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特表2023-552306アンチロックブレーキシステム用バルブユニット
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-15
(54)【発明の名称】アンチロックブレーキシステム用バルブユニット
(51)【国際特許分類】
   B60T 15/36 20060101AFI20231208BHJP
   B60T 8/00 20060101ALI20231208BHJP
   B60T 8/176 20060101ALI20231208BHJP
【FI】
B60T15/36 Z
B60T8/00 Z
B60T8/176 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2023530732
(86)(22)【出願日】2021-11-23
(85)【翻訳文提出日】2023-06-09
(86)【国際出願番号】 IB2021060852
(87)【国際公開番号】W WO2022112936
(87)【国際公開日】2022-06-02
(31)【優先権主張番号】102020000028418
(32)【優先日】2020-11-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522243484
【氏名又は名称】ライカム・ドライブライン・ソチエタ・ア・レスポンサビリタ・リミタータ
【氏名又は名称原語表記】RAICAM DRIVELINE S.R.L.
(74)【代理人】
【識別番号】110003007
【氏名又は名称】弁理士法人謝国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】ボナルド、サンドロ
【テーマコード(参考)】
3D049
3D246
【Fターム(参考)】
3D049AA01
3D049CC02
3D049HH27
3D049HH41
3D049HH45
3D049HH48
3D049HH53
3D049JJ05
3D049JJ06
3D049JJ07
3D049JJ09
3D049QQ04
3D246AA11
3D246BA02
3D246DA01
3D246GB01
3D246GC14
3D246LA04Z
3D246LA12Z
3D246LA24A
3D246LA41A
3D246LA76A
3D246LA77A
3D246LA79A
3D246LA80B
(57)【要約】
アンチロックブレーキシステム(ABS)用のバルブユニット(10)は、バルブ本体(11)、バルブ本体内を移動可能なピストン(18)、及び、ピストンに作用する弾性要素(34)を有する。バルブ本体は、放出ポート(14)、吸引ポート(17)、放出ポートに連通する主チャンバ(15)、主チャンバと拡張チャンバとの間の流体連通を実現する流出通路(51)を有する拡張チャンバ(16)、及び、吸引ポートと放出ポートとの間のバイパス通路(50)、を有する。ピストン(18)は、主チャンバ(15)内を移動可能であり、縦方向貫通空洞(31)を有する。ピストンは、放出ポートから離れて面する第1の横方向面、及び、第1の横方向面に対向し放出ポートから離れて面する第2の横方向面を有し、第1の横方向面は、第2の横方向面の面積よりも小さい面積を有する。弾性要素(34)は、ピストン(18)を放出ポート(14)から離れるように移動させる弾性力を発揮する。バルブユニット(10)は、主チャンバ(15)内のブレーキ液の圧力によって作動可能である。
【選択図】 図2




















【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のアンチロックブレーキシステムのためのバルブユニットであって、
前記バルブユニットは、
ブレーキキャリパ(G)に液圧的に接続可能な放出ポート(14)、マスタシリンダ(M)に液圧的に接続可能な吸引ポート(17)、前記放出ポート(14)と流体連通する主チャンバ(15)、拡張チャンバ(16)であって、前記主チャンバ(15)と前記拡張チャンバ(16)との間を流体連通する流出通路(51)を有するもの、及び、前記吸引ポート(17)と前記放出ポート(14)との間で流体連通するバイパス通路(50)、を有するバルブ本体(11)、
前記主チャンバ(15)内で縦方向に移動可能であるピストン(18)であって、前記放出ポート(14)に面する前記ピストンの端面(32)と前記ピストンの側面に開口する横方向通路(33)との間で前記ピストンを貫通して延在する縦方向空洞(31)、を有し、前記ピストン(18)は、前記放出ポート(14)に面する第1の横方向面、及び、前記第1の横方向面の対向し、前記放出ポート(14)から離れるように面する第2の横方向面を全体的に有し、並びに、前記第1の横方向面は、前記第2の横方向面の面積よりも小さい面積を有し、
前記放出ポート(14)から離れるように、前記ピストン(18)を移動させる弾性力を発揮する少なくとも1つの弾性要素(34)、
を有し、
前記ピストン(18)は、
通常制動条件下での第1の位置であって、前記弾性要素の力が、前記主室(15)内に存在する前記ブレーキ液の油圧の縦方向成分にまさり、前記ピストン(18)を、前記放出ポート(14)から離れるように動かし、及び、前記バイパス通路(50)を閉鎖することなく、前記流出通路(51)を閉鎖し、並びに、前記バルブユニットの作動状態における第2の位置であって、前記主チャンバ(15)内に存在するブレーキ液の油圧推力が、前記弾性要素(34)によって発揮される力にまさる縦方向の成分を有し、これにより、前記ピストン(18)は、前記放出ポート(14)に向かって変位し、及び、前記バイパス通路(50)を閉鎖する一方、前記流出通路(51)を閉鎖しない、2つの代替的な動作位置を有する、
バルブユニット。
【請求項2】
請求項1に係るバルブユニットであって、
前記主チャンバ(15)は、
前記放出ポート(14)の近くに配置され、及び、第1の直径(D1)を有する第1の領域(19)、
前記放出ポート(14)から離れて配置され、及び、前記第1の直径(D1)よりも小さい第3の直径(D3)を有する第3の領域(21)、
前記第1の領域(19)と前記第3の領域(21)との中間に位置し、及び、前記第1の直径(D1)よりも大きい第2の直径(D2)を有する第2の領域(20)、
を形成し、
前記ピストン(18)は、
前記主チャンバ(15)の第1の領域(19)において、密封的に摺動する第1の部分(22)、
前記主チャンバの前記第2の中間領域(20)において、密封的に摺動する中間部分(23)、
前記主チャンバの第3の領域(21)において、密封的に摺動する第3の部分(24)、
を有し、
前記第1の横方向面は、前記第1の直径(D1)を有する円の面積を有し、及び、
前記第2の横方向面は、前記第2の直径(D2)に対応する直径を有する外周と、前記第3の直径(D3)に対応する直径を有する内周とを有する環状クラウンの面積を有する、
バルブユニット。
【請求項3】
請求項1、又は、請求項2に係るバルブユニットであって、さらに、
前記弾性要素(34)によって、前記ピストン(18)に及ぼされる弾性力を調整するための装置(42)を有する、
バルブユニット。
【請求項4】
請求項1、又は、請求項2、又は、請求項3に係るバルブユニットであって、
前記バルブユニットは、
前記放出ポート(14)から離れるように面し、及び、前記バルブ本体(11)と一体化する横方向肩部(35)、
前記横方向肩部(35)に面し、及び、そこから、縦方向に離間する横方向コントラスト壁(36)、
前記横方向コントラスト壁(36)を前記ピストン(18)に接続し、及び、前記ピストンを前記横方向コントラスト壁(36)と縦方向に一体化する縦方向ステム(37)、
を有し、
前記弾性要素(34)は、前記横方向コントラスト壁(36)と前記横方向肩部(35)との間で縦方向に圧縮される圧縮ばねである、
バルブユニット。
【請求項5】
請求項3、及び、請求項4に係るバルブユニットであって、
前記弾性要素(34)によって前記ピストン(18)に及ぼす弾性力を調節するための前記装置(42)は、
前記横方向コントラスト壁(36)と前記横方向肩部(35)との間の縦方向距離を調節するように構成されている、
バルブユニット。
【請求項6】
請求項5に係るバルブユニットであって、
前記ステム(37)は、
前記横方向コントラスト壁(36)を貫通して形成される対応するねじ付き貫通孔(39)に係合するねじ付きステム部分を有し、それにより、自身の縦方向軸線(37A)を中心として前記ステムに与えられる回転によって、前記横方向コントラスト壁(36)と前記ピストン(18)との間の縦方向距離の変化がもたらされる、
バルブユニット。
【請求項7】
請求項6に係るバルブユニットであって、
前記ステム(37)は、
前記ピストン(18)に形成される凹部(41)に係合する、断面円形の拡大端部ヘッド(40)を有する、
バルブユニット。
【請求項8】
請求項6、又は、請求項7に係るバルブユニットであって、
前記ステム(37)は、
前記ピストン(18)の縦方向の中心軸(18A)に対して偏心する中央の縦方向軸(37A)を有する、
バルブユニット。
【請求項9】
請求項6~請求項8に係るいずれかのバルブユニットであって、
前記ステム(37)は、中央縦方向軸(37A)を有し、並びに、前記横方向コントラスト壁(36)は、前記同じ軸(37A)と前記ステム(37)に横方向に対向する前記本体(11)の表面(38)との間の最小横方向距離(P2)よりも大きい前記中央縦方向軸からの横方向距離(P1)を有し、及び、前記ステム(37)が回転したときに、前記横方向コントラスト壁(36)の回転を阻止する絞りとして作用する周縁を有する、
バルブユニット。
【請求項10】
請求項6、又は、請求項8に係るバルブユニットであって、
前記調節装置(42)は、
前記調節装置(42)と前記ステム(37)との間の相対的な縦方向の移動を可能にするスプライン結合された縦方向継手(44)によって、前記ステム(37)に回転可能に結合されている、
バルブユニット。
【請求項11】
請求項4~請求項10に係るいずれかのバルブユニットであって、
前記横方向コントラスト壁(36)は、
横方向の遊びをもって受容され、及び、前記バルブ本体(11)によって形成されるチャンバ(38)内で縦方向に移動可能である、
バルブユニット。
【請求項12】
請求項1、又は、請求項2、又は、請求項3に係るバルブユニットであって、
前記弾性要素(34)は、
弾性牽引要素であり、及び、ピストン(18)に拘束される第1の端部、及び、前記バルブ本体(11)と一体の前記横方向コントラスト壁(36)に拘束される第2の端部を有する、
バルブユニット。
【請求項13】
請求項12に係るバルブユニットであって、
前記横方向コントラスト壁(36)は、
前記バルブ本体(11)に対して固定されているか、又は、前記弾性要素(34)の事前張力、したがって、前記放出ポート(14)から離れるように、前記ピストンに作用する前記牽引力、を調整するために、縦方向位置を調整できる、
バルブユニット。
【請求項14】
請求項3に係るバルブユニットであって、
前記弾性力調整装置(42)は、
前記車両の基板に配置される電子制御ユニット(ECU)と電気的に接続可能な電気駆動部を有する、
バルブユニット。
【請求項15】
請求項3に係るバルブユニットであって、
前記弾性力調整装置(42)は、
手動調整可能な機構を有する、
バルブユニット。
【請求項16】
前記請求項に係るいずれかバルブユニットであって、
前記拡張チャンバ(16)は、
縦方向に摺動可能なフローティングバルブ要素(61)、及び、
前記フローティングバルブ要素(61)を前記吸引ポート(17)に向かって押す副ばね要素(66)、
を収容し、
前記拡張チャンバ(16)は、通路(68)を介して前記吸引ポート(17)と流体連通しており、一方向バルブ(69、70、71)が、一方向(B)のみで前記拡張チャンバ(16)から前記吸引ポート(17)に向かってブレーキ液を流すことができるように配置されている、
バルブユニット。
【請求項17】
請求項16に係るバルブユニットであって、
前記フローティングバルブ要素(61)は、
前記拡張チャンバにおいて前記吸引ポート(17)に最も近くに配置される前記バルブ本体(11)の肩部(64)と、前記拡張チャンバににおいて前記吸引ポートから最も遠くに配置される横方向壁(67)との間で、前記拡張チャンバ(16)内を移動可能であり、
前記流出通路(51)は、
前記肩部(64)に縦方向に隣接して配置される位置で、前記拡張チャンバ(16)に開口している、
バルブユニット。
【請求項18】
請求項4に係るバルブユニットであって、
前記弾性要素(34)は、
前記横方向コントラスト壁(36)と前記横方向肩部(35)との間に少なくとも2つの圧縮ばねを有し、
第1のばねは、
常に、前記横方向コントラスト壁(36)と前記横方向肩部(35)との間で縦方向に事前圧縮され、及び、
第2のばねは、
前記第1のばねよりも短い自由長を有し、及び、前記横方向コントラスト壁(36)と前記横方向肩部(35)との間で縦方向に事前圧縮されない、
バルブユニット。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の車輪のアンチロック機能を制御する油圧ブレーキシステム用バルブユニットに関する。バルブシステムは、自転車のような、電動式、及び、非電動式の両方の車両に適用できる。
【背景技術】
【0002】
アンチロックブレーキシステム(「ABS」)は、油圧ブレーキを有する車両に設置され、横滑り、又は、制御されないスリップを防止し、急停止の影響を低減する。このようなシステムの1つは、図1に示されており、自動車の4つの車輪は、ブレーキディスクE1-E4、及び、フォニックホイールF1-F4,又は、同等の要素に対向し、ブレーキディスクと一体的に回転する各対応するセンサS1-S4を装備している。センサS1-S4は、既知のモードに応じて、対応付けられているホイールの回転速度を検出し、及び、回転速度を示す信号を、受信される速度信号を処理する電子制御ユニット(ECU)、又は、モジュールに、例えば、配線N1-N4を介して、送信する。各ブレーキディスクは、ブレーキキャリパG1-G4に関連付けられている。フットコントロールCによって操作されるマスタシリンダMは、バルブユニットABS1-ABS4が設けられている各油圧ラインH1-H4を介して、ブレーキキャリパを作動させる。各ABSバルブユニットは、電子制御ユニットECUからの電気制御信号に応答して、関連付けられるブレーキキャリパへのブレーキ液の流れ、及び、圧力を制御する。ECUは、差し迫るホイールロックアップを示す状態を検出すると、各ABSバルブを作動させ、影響されたホイールで、ブレーキの油圧を低下させ、それにより、そのホイールの制動力を減少させ、その結果、ホイールは、制動される一方、回転できる。この処理は、制動中に、1秒間に数回連続して繰り返され、車両がスリップすることを防止する。
【0003】
DE10158382A1は、出口、及び、逆止弁を有する油圧式密閉コンパクトユニットを形成する油圧アクチュエータ、及び、低圧液体油圧リザーバに一体化されるマスタ、及び、スレーブ油圧シリンダを有する自転車用アンチロックブレーキシステムを開示する。システムは、また、電子制御部、少なくとも1つのホイールブレーキ、少なくとも1つの速度センサ、及び、吐出弁、及び、隔離弁に接続される低圧油圧液体リザーバを有する油圧アクチュエータを有している。逆止弁は、並列に、排出弁に接続され、また、油圧スレーブシリンダは、隔離弁、及び、排出弁の下流に、接続される。
【0004】
EP3392105A2は、2つの電動バルブアセンブリを有する自転車用の液圧ブレーキシステムを記載している。各バルブアセンブリは、それぞれの電動アクチュエータによって、別々に、作動される。第1のバルブアセンブリを用いて、マスタシリンダとブレーキキャリパとの間のブレーキ液を遮断し、また、第2のバルブアセンブリを用いて、ブレーキキャリパをアキュムレータに液圧的に接続する並列チャネルを開く。2つの電動アクチュエータは、ECUによって、個別に、所定の順序で、動かされる。2つのバルブアセンブリは、ハンドレバーによって操作されるメインシリンダとブレーキキャリパとを接続する油圧回路の並列分岐上に、配置される。通常の制動中、第1のバルブアッセンブリは、開放され、マスタシリンダとブレーキキャリパとの間の直接的な流体連通を可能にする一方、第2のバルブアセンブリは、閉じられる。強いブレーキ状態では、差し迫るホイールロックアップにおいて、第1の電動アクチュエータは、第1のバルブアセンブリを閉じ、ハンドレバーからの圧力入力を遮断し、その結果、第1のバルブアセンブリからキャリパへの圧力を、遮断し、キャリパに作用する圧力のさらなる上昇を防止する。第2の電動アクチュエータは、第2のバルブを開き、並列チャネルにおける第2のバルブの上流に位置するアキュムレータ内に、圧力を放出することを可能する。その結果、キャリパの圧力が低下し、ブレーキを解除する。
【0005】
他のABSシステムは、油圧ラインに取り付けられるピストンを有するバルブユニットを有する。ピストンは、油圧ラインの容積を変化させ、その結果、制動回路内の圧力を調節するために、ピストンを往復運動させる電動アクチュエータ(ソレノイド)によって制御される。
【発明の概要】
【0006】
従来技術に照らして、本発明の主な目的は、被制動ホイールがロックされる状態に介入するために、従来のアクチュエータの電気的制御によってではなく、作動させることができるABSバルブユニットを提供することである。
【0007】
本発明は、ブレーキシステムの油圧回路に存在するブレーキ液圧によって作動するABSバルブユニットを提供する。
【0008】
一態様によれば、本発明は、請求項1に規定されているように、車両の車輪のアンチロック機能を制御する油圧ブレーキシステム用のバルブユニットを開示する。本発明の好ましい実施形態は、従属請求項に規定されている。
【0009】
要約すると、車両のアンチロックブレーキシステム用のバルブユニットは、バルブ本体、バルブ本体内の可動ピストン、及び、ピストンに作用する弾性要素を有する。バルブ本体は、ブレーキキャリパに液圧的に接続され得る放出ポート、マスタシリンダに液圧的に接続され得る吸引ポート、放出ポートと流体連通する主チャンバ、拡張チャンバであって、主チャンバと拡張チャンバとの間で流体連通を達成する流出通路を有する拡張チャンバ、及び、吸引ポートと放出ポートとの間で流体連通を達成するバイパス通路、を有する。ピストンは、主チャンバ内で縦方向に移動可能であり、及び、放出ポートに面するピストンの端面の間で、ピストンを通って延在する縦方向空洞、及び、ピストンの側面に開口する横方向通路を有する。ピストンは、放出ポートから離れるように面する第1の横方向面、第1の横方向面に対向し、及び、放出ポートから離れるように面する第2の横方向面を、まとめて、有し、第1の横方向面は、第2の横方向面の面積よりも小さい面積を有する。弾性要素は、ピストンを放出ポートから離れるように移動させる弾性力を発揮する。ピストンは、2つの代替的な動作位置を有する:第1の位置では、通常の制動状態において、弾性体の弾性力が、主チャンバに存在するブレーキ液の液圧推力の縦方向成分に勝り、それにより、ピストンは、放出ポートから離れるように動かされ、及び、バイパス通路を閉鎖することなく、流出通路を閉鎖し、および、第2の位置では、バルブユニットの作動状態において、バルブユニットに、主チャンバに存在するブレーキ流体の油圧推力は、弾性要素によって及ぼされる力に勝る縦方向成分を有し、それにより、ピストンは、放出ポートに向かって動かされ、及び、流出通路を閉鎖しない一方、バイパス通路を閉鎖する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
本発明を明確に理解するために、以下に添付図面を参照して、いくつかの好ましい実施形態を説明する。
図1は、車両のアンチロックブレーキシステムの動作を模式的に示す図である。
図2は、第1の動作状態における本発明の第1の実施形態に係るバルブユニットの縦方向の断面図である。
図3図5は、他の動作状態下における図2のバルブユニットを示す。
図6は、他の実施形態に係るバルブユニットの縦方向の断面図である。
図7は、さらなる実施形態に係るバルブユニットの縦方向の断面図である。
【発明の詳細な説明】
【0011】
図2図5を参照すると、参照番号10は、車両のホイールに関するアンチロックブレーキシステムのためのABSバルブユニット全体として示す。バルブユニット10は、縦方向軸xを規定し、及び、縦方向、又は、軸方向として本明細書に規定される方向に、細長い形状を有している。この文脈で使用される理解では、x軸に関連して、「縦方向」、及び、「横方向」のような用語が、理解されるであろう。
【0012】
バルブユニット10は、「縦方向」として本明細書で参照される作動方向を規定するプラスチック材料からなる本体11(又は、筐体)を有している。本体11は、この例では、第1の端部12、及び、第1の端部に対向する第2の端部13を有する全体的な円筒形の管形状を有している。
【0013】
本体11の端部12は、車両のホイール用のブレーキのブレーキキャリパ(図示せず)に液圧的に接続できる放出ポート(又は、出口ポート)14、及び、車両のフットペダル、又は、ハンドレバー(図示せず)による作動制御に、個別に関連付けられるマスタシリンダ(又は、主シリンダ、図示せず)に液圧的に接続できる吸引ポート17を形成する。
【0014】
本体11は、主油圧チャンバ15、及び、拡張チャンバ16、又は、副油圧チャンバを有する。主油圧チャンバ15は、直接的に放出ポート14に連通し、及び、ピストン18を、スライド式に、縦方向に収容する。
【0015】
主油圧チャンバ15は、放出ポート14に近い直径D1を有する第1の端部領域19(又は、端部領域)、直径D1よりも大きい直径D2を有する第2の中間部領域20、放出ポート14からさらに離れる直径D2よりも小さい直径D3を有する第3の領域21(又は、基部領域)を形成する。
【0016】
ピストン18は、主チャンバ15の端部領域19に収容される端部22、主チャンバ15の中間部領域20に収容される中間部23、及び、主チャンバ15の基部領域21に収容される基部24を有している。
【0017】
ピストン18の端部22に、短い距離を隔てて配置される、縦方向に隣接する一対のシール端ガスケット26、27を提供する。ガスケット26、27は、主チャンバ15の端部領域19に摺動しながら接触している。ピストン18の中間部23に、主チャンバ15の中間部領域20に噛み合う、縦方向に隣接し、及び、離間して配置される一対の中間ガスケット28、29を提供する。基部シールガスケット30を、主チャンバ15の基部領域21と密封しながら噛み合うように、ピストンの基部24に取り付ける。
【0018】
ピストン18は、放出ポート14に面する、ピストンの端部の端面32とピストンの側面に排出する横方向通路33との間でピストンを通って延在する縦方向空洞31を形成する。横方向通路33は、主チャンバ15の中間部領域20に流入する。
【0019】
吸引ポート17、及び、放出ポート14を有する端とは反対側の本体11の部分13には、放出ポート14から離れるように、ピストン18を押す主弾性要素34が受容されている。
【0020】
図2図5の実施形態では、主弾性要素34は、本体11の肩部35と、肩部35に面し、及び、そこから縦方向に離間して配置される横方向コントラスト壁36との間で縦方向に圧縮される単一の圧縮ばねとして形成される。図示されるものに対する代替的な実施形態は、1つ以上の弾性要素、例えば、2つのばね、そのうちの1つは、既に、事前に圧縮され、及び、1つのみが支持され、短い縦方向のストロークに沿って異なるレベルの予圧を提供するものを含んでもよい。
【0021】
横方向コントラスト壁36は、横方向の遊びをもって受容され、及び、本体11によって好都合に形成されるチャンバ38内で縦方向に移動できる。
【0022】
ステム37は、横方向コントラスト壁36をピストン18に接続し、及び、それらと共に、ピストン18を縦方向に一体化する。
【0023】
主弾性要素34の縦方向の圧縮は、横方向コントラスト壁36を左側に押し、及び、その結果、これにより、ピストン18は、ステム37を介して左側に引っ張られる。
【0024】
横方向コントラスト壁36と肩部35との間の縦方向の距離を、調整し、主弾性要素がピストン18を放出ポート14から離れるように引っ張る縦方向弾性力を変えることができる。
【0025】
一実施形態によれば、ステム37を、横方向コントラスト壁36を通って形成される対応するねじ式貫通孔39を通って係合するねじ山付きステムとして形成してもよい。
【0026】
ステム37は、ピストン18の部分24に形成される対応する凹部41で係合される、例えば、球形の円形断面を有する拡大されたターミナルヘッド40を有してもよい。
【0027】
放出ポート14から離れるようにピストン18を押す弾性力を調節する調節装置42を想定できる。調節装置42は、ステム37に沿って、横方向コントラスト壁36の縦方向位置を変化させ、それによって、横方向コントラスト壁36と肩部35との間の距離、結果として、主弾性要素34の長さ、及び、圧縮力を調節できる。調整装置42によってステム37を、その縦軸37Aを中心として所定の回転方向に回転させることにより、さらに、主弾性要素34を圧縮し、また、縦方向に短くすることで、結果として、放出ポート14から離れるように、ピストン18を動かす牽引力を、増大する。逆に、ステム37を逆回転方向に回転させることにより、主弾性要素34を、減圧し、及び、縦方向に伸長させ、それによって、放出ポート14から離れるように、ピストン18を引っ張る牽引力を低減する。
【0028】
ステム37は、好ましくは、ピストン18の縦方向中心軸18Aに対して偏心した中心縦方向軸37Aを有している。このようにして、横方向コントラスト壁36の位置を調整する段階の間、その軸37Aを中心としてステム37に与えられる回転によっては、その軸18Aを中心としたピストン18の望ましくない回転は、引き起こされず、その結果、ピストン18に取り付けられ、及び、主油圧チャンバ15の壁に作用するシールガスケットが摩耗する。上述した軸の偏心配置の代わりに、異なる実施形態(図示せず)は、例えば、ピストン18、及び/又は、横方向コントラスト壁36から半径方向に突出する横歯のような回り止め要素を提供してもよい。
【0029】
横方向のコントラスト壁36の縁部とチャンバ38との間の横方向の遊びは、壁36と共にピストン18の縦方向の移動の間、摩擦を減少させることが望ましい。ステム37に与えられる回転によって、コントラスト壁36に対しするねじ込み、又は、ねじ抜きが引き起こされることを確実にするために、壁36の周縁の少なくとも一部は、軸37Aとチャンバ38の内面との間の最小横方向距離P2よりも大きい軸37Aからの横方向距離P1を有していることが好ましい。この方法では、チャンバ38の内面は、ステム37が回転すると、横方向壁36を回転ブロックするためのコントラスト壁として機能する。
【0030】
一実施形態によれば、ねじ付きステム37を回転させる調整装置42は、車両に搭載され、配置され、後述するように、必要に応じて主弾性要素34の弾性力を調整できる電子制御ユニット(ECU、図1)によって制御される電気駆動装置を有している。
【0031】
主チャンバ15では、放出ポート14に近い第1の端部領域19に存在するブレーキ液は、ガスケット26、27によって規定される直径D1の円周を有するピストン18の円形領域に作用する。放出ポート14とシールガスケット27との間、第1の領域に存在するブレーキ液は、放出ポート14から離れるように、添付図面の左(方向A)に向かうピストン18の縦方向の推力を働かせる。
【0032】
主チャンバ15の第2の中間部分20に含まれるブレーキ液は、主チャンバ15の第2の中間部領域20の直径に対応する直径D2の外周、及び、さらに、放出ポート14から遠い、主チャンバ15の第3の領域21の直径に対応する直径D3の内周を有する円形のクラウンによって規定されるピストンの面積に、縦方向の油圧推力を働かせる。主チャンバの第2の中間部領域20におけるブレーキ液の液圧は、添付図面の右に方向付けられ、及び、放出ポート14に近づくように、ピストン18を押圧する。
【0033】
主チャンバの3つの部分19、20、及び、21のそれぞれの直径D1、D2、及び、D3、並びに、ピストン18の対応する部分22、23、及び、24の直径は、直径D2、及び、D3によって規定される円形クラウンの面積が直径D1を有する円の面積よりも大きくなるように選択される。その結果、ピストン18に作用する全体的な油圧推力は、ピストン18に作用し、ピストン18を放出ポート14に近づけるように押圧する縦方向の合力を有する。
【0034】
したがって、ピストン18に作用する全体的な油圧推力は、主弾性要素34によって生成され、放出ポート14から離れるようにピストン18に作用する応力とは反対の方向に向けられる。
【0035】
第1のバイパス通路50は、バルブアッセンブリの本体11に形成され、及び、この第1のバイパス通路50は主油圧チャンバ15の端部領域19に開口しており、このチャンバを吸引ポート17との流体連通に配置する。流出通路51は、バルブユニットの本体11に形成され、及び、主油圧チャンバ15の中間部分20に開口し、このチャンバを拡張チャンバ16との流体連通に配置する。
【0036】
拡張チャンバ16は、縦方向に摺動できる方法で、拡張チャンバ16の筒状部63と噛み合うシールガスケット62を有するフローティングバルブ要素61を受容する。フローティングバルブ要素61は、流入ポート17の近くに形成される肩部64と、流入ポート17から遠くに形成される横方向壁67との間で、拡張チャンバ16内で移動できる。
【0037】
流出通路51は、縦方向に吸引ポート17の近くに配置される位置で、拡張チャンバ16に流入する。流出通路51は、吸引ポート17から離れて、拡張チャンバ16の筒状部63の第1の端部で開口している。
【0038】
圧縮ばねのような副ばね要素66は、フローティングバルブ要素61とバルブ本体32の横方向壁67との間で、弾性的に圧縮される。副ばね要素66は、本体11の端部12に向かう、つまり、入り口ポート17に向かう、方向Bに、フローティングバルブ要素61を付勢する。後述するように、主チャンバ15から拡張チャンバ16への加圧ブレーキ液の導入は、副ばね要素66の力とは対照的に、フローティングバルブ要素61が、放出ポート14、及び、吸引ポート17から縦方向に離れる、方向Aに移動し、結果として、主チャンバ15において、及び、放出ポート14からブレーキキャリパに延在する油圧回路の分岐において、圧力の即時減圧を引き起こす。
【0039】
拡張チャンバ16は、本体11に形成され、一方向バルブ69が拡張チャンバ16と入り口ポート17との間に設けられる通路68を介して、入り口ポート17と流体連通している。一方向バルブ69は、ボール70、及び、入り口ポート17から離れるように、ボール70を押し、その結果、通路68を閉じるばね71を有する。一方向バルブ69は、ブレーキ液を、拡張チャンバ16から入り口ポート17に向かって一方向のみに、流通させる。
【0040】
図示の実施形態では、横方向通路72は、バイパス通路50の構造を容易にするという構造上の理由のために、本体32内にカットされている。横方向通路72は、73で概略的に表されるプラグによって恒久的に閉じられている。
【0041】
構造上の理由から、本体11は、2つ以上の相補部品、この例では、主要部11A、及び、連結部11B、を有してもよい。主要部11Aは、主油圧チャンバ15、拡張チャンバ16、入り口ポート17、及び、放出ポート14を形成する。連結部11Bは、ガスケット74によって主要部11Aに密に連結される。
【0042】
図2は、通常の制動状態、つまり、車両は、制動されているが、放出ポート14からブレーキ液を受ける車輪は、ロックされず、そのため、スリップしていない時、におけるバルブユニット10を示している。ブレーキ液は、縦方向貫通空洞31によって、主チャンバ15、第1の端部領域19、及び、第2の中間部領域20の両方に充填される。主弾性要素34は、全体としてピストン18を右(B方向)に押す傾向がある合力を生成する油圧推力を越えて、ピストン18を左(方向A)に引っ張る作用を発揮する。
【0043】
通常の制動状態において、つまり、制動されるホイールのロック状態に達することなく、発生する、適度な油圧のために、直径D2、及び、D3を有する円形クラウンの面積と直径D1を有する円の面積との間の差によって与えられる油圧は、主弾性要素34によって発揮される縦方向の力に対してより小さい強度の縦方向成分を有する合力を有する。
【0044】
通常の制動状態の下では、主弾性要素34の弾性力は、油圧推力を越え、及び、停止位置(又は、短縮位置)において、ピストン18を、放出ポート14から離れて、左側にずらしておく。停止位置では、ピストン18は、本体11によって形成される横方向肩部75に当接してもよい。
【0045】
ピストン18は、停止位置にあるとき(図2)、バイパス通路50を閉じず、吸引ポート17から放出ポート14へのブレーキ液の直接的な移行を可能にする。アンチロックブレーキシステムは、作動しない。ピストンの停止位置では、主チャンバ15と拡張チャンバ16との間の流出通路51は、その代わりとして、ストン18の第2の部分23の2つのガスケット28、29の間で、閉じられる。
【0046】
ロックホイール制動状態では、主油圧チャンバ15に存在するブレーキ液の圧力が上昇し、ピストン18に作用する全油圧推力の、左から右への、合力が、主弾性要素34によって及ばされる弾性力に対して、より大きい強度、及び、反対方向の縦方向成分を有する値に到達し、また、超えていく。したがって、主油圧チャンバ15のブレーキ液圧は、ピストン18を右方向(方向B、図3)に押圧し、主弾性要素34を、さらに、圧縮しながら、放出ポート14から離れるようにピストン18を移動する。
【0047】
ピストン18は、放出ポート14に向かって移動することにより、ガスケット26、27間でバイパス通路50を閉じ(図3)、マスタシリンダからバルブユニットを介してブレーキキャリパへのブレーキ液の流れを、遮断する。同時に、ピストン18は、主チャンバ15と拡張チャンバ16との間の流出通路51を開放し、主油圧チャンバ15から拡張チャンバ16へのブレーキ液の排出口の一部を開放する。
【0048】
拡張チャンバ16に流入するブレーキ液の圧力は、フローティングバルブ要素61を吸引ポート17から離れるように(左方向、方向Aに)、押圧し、副ばね66の弾性力に打ち勝つ。そして、拡張チャンバ16の容積が増加し、また、その結果、主チャンバ15のブレーキ液圧が瞬間的に低下する。
【0049】
ピストン18の縦方向貫通空洞31によって、主油圧チャンバ15の減圧も、同時に、放出ポート14からブレーキキャリパに延在する油圧回路の分岐のブレーキ液圧を減少させる。これにより、ブレーキキャリパによる制動力が低減され、ホイールのロックを開放する。
【0050】
主油圧チャンバ15の減圧によって、主弾性要素34の弾性力は、再び、油圧推力の縦方向の合力に打ち勝ち、それによって、主ばね要素34が弛緩し、再び、ピストン18を放出ポート14から離れるように、左方向に引っ張り、バイパス通路50を再開放し、及び、流出通路51を閉鎖する。その結果、マスタシリンダは、再び、ブレーキキャリパと流体連通する。
【0051】
バイパス通路50が再開放されているとき、フローティングバルブ要素61が方向Aに移動しているため、拡張チャンバ16(図2)は、まだ、いくらかのブレーキ液を有している。ブレーキ制御(フット、又は、ハンドレバー)が初期停止位置に戻ることができるように、拡張チャンバ16に収容されているブレーキ液の容量を、油圧回路に戻さなければならない。ブレーキ制御の解除によって、油圧回路内の圧力が低下し、その結果、副ばね66は、伸張し、フローティングバルブ要素61を吸引ポート17に向かって(方向B)移動し、本質的に、拡張チャンバ16を空にし(図2)、及び、ブレーキ液を油圧回路に再導入する。拡張チャンバ16を空にすることは、ボール70に関連付けられるばね71の作用によって、自動的に閉じる一方向バルブ69によって可能である。
【0052】
図2図5に示す実施形態では、ピストン18を移動させ、及び、そして、アンチロック機能のきっかけとするための最小の力は、調整可能である。この調整は、必要に応じて、主弾性要素34に、より大きい、又は、より小さい、弾性的な事前負荷を加えることによって行われる。主弾性要素34の弾性的な事前負荷が低い場合、主チャンバ15のブレーキ液の液圧における比較的低いレベルは、ピストン18を放出ポート14から離れるように(左側に)維持する弾性抵抗に打ち勝つために、十分である。低いレベルの事前負荷は、この例では、横方向コントラスト壁36を横方向肩部35から離れるように移動させる方向に、ステム37を回転させる調整装置42によって達成可能である(図4)。種弾性要素34の縦方向の長さが大きい場合には、この弾性要素が、停止時に、ピストンを保持する圧縮力は低い。そのため、高くない最大液圧は、ABSシステムのきっかけとなるには、十分ではない。車両が滑りやすい、氷雪路、未舗装路を走行し、それによって、より容易に、適度な液圧で、制動されるホイールが、ロックする可能性がある時に、このような低圧調整が、好ましい。
【0053】
逆に、より高いグリップ係数で、舗装路面を走行するために、ホイールスリップ状態が、より高い液圧レベルで発生する。したがって、滑り止めされているアスファルトの道を走行するために、横方向肩部35に近づけるように、横方向コントラスト壁36を持って行くような方法で、調整装置42によってステム37を回転させ、それによって、主弾性要素34を短縮し、また、さらに、事前圧縮することにより、主弾性要素34の事前負荷を、増やすことができる。より短い主弾性要素34の縦方向の長さと共に、この弾性要素がピストン18を停止位置に保持する圧縮力が、増加する。その結果、弾性力に打ち勝ち、また、ABSシステムのきっかけとなるためには、より高い最大液圧が必要とされるだろう。
【0054】
調整装置42が電気的に制御可能である実施形態では、車載電子処理ユニット(ECU)が、ロック、又は、スリップ状態を示すホイールセンサから速度信号を受信するときに、ECUからの電気信号によって、作動されてもよい。
【0055】
ステム37、及び、横方向コントラスト壁36は、ピストン18と縦方向に一体である。好ましくは、調整装置42は、ステム37に回転可能に結合されるが、例えば、スプライン軸継手44によって、ピストン18と縦方向に一体化した慣性質量を増加させないように、そこから、縦方向に、係合解除される。
【0056】
理解されるように、ABSシステムの作動は、ピストン18を介入させる主油圧チャンバ15のブレーキ液の圧力であるため、ABSシステムを、電気的制御、及び、電力供給がなくても作動できる。図2図5に示されるようないくつかの実施形態は、路面状態に応じて、ABSバルブユニットの介入レベルを設定する能力を提供する。
【0057】
簡略化された実施形態では、ABSバルブユニットを、電力供給がない車両で実行することが、想像される。代替的な実施形態によれば、調整装置42は、使用者が、主弾性要素34の事前圧縮の程度、したがって、ピストン18に作用する弾性力、を選択できるような手動回転可能なノブ42(図6)を有してもよい。実施形態は、それぞれが主弾性要素の事前圧縮のレベルに対応する、複数の所定の角度位置の中で、ノブ42を回転させるという可能性を提供してもよい。
【0058】
ステム37と横方向コントラスト壁36との間のねじ付きカップリング39の代わりに、カム面を有する部材による調整を、用いてもよい。
【0059】
電力供給を必要としない別の実施形態(図7)によれば、放出ポート14から離れるように、ピストン18に応力を与える主弾性要素34は、ピストン18に拘束される第1の端部、及び、横方向コントラスト壁36に拘束される第2の端部を有する牽引弾性要素として形成されてもよい。横方向コントラスト壁は、必要に応じて、本体11に対して固定されてもよいし、縦方向の位置で調整可能で、主弾性要素34の事前張力、したがって、放出ポートから離れるように移動するように、ピストンに作用する牽引力、を調整してもよい。
【0060】
他の実施形態(図示せず)によれば、調整装置42を、牽引ばねとして実装される主弾性要素34に関連付けて、その事前張力を調整してもよい。
【0061】
本発明の特定の実施形態を説明してきた一方、本開示は、純粋に例示の目的で提供されており、及び、本発明は、それによって限定されるべきではないことを理解されたい。上記の実施例に照らして、様々な変更が当業者には明らかになるであろう。本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲によってのみ制限される。


図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【国際調査報告】