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特表2023-552283区分けされた回折光学要素を備えた画像光ガイド
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-15
(54)【発明の名称】区分けされた回折光学要素を備えた画像光ガイド
(51)【国際特許分類】
   G02B 27/02 20060101AFI20231208BHJP
   H04N 5/64 20060101ALI20231208BHJP
【FI】
G02B27/02 Z
H04N5/64 511A
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023528405
(86)(22)【出願日】2021-11-24
(85)【翻訳文提出日】2023-05-22
(86)【国際出願番号】 US2021060786
(87)【国際公開番号】W WO2022115580
(87)【国際公開日】2022-06-02
(31)【優先権主張番号】63/118,581
(32)【優先日】2020-11-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/129,499
(32)【優先日】2020-12-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516201548
【氏名又は名称】ビュージックス コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】Vuzix Corporation
(74)【代理人】
【識別番号】110003340
【氏名又は名称】弁理士法人湧泉特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】シュルツ, ロバート ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】コワーツ, マレック ダブリュー.
【テーマコード(参考)】
2H199
【Fターム(参考)】
2H199CA04
2H199CA12
2H199CA54
2H199CA67
2H199CA68
2H199CA82
(57)【要約】
バーチャル像を伝送するための画像光ガイドは、導波路と、画像担持光ビームを導波路内に向けるように動作可能なインカップリング回折光学要素と、画像担持光ビームを導波路からアイボックスへと向けるように動作可能なアウトカップリング回折光学要素を含む。アウトカップリング回折光学要素は、それぞれが回折フィーチャの集合を含む2つ以上のゾーンを有する。第1ゾーンは第1の回折フィーチャの集合を含む。第2ゾーンは第2の回折フィーチャの集合を含み、第1ゾーンに隣接して配置されている。アウトカップリング回折光学要素は、第1ゾーンと第2ゾーンによって形成される第1の境界領域を含む。第1の境界領域は、第1サブ領域の集合と第2サブ領域の集合を含む。第1サブ領域の集合は第1の回折フィーチャの集合を含み、第2サブ領域の集合は第2の回折フィーチャの集合を含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バーチャル像を伝送するための画像光ガイドであって、
導波路と、
画像担持光ビームを前記導波路内に向けるように動作可能なインカップリング回折光学要素と、
前記画像担持光ビームを二次元で拡大し、前記画像担持光ビームの少なくとも一部を前記導波路からアイボックスに向けるように動作可能なアウトカップリング回折光学要素と、
を備え、
前記アウトカップリング回折光学要素は、第2ゾーンに隣接して配置された第1ゾーンを含み、前記第1ゾーンは第1の回折フィーチャの集合を含み、前記第2ゾーンは第2の回折フィーチャの集合を含み、
前記第1ゾーンと前記第2ゾーンは第1の境界領域を形成し、前記第1の境界領域は、1つ以上の第1サブ領域と1つ以上の第2サブ領域を含み、前記第1サブ領域は、前記第1の回折フィーチャの集合を含み、前記第2サブ領域は、前記第2の回折フィーチャの集合を含む、画像光ガイド。
【請求項2】
前記第1サブ領域と第2サブ領域が、前記第1の境界領域内において疑似ランダム配置で配置される、請求項1に記載の画像光ガイド。
【請求項3】
前記第1サブ領域と前記第2サブ領域が実質的に三角形の領域を表し、前記第1サブ領域と第2サブ領域が前記第1の境界領域の一次元に沿って交互に配置される、請求項1に記載の画像光ガイド。
【請求項4】
前記第1サブ領域が前記第2サブ領域と混合される、請求項1に記載の画像光ガイド。
【請求項5】
前記第1の境界領域における前記第1サブ領域の合計面積が、前記第1の境界領域の長手方向中心線から前記第1ゾーンに向かって増加する、請求項1に記載の画像光ガイド。
【請求項6】
前記第1の境界領域における前記第2サブ領域の合計面積は、前記第1の境界領域の前記長手方向中心線から前記第2ゾーンに向かって増加する、請求項5に記載の画像光ガイド。
【請求項7】
前記アウトカップリング回折光学要素は、前記第1ゾーンと前記第2ゾーンに隣接して配置された第3ゾーンを含み、前記第3ゾーンは第3の回折フィーチャの集合を含み、
前記第1ゾーンと前記第3ゾーンは第2の境界領域を形成し、前記第2の境界領域は、1つ以上の第1サブ領域と1つ以上の第3サブ領域を含み、前記第3サブ領域は、前記第3の回折フィーチャの集合を含む、請求項1に記載の画像光ガイド。
【請求項8】
前記第1サブ領域と第3サブ領域が、前記第2の境界領域内に疑似ランダム配置で配置される、請求項7に記載の画像光ガイド。
【請求項9】
前記第1サブ領域と前記第3サブ領域が実質的に三角形の領域を表し、前記第1サブ領域と第3サブ領域が前記第2の境界領域の一次元に沿って交互に配置される、請求項7に記載の画像光ガイド。
【請求項10】
前記第2の境界領域における前記第1サブ領域の合計面積が、前記第2の境界領域の長手方向中心線から前記第1ゾーンまで増加する、請求項7に記載の画像光ガイド。
【請求項11】
前記第2の境界領域における前記第3サブ領域の合計面積が、前記第2の境界領域の前記長手方向中心線から前記第3ゾーンまで増加する、請求項10に記載の画像光ガイド。
【請求項12】
前記アウトカップリング回折光学要素が、前記第2ゾーンと前記第3ゾーンとの間に位置する第3の境界領域を備え、前記第3の境界領域が、1つ以上の第2サブ領域と1つ以上の第3サブ領域を含む、請求項7に記載の画像光ガイド。
【請求項13】
前記第2サブ領域と前記第3サブ領域は、前記第3の境界領域内に疑似ランダム配置で配置される、請求項12に記載の画像光ガイド。
【請求項14】
前記第2サブ領域と第3サブ領域が実質的に三角形の領域を表し、前記第2サブ領域と前記第3サブ領域が前記第3の境界領域の一次元に沿って交互に配置される、請求項12に記載の画像光ガイド。
【請求項15】
前記第1サブ領域と前記第2サブ領域が、周期的な回折フィーチャの1以上のユニットセルを含む、請求項1に記載の画像光ガイド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電子ディスプレイに関し、特に回折光学要素を有する画像光ガイドを用いたディスプレイに関する。
【背景技術】
【0002】
ヘッドマウントディスプレイ(HMD)およびバーチャル像ニアアイディスプレイは、軍事、商業、産業、消防、娯楽など、さまざまな用途向けに開発されている。これらの多くの用途において、HMDの使用者の視野内にある実世界の画像と視覚的に重ね合わせることができるバーチャル像を形成することは、価値がある。バーチャル像を視者の瞳孔に向け、上記重ね合わせ機能を可能にするために、光学画像光ガイドは、狭い空間内において画像担持光を視者に伝送する。
【0003】
従来の画像光ガイドでは、コリメートされ角度的にエンコードされた画像ソースからの光ビームが、インカップリング回折光学要素等の入力結合(インカップリング)により平面導波路内へと結合される。このインカップリング回折光学要素は、平面導波路の表面に設けられまたは形成されているか、または導波路内に埋設されている。回折された光は、導波路に沿って伝搬した後で、アウトプット回折光学要素により導波路の外へと向けられる。さらに、バーチャル像の直交する次元において瞳拡大を提供するために、回転光学要素を導波路に沿ってインカップリング回折光学要素とアウトカップリング回折光学要素との間に配置することができる。導波路から出力された画像担持光は、視者のために拡大されたアイボックスを提供する。
【0004】
改善された回折効率、画像担持光の出力強度、および出力アパーチャ全域にわたる均一性を有するディスプレイ装置には利点があることが理解されよう。
【発明の概要】
【0005】
本開示の目的は、特にコンパクトな頭部装着型装置および類似のイメージング装置を用いる場合に、バーチャル像表示の技術を進歩させることである。
本開示にしたがい、第1の態様では、バーチャル像を伝送するための画像光ガイドが提供される。この画像光ガイドは、導波路と、画像担持光ビームを前記導波路に向けるように動作可能なインカップリング回折光学要素と、前記画像担持光ビームを前記導波路からアイボックスに向けるように動作可能なアウトカップリング回折光学要素と、を備えている。前記アウトカップリング回折光学要素は、第2ゾーンに隣接して配置された第1ゾーンを有し、前記第1ゾーンは第1の回折フィーチャの集合を含み、前記第2ゾーンは第2の回折フィーチャの集合を含む。アウトカップリング回折光学要素は、前記第1ゾーンと前記第2ゾーンにより形成された第1の境界領域を有する。前記第1の境界領域は、1つ以上の第1サブ領域と1つ以上の第2サブ領域を含み、前記第1サブ領域は、前記第1の回折フィーチャの集合を有し、前記第2サブ領域は、前記第2の回折フィーチャの集合を有する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
添付の図面は明細書の一部として組み込まれる。ここに開示された図面は、現在開示されている主題の実施形態を示し、本開示の選択された原理および教示を例示している。
しかしながら、図面は、現在開示されている主題のすべての可能な実施を例示するものではなく、いかなる方法でも本開示の範囲を制限することを意図するものではない。
【0007】
図1】バーチャル像の一次元に沿う瞳拡大を提供するアウトカップリング回折光学要素を備えた、バーチャル像伝送のための画像光ガイドを、単純化して示す断面図である。
【0008】
図2】アウトカップリング回折光学要素に加えて回転格子を備え、バーチャル像の二次元に沿って瞳拡大を提供する、バーチャル像伝送のための画像光ガイドの斜視図である。
【0009】
図3A】無限遠の焦点でバーチャル像を形成するための画像光ガイドを備えた、イメージング装置の側面図である。
図3B】同上面図である。
図3C】同斜視図である。
【0010】
図4A】本開示の主題の例示的な実施形態による、区分けされたアウトカップリング回折光学要素を有する画像光ガイドの上面図である。
図4B】同側面図である。
図4C】同端面図である。
【0011】
図5A図4Aの区分けされたアウトカップリング回折光学要素を有する画像光ガイドの上面図である。
図5B】同側面図である。
図5C】同端面図である。
【0012】
図6A】本開示の主題の例示的な実施形態による格子ベクトルを示す図である。
図6B】同格子ベクトルを示す図である。
【0013】
図7A図4Aの区分けされたアウトカップリング回折光学要素を有する画像光ガイドの上面図である。
図7B】同側面図である。
図7C】同端面図である。
【0014】
図8A】本開示の主題の例示的実施形態による漸進的回折フィーチャ深さを示す概略図である。
図8B】本開示の主題の例示的実施形態による漸進的回折フィーチャ深さを示す概略図である。
図8C】本開示の主題の例示的実施形態による漸進的回折フィーチャ深さを示す概略図である。
図8D】本開示の主題の例示的実施形態による漸進的回折フィーチャ深さを示す概略図である。
【0015】
図9】本明細書で開示される主題の例示的実施形態による、区分けされたアウトカップリング回折光学要素を有する画像光ガイドの上面図である。
【0016】
図10】本明細書で開示される主題の例示的実施形態による、区分けされたアウトカップリング回折光学要素を有する画像光ガイドの上面図である。
【0017】
図11A】本開示の主題の例示的実施形態による回折フィーチャの概略図である。
図11B】本開示の主題の例示的実施形態による回折フィーチャの概略図である。
図11C】本開示の主題の例示的実施形態による回折フィーチャの概略図である。
図11D】本開示の主題の例示的実施形態による回折フィーチャの概略図である。
図11E】本開示の主題の例示的実施形態による回折フィーチャの概略図である。
【0018】
図12】本開示の主題の例示的実施形態によるアウトカップリング回折光学要素内に回折フィーチャの繰り返しパターンを形成するように動作可能な矩形のユニットセルの概略図である。
【0019】
図13図12のユニットセルを含むアウトカップリング回折光学要素の一部の概略図である。
【0020】
図14A】本開示の主題の例示的な実施形態による、区分けされたアウトカップリング回折光学要素を有する画像光ガイドの概略上面図である。
図14B】同側面図である。
【0021】
図15図14のアウトカップリング回折光学要素の一部の概略図である。
【0022】
図16A】本開示の主題の例示的実施形態による、区分けされたアウトカップリング回折光学要素を有する画像光ガイドの上面図である。
図16B】同側面図である。
【0023】
図17図16Aのアウトカップリング回折光学要素の一部の概略図である。
【0024】
図18】本開示の主題の例示的実施形態による、アウトカップリング回折光学要素の3つのゾーン境界の一部の概略図である。
【0025】
図19】本開示の主題の例示的実施形態による、アウトカップリング回折光学要素の3つのゾーン境界の一部の概略図である。
【0026】
図20】本開示の主題の例示的実施形態による、アウトカップリング回折光学要素のゾーン境界の一部の概略図である。
【0027】
図21】本開示の主題の例示的実施形態による、アウトカップリング回折光学要素のゾーン境界の一部の概略図である。
【0028】
図22】本開示の主題の例示的実施形態による少なくとも1つの近焦点画像光ガイドを使用する、拡張現実表示のための双眼ディスプレイシステムの斜視図である。
【詳細な説明】
【0029】
本発明は、明示的に指定されている場合を除いて、様々な代替の配置および工程順序を想定し得ることを理解されたい。また、図面に示され明細書に記載された特定のアセンブリおよびシステムは、本明細書で定義される本発明の概念の単なる例示的な実施形態であることも理解されたい。したがって、開示された実施形態に関連する特定の寸法、方向、または他の物理的特性は、特に明記しない限り、限定的であると見なされるべきではない。また、本明細書に記載の様々な実施形態における同様の要素は、同様の参照番号で参照されている。
【0030】
本明細書において、「第1」、「第2」などの用語は、特に指定のない限り、必ずしも順序、や優先関係を示すのではなく、単にある要素または要素の集合を別の要素または要素の集合からより明確に区別するために使用される。
【0031】
本明細書で用いられる「例示的」なる用語は、「例」を意味するものであり、好ましい又は理想的な実施例を示唆するものではない。
【0032】
本明細書において、「視者」、「操作者」、「観察者」、および「使用者」という用語は均等であると見なされ、特にHMD装置に配置された画像光ガイドにより伝送されたバーチャル像を見る人を指す。
【0033】
本明細書で使用される場合、「励起可能」という用語は、電力を受け取ったとき、およびオプションでイネーブル信号を受け取ったときに、指示された機能を実行する装置または構成要素のセットに関する。
【0034】
本明細書で使用される「集合(セット;set)」という用語は、要素または部材の集合の概念が初等数学で広く理解されているように、空でない集合を指す。「部分集合」という用語は、特に明記しない限り、空でない適切な部分集合、すなわち、より大きな集合のうちの1つまたは複数の要素を有する部分集合を指すために使用される。集合Sの場合、部分集合は完全な集合Sを含み得る。しかしながら、集合Sの「適切な部分集合」は、集合Sに厳密に含まれ、集合Sの少なくとも1つの要素を除外する。
【0035】
本明細書で使用される場合、「光学的無限遠」および「無限遠で」の用語は、カメラおよび画像技術における従来の使用法に対応し、焦点距離が少なくとも約4mを超えるように、実質的にコリメートされた光の1つまたは複数の束を使用する画像形成を示す。
【0036】
本明細書で使用される場合、光学の文脈における「結合(coupled)」または「カプラー(coupler)」という用語は、結合(connection)を容易にする中間構造を介して、ある光学媒体またはデバイスから別の光学媒体またはデバイスに光を伝送させるような結合を指す。
【0037】
本明細書で使用される場合、用語「ビーム拡大器(ビームエキスパンダー)」および「瞳拡大器(瞳エキスパンダー)」は同義と見なされ、本明細書では交換可能に使用される。これらの用語は、本明細書では一般に、バーチャル像を伝送するために角度的に関連するビーム間の重複領域を拡大することを指す。
【0038】
本明細書で使用される場合、「ビーム拡大」とは、1以上の方向の出射瞳拡大を提供するための、光学的要素との複数回遭遇を介したビームの複製を意味する。同様に「ビーム又はビームの一部を拡大する」とは、1以上の方向の出射瞳拡大を提供するために、光学的要素との複数回遭遇を介してビームを複製することを意味する。
【0039】
HMD等の光学システムは、バーチャル像を提供することができる。実像投影の代わりに、光学システムは視者の目に明らかなバーチャル像を作成できる。実像を形成する方法とは対照的に、バーチャル像はディスプレイ面上に形成されない。つまり、ディスプレイ面がバーチャル像の知覚位置に配置されたと仮定した場合、その面に画像は形成されない。バーチャル像ディスプレイには、拡張現実表示にとって固有の多くの利点がある。たとえば、バーチャル像の見かけのサイズは、ディスプレイ面のサイズや位置によって制限されない。さらに、バーチャル像のソースオブジェクトは小さくすることができる。たとえば、拡大鏡はオブジェクトのバーチャル像を提供する。実像を投影するシステムと比較して、ある程度離れて見えるバーチャル像を形成することにより、より現実的な視体験を提供することができる。バーチャル像を提供することにより、実像を投影するときに必要なスクリーンのアーティファクトの補償が不要となる。
【0040】
画像光ガイドはプロジェクタ等の光源からの画像担持光を用いて、バーチャル像を表示する。例えば、コリメートされ相対的に角度的にエンコードされたプロジェクタからの光ビームがインカップリング回折光学要素等の入力結合により平面導波路内に結合される。このインカップリング回折光学要素は、平面導波路の表面に設けられるか形成され、または導波路内に埋め込まれる。このような回折光学要素は、回折格子、ホログラフィック光学要素(HOE)、または他の要素で形成されている。例えば回折格子は表面レリーフにより形成することができる。回折された光は、導波路に沿って伝播した後で、アウトカップリング回折光学要素等の出力結合により導波路外へと戻される。このアウトカップリング回折光学要素は、少なくとも1方向で瞳拡大を提供するように構成されている。さらに、回転格子を導波路に又は導波路内に配置して少なくとも他の1方向に瞳拡大を提供することができる。導波路からの画像担持光は視者に拡大されたアイボックスを提供する。
【0041】
図1に示すように、画像光ガイド10は、平らで平行な面を有する平面導波路22を備えている。導波路22は、外面12と反対側の内面14を有する透明基板Sを備えている。この例では、インカップリング回折光学要素IDOとアウトカップリング回折光学要素ODOが内面14に配置されており、インカップリング回折光学要素IDOは反射型回折格子であり、画像担持光WIは、このインカップリング回折光学要素IDOを介して平面導波路22内に結合される。しかしながら、インカップリング回折光学要素IDOは、体積ホログラムまたは他のホログラフィック回折要素、または入射する画像担持光WIの回折を提供する他のタイプの光学要素であってもよい。インカップリング回折光学要素IDOは、画像担持光WIが平面導波路22に接近する方向に対応して、平面導波路22の外面12または内面14に配置することができ、透過型または反射型とすることができる。
バーチャルディスプレイシステムの一部として使用される場合、インカップリング回折光学要素IDOは、実像のソースからの画像担持光WIを平面導波路22の基板S内へ結合する。実像または像のディメンジョンは、最初に、インカップリング回折光学要素IDO に提示するために、画像内の異なるピクセル部位をエンコードする角度的に関連したビームの重合アレイに変換される。画像担持光WIはインカップリング回折光学要素IDOによって回折され、それにより画像担持光WIの少なくとも一部は方向を変えられ、画像担持光WGとして平面導波路22内に入り、さらに全内部反射(TIR)により平面導波路22に沿って伝播する。画像担持光WGは、TIRによって設定された境界を維持しながら、角度的に関連するビームのより凝縮された範囲で回折されるが、画像情報をエンコードされた形態で保存する。アウトカップリング回折光学要素ODOはエンコードされた画像担持光WGを受け取り、画像担持光WGの少なくとも一部を画像担持光WOとして平面導波路22から視者の目の意図された位置に向かって回折する。一般に、アウトカップリング回折光学要素ODOは、インカップリング回折光学要素IDOに対して対称に設計され、出力された画像担持光WOの角度的に関連するビームの間で、画像担持光WIの元の角度関係を復元する。しかしながら、バーチャル像を見ることができるアイボックスE内の角度的に関連するビーム間のオーバーラップの一次元を増加させるために、アウトカップリング回折光学要素ODOは、画像担持光WGに複数回遭遇し、遭遇の度に画像担持光WGの一部だけを回折するように配置されている。伝播方向でのアウトカップリング回折光学要素の長さに沿った複数の遭遇は、画像担持光ビームが重なり合うアイボックスの1方向の拡大をもたらす。拡大されたアイボックスEは、バーチャル像を見るための視者の目の位置に対する感度を低下させる。
【0042】
単一方向に沿って屈折率が変化するアウトカップリング回折光学要素は、画像担持光ビームがアウトカップリング回折光学要素と遭遇して画像担持光ビームが複製されることにより、導波路に沿った伝播方向で、アイボックスの1つの方向を拡大できる。それに加えて第2の方向に沿って屈折率が変化するアウトカップリング回折光学要素は、アイボックスの第2の方向を拡大し、これによりアイボックスを二つの方向で拡大することができる。アウトカップリング回折光学要素の第1の方向に沿った屈折率の変化は、導波路からの各ビームのエネルギーの一部がアウトカップリング回折光学要素と遭遇する度に、所望の第一次数の回折を介して回折するように構成することができ、ビームのエネルギーの別の部分は、ゼロ次数回折を介して当初の方向へのさらなる伝播のために保存される。アウトカップリング回折光学要素の第2の方向に沿った屈折率の変化は、各ビームのエネルギーの一部がアウトカップリング回折光学要素と遭遇する度に、所望の第一次数回折を介して、ビームの元の伝播方向に対して角度をなす方向に回折するように構成することができ、ビームのエネルギーの別の部分は、ゼロ次数回折による当初の方向へのさらなる伝播のために保存される。
【0043】
アウトカップリング回折光学要素ODOは、平面導波路22の内面14上に配置された透過型回折格子として示されている。しかしながら、インカップリング回折光学要素IDOと同様に、アウトカップリング回折光学要素ODOは、平面導波路22の外面12または内面14上に配置することができ、透過型または反射型とすることができ、その組み合わせは、画像担持光WGが平面導波路22から出射する方向に依存する。
【0044】
図2に示すように、画像光ガイド20は、アイボックス74を2つの方向で、すなわち意図する画像のx軸およびy軸の両方に沿って拡大するように構成されている。二つの次元のビーム拡大を実現するために、回折格子ベクトルk0を有するインカップリング回折光学要素IDOは、画像担持光WIの一部を、格子ベクトルklを有する中間回転光学要素TGに向けて回折するように、方向付けられている。中間回転光学要素TGは画像担持光WGをアウトカップリング回折光学要素ODO に向かって反射モードで回折するように方向付けられている。画像担持光WGの一部のみが、中間回転光学要素TGとの複数回の遭遇のそれぞれによって回折され、これにより、アウトカップリング回折光学要素ODOに接近する画像担持光WGの角度的に関連するビームのそれぞれを横方向に拡大する。回転光学要素TGは、画像担持光WGをアウトカップリング回折光学要素ODOに向けて方向転換させる。アウトカップリング回折光学要素ODOでは、画像担持光WGの角度的に関連するビームを、画像担持光WOとして平面導波路22から出射する前に、縦方向に第2の次元で拡大する。格子ベクトルk0、k1、k2 などの格子ベクトルは、回折光学要素の回折フィーチャ(例えば、溝、線、または罫線)と直交する方向に延び、回折光学要素 IDO、TG、ODOの周期ないしはピッチd(つまり、溝間の中心距離)の逆数の大きさを有している。インカップリング回折光学要素IDOと中間格子TGとアウトカップリング回折光学要素ODOは異なる周期又はピッチdを有していてもよい。
【0045】
図2に示すように、インカップリング回折光学要素IDOは入射する画像担持光WIを受け取る。画像ソース16は、バーチャル像を生成するための角度的にエンコードされたビームの全範囲を生成するように動作可能であり、集光光学系を備えた実際のディスプレイ、ビームの角度をより直接的に設定するためのビームスキャナー、又はスキャナーと一緒に用いられる一次元の実際のディスプレイすることができるが、これらに限定されない。画像光ガイド20は、画像担持光WGを中間回転格子TGとアウトカップリング回折光学要素ODOの両方に異なる方向で複数回遭遇させることによって、画像の二つの次元において拡大された角度的に関連するビームの集合を出射する。平面導波路22の所与の配向において、中間回転光学要素TGはy軸方向にビーム拡大を提供し、アウトカップリング回折光学要素ODOはx軸方向に同様のビーム拡大を提供する。回折光学要素IDO、ODO 、TG の反射率特性とそれぞれの周期dは、それぞれの格子ベクトルの配向を伴って、2つの次元でのビーム拡大を提供する。この際、画像光ガイド20から画像担持光WOとして出射される画像担持光WIの角度的に関連するビーム間の意図された関係は維持される。
【0046】
画像光ガイド20に入射する画像担持光WIは、インカップリング回折光学要素IDOによって、角度的に関連するビームの異なる集合にエンコードされるが、画像を再構成するために必要な情報は、インカップリング回折光学要素IDO の系統的な効果によって保存される。インカップリング回折光学要素IDOとアウトカップリング回折光学要素ODOの間の中間位置にある回転格子TG及びODOは、通常、画像担持光WGのエンコードに重大な変化を引き起こさないように配置される。アウトカップリング回折光学要素ODOは通常、インカップリング回折光学要素IDOに対してシンメトリック(対称)に構成されている。例えば、同じ周期の回折フィーチャを含む。同様に、回転格子TGの周期もまた、典型的には、インカップリング回折光学要素IDOとアウトカップリング回折光学要素ODOの共通の周期と一致する。図2に示すように、回転光学要素TGの格子ベクトルk1は他の格子ベクトルK0,K2(全ての格子ベクトルは方向付けされていないものとする)に対して45度に向けられている。しかし、一実施形態では、回転格子TGの格子ベクトルk1を、インカップリング回折光学要素IDOの格子ベクトルk0とアウトカップリング回折光学要素ODOの格子ベクトルk2に対して60度に向けられてもよい。この場合、画像担持光WGは120度回転される。中間回転格子の格子ベクトルk1を、インカップリング回折光学要素IDOの格子ベクトルk0とアウトカップリング回折光学要素ODOの格子ベクトルk2に対して60度に向けることにより、格子ベクトルk0と格子ベクトルK1(格子ベクトルは方向付けされていないものとする)も、互いに60度の角度で配置されている。回転格子TGとインカップリング回折光学要素IDOおよびアウトカップリング回折光学要素ODOの共通ピッチによる格子ベクトルの大きさに基づいて、3つの格子ベクトルk0、k1、k2(格子ベクトルは方向付けされていないものとする)は正三角形を形成し、合計するとゼロの大きさになる。これにより、色分散などの望ましくない収差が誘導される可能性のある非対称効果を回避する。
【0047】
平面導波路22内に回折された画像担持光WIは、インカップリング光学要素IDOが格子、ホログラム、プリズム、ミラー、または他の機構のいずれを用いても、インカップリング回折光学要素IDOにより効果的にエンコードされる。インカップリング回折光学要素IDOで生じる光の反射、屈折、及び/又は回折は、視者に提示されるバーチャル像を再形成するために、アクトカップリング回折光学要素ODOによって対応するデコードをする必要がある。インカップリング回折光学要素IDOとアウトカップリング回折光学要素ODOの間の光学的中間位置に配置された回転光学要素TGは、通常、エンコードされた光に変化を引き起こさないように設計および配向される。アウトカップリング回折光学要素ODOは、画像担持光WGを、アイボックス74を満たすように拡大された角度的に関連するビームの元の形態または所望の形態にデコードする。
【0048】
回転光学要素TGとインカップリング回折光学要素IDOとアウトカップリング回折光学要素ODOの間で何らかの対称性(シンメトリック)が維持されているか否か、または、画像担持光WIの角度的に関連付けられたビームのエンコードに平面導波路22に沿って変化が生じているか否かに拘わらず、回転格子TGとインカップリング回折光学要素IDOとアウトカップリング回折光学要素ODOは、意図したバーチャル像を生成するために、平面導波路22から出力される画像担持光WOが画像担持光WIの元のまたは所望の形態を保持するように、関連付けられる。
【0049】
文字「R」は、目がアイボックス74にある視者に見えるバーチャル像の向きを表している。図示のように、表されたバーチャル像における文字「R」の向きは、画像担持光WIによってエンコードされた文字「R」の向きと一致する。xy平面に対する、入射した画像担持光WIのz軸周りの回転または角度方向の変化は、アウトカップリング回折光学要素(ODO)からの出射光の回転または角度方向についての対応するシンメトリックな変化を引き起こす。画像の向きの観点から、回転光学要素TGは一種の光学リレーとして機能し、画像担持光WGの角度的にエンコードされたビームを、画像の1つの軸 (例えばy軸)に沿って拡大する。アウトカップリング回折光学要素ODOは、画像担持光WIによってエンコードされたバーチャル像の元の向きを維持しながら、画像担持光WGの角度的にエンコードされたビームを、画像の別の軸(例えばx軸)に沿ってさらに拡大する。図2に示すように、回転格子TGは、平面導波路22の前面または後面に配置される傾斜したまたは正方形の格子とすることができる。代わりに回転格子TGは、ブレーズド格子であってもよい。
【0050】
回折格子として形成された回折光学要素では、格子の深さを増やすと回折効率が向上する。しかし、アウトカップリング回折格子の回折効率が高くなると、回折格子の外側領域から出射される画像担持光WOが減少する可能性がある。なぜなら、アウトカップリング回折光学要素の中央部から出力される画像担持光WGが多くなり過ぎ、眼に見えるホットスポットが生成されるからである。画像光ガイドの開示されている実施形態は、区分けされた(ゾーン化された;zoned)アウトカップリング回折光学要素を用いており、高い回折効率でアウトカップリングされた画像担持光WOのより均一な分布を促進する。
【0051】
図3A、3B、3Cに示す実施形態では、画像光ガイド100は、バーチャル像を拡大されたアイボックスに伝送し、バーチャル像を光学的無限遠の焦点で提示するように動作可能である。すなわち、アイボックス内の画像担持光を含む角度的に関連付けられたビームのそれぞれは、実質的にコリメートされた形態を維持している。画像コンテンツは、プロジェクタ110によって生成され、インカップリング回折光学要素IDOとアウトカップリング回折光学要素ODOを介して画像光ガイド100により伝達され、画像光ガイド100の正面に位置するバーチャル像VIとして、無限遠の焦点で視者の目に現れる。視者の視野内のバーチャル像の見かけのサイズは、角度的に関連付けられたビームが画像をエンコードする角度の範囲に関係している。アウトカップリング回折光学要素ODOを出る実線は、画像担持光WOのコリメートされたビームの1つを表している。破線は、画像光ガイド100の正面における1つのコリメートされたビームの仮想延長を表す。この仮想延長は、無限遠に位置するソースから発生するように見えるバーチャル像のピクセルに対応している。
【0052】
図4A~4Cに示すように、一実施形態では、画像光ガイド200は、前後の平行な面204、206を有する導波路202を含む。インカップリング回折光学要素210およびアウトカップリング回折光学要素212は、導波路の前面204上に配置されている。一実施形態では、インカップリング回折光学要素210およびアウトカップリング回折光学要素212は、導波路の後面206上に配置される。別の実施形態では、インカップリング回折光学要素210は導波路の前面204上に配置され、アウトカップリング回折光学要素212は導波路の後面206上に配置される。
【0053】
一実施形態では、中間回折光学要素は、インカップリング回折光学要素210とアウトカップリング回折光学要素212との間に光学的に配置される。中間回折光学要素は回転格子であってもよく、及び/又は中間回折光学要素は設計の多様性の増加を可能にしてもよい。
【0054】
アウトカップリング回折光学要素212は、画像担持光WOとしての画像担持光WGを拡大しアウトカップリングするように動作可能な複合回折格子パターンを含む。複合回折格子パターンは、2つ以上の重なり合う回折パターンを含む。各回折パターンは格子ベクトルkによって画定される。一実施形態では、複合回折格子パターンは、3つ以上のベクトルk成分を有する重なり合わない正弦波の回折パターンを含む。図4Aに示すように、一実施形態では、アウトカップリング回折光学要素212は、2つ以上の回折フィーチャのゾーン214,215,216,217,218,219,220,221,222,223,224,225,226,227,229を含む。ここで、各ゾーン214,215,216,217,218,219,220,221,222,223,224,225,226,227,229の回折フィーチャは、隣接するゾーン214,215,216,217,218,219,220,221,222,223,224,225,226,227,229の回折フィーチャと異なる。図4A図6Cに示すように、一実施形態では、アウトカップリング回折光学要素212は、y軸方向のほぼ中央に位置する第1ゾーン214を含む。第2ゾーン216は、y軸方向において第1ゾーン212のほぼ上に隣接して位置する。第3ゾーン218は、第2ゾーン216のほぼ上に隣接して位置する。第4ゾーン220は、y軸方向において第1ゾーン214のほぼ下に隣接して位置する。第5ゾーン222は、y軸方向において第4ゾーン220のほぼ下に隣接して位置する。第6ゾーン224は、y軸方向のほぼ中央に位置し、x軸方向において第1ゾーン214のほぼ右側に隣接して位置する。第7ゾーン226は、x軸方向に沿って第6ゾーン224のほぼ右側に隣接して位置する。
【0055】
アウトカップリング回折光学要素212は出力アパーチャ230を画成する。出力アパーチャ230の外側に配置されたアウトカップリング回折光学要素212の部分は、時々、画像担持光を出力アパーチャ230に向け直すものであり、くさび形または三角形のような形状にしてもよい。出力アパーチャ230は、アウトカップリング回折光学要素212の外側に位置する点線によって示されている。しかしながら、当業者は、図を明確にするためにこのように提示されていること、および出力アパーチャ230がアウトカップリング回折光学要素212の外側に延在していないことを理解するであろう。
【0056】
引き続き図4Aを参照すると、視覚化するために、アイボックス232A(すなわち、ヘッドモーションボックス)がアウトカップリング回折光学要素212の第1ゾーン214の上に示されている。アイボックス232Aは、バーチャル像の視野(FOV)の中心の画像担持光の入射光線に対応する。視者の目は、導波路202からある距離だけ離れた位置にある。この距離はアイレリーフ(瞳距離)と呼ばれている。動作中、観察者の目がアイボックス232A内で移動しても、入射光線に対応するピクセルを見ることができる。
【0057】
インカップリング回折光学要素210は、TIR条件で画像担持光WIの入射光線を入力結合(インカップリング)するように動作可能であり、それにより、画像担持光WGがアウトカップリング回折光学要素212に向かって伝播し、このアウトカップリング回折光学要素212で画像担持光WOがアイボックス232Aに向かって出力結合(アウトカップリング)することができる。図4A~4Cに示すように、一実施形態では、バーチャル像の視野(FOV)の中心に対応する光線は、インカップリング回折光学要素210を介して導波路202内にインカップリングされる。この光線は 導波路202と垂直をなしてインカップリング回折光学要素210に入射するように示されている。ただし、この中心光線は、導波路202に対して垂直以外の角度でインカップリング回折光学要素210に入射してもよい。図4A~4Cに示す実施形態では、アウトカップリング回折光学要素212の第1ゾーン214は、画像担持光WGを1以上の次元(すなわち、x軸およびy軸方向)に拡大し、画像担持光WOをアイボックス232A内にアウトカップリングするように動作可能である。
【0058】
この視野角の観点から、アイボックス232Aの下のこの領域における理想的なアウトカップリング格子は、インカップリング格子のリニア格子と平行に配置され1つの機能(画像担持光をアウトカップリングする機能)だけを備えたリニア格子を持つだろう。しかし、画像担持光の拡大を容易にしてより大きなアイボックスを作成するために、第1ゾーン214のアウトカップリング格子はほぼ菱形(diamond-shaped)のポストを備える。このほぼ菱形のポストは、インカップリング回折光学要素の格子ベクトルk0と平行な格子ベクトルk3を暗黙のうちに定義する。換言すれば、第1ゾーン214において、縦のリニア格子フィーチャはほぼ完全に目立たなくなっており(ディレートされており;de-rated)、縦のリニア格子フィーチャの唯一の証拠がほぼ菱形のポストの点になっている。ほぼ菱形のポストは、行ごとにオフセットされているが、それでも縦のラインを形成している。アイボックス232A内の画像担持光WOの回折は、回折フィーチャの周期性によって発生する。
【0059】
図5A~5Cでは、画像担持光WGの光線はバーチャル像の中心の右下にあるバーチャル像の部分に対応し、アイボックス232Bの投影はこれに対応して移動する。仮に画像担持光WGがアウトカップリング回折光学要素212で方向転換されない(すなわち回転されない)場合には、アウトカップリングされた画像担持光WOは、アイボックス232Bの投影を完全に逃してしまう。ここで、異なるゾーンはすべて、単一のピクセルまたは視野角から画像担持光WO を同じ角度範囲にアウトカップリングし、バーチャル像を形成する。換言すれば、単一のバーチャルピクセルからの画像担持光は、隣接するゾーンによって同じ角度に出力される。例えば、図5Aに示すように、アイボックス232Bに対応するバーチャルピクセルの画像担持光WGは、第1ゾーン214と第4ゾーン220の両方で同じ角度または角度範囲でアウトカップリングされる。
【0060】
一実施形態では、第1ゾーン214は、画像担持光WGの光線を、回転領域において画像担持光WGの進行方向に対してある角度で下向きに回折する(すなわち、回転する)ように動作可能な回折フィーチャを含む。第1ゾーン214の回折フィーチャはまた、方向転換された画像担持光WGを画像担持光WOとしてアウトカップリングするように動作可能である。図6A図6Bに示すように、第1ゾーン214の回折フィーチャは、2つの格子ベクトルk1、k2を画定し、これらは、インカップリング回折光学要素210の格子ベクトルk0と結合して、閉じた三角形を描き、実質的にゼロの大きさを有するベクトル図を形成する。換言すれば、格子ベクトルk0、k1、k2の組み合わせは、実質的に大きさを持たないベクトルを形成する。一実施形態では、格子ベクトルk0、k1、k2は閉じた二等辺三角形を形成する。別の実施形態では、格子ベクトルk0、k1、k2は閉じた不等辺三角形を形成する。このようにして、第1ゾーン214の回折フィーチャによってバーチャル像に光の分散または角度誤差が誘導されない。第1ゾーン214はまた、その回折フィーチャの配置を介して、インカップリング回折光学要素210の格子ベクトルk0と等価である第4の格子ベクトルk3を暗黙のうちに定義する。この実施形態では、これらの格子ベクトルk0、k1、k2、k3はすべて、第1回折ゾーン214で必要である。
【0061】
図7A~7Cでは、画像担持光WGの光線がバーチャル像の中心のさらに右下にあるバーチャル像の部分に対応し、アイボックス232Cの投影はこれ対応して移動する。この画像担持光WGの光線は、導波路202を通って第3ゾーン218内の領域に伝播するが、この画像担持光WGの光線は、第4または第5ゾーン220、222におけるアウトカップリング回折光学要素212の一部から出射する必要がある。第3ゾーン218は、画像担持光WGを第5ゾーン222に向けてy軸方向における下方に方向転換させる(すなわち、回転させる)ように動作可能である。第3ゾーン218から直接アウトカップリングされる(すなわちリニア回折格子からのようにアウトカップリングされる)画像担持光WGは、観察者の目を逃すであろう。第3、第5ゾーン218、222が画像担持光WGの向きを変えるかまたはアウトカップリングするためには、ただ1つの格子ベクトルが必要である。
【0062】
伝播の対称性により、画像担持光WGが第5ゾーン222に向かってy軸方向に下向きに進行し、必然的に第3ゾーン218に向かってy軸方向における上向きに方向転換し、画像担持光WOとしてアウトカップリングされる。画像担持光WGを第3ゾーン218に向けて方向転換するために必要な格子フィーチャは、第3ゾーン218からの方向転換された画像担持光WGをアウトカップリングするために必要な格子フィーチャと同一である。したがって、第5ゾーン222では、単一の格子ベクトルk5のみが必要である。
【0063】
第2、第4ゾーン216、220は、アウトカップリング回折光学要素212の遷移ソーンまたは中間ゾーンとして動作可能であり、第2および第4ゾーン216、220における格子フィーチャの設計は、隣接する2つのゾーンの組み合わせまたは畳み込み(重畳;convolution)である。例えば、第2ゾーン216は、第1、第3ゾーン214、218の組み合わせを表す。遷移ゾーン216、220は、導波路202内の移行をより円滑にし、画像光ガイド200のより望ましい透視体験を生み出す。例えば、視野(FOV)全体にわたりバーチャル像の明るさがより均一になる。一実施形態では、アウトカップリング回折光学要素212は、x軸方向およびy軸方向において、アウトカップリング回折光学要素212の中心から端まで、複数の遷移ゾーンを含む。
【0064】
図8A~8Cに示すように、一実施形態では、アウトカップリング回折光学要素212の2つ以上のゾーン214、215、216、217、218、219、220、221、222、223、224、225、226、227、229における回折フィーチャの深さは、回折フィーチャの基本的構成において定義されるゾーン境界290(図10を参照)とは無関係に変化することができる。アウトカップリング回折光学要素212の回折フィーチャの基本的構成は、回折次数の方向および相対的な大きさを決定するが、回折フィーチャの深さ調節は、存在するすべての回折次数の相対的効率を調節する役割を果たす。アウトカップリング回折光学要素212の回折フィーチャの基本的パターンとは無関係に、勾配を有する深さを適用することが可能である。
【0065】
一実施形態では、ゾーン214、215、216、217、218、219、220、221、222、223、224、225、226、227、229の回折フィーチャの深さは、回折フィーチャがy軸方向にアウトカップリング回折光学要素の端に近づくにつれて徐々に増大する。例えば図8Dに示されるように、回折フィーチャ250(図9を参照)は、第1ゾーン214の中心線280から第1ゾーン214の外縁までy軸方向に深さn-nで漸進的に変化する、回折フィーチャ256(図9を参照)は、第1ゾーン214の縁から第2ゾーン216の外縁まで、y軸方向に深さn-nで漸進的に変化する。回折フィーチャ252(図9を参照)は、第2ゾーン216の縁から第3ゾーン218の外縁まで、y軸方向に深さn-nで漸進的に変化する。この回折フィーチャの深さにおけるこの漸進的な増大は、第1ゾーン214の中心線280を横切って鏡面対称である。図8Aはリニア格子フィーチャの概略図を示す。このリニア格子フィーチャの深さは、x-z平面と平行な中心平面282を横切って対称をなすように、y軸に沿って増大
する。図8Bはリニア格子フィーチャの概略図を示す。このリニア格子フィーチャの深さは、x-z平面と平行な中心平面282を横切って対称をなすようにy軸に沿って階段状に増大する。
【0066】
別の実施形態では、ゾーン214、215、216、217、218、219、220、221、222、223、224、225、226、227、229の回折フィーチャの深さは、x軸方向に回折フィーチャがアウトカップリング回折光学要素の縁に近づくにつれて漸進的に増加する。図8Cはリニア格子フィーチャの概略図を示す。このリニア格子フィーチャの深さは、y-z平面と平行な中心平面284を横切って対称的にx軸に沿って増大する。一実施形態では、ゾーン214、215、216、217、218、219、220、221、222、223、224、225、226、227、229の回折フィーチャの深さは、回折フィーチャがアウトカップリング回折光学要素の縁に近づくにつれてx軸方向とy軸方向の両方で漸進的に増大する。
【0067】
図9に示すように、一実施形態では、アウトカップリング回折光学要素212の第1ゾーン214は、複合回折パターンを表す回折フィーチャ250を含む。図9に示される回折フィーチャ250は、ほぼ菱形のポストである。回折フィーチャ250の概略図が図11Aに示されている。別の実施形態では、回折フィーチャ250は、1つ以上の正弦波の列ないしは波状フィーチャである。第3、第5ゾーン218、222のそれぞれの回折フィーチャ252、254は、リニア格子を表す。回折フィーチャ254は、第1ゾーン214の中心線280に関して回折フィーチャ252と対称である。回折フィーチャ252、254はまた、中心線280に対して角度φで配置される。回折フィーチャ252の概略図が図11Cに示されている。回折フィーチャ254の概略図が図11Eに示されている。
【0068】
第2ゾーン216の回折フィーチャ256は、回折フィーチャ250と回折フィーチャ252との組み合わせを表す。換言すれば、一実施形態では、回折フィーチャ256は平行四辺形のフィーチャである。回折フィーチャ256の概略図が図11Bに示されている。同様に、第4ゾーン220の回折フィーチャ258は、回折フィーチャ250と回折フィーチャ254との組み合わせを表し、ひし形のフィーチャがリニア格子に接近するようにする。換言すれば、一実施形態では、回折フィーチャ258は平行四辺形のフィーチャである。回折フィーチャ258の概略図が図11Dに示されている。第6ゾーン224の回折フィーチャ260は、y軸とほぼ平行に配置されたほぼリニアな格子に近づくほぼ三角形のフィーチャを表している。第7ゾーン226の回折フィーチャ262は、ほぼ縦のリニア格子を表している。
【0069】
図12は、長方形のユニットセル300A、300B、300C、300D、300Eの概略図である。一実施形態では、アウトカップリング回折光学要素212の第1ゾーン214、第4ゾーン220A、220B、220C、および第5ゾーン222は、二次元格子に配置されたユニットセル300A、300B、300C、300D、300Eによって形成される。一実施形態では、各ユニットセル300A、300B、300C、300D、300Eは、ゾーン内の最小の繰り返される回折フィーチャを含む。しかしながら、ユニットセル300A、300B、300C、300D、300Eは、周期的な回折フィーチャを形成するためにゾーン内で反復可能であるような任意のサイズとすることができる。各ゾーン内の回折フィーチャは、周期的な格子(グリッド;grid)におけるユニットセルの配置を含み、2次元の周期的な格子構造を形成する。周期的格子は、アウトカップリング回折光学要素212内の各ゾーン214、215、216、217、218、219、220、221、222、223、224、225、226、227、229において同じである。図13に示すように、アウトカップリング回折光学要素212の複合回折パターンの一部は、ユニットセル300A、300B、300C、300D、300Eの複製と連続配置(隣接配置)を含む。当業者は、第1ゾーン214、第4ゾーン220A、220B、220Cおよび第5ゾーン222のそれぞれのx軸及び/又はy軸方向に、より多くのユニットセル300A、300B、300C、300D、300Eが存在し得ることを認識するであろう。
【0070】
一実施形態では、アウトカップリング回折光学要素212の中心から縁に向かってy軸及び/又はx軸方向に移行する複数のゾーンが存在する。しかし実際には、アウトカップリング回折光学要素212のy軸及び/又はx軸方向に有限数のナノ構造のみが許容される。したがって、一実施形態では、アウトカップリング回折光学要素212の中心から縁までのy軸及び/又はx軸方向の遷移ゾーンの数は、少なくとも部分的に、アウトカップリング回折光学要素212の最小の製造可能な構造およびサイズの関数である。
【0071】
別の実施形態では、アウトカップリング回折光学要素212のゾーン214、215、216、217、218、219、220、221、222、223、224、225、226、227、229は、ギャップ領域によって輪郭を描かれる。図10に示すように、ゾーンの境界290は、ゾーン214、215、216、217、218、219、220、221、222、223、224、225、226、227、229を画成する点線によって示されている。ゾーン境界290は、ゾーン214、215、216、217、218、219、220、221、222、223、224、225、226、227、229の間のギャップ領域を画成することができる。
【0072】
図10に示すように、一実施形態では、第1ゾーン214の回折フィーチャ250は、単一の列だけを含むことができる。この実施形態では、第2ゾーン216はサブセクション216A、216Bを含み、ゾーン216Bの回折フィーチャ256は、ゾーン216Aの回折フィーチャ256よりもリニア格子に近い。第4ゾーン220は、サブセクション220A、220Bを含み、ゾーン220Bの回折フィーチャ258は、ゾーン220Aの回折フィーチャ258よりもリニア格子に近い。
【0073】
図14A、14Bに示すように、一実施形態では、画像光ガイド300は、前後の平行をなす面304、306を有する導波路302を含む。インカップリング回折光学要素310およびアウトカップリング回折光学要素312は、導波路の前面304上に配置されている。アウトカップリング回折光学要素312は、画像担持光WGを拡大し、画像担持光WOとしてアウトカップリングするように動作可能な複合回折格子パターンを含む。アウトカップリング回折光学要素312は、回折フィーチャの10個のゾーン314、316、318、320、322、324、326、328、330、332を含む。各ゾーン314、316、318、320、322、324、326、328、330、332の回折フィーチャは、隣接するゾーン314、316、318、320、322、324、326、328、330、332の回折フィーチャとは異なる。
【0074】
アウトカップリング回折光学要素の第1ゾーン314は、y軸方向においてほぼ中心に位置する。第2ゾーン316は、y軸方向において第1ゾーン314のほぼ上に隣接して配置される。第3ゾーン318は、第2ゾーン316のほぼ上に隣接して配置される。第4ゾーン320は、第3ゾーン318のほぼ上に隣接して配置される。第2ゾーン316および第3ゾーン318は、第1ゾーン314と第4ゾーン320の回折フィーチャ間において遷移ゾーン(移行ソーン)として動作可能な回折光学要素を含む。換言すると、第2ゾーン316、第3ゾーン318は、第1ゾーン314と第4ゾーン310の組み合わせまたは畳み込みである回折フィーチャを含む。図15に示すように、第2ゾーン316は第1ゾーン314によりよく似ており、第3ゾーン318は第4ゾーン320によりよく似ている。
【0075】
第5ゾーン322は、y軸方向において第1ゾーン314のほぼ下に隣接して配置される。第6ゾーン324は、y軸方向において第5ゾーン322のほぼ下に隣接して配置される。第7ゾーン326は、y軸方向において第6ゾーン324のほぼ下に隣接して配置される。第5、第6ゾーン322、324は、第1ゾーン314と第7ゾーン326の異なる回折フィーチャ間において遷移ゾーン(移行ゾーン)として動作可能な回折光学要素を含む。換言すれば、第5、第6ゾーン322、324は、第1ゾーン314、第7ゾーン326の組み合わせまたは畳み込みである回折フィーチャを含む。第5、第6、第7ゾーン322、324、326の回折フィーチャは、第1ゾーン314の中心線を横切って第2、第3、第4ゾーン316、318、320の回折フィーチャと対称である。しかしながら、アウトカップリング回折光学要素312の形状は、必ずしも第1ゾーン314の中心線を横切って対称であるとは限らない。
【0076】
第8ゾーン328は、y軸方向のほぼ中央に位置し、x軸方向において第1ゾーン314の右側にほぼ隣接して配置される。第9ゾーン330は、y軸方向のほぼ中央に配置され、x軸方向に沿って第8ゾーン328の右側にほぼ隣接して配置される。第10ゾーン332も、y軸方向においてほぼ中央に配置されるとともに第3ゾーン318と第6ゾーン324との間に配置され、x 軸方向において第9ゾーン330、第2ゾーン316、第5ゾーン322のほぼ右側に隣接して配置される。第8、第9ゾーン328、330は、第1ゾーン314と第10ゾーン332の回折フィーチャ間の遷移ゾーンとして動作可能な回折フィーチャを含む。換言すると、第8、第9ゾーン328、330は、第1ゾーン314と第10ゾーン332の組み合わせまたは畳み込みである回折フィーチャを含む。
【0077】
さらに、第1ゾーン314、第8ゾーン328、第9ゾーン330は、y軸方向にほぼ同じ幅を有する。第1ゾーン314、第2ゾーン316、第5ゾーン322を合わせると、第10ゾーン332とほぼ同じy軸方向の幅を有する。一実施形態では、第4ゾーン320、第3ゾーン318、第6ゾーン324、第7ゾーン326のx軸方向の長さは等しくない。
【0078】
図16A図16Bに示すように、一実施形態では、画像光ガイド400は、前後の平行面404、406を有する導波路402を含む。インカップリング回折光学要素410およびアウトカップリング回折光学要素412は、導波路の前面404に配置される。一実施形態では、インカップリング光学要素410およびアウトカップリング回折光学要素412は、導波路の後面406に配置される。別の実施形態では、インカップリング光学要素410は導波路の前面404に配置され、アウトカップリング回折光学要素412は導波路の後面406に配置される。
【0079】
一実施形態では、中間回折光学要素は、インカップリング回折光学要素410とアウトカップリング回折光学要素412との間に光学的に配置される。中間回折光学要素は、回転格子であってもよく、及び/又は中間回折光学系は、設計変更の増加を可能にする。
【0080】
アウトカップリング回折光学要素412は、画像担持光WGを二次元に拡大し、この画像担持光WGを画像担持光WOとして出力結合するように動作可能な、複合回折格子パターンを含む。複合回折格子パターンは、2つ以上の重なり合う回折パターンを含み、各回折パターンは格子ベクトルkを表す。一実施形態では、複合回折格子パターンは、3つ以上のベクトルk成分を表す重複しない正弦波回折パターンを含む。図16A図17に示すように、一実施形態では、アウトカップリング回折光学要素412は、回折フィーチャの複数のゾーン414、416、418、420、422、424を含み、各ゾーン414、416、418、420、422、424の回折フィーチャは、隣接するゾーン414、416、418、420、422、424の回折フィーチャとは異なる。図16Aに示すように、一実施形態では、アウトカップリング回折光学要素412は、y軸方向のほぼ中央に位置する第1ゾーン414を含む。第2ゾーン416は、y軸方向で第1ゾーン414の上側に隣接して配置される。第3ゾーン418は、第2ゾーン416の上側に隣接して配置される。第4ゾーン420は、y軸方向で第1ゾーン414の下側に隣接して配置される。第5ゾーン422は、y軸方向で第4ゾーン420の下側に隣接して配置される。第6ゾーン424は、y軸方向のほぼ中心に位置し、x軸方向で第1ゾーン414の右側にほぼ隣接して配置される。
【0081】
インカップリング回折光学要素410は、TIR条件で画像担持光WIの入射光線を入力結合するように動作可能であり、これにより、画像担持光WGがアウトカップリング回折光学要素412に向かって伝播し、このアウトカップリング回折光学要素412で、画像担持光WOがアイボックスに向かって出力結合できる。一実施形態では、バーチャル像の視野(FOV)の中心に対応する光線は、インカップリング回折光学要素410を介して導波路402内へと入力結合される。光線は、導波路402に垂直にインカップリング回折光学要素410に入射することが図示されている。しかし、入射中心光線は、導波路402に対して垂直以外の角度でインカップリング回折光学要素410に入射してもよい。図16A図16Bに示すように、アウトカップリング回折光学要素412の第1ゾーン414は、画像担持光WGを1以上の次元(すなわち、x軸およびy軸)に拡大し、画像担持光WOをアイボックスに出力結合するように動作可能である。
【0082】
より大きなアイボックスを作成する画像担持光の拡大を容易にするために、第1ゾーン414のアウトカップリング格子は、ほぼ菱形のポスト414Aを備えている。この菱形のポスト414Aは、格子ベクトルk1、k2を規定し、インカップリング回折光学要素410の格子ベクトルk0と平行な格子ベクトルk3を暗黙のうちに規定する。換言すれば、第1ゾーン414では、垂直のリニアのフィーチャはほぼ完全に軽減されており(de-rated)、垂直のリニアな格子フィーチャの唯一の証拠は、ほぼ菱形のポスト414Aの点である。概ね菱形のポスト414Aは、行ごとにオフセットされているが、依然として垂直線を形成している。第2ゾーン416では、ほぼ菱形のポスト416Aは、第1ゾーン414のポスト414Aに比べてサイズが縮小されている。第2ゾーン416内のほぼ菱形のポスト416Aは、格子ベクトルk0 に対して角度を成すリニアな回折フィーチャ416Bによって接続されている(図17参照)。第3ゾーン418では、周期的な回折フィーチャは、リニアな格子フィーチャ418Aを含む。リニアな回折フィーチャ418Aは、リニアな回折フィーチャ416Bとほぼ平行に配置されている。第6ゾーン424は、周期的なリニアなフィーチャの3つのセットを有する周期的な回折フィーチャ424Aを含む。第1のリニアフィーチャのセットと第2のリニアフィーチャのセットは互いに交差し、第3のリニアフィーチャのセットは、第1および第2のリニアフィーチャの交点を通って垂直に配置されている。一実施形態では、アウトカップリング回折光学要素412は、長手軸BBに関して対称であり、第4ゾーン420が第2ゾーン416の鏡面対称であり、第5ゾーン422が第3ゾーン418と鏡面対称である。
【0083】
一実施形態では、図18に示すように、ゾーン414、416、418、420、422、424の回折フィーチャは、境界領域で混合される。換言すれば、1つのゾーン414、416、418、420、422、424は、境界領域において、隣接するゾーン414、416、418、420、422、424と同じ格子フィーチャを含む。例えば、第1ゾーン414のほぼ三角形の部分450は、第2ゾーン416に突出し、第2ゾーン416のほぼ三角形の部分452は、第1ゾーン414に突出する。このようにして、三角形の部分450,452が第1の境界領域において、交互パターンをなして配置される。同様に、第1ゾーン414のほぼ三角形の部分450は第6ゾーン424に突出し、第6ゾーン424のほぼ三角形の部分454は第1ゾーン414に突出する。このようにして第2の境界領域において三角形の部分450、454は交互パターンをなして配置される。一実施形態では、ほぼ三角形の部分450、452、454は、高さ400μm、幅800μmとすることができる。
【0084】
一実施形態では、各ゾーン414、416、418、420、422、424内の回折フィーチャは、アウトカップリング回折光学要素412の2次元周期格子を形成する周期的グリッドにおける、ユニットセル414C、416C、418C、420C、422C、424Cの配列を含む。一実施形態では、各ユニットセル414C、416C、418C、420C、422C、424Cは、ゾーン内の最小の繰り返し回折フィーチャを含む。しかしながら、ユニットセル414C、416C、418C、420C、422C、424Cは、ゾーン内で反復可能で周期的な回折フィーチャを形成するような、任意のサイズとすることができる。各ゾーン内の回折フィーチャは、周期的なグリッド内のユニットセルの配置を含み、2次元の周期的な格子構造を形成する。隣接するゾーン414、416、418、420、422、424の三角形の部分450、452、454の各々は、複数のユニットセルを含むことができる。図18に示される第6ゾーン424のユニットセル424Cは、参考用であり、縮尺通りには表示されていない。
【0085】
別の実施形態では、図19に示すように、隣接ゾーン414、416、418、420、422、424の間の混合された境界では、隣接するゾーン414、416、418、420、422、424からの1つのユニットセル414C、416C、418C、420C、422C、424Cが、交互パターンで各隣接ゾーン414、416、418、420、422、424内へと突出する。
【0086】
図20に示すように、一実施形態では、第1ゾーン414と第2ゾーン416との間のゾーン境界は、疑似ランダム配置で混合された複数のユニットセル414C、416Cを含む。一実施形態では、アウトカップリング回折光学要素212のゾーン214、215、216、217、218、219、220、221、222、223、224、225、226、227、229内のユニットセルによって表された回折パターンは、3つ以上の格子ベクトルk成分及び/又はポストを表す重ならない正弦波回折パターンを含むことができる。
【0087】
図21を参照すると、別の実施形態では、第1ゾーン414と第2ゾーン416との間の境界は、疑似ランダム配置で混合されたサブ領域414S、416Sを含む。各サブ領域414Sは、1つ以上のユニットセル414Cを含み、各サブ領域416Sは、1つ以上のユニットセル416Cを含む。一実施形態では、各サブ領域414S、416Sは、同数のユニットセルを含む。別の実施形態では、サブ領域414S、416Sは、異なる数のユニットセルを含むことができる。図21に示すユニットセル416Cは、縮尺通りに示されておらず、参考用に示しているだけである。例えば、隣接するゾーン414、416、418、420、422、424の間の境界領域は、幅1mm未満であり、サブ領域414S、416S、418S、420S、422S、424Sは、幅0.15mm未満であり、ユニットセル414C、416C、418C、420C、422C、424Cの幅は、1μmとすることができる。
【0088】
図21に示すように、一実施形態では、第1ゾーン414と第2ゾーン416との間の境界領域は、サブ領域414S、416Sのグリッドに分割可能である。当業者は、図示のグリッドが例示のみを目的としており、画像光ガイド400の物理的特徴ではないことを認識するであろう。一実施形態では、長手軸LIに沿う境界領域の中心線において、境界領域の中央列のサブ領域414S、416Sは、x軸方向に1つおきに交互に配置されている。中央の列のy軸方向の下側にあるサブ領域414S、416Sの列(すなわち、第1ゾーン414の側で中央の列に隣接する列)では、3つ毎に1つのサブ領域(2つおきのサブ領域)がサブ領域416Sである。中央の列からy軸方向に2つ下のサブ領域414S、416Sの列では、4つ毎に1つのサブ領域(3つおきのサブ領域)がサブ領域416Sである。中央の列からy軸方向に3つ下のサブ領域414S、416Sの列では、すべてのサブ領域がサブ領域414Sである。境界領域内のサブ領域414Sの合計面積は、境界領域の長手方向中心線から第1ゾーン414に向かって増加する。
【0089】
図21に示すように、サブ領域414S、416Sは上記と同様に、中央列から第2ゾーン416に向かって配置される。中央列よりy軸方向の上側のサブ領域414S、416Sの列(すなわち、第2ゾーン414側で中央列に隣接する列)では、3つ毎に1つのサブ領域(2つおきのサブ領域)がサブ領域414Sである。中央列よりy軸方向に2つ上にあるサブ領域414S、416Sの列では、4つ毎に1つのサブ領域(3つおきのサブ領域)がサブ領域414Sである。中央列から3つ上のサブ領域414S、416Sの列では、すべてのサブ領域がサブ領域416Sである。境界領域内のサブ領域416Sの合計面積は、境界領域の長手方向中心線から第2ゾーン416に向かって増加する。
【0090】
一実施形態では、サブ領域416S内の回折フィーチャの深さは、サブ領域414S内の回折フィーチャの深さとは異なる。別の実施形態では、1つのサブ領域416Sから次のサブ領域416Sまでの回折フィーチャの深さが異なり、1つのサブ領域414Sから次のサブ領域414Sまでの回折フィーチャの深さが異なる。
【0091】
ゾーン境界を混合(ブレンド)して急激な遷移を除去する利点の1つは、1つの回折パターンから別の回折パターンへの遷移の視認性が低下することである。
【0092】
図22の斜視図は、本開示の画像光ガイドを一対使用する三次元(3-D)拡張現実表示のためのディスプレイシステム60を示す。表示システム60は、左眼用の画像光ガイド140Lを有する左眼光学システム64Lと、右眼用の画像光ガイド140Rを有する右眼光学システム64Rとを有するHMDとして示されている。ピコプロジェクタ(または同様のデバイス)などの画像ソース152が提供される。この画像ソース152は、それぞれの目に対して別個の画像を生成するように動作可能であり、これら画像は、立位画像表示に必要な画像方向を有するバーチャル像として形成される。生成される画像は、三次元表示用の立体的な画像のペアにすることができる。光学システムによって形成されるバーチャル像は、画像光ガイドを通して視者が見る現実世界のシーンに重ね合わさるようにして表示される。拡張現実視覚化技術の当業者によく知られている追加の構成要素(光景の表示や視者の視線追跡のために、HMDのフレームに取り付けられる1つまたは複数のカメラなど)を装着することができる。片目に画像を提供するためのディスプレイ装置を含む、代替構成も可能である。
【0093】
本明細書に記載の実施形態の1つまたは複数の特徴を組み合わせて、図示されていない追加の実施形態を作成することができる。種々の実施形態が詳細に説明されているが、これらは例として提示されており、限定ではないことを理解されたい。開示された主題が、その範囲、精神、または本質的な特徴から逸脱することなく、他の特定の形態、変形、および修正で具体化され得ることは、当業者にとって自明なことである。したがって、上記の実施形態は、すべての点で例示的であり、限定的ではないとみなされるべきである。本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲によって示され、その均等物の意味および範囲内にあるすべての変更は、そこに含まれることが意図されている。
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図4A
図4B
図4C
図5A
図5B
図5C
図6A
図6B
図7A
図7B
図7C
図8A
図8B
図8C
図8D
図9
図10
図11A
図11B
図11C
図11D
図11E
図12
図13
図14A
図14B
図15
図16A
図16B
図17
図18
図19
図20
図21
図22
【国際調査報告】