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特表2023-552206デスモグレイン2指向性キメラ抗原受容体(CAR)コンストラクトと利用法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-14
(54)【発明の名称】デスモグレイン2指向性キメラ抗原受容体(CAR)コンストラクトと利用法
(51)【国際特許分類】
   A61K 39/395 20060101AFI20231207BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20231207BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20231207BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20231207BHJP
   A61K 31/7088 20060101ALI20231207BHJP
   A61K 35/76 20150101ALI20231207BHJP
   A61K 35/17 20150101ALI20231207BHJP
   C07K 19/00 20060101ALN20231207BHJP
   C07K 14/705 20060101ALN20231207BHJP
   C07K 16/28 20060101ALN20231207BHJP
   C12N 15/13 20060101ALN20231207BHJP
   C12N 15/62 20060101ALN20231207BHJP
   C12N 15/63 20060101ALN20231207BHJP
   C12N 7/01 20060101ALN20231207BHJP
   C12N 5/10 20060101ALN20231207BHJP
   C12N 5/0783 20100101ALN20231207BHJP
【FI】
A61K39/395 N
A61P35/00
A61P35/02
A61K48/00
A61K31/7088
A61K35/76
A61K35/17
C07K19/00 ZNA
C07K14/705
C07K16/28
C12N15/13
C12N15/62 Z
C12N15/63 Z
C12N7/01
C12N5/10
C12N5/0783
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023533976
(86)(22)【出願日】2021-12-02
(85)【翻訳文提出日】2023-07-31
(86)【国際出願番号】 US2021061548
(87)【国際公開番号】W WO2022120010
(87)【国際公開日】2022-06-09
(31)【優先権主張番号】63/120,356
(32)【優先日】2020-12-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】399029547
【氏名又は名称】トーマス・ジェファーソン・ユニバーシティー
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100138210
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 達則
(72)【発明者】
【氏名】アダム ユージーン スヌック
(72)【発明者】
【氏名】マイ ジョージア マホーニー
(72)【発明者】
【氏名】ロバート デブリン カールソン
【テーマコード(参考)】
4B065
4C084
4C085
4C086
4C087
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA90X
4B065AA90Y
4B065AA94X
4B065AA94Y
4B065AA95X
4B065AA95Y
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065CA25
4B065CA44
4C084AA13
4C084NA05
4C084NA14
4C084ZB261
4C084ZB262
4C084ZB271
4C084ZB272
4C085AA14
4C085AA38
4C085BB11
4C085DD62
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA16
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA05
4C086NA14
4C086ZB26
4C086ZB27
4C087AA01
4C087BB37
4C087BC83
4C087CA12
4C087NA05
4C087NA13
4C087NA14
4C087ZB26
4C087ZB27
4H045AA10
4H045AA30
4H045BA41
4H045CA40
4H045DA76
4H045EA20
4H045FA72
4H045FA74
(57)【要約】
本開示は、Dsg2結合分子、そのDsg2結合分子をコードする核酸分子、およびそれを含む組成物と、それを用いてがんを治療または予防する方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
Dsg2に特異的に結合するドメインを含むキメラ抗原受容体(CAR)分子を含む組成物。
【請求項2】
Dsg2に特異的に結合する前記ドメインがscFv抗体断片を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
Dsg2に特異的に結合する前記ドメインが、Dsg2、抗Dsg2抗体、またはその断片を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
Dsg2に特異的に結合する前記ドメインが、
a)配列番号2の重鎖(HC)CDR1配列;
b)配列番号4のHC CDR2配列;
c)配列番号6のHC CDR3配列;
d)配列番号10の軽鎖(LC)CDR1配列;
e)配列番号12のLC CDR2配列;
f)配列番号14のLC CDR3配列;
g)配列番号18のHC CDR1配列;
h)配列番号20のHC CDR2配列;
i)配列番号22のHC CDR3配列;
j)配列番号26のLC CDR1配列;
k)配列番号28のLC CDR2配列;および
l)配列番号30のLC CDR3配列
からなるグループから選択される少なくとも1つのCDR配列を含む抗体またはその断片を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記抗体が、
a)配列番号2、配列番号4、および配列番号6のCDR配列を含む可変重鎖配列;
b)配列番号10、配列番号12、および配列番号14のCDR配列を含む可変軽鎖配列;
c)配列番号18、配列番号20、および配列番号22のCDR配列を含む可変重鎖配列;
d)配列番号26、配列番号28、および配列番号30のCDR配列を含む可変軽鎖配列;
e)配列番号8と配列番号24からなるグループから選択される可変重鎖配列;
f)配列番号16と配列番号32からなるグループから選択される可変軽鎖配列;
g)配列番号8と配列番号24からなるグループから選択される可変重鎖配列と少なくとも95%一致する配列;
h)配列番号16と配列番号32からなるグループから選択される可変軽鎖配列と少なくとも95%一致する配列;
i)配列番号8と配列番号24からなるグループから選択される可変重鎖配列の完全長配列の少なくとも80%を含む断片;および
j)配列番号16と配列番号32からなるグループから選択される可変軽鎖配列の完全長配列の少なくとも80%を含む断片
からなるグループから選択される少なくとも1つのアミノ酸配列を含む、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
前記CARが、
a)配列番号34と配列番号36からなるグループから選択される配列;
b)配列番号34と配列番号36からなるグループから選択される配列と少なくとも95%一致する配列;および
c)配列番号34と配列番号36からなるグループから選択される配列の完全長配列の少なくとも80%を含む断片
からなるグループから選択される配列を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
医薬として許容可能な賦形剤と、アジュバントとからなるグループから選択される少なくとも1つをさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
Dsg2に特異的に結合するドメインを含むCAR分子をコードする核酸分子を含む組成物。
【請求項9】
Dsg2に特異的に結合する前記ドメインがscFv抗体断片を含む、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
Dsg2に特異的に結合する前記ドメインが、
a)配列番号2のHC CDR1配列;
b)配列番号4のHC CDR2配列;
c)配列番号6のHC CDR3配列;
d)配列番号10のLC CDR1配列;
e)配列番号12のLC CDR2配列;
f)配列番号14のLC CDR3配列;
g)配列番号18のHC CDR1配列;
h)配列番号20のHC CDR2配列;
i)配列番号22のHC CDR3配列;
j)配列番号26のLC CDR1配列;
k)配列番号28のLC CDR2配列;および
l)配列番号30のLC CDR3配列
からなるグループから選択される少なくとも1つのCDR配列を含む抗体またはその断片を含む、請求項8に記載の組成物。
【請求項11】
前記核酸分子が、
a)配列番号2、配列番号4、および配列番号6のCDR配列を含む可変重鎖配列;
b)配列番号10、配列番号12、および配列番号14のCDR配列を含む可変軽鎖配列;
c)配列番号18、配列番号20、および配列番号22のCDR配列を含む可変重鎖配列;
d)配列番号26、配列番号28、および配列番号30のCDR配列を含む可変軽鎖配列;
e)配列番号8と配列番号24からなるグループから選択される可変重鎖配列;
f)配列番号16と配列番号32からなるグループから選択される可変軽鎖配列;
g)配列番号8と配列番号24からなるグループから選択される可変重鎖配列と少なくとも95%一致する配列;
h)配列番号16と配列番号32からなるグループから選択される可変軽鎖配列と少なくとも95%一致する配列;
i)配列番号8と配列番号24からなるグループから選択される可変重鎖配列の完全長配列の少なくとも80%を含む断片;および
j)配列番号16と配列番号32からなるグループから選択される可変軽鎖配列の完全長配列の少なくとも80%を含む断片
からなるグループから選択される少なくとも1つのアミノ酸配列を含む抗体またはその断片をコードする、請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
前記核酸分子が、
a)HC CDR1をコードする配列番号1のヌクレオチド配列;
b)HC CDR2をコードする配列番号3のヌクレオチド配列
c)HC CDR3をコードする配列番号5のヌクレオチド配列
d)LC CDR1をコードする配列番号9のヌクレオチド配列
e)LC CDR2をコードする配列番号11のヌクレオチド配列
f)LC CDR3をコードする配列番号13のヌクレオチド配列
g)HC CDR1をコードする配列番号17のヌクレオチド配列
h)HC CDR2をコードする配列番号19のヌクレオチド配列
i)HC CDR3をコードする配列番号21のヌクレオチド配列
j)LC CDR1をコードする配列番号25のヌクレオチド配列
k)LC CDR2をコードする配列番号27のヌクレオチド配列
l)LC CDR3をコードする配列番号29のヌクレオチド配列
からなるグループから選択される少なくとも1つのCDRをコードするヌクレオチド配列を含む、請求項10に記載の組成物。
【請求項13】
前記核酸分子が、
a)配列番号1、配列番号3、および配列番号5を含むヌクレオチド配列;
b)配列番号9、配列番号11、および配列番号13を含むヌクレオチド配列;
c)配列番号17、配列番号19、および配列番号21を含むヌクレオチド配列;
d)配列番号25、配列番号27、および配列番号29を含むヌクレオチド配列;
e)配列番号7と配列番号23からなるグループから選択されて可変重鎖配列をコードするヌクレオチド配列;
f)配列番号15と配列番号31からなるグループから選択されて可変軽鎖配列をコードするヌクレオチド配列;
g)配列番号7と配列番号23からなるグループから選択されるヌクレオチド配列と少なくとも95%一致する配列;
h)配列番号15と配列番号31からなるグループから選択されるヌクレオチド配列と少なくとも95%一致する配列;
i)配列番号7と配列番号23からなるグループから選択されるヌクレオチド配列の完全長配列の少なくとも80%を含む断片;および
j)配列番号15と配列番号31からなるグループから選択されるヌクレオチド配列の完全長配列の少なくとも80%を含む断片
からなるグループから選択される少なくとも1つのヌクレオチド配列を含む、請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
前記CARをコードする前記核酸分子が、
a)配列番号33と配列番号35からなるグループから選択されるヌクレオチド配列;
b)配列番号33と配列番号35からなるグループから選択されるヌクレオチド配列と少なくとも95%一致する配列;および
c)配列番号33と配列番号35からなるグループから選択されるヌクレオチド配列の完全長配列の少なくとも80%を含む断片
からなるグループから選択される配列を含む、請求項8に記載の組成物。
【請求項15】
前記核酸分子が発現ベクターを含む、請求項8に記載の組成物。
【請求項16】
前記核酸分子がウイルス粒子に組み込まれている、請求項8に記載の組成物。
【請求項17】
医薬として許容可能な賦形剤と、アジュバントとからなるグループから選択される少なくとも1つをさらに含む、請求項8に記載の組成物。
【請求項18】
Dsg2に特異的に結合するドメインを含むCAR分子をコードする前記核酸分子を含む単離された細胞を含む、請求項8に記載の組成物。
【請求項19】
前記単離された細胞が免疫細胞を含む、請求項18に記載の組成物。
【請求項20】
前記免疫細胞の選択が、Tヘルパー細胞、細胞傷害性T細胞、メモリT細胞、エフェクタT細胞、Th1細胞、Th2細胞、Th9細胞、Th17細胞、Th22細胞、Tfh(濾胞性ヘルパー)細胞、T制御性細胞、ナチュラルキラーT細胞、粘膜関連インバリアントT細胞(MAIT)、γδ T細胞、TCRトランスジェニックT細胞、普遍的サイトカイン媒介殺傷のためリダイレクトされたT細胞(TRUCK)、腫瘍浸潤T細胞(TIL)、およびCAR-T細胞からなるグループからなされる、請求項19に記載の組成物。
【請求項21】
前記免疫細胞がナチュラルキラー細胞を含む、請求項19に記載の組成物。
【請求項22】
疾患または障害の治療または予防を必要とする対象においてそれを治療または予防する方法であって、請求項1~21のいずれか1項に記載の組成物を投与することを含む方法。
【請求項23】
前記疾患または障害が、がんであるか、がんに関連する疾患または障害である、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記がんの選択が、副腎皮質癌(ACC);膀胱尿路上皮癌(BLCA);浸潤性乳癌(BRCA);子宮頸扁平上皮癌と子宮頸腺癌(CESC);胆管癌(CHOL);大腸腺癌(COAD);リンパ系新生物びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBC);食道癌(ESCA);多形膠芽腫(GBM);頭頸部扁平上皮癌(HNSC);嫌色素性腎癌(KICH);腎明細胞癌(KIRC);乳頭状腎細胞癌(KIRP);急性骨髄性白血病(LAML);脳低悪性度神経膠腫(LGG);肝細胞癌(LIHC);肺腺癌(LUAD);肺扁平上皮癌(LUSC);中皮腫(MESO);多発性骨髄腫(MM);卵巣漿液性嚢胞腺癌(OV);膵臓腺癌(PAAD);褐色細胞腫と傍神経節腫(PCPG);前立腺腺癌(PRAD);直腸腺癌(READ);肉腫(SARC);皮膚黒色腫(SKCM);胃腺癌(STAD);精巣胚細胞腫瘍(TGCT);甲状腺癌(THCA);胸腺腫(THYM);子宮内膜癌(UCEC);子宮癌肉腫(UCS);およびブドウ膜黒色腫(UVM)からなるグループからなされる、請求項23に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連する出願の相互参照
本出願は、2020年12月2日に出願されたアメリカ合衆国仮出願第63/120,356号の優先権を主張するものであり、その全体が参照によって本明細書に組み込まれている。
【背景技術】
【0002】
がんクリニックに入った最も強力で成功している新規な療法の1つはCAR-T細胞療法である(Brudno and Kochenderfer, 2018, Nat Rev Clin Oncol, 15(1):31-46)。このアプローチでは、患者のT細胞を回収し、キメラ抗原受容体(CAR)を発現するように遺伝子を改変し、非常に大きな数になるまで増殖した後、患者に投与する。注目すべきことに、CAR-T細胞療法は難治性で進行性の白血病を伴う患者の約75%で有効であり、その結果としてFDAが3つのCAR-T細胞療法を認可している(Brudno and Kochenderfer, 2018, Nat Rev Clin Oncol, 15(1):31-46)。しかしこの療法は固形がん(肺、結腸直腸、膵臓、乳房など)ではこれまで成功していないことを考慮すると、それぞれの疾患のためと、患者、腫瘍、および免疫因子のための適切な抗原標的が必要とされている(Baybutt et al., 2019, Clin Pharmacol Ther, 105(1):71-78)。現在CAR-Tは、典型的には、がんの発生元である細胞が発現する組織特異的表面受容体を標的とする。逆に、理論に囚われることなく、細胞間の接合部(接着接合部、密着接合部、デスモソームなど)が変化することによる固形がんに典型的な組織の乱れから、正常な細胞ではなくがんの表面にある新規な療法標的が明らかになることで、普遍的標的を通じてほぼあらゆるタイプの固形がんを治療することが可能になるであろうことが提案されている。さらに、これまでは患者のT細胞が細胞療法のための主要な供給源であったが、ドナー由来のNK細胞を「既製品として使用できる」ようになり、患者由来の材料が不要になる可能性がある。ほぼ普遍的な標的とドナー由来の細胞供給源の組み合わせは、アメリカ合衆国においてがんで毎年亡くなる約100万人のための安全で、有効で、大量に製造でき、「既製品として使用できる」安価で普遍的なCAR-NK細胞療法を生み出す可能性がある。
【0003】
そのため本分野では、がんを含む疾患と障害の治療と予防のための組成物と方法が必要とされている。本発明は、本分野で満たされていないこの要求に対処する。
【発明の概要】
【0004】
一実施形態では、本発明は、Dsg2に特異的に結合する抗体またはその断片に関する。一実施形態では、その抗体またはその断片は、配列番号2の重鎖(HC)CDR1配列、配列番号4のHC CDR2配列、配列番号6のHC CDR3配列、配列番号10の軽鎖(LC)CDR1配列、配列番号12のLC CDR2配列、配列番号14のLC CDR3配列、配列番号18のHC CDR1配列、配列番号20のHC CDR2配列、配列番号22のHC CDR3配列、配列番号26のLC CDR1配列、配列番号28のLC CDR2配列、および配列番号30のLC CDR3配列の少なくとも1つを含む。
【0005】
一実施形態では、前記抗体またはその断片はscFv抗体断片を含む。
【0006】
一実施形態では、前記抗体またはその断片は、配列番号2、配列番号4、および配列番号6のCDR配列を含む可変重鎖配列を含む。一実施形態では、前記抗体またはその断片は、配列番号10、配列番号12、および配列番号14のCDR配列を含む可変軽鎖配列を含む。一実施形態では、前記抗体またはその断片は、配列番号18、配列番号20、および配列番号22のCDR配列を含む可変重鎖配列を含む。一実施形態では、前記抗体またはその断片は、配列番号26、配列番号28、および配列番号30のCDR配列を含む可変軽鎖配列を含む。一実施形態では、前記抗体またはその断片は、配列番号8と配列番号24からなるグループから選択される可変重鎖配列を含む。一実施形態では、前記抗体またはその断片は、配列番号16と配列番号32からなるグループから選択される可変軽鎖配列を含む。一実施形態では、前記抗体またはその断片は、配列番号8と配列番号24からなるグループから選択される可変重鎖配列と少なくとも95%一致する配列を含む。一実施形態では、前記抗体またはその断片は、配列番号16と配列番号32からなるグループから選択される可変軽鎖配列と少なくとも95%一致する配列を含む。一実施形態では、前記抗体またはその断片は、配列番号8と配列番号24からなるグループから選択される可変重鎖配列の完全長配列の少なくとも80%を含む断片を含む。一実施形態では、前記抗体またはその断片は、配列番号16と配列番号32からなるグループから選択される可変軽鎖配列の完全長配列の少なくとも80%を含む断片を含む。
【0007】
一実施形態では、本発明は、Dsg2に特異的に結合するドメインを含むキメラ抗原受容体(CAR)分子を含む組成物に関する。Dsg2に特異的に結合するドメイン。一実施形態では、Dsg2に特異的に結合する前記ドメインはscFv抗体断片を含む。一実施形態では、Dsg2に特異的に結合する前記ドメインは、Dsg2、抗Dsg2抗体、またはその断片を含む。
【0008】
一実施形態では、前記CARは、配列番号2、配列番号4、および配列番号6のCDR配列を含む可変重鎖配列を含むDsg2結合分子を含む。一実施形態では、前記CARは、配列番号10、配列番号12、および配列番号14のCDR配列を含む可変軽鎖配列を含むDsg2結合分子を含む。一実施形態では、前記CARは、配列番号18、配列番号20、および配列番号22のCDR配列を含む可変重鎖配列を含むDsg2結合分子を含む。一実施形態では、前記CARは、配列番号26、配列番号28、および配列番号30のCDR配列を含む可変軽鎖配列を含むDsg2結合分子を含む。一実施形態では、前記CARは、配列番号8と配列番号24からなるグループから選択される可変重鎖配列を含むDsg2結合分子を含む。一実施形態では、前記CARは、配列番号16と配列番号32からなるグループから選択される可変軽鎖配列を含むDsg2結合分子を含む。一実施形態では、前記CARは、配列番号8と配列番号24からなるグループから選択される可変重鎖配列と少なくとも95%一致する配列を含むDsg2結合分子を含む。一実施形態では、前記CARは、配列番号16と配列番号32からなるグループから選択される可変軽鎖配列と少なくとも95%一致する配列を含むDsg2結合分子を含む。一実施形態では、前記CARは、配列番号8と配列番号24からなるグループから選択される可変重鎖配列の完全長配列の少なくとも80%を含む断片を含むDsg2結合分子を含む。一実施形態では、前記CARは、配列番号16と配列番号32からなるグループから選択される可変軽鎖配列の完全長配列の少なくとも80%を含む断片を含むDsg2結合分子を含む。一実施形態では、前記CARは、配列番号34または配列番号36に示されている配列を含む。一実施形態では、前記CARは、配列番号34または配列番号36と少なくとも95%一致する配列を含む。一実施形態では、前記CARは、配列番号34または配列番号36の完全長配列の少なくとも80%を含む配列断片を含む。
【0009】
一実施形態では、組成物は、医薬として許容可能な賦形剤、アジュバント、またはこれらの組み合わせをさらに含む。
【0010】
一実施形態では、本発明は、Dsg2に特異的に結合する抗体またはその断片をコードする核酸分子に関する。一実施形態では、その核酸分子は、配列番号2の重鎖(HC)CDR1配列、配列番号4のHC CDR2配列、配列番号6のHC CDR3配列、配列番号10の軽鎖(LC)CDR1配列、配列番号12のLC CDR2配列、配列番号14のLC CDR3配列、配列番号18のHC CDR1配列、配列番号20のHC CDR2配列、配列番号22のHC CDR3配列、配列番号26のLC CDR1配列、配列番号28のLC CDR2配列;および配列番号30のLC CDR3配列の少なくとも1つを含む抗体をコードする。
【0011】
一実施形態では、前記核酸分子は、配列番号2、配列番号4、および配列番号6のCDR配列を含む可変重鎖配列を含む抗体をコードする。一実施形態では、前記核酸分子は、配列番号10、配列番号12、および配列番号14のCDR配列を含む可変軽鎖配列を含む抗体をコードする。一実施形態では、前記核酸分子は、配列番号18、配列番号20、および配列番号22のCDR配列を含む可変重鎖配列を含む抗体をコードする。一実施形態では、前記核酸分子は、配列番号26、配列番号28、および配列番号30のCDR配列を含む可変軽鎖配列を含む抗体をコードする。一実施形態では、前記核酸分子は、配列番号8と配列番号24からなるグループから選択される可変重鎖配列を含む抗体をコードする。一実施形態では、前記核酸分子は、配列番号16と配列番号32からなるグループから選択される可変軽鎖配列を含む抗体をコードする。一実施形態では、前記核酸分子は、配列番号8と配列番号24からなるグループから選択される可変重鎖配列と少なくとも95%一致する配列を含む抗体をコードする。一実施形態では、前記核酸分子は、配列番号16と配列番号32からなるグループから選択される可変軽鎖配列と少なくとも95%一致する配列を含む抗体をコードする。一実施形態では、前記核酸分子は、配列番号8、配列番号24、配列番号16、または配列番号32の完全長配列の少なくとも80%を含む断片をコードする。
【0012】
一実施形態では、Dsg2に特異的に結合する抗体またはその断片をコードする核酸は、HC CDR1をコードする配列番号1のヌクレオチド配列;HC CDR2をコードする配列番号3のヌクレオチド配列;HC CDR3をコードする配列番号5のヌクレオチド配列;LC CDR1をコードする配列番号9のヌクレオチド配列;LC CDR2をコードする配列番号11のヌクレオチド配列;LC CDR3をコードする配列番号13のヌクレオチド配列;HC CDR1をコードする配列番号17のヌクレオチド配列;HC CDR2をコードする配列番号19のヌクレオチド配列;HC CDR3をコードする配列番号21のヌクレオチド配列;LC CDR1をコードする配列番号25のヌクレオチド配列;LC CDR2をコードする配列番号27のヌクレオチド配列;およびLC CDR3をコードする配列番号29のヌクレオチド配列の少なくとも1つを含む。
【0013】
一実施形態では、Dsg2に特異的に結合する抗体またはその断片をコードする核酸分子は、配列番号1、配列番号3、および配列番号5のCDR配列を含んでいて可変重鎖配列をコードするヌクレオチド配列を含む。一実施形態では、Dsg2に特異的に結合する抗体またはその断片をコードする核酸分子は、配列番号9、配列番号11、および配列番号13のCDR配列を含んでいて可変軽鎖配列をコードするヌクレオチド配列を含む。一実施形態では、Dsg2に特異的に結合する抗体またはその断片をコードする核酸分子は、配列番号17、配列番号19、および配列番号21のCDR配列を含んでいて可変重鎖配列をコードするヌクレオチド配列を含む。一実施形態では、Dsg2に特異的に結合する抗体またはその断片をコードする核酸分子は、配列番号25、配列番号27、および配列番号29のCDR配列を含んでいて可変重鎖配列をコードするヌクレオチド配列を含む。一実施形態では、Dsg2に特異的に結合する抗体またはその断片をコードする核酸分子は、配列番号7と配列番号23からなるグループから選択されて可変重鎖配列をコードするヌクレオチド配列を含む。一実施形態では、Dsg2に特異的に結合する抗体またはその断片をコードする核酸分子は、配列番号15と配列番号31からなるグループから選択されて可変軽鎖配列をコードするヌクレオチド配列を含む。一実施形態では、Dsg2に特異的に結合する抗体またはその断片をコードする核酸分子は、配列番号7と配列番号23からなるグループから選択されるヌクレオチド配列と少なくとも95%一致する配列を含む。一実施形態では、Dsg2に特異的に結合する抗体またはその断片をコードする核酸分子は、配列番号15と配列番号31からなるグループから選択されるヌクレオチド配列と少なくとも95%一致する配列を含む。一実施形態では、Dsg2に特異的に結合する抗体またはその断片をコードする核酸分子は、配列番号7と配列番号23からなるグループから選択されるヌクレオチド配列の完全長配列の少なくとも80%を含む断片を含む。一実施形態では、Dsg2に特異的に結合する抗体またはその断片をコードする核酸分子は、配列番号15と配列番号31からなるグループから選択されるヌクレオチド配列の完全長配列の少なくとも80%を含む断片を含む。
【0014】
一実施形態では、Dsg2に特異的に結合する抗体またはその断片をコードする核酸分子は、scFv抗体断片を含むCAR分子をコードする。
【0015】
一実施形態では、CARをコードする核酸分子は、配列番号1、配列番号3、および配列番号5のCDR配列を含んでいて可変重鎖配列をコードするヌクレオチド配列を含む。一実施形態では、CARをコードする核酸分子は、配列番号9、配列番号11、および配列番号13のCDR配列を含んでいて可変軽鎖配列をコードするヌクレオチド配列を含む。一実施形態では、CARをコードする核酸分子は、配列番号17、配列番号19、および配列番号21のCDR配列を含んでいて可変重鎖配列をコードするヌクレオチド配列を含む。一実施形態では、CARをコードする核酸分子は、配列番号25、配列番号27、および配列番号29のCDR配列を含んでいて可変重鎖配列をコードするヌクレオチド配列を含む。一実施形態では、CARをコードする核酸分子は、配列番号7と配列番号23からなるグループから選択されて可変重鎖配列をコードするヌクレオチド配列を含む。一実施形態では、CARをコードする核酸分子は、配列番号15と配列番号31からなるグループから選択されて可変軽鎖配列をコードするヌクレオチド配列を含む。一実施形態では、CARをコードする核酸分子は、配列番号7と配列番号23からなるグループから選択されるヌクレオチド配列と少なくとも95%一致する配列を含む。一実施形態では、CARをコードする核酸分子は、配列番号15と配列番号31からなるグループから選択されるヌクレオチド配列と少なくとも95%一致する配列を含む。一実施形態では、CARをコードする核酸分子は、配列番号7と配列番号23からなるグループから選択されるヌクレオチド配列の完全長配列の少なくとも80%を含む断片を含む。一実施形態では、CARをコードする核酸分子は、配列番号15と配列番号31からなるグループから選択されるヌクレオチド配列の完全長配列の少なくとも80%を含む断片を含む。一実施形態では、CARをコードする核酸分子は、配列番号33と配列番号35からなるグループから選択されるヌクレオチド配列を含む。一実施形態では、CARをコードする核酸分子は、配列番号33と配列番号35からなるグループから選択されるヌクレオチド配列と少なくとも95%一致する配列を含む。一実施形態では、CARをコードする核酸分子は、配列番号33と配列番号35からなるグループから選択されるヌクレオチド配列の完全長配列の少なくとも80%を含む断片を含む。
【0016】
一実施形態では、前記核酸分子は発現ベクターを含む。一実施形態では、前記核酸分子はウイルス粒子に組み込まれている。
【0017】
一実施形態では、本発明は、Dsg2に特異的に結合する抗体またはその断片をコードする核酸分子を含む組成物、またはDsg2に特異的に結合する抗体またはその断片を含むCAR分子を含む組成物に関する。
【0018】
一実施形態では、前記組成物は、医薬として許容可能な賦形剤、アジュバント、またはこれらの組み合わせを含む。
【0019】
一実施形態では、本発明は、Dsg2に特異的に結合する抗体またはその断片をコードする核酸分子、またはDsg2に特異的に結合する抗体またはその断片を含むCAR分子を発現する単離された細胞に関する。
【0020】
一実施形態では、前記細胞は免疫細胞である。一実施形態では、前記免疫細胞は、Tヘルパー細胞、細胞傷害性T細胞、メモリT細胞、エフェクタT細胞、Th1細胞、Th2細胞、Th9細胞、Th17細胞、Th22細胞、Tfh(濾胞性ヘルパー)細胞、T制御性細胞、ナチュラルキラーT細胞、粘膜関連インバリアントT細胞(MAIT)、γδ T細胞、TCRトランスジェニックT細胞、普遍的サイトカイン媒介殺傷のためリダイレクトされたT細胞(TRUCK)、腫瘍浸潤T細胞(TIL)、またはCAR-T細胞である。一実施形態では、前記免疫細胞はナチュラルキラー(NK)細胞である。
【0021】
一実施形態では、本発明は、疾患または障害の治療または予防を必要とする対象においてそれを治療または予防する1つの方法に関するものであり、この方法は、Dsg2に特異的に結合する抗体またはその断片を含む組成物を投与することを含む。一実施形態では、本発明は、疾患または障害の治療または予防を必要とする対象においてそれを治療または予防する1つの方法に関するものであり、この方法は、Dsg2に特異的に結合する抗体またはその断片をコードする核酸分子を含む組成物を投与することを含む。一実施形態では、本発明は、疾患または障害の治療または予防を必要とする対象においてそれを治療または予防する1つの方法に関するものであり、この方法は、Dsg2に特異的に結合する抗体またはその断片をコードする核酸分子を含む単離された細胞を投与することを含む。
【0022】
一実施形態では、前記疾患または障害は、がんであるか、がんに関連する疾患または障害である。
【0023】
一実施形態では、前記がんは、副腎皮質癌(ACC);膀胱尿路上皮癌(BLCA);浸潤性乳癌(BRCA);子宮頸扁平上皮癌と子宮頸腺癌(CESC);胆管癌(CHOL);大腸腺癌(COAD);リンパ系新生物びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBC);食道癌(ESCA);多形膠芽腫(GBM);頭頸部扁平上皮癌(HNSC);嫌色素性腎癌(KICH);腎明細胞癌(KIRC);乳頭状腎細胞癌(KIRP);急性骨髄性白血病(LAML);脳低悪性度神経膠腫(LGG);肝細胞癌(LIHC);肺腺癌(LUAD);肺扁平上皮癌(LUSC);中皮腫(MESO);多発性骨髄腫(MM);卵巣漿液性嚢胞腺癌(OV);膵臓腺癌(PAAD);褐色細胞腫と傍神経節腫(PCPG);前立腺腺癌(PRAD);直腸腺癌(READ);肉腫(SARC);皮膚黒色腫(SKCM);胃腺癌(STAD);精巣胚細胞腫瘍(TGCT);甲状腺癌(THCA);胸腺腫(THYM);子宮内膜癌(UCEC);子宮癌肉腫(UCS);またはブドウ膜黒色腫(UVM)である。
【図面の簡単な説明】
【0024】
本発明の実施形態に関する以下の詳細な記述は添付の図面と組み合わせて読んだときによりよく理解されよう。本発明が図面に示されている実施形態の厳密な構成と装置に限定されないことを理解すべきである。
【0025】
図1図1は、養子T細胞免疫療法においてDsg2特異的CAR-T細胞を使用するための戦略と根拠の模式図である。T細胞を操作してDsg2結合ドメインとT細胞活性化ドメインのキメラ(CAR)を発現させる。正常な細胞では、Dsg2はデスモソーム複合体の表面に局在化し、CAR-T細胞にアクセスすることはできない。腫瘍細胞は、CAR-T細胞が標的とする無デスモソームDsg2を高レベルで発現する。
図2-1】図2A図2Eは、Dsg2はたいていの固形がんで過剰発現していて悪い予後と相関していることを実証する代表的な実験結果を示す。図2Aは、腫瘍がDsg2タンパク質を中発現または高発現しているさまざまながんを持つ患者の割合を示す(Human Protein Atlasから)。図2Bは、Dsg2に関して染色した前立腺、膵臓、結腸直腸、および肺がんの代表的な免疫組織化学を示しており、がん全体で豊富な発現であることを示す(Human Protein Atlasから)。図2Cは、代表的ながん(前立腺、膵臓、結腸直腸、および肺)における上方調節を、(TCGAプロジェクトとGTExプロジェクトのデータを用いてGEPIA2によってコンパイルされた)mRNAの定量によって示す。図2D図2Eは、膵臓がんと肺がんそれぞれの患者の5年生存確率を、(TCGAプロジェクトとGTExプロジェクトのデータを用いてGEPIA2によってコンパイルされた)Dsg2の発現によって示す。
図2-2】図2A図2Eは、Dsg2はたいていの固形がんで過剰発現していて悪い予後と相関していることを実証する代表的な実験結果を示す。図2Aは、腫瘍がDsg2タンパク質を中発現または高発現しているさまざまながんを持つ患者の割合を示す(Human Protein Atlasから)。図2Bは、Dsg2に関して染色した前立腺、膵臓、結腸直腸、および肺がんの代表的な免疫組織化学を示しており、がん全体で豊富な発現であることを示す(Human Protein Atlasから)。図2Cは、代表的ながん(前立腺、膵臓、結腸直腸、および肺)における上方調節を、(TCGAプロジェクトとGTExプロジェクトのデータを用いてGEPIA2によってコンパイルされた)mRNAの定量によって示す。図2D図2Eは、膵臓がんと肺がんそれぞれの患者の5年生存確率を、(TCGAプロジェクトとGTExプロジェクトのデータを用いてGEPIA2によってコンパイルされた)Dsg2の発現によって示す。
図3図3A図3Cは、Dsg2 mABが腫瘍の発達を阻止することを実証する代表的な実験結果を示す。図3Aは、SCIDマウスにおいて異種移植片腫瘍が確立されたことを、GFPまたはDsg2/GFPを発現しているA431 cSCC細胞を用いて実証するデータを示す。腫瘍の体積は式:V=0.5(L×W2)を用いて計算した。データは平均値±SEMとして表わした。二元配置反復測定分散分析。*P<0.05。図3Bと3Cは、異種移植片腫瘍が確立されたことをA431 cSCC細胞を用いて実証するデータを示す。1週間後、5mg/kgのmAB 6D8(図3B)またはmAB 10D2(図3C)を用いてマウスを週に2回治療した。
図4図4は、初代ヒトSCC細胞からの腫瘍異種移植片がDsg2を発現することを示す代表的な画像を示す。SCID Balb/cマウスの脇腹に1~4×10個の初代ヒトSCC腫瘍細胞を皮下注射した。異種移植片腫瘍を切除し、マウス表皮(左)と腫瘍塊(右)でDsg2に関して免疫染色した。皮膚ではDsg2の発現がほとんど、またはまったく検出されなかった。
図5図5A図5Cは、Dsg2特異的モノクローナル抗体(mAb)を実証する代表的な実験からの結果を示す。図5AはDsg2ドメインの模式図を示す。P、Pro領域;EC、細胞外ドメイン;TM、膜貫通;IA、細胞内係留、ICS、細胞内カドヘリン区画;LD、リンカードメイン;RUD、反復単位ドメイン;TD、末端ドメイン。10D2はEC1を認識するのに対し、6D8はEC4を認識する。図5B図5Cについては、mAb 6D8と10D2を用いてA431 SCCをイムノブロット(図5B)、または免疫染色した(図5C)。
図6図6は、4つのCRISPR/Cas9コンストラクトの個々のクローンがDsg2をノックアウトすることを実証する代表的な実験からの結果を示す(n=20)。
図7-1】図7は、選択された固形がんにおけるDsg2の発現を示す。GEPIA(gepia.cancer-pku.cn)を用いてRNAseqデータをTCGAプロジェクトとGTExプロジェクトからコンパイルし、分析し、表示した。ACC、副腎皮質癌;BLCA、膀胱尿路上皮癌;BRCA、浸潤性乳癌;CESC、子宮頸扁平上皮癌と子宮頸腺癌;CHOL、胆管癌;COAD、大腸腺癌;DLBC、リンパ系新生物びまん性大細胞型B細胞リンパ腫;ESCA、食道癌;GBM、多形膠芽腫;HNSC、頭頸部扁平上皮癌;KICH、嫌色素性腎癌;KIRC、腎明細胞癌;KIRP、乳頭状腎細胞癌;LAML、急性骨髄性白血病;LGG、脳低悪性度神経膠腫;LIHC、肝細胞癌;LUAD、肺腺癌;LUSC、肺扁平上皮癌;MESO、中皮腫;OV、卵巣漿液性嚢胞腺癌;PAAD、膵臓腺癌;PCPG、褐色細胞腫と傍神経節腫;PRAD、前立腺腺癌;READ、直腸腺癌;SARC、肉腫;SKCM、皮膚黒色腫;STAD、胃腺癌;TGCT、精巣胚細胞腫瘍;THCA、甲状腺癌;THYM、胸腺腫;UCEC、子宮内膜癌;UCS、子宮癌肉腫;UVM、ブドウ膜黒色腫。
図7-2】図7は、選択された固形がんにおけるDsg2の発現を示す。GEPIA(gepia.cancer-pku.cn)を用いてRNAseqデータをTCGAプロジェクトとGTExプロジェクトからコンパイルし、分析し、表示した。ACC、副腎皮質癌;BLCA、膀胱尿路上皮癌;BRCA、浸潤性乳癌;CESC、子宮頸扁平上皮癌と子宮頸腺癌;CHOL、胆管癌;COAD、大腸腺癌;DLBC、リンパ系新生物びまん性大細胞型B細胞リンパ腫;ESCA、食道癌;GBM、多形膠芽腫;HNSC、頭頸部扁平上皮癌;KICH、嫌色素性腎癌;KIRC、腎明細胞癌;KIRP、乳頭状腎細胞癌;LAML、急性骨髄性白血病;LGG、脳低悪性度神経膠腫;LIHC、肝細胞癌;LUAD、肺腺癌;LUSC、肺扁平上皮癌;MESO、中皮腫;OV、卵巣漿液性嚢胞腺癌;PAAD、膵臓腺癌;PCPG、褐色細胞腫と傍神経節腫;PRAD、前立腺腺癌;READ、直腸腺癌;SARC、肉腫;SKCM、皮膚黒色腫;STAD、胃腺癌;TGCT、精巣胚細胞腫瘍;THCA、甲状腺癌;THYM、胸腺腫;UCEC、子宮内膜癌;UCS、子宮癌肉腫;UVM、ブドウ膜黒色腫。
図8図8は、Dsg2ターゲティングのための「絶好の機会」を実証する代表的な実験からの結果を示す。予備的データに基づくと、仮説は、正常な細胞ではDsg2はデスモソーム複合体に局在化し、CAR-T細胞またはCAR-NK細胞にアクセスできないというものである。逆に、腫瘍細胞は、CAR-T/NK細胞が標的にすることのできる非デスモソーム関連Dsg2を高レベルで発現する。
図9図9は、Dsg2-mAb由来のscFvと組み合わされた第3世代CARコンストラクトの骨格を示す。後続の図でDsg2抗原の刺激機能とエフェクタ機能を調べるためマウスCD8+ T細胞に組み込まれたCARの現在の反復。左から右に:(mBIP-SS)マウスERシャペロンとシグナル配列、(5×HIS)ペンタヒスチジン反復、(VL)Dsg2 mAb由来の可変軽鎖、(リンカー)scFv(G4S)4可撓性リンカー、(VH)Dsg2 mAb由来の可変重鎖、(CD8ヒンジ)非シグナル伝達細胞外可撓性モジュール、(CD28 TM)CD28共刺激膜貫通ドメイン、(CD28 ICD)CD28共刺激細胞内シグナル伝達ドメイン、(4-1BB ICD)CD137共刺激細胞内シグナル伝達ドメイン、(CD3ζ)細胞内シグナル伝達ドメイン。
図10図10A図10Bは、抗原で刺激したDsg2特異的CAR-T細胞の細胞内サイトカイン染色を実証する代表的な実験からの結果を示す。サイトカインIFNγとTNFα(抗原検出とT細胞活性化のマーカー)に関して二重陽性である生きているCD8+ GFP+ T細胞の割合。図10Aは、PMA/イオノマイシンなしの陰性対照、非特異的タンパク質(BSA)刺激対照、組み換えヒトDsg2タンパク質、抗ペンタHIS抗体(CARコンストラクト特異的陽性対照)、PMA/イオノマイシン(抗原/CARとは独立な陽性対照)を示す。図10Bは、ヒトA431 cSCC細胞系のバリアント、すなわちGFPを有する親A431、Dsg2のパルミトイル化変異体を有するA431、Dsg2が過剰発現しているA431、A431 Dsg2 CRISPR/Cas9ノックアウト、(DLD-1)ヒト結腸直腸腺癌細胞系、非特異的PMA/イオノマイシン陽性対照を示す。
図11図11A図11Bは、CAR-T細胞は、表面にDsg2を発現しているSCC細胞系を殺傷するが、Dsg2ノックアウトSCC細胞では殺傷しないことを実証する代表的な実験からの結果を示す。Dsg2特異的CAR-T細胞が、A431 SCC親細胞では細胞傷害性(図11A)だが、A431 Dsg2 CRISPR/Cas9ノックアウト細胞(図11B)ではそうでないことを実証するxCELLigenceリアル-タイム細胞分析(RTCA)。
図12-1】図12A図12Cは、A431 cSCC腫瘍の治療における生体内でのCAR-T細胞の有効性を実証する代表的な実験の結果を示す。対照で治療された腫瘍の進行とDsg2 CAR-Tで治療された腫瘍の退縮を実証する生体内生物発光画像(図12A)と腫瘍サイズ測定(図12B)。生存分析は、対照で治療した動物の早期かつ全個体の死亡と、Dsg2 CAR-Tで治療した動物のほぼ100%の治癒を実証している(図12C)。
図12-2】図12A図12Cは、A431 cSCC腫瘍の治療における生体内でのCAR-T細胞の有効性を実証する代表的な実験の結果を示す。対照で治療された腫瘍の進行とDsg2 CAR-Tで治療された腫瘍の退縮を実証する生体内生物発光画像(図12A)と腫瘍サイズ測定(図12B)。生存分析は、対照で治療した動物の早期かつ全個体の死亡と、Dsg2 CAR-Tで治療した動物のほぼ100%の治癒を実証している(図12C)。
図13-1】図13A図13Cは、Dsg2指向性CAR-T細胞の生体内パーシスタンス(長期生存)を実証する代表的な実験の結果を示す。以前に治療したマウスは、(図12における最初の腫瘍チャレンジの100日後の)A431細胞を用いた第2のチャレンジに対して生体内耐性だが、Dsg2ノックアウトA431細胞を用いた第2のチャレンジに対してはそうでない(図13A)。骨髄と脾臓のフローサイトメトリー分析は、CAR+(GFP+)T細胞のパーシスタンス(図13B)と、メモリ表現型とエフェクタ表現型を持つこと(図13C)を実証している。
図13-2】図13A図13Cは、Dsg2指向性CAR-T細胞の生体内パーシスタンス(長期生存)を実証する代表的な実験の結果を示す。以前に治療したマウスは、(図12における最初の腫瘍チャレンジの100日後の)A431細胞を用いた第2のチャレンジに対して生体内耐性だが、Dsg2ノックアウトA431細胞を用いた第2のチャレンジに対してはそうでない(図13A)。骨髄と脾臓のフローサイトメトリー分析は、CAR+(GFP+)T細胞のパーシスタンス(図13B)と、メモリ表現型とエフェクタ表現型を持つこと(図13C)を実証している。
図14-1】図14Aは、CAR-T細胞が、6D8と10D2 scFvを用いて作製したDsg2 CAR-T細胞によってA431 SCC細胞を殺傷することを実証する代表的な実験を示す。形質導入なし(CARなし)のT細胞と1D3 CARを形質導入されたT細胞が陰性対照である。図14Bは、マウスにおける10D2 Dsg2 CAR-T細胞の安全性を実証する代表的な実験を示す。体重分析は、10D2 scFvから作製されたDsg2 CAR-T細胞を投与されたマウスの体重が変化しないことを実証している。図14C図14Eは、ヒトDsg2導入遺伝子を発現するマウスモデル(hDsg2Tgマウス)と、これらマウスにおけるCAR-T細胞の安全性を検証する代表的な実験を示す。hDsg2Tgマウスはたいていの組織においてDsg2を発現しており、ヒトを模倣している(図14Cに示されている選択された組織)。さらに、hDsg2Tgマウスから単離されたケラチノサイトは皿の中でDsg2 CAR-T細胞を活性化させており(図14D)、デスモソームの破壊を反映している(図8)。組織におけるhDsg2のロバストな発現にもかかわらず(図14C)、hDsg2Tgマウスに投与された10D8と6D8 CAR-T細胞は毒性を生じさせなかった(図14E)。
図14-2】図14Aは、CAR-T細胞が、6D8と10D2 scFvを用いて作製したDsg2 CAR-T細胞によってA431 SCC細胞を殺傷することを実証する代表的な実験を示す。形質導入なし(CARなし)のT細胞と1D3 CARを形質導入されたT細胞が陰性対照である。図14Bは、マウスにおける10D2 Dsg2 CAR-T細胞の安全性を実証する代表的な実験を示す。体重分析は、10D2 scFvから作製されたDsg2 CAR-T細胞を投与されたマウスの体重が変化しないことを実証している。図14C図14Eは、ヒトDsg2導入遺伝子を発現するマウスモデル(hDsg2Tgマウス)と、これらマウスにおけるCAR-T細胞の安全性を検証する代表的な実験を示す。hDsg2Tgマウスはたいていの組織においてDsg2を発現しており、ヒトを模倣している(図14Cに示されている選択された組織)。さらに、hDsg2Tgマウスから単離されたケラチノサイトは皿の中でDsg2 CAR-T細胞を活性化させており(図14D)、デスモソームの破壊を反映している(図8)。組織におけるhDsg2のロバストな発現にもかかわらず(図14C)、hDsg2Tgマウスに投与された10D8と6D8 CAR-T細胞は毒性を生じさせなかった(図14E)。
図15-1】図15A図15Bは、CAR-T細胞がインビトロで多彩なタイプの固形がんに対して有効であることを実証する代表的な実験の結果を示す。さまざまなタイプのヒトがん(扁平上皮癌(A431)、結腸直腸(HT-29、Caco-2、SW480、T84、およびDLD-1)、肺(A549)、膵臓(PANC-1)、および黒色腫(TJU-UM001)がんが含まれる)を6D8 Dsg2 CAR-T細胞とともにインキュベートし、エフェクタサイトカイン(IFNγとTNFα)の産生をフローサイトメトリーによって定量した(図15A)。「抗原なし」と「PMA/IONO」はそれぞれ陰性対照および陽性対照として機能した。さまざまなタイプのヒトがん(扁平上皮癌(A431)、結腸直腸(DLD-1とT84)、肺(A549)、および膵臓(BxPC-3、PANC-1、MIA PaCa-2、およびAsPC-1)がんが含まれる)を6D8 Dsg2 CAR-T細胞とともにインキュベートし、これらの溶解をRTCAによって定量した(図15B)。Dsg2ノックアウトA431が陰性対照であった。CRISPR-Cas9を用いてDsg2を欠失させた細胞(Dsg2-KO)を除き、調べたすべての細胞系でエフェクタサイトカインの産生(図15A)と溶解(図15B)が起こった。
図15-2】図15A図15Bは、CAR-T細胞がインビトロで多彩なタイプの固形がんに対して有効であることを実証する代表的な実験の結果を示す。さまざまなタイプのヒトがん(扁平上皮癌(A431)、結腸直腸(HT-29、Caco-2、SW480、T84、およびDLD-1)、肺(A549)、膵臓(PANC-1)、および黒色腫(TJU-UM001)がんが含まれる)を6D8 Dsg2 CAR-T細胞とともにインキュベートし、エフェクタサイトカイン(IFNγとTNFα)の産生をフローサイトメトリーによって定量した(図15A)。「抗原なし」と「PMA/IONO」はそれぞれ陰性対照および陽性対照として機能した。さまざまなタイプのヒトがん(扁平上皮癌(A431)、結腸直腸(DLD-1とT84)、肺(A549)、および膵臓(BxPC-3、PANC-1、MIA PaCa-2、およびAsPC-1)がんが含まれる)を6D8 Dsg2 CAR-T細胞とともにインキュベートし、これらの溶解をRTCAによって定量した(図15B)。Dsg2ノックアウトA431が陰性対照であった。CRISPR-Cas9を用いてDsg2を欠失させた細胞(Dsg2-KO)を除き、調べたすべての細胞系でエフェクタサイトカインの産生(図15A)と溶解(図15B)が起こった。
図16図16は、DLD-1結腸直腸腫瘍の治療において生体内でCAR-T細胞が有効であることを実証する代表的な実験の結果を示す。腫瘍増殖の17日目に投与された6D8 Dsg2 CAR-T細胞によるDLD-1腫瘍の迅速かつ完全な排除を実証する生体内腫瘍サイズ測定(図16)。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明は、Dsg2結合分子(抗体、その断片、そのバリアントなど)を含む組成物と、そのDsg2結合分子をコードする核酸分子と、疾患と障害の診断または治療を必要とする対象で診断または治療のためにそれを利用する方法に関する。
【0027】
いくつかの実施形態では、本発明は、Dsg2結合分子、その断片、そのバリアントを含むキメラ抗原受容体(CAR)分子;またはそれをコードする核酸分子に関する。
【0028】
いくつかの実施形態では、本発明は、Dsg2結合分子、その断片、またはそのバリアントを含むCAR分子を発現する免疫細胞に関する。
【0029】
いくつかの実施形態では、本発明は、疾患または障害の治療または予防を必要とする対象においてそれを治療または予防する方法に関するものであり、この方法は、その対象に、Dsg2結合分子、その断片、そのバリアント、それをコードする核酸分子;Dsg2結合分子、その断片、そのバリアント、それをコードする核酸分子を含むCAR分子;またはDsg2結合分子、その断片、そのバリアントを含むCAR分子を発現する免疫細胞を投与することを含む。
【0030】
いくつかの実施形態では、前記疾患または障害は、がんである。いくつかの実施形態では、前記がんは固形腫瘍である。いくつかの実施形態では、前記がんの選択は、クドレノ皮質癌(ACC);膀胱尿路上皮癌(BLCA);浸潤性乳癌(BRCA);子宮頸扁平上皮癌と子宮頸腺癌(CESC);胆管癌(CHOL);大腸腺癌(COAD);リンパ系新生物びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBC);食道癌(ESCA);多形膠芽腫(GBM);頭頸部扁平上皮癌(HNSC);嫌色素性腎癌(KICH);腎明細胞癌(KIRC);乳頭状腎細胞癌(KIRP);急性骨髄性白血病(LAML);脳低悪性度神経膠腫(LGG);肝細胞癌(LIHC);肺腺癌(LUAD);肺扁平上皮癌(LUSC);中皮腫(MESO);多発性骨髄腫(MM);卵巣漿液性嚢胞腺癌(OV);膵臓腺癌(PAAD);褐色細胞腫と傍神経節腫(PCPG);前立腺腺癌(PRAD);直腸腺癌(READ);肉腫(SARC);皮膚黒色腫(SKCM);胃腺癌(STAD);精巣胚細胞腫瘍(TGCT);甲状腺癌(THCA);胸腺腫(THYM);子宮内膜癌(UCEC);子宮癌肉腫(UCS);およびブドウ膜黒色腫(UVM)からなるグループからなされる。
【0031】
定義
【0032】
特に断わらない限り、本明細書で使用されるあらゆる科学技術用語は、本発明が属する分野の当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を持つ。
【0033】
本明細書では、以下の用語のそれぞれは、本セクションでその用語に関連付けられた意味を持つ。
【0034】
冠詞「1つの(a)」と「1つの(an)」は、本明細書では、物品の文法的対象の1つ、または2つ以上(すなわち少なくとも1つ)を意味する。例えば「1つのエレメント」は、1つのエレメント、または2つ以上のエレメントを意味する。
【0035】
本明細書で測定可能な値(量、持続期間など)に言及するときに用いられる「約」は、指定されている値から±20%、±10%、±5%、±1%、または±0.1%の変動(本開示の方法を実施するのに適切な変動など)を包含することを意味する。
【0036】
「抗体」という用語は、本明細書では、抗原またはエピトープに特異的に結合する免疫グロブリン分子を意味する。抗体として、天然供給源または組み換え供給源からのインタクト免疫グロブリンと、インタクト免疫グロブリンの免疫反応性部分が可能である。抗体は典型的には免疫グロブリン分子の四量体である。本発明における抗体は多彩な形態で存在することができ、形態に含まれるのは、例えばポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、Fv、Fab、およびF(ab)のほか、一本鎖抗体とヒト化抗体である(Harlow et al., 1999, In: Using Antibodies: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press, NY;Harlow et al., 1989, In: Antibodies: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor, New York;Houston et al., 1988, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:5879-5883;Bird et al., 1988, Science 242:423-426)。
【0037】
「抗体断片」という用語は、インタクト抗体の一部と、インタクト抗体の抗原性決定可変領域を意味する。抗体断片の非限定的な例に含まれるのは、Fab、Fab’、F(ab’)2、およびFvという断片、線状抗体、scFv抗体、および抗体断片から形成される多重特異性抗体である。
【0038】
「抗体重鎖」は、本明細書では、全抗体分子の中にその天然の立体構造で存在する2つのタイプのポリペプチド鎖の大きい方を意味する。
【0039】
「抗体軽鎖」は、本明細書では、全抗体分子の中にその天然の立体構造で存在する2つのタイプのポリペプチド鎖の小さい方を意味する。k軽鎖とl軽鎖は2つの主要な抗体軽鎖アイソタイプを意味する。
【0040】
「合成抗体」は、本明細書では、組み換えDNA技術を利用して作製される抗体(例えばバクテリオファージによって発現される抗体)を意味する。この用語が意味する抗体には、その抗体をコードするDNA分子の合成によって作製された抗体も含まれると解釈すべきであり、そのDNA分子は抗体タンパク質、またはその抗体を指定するアミノ酸配列を発現し、そのDNAまたはアミノ酸配列は、本分野で利用可能な周知のDNAまたはアミノ酸配列の合成技術を利用して得られたものである。この用語が意味する抗体には、その抗体をコードするRNA分子の合成によって作製された抗体も含まれると解釈すべきである。そのRNA分子は、抗体タンパク質、またはその抗体を指定するアミノ酸配列を発現し、そのRNAは、(合成またはクローニングされた)DNAの転写、または本分野で利用可能で周知の他の技術によって得られたものである。
【0041】
「抗原」または「Ag」という用語は、本明細書では、適応免疫応答を誘起する分子として定義される。この免疫応答には、抗体産生、または特定の免疫担当細胞の活性化、またはその両方が含まれる可能性がある。当業者は、実質的にすべてのタンパク質またはペプチドを含む任意の巨大分子が抗原として機能できることがわかるであろう。さらに、抗原は、組み換えまたはゲノムDNAまたはRNAに由来することができる。当業者は、適応免疫応答を誘起する、したがって本明細書で用いられている用語としての「抗原」をコードするタンパク質をコードするヌクレオチド配列または部分的ヌクレオチド配列を含む任意のDNAまたはRNAを理解するであろう。さらに、当業者は、抗原が遺伝子の完全長ヌクレオチド配列によってだけコードされる必要はないことがわかるであろう。本発明の非限定的な例には明らかに、2つ以上の遺伝子の部分的ヌクレオチド配列を使用することと、望む免疫応答を誘起するのにこれらヌクレオチド配列をさまざまな組み合わせで配置することが含まれる。さらに、当業者は、抗原が「遺伝子」によってコードされる必要はまったくないことがわかるであろう。明らかに、抗原は、合成によって生成させること、または生物サンプルに由来することが可能である。そのような生物サンプルの非限定的な例に含めることができるのは、組織サンプル、腫瘍サンプル、細胞、または体液である。
【0042】
「アジュバント」という用語は、本明細書では、抗原特異的な適応免疫応答を増強するあらゆる分子と定義される。
【0043】
「疾患」は、動物がホメオスタシスを維持することができない健康状態になっていることであり、疾患が改善されない場合には動物の健康が悪化し続ける。逆に、動物における「障害」は、その動物がホメオスタシスを維持することができる健康状態だが、その動物の健康状態が、障害が不在である場合よりも不利な状態になっていることである。障害は、治療なしで放置されても、その動物の健康状態のさらなる低下を必ずしも引き起こさない。
【0044】
「有効な量」は、本明細書では、治療または予防の利益を提供する量を意味する。
【0045】
「コードする」は、ポリヌクレオチドの中にあって、規定された配列のヌクレオチド(すなわちrRNA、tRNA、およびmRNA)または規定された配列のアミノ酸のいずれかを持つ他のポリマーと巨大分子を生物学的プロセスにおいて合成するための鋳型として機能するヌクレオチドの特定の配列(遺伝子、cDNA、またはmRNAなど)の固有の特性と、そこから生じる生物学的特性を意味する。したがってある遺伝子がタンパク質をコードしているのは、その遺伝子に対応するmRNAの転写と翻訳によって細胞または他の生物系の中でタンパク質が産生される場合である。コード鎖(そのヌクレオチド配列はmRNA配列と同じであり、通常は配列リストの中に提供される)と非コード鎖(遺伝子またはcDNAを転写するための鋳型として利用される)の両方を、その遺伝子またはcDNAのタンパク質または他の産物をコードすると言うことができる。
【0046】
「発現ベクター」は、発現させるヌクレオチド配列に機能可能に連結された発現制御配列を含む組み換えポリヌクレオチドを含むベクターを意味する。発現ベクターは、発現に十分なシス作用性エレメントを含む;発現のための他のエレメントは、宿主細胞が供給すること、またはインビトロ発現系の中に供給することができる。発現ベクターには、本分野で知られているすべてのベクター、例えば組み換えポリヌクレオチドが組み込まれたコスミド、プラスミド(例えば裸の、またはリポソームの中に含まれた)RNA、およびウイルス(例えばレンチウイルス、レトロウイルス、アデノウイルス、およびアデノ随伴ウイルス)が含まれる。
【0047】
「免疫原」は、免疫応答を生じさせるために体内に導入されるあらゆる物質を意味する。その物質は、物理的分子(タンパク質など)であること、またはベクター(DNA、mRNA、またはウイルスなど)によってコードすることができる。
【0048】
「免疫反応」は、本明細書では、免疫細胞を刺激した、および/または活性化させた検出可能な結果を意味する。
【0049】
「免疫応答」という用語は、本明細書では、T細胞、B細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞、および/または抗原提示細胞(APC)のいずれかにおいてエフェクタ機能が活性化される、および/または呼び出されるプロセスを意味する。したがって当業者が理解する免疫応答の非限定的な例に含まれるのは、ヘルパーT細胞または細胞傷害性T細胞応答の任意の検出可能な抗原特異的活性化または同種異系活性化、抗体の産生、T細胞を媒介としたアレルギー反応の活性化、マクロファージ浸潤などである。
【0050】
「免疫細胞」という用語は、本明細書では、免疫応答の増大に関与するあらゆる細胞を意味する。このような細胞の非限定的な例に含まれるのは、T細胞、B細胞、NK細胞、抗原提示細胞(例えば樹状細胞とマクロファージ)、単球、好中球、好酸球、好塩基球などである。
【0051】
「単離された」は、天然状態から変えられたか取り出されたことを意味する。例えば生きている動物の中に天然状態で存在する核酸またはペプチドは「単離されて」いないが、その同じ核酸またはペプチドが、その天然状態の共存材料から一部または全体が分離されている場合には「単離されて」いる。単離された核酸またはタンパク質は、実質的に精製された形態で存在すること、または非天然環境(例えば宿主細胞など)の中に存在することができる。
【0052】
本発明の文脈では、一般に見られるヌクレオシド(N-グリコシド結合を通じてリボース糖またはデオキシリボース糖に結合した核酸塩基)に関して以下の略号を使用する。「A」はアデノシンを意味し、「C」はシチジンを意味し、「G」はグアノシンを意味し、「T」はチミジンを意味し、「U」はウリジンを意味する。
【0053】
特に断わらない限り、「アミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列」に、互いの縮重バージョンであって同じアミノ酸配列をコードするすべてのヌクレオチド配列が含まれる。タンパク質またはRNAをコードするヌクレオチド配列という表現にはイントロンも含まれていてよいが、そのタンパク質をコードするヌクレオチド配列がいくつかのバージョンでは1個または複数個のイントロンを含んでいてもよいという程度である。
【0054】
「調節する」という用語は、本明細書では、対象における応答のレベルが、治療または化合物なしでのその対象における応答のレベルと比べて、および/または治療なしである以外は同じ対象における応答のレベルと比べて検出可能な増加または減少を示すことを意味する。この用語は、天然のシグナルまたは応答を擾乱し、および/または天然のシグナルまたは応答に影響を与え、そのことによって対象(好ましくはヒト)において有益な治療応答を生じさせることを包含する。
【0055】
「患者」、「対象」、「個体」などという用語は本明細書では交換可能に使用され、本明細書に記載されている方法に適した任意の動物、またはその細胞(インビトロの細胞または本来の位置にある細胞のどちらでもよい)を意味する。いくつかの非限定的な実施形態では、患者、対象、または個体はヒトである。
【0056】
「ポリヌクレオチド」という用語は、本明細書では、ヌクレオチドの鎖と定義される。さらに、核酸はヌクレオチドのポリマーである。したがって核酸とポリヌクレオチドは本明細書では交換可能である。当業者は、核酸がポリヌクレオチドであって加水分解により単量体「ヌクレオチド」にすることができるという一般的な知識を有する。単量体ヌクレオチドを加水分解してヌクレオシドにすることができる。本明細書では、ポリヌクレオチドの非限定的な例に、本分野で利用できる任意の手段によって得られるあらゆる核酸配列が含まれ、手段の非限定的な例に含まれるのは、組み換え手段、すなわち通常のクローニング技術とPCR(商標)などを利用した組み換えライブラリまたは細胞ゲノムからの核酸配列のクローニングと、合成手段である。
【0057】
本明細書では、「ペプチド」、「ポリペプチド」、および「タンパク質」という用語は交換可能に使用され、ペプチド結合によって共有結合したアミノ酸残基からなる化合物を意味する。タンパク質またはペプチドは少なくとも2個のアミノ酸を含有していなければならないが、タンパク質またはペプチドの配列が含むことのできるアミノ酸の最大数に制限はない。ポリペプチドには、ペプチド結合によって互いに接合された2個以上のアミノ酸を含む任意のペプチドまたはタンパク質が含まれる。本明細書では、前記用語は、短鎖(本分野では一般に例えばペプチド、オリゴペプチド、およびオリゴマーとも呼ばれる)と、より長い鎖(本分野では一般にタンパク質と呼ばれ、多くのタイプのタンパク質が存在する)の両方を意味する。「ポリペプチド」には、例えば生物活性な断片、実質的に相同なポリペプチド、オリゴペプチド、ホモ二量体、ヘテロ二量体、ポリペプチドのバリアント、修飾されたポリペプチド、誘導体、類似体、融合タンパク質が特に含まれる。ポリペプチドには、天然ペプチド、組み換えペプチド、合成ペプチド、またはこれらの組み合わせが含まれる。
【0058】
抗体に関して本明細書で用いられるときの「特異的に結合する」という表現は、サンプル中の特定の抗原を認識するが、他の分子は実質的に認識しないか、他の分子には実質的に結合しない抗体を意味する。例えば1つの種からの抗原に特異的に結合する抗体は、1つ以上の他の種からのその抗原にも結合できる可能性がある。しかしそのような種交差反応性そのものが抗体の分類を特異的抗体に変えることはない。別の一例では、抗原に特異的に結合する抗体は異なるアレル形態の抗原に結合することもできる。しかしそのような交差反応性そのものが特異的としての抗体の分類を変えることはない。いくつかの場合には、「特異的な結合」または「特異的に結合する」という表現は、抗体、タンパク質、またはペプチドと第2の化学種の相互作用に関して使用することができ、その相互作用が化学種の表面の特定の構造(例えば抗原決定基またはエピトープ)の存在に依存することを意味する;例えば抗体はタンパク質一般よりは特定のタンパク質構造を認識してそれに結合する。ある抗体がエピトープ「A」に対して特異的である場合には、標識された「A」とその抗体を含有する反応物の中にエピトープA(すなわち遊離した標識なしのA)を含有する分子が存在していると、その抗体に結合する標識されたAの量は減るであろう。
【0059】
「治療的」という用語は、本明細書では治療および/または予防を意味する。治療効果は、疾患または障害の少なくとも1つの徴候または症状の抑制、減少、寛解、または消滅によって得られる。
【0060】
「治療に有効な量」という表現は、研究者、獣医師、医師、または他の臨床医が実現しようとする組織、系、または対象の生物学的または医学的な応答を誘導する、対象とする化合物の量を意味する。「治療に有効な量」という表現には、投与されたときに治療中の疾患または障害の徴候または症状の1つ以上の進行を阻止するか、ある程度緩和するのに十分な化合物の量が含まれる。治療に有効な量は、化合物、疾患とその重症度、および治療される対象の年齢、体重などに応じて変化するであろう。
【0061】
疾患を「治療する」という用語は、本明細書では、対象が経験する疾患または障害の少なくとも1つの徴候または症状の頻度または重症度の低下を意味する。
【0062】
「トランスフェクトされた」または「形質転換された」または「形質導入された」という用語は、本明細書では、外来核酸が宿主細胞の中に移される、または導入されるプロセスを意味する。「トランスフェクトされた」または「形質転換された」または「形質導入された」細胞は、外来核酸がトランスフェクトされた、外来核酸で形質転換された、または外来核酸を形質導入された細胞である。その細胞には初代対象細胞とその子孫が含まれる。
【0063】
「ベクター」は、単離された核酸を含んでいてその単離された核酸を細胞の内部に送達するのに使用できる物質の組成物である。多数のベクターが本分野で知られており、その非限定的な例に含まれるのは、直線状ポリヌクレオチド、イオン性または両親媒性の化合物と会合したポリヌクレオチド、プラスミド、およびウイルスである。したがって「ベクター」という用語には、自己複製するプラスミドまたはウイルスが含まれる。この用語には、細胞への核酸の導入を容易にする非プラスミド化合物と非ウイルス化合物(例えばポリリシン化合物、リポソームなど)が含まれるとも解釈すべきである。ウイルスベクターの非限定的な例に含まれるのは、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、レトロウイルスベクターなどである。
【0064】
範囲:本開示全体を通じ、本発明のさまざまな側面を範囲の形式で提示することができる。範囲の形式での記述は単に便宜上と簡潔さのためであり、本発明の範囲に対する融通の利かない制限と解釈してはならない。したがって範囲の記述は、具体的に開示されている可能なすべての下位範囲のほか、その範囲内の個々の数値を持つと見なすべきである。例えば1~6などの範囲の記述は、1~3、1~4、1~5、2~4、2~6、3~6などの具体的に開示されている下位範囲のほか、その範囲内の例えば1、2、2.7、3、4、5、5.3、および6という個々の数字を持つと見なすべきである。これは、範囲の幅に関係なく適用される。
【0065】
説明
【0066】
本発明は、一部が、がん細胞の中で高発現するDsg2に結合させるための組成物の開発に基づく。一実施形態では、本発明により、がんを治療または予防するため本発明のDsg2結合分子を含む組成物が提供される。いくつかの実施形態では、この組成物は、免疫応答を誘導する免疫原性組成物(例えばワクチン)である。一実施形態では、この組成物は、疾患または障害に向けられる治療剤である。例えば一実施形態では、この組成物は、Dsg2に特異的に結合する抗体または抗体断片である。
【0067】
一実施形態では、本発明の組成物と方法を固形がんの治療または予防に用いることができる。固形がんの非限定的な例に含まれるのは、副腎皮質癌(ACC);膀胱尿路上皮癌(BLCA);浸潤性乳癌(BRCA);子宮頸扁平上皮癌と子宮頸腺癌(CESC);胆管癌(CHOL);大腸腺癌(COAD);リンパ系新生物びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBC);食道癌(ESCA);多形膠芽腫(GBM);頭頸部扁平上皮癌(HNSC);嫌色素性腎癌(KICH);腎明細胞癌(KIRC);乳頭状腎細胞癌(KIRP);急性骨髄性白血病(LAML);脳低悪性度神経膠腫(LGG);肝細胞癌(LIHC);肺腺癌(LUAD);肺扁平上皮癌(LUSC);中皮腫(MESO);多発性骨髄腫(MM);卵巣漿液性嚢胞腺癌(OV);膵臓腺癌(PAAD);褐色細胞腫と傍神経節腫(PCPG);前立腺腺癌(PRAD);直腸腺癌(READ);肉腫(SARC);皮膚黒色腫(SKCM);胃腺癌(STAD);精巣胚細胞腫瘍(TGCT);甲状腺癌(THCA);胸腺腫(THYM);子宮内膜癌(UCEC);子宮癌肉腫(UCS);およびブドウ膜黒色腫(UVM)である。
【0068】
組成物
【0069】
本発明の1つの側面は、Dsg2またはそのエピトープに結合する能力によって特徴づけられる薬剤に関係する。Dsg2またはDsg2結合分子に結合することのできる薬剤の非限定的な例に含まれるのは、抗体、アプタマー、分子プローブ、ペプチド、ペプチド模倣体、小分子、およびこれらの複合体である。一実施形態では、Dsg2結合分子は、Dsg2に特異的に結合する抗Dsg2ナノボディを含む。一実施形態では、Dsg2結合分子は、Dsg2相互作用タンパク質またはその断片を含む。Dsg2はホモ二量体を形成するため、一実施形態では、Dsg2結合分子はDsg2またはその断片を含み、それが別のDsg2分子と二量体になる。
【0070】
一実施形態では、Dsg2結合分子はポリクローナル抗体である。別の一実施形態では、Dsg2結合分子はモノクローナル抗体である。いくつかの実施形態では、Dsg2結合分子はキメラ抗体である。いくつかの実施形態では、Dsg2結合分子はヒト化抗体である。いくつかの実施形態では、Dsg2結合分子は抗体断片を含む。いくつかの実施形態では、Dsg2結合分子はscFv抗体断片を含む。
【0071】
いくつかの実施形態では、Dsg2結合分子は、インタクトなモノクローナル抗体またはポリクローナル抗体、またはその免疫学的な部分または活性な断片である。したがってさまざまな実施形態では、本発明のDsg2結合分子は、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、細胞内抗体(「イントラボディ」)、Fv、Fab、Fab’、F(ab)2、およびF(ab’)2、一本鎖抗体(scFv)、重鎖抗体(例えばラクダ抗体など)、合成抗体、キメラ抗体、またはヒト化抗体である(例えばHarlow et al., 1999, Using Antibodies: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press, NY; Harlow et al., 1989, Antibodies: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor, New York; Houston et al., 1988, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:5879-5883; Bird et al., 1988, Science 242:423-426を参照されたい)。抗体は、興味ある免疫化抗原を含有するインタクトポリペプチドまたは断片を用いて調製することができる。動物の免疫化に使用されるポリペプチドまたはオリゴペプチドは、RNAの翻訳から得ること、または化学的に合成することができ、望むのであれば担体タンパク質に接合させることができる。ペプチドに化学的にカップルさせることのできる適切な基剤に含まれるのは、ウシ血清アルブミンとサイログロブリン、キーホールカサガイヘモシアニンである。その後、カップルしたポリペプチドを用いて動物(例えばマウス、ラット、またはウサギ)を免疫化することができる。
【0072】
一実施形態では、本発明は、少なくとも1つのDsg2抗体またはその断片を含む組成物に関する。一実施形態では、抗Dsg2抗体またはその断片は、配列番号2の重鎖(HC)CDR1配列、配列番号4のHC CDR2配列、配列番号6のHC CDR3配列、配列番号10の軽鎖(LC)CDR1配列、配列番号12のLC CDR2配列、および配列番号14のLC CDR3配列のうちの1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、または全6つを含む。一実施形態では、抗Dsg2抗体またはその断片は、配列番号18の重鎖(HC)CDR1配列、配列番号20のHC CDR2配列、配列番号22のHC CDR3配列、配列番号26の軽鎖(LC)CDR1配列、配列番号28のLC CDR2配列、および配列番号30のLC CDR3配列のうちの1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、または全6つを含む。
【0073】
一実施形態では、抗Dsg2抗体またはその断片は、配列番号8に示されている配列を持つ重鎖可変領域、またはその断片またはバリアントを含む。一実施形態では、抗Dsg2抗体またはその断片は、配列番号16に示されている配列を持つ軽鎖可変領域、またはその断片またはバリアントを含む。一実施形態では、抗Dsg2抗体またはその断片は、配列番号8の重鎖可変領域配列、またはその断片またはバリアントと、配列番号16の軽鎖可変領域配列、またはその断片またはバリアントを含む。
【0074】
一実施形態では、抗Dsg2抗体またはその断片は、配列番号24に示されている配列を持つ重鎖可変領域、またはその断片またはバリアントを含む。一実施形態では、抗Dsg2抗体またはその断片は、配列番号32に示されている配列を持つ軽鎖可変領域、またはその断片またはバリアントを含む。一実施形態では、抗Dsg2抗体またはその断片は、配列番号24の重鎖可変領域配列、またはその断片またはバリアントと、配列番号32の軽鎖可変領域配列、またはその断片またはバリアントを含む。
【0075】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載されているアミノ酸配列のバリアントは、所定のアミノ酸配列と比べたとき、指定された領域全体で少なくとも約60%一致する、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれよりも多く一致する。いくつかの実施形態では、本明細書に記載されているアミノ酸配列のバリアントは、配列番号8、配列番号16、配列番号24、または配列番号32のアミノ酸配列の全長で少なくとも約60%一致する、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれよりも多く一致する。
【0076】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載されているアミノ酸配列の断片は、所定のアミノ酸配列の完全長配列の少なくとも約60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%を含む。いくつかの実施形態では、本明細書に記載されているアミノ酸配列の断片は、配列番号8、配列番号16、配列番号24、または配列番号32の完全長配列の少なくとも約60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%を含む。
【0077】
本明細書では、「抗体」または「免疫グロブリン」という用語は、タンパク質の免疫グロブリン(Ig)スーパーファミリーのタンパク質(糖タンパク質を含む)を意味する。抗体または免疫グロブリン(Ig)分子は、2つの同じ軽鎖ポリペプチドと2つの同じ重鎖ポリペプチドを含む四量体である可能性がある。2つの重鎖はジスルフィド結合によって互いに連結され、それぞれの重鎖はジスルフィド結合によって軽鎖に連結されている。それぞれの完全長Ig分子は、特定の標的または抗原のための少なくとも2つの結合部位を含有する。
【0078】
抗体を作製して使用する方法は本分野で周知である。例えば本発明で有用なポリクローナル抗体は、本分野で周知の標準的な免疫技術に従ってウサギを免疫化することによって生成させる(例えばAntibodies, A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor, NYの中のHarlow et al., 1988を参照されたい)。そのような技術に含まれるのは、動物を、別のタンパク質の一部(マルトース結合タンパク質またはグルタチオン(GSH)タグポリペプチド部分など)および/または興味ある抗原タンパク質が免疫原性にされているような部分(例えばキーホールカサガイヘモシアニン、KLHとの複合体になった興味ある抗原)と、それぞれの抗原タンパク質のアミノ酸残基を含む部分を含むキメラタンパク質で免疫化するというものである。キメラタンパク質の産生は、その目的に適したプラスミドベクター(その非限定的な例はpMAL-2またはpCMXなどである)に、マーカータンパク質をコードする適切な核酸をクローニングすることによってなされる。
【0079】
しかし本発明が、これら抗体を含む方法と組成物、または抗原のこれら部分に限定されると解釈されてはならない。むしろ本発明は、抗原に対する他の抗体(この用語は本明細書の別の箇所で定義されている)またはその一部を含むと解釈されるべきである。さらに、本発明は、特に興味ある特定の抗原に結合する抗体を包含すると解釈すべきであり、抗体が結合することができるのは、ウエスタンブロット上に存在する抗原、酵素結合イムノアッセイにおける溶液の中に存在する抗原、蛍光活性化セルソーティング(FACS)アッセイに存在する抗原、磁気親和性セルソーティング(MACS)アッセイに存在する抗原、および例えば抗原タンパク質の少なくとも一部をコードする核酸を一過性にトランスフェクトした細胞の免疫蛍光顕微鏡法に存在する抗原である。
【0080】
当業者であれば、本明細書に提示されている開示に基づき、抗体が抗原の任意の部分に特異的に結合することができ、完全長タンパク質を用いてそれに対して特異的な抗体を生成させることができることがわかるであろう。しかし本発明が完全長タンパク質を免疫原として用いることに限定されることはない。むしろ本発明は、タンパク質の免疫原性部分を用いて特定の抗原に特異的に結合する抗体を生成させることを含む。すなわち本発明は、抗原の免疫原性部分または抗原性決定基を用いて動物を免疫化することを含む。
【0081】
当業者であれば、本明細書に提示されている開示に基づき、あの本発明は単一の抗原エピトープを認識する単一の抗体の使用を含むが、本発明が単一の抗体の使用に限定されることはないことがわかるであろう。その代わりに本発明は、同じ、または異なる抗原タンパク質エピトープに向かわせることのできる少なくとも1つの抗体の使用を包含する。
【0082】
ポリクローナル抗体の生成は、標準的な抗体生成法を利用し、望む動物に抗原を接種した後、その抗原に特異的に結合する抗体をそこから単離することによって実現される(例えばHarlowら(1988, In: Antibodies, A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor, NY)に記載されている方法など)。
【0083】
完全長のタンパク質またはペプチド、またはタンパク質またはペプチドのペプチド断片に向かうモノクローナル抗体は、周知の任意のモノクローナル抗体調製手続き(例えばHarlowら(1988, In: Antibodies, A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor, NY)とTuszynskiら(1988, Blood, 72:109-115)に記載されている手続きなど)を利用して調製することができる。大量の望むペプチドは化学合成技術を利用して合成することもできる。あるいは望むペプチドをコードするDNAは、大量のペプチドの生成に適した細胞にクローニングして適切なプロモータ配列から発現させることができる。ペプチドに向かうモノクローナル抗体は、本明細書で参照されている標準的な手続きを利用してペプチドで免疫化したマウスから生成する。
【0084】
本明細書に記載されているDsg2結合分子をコードする核酸分子は、本分野で利用可能であり例えばWrightら(1992, Critical Rev. Immunol. 12:125-168)とその中で引用されている参考文献に記載されている技術を利用してクローニングし、シークエンシングすることができる。さらに、本発明の抗体の「ヒト化」は、例えばWrightらとその中で引用されている参考文献、およびGuら(1997, Thrombosis and Hematocyst 77:755-759)に記載されている技術と、抗体をヒト化するため本分野で周知であるか今後開発される他の方法を用いて実現することができる。
【0085】
本発明は、Dsg2と特異的に反応するヒト化抗体の使用も含む。本発明のヒト化抗体は、ヒトフレームワークを持つとともに、興味ある抗原と特異的に反応する抗体(典型的にはマウス抗体)からの1つ以上の相補性決定領域(CDR)を持つ。本発明で使用する抗体がヒト化されているとき、その抗体は、Queenら(アメリカ合衆国特許第6,180,370号)、Wrightら(上記文献)とその中で引用されている参考文献、またはGuら(1997, Thrombosis and Hematocyst 77(4):755-759)の中に記載されているようにして生成させることができる。Queenらの中に開示されている方法の一部は、アクセプタヒトフレームワーク領域をコードするDNA区画に付着した望む抗原(興味ある抗原上のエピトープなど)に結合することのできるドナー免疫グロブリンからの重鎖と軽鎖の相補性決定領域(CDR)をコードする組み換えDNA区画を発現させることによって産生されるヒト化免疫グロブリンの設計に向けられている。一般に、Queen特許の中の発明は実質的にすべてのヒト化免疫グロブリンの設計に適用できる。Queenの説明によれば、DNA区画は、典型的には、天然状態において付随しているプロモータ領域または異種プロモータ領域を含むヒト化免疫グロブリンコード配列に機能可能に連結された発現制御DNA配列を含むことになる。発現制御配列は、真核宿主細胞の形質転換または真核宿主細胞へのトランスフェクションが可能なベクターの中の真核生物プロモータ系であること、または発現制御配列は、原核宿主細胞の形質転換または原核宿主細胞へのトランスフェクションが可能なベクターの中の原核生物プロモータ系であることが可能である。ベクターが適切な宿主の中に組み込まれると、その宿主は、導入されたヌクレオチド配列を高レベルで発現させるのに適した条件に維持され、望むときには、ヒト化された軽鎖、重鎖、軽/重鎖二量体、またはインタクト抗体、結合断片、または他の免疫グロブリン形態の回収と精製をその後に続けることができる(Beychok, Cells of Immunoglobulin Synthesis, Academic Press, New York, (1979)、この文献は参照によって本明細書に組み込まれている)。
【0086】
本発明は、本明細書に記載されている抗体の機能的等価物も含む。機能的等価物は、それら抗体の結合特性と同等な結合特性を持ち、例えばハイブリダイズした抗体と一本鎖抗体のほか、その断片を含む。このような機能的等価物を生成させる方法は、PCT出願WO93/21319とPCT出願WO89/09622に開示されている。
【0087】
機能的等価物は、抗体の可変領域または超可変領域のアミノ酸配列と実質的に同じアミノ酸配列を持つポリペプチドを含む。「実質的に同じ」アミノ酸配列は、本明細書では、 Pearson and Lipman, 1988 Proc. Nat’l. Acad. Sci. USA 85: 2444-2448に従うFASTA検索法によって求めたとき、別のアミノ酸配列と少なくとも70%、好ましくは少なくとも約80%、より好ましくは少なくとも約90%、より一層好ましくは少なくとも約95%、そして最も好ましくは少なくとも99%(または70と99の間の任意の整数)が相同な配列と定義される。キメラ抗体または他のハイブリッド抗体は、ヒト抗体の定常領域に実質的または全面的に由来する定常領域と、それぞれの安定なハイブリドーマからのモノクローナル抗体の可変領域の配列に実質的または全面的に由来すると可変領域を持つ。
【0088】
一本鎖抗体(scFv)またはFv断片は、相互接続リンカーを用いて、またはなしで抗体の軽鎖の可変領域に連結された重鎖の可変領域からなるポリペプチドである。したがってFvは抗体結合部位を含む。
【0089】
本発明の抗体の機能的等価物はさらに、抗体全体と同じか実質的に同じ結合特性を持つ抗体の断片を含む。このような断片は、Fab断片またはF(ab’)断片の一方または両方を含有することができる。抗体断片は抗体全体の全6つの相補性決定領域を含有するが、そのような領域のすべてよりも少数(3、4、または5つの相補性決定領域など)を含有する断片も機能する。機能的等価物は、免疫グロブリンのクラスIgGとそのサブクラスのメンバーだが、以下のクラスの免疫グロブリン、すなわちIgM、IgA、IgD、またはIgEと、これらのサブクラスのうちの任意の1つであること、またはそれと組み合わせることができる。さまざまなサブクラス(IgGサブクラスなど)の重鎖は異なるエフェクタ機能に責任があるため、望む重鎖定常領域を選択することにより、望むエフェクタ機能を持つハイブリッド抗体が生成する。代表的な定常領域は、ガンマ1(IgG1)、ガンマ2(IgG2)、ガンマ3(IgG3)、およびガンマ4(IgG4)である。軽鎖定常領域はカッパまたはラムダのタイプが可能である。
【0090】
本発明の免疫グロブリンは、1価、2価、または多価が可能である。1価免疫グロブリンは、ジスルフィド架橋を通じてハイブリッド軽鎖と会合したハイブリッド重鎖で形成された二量体(HL)である。2価免疫グロブリンは、少なくとも1つのジスルフィド架橋を通じて会合した2つの二量体で形成された四量体(H)である。
【0091】
本発明のペプチドとキメラタンパク質は、無機酸(塩酸、硫酸、臭化水素酸、リン酸など)または有機酸(ギ酸、酢酸、プロピオン酸、グリコール酸、乳酸、ピルビン酸、シュウ酸、コハク酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、サリチル酸、ベンゼンスルホン酸、およびトルエンスルホン酸など)と反応させることによって医薬塩に変換することができる。
【0092】
一実施形態では、本発明により、本発明のDsg2結合分子をコードする単離された核酸、またはその生物学的機能断片を含む組成物が提供される。
【0093】
一実施形態では、抗Dsg2抗体またはその断片をコードする核酸分子は、配列番号2の重鎖(HC)CDR1配列、配列番号4のHC CDR2配列、配列番号6のHC CDR3配列、配列番号10の軽鎖(LC)CDR1配列、配列番号12のLC CDR2配列、および配列番号14のLC CDR3配列のうちの1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、または全6つをコードする。一実施形態では、抗Dsg2抗体またはその断片をコードする核酸分子は、配列番号1の配列をコードする重鎖(HC)CDR1、配列番号3の配列をコードするHC CDR2、配列番号5の配列をコードするHC CDR3、配列番号9の配列をコードする軽鎖(LC)CDR1、配列番号11の配列をコードするLC CDR2、および配列番号13の配列をコードするLC CDR3のうちの1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、または全6つを含む。
【0094】
一実施形態では、抗Dsg2抗体またはその断片をコードする核酸分子は、配列番号18の重鎖(HC)CDR1配列、配列番号20のHC CDR2配列、配列番号22のHC CDR3配列、配列番号26の軽鎖(LC)CDR1配列、配列番号28のLC CDR2配列、および配列番号30のLC CDR3配列のうちの1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、または全6つをコードする。一実施形態では、抗Dsg2抗体またはその断片をコードする核酸分子は、配列番号17の配列をコードする重鎖(HC)CDR1、配列番号19の配列をコードするHC CDR2、配列番号21の配列をコードするHC CDR3、配列番号25の配列をコードする軽鎖(LC)CDR1、配列番号27の配列をコードするLC CDR2、および配列番号29の配列をコードするLC CDR3のうちの1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、または全6つを含む。
【0095】
一実施形態では、抗Dsg2抗体またはその断片をコードする核酸分子は、配列番号8に示されている配列を持つ重鎖可変領域、またはその断片またはバリアントをコードする。一実施形態では、抗Dsg2抗体またはその断片をコードする核酸分子は、配列番号16に示されている配列を持つ軽鎖可変領域、またはその断片またはバリアントをコードする。一実施形態では、抗Dsg2抗体またはその断片をコードする核酸分子は、配列番号8の重鎖可変領域配列、またはその断片またはバリアントと、配列番号16の軽鎖可変領域配列、またはその断片またはバリアントをコードする。
【0096】
一実施形態では、抗Dsg2抗体またはその断片をコードする核酸分子は、配列番号7に示されていて重鎖可変領域コードするヌクレオチド配列、またはその断片またはバリアントを含む。一実施形態では、抗Dsg2抗体またはその断片をコードする核酸分子は、配列番号15に示されていて軽鎖可変領域をコードするヌクレオチド配列、またはその断片またはバリアントを含む。一実施形態では、抗Dsg2抗体またはその断片をコードする核酸分子は、配列番号7に示されていて重鎖可変領域コードするヌクレオチド配列、またはその断片またはバリアントと、配列番号15に示されていて軽鎖可変領域をコードするヌクレオチド配列、またはその断片またはバリアントを含む。
【0097】
一実施形態では、抗Dsg2抗体またはその断片をコードする核酸分子は、配列番号24に示されている配列を持つ重鎖可変領域、またはその断片またはバリアントをコードする。一実施形態では、抗Dsg2抗体またはその断片をコードする核酸分子は、配列番号32に示されている配列を持つ軽鎖可変領域、またはその断片またはバリアントをコードする。一実施形態では、抗Dsg2抗体またはその断片をコードする核酸分子は、配列番号24の重鎖可変領域配列、またはその断片またはバリアントと、配列番号32の軽鎖可変領域配列、またはその断片またはバリアントをコードする。
【0098】
一実施形態では、抗Dsg2抗体またはその断片をコードする核酸分子は、配列番号23に示されていて重鎖可変領域コードするヌクレオチド配列、またはその断片またはバリアントを含む。一実施形態では、抗Dsg2抗体またはその断片をコードする核酸分子は、配列番号31に示されていて軽鎖可変領域をコードするヌクレオチド配列、またはその断片またはバリアントを含む。一実施形態では、抗Dsg2抗体またはその断片をコードする核酸分子は、配列番号23に示されていて重鎖可変領域コードするヌクレオチド配列、またはその断片またはバリアントと、配列番号31に示されていて軽鎖可変領域をコードするヌクレオチド配列、またはその断片またはバリアントを含む。
【0099】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載されているヌクレオチド配列のバリアントは、所定のヌクレオチド配列と比較するとき、指定された領域全体で少なくとも約60%一致する、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれよりも多く一致する。いくつかの実施形態では、本明細書に記載されているヌクレオチド配列のバリアントは、配列番号7、配列番号15、配列番号23、または配列番号31のヌクレオチド配列の全長で少なくとも約60%一致する、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれよりも多く一致する。
【0100】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載されているヌクレオチド配列の断片は、所定のヌクレオチド配列の完全長配列の少なくとも約60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%を含む。いくつかの実施形態では、本明細書に記載されているヌクレオチド配列の断片は、配列番号7、配列番号15、配列番号23、または配列番号31の完全長ヌクレオチド配列の少なくとも約60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%を含む。
【0101】
抗原タンパク質またはペプチドをコードする単離された核酸配列は、本分野で知られている多くの組み換え法のうちの任意のものを利用して得ること、例えば遺伝子を発現している細胞からのライブラリをスクリーニングすることによって、それを含むことが知られているベクターから遺伝子を導出することによって、またはそれを含有する細胞と組織から標準的な技術を利用して直接単離することによって得ることができる。あるいは興味ある遺伝子は、クローニングよりは合成によって生成させることができる。
【0102】
単離された核酸には任意のタイプの核酸が含まれる可能性があり、その非限定的な例に含まれるのはDNAとRNAである。例えば一実施形態では、組成物は単離されたDNA分子を含み、その中には、例えば抗原タンパク質またはペプチド、またはその機能的断片をコードする単離されたcDNA分子が含まれる。一実施形態では、組成物は、抗原タンパク質またはペプチド、またはその機能的断片をコードする単離されたRNA分子を含む。
【0103】
本発明の核酸分子を修飾して細胞培養物のための血清または増殖培地における安定性を改善することができる。修飾は、安定性、機能性、および/または特異性を増強するため、そして本発明の核酸分子の免疫刺激特性を最少にするために付加することができる。例えば安定性を増強するため、3’残基を分解に対して安定化させることができる。例えば3’残基は、プリンヌクレオチド、特にアデノシンまたはグアノシンヌクレオチドからなるように選択することができる。あるいはピリミジンヌクレオチドを修飾された類似体で置換すること(ウリジンを2’-デオキシチミジンで置換すること)が許容され、それが分子の機能に影響を与えることはない。
【0104】
本発明の一実施形態では、核酸分子は、少なくとも1つの修飾されたヌクレオチド類似体を含有することができる。例えば末端は、修飾されたヌクレオチド類似体を組み込むことによって安定化させることができる。
【0105】
ヌクレオチド類似体の非限定的な例に含まれるのは、糖および/または骨格が修飾されたリボヌクレオチドである(すなわちリン酸-糖骨格に対する修飾を含む)。例えば天然RNAのホスホジエステル結合は、窒素または硫黄というヘテロ原子の少なくとも1つを含むように修飾することができる。骨格が修飾されたいくつかのリボヌクレオチドでは、隣のリボヌクレオチドに接続されるホスホエステル基が例えばホスホチオエート基の修飾された基で置換される。糖が修飾されたいくつかのリボヌクレオチドでは、2’OH基は、H、OR、R、ハロ、SH、SR、NH、NHR、NR、またはON(ただしRはC-Cアルキル、アルケニル、またはアルキニルであり、ハロは、F、Cl、Br、またはIである)から選択される基で置換される。
【0106】
修飾の別の例は、核酸塩基が修飾されたリボヌクレオチド、すなわち天然核酸塩基の代わりに少なくとも1つの非天然核酸塩基を含有するリボヌクレオチドである。塩基を修飾してアデノシンデアミナーゼの活性を阻止することができる。代表的な修飾された核酸塩基の非限定的な例に含まれるのは、5位が修飾されたウリジンおよび/またはシチジン(例えば5-(2-アミノ)プロピルウリジン、5-ブロモウリジン)であり;8位が修飾されたアデノシンおよび/またはグアノシン(例えば8-ブロモグアノシン);デアザヌクレオチド(例えば7-デアザ-アデノシン);O-アルキル化ヌクレオチドとN-アルキル化ヌクレオチド(例えばN6-メチルアデノシン)が適切である。上記の修飾は組み合わせてもよいことに注意すべきである。
【0107】
いくつかの実施形態では、核酸分子は、以下の化学的修飾、すなわち1つ以上のヌクレオチドの2’-H修飾、2’-O-メチル修飾、または2’-OH修飾の少なくとも1つを含む。ある実施形態では、本発明の核酸分子はヌクレアーゼに対する増強された耐性を持つことができる。ヌクレアーゼ耐性を増大させるため、核酸分子は例えば2’修飾リボース単位および/またはホスホロチオエート結合を含むことができる。例えば2’ヒドロキシル基(OH)を修飾すること、または多数の異なる「オキシ」または「デオキシ」置換基で置換することができる。ヌクレアーゼ耐性を増大させるため、本発明の核酸分子は、2’-O-メチル、2’-フッ素、2’-O-メトキシエチル、2’-O-アミノプロピル、2’-アミノ、および/またはホスホロチオエート結合を含むことができる。ロックされた核酸(LNA)、エチレン核酸(ENA)(例えば2’-4’-エチレン架橋核酸)、およびいくつかの核酸塩基修飾(2-アミノ-A、2-チオ(例えば2-チオ-U)、G-クランプという修飾など)を含めることによっても標的に対する結合親和性を増大させることができる。
【0108】
一実施形態では、核酸分子は、2’修飾ヌクレオチドである例えば2’-デオキシ、2’-デオキシ-2’-フルオロ、2’-O-メチル、2’-O-メトキシエチル(2’-O-MOE)、2’-O-アミノプロピル(2’-O-AP)、2’-O-ジメチルアミノエチル(2’-O-DMAOE)、2’-O-ジメチルアミノプロピル(2’-O-DMAP)、2’-O-ジメチルアミノエチルオキシエチル(2’-O-DMAEOE)、または2’-O-N-メチルアセタアミド(2’-O-NMA)を含む。一実施形態では、核酸分子は、少なくとも1つの2’-O-メチル修飾ヌクレオチドを含み、いくつかの実施形態では、核酸分子のヌクレオチドのすべてが2’-O-メチル修飾を含む。
【0109】
本明細書で論じる核酸剤には、他の点は修飾されていないRNAとDNAのほか、例えば有効性を改善するため修飾されたRNAおよびDNAと、ヌクレオシド代替物のポリマーが含まれる。修飾されていないRNAは、核酸の構成要素、すなわち糖、塩基、およびリン酸部分が、自然界で生じる(例えば人体内で自然に生じる)のと同じであるか実質的に同じである分子を意味する。本分野では、修飾されたRNAとして、稀であるか異常だが天然のRNAに言及されている(例えばLimbachら(Nucleic Acids Res., 1994, 22:2183-2196)を参照されたい)。修飾されたRNAと呼ばれることがしばしばあるこのような稀であるか異常なRNAは、典型的には転写後修飾の結果であるため、本明細書では修飾されていないRNAという用語に含まれる。修飾されたRNAは、本明細書では、核酸の構成要素、すなわち糖、塩基、およびリン酸部分の1つ以上が、自然界で生じる(例えば人体内で自然に生じる)のとは異なっている分子を意味する。それらは「修飾されたRNA」と呼ばれるが、修飾があるため、もちろん厳密に言えばRNAではない分子を含む。ヌクレオシド代替物は、リボリン酸骨格が、塩基が正しい空間的関係で提示されることを可能にする非リボリン酸コンストラクト(例えばリボリン酸骨格の非帯電模倣体)で置換された分子であるため、ハイブリダイゼーションがリボリン酸骨格で見られるのと実質的に同様になる。
【0110】
本発明の核酸の修飾は、リン酸基、糖基、骨格、N末端、C末端、または核酸塩基の1つ以上の位置に存在することができる。
【0111】
本発明には、本発明の単離された核酸が挿入されたベクターも含まれる。本分野には、本発明で有用な適切なベクターが多数ある。
【0112】
いくつかの実施形態では、Dsg2結合分子をコードする天然または合成の核酸の発現は、典型的には、抗原タンパク質またはペプチドまたはその一部をコードする核酸をプロモータに機能可能に連結し、このコンストラクトを発現ベクターの中に組み込むことによって実現される。使用されるベクターは複製に適しており、場合により真核細胞に組み込まれる。典型的なベクターは、転写と翻訳のターミネータ、開始配列、および望む核酸配列の発現の調節に有用なプロモータを含有する。
【0113】
本発明のベクターは標準的な遺伝子送達プロトコルを利用して核酸免疫化と遺伝子療法に用いることもできる。遺伝子送達の方法は本分野で知られている。例えばアメリカ合衆国特許第5,399,346号、第5,580,859号、第5,589,466号を参照されたい(これらの全体が参照によって本明細書に組み込まれている)。別の一実施形態では、本発明により遺伝子療法ベクターが提供される。
【0114】
本発明の単離された核酸は多くのタイプのベクターにクローニングすることができる。例えば核酸は、ベクター(その非限定的な例に含まれるのは、プラスミド、ファージミド、ファージ誘導体、動物ウイルス、およびコスミドである)にクローニングすることができる。特に興味深いベクターに含まれるのは、発現ベクター、複製ベクター、プローブ生成ベクター、およびシークエンシングベクターである。
【0115】
さらに、ベクターはウイルスベクターの形態で細胞に提供することができる。ウイルスベクター技術は本分野で周知であり、例えばSambrookら(2012, Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory, New York)と、ウイルス学および分子生物学の他の教科書に記載されている。ベクターとして有用なウイルスの非限定的な例に含まれるのは、レトロウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、ヘルペスウイルス、およびレンチウイルスである。一般に、適切なベクターは、少なくとも1つの生物で機能する複製起点、プロモータ配列、便利な制限エンドヌクレアーゼ部位、および1つ以上の選択マーカーを含有する、(例えばWO01/96584;WO01/29058;およびアメリカ合衆国特許第6,326,193号)。
【0116】
ウイルスに基づく多数の系が、哺乳類細胞に遺伝子を導入するために開発されている。例えばレトロウイルスは遺伝子送達系のための便利なプラットフォームを提供する。選択された遺伝子をベクターの中に挿入し、本分野で知られている技術を利用してレトロウイルス粒子の中にパッケージすることができる。組み換えウイルスをその後単離し、生体内または生体外で対象の細胞に送達することができる。多数のレトロウイルス系が本分野で知られている。いくつかの実施形態では、アデノウイルスベクターが使用される。多数のアデノウイルスベクターが本分野で知られている。一実施形態では、レンチウイルスベクターが使用される。
【0117】
例えばレトロウイルス(レンチウイルスなど)に由来するベクターは、導入遺伝子の長期の安定な組み込みと、娘細胞におけるその増殖を可能にしてくれるため、長期の遺伝子導入を実現するのに適したツールである。レンチウイルスベクターは、非増殖細胞(肝細胞など)に形質導入することができるという点で、がんレトロウイルス(マウス白血病ウイルスなど)に由来するベクターを超える追加の利点を持つ。レンチウイルスベクターは、低い免疫原性という追加の利点も持つ。一実施形態では、組成物は、アデノ随伴ウイルス(AAV)に由来するベクターを含む。アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターはさまざまな障害を治療するための強力な遺伝子送達ツールとなっている。AAVベクターは、このベクターを遺伝子療法にとって理想的なものにしている多くの特徴(病原性の欠如、最少の免疫原性、および有糸分裂後の細胞に安定かつ効率的に形質導入する能力が含まれる)を持つ。AAV血清型、プロモータ、および送達法の適切な組み合わせを選択することにより、1つ以上のタイプの細胞を特異的に標的にしてAAVベクターの中に含まれる特定の遺伝子を発現させることができる
【0118】
ある実施形態では、ベクターは、このプラスミドベクターをトランスフェクトした細胞、または本発明によって作製したウイルスに感染した細胞において導入遺伝子の転写、翻訳、および/または発現が可能になるようにその導入遺伝子に機能可能に連結された従来の制御エレメントも含む。本明細書では、「機能可能に連結された」配列は、興味ある遺伝子と連続した発現制御配列と、その興味ある遺伝子を制御するためトランスで、または距離を離して作用する発現制御配列の両方を含む。発現制御配列は、適切な転写開始、終止、プロモータ、およびエンハンサの配列;効率的なRNAプロセシングのシグナル(スプライシングやポリアデニル化(ポリA)のシグナルなど);細胞質mRNAを安定化させる配列;翻訳効率を増強する配列(すなわちコザックコンセンサス配列);タンパク質の安定性を増強する配列;および望む場合にはコードされた産物の分泌を増強する配列を含む。多数の発現制御配列が、天然の、構成的な、誘導性の、および/または組織特異的なプロモータを含めて本分野で知られており、使用することができる。
【0119】
追加プロモータエレメント(例えばエンハンサ)は転写開始の頻度を調節する。典型的にはこれらは開始部位から30~110bp上流の領域に位置するが、多数のプロモータは、開始部位の下流の機能的エレメントも含有することが最近示された。プロモータエレメント間の間隔はしばしば柔軟であるため、エレメントが互いに逆転したり移動したりするときにプロモータ機能が保持される。チミジンキナーゼ(tk)プロモータでは、プロモータエレメント間の間隔を50bpまで離すことができ、それを超えると活性が低下し始める。プロモータに応じ、個々のエレメントは協働的に、または独立に機能して転写を活性化することができるように見える。
【0120】
適切なプロモータの一例は前初期サイトメガロウイルス(CMV)プロモータ配列である。このプロモータ配列は、強力な構成的プロモータ配列であり、これに機能可能に連結された任意のポリヌクレオチド配列を高レベルで発現させる。適切なプロモータの別の一例は伸長増殖因子-1α(EF-1α)である。しかし他の構成的プロモータ配列も使用することができ、その非限定的な例に含まれるのは、シミアンウイルス40(SV40)初期プロモータ、マウス乳腺腫瘍ウイルス(MMTV)、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)長い末端反復(LTR)プロモータ、MoMuLVプロモータ、トリ白血病ウイルスプロモータ、エプスタイン-バールウイルス前初期プロモータ、ラウス肉腫ウイルスプロモータのほか、ヒト遺伝子プロモータ(非限定的な例は、アクチンプロモータ、ミオシンプロモータ、ヘモグロビンプロモータ、およびクレアチンキナーゼプロモータなどである)である。さらに、本発明が構成的プロモータの使用に限定されるはずはない。誘導性プロモータも本発明の一部として考慮される。誘導性プロモータの使用により、これに機能可能に連結されたポリヌクレオチド配列の発現が望まれるときにはその発現をオンにし、発現が望まれていないときにはその発現をオフにすることのできる分子スイッチが提供される。誘導性プロモータの非限定的な例に含まれるのは、メタロチオニンプロモータ、グルココルチコイドプロモータ、プロゲステロンプロモータ、およびテトラサイクリンプロモータである。
【0121】
ベクター上に見られるエンハンサ配列は、その中に含まれる遺伝子の発現も調節する。典型的には、エンハンサはタンパク質因子に結合して遺伝子の転写を増強する。エンハンサは、それが調節する遺伝子の上流または下流に位置することができる。エンハンサは、特定のタイプの細胞または組織における転写を増強するため組織特異的であることも可能である。一実施形態では、本発明のベクターは、ベクターの中に存在する遺伝子の転写を促進するため1つ以上のエンハンサを含む。
【0122】
Dsg2結合分子の発現を評価するため、細胞の中に導入される発現ベクターは、選択マーカー遺伝子とレポータ遺伝子の一方または両方を含有することができる。するとウイルスベクターを通じてトランスフェクションまたは感染を実現しようとする細胞の集団から発現細胞を同定して選択することが容易になる。他の側面では、選択マーカーをDNAの別の切片に搭載して同時トランスフェクション手続きで使用することができる。選択マーカーとレポータ遺伝子の両方を、宿主細胞の中での発現を可能にする適切な調節配列に隣接させることができる。有用な選択マーカーに、例えば抗生剤耐性遺伝子(neoなど)などが含まれる。
【0123】
レポータ遺伝子を用い、トランスフェクトされた可能性のある細胞を同定し、調節配列の機能を評価することができる。一般に、レポータ遺伝子は、レシピエント生物またはレシピエント組織の中に存在していないか、それによって発現されることがない遺伝子であり、発現が容易に検出できるなんらかの特性(例えば酵素活性)によって示されるポリペプチドをコードする。レポータ遺伝子の発現は、DNAがレシピエント細胞の中に導入された後の適切な時期に検査される。適切なレポータ遺伝子は、ルシフェラーゼ、ベータ-ガラクトシダーゼ、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ、分泌されたアルカリホスファターゼをコードする遺伝子、または緑色蛍光タンパク質遺伝子を含むことができる(例えばUi-Tei et al., 2000 FEBS Letters 479: 79-82)。適切な発現系は周知であり、既知の技術を利用して調製すること、または市場で入手することができる。一般に、レポータ遺伝子の最高レベルの発現を示す最小5’フランキング領域を持つコンストラクトが、プロモータとして同定される。このようなプロモータ領域はレポータ遺伝子に連結することができ、薬剤を、プロモータが駆動する転写を変化させる能力に関して評価するのに使用される。
【0124】
遺伝子を細胞の中に導入して発現させる方法は本分野で知られている。発現ベクターの文脈では、ベクターは、本分野の任意の方法によって宿主細胞(例えば哺乳類、細菌、酵母、または昆虫の細胞)の中に容易に導入することができる。例えば発現ベクターは、物理的、化学的、または生物学的な手段によって宿主細胞の中に移すことができる。
【0125】
ポリヌクレオチドを宿主細胞の中に導入するための物理的手段に含まれるのは、リン酸カルシウム沈降、リポフェクション、粒子ボンバードメント、微量注入、電気穿孔などである。ベクターおよび/または外来性核酸を含む細胞を生成させる方法は本分野で周知である。例えばSambrookら(2012, Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory, New York)を参照されたい。一実施形態では、ポリヌクレオチドを宿主細胞の中に導入する方法は、リン酸カルシウムトランスフェクションである。
【0126】
興味あるポリヌクレオチドを宿主細胞の中に導入するための生物学的手段に含まれるのは、DNAベクターとRNAベクターの使用である。ウイルスベクター、特にレトロウイルスベクターが、遺伝子を哺乳類(例えばヒト)細胞の中に挿入するのに最も広く使用される方法となっている。他のウイルスベクターは、レンチウイルス、ポックスウイルス、単純ヘルペスウイルスI、アデノウイルス、およびアデノ随伴ウイルスなどに由来することができる。例えばアメリカ合衆国特許第5,350,674号と第5,585,362号を参照されたい。
【0127】
ポリヌクレオチドを宿主細胞の中に導入するための化学的手段に含まれるのはコロイド状分散系であり、それは、巨大分子複合体、ナノカプセル、マイクロスフェア、ビーズ、および脂質に基づく系(水中油型エマルション、ミセル、混合されたミセル、およびリポソームが含まれる)などである。インビトロと生体内で送達用担体として使用するための1つの代表的なコロイド系はリポソーム(例えば人工膜小胞体)である。
【0128】
非ウイルス送達系が使用される場合には、代表的な1つの送達用担体はリポソームである。脂質製剤を用いて核酸を宿主細胞の中に導入することを考慮する(インビトロ、生体外、または生体内)。別の1つの側面では、核酸を脂質と会合させることができる。脂質と会合した核酸は、リポソームの水性内部の中に封止すること、リポソームの脂質二重層の中に散在させること、リポソームとオリゴヌクレオチドの両方と会合した連結分子を介してリポソームに付着させること、リポソームの中に捕捉すること、リポソームとの複合体にすること、脂質を含有する溶液の中に分散させること、脂質と混合すること、脂質と組み合わせること、懸濁液として脂質の中に含めること、ミセルの中に含めるかミセルとの複合体にすること、またはそれ以外に脂質と会合させることができる。脂質、脂質/DNA、または脂質/発現ベクターが会合した組成物が溶液中でどれか特定の構造に限定されることはない。例えば組成物は、二層構造(ミセルなど)、または「崩壊した」構造で存在することができる。組成物は溶液の中に単純に散在させることもでき、おそらくサイズまたは形が一様でない凝集体を形成する。脂質は脂肪性物質であり、天然脂質または合成脂質が可能である。例えば脂質には、細胞質の中で自然に生じる脂肪液滴のほか、長鎖脂肪族炭化水素とその誘導体(脂肪酸、アルコール、アミン、アミノアルコール、およびアルデヒドなど)を含有する化合物のクラスが含まれる。
【0129】
使用に適した脂質は商用品供給者から取得することができる。例えばジミリスチルホスファチジルコリン(「DMPC」)はSigma(セントルイス、ミズーリ州)から取得することができる;リン酸ジセチル(「DCP」)はK&K Laboratories(プレインヴュー、ニューヨーク州)から取得することができる;コレステロール(「Chol」)はCalbiochem-Behringから取得することができる;ジミリスチルジミリスチルホスファチジルグリセロール(「DMPG」)と他の脂質はAvanti Polar Lipids, Inc.(バーミンガム、アラバマ州)から取得することができる。クロロホルムまたはクロロホルム/メタノールの中に脂質を含む貯蔵溶液は約-20℃で保管することができる。クロロホルムはメタノールよりも容易に蒸発するため、唯一の溶媒として使用される。「リポソーム」は、囲まれた脂質二重層または凝集体の生成によって形成された多彩な単一脂質担体と多層膜脂質担体を包含する一般的な用語である。リポソームは、リン脂質二重層膜と内部水性媒体を有する小胞構造を持つことを特徴とすることができる。多層膜リポソームは水性媒体によって隔てられた多数の脂質層を持つ。多層膜リポソームは、リン脂質が過剰な水溶液の中に懸濁されるときに自発的に形成される。脂質構成要素は閉鎖構造を形成する前に自己再配置を起こし、脂質二重層の間に水と溶けた溶質を捕獲する(Ghosh et al., 1991 Glycobiology 5: 505-10)。しかし溶液中で通常の小胞構造と異なる構造を持つ組成物も包含される。例えば脂質は、ミセル構造を取る可能性、または単に脂質分子の不均一な凝集体として存在する可能性がある。リポフェクタミン-核酸複合体も考慮される。
【0130】
外来性核酸を宿主細胞の中に導入するのにどの方法を用いるかに関係なく、宿主細胞の中に組み換えDNA配列が存在することを確認するため、多彩なアッセイを実施することができる。そのようなアッセイに含まれるのは、例えば当業者に周知の「分子生物学的」アッセイ(サザンブロッティングトノーザンブロッティング、RT-PCR、およびPCRなど);「生化学的」アッセイ(本発明の範囲に入る薬剤を同定するため、特定のペプチドの存在または不在を例えば免疫学的手段(ELISAとウエスタンブロット)によって、または本明細書に記載されているアッセイによって検出するなど)である。
【0131】
一実施形態では、本発明により、Dsg2結合分子を含むか、Dsg2結合分子をコードする核酸分子を含む送達用担体が提供される。代表的な送達用担体の非限定的な例に含まれるのは、マイクロスフェア、マイクロ粒子、ナノ粒子、ポリメロソーム、リポソーム、およびミセルである。例えばある実施形態では、送達用担体にDsg2結合分子、またはDsg2結合分子をコードする核酸分子がロードされる。ある実施形態では、送達用担体により、ロードされたカーゴの制御放出、遅延放出、または連続放出が提供される。ある実施形態では、送達用単体は、この送達用担体を治療部位に向けるターゲティング部分を含む。
【0132】
免疫療法組成物
【0133】
いくつかの実施形態では、本発明は免疫療法に関するものであり、特に、望む条件で導入遺伝子が発現するよう免疫細胞を遺伝子操作することに基づく標的化細胞療法に関する。いくつかの実施形態では、導入遺伝子はDsg2結合分子またはその断片をコードする。本明細書に記載されているのは、治療用導入遺伝子を免疫細胞のゲノムに組み込み、その導入遺伝子が内在性プロモータの制御下に置かれるようにすることにより、免疫療法のための免疫細胞を生成させる方法である。本明細書に記載されている1つの導入遺伝子(単数形)への言及は、文脈がそれとは異なることを示している場合は別にして、1つ以上の導入遺伝子(複数形)にも適用されることが理解されよう。本発明により、免疫細胞療法のための戦略として、ゲノム編集を利用して1個または数個の治療用導入遺伝子を1つ以上の内在性プロモータの制御下に置き、治療用免疫細胞における制御された時空間での発現を提供する戦略が提供される。本発明により、1個の治療用導入遺伝子または多彩な治療用導入遺伝子を発現するよう操作された免疫細胞が提供され、その導入遺伝子の発現が免疫細胞の位置(例えば腫瘍の近傍だけでの導入遺伝子の発現)または所定の時点(例えば腫瘍細胞に取り付く前または後)に依存するようにすることが、それに応じた発現を提供する内在性プロモータの使用によって可能になる。したがって本発明の細胞と方法を利用して治療用免疫細胞の有効性と安全性を増大させることができる。
【0134】
一実施形態では、本発明の免疫細胞は、T細胞、B細胞、NK細胞、抗原提示細胞(例えば樹状細胞またはマクロファージ)、単球、好中球、好酸球、または好塩基球である。
【0135】
いくつかの実施形態では、本発明は、治療用導入遺伝子を内在性プロモータの制御下に置き、免疫細胞において望む導入遺伝子発現プロファイルを実現することに関する。内在性プロモータは、導入遺伝子の発現の特徴(例えば導入遺伝子発現のタイミングおよび/または導入遺伝子の発現レベル)を調節するように選択される。導入遺伝子を内在性プロモータの制御下に置くことによってその発現を調節すると、導入遺伝子の発現、免疫原性成分の発現、および内部プロモータと導入遺伝子をコードするウイルスベクターの発現を誘導する小分子薬を投与する必要がなくなる。内在性プロモータを用いることにより、免疫細胞を、導入遺伝子の発現が自律的に調節されるように操作し、導入遺伝子の発現(例えばどこでいつ導入遺伝子の発現が活性化されるか)が、好ましくは環境要因(例えば標的抗原、サイトカイン、および/または共刺激リガンドの近傍)に対する免疫細胞の協調した内在性応答に依存した所定のプログラムで起こるようにする。したがって特別な一実施形態では、免疫細胞を操作し、微小環境要因に応答する内在性プロモータが利用されて、その結果として空間的と時間的に予測可能な導入遺伝子の発現がその内在性プロモータによって支配されるようにする。
【0136】
特別な一実施形態では、治療用導入遺伝子は治療用タンパク質をコードする。別の特別な一実施形態では、治療用導入遺伝子は治療用RNAをコードする。
【0137】
免疫細胞
【0138】
一実施形態では、本発明により、本発明のDsg2結合分子を含む免疫細胞が提供される。一実施形態では、本発明により、キメラ抗原受容体(CAR)をコードする組み換え核酸配列を含む免疫細胞(例えばT細胞)が提供される。一実施形態では、組み換え細胞を用いてDsg2発現細胞に対する免疫応答を増強または提供することができる。いくつかの実施形態では、細胞はヒトに由来する(組み換えがなされる前はヒト起源である)(そして本発明の治療法ではヒトに投与するのにヒト由来の細胞が特に好ましい)。
【0139】
いくつかの実施形態では、本発明の免疫細胞として有用なT細胞はCD4+またはCD8+が可能であり、その非限定的な例に含めることができるのは、Tヘルパー細胞(CD4+)、細胞傷害性T細胞(細胞傷害性Tリンパ球、CTL;CD8+ T細胞とも呼ばれる)、およびメモリT細胞(セントラルメモリT細胞(TCM)、幹メモリT細胞(TSCM)、幹細胞様メモリT細胞(または幹様メモリT細胞)、およびエフェクタメモリT細胞(例えばTEM細胞とTEMRA(CD45RA+)細胞)が含まれる)、エフェクタT細胞、Th1細胞、Th2細胞、Th9細胞、Th17細胞、Th22細胞、Tfh(濾胞性ヘルパー)細胞、T制御性細胞、ナチュラルキラーT細胞、粘膜関連インバリアントT細胞(MAIT)、およびγδ T細胞である。主要なT細胞のサブタイプに含まれるのは、T(ナイーブ)、TSCM(幹細胞メモリ)、TCM(セントラルメモリ)、TTM(移行メモリ)、TEM(エフェクタメモリ)、およびTTE(ターミナルエフェクタ)、TCR-トランスジェニックT細胞、普遍的サイトカイン媒介殺傷のためリダイレクトされたT細胞(TRUCK)、腫瘍浸潤T細胞(TIL)、CAR-T細胞、または疾患または障害を治療するために使用できるあらゆるT細胞である。
【0140】
一実施形態では、本発明のT細胞は免疫刺激細胞、すなわち免疫応答を媒介する細胞である。免疫刺激性である代表的なT細胞の非限定的な例に含まれるのは、Tヘルパー細胞(CD4+)、細胞傷害性T細胞(細胞傷害性Tリンパ球、CTL;CD8+ T細胞とも呼ばれる)、およびメモリT細胞(セントラルメモリT細胞(TCM)、幹メモリT細胞(TSCM)、幹細胞様メモリT細胞(または幹様メモリT細胞)、およびエフェクタメモリT細胞(例えばTEM細胞とTEMRA(CD45RA+)細胞)が含まれる)、エフェクタT細胞、Th1細胞、Th2細胞、Th9細胞、Th17細胞、Th22細胞、Tfh(濾胞性ヘルパー)細胞、ナチュラルキラーT細胞、粘膜関連インバリアントT細胞(MAIT)、およびγδ T細胞である。
【0141】
免疫細胞は、場合により、胚性幹細胞または人工多能性幹細胞(iPSC)から生成させることができる。いくつかの実施形態では、本発明のDsg2結合分子(例えばCAR)を組み換え発現する使用可能な免疫細胞の前駆細胞は、例えば造血幹細胞および/または前駆細胞である。造血幹細胞および/または前駆細胞は、本分野で知られている方法によるサイトカイン動員などの後の骨髄、臍帯血、成人末梢血に由来することができ、その後遺伝子操作されて本発明のDsg2結合分子(例えばCAR)を組み換え発現する。いくつかの実施形態では、前駆細胞は、リンパ球系に分化することのできる細胞(例えば造血幹細胞、または望むタイプの免疫細胞に分化することのできるリンパ球系の前駆細胞)である。一実施形態では、iPSCを、本発明のDsg2結合分子(例えばCAR)を発現させるための細胞として用いることができる。
【0142】
免疫細胞は、本分野で周知の方法(市場で入手できる単離法が含まれる)によって単離することができる。免疫細胞のための供給源の非限定的な例に含まれるのは、末梢血、臍帯血、骨髄、または他の造血細胞供給源である。さまざまな技術を利用して細胞を分離し、望む免疫細胞(T細胞など)を単離または富化することができる。例えば陰性選択法を利用して望む免疫細胞でない細胞を除去することができる。それに加え、陽性選択法を利用して望むT細胞を単離または富化すること、または陽性選択法と陰性選択法の組み合わせを利用することができる。モノクローナル抗体(MAb)は、陽性選択と陰性選択の両方で特定の細胞系列および/または分化の段階に関係するマーカーを同定するのに特に有用である。特定のタイプのT細胞を単離する場合には、本分野で周知のように、さまざまな細胞表面マーカー、またはマーカーの組み合わせ(その非限定的な例に含まれるのは(造血幹細胞と前駆細胞については)CD3、CD4、CD8、CD34などである)を利用して細胞を分離することができる。
【0143】
細胞を分離するための手続きの非限定的な例に含まれるのは、密度勾配遠心分離、細胞密度を変化させる粒子へのカップリング、抗体で覆われた磁性ビーズを用いた磁性分離、アフィニティクロマトグラフィ;モノクローナル抗体(mAb)に接合された細胞毒性剤(その非限定的な例に含まれるのは補体と細胞毒素である)、またはmAbと組み合わせて使用される細胞毒性剤、および固体マトリックス(例えばプレートまたはチップ)に付着した抗体を用いたパンニング、水簸、フローサイトメトリー、または便利な他の任意の技術である。
【0144】
免疫細胞は、本発明の治療法においてその免疫細胞が投与される対象にとって自家または非自家であることが可能である。自家細胞は、操作された免疫細胞が投与される対象から単離される。一実施形態では、自家細胞は、CARを組み換え発現している操作された細胞を投与される対象から単離される。場合により、細胞は白血球アフェレーシスによって得ることができ、この方法では取り出された血液から白血球が選択的に取り出され、組み換えされた後、ドナーに再び輸注される。あるいは対象ではない非自家ドナーからの同種異系細胞を使用することができる。非自家ドナーの場合には、本分野で周知のように、細胞はタイプ分けされ、ヒト白血球抗原(HLA)が照合されて適切なレベルの適合性が判断される。自家細胞と非自家細胞の両方について、細胞は、場合により、本分野で周知の方法を利用して遺伝子操作する準備、および/または対象に投与するのに用いる準備ができるまで低温で保管することができる。
【0145】
CARの組み換え発現に使用可能な免疫細胞を単離するさまざまな方法が以前に記載されており、それらを利用することができる。方法の非限定的な例に含まれるのは、末梢ドナーリンパ球の使用(Sadelain et al., Nat. Rev. Cancer 3:35-45(2003);Morgan et al., Science 314:126-129(2006)、腫瘍生検に含まれる腫瘍浸潤リンパ球(TIL)に由来するリンパ球培養物の使用(Panelli et al., J Immunol. 164:495-504(2000);Panelli et al., J Immunol. 164:4382-4392(2000))、および人工的抗原提示細胞(AAPC)または樹状細胞を用いてインビトロで増殖された抗原特異的末梢血の白血球の選択的な使用(Dupont et al., Cancer Res. 65:5417-5427(2005);Papanicolaou et al., Blood 102:2498-2505(2003))である。幹細胞を用いる場合には、細胞は本分野で周知の方法によって単離することができる(例えばKlug et al., Hematopoietic Stem Cell Protocols, Humana Press, New Jersey(2002);Freshney et al., Culture of Human Stem Cells, John Wiley&Sons(2007)を参照されたい)。
【0146】
一実施形態では、単離された免疫細胞は、本発明のDsg2結合分子の組み換え発現のため生体外で遺伝子操作される。一実施形態では、単離された免疫細胞は、CARの組み換え発現のため生体外で遺伝子操作される。細胞は、組み換え発現のため本分野で周知の方法によって遺伝子操作することができる。
【0147】
免疫細胞は、その細胞の維持または増殖に有利な条件にすることができる。細胞は、生体外遺伝子操作の前または後に増殖させることができる。細胞の増殖は、対象に投与するための細胞の数を増やすのに有用である。免疫細胞(T細胞など)を増殖させるこのような方法は本分野で周知である。さらに、細胞は、単離、および/または遺伝子操作、および/または遺伝子操作された細胞の増殖の後に低温で保管することができる。細胞を低温保存する方法は本分野で周知である。
【0148】
組み換え細胞
【0149】
いくつかの実施形態では、本発明により、内在性プロモータの制御下で本発明のDsg2結合分子を組み換え発現する免疫細胞が提供される。一実施形態では、本発明のDsg2結合分子(例えばCAR)をコードする核酸が免疫細胞の中に導入される。伝統的には、そのような方法は適切な発現ベクターを利用してきており、その場合には免疫細胞に導入遺伝子(例えばCARをコードする核酸)が形質導入される。一実施形態では、本発明のt Dsg2結合分子(例えばCAR)がターゲティングコンストラクトにクローニングされ、このターゲティングコンストラクトが、ゲノム内のある部位を標的とした導入遺伝子の組み込みを提供する。例えば分子生物学の周知の技術を利用して本発明のCARをコードするポリヌクレオチドを適切なターゲティングコンストラクトまたは適切なベクター(レトロウイルスベクターなど)にクローニングした後、免疫細胞の中に導入することができる。
【0150】
本発明の免疫細胞(例えばヒトT細胞)の中で発現させるのに適した適切な任意のターゲティングコンストラクトを用いることができる。特別な一実施形態では、ターゲティングコンストラクトは、細胞のゲノム内のある部位を標的とした核酸配列(導入遺伝子)の組み込みに適した相同組み換え系とともに用いるのに適合している。代表的な相同組み換え系は本分野で周知であり、その非限定的な例に含まれるのは、ヌクレアーゼ、例えば転写アクチベータ様エフェクタヌクレアーゼ(TALEN)、ジンク-フィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、クラスター化され規則的間隔にされた短い回文反復(CRISPR)系(CRISPR関連タンパク質9(Cas9)やCpf1など)、および/またはメガヌクレアーゼまたはMega-Tal(Talドメインとメガヌクレアーゼの融合体)などを利用した技術であり、これらが相同組み換えを提供する。このような方法は本分野で周知であり、市場で入手できる。CRISPRに基づく他の系は発熱物質と黄色ブドウ球菌を含む。このような方法を利用して相同組み換えを実施または促進することができる。
【0151】
ベクターとターゲティングコンストラクト
【0152】
本発明の方法のために使用できるウイルスベクターの非限定的な例に含まれるのは、レトロウイルス、アデノウイルス、レンチウイルス、およびアデノ随伴ウイルスのベクター、ワクシニアウイルス、ウシパピローマウイルス由来のベクター、およびヘルペスウイルスベクター(エプスタイン-バールウイルスなど)である(例えばMiller, Hum. Gene Ther. 1(1):5-14(1990);Friedman, Science 244:1275-1281(1989);Eglitis et al., BioTechniques 6:608-614(1988);Tolstoshev et al., Current Opin. Biotechnol. 1:55-61(1990);Sharp, Lancet 337:1277-1278(1991);Cornetta et al., Prog. Nucleic Acid Res. Mol. Biol. 36:311-322(1989);Anderson, Science 226:401-409(1984);Moen, Blood Cells 17:407-416(1991);Miller et al., Biotechnology 7:980-990(1989);Le Gal La Salle et al., Science 259:988-990(1993);およびJohnson, Chest 107:77S-83S(1995);Rosenberg et al., N. Engl. J. Med. 323:370(1990);Anderson et al.、アメリカ合衆国特許第5,399,346号;Scholler et al., Sci. Transl. Med. 4:132-153(2012;Parente-Pereira et al., J. Biol. Methods 1(2):e7(1-9)(2014);Lamers et al., Blood 117(1):72-82(2011);Reviere et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 92:6733-6737(1995);Wang et al., Gene Therapy 15:1454-1459(2008)を参照されたい)。
【0153】
いくつかの実施形態では、ベクターは、組み換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)、組み換え非組み込みレンチウイルス(rNILV)、組み換えガンマ-レトロウイルス(rNIgRV)、一本鎖DNA(直線状または環状)などである。
【0154】
細胞のゲノム内の部位に組み込まれた導入遺伝子の発現を制御するのに内在性プロモータを用いる本発明の方法では、ターゲティングコンストラクトはプロモータなしであることが好ましい。
【0155】
いくつかの実施形態では、免疫細胞の中で本発明のDsg2結合分子(例えばCAR)を発現させるのに適したプロモータを用いるベクターを使用することができる。プロモータとして誘導性プロモータまたは構成的プロモータが可能である。
【0156】
いくつかの実施形態では、本発明のコンストラクトは、導入遺伝子をコードする核酸配列のすぐ上流にP2A配列を含むように設計することができる。一実施形態では、ターゲティングコンストラクトは、場合により、CARをコードする核酸配列のすぐ上流にP2A配列を含むように設計することができる。P2Aは自己切断ペプチド配列であり、タンパク質配列の二シストロン性または多シストロン性の発現のために使用することができる(Szymczak et al., Expert Opin. Biol. Therapy 5(5):627-638(2005)参照)。望むのであれば、コンストラクトは、場合により、レポータ(例えば形質導入された細胞を同定するためのレポータタンパク質)を含むように設計することができる。代表的なレポータタンパク質の非限定的な例に含まれるのは、蛍光タンパク質(mCherry、緑色蛍光タンパク質(GFP)、青色蛍光タンパク質(例えばEBFP、EBFP2、Azurite、およびmKalamal)、シアン色蛍光タンパク質(例えばECFP、Cerulean、およびCyPet)、および黄色蛍光タンパク質(例えばYFP、Citrine、Venus、およびYPet)など)である。
【0157】
いくつかの実施形態では、コンストラクトは導入遺伝子のポリアデニル化(ポリA)配列3’を含む。例えば一実施形態では、コンストラクトはCARをコードする核酸配列のポリアデニル化(ポリA)配列3’を含む。
【0158】
分子生物学の定型的な技術を利用したアッセイを用いて導入遺伝子(CARをコードしていることが好ましい)の形質導入効率を求めることができる。遺伝子導入の効率を、形質導入された免疫細胞の割合を定量するための蛍光活性化セルソーティング(FACS)分析によってモニタすること、および/または定量PCRによってモニタすることができる。よく確立された共培養系(Gade et al., Cancer Res. 65:9080-9088(2005);Gong et al., Neoplasia 1:123-127(1999);Latouche et al., Nat. Biotechnol. 18:405-409(2000))を利用して、がん抗原を発現している線維芽細胞AAPCが(対照と比較して)、CARを発現している形質導入された免疫細胞からのサイトカイン放出を指示するかどうか(IL-2、IL-4、IL-10、IFN-γ、TNF-α、およびGM-CSFを探す細胞上清LUMINEX(Austin Tex.)アッセイ)、(カルボキシフルオレセインスクシンイミジルエステル(CFSE)標識により)免疫細胞増殖を指示するかどうか、および(アネキシンV染色により)免疫細胞の生存を指示するかどうかを判断することができる。CARを発現している免疫細胞を標的抗原陽性細胞による反復刺激に曝露し、免疫細胞増殖とサイトカイン応答が反復刺激で同様にとどまるか減少するかを判断することができる。一実施形態では、CARを発現している免疫細胞をがん抗原陽性標的細胞による反復刺激に曝露し、免疫細胞増殖とサイトカイン応答が反復刺激で同様にとどまるか減少するかを判断することができる。クロム放出アッセイを利用し、多くのE:T比で細胞毒性アッセイを実施することができる。
【0159】
いくつかの実施形態では、本発明は、免疫細胞における治療用導入遺伝子の発現を、その免疫細胞のゲノム内のある部位に、その導入遺伝子がその免疫細胞の内在性プロモータの制御下になるように組み込むことによって実現することに関する。内在性プロモータを用いることにより、免疫細胞は、1つの治療用導入遺伝子または多彩な治療用導入遺伝子が異なる内在性プロモータの制御下で発現するように操作されている。特別な一実施形態では、導入遺伝子の発現は免疫細胞の微小環境に依存するようにされる。例えば治療用導入遺伝子の発現は、免疫細胞が特定の位置にあるとき(例えば免疫細胞が腫瘍の位置にあって腫瘍抗原に結合することによって活性化され、そのことによって内在性プロモータを誘導するとき)に誘導される内在性プロモータを用いることにより、免疫細胞の位置(例えば腫瘍の近傍だけでの導入遺伝子の発現)に依存するようにすること、または(例えば所定の時点に誘導される内在性プロモータを用いることにより、例えば腫瘍細胞に遭遇したときの免疫細胞の活性化によって)所定の時点になされるようにすることができる。プロモータは、例えば免疫細胞が抗原に遭遇した後にそのプロモータがどれほど早く活性化または阻害されるか、そのプロモータがどれほど強く発現するか、およびどれほど長く続くかに基づいて選択される。プロモータは、そのプロモータが発現を調節する導入遺伝子に関する薬理学に適合するように選択される(例えばいくつかの導入遺伝子は低レベルでより有効であり、他の導入遺伝子は高レベルの発現でより有効であるなど)。免疫細胞における導入遺伝子の発現を制御する内在性プロモータ(単数形)の使用に関する本開示の記述は、免疫細胞の中で2つ以上の内在性プロモータを使用し、それぞれが1つの導入遺伝子(他方の導入遺伝子と同じであるか異なっている可能性がある)の発現を制御する場合にも同様に当てはまるが、文脈がそうでないことを示している場合は別であることが理解されよう。当業者は、免疫細胞療法で使用するため、1つ以上の導入遺伝子の望む発現および/または調節を提供して免疫細胞の有効性を増強する適切な内在性プロモータを容易に選択することができる。
【0160】
内在性免疫細胞プロモータは構成的または誘導性であることが可能である。特別な一実施形態では、内在性プロモータは、免疫細胞のあるサブセットに対して特異的である。2つ以上の導入遺伝子が免疫細胞の中で発現する場合には、それら導入遺伝子(互いに異なっていてもよい)を、それぞれ構成的プロモータと誘導性プロモータの組み合わせの制御下に置き、プロモータの1つ以上を例えば免疫細胞のサブセットに対して特異的にすることができる。
【0161】
一実施形態では、内在性免疫細胞プロモータは構成的である。別の一実施形態では、内在性免疫細胞プロモータは誘導性である。特別な一実施形態では、内在性免疫細胞プロモータは、免疫細胞のあるサブセットの中で活性である。一実施形態では、2つ以上の導入遺伝子が免疫細胞のゲノムに組み込まれ、それぞれの導入遺伝子の発現がその免疫細胞の異なる内在性プロモータの制御下にあるようにされる。したがって特別な一実施形態では、2つの導入遺伝子が組み込まれる。特別な一実施形態では、2つの導入遺伝子のそれぞれの発現は、構成的である異なる内在性プロモータの制御下にある。別の特別な実施形態では、2つの導入遺伝子のそれぞれの発現は、誘導性である異なる内在性プロモータの制御下にある。別の特別な一実施形態では、第1の導入遺伝子の発現は構成的内在性プロモータの制御下にあり、第2の導入遺伝子の発現は誘導性内在性プロモータの制御下にある。別の特別な実施形態では、3つの導入遺伝子が免疫細胞のゲノムに組み込まれ、それぞれの導入遺伝子の発現がその免疫細胞の異なる内在性プロモータの制御下にあるようにされる(第1の導入遺伝子の発現は構成的内在性プロモータの制御下にあり、第2と第3の導入遺伝子の発現はそれぞれ2つの異なる誘導性の内在性プロモータの制御下にある)。免疫細胞の中で発現させる導入遺伝子に応じ、プロモータは、適切な発現レベル、発現の時期、免疫細胞が特別な微小環境にあるときの発現などを提供するように選択できることがわかる。例えば導入遺伝子1の発現は構成的プロモータの制御下に置くことができ、導入遺伝子2の発現は、免疫細胞によって認識される抗原と接触してからしばらくした後に活性化される誘導性プロモータの制御下に置くことができ、導入遺伝子3の発現は、導入遺伝子2よりも後の時点で、または導入遺伝子2とは異なるレベルで活性化される異なる誘導性プロモータの制御下に置くことができる。この特別な例では、導入遺伝子1は構成的に発現し、導入遺伝子2と3は特徴が異なる誘導性プロモータの制御下にある。
【0162】
内在性免疫細胞プロモータから導入遺伝子を発現させるため本発明の免疫細胞を操作し、免疫細胞による導入遺伝子発現の自律的調節を提供する。したがって免疫細胞の微小環境を利用して複数の導入遺伝子の発現を協調させ、特に少なくとも1つの遺伝子が誘導性プロモータの制御下にあるときにトランスジェニック免疫細胞の最適な活性化を提供することができる。例えば免疫細胞療法に免疫細胞刺激性サイトカインの投与を付随させることができる(Sadelain et al., Cancer Disc. 3:388-398(2013)参照)。一実施形態では、本発明の免疫細胞を操作してCARと第2の導入遺伝子(免疫細胞活性化サイトカインなど)を同時に発現させることができる。例えばCARを構成的プロモータの制御下に置き、第2の導入遺伝子(免疫細胞活性化サイトカイン(例えばインターロイキン12(IL12))など)を誘導性プロモータの制御下に置くことで、免疫細胞が腫瘍などの表面のCARによって認識された抗原の近傍にあるとき(例えば免疫細胞がCARへの結合によって標的腫瘍抗原に係合するとき)、第2の導入遺伝子を制御する誘導性プロモータの活性化が起こるようにする。この例では、このようなコンストラクトは、毒性につながる可能性のある免疫細胞活性化サイトカインの全身投与または局所投与を必要としない。それに加え、免疫細胞を操作し、薬の投与によって調節することのできる誘導性プロモータの制御下で免疫細胞活性化サイトカインが発現するようにする場合には、そのようなコンストラクトはその薬の投与を必要としない。そのような場合には、導入遺伝子の発現を誘導するのに薬の投与を必要とする代わりに、導入遺伝子発現の調節は内在性プロモータの制御下にあるため、その内在性プロモータが導入遺伝子を発現させる。その代わりに、免疫細胞そのものは、標的抗原と係合すると、免疫細胞活性化サイトカインの発現を活性化してそのサイトカインを局所的に発現させ、したがって導入遺伝子の発現を空間的時間的に調節して免疫療法で使用される免疫細胞の有効性を最適化する。
【0163】
別の一例では、CARを発現している免疫細胞はときどき毒性を示す可能性がある。そのような毒性を減らすため、特別な一実施形態では、CARをコードする導入遺伝子をしたがって誘導性プロモータの制御下に置き、免疫細胞がCARによって認識される標的(標的腫瘍など)に係合するまでそのプロモータが誘導されずCARの発現が起こらないようにすることができる。さらに別の一実施形態では、免疫細胞を操作し、特定の標的に対するより大きな選択性を持つようにすることができる。例えばいくつかの場合には、腫瘍上の標的抗原は、その腫瘍だけの表面で発現するのではない可能性がある。したがって免疫細胞を標的抗原に向かわせると、同じ抗原を発現する非標的細胞または非標的組織に対する免疫応答が起こる可能性がある。したがって一実施形態では、本発明の免疫細胞を操作して標的腫瘍の表面上の2つの抗原を認識するようにすると、標的腫瘍に対するより大きな選択性が提供される。例えば免疫細胞を操作し、2つの異なる腫瘍抗原に対して特異的な2つのCARを発現するようにできる。この場合には、2つの標的抗原を有する標的に対する免疫細胞の選択的結合を誘導性内在性プロモータの制御下にある第3の導入遺伝子(上記の免疫細胞活性化サイトカインなど)とカップルさせることにより、標的への選択的係合がなされたときだけ、そのサイトカインを用いた免疫細胞の活性化を刺激することができる。当業者は、適切な内在性免疫細胞プロモータ(あるサブタイプの免疫細胞に対して特異的な構成的プロモータ、誘導性プロモータ、またはこれらの組み合わせのいずれか)の制御下で発現させる適切な治療用導入遺伝子を選択して導入遺伝子の自律的に調節された発現を生じさせ、より有効な免疫細胞療法を提供できることを容易に理解するであろう。一実施形態では、十分な抗腫瘍応答のため、1つの抗原を標的とする十分に適したCARを用いるのではなく、2つの異なる抗原を標的とする2つの最適ではないCARが関与する必要がある。健康な組織が一方または他方の抗原を発現している場合、その健康な組織が十分なCAR免疫細胞応答をすることはなかろう。腫瘍がそれら2つの抗原を発現している場合には、その腫瘍は完全なCAR免疫細胞活性を発動させるであろう。
【0164】
いくつかの実施形態では、本発明のトランスジェニック免疫細胞は構成的プロモータと誘導性プロモータの両方を含む。なぜなら免疫細胞を操作して特定の分子的要因に特異的に応答するようにし、選択された位置と時期に新たな治療用分子を生成させることができるからである。例えば抗原特異的細胞表面受容体(例えば本発明のDsg2結合分子)をコードする導入遺伝子は構成的プロモータから発現させることができ、その特定の抗原と相互作用したときだけシグナルを出すであろう。するとこの相互作用が、治療用分子の発現を制御する特定のプロモータの活性化を誘導する。この特別な操作された免疫細胞の治療上の利益は、構成的プロモータと誘導性プロモータの両方の機能に依存する。例えばそのような場合には、導入遺伝子はCARが活性化したときに発現し、特に腫瘍の中で発現すると考えられる。
【0165】
一実施形態では、本発明は、3つ以上の導入遺伝子を発現させることに関する。例えば導入遺伝子1は構成的であることが可能であり、抗原と接触してからしばらくした後に2つ以上の追加の導入遺伝子が介入することができる。特別な一実施形態では、導入遺伝子1はDsg2に対して特異的なCARをコードする。Dsg2に結合した後、1つ以上の追加の導入遺伝子が発現する。一実施形態では、その1つ以上の追加の導入遺伝子は、腫瘍細胞、または腫瘍微小環境内の他の細胞の表面でも発現する抗原に対して特異的な別のCARをコードする。この例は、同じ免疫細胞による異なるCARの時間的/逐次的発現を利用した「組み合わせターゲティング」の1つの形態である。別の特別な一実施形態では、導入遺伝子1はDsg2に対して特異的なCARをコードし;導入遺伝子2はサイトカインをコードし、導入遺伝子3は別のサイトカインまたは共刺激リガンドまたはscFvをコードし、例えば抗原Aを発現する同じ細胞(例えば腫瘍細胞)または同じ微小環境内の細胞の表面の抗原を認識する。これは、遺伝子発現を微小環境(腫瘍微小環境など)に限定することによって免疫細胞の効力と安全性を増大させるように設計された逐次的遺伝子活性化の一例である。
【0166】
一実施形態では、誘導性プロモータは免疫細胞の活性化によって誘導される。一実施形態では、誘導性プロモータは、免疫細胞によって発現されるキメラ抗原受容体(CAR)またはキメラ共刺激受容体(CCR)が例えば対応する抗原と相互作用したとき、対応するそれぞれの結合パートナーに結合することによって誘導される。CARとCCRの両方が細胞内シグナル伝達ドメインを含有する。CARの場合には、細胞内シグナル伝達ドメインは免疫細胞を活性化させ、場合により、共刺激ドメインを含有する(第2世代と第3世代のCARの場合)(Sadelain et al., Cancer Discov. 3(4):388-398(2013)参照)。CCRの場合には、細胞内シグナル伝達ドメインは共刺激シグナルを含有するが免疫細胞活性化シグナルは持たない(Sadelain et al.、上記文献、2013)。対応する抗原がCARまたはCCRに結合すると、免疫細胞シグナル伝達ドメインおよび/または共刺激ドメインが活性化される。これらシグナル伝達ドメインが活性化される結果としてシグナルが核に伝達され、免疫細胞の中のある内在性プロモータが活性化される。CARまたはCCRの細胞内シグナル伝達ドメインの非限定的な例に含まれるのは、CD28、4-1BB、CD27、ICOS、CD3ζなどの細胞内ドメインのほか、本明細書に開示されている他の細胞内シグナル伝達ドメインである。シグナル伝達は、これらドメインの変異バージョン(例えば変異したITAM)、短縮バージョン、または融合バージョンでも起こる可能性がある。
【0167】
別の一実施形態では、誘導性プロモータは、免疫細胞が発現するT細胞受容体(TCR)、CD28、CD27、4-1BBなどが対応するそれぞれの結合パートナーに結合することによって誘導される。これら分子は細胞内シグナル伝達ドメインを含有する。シグナル伝達ドメインは、活性化すると核にシグナルを伝達し、免疫細胞の中のある内在性プロモータを活性化させる。別の一実施形態では、誘導性プロモータは、iCAR(抑制性細胞内ドメイン(PD1、CTLA4など)を有するCAR)または短縮型CAR(細胞内ドメインなし)の結合によって誘導される。一実施形態では、iCARは標的に遭遇したとき細胞内ドメインCTLA4またはPD1のシグナル伝達を通じて免疫細胞の活性化の「破壊因子」として機能する。したがってiCARが抗原に遭遇したとき、PD1またはCTLA4によって調節されるプロモータを用いて導入遺伝子を発現させることができる。
【0168】
別の一実施形態では、誘導性プロモータは、リガンドが免疫細胞の表面に発現した抑制性受容体に結合することによって誘導される。代表的な抑制性受容体の非限定的な例に含まれるのは、受容体であるプログラムされた死1(PD-1)、細胞傷害性Tリンパ球抗原-4(CTLA-4)、Bリンパ球とTリンパ球アテニュエータ(BTLA)、T細胞免疫グロブリンムチン-3(TIM-3)、リンパ球活性化タンパク質3(LAG-3)、腫瘍壊死因子(TNF)関連アポトーシス誘導リガンド(TRAIL、受容体1と2)、Fas、IgドメインとITIMドメインを持つT細胞免疫受容体(TIGIT)、および2B4(CD244)である。これら抑制性受容体のための対応するリガンドに含まれるのは、例えば(PD-1のための)PD-L1;(PD-1のための)PD-L2;(CTLA-4のための)CD80、CD86;(BTLAのための)HVEM;(TIM-3のための)ガレクチン-9、HMGB1;(LAG-3のための)MHC II;(TRAIL受容体1とTRAIL受容体2のための)TRAIL;(Fasのための)Fasリガンド(FasL)などである(Chen et al., Nat. Rev. Immunol. 13(4):227-242(2013);Tollefson et al., J. Virol. 75:8875-8887(2001);Waring et al., Immunol. Cell Biol. 77:312-317(1999)を参照されたい)。
【0169】
別の一実施形態では、誘導性プロモータは、免疫細胞が発現するサイトカインまたはサイトカイン受容体の結合によって誘導される。一実施形態では、サイトカインは、インターロイキン2(IL2)、インターロイキン7(IL7)、インターロイキン15(IL15)、およびインターロイキン21(IL21)からなるグループから選択される免疫刺激サイトカインである。
【0170】
別の一実施形態では、誘導性プロモータは代謝産物によって誘導される。特別な一実施形態では、代謝産物は、ピルビン酸塩、グルタミン、ベータ-ヒドロキシ酪酸塩、乳酸塩、およびセリンからなるグループから選択される。これら代謝産物は免疫細胞活性化の間に生成し、または取り上げられ、それが免疫細胞における代謝の変化につながる。
【0171】
別の一実施形態では、誘導性プロモータは代謝の変化によって誘導される。これは、細胞の代謝状態を意味する。例えばナイーブT細胞がエネルギーを生み出すのに酸化的リン酸化に頼るとき、そしてそれらナイーブT細胞が活性化されたエフェクタT細胞に分化するとき、それらナイーブT細胞は解糖に切り換えてエネルギーを生み出す。低酸素症と低pHも代謝の変化を誘導する(Chang et al., Nat. Immunol 17:364-368(2016);McNamee et al., Immunol. Res. 55: 58-70(2013))。
【0172】
別の一実施形態では、誘導性プロモータはイオン(特定のイオン濃度など)によって誘導される。一実施形態では、イオンはカリウムまたはカルシウムである。イオンによって誘導される代表的なプロモータの非限定的な例に含まれるのは、IL2、TNFアルファ、およびIFNガンマのプロモータであり、これらはNFATに依存して活性化される。NFATは細胞内カルシウムのレベル上昇によって活性化される。
【0173】
治療用導入遺伝子
【0174】
本発明は、免疫細胞の中で治療用導入遺伝子を発現させるための組成物に関する。治療用導入遺伝子は、治療用タンパク質または治療用核酸をコードするヌクレオチド(例えばDNA、またはその修飾された形態)の配列である。治療用タンパク質または治療用核酸は、免疫細胞によって発現されたとき、疾患または障害の治療に使用される。治療用タンパク質として、RNA、ペプチド、またはポリペプチドが可能である。
【0175】
導入遺伝子は、例えばcDNA、遺伝子、miRNA、またはlncRNAなどをコードできることがわかる。それに加え、導入遺伝子として、多シストロン性メッセージ、すなわちアレイ状のcDNAまたはアレイ状のmiRNAが可能である。1つの代表的な多シストロン性導入遺伝子はTCR鎖である。多シストロン性メッセージを免疫細胞の中で操作して同じ内在性プロモータの制御下で複数の導入遺伝子を発現させることができる。したがって3つの選択された遺伝子座で3つの二シストロン性導入遺伝子をノックアウトすることにより、操作された免疫細胞の中で6つの遺伝子産物を発現させることができる可能性がある。したがって1個の免疫細胞の中で多数の導入遺伝子(望みに応じて1、2、3、4、5、6個など)を、それぞれを別々の内在性プロモータの制御下で、またはいくつかの導入遺伝子(すなわち多シストロン性導入遺伝子)を同じ内在性プロモータの制御下で発現させることができる。これら複数の導入遺伝子は、独立に、構成的プロモータまたは誘導性プロモータの制御下に置くことができる。したがって構成的プロモータおよび/または誘導性プロモータの組み合わせを免疫細胞の中で用いて同じ細胞内で複数の導入遺伝子を発現させることができる。
【0176】
一実施形態では、導入遺伝子は多シストロン性(例えば二シストロン性)である。一実施形態では、導入遺伝子は多シストロン性であって2つ以上の治療用タンパク質または治療用RNAをコードしており、その両方の発現は免疫細胞の同じ内在性プロモータの制御下にある。特別な一実施形態では、導入遺伝子は二シストロン性であって2つの治療用タンパク質(例えばscFv)をコードしており、scFvの発現は両方とも免疫細胞の同じ内在性プロモータの制御下にある。
【0177】
キメラ抗原受容体(CAR)
【0178】
一実施形態では、本発明のDsg2結合分子はキメラ抗原受容体(CAR)を含む。いくつかの実施形態では、CARは、Dsg2に結合する抗原結合ドメインを含む。
【0179】
さまざまな実施形態では、CARとして任意のCAR分子が可能であり、その非限定的な例に含まれるのは、「第1世代」、「第2世代」、「第3世代」、「第4世代」、または「第5世代」のCARである(例えばSadelain et al., Cancer Discov. 3(4):388-398(2013);Jensen et al., Immunol. Rev. 257:127-133(2014);Sharpe et al., Dis. Model Mech. 8(4):337-350(2015);Brentjenset al., Clin. Cancer Res. 13:5426-5435(2007);Gade et al., Cancer Res. 65:9080-9088(2005);Maher et al., Nat. Biotechnol. 20:70-75(2002);Kershaw et al., J. Immunol. 173:2143-2150(2004);Sadelain et al., Curr. Opin. Immunol.(2009);Hollyman et al., J. Immunother. 32:169-180(2009)を参照されたい)。
【0180】
本発明で利用するための「第1世代」CARは、T細胞受容体鎖の細胞質/細胞内ドメインに融合された膜貫通ドメインに融合されたDsg2結合ドメイン(例えば一本鎖可変断片(scFv))を含む。「第1世代」CARは、典型的には、内在性T細胞受容体(TCR)からのシグナルの主要なトランスミッタであるCD3ζ鎖からの細胞内ドメインを持つ。「第1世代」CARは新たな抗原認識を提供し、HLAを媒介とする抗原提示とは独立に、CD4+とCD8+ T細胞の両方を、単一の融合分子内のそれらのCD3ζ鎖シグナル伝達ドメインを通じて活性化させることができる。
【0181】
本発明で使用するための「第2世代」CARは、T細胞を活性化させることのできる細胞内シグナル伝達ドメインに融合したDsg2結合ドメイン(例えば一本鎖可変断片(scFv))と、T細胞の効力とパーシスタンスを増大させる設計の共刺激ドメインを含む(Sadelain et al., Cancer Discov. 3:388-398(2013))。したがってCARの設計では抗原認識をシグナル伝達と組み合わせることができる。これらは、2つの別々の複合体、すなわちTCRヘテロ二量体とCD3複合体によって生理学的に担われる2つの機能である。「第2世代」CARは、細胞に追加シグナルを提供するため、このCARの細胞質尾部にさまざまな共刺激分子からの細胞内ドメイン(例えばCD28、4-1BB、ICOS、OX40など)を含む。
【0182】
「第2世代」CARは、例えばCD28ドメインまたは4-1BBドメインによる共刺激と、例えばCD3ζシグナル伝達ドメインによる活性化の両方を提供する。前臨床試験は、「第2世代」CARがT細胞の抗腫瘍活性を改善できることを示した。例えば「第2世代」CARで改変したT細胞のロバストな有効性が、慢性リンパ球芽性白血病(CLL)と急性リンパ球芽性白血病(ALL)の患者のCD19分子を標的とする臨床試験において実証された(Davila et al., Oncoimmunol. 1(9):1577-1583(2012))。
【0183】
「第3世代」CARは、例えばCD28ドメインと4-1BBドメインの両方を含むことによる多重共刺激と、例えばCD3ζ活性化ドメインを含むことによる活性化を提供する。
【0184】
「第4世代」CARは、例えばCD28ドメインまたは4-1BBドメインによる共刺激と、例えば構成的または誘導性のケモカイン成分に加えてCD3ζシグナル伝達ドメインによる活性化を提供する。
【0185】
「第5世代」CARは、例えばCD28ドメインまたは4-1BBドメインによる共刺激と、例えばCD3ζシグナル伝達ドメイン、構成的または誘導性のケモカイン成分、およびサイトカイン受容体(例えばIL-2Rβ)の細胞内ドメインによる活性化を提供する。
【0186】
さまざまな実施形態では、CARを多価CAR系(例えばDualCARまたは「タンデムCAR」系)に含めることができる。多価CAR系には、複数のCARを含む系または細胞と、2つ以上の抗原を標的とする2価/二重特異性CARを含む系または細胞が含まれる。
【0187】
本明細書に開示されている実施形態では、上述のように、CARは一般に、Dsg2抗原結合ドメイン、膜貫通ドメイン、および細胞内ドメインを含む。特別な非限定的な一実施形態では、Dsg2結合ドメインはscFvである。
【0188】
本明細書に開示されているように、本発明の方法は、CARを発現するように操作された細胞を投与することを含む。CARの細胞外抗原結合ドメインは通常はモノクローナル抗体(mAb)に由来するか、受容体またはそのリガンドに由来する。
【0189】
Dsg2に向かうCARは、CARを設計するための周知の方法(本明細書に記載されている方法が含まれる)を利用して生成させることができる。CARは、第1、第2、第3、第4、または第5世代CARのどれであれ、抗原結合ドメインまたはDsg2結合分子(Dsg2-scFv抗体など)を免疫細胞シグナル伝達ドメイン(T細胞受容体細胞質/細胞内ドメインなど)に融合させることによって容易に設計することができる。上述のように、CARは一般に、T細胞の中で細胞シグナル伝達活性を持つ細胞内ドメインに融合された膜貫通ドメインに融合した細胞外ドメインの少なくとも一部として、抗原結合活性を有する細胞表面受容体の構造(scFvなど)を持つ。CARは、本明細書に記載されているように、共刺激分子を含むことができる。当業者は、T細胞における望ましいシグナル伝達能力を提供するため、適切な膜貫通ドメイン(例えば本明細書に記載されているものと、本分野で知られているもの)と細胞内ドメインを容易に選択することができる。
【0190】
一実施形態では、本発明のCARの抗原結合ドメインまたはDsg2結合分子は、抗体またはその断片を含む。抗体は、免疫グロブリン(例えばIgG)として発現させること、または二重特異性T細胞エンゲージャ(BiTE)、ディアボディ、二重親和性再ターゲティング抗体(DART)、Fab、F(ab’)、一本鎖可変断片(scFv)、ナノボディ、二重特異性抗体などとして発現させることができる。
【0191】
いくつかの実施形態では、抗原結合ドメインまたはDsg2結合分子として、scFvまたはFab、または抗体の適切な任意の抗原結合断片が可能である(Sadelain et al., Cancer Discov. 3:38-398(2013)参照)。抗原(がん抗原など)に結合する多くの抗体、または抗体由来の抗原結合ドメインが、本分野で知られている。あるいはそのような抗体または抗原結合ドメインは、定型的な方法によって生成させることができる。抗体を生成させる方法は本分野で周知であり、方法に含まれるのは、モノクローナル抗体を産生させる方法、またはライブラリをスクリーニングして抗原結合ポリペプチドを取得する方法(ヒトFabのライブラリのスクリーニングが含まれる)である(Winter and Harris, Immunol. Today 14:243-246(1993);Ward et al., Nature 341:544-546(1989);Harlow and Lane, Antibodies: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press(1988);Hilyard et al., Protein Engineering: A practical approach(IRL Press 1992);Borrabeck, Antibody Engineering, 2nd ed.(Oxford University Press 1995);Huse et al., Science 246:1275-1281(1989))。CARのための抗体由来の抗原結合ドメインとして、望みに応じ、ヒト、ヒト化、キメラ、CDRグラフトなどが可能である。例えばマウスモノクローナル抗体がCARの抗原結合ドメインを生成させるための元になる抗体である場合には、そのような抗体は、マウス抗体のCDRをヒトフレームワークにグラフトすることによってヒト化することができ(Borrabeck、上記文献、1995参照)、それはCARをヒト対象に投与するのに有益である可能性がある。好ましい一実施形態では、抗原結合ドメインはscFvである。scFvの生成は本分野で周知である(例えばHuston, et al., Proc. Nat. Acad. Sci. USA 85:5879-5883(1988);Ahmad et al., Clin. Dev. Immunol. 2012: ID980250(2012);アメリカ合衆国特許第5,091,513号、第5,132,405号、および第4,956,778号;およびアメリカ合衆国特許出願公開第20050196754号と第20050196754号を参照されたい)。
【0192】
本明細書に開示されているように、Dsg2に結合する抗体の生成とスクリーニングでは、CARにおいて特に有用なDsg2に結合するscFvの生成を含め、周知の方法を用いることができる。
【0193】
一実施形態では、本発明は、Dsg2指向性CAR分子またはその断片を含む組成物に関する。一実施形態では、Dsg2指向性CAR分子またはその断片は、配列番号2の重鎖(HC)CDR1配列、配列番号4のHC CDR2配列、配列番号6のHC CDR3配列、配列番号10の軽鎖(LC)CDR1配列、配列番号12のLC CDR2配列、および配列番号14のLC CDR3配列のうちの1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、または全6つを含む。一実施形態では、Dsg2指向性CAR分子またはその断片は、配列番号18の重鎖(HC)CDR1配列、配列番号20のHC CDR2配列、配列番号22のHC CDR3配列、配列番号26の軽鎖(LC)CDR1配列、配列番号28のLC CDR2配列、および配列番号30のLC CDR3配列のうちの1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、または全6つを含む。
【0194】
一実施形態では、Dsg2指向性CAR分子またはその断片は、配列番号8に示されている配列を持つ重鎖可変領域、またはその断片またはバリアントを含む。一実施形態では、Dsg2指向性CAR分子またはその断片は、配列番号16に示されている配列を持つ軽鎖可変領域、またはその断片またはバリアントを含む。一実施形態では、Dsg2指向性CAR分子またはその断片は、配列番号8の重鎖可変領域配列、またはその断片またはバリアントと、配列番号16の軽鎖可変領域配列、またはその断片またはバリアントを含む。
【0195】
一実施形態では、Dsg2指向性CAR分子またはその断片は、配列番号24に示されている配列を持つ重鎖可変領域、またはその断片またはバリアントを含む。一実施形態では、Dsg2指向性CAR分子またはその断片は、配列番号32に示されている配列を持つ軽鎖可変領域、またはその断片またはバリアントを含む。一実施形態では、Dsg2指向性CAR分子またはその断片は、配列番号24の重鎖可変領域配列、またはその断片またはバリアントと、配列番号32の軽鎖可変領域配列、またはその断片またはバリアントを含む。
【0196】
一実施形態では、本発明は、Dsg2指向性CAR分子またはその断片をコードする核酸分子に関する。一実施形態では、Dsg2指向性CAR分子またはその断片をコードする核酸分子は、配列番号2の重鎖(HC)CDR1配列、配列番号4のHC CDR2配列、配列番号6のHC CDR3配列、配列番号10の軽鎖(LC)CDR1配列、配列番号12のLC CDR2配列、および配列番号14のLC CDR3配列のうちの1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、または全6つをコードする。一実施形態では、Dsg2指向性CAR分子またはその断片をコードする核酸分子は、配列番号1の配列をコードする重鎖(HC)CDR1、配列番号3の配列をコードするHC CDR2、配列番号5の配列をコードするHC CDR3、配列番号9の配列をコードする軽鎖(LC)CDR1、配列番号11の配列をコードするLC CDR2、および配列番号13の配列をコードするLC CDR3のうちの1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、または全6つを含む。
【0197】
一実施形態では、Dsg2指向性CAR分子またはその断片をコードする核酸分子は、配列番号18の重鎖(HC)CDR1配列、配列番号20のHC CDR2配列、配列番号22のHC CDR3配列、配列番号26の軽鎖(LC)CDR1配列、配列番号28のLC CDR2配列、および配列番号30のLC CDR3配列のうちの1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、または全6つをコードする。一実施形態では、Dsg2指向性CAR分子またはその断片をコードする核酸分子は、配列番号17の配列をコードする重鎖(HC)CDR1、配列番号19の配列をコードするHC CDR2、配列番号21の配列をコードするHC CDR3、配列番号25の配列をコードする軽鎖(LC)CDR1、配列番号27の配列をコードするLC CDR2、および配列番号29の配列をコードするLC CDR3のうちの1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、または全6つを含む。
【0198】
上述のように、CARは、そのCARを発現している免疫細胞の中で機能するシグナル伝達ドメインも含有する。このようなシグナル伝達ドメインは例えばCD3ζまたはFc受容体γに由来することができる(Sadelain et al., Cancer Discov. 3:288-298(2013)参照。一般に、シグナル伝達ドメインは、形質導入された免疫細胞またはその前駆細胞においてパーシスタンス機能、移動機能、および/またはエフェクタ機能を誘導するであろう(Sharpe et al., Dis. Model Mech. 8:337-350(2015);Finney et al., J. Immunol. 161:2791-2797(1998);Krause et al., J. Exp. Med. 188:619-626(1998))。CD3ζまたはFc受容体γの場合には、シグナル伝達ドメインは、各ポリペプチドの細胞内ドメイン、またはシグナル伝達に十分な細胞内ドメインの断片に対応する。代表的なシグナル伝達ドメインは下により詳細に記載されている。
【0199】
一実施形態では、CAR分子は、配列番号34に示されている配列、またはその断片またはバリアントを含む。一実施形態では、CAR分子は、配列番号36に示されている配列、またはその断片またはバリアントを含む。
【0200】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載されているCAR分子のバリアントは、配列番号34または配列番号36のアミノ酸配列の全長で少なくとも約60%一致する、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれよりも多く一致する。
【0201】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載されているCAR分子のバリアントは、配列番号34または配列番号36の完全長アミノ酸配列の少なくとも約60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%を含む。
【0202】
一実施形態では、CAR分子をコードする核酸分子は、配列番号34に示されている配列、またはその断片またはバリアントをコードする。一実施形態では、CAR分子をコードする核酸分子は、配列番号36に示されている配列、またはその断片またはバリアントをコードする。
【0203】
一実施形態では、CAR分子をコードする核酸分子は、配列番号33に示されているヌクレオチド配列、またはその断片またはバリアントを含む。一実施形態では、CAR分子をコードする核酸分子は、配列番号35に示されているヌクレオチド配列、またはその断片またはバリアントを含む。
【0204】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載されているCAR分子をコードするヌクレオチド配列のバリアントは、配列番号33または配列番号35のヌクレオチド配列の全長で少なくとも約60%一致する、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれよりも多く一致する。
【0205】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載されているCAR分子をコードするヌクレオチド配列のバリアントは、配列番号33または配列番号35の完全長ヌクレオチド配列の少なくとも約60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%を含む。
【0206】
CD3ζ
【0207】
非限定的な一実施形態では、CARは、CD3ζポリペプチドに由来するシグナル伝達ドメイン(例えば免疫細胞を活性化させるか刺激することのできるCD3ζの細胞内ドメインに由来するシグナル伝達ドメイン)を含むことができる。CD3ζは免疫-受容体-チロシンに基づく3つの活性化モチーフ(ITAM)を含んでおり、抗原が結合した後に活性化シグナルを細胞(例えばリンパ系の細胞(T細胞など))に伝達する。「CD3ζ核酸分子」は、CD3ζポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを意味すると理解される。
【0208】
ある非限定的な実施形態では、CARの細胞内ドメインは少なくとも1つの共刺激シグナル伝達ドメインをさらに含むことができる。このような共刺激シグナル伝達ドメインは免疫細胞の活性化を増大させることができる。共刺激シグナル伝達ドメインは、CD28ポリペプチド、4-1BBポリペプチド、OX40ポリペプチド、ICOSポリペプチド、DAP10ポリペプチド、2B4ポリペプチドなどに由来することができる。いくつかの実施形態では、CARの細胞内ドメインは、本明細書に開示されているように、2つの共刺激分子(CD28と4-1BB、またはCD28とOX40など)、または共刺激リガンドの他の組み合わせを含む共刺激シグナル伝達領域を含むことができる。
【0209】
シグナルペプチド
【0210】
いくつかの実施形態では、CARの抗原結合ドメインは、新生タンパク質が小胞体の中に入ってその後細胞表面に移動するのを指示するリーダーまたはシグナルペプチドに融合させることができる。シグナルペプチドを含有するポリペプチドが細胞表面で発現すると、そのシグナルペプチドは一般に、小胞体の中で処理されている間にタンパク質分解によって細胞表面に移動すると理解されている。したがっていくつかの実施形態では、ポリペプチド(CARなど)はシグナルペプチドを欠く成熟タンパク質として細胞表面に発現するのに対し、ポリペプチドの前駆体形態はシグナルペプチドを含む。シグナル配列またはリーダーは、新たに合成されたタンパク質のN末端に一般に存在していてそのタンパク質が分泌経路に入るのを指示するペプチド配列である。シグナルペプチドはCARの細胞外抗原結合ドメインのN末端に融合タンパク質として共有結合する。本分野で周知のように、適切な任意のシグナルペプチドをCARに適用し、免疫細胞において細胞表面で発現させる(Gierasch Biochem. 28:923-930(1989);von Heijne, J. Mol. Biol. 184(1):99-105(1985)参照)。代表的なシグナルペプチドは、免疫細胞の中で自然に発現する細胞表面タンパク質に由来することができ、その中には本明細書に開示されているポリペプチドのシグナルペプチドが含まれる。したがって適切な任意のシグナルペプチドを用いてCARを免疫細胞の細胞表面で発現させることができる。
【0211】
一実施形態では、CAR分子は[[]]を含む。
【0212】
リンカー
【0213】
ある非限定的な実施形態では、CARの抗原結合ドメインは、この抗原結合ドメインの重鎖可変領域と軽鎖可変領域を接続するリンカー配列またはペプチドリンカーを含むことができる。ある非限定的な実施形態では、CARは、CARのドメインを互いに連結するスペーサの領域または配列も含むことができる。例えばスペーサは、シグナルペプチドと抗原結合ドメインの間、抗原結合ドメインと膜貫通ドメインの間、膜貫通ドメインと細胞内ドメインの間、および/または細胞内ドメイン内のドメインの間(例えば刺激ドメインと共刺激ドメインの間)に含めることができる。スペーサ領域は、さまざまなドメインが他のポリペプチドと相互作用することを可能にする(例えば抗原認識を容易にするため抗原結合ドメインが方向の柔軟性を持つことを可能にする)のに十分な柔軟性を持つことができる。スペーサ領域として、例えばIgGからのヒンジ領域、免疫グロブリンのCH2CH3(定常)領域、および/またはCD3(分化のクラスター3)の一部、またはスペーサとして適した何らかの他の配列が可能である。
【0214】
いくつかの実施形態では、CARの膜貫通ドメインは、膜の少なくとも一部に広がる疎水性アルファヘリックスを含む。膜貫通ドメインが異なると、受容体の安定性が異なる結果になる。受容体は、抗原を認識した後、クラスターを形成してシグナルが細胞に伝達される。一実施形態では、CARの膜貫通ドメインは、免疫細胞の中で自然に発現する別のポリペプチドに由来することができる。一実施形態では、CARは、CD8、CD28、CD3、CD4、4-1BB、OX40、ICOS、CTLA-4、PD-1、LAG-3、2B4、BTLA、または膜貫通ドメインを持つ免疫細胞の中で発現する他のポリペプチドに由来する膜貫通ドメインを持つことができ、その中には本明細書に開示されている他のもの、または本分野で周知のものが含まれる。場合により、膜貫通ドメインは、免疫細胞の中で天然状態では発現しないポリペプチドに由来することができるが、膜貫通ドメインが、CARに結合した抗原から細胞内シグナル伝達ドメインおよび/または共刺激ドメインへとシグナルを伝達するように機能できることが条件である。ポリペプチドのうちでポリペプチドの膜貫通ドメインを含む部分は、望みに応じ、そのポリペプチドからの追加配列(例えば膜貫通ドメインのN末端またはC末端に隣接する追加配列)またはポリペプチドの他の領域を含むことができることがわかる。
【0215】
本明細書に記載されているポリペプチドのドメインは、望む機能(シグナルペプチド、抗原結合ドメイン、膜貫通ドメイン、細胞内シグナル伝達ドメイン、および/または共刺激ドメインなど)を提供するのに有用であるため、がん抗原CARで使用できることがわかる。例えば望みに応じて本発明のCARに特別な機能を提供するため、シグナルペプチド、膜貫通ドメイン、細胞内シグナル伝達ドメイン、または他のドメインなどのドメインを選択することができる。可能で望ましい機能の非限定的な例に含めることができるのは、シグナルペプチド、および/または膜貫通ドメインの提供である。
【0216】
キメラ共刺激受容体(CCR)
【0217】
いくつかの実施形態では、本発明によりキメラ共刺激受容体(CCR)が提供される。キメラ共刺激受容体(CCR)は、CARと同様、抗原結合細胞外ドメイン、膜貫通ドメイン、および細胞内シグナル伝達ドメインを含むキメラ受容体である(Sadelain et al., Cancer Discov. 3(4):388-398(2013))。CCRはT細胞活性化ドメインを持たないが、共刺激ドメインは確かに含んでおり、それはCARのための上記の共刺激ドメイン(例えばCD28、4-1BB、OX40、ICOS、DAP10、2B4、CD70など)の1つである。CCRをT細胞受容体またはCARと組み合わせて用い、二重抗原を発現しているT細胞に対するT細胞の反応性を増強することができる(Sadelain et al.、上記文献、2013)。CCRは選択的な腫瘍ターゲティングを増強するのにも使用できる(Sadelain et al.、上記文献、2013)。CCRは抗原特異的共刺激受容体であり、対応する結合パートナー、すなわち標的抗原に結合すると(CCRの共刺激ドメインに依存して)4-1BB、OX40、ICOS、またはCD70の効果を模倣する。
【0218】
ドミナントネガティブiCAR
【0219】
一実施形態では、本発明のDsg2結合分子は、本発明のT細胞の活性化を刺激または維持するドミナントネガティブ分子を含む。代表的なドミナントネガティブ分子の非限定的な例に含まれるのは、抑制性キメラ抗原受容体(iCAR)、(例えばTGFベータ、IL10のための)分泌可能な可溶性サイトカイン受容体、(例えばPD1、CTLA4、LAG3、またはTIM-3に由来する)分泌可能な可溶性T細胞抑制性受容体などである。いくつかの実施形態では、iCARは、抑制性T細胞受容体(PD1、CTL4など)に由来する細胞内シグナル伝達ドメインに融合されたDsg2結合分子(例えばDsg2-scFv)からなる細胞表面受容体である。操作されたT細胞は、標的細胞と相互作用すると阻害される。
【0220】
遺伝子回路
【0221】
一実施形態では、本発明のDsg2結合分子、CAR、またはCCRは、遺伝子回路の中に組み込まれる。遺伝子回路は、機能的に関連した遺伝子発現ユニットのセットである。
【0222】
一実施形態では、遺伝子回路は、細胞表面リガンド特異的合成転写因子(TF)を発現する構成的転写ユニットを含んでおり、リガンドが結合するとTF部分が放出されて核に移動する。その後TFは核の中の対応するコグネイトDNA配列に結合し、その配列が遺伝子発現を活性化させる。一実施形態では、細胞表面リガンド特異的合成転写因子(TF)はDsg2への結合に特異的である。
【0223】
本発明のDsg2結合分子、CAR、またはCCRに組み込むことのできる遺伝子回路の非限定的な例に含まれるのは、SynNotch回路、NFAT回路、およびHIFlアルファ回路である。
【0224】
別の一実施形態では、本発明のDsg2結合分子、CAR、またはCCRは、論理ゲート型の系に組み込むことができる。本発明のDsg2結合分子、CAR、またはCCRを含むことのできる論理ゲート型CAR系は、国際特許出願公開WO2015075469A1(その全体が参照によって本明細書に組み込まれている)に記載されている。
【0225】
融合分子
【0226】
一実施形態では、Dsg2結合分子は他のタンパク質、核酸分子、または小分子に接合されて融合分子が調製される。これは例えばN末端またはC末端融合タンパク質の合成によって実現できるが、得られた融合タンパク質が本明細書に記載されているDsg2に結合する機能を保持していることが条件である。本発明のペプチドまたはタンパク質を含んでいて少なくとも1つの他の分子に接合されたN末端またはC末端の融合タンパク質は、ペプチドまたはタンパク質のN末端またはC末端と、望む生物学的機能を持つ選択されたタンパク質または選択マーカーの配列を組み換え技術を通じて融合させることによって調製することができる。得られた融合タンパク質は、本明細書に記載されている選択されたタンパク質またはマーカータンパク質に融合された本発明のペプチドを含有する。
【0227】
本発明はさらに融合タンパク質を包含しており、融合タンパク質を生成させるため、本発明のタンパク質またはその断片が、異種タンパク質(すなわち無関係なタンパク質またはその一部、例えばそのポリペプチドの少なくとも10個、少なくとも20個、少なくとも30個、少なくとも40個、少なくとも50個、少なくとも60個、少なくとも70個、少なくとも80個、少なくとも90個、または少なくとも100個のアミノ酸)に組み換えで融合されるか化学的に接合される(共有結合と非共有結合の両方が含まれる)。融合は必ずしも直接的でなくてもよいが、リンカー配列を通じて起こることができる。
【0228】
したがっていくつかの実施形態では、本発明は、1つ以上の治療用分子に融合された本発明のDsg2結合分子を含む融合分子を含む。一実施形態では、本発明の融合分子は、本発明のDsg2結合分子を含む抗体-薬複合体である。一実施形態では、治療用分子はがんを治療するための薬剤を含む。
【0229】
利用法
【0230】
いくつかの実施形態では、本発明のDsg2結合分子(例えば抗体など)は、塩、化合物、および他のポリペプチドの複合混合物の中のDsg2を検出してそのDsg2に結合する大きな能力を示す。当業者は、本明細書に記載されているDsg2結合分子(例えば抗体など)がさまざまな手続きと方法において有用であることがわかるであろう。手続きと方法の非限定的な例に含まれるのは、免疫クロマトグラフィアッセイ、イムノドットアッセイ、Luminexアッセイ、ELISAアッセイ、ELISPOTアッセイ、タンパク質マイクロアレイアッセイ、ウエスタンブロットアッセイ、質量分光測色アッセイ、ラジオイムノアッセイ(RIA)、放射免疫拡散アッセイ、液体クロマトグラフィ-タンデム質量分析アッセイ、オクタロニー免疫拡散アッセイ、逆相タンパク質マイクロアレイ、ロケット免疫電気泳動アッセイ、免疫染色アッセイ、免疫沈降アッセイ、補体固定アッセイ、FACS、タンパク質チップアッセイ、分離と精製のプロセス、およびアフィニティクロマトグラフィである(2007, Van Emon, Immunoassay and Other Bioanalytical Techniques, CRC Press;2005, Wild, Immunoassay Handbook, Gulf Professional Publishing;1996, Diamandis and Christopoulos, Immunoassay, Academic Press;2005, Joos, Microarrays in Clinical Diagnosis, Humana Press;2005, Hamdan and Righetti, Proteomics Today, John Wiley and Sons; 2007も参照されたい)。
【0231】
いくつかの実施形態では、本発明は、本発明のDsg2結合分子、または本発明のDsg2結合分子をコードする核酸分子を対象に投与する方法に関する。一実施形態では、本発明のDsg2結合分子は、がんを診断または治療するため対象に投与される。
【0232】
以下が、開示されている方法と組成物によって診断または治療することのできるがんの非限定的な例である:急性リンパ芽球白血病、急性骨髄性白血病、副腎皮質癌、虫垂がん、基底細胞癌、胆管がん、膀胱がん、骨がん、脳と脊髄の腫瘍、脳幹神経膠腫、脳腫瘍、乳がん、気管支腫瘍、バーキットリンパ腫、カルチノイド腫瘍、中枢神経系非定型奇形腫/ラブドイド腫瘍、中枢神経系胎児性腫瘍、中枢神経系リンパ腫、小脳星細胞腫、大脳星細胞腫/悪性神経膠腫、大脳星細胞腫/悪性神経膠腫、子宮頸がん、小児視路腫瘍、脊索腫、慢性リンパ性白血病、慢性骨髄性白血病、慢性骨髄増殖性疾患、大腸がん、結腸直腸がん、頭蓋咽頭腫、皮膚がん、皮膚T細胞リンパ腫、子宮内膜がん、上衣芽腫、上衣腫、食道がん、ユーイングファミリーの腫瘍、頭蓋外がん、性線外胚細胞腫瘍、肝外胆管がん、肝外がん、目がん、菌状息肉症、胆嚢がん、胃の(胃)がん、消化管がん、消化管カルチノイド腫瘍、消化管間質腫瘍(ジスト)、胚細胞腫瘍、妊娠がん、妊娠性トロホブラスト腫瘍、膠芽腫、神経膠腫、有毛細胞白血病、頭頸部がん、肝細胞(肝臓)がん、組織球症、ホジキンリンパ腫、下咽頭がん、視床下部視神経神経膠腫、視床下部腫瘍、眼内(目)がん、眼内黒色腫、膵島細胞腫瘍、カポジ肉腫、腎臓(腎細胞)がん、ランゲルハンス細胞がん、ランゲルハンス細胞組織球症、咽頭がん、白血病、唇と口腔のがん、肝臓がん、肺がん、リンパ腫、マクログロブリン血症、骨の悪性線維性組織球腫と骨肉腫、髄芽腫、髄上皮腫、黒色腫、メルケル細胞癌、中皮腫、原発不明の転移性頸部扁平上皮がん、口がん、多発性内分泌腫瘍症症候群、多発性骨髄腫、真菌症、骨髄異形成症候群、骨髄異形成/骨髄増殖性疾患、骨髄性白血病、骨髄性白血病、骨髄腫、骨髄増殖性疾患、鼻腔と副鼻腔のがん、鼻咽頭がん、神経芽腫、非ホジキンリンパ腫、非小細胞肺がん、口がん、口腔がん、口腔咽頭がん、骨肉腫と悪性線維性組織球腫、骨肉腫と骨の悪性線維性組織球腫、卵巣の、卵巣がん、卵巣上皮がん、卵巣胚細胞腫瘍、卵巣低悪性度腫瘍、膵臓がん、乳頭腫症、傍神経節腫、副甲状腺がん、陰茎がん、咽頭がん、褐色細胞腫、中分化型の松果体実質腫瘍、松果体芽腫瘍とテント上原始神経外胚腫瘍、下垂体腫瘍、形質細胞新生物、形質細胞新生物/多発性骨髄腫、胸膜肺芽腫、原発性中枢神経系がん、原発性中枢神経系リンパ腫、前立腺がん、直腸がん、腎細胞(腎臓)がん、腎盂と尿管のがん、染色体15上のnut遺伝子が関与する気道癌、網膜芽細胞腫、横紋筋肉腫、唾液腺がん、肉腫、セザリー症候群、皮膚がん(黒色腫)、皮膚がん(非黒色腫)、皮膚癌、小細胞肺がん、小腸がん、軟組織がん、軟組織肉腫、扁平上皮癌、頸部扁平上皮がん、胃(胃の)がん、テント上原始神経外胚腫瘍、テント上原始神経外胚腫瘍と松果体芽腫瘍、T細胞リンパ腫、精巣がん、喉がん、胸腺腫と胸腺癌、甲状腺がん、移行上皮がん、腎盂と尿管の移行上皮がん、トロホブラスト腫瘍、尿道がん、子宮がん、子宮肉腫、膣がん、視神経視床下部神経膠腫、陰門がん、ワルデンシュトレームマクログロブリン血症、およびウィルムス腫瘍。
【0233】
本発明は、免疫療法を必要とする対象をそのような療法で治療する方法にも関する。いくつかの実施形態では、免疫療法は免疫応答を促進する。いくつかの実施形態では、治療される対象はがんまたは前がんを持っている可能性があり、本発明の組み換え免疫細胞の投与によってがんを治療するかがんの進行を阻止する。免疫細胞は、組み換え発現しているDsg2結合分子(例えばCARまたは抗体)のおかげでがんを標的とすることができる。いくつかの実施形態では、腫瘍細胞の表面に発現したDsg2にCARが結合するため、本発明の組み換え免疫細胞の投与でがんが治療される。一実施形態では、組み換え免疫細胞はT細胞である。T細胞として、本明細書に開示されているように、CD8+、CD4+、TSCM、TCM、エフェクタメモリT細胞、エフェクタT細胞、Th1細胞、Th2細胞、Th9細胞、Th17細胞、Th22細胞、Tfh(濾胞性ヘルパー)細胞、または他のT細胞が可能である。
【0234】
がんを治療する方法は、がんに伴う徴候または症状を改善するあらゆる効果を含むことができると理解されている。そのような徴候または症状の非限定的な例に含まれるのは、がん細胞の数の減少、腫瘍量の減少(腫瘍の増殖阻害を含む)、腫瘍の増殖速度の低下、腫瘍のサイズ減少、腫瘍の数の減少、腫瘍の排除であり、これらのすべてを本分野で周知の定型的な腫瘍イメージング技術を利用して測定することができる。がんに伴う他の徴候または症状の非限定的な例に含まれるのは、疲労、疼痛、体重減少、およびさまざまながんに伴う他の徴候または症状である。したがって本発明の細胞の投与により、対象における腫瘍細胞の数を減らすこと、腫瘍のサイズを小さくすること、および/または腫瘍を根絶することができる。腫瘍として血液がんまたは固形腫瘍が可能である。本発明の方法は、がんを持つ対象の生存を増加または延長することもできる。それに加え、本発明の方法は、対象における免疫応答を増大させること、例えばがんに対する免疫応答を増大させることができる。
【0235】
いくつかの実施形態では、本発明の細胞を含む医薬組成物を対象に投与して免疫応答を誘起する。一実施形態では、本発明の細胞を対象(ヒト対象など)に投与してDsg2に対する免疫応答を誘導する。
【0236】
いくつかの実施形態では、がんに固形腫瘍を含めることができる。本発明の細胞を用いて治療するがんは、免疫療法に典型的に応答するがんを含む。代表的なタイプのがんの非限定的な例に含まれるのは、副腎皮質癌(ACC);膀胱尿路上皮癌(BLCA);浸潤性乳癌(BRCA);子宮頸扁平上皮癌と子宮頸腺癌(CESC);胆管癌(CHOL);大腸腺癌(COAD);リンパ系新生物びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBC);食道癌(ESCA);多形膠芽腫(GBM);頭頸部扁平上皮癌(HNSC);嫌色素性腎癌(KICH);腎明細胞癌(KIRC);乳頭状腎細胞癌(KIRP);急性骨髄性白血病(LAML);脳低悪性度神経膠腫(LGG);肝細胞癌(LIHC);肺腺癌(LUAD);肺扁平上皮癌(LUSC);中皮腫(MESO);多発性骨髄腫(MM);卵巣漿液性嚢胞腺癌(OV);膵臓腺癌(PAAD);褐色細胞腫と傍神経節腫(PCPG);前立腺腺癌(PRAD);直腸腺癌(READ);肉腫(SARC);皮膚黒色腫(SKCM);胃腺癌(STAD);精巣胚細胞腫瘍(TGCT);甲状腺癌(THCA);胸腺腫(THYM);子宮内膜癌(UCEC);子宮癌肉腫(UCS);およびブドウ膜黒色腫(UVM)である。
【0237】
治療に関しては、投与される量は、望む効果を生じさせるのに有効な量である。有効な量または治療に有効な量は、治療したときに有利な、または望む臨床結果を提供するのに十分な量である。有効な量は、単回投与または一連の投与(1回以上の投与)で提供することができる。有効な量は、ボーラスで、または連続的灌流によって提供することができる。治療に関しては、有効な量は、疾患の進行を緩和する、改善する、安定させる、逆転させる、または遅延させるのに十分な量、またはそれ以外で疾患の病理学的帰結を軽減する量である。有効な量は、医師が特定の対象について決定することができる。有効な量を実現するため適切な用量を決定するとき、いくつかの因子が典型的には考慮される。これらの因子に含まれるのは、対象の年齢、性別、および体重、治療する状態、状態の重症度、および投与される本発明の細胞の形態と有効濃度である。
【0238】
本発明の細胞は一般に、体重1キログラム当たりの細胞数(細胞/kg)に基づく用量として投与される。一般に、細胞の用量は、投与様式と投与箇所に応じ、体重1kg当たり約10~約1010個の細胞の範囲、例えば約10~約10、約10~約10、約10~約10、または約10~10個である。一般に、全身投与の場合には局所投与よりも多い用量で使用され、本発明の免疫細胞が領域、臓器、または腫瘍に投与される。代表的な用量範囲の非限定的な例に含まれるのは、1×10~1×10、2×10~1×10、3×10~1×10、4×10~1×10、5×10~1×10、6×10~1×10、7×10~1×10、8×10~1×10、9×10~1×10、1×10~1×10個などである。このような用量範囲は、局所投与にとって特に有用である可能性がある。特別な一実施形態では、細胞は、局所投与(例えば胸膜内投与)では1×10~5×10、特に1×10~3×10、または3×10~3×10個/kgの用量で提供される。用量は、単回用量が投与されるか、多数回用量が投与されるかを考慮して調節することもできる。何が有効な用量と考えられるかの厳密な判断は、各対象に固有の因子(上記のように、対象のサイズ、年齢、性別、体重、および個々の対象の状態が含まれる)に基づいてなすことができる。用量は、当業者が本明細書の開示と本分野の知識に基づいて容易に決定することができる。
【0239】
本発明の細胞は、本分野で知られている任意の方法によって投与することができる(方法の非限定的な例に含まれるのは、胸膜投与、静脈内投与、皮下投与、節内投与、腫瘍内投与、髄腔内投与、胸膜内投与、腹腔内投与、頭蓋内投与、および胸腺への直接投与である)。一実施形態では、本発明の細胞は、周知の方法を利用して臓器、腫瘍、または自己免疫疾患の部位、または感染性疾患の部位に局所的に送達することができる。方法の非限定的な例に含まれるのは、肝臓ポンプまたは大動脈ポンプ;四肢、肺、または肝臓への灌流;門脈の中に;静脈シャントを通じて;腫瘍近傍の空洞または静脈の中になどである。別の一実施形態では、本発明の細胞は全身投与することができる。さらに別の一実施形態では、細胞は治療を望む部位(例えば腫瘍の部位)に局所的に投与される。腫瘍の場合には、細胞は、腫瘍の部位に、および/または腫瘍の血管系の中に直接注入することによって腫瘍内に投与することもできる。当業者は、標的組織または標的領域のタイプ、および/または治療する標的組織または標的領域の位置に基づき、適切な投与様式を選択することができる。細胞は注射またはカテーテルによって導入することができる。場合により、生体内での本発明の細胞の産生を増やすため、細胞の投与前、投与中、または投与後に増殖剤および/または分化剤を対象に投与することができる。
【0240】
いくつかの実施形態では、本発明の細胞の増殖は、対象に投与する前に生体外で実施されるか、対象に投与した後に生体内で実施される(Kaiser et al., Cancer Gene Therapy 22:72-78(2015)参照)。
【0241】
本発明の方法はさらに、本発明の細胞を用いた治療の前、最中、または後に組み合わせるアジュバント療法を含むことができる。したがって本発明の細胞療法は、他の標準的なケアおよび/または本発明の細胞の投与に適合した療法とともに利用することができる。
【0242】
医薬組成物
【0243】
いくつかの実施形態では、本発明により、本発明のDsg2結合分子、CAR、または細胞を含む医薬組成物が提供される。一実施形態では、医薬組成物は、本発明のDsg2結合分子、CAR、または細胞の有効量と、医薬として許容可能な基剤を含む。本発明の医薬組成物は、減菌液体調製物(例えば典型的には細胞懸濁液との等張水溶液)にして、または場合により典型的には緩衝されて選択されたpHにされたエマルション、分散液などとして簡便に提供することができる。組成物は、細胞の完全性および生存の保持と、細胞組成物の投与に適した基剤(例えば水、生理食塩水、リン酸塩緩衝化生理食塩水など)を含むことができる。
【0244】
減菌注射溶液は、本発明の組成物とともに望みに応じてさまざまな量の他の成分を適量の適切な溶媒の中に組み込むことによって調製できる。このような組成物は、医薬として許容可能な基剤、希釈剤、または賦形剤(細胞組成物での使用と対象(ヒトなど)への投与に適した減菌水、生理食塩水、グルコース、デキストロースなど)を含むことができる。細胞組成物を提供するための適切なバッファは本分野で周知である。使用されるどの溶剤、希釈剤、または添加剤も、本発明の細胞の完全性および生存の保持に適合している。
【0245】
いくつかの実施形態では、組成物は等張である、すなわち血液と同じ浸透圧を持つ。本発明の細胞組成物の望ましい等張性は、塩化ナトリウム、または医薬として許容可能な他の薬剤(デキストロース、ホウ酸、酒石酸ナトリウム、または他の無機または有機の溶質など)を用いて実現することができる。塩化ナトリウムが、ナトリウムイオンを含有するバッファにとって特に好ましい。1つの特に有用なバッファは生理食塩水(例えば通常の生理食塩水)である。当業者は、組成物の構成成分の選択が、化学的に不活性であるように、そして本発明の細胞の生存または有効性に影響しないように、そして対象(ヒトなど)への投与に適合しているようになされるべきであることを認識しているであろう。当業者は、本発明の方法で投与される組成物の中の細胞の量と、場合により添加剤、溶剤、および/または基剤の量を容易に決定することができる。
【0246】
本発明の組成物は、生理学的に許容可能な任意の溶剤の中に入れて投与することができる。投与に適した用量は本明細書に記載されている。
【0247】
本発明の細胞を含む細胞集団は、細胞の精製された集団を含むことができる。当業者は、本明細書に記載されているように、細胞集団内の細胞の割合を周知のさまざまな方法を利用して容易に求めることができる。本発明の遺伝子改変細胞を含む細胞集団の中の純度の範囲は、約25%~約50%、約30%~約50%、約30%~約40%、約40%~50%、約50%~約55%、約55%~約60%、約65%~約70%、約70%~約75%、約75%~約80%、約80%~約85%;約85%~約90%、約90%~約95%、または約95~約100%が可能である。このような集団は、本明細書に開示されているように本発明の方法で効率的に生成させること、または場合により、本明細書に開示されているように、Dsg2結合分子を発現する遺伝子改変された細胞が豊富であるようにできることがわかる。一実施形態では、Dsg2結合分子はCARを含む。
【0248】
化合物は、動物に1日に数回の頻度で投与すること、またはより少ない頻度で(1日に1回、週に1回、2週間に1回、月に1回など)、またはさらに少ない頻度で(数ヶ月に1回、または1年に1回以下など)投与することができる。投与頻度は当業者には明らかであろうし、任意の数の因子(その非限定的な例は、治療する疾患のタイプと重症度、動物のタイプの年齢などである)に依存するであろう。本明細書に記載されている医薬組成物の製剤は、薬理学の分野で知られているか今後開発される任意の方法によって調製することができる。一般に、このような調製法は、活性成分を基剤または1つ以上の他の補助成分と組み合わせた後、必要な場合または望む場合にはその製品を成形またはパッケージして望む単回用量単位または多回用量単位にする工程を含む。
【0249】
本明細書に示されている医薬組成物の記述はヒトへの倫理的な投与に適した医薬組成物に主に向けられているが、そのような組成物は一般にあらゆる種類の動物への投与に適することを当業者は理解しているであろう。ヒトへの投与に適した医薬組成物を改変してさまざまな動物への投与に適した組成物にすることはよく理解されており、獣医学分野の薬理学の当業者は、そのような改変を設計し、必要な場合には単に通常の実験で実現することができる。本発明の医薬組成物を投与することが考えられる対象の非限定的な例に含まれるのは、ヒトとそれ以外の霊長類、哺乳類であり、その中には、商業的に重要な哺乳類(非ヒト霊長類、ウシ、ブタ、ウマ、ヒツジ、ネコ、およびイヌなど)が含まれる。
【0250】
本発明の方法で有用な医薬組成物は、眼、経口、直腸、膣、非経口、局所、肺、鼻腔内、口内、または別の投与経路に適した製剤として調製すること、パッケージすること、または販売することができる。考慮する他の製剤に含まれるのは、突起ナノ粒子、リポソーム調製物、活性成分を含有する再密封された赤血球、および免疫学に基づく製剤である。
【0251】
本発明の医薬組成物は、バルクで、単一単位用量として、または複数の単一単位用量として調製すること、パッケージすること、または販売することができる。本明細書では、「単位用量」は、所定量の活性成分を含む医薬組成物の離散量である。活性成分の量は一般に、対象に投与することになる活性成分の用量に等しいか、そのような用量の便利な分数(例えば用量の半分または1/3など)である。
【0252】
本発明の医薬組成物の中の活性成分、医薬として許容可能な基剤、および任意の追加成分の相対量は、治療する対象の素性、サイズ、および状態に依存して変化するであろうし、組成物が投与される経路にさらに依存して変化するであろう。例えば組成物は0.1%と100%(w/w)の間の活性成分を含むことができる。
【0253】
本発明の医薬組成物は、活性成分に加え、医薬として活性な1つ以上の追加活性剤をさらに含むことができる。線維症の治療に有用な他の活性成分には、抗炎症剤(コルチコステロイド)と免疫抑制剤が含まれる。
【0254】
本発明の医薬組成物の制御放出製剤または持続放出製剤は従来の技術を利用して作製することができる。
【0255】
本明細書では、医薬組成物の「非経口投与」には、対象の組織を物理的に突破することを特徴とする任意の投与経路と、突破を通じた組織への医薬組成物の投与が含まれる。したがって非経口投与の非限定的な例に含まれるのは、注射による医薬組成物の投与、外科的切開を通じた組成物の適用、組織に侵入する非外科的傷を通じた組成物の適用などである。特に、非経口投与が考えられる非限定的な例に含まれるのは、眼内、硝子体内、皮下、腹腔内、筋肉内、胸骨内への注射、および腎臓透析輸液技術である。。
【0256】
非経口投与に適した医薬組成物の製剤は、活性成分を、医薬として許容可能な基剤(減菌水または減菌等張生理食塩水など)と組み合わせて含む。このような製剤は、ボーラス投与または連続投与に適した形態で調製すること、パッケージすること、または販売することができる。注射可能な製剤は、単位剤型(アンプルなど)、または保存剤を含有する複数回投与容器として調製すること、パッケージすること、または販売することができる。非経口投与のための製剤の非限定的な例に含まれるのは、懸濁液、溶液、油性または水性の溶剤の中のエマルション、ペースト、および埋め込み可能な持続放出製剤または生物分解性製剤である。このような製剤は1つ以上の追加成分をさらに含むことができ、その非限定的な例に含まれるのは、懸濁剤、安定剤、または分散剤である。非経口投与のための製剤の一実施形態では、活性成分は乾燥(すなわち粉末または顆粒)形態で提供され、適切な溶剤(例えば発熱物質を含まない減菌水)を用いて再構成された後、その再構成された組成物が非経口投与される。
【0257】
医薬組成物は、減菌された注射可能な水性または油性の懸濁液または溶液の形態で調製すること、パッケージすること、または販売することができる。この懸濁液または溶液は知られている方法に従って製剤化することと、活性成分に加え、追加成分(本明細書に記載されている分散剤、湿潤剤、または懸濁剤など)を含むことができる。このような注射可能な減菌製剤は、非毒性で非経口が許容される希釈剤または溶媒(例えば水または1,3-ブタンジオールなど)を用いて調製することができる。他の許容可能な希釈剤と溶媒の非限定的な例に含まれるのは、リンゲル液、等張塩化ナトリウム溶液、および不揮発性油(合成モノグリセリドまたはジグリセリドなど)である。有用な他の非経口投与可能な製剤に含まれるのは、微結晶形態の活性成分、リポソーム調製物になった活性成分、または生物分解性ポリマー系の1構成要素としての活性成分を含むものである。持続放出または埋め込みのための組成物は、医薬として許容可能なポリマー材料または疎水性材料(エマルション、イオン交換樹脂、難溶性ポリマー、または難溶性塩など)を含むことができる。
【0258】
本発明の医薬組成物は、口腔を通じた肺投与に適した製剤として調製、パッケージ、または販売することができる。このような製剤は、活性成分を含んでいて約0.5~約7ナノメートル、好ましくは約1~約6ナノメートルの範囲の直径を持つ乾燥粒子を含むことができる。このような組成物は、乾燥粉末リザーバを含む装置(推進剤の流れをリザーバに向けて粉末を分散させる)、または自己推進溶媒/粉末分配容器(密封容器の中の低沸点の推進剤に溶かすか懸濁させた活性成分を含む装置など)を用いて投与するため乾燥粉末の形態であることが便利である。一実施形態では、このような粉末は、粒子の重量の少なくとも98%が0.5ナノメートルよりも大きな直径を持ち、粒子の数の少なくとも95%が7ナノメートル未満の直径を持つ粒子を含むことが好ましい。一実施形態では、粒子の重量の少なくとも95%が1ナノメートルよりも大きな直径を持ち、粒子の数の少なくとも90%が6ナノメートル未満の直径を持つ。いくつかの場合には、乾燥粉末組成物は固体微粉末希釈剤(糖など)を含むことが好ましく、単位剤型にすると提供が便利である。
【0259】
低沸点の推進剤は一般に大気圧で65°F未満の沸点を持つ液体推進剤を含む。一般に推進剤は組成物の50~99.9%(w/w)を占めることができ、活性成分は組成物の0.1~20%(w/w)を占めることができる。推進剤はさらに、追加成分(液体非イオン性または固体アニオン性界面活性剤、または固体希釈剤(いくつかの場合には粒子のサイズが活性成分を含む粒子と同程度である)など)を含むことができる。
【0260】
肺送達のために製剤化された本発明の医薬組成物は、溶液または懸濁液の液滴の形態になった活性成分を提供することもできる。このような製剤は、活性成分を含んでいて場合により減菌された水性または希アルコール性の溶液または懸濁液として調製すること、パッケージすること、または販売することができ、任意の噴霧装置または微粒化装置を用いて簡便に投与することができる。このような製剤はさらに1つ以上の追加成分を含むことができ、その非限定的な例に含まれるのは、香味剤(サッカリンナトリウムなど)、揮発性油、緩衝剤、表面活性剤、または保存剤(ヒドロキシ安息香酸メチルなど)である。一実施形態では、この投与経路によって提供される液滴は約0.1~約200ナノメートルの範囲の平均直径を持つ。
【0261】
肺送達に有用であるとして本明細書に記載されている製剤は、本発明の医薬組成物の鼻腔内送達にも有用である。
【0262】
鼻腔内投与に適した別の製剤は、活性成分を含んでいて約0.2~500マイクロメートルの平均粒径を持つ粗い粉末である。このような製剤は、嗅ぐことにより、すなわち鼻腔の近くに保持した粉末容器から鼻腔を通じて素早く吸入することにより投与される。
【0263】
鼻投与に適した製剤は、例えば、約0.1%(w/w)という少量から多くは100%(w/w)の活性成分と、本明細書に記載されている追加成分の1つ以上をさらに含むことができる。
【0264】
本発明の医薬組成物は、口内投与に適した製剤にして調製、パッケージ、または販売することができる。このような製剤は例えば従来法を利用して製造された錠剤またはロゼンジの形態にすることができて、例えば0.1~20%(w/w)の活性成分を含むことができ、残部は、経口で溶解または分解が可能な組成物と、場合により本明細書に記載されている追加成分の1つ以上を含む。あるいは口内投与に適した製剤は、活性成分を含んでいて粉末またはエアロゾル化または微粒化された溶液または懸濁液を含むことができる。一実施形態では、そのような粉末化、エアロゾル化、またはエアロゾル化された製剤は、分散されるとき、約0.1~約200ナノメートルの範囲の平均粒径または液滴サイズを持ち、本明細書に記載されている追加成分の1つ以上をさらに含むことができる。
【0265】
本明細書では、「追加成分」の非限定的な例に含まれるのは、賦形剤;界面活性剤;分散剤;不活性な希釈剤;顆粒剤と崩壊剤;結合剤;潤滑剤;甘味剤;着香剤;着色剤;保存剤;生理学的に分解する組成物(ゼラチンなど);水性の溶剤と溶媒;油性の溶剤と溶媒;懸濁剤;分散剤または湿潤剤;乳化剤、粘滑剤;バッファ;塩;増粘剤;充填剤;乳化剤;抗酸化剤;抗生剤;抗真菌剤;安定剤;および医薬として許容可能なポリマー材料または疎水性材料のうちの1つ以上である。本発明の医薬組成物に含めることのできる他の「追加成分」は本分野で知られており、例えばRemington’s Pharmaceutical Sciences(1985, Genaro, ed., Mack Publishing Co.、イーストン、ペンシルヴェニア州)に記載されている(この文献は参照によって本明細書に組み込まれている)。
【0266】
キット
【0267】
本発明により本発明の組成物を含むキットも提供される。一実施形態では、キットは、1つ以上の容器の中に、本発明の遺伝子操作された免疫細胞を生成させるための1つ以上のベクターを含む。一実施形態では、ベクターはCARを含む。一実施形態では、キットを使用して、対象に由来する自家細胞から、または適合した対象に投与される非自家細胞から、遺伝子操作された免疫細胞を生成させることができる。別の一実施形態では、キットは、対象に自家投与または非自家投与するための本発明の細胞を含むことができる。特別な実施形態では、キットは1つ以上の容器の中に本発明の免疫細胞を含む。
【0268】
がん療法
【0269】
本発明の組成物は、ヒトと動物におけるがんを予防する、軽減する、最少にする、制御する、および/または小さくするのに用いることができる。本発明の組成物を用いて原発腫瘍増殖の速度を低下させることもできる。本発明の組成物は、治療を必要とする対象に投与されるとき、がん細胞の広がりを停止させるために用いることができる。そのため本発明のDsg2結合分子、本発明の本発明のDsg2結合分子をコードする核酸分子、または本発明のDsg2結合分子を発現するように改変された細胞の有効量を併用療法の一部として、1つ以上の薬または他の医薬剤とともに投与することができる。併用療法の一部として用いるとき、本発明の組成物によって得られる転移の減少と原発腫瘍増殖の減少は、患者の治療に利用される任意の医薬療法または薬物療法のより有効で効率的な利用を可能にする。それに加え、本発明の組成物による転移の制御は、その疾患を1つの場所に集中させるより大きな能力を対象にもたらす。
【0270】
一実施形態では、本発明により、がん転移を治療する方法が提供され、この方法は、対象を、本発明の組成物を用いた治療の前に、その治療と同時に、またはその治療の後に、がんの補完療法(外科手術、化学療法、化学療法剤、放射線療法、またはホルモン療法、またはこれらの組み合わせなど)で治療することを含む。
【0271】
したがって一実施形態では、本発明の組成物は、本発明のDsg2結合分子、本発明の本発明のDsg2結合分子をコードする核酸分子、または本発明のDsg2結合分子を発現するように改変された細胞と、1つ以上の追加治療剤の組み合わせを含む。いくつかの実施形態では、治療剤は、ペプチド、核酸分子、小分子、抗体などを含む。いくつかの実施形態では、追加の治療剤はがんの治療用である。
【0272】
一実施形態では、治療剤はチェックポイント阻害剤を含む。いくつかの実施形態では、抗原と免疫チェックポイント抗体の組み合わせは、抗原だけを含む免疫原組成物よりも効率的に免疫系を誘導する。このより効率的な免疫応答は、がんの治療および/または予防における有効性を増大させる。一実施形態では、チェックポイント阻害剤は、PD-1、PDL-1 CTLA-4、LAG-3、TIM-3、TIGIT、およびCEACAM1の少なくとも1つを阻害する。本発明の組成物と方法で使用できる代表的なチェックポイント阻害剤の非限定的な例に含まれるのは、イピリムマブ、ニボルマブ、ペムブロリズマブ、ピジリズマブ、アテゾリズマブ、BMS-986016、BMS-936559、MPDL3280A、MDX1105-01、MEDI4736、TSR-022、CM-24、およびMK-3475である。
【0273】
一実施形態では、追加治療剤は治療用の抗体または抗体断片を含む。治療用の抗体または抗体断片は、腫瘍細胞に結合する、腫瘍細胞の殺傷を誘導する、または腫瘍細胞の増殖または転移を阻止する本分野で既知の任意の抗体を含む。一実施形態では、治療剤は抗体-薬複合体を含む。
【0274】
一実施形態では、本発明により、がん転移を治療する方法が提供され、この方法は、対象を、本発明の組成物を用いた治療の前に、その治療と同時に、またはその治療の後に、がんの補完療法(外科手術、化学療法、化学療法剤、放射線療法、またはホルモン療法、またはこれらの組み合わせなど)で治療することを含む。
【0275】
化学療法剤に含まれるのは、細胞毒性剤(例えば5-フルオロウラシル、シスプラチン、カルボプラチン、メトトレキサート、ダウノルビシン、ドキソルビシン、ビンクリスチン、ビンブラスチン、オキソルビシン、カルムスチン(BCNU)、ロムスチン(CCNU)、シタラビンUSP、シクロホスファミド、エストラムシンリン酸ナトリウム、アルトレタミン、ヒドロキシウレア、イホスファミド、プロカルバジン、マイトマイシン、ブスルファン、シクロホスファミド、ミトキサントロン、カルボプラチン、シスプラチン、組み換えインターフェロンアルファ-2a、パクリタキセル、テニポシド、およびストレプトゾシ)、細胞傷害性アルカリ化剤(例えばブスルファン、クロラムブシル、シクロホスファミド、メルファラン、またはエチルスルホン酸)、アルカリ化剤(例えばアサレー(asaley)、AZQ、BCNU、ブスルファン、ビスルファン、カルボキシフタラト白金、CBDCA、CCNU、CHIP、クロラムブシル、クロロゾトシン、シス-白金、クロメゾン、シアノモルホリノドキソルビシン、シクロジソン、シクロホスファミド、ジアンヒドロガラクチトール、フルオロドパン、ヘプスルファム、ヒカントン、イホスファミド、メルファラン、メチルCCNU、マイトマイシン C、ミトゾラミド、ナイトロジェンマスタード、PCNU、ピペラジン、ピペラジンジオン、ピポブロマン、ポルフィロマイシン、スピロヒダントインマスタード、ストレプトゾトシン、テロキシロン、テトラプラチン、チオテパ、トリエチレンメラミン、ウラシルナイトロジェンマスタード、およびYoshi-864)、抗有糸分裂剤(例えばアロコルヒチン、ハリコンドリンM、コルヒチン、コルヒチン誘導体、ドラスタチン10、メイタンシン、リゾキシン、パクリタキセル誘導体、パクリタキセル、チオコルヒチン、トリチルシステイン、硫酸ビンブラスチン、および硫酸ビンクリスチン)、植物アルカロイド(例えばアクチノマイシンD、ブレオマイシン、L-アスパラギナーゼ、イダルビシン、硫酸ビンブラスチン、硫酸ビンクリスチン、ミトラマイシン、マイトマイシン、ダウノルビシン、VP-16-213、VM-26、ナベルビン、およびタキソテール)、生物学的製剤(例えばアルファインターフェロン、BCG、G-CSF、GM-CSF、およびインターロイキン-2)、トポイソメラーゼI阻害剤(例えばカンプトテシン、カンプトテシン誘導体、およびモルホリノドキソルビシン)、トポイソメラーゼII阻害剤(例えばミトキサントロン、アモナフィド、m-AMSA、アントラピラゾール誘導体、ピラゾロアクリジン、ビサントレンHCL、ダウノルビシン、デオキシドキソルビシン、メノガリル、N,N-ジベンジルダウノマイシン、オキサントラゾール、ルビダゾン、VM-26、およびVP-16)、および合成薬(例えばヒドロキシウレア、プロカルバジン、o,p’-DDD、ダカルバジン、CCNU、BCNU、シス-ジアンミンジクロロ白金、ミトキサントロン、CBDCA、レバミゾール、ヘキサメチルメラミン、全トランス型レチノイン酸、グリアデル、およびポルフィマーナトリウム)である。
【0276】
抗増殖剤は細胞の増殖を減らす化合物である。抗増殖剤に含まれるのは、アルカリ化剤、抗代謝産物、酵素、生物学的応答調節剤、多彩な薬剤、ホルモンとアンタゴニスト、アンドロゲン阻害剤(例えばフルタミドと酢酸リュープロリド)、抗エストロゲン(例えばクエン酸タモキシフェンとその類似体、トレミフェン、ドロロキシフェン、およびロロキシフェン)であり、具体的な抗増殖剤の非限定的な追加例に含まれるのは、レバミゾール、硝酸ガリウム、グラニセトロン、塩化サルグラモスチムストロンチウム-89、フィルグラスチム、ピロカルピン、デクスラゾキサン、およびオンダンセトロンである。
【0277】
本発明の化合物は単独で、または他の抗腫瘍剤(細胞毒性/抗新生物剤と抗血管新生剤が含まれる)との組み合わせで投与することができる。細胞毒性/抗新生物剤は、がん細胞を攻撃して殺傷する薬剤と定義される。いくつかの細胞毒性/抗新生物剤は、腫瘍細胞の中の遺伝物質をアルカリ化するアルキル化剤であり、例えばシス-プラチン、シクロホスファミド、ナイトロジェンマスタード、トリメチレンチオホスホラミド、カルムスチン、ブスルファン、クロラムブシル、ベルスチン、ウラシルマスタード、クロマファジン、およびダカバジンがある。他の細胞毒性/抗新生物剤は腫瘍細胞に対する抗代謝産物であり、例えばシトシンアラビノシド、フルオロウラシル、メトトレキサート、メルカプトプリン、アザチオプリム、およびプロカルバジンがある。他の細胞毒性/抗新生物剤は抗生剤であり、例えばドキソルビシン、ブレオマイシン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、ミトラマイシン、マイトマイシン、マイトマイシンC、およびダウノマイシンがある。これら化合物に関する市販の多数のリポソーム製剤が存在している。さらに別の細胞毒性/抗新生物剤は有糸分裂阻害剤(ビンカアルカロイド)である。その中に含まれるのは、ビンクリスチン、ビンブラスチン、およびエトポシドである。その他の細胞毒性/抗新生物剤に含まれるのは、タキソールとその誘導体、L-アスパラギナーゼ、抗腫瘍抗体、ダカルバジン、アザシチジン、アムサクリン、メルファラン、VM-26、イホスファミド、ミトキサントロン、およびビンデシンである。
【0278】
抗血管新生剤は当業者に周知である。本発明の方法と組成物で用いるのに適した抗血管新生剤に含まれるのは抗VEGF抗体であり、その中には、ヒト化抗体とキメラ抗体、抗VEGFアプタマー、およびアンチセンスオリゴヌクレオチドが含まれる。他の既知の血管新生阻害剤に含まれるのは、アンギオスタチン、エンドスタチン、インターフェロン、インターロイキン1(アルファとベータが含まれる)インターロイキン12、レチノイン酸、およびメタロプロテイナーゼ-1と-2の組織阻害剤(TIMP-1と-2)である。小分子(抗血管新生活性を持つトポイソメラーゼII阻害剤であるラゾキサンなどのトポイソメラーゼが含まれる)も使用することができる。
【0279】
本発明の組成物と組み合わせて使用できる他の抗がん剤の非限定的な例に含まれるのは、アシビシン;アクラルビシン;塩酸アコダゾール;アクロニン;アドゼレシン;アルデスロイキン;アルトレタミン;アンボマイシン;酢酸アメタントロン;アミノグルテチミド;アムサクリン;アナストロゾール;アントラマイシン;アスパラギナーゼ;アスペルリン;アザシチジン;アゼテパ;アゾトマイシン;バチマスタット;ベンゾデパ;ビカルタミド;塩酸ビサントレン;ジメシル酸ビスナフィド;ビゼレシン;硫酸ブレオマイシン;ブレキナルナトリウム;ブロピリミン;ブスルファン;カクチノマイシン;カルステロン;カラセミド;カルベチマー;カルボプラチン;カルムスチン;塩酸カルビシン;カルゼレシン;セデフィンゴール;クロラムブシル;シロレマイシン;シスプラチン;クラドリビン;メシル酸クリスナトール;シクロホスファミド;シタラビン;ダカルバジン;ダクチノマイシン;塩酸ダウノルビシン;デシタビン;デキソルマプラチン;デザグアニン;メシル酸デザグアニン;ジアジコン;ドセタキセル;ドキソルビシン;塩酸ドキソルビシン;ドロロキシフェン;クエン酸ドロロキシフェン;プロピオン酸ドロモスタノロン;デュアゾマイシン;エダトレキサート;塩酸エフロルニチン;エルサミトルシン;エンロプラチン;エンプロマート;エピプロピジン;塩酸エピルビシン;エルブロゾール;塩酸エソルビシン;エストラムスチン;エストラムスチンリン酸ナトリウム;エタニダゾール;エトポシド;リン酸エトポシド;エトプリン;塩酸ファドロゾール;ファザラビン;フェンレチニド;フロクスウリジン;リン酸フルダラビン;フルオロウラシル;フルオロシタビン;ホスキドン;ホストリエシンナトリウム;ゲムシタビン;塩酸ゲムシタビン;ヒドロキシウレア;塩酸イダルビシン;イホスファミド;イルモホシン;インターロイキンII(組み換えインターロイキンII、またはrIL2を含む)、インターフェロンアルファ-2a;インターフェロンアルファ-2b;インターフェロンアルファ-n1;インターフェロンアルファ-n3;インターフェロンベータ-Ia;インターフェロンガンマ-Ib;イプロプラチン;塩酸イリノテカン;酢酸ランレオチド;レトロゾール;酢酸リュープロリド;塩酸リアロゾール;ロメトレキソールナトリウム;ロムスチン;塩酸ロソキサントロン;マソプロコール;メイタンシン;塩酸メクロレタミン;酢酸メゲストロール;酢酸メレンゲストロール;メルファラン;メノガリル;メルカプトプリン;メトトレキサート;メトトレキサートナトリウム;メトプリン;メツレデパ;ミチンドミド;ミトカルシン;ミトクロミン;マイトジリン;マイトマルシン;マイトマイシン;ミトスパー;ミトタン;塩酸ミトキサントロン;ミコフェノール酸;ノコダゾール;ノガラマイシン;オルマプラチン;オキシスラン;パクリタキセル;ペガスパルガーゼ;ペリオマイシン;ペンタムスチン;硫酸ペプロマイシン;ペルホスファミド;ピポブロマン;ピポスルファン;塩酸ピロキサントロン;プリカマイシン;プロメスタン;ポルフィマーナトリウム;ポルフィロマイシン;プレドニムスチン;塩酸プロカルバジン;ピューロマイシン;塩酸ピューロマイシン;ピラゾフリン;リボプリン;ログレチミド;サフィンゴル;塩酸サフィンゴル;セムスチン;シムトラゼン;スパルホサートナトリウム;スパルソマイシン;塩酸スピロゲルマニウム;スピロムスチン;スピロプラチン;ストレプトニグリン;ストレプトゾシン;スロフェヌール;タリソマイシン;テコガランナトリウム;テガフール;塩酸テロキサントロン;テモポルフィン;テニポシド;テロキシロン;テストラクトン;チアミプリン;チオグアニン;チオテパ;チアゾフリン;チラパザミン;クエン酸トレミフェン;酢酸トレストロン;リン酸トリシリビン;トリメトレキサート;グルクロン酸トリメトレキサート;トリプトレリン;塩酸ツブロゾール;ウラシルマスタード;ウレデパ;バプレオチド;ベルテポルフィン;硫酸ビンブラスチン;硫酸ビンクリスチン;ビンデシン;硫酸ビンデシン;硫酸ビネピジン;硫酸ビングリシナート;硫酸ビンロイロシン;酒石酸ビノレルビン;硫酸ビンロシジン;硫酸ビンゾリジン;ボロゾール;ゼニプラチン;ジノスタチン;塩酸ゾルビシンである。他の抗がん薬の非限定的な例に含まれるのは、20-エピ-1,25ジヒドロキシビタミンD3;5-エチニルウラシル;アビラテロン;アクラルビシン;アシルフルベン;アデシペノール;アドゼレシン;アルデスロイキン;ALL-TKアンタゴニスト;アルトレタミン;アンバムスチン;アミドックス;アミフォスチン;アミノレブリン酸;アムルビシン;アムサクリン;アナグレリド;アナストロゾール;アンドログラフォリド;血管新生阻害剤;アンタゴニストD;アンタゴニストG;アンタレリクス;抗背側形態形成タンパク質-1;抗アンドロゲン、前立腺癌;抗エストロゲン;抗ネオプラストン;アンチセンスオリゴヌクレオチド;グリシン酸アフィジコリン;アポトーシス遺伝子調節物質;アポトーシス調節因子;アプリン酸;アラ-CDP-DL-PTBA;アルギニンデアミナーゼ;アスラクリン;アタメスタン;アトリムスチン;アキシナスタチン1;アキシナスタチン2;アキシナスタチン3;アザセトロン;アザトキシン;アザチロシン;バッカチンIII誘導体;バラノール;バチマスタット;BCR/ABLアンタゴニスト;ベンゾクロリン;ベンゾイルスタウロスポリン;ベータラクタム誘導体;ベータ-アレチン;ベタクラマイシンB;ベツリン酸;bFGF阻害剤;ビカルタミド;ビサントレン;ビスアジリジニルスペルミン;ビスナフィド;ビストラテンA;ビゼレシン;ブレフラート;ブロピリミン;ブドチタン;ブチオニンスルホキシミン;カルシポトリオール;カルホスチンC;カンプトテシン誘導体;カナリア痘IL-2;カペシタビン;カルボキサミド-アミノ-トリアゾール;カルボキシアミドトリアゾール;CaRest M3;CARN 700;軟骨由来阻害剤;カルゼレシン;カゼインキナーゼ阻害剤(ICOS);カスタノスペルミン;セクロピンB;セトロレリクス;クロリン;クロロキノキサリンスルホンアミド;シカプロスト;シス-ポルフィリン;クラドリビン;クロミフェン類似体;クロトリマゾール;コリスマイシンA;コリスマイシンB;コンブレタスタチンA4;コンブレタスタチン類似体;コナゲニン;クランベシジン816;クリスナトール;クリプトフィシン8;クリプトフィシンA誘導体;クラシンA;シクロペンタアントラキノン;シクロプラタム;シペマイシン;シタラビンオクホスファート;細胞溶解因子;サイトスタチン;ダクリキシマブ;デシタビン;ジヒドロジデムニンB;デスロレリン;デキサメタゾン;デキシホスファミド;デクスラゾキサン;デクスベラパミル;ジアジコン;ジデムニンB;ジドックス;ジエチルノルスペルミン;ジヒドロ-5-アザシチジン;ジヒドロタキソール, 9-;ジオキサマイシン;ジフェニルスピロムスチン;ドセタキセル;ドコサノール;ドラセトロン;ドキシフルリジン;ドロロキシフェン;ドロナビノール;デュオカルマイシンSA;エブセレン;エコムスチン;エデルホシン;エドレコロマブ;エフロルニチン;エレメン;エミテフール;エピルビシン;エプリステリド;エストラムスチン類似体;エストロゲンアゴニスト;エストロゲンアンタゴニスト;エタニダゾール;リン酸エトポシド;エキセメスタン;ファドロゾール;ファザラビン;フェンレチニド;フィルグラスチム;フィナステリド;フラボピリドール;フレゼラスチン;フルアステロン;フルダラビン;塩酸フルオロダウノルニシン;ホルフェニメクス;ホルメスタン;ホストリエシン;ホテムスチン;ガドリニウムテキサフィリン;硝酸ガリウム;ガロシタビン;ガニレリクス;ゼラチナーゼ阻害剤;ゲムシタビン;グルタチオン阻害剤;ヘプスルファム;ヘレグリン;ヘキサメチレンビスアセトアミド;ヒペリシン;イバンドロン酸;イダルビシン;イドキシフェン;イドラマトン;イルモホシン;イロマスタット;イミダゾアクリドン;イミキモド;免疫刺激ペプチド;インスリン様増殖因子-1受容体阻害剤;インターフェロンアゴニスト;インターフェロン;インターロイキン;イオベングアン;ヨードドキソルビシン;イポメアノール、4-;イロプラクト;イルソグラジン;イソベンガゾール;イソホモハリコンドリンB;イタセトロン;ジャスプラキノリド;カハラリドF;三酢酸ラメラリン-N;ランレオチド;レイナマイシン;レノグラスチム;硫酸レンチナン;レプトルスタチン;レトロゾール;白血病阻害因子;白血球アルファインターフェロン;リュープロリド+エストロゲン+プロゲステロン;リュープロレリン;レバミゾール;リアロゾール;直線状ポリアミン類似体;親油性二糖ペプチド;親油性白金化合物;リソクリナミド7;ロバプラチン;ロンブリシン;ロメトレキソール;ロニダミン;ロソキサントリン;ロバスタチン;ロキソリビン;ルルトテカン;ルテチウムテキサフィリン;リソフィリン;溶解性ペプチド;メイタンシン;マンノスタチンA;マリマスタット;マソプロコール;マスピン;マトリリシン阻害剤;マトリックスメタロプロテイナーゼ阻害剤;メノガリル;メルバロン;メテレリン;メチオニナーゼ;メトクロプラミド;MIF阻害剤;ミフェプリストン;ミルテホシン;ミリモスチム;ミスマッチのある二本鎖RNA;ミトグアゾン;ミトラクトール;マイトマイシン類似体;ミトナフィド;マイトトキシン線維芽細胞増殖因子-サポリン;ミトキサントロン;モファロテン;モルグラモスチム;モノクローナル抗体、ヒト絨毛膜ゴナドトロフィン;モノホスホリル脂質A+マイコバクテリア細胞壁sk;モピダモール;多剤耐性遺伝子阻害剤;多重腫瘍抑制遺伝子1に基づく療法;マスタード抗がん剤;ミカペルオキシドB;マイコバクテリア細胞壁抽出物;ミリアポロン;N-アセチルジナリン;N置換ベンズアミド;ナファレリン;ナグレスチップ;ナロキソン+ペンタゾシン;ナパビン;ナフテルピン;ナルトグラシム;ネダプラチン;ネモルビシン;ネリドロン酸;中性エンドペプチダーゼ;ニルタミド;ニサマイシン;一酸化窒素調節物質;窒素酸化物抗酸化剤;ニトルリン;O6-ベンジルグアニン;オクトレオチド;オキセノン;オリゴヌクレオチド;オナプリストン;オンダンセトロン;オンダンセトロン;オラシン;経口サイトカイン誘導剤;オルマプラチン;オサテロン;オキサリプラチン;オキサウノマイシン;パクリタキセル;パクリタキセル類似体;パクリタキセル誘導体;パラウアミン;パルミトイルリゾキシン;パミドロン酸;パナキシトリオール;パノミフェン;パラバクチン;パゼリプチン;ペガスパルガーゼ;ペルデシン;ペントサンポリ硫酸ナトリウム;ペントスタチン;ペントロゾール;ペルフルブロン;ペルホスファミド;ペリリルアルコール;フェナジノマイシン;フェニル酢酸塩;ホスファターゼ阻害剤;ピシバニル;塩酸ピロカルピン;ピラルビシン;ピリトレキシム;プラセチンA;プラセチンB;プラスミノーゲンアクチベータ阻害剤;白金複合体;白金化合物;白金-トリアミン複合体;ポルフィマーナトリウム;ポルフィロマイシン;プレドニゾン;プロピルビス-アクリドン;プロスタグランジンJ2;プロテアソーム阻害剤;プロテインAに基づく免疫調節剤;プロテインキナーゼC阻害剤;プロテインキナーゼC阻害剤、微細藻類;プロテインチロシンホスファターゼ阻害剤;プリンヌクレオシドホスホリラーゼ阻害剤;プルプリン;ピラゾロアクリジン;ピリドキシル化ヘモグロビンポリオキシエチレン複合体;rafアンタゴニスト;ラルチトレキセド;ラモセトロン;rasファルネシルタンパク質トランスフェラーゼ阻害剤;ras阻害剤;ras-GAP阻害剤;脱メチル化レテリプチン;レニウムRe 186エリドロナート;リゾキシン;リボザイム;RIIレチンアミド;ログレチミド;ロヒツキン;ロムルチド;ロキニメクス;ルビジノンB1;ルボキシル;サフィンゴル;サイントピン;SarCNU;サルコフィトールA;サルグラモスチム;Sd
i 1模倣体;セムスチン;老化由来阻害剤1;センスオリゴヌクレオチド;シグナル伝達阻害剤;シグナル伝達調節因子;一本鎖抗原結合タンパク質;シゾフラン;ソブゾキサン;ボロカプテイトナトリウム;フェニル酢酸ナトリウム;ソルベロール;ソマトメジン結合タンパク質;ソネルミン;スパルフォシン酸;スピカマイシンD;スピロムスチン;スプレノペンチン;スポンギスタチン1;スクアラミン;幹細胞阻害剤;幹細胞分化阻害剤;スチピアミド;ストロメリシン阻害剤;スルフィノシン;超活性血管作動性腸管アンタゴニスト;スラジスタ;スラミン;スワインソニン;合成グリコサミノグリカン;タリムスチン;タモキシフェンヨウ化メチル;タウロムスチン;タザロテン;テコガランナトリウム;テガフール;テルラピリリウム;テロメラーゼ阻害剤;テモポルフィン;テモゾロミド;テニポシド;テトラクロロデカオキシド;テトラゾミン;サリブラスチン;チオコラリン;トロンボポエチン;トロンボポエチン模倣体;チマルファシン;チモポエチン受容体アゴニスト;チモトリナン;甲状腺刺激ホルモン;エチルエチオプルプリンスズ;チラパザミン;二塩化チタノセン;トプセンチン;トレミフェン;全能性幹細胞因子;翻訳阻害剤;トレチノイン;トリアセチルウリジン;トリシリビン;トリメトレキサート;トリプトレリン;トロピセトロン;ツロステリド;チロシンキナーゼ阻害剤;チルホスチン;UBC阻害剤;ウベニメクス;尿生殖洞由来増殖阻害因子;ウロキナーゼ受容体アンタゴニスト;バプレオリド;バリオリンB;ベクター系、赤血球遺伝子療法;ベラレソール;ベラミン;ベルジン;ベルテポルフィン;ビノレルビン;ビンキサルチン;ビタキシン;ボロゾール;ザノテロン;ゼニプラチン;ジラソルブ;およびジノスタチンスチマラマーである。一実施形態では、抗がん薬は、5-フルオロウラシル、タキソール、またはロイコボリンである。
【0280】
実験の実施例
【0281】
本発明を、以下の実験例を参照することによって詳細にさらに説明する。これら実施例は説明だけを目的として提示されており、特に断わらない限り限定する意図はない。したがって本発明は、実施例に限定されると解釈されてはならず、むしろ、本明細書に提示されている教示の結果として明らかになるあらゆるバリエーションを包含すると解釈すべきである。
【0282】
当業者は、さらなる説明なしで、これまでの記述と以下の説明的実施例を利用し、本発明をなすこと、本発明を利用すること、請求項の方法を実施することができると考えられる。したがって以下の機能する実施例は、いかなる意味でも本開示の残部を制限すると解釈されてはならない。
【0283】
実施例1:固形がんのためのDsg2指向性CAR-T細胞療法
【0284】
接着斑カドヘリンであるデスモグレイン2(Dsg2)は、さまざまな細胞集団における細胞の増殖と移動に関与するシグナル伝達経路の重要な1つの調節因子である(Kant et al. 2015;Eshkind et al., 2002, Eur J Cell Biol. 81: 592-598)。また、Dsg2はほぼすべての固形がんで上方調節されており、その発現は悪い予後と相関する(Kamekura et al., 2013, Oncogene. 33(36): 4531-4536;Brennan, Hu et al., 2007, J Cell Sci. 120(5): 758-771;Brennan-Crispi et al., 2015, Oncotarget. 6(11): 6(11):8593-8605;Brennan-Crispi et al., 2019, J Invest Dermatol. 139(2): 300-307;Tan et al. 2016, Oncotarget. 7(29): 46492-46508)ため、標的療法のための新規な候補となる。多くの組織におけるDsg2の発現とさまざまな組織におけるその極めて重要な役割は、自己免疫毒性の大きなリスクを考慮すると、それが実現可能な免疫療法の標的にはならないであろうことを示唆する。しかし理論に囚われることなく、Dsg2の過剰発現と、がんによる調節異常と、正常な細胞におけるデスモソームの中へのDsg2の封鎖の文脈では、Dsg2指向性CAR-TまたはCAR-NK細胞療法を用いて正常な組織における毒性を伴うことなく特異的にがん細胞を排除する「絶好の機会」が存在すると仮定した。実際、本明細書に提示されているデータは、マウスモデルにおいて、Dsg2 CAR-T細胞によって毒性なしにほぼすべてのタイプの固形がんを標的として排除することが可能であることを示唆する。これは、Dsg2指向性CAR-T/CAR-NK細胞療法が、がんのための潜在的に普遍的な「既製品として使用できる」細胞療法であることを実証している。
【0285】
本研究は、さまざまな幹細胞集団において細胞の増殖と移動に関与するシグナル伝達経路の重要な1つの調節因子であるカドヘリンデスモグレイン2(Dsg2)に焦点を絞っている。Dsg2は13種類の最も一般的ながんのうちの10種類で上方調節されており、その発現は悪い予後と相関するため、Dsg2は多彩なヒトのがんにおける標的療法のための新規な標的となる。
【0286】
Dsg2特異的モノクローナル抗体治療はヒトSCC異種移植片を標的にできることが実証された。本研究は、Dsg2の異常な細胞表面提示がCAR-T細胞免疫療法にとっての便乗治療標的を提供することを実証する。Dsg2特異的ハイブリドーマを用いてヒトDsg2特異的抗体配列を取得し、ヒトDsg2特異的CARとCAR-T細胞を生成させる。本明細書に提示されている本研究は、それらがインビトロでcSCC細胞とHNSCC細胞を殺傷するのに有効であること、そして患者の腫瘍異種移植片を生体内で消失させるのに有効であることを実証している。
【0287】
デスモソームは力学的負荷を感じる組織(皮膚や心臓など)において豊富に発現する接着結合部である(Kowalczyk and Green, 2013, Prog Mol Biol Transl Sci. 116: 95-118)。デスモソームは膜貫通接着成分を中間細胞骨格ケラチン繊維に連結させることによって引張強度を提供する。カドヘリン(デスモグレインとデスモコリン)の細胞外ドメインは細胞-細胞接着を媒介する一方で、細胞内細胞質ドメインはアルマジロ(プラコグロビンとプラコフィリン)シグナル伝達タンパク質に結合してリンカータンパク質のプラキン(デスモプラキンとペリプラキン)ファミリーをリクルートする。ヒトでは、デスモソーム機能の破壊が、さまざまな組織(皮膚、爪、毛髪、および心臓が含まれる)に影響を与えるいくつかの自己免疫性で感染性で遺伝性の障害の基礎にある(Najor, 2018, Annu Rev Pathol. 13: 51-70)。4つの異なるデスモグレイン遺伝子(Dsg 1-4)が存在しており、Dsg1、3、および4は重層上皮(皮膚や口腔粘膜など)に主に限定されるのに対し、Dsg2は単なる上皮と心臓にも見られる。ヒトDsg2遺伝子における変異が、突然死に至ることがしばしばあるいくつかの不整脈原性右室心筋症の基礎にある(Lombardi and Marian, 2010, Curr Opin Cardiol. 25: 222-228)。Dsg2は気道と尿路の感染に関与するアデノウイルスのための受容体としても機能し、アルツハイマー病にも関係している(Wang, Li et al. 2011, Nat Med. 17(1): 96-104)。興味深いことに、ヒト多能性幹細胞では、Dsg2は、自己複製、胚体形成、および奇形腫形成にとって極めて重要であることが示されており、β-カテニン/Slug経路を通じて上皮から間葉系への移行を媒介する(Park, Son et al., 2018, Stem Cell Reports. 11(1): 115-127)。マウスでは、Dsg2遺伝子を切除すると胚盤胞の中の栄養外胚葉層が失われて胚致死となり、Dsg2-/-胚性幹細胞は培養物の中で生きられないため、Dsg2が細胞の増殖と生存において決定的に重要な役割を果たしていることを示唆する(Eshkind, Tian et al., 2002, Eur J Cell Biol. 81: 592-598)。
【0288】
Dsg2は、悪性上皮細胞系においてと、2つの最も一般的な皮膚がんである基底細胞癌(BCC)とSCCにおいて高発現する(Biedermann, Vogelsang et al., 2005, J Pathol. 207(2): 199-206;Brennan and Mahoney, 2009, Cell Adh Migr. 3(2): 148-154)。さらに、Dsg2は血管擬態を促進して腫瘍への血液供給を増やすため、悪性黒色腫における悪い予後と関係している(Tan, Mintoff et al., 2016, Oncotarget. 7(29): 46492-46508)。Dsg2の過剰発現は前立腺がんと大腸がんでも起こるため、多彩な上皮由来組織での腫瘍形成においてDsg2がある役割を果たしていることを示唆する(Barber, Castillo-Martin et al., 2014, PLoS One. 9(6): e98786)。結腸上皮癌細胞におけるDsg2のノックダウンはマウスにおいて増殖を減らし、異種移植片腫瘍の増殖を抑制する(Kamekura, Kolegraff et al., 2013, Oncogene. 33(36): 4531-4536)。さらに、トランスジェニックマウスの表皮におけるDsg2の強制発現は表皮過形成を促進し、腫瘍発達に対する感受性を増大させる(Brennan, Hu et al., 2007, J Cell Sci. 120(5): 758-771;Brennan, Peltonen et al., 2012, Oncogene. 31(13): 1636-1648;Overmiller, McGuinn et al., 2016, Oncotarget, 7(25): 37536-37555)。Dsg2はStat3を通じてHhシグナル伝達経路の標的遺伝子であるGli1とPtch1を上方調節し、化合物Dsg2/Ptc1+/lacZマウスは化学的発がん物質に応答してBCCとSCCの発達と腫瘍形成を加速させた(Brennan-Crispi et al. 2015, Oncotarget. 6(11): 6(11):8593-8605;Brennan-Crispi et al., 2019, J Invest Dermatol. 139(2): 300-307)。
【0289】
SCCによるDsg2の過剰発現と、正常な細胞におけるデスモソームの中へのDsg2の封鎖が、正常な組織における毒性を伴うことなくDsg2特異的CAR-T細胞療法によるSCCの特異的排除の「絶好の機会」を生み出すかどうかを調べた(図1)。
【0290】
Dsg2はHNSCCにおいて上方調節されている
【0291】
Dsg2は正常などの口腔粘膜(n=12)でも検出されなかったのに対し、16種のHNSCCのうちの15種はDsg2に関して陽性だった(図2A)。これは、cSCC組織アレイを用いて以前に得られた結果と似ている(Wahl 2002, Hybrid Hybridomics. 21(1): 37-44;Biedermann, Vogelsang et al., 2005, J Pathol. 207(2): 199-206;Brennan and Mahoney, 2009, Cell Adh Migr. 3(2): 148-154)。インシリコ分析は、HNSCCにおいてDsg2発現を悪い全生存率と相関させる(proteinatlas.org)(図2B)。これらの知見は、Dsg2が高リスクのcSCCとHNSCCにおいて療法のための1つの優れた標的として機能する可能性があること、そしてこの方法を他のDsg2高発現がん(肺、前立腺、および大腸が含まれる)に適用できる可能性があることを示唆する。
【0292】
腫瘍増殖におけるDsg2
【0293】
腫瘍増殖におけるDsg2の役割をさらに評価するため、レトロウイルス発現ベクターLZRS-ms-neoを用い、外来性のGFPまたはDsg2/GFPを安定に発現するA431 cSCC細胞を生成させた(Brennan, Hu et al., 2007, J Cell Sci. 120(5): 758-771;Brennan, Peltonen et al., 2012, Oncogene. 31(13): 1636-1648;Overmiller, McGuinn et al. 2016, Oncotarget. 7(25): 37536- 37555)。細胞(1×10個)を免疫不全SCIDマウスに移植し、移植後27日目まで腫瘍の体積を測定した。実験終了時にcSCC-GFP腫瘍は平均体積が662 mmに達したのに対し、cSCC-Dsg2/GFP系はそれよりも有意に大きい1428 mmという体積に達した(図3A)。これらの結果は、Dsg2が悪性腫瘍の異種移植片モデルにおいて腫瘍生成を促進することを実証している。SCC腫瘍異種移植片の増殖と発達におけるDsg2をさらに評価するため、Dsg2の4番目の細胞外ドメイン上のエピトープを標的としていてDsg2内部化を促進するmAb 6D8を使用した(Biedermann, Vogelsang et al., 2005, J Pathol. 207(2): 199-206;Brennan and Mahoney, 2009, Cell Adh Migr. 3(2): 148-154)。精製したmAb 6D8を週に2回(5mg/kg)、20日間にわたって腹腔内に送達した。治療したマウスに由来する腫瘍(133 mm)は治療なしのマウス(756 mm)よりも有意に小さかった(図3B)。同様の結果がmAb 10D2で見られた(図3C)。Ki67+がん細胞の数を分析すると、mAb 6D8で治療した異種移植片は、異種移植片の健康な層で活発に分化していた細胞が有意に少なかった。mAb 6D8で治療した腫瘍も、PBSで治療した腫瘍よりも有意に少ないDsg2、EGFR、およびc-Srcを発現した。
【0294】
SCC腫瘍の発達を阻害するための治療手段としてのDsg2
【0295】
初代ヒトcSCC細胞を用いて異種移植片を生成させた。腫瘍の免疫染色は高レベルのDsg2を示した(図4)。標的化mAb療法は一般にがん細胞の死を誘導し、血管が新生して腫瘍が増殖するのを妨げ、がん細胞の増殖を阻害する。Dsg2指向性mAbの1つの大きな懸念はDsg2を発現しているさまざまな臓器におけるオフ-ターゲット効果であると考えられるため、さまざまな組織のmAb結合と組織病理学を、2日ごとに5 mg/kg(約100 μg)のmAb 6D8と10D2だけを4週間まで用いて長期治療したマウスのコホートで評価した(Sewell, Chapman et al. 2017, MAbs. 9: 742-755)。これらのマウスは、PBSで治療した対照と同様、mAb治療を延長した後に大腸、心臓、皮膚、および口腔粘膜の正常な組織の組織学を持っており、抗マウス二次Abを直接適用すると、これらの組織で結合したmAb 6D8または10D2は検出されなかった。mAbで治療したどのマウスも治療で失われることはなく、治療に関する観察可能な副作用もまったくなかった。これは、Dsg2が正常な細胞ではデスモソーム複合体の中に封鎖され、Dsg2 mAbによる結合とオフ-ターゲット毒性を阻止したことを示唆する。これらの結果は、SCCを治療するための抗Dsg2療法(Dsg2 mAbと免疫療法(Dsg2指向性CAR-T細胞など)を含む)の有効性と忍容性を実証している。
【0296】
ヒトDsg2に対して特異的なmAbの特徴づけ
【0297】
図3Bの中のデータは、mAb 6D8がcSCC A431を用いた異種移植片腫瘍の増殖の減少に極めて有効であったことを示す。実験は、特に、異種移植片とCAR-T細胞の移植が可能なNOD.Cg-Rag1tm1MomIl2rgtm1Wjl/SzJ(NRG)マウスにおいてmAb 6D8がUM-SCC1異種移植片腫瘍をなくすのに有効であることを実証する設計である。簡単に述べると、接種の1週間後に腫瘍が約40 mmに達し、その時点でマウスを、精製したmAb 6D8または無関係なmAb(IgG2b;Sigma)を2日ごとに4週間まで腹腔内注射(各回5mg/kgのmAb)することによって治療する。IgG2bはどのヒトタンパク質も認識しないためアイソタイプ対照として機能する。対照腫瘍は約600mmに達する。腫瘍はノギスによって測定し、腫瘍の体積は(長さ×幅)×0.5(単位はmm)として記録する。データは、各治療群(各群でn>5)について平均腫瘍体積±SEとして表示する。腫瘍を回収し、Dsg2の発現を他のがんマーカー(EGFRなど)の発現に加えて分析する。これらの実験により、mAb 6D8を用いてDsg2を標的とすることの実現可能性が確立される。
【0298】
CARの生成
【0299】
pLVX-IRES-ZsGreen1(Clontech)レンチウイルスベクターの中にBiP(GRP-78)シグナルペプチド、scFv、CD8αヒンジ領域、CD28の膜貫通ドメインと細胞内ドメイン、および4-1BB(CD137)とCD3ζの細胞内ドメインを含有する第3世代のコドン最適化CARを使用する(Magee et al. 2016, Oncoimmunology 5: e1227897;Magee, Abraham et al. 2018, Cancer Immunol Res. 6: 509-516)。VとVの可変領域を、縮重プライマーを用いたRT-PCRによってmAb 6D8とmAb 10D2のハイブリドーマからクローニングし、オーバーラップ伸長PCRによってグリシン-セリンリンカー(GS)に連結させる(Kochenderfer et al., 2009, J Immunother. 32: 689-702;Magee et al. 2016, Oncoimmunology 5: e1227897)。
【0300】
Dsg2 CAR-T細胞の機能試験(インビトロ)
【0301】
Dsg2指向性6D8-28BBz CAR-T細胞による標的認識、サイトカイン産生、および細胞溶解をインビトロで調べた(図10図11)。6D8 CAR-T細胞はヒトDsg2刺激と陽性対照(抗His;PMA/Iono)刺激の後にTNFαとIFNγを産生したが、刺激なしでは産生しなかった(図10A)。さらに、Dsg2を発現しているA431 SCC細胞はサイトカイン産生を誘導し(図10B)、6D8 CAR-T細胞によって溶解した(図11)が、CRISPR-Cas9によるDsg2ノックアウトA431細胞はそうでなかった。対照CAR-T細胞は細胞の存在下でサイトカインを産生せず、A431細胞を溶解させなかった(図11)。
【0302】
細胞系由来の異種移植片(CDX)におけるDsg2 CAR-T細胞の試験
【0303】
インビトロでDsg2を発現しているA431 SCC細胞の成功した特異的認識の後(図10図11)、ルシフェラーゼを発現しているA431腫瘍をNSGマウスの皮下に確立した(図12)。対照または6D8 CAR-T細胞を、腫瘍が平均で500 mmになった12日目に投与した。対照動物では腫瘍が急速に発達して(図12AとB)投与から10日以内に100%の死亡率になった(図12C)のに対し、6D8-28BBz CAR-T細胞で治療したほぼすべての動物では腫瘍が排除され(図12AとB)、再発なく80日間を超えて生存した(図12C)。
【0304】
Dsg2 CAR-T細胞は長期間持続する
【0305】
Dsg2を発現しているA431 SCC腫瘍を生体内で特異的に排除することに成功した(図12)後、生き延びたNSGマウスの皮下にA431がん細胞またはDsg2ノックアウトA431がん細胞で再チャレンジした(図13)。再チャレンジを受けたマウスはA431細胞には耐えたが、Dsg2ノックアウトA431細胞には耐えられなかった(図13A)。さらに、これらの動物の脾臓と骨髄はCAR-T細胞(GFP+細胞;図13B)を含有しており、セントラルメモリ表現型とエフェクタメモリ表現型が混合していた(図13C)。
【0306】
10D2 CAR-T細胞
【0307】
6D8 CAR-T細胞に加えて10D2 CAR-T細胞を生成させ、その活性を調べた。10D2 CAR-T細胞はDsg2を認識するとIFNγとTNFαを産生し、Dsg2を発現しているA431 SCC細胞を溶解させたが、溶解は6D8 CAR-T細胞よりも少ない(図14A)。
【0308】
10D2 CAR-T細胞の安全性
【0309】
ヒトDsg2だけを認識する6D8 mAb(とCAR-T)とは異なり、10D2 mAbはヒトとマウスのDsg2を認識する(Brennan and Mahoney, 2009, Cell Adh Migr. 3(2): 148-154;Gupta et al. 2015, Plos One, 10(3):e0120091)ため、従来のマウスでの安全性評価が可能である。10D2 CAR-T細胞はうまくA431 SCC細胞を溶解させる(図14A)が、マウスで毒性を生じさせることはない(図14B)。10個のCAR-T細胞を投与された動物が約2週間以内に毒性を示すことはない(図14B)。約2週間というのは、CAR-T細胞療法が患者(Hay et al., 2017, Blood, 130:2295-2306;Morgan et al., 2010, Mol Ther, 18:843-851)とマウス(3~4日間で20%の体重減少)(Yang et al. 2019, Journal for immunotherapy of cancer, 7:171)において深刻な毒性と死を生じさせた期間である。
【0310】
ヒトDsg2トランスジェニックマウスにおける10D2と6D8 CAR-T細胞の安全性
【0311】
ヒトDsg2遺伝子座のBACから作製されたヒトDsg2トランスジェニックマウス(hDsg2Tg)をワシントン大学から取得した。これらのマウスはヒトと似た組織と細胞分布でhDsg2を産生するため(図14C)、hDsg2研究の優れたモデルである(Wang et al., 2012, J Virol, 86(11):6286-6302)。重要なことだが、これらのマウスからの皮膚はCAR-T細胞によって認識可能なロバストなDsg2発現を持つ。野生型マウスではなくhDsg2Tgマウスから単一細胞懸濁液として単離されたケラチノサイトは生体外で6D8 CAR-T細胞を刺激してサイトカインを分泌させることに成功した(図14D)。対照、6D8、または10D2 CAR-T細胞(10個のCAR-T細胞)をhDsg2Tgマウスに投与した。皮膚(図14D)を含むさまざまな組織(図14C)におけるhDsg2の発現にもかかわらず、動物は、体重(図14E)と組織学によって観察した4週間にわたって毒性を示さなかった。4週間というのは、CAR-T細胞療法が患者(Hay et al., 2017, Blood, 130:2295-2306;Morgan et al., 2010, Mol Ther, 18:843-851)とマウス(Castellarin et al., 2020, CI Insight, 5:e136012;Qin et al., 2020, Oncoimmunology, 9(1):1806009)において深刻な毒性と死を生じさせた期間である。
【0312】
他のがんのためのDsg2指向性CAR-T細胞療法
【0313】
6D8 CAR-T細胞が多数の他のがん細胞を認識した結果としてのエフェクタサイトカインの産生(図15A)と殺傷(図15B)を調べた。調べたすべてのがん系が6D8 CAR-T細胞をうまく活性化させ、それら細胞によって殺傷された。さらに、腫瘍増殖の17日目に投与された6D8 CAR-T細胞は、DLD-1結腸直腸がん異種移植片を持つマウスをうまく治癒させた(図16)。
【0314】
実施例2:Dsg2-CAR
【0315】
悪性固形腫瘍は全体としてがん関連死の主要な原因であり続けている。しかし養子細胞療法が、現在の障害に直接対処することのできる免疫腫瘍学レパートリーの範囲内の強力なツールとして出現した。養子移植されたキメラ抗原受容体(CAR)で操作されてl B細胞特異的抗原CD19を標的とするT細胞を用いると、ある種のリンパ腫と白血病の治療に非常に有効であることが以前に実証されている。液体腫瘍の一部と、それと同様の固形腫瘍標的に限定されるCD19(PSMAは前立腺でだけ、GUCY2CはGIがんでだけなど)とは異なり、デスモグレイン-2(Dsg2)は、多くの健康な組織において発現し、ほぼすべてのタイプの固形腫瘍において普遍的に過剰発現している腫瘍関連抗原である(図7)。
【0316】
Dsg2は基礎レベルで発現する接着斑カドヘリンタンパク質であり、正常な上皮では細胞-細胞接合の間に封鎖されているが、形質転換された上皮細胞と悪性上皮細胞の表面で大きく過剰発現している。多くの重要な組織(心臓など)で広範に発現していることを考慮するとCARの標的にするのは最初は直感に反するが、この独自の細胞内発現プロファイルは、固形腫瘍において正常な上皮における毒性を伴うことなくDsg2の脱封鎖を標的とすることができるというパラダイムを活用できることを意味する(図8図14B)。専用のモノクローナル抗体(mAb)から改変されてヒトDsg2タンパク質を標的とすることのできる一本鎖可変断片(scFv)含有CARコンストラクト(図9)が開発された。T細胞の中でこれらコンストラクトを発現させてDsg2指向性CAR-T細胞を生成させると、さまざまながん細胞系の表面のDsg2のほか、プレートによって被覆されたDsg2タンパク質を検出する能力が生じる(図10)。Dsg2指向性CAR-T細胞はインビトロで固形腫瘍細胞を殺傷し、Dsg2ノックアウト細胞では細胞を溶解させないため、Dsg2特異性を示す(図11)。さらに、マウスDsg2を標的とするDsg2 CAR-T細胞の投与は、マウスに投与したとき毒性を生じさせなかった(図13B)。合わせると、Dsg2を標的とするCARは、T細胞の中で発現すると、強力な細胞溶解エフェクタ機能と抗腫瘍有効性を提供する。さらに、他のタイプの細胞(NK細胞など)が同様の利益を提供する可能性が大きいことに加え、CAR-T/NK細胞は、安全性と有効性を改善するために改変すること、および/またはの他の戦略(その非限定的な例に含まれるのは、下記の戦略(潜在的な修飾、組み合わせ、および/またはバリアント)である)と組み合わせることができよう。
【0317】
その最も基本的な形態では:
1.T細胞を患者から回収し、Dsg2 CAR(図9)を操作して細胞の中に入れ、その新たに形成されたCAR-T細胞を同じ患者に投与する。または
2.NK細胞を1箇所に集約された供給源(血液銀行または臍帯血銀行)から回収し、改変してDsg2 CARを大規模に発現させ、CAR-NK細胞を作製して集約し、Dsg2を発現している固形腫瘍を持つ任意の患者に投与する。これは、既製品として使用できる普遍的なDsg2 CAR-NK細胞療法のための大規模製造のアプローチであり、ほぼすべてのがん患者で使用できるため、オーダーメイドのがんに限定される現在利用されている患者特異的CAR-T細胞アプローチとは対照的である。
【0318】
CARは、さまざまなT細胞(例えばαβ、γδ;CD4+、CD8+)、ナチュラルキラー細胞、(例えばNK-92、NK-92MI、NKL)、マクロファージ(例えばM1、M2)、および他のタイプの細胞の中で発現させることができる。
【0319】
CARとして、第1世代CARコンストラクト(scFV+CD3ζ)、第2世代CARコンストラクト(scFv+CD28/4-1BB/OX40/ICOS+CD3ζ)、第3世代CARコンストラクト(第2世代CAR骨格+追加CD28/4-1BB/OX40/ICOS)、第4世代CARコンストラクトまたは普遍的サイトカイン媒介殺傷のためリダイレクトされた(TRUCK)、(第2世代CAR骨格+構成的/誘導性ケモカイン[例えばIL-2、IL-12、IL-15など]成分)、または第5世代CAR(第4世代CAR+サイトカイン受容体[例えばIL-2Rβ]の細胞内ドメイン)コンストラクトが可能である。
【0320】
Dsg2 CARは、自殺遺伝子である誘導性カスパーゼ9(「iCasp9」)、単純ヘルペスウイルスのチミジンキナーゼ(HSV-TK)などと組み合わせて用いることができる。
【0321】
Dsg2 CARとして、「DualCAR」形式(免疫細胞1個につき2つ以上のCAR)および/または「タンデムCAR」形式(2つ以上の抗原を標的とする単一の2価/二重特異性CAR)が可能である。
【0322】
Dsg2 CARとして、論理ゲート型CAR(「OR」、「AND」、および「NOT」ブーリアンゲート型安全スイッチ)形式が可能である。
【0323】
Dsg2 CARは、「iCAR」(PD-1、CTLA-4などとの複合体になった正常組織抗原特異的抑制性CAR)と組み合わせて用いることができる。
【0324】
Dsg2 CARとして「SynNotch」(合成Notch受容体)CARが可能である。
【0325】
免疫細胞として、CRISPR/Cas9で改変した免疫細胞(例えばPD-1、CTLA-4、TIM-3、LAG-3などの除去)が可能である。
【0326】
Dsg2 CARは、免疫チェックポイント阻害療法(抗PD-1/PD-L1、抗CTLA-4、抗TIM-3など)と組み合わせて用いることができる。
【0327】
Dsg2 CARは、養子移植の前/間/後にサイトカイン(IL-2、IL-15、IL-18など)の添加と組み合わせて用いることができる。
【0328】
Dsg2 CARはワクチン接種または腫瘍溶解ウイルスとタンデムで用いることができる。
【0329】
Dsg2 CARを用いてDsg2の腫瘍特異的バリエーション(変異、切断生成、グリコシル化の違いなど)を標的とすることができる。
【0330】
Dsg2 CARは、CAR-T細胞ホーミング(IV vs. IP vs. 局所/領域送達、ホーミング分子のCRISPRターゲティング、ホーミング分子導入遺伝子送達)などの改変に用いることができる。
【0331】
実施例3:配列:
【0332】
【表1】
【0333】
【表2】
【0334】
配列番号33 - 6D8-28BBz_CAR_(DNA)
CD8リーダー配列(nt 1~63);6D8 scFv(nt 64~798);6D8カッパ軽鎖(nt 64~384);6D8カッパ軽鎖CDR1(nt 142~159);6D8カッパ軽鎖CDR2(nt 211~219);6D8カッパ軽鎖CDR3(nt 328~354);リンカー(nt 385~447);6D8重鎖(nt 448~798);6D8重鎖CDR1(nt 523~546);6D8重鎖CDR2(nt 598~621);6D8重鎖CDR3(nt 736~765);CD8ヒンジ(nt 799~933);CD8膜貫通(nt 934~1005);CD28 ICD(nt 1006~1128);4-1BB ICD(nt 1129~1254);CD3ζ ICD(nt 1255~1590)
atggcattgcctgttacagctctgctgctgcccctggctctgcttctgcatgctgccagacctgacatccagatgacccagagccctgctagtctctccgtgtccgttggcgagacggtgaccatcacctgccgcgcatccgagaacatctactcgaacctggcctggtaccagcagaagcagggcaagagccctcagctgctggtgtacatcgccattaacctggcggacggcgtaccctctcggttttcagggagcggctcggggacccagtacagtctaaaaattaattcccttcagtccgaagatttcggcaactattactgtcagcacttttggggcactccgcgcaccttcggcggaggtaccaagctggagatcaagtcgggcggaggaggcagcggcggcgggggttccggtggaggcggctctggcggcgggggttctcagatccagcttgtgcagagcggccccgagctgaagaagcccggggagactgtcaagatctcttgcaaggcgtccggctacacgttcaccaactacggtatgaactgggtgaagcaggccccggggcgtggcttgaaatggatgggttggatcaatacttacaccggtaatccaacctacgcggatgacttcaagggccgcttcgatttttcgctggagacctccgctagcactgcctacctgcaaattaacaacctcaaaaacgaggacatggccatctatttctgtgctcgcgacaggggcaactccttcgactattggggccagggtaccacactgaccgtctcttctacaacaacccctgctcctcggcctcctacaccagctcctacaattgccagccagcctctgtctctgaggcccgaagcttgtagacctgctgctggcggagccgtgcatacaagaggactggatttcgcctgcgacatctacatctgggctcctctggccggaacatgtggcgtgctgctgctgagcctggtcatcaccctgtactgccggtccaagagaagcagactgctgcacagcgactacatgaacatgacccctagacggcccggacctaccagaaagcactaccagccttacgctcctcctcgggacttcgctgcctacagaagcaagcggggcagaaagaagctgctgtacatcttcaagcagcccttcatgcggcccgtgcagaccacacaagaggaagatggctgctcctgcagattccccgaggaagaagaaggcggctgcgagctgagagtgaagttcagcagatccgctgacgcccctgcctacaagcagggacagaaccagctgtacaacgagctgaacctggggagaagagaagagtacgacgtgctggacaagcggagaggcagagatcctgagatgggcggcaagcccagacggaagaatcctcaagagggcctgtataatgagctgcagaaagacaagatggccgaggcctacagcgagatcggaatgaagggcgagcgcagaagaggcaagggacacgatggactgtaccagggcctgagcaccgccaccaaggatacctatgatgccctgcacatgcaggccctgcctccaagatag
【0335】
配列番号34 - 6D8-28BBz_CAR_(アミノ酸)
CD8リーダー配列(残基1~21);6D8 scFV(残基22~266);6D8カッパ軽鎖(残基22~128);6D8カッパ軽鎖CDR1(残基48~53);6D8カッパ軽鎖CDR2(残基71~73);6D8カッパ軽鎖CDR3(残基110~118);リンカー(残基129~149);6D8重鎖(残基150~266);6D8重鎖CDR1(残基175~182);6D8重鎖CDR2(残基200~207);6D8重鎖CDR3(残基246~255);CD8ヒンジ(残基267~311);CD8膜貫通(残基312~335);CD28 ICD(残基336~376);4-1BB ICD(残基377~418);CD3ζ ICD(残基419~530)
malpvtalllplalllhaarpdiqmtqspaslsvsvgetvtitcraseniysnlawyqqkqgkspqllvyiainladgvpsrfsgsgsgtqyslkinslqsedfgnyycqhfwgtprtfgggtkleiksggggsggggsggggsggggsqiqlvqsgpelkkpgetvkisckasgytftnygmnwvkqapgrglkwmgwintytgnptyaddfkgrfdfsletsastaylqinnlknedmaiyfcardrgnsfdywgqgttltvsstttpaprpptpaptiasqplslrpeacrpaaggavhtrgldfacdiyiwaplagtcgvlllslvitlycrskrsrllhsdymnmtprrpgptrkhyqpyapprdfaayrskrgrkkllyifkqpfmrpvqttqeedgcscrfpeeeeggcelrvkfsrsadapaykqgqnqlynelnlgrreeydvldkrrgrdpemggkprrknpqeglynelqkdkmaeayseigmkgerrrgkghdglyqglstatkdtydalhmqalppr
【0336】
配列番号35 10D2-28BBz_CAR_(DNA)
CD8リーダー配列(nt 1~63);10D2 scFv(nt 64~816);10D2カッパ軽鎖(nt 64~399);10D2カッパ軽鎖CDR1(nt 133~183);10D2カッパ軽鎖CDR2(nt 229~249);10D2カッパ軽鎖CDR3(nt 346~369);リンカー(nt 400~462);10D2重鎖(nt 463~816);10D2重鎖 CDR1(nt 553~567);10D2重鎖CDR2(nt 610~660);10D2重鎖CDR3(nt 760~774);CD8ヒンジ(nt 817~951);CD8膜貫通(nt 952~1023);CD28 ICD(nt 1024~1146);4-1BB ICD(nt 1147~1272);CD3ζ ICD(nt 1273~1608)
atggcattgcctgttacagctctgctgctgcccctggctctgcttctgcatgctgccagacctaacatcatgatgacccagagcccgtcgtccctcaccgtgtccgctggcgagaaggtgaccatgtcttgcaaatcctctcaatctatcctgtacggctcgacccagaagaactacctggcatggtaccagcagaagcccgggcagagccctaagctgctgatttattgggcttccactcgtgagagcggggtccccgaccgcttcaccggctccggctccggcaccgacttcaccctgaccatctcttccgtgcaggccgaagatctggccgtgtattactgtcaccagtacctttcgagctacaccttcggcggtggcactaagttagagatcaagtcgggcgggggaggaagtggcgggggtggttctggcggcggtggttccggcggaggagggtccgaggtgcagctgcagcagagcgggcccgagctggtgaatccaggcgcgtcagtgaagatgtcatgcaaagcttctggctactccttcaccagctacatcttgcattgggtcaagcagaagcctggacagggtctggagtggatcggttatattaacccgtacaacgacgccaccaagtacaacgagaaatttaagggcaaggccacgctcactagcgataaaagctcgtccacggcctacatggaattgagttccgtcacctccgaggacagcgcggtgtactactgttgctctatgatcaccacagcctattgggcgtactggggccagggcactcttgttacagtatctgctacaacaacccctgctcctcggcctcctacaccagctcctacaattgccagccagcctctgtctctgaggcccgaagcttgtagacctgctgctggcggagccgtgcatacaagaggactggatttcgcctgcgacatctacatctgggctcctctggccggaacatgtggcgtgctgctgctgagcctggtcatcaccctgtactgccggtccaagagaagcagactgctgcacagcgactacatgaacatgacccctagacggcccggacctaccagaaagcactaccagccttacgctcctcctcgggacttcgctgcctacagaagcaagcggggcagaaagaagctgctgtacatcttcaagcagcccttcatgcggcccgtgcagaccacacaagaggaagatggctgctcctgcagattccccgaggaagaagaaggcggctgcgagctgagagtgaagttcagcagatccgctgacgcccctgcctacaagcagggacagaaccagctgtacaacgagctgaacctggggagaagagaagagtacgacgtgctggacaagcggagaggcagagatcctgagatgggcggcaagcccagacggaagaatcctcaagagggcctgtataatgagctgcagaaagacaagatggccgaggcctacagcgagatcggaatgaagggcgagcgcagaagaggcaagggacacgatggactgtaccagggcctgagcaccgccaccaaggatacctatgatgccctgcacatgcaggccctgcctccaagatag
【0337】
配列番号36 10D2-28BBz_CAR_(アミノ酸)
CD8リーダー配列(残基1~21);10D2 scFv(残基22~272);10D2カッパ軽鎖(残基22~133);10D2カッパ軽鎖 CDR1(残基45~61);10D2カッパ軽鎖 CDR3(残基77~83);10D2カッパ軽鎖CDR3(残基116~123);リンカー(残基134~154);10D2重鎖(残基155~272);10D2 重鎖CDR1(残基185~189);10D2重鎖CDR2(残基204~220);10D2重鎖CDR3(残基254~258);CD8ヒンジ(残基273~317);CD8膜貫通(残基318~341);CD28 ICD(残基342~382);4-1BB ICD(残基383~424);CD3ζ ICD(残基425~536)
malpvtalllplalllhaarpnimmtqspssltvsagekvtmsckssqsilygstqknylawyqqkpgqspklliywastresgvpdrftgsgsgtdftltissvqaedlavyychqylssytfgggtkleiksggggsggggsggggsggggsevqlqqsgpelvnpgasvkmsckasgysftsyilhwvkqkpgqglewigyinpyndatkynekfkgkatltsdkssstaymelssvtsedsavyyccsmittaywaywgqgtlvtvsatttpaprpptpaptiasqplslrpeacrpaaggavhtrgldfacdiyiwaplagtcgvlllslvitlycrskrsrllhsdymnmtprrpgptrkhyqpyapprdfaayrskrgrkkllyifkqpfmrpvqttqeedgcscrfpeeeeggcelrvkfsrsadapaykqgqnqlynelnlgrreeydvldkrrgrdpemggkprrknpqeglynelqkdkmaeayseigmkgerrrgkghdglyqglstatkdtydalhmqalppr
【0338】
本明細書で引用したそれぞれの特許、特許出願、および刊行物の開示内容は、その全体が参照によって本明細書に組み込まれている。本発明を具体的な実施形態を参照して開示してきたが、本発明の他の実施形態とバリエーションを他の当業者が本発明の真の精神と範囲を逸脱することなく考案できることは明らかである。添付の請求項は、そのような実施形態と、同等なバリエーションをすべて含むと解釈されることが想定されている。
図1
図2-1】
図2-2】
図3
図4
図5
図6
図7-1】
図7-2】
図8
図9
図10
図11
図12-1】
図12-2】
図13-1】
図13-2】
図14-1】
図14-2】
図15-1】
図15-2】
図16
【配列表】
2023552206000001.app
【国際調査報告】