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特表2023-552296三尖弁逆流を治療するための経カテーテル装置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-15
(54)【発明の名称】三尖弁逆流を治療するための経カテーテル装置
(51)【国際特許分類】
   A61F 2/24 20060101AFI20231208BHJP
【FI】
A61F2/24
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023530300
(86)(22)【出願日】2021-11-24
(85)【翻訳文提出日】2023-06-27
(86)【国際出願番号】 US2021060872
(87)【国際公開番号】W WO2022115640
(87)【国際公開日】2022-06-02
(31)【優先権主張番号】63/227,871
(32)【優先日】2021-07-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/146,552
(32)【優先日】2021-02-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】17/535,381
(32)【優先日】2021-11-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/118,631
(32)【優先日】2020-11-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/163,772
(32)【優先日】2021-03-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/283,032
(32)【優先日】2021-11-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/224,337
(32)【優先日】2021-07-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/180,656
(32)【優先日】2021-04-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/137,589
(32)【優先日】2021-01-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522329744
【氏名又は名称】タウ メディカル インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】TAU MEDICAL INC.
(71)【出願人】
【識別番号】522485051
【氏名又は名称】タウ メディカル インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】TAU MEDICAL INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】キム, ジュン-ホン
【テーマコード(参考)】
4C097
【Fターム(参考)】
4C097AA27
4C097BB01
4C097BB09
4C097CC05
4C097CC18
4C097SB10
(57)【要約】
三尖弁逆流を治療する経カテーテル装置。経カテーテル装置は、主軸、近位部、遠位尾部、及び主軸に取り付けられており近位部と遠位尾部との間に設置されているスペーサ本体を備える。この経カテーテル装置は、患者の心臓における三尖弁逆流を治療するために使用できる。経カテーテル装置の全部又は一部は、主軸によって支持される。スペーサ本体は軸に取り付けられ、軸はスペーサ本体を通って移動する。経カテーテル装置を備える接合組立体、及び経カテーテル装置を使用して三尖弁逆流を治療する方法も開示されている。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の(i)~(iv)、すなわち
(i)主軸、
(ii)前記主軸の近位セグメント及び血管内アンカーを備える近位部、
(iii)前記主軸の遠位部を備える遠位尾部、
(iv)前記主軸に取り付けられており前記主軸の前記近位セグメントと前記遠位尾部との間に設置されているスペーサ本体、
を具備する経カテーテル装置を有するステップと、
前記経カテーテル装置を大腿静脈内へ挿入するステップと、
前記経カテーテル装置を、下大静脈を通して進めるステップと、
前記経カテーテル装置を心臓の右心房を通して進めるステップと、
前記経カテーテル装置を、三尖弁を横切って前記心臓の右心室内へ進めるステップと、
前記経カテーテル装置を肺動脈の方へ進めるステップと、
前記遠位尾部を前記肺動脈内へ少なくとも10cmの距離で前記肺動脈内へ進めるステップと、
前記スペーサ本体を前記三尖弁の弁尖同士の間に配置するステップと、
前記心臓の室上稜に対して当接するように前記スペーサ本体を配置するステップと、
前記血管内アンカーを前記下大静脈内に留めるステップと、を含む、患者の心臓における三尖弁逆流を治療する方法。
【請求項2】
(削除)
【請求項3】
前記室上稜に対して前記当接することが、前記スペーサ本体の遠位側の半分内の箇所で生じる、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記三尖弁が三尖弁輪を有し、前記三尖弁輪に対して画定された環状平面があり、
前記環状平面が、前記三尖弁輪のX軸に沿って、前記三尖弁輪のY軸に直交し、
前記スペーサ本体が、前記環状平面に対して斜めの角度で配置される、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記主軸が管腔を備え、前記方法が、
ガイドワイヤを前記大腿静脈内へ挿入するステップと、
前記ガイドワイヤを、前記下大静脈を通して進めるステップと、
前記ガイドワイヤを、前記右心房を通して進めるステップと、
前記ガイドワイヤを進めて前記三尖弁を横断して前記右心室内へ進めるステップと、
前記ガイドワイヤを前記軸の前記管腔内へ導入するステップと、
前記経カテーテル装置を前記ガイドワイヤの上で進めるステップと、をさらに含む、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
前記遠位尾部が前記肺動脈の第1の分岐点を越えて進められる、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記遠位尾部が前記肺動脈の第2の分岐点を越えて進められる、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記経カテーテル装置の前記遠位尾部が、前記肺動脈の第3の分岐点を越えて進められる、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記経カテーテル装置の前記遠位尾部が、前記肺動脈内へ少なくとも15cm進められる、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記スペーサ本体が、血液が前記スペーサ本体を通って流れる開口部を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記肺動脈が左側肺動脈である、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
主軸と、
前記主軸の近位セグメント及び血管内アンカーを備える近位部と、
前記主軸の遠位部を備える遠位尾部であって、C字形状、及び10~40cmの長さの範囲にある長さを有する遠位尾部と、
前記主軸に取り付けられており前記主軸の前記近位セグメントと前記遠位尾部との間に設置されているスペーサ本体と、を具備する経カテーテル装置。
【請求項13】
前記スペーサ本体が非線形状を有する、請求項12に記載の経カテーテル装置。
【請求項14】
前記遠位尾部が曲げを備える、請求項12に記載の経カテーテル装置。
【請求項15】
前記遠位尾部が近位セグメント及び遠位セグメントを備え、前記遠位セグメントが前記近位セグメントよりも細い直径を有する、請求項12に記載の経カテーテル装置。
【請求項16】
前記スペーサ本体が4~13cmの範囲にある長さを有する、請求項12に記載の経カテーテル装置。
【請求項17】
前記血管内アンカーが渦巻状コイルである、請求項12に記載の経カテーテル装置。
【請求項18】
前記血管内アンカーが少なくとも2つの渦巻を有する、請求項17に記載の経カテーテル装置。
【請求項19】
前記主軸が管腔を備える請求項12に記載の経カテーテル装置と、
前記主軸の前記管腔を通って移動するガイドワイヤと、
前記スペーサ本体及び前記血管内アンカーを覆う移動可能な送達シースと、
前記経カテーテル装置の血管内展開のための展開カテーテルと、を具備する接合組立体。
【請求項20】
前記血管内アンカーと前記スペーサ本体との間の箇所における前記主軸の入口開口部と、前記遠位尾部の先端における前記主軸の出口開口部とをさらに具備し、
前記主軸の前記管腔が、前記入口開口部から前記出口開口部まで延び、
前記ガイドワイヤが、前記入口開口部から前記出口開口部まで前記管腔を通って移動する、請求項19に記載の経カテーテル装置組立体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、経カテーテル装置を使用することによる三尖弁逆流の治療に関する。
【背景技術】
【0002】
心臓弁逆流(心臓弁からの漏れ)は、心臓弁が適切に閉じないときに生じる。一例は三尖弁逆流であって、右心室、乳頭筋、及び三尖弁輪の幾何学的構成の変化により通常、引き起こされる。これらの幾何学的変更により、心室収縮期の間の弁尖の接合は不完全となるので、逆流が生じる。以前は、心臓弁を修復することは心肺バイパスによる開胸手術を必要とした。近年、弁修復のための様々なカテーテルベースの技術が導入されている。これらのカテーテルベースの手順は、開胸、又は心肺バイパスの使用を必要としない。三尖弁逆流に対するカテーテルベースの治療におけるさらなる進歩の必要がある。
【発明の概要】
【0003】
経カテーテル装置:一態様では、本発明は、主軸、近位部、遠位尾部、及び主軸に取り付けられ、近位部と遠位尾部との間に設置されたスペーサ本体を備える経カテーテル装置である。この経カテーテル装置は、患者の心臓における三尖弁逆流を治療するために使用できる。経カテーテル装置の全部又は一部は、主軸によって支持されている。スペーサ本体は軸に取り付けられ、軸はスペーサ本体を通って移動する。経カテーテル装置の近位部は、主軸の近位セグメントを取り囲む。これは、経カテーテル装置の近位部を備える主軸の近位セグメントとして代替的に表現できる。経カテーテル装置の遠位尾部は、主軸の遠位セグメントを取り囲む。これは、経カテーテル装置の遠位尾部を備える主軸の遠位セグメントとして代替的に表現できる。
【0004】
主軸は、ガイドワイヤを中に入れるための管腔及び開口部(複数可)を備える。主軸の遠位先端に(遠位尾部分に)管腔用の開口部があることができる。経カテーテル装置の近位部に設置された近位開口部もあることができる。経カテーテル装置が血管内アンカーを備える実施形態では、管腔用のこの近位開口部は、スペーサ本体と血管内アンカーとの間に設置できる。例えば、開口部は、血管内アンカーに結合する主軸の近位端に設置できる。
【0005】
主軸の全長は、長さ50~175cmの範囲にあることができる。主軸は、どのような好適方法で構築されてもよい。例えば、主軸は金属ワイヤコア(例えば、ステンレス鋼又はニチノール合金)でできていて、ポリマー材料で次に覆われる。例えば、金属ワイヤコアは熱可塑性ポリウレタン編組又はポリテトラフルオロエチレン(PTFE)被覆で覆われることができる。金属ワイヤコアは、主軸の全長を通って延びることができる。しかしながら、いくつかの実施形態では、金属ワイヤコアは、遠位尾部の先端(又は主軸の遠位先端)に到達する前に終わる。例えば、金属ワイヤコアは、遠位先端から0.5~4cm以内である場所で終わることができる。
【0006】
遠位尾部。遠位尾部は、肺動脈内に十分な固定を行うように、どのような好適長さを有してもよい。いくつかの実施形態では、遠位尾部の長さは10~40cmの長さ、場合によっては、15~30cmの長さである。遠位尾部は、肺動脈内へ移動する際、先端を鈍くして、外傷を低減するように、ピグテール又は丸みを帯びた先端を有することができる。いくつかの実施形態では、遠位尾部は、1つ又は複数の曲げを有する。曲げ(複数可)は、80~140°の範囲にある内角を有することができる。曲げ(複数可)は、遠位尾部のどのような好適場所にも設置できる。いくつかの実施形態では、スペーサ本体から0.25~3.5cmの距離に設置する曲げがある。
【0007】
遠位尾部は、その長さにわたって非一定の直径を有してもよい。いくつかの実施形態では、遠位尾部は、近位セグメント及び遠位セグメントを備える。近位セグメントは、遠位尾部の全長の10~60%を取り囲んでもよい。遠位セグメントは、近位セグメントよりも細い直径を有することができる。この違いには、近位セグメントが遠位セグメントよりも多い又は厚い外装又は覆いを有するなど、様々な理由があってもよい。遠位セグメントは、遠位尾部の近位セグメントよりも可撓性が高くなり得る。いくつかの実施形態では、遠位尾部は、どのようなコイル、ループ、又はステントも備えない。
【0008】
遠位尾部は、流線形状を有するように設計できる。いくつかの実施形態では、遠位尾部は、フック、ワイヤ、リング、隆起などの突出する特徴を有していない(管腔の有無にかかわらず)薄く細長い円筒形状である。これは、肺動脈の壁への遠位尾部の血栓の形成又は浸食を防ぐのに有用であってもよい。
【0009】
いくつかの実施形態では、遠位セグメントは、近位セグメントよりも可撓性が高い。場合によっては、近位セグメントは金属編組を備えるが、遠位セグメントは備えない。遠位セグメントは、近位セグメントよりも柔らかいポリマー材料から成ることができる。遠位セグメントは、近位セグメントよりも小さい直径を有することができる。場合によっては、遠位セグメントの長さは近位セグメントの長さよりも短い。遠位セグメントの長さは2~7cmの長さであることができる。近位セグメントの長さは7~15cmの長さであることができる。場合によっては、近位セグメントは遠位尾部の全長の35~65%を構成する。
【0010】
近位セグメントは、遠位セグメントとは異なるサイズを有することができる。場合によっては、遠位セグメントは近位セグメントよりも小さい直径を有する。場合によっては、遠位セグメントの直径は、近位セグメントの直径サイズの45~85%である。例えば、遠位セグメントは2~5mmの直径を有することができるが、近位セグメントは3~6mmの直径を有することができる。
【0011】
場合によっては、遠位尾部は、近位セグメントと遠位セグメントとの間の中央セグメントをさらに備える。中央セグメントは近位セグメントよりも可撓性が高いが、遠位セグメントよりも堅い。場合によっては、中央セグメントの長さは近位セグメントの長さよりも短い。例えば、中央セグメントの長さは2~7cmの長さであることができる。
【0012】
スペーサ本体。スペーサ本体は主軸に取り付けられている。スペーサ本体は、三尖弁の弁尖用の接合面を設けるのに好適である寸法又は形状を有するように作られている。例えば、スペーサ本体の形状は、特定の設計を有してもよい。いくつかの実施形態では、スペーサ本体は、線形状(例えば、卵形状、テーパー状若しくは円錐形の端部を有する円筒形状など)を有する。いくつかの実施形態では、スペーサ本体は、非線形状(例えば、湾曲形状又はブーツ形状)を有する。非線形状のスペーサ本体では、スペーサ本体は80~140°の範囲にある内角を有する曲げを備えることができる。
【0013】
別の設計パラメータは、スペーサ本体の長さである。例えば、スペーサ本体の長さは4~13cm、場合によっては、5~9cmであることができる。スペーサ本体が非線形状を有する場合、この長さはスペーサ本体の長手軸線に沿った移動距離によって表される。スペーサ本体の幅は、長手軸線に直交している横方向の断面平面上で測定することができる。いくつかの実施形態では、この横方向の断面平面上のスペーサ本体の最も広い幅は、0.5~3.5cmの範囲にあり、場合によっては、0.5~2.5cmの範囲にある。スペーサ本体は、緩和された収縮構成と細長い構成とを有してもよい。この状況では、スペーサ本体の上記の測定は緩和された構成でなされる。いくつかの実施形態では、最も広い軸線上のスペーサ本体の幅は、横方向平面上(すなわち非円形又は非対称断面)の交差軸線上のスペーサ本体の幅よりも大きい。
【0014】
スペーサ本体は、バルーン(例えば、流体、泡、若しくは空気充填)、バスケット、メッシュ、(例えば、ステントのような)支柱、枠組、骨格、足場などのどのような好適構造も有することができる。必要に応じて、スペーサ本体のための表面は、皮膚、シェル、ケーシング、又は膜などのどのような好適様式で設けられてもよい。スペーサ本体は、プラスチック、金属、若しくはそれらの組み合わせのような、どのような好適材料でできていてもよい。スペーサ本体は、血液の流れが通ることができるように1つ又は複数の開口部を有することができる。血液の流れが通ることができるように、スペーサ本体(その端部のうちの1つでの)と主軸との間に間隙があってもよい。これらの開口部又は間隙は、血液がスペーサ本体を容易に通って流れることができるので、血栓形成を防ぐのに有用であることができる。
【0015】
いくつかの実施形態では、スペーサ本体は、1つ又は複数の側付属物を備える。これらはスペーサ本体の側面に設置されてもよい。側付属物は、三尖弁の弁尖における間隙を横切る血液の流れに対する障壁としてのスペーサ本体の機能を促進するどのような型の薄く可撓性のある構造でもあることができる。側付属物の例は、翼、フラップ、シュラウド、ドレープ、裾、自由縁辺、タグなどを含む。側付属物は、広くされた構成(心室収縮期の場合)及び狭くされた構成(心室拡張期の場合)を有する。
【0016】
側付属物の広くされた構成は血流の方向によって誘発され、広げる、延ばす、拡大する、膨張させる、折り広げる、開くなど、どのような好適様式でも行われることができる。側付属物の狭くされた構成は、血流の反対方向によって誘発され、折り畳む、引き込む、崩壊させる、収縮させる、閉じるなどのどのような好適様式でも行われることができる。
【0017】
側付属物は、三尖弁の弁尖同士の間の間隙を低減するか、又は三尖弁を横切ってスペーサ本体を安定させることを助けるように十分に広くするべきである。いくつかの実施形態では、側付属物の幅は、0.3~5.0cm、場合によっては、0.5~3.5cmである。幅は、スペーサ本体からスペーサ本体の横軸線に直交している方向に側付属物の最も広い距離として測定される。
【0018】
側付属物の長さは、スペーサ本体の長さよりも短くてもよい。いくつかの実施形態では、側付属物の長さは2~9cm、場合によっては4~7cmである。長さは、スペーサ本体の長手軸線に沿って測定された最長の長さである。
【0019】
側付属物は、三尖弁を横切る血流へ柔軟に応じるように十分に薄くするべきである。いくつかの実施形態では、側付属物は、0.2~10mm、場合によっては、0.3~6mmの厚さを有する。厚さは、側付属物及びスペーサ本体の長手軸線に直交しているスペーサ本体の横軸線に沿って測定される。
【0020】
側付属物はどのような好適形状も有することができる。いくつかの実施形態では、側付属物は、側付属物に内側(凹状)及び外側(凸状)を与える三次元曲率を持つ平らでない形状を有する。この平らでない形状を有することは、三尖弁を横切る血流に対する応答を改良するのに有用であることができる。
【0021】
近位部。経カテーテル装置の近位部は、主軸の近位セグメントを備える。近位セグメントは、主軸の近位の継続部であることができる。経カテーテル装置の近位部は、大静脈内の血管内アクセス又は十分な固定を行うために、どのような好適長さも有することができる。いくつかの実施形態では、近位部の全長は、10~60cmの長さの範囲にある。近位部が血管内アンカーを含む実施形態では、この測定値は血管内アンカーの長さを含む。血管内アンカーが線形状(例えば、コイル)を有していない状況では、これは長手軸線に沿って測定された長さを意味する。
【0022】
いくつかの実施形態では、主軸の近位セグメントは、1つ又は複数の曲げを有する。曲げ(複数可)は、80~140°の範囲にある内角を有することができる。曲げ(複数可)は、主軸の近位セグメント上のどのような好適場所でも設置できる。いくつかの実施形態では、スペーサ本体から0.25~5.5cmの距離に設置された曲げがある。近位セグメントは、(曲げよりも広い)湾曲部も有することができる。いくつかの実施形態では、近位セグメントは、2つの別個の曲げ及び2つの曲げ同士の間の湾曲部を有する。近位セグメントの長さは3~15cmの長さの範囲にあることができる。
【0023】
血管内アンカー。いくつかの実施形態では、近位部は血管内アンカーを備える。血管内アンカーの例は、渦巻状コイル及び拡張可能なステントを含む。いくつかの実施形態では、血管内アンカーは、渦巻状コイルである。渦巻状コイルは少なくとも2つの渦巻を有することができる。血管内アンカーは、大静脈に固定するために、どのような好適幅も有することができる。いくつかの実施形態では、血管内アンカーの最も広い幅は、2~7cmの幅の範囲にある。血管内アンカーの長さは、4~11cmの長さの範囲にあることができる(長手軸線上でまっすぐに測定)。血管内アンカーが線形状(例えば、コイル)を有していない状況では、この長さは長手軸線に沿って測定された長さを意味する。血管内アンカーが可撓性のある構成を有する(例えば、螺旋状コイルにおけるように)状況では、この長さは自然に巻かれた構成において測定される。本発明の代替実施形態では、経カテーテル装置は、血管内アンカー又は遠位尾部のいずれかを備えるが、両方を備えるわけではない。
【0024】
放射線不透過性マーカー。経カテーテル装置は、X線撮像(例えば、X線透視法)下で見ることができる1つ又は複数の放射線不透過性マーカーを有してもよい。経カテーテル装置のいくつかの実施形態では、主軸の近位セグメント(スペーサ本体の近位)に設置されている第1の放射線不透過性マーカーと、遠位尾部(スペーサ本体の遠位)に設置されている第2の放射線不透過性とがある。第1の放射線不透過性マーカーは、スペーサ本体の近位端から2cm以内に設置できる。第2の放射線不透過性マーカーは、スペーサ本体の遠位端から2cm以内に設置できる。
【0025】
接合組立体:別の態様では、本発明は、三尖弁逆流を治療する接合組立体である。本組立体は、本発明の経カテーテル装置を具備する。本組立体は、主軸の管腔を通って移動するガイドワイヤをさらに備える。いくつかの実施形態では、本組立体は、スペーサ本体又は血管内アンカーを覆うことができる可動送達シースをさらに備える。シースは、スペーサ本体又は血管内アンカーを覆うように進めることができる。或いは、スペーサ本体は、スペーサ本体又は血管内アンカーを覆いから外すように引き込むことができる。いくつかの実施形態では、本組立体は、展開カテーテルをさらに備える。展開カテーテルは、患者の心臓に経カテーテル装置を展開するのに十分な長さである。例えば、展開カテーテルの長さは50~150cmであることができる。
【0026】
接合キット:別の態様では、本発明は、三尖弁逆流を治療する接合キットである。キットは、本発明の経カテーテル装置、展開カテーテル、送達シース、及びガイドワイヤを備える。これらの構成要素は、本明細書に記載の様式で組み立て又は使用できる。
【0027】
治療の方法:別の態様では、本発明は、本発明の経カテーテル装置を使用して患者における欠陥のある三尖弁を治療する方法である。経カテーテル装置は、肺動脈内に遠位尾部が、そして三尖弁を横切るスペーサ本体が植え込まれる。経カテーテル装置は、大腿静脈、鎖骨下静脈、頸静脈などの入口静脈内へ挿入される。経カテーテル装置は、(下又は上)大静脈内へさらに進められる。経カテーテル装置は、心臓の右心房を通って、三尖弁を横切って、心臓の右心室内へ進められる。経カテーテル装置は、肺動脈の方へさらに進められる。遠位尾部は肺動脈内へ進められる。これは、左側又は右側の肺動脈であることができる。
【0028】
遠位尾部は、経カテーテル装置を、固定することを助けるように働く。そのように、遠位尾部は、この機能を行うのに十分な距離の肺動脈内へ延びてもよい。いくつかの実施形態では、遠位尾部は、肺動脈内へ少なくとも10cm、場合によっては、少なくとも15cmの距離を延びる。いくつかの実施形態では、遠位尾部は、肺動脈の第1の分岐点を越えて、場合によっては、肺動脈の第2の分岐点を越えて、場合によっては、肺動脈の第3の分岐点を越えて進められる。遠位尾部の適切な配置は、放射線不透過性マーカーを有して、放射線不透過性マーカーを見るためのX線撮像によって確認できる。いくつかの実施形態では、遠位尾部は、心臓組織内に埋め込まれない。
【0029】
スペーサ本体は、三尖弁の弁尖同士の間に適切に配置されるべきである。このように適切に置くことは、X線又は心エコー図などの外部撮像によって確認できる。いくつかの実施形態では、スペーサ本体は、心臓の室上稜に対して当接するように配置される。室上稜に対するこのような当接は、スペーサ本体の遠位半分内の場所で生じることがある。三尖弁は三尖弁輪を有し、三尖弁輪のために画定された環状平面がある。この環状平面は、三尖弁輪のX軸に沿って、三尖弁輪のY軸に直交している。いくつかの実施形態では、スペーサ本体は、環状平面に対して斜めの角度(<90°)で配置される。この斜めの角度は15~75°の範囲にあることができる。
【0030】
スペーサ本体が側付属物を備える実施形態では、本方法は、心室収縮期の間に側付属物を広くして、心室拡張期の間に側付属物を狭くすることをさらに含むことができる。広くされた構成では、側付属物は、三尖弁の弁尖同士の間に配置されて内部に存在する間隙をふさいでもよい。側付属物が平らでない形状を有する状況では、内側(凹状)は右心室の方へ面するように配向される。
【0031】
経カテーテル装置がその近位部に血管内アンカーをさらに備える実施形態では、この血管内アンカーは(下又は上)大静脈に留められる。経カテーテル装置は、ガイドワイヤを使用して植え込まれることができる。ガイドワイヤは、大腿静脈などの入口静脈内へ挿入され、(下又は上)大静脈内へさらに進められる。ガイドワイヤは、心臓の右心房を通って、三尖弁を横切って、心臓の右心室内へ進められる。ガイドワイヤは肺動脈の方へさらに進められる。ガイドワイヤは、経カテーテル装置のガイドワイヤ管腔内へ挿入され、経カテーテル装置は、このガイドワイヤの上を進められる。
【0032】
展開。経カテーテル装置は、送達シース及び展開カテーテルを使用して展開できる。挿入時、送達シースは、スペーサ本体を覆うように、関連する実施形態では、血管内アンカーを覆うように移動できる。展開時、送達シースは後方に引き込まれる。経カテーテル装置の送達シース及びシースから外すための構成要素の引込みは、植込みプロセスの一部であることができる。スペーサ本体が自己拡張型である実施形態では、このようにシースから外すことにより、スペーサ本体は外方に自己拡張して、より広い接合面を形成することができる。経カテーテル装置が拡張可能な構成を有する血管内アンカーを備える実施形態では、シースから外すことにより、アンカーは大静脈内に留まるように外方へ拡張することができる。
【0033】
いくつかの実施形態では、この展開組立体は、手順が完了した直後は分解されない。臨床医は、装置の有効性を確認するために短い試用期間を実施することを望むことがある。この短い試用期間中、送達組立体の1つ又は複数の構成要素(展開カテーテル、送達シース、又はガイドワイヤ)は、経カテーテル装置と共に患者の身体内に保持できる。短い試用期間中、三尖弁の機能が監視される(例えば、心エコー図による)。経カテーテル装置がこの試用期間に有効性を示した場合、展開組立体は取り外されるが、カテーテル装置は定位置に保持する。試用期間で効果のない結果が示された場合、展開組立体を定位置に依然として残しておくことにより、経カテーテル装置は容易に取り外すことができる。試用期間は、どのような好適な短期間にもすることができる。例えば、試用期間は、挿入後12~48時間の範囲内の期間にすることができる。
【0034】
回収。植込み後、経カテーテル装置は必要に応じて取り外すことができる。これは、血管内アンカー(例えば、アンカーの近位先端での渦巻状コイル)をつかみ、患者の身体から取り外すために経カテーテル装置を引き出すことによってなされることができる。例えば、これは、スネアカテーテルを入口静脈に挿通し、スネアカテーテルを渦巻状コイルの方へ進め、渦巻状コイルをつかみ、スネアカテーテルを取り出し、経カテーテル装置を入口静脈から引き出すことによって行われることができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1】三尖弁逆流を治療する経カテーテル装置の一例を示す図である。
図2】延設され伸ばされた構成の経カテーテル装置を単独で示す図である。
図3】肺動脈樹を可視化した左肺を示す図である。
図4A】患者の心臓に植え込まれるような経カテーテル装置を示す図である。
図4B】患者の心臓に植え込まれるような経カテーテル装置を示す図である。
図5A】経カテーテル装置のさらなる詳細な図である。
図5B】経カテーテル装置のさらなる詳細な図である。
図6A】経カテーテル装置の別の例示的実施形態を示す図である。
図6B】経カテーテル装置の別の例示的実施形態を示す図である。
図6C】経カテーテル装置の別の例示的実施形態を示す図である。
図7A】スペーサ本体の遠位端及び遠位スリーブの近接図を示す図である。
図7B】スペーサ本体の遠位端及び遠位スリーブの近接図を示す図である。
図8A】スペーサ本体が血液の通り抜ける流れを可能にする開口部を有する実施形態の近接図である。
図8B】スペーサ本体が血液の通り抜ける流れを可能にする開口部を有する実施形態の近接図である。
図9A】経カテーテル装置の追加図である。
図9B】経カテーテル装置の追加図である。
図9C】経カテーテル装置の追加図である。
図10A】経カテーテル装置が送達シースを使用してどのように展開されるかを示す図である。
図10B】経カテーテル装置が送達シースを使用してどのように展開されるかを示す図である。
図10C】経カテーテル装置が送達シースを使用してどのように展開されるかを示す図である。
図11A】欠陥のある三尖弁のプロファイル図を示す模式図である。
図11B】欠陥のある三尖弁のプロファイル図を示す模式図である。
図12】異なる実施形態についての類似の概略図である。
図13A】患者の心臓に植え込まれるような経カテーテル装置の別の説明図である。
図13B】患者の心臓に植え込まれるような経カテーテル装置の別の説明図である。
図13C】患者の心臓に植え込まれるような経カテーテル装置の別の説明図である。
図13D】患者の心臓に植え込まれるような経カテーテル装置の別の説明図である。
図14A】経カテーテル装置の別の実施形態を示す図である。
図14B】経カテーテル装置の別の実施形態を示す図である。
図15A】経カテーテル装置の別の実施形態の様々な斜視図である。
図15B】経カテーテル装置の別の実施形態の様々な斜視図である。
図15C】経カテーテル装置の別の実施形態の様々な斜視図である。
図16A】経カテーテル装置の別の実施形態の様々な斜視図である。
図16B】経カテーテル装置の別の実施形態の様々な斜視図である。
図17】経カテーテル装置の別の実施形態を示す図である。
図18A】本発明の経カテーテル装置が患者の心臓にどのように配置できるかを示す図である。
図18B】本発明の経カテーテル装置が患者の心臓にどのように配置できるかを示す図である。
図19A】経カテーテル装置の別の実施形態の様々な図である。
図19B】経カテーテル装置の別の実施形態の様々な図である。
図19C】経カテーテル装置の別の実施形態の様々な図である。
図19D】経カテーテル装置の別の実施形態の様々な図である。
図19E】経カテーテル装置の別の実施形態の様々な図である。
図19F】経カテーテル装置の別の実施形態の様々な図である。
図19G】経カテーテル装置の別の実施形態の様々な図である。
図19H】経カテーテル装置の別の実施形態の様々な図である。
図19K】経カテーテル装置の別の実施形態の様々な図である。
図20A】経カテーテル装置の別の実施形態の様々な図である。
図20B】経カテーテル装置の別の実施形態の様々な図である。
図20C】経カテーテル装置の別の実施形態の様々な図である。
図20D】経カテーテル装置の別の実施形態の様々な図である。
図20E】経カテーテル装置の別の実施形態の様々な図である。
図21A】経カテーテル装置の別の実施形態の様々な図である。
図21B】経カテーテル装置の別の実施形態の様々な図である。
図21C】経カテーテル装置の別の実施形態の様々な図である。
図21D】経カテーテル装置の別の実施形態の様々な図である。
図21E】経カテーテル装置の別の実施形態の様々な図である。
図21F】心臓に植え込まれた経カテーテル装置を示す図である。
図21G】心臓に植え込まれた経カテーテル装置を示す図である。
図21H】心臓に植え込まれた経カテーテル装置を示す図である。
図22A】経カテーテル装置上のスペーサ本体が三尖弁内でどのように「セルフセンタリング」できるかを示す図である。
図22B】経カテーテル装置上のスペーサ本体が三尖弁内でどのように「セルフセンタリング」できるかを示す図である。
図23A】送達組立体の別の図である。
図23B】送達組立体の別の図である。
図24A】スペーサ本体の様々な図である。
図24B】スペーサ本体の様々な図である。
図24C】スペーサ本体の様々な図である。
図24D】スペーサ本体の様々な図である。
図24E】スペーサ本体の様々な図である。
図24F】スペーサ本体の様々な図である。
図24G】スペーサ本体の様々な図である。
図25A】遠位尾部の異なる実施形態を示す図である。
図25B】遠位尾部の異なる実施形態を示す図である。
図25C】遠位尾部の異なる実施形態を示す図である。
図26】近位部に渦巻状コイルを欠く経カテーテル装置の代替実施形態を示す図である。
図27】経カテーテル装置の寸法パラメータを示す図である。
図28A】経カテーテル装置の特定の寸法を示す図である。
図28B】経カテーテル装置の特定の寸法を示す図である。
図28C】経カテーテル装置の特定の寸法を示す図である。
図29A】経カテーテル装置のさらなる特定の寸法を示す図である。
図29B】経カテーテル装置のさらなる特定の寸法を示す図である。
図29C】経カテーテル装置のさらなる特定の寸法を示す図である。
図30A】経カテーテル装置の寸法パラメータを示す図である。
図30B】経カテーテル装置の寸法パラメータを示す図である。
図31】近位部に渦巻状コイルを欠く経カテーテル装置の代替実施形態を示す図である。
図32A】経カテーテル装置の寸法パラメータを示す図である。
図32B】経カテーテル装置の寸法パラメータを示す図である。
図33A】経カテーテル装置用の送達カテーテルを示す図である。
図33B】経カテーテル装置用の送達カテーテルを示す図である。
図33C】経カテーテル装置用の送達カテーテルを示す図である。
図34A】経カテーテル装置の別の例示的実施形態を示す図である。
図34B】経カテーテル装置の別の例示的実施形態を示す図である。
図34C】経カテーテル装置の別の例示的実施形態を示す図である。
図35A】経カテーテル装置のさらなる特定の寸法を示す図である。
図35B】経カテーテル装置のさらなる特定の寸法を示す図である。
図36A】経カテーテル装置の試作品を示す図である。
図36B】経カテーテル装置の試作品を示す図である。
図36C】経カテーテル装置の試作品を示す図である。
図37A】経カテーテル装置の別の実施形態を示す図である。
図37B】経カテーテル装置の別の実施形態を示す図である。
図37C】経カテーテル装置の別の実施形態を示す図である。
図37D】経カテーテル装置の別の実施形態を示す図である。
図38A】経カテーテル装置の別の実施形態を示す図である。
図38B】経カテーテル装置の別の実施形態を示す図である。
図38C】経カテーテル装置の別の実施形態を示す図である。
図39】スペーサ本体の三尖弁尖への接合を改良するために翼がどのように働くことができるかを示す図である。
図40A】スペーサ本体の三尖弁尖への接合を改良するために翼がどのように働くことができるかを示す図である。
図40B】スペーサ本体の三尖弁尖への接合を改良するために翼がどのように働くことができるかを示す図である。
図41A】翼が内方にどのように折られるかを示す図である。
図41B】翼が内方にどのように折られるかを示す図である。
図42A】スペーサ本体及び翼の可能な寸法を示す概略図である。
図42B】スペーサ本体及び翼の可能な寸法を示す概略図である。
図42C】スペーサ本体及び翼の可能な寸法を示す概略図である。
図43】スペーサ本体に翼を有する経カテーテル装置の別の例を示す図である。
図44A】スペーサ本体に複数の小さい小翼を有する経カテーテル装置の別の例を示す図である。
図44B】スペーサ本体に複数の小さい小翼を有する経カテーテル装置の別の例を示す図である。
図44C】スペーサ本体に複数の小さい小翼を有する経カテーテル装置の別の例を示す図である。
図45A】スペーサ本体用の異なる設計を有する経カテーテル装置の別の例を示す図である。
図45B】スペーサ本体用の異なる設計を有する経カテーテル装置の別の例を示す図である。
図45C】スペーサ本体用の異なる設計を有する経カテーテル装置の別の例を示す図である。
図46】展開された構成のスペーサ本体を示す経カテーテル装置の斜視図である。
図47A】スペーサ本体が内部に設置された側面図から概略モデルとして示された三尖弁の説明図である。
図47B】スペーサ本体が内部に設置された側面図から概略モデルとして示された三尖弁の説明図である。
図48A】スペーサ本体に使用できる翼設計の別の例を示す図である。
図48B】スペーサ本体に使用できる翼設計の別の例を示す図である。
図49A】スペーサ本体にシュラウドを有する経カテーテル装置の別の例を示す図である。
図49B】スペーサ本体にシュラウドを有する経カテーテル装置の別の例を示す図である。
図50A】経カテーテル装置の別の例を示す図である。
図50B】経カテーテル装置の別の例を示す図である。
図50C】経カテーテル装置の別の例を示す図である。
図51A】経カテーテル装置の主軸の断面を示す図である。
図51B】経カテーテル装置の主軸の断面を示す図である。
図52】主軸の近位セグメントの代替設計を示す図である。
図53A】例示的な経カテーテル装置の幹部全体の形状を示す図である。
図53B】例示的な経カテーテル装置の幹部全体の形状を示す図である。
図53C】例示的な経カテーテル装置の幹部全体の形状を示す図である。
図53D】例示的な経カテーテル装置の幹部全体の形状を示す図である。
図53E】例示的な経カテーテル装置の幹部全体の形状を示す図である。
図54A】幹部全体の形状の異なる設計を示す図である。
図54B】幹部全体の形状の異なる設計を示す図である。
図54C】幹部全体の形状の異なる設計を示す図である。
図54D】幹部全体の形状の異なる設計を示す図である。
図54E】幹部全体の形状の異なる設計を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
[例示的実施形態の詳細な説明]
本発明を理解する際に助けとなるように、本発明が実施されることができる特定の実施形態を例証として示すために添付の図面を参照する。本明細書における図面は、必ずしも縮尺又は実際の比率に合わせて作られているわけではない。例えば、構成要素の長さ及び幅は、ページサイズに合わせて調整されてもよい。
【0037】
図1は、三尖弁逆流を低減するための経カテーテル装置の一例を示す。ここに示されているのは、患者の心臓に植え込まれた経カテーテル装置100である。経カテーテル装置100は、遠位尾部160及び近位部20を有する。遠位尾部160と近位部20との間にはスペーサ本体120がある。経カテーテル装置100の近位部20は、渦巻状コイル146を備える。スペーサ本体120は、三尖弁尖の改良された接合をもたらすように働くことにより、弁逆流を低減する。渦巻状コイル146は、下大静脈(IVC)の内側に留まるように働いて三尖弁を横切るスペーサ本体120の所望の位置を維持するためのアンカーを形成する。遠位尾部160は、肺動脈(PA)内に留まるように働いて三尖弁を横切るスペーサ本体120の所望の位置を維持するためのアンカーも形成する。
【0038】
図2は、延設され伸ばされた構成の経カテーテル装置100を単独で示す。経カテーテル装置100は、スペーサ本体120を横切って経カテーテル装置100の近位部20を取り囲む主軸180と、経カテーテル装置100の遠位尾部160とを備える。この例示的実施形態では、スペーサ本体120は、長手軸線及び横軸線の両方において対称である形状を有する。形状は、緩やかな長手方向の曲率及び中央部における拡大された腹部を有するフットボールに似ている。
【0039】
主軸180は、ガイドワイヤ190が通って移動する管腔を有する。主軸180は、管腔が始まる近位開口部と、管腔が終わる遠位開口部とを有する。経カテーテル装置100の植込みのために、ガイドワイヤ190は大腿静脈内へ挿入され、下大静脈を通って、心臓の右心房内から、三尖弁を横切って、右心室内へ、次いで肺動脈内へ進められる。
【0040】
ガイドワイヤ190が定位置に設定されると、経カテーテル装置100は、ガイドワイヤ190を主軸180の近位開口部を通して、主軸180の管腔を通して、遠位開口部から外へ挿入することによって、ガイドワイヤ190の上を進められる。ガイドワイヤ190に沿って移動すると、経カテーテル装置100は、下大静脈を通って、心臓の右心房内から、三尖弁を横切って、右心室内へ、次いで肺動脈内へ進められる。経カテーテル装置100が完全に植え込まれると、渦巻状コイル146は下大静脈の内側に留め、遠位尾部160は肺動脈内に留め、スペーサ本体120は三尖弁を横切って置く。X線透視法の下で見ることができるように、遠位尾部160は、遠位先端から1mmのサイズを有する放射線不透過性マーカーバンドをさらに含んでもよい。遠位尾部160は、ペレセン(Pellethane)55D(医療グレードの熱可塑性ポリウレタンエラストマー)編組で補強されたニチノールのワイヤコアでできている。
【0041】
遠位尾部:本例示的実施形態では、経カテーテル装置100の遠位尾部160はガイドワイヤ190の上を進められ、肺動脈内へ延ばされて、図1及び図3に示されているようにアンカーとして機能する。図1では、遠位尾部160は、第1の動脈枝302を越えて、第2の動脈枝304を越えて、第3の動脈枝306を越えた場所で左肺動脈300内へ延びる。同様に、図3は、肺動脈樹を可視化した左肺320を示す。ここに示されているのは、左肺動脈の主幹322及び分岐動脈302、304、及び306である。経カテーテル装置100の遠位尾部160は、肺動脈主幹322内へ入り、第1の分岐動脈302を越えて、第2の分岐動脈304を越えて、第3の分岐動脈306を越えて延びる。
【0042】
ここで、遠位尾部160は、肺動脈の組織内へ埋め込まれていない。代わりに、遠位尾部160は、肺動脈樹の自然に曲がりくねった解剖学的構造によって絡み合っているので、肺動脈に閉じ込められる。破線の円は、肺動脈を通る遠位尾部160の経路に沿った複数の接触点を示す。遠位尾部160は、これらの複数の接触点で肺動脈内に絡み合うようになる。したがって、遠位尾部160は、逆行して引っ張られることに抵抗し、経カテーテル装置100が三尖弁を横切るスペーサ本体120の配置から引き離されるのを防ぐようにアンカーとして働く。
【0043】
経カテーテル装置100の代替実施形態では、固定部材を1つだけ有してもよい。本装置は、下大静脈に固定するための渦巻状コイル146を有することができる、又は肺動脈内に固定するための遠位尾部160を有することができるのいずれかである。経カテーテル装置100の別の代替実施形態では、遠位尾部160は、相対的に短く、肺動脈幹(左又は右)内へのみ延びるが、第1の分岐動脈を越えて延びることはない。
【0044】
収縮期及び拡張期:図4A及び図4Bは、スペーサ本体120が漏れのある三尖弁を横切って配置された状態で、患者の心臓290(断面図)に植え込まれた図2の経カテーテル装置を示す。右心房(RA)及び右心室(RV)は標識されている。図4Aでは、心臓290は、三尖弁が閉じた立体構造にある心臓周期の収縮期収縮部分にある。ここで見られるように、三尖弁の弁尖292は、スペーサ本体120に押し付けられている(接合)。これにより、漏れのある三尖弁の逆流が低減する。図4Bは、心臓周期の拡張期緩和部分における三尖弁を示す。ここで見られるように、三尖弁の弁尖292は、血液がスペーサ本体の周囲に流れることができるようにスペーサ本体120から押して離されている。これにより、血液は、次の圧送周期のために血液が補充されるように、右心房から右心室内へ流れることができる。
【0045】
図13A図13Dは、スペーサ本体120が漏れのある三尖弁を横切って配置された状態で患者の心臓290(断面図)に植え込まれた図2の経カテーテル装置の別の説明図を示す。図13A及び図13Bは、三尖弁尖292がスペーサ本体120の周囲で閉じられた収縮期における心臓を示す。図13C及び図13Dは、三尖弁尖292が開いた位置にある拡張期における心臓を示す。三尖弁尖292はスペーサ本体120から離して広げることにより、血液はスペーサ本体120の周囲に流れることができる。
【0046】
図5A及び図5Bは、上記図1の経カテーテル装置100のさらに詳細な図を示す。図5Aは、スペーサ本体120が、近位スリーブ128a及び遠位スリーブ128bの2つのスリーブを備えることを示す。線M-Mは、2つのスリーブが合わされた状態を示す。2つのスリーブは、離される、又は一緒に押されるなど、互いへ相対的に移動できる。定義するという目的のために、この経カテーテル装置100は、遠位尾部160、スペーサ本体120、及び近位部20を有すると考えることができる。図5Bは、経カテーテル装置100を長手断面図で示し、内部特徴のうちのいくつかを明らかに示す。ここで見られるように、経カテーテル装置100は主軸180を備える。遠位尾部160は、この主軸180の遠位セグメント86であると考えることができる。スペーサ本体120は、主軸180の中央部82に同軸配置で取り付けられる。スペーサ本体120の近位端182aは主軸180へ固定されているが、遠位端182bは主軸180上で摺動可能である。これにより、遠位スリーブ128bは近位スリーブ128aの方へ、又は近位スリーブから離してずらすことができる。或いは、スペーサ本体120の近位端182a及び遠位端182bの両方が主軸180上で摺動可能であってもよい。これにより、近位スリーブ128a及び遠位スリーブ128bの両方が互いに対して前後にずらすことができる。
【0047】
経カテーテル装置100の近位部20は、主軸180の近位セグメント84にさらに分割され、このセグメントへ付けられるのが渦巻状コイル146であると考えることができる。スペーサ本体120の長さである長さL1は5cmである。長さL2は、主軸180の近位セグメント84の長さの9cmである。長さL3は、遠位尾部160(及び主軸180の遠位部86)の長さである。対の矢印D1で示されているように、遠位端182の内径は3.3mmである。
【0048】
図7A及び図7Bは、図5A及び図5Bに示されているスペーサ本体120の遠位端182b及び遠位スリーブ128bの近接図を示す。上述したように、スペーサ本体120は、近位端182aが主軸180へ固定された状態で軸180に取り付けられている。しかしスペーサ本体120の遠位端182bは軸180へ固定されていない。代わりに、遠位端182bは、主軸180上で摺動可能である。したがって、遠位スリーブ128bは近位スリーブ128aに対して前後にずらすことができる。軸180は管腔184を有する。対の矢印D1は、スペーサ本体120の遠位端182bでの内径を示す。図7Bは、スペーサ本体120の横断面を示す。スリーブはePTFE膜22でできている。スペーサ本体120の遠位端182bと主軸180との間には小さい間隙130もあり、血液はこの間隙を通って流れることができる。
【0049】
クロワッサンパン形状:図6A図6Cは、経カテーテル装置の別の例示的実施形態を示す。図6Bは、クロワッサンに似た形状を有するスペーサ本体210を示す。スペーサ本体210の外面は、ePTFE(延伸ポリテトラフルオロエチレン)膜212でできているスリーブによって設けられている。図6Aは、スリーブ212の下でスリーブを支持している内枠124を示す。内枠124は、可撓性のある金属ワイヤのメッシュである。これらのワイヤは、内枠124にクロワッサン形状を延伸構成で維持するのに十分な剛性を与えるニチノール合金であるが、血管送達シースの内側で崩壊できるように十分な可撓性も与える。図6Cは、スペーサ本体210が三尖弁でどのように配置できるかを示す。参考のため、スペーサ本体210の遠位端214及び近位端218が示されている。スペーサ本体がクロワッサン形状であるため、スペーサ本体210の(遠位端214へ向かう)遠位部は、三尖弁の中隔尖30及び前尖32の後ろ(下)に配置される。一方、スペーサ本体210の(近位端218へ向かう)近位部は三尖弁の後尖34の上方(上)に配置される。
【0050】
スペーサ本体開口部:図8A及び図8Bは、スペーサ本体が血液の通過流を可能にする開口部を有する実施形態の近接図を示す。図8Aは、遠位端204及び近位端202を有するスペーサ本体200を示す。スペーサ本体200は、軸206に取り付けられる。遠位端204では、スペーサ本体200と軸206との間に小さい間隙がある。また、スペーサ本体200の覆いであるスリーブ208には小さい穴60がある。破線の矢印によって示されているように、これにより、血液は、遠位端204での間隙へ流入し、スペーサ本体200を通り、スリーブ208の穴60から流出できる。これは、収縮期の間の血流の方向を示す。血流の方向は、拡張期において反対又は異なってもよい。
【0051】
図8Bは、スペーサ本体の代替実施形態を示す。本実施形態において、スペーサ本体210は、遠位端214及び近位端212を有する。スペーサ本体210は、軸216に取り付けられる。遠位端214では、スペーサ本体210と軸216との間に小さい間隙がある。スペーサ本体210は、遠位の半分のみにスリーブ218を有する。下にあるワイヤメッシュ枠219を露出させる近位スリーブはない。したがって、破線の矢印によって示されているように、これにより血液は、遠位端214での間隙へ流入し、スペーサ本体210を通って、近位部でのワイヤ枠219から流出できるが、覆いのスリーブがないからであり、すなわち、近位スリーブが省略され、遠位スリーブのみが存在するからである。また、使用時には、スリーブ218を移動させて(前方へ進める又は後方へ引き込む)開口部のサイズを調整することにより、スペーサ本体210を通る血流の量を調整することができる。これは、収縮期の間の血流の方向を示す。血流の方向は、拡張期において反対又は異なってもよい。
【0052】
主軸及び渦巻状コイル:図9A図9Cは、図2の経カテーテル装置100の追加図を示す。図9Aは、経カテーテル装置100の凝縮側面図を示す。よりよく見ることができるように、スペーサ本体は省略され、主軸180は凝縮図で示されている。主軸180は、ペレセン55D(医療グレードの熱可塑性ポリウレタンエラストマー)編組で補強されたニチノール合金コアワイヤでできている。主軸180は、遠位端450及び近位端452を有する。遠位端450の先端では、軸180は、遠位端開口部454を有する。近位端452では、軸180は近位開口部456を有する。主軸180の全長は約30cmである。同様に、これは、主軸180の遠位開口部454と近位開口部456との間の距離と同じである。渦巻状セグメント146は、約7cmの長さを有する(緩和された構えでは、移動長さではなく長手軸線に沿って測定される)。渦巻状部材146は、主軸180の長手軸線と同軸である。
【0053】
図9Bは、渦巻状セグメント146を付けずに、主軸180の近位端452の単独の近接図を示す。近位開口部456はここで見られる。本図は、主軸180の近位端452が、近位開口部456に隣り合う丸みを帯びた先端458を有することも示す。本図は、主軸180の管腔453も示す。ガイドワイヤ190(図2参照)は、この管腔453を通って移動する。ガイドワイヤ190は、約0.035インチの直径を有する。丸みを帯びた先端458は、ガイドワイヤの挿入を、より容易にすることができる。渦巻状コイル146は、ペレセン55D(医療グレードの熱可塑性ポリウレタンエラストマー)で覆われている0.019インチのニチノールのワイヤコアでできている。この例では、渦巻状コイル146は3つの完全な渦巻を有する。或いは、渦巻状部材146は、患者の特定の解剖学的構造に応じてステント型構造に置き換えることができる。図9Cは、「C」が渦巻の中心を表す、渦巻状コイル146の軸方向端面図を示す。
【0054】
展開手順:図10A図10Cは、経カテーテル装置100が送達シース460を使用してどのように展開されるかを示す。様々な部品が凝縮図で示されている。0.035インチのガイドワイヤ190は、入口静脈内へ挿入されて、経カテーテル装置によってとられる経路に沿って進められる。入口静脈の外では、ガイドワイヤ190の近位端は、遠位尾部160の先端での遠位開口部454で経カテーテル装置の管腔内へ挿入される。経カテーテル装置は、ガイドワイヤ190の上を前方へ摺動される。ガイドワイヤ190は、主軸180の近位セグメント84の近位開口部456で経カテーテル装置から出る。ガイドワイヤ190の近位端は展開カテーテル462の管腔内へ挿入され、展開カテーテル462はガイドワイヤ190の上を前方に摺動される。展開カテーテル462の遠位先端は、主軸180の近位セグメント84に近づくが、近位開口部456には入らない。図10Aに示されているように、展開カテーテル462と共に経カテーテル装置は送達シース460内へ挿入される。送達シース460の内側に拘束されて、渦巻状コイル146は、長手軸線に沿って伸びるように圧縮される。
【0055】
展開カテーテル462を使用して前方へ押し、この組み合わせられた組立体は、ガイドワイヤ190の経路に沿って進められる。すなわち、右心房内へ進み、三尖弁を横切って、右心室内へ進む。遠位尾部160は肺動脈内へ進められる。スペーサ本体120は、三尖弁を横切って所望の位置になるように調整される。一方、渦巻状コイル146は下大静脈の内側にある。図10Bは、経カテーテル装置が定位置に固定される準備ができると、送達シース460は、遠位端466がスペーサ本体120の後ろにくる(シースから外す)ように引き込まれることを示す。送達シース460は、遠位端466が渦巻状コイル146の後ろになるように引き込まれると、渦巻状コイル146は、下大静脈の内側で、拡張且つ固定される。スペーサ本体120及び渦巻状コイル146の適切な配置は、撮像(例えば、透視鏡又は心エコー図)によって確認できる。図10Cに示されているように、送達シース460をここで完全に引き抜き、取り外すことができる。手順を完了する際に、ガイドワイヤ190及び展開カテーテル462も完全に引き抜かれ、取り外される。
【0056】
図23A及び図23Bは、送達組立体の別の図を示す。図23Aは、スペーサ本体120、遠位尾部160、ガイドワイヤ190、主軸の近位セグメント84、及び渦巻状コイル146を有する経カテーテル装置を示す。送達システムは、送達シース460及び展開カテーテル462を含む。送達シース460は、渦巻状コイル146及び主軸の近位セグメント84を覆っている。これにより、渦巻状コイル146は狭い延設構成になるように圧縮される。しかしながら、スペーサ本体120は、送達シース460によって覆われていない。そのように、スペーサ本体120は拡張状態で示されている。図23Bは、スペーサ本体120を覆うように前方へ進められた送達シース460を示す。これにより、スペーサ本体120は狭い構成になるように圧縮される。これにより、対象部位内への経カテーテル装置の操作を、より容易にすることができる。
【0057】
斜め配置:図11A及び図11Bは、欠陥のある三尖弁のプロファイル図を示す概略図である。肺動脈(PA)、右心房(RA)、右心室(RV)、及び下大静脈(IVC)が示されている。図11Aは、三尖弁尖470/472が十分な接合を欠くことにより、逆流オリフィス(RO)を作成することを示す。三尖弁は、環状平面が画定できる三尖弁輪を有する。環状平面は、三尖弁輪のX軸に沿って、三尖弁輪のY軸に直交している。図11Bは、心臓に植え込まれた経カテーテル装置を示す。経カテーテル装置は、三尖弁を横切るスペーサ本体474、肺動脈内へ延びる遠位尾部478、及び下大静脈内へ延びる近位部476を備える。
【0058】
スペーサ本体474は三尖弁尖470/472のための結合面を提供することがわかる。スペーサ本体474は環状平面に対して斜めの角度で配置されていることもわかる。この斜めの角度のために、スペーサ本体474は、中隔及び前尖470の後ろ(後方)に配置されているが、後尖472の前(前方)に配置されている。患者間の解剖学的差異に適合するように、スペーサ本体のために様々な程度の斜め角度がある。これは、異なる患者における三尖弁輪下大静脈間峡部の幅に依存してもよく、3~5cmの幅の範囲にあってもよい。相対的に短い三尖弁輪下大静脈間峡部を持つ患者では、短い三尖弁輪下大静脈間峡部の限られた空間をよりよく収容するために、比較的浅い角度が理想的であってもよい。さらに、経カテーテル装置の近位部に予めL字に形成された曲げを有することで、短い三尖弁輪下大静脈間峡部の制約された空間へよりよく適合してもよい。相対的に長い三尖弁輪下大静脈間峡部を持つ患者では、相対的に急な斜めが理想的であってもよい。図12は、異なる実施形態についての類似の概略図を示す。ここでスペーサ本体474は、Y軸と同軸で環状平面に直交して配置されている。
【0059】
図14A及び図14Bは、経カテーテル装置の別の実施形態を示す。本実施形態では、経カテーテル装置300は、遠位尾部302、スペーサ本体320、及び近位部328を有する。遠位尾部302は曲げ304を有する。近位部328は、主軸の近位セグメント314と、渦巻状コイル306とを備える。経カテーテル装置300の主軸の近位セグメント314は、2つの曲げ318/324及び曲線322を有する。曲げ318/324の場所及び角度、並びに曲線322の形状は、患者の個々の解剖学的構造に依存してもよい。渦巻状コイル306は、ピグテール308を有する。本実施形態のために、スペーサ本体304の近位開口部310と、遠位開口部312とが示されている。三尖弁の欠陥の豚モデルでなされた実験的作業により、開窓開口部310(遠位)及び流出開口部312(遠位)を有することが、図6Bに示されている非開窓スペーサ本体設計と比較して、より良い新生体組織の覆いをもたらすことが示された。
【0060】
図16A及び図16Bは、主軸の近位セグメントの異なる設計の近接図を示す。本図に示されているのは、スペーサ本体360(部分図)と経カテーテル装置の近位部とである。近位部は、主軸の近位セグメント374と、渦巻状コイル372(部分図)とを備える。主軸の近位セグメントは、2つの曲げ366及び368を有するが、曲線はない。
【0061】
図15A図15Cは、経カテーテル装置の別の実施形態の様々な図を示す。図15Aは斜視図を示し、図15Bは、長手断面図を示し、図15Cは、近位端面図を示す。本実施形態では、経カテーテル装置330の遠位尾部332は、直線構成を有する(曲げなし)。この経カテーテル装置330は、近位セグメント344を持つ主軸も有し、近位セグメントは短く、直線構成を有する。スペーサ本体340及び渦巻状コイル346も示されている。スペーサ本体340は、円錐端部を持つ全体的に円筒の形状を有する。スペーサ本体340には近位開口部342及び遠位開口部346があり、スペーサ本体を通る血流を可能にする。代替実施形態では、スペーサ本体340は、そのような開口部を1つだけ、近位開口部342又は遠位開口部346のいずれかを有する。
【0062】
図15Bに示されているように、スペーサ本体340は、外面を設けるためにePTFE膜で覆われているワイヤメッシュ足場560を備える。このワイヤメッシュ足場560は、展開手順中にスペーサ本体340に崩壊又は拡張する能力を与える。図15Cは、ワイヤメッシュ足場560の端面図を示す。経カテーテル装置の主軸559は、ガイドワイヤを挿入するための管腔566を有する。スペーサ本体340の遠位端では、主軸559からのスリーブ間隙568がある。スペーサ本体340の遠位端は、このスリーブ間隙568で主軸559へ貼り付けられていないので、スペーサ本体340の遠位端は主軸559上で摺動可能である。主軸559は、ポリウレタンのシースで覆われ、ワイヤ編組564で補強されたニチノールのコアワイヤ562でできている。
【0063】
図17は、経カテーテル装置の別の実施形態を示す。本実施形態では、経カテーテル装置380の遠位尾部382は曲げ384を有する。主軸の近位セグメント386は、単一の曲げ388を有する。渦巻状コイル392は、主軸の近位セグメント386へ付けられている。渦巻状コイル392はピグテール393も有する。スペーサ本体390は、近位端に曲線394を持つブーツ形状を有する。スペーサ本体390には近位開口部396及び遠位開口部398もある。
【0064】
図18A及び図18Bは、本発明の経カテーテル装置が患者の心臓にどのように配置できるかを示す。図19Aでは、経カテーテル装置400は、フットボール形状のスペーサ本体402を、遠位尾部404及び渦巻状コイル406と共に有する。患者の心臓は、三尖弁及び肺動脈弁410と共に断面図で示されている。この図に見られるように、スペーサ本体402は三尖弁を横切って配置され、遠位尾部404は肺動脈弁410を横切って右肺動脈内へ移動する。なお、遠位尾部404は、右肺動脈へ尾部を向けることを容易にする曲げ412を有する。スペーサ本体402の遠位部分は、室上稜408に対して当接する。
【0065】
図18Bでは、経カテーテル装置420は、ブーツ形状のスペーサ本体422を遠位尾部424及び渦巻状コイル426と共に有する。患者の心臓は、三尖弁及び肺動脈弁410と共に断面図で示されている。この図に見られるように、スペーサ本体422は三尖弁を横切って配置され、遠位尾部424は肺動脈弁410を横切って右肺動脈内へ移動する。なお、遠位尾部424は、右肺動脈へ尾部を向けることを容易にする曲げ426を有する。ブーツ形状のスペーサ本体422は、室上稜408に対する当接を容易にすることにも留意されたい。
【0066】
図19A図19H及び図19Kは、経カテーテル装置の実施形態の様々な図を示す。図19Aは側面図を示し、図19Bは長手断面の切断図を示す。図19Cは、異なる回転での側面図を示す。図19Dは、近位端面図を示す。経カテーテル装置は、スペーサ本体480、渦巻状コイル486、及び遠位尾部484を有する。渦巻状コイル486は、引き抜かれる必要がある場合に経カテーテル装置を再度捕捉するためのフック492を有する。スペーサ本体480は、円錐状の端部を持つ全体的に円筒の形状を有する。スペーサ本体480は、近位開口部483及び遠位開口部485を有し、スペーサ本体を通る血流を可能にする。遠位尾部484は曲げ506を有する。
【0067】
経カテーテル装置の近位部では、主軸490の近位セグメント482がある。この近位セグメント482は、いくつかの輪郭特徴を有する。近位セグメントは2つの曲げ502/504を有する。曲げ502と504との間には、湾曲したセグメント500があり、このセグメントは患者の特定の解剖学的構造に応じて80~120°の曲率を有してもよい。この湾曲したセグメント500は、スペーサ本体480を心臓の室上稜へ近づける。曲げ502/504の場所及び湾曲したセグメント500の寸法は、患者の特定の解剖学的構造に応じて変化してもよい。
【0068】
図19B(横断面)は、スペーサ本体480が、外面を設けるためにePTFE膜で覆われているワイヤメッシュ足場496を備えることを示す。このワイヤメッシュ足場496は、スペーサ本体480に、展開手順中に崩壊又は拡張する能力を与える。図19Eは、ワイヤメッシュ足場496の端面図を示す。主軸490は、ガイドワイヤを挿入するための管腔488を有する。スペーサ本体480の遠位端には、主軸490からのスリーブ間隙508がある。スペーサ本体480の遠位端が、このスリーブ間隙508で主軸490へ貼り付けられていないため、スペーサ本体480の遠位端は主軸490上で摺動可能である。主軸490は、ポリウレタン編組495で補強されたニチノールのコアワイヤ497でできている。
【0069】
図19F図19H及び図19Kは、下大静脈から右心房(RA)内へ、次に三尖弁を横切って右心室(RV)内へ入り、室上稜505に触れ、肺動脈弁507を通って右肺動脈(PA)内へ移動する経路で心臓に植え込まれた経カテーテル装置を示す。心臓を通るこの経路により、経カテーテル装置は安定した位置に残り、心臓の鼓動にもかかわらず、前後移動に対して耐性がある。さらに、この経路により、経カテーテル装置は、横方向への移動に対して柔軟であることが可能であり、本装置は、以下に説明するように位置を「セルフセンタリング」できる。
【0070】
図19Fは、三尖弁尖503がスペーサ本体480の周囲で閉じられた収縮期における心臓を示す。図19Gは、三尖弁尖503が開位置にある拡張期の心臓を示す。三尖弁尖503はスペーサ本体480から離間して広げられることによりスペーサ本体480の周囲の血流を可能にする。遠位尾部484におけるL字形状の曲げ506は、スペーサ本体480の遠位部を室上稜505へ近づけるのに役立つことがわかる。この曲げ506も、遠位尾部484を(左肺動脈の代わりに)右肺動脈内へ向ける。近位セグメント482の輪郭特徴が、スペーサ本体480を三尖弁の環状平面に対して斜めの角度で保つのに役立つこともわかる。図19Hは近接図を示す。図19Kは、より緩やかに湾曲された形状を有する近位セグメント512の代替設計を示す近接図である。
【0071】
図20A図20Eは、経カテーテル装置の別の実施形態の様々な図を示す。図20Aは、横断面図を示し、図20Bは側面図を示し、図20Cは上面図を示し、図20Dは、近位端面図を示す。経カテーテル装置は、スペーサ本体510、渦巻状コイル517、及び遠位尾部514を有する。スペーサ本体510は、円錐状の端部を持つ全体的に円筒の形状を有する。スペーサ本体510は、近位開口部513及び遠位開口部515を有して、スペーサ本体を通る血流を可能にする。遠位尾部514は曲げ516を有する。
【0072】
経カテーテル装置の近位部には、主軸519の近位セグメント512がある。この近位セグメント512は2つの曲げ522/524を有する。曲げ522/524の場所及び角度は、患者の特定の解剖学的構造に応じて変化してもよい。スペーサ本体510は、外面を設けるためにePTFE膜で覆われているワイヤメッシュ足場を備える。このワイヤメッシュ足場は、スペーサ本体510に展開手順中に崩壊又は拡張する能力を与える。図20Eは、ワイヤメッシュ足場526の端面図を示す。主軸519は、ガイドワイヤを挿入するための管腔528を有する。スペーサ本体510の遠位端には、主軸519からのスリーブ間隙528がある。スペーサ本体510の遠位端は、このスリーブ間隙518で主軸519へ貼り付けられていないので、スペーサ本体510の遠位端は主軸519上で摺動可能である。主軸519は、ポリウレタン編組525で補強されたニチノールのコアワイヤ517でできている。
【0073】
図21A図21Eは、経カテーテル装置の別の実施形態の様々な図を示す。図21Aは側面図を示し、図21Bは長手断面切断図を示す。図21Cは、異なる回転での側面図を示す。図21Dは、近位端面図を示す。経カテーテル装置は、スペーサ本体530、渦巻状コイル537、及び遠位尾部534を有する。スペーサ本体530は、90°湾曲した近位部531を持つブーツ形状を有する。スペーサ本体530は、近位開口部533及び遠位開口部535を有して、スペーサ本体を通る血流を可能にする。遠位尾部536は曲げ536を有する。
【0074】
経カテーテル装置の近位部には、主軸539の近位セグメント532がある。この近位セグメント532は、90°外方の曲げ542を有する。スペーサ本体530は、外面を設けるためにePTFE膜で覆われているワイヤメッシュ足場546を備える。このワイヤメッシュ足場546は、スペーサ本体530に展開手順中に崩壊又は拡張する能力を与える。図21Eは、ワイヤメッシュ足場546の端面図を示す。主軸539は、ガイドワイヤを挿入するための管腔548を有する。スペーサ本体530の遠位端には、主軸539からのスリーブ間隙538がある。スペーサ本体530の遠位端は、このスリーブ間隙538で主軸539へ貼り付けられていないので、スペーサ本体530の遠位端は主軸539上で摺動可能である。主軸539は、ポリウレタン編組545で補強されたニチノールのコアワイヤ547でできている。
【0075】
図21F図21Hは、経路が下大静脈から右心房(RA)内へ入り、三尖弁を横切って右心室(RV)に入り、室上稜505に触れ、肺動脈弁507を通って右肺動脈(PA)内へと移動する、心臓に植え込まれた経カテーテル装置を示す。図21Fは、三尖弁尖503がスペーサ本体530の周囲で閉じられた収縮期における心臓を示す。図21Gは、三尖弁尖503が開位置にある拡張期における心臓を示す。三尖弁尖503は、スペーサ本体530から離間して広げられることによりスペーサ本体530の周囲の血流を可能にする。遠位尾部534における曲げ536は、スペーサ本体530の遠位部を室上稜505へ近づけるのに役立つことがわかる。この曲げ536も、遠位尾部534を(左肺動脈の代わりに)右肺動脈内へ向ける。
【0076】
スペーサ本体530の近位部での近位セグメント532及びブーツ形状の曲線531の輪郭特徴が、スペーサ本体530を三尖弁の環状平面に対して斜めの角度に保つのに役立つこともわかる。図21Hは、室上稜505に対して当接しているスペーサ本体530の遠位部を示す近接図である。ブーツ形状のスペーサ本体530での曲げ531が、三尖弁輪下大静脈間峡部に対して当接することもわかる。
【0077】
図24Aは、内部ワイヤメッシュ枠組を示す部分透視図と共にスペーサ本体530の側面図を示す。図24Bは、内部ワイヤメッシュ枠組を示すスペーサ本体530の近位端539の近接透視図を示す。図24Cは、内部ワイヤメッシュ枠組を示すスペーサ本体530の中央部の近接透視図を示す。図24Dは、スリーブとしてのePTFE膜で覆われているスペーサ本体530の近位端539の近接図を示す。図24Eは、内部ワイヤメッシュ枠組を見ることができる、スペーサ本体530の近位開口部533の近接図を示す。図24Fは、内部ワイヤメッシュ枠組を見ることができる、スペーサ本体530の遠位端537での遠位開口部535の近接図を示す。図24Gは、スペーサ本体530用のワイヤメッシュ枠組の端面図を示す。
【0078】
セルフセンタリング:図22A及び図22Bは、経カテーテル装置上のスペーサ本体が三尖弁内でどのように「セルフセンタリング」できるかを示す。図22Aは、スペーサ本体570、主軸の近位セグメント572、及び遠位尾部576を備える経カテーテル装置を示す。室上稜の場所は破線の円で示されている。遠位尾部576は、室上稜に対するスペーサ本体の配置を容易にする曲げ574を有する。前尖、中隔尖、及び後尖は標識されている。三尖弁輪の縁辺図も示されている。図22Aに見られるように、後尖に対する横方向への移動に対して柔軟である。図22Bは、スペーサ本体570の遠位部が室上稜に対してどのように当接するかを示す。拍動する右心室内の脈動圧は、前から後への(AP)移動でぐらつくようにスペーサ本体570を繰り返し押す。ここで見られるように、このような配置で、室上稜は、前尖と中隔尖との間のスペーサ本体570の前から後への(AP)移動を妨げる壁として働く。
【0079】
豚での実験的試験では、心エコー図による視覚化により、スペーサ本体が右心室収縮時の収縮期圧力に対する頑丈な控え壁として室上稜を使用することが示された。したがって、経カテーテル装置の設計全体は、過剰な移動を防ぐために内部の心臓及び血管の解剖学的構造に適合する。
【0080】
遠位尾部:図25A図25Cは、遠位尾部の異なる実施形態を示す。図25Aは、曲げ582を有する遠位尾部580を示す。遠位尾部580は、スペーサ本体の遠位端584から延びる。図25Bは、遠位尾部580が、覆いのないニチノールのワイヤである遠位部587と、覆うシース(例えば、ePTFE被覆又はペレセン55D編組)を持つニチノールのワイヤである近位部586とを有する代替実施形態を示す。図25Cは、ニチノールのワイヤが丸みを帯びた先端588を有する遠位セグメント587の近接図を示す。この丸みを帯びた先端588は、肺動脈内へ移動する際の外傷を低減するようにニチノールのワイヤの先端を鈍くする。
【0081】
図26は、近位部に渦巻状コイルを欠く経カテーテル装置の代替実施形態を示す。この経カテーテル装置595は、ブーツ形状のスペーサ本体590、主軸592、遠位尾部596、ガイドワイヤ598、及び主軸592の近位セグメント594を備える。ブーツ形状のスペーサ本体590は、湾曲部591を有する。
【0082】
図27は、経カテーテル装置595の寸法パラメータを示す。L1は遠位尾部596の長さである。L2は、スペーサ本体590の直線部を取り囲む主軸592の長さである。L3は、スペーサ本体590の湾曲部591を取り囲む主軸の長さである。L4は、主軸592の近位セグメント594の長さである。例として、L1は20~25cmの長さ、L2は6~9cmの長さ、L3は2~3.5cmの長さ、L4は90~120cmの長さであることができる。A1は、遠位尾部596へ向きを変える、主軸592における曲げ599aの内角である。A2は、ブーツ形状のスペーサ本体590における湾曲での曲げ599bにおける内角である。角度A1及びA2は80~120°の範囲にあることができる。A3は、近位セグメント594へ向きを変える、主軸592における曲げ599cの内角である。
【0083】
図28A図28Cは、経カテーテル装置595の具体的な寸法を示す。図28Aは、ペレセン編組で補強されたニチノールのワイヤコアである遠位尾部596を示す。遠位尾部596は、ePTFE被覆で覆われた、シースで覆われたセクション602と、ePTFE被覆を有していない、シースから外されたセクション604とを有する。遠位尾部596は、約20cmである長さL1を有する。シースから外された606は、約10cmである長さL2を有する。シースで覆われたセクション602は、約2.83mmの外径D2を有する。シースから外されたセクション604は、約2.57mmの外径D1を有する。近位セグメント594は、約90cmである長さL3を有する。
【0084】
図28Bは、図28Aに示されている線Gでの近位セグメント594の横断面図を示す。ここで見られるように、近位セグメント594は、2.43mmの外径D3を有する。近位セグメント594は、0.99mmの内径D4を有する管腔も含む。図28Cは、図28Aに示されている線Hでの遠位尾部596の横断面図を示す。遠位尾部596は、0.48mmの外径D8を有する、埋め込まれたニチノールのコアワイヤでできている。このコアワイヤはペレセン編組で補強されて2.17mmの外径D7を作る。このペレセン編組は、ePTFEでさらに被覆されて2.57mmの総外径D5を作る。遠位尾部596は、0.99mmの内径D6を持つ管腔も有する。
【0085】
図29A図29Cは、経カテーテル装置595のさらに具体的な寸法を示す。図29Aは、スペーサ本体590を省略している主軸592を示す。遠位尾部596へ向きを変える、主軸592における曲げ601での内角は120°である。この曲げ601は、10mmの曲率半径を有する。ブーツ形状のスペーサ本体590における湾曲での曲げ603における外角は240°である。近位セグメント594へ向きを変える、主軸592における曲げ605の内角は135°である。この曲げ605は、5mmの曲率半径を有する。
【0086】
図29Bは、スペーサ本体590が主軸592に取り付けられている経カテーテル装置595の様々な長さを示す。長さS1は、延設されていない構成において、スペーサ本体590の直線部を表し、6cmの長さである。スペーサ本体590の遠位端は、送達シースの内側で外方へ圧縮されると、主軸592上を前方へ摺動する。長さS2は、延設されていない構成において、スペーサ本体590の曲げられた腕部を表し、2.5cmの長さである。図29Cは、図29Bの線Aに沿ったスペーサ本体590の横断面を示す。この図は、内部ワイヤ枠600、ニチノールのワイヤコア606、ワイヤコア606の周囲のポリマー編組608、及びガイドワイヤ用の管腔610を示す。スペーサ本体590の外径(OD)は(ワイヤメッシュ600が緩和されている場合)9~19mmの幅の範囲にある。
【0087】
図30Aは、図29A及び図29Bの経カテーテル装置の寸法パラメータを示す。L1は遠位尾部514の長さである。L2は、スペーサ本体510を取り囲む主軸519の長さである。L3は、第1の曲げ524と第2の曲げ522との間の近位セグメント512の長さである。L4は、第2の曲げ522の後の主軸519の近位セグメント512の長さである。図30Bは、スペーサ本体510についての近接概略説明図を示す。スペーサ本体510の長さH1は、5~7cmの範囲にある。長さD1は、スペーサ本体510の遠位端と遠位尾部514における曲げ516との間の距離である。長さD2は、スペーサ本体510の近位端と近位セグメント514における曲げ524との間の距離である。
【0088】
図31は、近位部に渦巻状コイルを欠く経カテーテル装置の代替実施形態を示す。この経カテーテル装置630は、スペーサ本体635、主軸638、遠位尾部634、及び主軸638の近位セグメント636を備える。図32Aは、経カテーテル装置630の寸法パラメータを示す。L1は遠位尾部634の長さである。一例として、L1は20~25cmの範囲にある長さを有する。L2は主軸638の近位セグメント636の長さである。一例として、L2は、90~120cmの範囲にある長さである。これらの長さのうちのそれぞれは、(移動軸線とは対照的に)長手軸線に沿った長さを表す。図32Bは、スペーサ本体635についての概略説明図の近接図を示す。曲げ633は、遠位尾部634へ向きを変える、主軸638がなす曲げである。一例として、曲げ633での角度は80~120°の範囲を有する。スペーサ本体635の長さH1は、5~7cmの範囲にある。長さD1は、スペーサ本体635の遠位端と遠位尾部634における曲げ633との間の距離である。
【0089】
送達カテーテル:図33A図33Cは、経カテーテル装置用の送達カテーテルを示す。図33Aは、送達カテーテル700に置かれた経カテーテル装置の側面図を示す。ここで見られるのは、経カテーテル装置のスペーサ本体710及び遠位尾部712である。送達カテーテル700は軸702を備える。近位端では、送達カテーテル700は、主要ポート706及びスタイレット704を有する。図33Bは、送達カテーテル700の近位端の近接側面図を示す。長さL1は、軸702の60cmの長さを表す。送達カテーテル700の(ポートを含む)全長は約670mmである。図33Cは、送達カテーテル700の断面図を示す。送達カテーテルの外径は約5.7mmである。ここには、付属ポート708も示されている。
【0090】
図34A図34Cは、経カテーテル装置の別の例示的実施形態を示す。図34Aは、バルーン型ブーツ形状のスペーサ本体732、遠位尾部734、及び主軸の近位セグメント740を備える経カテーテル装置730を示す。遠位尾部734は曲げ738を有する。遠位尾部734は、ニチノールのコアワイヤによって支持されていない(長さ2cmの)遠位セグメント736を有する。すなわち、ニチノールのコアワイヤは、遠位尾部734の遠位先端に到達する前に終わる。遠位部にニチノールのワイヤがないことは、遠位尾部734が肺動脈樹内へさらに進むことができるように、遠位尾部に対して、より高い可撓性を有するために有用であり得る。曲げ738での内角は120°である。スペーサ本体732は、スペーサ本体732を曲線形状にするために曲げ744を有する。曲げ744での内角は120°である。主軸が近位セグメント740へ向きを変える場合の曲げ742がある。曲げ742での内角は110°である。スペーサ本体732は、膨張可能なバルーンとして設計される。
【0091】
図34Aには、経カテーテル装置730を患者の心臓内へ展開するための送達カテーテル700も示されている。図34Bは、図34Aの線Gでの送達カテーテル700の横断面図を示す。ここには、内径D1(0.99mm)を有するガイドワイヤ用の管腔と、スペーサ本体732のバルーンが膨張且つ収縮される空気供給ポート746とが示されている。送達カテーテル700の外径(D2)は2.43mmである。図34Cは、直径(D5)が0.48mmのニチノールのワイヤコアを有する、線Hに沿った遠位尾部734の横断面図を示す。直径(D3)が0.99mmのガイドワイヤ管腔も有する。ニチノールのワイヤの周囲のペレセン編組は、2.17mmの直径(D4)を与える。ペレセン編組の周囲に薄いePTFE被覆もある。
【0092】
図35A及び図35Bは、経カテーテル装置730のさらなる具体的な寸法を示す。遠位尾部734における曲げ738の移動長さは約10mmである。主軸の近位セグメント740の曲げ744の移動長さは約5mmである。図35Aは、膨張されていない構成においてバルーン型スペーサ本体732を示す。図35Bは、膨張された構成においてバルーン型スペーサ本体732を示す。スペーサ本体732の幅が膨張後に拡張されたことがわかる。拡張可能な内部足場によって支持されているスペーサ本体について、図35A及び図35Bは、それぞれ制約された構成及び緩和された構成でスペーサ本体を代替として示すことができる。
【0093】
図36Aは、スペーサ本体732を膨張させ、ガイドワイヤ190を挿入した経カテーテル装置730の試作品を示す。図36Bは、図36Bの線Bに沿った横断面図を示す。ここで見られるのは、ガイドワイヤ用の主管腔を有する主軸760である。バルーン型スペーサ本体732に空気又は生理食塩水を供給するための付属チャネル762もある。空気又は生理食塩水は、主軸760における穴768を通って流れ、バルーン型スペーサ本体732を膨張/収縮させる。図36Cは、図35Bの線Aに沿った断面図を示す。ここで見られるのは、主管腔758及び付属チャネル762を有する主軸760である。主軸760の剛性支持のためのニチノールのワイヤコア764もある。
【0094】
図37A図37Dは、経カテーテル装置の別の実施形態を示す。これらの説明図は、患者の心臓に設置されている経カテーテル装置140を示す。下大静脈150、上大静脈151、右心房152、冠状動脈洞153、右心室154、肺動脈弁155、室上稜156、肺動脈の主幹157、及び肺動脈の2つの枝158が示されている。図37Aは、送達シース149を経て展開されている経カテーテル装置140を示す。スペーサ本体142及び渦巻状コイル144は、送達シース149の内側に保持される。送達シース149の内側に制約されて、渦巻状コイル144は、長手軸線に沿って外へ伸びるように圧縮された構成になる。なお、スペーサ本体142は、遠位端に小さい有刺フック148を備え、これは送達シース149によって引込み位置に保持される。
【0095】
遠位尾部146は、送達シース149から外へ延び、肺動脈弁155を横切って肺動脈の主幹157内へ延びる。なお、遠位尾部146は、肺動脈の枝158内へ延びない。フック148を有することにより、遠位尾部146は長さを相対的に短くすることができる。例えば、遠位尾部146の長さは、5~25cmの長さ、場合によっては5~15cmの長さの範囲にあることができる。図37Bは、展開されているフック148を示す。送達シース149が後方に引き込まれると、フック148が現れ、予め付勢され突き出た構成で跳ね出る。
【0096】
フック148のばね状作用の力は、フック148を室上稜156内へ埋め込むのに十分であってもよい。スペーサ本体142は、フック148を室上稜156内へ埋め込むのに役立つように、わずかに引き戻すこともできる。したがって、スペーサ本体142の遠位部分が室上稜156の近くへ固定される。これにより、三尖弁に対して正しい位置におけるスペーサ本体142の安定性が改良される。図37Cでは、送達シース149は完全に引き抜かれるので、渦巻状コイル144は外方に拡張し、下大静脈150内に留まることになる。図37Cは、遠位穴141の反対側であるが、近位穴143と同じ側及びスペーサ本体142のブーツ部の方向に配置されているフック148の配向も示す。
【0097】
図37Dは、経カテーテル装置が回収手順によって、その後どのように取り外すことができるかを示す。なお、これは、上述のフック148のない代替経カテーテル装置設計のためのものである。これは、スネアループ688を有するスネアカテーテル686の使用を要する。スネアカテーテル686は、大腿静脈に挿通され、X線透視誘導の下で下大静脈150の方へ上方に進める。スネアカテーテル686は、スネアループ688が渦巻状コイル144の遠位端を捕らえるように操作される。スネアカテーテル686は次いで、取り出されて、経カテーテル装置140全体を患者の体外へ取り外す。
【0098】
図38A図38Cは、欠陥のある三尖弁を治療する経カテーテル装置の別の例を示す。経カテーテル装置800は、遠位尾部806及び近位部820を有する。遠位尾部806と近位部820との間には、翼804を有するスペーサ本体802がある。経カテーテル装置800の近位部820は渦巻状コイル812を備える。主軸810は、経カテーテル装置800の近位部820を、スペーサ本体802、及び経カテーテル装置800の遠位尾部806を通して取り囲む。図38A(底面図)に見られるように、小さい遠位開口部808がある。図38B(側面図)に見られるように、主軸810の近位部820での曲げ816、及び遠位尾部806での曲げ818がある。図38C(上面図)に見られるように、スペーサ本体802に、より大きい近位開口部814がある。
【0099】
この例示的実施形態では、スペーサ本体802は円筒状のブーツ形状を有する。スペーサ本体802は、一対の翼804も有し、翼はスペーサ本体802の三尖弁尖への結合を改良するように働く。図39図40A図40B図41A及び図41Bは、どのように働くかを示す。図39は、3つの弁尖を有する三尖弁840を横切る、図22Aのスペーサ本体530を示す。僧帽弁824、肺動脈弁828、及び大動脈弁826も示されている。三尖弁840では、スペーサ本体530は弁尖822との良好な接合をもたらす。しかしながら、弁尖822の両側の間には、逆流が持続することを許してしまう間隙825が依然としてある。
【0100】
図40A及び図40Bは、翼804がこれらの間隙825を閉じるのにどのように役立つかを示す。図40Aは、心室収縮期の間の閉構成における三尖弁840を示す。右心室からの圧力により、翼804が開いて広がる構成になる。この構成では、翼804は弁尖822同士の間の間隙825を低減するように働く。これにより、弁尖822へのスペーサ本体802の結合を改良する。図40Bは、広がる構成において翼804を有するスペーサ本体802単独の軸方向端面図である。
【0101】
図41A及び図41Bは、翼804が内方にどのように折れるのかを示す。心室拡張期の間には、三尖弁840が開き、血液は右心房から右心室内へ流れることができる。この血流により、翼804は内方に折れてコンパクトな構成になる。これにより、翼804が右心室内への血液のこの流れに対して引き起こすことがある干渉を低減する。図41Bは、折り畳んだ構成において翼804を有するスペーサ本体802の単独の軸方向端面図である。
【0102】
図42A図42Cは、スペーサ本体及び翼の可能な寸法を示す概略説明図である。図42A(上面図)に見られるように、翼の幅は、三尖弁尖同士の間の間隙を低減するのに十分広い。いくつかの実施形態では、翼804の幅W1は、0.1~3.5cm、場合によっては、0.5~2.5cmである。図42B(側面、縁辺図)に見られるように、翼804の長さはスペーサ本体802の長さよりも短い。いくつかの実施形態では、翼804の(スペーサ本体802の長手軸線に沿った最長の長さとして測定される)長さL5は、2~9cm、場合によっては、3~6cmである。図42C(軸方向端面図)に見られるように、翼804の厚さは、スペーサ本体802の厚さ未満である。いくつかの実施形態では、翼804の(翼とスペーサ本体の長手軸線に直交している横軸線Tに沿って測定される)厚さは、0.5~10mm、場合によっては、0.5~6mmである。
【0103】
図43は、スペーサ本体に翼を有する経カテーテル装置の別の例を示す。経カテーテル装置850は、遠位尾部856及び近位部858を有する。遠位尾部856と近位部858との間にはスペーサ本体842がある。ここで、スペーサ本体842は、中央近くに細いくびれ844を持つ砂時計形状を有する。このくびれ844では、2つの翼846がある。経カテーテル装置850の近位部858は、主軸の近位セグメント852、及び渦巻状コイル854を備える。スペーサ本体842に近位開口部848も示されている。
【0104】
図44A図44Cは、スペーサ本体に複数の小さい小翼を有する経カテーテル装置の別の例を示す。経カテーテル装置860は、遠位尾部866、及び近位セグメント870を有する主軸を含む。遠位尾部866と近位セグメント870との間にはスペーサ本体862がある。ここで、スペーサ本体862は、各側に3つの小さい小翼864、合計6つの小翼864を有する。図44A(底面図)に示されているように、経カテーテル装置860は、スペーサ本体862に、渦巻状コイル872及び遠位穴868を備える。図44B(上面図)に示されているように、スペーサ本体862は近位穴874も有する。図44Cは、主軸において2つの曲げを示す経カテーテル装置860の側面図である。
【0105】
図45A図45Cは、スペーサ本体の異なる設計を有する経カテーテル装置の別の例を示す。経カテーテル装置880は、渦巻状コイル888、遠位尾部886、及び近位セグメント884を有する主軸を含む。遠位尾部886と近位セグメント884との間にはスペーサ本体882がある。ここで、スペーサ本体882は、パラシュート状様式で働くように設計される。図45Aは、スペーサ本体882に対する天蓋890の俯瞰図を示す経カテーテル装置880の上面図である。図45Bは、天蓋890の下面図を示す底面図である。ここに示されているのは、天蓋890の周辺へ付けられている複数のストリング892である。図45Cは、ストリング892及びテザー894がどのように付けられるかを示す経カテーテル装置880の側面図である。一方の端部では、ストリング892は、天蓋890の周辺へ、他方の端部ではテザー894の先端へ付けられる。テザー894は主軸へ付けられる。
【0106】
図46は、展開された構成においてスペーサ本体882を示す経カテーテル装置880の斜視図である。ここに示されている天蓋890は膨張構成で膨潤している。天蓋890形状は、テザー894へ付けられているストリング892によって一緒に保持される。
【0107】
図47A及び図47Bは、側面図から概略モデルとして示されている三尖弁の説明図である。ここに示されているのは、三尖弁に設置されたときに動作中の経カテーテル装置880のスペーサ本体882である。図47Aは、心室圧が矢印F1の方向にある、心室収縮期の間の閉構成に三尖弁を示す。この流体圧力により、天蓋890は膨潤して開き、弁尖822に対して当接して、スペーサ本体882の三尖弁への接合を行う。天蓋890の形状は、経カテーテル装置880の主軸896へ付けられたテザー894へ付けられているストリング892によって保持される。図47Bでは、矢印F2は、右心房から右心室内への心室拡張期の間の血流を示す。この血流により、天蓋890は内方に崩壊してコンパクトな構成になる。これにより、天蓋890が右心室内への血液のこの流れに対して引き起こすことがある干渉を低減する。
【0108】
図48A及び図48Bは、スペーサ本体に使用可能な翼設計の別の例を示す。図48Aは、翼900単独の斜視図である。翼900は、凸状外側902及び凹状内側904を持つボート形状を有する。3次元形状をよりよく示すためにグリッド線が追加されている。図48Bは、スペーサ本体906及びボート形状の翼900を備える経カテーテル装置の断面図である。この図は、凸状外側902及び凹状内側904を有する翼900の曲率を説明するのに役立つ。実際の使用では、内側904は右心室の方へ面する。この形状は、血液の流れに対する翼900の羽ばたき応答を改良するのに有用であることができる。
【0109】
図49A及び図49Bは、スペーサ本体にシュラウドを有する経カテーテル装置の別の例を示す。経カテーテル装置は、人間の心臓の人工シリコーンプラスチックモデル111との関連で示されている。図49Aは、遠位尾部916及びスペーサ本体910を有する経カテーテル装置の(人工右心室の内側から見た)底面図を示す。スペーサ本体910の主要ハル912は、シュラウド914内に収容される。シュラウド914は、上述した翼と類似の様式で働く縁辺フラップ915を有し、開構成及び閉構成を有する。シュラウド914は、血液の流れに対する縁辺フラップ915の羽ばたき応答を改良する固有の曲率も有する。図49Bは、主軸の近位セグメント918を有する経カテーテル装置の(人工右心房の内側から見た)上面図を示す。ここで見られるように、シュラウド914の内側は右心室に面する。
【0110】
図50A図50Cは、経カテーテル装置の別の実施形態を示す。本実施形態において、経カテーテル装置620は、遠位尾部622、スペーサ本体650、主軸の近位セグメント656、及び渦巻状コイル658を有する。図50A(側面図)に示されているように、遠位尾部622は、異なる可撓性特性の3つのセグメントを有する。遠位セグメント624、中央セグメント626、及び近位セグメント628がある。遠位セグメント624は、中央セグメント626及び近位セグメント628の両方よりも可撓性が高い。さらに、中央セグメント626は、近位セグメント628よりも可撓性が高い。すなわち、近位セグメント628は、中央セグメント626及び遠位セグメント624の両方よりも堅い。遠位尾部622の予め形成された(予め付勢された)湾曲形状は、長さに沿って遠位尾部622の漸進的に増加する可撓性と共に、肺動脈への外傷を少なくする。これにより、肺動脈への損傷のおそれが低減される。
【0111】
遠位尾部622の全長は約20cmである。遠位セグメント624の長さは約5cmである。中央セグメント626の長さは約5cmである。近位セグメント628の長さは約10cmである。主軸の近位セグメント656の長さは約5cmである。主軸の近位セグメント656は、スペーサ本体650と接続するように、丸みを帯びた雁首状曲線657を有することにも留意されたい。
【0112】
図50B(斜視図)及び図50C(背面図)は、スペーサ本体650を通る血流を可能にする近位開口部654及び遠位開口部652を有するスペーサ本体650を示す。経カテーテル装置に一連の放射線不透過性マーカーも示されている。主軸の近位セグメント656に放射線不透過性ストリップ670がある。遠位尾部622には一連の放射線不透過性バンド(672、674、676)がさらにある。遠位尾部622の先端には放射線不透過性バンド678もある。
【0113】
図51A及び図51Bは、経カテーテル装置620の主軸の断面図を示す。図51Aは遠位セグメント624を示し、このセグメントは、ペレセン90A(ショアA硬度スケールのグレード90)でできているジャケット660、及びePTFEで裏打ちされている管腔662を備える。遠位セグメント624の直径D8は約3mmである。ペレセンは、医療装置に使用するために設計された熱可塑性ポリウレタンエラストマーのブランドである。経カテーテル装置620の主軸の長さを通る構造支持のためのニチノールのコアワイヤ664もある。ニチノールのコアワイヤ664は、遠位尾部622に予め形成された湾曲形状を与える。中央セグメント626は同じ構造を有するが、ジャケットはジャケット用のペレセン55D(ショアD硬度スケールのグレード55)でできている。ペレセン55D材料は、遠位セグメント624に使用されるペレセン90A材料よりも硬い。中央セグメント626の直径は約3mmである。
【0114】
図51Bは、近位セグメント628を示し、このセグメントは、ペレセン77D(ショアD硬度スケールのグレード77)でできているジャケット666、及びePTFEで裏打ちされている管腔662を備える。ペレセン77D材料は、中央セグメント626に使用されたペレセン55Dよりも硬い。余分な堅さを与えるために、近位セグメント628はステンレス鋼編組668のシースで覆われている。近位セグメント628は約4mmの直径である。ニチノールのコアワイヤ664は、近位セグメント628を通って続く。主軸の近位セグメント656は、類似の構造及び材料組成も有する。したがって、近位セグメント628、及び主軸の近位セグメント656は類似の堅さを有する。
【0115】
図52は、主軸の近位セグメントの代替設計を示す。ここで、主軸の近位セグメント682は、スペーサ本体680へ接続する、鋭い直角曲線684を有する。これは、図50Aに示されている設計のための丸みを帯びた雁首状曲線657とは異なる。ここには渦巻状コイル686も示されている。
【0116】
図53A及び図53Bは、経カテーテル装置の幹部の全体形状を示す。幹部全体は、主軸及び遠位尾部を備える。主軸は、近位セグメント及びスペーサ本体セグメントを備える。近位セグメントに、血管内アンカーが付けられている。近位セグメントはスペーサ本体へつながる。スペーサ本体セグメントに、スペーサ本体が取り付けられている。主軸から続くのは遠位尾部である。
【0117】
図53Aは、近位セグメント442及びスペーサセグメント444を含む主軸を備える幹部形状440全体を示す。幹部440は遠位尾部446をさらに備える。近位セグメント442は、角を曲がる形状を有する単一の曲げ443のみを含む。この曲げ443の可能な特性に関するより多くの情報は、見出し「近位部」において上記の要約セクションに説明されている。スペーサセグメント444及び遠位尾部446は、C字形状全体を形成する。図53C及び図53Dに示されているように、C字形状全体は、肺動脈、RVの室上稜、三尖弁、及び右心房に沿って、次いでIVCへ向かう経路を包含するように設計されている。上行大動脈の外壁であるRV室上稜は、装置のこの包含する機能のために頑丈な控え壁を解剖学的に提供する。
【0118】
遠位尾部446の遠位セグメントは長手軸線447を有する。主軸の近位セグメントの初期直線セクション441は長手軸線448を有する。図53Bは、長手軸線447と長手軸線448との間の角度αを示し、ここで、αは20~60°の範囲にある。したがって、遠位尾部446の遠位セグメントは、近位セグメント442の初期直線セクション441の方向に対して20~60°以内である方向を指すことができる。
【0119】
図53C及び図53Eは、長手軸線447Aと長手軸線448Bとの間の角度α2を示し、ここで、α2は0~15°の範囲にある。
【0120】
図54Aは、主軸が湾曲した雁首形状において2つの曲げ553及び559を有する異なる幹部形状550全体を示す。これらの2つの曲げは、主軸の近位セグメント552及びスペーサセグメント554に生じる。この設計では、曲げ553及び559は、主軸に滑らかに湾曲するS字形状を作成する。第1の曲げ553は一方向(下方)の曲率を有するが、第2の曲げ559は異なる方向、すなわち、全体的には反対方向(上方)における曲率を有する。第1の曲げ553は主軸で1~5cmの範囲にある長さを取り囲む。第2の曲げ555は主軸で1~5cmの範囲にある長さを取り囲む。図54Bは、長手軸線557と長手軸線558との間の角度βを示し、ここで、βは20~60°の範囲にある。したがって、遠位尾部556の遠位セグメントは、近位セグメント552の初期直線セクション551の方向に対して20~60°以内にある方向を指すことができる。
【0121】
図54A及び図54Dに示されているように、C字形状全体は、肺動脈、RVの室上稜、三尖弁、右心房に沿って、次にIVCへ向かう経路を包含するように設計されている。上行大動脈の外壁であるRV室上稜は、装置のこの包含する機能のための頑丈な控え壁を解剖学的に提供する。図54C及び図54Eは、長手軸線557Aと長手軸線557Bとの間の角度β2を示し、ここで、β2は0~15°の範囲にある。
【0122】
実験的試験:経カテーテル装置の試作品は、三尖弁欠陥の豚モデルで試験され、有効性は、欠陥のある三尖弁の心エコー図画像によって評価された。治療前には、心エコー図は重度の三尖弁逆流定格グレードV~VIがあることを示した。経カテーテル装置は植え込まれ、スペーサ本体は三尖弁を横切って配置された。心エコー図画像は、植込み後6週間、撮られ、三尖弁逆流定格グレードIIの低減を示した。
【0123】
三尖弁欠陥の豚モデルにおける経カテーテル装置の回収を試験する実験も行った。試作品の経カテーテル装置は三尖弁を横切って植え込まれた。回収は3つの時点、(グループ1)経カテーテル装置の安全な配置直後、(グループ2)植込み後2週間、及び(グループ3)植込み後4週間で行われた。いずれの場合も、回収は従来のカテーテルスネアシステムで試みた。この回収手順は、経カテーテル装置の渦巻状コイルの近位先端をつかみ、スネアシステムを取り出し、経カテーテル装置全体を入口静脈から引き出すことによって行われた。グループ1及び2(直後及び2週間後)では、経カテーテル装置は、いかなる問題もなく正常に取り外された。手順後の心エコー図により、経カテーテル装置が植え込まれることにより生じる異常、及びその後の取り外しにより生じる外傷がないことが確認された。しかしながら、グループ3(4週間後)では、下大静脈への渦巻状コイルの付着が強いため、回収は不可能であった。これは、渦巻状コイルが下大静脈内の安全なアンカーとして正常に機能することを示す。
【0124】
本明細書に示す説明及び例は、本発明を単に説明することを意図しており、限定することを意図するものではない。本発明の開示された態様及び実施形態のそれぞれは、個々に、又は本発明の他の態様、実施形態、及び変形例と組み合わせて考えられてもよい。加えて、特に指定しない限り、本発明の方法のステップは、特定の履行の順序へ限定されない。本発明の真意及び実体を組み込む開示された実施形態の変更は、当業者に生じてもよく、そのような変更は本発明の範囲に含まれる。
【0125】
本明細書における単語「又は」の使用はいかなるものも、包括的であることが意図され、文脈が明確に別段の指示をしない限り、表現「及び/又は」と同等である。そのように、例えば、表現「A又はB」は、A若しくはB、又はAとBとの両方を意味する。同様に、例えば、表現「A、B、又はC」は、A、B、若しくはC、又はこれらのどのような組み合わせも意味する。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5A
図5B
図6A
図6B
図6C
図7A
図7B
図8A
図8B
図9A
図9B
図9C
図10A
図10B
図10C
図11A
図11B
図12
図13A
図13B
図13C
図13D
図14A
図14B
図15A
図15B
図15C
図16A
図16B
図17
図18A
図18B
図19A
図19B
図19C
図19D
図19E
図19F
図19G
図19H
図19K
図20A
図20B
図20C
図20D
図20E
図21A
図21B
図21C
図21D
図21E
図21F
図21G
図21H
図22A
図22B
図23A
図23B
図24A
図24B
図24C
図24D
図24E
図24F
図24G
図25A
図25B
図25C
図26
図27
図28A
図28B
図28C
図29A
図29B
図29C
図30A
図30B
図31
図32A
図32B
図33A
図33B
図33C
図34A
図34B
図34C
図35A
図35B
図36A
図36B
図36C
図37A
図37B
図37C
図37D
図38A
図38B
図38C
図39
図40A
図40B
図41A
図41B
図42A
図42B
図42C
図43
図44A
図44B
図44C
図45A
図45B
図45C
図46
図47A
図47B
図48A
図48B
図49A
図49B
図50A
図50B
図50C
図51A
図51B
図52
図53A
図53B
図53C
図53D
図53E
図54A
図54B
図54C
図54D
図54E
【国際調査報告】