(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-14
(54)【発明の名称】タイヤの構造物に入るゴム状材料の温度を決定するための方法
(51)【国際特許分類】
G01K 11/125 20210101AFI20231207BHJP
G01B 15/02 20060101ALI20231207BHJP
【FI】
G01K11/125
G01B15/02 C
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023534152
(86)(22)【出願日】2021-11-26
(85)【翻訳文提出日】2023-06-05
(86)【国際出願番号】 FR2021052100
(87)【国際公開番号】W WO2022123138
(87)【国際公開日】2022-06-16
(32)【優先日】2020-12-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】514326694
【氏名又は名称】コンパニー ゼネラール デ エタブリッスマン ミシュラン
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100144451
【氏名又は名称】鈴木 博子
(74)【代理人】
【識別番号】100196221
【氏名又は名称】上潟口 雅裕
(72)【発明者】
【氏名】モントワ オーレリアン
【テーマコード(参考)】
2F056
2F067
【Fターム(参考)】
2F056VF11
2F067AA27
2F067BB01
2F067BB16
2F067CC11
2F067DD09
2F067EE03
2F067EE04
2F067HH02
2F067JJ02
2F067KK08
2F067NN03
(57)【要約】
本発明は、多層ポリマー製品の少なくとも1つの層の温度を決定するための方法に関し、本方法は、
-測定される製品を移送テーブル上に位置決めするステップと、
-製品を少なくとも1つのテラヘルツセンサを含む構造体の下で進ませるステップと、
-製品の方向に入射テラヘルツ放射線を放出するステップと、
-入射テラヘルツ放射線が直面する界面で反射された複数のテラヘルツ放射線のスペクトルに対応する信号を検出するステップと、
-直面する様々な界面に対応する様々なピークを決定する目的で信号を分析するステップと、
-各ピークの振幅に応じて、入射放射線が通過する各材料層の温度を決定するステップと、
を含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
多層ポリマー製品の少なくとも1つの層の温度を決定するための方法であって、
-測定される製品を移送テーブル上に位置決めするステップと、
-前記製品を少なくとも1つのテラヘルツセンサを含むフレームの下で前進させるステップと、
-前記製品の方向に入射テラヘルツ放射線を放出するステップと、
-入射光線が直面する界面によって反射された一連のパルスに対応する信号を検出するステップと、
-前記信号を分析して、直面する様々な界面に対応する様々なピークを決定するステップと、
-前記ピークの各々の振幅に基づいて、前記入射光線が通過する材料層の各々の温度を決定するステップと、
を含む、決定方法。
【請求項2】
前記多層ポリマー製品は、硬化前又は硬化後の、複数のゴム材料層で構成されている製品である、請求項1に記載の決定方法。
【請求項3】
前記製品は、タイヤ、キャタピラトラック又はコンベヤベルトである、請求項2に記載の決定方法。
【請求項4】
前記分析するステップの前に、生信号を処理するステップを含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の決定方法。
【請求項5】
前記製品の前進速度は、0と70m/分との間である、請求項1から4のいずれか一項に記載の温度決定方法。
【請求項6】
前記テラヘルツセンサの取得速度は、100Hzより大きい、請求項1から5のいずれか一項に記載の決定方法。
【請求項7】
多層ポリマー製品の少なくとも1つの層の特性を決定するための方法であって、
前記方法は、請求項1から6のいずれか一項に記載の温度決定方法の全てのステップを含み、さらに、前記信号の2つのピークの間の差の関数として、前記入射光線が通過する前記材料層の各々の厚さを決定するステップを含む、方法。
【請求項8】
多層ポリマー製品の少なくとも1つの層の特性を決定するためのシステムであって、
-前記多層ポリマー製品を前進させるための支持テーブルと、
-テラヘルツセンサと、
-前記ポリマー製品から反射された信号を取得及び分析するための手段と、
-請求項1から6のいずれか一項に記載の多層材料層の温度決定方法を実施するための手段と、
を備えるシステム。
【請求項9】
請求項7による材料層の厚さを決定するための方法を実施するための手段をさらに含む、請求項8に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤ製造の分野に関する。より具体的には、本発明は、タイヤを形成するゴム製品の製造方法の詳細には温度についての管理、監視及び制御に関する。
【背景技術】
【0002】
タイヤ製造方法は、
-タイヤの構成物に使用される半完成製品を準備する準備段階、
-設計者が最初に規定した構成に従って、これらの半完成製品を組み立てる組立段階、
-加硫とも呼ばれる加硫を行う加硫段階、
である複数の主たる段階を含む。
【0003】
準備段階及び組立段階を最適に管理するためには、それぞれの段階の間に温度測定を行うことが有効である。この温度測定は、単層からなる単純な製品又がさまざまな層の組み合わせからなる複雑な製品で行われる場合がある。これらの測定は、現在、未硬化ゴムに穿孔する方法で行われている。この方法は実施が容易であるが、測定精度を十分に保証しない。具体的には、この方法は手作業で行われるため、穿孔深さ(複雑な製品の場合、間違った深さは間違った層の測定につながる)、測定ごとに変わる可能性のある穿孔時間、及びオペレータごとに変わる可能性のある値の判読を含む、制御が困難な多くのパラメータの影響を受けやすい。
【0004】
これらの欠点を是正するために、製造方法を担当する品質管理者は安全マージンを導入するが、これは生産性能を低下させる。
【0005】
さらに、製造方法全体の管理を保証するために、ラインの最後で、換言すれば硬化後のタイヤでも温度測定が行われている。このような測定は、現在、熱電対を硬化ゴムに挿入することによって行われているが、これは、測定が行われる製品の損傷又は破壊につながる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、本発明は、多層ポリマー材料の少なくとも1つの層の温度を測定するための正確かつ非侵襲的な方法を提案することによって、これらの欠点を改善することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
1つの特定の実施形態において、本発明は、何らかの製造段階の間に、タイヤの様々なゴム材料層の温度を決定することを可能にする方法を提案することになる。
【0008】
従って、本発明は、多層ポリマー製品の少なくとも1つの層の温度を決定するための方法に関し、本方法は、
-測定される製品を移送テーブル上に位置決めするステップと、
-製品を少なくとも1つのテラヘルツセンサを含むフレームの下で前進させるステップと、
-製品の方向に入射テラヘルツ放射線(テラヘルツスペクトルの走査部分)を放出するステップと、
-入射テラヘルツ光線が直面する界面によって反射されたテラヘルツ光線の複数のスペクトルに対応する信号を検出する(製品の種類に応じた周波数スキャン)ステップと、
-信号を分析して、直面する様々な界面に対応する様々なピークを決定するステップと、
-各ピークの振幅に基づいて、入射光線が通過する各材料層の温度を決定するステップと、
を含む。
【0009】
テラヘルツ放射線は、所望のスペクトルのための走査システムによって、いくつかの周波数で放出される。有利には、放出は、製品に対して垂直な又は実質的に垂直な入射角で行われる。また、有利には、この放出は焦点面で行われる。
【0010】
このスペクトルは、分析される材料の吸収率、所望の精度及び試料の厚さに応じて選択される。
【0011】
放出されたテラヘルツ波は、直面する各製品界面から部分的に戻される。戻された信号の各々を分析し、波の伝搬速度及び波の減衰の2つの情報部分を推測するようになっている。
【0012】
具体的には、受け取った波の形状は、n=n’+i*n’’の複素形式でモデル化することができ、ここで、
-nは、各界面で戻されるTHz波の振幅であり、
-n’は、THz波の実数部(屈折率)であり、波の伝搬時間を測定することで層の厚さを決定することができる伝搬速度を表し、
-n’’は、THz波の減衰を表す波の虚数部(吸収係数)である。
【0013】
しかしながら、驚くべきことに、試料の温度変化は、伝搬時間の安定を維持しながらテラヘルツ波の振幅を変化させることが分かっている。
【0014】
結果として、信号の様々なピークを分析することで、直面する様々な媒体の温度を決定することが可能になる。
【0015】
この場合、振幅の変化は、ゴム系列ごとに異なる(形状、進行過程など)ことが明記される。従って、系列ごとにチャートを作成することが有効である。チャートは、熱電対プローブを備えるゴム試料から作成される。次に試料を加熱し、次に空気中で自然冷却させる。この2つの段階の間に、テラヘルツデータ及び熱電対データを相関させることでチャートを作成することができる。
【0016】
従って、これらのデータに基づいて、予め定義されたチャートと外部界面の振幅から、単層又は多層試料の温度を決定することができる。
【0017】
この場合、温度を決定できるようにするためには、支持体の屈折率を知ることが必要であることが明記される。
【0018】
従って、本発明による方法は、正確で非侵襲的な温度測定を行うことを可能にする。この測定は、どのようなタイプの製品であっても、その状態がどうであれ、行うことができる。
【0019】
従って、1つの実施形態では、多層ポリマー製品は、硬化前又は硬化後の、複数のゴム材料層で構成された製品である。さらに、製品は、有利には、タイヤ、キャタピラトラック又はコンベヤベルトである。それにもかかわらず、ポリマー材料、より好ましくはエラストマー材料の1又は2以上の層で構成された何らかの製品に使用することができる。また、金属又は繊維補強要素をさらに含む製品にも適用可能である。
【0020】
この測定は自動的に行われるので、手動で行われる測定のばらつきの影響を受けることはない。従って、このような方法は、より信頼性の高い測定値を得ること及び最終製品の品質を保証する安全マージンを縮小することができる。従って、この方法を使用することにより、生産速度の向上及び不適合製品の削減の両方により、より良い生産効率を達成することができる。
【0021】
有利な1つの実施形態では、本発明による方法は、分析ステップの前に、生信号を処理するステップを含む。
【0022】
有利な1つの実施形態では、製品の前進速度は、0と70m/分との間である。
【0023】
有利な1つの実施形態では、テラヘルツセンサの取得速度は、100Hzより大きい。
【0024】
また、本発明は、多層ポリマー製品の少なくとも1つの層の特性を決定するための方法に関し、本方法は、上記実施形態の1つによる温度決定方法の全てのステップを含み、さらに、信号の2つのピークの間の差の関数として、入射光線が通過する各材料層の厚さを決定するステップを含む。
【0025】
具体的には、入射テラヘルツ光線がポリマー材料層に到達する場合、反射光線の特性は層の厚さに依存することが分かっている。
【0026】
最後に、本発明は、上記のような方法を実施することを可能にするシステムに関する。
【0027】
従って、本発明は、多層ポリマー製品の少なくとも1つの層の特性を決定するためのシステムに関し、システムは、
-多層ポリマー製品を前進させるための支持テーブルと、
-テラヘルツセンサと、
-ポリマー製品から反射された信号を取得及び分析する手段と、
-反射された信号の分析に基づいて、多層材料層の温度を決定するための手段と、
を備える。
【0028】
好ましい実施形態では、システムは、反射された信号の分析に基づいて材料層の厚さを決定するための手段をさらに備える。
【0029】
本発明のさらなる利点及び実施形態は、非限定的である、様々な例示的な図の説明から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】本発明による方法を実施するためのシステムを示す。
【
図2】多層製品上のテラヘルツ放射線の影響を概略的に示す。
【
図3】本発明により実施されるテラヘルツセンサによる取得によって生じる生信号及び処理信号を示す。
【発明を実施するための形態】
【0031】
図1に示される、本発明による方法の実施形態の一例では、多層製品101は支持テーブル102上に配置される。支持テーブルは、製品をX方向に前進させる手段を備える。テーブルには、テラヘルツセンサ103が配置されたフレームが載せられている。製品の前進速度は、テラヘルツセンサの取得速度に応じて設定される。好ましくは、毎分10と70mとの間である。
【0032】
図2は、異なる屈折率n1及びn2を有する媒体をそれぞれ形成する2つの層11及び12を含む製品1を概略的に示す。この製品1は、同様に異なる屈折率を有する支持体102(
図1のテーブル102に相当する)上に置かれ、層11の上面は周囲空気13と接触している。
【0033】
テラヘルツセンサが放射線を放出すると、入射テラヘルツ光線は製品1に到達する。この製品は、実際には、空気と層11との間の界面、層11と層12との間の界面、及び層12と支持体102との間の界面である3つの界面を有する。
【0034】
入射THzパルス14が界面を通過する場合、パルスの一部が反射される。従って、THzパルスが多層製品内を伝搬する場合、一連のパルス15が反射される。
【0035】
図3は、2層のゴム材料を含む製品で取得された一連のパルスを表す信号の形状を示す。
【0036】
上の曲線は生信号を示し、下の曲線は分析を助けるために行われる前処理の後の信号を示す。
【0037】
連続する2つのパルス間の遅延は、通過した材料の厚さに正比例することが知られている。連続する2つのパルス間の遅延を基にした層の厚さの計算は、屈折率の実数部を用いて行われる。この数値は、層を構成する材料の特性であり、その中でのTHzパルスの伝搬速度を表す。従って、
図3に示す処理信号において、層11の厚さは、ピーク1とピーク2との間のタイムラグを測定することによって決定され、層12の厚さは、ピーク2とピーク3との間のタイムラグを測定することによって決定される。
【符号の説明】
【0038】
101 多層製品
102 支持テーブル
103 テラヘルツセンサ
【国際調査報告】