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特表2023-552358コーティング織物およびこれを含むエアバッグ
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-15
(54)【発明の名称】コーティング織物およびこれを含むエアバッグ
(51)【国際特許分類】
   B60R 21/235 20060101AFI20231208BHJP
   D03D 1/02 20060101ALI20231208BHJP
   D03D 15/283 20210101ALI20231208BHJP
   D03D 15/275 20210101ALI20231208BHJP
   D03D 15/208 20210101ALI20231208BHJP
   D06M 15/643 20060101ALI20231208BHJP
   D06M 15/564 20060101ALI20231208BHJP
   B32B 27/12 20060101ALI20231208BHJP
   B32B 27/20 20060101ALI20231208BHJP
   B32B 5/08 20060101ALI20231208BHJP
   D06M 11/79 20060101ALI20231208BHJP
   D06M 11/44 20060101ALI20231208BHJP
【FI】
B60R21/235
D03D1/02
D03D15/283
D03D15/275
D03D15/208
D06M15/643
D06M15/564
B32B27/12
B32B27/20 Z
B32B5/08
D06M11/79
D06M11/44
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023533775
(86)(22)【出願日】2021-12-23
(85)【翻訳文提出日】2023-06-01
(86)【国際出願番号】 KR2021019706
(87)【国際公開番号】W WO2022145873
(87)【国際公開日】2022-07-07
(31)【優先権主張番号】10-2020-0186479
(32)【優先日】2020-12-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2021-0185280
(32)【優先日】2021-12-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518215493
【氏名又は名称】コーロン インダストリーズ インク
(74)【代理人】
【識別番号】100121382
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 託嗣
(72)【発明者】
【氏名】キム,ヒョ ウン
(72)【発明者】
【氏名】チョン,イル
(72)【発明者】
【氏名】キム,キ ジョン
(72)【発明者】
【氏名】ホ,ジン ウク
(72)【発明者】
【氏名】パク,ジ フン
【テーマコード(参考)】
3D054
4F100
4L031
4L033
4L048
【Fターム(参考)】
3D054CC26
3D054CC30
3D054CC45
3D054FF14
3D054FF18
4F100AA13B
4F100AA19B
4F100AA20B
4F100AA21B
4F100AA27B
4F100AD03B
4F100AD04B
4F100AD11A
4F100AJ04A
4F100AK03A
4F100AK25A
4F100AK42A
4F100AK47A
4F100AK51B
4F100AK52B
4F100AK56A
4F100BA02
4F100BA10A
4F100BA10B
4F100CA23B
4F100DG01B
4F100DG02A
4F100DG04A
4F100GB32
4F100JJ03
4F100YY00A
4F100YY00B
4L031AA19
4L031AA20
4L031AB32
4L031BA09
4L031BA20
4L031BA23
4L031DA11
4L033AA07
4L033AA08
4L033AB05
4L033AC15
4L033CA50
4L033CA59
4L033DA00
4L048AA05
4L048AA07
4L048AA13
4L048AA15
4L048AA16
4L048AA20
4L048AA21
4L048AA24
4L048AA25
4L048AA34
4L048AB11
4L048CA01
4L048CA15
4L048DA25
4L048EB00
(57)【要約】
本出願は、コーティング織物およびこれを含むエアバッグに関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維基材(A)、および前記繊維基材上に形成されるコーティング層(B)を含み、
前記コーティング層は、バインダー樹脂およびフィラー(filler)を含み、
前記フィラーは、コーティング層内に分散しており、
前記フィラーは、チョップドセラミック繊維(chopped ceramic fiber)およびその凝集物のうちの1つ以上を含む、コーティング織物。
【請求項2】
前記セラミック繊維は、Si、Al、Ti、Zr、CaおよびMgのうちの1つ以上についての酸化物、窒化物または炭化物を含む、請求項1に記載のコーティング織物。
【請求項3】
前記セラミック繊維は、Si、Al、Ti、Zr、CaおよびMgのうちの1つ以上についての酸化物を含む、請求項2に記載のコーティング織物。
【請求項4】
前記セラミック繊維は、SiO、CaOおよびMgOを含む、請求項3に記載のコーティング織物。
【請求項5】
前記セラミック繊維は、SiO 50~60重量%、CaO 20~30重量%、およびMgO 10~30重量%を含む、請求項4に記載のコーティング織物。
【請求項6】
前記バインダー樹脂は、ウレタン樹脂およびシリコーン樹脂の中から選択される1つ以上を含む、請求項1に記載のコーティング織物。
【請求項7】
前記コーティング層は、コーティング層の全体である100重量%に対して、20重量%以下で前記フィラーを含む、請求項1に記載のコーティング織物。
【請求項8】
繊維基材の1層(l ayer)に対する前記コーティング層のコーティング量が100g/m(gsm)以下である、請求項1に記載のコーティング織物。
【請求項9】
前記繊維基材は、ポリエステル繊維、アラミド繊維、ナイロン繊維、炭素繊維、ポリケトン繊維、セルロース繊維、ポリオレフィン繊維およびアクリル繊維の中から選択される1つ以上を含む、請求項1に記載のコーティング織物。
【請求項10】
前記繊維基材が含む繊維の繊度は、450~1,100dtexの範囲にある、請求項9に記載のコーティング織物。
【請求項11】
前記繊維基材は、経糸および緯糸を含む織物であり、
前記織物の経糸および緯糸密度は、それぞれ20~55th/inchの範囲以内である、請求項9に記載のコーティング織物。
【請求項12】
前記コーティング織物は、350g/m以下の重量を有する、請求項1に記載のコーティング織物。
【請求項13】
前記コーティング織物は、0.25~0.40mmの範囲の厚さを有する、請求項1に記載のコーティング織物。
【請求項14】
バインダー樹脂およびフィラー(filler)を含むコーティング組成物を、繊維基材上に塗布した後に硬化させる段階を含み、
前記フィラーは、チョップドセラミック繊維(chopped ceramic fiber)およびその凝集物のうちの1つ以上を含む、コーティング織物の製造方法。
【請求項15】
請求項1に記載のコーティング織物を含むエアバッグ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
<関連出願との相互参照>
本出願は、2020年12月29日付の韓国特許出願第10-2020-0186479号、および2021年12月22日付の韓国特許出願第10-2021-0185280号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示されたすべての内容は、本明細書の一部として含まれる。
【0002】
<技術分野>
本出願は、コーティング織物およびこれを含むエアバッグに関する。
【背景技術】
【0003】
エアバッグは、衝突などによる外力が車両に加えられる場合、センサが衝突衝撃を検知した後、火薬を爆発させ、エアバッグクッションの内部に供給されたガスによってクッションが膨張することで車両利用者を保護する装置である。このようなクッションの膨張過程に関与するインフレータ(inflator)の周辺には、高温および高圧のガスが発生するため、エアバッグ布が損傷し、これによってクッションの耐圧性能が低下する。
【0004】
このような現象を防止するために、従来は、高密度の織物生地を用いたりコーティング重量を大きくしたりすることが考えられていたが、これはエアバッグクッションの小型化や軽量化の傾向に合わず、保管性(フォールディング性)を低下させるという問題がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本出願の一つの目的は、上述した従来技術の問題点を解消できるコーティング織物を提供することである。
【0006】
本出願の他の目的は、フォールディング性に優れたコーティング織物を提供することである。
【0007】
本出願のさらに他の目的は、低重量および/または低密度の場合にも、優れた耐熱耐久性を有するコーティング織物を提供することである。
【0008】
本出願のさらに他の目的は、前記コーティング織物を含むエアバッグを提供することである。
【0009】
本出願の上記の目的およびその他の目的は、以下に説明する本発明によりすべて解決できる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本出願に係る一例において、本出願は、コーティング織物に関する。具体的には、前記コーティング織物は、繊維基材(A)、および前記繊維基材上に形成されたコーティング層(B)を含む。
【0011】
コーティング織物をなす繊維基材(A)とコーティング層(B)との間の結合関係に関連し、本明細書において、「コーティング層が繊維基材上に形成される」とは、繊維基材(および/または繊維基材を形成する繊維)の表面に、コーティング層形成物質による膜(コーティング層)が形成されることを意味する。
【0012】
本出願の具体例によれば、前記コーティング層(B)は、バインダー樹脂およびフィラー(filler)を含み、前記フィラーは、コーティング層内にて、またはバインダー樹脂内にて、分散した状態で存在する。ここで、前記フィラーは、チョップドセラミック繊維(chopped ceramic fiber)および/またはその凝集物を含むことができる。具体的には、前記フィラーは、凝集された状態のCBF(ceramic bulk fiber;セラミックバルクファイバー)であってもよい。
【0013】
一つの例において、前記繊維基材は、非セラミック繊維を含むことができる。例えば、前記繊維基材は、有機繊維を含むことができる。前記繊維基材がセラミック繊維を含む場合、エアバッグ布に基本的に要求される、引張強度、引裂強度および伸び率などの特性が良くない。
【0014】
繊維基材に含まれる有機繊維の種類は特に制限されない。例えば、前記繊維基材は、ポリエステル繊維、アラミド繊維、ナイロン繊維、炭素繊維、ポリケトン繊維、セルロース繊維、ポリオレフィン繊維およびアクリル繊維の中から選択される1つ以上を含むことができる。
【0015】
一つの例において、前記繊維基材に含まれる繊維は、450~1,100dtexの範囲の繊度を有することができる。具体的には、前記繊度の下限は、例えば、500dtex以上、550dtex以上または600dtex以上であってもよく、その上限は、例えば、1000dtex以下、900dtex以下、800dtex以下、700dtex以下または600dtex以下であってもよい。使用される繊維の繊度が前記範囲を満足する場合、適正水準の軽量性と機械的物性を確保するのに有利である。
【0016】
一つの例において、前記繊維基材は、織物または不織布であるか、これらの1つ以上を含むことができる。
【0017】
一つの例において、前記繊維基材は、1つ以上の層を含むことができる。例えば、前記繊維基材は、2つ以上の織物層を含む積層体、2つ以上の不織布層を含む積層体、または1つ以上の織物層と、1つ以上の不織布層とを含む積層体であってもよい。
【0018】
前記繊維基材は、エアバッグ用(コーティング)織物のフォールディング性を確保するために、低密度特性を有することができる。
【0019】
一つの例において、前記繊維基材は、経糸および緯糸を含む織物であってもよく、前記織物の経糸および緯糸の密度は、それぞれ20~55スレッド/インチ(th/inch)の範囲であってもよい。具体的には、前記経糸または緯糸の密度の下限は、例えば、25th/inch以上、30th/inch以上、35th/inch以上、40th/inch以上または45th/inch以上であってもよく、その上限は、例えば、50th/inch以下または45th/inch以下であってもよい。特に制限されないが、前記密度は、ISO7211-2(section3.07)に準じて測定されうる。
【0020】
従来技術の場合、エアバッグの膨張時、織物の気密性の確保と破損(または破断)の防止とのために、経糸および緯糸の少なくともいずれか1つにおいて高密度(例えば、70th/inch)で製織された繊維基材を用いることが考えられた。しかし、このような高密度織物の使用は、エアバッグの軽量化を妨げるだけでなく、エアバッグのフォールディング性と収納性にとり良くない。本出願では、上記のような低密度織物を用いるため、織物とエアバッグを軽量化することができ、エアバッグのフォールディング性と収納性を確保するのに有利である。特に、本出願のコーティング織物は、以下に説明されるコーティング層を有するため、耐熱耐久性にも優れている。
【0021】
本出願によるコーティング織物のコーティング層は、上述のように、フィラー(filler)としてセラミック繊維を含む。前記セラミック繊維は、短繊維であって、コーティング層内にて、またはコーティング層形成のための組成物内にて、互いに凝集する性質を有するため、他の種類のフィラーよりも十分な耐熱耐久性を提供することができる。
【0022】
本出願で使用されるセラミック繊維(例:CBF(ceramic bulk fiber))は、凝集しようとする性質をより強く有する。それによって、本出願で使用されるセラミック繊維は、同一サイズのセラミックフィラー(ceramic filer)、つまり、繊維形態でない通常のセラミックフィラーに比べて、優れた耐熱性を提供することができる(下記の評価2参照)。
【0023】
例えば、本出願の具体例において、前記セラミック繊維は、切断された(chopped)短繊維がかたまっている形状(バルク(bulk)形状)を有する。コーティング層内で、前記繊維は複数の凝集物を形成するのであって、このような凝集物はコーティング層内にて、またはバインダー樹脂内にて分散して存在する。
【0024】
下記の実験例から確認されるように、チョップドセラミック繊維(chopped ceramic fiber)の凝集物が、分散して存在するコーティング層を用いる実施例は、コーティング量が多い比較例1、および二重織物を用いる比較例2よりも優れた耐熱耐久性を有することができる。
【0025】
一つの例において、前記セラミック繊維、つまり、CBF(ceramic bulk fiber)は、0.1~2.0mmの範囲の大きさを有することができる。ここで、CBFの大きさは、公知の光学顕微鏡などにより確認できるのであって、CBFの形状が有するディメンション(次元・寸法)のうちの最も大きいディメンションの長さを意味しうる。
【0026】
具体的には、前記CBF(ceramic bulk fiber)の大きさは、例えば、0.15mm以上、0.20mm以上、0.25mm以上、0.30mm以上、0.35mm以上、0.40mm以上、0.45mm以上、0.50mm以上、0.55mm以上、0.60mm以上、0.65mm以上、0.70mm以上、0.75mm以上、0.80mm以上、0.85mm以上、0.90mm以上、0.95mm以上、1.0mm以上、1.05mm以上、1.10mm以上、1.15mm以上、1.20mm以上、1.25mm以上、1.30mm以上、1.35mm以上、1.40mm以上、1.45mm以上または1.50mm以上であってもよい。そして、CBF(ceramic bulk fiber)の大きさの上限は、例えば、1.95mm以下、1.90mm以下、1.85mm以下、1.80mm以下、1.75mm以下、1.70mm以下、1.65mm以下、1.60mm以下、1.55mm以下、1.50mm以下、1.45mm以下、1.40mm以下、1.35mm以下、1.30mm以下、1.25mm以下、1.20mm以下、1.15mm以下、1.10mm以下、1.05mm以下、1.0mm以下、0.95mm以下、0.90mm以下、0.85mm以下、0.80mm以下、0.75mm以下、0.70mm以下、0.65mm以下、0.60mm以下、0.55mm以下または0.55mm以下であってもよい。前記範囲を有するように凝集されたCBFは、優れた耐熱耐久性を提供することができる。
【0027】
本出願に係る具体例において、前記凝集物の分散の程度は、コーティング層の面積に対する、前記コーティング層にて視認される凝集物の占める面積として表現されうる。例えば、前記凝集物は、コーティング層の全体の面積の1~25%の範囲の面積を占めることができる。このような面積は、光学顕微鏡でコーティング層の表面を分析して計算される。具体的には、コーティング層の一表面の総面積を確認し、前記コーティング層の一表面におけるフィラー(凝集物)の占める面積を確認した後、フィラー(凝集物)がコーティング層の面積の何%を占めるかを計算する方式であって、前記フィラーの分散の程度を確認できる。ここで、コーティング層は、いくつかの領域に分割され、分割された各領域に対して測定された面積とその比率は、平均値(算術平均)として計算されうる。これに関連して用いられる光学顕微鏡の種類は特に制限されない。具体的には、前記凝集物がコーティング層の全体面積に占める面積の比率は、例えば、5%以上または10%以上であってもよく、その上限は、例えば、20%以下または15%以下であってもよい。
【0028】
一つの例において、前記セラミック繊維は、Si、Al、Ti、Zr、CaおよびMgのうちの1つ以上の酸化物、窒化物または炭化物を含むことができる。
【0029】
一つの例において、前記セラミック繊維は、Si、Al、Ti、Zr、CaおよびMgのうちの1つ以上の酸化物を含むことができる。
【0030】
一つの例において、前記セラミック繊維は、SiO、CaOおよびMgOを含むことができる。コーティング層に含まれるセラミック繊維が、少なくともSiO、CaOおよびMgOを含む場合、以下の実験例から確認されるように、優れた耐熱耐久性を確保できる。
【0031】
一つの例において、前記セラミック繊維は、SiOを50~60重量%、CaOを20~30重量%およびMgOを10~30重量%含むことができる。コーティング層に含まれるセラミック繊維がSiO、CaOおよびMgOを前記含有量範囲で含む場合、下記の実験例から確認されるように、優れた耐熱耐久性を確保することができる。
【0032】
一つの例において、繊維基材の1層(layer)に対する前記コーティング層のコーティング量は、100gsm(g/m)以下であってもよい。具体的には、前記コーティング量の下限は、例えば、50gsm以上、55gsm以上、60gsm以上、65gsm以上、70gsm以上、75gsm以上、80gsm以上、85gsm以上、90gsm以上または95gsm以上であってもよい。そして、その上限は、例えば、95gsm以下、90gsm以下、85gsm以下、80gsm以下、75gsm以下、70gsm以下、65gsm以下または60gsm以下であってもよい。一般には、コーティング量が多いほど、コーティングによる効果が増大することが期待される。しかし、本出願のコーティング層は、セラミック繊維のフィラーが分散したコーティング層であるため、コーティング量が少ない場合にも、セラミック繊維フィラーを用いない場合や、他の種類のフィラーを用いた場合よりも高いコーティング効果(例:耐熱耐久性)を確保できる。特に制限されないが、前記コーティング量は、ISO3801(section3.07)に準じて測定されうる。
【0033】
一つの例において、前記コーティング層に含まれるバインダー樹脂は、シリコーン樹脂およびウレタン樹脂の中から選択される1つ以上を含むことができる。シリコーン樹脂やウレタン樹脂の具体的な成分や特性は特に制限されない。
【0034】
本出願の具体例によれば、シリコーン樹脂がバインダー樹脂として使用できされうる。この場合、前記シリコーンバインダー樹脂を形成しうる具体的な物質の種類は特に制限されない。例えば、前記シリコーン樹脂は、ポリシロキサンが架橋または硬化して形成されたシリコーンエラストマーであるか、これを含むのでありうる。そして、重付加反応によってシリコーン樹脂を提供できるとして知られたシロキサン化合物も、シリコーンバインダー樹脂として使用されうる。その他、公知の製品、例えば、ELKEM社のTCS7516やTCS7537なども、シリコーンバインダー樹脂を含むコーティング層の形成に使用されうる。
【0035】
一つの例において、前記コーティング層は、コーティング層の全体(100重量%)に対し、20重量%以下で前記フィラーを含みうる。ここで、コーティング層の全体の100重量%は、コーティング層に含まれるバインダー樹脂およびフィラーについての、固形分(solid contents)基準の合計含有量を意味しうる。あるいは、バインダー樹脂、フィラーおよびその他の成分(例:添加剤)についての、固形分基準の合計含有量を、コーティング層全体の100重量%と見なすことができる。フィラーの含有量が前記範囲を超える場合、コーティング液の粘度が増加して分散が均一でないのであって、コーティング層の形成による効果が十分に得られなくなる。前記フィラーの含有量の下限は、特に制限されないが、例えば、1重量%以上であってもよい。具体的には、フィラーの使用による耐熱耐久性の改善効果を考慮するとき、5重量%以上のフィラーが使用されることが好ましい。
【0036】
一つの例において、前記構成を有するコーティング織物の重量(g/m)は、350g/m以下であってもよい。具体的には、前記コーティング織物の重量の上限は、例えば、340g/m以下、330g/m以下、320g/m以下、310g/m以下または300g/m以下であってもよく、その下限は、例えば、280g/m以上、290g/m以上、300g/m以上または310g/m以上であってもよい。コーティング織物の重量が前記上限を超える場合には、軽量化が難しく、織物の製造費用が増加しうる。そして、コーティング織物の重量が前記下限未満の場合には、機械的物性が低下しうる。特に制限されないが、前記コーティング織物の重量は、ISO3801(section3.07)に準じて測定されうる。
【0037】
一つの例において、前記構成のコーティング織物の厚さは、0.25~0.40mmの範囲であってもよい。ここで、前記織物の厚さは、コーティングされた織物の1層(1layer)を基準とする。具体的には、前記厚さの下限は、0.26mm以上、0.27mm以上、0.28mm以上、0.29mm以上または0.30mm以上であってもよく、その上限は、例えば、0.39mm以下、0.38mm以下、0.37mm以下、0.36mm以下、0.35mm以下であってもよい。厚さが前記範囲の下限よりも小さい場合には、十分な機械的物性を確保しにくく、前記範囲を超える場合には、フォールディング性が良くない。特に制限されるわけではないが、前記厚さは、ISO5084(section3.09)に準じて測定されうる。
【0038】
本出願に係る他の例において、本出願は、コーティング織物を製造する方法に関する。
【0039】
具体的には、前記コーティング織物の製造方法は、繊維基材上にバインダー樹脂およびフィラーを含む組成物をコーティングした後に、前記コーティングされた組成物を硬化する段階を含む。
【0040】
ここで、前記フィラーは、チョップドセラミック繊維(chopped ceramic fiber)またはその凝集物を含む。その他、前記バインダー樹脂およびフィラーに関する説明は、上述した通りであるので、省略する。
【0041】
前記コーティングは、繊維基材(および/または繊維基材を形成する繊維)の表面に前記組成物による膜(コーティング層)が形成されうるように行われる。これに関連し、前記組成物を繊維基材上にコーティングする方法は、特に制限されず、公知の方法により適切に行われうる。
【0042】
一つの例において、前記硬化は、常温またはそれ以上の温度で行われる。前記常温は、特に減温または加温が行われない状態の温度であって、約15~35℃の温度を意味しうる。そして、常温以上の温度は、加温が行われた温度であって、35℃を超える温度、例えば、40~300℃の範囲の温度を意味しうる。前記温度での硬化時間は特に制限されず、例えば、数秒(sec)~数十分(min)の間に前記硬化が行われうる。
【0043】
本出願に係る他の例において、本出願は、エアバッグに関する。前記エアバッグは、上述したコーティング織物を含む。
【0044】
エアバッグに含まれるコーティング織物の構成および特性に関する説明は上述した通りであるので、これを省略する。
【0045】
一つの例において、前記コーティング織物は、エアバッグ用補強布として使用されうる。ここで、補強布とは、エアバッグの膨張部などにてエアバッグクッション布の破損などを防止すべく継ぎ当て(裏打ち)される構成を意味する。これに関連し、エアバッグの構成のうちで補強布が継ぎ当てられる構成をメインパネル(main panel)と呼ぶことができる。これに伴い、エアバッグは、メインパネルと、前記メインパネルの少なくとも一部の面積上に取り付けられた補強布とを含むことができる。
【0046】
一つの例において、前記メインパネルは、前記補強布の面積以上の面積を有することができる。
【0047】
一つの例において、前記メインパネルは、ポリエステル繊維、アラミド繊維、ナイロン繊維、炭素繊維、ポリケトン繊維、セルロース繊維、ポリオレフィン繊維およびアクリル繊維の中から選択される1つ以上を含む織物を含むことができる。
【0048】
一つの例において、前記メインパネルは、経糸および緯糸にて45~55th/inchの範囲の密度を有する織物を含むことができる。
【0049】
一つの例において、前記メインパネルは、コーティング層を有することができる。メインパネルのコーティング層は、一般に知られた、シリコーン樹脂またはウレタン樹脂を含むことができるが、これらの樹脂に制限されるわけではない。コーティングが行われる場合、コーティング量は、20~40gsmであってもよいが、これに特に制限されるわけではない。
【発明の効果】
【0050】
本出願によれば、エアバッグおよびコーティング織物の軽量化、エアバッグクッションのフォールディング性および収納性を考慮して、低重量織物上に低密度のコーティング層が形成された場合にも、優れた耐熱耐久性を有するエアバッグ用コーティング織物が提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0051】
図1A】インフレータ損傷(inflator damage)評価方法とその結果を概略的に示す(1)。具体的に、図1Aは、評価に用いられたインフレータと織物の設置方法を概略的に示すためのイメージである。
図1B】インフレータ損傷(inflator damage)評価方法とその結果を概略的に示す(2)。具体的に、図1Bは、実施例1の耐熱性の評価結果を撮影したイメージである。
図1C】インフレータ損傷(inflator damage)評価方法とその結果を概略的に示す(3)。具体的に、図1Cは、比較例1の耐熱性の評価結果を撮影したイメージである。
図1D】インフレータ損傷(inflator damage)評価方法とその結果を概略的に示す(4)。具体的に、図1Dは、比較例2の耐熱性の評価結果を撮影したイメージである。
図2】本出願の一例によるコーティング層の表面を光学顕微鏡で撮影したイメージである。凝集された形態のフィラーは、より濃厚な陰影で視認されることを確認できる。図2から確認されるフィラーの大きさは0.1~2.0mm水準である。
図3A】フィラーの種類による耐熱耐久性の評価結果(Hot-rod評価)と凝集特性を比較して示したもの(1)である。具体的には、図3Aは、Hot-rod評価により、本件CBF(ceramic bulk fiber)繊維が、より優れた耐熱耐久性を提供することを示す実験結果である。
図3B】フィラーの種類による耐熱耐久性の評価結果(Hot-rod評価)と凝集特性を比較して示したもの(2)である。具体的には、図3Bは、フィラーの種類および凝集特性により耐熱耐久性が異なる理由を説明するための概略図である。図3Bに示されているように、CBFは他のセラミックフィラーに比べて凝集しようとする性質が強いため、高温/高圧の条件にて、コーティング層形成樹脂の損傷を抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0052】
以下、発明の具体的な実施例を通じて発明の作用、効果をより具体的に説明する。ただし、これは発明の例として提示されたものであり、これによって発明の権利範囲が、いかなる意味でも限定されるものではない。
【0053】
<実施例および比較例>
<実施例1>
コーティング組成物の製造:シリコーン系バインダー樹脂であるELKEM社のTCS7516、およびセラミックバルク繊維(ceramic bulk fiber)(SiO55重量%、CaO 25重量%およびMgO 20重量%からなるセラミック繊維)を含む組成物を用意した。この際、セラミックバルク繊維(ceramic bulk fiber)の含有量は、最終硬化したコーティング層内で約10重量%となるように調節した。
【0054】
コーティング織物の製造:繊度550dtexのPET繊維でもって織物を製造した。具体的には、織物の密度が46×46スレッド/インチ(th/inch)(経糸×緯糸)の織物(1層(1つのlayer))を用意し、このように製造された組成物を、約87g/m(gsm;grams per square meter)のレベル(水準)にて前記織物にコーティングした。この後、熱風チャンバ(chamber)を用いて、160~190℃の温度にて1分30秒以上で硬化を進行させて、織物生地を製造した。製造されたコーティング織物の重量は315g/mであり、厚さは約0.33mmである(図2参照)。
【0055】
<比較例1>
コーティング組成物の製造:シリコーン系バインダー樹脂としてELKEM社のTCS7517を用意した。
【0056】
コーティング織物の製造:繊度470dtexのPA66繊維で織物を製造した。具体的には、織物の密度が46×46th/inch(経糸×緯糸)の織物(1層; 1 layer)を用意した。そして、前記製造されたコーティング組成物を約122g/m(gsm)のレベル(水準)(実施例1よりもコーティング量が約50gsm程度多い)でもって、用意された織物にコーティングした後、実施例1と同一の条件で硬化させた。製造されたコーティング織物の重量は308g/mであり、厚さは約0.33mmである。
【0057】
<比較例2>
コーティング組成物の製造:ウレタン系バインダー樹脂であるDow corning社のDC3730を用意した。
【0058】
コーティング織物の製造:繊度470dtexのPA66繊維で織物を製造した。具体的には、織物の密度が112×96th/inch(経糸×緯糸)の織物(binded 2layers、実施例および比較例1と異なって二重織物)を用意した。そして、前記製造された組成物を約69gsm水準で前記織物にコーティングした。製造されたコーティング織物の重量は512g/mであり、厚さは約0.66mmである。
【0059】
<評価1:コーティング織物の耐熱耐久性評価>
下記の方法により実施例および比較例で製造されたコーティング織物の耐熱性を評価した。
【0060】
1.HOT-ROD評価
具体的には、円柱形状の棒(直径10mm、長さ80mmおよび重量50gである)を用意し、前記棒を所望の600℃に熱してコーティング織物上に接触させた。そして、棒が生地を完全に溶かしてから下に落ちるまでの時間(秒)を測定し、これを表1に記載した。
【0061】
2.インフレータ損傷(inflator damage)評価
KSS社のDAB用デュアルインフレータのジグ(jig)の内側に遮熱布(heat shield fabric)を一重にぐるりと重ねた後、実施例および比較例のコーティング織物生地を6重(6 layers)にぐるりと重ねる方式にて試験片を製造した(図1A参照)。そして、エアバッグが展開される際の過程を模写して、試験片に高温および高圧のガスが加えられるようにした。この際、前記高温高圧のガスは、40~80ミリ秒(ms)の間に、最高圧力180~270Kpaで与えられるように制御した。
【0062】
以後、5重コーティング織物のうちの損傷した織物の個数(n個)と、これらの損傷した織物から確認される穴(hole)の個数(m個)を測定し、nに対する重み付けを10に、mに対する重み付けを1にして、評価結果を下記のように数値化した。ダメージスコアが低いほど、耐熱性に優れている。
【0063】
ダメージスコア=(n×10)+(m×n×1)
【0064】
【表1】
【0065】
<評価2:フィラー(filler)別の耐熱耐久性の比較>
実施例1で製造されたコーティング織物のフィラーの種類を図3Aのように異ならせ、上述したHOT-ROD評価結果を比較した。具体的には、コーティング層の中でのフィラーの含有量を5wt%と、同一となるように適用した。このようにして、CBF(ceramic bulk fiber)、通常のセラミックフィラー(マイカ;Mica(約40μmのD50平均(数分布;number distribution)の大きさ)、シリカ(Silica; 約20~30μmのD50平均(number distribution)の大きさ)およびTalc(約20~30μmのD50平均(数分布;number distribution)の大きさ)をそれぞれ使用)、およびCF(carbon fiber)フィラー(約2~3mmの大きさ)を用いた場合に対して、HOT-ROD評価を行った。Y軸の結果は、約10回程度進行した後の算術平均値(単位:秒)である。
図1A
図1B
図1C
図1D
図2
図3A
図3B
【国際調査報告】