャリアまたはプラットフォーム部分が、前記組織培養ウェルの底部から約1mm離れて吊り下げられる、請求項1に記載のデバイス。
【請求項5】
前記リム部分が、前記組織培養ウェルの直径よりも僅かに大きい直径を有する、請求項1に記載のデバイス。
【請求項6】
前記キャリアまたはプラットフォーム部分が、細胞複合体を収容するように構成される、請求項1に記載のデバイス。
【請求項7】
前記細胞複合体が、前記組織培養ウェルの中央領域を占めないように位置決めされる、請求項6に記載のデバイス。
【請求項8】
前記キャリアまたはプラットフォーム部分が、1つまたは複数の環状キャリアまたはプラットフォームを含む、請求項6に記載のデバイス。
【請求項9】
前記キャリアまたはプラットフォーム部分が、1つの環状キャリアまたはプラットフォームを含む、請求項8に記載のデバイス。
【請求項10】
前記キャリアまたはプラットフォーム部分が、2つの同心環状キャリアまたはプラットフォームを含む、請求項8に記載のデバイス。
【請求項11】
前記キャリアまたはプラットフォーム部分が、前記細胞複合体を所定の位置に維持するために微小孔および短い垂直の壁を含む、請求項6に記載のデバイス。
【請求項12】
各前記微小孔が、約100ミクロンから約1,000ミクロンのサイズを有する、請求項8に記載のデバイス。
【請求項13】
前記細胞複合体が、ヒドロゲルを含む、請求項6に記載のデバイス。
【請求項14】
前記細胞複合体が、アルギン酸、コラーゲン、ゼラチン、またはマトリゲル(登録商標)、Cultrex(登録商標)BME、CELLINK GelXA、CELLINK LAMININK 111などの基底膜抽出物などのヒドロゲル、またはそれらのいずれかの組み合わせを含む、請求項6に記載のデバイス。
【請求項15】
前記ウェルインサートが、開放格子を含むか、開放空間を全く含まない壁を含む、請求項1に記載のデバイス。
【請求項16】
腫瘍細胞に対する活性のための候補治療薬をスクリーニングする際に使用するためのシステムであって、(i)複数の組織培養ウェルを含む組織培養プレート、および(ii)請求項1に記載のデバイスを含む、システム。
【請求項17】
前記組織培養プレートが、384ウェルプレートまたは96ウェルプレートまたは48ウェルプレートまたは24ウェルプレートまたは12ウェルプレートまたは6ウェルプレートである、請求項16に記載のシステム。
【請求項18】
各前記組織培養ウェルが、腫瘍細胞を含む腫瘍細胞複合体を含み、前記腫瘍細胞複合体が、前記組織培養ウェルの底部で周囲に成形された押出成形物として堆積する、請求項16に記載のシステム。
【請求項19】
前記腫瘍細胞が、肉腫細胞またはカルシノーマ細胞または正常組織細胞である、請求項16に記載のシステム。
【請求項20】
前記腫瘍細胞複合体が、ヒドロゲルを含む、請求項16に記載のシステム。
【請求項21】
前記腫瘍細胞複合体が、アルギン酸、コラーゲン、ゼラチン、またはマトリゲル(登録商標)、Cultrex(登録商標)BME、CELLINK GelXA、CELLINK LAMININK 111などの基底膜抽出物などのヒドロゲル、またはそれらのいずれかの組み合わせを含む、請求項16に記載のシステム。
【請求項22】
請求項1に記載のデバイスのキャリアまたはプラットフォーム部分が、1つまたは複数の候補治療薬を代謝することができる細胞を含む活性細胞複合体を含む、請求項16に記載のシステム。
【請求項23】
前記活性細胞複合体が、肝臓細胞を含む、請求項22に記載のシステム。
【請求項24】
前記活性細胞複合体が、ヒドロゲルを含む、請求項22に記載のシステム。
【請求項25】
前記活性細胞複合体が、アルギン酸、コラーゲン、ゼラチン、またはマトリゲル(登録商標)、Cultrex(登録商標)BME、CELLINK GelXA、CELLINK LAMININK 111などの基底膜抽出物などのヒドロゲル、またはそれらのいずれかの組み合わせを含む、請求項22に記載のシステム。
【請求項26】
各前記デバイスが、腫瘍細胞を含む腫瘍細胞複合体を含む、請求項16に記載のシステム。
【請求項27】
前記腫瘍細胞が、肉腫細胞またはカルシノーマ細胞である、請求項26に記載のシステム。
【請求項28】
前記腫瘍細胞複合体が、ヒドロゲルを含む、請求項26に記載のシステム。
【請求項29】
前記腫瘍細胞複合体が、アルギン酸、コラーゲン、ゼラチン、またはマトリゲル(登録商標)、Cultrex(登録商標)BME、CELLINK GelXA、CELLINK LAMININK 111などの基底膜抽出物などのヒドロゲル、またはそれらのいずれかの組み合わせを含む、請求項28に記載のシステム。
【請求項30】
前記組織培養ウェルが、1つまたは複数の候補治療薬を代謝することができる細胞を含む活性細胞複合体を含む、請求項26に記載のシステム。
【請求項31】
前記活性細胞複合体が、肝臓細胞を含む、請求項30に記載のシステム。
【請求項32】
前記活性細胞複合体が、ヒドロゲルを含む、請求項30に記載のシステム。
【請求項33】
前記活性細胞複合体が、アルギン酸、コラーゲン、ゼラチン、またはマトリゲル(登録商標)、Cultrex(登録商標)BME、CELLINK GelXA、CELLINK LAMININK 111などの基底膜抽出物などのヒドロゲル、またはそれらのいずれかの組み合わせを含む、請求項32に記載のシステム。
【請求項34】
患者の腫瘍を処置するための治療薬またはその組み合わせを同定するための方法であって、
i)前記患者の前記腫瘍から、場合によっては単一細胞懸濁液中で、または凝集体もしくはクラスターとして腫瘍細胞の試料を取得するステップ;
ii)前記腫瘍細胞を含む成形オルガノイド押出成形物を組織培養ウェル内に分配するステップ;
iii)前記治療薬またはその組み合わせを代謝することができる活性細胞を含む活性細胞複合体を請求項1に記載のデバイスのキャリアまたはプラットフォーム部分の上に分配するステップ;ならびに
iv)請求項1に記載のデバイスを前記組織培養ウェルに挿入し、前記腫瘍細胞および前記活性細胞を前記組織培養ウェル内で前記治療薬またはその組み合わせと培養するステップであって、前記治療薬またはその組み合わせの存在下で前記腫瘍細胞の増殖が低下するか、移動性が低下するか、生物学的特性が変更されるか、生存率が低下することで、前記患者の前記腫瘍を処置するための前記治療薬またはその組み合わせを同定するステップ
を含む、方法。
【請求項35】
患者の腫瘍を処置するための方法であって、
i)前記患者の前記腫瘍から、場合によっては単一細胞懸濁液中で、または凝集体もしくはクラスターとして腫瘍細胞の試料を取得するステップ;
ii)前記腫瘍細胞を含む成形オルガノイド押出成形物を組織培養ウェル内に分配するステップ;
iii)前記治療薬またはその組み合わせを代謝することができる活性細胞を含む活性細胞複合体を請求項1に記載のデバイスのキャリアまたはプラットフォーム部分の上に分配するステップ;
iv)請求項1に記載のデバイスを前記組織培養ウェルに挿入し、前記腫瘍細胞および前記活性細胞を前記組織培養ウェル内で前記治療薬またはその組み合わせと培養するステップであって、前記治療薬またはその組み合わせの存在下で前記腫瘍細胞の増殖が低下するか、移動性が低下するか、生物学的特性、または生存率が変更されることで、前記患者の前記腫瘍を処置するための前記治療薬またはその組み合わせを同定するステップ;ならびに
v)前記治療薬またはその組み合わせを用いて前記患者を処置するステップ
を含む、方法。
【請求項36】
前記成形オルガノイド押出成形物または前記活性細胞複合体の前記分配が、手動または自動化されたバイオプリンティングにより独立して実行される、請求項26または27に記載の方法。
【請求項37】
前記腫瘍細胞が、肉腫細胞である、請求項26または27に記載の方法。
【請求項38】
前記成形オルガノイド押出成形物が、ヒドロゲルを含む、請求項26または27に記載の方法。
【請求項39】
前記成形オルガノイド押出成形物が、アルギン酸、コラーゲン、ゼラチン、マトリゲル(登録商標)、Cultrex(登録商標)BME、CELLINK GelXA、CELLINK LAMININK 111などの基底膜抽出物、またはそれらのいずれかの組み合わせを含む、請求項26または27に記載の方法。
【請求項40】
前記活性細胞が、肝臓細胞を含む、請求項26または27に記載の方法。
【請求項41】
前記活性細胞複合体が、ヒドロゲルを含む、請求項26または27に記載の方法。
【請求項42】
前記活性細胞複合体が、アルギン酸、コラーゲン、ゼラチン、マトリゲル(登録商標)、Cultrex(登録商標)BME、CELLINK GelXA、CELLINK LAMININK 111などの基底膜抽出物、またはそれらのいずれかの組み合わせを含む、請求項26または27に記載の方法。
【請求項43】
患者の腫瘍を処置するための治療薬またはその組み合わせを同定するための方法であって、
i)前記患者の前記腫瘍から、場合によっては単一細胞懸濁液中で、または凝集体もしくはクラスターとして腫瘍細胞の試料を取得するステップ;
ii)前記腫瘍細胞を組織培養ウェル内に提供するステップ;
iii)前記治療薬またはその組み合わせを代謝することができる活性細胞を含む活性細胞複合体を請求項1に記載のデバイスのキャリアまたはプラットフォーム部分の上に分配するステップ;
iv)1つまたは複数の治療薬を前記組織培養ウェルに導入し、前記腫瘍細胞を前記組織培養ウェル内で前記治療薬と培養するステップであって、前記治療薬の存在下で前記腫瘍細胞の増殖が低下するか、移動性が低下するか、生物学的特性が変更されるか、生存率が低下することで、前記患者の前記腫瘍を処置するための前記治療薬またはその組み合わせを同定するステップ
を含む、方法。
【請求項44】
患者の腫瘍を処置するための方法であって、
i)前記患者の前記腫瘍から、場合によっては単一細胞懸濁液中で、または凝集体もしくはクラスターとして腫瘍細胞の試料を取得するステップ;
ii)前記腫瘍細胞を組織培養ウェル内に提供するステップ;
iii)前記治療薬またはその組み合わせを代謝することができる活性細胞を含む活性細胞複合体を請求項1に記載のデバイスのキャリアまたはプラットフォーム部分の上に分配するステップ;
iv)1つまたは複数の治療薬を前記組織培養ウェルに導入し、前記腫瘍細胞を前記組織培養ウェル内で前記治療薬と培養するステップであって、前記治療薬の存在下で前記腫瘍細胞の増殖が低下するか、移動性が低下するか、生物学的特性が変更されるか、生存率が低下することで、前記患者の前記腫瘍を処置するための前記治療薬またはその組み合わせを同定するステップ;ならびに
(v)前記治療薬またはその組み合わせを用いて前記患者を処置するステップ
を含む、方法。
【請求項45】
前記腫瘍細胞が、肉腫細胞またはカルシノーマ細胞である、請求項35または36に記載の方法。
【請求項46】
前記活性細胞が、肝臓細胞または腸細胞を含む、請求項35または36に記載の方法。
【請求項47】
前記活性細胞複合体が、ヒドロゲルを含む、請求項35または36に記載の方法。
【請求項48】
前記活性細胞複合体が、アルギン酸、コラーゲン、ゼラチン、またはマトリゲル(登録商標)、Cultrex(登録商標)BME、CELLINK GelXA、CELLINK LAMININK 111などの基底膜抽出物などのヒドロゲル、またはそれらのいずれかの組み合わせを含む、請求項35または36に記載の方法。
【請求項49】
患者の腫瘍を処置するための治療薬またはその組み合わせを同定するための方法であって、
i)前記患者の前記腫瘍から、場合によっては単一細胞懸濁液中で、または凝集体もしくはクラスターとして腫瘍細胞の試料を取得するステップ;
ii)前記腫瘍細胞を請求項1に記載のデバイスのキャリアまたはプラットフォーム部分の上に分配するステップ;
iii)場合によっては前記治療薬またはその組み合わせを代謝することができる活性細胞を含む活性細胞複合体を組織培養ウェル内に分配するステップ;ならびに
iv)前記デバイスを前記組織培養ウェルに挿入し、前記腫瘍細胞および場合によっては前記活性細胞を前記組織培養ウェル内で前記治療薬またはその組み合わせと培養するステップであって、前記治療薬またはその組み合わせの存在下で前記腫瘍細胞の増殖が低下するか、移動性が低下するか、生物学的特性が変更されるか、生存率が低下することで、前記患者の前記腫瘍を処置するための前記治療薬またはその組み合わせを同定するステップ
を含む、方法。
【請求項50】
患者の腫瘍を処置するための方法であって、
i)前記患者の前記腫瘍から、場合によっては単一細胞懸濁液中で、または凝集体もしくはクラスターとして腫瘍細胞の試料を取得するステップ;
ii)前記腫瘍細胞を請求項1に記載のデバイスのキャリアまたはプラットフォーム部分の上に分配するステップ;
iii)場合によっては前記治療薬またはその組み合わせを代謝することができる活性細胞を含む活性細胞複合体を組織培養ウェル内に分配するステップ;
iv)請求項1に記載のデバイスを前記組織培養ウェルに挿入し、前記腫瘍細胞および場合によっては前記活性細胞を前記組織培養ウェル内で前記治療薬またはその組み合わせと培養するステップであって、前記治療薬またはその組み合わせの存在下で前記腫瘍細胞の増殖が低下するか、移動性が低下するか、生物学的特性、または生存率が変更されることで、前記患者の前記腫瘍を処置するための前記治療薬またはその組み合わせを同定するステップ;ならびに
v)前記治療薬またはその組み合わせを用いて前記患者を処置するステップ
を含む、方法。
【請求項51】
前記腫瘍細胞または前記活性細胞複合体の前記分配が、手動または自動化されたバイオプリンティングにより独立して実行される、請求項49または50に記載の方法。
【請求項52】
前記腫瘍細胞が、肉腫細胞である、請求項49または50に記載の方法。
【請求項53】
前記腫瘍細胞が、ヒドロゲル内に提供される、請求項49または50に記載の方法。
【請求項54】
前記ヒドロゲルが、アルギン酸、コラーゲン、ゼラチン、またはマトリゲル(登録商標)、Cultrex(登録商標)BME、CELLINK GelXA、CELLINK LAMININK 111などの基底膜抽出物、またはそれらのいずれかの組み合わせである、請求項53に記載の方法。
【請求項55】
前記活性細胞が、肝臓細胞を含む、請求項4または50に記載の方法。
【請求項56】
前記活性細胞複合体が、ヒドロゲルを含む、請求項49または50に記載の方法。
【請求項57】
前記ヒドロゲルが、アルギン酸、コラーゲン、ゼラチン、またはマトリゲル(登録商標)、Cultrex(登録商標)BME、CELLINK GelXA、CELLINK LAMININK 111などの基底膜抽出物、またはそれらのいずれかの組み合わせである、請求項56に記載の方法。
【請求項58】
患者の腫瘍を処置するための治療薬またはその組み合わせを同定するための方法であって、
i)前記患者の前記腫瘍から、場合によっては単一細胞懸濁液中で、または凝集体もしくはクラスターとして腫瘍細胞の試料を取得するステップ;
ii)前記腫瘍細胞を組織培養ウェル内に提供するステップ;
iii)前記治療薬またはその組み合わせを代謝することができる活性細胞を含む活性細胞複合体を請求項1に記載のデバイスのキャリアまたはプラットフォーム部分の上に分配するステップ;
iv)1つまたは複数の治療薬を前記組織培養ウェルに導入し、前記腫瘍細胞を前記組織培養ウェル内で前記治療薬と培養するステップであって、前記治療薬の存在下で前記腫瘍細胞の増殖が低下するか、移動性が低下するか、生物学的特性が変更されるか、生存率が低下することで、前記患者の前記腫瘍を処置するための前記治療薬またはその組み合わせを同定するステップ
を含む、方法。
【請求項59】
患者の腫瘍を処置するための方法であって、
i)前記患者の前記腫瘍から、場合によっては単一細胞懸濁液中で、または凝集体もしくはクラスターとして腫瘍細胞の試料を取得するステップ;
ii)前記腫瘍細胞を組織培養ウェル内に提供するステップ;
iii)前記治療薬またはその組み合わせを代謝することができる活性細胞を含む活性細胞複合体を請求項1に記載のデバイスのキャリアまたはプラットフォーム部分の上に分配するステップ;
iv)1つまたは複数の治療薬を前記組織培養ウェルに導入し、前記腫瘍細胞を前記組織培養ウェル内で前記治療薬と培養するステップであって、前記治療薬の存在下で前記腫瘍細胞の増殖が低下するか、移動性が低下するか、生物学的特性が変更されるか、生存率が低下することで、前記患者の前記腫瘍を処置するための前記治療薬またはその組み合わせを同定するステップ;ならびに
v)前記治療薬またはその組み合わせを用いて前記患者を処置するステップ
を含む、方法。
【請求項60】
前記腫瘍細胞が、肉腫細胞またはカルシノーマ細胞である、請求項58または59に記載の方法。
【請求項61】
前記活性細胞が、肝臓細胞または腸細胞を含む、請求項58または59に記載の方法。
【請求項62】
前記活性細胞複合体が、ヒドロゲルを含む、請求項58または59に記載の方法。
【請求項63】
前記活性細胞複合体が、アルギン酸、コラーゲン、ゼラチン、またはマトリゲル(登録商標)、Cultrex(登録商標)BME、CELLINK GelXA、CELLINK LAMININK 111などの基底膜抽出物などのヒドロゲル、またはそれらのいずれかの組み合わせを含む、請求項58または59に記載の方法。
【請求項64】
生理活性化合物を同定するための方法であって、
i)場合によっては単一細胞懸濁液中で、または凝集体もしくはクラスターとして正常細胞または腫瘍細胞の試料を取得するステップ;
ii)前記細胞を、前記細胞を含む2D単層または3D凝集体または3Dの成形オルガノイド押出成形物として組織培養ウェル内に分配するステップ;
iii)前記小分子または生物製剤またはそれらの組み合わせを代謝することができる活性細胞を含む活性細胞複合体を請求項1に記載のデバイスのキャリアまたはプラットフォーム部分の上に分配するステップ;
iv)請求項1に記載のデバイスを前記組織培養ウェルに挿入し、前記細胞および前記活性細胞を前記組織培養ウェル内で前記小分子または生物製剤またはその組み合わせと培養するステップであって、前記小分子または生物製剤またはその組み合わせの存在下で前記腫瘍細胞の増殖が低下するか、移動性が低下するか、生物学的特性または生存率が変化することで、生物学的調査のために前記活性剤またはその組み合わせを同定するステップ
を含む、方法。
【請求項65】
生物活性のインビトロ評価で使用するためのシステムであって、(i)複数の組織培養ウェルを含む組織培養プレート、および(ii)請求項1に記載のデバイスを含む、システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般に、インビトロ生物系および癌治療薬の分野に関する。一実施形態において、本開示は、細胞同時培養系の生物学的調査および癌治療薬の高速ハイスループットスクリーニングのためのデバイスおよび方法を提供する。
【背景技術】
【0002】
いくつかの癌治療は、活性抗腫瘍化合物になるために化学修飾を必要とするプロドラッグとして送達される。これらの分子は、多くがクリアランスのために化合物を分解する役割があるシトクロムP450(CYP)などの酵素による代謝を必要とするのでインビトロで研究することが特に困難である。これらの代謝物のいくつかは、その不安定性および反応性のために直接合成することができない。生成することができるものであっても望ましくない副反応により不活性化されやすく、溶液中に沈殿する可能性がある。治療薬を代謝するエクスビボシステムを開発することにより、患者由来組織移植(PDX)モデルにおいて肝臓で代謝される薬物を試験する必要性を回避することができる。動物モデルが正確なメタボロームプロファイルを提供するが、それらはまた、高価で、時間がかかるものであり、移植された細胞の腫瘍原性により制限され、高速スクリーニングに不適当である。
【0003】
現在、多くの癌患者にとって、臨床転帰を改善する効果的な治療薬の迅速な同定には制限がある。例えば、骨肉腫は、若年層の患者に偏って影響を及ぼす40を超える癌の種類の稀少なファミリーである。診断された患者の大多数は、45歳未満であり、4分の1を超える症例が20歳未満の患者に影響している。これらの癌が米国で毎年新規に診断される症例の0.2%にすぎず(約3,600症例)、2021年には2,000人を超える患者の死亡の原因となると予想される。骨肉腫(osteosarcoma)(約1000症例/年)、ユーイング肉腫(約290症例/年)、脊索腫(約300症例/年)、および線維肉腫(約150症例/年)が骨肉腫の4つの主要なタイプである。腫瘍は多くの場合、イメージングにより同定され、診断的生検により確定される。現在、診療計画は、腫瘍の分子特徴に対して情報が限られている生検の組織学に基づいて立案される。
【0004】
例えば骨肉腫を処置する主要なアプローチは、外科的切除であり、腫瘍のタイプに応じてネオアジュバントおよび/またはアジュバント化学療法を併用することができる。臨床的に異なる腫瘍のタイプが多く、全体として骨肉腫の患者が比較的少数であるため、わずかな最前線の治療法のセットのみが広範囲に渡ってテストされている。多くの臨床試験を実行する際の本質的な困難により、潜在的に有用な薬物候補がテストされていないままになっている。多大な努力にも関わらず、全体的な5年生存率は、過去数十年にわたって有意に改善しておらず、局在性腫瘍の患者では約60~80%、転移性骨肉腫の患者では30%で頭打ちになっている。
【0005】
したがって、テストすることができる治療薬の数を増加させるためおよび機能的個別化医療の恩恵を受けることができる患者の数を拡大するために患者由来腫瘍標本に対して肝臓で直接例えば代謝および活性化される化学療法剤、生物剤、および標的剤の機能的スクリーニングを可能にする改善されたプラットフォームならびにハイスループット薬物スクリーニングのための方法を開発する必要性がある。
【発明の概要】
【0006】
一態様において、本開示は、複数の組織培養ウェルを含む組織培養プレートと使用するためのデバイスを提供し、そのデバイスは、組織培養ウェルに挿入されるように構成された円筒形のウェルインサートを含み、ウェルインサートは、インサートの一端にリム部分を、またインサートの他端に1つもしくは複数のキャリアまたはプラットフォーム部分を含み、リムおよびキャリアまたはプラットフォームは、1つまたは複数の支柱により接合され、キャリアまたはプラットフォーム部分もしくは複数の部分は、他端の周囲に配置され、キャリアまたはプラットフォーム部分もしくは複数の部分は、組織培養ウェルの底部の上に吊り下げられるように、組織培養ウェル内で位置決め可能である。いくらかの実施形態において、キャリアまたはプラットフォーム部分は、肝細胞または免疫細胞などの細胞(この後、「キャリアまたはプラットフォーム細胞」)で充填され、キャリアまたはプラットフォームは、培地および懸濁液中に存在するか、ウェルの底部にあるヒドロゲルマトリックス内に印刷されている腫瘍細胞などの細胞(この後、「ウェル細胞」)を含むウェルに浸漬される。いくらかの実施形態において、ウェル細胞に対するテストされた薬剤の効果は、キャリアまたはプラットフォームにより調整することができる。いくらかの実施形態において、ウェル細胞に対する薬剤の効果を調整することによるキャリアまたはプラットフォームの代謝活性または他の活性は、ウェル細胞およびキャリアまたはプラットフォーム(例えば、腫瘍生検由来のウェル細胞および肝臓由来のキャリアまたはプラットフォーム)が同時に存在するインビボでの薬剤の活性のより良好な予測を与える。
【0007】
別の実施形態において、本開示は、腫瘍細胞などの標的細胞に対する活性のために候補小分子または生物製剤をスクリーニングする際に使用するためのシステムを提供し、システムは、(i)複数の組織培養ウェルを含む組織培養プレート、および(ii)本明細書に記載のウェルインサートを含むデバイスを含む。デバイスは、384ウェル、96ウェル、48ウェル、24ウェル、12ウェルまたは6ウェルプレートのウェル内に適合するように、トップリムに載せるように、そして培養培地内に浸漬されたキャリアまたはプラットフォームを吊り下げるように構成される可能性がある。癌細胞または正常細胞は組織培養ウェル内に存在する可能性があり、肝臓由来または他の代謝活性のある細胞はデバイスインサート内に存在する可能性がある。代わりに、癌細胞または正常細胞はデバイスインサート内に存在する可能性があり、肝臓由来または他の代謝活性のある細胞は組織培養ウェル内に存在する可能性がある。
【0008】
別の実施形態において、本開示は、患者の腫瘍から、場合によっては単一細胞懸濁液中で、または凝集体もしくはクラスターとして腫瘍細胞の試料を取得するステップ;腫瘍細胞を含む幾何学的形状のオルガノイド押出成形物を組織培養ウェル内に分配するか、組織培養ウェル内の培地中に腫瘍細胞を配置するステップ;治療薬またはその組み合わせを代謝することができる活性細胞を含む活性細胞複合体を本明細書に記載のデバイスのキャリアまたはプラットフォーム部分もしくは複数の部分の上に分配するステップ;ならびにウェルインサートを組織培養ウェルに挿入し、腫瘍細胞および活性細胞を組織培養ウェル内で治療薬またはその組み合わせと培養するステップであって、治療薬またはその組み合わせの存在下で腫瘍細胞の増殖が低下するか、移動性が低下することで、患者の腫瘍を処置するための治療薬またはその組み合わせを同定するステップを含む、患者の腫瘍を処置するための治療薬またはその組み合わせを同定するための方法を提供する。いくらかの実施形態において、治療薬を代謝することができる細胞の存在は、患者における治療薬の配置をより忠実に模倣するアッセイシステムを提供し、いくらかの実施形態において、潜在的に効果のある治療薬を同定するための改善されたシステムを提供する。
【0009】
別の実施形態において、本開示は、患者の腫瘍から、場合によっては単一細胞懸濁液中で、または凝集体もしくはクラスターとして腫瘍細胞の試料を取得するステップ;腫瘍細胞を含む成形オルガノイド押出成形物を組織培養ウェルに、または腫瘍細胞を組織培養ウェル内の培地中に分配するステップ;治療薬またはその組み合わせを代謝することができる活性細胞を含む活性細胞複合体を本明細書に記載のデバイスのキャリアまたはプラットフォーム容器部分もしくは複数の部分の上に分配するステップ;ウェルインサートを組織培養ウェルに挿入し、腫瘍細胞および活性細胞を組織培養ウェル内で治療薬またはその組み合わせと培養するステップであって、治療薬またはその組み合わせの存在下で腫瘍細胞の増殖が低下するか、移動性が低下することで、患者の腫瘍を処置するための治療薬またはその組み合わせを同定するステップ;ならびに治療薬またはその組み合わせを用いて患者を処置するステップを含む、患者の腫瘍を処置するための方法を提供する。いくらかの実施形態において、治療薬を代謝することができる細胞の存在は、患者における治療薬の配置をより忠実に模倣するアッセイシステムを提供し、いくらかの実施形態において、潜在的に効果のある患者の処置を同定するための改善されたシステムを提供する。
【0010】
したがって、一態様において、複数の組織培養ウェルを含む組織培養プレートと使用するためのデバイスが提供され、そのデバイスは、組織培養ウェルに挿入されるように構成された円筒形のウェルインサートを含み、ウェルインサートは、インサートの一端にリム部分を、またインサートの他端に1つもしくは複数のキャリアまたはプラットフォーム部分を含み、キャリアまたはプラットフォーム部分もしくは複数の部分は、他端の周囲に配置され、キャリアまたはプラットフォーム部分もしくは複数の部分は、組織培養ウェルの底部から離れて吊り下げられるように、組織培養ウェル内で位置決め可能である。いくらかの実施形態において、組織培養プレートは、384ウェルプレートまたは96ウェルプレートまたは48ウェルプレートまたは24ウェルプレートまたは12ウェルプレートまたは8ウェルプレートである。
【0011】
デバイスのいくらかの実施形態において、リム部分とキャリアまたはプラットフォーム部分との間の距離は、組織培養ウェルの深さより短い。いくらかの実施形態において、キャリアまたはプラットフォーム部分は、組織培養ウェルの底部から約1mm離れて吊り下げられる。いくらかの実施形態において、リム部分は、組織培養ウェルの直径よりも僅かに大きい直径を有する。
【0012】
デバイスのいくらかの実施形態において、キャリアまたはプラットフォーム部分は、細胞複合体を収容するように構成される。いくらかの実施形態において、細胞複合体は、組織培養ウェルの中央領域を占めないように位置決めされる。いくらかの実施形態において、キャリアまたはプラットフォーム部分は、1つまたは複数の環状キャリアまたはプラットフォームを含む。いくらかの実施形態において、キャリアまたはプラットフォーム部分は、1つの環状キャリアまたはプラットフォームを含む。いくらかの実施形態において、キャリアまたはプラットフォーム部分は、2つの同心環状キャリアまたはプラットフォームを含む。いくらかの実施形態において、キャリアまたはプラットフォーム部分は、細胞複合体を所定の位置に維持するために微小孔および短い垂直の壁を含む。いくらかの実施形態において、各微小孔は、約100ミクロンから約1,000ミクロンのサイズを有する。
【0013】
いくらかの実施形態において、細胞複合体はヒドロゲルを含む。いくらかの実施形態において、細胞複合体は、アルギン酸、コラーゲン、ゼラチン、マトリゲル(登録商標)、Cultrex(登録商標)BME、CELLINK GelXA、CELLINK LAMININK 111などの基底膜抽出物、またはそれらのいずれかの組み合わせを含む。
【0014】
いくらかの実施形態において、ウェルインサートは、開放格子を含むか、開放空間を全く含まない壁を含む。
【0015】
いくらかの実施形態において、本明細書で開示されているデバイスのキャリアまたはプラットフォーム部分は、1つまたは複数の候補治療薬を代謝することができる細胞を含む活性細胞複合体を含む。いくらかの実施形態において、活性細胞複合体は肝臓細胞を含む。いくらかの実施形態において、活性細胞複合体はヒドロゲルを含む。いくらかの実施形態において、活性細胞複合体は、アルギン酸、コラーゲン、ゼラチン、マトリゲル(登録商標)、Cultrex(登録商標)BME、CELLINK GelXA、CELLINK LAMININK 111などの基底膜抽出物、またはそれらのいずれかの組み合わせを含む。
【0016】
一態様において、腫瘍細胞に対する活性のための候補治療薬をスクリーニングする際に使用するためのシステムが提供され、システムは、(i)複数の組織培養ウェルを含む組織培養プレート、および(ii)本明細書で前述したようなデバイスを含む。いくらかの実施形態において、組織培養プレートは、384ウェルプレートまたは96ウェルプレートまたは48ウェルプレートまたは24ウェルプレートまたは12ウェルプレートまたは8ウェルプレートである。いくらかの実施形態において、組織培養ウェルは、腫瘍細胞を含む腫瘍細胞複合体を含み、腫瘍細胞複合体は、組織培養ウェルの底部で周囲に成形された押出成形物として堆積する。いくらかの実施形態において、腫瘍細胞は肉腫細胞またはカルシノーマ細胞または正常組織細胞である。いくらかの実施形態において、腫瘍細胞複合体はヒドロゲルを含む。いくらかの実施形態において、腫瘍細胞複合体は、アルギン酸、コラーゲン、ゼラチン、マトリゲル(登録商標)、Cultrex(登録商標)BME、CELLINK GelXA、CELLINK LAMININK 111などの基底膜抽出物、またはそれらのいずれかの組み合わせを含む。
【0017】
本明細書のシステムのいくらかの実施形態において、前記デバイスはそれぞれ、腫瘍細胞を含む腫瘍細胞複合体を含む。いくらかの実施形態において、腫瘍細胞は、肉腫細胞またはカルシノーマ細胞である。いくらかの実施形態において、腫瘍細胞複合体はヒドロゲルを含む。いくらかの実施形態において、ヒドロゲルは、アルギン酸、コラーゲン、ゼラチン、またはマトリゲル(登録商標)、Cultrex(登録商標)BME、CELLINK GelXA、CELLINK LAMININK 111などの基底膜抽出物、またはそれらのいずれかの組み合わせである。いくらかの実施形態において、組織培養ウェルは、1つまたは複数の候補治療薬を代謝することができる細胞を含む活性細胞複合体を含む。いくらかの実施形態において、活性細胞複合体は肝臓細胞を含む。いくらかの実施形態において、活性細胞複合体は、ヒドロゲル、例えばアルギン酸、コラーゲン、ゼラチン、またはマトリゲル(登録商標)、Cultrex(登録商標)BME、CELLINK GelXA、CELLINK LAMININK 111などの基底膜抽出物、またはそれらのいずれかの組み合わせを含む。
【0018】
一態様において、(i)患者の腫瘍から、場合によっては単一細胞懸濁液中で、または凝集体もしくはクラスターとして腫瘍細胞の試料を取得するステップ;(ii)腫瘍細胞を含む成形オルガノイド押出成形物を組織培養ウェルに分配するステップ;(iii)治療薬またはその組み合わせを代謝することができる活性細胞を含む活性細胞複合体を請求項1に記載のデバイスのキャリアまたはプラットフォーム部分の上に分配するステップ;ならびに(iv)請求項1に記載のデバイスを組織培養ウェルに挿入し、腫瘍細胞および活性細胞を組織培養ウェル内で治療薬またはその組み合わせと培養するステップであって、治療薬またはその組み合わせの存在下で腫瘍細胞の増殖が低下するか、移動性が低下するか、生存率が低下することで、患者の腫瘍を処置するための治療薬またはその組み合わせを同定するステップを含む、患者の腫瘍を処置するための治療薬またはその組み合わせを同定するための方法が提供される。
【0019】
一態様において、患者の腫瘍を処置するための方法は、(i)患者の腫瘍から、場合によっては単一細胞懸濁液中で、または凝集体もしくはクラスターとして腫瘍細胞の試料を取得するステップ;(ii)腫瘍細胞を含む成形オルガノイド押出成形物を組織培養ウェルに分配するステップ;(iii)治療薬またはその組み合わせを代謝することができる活性細胞を含む活性細胞複合体を請求項1に記載のデバイスのキャリアまたはプラットフォーム部分の上に分配するステップ;(iv)請求項1に記載のデバイスを組織培養ウェルに挿入し、腫瘍細胞および活性細胞を組織培養ウェル内で治療薬またはその組み合わせと培養するステップであって、治療薬またはその組み合わせの存在下で腫瘍細胞の増殖が低下するか、移動性または生存率が低下することで、患者の腫瘍を処置するための治療薬またはその組み合わせを同定するステップ;ならびに(v)治療薬またはその組み合わせを用いて患者を処置するステップを含む。
【0020】
前述の態様のいずれかにおいて、一実施形態では、成形オルガノイド押出成形物または活性細胞複合体の分配は、手動または自動化されたバイオプリンティングにより独立して実行される。いくらかの実施形態において、腫瘍細胞は肉腫細胞またはカルシノーマ細胞である。いくらかの実施形態において、成形オルガノイド押出成形物はヒドロゲルを含む。いくらかの実施形態において、成形オルガノイド押出成形物は、アルギン酸、コラーゲン、ゼラチン、マトリゲル(登録商標)、Cultrex(登録商標)BME、CELLINK GelXA、CELLINK LAMININK 111などの基底膜抽出物、またはそれらのいずれかの組み合わせを含む。いくらかの実施形態において、活性細胞は肝臓細胞を含む。いくらかの実施形態において、活性細胞複合体はヒドロゲルを含む。いくらかの実施形態において、活性細胞複合体は、アルギン酸、コラーゲン、ゼラチン、マトリゲル(登録商標)、Cultrex(登録商標)BME、CELLINK GelXA、CELLINK LAMININK 111などの基底膜抽出物、またはそれらのいずれかの組み合わせを含む。
【0021】
別の態様において、(i)患者の腫瘍から、場合によっては単一細胞懸濁液中で、または凝集体もしくはクラスターとして腫瘍細胞の試料を取得するステップ;(ii)組織培養ウェルに腫瘍細胞を提供するステップ;(iii)治療薬またはその組み合わせを代謝することができる活性細胞を含む活性細胞複合体を請求項1に記載のデバイスのキャリアまたはプラットフォーム部分の上に分配するステップ;(iv)1つまたは複数の治療薬を組織培養ウェルに導入し、腫瘍細胞を組織培養ウェル内で治療薬と培養するステップであって、治療薬の存在下で腫瘍細胞の増殖が低下するか、移動性が低下するか、生存率が低下することで、患者の腫瘍を処置するための治療薬またはその組み合わせを同定するステップを含む、患者の腫瘍を処置するための治療薬またはその組み合わせを同定するための方法が提供される。
【0022】
一態様において、患者の腫瘍を処置するための方法は、(i)患者の腫瘍から、場合によっては単一細胞懸濁液中で、または凝集体もしくはクラスターとして腫瘍細胞の試料を取得するステップ;(ii)組織培養ウェルに腫瘍細胞を提供するステップ;(iii)治療薬またはその組み合わせを代謝することができる活性細胞を含む活性細胞複合体を請求項1に記載のデバイスのキャリアまたはプラットフォーム部分の上に分配するステップ;(iv)1つまたは複数の治療薬を組織培養ウェルに導入し、腫瘍細胞を組織培養ウェル内で治療薬と培養するステップであって、治療薬の存在下で腫瘍細胞の増殖が低下するか、移動性が低下するか、生存率が低下することで、患者の腫瘍を処置するための治療薬またはその組み合わせを同定するステップ;ならびに(v)治療薬またはその組み合わせを用いて患者を処置するステップを含む。
【0023】
前述の態様のいずれかにおいて、一実施形態では、腫瘍細胞は、肉腫細胞またはカルシノーマ細胞である。いくらかの実施形態において、活性細胞は肝臓細胞を含む。いくらかの実施形態において、活性細胞複合体はヒドロゲルを含む。いくらかの実施形態において、活性細胞複合体は、アルギン酸、コラーゲン、ゼラチン、マトリゲル(登録商標)、Cultrex(登録商標)BME、CELLINK GelXA、CELLINK LAMININK 111などの基底膜抽出物、またはそれらのいずれかの組み合わせを含む。
【0024】
別の態様において、(i)患者の腫瘍から、場合によっては単一細胞懸濁液中で、または凝集体もしくはクラスターとして腫瘍細胞の試料を取得するステップ;(ii)前記腫瘍細胞を請求項1に記載のデバイスのキャリアまたはプラットフォーム部分の上に分配するステップ;(iii)場合によっては前記治療薬またはその組み合わせを代謝することができる活性細胞を含む活性細胞複合体を組織培養ウェル内に分配するステップ;ならびに(iv)デバイスを前記組織培養ウェルに挿入し、前記腫瘍細胞および場合によっては前記活性細胞を前記組織培養ウェル内で前記治療薬またはその組み合わせと培養するステップであって、前記治療薬またはその組み合わせの存在下で腫瘍細胞の増殖が低下するか、移動性が低下するか、生物学的特性が変更されるか、生存率が低下することで、患者の腫瘍を処置するための治療薬またはその組み合わせを同定するステップを含む、患者の腫瘍を処置するための治療薬またはその組み合わせを同定するための方法が提供される。
【0025】
一態様において、(i)患者の腫瘍から、場合によっては単一細胞懸濁液中で、または凝集体もしくはクラスターとして腫瘍細胞の試料を取得するステップ;(ii)前記腫瘍細胞を請求項1に記載のデバイスのキャリアまたはプラットフォーム部分の上に分配するステップ;(iii)場合によっては前記治療薬またはその組み合わせを代謝することができる活性細胞を含む活性細胞複合体を組織培養ウェル内に分配するステップ;(iv)請求項1に記載のデバイスを前記組織培養ウェルに挿入し、前記腫瘍細胞および場合によっては前記活性細胞を前記組織培養ウェル内で前記治療薬またはその組み合わせと培養するステップであって、前記治療薬またはその組み合わせの存在下で腫瘍細胞の増殖が低下するか、移動性が低下するか、生物学的特性、または生存率が変更されることで、患者の腫瘍を処置するための治療薬またはその組み合わせを同定するステップ;ならびに(v)前記治療薬またはその組み合わせを用いて前記患者を処置するステップを含む、患者の腫瘍を処置するための方法が提供される。
【0026】
前述の実施形態において、腫瘍細胞または活性細胞複合体の分配は、手動または自動化されたバイオプリンティングにより独立して実行される。いくらかの実施形態において、腫瘍細胞は肉腫細胞またはカルシノーマ細胞である。いくらかの実施形態において、腫瘍細胞はヒドロゲル内に提供される。いくらかの実施形態において、ヒドロゲルは、アルギン酸、コラーゲン、ゼラチン、またはマトリゲル(登録商標)、Cultrex(登録商標)BME、CELLINK GelXA、CELLINK LAMININK 111などの基底膜抽出物、またはそれらのいずれかの組み合わせである。いくらかの実施形態において、活性細胞は肝臓細胞を含む。いくらかの実施形態において、活性細胞複合体は、ヒドロゲルを含む。いくらかの実施形態において、ヒドロゲルは、アルギン酸、コラーゲン、ゼラチン、またはマトリゲル(登録商標)、Cultrex(登録商標)BME、CELLINK GelXA、CELLINK LAMININK 111などの基底膜抽出物、またはそれらのいずれかの組み合わせである。
【0027】
一態様において、生物活性のインビトロ評価で使用するためのシステムが提供され、システムは、(i)複数の組織培養ウェルを含む組織培養プレート、および(ii)本明細書で前述のデバイスを含む。
【0028】
これらおよび他の態様は、以下の図面の説明および詳細な説明から理解されるであろう。
【0029】
いくらかの実施形態は、添付の図面を参照して、例示のためにのみ、本明細書で説明される。ここで特に図面を詳細に参照すると、特に示されるものは一例であり、実施形態の例証的議論の目的のためであることが強調される。この点について、図面と併せて説明することで、実施形態がどのように実行され得るか、当業者に明らかにする。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】
図1A~
図1Bは、本開示のミニオルガノイドインサート(MOI)デバイスの2つの実施形態の立面斜視図を示す。描かれたMOIデバイスは、1つまたは複数の環状キャリアまたはプラットフォームを支持する3つの垂直の支柱を含む。MOIデバイスは、384ウェル、96ウェル、24ウェル、12ウェルまたは6ウェルプレートのウェル内に適合するように、トップリムに載せるように、そして培養培地内に浸漬されたキャリアまたはプラットフォームを吊り下げるように構成される可能性がある。3D印刷され得る具体化されたMOIデバイスは、垂直の支柱の底部で1つまたは複数の環状キャリアまたはプラットフォームを含み、そのような環状キャリアまたはプラットフォームの中で、「キャリアまたはプラットフォーム」(例えば、哺乳動物の肝細胞)が(ヒドロゲルまたは他の基底膜抽出物(BME)内、例えばアルギン酸、コラーゲン、ゼラチン、マトリゲル(登録商標)または他の支持体内に)播種される可能性がある。播種された「キャリアまたはプラットフォーム」を運搬するMOIデバイスは、その後、ウェル-プレートのウェルに挿入され、ウェルの基部は、それ自体の「ウェル細胞」、例えば、細胞の2D単層、手動で播種された3D細胞モデルまたは事前に印刷された成形腫瘍オルガノイド押出成形物がすでに播種されており、したがって2つの細胞株は、都合よく同時培養することが可能である。哺乳動物の肝臓細胞の代謝活性は、多くの場合、腫瘍に対してテストされている多くの医薬品の治療活性を調整し、したがって、同時培養している肝臓オルガノイドキャリアまたはプラットフォームは腫瘍ウェル細胞と一緒に治療薬のインビボでの生物活性をシミュレートする。MOIデバイスは、あらゆるオルガノイド培養の用途に適している可能性がある。
図1Aは、細胞組織培養物などの細胞培養物がその上で増殖する可能性がある、1つの基底環状キャリアまたはプラットフォームを有するMOIデバイスの立面斜視図を示す。
図1Aの実施形態は、「1つの環形」の実施形態と呼ばれる可能性がある。
図1Bは、オルガノイド組織培養物などの細胞培養物がその上で増殖する可能性がある、2つの同心基底環状支持キャリアまたはプラットフォームを有するMOIデバイスの立面斜視図を示す。本実施形態の2つの環形は、同じ細胞型または異なる細胞型を培養する可能性がある。
図1Bの実施形態は、「二重の環形」の実施形態と呼ばれる可能性がある。
【
図2】
図2A~
図2Bは、本開示のMOIデバイスの1つの環形の実施形態、
図2A、および二重の環形の実施形態、
図2Bの直交俯瞰図を示す。破線は、透明性を示す。
【
図4】
図4は、本開示の1つの環形の実施形態の断面図を示す。クロスハッチングは、分割された固体表面を示唆する。描写された視点から、3つの垂直の支持構造の1つが見える。環状の上部支持体は、384ウェル、96ウェル、24ウェル、12ウェルまたは6ウェルのウェルプレート開口の、開口の上に適合するように構成される。オルガノイド、例えば哺乳動物の肝臓オルガノイドなどの細胞培養物は、MOIデバイスの基底部分の上の環状の空隙内で培養される可能性がある。細胞培養物は、この空間内に懸濁される可能性があり、培養細胞を含む支持材料に固有の接着特性および/または表面張力特性により保持される可能性がある。
【
図5】
図5A~
図5Fは、本開示のMOIデバイスの一実施形態の種々の図を表し、描写された実施形態は、3つの垂直のピラーを含み、各ピラーは、小さい窓がある保持容器を支持する。
図5Aは、MOIデバイスの描写された実施形態の立面斜視図を表す。
図5Bは、描写された実施形態の代替の立面斜視図を表す。
図5Cは、描写された実施形態の断面図を表す。
図5Dは、ウェルプレートのウェル内に静置している描写された実施形態の直交側面図を表す。
図5Eは、96ウェルプレートのウェル内への挿入を待っている、描写された実施形態の立面斜視図、および拡大挿入図を表す。
図5Fは、96ウェルプレートのウェル内への挿入を待っている、描写された実施形態のクローズアップ立面斜視図を表す。
【
図6】
図6A~
図6Bは、96ウェルプレートのウェル内に静置している、1つの環形および二重の環形の実施形態の立面斜視図を表す。
図6Aは、1つの環形の実施形態を表す。
図6Bは、両方の実施形態を表し、各実施形態は、それ自体のウェル内にある。
【
図7】
図7A~
図7Cは、ウェルプレートのウェル内に静置しているMOIデバイスの3つの実施形態の側面図を表す。
図7Aは、ウェルプレートのウェル内に静置している1つの環形の実施形態または2つの環形の実施形態のいずれかの側面図を表す。
図7Bは、1つの環形の実施形態の断側面図を表す。
図7Cは、2つの環形の実施形態の断側面図を表す。
【
図8】
図8は、本開示のMOIデバイスの一実施形態の標識された断側面図を表し、描写された実施形態は、3つの垂直のピラーを含み、各ピラーは、小さい窓がある保持容器を支持する。
【
図9】
図9A~
図9Cは、本開示のMOIデバイスの代替の窓がある実施形態の種々の図を表し、描写された実施形態は、3つの垂直のピラーを含み、各ピラーは、小さい窓がある保持容器を支持し、描写された実施形態は、円形のパンチ穴のある開窓を有する。
図9Aは、立面斜視図を表す。
図9Bは、ウェルプレートのウェル内に静置している実施形態の断側面図を表す。
図9Cは、24ウェルプレートのウェル内への挿入を待っている、描写された実施形態の立面斜視図。
【
図10】
図10A~
図10Bは、MOIデバイスの一実施形態の種々の図を表す。描写された実施形態は、多孔リングのキャリアまたはプラットフォームベースを保持する6つの垂直の支柱を有する。哺乳動物の肝臓オルガノイドなどの培養細胞は、多孔リングベースに配置される可能性がある。培養培地は、リングベースの基底面の周囲に配置された穿孔を通って自由に流動することが可能である。
図10Aは、MOIデバイスの一実施形態の立面斜視図を表す。
図10Bは、96ウェルプレートのウェル内への挿入を待っている、描写された実施形態の立面斜視図、および拡大挿入図を表す。
【
図11】
図11A~
図11Bは、ウェルプレートのウェル内の二重細胞培養の概略図を表す。
図11Aは、二重培養を表し、腫瘍細胞(ダークグレーの円)が播種されたマトリゲル(登録商標)リング(ライトグレー)がウェルの基部に配置され、オルガノイド細胞、例えば哺乳動物の肝臓細胞(黒色三角)が培養培地に懸濁している。
図11Bは、本開示のMOIデバイスの一実施形態を採用している二重培養を表し、MOIデバイスは、ウェルプレートのウェルに挿入され、MOIデバイスの基底部分が培養培地に浸漬されている。腫瘍細胞(ダークグレーの円)が播種されたマトリゲル(登録商標)リング(ライトグレー)は、ウェルの基部に配置される。オルガノイド細胞、例えば哺乳動物の肝臓細胞(黒色三角)は、MOIデバイスの基部で、小さい窓があるポケット内で増殖する。培養培地は、開窓を通って自由に流動することができる。プロドラッグなどの代謝物は、培養培地に添加される可能性があり、オルガノイドは、代謝物を代謝する可能性があり、そのため腫瘍細胞に対する代謝物の効果を評価することが可能である。
【
図12】
図12A~
図12Bは、本開示のMOIデバイスを使用して取得した対照および実験の腫瘍細胞生存率データを表す。MOIデバイスを使用して、腫瘍細胞を、MOIデバイス上に吊り下げられた肝臓オルガノイドなし、
図12A、およびあり、
図12Bで同時培養した。対照、
図12Aでは、腫瘍細胞生存率は、化学療法薬シクロホスファミド(CP)の対数的に増加する濃度により有意に低下しなかった。MOIデバイス支持肝臓オルガノイドの存在下、
図12Bでは、腫瘍細胞生存率は、より高いCP濃度で低下した。
【
図13】
図13A~
図13Cは、ウェルプレートの複数のウェルにまたがるように接続された複数のMOIデバイスの立面斜視図を表す。
図13Aは、直線状の8ウェルの実施形態を表す。
図13Bは、直線状の12ウェルの実施形態を表す。
図13Cは、96ウェルプレートで使用するための二次元96ウェルアレイを表す。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本明細書で提供されるものは、癌研究が含まれるがこれに限定されない目的のインビトロ生物系で使用するためのデバイスであり、あらゆる細胞型が、インビトロ生物培養系に組み込まれる可能性がある。本開示のデバイスは、人工的に制限した膜または障壁を使用することがない、二次元または三次元モダリティのいずれかでの細胞集団または細胞複合体の間接的同時培養を可能にする。いくらかの実施形態において、細胞集団または細胞複合体は、3D形状を含むことができる。いくらかの実施形態において、細胞集団または細胞複合体は、本質的に2D単層を含む。いくらかの実施形態において、細胞集団または細胞複合体は、自己集合スフェロイド/凝集体である。本明細書で開示されているデバイスは、ウェルの底部で、あらゆる細胞含有構造に対応している。
【0032】
本明細書に記載されるように、本明細書で開示されているデバイスは、細胞集団または細胞複合体の付近で同時培養される場合、培養系に対してさらなる情報を提供することができる、1つまたは複数の追加の細胞型を提供する。一実施形態において、デバイス内の細胞は、代謝的に活性があり、一実施形態において、細胞集団または細胞複合体(例えば、抗癌活性についてスクリーニングされている薬物を代謝して不活性化または活性化する可能性がある肝臓細胞)に対してテストされている化合物の活性に影響する可能性がある。別の実施形態において、細胞集団または細胞複合体で代謝的に活性がある細胞は、デバイス内に存在する細胞に対するテスト化合物の活性に影響する可能性がある。本明細書に記載されるように、少なくとも1つの細胞型または集団がウェルの底部の中、底部またはその上に提供され、別の少なくとも1つの細胞型または集団がデバイスキャリア、プラットフォームまたはポケットに提供されるいずれかの様式は、本明細書に包含される。いくらかの実施形態において、腫瘍細胞はウェルに提供され、肝臓細胞はデバイスに提供される。いくらかの実施形態において、腫瘍細胞はデバイスに提供され、肝臓細胞はウェルに提供される。いくらかの実施形態において、ウェル内の細胞は、培養培地内にあるか、ウェルの底部に付着するか、その両方である。いくらかの実施形態において、ウェル内の細胞は、成形オルガノイド押出成形物に提供される。いくらかの実施形態において、ウェル内の異なる細胞集団または細胞複合体は、押出成形物内にあり、培養中に遊離または付着している。
【0033】
一実施形態において、本開示は、384ウェル、96ウェル、48ウェル、24ウェル、12ウェルまたは6ウェル培養プレートを使用するハイスループット薬物スクリーニング法に対応しているウェルインサートデバイス101を提供する。ミニ臓器インサート(MOI)ウェルインサートデバイスは、ヒドロゲルまたは他のマトリックスを保持することができるキャリアまたはプラットフォームまたは複数のプラットフォーム103を含み、肝臓細胞または免疫細胞などではあるがこれらに限定されない細胞113を配置してその中で培養することができる。一実施形態において、ヒドロゲル内の細胞は、ウェル111内で化合物を代謝し、他の実施形態において、腫瘍または他の細胞もウェル内、例えば本明細書に記載の成形オルガノイド押出成形物115内に存在する。一実施形態において、そのような腫瘍細胞は、代謝された化合物に応答し、その化合物を同様に代謝する患者に投与した場合、その化合物が、癌化学療法剤として有効であるかどうかを示唆する。
【0034】
ウェルインサートデバイス101は、ウェル111内に配置され、ウェルのリムに取り付けられ、細胞培養培地中にデバイスのキャリアまたはプラットフォームまたは複数のプラットフォーム103を吊り下げておく。本開示のインサートは、キャリアもしくはプラットフォームの壁および/または底部の微小孔もしくは穿孔を含む可能性があり、キャリアまたはプラットフォームまたは複数のプラットフォーム103は、デバイスの周囲、したがってウェル111の壁近傍に配置され、そのため、ウェル111の中央は、例えば培地を交換するための障害がない。
【0035】
【0036】
インサートデバイス101は、以下の構成部品を含む。
【0037】
キャリアまたはプラットフォーム。インサートデバイスのキャリアもしくはプラットフォーム103または複数のキャリアもしくはプラットフォームは、細胞113を含む少量の培地を保持するように設計されている1つまたは複数の小さいくぼみまたはポケット109を含む。くぼみは、底部および側壁に穴があけられているか窓がある可能性があり、そのため、組織培養培地中の薬剤および他の構成成分の交換は、キャリアまたはプラットフォーム内の細胞と相互作用する可能性がある。インサートのいくらかのデザインにおいて、いくつかのキャリアまたはプラットフォームが提供され、それぞれ個々の支柱105からのリム107から吊り下げられる。いくらかのデザインにおいて、単一の環状キャリアまたはプラットフォーム103が提供され、複数の支柱105から吊り下げられる。いくらかのデザインにおいて、複数の同心環状キャリアまたはプラットフォーム103が提供され、複数の同心環状キャリアまたはプラットフォームは、複数の支柱105から吊り下げられる。環状のデザインは、環形全体に底部の「床」部分を有する可能性があり、閉じた環状のくぼみ109を与える。床部分は、穴があいているか窓があり、培養培地の流れを許容する。代わりに、環状キャリアまたはプラットフォームは、床部分を有していない「オープントラフ」である可能性がある。そのようなデザインにおいて、オルガノイドは、材料(例えば組織培養培地、BMEなど)とインサートとの間の接着、表面張力、毛細管作用、または他の自然の力により環状キャリアまたはプラットフォームのオープントラフ109に吊り下げられる可能性がある。キャリアまたはプラットフォームの容積は、所望の体積の細胞を含む培地またはヒドロゲルを保持するように調節される可能性がある。キャリアまたはプラットフォームは、デバイス上に位置決めされ、ウェル111の底部に配置されたあらゆる成形オルガノイド押出成形物115または他の固体もしくは半固体の構成部品115に干渉されないようにウェル111の底部の上に静置している。さらに、中央に延びるキャリアまたはプラットフォームの寸法は、針または他のサンプリングプローブをウェルに容易に挿入することができ、インサートデバイスまたはキャリアもしくはプラットフォームの上の細胞を揺らさないように、ウェルのコア領域、すなわち頂部から底部に延びる中央領域が閉塞されないように設計される。用語「キャリアまたはプラットフォーム」103は、キャリアまたはプラットフォーム103およびポケットまたはくぼみ109を一緒に指す場合に使用される可能性がある。一実施形態において、ポケット、キャリアまたはプラットフォームの高さは、約1mm~2mmである可能性がある。一実施形態において、ポケット、キャリアまたはプラットフォームの高さは、約1mmである。一実施形態において、ポケット、キャリアまたはプラットフォームの高さは、約1.5mmである。
【0038】
支柱。支柱105はキャリアまたはプラットフォームをリム107から吊り下げる。複数の個々のキャリアまたはプラットフォーム103を有するデバイスでは、それぞれが支柱105を用いてリム107から吊り下げられる。環状キャリアまたはプラットフォームを有するデバイスでは、1つから複数の支柱が提供される可能性がある。支柱の配置の直径は、ウェル111の直径よりも僅かに小さく、そのためインサートがウェル内に配置される場合、支柱はウェル111の壁の近傍にある。円錐形のデザインまたは先細の壁を有するウェルでは、支柱は、先細部に適合するように設計される可能性があり、ウェル111への挿入を容易にする。小さい先細部を有するウェルと使用されるインサートデバイスでは、支柱は垂直である可能性がある。
【0039】
リム。デバイスのリム107は、デバイスをウェルの頂部に支持し、ウェル内に完全に落ちないように、ウェル111の直径よりも直径が僅かに大きい。リムの内径は、リングの内壁からキャリアまたはプラットフォームに延びる支柱のための支持体を提供する。
【0040】
1つの非限定例において、ウェル直径が頂部で6.86mm、底部で6.35mm、ウェル深さが1.5cmである組織培養プレートでの使用のため、リムは外径(OD)が7.2mmであり、支柱の外壁はODが6.3mmである。支柱の頂部0.5mmは、セルフセンタリングを確実にするために角度を付けた特徴を有する。この領域は、底部で直径が6.3mmであり、頂部のOD6.75mmまで延びる。一般に、プレートおよびインサートの両方の製作公差は、インサートが底部付近のウェルの壁に対して寄りかかるのに十分高い。
【0041】
一実施形態において、インサートが確実に中心になるように角度を付けた特徴を有するリムまたはリムに隣接する支柱の部分が提供される。
【0042】
いくらかの実施形態において、キャリアまたはプラットフォームは、それぞれリムからの支柱から吊り下げられた複数のキャリアまたはプラットフォームを含む。いくらかの実施形態において、キャリアまたはプラットフォームは、複数の支柱を使用して吊り下げられた環形またはリング形状の部分である。キャリアまたはプラットフォームのいずれかのデザインにおいて、キャリアまたはプラットフォームの底面に、および/またはその垂直の壁(典型的には組織培養培地と接触している壁であり、ウェル壁近傍の周囲の壁ではないが、本開示はそれほど限定的ではない)に、微小孔(例えば100~1000ミクロン;本明細書では穿孔または開窓とも呼ばれる)を含み、組織培養ウェルとキャリアまたはプラットフォーム上の開示された細胞との間でその中の培地および構成成分の交換を可能にする。一実施形態において、
図4は、キャリアまたはプラットフォーム底部および壁の長方形の穿孔を表す;底部の穿孔は、示されるように同心円状に配置される可能性がある。
【0043】
一実施形態において、デバイスは、ウェルに肝臓細胞を提供するために使用した場合、肝細胞を含むヒドロゲルを培養培地に直接浸漬し、それにより複数の細胞型が同じ培地を共有する。これにより、膜を通る拡散を制限することなく、培地内の代謝された化合物の良好な移動が可能になる。さらに、細胞は、ウェルの中央から離れて維持され、ウェルの中央に届くピペットチップを使用する自動化流体処理プロトコルにデバイスを対応させる。一実施形態において、本明細書で開示されているインサートは、本明細書で開示されているハイスループットスクリーニングシステムと組み合わせて使用して、臨床では一般に使用されているが、インビトロでの研究には困難である化合物をテストすることができる。
【0044】
一実施形態において、本開示は、複数の組織培養ウェルを含む組織培養プレートと使用するためのデバイスを提供し、そのデバイスは、組織培養ウェルに挿入されるように構成された円筒形のウェルインサートを含み、ウェルインサートは、インサートの一端にリム部分を、またインサートの他端にキャリアまたはプラットフォーム部分を含み、キャリアまたはプラットフォーム部分は、他端の周囲に配置され、キャリアまたはプラットフォーム部分は、組織培養ウェルの底部から離れて吊り下げられるように、組織培養ウェル内で位置決め可能である。
【0045】
一実施形態において、組織培養プレートは、384ウェル、96ウェルプレート、24ウェルプレート、12ウェルプレートまたは6ウェルプレートである。一実施形態において、ウェルインサートのリム部分とキャリアまたはプラットフォーム部分との間の距離は、組織培養ウェルの深さより短い。例えば、キャリアまたはプラットフォーム部分は、組織培養ウェルの底部から約0.4mm離れて吊り下げられる。一般に、ウェルインサートのリム部分は、組織培養ウェルの直径よりも僅かに大きい直径を有する。一実施形態において、扇型または環状キャリアまたはプラットフォーム部分は、細胞複合体(本明細書では細胞集団とも呼ばれる)を収容するように構成される。一実施形態において、細胞複合体は、組織培養ウェルの中央領域を占めないように位置決めされる。別の実施形態において、キャリアまたはプラットフォーム部分は、細胞複合体を所定の位置に維持するために小さいポケット(例えば、サイズが約100ミクロンから約1,000ミクロンである)および短い垂直の壁を含む。
【0046】
本明細書に記載されるように、本明細書で開示されているデバイスは、本明細書の種々の目的に有用なあらゆるタイプの細胞を含む可能性がある。デバイスは、(例えば、培養物中または場合によってはオルガノイドリングとしてなど)ウェル内に提供された腫瘍細胞に対する活性のために試験されている薬物を代謝する活性細胞を含む可能性がある。本開示はまた、その逆方向も具体化し、活性細胞がウェル内(例えば、培養物中、またはマトリックス中など)に提供され、腫瘍細胞がデバイスに提供される。別の実施形態において、腫瘍細胞は、デバイスに提供され、テスト化合物または他の条件がウェル内に提供され、細胞はいずれもウェル内に提供されず、例えば、インビトロスクリーニングの目的のために腫瘍細胞または任意の他のタイプの細胞に対してテスト化合物またはテスト化合物の希釈物をスクリーニングする。
【0047】
したがって、一実施形態において、アッセイ細胞の集団は、別個の位置または一緒に組み合わせて、2つまたはそれ以上の細胞型を含む。一実施形態において、アッセイ細胞の集団は、組織培養ウェルに提供される。一実施形態において、アッセイ細胞の集団は、2つまたはそれ以上の細胞型を含み、2つまたはそれ以上の細胞型の少なくとも1つは、ウェルインサートに提供される。1つのさらなる実施形態において、第2の細胞型がウェルインサートまたは組織培養ウェルに提供される。一実施形態において、少なくとも2つの細胞型は、ウェルインサートに提供される。したがって、1つまたはそれ以上のアッセイ細胞型は、本明細書の開示に記載されるように使用される可能性があり、各アッセイ細胞型は、他のアッセイ細胞型のいずれかと組み合わせられる可能性があり、それぞれ個々の混合されたアッセイ細胞型は、ウェルインサート、組織培養ウェル、両方の場所に提供され、いくらかの実施形態において、1つのアッセイ細胞型は、ウェルインサートの1つのキャリアまたはプラットフォームに提供される可能性があり、別のアッセイ細胞型は、同じウェルインサートの第2のキャリアまたはプラットフォームに提供される。いくらかの実施形態において、同じ細胞型は、同じウェルインサート内で両方のキャリアまたはプラットフォームに提供される可能性がある。いくらかの実施形態において、別のタイプのアッセイ細胞は、各ウェルインサートキャリアまたはプラットフォームおよび組織培養ウェルに提供される可能性がある。任意の組み合わせまたは場所またはいずれか1つまたは複数のアッセイ細胞型が本明細書に包含される。
【0048】
一実施形態において、キャリアまたはプラットフォーム部分に堆積した細胞複合体は、肝臓細胞、または治療薬を代謝することができる任意の他の細胞を含む。別の実施形態において、キャリアまたはプラットフォーム部分に堆積した細胞複合体は、ヒドロゲルを含む。例えば、細胞複合体は、アルギン酸、コラーゲン、ゼラチン、または限定されないがマトリゲル(登録商標)、Cultrex(登録商標)BME、CELLINK GelXA、CELLINK LAMININK 111などの基底膜抽出物、またはそれらのいずれかの組み合わせを含む。
【0049】
一実施形態において、細胞装填ヒドロゲルは、ピペットを使用してキャリアまたはプラットフォームのポケットに堆積される。別の実施形態において、細胞装填ヒドロゲルは、自動化流体処理システムまたはバイオプリンタを使用してキャリアまたはプラットフォームのポケットに堆積される。別の実施形態において、細胞装填ヒドロゲルは、インサートのポケットを液体材料のリザーバに浸漬させることによりキャリアまたはプラットフォームのポケットに堆積される。浸漬は、0.5~10秒間に、1回、または複数回発生することができる。液体ヒドロゲルがポケットに装填されると、熱的、光化学的、または化学的な機序で材料を架橋することができる。いくらかの実施形態において、ポケットの装填は、ヒドロゲルが液体である温度、例えば2℃で実行される。装填されたポケットがプレートのインキュベーション温度まで温められると、ヒドロゲルはゲルになり、その中で細胞を捕捉する。
【0050】
一実施形態において、ウェルインサートは、開放格子を含む壁を含む。別の実施形態において、ウェルインサートは、開放格子を全く含まない壁を含む。本明細書に記載されるように、キャリアまたはプラットフォーム底面または壁の穿孔または開窓は、操作中に培地および構成成分の交換を許容し、細胞装填ヒドロゲルを有するポケットを排液せずに充填することが可能になるような任意の形状およびサイズであり得る。
【0051】
別の実施形態において、本開示は、腫瘍細胞に対する活性のための候補治療薬をスクリーニングする際に使用するためのシステムを提供し、システムは、(i)複数の組織培養ウェルを含む組織培養プレート、および(ii)本明細書に記載のウェルインサートを含むデバイスを含む。一実施形態において、組織培養プレートは、384ウェルプレート、96ウェルプレート、24ウェルプレート、12ウェルプレートまたは6ウェルプレートである。一実施形態において、組織培養ウェルは、腫瘍細胞を含む腫瘍細胞複合体を含み、腫瘍細胞複合体は、組織培養ウェルの底部で周囲にリングとして堆積される。他の実施形態において、腫瘍細胞は、ウェル内で組織培養培地中に懸濁される。いずれのタイプの腫瘍または癌も、組織培養ウェルの底部に堆積することができる。腫瘍または癌の例には、限定されないが、カルシノーマ、肉腫、リンパ腫、白血病、胚細胞腫瘍、芽細胞腫、軟骨肉腫、ユーイング肉腫、骨の悪性線維性組織球腫、骨肉腫(osteosarcoma)、横紋筋肉腫、心臓癌、脳癌、星状細胞腫、神経膠腫、髄芽細胞腫、神経芽細胞腫、乳癌、髄様癌、副腎皮質癌、甲状腺癌、メルケル細胞癌、眼癌、胃腸癌、結腸癌、胆嚢癌、胃癌(gastric cancer)(胃癌(stomach cancer))、消化管カルチノイド腫瘍、肝細胞癌、膵癌、直腸癌、膀胱癌、子宮頸癌、子宮体癌、卵巣癌、腎細胞癌、前立腺癌、精巣癌、尿道癌、子宮肉腫、膣癌、頭部癌、頸部癌、上咽頭癌、造血器癌(hematopoietic cancer)、非ホジキンリンパ腫、皮膚癌、基底細胞癌、メラノーマ、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、またはそれらのいずれかの組み合わせが含まれる。
【0052】
一実施形態において、組織培養ウェルの底部に堆積した腫瘍細胞複合体はヒドロゲルを含む。例えば、腫瘍細胞複合体は、アルギン酸、コラーゲン、ゼラチンまたは限定されないがマトリゲル(登録商標)、Cultrex(登録商標)BME、CELLINK GelXA、CELLINK LAMININK 111などの基底膜抽出物、またはそれらのいずれかの組み合わせを含む。一実施形態において、組織培養ウェルに挿入されているウェルインサートのキャリアまたはプラットフォーム部分は、1つまたは複数の候補治療薬を代謝することができる細胞を含む活性細胞複合体を含む。例えば、活性細胞複合体は肝臓細胞を含む。別の実施形態において、活性細胞複合体はヒドロゲルを含む。例えば、活性細胞複合体は、マトリゲル(登録商標)、Cultrex(登録商標)BME、CELLINK GelXA、CELLINK LAMININK 111、またはそれらのいずれかの組み合わせを含む。
【0053】
一実施形態において、本開示は、(i)患者の腫瘍から、単一細胞懸濁液中で腫瘍細胞の試料を取得するステップ;(ii)腫瘍細胞を含む成形オルガノイド押出成形物を組織培養ウェルに分配するか、組織培養ウェル内の培地中に腫瘍細胞を分配するステップ;(iii)治療薬またはその組み合わせを代謝することができる活性細胞を含む活性細胞複合体を本明細書で開示されているウェルインサートのキャリアまたはプラットフォーム部分の上に分配するステップ;ならびに(iv)ウェルインサートを組織培養ウェルに挿入し、腫瘍細胞および活性細胞を組織培養ウェル内で治療薬またはその組み合わせと培養するステップであって、治療薬またはその組み合わせの存在下で腫瘍細胞の増殖が低下するか、移動性が低下することで、患者の腫瘍を処置するための治療薬またはその組み合わせを同定するステップを含む、患者の腫瘍を処置するための治療薬またはその組み合わせを同定するための方法を提供する。腫瘍または癌の例は上述されている。本明細書に記載されるように、治療薬を代謝する活性細胞の存在は、患者における治療薬の配置を模倣し、肝臓細胞または腸細胞などの活性細胞は、テストされた治療薬の治療効果を変更する可能性がある。本明細書に記載のデバイスまたは任意の代替形態における活性細胞の使用は、癌患者のために潜在的に治療的活性がある化合物の強化されたスクリーニングを提供する。活性細胞の標的細胞と一緒でのそのような構成はまた、他の目的のために使用される可能性があり、インビボ条件を模倣する、複数の細胞型を利用するインビトロでの強化されたスクリーニングが望ましい。
【0054】
別の実施形態において、本開示は、(i)患者の腫瘍から、場合によっては単一細胞懸濁液中で、または凝集体もしくはクラスターとして腫瘍細胞の試料を取得するステップ;(ii)腫瘍細胞を含む成形オルガノイド押出成形物を組織培養ウェルに分配するか、培地中に懸濁した腫瘍細胞を提供するステップ;(iii)前記治療薬またはその組み合わせを代謝することができる活性細胞を含む活性細胞複合体を本明細書に開示されたウェルインサートのキャリアまたはプラットフォーム部分の上に分配するステップ;(iv)ウェルインサートを組織培養ウェルに挿入し、腫瘍細胞および活性細胞を組織培養ウェル内で治療薬またはその組み合わせと培養するステップであって、治療薬またはその組み合わせの存在下で腫瘍細胞の増殖が低下するか、移動性が低下することで、患者の腫瘍を処置するための治療薬またはその組み合わせを同定するステップ;ならびに(v)治療薬またはその組み合わせを用いて患者を処置するステップを含む、患者の腫瘍を処置するための方法を提供する。腫瘍または癌の例は上述されている。本明細書に記載されるように、治療薬を代謝する活性細胞の存在は、患者における治療薬の配置を模倣し、肝臓細胞などの活性細胞は、テストされた治療薬の治療効果を変更する可能性がある。本明細書に記載のデバイスまたは任意の代替形態における活性細胞の使用は、効果的な癌治療計画の強化された同定を提供する。活性細胞の標的細胞と一緒でのそのような構成はまた、他の目的のために使用される可能性があり、インビボ条件を模倣する、複数の細胞型を利用することが望ましいインビトロ条件を使用する治療計画の強化された同定が望ましい。
【0055】
一実施形態において、成形オルガノイド押出成形物または活性細胞複合体の分配は、手動または自動化されたバイオプリンティングにより独立して実行される。一実施形態において、成形オルガノイド押出成形物はヒドロゲルを含み、例えば、成形オルガノイド押出成形物は、マトリゲル(登録商標)、Cultrex(登録商標)BME、CELLINK GelXA、CELLINK LAMININK 111、またはそれらのいずれかの組み合わせを含む。一実施形態において、活性細胞は肝臓細胞を含む。別の実施形態において、活性細胞複合体はヒドロゲルを含み、例えば、活性細胞複合体は、マトリゲル(登録商標)、Cultrex(登録商標)BME、CELLINK GelXA、CELLINK LAMININK 111、またはそれらのいずれかの組み合わせを含む。
【0056】
一実施形態において、複数のヒドロゲル構造は、単一のウェル内で堆積することができる。これらの構造は、サイズ、形状、材料組成、および細胞含有物において変更することができる。すべての後続の分析は、複数部分構成についても同一のままである。
【0057】
本明細書における成形オルガノイド押出成形物は、シート、リング、または多角形を含むがこれらに限定されない任意の二次元形状配置において、単層で堆積される可能性がある。成形オルガノイド押出成形物は、多角形、環状、卵形、楕円形、環状体、レムニスケート、X型、C型などであり得、任意の特定の二次元形状に限定されない(文脈がそれ以外を指示する場合があることを除く)。成形オルガノイド押出成形物はまた、手動で播種された三次元形状の押出成形物である可能性がある。
【0058】
【0059】
本明細書において図で示されるように、複数のMOIは、例えば肝臓細胞または腫瘍細胞が複数のデバイスのキャリアまたはプラットフォームに装填され得、その後、異なる条件、例えば異なる治療薬、薬剤の系列希釈などを有するウェルに浸漬させることができるように、プレートの複数のウェル、またはすべてのウェルに適合するように一緒に配列させることが可能である。
図13A~
図13Cは、ウェルプレートの複数のウェルにまたがって接続された複数のMOIデバイスの立面斜視図を表す。
図13Aは、直線状の8ウェルの実施形態を表す。
図13Bは、直線状の12ウェルの実施形態を表す。
図13Cは、96ウェルプレートで使用するための二次元96ウェルアレイを表す。このように、本明細書で開示されている1つまたは複数のデバイスを含むアレイが提供される可能性がある。
【0060】
本明細書で使用されるように、単数形「a」、「an」および「the」は、文脈上明らかに別段の指示がない限り、複数の参照を含める。
【0061】
この出願全体を通じて、本開示の種々の実施形態は、範囲形式で提示される可能性がある。範囲形式での説明が、単に便宜上、簡略化したものであり、本明細書に開示された範囲を柔軟に限定するものと解釈すべきではないことが理解されるべきである。したがって、範囲の記述は、その範囲内にある個々の数値と同様にすべての可能な部分範囲を具体的に開示しているとみなすべきである。例えば、1~6などの範囲の記述は、1~3、1~4、1~5、2~4、2~6、3~6などのような部分範囲およびその範囲内の個々の数字、例えば、1、2、3、4、5、および6を具体的に開示しているとみなすべきである。これは、範囲の広さに関係なく適用される。
【0062】
本明細書に数値範囲が表示される場合はいつでも、表示された範囲内で任意の引用された数字(分数または整数)を含むことを意味する。第1の表示数字と第2の表示数字との「範囲内/間の範囲」、および第1の表示数字から第2の表示数字「までの」「範囲内/間の範囲」という成句は、本明細書において交換可能に使用され、第1および第2の表示数字およびその間のすべての分数および整数を含むことを意味する。
【0063】
別段の定義がない限り、本明細書で使用されるすべての技術および/または科学用語は、本開示が関係する当業者により一般に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書に記載のものと類似または同等の方法および材料は、実施形態の実行またはテストに使用することができるが、代表的な方法および/または材料は、以下に説明される。競合する場合、特許明細書は、定義を含めて支配する。さらに、材料、方法、および実施例は、例証のみであり、必ずしも限定することを意図していない。本明細書で言及される各文献参照または他の引用は、その全体が参照により本明細書に組み込まれている。
【0064】
本明細書に提示された説明において、各ステップおよびそのバリエーションが説明される。この説明は、限定することを意図しておらず、構成要素、ステップの順序、および他のバリエーションの変化は、本開示の範囲内であると理解されるであろう。
【0065】
明確にするために、別個の実施形態の状況で説明されている、ある特定の特徴がまた、単一の実施形態で組み合わせて提供される可能性があることが認識される。逆に、簡潔にするために、単一の実施形態の状況で説明されている種々の特徴はまた、別個にまたはいずれかの適切な部分的組み合わせで、またはいずれかの他の説明された実施形態で適切に提供される可能性がある。種々の実施形態の状況で説明された、ある特定の特徴は、実施形態が、これらの要素なしで実施されない限り、これらの実施形態の本質的な特徴とみなされない。
【0066】
本明細書の前記で確定されたような、そして以下の特許請求の範囲のセクションで主張されるような本開示の種々の実施形態および態様は、以下の実施例において実験的裏付けを見出す。
【0067】
本明細書で特定の機能を例証し、説明しているが、多くの修飾、置換、変更、および等価物は、ここで、当業者であれば思いつくであろう。そのため、添付の特許請求の範囲が、本開示の真の精神に収まるような、すべてのそのような修飾および変更をカバーすることを意図していることが理解される。
【0068】
実施例1
ミニ臓器インサート
本明細書に記載のインサートデバイスは、
図1A~
図1B、
図2A~
図2B、
図3A~
図3B、
図4、
図5A~
図5F、
図6A~
図6B、
図7A~
図7C、
図8、
図9A~
図9C、および
図10A~
図10Bの説明にしたがって3D印刷された。
図1A~
図1Bは、ミニ臓器インサート(MOI)デバイスの2つの好ましい実施形態を表す。MOIデバイスは、標準384ウェルプレート、96ウェルプレート、24ウェルプレート、12ウェルプレートまたは6ウェルプレートのいずれかのウェル内に適合するように、トップリムに載せるように、そして培養培地に細胞を含むキャリアまたはプラットフォームを吊り下げるように設計される;そのような細胞は、培地に存在する治療薬を代謝することが可能である。
図1Aは、MOIデバイスの1つのデザインおよび使用を示す。3D印刷されたインサートは、3つの支柱により吊り下げられた環状キャリアまたはプラットフォームを含み、このキャリアまたはプラットフォームの中で、細胞(例えば、肝臓細胞、腸細胞または免疫細胞)の培養物をヒドロゲル(例えばマトリゲル(登録商標))に播種する。したがって、環状キャリアまたはプラットフォームは、細胞のリング、例えば肝臓オルガノイドを支持し、MOIデバイスを使用して、ウェルプレートのウェル内で培養培地に容易に浸漬することが可能である。吊り下げられた細胞のキャリアまたはプラットフォームを有するMOIは、その後、事前に印刷された成形オルガノイド押出成形物または2D単層または他の細胞凝集体をその基部に有するウェルに配置される;キャリアまたはプラットフォーム、ウェル細胞のいずれか、またはその両方の代謝活性は、腫瘍に対してテストされている治療薬の治療活性を調整し、インビボで治療薬の生物活性をシミュレートすることが可能である。この方法は、既存の薬物スクリーニングプロトコルに対応している。一実施形態において、肝細胞は、3D印刷されたウェルインサートのキャリアまたはプラットフォームポケットにバイオプリントされ、その後、組織培養ウェルに挿入される。
図11Bは、肉腫腫瘍オルガノイドを含む組織培養ウェルおよび肝細胞を含むMOIデバイスの断面概略図を示す。
【0069】
図10A~
図10Bは、MOIに対する別のバリエーションを表し、キャリアまたはプラットフォームは、細胞を保持するためのリング構成を含む。リングの底部は、培養培地との相互作用を強化するために穴あきである。キャリアまたはプラットフォームは、垂直の支柱でリングから吊り下げられる。MOIデバイスの他の実施形態と同様に、MOIのバリエーションは、ウェル内に適合するように、トップリムに載せるように、そして培養培地に細胞を含むキャリアまたはプラットフォームを吊り下げるように設計される。
図10A~
図10Bは、デザインおよび使用の例を示す。3D印刷されたインサートは、各支柱の底部でリングキャリアまたはプラットフォームを含み、その中に、細胞(例えば肝臓細胞)が(例えばマトリゲル(登録商標)内に)播種される。MOIデバイスは、事前に印刷された成形オルガノイド押出成形物をその基部に有する可能性があるウェルに挿入される;キャリアまたはプラットフォームの代謝活性は、腫瘍に対してテストされている薬剤の治療活性を調整し、インビボで治療薬の生物活性をシミュレートする。
【0070】
実施例2
ハイスループット薬物スクリーニングおよび治療選択のためのオルガノイドのバイオプリンティング
現在、患者由来肉腫オルガノイドに対する治療をスクリーニングするためのプロトコルは、ウェルの周囲への細胞搭載ゲルの手動の堆積に依存する。この手順は手間がかかり、洗練された技術を必要とし、したがって、テストすることができる患者の数および各患者についてスクリーニングされる薬剤の数の両方を大きく制限する。さらに、後続のオルガノイドのイメージングおよび分析は、対象の焦点面に一貫性がないこと、およびウェル形状により生成されたメニスカス効果により複雑である。
【0071】
プロトコルが検証されると、腫瘍オルガノイドは、患者用の薬物スクリーニングプロセスに実装することができる。これらの患者は、既存の方法を使用する同時スクリーニングも比較のために実行することができるため、利用可能な量の組織に基づいて選択することができる。オルガノイドは、72時間インキュベートされ、24時間ごとに明視野画像を撮影することができる。インキュベーション期間の後、ウェル内の液体を取り除き、対象の薬物を含む新しい培地で置き換える。すべての薬物は、最低4連で、例えば0.1μM、1μM、および10μMの濃度でテストすることができる。処置は、連続した日数をかけて2回繰り返される。一実施形態において、標準の化学療法剤および標的治療薬(例えば、キナーゼ、PARP、プロテアソーム、およびHDAC阻害剤)を含む、ほぼ500個の化合物を含む薬物アレイを使用することができる。処置後、各試料に対するATPアッセイ(CellTiter-Glo 3D、プロメガ)は、感受性を測定するために実行される。
【0072】
一実施形態において、バイオプリンティング条件はまた、患者由来細胞を使用して最適化することができる。材料および印刷パラメータは変更される可能性がある。例えば、ATPアッセイは、生存率についての代替であり、代謝経路に影響する薬物に偏っている。したがって、形態学的分析を使用して薬物の影響を定量するために、標識がない画像に基づくアプローチを開発することができる。同様の方法は、単一細胞およびオルガノイドの特徴について開発されている。バイナリマスキングおよび形態学的特徴づけに基づく標準画像分析は、MATLAB、Pythonまたは他のプログラミング言語を使用して実行することができ、面積、円形度、および光学密度などのパラメータを生存率と相関させ、重要なメトリクスを同定することができる。ニューラルネットワークは、明視野画像および抽出された機能特性に対してモデルを訓練することによりオルガノイドの生存率を予測するために訓練することができる。これは、治療に対する感受性(処置後の生存率)で標識された肉腫オルガノイド画像の既存のデータベース(発明者らにより収集)を活用する。この分析ツールの全体的な目標は、オルガノイドに対する薬物の影響を評価するために破壊的な化学的アッセイを実行する必要性を排除することである。
【0073】
本明細書に記載されるように、肝臓細胞または免疫細胞などの臓器由来の細胞を活性化するインサートデバイスの使用は、治療薬の潜在的な有効性の評価に代謝成分を導入するインビトロスクリーニングの特徴を提供する。潜在的に有効な処置を同定するために腫瘍細胞に対して治療薬または組み合わせを単に評価するよりもむしろ、一実施形態において、治療薬を代謝する肝臓細胞の追加の存在は、より良好なスクリーニング条件を提供する。いくらかの実施形態において、肝臓細胞は、治療薬を不活性化する可能性があり、したがって、肝臓細胞を使用するバイオアッセイは、治療薬が、腫瘍細胞に対して有効であるが、インビボでは生体利用可能ではないことを示唆する可能性がある。別の実施形態において、肝臓および他の細胞は、治療薬またはそのプロドラッグを活性化して、それらの治療的価値を高める可能性がある。本明細書に記載の腫瘍細胞および肝臓細胞の同時培養は、これがなければインビトロで不活性であるとみなされる、有効な治療薬を同定する可能性がある。
【0074】
一般的手順
一実施形態において、スクリーニングプロセスは、細かく刻まれ、コラゲナーゼIVで処置されると単一細胞懸濁液に解離される、患者由来組織試料を回収することで開始される。細胞懸濁液は、その後、40μmセルストレーナーに通して濾過される。細胞懸濁液をゲル前駆体溶液に混合し、リングまたは他の形状で個々のウェルの周囲に手動または自動的に堆積させ、成形オルガノイド押出成形物を提供する。溶液が温かい環境でゲル化すると、培地を添加する。48~72時間後、スクリーニングのために対象の薬物を含む培地で培地を交換する。実験の最後まで、各ウェルの画像を24時間ごとに撮影する。生存率は、化学的アッセイを使用して追跡され、画像解析で補足される。すべての培地交換は、自動流体ハンドラにより管理され、イメージングもまた、自動イメージングシステムにより管理することができる。同一または類似の結果を達成する前記のバリエーションは、本明細書に完全に包含される。
【0075】
一実施形態において、用語「ヒドロゲル」は、市販のもの(例えばCELLINKシリーズ、Allevi Liver dECM)および天然物(例えばコラーゲン、ゼラチン、アルギン酸)または合成生体適合性ポリマー(例えばプルロニック、PEG、PPO)由来のラボ開発材料(例えばGelMA、ColMA)の両方を包含する。これらの材料は、本明細書ではバイオインクと呼ばれる。
【0076】
一実施形態において、マトリゲル(登録商標)系バイオインクは、マトリゲル(登録商標)および細胞培養培地の複合体である。種々のゲルマトリックス(例えばマトリゲル(登録商標)、BMEなど)を細胞培養培地(例えばMammoCult、RPMI、DMEM)と混合する際、いくつかの比率を使用することができる。例えば、培地3部をマトリゲル(登録商標)4部に使用する。他の実施形態において、培地のマトリゲル(登録商標)に対する比率は、1:2、1:1、2:1、3:1であり得るか、純マトリゲル(登録商標)溶液を使用することができる。他の実施形態において、キサンタンガムまたはカルボキシメチルセルロースなどのセルロース誘導体などの増粘剤は、機械的特性を変更するために、約1%から約20%で含まれる可能性がある。
【0077】
細胞播種の必要要件
一実施形態において、96ウェルプレートで1ウェルあたり2,000~10,000個の細胞、24ウェルプレートで1ウェルあたり10,000~200,000個の細胞の範囲で細胞が播種される。細胞密度は、さまざまな要因に依存するが、患者から回収された組織の量により主に決定される。
【0078】
形状の必要要件
印刷された形状は、単一または複数の層からなる任意の多角形であり得る。複数の形状は、同じウェル内に印刷することができる。各形状/構造は、単数、複数の細胞型を含むことができるか、全く含まない可能性がある。形状は、所与のウェルプレートの内径を有する円により外接することができる必要があり、ウェルの中央領域、例えば中心から半径0.5mm以内を占有するべきではない。一実施形態において、直径6.35mmの基部を有する培養ウェルを使用することができ、印刷針の外縁が6.35mmの円形境界内で、除外された中心半径の外に残る前提で、どのような印刷形状も使用することができる。一実施形態において、平均直径3.3mmで、幅1mmであるリングが印刷される。ウェルの中央に印刷されるので、印刷されたリングは、ウェルの壁のいずれとも接触しない。
【0079】
実施例3
肝臓で代謝される治療薬を腫瘍オルガノイドに対してテストするための肝臓細胞を使用するポータブルミニ臓器インサート(MOI)
本実施例は、対象の患者への適合性をより良好に臨床医に情報提供するように、薬物を単独または組み合わせてスクリーニングする、ミニ臓器インサート(MOI)デバイスの使用を説明する。例証の目的で、本実施例は、骨肉腫用の薬物のスクリーニングを説明する。本明細書に記載の方法論は、他の癌または疾患用の他の薬物のスクリーニングにも等しく適用可能である。
【0080】
バイオプリンティングに基づくプラットフォームは、本明細書では、肉腫細胞を含むオルガノイドを生成するためのものである可能性がある。いくらかの実施例において、例えばHepaRG(商標)細胞(BIOPREDIC International)は、同様のヒドロゲル構造で、ウェルインサート、ミニ臓器インサート(MOI、
図1A~
図1B、
図2A~
図2B、
図3A~
図3B、
図4、
図5A~
図5F、
図6A~
図6B、
図7A~
図7C、
図8、
図9A~
図9C、および
図10A~
図10Bを参照されたい)に印刷することができる。一実施形態において、ウェルインサートは、ステレオリソグラフィプリンタ(Form 3、Formlabs)を使用して3D印刷される。一実施形態において、外科用ガイドレジン(Formlabs)は、生体適合性およびオートクレーブ安全性のために使用することができる。この材料はまた、半透明のために倒立顕微鏡に対応している。MOIシステムは、肝細胞を播種したゲルを、肉腫オルガノイドを含むウェルに直接浸漬することを可能にする一方で、細胞をウェルの中央から離れて維持することにより自動化に対応した形式も維持する。
【0081】
他の実施形態において、デバイスは、プラスチックまたは樹脂、例えば医療用のフォトポリマー、PVC、ポリエチレン、PEEK、ポリカーボネート、ポリプロピレンなどの任意の生体適合性材料で、3D印刷、射出成形、吹込成形、真空鋳造、熱成形、押出成形された構成部品からの組み立てなどの任意の方法により製造される可能性がある。
【0082】
MOIは、肉腫オルガノイドに適用する前に、対象のすべての薬物について検証することができる。一実施形態において、検証プロセスには、1,000~20,000個の肝細胞をウェルインサートに印刷し、培地中で72時間インキュベートすることが含まれる。いくらかの実施形態において、約5,000~約10,000個の肝細胞は、ウェルインサートに提供される。0.5時間、1時間、2時間、4時間、8時間、12時間、24時間、48時間および72時間の時点で、培養培地をウェルから回収する。液体クロマトグラフィ質量分析を使用して、親化合物、その代謝物、およびそれらの濃度を定量することができる。目標は、インビボでの薬物代謝を再現する条件を同定することである。例えば、イホスファミドの25~50%が、クロロ-アセトアルデヒドに変換される一方で、残りが4-ヒドロキシ-イホスファミドおよびそのより安定な不活性型に変換されることが予想される。これらのパラメータを最適化するため、ウェルインサートのサイズ、形状、および細胞密度は、必要に応じて変更することができる。肝細胞生存率および増殖は、各時点について、カルセインAMおよびヨウ化プロピジウム染色ならびにATPアッセイにより評価することができる。その後、各薬物についての最適な肝細胞条件およびインキュベーション期間は、後続の実験で使用することができる。
【0083】
薬物スクリーニングを実行するため、ウェルインサートは、マウス、例えば、EW-7(ユーイング肉腫)およびSAOS-LM7(骨肉腫(osteosarcoma))細胞株でのイホスファミドに感受性がある細胞株との同時培養において研究することができる。第1の目標は、ウェルインサートが、薬物のない状態で肉腫細胞に対して毒性がないことを確認することである;これは、生存率アッセイで検証することができる。次に、HepaRG細胞との相互作用のために肉腫細胞における表現型の変化が生じるかどうか、いつ生じるかを判断する。IHCおよびH&E染色ならびにRNAseqは、ウェルインサートの有無で培養される細胞間の変化を特徴づけるために使用することができる。一実施形態において、CELLINK BioXを用いて印刷された肉腫オルガノイドおよびHepRG細胞は、最初の72時間、独立してインキュベートされる。3日後、薬物含有培地で培地を交換する。培地が交換されると、肝細胞ゲルを有するウェルインサートを肉腫オルガノイドウェルに移す。その後24時間ごとに肉腫オルガノイドをイメージングすることができ、培地を交換することができる。2つの処置の後、ウェルインサートを取り除くことができ、オルガノイド生存率は、本明細書に記載のようにアッセイすることができる。
【0084】
システムが細胞株由来オルガノイドに対して検証されると、スクリーニングを進めて、骨肉腫患者試料から確立されたオルガノイドをテストすることができる。何年にもわたって肉腫患者由来の試験片を回収し、バイオバンク化している。既存のデータベースをマイニングして、臨床的に感受性があると認められた患者およびイホスファミドなどの薬物に耐性がある患者を同定することができる。ウェルインサートの有無によるオルガノイド感受性を患者の臨床反応と比較することができる。インビトロ反応と、治療に対する患者の放射線学的および病理組織学的応答との間の相関が予想される。本明細書に記載のミニウェルインサートプラットフォームは、既存の薬物スクリーニングプロトコルに組み込んで、一般に使用されている最先端の治療をスクリーニングすることができる。本明細書に記載のウェルインサートプラットフォームを使用することで、潜在的に有用な薬物のリストを、治療計画を選択する医師に提供することができ、同様にこれらの薬物の生物学的効果をインビトロで研究する可能性を開くことができる。
【国際調査報告】