(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-15
(54)【発明の名称】BCL11Aの標的化のための組成物及び方法
(51)【国際特許分類】
C12N 15/09 20060101AFI20231208BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20231208BHJP
C12N 15/86 20060101ALI20231208BHJP
C12N 15/864 20060101ALI20231208BHJP
C12N 15/867 20060101ALI20231208BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20231208BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20231208BHJP
A61P 7/00 20060101ALI20231208BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20231208BHJP
A61K 35/76 20150101ALI20231208BHJP
A61K 35/28 20150101ALI20231208BHJP
A61K 35/545 20150101ALI20231208BHJP
A61P 13/02 20060101ALI20231208BHJP
A61P 9/12 20060101ALI20231208BHJP
A61P 9/00 20060101ALI20231208BHJP
A61P 29/02 20060101ALI20231208BHJP
A61P 25/04 20060101ALI20231208BHJP
A61P 11/00 20060101ALI20231208BHJP
A61P 7/06 20060101ALI20231208BHJP
【FI】
C12N15/09 110
C12N15/63 Z ZNA
C12N15/86 Z
C12N15/864 100Z
C12N15/867 Z
C12N5/10
C12N1/19
A61P7/00
A61K48/00
A61K35/76
A61K35/28
A61K35/545
A61P13/02
A61P9/12
A61P9/00
A61P29/02
A61P25/04
A61P11/00
A61P7/06
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023533861
(86)(22)【出願日】2021-12-02
(85)【翻訳文提出日】2023-07-28
(86)【国際出願番号】 US2021061672
(87)【国際公開番号】W WO2022120094
(87)【国際公開日】2022-06-09
(32)【優先日】2020-12-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】521532813
【氏名又は名称】スクライブ・セラピューティクス・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】SCRIBE THERAPEUTICS INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100122301
【氏名又は名称】冨田 憲史
(74)【代理人】
【識別番号】100157956
【氏名又は名称】稲井 史生
(74)【代理人】
【識別番号】100170520
【氏名又は名称】笹倉 真奈美
(74)【代理人】
【識別番号】100221545
【氏名又は名称】白江 雄介
(72)【発明者】
【氏名】オークス,ベンジャミン
(72)【発明者】
【氏名】ヒギンズ,ショーン
(72)【発明者】
【氏名】デニー,サラ
(72)【発明者】
【氏名】スタール,ブレット ティ
(72)【発明者】
【氏名】コリン,イザベル
(72)【発明者】
【氏名】アディル,マルーフ
(72)【発明者】
【氏名】アーンズ,コール
【テーマコード(参考)】
4B065
4C084
4C087
【Fターム(参考)】
4B065AA90X
4B065AA90Y
4B065AB01
4B065AC20
4B065BA02
4B065CA44
4C084AA13
4C084NA14
4C084ZA08
4C084ZA36
4C084ZA51
4C084ZA55
4C084ZA59
4C084ZA81
4C087AA01
4C087AA02
4C087BB63
4C087BC83
4C087CA12
4C087NA14
4C087ZA08
4C087ZA36
4C087ZA51
4C087ZA55
4C087ZA59
4C087ZA81
(57)【要約】
本明細書において、クラス2 V型CRISPRポリペプチド、ガイド核酸(gNA)、及び任意選択的にBCL11A遺伝子の改変に有用なドナー鋳型核酸を含むシステムが提供される。このシステムはまた、異常ヘモグロビン症関連疾患を有する対象における細胞の改変にも有用である。また、かかる対象においてBCL11A遺伝子を標的化するシステム又はかかるシステムをコードする核酸を投与することによって、異常ヘモグロビン症関連疾患を有する対象を治療する方法も提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
クラス2 V型CRISPRタンパク質及び第1のガイドリボ核酸(gRNA)を含むシステムであって、前記gRNAが、ポリピリミジントラクト結合タンパク質1(BCL11A)遺伝子を含む標的核酸配列に相補的な標的化配列を含む、システム。
【請求項2】
前記gRNAが、
a.BCL11Aイントロン、
b.BCL11Aエキソン、
c.BCL11Aイントロン-エキソン接合部、
d.BCL11A調節エレメント、及び
e.遺伝子間領域、からなる群から選択される標的核酸配列に相補的な標的化配列を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記BCL11A遺伝子が、野生型配列を含む、請求項1又は請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記gRNAが、単一分子gRNA(sgRNA)である、請求項1~3のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項5】
前記gRNAが、二種分子gRNA(dgRNA)である、請求項1~4のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項6】
前記gRNAの前記標的化配列が、配列番号272~2100及び2286~26789からなる群から選択される配列、又はそれと少なくとも約65%、少なくとも約75%、少なくとも約85%、若しくは少なくとも約95%の同一性を有する配列を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項7】
前記gRNAの前記標的化配列が、配列番号272~2100及び2286~26789からなる群から選択される配列を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項8】
前記標的化配列が、前記配列の3’末端から単一のヌクレオチドが除去されている、請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
前記標的化配列が、前記配列の3’末端から2つのヌクレオチドが除去されている、請求項7に記載のシステム。
【請求項10】
前記標的化配列が、前記配列の3’末端から3つのヌクレオチドが除去されている、請求項7に記載のシステム。
【請求項11】
前記標的化配列が、前記配列の3’末端から4つのヌクレオチドが除去されている、請求項7に記載のシステム。
【請求項12】
前記標的化配列が、前記配列の3’末端から5つのヌクレオチドが除去されている、請求項7に記載のシステム。
【請求項13】
前記gRNAの前記標的化配列が、BCL11Aエキソンの配列に相補的である、請求項1~12のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項14】
前記gRNAの前記標的化配列が、BCL11Aエキソン1配列、BCL11Aエキソン2配列、BCL11Aエキソン3配列、BCL11Aエキソン4配列、BCL11Aエキソン5配列、BCL11Aエキソン6配列、BCL11Aエキソン7配列、BCL11Aエキソン8配列、及びBCL11Aエキソン9配列からなる群から選択される配列に相補的である、請求項13に記載のシステム。
【請求項15】
前記gRNAの前記標的化配列が、BCL11Aエキソン1配列、BCL11Aエキソン2配列、及びBCL11Aエキソン3配列からなる群から選択される配列に相補的である、請求項14に記載のシステム。
【請求項16】
前記gRNAの前記標的化配列が、BCL11A調節エレメントの配列に相補的である、請求項1~12のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項17】
前記gRNAの前記標的化配列が、前記BCL11A遺伝子のプロモーターの配列に相補的である、請求項16に記載のシステム。
【請求項18】
前記gRNAの前記標的化配列が、エンハンサー調節エレメントの配列に相補的である、請求項16に記載のシステム。
【請求項19】
前記gRNAの前記標的化配列が、前記BCL11A遺伝子のGATA1赤血球特異的エンハンサー結合部位(GATA1)を含む配列に相補的である、請求項18に記載のシステム。
【請求項20】
前記gRNAの前記標的化配列が、前記BCL11A遺伝子の前記GATA1結合部位の5’側にある配列に相補的である、請求項16に記載のシステム。
【請求項21】
前記gRNAの前記標的化配列が、UGGAGCCUGUGAUAAAAGCA(配列番号22)の配列、又はそれと少なくとも90%若しくは95%の配列同一性を有する配列を含む、請求項19又は請求項20に記載のシステム。
【請求項22】
前記gRNAの前記標的化配列が、UGGAGCCUGUGAUAAAAGCA(配列番号22)の配列からなる、請求項19に記載のシステム。
【請求項23】
前記gRNAの前記標的化配列が、UGCUUUUAUCACAGGCUCCA(配列番号23)の配列、又はそれと少なくとも90%若しくは95%の配列同一性を有する配列を含む、請求項18に記載のシステム。
【請求項24】
前記gRNAの前記標的化配列が、UGCUUUUAUCACAGGCUCCA(配列番号23)の配列からなる、請求項18に記載のシステム。
【請求項25】
前記gRNAの前記標的化配列が、CAGGCUCCAGGAAGGGUUUG(配列番号2949)の配列、又はそれと少なくとも90%若しくは95%の配列同一性を有する配列を含む、請求項19又は請求項20に記載のシステム。
【請求項26】
前記gRNAの前記標的化配列が、CAGGCUCCAGGAAGGGUUUG(配列番号2949)の配列からなる、請求項19又は請求項20に記載のシステム。
【請求項27】
前記gRNAの前記標的化配列が、GAGGCCAAACCCUUCCUGGA(配列番号2948)の配列、又はそれと少なくとも90%若しくは95%の配列同一性を有する配列を含む、請求項19又は請求項20に記載のシステム。
【請求項28】
前記gRNAの前記標的化配列が、CAGGCUCCAGGAAGGGUUUG(配列番号2948)の配列からなる、請求項19又は請求項20に記載のシステム。
【請求項29】
前記gRNAの前記標的化配列が、AGUGCAAGCUAACAGUUGCU(配列番号15747)の配列、又はそれと少なくとも90%若しくは95%の配列同一性を有する配列を含む、請求項19又は請求項20に記載のシステム。
【請求項30】
前記gRNAの前記標的化配列が、AGUGCAAGCUAACAGUUGCU(配列番号15747)の配列からなる、請求項19又は請求項20に記載のシステム。
【請求項31】
前記gRNAの前記標的化配列が、AUACAACUUUGAAGCUAGUC(配列番号15748)の配列、又はそれと少なくとも90%若しくは95%の配列同一性を有する配列を含む、請求項19又は請求項20に記載のシステム。
【請求項32】
前記gRNAの前記標的化配列が、AUACAACUUUGAAGCUAGUC(配列番号15748)の配列からなる、請求項19又は請求項20に記載のシステム。
【請求項33】
第2のgRNAを更に含み、前記第2のgRNAが、前記第1のgRNAの前記gRNAの前記標的化配列と比較して、前記BCL11A標的核酸の異なる部分又は重複する部分に相補的な標的化配列を有する、請求項1~32のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項34】
前記第2のgRNAの前記標的化配列が、前記GATA1結合部位配列の5’側又は3’側にある前記標的核酸の配列に相補的である、請求項33に記載のシステム。
【請求項35】
前記第1のgRNA及び前記第2のgRNAが、各々、前記BCL11A遺伝子の前記プロモーター内の配列に相補的な標的化配列を有する、請求項33に記載のシステム。
【請求項36】
前記第1のgRNA又は前記第2のgRNAが、配列番号2238~2285、26794~26839、及び27219~27265からなる群から選択される配列、又はそれと少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%の配列同一性を有する配列を含む足場を有する、請求項1~35のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項37】
前記第1のgRNA又は前記第2のgRNAが、配列番号2238~2285、26794~26839、及び27219~27265からなる群から選択される配列を含む足場を有する、請求項1~36のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項38】
前記第1のgRNA又は前記第2のgRNAが、配列番号2238~2285、26794~26839、及び27219~27265からなる群から選択される配列からなる足場を有する、請求項1~36のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項39】
前記第1のgRNA又は前記第2のgRNAが、配列番号2238又は配列番号26800の配列からなる足場を有する、請求項38に記載のシステム。
【請求項40】
前記標的化配列が、前記gRNAの前記足場の3’末端に連結されている、請求項36~39のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項41】
前記クラス2 V型CRISPRタンパク質が、配列番号59、72~99、101~148、及び26908~27154からなる群から選択される配列、又はそれと少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、若しくは少なくとも約95%、若しくは少なくとも約95%、若しくは少なくとも約96%、若しくは少なくとも約97%、若しくは少なくとも約98%、若しくは少なくとも約99%の配列同一性を有する配列を含むCasXバリアントタンパク質である、請求項1~40のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項42】
前記クラス2 V型CRISPRタンパク質が、配列番号59、72~99、101~148、及び26908~27154からなる群から選択される配列を含むCasXバリアントタンパク質である、請求項41に記載のシステム。
【請求項43】
前記CasXバリアントタンパク質が、配列番号59、72~99、101~148、及び26908~27154からなる群から選択される配列からなる、請求項41に記載のシステム。
【請求項44】
前記CasXバリアントタンパク質が、配列番号126、27043、27046、27050からなる群から選択される配列からなる、請求項42に記載のシステム。
【請求項45】
前記CasXバリアントタンパク質が、配列番号1~3から選択される配列を有する参照CasXタンパク質と比較して、少なくとも1つの改変を含む、請求項41に記載のシステム。
【請求項46】
前記少なくとも1つの改変が、前記参照CasXタンパク質と比較して、前記CasXバリアントタンパク質のドメインにおける少なくとも1つのアミノ酸置換、欠失、又は置換を含む、請求項45に記載のシステム。
【請求項47】
前記ドメインが、非標的鎖結合(NTSB)ドメイン、標的鎖装填(TSL)ドメイン、ヘリックスIドメイン、ヘリックスIIドメイン、オリゴヌクレオチド結合ドメイン(OBD)、及びRuvC DNA切断ドメインからなる群から選択される、請求項46に記載のシステム。
【請求項48】
前記CasXバリアントタンパク質が、HNHドメインを含まない、請求項41~47のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項49】
前記CasXバリアントタンパク質が、1つ以上の核局在化シグナル(NLS)を更に含む、請求項41~48のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項50】
前記1つ以上のNLSが、PKKKRKV(配列番号168)、KRPAATKKAGQAKKKK(配列番号169)、PAAKRVKLD(配列番号170)、RQRRNELKRSP(配列番号171)、NQSSNFGPMKGGNFGGRSSGPYGGGGQYFAKPRNQGGY(配列番号172)、RMRIZFKNKGKDTAELRRRRVEVSVELRKAKKDEQILKRRNV(配列番号173)、VSRKRPRP(配列番号174)、PPKKARED(配列番号175)、PQPKKKPL(配列番号176)、SALIKKKKKMAP(配列番号177)、DRLRR(配列番号178)、PKQKKRK(配列番号179)、RKLKKKIKKL(配列番号180)、REKKKFLKRR(配列番号181)、KRKGDEVDGVDEVAKKKSKK(配列番号182)、RKCLQAGMNLEARKTKK(配列番号183)、PRPRKIPR(配列番号184)、PPRKKRTVV(配列番号185)、NLSKKKKRKREK(配列番号186)、RRPSRPFRKP(配列番号187)、KRPRSPSS(配列番号188)、KRGINDRNFWRGENERKTR(配列番号189)、PRPPKMARYDN(配列番号190)、KRSFSKAF(配列番号191)、KLKIKRPVK(配列番号192)、PKKKRKVPPPPAAKRVKLD(配列番号193)、PKTRRRPRRSQRKRPPT(配列番号26792)、SRRRKANPTKLSENAKKLAKEVEN(配列番号194)、KTRRRPRRSQRKRPPT(配列番号195)、RRKKRRPRRKKRR(配列番号196)、PKKKSRKPKKKSRK(配列番号197)、HKKKHPDASVNFSEFSK(配列番号198)、QRPGPYDRPQRPGPYDRP(配列番号199)、LSPSLSPLLSPSLSPL(配列番号200)、RGKGGKGLGKGGAKRHRK(配列番号201)、PKRGRGRPKRGRGR(配列番号202)、PKKKRKVPPPPAAKRVKLD(配列番号203)、PKKKRKVPPPPKKKRKV(配列番号204)、PAKRARRGYKC(配列番号27199)、KLGPRKATGRW(配列番号27200)、PRRKREE(配列番号27201)、PYRGRKE(配列番号27202)、PLRKRPRR(配列番号27203)、PLRKRPRRGSPLRKRPRR(配列番号27204)、PAAKRVKLDGGKRTADGSEFESPKKKRKV(配列番号27205)、PAAKRVKLDGGKRTADGSEFESPKKKRKVGIHGVPAA(配列番号27206)、PAAKRVKLDGGKRTADGSEFESPKKKRKVAEAAAKEAAAKEAAAKA(配列番号207)、PAAKRVKLDGGKRTADGSEFESPKKKRKVPG(配列番号27208)、KRKGSPERGERKRHW(配列番号27209)、KRTADSQHSTPPKTKRKVEFEPKKKRKV(配列番号27210)、及びPKKKRKVGGSKRTADSQHSTPPKTKRKVEFEPKKKRKV(配列番号27211)からなる配列の群から選択され、前記1つ以上のNLSが、リンカーペプチドを用いて、前記CRISPRタンパク質又は隣接するNLSに連結され、前記リンカーペプチドが、RS、(G)n(配列番号27212)、(GS)n(配列番号27213)、(GSGGS)n(配列番号214)、(GGSGGS)n(配列番号215)、(GGGS)n(配列番号216)、GGSG(配列番号217)、GGSGG(配列番号218)、GSGSG(配列番号219)、GSGGG(配列番号220)、GGGSG(配列番号221)、GSSSG(配列番号222)、GPGP(配列番号223)、GGP、PPP、PPAPPA(配列番号224)、PPPG(配列番号27214)、PPPGPPP(配列番号225)、PPP(GGGS)n(配列番号27215)、(GGGS)nPPP(配列番号27216)、AEAAAKEAAAKEAAAKA(配列番号27217)、及びTPPKTKRKVEFE(配列番号27218)(式中、nは1~5である)からなる群から選択される、請求項49に記載のシステム。
【請求項51】
前記1つ以上のNLSが、前記CasXバリアントタンパク質のC末端又はその近傍に位置する、請求項49又は請求項50に記載のシステム。
【請求項52】
前記1つ以上のNLSが、前記CasXバリアントタンパク質のN末端又はその近傍に位置する、請求項49又は請求項50に記載のシステム。
【請求項53】
前記CasXバリアントタンパク質のN末端又はその近傍及びC末端又はその近傍に位置する1つ以上のNLSを含む、請求項49又は請求項50に記載のシステム。
【請求項54】
前記CasXバリアントが、ガイド核酸(gRNA)とリボ核タンパク質複合体(RNP)を形成することができる、請求項41~53のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項55】
前記CasXバリアントタンパク質及び前記gRNAバリアントのRNPが、配列番号1、配列番号2、又は配列番号3の参照CasXタンパク質及び配列番号4~16のいずれか1つの配列を含むgRNAのRNPと比較して、少なくとも1つ以上の改善された特徴を示す、請求項54に記載のシステム。
【請求項56】
前記改善された特徴が、前記CasXバリアントのフォールディングの改善、ガイド核酸(gRNA)に対する結合親和性の改善、標的DNAに対する結合親和性の改善、標的DNAの編集において、ATC、CTC、GTC、又はTTCを含むより広範囲の1つ以上のプロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)配列を利用する能力の改善、前記標的DNAの巻き戻しの改善、編集活性の増加、編集効率の改善、編集特異性の改善、ヌクレアーゼ活性の増加、標的核酸配列の切断速度の改善、二本鎖切断のための標的鎖装填の増加、一本鎖ニッキングのための標的鎖装填の減少、オフターゲット切断の減少、非標的DNA鎖の結合の改善、タンパク質安定性の改善、タンパク質溶解度の改善、リボ核タンパク質複合体(RNP)の形成の改善、より高い百分率割合の切断コンピテントRNP、タンパク質:gRNA複合体(RNP)の安定性の改善、タンパク質:gRNA複合体の溶解度の改善、タンパク質収量の改善、タンパク質発現の改善、及び融合体特徴の改善、からなる群の1つ以上から選択される、請求項55に記載のシステム。
【請求項57】
前記CasXバリアントタンパク質及び前記gRNAバリアントの前記RNPの前記改善された特徴が、配列番号1、配列番号2、又は配列番号3の前記参照CasXタンパク質及び配列番号4~16のいずれか1つの配列を含む前記gRNAの前記RNPと比較して、少なくとも約1.1~約100倍又はそれ以上改善されている、請求項55又は請求項56に記載のシステム。
【請求項58】
前記CasXバリアントタンパク質の前記改善された特徴が、配列番号1、配列番号2、又は配列番号3の前記参照CasXタンパク質及び配列番号4~16のいずれか1つの配列を含む前記gRNAと比較して、少なくとも約1.1倍、少なくとも約2倍、少なくとも約10倍、少なくとも約100倍、又はそれ以上改善されている、請求項55又は請求項56に記載のシステム。
【請求項59】
前記CasXバリアントタンパク質の前記改善された特徴が、配列番号1、配列番号2、又は配列番号3の前記参照CasXタンパク質及び配列番号4~16のいずれか1つの配列を含む前記gNAと比較して、少なくとも約1.1倍、少なくとも約2倍、少なくとも約10倍、少なくとも約100倍、又はそれ以上改善されている、請求項55又は請求項56に記載のシステム。
【請求項60】
前記改善された特徴が、編集効率を含み、前記CasXバリアントタンパク質及び前記gRNAバリアントの前記RNPが、配列番号2の前記参照CasXタンパク質及び配列番号4~16のいずれか1つの前記gRNAの前記RNPと比較して、編集効率の1.1~100倍の改善を含む、請求項55~59のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項61】
前記PAM配列TTC、ATC、GTC、又はCTCのいずれか1つが、細胞アッセイシステムにおいて前記gRNAの前記標的化配列と同一性を有するプロトスペーサーの前記非標的鎖に対して1ヌクレオチド5’側に位置する場合、前記CasXバリアント及び前記gRNAバリアントを含む前記RNPが、比較アッセイシステムにおける参照CasXタンパク質及び参照gRNAを含むRNPの編集効率及び/又は結合と比較して、より高い編集効率及び/又は標的核酸配列の結合を示す、請求項54~59のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項62】
前記PAM配列が、TTCである、請求項61に記載のシステム。
【請求項63】
前記gRNAの前記標的化配列が、配列番号17904~26789からなる群から選択される配列を含む、請求項62に記載のシステム。
【請求項64】
前記PAM配列が、ATCである、請求項61に記載のシステム。
【請求項65】
前記gRNAの前記標的化配列が、配列番号272~2100及び2286~5625からなる群から選択される配列を含む、請求項64に記載のシステム。
【請求項66】
前記PAM配列が、CTCである、請求項61に記載のシステム。
【請求項67】
前記gRNAの前記標的化配列が、配列番号5626~13616からなる群から選択される配列を含む、請求項66に記載のシステム。
【請求項68】
前記PAM配列が、GTCである、請求項61に記載のシステム。
【請求項69】
前記gRNAの前記標的化配列が、配列番号13617~17903からなる群から選択される配列を含む、請求項66に記載のシステム。
【請求項70】
前記1つ以上のPAM配列に対する増加した前記結合親和性が、配列番号1~3の前記参照CasXタンパク質のいずれか1つの前記PAM配列に対する前記結合親和性と比較して、少なくとも1.5倍大きい、請求項61~68のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項71】
前記RNPが、前記参照CasXタンパク質及び配列番号4~16の前記gRNAのRNPと比較して、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも15%、又は少なくとも20%高い百分率割合の切断コンピテントRNPを有する、請求項54~70のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項72】
前記CasXバリアントタンパク質が、ニッカーゼ活性を有するRuvC DNA切断ドメインを含む、請求項41~71のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項73】
前記CasXバリアントタンパク質が、二本鎖切断活性を有するRuvC DNA切断ドメインを含む、請求項41~71のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項74】
前記CasXタンパクが、触媒的に不活性なCasX(dCasX)タンパク質であり、前記dCasX及び前記gRNAが、前記BCL11A標的核酸への結合能を保持している、請求項1~54のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項75】
前記dCasXが、残基:
a.配列番号1の前記CasXタンパク質に対応するD672、E769、及び/若しくはD935、又は
b.配列番号2の前記CasXタンパク質に対応するD659、E756、及び/若しくはD922、に変異を含む、請求項74に記載のシステム。
【請求項76】
前記変異が、前記残基のアラニンへの置換である、請求項75に記載のシステム。
【請求項77】
ドナー鋳型核酸を更に含む、請求項1~73のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項78】
前記ドナー鋳型が、BCL11Aエキソン、BCL11Aイントロン、BCL11Aイントロン-エキソン接合部、BCL11A調節エレメント、及びGATA1結合部位配列からなる群から選択されるBCL11A遺伝子の少なくとも一部を含む核酸を含む、請求項77に記載のシステム。
【請求項79】
前記ドナー鋳型の配列が、野生型BCL11A遺伝子の対応する部分と比較して、1つ以上の変異を含む、請求項78に記載のシステム。
【請求項80】
前記ドナー鋳型が、BCL11Aエキソン1、BCL11Aエキソン2、BCL11Aエキソン3、BCL11Aエキソン4、BCL11Aエキソン5、BCL11Aエキソン6、BCL11Aエキソン7、BCL11Aエキソン8、及びBCL11Aエキソン9からなる群から選択されるBCL11Aエキソンの少なくとも一部を含む核酸を含む、請求項78又は請求項79に記載のシステム。
【請求項81】
前記ドナー鋳型が、BCL11Aエキソン1、BCL11Aエキソン2、及びBCL11Aエキソン3からなる群から選択されるBCL11Aエキソンの少なくとも一部を含む核酸を含む、請求項80に記載のシステム。
【請求項82】
前記ドナー鋳型のサイズが、10~15,000ヌクレオチドの範囲である、請求項77~81のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項83】
前記ドナー鋳型が、一本鎖DNA鋳型又は一本鎖RNA鋳型である、請求項77~82のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項84】
前記ドナー鋳型が、二本鎖DNA鋳型である、請求項77~82のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項85】
前記ドナー鋳型が、前記クラス2 V型CRISPRタンパク質によって導入される前記BCL11A標的核酸における切断部位に隣接する配列に相補的である相同アームを、前記ドナー鋳型の5’末端及び3’末端又はその近傍に含む、請求項77~84のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項86】
請求項77~85のいずれか一項に記載のドナー鋳型を含む、核酸。
【請求項87】
請求項41~76のいずれか一項に記載のCasXをコードする配列を含む、核酸。
【請求項88】
請求項1~40のいずれか一項に記載のgRNAをコードする配列を含む、核酸。
【請求項89】
前記CasXタンパク質をコードする前記配列が、真核細胞における発現のためにコドン最適化されている、請求項87に記載の核酸。
【請求項90】
請求項1~40のいずれか一項に記載のgRNA、請求項41~76のいずれか一項に記載のCasXタンパク質、又は請求項86~89のいずれか一項に記載の核酸を含む、ベクター。
【請求項91】
前記ベクターが、1つ以上のプロモーターを更に含む、請求項90に記載のベクター。
【請求項92】
前記ベクターが、レトロウイルスベクター、レンチウイルスベクター、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクター、単純ヘルペスウイルス(HSV)ベクター、ウイルス様粒子(VLP)、CasX送達粒子(XDP)、プラスミド、ミニサークル、ナノプラスミド、DNAベクター、及びRNAベクターからなる群から選択される、請求項90又は請求項91に記載のベクター。
【請求項93】
前記ベクターが、AAVベクターである、請求項92に記載のベクター。
【請求項94】
前記AAVベクターが、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV-Rh74、又はAAVRh10から選択される、請求項93に記載のベクター。
【請求項95】
前記AAVベクターが、AAV1、AAV2、AAV5、AAV8、又はAAV9から選択される、請求項94に記載のベクター。
【請求項96】
前記AAVベクターが、以下の成分:
a.5’ITR、
b.3’ITR、及び
c.導入遺伝子であって、第1のプロモーターに作動可能に連結された請求項87に記載の核酸と、第2のプロモーターに作動可能に連結された請求項88に記載の核酸と、を含む、導入遺伝子、を含む核酸を含む、請求項94又は請求項95に記載のベクター。
【請求項97】
前記核酸が、前記CasXタンパク質をコードする前記配列の3’側にポリ(A)配列を更に含む、請求項96に記載のベクター。
【請求項98】
前記核酸が、1つ以上のエンハンサーエレメントを更に含む、請求項96又は請求項97に記載のベクター。
【請求項99】
単一のAAV粒子が、前記核酸を含有することができ、前記AAV粒子が、標的細胞において標的核酸を形質導入し、効果的に改変するのに必要な全ての成分を有する、請求項96~98のいずれか一項に記載のベクター。
【請求項100】
前記ベクターが、レトロウイルスベクターである、請求項92に記載のベクター。
【請求項101】
前記ベクターが、gagポリタンパク質の1つ以上の成分を含むXDPである、請求項92に記載のベクター。
【請求項102】
前記gagポリタンパク質の前記1つ以上の成分が、マトリックスタンパク質(MA)、ヌクレオカプシドタンパク質(NC)、カプシドタンパク質(CA)、p1ペプチド、p6ペプチド、P2Aペプチド、P2Bペプチド、P10ペプチド、p12ペプチド、PP21/24ペプチド、P12/P3/P8ペプチド、及びP20ペプチドからなる群から選択される、請求項101に記載のベクター。
【請求項103】
前記XDPが、前記gagポリタンパク質、前記CasXバリアントタンパク質、及び前記gRNAの前記1つ以上の成分を含む、請求項101又は請求項102に記載のベクター。
【請求項104】
前記CasXバリアントタンパク質及び前記gRNAが、RNP中で一緒に会合している、請求項103に記載のベクター。
【請求項105】
前記ドナー鋳型を更に含む、請求項101~104のいずれか一項に記載のベクター。
【請求項106】
標的細胞への前記XDPの結合及び融合を提供する偽型ウイルスエンベロープ糖タンパク質又は抗体断片を更に含む、請求項101~104のいずれか一項に記載のベクター。
【請求項107】
前記標的細胞が、造血幹細胞(HSC)、造血前駆細胞(HPC)、CD34+細胞、間葉系幹細胞(MSC)、胚性幹細胞(ES)、人工多能性幹細胞(iPSC)、骨髄系共通前駆細胞、前赤芽球細胞、及び赤芽球細胞からなる群から選択される、請求項106に記載のベクター。
【請求項108】
請求項90~107のいずれか一項に記載のベクターを含む、宿主細胞。
【請求項109】
前記宿主細胞が、ベビーハムスター腎線維芽細胞(BHK)細胞、ヒト胎児腎臓293(HEK293)細胞、ヒト胎児腎臓293T(HEK293T)細胞、NS0細胞、SP2/0細胞、YO骨髄腫細胞、P3X63マウス骨髄腫細胞、PER細胞、PER.C6細胞、ハイブリドーマ細胞、NIH3T3細胞、SV40遺伝物質を有するCV-1(サル)起源(COS)細胞、HeLa、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、及び酵母細胞からなる群から選択される、請求項108に記載の宿主細胞。
【請求項110】
細胞集団においてBCL11A標的核酸配列を改変する方法であって、前記細胞集団に、
a.請求項1~85のいずれか一項に記載のシステム、
b.請求項86~89のいずれか一項に記載の核酸、
c.請求項90~100のいずれか一項に記載のベクター、
d.請求項101~107のいずれか一項に記載のXDP、又は
e.(a)~(d)のうちの2つ以上の組み合わせ、を導入することを含み、
前記第1のgRNAによって標的化される前記細胞の前記BCL11A遺伝子の標的核酸配列が、前記前記CasXバリアントタンパク質によって改変される、方法。
【請求項111】
前記改変することが、前記細胞集団の前記BCL11A遺伝子の標的核酸配列に一本鎖切断を導入することを含む、請求項110に記載の方法。
【請求項112】
前記改変することが、前記細胞集団の前記BCL11A遺伝子の標的核酸配列に二本鎖切断を導入することを含む、請求項110に記載の方法。
【請求項113】
第2のgRNA又は前記第2のgRNAをコードする核酸を前記細胞集団に導入することを更に含み、前記第2のgRNAが、前記第1のgRNAと比較して、前記BCL11A遺伝子の標的核酸の異なる部分又は重複する部分に相補的な標的化配列を有し、前記細胞集団の前記BCL11A標的核酸における更なる切断をもたらす、請求項110~112のいずれか一項に記載の方法。
【請求項114】
前記改変することが、前記細胞集団の前記BCL11A遺伝子において1つ以上のヌクレオチドの挿入、欠失、置換、重複、又は逆位を導入することを含む、請求項110~113のいずれか一項に記載の方法。
【請求項115】
前記標的核酸のGATA1結合部位配列が改変される、請求項110~114のいずれか一項に記載の方法。
【請求項116】
前記方法が、前記細胞集団の前記BCL11A遺伝子の標的核酸配列の前記切断部位への前記ドナー鋳型の挿入を含む、請求項110~113のいずれか一項に記載の方法。
【請求項117】
前記ドナー鋳型の前記挿入が、相同組換え修復(HDR)又は相同性非依存性標的化組み込み(HITI)によって媒介される、請求項114に記載の方法。
【請求項118】
前記標的核酸の前記GATA1結合部位配列が改変される、請求項116又は請求項117に記載の方法。
【請求項119】
前記ドナー鋳型の挿入が、前記細胞集団における前記BCL11A遺伝子のノックダウン又はノックアウトをもたらす、請求項116~118のいずれか一項に記載の方法。
【請求項120】
前記BCL11Aタンパク質の発現が、前記BCL11A遺伝子が改変されていない細胞と比較して、少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、又は少なくとも約90%減少するように、前記細胞集団の前記BCL11A遺伝子が改変される、請求項110~119のいずれか一項に記載の方法。
【請求項121】
前記改変された細胞の少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、又は少なくとも約90%が検出可能なレベルのBCL11Aタンパク質を発現しないように、前記細胞集団の前記BCL11A遺伝子が改変される、請求項110~119のいずれか一項に記載の方法。
【請求項122】
前記細胞が、真核細胞である、請求項110~121のいずれか一項に記載の方法。
【請求項123】
前記真核細胞が、げっ歯類細胞、マウス細胞、ラット細胞、及び非ヒト霊長類細胞からなる群から選択される、請求項122に記載の方法。
【請求項124】
前記真核細胞が、ヒト細胞である、請求項122に記載の方法。
【請求項125】
前記真核細胞が、造血幹細胞(HSC)、造血前駆細胞(HPC)、CD34+細胞、間葉系幹細胞(MSC)、人工多能性幹細胞(iPSC)、骨髄系共通前駆細胞、前赤芽球細胞、及び赤芽球細胞からなる群から選択される、請求項122~124のいずれか一項に記載の方法。
【請求項126】
前記細胞集団の前記BCL11A遺伝子の標的核酸配列の前記改変が、インビトロ又はエクスビボで起こる、請求項110~125のいずれか一項に記載の方法。
【請求項127】
前記細胞集団の前記BCL11A遺伝子の標的核酸配列の前記改変が、対象においてインビボで起こる、請求項110~125のいずれか一項に記載の方法。
【請求項128】
前記対象が、げっ歯類、マウス、ラット、及び非ヒト霊長類からなる群から選択される、請求項127に記載の方法。
【請求項129】
前記対象が、ヒトである、請求項127に記載の方法。
【請求項130】
前記方法が、前記対象に治療有効用量の前記AAVベクターを投与することを含む、請求項127~129のいずれか一項に記載の方法。
【請求項131】
前記AAVベクターが、少なくとも約1×10
5ベクターゲノム/kg(vg/kg)、少なくとも約1×10
6vg/kg、少なくとも約1×10
7vg/kg、少なくとも約1×10
8vg/kg、少なくとも約1×10
9vg/kg、少なくとも約1×10
10vg/kg、少なくとも約1×10
11vg/kg、少なくとも約1×10
12vg/kg、少なくとも約1×10
13vg/kg、少なくとも約1×10
14vg/kg、少なくとも約1×10
15vg/kg、又は少なくとも約1×10
16vg/kgの用量で前記対象に投与される、請求項130に記載の方法。
【請求項132】
前記AAVベクターが、少なくとも約1×10
5vg/kg~約1×10
16vg/kg、少なくとも約1×10
6vg/kg~約1×10
15vg/kg、又は少なくとも約1×10
7vg/kg~約1×10
14vg/kgの用量で前記対象に投与される、請求項130に記載の方法。
【請求項133】
前記方法が、治療有効用量のXDPを前記対象に投与することを含む、請求項127~129のいずれか一項に記載に記載の方法。
【請求項134】
前記XDPが、少なくとも約1×10
5粒子/kg、少なくとも約1×10
6粒子/kg、少なくとも約1×10
7粒子/kg、少なくとも約1×10
8粒子/kg、少なくとも約1×10
9粒子/kg、少なくとも約1×10
10粒子/kg、少なくとも約1×10
11粒子/kg、少なくとも約1×10
12粒子/kg、少なくとも約1×10
13粒子/kg、少なくとも約1×10
14粒子/kg、少なくとも約1×10
15粒子/kg、少なくとも約1×10
16粒子/kgの用量で前記対象に投与される、請求項133に記載の方法。
【請求項135】
前記XDPが、少なくとも約1×10
5粒子/kg~約1×10
16粒子/kg、又は少なくとも約1×10
6粒子/kg~約1×10
15粒子/kg、又は少なくとも約1×10
7粒子/kg~約1×10
14粒子/kgの用量で前記対象に投与される、請求項133に記載の方法。
【請求項136】
前記ベクター又は前記XDPが、移植、局所注射、全身注入、又はそれらの組み合わせから選択される投与経路によって前記対象に投与される、請求項128~135のいずれか一項に記載の方法。
【請求項137】
前記方法が、治療前の前記対象におけるヘモグロビンF(HbF)のレベルと比較して、少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、又は少なくとも約50%の前記対象の循環血液中のHbFのレベルの増加をもたらす、請求項128~136のいずれか一項に記載の方法。
【請求項138】
前記方法が、少なくとも0.01:1.0、少なくとも0.025:1.0、少なくとも0.05:1.0、少なくとも0.075:1.0、少なくとも0.1:1.0、少なくとも0.2:1.0、少なくとも0.3:1.0、少なくとも0.4:1.0、少なくとも0.5:1:0、少なくとも0.75:1.0、少なくとも1.0:1.0、少なくとも1.25:1.0、少なくとも1.5:1.0、又は少なくとも1.75:1.0の前記対象の循環血液中のHbF対ヘモグロビンS(HbS)の比をもたらす、実施形態128~137のいずれか一項に記載の方法。
【請求項139】
前記方法が、前記対象の循環血液中の総ヘモグロビンの少なくとも約5%、又は少なくとも約10%、又は少なくとも約20%、又は少なくとも約30%のHbFレベルをもたらす、請求項128~138のいずれか一項に記載の方法。
【請求項140】
前記細胞集団の前記BCL11A遺伝子の標的核酸配列を、
a.前記第1のgRNAと比較して、前記BCL11A標的核酸の異なる部分若しくは重複する部分を標的化する追加のCRISPRヌクレアーゼ及びgRNA、
b.(a)の前記追加のCRISPRヌクレアーゼ及び前記gRNAをコードするポリヌクレオチド、
c.(b)の前記ポリヌクレオチドを含むベクター、又は
d.(a)の前記追加のCRISPRヌクレアーゼ及び前記gRNAを含むXDP、と接触させることを更に含み、
前記接触させることが、前記第1のgRNAによって標的化される前記配列と比較して、前記配列における異なる位置で前記BCL11A遺伝子の改変をもたらす、実施形態110~139のいずれか一項に記載の方法。
【請求項141】
前記追加のCRISPRヌクレアーゼが、請求項1~140のいずれか一項に記載のCasXタンパク質とは異なる配列を有するCasXタンパク質である、請求項140に記載の方法。
【請求項142】
前記追加のCRISPRヌクレアーゼが、CasXタンパク質ではない、請求項140に記載の方法。
【請求項143】
前記追加のCRISPRヌクレアーゼが、Cas9、Cas12a、Cas12b、Cas12c、Cas12d(CasY)、Cas12j、Cas12k、Cas13a、Cas13b、Cas13c、Cas13d、Cas14、Cpfl、C2cl、Csn2、及びそれらの配列バリアントからなる群から選択される、請求項142に記載の方法。
【請求項144】
請求項110~143のいずれか一項に記載の方法によって改変された細胞集団であって、前記改変された細胞の少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、又は少なくとも95%が検出可能なレベルのBCL11Aタンパク質を発現しないように、前記細胞が改変されている、細胞集団。
【請求項145】
BCL11Aタンパク質の前記発現が、前記BCL11A遺伝子が改変されていない細胞と比較して、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、又は少なくとも95%減少するように、前記細胞が改変されている、請求項110~143のいずれか一項に記載の方法によって改変された細胞集団。
【請求項146】
異常ヘモグロビン症の治療を必要とする対象においてそれを行う方法であって、治療有効量の請求項144又は請求項145に記載の細胞を前記対象に投与することを含む、方法。
【請求項147】
前記異常ヘモグロビン症が、鎌状赤血球症又はβサラセミアである、請求項146に記載の方法。
【請求項148】
前記細胞が、前記細胞を投与される前記対象に対して自己由来である、請求項146又は請求項147に記載の方法。
【請求項149】
前記細胞が、前記細胞を投与される前記対象に対して同種である、請求項146又は請求項147に記載の方法。
【請求項150】
前記細胞又はその子孫が、前記対象への前記改変された細胞の投与後、前記対象において、少なくとも1ヶ月間、2ヶ月間、3ヶ月間、4ヶ月間、5ヶ月間、6ヶ月間、7ヶ月間、8ヶ月間、9ヶ月間、10ヶ月間、11ヶ月間、12ヶ月間、13ヶ月間、14ヶ月間、15ヶ月間、16ヶ月間、17ヶ月間、18ヶ月間、19ヶ月間、20ヶ月間、21ヶ月間、22ヶ月間、23ヶ月間、2年間、3年間、4年間、又は5年間存続する、請求項146~149のいずれか一項に記載の方法。
【請求項151】
前記方法が、治療前の前記対象におけるヘモグロビンF(HbF)のレベルと比較して、少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、又は少なくとも約50%の循環血液中のHbFのレベルの増加をもたらす、請求項146~150のいずれか一項に記載の方法。
【請求項152】
前記方法が、少なくとも0.01:1.0、少なくとも0.025:1.0、少なくとも0.05:1.0、少なくとも0.075:1.0、少なくとも0.1:1.0、少なくとも0.2:1.0、少なくとも0.3:1.0、少なくとも0.4:1.0、少なくとも0.5:1:0、少なくとも0.75:1.0、少なくとも1.0:1.0、少なくとも1.25:1.0、少なくとも1.5:1.0、又は少なくとも1.75:1.0の前記対象におけるHbF対ヘモグロビンS(HbS)の比をもたらす、実施形態146~150のいずれか1項に記載の方法。
【請求項153】
前記方法が、前記対象における総循環ヘモグロビンの少なくとも約5%、又は少なくとも約10%、又は少なくとも約20%、又は少なくとも約30%のHbFレベルをもたらす、請求項146~150のいずれか一項に記載の方法。
【請求項154】
前記対象が、げっ歯類、マウス、ラット、及び非ヒト霊長類からなる群から選択される、請求項146~153のいずれか一項に記載の方法。
【請求項155】
前記対象が、ヒトである、請求項146~153のいずれか一項に記載の方法。
【請求項156】
異常ヘモグロビン症の治療を必要とする対象においてそれを行う方法であって、前記対象の細胞においてBCL11A遺伝子を改変することを含み、前記改変することが、前記細胞を、治療有効用量の
a.請求項1~85のいずれか一項に記載のシステム、
b.請求項86~89のいずれか一項に記載の核酸、
c.請求項90~100のいずれか一項に記載のベクター、
d.請求項101~104のいずれか一項に記載のXDP、又は
e.(a)~(d)のうちの2つ以上の組み合わせ、と接触させることを含み、
前記第1のgRNAによって標的化される前記細胞の前記BCL11A遺伝子が、前記CasXタンパク質によって改変される、方法。
【請求項157】
前記異常ヘモグロビン症が、鎌状赤血球症又はβサラセミアである、請求項156に記載の方法。
【請求項158】
前記細胞が、造血幹細胞(HSC)、造血前駆細胞(HPC)、CD34+細胞、間葉系幹細胞(MSC)、人工多能性幹細胞(iPSC)、骨髄系共通前駆細胞、前赤芽球細胞、及び赤芽球細胞からなる群から選択される、請求項156又は請求項157のいずれか一項に記載の方法。
【請求項159】
前記改変することが、前記細胞の前記BCL11A遺伝子において一本鎖切断を導入することを含む、請求項156~158のいずれか一項に記載の方法。
【請求項160】
前記改変することが、前記細胞の前記BCL11A遺伝子において二本鎖切断を導入することを含む、請求項156~158のいずれか一項に記載の方法。
【請求項161】
第2のgRNA又は前記第2のgRNAをコードする核酸を前記対象の前記細胞に導入することを更に含み、前記第2のgRNAが、前記第1のgRNAと比較して、前記標的核酸の異なる部分又は重複する部分に相補的な標的化配列を有し、前記対象の前記細胞の前記BCL11A標的核酸における更なる切断をもたらす、請求項156~160のいずれか一項に記載の方法。
【請求項162】
前記改変することが、前記細胞の前記BCL11A遺伝子において1つ以上のヌクレオチドの挿入、欠失、置換、重複、又は逆位を導入することを含む、請求項156~161のいずれか一項に記載の方法。
【請求項163】
前記改変することが、前記対象の前記改変された細胞における前記BCL11A遺伝子のノックダウン又はノックアウトをもたらす、請求項162記載の方法。
【請求項164】
前記改変された細胞による前記BCL11Aタンパク質の発現が、改変されていない細胞と比較して、少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、又は少なくとも約90%減少するように、前記細胞の前記BCL11A遺伝子が改変される、請求項156~163のいずれか一項に記載の方法。
【請求項165】
前記改変された細胞の少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、又は少なくとも95%が検出可能なレベルのBCL11Aタンパク質を発現しないように、前記対象の前記細胞の前記BCL11A遺伝子が改変される、請求項156~163のいずれか一項に記載の方法。
【請求項166】
前記方法が、治療前の前記対象におけるヘモグロビンF(HbF)のレベルと比較して、少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、又は少なくとも約50%の前記対象の循環血液中のHbFのレベルの増加をもたらす、請求項156~165のいずれか一項に記載の方法。
【請求項167】
前記方法が、少なくとも0.01:1.0、少なくとも0.025:1.0、少なくとも0.05:1.0、少なくとも0.075:1.0、少なくとも0.1:1.0、少なくとも0.2:1.0、少なくとも0.3:1.0、少なくとも0.4:1.0、少なくとも0.5:1:0、少なくとも0.75:1.0、少なくとも1.0:1.0、少なくとも1.25:1.0、少なくとも1.5:1.0、又は少なくとも1.75:1.0の前記対象の循環血液中のHbF対ヘモグロビンS(HbS)の比をもたらす、実施形態137~147のいずれか一項に記載の方法。
【請求項168】
前記方法が、前記対象の循環血液中の総ヘモグロビンの少なくとも約5%、又は少なくとも約10%、又は少なくとも約20%、又は少なくとも約30%のHbFレベルをもたらす、請求項156~165のいずれか一項に記載の方法。
【請求項169】
前記方法が、前記細胞の前記BCL11A遺伝子の標的核酸配列の前記切断部位への前記ドナー鋳型の挿入を含む、請求項156~161のいずれか一項に記載の方法。
【請求項170】
前記ドナー鋳型の前記挿入が、相同組換え修復(HDR)又は相同性非依存性標的化組み込み(HITI)によって媒介される、請求項168に記載の方法。
【請求項171】
前記ドナー鋳型の前記挿入が、前記対象の前記改変された細胞において前記BCL11A遺伝子のノックダウン又はノックアウトをもたらす、請求項168又は請求項170に記載の方法。
【請求項172】
前記改変された細胞による前記BCL11Aタンパク質の発現が、改変されていない細胞と比較して、少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、又は少なくとも約90%減少するように、前記細胞の前記BCL11A遺伝子が改変される、請求項166~171のいずれか一項に記載の方法。
【請求項173】
前記改変された細胞の少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、又は少なくとも95%が検出可能なレベルのBCL11Aタンパク質を発現しないように、前記対象の前記細胞の前記BCL11A遺伝子が改変される、請求項166~171のいずれか一項に記載の方法。
【請求項174】
前記方法が、治療前の前記対象におけるヘモグロビンF(HbF)のレベルと比較して、少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、又は少なくとも約50%の前記対象の循環血液中のHbFのレベルの増加をもたらす、請求項166~173のいずれか一項に記載の方法。
【請求項175】
前記方法が、少なくとも0.01:1.0、少なくとも0.025:1.0、少なくとも0.05:1.0、少なくとも0.075:1.0、少なくとも0.1:1.0、少なくとも0.2:1.0、少なくとも0.3:1.0、少なくとも0.4:1.0、少なくとも0.5:1:0、少なくとも0.75:1.0、少なくとも1.0:1.0、少なくとも1.25:1.0、少なくとも1.5:1.0、又は少なくとも1.75:1.0の前記対象の循環血液中のHbF対ヘモグロビンS(HbS)の比をもたらす、請求項166~173のいずれか一項に記載の方法。
【請求項176】
前記方法が、前記対象の循環血液中の総ヘモグロビンの少なくとも約5%、又は少なくとも約10%、又は少なくとも約20%、又は少なくとも約30%のHbFレベルをもたらす、請求項166~173のいずれか一項に記載の方法。
【請求項177】
前記対象が、げっ歯類、マウス、ラット、及び非ヒト霊長類からなる群から選択される、請求項156~175のいずれか一項に記載の方法。
【請求項178】
前記対象が、ヒトである、請求項156~175のいずれか一項に記載の方法。
【請求項179】
前記ベクターが、AAVであり、少なくとも約1×10
5ベクターゲノム/kg(vg/kg)、少なくとも約1×10
6vg/kg、少なくとも約1×10
7vg/kg、少なくとも約1×10
8vg/kg、少なくとも約1×10
9vg/kg、少なくとも約1×10
10vg/kg、少なくとも約1×10
11vg/kg、少なくとも約1×10
12vg/kg、少なくとも約1×10
13vg/kg、少なくとも約1×10
14vg/kg、少なくとも約1×10
15vg/kg、又は少なくとも約1×10
16vg/kgの用量で前記対象に投与される、請求項156~178のいずれか一項に記載の方法。
【請求項180】
前記ベクターが、AAVであり、少なくとも約1×10
5vg/kg~約1×10
16vg/kg、少なくとも約1×10
6vg/kg~約1×10
15vg/kg、又は少なくとも約1×10
7vg/kg~約1×10
14vg/kgの用量で前記対象に投与される、請求項156~178のいずれか一項に記載の方法。
【請求項181】
前記XDPが、少なくとも約1×10
5粒子/kg、少なくとも約1×10
6粒子/kg、少なくとも約1×10
7粒子/kg、少なくとも約1×10
8粒子/kg、少なくとも約1×10
9粒子/kg、少なくとも約1×10
10粒子/kg、少なくとも約1×10
11粒子/kg、少なくとも約1×10
12粒子/kg、少なくとも約1×10
13粒子/kg、少なくとも約1×10
14粒子/kg、少なくとも約1×10
15粒子/kg、少なくとも約1×10
16粒子/kgの用量で前記対象に投与される、請求項156~178のいずれか一項に記載の方法。
【請求項182】
前記XDPが、少なくとも約1×10
5粒子/kg~約1×10
16粒子/kg、又は少なくとも約1×10
6粒子/kg~約1×10
15粒子/kg、又は少なくとも約1×10
7粒子/kg~約1×10
14粒子/kgの用量で前記対象に投与される、請求項156~178のいずれか一項に記載の方法。
【請求項183】
前記ベクター又は前記XDPが、実質内、静脈内、動脈内、腹腔内(intraperitoneal)、嚢内、皮下、筋肉内、腹腔内(intraabdominally)、又はそれらの組み合わせから選択される投与経路によって前記対象に投与され、前記投与方法が、注射、輸血、又は移植である、請求項156~182のいずれか一項に記載の方法。
【請求項184】
前記方法が、前記対象における少なくとも1つの臨床的に関連するエンドポイントの改善をもたらす、請求項156~183のいずれか一項に記載の方法。
【請求項185】
前記方法が、末端臓器疾患の発生、アルブミン尿、高血圧、衰弱状態、低張尿、拡張機能障害、機能的な運動能力、急性冠症候群、疼痛事象、疼痛重篤度、貧血症、溶血、組織低酸素症、臓器機能障害、異常なヘマトクリット値、小児死亡率、脳卒中の発生率、ベースラインと比較したヘモグロビンレベル、HbFレベル、肺塞栓症の発生率の低下、血管閉塞危機の発生率、赤血球中のヘモグロビンSの濃度、入院率、肝臓鉄濃度、必要な輸血、及び生活の質スコアからなる群から選択される少なくとも1つの臨床的に関連するパラメータの改善をもたらす、請求項184に記載の方法。
【請求項186】
前記方法が、末端臓器疾患の発生、アルブミン尿、高血圧、衰弱状態、低張尿、拡張機能障害、機能的な運動能力、急性冠症候群、疼痛事象、疼痛重篤度、貧血症、溶血、組織低酸素症、臓器機能障害、異常なヘマトクリット値、小児死亡率、脳卒中の発生率、ベースラインと比較したヘモグロビンレベル、HbFレベル、肺塞栓症の発生率の低下、血管閉塞危機の発生率、赤血球中のヘモグロビンSの濃度、入院率、肝臓鉄濃度、必要な輸血、及び生活の質スコアからなる群から選択される少なくとも2つの臨床的に関連するパラメータの改善をもたらす、請求項184に記載の方法。
【請求項187】
異常ヘモグロビン症を有する対象を治療するための方法であって、
a.対象から人工多能性幹細胞(iPSC)又は造血幹細胞(HSC)を単離することと、
b.請求項110~126のいずれか一項に記載の方法によって、前記iPSC又は前記HSCの前記BCL11A標的核酸を改変することと、
c.前記改変されたiPSC又はHSCを造血前駆細胞に分化させることと、
d.前記異常ヘモグロビン症を有する前記対象に前記造血前駆細胞を移植することと、を含み、
前記方法が、治療前の前記対象におけるヘモグロビンF(HbF)のレベルと比較して、少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、又は少なくとも約50%の前記対象の循環血液中のHbFのレベルの増加をもたらす、方法。
【請求項188】
前記iPSC又は前記HSCが、自己由来であり、前記対象の骨髄又は末梢血から単離される、請求項187に記載の方法。
【請求項189】
前記iPSC又は前記HSCが、同種であり、異なる対象の骨髄又は末梢血から単離される、請求項187に記載の方法。
【請求項190】
前記移植することが、移植、局所注射、全身注入、又はそれらの組み合わせによって前記対象に前記造血前駆細胞を投与することを含む、請求項187~189のいずれか一項に記載の方法。
【請求項191】
前記異常ヘモグロビン症が、鎌状赤血球症又はβサラセミアである、請求項187~190のいずれか一項に記載の方法。
【請求項192】
ゲノム編集によって対象において胎児型ヘモグロビン(HbF)を増加させる方法であって、
a.有効用量の請求項90~100のいずれか一項に記載のベクター又は請求項101~107のいずれか一項に記載のXDPを前記対象に投与することであって、前記ベクター又は前記XDPが、前記対象の細胞に、CasX:gRNAシステムを送達する、投与することと、
b.前記対象の細胞の前記BCL11A標的核酸が、前記第1のgRNAによって標的化される前記CasXによって編集されることと、
c.BCL11Aタンパク質の発現が低減又は排除されるように、前記編集することが、前記標的核酸配列において1つ以上のヌクレオチドの挿入、欠失、置換、重複、又は逆位を導入することを含むことと、を含み、
前記方法が、治療前の前記対象におけるヘモグロビンF(HbF)のレベルと比較して、少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、又は少なくとも約50%の前記対象の循環血液中のHbFのレベルの増加をもたらす、方法。
【請求項193】
前記方法が、少なくとも0.01:1.0、少なくとも0.025:1.0、少なくとも0.05:1.0、少なくとも0.075:1.0、少なくとも0.1:1.0、少なくとも0.2:1.0、少なくとも0.3:1.0、少なくとも0.4:1.0、少なくとも0.5:1:0、少なくとも0.75:1.0、少なくとも1.0:1.0、少なくとも1.25:1.0、少なくとも1.5:1.0、又は少なくとも1.75:1.0の前記対象におけるHbF対ヘモグロビンS(HbS)の比をもたらす、請求項192に記載の方法。
【請求項194】
前記方法が、前記対象における総循環ヘモグロビンの少なくとも約5%、又は少なくとも約10%、又は少なくとも約20%、又は少なくとも約30%のHbFレベルをもたらす、請求項192又は請求項193に記載の方法。
【請求項195】
前記細胞が、造血幹細胞(HSC)、造血前駆細胞(HPC)、CD34+細胞、間葉系幹細胞(MSC)、人工多能性幹細胞(iPSC)、骨髄系共通前駆細胞、前赤芽球細胞、及び赤芽球細胞からなる群から選択される、請求項192~194のいずれか一項に記載の方法。
【請求項196】
前記BCL11Aタンパク質の発現が、編集されていない細胞の標的核酸と比較して、少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、又は少なくとも約90%減少するように、前記細胞の前記標的核酸が編集されている、請求項192~195のいずれか一項に記載の方法。
【請求項197】
前記対象が、マウス、ラット、ブタ、及び非ヒト霊長類からなる群から選択される、請求項192~196のいずれか一項に記載の方法。
【請求項198】
前記対象が、ヒトである、請求項192~196のいずれか一項に記載の方法。
【請求項199】
前記ベクターが、少なくとも約1×10
5ベクターゲノム/kg(vg/kg)、少なくとも約1×10
6vg/kg、少なくとも約1×10
7vg/kg、少なくとも約1×10
8vg/kg、少なくとも約1×10
9vg/kg、少なくとも約1×10
10vg/kg、少なくとも約1×10
11vg/kg、少なくとも約1×10
12vg/kg、少なくとも約1×10
13vg/kg、少なくとも約1×10
14vg/kg、少なくとも約1×10
15vg/kg、又は少なくとも約1×10
16vg/kgの用量で投与される、請求項192~198のいずれか一項に記載の方法。
【請求項200】
前記XDPが、少なくとも約1×10
5粒子/kg、少なくとも約1×10
6粒子/kg、少なくとも約1×10
7粒子/kg、少なくとも約1×10
8粒子/kg、少なくとも約1×10
9粒子/kg、少なくとも約1×10
10粒子/kg、少なくとも約1×10
11粒子/kg、少なくとも約1×10
12粒子/kg、少なくとも約1×10
13粒子/kg、少なくとも約1×10
14粒子/kg、少なくとも約1×10
15粒子/kg、又は少なくとも約1×10
16粒子/kgの用量で投与される、請求項192~198のいずれか一項に記載の方法。
【請求項201】
前記ベクター又は前記XDPが、移植、局所注射、全身注入、又はそれらの組み合わせから選択される投与経路によって投与される、請求項192~200のいずれか一項に記載の方法。
【請求項202】
異常ヘモグロビン症の前記治療のための医薬品として使用するための、請求項1~85のいずれか一項に記載のシステム、請求項86~89のいずれか一項に記載の核酸、90~95のいずれか一項に記載のベクター、請求項101~104のいずれか一項に記載のXDP、請求項108若しくは請求項109に記載の宿主細胞、又は請求項144若しくは請求項145に記載の細胞集団。
【請求項203】
前記標的核酸配列が、プロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)配列の1ヌクレオチド3’側に位置する非標的鎖配列に相補的である、請求項1に記載のシステム。
【請求項204】
前記PAM配列が、TCモチーフを含む、請求項203に記載のシステム。
【請求項205】
前記PAM配列が、ATC、GTC、CTC、又はTTCを含む、請求項204に記載のシステム。
【請求項206】
前記クラス2 V型CRISPRタンパク質が、RuvCドメインを含む、請求項203~205のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項207】
前記RuvCドメインが、前記標的核酸配列においてずれた二本鎖切断を生成する、請求項206に記載のシステム。
【請求項208】
前記クラス2 V型CRISPRタンパク質が、HNHヌクレアーゼドメインを含まない、請求項203~207のいずれか一項に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願に対する相互参照
本出願は、2020年12月3日に出願された、米国仮特許出願第63/1200233,885号の優先権を主張し、その内容は、参照によりそれらの全体が本明細書に援用される。
【0002】
配列表の参照による援用
本出願はEFS-Webを介して提出されたASCII形式の配列表を含み、その全体が参照により本明細書に援用される。当該ASCIIコピーは、2021年12月1日に作成され、名前が、SCRB_030_01WO_SeqList_ST25.txtであり、ファイルサイズが、8.78MBである。
【背景技術】
【0003】
胎児型ヘモグロビン(同様にヘモグロビンF、HbF、又はα2γ2)は、ヒト胎児における主要な酸素キャリアタンパク質である。HbFは、ヘモグロビンの成人形態とは異なる組成を有し、成人形態よりも強く酸素に結合することを可能にし、発育中の胎児が母親の血流から酸素を回収することを可能にする。HbFは、2つの成体α-グロビンポリペプチドと2つの胎児β様γ-グロビンポリペプチドとの四量体である。妊娠中、複製されたγ-グロビン遺伝子は、β-グロビンクラスターにおいて転写される主な遺伝子を構成する。出生後、γ-グロビンは、成体β-グロビンによって置換され、このプロセスは、「胎児スイッチ(fetal switch)」と呼ばれ、BCL11A(HbFサイレンシングの調節因子)の発現を伴うプロセスである(Sankaran,V.G.,et al.Human Fetal Hemoglobin Expression Is Regulated by the Developmental Stage-Specific Repressor BCL11A.Science 322(5909):1839-1842(2008)、Liu,N.,et al.Direct Promoter Repression by BCL11A Controls the Fetal to Adult Hemoglobin Switch.Cell 173(2):430(2018))。健康な成人では、ヘモグロビンの組成は、ヘモグロビンA(約97%)、ヘモグロビンA2(2.2~3.5%)、及びヘモグロビンF(<1%)である(Thomas,C and Lumb,A.B.Physiology of haemoglobin.Continuing Education in Anaesthesia Critical Care&Pain.12(5):251-256(2012))。
【0004】
異常ヘモグロビン症は、ほとんどの場合、常染色体共優性形質として遺伝する遺伝性単一遺伝子障害である。一般的な異常ヘモグロビン症としては、鎌状赤血球症並びにαサラセミア及びβサラセミアが挙げられる。異常ヘモグロビン症は、アフリカ、地中海沿岸、及び東南アジアの人々において最も一般的である。鎌状赤血球貧血を含むほとんどの異常ヘモグロビン症は、単にグロビンタンパク質自体の構造的異常である。鎌状赤血球貧血は、β-グロビン構造遺伝子HBBにおける点変異から生じ、異常ヘモグロビン(HbS)の産生をもたらし、血液の酸素運搬能力の低下をもたらす。サラセミアは、対照的に、通常、正常なグロビンタンパク質の産生不足をもたらし、多くの場合、調節遺伝子における変異を介して、成体型ヘモグロビン(HbA)の欠乏又は不在をもたらす。βサラセミアでは、β-グロビンが欠損しており、γ-グロビンの発現の増加は、この状態における貧血の病態生理の根底にあるα-グロビン鎖とβ-グロビン鎖の不均衡を減少させる(Liu,N.,et al.Direct Promoter Repression by BCL11A Controls the Fetal to Adult Hemoglobin Switch.Cell 173(2):430(2018))。鎌状赤血球症及びサラセミアの両方が、貧血を引き起こし得る。
【0005】
B細胞リンパ腫/白血病11A(B-cell lymphoma/leukemia 11A、BCL11A)は、ヒトにおいてBCL11A遺伝子によってコードされるタンパク質である。造血細胞の分化の間、この遺伝子は下方調節され、胎児型ヘモグロビン産生の抑制において役割を果たすことが見出されている。BCL11Aは、γサブユニットをコードする遺伝子にそのプロモーター領域で結合することによる、ヘモグロビンF産生の主要なリプレッサータンパク質である(Sankaran VG,et al.Human fetal hemoglobin expression is regulated by the developmental stage-specific repressor BCL11A.Science 322:1839(2008))。増加したγ-グロビンは、β-グロビンの変異又は発現の減少によって引き起こされるβ-異常ヘモグロビン症、鎌状赤血球症、及びβサラセミアの臨床重症度をそれぞれ減少させるので、γ-グロビンの発現を残りの約1%の胎児型ヘモグロビンを超えて増加させるためのBCL11Aの遺伝子編集が、異常ヘモグロビン症を有する成人における魅力的な治療戦略として提案されている(Smith,E.C.,et al.Strict in vivo specificity of the Bcl11a erythroid enhancer.Blood 128(19):2338(2016))。
【0006】
CRISPR/Casシステムの出現及びこれらの最小システムのプログラム可能な性質は、ゲノム操作及びエンジニアリングのための多用途技術としてのそれらの使用を容易にした。今日まで、異常ヘモグロビン症の治療のためのCRISPR/Casシステムの使用は、エクスビボでの細胞の編集、それに続く、根底にある異常ヘモグロビン症に罹患している対象への移植に限定されてきた。したがって、これらの疾患を有する対象において、インビボで直接的なγ-グロビン遺伝子プロモーターの抑制を低減するために、BCL11Aを調節する組成物及び方法が必要とされている。この必要性に対処するために、BCL11A遺伝子を標的化するための組成物及び方法が本明細書に提供される。
【発明の概要】
【0007】
本開示は、細胞においてBCL11A遺伝子を含む標的核酸を改変するために使用される、改変されたクラス2、V型CRISPRタンパク質及びガイド核酸の組成物に関する。クラス2、V型CRISPRタンパク質及びガイド核酸は、標的細胞に受動的に侵入するように改変される。クラス2、V型CRISPRタンパク質及びガイド核酸は、BCL11A関連疾患の標的核酸を改変するための様々な方法において有用であり、この方法も提供される。
【0008】
一態様では、本開示は、β異常ヘモグロビン症関連疾患を有する対象においてBCL11A遺伝子産物の発現を低減又は排除するための、CasX:ガイド核酸システム(CasX:gRNAシステム)及びBCL11A遺伝子をノックダウン又はノックアウトするために使用される方法に関する。
【0009】
いくつかの実施形態では、CasX:gRNAシステムのgRNAは、gRNA、又はRNAとDNAとのキメラであり、単一分子gRNA又は二種分子gRNAであり得る。他の実施形態では、CasX:gRNAシステムのgRNAは、BCL11A遺伝子内の領域を含む標的核酸配列に相補的な標的化配列を有する。いくつかの実施形態では、gRNAの標的化配列は、配列番号272~2100及び2286~26789、又はそれと少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、若しくは少なくとも約95%の同一性を有する配列からなる群から選択される。gRNAは、15~20個の連続したヌクレオチドを含む標的化配列を含むことができる。他の実施形態では、gRNAの標的化配列は、20ヌクレオチドからなる。他の実施形態では、標的化配列は、19ヌクレオチドからなる。他の実施形態では、標的化配列は、18ヌクレオチドからなる。他の実施形態では、標的化配列は、17ヌクレオチドからなる。他の実施形態では、標的化配列は、16ヌクレオチドからなる。他の実施形態では、標的化配列は、15ヌクレオチドからなる。他の実施形態では、gRNAの標的化配列は、配列番号272~2100及び2286~26789からなる群から選択される配列を有する。他の実施形態では、gRNAの標的化配列は、配列番号272~2100及び2286~26789からなる群から選択される配列を有し、配列の3’末端から単一のヌクレオチドが除去されている。他の実施形態では、標的化配列は、18ヌクレオチドからなり、配列番号272~2100及び2286~26789からなる群から選択される配列を有し、2つのヌクレオチドが配列の3’末端から除去されている。他の実施形態では、標的化配列は、17ヌクレオチドからなり、配列番号272~2100及び2286~26789からなる群から選択される配列を有し、3つのヌクレオチドが配列の3’末端から除去されている。他の実施形態では、標的化配列は、16ヌクレオチドからなり、配列番号272~2100及び2286~26789からなる群から選択される配列を有し、4つのヌクレオチドが配列の3’末端から除去されている。他の実施形態では、標的化配列は、15ヌクレオチドからなり、配列番号272~2100及び2286~26789からなる群から選択される配列を有し、5つのヌクレオチドが配列の3’末端から除去されている。
【0010】
いくつかの実施形態では、gRNAは、配列番号2238~2285、26794~26839、及び27219~27265の配列からなる群から選択される配列、若しくは表3に示される配列、又はそれと少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%の配列同一性を有する配列を含む足場(scaffold)を有する。いくつかの実施形態では、gRNAは、配列番号2238~2285、26794~26839、及び27219~27265の配列からなる群から選択される配列を含む足場を有する。いくつかの実施形態では、gRNAは、配列番号2101~2285、26794~26839、及び27219~27265の配列からなる群から選択される配列を含む足場を有する。
【0011】
いくつかの実施形態では、CasX:gRNAシステムは、配列番号36~99、101~148、26908~27154からなる群から選択される配列、又はそれと少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、若しくは少なくとも約90%、若しくは少なくとも約95%、若しくは少なくとも約96%、若しくは少なくとも約97%、若しくは少なくとも約98%、若しくは少なくとも約99%の配列同一性を有する配列を有するCasXバリアント配列を含む。いくつかの実施形態では、CasX:gRNAシステムは、配列番号36~99、101~148、26908~27154からなる群から選択される配列を有するCasXバリアント配列を含む。いくつかの実施形態では、CasX:gRNAシステムは、配列番号59、72~99、101~148、及び26908~27154からなる群から選択される配列、若しくは表4に示される配列、又はそれと少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、若しくは少なくとも約90%、若しくは少なくとも約95%、若しくは少なくとも約96%、若しくは少なくとも約97%、若しくは少なくとも約98%、若しくは少なくとも約99%の配列同一性を有する配列を有するCasXバリアント配列を含む。いくつかの実施形態では、CasX:gRNAシステムは、配列番号59、72~99、101~148、及び26908~27154からなる群から選択される配列を有するCasXバリアント配列を含む。いくつかの実施形態では、CasX:gRNAシステムは、配列番号132~148及び26908~27154からなる群から選択される配列、又はそれと少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、若しくは少なくとも約90%、若しくは少なくとも約95%、若しくは少なくとも約96%、若しくは少なくとも約97%、若しくは少なくとも約98%、若しくは少なくとも約99%の配列同一性を有する配列を有するCasXバリアント配列を含む。いくつかの実施形態では、CasX:gRNAシステムは、配列番号132~148及び26908~27154からなる群から選択される配列を有するCasXバリアント配列を含む。これらの実施形態では、CasXバリアントは、配列番号1~3の参照CasXタンパク質のうちのいずれか1つと比較して、1つ以上の改善された特徴を示す。いくつかの実施形態では、CasXバリアントタンパク質は、TTC、ATC、GTC、及びCTCからなる群から選択されるプロトスペーサー隣接モチーフ(protospacer adjacent motif、PAM)配列に対する結合親和性を有する。いくつかの実施形態では、CasXバリアントタンパク質は、TTC、ATC、GTC、及びCTCからなる群から選択されるPAM配列に対する配列番号1~3の参照CasXタンパク質のうちのいずれか1つの結合親和性と比較して、少なくとも1.5倍大きいPAM配列に対する結合親和性を有する。
【0012】
CasX:gRNAシステムの他の実施形態では、CasX分子及びgRNA分子は、リボ核タンパク質複合体(ribonuclear protein、RNP)において一緒に会合している。特定の実施形態では、CasXバリアント及びgRNAバリアントを含むRNPは、PAM配列TTC、ATC、GTC、又はCTCのうちのいずれか1つが、細胞アッセイシステムにおいてgRNAの標的化配列と同一性を有する非標的鎖配列に対して1ヌクレオチド5’側に位置する場合、比較可能なアッセイシステムにおける参照CasXタンパク質及び参照gRNAを含むRNPの編集効率及び/又は結合と比較して、より高い標的DNAにおける標的配列の編集効率及び/又は結合を示す。
【0013】
いくつかの実施形態では、CasX:gRNAシステムは、BCL11A遺伝子の少なくとも一部を含み、野生型配列と比較して、少なくとも1~約5つの変異を有する核酸を含むドナー鋳型を更に含み、BCL11A遺伝子部分が、BCL11Aエキソン、BCL11Aイントロン、BCL11Aイントロン-エキソン接合部、BCL11A調節エレメント、又はそれらの組み合わせからなる群から選択され、ドナー鋳型が、BCL11A遺伝子をノックダウン又はノックアウトするために使用される。場合によっては、ドナー配列は、一本鎖DNA鋳型又は一本鎖RNA鋳型である。他の場合では、ドナー鋳型は、二本鎖DNA鋳型である。
【0014】
他の実施形態では、本開示は、本明細書に記載の実施形態のいずれかのCasX:gRNAシステムをコードする核酸、並びに核酸を含むベクターに関する。いくつかの実施形態では、ベクターは、レトロウイルスベクター、レンチウイルスベクター、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルス(adeno-associated viral、AAV)ベクター、単純ヘルペスウイルス(herpes simplex virus、HSV)ベクター、プラスミド、ミニサークル、ナノプラスミド、及びRNAベクターからなる群から選択される。他の実施形態では、ベクターは、本明細書に記載の実施形態のいずれかのCasX及びgRNAのRNP、並びに任意選択的に、ドナー鋳型核酸及び標的化部分(例えば、ウイルス由来糖タンパク質)を含む、CasX送達粒子(CasX delivery particle、XDP)である。
【0015】
他の実施形態では、本開示は、細胞集団のBCL11A標的核酸配列を改変する方法を提供し、当該方法は、細胞に、a)本明細書に開示される実施形態のいずれかのCasX:gRNAシステム、b)本明細書に開示される実施形態のいずれかの核酸、c)本明細書に開示される実施形態のいずれかのベクター、d)本明細書に開示される実施形態のいずれかのXDP、又はe)前述の組み合わせ、を導入することを含む。本方法のいくつかの実施形態では、改変することは、野生型配列と比較して、標的核酸配列において1つ以上のヌクレオチドの挿入、欠失、置換、重複、又は逆位を導入することを含む。標的BCL11A遺伝子は、調節エレメントとしてGATA1赤血球特異的エンハンサー結合部位(GATA1)を含む。いくつかの実施形態では、改変する方法は、GATA1配列の改変を含み、BCL11A遺伝子が、改変によってノックダウン又はノックアウトされる。場合によっては、本方法は、標的核酸を本明細書に開示される実施形態のいずれかのドナー鋳型核酸と接触させることを更に含む。本方法のいくつかの実施形態では、ドナー鋳型は、BCL11A遺伝子の少なくとも一部を含むが、BCL11A遺伝子をノックアウト又はノックダウンするための1つ以上の変異を有する核酸を含む。場合によっては、標的核酸配列の改変は、インビトロ又はエクスビボで起こる。場合によっては、標的核酸配列の改変はインビボで起こる。いくつかの実施形態では、細胞は、げっ歯類細胞、マウス細胞、ラット細胞、霊長類細胞、及び非ヒト霊長類細胞からなる群から選択される真核細胞である。いくつかの実施形態では、細胞は、ヒト細胞である。いくつかの実施形態では、細胞は、造血幹細胞(hematopoietic stem cell、HSC)、造血前駆細胞(hematopoietic progenitor cell、HPC)、CD34+幹細胞、間葉系幹細胞(mesenchymal stem cell、MSC)、人工多能性幹細胞(induced pluripotent stem cell、iPSC)、骨髄系共通前駆細胞、前赤芽球細胞、及び赤芽球細胞からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、細胞は、β異常ヘモグロビン症関連疾患を有する対象に由来する自己細胞である。他の実施形態では、細胞は、同種であるが、治療される対象と同じ種である。
【0016】
他の実施形態では、本開示は、BCL11A遺伝子の標的核酸配列を改変する方法を提供し、標的細胞集団が、CasXタンパク質、及びBCL11A遺伝子に相補的な標的化配列を含む1つ以上のgRNAをコードし、任意選択的に、ドナー鋳型を更に含む、ベクターを使用して接触される。場合によっては、ベクターは、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV-Rh74、又はAAVRh10から選択されるアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターである。他の場合では、ベクターはレンチウイルスベクターである。他の実施形態では、本開示は、ベクターを使用して標的細胞を接触させる方法であって、ベクターが、本明細書に記載の実施形態のいずれかのCasX及びgRNAのRNPと、任意選択的にドナー鋳型核酸とを含むCasX送達粒子(XDP)である、方法を提供する。本方法のいくつかの実施形態では、ベクターは、治療有効用量で対象に投与される。対象は、マウス、ラット、ブタ、非ヒト霊長類、又はヒトであり得る。用量は、移植、局所注射、全身注入、又はそれらの組み合わせから選択される投与経路によって投与することができる。
【0017】
他の実施形態では、本開示は、β異常ヘモグロビン症関連疾患の治療を必要とする対象において、それを行う方法を提供し、対象の細胞においてBCL11A遺伝子をコードする遺伝子を改変することを含み、改変することが、当該細胞を、a)本明細書に開示される実施形態のいずれかのCasX:gRNAシステム、b)本明細書に開示される実施形態のいずれかの核酸、c)本明細書に開示される実施形態のいずれかのベクター、d)本明細書に開示される実施形態のいずれかのXDP、又はe)前述の組み合わせ、のいずれかと接触させることを含む。いくつかの実施形態では、β異常ヘモグロビン症関連疾患は、鎌状赤血球貧血又はβサラセミアである。場合によっては、β異常ヘモグロビン症関連疾患を有する対象を治療する方法は、少なくとも1つの臨床的に関連するパラメータの改善をもたらす。他の場合では、β異常ヘモグロビン症関連疾患を有する対象を治療する方法は、少なくとも2つの臨床的に関連するパラメータの改善をもたらす。
【0018】
他の実施形態では、本開示は、β異常ヘモグロビン症関連疾患の治療を必要とする対象においてそれを行うための、本明細書に記載のCasX:gRNAシステム、核酸、ベクター、又はXDPの使用を提供する。いくつかの実施形態では、使用は、対象の細胞においてBCL11A遺伝子をコードする遺伝子を改変することを含み、改変することが、当該細胞を、a)本明細書に開示される実施形態のいずれかのCasX:gRNAシステム、b)本明細書に開示される実施形態のいずれかの核酸、c)本明細書に開示される実施形態のいずれかのベクター、d)本明細書に開示される実施形態のいずれかのXDP、又はe)前述の組み合わせ、のいずれかと接触させることを含む。
【0019】
参照による援用
本明細書で言及される全ての刊行物、特許、及び特許出願は、各個々の刊行物、特許、又は特許出願が、参照により援用されることが具体的かつ個別に示されているかのように、参照により本明細書に援用される。CasXバリアント及びgRNAバリアントを開示する、2020年12月3日に出願された米国仮出願第63/121,196号、2021年3月17日に出願された同第63/162,346号、及び2021年6月9日に出願された同第63/208,855号の内容は、それらの全体が参照により本明細書に援用される。2020年12月10日に公開された国際出願公開第2020/247882号、2020年12月10日に公開された同第2020/247883号、及び2021年6月10日に公開された同第2021/113772号の内容は、それらの全体が参照により本明細書に援用される。
【図面の簡単な説明】
【0020】
添付の特許請求の範囲に本開示の新規の特徴を詳細に示す。本開示の原理を利用する例示的な実施形態について示す以下の詳細な説明、並びに添付の図面を参照することによって、本開示の特徴及び利点がより良く理解されるであろう。
【
図1】実施例8に記載されるように、sgRNA174(配列番号2238)並びにCasXバリアント119(配列番号59)、457(配列番号101)、488(配列番号123)、及び491(配列番号126)によって形成されたRNPの活性画分を定量化するためのアッセイの結果のグラフである。等モル量のRNP及び標的を共インキュベートし、切断された標的の量を、示された時点で決定した。3回の独立した反復の平均値及び標準偏差を、各時点について示す。組み合わせた複製物の二相適合を示す。「2」は、配列番号2の参照CasXタンパク質を指す。
【
図2】実施例8に記載されるように、CasX2(配列番号2の参照CasXタンパク質)及び改変sgRNAによって形成されたRNPの活性画分の定量化を示す。等モル量のRNP及び標的を共インキュベートし、切断された標的の量を、示された時点で決定した。3回の独立した反復の平均値及び標準偏差を、各時点について示す。組み合わせた複製物の二相適合を示す。
【
図3】実施例8に記載されるように、ガイド制限条件下でCasX 491及び改変sgRNAによって形成されたRNPの活性画分の定量化を示す。等モル量のRNP及び標的を共インキュベートし、切断された標的の量を、示された時点で決定した。データの二相適合を示す。
【
図4】実施例8に記載されるように、sgRNA174及びCasXバリアントによって形成されたRNPの切断速度の定量化を示す。標的DNAを、20倍過剰の示されたRNPとインキュベートし、切断された標的の量を、示された時点で決定した。単一の反復が示される488及び491を除いて、3回の独立した反復の平均値及び標準偏差を、各時点について示す。組み合わせた反復の単相適合を示す。
【
図5】実施例8に記載されるように、CasX2及び示されたsgRNAバリアントによって形成されたRNPの切断速度の定量化を示す。標的DNAを、20倍過剰の示されたRNPとインキュベートし、切断された標的の量を、示された時点で決定した。3回の独立した反復の平均値及び標準偏差を、各時点について示す。組み合わせた反復の単相適合を示す。
【
図6】実施例8に記載されるように、CasX2及びsgRNAバリアントによって形成されたRNPの初速度の定量化を示す。先の切断実験の最初の2つの時点を線形モデルに適合して、切断初速度を決定した。
【
図7】実施例8に記載されるように、CasX491及びsgRNAバリアントによって形成されたRNPの切断速度の定量化を示す。標的DNAを、20倍過剰の示されたRNPと10℃でインキュベートし、切断された標的の量を、示された時点で決定した。時点の単相適合を示す。
【
図8】実施例8に記載されるように、等モル量の示されたRNP及び相補標的を使用して、gRNA 2と複合体化した参照CasX 2のRNPと比較した、gRNAバリアント174と複合体化したCasXバリアント515(配列番号133)及び526(配列番号143)のRNPのコンピテント画分の定量化を示す。各時間経過又は組み合わせた複製のセットについての二相適合を示す。
【
図9】実施例8に記載されるように、20倍過剰の示されたRNPを使用して、gRNA 2と複合体化した参照CasX 2のRNPと比較した、gRNAバリアント174と複合体化したCasXバリアント515及び526のRNPの切断速度の定量化を示す。
【
図10A】実施例5に記載されるように、TTC PAMに対するCasXバリアントの切断速度の定量化を示す。同一のスペーサー及び示されたPAM配列を有する標的DNA基質を、20倍過剰の示されたRNPと37℃でインキュベートし、切断された標的の量を、示された時点で決定した。単一反復の単相適合を示す。
【
図10B】実施例5に記載されるように、CTC PAMに対するCasXバリアントの切断速度の定量化を示す。同一のスペーサー及び示されたPAM配列を有する標的DNA基質を、20倍過剰の示されたRNPと37℃でインキュベートし、切断された標的の量を、示された時点で決定した。単一反復の単相適合を示す。
【
図10C】実施例5に記載されるように、GTC PAMに対するCasXバリアントの切断速度の定量化を示す。同一のスペーサー及び示されたPAM配列を有する標的DNA基質を、20倍過剰の示されたRNPと37℃でインキュベートし、切断された標的の量を、示された時点で決定した。単一反復の単相適合を示す。
【
図10D】実施例5に記載されるように、ATC PAMに対するCasXバリアントの切断速度の定量化を示す。同一のスペーサー及び示されたPAM配列を有する標的DNA基質を、20倍過剰の示されたRNPと37℃でインキュベートし、切断された標的の量を、示された時点で決定した。単一反復の単相適合を示す。
【
図11A】実施例5に記載されるように、NTC PAMに対するCasXバリアント491及びガイド174のRNPの切断速度の定量化を示す。時点を、10分間にわたって取得し、切断された画分を各標的及び時点についてグラフ化したが、明確にするために、時間経過の最初の2分間のみを示す。
【
図11B】実施例5に記載されるように、NTT PAMに対するCasXバリアント491及びガイド174のRNPの切断速度の定量化を示す。時点を、10分間にわたって取得し、切断された画分を、各標的及び時点についてグラフ化した。
【
図12A】実施例9に記載されるように、18、19、又は20ヌクレオチド長のスペーサーを使用して、sgRNA174及びCasXバリアント515によって形成されたRNPによる切断の定量化を示す。標的DNAを、20倍過剰の示されたRNPとインキュベートし、切断された標的の量を、示された時点で決定した。3回の独立した反復の平均値及び標準偏差を、各時点について示す。組み合わせた反復の単相適合を示す。
【
図12B】実施例9に記載されるように、18、19、又は20ヌクレオチド長のスペーサーを使用して、sgRNA174及びCasXバリアント526によって形成されたRNPによる切断の定量化を示す。標的DNAを、20倍過剰の示されたRNPとインキュベートし、切断された標的の量を、示された時点で決定した。3回の独立した反復の平均値及び標準偏差を、各時点について示す。組み合わせた反復の単相適合を示す。
【
図13】アデノ随伴ウイルス(AAV)におけるパッケージングのためのCasXタンパク質及び足場DNA配列の例を示す概略図である。CasXをコードするDNA及びそのプロモーター、並びに足場をコードするDNA及びそのプロモーターから構成される、AAV逆位末端反復(inverted terminal repeat、ITR)間のDNAセグメントは、AAV産生中にAAVカプシド内にパッケージングされる。
【
図14】Ai9-tdtomatoトランスジェニックマウスから単離されたマウス神経前駆細胞(mouse neural progenitor cell、mNPC)におけるgRNA足場229~237(対応する配列及び配列番号については表3を参照)と足場174を比較する編集アッセイの結果を示す。細胞を、CasX 491、足場、及びmRHOを標的化するスペーサー11.30(5’AAGGGGCUCCGCACCACGCC3’、配列番号27197)をコードする示された用量のp59プラスミドでヌクレオフェクトした。mRHO遺伝子座での編集を、トランスフェクションの5日後にNGSによって評価し、足場230、231、234、及び235を有する構築物による編集が、両方の用量で足場174を有する構築物と比較して、より大きな編集を実証したことを示す。
【
図15】mNPC細胞においてgRNA足場229~237と足場174を比較する編集アッセイの結果を示す。細胞を、tdTomato蛍光タンパクの発現を防止する反復エレメントを標的化する、CasX 491、足場、及びスペーサー12.7(5’CUGCAUUCUAGUUGUGGUUU 3’、配列番号27198)をコードする示された用量のp59プラスミドでヌクレオフェクトした。トランスフェクションの5日後、編集を、FACSによって評価して、tdTomato陽性細胞の割合を定量化した。足場231~235をヌクレオフェクトした細胞は、足場174を有する構築物と比較して、高用量では約35%より大きい編集を示し、低用量では約25%より大きい編集を示した。
【
図16】カスタムHEK293細胞株PASS_V1.01におけるCasXヌクレアーゼ2、119、491、515、527、528、529、530、及び531(対応する配列及び配列番号については表4を参照)を比較する編集アッセイの結果を示す。細胞を、示されたCasXタンパク質をコードする2μgのp67プラスミドでリポフェクトした。5日後、細胞のゲノムDNAを抽出した。PCR増幅及び次世代配列決定を実施して、カスタム設計されたオンターゲット編集部位で編集された細胞の画分を単離及び定量化した。各試料について、以下のPAM配列からなる標的部位(個々の点)で編集を評価した:48個のTTC、14個のATC、22個のCTC、11個のGTCの個々の部位、及び編集の割合(%)を、ビヒクル対照に対して正規化した。任意のヌクレアーゼでリポフェクトされた細胞は、CasX 528を除く野生型ヌクレアーゼCasX 2のものよりも高い、TTC PAM標的部位(水平バー)での平均編集を示した。また、4つの異なるPAM配列に対する任意の所与のヌクレアーゼの相対優先度が、バイオリンプロットで表されている。特に、CasXヌクレアーゼ527、528、及び529は、野生型ヌクレアーゼCasX 2のものとは実質的に異なるPAM優先度を示す。
【
図17】カスタムHEK293細胞株PASS_V1.01において、改良型CasXヌクレアーゼ491と改良型ヌクレアーゼ532及び533を比較する編集アッセイの結果を示す。細胞を、示されたCasXタンパク質及びピューロマイシン耐性遺伝子をコードする2μgのp67プラスミドで二連でリポフェクトし、ピューロマイシン選択下で増殖させた。3日後、細胞のゲノムDNAを抽出した。PCR増幅及び次世代配列決定を実施して、カスタム設計されたオンターゲット編集部位で編集された細胞の画分を単離及び定量化した。各試料について、以下のPAM配列からなる標的部位で編集を評価した:48個のTTC、14個のATC、22個のCTC、11個のGTCの個々の部位、及び編集の割合を、ビヒクル対照に対して正規化した。CasX 532又は533でリポフェクトされた細胞は、TTC PAM標的部位におけるCasX 533を除いて、PAM配列の各々においてCas 491よりも高い平均編集を示した。エラーバーは、n=2の生物学的試料についての平均値の標準誤差を表す。
【
図18】実施例13に記載されるように、Cas9システムと比較した、足場174を有するCasXタンパク質バリアント438によるHEK293T細胞におけるBCL11A赤血球エンハンサー遺伝子座の編集の結果を示す。
【
図19】実施例14に記載されるように、足場174を有するCasXタンパク質バリアント119と比較した、足場174を有するCasXタンパク質バリアント491によるK562細胞におけるBCL11A赤血球エンハンサー遺伝子座のGATA1結合領域での編集の結果を示す。
【
図20】実施例14に記載されるように、様々な用量のXDPによって送達された足場174を有するCasXタンパク質バリアント491による、K562細胞におけるBCL11A赤血球エンハンサー遺伝子座のGATA1結合領域での編集の結果を示す。
【
図21】実施例15に記載されるように、足場174を有するCasXタンパク質バリアント119と比較した、足場174を有するCasXタンパク質バリアント491による、HSC細胞におけるBCL11A赤血球エンハンサー遺伝子座のGATA1結合領域での編集の結果を示す。
【
図22】実施例15に記載されるように、様々な用量のXDPによって送達された足場174を有するCasXタンパク質バリアント491による、HSC細胞におけるBCL11A赤血球エンハンサー遺伝子座のGATA1結合領域での編集の結果を示す。
【
図23】標的核酸におけるGATA1結合部位配列に対するスペーサー21.1(配列番号22)の配置を示す概略図である。上の鎖:配列番号26790、下の鎖:配列番号26791。
【発明を実施するための形態】
【0021】
例示的な実施形態が本明細書に示され、説明されてきたが、かかる実施形態は、単なる例として提供されることが当業者には明らかであろう。当業者であれば、本明細書で特許請求される本発明から逸脱することなく、多数の変形、変更、及び置換を想起するであろう。本開示の実施形態を実施する際に、本明細書に記載の実施形態に対する様々な代替形態を用いることができることを理解されたい。特許請求の範囲が本発明の範囲を定義し、これらの特許請求の範囲内の方法及び構造並びにそれらの均等物がそれによって包含されることが意図される。
【0022】
別途定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書に記載されているものと同様又は同等の任意の方法及び材料を本実施形態の実施又は試験において使用することができるが、好適な方法及び材料を以下に記載する。矛盾する場合、定義を含む本特許明細書が優先される。加えて、材料、方法、及び実施例は、例示にすぎず、限定することを意図するものではない。当業者であれば、本発明から逸脱することなく、多数の変形、変更、及び置換を想起するであろう。
【0023】
定義
「ポリヌクレオチド」及び「核酸」という用語は、本明細書において互換的に使用され、リボヌクレオチド又はデオキシリボヌクレオチドのいずれかである、任意の長さのヌクレオチドのポリマー形態を指す。したがって、「ポリヌクレオチド」及び「核酸」という用語は、一本鎖DNA、二本鎖DNA、多重鎖DNA、一本鎖RNA、二本鎖RNA、多重鎖RNA、ゲノムDNA、cDNA、DNA-RNAハイブリッド、並びにプリン及びピリミジン塩基又は他の天然の、化学的若しくは生化学的に改変された、非天然の、若しくは誘導体化されたヌクレオチド塩基を含むポリマーを包含する。
【0024】
「ハイブリダイズ可能」又は「相補的」は、互換的に使用され、核酸(例えば、RNA、DNA)が、温度及び溶液のイオン強度の適切なインビトロ及び/又はインビボ条件下で、配列特異的な逆平行様式で、別の核酸に非共有結合する(すなわち、ワトソン-クリック塩基対及び/又はG/U塩基対を形成する)、「アニールする」又は「ハイブリダイズする」(すなわち、核酸が相補的な核酸に特異的に結合する)ことを可能にするヌクレオチドの配列を含むことを意味する。ポリヌクレオチドの配列は、特異的にハイブリダイズ可能であるために、その標的核酸の配列と100%相補的である必要はないことが理解される。それは、少なくとも約70%、少なくとも約80%、又は少なくとも約90%、又は少なくとも約95%の配列同一性を有し、それでもなお標的核酸にハイブリダイズすることができる。更に、ポリヌクレオチドは、介在又は隣接するセグメントがハイブリダイゼーション事象に関与することなく、1つ以上のセグメントにわたってハイブリダイズすることができる(例えば、ループ構造又はヘアピン構造、「バルジ」、「バブル」など)。
【0025】
本開示の目的のための「遺伝子」は、遺伝子産物(例えば、タンパク質、RNA)をコードするDNA領域、並びに遺伝子産物の産生を調節する全てのDNA領域を含む(かかる調節エレメント配列がコード配列及び/又は転写配列に隣接しているか否かにかかわらない)。したがって、遺伝子は、調節配列を含み得、これには、プロモーター配列、ターミネーター、翻訳調節配列(例えば、リボソーム結合部位及び内部リボソーム進入部位)、エンハンサー、サイレンサー、インスレーター、境界エレメント、複製起点、マトリックス付着部位、及び遺伝子座制御領域が含まれるが、必ずしもこれらに限定されない。コード配列は、転写又は転写及び翻訳の際に遺伝子産物をコードする。本開示のコード配列は、オープンリーディングフレームの断片を含んでもよく、全長を含む必要はない。遺伝子は、転写される鎖(例えば、コード配列を含む鎖)、並びに相補鎖の両方を含み得る。
【0026】
「下流」という用語は、参照ヌクレオチド配列の3’側に位置するヌクレオチド配列を指す。特定の実施形態では、下流ヌクレオチド配列は、転写の開始点に続く配列に関する。例えば、遺伝子の翻訳開始コドンは、転写開始部位の下流に位置する。
【0027】
「上流」という用語は、参照ヌクレオチド配列の5’側に位置するヌクレオチド配列を指す。特定の実施形態では、上流ヌクレオチド配列は、コード領域又は転写開始点の5’側に位置する配列に関する。例えば、ほとんどのプロモーターは、転写開始部位の上流に位置する。
【0028】
ポリヌクレオチド又はアミノ酸配列に関して「に隣接する」という用語は、ポリヌクレオチド又はポリペプチドにおいて互いに隣にある又は隣接する配列を指す。当業者は、2つの配列が互いに隣接していると考えることができ、それでも限定された量の介在配列、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10個のヌクレオチド又はアミノ酸を包含することを理解するであろう。
【0029】
「調節エレメント」という用語は、本明細書において「調節配列」という用語と互換的に使用され、プロモーター、エンハンサー、及び他の発現調節エレメント(例えば、ポリアデニル化シグナル及びポリU配列などの転写終結シグナル)を含むことが意図される。例示的な調節エレメントとしては、転写プロモーター(例えば、CMV、CMV+イントロンA、SV40、RSV、HIV-Ltr、伸長因子1α(elongation factor 1 alpha、EF1α)、MMLV-ltr、内部リボソーム進入部位(internal ribosome entry site、IRES)又はP2Aペプチド(単一の転写物から複数の遺伝子の翻訳を可能にする)、メタロチオネイン、転写エンハンサーエレメント、転写終結シグナル、ポリアデニル化配列、翻訳開始の最適化のための配列、及び翻訳終結配列が挙げられるが、これらに限定されない。適切な調節エレメントの選択は、発現されるコードされた成分(例えば、タンパク質若しくはRNA)に依存するか、又は核酸が異なるポリメラーゼを必要とする複数の成分を含むか若しくは融合タンパク質として発現するように意図されていないかに依存することが理解される。
【0030】
「プロモーター」という用語は、RNAポリメラーゼ結合部位、転写開始部位、TATAボックス、及び/又はB認識エレメントを含み、関連する転写可能なポリヌクレオチド配列及び/又は遺伝子(若しくは導入遺伝子)の転写及び発現を補助若しくは促進する、DNA配列を指す。プロモーターは、合成的に産生され得るか、又は既知の若しくは天然に存在するプロモーター配列若しくは別のプロモーター配列に由来し得る。プロモーターは、転写される遺伝子に対して近位又は遠位であり得る。プロモーターはまた、特定の特性を付与するための2つ以上の異種配列の組み合わせを含むキメラプロモーターを含み得る。本開示のプロモーターは、組成が類似しているが、既知の又は本明細書に提供される他のプロモーター配列と同一ではないプロモーター配列のバリアントを含み得る。プロモーターは、プロモーター(例えば、構成的、発生的、組織特異的、誘導性など)に作動可能に連結された関連するコード配列若しくは転写可能配列又は遺伝子の発現パターンに関する基準に従って分類され得る。
【0031】
「エンハンサー」という用語は、転写因子と呼ばれる特定のタンパク質が結合した場合に、関連する遺伝子の発現を調節する、調節エレメントDNA配列を指す。エンハンサーは、遺伝子のイントロン、又は遺伝子のコード配列の5’若しくは3’に位置し得る。エンハンサーは、遺伝子の近位(すなわち、プロモーターの数十若しくは数百塩基対(base pair、bp)内)にあってもよく、又は遺伝子の遠位(すなわち、プロモーターから数千bp、数十万bp、若しくは更に数百万bp離れている)に位置してもよい。単一の遺伝子は、2つ以上のエンハンサーによって調節されてもよく、これらの全ては、本開示の範囲内であると想定される。
【0032】
本明細書で使用される場合、「転写後調節エレメント(post-transcriptional regulatory element、PRE)」(例えば、肝炎PRE)とは、転写された場合、それに作動可能に連結された関連遺伝子の発現を増強又は促進する転写後活性を示し得る三次構造を生成するDNA配列をいう。
【0033】
「GATA結合部位」という用語は、転写因子のGATAファミリーのDNA結合部位を指す。GATA転写因子は、典型的には、コンセンサス配列WGATAR(式中、W=A又はT、及びR=A又はG)に一致する標的部位を認識する。
【0034】
本明細書で使用される場合、「組換え」とは、特定の核酸(DNA又はRNA)が、クローニングステップ、制限ステップ、及び/又は連結ステップの様々な組み合わせの産物であり、その結果、天然のシステムで見出される内因性核酸から識別可能な構造的なコード配列又は非コード配列を有する構築物が得られることを意味する。一般に、構造コード配列をコードするDNA配列は、cDNA断片と短いオリゴヌクレオチドリンカー、又は一連の合成オリゴヌクレオチドから組み立てることができ、細胞又は無細胞転写及び翻訳システムに含まれる組換え転写単位から発現され得る合成核酸を提供する。かかる配列は、典型的には、真核生物遺伝子に存在する内部非翻訳配列又はイントロンによって中断されないオープンリーディングフレームの形態で提供され得る。関連配列を含むゲノムDNAはまた、組換え遺伝子又は転写単位の形成において使用され得る。非翻訳DNAの配列は、オープンリーディングフレームから5’又は3’に存在し得、ここで、かかる配列は、コード領域の操作又は発現を妨害せず、実際に、様々な機構によって所望の産物の産生を調節するように作用し得る(上記の「エンハンサー」及び「プロモーター」を参照)。
【0035】
「組換えポリヌクレオチド」又は「組換え核酸」という用語は、天然に存在しないもの、例えば、ヒトの介入を介して、そうでなければ分離された配列の2つのセグメントの人工的な組み合わせによって作製されるものを指す。この人工的な組み合わせは、多くの場合、化学合成手段、又は核酸の単離されたセグメントの人工的操作(例えば、遺伝子操作技術)のいずれかによって達成される。これは、典型的には、配列認識部位を導入又は除去しながら、コドンを、同じアミノ酸又は保存的アミノ酸をコードする縮重コドン(redundant codon)で置換するように行うことができる。代替的には、所望の機能の核酸セグメントを一緒に連結して、所望の機能の組み合わせを生成するように行われる。この人工的な組み合わせは、多くの場合、化学合成手段、又は核酸の単離されたセグメントの人工的操作(例えば、遺伝子操作技術)のいずれかによって達成される。
【0036】
同様に、「組換えポリペプチド」又は「組換えタンパク質」という用語は、天然に存在しないポリペプチド又はタンパク質、例えば、ヒトの介入を介して、そうでなければ分離されたアミノ配列の2つのセグメントの人工的な組み合わせによって作製されるものを指す。したがって、例えば、異種アミノ酸配列を含むタンパク質は組換え体である。
【0037】
本明細書で使用される場合、「接触する」という用語は、2つ以上の実体間に物理的接続を確立することを意味する。例えば、標的核酸配列をガイド核酸と接触させることは、標的核酸配列及びガイド核酸が、物理的接続を共有するようになされることを意味する(例えば、それらの配列が配列類似性を共有する場合、ハイブリダイズすることができる)。
【0038】
「解離定数」又は「Kd」は、互換的に使用され、リガンド「L」とタンパク質「P」との間の親和性を意味する(すなわち、リガンドが特定のタンパク質にどの程度強く結合するかである)。それは、式Kd=[L][P]/[LP]を用いて計算することができ、式中、[P]、[L]、及び[LP]は、それぞれ、タンパク質、リガンド、及び複合体のモル濃度を表す。
【0039】
本開示は、標的核酸配列を編集するために有用な組成物及び方法を提供する。本明細書で使用される場合、「編集」は、「改変」と互換的に使用され、切断、ニッキング、欠失、ノックイン、ノックアウトなどを含むが、これらに限定されない。
【0040】
「ノックアウト」という用語は、遺伝子又は遺伝子の発現の排除を指す。例えば、遺伝子は、リーディングフレームの破壊をもたらすヌクレオチド配列の欠失又は付加のいずれかによってノックアウトされ得る。別の例として、遺伝子は、遺伝子の一部を無関係な配列で置換することによってノックアウトされ得る。本明細書で使用される「ノックダウン」という用語は、遺伝子又はその遺伝子産物の発現の低減を指す。遺伝子ノックダウンの結果として、タンパク質活性若しくは機能が減弱され得るか、又はタンパク質レベルが低減若しくは排除され得る。
【0041】
本明細書で使用される場合、「相同組換え修復」(homology-directed repair、HDR)とは、細胞における二本鎖切断の修復中に起こるDNA修復の形態を指す。このプロセスは、ヌクレオチド配列の相同性を必要とし、ドナー鋳型を使用して標的DNAを修復又はノックアウトし、ドナー(例えば、ドナー鋳型など)から標的への遺伝情報の伝達をもたらす。相同組換え修復は、ドナー鋳型が標的DNA配列と異なり、ドナー鋳型の配列の一部又は全部が正しいゲノム遺伝子座で標的DNAに組み込まれる場合、挿入、欠失、又は変異による標的核酸配列の配列の改変をもたらすことができる。
【0042】
本明細書で使用される場合、「非相同末端結合」(non-homologous end joining、NHEJ)は、(修復を誘導するために相同配列を必要とする相同組換え修復とは対照的に)相同鋳型を必要とせずに、切断末端を互いに直接ライゲーションすることによる、DNAにおける二本鎖切断の修復を指す。NHEJは、多くの場合、インデル(二本鎖切断部位付近のヌクレオチド配列の喪失(欠失)又は挿入)をもたらす。
【0043】
本明細書で使用される場合、「マイクロホモロジー媒介末端結合」(micro-homology mediated end joining、MMEJ)は、(修復を誘導するために相同配列を必要とする相同組換え修復とは対照的に)相同鋳型を必要とせずに、切断部位に隣接する欠失と常に関連する、変異原性二本鎖切断(double strand break、DSB)修復機構を指す。MMEJは、多くの場合、二本鎖切断部位付近のヌクレオチド配列の喪失(欠失)をもたらす。
【0044】
ポリヌクレオチド又はポリペプチド(若しくはタンパク質)は、別のポリヌクレオチド又はポリペプチドと特定のパーセント「配列類似性」又は「配列同一性」を有し、これは、2つの配列を比較した場合(整列させた場合)、同じ相対位置にある同じ塩基又はアミノ酸の百分率割合を意味する。配列類似性(パーセント類似性、パーセント同一性、又は相同性とも称される)は、いくつかの異なる様式で決定することができる。配列類似性を決定するために、配列は、ncbi.nlm.nih.gov/BLASTのワールドワイドウェブ上で利用可能なBLASTを含む、当該技術分野で既知の方法及びコンピュータプログラムを使用して整列することができる。核酸内の核酸配列の特定のストレッチ間のパーセント相補性は、任意の便利な方法を使用して決定することができる。例示的な方法としては、BLASTプログラム(基本的局所整列検索ツール)及びPowerBLASTプログラム(Altschul et al.,J.Mol.Biol.,1990,215,403-410、Zhang and Madden,Genome Res.,1997,7,649-656)が挙げられる(又はGapプログラム(Wisconsin Sequence Analysis Package,Version 8 for Unix,Genetics Computer Group,University Research Park,Madison Wis.)を使用することによって、例えば、Smith and Watermanのアルゴリズム(Adv.Appl.Math.,1981,2,482-489)を使用するデフォルト設定を使用して)。
【0045】
「ポリペプチド」及び「タンパク質」という用語は、本明細書で互換的に使用され、任意の長さのアミノ酸のポリマー形態を指し、これは、コードアミノ酸及び非コードアミノ酸、化学的又は生化学的に改変又は誘導体化されたアミノ酸、並びに改変されたペプチド骨格を有するポリペプチドを含み得る。この用語は、融合タンパク質(異種アミノ酸配列を有する融合タンパク質を含むが、これに限定されない)を含む。
【0046】
「ベクター」又は「発現ベクター」は、プラスミド、ファージ、ウイルス、ウイルス様粒子、又はコスミドなどのレプリコンであり、これに別のDNAセグメント(すなわち、「インサート」)を結合させて、細胞において結合されたセグメントの複製又は発現をもたらすことができる。
【0047】
本明細書で使用される「天然に存在する」又は「未改変」又は「野生型」という用語は、核酸、ポリペプチド、細胞、又は生物に適用される場合、天然に見出される核酸、ポリペプチド、細胞、又は生物を指す。
【0048】
本明細書で使用される場合、「変異」とは、野生型若しくは参照アミノ酸配列と比較して、又は野生型若しくは参照ヌクレオチド配列と比較して、1つ以上のアミノ酸又はヌクレオチドの挿入、欠失、置換、重複、又は逆位を指す。
【0049】
本明細書で使用される場合、「単離された」という用語は、ポリヌクレオチド、ポリペプチド、又は細胞が天然に存在する環境とは異なる環境にあるポリヌクレオチド、ポリペプチド、又は細胞を表すことを意味する。単離された遺伝子改変宿主細胞は、遺伝子改変宿主細胞の混合集団中に存在してもよい。
【0050】
本明細書で使用される「宿主細胞」とは、真核細胞、原核細胞、又は単細胞実体として培養された多細胞生物由来の細胞(例えば、細胞株)を意味し、真核細胞又は原核細胞は、核酸(例えば、発現ベクター)のレシピエントとして使用され、核酸によって遺伝子改変された元の細胞の子孫を含む。単一細胞の子孫は、天然の、偶発的な、又は意図的な変異に起因して、形態において、又はゲノム若しくは全DNAの相補体において、元の親と必ずしも完全に同一でなくてもよいことが理解される。「組換え宿主細胞」(「遺伝子改変宿主細胞」とも称される)は、異種核酸(例えば、発現ベクター)が導入された宿主細胞である。
【0051】
「保存的アミノ酸置換」という用語は、タンパク質における、類似の側鎖を有するアミノ酸残基の互換性を指す。例えば、脂肪族側鎖を有するアミノ酸の群は、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、及びイソロイシンからなり、脂肪族ヒドロキシル側鎖を有するアミノ酸の群は、セリン及びスレオニンからなり、アミド含有側鎖を有するアミノ酸の群は、アスパラギン及びグルタミンからなり、芳香族側鎖を有するアミノ酸の群は、フェニルアラニン、チロシン、及びトリプトファンからなり、塩基性側鎖を有するアミノ酸の群は、リジン、アルギニン、及びヒスチジンからなり、硫黄含有側鎖を有するアミノ酸の群は、システイン及びメチオニンからなる。例示的な保存的アミノ酸置換群は、バリン-ロイシン-イソロイシン、フェニルアラニン-チロシン、リジン-アルギニン、アラニン-バリン、及びアスパラギン-グルタミンである。
【0052】
本明細書で使用される場合、「治療」又は「治療すること」は、本明細書で互換的に使用され、治療的利益及び/又は予防的利益を含むがこれらに限定されない有益な結果若しくは所望の結果を得るためのアプローチを指す。治療的利益とは、治療される基礎となる障害又は疾患の根絶又は改善を意味する。治療的利益はまた、対象が依然として基礎疾患に罹患している可能性があるにもかかわらず、対象において改善が観察されるような、基礎疾患に関連する1つ以上の症状の根絶若しくは改善、あるいは1つ以上の臨床パラメータの改善により達成することができる。
【0053】
「治療有効量」及び「治療有効用量」という用語は、本明細書で使用される場合、対象(例えば、ヒト又は実験動物)に単回用量又は反復用量で投与した場合、疾患状態又は病態の任意の症状、態様、測定されたパラメータ、又は特徴に対して任意の検出可能な有益な効果を有することができる、単独での又は組成物の一部としての薬物又は生物製剤の量を指す。かかる効果は、有益であるために絶対的である必要はない。
【0054】
本明細書で使用される場合、「投与すること」とは、本開示の組成物の投与量を対象に与える方法を意味する。
【0055】
本明細書で使用される場合、「対象」は、哺乳動物である。哺乳動物としては、家畜、霊長類、非ヒト霊長類、ヒト、イヌ、ブタ(porcine)(ブタ(pig))、ウサギ、マウス、ラット、及び他のげっ歯類が挙げられるが、これらに限定されない。
【0056】
本明細書で言及される全ての刊行物、特許、及び特許出願は、各個々の刊行物、特許、又は特許出願が、参照により援用されることが具体的かつ個別に示されているかのように、参照により本明細書に援用される。
【0057】
I.一般的な方法
本発明の実施は、別段の指示がない限り、免疫学、生化学、化学、分子生物学、微生物学、細胞生物学、ゲノミクス、及び組換えDNAの従来の技術を使用し、これらは、かかる標準的な教科書Molecular Cloning:A Laboratory Manual,3rd Ed.(Sambrook et al.,Harbor Laboratory Press 2001)、Short Protocols in Molecular Biology,4th Ed.(Ausubel et al.eds.,John Wiley&Sons 1999)、Protein Methods(Bollag et al.,John Wiley&Sons 1996)、Nonviral Vectors for Gene Therapy(Wagner et al.eds.,Academic Press 1999)、Viral Vectors(Kaplift&Loewy eds.,Academic Press 1995)、Immunology Methods Manual(I.Lefkovits ed.,Academic Press 1997)、及びCell and Tissue Culture:Laboratory Procedures in Biotechnology(Doyle&Griffiths,John Wiley&Sons 1998)に見出すことができる(それらの開示は、参照により本明細書に援用される)。
【0058】
値の範囲が提供される場合、終点が含まれること、及びその範囲の上限と下限との間の各介在値が、文脈が別途明確に指示しない限り、下限の単位の10分の1まで、その記載された範囲内の任意の他の記載された値又は介在値が包含されることが理解される。これらのより小さい範囲の上限及び下限は、独立して、より小さい範囲に含まれてもよく、また、記載された範囲内の任意の具体的に除外された限界に従って包含される。記載された範囲が限界の一方又は両方を含む場合、それらの含まれる限界のいずれか又は両方を除外する範囲も含まれる。
【0059】
別途定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されているものと同じ意味を有する。本明細書で言及される全ての刊行物は、刊行物が引用される方法及び/又は材料を開示及び記載するために、参照により本明細書に援用される。
【0060】
本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用される場合、単数形である「a」、「an」及び「the」には、文脈上明らかに別段の指示がない限り、その複数の指示対象が含まれることに留意されたい。
【0061】
明確にするために、別個の実施形態の文脈で説明される本開示の特定の特徴は、単一の実施形態で組み合わせて提供されてもよいことが理解されるであろう。他の場合では、簡潔にするために、単一の実施形態の文脈で説明される本開示の様々な特徴は、別個に又は任意の好適な部分的な組み合わせで提供されてもよい。本開示に関連する実施形態の全ての組み合わせは、本開示によって具体的に包含され、あたかもありとあらゆる組み合わせが個別にかつ明示的に開示されているかのように本明細書に開示されることが意図される。加えて、様々な実施形態及びその要素の全ての部分的な組み合わせもまた、本開示によって具体的に包含され、ありとあらゆるかかる部分的な組み合わせが本明細書に個別にかつ明示的に開示されているかのように本明細書に開示される。
【0062】
II.BCL11A遺伝子の遺伝子編集のためのシステム
第1の態様では、本開示は、システムを提供し、当該システムは、BCL11A遺伝子産物の発現を低減又は排除するために、BCL11A遺伝子を改変又は編集するのに使用するための、クラス2、V型CRISPRヌクレアーゼタンパク質と、1つ以上のガイド核酸(guide nucleic acid、gRNA)と、を含む。例示的なクラス2、V型CRISPRヌクレアーゼタンパク質及びガイド核酸システムとしては、CasX:gRNAシステムが挙げられる。CasX:gRNAシステムは、真核細胞においてBCL11A遺伝子を改変するように特別に設計されている。場合によっては、CasX:gRNAシステムは、BCL11A遺伝子をノックダウン又はノックアウトするように設計される。一般に、BCL11A遺伝子の任意の部分は、本明細書に提供されるプログラム可能な組成物及び方法を使用して標的化され得る。いくつかの実施形態では、改変されるBCL11A遺伝子は、野生型配列であり、改変される部分は、BCL11Aイントロン、BCL11Aエキソン、BCL11Aイントロン-エキソン接合部、BCL11A調節エレメント、及び遺伝子間領域からなる群から選択されるか、又は改変は、1つ以上のエキソンの欠失若しくは変異である。
【0063】
本明細書で使用される場合、本開示のCRISPRヌクレアーゼタンパク質及び1つ以上のgRNA、並びに本開示のCRISPRヌクレアーゼタンパク質及びgRNAをコードする核酸、並びに本開示の核酸又はCRISPRヌクレアーゼタンパク質及び1つ以上のgRNAを含むベクターを含むシステムなどの「システム」は、用語「組成物」と互換的に使用される。
【0064】
ヒトBCL11A遺伝子(HGNC:13221)は、以下の配列を有するタンパク質(Q9H165)をコードする。
MSRRKQGKPQHLSKREFSPEPLEAILTDDEPDHGPLGAPEGDHDLLTCGQCQMNFPLGDILIFIEHKRKQCNGSLCLEKAVDKPPSPSPIEMKKASNPVEVGIQVTPEDDDCLSTSSRGICPKQEHIADKLLHWRGLSSPRSAHGALIPTPGMSAEYAPQGICKDEPSSYTCTTCKQPFTSAWFLLQHAQNTHGLRIYLESEHGSPLTPRVGIPSGLGAECPSQPPLHGIHIADNNPFNLLRIPGSVSREASGLAEGRFPPTPPLFSPPPRHHLDPHRIERLGAEEMALATHHPSAFDRVLRLNPMAMEPPAMDFSRRLRELAGNTSSPPLSPGRPSPMQRLLQPFQPGSKPPFLATPPLPPLQSAPPPSQPPVKSKSCEFCGKTFKFQSNLVVHRRSHTGEKPYKCNLCDHACTQASKLKRHMKTHMHKSSPMTVKSDDGLSTASSPEPGTSDLVGSASSALKSVVAKFKSENDPNLIPENGDEEEEEDDEEEEEEEEEEEEELTESERVDYGFGLSLEAARHHENSSRGAVVGVGDESRALPDVMQGMVLSSMQHFSEAFHQVLGEKHKRGHLAEAEGHRDTCDEDSVAGESDRIDDGTVNGRGCSPGESASGGLSKKLLLGSPSSLSPFSKRIKLEKEFDLPPAAMPNTENVYSQWLAGYAASRQLKDPFLSFGDSRQSPFASSSEHSSENGSLRFSTPPGELDGGISGRSGTGSGGSTPHISGPGPGRPSSKEGRRSDTCEYCGKVFKNCSNLTVHRRSHTGERPYKCELCNYACAQSSKLTRHMKTHGQVGKDVYKCEICKMPFSVYSTLEKHMKKWHSDRVLNNDIKTE(配列番号100)。BCL11A遺伝子は、第2染色体上のヒトゲノムのchr2 60450520-60554467(GRCh38/hg38 Ensembl 100)にわたる配列として定義される。
【0065】
いくつかの実施形態では、本開示は、対象において、インビトロ、エクスビボ、又はインビボのいずれかで、真核細胞におけるBCL11A遺伝子を改変するように特別に設計されたシステムを提供する。一般に、BCL11A標的核酸の任意の部分は、本明細書に提供されるプログラム可能な組成物及び方法を使用して標的化され得る。いくつかの実施形態では、CRISPRヌクレアーゼは、クラス2、V型ヌクレアーゼである。クラス2 V型CRISPR-Casシステムのメンバーには相違点があるが、それらは、それらをCas9システムと区別するいくつかの共通の特徴を共有する。まず、V型ヌクレアーゼは、RuvCドメインを含むがHNHドメインを含まないRNA誘導型の単一エフェクターを有し、非標的鎖上の標的領域の5’上流のT-リッチPAMを認識する。これは、標的配列の3’側でG-リッチPAMに依存するCas9システムとは異なる。V型ヌクレアーゼは、PAMに近い近位部位に平滑末端を生成するCas9とは異なり、PAM配列に対して遠位にずれた二本鎖切断を生成する。加えて、V型ヌクレアーゼは、標的dsDNA又はシスで結合するssDNAによって活性化されると、ssDNAをトランスで分解する。いくつかの実施形態では、本開示は、Cas12a、Cas12b、Cas12c、Cas12d(CasY)、Cas12j、Cas12k、CasZ、及びCasXからなる群から選択されるクラス2、V型ヌクレアーゼを提供する。いくつかの実施形態では、本開示は、CasX:gRNAシステムとして、1つ以上のCasXタンパク質と、1つ以上のガイド核酸(gRNA)と、を含むシステムを提供する。他の実施形態では、本開示のCasX:gRNAシステムは、1つ以上のCasXタンパク質と、1つ以上のガイド核酸(gRNA)と、BCL11A遺伝子の一部をコードする核酸を含む1つ以上のドナー鋳型核酸と、を含み、ドナー鋳型核酸が、BCL11Aタンパク質をコードするゲノム核酸配列と比較して、1つ以上のヌクレオチドの欠失、挿入、又は変異を含む。これらの成分の各々及びBCL11A遺伝子の編集におけるそれらの使用は、以下で本明細書に記載される。
【0066】
いくつかの実施形態では、本開示は、本明細書に記載の実施形態のいずれかのCasX及びgRNAの遺伝子編集ペアを提供し、これは、遺伝子編集のためにそれらを使用する前に一緒に結合することができ、したがって、リボ核タンパク質複合体(RNP)として「前複合体化(pre-complexed)」している。前複合体化したRNPの使用は、標的核酸配列の編集のための細胞又は標的核酸配列へのシステム成分の送達において利点を付与する。
【0067】
いくつかの実施形態では、機能的RNPは、電気泳動又は化学的手段によって、エクスビボで細胞に送達され得る。他の実施形態では、機能的RNPは、それらの機能的形態でベクターによってエクスビボ又はインビボのいずれかで送達され得る。いくつかの実施形態では、RNPは、CasX送達粒子(XDP)を使用して、対象にインビボで送達され得る。gRNAは、標的核酸配列の配列に相補的なヌクレオチド配列を有する標的化配列(又は「スペーサー」)を含むことによって、複合体に標的特異性を提供することができる。一方、前複合体化したCasX:gRNAのCasXバリアントタンパク質は、gRNAとのその会合によって標的核酸配列内の標的部位に誘導される(例えば、標的部位で安定化される)、標的配列の切断又はニッキングなどの部位特異的活性を提供する。
【0068】
システムは、異常ヘモグロビン症の疾患(例えば、鎌状赤血球貧血又はβサラセミア)を有する対象の治療において有用である。CasX:gRNAシステムの成分、それらの機能、及び細胞における標的核酸の編集におけるそれらの使用の各々は、以下で更に詳しく説明される。
【0069】
III.遺伝子編集のためのシステムのガイド核酸
別の態様では、本開示は、特別に設計されたガイドリボ核酸(gRNA)に関し、当該gRNAは、BCL11A遺伝子の標的核酸配列に相補的な(したがって、それとハイブリダイズすることができる)標的化配列を含み、これは、CRISPRヌクレアーゼと複合体化した場合、細胞におけるBCL11A標的核酸のゲノム編集において有用である。いくつかの実施形態では、複数のgRNAが、標的核酸の改変のためにシステムにおいて送達されることが想定される。例えば、遺伝子内の2つの異なる部位又は重複する部位で結合及び切断するために、各々がCRISPRヌクレアーゼと複合体化する場合、標的核酸配列の異なる領域又は重複する領域に対する標的化配列を有する一対のgRNAを使用することができ、次いで、遺伝子は、非相同末端結合(NHEJ)、相同組換え修復(HDR)、相同性非依存性標的化組み込み(homology-independent targeted integration、HITI)、マイクロホモロジー媒介末端結合(micro-homology mediated end joining、MMEJ)、一本鎖アニーリング(single strand annealing、SSA)、又は塩基除去修復(base excision repair、BER)によって編集される。
【0070】
いくつかの実施形態では、本開示は、CasX:gRNAシステムにおいて利用されるgRNAを提供し、これは、真核細胞におけるBCL11A遺伝子のゲノム編集において有用である。特定の実施形態では、システムのgRNAは、CasXヌクレアーゼと複合体を形成することができる。本開示は、特別に設計されたgRNAを提供し、gRNAの標的化配列(又はスペーサー、以下でより詳細に記載される)は、遺伝子編集CasX:gRNAシステムの成分として使用される場合、標的核酸配列に相補的である(したがって、それとハイブリダイズすることができる)。表1に、本実施形態のgRNAで利用することができるBCL11A標的核酸に対する標的化配列の代表的であるが非限定的な例の配列番号を提示し、以下でより詳細に記載される。
【0071】
a.参照gRNA及びgRNAバリアント
本明細書で使用される場合、「参照gRNA」は、天然に存在するgRNAの野生型配列を含むCRISPRガイド核酸を指す。いくつかの実施形態では、本開示の参照gRNAは、参照gRNAと比較して増強された又は異なる特性を有する1つ以上のgRNAバリアントを生成するために、1つ以上の変異誘発方法(例えば、網羅的変異進化(Deep Mutational Evolution、DME)、網羅的変異スキャニング(deep mutational scanning、DMS)、エラープローンPCR、カセット変異誘発、ランダム変異誘発、付着伸長PCR、遺伝子シャッフリング、又はドメインスワッピングを含み得る、本明細書に記載される変異誘発方法)に供され得る。gRNAバリアントはまた、例えば、5’末端若しくは3’末端のいずれかに融合された又は内部に挿入された、1つ以上の外因性配列を含むバリアントも含む。参照gRNAの活性は、それに対してgRNAバリアントの活性が比較されるベンチマークとして使用されてもよく、それによって、gRNAバリアントの機能又は他の特徴の改善が測定される。他の実施形態では、参照gRNAは、gRNAバリアント(例えば、合理的に設計されたバリアント)を産生するために、1つ以上の意図的な特異的に標的化された変異に供され得る。
【0072】
本開示のgRNAは、2つのセグメントである標的化配列及びタンパク質結合セグメントを含む。gRNAの標的化セグメントは、以下でより詳細に記載される標的核酸配列(例えば、標的ssRNA、標的ssDNA、二本鎖標的DNAの鎖など)内の特定の配列(標的部位)に相補的である(したがって、それとハイブリダイズする)ヌクレオチド配列(互換的に、ガイド配列、スペーサー、ターゲッター、又は標的化配列と称される)を含む。gRNAの標的化配列は、標的核酸配列(コード配列、コード配列の相補体、非コード配列を含む)及び調節エレメントに結合することができる。タンパク質結合セグメント(又は「アクチベーター」若しくは「タンパク質結合配列」)は、RNPを形成する複合体として、CasXタンパク質と相互作用(例えば、結合)する(以下でより詳細に記載される)。代替的には、タンパク質結合セグメントは、本明細書で「足場(scaffold)」と呼ばれ、これは、いくつかの領域から構成される(以下でより詳細に記載される)。
【0073】
デュアルガイドRNA(dgRNA)の場合、ターゲッター部分及びアクチベーター部分は各々、二重鎖形成セグメントを有し、ターゲッターの二重鎖形成セグメント及びアクチベーターの二重鎖形成セグメントは、互いに相補性を有し、互いにハイブリダイズして二本鎖の二重鎖(gRNAについてはdsRNA二重鎖)を形成する。gRNAがgRNAである場合、「ターゲッター」又は「ターゲッターRNA」という用語は、本明細書において、CasXデュアルガイドRNAの(したがって、「アクチベーター」及び「ターゲッター」が、例えば、介在ヌクレオチドによって一緒に連結されている場合、CasXシングルガイドRNAの)crRNA様分子(crRNA:「CRISPR RNA」)を指すために使用される。crRNAは、tracrRNAとアニーリングする5’領域、続いて、標的化配列のヌクレオチドを有する。したがって、例えば、ガイドRNA(dgRNA又はsgRNA)は、ガイド配列と、crRNAの二重鎖形成セグメント(crRNAリピートとも称され得る)と、を含む。対応するtracrRNA様分子(アクチベーター)はまた、ガイドRNAのタンパク質結合セグメントのdsRNA二重鎖の他の半分を形成するヌクレオチドの二重鎖形成ストレッチも含む。したがって、ターゲッター及びアクチベーターは、対応する対としてハイブリダイズして、デュアルガイドNA(本明細書において「デュアルガイドNA」、「二種分子gRNA」、「dgRNA」、「二種分子ガイドNA」、又は「2分子ガイドNA」と呼ばれる)を形成する。CasXタンパク質による標的核酸配列(例えば、ゲノムDNA)の部位特異的結合及び/又は切断は、gRNAの標的化配列と標的核酸配列との間の塩基対形成の相補性によって決定される1つ以上の位置(例えば、標的核酸の配列)で起こり得る。したがって、例えば、本開示のgRNAは、TC PAMモチーフ(又はATC、CTC、GTC、若しくはTTCなどのPAM配列)に相補的な配列に隣接する標的核酸に相補的な配列を有し、したがって、標的核酸とハイブリダイズすることができる。ガイド配列の標的化配列は標的核酸配列の配列とハイブリダイズするので、PAM配列の位置が考慮される限り、特定の標的核酸配列とハイブリダイズするように、使用者によってターゲッターが改変され得る。したがって、場合によっては、ターゲッターの配列は、天然に存在しない配列であり得る。他の場合では、ターゲッターの配列は、編集される遺伝子に由来する天然に存在する配列であり得る。他の実施形態では、gRNAのアクチベーター及びターゲッターは、(互いにハイブリダイズするのではなく)互いに共有結合しており、単一分子(本明細書において、「単一分子gRNA」、「1分子ガイドNA」、「シングルガイドNA」、「シングルガイドRNA」、「単一分子ガイドRNA」、「1分子ガイドRNA」、又は「sgRNA」と称される)を含む。いくつかの実施形態では、sgRNAは、「アクチベーター」又は「ターゲッター」を含み、したがって、それぞれ「アクチベーターRNA」及び「ターゲッターRNA」であり得る。いくつかの実施形態では、gRNAは、リボ核酸分子(「gRNA」)であり、他の実施形態では、gRNAは、キメラであり、DNA及びRNAの両方を含む。本明細書で使用される場合、gRNAという用語は、天然に存在する分子、並びに配列バリアントを包含する。
【0074】
まとめると、本開示の構築されたgRNAは、4つの別個の領域又はドメイン:RNA三重鎖、足場ステム、伸長ステム、及び標的化配列(本開示の実施形態では標的核酸に特異的であり、gRNAの3’末端に位置する)を含む。RNA三重鎖、足場ステム、及び伸長ステムは、合わせて、gRNAの「足場」と称される。
【0075】
b.RNA三重鎖
本明細書に提供されるガイドNA(参照sgRNAを含む)のいくつかの実施形態では、RNA三重鎖が存在し、RNA三重鎖が、2つの介在ステムループ(足場ステムループ及び伸長ステムループ)の後にAAAGで終わるUUU-nX(約4~15)-UUU(配列番号226)ステムループの配列を含み、三重鎖を越えて二重鎖シュードノットへと伸長してもよいシュードノットを形成する。三重鎖のUU-UUU-AAA配列は、標的化配列、足場ステム、及び伸長ステムの間のネクサスとして形成される。例示的なCasX sgRNAでは、UUU-ループ-UUU領域が最初にコードされ、次いで、足場ステムループがコードされ、次いで、テトラループによって連結された伸長ステムループがコードされ、次いで、AAAGが三重鎖を閉じてから標的化配列になる。
【0076】
c.足場ステムループ
本開示のsgRNAのいくつかの実施形態では、三重鎖領域の後に足場ステムループが続く。足場ステムループは、CasXタンパク質(例えば、参照又はCasXバリアントタンパク質)が結合するgRNAの領域である。いくつかの実施形態では、足場ステムループは、かなり短く安定なステムループである。場合によっては、足場ステムループは、多くの変化を許容せず、何らかの形態のRNAバブルを必要とする。いくつかの実施形態では、足場ステムは、CasX sgRNAの機能に必要である。これは、おそらく、重要なステムループであるCas9のネクサスステムに類似しているが、CasX sgRNAの足場ステムは、いくつかの実施形態では、必要なバルジ(RNAバブル)を有し、これは、CRISPR/Casシステムで見出される多くの他のステムループとは異なる。いくつかの実施形態では、このバルジの存在は、異なるCasXタンパク質と相互作用するsgRNAにわたって保存されている。gRNAの足場ステムループ配列の例示的な配列は、配列CCAGCGACUAUGUCGUAUGG(配列番号20)を含む。
【0077】
d.伸長ステムループ
本開示のCasX sgRNAのいくつかの実施形態では、足場ステムループの後に伸長ステムループが続く。いくつかの実施形態では、伸長ステムは、主にCasXタンパク質が結合していない合成tracrRNA及びcrRNA融合体を含む。いくつかの実施形態では、伸長ステムループは、高度に可鍛性であり得る。いくつかの実施形態では、シングルガイドgRNAは、伸長ステムループ中のtracrRNAとcrRNAとの間にGAAAテトラループリンカー又はGAGAAAリンカーを用いて作製される。場合によっては、CasX sgRNAのターゲッター及びアクチベーターは、介在ヌクレオチドによって互いに連結され、リンカーは、3~20ヌクレオチドの長さを有し得る。本開示のCasX sgRNAのいくつかの実施形態では、伸長ステムは、リボ核タンパク質複合体中のCasXタンパク質の外側に位置する大きな32bpのループである。sgRNAの伸長ステムループ配列の例示的な配列は、配列GCGCUUAUUUAUCGGAGAGAAAUCCGAUAAAUAAGAAGC(配列番号21)を含む。いくつかの実施形態では、伸長ステムループは、GAGAAAスペーサー配列を含む。
【0078】
e.標的化配列
本開示のgRNAのいくつかの実施形態では、伸長ステムループの後に、三重鎖の一部を形成する領域が続き、次いで、gRNAの3’末端に標的化配列(又は「スペーサー」)が続く。標的化配列は、CasXリボ核タンパク質ホロ複合体を、改変される遺伝子の標的核酸配列の特定の領域に標的化する。したがって、例えば、本開示のgRNA標的化配列は、TC PAMモチーフ又はPAM配列TTC、ATC、GTC、若しくはCTCのうちのいずれか1つが、標的配列に相補的な非標的鎖配列に対して1ヌクレオチド5’側に位置する場合、RNPの成分として、真核細胞の核酸(例えば、真核生物の染色体、染色体配列、真核生物のRNAなど)におけるBCL11A遺伝子の一部に相補的な(したがって、それにハイブリダイズすることができる)配列を有する。gRNAの標的化配列は、PAM配列の位置が考慮される限り、gRNAが任意の所望の標的核酸配列の所望の配列を標的化することができるように改変することができる。いくつかの実施形態では、gRNA足場は、標的配列の5’側にあり、標的化配列が、gRNAの3’末端にある。いくつかの実施形態では、RNPのヌクレアーゼによって認識されるPAMモチーフ配列は、TCである。他の実施形態では、RNPのヌクレアーゼによって認識されるPAM配列は、NTCである。
【0079】
いくつかの実施形態では、gRNAの標的化配列は、BCL11Aタンパク質をコードする遺伝子の一部に特異的である。いくつかの実施形態では、gRNAの標的化配列は、BCL11Aのエキソンに特異的である。いくつかの実施形態では、gRNAの標的化配列は、BCL11Aのイントロンに特異的である。いくつかの実施形態では、gRNAの標的化配列は、BCL11Aのイントロン-エキソン接合部に特異的である。いくつかの実施形態では、gRNAの標的化配列は、BCL11Aの調節エレメント、BCL11Aのコード領域、BCL11Aの非コード領域、又はこれらの組み合わせ(例えば、2つの領域の共通部分)とハイブリダイズする配列を有する。いくつかの実施形態では、調節エレメントは、GATA結合配列を含む。いくつかの実施形態では、gRNAの標的化配列は、BCL11A遺伝子又はその相補体の1つ以上の一塩基多型(single nucleotide polymorphism、SNP)を含む配列に相補的である。BCL11Aのコード配列内又はBCL11Aの非コード配列内にあるSNPは、両方とも本開示の範囲内である。他の実施形態では、gRNAの標的化配列は、BCL11A遺伝子の遺伝子間領域の配列に相補的であるか、又はBCL11A遺伝子の遺伝子間領域に相補的な配列である。
【0080】
いくつかの実施形態では、gRNAの標的化配列は、BCL11A遺伝子産物の発現を調節する調節エレメントに特異的であるように設計される。かかる調節エレメントとしては、プロモーター領域、エンハンサー領域、遺伝子間領域、5’非翻訳領域(5’untranslated region、5’UTR)、3’非翻訳領域(3’untranslated region、3’UTR)、保存されたエレメント、及びシス調節エレメントを含む領域が挙げられるが、これらに限定されない。プロモーター領域は、コード配列の開始点から5kb以内のヌクレオチドを包含することが意図され、又は遺伝子エンハンサーエレメント若しくは保存されたエレメントの場合、標的核酸の遺伝子のコード配列から数千塩基対(bp)、数十万bp、又は数百万bp離れていてもよい。特定の実施形態では、gRNAの標的化配列は、BCL11Aの調節エレメントに相補的な配列とハイブリダイズする。一実施形態では、gRNAの標的化配列は、UGGAGCCUGUGAUAAAAGCA(配列番号22)であり、これは、BCL11A GATA1赤血球系特異的エンハンサー結合部位配列とハイブリダイズするか、又はそれと少なくとも90%若しくは少なくとも95%の配列同一性を有する(
図23を参照)。別の実施形態では、gRNAの標的化配列は、UGCUUUUAUCACAGGCUCCA(配列番号23)であるか、又はそれと少なくとも90%若しくは少なくとも95%の配列同一性を有する。別の実施形態では、gRNAの標的化配列は、UGCUUUUAUCACAGGCUCCA(配列番号23)であるか、又はそれと少なくとも90%若しくは少なくとも95%の配列同一性を有する。他の実施形態では、gRNAの標的化配列は、CAGGCUCCAGGAAGGGUUUG(配列番号2949)、GAGGCCAAACCCUUCCUGGA(配列番号2948)、AGUGCAAGCUAACAGUUGCU(配列番号15747)、及びAUACAACUUUGAAGCUAGUC(配列番号15748)からなる群から選択される。
【0081】
出生後に成熟している対象において、GATA1の結合は、BCL11Aの発現を増強し、これが次に、ヘモグロビンγに有利に、ヘモグロビンF(HbF)の発現を抑制する。しかし、特定の異常ヘモグロビン症を有する対象においてBCL11Aの発現を抑制すると、HbFの発現が再開することが実証されており、さもなければ欠陥のあるヘモグロビンを、対象において補償することができる。
【0082】
いくつかの実施形態では、gRNAの標的化配列は、14~35個の連続したヌクレオチドを有する。いくつかの実施形態では、標的化配列は、14、15、16、18、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、又は35個の連続したヌクレオチドを有する。いくつかの実施形態では、標的化配列は、20個の連続したヌクレオチドからなる。いくつかの実施形態では、標的化配列は、19個の連続したヌクレオチドからなる。いくつかの実施形態では、標的化配列は、18個の連続したヌクレオチドからなる。いくつかの実施形態では、標的化配列は、17個の連続したヌクレオチドからなる。いくつかの実施形態では、標的化配列は、16個の連続したヌクレオチドからなる。いくつかの実施形態では、標的化配列は、15個の連続したヌクレオチドからなる。いくつかの実施形態では、標的化配列は、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、又は35個の連続したヌクレオチドを有し、標的化配列は、標的核酸配列に対して0~5、0~4、0~3、又は0~2個のミスマッチを含むことができ、標的化配列を含むgRNAを含むRNPが標的核酸に対して相補的な結合を形成することができるように十分な結合特異性を保持することができる。
【0083】
本開示のgRNAにおける使用のために企図される標的核酸配列に対する標的化配列の代表的であるが非限定的な例は、配列番号272~2100及び2286~26789として提示される(表1を参照)。いくつかの実施形態では、本開示は、配列番号272~2100又は2286~5625の配列と少なくとも50%同一、少なくとも55%同一、少なくとも60%同一、少なくとも65%同一、少なくとも70%同一、少なくとも75%同一、少なくとも80%同一、少なくとも85%同一、少なくとも90%同一、少なくとも95%同一、又は100%同一である配列を含むATC PAMの標的化配列を提供する。いくつかの実施形態では、本開示は、配列番号272~2100又は2286~5625の配列を含むATC PAMの標的化配列を提供する。いくつかの実施形態では、本開示は、配列番号5626~13616の配列と少なくとも50%同一、少なくとも55%同一、少なくとも60%同一、少なくとも65%同一、少なくとも70%同一、少なくとも75%同一、少なくとも80%同一、少なくとも85%同一、少なくとも90%同一、少なくとも95%同一、又は100%同一である配列を含むCTC PAMの標的化配列を提供する。いくつかの実施形態では、本開示は、配列番号5626~13616の配列を含むCTC PAMの標的化配列を提供する。いくつかの実施形態では、本開示は、配列番号13617~17903の配列と少なくとも50%同一、少なくとも55%同一、少なくとも60%同一、少なくとも65%同一、少なくとも70%同一、少なくとも75%同一、少なくとも80%同一、少なくとも85%同一、少なくとも90%同一、少なくとも95%同一、又は100%同一である配列を含むGTC PAMの標的化配列を提供する。いくつかの実施形態では、本開示は、配列番号13617~17903の配列を含むGTC PAMの標的化配列を提供する。いくつかの実施形態では、本開示は、配列番号17904~26789の配列と少なくとも50%同一、少なくとも55%同一、少なくとも60%同一、少なくとも65%同一、少なくとも70%同一、少なくとも75%同一、少なくとも80%同一、少なくとも85%同一、少なくとも90%同一、少なくとも95%同一、又は100%同一である配列を含むTTC PAMの標的化配列を提供する。いくつかの実施形態では、本開示は、配列番号17904~26789の配列を含むTTC PAMに対する標的化配列を提供する。いくつかの実施形態では、gRNAの本開示のgRNAにおける使用のために企図される標的化配列は、配列の3’末端から単一のヌクレオチドが除去された配列番号272~2100又は2286~26789の配列を含む。他の実施形態では、gRNAの標的化配列は、配列の3’末端から2つのヌクレオチドが除去された配列番号272~2100又は2286~26789の配列を含む。他の実施形態では、gRNAの標的化配列は、配列の3’末端から3つのヌクレオチドが除去された配列番号272~2100又は2286~26789の配列を含む。他の実施形態では、gRNAの標的化配列は、配列の3’末端から4つのヌクレオチドが除去された配列番号272~2100又は2286~26789の配列を含む。他の実施形態では、gRNAの標的化配列は、配列の3’末端から5つのヌクレオチドが除去された配列番号272~2100又は2286~26789の配列を含む。段落の前述の実施形態では、チミン(T)ヌクレオチドは、gRNA標的化配列がgDNA若しくはgRNA、又はRNA及びDNAのキメラであり得るように、又はスペーサーのコード配列が発現ベクターに組み込まれる場合に、標的化配列のいずれかにおいてウラシル(U)ヌクレオチドの1つ以上又は全てを置換することができる。いくつかの実施形態では、配列番号272~2100又は2286~26789の標的化配列は、ウラシルヌクレオチドに置換される少なくとも1、2、3、4、5、若しくは6個、又はそれ以上のチミンヌクレオチドを有する。
【0084】
【0085】
いくつかの実施形態では、CasX:gRNAシステムは、第1のgRNAを含み、第2(及び任意選択的に、第3、第4、第5、又はそれ以上)のgRNAを更に含み、第2のgRNA又は追加のgRNAが、第1のgRNAの標的化配列と比較して、標的核酸配列の異なる部分又は重複する部分に相補的な標的化配列を有し、その結果、標的核酸において複数の点が標的化され、例えば、CasXによって標的核酸において複数の切断が導入される。そのような場合、第2の又は追加のgRNAは、CasXタンパク質の追加のコピーと複合体化されることが理解されるであろう。gRNAの標的化配列の選択によって、標的核酸内の特定の位置を囲む標的核酸配列の規定された領域を、本明細書に記載のCasX:gRNAシステムを使用して改変又は編集することができ、BCL11A遺伝子の変異を含むドナー鋳型の挿入を容易にすることを含む。特定の実施形態では、第2のgRNAは、GATA1結合部位が破壊されるように、5’又は3’側でGATA1結合部位に隣接する配列に相補的な標的化配列を含み得る。
【0086】
f.gRNA足場
標的化配列ドメインを除いて、gRNAの残りの成分は、本明細書において足場と称される。いくつかの実施形態では、gRNA足場は、参照gRNAとして以下に記載される天然に存在する配列に由来する。他の実施形態では、gRNA足場は、参照gRNAのバリアントであり、変異、挿入、欠失、又はドメイン置換が導入されて、gRNAに望ましい若しくは改善された特性を付与する。
【0087】
ポリヌクレオチド又はアミノ酸配列に関して「に隣接する」という用語は、ポリヌクレオチド又はポリペプチドにおいて互いに隣にある又は隣接する配列を指す。当業者は、2つの配列が互いに隣接していると考えることができ、それでも限定された量の介在配列、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10個のヌクレオチド又はアミノ酸を包含することを理解するであろう。
【0088】
表2は、参照gRNA tracrの配列及び足場配列を提供する。いくつかの実施形態では、本開示は、gRNA配列を提供し、gRNAが、表2に示される配列番号4~16の配列、又は表2の配列番号4~16のうちのいずれか1つの配列を有する参照gRNA配列と比較して少なくとも1つのヌクレオチド改変を有する配列を含む足場を有する。ベクターがgRNAの配列をコードするDNAを含むか又はgRNAがRNA及びDNAのキメラである実施形態では、チミン(T)塩基が、本明細書に記載のgRNA配列の実施形態のいずれかのウラシル(U)塩基に置換され得ることが理解されるであろう。
【0089】
【0090】
g.gRNAバリアント
別の態様では、本開示は、参照gRNA足場と比較して1つ以上の改変を含むガイド核酸バリアント(本明細書において、代替的に「gRNAバリアント」又は「gRNAバリアント」と称される)に関する。本明細書で使用される場合、「足場」とは、標的化配列を除いて、gRNAの機能に必要なgRNAの全ての部分を指す。
【0091】
いくつかの実施形態では、gRNAバリアントは、本開示の参照gRNA配列と比較して、1つ以上のヌクレオチド置換、挿入、欠失、又はスワップ若しくは置換された領域を含む。いくつかの実施形態では、変異は、gRNAバリアントを生成するために、参照gRNA足場の任意の領域において生じ得る。いくつかの実施形態では、gRNAバリアント配列の足場は、配列番号4又は配列番号5の配列と少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、又は少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、又は少なくとも約99%の同一性を有する。
【0092】
いくつかの実施形態では、gRNAバリアントは、参照gRNAと比較して、特徴を改善する参照gRNAの1つ以上の領域内に1つ以上のヌクレオチド変化を含む。例示的な領域としては、RNA三重鎖、シュードノット、足場ステムループ、及び伸長ステムループが挙げられる。場合によっては、バリアント足場ステムは、バブルを更に含む。他の場合では、バリアント足場は、三重鎖ループ領域を更に含む。更に他の場合では、バリアント足場は、5’非構造化領域を更に含む。一実施形態では、gRNAバリアント足場は、配列番号14と少なくとも60%の配列同一性を有する足場ステムループを含む。別の実施形態では、gRNAバリアントは、CCAGCGACUAUGUCGUAGUGG(配列番号25)の配列を有する足場ステムループを含む。別の実施形態では、本開示は、配列番号5に対して、C18G置換、G55挿入、U1欠失、並びに改変された伸長ステムループ(元の6ntループ及びループに対して最も近位の(most-loop-proximal)13塩基対(合計32ヌクレオチド)が、Uvsxヘアピン(4ntループ及びループに対して最も近位の5塩基対;合計14ヌクレオチド)に置換され、伸長ステムのループに対して遠位の(loop-distal)塩基が、A99欠失及びG64U置換によって新しいUvsxヘアピンに隣接する完全に塩基対合したステムに変換された)を提供する。前述の実施形態では、gRNA足場は、配列ACUGGCGCUUUUAUCUGAUUACUUUGAGAGCCAUCACCAGCGACUAUGUCGUAGUGGGUAAAGCUCCCUCUUCGGAGGGAGCAUCAAAG(配列番号2238)を含む。
【0093】
1つ以上の改善された機能若しくは特徴を有するか、又はバリアントgRNAを本明細書に記載の参照gRNAと比較した場合に1つ以上の新たな機能を追加する、全てのgRNAバリアントが、本開示の範囲内であると想定される。かかるgRNAバリアントの代表例は、ガイド174(配列番号2238)であり、その設計(及び設計の根拠)は、実施例に記載されている。いくつかの実施形態では、gRNAバリアントは、gRNAバリアントを含むRNPに新たな機能を追加する。いくつかの実施形態では、gRNAバリアントは、以下から選択される改善された特徴を有する:安定性の改善、溶解度の改善、gRNAの転写の改善、ヌクレアーゼ活性に対する耐性の改善、gRNAのフォールディング率の増加、フォールディング中の副生成物形成の減少、生産的なフォールディングの増加、CasXタンパク質に対する結合親和性の改善、CasXタンパク質と複合体化した場合の標的DNAに対する結合親和性の改善、CasXタンパク質と複合体化した場合の遺伝子編集の改善、CasXタンパク質と複合体化した場合の編集の特異性の改善、及びCasXタンパク質と複合体化した場合の標的DNAの編集におけるATC、CTC、GTC、若しくはTTCを含む1つ以上のより広範囲のPAM配列を利用する能力の改善、又はそれらの任意の組み合わせ。場合によっては、gRNAバリアントの改善された特徴のうちの1つ以上は、配列番号4又は配列番号5の参照gRNAと比較して、少なくとも約1.1~約100,000倍改善されている。他の場合では、gRNAバリアントの1つ以上の改善された特徴は、配列番号4又は配列番号5の参照gRNAと比較して、少なくとも約1.1倍、少なくとも約10倍、少なくとも約100倍、少なくとも約1000倍、少なくとも約10,000倍、少なくとも約100,000倍、又はそれ以上改善されている。他の場合では、gRNAバリアントの改善された特徴のうちの1つ以上は、配列番号4又は配列番号5の参照gRNAと比較して、約1.1~100,00倍、約1.1~10,00倍、約1.1~1,000倍、約1.1~500倍、約1.1~100倍、約1.1~50倍、約1.1~20倍、約10~100,00倍、約10~10,00倍、約10~1,000倍、約10~500倍、約10~100倍、約10~50倍、約10~20倍、約2~70倍、約2~50倍、約2~30倍、約2~20倍、約2~10倍、約5~50倍、約5~30倍、約5~10倍、約100~100,00倍、約100~10,00倍、約100~1,000倍、約100~500倍、約500~100,00倍、約500~10,00倍、約500~1,000倍、約500~750倍、約1,000~100,00倍、約10,000~100,00倍、約20~500倍、約20~250倍、約20~200倍、約20~100倍、約20~50倍、約50~10,000倍、約50~1,000倍、約50~500倍、約50~200倍、又は約50~100倍改善されている。他の場合では、gRNAバリアントの1つ以上の改善された特徴は、配列番号4又は配列番号5の参照gRNAと比較して、約1.1倍、1.2倍、1.3倍、1.4倍、1.5倍、1.6倍、1.7倍、1.8倍、1.9倍、2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、11倍、12倍、13倍、14倍、15倍、16倍、17倍、18倍、19倍、20倍、25倍、30倍、40倍、45倍、50倍、55倍、60倍、70倍、80倍、90倍、100倍、110倍、120倍、130倍、140倍、150倍、160倍、170倍、180倍、190倍、200倍、210倍、220倍、230倍、240倍、250倍、260倍、270倍、280倍、290倍、300倍、310倍、320倍、330倍、340倍、350倍、360倍、370倍、380倍、390倍、400倍、425倍、450倍、475倍、又は500倍改善されている。
【0094】
いくつかの実施形態では、gRNAバリアントは、本開示のgRNAバリアントを生成するために、参照gRNAを1つ以上の変異誘発方法、例えば、以下で本明細書に記載される変異誘発方法に供することによって作製することができ、これには、網羅的変異進化(DME)、網羅的変異スキャニング(DMS)、エラープローンPCR、カセット変異誘発、ランダム変異誘発、付着伸長PCR、遺伝子シャッフリング、又はドメインスワッピングが含まれ得る。参照gRNAの活性は、それに対してgRNAバリアントの活性が比較されるベンチマークとして使用されてもよく、それによって、参照gRNAと比較して、gRNAバリアントの機能の改善が測定される。他の実施形態では、参照gRNAは、gRNAバリアント(例えば、合理的に設計されたバリアント)を産生するために、1つ以上の意図的に標的化された変異、置換、又はドメインスワップに供され得る。かかる方法によって産生される例示的なgRNAバリアントは、実施例に記載されており、gRNA足場の代表的な配列は、表3に提示されている。
【0095】
いくつかの実施形態では、gRNAバリアントは、参照ガイド核酸足場配列と比較して、1つ以上の改変を含み、1つ以上の改変が、以下から選択される:gRNAバリアントの領域における少なくとも1つのヌクレオチド置換、gRNAバリアントの領域における少なくとも1つのヌクレオチド欠失、gRNAバリアントの領域における少なくとも1つのヌクレオチド挿入、gRNAバリアントの領域の全部若しくは一部の置換、gRNAバリアントの領域の全部若しくは一部の欠失、又は上記の任意の組み合わせ。場合によっては、改変は、gRNAバリアントの1つ以上の領域における1~15個の連続した又は連続していないヌクレオチドの置換である。他の場合では、改変は、gRNAバリアントの1つ以上の領域における1~10個の連続した又は連続していないヌクレオチドの欠失である。他の場合では、改変は、gRNAバリアントの1つ以上の領域における1~10個の連続した又は連続していないヌクレオチドの挿入である。他の場合では、改変は、足場ステムループ又は伸長ステムループの、近位の5’末端及び3’末端を有する異種RNA源由来のRNAステムループ配列による置換である。場合によっては、本開示のgRNAバリアントは、1つの領域に2つ以上の改変を含む。他の場合では、本開示のgRNAバリアントは、2つ以上の領域に改変を含む。他の場合では、gRNAバリアントは、この段落に記載されている前述の改変の任意の組み合わせを含む。
【0096】
いくつかの実施形態では、+1ヌクレオチドがGである場合、U6プロモーターからの転写がより効率的であり、開始部位に関してより一貫性があるので、インビボでの発現のために、5’GがgRNAバリアント配列に付加される。他の実施形態では、T7ポリメラーゼが+1位のG及び+2位のプリンを強く好むので、インビトロでの転写で生産効率を増加させるために、2つの5’GがgRNAバリアント配列に付加される。場合によっては、5’G塩基が、表2の参照足場に付加される。他の場合では、5’G塩基が、表3の配列番号2238~2285、26794~26839、及び27219~2726のバリアント足場に付加される。
【0097】
表3は、本開示の例示的なgRNAバリアント足場配列を提供する。いくつかの実施形態では、gRNAバリアント足場は、表3の配列番号2238~2285、26794~26839、及び27219~27265に列挙される配列のうちのいずれか1つ、又はそれと少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%の配列同一性を有する配列を含む。いくつかの実施形態では、gRNAバリアント足場は、配列番号2238~2285、26794~26839、及び27219~27265のうちのいずれか1つを含む。いくつかの実施形態では、gRNAバリアント足場は、配列番号2281~2285、26794~26839、及び27219~27265のうちのいずれか1つ、又はそれと少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%の配列同一性を有する配列を含む。いくつかの実施形態では、gRNAバリアント足場は、配列番号2281~2285、26794~26839、及び27219~27265のうちのいずれか1つを含む。ベクターがgRNAの配列をコードするDNAを含むか又はgRNAがRNA及びDNAのキメラである実施形態では、チミン(T)塩基が、本明細書に記載のgRNA配列の実施形態のいずれかのウラシル(U)塩基に置換され得ることが理解されるであろう。
【0098】
【0099】
【0100】
【0101】
【0102】
【0103】
【0104】
【0105】
【0106】
【0107】
【0108】
【0109】
いくつかの実施形態では、sgRNAバリアントは、表3の配列番号2238、配列番号2239、配列番号2240、配列番号2241、配列番号2243、配列番号2256、配列番号2274、配列番号2275、配列番号2279、配列番号2281、配列番号2285、配列番号26797、又は配列番号26800の配列に対する1つ以上の追加の変化を含む。
【0110】
本開示のgRNAバリアントのいくつかの実施形態では、gRNAバリアントは、少なくとも1つの改変を含み、配列番号5の参照ガイド足場と比較した少なくとも1つの改変が、以下のうちの1つ以上から選択される:(a)三重鎖ループにおけるC18G置換、(b)ステムバブルにおけるG55挿入、(c)U1欠失、(d)(i)6ntループ及びループに対して近位の13塩基対がUvsxヘアピンによって置換されており、(ii)A99の欠失及びG65Uの置換により、ループに対して遠位の塩基が完全に塩基対合している、伸長ステムループの改変。上記の例示的な実施形態では、gRNAバリアントは、配列番号2238、2241、2244、2248、2249、2256、2259~2285、26797、又は26800のうちのいずれか1つの配列を含む。
【0111】
いくつかの実施形態では、gRNAバリアントは、長い非コードRNA(lncRNA)を有する外因性ステムループを含む。本明細書で使用されるlncRNAは、長さが約200bpよりも長い非コードRNAを指す。いくつかの実施形態では、外因性ステムループの5’末端及び3’末端は、塩基対合している(すなわち、二重鎖RNAの領域を形成するように相互作用する)。いくつかの実施形態では、外因性ステムループの5’末端及び3’末端は、塩基対合しており、外因性ステムループの5’末端と3’末端との間の1つ以上の領域は、塩基対合していない。
【0112】
いくつかの実施形態では、本開示は、参照gRNAと比較して、ヌクレオチドの改変を有するgRNAバリアントを提供し、(a)gRNAバリアントの1つ以上の領域における1~15個の連続した若しくは連続していないヌクレオチドの置換、(b)gRNAバリアントの1つ以上の領域における1~10個の連続した若しくは連続していないヌクレオチドの欠失、(c)gRNAバリアントの1つ以上の領域における1~10個の連続した若しくは連続していないヌクレオチドの挿入、(d)足場ステムループ若しくは伸長ステムループの、近位の5’末端及び3’末端を有する異種RNA源由来のRNAステムループ配列による置換、又は(a)~(d)の任意の組み合わせ、を有する。本明細書に記載の置換、挿入及び欠失のうちのいずれかを組み合わせて、本開示のgNAバリアントを生成することができる。例えば、gNAバリアントは、参照gRNAと比較して、少なくとも1つの置換及び少なくとも1つの欠失、参照gRNAと比較して、少なくとも1つの置換及び少なくとも1つの挿入、参照gRNAと比較して、少なくとも1つの挿入及び少なくとも1つの欠失、又は参照gRNAと比較して少なくとも1つの置換、1つの挿入、及び1つの欠失、を含み得る。
【0113】
いくつかの実施形態では、本開示のsgRNAバリアントは、以前に生成されたバリアントに対する1つ以上の追加の変化を含み、以前に生成されたバリアント自体が、改変される配列として機能する。いくつかの実施形態では、sgRNAバリアントは、配列番号2238、配列番号2239、配列番号2240、配列番号2241、配列番号2241、配列番号2274、配列番号2275、配列番号2279、又は配列番号2285、配列番号26797、又は配列番号26800の配列に対する1つ以上の更なる変化を含む。
【0114】
例示的な実施形態では、gRNAバリアントは、gRNA足場バリアント174(配列番号2238)に対する1つ以上の改変を含み、得られたgRNAバリアントは、同等の条件下でインビトロ又はインビボアッセイにおいて評価した場合、親174と比較して機能的改善を示す。
【0115】
例示的な実施形態では、gRNAバリアントは、gRNA足場バリアント175(配列番号2239)に対する1つ以上の改変を含み、得られたgRNAバリアントは、同等の条件下でインビトロ又はインビボアッセイにおいて評価した場合、親174と比較して機能的改善を示す。
【0116】
例示的な実施形態では、gRNAバリアントは、gRNA足場バリアント215(配列番号2275)に対する1つ以上の改変を含み、得られたgRNAバリアントは、同等の条件下でインビトロ又はインビボアッセイにおいて評価した場合、親215と比較して機能的改善を示す。
【0117】
例示的な実施形態では、gRNAバリアントは、gRNA足場バリアント221(配列番号2281)に対する1つ以上の改変を含み、得られたgRNAバリアントは、同等の条件下でインビトロ又はインビボアッセイにおいて評価した場合、親221と比較して機能的改善を示す。
【0118】
例示的な実施形態では、gRNAバリアントは、gRNA足場バリアント225(配列番号2285)に対する1つ以上の改変を含み、得られたgRNAバリアントは、同等の条件下でインビトロ又はインビボアッセイにおいて評価した場合、親225と比較して機能的改善を示す。
【0119】
例示的な実施形態では、gRNAバリアントは、gRNA足場バリアント235(配列番号26800)に対する1つ以上の改変を含み、得られたgRNAバリアントは、同等の条件下でインビトロ又はインビボアッセイにおいて評価した場合、親225と比較して機能的改善を示す。
【0120】
いくつかの実施形態では、gRNAバリアントは、外因性伸長ステムループを含み、参照gRNAとのかかる差異は、以下の通りである。いくつかの実施形態では、外因性伸長ステムループは、本明細書に開示される参照ステムループ領域(例えば、配列番号15)とほとんど又は全く同一性を有しない。いくつかの実施形態では、外因性ステムループは、少なくとも10bp、少なくとも20bp、少なくとも30bp、少なくとも40bp、少なくとも50bp、少なくとも60bp、少なくとも70bp、少なくとも80bp、少なくとも90bp、少なくとも100bp、少なくとも200bp、少なくとも300bp、少なくとも400bp、少なくとも500bp、少なくとも600bp、少なくとも700bp、少なくとも800bp、少なくとも900bp、少なくとも1,000bp、少なくとも2,000bp、少なくとも3,000bp、少なくとも4,000bp、少なくとも5,000bp、少なくとも6,000bp、少なくとも7,000bp、少なくとも8,000bp、少なくとも9,000bp、少なくとも10,000bp、少なくとも12,000bp、少なくとも15,000bp、又は少なくとも20,000bpである。いくつかの実施形態では、gRNAバリアントは、少なくとも10、少なくとも100、少なくとも500、少なくとも1000、又は少なくとも10,000ヌクレオチドを含む伸長ステムループ領域を含む。いくつかの実施形態では、異種ステムループは、gRNAの安定性を増加させる。いくつかの実施形態では、異種RNAステムループは、タンパク質、RNA構造、DNA配列、又は小分子に結合することができる。いくつかの実施形態では、ステムループを置換する外因性ステムループ領域は、RNAステムループ又はヘアピンを含み、得られるgRNAは、安定性が増加しており、ループの選択に応じて、特定の細胞タンパク質又はRNAと相互作用することができる。かかる外因性伸長ステムループは、例えば、熱安定性RNA、例えば、MS2ヘアピン(ACAUGAGGAUCACCCAUGU(配列番号27))、Qβヘアピン(UGCAUGUCUAAGACAGCA(配列番号28))、U1ヘアピンII(AAUCCAUUGCACUCCGGAUU(配列番号29))、Uvsx(CCUCUUCGGAGG(配列番号30))、PP7ヘアピン(AGGAGUUUCUAUGGAAACCCU(配列番号31))、ファージ複製ループ(AGGUGGGACGACCUCUCGGUCGUCCUAUCU(配列番号32))、キッシングループ_a(UGCUCGCUCCGUUCGAGCA(配列番号33))、キッシングループ_b1(UGCUCGACGCGUCCUCGAGCA(配列番号34))、キッシングループ_b2(UGCUCGUUUGCGGCUACGAGCA(配列番号35))、G三重鎖M3q(AGGGAGGGAGGGAGAGG(配列番号149))、G四重鎖テロメアバスケット(GGUUAGGGUUAGGGUUAGG(配列番号150))、サルシン-リシンループ(CUGCUCAGUACGAGAGGAACCGCAG(配列番号151))、又はシュードノット(UACACUGGGAUCGCUGAAUUAGAGAUCGGCGUCCUUUCAUUCUAUAUACUUUGGAGUUUUAAAAUGUCUCUAAGUACA(配列番号152))を含み得る。いくつかの実施形態では、前述のヘアピン配列のうちの1つは、ステムループに組み込まれて、gRNA(及びRNP複合体中の関連するCasX)の出芽XDPへの組み込みを輸送するのを助ける(以下でより詳細に記載される)。
【0121】
gRNAバリアントの実施形態では、gRNAバリアントは、gRNAの3’末端に位置し、DMPK配列に特異的な標的核酸とハイブリダイズすることができるスペーサー(又は標的化配列)(上でより詳細に記載されている)を更に含み、スペーサーが、少なくとも14~約35ヌクレオチドを含み、標的DNAに相補的である配列を用いて設計される。いくつかの実施形態では、コードされたgRNAバリアントは、標的DNAに相補的な少なくとも10~20ヌクレオチドの標的化配列を含む。いくつかの実施形態では、標的化配列は、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、又は35ヌクレオチドを有する。いくつかの実施形態では、コードされたgRNAバリアントは、20ヌクレオチドを有する標的化配列を含む。いくつかの実施形態では、標的化配列は、25ヌクレオチドを有する。いくつかの実施形態では、標的化配列は、24ヌクレオチドを有する。いくつかの実施形態では、標的化配列は、23ヌクレオチドを有する。いくつかの実施形態では、標的化配列は、22ヌクレオチドを有する。いくつかの実施形態では、標的化配列は、21ヌクレオチドを有する。いくつかの実施形態では、標的化配列は、20ヌクレオチドを有する。いくつかの実施形態では、標的化配列は、19ヌクレオチドを有する。いくつかの実施形態では、標的化配列は、18ヌクレオチドを有する。いくつかの実施形態では、標的化配列は、17ヌクレオチドを有する。いくつかの実施形態では、標的化配列は、16ヌクレオチドを有する。いくつかの実施形態では、標的化配列は、15ヌクレオチドを有する。いくつかの実施形態では、標的化配列は、14ヌクレオチドを有する。
【0122】
h.CasXタンパク質との複合体形成
いくつかの実施形態では、gRNAバリアントは、発現時、表4の配列(配列番号36~99、101~148、及び26908~27154)のうちのいずれか1つ、又はそれと少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、若しくは少なくとも約99%の同一性を有する配列を含むCasXバリアントタンパク質とRNPとして複合体化される。いくつかの実施形態では、発現時に、gRNAバリアントは、配列番号59、72~99、101~148、若しくは26908~27154のうちのいずれか1つ、又はそれと少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、若しくは少なくとも約99%の同一性を有する配列を含むCasXバリアントタンパク質とRNPとして複合体化される。いくつかの実施形態では、発現時に、gRNAバリアントは、配列番号132~148若しくは26908~27154のうちのいずれか1つ、又はそれと少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、若しくは少なくとも約99%の同一性を有する配列を含むCasXバリアントタンパク質とRNPとして複合体化される。
【0123】
いくつかの実施形態では、gRNAバリアントは、参照gRNAと比較した場合、CasXタンパク質(例えば、参照CasX又はCasXバリアントタンパク質)と複合体を形成する改善された能力を有する。いくつかの実施形態では、gRNAバリアントは、参照gRNAと比較した場合、CasXタンパク質(例えば、参照タンパク質又はバリアントタンパク質)に対する改善された親和性を有し、それによって、実施例に記載されるように、CasXタンパク質とリボ核タンパク質(RNP)複合体を形成するその能力を改善する。リボ核タンパク質複合体の形成を改善することは、いくつかの実施形態では、機能的なRNPが構築される効率を改善することができる。いくつかの実施形態では、gRNAバリアント及びその標的化配列を含むRNPの90%超、93%超、95%超、96%超、97%超、98%超又は99%超が、標的核酸の遺伝子編集に適格である。
【0124】
CasXタンパク質と複合体を形成するgRNAバリアントの能力を改善することができる例示的なヌクレオチド変化は、いくつかの実施形態では、足場ステムを熱安定性ステムループで置換することを含み得る。いかなる理論にも拘束されることを望むものではないが、足場ステムを熱安定性ステムループで置換することによって、gRNAバリアントとCasXタンパク質との全体的な結合安定性を増加させることができる。代替的に、又は追加的に、ステムループの大部分を除去することによって、gRNAバリアントのフォールディング動態が変化し、例えば、gRNAバリアントがそれ自体で「もつれ」得る程度を減少させることによって、機能的にフォールディングされたgRNAがより容易にかつ迅速に形成され得る。いくつかの実施形態では、足場ステムループ配列の選択は、gRNAのために利用される異なる標的化配列によって変化し得る。いくつかの実施形態では、足場配列は、標的化配列、したがって、標的配列に合わせて調整することができる。実施例のアッセイを含む生化学的アッセイを使用して、RNPを形成するためのgRNAバリアントに対するCasXタンパク質の結合親和性を評価することができる。例えば、当業者は、追加の非標識「コールド競合(cold competitor)」gRNAの濃度の増加に対する応答として、固定化CasXタンパク質に結合している蛍光タグ付きgRNAの量の変化を測定することができる。代替的に、又は追加的に、異なる量の蛍光標識されたgRNAが固定化CasXタンパク質上を流れる際に、蛍光シグナルがどのように変化するのかを監視又は観察することができる。代替的に、RNPを形成する能力は、規定された標的核酸配列に対するインビトロ切断アッセイを使用して評価され得る。
【0125】
IV.標的核酸を改変するためのタンパク質
本開示は、真核細胞のゲノム編集において有用であるCRISPRヌクレアーゼを含むシステムを提供する。いくつかの実施形態では、ゲノム編集システムにおいて使用されるCRISPRヌクレアーゼは、クラス2、V型ヌクレアーゼである。クラス2、V型CRISPR-Casシステムのメンバーには相違点があるが、それらは、それらをCas9システムと区別するいくつかの共通の特徴を共有する。まず、クラス2、V型ヌクレアーゼは、単一のRNA誘導RuvCドメイン含有エフェクターを有するが、HNHドメインを有さず、非標的鎖上の標的領域の5’上流のT-リッチPAMを認識し、これは、標的配列の3’側でG-リッチPAMに依存するCas9システムとは異なる。V型ヌクレアーゼは、PAMに近い近位部位に平滑末端を生成するCas9とは異なり、PAM配列に対して遠位にずれた二本鎖切断を生成する。加えて、V型ヌクレアーゼは、シスで結合する標的dsDNA又はssDNAによって活性化された場合、トランスでssDNAを分解する。いくつかの実施形態では、本実施形態のV型ヌクレアーゼは、5’-TC PAMモチーフを認識し、RuvCドメインによってのみ切断される付着末端を生成する。いくつかの実施形態では、V型ヌクレアーゼは、Cas12a、Cas12b、Cas12c、Cas12d(CasY)、Cas12j、Cas12k、CasZ、及びCasXからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、本開示は、CasXタンパク質と、1つ以上のgRNA酸とを含むシステム(CasX:gRNAシステム)を提供し、gRNA酸は、真核細胞において標的核酸配列を改変するように特別に設計されている。
【0126】
本明細書で使用される「CasXタンパク質」という用語は、タンパク質のファミリーを指し、全ての天然に存在するCasXタンパク質、天然に存在するCasXタンパク質と少なくとも50%の同一性を共有するタンパク質、並びに天然に存在する参照CasXタンパク質と比較して1つ以上の改善された特徴を有するCasXバリアントを包含する。
【0127】
本開示のCasXタンパク質は、以下のドメインのうちの少なくとも1つを含む:非標的鎖結合(non-target strand binding、NTSB)ドメイン、標的鎖負荷(target strand loading、TSL)ドメイン、ヘリックスIドメイン、ヘリックスIIドメイン、オリゴヌクレオチド結合ドメイン(oligonucleotide binding domain、OBD)、及びRuvC DNA切断ドメイン。
【0128】
いくつかの実施形態では、CasXタンパク質は、標的核酸配列内の配列にハイブリダイズする関連するgRNAによって標的化される特定の配列において標的核酸に結合する及び/又はそれを改変する(例えば、ニックを入れる、二本鎖切断を触媒する、メチル化する、脱メチル化するなど)ことができる。
【0129】
a.参照CasXタンパク質
本開示は、天然に存在するCasXタンパク質(本明細書において「参照CasXタンパク質」と称される)を提供し、これはその後、本開示のCasXバリアントを作製するために改変された。例えば、参照CasXタンパク質は、Deltaproteobacteria、Planctomycetes、又はCandidatus Sungbacteria種などの天然に存在する原核生物から単離することができる。参照CasXタンパク質(互換的に、本明細書において参照CasXポリペプチドと称される)は、ガイドRNAと相互作用してリボ核タンパク質(RNP)複合体を形成するタンパク質のCasX(互換的に、Cas12eと称される)ファミリーに属するII型CRISPR/Casエンドヌクレアーゼである。
【0130】
場合によっては、参照CasXタンパク質は、Deltaproteobacterから単離されるか又はそれに由来し、以下の配列を有する:
【0131】
【0132】
場合によっては、参照CasXタンパク質は、Planctomycetesから単離されるか又はそれに由来し、以下の配列を有する:
【0133】
【0134】
場合によっては、参照CasXタンパクは、Candidatus Sungbacteriaから単離されるか又はそれに由来し、以下の配列を有する:
【0135】
【0136】
b.CasXバリアントタンパク質
本開示は、参照CasXタンパク質のバリアント(互換的に、本明細書において「CasXバリアント」又は「CasXバリアントタンパク質」と称される)を提供し、CasXバリアントは、参照CasXタンパク質と比較して少なくとも1つのドメインに少なくとも1つの改変を含み、配列番号1~3の配列を含むが、これらに限定されない。
【0137】
本開示のCasXバリアントは、参照CasXタンパク質と比較して、1つ以上の改善された特徴を有する。CasXバリアントの実施形態の例示的な改善された特徴としては、バリアントのフォールディングの改善、gRNAに対する結合親和性の改善、標的核酸に対する結合親和性の改善、標的DNAの編集及び/又は結合においてより広範囲のPAM配列を利用する能力の改善、標的DNAの巻き戻しの改善、編集活性の増加、編集効率の改善、編集特異性の改善、効率的に編集され得る真核生物ゲノムの百分率割合の増加、ヌクレアーゼ活性の増加、二本鎖切断のための標的鎖装填(target strand loading)の増加、一本鎖ニッキングのための標的鎖装填の減少、オフターゲット切断の減少、DNAの非標的鎖の結合の改善、タンパク質安定性の改善、タンパク質:gRNA(RNP)複合体の安定性の改善、タンパク質溶解度の改善、タンパク質:gRNA(RNP)複合体の溶解度性の改善、タンパク質収量の改善、タンパク質発現の改善、及び融合体特徴の改善が挙げられるが、これらに限定されない(以下でより詳細に説明される)。例示的な改善された特徴は、国際公開第2020/247882号(A1)及び国際公開第2020/247883号に記載されている(参照により本明細書に援用される)。前述の実施形態では、CasXバリアントの改善された特徴のうちの1つ以上は、比較可能な様式でアッセイした場合、配列番号1、配列番号2、又は配列番号3の参照CasXタンパク質と比較して、少なくとも約1.1~約100,000倍改善されている。他の実施形態では、改善は、比較可能な様式でアッセイした場合、配列番号1、配列番号2、又は配列番号3の参照CasXタンパク質と比較して、少なくとも約1.1倍、少なくとも約2倍、少なくとも約5倍、少なくとも約10倍、少なくとも約50倍、少なくとも約100倍、少なくとも約500倍、少なくとも約1000倍、少なくとも約5000倍、少なくとも約10,000倍、又は少なくとも約100,000倍である。他の場合では、CasXバリアント及びgRNAバリアントのRNPの1つ以上の改善された特徴は、配列番号1、配列番号2、又は配列番号3の参照CasXタンパク質及び表2のgRNAのRNPと比較して、少なくとも約1.1、少なくとも約10、少なくとも約100、少なくとも約1000、少なくとも約10,000、少なくとも約100,000倍、又はそれ以上改善されている。他の場合では、CasXバリアント及びgRNAバリアントのRNPの改善された特徴のうちの1つ以上は、比較可能な様式でアッセイした場合、配列番号1、配列番号2、又は配列番号3の参照CasXタンパク質及び表2のgRNAのRNPと比較して、約1.1~100,00倍、約1.1~10,00倍、約1.1~1,000倍、約1.1~500倍、約1.1~100倍、約1.1~50倍、約1.1~20倍、約10~100,00倍、約10~10,00倍、約10~1,000倍、約10~500倍、約10~100倍、約10~50倍、約10~20倍、約2~70倍、約2~50倍、約2~30倍、約2~20倍、約2~10倍、約5~50倍、約5~30倍、約5~10倍、約100~100,00倍、約100~10,00倍、約100~1,000倍、約100~500倍、約500~100,00倍、約500~10,00倍、約500~1,000倍、約500~750倍、約1,000~100,00倍、約10,000~100,00倍、約20~500倍、約20~250倍、約20~200倍、約20~100倍、約20~50倍、約50~10,000倍、約50~1,000倍、約50~500倍、約50~200倍、又は約50~100倍改善されている。他の場合では、CasXバリアント及びgRNAバリアントのRNPの1つ以上の改善された特徴は、比較可能な様式でアッセイした場合、配列番号1、配列番号2、又は配列番号3の参照CasXタンパク質及び表2のgRNAのRNPと比較して、約1.1倍、1.2倍、1.3倍、1.4倍、1.5倍、1.6倍、1.7倍、1.8倍、1.9倍、2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、11倍、12倍、13倍、14倍、15倍、16倍、17倍、18倍、19倍、20倍、25倍、30倍、40倍、45倍、50倍、55倍、60倍、70倍、80倍、90倍、100倍、110倍、120倍、130倍、140倍、150倍、160倍、170倍、180倍、190倍、200倍、210倍、220倍、230倍、240倍、250倍、260倍、270倍、280倍、290倍、300倍、310倍、320倍、330倍、340倍、350倍、360倍、370倍、380倍、390倍、400倍、425倍、450倍、475倍、又は500倍改善されている。
【0138】
CasXバリアントという用語は、融合タンパク質であるバリアントを含む。すなわち、CasXは、異種配列に「融合」されている。これは、CasXバリアント配列、及び異種タンパク質若しくはそのドメインへのCasXのN末端融合、C末端融合、又は内部融合を含むCasXバリアントを含む。
【0139】
いくつかの実施形態では、CasXバリアントは、NTSBドメインに少なくとも1つの改変を含む。いくつかの実施形態では、CasXバリアントは、TSLドメインに少なくとも1つの改変を含む。いくつかの実施形態では、CasXバリアントは、ヘリックスIドメインに少なくとも1つの改変を含む。いくつかの実施形態では、CasXバリアントは、ヘリックスIIドメインに少なくとも1つの改変を含む。いくつかの実施形態では、CasXバリアントは、OBDドメインに少なくとも1つの改変を含む。いくつかの実施形態では、CasXバリアントは、RuvC DNA切断ドメインに少なくとも1つの改変を含む。いくつかの実施形態では、RuvC DNA切断ドメインにおける少なくとも1つの改変は、配列番号2のアミノ酸K682、G695、A708、V711、D732、A739、D733、L742、V747、F755、M771、M779、W782、A788、G791、L792、P793、Y797、M799、Q804、S819、若しくはY857のうちの1つ以上のアミノ酸置換、又はアミノ酸P793の欠失を含む。
【0140】
いくつかの実施形態では、CasXバリアントタンパク質は、配列番号1~3の配列を含む参照CasXタンパク質の少なくとも1つのドメインにおいて、少なくとも2つのドメインの各々において、少なくとも3つのドメインの各々において、少なくとも4つのドメインの各々において、又は少なくとも5つのドメインの各々において、少なくとも1つの改変を含む。いくつかの実施形態では、CasXバリアントタンパク質は、参照CasXタンパク質の少なくとも1つのドメインにおいて2つ以上の改変を含む。いくつかの実施形態では、CasXバリアントタンパク質は、参照CasXタンパク質の少なくとも1つのドメインにおいて少なくとも2つの改変、参照CasXタンパク質の少なくとも1つのドメインにおいて少なくとも3つの改変、又は参照CasXタンパク質の少なくとも1つのドメインにおいて少なくとも4つの改変を含む。いくつかの実施形態では、CasXバリアントは、参照CasXと比較して2つ以上の改変を含み、各改変は、独立して、NTSBD、TSLD、ヘリックスIドメイン、ヘリックスIIドメイン、OBD、及びRuvC DNA切断ドメインからなる群から選択されるドメインにおいて行われる。いくつかの実施形態では、CasXバリアントタンパク質の少なくとも1つの改変は、配列番号1~3の参照CasXタンパク質の1つのドメインの少なくとも一部の欠失を含む。いくつかの実施形態では、欠失は、NTSBD、TSLD、ヘリックスIドメイン、ヘリックスIIドメイン、OBD、又はRuvC DNA切断ドメインにある。他の実施形態では、本開示は、別のCasXバリアントと比較して少なくとも1つの改変を含むCasXバリアントを提供する。例えば、CasXバリアント515は、CasXバリアント491のバリアントである。本明細書に記載の参照CasXタンパク質(又はそれが由来するバリアント)と比較した場合、CasXバリアントタンパク質の1つ以上の機能又は特徴を改善する全てのバリアントは、本開示の範囲内であると想定される。
【0141】
いくつかの実施形態では、CasXバリアントの改変は、参照CasXの1つ以上のアミノ酸における変異である。他の実施形態では、改変は、参照CasXの1つ以上のドメインの、異なるCasX由来の1つ以上のドメインによる置換である。いくつかの実施形態では、挿入は、異なるCasXタンパク質由来のドメインの一部又は全部の挿入を含む。変異は、参照CasXタンパク質の任意の1つ以上のドメインにおいて生じ得、例えば、参照CasXタンパク質の任意のドメインにおける1つ以上のドメインの一部若しくは全部の欠失、又は1つ以上のアミノ酸の置換、欠失、若しくは挿入を含み得る。CasXタンパク質のドメインは、非標的鎖結合(NTSB)ドメイン、標的鎖装填(TSL)ドメイン、ヘリックスIドメイン、ヘリックスIIドメイン、オリゴヌクレオチド結合ドメイン(OBD)、及びRuvC DNA切断ドメインを含む。CasXタンパク質の改善された特徴をもたらす参照CasXタンパク質のアミノ酸配列における任意の変化は、本開示のCasXバリアントタンパク質とみなされる。例えば、CasXバリアントは、参照CasXタンパク質配列と比較して、1つ以上のアミノ酸置換、挿入、欠失、若しくはスワップされたドメイン、又はそれらの任意の組み合わせを含み得る。
【0142】
本開示のCasXバリアントタンパク質を生成するための好適な変異誘発法には、例えば、網羅的変異進化(DME)、網羅的変異スキャニング(DMS)、エラープローンPCR、カセット変異誘発、ランダム変異誘発、付着伸長PCR、遺伝子シャッフリング、又はドメインスワッピングが含まれ得る。いくつかの実施形態では、CasXバリアントは、例えば、参照CasXにおける1つ以上の所望の変異を選択することによって設計される。特定の実施形態では、参照CasXタンパク質の活性は、それに対して1つ以上のCasXバリアントの活性が比較されるベンチマークとして使用され、それによって、CasXバリアントの機能の改善が測定される。
【0143】
本明細書に記載のCasXバリアントのいくつかの実施形態では、少なくとも1つの改変は、以下を含む:(a)配列番号1、配列番号2、配列番号3、CasXバリアント491、若しくはCasXバリアント515の参照CasXと比較した、CasXバリアントにおける1~100個の連続した若しくは連続していないアミノ酸の置換、(b)参照CasX若しくはそれが由来するバリアントと比較した、CasXバリアントにおける1~100個の連続した若しくは連続していないアミノ酸の欠失、(c)参照CasX若しくはそれが由来するバリアントと比較した、CasXにおける1~100個の連続した若しくは連続していないアミノ酸の挿入、又は(d)(a)~(c)の任意の組み合わせ。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの改変は、以下を含む:(a)配列番号1、配列番号2、配列番号3、CasX 491、又はCasX 515の参照CasXと比較した、CasXバリアントにおける5~10個の連続した又は連続していないアミノ酸の置換、(b)参照CasX又はそれが由来するバリアントと比較した、CasXバリアントにおける1~5個の連続した又は連続していないアミノ酸の欠失、(c)参照CasX又はそれが由来するバリアントと比較した、CasXにおける1~5個の連続した又は連続していないアミノ酸の挿入、又は(d)(a)~(c)の任意の組み合わせ。
【0144】
いくつかの実施形態では、CasXバリアントタンパク質は、配列番号1、配列番号2、配列番号3、CasX 491(表4を参照)、又はCasX 515(表4を参照)の配列と比較して、少なくとも1、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、少なくとも10、少なくとも20、少なくとも30、少なくとも40、少なくとも50、少なくとも60、少なくとも70、少なくとも80、少なくとも90、又は少なくとも100個の改変を有する配列を含むか又はそれからなる。これらの改変は、アミノ酸の挿入、欠失、置換、又はそれらの任意の組み合わせであり得る。改変は、CasXバリアントの1つのドメイン、又はいずれかのドメイン、又はドメインのいずれかの組み合わせにあり得る。本明細書に記載の置換において、任意のアミノ酸は、任意の他のアミノ酸と置換され得る。置換は、保存的置換であり得る(例えば、塩基性アミノ酸が別の塩基性アミノ酸に置換される)。置換は、非保存的置換であってもよい(例えば、塩基性アミノ酸が酸性アミノ酸に置換されるか、又はその逆も同様である)。例えば、参照CasXタンパク質におけるプロリンを、アルギニン、ヒスチジン、リジン、アスパラギン酸、グルタミン酸、セリン、スレオニン、アスパラギン、グルタミン、システイン、グリシン、アラニン、イソロイシン、ロイシン、メチオニン、フェニルアラニン、トリプトファン、チロシン、又はバリンのうちのいずれかに置換して、本開示のCasXバリアントタンパク質を生成することができる。
【0145】
本明細書に記載の実施形態の置換、挿入、及び欠失の任意の順列を組み合わせて、本開示のCasXバリアントタンパク質を生成することができる。例えば、CasXバリアントタンパク質は、参照CasXタンパク質配列と比較して、少なくとも1つの置換及び少なくとも1つの欠失、参照CasXタンパク質配列と比較して、少なくとも1つの置換及び少なくとも1つの挿入、参照CasXタンパク質配列と比較して、少なくとも1つの挿入及び少なくとも1つの欠失、又は参照CasXタンパク質配列と比較して、少なくとも1つの置換、1つの挿入、及び1つの欠失を含むことができる。
【0146】
いくつかの実施形態では、CasXバリアントは、配列番号2の参照CasX配列と比較して、以下のうちの1つ以上から選択される少なくとも1つの改変を含む:(a)L379Rのアミノ酸置換、(b)A708Kのアミノ酸置換、(c)T620Pのアミノ酸置換、(d)E385Pのアミノ酸置換、(e)Y857Rのアミノ酸置換、(f)I658Vのアミノ酸置換、(g)F399Lのアミノ酸置換、(h)Q252Kのアミノ酸置換、(i)L404Kのアミノ酸置換、及び(j)P793のアミノ酸欠失。
【0147】
いくつかの実施形態では、CasXバリアントタンパク質は、400~2000アミノ酸、500~1500アミノ酸、700~1200アミノ酸、800~1100アミノ酸、又は900~1000アミノ酸を含む。
【0148】
いくつかの実施形態では、CasXバリアントタンパク質は、表4に示される配列番号59、72~99、101~148、及び26908~27154の配列を含む。いくつかの実施形態では、CasXバリアントタンパク質は、表4に示される配列番号59、72~99、101~148、及び26908~27154の配列からなる。他の実施形態では、CasXバリアントタンパク質は、表4に示される配列番号59、72~99、101~148、又は26908~27154の配列と少なくとも60%同一、少なくとも65%同一、少なくとも70%同一、少なくとも75%同一、少なくとも80%同一、少なくとも81%同一、少なくとも82%同一、少なくとも83%同一、少なくとも84%同一、少なくとも85%同一、少なくとも86%同一、少なくとも86%同一、少なくとも87%同一、少なくとも88%同一、少なくとも89%同一、少なくとも89%同一、少なくとも90%同一、少なくとも91%同一、少なくとも92%同一、少なくとも93%同一、少なくとも94%同一、少なくとも95%同一、少なくとも96%同一、少なくとも97%同一、少なくとも98%同一、少なくとも99%同一、少なくとも99.5%同一の配列を含む。いくつかの実施形態では、CasXバリアントタンパク質は、配列番号536~99、101~148、又は26908~27154の配列を含むか、又はそれからなる。他の実施形態では、CasXバリアントタンパク質は、配列番号36~99、101~148、又は26908~27154の配列と少なくとも60%同一、少なくとも65%同一、少なくとも70%同一、少なくとも75%同一、少なくとも80%同一、少なくとも81%同一、少なくとも82%同一、少なくとも83%同一、少なくとも84%同一、少なくとも85%同一、少なくとも86%同一、少なくとも86%同一、少なくとも87%同一、少なくとも88%同一、少なくとも89%同一、少なくとも89%同一、少なくとも90%同一、少なくとも91%同一、少なくとも92%同一、少なくとも93%同一、少なくとも94%同一、少なくとも95%同一、少なくとも96%同一、少なくとも97%同一、少なくとも98%同一、少なくとも99%同一、少なくとも99.5%同一の配列を含む。いくつかの実施形態では、CasXバリアントタンパク質は、配列番号132~148又は26908~27154の配列を含むか、又はそれからなる。他の実施形態では、CasXバリアントタンパク質は、配列番号132~148又は26908~27154の配列と少なくとも60%同一、少なくとも65%同一、少なくとも70%同一、少なくとも75%同一、少なくとも80%同一、少なくとも81%同一、少なくとも82%同一、少なくとも83%同一、少なくとも84%同一、少なくとも85%同一、少なくとも86%同一、少なくとも86%同一、少なくとも87%同一、少なくとも88%同一、少なくとも89%同一、少なくとも89%同一、少なくとも90%同一、少なくとも91%同一、少なくとも92%同一、少なくとも93%同一、少なくとも94%同一、少なくとも95%同一、少なくとも96%同一、少なくとも97%同一、少なくとも98%同一、少なくとも99%同一、少なくとも99.5%同一の配列を含む。
【0149】
【0150】
【0151】
【0152】
【0153】
【0154】
【0155】
【0156】
c.複数の供給源のタンパク質由来のドメインを有するCasXバリアントタンパク質
特定の実施形態では、本開示は、2つ以上の異なるCasXタンパク質(例えば、2つ以上の天然に存在するCasXタンパク質又は本明細書に記載される2つ以上のCasXバリアントタンパク質配列)由来のタンパク質ドメインを含むキメラCasXタンパク質を提供する。本明細書で使用される場合、「キメラCasXタンパク質」とは、異なる供給源(例えば、2つの天然に存在するタンパク質)から単離又は誘導された少なくとも2つのドメインを含むCasXを指し、これは、いくつかの実施形態では、異なる種から単離され得る。例えば、いくつかの実施形態では、キメラCasXタンパク質は、第1のCasXタンパク質由来の第1のドメインと、第2の異なるCasXタンパク質由来の第2のドメインと、を含む。いくつかの実施形態では、第1のドメインは、NTSB、TSL、ヘリックスI、ヘリックスII、OBD、及びRuvCドメインからなる群から選択され得る。いくつかの実施形態では、第2のドメインは、NTSB、TSL、ヘリックスI、ヘリックスII、OBD、及びRuvCドメインからなる群から選択され、第2のドメインは、前述の第1のドメインとは異なる。ヘリックスI、RuvC、及びOBDなどの分割又は非連続ドメインの場合、非連続ドメインの一部を任意の他の供給源由来の対応する部分で置換することができる。例えば、配列番号2におけるヘリックスI-Iドメイン(時折、ヘリックスI-aと称される)は、配列番号1由来の対応するヘリックスI-I配列などで置換され得る。表5に、参照CasXタンパク質由来のドメイン配列及びそれらの座標を示す。キメラCasXタンパク質の代表的な例としては、CasX 472-483、485-491及び515のバリアントが挙げられ、表4に、その配列を示す。
【0157】
【表8】
*OBDa及びb、ヘリックスIa及びb、並びにRuvCa及びbはまた、本明細書において、OBDI及びII、ヘリックスI-I及びI-II、並びにRuvCI及びIIとも称される。
【0158】
d.gRNAに対するタンパク質親和性
いくつかの実施形態では、CasXバリアントタンパク質は、参照CasXタンパク質と比較して、gRNAに対する改善された親和性を有し、リボ核タンパク質複合体(RNP)の形成をもたらす。gRNAに対するCasXバリアントタンパク質の親和性の増加は、例えば、RNP複合体の生成についてより低いKdをもたらし得、これは、場合によっては、より安定なリボ核タンパク質複合体の形成をもたらし得る。いくつかの実施形態では、gRNAに対するCasXバリアントタンパク質の親和性の増加は、ヒト細胞に送達された場合、リボ核タンパク質複合体の安定性の増加をもたらす。この安定性の増加は、対象の細胞における複合体の機能及び有用性に影響を及ぼし得、並びに対象に送達された場合、血液における改善された薬物動態学特性をもたらし得る。いくつかの実施形態では、CasXバリアントタンパク質の親和性の増加、及び得られるリボ核タンパク質複合体の安定性の増加は、所望の活性、例えば、インビボ又はインビトロでの遺伝子編集を依然として有しながら、対象又は細胞に送達されるCasXバリアントタンパク質の用量がより低くなる。いくつかの実施形態では、CasXバリアントタンパク質のgRNAに対するより高い親和性(より強い結合)は、CasXバリアントタンパク質及びgRNAの両方がRNP複合体中に残っている場合、より多くの編集事象を可能にする。編集事象の増加は、本明細書に記載のtdTom編集アッセイなどの編集アッセイを使用して評価することができる。いくつかの実施形態では、gRNAに対するCasXバリアントタンパク質のKdは、参照CasXタンパク質と比較して、少なくとも約1.1、少なくとも約1.2、少なくとも約1.3、少なくとも約1.4、少なくとも約1.5、少なくとも約1.6、少なくとも約1.7、少なくとも約1.8、少なくとも約1.9、少なくとも約2、少なくとも約3、少なくとも約4、少なくとも約5、少なくとも約6、少なくとも約7、少なくとも約8、少なくとも約9、少なくとも約10、少なくとも約15、少なくとも約20、少なくとも約25、少なくとも約30、少なくとも約35、少なくとも約40、少なくとも約45、少なくとも約50、少なくとも約60、少なくとも約70、少なくとも約80、少なくとも約90、又は少なくとも約100倍増加する。いくつかの実施形態では、CasXバリアントは、配列番号2の参照CasXタンパク質と比較して、gRNAに対して約1.1~約10倍増加した結合親和性を有する。
【0159】
いくつかの実施形態では、gRNAに対するCasXバリアントタンパク質の親和性の増加は、哺乳動物細胞に送達された場合(対象へのインビボ送達を含む)、リボ核タンパク質複合体の安定性の増加をもたらす。この安定性の増加は、対象の細胞における複合体の機能及び有用性に影響を及ぼし得、並びに対象に送達された場合、血液における改善された薬物動態学特性をもたらし得る。いくつかの実施形態では、CasXバリアントタンパク質の親和性の増加、及び得られるリボ核タンパク質複合体の安定性の増加は、所望の活性(例えば、インビボ又はインビトロ遺伝子編集)を依然として有しながら、対象又は細胞に送達されるCasXバリアントタンパク質の用量がより低くなる。RNPを形成し、それらを安定な形態に保つ能力の増加は、アッセイ(例えば、本明細書の実施例に記載のインビトロ切断アッセイ)を使用して評価することができる。いくつかの実施形態では、本開示のCasXバリアントを含むRNPは、RNPとして複合体化した場合、配列番号1~3の参照CasXを含むRNPと比較して、少なくとも2倍、少なくとも5倍、又は少なくとも10倍高いk切断速度を達成することができる。
【0160】
いくつかの実施形態では、CasXバリアントタンパク質のgRNAに対するより高い親和性(より強い結合)は、CasXバリアントタンパク質及びgRNAの両方がRNP複合体中に残っている場合、より多くの編集事象を可能にする。編集事象の増加は、本明細書に記載のアッセイなどの編集アッセイを使用して評価することができる。
【0161】
理論に束縛されることを望むものではないが、いくつかの実施形態では、ヘリックスIドメインにおけるアミノ酸変化は、CasXバリアントタンパク質とgRNA標的化配列との結合親和性を増加させることができ、ヘリックスIIドメインにおける変化は、CasXバリアントタンパク質とgRNA足場ステムループとの結合親和性を増加させることができ、オリゴヌクレオチド結合ドメイン(OBD)における変化は、CasXバリアントタンパク質とgRNA三重鎖との結合親和性を増加させる。
【0162】
gRNAに対するCasXタンパク質の結合親和性を測定する方法は、精製されたCasXタンパク質及びgRNAを使用するインビトロの方法を含む。参照CasX及びバリアントタンパク質に対する結合親和性は、gRNA又はCasXタンパク質がフルオロフォアでタグ付けされている場合、蛍光偏光によって測定することができる。代替的に、又は追加的に、結合親和性は、バイオレイヤー干渉法、電気泳動移動度シフトアッセイ(electrophoretic mobility shift assay、EMSA)、又は膜結合によって測定することができる。参照gRNA及びそのバリアントなどの特定のgRNAに対する、参照CasX及び本開示のバリアントタンパク質などのRNA結合タンパク質の絶対親和性を定量化するための更なる標準的な技術としては、等温熱量測定(isothermal calorimetry、ITC)及び表面プラズモン共鳴(surface plasmon resonance、SPR)、並びに実施例の方法が挙げられるが、これらに限定されない。
【0163】
e.標的核酸に対する親和性
いくつかの実施形態では、CasXバリアントタンパク質は、標的核酸配列に対する参照CasXタンパク質の親和性と比較して、標的核酸配列に対する改善された結合親和性を有する。いくつかの実施形態では、標的核酸分子に対する本開示のCasXバリアントタンパク質の親和性は、参照CasXタンパク質と比較して、少なくとも約1.1、少なくとも約1.2、少なくとも約1.3、少なくとも約1.4、少なくとも約1.5、少なくとも約1.6、少なくとも約1.7、少なくとも約1.8、少なくとも約1.9、少なくとも約2、少なくとも約3、少なくとも約4、少なくとも約5、少なくとも約6、少なくとも約7、少なくとも約8、少なくとも約9、少なくとも約10、少なくとも約15、少なくとも約20、少なくとも約25、少なくとも約30、少なくとも約35、少なくとも約40、少なくとも約45、少なくとも約50、少なくとも約60、少なくとも約70、少なくとも約80、少なくとも約90、又は少なくとも約100倍増加する。
【0164】
それらの標的核酸に対してより高い親和性を有するCasXバリアントは、いくつかの実施形態では、標的核酸に対して増加した親和性を有しない参照CasXタンパク質よりも迅速に標的核酸配列を切断することができる。いくつかの実施形態では、標的核酸配列に対する親和性の改善は、標的核酸配列に対する親和性の改善、より広範囲のPAM配列に対する結合親和性の改善、標的核酸配列についてDNAを検索する能力の改善、又はそれらの任意の組み合わせを含み、標的核酸を改変する能力の増加をもたらす。いくつかの実施形態では、改善された標的核酸親和性を有するCasXバリアントタンパク質は、TTC、ATC、GTC、及びCTCからなる群から選択されるPAM配列に対する結合親和性を含む、配列番号2の参照CasXタンパク質によって認識される正準TTC PAM以外の特定のPAM配列に対する増加した親和性を有する。DNAに対するより高い全体的な親和性はまた、いくつかの実施形態では、CasXタンパク質が結合及び巻き戻しステップを効果的に開始及び終了することができる頻度を増加させることができ、それによって、標的鎖侵入及びRループ形成、並びに最終的に標的核酸配列の切断を促進する。
【0165】
いくつかの実施形態では、CasXバリアントタンパク質は、標的核酸の非標的鎖に対する改善された結合親和性を有する。本明細書で使用される場合、「非標的鎖」という用語は、gRNAにおける標的化配列とワトソン及びクリック塩基対を形成せず、標的DNA鎖に相補的であるDNA標的核酸配列の鎖を指す。いくつかの実施形態では、CasXバリアントタンパク質は、配列番号1、配列番号2、又は配列番号3の参照タンパク質と比較して、標的核酸の非標的鎖に対して約1.1~約100倍増加した結合親和性を有する。
【0166】
標的核酸分子に対するCasXバリアントタンパク質の親和性を測定する方法は、電気泳動移動度シフトアッセイ(EMSA)、膜結合、等温熱量測定(ITC)、及び表面プラズモン共鳴(SPR)、蛍光偏光、及びバイオレイヤー干渉法(biolayer interferometry、BLI)を含み得る。標的に対するCasXタンパク質の親和性を測定する更なる方法としては、経時的にDNA切断事象を測定するインビトロ生化学的アッセイ(例えば、実施例に記載されるように、k切断速度の決定)が挙げられる。
【0167】
f.標的部位に対する改善された特異性
いくつかの実施形態では、CasXバリアントタンパク質は、参照CasXタンパク質と比較して、標的核酸配列に対する改善された特異性を有する。本明細書で使用される場合、「特異性」(互換的に「標的特異性」と称される)は、CRISPR/Casシステムリボ核タンパク質複合体が、標的核酸配列に類似するが同一ではないオフターゲット配列を切断する程度を指す。例えば、より高い程度の特異性を有するCasXバリアントRNPは、参照CasXタンパク質と比較して、配列のオフターゲット切断の低減を示す。CRISPR/Casシステムタンパク質の特異性、及び潜在的に有害なオフターゲット効果の低減は、哺乳動物対象における使用のための許容される治療指数を達成するために極めて重要であり得る。
【0168】
いくつかの実施形態では、CasXバリアントタンパクは、配列番号1~3の参照CasXタンパクと比較して、gRNAの標的化配列に相補的である標的配列内の標的部位に対して改善された特異性を有する。理論に束縛されることを望むものではないが、標的核酸鎖に対するCasXバリアントタンパク質の特異性を増加させるヘリックスI及びIIドメインにおけるアミノ酸変化は、標的核酸全体に対するCasXバリアントタンパク質の特異性を増加させることができる可能性がある。いくつかの実施形態では、標的核酸に対するCasXバリアントタンパク質の特異性を増加させるアミノ酸変化はまた、DNAに対するCasXバリアントタンパク質の親和性の減少をもたらし得る。
【0169】
CasXタンパク質(例えば、バリアント又は参照)の標的特異性を試験する方法は、ガイド及び配列決定による切断効果のインビトロ報告のための環状化(Circularization for In vitro Reporting of Cleavage Effects by Sequencing)(CIRCLE-seq)、又は同様の方法を含み得る。簡潔に、CIRCLE-seq技術では、ゲノムDNAを剪断し、ステム・ループアダプターのライゲーションによって環状化し、ステム・ループ領域にニックを入れて、4ヌクレオチドのパリンドロームオーバーハングを露出させる。これに続いて、残りの直鎖DNAの分子内ライゲーション及び分解が行われる。続いて、CasX切断部位を含む環状DNA分子をCasXで線状化し、アダプターアダプターを、露出した末端にライゲーションした後、ハイスループット配列決定を行って、オフターゲット部位についての情報を含むペアエンドリードを生成する。オフターゲット事象(したがって、CasXタンパク質の特異性)を検出するために使用することができる更なるアッセイとしては、それらの選択されたオフターゲット部位で形成されたインデル(挿入及び欠失)を検出及び定量化するために使用されるアッセイ(例えば、ミスマッチ検出ヌクレアーゼアッセイ及び次世代シーケンシング(next generation sequencing、NGS))が挙げられる。例示的なミスマッチ検出アッセイとしては、ヌクレアーゼアッセイが挙げられ、これは、CasX及びsgRNAで処理した細胞由来のゲノムDNAをPCR増幅し、変性させ、再ハイブリダイズして、1つの野生型鎖と1つのインデルを有する鎖とを含むヘテロ二重鎖DNAを形成する。ミスマッチは、ミスマッチ検出ヌクレアーゼ(例えば、Surveyorヌクレアーゼ又はT7エンドヌクレアーゼI)によって認識及び切断される。
【0170】
g.プロトスペーサー及びPAM配列
本明細書において、プロトスペーサーは、ガイドRNAの標的化配列に相補的なDNA配列及びその配列に相補的なDNAとして定義され、それぞれ標的鎖及び非標的鎖と呼ばれる。本明細書で使用される場合、PAMは、標的核酸の標的鎖における標的核酸配列に相補的である非標的鎖における配列の1ヌクレオチド5’側に位置するヌクレオチド配列であり、gRNAの標的化配列と併せて、プロトスペーサー鎖の潜在的な切断のためにCasXの配向及び配置を助ける。
PAM配列は縮重していてもよく、特定のRNP構築物は、異なる切断効率を支持する異なる好ましい許容されるPAM配列を有していてもよい。慣例に従って、別段の記載がない限り、本開示は、PAM及びプロトスペーサー配列の両方、並びに非標的鎖の配向に従ったそれらの方向性について言及する。これは、標的鎖ではなく非標的鎖のPAM配列が切断の決定因子であるか、又は標的認識に機構的に関与することを意味するものではない。例えば、TTC PAMに言及する場合、実際には、標的切断に必要な相補的なGAA配列であってもよく、又は両方の鎖からのヌクレオチドの何らかの組み合わせであってもよい。本明細書に開示されるCasXタンパク質の場合、PAMは、プロトスペーサーの5’側に位置し、単一のヌクレオチドがPAMをプロトスペーサーの第1のヌクレオチドから分離する。したがって、参照CasXの場合、TTC PAMは、式5’-...NNTTCN(プロトスペーサー)NNNNNN...3’(式中、「N」は、任意のDNAヌクレオチドであり、「(プロトスペーサー)」は、ガイドRNAの標的化配列と同一性を有するDNA配列である)に従う配列を意味すると理解されるべきである。拡張されたPAM認識を有するCasXバリアントの場合、TTC、CTC、GTC、又はATC PAMは、以下の式に従う配列を意味すると理解されるべきである:5’-...NNTTCN(プロトスペーサー)NNNNNN...3’、
5’-...NNCTCN(プロトスペーサー)NNNNNN...3’、
5’-...NNGTCN(プロトスペーサー)NNNNNN...3’、又は
5’-...NNATCN(プロトスペーサー)NNNNNN...3’。
【0171】
代替的に、TC PAMは、式:5’-...NNNTCN(プロトスペーサー)NNNNNN...3’に従う配列を意味すると理解されるべきである。追加的に、本開示のCasXバリアントタンパク質は、参照CasXタンパク質及び参照gRNAのRNPと比較して、TTC、ATC、GTC、又はCTC(5’から3’の配向で)から選択されるPAM配列を含むPAM TCモチーフを利用して、RNPとしてgRNAと複合体化した場合、標的DNAを効率的に編集及び/又はそれに結合する増強された能力を有する。前述において、PAM配列は、比較可能なアッセイシステムにおける参照CasXタンパク質及び参照gRNAを含むRNPの編集効率及び/又は結合と比較して、アッセイシステムにおけるgRNAの標的化配列と同一性を有するプロトスペーサーの非標的鎖に対して少なくとも1ヌクレオチド5’側に位置する。一実施形態では、CasXバリアント及びgRNAバリアントのRNPは、比較可能なアッセイシステムにおける参照CasXタンパク質及び参照gRNAを含むRNPと比較して、より高い編集効率及び/又は標的DNAにおける標的配列の結合を示し、ここで、標的DNAのPAM配列はTTCである。別の実施形態では、CasXバリアント及びgRNAバリアントのRNPは、比較可能なアッセイシステムにおける参照CasXタンパク質及び参照gRNAを含むRNPと比較して、より高い編集効率及び/又は標的DNAにおける標的配列の結合を示し、ここで、標的DNAのPAM配列はATCである。別の実施形態では、CasXバリアント及びgRNAバリアントのRNPは、比較可能なアッセイシステムにおける参照CasXタンパク質及び参照gRNAを含むRNPと比較して、より高い編集効率及び/又は標的DNAにおける標的配列の結合を示し、ここで、標的DNAのPAM配列はCTCである。別の実施形態では、CasXバリアント及びgRNAバリアントのRNPは、比較可能なアッセイシステムにおける参照CasXタンパク質及び参照gRNAを含むRNPと比較して、より高い編集効率及び/又は標的DNAにおける標的配列の結合を示し、ここで、標的DNAのPAM配列はGTCである。前述の実施形態では、1つ以上のPAM配列に対する増大した編集効率及び/又は結合親和性は、PAM配列についての配列番号1~3のうちのいずれか1つのCasXタンパク質及び表2のgRNAのRNPの編集効率及び/又は結合親和性と比較して、少なくとも1.5倍以上大きい。改善された編集を実証する例示的なアッセイは、本明細書の実施例に記載されている。
【0172】
h.DNAの巻き戻し
いくつかの実施形態では、CasXバリアントタンパク質は、参照CasXタンパク質と比較して、改善されたDNA巻き戻し能力を有する。不十分なdsDNA巻き戻しは、CRISPR/Casシステムタンパク質AnaCas9又はCas14のDNAを切断する能力を損なうか又は妨げることが以前に示されている。したがって、いかなる理論にも束縛されることを望むものではないが、本開示のいくつかのCasXバリアントタンパク質によるDNA切断活性の増加は、少なくとも部分的に、標的部位でdsDNAを見つけて巻き戻す能力の増加に起因する可能性が高い。
【0173】
理論に束縛されることを望むものではないが、NTSBドメインにおけるアミノ酸変化は、DNA巻き戻し特徴が増加したCasXバリアントタンパク質を産生することができると考えられる。代替的に、又は追加的に、OBD又はPAMと相互作用するヘリックスドメイン領域におけるアミノ酸変化はまた、DNA巻き戻し特徴が増加したCasXバリアントタンパク質を生成することができる。
【0174】
CasXタンパク質(例えば、バリアント又は参照)がDNAを巻き戻す能力を測定する方法としては、蛍光偏光又はバイオレイヤー干渉法におけるdsDNA標的のオン速度の増加を観察するインビトロアッセイが挙げられるが、これらに限定されない。
【0175】
i.触媒活性
本明細書に開示されるCasX:RNAシステムのリボ核タンパク質複合体gは、標的核酸配列に結合し、標的核酸配列を切断するCasXバリアントを含む。いくつかの実施形態では、CasXバリアントタンパク質は、参照CasXタンパク質と比較して、改善された触媒活性を有する。理論に束縛されることを望むものではないが、場合によっては、標的鎖の切断が、dsDNA切断の生成におけるCas12様分子の制限因子であり得ると考えられる。いくつかの実施形態では、CasXバリアントタンパク質は、DNAの標的鎖の屈曲及びこの鎖の切断を改善し、CasXリボ核タンパク質複合体によるdsDNA切断の全体的な効率の改善をもたらす。
【0176】
いくつかの実施形態では、CasXバリアントタンパク質は、参照CasXタンパク質と比較して、増加したヌクレアーゼ活性を有する。ヌクレアーゼ活性が増加したバリアントは、例えば、RuvCヌクレアーゼドメインにおけるアミノ酸変化を介して生成することができる。いくつかの実施形態では、CasXバリアントは、ニッカーゼ活性を有するRuvCヌクレアーゼドメインを含む。前述において、CasX:gRNAシステムのCasXニッカーゼは、非標的鎖におけるPAM部位の3’側の10~18ヌクレオチド内に一本鎖切断を生成する。他の実施形態では、CasXバリアントは、二本鎖切断活性を有するRuvCヌクレアーゼドメインを含む。前述において、CasX:gRNAシステムのCasXは、標的鎖上のPAM部位の5’側18~26ヌクレオチド及び非標的鎖上の3’側10~18ヌクレオチド内に二本鎖切断を生成する。ヌクレアーゼ活性は、実施例の方法を含む様々な方法によってアッセイすることができる。いくつかの実施形態では、CasXバリアントは、参照CasXと比較して、少なくとも2倍、又は少なくとも3倍、又は少なくとも4倍、又は少なくとも5倍、又は少なくとも6倍、又は少なくとも7倍、又は少なくとも8倍、又は少なくとも9倍、又は少なくとも10倍大きいk切断定数を有する。
【0177】
いくつかの実施形態では、CasXバリアントタンパク質は、gRNAを有するRNPを形成する改善された特徴を有し、実施例に記載されるように、配列番号1、配列番号2、又は配列番号3の参照CasXタンパク質及びgRNAのRNPと比較して、より高い百分率割合の切断コンピテントRNPをもたらす。切断コンピテント(cleavage competent)とは、形成されるRNPが標的核酸を切断する能力を有することを意味する。いくつかの実施形態では、CasXバリアント及びgRNAのRNPは、配列番号1、配列番号2、又は配列番号3の参照CasXタンパク質及び表2のgRNAのRNPと比較して、少なくとも2倍、又は少なくとも3倍、又は少なくとも4倍、又は少なくとも5倍、又は少なくとも10倍の切断速度を示す。前述の実施形態では、改善されたコンピテンシー率は、実施例に記載されているようなインビトロアッセイにおいて実証することができる。
【0178】
いくつかの実施形態では、CasXバリアントタンパク質は、参照CasXと比較して、二本鎖切断のための増加した標的鎖装填を有する。増加した標的鎖装填活性を有するバリアントは、例えば、TLSドメインにおけるアミノ酸変化を介して生成され得る。理論に束縛されることを望むものではないが、TSLドメインにおけるアミノ酸変化は、改善された触媒活性を有するCasXバリアントタンパク質をもたらし得る。代替的に、又は追加的に、RNA:DNA二重鎖の結合チャネルの周囲のアミノ酸変化はまた、CasXバリアントタンパク質の触媒活性も改善することができる。いくつかの実施形態では、CasXバリアントタンパク質は、参照CasXタンパク質と比較して、増加した付随的な切断活性を有する。本明細書で使用される場合、「付随的な切断活性」とは、標的核酸配列の認識及び切断に続く、核酸の更なる非標的化切断をいう。いくつかの実施形態では、CasXバリアントタンパク質は、参照CasXタンパク質と比較して、減少した付随的な切断活性を有する。
【0179】
いくつかの実施形態、例えば、標的核酸配列の切断が所望の結果ではない適用を包含する実施形態では、CasXバリアントタンパク質の触媒活性を改善することは、CasXバリアントタンパク質の触媒活性を変化、低下、又は消失させることを含む。いくつかの実施形態では、dCasXバリアントタンパクを含むリボ核タンパク質複合体は、標的核酸配列に結合し、標的核酸を切断しない。
【0180】
いくつかの実施形態では、CasXバリアントタンパク質を含むCasXリボ核タンパク質複合体は、標的DNAに結合するが、標的DNAにおいて一本鎖ニックを生成する。いくつかの実施形態、特に、CasXタンパク質がニッカーゼである実施形態では、CasXバリアントタンパク質は、一本鎖ニッキングのための標的鎖装填が減少している。標的鎖装填が減少したバリアントは、例えば、TSLドメインにおけるアミノ酸変化を介して生成され得る。
【0181】
CasXタンパク質の触媒活性を特徴付けるための例示的な方法としては、以下の実施例の方法を含むインビトロ切断アッセイが挙げられ得るが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、アガロースゲル上でのDNA産物の電気泳動は、鎖切断の動態を調べることができる。
【0182】
j.CasX融合タンパク質
いくつかの実施形態では、本開示は、CasXに融合した異種タンパク質を含むCasXタンパク質を提供する。場合によっては、CasXは、参照CasXタンパク質である。他の場合では、CasXは、本明細書に記載の実施形態のいずれかのCasXバリアントである。
【0183】
いくつかの実施形態では、CasXバリアントタンパク質は、目的の異なる活性を有する1つ以上のタンパク質又はそのドメインに融合された表4の配列の配列番号59、72~99、101~148、及び26908~27154のうちのいずれか1つを含み、融合タンパク質をもたらす。いくつかの実施形態では、CasXバリアントタンパク質は、1つ以上のタンパク質又はそのドメインに融合された配列番号36~99、101~148、26908~27154のうちのいずれか1つを含む。いくつかの実施形態では、CasXバリアントタンパク質は、1つ以上のタンパク質又はそのドメインに融合された配列番号132~148、26908~2715のいずれか1つを含む。例えば、いくつかの実施形態では、CasXバリアントタンパク質は、転写を阻害する、標的核酸配列を改変する、又は核酸に関連するポリペプチドを改変する(例えば、ヒストン改変)タンパク質(又はそのドメイン)に融合される。
【0184】
いくつかの実施形態では、異種ポリペプチド(又はシステイン残基若しくは非天然アミノ酸などの異種アミノ酸)をCasXタンパク質内の1つ以上の位置に挿入して、CasX融合タンパク質を生成することができる。他の実施形態では、システイン残基をCasXタンパク質内の1つ以上の位置に挿入し、続いて、以下に記載する異種ポリペプチドをコンジュゲートすることができる。いくつかの代替的な実施形態では、異種ポリペプチド又は異種アミノ酸は、CasXバリアントタンパク質のN末端又はC末端に付加され得る。他の実施形態では、異種ポリペプチド又は異種アミノ酸は、CasXタンパク質の配列内に内部挿入され得る。
【0185】
いくつかの実施形態では、CasXバリアント融合タンパク質は、RNA誘導型の配列特異的な標的核酸結合及び切断活性を保持する。場合によっては、CasXバリアント融合タンパク質は、異種タンパク質の挿入を有しない対応するCasXバリアントタンパク質の活性(例えば、切断活性及び/又は結合活性)の50%以上を有する(保持する)。場合によっては、CasXバリアント融合タンパク質は、異種タンパク質の挿入を有しない対応するCasXタンパク質の活性(例えば、切断活性及び/又は結合活性)の少なくとも約60%、又は少なくとも約70%以上、少なくとも約80%、又は少なくとも約90%、又は少なくとも約92%、又は少なくとも約95%、又は少なくとも約98%、又は少なくとも約100%を保持する。
【0186】
場合によっては、CasXバリアント融合タンパク質は、挿入された異種アミノ酸又は異種ポリペプチドを有しないCasXタンパク質の活性と比較して、標的核酸の結合活性を保持する(有する)。場合によっては、CasXバリアント融合タンパク質は、異種タンパク質の挿入を有しない対応するCasXタンパク質の結合活性の少なくとも約60%、又は少なくとも約70%以上、少なくとも約80%、又は少なくとも約90%、又は少なくとも約92%、又は少なくとも約95%、又は少なくとも約98%、又は少なくとも約100%を保持する。
【0187】
場合によっては、CasXバリアント融合タンパク質は、挿入された異種アミノ酸又は異種ポリペプチドを有しない親CasXタンパク質の活性と比較して、標的核酸の結合活性及び/又は切断活性を保持する(有する)。例えば、場合によっては、CasXバリアント融合タンパク質は、対応する親CasXタンパク質(挿入を有しないCasXタンパク質)の結合活性及び/又は切断活性の50%以上を有する(保持する)。例えば、場合によっては、CasXバリアント融合タンパク質は、対応するCasX親タンパク質(挿入を有しないCasXタンパク質)の結合活性及び/又は切断活性の60%以上(70%以上、80%以上、90%以上、92%以上、95%以上、98%以上、又は100%)を有する(保持する)。CasXタンパク質及び/又はCasX融合タンパク質の切断活性及び/又は結合活性を測定する方法は、当業者に既知であり、任意の便利な方法を使用することができる。
【0188】
様々な異種ポリペプチドが、本開示の参照CasX又はCasXバリアント融合タンパク質に含めるのに好適である。場合によっては、融合パートナーは、標的DNAの転写を調節する(例えば、転写を阻害する、転写を増加させる)ことができる。例えば、場合によっては、融合パートナーは、転写を抑制するタンパク質(又はタンパク質由来のドメイン)(例えば、転写リプレッサー、転写抑制タンパク質の動員、メチル化などの標的DNAの改変、DNAモディファイヤーの動員、標的DNAに会合するヒストンの調節、ヒストンのアセチル化及び/又はメチル化を改変するものなどのヒストンモディファイヤーの動員などを介して機能するタンパク質)である。
【0189】
場合によっては、融合パートナーは、転写を増加させるタンパク質(又はタンパク質由来のドメイン)(例えば、転写アクチベーター、転写アクチベータータンパク質の動員、脱メチル化などの標的DNAの改変、DNAモディファイヤーの動員、標的DNAに会合するヒストンの調節、ヒストンのアセチル化及び/又はメチル化を改変するものなどのヒストンモディファイヤーの動員などを介して作用するタンパク質)である。場合によっては、融合パートナーは、標的核酸配列を改変する酵素活性、例えば、ヌクレアーゼ活性、メチルトランスフェラーゼ活性、デメチラーゼ活性、DNA修復活性、DNA損傷活性、脱アミノ化活性、ジスムターゼ活性、アルキル化活性、脱プリン化活性、酸化活性、ピリミジン二量体形成活性、インテグラーゼ活性、トランスポザーゼ活性、リコンビナーゼ活性、ポリメラーゼ活性、リガーゼ活性、ヘリカーゼ活性、フォトリアーゼ活性、又はグリコシラーゼ活性を有する。いくつかの実施形態では、CasXバリアントは、配列番号36~99、101~148、若しくは26908~27154のうちのいずれか1つ、又は配列番号59、72~99、101~148、若しくは26908~27154のうちのいずれか1つ、又は配列番号132~148若しくは26908~27154のうちのいずれか1つと、メチルトランスフェラーゼ活性、デメチラーゼ活性、アセチルトランスフェラーゼ活性、デアセチラーゼ活性、キナーゼ活性、ホスファターゼ活性、ユビキチンリガーゼ活性、脱ユビキチン化活性、アデニル化活性、脱アデニル化活性、SUMO化活性、脱SUMO化活性、リボシル化活性、脱リボシル化活性、ミリストイル化活性、又は脱ミリストイル化活性を有するポリペプチドと、を含む。
【0190】
いくつかの実施形態では、CasXバリアントは、配列番号36~99、101~148、及び26908~27154のうちのいずれか1つ、又は配列番号59、72~99、101~148、若しくは26908~27154のうちのいずれか1つ、又は配列番号132~148若しくは26908~27154のうちのいずれか1つと、標的核酸に関連するポリペプチド(例えば、ヒストン)を改変する酵素活性(例えば、メチルトランスフェラーゼ活性、デメチラーゼ活性、アセチルトランスフェラーゼ活性、デアセチラーゼ活性、キナーゼ活性、ホスファターゼ活性、ユビキチンリガーゼ活性、脱ユビキチン化活性、アデニル化活性、脱アデニル化活性、SUMO化活性、脱SUMO化活性、リボシル化活性、脱リボシル化活性、ミリストイル化活性、又は脱ミリストイル化活性)を有する融合パートナーと、を含む。転写を増加させるための融合パートナーとして使用することができるタンパク質(又はその断片)の例としては、転写アクチベーター(例えば、VP16、VP64、VP48、VP160、p65サブドメイン(例えば、NFkB由来)、及び(例えば、植物における活性の)EDLLの活性化ドメイン及び/又はTAL活性化ドメイン);ヒストンリジンメチルトランスフェラーゼ(例えば、SET1A、SET1B、MLL1~5、ASH1、SYMD2、NSD1など);ヒストンリジンデメチラーゼ(例えば、JHDM2a/b、UTX、JMJD3など);ヒストンアセチルトランスフェラーゼ(例えば、GCN5、PCAF、CBP、p300、TAF1、TIP60/PLIP、MOZ/MYST3、MORF/MYST4、SRC1、ACTR、P160、CLOCKなど);並びにDNAデメチラーゼ(例えば、Ten-Eleven Translocation(TET)ジオキシゲナーゼ1(TET1CD)、TET1、DME、DML1、DML2、ROS1など)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0191】
転写を減少させるための融合パートナーとして使用され得るタンパク質(又はその断片)の例としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:転写リプレッサー(例えば、Kruppel関連ボックス(KRAB又はSKD));KOX1抑制ドメイン;Mad mSIN3相互作用ドメイン(SID);ERFリプレッサードメイン(ERF repressor domain、ERD)、(例えば、植物における抑制の)SRDX抑制ドメインなど;ヒストンリジンメチルトランスフェラーゼ(例えば、Pr-SET7/8、SUV4-20H1、RIZ1など);ヒストンリジンデメチラーゼ(例えば、JMJD2A/JHDM3A、JMJD2B、JMJD2C/GASC1、JMJD2D、JARID1A/RBP2、JARID1B/PLU-1、JARID1C/SMCX、JARID1D/SMCYなど);ヒストンリジンデアセチラーゼ(例えば、HDAC1、HDAC2、HDAC3、HDAC8、HDAC4、HDAC5、HDAC7、HDAC9、SIRT1、SIRT2、HDAC11など);DNAメチラーゼ(例えば、HhaI DNA m5c-メチルトランスフェラーゼ(M.HhaI)、DNAメチルトランスフェラーゼ1(DNMT1)、DNAメチルトランスフェラーゼ3a(DNMT3a)、DNAメチルトランスフェラーゼ3b(DNMT3b)、METI、DRM3(植物)、ZMET2、CMT1、CMT2(植物)など);及び末梢動員エレメント(例えば、Lamin A、Lamin Bなど)。
【0192】
場合によっては、CasXバリアントに対する融合パートナーは、標的核酸配列(例えば、ssRNA、dsRNA、ssDNA、dsDNA)を改変する酵素活性を有する。融合パートナーによって提供され得る酵素活性の例としては、ヌクレアーゼ活性(例えば、制限酵素(例えば、FokIヌクレアーゼ)によって提供されるもの)、メチルトランスフェラーゼ活性(例えば、メチルトランスフェラーゼ(例えば、HhaI DNA m5c-メチルトランスフェラーゼ(M.Hhal)、DNAメチルトランスフェラーゼ1(DNMT1)、DNAメチルトランスフェラーゼ3a(DNMT3a)、DNAメチルトランスフェラーゼ3b(DNMT3b)、METI、DRM3(植物)、ZMET2、CMT1、CMT2(植物)などによって提供されるもの)、デメチラーゼ活性(例えば、デメチラーゼ(例えば、Ten-Eleven Translocation(TET)ジオキシゲナーゼ1(TET1 CD)、TET1、DME、DML1、DML2、ROS1など)によって提供されるもの)、DNA修復活性、DNA損傷活性、脱アミノ化活性(例えば、デアミナーゼ(例えば、シトシンデアミナーゼ酵素、例えば、ラットAPOBEC1などのAPOBECタンパク質)によって提供されるもの)、ジスムターゼ活性、アルキル化活性、脱プリン化活性、酸化活性、ピリミジン二量体形成活性、インテグラーゼ活性(例えば、インテグラーゼ及び/又はリゾルバーゼ(例えば、Ginインベルターゼ(例えば、GinインベルターゼGinH106Yの高活性変異体))、ヒト免疫不全ウイルス1型インテグラーゼ(IN)、Tn3リゾルバーゼなどによって提供されるもの)、トランスポザーゼ活性、リコンビナーゼ活性(例えば、リコンビナーゼ(例えば、Ginリコンビナーゼの触媒ドメイン)によって提供されるもの)、ポリメラーゼ活性、リガーゼ活性、ヘリカーゼ活性、フォトリアーゼ活性、及びグリコシラーゼ活性が挙げられるが、これらに限定されない。
【0193】
場合によっては、本開示のCasXバリアントタンパク質は、転写を増加させるためのドメイン(例えば、VP16ドメイン、VP64ドメイン)、転写を減少させるためのドメイン(例えば、KRABドメイン(例えば、Kox1タンパク質由来))、ヒストンアセチルトランスフェラーゼのコア触媒ドメイン(例えば、ヒストンアセチルトランスフェラーゼp300)、検出可能なシグナルを提供するタンパク質/ドメイン(例えば、GFPなどの蛍光タンパク質)、ヌクレアーゼドメイン(例えば、FokIヌクレアーゼ)、又は塩基エディター(例えば、APOBEC1などのシチジンデアミナーゼ)から選択されるポリペプチドに融合される。
【0194】
いくつかの実施形態では、CasXバリアントは、配列番号36~99、101~148、若しくは26908~27154のうちのいずれか1つ、又は配列番号59、72~99、101~148、若しくは26908~27154のうちのいずれか1つ、又は配列番号132~148若しくは26908~27154のうちのいずれか1つと、標的核酸に関連するタンパク質(例えば、ssRNA、dsRNA、ssDNA、dsDNA)を改変する酵素活性を有する融合パートナー(例えば、ヒストン、RNA結合タンパク質、DNA結合タンパク質など)と、を含む。融合パートナーによって提供され得る酵素活性(標的核酸に関連するタンパク質を改変する)の例としては、ヒストンメチルトランスフェラーゼ活性(例えば、メチルトランスフェラーゼ(histone methyltransferase、HMT)(例えば、斑入り3-9ホモログ1のサプレッサー(SUV39H1、KMT1Aとしても知られる)、真性染色質ヒストンリジンメチルトランスフェラーゼ2(G9A、KMT1C及びEHMT2としても知られる)、SUV39H2、ESET/SETDB 1など、SET1A、SET1B、MLL1~5、ASH1、SYMD2、NSD1、DOT1L、Pr-SET7/8、SUV4-20H1、EZH2、RIZ1)によって提供されるもの)、デメチラーゼ活性(例えば、ヒストンデメチラーゼ(例えば、リジンデメチラーゼ1A(KDM1A、LSD1としても知られる)、JHDM2a/b、JMJD2A/JHDM3A、JMJD2B、JMJD2C/GASC1、JMJD2D、JARID1A/RBP2、JARID1B/PLU-1、JARID1C/SMCX、JARID1D/SMCY、UTX、JMJD3など)によって提供されるもの)、アセチルトランスフェラーゼ活性(例えば、ヒストンアセチルトランスフェラーゼ(例えば、ヒトアセチルトランスフェラーゼp300の触媒コア/断片、GCN5、PCAF、CBP、TAF1、TIP60/PLIP、MOZ/MYST3、MORF/MYST4、HB01/MYST2、HMOF/MYST1、SRC1、ACTR、P160、CLOCKなど)によって提供されるもの)、デアセチラーゼ活性(例えば、ヒストンデアセチラーゼ(例えば、HDAC1、HDAC2、HDAC3、HDAC8、HDAC4、HDAC5、HDAC7、HDAC9、SIRT1、SIRT2、HDAC11など)によって提供されるもの)、キナーゼ活性、ホスファターゼ活性、ユビキチンリガーゼ活性、脱ユビキチン化活性、アデニル化活性、脱アデニル化活性、SUMO化活性、脱SUMO化活性、リボシル化活性、脱リボシル化活性、ミリストイル化活性、及び脱ミリストイル化活性が挙げられるが、これらに限定されない。
【0195】
CasXバリアントのための好適な融合パートナーの更なる例は、(i)ジヒドロ葉酸レダクターゼ(dihydrofolate reductase、DHFR)不安定化ドメイン(例えば、化学的に制御可能な対象のRNA誘導型ポリペプチド又は条件的に活性なRNA誘導型ポリペプチドを生成するため)、及び(ii)葉緑体移行ペプチド、を含む。いくつかの実施形態では、CasXバリアントは、配列番号36~99、101~148、若しくは26908~27154のうちのいずれか1つ、又は配列番号59、72~99、101~148、若しくは26908~27154のうちのいずれか1つ、又は配列番号132~148若しくは26908~27154のうちのいずれか1つ、又は表4の配列と、葉緑体移行ペプチド(MASMISSSAVTTVSRASRGQSAAMAPFGGLKSMTGFPVRKVNTDITSITSNGGR VKCMQVWPPIGKKKFETLSYLPPLTRDSRA(配列番号154);MASMISSSAVTTVSRASRGQSAAMAPFGGLKSMTGFPVRKVNTDITSITSNGGRVKS(配列番号155);MASSMLSSATMVASPAQATMVAPFNGLKSSAAFPATRKANNDITSITSNGGRVNCMQV WPPIEKKKFETLSYLPDLTDSGGRVNC(配列番号156);MAQVSRICNGVQNPSLISNLSKSSQRKSPLSVSLKTQQHPRAYPISSSWGLKKSGMTLIG SELRPLKVMSSVSTAC(配列番号157);MAQVSRICNGVWNPSLISNLSKSSQRKSPLSVSLKTQQHPRAYPISSSWGLKKSGMTLIG SELRPLKVMSSVSTAC(配列番号158);MAQINNMAQGIQTLNPNSNFHKPQVPKSSSFLVFGSKKLKNSANSMLVLKKDSIFMQLF CSFRISASVATAC(配列番号159);MAALVTSQLATSGTVLSVTDRFRRPGFQGLRPRNPADAALGMRTVGASAAPKQSRKPH RFDRRCLSMVV(配列番号160);MAALTTSQLATSATGFGIADRSAPSSLLRHGFQGLKPRSPAGGDATSLSVTTSARATPKQ QRSVQRGSRRFPSVVVC(配列番号161);MASSVLSSAAVATRSNVAQANMVAPFTGLKSAASFPVSRKQNLDITSIASNGGRVQC(配列番号162);MESLAATSVFAPSRVAVPAARALVRAGTVVPTRRTSSTSGTSGVKCSAAVTPQASPVIS RSAAAA(配列番号163);及びMGAAATSMQSLKFSNRLVPPSRRLSPVPNNVTCNNLPKSAAPVRTVKCCASSWNSTINGAAATTNGASAASS(配列番号164)が含まれるが、これらに限定されない)と、を含む。
【0196】
場合によっては、本開示のCasXバリアントタンパク質は、エンドソームエスケープペプチドを含んでもよい。場合によっては、エンドソーム脱出ポリペプチドは、アミノ酸配列GLFXALLXLLXSLWXLLLXA(配列番号165)を含み、各Xは、独立して、リジン、ヒスチジン、及びアルギニンから選択される。場合によっては、エンドソーム脱出ポリペプチドは、アミノ酸配列GLFHALLHLLHSLWHLLLHA(配列番号166)又はHHHHHHHHH(配列番号167)を含む。
【0197】
ssRNA標的核酸配列を標的化する場合、CasXバリアントタンパク質とともに使用するための融合パートナーの非限定的な例としては(限定されないが)、スプライシング因子(例えば、RSドメイン);タンパク質翻訳成分(例えば、翻訳開始、伸長、及び/又は終結因子;例えば、eIF4G);RNAメチラーゼ;RNA編集酵素(例えば、RNAデアミナーゼ(例えば、RNAに作用するアデノシンデアミナーゼ(adenosine deaminase acting on RNA、ADAR))、AからI及び/又はCからUの編集酵素を含む);ヘリカーゼ;RNA結合タンパク質などが挙げられる。異種ポリペプチドは、タンパク質全体を含み得るか、又は場合によっては、タンパク質の断片(例えば、機能的ドメイン)を含み得ることが理解される。
【0198】
いくつかの実施形態では、CasXバリアントは、配列番号36~99、101~148、若しくは26908~27154のうちのいずれか1つ、又は配列番号59、72~99、101~148、若しくは26908~27154のうちのいずれか1つ、又は配列番号132~148若しくは26908~27154のうちのいずれか1つと、ssRNAと相互作用することができる任意のドメインの融合パートナーと、を含む(本開示の目的のために、分子内及び/又は分子間二次構造を含む、例えば、二本鎖RNA二重鎖、例えば、ヘアピン、ステムループなどが含まれる)。一過的又は不可逆的、直接的又は間接的にかかわらず、以下を含む群から選択されるエフェクタードメインが挙げられるが、これに限定されない:エンドヌクレアーゼ(例えば、RNase III、CRR22 DYWドメイン、Dicer、並びにSMG5及びSMG6などのタンパク質由来のPIN(PilT N末端)ドメイン);RNA切断の刺激に関与するタンパク質及びタンパク質ドメイン(例えば、CPSF、CstF、CFIm、及びCFIIm);エキソヌクレアーゼ(例えば、XRN-1又はエキソヌクレアーゼT);デアデニラーゼ(例えば、HNT3);ナンセンス媒介RNA分解に関与するタンパク質及びタンパク質ドメイン(例えば、UPF1、UPF2、UPF3、UPF3b、RNPSI、Y14、DEK、REF2、及びSRm160);RNAの安定化に関与するタンパク質及びタンパク質ドメイン(例えば、PABP);翻訳の抑制に関与するタンパク質及びタンパク質ドメイン(例えば、Ago2及びAgo4);翻訳の刺激に関与するタンパク質及びタンパク質ドメイン(例えば、Staufen);翻訳の調節に関与する(例えば、翻訳を調節することができる)タンパク質及びタンパク質ドメイン(例えば、翻訳因子(例えば、開始因子、伸長因子、終結因子など、例えば、eIF4G));RNAのポリアデニル化に関与するタンパク質及びタンパク質ドメイン(例えば、PAP1、GLD-2、及びStar-PAP);RNAのポリウリジニル化に関与するタンパク及びタンパクドメイン(例えば、CIDl及び末端ウリジル酸トランスフェラーゼ);RNA局在化に関与するタンパク質及びタンパク質ドメイン(例えば、IMP1、ZBP1、She2p、She3p、及びBicaudal-D由来);RNAの核内保持に関与するタンパク質及びタンパク質ドメイン(例えば、Rrp6);RNAの核外輸送に関与するタンパク質及びタンパク質ドメイン(例えば、TAP、NXF1、THO、TREX、REF、及びAly);RNAスプライシングの抑制に関与するタンパク質及びタンパク質ドメイン(例えば、PTB、Sam68、及びhnRNP Al);RNAスプライシングの刺激に関与するタンパク質及びタンパク質ドメイン(例えば、セリン/アルギニンリッチ(SR)ドメイン);転写効率の低下に関与するタンパク質及びタンパク質ドメイン(例えば、FUS(TLS));転写の刺激に関与するタンパク質及びタンパク質ドメイン(例えば、CDK7及びHIV Tat)。代替的に、エフェクタードメインは、以下を含む群から選択することができる:エンドヌクレアーゼ;RNA切断を刺激することができるタンパク質及びタンパク質ドメイン;エキソヌクレアーゼ;デアデニラーゼ;ナンセンス媒介RNA分解活性を有するタンパク質及びタンパク質ドメイン;RNAを安定化することができるタンパク質及びタンパク質ドメイン;翻訳を抑制することができるタンパク質及びタンパク質ドメイン;翻訳を刺激することができるタンパク質及びタンパク質ドメイン;翻訳を調節することができるタンパク質及びタンパク質ドメイン(例えば、翻訳因子(例えば、開始因子、伸長因子、終結因子など、例えば、eIF4G));RNAをポリアデニル化することができるタンパク質及びタンパク質ドメイン;RNAをポリウリジニル化することができるタンパク及びタンパクドメイン;RNA局在化活性を有するタンパク質及びタンパク質ドメイン;RNAを核内保持することができるタンパク質及びタンパク質ドメイン;RNA核外輸送活性を有するタンパク質及びタンパク質ドメイン;RNAスプライシングを抑制することができるタンパク質及びタンパク質ドメイン;RNAスプライシングを刺激することができるタンパク質及びタンパク質ドメイン;転写効率を低下させることができるタンパク質及びタンパク質ドメイン;並びに転写を刺激することができるタンパク質及びタンパク質ドメイン。別の好適な異種ポリペプチドは、PUF RNA結合ドメインであり、これは、国際公開第2012/068627号(その全体が参照により本明細書に援用される)により詳細に記載されている。
【0199】
CasXバリアントとの融合パートナーとして(全体又はその断片で)使用することができるいくつかのRNAスプライシング因子は、別個の配列特異的なRNA結合モジュール及びスプライシングエフェクタードメインを有するモジュール構成を有する。例えば、セリン/アルギニンリッチ(serine/arginine-rich、SR)タンパク質ファミリーのメンバーは、プレmRNAにおけるエキソンスプライシングエンハンサー(exonic splicing enhancer、ESE)に結合するN末端RNA認識モチーフ(RNA recognition motif、RRM)及びエキソン封入を促進するC末端RSドメインを含む。別の例として、hnRNPタンパク質hnRNP Alは、そのRRMドメインを介してエキソンスプライシングサイレンサー(exonic splicing silencer、ESS)に結合し、C末端グリシンリッチドメインを介してエキソン封入を阻害する。いくつかのスプライシング因子は、2つの選択的部位の間の調節配列に結合することによって、スプライス部位(splice site、ss)の選択的使用を調節することができる。例えば、ASF/SF2は、ESEを認識し、イントロン近位部位の使用を促進することができるが、hnRNPAlは、ESSに結合し、スプライシングをイントロン遠位部位の使用にシフトさせることができる。かかる因子の1つの適用は、内因性遺伝子(特に、疾患関連遺伝子)の選択的スプライシングを調節するESFを作製することである。例えば、Bcl-xプレmRNAは、反対の機能のタンパク質をコードする2つの選択的5’スプライス部位を有する2つのスプライシングアイソフォームを産生する。長いスプライシングアイソフォームのBcl-xLは、長寿命の有糸分裂後細胞において発現される強力なアポトーシス阻害剤であり、多くのがん細胞において上方制御され、アポトーシスシグナルから細胞を保護する。短いアイソフォームのBcl-xSは、アポトーシス促進性アイソフォームであり、高い代謝率を有する細胞(例えば、発生中のリンパ球)において高レベルで発現される。2つのBcl-xスプライシングアイソフォームの比は、コアエキソン領域又はエキソン伸長領域(すなわち、2つの選択的5’スプライス部位間)のいずれかに位置する複数のccエレメントによって調節される。更なる例については、国際公開第2010/075303号を参照されたい(その全体が参照により本明細書に援用される)。
【0200】
CasXバリアントとともに使用するための更なる好適な融合パートナーとしては、境界エレメント(例えば、CTCF)であるタンパク質(又はその断片)、末梢動員を提供するタンパク質及びその断片(例えば、ラミンA、ラミンBなど)、並びにタンパク質ドッキングエレメント(例:FKBP/FRB、Pill/Abylなど)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0201】
場合によっては、CasXバリアントとともに使用するための異種ポリペプチド(融合パートナー)は、細胞内局在化を提供する。すなわち、異種ポリペプチドは、細胞内局在化配列(例えば、核への標的化のための核局在化シグナル(nuclear localization signal、NLS)、融合タンパク質を核外に保持するための配列(例えば、核外輸送配列(nuclear export sequence、NES))、融合タンパク質を細胞質に保持するための配列、ミトコンドリアへの標的化のためのミトコンドリア局在化シグナル、葉緑体への標的化のための葉緑体局在化シグナル、ER保持シグナルなど)を含む。いくつかの実施形態では、対象のRNAガイドポリペプチド若しくは条件的活性型RNAガイドポリペプチド及び/又は対象のCasX融合タンパク質は、タンパク質が核を標的化しないように、NLSを含まない(これは、例えば、標的核酸配列が細胞質ゾルに存在するRNAである場合に有利であり得る)。いくつかの実施形態では、融合パートナーは、追跡及び/又は精製を容易にするためのタグを提供することができる(すなわち、異種ポリペプチドが検出可能な標識である)(例えば、蛍光タンパク質、例えば、緑色蛍光タンパク質(green fluorescent protein、GFP)、黄色蛍光タンパク質(yellow fluorescent protein、YFP)、赤色蛍光タンパク質(red fluorescent protein、RFP)、シアン蛍光タンパク質(cyan fluorescent protein、CFP)、mCherry、tdTomatoなど;ヒスチジンタグ、例えば、6×Hisタグ;赤血球凝集素(HA)タグ;FLAGタグ;Mycタグなど)。
【0202】
場合によっては、CasXバリアントとともに使用するのに好適なNLSの非限定的な例としては、以下に由来する配列と少なくとも約80%、少なくとも約90%、若しくは少なくとも約95%の同一性を有するか、又はそれと同一である配列が挙げられる:アミノ酸配列PKKKRKV(配列番号168)を有するSV40ウイルスラージT抗原のNLS;ヌクレオプラスミン由来のNLS(例えば、配列KRPAATKKAGQAKKKK(配列番号169)を有するヌクレオプラスミン二分NLS);アミノ酸配列PAAKRVKLD(配列番号170)又はRQRRNELKRSP(配列番号171)を有するc-myc NLS;配列NQSSNFGPMKGGNFGGRSSGPYGGGGQYFAKPRNQGGY(配列番号172)を有するhRNPAl M9 NLS;インポーチンアルファ由来のIBBドメインの配列RMRIZFKNKGKDTAELRRRRVEVSVELRKAKKDEQILKRRNV(配列番号173);筋腫Tタンパク質の配列VSRKRPRP(配列番号174)及びPPKKARED(配列番号175);ヒトp53の配列PQPKKKPL(配列番号176);マウスc-abl IVの配列SALIKKKKKMAP(配列番号177);インフルエンザウイルスNS1の配列DRLRR(配列番号178)及びPKQKKRK(配列番号179);ヘルペスウイルスδ抗原の配列RKLKKKIKKL(配列番号180);マウスMxlタンパク質の配列REKKKFLKRR(配列番号181);ヒトポリ(ADP-リボース)ポリメラーゼの配列KRKGDEVDGVDEVAKKKSKK(配列番号182);ステロイドホルモン受容体(ヒト)グルココルチコイドの配列RKCLQAGMNLEARKTKK(配列番号183);ボルナ病ウイルスPタンパク質(BDV-P1)の配列PRPRKIPR(配列番号184);C型肝炎ウイルス非構造タンパク質(HCV-NS5A)の配列PPRKKRTVV(配列番号185);LEF1の配列NLSKKKKRKREK(配列番号186);ORF57 simiraeの配列RRPSRPFRKP(配列番号187);EBV LANAの配列KRPRSPSS(配列番号188);インフルエンザAタンパク質の配列KRGINDRNFWRGENERKTR(配列番号189);ヒトRNAヘリカーゼA(RHA)の配列PRPPKMARYDN(配列番号190);核小体RNAヘリカーゼIIの配列KRSFSKAF(配列番号191);TUS-タンパク質の配列KLKIKRPVK(配列番号192);インポーチンαに関連する配列PKKKRKVPPPPAAKRVKLD(配列番号193);HTLV-1のRexタンパク質由来の配列PKTRRRPRRSQRKRPPT(配列番号26792);Caenorhabditis elegansのEGL-13タンパク由来の配列SRRRKANPTKLSENAKKLAKEVEN(配列番号194);並びに配列KTRRRPRRSQRKRPPT(配列番号195)、RRKKRRPRRKKRR(配列番号196)、PKKKSRKPKKKSRK(配列番号197)、HKKKHPDASVNFSEFSK(配列番号198)、QRPGPYDRPQRPGPYDRP(配列番号199)、LSPSLSPLLSPSLSPL(配列番号200)、RGKGGKGLGKGGAKRHRK(配列番号201)、PKRGRGRPKRGRGR(配列番号202)、PKKKRKVPPPPAAKRVKLD(配列番号203)、PKKKRKVPPPPKKKRKV(配列番号204)、PAKRARRGYKC(配列番号27199)、KLGPRKATGRW(配列番号27200)、PRRKREE(配列番号27201)、PYRGRKE(配列番号27202)、PLRKRPRR(配列番号27203)、PLRKRPRRGSPLRKRPRR(配列番号27204)、PAAKRVKLDGGKRTADGSEFESPKKKRKV(配列番号27205)、PAAKRVKLDGGKRTADGSEFESPKKKRKVGIHGVPAA(配列番号27206)、PAAKRVKLDGGKRTADGSEFESPKKKRKVAEAAAKEAAAKEAAAKA(配列番号207)、PAAKRVKLDGGKRTADGSEFESPKKKRKVPG(配列番号27208)、KRKGSPERGERKRHW(配列番号27209)、KRTADSQHSTPPKTKRKVEFEPKKKRKV(配列番号27210)、及びPKKKRKVGGSKRTADSQHSTPPKTKRKVEFEPKKKRKV(配列番号27211)。いくつかの実施形態では、1つ以上のNLSは、リンカーペプチドを用いて、CRISPRタンパク質又は隣接するNLSに連結され、リンカーペプチドが、RS、(G)n(配列番号27212)、(GS)n(配列番号27213)、(GSGGS)n(配列番号214)、(GGSGGS)n(配列番号215)、(GGGS)n(配列番号216)、GGSG(配列番号217)、GGSGG(配列番号218)、GSGSG(配列番号219)、GSGGG(配列番号220)、GGGSG(配列番号221)、GSSSG(配列番号222)、GPGP(配列番号223)、GGP、PPP、PPAPPA(配列番号224)、PPPG(配列番号27214)、PPPGPPP(配列番号225)、PPP(GGGS)n(配列番号27215)、(GGGS)nPPP(配列番号27216)、AEAAAKEAAAKEAAAKA(配列番号27217)、及びTPPKTKRKVEFE(配列番号27218)(式中、nは1~5である)からなる群から選択される。一般に、NLS(又は複数のNLS)は、真核細胞の核におけるCasXバリアント融合タンパク質の蓄積を駆動するのに十分強力なものである。核における蓄積の検出は、任意の好適な技術によって実施され得る。例えば、検出可能なマーカーは、細胞内の位置が可視化され得るように、CasXバリアント融合タンパク質に融合され得る。細胞核はまた、細胞から単離され得、次いで、その内容物が、タンパク質を検出するための任意の好適なプロセス(例えば、免疫組織化学、ウェスタンブロット、又は酵素活性アッセイ)によって分析され得る。核における蓄積はまた、間接的に決定され得る。
【0203】
一般に、NLS(又は複数のNLS)は、真核細胞の核において発現されたCasXバリアント融合タンパク質の蓄積を駆動するのに十分強力なものである。核における蓄積の検出は、任意の好適な技術によって実施され得る。例えば、検出可能なマーカーは、細胞内の位置が可視化され得るように、CasXバリアント融合タンパク質に融合され得る。細胞核はまた、細胞から単離され得、次いで、その内容物が、タンパク質を検出するための任意の好適なプロセス(例えば、免疫組織化学、ウェスタンブロット、又は酵素活性アッセイ)によって分析され得る。核における蓄積はまた、間接的に決定され得る。
【0204】
場合によっては、CasXバリアント融合タンパク質は、「タンパク質形質導入ドメイン」又はPTD(CPP細胞透過ペプチドとしても知られる)を含み、これは、脂質二重層、ミセル、細胞膜、細胞小器官膜、又は小胞膜の横断を促進するタンパク質、ポリヌクレオチド、炭水化物、又は有機若しくは無機化合物を指す。別の分子(これは、小さな極性分子から大きな高分子及び/又はナノ粒子の範囲であり得る)に結合したPTDは、分子が膜を横断すること、例えば、細胞外空間から細胞内空間へ、又はサイトゾルから細胞小器官内へ移行することを容易にする。いくつかの実施形態では、PTDは、CasXバリアント融合タンパク質のアミノ末端に共有結合される。いくつかの実施形態では、PTDは、CasXバリアント融合タンパク質のカルボキシル末端に共有結合される。場合によっては、PTDは、好適な挿入部位でCasXバリアント融合タンパク質の配列の内部に挿入される。場合によっては、CasXバリアント融合タンパク質は、1つ以上のPTD(例えば、2つ以上、3つ以上、4つ以上のPTD)を含む(にコンジュゲートされている、融合されている)。場合によっては、PTDは、1つ以上の核局在化シグナル(NLS)を含む。PTDの例としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:YGRKKRRQRRR(配列番号205)、RKKRRQRR(配列番号206)を含むHIV TATのペプチド形質導入ドメイン;YARAAARQARA(配列番号207);THRLPRRRRRR(配列番号208);及びGGRRARRRRRR(配列番号209);細胞への侵入を指示するのに十分な数のアルギニン残基(例えば、3、4、5、6、7、8、9、10、又は10~50個のアルギニン残基を含むポリアルギニン配列(配列番号26793);VP22ドメイン(Zender et al.(2002)Cancer Gene Ther.9(6):489-96);Drosophilaアンテナペディアタンパク形質導入ドメイン(Noguchi et al.(2003)Diabetes 52(7):1732-1737);短縮型ヒトカルシトニンペプチド(Trehin et al.(2004)Pharm.Research 21:1248-1256);ポリリジン(Wender et al.(2000)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 97:13003-13008);RRQRRTSKLMKR(配列番号210);トランスポータンGWTLNSAGYLLGKINLKALAALAKKIL(配列番号211);KALAWEAKLAKALAKALAKHLAKALAKALKCEA(配列番号212);並びにRQIKIWFQNRRMKWKK(配列番号213)。いくつかの実施形態では、PTDは、活性化可能CPP(ACPP)である(Aguilera et al.(2009)Integr Biol(Camb)June;1(5-6):371-381)。ACPPは、一致するポリアニオン(例えば、Glu9又は「E9」)に切断コンピテントリンカーを介して連結されたポリカチオン性CPP(例えば、Arg9又は「R9」)を含み、これは、正味電荷をほぼ0に減少させ、それによって、細胞への接着及び取り込みを阻害する。リンカーが切断されると、ポリアニオンが放出され、ポリアルギニン及びその固有の接着性を局所的にアンマスクし、したがって、ACPPを「活性化」して膜を通過させる。
【0205】
いくつかの実施形態では、システムにおいて使用するためのCasXバリアント融合タンパク質は、リンカーポリペプチド(例えば、1つ以上のリンカーポリペプチド)を介して内部に挿入された異種アミノ酸又は異種ポリペプチド(異種アミノ酸配列)に連結されたCasXタンパク質を含むことができる。いくつかの実施形態では、CasXバリアント融合タンパク質は、C末端及び/又はN末端において、リンカーポリペプチド(例えば、1つ以上のリンカーポリペプチド)を介して異種ポリペプチド(融合パートナー)に連結され得る。リンカーポリペプチドは、様々なアミノ酸配列のいずれかを有し得る。タンパク質は、一般的に柔軟な性質のスペーサーペプチドによって連結され得るが、他の化学結合は除外されない。好適なリンカーには、4アミノ酸~40アミノ酸長、又は4アミノ酸~25アミノ酸長のポリペプチドが含まれる。これらのリンカーは、一般に、合成のリンカーをコードするオリゴヌクレオチドを使用してタンパク質をカップリングすることによって生成される。ある程度の柔軟性を有するペプチドリンカーを使用することができる。連結ペプチドは、好ましいリンカーが一般的に柔軟なペプチドをもたらす配列を有するであろうことを考慮して、実質的に任意のアミノ酸配列を有し得る。グリシン及びアラニンなどの小アミノ酸の使用は、柔軟なペプチドの生成において有用である。かかる配列の生成は、当業者にとって日常的である。様々な異なるリンカーが市販されており、使用に好適であると考えられる。例示的なリンカーポリペプチドとしては、RS、(G)n(配列番号27212)、(GS)n(配列番号27213)、(GSGGS)n(配列番号214)、(GGSGGS)n(配列番号215)、(GGGS)n(配列番号216)、(式中、nは1~5の整数である)GGSG(配列番号217)、GGSGG(配列番号218)、GSGSG(配列番号219)、GSGGG(配列番号220)、GGGSG(配列番号221)、GSSSG(配列番号222)、GPGP(配列番号223)、GGP、PPP、PPAPPA(配列番号224)、PPPG(配列番号27214)、PPPGPPP(配列番号225)、PPP(GGGS)n(配列番号27215)、(GGGS)nPPP(配列番号27216)、AEAAAKEAAAKEAAAKA(配列番号27217)、及びTPPKTKRKVEFE(配列番号27218)(式中、nは1~5である)からなる群から選択されるペプチドが挙げられる。当業者であれば、上記の任意のエレメントにコンジュゲートされたペプチドの設計は、リンカーが柔軟なリンカー並びにあまり柔軟ではない構造を付与する1つ以上の部分を含むことができるように、全て又は部分的に柔軟なリンカーを含むことができることを認識するであろう。
【0206】
V.BCL11A遺伝子の改変のためのシステム及び方法
本明細書に提供されるCRISPRタンパク質、ガイド核酸、及びそれらのバリアントは、治療剤、診断剤として、及び研究のためを含む様々な用途に有用である。いくつかの実施形態では、遺伝子編集のための本開示の方法を実施するために、プログラム可能なCasX:gRNAシステムが本明細書において提供される。本明細書に提供されるシステムのプログラム可能な性質は、BCL11A遺伝子標的核酸中の所定の目的の1つ以上の領域において所望の改変を達成するための正確な標的化を可能にする。本明細書に提供されるシステムを使用して細胞における標的核酸配列を改変するために、様々な戦略及び方法を使用することができる。本明細書で使用される場合、「改変」としては、切断、ニッキング、編集、欠失、ノックアウト、ノックダウン、変異誘発、修復、エキソンスキッピングなどが挙げられるが、これらに限定されない。利用されるシステム成分に応じて、編集事象は、切断事象と、それに続く、例えば、フレームシフト変異を生成し得る不正確な非相同DNA末端結合(NHEJ)修復経路を利用することによる、ランダム挿入若しくは欠失(インデル)又は他の変異(例えば、1つ以上のヌクレオチドの置換、重複、若しくは逆位)の導入であり得る。代替的に、編集事象は、切断事象、それに続く、標的核酸配列の改変をもたらす相同組換え修復(HDR)、相同性非依存性標的化組み込み(HITI)、マイクロホモロジー媒介末端結合(MMEJ)、一本鎖アニーリング(SSA)又は塩基除去修復(BER)であり得る。
【0207】
本方法のいくつかの実施形態では、改変されるBCL11A遺伝子は、配列番号100の配列の全部若しくは一部をコードするポリヌクレオチドに対応する配列を含むか、又は第2染色体上のヒトゲノムのchr2 60450520-60554467(GRCh38/hg38 Ensembl 100)の全部若しくは一部にわたるポリヌクレオチド配列を含む。本方法の他の実施形態では、改変される標的核酸配列は、BCL11Aタンパク質をコードするBCL11A遺伝子の領域、BCL11A調節エレメント、BCL11A遺伝子の非コード領域、又はそれらの重複部分を含む。本方法の特定の実施形態では、改変される標的核酸配列は、GATA1結合モチーフ配列又はその相補体を含む。
【0208】
いくつかの実施形態では、本開示は、細胞においてBCL11A標的核酸を改変する方法を提供し、クラス2、V型CRISPRシステムを細胞に導入することを含む方法を提供する。本方法のいくつかの実施形態では、改変される細胞は、当該細胞を投与される対象に対して自己由来である。他の実施形態では、改変される細胞は、当該細胞を投与される対象に対して同種である。したがって、本明細書に記載のシステム及び方法は、変異がβ-グロビン遺伝子に存在し、疾患(例えば、鎌状赤血球症並びにαサラセミア及びβサラセミアを含む異常ヘモグロビン症)に関連する様々な細胞を操作するために使用され得る。したがって、このアプローチは、限定されないが鎌状赤血球症並びにα-及びβサラセミアなどの異常ヘモグロビン症関連疾患を有する対象における適用のために細胞を改変するのに使用することができる。
【0209】
いくつかの実施形態では、本開示は、細胞におけるBCL11A標的核酸を改変する方法を提供し、本方法は、細胞に、i)本明細書に記載の実施形態のいずれか1つに記載のCasX及びgRNAを含むCasX:gRNAシステム、ii)本明細書に記載の実施形態のいずれか1つに記載のCasX、gRNA、及びドナー鋳型を含むCasX:gRNAシステム、iii)CasX及びgRNAをコードし、任意選択的に、ドナー鋳型を含む核酸、iv)上記の(iii)の核酸を含むベクター、v)本明細書に記載の実施形態のいずれか1つに記載のCasX:gRNAシステムを含むXDP、又はvi)(i)~(v)のうちの2つ以上の組み合わせ、を導入することを含み、細胞の標的核酸配列が、CasXタンパク質及び任意選択的にドナー鋳型によって改変される。いくつかの実施形態では、ベクターはAAVベクターである。いくつかの実施形態では、本開示は、細胞におけるBCL11A遺伝子を改変する方法において使用するためのCasX:gRNAシステムを提供し、本方法は、配列番号36~99、101~148、及び26908~27154からなる群から選択されるCasXバリアント、若しくは配列番号59、72~99、101~148、及び26908~27154からなる群から選択されるCasXバリアント、若しくは配列番号132~148及び26908~27154からなる群から選択されるCasXバリアント、又はそれと少なくとも60%同一、少なくとも70%同一、少なくとも80%同一、少なくとも81%同一、少なくとも82%同一、少なくとも83%同一、少なくとも84%同一、少なくとも85%同一、少なくとも86%同一、少なくとも86%同一、少なくとも87%同一、少なくとも88%同一、少なくとも89%同一、少なくとも89%同一、少なくとも90%同一、少なくとも91%同一、少なくとも92%同一、少なくとも93%同一、少なくとも94%同一、少なくとも95%同一、少なくとも96%同一、少なくとも97%同一、少なくとも98%同一、少なくとも99%同一、若しくは少なくとも99.5%同一のバリアント配列を含み、gRNA足場が、表3に示される配列番号2101~2285、26794~26839、及び27219~27265からなる群から選択される配列、若しくは配列番号2281~2285、26794~26839、及び27219~27265からなる群から選択される配列、又はそれと少なくとも65%同一、少なくとも70%同一、少なくとも75%同一、少なくとも80%同一、少なくとも81%同一、少なくとも82%同一、少なくとも83%同一、少なくとも84%同一、少なくとも85%同一、少なくとも86%同一、少なくとも86%同一、少なくとも87%同一、少なくとも88%同一、少なくとも89%同一、少なくとも89%同一、少なくとも90%同一、少なくとも91%同一、少なくとも92%同一、少なくとも93%同一、少なくとも94%同一、少なくとも95%同一、少なくとも96%同一、少なくとも97%同一、少なくとも98%同一、少なくとも99%同一、少なくとも99.5%同一の配列を含み、gRNAが、配列番号272~2100若しくは2286~26789からなる群から選択される標的化配列、又はそれと少なくとも65%同一、少なくとも70%同一、少なくとも75%同一、少なくとも80%同一、少なくとも85%同一、少なくとも90%同一、若しくは少なくとも95%同一の配列を含み、かつ15~20ヌクレオチドを有する。特定の実施形態では、gRNAの標的化配列は、GATA1結合モチーフ配列内の配列、又はGATA1結合モチーフ配列の5’側若しくは3’側にある配列と相補的であり、したがって、それとハイブリダイズすることができる。一実施形態では、gRNAの標的化配列は、BCL11A GATA1赤血球特異的エンハンサー結合部位配列とハイブリダイズするUGGAGCCUGUGAUAAAAGCA(配列番号22)であるか、又はそれと少なくとも90%若しくは少なくとも95%の配列同一性を有する配列である。別の実施形態では、gRNAの標的化配列はUGCUUUUAUCACAGGCUCCA(配列番号23)であり、これは、BCL11A GATA1赤血球特異的エンハンサー結合部位配列の逆相補体に相補的な配列とハイブリダイズするか、又はそれと少なくとも90%若しくは少なくとも95%の配列同一性を有する配列である。別の特定の実施形態では、gRNAの標的化配列は、BCL11A遺伝子のプロモーター内の配列に相補的であり、したがって、それとハイブリダイズすることができる。本方法の一実施形態では、CasX及びgRNAは、リボ核タンパク質複合体(RNP)において一緒に会合している。細胞におけるBCL11A標的核酸配列を改変する方法のいくつかの実施形態では、改変は、標的核酸配列において一本鎖切断を導入することを含む。本方法の他の実施形態では、改変は、標的核酸配列において二本鎖切断を導入することを含む。本方法のいくつかの実施形態では、改変することは、標的核酸配列において1つ以上のヌクレオチドの挿入、欠失、置換、重複、又は逆位を導入することを含む。本明細書に記載されるように、標的核酸の二本鎖切断を導入するCasXバリアントは、標的鎖上のPAM部位の5’側の18~26ヌクレオチド内及び非標的鎖上の3’側の10~18ヌクレオチド内に二本鎖切断を生成する。したがって、いくつかの実施形態では、本方法によって得られる改変は、非相同DNA末端結合(NHEJ)修復機構によって、それらの領域における1つ以上のヌクレオチドのランダムな挿入、又は欠失(インデル)、又は置換、重複、又は逆位をもたらし得る。
【0210】
細胞におけるBCL11A標的核酸配列を改変する方法の他の実施形態では、本方法は、標的核酸配列をBCL11A遺伝子の異なる部分又は重複する部分を標的化する第1及び第2の又は複数のgRNA(例えば、第2のgRNAの標的化配列が、GATA1結合部位の5’側又は3’側にある配列と相補的である)を有するCasX:gRNAシステムと接触させることを含み、CasXタンパク質が、標的核酸に複数の切断を導入し、本明細書に記載されるように、BCL11A遺伝子産物の対応する発現の調節若しくは機能の改変を伴う、標的核酸における永続的なインデル若しくは変異又はGATA1結合モチーフ配列の切除をもたらし、それによって、編集された細胞を生成する。前述のいくつかの場合では、複数のgRNAは、GATA1結合モチーフ配列の一部又は全部が、2つのgRNAによって標的化される二重切断部位間の標的遺伝子から切除されるように、BCL11A遺伝子のGATA1結合モチーフ配列に対して5’側及び3’側の位置を標的化する。本方法の前述の実施形態はまた、コード核酸、コード酸を含むベクター、又はCasX:gRNAシステム成分を含むXDPの使用によって達成され得ることが理解されるであろう。
【0211】
いくつかの実施形態では、本開示の方法は、PAM部位の3’側の18~24ヌクレオチド内に部位特異的な二本鎖切断(double strand break、DSB)又は一本鎖切断(single strand break、SSB)(例えば、CasXタンパク質が、標的核酸の一方の鎖のみを切断することができるニッカーゼである場合)を生成するCasXタンパク質及びgRNA対を提供し、これは次いで、非相同末端結合(NHEJ)、相同組換え修復(HDR)、相同性非依存性標的化組み込み(HITI)、マイクロホモロジー媒介末端結合(MMEJ)、一本鎖アニーリング(SSA)、又は塩基除去修復(BER)のいずれかによって修復され得、BCL11A遺伝子の改変が、野生型配列と比較して、1つ以上のヌクレオチドの挿入、欠失、逆位、又は重複の変異を導入し、BCL11A遺伝子産物の対応する発現の調節又は機能の改変を伴い、それによって、編集された細胞が生成される。
【0212】
場合によっては、BCL11A遺伝子を改変する方法において使用するためのCasX:gRNAシステムは、本明細書に開示される実施形態のいずれかのドナー鋳型核酸を更に含み、ドナー鋳型が、宿主細胞の相同組換え修復(HDR)又は相同性非依存性標的化組み込み(HITI)修復機構によって挿入され得る。したがって、場合によっては、本明細書に提供される方法は、ドナー鋳型を(インビトロで細胞内に又はインビボで細胞内に)導入することによって、BCL11A遺伝子をドナー鋳型と接触させることを含み、ドナー鋳型、ドナー鋳型の一部、ドナー鋳型のコピー、又はドナー鋳型のコピーの一部は、BCL11A遺伝子に組み込まれて、BCL11A遺伝子の一部を置換する。ドナー鋳型は、短い一本鎖若しくは二本鎖オリゴヌクレオチド、又は長い一本鎖若しくは二本鎖オリゴヌクレオチドであり得る。いくつかの実施形態では、ドナー鋳型は、BCL11A遺伝子の少なくとも一部を含み、BCL11A遺伝子の部分が、BCL11Aエキソン、BCL11Aイントロン、BCL11Aイントロン-エキソン接合部、BCL11A調節エレメント、又はそれらの組み合わせからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、本開示は、BCL11A標的配列における転写アクチベーターGATA1結合部位を標的化又は破壊する際に使用するためのドナー鋳型を提供し、ドナー鋳型が、標的DNA領域と2つの隣接配列との間の修復機構が、HDRによる挿入を容易にするための標的領域でのドナー鋳型の挿入をもたらすように、切断部位の5’側及び3’側に対する2つの相同性領域(「相同アーム」)に隣接する、BCL11A遺伝子におけるGATA1部位内又はその付近のDNAの領域に対して非相同である配列を含む。ドナー鋳型は、ゲノム配列に関して1つ以上の単一塩基変化、挿入、欠失、逆位又は再編成を含んでもよいが、BCL11Aタンパク質が発現されない(ノックアウト)又はより低いレベルで発現される(ノックダウン)ようなフレームシフト又は他の変異をもたらすことができる、標的核酸へのその組み込みを支持するための標的核酸配列との十分な相同性が存在しなければならない。HITIによって挿入される外因性ドナー鋳型は、任意の長さ、例えば、10~50ヌクレオチド長の比較的短い配列、又は約50~1000ヌクレオチド長のより長い配列であり得る。相同性の欠如は、例えば、20~50%以下の配列同一性を有すること、及び/又は低い厳密性での特異的なハイブリダイゼーションを欠くことであり得る。他の場合では、相同性の欠如は、5、6、7、8、又は9bp以下の同一性を有するという基準を更に含み得る。いくつかの実施形態では、ドナー鋳型ポリヌクレオチドは、少なくとも約10、少なくとも約50、少なくとも約100、又は少なくとも約200、又は少なくとも約300、又は少なくとも約400、又は少なくとも約500、又は少なくとも約600、又は少なくとも約700、又は少なくとも約800、又は少なくとも約900、又は少なくとも約1000、又は少なくとも約10,000、又は少なくとも約15,000ヌクレオチドを含む。他の実施形態では、ドナー鋳型は、少なくとも約10~約15,000ヌクレオチド、又は少なくとも約100~約10,000ヌクレオチド、又は少なくとも約400~約8,000ヌクレオチド、又は少なくとも約600~約5000ヌクレオチド、又は少なくとも約1000~約2000ヌクレオチドを含む。ドナー鋳型配列は、ゲノム配列と比較して、特定の配列の差異、例えば、制限部位、ヌクレオチド多型、選択マーカー(例えば、薬剤耐性遺伝子、蛍光タンパク質、酵素など)などを含み得、これらは、切断部位でのドナー核酸の挿入の成功を評価するために使用され得るか、又は場合によっては、他の目的のために(例えば、標的ゲノム遺伝子座における発現を示すために)使用され得る。代替的に、これらの配列の差異は、マーカー配列の除去のために後で活性化され得る、隣接する組換え配列(例えば、FLP配列、loxP配列など)を含み得る。
【0213】
標的核酸に対する切断又は任意の所望の改変を誘導するために、細胞のBCL11A標的核酸をインビトロ又はエクスビボで改変する方法のいくつかの実施形態では、本開示のgRNA及び/又はCasXタンパク質、並びに任意選択的にドナー鋳型配列は、核酸又はポリペプチド、複合体化RNP、ベクター、又はXDPとして導入されるかどうかにかかわらず、約30分~約24時間、又は少なくとも約1時間、1.5時間、2時間、2.5時間、3時間、3.5時間、4時間、5時間、6時間、7時間、8時間、12時間、16時間、18時間、20時間、又は約30分~約24時間の任意の他の期間、細胞に提供され、これは、約毎日~約4日毎の頻度、例えば、1.5日毎、2日毎、3日毎、又は約毎日~約4日毎の任意の他の頻度で繰り返され得る。薬剤は、対象細胞に、1回以上、例えば、1回、2回、3回、又は3回超提供され得、細胞は、各接触事象後に一定の時間(例えば、30分~約24時間)、薬剤とインキュベートされ得る。インビトロベースの方法の場合、CasX及びgRNA(及び任意選択的にドナー鋳型)とのインキュベーション期間後、培地を新鮮な培地と交換し、細胞を更に培養する。
【0214】
細胞におけるBCL11A標的核酸を改変する方法のいくつかの実施形態では、本方法は、細胞の標的核酸配列を、a)第1のgRNAと比較してBCL11A標的核酸の異なる部分又は重複する部分を標的化する追加のCRISPRヌクレアーゼ及びgRNA、b)(a)の追加のCRISPRヌクレアーゼ及びgRNAをコードするポリヌクレオチド、c)(b)のポリヌクレオチドを含むベクター、又はd)追加のCRISPRヌクレアーゼ及び(a)のgRNAを含むXDP、と接触させることを更に含み、接触が、第1のgRNAと比較して配列における異なる位置で、BCL11A標的核酸の改変をもたらす。場合によっては、追加のCRISPRヌクレアーゼは、前述の請求項のいずれかのCasXタンパク質とは異なる配列を有するCasXタンパク質である。他の場合では、追加のCRISPRヌクレアーゼは、CasXタンパク質ではなく、Cas9、Cas12a、Cas12b、Cas12c、Cas12d(CasY)、Cas12j、Cas12k、Cas13a、Cas13b、Cas13c、Cas13d、CasY、Cas14、Cpfl、C2cl、Csn2、Cas Phi、及びそれらの配列バリアントからなる群から選択される。
【0215】
改変がBCL11A遺伝子のノックダウンをもたらす場合では、BCL11Aタンパク質の発現は、改変されていない細胞と比較して、少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、又は少なくとも約90%減少する。改変がBCL11A遺伝子のノックアウトをもたらす他の場合では、細胞集団の標的核酸は、BCL11Aタンパク質の発現が検出できないように改変される。BCL11Aタンパク質の発現は、フローサイトメトリー、ELISA、細胞ベースのアッセイ、ウェスタンブロット、qRT-PCR、若しくは当該技術分野で既知の他の方法によって、又は実施例に記載されるように測定することができる。
【0216】
いくつかの実施形態では、本開示は、インビボで対象における細胞集団のBCL11A標的核酸を改変する方法を提供する。いくつかの実施形態では、標的核酸配列の改変は、エクスビボで真核細胞において行われ、真核細胞が、造血幹細胞(HSC)、造血前駆細胞(HPC)、CD34+細胞、間葉系幹細胞(MSC)、人工多能性幹細胞(iPSC)、骨髄系共通前駆細胞、前赤芽球細胞、及び赤芽球細胞からなる群から選択される。前述の実施形態では、改変された細胞集団は、対象における治療の方法において利用され得、改変された細胞が、それを必要とする対象に投与され、対象が、マウス、ラット、ブタ、非ヒト霊長類、及びヒトからなる群から選択される。場合によっては、エクスビボ細胞は自己由来であり、対象の骨髄又は末梢血から単離される。他の場合では、エクスビボ細胞は同種であり、異なる対象の骨髄又は末梢血から単離される。治療方法では、改変細胞は、実質内、静脈内、動脈内、筋内、表皮下、関節腔内、心臓内、心膜内、硝子体内、被膜下から選択される投与経路によって、又は皮下注射によって対象に投与することができ、移植、局所注射、全身注入、又はそれらの組み合わせによって対象に移植することができる。前述の実施形態では、本方法は、少なくとも約1ヶ月間、少なくとも約2ヶ月間、少なくとも約3ヶ月間、少なくとも約4ヶ月間、少なくとも約6ヶ月間、少なくとも約7ヶ月間、少なくとも約8ヶ月間、少なくとも約9ヶ月間、少なくとも約10ヶ月間、少なくとも約11ヶ月間、少なくとも約12ヶ月間、少なくとも約18ヶ月間、少なくとも約2年間、少なくとも約3年間、少なくとも約4年間、又は少なくとも約5年間、改変細胞又はその子孫の存続をもたらす。
【0217】
標的核酸配列を改変する方法のいくつかの実施形態では、BCL11A遺伝子を改変することは、CasX:gRNA複合体を標的核酸配列と結合させ、RNPとして細胞に導入することを含む。いくつかの実施形態では、CasXは、gRNA及び標的核酸配列に結合する能力を保持している触媒的に不活性なCasX(dCasX)タンパク質である。例えば、標的核酸配列は、GATA1結合モチーフ配列に相補的な配列を含むBCL11A配列を含み、dCasX:gRNA複合体の標的配列への結合が、BCL11Aアレルの転写を妨害又は抑制する。いくつかの実施形態では、dCasXは、配列番号1のCasXタンパクに対応する残基D672、E769、及び/若しくはD935、又は配列番号2のCasXタンパクに対応するD659、E756、及び/若しくはD922に変異を含む。前述のいくつかの実施形態では、CasXバリアントタンパク質における変異は、残基のアラニン又はグリシンの置換であり、本明細書に記載のバリアントのいずれかに利用することができる。
【0218】
システム実施形態の成分又は成分をコードする核酸を含む組換え発現ベクターを標的細胞に導入することは、インビボ、インビトロ又はエクスビボで行うことができる。本方法のいくつかの実施形態では、ベクターは、標的宿主細胞に直接提供され得る。核酸(例えば、ドナーポリヌクレオチド配列を含む核酸、CasXタンパク質及び/若しくはgRNAをコードする1つ以上の核酸(DNA若しくはRNA)、又はそれを含むベクター)を細胞に導入する方法は、当該技術分野で既知であり、任意の便利な方法を使用して、核酸(例えば、発現構築物)を細胞に導入することができる。好適な方法としては、例えば、ウイルス感染、トランスフェクション、リポフェクション、エレクトロポレーション、リン酸カルシウム沈殿、ポリエチレンイミン(PEI)媒介性トランスフェクション、DEAE-デキストラン媒介性トランスフェクション、リポソーム媒介性トランスフェクション、パーティクルガン技術、ヌクレオフェクション、エレクトロポレーション、ドナーDNAに融合された若しくはそれを動員する細胞透過性CasXタンパク質による直接添加、細胞圧搾、リン酸カルシウム沈殿、直接マイクロインジェクション、ナノ粒子媒介性核酸送達などが挙げられる。核酸は、QiagenからのTransMessenger(登録商標)試薬、StemgentからのStemfect(商標)RNAトランスフェクションキット、及びMirus Bio LLCからのTransIT(登録商標)-mRNAトランスフェクションキット、Lonzaヌクレオフェクション、Maxagenエレクトロポレーションなどの使用などの、十分に開発された市販のトランスフェクション技術を使用して細胞に導入され得る。インビトロ条件下で本開示のCasX:gRNAシステム(及び任意選択的にドナー配列)をコードする配列を含む組換え発現ベクターを細胞に導入することで、任意の好適な培養培地中で、細胞の生存を促進する任意の好適な培養条件下で行うことができる。例えば、細胞は、ベクターが細胞によって取り込まれるように、対象核酸を含むベクター(例えば、ドナー鋳型配列並びにCasX及びgRNAをコードする核酸を有する組換え発現ベクター)と接触させることができる。gRNA及び/又はCasXタンパク質をコードする核酸を標的宿主細胞に提供するために使用されるベクターは、目的の核酸の発現(すなわち、転写活性化)を駆動するための好適なプロモーターを含むことができる。場合によっては、目的のコード核酸は、プロモーターに作動可能に連結される。これは、遍在的に作用するプロモーター(例えば、CMV-β-アクチンプロモーター)又は誘導性プロモーター(例えば、特定の細胞集団において活性であるか、又はテトラサイクリン若しくはカナマイシンのような薬物の存在に応答するプロモーター)を含み得る。転写活性化によって、転写が、ベクターを含む標的宿主細胞における基底レベルを超えて、少なくとも約10倍、少なくとも約100倍、より通常には少なくとも約1000倍増加することが意図される。加えて、gRNA及び/又はCasXタンパク質をコードする核酸を細胞に提供するために使用されるベクターは、CasXタンパク質及び/又はgRNAを取り込んだ細胞を同定するために、標的細胞における選択可能マーカーをコードする核酸配列を含み得る。
【0219】
ウイルスベクターの送達の場合、細胞を、対象ウイルス発現ベクター、並びにCasX及びgRNAをコードする核酸、並びに任意選択的にドナー鋳型を含むウイルス粒子と接触させることができる。いくつかの実施形態では、ベクターはアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターであり、AAVが、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、AAV12、AAV44.9、AAV-Rh74、又はAAVRh10から選択される。他の場合では、AAVは、AAV1、AAV2、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、及びAAV9から選択され、これは、筋肉の形質導入に効率的である(Gruntman AM,et al.Gene transfer in skeletal and cardiac muscle using recombinant adeno-associated virus.Curr Protoc Microbiol.14(14D):3(2013))。AAVベクターの実施形態は、以下でより詳細に記載される。他の実施形態では、ベクターは、レンチウイルスベクターである。レトロウイルス(例えば、レンチウイルス)は、本開示の方法における使用に好適であり得る。一般的に使用されるレトロウイルスベクターは、「欠陥」があり、例えば、増殖性感染に必要なウイルスタンパク質を産生することができない。むしろ、ベクターの複製は、パッケージング細胞株における増殖を必要とする。目的の核酸を含むウイルス粒子を生成するために、核酸を含むレトロウイルス核酸は、パッケージング細胞株によってウイルスカプシドにパッケージングされる。異なるパッケージング細胞株は、カプシドに組み込まれる異なるエンベロープタンパク(エコトロピック、アンホトロピック、又はゼノトロピック)を提供し、このエンベロープタンパクは、細胞に対するウイルス粒子の特異性又はトロピズムを決定する(マウス及びラットに対してエコトロピック;ヒト、イヌ、及びマウスを含むほとんどの哺乳動物細胞型に対してアンホトロピック;マウス細胞を除くほとんどの哺乳動物細胞型に対してゼノトロピック)。適切なパッケージング細胞株は、パッケージングされたウイルス粒子によって確実に細胞が標的化されるように使用され得る。対象ベクター発現ベクターをパッケージング細胞株に導入する方法、及びパッケージング株によって生成されるウイルス粒子を収集する方法は、当該技術分野で周知であり、これには、米国特許第5,173,414号、Tratschin et al.,Mol.Cell.Biol.5:3251-3260(1985)、Tratschin,et al.,Mol.Cell.Biol.4:2072-2081(1984)、Hermonat&Muzyczka,PNAS 81:6466-6470(1984)、及びSamulski et al.,J.Virol.63:03822-3828(1989)が含まれる。核酸はまた、直接マイクロインジェクション(例えば、RNAの注入)によって導入することもできる。
【0220】
BCL11A遺伝子を改変する方法の他の実施形態では、本方法は、対象の細胞へのRNPの標的化送達のために、CasX送達粒子(XDP)を利用する。XDPは、ウイルスに非常に似ているが、ウイルス性遺伝物質を含まず、したがって、非感染性である粒子である。いくつかの実施形態では、XDPは、RNPとして複合体化されたCasX及びgRNA、並びに任意選択的に、HDR又はHITI機構を介した挿入によってBCL11A遺伝子又はその遺伝子の一部をノックダウン又はノックアウトするためのBCL11A遺伝子の全部又は一部を含むドナー鋳型を含む。XDPの実施形態は、以下でより詳細に記載される。
【0221】
VI.ポリヌクレオチド及びベクター
別の態様では、本開示は、BCL11A遺伝子の編集において有用であるクラス2、V型ヌクレアーゼ及びgRNAをコードするポリヌクレオチドに関する。いくつかの実施形態では、本開示は、CasXタンパク質をコードするポリヌクレオチド及び本明細書に記載の実施形態のCasX:gRNAシステムのgRNAのポリヌクレオチドを提供する。追加の実施形態では、本開示は、BCL11A遺伝子の一部又は全部をコードするドナー鋳型ポリヌクレオチドを提供する。場合によっては、ドナー鋳型は、標的核酸への挿入時にBCL11A遺伝子をノックダウン又はノックアウトするための変異又は異種配列を含む。また更なる実施形態では、本開示は、本明細書に記載のCasXタンパク質及びCasX gRNAをコードするポリヌクレオチド、並びに実施形態のドナー鋳型を含むベクターを提供する。
【0222】
いくつかの実施形態では、本開示は、本明細書に記載の実施形態のいずれかのCasXバリアントをコードするポリヌクレオチド配列を提供し、表4に記載される配列番号59、72~99、101~148、及び26908~27154のCasXタンパク質バリアント、又は表4の配列番号59、72~99、101~148、及び26908~27154の配列と少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、若しくは少なくとも約99%の配列同一性を有する配列を含む。いくつかの実施形態では、本開示は、本明細書に記載の実施形態のいずれかのCasXバリアントをコードするポリヌクレオチド配列を提供し、表4に記載される配列番号36~99、101~148、及び26908~27154のCasXタンパク質バリアント、又は表4の配列番号36~99、101~148、及び26908~27154の配列と少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、若しくは少なくとも約99%の配列同一性を有する配列を含む。いくつかの実施形態では、本開示は、本明細書に記載の実施形態のいずれかのgRNA配列をコードする単離されたポリヌクレオチド配列を提供し、表2及び表3の配列番号4~16、2238~2285、26794~26839、又は27219~27265の配列とともに、配列番号272~2100又は2286~26789の標的化配列を含む。いくつかの実施形態では、本開示は、本明細書に記載の実施形態のいずれかのgRNA配列をコードする単離されたポリヌクレオチド配列を提供し、配列番号2101~2285、26794~26839、及び27219~27265の配列とともに、配列番号272~2100又は2286~26789の標的化配列を含む。いくつかの実施形態では、本開示は、本明細書に記載の実施形態のいずれかのgRNA配列をコードする単離されたポリヌクレオチド配列を提供し、配列番号2281~2285、26794~26839、及び27219~27265の配列とともに、配列番号272~2100又は2286~26789の標的化配列を含む。いくつかの実施形態では、CasXタンパク質をコードする配列は、真核細胞における発現のためにコドン最適化される。
【0223】
いくつかの実施形態では、本開示は、配列番号4~16、2238~2285、26794~26839、若しくは27219~27265のgRNA足場配列、又は表2若しくは表3に示されるgRNA足場配列、あるいはそれと少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%の配列同一性を有する配列をコードするポリヌクレオチドを提供する。他の実施形態では、本開示は、表1の標的化配列ポリヌクレオチド、又は配列番号272~2100若しくは2286~26789の配列と少なくとも約65%、少なくとも約75%、少なくとも約85%、若しくは少なくとも約95%の同一性を有する配列を提供する。いくつかの実施形態では、標的化配列ポリヌクレオチドは、次に、gRNA足場配列の3’末端に(sgRNA又はdgRNAのいずれかとして)連結される。他の実施形態では、本開示は、配列番号272~2100又は2286~26789の配列と比較して1つ以上の一塩基多型(SNP)を有する標的化配列ポリヌクレオチドを含むgRNAを提供する。
【0224】
他の実施形態では、本開示は、BCL11A遺伝子に相補的であり、したがって、それとハイブリダイズすることができる標的化配列を含むgRNAをコードする単離されたポリヌクレオチド配列を提供する。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチド配列は、BCL11Aエキソンとハイブリダイズする標的化配列を含むgRNAをコードする。他の実施形態では、ポリヌクレオチド配列は、BCL11Aイントロンとハイブリダイズする標的化配列を含むgRNAをコードする。他の実施形態では、ポリヌクレオチド配列は、BCL11Aイントロン-エキソン接合部とハイブリダイズする標的化配列を含むgRNAをコードする。他の実施形態では、ポリヌクレオチド配列は、BCL11A遺伝子の遺伝子間領域とハイブリダイズする標的化配列を含むgRNAをコードする。他の実施形態では、ポリヌクレオチド配列は、BCL11A調節エレメントとハイブリダイズする標的化配列を含むgRNAをコードする。場合によっては、BCL11A調節エレメントは、BCL11Aプロモーター又はエンハンサーである。場合によっては、BCL11A調節エレメントは、BCL11A転写開始部位の5’側、BCL11A転写開始の3’側、又はBCL11Aイントロン中に位置する。他の実施形態では、ポリヌクレオチド配列は、GATA1結合モチーフ配列の5’側に位置する配列とハイブリダイズする標的化配列を含むgRNAをコードする。他の実施形態では、ポリヌクレオチド配列は、GATA1結合モチーフ配列と重複する配列とハイブリダイズする標的化配列を含むgRNAをコードする。前述の特定の実施形態では、ポリヌクレオチド配列は、配列番号22を有する標的化配列を含むgRNAをコードする。場合によっては、BCL11A調節エレメントは、BCL11A遺伝子のイントロン中にある。他の場合では、BCL11A調節エレメントは、BCL11A遺伝子の5’UTRを含む。更に他の場合では、BCL11A調節エレメントは、BCL11A遺伝子の3’UTRを含む。
【0225】
他の実施形態では、本開示はドナー鋳型核酸を提供し、ドナー鋳型が、BCL11A標的核酸配列と相同性を有するヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態では、BCL11Aドナー鋳型は、CasX:gRNAシステムと併せて遺伝子編集を目的とし、BCL11A遺伝子の少なくとも一部を含む。他の実施形態では、BCL11Aドナー配列は、BCL11Aエキソンの少なくとも一部をコードする配列を含む。他の実施形態では、BCL11Aドナー鋳型は、BCL11Aイントロンの少なくとも一部をコードする配列を有する。他の実施形態では、BCL11Aドナー鋳型は、BCL11Aイントロン-エキソン接合部の少なくとも一部をコードする配列を有する。他の実施形態では、BCL11Aドナー鋳型は、BCL11A遺伝子の遺伝子間領域の少なくとも一部をコードする配列を有する。他の実施形態では、BCL11Aドナー鋳型は、BCL11A調節エレメントの少なくとも一部をコードする配列を有する。場合によっては、BCL11Aドナー鋳型は、配列番号100の少なくとも一部をコードする野生型配列である。他の場合では、BCL11Aドナー鋳型配列は、野生型BCL11A遺伝子と比較して、1つ以上の変異を含む。特定の実施形態では、ドナー鋳型は、GATA1結合モチーフ配列の一部又は全部をコードするが、野生型配列と比較して少なくとも1~5個の変異を有する配列を有する。前述の実施形態では、ドナー鋳型は、少なくとも10ヌクレオチド、少なくとも100ヌクレオチド、少なくとも200ヌクレオチド、少なくとも300ヌクレオチド、少なくとも400ヌクレオチド、少なくとも500ヌクレオチド、少なくとも600ヌクレオチド、少なくとも700ヌクレオチド、少なくとも800ヌクレオチド、少なくとも900ヌクレオチド、少なくとも1,000ヌクレオチド、少なくとも2,000ヌクレオチド、少なくとも3,000ヌクレオチド、少なくとも4,000ヌクレオチド、少なくとも5,000ヌクレオチド、少なくとも6,000ヌクレオチド、少なくとも7,000ヌクレオチド、少なくとも8,000ヌクレオチド、少なくとも9,000ヌクレオチド、少なくとも10,000ヌクレオチド、少なくとも12,000ヌクレオチド、又は少なくとも15,000ヌクレオチドである。いくつかの実施形態では、ドナー鋳型は、少なくとも約10~約15,000ヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態では、ドナー鋳型は、一本鎖DNA鋳型である。他の実施形態では、ドナー鋳型は、一本鎖RNA鋳型である。他の実施形態では、ドナー鋳型は、二本鎖DNA鋳型である。いくつかの実施形態では、ドナー鋳型は、BCL11A遺伝子を編集するための系において裸の核酸として提供することができ、ベクターに組み込む必要はない。他の実施形態では、ドナー鋳型をベクターに組み込んで(例えば、ウイルスベクターで)、細胞へのその送達を容易にすることができる。
【0226】
他の態様では、本開示は、本明細書に記載の実施形態のいずれかのCasXバリアント又はgRNA(その相同バリアントを含む)をコードするポリヌクレオチド配列を産生するための方法、並びにポリヌクレオチド配列によって発現されるタンパク質又は転写されるRNAを発現させるための方法に関する。一般に、本方法は、本明細書に記載の実施形態のいずれかのCasXバリアント又はgRNAをコードするポリヌクレオチド配列を産生することと、コード遺伝子を宿主細胞に適した発現ベクターに組み込むことと、を含む。分子生物学における標準的な組換え技術を使用して、本開示のポリヌクレオチド及び発現ベクターを作製することができる。本明細書に記載の実施形態のいずれかのコードされた参照CasX、CasXバリアント、又はgRNAの産生のために、本方法は、適切な宿主細胞をコードポリヌクレオチドを含む発現ベクターで形質転換することと、得られる本明細書に記載の実施形態のいずれかの参照CasX、CasXバリアント、又はgRNAが形質転換された宿主細胞において発現又は転写されることを引き起こすか又は可能にする条件下で宿主細胞を培養し、それによって、CasXバリアント又はgRNAを産生することと、を含み、それは、本明細書に記載される方法によって、又は当該技術分野で既知の標準的な精製方法によって、又は実施例に記載されるように回収される。
【0227】
本開示によれば、本明細書に記載の実施形態のいずれかのCasXバリアント又はgRNA(又はそれらの相補体)をコードする核酸配列を使用して、適切な宿主細胞における発現を指示する組換えDNA分子を生成する。いくつかのクローニング戦略が本開示を実施するのに好適であり、その多くは、本開示の組成物をコードする遺伝子又はその相補体を含む構築物を生成するために使用される。いくつかの実施形態では、クローニング戦略を使用して、組成物の発現のために宿主細胞を形質転換するために使用される、CasXバリアント又はgRNAをコードするヌクレオチドを含む構築物をコードする遺伝子を生成する。
【0228】
いくつかのアプローチでは、まず、CasXバリアント又はgRNAをコードするDNA配列を含む構築物が調製される。かかる構築物の調製のための例示的な方法は、実施例に記載されている。次いで、構築物を使用して、宿主細胞(例えば、CasX又はgRNAの場合、タンパク質構築物の発現及び回収のための原核宿主細胞又は真核宿主細胞)を形質転換するのに好適な発現ベクターを生成する。所望であれば、宿主細胞は、E.coliである。他の実施形態では、宿主細胞は、真核細胞である。真核宿主細胞は、ベビーハムスター腎線維芽細胞(Baby Hamster Kidney、BHK)細胞、ヒト胎児腎臓293(HEK293)、ヒト胎児腎臓293T(HEK293T)、NS0細胞、SP2/0細胞、YO骨髄腫細胞、P3X63マウス骨髄腫細胞、PER細胞、PER.C6細胞、ハイブリドーマ細胞、NIH3T3細胞、SV40遺伝物質を有するCV-1(サル)起源(COS)細胞、HeLa、チャイニーズハムスター卵巣(Chinese hamster ovary、CHO)、若しくは酵母細胞、又は組換え産物の産生に好適な当該技術分野で既知の他の真核細胞から選択することができる。発現ベクターの生成、宿主細胞の形質転換、並びにCasXバリアント又はgRNAの発現及び回収のための例示的な方法は、実施例に記載されている。
【0229】
CasXバリアント又はgRNA構築物をコードする遺伝子は、完全に合成的に、又は実施例でより詳細に記載される方法を含む、制限酵素媒介クローニング、PCR、及び重複伸長などの酵素プロセスと組み合わせた合成によって、1つ以上のステップで作製することができる。本明細書に開示される方法は、例えば、所望の配列の様々な成分(例えば、CasX及びgRNA)遺伝子をコードするポリヌクレオチドの配列をライゲーションするために使用することができる。ポリペプチド組成物をコードする遺伝子は、遺伝子合成の標準的な技術を使用して、オリゴヌクレオチドから構築される。
【0230】
いくつかの実施形態では、CasXタンパク質をコードするヌクレオチド配列は、意図された宿主細胞のためにコドン最適化される。このタイプの最適化は、同じCasXタンパク質をコードしながら、意図された宿主生物又は細胞のコドン選好性を模倣するために、コードヌクレオチド配列の変異を伴い得る。したがって、コドンを変化させることはできるが、コードされるタンパク質又はgRNAは変化しないままである。例えば、CasXタンパク質の意図された標的細胞がヒト細胞である場合、ヒトコドン最適化CasXコードヌクレオチド配列を使用することができる。別の非限定的な例として、意図された宿主細胞がマウス細胞である場合、マウスコドン最適化CasXコードヌクレオチド配列を生成することができる。遺伝子設計は、参照CasX又はCasXバリアントの産生において利用される宿主細胞に適切なコドン使用頻度及びアミノ酸組成を最適化するアルゴリズムを使用して行うことができる。本開示の1つの方法において、構築物の成分をコードするポリヌクレオチドのライブラリが作製され、次いで、上記のように構築される。次いで、本明細書に記載されるように、得られた遺伝子を組み立て、得られた遺伝子を使用して宿主細胞を形質転換し、その特性を評価するために、CasXバリアント又はgRNA組成物を産生及び回収する。
【0231】
本開示は、宿主細胞と適合し、宿主細胞によって認識され、ポリペプチドの制御された発現又はRNAの転写のためにポリペプチドをコードする遺伝子に作動可能に連結されている複製配列及び制御配列を含むプラスミド発現ベクターの使用を提供する。様々な細菌、酵母、及びウイルスについてのかかるベクター配列はよく知られている。使用され得る有用な発現ベクターには、例えば、染色体、非染色体、及び合成DNA配列のセグメントが含まれる。「発現ベクター」とは、好適な宿主においてポリペプチドをコードするDNAの発現をもたらすことができる好適な制御配列に作動可能に連結されているDNA配列を含むDNA構築物を指す。必要条件は、選択された宿主細胞において、ベクターが複製可能かつ生存可能であることである。低コピー数ベクター又は高コピー数ベクターを、所望に応じて使用することができる。ベクターの制御配列は、転写をもたらすプロモーター、かかる転写を制御する任意選択的なオペレーター配列、好適なmRNAリボソーム結合部位をコードする配列、並びに転写及び翻訳の終結を制御する配列を含む。いくつかの実施形態では、gRNAをコードするヌクレオチド配列は、制御エレメント(例えば、プロモーターなどの転写制御エレメント)に作動可能に連結される。いくつかの実施形態では、CasXタンパク質をコードするヌクレオチド配列は、制御エレメント(例えば、プロモーターなどの転写制御エレメント)に作動可能に連結される。他の場合では、CasX及びgRNAをコードするヌクレオチドは連結され、単一の制御エレメントに作動可能に連結される。プロモーターは、選択された宿主細胞において転写活性を示す任意のDNA配列であってもよく、宿主細胞に対して同種又は異種のいずれかのタンパク質をコードする遺伝子に由来してもよい。例示的な調節エレメントとしては、転写プロモーター、転写エンハンサーエレメント、転写終結シグナル、単一の転写物から複数の遺伝子の翻訳を可能にする内部リボソーム進入部位(IRES)又はP2Aペプチド、下流の転写終結を促進するポリアデニル化配列、翻訳の開始の最適化のための配列、及び翻訳終結配列が挙げられる。場合によっては、プロモーターは、構成的に活性なプロモーターである。場合によっては、プロモーターは、調節可能なプロモーターである。場合によっては、プロモーターは、誘導性プロモーターである。場合によっては、プロモーターは、組織特異的プロモーターである。場合によっては、プロモーターは、細胞型特異的プロモーターである。場合によっては、転写制御エレメント(例えば、プロモーター)は、標的化細胞型又は標的化細胞集団において機能的である。例えば、場合によっては、転写制御エレメントは、真核細胞(例えば、ウイルス又はXDPベクターのためのパッケージング細胞、造血幹細胞(HSC)、造血前駆細胞(HPC)、CD34+細胞、間葉系幹細胞(MSC)、胚性幹細胞(ES)、人工多能性幹細胞(iPSC)、骨髄系共通前駆細胞、前赤芽球細胞、及び赤芽球細胞)において機能的であり得る。
【0232】
pol IIプロモーターの非限定的な例としては、EF-1α、EF-1αコアプロモーター、Jens Tornoe(JeT)、サイトメガロウイルス(cytomegalovirus、CMV)由来のプロモーター、CMV最初期(CMV immediate early、CMVIE)、CMVエンハンサー、単純ヘルペスウイルス(HSV)チミジンキナーゼ、初期及び後期サルウイルス40(simian virus 40、SV40)、SV40エンハンサー、レトロウイルス由来の長鎖末端反復(long terminal repeat、LTR)、マウスメタロチオネイン-I、アデノウイルス主要後期プロモーター(adenovirus major late promoter、Ad MLP)、CMVプロモーター全長プロモーター、最小CMVプロモーター、ニワトリ
【0233】
【化1】
(CBA)、CBAハイブリッド(CBA hybrid、CBh)、サイトメガロウイルスエンハンサーを有するニワトリ
【0234】
【化2】
(CB7)、ニワトリβ-アクチンプロモーター及びウサギβ-グロビンスプライスアクセプター部位融合体(CAG)、ラウス肉腫ウイルス(rous sarcoma virus、RSV)プロモーター、HIV-Ltrプロモーター、hPGKプロモーター、HSV TKプロモーター、7SKプロモーター、Mini-TKプロモーター、ニューロン特異的発現を付与するヒトシナプシンI(SYN)プロモーター、β-アクチンプロモーター、スーパーコアプロモーター1(super core promoter 1、SCP1)、ニューロンにおける選択的発現のためのMecp2プロモーター、最小IL-2プロモーター、ラウス肉腫ウイルスエンハンサー/プロモーター(単一)、脾臓病巣形成ウイルス長鎖末端反復(LTR)プロモーター、TBGプロモーター、ヒトチロキシン結合グロブリン遺伝子由来のプロモーター(肝臓特異的)、PGKプロモーター、ヒトユビキチンCプロモーター(ubiquitin C、UBC)、UCOEプロモーター(HNRPA2B1-CBX3のプロモーター)、合成CAGプロモーター、ヒストンH2プロモーター、ヒストンH3プロモーター、U1a1核内低分子RNAプロモーター(226nt)、U1a1核内低分子RNAプロモーター(226nt)、U1b2核内低分子RNAプロモーター(246nt)26、GUSBプロモーター、CBhプロモーター、ロドプシン(rhodopsin、Rho)プロモーター、サイレンシングプローン脾臓病巣形成ウイルス(spleen focus forming virus、SFFV)プロモーター、ヒトH1プロモーター(H1)、POL1プロモーター、TTR最小エンハンサー/プロモーター、b-キネシンプロモーター、マウス乳がんウイルス長鎖末端反復(LTR)プロモーター、ヒト真核生物翻訳開始因子4A(eukaryotic initiation factor 4A、EIF4A1)プロモーター、ROSA26プロモーター、グリセルアルデヒド3-リン酸デヒドロゲナーゼ(glyceraldehyde 3-phosphate dehydrogenase、GAPDH)プロモーター、tRNAプロモーター、並びに前述の短縮型バージョン及び配列バリアントが挙げられるが、これらに限定されない。特定の実施形態では、pol IIプロモーターは、EF-1αであり、プロモーターが、トランスフェクション効率、CRISPRヌクレアーゼの導入遺伝子の転写又は発現、発現陽性クローンの割合、及び長期培養におけるエピソームベクターのコピー数を増強する。
【0235】
pol IIIプロモーターの非限定的な例としては、U6、ミニU6、U6短縮型プロモーター、7SK、及びH1バリアント、BiH1(双方向性H1プロモーター)、BiU6、Bi7SK、BiH1(双方向性U6、7SK、及びH1プロモーター)、ゴリラU6、アカゲザルU6、ヒト7SK、ヒトH1プロモーター、及びそれらの配列バリアントが挙げられるが、これらに限定されない。前述の実施形態では、pol IIIプロモーターは、gRNAの転写を増強する。
【0236】
適切なベクター及びプロモーターの選択は、発現の制御に関連するので(例えば、BCL11A遺伝子を改変するための)、十分に当業者のレベルの範囲内である。発現ベクターはまた、翻訳開始のためのリボソーム結合部位及び転写ターミネーターを含み得る。発現ベクターはまた、発現を増幅するための適切な配列を含み得る。発現ベクターはまた、CasXタンパク質に融合され得るタンパク質タグ(例えば、6×Hisタグ、赤血球凝集素タグ、蛍光タンパク質など)をコードするヌクレオチド配列を含み、したがって、精製又は検出のために使用されるキメラCasXタンパク質を得ることができる。
【0237】
本開示の組換え発現ベクターはまた、本開示のCasXタンパク質及びgRNAの強力な発現を促進するエレメントを含むことができる。例えば、組換え発現ベクターは、1つ以上のポリアデニル化シグナル(ポリ(A))、イントロン配列、又は転写後調節エレメント(例えば、ウッドチャック肝炎転写後調節エレメント(woodchuck hepatitis post-transcriptional regulatory element、WPRE))を含むことができる。例示的なポリ(A)配列としては、hGHポリ(A)シグナル(短鎖)、HSV TKポリ(A)シグナル、合成ポリアデニル化シグナル、SV40ポリ(A)シグナル、β-グロビンポリ(A)シグナルなどが挙げられる。当業者は、本明細書に記載の組換え発現ベクターに含まれる好適なエレメントを選択することができるであろう。
【0238】
いくつかの実施形態では、以下のうちの1つ以上を含む1つ以上の組換え発現ベクターが本明細書に提供される:(i)ドナー鋳型が標的核酸(例えば、標的ゲノム)の標的BCL11A遺伝子座の配列と相同性を有するヌクレオチド配列を含む、ドナー鋳型核酸のヌクレオチド配列、(ii)真核細胞などの標的細胞において作動可能であるプロモーターに作動可能に連結された標的ゲノムのBCL11A遺伝子座の標的配列にハイブリダイズする(例えば、シングル又はデュアルガイドRNAとして構成される)、gRNAをコードするヌクレオチド配列、及び(iii)真核細胞などの標的細胞において作動可能であるプロモーターに作動可能に連結された、CasXタンパク質をコードするヌクレオチド配列。いくつかの実施形態では、ドナー鋳型、gRNA、及びCasXタンパク質をコードする配列は、異なる組換え発現ベクター中にあり、他の実施形態では、1つ以上の(ドナー鋳型、CasX、及びgRNAの)ポリヌクレオチド配列は、同じ組換え発現ベクター中にある。他の場合では、CasX及びgRNAが、RNPとして標的細胞に送達され(例えば、エレクトロポレーション又は化学的手段によって)、ドナー鋳型が、ベクターによって送達される。
【0239】
ポリヌクレオチド配列は、様々な手順によってベクターに挿入される。一般に、DNAは、当該技術分野で既知の技術を使用して、適切な制限エンドヌクレアーゼ部位に挿入される。ベクター成分としては、一般に、シグナル配列、複製起点、1つ以上のマーカー遺伝子、エンハンサーエレメント、プロモーター、及び転写終結配列のうちの1つ以上が挙げられるが、これらに限定されない。これらの成分のうちの1つ以上を含む好適なベクターの構築は、当業者に既知の標準的なライゲーション技術を使用する。かかる技術は、当該技術分野で周知であり、科学文献及び特許文献に詳細に記載されている。様々なベクターが公的に入手可能である。ベクターは、例えば、組換えDNA手順に都合よく供され得るプラスミド、コスミド、ウイルス粒子、又はファージの形態であり得、ベクターの選択は、しばしば、ベクターが導入される宿主細胞に依存する。したがって、ベクターは、自律複製ベクター、すなわち、染色体外実体として存在し、その複製が染色体複製とは独立しているベクター(例えば、プラスミド)であってもよい。代替的に、ベクターは、宿主細胞に導入された場合、宿主細胞ゲノムに組み込まれ、それが組み込まれた染色体と一緒に複製されるものであってもよい。好適な宿主細胞に導入されると、抗原プロセシング、抗原提示、抗原認識、及び/又は抗原応答に関与するタンパク質の発現は、当該技術分野で既知の任意の核酸アッセイ又はタンパク質アッセイを使用して決定され得る。例えば、参照CasX又はCasXバリアントの転写されたmRNAの存在は、ポリヌクレオチドの任意の領域に相補的なプローブを使用して、従来のハイブリダイゼーションアッセイ(例えば、ノーザンブロット分析)、増幅手順(例えば、RT-PCR)、SAGE(米国特許第5,695,937号)、及びアレイベース技術(例えば、米国特許第5,405,783号、同第5,412,087号、及び同第5,445,934号を参照)によって検出及び/又は定量化され得る。
【0240】
ポリヌクレオチド及び組換え発現ベクターは、様々な方法によって標的宿主細胞に送達することができる。かかる方法としては、ウイルス感染、トランスフェクション、リポフェクション、エレクトロポレーション、リン酸カルシウム沈殿、ポリエチレンイミン(PEI)媒介性トランスフェクション、DEAE-デキストラン媒介性トランスフェクション、マイクロインジェクション、リポソーム媒介性トランスフェクション、パーティクルガン技術、ヌクレオフェクション、ドナーDNAに融合された若しくはそれを動員する細胞透過性CasXタンパク質による直接添加、細胞圧搾、リン酸カルシウム沈殿、直接マイクロインジェクション、ナノ粒子媒介性核酸送達、並びにQiagenから市販されているTransMessenger(登録商標)試薬、StemgentからのStemfectTM RNAトランスフェクションキット、及びMirus Bio LLCからのTransIT(登録商標)-mRNAトランスフェクションキット、Lonzaヌクレオフェクション、Maxagenエレクトロポレーションなどを使用することが挙げられるが、これらに限定されない。
【0241】
組換え発現ベクター配列は、その後のエクスビボ、インビトロ、又はインビボでの細胞の感染及び形質転換のために、ウイルス又はウイルス様粒子(本明細書では「粒子」又は「ビリオン」とも称される)にパッケージングされ得る。かかる粒子又はビリオンは、典型的には、ベクターゲノムをカプシド化又はパッケージングするタンパク質を含む。好適な発現ベクターとしては、以下に基づくウイルス発現ベクターが挙げられ得る:ワクシニアウイルス;ポリオウイルス;アデノウイルス;レトロウイルスベクター(例えば、マウス白血病ウイルス)、脾臓壊死ウイルス、並びにレトロウイルス(例えば、ラウス肉腫ウイルス、ハーベイ肉腫ウイルス、トリ白血病ウイルス、レンチウイルス、ヒト免疫不全ウイルス、骨髄増殖性肉腫ウイルス、及び乳がんウイルス)に由来するベクターなど。いくつかの実施形態では、本開示の組換え発現ベクターは、組換えアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターである。いくつかの実施形態では、本開示の組換え発現ベクターは、組換えレンチウイルスベクターである。いくつかの実施形態では、本開示の組換え発現ベクターは、組換えレトロウイルスベクターである。
【0242】
いくつかの実施形態では、本開示の組換え発現ベクターは、組換えアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターである。いくつかの実施形態では、本開示の組換え発現ベクターは、組換えレンチウイルスベクターである。いくつかの実施形態では、本開示の組換え発現ベクターは、組換えレトロウイルスベクターである。
【0243】
AAVは、対象に投与するために調製される細胞のためにインビボ又はエクスビボのいずれかで、真核細胞などの細胞への送達のためにウイルスベクターを用いる状況において、ヒト疾患を治療するのに有用である小さな(20nm)非病原性ウイルスである。構築物(例えば、本明細書に記載される実施形態のCasXタンパク質及び/又はCasX gRNAのいずれかをコードする構築物)が生成され、AAV逆位末端反復(ITR)配列に隣接し、それによって、AAVベクターのAAVウイルス粒子へのパッケージングが可能になる。
【0244】
「AAV」ベクターは、天然に存在する野生型ウイルス自体又はその誘導体を指し得る。この用語は、別途必要とされる場合を除いて、全てのサブタイプ、血清型、及び偽型、並びに天然に存在する形態及び組換え形態の両方を包含する。本明細書で使用される場合、「血清型」という用語は、規定の抗血清とのカプシドタンパク質の反応性に基づいて他のAAVによって同定されかつそれと区別されるAAVを指す。例えば、霊長類AAVの多くの既知の血清型が存在する。いくつかの実施形態では、AAVベクターは、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、AAV12、AAV44.9、AAV-Rh74(アカゲザル由来AAV)、及びAAVRh10、並びにこれらの血清型の改変カプシドから選択される。例えば、血清型AAV-2は、AAV-2のcap遺伝子からコードされるカプシドタンパク質と、同じAAV-2血清型由来の5’及び3’ITR配列を含むゲノムと、を含むAAVを指すために使用される。偽型AAVは、1つの血清型由来のカプシドタンパク質と、第2の血清型の5’-3’ITRを含むウイルスゲノムと、を含むAAVを指す。偽型rAAVは、カプシド血清型の細胞表面結合特性と、ITR血清型と一致する遺伝的特性と、を有することが予想される。偽型組換えAAV(rAAV)は、当該技術分野で記載される標準的な技術を使用して産生される。本明細書で使用される場合、例えば、rAAV1は、同じ血清型由来のカプシドタンパク質及び5’-3’ITRの両方を有するAAVを指すために使用され得るか、又はそれは、血清型1由来のカプシドタンパク質及び異なるAAV血清型(例えば、AAV血清型2)由来の5’-3’ITRを有するAAVを指し得る。本明細書に例示される各実施例について、ベクター設計及び産生の記載は、カプシド及び5’-3’ITR配列の血清型を記載する。
【0245】
「AAVウイルス」又は「AAVウイルス粒子」は、少なくとも1つのAAVカプシドタンパク質(好ましくは野生型AAVのカプシドタンパク質の全てによるもの)と、カプシド化されたポリヌクレオチドと、から構成されるウイルス粒子を指す。粒子が異種ポリヌクレオチド(すなわち、哺乳動物細胞に送達される野生型AAVゲノム以外のポリヌクレオチド)を更に含む場合、それは、典型的には「rAAV」と称される。例示的な異種ポリヌクレオチドは、本明細書に記載の実施形態のいずれかのCasXタンパク質及び/又はsgRNA、並びに任意選択的にドナー鋳型を含むポリヌクレオチドである。
【0246】
「アデノ随伴ウイルス逆位末端反復」又は「AAV ITR」とは、AAVゲノムの各末端に見出される当該技術分野で認識される領域を意味し、これは、DNAの複製起点として及びウイルスのパッケージングシグナルとして、シスで一緒に機能する。AAV ITRは、AAV repコード領域とともに、哺乳動物細胞ゲノムからの効率的な切除及び救出、並びに哺乳動物細胞ゲノムへの2つの隣接ITR間に挿入されたヌクレオチド配列の組み込みを提供する。AAV ITR領域のヌクレオチド配列は既知である。例えば、Kotin,R.M.(1994)Human Gene Therapy 5:793-801;Berns,K.I.「Parvoviridae and their Replication」in Fundamental Virology,2nd Edition,(B.N.Fields and D.M.Knipe,eds.)を参照されたい。本明細書で使用される場合、AAV ITRは、示された野生型ヌクレオチド配列を有する必要はないが、例えば、ヌクレオチドの挿入、欠失、又は置換によって改変され得る。追加的に、AAV ITRは、いくつかのAAV血清型(AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV-Rh74、及びAAVRh10が挙げられるが、これらに限定されない)、並びにこれらの血清型の改変カプシドのうちのいずれかに由来し得る。更に、AAVベクターにおける選択されたヌクレオチド配列に隣接する5’及び3’ITRは、それらが意図されるように機能する(すなわち、宿主細胞ゲノム又はベクターからの目的の配列の切除及び救出を可能にし、かつAAV Rep遺伝子産物が細胞に存在する場合、レシピエント細胞のゲノムへの異種配列の組み込みを可能にする)限り、必ずしも同一である必要はないか、又は同じAAV血清型若しくは分離株に由来する必要はない。宿主細胞への異種配列の組み込みのためのAAV血清型の使用は、当該技術分野において既知である(例えば、参照により本明細書に援用される、国際公開第2018/195555号(A1)及び米国特許出願公開第組み込2018/0258424号(A1)を参照)。
【0247】
「AAV repコード領域」とは、複製タンパク質であるRep78、Rep68、Rep52、及びRep40をコードするAAVゲノムの領域を意味する。これらのRep発現産物は、AAVのDNA複製起点の認識、結合、及びニッキング、DNAヘリカーゼ活性、並びにAAV(又は他の異種)プロモーターからの転写の調節を含む多くの機能を有することが示されている。Rep発現産物は、まとめて、AAVゲノムを複製するために必要とされる。「AAV capコード領域」とは、カプシドタンパク質であるVP1、VP2、及びVP3、又はそれらの機能的ホモログをコードするAAVゲノムの領域を意味する。これらのCap発現産物は、まとめて、ウイルスゲノムをパッケージングするために必要とされるパッケージング機能を供給する。
【0248】
いくつかの実施形態では、CasX及びgRNA、並びに任意でDMPKドナー鋳型ヌクレオチドのコード配列を宿主細胞に送達するために利用されるAAVカプシドは、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、AAV12、AAV44.9、AAV-Rh74(アカゲザル由来AAV)、及びAAVRh10を含むがこれらに限定されないいくつかのAAV血清型のいずれかに由来することができ、AAV ITRはAAV血清型2に由来する。特定の実施形態では、AAV1、AAV7、AAV6、AAV8、又はAAV9は、CasX、gRNA、及び任意選択的にドナー鋳型ヌクレオチドの宿主筋細胞への送達のために利用される。
【0249】
rAAVウイルス粒子を産生するために、AAV発現ベクターは、既知の技術(例えば、トランスフェクション)を使用して好適な宿主細胞に導入される。パッケージング細胞は、典型的には、ウイルス粒子を形成するために使用される。かかる細胞には、アデノウイルスをパッケージングするHEK293細胞(及び当該技術分野で既知の他の細胞)が含まれる。多くのトランスフェクション技術が当該技術分野で一般的に既知である。例えば、Sambrook et al.(1989)Molecular Cloning,a laboratory manual,Cold Spring Harbor Laboratories,New Yorkを参照されたい。特に好適なトランスフェクション方法としては、リン酸カルシウム共沈殿、培養細胞への直接マイクロインジェクション、エレクトロポレーション、リポソーム媒介性遺伝子導入、脂質媒介性形質導入、及び高速微粒子銃を使用する核酸送達が挙げられる。
【0250】
本開示のrAAV構築物の利点では、より小さいサイズのCRISPR V型ヌクレアーゼ(例えば、本実施形態のCasX)は、単一のrAAV粒子が、全ての必要な編集及び補助的発現成分を、標的細胞の標的核酸を効果的に改変することができるCRISPRヌクレアーゼ及びgRNAの発現をもたらす形態で標的細胞に送達及び形質導入することができるように、これら成分を導入遺伝子に含めることを可能にする。このような構築物の代表的な概略図を、
図13に示す。これは、Cas9などの他のCRISPRシステムとは著しく対照的であり、典型的には、二粒子システムを用いて、必要な編集成分を標的細胞に送達する。したがって、rAAVシステムのいくつかの実施形態では、本開示は、i)ITR、CasXバリアントをコードする配列、1つ以上のgRNAをコードする配列、CasXに作動可能に連結された第1のプロモーター及びgRNAに作動可能に連結された第2のプロモーター、並びに任意選択的に1つ以上のエンハンサーエレメントを含む、第1のプラスミド、ii)rep及びcap遺伝子を含む、第2のプラスミド、並びにiii)ヘルパー遺伝子を含む、第3のプラスミド、を提供し、適切なパッケージング細胞のトランスフェクション時、細胞が、CasXヌクレアーゼを発現することができる配列及び標的細胞の標的核酸を編集する能力を有するgRNAを単一粒子で標的細胞に送達する能力を有するrAAVを産生することができる。rAAVシステムのいくつかの実施形態では、CRISPRタンパク質をコードする配列及び少なくとも第1のgRNAをコードする配列は、約3100未満、約3090未満、約3080未満、約3070未満、約3060未満、約3050未満、又は約3040未満のヌクレオチド長であり、それにより、第1のプロモーター及び第2のプロモーター並びに任意選択的に1つ以上のエンハンサーエレメントをコードする配列が、合わせて、少なくとも約1300、少なくとも約1350、少なくとも約1360、少なくとも約1370、少なくとも約1380、少なくとも約1390、少なくとも約1400、少なくとも約1500、少なくとも約1600ヌクレオチド、少なくとも1650、少なくとも約1700、少なくとも約1750、少なくとも約1800、少なくとも約1850、又は少なくとも約1900ヌクレオチド長を有することができる。rAAVシステムのいくつかの実施形態では、第1及のプロモーター及び少なくとも1つのアクセサリエレメントをコードする配列は、合わせて、少なくとも約1300、少なくとも約1350、少なくとも約1360、少なくとも約1370、少なくとも約1380、少なくとも約1390、少なくとも約1400、少なくとも約1500、少なくとも約1600ヌクレオチド、少なくとも1650、少なくとも約1700、少なくとも約1750、少なくとも約1800、少なくとも約1850、又は少なくとも約1900超のヌクレオチド長を有する。rAAVシステムのいくつかの実施形態では、第1及び第2のプロモーター並びに少なくとも1つのアクセサリエレメントをコードする配列は、合わせて、少なくとも約1300、少なくとも約1350、少なくとも約1360、少なくとも約1370、少なくとも約1380、少なくとも約1390、少なくとも約1400、少なくとも約1500、少なくとも約1600ヌクレオチド、少なくとも1650、少なくとも約1700、少なくとも約1750、少なくとも約1800、少なくとも約1850、又は少なくとも約1900超のヌクレオチド長を有する。
【0251】
いくつかの実施形態では、上記のAAV発現ベクターでトランスフェクトされた宿主細胞は、AAV ITRに隣接するヌクレオチド配列を複製及びカプシド化してrAAVウイルス粒子を産生するために、AAVヘルパー機能を提供することができるようにされる。AAVヘルパー機能は、一般に、AAV由来コード配列であり、これが発現してAAV遺伝子産物を提供し、それは次に、生産的なAAV複製のためにトランスで機能することができる。AAVヘルパー機能は、本明細書において、AAV発現ベクターに欠けている必要なAAV機能を補完するために使用される。したがって、AAVヘルパー機能は、rep及びcapのコード領域をコードする主要なAAV ORF(オープンリーディングフレーム)の一方又は両方、又はその機能的ホモログを含む。アクセサリ機能は、当業者に既知の方法を使用して宿主細胞に導入され、次いで、宿主細胞で発現され得る。通常、アクセサリ機能は、無関係なヘルパーウイルスによる宿主細胞の感染によって提供される。いくつかの実施形態では、アクセサリ機能は、アクセサリ機能ベクターを使用して提供される。利用される宿主/ベクター系に依存して、構成的プロモーター及び誘導性プロモーター、転写エンハンサーエレメント、転写ターミネーターなどを含むいくつかの好適な転写及び翻訳制御エレメントのいずれかが、発現ベクターにおいて使用され得る。いくつかの実施形態では、本開示は、本明細書に開示される実施形態のAAVベクターを含む宿主細胞を提供する。
【0252】
他の実施形態では、好適なベクターは、ウイルス様粒子(virus-like particle、VLP)を含み得る。ウイルス様粒子(VLP)は、ウイルスに非常に似ているが、ウイルス性遺伝物質を含まず、したがって、非感染性である粒子である。いくつかの実施形態では、VLPは、1つ以上のウイルス構造タンパク質とともにパッケージングされた、目的の導入遺伝子(例えば、実施形態のCasXタンパク質及び/又はgRNAのいずれか)をコードするポリヌクレオチド、並びに任意選択的に本明細書に記載のドナー鋳型ポリヌクレオチドを含む。他の実施形態では、本開示は、インビトロで産生されたXDPを提供し、CasX:gRNA RNP複合体と、任意選択的に、ドナー鋳型と、を含む。異なるウイルス由来の構造タンパク質の組み合わせを使用して、XDPsを作製することができる。それには、パルボウイルス科(例えば、アデノ随伴ウイルス)、レトロウイルス科(例えば、アルファレトロウイルス、ベータレトロウイルス、ガンマレトロウイルス、デルタレトロウイルス、イプシロンレトロウイルス、又はレンチウイルス)、フラビウイルス科(例えば、C型肝炎ウイルス)、パラミクソウイルス科(例えば、Nipah)、及びバクテリオファージ(例えば、Qβ、AP205)を含むウイルス科由来の成分が含まれる。いくつかの実施形態では、本開示は、レトロウイルス(レンチウイルス(HIVなど)及びアルファレトロウイルス、ベータレトロウイルス、ガンマレトロウイルス、デルタレトロウイルス、イプシロンレトロウイルスを含む)の成分を使用して設計されたXDPシステムを提供し、様々な成分をコードするポリヌクレオチドを含む個々のプラスミドが、パッケージング細胞に導入され、これが次に、XDPを産生する。いくつかの実施形態、本開示は、i)プロテアーゼ、ii)プロテアーゼ切断部位、iii)以下から選択されるgagポリタンパク質の1つ以上の成分:マトリックスタンパク質(matrix protein、MA)、ヌクレオカプシドタンパク質(nucleocapsid protein、NC)、カプシドタンパク質(capsid protein、CA)、p1ペプチド、p6ペプチド、P2Aペプチド、P2Bペプチド、P10ペプチド、p12ペプチド、PP21/24ペプチド、P12/P3/P8ペプチド、及びP20ペプチド、v)CasX、vi)gRNA、並びにvi)標的化糖タンパク質又は抗体断片、のうちの1つ以上の成分を含むXDPを提供し、得られたXDP粒子が、CasX:gRNA RNPをカプシド化する。Gag、CasX、及びgRNAをコードするポリヌクレオチドは、宿主細胞の核から出芽XDPへの成分の輸送を補助するように設計された対の成分を更に含み得る。かかる輸送成分の非限定的な例としては、MS2ヘアピン、PP7ヘアピン、Qβヘアピン、並びにそれぞれMS2コートタンパク質、PP7コートタンパク質、Qβコートタンパク質に対する結合親和性を有するU1ヘアピンII及びU1Aシグナル認識粒子が挙げられる。他の実施形態では、gRNAは、Rev応答エレメント(Rev response element、RRE)又はRevに対する結合親和性を有するその部分を含むことができ、これはGagポリタンパク質に連結することができる。他の実施形態では、gRNAは、1つ以上のRREと、1つ以上のMS2ヘアピン配列と、を含むことができる。他の実施形態では、gRNAは、Rev応答エレメント(RRE)又はRevに対する結合親和性を有するその部分を含むことができ、これはGagポリタンパク質に連結することができる。RREは、Rev応答エレメント(RRE)のステムIIB、RREのステムII~V、RREのステムII、ステムIIBのRev結合エレメント(Rev-binding element、RBE)、及び全長RREからなる群から選択され得る。前述の実施形態では、成分には、UGGGCGCAGCGUCAAUGACGCUGACGGUACA(ステムIIB;配列番号27266)、GCACUAUGGGCGCAGCGUCAAUGACGCUGACGGUACAGGCCAGACAAUUAUUGUCUGGUAUAGUGC(ステムII;配列番号27267)、GCUGACGGUACAGGC(RBE、配列番号27268)、CAGGAAGCACUAUGGGCGCAGCGUCAAUGACGCUGACGGUACAGGCCAGACAAUUAUUGUCUGGUAUAGUGCAGCAGCAGAACAAUUUGCUGAGGGCUAUUGAGGCGCAACAGCAUCUGUUGCAACUCACAGUCUGGGGCAUCAAGCAGCUCCAGGCAAGAAUCCUG(ステムII-V;配列番号27269)、及びAGGAGCUUUGUUCCUUGGGUUCUUGGGAGCAGCAGGAAGCACUAUGGGCGCAGCGUCAAUGACGCUGACGGUACAGGCCAGACAAUUAUUGUCUGGUAUAGUGCAGCAGCAGAACAAUUUGCUGAGGGCUAUUGAGGCGCAACAGCAUCUGUUGCAACUCACAGUCUGGGGCAUCAAGCAGCUCCAGGCAAGAAUCCUGGCUGUGGAAAGAUACCUAAAGGAUCAACAGCUCCU(全長RRE;配列番号27270)の配列が含まれる。他の実施形態では、gRNAは、1つ以上のRREと、1つ以上のMS2ヘアピン配列と、を含むことができる。特定の実施形態では、gRNAは、MS2コートタンパク質に対する結合親和性を増加させ、それによって、出芽XDPへのgRNA及び関連するCasXの組み込みを増強するように最適化されたMS2ヘアピンバリアントを含む。MS2ヘアピンバリアントを含むgRNAバリアントには、gRNAバリアント275~315及び317~320(配列番号2722~27264)が含まれる。
【0253】
表面上の標的化糖タンパク質又は抗体断片は、標的細胞へのXDPのトロピズムを提供し、標的細胞への投与及び侵入の際、RNP分子が、細胞の核内に自由に輸送される。エンベロープ糖タンパク質は、XDPにトロピズムを付与することが当該技術分野で既知である任意の以下のエンベロープウイルスに由来し得る:限定するものではないが、アルゼンチン出血熱ウイルス、オーストラリアコウモリウイルス、Autographa californica核多角体病ウイルス、トリ白血病ウイルス、ヒヒ内在性ウイルス、ボリビア出血熱ウイルス、ボルナ病ウイルス、ブレダウイルス、ブニヤムウェラウイルス、チャンディプラウイルス、チクングニアウイルス、クリミア・コンゴ出血熱ウイルス、デング熱ウイルス、ドゥベンヘイグウィルス、東部ウマ脳炎ウイルス、エボラ出血熱ウイルス、エボラ・ザイールウイルス、腸管アデノウイルス、エフェメロウイルス、エプスタイン・バーウイルス(Epstein-Bar viru、EBV)、ヨーロッパコウモリウイルス1、ヨーロッパコウモリウイルス2、Fug合成gP融合体、テナガザル白血病ウイルス、ハンタウイルス、ヘンドラウイルス、A型肝炎ウイルス、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、D型肝炎ウイルス、E型肝炎ウイルス、G型肝炎ウイルス(GBウイルスC)、単純ヘルペスウイルス1型、単純ヘルペスウイルス2型、ヒトサイトメガロウイルス(human cytomegalovirus、HHV5)、ヒト泡沫状ウイルス、ヒトヘルペスウイルス(human herpesvirus、HHV)、ヒトヘルペスウイルス7型、ヒトヘルペスウイルス6型、ヒトヘルペスウイルス8型、ヒト免疫不全ウイルス1型(human immunodeficiency virus 1、HIV-1)、ヒトメタニューモウイルス、ヒトTリンパ球向性ウイルス1、インフルエンザA型ウイルス、インフルエンザB型ウイルス、インフルエンザC型ウイルス、日本脳炎ウイルス、カポジ肉腫関連ヘルペスウイルス(Kaposi’s sarcoma-associated herpesvirus、HHV8)、キャサヌール森林病ウイルス、ラクロスウイルス、ラゴスコウモリウイルス、ラッサ熱ウイルス、リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス(lymphocytic choriomeningitis virus、LCMV)、マチュポウイルス、マールブルグ出血熱ウイルス、麻疹ウイルス、中東呼吸器症候群関連コロナウイルス、モコラウイルス、モロニーマウス白血病ウイルス、サル痘、マウス乳がんウイルス、おたふく風邪ウイルス、マウスガンマヘルペスウイルス、ニューカッスル病ウイルス、ニパウイルス、ニパウイルス、ノーウォークウイルス、オムスク出血熱ウイルス、パピローマウイルス、パルボウイルス、仮性狂犬病ウイルス、クアランフィルウイルス、狂犬病ウイルス、RD114ネコ内在性レトロウイルス、呼吸器合胞体ウイルス(RSV)、リフトバレー熱ウイルス、ロスリバーウイルス、rロタウイルス、ラウス肉腫ウイルス、風疹ウイルス、サビア関連出血熱ウイルス、SARS関連コロナウイルス(SARS-associated coronavirus、SARS-CoV)、センダイウイルス、タカリベウイルス、ソゴトウイルス、ダニ媒介性脳炎原因ウイルス、水痘帯状疱疹ウイルス(varicella zoster virus、HHV3)、水痘帯状疱疹ウイルス(HHV3)、大痘瘡ウイルス、小痘瘡ウイルス、ベネズエラウマ脳炎ウイルス、ベネズエラ出血熱ウイルス、水疱性口内炎ウイルス(vesicular stomatitis virus、VSV)、VSV-G、ベシクロウイルス、西ナイルウイルス、西部ウマ脳炎ウイルス、及びジカウイルス。
【0254】
他の実施形態では、本開示は、前述のXDPを提供し、polポリタンパク質の1つ以上の成分(例えば、プロテアーゼ)、及び任意選択的に、第2のCasX又はドナー鋳型を更に含む。本開示は、コード化された成分のいくつかの複製を含む、コード化された成分の配置の複数の構成を企図する。前述のことは、分裂細胞及び非分裂細胞へのウイルス形質導入が効率的であり、XDPが、さもなければ外来タンパク質を検出する対象の免疫監視機構を回避する強力で短寿命のRNPを送達するという点で、当該技術分野における他のベクターに対する利点を提供する。非限定的な例示的なXDP系は、国際出願PCT/US20/63488号及び国際公開第2021/113772号(A1)に記載されている(参照により本明細書に援用される)。いくつかの実施形態では、本開示は、前述のXDPの実施形態のいずれかをコードするポリヌクレオチド又はベクターを含む宿主細胞を提供する。
【0255】
本明細書に記載の実施形態のいずれかのCasX:gRNA RNPを含むXDPを生成及び回収する際、XDPは、以下でより詳細に記載されるように、かかるXDPの投与によって対象の標的細胞を編集するための方法において使用され得る。
【0256】
VII.細胞
別の態様では、本明細書に記載のシステム又は方法のいずれかの実施形態によってエクスビボで改変されたBCL11A遺伝子を含む細胞集団が本明細書に提供される。いくつかの実施形態では、このように遺伝子改変された細胞は、遺伝子療法などの目的のために対象に投与され得る。例えば、鎌状赤血球症又はβサラセミアなどの異常ヘモグロビン症関連疾患の治療方法において、投与は、対象におけるγ-グロビンの発現の増加及び胎児型ヘモグロビン(fetal hemoglobin、HbF)の増加をもたらす。他の実施形態では、本開示は、異常ヘモグロビン症関連疾患の治療における医薬品として使用するための改変細胞の組成物を提供する。
【0257】
クラス2、V型Casヌクレアーゼ及びBCL11A標的核酸を標的化する1つ以上のガイドによるBCL11A遺伝子のエクスビボ改変に好適な本開示の細胞は、造血前駆細胞(HPC)、造血幹細胞(HSC)、CD34+細胞、間葉系幹細胞(MSC)、人工多能性幹細胞(iPSC)、骨髄系共通前駆細胞、前赤芽球細胞、又は赤芽球細胞であり得る。いくつかの実施形態では、改変される細胞集団は、動物細胞である。例えば、げっ歯類、ラット、マウス、ウサギ、イヌ細胞、又は非ヒト霊長類細胞(例えば、カニクイザル細胞)に由来する。いくつかの実施形態では、細胞は、ヒト細胞である。場合によっては、改変される細胞は、細胞を投与される対象に対して自己由来である。他の場合では、細胞は、細胞を投与される対象に対して同種である。場合によっては、エクスビボ細胞は、対象の骨髄又は末梢血から単離される。
【0258】
いくつかの実施形態では、本開示は、各細胞集団に、i)本明細書に記載の実施形態のいずれか1つのCasX及びgRNAを含むCasX:gRNAシステム、ii)本明細書に記載の実施形態のいずれか1つのCasX、gRNA、及びドナー鋳型を含むCasX:gRNAシステム、iii)CasX及びgRNAをコードし、任意選択的にドナー鋳型を含む核酸、iv)本明細書に記載の実施形態のいずれかのAAVであり得る、上記の(iii)の核酸を含むベクター、v)本明細書に記載の実施形態のいずれか1つのCasX:gRNAシステムを含むXDP、又はvi)(i)~(v)のうちの2つ以上の組み合わせ、を導入する方法及びそれによって改変された細胞集団を提供し、gRNAによって標的化される細胞のBCL11A標的核酸配列が、CasXタンパク質及び任意選択的にドナー鋳型によって改変される。いくつかの実施形態では、本方法は、第2のgRNA又は第2のgRNAをコードする核酸を投与することを更に含み、第2のgRNAが、第1のgRNAと比較して、標的核酸配列の異なる部分又は重複する部分に相補的な標的化配列を有する。場合によっては、CasX及びgRNAは、RNP(その実施形態は、本明細書において上に記載されている)及び任意選択的にドナー鋳型として、細胞集団に送達される。いくつかの実施形態では、本開示は、改変された細胞の少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、又は少なくとも95%が検出可能なレベルのBCL11Aタンパク質を発現しないように細胞が改変されている、前述の方法によって改変された細胞集団を提供する。他の実施形態では、本開示は、BCL11Aタンパク質の発現が、改変されていない細胞と比較して、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、又は少なくとも95%減少するように、細胞が改変されている細胞集団を提供する。更に他の実施形態では、本開示は、BCL11Aタンパク質の発現が、改変された細胞集団において検出され得ない、細胞集団を提供する。改変の効果は、ウェスタンブロット、フローサイトメトリー、ELISA、細胞ベースのアッセイ、qRT-PCR、電気化学発光アッセイによって評価され得、センス転写物は、RNA蛍光インサイツハイブリダイゼーション(fluorescence in situ hybridization、FISH)アッセイ、又は当該技術分野で既知の他の方法、又は実施例に記載されている他の方法によって分析され得る。
【0259】
いくつかの実施形態では、本開示は、インビトロ又はエクスビボの方法によって細胞集団においてBCL11A標的核酸を改変する方法を提供する。本方法は、当業者に既知の任意の数の技術を使用して、対象から細胞を得ることができることを提供する(例えば、骨髄の生検又は末梢血の試料を得ることによって)。所望の細胞を、試料の残りから分離し、洗浄して、流体及びデブリを除去し、任意選択的に、その後の処理ステップのために適切な緩衝液又は培地に入れてもよい。本方法は、以下のうちの1つ以上のステップを含み得る:i)標的核酸を編集するためのCasX:gRNAシステム成分を細胞に導入するステップ、ii)CasX:gRNAシステム成分を細胞にコードする核酸又はベクターを細胞に導入するステップ、iii)細胞を、それらの増殖に好適な条件下で、好適な培地で増殖させるステップ、及びiv)細胞を、その後の対象への投与のために凍結保存するステップ。したがって、本明細書に記載のCasX:gRNAシステム及び方法を使用して、異常ヘモグロビン症に関連する様々な細胞を改変して、BCL11Aタンパク質の発現が低減又は排除され、かつHbFが増加している細胞集団を産生することができる。したがって、このアプローチは、とりわけ鎌状赤血球貧血又はβサラセミアなどの異常ヘモグロビン症を有する対象における治療方法に使用することができる。場合によっては、細胞を、gRNAがガイドRNA(gRNA)である、CasX及びgRNAと接触させる。他の場合では、細胞を、gRNAがDNA及びRNAを含むキメラである、CasX及びgRNAと接触させる。本明細書に記載されるように、任意の組み合わせ(sgRNA又はdgRNAとして構成され得る足場及び標的化配列の組み合わせ)の実施形態では、当該gRNA分子の各々は、改変される細胞への組み込みのために、本明細書に記載の実施形態のCasXを有するRNPとして提供され得る。一実施形態では、細胞の標的核酸は、細胞を、CasXタンパク質、BCL11A標的核酸に相補的な標的化配列を含むガイド核酸(gRNA)、及びドナー鋳型と接触させることによって、改変され、BCL11Aタンパク質が発現されないか又は減少したレベルで発現されるように、ドナー鋳型が、細胞の標的核酸配列の一部に挿入されるか又はそれを置換する。他の場合では、ベクターにおけるCasX及びgRNAが、細胞集団に送達され(その実施形態は、本明細書において上に記載されている)、標的核酸は、BCL11Aタンパク質が発現されないか又は減少したレベルで発現されるように改変される。
【0260】
いくつかの実施形態では、細胞集団が、表4の配列又はそれと少なくとも65%同一、少なくとも70%同一、少なくとも75%同一、少なくとも80%同一、少なくとも81%同一、少なくとも82%同一、少なくとも83%同一、少なくとも84%同一、少なくとも85%同一、少なくとも86%同一、少なくとも86%同一、少なくとも87%同一、少なくとも88%同一、少なくとも89%同一、少なくとも89%同一、少なくとも90%同一、少なくとも91%同一、少なくとも92%同一、少なくとも93%同一、少なくとも94%同一、少なくとも95%同一、少なくとも96%同一、少なくとも97%同一、少なくとも98%同一、少なくとも99%同一、若しくは少なくとも99.5%同一の配列を含むCasXバリアントと接触され、gRNA足場が、表3の配列又はそれと少なくとも65%同一、少なくとも70%同一、少なくとも75%同一、少なくとも80%同一、少なくとも81%同一、少なくとも82%同一、少なくとも83%同一、少なくとも84%同一、少なくとも85%同一、少なくとも86%同一、少なくとも86%同一、少なくとも87%同一、少なくとも88%同一、少なくとも89%同一、少なくとも89%同一、少なくとも90%同一、少なくとも91%同一、少なくとも92%同一、少なくとも93%同一、少なくとも94%同一、少なくとも95%同一、少なくとも96%同一、少なくとも97%同一、少なくとも98%同一、少なくとも99%同一、少なくとも99.5%同一の配列を含み、gRNAが、表1の配列番号272~2100及び2286~26789からなる群から選択される標的化配列又はそれと少なくとも65%同一、少なくとも70%同一、少なくとも75%同一、少なくとも80%同一、少なくとも85%同一、少なくとも90%同一、若しくは少なくとも95%同一の配列を含み、かつ15~20個のアミノ酸を有する。他の場合では、CasX及び1つ以上のgRNAは、ベクターを使用して、コードポリヌクレオチドとして細胞集団に導入される(その実施形態は、本明細書に記載されている)。CasX:gRNAシステム成分を使用して細胞を改変する更なる方法には、ウイルス感染、トランスフェクション、コンジュゲーション、プロトプラスト融合、パーティクルガン技術、リン酸カルシウム沈殿、直接マイクロインジェクションなどが含まれる。方法の選択は、一般に、形質転換される細胞型及び形質転換が行われる環境(例えば、インビトロ、エクスビボ、又はインビボ)に依存する。これらの方法の一般的な考察は、Ausubel,et al,Short Protocols in Molecular Biology,3rd ed.,Wiley&Sons,1995に見出すことができる。
【0261】
CasX及びgRNAによる標的核酸とのハイブリダイゼーションの際、CasXは、BCL11A遺伝子内に1つ以上の一本鎖切断又は二本鎖切断を導入し、これが、標的核酸における永続的なインデル(欠失若しくは挿入)又は他の変異(例えば、置換、重複、若しくは逆位)などの標的核酸の改変をもたらし、宿主細胞の修復機構と関連して、機能的なBCL11Aタンパク質の発現の対応する低減又は排除をもたらし、それによって、改変された細胞集団が作製される。本明細書に記載されるように、標的核酸の二本鎖切断を導入するCasXバリアントは、標的鎖上のPAM部位の5’側の18~26ヌクレオチド内及び非標的鎖上の3’側の10~18ヌクレオチド内に二本鎖切断を生成する。したがって、いくつかの実施形態では、本方法によって得られる改変は、非相同DNA末端結合(NHEJ)修復機構によって、それらの領域における1つ以上のヌクレオチドのランダムな挿入、又は欠失(インデル)、又は置換、重複、又は逆位をもたらし得る。
【0262】
細胞集団を改変する方法のいくつかの実施形態では、第1のgRNAは、BCL11A遺伝子のエキソンのうちのいずれか1つに近位の又はその中の配列に相補的な標的化配列を含む。一実施形態では、第1のgRNAは、BCL11A遺伝子の調節エレメントのうちのいずれか1つに近位の又はその中の又はそれに隣接する配列に相補的な標的化配列を含む。特定の実施形態では、第1のgRNAは、BCL11A遺伝子のGATA1結合モチーフ配列内の又は5’側に隣接する配列に相補的な標的化配列を含む。特定の実施形態では、標的化配列は配列番号22である。前述により、標的核酸配列の破壊は、機能的なBCL11Aタンパク質の発現が改変された細胞集団において低減又は排除されるように、BCL11A遺伝子の改変をもたらす。
【0263】
本方法のいくつかの実施形態では、細胞集団の標的核酸は、BCL11A遺伝子の異なる部分又は重複する部分を標的化する複数の(例えば、2つ、3つ、4つ、又はそれ以上)gRNAを使用して改変され、CasXタンパク質は、標的核酸配列に複数の切断を導入して、永続的なインデル(欠失若しくは挿入)又は他の変異(例えば、1つ以上のヌクレオチドの置換、重複、若しくは逆位)をもたらし、それにより、改変された細胞集団において、機能的なBCL11Aタンパク質の発現が低減又は排除される。
【0264】
他の実施形態では、本開示は、細胞を、本明細書に記載の実施形態のいずれかのCasXタンパク質、標的化配列を含む1つ以上のgRNA、及びドナー鋳型と接触させることによって、改変された細胞集団を提供し、ドナー鋳型が、ヌクレアーゼによって導入された切断部位に挿入され、改変されるBCL11A遺伝子の標的核酸配列の全て又は一部を置換する。前述の一実施形態では、ドナー鋳型は、BCL11Aエキソンの少なくとも一部を含み、1つ以上の変異及び細胞の改変が、遺伝子の改変をもたらし、それにより、改変された細胞集団において、機能的なBCL11Aタンパク質の発現が低減又は排除される。前述の別の実施形態では、ドナー鋳型は、GATA1結合モチーフ配列の中の又は5’側に隣接する配列を含むが、野生型配列と比較して1つ以上の変異を有し、細胞の改変が、改変された細胞集団において、機能的なBCL11Aタンパク質の発現の低減又は排除をもたらす。このような場合、ドナー鋳型による置換は、置換される標的核酸の特定の部分でヌクレアーゼによって導入される切断部位の位置よりも5’方向及び3’方向に大きく、その挿入を容易にするために、ヌクレアーゼによって導入される切断部位の5’側及び3’側にある相同アームを更に含むことが理解される。場合によっては、ドナー鋳型は、一本鎖DNA鋳型又は一本鎖RNA鋳型である。他の場合では、ドナー鋳型は、二本鎖DNA鋳型である。標的領域でのドナー鋳型の挿入は、相同組換え修復(HDR、上記のとおり)又は相同性非依存性標的化組み込み(HITI)によって媒介され得る。HITIによって挿入される外因性配列は、任意の長さ、例えば、10~50ヌクレオチド長の比較的短い配列、又は約50~1000ヌクレオチド長のより長い配列であり得る。ドナー鋳型配列は、ゲノム配列と比較して、特定の配列の差異、例えば、制限部位、ヌクレオチド多型、バーコード、選択マーカー(例えば、薬剤耐性遺伝子、蛍光タンパク質、酵素など)などを含み得、これらは、切断部位でのドナー核酸の挿入の成功を評価するために使用され得るか、又は場合によっては、他の目的のために(例えば、標的ゲノム遺伝子座における発現を示すために)使用され得る。代替的に、これらの配列の差異は、マーカー配列の除去のために後で活性化され得る、隣接する組換え配列(例えば、FLP配列、loxP配列など)を含み得る。
【0265】
細胞集団を改変する方法のいくつかの実施形態では、本方法は、細胞集団のBCL11A遺伝子の標的核酸配列を、i)第1のgRNAと比較してBCL11A標的核酸の異なる部分又は重複する部分を標的化する追加のCRISPRヌクレアーゼ及びgRNA、ii)(i)の追加のCRISPRヌクレアーゼ及びgRNAをコードするポリヌクレオチド、iii)(ii)のポリヌクレオチドを含むベクター、又はiv)(i)の追加のCRISPRヌクレアーゼ及びgRNAを含むXDP、と接触させることを更に含み、接触が、第1のgRNAによって標的化される配列と比較して配列における異なる位置で、BCL11A遺伝子の改変をもたらす。前述の一実施形態では、追加のCRISPRヌクレアーゼは、前述の実施形態のCasXタンパク質とは異なる配列を有するCasXタンパク質である。前述の別の実施形態では、追加のCRISPRヌクレアーゼは、CasXタンパク質ではなく、Cas9、Cas12a、Cas12b、Cas12c、Cas12d(CasY)、Cas12j、Cask、Cas13a、Cas13b、Cas13c、Cas13d、Cas14、Cpfl、C2cl、Csn2、及びそれらの配列バリアントからなる群から選択される。
【0266】
他の実施形態では、本開示は、対象の細胞集団におけるBCL11A標的核酸を、インビボで改変する方法を提供する。インビボでの改変の方法の一実施形態では、本方法は、本明細書に記載の実施形態のベクターを、治療有効用量で対象に投与することを含む。いくつかの実施形態では、ベクターは、少なくとも約1×105ベクターゲノム(vg/kg)、少なくとも約1×106vg/kg、少なくとも約1×107vg/kg、少なくとも約1×108vg/kg、少なくとも約1×109vg/kg、少なくとも約1×1010vg/kg、少なくとも約1×1011vg/kg、少なくとも約1×1012vg/kg、少なくとも約1×1013vg/kg、少なくとも約1×1014vg/kg、少なくとも約1×1015vg/kg、又は少なくとも約1×1016vg/kgの用量で対象に投与される。他の実施形態では、ベクターは、少なくとも約1×105vg/kg~少なくとも約1×1016vg/kg、又は少なくとも約1×106vg/kg~約1×1015vg/kg、又は少なくとも約1×107vg/kg~約1×1014vg/kg、又は少なくとも約1×108vg/kg~約1×1014vg/kgの用量で対象に投与される。インビボでの改変の方法の別の実施形態では、本方法は、対象に、治療有効用量のXDPを投与すること含み、XDPが、RNP中で複合体化されたCasX及びgRNA、並びに任意選択的にドナー鋳型を含み(上により詳細に記載されている)、XDPが、標的細胞に対するトロピズムを有し、本明細書に記載されるように、BCL11A遺伝子の編集のためにRNPを送達することができる。前述の編集方法で利用されるXDPの実施形態が、本明細書に記載される。一実施形態では、XDPは、少なくとも約1×105粒子/kg、少なくとも約1×106粒子/kg、少なくとも約1×107粒子/kg少なくとも約1×108粒子/kg、少なくとも約1×109粒子/kg、少なくとも約1×1010粒子/kg、少なくとも約1×1011粒子/kg、少なくとも約1×1012粒子/kg、少なくとも約1×1013粒子/kg、少なくとも約1×1014粒子/kg、少なくとも約1×1015粒子/kg、少なくとも約1×1016粒子/kg、又は少なくとも約1×106粒子/kg~約1×1015粒子/kg、又は少なくとも約1×107粒子/kg~約1×1014粒子/kgの用量で対象に投与される。本段落の前述の実施形態では、ベクター又はXDPは、実質内、静脈内、動脈内、腹腔内(intraperitoneal)、嚢内、皮下、筋肉内、腹腔内(intraabdominally)、又はそれらの組み合わせから選択される投与経路によって対象に投与され、投与方法が、注射、輸血、又は移植である。
【0267】
VIII.治療方法
別の態様では、本開示は、鎌状赤血球症又はβサラセミアを含むがこれらに限定されない異常ヘモグロビン症関連疾患の治療を必要とする対象においてそれを行う方法に関し、対象の標的細胞におけるBCL11A遺伝子を改変することによるBCL11Aタンパク質の発現の抑制又は排除が、対象が依然として基礎疾患に罹患している可能性があるにもかかわらず、疾患の徴候、症状、又は影響を改善する。
【0268】
いくつかの治療戦略が、異常ヘモグロビン症関連疾患を有する対象の治療方法における使用のための組成物を設計するために使用されている。いくつかの実施形態では、本方法は、異常ヘモグロビン症(例えば、鎌状赤血球貧血又はβサラセミア)を有する対象に、治療有効用量の本明細書に開示されるクラス2、V型CRISPRヌクレアーゼ及びガイドRNAを投与することを含む。いくつかの実施形態では、治療方法は、対象に、治療有効用量のi)第1のCasXタンパク質と、標的核酸に相補的な標的化配列を有する第1のgRNAと、を含むCasX:gRNAシステム、ii)第1のCasXタンパク質と、標的核酸に相補的な標的化配列を有する第1のgRNAと、ドナー鋳型と、を含むCasX:gRNAシステム、iii)(i)若しくは(ii)のCasX:gRNAシステムをコードする核酸、iv)本明細書に記載の実施形態のいずれかのAAVであり得る、(iii)の核酸を含むベクター、v)(i)若しくは(ii)のCasX:gRNAシステムを含むXDP、又はvi)(i)~(v)のうちの2つ以上の組み合せ、を投与することを含み、1)第1のgRNAによって標的化される対象の細胞のBCL11A遺伝子が、CasXタンパク質及び任意選択的にドナー鋳型によって改変され(例えば、ノックダウン又はノックアウトされ)、2)対象においてヘモグロビンF(HbF)の産生の増加が生じる。いくつかの実施形態では、治療方法は、第2のgRNA又は第2のgRNAをコードする核酸を投与することを更に含み、第2のgRNAが、第1のgRNAと比較して、標的核酸配列の異なる部分又は重複する部分に相補的な標的化配列を有する。場合によっては、改変のために標的化される細胞は、造血幹細胞(HSC)、造血前駆細胞(HPC)、CD34+細胞、間葉系幹細胞(MSC)、人工多能性幹細胞(iPSC)、骨髄系共通前駆細胞、前赤芽球細胞、及び赤芽球細胞からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、治療される対象は、げっ歯類、マウス、ラット、及び非ヒト霊長類からなる群から選択される。別の実施形態では、対象は、ヒトである。
【0269】
治療方法のいくつかの実施形態では、ベクターは、CasX:gRNAシステムをコードするAAVベクターであり、少なくとも約1×105ベクターゲノム(vg/kg)、少なくとも約1×106vg/kg、少なくとも約1×107vg/kg、少なくとも約1×108vg/kg、少なくとも約1×109vg/kg、少なくとも約1×1010vg/kg、少なくとも約1×1011vg/kg、少なくとも約1×1012vg/kg、少なくとも約1×1013vg/kg、少なくとも約1×1014vg/kg、少なくとも約1×1015vg/kg、又は少なくとも約1×1016vg/kgの用量で対象に投与される。本方法の他の実施形態では、AAVベクターは、少なくとも約1×105vg/kg~約1×1016vg/kg、少なくとも約1×106vg/kg~約1×1015vg/kg、又は少なくとも約1×107vg/kg~約1×1014vg/kgの用量で対象に投与される。他の実施形態では、治療方法は、対象に、治療有効用量の、CasX:gRNAシステムを含むXDPを投与することを含む。一実施形態では、XDPは、少なくとも約1×105粒子/kg、少なくとも約1×106粒子/kg、少なくとも約1×107粒子/kg、少なくとも約1×108粒子/kg、少なくとも約1×109粒子/kg、少なくとも約1×1010粒子/kg、少なくとも約1×1011粒子/kg、少なくとも約1×1012粒子/kg、少なくとも約1×1013粒子/kg、少なくとも約1×1014粒子/kg、少なくとも約1×1015粒子/kg、少なくとも約1×1016粒子/kgの用量で対象に投与される。別の実施形態では、XDPは、少なくとも約1×105粒子/kg~約1×1016粒子/kg、又は少なくとも約1×106粒子/kg~約1×1015粒子/kg、又は少なくとも約1×107粒子/kg~約1×1014粒子/kgの用量で対象に投与される。本段落の前述の実施形態では、ベクター又はXDPは、実質内、静脈内、動脈内、腹腔内(intraperitoneal)、嚢内、皮下、筋肉内、腹腔内(intraabdominally)、又はそれらの組み合わせから選択される投与経路によって対象に投与され、投与方法が、注射、輸血、又は移植である。投与は、1回、2回であり得るか、又は毎週、2週間毎、毎月、四半期毎、若しくは6ヶ月毎のレジメンスケジュールを使用して、複数回投与され得る。
【0270】
いくつかの実施形態では、治療方法は、BCL11A遺伝子の異なる又は重複する領域を標的化するCasX及び複数のgRNAをコードするポリヌクレオチドを含むベクターを対象に投与することを含み、投与が、対象の細胞内で対象標的核酸配列をベクターの発現産物と接触させることをもたらし、BCL11A遺伝子が、対象の細胞において改変される。治療方法の他の実施形態では、本方法は、CasXタンパク質及びgRNAをコードし、ドナー鋳型を更に含むベクターを、対象に投与することを含み、当該投与が、CasXタンパク質による切断及びドナー鋳型の標的核酸への挿入によって、対象の細胞の標的核酸配列の改変をもたらす。他の実施形態では、本方法は、BCL11A遺伝子の異なる又は重複する配列を標的化するCasX及び複数のgRNAをコードするポリヌクレオチドを含む第1のベクターと、BCL11A遺伝子の少なくとも一部又は全体をコードするドナー鋳型ポリヌクレオチドを含む第2のベクターとを、対象に投与することを含み、ベクターの投与が、対象の細胞内の対象標的核酸配列をCasX及びgRNAベクターの発現産物並びにドナー鋳型と接触させることをもたらし、BCL11A遺伝子が、本明細書に記載されるように、対象の細胞において改変される。治療方法のいくつかの実施形態では、対象に投与されるベクターは、本明細書に記載されるAAVベクターである。前述において、AAVベクターは、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV-Rh74、又はAAVRh10から選択される。治療方法のいくつかの実施形態では、対象に投与されるベクターは、CasX:gRNAシステムのRNPを含む、本明細書に記載のXDPである。
【0271】
本方法のいくつかの実施形態では、改変することは、細胞集団のBCL11A遺伝子において一本鎖切断を導入することを含む。他の場合では、改変することは、細胞集団のBCL11A遺伝子において二本鎖切断を導入することを含む。いくつかの実施形態では、改変することは、BCL11A遺伝子における1つ以上のヌクレオチドの挿入、欠失、置換、重複、又は逆位などの、BCL11A標的核酸における1つ以上の変異を導入し、対象の細胞におけるBCL11Aタンパク質の発現が、改変されていない細胞と比較して、少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、又は少なくとも約90%減少する。場合によっては、対象の細胞のBCL11A遺伝子は、改変された細胞の少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、又は少なくとも95%が検出可能なレベルのBCL11Aタンパク質を発現しないように改変される。治療方法の他の場合では、改変することは、治療前の対象におけるHbFのレベルと比較して、少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、又は少なくとも約50%の対象の循環血液中のHbFの産生の増加をもたらす。他の実施形態では、本方法は、少なくとも0.01:1.0、少なくとも0.025:1.0、少なくとも0.05:1.0、少なくとも0.075:1.0、少なくとも0.1:1.0、少なくとも0.2:1.0、少なくとも0.3:1.0、少なくとも0.4:1.0、少なくとも0.5:1:0、少なくとも0.75:1.0、少なくとも1.0:1.0、少なくとも1.25:1.0、少なくとも1.5:1.0、又は少なくとも1.75:1.0の対象の循環血液中のHbF対ヘモグロビンS(HbS)の比をもたらす。他の実施形態では、本方法は、対象の循環血液中の総ヘモグロビンの少なくとも約5%、又は少なくとも約10%、又は少なくとも約20%、又は少なくとも約30%のHbFレベルをもたらす。前述の実施形態では、対象は、マウス、ラット、ブタ、非ヒト霊長類、及びヒトからなる群から選択される。治療の有効性を決定するための分析のために治療された対象から試料(例えば、体液又は組織)を得る方法、及び分析を可能にするための試料の調製方法は、当業者に周知である。RNAレベル及びタンパク質レベルの分析のための方法は、上で考察されており、当業者に周知である。治療の効果はまた、当該技術分野で既知の日常的な臨床方法によって、本発明の1つ以上の化合物と接触させた動物から採取された前述の体液、組織、又は器官における標的遺伝子の発現に関連するバイオマーカーを測定することによって評価することができる。異常ヘモグロビン症疾患のバイオマーカーとしては、循環血液中の鎌状赤血球の百分率割合、BCL11Aレベル、BCL11A RNA、ヘモグロビンSレベル、ヘモグロビン-ガンマレベル、及びヘモグロビンFレベルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0272】
場合によっては、対象における異常ヘモグロビン症を治療する方法は、治療有効用量の追加のCRISPRヌクレアーゼ、又は追加のCRISPRヌクレアーゼをコードするポリヌクレオチドを投与することを更に含む。一実施形態では、追加のCRISPRヌクレアーゼは、第1のCasXとは異なる配列を有するCasXタンパク質である。別の実施形態では、追加のCRISPRヌクレアーゼは、CasXタンパク質(すなわち、Cas9、Cas12a、Cas12b、Cas12c、Cas12d(CasY)、Cas12j、Cas12k、Cas13a、Cas13b、Cas13c、Cas13d、Cas14、Cpfl、C2cl、Csn2である)又はその配列バリアントではない。いくつかの実施形態では、対象における異常ヘモグロビン症を治療する方法は、化学療法剤を投与することを更に含む。
【0273】
他の実施形態では、本開示は、異常ヘモグロビン症関連疾患の治療を必要とする対象において、以下を含む本明細書に記載の実施形態のCasX:gRNAシステム組成物によってインビトロ又はエクスビボで改変された治療的有効量の細胞集団を対象に投与することによって、それを行う方法を提供する:i)第1のCasXタンパク質と、標的核酸に相補的な標的化配列を有する第1のgRNAと、を含むCasX:gRNAシステム、ii)第1のCasXタンパク質と、標的核酸に相補的な標的化配列を有する第1のgRNAと、ドナー鋳型と、を含むCasX:gRNAシステム、iii)(i)若しくは(ii)のCasX:gRNAシステムをコードする核酸、iv)本明細書に記載の実施形態のいずれかのAAVであり得る、(iii)の核酸を含むベクター、v)(i)若しくは(ii)のCasX:gRNAシステムを含むXDP、又はvi)(i)~(v)のうちの2つ以上の組み合わせ。一実施形態では、治療方法は、i)対象から人工多能性幹細胞(iPSC)又は造血幹細胞(HSC)を単離することと、ii)本明細書に記載の実施形態のいずれかの方法によって、iPSC又はHSCのBCL11A標的核酸を改変することと、iii)改変されたiPSC又はHSCを造血前駆細胞に分化させることと、iv)造血前駆細胞を、異常ヘモグロビン症を有する対象に移植することと、を含み、本方法が、治療前の対象におけるヘモグロビンF(HbF)のレベルと比較して、少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、又は少なくとも約50%の対象の循環血液中のHbFのレベルの増加をもたらす。場合によっては、細胞は、細胞が投与される対象に対して自己由来であり、対象の骨髄又は末梢血から単離される。他の場合では、細胞は、細胞を投与される対象に対して同種であり、異なる対象の骨髄又は末梢血から単離される。改変された細胞は、移植、局所注射、全身注入、又はそれらの組み合わせによって対象に移植することができる。対象への投与のために細胞を改変する方法は、本明細書に記載されているが、簡潔には、改変することは、細胞を、i)第1のCasXタンパク質と、標的核酸に相補的な標的化配列を有する第1のgRNAと、を含むCasX:gRNAシステム、ii)第1のCasXタンパク質と、標的核酸に相補的な標的化配列を有する第1のgRNAと、ドナー鋳型と、を含むCasX:gRNAシステム、iii)(i)若しくは(ii)のCasX:gRNAシステムをコードする核酸、iv)本明細書に記載の実施形態のいずれかのAAVであり得る、(iii)の核酸を含むベクター、v)(i)若しくは(ii)のCasX:gRNAシステムを含むXDP、又はvi)(i)~(v)のうちの2つ以上の組み合わせ、と接触させることを含み、BCL11Aタンパク質の発現が低減されるか、又は細胞が検出可能なレベルのBCL11Aタンパク質を発現しない。いくつかの実施形態では、本方法は、第2のgRNA又は第2のgRNAをコードする核酸を投与することを更に含み、第2のgRNAが、第1のgRNAと比較して、標的核酸配列の異なる部分又は重複する部分に相補的な標的化配列を有する。場合によっては、RNPとしてのCasX及びgRNA(その実施形態は、本明細書において上に記載されている)、並びに任意選択的にドナー鋳型が、細胞集団に送達され、標的核酸は、BCL11Aタンパク質が発現されないか又は減少したレベルで発現されるように改変される。他の場合では、ベクターにおけるCasX及びgRNAが、細胞集団に送達され(その実施形態は、本明細書において上に記載されている)、標的核酸は、BCL11Aタンパク質が発現されないか又は減少したレベルで発現されるように改変される。いくつかの実施形態では、組成物の投与によって改変される細胞集団は、げっ歯類細胞、マウス細胞、ラット細胞、及び非ヒト霊長類細胞からなる群から選択される真核細胞である。いくつかの実施形態では、真核細胞は、ヒト細胞である。いくつかの実施形態、真核細胞は、造血幹細胞(HSC)、造血前駆細胞(HPC)、CD34+細胞、間葉系幹細胞(MSC)、人工多能性幹細胞(iPSC)、骨髄系共通前駆細胞、前赤芽球細胞、及び赤芽球細胞からなる群から選択される。本方法のいくつかの実施形態では、対象に投与された細胞又はその子孫は、対象への投与後、対象において、少なくとも1ヶ月間、2ヶ月間、3ヶ月間、4ヶ月間、5ヶ月間、6ヶ月間、7ヶ月間、8ヶ月間、9ヶ月間、10ヶ月間、11ヶ月間、12ヶ月間、13ヶ月間、14ヶ月間、15ヶ月間、16ヶ月間、17ヶ月間、18ヶ月間、19ヶ月間、20ヶ月間、21ヶ月間、22ヶ月間、23ヶ月間、2年間、3年間、4年間、又は5年間存続する。いくつかの実施形態では、本開示の治療方法は、治療前の対象におけるヘモグロビンF(HbF)のレベルと比較して、少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、又は少なくとも約50%の循環血液中のHbFのレベルの増加をもたらす。他の実施形態では、本方法は、少なくとも0.01:1.0、少なくとも0.025:1.0、少なくとも0.05:1.0、少なくとも0.075:1.0、少なくとも0.1:1.0、少なくとも0.2:1.0、少なくとも0.3:1.0、少なくとも0.4:1.0、少なくとも0.5:1:0、少なくとも0.75:1.0、少なくとも1.0:1.0、少なくとも1.25:1.0、少なくとも1.5:1.0、又は少なくとも1.75:1.0の対象におけるHbF対ヘモグロビンS(HbS)の比をもたらす。他の実施形態では、本方法は、対象における総循環ヘモグロビンの少なくとも約5%、又は少なくとも約10%、又は少なくとも約20%、又は少なくとも約30%のHbFレベルをもたらす。
【0274】
他の実施形態では、本開示は、ゲノム編集によって異常ヘモグロビン症を有する対象において胎児型ヘモグロビン(HbF)を増加させる方法を提供し、i)対象に有効用量の本明細書に記載の実施形態のベクター又はXDPを投与することを含み、ベクター又はXDPが、対象の細胞に、CasX:gRNAシステムを送達し、ii)対象の細胞のBCL11A標的核酸が、第1のgRNAにより標的化されるCasXによって編集され、iii)編集が、BCL11Aタンパク質の発現が低減又は排除されるように、標的核酸配列において1つ以上のヌクレオチドの挿入、欠失、置換、重複、又は逆位を導入することを含み、本方法が、治療前の対象におけるヘモグロビンF(HbF)のレベルと比較して、少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、又は少なくとも約50%の対象の循環血液中のHbFのレベルの増加をもたらす。前述において、細胞は、造血幹細胞(HSC)、造血前駆細胞(HPC)、CD34+細胞、間葉系幹細胞(MSC)、人工多能性幹細胞(iPSC)、骨髄系共通前駆細胞、前赤芽球細胞、及び赤芽球細胞からなる群から選択される。本方法の一実施形態では、細胞の標的核酸は、BCL11Aタンパク質の発現が、編集されていない細胞の標的核酸と比較して、少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、又は少なくとも約90%減少するように編集されている。場合によっては、対象は、マウス、ラット、ブタ、及び非ヒト霊長類からなる群から選択される。他の場合では、対象は、ヒトである。
【0275】
対象における異常ヘモグロビン症を治療する方法のいくつかの実施形態では、本方法は、末端臓器疾患の発生、アルブミン尿、高血圧、衰弱状態、低張尿、拡張機能障害、機能的な運動能力、急性冠症候群、疼痛事象、疼痛重篤度、貧血症、溶血、組織低酸素症、臓器機能障害、異常なヘマトクリット値、小児死亡率、脳卒中の発生率、ベースラインと比較したヘモグロビンレベル、HbFレベル、肺塞栓症の発生率の低下、血管閉塞危機の発生率、赤血球中のヘモグロビンSの濃度、入院率、肝臓鉄濃度、必要な輸血、及び生活の質スコアからなる群から選択される少なくとも1つの臨床的に関連するパラメータの改善をもたらす。対象における異常ヘモグロビン症を治療する方法の他の実施形態では、本方法は、末端臓器疾患の発生、アルブミン尿、高血圧、衰弱状態、低張尿、拡張機能障害、機能的な運動能力、急性冠症候群、疼痛事象、疼痛重篤度、貧血症、溶血、組織低酸素症、臓器機能障害、異常なヘマトクリット値、小児死亡率、脳卒中の発生率、ベースラインと比較したヘモグロビンレベル、HbFレベル、肺塞栓症の発生率の低下、血管閉塞危機の発生率、赤血球中のヘモグロビンSの濃度、入院率、肝臓鉄濃度、必要な輸血、及び生活の質スコアからなる群から選択される少なくとも2つの臨床的に関連するパラメータの改善をもたらす。
【0276】
いくつかの実施形態では、治療方法は、CasXタンパク質及びgRNAを含むリポソーム又は脂質ナノ粒子を対象に投与することを含む。いくつかの実施形態では、リポソーム又は脂質ナノ粒子は、本明細書に記載の実施形態のいずれかのドナー鋳型を更に含む。
【0277】
いくつかの実施形態では、本開示は、異常ヘモグロビン症関連疾患を有する対象の治療方法を提供し、本方法は、本明細書に開示される実施形態のいずれかのCasX:gRNA組成物、又はベクター、又はCasX:gRNA組成物のRNPを含むXDPを、治療有効用量を使用して、1回以上の連続した用量を含む治療レジメンに従って、対象に投与することを含む。治療レジメンのいくつかの実施形態では、治療有効用量の組成物又はベクターは、単回用量として投与される。治療レジメンの他の実施形態では、治療有効用量は、少なくとも2週間、又は少なくとも1ヶ月間、又は少なくとも2ヶ月間、又は少なくとも3ヶ月間、又は少なくとも4ヶ月間、又は少なくとも5ヶ月間、又は少なくとも6ヶ月間の期間にわたって、2回以上の用量として対象に投与される。治療レジメンのいくつかの実施形態では、有効用量は、移植、局所注射、全身注入、又はそれらの組み合わせからなる群から選択される経路によって投与される。
【0278】
いくつかの実施形態では、治療方法は、化学療法剤を投与することを更に含み、薬剤は、ヒドロキシ尿素、L-グルタミン経口粉末、ボクセロトール、及び鎮痛剤を含むがこれらに限定されない、異常ヘモグロビン症関連疾患に関連する徴候又は症状を改善するのに有効である。
【0279】
いくつかの実施形態では、本開示は、鎌状赤血球症又はβサラセミアを含む異常ヘモグロビン症の治療のための医薬品として使用するためのCasX:gRNA組成物、CasX:gRNA組成物をコードする核酸、核酸を含むベクター、又はCasX:gRNAのRNPを含むXDPを提供する。
【0280】
XIV.キット及び組成物
他の実施形態では、CasXタンパク質、BCL11A遺伝子に特異的な標的化配列を含む本開示の実施形態のいずれかの1つ又は複数のgRNA、及び好適な容器(例えば、チューブ、バイアル、又はプレート)を含むキットが本明細書に提供される。いくつかの実施形態では、キットは、緩衝液、ヌクレアーゼ阻害剤、プロテアーゼ阻害剤、リポソーム、治療剤、標識、標識可視化試薬、又は前述の任意の組み合わせを更に含む。いくつかの実施形態では、キットは、薬学的に許容される担体、希釈剤、又は賦形剤を更に含む。いくつかの実施形態では、キットは、遺伝子改変適用のための適切な対照組成物、及び使用説明書を含む。いくつかの実施形態では、キットは、ベクターを含み、ベクターは、本開示のCasXタンパク質をコードする配列、本開示のgRNA、任意選択的にドナー鋳型、又はそれらの組み合わせを含む。
【0281】
本開示のキットの他の実施形態では、キットは、対象の単離された細胞におけるBCL11A標的核酸を改変することによる、対象における異常ヘモグロビン症の治療のための組成物を含み、改変することが、細胞の標的核酸配列を、本明細書に開示される実施形態のi)CasX:gRNAシステム、ii)CasX:gRNAシステムの成分をコードする核酸、iii)核酸を含むベクター、iv)CasXタンパク質及びガイド核酸(gRNA)を含むXDP、又はv)(i)~(iv)のいずれかの組み合わせ、と接触させることを含み、i)当該接触させることが、CasXタンパク質によるBCL11A標的核酸配列の改変、ii)BCL11Aタンパク質の発現の減少、及びiii)細胞の成熟時のヘモグロビンF(HbF)の産生の増加、をもたらす。場合によっては、細胞は、人工多能性幹細胞(iPSC)である。他の場合では、細胞は、造血幹細胞(HSC)である。一実施形態では、組成物の使用は、成熟細胞によるBCL11Aタンパク質の発現の減少をもたらし、改変されていない標的核酸と比較して、少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、又は少なくとも約90%減少する。別の実施形態では、成熟細胞によるBCL11Aタンパク質の発現は検出できない。
【0282】
いくつかの実施形態では、キットは、本明細書に記載のCasX:gRNAシステムを使用して編集された複数の細胞を含む。
【0283】
本明細書は、多数の例示的な構成、方法、パラメータなどを記載する。しかしながら、かかる説明は、本開示の範囲に対する限定として意図されるものではなく、代わりに例示的な実施形態の説明として提供されることを認識されたい。
【0284】
列挙された実施形態
本発明は、以下に列挙された例示的な実施形態を参照することによって定義され得る。
【0285】
セットI
実施形態1.クラス2 V型CRISPRタンパク質及び第1のガイド核酸(guide nucleic acid、gNA)を含む組成物であって、gNAが、ポリピリミジントラクト結合タンパク質1(BCL11A)遺伝子標的核酸配列に相補的な標的化配列を含む、組成物。
【0286】
実施形態2.gNAが、
a.BCL11Aイントロン、
b.BCL11Aエキソン、
c.BCL11Aイントロン-エキソン接合部、
d.BCL11A調節エレメント、及び
e.遺伝子間領域、からなる群から選択される標的核酸配列に相補的な標的化配列を含む、実施形態1に記載の組成物。
【0287】
実施形態3.BCL11A遺伝子が、野生型配列を含む、実施形態1に記載の組成物。
【0288】
実施形態4.gNAが、ガイドRNA(gRNA)である、実施形態1~3のいずれか1つに記載の組成物。
【0289】
実施形態5.gNAが、ガイドDNA(gDNA)である、実施形態1~3のいずれか1つに記載の組成物。
【0290】
実施形態6.gNAが、DNA及びRNAを含むキメラである、実施形態1~3のいずれか1つに記載の組成物。
【0291】
実施形態gNAが、単一分子gNA(single-molecule gNA、sgnA)である、実施形態1~6のいずれか1つに記載の組成物。
【0292】
実施形態8.gNAが、二種分子gNA(dual-molecule gNA、dgNa)である、実施形態1~6のいずれか1つに記載の組成物。
【0293】
実施形態9.gNAの標的化配列が、配列番号272~2100及び2286~26789からなる群から選択される配列、又はそれと少なくとも約65%、少なくとも約75%、少なくとも約85%、若しくは少なくとも約95%の同一性を有する配列を含む、実施形態1~8のいずれか1つに記載の組成物。
【0294】
実施形態10.gNAの標的化配列が、配列番号272~2100及び2286~26789からなる群から選択される配列を含む、実施形態1~8のいずれか1つに記載の組成物。
【0295】
実施形態11.gNAの標的化配列が、配列の3’末端から単一のヌクレオチドが除去された配列番号272~2100及び2286~26789の配列を含む、実施形態1~8のいずれか1つに記載の組成物。
【0296】
実施形態12.gNAの標的化配列が、配列の3’末端から2つのヌクレオチドが除去された配列番号272~2100及び2286~26789の配列を含む、実施形態1~8のいずれか1つに記載の組成物。
【0297】
実施形態13.gNAの標的化配列が、配列の3’末端から3つのヌクレオチドが除去された配列番号272~2100及び2286~26789の配列を含む、実施形態1~8のいずれか1つに記載の組成物。
【0298】
実施形態14.gNAの標的化配列が、配列の3’末端から4つのヌクレオチドが除去された配列番号272~2100及び2286~26789の配列を含む、実施形態1~8のいずれか1つに記載の組成物。
【0299】
実施形態15.gNAの標的化配列が、配列の3’末端から5つのヌクレオチドが除去された配列番号272~2100及び2286~26789の配列を含む、実施形態1~8のいずれか1つに記載の組成物。
【0300】
実施形態16.gNAの標的化配列が、BCL11Aエキソンの配列に相補的である、実施形態1~15のいずれか1つに記載の組成物。
【0301】
実施形態17.gNAの標的化配列が、BCL11Aエキソン1配列、BCL11Aエキソン2配列、BCL11Aエキソン3配列、BCL11Aエキソン4配列、BCL11Aエキソン5配列、BCL11Aエキソン6配列、BCL11Aエキソン7配列、BCL11Aエキソン8配列、及びBCL11Aエキソン9配列からなる群から選択される配列に相補的である、実施形態16に記載の組成物。
【0302】
実施形態18.gNAの標的化配列が、BCL11Aエキソン1配列、BCL11Aエキソン2配列、及びBCL11Aエキソン3配列からなる群から選択される配列に相補的である、実施形態17に記載の組成物。
【0303】
実施形態19.gNAの標的化配列が、BCL11A調節エレメントの配列に相補的である、実施形態1~15のいずれか1つに記載の組成物。
【0304】
実施形態20.gNAの標的化配列が、BCL11A遺伝子のプロモーターの配列に相補的である、実施形態19に記載の組成物。
【0305】
実施形態21.gNAの標的化配列が、エンハンサー調節エレメントの配列に相補的である、実施形態19に記載の組成物。
【0306】
実施形態22.gNAの標的化配列が、BCL11A遺伝子のGATA1赤血球特異的エンハンサー結合部位(GATA1)を含む配列に相補的である、実施形態21に記載の組成物。
【0307】
実施形態23.gNAの標的化配列が、配列UGGAGCCUGUGAUAAAAGCA(配列番号22)、又はそれと少なくとも90%若しくは95%の配列同一性を有する配列を有する、実施形態22に記載の組成物。
【0308】
実施形態24.gNAの標的化配列が、配列UGGAGCCUGUGAUAAAAGCA(配列番号22)からなる、実施形態22に記載の組成物。
【0309】
実施形態25.gNAの標的化配列が、配列UGCUUUUAUCACAGGCUCCA(配列番号23)、又はそれと少なくとも90%若しくは95%の配列同一性を有する配列を有する、実施形態21に記載の組成物。
【0310】
実施形態26.gNAの標的化配列が、配列UGCUUUUAUCACAGGCUCCA(配列番号23)からなる、実施形態21に記載の組成物。
【0311】
実施形態27.第2のgNAを更に含み、第2のgNAが、第1のgNAのgNAの標的化配列と比較して、BCL11A標的核酸の異なる部分又は重複する部分に相補的な標的化配列を有する、実施形態1~26のいずれか1つに記載の組成物。
【0312】
実施形態28.第2のgNAの標的化配列が、GATA1結合部位配列の5’側又は3’側にある標的核酸の配列に相補的である、実施形態27に記載の組成物。
【0313】
実施形態29.第2のgNAが、第1のgNAによって標的化される同じエキソンに相補的な標的化配列を有する、実施形態27に記載の組成物。
【0314】
実施形態30.第1のgNA又は第2のgNAが、表1及び表2に示される配列番号4~16及び2101~2285からなる群から選択される配列と少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%の配列同一性を有する配列を含む足場を有する、実施形態1~29のいずれか1つに記載の組成物。
【0315】
実施形態31.第1のgNA又は第2のgNAが、配列番号2101~2285からなる群から選択される配列を含む足場を有する、実施形態1~30のいずれか1つに記載の組成物。
【0316】
実施形態32.第1のgNA又は第2のgNAが、配列番号2101~2285からなる群から選択される配列からなる足場を有する、実施形態1~30のいずれか1つに記載の組成物。
【0317】
実施形態33.第1のgNA又は第2のgNAの足場が、配列番号4~16からなる群から選択される参照gNA配列と比較して、少なくとも1つの改変を有する配列を含む、実施形態1~30のいずれか1つに記載の組成物。
【0318】
実施形態34.参照gNAの少なくとも1つの改変が、参照gNA配列のヌクレオチドの少なくとも1つの置換、欠失、又は置換を含む、実施形態33に記載の組成物。
【0319】
実施形態35.第1のgNAのバリアント又は第2のgNAのバリアントが、UGGAGCCUGUGAUAAAAGCA(配列番号22)の標的化配列を含む、実施形態1~34のいずれか1つに記載の組成物。
【0320】
実施形態36.第1のgNA又は第2のgNAが、化学的に改変されている、実施形態1~35のいずれか1つに記載の組成物。
【0321】
実施形態37.クラス2 V型CRISPRタンパク質が、配列番号1~3のいずれか1つの配列を有する参照CasXタンパク質、表4に示される配列番号36~99若しくは101~148の配列、又はそれと少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、若しくは少なくとも約95%、若しくは少なくとも約95%、若しくは少なくとも約96%、若しくは少なくとも約97%、若しくは少なくとも約98%、若しくは少なくとも約99%の配列同一性を有する配列を有するCasXバリアントタンパク質である、実施形態1~36のいずれか1つに記載の組成物。
【0322】
実施形態38.クラス2 V型CRISPRタンパク質が、配列番号36~99又は101~148の配列を有するCasXバリアントタンパク質である、実施形態37に記載の組成物。
【0323】
実施形態39.CasXバリアントタンパク質が、配列番号36~99又は101~148の配列からなる、実施形態37に記載の組成物。
【0324】
実施形態40.CasXバリアントタンパク質が、配列番号1~3から選択される配列を有する参照CasXタンパク質と比較して、少なくとも1つの改変を含む、実施形態37に記載の組成物。
【0325】
実施形態41.少なくとも1つの改変が、参照CasXタンパク質と比較して、CasXバリアントタンパク質のドメインにおける少なくとも1つのアミノ酸置換、欠失、又は置換を含む、実施形態40に記載の組成物。
【0326】
実施形態42.ドメインが、非標的鎖結合(NTSB)ドメイン、標的鎖装填(TSL)ドメイン、ヘリックスIドメイン、ヘリックスIIドメイン、オリゴヌクレオチド結合ドメイン(OBD)、及びRuvC DNA切断ドメインからなる群から選択される、実施形態41に記載の組成物。
【0327】
実施形態43.CasXタンパク質が、1つ以上の核局在化シグナル(NLS)を更に含む、実施形態37~42のいずれか1つに記載の組成物。
【0328】
実施形態44.1つ以上のNLSが、PKKKRKV(配列番号168)、KRPAATKKAGQAKKKK(配列番号169)、PAAKRVKLD(配列番号170)、RQRRNELKRSP(配列番号171)、NQSSNFGPMKGGNFGGRSSGPYGGGGQYFAKPRNQGGY(配列番号172)、RMRIZFKNKGKDTAELRRRRVEVSVELRKAKKDEQILKRRNV(配列番号173)、VSRKRPRP(配列番号174)、PPKKARED(配列番号175)、PQPKKKPL(配列番号176)、SALIKKKKKMAP(配列番号177)、DRLRR(配列番号178)、PKQKKRK(配列番号179)、RKLKKKIKKL(配列番号180)、REKKKFLKRR(配列番号181)、KRKGDEVDGVDEVAKKKSKK(配列番号182)、RKCLQAGMNLEARKTKK(配列番号183)、PRPRKIPR(配列番号184)、PPRKKRTVV(配列番号185)、NLSKKKKRKREK(配列番号186)、RRPSRPFRKP(配列番号187)、KRPRSPSS(配列番号188)、KRGINDRNFWRGENERKTR(配列番号189)、PRPPKMARYDN(配列番号190)、KRSFSKAF(配列番号191)、KLKIKRPVK(配列番号192)、PKTRRRPRRSQRKRPPT(配列番号26792)、RRKKRRPRRKKRR(配列番号196)、PKKKSRKPKKKSRK(配列番号197)、HKKKHPDASVNFSEFSK(配列番号198)、QRPGPYDRPQRPGPYDRP(配列番号199)、LSPSLSPLLSPSLSPL(配列番号200)、RGKGGKGLGKGGAKRHRK(配列番号201)、PKRGRGRPKRGRGR(配列番号202)、MSRRRKANPTKLSENAKKLAKEVEN(配列番号194)、PKKKRKVPPPPAAKRVKLD(配列番号193)、及びPKKKRKVPPPPKKKRKV(配列番号204)からなる配列の群から選択される、実施形態43に記載の組成物。
【0329】
実施形態45.1つ以上のNLSが、CasXタンパク質のC末端又はその近傍で発現される、実施形態43又は実施形態44に記載の組成物。
【0330】
実施形態46.1つ以上のNLSが、CasXタンパク質のN末端又はその近傍で発現される、実施形態43又は実施形態44に記載の組成物。
【0331】
実施形態47.CasXタンパク質のN末端又はその近傍及びC末端又はその近傍に位置する1つ以上のNLSを含む、実施形態43又は実施形態44に記載の組成物。
【0332】
実施形態48.CasXバリアントが、ガイド核酸(gNA)とリボ核タンパク質複合体(RNP)を形成することができる、実施形態37~47のいずれか1つに記載の組成物。
【0333】
実施形態49.CasXバリアントタンパク質及びgNAバリアントのRNPが、配列番号1、配列番号2、又は配列番号3の参照CasXタンパク質及び配列番号4~16の配列を含むgNAのRNPと比較して、少なくとも1つ以上の改善された特徴を示す、実施形態48に記載の組成物。
【0334】
実施形態50.改善された特徴が、CasXバリアントのフォールディングの改善、ガイド核酸(gNA)に対する結合親和性の改善、標的DNAに対する結合親和性の改善、標的DNAの編集において、ATC、CTC、GTC、又はTTCを含む1つ以上のより広範囲のPAM配列を利用する能力の改善、当該標的DNAの巻き戻しの改善、編集活性の増加、編集効率の改善、編集特異性の改善、ヌクレアーゼ活性の増加、二本鎖切断のための標的鎖装填の増加、一本鎖ニッキングのための標的鎖装填の減少、オフターゲット切断の減少、非標的DNA鎖の結合の改善、タンパク質安定性の改善、タンパク質溶解度の改善、タンパク質:gNA複合体(RNP)の安定性の改善、タンパク質:gNA複合体の溶解度の改善、タンパク質収量の改善、タンパク質発現の改善、及び融合体特徴の改善、からなる群の1つ以上から選択される、実施形態49に記載の組成物。
【0335】
実施形態51.CasXバリアントタンパク質及びgNAバリアントのRNPの改善された特徴が、配列番号1、配列番号2、又は配列番号3の参照CasXタンパク質及び配列番号4~16の配列を含むgNAのRNPと比較して、少なくとも約1.1~約100倍又はそれ以上改善されている、実施形態49又は実施形態50に記載の組成物。
【0336】
実施形態52.CasXバリアントタンパク質の改善された特徴が、配列番号1、配列番号2、又は配列番号3の参照CasXタンパク質及び配列番号4~16の配列を含むgNAと比較して、少なくとも約1.1倍、少なくとも約2倍、少なくとも約10倍、少なくとも約100倍、又はそれ以上改善されている、実施形態49又は実施形態50に記載の組成物。
【0337】
実施形態53.改善された特徴が、編集効率を含み、CasXバリアントタンパク質及びgNAバリアントのRNPが、配列番号2の参照CasXタンパク質及び配列番号4~16のgNAのRNPと比較して、編集効率の1.1~100倍の改善を含む、実施形態49~52のいずれか1つに記載の組成物。
【0338】
実施形態54.PAM配列TTC、ATC、GTC、又はCTCのいずれか1つが、細胞アッセイシステムにおいてgNAの標的化配列と同一性を有するプロトスペーサーの非標的鎖に対して1ヌクレオチド5’側に位置する場合、CasXバリアント及びgNAバリアントを含むRNPが、比較アッセイシステムにおける参照CasXタンパク質及び参照gNAを含むRNPの編集効率及び/又は結合と比較して、標的DNAにおけるより高い編集効率及び/又は標的配列の結合を示す、実施形態48~53のいずれか1つに記載の組成物。
【0339】
実施形態55.PAM配列が、TTCである、実施形態54に記載の組成物。
【0340】
実施形態56.PAM配列が、ATCである、実施形態54に記載の組成物。
【0341】
実施形態57.PAM配列が、CTCである、実施形態54に記載の組成物。
【0342】
実施形態58.PAM配列が、GTCである、実施形態54に記載の組成物。
【0343】
実施形態59.1つ以上のPAM配列に対する増加した結合親和性が、配列番号1~3のCasXタンパク質のいずれか1つのPAM配列に対する結合親和性と比較して、少なくとも1.5倍大きい、実施形態54~58のいずれか1つに記載の組成物。
【0344】
実施形態60.RNPが、参照CasX及び配列番号4~16のgNAのRNPと比較して、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも15%、又は少なくとも20%高い百分率割合の切断コンピテントRNPを有する、実施形態48~59のいずれか1つに記載の組成物。
【0345】
実施形態61.CasXバリアントタンパク質が、ニッカーゼ活性を有するRuvC DNA切断ドメインを含む、実施形態37~60のいずれか1つに記載の組成物。
【0346】
実施形態62.CasXバリアントタンパク質が、二本鎖切断活性を有するRuvC DNA切断ドメインを含む、実施形態37~60のいずれか1つに記載の組成物。
【0347】
実施形態63.CasXタンパクが、触媒的に不活性なCasX(dCasX)タンパク質であり、dCasX及びgNAが、BCL11A標的核酸への結合能を保持している、実施形態1~48のいずれか1つに記載の組成物。
【0348】
実施形態64.dCasXが、残基:
a.配列番号1のCasXタンパク質に対応するD672、E769、及び/若しくはD935、又は
b.配列番号2のCasXタンパク質に対応するD659、E756、及び/若しくはD922、に変異を含む、実施形態63に記載の組成物。
【0349】
実施形態65.変異が、残基のアラニンへの置換である、実施形態64に記載の組成物。
【0350】
実施形態66.ドナー鋳型核酸を更に含む、実施形態1~62のいずれか1つに記載の組成物。
【0351】
実施形態67.ドナー鋳型が、BCL11Aエキソン、BCL11Aイントロン、BCL11Aイントロン-エキソン接合部、BCL11A調節エレメント、及びGATA1結合部位配列からなる群から選択されるBCL11A遺伝子の少なくとも一部を含む核酸を含む、実施形態66に記載の組成物。
【0352】
実施形態68.ドナー鋳型の配列が、野生型BCL11A遺伝子の対応する部分と比較して、1つ以上の変異を含む、実施形態67に記載の組成物。
【0353】
実施形態69.ドナー鋳型が、BCL11Aエキソン1、BCL11Aエキソン2、BCL11Aエキソン3、BCL11Aエキソン4、BCL11Aエキソン5、BCL11Aエキソン6、BCL11Aエキソン7、BCL11Aエキソン8、及びBCL11Aエキソン9からなる群から選択されるBCL11Aエキソンの少なくとも一部を含む核酸を含む、実施形態67又は実施形態68に記載の組成物。
【0354】
実施形態70.ドナー鋳型が、BCL11Aエキソン1、BCL11Aエキソン2、及びBCL11Aエキソン3からなる群から選択されるBCL11Aエキソンの少なくとも一部を含む核酸を含む、実施形態69に記載の組成物。
【0355】
実施形態71.ドナー鋳型のサイズが、10~15,000ヌクレオチドの範囲である、実施形態66~70のいずれか1つに記載の組成物。
【0356】
実施形態72.ドナー鋳型が、一本鎖DNA鋳型又は一本鎖RNA鋳型である、実施形態66~71のいずれか1つに記載の組成物。
【0357】
実施形態73.ドナー鋳型が、二本鎖DNA鋳型である、実施形態66~71のいずれか1つに記載の組成物。
【0358】
実施形態74.ドナー鋳型が、クラス2 V型CRISPRタンパク質によって導入されるBCL11A標的核酸における切断部位に隣接する配列に相補的である相同アームを、ドナー鋳型の5’末端及び3’末端又はその近傍に含む、実施形態66~73のいずれか1つに記載の組成物。
【0359】
実施形態75.実施形態66~74のいずれか1つに記載のドナー鋳型を含む、核酸。
【0360】
実施形態76.実施形態37~65のいずれか1つに記載のCasXをコードする配列を含む、核酸。
【0361】
実施形態77.実施形態1~36のいずれか1つに記載のgNAをコードする配列を含む、核酸。
【0362】
実施形態78.CasXタンパク質をコードする配列が、真核細胞における発現のためにコドン最適化されている、実施形態76に記載の核酸。
【0363】
実施形態79.実施形態1~36のいずれか1つに記載のgNA、実施形態37~65のいずれか1つに記載のCasXタンパク質、又は実施形態75~78のいずれか1つに記載の核酸を含む、ベクター。
【0364】
実施形態プロモーターを更に含む、実施形態79に記載のベクター。
【0365】
実施形態81.ベクターが、レトロウイルスベクター、レンチウイルスベクター、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクター、単純ヘルペスウイルス(HSV)ベクター、ウイルス様粒子(VLP)、プラスミド、ミニサークル、ナノプラスミド、DNAベクター、及びRNAベクターからなる群から選択される、実施形態79又は8実施形態0に記載のベクター。
【0366】
実施形態82.ベクターが、AAVベクターである、実施形態81に記載のベクター。
【0367】
実施形態83.AAVベクターが、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV-Rh74、又はAAVRh10から選択される、実施形態82に記載のベクター。
【0368】
実施形態84.ベクターが、レトロウイルスベクターである、実施形態81に記載のベクター。
【0369】
実施形態85.ベクターが、gagポリタンパク質の1つ以上の成分を含むVLPである、実施形態81に記載のベクター。
【0370】
実施形態86.gagポリタンパク質の1つ以上の成分が、マトリックスタンパク質(MA)、ヌクレオカプシドタンパク質(NC)、カプシドタンパク質(CA)、及びp1~p6タンパク質からなる群から選択される、実施形態85に記載のベクター。
【0371】
実施形態87.CasXタンパク質及びgNAを含む、実施形態85又は実施形態86に記載のベクター。
【0372】
実施形態88.CasXタンパク質及びgNAが、RNP中で一緒に会合している、実施形態87に記載のベクター。
【0373】
実施形態89.標的細胞へのVLPの結合及び融合を提供する偽型ウイルスエンベロープ糖タンパク質又は抗体断片を更に含む、実施形態85~88のいずれか1つに記載のVLP。
【0374】
実施形態90.標的細胞が、造血幹細胞(HSC)、造血前駆細胞(HPC)、CD34+細胞、間葉系幹細胞(MSC)、胚性幹細胞(ES)、人工多能性幹細胞(iPSC)、骨髄系共通前駆細胞、前赤芽球細胞、及び赤芽球細胞からなる群から選択される、実施形態89の実施形態に記載のVLP。
【0375】
実施形態91.ドナー鋳型を更に含む、実施形態85~90のいずれか1つに記載のベクター。
【0376】
実施形態92.実施形態79~91のいずれか1つに記載のベクターを含む、宿主細胞。
【0377】
実施形態93.宿主細胞が、BHK、HEK293、HEK293T、NS0、SP2/0、YO骨髄腫細胞、P3X63マウス骨髄腫細胞、PER、PER.C6、NIH3T3、COS、HeLa、CHO、及び酵母細胞からなる群から選択される、実施形態92の宿主細胞。
【0378】
実施形態94.細胞集団においてBCL11A標的核酸配列を改変する方法であって、細胞集団に、
a.実施形態1~74のいずれか1つに記載の組成物、
b.実施形態75~78のいずれか1つに記載の核酸、
c.実施形態79~84のいずれか1つに記載のベクター、
d.実施形態85~91のいずれか1つに記載のVLP、又は
e.(a)~(d)のうちの2つ以上の組み合わせ、を導入することを含み、
第1のgNAによって標的化される細胞のBCL11A遺伝子の標的核酸配列が、CasXタンパク質によって改変される、方法。
【0379】
実施形態95.改変することが、細胞集団のBCL11A遺伝子の標的核酸配列に一本鎖切断を導入することを含む、実施形態94に記載の方法。
【0380】
実施形態96.改変することが、細胞集団のBCL11A遺伝子の標的核酸配列に二本鎖切断を導入することを含む、実施形態94に記載の方法。
【0381】
実施形態97.第2のgNA又は第2のgNAをコードする核酸を細胞集団に導入することを更に含み、第2のgNAが、第1のgNAと比較して、BCL11A遺伝子の標的核酸の異なる部分又は重複する部分に相補的な標的化配列を有し、細胞集団のBCL11A標的核酸における更なる切断をもたらす、実施形態94~96のいずれか1つに記載の方法。
【0382】
実施形態98.改変することが、細胞集団のBCL11A遺伝子において1つ以上のヌクレオチドの挿入、欠失、置換、重複、又は逆位を導入することを含む、実施形態94~97のいずれか1つに記載の方法。
【0383】
実施形態99.標的核酸のGATA1結合部位配列が改変される、実施形態94~98に記載の方法。
【0384】
実施形態100.方法が、細胞集団のBCL11A遺伝子の標的核酸配列の切断部位へのドナー鋳型の挿入を含む、実施形態94~97のいずれか1つに記載の方法。
【0385】
実施形態101.ドナー鋳型の挿入が、相同組換え修復(HDR)又は相同性非依存性標的化組み込み(HITI)によって媒介される、実施形態98に記載の方法。
【0386】
実施形態102.標的核酸のGATA1結合部位配列が改変される、実施形態100又は実施形態101に記載の方法。
【0387】
実施形態103.ドナー鋳型の挿入が、細胞集団におけるBCL11A遺伝子のノックダウン又はノックアウトをもたらす、実施形態100~102のいずれか1つに記載の方法。
【0388】
実施形態104.BCL11Aタンパク質の発現が、BCL11A遺伝子が改変されていない細胞と比較して、少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、又は少なくとも約90%減少するように、細胞集団のBCL11A遺伝子が改変される、実施形態94~103のいずれか1つに記載の方法。
【0389】
実施形態105.細胞の少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、又は少なくとも約90%が検出可能なレベルのBCL11Aタンパク質を発現しないように、細胞集団のBCL11A遺伝子が改変される、実施形態94~103のいずれか1つに記載の方法。
【0390】
実施形態106.細胞が、真核細胞である、実施形態94~105のいずれか1つに記載の方法。
【0391】
実施形態107.真核細胞が、げっ歯類細胞、マウス細胞、ラット細胞、及び非ヒト霊長類細胞からなる群から選択される、実施形態106に記載の方法。
【0392】
実施形態108.真核細胞が、ヒト細胞である、実施形態106に記載の方法。
【0393】
実施形態109.真核細胞が、造血幹細胞(HSC)、造血前駆細胞(HPC)、CD34+細胞、間葉系幹細胞(MSC)、人工多能性幹細胞(iPSC)、骨髄系共通前駆細胞、前赤芽球細胞、及び赤芽球細胞からなる群から選択される、実施形態106~108のいずれか1つに記載の方法。
【0394】
実施形態110.細胞集団のBCL11A遺伝子の標的核酸配列の改変が、インビトロ又はエクスビボで起こる、実施形態94~109のいずれか1つに記載の方法。
【0395】
実施形態111.細胞集団のBCL11A遺伝子の標的核酸配列の改変が、対象においてインビボで起こる、実施形態94~109のいずれか1つに記載の方法。
【0396】
実施形態112.対象が、げっ歯類、マウス、ラット、及び非ヒト霊長類からなる群から選択される、実施形態111に記載の方法。
【0397】
実施形態113.対象が、ヒトである、実施形態111に記載の方法。
【0398】
実施形態114.方法が、対象に治療有効用量のAAVベクターを投与することを含む、実施形態111~113のいずれか1つに記載の方法。
【0399】
実施形態115.AAVベクターが、少なくとも約1×105ベクターゲノム/kg(vg/kg)、少なくとも約1×106vg/kg、少なくとも約1×107vg/kg、少なくとも約1×108vg/kg、少なくとも約1×109vg/kg、少なくとも約1×1010vg/kg、少なくとも約1×1011vg/kg、少なくとも約1×1012vg/kg、少なくとも約1×1013vg/kg、少なくとも約1×1014vg/kg、少なくとも約1×1015vg/kg、又は少なくとも約1×1016vg/kgの用量で対象に投与される、実施形態114に記載の方法。
【0400】
実施形態116.AAVベクターが、少なくとも約1×105vg/kg~約1×1016vg/kg、少なくとも約1×106vg/kg~約1×1015vg/kg、又は少なくとも約1×107vg/kg~約1×1014vg/kgの用量で対象に投与される、実施形態114に記載の方法。
【0401】
実施形態117.方法が、治療有効用量のVLPを対象に投与することを含む、実施形態111~113のいずれか1つに記載に記載の方法。
【0402】
実施形態118.VLPが、少なくとも約1×105粒子/kg、少なくとも約1×106粒子/kg、少なくとも約1×107粒子/kg、少なくとも約1×108粒子/kg、少なくとも約1×109粒子/kg、少なくとも約1×1010粒子/kg、少なくとも約1×1011粒子/kg、少なくとも約1×1012粒子/kg、少なくとも約1×1013粒子/kg、少なくとも約1×1014粒子/kg、少なくとも約1×1015粒子/kg、少なくとも約1×1016粒子/kgの用量で対象に投与される、実施形態117に記載の方法。
【0403】
実施形態119.VLPが、少なくとも約1×105粒子/kg~約1×1016粒子/kg、又は少なくとも約1×106粒子/kg~約1×1015粒子/kg、又は少なくとも約1×107粒子/kg~約1×1014粒子/kgの用量で対象に投与される、実施形態117に記載の方法。
【0404】
実施形態120.ベクター又はVLPが、移植、局所注射、全身注入、又はそれらの組み合わせから選択される投与経路によって対象に投与される、実施形態112~119のいずれか1つに記載の方法。
【0405】
実施形態121.細胞集団のBCL11A遺伝子の標的核酸配列を、
a.第1のgNAと比較して、BCL11A標的核酸の異なる部分若しくは重複する部分を標的化する追加のCRISPRヌクレアーゼ及びgNA、
b.(a)の追加のCRISPRヌクレアーゼ及びgNAをコードするポリヌクレオチド、
c.(b)のポリヌクレオチドを含むベクター、又は
d.(a)の追加のCRISPRヌクレアーゼ及びgNAを含むVLP、と接触させることを更に含み、
接触させることが、第1のgNAによって標的化される配列と比較して、配列における異なる位置でBCL11A遺伝子の改変をもたらす、実施形態94~120のいずれか1つに記載の方法。
【0406】
実施形態122.追加のCRISPRヌクレアーゼが、実施形態1~121のいずれか1つに記載のCasXタンパク質とは異なる配列を有するCasXタンパク質である、実施形態121に記載の方法。
【0407】
実施形態123.追加のCRISPRヌクレアーゼが、CasXタンパク質ではない、実施形態121に記載の方法。
【0408】
実施形態124.追加のCRISPRヌクレアーゼが、Cas9、Cas12a、Cas12b、Cas12c、Cas12d(CasY)、Cas12J、Cas13a、Cas13b、Cas13c、Cas13d、CasX、CasY、Cas14、Cpfl、C2cl、Csn2、及びそれらの配列バリアントからなる群から選択される、実施形態123に記載の方法。
【0409】
実施形態125.実施形態94~124のいずれか1つに記載の方法によって改変された細胞集団であって、改変された細胞の少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、又は少なくとも95%が検出可能なレベルのBCL11Aタンパク質を発現しないように、細胞が改変されている、細胞集団。
【0410】
実施形態126.BCL11Aタンパク質の発現が、BCL11A遺伝子が改変されていない細胞と比較して、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、又は少なくとも95%減少するように、細胞が改変されている、実施形態94~124のいずれか1つに記載の方法によって改変された細胞集団。
【0411】
実施形態127.異常ヘモグロビン症の治療を必要とする対象においてそれを行う方法であって、治療有効量の実施形態125又は実施形態126に記載の細胞を対象に投与することを含む、方法。
【0412】
実施形態128.異常ヘモグロビン症が、鎌状赤血球症又はβサラセミアである、実施形態127に記載の方法。
【0413】
実施形態129.細胞が、細胞を投与される対象に対して自己由来である、実施形態127又は実施形態128のいずれか1つに記載の方法。
【0414】
実施形態130.細胞が、細胞を投与される対象に対して同種である、実施形態127又は実施形態128のいずれか1つに記載の方法。
【0415】
実施形態131.細胞又はその子孫が、対象への改変された細胞の投与後、対象において、少なくとも1ヶ月間、2ヶ月間、3ヶ月間、4ヶ月間、5ヶ月間、6ヶ月間、7ヶ月間、8ヶ月間、9ヶ月間、10ヶ月間、11ヶ月間、12ヶ月間、13ヶ月間、14ヶ月間、15ヶ月間、16ヶ月間、17ヶ月間、18ヶ月間、19ヶ月間、20ヶ月間、21ヶ月間、22ヶ月間、23ヶ月間、2年間、3年間、4年間、又は5年間存続する、実施形態127~130のいずれか1つに記載の方法。
【0416】
実施形態132.方法が、治療前の対象におけるヘモグロビンF(HbF)のレベルと比較して、少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、又は少なくとも約50%の循環血液中のHbFのレベルの増加をもたらす、実施形態127~131のいずれか1つに記載の方法。
【0417】
実施形態133.方法が、少なくとも0.01:1.0、少なくとも0.025:1.0、少なくとも0.05:1.0、少なくとも0.075:1.0、少なくとも0.1:1.0、少なくとも0.2:1.0、少なくとも0.3:1.0、少なくとも0.4:1.0、少なくとも0.5:1:0、少なくとも0.75:1.0、少なくとも1.0:1.0、少なくとも1.25:1.0、少なくとも1.5:1.0、又は少なくとも1.75:1.0の対象におけるHbF対ヘモグロビンS(HbS)の比をもたらす、実施形態127~131のいずれか1つに記載の方法。
【0418】
実施形態134.方法が、対象における総循環ヘモグロビンの少なくとも約5%、又は少なくとも約10%、又は少なくとも約20%、又は少なくとも約30%のHbFレベルをもたらす、実施形態127~131のいずれか1つに記載の方法。
【0419】
実施形態135.対象が、げっ歯類、マウス、ラット、及び非ヒト霊長類からなる群から選択される、実施形態127~134のいずれか1つに記載の方法。
【0420】
実施形態136.対象が、ヒトである、実施形態127~134のいずれか1つに記載の方法。
【0421】
実施形態137.異常ヘモグロビン症の治療を必要とする対象においてそれを行う方法であって、対象の細胞においてBCL11A遺伝子を改変することを含み、改変することが、当該細胞を、治療有効用量の
a.実施形態1~74のいずれか1つに記載の組成物、
b.実施形態75~78のいずれか1つに記載の核酸、
c.実施形態79~84のいずれか1つに記載のベクター、
d.実施形態85~88のいずれか1つに記載のVLP、又は
e.(a)~(d)のうちの2つ以上の組み合わせ、と接触させることを含み、
第1のgNAによって標的化される細胞のBCL11A遺伝子が、CasXタンパク質によって改変される、方法。
【0422】
実施形態138.異常ヘモグロビン症が、鎌状赤血球症又はβサラセミアである、実施形態137に記載の方法。
【0423】
実施形態139.細胞が、造血幹細胞(HSC)、造血前駆細胞(HPC)、CD34+細胞、間葉系幹細胞(MSC)、人工多能性幹細胞(iPSC)、骨髄系共通前駆細胞、前赤芽球細胞、及び赤芽球細胞からなる群から選択される、実施形態137又は実施形態138のいずれか1つに記載の方法。
【0424】
実施形態140.改変することが、細胞のBCL11A遺伝子において一本鎖切断を導入することを含む、実施形態137~139のいずれか1つに記載の方法。
【0425】
実施形態141.改変することが、細胞のBCL11A遺伝子において二本鎖切断を導入することを含む、実施形態137~139のいずれか1つに記載の方法。
【0426】
実施形態142.第2のgNA又は第2のgNAをコードする核酸を対象の細胞に導入することを更に含み、第2のgNAが、第1のgNAと比較して、標的核酸の異なる部分又は重複する部分に相補的な標的化配列を有し、対象の細胞のBCL11A標的核酸における更なる切断をもたらす、実施形態137~141のいずれか1つに記載の方法。
【0427】
実施形態143.改変することが、細胞のBCL11A遺伝子において1つ以上のヌクレオチドの挿入、欠失、置換、重複、又は逆位を導入することを含む、実施形態137~142のいずれか1つに記載の方法。
【0428】
実施形態144.改変することが、対象の改変された細胞におけるBCL11A遺伝子のノックダウン又はノックアウトをもたらす、実施形態143記載の方法。
【0429】
実施形態145.改変された細胞によるBCL11Aタンパク質の発現が、改変されていない細胞と比較して、少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、又は少なくとも約90%減少するように、細胞のBCL11A遺伝子が改変される、実施形態137~144のいずれか1つに記載の方法。
【0430】
実施形態146.改変された細胞の少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、又は少なくとも95%が検出可能なレベルのBCL11Aタンパク質を発現しないように、対象の細胞のBCL11A遺伝子が改変される、実施形態137~144のいずれか1つに記載の方法。
【0431】
実施形態147.方法が、治療前の対象におけるヘモグロビンF(HbF)のレベルと比較して、少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、又は少なくとも約50%の対象の循環血液中のHbFのレベルの増加をもたらす、実施形態137~146のいずれか1つに記載の方法。
【0432】
実施形態148.方法が、少なくとも0.01:1.0、少なくとも0.025:1.0、少なくとも0.05:1.0、少なくとも0.075:1.0、少なくとも0.1:1.0、少なくとも0.2:1.0、少なくとも0.3:1.0、少なくとも0.4:1.0、少なくとも0.5:1:0、少なくとも0.75:1.0、少なくとも1.0:1.0、少なくとも1.25:1.0、少なくとも1.5:1.0、又は少なくとも1.75:1.0の対象の循環血液中のHbF対ヘモグロビンS(HbS)の比をもたらす、実施形態137~147のいずれか1つに記載の方法。
【0433】
実施形態149.方法が、対象の循環血液中の総ヘモグロビンの少なくとも約5%、又は少なくとも約10%、又は少なくとも約20%、又は少なくとも約30%のHbFレベルをもたらす、実施形態137~146のいずれか1つに記載の方法。
【0434】
実施形態150.方法が、細胞のBCL11A遺伝子の標的核酸配列の切断部位へのドナー鋳型の挿入を含む、実施形態137~142のいずれか1つに記載の方法。
【0435】
実施形態151.ドナー鋳型の挿入が、相同組換え修復(HDR)又は相同性非依存性標的化組み込み(HITI)によって媒介される、実施形態149に記載の方法。
【0436】
実施形態152.ドナー鋳型の挿入が、対象の改変された細胞においてBCL11A遺伝子のノックダウン又はノックアウトをもたらす、実施形態149又は実施形態151に記載の方法。
【0437】
実施形態153.改変された細胞によるBCL11Aタンパク質の発現が、改変されていない細胞と比較して、少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、又は少なくとも約90%減少するように、細胞のBCL11A遺伝子が改変される、実施形態147~152のいずれか1つに記載の方法。
【0438】
実施形態154.改変された細胞の少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、又は少なくとも95%が検出可能なレベルのBCL11Aタンパク質を発現しないように、対象の細胞のBCL11A遺伝子が改変される、実施形態147~152のいずれか1つに記載の方法。
【0439】
実施形態155.方法が、治療前の対象におけるヘモグロビンF(HbF)のレベルと比較して、少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、又は少なくとも約50%の対象の循環血液中のHbFのレベルの増加をもたらす、実施形態147~154のいずれか1つに記載の方法。
【0440】
実施形態156.方法が、少なくとも0.01:1.0、少なくとも0.025:1.0、少なくとも0.05:1.0、少なくとも0.075:1.0、少なくとも0.1:1.0、少なくとも0.2:1.0、少なくとも0.3:1.0、少なくとも0.4:1.0、少なくとも0.5:1:0、少なくとも0.75:1.0、少なくとも1.0:1.0、少なくとも1.25:1.0、少なくとも1.5:1.0、又は少なくとも1.75:1.0の対象の循環血液中のHbF対ヘモグロビンS(HbS)の比をもたらす、実施形態147~154のいずれか1つに記載の方法。
【0441】
実施形態157.方法が、対象の循環血液中の総ヘモグロビンの少なくとも約5%、又は少なくとも約10%、又は少なくとも約20%、又は少なくとも約30%のHbFレベルをもたらす、実施形態147~154のいずれか1つに記載の方法。
【0442】
実施形態158.対象が、げっ歯類、マウス、ラット、及び非ヒト霊長類からなる群から選択される、実施形態137~156のいずれか1つに記載の方法。
【0443】
実施形態159.対象が、ヒトである、実施形態137~156のいずれか1つに記載の方法。
【0444】
実施形態160.ベクターが、AAVであり、少なくとも約1×105ベクターゲノム/kg(vg/kg)、少なくとも約1×106vg/kg、少なくとも約1×107vg/kg、少なくとも約1×108vg/kg、少なくとも約1×109vg/kg、少なくとも約1×1010vg/kg、少なくとも約1×1011vg/kg、少なくとも約1×1012vg/kg、少なくとも約1×1013vg/kg、少なくとも約1×1014vg/kg、少なくとも約1×1015vg/kg、又は少なくとも約1×1016vg/kgの用量で対象に投与される、実施形態137~159のいずれか1つに記載の方法。
【0445】
実施形態161.ベクターが、AAVであり、少なくとも約1×105vg/kg~約1×1016vg/kg、少なくとも約1×106vg/kg~約1×1015vg/kg、又は少なくとも約1×107vg/kg~約1×1014vg/kgの用量で対象に投与される、実施形態137~159のいずれか1つに記載の方法。
【0446】
実施形態162.VLPが、少なくとも約1×105粒子/kg、少なくとも約1×106粒子/kg、少なくとも約1×107粒子/kg、少なくとも約1×108粒子/kg、少なくとも約1×109粒子/kg、少なくとも約1×1010粒子/kg、少なくとも約1×1011粒子/kg、少なくとも約1×1012粒子/kg、少なくとも約1×1013粒子/kg、少なくとも約1×1014粒子/kg、少なくとも約1×1015粒子/kg、少なくとも約1×1016粒子/kgの用量で対象に投与される、実施形態137~159のいずれか1つに記載の方法。
【0447】
実施形態163.VLPが、少なくとも約1×105粒子/kg~約1×1016粒子/kg、又は少なくとも約1×106粒子/kg~約1×1015粒子/kg、又は少なくとも約1×107粒子/kg~約1×1014粒子/kgの用量で対象に投与される、実施形態137~159のいずれか1つに記載の方法。
【0448】
実施形態164.ベクター又はVLPが、移植、局所注射、全身注入、又はそれらの組み合わせから選択される投与経路によって対象に投与される、実施形態137~163のいずれか1つに記載の方法。
【0449】
実施形態165.方法が、対象における少なくとも1つの臨床的に関連するエンドポイントの改善をもたらす、実施形態137~164のいずれか1つに記載の方法。
【0450】
実施形態166.方法が、末端臓器疾患の発生、アルブミン尿、高血圧、衰弱状態、低張尿、拡張機能障害、機能的な運動能力、急性冠症候群、疼痛事象、疼痛重篤度、貧血症、溶血、組織低酸素症、臓器機能障害、異常なヘマトクリット値、小児死亡率、脳卒中の発生率、ベースラインと比較したヘモグロビンレベル、HbFレベル、肺塞栓症の発生率の低下、血管閉塞危機の発生率、赤血球中のヘモグロビンSの濃度、入院率、肝臓鉄濃度、必要な輸血、及び生活の質スコアからなる群から選択される少なくとも1つの臨床的に関連するパラメータの改善をもたらす、実施形態165に記載の方法。
【0451】
実施形態167.方法が、末端臓器疾患の発生、アルブミン尿、高血圧、衰弱状態、低張尿、拡張機能障害、機能的な運動能力、急性冠症候群、疼痛事象、疼痛重篤度、貧血症、溶血、組織低酸素症、臓器機能障害、異常なヘマトクリット値、小児死亡率、脳卒中の発生率、ベースラインと比較したヘモグロビンレベル、HbFレベル、肺塞栓症の発生率の低下、血管閉塞危機の発生率、赤血球中のヘモグロビンSの濃度、入院率、肝臓鉄濃度、必要な輸血、及び生活の質スコアからなる群から選択される少なくとも2つの臨床的に関連するパラメータの改善をもたらす、実施形態165に記載の方法。
【0452】
実施形態168.異常ヘモグロビン症を有する対象を治療するための方法であって、
a.対象から人工多能性幹細胞(iPSC)又は造血幹細胞(HSC)を単離することと、
b.実施形態94~110のいずれか1つに記載の方法によって、iPSC又はHSCのBCL11A標的核酸を改変することと、
c.改変されたiPSC又はHSCを造血前駆細胞に分化させることと、
d.異常ヘモグロビン症を有する対象に造血前駆細胞を移植することと、を含み、
方法が、治療前の対象におけるヘモグロビンF(HbF)のレベルと比較して、少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、又は少なくとも約50%の対象の循環血液中のHbFのレベルの増加をもたらす、方法。
【0453】
実施形態169.iPSC又はHSCが、自己由来であり、対象の骨髄又は末梢血から単離される、実施形態168に記載の方法。
【0454】
実施形態170.iPSC又はHSCが、同種であり、異なる対象の骨髄又は末梢血から単離される、実施形態168に記載の方法。
【0455】
実施形態171.移植することが、移植、局所注射、全身注入、又はそれらの組み合わせによって対象に造血前駆細胞を投与することを含む、実施形態168~170のいずれか1つに記載の方法。
【0456】
実施形態172.異常ヘモグロビン症が、鎌状赤血球症又はβサラセミアである、実施形態168~171のいずれか1つに記載の方法。
【0457】
実施形態173.ゲノム編集によって対象において胎児型ヘモグロビン(HbF)を増加させる方法であって、a.有効用量の、実施形態79~84のいずれか1つに記載のベクター又は実施形態85~90のいずれか1つに記載のVLPを対象に投与することであって、ベクター又はVLPが、対象の細胞にCasX:gNAシステムを送達する、投与することと、
b.対象の細胞のBCL11A標的核酸が、第1のgNAによって標的化されたCasXによって編集されることと、
c.BCL11Aタンパク質の発現が低減又は排除されるように、編集することが、標的核酸配列において1つ以上のヌクレオチドの挿入、欠失、置換、重複、又は逆位を導入することを含むことと、を含み、
方法が、治療前の対象におけるヘモグロビンF(HbF)のレベルと比較して、少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、又は少なくとも約50%の対象の循環血液中のHbFのレベルの増加をもたらす、方法。
【0458】
実施形態174.細胞が、造血幹細胞(HSC)、造血前駆細胞(HPC)、CD34+細胞、間葉系幹細胞(MSC)、人工多能性幹細胞(iPSC)、骨髄系共通前駆細胞、前赤芽球細胞、及び赤芽球細胞からなる群から選択される、実施形態173に記載の方法。
【0459】
実施形態175.BCL11Aタンパク質の発現が、編集されていない細胞の標的核酸と比較して、少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、又は少なくとも約90%減少するように、細胞の標的核酸が編集されている、実施形態173又は実施形態174に記載の方法。
【0460】
実施形態176.対象が、マウス、ラット、ブタ、及び非ヒト霊長類からなる群から選択される、実施形態173~175のいずれか1つに記載の方法。
【0461】
実施形態177.対象が、ヒトである、実施形態173~175のいずれか1つに記載の方法。
【0462】
実施形態178.ベクターが、少なくとも約1×105ベクターゲノム/kg(vg/kg)、少なくとも約1×106vg/kg、少なくとも約1×107vg/kg、少なくとも約1×108vg/kg、少なくとも約1×109vg/kg、少なくとも約1×1010vg/kg、少なくとも約1×1011vg/kg、少なくとも約1×1012vg/kg、少なくとも約1×1013vg/kg、少なくとも約1×1014vg/kg、少なくとも約1×1015vg/kg、又は少なくとも約1×1016vg/kgの用量で投与される、実施形態173~177のいずれか1つに記載の方法。
【0463】
実施形態179.VLPが、少なくとも約1×105粒子/kg、少なくとも約1×106粒子/kg、少なくとも約1×107粒子/kg、少なくとも約1×108粒子/kg、少なくとも約1×109粒子/kg、少なくとも約1×1010粒子/kg、少なくとも約1×1011粒子/kg、少なくとも約1×1012粒子/kg、少なくとも約1×1013粒子/kg、少なくとも約1×1014粒子/kg、少なくとも約1×1015粒子/kg、又は少なくとも約1×1016粒子/kgの用量で投与される、実施形態173~177のいずれか1つに記載の方法。
【0464】
実施形態180.ベクター又はVLPが、移植、局所注射、全身注入、又はそれらの組み合わせから選択される投与経路によって投与される、実施形態173~179のいずれか1つに記載の方法。
【0465】
実施形態181.異常ヘモグロビン症の治療のための医薬品として使用するための、実施形態1~74のいずれか1つに記載の組成物、実施形態75~78のいずれか1つに記載の核酸、79~84のいずれか1つに記載のベクター、実施形態85~88のいずれか1つに記載のVLP、実施形態92若しくは実施形態93に記載の宿主細胞、又は実施形態125若しくは実施形態126に記載の細胞集団。
【0466】
実施形態182.標的核酸配列が、プロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)配列の1ヌクレオチド3’側に位置する非標的鎖配列に相補的である、実施形態1に記載の組成物。
【0467】
実施形態183.PAM配列が、TCモチーフを含む、実施形態182に記載の組成物。
【0468】
実施形態184.PAM配列が、ATC、GTC、CTC、又はTTCを含む、実施形態183に記載の組成物。
【0469】
実施形態185.クラス2 V型CRISPRタンパク質が、RuvCドメインを含む、実施形態182~184のいずれか1つに記載の組成物。
【0470】
実施形態186.RuvCドメインが、標的核酸配列においてずれた二本鎖切断を生成する、実施形態185に記載の組成物。
【0471】
実施形態187.クラス2 V型CRISPRタンパク質が、HNHヌクレアーゼドメインを含まない、実施形態182~186のいずれか1つに記載の組成物。
【0472】
セットII
実施形態1.クラス2 V型CRISPRタンパク質及び第1のガイドリボ核酸(gRNA)を含むシステムであって、gRNAが、ポリピリミジントラクト結合タンパク質1(BCL11A)遺伝子を含む標的核酸配列に相補的な標的化配列を含む、システム。
【0473】
実施形態2.gRNAが、
a.BCL11Aイントロン、
b.BCL11Aエキソン、
c.BCL11Aイントロン-エキソン接合部、
d.BCL11A調節エレメント、及び
e.遺伝子間領域、からなる群から選択される標的核酸配列に相補的な標的化配列を含む、実施形態1に記載のシステム。
【0474】
実施形態3.BCL11A遺伝子が、野生型配列を含む、実施形態1又は実施形態2に記載のシステム。
【0475】
実施形態4.gRNAが、単一分子gRNA(sgRNA)である、実施形態1~3のいずれか1つに記載のシステム。
【0476】
実施形態5.gRNAが、二種分子gRNA(dgRNA)である、実施形態1~4のいずれか1つに記載のシステム。
【0477】
実施形態6.gRNAの標的化配列が、配列番号272~2100及び2286~26789からなる群から選択される配列、又はそれと少なくとも約65%、少なくとも約75%、少なくとも約85%、若しくは少なくとも約95%の同一性を有する配列を含む、実施形態1~5のいずれか1つに記載のシステム。
【0478】
実施形態7.gRNAの標的化配列が、配列番号272~2100及び2286~26789からなる群から選択される配列を含む、実施形態1~5のいずれか1つに記載のシステム。
【0479】
実施形態8.標的化配列が、配列の3’末端から単一のヌクレオチドが除去されている、実施形態7に記載のシステム。
【0480】
実施形態9.標的化配列が、配列の3’末端から2つのヌクレオチドが除去されている、実施形態7に記載のシステム。
【0481】
実施形態10.標的化配列が、配列の3’末端から3つのヌクレオチドが除去されている、実施形態7に記載のシステム。
【0482】
実施形態11.標的化配列が、配列の3’末端から4つのヌクレオチドが除去されている、実施形態7に記載のシステム。
【0483】
実施形態12.標的化配列が、配列の3’末端から5つのヌクレオチドが除去されている、実施形態7に記載のシステム。
【0484】
実施形態13.gRNAの標的化配列が、BCL11Aエキソンの配列に相補的である、実施形態1~12のいずれか1つに記載のシステム。
【0485】
実施形態14.gRNAの標的化配列が、BCL11Aエキソン1配列、BCL11Aエキソン2配列、BCL11Aエキソン3配列、BCL11Aエキソン4配列、BCL11Aエキソン5配列、BCL11Aエキソン6配列、BCL11Aエキソン7配列、BCL11Aエキソン8配列、及びBCL11Aエキソン9配列からなる群から選択される配列に相補的である、実施形態13に記載のシステム。
【0486】
実施形態15.gRNAの標的化配列が、BCL11Aエキソン1配列、BCL11Aエキソン2配列、及びBCL11Aエキソン3配列からなる群から選択される配列に相補的である、実施形態14に記載のシステム。
【0487】
実施形態16.gRNAの標的化配列が、BCL11A調節エレメントの配列に相補的である、実施形態1~12のいずれか1つに記載のシステム。
【0488】
実施形態17.gRNAの標的化配列が、BCL11A遺伝子のプロモーターの配列に相補的である、実施形態16に記載のシステム。
【0489】
実施形態18.gRNAの標的化配列が、エンハンサー調節エレメントの配列に相補的である、実施形態16に記載のシステム。
【0490】
実施形態19.gRNAの標的化配列が、BCL11A遺伝子のGATA1赤血球特異的エンハンサー結合部位(GATA1)を含む配列に相補的である、実施形態18に記載のシステム。
【0491】
実施形態20.gRNAの標的化配列が、BCL11A遺伝子のGATA1結合部位の5’側にある配列に相補的である、実施形態16に記載のシステム。
【0492】
実施形態21.gRNAの標的化配列が、UGGAGCCUGUGAUAAAAGCA(配列番号22)の配列、又はそれと少なくとも90%若しくは95%の配列同一性を有する配列を含む、実施形態19又は実施形態20に記載のシステム。
【0493】
実施形態22.gRNAの標的化配列が、UGGAGCCUGUGAUAAAAGCA(配列番号22)の配列からなる、実施形態19に記載のシステム。
【0494】
実施形態23.gRNAの標的化配列が、UGCUUUUAUCACAGGCUCCA(配列番号23)の配列、又はそれと少なくとも90%若しくは95%の配列同一性を有する配列を含む、実施形態18に記載のシステム。
【0495】
実施形態24.gRNAの標的化配列が、UGCUUUUAUCACAGGCUCCA(配列番号23)の配列からなる、実施形態18に記載のシステム。
【0496】
実施形態25.gRNAの標的化配列が、CAGGCUCCAGGAAGGGUUUG(配列番号2949)の配列、又はそれと少なくとも90%若しくは95%の配列同一性を有する配列を含む、実施形態19又は実施形態20に記載のシステム。
【0497】
実施形態26.gRNAの標的化配列が、CAGGCUCCAGGAAGGGUUUG(配列番号2949)の配列からなる、実施形態19又は実施形態20に記載のシステム。
【0498】
実施形態27.gRNAの標的化配列が、GAGGCCAAACCCUUCCUGGA(配列番号2948)の配列、又はそれと少なくとも90%若しくは95%の配列同一性を有する配列を含む、実施形態19又は実施形態20に記載のシステム。
【0499】
実施形態28.gRNAの標的化配列が、CAGGCUCCAGGAAGGGUUUG(配列番号2948)の配列からなる、実施形態19又は実施形態20に記載のシステム。
【0500】
実施形態29.gRNAの標的化配列が、AGUGCAAGCUAACAGUUGCU(配列番号15747)の配列、又はそれと少なくとも90%若しくは95%の配列同一性を有する配列を含む、実施形態19又は実施形態20に記載のシステム。
【0501】
実施形態30.gRNAの標的化配列が、AGUGCAAGCUAACAGUUGCU(配列番号15747)の配列からなる、実施形態19又は実施形態20に記載のシステム。
【0502】
実施形態31.gRNAの標的化配列が、AUACAACUUUGAAGCUAGUC(配列番号15748)の配列、又はそれと少なくとも90%若しくは95%の配列同一性を有する配列を含む、実施形態19又は実施形態20に記載のシステム。
【0503】
実施形態32.gRNAの標的化配列が、AUACAACUUUGAAGCUAGUC(配列番号15748)の配列からなる、実施形態19又は実施形態20に記載のシステム。
【0504】
実施形態33.第2のgRNAを更に含み、第2のgRNAが、第1のgRNAのgRNAの標的化配列と比較して、BCL11A標的核酸の異なる部分又は重複する部分に相補的な標的化配列を有する、実施形態1~32のいずれか1つに記載のシステム。
【0505】
実施形態34.第2のgRNAの標的化配列が、GATA1結合部位配列の5’側又は3’側にある標的核酸の配列に相補的である、実施形態33に記載のシステム。
【0506】
実施形態35.第1のgRNA及び第2のgRNAが、各々、BCL11A遺伝子のプロモーター内の配列に相補的な標的化配列を有する、実施形態33に記載のシステム。
【0507】
実施形態36.第1のgRNA又は第2のgRNAが、配列番号2238~2285、26794~26839、及び27219~27265からなる群から選択される配列、又はそれと少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%の配列同一性を有する配列を含む足場を有する、実施形態1~35のいずれか1つに記載のシステム。
【0508】
実施形態37.第1のgRNA又は第2のgRNAが、配列番号2238~2285、26794~26839、及び27219~27265からなる群から選択される配列を含む足場を有する、実施形態1~36のいずれか1つに記載のシステム。
【0509】
実施形態38.第1のgRNA又は第2のgRNAが、配列番号2238~2285、26794~26839、及び27219~27265からなる群から選択される配列からなる足場を有する、実施形態1~36のいずれか1つに記載のシステム。
【0510】
実施形態39.第1のgRNA又は第2のgRNAが、配列番号2238又は配列番号26800の配列からなる足場を有する、実施形態38に記載のシステム。
【0511】
実施形態40.標的化配列が、gRNAの足場の3’末端に連結されている、実施形態36~39のいずれか1つに記載のシステム。
【0512】
実施形態41.クラス2 V型CRISPRタンパク質が、配列番号59、72~99、101~148、及び26908~27154からなる群から選択される配列、又はそれと少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、若しくは少なくとも約95%、若しくは少なくとも約95%、若しくは少なくとも約96%、若しくは少なくとも約97%、若しくは少なくとも約98%、若しくは少なくとも約99%の配列同一性を有する配列を含むCasXバリアントタンパク質である、実施形態1~40のいずれか1つに記載のシステム。
【0513】
実施形態42.クラス2 V型CRISPRタンパク質が、配列番号59、72~99、101~148、及び26908~27154からなる群から選択される配列を含むCasXバリアントタンパク質である、実施形態41に記載のシステム。
【0514】
実施形態43.CasXバリアントタンパク質が、配列番号59、72~99、101~148、及び26908~27154からなる群から選択される配列からなる、実施形態41に記載のシステム。
【0515】
実施形態44.CasXバリアントタンパク質が、配列番号126、27043、27046、27050からなる群から選択される配列からなる、実施形態42に記載のシステム。
【0516】
実施形態45.CasXバリアントタンパク質が、配列番号1~3から選択される配列を有する参照CasXタンパク質と比較して、少なくとも1つの改変を含む、実施形態41に記載のシステム。
【0517】
実施形態46.少なくとも1つの改変が、参照CasXタンパク質と比較して、CasXバリアントタンパク質のドメインにおける少なくとも1つのアミノ酸置換、欠失、又は置換を含む、実施形態45に記載のシステム。
【0518】
実施形態47.ドメインが、非標的鎖結合(NTSB)ドメイン、標的鎖装填(TSL)ドメイン、ヘリックスIドメイン、ヘリックスIIドメイン、オリゴヌクレオチド結合ドメイン(OBD)、及びRuvC DNA切断ドメインからなる群から選択される、実施形態46に記載のシステム。
【0519】
実施形態48.CasXバリアントタンパク質が、HNHドメインを含まない、実施形態41~47のいずれか1つに記載のシステム。
【0520】
実施形態49.CasXバリアントタンパク質が、1つ以上の核局在化シグナル(NLS)を更に含む、実施形態41~48のいずれか1つに記載のシステム。
【0521】
実施形態50.1つ以上のNLSが、PKKKRKV(配列番号168)、KRPAATKKAGQAKKKK(配列番号169)、PAAKRVKLD(配列番号170)、RQRRNELKRSP(配列番号171)、NQSSNFGPMKGGNFGGRSSGPYGGGGQYFAKPRNQGGY(配列番号172)、RMRIZFKNKGKDTAELRRRRVEVSVELRKAKKDEQILKRRNV(配列番号173)、VSRKRPRP(配列番号174)、PPKKARED(配列番号175)、PQPKKKPL(配列番号176)、SALIKKKKKMAP(配列番号177)、DRLRR(配列番号178)、PKQKKRK(配列番号179)、RKLKKKIKKL(配列番号180)、REKKKFLKRR(配列番号181)、KRKGDEVDGVDEVAKKKSKK(配列番号182)、RKCLQAGMNLEARKTKK(配列番号183)、PRPRKIPR(配列番号184)、PPRKKRTVV(配列番号185)、NLSKKKKRKREK(配列番号186)、RRPSRPFRKP(配列番号187)、KRPRSPSS(配列番号188)、KRGINDRNFWRGENERKTR(配列番号189)、PRPPKMARYDN(配列番号190)、KRSFSKAF(配列番号191)、KLKIKRPVK(配列番号192)、PKKKRKVPPPPAAKRVKLD(配列番号193)、PKTRRRPRRSQRKRPPT(配列番号26792)、SRRRKANPTKLSENAKKLAKEVEN(配列番号194)、KTRRRPRRSQRKRPPT(配列番号195)、RRKKRRPRRKKRR(配列番号196)、PKKKSRKPKKKSRK(配列番号197)、HKKKHPDASVNFSEFSK(配列番号198)、QRPGPYDRPQRPGPYDRP(配列番号199)、LSPSLSPLLSPSLSPL(配列番号200)、RGKGGKGLGKGGAKRHRK(配列番号201)、PKRGRGRPKRGRGR(配列番号202)、PKKKRKVPPPPAAKRVKLD(配列番号203)、PKKKRKVPPPPKKKRKV(配列番号204)、PAKRARRGYKC(配列番号27199)、KLGPRKATGRW(配列番号27200)、PRRKREE(配列番号27201)、PYRGRKE(配列番号27202)、PLRKRPRR(配列番号27203)、PLRKRPRRGSPLRKRPRR(配列番号27204)、PAAKRVKLDGGKRTADGSEFESPKKKRKV(配列番号27205)、PAAKRVKLDGGKRTADGSEFESPKKKRKVGIHGVPAA(配列番号27206)、PAAKRVKLDGGKRTADGSEFESPKKKRKVAEAAAKEAAAKEAAAKA(配列番号207)、PAAKRVKLDGGKRTADGSEFESPKKKRKVPG(配列番号27208)、KRKGSPERGERKRHW(配列番号27209)、KRTADSQHSTPPKTKRKVEFEPKKKRKV(配列番号27210)、及びPKKKRKVGGSKRTADSQHSTPPKTKRKVEFEPKKKRKV(配列番号27211)からなる配列の群から選択され、1つ以上のNLSが、リンカーペプチドを用いて、CRISPRタンパク質又は隣接するNLSに連結され、リンカーペプチドが、RS、(G)n(配列番号27212)、(GS)n(配列番号27213)、(GSGGS)n(配列番号214)、(GGSGGS)n(配列番号215)、(GGGS)n(配列番号216)、GGSG(配列番号217)、GGSGG(配列番号218)、GSGSG(配列番号219)、GSGGG(配列番号220)、GGGSG(配列番号221)、GSSSG(配列番号222)、GPGP(配列番号223)、GGP、PPP、PPAPPA(配列番号224)、PPPG(配列番号27214)、PPPGPPP(配列番号225)、PPP(GGGS)n(配列番号27215)、(GGGS)nPPP(配列番号27216)、AEAAAKEAAAKEAAAKA(配列番号27217)、及びTPPKTKRKVEFE(配列番号27218)(式中、nは1~5である)からなる群から選択される、実施形態49に記載のシステム。
【0522】
実施形態51.1つ以上のNLSが、CasXバリアントタンパク質のC末端又はその近傍に位置する、実施形態49又は実施形態50に記載のシステム。
【0523】
実施形態52.1つ以上のNLSが、CasXバリアントタンパク質のN末端又はその近傍に位置する、実施形態49又は実施形態50に記載のシステム。
【0524】
実施形態53.CasXバリアントタンパク質のN末端又はその近傍及びC末端又はその近傍に位置する1つ以上のNLSを含む、実施形態49又は実施形態50に記載のシステム。
【0525】
実施形態54.CasXバリアントが、ガイド核酸(gRNA)とリボ核タンパク質複合体(RNP)を形成することができる、実施形態41~53のいずれか1つに記載のシステム。
【0526】
実施形態55.CasXバリアントタンパク質及びgRNAバリアントのRNPが、配列番号1、配列番号2、又は配列番号3の参照CasXタンパク質及び配列番号4~16のいずれか1つの配列を含むgRNAのRNPと比較して、少なくとも1つ以上の改善された特徴を示す、実施形態54に記載のシステム。
【0527】
実施形態56.改善された特徴が、CasXバリアントのフォールディングの改善、ガイド核酸(gRNA)に対する結合親和性の改善、標的DNAに対する結合親和性の改善、標的DNAの編集において、ATC、CTC、GTC、又はTTCを含むより広範囲の1つ以上のプロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)配列を利用する能力の改善、標的DNAの巻き戻しの改善、編集活性の増加、編集効率の改善、編集特異性の改善、ヌクレアーゼ活性の増加、標的核酸配列の切断速度の改善、二本鎖切断のための標的鎖装填の増加、一本鎖ニッキングのための標的鎖装填の減少、オフターゲット切断の減少、非標的DNA鎖の結合の改善、タンパク質安定性の改善、タンパク質溶解度の改善、リボ核タンパク質複合体(RNP)の形成の改善、より高い百分率割合の切断コンピテントRNP、タンパク質:gRNA複合体(RNP)の安定性の改善、タンパク質:gRNA複合体の溶解度の改善、タンパク質収量の改善、タンパク質発現の改善、及び融合体特徴の改善、からなる群の1つ以上から選択される、実施形態55に記載のシステム。
【0528】
実施形態57.CasXバリアントタンパク質及びgRNAバリアントのRNPの改善された特徴が、配列番号1、配列番号2、又は配列番号3の参照CasXタンパク質及び配列番号4~16のいずれか1つの配列を含むgRNAのRNPと比較して、少なくとも約1.1~約100倍又はそれ以上改善されている、実施形態55又は実施形態56に記載のシステム。
【0529】
実施形態58.CasXバリアントタンパク質の改善された特徴が、配列番号1、配列番号2、又は配列番号3の参照CasXタンパク質及び配列番号4~16のいずれか1つの配列を含むgRNAと比較して、少なくとも約1.1倍、少なくとも約2倍、少なくとも約10倍、少なくとも約100倍、又はそれ以上である、実施形態55又は実施形態56に記載のシステム。
【0530】
実施形態59.CasXバリアントタンパク質の改善された特徴が、配列番号1、配列番号2、又は配列番号3の参照CasXタンパク質及び配列番号4~16のいずれか1つの配列を含むgNAと比較して、少なくとも約1.1倍、少なくとも約2倍、少なくとも約10倍、少なくとも約100倍、又はそれ以上改善されている、実施形態55又は実施形態56に記載のシステム。
【0531】
実施形態60.改善された特徴が、編集効率を含み、CasXバリアントタンパク質及びgRNAバリアントのRNPが、配列番号2の参照CasXタンパク質及び配列番号4~16のいずれか1つのgRNAのRNPと比較して、編集効率の1.1~100倍の改善を含む、実施形態55~59のいずれか1つに記載のシステム。
【0532】
実施形態61.PAM配列TTC、ATC、GTC、又はCTCのいずれか1つが、細胞アッセイシステムにおいてgRNAの標的化配列と同一性を有するプロトスペーサーの非標的鎖に対して1ヌクレオチド5’側に位置する場合、CasXバリアント及びgRNAバリアントを含むRNPが、比較アッセイシステムにおける参照CasXタンパク質及び参照gRNAを含むRNPの編集効率及び/又は結合と比較して、より高い編集効率及び/又は標的核酸配列の結合を示す、実施形態54~59のいずれか1つに記載のシステム。
【0533】
実施形態62.PAM配列が、TTCである、実施形態61に記載のシステム。
【0534】
実施形態63.gRNAの標的化配列が、配列番号17904~26789からなる群から選択される配列を含む、実施形態62に記載のシステム。
【0535】
実施形態64.PAM配列が、ATCである、実施形態61に記載のシステム。
【0536】
実施形態65.gRNAの標的化配列が、配列番号272~2100及び2286~5625からなる群から選択される配列を含む、実施形態64に記載のシステム。
【0537】
実施形態66.PAM配列が、CTCである、実施形態61に記載のシステム。
【0538】
実施形態67.gRNAの標的化配列が、配列番号5626~13616からなる群から選択される配列を含む、実施形態66に記載のシステム。
【0539】
実施形態68.PAM配列が、GTCである、実施形態61に記載のシステム。
【0540】
実施形態69.gRNAの標的化配列が、配列番号13617~17903からなる群から選択される配列を含む、実施形態66に記載のシステム。
【0541】
実施形態70.1つ以上のPAM配列に対する増加した結合親和性が、配列番号1~3の参照CasXタンパク質のいずれか1つのPAM配列に対する結合親和性と比較して、少なくとも1.5倍大きい、実施形態61~68のいずれか1つに記載のシステム。
【0542】
実施形態71.RNPが、参照CasXタンパク質及び配列番号4~16のgRNAのRNPと比較して、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも15%、又は少なくとも20%高い百分率割合の切断コンピテントRNPを有する、実施形態54~70のいずれか1つに記載のシステム。
【0543】
実施形態72.CasXバリアントタンパク質が、ニッカーゼ活性を有するRuvC DNA切断ドメインを含む、実施形態41~71のいずれか1つに記載のシステム。
【0544】
実施形態73.CasXバリアントタンパク質が、二本鎖切断活性を有するRuvC DNA切断ドメインを含む、実施形態41~71のいずれか1つに記載のシステム。
【0545】
実施形態74.CasXタンパクが、触媒的に不活性なCasX(dCasX)タンパク質であり、dCasX及びgRNAが、BCL11A標的核酸への結合能を保持している、実施形態1~54のいずれか1つに記載のシステム。
【0546】
実施形態75.dCasXが、残基:
a.配列番号1のCasXタンパク質に対応するD672、E769、及び/若しくはD935、又は
b.配列番号2のCasXタンパク質に対応するD659、E756、及び/若しくはD922、に変異を含む、実施形態74に記載の組成物。
【0547】
実施形態76.変異が、残基のアラニンへの置換である、実施形態75に記載のシステム。
【0548】
実施形態77.ドナー鋳型核酸を更に含む、実施形態1~73のいずれか1つに記載のシステム。
【0549】
実施形態78.ドナー鋳型が、BCL11Aエキソン、BCL11Aイントロン、BCL11Aイントロン-エキソン接合部、BCL11A調節エレメント、及びGATA1結合部位配列からなる群から選択されるBCL11A遺伝子の少なくとも一部を含む核酸を含む、実施形態77に記載のシステム。
【0550】
実施形態79.ドナー鋳型の配列が、野生型BCL11A遺伝子の対応する部分と比較して、1つ以上の変異を含む、実施形態78に記載のシステム。
【0551】
実施形態80.ドナー鋳型が、BCL11Aエキソン1、BCL11Aエキソン2、BCL11Aエキソン3、BCL11Aエキソン4、BCL11Aエキソン5、BCL11Aエキソン6、BCL11Aエキソン7、BCL11Aエキソン8、及びBCL11Aエキソン9からなる群から選択されるBCL11Aエキソンの少なくとも一部を含む核酸を含む、実施形態78又は実施形態79に記載のシステム。
【0552】
実施形態81.ドナー鋳型が、BCL11Aエキソン1、BCL11Aエキソン2、及びBCL11Aエキソン3からなる群から選択されるBCL11Aエキソンの少なくとも一部を含む核酸を含む、実施形態80に記載のシステム。
【0553】
実施形態82.ドナー鋳型のサイズが、10~15,000ヌクレオチドの範囲である、実施形態77~81のいずれか1つに記載のシステム。
【0554】
実施形態83.ドナー鋳型が、一本鎖DNA鋳型又は一本鎖RNA鋳型である、実施形態77~82のいずれか1つに記載のシステム。
【0555】
実施形態84.ドナー鋳型が、二本鎖DNA鋳型である、実施形態77~82のいずれか1つに記載のシステム。
【0556】
実施形態85.ドナー鋳型が、クラス2 V型CRISPRタンパク質によって導入されるBCL11A標的核酸における切断部位に隣接する配列に相補的である相同アームを、ドナー鋳型の5’末端及び3’末端又はその近傍に含む、実施形態77~84のいずれか1つに記載のシステム。
【0557】
実施形態86.実施形態77~85のいずれか1つに記載のドナー鋳型を含む、核酸。
【0558】
実施形態87.実施形態41~76のいずれか1つに記載のCasXをコードする配列を含む、核酸。
【0559】
実施形態88.実施形態1~39のいずれか1つに記載のgRNAをコードする配列を含む、核酸。
【0560】
実施形態89.CasXタンパク質をコードする配列が、真核細胞における発現のためにコドン最適化されている、実施形態87に記載の核酸。
【0561】
実施形態実施形態1~39のいずれか1つに記載のgRNA、実施形態41~76のいずれか1つに記載のCasXタンパク質、又は実施形態86~89のいずれか1つに記載の核酸を含む、ベクター。
【0562】
実施形態91.ベクターが、1つ以上のプロモーターを更に含む、実施形態90に記載のベクター。
【0563】
実施形態92.ベクターが、レトロウイルスベクター、レンチウイルスベクター、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクター、単純ヘルペスウイルス(HSV)ベクター、ウイルス様粒子(VLP)、CasX送達粒子(XDP)、プラスミド、ミニサークル、ナノプラスミド、DNAベクター、及びRNAベクターからなる群から選択される、実施形態90又は実施形態91に記載のベクター。
【0564】
実施形態93.ベクターが、AAVベクターである、実施形態92に記載のベクター。
【0565】
実施形態94.AAVベクターが、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV-Rh74、又はAAVRh10から選択される、実施形態93に記載のベクター。
【0566】
実施形態95.AAVベクターが、AAV1、AAV2、AAV5、AAV8、又はAAV9から選択される、実施形態94に記載のベクター。
【0567】
実施形態96.AAVベクターが、以下の成分:
a.5’ITR、
b.3’ITR、及び
c.導入遺伝子であって、第1のプロモーターに作動可能に連結された実施形態87に記載の核酸と、第2のプロモーターに作動可能に連結された実施形態88に記載の核酸と、を含む、導入遺伝子、を含む核酸を含む、実施形態94又は実施形態95に記載のベクター。
【0568】
実施形態97.核酸が、CasXタンパク質をコードする配列の3’側にポリ(A)配列を更に含む、実施形態96に記載のベクター。
【0569】
実施形態98.核酸が、1つ以上のエンハンサーエレメントを更に含む、実施形態96又は実施形態97に記載のベクター。
【0570】
実施形態99.単一のAAV粒子が、核酸を含有することができ、AAV粒子が、標的細胞において標的核酸を形質導入し、効果的に改変するのに必要な全ての成分を有する、実施形態96~98のいずれか1つに記載のベクター。
【0571】
実施形態100.ベクターが、レトロウイルスベクターである、実施形態92に記載のベクター。
【0572】
実施形態101.ベクターが、gagポリタンパク質の1つ以上の成分を含むXDPである、実施形態92に記載のベクター。
【0573】
実施形態102.gagポリタンパク質の1つ以上の成分が、マトリックスタンパク質(MA)、ヌクレオカプシドタンパク質(NC)、カプシドタンパク質(CA)、p1ペプチド、p6ペプチド、P2Aペプチド、P2Bペプチド、P10ペプチド、p12ペプチド、PP21/24ペプチド、P12/P3/P8ペプチド、及びP20ペプチドからなる群から選択される、実施形態101に記載のベクター。
【0574】
実施形態103.XDPが、gagポリタンパク質、CasXタンパク質、及びgRNAの1つ以上の成分を含む、実施形態101又は実施形態102に記載のベクター。
【0575】
実施形態104.CasXタンパク質及びgRNAが、RNP中で一緒に会合している、実施形態103に記載のベクター。
【0576】
実施形態105.ドナー鋳型を更に含む、実施形態101~104のいずれか1つに記載のベクター。
【0577】
実施形態106.標的細胞へのXDPの結合及び融合を提供する偽型ウイルスエンベロープ糖タンパク質又は抗体断片を更に含む、実施形態101~104のいずれか1つに記載のベクター。
【0578】
実施形態107.実施形態の実施形態に記載のベクターであって、標的細胞が、造血幹細胞(HSC)、造血前駆細胞(HPC)、CD34+細胞、間葉系幹細胞(MSC)、胚性幹細胞(ES)、人工多能性幹細胞(iPSC)、骨髄系共通前駆細胞、前赤芽球細胞、及び赤芽球細胞からなる群から選択される、ベクター。
【0579】
実施形態108.実施形態90~107のいずれか1つに記載のベクターを含む、宿主細胞。
【0580】
実施形態109.宿主細胞が、BHK、HEK293、HEK293T、NS0、SP2/0、YO骨髄腫細胞、P3X63マウス骨髄腫細胞、PER、PER.C6、NIH3T3、COS、HeLa、CHO、及び酵母細胞からなる群から選択される、実施形態108に記載の宿主細胞。
【0581】
実施形態110.細胞集団においてBCL11A標的核酸配列を改変する方法であって、細胞集団に、
a.実施形態1~85のいずれか1つに記載のシステム、
b.実施形態86~89のいずれか1つに記載の核酸、
c.実施形態90~95のいずれか1つに記載のベクター、
d.実施形態101~107のいずれか1つに記載のXDP、又は
e.(a)~(d)のうちの2つ以上の組み合わせ、を導入することを含み、
第1のgRNAによって標的化される細胞のBCL11A遺伝子の標的核酸配列が、CasXバリアントタンパク質によって改変される、方法。
【0582】
実施形態111.改変することが、細胞集団のBCL11A遺伝子の標的核酸配列に一本鎖切断を導入することを含む、実施形態110に記載の方法。
【0583】
実施形態112.改変することが、細胞集団のBCL11A遺伝子の標的核酸配列に二本鎖切断を導入することを含む、実施形態110に記載の方法。
【0584】
実施形態113.第2のgRNA又は第2のgRNAをコードする核酸を細胞集団に導入することを更に含み、第2のgRNAが、第1のgRNAと比較して、BCL11A遺伝子の標的核酸の異なる部分又は重複する部分に相補的な標的化配列を有し、細胞集団のBCL11A標的核酸における更なる切断をもたらす、実施形態110~112のいずれか1つに記載の方法。
【0585】
実施形態114.改変することが、細胞集団のBCL11A遺伝子において1つ以上のヌクレオチドの挿入、欠失、置換、重複、又は逆位を導入することを含む、実施形態110~113のいずれか1つに記載の方法。
【0586】
実施形態115.標的核酸のGATA1結合部位配列が改変される、実施形態110~114のいずれか1つに記載の方法。
【0587】
実施形態116.方法が、細胞集団のBCL11A遺伝子の標的核酸配列の切断部位へのドナー鋳型の挿入を含む、実施形態110~113のいずれか1つに記載の方法。
【0588】
実施形態117.ドナー鋳型の挿入が、相同組換え修復(HDR)又は相同性非依存性標的化組み込み(HITI)によって媒介される、実施形態114に記載の方法。
【0589】
実施形態118.標的核酸のGATA1結合部位配列が改変される、実施形態116又は実施形態117に記載の方法。
【0590】
実施形態119.ドナー鋳型の挿入が、細胞集団におけるBCL11A遺伝子のノックダウン又はノックアウトをもたらす、実施形態116~118のいずれか1つに記載の方法。
【0591】
実施形態120.BCL11Aタンパク質の発現が、BCL11A遺伝子が改変されていない細胞と比較して、少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、又は少なくとも約90%減少するように、細胞集団のBCL11A遺伝子が改変される、実施形態110~119のいずれか1つに記載の方法。
【0592】
実施形態121.改変された細胞の少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、又は少なくとも約90%が検出可能なレベルのBCL11Aタンパク質を発現しないように、細胞集団のBCL11A遺伝子が改変される、実施形態110~119のいずれか1つに記載の方法。
【0593】
実施形態122.細胞が、真核細胞である、実施形態110~121のいずれか1つに記載の方法。
【0594】
実施形態123.真核細胞が、げっ歯類細胞、マウス細胞、ラット細胞、及び非ヒト霊長類細胞からなる群から選択される、実施形態122に記載の方法。
【0595】
実施形態124.真核細胞が、ヒト細胞である、実施形態122に記載の方法。
【0596】
実施形態125.真核細胞が、造血幹細胞(HSC)、造血前駆細胞(HPC)、CD34+細胞、間葉系幹細胞(MSC)、人工多能性幹細胞(iPSC)、骨髄系共通前駆細胞、前赤芽球細胞、及び赤芽球細胞からなる群から選択される、実施形態122~124のいずれか1つに記載の方法。
【0597】
実施形態126.細胞集団のBCL11A遺伝子の標的核酸配列の改変が、インビトロ又はエクスビボで起こる、実施形態110~125のいずれか1つに記載の方法。
【0598】
実施形態127.細胞集団のBCL11A遺伝子の標的核酸配列の改変が、対象においてインビボで起こる、実施形態110~125のいずれか1つに記載の方法。
【0599】
実施形態128.対象が、げっ歯類、マウス、ラット、及び非ヒト霊長類からなる群から選択される、実施形態127に記載の方法。
【0600】
実施形態129.対象が、ヒトである、実施形態127に記載の方法。
【0601】
実施形態130.方法が、対象に治療有効用量のAAVベクターを投与することを含む、実施形態127~129のいずれか1つに記載の方法。
【0602】
実施形態131.AAVベクターが、少なくとも約1×105ベクターゲノム/kg(vg/kg)、少なくとも約1×106vg/kg、少なくとも約1×107vg/kg、少なくとも約1×108vg/kg、少なくとも約1×109vg/kg、少なくとも約1×1010vg/kg、少なくとも約1×1011vg/kg、少なくとも約1×1012vg/kg、少なくとも約1×1013vg/kg、少なくとも約1×1014vg/kg、少なくとも約1×1015vg/kg、又は少なくとも約1×1016vg/kgの用量で対象に投与される、実施形態130に記載の方法。
【0603】
実施形態132.AAVベクターが、少なくとも約1×105vg/kg~約1×1016vg/kg、少なくとも約1×106vg/kg~約1×1015vg/kg、又は少なくとも約1×107vg/kg~約1×1014vg/kgの用量で対象に投与される、実施形態130に記載の方法。
【0604】
実施形態133.方法が、治療有効用量のXDPを対象に投与することを含む、実施形態127~129のいずれか1つに記載に記載の方法。
【0605】
実施形態134.XDPが、少なくとも約1×105粒子/kg、少なくとも約1×106粒子/kg、少なくとも約1×107粒子/kg、少なくとも約1×108粒子/kg、少なくとも約1×109粒子/kg、少なくとも約1×1010粒子/kg、少なくとも約1×1011粒子/kg、少なくとも約1×1012粒子/kg、少なくとも約1×1013粒子/kg、少なくとも約1×1014粒子/kg、少なくとも約1×1015粒子/kg、少なくとも約1×1016粒子/kgの用量で対象に投与される、実施形態133に記載の方法。
【0606】
実施形態135.XDPが、少なくとも約1×105粒子/kg~約1×1016粒子/kg、又は少なくとも約1×106粒子/kg~約1×1015粒子/kg、又は少なくとも約1×107粒子/kg~約1×1014粒子/kgの用量で対象に投与される、実施形態133に記載の方法。
【0607】
実施形態136.ベクター又はXDPが、移植、局所注射、全身注入、又はそれらの組み合わせから選択される投与経路によって対象に投与される、実施形態128~135のいずれか1つに記載の方法。
【0608】
実施形態137.方法が、治療前の対象におけるヘモグロビンF(HbF)のレベルと比較して、少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、又は少なくとも約50%の対象の循環血液中のHbFのレベルの増加をもたらす、実施形態128~136のいずれか1つに記載の方法。
【0609】
実施形態138.方法が、少なくとも0.01:1.0、少なくとも0.025:1.0、少なくとも0.05:1.0、少なくとも0.075:1.0、少なくとも0.1:1.0、少なくとも0.2:1.0、少なくとも0.3:1.0、少なくとも0.4:1.0、少なくとも0.5:1:0、少なくとも0.75:1.0、少なくとも1.0:1.0、少なくとも1.25:1.0、少なくとも1.5:1.0、又は少なくとも1.75:1.0の対象の循環血液中のHbF対ヘモグロビンS(HbS)の比をもたらす、実施形態128~137のいずれか1つに記載の方法。
【0610】
実施形態139.方法が、対象の循環血液中の総ヘモグロビンの少なくとも約5%、又は少なくとも約10%、又は少なくとも約20%、又は少なくとも約30%のHbFレベルをもたらす、実施形態128~138のいずれか1つに記載の方法。
【0611】
実施形態140.細胞集団のBCL11A遺伝子の標的核酸配列を、
a.第1のgRNAと比較して、BCL11A標的核酸の異なる部分若しくは重複する部分を標的化する追加のCRISPRヌクレアーゼ及びgRNA、
b.(a)の追加のCRISPRヌクレアーゼ及びgRNAをコードするポリヌクレオチド、
c.(b)のポリヌクレオチドを含むベクター、又は
d.(a)の追加のCRISPRヌクレアーゼ及びgRNAを含むXDP、と接触させることを更に含み、
接触させることが、第1のgRNAによって標的化される配列と比較して、配列における異なる位置でBCL11A遺伝子の改変をもたらす、実施形態110~139のいずれか1つに記載の方法。
【0612】
実施形態141.追加のCRISPRヌクレアーゼが、実施形態1~140のいずれか1つに記載のCasXタンパク質とは異なる配列を有するCasXタンパク質である、実施形態140に記載の方法。
【0613】
実施形態142.追加のCRISPRヌクレアーゼが、CasXタンパク質ではない、実施形態140に記載の方法。
【0614】
実施形態143.追加のCRISPRヌクレアーゼが、Cas9、Cas12a、Cas12b、Cas12c、Cas12d(CasY)、Cas12j、Cas12k、Cas13a、Cas13b、Cas13c、Cas13d、Cas14、Cpfl、C2cl、Csn2、及びそれらの配列バリアントからなる群から選択される、実施形態142に記載の方法。
【0615】
実施形態144.実施形態110~143のいずれか1つに記載の方法によって改変された細胞集団であって、改変された細胞の少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、又は少なくとも95%が検出可能なレベルのBCL11Aタンパク質を発現しないように、細胞が改変されている、細胞集団。
【0616】
実施形態145.BCL11Aタンパク質の発現が、BCL11A遺伝子が改変されていない細胞と比較して、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、又は少なくとも95%減少するように、細胞が改変されている、実施形態110~143のいずれか1つに記載の方法によって改変された細胞集団。
【0617】
実施形態146.異常ヘモグロビン症の治療を必要とする対象においてそれを行う方法であって、治療有効量の実施形態144又は実施形態145に記載の細胞を対象に投与することを含む、方法。
【0618】
実施形態147.異常ヘモグロビン症が、鎌状赤血球症又はβサラセミアである、実施形態146に記載の方法。
【0619】
実施形態148.細胞が、細胞を投与される対象に対して自己由来である、実施形態146又は実施形態147に記載の方法。
【0620】
実施形態149.細胞が、細胞を投与される対象に対して同種である、実施形態146又は実施形態147に記載の方法。
【0621】
実施形態150.細胞又はその子孫が、対象への改変された細胞の投与後、対象において、少なくとも1ヶ月間、2ヶ月間、3ヶ月間、4ヶ月間、5ヶ月間、6ヶ月間、7ヶ月間、8ヶ月間、9ヶ月間、10ヶ月間、11ヶ月間、12ヶ月間、13ヶ月間、14ヶ月間、15ヶ月間、16ヶ月間、17ヶ月間、18ヶ月間、19ヶ月間、20ヶ月間、21ヶ月間、22ヶ月間、23ヶ月間、2年間、3年間、4年間、又は5年間存続する、実施形態146~149のいずれか1つに記載の方法。
【0622】
実施形態151.方法が、治療前の対象におけるヘモグロビンF(HbF)のレベルと比較して、少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、又は少なくとも約50%の循環血液中のHbFのレベルの増加をもたらす、実施形態146~150のいずれか1つに記載の方法。
【0623】
実施形態152.方法が、少なくとも0.01:1.0、少なくとも0.025:1.0、少なくとも0.05:1.0、少なくとも0.075:1.0、少なくとも0.1:1.0、少なくとも0.2:1.0、少なくとも0.3:1.0、少なくとも0.4:1.0、少なくとも0.5:1:0、少なくとも0.75:1.0、少なくとも1.0:1.0、少なくとも1.25:1.0、少なくとも1.5:1.0、又は少なくとも1.75:1.0の対象におけるHbF対ヘモグロビンS(HbS)の比をもたらす、実施形態146~150のいずれか1つに記載の方法。
【0624】
実施形態153.方法が、対象における総循環ヘモグロビンの少なくとも約5%、又は少なくとも約10%、又は少なくとも約20%、又は少なくとも約30%のHbFレベルをもたらす、実施形態146~150のいずれか1つに記載の方法。
【0625】
実施形態154.対象が、げっ歯類、マウス、ラット、及び非ヒト霊長類からなる群から選択される、実施形態146~153のいずれか1つに記載の方法。
【0626】
実施形態155.対象が、ヒトである、実施形態146~153のいずれか1つに記載の方法。
【0627】
実施形態156.異常ヘモグロビン症の治療を必要とする対象においてそれを行う方法であって、対象の細胞においてBCL11A遺伝子を改変することを含み、改変することが、当該細胞を、治療有効用量の
a.実施形態1~85のいずれか1つに記載のシステム、
b.実施形態86~89のいずれか1つに記載の核酸、
c.実施形態90~95のいずれか1つに記載のベクター、
d.実施形態101~104のいずれか1つに記載のXDP、又は
e.(a)~(d)のうちの2つ以上の組み合わせ、と接触させることを含み、
第1のgRNAによって標的化される細胞のBCL11A遺伝子が、CasXタンパク質によって改変される、方法。
【0628】
実施形態157.異常ヘモグロビン症が、鎌状赤血球症又はβサラセミアである、実施形態156に記載の方法。
【0629】
実施形態158.細胞が、造血幹細胞(HSC)、造血前駆細胞(HPC)、CD34+細胞、間葉系幹細胞(MSC)、人工多能性幹細胞(iPSC)、骨髄系共通前駆細胞、前赤芽球細胞、及び赤芽球細胞からなる群から選択される、実施形態156又は実施形態157のいずれか1つに記載の方法。
【0630】
実施形態159.改変することが、細胞のBCL11A遺伝子において一本鎖切断を導入することを含む、実施形態156~158のいずれか1つに記載の方法。
【0631】
実施形態160.改変することが、細胞のBCL11A遺伝子において二本鎖切断を導入することを含む、実施形態156~158のいずれか1つに記載の方法。
【0632】
実施形態161.第2のgRNA又は第2のgRNAをコードする核酸を対象の細胞に導入することを更に含み、第2のgRNAが、第1のgRNAと比較して、標的核酸の異なる部分又は重複する部分に相補的な標的化配列を有し、対象の細胞のBCL11A標的核酸における更なる切断をもたらす、実施形態156~160のいずれか1つに記載の方法。
【0633】
実施形態162.改変することが、細胞のBCL11A遺伝子において1つ以上のヌクレオチドの挿入、欠失、置換、重複、又は逆位を導入することを含む、実施形態156~161のいずれか1つに記載の方法。
【0634】
実施形態163.改変することが、対象の改変された細胞におけるBCL11A遺伝子のノックダウン又はノックアウトをもたらす、実施形態162記載の方法。
【0635】
実施形態164.改変された細胞によるBCL11Aタンパク質の発現が、改変されていない細胞と比較して、少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、又は少なくとも約90%減少するように、細胞のBCL11A遺伝子が改変される、実施形態156~163のいずれか1つに記載の方法。
【0636】
実施形態165.改変された細胞の少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、又は少なくとも95%が検出可能なレベルのBCL11Aタンパク質を発現しないように、対象の細胞のBCL11A遺伝子が改変される、実施形態156~163のいずれか1つに記載の方法。
【0637】
実施形態166.方法が、治療前の対象におけるヘモグロビンF(HbF)のレベルと比較して、少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、又は少なくとも約50%の対象の循環血液中のHbFのレベルの増加をもたらす、実施形態156~165のいずれか1つに記載の方法。
【0638】
実施形態167.方法が、少なくとも0.01:1.0、少なくとも0.025:1.0、少なくとも0.05:1.0、少なくとも0.075:1.0、少なくとも0.1:1.0、少なくとも0.2:1.0、少なくとも0.3:1.0、少なくとも0.4:1.0、少なくとも0.5:1:0、少なくとも0.75:1.0、少なくとも1.0:1.0、少なくとも1.25:1.0、少なくとも1.5:1.0、又は少なくとも1.75:1.0の対象の循環血液中のHbF対ヘモグロビンS(HbS)の比をもたらす、実施形態147~154のいずれか1つに記載の方法。
【0639】
実施形態168.方法が、対象の循環血液中の総ヘモグロビンの少なくとも約5%、又は少なくとも約10%、又は少なくとも約20%、又は少なくとも約30%のHbFレベルをもたらす、実施形態156~165のいずれか1つに記載の方法。
【0640】
実施形態169.方法が、細胞のBCL11A遺伝子の標的核酸配列の切断部位へのドナー鋳型の挿入を含む、実施形態156~161のいずれか1つに記載の方法。
【0641】
実施形態170.ドナー鋳型の挿入が、相同組換え修復(HDR)又は相同性非依存性標的化組み込み(HITI)によって媒介される、実施形態168に記載の方法。
【0642】
実施形態171.ドナー鋳型の挿入が、対象の改変された細胞においてBCL11A遺伝子のノックダウン又はノックアウトをもたらす、実施形態168又は実施形態170に記載の方法。
【0643】
実施形態172.改変された細胞によるBCL11Aタンパク質の発現が、改変されていない細胞と比較して、少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、又は少なくとも約90%減少するように、細胞のBCL11A遺伝子が改変される、実施形態166~171のいずれか1つに記載の方法。
【0644】
実施形態173.改変された細胞の少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、又は少なくとも95%が検出可能なレベルのBCL11Aタンパク質を発現しないように、対象の細胞のBCL11A遺伝子が改変される、実施形態166~171のいずれか1つに記載の方法。
【0645】
実施形態174.方法が、治療前の対象におけるヘモグロビンF(HbF)のレベルと比較して、少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、又は少なくとも約50%の対象の循環血液中のHbFのレベルの増加をもたらす、実施形態166~173のいずれか1つに記載の方法。
【0646】
実施形態175.方法が、少なくとも0.01:1.0、少なくとも0.025:1.0、少なくとも0.05:1.0、少なくとも0.075:1.0、少なくとも0.1:1.0、少なくとも0.2:1.0、少なくとも0.3:1.0、少なくとも0.4:1.0、少なくとも0.5:1:0、少なくとも0.75:1.0、少なくとも1.0:1.0、少なくとも1.25:1.0、少なくとも1.5:1.0、又は少なくとも1.75:1.0の対象の循環血液中のHbF対ヘモグロビンS(HbS)の比をもたらす、実施形態166~173のいずれか1つに記載の方法。
【0647】
実施形態176.方法が、対象の循環血液中の総ヘモグロビンの少なくとも約5%、又は少なくとも約10%、又は少なくとも約20%、又は少なくとも約30%のHbFレベルをもたらす、実施形態166~173のいずれか1つに記載の方法。
【0648】
実施形態177.対象が、げっ歯類、マウス、ラット、及び非ヒト霊長類からなる群から選択される、実施形態156~175のいずれか1つに記載の方法。
【0649】
実施形態178.対象が、ヒトである、実施形態156~175のいずれか1つに記載の方法。
【0650】
実施形態179.ベクターが、AAVであり、少なくとも約1×105ベクターゲノム/kg(vg/kg)、少なくとも約1×106vg/kg、少なくとも約1×107vg/kg、少なくとも約1×108vg/kg、少なくとも約1×109vg/kg、少なくとも約1×1010vg/kg、少なくとも約1×1011vg/kg、少なくとも約1×1012vg/kg、少なくとも約1×1013vg/kg、少なくとも約1×1014vg/kg、少なくとも約1×1015vg/kg、又は少なくとも約1×1016vg/kgの用量で対象に投与される、実施形態156~178のいずれか1つに記載の方法。
【0651】
実施形態180.ベクターが、AAVであり、少なくとも約1×105vg/kg~約1×1016vg/kg、少なくとも約1×106vg/kg~約1×1015vg/kg、又は少なくとも約1×107vg/kg~約1×1014vg/kgの用量で対象に投与される、実施形態156~178のいずれか1つに記載の方法。
【0652】
実施形態181.XDPが、少なくとも約1×105粒子/kg、少なくとも約1×106粒子/kg、少なくとも約1×107粒子/kg、少なくとも約1×108粒子/kg、少なくとも約1×109粒子/kg、少なくとも約1×1010粒子/kg、少なくとも約1×1011粒子/kg、少なくとも約1×1012粒子/kg、少なくとも約1×1013粒子/kg、少なくとも約1×1014粒子/kg、少なくとも約1×1015粒子/kg、少なくとも約1×1016粒子/kgの用量で対象に投与される、実施形態156~178のいずれか1つに記載の方法。
【0653】
実施形態182.XDPが、少なくとも約1×105粒子/kg~約1×1016粒子/kg、又は少なくとも約1×106粒子/kg~約1×1015粒子/kg、又は少なくとも約1×107粒子/kg~約1×1014粒子/kgの用量で対象に投与される、実施形態156~178のいずれか1つに記載の方法。
【0654】
実施形態183.ベクター又はXDPが、実質内、静脈内、動脈内、腹腔内(intraperitoneal)、嚢内、皮下、筋肉内、腹腔内(intraabdominally)、又はそれらの組み合わせから選択される投与経路によって対象に投与され、投与方法が、注射、輸血、又は移植である、実施形態156~182のいずれか1つに記載の方法。
【0655】
実施形態184.方法が、対象における少なくとも1つの臨床的に関連するエンドポイントの改善をもたらす、実施形態156~183のいずれか1つに記載の方法。
【0656】
実施形態185.方法が、末端臓器疾患の発生、アルブミン尿、高血圧、衰弱状態、低張尿、拡張機能障害、機能的な運動能力、急性冠症候群、疼痛事象、疼痛重篤度、貧血症、溶血、組織低酸素症、臓器機能障害、異常なヘマトクリット値、小児死亡率、脳卒中の発生率、ベースラインと比較したヘモグロビンレベル、HbFレベル、肺塞栓症の発生率の低下、血管閉塞危機の発生率、赤血球中のヘモグロビンSの濃度、入院率、肝臓鉄濃度、必要な輸血、及び生活の質スコアからなる群から選択される少なくとも1つの臨床的に関連するパラメータの改善をもたらす、実施形態184に記載の方法。
【0657】
実施形態186.方法が、末端臓器疾患の発生、アルブミン尿、高血圧、衰弱状態、低張尿、拡張機能障害、機能的な運動能力、急性冠症候群、疼痛事象、疼痛重篤度、貧血症、溶血、組織低酸素症、臓器機能障害、異常なヘマトクリット値、小児死亡率、脳卒中の発生率、ベースラインと比較したヘモグロビンレベル、HbFレベル、肺塞栓症の発生率の低下、血管閉塞危機の発生率、赤血球中のヘモグロビンSの濃度、入院率、肝臓鉄濃度、必要な輸血、及び生活の質スコアからなる群から選択される少なくとも2つの臨床的に関連するパラメータの改善をもたらす、実施形態184に記載の方法。
【0658】
実施形態187.異常ヘモグロビン症を有する対象を治療するための方法であって、
a.対象から人工多能性幹細胞(iPSC)又は造血幹細胞(HSC)を単離することと、
b.実施形態110~126のいずれか1つに記載の方法によって、iPSC又はHSCのBCL11A標的核酸を改変することと、
c.改変されたiPSC又はHSCを造血前駆細胞に分化させることと、
d.異常ヘモグロビン症を有する対象に造血前駆細胞を移植することと、を含み、
方法が、治療前の対象におけるヘモグロビンF(HbF)のレベルと比較して、少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、又は少なくとも約50%の対象の循環血液中のHbFのレベルの増加をもたらす、方法。
【0659】
実施形態188.iPSC又はHSCが、自己由来であり、対象の骨髄又は末梢血から単離される、実施形態187に記載の方法。
【0660】
実施形態189.iPSC又はHSCが、同種であり、異なる対象の骨髄又は末梢血から単離される、実施形態187に記載の方法。
【0661】
実施形態190.移植することが、移植、局所注射、全身注入、又はそれらの組み合わせによって対象に造血前駆細胞を投与することを含む、実施形態187~189のいずれか1つに記載の方法。
【0662】
実施形態191.異常ヘモグロビン症が、鎌状赤血球症又はβサラセミアである、実施形態187~190のいずれか1つに記載の方法。
【0663】
実施形態192.ゲノム編集によって対象において胎児型ヘモグロビン(HbF)を増加させる方法であって、
a.有効用量の実施形態90~95のいずれか1つに記載のベクター又は実施形態101~107のいずれか1つに記載のXDPを対象に投与することであって、ベクター又はXDPが、対象の細胞に、CasX:gRNAシステムを送達する、投与することと、
b.対象の細胞のBCL11A標的核酸が、第1のgRNAによって標的化されるCasXによって編集されることと、
c.BCL11Aタンパク質の発現が低減又は排除されるように、編集することが、標的核酸配列において1つ以上のヌクレオチドの挿入、欠失、置換、重複、又は逆位を導入することを含むことと、を含み、
方法が、治療前の対象におけるヘモグロビンF(HbF)のレベルと比較して、少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、又は少なくとも約50%の対象の循環血液中のHbFのレベルの増加をもたらす、方法。
【0664】
実施形態193.方法が、少なくとも0.01:1.0、少なくとも0.025:1.0、少なくとも0.05:1.0、少なくとも0.075:1.0、少なくとも0.1:1.0、少なくとも0.2:1.0、少なくとも0.3:1.0、少なくとも0.4:1.0、少なくとも0.5:1:0、少なくとも0.75:1.0、少なくとも1.0:1.0、少なくとも1.25:1.0、少なくとも1.5:1.0、又は少なくとも1.75:1.0の対象におけるHbF対ヘモグロビンS(HbS)の比をもたらす、実施形態192に記載の方法。
【0665】
実施形態194.方法が、対象における総循環ヘモグロビンの少なくとも約5%、又は少なくとも約10%、又は少なくとも約20%、又は少なくとも約30%のHbFレベルをもたらす、実施形態192又は実施形態193に記載の方法。
【0666】
実施形態195.細胞が、造血幹細胞(HSC)、造血前駆細胞(HPC)、CD34+細胞、間葉系幹細胞(MSC)、人工多能性幹細胞(iPSC)、骨髄系共通前駆細胞、前赤芽球細胞、及び赤芽球細胞からなる群から選択される、実施形態192~194のいずれか1つに記載の方法。
【0667】
実施形態196.BCL11Aタンパク質の発現が、編集されていない細胞の標的核酸と比較して、少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、又は少なくとも約90%減少するように、細胞の標的核酸が編集されている、実施形態192~195のいずれか1つに記載の方法。
【0668】
実施形態197.対象が、マウス、ラット、ブタ、及び非ヒト霊長類からなる群から選択される、実施形態192~196のいずれか1つに記載の方法。
【0669】
実施形態198.対象が、ヒトである、実施形態192~196のいずれか1つに記載の方法。
【0670】
実施形態199.ベクターが、少なくとも約1×105ベクターゲノム/kg(vg/kg)、少なくとも約1×106vg/kg、少なくとも約1×107vg/kg、少なくとも約1×108vg/kg、少なくとも約1×109vg/kg、少なくとも約1×1010vg/kg、少なくとも約1×1011vg/kg、少なくとも約1×1012vg/kg、少なくとも約1×1013vg/kg、少なくとも約1×1014vg/kg、少なくとも約1×1015vg/kg、又は少なくとも約1×1016vg/kgの用量で投与される、実施形態192~198のいずれか1つに記載の方法。
【0671】
実施形態200.XDPが、少なくとも約1×105粒子/kg、少なくとも約1×106粒子/kg、少なくとも約1×107粒子/kg、少なくとも約1×108粒子/kg、少なくとも約1×109粒子/kg、少なくとも約1×1010粒子/kg、少なくとも約1×1011粒子/kg、少なくとも約1×1012粒子/kg、少なくとも約1×1013粒子/kg、少なくとも約1×1014粒子/kg、少なくとも約1×1015粒子/kg、又は少なくとも約1×1016粒子/kgの用量で投与される、実施形態192~198のいずれか1つに記載の方法。
【0672】
実施形態201.ベクター又はXDPが、移植、局所注射、全身注入、又はそれらの組み合わせから選択される投与経路によって投与される、実施形態192~200のいずれか1つに記載の方法。
【0673】
実施形態202.異常ヘモグロビン症の治療のための医薬品として使用するための、実施形態1~85のいずれか1つに記載のシステム、実施形態86~89のいずれか1つに記載の核酸、90~95のいずれか1つに記載のベクター、実施形態101~104のいずれか1つに記載のXDP、実施形態108若しくは実施形態109に記載の宿主細胞、又は実施形態144若しくは実施形態145に記載の細胞集団。
【0674】
実施形態203.標的核酸配列が、プロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)配列の1ヌクレオチド3’側に位置する非標的鎖配列に相補的である、実施形態1に記載のシステム。
【0675】
実施形態204.PAM配列が、TCモチーフを含む、実施形態203に記載のシステム。
【0676】
実施形態205.PAM配列が、ATC、GTC、CTC、又はTTCを含む、実施形態204に記載のシステム。
【0677】
実施形態206.クラス2 V型CRISPRタンパク質が、RuvCドメインを含む、実施形態203~205のいずれか1つに記載のシステム。
【0678】
実施形態207.RuvCドメインが、標的核酸配列においてずれた二本鎖切断を生成する、実施形態206に記載のシステム。
【0679】
実施形態208.クラス2 V型CRISPRタンパク質が、HNHヌクレアーゼドメインを含まない、実施形態203~207のいずれか1つに記載のシステム。
【実施例】
【0680】
実施例1:CasXバリアント構築物の生成
CasX 488構築物(表6の配列)を生成するために、コドン最適化CasX 119構築物(Planctomycetes CasX配列番号2をコードし、アミノ酸置換及び欠失を有する、CasX Stx2構築物に基づく)を、標準的なクローニング方法を使用して目的のプラスミド(pStX)にクローニングした。CasX 491構築物(表6の配列)を生成するために、コドン最適化CasX 484構築物(Planctomycetes CasX配列番号2をコードし、特定のアミノ酸の置換及び欠失を有し、NLSに融合され、ガイド配列及び非標的化配列に連結された、CasX Stx2構築物に基づく)を、標準的なクローニング方法を使用して目的のプラスミド(pStX)にクローニングした。標準的なクローニング方法を使用して、構築物CasX 1(CasX配列番号1)を目的のベクターにクローニングした。CasX 488を構築するために、CasX 119構築物DNAを、適切なユニバーサルプライマーを使用して、製造業者のプロトコルに従ってQ5 DNAポリメラーゼを使用して、2つの反応でPCR増幅した。CasX 491を構築するために、コドン最適化CasX 484構築物DNAを、適切なプライマーを使用して、製造業者のプロトコルに従ってQ5 DNAポリメラーゼを使用して、2つの反応でPCR増幅した。CasX 1構築物を、適切なユニバーサルプライマーを使用して、製造業者のプロトコルに従ってQ5 DNAポリメラーゼを使用して、2つの反応でPCR増幅した。各PCR産物を、製造業者のプロトコルに従ってZymocleanゲルDNA回収キットを使用して、1%アガロースゲル(Gold Bio カタログ番号A-201-500)からのゲル抽出によって精製した。次いで、製造業者のプロトコルに従って、Gibsonアセンブリ(New England BioLabs カタログ番号E2621S)を使用して、対応する断片をつなぎ合わせた。pStx1において構築された産物を、化学的にコンピテントなTurboコンピテントE.coli細菌細胞に形質転換し、カナマイシンを含有するLB寒天プレート上にプレーティングした。個々のコロニーを採取し、製造業者のプロトコルに従ってQiagenスピンミニプレップキットを使用してミニプレップした。得られたプラスミドを、サンガー配列決定を使用して配列決定して、正しい構築を確認した。次いで、正しいクローンを、制限酵素クローニングを使用して、哺乳動物発現ベクターpStx34にサブクローニングした。pStx1におけるpStx34骨格、並びにCasX 488及び491クローンを、それぞれXbaI及びBamHIで消化した。消化した骨格及びそれぞれの挿入断片を、製造業者のプロトコルに従ってZymocleanゲルDNA回収キットを使用して、1%アガロースゲル(Gold Bioカタログ番号A-201-500)からのゲル抽出によって精製した。次いで、製造業者のプロトコルに従ってT4リガーゼ(New England Biolabsカタログ番号M0202L)を使用して、きれいな骨格及びインサートを一緒にライゲーションした。ライゲーション産物を、化学的にコンピテントなTurboコンピテントE.coli細菌細胞に形質転換し、カルベニシリンを含有するLB寒天プレート上にプレーティングした。個々のコロニーを採取し、製造業者のプロトコルに従ってQiagenスピンミニプレップキットを使用してミニプレップした。得られたプラスミドを、サンガー配列決定を使用して配列決定して、正しい構築を確認した。
【0681】
CasX 515(表6の配列)を構築するために、CasX 491構築物DNAを、適切なプライマーを使用して、製造業者のプロトコルに従ってQ5 DNAポリメラーゼを使用して、2つの反応でPCR増幅した。CasX 527(表6の配列)を構築するために、CasX 491構築物DNAを、適切なプライマーを使用して、製造業者のプロトコルに従ってQ5 DNAポリメラーゼを使用して、2つの反応でPCR増幅した。PCR産物を、製造業者のプロトコルに従ってZymocleanゲルDNA回収キットを使用して、1%アガロースゲルからのゲル抽出によって精製した。pStX骨格を、プラスミドpStx56における2部位間のDNAの2931塩基対断片を除去するために、XbaI及びSpeIを使用して消化した。消化した骨格断片を、製造業者のプロトコルに従ってZymocleanゲルDNA回収キットを使用して、1%アガロースゲルからのゲル抽出によって精製した。次いで、製造業者のプロトコルに従ってGibsonアセンブリ(New England BioLabsカタログ番号E2621S)を使用して、挿入断片及び骨格断片をつなぎ合わせた。pStx56において構築された産物を、化学的にコンピテントなTurboコンピテントE.coli細菌細胞に形質転換し、カナマイシンを含むLB寒天プレート上にプレーティングした。個々のコロニーを採取し、製造業者のプロトコルに従ってQiagenスピンミニプレップキットを使用してミニプレップした。得られたプラスミドを、サンガー配列決定を使用して配列決定して、正しい構築を確認した。pStX34は、タンパク質マーカー並びにピューロマイシン及びカルベニシリンの両方の選択マーカーのためのEF-1αプロモーターを含む。pStX56は、タンパク質マーカー並びにピューロマイシン及びカルベニシリンの両方の選択マーカーのためのEF-1αプロモーターを含む。目的の遺伝子を標的化する標的化配列をコードする配列を、CasX PAMの位置に基づいて設計した。標的配列及びこの配列の逆相補体からなる、一本鎖DNA(single-stranded DNA、ssDNA)オリゴ(Integrated DNA Technologies)としての標的配列DNAを注文した。これらの2つのオリゴを、一緒にアニールし、プラスミドのためのT4 DNAリガーゼ及び適切な制限酵素を使用して、Golden Gateアセンブリによって、個々に又はバルクで、pStXにクローニングした。Golden Gate産物を、NEB TurboコンピテントE.coli(NEBカタログ番号C2984I)などの化学的又は電気的にコンピテントな細胞に形質転換し、適切な抗生物質を含有するLB寒天プレートにプレーティングした。個々のコロニーを採取し、製造業者のプロトコルに従ってQiaprepスピンミニプレップキットを使用してミニプレップした。得られたプラスミドを、サンガー配列決定を使用して配列決定して、正しいライゲーションを確認した。
【0682】
CasX 535-537(表6の配列)を構築するために、CasX 515構築物DNAを、製造業者のプロトコルに従ってQ5 DNAポリメラーゼを使用して、各構築物について2つの反応でPCR増幅した。CasX 535については、適切なプライマーを増幅に使用した。CasX 536については、適切なプライマーを使用した。CasX 537については、適切なプライマーを使用した。PCR産物を、製造業者のプロトコルに従ってZymocleanゲルDNA回収キットを使用して、1%アガロースゲルからのゲル抽出によって精製した。pStX骨格を、プラスミドpStx56における2部位間のDNAの2931塩基対断片を除去するために、XbaI及びSpeIを使用して消化した。消化した骨格断片を、製造業者のプロトコルに従ってZymocleanゲルDNA回収キットを使用して、1%アガロースゲルからのゲル抽出によって精製した。次いで、製造業者のプロトコルに従ってGibsonアセンブリを使用して、挿入断片及び骨格断片をつなぎ合わせた。pStx56において構築された産物を、化学的にコンピテントなTurboコンピテントE.coli細菌細胞に形質転換し、カナマイシンを含有するLB寒天プレート上にプレーティングした。個々のコロニーを採取し、製造業者のプロトコルに従ってQiagenスピンミニプレップキットを使用してミニプレップした。得られたプラスミドを、サンガー配列決定を使用して配列決定して、正しい構築を確認した。pStX34は、タンパク質マーカー並びにピューロマイシン及びカルベニシリンの両方の選択マーカーのためのEF-1αプロモーターを含む。pStX56は、タンパク質マーカー並びにピューロマイシン及びカルベニシリンの両方の選択マーカーのためのEF-1αプロモーターを含む。目的の遺伝子を標的化する標的化配列をコードする配列を、CasX PAMの位置に基づいて設計した。標的配列及びこの配列の逆相補体からなる、一本鎖DNA(ssDNA)オリゴ(Integrated DNA Technologies)としての標的配列DNAを注文した。これらの2つのオリゴを、一緒にアニールし、プラスミドのためのT4 DNAリガーゼ及び適切な制限酵素を使用して、Golden Gateアセンブリによって、個々に又はバルクで、pStXにクローニングした。Golden Gate産物を、NEB TurboコンピテントE.coliなどの化学的又は電気的にコンピテントな細胞に形質転換し、適切な抗生物質を含有するLB寒天プレートにプレーティングした。個々のコロニーを採取し、製造業者のプロトコルに従ってQiaprepスピンミニプレップキットを使用してミニプレップした。得られたプラスミドを、サンガー配列決定を使用して配列決定して、正しいライゲーションを確認した。
【0683】
全てのその後のCasXバリアント、例えば、CasX 544及びCasX 660~664、668、670、672、676、及び677を、変異特異的内部プライマー並びにユニバーサルフォワード及びリバースプライマー(設計された変異特異的プライマー並びに使用されたCasX基本構築物がそれらの間の違いであった)を用いるGibsonアセンブリを使用して、上記と同じ方法論を使用してクローニングした。SaCas9及びSpyCas9対照プラスミドを、pStXのタンパク質及びガイド領域をそれぞれのタンパク質及びガイドに交換して、上記のpStXプラスミドと同様に調製した。SaCas9及びSpyCas9の標的化配列は、文献から得たか、又は確立された方法に従って合理的に設計した。
【0684】
CasX構築物の発現及び回収を、標準的な方法論を使用して実施し、以下のように要約する。
【0685】
精製:
凍結試料を、磁気撹拌しながら4℃で一晩解凍した。得られた溶解物の粘度を音波処理によって低下させ、NanoDeBEE(BEE International)を使用して、20,000PSIで2回通してホモジナイズすることによって溶解を完了させた。溶解物を、50,000×g、4℃で30分間の遠心分離によって清澄化し、上清を回収した。清澄化した上清を、AKTA Pure FPLC(Cytiva)を使用して、ヘパリン6 Fast Flowカラム(Cytiva)に適用した。カラムを、5カラム体積(CV)のヘパリン緩衝液A(50mM HEPES-NaOH、250mM NaCl、5mM MgCl2、0.5mM TCEP、10%グリセロール、pH8)で洗浄し、次いで、3CVのヘパリン緩衝液B(NaCl濃度を500mMに調整した緩衝液A)で洗浄した。タンパク質を、1.75CVのヘパリン緩衝液C(NaCl濃度を1Mに調整した緩衝液A)で溶出した。溶出液を、FPLCを使用して、StrepTactin HPカラム(Cytiva)に適用した。カラムを、10 CVのStrep緩衝液(50mM HEPES-NaOH、500mM NaCl、5mM MgCl2、0.5mM TCEP、10%グリセロール、pH8)で洗浄した。タンパク質を、2.5mMデスチオビオチンを添加した1.65CVのStrep緩衝液を使用して、カラムから溶出した。CasX含有画分をプールし、50kDaカットオフの遠心濃縮器(Amicon)を使用して4℃で濃縮し、Superdex 200pgカラム(Cytiva)でのサイズ排除クロマトグラフィーによって精製した。カラムを、SEC緩衝液(25mM リン酸ナトリウム、300mM NaCl、1mM TCEP、10%グリセロール、pH7.25)で平衡化し、FPLCによって操作した。適切な分子量で溶出したCasX含有画分をプールし、50kDaカットオフ遠心濃縮器を使用して4℃で濃縮し、アリコートし、液体窒素中で急速凍結した後、-80℃で保存した。
【0686】
CasXバリアント488:平均収量は、コロイドクーマシー染色によって評価して、98.8%純度で、培養物1リットル当たり2.7mgの精製CasXタンパク質であった。
【0687】
CasXバリアント491:平均収量は、コロイドクーマシー染色によって評価して、99.4%純度で、培養物1リットル当たり12.4mgの精製CasXタンパク質であった。
【0688】
CasXバリアント515:平均収量は、コロイドクーマシー染色によって評価して、純度90%で培養物1リットル当たり7.8mgの精製CasXタンパク質であった。
【0689】
CasXバリアント526:平均収量は、93%純度で、培養物1リットル当たり13.79mgであった。純度は、コロイドクーマシー染色によって評価した。
【0690】
【0691】
実施例2:RNAガイドの生成
RNAシングルガイド及び標的化配列を生成するために、Q5ポリメラーゼ、各骨格に対する鋳型プライマー、並びにT7プロモーター及び標的化配列を有する増幅プライマーを用いてPCRを行うことによって、インビトロ転写のための鋳型を生成した。T7プロモーターに対するDNAプライマー配列、ガイド及び標的化配列のためのガイド及び標的化配列を、以下の表7に示す。sg1、sg2、sg32、sg64、sg174、及びsg235は、それぞれ配列番号4、5、2104、2106、2238、及び26800に対応するが、但し、sg2、sg32、及びsg64は、転写効率を増加させるために追加の5’Gで改変した(表7の配列を表3と比較されたい)。7.37標的化配列は、β2-ミクログロブリン(beta2-microglobulin、B2M)を標的化する。PCR増幅後、鋳型をきれいにし、フェノール-クロロホルム-イソアミルアルコール抽出によって単離し、続いて、エタノール沈殿を行った。
【0692】
インビトロ転写を、50mM Tris pH8.0、30mM MgCl2、0.01%Triton X-100、2mMスペルミジン、20mM DTT、5mM NTP、0.5μM鋳型、及び100μg/mL T7 RNAポリメラーゼを含有する緩衝液中で行った。反応物を、37℃で一晩インキュベートした。1mLの転写容量当たり20単位のDNase I(Promega #M6101)を添加し、1時間インキュベートした。RNA産物を、変性PAGEによって精製し、エタノール沈殿し、1×リン酸緩衝生理食塩水に再懸濁した。sgRNAをフォールディングするために、試料を、5分間70℃に加熱し、次いで、室温に冷却した。反応物に最終濃度が1mMになるようにMgCl2を補充し、5分間50℃に加熱し、次いで、室温に冷却した。最終RNAガイド産物を、-80℃で保存した。
【0693】
【0694】
実施例3:ガイドRNAに対する結合親和性の評価
精製された野生型及び改良型CasXを、塩化マグネシウム並びに非特異的結合及び凝集を防止するためのヘパリンを含有する低塩緩衝液中で、3’側にCy7.5部分を含有する合成シングルガイドRNAとインキュベートする。sgRNAは、10pMの濃度で維持し、タンパク質は、別個の結合反応で、1pMから100μMまで滴定する。反応を平衡に到達させた後、試料を、それぞれタンパク質及び核酸に結合するニトロセルロース膜及び正に荷電したナイロン膜を用いた真空マニホールド膜結合アッセイにかける。膜を画像化して、ガイドRNAを同定し、結合RNA対非結合RNAの割合を、各タンパク質濃度についてニトロセルロース膜対ナイロン膜上の蛍光量によって決定して、タンパク質-sgRNA複合体の解離定数を計算する。実験はまた、これらの変異が野生型及び変異体タンパク質に対するガイドの親和性にも影響を及ぼすかどうかを判定するために、sgRNAの改良型バリアントを用いて実施される。本発明者らはまた、電気移動度シフトアッセイを実施して、膜結合アッセイと定性的に比較し、凝集ではなく可溶性結合が、タンパク質-RNA会合への主要な寄与因子であることを確認する。
【0695】
実施例4:標的DNAに対する結合親和性の評価
精製された野生型及び改良CasXは、標的核酸に相補的な標的化配列を有するシングルガイドRNAと複合体化する。RNP複合体を、塩化マグネシウム並びに非特異的結合及び凝集を防止するためのヘパリンを含有する低塩緩衝液中で、PAM及び標的鎖上の5’側にCy7.5部分を有する適切な標的核酸配列を含有する二本鎖標的DNAとインキュベートする。標的DNAは、1nMの濃度で維持し、一方、RNPは、別個の結合反応で、1pMから100μMまで滴定する。反応を平衡に到達させた後、試料を、未変性5%ポリアクリルアミドゲル上で泳動して、結合及び非結合標的DNAを分離する。ゲルを画像化して、標的DNAの移動度シフトを同定し、結合対非結合DNAの割合を、各タンパク質濃度について計算して、RNP-標的DNA三元複合体の解離定数を決定する。
【0696】
実施例5:インビトロでの差次的PAM認識の評価
1.参照バリアント及びCasXバリアントの比較
本質的に実施例8に記載されるように、インビトロ切断アッセイを、sg174.7.37と複合体化したCasX2、CasX119、及びCasX438を使用して実施した。7.37スペーサー及びTTC、CTC、GTC、又はATC PAMのいずれかを有する蛍光標識されたdsDNA標的を使用した(配列は表8)。0.25、0.5、1、2、5、10、30、及び60分の時点をとった。ゲルをCytiva Typhoonで画像化し、IQTL 8.2ソフトウェアを使用して定量化した。各標的上の各CasX:sgRNA複合体について、非標的鎖切断の見かけの一次速度定数(k切断)を決定した。非TTC PAMを有する標的についての速度定数を、TTC PAM標的と比較して、各PAMについての相対優先度が所与のタンパク質バリアントにおいて変化したかどうかを決定した。
【0697】
全てのバリアントについて、TTC標的が最も高い切断速度を支持し、続いてATC標的、次いでCTC標的、最後にGTC標的であった(
図10A~
図10D、表9)。CasXバリアント及びNTC PAMの各組み合わせについての切断速度k
切断を示す。全ての非NTC PAMについて、そのバリアントのTTC速度と比較した相対切断速度を括弧内に示す。全ての非TTC PAMは、切断速度の大幅な減少(全てについて>10倍)を示した。特定のバリアントについての所与の非TTC PAMの切断速度とTTC PAMの切断速度との間の比は、全てのバリアントにわたって概して一貫したままであった。CTC標的は、TTC標的の3.5~4.3%の速さで切断を支持し、GTC標的は、1.0~1.4%の速さで切断を支持し、ATC標的は、6.5~8.3%の速さで切断を支持した。例外は491であり、ここでは、TTC PAMでの切断速度が速すぎて正確な測定ができず、これは、TTCと非TTC PAMとの間の見かけの差を人為的に減少させる。測定可能な範囲内に入るGTC、CTC、及びATC PAMに対する491の相対速度を比較すると、非TTC PAM間で比較した場合、他のバリアントのものと同等の比が得られ、これは、タンデムで増加する速度と一致する。全体として、バリアント間の差異は、様々なNTC PAMに対する相対優先度が変化していることを示唆するほど大きくはない。しかしながら、バリアントの基底切断速度がより高いため、ATC又はCTC PAMを有する標的が10分以内にほぼ完全に切断され、見かけのk
切断は、TTC PAM上のCasX2のk
切断と同等か、又はそれよりも大きい(表9)。この切断速度の増加は、ヒト細胞における有効なゲノム編集に必要な閾値を超えている可能性があり、これらのバリアントに対するPAMの柔軟性が明らかに増加していることを説明する。
【0698】
【表11】
*各々のPAM配列は太字である。TS-標的鎖。NTS-非標的鎖。
【0699】
【0700】
2.単一CasXバリアントを使用したPAM認識の比較
材料及び方法
7.37スペーサー及びTTC、CTC、GTC、ATC、TTT、CTT、GTT、又はATT PAMのいずれかを有する蛍光標識されたdsDNA標的を使用した(配列は表10)。5’アミノ改変を有するオリゴを注文し、標的鎖オリゴについてはCy7.5 NHSエステルで標識し、非標的鎖オリゴについてはCy5.5 NHSエステルで標識した。オリゴを1:1の比で1×切断緩衝液(20mM Tris HCl pH7.5、150mM NaCl、1mM TCEP、5%グリセロール、10mM MgCl2)中で混合し、10分間95℃に加熱し、溶液を室温に冷却することによって、dsDNA標的を形成した。
【0701】
CasXバリアント491を、sg174.7.37と複合体化した。ガイドを1×切断緩衝液で1.5μMの最終濃度に希釈し、次いで、タンパク質を1μMの最終濃度に添加した。RNPを37℃で10分間インキュベートし、次いで、氷上に置いた。
【0702】
切断アッセイは、RNPを切断緩衝液で200nMの最終濃度に希釈し、dsDNA標的を10nMの最終濃度に添加することによって行った。0.25、0.5、1、2、5、及び10分の時点をとり、等量の95%ホルムアミド及び20mM EDTAを添加することによってクエンチした。切断産物を、10%尿素-PAGEゲル上で泳動することによって分離した。ゲルをAmersham Typhoonで画像化し、IQTL 8.2ソフトウェアを使用して定量化した。非標的鎖切断の見かけの一次速度定数(k切断)を、GraphPad Prismを使用して各標的について決定した。
【0703】
結果:
様々なPAMに対する491.174 RNPの相対切断速度を調べた。細胞における標的及び潜在的なオフターゲットの切断効率の予測を助けることに加えて、これらのデータにより、合成標的の切断速度を調整することが可能になる。自己標的化を可能にするために新しいプロトスペーサーをベクター内に加えることができる自己制限AAVベクターの場合、本発明者らは、PAMを変化させることによってエピソームの切断速度を上下に調節することができると推論した。
【0704】
本発明者らは、PAMを除いて配列が同一である様々なdsDNA基質に対するRNPの切断速度を試験した。この実験設定は、PAM認識をスペーサー配列及びゲノムの状況から生じる効果で複雑にするのではなく、PAM自体の効果の単離を可能にするはずである。全てのNTC及びNTT PAMを試験した。予想通り、RNPは、TTC PAMを有する標的を最も迅速に切断し、第1の時点までに本質的に全てを生成物に変換した(
図11A)。CTCは、およそ半分の速さで切断されたが、TTCの急速な切断により、より幅広い切断速度を捕捉するように最適化されたこれらのアッセイ条件下で、正確なk切断を決定することが困難になる(
図11A、表11)。GTC標的は、NTC PAMの中で最もゆっくりと切断され、切断速度はTTC標的よりもおよそ6倍遅かった。全てのNTT PAMは、全てのNTC PAMよりもゆっくりと切断され、TTTが最も効率的に切断され、GTTがそれに続いた(
図11B、表11)。全てのNTC PAMと比較して低いGTCの切断速度と比較した、全てのNTT PAM間のGTT切断の相対的な効率は、個々のPAMヌクレオチドの認識が状況依存的であり、PAMにおけるある位置でのヌクレオチド同一性が、他の位置での配列優先度に影響を及ぼすことを実証する。
【0705】
ここで試験したPAM配列は、同じスペーサー配列で切断活性を依然として維持しながら、3桁にわたる切断速度を生じる。これらのデータは、所与の合成標的における切断速度が、関連するPAMを変化させることによって容易に改変され得、自己切断活性の調節を可能にして、AAVエピソームの切断及び排除の前にゲノム標的の効率的な標的化を可能にすることを実証する。
【0706】
【表13】
*各dsDNA基質を生成するために使用したDNA配列を示す。各々のPAM配列は太字である。TS-標的鎖。NTS-非標的鎖。
【0707】
【表14】
*TTC切断の速度は、このアッセイの分解能を超えるので、得られたk
切断は、下限として解釈されるべきである。
【0708】
実施例6:二本鎖切断についてのヌクレアーゼ活性の評価
精製された野生型及び操作されたCasXバリアントは、固定されたHRS標的化配列を有するシングルガイドRNAと複合体化する。RNP複合体を、100nMの最終濃度でMgCl2を含む緩衝液に添加し、10nMの濃度で標的鎖又は非標的鎖のいずれかの5’側にCy7.5標識を有する二本鎖標的DNAとインキュベートする。反応物のアリコートを決まった時間に採取し、等量の50mM EDTA及び95%ホルムアミドの添加によってクエンチする。試料を、変性ポリアクリルアミドゲル上で泳動して、切断されたDNA基質と切断されていないDNA基質とを分離する。結果を可視化し、野生型及び操作されたバリアントによる標的及び非標的鎖の切断速度を決定する。標的結合に対する変化と核酸分解反応自体の触媒速度との間をより明確に区別するために、タンパク質濃度を10nM~1uMの範囲にわたって滴定し、切断速度を各濃度で決定して、偽ミカエリス-メンテン適合を生成し、kcat*及びKM*を決定する。KM*の変化は変化した結合を示し、kcat*の変化は変化した触媒を示す。
【0709】
実施例7:PASSアッセイによる異なるPAM配列特異性のCasXタンパク質バリアントの同定
CasXタンパク質2(配列番号2)、491(配列番号126)、515(配列番号133)、533(配列番号26909)、535(配列番号26911)、668(配列番号27043)、及び672(配列番号27046)のPAM配列特異性を同定するために実験を行った。これを達成するために、HEK293細胞株であるPASS_V1.01又はPASS_V1.02を、少なくとも2回の反復実験で、上記のCasXタンパク質で処理し、次世代配列決定(NGS)を実施して、意図された標的部位で様々なスペーサーを使用して、編集の割合(%)を計算した。
【0710】
材料及び方法:PASSシステムを使用してクローンタンパク質バリアントをアッセイするために、多重化プールアプローチをとった。簡潔には、2つのプールされたHEK293細胞株を生成し、PASS_V1.01及びPASS_V1.02と名付けた。プール内の各細胞は、特定の標的部位と対になったゲノムに組み込まれたシングルガイドRNA(sgRNA)を含んでいた。タンパク質発現構築物のトランスフェクション後、特定のスペーサーによる特定の標的での編集を、NGSによって定量化することができた。各ガイド-標的対は、CasX-ガイドRNP複合体の活性、特異性、及び標的化能に関するデータを提供するように設計された。
【0711】
対のスペーサー-標的配列は、Twist Biosciencesによって合成され、等モルプールのオリゴヌクレオチドとして入手した。このプールを、PCRによって増幅し、Golden Gateクローニングによってクローニングして、p77と名付けられたプラスミドの最終ライブラリを生成した。各プラスミドは、GFP発現エレメントとともに、sgRNA発現エレメント及び標的部位を含んでいた。sgRNA発現エレメントは、gRNA足場174(配列番号2238)の転写を駆動するU6プロモーター、続いて、ガイド及びCasXバリアントのRNPを意図された標的部位に標的化するスペーサー配列とからなった。250個の可能な固有の、対のスペーサー-標的合成配列を設計及び合成した。次いで、レンチウイルスのプールを、製造業者の説明書に従ってLentiX産生システム(Takara Bio USA,Inc)を使用して、このプラスミドライブラリから産生した。次いで、得られたウイルス調製物を、qPCRによって定量化し、単一コピーの組み込みを生成するように、低い感染多重度で標準HEK293細胞株に形質導入した。次いで、得られた細胞株を、蛍光活性化細胞選別(fluorescence-activated cell sorting、FACS)によって精製して、PASS_V1.01又はPASS_V1.02の産生を完了した。次いで、細胞株を、6ウェルプレート形式で播種し、2連で、水で処理するか、又は2μgのプラスミドp67でトランスフェクトし、製造業者の説明書に従ってLipofectamineトランスフェクション試薬(ThermoFisher)によって送達した。プラスミドp67は、SV40核局在化配列でタグ付けされたCasXタンパク質の発現を駆動するEF-1αプロモーターを含む。2日後、処理した細胞を回収し、溶解させ、ゲノムDNA単離キット(Zymo Research)を使用して、ゲノムDNAを抽出した。次いで、ゲノムDNAをカスタムプライマーを用いてPCR増幅して、Illumina NGSと適合性のアンプリコンを生成し、NextSeq機器で配列決定した。試料リードを逆多重化し、品質についてフィルタリングした。次いで、編集結果メトリック(インデルを有するリードの割合)を、処理された試料にわたって、各スペーサー-標的合成配列について定量化した。
【0712】
CasXタンパク質に対するPAM配列特異性を評価するために、4つの異なるPAM配列に対する編集結果メトリックを分類した。TTC PAM標的部位について、48個の異なるスペーサー-標的対を定量化した(ATC PAM、CTC PAM、及びGTC PAM標的部位について、14、22、及び11個の個々の標的部位をそれぞれ定量化した)。いくつかのCasXタンパク質については、反復実験を数ヶ月間にわたって数十回繰り返した。これらの実験の各々について、平均編集効率を上記のスペーサーの各々について計算した。次いで、PAM配列の4つのカテゴリにわたる平均編集効率を、これらの測定値の標準偏差とともに、全てのかかる実験から計算した。
【0713】
結果
表12は、PAMカテゴリにわたる平均編集効率及びCasXタンパク質バリアントにわたる平均編集効率を、これらの測定値の標準偏差とともに列挙する。各カテゴリの測定回数も示されている。これらのデータは、操作されたCasXバリアント491及び515が、正準PAM配列TTCに特異的である一方、CasXの他の操作されたバリアントが、試験したPAM配列において多かれ少なかれ効率的に機能したことを示す。特に、CasX 491についてのPAM優先度の平均順位は、CasX 515についてTTC>>ATC>CTC>GTC、又はTTC>>ATC>GTC>CTCであるが、野生型CasX 2は、TTC>>GTC>CTC>ATCの平均順位を示す。より低い編集のPAM配列については、これらの平均測定値の誤差が大きいことに留意されたい。対照的に、CasXバリアント535、668、及び672は、TTC>CTC>ATC>GTCの順位で、かなり広いPAM認識を有する。最後に、CasX 533は、WT CasXと比較して、完全に並べ替えられた順位ATC>CTC>>GTC>TTCを示す。これらのデータを使用して、目的の標的DNA配列に対して最大限に活性な治療用CasX分子を操作することができる。
【0714】
実験の条件下で、配列TTC、ATC、CTC、又はGTCのPAMに関連する標的DNA配列でのヒト細胞における二本鎖DNA切断について改良されたCasXタンパク質のセットが同定された。これは、CasXバリアントが、非正準PAM(すなわち、ATC、CTC、及びGTC)について、CasX 491と比較して、PAM特異性の範囲が変化したことを支持している。
【0715】
【0716】
実施例8:CasX:gRNAインビトロ切断アッセイ
1.RNPの構築
精製された野生型及びCasXのRNP及びシングルガイドRNA(sgRNA)を、実験の直前に調製するか、又は調製して後で使用するために液体窒素中で瞬間凍結し、-80℃で保存した。RNP複合体を調製するために、CasXタンパク質をsgRNAと1:1.2のモル比でインキュベートした。簡潔には、sgRNAを、緩衝液#1(25mM NaPi、150mM NaCl、200mMトレハロース、1mM MgCl2)に添加し、次いで、CasXをsgRNA溶液にゆっくりとかき混ぜながら添加し、37℃で10分間インキュベートして、RNP複合体を形成する。RNP複合体を、使用前に200μLの緩衝液#1で予め湿らせた0.22μmのCostar 8160フィルターを通して濾過した。必要に応じて、RNP試料を、0.5mL Ultra 100-Kdカットオフフィルター(Millipore パーツ番号UFC510096)を用いて、所望の容量が得られるまで濃縮した。コンピテントRNPの形成を以下に記載するように評価した。
【0717】
2.野生型参照CasXと比較したタンパク質バリアントの切断コンピテント画分の決定
参照CasXと比較して活性RNPを形成するCasXバリアントの能力を、インビトロ切断アッセイを使用して決定した。切断アッセイのためのβ-2ミクログロブリン(B2M)7.37標的を以下のように生成した。5’蛍光標識(それぞれ、LI-COR IRDye 700及び800)を有する配列TGAAGCTGACAGCATTCGGGCCGAGATGTCTCGCTCCGTGGCCTTAGCTGTGCTCGCGCT(非標的鎖、NTS(配列番号27177))及びAGCGCGAGCACAGCTAAGGCCACGGAGCGAGACATCTCGGCCCGAATGCTGTCAGCTTCA(標的鎖、TS(配列番号27176))を有するDNAオリゴを購入した。オリゴを1:1の比で1×切断緩衝液(20mM Tris HCl pH7.5、150mM NaCl、1mM TCEP、5%グリセロール、10mM MgCl2)中で混合し、95℃に10分間加熱し、溶液を室温に冷却することによって、dsDNA標的を形成させた。
【0718】
asX RNPを、CasXを
、1×切断緩衝液(20mM Tris HCl pH7.5、150mM NaCl、1mM TCEP、5%グリセロール、10mM MgCl2)中で、最終濃度が1μMの示されたCasX及びガイド(グラフを参照されたい)(特に明記しない限り、1.5倍過剰の示されたガイド)を用いて、37℃で10分間再構成した後、使用するまで氷に移した。7.37標的を、7.37標的に相補的なスペーサーを有するsgRNAとともに使用した。
【0719】
切断反応物を、100nMの最終RNP濃度及び100nMの最終標的濃度で調製した。反応を37℃で行い、7.37標的DNAを添加することによって反応を開始した。アリコートを、5、10、30、60、及び120分で採取し、95%ホルムアミド、20mM EDTAに添加することによってクエンチした。試料を、95℃で10分間加熱することによって変性させ、10%尿素-PAGEゲル上で泳動した。ゲルを、LI-COR Odyssey CLxで画像化し、LI-COR Image Studioソフトウェアを使用して定量化するか、又はCytiva Typhoonで画像化し、Cytiva IQTLソフトウェアを使用して定量化した。得られたデータをプロットし、Prismを使用して分析した。本発明者らは、化学量論量未満の酵素が、延長された時間スケール下であっても化学量論量を超える量の標的を切断することができず、代わりに、存在する酵素の量に比例するプラトーに近づくという観察によって示されるように、CasXが、アッセイ条件下で、本質的に単一代謝回転酵素として作用すると仮定した。したがって、等モル量のRNPによって長い時間スケールにわたって切断された標的の画分は、RNPのどの画分が適切に形成され、切断に対して活性であるかを示す。切断反応がこの濃度レジーム下で単相性から明らかに逸脱するので、切断トレースを二相性速度モデルに適合させ、3つの独立した反復の各々についてプラトーを決定した。平均値及び標準偏差を計算して、活性画分を決定した(表13)。
【0720】
図1に示されるように、CasX2+ガイド174+7.37スペーサー、CasX119+ガイド174+7.37スペーサー、CasX457+ガイド174+7.37スペーサー、CasX488+ガイド174+7.37スペーサー、及びCasX491+ガイド174+7.37スペーサーについて形成されたRNPについて、見かけの活性(コンピテント)画分を決定した。表13に、決定した活性画分を示す。全てのCasXバリアントは、野生型CasX2よりも高い活性画分を有し、これは、操作されたCasXバリアントが、野生型CasXと比較して、試験条件下で同一のガイドを有する有意により活性で安定なRNPを形成することを示している。これは、sgRNAに対する親和性の増加、sgRNAの存在下での安定性若しくは溶解度の増加、又は操作されたCasX:sgRNA複合体の切断コンピテント立体構造の安定性の増加に起因する可能性がある。RNPの溶解度の増加は、CasX2と比較して、CasX457、CasX488、又はCasX491がsgRNAに添加された場合、形成される観察された沈殿物の顕著な減少によって示された。
【0721】
3.インビトロ切断アッセイ-参照シングルガイドと比較したシングルガイドバリアントについての切断コンピテント画分の決定
図2及び表10に示されるように、CasX2.2.7.37、CasX2.32.7.37、CasX2.64.7.37、及びCasX2.174.7.37についても同じプロトコルを使用して切断コンピテント画分を決定したところ、16±3%、13±3%、5±2%、及び22±5%であった。
【0722】
ガイドの第2のセットを異なる条件下で試験して、RNPの形成に対するガイドの寄与をより良好に単離した。7.37スペーサーを有するガイド174、175、185、186、196、214、及び215を、以前のように過剰なガイドではなく、ガイドについて1μM及びタンパク質について1.5μMの最終濃度でCasX 491と混合した。
図3及び表10に、その結果を示す。これらのガイド制限条件下で、これらのガイドの多くは、174を上回る更なる改善を示し、174の場合の80±9%と比較して、185及び196は、それぞれ91±4%及び91±1%のコンピテント画分を達成した。
【0723】
これらのデータは、CasXバリアント及びsgRNAバリアントの両方が、野生型CasX及び野生型sgRNAと比較して、ガイドRNAを有するより高度の活性RNPを形成できることを示す。野生型参照CasXと比較したCasXバリアント119、457、488、及び491の見かけの切断速度を、標的7.37の切断についてのインビトロ蛍光アッセイを使用して決定した。
【0724】
4.インビトロ切断アッセイ-野生型参照CasXと比較したCasXバリアントのk
切断の決定
CasX RNPを、1×切断緩衝液(20mM Tris HCl pH7.5、150mM NaCl、1mM TCEP、5%グリセロール、10mM MgCl
2)中で、最終濃度が1μMの示されたCasX(
図4を参照)及び1.5倍過剰の示されたガイドを用いて、37℃で10分間再構成した後、使用するまで氷に移した。切断反応を、200nMの最終RNP濃度及び10nMの最終標的濃度で設定した。反応を、特に断りのない限り、37℃で行い、標的DNAを添加することによって反応を開始した。アリコートを、0.25、0.5、1、2、5、及び10分で採取し、95%ホルムアミド、20mM EDTAに添加することによってクエンチした。試料を、95℃で10分間加熱することによって変性させ、10%尿素-PAGEゲル上で泳動した。ゲルを、LI-COR Odyssey CLxで画像化し、LI-COR Image Studioソフトウェアを使用して定量化するか、又はCytiva Typhoonで画像化し、Cytiva IQTLソフトウェアを使用して定量化した。得られたデータをプロットし、Prismを使用して分析し、各CasX:sgRNAの組み合わせの個別の反復について、非標的鎖切断の見かけの一次速度定数(k切断)を決定した。表10に、独立した適合による3回の反復の平均値及び標準偏差を示し、
図5に、切断トレースを示す。
【0725】
見かけの切断速度定数を、野生型CasX2、並びに各アッセイで利用したガイド174及びスペーサー7.37を有するCasXバリアント119、457、488、及び491について決定した(表10及び
図4を参照)。全てのCasXバリアントは、野生型CasX2と比較して、改善された切断速度を有した。CasX 457は、上で決定されたように、より高いコンピテント画分を有するにもかかわらず、119よりもゆっくりと切断した。CasX488及びCasX491は、かなりの差で最も高い切断速度を有した。標的は最初の時点でほぼ完全に切断され、真の切断速度はこのアッセイの分解能を超えるので、報告されたk
切断は下限として解釈されるべきである。
【0726】
これらのデータは、CasXバリアントがより高いレベルの活性を有し、k切断速度が、野生型CasX2と比較して少なくとも30倍高くなることを示す。
【0727】
5.インビトロ切断アッセイ:野生型ガイドとガイドバリアントとの比較
また、野生型参照CasX2及び参照ガイド2を用いて切断アッセイを実施し、ガイドバリアント32、64、及び174と比較して、バリアントが切断を改善したかどうかを決定した。実験は上記のように実施した。得られたRNPの多くは、試験した時間内に標的の完全な切断に近づかなかったので、本発明者らは、一次速度定数ではなく初期反応速度(V0)を決定した。最初の2つの時点(15秒及び30秒)を、各CasX:sgRNAの組み合わせ及び反復について線形適合した。3回の反復について、傾きの平均値及び標準偏差を決定した。
【0728】
アッセイ条件下で、ガイド2、32、64、及び174を有するCasX2のV
0は、20.4±1.4nM/分、18.4±2.4nM/分、7.8±1.8nM/分、及び49.3±1.4nM/分であった。(表13、並びに
図5及び
図6を参照)。ガイド174は、得られたRNPの切断速度の大幅な改善(2に対して約2.5倍、
図6を参照のこと)を示したが、ガイド32及び64は、ガイド2と同様の又はそれよりも劣る機能を示した。注目すべきことに、ガイド64は、ガイド2のものよりも低い切断速度を支持するが、インビボでは、はるかに良好に機能する(データは示さず)。ガイド64を生成するためのいくつかの配列の改変は、三重鎖形成に関与するヌクレオチドを犠牲にして、インビボで転写を改善する可能性が高い。ガイド64の改善された発現は、インビボでのその改善された活性を説明する可能性が高く、一方、その減少した安定性は、インビトロで不適切なフォールディングを導く可能性がある。
【0729】
スペーサー7.37を有するガイド174、175、185、186、196、214、及び215、並びにCasX 491を用いて更なる実験を実施して、相対切断速度を決定した。本発明者らのアッセイで測定可能な範囲まで切断速度を減少させるために、切断反応物を10℃でインキュベートした。結果を
図7及び表13に示す。これらの条件下では、215は、174よりも速い切断速度を支持する唯一のガイドであった。196は、ガイド制限条件下でRNPの最も高い活性画分を示し、174と本質的に同じ動態を有し、異なるバリアントが異なる特徴の改善をもたらすことを再度強調した。
【0730】
これらのデータは、アッセイの条件下で、ガイドバリアントをCasXとともに使用すると、その大部分が、野生型ガイドを有するものよりも高いレベルの活性を有するRNPをもたらし、約2倍~6倍超の範囲の切断初速度の改善を伴うことを支持する。表13の番号は、左から右に、RNP構築物のCasXバリアント、sgRNA足場、及びスペーサー配列を示す。以下の表で、RNP構築物名は、左から右に、CasXタンパク質バリアント、ガイド足場、及びスペーサーが示されている。
【0731】
6.インビトロ切断アッセイ:参照2.2に対する515.174及び526.174の切断速度及びコンピテント画分の比較。
本発明者らは、操作されたシングルガイドバリアント174と複合体化した操作されたタンパク質CasXバリアント515及び526を、参照野生型タンパク質2(配列番号2)及び最小限に操作されたガイドバリアント2(配列番号5)と比較したいと考えた。1.5倍過剰のガイドを用いて、上記のようにRNP複合体を構築した。k切断及びコンピテント画分を決定するための切断アッセイを上記のように実施し(両方とも37℃で実施)、異なる時点を使用して、反応がほぼ完了するのに必要な時間が有意に異なるため、野生型対操作されたRNPについてのコンピテント画分を決定した。
【0732】
得られたデータは、タンパク質及びガイドの両方を操作することによって、RNPの活性が劇的に改善したことを明らかに実証する。515.174及び526.174のRNPは、2.2の16%と比較して、それぞれ76%及び91%のコンピテント画分を有した(
図8、表13)。動態アッセイにおいて、515.174及び526.174の両方は、第1の時点までに本質的に全ての標的DNAを切断し、アッセイの分解能を超え、それぞれ17.10及び19.87分
-1の推定切断速度をもたらした(
図9、表13)。対照的に、2.2のRNPは、最後の10分の時点までに平均60%未満の標的DNAを切断し、操作されたRNPよりもほぼ2桁低い推定k
切断を有する。タンパク質及びガイドに対して行われた改変は、より安定であり、活性粒子を形成する可能性がより高く、粒子毎にはるかに効率的にDNAを切断するRNPをもたらした。
【0733】
【表16】
*平均値及び標準偏差
**速度がアッセイの分解能を超えている
【0734】
実施例9:インビトロでの切断動態に対するスペーサー長の効果の試験
様々な長さのスペーサーを有する2つのCasXバリアント及びガイドRNAのリボ核タンパク質複合体(RNP)を、インビトロでの切断活性について試験して、どのスペーサー長が標的核酸の最も効率的な切断を支持するか、及びスペーサー長の優先度がタンパク質によって変化するかどうかを決定した。
【0735】
方法:
様々な長さのスペーサーを有するCasX及びガイドRNAのリボ核タンパク質複合体(RNP)を、インビトロでの切断活性について試験して、どのスペーサー長が標的核酸の最も効率的な切断を支持するかを決定した。
【0736】
CasXバリアント515及び526を上記のように精製した。足場174(配列番号2238)を有するガイドを、インビトロ転写(in vitro transcription、IVT)によって調製した。IVT鋳型は、推奨プロトコルに従ってQ5ポリメラーゼ(NEB M0491)、各足場骨格の鋳型オリゴを使用して、またT7プロモーター及び7.37スペーサーを有する20ヌクレオチドの増幅プライマー又は3’末端から短縮された18若しくは19ヌクレオチドの増幅プライマー(GGCCGAGATGTCTCGCTCCG;tdTomatoを標的化(配列番号27192))を使用して、PCRによって生成した。表14に、スペーサー配列並びに各鋳型を生成するために使用したオリゴヌクレオチドを示す。次いで、得られた鋳型は、T7 RNAポリメラーゼを使用して、標準的なプロトコルに従ってRNAガイドを生成した。変性ポリアクリルアミドゲル電気泳動を使用してガイドを精製し、使用前にリフォールディングした。
【0737】
CasX RNPを、CasXを1μMになるように1×切断緩衝液(20mM Tris HCl pH7.5、150mM NaCl、1mM TCEP、5%グリセロール、10mM MgCl2)に希釈し、sgRNAを1.2μMになるように添加し、37℃で10分間インキュベートすることによって再構成した後、使用するまで氷に移した。蛍光標識された7.37標的DNAを、Integrated DNA Technologiesから個々のオリゴヌクレオチドとして購入し(配列の詳細は表14)、dsDNA標的を、1×切断緩衝液中の2つの相補鎖の等モル混合物を加熱し、室温までゆっくりと冷却することによって調製した。
【0738】
RNPを、最終濃度が200nMになるように切断緩衝液に希釈し、振盪せずに10℃でインキュベートした。7.37標的DNAを、最終濃度が10nMになるように添加することによって、切断反応を開始した。0.25、0.5、1、2、5、10、及び30分の時点をとった。等量の95%ホルムアミド、20mM EDTAを添加することによって、時点をクエンチした。試料を、95℃で10分間加熱することによって変性させ、10%尿素-PAGEゲル上で泳動した。ゲルをAmersham Typhoonで画像化し、IQTLソフトウェアで分析した。得られたデータをプロットし、Prismを使用して分析した。非標的鎖の切断を単一の指数関数に適合させて、見かけの一次速度定数(k切断)を決定した。
【0739】
結果:
18、19、又は20ヌクレオチドのスペーサーを有するsgRNAと複合体化したCasXバリアント515及び526の切断速度を比較して、どのスペーサー長が各タンパク質バリアントについて最も効率的な切断をもたらすかを決定した。インビトロ転写されたsgRNAを用いて実施した他の実験と一致して、18ntスペーサーガイドは、両方のタンパク質バリアントについて最も良好に機能した(
図12A及び
図12B、表14)。18ntスペーサーは、タンパク質515の場合、20ntスペーサーよりも1.4倍速く、タンパク質526の場合、20ntスペーサーよりも3倍速かった。19ntスペーサーは、両方のタンパク質に対して中間の活性を有したが、ここでも、差異はバリアント526に対してより顕著であった。一般に、20ntよりも短いスペーサーは、様々なタンパク質、スペーサー、及び送達方法にわたって増加した活性を有することが観察されているが、改善の程度及び最適なスペーサー長は異なっている。これらのデータは、配列が非常に類似している(2残基のみが異なる)2つの操作されたタンパク質が、方向は類似しているが程度が大幅に異なるスペーサー長の結果として、活性の変化を有し得ることを示す。
【0740】
【0741】
【0742】
実施例10:ガイドRNAに対する結合親和性の評価
精製された野生型及び改良型CasXを、塩化マグネシウム並びに非特異的結合及び凝集を防止するためのヘパリンを含有する低塩緩衝液中で、3’側にCy7.5部分を含有する合成シングルガイドRNAとインキュベートする。sgRNAは、10pMの濃度で維持し、タンパク質は、別個の結合反応で、1pMから100μMまで滴定する。反応を平衡に到達させた後、試料を、それぞれタンパク質及び核酸に結合するニトロセルロース膜及び正に荷電したナイロン膜を用いた真空マニホールド膜結合アッセイにかける。膜を画像化して、ガイドRNAを同定し、結合RNA対非結合RNAの割合を、各タンパク質濃度についてニトロセルロース膜対ナイロン膜上の蛍光量によって決定して、タンパク質-sgRNA複合体の解離定数を計算する。実験はまた、これらの変異が野生型及び変異体タンパク質に対するガイドの親和性にも影響を及ぼすかどうかを判定するために、sgRNAの改良型バリアントを用いて実施される。本発明者らはまた、電気移動度シフトアッセイを実施して、膜結合アッセイと定性的に比較し、凝集ではなく可溶性結合が、タンパク質-RNA会合への主要な寄与因子であることを確認する。
【0743】
実施例11:標的DNAに対する結合親和性の評価
精製された野生型及び改良CasXは、標的核酸に相補的な標的化配列を有するシングルガイドRNAと複合体化する。RNP複合体を、塩化マグネシウム並びに非特異的結合及び凝集を防止するためのヘパリンを含有する低塩緩衝液中で、PAM及び標的鎖上の5’側にCy7.5標識を有する適切な標的核酸配列を含有する二本鎖標的DNAとインキュベートする。標的DNAは、1nMの濃度で維持し、一方、RNPは、別個の結合反応で、1pMから100μMまで滴定する。反応を平衡に到達させた後、試料を、未変性5%ポリアクリルアミドゲル上で泳動して、結合及び非結合標的DNAを分離する。ゲルを画像化して、標的DNAの移動度シフトを同定し、結合対非結合DNAの割合を、各タンパク質濃度について計算して、RNP-標的DNA三元複合体の解離定数を決定する。実験は、参照CasX及び参照gRNAを含むRNPと比較して、CasXバリアント及びgRNAバリアントを含むRNPの改善された結合親和性を実証すると予想される。
【0744】
実施例12:RNP産生のためのCasXバリアントの改善された発現及び溶解度特徴の評価
野生型及び改変型CasXバリアントを、同一条件下で、BL21(DE3)E.coliで発現させる。全てのタンパク質は、IPTG誘導性T7プロモーターの制御下にある。細胞を、TB培地で、37℃で0.6のODまで増殖させ、その時点で増殖温度を16℃に低下させ、0.5mMのIPTGを添加することによって発現を誘導する。発現の18時間後、細胞を回収する。可溶性タンパク質画分を抽出し、SDS-PAGEゲル上で分析する。可溶性CasXの発現の相対レベルを、クーマシー染色によって同定する。タンパク質を上記のプロトコルに従って並行して精製し、純粋なタンパク質の最終収量を比較する。精製されたタンパク質の溶解度を決定するために、タンパク質が沈殿し始めるまで、構築物を保存緩衝液中で濃縮する。沈殿したタンパク質を遠心分離によって除去し、可溶性タンパク質の最終濃度を測定して、各バリアントの最大溶解度を決定する。最後に、CasXバリアントを、シングルガイドRNAと複合体化し、沈殿が始まるまで濃縮する。沈殿したRNPを遠心分離によって除去し、可溶性RNPの最終濃度を測定して、ガイドRNAに結合した場合の各バリアントの最大溶解度を決定する。
【0745】
実施例13:HEK293T細胞におけるBCL11A赤血球エンハンサー遺伝子座におけるGATA1結合領域の編集
CasXバリアント438及びガイドバリアント174、並びにHEK293T細胞におけるヒトBCL11A赤血球エンハンサー遺伝子座のGATA1結合領域を標的化するスペーサーを使用して、BCL11A赤血球エンハンサー遺伝子座においてGATA1結合領域を編集するCasXの能力を実証するために実験を行った。
【0746】
HEK293T細胞を、線維芽細胞(FB)培地で、37℃、5%CO2で維持した。線維芽細胞(Fibroblast、FB)培地は、10%ウシ胎児血清(FBS;Seradigm,#1500-500)、並びに100単位/mLのペニシリン及び100mg/mLのストレプトマイシン(100x-Pen-Strep;GIBCO #15140-122)が補充された、ピルビン酸ナトリウム(100×、Thermofisher #11360070)、非必須アミノ酸(100×、Thermofisher #11140050)、HEPES緩衝液(100×、Thermofisher #15630080)、及び2-メルカプトエタノール(1000×、Thermofisher #21985023)を更に含み得る、ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM;Corning Cellgro、#10-013-CV)からなる。
【0747】
この実験の場合、100μLのFB培地中のHEK293T細胞を、96ウェルプレートに20~40,000個/ウェルで播種し、5%CO2を含む37℃インキュベーターで培養した。翌日、細胞を、約75%コンフルエンスでトランスフェクトした。CasX及びガイドの構築物(配列については表16を参照)を、反復として構築物当たり3ウェルを使用して、製造業者のプロトコルに従ってLipofectamine 3000を使用して、ウェル当たり100~500ngでHEK293T細胞にトランスフェクトした。陰性対照として、非標的プラスミドを使用した。ベンチマーク対照として、同じ領域を標的化するSpyCas9及びガイドの構築物を使用した。0.3~3μg/mLのピューロマイシンによる24~48時間のトランスフェクションが上手くいった細胞を選択し、その後、FB培地中で回収した。続いて、実験からの各試料の細胞を溶解させ、製造業者のプロトコル及び標準的な手順に従ってゲノムを抽出した。各実験試料からの細胞における編集を、NGS分析を使用してアッセイした。簡潔には、ゲノムDNAを、目的の標的ゲノム位置に特異的なプライマーを用いて、PCRによって増幅して、標的アンプリコンを形成した。これらのプライマーは、Illuminaリード及び2つの配列を導入するために5’末端に追加の配列を含む。更に、それらは、固有分子識別子(unique molecular identifier、UMI)として機能する16ntランダム配列を含む。Fragment Analyzer DNA分析キット(Agilent、dsDNA 35~1500bp)を使用して、アンプリコンの品質及び定量化を評価した。アンプリコンを、製造業者の説明書に従ってIllumina Miseqで配列決定した。配列決定からの生のfastqファイルを以下のように処理した。(1)プログラムcutadapt(v.2.1)を使用して、品質及びアダプター配列について配列をトリミングした。(2)プログラムflash2(v2.2.00)を使用して、リード1及びリード2の配列を単一の挿入配列に重ね合わせた。(3)コンセンサス挿入配列を、予想されるアンプリコン配列及びスペーサー配列とともに、プログラムCRISPResso2(v 2.0.29)を実行した。このプログラムは、スペーサーの3’末端周辺のウィンドウ(スペーサーの3’末端から-3bpを中心とする30bpウィンドウ)において改変されたリードの割合(%)を定量化する。CasX分子の活性を、このウィンドウ内のどこかに挿入及び/又は欠失を含むリードの割合の合計として定量化した。
【0748】
【0749】
結果:
図18のグラフは、トランスフェクションの5日後のHEK293T細胞におけるBCL11A赤血球エンハンサー遺伝子座でのGATA1結合領域のCasX媒介編集のNGS分析の結果を示す。各データポイントは、個々の処理条件によって生成された編集結果のNGSリードの平均測定値である。結果は、CasX及びガイドが90%の平均編集レベルでBCL11A赤血球エンハンサー遺伝子座を編集することができた一方で、SpyCas9構築物が80%の平均編集レベルを示したことを示す。非標的スペーサーを有する構築物は、編集をもたらさなかった(データは示さず)。本実施例は、適切なガイドを有するCasXが、HEK293T細胞においてBCL11A赤血球エンハンサー遺伝子座を編集することができたことを実証する。CasXバリアント668、672、676、及びgRNA 235を用いた実験は、同様の条件下で行われ、同様の編集効率をもたらすことが予想される。
【0750】
実施例14:K562細胞におけるBCL11A赤血球エンハンサー遺伝子座におけるGATA1結合領域の編集
K562細胞において、CasXバリアント119及び491、足場バリアント174、並びにヒトBCL11A赤血球エンハンサー遺伝子座のGATA1結合領域を標的化するスペーサーを使用して、CasXがBCL11A赤血球エンハンサー遺伝子座を編集できることを実証するために実験を行った。
【0751】
K562細胞を、培地で、37℃、5%CO2で維持した。培地は、10%ウシ胎児血清(FBS;Seradigm、#1500-500)、並びに100単位/mLのペニシリン及び100mg/mLのストレプトマイシン(100x-Pen-Strep;GIBCO #15140-122)が補充された、ピルビン酸ナトリウム(100×、Thermofisher #11360070)及びHEPES緩衝液(100×、Thermofisher #15630080)を更に含み得る、RPMI(RPMI;Thermofisher、#11875119)からなる。
【0752】
この実験では、BCL11A遺伝子座のGATA1結合領域を標的化するCasX及びガイドを、2つの異なる送達様式であるRNP及びXDPs(XDPにパッケージングされたRNP)を使用して、K562細胞に導入した。第1の実験群では、BCL11A遺伝子座のGATA1結合領域を標的化するCasX RNP(スペーサー配列については表を参照)を、標準的な方法を使用して製剤化した。簡潔には、各CasX RNP(配列については表を参照)を、製造業者のプロトコルに従ってLonza nucleofectorキットを使用して、反復として構築物当たり3ウェルを使用して、条件当たり10~100pmolで、100,000~500,000個のK562細胞に形質導入した。細胞を、補充RPMI培地で、37℃、5%CO2で培養した。
【0753】
第2の実験群では、BCL11A遺伝子座のGATA1結合領域を標的化するCasXがカプセル化されたXDPsを、以下に記載するように製剤化した。簡潔には、4つの構造プラスミド:pXDP17、pSG0010、pGP2、及びpXDP3を使用して、XDPを産生した。プラスミドpXDP17は、HIV-1のgag配列、続いてCasXバージョン491を発現する。pSG0010は、U6プロモーターの下で発現される、BC11Aを標的化するスペーサー21.1(配列については以下を参照)を有する足場174である。pGP2は、VSV-G標的化部分を発現する。pXDP3は、CasX分子が結合していないHIV-1のgagポリプロテインを発現する。XDPsを産生するために、TakaraからのLentiX細胞を継代し、プラスミドDNAのトランスフェクションの24時間前に播種した。89μgのpSG0010プラスミド、366μgのpXDP0017プラスミド、30μgのpXDP0003プラスミド、及び1.7μgのpGP2プラスミドを、Opti-MEM及びPEIと混合し、次いで、細胞培養物に添加した。トランスフェクションの16時間後、培地をOpti-MEMに交換した。トランスフェクションの54時間後、培地を回収し、遠心分離によって濃縮した。XDPを、150mM NaCl緩衝液1に再懸濁し、-150℃で凍結した。実験当日、XDPを氷上で解凍し、直ちに細胞に使用した。
【0754】
K562細胞を、96ウェルプレートに30~50,000個/ウェルで播種し、様々なMOIのXDPで形質導入し、補充RPMI培地で、37℃、5%CO2で培養した。
【0755】
4日後、RNP又はXDPで形質導入した試料からの各実験試料由来の細胞における編集を、NGS分析を使用してアッセイした。簡潔には、ゲノムDNAを、目的の標的ゲノム位置に特異的なプライマーを用いて、PCRによって増幅して、標的アンプリコンを形成した。これらのプライマーは、Illuminaリード及び2つの配列を導入するために5’末端に追加の配列を含む。更に、それらは、固有分子識別子(UMI)として機能する16ntランダム配列を含む。Fragment Analyzer DNA分析キット(Agilent,dsDNA 35~1500bp)を使用して、アンプリコンの品質及び定量化を評価した。アンプリコンを、製造業者の説明書に従ってIllumina Miseqで配列決定した。配列決定からの生のfastqファイルを以下のように処理した。(1)プログラムcutadapt(v.2.1)を使用して、品質及びアダプター配列について配列をトリミングした。(2)プログラムflash2(v2.2.00)を使用して、リード1及びリード2の配列を単一の挿入配列に重ね合わせた。(3)コンセンサス挿入配列を、予想されるアンプリコン配列及びスペーサー配列とともに、プログラムCRISPResso2(v 2.0.29)を実行した。このプログラムは、スペーサーの3’末端周辺のウィンドウ(スペーサーの3’末端から-3bpを中心とする30bpウィンドウ)において改変されたリードの割合(%)を定量化する。CasX分子の活性を、このウィンドウ内のどこかに挿入及び/又は欠失を含むリードの割合の合計として定量化した。
【0756】
結果:
図19のグラフは、RNP形質導入の4日後のK562細胞におけるBCL11A赤血球エンハンサー遺伝子座でのGATA1結合領域のCasX媒介編集のNGS分析の結果を示す。各データポイントは、個々の処理条件によって生成された編集結果のNGSリードの平均測定値である。結果は、CasX及びガイドが、用量依存的な様式でBCL11A赤血球エンハンサー遺伝子座を編集することができることを示し、CasXバリアント491は、CasXバリアント119と比較して、一貫してより高いレベルの編集を示す。本実施例は、アッセイの条件下で、適切なガイドを有するCasXが、K562細胞においてBCL11A赤血球エンハンサー遺伝子座を編集することができることを実証する。
【0757】
図20のグラフは、XDP形質導入の4日後のK562細胞におけるBCL11A赤血球エンハンサー遺伝子座でのGATA1結合領域のCasX媒介編集のNGS分析の結果を示す。各データポイントは、個々の処理条件によって生成された編集結果のNGSリードの平均測定値である。結果は、CasX及びガイドが用量依存的にBCL11A赤血球エンハンサー遺伝子座を編集することができたことを示す。本実施例は、適切なガイドを有するCasXが、K562細胞においてBCL11A赤血球エンハンサー遺伝子座を編集することができたことを実証する。CasXバリアント668、672、676、及びgRNA 235を用いた実験は、同様の条件下で行われ、同様の編集効率をもたらすことが予想される。
【0758】
実施例15:造血幹細胞におけるBCL11A赤血球エンハンサー遺伝子座におけるGATA1結合領域の編集
CD34+造血幹細胞(HSC)において、CasXバリアント119及び491、足場バリアント174、並びにヒトBCL11A赤血球エンハンサー遺伝子座のGATA1結合領域を標的化するスペーサーを使用して、CasXがBCL11A赤血球エンハンサー遺伝子座を編集できることを実証するために実験を行った。
【0759】
HSCを、CC100(Stem Cell #2697)を補充したStemSpan SFEM II培地(Stem Cell #9605)で培養し、37℃、5%CO2で維持した。この実験では、BCL11A遺伝子座のGATA1結合領域を標的化するCasX及びガイドを、2つの異なる送達様式であるRNP及びXDPを使用してHSCに導入した。第1の実験群では、BCL11A遺伝子座のGATA1結合領域を標的化するCasX RNP(スペーサー配列については表を参照)を、標準的な方法を使用して製剤化した。各CasX RNP(配列については表を参照)を、製造業者のプロトコルに従ってLonza nucleofectorキットを使用して、反復として構築物当たり3ウェルを使用して、条件当たり10~100pmolで、100,000~500,000個のHSCに形質導入した。細胞を、補充SFEM II培地で、37℃、5%CO2で培養した。
【0760】
第2の実験群では、BCL11A遺伝子座のGATA1結合領域を標的化するCasXがカプセル化されたXDPsを、以下に記載するように製剤化した。簡潔には、4つの構造プラスミド:pXDP17、pSG0010、pGP2、及びpXDP3を使用して、XDPを産生した。プラスミドpXDP17は、HIV-1のgag配列、続いてCasXバージョン491を発現する。pSG0010は、U6プロモーターの下で発現される、BC11Aを標的化するスペーサー21.1(配列については以下を参照)を有する足場174である。pGP2は、VSV-G標的化部分を発現する。pXDP3は、CasX分子が結合していないHIV-1のgagポリプロテインを発現する。XDPsを産生するために、TakaraからのLentiX細胞を継代し、プラスミドDNAのトランスフェクションの24時間前に播種した。89μgのpSG0010プラスミド、366μgのpXDP0017プラスミド、30μgのpXDP0003プラスミド、及び1.7μgのpGP2プラスミドを、Opti-MEM及びPEIと混合し、次いで、細胞培養物に添加した。トランスフェクションの16時間後、培地をOpti-MEMに交換した。トランスフェクションの54時間後、培地を回収し、遠心分離によって濃縮した。XDPを、150mM NaCl緩衝液1に再懸濁し、-150℃で凍結した。実験当日、XDPを氷上で解凍し、直ちに細胞に使用した。
【0761】
HSCを、96ウェルプレートに30,000~50,000個/ウェルで播種し、様々なMOIのXDPで形質導入し、補充SFEM II培地で、37℃、5%CO2で培養した。4日後、RNP又はXDPで形質導入した試料からの各実験条件からの細胞における編集を、NGS分析を使用してアッセイした。簡潔には、実験からの各試料の細胞を溶解させ、製造業者のプロトコル及び標準的な手順に従ってゲノムを抽出した。各実験試料からの細胞における編集を、NGS分析を使用してアッセイした。簡潔には、ゲノムDNAを、目的の標的ゲノム位置に特異的なプライマーを用いて、PCRによって増幅して、標的アンプリコンを形成した。これらのプライマーは、Illuminaリード及び2つの配列を導入するために5’末端に追加の配列を含む。更に、それらは、固有分子識別子(UMI)として機能する16ntランダム配列を含む。Fragment Analyzer DNA分析キット(Agilent,dsDNA 35~1500bp)を使用して、アンプリコンの品質及び定量化を評価した。アンプリコンを、製造業者の説明書に従ってIllumina Miseqで配列決定した。配列決定からの生のfastqファイルを以下のように処理した。(1)プログラムcutadapt(v.2.1)を使用して、品質及びアダプター配列について配列をトリミングした。(2)プログラムflash2(v2.2.00)を使用して、リード1及びリード2の配列を単一の挿入配列に重ね合わせた。(3)コンセンサス挿入配列を、予想されるアンプリコン配列及びスペーサー配列とともに、プログラムCRISPResso2(v 2.0.29)を実行した。このプログラムは、スペーサーの3’末端周辺のウィンドウ(スペーサーの3’末端から-3bpを中心とする30bpウィンドウ)において改変されたリードの割合(%)を定量化する。CasX分子の活性を、このウィンドウ内のどこかに挿入及び/又は欠失を含むリードの割合の合計として定量化した。
【0762】
結果:
図21のグラフは、RNP形質導入の4日後のHSCにおけるBCL11A赤血球エンハンサー遺伝子座でのGATA1結合領域のCasX媒介編集のNGS分析の結果を示す。各データポイントは、個々の処理条件によって生成された編集結果のNGSリードの平均測定値である。結果は、CasX及びガイドが、用量依存的な様式でBCL11A赤血球エンハンサー遺伝子座を編集することができることを示し、CasXバリアント491は、CasXバリアント119と比較して、一貫してより高いレベルの編集を示す。本実施例は、アッセイの条件下で、適切なガイドを有するCasXが、HSCにおいてBCL11A赤血球エンハンサー遺伝子座を編集することができることを実証する。
図22のグラフは、XDP形質導入の4日後のHSCにおけるBCL11A赤血球エンハンサー遺伝子座でのGATA1結合領域のCasX媒介編集のNGS分析の結果を示す。各データポイントは、個々の処理条件によって生成された編集結果のNGSリードの平均測定値である。結果は、CasX及びガイドが用量依存的にBCL11A赤血球エンハンサー遺伝子座を編集することができたことを示す。本実施例は、適切なガイドを有するCasXが、HSCにおいてBCL11A赤血球エンハンサー遺伝子座を編集することができたことを実証する。CasXバリアント668、672、676、及びgRNA 235を用いた実験は、同様の条件下で行われ、同様の編集効率をもたらすことが予想される。
【配列表】
【国際調査報告】