(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-14
(54)【発明の名称】遊星キャリアアセンブリ
(51)【国際特許分類】
F16H 1/28 20060101AFI20231207BHJP
F16B 5/08 20060101ALI20231207BHJP
【FI】
F16H1/28
F16B5/08 A
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023534060
(86)(22)【出願日】2021-10-28
(85)【翻訳文提出日】2023-06-02
(86)【国際出願番号】 DE2021100862
(87)【国際公開番号】W WO2022117140
(87)【国際公開日】2022-06-09
(31)【優先権主張番号】102020131940.1
(32)【優先日】2020-12-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515009952
【氏名又は名称】シェフラー テクノロジーズ アー・ゲー ウント コー. カー・ゲー
【氏名又は名称原語表記】Schaeffler Technologies AG & Co. KG
【住所又は居所原語表記】Industriestr. 1-3, 91074 Herzogenaurach, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ミヒャエル ケック
(72)【発明者】
【氏名】ヤン ハイメル
(72)【発明者】
【氏名】ラルフ シンプフ
【テーマコード(参考)】
3J001
3J027
【Fターム(参考)】
3J001FA02
3J001GB01
3J001HA04
3J001JD11
3J001KB01
3J027FA17
3J027FA36
3J027FA37
3J027GC13
3J027GC22
3J027GE01
(57)【要約】
本発明は、遊星キャリア(3)の少なくとも1つの第1のキャリアチーク(2)と、少なくとも1つのシャフト(4)と、からなる、遊星キャリアアセンブリ(1)に関し、第1のキャリアチーク(2)及びシャフト(4)は、シャフト(4)の軸方向ストッパ(7)と第1のキャリアチーク(2)との間に軸方向に形成された第1の接合ゾーン(5)において、互いに結合されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
遊星キャリア(3)の少なくとも1つの第1のキャリアチーク(2)と、少なくとも1つのシャフト(4)と、からなる、遊星キャリアアセンブリ(1)であって、前記シャフト(4)には、少なくとも1つの誘導面(6)と、前記誘導面(6)に軸方向に隣接する少なくとも1つの軸方向ストッパ(7)と、が提供され、前記第1のキャリアチーク(2)のホルダ(9)は、前記誘導面(6)上に半径方向に支持されており、かつ、前記シャフト(4)の軸方向に整列された回転軸(8)上に中心合わせされており、前記第1のキャリアチーク(2)及び前記シャフト(4)は、第1の接合ゾーン(5)において、互いに少なくとも実質的に結合されており、前記第1のキャリアチーク(2)及び前記シャフト(4)が、前記軸方向ストッパ(7)と前記第1のキャリアチーク(2)との間に軸方向に形成された前記第1の接合ゾーン(5)において、互いに実質的に結合されていることを特徴とする、遊星キャリアアセンブリ(1)。
【請求項2】
前記誘導面(6)が、前記回転軸(8)の周囲で円周方向に延在していることを特徴とする、請求項1に記載の遊星キャリアアセンブリ(1)。
【請求項3】
前記誘導面(6)が、少なくとも複数のセクションにおいて外部円筒形表面を有することを特徴とする、請求項1又は2に記載の遊星キャリアアセンブリ(1)。
【請求項4】
前記軸方向ストッパ(7)には、少なくとも1つの接合面が提供されており、前記少なくとも1つの接合面は、前記キャリアチーク(2)に面し、かつ前記回転軸(8)から離れるように半径方向外向きに延伸し、かつ少なくとも部分的に前記接合面(25)の円周の周囲に延伸し、かつ前記第1の接合ゾーン(5)が、前記キャリアチーク(2)と前記接合面(25)との間に軸方向に形成されていることを特徴とする、請求項1又は2に記載の遊星キャリアアセンブリ(1)。
【請求項5】
前記シャフト(4)及び前記第1のキャリアチーク(2)が、前記第1の接合ゾーン(5)において、Vシームとして設計された第1の溶接シーム(10)によって、互いに実質的に結合されることを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載の遊星キャリアアセンブリ(1)。
【請求項6】
前記誘導面(6)及び前記軸方向ストッパ(7)が、ハブ(11)上に形成されており、前記ハブ(11)は、前記回転軸(8)から半径方向に離れるように方向付けられており、かつ前記シャフト(4)から発出していることを特徴とする、請求項1に記載の遊星キャリアアセンブリ(1)。
【請求項7】
前記シャフト(4)及び前記ハブ(11)が、1つの部品として、かつ1つの材料から、互いに作製されていることを特徴とする、請求項6に記載の遊星キャリアアセンブリ(1)。
【請求項8】
前記第1のキャリアチーク(2)及び前記シャフト(4)が、互いに異なる鋼鉄材料から形成されていることを特徴とする、請求項1に記載の遊星キャリアアセンブリ(1)。
【請求項9】
前記第1のキャリアチーク(2)が、少なくとも1つの第2の溶接シーム(14)によって、第2の接合ゾーン(13)において、第2のキャリアチーク(12)に接続され、前記第2の接合ゾーン(13)及び前記第2の溶接シームが、少なくとも部分的に、前記キャリアチーク(2、12)の間で軸方向になるように形成されていることを特徴とする、請求項1~8のいずれか一項に記載の遊星キャリアアセンブリ(1)。
【請求項10】
前記第1のキャリアチーク(2)及び前記第2のキャリアチーク(12)が、同一の部品として設計され、しかしながら前記第1のキャリアチーク(2)内の円筒形の孔として構成され、かつ前記回転軸(8)と同心であるホルダ(9)が、前記第2のキャリアチーク(12)内に形成され、かつ前記回転軸(8)と同心である貫通孔(29)とは異なる又は同じ内径を有することを特徴とする、請求項9に記載の遊星キャリアアセンブリ(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遊星キャリアの少なくとも1つのキャリアチークと、少なくとも1つのシャフトと、からなる、遊星キャリアアセンブリに関し、シャフトは、少なくとも1つの誘導面と、誘導面に軸方向に隣接する少なくとも1つの軸方向ストッパと、が提供され、キャリアチークのホルダは、誘導面上に半径方向に支持されており、シャフトの軸方向に整列された回転軸上に中心合わせされ、キャリアチーク及びシャフトは、少なくとも1つの接合ゾーンにおいて、互いに少なくとも実質的に結合されている。
【背景技術】
【0002】
このタイプの遊星キャリアアセンブリを有する遊星ギアボックスが、DE11 2012 000 461 B4に開示されている。この遊星ギアボックスは、遊星ギア、遊星ピン、及び遊星キャリアアセンブリによって形成されている。遊星キャリアアセンブリは、様々な構成要素から構成されている。1つの構成要素は、2つのキャリアチークから構成されている遊星キャリアであり、別の構成要素は、ラジアルフランジを有するシャフトである。遊星キャリアは、板金で作製されている2つのキャリアチークを有し、これらはウェブ及び遊星ピンによって軸方向に互いに接続されている。遊星キャリアとシャフトとは互いに取り外し不可能に材料的に結合されている。DE11 2012 000 461 B4の
図1に示される実施形態によれば、キャリアチークのうちの一方は、内側円筒形誘導面を備えた貫通孔を有する。誘導面の内径は、フランジの外部円筒形誘導面の外径に公称上対応する。誘導面の各々は、片側の面取り部によって軸方向に隣接している。キャリアチークは、内側円筒形誘導面及び外側円筒形誘導面が互いに同心かつ半径方向に位置するように、フランジ上に配置及び支持されており、よって、遊星キャリアがシャフト又はラジアルフランジに同心円状に誘導される。キャリアチークの環状ショルダは、フランジの外側円筒形誘導面の外径よりも小さい内径を有し、軸方向に貫通孔に隣接する。この環状ショルダは軸方向ストッパを形成する。軸方向ストッパは、2つの接合面が、互いに軸方向に整列し、同心円状に互いに半径方向に対向し、軸方向に互いにオフセットされないことを確実にする。キャリアチークは、ストッパを介して、キャリアチーク上に軸方向に支持される。対向する円錐状の接合面又は面取り部に起因して、軸方向に整列された矢印形の環状溝がこの点に形成され、結果的に、遊星キャリア及びシャフトは、軸方向に整列されたVシームと、互いに取り外し不可能に実質的に結合される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の目的は、最適化された遊星キャリアアセンブリを作製することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この目的は、請求項1に係る主題によって達成される。
【0005】
軸方向ストッパとキャリアチークとの間に軸方向に形成された接合ゾーンにおいて、キャリアチーク及びシャフトを互いに結合するための準備がなされる。したがって、接合ゾーンは、シャフトの回転軸によって垂直に貫通され、溶接シームを通って、又は接合ゾーン内で、軸方向に延在する少なくとも1つの半径方向平面内に形成される。したがって、溶接シームは、深さにおいて半径方向に延在する。接合ゾーンは、例えば、軸方向に互いに隣接して戴置される構成要素間に形成される接合部による材料固定接続の前に形成される。溶接技術では、その上に生成されるこのような溶接シームは突き合わせ溶接とも称される。接合部では、構成要素は、互いに遊びを伴って、若しくは伴わずに面するか、又は互いに戴置される。
【0006】
本発明の利点は、一方では、溶接デバイスの溶接ヘッドが、回転軸に対して直接垂直に、すなわち半径方向から、他の構成要素によって妨げられずに、直接、接合ゾーンに送給することができることである。この利点は、特に、本発明の一実施形態によれば、遊星キャリアアセンブリの遊星キャリアの2つのキャリアチークの間に更なる溶接シームを作製しなければならない場合にも発揮され、この場合、溶接ヘッドも半径方向から送給しなければならず、すなわち、接続ゾーンはやはり、シャフトの回転軸によって垂直に穿通され、溶接シームを通って、又は接合ゾーン内で、軸方向に延在する少なくとも半径方向平面内に存在する。後者は、例えば、キャリアチークが同一の部品として設計される場合に必要とされる。この場合、溶接シーム間で変更するときに溶接ヘッドを回す必要がないため、溶接プロセスが最適化される。さもなければ、溶接点間で変更するとき、2つの接合ゾーンを連続して溶接する場合、溶接ヘッドを、軸方向送給方向から半径方向送給方向に、又はその逆に旋回させる必要がある。結果として、溶接ヘッドは旋回可能でなければならず、旋回に起因して、溶接に必要な全体的なサイクル時間が長くなるため、溶接デバイスは、より複雑な設計を有しなければならない。
【0007】
DE11 2012 000 461 B4の発明の背景に関する章で既に説明されている構成では、溶接シームは軸方向に深く延在している。したがって、溶接ヘッドは、軸方向から送給されなければならない。このような遊星キャリアアセンブリを設計するときは、溶接ヘッドが妨害を伴わずに軸方向に送給され得るように、溶接ヘッドの寸法及び半径方向の動きの自由度を考慮に入れて、接合ゾーンとシャフトとの間に十分な半径方向距離があることを確認するように注意する必要がある。一方、本発明の利点は、溶接ヘッドの寸法とは無関係に、接合ゾーン間の距離を、シャフト上で直接、又はシャフトから、ある半径方向距離において実現することができることである。
【0008】
本発明の上記実施形態は、第1のキャリアチークは、少なくとも1つの第2の溶接シームによって第2の接合ゾーンにおいて第2のキャリアチークに接続され、第2の接合ゾーンは、キャリアチーク間で軸方向になるように形成されており、溶接ヘッドも半径方向から送給されることを特徴としており、結果として、溶接シームは、回転軸の方向において材料の深さまで半径方向に延伸する。
【0009】
この文脈において、本発明の実施形態はまた、2つのキャリアチークが同一の部品として設計されることを提供する。本発明の利点は、2つのキャリアチークを形成するために必要とされる形成工具(1つ又は複数)が、両方のキャリアチークについて同じ設計であるということである。両キャリアチークを製造するために必要な工具が1つの器具に低減されるため、工具費が節約される。加えて、個数が2倍になることに起因して、個別生産と比較して、各キャリアチークをよりコスト効率よく製造することができる。最終ステップにおいて、キャリアチークの中央の孔を異なる設計にする必要であり得る。シャフトとキャリアチークとを接続するためのホルダの孔を、このホルダの軸方向に反対側にある他方のキャリアチークの孔とは異なる設計にする必要であり得る。これは、例えば、大きい太陽ギアが、第2のキャリアチークを通って、遊星キャリアの中へ挿入されなければならないときに、必要であり得る。代替的に、第2のキャリアチークの孔も大きく、構成要素、及びアセンブリ又は遊星キャリアアセンブリ内の構成要素のアセンブリのための送給工具のために十分なスペースがある。
【0010】
キャリアチーク、特に遊星ギアのための接触点には、滑りコーティング、例えば、リン酸マンガンコーティングが提供されていることが考えられる。
【0011】
本発明の一実施形態は、第1のキャリアチークを誘導する誘導面が、回転軸の周りに周方向に断続的又は連続的に延在していることを提供する。誘導面の機能は、シャフトに取り付けられたキャリアチークを、シャフトの回転軸に対して半径方向に支持し、中心合わせすることである。キャリアチークは、反対側のキャリアチークとともに遊星キャリアを形成する。代替的に、遊星キャリアは、1つのキャリアチークのみから形成され得る。代替的に、遊星キャリアは、キャリアチークに加えて、他の構成要素から形成され得る。キャリアチークは、遊星ギアボックスの遊星ピンと、遊星ピンに着座された遊星ギアと、を担持する構成要素である。キャリアチークをシャフトの回転軸に正確に中心合わせすることが必要であり、これは、例えば、遊星ピンの中心距離、よって、回転軸に対する遊星ギアの中心距離が正しくなるようにするためであり、ひいては、遊星ギアボックスの他のギアとの適切な噛み合わせのために必要である。シャフトは、中空又は中実の材料となるシャフト又はスタブシャフトとして設計され、かつ回転軸を中心に回転できるか、又は回転され得る任意の回転対称構成要素を意味すると理解されたい。
【0012】
本発明の更なる実施形態は、誘導面が少なくとも複数のセクションにおいて外部円筒形表面を有することを提供する。このような円筒形表面は、例えば、シャフト又はシャフトに接続されたハブに円筒形セクションを機械加工することによって、容易かつ安価に作製することができる。代替的に、例えば少なくとも3つのスポーク状の突起、又はシャフトからちょうど半径方向に突出している突起上の複数の部分誘導面が、円周側面上で同じピッチで又は異なる距離で互いに離間していることも考えられる。
【0013】
本発明の更なる実施形態は、軸方向ストッパに少なくとも1つの接合面が提供されることを提供する。接合面は、キャリアチークに面し、回転軸から離れるように半径方向外向きに延伸し、かつ回転軸の周りを少なくとも複数のセクションにおいて又は完全に周方向に延伸している。第1の接合ゾーンは、キャリアチークと接合面との間に軸方向に形成される。したがって、有利に、軸方向ストッパはシャフト上に形成され、ここでは、好ましくはシャフトのハブ上に形成され、外部円筒形誘導面を作製するための機械加工シーケンスに簡単かつ安価に技術的に組み込むことができる。結果として、キャリアチークの製造を単純化することができる。誘導面に戴置されるホルダは、パンチングによって安価に作製することができる。これまでに既知の従来技術では、既知の軸方向ストッパを形成するために、例えば機械加工プロセスによって、ホルダの内側にステップを導入する必要があった。
【0014】
本発明の更なる構成は、シャフト及び第1のキャリアチークが、第1の接合ゾーン内に形成された溶接シームによって互いに実質的に結合されることを提供する。溶接シームは、例えば、回転軸の周りに少なくとも部分的に延在するVシームとして設計される。
【0015】
溶接シームでは、構成要素の材料は、追加材料の補助を伴って、又は伴わずに、例えば、キャリアチークとシャフトとが互いに軸方向に接触する溶接接合部の接合ゾーン内に、互いに実質的に結合されている。回転軸に沿い、接合ゾーンを横切る軸方向長手方向セクション内での外観に応じて、溶接シームは、突き合わせ溶接及び隅肉溶接又はVシームとして定義及び実行される。
【0016】
突き合わせ溶接の場合、2つの構成要素が接合ゾーンで軸方向に突き合わされる。加えて、貫通溶接されたシームと貫通溶接されていない溶接シームとの間で区別される。溶接シームが隣接部全体に深く延伸している場合、シームは、貫通されている。貫通していないシームの場合、実質的結合のないゾーンは、接合部又は隣接部の深さにおいて残る。本発明に関して検討されている場合では、溶接シームは隣接部(接合ゾーン)全体にわたって深く半径方向に延伸するか、又は、構成要素が戴置される、実質的結合のない半径方向に延伸するゾーンが接合ゾーン内に残る。
【0017】
Vシームでは、材料接続のための表面は、互いに対してV字型に傾斜している。このような表面は、形成された部品に、例えば、機械加工によって、又は曲げ、エンボス加工、スタンピングなどによって導入される。Vシームは通常、突き合わせ溶接である。
【0018】
本発明の一実施形態は、第1のキャリアチークが、少なくとも1つの第2の溶接シームによって第2の接合ゾーンにおいて第2のキャリアチークに接続されることを提供する。この場合、第1のキャリアチークは、少なくとも1つの第2の溶接シーム又はスポット溶接部によって、キャリアチーク間に軸方向に形成された第2の接合ゾーンにおいて第2のキャリアチークに接続される。第2の接合ゾーン及び第2の溶接シームは各々、少なくとも部分的に半径方向に延伸し、したがってキャリアチーク間の少なくとも1つの半径方向平面内で軸方向に形成される。
【0019】
本発明の更なる実施形態は、誘導面及び軸方向ストッパが、ハブ上に形成されており、ハブが、回転軸から半径方向に離れるように方向付けられており、シャフトから発出していることを提供する。したがって、ハブは、シャフトから半径方向に突出する構成要素、又はシャフトから半径方向に突出するスポーク状若しくはディスク状のセクション若しくはフランジなどであり、ハブとともに1つの部品として、かつ1つの材料から作製され、好ましくは、回転対称で、誘導面及び軸方向ストッパとしての外周を有するように形成される。シャフトのこのような実施形態の利点は、キャリアチークを用途ごとに可変的に適合させ、シャフト又はハブに取り付けることができることである。この場合、例えば、ハブ及びホルダの半径方向寸法を変更することによってのみ、キャリアチークをハブに固定するための十分なスペース及び動きの自由度を作成することができる。代替的に、回転軸、太陽ギア、又は太陽ギアの歯までの遊星ピンの中心距離は、ハブの寸法によって設定することができる。シャフトのブランクにはハブに対して対応する余裕があり、これは、次いで、様々な要件に適するように、除去することができる。しばしば、キャリアチーク及びシャフトの構成要素又は材料には様々な要件が課される。例えば、シャフトを硬化させ、機械加工に適した材料で形成する必要がある。一方、遊星キャリアのキャリアチークは、全ての場合において硬化する必要がなく、好ましくは冷間形成に好適である鋼鉄から形成され得る。有利に、ハブは、本発明の実施形態によって提供されるように、シャフトと一緒にシャフトと同じ材料から1つの部品として作製されるべきである。例えば、より容易に溶接することができる硬化されていないゾーンを、シャフトから半径方向に突出するハブ上に作製又は提供することができる。
【0020】
遊星キャリアアセンブリを有する遊星ギアボックスには、遊星ピンが提供され、遊星ピンは、キャリアチーク内の左右に各々支持され、その上に、遊星ギアが着座される。加えて、遊星ギアボックスは、任意選択的に、少なくとも1つの太陽ギア又は少なくとも1つのリングギア、又はその両方を有する。キャリアチークは、遊星ウェブと呼ばれるものを形成する。任意選択的に、支持パネルには、潤滑剤誘導構造又はオイル受け皿などの追加機能要素が設けられ得る。
【0021】
本発明の更なる実施形態は、少なくとも1つのオイル受け皿を提供する。オイル受け皿は、キャリアチークのうちの1つ、好ましくは第1のキャリアチークに取り付けられる。キャリアチークには、接続孔が提供されており、遊星ピンは、オイルボアを有する。オイル受け皿は、少なくとも1つの支持プレートと、支持プレートに接続され、かつ軸方向に整列されたトランスミッションデバイスの回転軸の周りに延在するチャネルと、を有する。オイル受け皿にはまた、オイル誘導ノズル及び接続要素が提供されている。オイル誘導ノズルは、オイルボアのうちの1つに軸方向に挿入される。オイル受け皿は、いずれの場合も接続孔の1つと少なくとも部分的にしっかりと係合する接続要素によってキャリアチーク上に保持される。キャリアチークから離れて面する側で、軸方向において、接続要素の各々の後にプラットフォームが続く。プラットフォームの各々上で、プラットフォームの上、かつ表面の上で軸方向に立ち上がる少なくとも1つの突起は、それぞれのプラットフォームの平坦な表面から突出する。この構成の利点は、突起が、キャリアチークのオイル受け皿のアセンブリ中に位置的な方向付けを補助する役割を果たし、したがって、オイル誘導ノズルをオイルボアへ、及び接続要素を接続孔へという両方の組み立て位置決めを正しく行うために提供されることにある。加えて、突起が適切に設計されている場合、組み立て中にオイル受け皿を突起の上で把持又は誘導することもできる。
【0022】
本発明の一実施形態は、それぞれの突起が軸方向に突出するそれぞれの表面が、回転軸によって垂直に貫通する仮想半径方向平面内に延伸することを提供する。全てのプラットフォームの平坦な表面は、共通の仮想半径方向平面内に位置し得るか、又は軸方向に互いに離れた半径方向平面内で軸方向に互いにオフセットされ得る。このような構成の利点は、1つ以上の半径方向平面上に整列されたこれらの面が、アセンブリ中にキャリアチーク又は遊星ギアボックスに対してオイル受け皿を正確に位置決めするために必要な基準面として機能することである。
【0023】
加えて、任意選択的に、接続要素のうちの1つが、キャリアチークに面する側でそれぞれのプラットフォームから軸方向に突出していること、すなわち、好ましくはプラットフォームと一体に形成されていることを提供する。この設計上の特徴の利点は、プラットフォームの対応する設計に起因して、接続要素の半径方向の間隔が、支持プレート又はチャネルの半径方向の寸法に依存しないか、又は部分的にしか依存しないという事実にある。必要な場合、接続要素を有するプラットフォームは、オイル受け皿の外側輪郭を越えて半径方向に突出することができる。そのため、プラットフォームは、接続要素が突出する半径方向延伸部を形成する。オイル受け皿の取り付け点(接続要素)間の距離は、実際のオイル誘導の位置に関係なく、プラットフォームの寸法を介してキャリアチークの設計に合わせて調整することができる。加えて、本発明に起因して、ハブ及び接合ゾーンの寸法、並びにオイル受け皿間の距離は、要件を考慮して、有利に互いに調整又は適合させることができる。
【0024】
加えて、任意選択的に、それぞれの突起が、それぞれのプラットフォーム及びチャネルに接続されたリブとして設計されることが提供される。一方では、リブはアセンブリ中に容易に係合させることができ、他方では、リブは固定構造の補強を形成する。後者は、例えば、オイル受け皿のキャリアチークへの組み立て中に、接続要素が、圧力で、接続孔にプレス又はスナップされる場合に役立つ。
【0025】
本発明の一実施形態は、遊星キャリアとオイル受け皿との間の取り外し可能又は取り外し不可能なはめ込みスナップ接続が、接続孔及び接続要素によって実現されることを提供する。接続要素は、例えば、スナップフックとして設計されているか、又はダボのような拡張設計を有する。このような構成は、特にプラスチックからオイル受け皿を作製する場合に、容易に作製することができる。接続孔内には、スナップフック又は膨張ダボを引っ掛けるための対応するアンダーカットが形成されるか、又はフック若しくは拡張要素が、軸方向にそれぞれの接続孔を通って到達し、反対側に引っ掛かり、キャリアチークの壁又は壁セクションの背後を把持する。
【0026】
オイル受け皿のオイル導入ノズルのうちの1つ、いくつか、又は全てである、それぞれのオイル誘導ノズルは、遊星ピンのオイルボアのうちの1つに係合し、このオイルボアは、通常、遊星ピン内で軸方向に延伸し、貫通孔又は止まり孔として設計される。横断ボアは、それぞれのオイルボアから、少なくとも1つの遊星ギアのための少なくとも1つの遊星ベアリングに通じている。
【0027】
以下において、本発明は、例示的な実施形態を参照してより詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】回転軸8に沿った長手方向セクションにおける遊星ギアボックス15を示す。回転軸8は、空間内での実際の向きとは無関係に、軸方向に整列していると見なされる。半径方向とは、回転軸8を横断する方向を意味する。
【
図2】
図1に示される遊星ギアボックス15内に設置された、
図5に示される遊星キャリアアセンブリ1のシャフト4を、回転軸8に沿った長手方向セクションにおける、部分的に個々の部品として示す。
【
図3】個々の部品として
図5に示される遊星キャリアアセンブリ1からの第1のキャリアチーク2を示す。
【
図4】個々の部品として
図5に示される遊星キャリアアセンブリ1からの第2のキャリアチーク12を示す。
【
図5】回転軸8に沿った長手方向セクションにおける遊星キャリアアセンブリ1を示す。
【
図6】
図5に示される遊星キャリアアセンブリ1のシャフト4の第2のシャフトセクション24の反対側に配置されたオイル受け皿19の全体図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0029】
図1-遊星ギアボックス15は、遊星キャリアアセンブリ1と、遊星ギア16と、遊星ピン17と、遊星ベアリング18と、オイル受け皿19と、からなる。遊星ギア16の各々は、遊星ベアリング18を有する遊星ピン17に回転可能に装着される。遊星ピン17の各々は、右側の第1のキャリアチーク2及び左側の第2のキャリアチーク12内で支持されている。遊星ピン17には止まり孔20が各々提供されており、そこから、横断ボア21がそれぞれの遊星ベアリング18に通じている。オイル受け皿19は、第1のキャリアチーク2上に横方向に配置され、各場合において、1つの止まり孔20内で軸方向にオイル誘導ノズル22と係合する。
【0030】
図1及び
図5-遊星キャリアアセンブリ1は、第1のキャリアチーク2と、第2のキャリアチーク12と、シャフト4と、から形成される。第1のキャリアチーク2は、ハブ11に実質的に結合され、第1のキャリアチーク2及び第2のキャリアチーク12は、互いに実質的に結合される。
【0031】
図2-シャフト4(
図2では切り出しとしてのみ示されている)は、鋼鉄から1つの部品として及び1つの材料から形成されており、2つのシャフトセクション23、24から、かつハブ11から形成されている。ハブ11は、第1のシャフトセクション23と第2のシャフトセクション24との間に軸方向に位置し、回転軸8の周囲に延在している。ハブ11は、2つのシャフトセクション23及び24から半径方向に突出している。図面内の左側のシャフトセクション23は、図面内の右側のシャフトセクション24の直径と比較して、2段階で小さい直径を有する。ハブ11は、外周側面上の外部円筒形誘導面6と、軸方向ストッパ7と、を有する。軸方向ストッパ7は、誘導面6に軸方向に直接隣接し、外側円筒形誘導面6から半径方向に突出している。軸方向ストッパ7上に形成される接合面25は、誘導面6上で直接続く。接合面25は、回転軸8が垂直に貫通する仮想半径方向平面E-E内に位置する環状表面である。代替的に、環状表面の代わりに、軸方向ストッパ上の複数の個別の軸方向ストッパ面又は点が、同じ半径方向平面内に、又は互いに軸方向にオフセットされている仮想半径方向平面内に形成され得る。
【0032】
図3-第1のキャリアチーク2は、板金で作製される構成要素であり、冷間形成によって、例えば、絞り加工及び/又はエンボス加工及びスタンピングなどによって製造される。キャリアチーク2は、対称軸を中心とした円周上に、互いに対して均一に分布された第1のウェブ26を有する。対称軸は、シャフトの回転軸8上で、装着された遊星キャリアアセンブリ1内に位置する。
図3に係る断面図に起因して、ウェブ26のうちの2つのみが見えており、1つは断面において、1つは内側から半径方向に見たものである。キャリアチーク2には、ホルダ9である軸方向貫通孔が提供されている。ホルダ9は、誘導面6上で誘導して着座させるために提供されている(
図5参照)。キャリアチーク2には、遊星ギアボックス15(
図1参照)内に設置される遊星ピンの数に対応するボルトベアリング27が提供されている。ピンベアリング27は、軸方向貫通孔である。断面図のため、
図3にはピンベアリング27のうちの1つのみが見えている。また、キャリアチーク2には、例えば技術的な理由で導入され、かつ/又はオイル受け皿を取り付けるために使用される更なる貫通孔28が提供される(
図5及び
図6参照)。この例示的な実施形態では、3つのボルトベアリング27及び3つの貫通孔28が提供されているが、断面図に起因して、1つのみが見えている。
【0033】
図4-キャリアチーク12の形状は、基本的に
図3に示されるキャリアチーク2に対応する。キャリアチーク12も、3つのウェブ26、ピンベアリング27、及び貫通孔28を有する。しかしながら、キャリアチーク12の中央貫通孔29は、キャリアチーク2のホルダ9よりも大きい直径を有する(
図3参照)。
図4に係る断面図に起因して、ウェブ26のうちの2つのみが見えており、1つは断面として、1つは内側から半径方向に見たものである。この例示的な実施形態では、3つのボルトベアリング27及び3つの貫通孔28が提供されているが、断面図に起因して、1つのみが見えている。
【0034】
図5-第1のキャリアチーク2は、ホルダ9の内側輪郭を介して誘導面6上に半径方向に支持されており、シャフト4の回転軸8上に中心合わせされている。第1のキャリアチーク2及びシャフト4は、第1の接合ゾーン5において互いに少なくとも実質的に結合される。第1のキャリアチーク2及びシャフト4は接合ゾーン5において互いに軸方向に接触しており、回転軸8の周囲に延在する軸方向ストッパ7と第1のキャリアチーク2との間に軸方向に形成された第1の接合ゾーン5において、互いに実質的に結合される。第1の接合ゾーン5は、キャリアチーク2と接合面25との間に軸方向に形成され、回転軸8が垂直に貫通する半径方向平面E-E内に位置する。
【0035】
シャフト4及び第1のキャリアチーク2は、第1の接合ゾーン5において、Vシームとして設計された第1の溶接シーム10によって互いに実質的に結合される。Vシームは、回転軸8に垂直な半径方向において半径方向深さまで延伸しており、かつ、外周側面上において回転軸8を中心として延在している。その結果は、全体が溶接されていないシームであり、ここでは、接合又は隣接部の深さにおいて、物質結合がないゾーンが、Vの先端と誘導面6との間に半径方向に残り、その上に、キャリアチーク2及びストッパ7が、軸方向に互いに戴置される。
【0036】
第1のキャリアチーク2及び第2のキャリアチーク12は、ウェブ26を介して軸方向に互いに戴置される。遊星ベアリング27は、軸A上で互いに同心円状に整列されている。第1のキャリアチーク2は、少なくとも1つの第2の溶接シーム14によって、第2の接合ゾーン13において第2のキャリアチーク12に接続される。第2の接合ゾーン13、よって第2の溶接シーム14は、キャリアチーク2と12との間に軸方向に形成される。この全体溶接シームの場合、溶接シームは、深さにおいて隣接部(接合ゾーン)の一部だけにわたって半径方向に延伸する。
【0037】
図6-
図6は、オイル受け皿19が、シャフト4と、例えば、
図5に示す遊星キャリアアセンブリ1のシャフト4との組み立ての準備のために整列された位置にあるオイル受け皿19を示す。オイル受け皿19は、支持プレート30と、チャネル31と、オイル誘導ノズル22と、接続要素32と、からなる。チャネル31により、複数のプラットフォーム33は1つの部品として1つのプラスチック材料から形成され、半径方向、すなわち対称軸又は回転軸8に交差する方向においてチャネル31の外側輪郭40を越えて半径方向に突出する。接続要素32は、それぞれのプラットフォーム33の片側において軸方向に突出し、突起34は、他方の側でプラットフォーム33の表面35から軸方向に突出する。それぞれの突起34は、ガセットプレートの形態で設計され、1つの材料からの1つの部品として、その半径方向ルート部36が表面35に融合し、1つの材料からの1つの部品として、その軸方向ルート部37がチャネル31に融合する。接続要素32は、スナップ機能を有するプラグコネクタであり、このためにスナップラグ39を有する。
【0038】
図1-オイル受け皿19の支持プレート30は、第1のキャリアチーク2の端面38上に軸方向に戴置され、止まり孔20内にオイル誘導ノズル22が差し込まれる。オイル受け皿19は、接続要素32が、キャリアチーク2の壁に形成されたそれぞれの貫通孔28を軸方向に通過し、かつ、スナップインラグ39が、オイル受け皿19から離れて面するキャリアチーク2の側で軸方向又は半径方向に後方に到達するように、接続要素32によって支持構成要素2に固定される。第1のキャリアチーク2及び第2のキャリアチーク12は、ウェブ26を介して軸方向に互いに戴置される。第1のキャリアチーク2は、少なくとも1つの第2の溶接シーム14によって、第2の接合ゾーン13において第2のキャリアチーク12に接続される。第2の接合ゾーン13、よって第2の溶接シーム14は、キャリアチーク2と12との間に軸方向に形成される。
【符号の説明】
【0039】
1 遊星キャリアアセンブリ
2 第1のキャリアチーク
3 遊星キャリア
4 シャフト
5 (キャリアチークとシャフトとの間の)第1の接合ゾーン
6 シャフト上の誘導面
7 シャフト上の軸方向ストッパ
8 シャフトの回転軸
9 キャリアチークのホルダ
10 溶接シーム
11 ハブ
12 第2のキャリアチーク
13 第2の接合ゾーン
14 第2の溶接シーム
15 遊星ギアボックス
16 遊星ギア
17 遊星ピン
18 遊星ベアリング
19 オイル受け皿
20 止まり孔
21 クロスボア
22 オイル受け皿のオイル誘導ノズル
23 第1のシャフトセクション
24 第2のシャフトセクション
25 接合面
26 ウェブ
27 ピンベアリング
28 貫通孔
29 貫通孔
30 支持プレート
31 チャネル
32 接続要素
33 プラットフォーム
34 突起
35 表面
36 半径方向ルート部
37 軸方向ルート部
38 端面
39 スナップノーズ
40 外側輪郭
【国際調査報告】