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特表2023-552257溶媒積層リターダスタックの精密製作のための機器および方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-15
(54)【発明の名称】溶媒積層リターダスタックの精密製作のための機器および方法
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/30 20060101AFI20231208BHJP
   B29C 65/48 20060101ALI20231208BHJP
【FI】
G02B5/30
B29C65/48
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022579072
(86)(22)【出願日】2021-06-21
(85)【翻訳文提出日】2023-02-15
(86)【国際出願番号】 US2021038183
(87)【国際公開番号】W WO2021262569
(87)【国際公開日】2021-12-30
(31)【優先権主張番号】63/041,978
(32)【優先日】2020-06-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TEFLON
(71)【出願人】
【識別番号】515046968
【氏名又は名称】メタ プラットフォームズ テクノロジーズ, リミテッド ライアビリティ カンパニー
【氏名又は名称原語表記】META PLATFORMS TECHNOLOGIES, LLC
(74)【代理人】
【識別番号】110002974
【氏名又は名称】弁理士法人World IP
(72)【発明者】
【氏名】シャープ, ゲイリー
(72)【発明者】
【氏名】コールマン, デーヴィッド
【テーマコード(参考)】
2H149
4F211
【Fターム(参考)】
2H149AA13
2H149AB26
2H149EA05
2H149EA22
2H149FA66
2H149FB08
2H149FD31
4F211AA01
4F211AA03
4F211AA28
4F211AG01
4F211AG03
4F211AR07
4F211TA01
4F211TC01
4F211TD11
4F211TJ11
4F211TN88
4F211TQ03
(57)【要約】
リタデーションフィルムの高精度の溶媒接合のためのラミネータが開示される。本ラミネータは、配向の再現性が高く、面内応力が低い積層体を生産できる。さもなければ理論上の最適性能と物理的に実現可能な性能との間にギャップが生じやすい。バッチモードのラミネータは、大面積のマザーシートに拡張可能であり、高スループットの製造に適している。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つ以上のリターダフィルムを低い面内応力で精確に溶媒積層するための装置であって、
単一プライのリターダフィルムを固定支持するように適合されており、単一プライのリターダフィルムの位置および配向の位置をほぼ特定するための機械的特徴を含む、送給プレートと、
リターダスタックの1つまたは複数のプライを固定支持するように適合されているビルドプレートと、
送給プライの位置および配向の位置を特定するように適合されている視覚システムと、
視覚システムによって送達された情報を使用してリターダフィルムとリターダスタックとの間の位置および配向の相対誤差を補正するように適合されている送給プレートまたはビルドプレートのいずれかに取り付けられている、第1の移動テーブルと、
送給プライをリターダスタックの1つまたは複数のプライに積層するように適合されている第2の移動テーブルおよび積層ローラと、
溶媒をニップに送達するように適合されている溶媒分注ヘッドと、
送給プライの前縁をリターダスタックに送達するように適合されており、送給プライとリターダスタックとの間の相対配向を実質的に維持し送給プライ上の面内応力を最小化する、機構と
を備える、装置。
【請求項2】
送給プレートは実質的に水平な平面内に配置されており、ビルドプレートは実質的に鉛直な平面内に配置されている、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
送給プレート角度の大きさが水平に対して<40°、およびビルドプレート角度の大きさが鉛直に対して<20°である、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
送給プレートは2つのセグメント、すなわち、視覚システム位置合わせ中にフィルムを支持する第1の固定的セグメントと、送給プライの前縁をリターダスタックに送達してニップを形成する第2のセグメントと、を含む、請求項1に記載の装置。
【請求項5】
面内応力緩和機構を更に備え、送給プライの前縁が積層ローラと押さえバーとの間で捕捉される、請求項1に記載の装置。
【請求項6】
送給プライを機械的干渉を伴わずに担体基板またはリターダスタックに差し向けるべく、押さえバーが積層ローラの周囲で前進され得るように構成されている、請求項5に記載の装置。
【請求項7】
ニップを形成し押さえバーを後退させた後で積層テーブルが積層開始位置へと駆動されてリターダスタックの面積歩留まりが最大化されるように装置が構成されている、請求項6に記載の装置。
【請求項8】
送給プライは位置合わせ中に真空装置によって所定位置に保持される、請求項1に記載の装置。
【請求項9】
真空または機械的固定具を使用してビルドプレートに取り付けられている光学的に平坦な剛性担体基板がリターダスタックを受け取り、担体基板およびリターダスタックは溶媒積層プロセスの完了後にラミネータから取り外すことが可能な、請求項1に記載の装置。
【請求項10】
剛性担体基板は研磨ガラスまたはポリマーで構成されている、請求項7に記載の装置。
【請求項11】
低い面内応力および高い配向精度で2つのリターダフィルムを溶媒積層するための方法であって、
機械的な位置調整特徴を有する送給プレート上で第1のプライであるリターダフィルムを位置合わせすることと、
ビルドプレート上に担体基板を装着することと、
視覚システムを用いて第1のプライであるリターダフィルムの縁部の位置を特定することと、
送給プレートに取り付けられている移動テーブルを使用して第1のプライであるリターダフィルムの位置および配向を選択することと、
ビルドプレートに取り付けられている積層テーブルを使用して第1のプライであるリターダフィルムを担体基板に移動させることと、
第2のプライであるリターダフィルムを送給プレート上で位置合わせし、第2のプライであるリターダフィルムを送給プレートに押し付けて維持することと、
視覚システムを用いて第2のプライであるリターダフィルムの縁部の位置を特定することと、
送給プレートに取り付けられている移動テーブルを使用して第2のプライであるリターダフィルムを第1のプライであるリターダフィルムと位置合わせすることと、
押さえバーと積層ローラとの間で第2のプライの前縁を捕捉することと、
送給プレートのセグメントを並進させることによって第2のプライであるリターダフィルムを第1のプライであるリターダフィルムに差し向けて、ニップを形成することと、
ニップ内に溶媒を分注することと、
積層テーブルを使用して第2のプライであるリターダフィルムを第1のプライであるリターダフィルムに溶媒溶着することと
を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
相互参照
本願は2020年1月21日出願の米国仮出願第63/041,978号に対する優先権を主張するものであり、その出願の内容の全体を参照により本明細書に援用するものである。
【背景技術】
【0002】
光学リターダフィルム(位相差フィルムとしても知られる)を積層するために使用される接着剤の最も一般的な一群は、アクリル系感圧接着剤(PSA)である。PSAは光透過性接着剤(OCA)と呼ばれる場合もあり、典型的には厚さ25~50ミクロンであり、約1.46の屈折率を有し、三酢酸セルロース(CTA、またはTAC)、ポリカーボネート(PC)、および環状オレフィンポリマー(COPまたはCOC)などの基板同士の間に、大面積の結合部を形成し得る。接着を促進するために積層前に表面活性化(例えばプラズマまたはコロナ)を用いること、ならびに、ヘーズおよびマイクロバブルを排除するために積層後にオートクレーブを用いることが典型的である。液晶ディスプレイテレビおよびモニタに偏光板およびリターダフィルムを積層するために使用されるものをはじめ、(ロールツーロール方式のラミネータとは区別されるような)バッチモードのラミネータは、一般的なものである。積層中に真空膜を使用してフィルム全体に面内支持を提供する最新の技術によって、応力を最小化することが可能であるが、これは2つの重要な理由による。第1に、フィルムが真空を介して膜に追従し、通常であればニップが形成されるときに生じ得る、圧力の横方向の不均一を最小化する。第2に、膜が並進する積層ローラと協働して、通常であれば(例えば)真空ステージからフィルムを引き離すときに生じ得る、縦方向(machine-direction)の応力を最小化する。積層中に2つのフィルムの間に小さい間隙を維持することによって、ひずみの量が最小化される。xy-シータ操作が行われるステージを機械視覚カメラと連繋させることも、精密で高スループットのフィルム-ディスプレイ積層およびフィルム-フィルム積層のために有用である。
【0003】
ポリカーボネートの層同士の結合に関して、接着剤の必要性を排除する全ての利益と共に、リターダフィルムの溶媒接合についても記載される。横方向の位置および配向を決定するために積層方向と平行な送達デバイス上の基準ガイドが使用される、溶媒接合装置について記載されている。移動制御ステージ上の基準停止部によって、縦方向(または積層方向)の位置を設定することができる。ラミネータは、フィルム送達デバイスから垂れ下がったフィルムの下側部分を移動可能なバッキング面上のフィルムに対して押し付けることによって、ニップを形成し得る。このニップは、積層体全体の品質に影響し得る、積層開始の初期状態を決定し得る。これには投入フィルムの精確な配向、および横方向の圧力の分配が含まれる。
【0004】
広い波長範囲にわたる線形偏光から円偏光への(およびその逆の)変換のために必要なものをはじめ、リターダスタックは、理想に近い理論上の逆分散性を有し得る。例えば、エンジニアリングされたリターダスタックは、可視帯域(400~700nm)全体にわたって0.99を上回る楕円率の電場比(ellipticity field-ratio)をもたらし得るが、このことは高性能な光学系の要件となり得る。高精度の光軸配向および最適な誘起応力を実現できる積層機器および積層方法が一般に求められている。
【発明の概要】
【0005】
本明細書における開示には、精密光学リターダスタックの製作における不確かさを最小化する、バッチモード溶媒積層機器および方法が記載されている。光学リターダスタックは、広範囲の偏光制御機能に対処できる、エンジニアリングされたインパルス応答を可能にする透明配向フィルムの複数の層で構成されている。これらの技術は、溶媒溶着リターダスタック積層プロセスにおける、各プライの位置/配向の不確かさを最小化することを意図している。それらはまた、従来技術の積層プロセスにおいて通常であれば生じ得る、積層点におけるリターダスタックの内部面内応力を最小化することを意図している。それらの実施形態は一般に、溶着プロセスに、投入または送給フィルムの操作におけるプロセス制御を導入する。特にそれらは、積層ニップを形成する非常に重要な工程までのおよびこの工程を含めた、送給フィルムの前縁の制御を意図している。
【0006】
本明細書には、フィルム配向の不確かさを最小化し、ベースリタデーションフィルムの製作時点の(as-fabricated)統計的データを最良に維持する、溶媒積層機器および方法が記載されている。不確かさの最小化とは、信頼できる機械的な基準(例えばフィルム縁部)に基づいて、送給フィルム(または投入フィルム)の配向配置の高い再現性を実現するための方法を指す。統計的データの維持とは、ニップ形成中に確立されるニップにおけるローラ軸に沿った圧力の均一性を指す。そのような不均一が生じる場合、投入フィルム上に、光軸および位相差の統計的データを損ない得る、局所的な面内圧縮荷重が存在する可能性がある。また更に、積層中この不均一さが縦方向に沿って伝播して、マザーシート全体の性能に影響する可能性がある。溶媒積層には機械的柔性を導入する可能性のあり得る接着剤が関与しないので、そのような応力はいずれも接合部が形成された瞬間に構造内に永続的に固定化され(frozen)得る。本明細書に記載する技術は、ニップ形成の不確かさおよびリターダスタックの性能を損ない得る他の潜在的な積層応力を克服することを企図している。
【0007】
本明細書で開示されている機器および方法は、投入(送給)フィルムの固有の特性の多くから影響を受けないようになり(create an immunity)、この方法がよりロバストになるのが理想的である。このことは、投入フィルムの前縁に/その近くに予荷重機構を設けて、非常に重要なニップ形成工程中に投入フィルムが支持されるようにすることによって達成され得る。ニップの形成は少なくとも4つの要素が関与する。単一ローラ構成では、これには投入フィルム、圧力ローラ、ビルドプレート(build-plate)、およびビルドプレートに取り付けられるビルドフィルム(build-film)(仕掛品、WIPスタック)が含まれる。実施形態では、ニップ形成前にフィルムを平坦にするための何らかの形態の基準表面を使用して、投入フィルムの可能な限り広い面積が支持される。このことは、特にニップが形成される領域内で、面内応力の最小化と同時に達成される。別の実施形態では、送給フィルムの完全な支持を提供するための、第5の要素(変形可能な支持部材)が導入される。
【0008】
本明細書の開示に従って製作されるリターダスタックの性能は、各ベースフィルムの製作時点の面内経路長差(Rとしても知られる)および光軸配向の維持に依存する。剥離接着強さの高い溶媒接合では、基板の表面をR値を大きく損なうことなく事実上即座に軟化するのに適した溶媒が使用される。十分な圧力/時間(またはエネルギー)をかけて、接合部が形成され得る。積層のために適用される均一な下向きの力は、得られるスタックの機能の性能にとって有害ではない。しかしながら、積層中に生じるどのような面内応力も、性能を深刻に損なう可能性がある。本明細書に記載するのは、リターダスタックに影響し得る面内応力および不均一な下向きの力のいくつかの発生源、ならびにそれらの影響を最小化するための機器/方法である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】従来技術の、ポリカーボネートリターダフィルムを1つに溶媒溶着するための装置の図である。
図2】従来技術の溶着装置において、支持されていないフィルムから生じ得る、送給フィルム縁部とローラ軸との間の角度の不確かさの図である。
図3】従来技術の溶着装置における、支持のないフィルムを用いたニップの形成時に生じ得る局所的な面内圧縮応力の図である。
図4】フィルム前縁の支持のない長さ(D)を最小化する送給プレートに関する構成の図である。
図5】送給プレートの横方向の図であって、(A)ではフィルムは弛緩状態にあり、(B)ではフィルムは送給プレートと共形であり、(C)ではフィルム前縁がリテイニングバーと送給プレートとの間で捕捉されている。
図6】(A)投入フィルムを送給プレート上で機械的に位置合わせすることと、(B)フィルムを送給プレートと共形にすることと、(C)フィルムの前縁を押さえバー(retainer bar)で捕捉することと、(D)積層ローラの周囲の一部にフィルムを巻き付けることと、(E)ニップを形成することと、(F)押さえバーを解除しテーブルを開始位置まで移動させることと、を含む、本発明に係る例示的ニップを形成するためのプロセスの図である。
図7】セグメント化された送給プレートを使用する、本発明のラミネータ構成の上面図である。
図8】単一の3位置送給プレートを使用する、本発明の代替のラミネータ構成に関するプロセス工程の図である。
図9】真空曲げ力を適用する、ある外形を有する上側表面を有する本発明の送給プレートの端部付近の拡大図である。
図10】変形可能な支持部材を使用する本発明の溶媒ラミネータの図である。
図11】変形可能な支持部材を使用する本発明の溶媒ラミネータのためのプロセス工程の図である。
図12】変形可能な支持部材(DSM)を使用する2つの溶媒ラミネータ構成に関するニップ領域の側面図であり、(A)は狭い間隙およびDSMにわたる従来の均一なひずみを有し、(B)は広い間隙および2部分で成るDSMを有し、ここで外側部分がほとんどのひずみを軽減する。
【発明を実施するための形態】
【0010】
これらの技術は、高精度、大面積の、製造可能な、偏光制御のための光学リターダスタックの必要性に動機付けられている。これらのスタックは、拡張現実、仮想現実ヘッドセット(例えば偏光ベースのパンケーキレンズおよび光アイソレータ)、直視型ディスプレイ(例えば環境光制御、直射日光下の可読性、およびOLEDディスプレイのアイソレータ)、迷光緩和、画像キャプチャフィルタ、波長選択性の偏光制御、偏光分析、サングラス、色覚異常用アイウェア、ならびに他のカスタムエンジニアリングされた光学コンポーネントに必要とされている。これらのスタックは典型的には、縦方向、横方向、または斜め方向のうちの1つまたは複数の面内延伸を伴う、透明延伸ポリマーである。厚さは典型的には25ミクロンから100ミクロンまでの範囲である。ほとんどの基板(例えばポリカーボネートまたは環状オレフィン)は延伸方向において屈折率の増大を呈する傾向があるが(正の異方性)、負の異方性を示すそれほど一般的でない他の基板(例えばポリスチレン)が存在する。ポリカーボネート製リターダは、大きな面内光路長差(R)(例えば400~2,000nm)が必要な、または価格が非常に繊細な(例えば3Dシネマ用アイウェア)状況への、適用可能性が非常に高い。製造者としては帝人株式会社および株式会社カネカが挙げられる。環状オレフィン(例えば日本ゼオン株式会社のCyclic Olefin Polymer、またはJSR株式会社のArtonなどのCyclic Olefin Copolymer)は光学的に透明であり、平坦であり、より低い屈折率、低複屈折分散、低吸湿性であり、必要な面内光路長差がより低い、R<300nmであるケースへの適用可能性が非常に高い。ロバストな高性能リターダスタックを製造する文脈では通常、製作時点の統計的データ、低い応力-光学係数、低い緊張下伸び率(すなわち高いヤング率)、および環境に対するロバスト性(例えば水分吸収に起因する膨脹による応力)という理由で、COPが好ましい。例えば、円形のアクロマティックな多層偏光子には100~300nmの範囲の経路長差が必要であるが、これはCOPの製造範囲内にある。溶媒ラミネータが何らかの面内応力を生む場合、COPスタックに対する影響は、同様のPCスタックからの面内応力よりも小さい。
【0011】
リターダフィルムは連続ウェブプロセスにおいて、均一厚さのキャスト/押し出し透明フィルムをガラス転移温度(付近)まで加熱し、それを空間的に均一な規定された経路長差を達成する量だけ延伸することによって製造される。ウェブ幅は500mmから1,300mm超の範囲であり、長さは数百メートルであり得る。製造者は1つまたは複数の縦方向スリット縁部を設けることができるが、スリット縁部に対する光軸の配向にある程度の不確かさが存在し得る。均一性は決して完全ではないので、光学軸の位置を正確に特定するために、試験が必要な場合がある。ダウンウェブ方向においてよりもクロスウェブ方向において、リタデーション/光軸のより大きい統計的変動が存在する傾向がある。リターダスタックは一般に複数の光軸配向を使用し、したがってそれらは一般に、1つまたは2つのリタデーション値を使用するバッチプロセスを介して製造される。これらの技術はバッチプロセスをサポートする方法に特に向けられている。特定の設計による要求に応じて、マザーシートの各層は、機械的プロセスまたはレーザプロセスを用いて、ウェブから適切な角度で切り出される。マザーシートのサイズは(例えば)A4であり得るが、製造コスト低減のために(例えば)A2へのスケーリングが好ましい。機械設計は、ベースフィルムのリタデーション/光軸の統計的データ、試験プロトコール、およびマザーシート切断プロセスが、全体として投入マザーシートの統計的特性を最適化することを想定している。マザーシートは各々が、十分な真直度を有する少なくとも1つの基準縁部(または同程度に信頼できる位置調整特徴)と、この縁部に対する信頼できる光軸配向と、十分な面内経路長差(R)の統計的データとを有する。したがって、ラミネータが、高い再現度で縁部配向を位置合わせし、積層によって誘起されるRの変化が最適な状態で、マザースタックを作り出すときに、可能な最良のリターダスタック性能が達成されるものと想定されている。
【0012】
製作後(すなわちガラス状態において)、リターダフィルムは積層プロセスによるあらゆる弾性変形に対して脆弱なままである。この脆弱性の程度は、適用される応力の量(σ、すなわち単位断面積あたりの力)、および応力-光学係数(C、すなわち単位応力ごとに誘起される複屈折率(Δn))に依存する。厚さdを有するフィルムに関して、フィルムにおいて誘起される光路長差は、
Δnd=σCd
によって表すことができる。dと幅wの積によって定義される断面積を有するフィルムが、その長さに沿って小さい力Fを受けると、単位力あたりに誘起される経路長差は、
となる。
【0013】
例えば、積層中送給ステージに真空が適用される場合、投入フィルムは積層点において縦方向に準均一な緊張下にあり得る。このプロセスはまた、(例えば固定支持(fixturing)に起因する)より局所化された力を生じさせる場合があり、この力は、幅にわたって均等に分配された力よりも影響が大きい可能性がある。また、上記の式によれば、低応力光学係数のポリマーの溶媒溶着が一般に好ましい。積層点で(すなわちニップにおいて)面内力が適用されると、これは溶媒積層を行うときに永続的なものとなり得る。対照的に、PSA層は応力を軽減し得るある程度の柔性をもたらし、また最終段階の熱的プロセスによって、場合によっては積層プロセスと関連付けられる応力をある程度弛緩させることすらできる。リタデーションフィルムに遅軸に沿って小さい単軸面内応力が適用される場合(正の異方性)、リタデーションは遅軸屈折率の増大に比例して増大し、光軸配向は安定したままである。同様に、リタデーションフィルムに遅軸に対して垂直に小さい応力が適用される場合、リタデーションが遅軸に対して垂直な方向における屈折率の増大に比例して減少し、光軸はここでも安定している。応力が遅軸に対して±45°で適用される場合、リタデーションは実質的に安定しており、光軸は応力の配向によって決まる符号で回転する。他の角度では、リタデーションおよび光軸配向の変化の混合が存在する。したがって、積層点における面内弾性変形を最小化し、得られるスタックの性能をそれにより最適化する積層プロセスが求められている。
【0014】
フィルムはまた、積層ローラと共形であるとき弾性変形され得る。平面状のバッキング面を用いる単一ローラ積層プロセスの場合、投入フィルムは積層点においてローラと共形となり得、ここでビルド側(またはスタック)は面内応力を実質的に全く受けない場合がある。半径Rを有するローラの場合、接触箇所における内部応力は
によって与えられる。
【0015】
上式でEはフィルムに関するヤング率である。この応力は溶媒接合部内に固定化される可能性があり、場合によっては丸まりを引き起こす。しかし顕著な丸まりが存在しない場合であってさえ、偏光機能性の大きな変化が存在し得る。幸い、25~100μm厚さ範囲内のほとんどのリターダフィルムは、>30mmのローラ径の場合に積層点における曲げ応力が容認できる程度に柔軟である。
【0016】
単一ローラ積層プロセスでは、ニップ形成には4つの要素:(1)積層ローラ、(2)投入フィルム(任意の保護ライナーを含む)、(3)任意のより下層の保護ライナーを含むビルドフィルム、および(4)ビルドプレートを、1つに合わせることが関与する。シートの可撓性および平坦展伸性(lie-flat)の問題を理由として、ニップ形成中の投入フィルムの取扱いは最も大きな問題となる傾向がある。ビルドスタックの全面積がビルドプレートによって強固に支持され、したがってこれは比較的良好に支持され、ローラはニップを形成するためだけに進行すればよい。様々な実施形態は、ニップ形成および続く積層の間に投入フィルムを支持するという、共通の目的を有する。
【0017】
マザーシート構成は、基板の化学的性質、表面エネルギー、厚さ、平坦度、分子量/デュロメータ硬さ、種類/厚さ、および任意の保護ライナーの適用プロセス、および投入フィルムの全体的な平坦展伸特性に応じて、非常に多様であり得る。フィルムはロール巻きにされている場合があり、したがってマザーシートのサイズへの切断後に、上/下に丸まる傾向を有する場合がある。丸まりの厳密な軸は縁部に対する光軸の配向に依存し得る。フィルムは反射防止コーティングを有してもよいが、これは応力誘起の丸まりを引き起こし得る。フィルムは、丸まりを引き起こす保護ライナーを有し得るか、または平坦展伸性に影響する機械的荷重下で積層される。フィルムは水分を吸収し、丸まりが誘起される場合がある。フィルムは高い表面エネルギーを有し、そのためビルドプレート上のフィルムに近接させると離散した光学接触を形成する傾向を有し得る。フィルムの製造プロセスは、(例えば)平坦展伸性のクロスウェブ方向の変動、例えばリップルを引き起こし得る。マザーシート特性の上記の不確定要素は全て、従来技術の溶媒積層プロセスに、得られるリターダスタックの性能に影響し得る不確かさをもたらす可能性がある。まず第1に、これらの測定基準には、投入フィルムの積層配向の再現性および面内応力の不均一さが含まれる。
【0018】
大きな外部荷重下にない(例えば重力だけの)場合、各マザーシートが平坦に展伸するのが当然ながら好ましい。完成したリターダスタックは典型的には平面状である必要があるので、各シートを平坦にするのに必要な任意の曲げ力が、それ自体で積層点における面内応力を変化させる可能性がある。平坦なシートを作り出すのに必要な曲げ力が僅かであるベースフィルム(例えば、積層ローラに追従するために必要な曲げ力に典型的である)が非常に好ましい。また更に、積層中に存在する保護ライナーはリターダフィルムの平坦展伸特性を大きく低下させるべきではない。
【0019】
溶媒積層プロセスにおける投入フィルムの固定支持は、フィルムの物理的配向制御、ならびにRおよび光軸の均一性の維持にとって、非常に重要であり得る。従来技術のプロセスによれば、フィルムプライを真空送給プレート上に挿入し、ニップ領域内まで摺動させ、基準ガイドに合わせて位置調整することができる。真空が十分に強い場合(例えばフィルムと送給プレートとの間に強い真空押さえ付けが存在する場合)、ガイドに対する配向は信頼できるものとなり得る。しかしながら、ニップを確立する目的で送給プレートの端部から張り出した支持のないフィルムの長さ部分が問題となる可能性がある。張り出した部分(最適にはニップ内まで延びるのに必要な部分)を含む支持のない長さ部分、および場合によっては真空支持のない送給プレートの端部における長さ部分は、フィルム配向に不確かさをもたらし得る。このことは、フィルムが基準ガイドに正確に突き当たる場合であっても生じ得る。図1は、ポリカーボネート製のリタデーションフィルムを溶媒積層するための従来技術の装置(米国特許第6,638,583号、または‘583)の側面図を示す。本開示では、フィルム送達デバイスの端部から接触点まで延びるフィルムの支持のない最小長さDが、図面上で特定されている。示されているように、この距離はローラの直径にほぼ等しい。
【0020】
図1の‘583の装置における積層制御は、投入フィルムの特性および支持のない長さ部分の影響を受ける。例えば、フィルムが上向きに丸まる傾向を有する場合、支持のない長さ部分は、ビルド側のフィルムと1つまたは複数の局所化された接触部を自然に形成するように傾斜され得る。この場合、フィルムの表面エネルギーは光学接触が形成される場所を作り出すのに十分であり得、投入フィルムはこれが所定位置まで摺動されるとビルドフィルム上に「掛けられる(hang up)」。このことが起こると、フィルムが送給プレートに対して持ち上がる場合があり、その高さは横(ローラ軸)方向の位置の関数となり得る。フィルム上の関連する力が送給プレートの端部付近で真空押さえ付けを克服するのに十分である場合、支持のない長さは事実上より長くなり、問題は悪化し得る。A4シート(横幅210mm)が積層され、要求される配向に関する公差が0.1°である場合、関連する横方向に沿った高さ差は367ミクロンである。この高さ差が積層ローラの進行後に残留する場合、フィルム配向における0.1°の誤差が完成した積層体に「焼き付けられる(baked)」。
【0021】
‘583の装置においてフィルムに下向きに丸まる傾向のある場合、これを積層位置へと摺動させたときに、支持のない長さ部分は最初は接触を行わない可能性がある。丸まりが極端であれば、フィルムは最初にローラと接触する可能性がある。いずれの場合も、フィルム同士はローラの進行後に初めて接触し、ニップを形成する。この場合、ローラはここでもフィルムを局所的に上向きに持ち上げ、フィルムがニップ内に捕捉されるときに配向の不確かさをもたらす可能性がある。丸まりの軸(これは縁部に対する光軸配向の関数であり得る)は、ローラがフィルムと最初の接触を行う場所に影響し得ることに留意されたい。このことは例えば、ある角をそれ以外の角よりも優先的に大きく持ち上げる可能性がある。
【0022】
図2は、図1の従来技術(‘583)の装置において生じ得る第1の問題を示す。これはフィルム送達デバイスの移動可能なバッキング面およびローラからの図を示す。投入フィルムの縁部の持ち上がりは、進行中のローラとの相互作用からもしくはローラの進行前の投入フィルムとビルドフィルムの接触を介してのいずれかで、または両方によって、生じ得る。図に示すように、投入フィルム前縁の無作為的な操作が、フィルム横方向縁部とローラ軸との間の角度の不確かさをもたらし得る。フィルムの縦方向縁部が基準ガイドに正確に突き当たっているように見え得る場合でも、ニップの形成時に配向誤差がなお存在する可能性があり、その誤差は溶着されたスタックにおいて、永続的な配向誤差となり得る。
【0023】
図3は、図1の従来技術(‘583)の装置において生じ得る第2の問題を示す。既に述べたように、投入フィルムの支持のない前縁は、ビルドフィルム表面と最初に接触する場合があるか、ローラと最初に接触する場合があるか、またはローラが進行するまで接触しない場合がある。それにも関わらず、従来技術の装置では、フィルムの支持のない長さ部分は、これがニップ内に捕捉されるまで実質的に制約されない。ニップが形成中の点において、前縁は1つまたは複数の場所で、ビルドフィルムと無作為的に接触し得る。この接触はフィルム配向をシフトさせる場合があるが、局所的な面内応力領域を作り出す可能性もある。図3Aは真空の適用前の送給プレート上の投入フィルムを示しており、ここでビルドフィルムとの3つの接触点が自然に生じている。図3Bは、ローラが進行し投入フィルムが捕捉されるときに誘起される面内応力を示す。フィルムはそこで接触が行われるとその後はそれ以上滑動し得ないような高い表面エネルギーを有し得るが、通常であればこの滑動は、応力を軽減し均一な圧力を(すなわち下向きの力だけを)もたらし得るものである。滑動がない場合、投入フィルムは接触点同士の間で局所化された圧縮面内応力を経験し得る。溶媒が分注され溶着が開始されるとき、この応力は軽減されない場合があり、マザーシートの全長に初期状態が伝播する場合がある。ここでも、この状況は投入フィルムの前縁が制約されない結果生じる。
【0024】
図4は例示的送給プレートの一部分の側面図を示す。送給プレートと既に共形である投入フィルムが示されており、支持のないフィルムの最適な長さDが張り出している。送給プレートは低表面エネルギーコーティング(例えばTeflon、PTFE、もしくはParyleneコーティング)を有してもよく、フィルムは低表面エネルギー保護ライナーを有してもよく、または両方であってもよく、このとき、フィルムを送給プレートと共形にする処置によって有意な面内応力が誘起されることはない。送給プレートは、フィルムが事実上無限に剛性にニップ領域の可能な限り近くにくるように、投入フィルムの表面全体に対して下向きの力を最適に提供する。ローラを可能な限り送給プレートの端部の近くまでもってこられるように、ビルドプレートの下側を端部付近で薄くしてもよい。半径Rを有する積層ローラに関して、支持のない送給フィルムの長さは好ましくは<Rであり、またはより好ましくはR/2付近である。接触を容易にするために、ローラの頂部は送給プレートと実質的に同一平面上に、またはこれよりも僅かに上にあってもよい。送給プレートが下向きの力を適用するときフィルムの前縁がローラの頂部と均一に接触するように、ローラは低表面エネルギー材料から構成され得るか、または、低表面エネルギーコーティングを有し得る。
【0025】
図5は、送給フィルムの前縁を捕捉し、ニップ形成中にそれを維持するためのプロセスを示す。フィルムの法線方向は縦方向を表し、X方向は横方向に沿っている。図5Aは、押さえ付け力の適用前の送給プレート上のフィルムを示す。図5Bは下向きの力の適用後のフィルムを示しており、ここで、既に記載したようにフィルムは送給プレートと共形である。図5Cは、送給フィルムの前縁の頂部への押さえバー(RB)の作動を示す。RBは確立された配向が維持されるようにこれとローラとの間で送給フィルムを捕捉し、誘起される面内応力は僅かである。RBは低表面エネルギーコーティングを有し得るか、または低表面エネルギー材料で作製され得る。RBの外形は、フィルムがローラ内へと押し込まれるときに、いかなる変形も導入することなくフィルムの強固で均一な把持を提供するように選択され得る。例えばこれは、圧力を均一に分配するために、ローラの外形と整合する外形を有し得る。RBは横方向全体にわたってローラ軸と実質的に平行であってもよく、その結果、フィルムを捕捉するプロセス全体を通して、横方向に沿った圧力は均一となる。別法として、RBは、面内応力を導入することなくローラとの均一な接触を作り出すべくフィルムを広げるのを支援するための、横方向のプロファイル(例えばクラウン)を有し得る。この場合、RBはローラ中央付近で最初の接触を行ってもよく、その後圧力が高まるにつれ、圧力が外向きに横方向に2方向に拡散し得る。同様に、ローラは均一な直径を有し得るか、またはローラは、ニップの局所圧力を制御するクラウンなどの外形を有し得る。
【0026】
図6は、ニップの形成中に送給フィルムの前縁を支持するための、6工程のプロセスを示す。これは図に対する法線がローラ軸に沿っている側面図を示している。図6A図6C図5に似ているが、異なる視点から示されている。図5におけるように、図6Aはステージ上で静止しているフィルムを示し、図6Bは、支持のないフィルムの最適な長さ部分がローラの頂部の上に延びている、送給プレートと共形にされた後のフィルムを示し、図6Cは押さえバー(RB)によって捕捉されたフィルムの前縁を示す。図6は水平位置にあるテーブルを示すが、テーブルは角度を付けられてもよい。角度が付いている場合、その角度は、手でのまたは真空による押さえ付けが適用されないときに、フィルムが重力の影響下でニップ内へと摺動しないように、十分に小さいのが好ましい場合がある。図6Dは、積層ローラの周囲の一部に沿ってフィルムを前進させる工程を示す。このことは、RBを駆動し積層アイドラローラを使用することによって、または駆動される積層ローラを使用することによって、行われ得る。フィルムがローラの周囲で前進される際に送給テーブルの真空、空気、または静電気を介してフィルムにある程度の緊張が適用され得る。このことはフィルムがローラの表面全体と均一に接触するのを保証するために行われるであろう。送給プレートの場合のように、フィルムを均一にローラと共形にすることによって、事実上フィルム厚さが増し、その結果不確かさが排除される。目的は、面内応力を導入することなくフィルムをローラと完全な共形とすることである。フィルムをローラの周囲で前進させるプロセス中に面内応力が適用され得るが、これはニップが形成されると大きく低減または完全に排除され得る。必要な緊張の量は、フィルムを支持のないままにしておく可能性があり既に記載した不確かさ問題につながり得る、フィルムがローラから物理的に分離する傾向に依存する。
【0027】
フィルムをローラと共形にすることの利益は、このことによって、フィルムがどのような負荷も受けていないときに存在する自由度が排除されることである。例えば、非常に小さい曲げ力を用いて柔軟なフィルムに1軸の湾曲を導入するのは容易であるが、フィルムが既に1つの軸を中心に湾曲しているときにそのフィルムに直交する軸に沿って湾曲を導入するには、大きな力を要する。従来のローラを使用して所望の単一軸の湾曲を導入することができ、その場合、ゴム/シリコーン層がシャフト上にキャストされ、機械加工/研磨される。RBを使用してフィルムを捕捉することができ、上記のプロセスによって前縁をローラと共形にすることができる。別法として、フィルムをローラに追従させるために、RBを必要とすることなく、真空ローラを使用してもよい。この場合、真空を作用させたときまたはフィルムをローラの周囲で前進させたときに面内応力が誘起されないように、真空は均一に適用されるべきである。ローラはこの場合駆動されてもよい。真空ローラに関する懸念の1つは、フィルムに力を適用するべく空気がローラ媒体を通過するのを可能にする穿孔または特徴が、積層中に小さい圧力不均一をもたらし得ることである。例えば、多孔質セラミック真空チャックは通常、研磨後でさえ局所的な表面窪みを有し、フィルムが共形である場合、続く積層プロセスによって、この表面不規則さが積層体に転移する可能性がある。光学フィルムの場合、不均一な圧力または基準表面平坦度の局所的不規則に起因するこの「読込み(read-through)」によって、リターダスタックは光学的に容認できないものになり得る。真空ローラ使用時の第2の懸念は、真空が保護ライナーの下面に適用され得ることである。リターダへのライナーの接着が不十分である場合、フィルムがローラの周囲で前進するときにライナーが分離する場合がある。
【0028】
フィルムをローラと共形にするための他の方法としては、空気圧、静電気、または低粘着性接着剤を介した下向きの力が挙げられる。圧縮空気からの下向きの力が機能的にはRBに最も似ているが、RBを使用したローラへの相対的に堅牢な取付けは、滑動に関するあらゆる懸念を軽減する。その他の方法には、フィルムからのライナーの分離に関して、上で検討した同じ懸念が存在する。静電気押さえ付けはまた、静電気によるほこりの引き寄せに起因する美観上の問題が生じ得るという懸念を生む。
【0029】
この機構に関わらず、フィルムがローラの周囲を前進する量は、機械的干渉の問題を回避しながら送給フィルムのニップ部分を露出するのに必要な量であるのが最適である。図6Dは、送給プレート/ローラアセンブリを機械的干渉を伴わずにビルドプレートと接触させることのできる十分な遠さまで、RBが前進したことを示す。図6Eはニップ形成を示し、ここでは送給プレート/ローラアセンブリが水平に並進され、ローラが送給フィルムをビルドフィルムへと押す。ここでも、このニップは、送給フィルムが最適な面内緊張でローラと均一に接触して、最適に形成される。ニップによって積層に関する初期状態が確立されると、図6Fに示すようにRBを解除することができる。RBが解除されると、ビルドプレートは材料利用を改善する開始位置までシフトし得る。この時点で、溶媒を分注することができ、鉛直テーブルを下向きに移動させることができ、積層が完了する。
【0030】
ニップの初期状態によって積層軸およびフィルムを1つにする際の均一性が決まるので、積層プロセスを制御するための精密機構(例えばガイド)は基本的には必要ない。しかしながら、投入フィルムが送給プレートを横切る際に、それに緩い支持を提供し続けることが有用な場合がある。このことは(例えば)弱い真空押さえ付けを使用して行うことができるか、または、フィルムが前進する際にニップ内でフィルムがローラの一部分と共形なままであることを保証する、フィルムの上方に装着されるバー(図示せず)を設ければ十分であり得る。既に検討したように、積層中のいかなる真空押さえ付けも、リターダフィルムの面内の統計的データに影響すべきではない。この理由から、送給フィルムの僅か上方に懸架されているバーが好ましい場合がある。このバーはフィルムの表面に触れる場合があるので、清潔に(すなわち溶媒およびほこりのない状態に)しておかねばならず、またバーが表面に掻き傷を付けてはならない。積層の終了近くに、送給フィルムの後縁が送給プレートから持ち上がる傾向が強くなる。押さえ付け機構が所定位置にない場合、この材料は溶媒へのより大きい曝露を、したがって機能損傷を経験する場合がある。マザーシートの歩留まりを最大化するために、押さえ付け機構はニップの可能な限り近くで送給フィルムの後縁を支持し得る。バーは固定されていてもよく、またはフィルムの前進につれて回転してもよい。押さえ付けバーが構築プロセス全体を通して固定位置にある場合、それが送給フィルムライナー除去に関していくつかの困難を生む場合のあることに留意されたい。フィルム装着およびライナー除去中に送給テーブルに対して持ち上がり、積層プロセス中にフィルムの直上に落下するバーを有するのが好ましい場合がある。別法としてバーは、ライナー除去プロセスから遠くの、ビルドプレートの付近に留まってもよい。
【0031】
図7は、例示的バッチプロセス式溶媒ラミネータの上面図を示す。ニップを形成するために送給プレート/ローラアセンブリ全体を並進させるのではなく、この設計では、セグメント化された送給プレートが使用される。操作者は投入フィルムを実質的に第1のセグメント(矩形のマザーシートの点線の輪郭)上に設置し、第2のセグメント上に小さい部分が延びている。テーブルへのフィルムの粗い位置合わせのために、第1のセグメント上の機械的位置合わせ特徴(これは単に接着テープであってもよい)を使用することができる。(同一平面上の)第2の真空テーブルセグメントは、積層ローラを含み得るアセンブリの一部である。マザーシートは第2の真空テーブルセグメントの全長にわたり、小さい部分がそれを越えて積層ローラ上まで延びている。送給テーブル上でマザーシートを位置合わせした後で、シートは真空によって押し付けられる。操作者は送給フィルムの上面から保護ライナーを除去してもよい。何らかのデブリを除去するために、帯電防止エアナイフで送給フィルムに吹き付けを行ってもよい。照明、カメラ、並進ステージ、および画像処理ソフトウェアを含む視覚システムが、マザーシートの縦方向縁部の位置を迅速かつ正確に特定する。マザーシート縁部の真直度に切断による何らかの「迷走(wander)」が存在する場合、縁部データに最も良くフィットさせるためのアルゴリズムを使用してもよい。別法として、フィルム縁部の位置を特定するために、十分な画角を有する単一のカメラ、または固定位置にある2つ以上のカメラを使用することができる。操作者が投入フィルムをステージ上に不十分な正確さで置いた場合、アラームによって操作者にフィルムを位置直ししなければならないと知らせることができる。視覚システムは、第1の真空テーブルセグメント上のフィルムの部分のスキャンからのデータを利用してもよく、その場合、第2の真空テーブルセグメントには真空が適用されなくてもよい。別法として全長をスキャンしてもよく、その場合両方のセグメントに真空を適用してもよい。
【0032】
フィルム縁部の位置が特定された後で、第1の真空テーブルセグメント上で移動テーブルを使用して、投入フィルムの精緻な位置直しを行うことができる。最も重要な移動のタイプは配向の移動であるが、その場合横方向および縦方向の粗い位置決めで十分であり得る。例えば、操作者は±500ミクロンのXY正確度でフィルムを位置決めすることができ得るが、このことは得られるスタック性能に何の影響も有さない場合がある。しかしながら、A4マザーシートに対する500ミクロンのウェッジ(wedge)は0.1°の角度誤差を表すが、これは多くの場合容認できない。セグメント1だけに真空を適用すると、フィルムは位置直しされ、(少なくとも)配向公差が大きく改善され得る。別法として、ビルド側に装着されたステージを使用して、送給シート位置の不確かさの補償を補正してもよい。フィルムの捕捉において何らかの配向不確かさが存在する場合、縁部の捕捉後に縁部をスキャン(またはその像を形成)することによって、ビルドプレート配向の調整でそれを補正することができる。示されているケースでは、第1および第2の真空テーブルセグメントの間の間隙は、第2のセグメントとの機械的干渉を伴わずに、第1のセグメントの(例えば)±1°の回転を可能にする。A2積層体を支持するテーブルは、約450mmの幅を有し得る。±1°の回転にはこの場合、セグメント間で約8mmの間隙を要する。フィルムがこの幅の間隙中に垂れ下がる程度に十分に柔軟な場合、柔軟な材料で間隙を橋渡ししてフィルムの支持を提供することができる。視覚システムの縁部位置合わせの現時点の最新の精度は、±50ミクロンである。A4マザーシートを使用する場合、これは、±0.01°の配向公差を表す。
【0033】
フィルムが位置直しされると、第2のセグメントに対して真空を適用することができ、ローラ上へと進行する僅かな長さを除いて、フィルムが完全に押し付けられる。既に記載したように、次いでローラ(図示せず)の上方に懸架されている押さえバー(RB)はそれを積層ローラに均一に押し付けることによって、前縁を捉えることができる。RBは、既に記載したような積層ローラの周囲の一部に沿って投入フィルムを駆動する機構に取り付けられ得る。フィルムがローラと共形になりフィルム応力が最小化されると、ビルドプレートに接触パッチが差し向けられ、ローラが水平に並進し、ニップを形成する。ある構成では、第2の真空テーブルセグメントはローラと共にビルドプレートまで移動する。この場合、第1の真空テーブルセグメントへの真空は遮断され、第2のセグメントに対する真空は並進中そのままであり得る。このようにする際に、ニップの形成中におよび積層中であってさえ、ある程度の緊張を維持するために、第2のセグメントを使用することができる。更に、押さえ付けバーはこの並進するアセンブリの一部であってもよい。
【0034】
並進するアセンブリは、1つまたは複数の移動機構を有し得る。例えば、積層後の保護ライナー除去のために送給ステージとビルドステージとの間で必要になる作動距離の量は、比較的大きい並進距離を有する高速の2位置ステージを必要とし得る。ステージが積層位置まで移動されると、ローラは異なる機構を使用して比較的短い距離を進行することができる。例えば、エアシリンダまたはサーボモータによってローラを(例えば)10~20mm並進させて、ニップを形成してもよい。
【0035】
次いで溶媒分注ヘッドを横方向に移動させ、ニップ内で1回または複数回の注入量を分注することができる。次いでビルド側の動き制御ステージを下向きに移動させることができ、溶着部が形成される。サイクル終了時に、送給ステージおよびビルドステージは開始位置に戻る。保護ライナーが送給フィルムの下面上にある場合、これを手作業でまたはロボットを使用してのいずれかで取り外すことができる。エアナイフによってビルド側に吹き付けを行うことができ、このプロセスをスタックが完成するまで繰り返すことができる。
【0036】
配向誤差および面内積層応力の低減という点で類似している、この進歩性を有するラミネータの他の実施形態が存在する。上記の例は、様々な要素に関する移動の量および複雑さを最小化する実際的な解決法を表す。図8に示されている代替形態は、単一セグメント送給テーブルを使用するためのものである。図8Aに示すように、真空を用いて送給フィルムを固定支持した後で、送給プレートアセンブリ全体を必要に応じて第2の位置まで並進/回転させて、送給フィルムの前縁をビルドフィルムに最適に差し向けることができる。図8Bに示されている第2の位置では、送給プレートは送給フィルムの前縁を準平行な様式でビルドフィルムに差し向けることができ、ローラの進行前にフィルム間に制御された小さい間隙が存在する。この場合、ローラアセンブリは、ニップを形成するためのエアシリンダまたはサーボモータを介した水平並進だけには、固定されていてもよい。また本発明の構成は、RBの必要性を排除し得る。ローラが進行しニップが形成された後で、図8Cに示すように、送給プレートは、機械的干渉を伴わずに溶媒分注および送給フィルム押さえ付けを可能にする第3の位置まで、回転/並進し得る。図8Dは、溶媒注入を可能にするために送給プレートが送給プレートとビルドプレートとの間の角度を開く様子を示す。ニップが形成されると相対的なフィルム配向および面内圧力が実質的に確立され、その場合には送給プレートが有し得るのは支持表面を提供する低精度の機能である。同様に、送給フィルムの上方に装着された案内バーが有し得るのは、送給テーブルに沿ってフィルムが移動する際にそれが持ち上がらないようにする、低精度の機能である。積層の完了後、両方のステージは開始位置に戻ることができる。この設計はいくつかの設計簡略化を実現し得るが、単一の実質的により大型の送給プレートアセンブリによる、より複雑な移動も必要とし得る。
【0037】
図9は、ある実施形態を表す送給プレートの端部付近の拡大図を示す。この場合プレートの上面の端部にはある輪郭が存在し、ここでこの輪郭の表面に対して真空を適用することができる。真空区域はフィルムがプレートに均一に追従するように、(例えば左から右へと)連続的に連動し得る。送給プレートの端部に真空を適用すると、フィルムはこれを下向きの姿勢で配向し直す曲げ力を経験する。このことによって、図8Bに示すように送給プレートを回転させる必要性を、低減または排除することができる。この場合フィルムは送給プレートの外形と共形となり得、前縁の小さい長さDが張り出している。事前装着されたフィルムは前縁において、(半径Rの)ローラに対して実質的に接線方向となり得る。既に検討したように、任意の剥離ライナーの剥離接着強さは、それが曲げ力の影響下で層剥離しないように十分でなければならない。フィルムがローラと接触して下向きの姿勢にあるとき、ニップが形成され得る。このことは、固定的送給プレートを用いてローラを並進させること、送給プレートを用いてローラを並進させること、または両方によって、行うことができる。既に検討したように、この対を大きく移動させることに比べて、ニップを作り出すためのローラの短い移動での並進には、作動距離の利益が存在し得る。
【0038】
(低粘度)溶媒の分配が良好に制御される場合、溶媒積層は原理的には任意のニップ配向で達成され得る。溶媒積層のための特に実際的な方法は鉛直に、またはほぼ鉛直に達成される。ニップの形成後溶媒を分注することができ、積層テーブルが移動するまで準安定位置に留まる溶媒リザーバを形成することができる。時間を遅延させることで、フィルムからの毛管力によってニップにおいて溶媒を均一に分配することが可能になり得、次いで積層を進めることができる。局所的に接合部を形成するために必要な溶媒は非常に少量であり得るので、および、接合部の形成はエバポレーションを無視できる程度に素早く行われ得るので、長さ600~1,000mmであるシートを積層するには、積層開始時の1回の分注で十分であり得る。別法として、積層前の分注のみを用いて積層を完了させるのに十分な溶媒を分注することが実際的ではない場合に、溶媒リザーバに補充を行うために、積層中に溶媒を分注することができる。
【0039】
別の単一ローラ積層プロセスでは、ニップ形成には5つの要素:(1)積層ローラ、(2)変形可能な支持部材(DSM)、(3)投入フィルム(任意の保護ライナーを含む)、(4)ビルドフィルム(または仕掛りのスタック、より下層の任意の保護ライナーを含む)、および(5)ビルドプレートを、1つに合わせることが関与する。DSMの追加は、積層中に面内応力を導入することなく送給フィルムの全面積を支持するために行われる。DSMは送給フィルムの厚さを事実上大きくし、これを機械的により安定させ得る。この手法は、ニップが形成されている場所においてさえもフィルムが完全に支持されるという、潜在的な利点を有する。図10は、送給アセンブリ22とビルドアセンブリ(32、34)とから成る溶媒ラミネータ20を示す。送給アセンブリはフィルム装着中に実質的に水平なものとして示されており、ビルドアセンブリは実質的に鉛直なものとして示されている。角度にはある程度の融通性があるが、1つの考慮事項は水平フィルム装着の簡便性である。第2の考慮事項は、ローラの影響がない場合に溶媒が積層方向に流れないような十分に急な角度で積層を行うべきであることである。送給アセンブリは、Z並進ステージ(例えばエアシリンダまたはサーボモータ)に装着されたローラを収容した準密閉式の函体であってもよく、このアセンブリ全体がY並進ステージ(例えばウォームドライブ)26上で移動する。変形可能な支持部材28は函体の上面(XY平面)を実質的に覆う。DSMは緊張下にあり、したがってこれによって送給フィルム30を積層前に平面状の様式で固定支持することができる。DSMはポリマー(例えばマイラー)であってもよく、または金属(例えばステンレス鋼)であってもよい。好適な材料/厚さによって、積層中の材料にローラからの均一な圧力を伝達することが可能になる。
【0040】
送給フィルム30を装着し、(例えば2つの軸線を定めるテープを使用して)大まかに位置合わせした後で、真空を適用することによってそれを筐体22に固定支持することができ、次いで保護ライナーを除去することができる。DSMは真空を送給フィルムに伝え、それをしっかりと所定位置に保持し、それを全面積にわたって支持し得る。そのような真空に関する特徴が積層体を局所的に損なわないことが保証されるよう注意しなければならない。先行する実施形態の場合のように、視覚システムは、(例えば)縦方向に沿ってスキャンすることによって、フィルム縁部の位置を特定することができる。フィルムの精密位置合わせ用のステージは、送給側に配置してもビルド側に配置してもよい。この場合、精密位置合わせのための位置決めステージ34は、固定された鉛直プレート32上に装着される。ビルドプレート(例えば平坦なガラスプレート)36は、真空または機械的手段を使用して位置決めステージに強固に保持され得る。ビルドフィルム(またはスタック)38は、テープ、光学接触、または低粘着性接着剤を介して、ビルドプレートに取り付けられる。固定支持され位置合わせされると、ヒンジ機構40によって送給アセンブリを、送給アセンブリが所定位置にロックされるように、ビルドアセンブリと同じ面法線方向に持ち上げることができる。
【0041】
図11は、図10の溶媒ラミネータを使用する積層プロセスを示す。図11Aは、図10の場合のように装着位置にあるラミネータを示す。図11Bは、送給プレートのX軸を中心とした鉛直位置へのヒンジ動作を示す。送給プレートが所定位置にロックされると、送給フィルムとビルドフィルムとの間に均一な間隙が形成される。この間隙は溶媒の導入を容易にし、この間隙はスタックの最大厚さとなり、またこの間隙は積層の時点の送給フィルムとビルドフィルムとの間の角度に影響する。間隙が小さい場合フィルム間の角度も同様に小さく、毛管力によって溶媒が積層点よりも先の過度に遠いところまで引き上げられて、フィルムを損傷する場合がある。間隙が大きくなると、ローラも同様にY方向に更に並進してニップが形成され、フィルム間の角度が大きくなる。境界において強固に固定されている場合、DSMのひずみは間隙と共に大きくなり、ローラ、エアシリンダ、またはサーボモータによって適用される圧力が増大して、一定のニップ圧力が維持され得る。ニップ形成後のフィルム間の角度に影響する他の要因としては、ヤング率、厚さ、およびローラ進行前のDSMの緊張が挙げられる。必要な角度によってDSMにおける大きなひずみが余儀なくされる場合、それが面内ひずみを積層点において投入フィルムに転移しないことが重要である。
【0042】
投入フィルムに対するDSMひずみによる面内応力を緩和するための方法は、ニップの形成時にある程度の滑動を与えることである。例えば、フィルムが積層の開始/終了時にのみ固定支持される場合、ニップの初期の形成時にフィルムが滑動して応力が軽減されるように、真空が十分に弱くてもよい。DSMのひずみを軽減するための別の方法は、融通性のある境界条件を導入することである。DSMのフィルムを支持している部分ではなく境界付近でひずみが導入される場合、投入フィルムには比較的低い応力が適用され得る。図12図11Cからのニップ領域の拡大図を示す。図12Aは、フィルム間のおおよその角度θを形成する幅Wを有する間隙の例を示す。この場合、ローラが進行するときに準均一なひずみを受ける単一のDSM層が存在する。このひずみは部分的に投入フィルムに移され得る。図12Bは、より大きい角度θを作り出すべくフィルム間の間隙をWまで大きくする場合を示す。仮にDSMが同じ構造のものであれば、ニップを形成するためにより大きいひずみが導入されることになると考えられ、投入フィルムが受ける緊張が増大し得ると考えられる。しかしながら図12Bに示すように、DSMは、送給フィルムを支持する内側部分と、緊張を実質的に軽減する外側部分とで構成され得る。内側部分は外側部分に対して、より高弾性の材料を有してもよく、より厚くてもよく、または両方であってもよい。外側部分の目的はしたがって、投入フィルムを支持しているが面内応力は伴わないままで、所望のニップ幾何形状を生成するために必要なひずみのほとんどを生成することである。
【0043】
図11Cは、ニップを形成するローラの(Y方向への)進行を示す。送給テーブルの持ち上げ前に薄型の分注ヘッドが所定位置にあってもよく、またはそれを後から挿入してもよい。ニップの形成後、ニードルはその後退の際に1回または複数回の注入量を分注して、溶媒リザーバを作り出してもよい。スパッタおよび関連するフィルム損傷を回避する手段として、溶媒分注圧力を最小化してもよい。図11Dは、フィルムを1つに溶着するZ方向へのローラの並進を示す。移動終了時、ローラは後退して開始位置に戻り、送給テーブルは装着位置に戻る。
【0044】
この構成には、積層体の品質に対するDSMの影響に関する懸念が存在し得る。DSMが送給フィルムを固定支持するために真空を提供する場合(例えば貫通孔)、溶着部を形成するために必要な圧力が不十分なエリアが存在し得る。この場合、フィルムは溶媒への過剰な曝露を経験する場合があり、十分な圧力が存在しない場合、信頼できる溶着が行われない場合がある。ある構成では、真空孔はマザーシートの犠牲部分上にだけ存在してもよい。例えば、真空孔は、積層体の頂部および底部において横方向に沿ってのみ存在し得る。このことによって、歩留まりに大きく影響することなく、フィルムの十分な支持が提供され得る。
【0045】
DSMは積層体の密接な部分であるので、優れた厚さ均一性と表面品質とを有するべきである。そうでなければ、テクスチャの読込みおよび局所的面内応力を引き起こす圧力不均一性が存在する可能性がある。ニップの圧力均一性を保証するために、縦方向と横方向で異なる緊張を提供することも必要であり得る。積層中にDSMが実質的にローラと共形になるのが好ましい場合があり、ローラの端部におけるDSMの緊張の存在は妨げとなり得る。このことは、ローラ/DSMの長さをフィルムの幅を十分超えるように伸ばすことによって、または横方向の応力の一部を軽減することによって、克服され得る。後者は、薄くすることによってまたは異なる材料を使用して、DSMをニップの外側の領域においてより柔軟にすることによって、行うことができる。このことは、ローラが係合するときにDSMの縦方向ひずみを最小化するための上述した方法と似ている。
【0046】
一般に、ニップと密接に接触する要素の材料および公差は慎重に選択せねばならない。圧力および溶媒曝露の局所的不均一の結果生じ得る積層体のテクスチャの転写(print-through)または読込みを回避するような光学品質仕様が、通常は好ましい。これらの不均一は、面内およびシートの法線方向の両方における影響に起因して生じ得る。材料均質性、ローラのキャスティング/機械加工プロセス、および関連する欠陥(例えばキャストローラ材料中のバブルまたは混入物)を含め、ローラ密度、厚さ、および表面不均一性を精査しなければならない。横方向の圧力傾斜を回避するために、ローラ-軸をビルドプレートに精確に位置合わせしなければならない。保護ライナー厚さの均一性、および保護ライナー積層の清浄度を精査しなければならない。ビルドプレート厚さの均一性および表面品質を精査しなければならない。例示的ビルドプレート材料は、研磨ガラス、研磨金属、および場合によっては(例えばセルキャスト)ポリマーを含む。後者は単回使用のビルドプレートにとって、または大面積積層においてビルドプレートの重量を低減するのに有用であり得る。ビルドステージ平坦度を精査しなければならない。ビルドプレートが真空を使用してビルドステージに保持される場合、真空に関する特徴が積層体に転写されてはならない。このことは、真空に関する特徴を積層エリアの外側に設けそれらを十分に小さくすること、または、積層品質に影響しないような十分な剛直性を有するビルドプレートを使用することによって、行うことができる。当然ながら、ニップを構成する全ての要素はデブリを含んではならない。積層体中に捕捉された粒子は美観による歩留まり(cosmetic yield)に影響し、このとき溶媒の影響を受けるエリアは典型的には物理的粒子よりもはるかに大きい。積層体の外側の粒子は、完成したスタックの局所的な平坦度/透過波面品質に影響し得る。後者はディンプルまたはクレータとして現れる可能性があり、これらは完成したスタックのある表面が次に別の光学表面に接合される場合に特に問題となる。
【0047】
ビルドプレートへの第1のリターダフィルムのプライの取付け(すなわち一時的な固定支持)のための方法を精査しなければならない。このプロセスは好ましくはラミネータを使用して(例えば溶着溶媒分注をオフにして)行われ、このとき機械視覚システムは、全てのフィルムを同じ精度で、同じ簡便性で、および最適な取扱いで設置する。取付け方法は、マザーシートもしくはビルドプレートの犠牲エリアに適用される接着剤(例えば、積層の開始部/終了部における横方向に沿った両面テープ)であってもよく、または全面接合であってもよい。接着剤は好ましくは、担体基板をビルドプレートに移す必要なく移動可能であってもよい(接着テープの場合と同様)。接着剤の機能上の目的は、溶着プロセスと同じ要件のうちのいくつかを用いて第1のプライを固定支持すること(すなわち最適な面内応力で配向精度を維持すること)である。頂部/底部で個別の取付けが行われる場合、フィルムは続く積層ステップ中に面内で大きく移動してはならない。続く溶媒溶着における積層の終了時に過剰な溶媒が押し出される場合、それが毛管作用でスタックの下に移動しこれを損傷することは許されない。個別取付け方法は、積層エリア内でフィルムが機械的に「浮き上がる(float)」ことが可能になり、このことが面内応力の低減に役立ち得るという点で、いくつかの利益を有し得る。
【0048】
リターダフィルムの下面上に保護ライナーがある場合、これは低い表面エネルギーを有するのが好ましい。保護ライナー(または保護されていないリターダ)は高い表面エネルギーを有する場合があり、したがってビルドプレートと接触させると無作為的な光学接触を行って、面内応力を引き起こし得る。また更に、第1のプライの取付け中にこれらの表面間の接触面に捕捉された空気はいずれも、完成したスタックに局所的な圧力不均一およびテクスチャをもたらし得る。溶着に関連する先行する全ての分析に見られるように、第1のプライを取り付ける際の面内応力はいずれも、第2のプライに溶着されるときに焼き付けられる可能性がある。
【0049】
より完全な支持のため、第1のプライである保護ライナーまたはビルドプレートに予め適用される接着剤を使用して、ビルドプレートへの第1のプライの全面接合を行ってもよい。このことは、ビルドプレートの積層側に浸漬または噴霧を行い、次いで、ビルドプレートがラミネータ内に設置されたときに取外し可能な剥離ライナーを取り付けることによって、行うことができる。ビルドプレートを清浄化し再利用しなければならない場合、接着剤は、これが水または非浸食性溶剤(例えばイソプロピルアルコール)で容易に取り外されるようになる化学的性質のものであるのが好ましい。接着剤厚さのあらゆる不均一さが積層体の平坦度に影響するように、接着剤は精確な厚さで適用されるおよび/または最適な厚さ(<1ミクロン)を有するのが理想的である。後者の極端な例は、保護ライナーへのビルドプレート材料の十分な取付けを実現するヘッド/テール基を有する、水溶性の自己組織化単層(SAM)である。粘着性は、積層中にスタックを確実に固定支持するのに十分であり得るが、ビルドプレートに対する保護ライナーの粘着性よりも低い粘着性であるのが好ましい。後者によってビルドプレートからの(ライナーを両側に有する)完成したスタックの容易な除去が可能になる。接着剤層が極めて薄い場合(例えばSAM)、これは第1のプライが積層されるときに柔性をもたらさない場合がある。この状況は、取付け中にニップに液体が存在しない場合があるという点で、溶媒溶着とは異なり得る。積層プロセスは理想的には、面内応力を最小化するためにビルドプレートにおいて柔性を利用することはない。しかしながら、保護ライナーの機械的特性(厚さ/弾性率/表面エネルギー)を介して、第1のプライとビルドプレートとの間の何らかの機械的隔離が達成され得る。いくつかの場合、接着剤は第1のプライを取り付けるときに液体形態であり得、したがって接着剤は、面内応力を最小化するある程度の潤滑性を提供し得る。例えば、ニップ内に粘度の低いシアノアクリレート接着剤を分注し回転塗布して、第1のプライを取り付けてもよい。
【0050】
ビルドプレートへの第1のプライの取付けのための他のあり得る方法が存在する。このことは、ビルドステージからビルドプレートを介して伝えられた真空を使用して行うことができる。これら真空に関する特徴は、マザーシートの犠牲部分上にだけ存在してもよい。真空ローラを参照して検討したように、真空押さえ付けを可能にする非常に小さい特徴部によって、リターダスタックの光学特性が損なわれる可能性がある。静電引力を使用して、ビルドプレートへの第1のプライの全面取付けも達成され得る。取付けは、保護ライナー(または露出したリターダ)とビルドプレートの化学構造との間のファン・デル・ワールス力を介しても達成され得る。固定支持を行うのに十分に強いが完成したスタックが剥離されるとき容易に破壊される化学結合を促進するべく、ニップ内に好適な液体を分注することができる。
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【国際調査報告】