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特表2023-552365回転軸を有する振り子ロッカーダンパー
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-15
(54)【発明の名称】回転軸を有する振り子ロッカーダンパー
(51)【国際特許分類】
   F16F 15/123 20060101AFI20231208BHJP
   B60G 21/055 20060101ALI20231208BHJP
   F16F 15/121 20060101ALI20231208BHJP
   F16F 15/134 20060101ALI20231208BHJP
【FI】
F16F15/123 B
B60G21/055
F16F15/121
F16F15/123 D
F16F15/134 B
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023533794
(86)(22)【出願日】2022-01-18
(85)【翻訳文提出日】2023-06-01
(86)【国際出願番号】 DE2022100046
(87)【国際公開番号】W WO2022171231
(87)【国際公開日】2022-08-18
(31)【優先権主張番号】102021102931.7
(32)【優先日】2021-02-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515009952
【氏名又は名称】シェフラー テクノロジーズ アー・ゲー ウント コー. カー・ゲー
【氏名又は名称原語表記】Schaeffler Technologies AG & Co. KG
【住所又は居所原語表記】Industriestr. 1-3, 91074 Herzogenaurach, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】オーラフ ヴェアナー
(72)【発明者】
【氏名】アラン リュシュ
(72)【発明者】
【氏名】マーティン ヘスラー
(72)【発明者】
【氏名】ミヒャエル ケスラー
【テーマコード(参考)】
3D301
【Fターム(参考)】
3D301DA66
3D301DA72
(57)【要約】
本発明は、回転軸(2)を有する振り子ロッカーダンパー(1)に関し、振り子ロッカーダンパー(1)は、少なくとも以下のコンポーネント:-入力側(3)と、-出力側(4)と、-入力側(3)と出力側(4)との間でトルクを伝達するための貯蔵エネルギー源(5)と、-入力側ローラトラック(7)及び出力側ローラトラック(8)を有する複数のロッカー要素(6)と、-対応する数の転動要素(9、10)と、を備え、入力側(3)は、各入力側ローラトラック(7)のためのカウンタトラック(11)を有し、各入力側ローラトラックとカウンタトラックとの間には、貯蔵エネルギー源(5)によって転動可能にクランプされた入力側転動要素(9)があり、出力側(4)は、出力側ローラトラック(8)の各々のためのカウンタトラック(12)を有し、各出力側ローラトラックとカウンタトラックとの間には、貯蔵エネルギー源(5)によって転動可能にクランプされた出力側転動要素(10)がある。振り子ロッカーダンパー(1)は、とりわけ、互いに軸方向にオフセットされて配置された3つの別個の部分トラック(13、14、15)が、ロッカー要素(6)によって囲まれ、ローラトラック(7、8)を形成することを特徴とする。本発明は更に、振り子ロッカーダンパー(1)を有する転動スタビライザ(32)に関する。ここで提案される振り子ロッカーダンパーは、コンパクトであり、高いねじり剛性を生成することを可能にする。本転動スタビライザは、ラトルノイズが低減されて動作することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸(2)を有する振り子ロッカーダンパー(1)であって、少なくとも以下のコンポーネント:
-入力側(3)と、
-出力側(4)と、
-前記入力側(3)と前記出力側(4)との間でトルクを伝達するための貯蔵エネルギー源(5)と、
-入力側ローラトラック(7)及び出力側ローラトラック(8)を有する複数のロッカー要素(6)と、
-前記ロッカー要素(6)の前記ローラトラック(7、8)の数に対応する数の転動要素(9、10)と、を備え、
前記入力側(3)が、前記入力側ローラトラック(7)のそれぞれ1つに各々が対応する1つの入力側カウンタトラック(11)を有し、前記入力側カウンタトラック(11)の間に、各々が前記貯蔵エネルギー源(5)によって転動可能にクランプされた1つの入力側転動要素(9)があり、かつ、
前記出力側(4)が、前記出力側ローラトラック(8)のそれぞれ1つに各々が対応する1つの出力側カウンタトラック(12)を有し、前記出力側カウンタトラック(12)の間に、各々が前記貯蔵エネルギー源(5)によって転動可能にクランプされた1つの出力側転動要素(10)があり、
前記ロッカー要素(6)が各々、互いに対して軸方向にオフセットされるように配置され、かつ、前記ローラトラック(7、8)が形成される3つの別個の部分トラック(13、14、15)を備えることを特徴とする、振り子ロッカーダンパー(1)。
【請求項2】
前記入力側ローラトラック(7)及び前記出力側ローラトラック(8)が各々、前記ロッカー要素(6)の半径方向外側に配置されている、請求項1に記載の振り子ロッカーダンパー(1)。
【請求項3】
前記入力側(3)及び前記出力側(4)が、互いに軸方向に隣接するように配置されており、
前記入力側(3)及び/又は前記出力側(4)が、好ましくは、2つの別個の部分要素(16、17)を含む、請求項1又は2に記載の振り子ロッカーダンパー(1)。
【請求項4】
前記貯蔵エネルギー源(5)が、直線状のばね軸(20)を有する少なくとも1つの圧縮コイルばね(18、19)を備えており、
前記ばね軸(20)が、好ましくは、前記入力側転動要素(9)と前記出力側転動要素(10)との間に延在するように配置されている、請求項1~3のいずれか一項に記載の振り子ロッカーダンパー(1)。
【請求項5】
前記圧縮コイルばね(18、19)のうちの少なくとも1つのワイヤ直径(21)が、走行面(23、24、25、26)における前記転動要素(9、10)のローラ直径(22)から20%未満だけ逸脱し、好ましくは、前記ワイヤ直径(21)が、前記ローラ直径(22)よりも5%超大きく、
前記ワイヤ直径(21)が、好ましくは、5mmよりも大きく、前記ロッカー要素(6)の外周から形成されるコア直径(27)が、80mm未満、好ましくは、40mm未満である、請求項4に記載の振り子ロッカーダンパー(1)。
【請求項6】
前記ロッカー要素(6)のうちの少なくとも1つが、その受け面(29)に、前記圧縮コイルばね(19)のうちの少なくとも1つ、好ましくは、内側の圧縮コイルばねを受けるための窪み(28)を有する、請求項4又は5に記載の振り子ロッカーダンパー(1)。
【請求項7】
前記入力側(3)と前記出力側(4)との間の最大相対ねじれ角(30)が、10°未満、好ましくは、5°未満である、請求項1~6のいずれか一項に記載の振り子ロッカーダンパー(1)。
【請求項8】
前記入力側(3)と前記出力側(4)との間の設計による最大相対ねじれ角(30)において、前記ローラトラック(7、8)及び前記カウンタトラック(11、12)によって、約1mm~10mm、好ましくは、最大6mmまでの前記貯蔵エネルギー源(5)の最大ばね撓み(31)がもたらされる、請求項1~7のいずれか一項に記載の振り子ロッカーダンパー(1)。
【請求項9】
自動車(35)の車軸(33、34)のための転動スタビライザ(32)であって、少なくとも、以下のコンポーネント:
-少なくとも1つのホイールばね接続部(36、37)、
-好ましくは、請求項1~8のいずれか一項に記載の少なくとも1つの振り子ロッカーダンパー(1)、を備え、
前記少なくとも1つのホイールばね接続部(36、37)が、トルクを伝達する様態で前記振り子ロッカーダンパー(1)に接続されており、
前記振り子ロッカーダンパー(1)が、入力側(3)、出力側(4)、複数のロッカー要素(6)、対応する数の転動要素(9、10)、及び貯蔵エネルギー源(5)を備えており、
前記転動要素(9、10)が、前記ロッカー要素(6)のローラトラック(7、8)と前記入力側(3)又は前記出力側(4)のカウンタトラック(11、12)との間で前記貯蔵エネルギー源(5)によって転動可能にクランプされており、
好ましくは、アクチュエータ(38)、特に好ましくは、多段式遊星ギア(39)が、前記アクチュエータ(38)と前記振り子ロッカーダンパー(1)との間のトルクフローに設けられており、
前記少なくとも1つのホイールばね接続部(36、37)が、トルクを伝達する様態で、前記振り子ロッカーダンパー(1)によって前記アクチュエータ(38)に接続されている、転動スタビライザ(32)。
【請求項10】
自動車(35)であって、
駆動エンジン(40)と、少なくとも1つの車軸(33、34)と、前記車軸(33、34)のうちの少なくとも一方上に、請求項9記載の少なくとも1つの転動スタビライザ(32)と、を有する、自動車(35)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転軸を有する振り子ロッカーダンパーに関するものであり、本振り子ロッカーダンパーは、少なくとも、以下のコンポーネント:
-入力側と
-出力側と、
-入力側と出力側との間でトルクを伝達するための貯蔵エネルギー源と、
-入力側ローラトラック及び出力側ローラトラックを有する複数のロッカー要素と、
-対応する数の転動要素と、を備え、
入力側は、入力側ローラトラックのそれぞれ1つについて各々1つのカウンタトラックを有し、それらのカウンタトラックの間に、各々が貯蔵エネルギー源によって転動可能にクランプされた1つの入力側転動要素があり、かつ、
出力側は、出力側ローラトラックのそれぞれ1つについて各々1つのカウンタトラックを有し、それらのカウンタトラックの間に、各々が貯蔵エネルギー源によって転動可能にクランプされた1つの出力側転動要素がある。振り子ロッカーダンパーは、第一に、ロッカー要素が各々、互いに対して軸方向にオフセットされるように配置され、かつ、ローラトラックが形成される3つの別個の部分トラックを備えることを特徴とする。更に、本発明は、そのような振り子ロッカーダンパーを有する転動スタビライザに関する。本発明は更に、自動車の車軸のための転動スタビライザ及び自動車に関する。
【背景技術】
【0002】
いわゆる、振り子ロッカーダンパーは、従来技術から既に知られている。例えば、ドライブトレイン内の回転シャフト又は回転シャフトシステムの剛性を調節する概念が、DE 10 2019 121 204 A1及びDE 10 2019 121 205 A1によって知られている。これらの振り子ロッカーダンパーは、入力側と出力側とを有しており、これらの入力側と出力側とは、トルクを伝達する様態で互いに(両方向に)結合されている。複数のロッカー要素(ロッカーとも称される)及び複数のばね要素が介在される。ロッカー要素は、入力側及び/又は出力側の少なくとも1つの転動要素によって相対的に変位可能な様態で支持されている。転動要素は、それぞれの伝達トラックと相補的なカウンタトラックとの間で転動することができるように、ばね要素によってクランプされている。入力側と出力側との間の相対なねじれ角が、この振り子ロッカーダンパーによって、ばね要素のばね撓みに変換される。ランプギアを形成する伝達トラック及び相補的なカウンタトラックによって、伝達比を調整することができ、これにより、振り子ロッカーダンパーの剛性を調整することができる。ここでも、伝達比が一定である必要はなく、入力側から出力側へのねじれ角を介してランプギアの傾きを可変に調整することができることが有利である。他の実施形態と比較したそのような振り子ロッカーダンパーの更なる利点は、振り子ロッカーダンパーが、特にゼロ交差において、ヒステリシス特性を(ほとんど)有さないことである。既知の振り子ロッカーダンパーは、大量の取り付け空間を必要とし、回転シャフトの剛性を低減するように設計されている。
【0003】
更に、従来技術から、いわゆる転動スタビライザが既知であり、この転動スタビライザによって、二輪車軸の一方のホイールのばね特性が、それぞれ他方のホイールに転写される。例えば、コーナリング時には、車体の転動レートがカーブの外側に減少する。例えば、ポットホールを通り抜けるときに他方のホイールを模倣することを防止するために、アクティブ転動スタビライザがますます使用されている。これらは、アクチュエータ及びダンパーデバイスを備える。ダンパーデバイスは、ホイールの短時間の(垂直方向の)撓み(例えば、ポットホールの場合に発生するような)を伝達から切り離すように、及び/又はコンポーネントを保護するためにトルク衝撃を遅延させるようにセットアップされる。エラストマーを有するダンパーデバイスは、現在、減衰体として使用されている。これらは、例えば1.5kNm(1.5キロニュートンメートル)のトルクを有する非常に高い負荷を受ける。更に、そのようなダンパーデバイスの伝達特性をプロセスに信頼できる様態で設定することは困難であり、エラストマー本体にはその耐用年数にわたって経年変化の兆候が生じる。減衰体としてエラストマーを有するこのようなダンパーデバイスは、非常にコンパクトであるという大きな利点を有する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこから進んで、本発明の目的は、先行技術から知られている欠点を少なくとも部分的に解消することである。本発明による特徴は、有利な実施形態が従属請求項に示されている独立請求項から生じる。特許請求の範囲の特徴は、任意の技術的に合理的な方法で組み合わせることができ、本発明の追加の実施形態を含む、以下の記載における説明及び図面からの特徴もまた、この目的のために使用することができる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、回転軸を有する振り子ロッカーダンパーに関するものであり、本振り子ロッカーダンパーは、少なくとも、以下のコンポーネント:
-入力側と、
-出力側と、
-入力側と出力側との間でトルクを伝達するための貯蔵エネルギー源と、
-入力側ローラトラック及び出力側ローラトラックを有する複数のロッカー要素と、
-ロッカー要素のローラトラックの数に対応する数の転動要素と、を備え、
入力側は、入力側ローラトラックのそれぞれ1つに各々が対応する1つの入力側カウンタトラックを有し、それらの入力側カウンタトラックの間に、各々が貯蔵エネルギー源によって転動可能にクランプされた1つの入力側転動要素があり、かつ、
出力側は、出力側ローラトラックのそれぞれ1つに各々が対応する1つの出力側カウンタトラックを有し、それらの出力側カウンタトラックの間に、各々が貯蔵エネルギー源によって転動可能にクランプされた1つの出力側転動要素がある。
【0006】
振り子ロッカーダンパーは、第一に、ロッカー要素が各々、互いに対して軸方向にオフセットされるように配置され、かつ、ローラトラックが形成される3つの別個の部分トラックを備えることを特徴とする。
【0007】
特に明記しない限り、「中心」、「軸方向」、「半径方向」、又は「円周方向」という用語、並びに対応する用語が以下で使用される場合、記載された回転軸が参照される。特に明記されていない限り、前及び後の説明で使用される序数は、明確に区別する目的でのみ使用され、指定されたコンポーネントの順序又は順位を示すものではない。1よりも大きい序数は、そのような他のコンポーネントが存在しなければならないことを必ずしも意味しない。
【0008】
ここで提案される振り子ロッカーダンパーは、ローラトラックの配置、すなわち入力側ローラトラック及び出力側ローラトラックの両方が、それぞれのロッカー要素上の非常にコンパクトな設計を可能にするため、極めてコンパクトである。転動要素は、軸方向に互いに隣接して配置される結果として、(関連するロッカー要素の揺動運動に対応する)転動要素の走行方向に互いに近接して配置することができる。走行方向は、関連するロッカー要素の揺動運動中の転動要素の転動軸の移動である。一実施形態では、ロッカー要素の転動要素の転動軸は、ロッカー要素が静止位置にあるときに貯蔵エネルギー源に対して同じ高さに配置され、好ましくは、これだけで、転動要素、ロッカー要素、及びローラトラックの同じ幾何学的形状を有する側部にわたって力の平衡を生み出すように配置される。有利な実施形態では、入力側及び出力側の両方が、半径方向外側に配置されている。これにより、中央取り付け空間は、ロッカー要素及び貯蔵エネルギー源によってのみ占有される。この点で、貯蔵エネルギー源は、力を吸収し、この力を(ほぼ)損失なく出力するように(少なくとも組み合わせて)設計された1つ又は複数の要素を備えることが指摘されるべきである。そのような要素は、例えば、コイルばね、固体ばね、ガス蓄圧器、又はゴム弾性挙動を示す材料のブロックである。貯蔵エネルギー源によって保持される力は、好ましくは、圧縮力として提供される。
【0009】
それに応じて、入力側及び出力側のカウンタトラックは、半径方向内側に向いており、その結果、転動要素は、トラック間に配置され、各々が、ローラトラック及び対応する(かつ相補的な)カウンタトラックからなるトラックの対を形成する。貯蔵エネルギー源の力の導入点又は導入表面は、それぞれのロッカー要素に対して更に半径方向内側になるように配置される。これにより、トラックを介して、半径方向外側に向かう予圧が転動要素に印加される。これにより、転動要素は、(設計に従って作動されたときに)トラックに対して転動する様態で(それぞれの転動軸の周りで)のみ移動可能である。これにより、ランプギアが形成される。好ましい実施形態では、ここで言及される振り子ロッカーダンパーのコンポーネントを固定及び/又は支持するための更なる手段は設けられていない。有利な実施形態では、それぞれの転動要素及びそれぞれの2つのトラックのうちの少なくとも一方は、コンポーネントを互いに軸方向に固定するための機械的停止部を形成する。例えば、転動要素のうちの少なくとも1つは、その転動軸に対して半径方向外側を指す肩部を有する。
【0010】
ここでは、入力側及び出力側が、より良好な区別のために規定される。しかしながら、これは、トルク曲線の方向を規定しない。むしろ、トルクは、好ましくは、最大トルク、最大ねじれ角及び/又は伝達比の伝達可能性のいかなる差もなく、ロッカー要素及び貯蔵エネルギー源によって2つの側部の間で機能的に同一の様態で両方向に伝達され得る。入力側及び/又は出力側は、例えば、中心(共通)回転軸の周りにリング状に形成される。(回転軸に対して)半径方向内側に、カウンタトラックと、場合によっては、他のコンポーネントの相対可動性のための膨出部及び/又は少なくとも1つの停止部とが設けられて、例えば、過負荷の場合に過度に大きい相対ねじれ角を防止する。
【0011】
そのようなロッカー要素は、入力側に向かって転動要素を収容するための(少なくとも)1つのローラトラックと、出力側に向かって転動要素を収容するための(少なくとも)1つの別のローラトラックとを備える。更に、ロッカー要素は、予圧力を導入するために、貯蔵エネルギー源の要素のための受け面を備えており、この予圧力は、トラック及び転動要素によって、入力側から出力側への相対回動に抗するトルクに変換される。予圧力及び所望の(最大の)伝達可能なトルクのための力は、少なくとも部分的に、好ましくは、全体として、同じ方向に、作用するようにセットアップされる。トラックは、入力側及び出力側が互いに対して回転するときに、ロッカー要素が互いに対してわずかな相対傾斜のみを受けるように、好ましくは、相対傾斜を全く受けないか又は無視可能であるようにセットアップされる。一実施形態(好ましくは、全体としてのみ)では、2つのロッカー要素が互いに対向するように配置され、それらの間の貯蔵エネルギー源は、2つの側部が互いに対して回転し、互いに対して傾斜していないか、又は互いに対して無視できる程度に傾斜している場合にのみ圧縮される。先に説明した実施形態とは無関係に、好ましい実施形態では、振り子ロッカーダンパーの転動要素上の合力は、それぞれのトラックにちょうど隣接した接触線の正接(トラックの方向に整列している)に対して常に垂直に整列している。
【0012】
ここで、そのようなロッカー要素が、互いに対して軸方向にオフセットされるように配置された3つの別個の部分トラックを備えることが提案される。例えば、部分トラックのうちの2つから、(単一の)ローラトラック(例えば、出力側のローラトラック)が形成される。第3の部分トラックから、(単一の)第2のローラトラック(例えば、入力側のローラトラック)が形成される。特に好ましくは、第1の部分トラック及び第2の部分トラックは、軸方向外側に配置され、第3の部分トラックは、他の2つの部分トラックの間に軸方向に配置される。特に好ましい実施形態では、部分トラックに対応する部分カウンタトラックが側部上に形成され、具体的には、1つの(単一の)部分トラックが設けられる場合には2つの部分カウンタトラックが形成され、2つの部分トラックが設けられる場合には1つの(単一の)部分カウンタトラックが形成される。例えば、入力側は、入力側カウンタトラックを備え、入力側カウンタトラックは、(単一の)部分カウンタトラックから形成され、かつ、入力側転動要素の入力側第2の走行面と転がり接触する。そこでは、ロッカー要素は、入力側ローラトラックを備え、入力側ローラトラックは、2つの部分トラックから形成され、かつ、入力側転動要素の対応する入力側第1の走行面と転がり接触する。出力側については、それは、好ましくは、正確に反対であり、すなわち、出力側転動要素は、ロッカー要素の出力側ローラトラック上で軸方向に中心に、かつ、出力側の出力側カウンタトラック上で2つの部分カウンタトラックによって軸方向外側に転動する様態で支持される。
【0013】
そのような振り子ロッカーダンパーでは、エネルギーは、転動要素によって、個別に適合可能な伝達特性(相対ねじれ角に対するトルク)に変換される。転動要素の転がり接触には純粋な転動があり、したがって摩擦がないため、実質的にヒステリシスはない。ローラトラック及び相補的なカウンタトラックは、貯蔵エネルギー源を交換することなく、モジュールの様態で任意の伝達特性を達成することを可能にする。
【0014】
有利な実施形態では、各転動要素は、転動軸の方向で外側で等辺の走行面に支持され、転動軸に対して交差する方向の傾斜モーメントに抗する。出力側、入力側、又は対応するロッカー要素上に、等辺の走行面が形成される。(好ましくは一体の)他の走行面は、2つの外側支持走行面の間に配置され、それに応じて、対抗コンポーネント上に、すなわち、(上述した対応する順序で)対応するロッカー要素上に、又は出力側若しくは入力側にそれぞれ支持される。ロッカー要素側では、そのような傾斜モーメントは、好ましくは、貯蔵エネルギー源によって、特に好ましくは、予圧力を生成するか又はこの予圧力に寄与する同じ要素によって、対抗支持される。
【0015】
好ましい実施形態では、ここで提案される振り子ロッカーダンパーは、回転シャフト内では使用されず、振り子ロッカーダンパーの回転軸を中心とした片側又は両側のねじり撓みのみで静的に使用され、例えば、車両サスペンション、例えば、転動スタビライザ内で、ダンパーデバイスとして、例えば、トランクリッド又はフードのフラップダンパーとして、又は車両ドア用のラッチ機能を提供するために使用される。
【0016】
また、振り子ロッカーダンパーの有利な実施形態では、入力側ローラトラック及び出力側ローラトラックは各々、ロッカー要素の半径方向外側に配置されることが提案される。
【0017】
特にコンパクトな設計のために、ロッカー要素は、半径方向外側に(すなわち、それぞれの側部に向かって、及び/又は貯蔵エネルギー源から離れて)開くように設計される。転動要素は、外側から、すなわち、それぞれの転動軸に対して半径方向に、関連付けられたローラトラック上に位置付けることができる。それにもかかわらず、一実施形態では、転動要素は、組み立て中にそれらの転動軸に対して軸方向に押し込まれる。この実施形態では、全ての既存のローラトラックが、半径方向外側に(すなわち、貯蔵エネルギー源の中心及び/又は力の平衡及び/又は振り子ロッカーダンパーの対称軸から離れるように)配置されることが指摘されるべきである。ローラトラックは、ロッカー要素内に配置されず、又は貯蔵エネルギー源の方を指すように配置されない。これにより、既存の(相補的な)カウンタトラックも全て、半径方向内向きに、好ましくは、リング状に形成された側部の半径方向内向きに向くように配置される。特にコンパクトな設計のために、側部はまた、半径方向内向きに(すなわち、それぞれのロッカー要素に向かって、又は貯蔵エネルギー源に向かって)開くように設計される。一方の側部は、好ましくは、転動要素の一方の(最大)端部から転動要素の反対側の(最大)端部まで延在するか、又はより短いか若しくはそれを越えて突出する軸方向範囲を有する。一実施形態では、側部の少なくとも一方は、更なる要素に軸方向に接続されるか、又は一体に形成され、軸方向の重なりの外側で、振り子ロッカーダンパーの(貯蔵エネルギー源及び/又は力の平衡及び/又は対称軸の)中心に向かって(半径方向にリング状の側部の場合)、ロッカー要素及び/又は貯蔵エネルギー源を有する転動要素のうちの1つと重なる。一実施形態では、ロッカー要素及び/又は貯蔵エネルギー源のレベルでの軸方向の重なりは、可動要素(又はそれらの移動トラック)の外側の領域においてのみ、例えば、2つの側部のうちの一方における2つの部分要素間の接続ボルトによって形成される。リング状に形成された側部の場合、(例えば、対としての)ロッカー要素は、側部によって囲まれた円内に2つの円セグメントを形成する。ロッカー要素の円セグメントを除いた囲まれた円内に、貯蔵エネルギー源のための取り付け空間が存在する。この貯蔵エネルギー源は、好ましくは、中央取り付け空間が完全に満たされる(直線状のばね軸を有するコイルばねの場合には、エンベロープ、例えば円筒形状によって)ような方法で、セットアップされる。
【0018】
また、振り子ロッカーダンパーの有利な実施形態では、入力側及び出力側は、互いに軸方向に隣接するように配置され、入力側及び/又は出力側は、好ましくは2つの別個の部分要素を含むことが提案される。
【0019】
この実施形態では、特に半径方向にコンパクトな設計を達成することができる。例えば、入力側及び出力側の外周は(およそ又は正確に)同じである。一実施形態では、入力側及び出力側の内周、すなわちロッカー要素に向かう延在部は、(およそ又は正確に)同じであり、それぞれのカウンタトラックの配置は、反対のねじれ角に起因して、(好ましくは)対称の実施形態で鏡映される。一実施形態では、入力側及び出力側は、(場合によっては、軸方向の取り付け長さを除いて)構造が同一である。一実施形態では、入力側は、出力側と軸方向に重なり合い、又はその逆も同様であり、その結果、重なり合う入力側又は出力側は、回転軸に対して支持されており、振り子ロッカーダンパーの取り付け長さに対応する(場合によっては、それよりもわずかに短い)軸方向距離で支持され得る。これにより、回転軸に対して交差する方向の傾斜モーメントに対する高レベルの剛性が生み出される。一実施形態では、3つ以上の別個のローラトラックがロッカー要素上に設けられ、対応する数の別個のカウンタトラックが側部に設けられ、加えて、別個の走行面が転動要素に設けられる。
【0020】
有利な実施形態では、側部のうちの一方、例えば出力側は、2つの別々の部分要素と対をなして形成され、これら部分要素は、それぞれ他方の側部、例えば、入力側に軸方向に隣接するよう配置される。一実施形態では、2つの別個の部分要素は、互いに接続されず、単に機能的にともにそれぞれの側部を形成し、それぞれの側部は、転動要素及びロッカー要素のギア接続を介して別個の部分要素に割当てられる。したがって、2つの部分要素は常に互いに同期して移動する。別個の動作モードの代替として、(例えば、スペーサボルトによる)接続が、振り子ロッカーダンパーの(ロッカー要素が配置される)コア直径の半径方向外側の関連する側部の2つの部分要素間に、又はこのコア直径内に形成される。コア直径内に接続部を有する実施形態は、相対的なねじれ角が小さい場合に有利である。
【0021】
また、振り子ロッカーダンパーの有利な実施形態では、貯蔵エネルギー源は、直線状のばね軸を有する少なくとも1つの圧縮コイルばねを備えており、
ばね軸は、入力側転動要素と出力側転動要素との間に延在するように配置されることが提案される。
【0022】
この特に単純な実施形態は、費用効果の高い設計及び少ない数の別個の構造コンポーネントを可能にする。圧縮コイルばねは、同様に、転動要素に対して最小の予圧を及ぼすように、振り子ロッカーダンパーの回転軸に対して交差する方向の傾斜モーメントに対する支持を提供するように、かつ(主機能として)入力側と出力側との互いに対する相対回転に対して所望の反力を提供するように、ロッカー要素によってセットアップされる。好ましい実施形態では、2つのロッカー要素は、互いに直径方向に対向するように配置され、1つ以上の圧縮コイルばねは、それらの(それぞれの)ばね軸が2つのロッカー要素間の最短距離に並行になるように位置合わせされる。形成されたランプギアは、入力側と出力側との間のねじれ角が増大するにつれて圧縮コイルばねの圧縮を増大させ、それにより、(変位に比例して)増大する反力が生成される。圧縮コイルばねは、低いエネルギー散逸を示し、簡単な様態で過負荷に対して設計することができ、例えば、オンブロック負荷まで破損に対して安全であるように設計することができ、及び/又は最大ばね撓みを(例えば、ロッカー要素上の)停止部によって制限することができる。圧縮コイルばねはまた、非常に正確に調整された変位-力特性(例えば、ゴム弾性材料ブロックと比較して)を伴って安価に生産することができ、又は標準部品として市販されており、十分に長い耐用年数にわたって考慮しなければならない経年変化の兆候を受けない。圧縮コイルばねの限界負荷も、例えば、オンブロック負荷までの最大ばね撓みによって、設計に関して容易に考慮される。
【0023】
有利な一実施形態では、少なくとも1つの圧縮コイルばねのばね軸は、それぞれのロッカー要素の(例えば、2つの)転動要素の間に、好ましくは、およそ(例えば、3mm(3ミリメートル)以下だけずれて)又は正確に中央に、特に好ましくは、回転軸と交差して又は小さいオフセット(例えば、最大で±0.5mm(プラス/マイナス0.5ミリメートル)の)で配置される。一実施形態では、2つ以上の圧縮コイルばねが、例えば同一のばね軸を有して互いに入れ子になるように配置され、2つの圧縮コイルばねのうちの一方が、好ましくは、他方の圧縮コイルばねを誘導し、2つの圧縮コイルばねのうちの一方のみが、ばね軸に対して交差する方向に取り付けられる。一実施形態では、圧縮コイルばねのうちの1つは、その弛緩長において、貯蔵エネルギー源によって互いに対して支持されるロッカー要素の(ねじれ角ゼロにおける)最短距離よりも短い。2つの側部の互いに対する所定のねじれ角においてのみ、両方のロッカー要素が、この(短い)圧縮コイルばねと力伝達接触する。これはまた、振り子ロッカーダンパーの伝達特性にわたって剛性の(段階的な)増加を生み出し、及び/又は他の(長く恒久的に力伝達接触している)圧縮コイルばねのオンブロック負荷又は過負荷に対する保護手段を形成する。そのような短い圧縮コイルばねはまた、貯蔵エネルギー源要素の別の実施形態と組み合わせることができる。
【0024】
中央位置に貯蔵エネルギー源として少なくとも1つの圧縮コイルばねを有する振り子ロッカーダンパーは、高いワイヤ厚さを可能にし、これは、非常に高いエネルギー量を意味する。このエネルギー量は、転動要素によって、個々に適合可能な伝達特性に変換される。転がり接触には純粋な転動があり、したがって摩擦がないため、実質的にヒステリシスはない。圧縮コイルばねの硬さは、ほとんど変化しない。これは、耐用期間にわたって高品質の絶縁を保証する。ローラトラック及び相補的なカウンタトラックは、圧縮コイルばねを交換することなく、モジュールの様式で任意の特性を達成することを可能にする。
【0025】
更に、振り子ロッカーダンパーの有利な実施形態では、圧縮コイルばねのうちの少なくとも1つのワイヤ直径は、走行面における転動要素のローラ直径から20%未満だけ逸脱し、好ましくは、ワイヤ直径は、ローラ直径よりも5%超大きく、ワイヤ直径は、好ましくは、5mmよりも大きく、ロッカー要素の外周から形成されるコア直径は、80mm未満、好ましくは、40mm未満であることが提案される。
【0026】
ここで提案される振り子ロッカーダンパーは、その全体寸法又はその伝達可能なトルクと比較して非常に高いレベルの硬さを有する圧縮コイルばねを有する。好ましい実施形態では、圧縮コイルばねは、(設計による)最大伝達可能トルクにおける唯一の力伝達要素であり、すなわち、(停止部及び/又は追加の貯蔵エネルギー源要素などの)並列構造は設けられない。例えば、1.5kNm(1.5キロニュートンメートル)の最大トルクを圧縮コイルばねを介して伝達することができ、例えば、5kN(5キロニュートン)~30kNの最大ばね力が圧縮コイルばねに印加され、圧縮コイルばねは依然として自由なばね撓み能力を有し、したがって、ブロックするまで負荷がかからない。
【0027】
有利な実施形態では、振り子ロッカーダンパーのコア直径は、80mm(80ミリメートル)未満、好ましくは、40mm未満である。振り子ロッカーダンパー又はここに記載のコンポーネントの外径は、好ましくは、100mm未満、例えば、約60mmである。コア直径は、取り付け状態におけるロッカー要素の外周によって画定され、コア直径は、ロッカー要素の最大半径方向範囲(外側)に対して正弦方向に配置された、回転軸の周りの円の直径に対応する。代替的に、コア直径は、取り付け状況において半径方向に最も外側の(例えば、全ての)転動要素の転動軸を通る円の直径である。取り付け状況は、入力側と出力側との間にねじれ角がない状況である。この場合、少なくとも1つの圧縮コイルばねのワイヤ直径は、好ましくは、5mm(5ミリメートル)よりも大きく、特に好ましくは、約10mmである。転動要素のローラ直径は、例えば、9.5mmであり、ワイヤ直径から-5%(マイナス5パーセント)の偏差を有する。一実施形態では、振り子ロッカーダンパーの軸方向取り付け長さは、100mm(100ミリメートル)未満、好ましくは、約50mmである。転動要素は、好ましくは、振り子ロッカーダンパーの軸方向取り付け長さと軸方向にちょうど同じ長さであるか又はこれよりも僅かに短い。
【0028】
また、振り子ロッカーダンパーの有利な実施形態では、ロッカー要素のうちの少なくとも1つは、圧縮コイルばねのうちの少なくとも1つ、好ましくは、内側の圧縮コイルばねを受容するための窪みをその受け面に有することが提案される。
【0029】
窪みは、圧縮コイルばねの確実な誘導を提供する。突出部とは対照的に、窪みは、受容される圧縮コイルばねのより長い設計を可能にし、これにより、より大きなばね撓み能力及び/又はばね硬さを可能にする。窪みはまた、ロッカー要素が確実な成形のために鋳造又は焼結によって製造される場合に有利である。好ましい実施形態では、内側(又は最も内側)の圧縮コイルばねのみが、窪みによって受容される。(1つ以上の)他の圧縮コイルばねは、好ましくは、窪みによって誘導される圧縮コイルばねによってのみ誘導される。一実施形態では、圧縮コイルばねは、設計通りに機能しているときに決して互いに接触しないように設計される。代替的に、それらは、限界負荷に達したとき、例えば、圧縮コイルばねのうちの少なくとも1つがオンブロック負荷を受けたときにのみ接触する。一実施形態では、エネルギー散逸が生じるように、所定の負荷からの圧縮コイルばね間の摩擦が望まれる。このエネルギー散逸は、好ましくは、相対ねじれ角の外側限界範囲内でのみ生じ、ゼロ交差では生じない。これにより、ゼロ交差では、ヒステリシスは(およそぼ)ゼロである。それにもかかわらず、安全限界及び/又は反力若しくは逆トルクの増加が、(設計による最大ねじれ角と比較して)大きいねじれ角で生成され得る。
【0030】
また、振り子ロッカーダンパーの有利な実施形態では、入力側と出力側との間の最大相対ねじれ角が10°未満、好ましくは、5°未満であることが提案される。
【0031】
回転シャフトシステムのドライブトレインで使用するための既知の振り子ロッカーダンパーの場合、200Nm(200ニュートンメートル)~300Nmの低い剛性で±20°(360°からプラス/マイナス20度)~±30°の最大ねじれ角が必要とされるが、ここでは、好ましくは、±10°(プラス/マイナス10度)未満、更には±5°未満、例えば±3°~±4°の低いねじれ角で約1.5kNmの(既に上述したような)非常に高い剛性が提供される。このような振り子ロッカーダンパーは、例えば、転動スタビライザのために、別の手段なしに、トルクフローにおける唯一のダンパーデバイスとして使用することができる。そのような転動スタビライザの取り付け空間及び質量又は力に応じて、他の値を達成することができる。加えて、ヒステリシス特性を(ほぼ)含まない伝達曲線を達成することができ、その結果、例えば、小さいねじれ角(例えば、凹凸のある道路を走行しているときの自動車において)に対して、固有の、例えば、ソフトな伝達特性が存在し、大きいねじれ角(例えば、高い横加速度でコーナリングしているときの自動車において)に対して、固有の、例えば、ハードな伝達特性が存在する。パットホールの上を走行するとき、ホイール組立体の重量のみが影響を及ぼすため、低いトルクが転動スタビライザに生じる。伝達特性の剛性が低い(低トルクに対応する)場合、これらは、車軸上の他方のホイールに伝達されないか、又は大きな減衰を伴って伝達される。コーナリング時には、車体全体がカーブの外側に向かって(交差する方向に)加速され、その結果、転動スタビライザに著しく高いトルクが発生する。次いで、これらは、伝達特性の高い剛性(高いトルクに対応する)を有する他方のホイールに渡される。
【0032】
また、振り子ロッカーダンパーの有利な実施形態では、ローラトラック及びカウンタトラックによって、入力側と出力側との間の設計に応じた最大相対ねじれ角で、約1mm~10mm、好ましくは、最大6mmまでの貯蔵エネルギー源の最大ばね撓みがもたらされることが提案される。
【0033】
貯蔵エネルギー源のばね撓みは、振り子ロッカーダンパーの高度のコンパクト性を達成することができるように、可能な限り小さくすべきである。いくつかの用途では、振り子ロッカーダンパーの高い(最大)剛性がまた、(例えば上述したように)低い最大ねじれ角とともに必要とされる。転動要素、すなわち、ランプギアのためのトラックにより、このような関係を達成することができ、また、どの場合にも、必要とされる特性曲線を有する要件に個々に適合させることができる。有利な実施形態では、構造が常に同一であるか、又はわずかに変更された貯蔵エネルギー源を、異なる伝達特性のために使用することができる。ランプギアの形状のみが適合される必要がある。代替的に、同じ特性であるが異なる力又はトルクを有する所望の伝達特性を達成するために、貯蔵エネルギー源のみが交換される必要がある。要求される取り付け空間は、特に好ましくは、貯蔵エネルギー源及び/又はランプギアに必要な変更がある状態で、常に同じである。これは、振り子ロッカーダンパーが、異なる質量を有する多数の異なる車両のために使用され得ること、及び/又は、開発の過程において、大きな努力をすることなく後日に適合され得ること、並びに、多くの異なる用途のために使用され得ることを意味する。
【0034】
更なる実施態様によれば、自動車の車軸のための転動スタビライザが提供され、該転動スタビライザは、少なくとも、以下のコンポーネント:
-少なくとも1つのホイールばね接続部、
-好ましくは、上記記載による実施形態による、少なくとも1つの振り子ロッカーダンパーと、を備え、
少なくとも1つのホイールばね接続部は、トルクを伝達する様態で振り子ロッカーダンパーに接続されており、
振り子ロッカーダンパーは、入力側、出力側、複数のロッカー要素、対応する数の転動要素、及び貯蔵エネルギー源を備えており、
転動要素は、ロッカー要素のローラトラックと入力側又は出力側のカウンタトラックとの間で貯蔵エネルギー源によって転動可能にクランプされており、
好ましくは、アクチュエータ、特に好ましくは、多段式遊星ギアは、アクチュエータと振り子ロッカーダンパーとの間のトルクフローに設けられており、
少なくとも1つのホイールばね接続部は、トルクを伝達する様態で、振り子ロッカーダンパーを介してアクチュエータに接続されている。
【0035】
従来の実施形態における転動スタビライザは、例えば、第1のねじれバーを介して接続された第1のホイールばねと、例えば、第2のねじれバーを介して接続された第2のホイールばねとの間に配置され、例えば、(好ましくは、操縦される)前車軸上のマクファーソンストラットを用いて、(共通の)ホイール車軸の2つのホイールの圧縮力又は反発力の伝達を調節するようにセットアップされる。ばねストラット又はねじれバーはそれぞれ、共通の車軸の1つのホイールのためのホイール取り付け部に力を伝達する様態で接続される。転動スタビライザの非調節の受動的な構成では、両ねじれバーが互いに結合されているか、又は一体的に形成されている。ここで記載される転動スタビライザでは、トルク伝達は、一方のホイールばねから他方のホイールばねへ、それぞれのホイールばね接続部によって振り子ロッカーダンパーを介して方向付けられる。振り子ロッカーダンパーは、2つのホイールのうちの一方の上下運動(例えば、平坦でない地面による)の、共通のホイール軸の他方のホイールへの伝達を減衰又は抑制するために挿入される。
【0036】
転動スタビライザのアクティブな実施形態では、アクチュエータが更に設けられる。アクチュエータは、例えば、電気機械である。アクチュエータは、好ましくは、転動スタビライザの外部から、例えば、自動車の車載電源から、必要な電源電圧が供給される。一実施形態では、コントローラ及び/又はアクチュエータに必要なセンサシステムは、転動スタビライザに組み込まれる。一実施形態では、各ホイールに対して別個の転動スタビライザが設けられており、その結果、どの場合にも、1つのホイールばね接続部のみが設けられる。このホイールばね接続部は、振り子ロッカーダンパーによってアクチュエータに接続される。トルクを伝達する様態で接続されたホイールの圧縮又は反発は、センサシステムによって記録される。決定された値は、純粋に電子的に、共通の車軸上のそれぞれ他方の転動スタビライザのアクチュエータに送られ、アクチュエータは、そこでホイールばね接続部への伝達のためのトルクを生成する。
【0037】
良好な応答挙動のために、及び転動スタビライザ内のガタつき音を低減するために、そのランプギアによって所望の減衰を提供する振り子ロッカーダンパーの使用が特に有利である。ガタつき音は、特に、これらのノイズを引き起こし得る平坦でない地面に遭遇したときに、車両運転者に不確実性をもたらす。振り子ロッカーダンパーは、好ましくは、2つのホイールばね接続部の間の、又はアクチュエータと1つ又は複数のホイールばね接続部との間のトルクフローにおける唯一のダンパーデバイスである。振り子ロッカーダンパーは、ゴム弾性的なダンパ要素なしに形成されている。振り子ロッカーダンパーは、複数のロッカー要素、対応する数の転動要素、及び貯蔵エネルギー源を備え、入力側及び/又は出力側のロッカー要素によってランプギアが形成される。入力側の回転に抗して出力側に向けられたトルクは、好ましくは、少なくとも1つの圧縮コイルばねを備える、特に好ましくは、少なくとも1つの圧縮コイルばねのみを備える、貯蔵エネルギー源によって印加される。転動要素は、ロッカー要素のローラトラックと入力側又は出力側のカウンタトラックとの間に、貯蔵エネルギー源によって転動可能にクランプされる。振り子ロッカーダンパーは、例えば、先に述べた既知の振り子ロッカーダンパーの実施形態のように設計される。振り子ロッカーダンパーは、ヒステリシス特性が無視できるほど低いように設計することができる。これにより、転動スタビライザにおけるガタつき音の発生を効果的に回避又は十分に低減することができる。好ましい実施形態では、振り子ロッカーダンパーは、上記記載による実施形態に従って設計される。後者は、特にコンパクトであるという利点を提供し、好ましくは、従来の転動スタビライザに使用される既知のゴム弾性ダンパーデバイスよりも少ない取り付け空間を必要とする。加えて、そのような振り子ロッカーダンパーは、安価に生産することができ、この目的のために必要とされる取り付け空間を変更する必要なく、多種多様な要件に柔軟に適合させることができる。
【0038】
有利な構成では、アクティブな転動スタビライザにおいて、アクチュエータと振り子ロッカーダンパーとの間のトルクフローに、多段式遊星ギアが介装される。これにより、転動スタビライザにおいて(伝達なしで)使用するには(低すぎる)最大トルクを有する、安価で非常にコンパクトなアクチュエータを使用することができる。多段式遊星ギアは、可能な限り小さい取り付け空間で非常に大きな伝達比を可能にする。一実施形態では、3段式遊星ギアが提供される。
【0039】
更なる態様によれば、自動車が提案され、本自動車は、駆動エンジンと、少なくとも1つの車軸と、車軸のうちの少なくとも1つ上の上述した実施形態による少なくとも1つの転動スタビライザと、を有する。
【0040】
自動車の重量は、いわゆるスポーツユーティリティビークル(SUV)と、大型トラクションバッテリを有する電動自動車との両方において、ますます問題となっている。加えて、例えば、正確なコーナリングのための舗装道路上での良好な転動安定性、及び高レベルの乗り心地(これによる、増大した安心感)を含む、高い運転安全性に対する要求が高まっている。同時に、今日の自動車は複雑であり、運転中に自動車内で何が起こっているかの理解がますます欠如しているため、(未知の)ノイズの発生に対する車両運転者の感度は高い。
【0041】
ここで提案される自動車では、コンパクトな振り子ロッカーダンパーを有し、全ての動作状態においてガタつきのない動作を行うアクティブ転動スタビライザが提案される。本転動スタビライザは、ゴム弾性的なダンパーデバイスを備えた以前より既知の転動スタビライザと比較して同じ大きさ又はより小さく形成することができ、したがって、自動車において以前より既知の転動スタビライザの代用として使用することができ、例えば、従来の転動スタビライザにおいて、例えば、経年変化の兆候に基づいて問題が発生した場合には、保守サイクルにおいて交換することもできる。
【0042】
乗用車は、例えば、サイズ、価格、重量、及び性能に応じて車両カテゴリーに割り当てられ、この定義は、市場のニーズに基づいて絶えず変更される。米国市場では、欧州分類による車両のJセグメント(SUV)は、ミニSUV~フルサイズSUVセグメントに割り当てられ、英国市場では、それらは4×4セグメント又はクーペSUVセグメントに対応する。ミニSUVセグメントの例は、Dacia Duster及びOpel Mokkaである。ラージ4x4セグメントの例は、Porsche Cayenne、Mercedes-Benz M-Class及びFord Explorerである。周知の全電気式SUVはTesla Model Xである。
【0043】
上記に記載された発明は、好ましい実施形態を示す添付図面を参照して重要な技術的背景に対して以下に詳細に説明される。本発明は、純粋に概略的な図面を用いて決して制限されないが、図面は、寸法的に正確ではなく、比率を定義するには好適ではないことに留意されたい。
【図面の簡単な説明】
【0044】
図1】振り子ロッカーダンパーの正面図を示す。
図2図1による振り子ロッカーダンパーの断面図を示す。
図3図1及び図2による振り子ロッカーダンパーの分解図を示す。
図4】達成可能な伝達特性を示す。
図5図1図3による振り子ロッカーダンパーを有するアクティブ転動スタビライザを示す。
図6】2つの転動スタビライザを有する自動車を示す。
【発明を実施するための形態】
【0045】
図1は、中心回転軸2を中心とする(ここではリング状の)入力側3(図2及び図3を参照)と(ここでもリング状の)出力側4との間の中心回転軸2を中心とするねじれ角30がばね軸20に沿った直線状ばね撓み31に変換される振り子ロッカーダンパー1の正面図を示す。これは、この実施形態では、2つの直径方向に対向するロッカー要素6によって、又はそれらのローラトラック7、8カウンタトラック11、12(入力側3及び出力側4上)、及びそれらの間に配置された転動要素9、10によって形成されるランプギアによって達成される(図3参照)。ロッカー要素6のローラトラック7、8は、半径方向外側を向き、この実施形態では、入力側3>及び出力側4は、ロッカー要素6に対して半径方向外側にあるように配置される。なお、入力側3と出力側4との間のねじれ角30(ゼロではない)の結果として、ロッカー要素6は、側部3、4に対して示された静止位置から傾斜する。しかしながら、ロッカー要素6は、ばね軸20>に沿って互いに対して(少なくともほぼ)位置合わせされたままであり、すなわち、ばね軸に対して垂直であり、又は、互いに対して受け面29のわずかな横方向のオフセットを描く。ロッカー要素6は、印加されたねじれ角30(ゼロに等しくない)の場合に、示されたばね撓み31によって示されるように、互いに向かって移動する。
【0046】
転動要素9、10は、それぞれの転動要素9、10とロッカー要素6と関連する側部3、4との間の相対運動としての転動運動のみが可能であるように、貯蔵エネルギー源5によって、それぞれのローラトラック7、8及びそれぞれのカウンタトラック11、12に押し付けられる。それぞれの転動要素9、10の転動軸41(ここでは見やすくするために、図面によれば下側の転動要素9,10の場合にのみ示されている)を中心とした回転なしのスリップ運動は、振り子ロッカーダンパー1が規定通りに運転される場合には排除される。この実施形態では、貯蔵エネルギー源5は、共通のばね軸20を有する外側圧縮コイルばね18及び内側圧縮コイルばね19を備える。ばね軸20は、ロッカー要素6の受け面29に対して垂直に配置されており、したがって、圧縮コイルばね18、19の予圧力は、ロッカー要素6に対して垂直に向けられている。ばね軸20は、回転軸2と交差するか、又は回転軸2からわずかにオフセットして配置されている。次いで、貯蔵エネルギー源5の予圧力が、それぞれのローラトラック7、8を介して、関連する転動要素9,10,に導入され、この転動要素から、関連する側部3、4の関連するカウンタトラック11、12に導入される。好ましい実施形態では、転動要素9、10上の力が、どの場合でもそれぞれのトラック7、8、11、12との現在の接触線の(トラックの方向の)接線に対して(少なくともほぼ)垂直に向けられるような、安定した力のバランスが作り出される。次いで、力は、転動要素9、10を通って直径方向に(すなわち、転動軸<41と交差して)進む。
【0047】
図2において、図1による振り子ロッカーダンパー1は、そこに示されるように、断面図で示される。図の頂部には、(出力側)転動要素10が破線で簡略化された形態で示されており、反対側(下方)には、(入力側)転動要素9が大部分覆われており、したがってここでは示されていない(図1参照)。ここでは、共通のばね軸20を有する2つの圧縮コイルばね18、19が、ロッカー要素6の受け面29の間で一方が他方の内側になるように配置され、したがって、予圧力及び相対回転に対抗するトルクを発生させるためにクランプされる様子が容易に分かる。外側圧縮コイルばね18のワイヤ直径21は、転動要素9、10の(有効)ローラ直径22よりもわずかに大きい。側部3、4は、半径方向外側に配置されており、ここでは、軸方向中心にある(一体の)入力側3として、また、入力3にどの場合でも軸方向に隣接する第1の部分要素16及び第2の部分要素17を有する出力側4として、リング状の様態で形成されている。入力側3を介して印加されるトルクは、入力側転動要素9を介して、ロッカー要素6を介して、また再び出力側転動要素10を介して、出力側4に伝わる。このようにして生成されたロッカー要素6の(揺動)運動は、貯蔵エネルギー源5のばね力に対抗する(図1のばね撓み31を参照)。圧縮コイルばね18、19を交差する方向の力に抗して誘導又は保持するために、この有利な実施形態では、ロッカー要素6の受け面29に窪み28が(任意選択的に)設けられる。内側圧縮コイルばね19の各一端は、これらの窪み28に受容される。内側の圧縮コイルばね19は、外側の圧縮コイルばね18をその外側の円筒周面にわたって誘導する。リング状の側部3、4の半径方向内側には、コア直径27が形成されており、このコア直径は、図示の取り付け状態では、ロッカー要素6の(最大の)外周に相当している。コア直径27は非常に小さい(例えば40mm程度)が、回転軸2を中心に入力側3が出力側4に対して相対的にねじれた場合の最大トルクは1.5kNm(1.5キロニュートンメートル)以上が得られる。好ましくは、最大ねじれ角30(設計による)は、±6°(プラス/マイナス6度)未満である。
【0048】
図3は、図1及び図2による振り子ロッカーダンパー1の分解図を示す。既に説明した振り子ロッカーダンパー1のコンポーネントに加えて、トラックがここでは明確に見える。
-(図によれば)上側のロッカー要素6には、2つの部分からなる出力側のローラトラック8が前方に示されており、軸線方向中央の入力側のローラトラック7が後方に示されている。同じことが、回転軸2を中心に回転され、好ましくは上側ロッカー要素6と同一である下側ロッカー要素6にも当てはまる。したがって、出側ローラトラック8は、どの場合でも、軸方向外側に配置された第1の部分トラック13及び第2の部分トラック14から形成される。入力側のローラトラック7は、どの場合でも第3の部分トラック15から形成されており、この第3の部分トラックは、他の2つの第1の部分トラック13、14の間の軸方向中央に配置されている。
-軸中心入力側3上に、互いに対向する2つの(入力側)カウンタトラック11を見ることができる。したがって、入力側のカウンタトラック11は、どの場合でも、(軸中心の)第3の部分カウンタトラック44から形成されている。
-2つの部分からなる出力側4では、どの場合でも各部分要素16、17上に2つの(出力側の)互いに対向するカウンタトラック11、12を見ることができる。
【0049】
このように、出力側カウンタトラック12は、第1の部分カウンタトラック42(出力側4の第1の部分要素16上)及び第2の部分カウンタトラック43(出力側4の第2の部分要素17上)からどの場合でも形成され、すなわち、第3の部分カウンタトラック44に対して軸方向外側に形成される。
【0050】
更に、転動要素9、10にも対応する走行面が見られる。
-入力側転動要素9(図によれば、前側のものが頂部にあり、後側のものが底部にある)上で、入力側カウンタトラック11(第3の部分カウンタトラック44)上で転動するための入力側第2の走行面25が軸方向中央に見られ、入力側ローラトラック7(第1の部分トラック13及び第2の部分トラック14)上で転動するための入力側第1の走行面23が軸方向外側にどの場合にも見られる。純粋に任意選択的に、入力側転動要素9の(入力側)走行面23、25は、ここでは肩部によって互いに分離され、したがって、軸受配置又はせ保護手段を形成する。
-出力側の転動要素10(図によれば、前側の転動要素は下側に、後側の転動要素は上側にある)には、出力側のローラトラック8(第3の部分トラック15)上で転動するための出力側の第1の走行面24が軸方向中央に、出力側のカウンタトラック12(第1の部分カウンタトラック42及び第2の部分カウンタトラック43)上で転動するための出力側の第2の走行面26が軸方向外側にどの場合にも見える。純粋に選択的に、出力側の転動要素10の(出力側の走行面24、26も、ここでは段部によって互いに分離されており、これにより、軸受配置又は保護手段が形成される。
【0051】
更に、図による下側ロッカー要素6の受け面29における窪み28は、ここでは図3において明確に見ることができる。図2に既に示されているように、この有利な実施形態では、窪み28は、内側圧縮コイルばね19のみを受けるように設計されており、窪み28の周囲の受け面29の領域は、外側圧縮コイルばね18のみを受けるように設計されている。
【0052】
図4は、(例えば、図1図3のうちの1つに示されるような)振り子ロッカーダンパー1によって達成され得る伝達特性45を示す。このような伝達特性45は、転動スタビライザ32(例えば、図5に示すような)に有用である。横座標46は、例えば-6°~+6°までの度数でプロットされる。縦座標47は、キロニュートンメートルで、例えば、-1.5kNm~+1.5kNmまでプロットされる。伝達特性45は、平坦であり、ゼロ交差48の周りでほぼ直線である(すなわち、ほぼ一定の勾配を有する)。これは、小さいねじれ角30でソフトな応答挙動を達成する。所定のねじれ角30、例えば-4°又は+4°から、急勾配でほぼ直線の勾配(すなわち、剛性の急速な増加)への突然であるが一定の遷移が形成される。ねじれ角30の小さい範囲(例えば、+4°~+6°又は-4°~-6°)では、ねじり剛性は10倍(又はそれ以上)増加する(例えば、約0.15kNm~1.5kNm)。伝達特性45は、広い範囲内で任意に設定することができることを指摘しておく。更に、適切な設計では、伝達特性45のヒステリシスは、図示のように無視できる。例えば、ゼロ交差48でのヒステリシスは、0.5Nm(0.5ニュートンメートル)未満である。
【0053】
図5は、図1図3による振り子ロッカーダンパー1を有するアクティブ転動スタビライザ32の例を示す。転動スタビライザ32は、例えば左ねじれバー49(断面で示される)のための左ホイールばね接続部36と、例えば右ねじれバー50(断面で示される)のための右ホイールばね接続部37とを有する。側部指定は任意であり、ここでは、表示に従って一般性を排除することなく選択される。ハウジング51を介して、左ホイールばね接続部36は、その固定子52を介して、電気機械として設計されたアクチュエータ38にトルクを伝達する様態で接続されている。アクチュエータ38のロータ53は、直列に接続された第1の遊星段54、第2の遊星段55及び第3の遊星段56を含む遊星ギア39を介して、振り子ロッカーダンパー1の出力側4にトルクを伝達する様態で接続される。振り子ロッカーダンパー1の入力側3は、右側のホイールばね接続部37にトルクを伝達する様態で接続されている。したがって、左ホイールばね接続部36と右ホイールばね接続部37との間のトルク伝達接続は、アクチュエータ38、遊星ギア39、及び振り子ロッカーダンパー1を介してのみ形成される。このようにして、一方では、トルク伝達は、例えば図4に示されるような伝達特性45に従って、振り子ロッカーダンパー1によって減衰され、及び/又は変調される。一方、小さなトルク撓み及び従来のダンパーデバイスのヒステリシス特性の結果は、遊星ギア39及びアクチュエータ38によって回避される。また、アクチュエータ38によってトルクを発生させることができ、その結果、原因となるホイール57、58(又はねじれバー49、50)によって引き起こされるよりも大きな(反対の)トルクを2つのホイールばね接続部36、37に伝達することができる。アクチュエータ38は、ここでは内部センサシステム、ここでは例えば磁気弾性トルクセンサ59及びロータ位置センサ60によって制御される。
【0054】
図6には、車軸33、34上に各々1つの転動スタビライザ32を有する自動車35が、平面図で純粋に概略的に示されている。この自動車35では、(車両長手方向軸61に沿った)後輪車軸34が、(例えば純粋に電気的な)駆動エンジン40によって駆動される。前輪車軸33は、(例えば、排他的に)ステアリングホイール63によって運転室62から自動車35の走行方向を制御するためのステアリング車軸である。例えば、車軸33、34の左ホイール57がコーナリング(ここでは左に示す)のために圧縮する場合、自動車の車体35に向かう左(すなわちカーブの外側)ホイール57のこの相対的な上方移動は、左ねじれバー49のトルクに変換され、転動スタビライザ32に伝えられる。そこでは、(場合によってはアクティブに増幅された)トルクが右側(曲線の内側)のねじれバー50に伝達される。右ホイール58の負荷されていないばねストラットは、このように負荷され、したがって、負荷された左ホイール57のための当接部を形成する。これにより、自動車35の横転傾向が低減される。自動車35は、低い転動レートで(左側の)カーブを通過する。一方、平坦でない地面のみがホイール57、58を上下に移動させる場合、この結果として生じるトルクは、振り子ロッカーダンパー1によって吸収されるか、又は柔軟性のために大幅に低減される。したがって、自動車35は揺動しない。
【0055】
ここで提案される振り子ロッカーダンパーは、コンパクトであり、高いねじり剛性を生成することを可能にする。転動スタビライザは、低減されたラトル音で動作することができる。
【符号の説明】
【0056】
1 振り子ロッカーダンパー
2 回転軸
3 入力側
4 出力側
5 貯蔵エネルギー源
6 ロッカー要素
7 入力側ローラトラック
8 出力側ローラトラック
9 入力側転動要素
10 出力側転動要素
11 入力側カウンタトラック
12 出力側カウンタトラック
13 第1の部分トラック
14 第2の部分トラック
15 第3の部分トラック
16 第1の部分要素(出力側)
17 第2の部分要素(出力側)
18 外側圧縮コイルばね
19 内側圧縮コイルばね
20 ばね軸
21 ワイヤ直径
22 ローラ直径
23 入力側の第1の走行面
24 出力側の第1の走行面
25 入力側の第2の走行面
26 出力側の第2の走行面
27 コア直径
28 窪み
29 受け面
30 ねじれ角
31 ばね撓み
32 転動スタビライザ
33 前輪車軸
34 後輪車軸
35 自動車
36 左ホイールばね接続部
37 右ホイールばね接続部
38 アクチュエータ
39 遊星ギア
40 駆動エンジン
41 転動軸
42 第1の部分カウンタトラック
43 第2の部分カウンタトラック
44 第3の部分カウンタトラック
45 伝達特性
46 横座標
47 縦軸
48 ゼロ交差
49 左ねじれバー
50 右ねじれバー
51 ハウジング
52 固定子
53 ロータ
54 第1の遊星段
55 第2の遊星段
56 第3の遊星段
57 左ホイール
58 右ホイール
59 磁気弾性トルクセンサ
60 ロータ位置センサ
61 車両縦軸
62 運転席
63 ステアリングホイール
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【国際調査報告】