(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-15
(54)【発明の名称】ドライ真空ポンプ
(51)【国際特許分類】
F04C 29/00 20060101AFI20231208BHJP
F04C 18/16 20060101ALI20231208BHJP
F16C 32/00 20060101ALI20231208BHJP
F16C 17/02 20060101ALI20231208BHJP
F16C 33/12 20060101ALI20231208BHJP
【FI】
F04C29/00 G
F04C18/16 J
F16C32/00 C
F16C17/02 Z
F16C33/12 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023532464
(86)(22)【出願日】2021-11-23
(85)【翻訳文提出日】2023-07-27
(86)【国際出願番号】 EP2021082644
(87)【国際公開番号】W WO2022112229
(87)【国際公開日】2022-06-02
(32)【優先日】2020-11-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】511148259
【氏名又は名称】ファイファー バキユーム
(74)【代理人】
【識別番号】110003292
【氏名又は名称】弁理士法人三栄国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ティエリ ニール
(72)【発明者】
【氏名】リュカ レイ
(72)【発明者】
【氏名】ローラン ビゼー
【テーマコード(参考)】
3H129
3J011
3J102
【Fターム(参考)】
3H129AA03
3H129AA18
3H129AA24
3H129AB06
3H129BB33
3H129BB44
3H129CC02
3H129CC18
3H129CC38
3J011AA08
3J011BA02
3J011CA05
3J011DA01
3J011KA02
3J011LA04
3J011MA02
3J011QA03
3J011QA04
3J011QA05
3J011SB15
3J011SC05
3J011SD02
3J102AA01
3J102AA07
3J102BA03
3J102BA17
3J102CA10
3J102CA13
3J102DA07
3J102DA31
(57)【要約】
【課題】ドライ真空ポンプは、特定のポンプ用途では、少なくとも断続的に、大量のガス流を吸収する能力が必要である。これらの過渡段階において引き起こされる熱膨張と軸のたわみ動作の現象が蓄積すると、一対のロータ間またはロータとステータの間に半径方向の接触が発生する可能性がある。
【解決手段】少なくとも1つのポンプステージ(3a~3e)と、少なくとも1つの前記ポンプステ-ジ内で回転するように構成された一対のロータ(7)を備え、前記一対のロータは、前記真空ポンプの少なくとも1つのモータ(9)によって回転するように構成されているドライ真空ポンプ(1)において、前記真空ポンプ(1)は、少なくとも一対の二重軸受(13a、13b)を有し、前記二重軸受(13a、13b)の各々は、それぞれ前記ロータを支持するための少なくとも1つの永久磁石磁気軸受(14a、14b)および少なくとも1つの滑り軸受(15a、15b)を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドライ真空ポンプ(1)であって、
- 少なくとも1つのポンプステージ(3a~3e)と、
- 少なくとも1つの前記ポンプステ-ジ(3a~3e)内で回転するように構成された一対のロータ(7)と、
- 少なくとも一対の二重軸受(13a、13b)を備え、
前記一対のロータは、前記真空ポンプ(1)の少なくとも1つのモータ(9)によって回転するように構成されており、
少なくとも一対の前記二重軸受(13a、13b)は、前記一対のロータ(7)のそれぞれを支持するための、少なくとも1つの永久磁石磁気軸受(14a、14b)および少なくとも1つの滑り軸受(15a、15b)をそれぞれ有しており、
前記永久磁石磁気軸受(14a、14b)は、前記ステータ(2)に固定されるステータ部分(17b)と、前記ロータ(7)と一体回転するロータ部分(17a)とを有するものにおいて、
少なくとも一対の前記二重軸受(13a、13b)の前記滑り軸受(15a、15b)が、前記ロータ(7)と前記ステータ(2)との間にそれぞれのクリアランス(d)があるように形成されており、前記クリアランス(d)は、少なくとも一対の前記二重軸受(13a、13b)の前記永久磁石磁気軸受(14a、14b)の前記ロータ部分(17a)と前記ステータ部分(17b)との間の隙間よりも小さいことを特徴とするドライ真空ポンプ。
【請求項2】
請求項1のドライ真空ポンプにおいて、
前記滑り軸受(15a、15b)のそれぞれが、前記ステータ(2)または前記ロータ(7)の穴にクランプされて取り付けられるリング、あるいは、前記ステータ(2)の軸(23)または前記ロータ(7)の軸(18)にクランプされて取り付けられるリングを有することを特徴とするドライ真空ポンプ。
【請求項3】
請求項1又は2のドライ真空ポンプにおいて、
前記滑り軸受(15a、15b)は、前記ステータ(2)または前記ロータ(7)の穴、および/または前記ステータ(2)または前記ロータ(7)の軸(23、18)、および/または穴内にクランプされておよび/または軸に取り付けられたリング上にコーティングまたは表面処理がされていることを特徴とするドライ真空ポンプ。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項のドライ真空ポンプにおいて、
直列に配置された少なくとも2つの前記ポンプステージ(3a~3e)を有し、前記一対の二重軸受(13a、13b)の前記永久磁石磁気軸受(14a、14b)が、2つの連続する前記ポンプステージ(3a~3e)間の軸通路に配置されていることを特徴とするドライ真空ポンプ。
【請求項5】
請求項1~3のいずれか1項のドライ真空ポンプにおいて、
直列に配置された少なくとも2つの前記ポンプステージ(3a~3e)を有し、前記一対の二重軸受(13a、13b)のすべり軸受(15a、15b)が、2つの連続する前記ポンプステージ(3a~3e)の間の軸通路に配置されていることを特徴とするドライ真空ポンプ。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項のドライ真空ポンプにおいて、
前記一対の二重軸受(13a、13b)の前記永久磁石磁気軸受(14a、14b)が軸端(16a、16b)に位置し、少なくとも1つの前記ポンプステージ(3a~3e)が、前記モータ(9)と前記軸端(16a、16b)との間に介在していることを特徴とするドライ真空ポンプ。
【請求項7】
請求項1~5のいずれか1項のドライ真空ポンプにおいて、
前記一対の二重軸受(13a、13b)の前記滑り軸受(15a、15b)が軸端(16a、16b)に位置し、少なくとも1つの前記ポンプステージ(3a~3e)が前記モータ(9)と前記軸端(16a、16b)との間に介在していることを特徴とするドライ真空ポンプ。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項のドライ真空ポンプにおいて、
前記一対の二重軸受(13a、13b)の前記永久磁石磁気軸受(14a、14b)の前記ステータ部分(17b)および/または前記一対の二重軸受(13a、13b)の前記滑り軸受(15a、15b)が前記ロータ(7)を取り囲んでいることを特徴とするドライ真空ポンプ。
【請求項9】
請求項1~7のいずれか1項のドライ真空ポンプにおいて、
前記一対の二重軸受(13a、13b)の前記永久磁石磁気軸受(14a、14b)および/または前記一対の二重軸受(13a、13b)の前記滑り軸受(15a、15b)は、それぞれの前記ロータ(7)の内側に配置されていることを特徴とするドライ真空ポンプ。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか1項のドライ真空ポンプにおいて、
前記滑り軸受(15a、15b)のそれぞれが、炭化ケイ素コーティングまたはニッケル/PTFEコーティングを有することを特徴とするドライ真空ポンプ。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか1項のドライ真空ポンプにおいて、
前記永久磁石磁気軸受(14a、14b)はそれぞれ、ニッケル/PTFEコーティングを有することを特徴とするドライ真空ポンプ(1)。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか1項のドライ真空ポンプにおいて、
前記真空ポンプ(1)の前記駆動部(8)内で前記ロータ(7)を支持するように構成された少なくとも2つの転がり軸受装置(11a)を有することを特徴とするドライ真空ポンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドライ真空ポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
ドライ真空ポンプは、ポンプ搬送されるガスが吸気口と吐出口の間で循環する1つまたは複数の直列のポンプステージを備えている。既知の真空ポンプの中では、「ルーツ」という名前でも知られる回転ローブを備えたポンプと、「クロー」という名前でも知られる爪を備えたポンプとが区別される。これらの真空ポンプは「ドライ」と呼ばれる。その理由は、動作中に一対のロータがステータ内で回転し、ロータ同士が機械的に接触したり、ロータがステータと機械的に接触したりすることがないためである。これにより、ポンプステージでオイルを使用しなくても済む。
一対のロータは軸端にある潤滑軸受によって支持されている。取り付けと取り外しを容易にするために、特定のロータは片持ち梁形式で取り付けられ、軸はモータに配置された軸受のみによって支えられている。
【発明の概要】
【0003】
特定のポンプ用途では、少なくとも断続的に、大量のガス流を吸収する能力が必要である。これらの過渡現象は、真空ポンプの室が大気圧で空になっているとき、またはガスが真空ポンプの室に突然入ってくるときに最も頻繁に発生する。これらの強力なガス流をポンプ搬送すると、真空ポンプが大幅に加熱され、ロータに大きな負荷がかかる。
これらのさまざまな過渡段階において引き起こされる熱膨張と軸のたわみ動作の現象が蓄積すると、一対のロータ間またはロータとステータの間に半径方向の接触が発生する可能性がある。その発生頻度は非常に低いが、これらの過渡段階は真空ポンプに大きなダメージを与える可能性がある。
【0004】
本発明の1つの目的は、上述の欠点の1つを少なくとも部分的に解決することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この目的を達成するために、本発明の主題は、以下の特徴を備えたドライ真空ポンプに関するものである。
- 少なくとも1つのポンプステージと、
- 少なくとも1つの前記ポンプステ-ジ内で回転するように構成された一対のロータを備え、前記一対のロータは、前記真空ポンプの少なくとも1つのモータによって回転するように構成されているものにおいて、
前記真空ポンプは、前記一対のロータのそれぞれを支持するために、少なくとも1つの永久磁石磁気軸受と少なくとも1つの滑り軸受を有する、少なくとも一対の二重軸受を有することを特徴とする。
【0006】
前記永久磁石磁気軸受は、定常状態体制において、芯出しによりロータをステータの中心に置く。これにより、弱いガス流や中程度のガス流をポンプ搬送するために、軸にごくわずかな負荷しか発生させないようにする。前記永久磁石磁気軸受は、通常動作中の前記ロータのたわみ現象を制限する。また、通常の動作中に、共振現象やバランス不良によって引き起こされるロータの振動も制限される。
前記滑り軸受は、過渡モードにおいて、前記ロータの停止を形成する。すなわち、前記永久磁石磁気軸受による芯出しが不十分な場合にのみ、滑りによる回転の案内を提供することにより、大量のガス流を、間欠的にポンプ搬送するようにする。したがって、滑り軸受は永久磁石磁気軸受のバックアップとなる。この装置の利点は、これらの軸受が非接触であるため、摩擦や磨耗が発生しないことである。それは、ポンプ搬送されるガスの流れを制限せず、ガスを保護するための潤滑や希釈ガスも必要ないため、ポンプ性能に影響はない。さらに、これらの軸受は腐食環境にも対応できる。
この解決策は同様に、「垂直」、つまり垂直軸方向に設置された真空ポンプの配置を容易にする。これは、潤滑剤が存在しないということは、オイルやグリースが軸受から重力によってドライポンプステージに向かって移動するリスクがないことを意味する。
【0007】
真空ポンプは、以下に説明する特徴の1つ以上を単独で、または組み合わせて備えることもできる。
永久磁石式磁気軸受は、ステータに固定されるステータ部分と、ロータと一体回転するロータ部分とを有していてもよい。
少なくとも一対の前記二重軸受の滑り軸受は、前記ロータと前記ステータとの間のそれぞれのクリアランスを、少なくとも一対の前記二重軸受の永久磁石磁気軸受の前記ロータ部分と前記ステータ部分との間のクリアランスよりも小さくして設置することができる。これにより、ロータとステータの間の接触は、永久磁石磁気軸受のステータ部分とロータ部分の間ではなく、最初に、滑り軸受内で発生することが保証される。
【0008】
滑り軸受はそれぞれ、ステータまたはロータの穴にクランプされて取り付けられるリング、および/またはステータおよび/またはロータの軸にクランプされて取り付けられるリングを有してもよい。したがって、滑り軸受はそれぞれ、例えば、穴内にクランプされて取り付けられる単一のリング、または軸上にクランプされて取り付けられる単一のリング、または2つのリングを備えている。後者の場合、1つは穴内にクランプされて取り付けられ、もう1つは軸にクランプされて取り付けられる。
滑り軸受は、ステータまたはロータの穴、および/またはステータまたはロータの軸、および/または穴内および/または軸に、表面処理される場合があり、さらに、穴および/または軸にクランプされて取り付けられているリングに、コーティングまたは表面処理がなされる場合がある。例えば、各滑り軸受は、穴のみでコーティングまたは表面処理されるか、または軸のみでコーティングまたは表面処理されるか、または穴および軸でコーティングまたは表面処理されるか、または、穴内および/または軸にクランプされて取り付けられるリングにコーティングまたは表面処理がなされる。
【0009】
真空ポンプは、直列に配置された少なくとも2つのポンプステージを有し、一対の二重軸受の永久磁石磁気軸受が、2つの連続するポンプステージ間の軸通路に配置されていてもよい。
真空ポンプは、直列に配置された少なくとも2つのポンプステージを有し、一対の二重軸受の滑り軸受が、2つの連続するポンプステージ間の軸通路に配置されてもよい。
一対の二重軸受の永久磁石磁気軸受は軸端に配置され、ポンプステージはモータと軸端との間に介在してもよい。一対の二重軸受の滑り軸受は軸端に配置され、少なくとも1つのポンプステージがモータと軸端との間に介在してもよい。
【0010】
二重軸受の永久磁石磁気軸受は、ロータに沿って滑り軸受から離間して配置されてもよいし、隣接して配置されてもよい。例えば、軸端に永久磁石磁気軸受が設けられ、第1軸通路などの軸通路、すなわち第1ポンプステージと第2ポンプステージとの間に配置された滑り軸受が設けられる、構成でもよい。これにより、真空ポンプのコンパクト化を図ることができる。
【0011】
本発明の一実施形態によれば、一対の二重軸受の永久磁石磁気軸受のステータ部分および/または一対の二重軸受の滑り軸受が、ロータを取り囲んでいる。
本発明の一実施形態によれば、一対の二重軸受の永久磁石磁気軸受および/または一対の二重軸受の滑り軸受は、それぞれのロータの内部に配置されている。
滑り軸受はそれぞれ、炭化ケイ素コーティングまたはニッケル/PTFEコーティングを有する場合がある。
永久磁石磁気軸受は、それぞれ、ニッケル/PTFEコーティングを施してもよい。
真空ポンプはまた、真空ポンプの駆動部分においてそれぞれのロータを支持するように構成された少なくとも2つのころ軸受装置を備えていてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明のドライ真空ポンプの第1実施形態の概略図である。
【
図2】
図1のドライ真空ポンプの軸端の詳細を示す断面図である。
【
図3】本発明の別のドライ真空ポンプの変形例の軸端の詳細を示す断面図である。
【
図4】本発明の、軸端におけるドライ真空ポンプの別の変形例の詳細を示す概略図である。
【
図5】本発明のドライ真空ポンプの第2の実施形態についての、
図1と同様の図である。
【
図6】本発明のドライ真空ポンプの第3の実施形態についての、
図1と同様の図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の他の特徴および利点は、添付の図面を参照しながら、限定するものではなく例として与えられる以下の説明から明らかになるであろう。
これらの図では、同一の要素には同一の参照番号が付されている。以下の実施形態は一例である。以下の説明は1つ以上の実施形態に言及しているが、これは必ずしも各参照が同じ実施形態に関連していること、または特徴が単一の実施形態にのみ適用されることを意味するものではない。様々な実施形態の個々の特徴を組み合わせたり交換したりして、他の実施形態を提供することもできる。
「上流」とは、ポンプ搬送されるガスの循環方向に関して、別の要素の前に位置する要素を意味すると理解される。 逆に、「下流」とは、ポンピングされるガスの循環方向に関して、別の要素の後に位置する要素を意味すると理解される。軸方向は、ロータの回転軸が延びる真空ポンプの長手方向として定義される。
【0014】
本発明は、少なくとも1つのポンプステージ3a~3eを有する任意のタイプのドライ真空ポンプ1に適用され、この真空ポンプは、例えば5段のポンプステージ3a~3eなど、1~10段のポンプステージを備えていても良い。この真空ポンプ1は、ポンプ搬送されたガスを大気圧で吐出するように構成された粗引き真空ポンプであってもよい。あるいは、1~3段のポンプステージを備え、使用中は粗引き真空ポンプの上流に接続され、動作中の吐出圧力は粗引き真空ポンプによって得られる圧力になるドライ真空ポンプであってもよい。
真空ポンプ1は、少なくとも1つのポンプステージ3a~3eの圧縮室内で回転するように構成された一対のロータ7を有しており、吸気オリフィス4から吐出オリフィス5に向けてガスを、
図1の矢印で概略的に示したガスの循環方向に、ポンプ搬送する。
【0015】
一対のロータ7は、軸6a、6b上に組み立てることができる、または、ロータ7の軸6a、6bと一体に作製することができる嵌合輪郭を有する(一体型ロータと呼ばれる)。ロータ7は、例えば、2つ以上のローブを有する「ルーツ」タイプ、または「クロー」タイプ、または別の同様の、容積式真空ポンプ原理に基づいている。
【0016】
真空ポンプ1は、例えば直列に配置された少なくとも2段のポンプステージ3a~3eを有する。ステータ2の各ポンプステージ3a~3eは、2つの嵌合ロータ7を受け入れる圧縮室によって形成され、これらの圧縮室はそれぞれの吸入口およびそれぞれの出口を備えている。回転中、吸入口から引き込まれたガスは、ロータ7とステータ2との間に生じる容積に閉じ込められ、ロータ7によって次のステージに向かって搬送される。連続するポンプステージ3a~3eは、次々に直列に接続され、それぞれの段間チャネルによって、前のポンプステージの出口を次のポンプステージの吸入口に接続する。
【0017】
第1ポンプステージ3aの吸入口は、真空ポンプ1の吸気オリフィス4と連通している。最終ポンプステージ3eの出口は、吐出オリフィス5と連通している。各ポンプステージの軸方向寸法は、例えば同じであるか、または、ポンプステージ3a~3eの配置順序に従って減少し、吸気オリフィス4の近くに位置するポンプステージ3aが最大の軸方向寸法を有する。
これらの真空ポンプは「ドライ」と呼ばれる。その理由は、動作中、ロータ7がステータ2内で相互に、またはステータ2と、機械的に接触せずに回転するので、これにより、ポンプステージ3a~3eでオイルを使用しないことが可能になるためである。
【0018】
ロータ7は、真空ポンプ1の駆動部8内の少なくとも1つのモータ9によって回転されるように構成されている。真空ポンプ1は、例えば、この真空ポンプ1の最後のポンプステージ3eなど、真空ポンプ1の一端において、ロータ7のうちの1つに取り付けられた単一のモータ9を有する。
モータ9に加えて、駆動部8は、同期歯車10と、駆動部8内のそれぞれのロータ7を支持するための少なくとも2つの転がり軸受装置11a、11bを有していてもよい。
【0019】
駆動部8は、例えば複数対、例えば3対の転がり軸受装置11aを有し、これらは、駆動軸6aの転がり軸受装置11aとして、モータ9の両側に配置することができる。例えば、駆動部8の軸端に1つの転がり軸受装置11aがあり、モータ9とポンプステージ3a~3eとの間に介在する2つの転がり軸受装置11aがある。従動軸6bの転がり軸受装置11bは、駆動軸6aの転がり軸受装置11aと対称に配置されてもよい。転がり軸受装置11a、11bは、例えば玉軸受を有する。
【0020】
転がり軸受装置11a、11bは、真空ポンプ1の駆動部8の油だめ12内の潤滑剤によって潤滑されてもよく、この油だめ12はモータ9とポンプステージ3a~3eとの間に設けられている。潤滑剤は、転がり軸受装置11a、11bの転がり軸受やロータ7の同期歯車10を潤滑する。
また、真空ポンプ1は、駆動部8とポンプステージ3a~3eのガスが循環するドライポンプ部との間に介在する、潤滑剤をシールする装置(図示せず)を備えている。このシール装置により、潤滑剤の移動を制限しながら、ドライポンプ部で軸6a、6bを回転させることができる。
【0021】
真空ポンプ1はまた、一対のロータ7のそれぞれを支持するために、少なくとも1つの永久磁石磁気軸受14a、14bと少なくとも1つの滑り軸受15a、15bを有する、少なくとも一対の二重軸受13a、13bを有する。ロータは、ドライポンプ部分、すなわちポポンプステージ3a~3eに配置されたこれらの二重軸受13a、13bにおける「通常の」動作中に、非接触で回転することができる。
【0022】
これらの永久磁石磁気軸受14a、14bは、回転するロータ7に非接触で磁気浮上によりロータ7を支持する軸受である。それらの軸受はそれぞれ、例えば、ステータ部分17b内で回転するように構成されたロータ部分17aを有する。このロータ部分17aは、ロータ7とともに回転し、磁石を支持しており、その回転により磁界が生成され、ステータ部分17bの芯出しを確実にする(
図2参照)。
永久磁石磁気軸受14a、14bはそれぞれ、ニッケル/PTFEコーティング、特にキュリー点より低い温度で熱処理されたコーティングを有していてもよい。このコーティングは、ロータ部分17aおよび/またはステータ部分17bを覆っている。
滑り軸受15a、15bは、それぞれロータ7との間にクリアランスdを持って取り付けられている。このクリアランスは、ロータ7間の動作クリアランスよりも小さく、ロータ7とステータ2との間の動作クリアランスよりも小さい。この半径におけるクリアランスdは、例えば0.1mmより大きく、かつ/または0.5mmより小さい。永久磁石磁気軸受14a、14bのロータ部分17aとステータ部分17bとの間のクリアランスは、例えばクリアランスdよりも大きい。
【0023】
滑り軸受15a、15bはそれぞれ、例えば、ステータ2またはロータ7の穴内にクランプされて設置されるリング、および/またはステータ2の軸23および/またはロータ7上にクランプされて設置されるリングを有する。滑り軸受15a、15bはまた、ステータ2またはロータ7の穴において、および/またはステータ2またはロータの軸23、18において、および/または穴内および/または軸にクランプされて取り付けられたリングにおいて、コーティングまたは表面処理されてもよい。
滑り軸受15a、15bはそれぞれ、炭化ケイ素(SiC)コーティング、またはニッケル/PTFEコーティングを有し、特に熱処理されたコーティングを有することができる。これらのコーティングは、以下に示すように、リング、穴、またはロータ7の軸6a、またはプラグシール19の軸18、23などの軸を覆っている。
【0024】
永久磁石磁気軸受14a、14bは、定常状態体制において、ロータ7の芯出しをする。これにより、弱く中程度のガス流をポンプ搬送するためにロータ7にごくわずかな負荷を生じる。この永久磁石磁気軸受14a、14bにより、通常動作中のロータ7のたわみ現象を制限することができる。これらはまた、共振現象または平衡欠陥によって引き起こされる通常動作中のロータ7の振動を制限する。
滑り軸受15a、15bは、過渡モードにおいて、ロータ7の停止状態を形成する。すなわち、永久磁石磁気軸受14a、14bによる芯出しが不十分な場合にのみ、滑りによる回転の案内を提供することにより、大量のガス流を断続的にポンプ搬送するようにする。したがって、滑り軸受15a、15bは、永久磁石磁気軸受14a、14bのバックアップを提供する。
この装置の利点は、これらの軸受13a、13bが非接触であるため、摩擦や摩耗がないことである。これらは、ポンプ搬送されるガスの流れを制限せず、ガスを保護するための潤滑や希釈ガスも必要ないため、ポンプ性能に影響はない。さらに、これらの軸受13a、13bは腐食環境にも適合できるようにすることができる。
この解決策は同様に、「垂直に」、すなわち垂直軸方向に設置される真空ポンプ1の配置を可能にする。なぜなら、潤滑剤が存在しないということは、オイルまたはグリースが軸受13a、13bから重力によってポンプステージ3a~3eに向かって移動する危険がないことを意味するからである。
【0025】
図1に示す第1の実施形態によれば、永久磁石磁気軸受14a、14b及び一対の二重軸受13a、13bの滑り軸受は、軸端16a、16bに位置し、ポンプステージ3a~3eは、駆動部8のモータ9と軸端16a、16bとの間に配置される。この構造は、一対のロータ7と軸受13a、13bとの間に接触がないため、カンチレバー構造と呼ばれるものである。
【0026】
図2の非限定的な例からわかるように、永久磁石磁気軸受14a、14bのロータ部分17aは、例えば、ロータ7の中央ハウジング22に設置されたプラグシール19の軸18に固定された1つのリングを有する。ステータ部分17bは、例えばステータ2に固定される1つの環状部を有する。
プラグシール19は、例えば、ロータ7の中央ハウジング22と相補的な形状、例えば円筒形を有する基部を有する本体20を有し、その上にはロータの回転軸と同軸の軸18が取り付けられている。この本体20は、例えば鋼製である。また、プラグシール19は、本体20とロータ7との間にフッ素エラストマー等からなるトーリックシール21を介在させている。このプラグシール19は、例えば、ねじ止めによりロータ7に固定されている。
【0027】
プラグシール19は、ロータ7の腐食や損傷を引き起こす可能性のある腐食性ガス、粉末、または他の物質が中央ハウジング22に侵入するのを防ぐために、ロータ7の中央ハウジング22を密封して閉じている。
滑り軸受15a、15bは、ここでは、プラグシール19の軸18に対してクリアランスdを介してステータ2内に取り付けられている。
滑り軸受15a、15bはそれぞれ、例えば、ステータ2の穴内にクランプされて取り付けられるリングを有する。
ロータ7の軸端で突出する軸18は、ロータ7の本体と一体に作られてもよい。この変形例は、特にプラグシールのない一体型ロータ7の場合に適用される。
【0028】
図3は、真空ポンプ1の変形実施形態を示しており、一対の二重軸受13a、13bの、永久磁石磁気軸受14a、14bおよび/または滑り軸受15a、15bが、それぞれのロータ7の内部に配置されている。
より具体的には、ここでは、真空ポンプ1は、各ロータ7の内部に配置された永久磁石磁気軸受14a、14bと、各ロータ7の内部に配置された滑り軸受15a、15bを有する。
図3の例では、一対の二重軸受13a、13bが軸端16a、16bに配置されており、永久磁石磁気軸受14a、14bのロータ部分17aは、例えば、ステータ部分17bに面するプラグシール19のハウジング内に固定されたリングを有する。このリングは、ステータ2から突出する軸23に取り付けられ、プラグシール19のハウジングに挿入されている。この例では、プラグシール19は軸18を有さず、ロータの回転軸と同軸のハウジングを有する。
【0029】
滑り軸受15a、15bは、ここでは、ステータ2の軸23に対してクリアランスdを介して、それぞれのプラグシール19のハウジング内に取り付けられている。
永久磁石磁気軸受14a、14bのロータ部分17aおよび滑り軸受15a、15bを、ステータ2から突出する軸23に面するロータ7の軸方向空洞内に直接配置することも考えられる。このことは、プラグシールのない一体型ロータ7の場合に、特に当てはまる。
【0030】
図4は、真空ポンプ1が、軸端16a、16bに位置する一対の二重軸受13a、13bと、ロータ7を取り囲む一対の二重軸受13a、13bを有する別の実施形態を示す。
この例では、例えば永久磁石磁気軸受14a、14bのロータ部分17aが、ロータ7に形成されている。永久磁石磁気軸受14a、14bのステータ部分17bと滑り軸受15a、15bのリングはステータ2に形成されており、これらはそれぞれロータ7のロータ部分17aを囲んでいる。
真空ポンプ1は、各ロータ7を取り囲む一対の二重軸受13a、13bのみを有してもよい。これらは、
図4のように軸端16a、16bに、またはロータ7に沿った他の位置に配置されてもよい。
【0031】
図5および
図6は、したがって、一対の二重軸受13a、13bの永久磁石磁気軸受14a、14bが、2つの連続するポンプステージ3a~3eの間の軸通路に配置される、および/または、一対の二重軸受13a、13bの滑り軸受15a、15bは、2つの連続するポンプステージ3a~3eの間の軸通路に配置されている、2つの例を示している。
一対の二重軸受13a、13bの永久磁石磁気軸受14a、14bは、滑り軸受15a、15bから離間して配置されてもよいし、滑り軸受15a、15bに隣接して配置されてもよい。
例えば、軸端に永久磁石磁気軸受14a、14bが設けられ、第1の軸通路、すなわち第1と第2のポンプステージ3a、3bの間に滑り軸受15a、15bが設けられる。これにより、真空ポンプ1のコンパクト性を向上させることができる。
【0032】
図5および
図6の例示的な例では、永久磁石磁気軸受14a、14bおよび一対の二重軸受13a、13bの滑り軸受15a、15bは、2つのそれぞれのポンプステージ3a~3eの間の軸通路に配置されており、特に、第1、第2のポンプステージ3a、3bの間の第1の軸通路(
図5)や、第2、第3のポンプステージ3b、3cの間の第2の軸通路(
図6)に配置されている。
軸受13a、13bが各ポンプステージ3a~3eのいずれか2つの間に配置される場合、軸端16a、16bは、カンチレバー構造の吸気オリフィス4(
図5)によるいかなる案内手段もなしに、自由なままにしておくことができる。あるいは、真空ポンプ1が、ロータ軸端16a、16bにボール軸受24a、24b(
図6)などの従来の軸受を備えていてもよい。ボール軸受24a、24bは、例えばグリースによって潤滑される。
【符号の説明】
【0033】
1 真空ポンプ
2 ステータ
3a~3e ポンプステージ
4 吸気オリフィス
5 吐出オリフィス
6a、6b 軸
7 ロータ
8 駆動部
9 モータ
10 同期歯車
11a、11b 転がり軸受装置
12 油だめ
13a、13b 二重軸受
14a、14b 永久磁石磁気軸受
15a、15b 滑り軸受
16a、16b ロータ軸端
17a、17b ロータ部分
18 軸
19 プラグシール
20 本体
22 中央ハウジング
d クリアランス
【国際調査報告】