(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-14
(54)【発明の名称】CD47に特異的な抗体及びその使用
(51)【国際特許分類】
C07K 16/28 20060101AFI20231207BHJP
C12N 15/13 20060101ALI20231207BHJP
C12N 15/62 20060101ALI20231207BHJP
C12N 15/12 20060101ALI20231207BHJP
C07K 14/725 20060101ALI20231207BHJP
C07K 19/00 20060101ALI20231207BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20231207BHJP
C12P 21/08 20060101ALI20231207BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20231207BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20231207BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20231207BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20231207BHJP
A61K 35/17 20150101ALI20231207BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20231207BHJP
【FI】
C07K16/28
C12N15/13 ZNA
C12N15/62 Z
C12N15/12
C07K14/725
C07K19/00
C12N15/63 Z
C12P21/08
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
A61K39/395 N
A61K35/17
A61P35/00
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023534627
(86)(22)【出願日】2021-12-07
(85)【翻訳文提出日】2023-06-07
(86)【国際出願番号】 KR2021018467
(87)【国際公開番号】W WO2022124764
(87)【国際公開日】2022-06-16
(31)【優先権主張番号】10-2020-0169415
(32)【優先日】2020-12-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521533463
【氏名又は名称】イノベイション バイオ カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】InnoBation Bio Co., Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】100125450
【氏名又は名称】河野 広明
(72)【発明者】
【氏名】キム、キテ
(72)【発明者】
【氏名】キム、スング
【テーマコード(参考)】
4B064
4B065
4C085
4C087
4H045
【Fターム(参考)】
4B064AG27
4B064CA19
4B064CC24
4B064CE10
4B064DA01
4B065AA01X
4B065AA57X
4B065AA72X
4B065AA88X
4B065AA90X
4B065AB01
4B065BA02
4B065CA44
4B065CA46
4C085AA14
4C085AA16
4C085BB11
4C085BB31
4C085DD62
4C085EE01
4C087BB37
4C087BB65
4C087CA12
4C087NA14
4C087ZB26
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045CA40
4H045DA76
4H045EA20
4H045FA74
4H045GA21
(57)【要約】
本発明は、CD47に特異的な抗体及びその使用に関し、より詳細には、CD47に特異的に結合する抗体、該抗体を含むキメラ抗原受容体、及びそれらを含むCD47を発現する細胞によって媒介される疾患の予防又は治療のための医薬組成物に関する。
本発明では、CD47により特異的に結合する抗体をスクリーニングして新規抗体7種(7C7、5H4、5A4、4E12、3H3、3A5、1E7)を確立し、前記新規抗体がCD47抗原と特異的に結合することを確認した。
また、上記確立された抗体を用いてCD47を標的とするキメラ抗原受容体(CAR)の製造が可能であることを確認したので、本発明のCD47に特異的な抗体及びこれを用いて製造したキメラ抗原受容体はCD47を発現する癌又は腫瘍の予防又は治療に適用することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)配列番号1のアミノ酸で表されるCDR1領域、配列番号2のアミノ酸で表されるCDR2領域及び配列番号3のアミノ酸で表されるCDR3領域を含む重鎖可変部位、及び配列番号4のアミノ酸で表されるCDR1領域、配列番号5のアミノ酸で表されるCDR2領域及び配列番号6のアミノ酸で表されるCDR3領域を含む軽鎖可変部位;
(2)配列番号11のアミノ酸で表されるCDR1領域、配列番号12のアミノ酸で表されるCDR2領域及び配列番号13のアミノ酸で表されるCDR3領域を含む重鎖可変部位、及び配列番号14のアミノ酸で表されるCDR1領域、配列番号15のアミノ酸で表されるCDR2領域と配列番号16のアミノ酸で表されるCDR3領域とを含む軽鎖可変部位;
(3)配列番号21のアミノ酸で表されるCDR1領域、配列番号22のアミノ酸で表されるCDR2領域及び配列番号23のアミノ酸で表されるCDR3領域を含む重鎖可変部位、及び配列番号24のアミノ酸で表されるCDR1領域、配列番号25のアミノ酸で表されるCDR2領域及び配列番号26のアミノ酸で表されるCDR3領域を含む軽鎖可変部位;
(4)配列番号31のアミノ酸で表されるCDR1領域、配列番号32のアミノ酸で表されるCDR2領域及び配列番号33のアミノ酸で表されるCDR3領域を含む重鎖可変部位、及び配列番号34のアミノ酸で表されるCDR1領域、配列番号35のアミノ酸で表されるCDR2領域及び配列番号36のアミノ酸で表されるCDR3領域を含む軽鎖可変部位;
(5)配列番号41のアミノ酸で表されるCDR1領域、配列番号42のアミノ酸で表されるCDR2領域及び配列番号43のアミノ酸で表されるCDR3領域を含む重鎖可変部位、及び配列番号44のアミノ酸で表されるCDR1領域、配列番号45のアミノ酸で表されるCDR2領域及び配列番号46のアミノ酸で表されるCDR3領域を含む軽鎖可変部位;
(6)配列番号51のアミノ酸で表されるCDR1領域、配列番号52のアミノ酸で表されるCDR2領域及び配列番号53のアミノ酸で表されるCDR3領域を含む重鎖可変部位、及び配列番号54のアミノ酸で表されるCDR1領域、配列番号55のアミノ酸で表されるCDR2領域及び配列番号56のアミノ酸で示されるCDR3領域を含む軽鎖可変部位;又は
(7)配列番号61のアミノ酸で表されるCDR1領域、配列番号62のアミノ酸で表されるCDR2領域及び配列番号63のアミノ酸で表されるCDR3領域を含む重鎖可変部位、及び配列番号64のアミノ酸で表されるCDR1領域、配列番号65のアミノ酸で表されるCDR2領域及び配列番号66のアミノ酸で表されるCDR3領域を含む軽鎖可変部位;を含む
CD47に特異的に結合する抗体又はその断片。
【請求項2】
前記(1)抗体が、配列番号7のアミノ酸で表される重鎖可変部位、及び配列番号8のアミノ酸で表される軽鎖可変部位、
前記(2)抗体は、配列番号17のアミノ酸で表される重鎖可変部位、及び配列番号18のアミノ酸で表される軽鎖可変部位、
前記(3)抗体は、配列番号27のアミノ酸で表される重鎖可変部位、及び配列番号28のアミノ酸で表される軽鎖可変部位、
前記(4)抗体は、配列番号37のアミノ酸で表される重鎖可変部位、及び配列番号38のアミノ酸で表される軽鎖可変部位、
前記(5)抗体は、配列番号47のアミノ酸で表される重鎖可変部位、及び配列番号48のアミノ酸で表される軽鎖可変部位、
前記(6)抗体は、配列番号57のアミノ酸で表される重鎖可変部位、及び配列番号58のアミノ酸で表される軽鎖可変部位、又は
前記(7)抗体は、配列番号67のアミノ酸で表される重鎖可変部位と、配列番号68のアミノ酸で表される軽鎖可変部位、とからなることを特徴とする
CD47に特異的に結合する抗体又はその断片。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のCD47に特異的に結合する抗体又はその断片をコードするポリヌクレオチド。
【請求項4】
請求項1又は2に記載のCD47に特異的に結合する抗体又はその断片をコードするポリヌクレオチドを含むベクター。
【請求項5】
請求項4に記載のベクターで形質転換されたCD47に特異的に結合する抗体又はその断片を産生する組換え細胞。
【請求項6】
CD47結合ドメイン;
膜貫通ドメイン;
共同刺激ドメイン;及び
細胞内シグナル伝達ドメイン(intracellular signal transduction domain) ;を含むキメラ抗原受容体(chimeric antigen receptor:CAR)であって、
前記CD47結合ドメインは、
(1)配列番号1のアミノ酸で表されるCDR1領域、配列番号2のアミノ酸で表されるCDR2領域及び配列番号3のアミノ酸で表されるCDR3領域を含む重鎖可変部位、及び配列番号4のアミノ酸で表されるCDR1領域、配列番号5のアミノ酸で示されるCDR2領域及び配列番号6のアミノ酸で示されるCDR3領域を含む軽鎖可変部位を含むCD47に特異的に結合する抗体又はその断片;
(2)配列番号11のアミノ酸で表されるCDR1領域、配列番号12のアミノ酸で表されるCDR2領域及び配列番号13のアミノ酸で表されるCDR3領域を含む重鎖可変部位、及び配列番号14のアミノ酸で表されるCDR1領域、配列番号15のアミノ酸で表されるCDR2領域及び配列番号16のアミノ酸で表されるCDR3領域を含む軽鎖可変部位を含むCD47に特異的に結合する抗体又はその断片;
(3)配列番号21のアミノ酸で表されるCDR1領域、配列番号22のアミノ酸で表されるCDR2領域及び配列番号23のアミノ酸で表されるCDR3領域を含む重鎖可変部位、及び配列番号24のアミノ酸で表されるCDR1領域、配列番号25のアミノ酸で表されるCDR2領域及び配列番号26のアミノ酸で表されるCDR3領域を含む軽鎖可変部位を含むCD47に特異的に結合する抗体又はその断片;
(4)配列番号31のアミノ酸で表されるCDR1領域、配列番号32のアミノ酸で表されるCDR2領域及び配列番号33のアミノ酸で表されるCDR3領域を含む重鎖可変部位、及び配列番号34のアミノ酸で表されるCDR1領域、配列番号35のアミノ酸で表されるCDR2領域及び配列番号36のアミノ酸で表されるCDR3領域を含む軽鎖可変部位を含むCD47に特異的に結合する抗体又はその断片;
(5)配列番号41のアミノ酸で表されるCDR1領域、配列番号42のアミノ酸で表されるCDR2領域及び配列番号43のアミノ酸で表されるCDR3領域を含む重鎖可変部位、及び配列番号44のアミノ酸で表されるCDR1領域、配列番号45のアミノ酸で表されるCDR2領域及び配列番号46のアミノ酸で表されるCDR3領域を含む軽鎖可変部位を含むCD47に特異的に結合する抗体又はその断片;
(6)配列番号51のアミノ酸で表されるCDR1領域、配列番号52のアミノ酸で表されるCDR2領域及び配列番号53のアミノ酸で表されるCDR3領域を含む重鎖可変部位、及び配列番号54のアミノ酸で表されるCDR1領域、配列番号55のアミノ酸で表されるCDR2領域及び配列番号56のアミノ酸で表されるCDR3領域を含む軽鎖可変部位を含むCD47に特異的に結合する抗体又はその断片;又は
(7)配列番号61のアミノ酸で表されるCDR1領域、配列番号62のアミノ酸で表されるCDR2領域及び配列番号63のアミノ酸で表されるCDR3領域を含む重鎖可変部位、及び配列番号64のアミノ酸で表されるCDR1領域、配列番号65のアミノ酸で表されるCDR2領域及び配列番号66のアミノ酸で表されるCDR3領域を含む軽鎖可変部位を含むCD47に特異的に結合する抗体又はその断片;であることを特徴とする、
キメラ抗原受容体。
【請求項7】
前記膜貫通ドメインが、CD8α、CD4、CD28、CD137、CD80、CD86、CD152及びPD1からなる群から選択されるタンパク質であって、
共刺激ドメインは、CD28、4-1BB、OX-40及びICOSからなる群から選択されるタンパク質であって、
シグナル伝達ドメインはCD3ζであることを特徴とする
請求項6に記載のキメラ抗原受容体。
【請求項8】
前記CD47結合ドメインのC末端と膜貫通ドメインのN末端との間にヒンジ領域がさらに含まれる、
請求項6に記載のキメラ抗原受容体。
【請求項9】
請求項6~8のいずれか一項に記載のキメラ抗原受容体(CAR)をコードする
ポリヌクレオチド。
【請求項10】
請求項6~8のいずれか一項に記載のキメラ抗原受容体(CAR)をコードするポリヌクレオチドを含む
ベクター。
【請求項11】
請求項6~8のいずれか一項に記載のキメラ抗原受容体(CAR)をコードするポリヌクレオチド、又は前記ポリヌクレオチドを含むベクターを含む
免疫エフェクター細胞。
【請求項12】
請求項1又は2に記載のCD47に特異的に結合する抗体又はその断片;
又は請求項11に記載の免疫エフェクター細胞を含む
CD47を発現する癌又は腫瘍の予防又は治療用医薬組成物。
【請求項13】
前記癌又は腫瘍が、血液癌、卵巣癌、結腸癌、乳癌、肺癌、骨髄腫、神経芽細胞誘発性CNS腫瘍、単球白血病、B細胞誘導白血病、T細胞誘導白血病、 B細胞誘導リンパ腫、T細胞誘導リンパ腫、及び肥満細胞誘導腫瘍からなる群から選択されることを特徴とする,
請求項12に記載のCD47を発現する癌又は腫瘍の予防又は治療用医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、CD47に特異的な抗体及びその使用に関し、より詳細には、CD47に特異的に結合する抗体、該抗体を含むキメラ抗原受容体、及びそれらを含むCD47を発現する細胞によって媒介される疾患の予防又は治療のための医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
CD47はインテグリン結合タンパク質(IAP)とも呼ばれ、細胞表面で広く発現される膜貫通糖タンパク質であって、免疫グロブリン相科(immunoglobulin superfamily)に属する。
【0003】
CD47は細胞表面の非常に重要なマーカーであって、分子量は47~55kDであって、構造は1つのアミノ末端細胞外可変領域、1つの3~5個の高疎水性膜貫通断片からなる膜貫通領域と1つの親水性カルボキシ末端細胞質尾部(cytoplasmic tail)を含む。これは、インテグリン、SIRPα(シグナル調節タンパク質α)、SIRPγ及びトロンボスポンジンなどの様々なリガンドと相互作用する。
【0004】
SIRPαは、主にマクロファージ、顆粒細胞、骨髄系樹状細胞(DCs)、肥満細胞、及び造血幹細胞(HSCs)を含む、それらの前駆体を含む骨髄細胞で発現される。SIRPαはマクロファージによる宿主細胞の食菌作用を抑制し、宿主標的細胞上で発現されるCD47によるマクロファージ上のSIRPαのライゲーションはSHP-1によって媒介される抑制シグナルを生成し、食菌作用を陰性的で調整する。
【0005】
先天的な免疫系では、CD47は骨髄細胞で発現されるSIRPαとの結合を介して機能し、生理学的条件下でのCD47の広範な発現の作用は、健康な細胞が先天的免疫系によって除去されるのを防ぐ。
【0006】
しかし、腫瘍細胞はCD47の過剰発現による免疫監視を効果的に回避することができる。近年、CD47及びCD47-SIRPαシグナル伝達系は腫瘍治療における潜在的な薬物標的として最も注目されている。既存の研究によれば、CD47の発現は、ほとんどのヒト癌(例えば、NHL、AML、乳癌、結腸癌、膠芽腫、神経膠腫、卵巣癌、膀胱癌及び前立腺癌)で上昇調節され、上昇したCD47の発現レベルは侵襲性疾患と低い生存率と関連していることが証明された。スタンフォード大学のWeissmanは、様々な固形腫瘍のうちCD47の発現レベルを体系的に研究し、その結果、すべてのヒト固形腫瘍細胞においてCD47は過剰発現を示し、平均発現レベルは対応する正常細胞の3.3倍程度であることを見出した。さらに、固形腫瘍患者のCD47mRNAのレベルは予後指数と 相関関係を示すことがわかった(Mark P Chao et al., Front Oncol., 9:1380, 2020)。
【0007】
抗CD47抗体の腫瘍の治療は様々なメカニズムと関連している。まず、抗CD47抗体は、腫瘍細胞上のCD47とマクロファージ上のSIRPαの結合を遮断し、腫瘍細胞が貪食されるようにする。さらに、抗CD47抗体は、NK細胞が関与する腫瘍細胞の細胞毒性を誘導することができ、死を直接誘導して腫瘍細胞を除去することができる。最後に、抗CD47抗体はCD8+T細胞を活性化し、獲得性T細胞の免疫反応を引き起こし、腫瘍細胞をさらに死滅させることができる。
【0008】
このようなCD47を発現する腫瘍細胞又はCD47過剰発現に関連する疾患などの治療又は診断のためにCD47に特異的な抗体の開発が行われており、国際公開特許WO2018-075857号、国際公開特許WO2017-121771号及び国際公開特許WO2013-119714号は、様々な抗CD47抗体について開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明では、CD47により特異的に結合する抗体を開発するために、CD47に結合する抗体をスクリーニングして新規抗体7種(7C7、5H4、5A4、4E12、3H3、3A5、1E7)を確立し、本発明で選択した7種の抗体はCD47抗原と特異的に結合することを確認した。また、本発明のCD47特異的抗体を用いてCD47を標的とするキメラ抗原受容体の製造が可能であることを確認し、本発明を完成した。
【0010】
したがって、本発明の目的は、CD47に特異的に結合する抗体を提供することである。
【0011】
本発明の他の目的は、前記抗体をコードするポリヌクレオチド、前記抗体を発現するベクター、前記ベクターで形質転換された組換え細胞を提供することにある。
【0012】
本発明の別の目的は、前記抗体を含むキメラ抗原受容体、CD47を標的とするキメラ抗原受容体をコードするポリヌクレオチド、それを含むベクター、及び前記ポリヌクレオチド又はベクターを含むキメラ抗原受容体を発現する免疫エフェクター細胞を提供することにある。
【0013】
本発明の別の目的は、前記抗体又はCD47を標的とするキメラ抗原受容体を発現する免疫エフェクター細胞を含む、CD47を発現する細胞によって媒介される疾患の予防又は治療用医薬組成物を提供することである。
【0014】
本発明の他の目的は、前記抗体を含むCD47を発現する細胞によって媒介される疾患の診断又はモニタリング組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記の目的を達成するために、
本発明は、
(1)配列番号1のアミノ酸で表されるCDR1領域、配列番号2のアミノ酸で表されるCDR2領域及び配列番号3のアミノ酸で表されるCDR3領域を含む重鎖可変部位、及び配列番号4のアミノ酸で表されるCDR1領域、配列番号5のアミノ酸で表されるCDR2領域及び配列番号6のアミノ酸で表されるCDR3領域を含む軽鎖可変部位;
(2)配列番号11のアミノ酸で表されるCDR1領域、配列番号12のアミノ酸で表されるCDR2領域及び配列番号13のアミノ酸で表されるCDR3領域を含む重鎖可変部位、及び配列番号14のアミノ酸で表されるCDR1領域、配列番号15のアミノ酸で表されるCDR2領域と配列番号16のアミノ酸で表されるCDR3領域とを含む軽鎖可変部位;
(3)配列番号21のアミノ酸で表されるCDR1領域、配列番号22のアミノ酸で表されるCDR2領域及び配列番号23のアミノ酸で表されるCDR3領域を含む重鎖可変部位、及び配列番号24のアミノ酸で表されるCDR1領域、配列番号25のアミノ酸で表されるCDR2領域及び配列番号26のアミノ酸で表されるCDR3領域を含む軽鎖可変部位;
(4)配列番号31のアミノ酸で表されるCDR1領域、配列番号32のアミノ酸で表されるCDR2領域及び配列番号33のアミノ酸で表されるCDR3領域を含む重鎖可変部位、及び配列番号34のアミノ酸で表されるCDR1領域、配列番号35のアミノ酸で表されるCDR2領域及び配列番号36のアミノ酸で表されるCDR3領域を含む軽鎖可変部位;
(5)配列番号41のアミノ酸で表されるCDR1領域、配列番号42のアミノ酸で表されるCDR2領域及び配列番号43のアミノ酸で表されるCDR3領域を含む重鎖可変部位、及び配列番号44のアミノ酸で表されるCDR1領域、配列番号45のアミノ酸で表されるCDR2領域及び配列番号46のアミノ酸で表されるCDR3領域を含む軽鎖可変部位;
(6)配列番号51のアミノ酸で表されるCDR1領域、配列番号52のアミノ酸で表されるCDR2領域及び配列番号53のアミノ酸で表されるCDR3領域を含む重鎖可変部位、及び配列番号54のアミノ酸で表されるCDR1領域、配列番号55のアミノ酸で表されるCDR2領域及び配列番号56のアミノ酸で示されるCDR3領域を含む軽鎖可変部位;又は
(7)配列番号61のアミノ酸で表されるCDR1領域、配列番号62のアミノ酸で表されるCDR2領域及び配列番号63のアミノ酸で表されるCDR3領域を含む重鎖可変部位、及び配列番号64のアミノ酸で表されるCDR1領域、配列番号65のアミノ酸で表されるCDR2領域及び配列番号66のアミノ酸で表されるCDR3領域を含む軽鎖可変部位;を含むCD47に特異的に結合する抗体又はその断片を提供する。
【0016】
本発明の好ましい一実施形態では、前記抗体はモノクローナル抗体、好ましくはscFv(Single-chain variable fragment)であり得る。
【0017】
本発明の好ましい別の実施形態において、前記(1)抗体は、配列番号7のアミノ酸で表される重鎖可変部位、及び配列番号8のアミノ酸で表される軽鎖可変部位であって、
前記(2)抗体は、配列番号17のアミノ酸で表される重鎖可変部位、及び配列番号18のアミノ酸で表される軽鎖可変部位であって、
前記(3)抗体は、配列番号27のアミノ酸で表される重鎖可変部位、及び配列番号28のアミノ酸で表される軽鎖可変部位であって、
前記(4)抗体は、配列番号37のアミノ酸で表される重鎖可変部位、及び配列番号38のアミノ酸で表される軽鎖可変部位であって、
前記(5)抗体は、配列番号47のアミノ酸で表される重鎖可変部位、及び配列番号48のアミノ酸で表される軽鎖可変部位であって、
前記(6)抗体は、配列番号57のアミノ酸で表される重鎖可変部位、及び配列番号58のアミノ酸で表される軽鎖可変部位であって、
前記(7)抗体は、配列番号67のアミノ酸で表される重鎖可変部位と、配列番号68のアミノ酸で表される軽鎖可変部位から構成され得る。
【0018】
本発明の別の好ましい実施形態では、前記抗体は、CD47がシグナル調節タンパク質α(SIRPα)と相互作用するのを防止するか、又はCD47発現細胞に対するマクロファージ媒介性食作用を促進することができる。
【0019】
他の目的を達成するために、本発明は、前記CD47に特異的に結合する抗体をコードするポリヌクレオチドを提供する。
【0020】
さらに、本発明は、前記CD47に特異的に結合する抗体をコードするポリヌクレオチドを含むベクターを提供する。
【0021】
さらに、本発明は、前記ベクターで形質転換されたCD47に特異的に結合する抗体又はその断片を産生する組換え細胞を提供する。
【0022】
さらに、他の目的を達成するために、本発明はCD47結合ドメイン;膜貫通ドメイン(transmembrane domain);共同刺激ドメイン(costimulatory domain);及び細胞内シグナル伝達ドメイン(intracellular signal transduction domain);を含むキメラ抗原受容体を提供する。
【0023】
前記CD47結合ドメインは、本発明のCD47に特異的に結合することができる抗体又はその断片で選択することができる。
【0024】
本発明の好ましい一実施形態では、膜貫通ドメインは、CD8α、CD4、CD28、CD137、CD80、CD86、CD152及びPD1からなる群から選択されるタンパク質に由来し得る。
【0025】
本発明の別の好ましい一実施形態では、共刺激ドメインは、CD28、4-1BB、OX-40及びICOSからなる群から選択されるタンパク質由来であって得、シグナル伝達ドメインはCD3ζ由来であり得る。
【0026】
本発明の別の好ましい一実施形態では、前記CD47結合ドメインのC末端と膜経由ドメインのN末端との間に位置するヒンジ領域をさらに含み、ヒンジ部位はCD8α由来であり得る。
【0027】
他の目的を達成するために、本発明は前記キメラ抗原受容体(CAR)をコードするポリヌクレオチドを提供する。
【0028】
さらに、本発明は、前記キメラ抗原受容体(CAR)をコードするポリヌクレオチドを含むベクターを提供する。
【0029】
本発明の好ましい一実施形態では、前記ベクターはプラスミド(plasmid)、レトロウイルス(retroviral)ベクター、又はレンチウイルス(lentiviral)ベクターであり得る。
【0030】
また、本発明は、前記キメラ抗原受容体(CAR)をコードするポリヌクレオチド又はキメラ抗原受容体(CAR)をコードするポリヌクレオチドを含み、前記キメラ抗原受容体(CAR)を発現する免疫エフェクター細胞を提供する。
【0031】
本発明の好ましい一実施形態では、 前記免疫エフェクター細胞はT細胞であり得る。
【0032】
別の目的を達成するために、本発明は、CD47を標的とするキメラ抗原受容体を発現する免疫エフェクター細胞;あるいは、CD47に特異的に結合する抗体又はその断片;を含むCD47を発現する癌又は腫瘍の予防又は治療用医薬組成物を提供する。
【0033】
本発明において、前記癌又は腫瘍は、血液癌、卵巣癌、結腸癌、乳癌、肺癌、骨髄腫、神経芽細胞誘導CNS腫瘍、単核球白血病、B細胞誘導白血病、T細胞誘導白血病、B細胞誘導リンパ腫、T細胞誘導リンパ腫、及び肥満細胞誘導腫瘍からなる群から選択することができる。
【発明の効果】
【0034】
本発明では、CD47により特異的に結合する抗体をスクリーニングして新規抗体7種(7C7、5H4、5A4、4E12、3H3、3A5、1E7)を確立し、前記新規抗体がCD47抗原と特異的に結合することを確認した。
【0035】
また、上記確立された抗体を用いてCD47を標的とするキメラ抗原受容体(CAR)の製造が可能であることを確認したので、本発明のCD47に特異的な抗体、及びこれを用いて製造したキメラ抗原受容体はCD47を発現する癌又は腫瘍の予防又は治療に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1は、本発明で選択した7C7、5H4、5A4、4E12、3H3、3A5及び1E7抗体のCD47発現腫瘍細胞(MCF-7)に対する結合力をフローサイトメーターで確認したデータである。
図2は、CD47を標的とするキメラ抗原受容体(CD47-CAR)を発現するレンチウイルスを用いたCD47-CAR発現細胞の製造方法を示す模式図である。
図3は、HEK293細胞株にCD47-CAR発現レンチウイルスベクターを形質転換させた後、形質転換されたHEK293細胞のCD47ペプチドに対する結合能を確認する方法を示す模式図である。
図4は、CD47-CARを発現するレンチウイルスで形質転換されたHEK293FT細胞におけるCD47-CAR発現程度(expression)及びCD47に対する結合能(binding)を確認したデータである。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0038】
CD47に特異的に結合する抗体
本発明は、一態様において、CD47に特異的に結合する抗体又はその断片であって、
【0039】
(1)配列番号1のアミノ酸で表されるCDR1領域、配列番号2のアミノ酸で表されるCDR2領域及び配列番号3のアミノ酸で表されるCDR3領域を含む重鎖可変部位、及び配列番号4のアミノ酸で表されるCDR1領域、配列番号5のアミノ酸で表されるCDR2領域及び配列番号6のアミノ酸で表されるCDR3領域を含む軽鎖可変部位を含むCD47に特異的に結合する抗体又はその断片;
(2)配列番号11のアミノ酸で表されるCDR1領域、配列番号12のアミノ酸で表されるCDR2領域及び配列番号13のアミノ酸で表されるCDR3領域を含む重鎖可変部位、及び配列番号14のアミノ酸で表されるCDR1領域、配列番号15のアミノ酸で表されるCDR2領域及び配列番号16のアミノ酸で表されるCDR3領域を含む軽鎖可変部位を含むCD47に特異的に結合する抗体又はその断片;
(3)配列番号21のアミノ酸で表されるCDR1領域、配列番号22のアミノ酸で表されるCDR2領域及び配列番号23のアミノ酸で表されるCDR3領域を含む重鎖可変部位、及び配列番号24のアミノ酸で表されるCDR1領域、配列番号25のアミノ酸で表されるCDR2領域及び配列番号26のアミノ酸で表されるCDR3領域を含む軽鎖可変部位を含むCD47に特異的に結合する抗体又はその断片;
(4)配列番号31のアミノ酸で表されるCDR1領域、配列番号32のアミノ酸で表されるCDR2領域及び配列番号33のアミノ酸で表されるCDR3領域を含む重鎖可変部位、及び配列番号34のアミノ酸で表されるCDR1領域、配列番号35のアミノ酸で表されるCDR2領域及び配列番号36のアミノ酸で示されるCDR3領域を含む軽鎖可変部位を含むCD47に特異的に結合する抗体又はその断片;
(5)配列番号41のアミノ酸で表されるCDR1領域、配列番号42のアミノ酸で表されるCDR2領域及び配列番号43のアミノ酸で表されるCDR3領域を含む重鎖可変部位、及び配列番号44のアミノ酸で表されるCDR1領域、配列番号45のアミノ酸で表されるCDR2領域及び配列番号46のアミノ酸で表されるCDR3領域を含む軽鎖可変部位を含むCD47に特異的に結合する抗体又はその断片;
(6)配列番号51のアミノ酸で表されるCDR1領域、配列番号52のアミノ酸で表されるCDR2領域及び配列番号53のアミノ酸で表されるCDR3領域を含む重鎖可変部位、及び配列番号54のアミノ酸で表されるCDR1領域、配列番号55のアミノ酸で表されるCDR2領域及び配列番号56のアミノ酸で表されるCDR3領域を含む軽鎖可変部位を含むCD47に特異的に結合する抗体又はその断片;又は
(7)配列番号61のアミノ酸で表されるCDR1領域、配列番号62のアミノ酸で表されるCDR2領域及び配列番号63のアミノ酸で表されるCDR3領域を含む重鎖可変部位、及び配列番号64のアミノ酸で表されるCDR1領域、配列番号65のアミノ酸で表されるCDR2領域及び配列番号66のアミノ酸で表されるCDR3領域を含む軽鎖可変部位を含むCD47に特異的に結合する抗体又はその断片;に関する。
【0040】
本発明において、前記抗体は、CD47がシグナル調節タンパク質α(SIRPα)と相互作用するのを防止するか、又はCD47発現細胞に対するマクロファージ媒介食作用を促進することができる。
【0041】
本発明において、前記抗体はモノクローナル抗体であり得る。本発明において、用語「モノクローナル抗体」は単一抗体形成細胞が産生する抗体であり、一次構造(アミノ酸配列)が均一な特徴がある。ただ一つの抗原決定基のみを認識し、一般にがん細胞と抗体産生細胞を融合したハイブリドーマ細胞を培養して産生される。
【0042】
本発明の抗体は、抗原結合に核心的な部分であるCDR部位を除く残りの部分をヒトによって産生された抗体と対応するアミノ酸配列となるようにし、よりヒト抗体との類似性が増加したヒト化抗体で製造することができる。抗体(non-human antibody)をヒト化する最も一般的な方法としては、動物抗体のCDR部位をヒト抗体に移植するCDR-グラフト法(CDR-grafting)方法があり、これに限定されず、当技術分野で公知の方法を利用してヒト化抗体を作製することができる。
【0043】
本発明において、用語「CDR」、すなわち「相補性決定領域」は、重鎖ポリペプチド及び軽鎖ポリペプチドの両方の可変領域内に見られる非近接(non-contiguous)抗原結合部位を意味する。
【0044】
本発明において、用語「抗体」は、2つの全長の軽鎖及び2つの全長の重鎖を有する完全な形態だけでなく、抗体分子の断片も使用することができる。抗体分子の断片とは、少なくともペプチドタグ(エピトープ)結合機能を保持している断片を意味し、scFv、Fab、F(ab’)、F(ab’)2、単一ドメイン(single domain)などを含む。
【0045】
抗体断片のうち、Fabは、軽鎖及び重鎖の可変領域と軽鎖の定常領域及び重鎖の最初の定常領域(CH1)とを有する構造であり、1つの抗原結合部位を有する。
【0046】
Fab’は、重鎖CH1ドメインのC末端に1つ以上のシステイン残基を含むヒンジ領域を有するという点で、Fabとは異なる。F(ab’)2抗体は、Fab’のヒンジ部位のシステイン残基がジスルフィド結合を形成しながら生成される。Fvは、重鎖可変部位及び軽鎖可変部位のみを有する最小の抗体断片で、Fv断片を生成する組換え技術は、国際公開特許WO 88/10649、WO 88/106630、WO 88/07085、WO 88/07086及びWO 88/09344に開示されている。二重鎖Fv(dsFv)はジスルフィド結合で重鎖可変部位と軽鎖可変部位が連結されており、短鎖Fv(scFv)は一般にペプチドリンカーを介して重鎖の可変領域と軽鎖の可変領域が共有結合で連結されている。このような抗体断片は、タンパク質加水分解酵素を用いて得ることができ(例えば、全抗体をパパインに制限切断するとFabを得ることができ、ペプシンで切断するとF(ab’)2断片を得ることができる)、好ましい。遺伝子組み換え技術によって作製することができます。
【0047】
本発明のCD47に特異的に結合するモノクローナル抗体は、CD47タンパク質の全部又は一部のペプチドを免疫原(又は抗原)として利用して調製することができる。より具体的には、まず免疫原としてCD47、CD47タンパク質を含む融合タンパク質、又はCD47タンパク質を含むキャリアを必要に応じて免疫増強剤であるアジュバント(例えば、Freund adjuvant)と共に、ヒト以外の哺乳動物の皮下、筋肉、静脈、足凸、又は腹腔内に1回以上の注射により免疫感作をさせる。ヒト以外の哺乳動物は、マウス、ラット、ハムスター、モルモット、ニワトリ、ウサギ、ネコ、イヌ、ブタ、ヤギ、ヒツジ、ロバ、ウマ又はウシ(ヒト抗体を産生するトランスジェニックマウスなどの他の動物由来の抗体を産生するように操作されたトランスジェニック動物を含む)であり、より好ましくはマウス、ラット、ハムスター、モルモット、鶏やウサギである。最初の免疫から約1~21日ごとに1~4回免疫を行い、最終免疫から約1~10日後に免疫感作された哺乳動物から抗体産生する細胞を得ることができる。免疫をさせる回収及び時間的間隔は、使用する免疫原の特徴等により適宜変更することができる。
【0048】
モノクローナル抗体を分泌するハイブリドーマ(hybridoma)の製造は、ケイラ及びミルシュタインなどの方法(Nature、1975、Vol。256、p.495-497)及びそれに準ずる方法に従って行うことができる。上記のように免疫感作されたヒトを除く動物から採取した脾臓、リンパ節、骨髄又は扁桃からなる群から選択されるいずれか、好ましくは脾臓に含まれる抗体産生する細胞と自己抗体産生能力のない哺乳動物由来の骨髄腫細胞(myeloma cells)を細胞融合させることによりハイブリドーマ(hybridoma)を製造することができる。哺乳動物は、マウス、ラット、モルモット、ハムスター、ニワトリ、ウサギ又はヒトであり得、好ましくはマウス、ラット、ニワトリ又はヒトであり得る。
【0049】
細胞融合は、例えば、ポリエチレングリコールやセンダイウイルスを含む融合促進剤や電気パルスによる方法が用いられ、例えば、融合促進剤を含む融合培地に抗体産生細胞と無限増殖可能な哺乳類由来の細胞を約1:1~1:10の割合で浮遊させ、この状態で、約30~40℃で約1~5分間インキュベートする。融合培地には、例えば、MEM培地、RPMI1640培地及びイスコブ修飾ダルベッコ培地(Iscove’s Modified Dulbecco’s Medium)を含む通常の一般的なものを用いるとよく、ウシ血清などの血清流は除いておくことが好ましい。
【0050】
前記モノクローナル抗体を産生するハイブリドーマクローンをスクリーニングする方法は、まず、上記のように取得した融合細胞をHAT培地などの選択用培地に移し、約30~40℃で約3日~3週間培養して、ハイブリドーマ以外の細胞を死滅させる。続いて、マイクロタイタープレート(microtiter plate)等でハイブリドーマを培養した後、上述したヒトを除く動物の免疫反応に用いた免疫原と培養上清との反応性が増加した部分をRIA(radioactive substance-marked immuno antibody)又はELISA(Enzyme-Linked Immunosorbent Assay)などのイムノアッセイ方法を用いて見つける方法によって行うことができる。そして、上記で見つけたモノクローナル抗体を産生するクローンは、前記免疫原に対して特異的な結合力を示す。
【0051】
本発明のモノクローナル抗体は、このようなハイブリドーマを生体内外で培養することにより得ることができる。培養には、哺乳動物由来の細胞を培養するための通常の方法が用いられ、培養物などからモノクローナル抗体を採取するためには、抗体一般を精製するためのこの分野における通常の方法が用いられる。それぞれの方法としては、例えば、塩析、透析、濾過、濃縮、遠心分離、分別沈殿、ゲル濾過クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティクロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィー、ゲル電気泳動等電点電気泳動などが挙げられ、これらは必要に応じて組み合わせて適用される。精製したモノクローナル抗体は、その後、濃縮、乾燥し、用途に応じて液相又は固相とする。
【0052】
本発明の具体的な一実施形態では、CD47に特異的に結合する抗体を製造するために、CD47タンパク質を産生するハイブリドーマを調製及びスクリーニングし、CD47に特異的に結合する抗体(scFv)7種を選択し、これをそれぞれ7C7、5H4、5A4、4E12、3H3、3A5及び1E7と命名した。
【0053】
(1)前記7C7抗体は、配列番号1のアミノ酸で表されるCDR1領域(GYTFTSYV)、配列番号2のアミノ酸で表されるCDR2領域(INPYNDGT)及び配列番号3のアミノ酸で表されるCDR3領域(ARGRNRYDSWFAY)を含む重鎖可変部位、及び配列番号4のアミノ酸で表されるCDR1領域(QDISNY)、配列番号5のアミノ酸で表されるCDR2領域(YTS)及び配列番号6のアミノ酸で表されるCDR3領域(QQGNTLPWT)を含む軽鎖可変部位からなることを確認した。
【0054】
具体的には、7C7抗体は、配列番号7のアミノ酸で表される重鎖可変部位と配列番号8のアミノ酸で表される軽鎖可変部位から構成され、前記重鎖可変部位は配列番号9の塩基配列であって、軽鎖可変部位は、配列番号10の塩基配列でコードされることを確認した。
【0055】
(2)前記5H4抗体は、配列番号11のアミノ酸で表されるCDR1領域(GYTFTNYW)、配列番号12のアミノ酸で表されるCDR2領域(IDPSNSAT)及び配列番号13のアミノ酸で表されるCDR3領域(ARGGFAFDS)を含む重鎖可変部位、及び配列番号14のアミノ酸で表されるCDR1領域(QSLVHSNGNTY)、配列番号15のアミノ酸で表されるCDR2領域(KVS)及び配列番号16のアミノ酸で表されるCDR3領域(SQSTHVPWT)を含む軽鎖可変部位からなることを確認した。
【0056】
具体的には、5H4抗体は、配列番号17のアミノ酸で表される重鎖可変部位と配列番号18のアミノ酸で表される軽鎖可変部位から構成され、前記重鎖可変部位は配列番号19の塩基配列であって、軽鎖可変部位は、配列番号20の塩基配列でコードされることを確認した。
【0057】
(3)前記5A4抗体は、配列番号21のアミノ酸で表されるCDR1領域(GYTFTNYW)、配列番号22のアミノ酸で表されるCDR2領域(IDPSDSYT)及び配列番号23のアミノ酸で表されるCDR3領域(TRGGKRAMDY)を含む重鎖可変部位、及び配列番号24のアミノ酸で表されるCDR1領域(QSLVHSNGNTY)、配列番号25のアミノ酸で表されるCDR2領域(KVS)及び配列番号26のアミノ酸で表されるCDR3領域(SQSTHVPFT)を含む軽鎖可変部位からなることを確認した。
【0058】
具体的には、5A4抗体は、配列番号27のアミノ酸で表される重鎖可変部位と配列番号28のアミノ酸で表される軽鎖可変部位から構成され、前記重鎖可変部位は配列番号29の塩基配列であって、軽鎖可変部位は、配列番号30の塩基配列でコードされることを確認した。
【0059】
(4)前記4E12抗体は、配列番号31のアミノ酸で表されるCDR1領域(GYTFTNYG)、配列番号32のアミノ酸で表されるCDR2領域(INTYTGEP)及び配列番号33のアミノ酸で表されるCDR3領域(ARGGGRGAMDY)を含む重鎖可変部位、及び配列番号34のアミノ酸で表されるCDR1領域(QSIVHSNGNTY)、配列番号35のアミノ酸で表されるCDR2領域(KVS)及び配列番号36のアミノ酸で表されるCDR3領域(FQGSHVPFT)を含む軽鎖可変部位からなることを確認した。
【0060】
具体的には、4E12抗体は、配列番号37のアミノ酸で表される重鎖可変部位と配列番号38のアミノ酸で表される軽鎖可変部位から構成され、前記重鎖可変部位は配列番号39の塩基配列であって、軽鎖可変部位は配列番号40の塩基配列でコードされることを確認した。
【0061】
(5)前記3H3抗体は、配列番号41のアミノ酸で表されるCDR1領域(GYTFTNYW)、配列番号42のアミノ酸で表されるCDR2領域(IDPSNSET)及び配列番号43のアミノ酸で表されるCDR3領域(ARGGFAFDS)を含む重鎖可変部位、及び配列番号44のアミノ酸で表されるCDR1領域(QSLVHNNGNTY)、配列番号45のアミノ酸で表されるCDR2領域(KVS)及び配列番号46のアミノ酸で表されるCDR3領域(SQSTHVPWT)を含む軽鎖可変部位からなることを確認した。
【0062】
具体的には、3H3抗体は、配列番号47のアミノ酸で表される重鎖可変部位と配列番号48のアミノ酸で表される軽鎖可変部位から構成され、前記重鎖可変部位は配列番号49の塩基配列であって、軽鎖可変部位は配列番号50の塩基配列でコードされることを確認した。
【0063】
(6)前記3A5抗体は、配列番号51のアミノ酸で表されるCDR1領域(GYTFTSYW)、配列番号52のアミノ酸で表されるCDR2領域(IDPSDSYT)及び配列番号53のアミノ酸で表されるCDR3領域(ARGGKRAMDY)を含む重鎖可変部位、及び配列番号54のアミノ酸で表されるCDR1領域(QSLVHSNGNTY)、配列番号55のアミノ酸で表されるCDR2領域(KVS)及び配列番号56のアミノ酸で表されるCDR3領域(SQSTHVPFT)を含む軽鎖可変部位からなることを確認した。
【0064】
具体的には、3A5抗体は、配列番号57のアミノ酸で表される重鎖可変部位と配列番号58のアミノ酸で表される軽鎖可変部位から構成され、前記重鎖可変部位は配列番号59の塩基配列であって、軽鎖可変部位は、配列番号60の塩基配列でコードされることを確認した。
【0065】
(7)前記1E7抗体は、配列番号61のアミノ酸で表されるCDR1領域(GYIFTSYV)、配列番号62のアミノ酸で表されるCDR2領域(INPYNDGT)及び配列番号63のアミノ酸で表されるCDR3領域(ARGGFTTDY)を含む重鎖可変部位、及び配列番号64のアミノ酸で表されるCDR1領域(QSLVHSNGNTY)、配列番号65のアミノ酸で表されるCDR2領域(KVS)及び配列番号66のアミノ酸で表されるCDR3領域(SQSTHVPYT)を含む軽鎖可変部位からなることを確認した。
【0066】
具体的には、1E7抗体は、配列番号67のアミノ酸で表される重鎖可変部位と配列番号68のアミノ酸で表される軽鎖可変部位から構成され、前記重鎖可変部位は配列番号69の塩基配列であって、軽鎖可変部位は配列番号70の塩基配列でコードされることを確認した。
【0067】
本発明のCD47に特異的な抗体は、好ましくはscFv(単一鎖可変フラグメント)であって、重鎖可変部位及び軽鎖可変部位がリンカーに連結され得るように遺伝子組換え技術を介して作製することができる。リンカーは、好ましくは、配列番号71のアミノ酸配列又は配列番号72の塩基配列で表すことができるが、これらに限定されない。
【0068】
軽鎖可変部位-リンカー-重鎖可変部位で連結された場合、7C7抗体は配列番号73のアミノ酸配列又は配列番号74の塩基配列で、5H4抗体は配列番号75のアミノ酸配列又は配列番号76の塩基配列で、5A4抗体は配列番号77のアミノ酸配列又は配列番号78の塩基配列であって、4E12抗体は配列番号79のアミノ酸配列又は配列番号80の塩基配列で、3H3抗体は配列番号81のアミノ酸配列又は配列番号82の塩基配列で、3A5抗体は配列番号83のアミノ酸配列又は配列番号84の塩基配列で、1E7抗体は配列番号85のアミノ酸配列又は配列番号86の塩基配列で表すことができる。
【0069】
本発明は、別の観点から、前記CD47に特異的に結合する抗体をコードするポリヌクレオチドに関する。
【0070】
本発明において、「ポリヌクレオチド」という用語は、一般に、任意の長さに単離された核酸分子(nucleic acid molecule)、デオキシリボヌクレオチドもしくはリボヌクレオチド、又はその類似体を指す。いくつかの実施形態では、本発明のポリヌクレオチドは、
(1)ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)増幅などのインビトロ増幅;
(2)クローニング及び組換え;
(3)切断及びゲル電気泳動分離などの精製;
(4)化学合成などの合成;によって製造することができ、好ましくは単離されたポリヌクレオチドは組換えDNA技術によって製造される。
本発明において、抗体又はその抗原結合断片をコードするための核酸は、合成オリゴヌクレオチドの制限断片操作(restriction fragment operation)又はSOE PCRの適用を含むがこれらに限定されず、当技術分野で公知の様々な方法により、製造することができる。
【0071】
本発明は、別の観点から、前記CD47に特異的に結合する抗体をコードするポリヌクレオチドを含むベクター、及び前記ベクターで形質転換された組換え細胞に関する。
【0072】
本発明において、「ベクター」という用語は、適切な宿主細胞内で目的遺伝子が発現できるように、プロモーターなどの必須の調節要素を含む遺伝子調製物である。ベクターは、プラスミド、レトロウイルスベクター及びレンチウイルスベクターのうちの1つ以上から選択することができる。適切な宿主に形質転換されると、ベクターは宿主ゲノムとは無関係に複製及び機能することができ、又は場合によってはゲノム自体に組み込むことができる。
【0073】
さらに、ベクターは、コード領域が適切な宿主において正確に発現されることを可能にする発現制御要素を含み得る。そのような調節要素は当業者に周知であり、例えば、プロモーター、リボソーム結合部位、エンハンサー、及び遺伝子転写又はmRNA翻訳を調節するための他の調節要素を含み得る。発現制御配列の特定の構造は、種又は細胞型の機能に応じて変わり得るが、通常、TATAボックス、キャップ配列、CAAT配列などの転写開始及び翻訳開始にそれぞれ関与する5’非-転写配列、及び5’又は3’非翻訳配列を含む。例えば、5’非転写発現制御配列は、機能的に連結された核酸を転写及び制御するためのプロモーター配列を含み得るプロモーター領域を含み得る。
【0074】
本発明において、用語「プロモーター」は、転写を指示するのに十分な最小配列を意味する。さらに、細胞型特異的又は外部のシグナル又は制裁によって誘導される調節可能なプロモーター依存性遺伝子を発現させるのに十分なプロモーター構成を含めることができ、そのような構成は遺伝子の5’又は3’部分に配置することができる。保存的プロモーターと誘導的プロモーターの両方が含まれる。プロモーター配列は、原核生物、真核生物又はウイルスに由来し得る。
【0075】
本発明において、「形質転換体」という用語は、1つ以上の目的タンパク質をコードするポリヌクレオチドを有するベクターが宿主細胞に導入されて形質転換された細胞を意味し、発現ベクターを宿主細胞に導入して形質転換体を製造する方法としては文献(Sambrook、J.、 et al.、Molecular Cloning、A Laboratory Manual(2版)、Cold Spring Harbor Laboratory、1.74、1989)に記載のリン酸カルシウム法又は塩化カンシウム/塩化ルビジウム法、エレクトロポレーション法(electroporation)、電気注入法(electroinjection)、PEGなどの化学的処理方法、遺伝子銃(gene gun)などを用いる方法などがある。
【0076】
前記ベクターが発現される形質転換体を栄養培地で培養すると、抗体タンパク質を大量に製造、分離可能である。培地と培養条件は、宿主細胞によって慣用されるものを適宜選択して用いることができる。培養時の細胞の生育とタンパク質の大量生産に適するように、温度、培地のpH、培養時間などの条件を適切に調節しなければならない。
【0077】
本発明によるベクターは、抗体の産生のために宿主細胞、好ましくは哺乳動物細胞に形質転換することができる。完全なグリコシル化タンパク質を発現できる適切な宿主細胞株の数は当分野で開発されており、COS-1(例えば、ATCC CRL 1650)、COS-7(例えば、ATCC CRL-1651)、HEK293 、BHK21(例えば、ATCC CRL-10)、CHO(例えば、ATCC CRL 1610)及びBSC-1(例えば、ATCC CRL-26)細胞株、Cos-7細胞、CHO細胞、hep G2細胞、P3X63Ag8653、SP2/0-Agl4、293細胞、HeLa細胞などを含み、これらの細胞は、例えば、ATCC(American Type Culture Collection、米国)から容易に利用可能である。
【0078】
CD47を標的とするキメラ抗原受容体
本発明は、他の観点から、
CD47結合ドメイン;
膜貫通ドメイン;
共同刺激ドメイン;及び
細胞内シグナル伝達ドメイン(intracellular signal transduction domain)を含むキメラ抗原受容体(chimeric antigen receptor:CAR)で、
前記CD47結合ドメインは、
(1)配列番号1のアミノ酸で表されるCDR1領域、配列番号2のアミノ酸で表されるCDR2領域及び配列番号3のアミノ酸で表されるCDR3領域を含む重鎖可変部位、及び配列番号4のアミノ酸で表されるCDR1領域、配列番号5のアミノ酸で示されるCDR2領域及び配列番号6のアミノ酸で示されるCDR3領域を含む軽鎖可変部位を含むCD47に特異的に結合する抗体又はその断片;
(2)配列番号11のアミノ酸で表されるCDR1領域、配列番号12のアミノ酸で表されるCDR2領域及び配列番号13のアミノ酸で表されるCDR3領域を含む重鎖可変部位、及び配列番号14のアミノ酸で表されるCDR1領域、配列番号15のアミノ酸で表されるCDR2領域及び配列番号16のアミノ酸で表されるCDR3領域を含む軽鎖可変部位を含むCD47に特異的に結合する抗体又はその断片;
(3)配列番号21のアミノ酸で表されるCDR1領域、配列番号22のアミノ酸で表されるCDR2領域及び配列番号23のアミノ酸で表されるCDR3領域を含む重鎖可変部位、及び配列番号24のアミノ酸で表されるCDR1領域、配列番号25のアミノ酸で表されるCDR2領域及び配列番号26のアミノ酸で表されるCDR3領域を含む軽鎖可変部位を含むCD47に特異的に結合する抗体又はその断片;
(4)配列番号31のアミノ酸で表されるCDR1領域、配列番号32のアミノ酸で表されるCDR2領域及び配列番号33のアミノ酸で表されるCDR3領域を含む重鎖可変部位、及び配列番号34のアミノ酸で表されるCDR1領域、配列番号35のアミノ酸で表されるCDR2領域及び配列番号36のアミノ酸で示されるCDR3領域を含む軽鎖可変部位を含むCD47に特異的に結合する抗体又はその断片;
(5)配列番号41のアミノ酸で表されるCDR1領域、配列番号42のアミノ酸で表されるCDR2領域及び配列番号43のアミノ酸で表されるCDR3領域を含む重鎖可変部位、及び配列番号44のアミノ酸で表されるCDR1領域、配列番号45のアミノ酸で表されるCDR2領域及び配列番号46のアミノ酸で表されるCDR3領域を含む軽鎖可変部位を含むCD47に特異的に結合する抗体又はその断片;
(6)配列番号51のアミノ酸で表されるCDR1領域、配列番号52のアミノ酸で表されるCDR2領域及び配列番号53のアミノ酸で表されるCDR3領域を含む重鎖可変部位、及び配列番号54のアミノ酸で表されるCDR1領域、配列番号55のアミノ酸で表されるCDR2領域及び配列番号56のアミノ酸で表されるCDR3領域を含む軽鎖可変部位を含むCD47に特異的に結合する抗体又はその断片;又は
(7)配列番号61のアミノ酸で表されるCDR1領域、配列番号62のアミノ酸で表されるCDR2領域及び配列番号63のアミノ酸で表されるCDR3領域を含む重鎖可変部位、及び配列番号64のアミノ酸で表されるCDR1領域、配列番号65のアミノ酸で表されるCDR2領域及び配列番号66のアミノ酸で表されるCDR3領域を含む軽鎖可変部位を含むCD47に特異的に結合する抗体又はその断片;である。
【0079】
本発明において、用語「キメラ抗原受容体(CAR)」は、一般に、抗原及び1つ以上の細胞内ドメインと結合する能力を有する細胞外ドメインを含む融合タンパク質を指す。CARはキメラ抗原受容体T細胞(CAR-T)の重要な部分であり、抗原結合ドメイン、膜貫通ドメイン、共刺激ドメイン、及び細胞内シグナル伝達ドメインを含み得る。CARは、抗体の抗原(例えばCD47)特異性に基づいてT細胞受容体-活性化細胞内ドメインと組み合わせることができる。遺伝子改変されたCAR発現T細胞は、標的抗原発現悪性細胞を特異的に同定し除去することができる。
【0080】
本発明において、「CD47結合ドメイン」という用語は、一般にCD47タンパク質に特異的に結合することができるドメインを指す。例えば、CD47結合ドメインは、B細胞で発現されたヒトCD47ポリペプチド又はその断片に特異的に結合することができる抗CD47抗体又はその断片を含み得る。
【0081】
本発明において、用語「結合ドメイン」は、「細胞外ドメイン」、「細胞外結合ドメイン」、「抗原特異的結合ドメイン」及び「細胞外抗原特異的結合ドメイン」は互換的に使用することができ、標的抗原(例えばCD47)に特異的に結合する能力を有するCARドメイン又は断片をという。
【0082】
本発明において、前記抗CD47抗体又はその断片は、上述の抗CD47抗体であり、モノクローナル抗体(モノクローナル抗体)、好ましくはscFv(single chain variable fragment)である。具体的には、本発明のCD47に特異的な7C7、5H4、5A4、4E12、3H3、3A5及び1E7抗体を用いて製造することができる。
【0083】
本発明において、CD47結合ドメインのN末端にシグナルペプチドをさらに含むことができ、前記「シグナルペプチド」は一般にタンパク質送達を誘導するためのペプチド鎖を指す。シグナルペプチドは、5~30のアミノ酸長を有する短いペプチドであり得、本発明では、好ましくは配列番号94のアミノ酸配列を使用した。
【0084】
本発明において、CD47結合ドメインのC末端と膜貫通ドメインのN末端との間に位置するヒンジ領域をさらに含むことができ、ヒンジ部位はCD8α由来であり、好ましくは配列番号95のアミノ酸配列で表すことができる。
【0085】
前記「ヒンジ領域」は、一般に、抗原結合領域と免疫細胞Fc受容体(FcR)結合領域との間の結合領域を指す。
【0086】
本発明において、「膜貫通ドメイン」とは、一般に細胞膜を通過し、細胞内シグナル伝達ドメインに連結されてシグナル伝達の役割を果たすCARのドメインを指す。膜貫通ドメインは、CD8α、CD4、CD28、CD137、CD80、CD86、CD152及びPD1からなる群から選択されるタンパク質に由来し得、好ましくは配列番号96のアミノ酸配列で表され得る。
【0087】
本発明において、「共刺激ドメイン」とは、一般に、リンパ球の抗原に対する効果的な反応に必要な細胞表面分子である免疫刺激分子を提供することができる細胞内ドメインを指す。上記の共刺激ドメインは、CD28の共刺激ドメインを含み、OX40及び4-1BBの共刺激ドメインなどのTNF受容体ファミリーの共刺激ドメインを含むことができ、好ましくは配列番号97のアミノ酸配列で表される4-1BBであり得る。
【0088】
本発明において、「細胞内シグナル伝達ドメイン」とは、一般に、細胞内に位置し、シグナルを伝達することができるドメインを指す。本発明において、細胞内シグナル伝達ドメインはキメラ抗原受容体の細胞内シグナル伝達ドメインである。例えば、細胞内シグナル伝達ドメインは、CD3ζ細胞内ドメイン、CD28細胞内ドメイン、CD28細胞内ドメイン、4-1BB細胞内ドメイン、及びOX40細胞内ドメインから選択することができ、好ましくは配列番号98のアミノ酸配列で表されるCD3ζであり得る。
【0089】
本発明のCD47を標的とするキメラ抗原受容体(CD47-CAR)は、好ましくは、
図2に示す模式図のように調製することができる。
【0090】
キメラ抗原受容体をコードするポリヌクレオチド及びキメラ抗原受容体発現ベクター
本発明はさらに別の観点から、キメラ抗原受容体(CAR)をコードするポリヌクレオチドに関する。
【0091】
本発明において、キメラ抗原受容体(CAR)をコードするポリヌクレオチドは、CD47結合ドメインをコードするポリヌクレオチド;膜貫通ドメインをコードするポリヌクレオチド;共刺激ドメインをコーティングするポリヌクレオチド;細胞内シグナル伝達ドメインをコードするポリヌクレオチド;を含み得る。
【0092】
前記CD47結合ドメインをコードするポリヌクレオチドは、本発明のCD47に特異的な7C7、5H4、5A4、4E12、3H3、3A5及び1E7抗体をコードするポリヌクレオチドであってもよく、軽鎖可変部位及び重鎖可変部位がリンカーで連結されたscFvの形態で、具体的な塩基配列は上記の通りである。
【0093】
好ましくは、本発明のキメラ抗原受容体(CAR)をコードするポリヌクレオチドは、
配列番号88の塩基配列で表されるシグナルペプチド;
配列番号74の塩基配列で表される7C7抗体、配列番号76の塩基配列で表される5H4抗体、配列番号78の塩基配列で表される5A4抗体、配列番号80の塩基配列で表される4E12抗体、配列番号82の塩基配列で表される3H3抗体、配列番号84の塩基配列で表される3A5抗体、又は配列番号86の塩基配列で表される1E7抗体;
配列番号90の塩基配列で表される膜貫通ドメイン;
配列番号91の塩基配列で表される4-1BB(共刺激ドメイン);及び
配列番号92の塩基配列で表されるCD3ζ(細胞内シグナル伝達ドメイン);から構成することができる。
【0094】
また、CD47結合ドメインをコードするポリヌクレオチドと膜貫通ドメインとの間に、ヒンジ部位をコードするポリヌクレオチドをさらに含むことができ、好ましくは配列番号89の塩基配列で表されるCD8ヒンジ部位を含むことができる。
【0095】
本発明はさらに別の観点から、キメラ抗原受容体(CAR)をコードするポリヌクレオチドを含むベクターに関する。
【0096】
本発明の特定の実施形態では、ベクターは組換えウイルスベクターであり、好ましくはレンチウイルスベクターであり、作動可能に連結されたEF1αプロモーター;シグナルペプチドをコードするポリヌクレオチド;CD47結合ドメインをコードするポリヌクレオチド;膜貫通ドメインをコードするポリヌクレオチド;細胞内シグナル伝達ドメインをコードするポリヌクレオチド;を含み、タンパク質の発現を増加させるためにWPRE(woodchuck hepatitis virus post-transcriptional regulatory element)をさらに含み得る(
図2)。
【0097】
前記EF1αプロモーターは配列番号87の塩基配列で表され、必要に応じて前記配列番号87の塩基配列と90%以上、93%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、又は99%以上同じ配列を含み得る。
【0098】
さらに、プロモーターは、CD47結合ドメインである抗CD47抗体(scFv)の発現を誘導するように作動可能に連結されている。
【0099】
本発明の具体的な一実施形態では、
図2及び
図3に示すように、CD47-CARをコードするポリヌクレオチドが挿入されたレンチウイルスベクターを作製し、
図4に示すように、抗CD47 CARは正常に発現してCD47ペプチドと結合することを確認した。
【0100】
宿主細胞にポリヌクレオチドを導入するための生物学的方法は、DNA及びRNAベクターの使用を含む。ウイルスベクター、特にレトロウイルスベクターは、哺乳動物、例えばヒト細胞に遺伝子を挿入するために最も広く使用されている方法となっている。他のウイルスベクターは、レンチウイルス、ポックスウイルス、単純ヘルペスウイルス、アデノウイルス及びアデノ関連ウイルスなどに由来し得る。
【0101】
宿主細胞にポリヌクレオチドを導入するための化学的手段は、コロイド分散系、例えば、高分子複合体、ナノカプセル、ミクロスフェア、ビーズ、及び水中油型エマルジョン、ミセル、混合ミセル、及びリポソームを含む脂質ベースシステムを含みます。インビトロ及びインビボで送達ビヒクルとして使用するための例示的なコロイド系は、リポソーム(例えば、人工膜小胞)である。核酸の最新技術の標的化送達、例えば、標的化ナノ粒子又は他の適切なマイクロメータ未満の送達システムを用いたポリヌクレオチドの送達のための他の方法が利用可能である。
【0102】
非ウイルス送達システムが使用される場合、例示的な送達ビヒクルはリポソームである。脂質製剤の使用は、宿主細胞への核酸の導入(インビトロ又はインビボ)のために企図される。別の態様では、核酸は脂質と会合することができる。脂質と会合した核酸は、リポソームの水性内部にカプセル化されるか、リポソームの脂質二重層に点在するか、リポソームとオリゴヌクレオチドの両方と会合した連結分子を介してリポソームに結合するか、リポソーム内に捕捉されるか、リポソームと複合体化されるか、脂質含有溶液中に分散させるか、脂質と混合するか、脂質と組み合わせるか、脂質中に懸濁液として含有するか、ミセルと共に含有又は複合体化するか、又は脂質とは異なり会合することができる。脂質、脂質/DNA又は脂質/発現ベクター会合組成物は、溶液中の任意の特定の構造に限定されない。
【0103】
キメラ抗原受容体(CAR)発現免疫エフェクター細胞
本発明はさらに別の観点から、キメラ抗原受容体(CAR)をコードするポリヌクレオチド又はキメラ抗原受容体(CAR)をコードするポリヌクレオチドを含むベクターを含み、前記キメラ抗原受容体(CAR)を発現する免疫エフェクター細胞に関する。
【0104】
本発明において、免疫エフェクター細胞は哺乳動物由来細胞であり得、好ましくはT細胞又は自然殺害(NK)細胞であり得る。
【0105】
本発明において、キメラ抗原受容体(CAR)を発現する免疫エフェクター細胞は、本発明のCARベクターを免疫エフェクター細胞、例えばT細胞又はNK細胞に導入することにより製造することができる。
【0106】
具体的には、CARベクターは、エレクトロポレーション、リポフェクタミン2000、Invitrogenなどの当技術分野で公知の方法によって細胞に導入することができる。例えば、免疫エフェクター細胞をレンチウイルスベクターでトランスフェクトして、CAR分子を運ぶウイルスゲノムを宿主ゲノムに組み込むことによって標的遺伝子の長期的かつ安定した発現を確実にすることができる。他の例では、転移因子を用いてCAR輸送プラスミド及び転移酵素輸送プラスミドを標的細胞に導入することができる。他の例では、CAR分子を遺伝子編集方法(例えば、CRISPR / Cas9)によってゲノムに添加することができる。
【0107】
キメラ抗原受容体(CAR)を発現する免疫エフェクター細胞を調製するための免疫エフェクター細胞は、対象から得ることができ、「対象」は免疫応答を引き出すことができる生きている生物(例えば哺乳動物)を含む。対象の例には、ヒト、イヌ、ネコ、マウス、ラット、及びそれらのトランスジェニック種が含まれる。
【0108】
T細胞は、末梢血単核細胞、骨髄、リンパ節組織、臍帯血、胸腺組織、感染部位からの組織、腹水、胸膜滲出、脾臓組織、及び腫瘍を含む多数の供給源から得ることができる。
【0109】
前記T細胞は、当業者に知られている多くの技術、例えばFicoll(商標)単離を用いて対象から収集された血液単位から得ることができる。血液からの細胞は単離輸出によって得られ、単離輸出産物は典型的にはT細胞、単球、顆粒球、B細胞を含むリンパ球、他の有核白血球、赤血球、及び血小板を含む。
【0110】
分離エクスポートによって収集された細胞は、血漿画分を除去し、細胞をその後の処理工程のために適切な緩衝液又は培地に入れるために洗浄することができる。
【0111】
T細胞は、赤血球を溶解し、例えばパーコール(PERCOLL)TM勾配による遠心分離によって又は逆流遠心分離によって単球を枯渇させることによって末梢血リンパ球から単離される。
【0112】
CD47発現によって媒介される疾患の予防又は治療用組成物
本発明は、別の観点から、CD47に特異的に結合する抗体、又はCD47を標的とするキメラ抗原受容体を発現する免疫エフェクター細胞を含む、CD47を発現する癌又は腫瘍の予防又は治療用医薬組成物に関する。
【0113】
本発明において、CD47を発現する癌又は腫瘍は、血液癌、卵巣癌、結腸癌、乳癌、肺癌、骨髄腫、神経芽細胞誘発CNS腫瘍、単球白血病、B細胞誘導白血病、T細胞誘導白血病、B細胞由来リンパ腫、T細胞誘導リンパ腫、及び肥満細胞誘導腫瘍からなる群から選択することができる。
【0114】
本発明において、組成物は、CD47を発現する細胞によって媒介される疾患の治療剤を含み得、治療剤は、CD47に特異的に結合する抗体の重鎖及び/又は軽鎖に共有結合した状態で存在する。あるいは、本発明のCD47に特異的な抗体又はCD47-CAR-T細胞と併用投与することができる。
【0115】
治療薬は、低分子薬物、ペプチド薬物、毒素(例えば細胞毒素)などを含む。
【0116】
さらに、治療薬は抗癌剤であり得る。抗癌剤は、癌細胞の増殖を減少させ、細胞傷害性薬剤及び細胞増殖抑制剤を組み合わせた非ペプチド性(すなわち、非タンパク質系)化合物を含む。抗癌剤の非限定的な例には、アルキル化剤、ニトロソ要素、抗代謝物質、抗腫瘍抗生物質、植物(ビンカ)アルカロイド及びステロイドホルモンが含まれる。ペプチド性化合物も使用することができる。
【0117】
前記医薬組成物中のCD47に特異的に結合する抗体又はCD47を標的とするキメラ抗原受容体を発現する免疫エフェクター細胞は、治療又は診断用組成物内で唯一の活性成分であるか、又は例えば抗T細胞、抗IFNγ又は抗LPS抗体などの他の抗体成分、又はキサンチンなどの非抗体成分を含む他の活性成分と共に使用可能である。
【0118】
医薬組成物は、治療的有効量の本発明の抗体を含むことが好ましい。本明細書で使用される「治療的有効量」という用語は、標的疾患又は状態を治療、改善、又は予防するのに必要な治療薬の量を意味し、又は検出可能な程度の治療又は予防効果を示すために必要な治療薬の量を意味する。いくつかの抗体について、治療的有効投与量は、細胞培養アッセイ又は通常げっ歯類、ウサギ、イヌ、ブタ、又は霊長類などの動物モデルによって最初に決定することができる。動物モデルはまた、適切な濃度範囲及び投与ルートを決定するために使用することができる。そのような情報は、ヒトの投与に有用な投与量及び根を決定するために使用することができる。
【0119】
ヒト患者の正確な有効量は、疾患状態の重症度、患者の一般的な健康状態、患者の年齢、体重及び性別、食事、投与時間、投与頻度、薬剤組成、反応感度及び治療に対する耐性/反応に依存する。前記量は従来の実験によって決定することができ、臨床医の判断の範囲内である。一般に、有効用量は0.01~50mg/kg、好ましくは0.1~20mg/kg、さらに好ましくは約15mg/kgである。
【0120】
組成物は患者に個別に投与することができ、又は他の薬剤、薬剤又はホルモンと組み合わせて投与することができる。
【0121】
本発明の抗体が投与される投与量は、治療される状態の性質、悪性リンパ腫又は白血病のグレード、及び抗体が疾患予防レベルで使用されるか、又は存在する状態を治療するために使用されるかによって異なる。
【0122】
投与頻度は、抗体分子の半減期、薬効の持続性に依存する。抗体分子が短い半減期(例えば、2~10時間)を有する場合、1日当たり1回以上の用量を提供する必要がある。あるいは、抗体分子が長い半減期(例えば、2~15日)を有する場合、1日に1回、1週間に1回、又は毎月又は2ヶ月あたり1回の用量を提供する必要がある。
【0123】
さらに、医薬組成物は、抗体の投与のために薬学的に許容される担体を含有してもよい。担体は、それ自体が組成物を投与される個体に有害な抗体の産生を引き起こすべきではなく、毒性がないべきである。適切な担体は、タンパク質、ポリペプチド、リポオソーム、多糖類、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、アミノ酸ポリマー、アミノ酸コポリマー及び不活性ウイルス粒子などの徐々に新陳代謝される高分子であり得る。
【0124】
薬学的に許容される塩は、例えば、塩化水素酸塩、臭化水素酸塩、リン酸塩及び硫酸塩などのミネラル酸塩、又は酢酸、プロピオン酸、マロン酸及び安息香酸などの有機酸の塩を使用することができる。
【0125】
治療組成物中の薬学的に許容される担体はさらに、水、生理食塩水、グリセロール及びエタノールなどの液体を含み得る。さらに、湿潤剤、乳化剤又はpH緩衝物質などの補助物質がそのような組成物中に存在し得る。担体は、患者による医薬組成物の摂取のために、錠剤、丸薬、糖衣錠、カプセル、液体、ゲル、シロップ、スラリー、及び懸濁剤として製剤化することができる。
【0126】
投与のための好ましい形態は、例えば注射又は注入(例えば、喪失注射又は連続注入)による非経口投与に適した形態を含む。生成物が注入又は注射用である場合、油又は水溶性賦形剤中の懸濁剤、溶液又はエマルジョンの形態をとることができ、これは懸濁剤、保存剤、安定剤及び/又は分散剤などの処方剤を含み得る。あるいは、抗体分子は無水形態であってもよく、使用前に適切な滅菌液で再構成されてもよい。
【0127】
一旦製剤化されると、本発明の組成物は患者に直接投与することができる。治療を受ける患者は動物であり得る。しかしながら、組成物はヒト患者の投与のために適合することが好ましい。
【0128】
本発明の医薬組成物は制限はないが、経口、静脈、筋肉内、動脈内、骨髄内、脊椎腔内、心室内、経皮、経皮、皮下、腹腔内、鼻腔内、腸内、局所、舌下、膣内又は直腸経路を含む経路によって投与することができる。典型的には、治療用組成物は液体溶液又は懸濁液として注射可能な材料として調製することができる。また、注入前に液体賦形剤内容液又は懸濁液に適した固体形態を製造することができる。
【0129】
組成物の直接送達は、一般に、注射、皮下注射、腹腔内注射、静脈内注射、筋肉内注射によって行うことができ、又は組織の間質空間に送達することができる。さらに、組成物は創傷部位で投与することができる。用量処理は、単回投与スケジュール又は複数回投与スケジュールであり得る。
【0130】
CD47を発現する細胞によって媒介される疾患の診断又はモニタリング
本発明はさらに別の観点から、CD47に特異的に結合する抗体を含む、CD47を発現する細胞によって媒介される疾患の診断又は監視用組成物に関する。
【0131】
CD47に特異的に結合する抗体は直接的又は間接的に標識することができる。間接的標識は、検出可能な標識を含む二次抗体を含み、二次抗体がCD47に特異的に結合する抗体に結合する。他の間接的標識はビオチンを含み、ビオチン化CD47に特異的に結合する抗体は検出可能標識を含むアビジン又はストレプトアビジンを使用して検出することができる。
【0132】
適切な検出可能標識は、分光分析的、光化学的、生化学的、免疫化学的、電気的、光学的又は化学的手段によって検出可能なすべての組成物を含む。適切な標識は、非限定的に、磁石ビーズ、蛍光染料(例えば、フルオレセインイソチオシアン酸塩、テキサスレッド、ローダミン、緑色蛍光タンパク質、赤色蛍光タンパク質、黄色蛍光タンパク質など)、放射性標識(例えば、たとえば、3H、125I、35S、14C、又は32P)、酵素(例えば、マスタード無過酸化酵素、アルカリンホスファターゼ、ルシフェラーゼ及び酵素結合免疫吸着検査(ELISA)に一般的に使用されるもの)及びコロイド状の金又は着色ガラス又はプラスチック(例えば、ポリスチレン、ポリプロピレン、ラテックスなど)ビーズなどの表色系標識が含まれる。
【0133】
さらに、診断又は監視のために、抗体は蛍光タンパク質で標識することができ、造影剤又は放射線同位体を含み得る。
【0134】
本発明のCD47に特異的に結合する抗体を診断キットに用いる場合、抗体は支持体に固定されており、支持体はマイクロプレート、マイクロアレイ、チップ、ガラス、ビーズ又は粒子、又は膜であり得る。
【0135】
以下、本発明の理解を助けるために好ましい実施例を提示する。しかしながら、以下の実施例は本発明をより容易に理解するために提供されるものであり、以下の実施例によって本発明の内容が限定されるものではない。
【0136】
実施例1:CD47に特異的に結合する抗体の調製及び選択
CD47ペプチド特異的抗体を選択するために、CD47に結合する抗体を産生するハイブリドーマを調製して抗体を選択した。
【0137】
まず、CD47タンパク質(Acrobiosystems、cat#CD7-HA2E9)を免疫して脾臓細胞を摘出し、マウス骨髄症細胞と細胞融合を通じてハイブリドーマ細胞を作製した。
【0138】
細胞融合に用いるマウス骨髄腫細胞は、HGPRT(HypoxanthineGuanidine-Phosphoribosyl-Transferase)を有していないため、HAT培地では生存できないが、ハイブリドーマは脾臓細胞と融合することによりHAT培地で生存できる。これを用いるとハイブリドーマのみを増殖させることができるので、通常ハイブリドーマを確立するまでHAT培地で増殖させた。
【0139】
増殖したハイブリドーマの中でCD47と結合する抗体を産生するハイブリドーマを選択するために限界希釈法を用いた。まず、96ウェル当たり1細胞以下となるようにした後、1つの細胞から増殖したクローンで得られた抗体がCD47と結合するかをELISAで確認し、CD47と結合するクローンを選別した。この過程を3回繰り返してCD47と結合する抗体を産生するハイブリドーマを選別した。このようにしてCD47に結合する7種の抗体を得た。
【0140】
上記7種の抗体はそれぞれ7C7、5H4、5A4、4E12、3H3、3A5及び1E7と命名し、それらの塩基配列とアミノ酸配列を分析した。配列分析結果による各抗体の重鎖可変部位、及び軽鎖可変部位の配列情報を下記表1~表7に示し、下記表1~7で下線を付した部分は相補的決定部位を意味する。
【0141】
【0142】
【0143】
【0144】
【0145】
【0146】
【0147】
【0148】
実施例2:選択された抗体のCD47に対する特異性の確認 - ELISA分析
本発明では、上記実施例1で確立した7C7、5H4、5A4、4E12、3H3、3A5及び1E7抗体のCD47に対する特異性を確認するために、ELISA分析を行った。
【0149】
まず、CD47ペプチドをコードするために、CD47タンパク質(Acrobiosystems、cat#CD7-HA2E9)を100ng/ウェルになるように96ウェルプレートに分注し、4℃で一晩反応させた。次いで、3%BSAを含む1×PBSTを処理した後、室温で30分間ブロッキングした。
【0150】
7C7、5H4、5A4、4E12、3H3、3A5及び1E7抗体産生する各クローンのハイブリドーマ細胞培養液3μlを各ウェルに処理した後、常温で2時間反応させた後、1×PBSTで3回洗浄した。二次抗体(anti-HRP、1:10,000)を処理して室温で30分間反応させた後、1×PBSTで3回洗浄した後、発色のためにTMBを処理して室温で5分間反応させた。最後に1N H2SO4の停止液(stop solution)を処理して反応を終了させた後、450nmで吸光度を測定した。
【0151】
【0152】
【0153】
その結果、表9に示すように、本発明で選択した抗体が全てCD47に特異的に結合することを確認した。
【0154】
実施例3:選択された抗体のCD47に対する特異性の確認 - フローサイトメトリー
本発明では、上記実施例1で確立した7C7、5H4、5A4、4E12、3H3、3A5及び1E7抗体のCD47に対する特異性を確認するためにフローサイトメトリーを行った。
【0155】
まず、CD47を発現する乳がん細胞株MCF-7 1×107個と7C7、5H4、5A4、4E12、3H3、3A5及び1E7抗体1μgそれぞれを30分間反応させた後、二次抗体で表面(surface)を染色その後、フローサイトメーターで測定した。
【0156】
陽性対照(positive control)でCD47抗体(Biolegend PE anti-human CD47, cat# 323108, 5μl)を、二次抗体としてPE-コンジュゲーションされた抗マウスIgG抗体(PE-conjugated goat anti-mouse IgG; Biolegend Inc., cat# 405307, 米国、5μl)を使用した。
【0157】
【0158】
その結果、
図1及び表10に示すように、7C7、5H4、5A4、4E12、3H3、3A5及び1E7抗体ともにCD47を発現する細胞と特異的に結合することを確認した。
【0159】
本発明で選択した抗体はCD47を発現する細胞を特異的に認識したので、CD47を発現する癌又は腫瘍細胞の免疫回避を抑制して免疫細胞/マクロファージによる細胞毒性又は死滅を効果的に誘導することができる。したがって、本発明の抗CD47抗体は、CD47を発現する癌又は腫瘍の予防又は治療用組成物として有用に利用することができる。
【0160】
実施例4:CD47を標的とするキメラ抗原受容体(CD47-CAR)発現ベクターの作製
本発明では、上記実施例1で製造したCD47抗体を用いて、CD47を標的とするキメラ抗原受容体(CAR)を発現するレンチウイルスベクター(CD47-CARレンチウイルス)を製造した。
【0161】
図2の模式図に示すように、EF1αプロモーター(配列番号87);
シグナルペプチドをコードするポリヌクレオチド(配列番号88);
CD47結合ドメインをコードするポリヌクレオチド(配列番号74の塩基配列で表される7C7抗体、配列番号76の塩基配列で表される5H4抗体、配列番号78の塩基配列で表される5A4抗体、配列番号80の塩基配列で表される4E12抗体、配列番号82の塩基配列で表される3H3抗体、配列番号84の塩基配列で表される3A5抗体、又は配列番号86の塩基配列で表される1E7抗体);
CD8ヒンジ部位をコードするポリヌクレオチド(配列番号89);
膜貫通ドメインをコードするポリヌクレオチド(配列番号90);
4-1BB(共同刺激ドメイン)をコードするポリヌクレオチド(配列番号91);
CD3ζ細胞内のシグナル伝達ドメイン)をコードするポリヌクレオチド(配列番号92);とWPREをコードするポリヌクレオチド(配列番号93);からなるCAR DNAをin vitroで合成し、第3世代レンチウイルスベクターに挿入した。
【0162】
レンチウイルスベクターDNA(0.5μg)をHEK293FT細胞(5×105cells/500μl)に送達し、CD47-CAR遺伝子を発現する293HEK細胞を作製した。293HEK細胞に遺伝子を送達するために、Lipofectamine 3000トランスフェクションキット(Invitrogen、cat#L3000-015)を使用し、Opti-MEM(gibco、cat#51985-034)培地で4時間インキュベートした。
【0163】
レンチウイルスベクターDNAで形質転換されたHEK293FTでCD47特異的CARが正常に発現され、CD47ペプチドと結合するかフローサイトメトリー法により確認した結果(
図3)、
図4に示すように、CD47-CARは、正常に発現し、CD47ペプチドと結合することを確認した。したがって、抗CD47抗体である5A4、4E12、3H3、3A5又は1E7は、CD47を標的とするCAR-T細胞の製造に利用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0164】
本発明で選択したCD47に特異的な抗体7種(7C7、5H4、5A4、4E12、3H3、3A5、1E7)はCD47抗原と特異的に結合し、上記確立された抗体を用いてCD47を標的とするキメラ抗原受容体(CAR)の調製が可能であることが確認されたので、本発明のCD47に特異的な抗体及びそれを用いて製造したキメラ抗原受容体は、CD47を発現する癌又は腫瘍の予防又は治療に適用することができる。
【配列表】
【国際調査報告】