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特表2023-552389呼吸器疾病を有する患者に対処するための、少なくとも1種の病原体に対して活性な低pHおよび低毒性を有する治療用材料
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  • 特表-呼吸器疾病を有する患者に対処するための、少なくとも1種の病原体に対して活性な低pHおよび低毒性を有する治療用材料 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-15
(54)【発明の名称】呼吸器疾病を有する患者に対処するための、少なくとも1種の病原体に対して活性な低pHおよび低毒性を有する治療用材料
(51)【国際特許分類】
   A61K 33/04 20060101AFI20231208BHJP
   A61P 11/06 20060101ALI20231208BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20231208BHJP
   A61P 37/08 20060101ALI20231208BHJP
   A61K 33/20 20060101ALI20231208BHJP
   A61K 31/198 20060101ALI20231208BHJP
   A61K 31/327 20060101ALI20231208BHJP
   A61K 33/42 20060101ALI20231208BHJP
   A61K 31/19 20060101ALI20231208BHJP
   A61K 31/185 20060101ALI20231208BHJP
   A61K 31/375 20060101ALI20231208BHJP
   A61P 31/12 20060101ALI20231208BHJP
   A61P 31/04 20060101ALI20231208BHJP
   A61P 31/10 20060101ALI20231208BHJP
   A61K 31/201 20060101ALI20231208BHJP
   A61K 31/235 20060101ALI20231208BHJP
【FI】
A61K33/04
A61P11/06
A61P11/00
A61P37/08
A61K33/20
A61K31/198
A61K31/327
A61K33/42
A61K31/19
A61K31/185
A61K31/375
A61P31/12
A61P31/04
A61P31/10
A61K31/201
A61K31/235
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2023533908
(86)(22)【出願日】2021-10-21
(85)【翻訳文提出日】2023-07-28
(86)【国際出願番号】 US2021056001
(87)【国際公開番号】W WO2022119661
(87)【国際公開日】2022-06-09
(31)【優先権主張番号】63/121,856
(32)【優先日】2020-12-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/144,305
(32)【優先日】2021-02-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/158,864
(32)【優先日】2021-03-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】PCT/US2021/030429
(32)【優先日】2021-05-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/220,441
(32)【優先日】2021-07-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518004141
【氏名又は名称】ティグラス,リミテッド ライアビリティ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】IBC一番町弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】バンドスチュア,ポール
(72)【発明者】
【氏名】カールソン,ローレンス
(72)【発明者】
【氏名】ドラン,ショーン
(72)【発明者】
【氏名】ヤクシク,アンドルー
【テーマコード(参考)】
4C086
4C206
【Fターム(参考)】
4C086AA01
4C086AA02
4C086BA18
4C086HA07
4C086HA08
4C086HA09
4C086HA17
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA13
4C086MA16
4C086MA56
4C086NA14
4C086ZA59
4C086ZB13
4C086ZB33
4C086ZB35
4C206AA01
4C206AA02
4C206DA02
4C206DA04
4C206DA07
4C206DA17
4C206FA53
4C206MA01
4C206MA02
4C206MA04
4C206MA06
4C206MA36
4C206MA76
4C206NA14
4C206ZA59
4C206ZB13
4C206ZB33
4C206ZB35
(57)【要約】
呼吸器疾病を処置または予防するための方法および組成物。その方法は、3.0未満のpHを有する少なくとも1用量の薬学的に許容され得る流体を、それを必要とする患者に存在する気道の少なくとも1つの領域と接触させて投与することを含む。処置できる呼吸器疾病には、COVID-19が含まれる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
呼吸器疾病を処置または予防する方法であって、前記方法は、
3.0未満のpHを有する少なくとも1用量の薬学的に許容され得る流体を、それを必要とする患者に存在する気道の少なくとも1つの領域と接触させて投与すること
を含む、方法。
【請求項2】
前記呼吸器疾病が、慢性状態である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記呼吸器疾病が、慢性閉塞性肺疾患、嚢胞性線維症、喘息または呼吸器系アレルギーのうちの1つである、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記呼吸器疾病が、ウイルス性病原体、細菌性病原体、真菌性病原体およびそれらの混合物のうちの少なくとも1つによって引き起こされる気道感染症である、請求項1、2または3に記載の呼吸器疾病。
【請求項5】
前記ウイルス性病原体が、コロナウイルス、インフルエンザウイルス、パラインフルエンザウイルス、呼吸器合胞体ウイルス(RSV)、ライノウイルス、アデノウイルスおよびそれらの混合物のうちの少なくとも1つである、請求項4に記載の呼吸器疾病。
【請求項6】
コロナウイルスが、SARS-CoV、SARS-CoV-2、MERS-CoVおよびそれらの混合物からなる群より選択されるベータコロナウイルスである、請求項5に記載の呼吸器疾病。
【請求項7】
前記細菌性病原体が、Streptoccocus pneumoniae、Pseudomonas aeruginosa、Klebsiella pneumoniae、Haemophilus influenzae、Staphylococcus aureus、Moraxella catarrhalis、Streptococcus pyogenes、Mycobacterium tuberculosis、Mycobacterium avium-intracellulare(MAI)、Mycobacterium terraeおよびそれらの混合物からなる群より選択される、請求項4に記載の方法。
【請求項8】
前記真菌性病原体が、Aspergillus属、Cryptococcus属、Pneumocystis属、Rhizopus属、Candidia属、風土病性真菌およびそれらの混合物からなる群より選択される、請求項4に記載の方法。
【請求項9】
前記薬学的に許容され得る流体が、キャリアと、硫酸、塩酸、臭化水素酸、リン酸、ポリリン酸、次亜塩素酸およびそれらの混合物からなる群より選択される少なくとも1種の無機酸化合物とを含む、請求項1~8に記載の方法。
【請求項10】
前記薬学的に許容され得る流体中の前記無機酸が、硫酸、塩酸、臭化水素酸およびそれらの混合物である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記薬学的に許容され得る流体が、2.5未満のpHを有する、請求項1~10に記載の方法。
【請求項12】
前記薬学的に許容され得る流体が、2.2未満のpHを有する、請求項1~11に記載の方法。
【請求項13】
前記薬学的に許容され得る流体が、2.0未満のpHを有する、請求項1~11に記載の方法。
【請求項14】
前記薬学的に許容され得る流体が、1.8未満のpHを有する、請求項1~11に記載の方法。
【請求項15】
前記薬学的に許容され得る流体が、1.4~3.0のpHを有する、請求項1~11に記載の方法。
【請求項16】
次亜塩素酸、過酸化水素およびそれらの混合物を含む組成物を前記患者の呼吸器組織と接触させて投与する工程をさらに含み、次亜塩素酸、過酸化水素およびそれらの混合物の前記投与は、少なくとも1用量の薬学的に許容され得る流体を前記患者の気道における組織と接触させて投与する直前またはその投与と同時に投与される、請求項1~11に記載の方法。
【請求項17】
次亜塩素酸、過酸化水素およびそれらの混合物を含む前記組成物が、前記薬学的に許容され得る流体と同時吸引される、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
薬学的に許容され得る流体が、酢酸、トリクロロ酢酸、ベンゼンスルホン酸、クエン酸、プロピオン酸、ギ酸、グルコン酸、乳酸、アスコルビン酸、イソアスコルビン酸、アスパラギン酸、グルタミン酸、グルタル酸およびそれらの混合物からなる群より選択される有機酸をさらに含む、請求項1~11、16および17に記載の方法。
【請求項19】
前記薬学的に許容され得る流体が、アスパラギン酸またはグルタミン酸と、塩酸、臭化水素酸および硫酸のうちの少なくとも1つとを含む、請求項1~11、16、17および18に記載の方法。
【請求項20】
前記薬学的に許容され得る流体が、一般式:
【数1】

(式中、xは、3以上の奇数の整数であり;
yは、1~20の整数であり;
Zは、多原子イオンまたは単原子イオンである)
を有する化合物を含む、請求項1~11、16~19に記載の方法。
【請求項21】
前記薬学的に許容され得る流体が、第1族カチオン、第2族カチオンおよびそれらの混合物をさらに含む、請求項1~11、16~20に記載の方法。
【請求項22】
前記薬学的に許容され得る流体が、少なくとも1つの抗真菌阻害剤をさらに含み、前記少なくとも1つの抗真菌阻害剤が、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、安息香酸カリウムおよびそれらの混合物からなる群より選択される、請求項1~11、16~20に記載の方法。
【請求項23】
前記少なくとも1用量の前記薬学的に許容され得る流体が接触する前記気道の領域が、以下:鼻腔、副鼻腔、咽喉、咽頭、喉頭、喉頭蓋、副鼻腔、気管、気管支または肺胞のうちの少なくとも1つに位置する、請求項1~22に記載の方法。
【請求項24】
前記少なくとも1用量の前記薬学的に許容され得る流体が接触する前記気道の部分が、気管支および肺胞に位置する、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記患者が、ヒトである、請求項1~11、16~24に記載の方法。
【請求項26】
前記患者が、動物である、請求項1~11、16~24に記載の方法。
【請求項27】
前記投与工程が、前記患者の気道に存在する病原体負荷を減少させるのに十分な時間幅にわたって、前記薬学的に許容され得る流体を前記患者の気道の前記少なくとも1つの領域と接触させて導入することを含む、請求項1~11、16~26に記載の方法。
【請求項28】
前記患者の気道の少なくとも1つの領域と接触させて前記薬学的に許容され得る流体を投与することが、1秒間~120分間にわたって進行する、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記患者の気道と接触させて前記薬学的に許容され得る流体を投与することが、少なくとも24時間にわたって連続的に進行する、請求項27に記載の方法。
【請求項30】
前記薬学的に許容され得る流体が、蒸気、エアロゾル、スプレー、微粒子化ミスト、ガス、ガス中に分散されたナノ粒子またはガス中に分散された微粒子化粒子のうちの少なくとも1つとして、前記気道の前記少なくとも1つの部分と接触させて導入される、請求項27、28または29に記載の方法。
【請求項31】
前記薬学的に許容され得る流体が、0.1~5.0ミクロンの平均質量空気力学的直径の粒子径を有する、請求項27~30に記載の方法。
【請求項32】
前記薬学的に許容され得る流体が、24時間の間に少なくとも1用量で投与される、請求項27に記載の方法。
【請求項33】
呼吸器疾病の発症前に前記患者の気道に前記薬学的に許容され得る流体を投与する工程をさらに含む、請求項24~32に記載の方法。
【請求項34】
前記患者が、前記ウイルス性病原体、前記細菌性病原体、前記真菌性病原体およびそれらの混合物のうちの少なくとも1つへの慢性の曝露を有する、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記患者が、慢性疾病または併存症を示し、前記慢性疾病が、慢性閉塞性肺疾患、嚢胞性線維症、喘息、短期もしくは長期の免疫不全または呼吸器系アレルギーのうちの1つであり、前記併存症が、病状、年齢または体重のうちの少なくとも1つである、請求項33または34に記載の方法。
【請求項36】
薬学的に許容され得る治療用流体組成物であって、
流体キャリア;および
薬学的に許容され得る酸性成分であって、前記薬学的に許容され得る酸性成分は、少なくとも1種の無機酸、少なくとも1種の有機酸およびそれらの混合物を含み、前記薬学的に許容され得る酸性成分は、患者の呼吸器疾病に対処する際に使用するために、3.0未満のpHを生じるのに十分な量で前記キャリア中に存在する、薬学的に許容され得る酸性成分
を含む、薬学的に許容され得る治療用流体組成物。
【請求項37】
前記薬学的に許容され得る酸性成分が、硫酸、塩酸、臭化水素酸、リン酸、ポリリン次亜塩素酸およびそれらの混合物からなる群より選択される、薬学的に許容され得る治療用流体。
【請求項38】
前記pHが2.5未満である、請求項36に記載の薬学的に許容され得る治療用流体組成物。
【請求項39】
前記pHが2.2未満である、請求項36に記載の薬学的に許容され得る治療用流体組成物。
【請求項40】
前記pHが2.0未満である、請求項36に記載の薬学的に許容され得る治療用流体組成物。
【請求項41】
前記pHが1.8未満である、請求項36に記載の薬学的に許容され得る治療用流体組成物。
【請求項42】
前記pHが1.4~3.0である、請求項36に記載の薬学的に許容され得る治療用流体組成物。
【請求項43】
前記酸性成分が、硫酸と、塩酸、臭化水素酸、リン酸、ポリリン次亜塩素酸のうちの少なくとも1つとである、請求項36~42に記載の薬学的に許容され得る治療用流体組成物。
【請求項44】
前記酸性成分が、硫酸または塩酸である、請求項36~42に記載の薬学的に許容され得る治療用流体組成物。
【請求項45】
前記酸性成分が、有機酸をさらに含む、請求項36~42および44に記載の薬学的に許容され得る治療用流体組成物。
【請求項46】
前記有機酸が、酢酸、トリクロロ酢酸、ベンゼンスルホン酸、クエン酸、プロピオン酸、ギ酸、グルコン酸、乳酸、アスコルビン酸、イソアスコルビン酸、アスパラギン酸、グルタミン酸、グルタル酸およびそれらの混合物からなる群より選択される、請求項45に記載の薬学的に許容され得る治療用流体組成物。
【請求項47】
前記酸性成分が、酢酸、トリクロロ酢酸、ベンゼンスルホン酸、クエン酸、プロピオン酸、ギ酸、グルコン酸、乳酸、アスコルビン酸、イソアスコルビン酸、アスパラギン酸、グルタミン酸、グルタル酸およびそれらの混合物からなる群より選択される少なくとも1種の有機酸と、硫酸とである、請求項36~42および44に記載の薬学的に許容され得る治療用流体組成物。
【請求項48】
前記酸性成分が、酢酸、トリクロロ酢酸、ベンゼンスルホン酸、クエン酸、プロピオン酸、ギ酸、グルコン酸、乳酸、アスコルビン酸、イソアスコルビン酸、アスパラギン酸、グルタミン酸、グルタル酸およびそれらの混合物からなる群より選択される少なくとも1種の有機酸と、塩酸とである、請求項36~42および44に記載の薬学的に許容され得る治療用流体組成物。
【請求項49】
前記呼吸器疾病が、ウイルス感染症、細菌感染症または真菌感染症のうちの少なくとも1つによって引き起こされる感染症である、請求項36~48に記載の薬学的に許容され得る治療用流体組成物。
【請求項50】
前記呼吸器疾病が、コロナウイルス、インフルエンザウイルス、パラインフルエンザウイルス、呼吸器合胞体ウイルス、ライノウイルスのうちの少なくとも1つによって引き起こされるウイルス感染によって引き起こされる、請求項36~49に記載の薬学的に許容され得る治療用流体組成物。
【請求項51】
前記ウイルス感染が、SARS-CoV、SARS-CoV-2、MERS-CoVおよびそれらの混合物からなる群より選択されるベータコロナウイルスによって引き起こされる、請求項50に記載の薬学的に許容され得る治療用流体組成物。
【請求項52】
前記呼吸器疾病が、Streptoccocus pneumoniae、Pseudomonas aeruginosa、Klebsiella pneumoniae、Haemophilus influenzae、Staphylococcus aureus、Moraxella catarrhalis、Streptococcus pyogenes、Mycobacterium tuberculosis、Mycobacterium avium-intracellulare(MAI)およびそれらの混合物からなる群より選択される細菌性病原体のうちの少なくとも1つによって引き起こされる細菌感染症である、請求項36~49に記載の薬学的に許容され得る治療用流体組成物。
【請求項53】
前記呼吸器疾病が、Aspergillus属、Cryptococcus属、Rhizopus属およびそれらの混合物からなる群より選択される少なくとも1種の真菌性病原体によって引き起こされる真菌感染症である、請求項36~49に記載の薬学的に許容され得る治療用流体組成物。
【請求項54】
前記薬学的に許容され得る流体が、吸入を介して蒸気、エアロゾル、スプレーまたは微粒子化ミストとして投与される、請求項36~55に記載の薬学的に許容され得る治療用流体組成物。
【請求項55】
アマンタジン、ロピナビル、ラインバッカーおよびエクイビル、アルビドール、ナノウイルス剤、レムデシビル、モルヌピラビル、ファビピラビル、オセルタミビル リバビリンならびにそれらの組み合わせからなる群より選択される少なくとも1つの抗ウイルス薬
をさらに含む、請求項36~48に記載の薬学的に許容され得る治療用流体組成物。
【請求項56】
ビトルテロール、フェノテロール、イソプレナリン、レボサルブタモール、オルシプレナリン、ピルブテロール、プロカテロール、リトドリン、サルブタモール、テルブタリン、アルブテロール、シクレソニド、アルホルモテロール、バンブテロール、クレンブテロール、フォルモテロール、サルメテロール、アベジテロール、カルモテロール、インダカテロール、オロダテロール、ビランテロール、イソクスプリン、マブテロール、ジルパテロールおよびそれらの混合物からなる群より選択される少なくとも1つのアドレナリンβ受容体アゴニスト
をさらに含む、請求項36~48に記載の薬学的に許容され得る治療用流体組成物。
【請求項57】
ベクロメタゾン、ブデソニド、シクレソニド、フルニソリド、フルチカゾン、モメタゾンおよびそれらの組み合わせからなる群より選択される少なくとも1つのステロイド薬
をさらに含む、請求項36~48に記載の薬学的に許容され得る治療用流体組成物。
【請求項58】
アデノシン、メタ重亜硫酸塩、L-アスピリン、インドメタシンおよびそれらの組み合わせからなる群より選択される少なくとも1つの非ステロイド性抗炎症薬
をさらに含む、請求項36~48に記載の薬学的に許容され得る治療用流体組成物。
【請求項59】
治療用流体組成物であって、
流体キャリア;
酸性成分であって、前記酸性成分は、少なくとも1種の無機酸、少なくとも1種の有機酸またはそれらの混合物からなる群より選択され、前記酸性成分は、3.0未満のpHを生じるのに十分な量で前記組成物中に存在する、酸性成分;および
少なくとも1つの抗ウイルス化合物、少なくとも1つのアドレナリンβ受容体アゴニスト、少なくとも1つのステロイド、少なくとも1つの抗炎症剤およびそれらの混合物からなる群より選択される少なくとも1つの活性な医薬品
を含む、治療用流体組成物。
【請求項60】
前記酸性酸成分の前記少なくとも1種の無機酸が、硫酸、塩酸、臭化水素酸、リン酸、ポリリン次亜塩素酸およびそれらの混合物からなる群より選択される、請求項59に記載の薬学的に許容され得る治療用流体組成物。
【請求項61】
前記酸性酸成分の前記少なくとも1種の無機酸が、硫酸、塩酸およびそれらの混合物である、請求項60に記載の薬学的に許容され得る治療用流体組成物。
【請求項62】
前記酸性酸成分の前記少なくとも1種の有機酸が、酢酸、トリクロロ酢酸、ベンゼンスルホン酸、クエン酸、プロピオン酸、ギ酸、グルコン酸、乳酸、アスコルビン酸、イソアスコルビン酸、アスパラギン酸、グルタミン酸、グルタル酸およびそれらの混合物からなる群より選択される、請求項60~61に記載の薬学的に許容され得る治療用流体組成物。
【請求項63】
前記pHが2.5未満である、請求項59~62に記載の薬学的に許容され得る治療用流体組成物。
【請求項64】
前記pHが2.2未満である、請求項59~62に記載の薬学的に許容され得る治療用流体組成物。
【請求項65】
前記pHが2.0未満である、請求項59~62に記載の薬学的に許容され得る治療用流体組成物。
【請求項66】
前記pHが1.8未満である、請求項59~62に記載の薬学的に許容され得る治療用流体組成物。
【請求項67】
前記pHが1.4~3.0である、請求項59~62に記載の薬学的に許容され得る治療用流体組成物。
【請求項68】
アマンタジン、ロピナビル、ラインバッカーおよびエクイビル、アルビドール、ナノウイルス剤、レムデシビル、モルヌピラビル、ファビピラビル、オセルタミビル リバビリンならびにそれらの組み合わせからなる群より選択される少なくとも1つの抗ウイルス薬をさらに含む、請求項59~67に記載の薬学的に許容され得る治療用流体組成物。
【請求項69】
前記少なくとも1つのアドレナリンβ受容体アゴニストが、ビトルテロール、フェノテロール、イソプレナリン、レボサルブタモール、オルシプレナリン、ピルブテロール、プロカテロール、リトドリン、サルブタモール、テルブタリン、アルブテロール、アルホルモテロール、バンブテロール、クレンブテロール、フォルモテロール、サルメテロール、アベジテロール、カルモテロール、インダカテロール、オロダテロール、ビランテロール、イソクスプリン、マブテロール、ジルパテロールおよびそれらの混合物からなる群より選択される、請求項59~67に記載の薬学的に許容され得る治療用流体組成物。
【請求項70】
前記少なくとも1つのステロイド薬が、ベクロメタゾン、ブデソニド、シクレソニド、フルニソリド、フルチカゾン、モメタゾンおよびそれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項59~67に記載の薬学的に許容され得る治療用流体組成物。
【請求項71】
前記少なくとも1つの抗炎症薬が、メタ重亜硫酸塩、アデノシン、L-アスピリン、インドメタシンおよびそれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項59~67に記載の治療用流体組成物。
【請求項72】
呼吸器疾病を処置または予防するための方法における使用のための薬学的に許容され得る流体であって、前記使用は、少なくとも1用量の前記薬学的に許容され得る流体を、それを必要とする患者の気道に存在する呼吸器系膜の少なくとも一部と接触させて投与することを含み、前記薬学的に許容され得る流体は、3.0未満のpHを有する、薬学的に許容され得る流体。
【請求項73】
前記呼吸器疾病が、慢性状態である、請求項72に記載の使用のための薬学的に許容され得る流体。
【請求項74】
前記呼吸器疾病が、慢性閉塞性肺疾患、嚢胞性線維症、喘息または呼吸器系アレルギーのうちの1つである、請求項73に記載の使用のための薬学的に許容され得る流体。
【請求項75】
前記呼吸器疾病が、急性状態である、請求項72に記載の使用のための薬学的に許容され得る流体。
【請求項76】
前記呼吸器疾病が、ウイルス性病原体、細菌性病原体、真菌性病原体およびそれらの混合物のうちの少なくとも1つによって引き起こされる気道感染症である、請求項72に記載の使用のための薬学的に許容され得る流体。
【請求項77】
前記ウイルス性病原体が、コロナウイルス、インフルエンザウイルス、パラインフルエンザウイルス、呼吸器合胞体ウイルス(RSV)、ライノウイルス、アデノウイルスおよびそれらの混合物のうちの少なくとも1つである、請求項76に記載の使用のための薬学的に許容され得る流体。
【請求項78】
前記コロナウイルスが、SARS-CoV、SARS-CoV-2、MERS-CoVおよびそれらの混合物からなる群より選択されるベータコロナウイルスである、請求項77に記載の使用のための薬学的に許容され得る流体。
【請求項79】
前記細菌性病原体が、Streptococcus pneumoniae、Pseudomonas aeruginosa、Klebsiella pneumoniae、Haemophilus influenzae、Staphylococcus aureus、Moraxella catarrhalis、Streptococcus pyogenes、Mycobacterium tuberculosis、Mycobacterium avium-intracellulare(MAI)およびそれらの混合物からなる群より選択される、請求項75に記載の使用のための薬学的に許容され得る流体。
【請求項80】
前記真菌性病原体が、Aspergillus属、Cryptococcus属、Pneumocystis属、Rhizopus属、風土病性真菌およびそれらの混合物からなる群より選択される、請求項75に記載の使用のための薬学的に許容され得る流体。
【請求項81】
前記薬学的に許容され得る流体が、キャリアと、硫酸、塩酸、臭化水素酸、リン酸、ポリリン酸、次亜塩素酸およびそれらの混合物からなる群より選択される少なくとも1種の無機酸化合物とを含む、請求項72に記載の使用のための薬学的に許容され得る流体。
【請求項82】
前記無機酸が、硫酸である、請求項81に記載の使用のための薬学的に許容され得る流体。
【請求項83】
前記薬学的に許容され得る流体が、2.5未満のpHを有する、請求項72~82に記載の使用のための薬学的に許容され得る流体。
【請求項84】
前記薬学的に許容され得る流体が、2.2未満のpHを有する、請求項72~81に記載の使用のための薬学的に許容され得る流体。
【請求項85】
前記薬学的に許容され得る流体が、2.0未満のpHを有する、請求項72~81に記載の使用のための薬学的に許容され得る流体。
【請求項86】
前記薬学的に許容され得る流体が、1.8未満のpHを有する、請求項72~81に記載の使用のための薬学的に許容され得る流体。
【請求項87】
前記薬学的に許容され得る流体が、1.4~3.0のpHを有する、請求項72~81に記載の使用のための薬学的に許容され得る流体。
【請求項88】
次亜塩素酸、過酸化水素およびそれらの混合物を含む組成物を前記患者の気道の少なくとも1つの領域と接触させて投与する工程をさらに含み、次亜塩素酸、過酸化水素およびそれらの混合物の前記投与は、少なくとも1用量の薬学的に許容され得る流体を前記患者の気道の少なくとも1つの領域と接触させて投与する直前またはその投与と同時に投与される、請求項72~87に記載の使用のための薬学的に許容され得る流体。
【請求項89】
前記薬学的に許容され得る流体が、酢酸、トリクロロ酢酸、ベンゼンスルホン酸、クエン酸、プロピオン酸、ギ酸、グルコン酸、乳酸、アスコルビン酸、イソアスコルビン酸、アスパラギン酸、グルタミン酸、グルタル酸およびそれらの混合物からなる群より選択される有機酸をさらに含む、請求項72~88に記載の使用のための薬学的に許容され得る流体。
【請求項90】
前記薬学的に許容され得る流体が、塩酸およびアスパラギン酸を含む、請求項88に記載の使用のための薬学的に許容され得る流体。
【請求項91】
前記薬学的に許容され得る流体が、一般式:
【数2】

(式中、xは、3以上の奇数の整数であり;
Yは、1~20の整数であり;Zは、多原子イオンまたは単原子イオンである)
を有する化合物を含む、請求項72~90に記載の使用のための薬学的に許容され得る流体。
【請求項92】
前記薬学的に許容され得る流体が、第1族カチオン、第2族カチオンおよびそれらの混合物をさらに含む、請求項72~91に記載の使用のための薬学的に許容され得る流体。
【請求項93】
前記薬学的に許容され得る流体が、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、安息香酸カリウムおよびそれらの混合物からなる群より選択される少なくとも1つの抗真菌阻害剤をさらに含む、請求項72~91に記載の使用のための薬学的に許容され得る流体。
【請求項94】
前記少なくとも1用量の前記薬学的に許容され得る流体が接触する前記気道の一部が、呼吸器粘膜に存在する上皮を含む、請求項72~93に記載の使用のための薬学的に許容され得る流体。
【請求項95】
前記少なくとも1用量の前記薬学的に許容され得る流体が接触する前記気道の一部が、以下:鼻腔、咽喉、咽頭、喉頭、喉頭蓋、副鼻腔、気管、気管支または肺胞のうちの少なくとも1つに位置する、請求項72~94に記載の使用のための薬学的に許容され得る流体。
【請求項96】
前記少なくとも1用量の前記薬学的に許容され得る流体が接触する前記呼吸器系膜の一部が、気管支および肺胞に位置する、請求項94に記載の使用のための薬学的に許容され得る流体。
【請求項97】
前記患者が、ヒトである、請求項71~95に記載の使用のための薬学的に許容され得る流体。
【請求項98】
前記患者が、動物である、請求項71~95に記載の使用のための薬学的に許容され得る流体。
【請求項99】
前記投与が、前記患者の気道に存在する病原体負荷を少なくとも1%減少させるのに十分な時間幅にわたって、前記薬学的に許容され得る流体を前記患者の気道と接触させて導入することを含む、請求項72~98に記載の使用のための薬学的に許容され得る流体。
【請求項100】
前記患者の気道と接触させて前記薬学的に許容され得る流体を導入することが、5秒間から少なくとも24時間にわたる連続した期間にわたって進行する、請求項99に記載の使用のための薬学的に許容され得る流体。
【請求項101】
前記患者の気道と接触させて前記薬学的に許容され得る流体を導入することが、少なくとも24時間にわたって連続的に進行する、請求項100に記載の使用のための薬学的に許容され得る流体。
【請求項102】
前記薬学的に許容され得る流体が、蒸気、エアロゾル、スプレー、微粒子化ミスト、ガス、微粒子化固体粒子またはナノサイズの固体粒子として気道に導入される、請求項99、100または101に記載の使用のための薬学的に許容され得る流体。
【請求項103】
前記薬学的に許容され得る流体が、0.1~5.0ミクロンの平均質量空気力学的直径の粒子径を有する、請求項99~102に記載の使用のための薬学的に許容され得る流体。
【請求項104】
前記薬学的に許容され得る流体が、24時間の間に少なくとも1用量で投与される、請求項99~103に記載の使用のための薬学的に許容され得る流体。
【請求項105】
呼吸器疾病の発症前に前記患者の気道に前記薬学的に許容され得る流体を投与する工程をさらに含む、請求項99~104に記載の使用のための薬学的に許容され得る流体。
【請求項106】
呼吸器疾病の処置または予防において使用するためのキットであって、前記キットは、
薬学的に許容され得る流体を、それを必要とする患者の気道内に投与するための呼吸器送達デバイスに接続可能な容器であって、前記容器は、少なくとも1つのチャンバーを有し、前記チャンバーは、液体キャリアおよび少なくとも1種の酸化合物を含む少なくとも1用量の薬学的に許容され得る流体を収容し、前記薬学的に許容され得る流体は、3.0未満のpHを有する、容器、および前記薬学的に許容され得る流体を前記容器から、それを必要とする患者の気道内に運ぶための少なくとも1つのデバイス
を含む、キット。
【請求項107】
前記薬学的に許容され得る流体を投与するための手段をさらに含む、請求項106に記載のキット。
【請求項108】
前記薬学的に許容され得る流体を前記患者の気道の少なくとも一部と接触させて投与するための前記手段が、前記流体を、気化した状態、霧状にした状態または噴霧した状態で送達する少なくとも1つの機構を含む、請求項107に記載のキット。
【請求項109】
前記容器が、吸入器またはネブライザーである、請求項106に記載のキット。
【請求項110】
前記ネブライザーが、PARIネブライザーである、請求項109に記載のキット。
【請求項111】
呼吸器用吸入デバイスであって、前記デバイスは以下を含む:
少なくとも1つの内部チャンバーを有するリザーバ、
前記内部チャンバー内に収容された薬学的に許容され得る流体であって、前記薬学的に許容され得る流体は、
少なくとも1種の有機酸、少なくとも1種の無機酸およびそれらの混合物からなる群より選択される酸化合物;および
キャリア
を含み、前記酸化合物は、3.0未満のpHを提供するのに十分な量で存在する;および
前記リザーバと流体連通しているディスペンサー、
前記ディスペンサーは、呼吸器疾病を有する患者の気道の少なくとも一部と吸入可能に接触するように、前記リザーバから、前記薬学的に許容され得る流体の測定された部分を分注するように構成されており、
前記薬学的に許容され得る流体は、平均質量直径が0.5~5.0ミクロンの液滴サイズである。
【請求項112】
前記呼吸器疾病が、ウイルス性病原体、細菌性病原体、真菌性病原体のうちの少なくとも1つによって引き起こされる急性呼吸器疾病である、請求項111に記載の呼吸器用吸入デバイス。
【請求項113】
前記ウイルス性病原体が、コロナウイルス、インフルエンザウイルス、パラインフルエンザウイルス、呼吸器合胞体ウイルス、ライノウイルスのうちの1つである、請求項112に記載の呼吸器用吸入デバイス。
【請求項114】
前記ウイルス性病原体が、SARS-CoV、SARS-CoV-2、MERS-CoVおよびそれらの混合物からなる群より選択されるベータコロナウイルスである、請求項113に記載の呼吸器用吸入デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
係属中の出願の相互参照
本開示は、2020年12月4日に出願された米国特許出願第63/121,856号;2021年2月1日に出願された米国特許出願第63/144,305号;2021年3月9日に出願された米国特許出願第63/158,864号および2021年7月9日に出願された米国特許出願第63/220,441号に対する優先権を主張する。これらはいずれも係属中であり、これらの明細書はその全体が本明細書中に援用される。本出願はまた、現在係属中の2021年5月3日に出願されたPCT/US2021/030429に対する優先権も主張し、その明細書も参照により本明細書中に援用される。
【背景技術】
【0002】
本開示は、呼吸器疾病を処置および/または予防するための方法および組成物に関する。より詳細には、本開示は、感染性病原体によって少なくとも部分的に引き起こされる呼吸器疾病を処置および/または予防する方法に関する。そのような病原体の非限定的な例は、細菌性病原体、真菌性病原体および/またはウイルス性病原体である。ウイルス性病原体の非限定的な例としては、コロナウイルス、インフルエンザウイルス、パラインフルエンザウイルス、呼吸器合胞体ウイルスおよびライノウイルスのうちの1つ以上によって引き起こされるものが挙げられる。
【0003】
感染性呼吸器疾患は、あらゆる年齢の人々の健康、安全性および幸福を脅かしている。様々なウイルス性および/または細菌性および/または真菌性病原体が、集団を介して容易に広がり、多くの人に感染することができる。これは、罹患集団内の多数の個体が所与の病原体に対する自然免疫または獲得免疫を欠くとき、特に困難である。また、高度な医学的処置へのアクセスが制限されている集団または高度な医学的処置にアクセスできない集団においても困難である。ゆえに、米国などの先進国の農村部、ならびにアフリカ、南米およびアジアの国々の多くの地域では、新規の感染性病原体の到来は、壊滅的ではないにしても特に難儀であり得る。
【0004】
細菌、真菌、およびSARS-CoV-2を含むウイルスなどの呼吸器病原体は、毎年500万人超を死亡させている(Forum of International Respiratory Societies.The Global Impact of Respiratory Disease-Second Edition.Sheffield,European Respiratory Society,2017を参照のこと)。SARS-CoV-2などの新興のパンデミック病原体の場合、疾患特異的治療薬は開発に時間がかかる。また、多くの風土病病原体は、多剤耐性になるように進化することができ、複数の遺伝子型を示すことができ、指数関数的な疾患流行が起こるまでは、利用可能な特定の診断プラットフォームなしで迅速に提示することができる。利用可能な治療薬は、病原体特異的であることが多い。病原体の特徴付け、標的の同定、小分子の設計から臨床試験までの治療薬開発のタイムラインは、費用がかかり、達成するのに数年かかる場合がある。例えば、SARS-CoV-2ウイルスは、その伝染率および増殖感染率を上昇させるために複数の変異体に変異しており、ワクチン接種集団内で生成された抗体認識を回避するためにさらに変異する可能性が高い。
【0005】
多くのウイルス性、細菌性および真菌性の呼吸器病原体にわたって有効性を提供する広域抗菌療法が非常に望ましい。現在および新興のSARS-CoV-2変異体ならびに現在および新興の抗生物質耐性細菌株に対して有効性を提供することも望ましい。さらに、治療薬は、投与が容易であり、全身作用が最小限で、あらゆる患者が広く入手できることが望ましく、このことにより、病原体特異的薬物材料および/または病原体特異的処置方法の前またはそれに加えて、広範囲の呼吸器感染症の第一選択処置の選択肢として使用することが可能になり得る。
【0006】
気道の1つ以上の領域で増殖し得る感染性病原体に対して有効な抗菌化合物の経肺吸入薬の医学的調査は、結核および風邪、インフルエンザなどの感染症の潜在的な治療薬として1世紀以上前に始まった。この調査は成功せず、この努力は、ペニシリンなどの抗生物質の発見に取って代わられたようである。しかしながら、COVID-19のパンデミックにより、安全で効果的な経肺抗菌化合物および組成物の継続の必要性は、さらに緊急になっている。さらに、抗生物質耐性および治療薬耐性病原体が増殖していること、ならびに広範囲のウイルス性、細菌性および真菌性の呼吸器病原体に対する感受性を増加させ得る既存の呼吸器疾患を有する患者集団が拡大していることもまた、有効な経肺抗菌化合物および処置の必要性を浮き彫りにしている。
【0007】
さらに、上気道感染症および下気道感染症は、一般に抗生物質で処置され、先進工業国における抗生物質処方の過半数の理由であり得る。これは費用がかかることがあり、時間の経過とともに病原体の抗生物質耐性株の出現を高める可能性がある。したがって、気道感染症における処置として、抗生物質処置の代替または少なくとも補助として使用することができる組成物および処置を提供することが望ましいだろう。
【0008】
薬学的に許容でき、有効であり、患者への投与の許容範囲内であり、宿主の組織にとって有害でない肺消毒化合物の必要性は、まだ満たされていない。
【0009】
したがって、呼吸器感染症に関連する1種以上の病原体を減少させるまたは排除するために、患者のインサイチュで1種以上の病原体に対して作用することができる製剤を提供することが望ましいだろう。1種以上の病原体によって引き起こされる感染症を予防するため、またはその感染症を発症する患者を処置するため、または病原体が陽性であることを検査するための方法であって、薬学的に許容でき、有効で、耐容され、かつ宿主の組織に対して有害でない方法を提供することも望ましい。
【発明の概要】
【0010】
呼吸器疾病を処置または予防する方法であって、3.0未満のpHを有する少なくとも1用量の薬学的に許容され得る流体を、それを必要とする患者の気道の少なくとも1つの領域と接触させて投与することを含む方法が開示される。薬学的に許容され得る流体は、少なくとも1種の無機酸、少なくとも1種の有機酸およびそれらの混合物を含み得る。
【0011】
また、治療用組成物も開示され、その治療用組成物は、呼吸器疾病への対処を必要とする患者の呼吸器疾病に対処する際に使用するために、3.0未満のpHを生じるのに十分な量で存在する薬学的に許容され得る酸性成分を含む酸性成分と、流体キャリアとを含む。薬学的に許容され得る酸性成分は、少なくとも1種の無機酸、少なくとも1種の有機酸およびそれらの混合物であり得る。
【0012】
治療用吸入剤組成物として使用される少なくとも1種の薬学的に許容され得る酸から構成される、3.0未満のpHを有する組成物も開示される。その少なくとも1種の薬学的に許容され得る酸は、少なくとも1種の無機酸、少なくとも1種の有機酸またはそれらの混合物であり得る。
【0013】
呼吸器疾病の処置または予防において使用するためのキットも開示され、そのキットは、液体キャリアおよび少なくとも1種の化合物を含む薬学的に許容され得る流体であって、3.0未満のpHを有する薬学的に許容され得る流体と、薬学的に許容され得る流体を、呼吸器疾病の処置または予防を必要とする患者の気道に投与するための容器とを含む。
【0014】
本方法および/または本組成物の様々な特徴、利点および他の使用は、以下の詳細な説明および図面を参照することによってより明らかになるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】400ppm CaSOを含む希硫酸(A)、希硫酸(B)、実施例LXXIIに概説されるプロセスに従って調製された本明細書中に開示される実施形態(C)、および逆浸透水(D)についてポジティブイオン化モードで収集された質量スペクトルである。
図2】400ppm CaSOを含む希硫酸(A)、希硫酸(B)、実施例LXXIIに概説されるプロセスに従って調製された本明細書中に開示される実施形態(C)、および逆浸透水(D)についてネガティブイオン化モードで収集された質量スペクトルである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
3.0未満のpHを有する少なくとも1用量の薬学的に許容され得る流体を、それを必要とする患者に存在する気道の少なくとも1つの領域と接触させて投与する工程を含む、呼吸器疾病を処置または予防するための方法および組成物が本明細書中に開示される。
【0017】
本明細書中に開示される方法および/または組成物によって処置または予防できる呼吸器疾病には、ヒトもしくは動物またはその両方に影響を及ぼし得る1種以上の種々の感染性病原体によって引き起こされる気道感染症が含まれ得る。本明細書中に開示される方法によって処置または予防できる呼吸器疾病には、1つ以上の慢性呼吸器状態が含まれ得る。処置または予防できる呼吸器疾病は、1つ以上の慢性呼吸器状態と1つ以上の呼吸器感染症との組み合わせであり得る。ある特定の実施形態において、気道感染症は、急性感染症または慢性感染症のいずれかであり得、1種以上の病原体によって引き起こされ得る。呼吸器疾病は、慢性呼吸器疾病と気道感染症との組み合わせであり得ることも企図される。
【0018】
米国疾病管理センター(United States Center for Disease Control)によって定義されている慢性呼吸器状態は、広義には、1年以上続き、継続的な医学的配慮を必要とするか、または日常生活動作を制限するか、またはその両方である状態として定義される。本明細書中に開示される方法および/または組成物によって対処することができる慢性呼吸器疾病の非限定的な例としては、慢性閉塞性肺疾患、嚢胞性線維症、喘息または呼吸器系アレルギーが挙げられる。
【0019】
本開示において使用される用語としての気道感染症は、上気道または下気道の任意の感染症として広く定義される。上気道感染としては、感冒、喉頭炎、咽頭炎/扁桃炎、鼻炎、鼻副鼻腔炎などが挙げられ得るが、これらに限定されない。下気道感染症としては、気管支炎、細気管支炎、肺炎、気管炎などが挙げられる。
【0020】
本明細書中に開示される方法および/または組成物によって処置できる気道感染症の原因となる病原体としては、1種以上のウイルス性病原体、1種以上の細菌性病原体、1種以上の真菌性病原体、ならびに論じられているクラスのうちの2つ以上から生じる混合病原体感染が挙げられ得る。本明細書中に開示されるある特定の実施形態において、ウイルス性病原体は、コロナウイルス、インフルエンザウイルス、パラインフルエンザウイルス、呼吸器合胞体ウイルス(RSV)、ライノウイルス、アデノウイルスのうちの少なくとも1つならびに前述の2つ以上の組み合わせであり得る。患者において感染を引き起こす様々なウイルス株は、純粋な株であり得るか、または様々な株、タイプ、サブタイプおよび/または変異の混合物であり得ることも企図される。
【0021】
本明細書中に開示される方法および/または組成物によって処置できるコロナウイルスとしては、アルファコロナウイルス、ベータコロナウイルス、ならびに他の新興タイプが挙げられるが、これらに限定されない。コロナウイルスは、この用語が本開示において使用されるとき、様々な哺乳動物種および鳥類種において疾患、特に気道感染症を引き起こす関連RNAウイルスの群であると理解される。本明細書中に開示される方法および/または組成物によって処置できるコロナウイルスには、Coronaviridea科のOrthocoronavirinae亜科のメンバーが含まれる。ある特定の実施形態では、本明細書中に開示される方法および/または組成物を使用して、呼吸器感染症を処置または予防することができ、その疾患を引き起こす病原体は、SARS-CoV-1(2003)、HCoV NL63(2004)、HCoV HKU1(2004)、MERS-CoV(2013)SARS-CoV-2(2019)およびそれらの混合物からなる群より選択されるCoronaviridea科のメンバーであるヒトコロナウイルスである。ある特定の実施形態において、コロナウイルスは、SARS-CoV、SARS-CoV-2、MERS-CoVおよびそれらの混合物からなる群より選択されるベータコロナウイルスであり得る。ある特定の実施形態では、本明細書中に開示される方法および/または組成物を使用して、呼吸器感染症を処置または予防することができ、その疾患を引き起こす病原体は、言及されたもの以外の、エンベロープを有するプラスセンスの一本鎖RNAウイルスである。
【0022】
気道感染症を引き起こすことができ、本明細書中に開示される方法および/または組成物によって処置できるインフルエンザウイルスの非限定的な例は、Orthomyxoviridae科などのマイナスセンスのRNAウイルス、例えば、アルファインフルエンザ属、ベータインフルエンザ属、デルタインフルエンザ属、ガンマインフルエンザ属、トゴトウイルス属およびクアラジャウイルス(quarajavirus)属のものであり得る。ある特定の実施形態において、インフルエンザウイルスは、H1N1、H1N2、H2N2、H3N1、H3N2、H3N8、H5N1、H5N2、H5N3、H5N8、H5N9、H7N1、H7N2、H7N4、N7N7、H7N9、H9N2、H10N7などの血清型として表現されるアルファインフルエンザであり得る。他の表現も企図される。
【0023】
パラインフルエンザウイルスの非限定的な例は、Paramyoviridae科の、エンベロープを有する一本鎖RNAウイルスであり得る。ヒトパラインフルエンザウイルスの非限定的な例としては、Respirovirus属およびRubulavirus属のウイルスが挙げられる。
【0024】
呼吸器合胞体ウイルス(RSV)の非限定的な例は、Orthopneumovirus属のウイルスなどのPneumvidae科の、エンベロープを有する様々な中型(約150nm)のウイルスである。
【0025】
本明細書中に開示される方法および/または組成物によって処置できるライノウイルスの非限定的な例としては、ウイルスタンパク質を含むカプシドから構成される一本鎖プラスセンスRNAゲノムを有するウイルスが挙げられる。ライノウイルスは、Picovirus科およびEnterovirus属のウイルスであり得る。
【0026】
アデノウイルスの非限定的な例としては、二本鎖DNAなどの核酸を含む正二十面体のヌクレオカプシドを有するウイルスなどのエンベロープを有しないウイルスが挙げられる。ウイルスは、Atadenoviridae科、およびAtadenovirus、Mastadenvirus、Siadenovirusなどの属のウイルスであり得る。
【0027】
本明細書中に開示される方法および/または組成物を使用して、細菌性病原体によって引き起こされる呼吸器感染症を処置することができることも企図される。そのような細菌性病原体の非限定的な例としては、Streptoccocus pneumoniae、Pseudomonas aeruginosa、Klebsiella pneumoniae、Haemophilus influenzae、Staphylococcus aureus、Moraxella catarrhalis、Streptococcus pyogenes、Mycobacterium tuberculosis、Mycobacterium avium-intracellulare(MAI)、Mycobacterium terraeおよびそれらの混合物が挙げられる。
【0028】
本明細書中に開示される方法および/または組成物を使用することにより、単一病原体の真菌感染症、複数病原体の真菌感染症、または呼吸器が関与する一般的な真菌症として呈する、真菌性病原体によって引き起こされる呼吸器感染症を処置することができる。呼吸器疾病および呼吸器感染症に関与する真菌性病原体の非限定的な例としては、Aspergillus属のある特定の種が挙げられ、A.fumigatus、A.flavusおよびA.clavatusが、非限定的な例である。本明細書中に開示される方法および/または組成物によって処置され得る真菌性病原体によって引き起こされる呼吸器感染症の他の例は、Cryptococcus属、Rhizopus属、Mucor属、Pneumocystis属、Candida属などの感染性の種が関わる呼吸器感染症である。
【0029】
ある特定の実施形態において、本明細書中に開示される方法および/または組成物は、2.8未満;2.5未満;2.4未満;2.0未満;1.8未満;1.7未満;1.6未満;1.5未満;1.0未満のpHを有し得、低いほうの範囲は、患者の肺の状態および健康状態によって決定される。ある特定の実施形態において、本組成物は、1.4~3.0、1.5~3.0;1.6~3.0;1.7~3.0;1.8~3.0;1.9~3.0;2.0~3.0;2.2~3.0;2.4~3.0;1.4~2.5;1.5~2.5;1.6~2.5;1.7~2.5;1.8~2.5;1.9~2.5;2.0~2.5;2.2~2.5;2.4~2.5;1.4~2.4;1.5~2.4;1.6~2.4;1.7~2.4;1.8~2.4;1.9~2.4;2.0~2.4;2.2~2.4;1.4~2.4;1.5~2.2;1.6~2.2;1.7~2.2;1.8~2.2;1.9~2.2;2.0~2.2;1.4~2.0;1.5~2.0;1.6~2.0;1.7~2.0;1.8~2.0;1.9~2.0、1.4~1.9;1.4~1.9;1.4~1.8;1.4~1.7;1.4~1.6;1.4~1.5のpHを有し得る。
【0030】
本明細書中に開示される方法では、3.0未満のpHを有する薬学的に許容され得る流体を、それを必要とする患者の気道の少なくとも1つの領域と接触させて投与することができ、任意の治療的に許容され得る様式によって投与することができる。ある特定の実施形態において、薬学的に許容され得る流体は、患者の吸入による組成物の少なくとも一部の取り込みを可能にするかまたは促進する様式で投与される。薬学的に許容され得る流体は、ある特定の実施形態では圧力下で導入され得る。
【0031】
本明細書中に開示される薬学的に許容され得る流体は、ガス、流体またはこれら2つの混合物の形態で、患者の気道の少なくとも1つの領域と接触させて導入され得る。ある特定の実施形態において、薬学的に許容され得る流体は、1種以上の粉末または微粒子化された固体を含むこともできる。薬学的に許容され得る流体は、蒸気、エアロゾル、スプレー、微粒子化ミスト、ガスなどの形態で患者の気道の少なくとも一部と接触させて導入され得る。薬学的に許容され得る流体は、ガスとして、ガス中の分散されたナノ粒子として、ガス中の微粒子化された粒子として、ガス中の分散されたナノ粒子などとして投与され得ることも企図される。
【0032】
患者の気道の少なくとも1つの領域と接触させて導入される薬学的に許容され得る流体から構成される微粒子または液滴材料のサイズは、気道の所望の領域との接触を増加させるように調整するまたは合わせることができる。薬学的に許容され得る流体が接触できる気道のそれぞれの領域としては、鼻、副鼻腔、咽喉、咽頭、喉頭、喉頭蓋、副鼻腔、気管、気管支、肺胞または前述のいずれかの組み合わせが挙げられ得る。粒子/液滴のサイズ分布は、最も大きい病原体集団の位置に対処するように合わせることができる。ある特定の実施形態において、少なくとも1用量の薬学的に許容され得る流体は、その領域に局在する感染に対処するために、気管支、肺胞などの下気道と接触させて送達され得る。ある特定の実施形態において、少なくとも1用量の薬学的に許容され得る流体は、この領域に局在する感染に対処するために、鼻または鼻孔、鼻腔、口、咽頭、喉頭などの上気道と接触させて送達され得る。
【0033】
ある特定の実施形態において、投与される薬学的に許容され得る流体は、0.1~20.0ミクロンの平均質量空気力学的直径(MMAD)の粒子径を有し得る。ある特定の実施形態において、その粒子径は、0.5~20.0;0.75~20.0;1.0~20.0;2.0~20.0;3.0~20.0;4.0~20.0;5.0~20.0;7.0~20.0;10.0~20.0;12.0~20.0;15.0~20.0;16.0~20.0;17.0~20.0;18.0~20.0;0.1~15.0;0.5~15.0;0.75~15.0;1.0~15.0;2.0~15.0;3.0~15.0;4.0~15.0;5.0~15.0;7.0~15.0;10.0~15.0;12.0~15.0;14.0~15.0;0.1~10.0;0.5~10.0;0.75~10.0;1.0~10.0;2.0~10.0;3.0~10.0;4.0~10.0;5.0~10.0;7.0~10.0;8.0~10.0;9.0~10.0;0.1~5.0;0.5~5.0;0.75~5.0;1.0~5.0;2.0~5.0;3.0~5.0;4.0~5.0;0.1~4.0;0.5~4.0;0.75~4.0;1.0~4.0;2.0~4.0;3.0~4.0;0.1~3.0;0.5~3.0;0.75~3.0;1.0~3.0;1.5~3.0;2.0~3.0;0.1~2.0;0.5~2.0;0.75~2.0;1.0~2.0;1.5~2.0;0.1~1.0;0.3~1.0;0.5~1.0;0.75~1.0ミクロンであり得る。
【0034】
薬学的に許容され得る流体は、気道に存在する病原体負荷を減少させるのに十分な濃度および量で、患者の気道の少なくとも1つの領域と接触させて導入され得る。薬学的に許容され得る流体を、数分、数時間またはさらには数日間という規定の期間にわたって連続的に導入できることは、本開示の範囲内である。ある特定の実施形態において、薬学的に許容され得る流体は、少なくとも24時間という期間にわたって連続的に導入され得る。呼吸器感染症を呈している患者では、連続投与は、直接的に測定されるか、または血中酸素飽和度などの症状の改善によって間接的に確認されるように、病原体負荷が減少したとき、中止することができる。
【0035】
薬学的に許容され得る流体が、所定の間隔で導入される一連の少なくとも2用量で投与され得ることも、本開示の範囲内である。投与の間隔および投与される用量の数は、直接的に測定されるか、または血中酸素飽和度などの症状の改善によって間接的に確認されるかのいずれかのとき、患者の気道に存在する病原体負荷を減少させるのに十分な間隔である。
【0036】
ある特定の実施形態では、病原体負荷の減少は、薬学的に許容され得る流体を投与される患者の気道における病原体数の部分的または完全な減少であり得る。気道病原体の数の完全な減少よりも少ない減少が達成される場合、少なくともいくつかの例では、気道病原体の数の減少は、患者自身の免疫系の応答が単独でまたは追加の支持療法もしくは増強療法のいずれかで感染性病原体に対処するまたはそれを克服することを可能にするのに十分であり得ると考えられている。
【0037】
薬学的に許容され得る流体が、複数の別個の用量で投与される場合、その薬学的に許容され得る流体は、24時間の間に2~10用量にわたって投与され得、ある特定の実施形態では3~4用量が企図される。各投与間隔は、1秒~120分の期間であり得、ある特定の実施形態では、1~60分;1~30分;1~20分;1~10分の投与間隔が企図される。ある特定の実施形態において、薬学的に許容され得る流体が、ある投与間隔にわたって投与される場合、その薬学的に許容され得る流体のさらなる部分が、その投与間隔にわたって導入され、患部気道と接触し、それにより、その継続的な添加によって病原体負荷が減少する。
【0038】
患者の気道における病原体負荷の減少の直接測定は、拭き取り、サンプリングなどによる任意の好適な機構によって達成することができる。ある特定の実施形態において、病原体負荷の減少は、投与開始の1分後~24時間後の時点において測定された、患者の気道の少なくとも1つの領域における病原体集団の少なくとも1%の減少として定義することができると企図される。ある特定の実施形態において、病原体負荷の減少は、投与開始の1分後~24時間後の時点において測定されるとき、少なくとも10%;少なくとも25%;少なくとも50%;少なくとも75%であり得る。
【0039】
薬学的に許容され得る流体は、特定の患者の生理機能および健康履歴に応じて予防的または治療的に投与され得ることが企図される。予防的投与の非限定的な例としては、気道感染症、または気道感染症に起因する合併症のリスクが高い慢性状態を呈している個体への好適な投薬レジメンでの薬学的に許容され得る流体の日常的投与が挙げられ得る。予防的投与の別の非限定的な例は、伝染性病原体への曝露後の、1用量以上の本明細書中に開示される薬学的に許容され得る流体の投与である。
【0040】
薬学的に許容され得る流体の投与は、ネブライザー、低温ミスト気化器、陽圧吸入器、CPAPユニットなどを含むがこれらに限定されない1つ以上の好適なデバイスによって達成され得ることが企図される。
【0041】
薬学的に許容され得る流体は、3.0未満かつ本開示に記載される範囲内の流体pHを提供するのに十分な濃度で存在する少なくとも1種の酸化合物を含み得る。薬学的に許容され得る流体は、所望のとおりまたは必要に応じ、好適なキャリア中に存在する少なくとも1種の酸を含み得る。使用される酸は、薬学的に許容され得、有効で、耐容され、かつ処置される患者の気道に存在する周囲組織にとって有害でないものであり得る。好適な酸化合物は、ブレンステッド酸、ルイス酸およびそれらの混合物からなる群より選択され得る。
【0042】
本明細書中で使用されるとき、「薬学的に許容され得る」という用語は、治療用材料が、全身作用をほとんどまたは全く伴わずに、主に気道の組織の表面上で活性であるように、好適な薬力学および薬物動態を有すると定義される。理想的には、使用される材料は、迅速に吸収および代謝される一般的な代謝産物として身体によって認識される副産物を生成する。本明細書で使用される「有効な」は、身体の自然防御を支援および増強するために、病原体負荷を有意に減少させる目的でインビボにおいて標的病原体に対して有効である材料と定義される。本明細書中で定義される「耐容される」とは、刺激作用、息詰まり、咳嗽などを含むがこれらに限定されない望ましくない反応なしに、当該材料が、有効な治療濃度において患者によって許容され得ることである。本明細書中で使用される「有害でない」は、治療濃度レベルで存在する材料と直接接触している気道の組織に対してほとんどまたは全く悪影響を及ぼさずに、標的病原体を死滅させるのに有効な材料と定義される。
【0043】
使用される酸化合物は、少なくとも1種の無機酸、少なくとも1種の有機酸、または少なくとも1種の無機酸と少なくとも1種の有機酸との混合物であり得る。
【0044】
ある特定の実施形態において、薬学的に許容され得る流体は、本明細書中で定義されるレベルのpHを提供するのに十分な濃度で存在する少なくとも1種の無機酸を含み、その無機酸であり得る。2種以上の無機酸が使用される場合、様々な無機酸は、本開示において定義されるパラメータ内のpHレベルを提供するのに十分な比で存在する。それぞれの酸の比は、耐容性などのパラメータを満たすように修正または変更することができる。好適な無機酸の非限定的な例としては、塩酸、リン酸、硫酸、臭化水素酸、リン酸、ポリリン酸、次亜塩素酸およびそれらの混合物からなる群より選択される無機酸が挙げられる。ある特定の実施形態において、薬学的に許容され得る流体は、硫酸、塩酸、臭化水素酸およびそれらの混合物を含み得る。本開示はまた、薬学的に許容され得る流体中の少なくとも1種の無機酸が、それぞれの無機酸の塩として全体的または部分的に存在し得ることを企図する。少なくとも1種の無機酸は、所望のpH範囲を得るために、単独で、または他の弱有機酸もしくは強有機酸または弱無機酸もしくは強無機酸あるいはそれらの塩と組み合わせて、使用することができる。
【0045】
ある特定の実施形態において、薬学的に許容され得る流体は、本明細書中で定義されるレベルのpHを提供するのに十分な濃度で存在する少なくとも1種の有機酸を含み得る。ある特定の実施形態において、少なくとも1種の有機酸は、単独でまたは1種以上の無機酸と組み合わせて存在し得る。2種以上の有機酸が使用される場合、様々な有機酸は、本開示で定義されるパラメータ内のpHレベルを提供するのに十分な比で存在し得る。それぞれの酸の比は、耐容性などのパラメータを満たすように修正または変更することができる。有機酸の非限定的な例としては、酢酸、トリクロロ酢酸、ベンゼンスルホン酸、クエン酸、プロピオン酸、ギ酸、グルコン酸、乳酸、アスコルビン酸、イソアスコルビン酸、アスパラギン酸、グルタミン酸、グルタル酸およびそれらの混合物からなる群より選択される少なくとも1種の有機酸が挙げられる。ある特定の実施形態において、有機酸は、トリクロロ酢酸、ベンゼンスルホン酸、クエン酸、プロピオン酸、ギ酸、グルコン酸、乳酸、アスコルビン酸、イソアスコルビン酸、アスパラギン酸、グルタミン酸およびそれらの混合物のうちの少なくとも1つであり得る。
【0046】
ある特定の実施形態において、薬学的に許容され得る流体は、上に列挙された少なくとも1種の有機酸と組み合わせて少なくとも1種の無機酸を含むことができる。少なくとも1種の有機酸または少なくとも1種の無機酸は、少なくとも1種のアミノ酸と組み合わせて存在し得ることも企図される。そのような組み合わせの非限定的な例としては、例えば、アスパラギン酸またはグルタミン酸などのアミノ酸と、適切なpH範囲を提供するために必要な、塩酸、臭化水素酸および硫酸などの少なくとも1種の無機酸と、が挙げられる。
【0047】
3未満のpHまたは本明細書中で論じられる範囲のうちの1つのpHを有する薬学的に許容され得る流体を提供するのに十分な濃度で2種以上の酸化合物を含み得る薬学的に許容され得る流体中に存在する酸成分を提供することは、本開示の範囲内である。したがって、2種以上の酸化合物が、薬学的に許容され得る流体中に存在する場合、その組成物は、完成した組成物について概説される範囲レベル外のpHを有するある特定の有機酸および/または無機酸を含み得ることが企図される。必要に応じ、耐容されるおよび/または効果的に代謝されることを可能にするレベルの少量の酸化合物を含むことも本開示の範囲内であるとみなされる。
【0048】
所望の場合または必要に応じて、薬学的に許容され得る治療用流体は、流体キャリアを含み得る。流体キャリア成分は、ヒトへの投与に適した液体気体材料であり得、より詳細には、流体キャリアは、吸入可能または導入可能な材料として投与することができるものであって、患者の気道の少なくとも1つの領域に存在する1つ以上の表面と接触するものであり得る。流体キャリア成分は、好適なプロトン性溶媒、好適な非プロトン性溶媒またはそれらの混合物であり得る。ある特定の実施形態において、キャリアは、気体であり得るか、または好適な手段によって気化、エアロゾル化などされ得る流体であり得る。好適なキャリアの非限定的な例としては、単独でまたは好適な混合物中に存在する、水、有機溶媒などが挙げられる。有機溶媒の非限定的な例としては、C~Cアルコール、薬学的に許容され得るフッ素化合物、薬学的に許容され得るシロキサン化合物、薬学的に許容され得る炭化水素、薬学的に許容され得るハロゲン化炭化水素およびそれらの混合物からなる群より選択される材料が挙げられる。
【0049】
いかなる理論にも拘束されるものではないが、薬学的に許容され得る流体組成物中に存在する遊離水素は、解離状態で全体的または部分的に存在する1種以上の好適な酸を含むことができると考えられている。ある特定の実施形態において、全体的または部分的に解離した状態で存在する好適な酸は、硫酸、塩酸、臭化水素酸、炭酸、シュウ酸、ピロリン酸、リン酸およびそれらの混合物からなる群より選択され得る。
【0050】
酸成分は、患者の気道に存在する病原体に作用するのに十分な量で存在することができる。ある特定の実施形態において、酸成分は、最大10,000ppm;1000~10,000ppm;2000~10,000ppm;3000~10,000ppm;4000~10,000ppm;5000~10,000ppm;6000~10,000ppm;7000~10,000ppm 8000~10,000ppm;9000~10,000ppmの量で存在し得る。ある特定の実施形態において、酸成分は、100ppm~2000ppmの量で薬学的に許容され得る材料溶液中に存在し得;ある特定の実施形態において、無機酸は、100ppm~1700ppm;100~1500ppm;100~1200ppm;100~1000ppm;100~900ppm;100ppm~800ppm;100ppm~700ppm;および100ppm~600ppm.500ppm~1700ppm;500~1500ppm;500~1200ppm;500~1000ppm;500~900ppm;500ppm~800ppm;500ppm~700ppm;および500ppm~600ppm;1000ppm~1700ppm;1000~1500ppm;1000~1200ppmの量で存在し得る。
【0051】
いかなる理論にも拘束されるものではないが、薬学的に許容され得る流体中の酸化合物は、患者の気道の少なくとも1つの領域に存在する病原体に影響を及ぼすことができるプロトン供与体であって、その中の病原体負荷を減少させることができるプロトン供与体として機能することができると考えられている。例えば、硫酸が使用されるとき、少なくとも一部は、低濃度で主に水素イオンおよび硫酸水素(HSO )に解離する。解離状態では、硫酸は、プロトンを供与して病原体に影響を及ぼすことができる。この作用様式を言及しているが、この考察によって他の作用様式が排除されることはない。
【0052】
上述の化合物は、好適な液体材料中に存在することができる。好適な材料の非限定的な例としては、成分材料の利用可能性および最終用途への適合性を促進するのに十分な純度レベルの水が含まれる。ある特定の実施形態において、液体材料の水成分は、ASTM D1193-06の最高グレードとして分類される材料であり得る。所望の場合または必要に応じて、水成分である水は、蒸留、二重蒸留、脱イオン化、鉱質除去、逆浸透、炭素濾過、限外濾過、紫外線酸化、微細濾過、電気透析などを含むがこれらに限定されない任意の好適な方法によって精製され得る。ある特定の実施形態において、0.05~2.00マイクロジーメンスの導電率を有する水を使用することができる。また、液体材料の水成分は、所望の場合または必要に応じて、最高グレードより高い純度を有する水から構成され得ることも本開示の範囲内である。ASTM 1193-96精製された、ASTM 1193-96超純水またはそれ以上に分類される水を使用することができることが望ましいまたは必要とされる。
【0053】
所望の場合または必要に応じて、上記組成物は、5~2000ppmの薬学的に許容され得るI族イオン、薬学的に許容され得るII族イオンおよびそれらの混合物を含むこともできる。ある特定の実施形態において、イオンは、カルシウム、マグネシウム、ストロンチウムおよびそれらの混合物からなる群より選択され得る。ある特定の実施形態において、無機イオンの濃度は、5~900ppm;5~800ppm;5~700ppm;5~600ppm;5~500ppm;5~400ppm;5~300ppm;5~200ppm;5~100ppm;5~50ppm;5~30ppm;5~20ppm;10~900ppm;10~800ppm;10~700ppm;10~600ppm;10~500ppm;10~400ppm;10~300ppm;10~200ppm;10~100ppm;10~50ppm;10~30ppm;100~900ppm;100~800ppm;100~700ppm;100~600ppm;100~500ppm;100~400ppm;100~300ppm;200~900ppm;200~800ppm;200~700ppm;200~600ppm;200~500ppm;200~400ppm;200~300ppm;300~900ppm;300~800ppm;300~700ppm;300~600ppm;300~500ppm;300~400ppmであり得る。ある特定の実施形態において、カルシウムイオンは、Ca2+、CaSO -1およびそれらの混合物として存在することができる。
【0054】
混合される上記酸化合物は、患者の気道に存在する少なくとも1つの領域と接触させて導入されたとき有害な相互作用がないことに限定される材料をもたらす任意の好適な手段によって生成することができると企図される。
【0055】
薬学的に許容され得る流体は、好適な治療濃度で存在する少なくとも1種の医薬品有効成分も含むことができる。好適な医薬品有効成分は、それが接触する気道の領域に局在する活性を有するものであり得る。好適な医薬品有効成分が、より大きな呼吸器系に対して影響を及ぼすものおよび/または患者に対して一般的な全身作用を及ぼすものであり得ることも、本開示の範囲内である。ある特定の実施形態において、使用される医薬品有効成分は、吸入などによって肺系を通って投与され得るものであり得る。ある特定の実施形態において、医薬品有効成分は、経口または静脈内などの吸入以外以外の投与方法を用いて、使用レジメンまたは処置レジメンの一部として投与され得ることが企図される。
【0056】
本明細書中で使用されるとき、「医薬品有効成分」は、薬学的に許容され得る塩、溶媒和物、錯体、多形、プロドラッグ、立体異性体、幾何異性体、互変異性体、活性代謝産物などの医薬品有効成分の「誘導体」も含み得る。好ましくは、誘導体には、プロドラッグおよび活性代謝産物が含まれる。さらに、様々な「医薬品有効成分およびその誘導体」は、様々な文献、特許および公開された特許出願に記載されており、当業者に周知である。
【0057】
ある特定の実施形態において、少なくとも1つの医薬品有効成分は、抗ウイルス薬または抗生物質などの抗菌薬、アドレナリンβ受容体アゴニスト、ステロイド、非ステロイド性抗炎症化合物、ムスカリンアンタゴニストなどのクラスの1種以上の好適な化合物を含むことができる。ある特定の実施形態において、本明細書中に開示される薬学的に許容され得る流体は、特定の病原性感染症に対処するためおよびそれを処置するための、コロナウイルス、インフルエンザなどに対して特異的または一般的な有効性を有する抗ウイルス化合物を含むことができる。抗ウイルス性医薬品有効成分の非限定的な例としては、アマンタジン、ロピナビル、ラインバッカー(linebacker)およびエクイビル(equivir)、アルビドール、ナノウイルス剤(nanoviricide)、レムデシビル、ファビピラビル、オセルタミビル リバビリン、モルヌピラビルならびにそれらの誘導体およびプロドラッグ、ならびに前述の組み合わせからなる群より選択される1種以上の化合物が挙げられる。ある特定の状況において、抗ウイルス性医薬品有効成分は、患者の気道の少なくとも一部と直接または即時に接触させた、吸入による投与または他の好適な投与を可能にする形態で存在し得る。いかなる理論にも拘束されるものではないが、モルヌピラビルなどの物質は、肺内のエステラーゼによってその活性代謝産物に変換され得るプロドラッグとして存在し得ると考えられている。それを必要とする患者の気道の少なくとも一部分と接触させて投与される薬学的に許容され得る流体との組み合わせにより、バイオアベイラビリティが向上し、かつ/または他の方法によって投与される材料の1つ以上の副作用が排除される。
【0058】
所望の場合または必要に応じて、抗ウイルス薬は、使用レジメンまたは処置レジメンの一部として投与され得ることも企図される。ノイラミニダーゼ阻害剤、Cap依存性エンドヌクレアーゼ阻害剤などの経口または静脈内投与される抗ウイルス薬は、使用レジメンまたは処置レジメンに含めることができる。
【0059】
ある特定の実施形態において、本明細書中に開示される薬学的に許容され得る流体は、特定の病原性感染症に対処するためおよびそれを処置するための、コロナウイルス、インフルエンザなどに対して特異的または一般的な有効性を有する抗ウイルス化合物を含むことができる。そのような抗ウイルス化合物の非限定的な例としては、レムデシビル、モルヌピラビルなどが挙げられる。本開示は、慢性疾病または認識されている併存症を有する患者などのリスクのある患者集団と同様に、曝露時または日常的に予防的に使用される本明細書中に開示される薬学的に許容され得る流体と好適に組み合わせたそのような材料の使用を企図する。本開示は、症候性または無症候性の個体に対する確定診断後の、本明細書中に開示される薬学的に許容され得る流体との好適な組み合わせでのそのような材料の投与または使用も企図する。いかなる理論にも拘束されるものではないが、開示される組み合わせによる処置またはその使用は、SARS-CoV-2、インフルエンザなどを含むがこれらに限定されない呼吸器疾病に対処するのに有効な治療レジメンを提供できると考えられている。
【0060】
ある特定の実施形態において、薬学的に許容され得る流体は、少なくとも1つのアドレナリンβ受容体アゴニスト医薬品有効成分を含み得る。好適なアドレナリンβ受容体アゴニストは、吸入または患者の気道の少なくとも1つの領域と接触させて導入する他の方法によって投与できるものであり得る。いかなる理論にも拘束されるものではないが、使用されるアドレナリンβ受容体アゴニストは、気管支路の拡張をもたらし得る局所的な平滑筋拡張を引き起こすように作用し得ると考えられている。本明細書中に開示される薬学的に許容され得る流体中において使用され得るアドレナリンβ受容体アゴニストの非限定的な例としては、ビトルテロール、フェノテロール、イソプレナリン、レボサルブタモール、オルシプレナリン、ピルブテロール、プロカテロール、リトドリン、サルブタモール、テルブタリン、アルブテロール、アルホルモテロール、バンブテロール、クレンブテロール、フォルモテロール、サルメテロール、アベジテロール(abediterol)、カルモテロール(carmoterol)、インダカテロール、オロダテロール、ビランテロール、イソクスプリン、マブテロール、ジルパテロール(zilpaterol)およびそれらの混合物からなる群より選択されるものが挙げられ得る。
【0061】
ある特定の状況において、アドレナリンβ受容体アゴニストは、薬学的に許容され得る流体と組み合わせて組成物として投与され得ることが企図される。アドレナリンβ受容体アゴニストは、本明細書中に開示される薬学的に許容され得る流体と同時投与され得ることも企図される。
【0062】
ある特定の実施形態において、薬学的に許容され得る流体は、ベクロメタゾン、ブデソニド、シクレソニド、フルニソリド、フルチカゾン、モメタゾンおよびそれらの組み合わせなどの化合物からなる群より選択される少なくとも1種のステロイド薬を含み得る。ある特定の状況において、ステロイドは、薬学的に許容され得る流体と組み合わせて組成物として投与され得ることが企図される。ステロイドは、本明細書中に開示される薬学的に許容され得る流体と同時投与され得ることも企図される。
【0063】
ある特定の実施形態において、薬学的に許容され得る流体は、メタ重亜硫酸塩、アデノシン、L-アスピリン、インドメタシンおよびそれらの組み合わせなどの化合物からなる群より選択されるものなどの少なくとも1種の吸入可能な非ステロイド性薬剤を含み得る。
【0064】
ある特定の状況において、非ステロイド性薬剤は、薬学的に許容され得る流体と組み合わせて組成物として投与され得ることが企図される。非ステロイド性薬剤は、本明細書中に開示される薬学的に許容され得る流体と同時投与され得ることも企図される。
【0065】
ある特定の実施形態において、ムスカリンアンタゴニストは、アトロピン、スコポラミン、グリコピロレートおよび臭化イプラトロピウムなどからなる群より選択される1種以上の化合物であり得る。
【0066】
本明細書中に開示される方法は、独立した処置レジメンとして使用することができるか、または特定の呼吸器感染症に対処し、それを処置するのに適した他の治療レジメンと組み合わせて使用することができる。この方法はまた、単独で、または曝露後であるが症状の発症前の個体のリスクまたは症状を低減または最小化するために予防的に用いることができる1つ以上の手順と組み合わせて使用することができる。本明細書中に開示される方法は、呼吸器感染症からの合併症または準最適な結果のリスクがある個体に対して使用するための独立した処置レジメンとして使用することができることも企図される。そのような個体の非限定的な例としては、免疫系が損なわれている個体、肺機能が損なわれている個体、心臓に問題がある個体、ならびに併存症(例えば、年齢、体重(肥満)など)を有する個体が挙げられる。
【0067】
本明細書中に開示される方法はまた、次亜塩素酸、過酸化水素およびそれらの混合物を含む組成物を患者の気道の少なくとも1つの領域と接触させて投与する工程を含むことができる。次亜塩素酸、過酸化水素およびそれらの混合物の投与は、少なくとも1用量の薬学的に許容され得る流体を患者の気道の少なくとも1つの領域と接触させる工程の前またはその工程と同時に行うことができる。ある特定の実施形態において、次亜塩素酸、過酸化水素およびそれらの混合物を含む組成物は、本明細書中に開示される薬学的に許容され得る流体材料と同時投与することができると企図される。所望の場合または必要に応じて、分散された次亜塩素酸、過酸化水素およびそれらの混合物を含む組成物は、薬学的に許容され得る流体材料と同じ気道の領域または異なる領域に接触するように構成またはサイズ設定され得る。
【0068】
ある特定の実施形態において、薬学的に許容され得る流体は、以下の工程:
少なくとも7モル濃度、22°~70°ボーメの密度および1.18~1.93の比重を有する液体形態のある体積の濃無機酸を、得られる組成物中に存在する固体材料を沈殿物、懸濁固体、コロイド懸濁液のうちの少なくとも1つとして生成するのに十分な体積で存在する無機水酸化物と反応容器内で接触させる工程;および
得られた液体材料から固体材料を除去する工程であって、得られた材料は、200~150Mのモル濃度を有する粘性材料である、工程
を含むプロセスによって生成される化合物を含むことができる。
【0069】
本明細書中に開示される方法によって生成される組成物は、好適な無機酸に好適な無機水酸化物を添加することによって形成することができる。その無機酸は、22°~70°ボーメの密度を有し得、約1.18~1.93の比重を有する。ある特定の実施形態において、無機酸は、50°~67°ボーメの密度;1.53~1.85の比重を有し得る。その無機酸は、単原子酸または多原子酸のいずれかであり得る。
【0070】
記載されるプロセスにおいて使用される無機酸は、均質であり得るか、または定義されたパラメータ内に入る様々な酸化合物の混合物であり得る。酸は、企図されるパラメータの範囲外であるが、他の材料と組み合わせて、指定された範囲の平均酸組成値を提供する、1種以上の酸化合物を含む混合物であってもよいことも企図される。使用される無機酸は、任意の好適なグレードまたは純度であり得る。ある特定の例では、技術グレードおよび/または食品グレードの材料を、様々な用途において首尾よく使用することができる。
【0071】
本明細書中の生成物を調製する際に、無機酸は、任意の好適な体積の液体形態で、任意の好適な反応容器に収容され得る。様々な実施形態において、反応容器は、好適な容積の非反応性ビーカーであり得ることが企図される。使用される酸の体積は、50mlほどの少量であり得る。最大5000ガロンおよび5000ガロン以上を含むより大きな体積もまた、本開示の範囲内であると考えられる。
【0072】
使用される無機酸は、周囲温度または周囲温度付近の温度などの好適な温度で反応容器内において維持され得る。最初の無機酸をおよそ23°~約70℃の範囲で維持することは、本開示の範囲内である。しかしながら、15°~約40℃の範囲のより低い温度も使用することができる。
【0073】
無機酸は、およそ0.5HP~3HPの範囲の力学的エネルギーを付与するために好適な手段によって撹拌され、1~2.5HPの力学的エネルギーを付与する撹拌レベルがこのプロセスのある特定の用途において使用される。撹拌は、DCサーボドライブ、電気インペラー、マグネチックスターラー、化学的インダクターなどを含むがこれらに限定されない種々の好適な機械的手段によって付与され得る。
【0074】
撹拌は、水酸化物の添加直前の期間において開始することができ、水酸化物導入工程の少なくとも一部の最中の期間にわたって継続することができる。
【0075】
本明細書中に開示されるプロセスでは、選択される酸材料は、少なくとも7以上の平均モル濃度(M)を有する濃酸であり得る。ある特定の手順において、平均モル濃度は、少なくとも10以上であり、7~10の平均モル濃度が、ある特定の用途において有用である。使用される最適な酸材料は、純粋な液体、液体スラリー、または本質的に濃縮された形態の溶解した酸の水溶液として存在し得る。
【0076】
好適な酸材料は、水性材料または非水性材料のいずれかであり得る。好適な酸材料の非限定的な例は、以下:塩酸、硝酸、リン酸、塩素酸、過塩素酸、クロム酸、硫酸、過マンガン酸、臭素酸、臭化水素酸、フッ化水素酸、ヨウ素酸、フルオロホウ酸、フルオロケイ酸、フルオロチタン酸のうちの1つ以上が挙げられ得る。
【0077】
ある特定の実施形態において、規定体積の使用される液体濃強酸は、55°~67°ボーメの比重を有する硫酸であり得る。この材料を反応容器に入れ、16°~70℃の温度で機械的に撹拌することができる。
【0078】
開示された方法のある特定の具体的な用途では、測定された規定量の好適な水酸化物材料を、測定された規定量で非反応性容器内に存在する撹拌中の酸、例えば濃硫酸に添加することができる。添加される水酸化物の量は、沈殿物および/または懸濁固体もしくはコロイド懸濁液として組成物中に存在する固体材料を生成するのに十分な量である。使用される水酸化物材料は、水溶性または部分的に水溶性の無機水酸化物であり得る。本明細書中に開示されるプロセスにおいて使用される部分的に水溶性の水酸化物は、一般に、それらが添加される酸性材料と混和性を示すものである。好適な部分的に水溶性の無機水酸化物の非限定的な例は、関連する酸に少なくとも50%の混和性を示すものである。無機水酸化物は、無水物または水和物のいずれかであり得る。
【0079】
水溶性無機水酸化物の非限定的な例としては、単独または互いに組み合わせた、水溶性のアルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物および希土類水酸化物が挙げられる。他の水酸化物も、本開示の範囲内であると考えられる。「水溶性」は、この用語が、使用される水酸化物材料と併せて定義されるとき、標準温度および標準圧力において水に75%以上の溶解特性を示す材料と定義される。利用される水酸化物は、通常、酸材料に導入され得る液体材料である。水酸化物は、真溶液、懸濁液または超飽和スラリーとして導入され得る。ある特定の実施形態において、水溶液中の無機水酸化物の濃度は、それが導入される関連する酸の濃度に依存し得ることが企図される。水酸化物材料に適した濃度の非限定的な例は、5モルの材料の5~50%を超える水酸化物濃度である。
【0080】
好適な水酸化物材料としては、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、水酸化カルシウム、水酸化ストロンチウム、水酸化バリウム、水酸化マグネシウムおよび/または水酸化銀が挙げられるが、これらに限定されない。無機水酸化物溶液は、使用されるとき、5モルの材料の5~50%の無機水酸化物濃度を有し得、5~20%の濃度が、ある特定の用途において使用される。無機水酸化物材料は、ある特定のプロセスにおいて、消石灰として存在するような好適な水溶液中の水酸化カルシウムであり得る。
【0081】
開示されるプロセスにおいて、液体または流体形態の無機水酸化物は、規定の共鳴時間を提供するために、規定の期間にわたって1つ以上の計量体積で、撹拌中の酸材料に導入される。概説されているこのプロセスにおける共鳴時間は、本明細書中に開示されているヒドロニウムイオン材料が発生する環境を促進および提供するのに必要な時間幅であると考えられる。本明細書中に開示されるプロセスにおいて使用される共鳴の時間幅は、通常、12~120時間であり、24~72時間という共鳴の時間幅およびその中の増分が特定の用途において利用される。
【0082】
上記プロセスの様々な用途において、無機水酸化物は、複数の計量体積で、撹拌中の体積の上面の酸に導入される。通常、無機水酸化物材料の総量は、共鳴の時間幅にわたって複数の測定部分として導入される。多くの場合、フロントロード計量添加が使用される。「フロントロード計量添加」とは、この用語が本明細書中で使用されるとき、共鳴時間の最初の部分の間により多くの部分が添加される、全水酸化物体積の添加を意味すると解釈される。所望の共鳴時間の最初のパーセンテージとは、総共鳴時間の最初の25%~50%であると考えられる。
【0083】
添加される各計量体積の比率は、等しいか、または外部プロセス条件、インサイチュプロセス条件、特定の材料特性などの非限定的な因子に基づいて変化し得ることを理解されたい。計量体積の数は、3~12であり得ることが企図される。各計量体積の添加間の間隔は、開示されるプロセスのある特定の用途では、5~60分であり得る。実際の添加間隔は、ある特定の用途では60分~5時間であり得る。
【0084】
上記プロセスのある特定の用途では、水酸化カルシウム材料の体積あたり5%重量の100 mlの体積を、混合物の有無にかかわらず、50mlの66°ボーメの濃硫酸に毎分2mlという計量分で5回添加する。水酸化物材料を硫酸に添加すると、液体濁度が上昇する材料が生成される。液体濁度の上昇は、硫酸カルシウム固体が沈殿物として形成されることを示す。生成された硫酸カルシウムは、連続的な水酸化物添加と協調して、調整された濃度の懸濁固体および溶解固体を提供する形式で除去され得る。
【0085】
いかなる理論にも拘束されるものではないが、本明細書中で定義される様式での硫酸への水酸化カルシウムの添加は、水酸化物を添加する際に一般に予想されるように、問題のプロトンがオフガス化されないように、硫酸に関連する初期水素プロトンを消費させて、水素プロトン酸素化をもたらすと考えられている。代わりに、そのプロトンは、液体材料中に存在するイオン性水分子成分と再結合する。
【0086】
所望の場合または必要に応じて、定義された好適な共鳴時間が経過した後、得られる材料は、2000ガウスを超える値の非双極性磁場にさらされる。ある特定の用途では200万ガウスを超える磁場が使用される。ある特定の状況では、10,000~200万ガウスの磁場を使用することができると企図される。磁場は、様々な好適な手段によって生成することができる。好適な磁場発生器の非限定的な一例は、Wurzburgerの米国特許第7,122,269号に見られ、その明細書は参照により本明細書中に援用される。
【0087】
プロセス中に生成され、沈殿物または懸濁固体として存在する固体材料は、任意の好適な手段によって除去することができる。そのような除去手段としては、以下:重量測定、強制濾過、遠心分離、逆浸透などが挙げられるが、これらに限定される必要はない。
【0088】
開示されるプロセスによって生成された材料は、周囲温度および50~75%の相対湿度で保存したとき、少なくとも1年間安定であると考えられている貯蔵安定性の粘稠性液体として存在することができる。安定な電解質組成物は、様々な最終用途にそのまま使用することができる。安定な電解質組成物は、電荷均衡していない酸プロトンの総モル数の8~9%を含む1.87~1.78モル濃度の材料を有し得る。ある特定の実施形態において、液体材料は、総モルの4%~9%の電荷均衡のとれた酸プロトン;総モルの5%~9%の電荷均衡のとれた酸;総モルの6%~9%の電荷平衡のとれた酸;総モルの7%~9%の電荷平衡のとれた酸;総モルの8%~9%の電荷平衡のとれた酸を含み得る。
【0089】
得られた材料は、好適にはさらに精製され得、本明細書中に開示される薬学的に許容され得る材料溶液中の液体材料として使用され得ると企図される。所望の場合または必要に応じて、得られた材料をさらなる処理に供することも、本開示の範囲内である。そのような処理の非限定的な例は、得られた流体を好適な磁場にさらすことが挙げられる。
【0090】
ある特定の実施形態において、得られた液体材料は、2000ガウスを超える値の非双極磁場にさらされ得る。ある特定の用途では200万ガウスを超える磁場が使用される。ある特定の状況では、10,000ガウス~200万ガウスの磁場が使用され得ると企図される。他の好適な範囲としては、10,000ガウス~20,000ガウス;10,000ガウス~30,000ガウス;10,000ガウス~40,000ガウス;10,000ガウス~50,000ガウス;10,000ガウス~60,000ガウス;10,000ガウス~70,000ガウス;10,000ガウス~80,000ガウス;10,000ガウス~90,000ガウス;10,000ガウス~100,000ガウス;50,000ガウス~100,000ガウス;50,000ガウス~150,000ガウス;50,000ガウス~200,000ガウス;50,000ガウス~250,000ガウス;100,000ガウス~200,000ガウス;100,000ガウス~250,000ガウス;100,000ガウス~300,000ガウス;100,000ガウス~350,000ガウス;100,000ガウス~400,000ガウス;100,000ガウス~450,000ガウス;100,000ガウス~500,000ガウス;250,000ガウス~300,000ガウス;250,000ガウス~400,000ガウス;250,000ガウス~500,000ガウス;500,000ガウス~600,000ガウス;500,000ガウス~700,000ガウス;500,000ガウス~800,000ガウス;500,000ガウス~900,000ガウス;500,000ガウス~1,000,000ガウス;750,000ガウス~1,100,000ガウス;750,000ガウス~1,200,000ガウス;750,000ガウス~1,250,000ガウス;1,000,000ガウス~1,100,000ガウス;1,100,000ガウス~1,200,000ガウス;1,200,000ガウス~1,300,000ガウス;1,300,000ガウス~1,400,000ガウス;1,400,000ガウス~1,500,000ガウス;1,500,000ガウス~1,600,000ガウス;1,600,000ガウス~1,700,000ガウス;1,800,000ガウス~1,900,000ガウス;1,900,000ガウス~2,000,000ガウスが挙げられる。磁場は、様々な好適な手段によって生成することができる。好適な磁場発生器の非限定的な一例は、Wurzburgerの米国特許第7,122,269号に見られ、その明細書は参照により本明細書中に援用される。
【0091】
本明細書中に開示されるプロセスによって生成された材料は、水素の電量分析およびFTIRスペクトル分析によって滴定的に測定したとき、200~150Mの強度、場合によっては187~178Mの強度のモル濃度を有する。材料は、1.15を超える重量分析範囲を有する。場合によっては1.9を超える範囲を有する。この材料は、分析したとき、1モルの水に含まれる水素に対して、1立方mlあたり最大1300体積倍のオルト水素を生じることが示されている。
【0092】
このプロセスによって生成された材料を水に導入することにより、本明細書中で使用される組成物を生成することができる。生成される使用溶液は、ある特定の実施形態において生成された、0.5体積%~10体積%の生成物を含むと企図される。ある特定の実施形態において、治療用材料は、0.5~8体積%;0.5~7体積%;0.5~6体積%;0.5~5体積%;0.5体積%;0.5~4体積%;0.5~3体積%;0.5~2体積%;0.5~1体積%;1~10体積% 1~8体積%;1~7体積%;1~6体積%;1~5体積%;1体積%;1~4体積%;1~3体積%;1~2体積%;2~10体積% 2および8体積%;2~7体積%;2~6体積%;2~5体積%;2~4体積%;2~3体積%;2~10体積% 2~8体積%;2~7体積%;2~6体積%;2~5体積%;2~4体積%;2~3体積%を構成する。
【0093】
いかなる理論にも拘束されるものではないが、本明細書中に開示されるプロセスは、以下の一般式:
【0094】
【数1】
【0095】
を有するものなどの成分を生成し得ると考えられている。
【0096】
xは、3以上の奇数の整数であり;
yは、1~20の整数であり;
Zは、-1~-3の間の電荷を有する14族から17族の単原子イオンまたは-1~-3の電荷を有する多原子イオンのうちの1つである。
【0097】
本明細書中に開示される成分において、Zとして使用され得る単原子の構成要素には、フッ化物、塩化物、ヨウ化物および臭化物などの17族のハロゲン化物;窒化物およびリン化物などの15族材料ならびに酸化物および硫化物などの16族材料が含まれる。多原子の構成要素としては、炭酸、炭酸水素、クロム酸、窒化物、硝酸、過マンガン酸、リン酸、硫酸、亜硫酸、亜塩素酸、過塩素酸、亜臭化水素酸(hydrobromite)、亜臭素酸、臭素酸、ヨウ化物、硫酸水素、亜硫酸水素が挙げられる。組成物は、上に列挙された材料の単一のものから構成され得るか、または列挙された1種以上の化合物の組み合わせであり得ることが企図される。
【0098】
ある特定の実施形態において、xは3~9の整数であり、いくつかの実施形態では、xは3~6の整数であることも企図される。
【0099】
ある特定の実施形態において、yは、1から10の整数であり、他の実施形態において、yは、1~5の整数である。
【0100】
ある特定の実施形態において、xは、3~12の奇数の整数であり;yは、1~20の整数であり;Zは、上記で概説したような、-1~-3の電荷を有する14~17族の単原子イオンまたは-1~-3の電荷を有する多原子イオンのうちの1つであり、いくつかの実施形態は、3~9のxを有し、yは1~5の整数である。
【0101】
本明細書中に開示されるイオン錯体は、存在する場合、安定であると考えられ、それを生成するために作り出された環境の存在下において酸素供与体として機能することができる場合がある。材料は、一般に安定であって、酸素供与体として機能することができる、任意の好適な構造および溶媒和を有し得る。得られる溶液の特定の実施形態は、以下の式:
【0102】
【数2】
【0103】
(式中、xは3以上の奇数の整数である)によって示されるような、ある濃度のイオンを含む。
【0104】
本明細書中に開示される化合物のイオンバージョンは、本開示においてヒドロニウムイオン錯体と呼ばれる各個別のイオン錯体中に7つを超える水素原子を有する固有のイオン錯体として存在すると企図される。本明細書中で使用されるとき、「ヒドロニウムイオン錯体」という用語は、カチオンHx-1+(式中、xは3以上の整数である)を取り囲む分子のクラスターとして広義に定義され得る。ヒドロニウムイオン錯体は、少なくとも4つの追加の水素分子と、化学量論的比率の、それと錯体形成した酸素分子とを、水分子として含み得る。したがって、本明細書中のプロセスにおいて使用され得るヒドロニウムイオン錯体の非限定的な例の式表現は、以下の式:
【0105】
【数3】
【0106】
(式中、xは、3以上の奇数の整数であり;
yは、1~20の整数であり、yは、ある特定の実施形態では3~9の整数である)
によって表すことができる。
【0107】
本明細書中に開示される様々な実施形態において、ヒドロニウムイオン錯体の少なくとも一部は、式:
+xO2y
(式中、xは1~4の整数であり;
yは、0~2の整数である)
を有するヒドロニウムイオンの溶媒和構造として存在する。
【0108】
このような構造では、
【0109】
【数4】
【0110】
コアは、複数のHO分子によってプロトン化される。本明細書中に開示される組成物中に存在するヒドロニウム錯体は、Eigen錯体カチオン、Zundel錯体カチオンまたはこれら2つの混合物として存在することができると企図される。Eigen溶媒和構造は、H+構造の中心にヒドロニウムイオンを有することができ、ヒドロニウム錯体は、3つの隣接する水分子に強く結合している。Zundel溶媒和錯体は、プロトンが2つの水分子によって等しく共有されるH+錯体であり得る。これらの溶媒和錯体は、通常、Eigen溶媒和構造とZundel溶媒和構造との間の平衡状態で存在する。これまで、それぞれの溶媒和構造の錯体は、一般に、Zundel溶媒和構造に有利な平衡状態で存在していた。
【0111】
概説したようなプロセスによって生成された材料を含めることは、少なくとも部分的には、ヒドロニウムイオンがEigen錯体に有利な平衡状態で存在する安定な材料を生成できるという予想外の発見に基づく。本開示は、プロセスの流れにおいてEigen錯体の濃度の上昇が、あるクラスの新規の増強された酸素供与体オキソニウム材料を提供できるという予想外の発見にも基づいている。
【0112】
本明細書中に開示されるプロセスの流れは、ある特定の実施形態において、1.2対1~15対1というEigen溶媒和状態対Zundel溶媒和状態の比を有することができる。他の実施形態では、1.2対1~5対1の比である。
【0113】
本明細書中に開示される新規の増強された酸素供与体オキソニウム材料は、一般に、過剰なプロトンイオンで緩衝された熱力学的に安定な酸水溶液として説明され得る。ある特定の実施形態において、過剰なプロトンイオンは、遊離水素含有量によって測定されるとき、10%~50%過剰な水素イオンの量で存在し得る。
【0114】
ある特定の実施形態において、組成物は、以下の化学構造:
【0115】
【数5】
【0116】
(式中、xは3~11の奇数の整数であり;
yは、1から10の整数であり;
Zは、多原子イオンまたは単原子イオンである)
を有することができる。
【0117】
多原子イオンは、1つ以上のプロトンを供与する能力を有する酸に由来するイオンから得ることができる。関連する酸は、23℃において1.7以上のpK値を有し得るものであり得る。使用されるイオンは、+2以上の電荷を有するものであり得る。そのようなイオンの非限定的な例としては、硫酸イオン、炭酸イオン、リン酸イオン、シュウ酸イオン、クロム酸イオン、二クロム酸イオン、ピロリン酸イオンおよびそれらの混合物が挙げられる。ある特定の実施形態において、多原子イオンは、pK値が1.7以下である酸に由来するイオンを含む多原子イオン混合物を含む混合物から得ることができると企図される。
【0118】
ある特定の実施形態において、組成物は、以下:水素(1+)、トリアクア-μ3-オキソトリ硫酸(1:1);水素(1+)、トリアクア-μ3-オキソトリ炭酸(1:1)、水素(1+)、トリアクア-μ3-オキソトリリン酸、(1:1);水素(1+)、トリアクア-μ3-オキソトリシュウ酸(1:1);水素(1+)、トリアクア-μ3-オキソトリクロム酸(1:1)、水素(1+)、トリアクア-μ3-オキソトリジクロム酸(1:1)、水素(1+)、トリアクア-μ3-オキソトリピロリン酸(1:1)、および水と混合されたそれらの混合物のうちの少なくとも1つの化学量論的にバランスのとれた化学組成から構成される。
【0119】
所望の場合または必要に応じて、薬学的に許容され得る流体材料を噴霧し、エアロゾル化し、微粒子にすることにより、投与を容易にすることができる。流体材料の投与は、塗布、スプレー、すすぎ、浸漬などとして直接適用することによって達成することができる。エアロゾル化または噴霧された材料は、所望の場合または必要に応じて、吸入によって投与され得ることも企図される。
【0120】
薬学的に許容され得る流体を構成する様々な材料がエアロゾル化または噴霧される場合、薬学的に許容され得る流体材料は、吸入摂取に適したサイズを有する液滴に加工され得る。好適な液滴サイズの非限定的な例としては、0.1~20μm;0.1~18μm;0.1~17μm;0.1~16μm;0.1~15μm;0.1~14μm;0.1~13μm;0.1~12μm;0.1~12μm;0.1~11μm;0.1~10μm;0.1~9μm;0.1~8μm;0.1~7μm;0.1~6μm;0.1~5μm;0.1~4μm;0.1~3μm;0.1~2μm;0.1~1μm;0.1~0.5μm;0.5および20μm;0.5~18μm;0.5~17μm;0.5~16μm;0.5~15μm;0.5~14μm;0.5~13μm;0.5~12μm;0.5~12μm;0.5~11μm;0.5~10μm;0.5~9μm;0.5~8μm;0.5~7μm;0.5~6μm;0.5~5μm;0.5~4μm;0.5~3μm;0.5~2μm;0.5~1μm;1~20μm;1~18μm;1~17μm;1~16μm;1~15μm;1~14μm;1~13μm;1~12μm;1~11μm;1~10μm;1~9μm;1~8μm;1~7μm;1~6μm;1~5μm;1~4μm;1~3μm;1~2μm;2~20μm;2~18μm;2~17μm;2~16μm;2~15μm;2~14μm;2~13μm;2~12μm;2~11μm;2~10μm;2~9μm;2~8μm;2~7μm;2~6μm;2~5μm;2~4μm;2~3μmのサイズを有する液滴が挙げられる。
【0121】
所望の場合または必要に応じて、使用される酸化合物は、その酸化合物の薬力学および/または薬物動態に基づいて選択することができる。薬学的に許容され得る流体材料を構成する低pHの抗菌吸入剤のある特定の実施形態において、その望ましい薬力学および薬物動態に起因して希硫酸製剤を含むことができる。その硫酸材料は、酸化還元反応を受けて、粘膜に吸収されるプロトン(H+)を生成し、硫酸アニオンは、即時のクリアランスのために周囲組織に非特異的に生体内分布する。曝露が過剰でない限り、身体の電解質プールへのアニオン分布は、無視できると考えられている。いかなる理論にも拘束されるものではないが、硫酸の効果は、硫酸イオンの効果ではなく、H+イオン(H+の局所的な沈着、pH変化)の結果であると考えられている。硫酸自体は、身体全体に吸収または分布されるとは予想されない。酸は、急速に解離し、アニオンは、身体の電解質プールに入り、具体的な毒物学的役割を果たさない。(OECD SIDS Sulfuric Acid,2001,UNEP Publications,p102を参照のこと)。結果として、吸入された希硫酸エアロゾルの全身作用は、ほとんどまたは全く予想されず、唯一の効果は、呼吸器系の表面に局所的である。
【0122】
放出されたプロトンの局所効果は、肺上皮および内皮の粘膜内層を標的とするウイルスおよび他の病原体を不活性化することができる。治療濃度の希硫酸(約1.7のpH)は、インビトロ懸濁試験に基づいて、1分以内にヒトコロナウイルスの不活化および/または濃度低下における有効性を提供する。
【0123】
提案された曝露濃度では、得られたプロトンレベルは、高度に緩衝された組織微小環境がこの空間間pHの短期間の変化に強いことにおそらく起因して、ヒト細胞および肺血管系に対して毒性を示さなかった。これは、Good Laboratory Practice(GLP)ガイドライン内で行われた急性組織毒性および細胞傷害性研究によって示されている。
【0124】
本開示で企図される濃度の硫酸などの吸入された無機酸は、近位肺構造内で急速に解離し、硫酸イオンを血流中に取り込む。Dahlは、ラット、モルモットおよびイヌにおける35S放射標識硫酸の吸収を研究し、ラットおよびモルモット動物モデルが170~230秒の35S半減期を有する非常に類似したPK/PDパラメータを有することを明らかにした。イヌ研究における35S放射標識硫酸の半減期は、特定の呼吸器系投与部位に応じて有意に変化した。肺深部硫酸投与は、ラットおよびモルモットと同様の2~3分の半減期を示した。半減期は、気管支および副鼻腔(sinus cavities)内のより上部の領域への投与では有意に長かった(Dahl,Clearance of Sulfuric Acid-Introduced 35S from the Respiratory Tracks of Rats,Guinea Pigs and Dogs Following Inhalation or Instillation,Fundamental and Applied Toxicology 3:293-297(1983)を参照のこと)。
【0125】
治療用吸入剤は、末梢肺組織における抗ウイルス治療の可能性を示し、吸収までの半減期は約2~3分である。硫酸中和は、呼吸器系内で直接測定されなかったが、以前のインビトロ研究では、1分以内のウイルス、細菌および真菌の複製阻害が予測されている。
【0126】
薬学的に許容され得る流体を、それを必要とする患者の気道に投与するための、少なくとも1つのチャンバーを有する呼吸器送達デバイスに接続可能な少なくとも1つの容器を含む、呼吸器疾病の処置または予防において使用するためのキットも本明細書中に開示される。少なくとも1つのチャンバーは、少なくとも1用量の本明細書中に開示される薬学的に許容され得る流体を含む。薬学的に許容され得る流体は、液体キャリアおよび少なくとも1種の酸化合物を含み、薬学的に許容され得る流体は、3.0未満のpHを有し、薬学的に許容され得る流体を、それを必要とする患者の気道に投与するための容器を有する。
【0127】
キットは、薬学的に許容され得る流体を、それを必要とする患者の気道の少なくとも一部に投与するための手段も含み得る。薬学的に許容され得る流体を、それを必要とする患者の気道の少なくとも一部に投与するための好適な手段の非限定的な例としては、吸入器、定量吸入器、PARIネブライザーなどのネブライザーなどのデバイスが挙げられ得る。投与手段には、気化した状態、霧状にした状態または噴霧した状態で流体を送達する少なくとも1つの機構が含まれ得る。「ネブライザー」は、この用語が本明細書で使用されるとき、酸素、圧縮空気、超音波出力などを使用して肺に吸入して溶液を小さなエアロゾル液滴に分割することができる形態で薬剤を投与するために使用される薬物送達デバイスである。本明細書中に開示される薬学的に許容され得る流体を分注するために使用され得るネブライザーの非限定的な例は、ジェット式ネブライザー、ソフトミスト吸入器、超音波ネブライザーなどであり得る。PARIネブライザーは、商業的に入手可能なPARI Respiratory Equipment,Inc.,Midlothian VAである。
【0128】
キットは、材料を患者の口腔および/または鼻腔に導くための好適なマスクまたは口腔インサートも含み得る。
【0129】
また、少なくとも1つの内部チャンバーを有するリザーバと、そのリザーバと流体連通したディスペンサーとを備える呼吸器用吸入デバイスも開示される。容器は、少なくとも1つの内部チャンバーに収容された本明細書中に開示される薬学的に許容され得る流体を含む。
【0130】
呼吸器用吸入デバイスは、リザーバと流体連通しているディスペンサーを備え、このディスペンサーは、呼吸器疾病を有する患者の気道の少なくとも一部と吸入可能に接触するように、リザーバから、薬学的に許容され得る流体の測定された部分を、分注するように構成されている。0.5~5.0ミクロンの平均質量直径の液滴サイズで分注される薬学的に許容され得る流体。ある特定の実施形態において、ディスペンサーは、好適な管材料および出口部材を備え得る。出口部材は、ある特定の実施形態において、患者に着脱可能に取り付けることができるマスクまたは患者の口に着脱可能に挿入することができるパイプ状部材として構成され得る。他の送達部材としては、鼻カニューレなどが挙げられ得る。
【0131】
呼吸器疾病は、コロナウイルス、インフルエンザウイルス、パラインフルエンザウイルス、呼吸器合胞体ウイルス、ライノウイルスのうちの1つなどのウイルス性病原体などの、ウイルス性病原体、細菌性病原体、真菌性病原体のうちの少なくとも1つであり得る。ある特定の実施形態において、ウイルス性病原体は、SARS-CoV、SARS-CoV-2、MERS-CoVおよびそれらの混合物からなる群より選択されるベータコロナウイルスであり得る。
【0132】
本開示をさらに説明するために、以下の実施例を提示する。実施例は、例示目的のためであり、本開示を限定するものとみなされるべきではない。
【0133】
実施例1
抗菌吸入治療薬において使用するための様々な構成要素の安全性評価
本開示に係る薬学的に許容され得る流体から構成される呼吸器用吸入抗菌剤を、薬学的に許容され得るグレードの硫酸を水と混合して調製することにより、以下の実施例に示される様々な値のpHが提供された。
【0134】
1.目的:希硫酸および低濃度のカルシウムの薬学的に許容され得る流体製剤を使用した低pHの呼吸器用吸入抗菌剤を、動物および後にヒトにおける急性毒性研究を用いて安全性についてインビボで試験した。インビトロ細胞傷害性試験も行った。
【0135】
ヒトコロナウイルスに対して希硫酸を使用するインビトロ懸濁試験を用いることにより、1分後のインビトロ有効性を実証するために必要な最小濃度の決定を支援した。1分間の懸濁試験は、先に述べた薬物動態に基づいてインビボ有効性をシミュレートする最も代表的なインビトロ試験であるとみなされている。有効濃度および潜在的な患者リスクを最小限に抑えながら、患者の回復を考慮して1logまたは90%の有効性目標を選択した。本開示に記載される投与の企図される1つの方法では、当該材料は、ネブライザーによる吸入によって、それを必要とする患者に投与される。ネブライザー投与などの吸入方法を用いる患者は、本明細書中に開示される薬学的に許容され得る流体を含む治療用材料を、連続的に、または潜在的には複数日間にわたって潜在的には1日に複数回、一連の不連続な投与間隔において、特定の濃度で数分間連続的に、吸入することが企図される。結果として、インビトロでの病原体負荷の減少が、インビボで一層大きくなることにより、処置期間にわたってより高い有効性が達成され得る。したがって、本明細書で論じられる試験において実証されたような1log未満のインビトロ有効性は、本明細書中で概説されるように投与されたとき、許容され得る有効性をインビボにおいて提供し得ると考えられる。
【0136】
pH1.61の硫酸は、1分で0.75log(82.11%)のインビトロ懸濁有効性を示すことが示された。ウイルス量を減少させ、COVID-19からの患者の回復を助けるために、わずかに弱く、より保存的な、pH1.72の(0.12%)硫酸製剤を選択した。
【0137】
2.インビボ急性毒性:GLP(Good Laboratory Practices)報告の急性毒性研究を、本開示に従って調製された吸入治療薬よりも50倍濃厚な硫酸溶液の製剤を用いて行った。これらの研究には、急性吸入毒性、急性経口毒性、急性経皮毒性、皮膚感受性、眼感受性および局所リンパ節アッセイ(LLNA)が含まれた。
【0138】
6つすべての急性毒性研究は、50×濃度のバージョンの治療用吸入製剤では毒性をほとんどまたは全く示さなかった。これは呼吸器用吸入剤であるため、急性吸入毒性研究は特に重要である。5匹の雄ラットおよび5匹の雌ラットを用いたこの研究では、投与後に不規則な呼吸が示されたが、10匹のラットはすべて回復した。結果を表1に要約する。
【0139】
【表1】
【0140】
5.2%硫酸を含む50X濃度の製剤は、急性吸入毒性を示さず、0.12%というより希釈された濃度は、ヒトコロナウイルスに対してインビトロ有効性を示したことから、このような材料は、SARS-CoV-2などのベータコロナウイルスを含むがこれに限定されないヒトコロナウイルスによって引き起こされる呼吸器感染症に対して有効性を示し得ることが示され、潜在的な呼吸器用吸入抗菌剤としての使用についてさらなる研究およびヒト初回臨床試験が促された。
【0141】
3.インビトロ細胞傷害性:4つの異なる濃度を使用したL929マウス細胞株に対するGLP細胞傷害性アッセイを、ISO10993-5に従って実施した。結果を表2に要約する。治療濃度の250%の濃度を含む4つの濃度はすべて、生物学的反応性の徴候を示さなかった。グレード0-検体の周囲または下に検出可能な区画はなかった。
【0142】
【表2】
【0143】
実施例2~17
様々な酸化合物および組み合わせの抗菌効力を評価するために、本開示の範囲内の種々の潜在的な薬学的に許容され得る流体製剤を評価して、一般的なウイルス性病原体、細菌性病原体および真菌性病原体に対する抗菌効力を測定した。これらの研究はすべて、ISO17025認定およびGLP準拠の研究室によって実施された。これらのインビトロ試験は、抗菌効力についてのASTM(American Society of Testing and Materials)の標準懸濁試験に従った。試験はすべて、前述の薬物動態に基づいて1分間の接触時間で行った。
【0144】
抗生物質耐性微生物に対する様々な提案された抗菌吸入治療薬の有効性
目的:抗生物質耐性のStaphylococcus aureusおよびPseudomonas aeruginosa細菌に対して第1セットのインビトロ有効性試験を行った。これらの2つの抗生物質耐性細菌株は、2つの広範な細菌のクラスを代表するので、これらの病原体を最初に選択した。S.aureusはグラム陽性であり、P.aeruginosaはグラム陰性である。各病原体の抗生物質耐性株は、治療法の選択肢が限られている最も致死的な呼吸器細菌株の一部と考えられている。
【0145】
結果:これらの試験の結果を表3に示す。
【0146】
【表3】
【0147】
受け取り時のpH測定値は、試験研究室が受け取った試験材料のものだった。ASTM抗菌試験手順は、9部の試験材料を、病原体を含む1部の培地と混合する。適用時のpHは、混合後のpHであり、これは病原体によって見られるものである。これらの試験のための1分間という試験期間の後、試験材料を中和し、病原体を計数し、コントロールと比較する。
【0148】
結論:1.9または3.1といういずれのpHにおいても、上記製剤は、これらの評価に採用された1log減少という目標と比べて、S.aureusに対して顕著な効果を示さなかった。pH1.9の製剤はすべて、抗生物質耐性P.aeruginosaに対して有効だったが、pH3.1の製剤はいずれも、定義された目標レベルの有効性を示さなかった。
【0149】
本明細書中に開示される組成物とともに製剤化されたときの既知のAPIの抗菌効果を調べるために、試験組成物のサンプルを、確立された呼吸器用APIであるアルブテロールとともに、標準的な治療濃度の0.0063Mアルブテロールにて製剤化した。結果を表3に要約する。結果は、確立されたAPIが組成物の抗菌効力に有意に影響しないことを示した。
【0150】
実施例18
抗生物質耐性微生物に対する再製剤化されたアルブテロール吸入治療薬の有効性
目的:この比較実施例では、新しい抗菌特性を提供するために、世界で最も一般的な呼吸器用吸入剤の1つである硫酸アルブテロールを再製剤化する可能性を論じる。アルブテロールは、通常、活性なアルブテロール成分の安定性および貯蔵寿命を高めるために、付加物として硫酸とともに製剤化されている。硫酸アルブテロールは、呼吸刺激剤に対してより高い感受性を有する患者集団である喘息患者による定期的な使用を含め、悪影響なしに数十年間にわたって使用されてきた。アルブテロールのpHは、通常、3.5である。
【0151】
この組成物は、試験されたpH3.1の、硫酸+アルブテロール製剤から構成されたものであり、このpH範囲の下端において、市販の硫酸アルブテロール製剤とこの十分に確立された治療薬とを厳密に一致させる。
【0152】
結果:投与された入手可能な硫酸アルブテロールは、抗菌特性を有すると認識されていない。硫酸アルブテロール試験を行ったところ、治療的に承認された3.1という最低pHの硫酸アルブテロールは、1分後の病原体数の1log減少によって判定されるとき、S.aureusまたはP.aeruginosa細菌に対して有効性を示さなかったことが確認された。
【0153】
これらの試験はまた、硫酸アルブテロール治療薬中の硫酸の濃度を上昇させることによって、実施例16および17に概説されているPseudomonas aeruginosaの抗生物質耐性株に対して新しい抗菌効力が達成されることも実証している。
【0154】
結論:多剤耐性Pseudomonas aeruginosaは、特に嚢胞性線維症および慢性閉塞性肺疾患などの慢性呼吸器疾患を有する患者において、呼吸器細菌感染症の中でもより高い死亡率を示すものの1つである。これらの試験は、広く使用されている硫酸アルブテロール治療薬が、追加の硫酸で再製剤化されたとき、この病原体に対する潜在的な治療薬として機能することができ、既存の慢性呼吸器疾患を有する集団に特に有用であり得ることを実証している。
【0155】
実施例19~46
Streptococcus pneumoniaeに対する様々な酸性抗菌吸入治療薬の有効性
目的:Streptococcus pneumoniaeは、細菌性肺炎、髄膜炎および敗血症の主な原因であり、2015年には世界中でおよそ335,000(240,000~460,000)人の5歳未満の小児を死亡させたと推定されている。S.pneumoniaeの有病率および死亡率に起因して、この一般的な病原体に対して広範囲の酸製剤を試験して、どの変数が有効性に影響を及ぼし得るかを明らかにした。実施された試験の目的は、様々な酸製剤を使用してS.pneumoniaeに対して1分で1log(90%)の有効性を達成するために必要なpHを決定することだった。
【0156】
結果:これらの試験結果を表4および表5に示す。
【0157】
【表4】
【0158】
【表5】
【0159】
結論:気管支拡張薬、ステロイドおよび非ステロイド性抗炎症薬などの呼吸器用APIを添加しても、有効性は有意に変化しなかった。これは、これらの病原体に特に感受性であり得る患者集団に新しい抗菌特性を提供するこれらの確立されたAPIの新しい製剤が調製され得ることを示唆している。
【0160】
いくつかの無機酸を試験して、1logという有効性の目標を満たす有効pHを明らかにした。硫酸の場合、1.91というpH値(実施例24)が、この目標を満たすことが分かった。同様に、臭化水素酸の場合、1.90というpH値(実施例36);塩酸の場合、およそ1.87というpHの値(実施例35)およびポリリン酸の場合、およそ1.85というpH値(実施例41)が、この目標を達成した。
【0161】
ベンゼンスルホン酸、トリクロロ酢酸、ヒドロキシ酢酸、モノクロロ酢酸およびトリフルオロ酢酸を含むより強い有機酸は、1.9というpHの範囲内の無機酸よりも高い有効性を示す(実施例39および実施例42~44)。
【0162】
より弱い有機酸は、単独で使用するとき、一般に、有効性に必要な2.0未満のpHという必要なpH範囲に達することができない。しかしながら、これらのより弱い有機酸を無機酸と混合して、2.0未満の所望のpH範囲を満たすことができ、弱有機酸と弱無機酸とのこれらの混合酸溶液は、同じpHレベルで無機酸単独よりも優れた有効性を示すことができる。
【0163】
アミノ酸は、薬学的に許容され得る弱有機酸であり、より強い無機酸とともに製剤化されることにより、改善された有効性を提供することができる。より酸性のアミノ酸のうちの2つは、アスパラギン酸およびグルタミン酸である。pH1.98のアスパラギン酸またはグルタミン酸と塩酸との製剤は、0.62~0.66logの有効性を示すが、同じpHレベルの塩酸は、ほとんど有効性を示さない(実施例45、42および31)。硫酸、塩酸および臭化水素酸などの無機酸にアスパラギン酸またはグルタミン酸を添加すると、より高いpHの製剤において少ない悪影響でより良好な有効性がもたらされ得る。
【0164】
比較実施例1-酢酸
酢酸吸入は、非重症COVID-19に対する潜在的な補助的療法として提案されている(L.Pianta,Acetic acid disinfection as a potential adjunctive therapy for non-severe COVID-19,European Archives of Oto-Rhino-Laryngology,May 2020を参照のこと)。酢酸を、酸性の抗菌吸入剤治療薬として使用できるかを判定するために、有効性および耐容性研究の結果を考察する。研究は、酢酸が、2.68というpHで4%濃度を使用したとき、1分以内に4logという有効性でSARS-CoV-2ウイルスに対する硬質表面上の消毒剤としての有効性を示したことを示している(J.Yoshimoto,Virucidal effect of acetic acid and vinegar on SARS-CoV-2を参照のこと)。
【0165】
Piantaの研究では、29人の患者が、ヒドロキシクロロキンによる補助療法として0.35%酢酸を吸入した。この吸入剤は、蒸気を発生している酸溶液の上に患者の顔を置き、頭とボウルを布で覆うことによって送達された。蒸気ミストエアロゾルのサイズおよび濃度は、制御されなかった。0.35%酢酸濃度は、およそ2.98のpHを有すると測定された。pH3.0以上で0.35%の酢酸濃度は、抗菌効果を有する可能性は低い。
【0166】
5人の男性および5人の女性の健常志願者を用いて、酢酸吸入耐容研究を行った。鼻の不快感、灼熱感、被刺激感または鼻水が、118分間の曝露によって10 ppm(0.001%)もの低いレベルで認められた。(L.Ernstgard,Acute effects of exposure to vapors of acetic acid human,Toxicology Letters 165(2006)22-30を参照のこと)。
【0167】
結論:消毒剤の有効性研究、治療薬吸入研究および吸入耐容研究はすべて、表6に要約されているように、異なるpH値を有する異なる濃度の酢酸を使用した。
【0168】
【表6】
【0169】
0.35%酢酸濃度は、およそ2.98のpHを有すると測定され、0.01%濃度は、3.77のpHを有すると測定された。
【0170】
pH2.68を有する高濃度の酢酸は、SARS-CoV-2ウイルスを不活化するのに有効な消毒剤であり得る。pH3.77の非常に低濃度において、酢酸は、患者の被刺激性の問題を示す。抗菌治療薬の研究において使用された2.98というpHの濃度の酢酸では、抗菌の利点がある可能性は低い。さらに、この濃度の酢酸が、有意なミスト密度(重量濃度)で一貫して適用される場合、患者の被刺激性を引き起こすと予想される。
【0171】
有効な酸性抗菌製剤となるために、材料は、治療濃度で患者の耐容性の問題を引き起こさないものでなければならない。酢酸は、患者の耐容性基準を満たさない。
【0172】
多くの要因が、患者の耐容能に影響を及ぼし得るが、患者の耐容能プロファイルが不良な様々な薬学的に許容され得る酸(例えば、酢酸のような有機酸)を、より許容され得るプロファイルを有する1種以上の酸またはアジュバントと組み合わせて使用してもよく、または投与される患者にとってより耐容される薬学的に許容され得る流体または組成物を提供するように使用してもよいと考えられる。
【0173】
実施例47~58
一般的な細菌性および真菌性呼吸器病原体に対する有効性
目的:この研究の目的は、硫酸が一連の一般的なグラム陰性菌で真菌性の呼吸器病原体に対してどの程度有効であるかを測定することだった。硫酸は、P.aeruginosaおよびS.pneumoniaeグラム陰性菌に対して有効性を示したが、他の呼吸器病原体に対してどの程度有効であり得るか、および1分で1logの有効性を達成するためにどのような濃度(pH)が必要であるかを理解することが望ましい。多種多様な呼吸器病原体を代表する他の3つの細菌および3つの真菌を選択した。
【0174】
結果:結果を表7に要約する。
【0175】
【表7】
【0176】
結論:pH1.99の硫酸は、Klebsiella pneumoniaeとHaemophilus influenzaの両方に対して非常に効果的であることに留意されたい。以前の研究において、pH1.9の硫酸が、S.pneumoniaeおよび抗生物質耐性P.aeruginosaに有効であることが実証された。これらの4種の細菌は、最も一般的なグラム陰性菌呼吸器病原体であるとみなされることがある。これは、pH1.9以下の硫酸の製剤が、抗生物質感受性と抗生物質耐性との両方の、すべてのグラム陰性呼吸器細菌に対して有効であるという結論を裏付けている。
【0177】
上記で概説した硫酸製剤は、Mycobacterium tuberculosisの代用として使用されるMycobacterium terraeに対して限定的な有効性(0.12log/25%)を示す。
【0178】
pH1.9の硫酸製剤は、Aspergillus fumigatusおよびRhizopus microsporesに対して有効だったことから、いくつかの形態の真菌に対する有効性が実証された。また、R.microsporusは、胞子を産生する真菌であり、これらの結果は、真菌胞子ならびに活性な形態の真菌を死滅させることにおける有効性の結論を支持するとみられることにも留意されたい。
【0179】
実施例59
Mycobacterium terraeに対する硫酸とアスパラギン酸との組み合わせ吸入治療薬の有効性
目的:Mycobacterium terraeは、世界で最も致命的な病原体の1つであるMycobacterium Tuberculosisの代用として認識されている。2015年にM.tuberculosisは、140万人を死亡させ、世界で最も大きな、単一感染病原体の死因となっている(COVID-19以前)。毎年1000万を超える新たな結核症例が診断され、多剤耐性感染を有する割合が増加している(Forum of International Respiratory Societies.The Global Impact of Respiratory Disease-Second Edition.Sheffield,European Respiratory Society,2017を参照のこと)。
【0180】
結果:pH1.99の硫酸製剤は、M.terraeに対して中程度の有効性(0.12log 24.56%)を示した。中程度のインビトロ有効性でさえ、この製剤は、連続投与による、複雑化する有効性に起因して治療効果を有し得る。これは、結核患者、特に抗生物質耐性株に罹患している患者にとって有益であり得る。
【0181】
アスパラギン酸を添加したまたは添加していないpH1.6のより高濃度の硫酸製剤は、M.terraeに対して1分間で1logの有効性を示す。
【0182】
結論:酸性抗菌吸入治療薬は、結核の世界的な問題に対する有望な新しい治療アプローチである。アスパラギン酸を含むまたは含まないpH1.6の硫酸製剤は、有望であるとみられ、単独でまたは確立された抗生物質を用いた補助治療薬として使用され得る。硫酸製剤は、M.tuberculosisの抗生物質感受性株および抗生物質耐性株に対して等しく有効であると見込まれる。
【0183】
いくつかの結核特許において有意な副作用を有することが知られている抗生物質治療薬とは異なり、本明細書中に開示される酸性抗菌吸入剤治療薬は、副作用が最小限であり得るか、または副作用がないことがあり、大きな患者集団に投与するのが容易であり得る。
【0184】
実施例60~67
ヒトコロナウイルスに対する無機酸抗菌吸入剤治療薬の有効性
目的:COVID-19は、SARS-CoV-2コロナウイルスによって引き起こされる世界的なパンデミックである。これらの研究の目的は、ヒトコロナウイルスに対するいくつかの無機酸の有効性を明らかにし、1分で1logの有効性を達成するのに必要なpHを確認することだった。
【0185】
SARS-CoV-2は、ベータコロナウイルスである。アルファコロナウイルスは、試験実験室で利用可能な最も近いウイルスであったので、これらの研究において用いた。アルファコロナウイルスは、この調査の目的のためにSARS-CoV-2に対する有効性の代表であると考えられる。
【0186】
結果:これらの研究の研究結果を表8に示す。
【0187】
【表8】
【0188】
使用したウイルス培地は、細菌培地で実証されたものよりも受け取り時と適用時との間でpHを上昇させるのにより大きな効果を有するEMEM(イーグル最小必須培地)である。pHのより大きな上昇に起因して、いずれの酸も1log有効性の目標を達成しなかった。
【0189】
上記EMEMは、有意な緩衝能を有する生MRC-5細胞を含む。ヒトコロナウイルスに対して有効性試験を繰り返すために使用されたより低いpHの硫酸製剤は、1logの有効性を示す。
【0190】
結論:より低い受け取り時のpHを用いたさらなるウイルス試験が必要であることが明らかになった。
【0191】
実施例68~79
選択された呼吸器系ウイルスに対する硫酸抗菌吸入剤治療薬の有効性
目的:硫酸の抗菌吸入剤濃度を、ヒトコロナウイルス、アルファインフルエンザウイルスおよびライノウイルスに対する有効性について試験して、これらの材料が治療用吸入剤としてどの程度有効であり得るかを明らかにした。
【0192】
結果:これらの研究の結果を表9に示す。
【0193】
【表9】
【0194】
結論:pH1.62の硫酸製剤は、1分で0.75logまたは82.11%の有効性を示したことから、ヒトコロナウイルス病原体に対して1logの有効性目標をほぼ満たし、SARS-CoV-2コロナウイルスについて同様の有効性が予測される。ネブライザー処置の連続吸入に起因して先に述べたように、処置期間にわたる治療効果は、インビトロ有効性の結果から複雑になる。
【0195】
患者のリスクをさらに低下させるために、ファースト・イン・ヒューマン臨床試験に向けて、より低いpH1.72の硫酸製剤を選択した。
【0196】
1.60硫酸製剤は、アルファインフルエンザウイルスに対して4log超の有効性を示した。インフルエンザAは、季節性インフルエンザの原因であり、このウイルスに対する有効性は、この深刻な病原体に対する有効性を示し得る。
【0197】
pH1.66および1.90の硫酸製剤は、ライノウイルスに対して2log超の有効性を示した。ライノウイルスは、ヒトにおいて最も一般的なウイルス感染病原体であり、感冒の主な原因である。このウイルスに対する有効性は、この一般的な病原体に対する有効性を示し得る。
【0198】
コロナウイルス、インフルエンザウイルスおよびライノウイルスはすべて、被包型呼吸器系ウイルスである。これらの試験は、pH1.6以下の硫酸製剤を使用して試験された一般的な被包型呼吸器ウイルスのすべてに対する有効性を実証する。これらの結果に基づくと、この製剤は、吸入環境におけるすべての被包型呼吸器系ウイルスに対して有効であり得ると想定され得る。
【0199】
実施例74
本明細書中に開示される段落0069~0108に概説されたプロセスに従って調製された生成物を含む薬学的に許容され得る流体組成物の有効性を試験するために、98%の質量分率のHSO、7を超える平均モル濃度(M)および66°ボーメの比重を有する50mlの濃硫酸液体を非反応性容器に入れ、その液体に1HPの力学的エネルギーを付与するためにマグネチックスターラーによって撹拌しながらそれらの各々を25℃に維持することによって、材料を生成、調製する。
【0200】
撹拌を開始したら、計量した量の水酸化カルシウムを、撹拌中の酸材料の各部分の上面に添加する。使用される水酸化カルシウム材料は、5M水酸化カルシウムの20%水溶液であり、5時間にわたって毎分2mlの速度で導入される5つの計量体積で導入され、24時間の共鳴時間がもたらされる。各計量体積の導入間隔は、30分である。
【0201】
濁度は、硫酸に水酸化カルシウムの添加によってもたらされ、硫酸カルシウム固体の形成を示す。固体をプロセス中に定期的に沈殿させ、沈殿物を反応中の溶液との接触から除去する。
【0202】
24時間の共鳴時間が完了したら、得られた生成物を2400ガウスの非双極磁場に曝露することにより、観察可能な沈殿物および懸濁固体を2時間にわたって生成させる。得られた材料を遠心分離し、強制濾過して沈殿物および懸濁固体を単離する。
【0203】
サンプルを、将来使用するために収集する。試験サンプルをFTIRスペクトル分析に供し、水素の電量分析で滴定する。サンプル材料は、200~150Mの強度および187~178Mの強度の範囲のモル濃度を有する。材料は、1.15を超える重量分析範囲を有する。場合によっては1.9を超える範囲を有する。組成物は、安定であり、総モル数の8~9%の電荷平衡のとれていない酸プロトンを含む1.87~1.78モル濃度の材料を有する。FTIR分析は、その材料が水素(1+)、トリアクア-μ3-オキソトリ硫酸(1:1)という式を有することを示す。
【0204】
それぞれのサンプルを希釈して水において5体積%の生成物を生成すると、少なくとも12~18ヶ月間貯蔵安定性であることが見出される。過剰な水素イオン濃度は、15%超と測定され、材料のpHは、1であると決定される。
【0205】
5体積%の材料を、脱イオン蒸留水で、1部の材料に対して4部の水という比で希釈し、滴注器を備えた2oz/60mlガラス瓶の中にひとまとめにする。
【0206】
各4mlの材料サンプルのアリコートを、10分の投与間隔にわたって適切なネブライザーマスクを介した吸入によってそれぞれの被験体に投与することができる2.5μmの粒子径を生成するように設定されたそれぞれのPARIネブライザーに導入する。材料を投与された被験体の一部は、鼻詰まり、または急性であるが起源が不確定な肺の鬱血を自己報告する。
【0207】
すべての被験体が、上記材料の吸入に耐容性を示す。追加の材料を、鼻詰まりまたは肺の鬱血を報告している個体に、72時間にわたって10分間隔で投与し、24時間毎に最大4回の投与を行う。およそ3分の2の個体が、最初の24時間の後に鬱血の顕著な軽減を報告し、72時間後に数人の個体で鬱血症状が解消される。
【0208】
実施例75
PCR試験によって確認された、包括的急性呼吸窮迫(including acute respiratory distress)症候群(ARDS)に至るまでの様々な呼吸器症状を呈している、COVID19の確定例の100人の各個体に、ネブライザーを介して7日間、3~4時間毎に2mlの用量を1日4回(それぞれ10分間の処置)投与する。本明細書中に開示される材料の有効性を評価するために、被験体を、実施例76の組成物を投与される群A(67人の個体)に無作為化し、条件および年齢が一致する33人の被験体には、生理食塩水のプラセボを投与する。COVID19の確認後直ちに処置を開始し、処置後14日間;処置完了後3週目および4週目ならびに処置後3ヶ月目にフォローアップ来院を行う。
【0209】
実施例74の組成物で処置された個体を7日目に評価すると、個体の少なくとも50%が、呼吸器症状を示さず、COVID-19陰性である。14日目に、これらの個体は、標準的なPCR試験に基づいてCOVID-19検査で陰性となる。
【0210】
実施例76
本明細書中に開示される実施例74で論じられた液体材料の第2の実施形態は、98%の質量分率HSO、7を超える平均モル濃度(M)、および66°ボーメの比重を有する50 ml単位の濃硫酸液体を非反応性容器に導入し、各液体単位に1HPの力学的エネルギーを付与するためにマグネチックスターラーによる撹拌によってそれぞれを25℃に維持することによって調製される。
【0211】
撹拌を開始したら、測定した量の水酸化カルシウムを、撹拌中の酸材料の各液体単位の上面に添加する。使用される水酸化ナトリウム材料は、5M水酸化カルシウムの20%水溶液であり、5時間にわたって毎分2mlの速度で導入される5つの計量体積で導入され、24時間の共鳴時間がもたらされる。各計量体積の導入間隔は、30分である。
【0212】
濁度は、硫酸に水酸化カルシウムの添加によってもたらされ、硫酸カルシウム固体の形成を示す。各単位中の固体をプロセス中に定期的に沈殿させ、沈殿物を反応中の溶液との接触から除去する。
【0213】
24時間の共鳴時間が完了したら、得られた材料を遠心分離し、強制濾過して沈殿物および懸濁固体を液体材料から単離し、それぞれの得られた材料単位をさらなる使用および分析のために収集する。
【0214】
概説されたこの方法に従って生成された5mlの材料を、標準温度および標準圧力で5mlの脱イオン蒸留水に混合する。過剰な水素イオン濃度は、15体積%を超えると測定され、材料のpHは、1であると決定される。
【0215】
この方法によって調製された材料をさらに評価するために、材料のサンプルを脱イオン水で希釈して、水の中にそれぞれの材料を1体積%含む材料をもたらす。これらのサンプルを、希硫酸溶液、硫酸カルシウムを添加することにより300ppmがもたらされる希硫酸溶液、および400ppmの硫酸カルシウムを含む希硫酸成分、ならびに逆浸透水コントロールに対して評価する。
【0216】
すべてのサンプルを分析のために硝酸マトリックスで希釈する。EPA法200.7に従って、カルシウムおよび硫黄の含有量についてThermo iCAP 6300 Duo ICP-OESを使用して試験を完了する。
【0217】
各試験材料を、最初に5%硝酸マトリックス中で単純希釈することによって調製する。較正標準を、サンプルと一致するように同じ酸マトリックス中に調製する。しかしながら、この調製は、高いカルシウム回収率をもたらし、これは、サンプル中に存在するが較正標準には存在しない硫酸の結果であると考えられる。サンプルと一致させるために較正標準を少量の硫酸で再調製し、100%に近いより良好なQC回収率を提供するために分析を繰り返す。
【0218】
伝導率を試験するために、各サンプルを分析に向けて脱イオン水で希釈する。EPA法120.1に従って、導電性プローブを備えたMettler Toledo Seven Excellence Meterを使用して試験を完了する。予測される伝導率の結果を表11に示す。
【0219】
【表11】
【0220】
凝固点を評価するために、USP<891>に従ってRCS-90冷却システムが備え付けられたTA Instruments Q100 DSCを用いてサンプルを分析する。予測結果を表12に示す。
【0221】
【表12】
【0222】
サンプルの密度および比重を、EPA法830.7300に従ってAnton Paarデジタル密度計を用いて20℃において測定する。予測結果を表13に示す。
【0223】
【表13】
【0224】
また、水素イオン含有量についてサンプルを滴定し、ASTM D1067-試験法Aに従ってpH8.6まで酸性度を測定する。この試験は、pHプローブが備え付けられたMetrohm 826 Titrandoを用いて完了した。予測結果を表14に示す。
【0225】
【表14】
【0226】
溶液を、直接注入(カラムなし)、およびエレクトロスプレーイオン化をポジティブモードおよびネガティブモードで使用して、Agilent 1290/G6530 Q-TOF LC-MSで分析した。ポジティブおよびネガティブのイオン化モードで収集された代表的な質量スペクトルを図1および2に示す。400ppmのCaSOを含む希硫酸(A)、希硫酸(B)、実施例76(C)および逆浸透水(D)である。
【0227】
生成されたそれぞれのサンプルを希釈して、5体積%の生成物水溶液を生成すると、少なくとも12~18ヶ月間、貯蔵安定性であることが分かる。過剰な水素イオン濃度は、15%超と測定され、材料のpHは、1であると決定される。
【0228】
実施例77
5体積%材料を、脱イオン蒸留水で、1部の材料に対して4部の水という比で希釈し、滴注器を備えた2oz/60mlガラス瓶の中にひとまとめにする。
【0229】
実施例76に概説された材料の各4 mlのアリコートを、PARIネブライザーに導入することにより、適切なネブライザーマスクを介した吸入によってそれぞれの被験体に投与することができる2.9μmの粒子径が生成される。
【0230】
実施例78
PCR試験によって確認された、包括的急性呼吸窮迫に至るまでの様々な呼吸器症状を呈している、COVID19の確定例の100人の個体に、ネブライザーを介して7日間、3~4時間毎に2mlの用量を1日4回(それぞれ10分間の処置)投与する。本明細書中に開示される材料の有効性を評価するために、被験体を、実施例79の組成物を投与される群A(67人の個体)に無作為化し、一方、条件および年齢が一致する33人の被験体には、生理食塩水のプラセボを投与する。処置は、COVID19の確認後直ちに開始する。処置後14日間;処置完了後3週目および4週目ならびに処置後3ヶ月目に、フォローアップ来院を行う。
【0231】
実施例79の組成物で処置された個体を7日目に評価すると、それらの個体の少なくとも50%が、呼吸器症状を示さない。14日目に、これらの個体は、標準的なPCR試験に基づいてCOVID-19検査で陰性となる。
【0232】
実施例79
COVID-19を呈している個体に対する簡易化された治療プロセスおよび吸入療法の準備
1.治療用包装材料:薬学的に許容され得るグレードの硫酸単独、塩酸単独、または硫酸と塩酸との50-50の混合物の様々な5体積%溶液をそれぞれ調製し、1部の材料に対して4部の水という比にて脱イオン水で希釈し、滴注器を備えた2oz/60mlガラス瓶の中にひとまとめにする。
【0233】
2.治療のための投与:上記のひとまとめにした治療用材料の4mlのアリコートを、PARIネブライザーに導入することにより、適切なネブライザーマスクを介した吸入によってそれぞれの被験体に投与することができる2.9μmという平均質量空気力学的直径(MMAD)の粒子径が生成される。この4mL用量は、エアロゾル化された硫酸を約10分間生成すると見込まれ、これが1処置である。
【0234】
3.ヒト臨床試験:PCR試験によって確認された、包括的急性呼吸窮迫に至るまでの様々な呼吸器症状を呈している、COVID19の確定例の20人の個体に、ネブライザーを介して7日間、3~4時間毎に4mlの用量を1日4回(それぞれ10分間の処置)投与し、処置開始後の14日間、毎日観察し、次いで3週間後、4週間後および3ヶ月後に追跡調査観察を行う。これらの投与は耐容性がよく、ほとんどの患者において24時間後に身体症状が軽減し、患者の一部は、72時間後にCOVID検査で陰性となる。
【0235】
各組成物について、PCR試験によって確認された、包括的急性呼吸窮迫に至るまでの様々な呼吸器症状を呈している、COVID19の確定例の追加の100人の個体に、ネブライザーを介して7日間、3~4時間毎に4mlの用量を1日4回(それぞれ10分間の処置)投与する。本明細書中に開示される材料の有効性を評価するために、被験体を、治療用組成物を投与される群A(67人の個体)に無作為化し、条件および年齢が一致する33人の被験体には、生理食塩水のプラセボを投与する。COVID19の確認後直ちに処置を開始し、処置後14日間;処置完了後3週目および4週目ならびに治療後3ヶ月目にフォローアップ来院を行う。
【0236】
治療用組成物の1つを投与されたある特定の個体は、血中酸素化レベルによって測定される1回目もしくは2回目の投与後に始まる症状の軽減および/または胸部鬱血の軽減を経験する。この結果は、コントロール群には反映されない。治療用組成物の1つを投与されたかなりの数の個体が、PCRによって測定されるとき、処置の3~7日後にCOVID-19検査で陰性となる。
【0237】
最も実用的かつ好ましい実施形態であると現在考えられているものに関連して本発明を説明してきたが、本発明は、開示された実施形態に限定されるものではなく、それどころか、添付の特許請求の範囲の趣旨および範囲内に含まれる様々な修正および等価な構成を網羅すると意図されており、その範囲は、法律の下で許容されるようなすべてのそのような修正および等価な構成を包含するように最も広い解釈が与えられるべきであることを理解されたい。
図1
図2
【国際調査報告】