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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-15
(54)【発明の名称】原子力発電プラントシステム
(51)【国際特許分類】
   G21C 19/02 20060101AFI20231208BHJP
   G21C 13/02 20060101ALI20231208BHJP
【FI】
G21C19/02 080
G21C13/02 100
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023534021
(86)(22)【出願日】2021-11-12
(85)【翻訳文提出日】2023-07-27
(86)【国際出願番号】 EP2021081548
(87)【国際公開番号】W WO2022117318
(87)【国際公開日】2022-06-09
(31)【優先権主張番号】2019068.2
(32)【優先日】2020-12-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522223039
【氏名又は名称】ロールス-ロイス・エスエムアール・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ダニエル・ロバートソン
(72)【発明者】
【氏名】ユアン・シャープ
(72)【発明者】
【氏名】ジェラルド・ハリデー
(72)【発明者】
【氏名】スティーブン・カルヴァート
(72)【発明者】
【氏名】マシュー・モーリス
(57)【要約】
本発明は、原子炉容器の閉鎖スタッドを張力付与/張力解除する方法に関する。閉鎖スタッドは、原子炉容器の一体型ヘッドパッケージ(IHP)を原子炉容器の本体に取り付けるために、原子炉容器の周囲に間隔を置いて配置されている。この方法は、第1のスタッド引張り装置をトロリー上に支持するステップと、格納位置から原子炉容器に隣接する展開位置まで、移動表面を横切ってトロリーを移動させるステップと、第1のスタッド引張り装置を、1つ又は複数の閉鎖スタッドに係合させるステップと、第1のスタッド引張り装置を作動させて、1つ又は複数の閉鎖スタッドを張力付与/張力解除するステップと、を含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
原子力発電プラントにおいて1つ以上のスタッド引張り装置を輸送するためのトロリーであって、
スタッド引張り装置を支持する支持フレームと
前記フレームに回転可能に取り付けられた複数のホイールと
前記フレームに対して移動可能であるように前記フレームに取り付けられたハンドリング装置であって、前記支持フレームに対してスタッド引張り装置を係合させて移動させるように構成されたハンドリング装置と、
を備えたトロリー。
【請求項2】
前記支持フレームは細長いガントリを備えており、前記ハンドリング装置は、前記ガントリの長手方向軸線に沿って移動可能に前記ガントリに取り付けられた、請求項1に記載のトロリー。
【請求項3】
前記ガントリは、略水平方向に延在している、請求項2に記載のトロリー。
【請求項4】
前記支持フレームは、前記スタッド引張り装置を支持するためのベースを備え、前記ガントリは、前記ベースの上方に離間して配置されている、請求項2または3に記載のトロリー。
【請求項5】
前記ホイールが前記ベースに回転可能に取り付けられている、請求項4に記載のトロリー。
【請求項6】
前記ハンドリング装置はウィンチを備え、前記ウィンチは、前記スタッド引張り装置と係合し、前記スタッド引張り装置を略垂直な軸線に沿って移動させるための係合部材を備えている、請求項1から5のいずれか一項に記載のトロリー。
【請求項7】
前記支持フレームは、折り畳まれた構成と拡張された構成との間で移動可能であるように構成されている、請求項1~6のいずれか一項に記載のトロリー。
【請求項8】
原子力プラントシステムであって、
- 原子炉容器であって
原子炉の炉心を収容するための空洞と、前記空洞への開口部を閉鎖するためのIHPと、を画定している本体であって、前記ヘッドが、前記原子炉容器の周囲に間隔を置いて配置され、前記本体及び前記ヘッドのそれぞれの外向きに突出している円周方向フランジに形成された開口を通って延在している複数の閉鎖スタッドによって、前記本体に取り外し可能に取り付けられている、本体と、
スタッド引張り装置を受け入れるための取付構造であって、前記円周方向フランジの上方に間隔を置いて配置され、前記ヘッドの周りに円周方向に延在している取付構造と、
を備えた原子炉容器と、
- 格納位置から前記原子炉容器に隣接する展開位置まで移動可能な、請求項1~7のいずれか一項に記載のトロリーと、
- 前記閉鎖スタッドを張力付与/張力解除するように構成されたスタッド引張り装置であって、前記原子炉容器の前記取付構造に取り付けるための取付部を備えるスタッド引張り装置と、
- 原子炉格納容器を囲む格納構造であって、格納場所と前記原子炉容器との間に延在している1つ又は複数の軌道又はレールを備え、前記格納場所と前記原子炉容器との間で前記トロリーを移動させるために、前記トロリーの前記ホイールが前記1つ又は複数の軌道又はレールと係合している格納構造と、
を備えた原子力プラントシステム。
【請求項9】
前記格納構造は、前記原子炉容器を収容している一次エンクロージャと、前記格納場所を画定している二次エンクロージャと、を備え、前記一次エンクロージャ及び前記二次エンクロージャは、前記格納構造の分離壁によって分離されており、前記1つ又は複数の軌道又はレールは、前記分離壁の開口部を通って前記二次エンクロージャから前記原子炉容器まで延在している、請求項8に記載の原子力プラントシステム。
【請求項10】
原子炉容器の閉鎖スタッドを張力付与/張力解除する方法であって、前記閉鎖スタッドは、前記原子炉容器の一体型ヘッドパッケージ(IHP)を前記原子炉容器の本体に取り付けるために前記原子炉容器の周囲に間隔を置いて配置されており、前記方法は、
第1のスタッド引張り装置をトロリー上に支持するステップと、
離れた格納位置から前記原子炉容器に隣接する展開位置まで移動表面を横切って前記トロリーを移動させるステップと、
前記第1のスタッド引張り装置を1つ又は複数の前記閉鎖スタッドと係合させるステップと、
前記第1のスタッド引張り装置を作動させて、1つ又は複数の前記閉鎖スタッドを張力付与/張力解除するステップと、
を含む方法。
【請求項11】
前記トロリーの移動は、前記原子炉容器に対して略横方向に延在している経路に沿って行われる、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記経路は、前記移動表面によって画定される略水平な基準面に沿って延在しており、前記基準面は、前記原子炉本体の上部開口と略垂直に整列している、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記トロリーの移動は、1つまたは複数の軌道またはレールに沿って行われ、前記移動表面は、前記1つまたは複数の軌道またはレールの表面である、請求項10~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記トロリーが前記展開位置に移動された後に、前記第1のスタッド引張り装置を前記原子炉容器に取り付けることを含む、請求項10~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記第1のスタッド引張り装置を前記スタッドと係合させる前に、前記第1のスタッド引張り装置を前記原子炉容器の外周の周りに回転させることを含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記トロリー上で第2のスタッド引張り装置を支持するステップと、前記第1のスタッド引張り装置を前記原子炉容器の周囲に回転させた後に、前記第2のスタッド引張り装置を前記原子炉容器に取り付けるステップとを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
第2のスタッド引張り装置を前記閉鎖スタッドと係合させ、前記第1のスタッド引張り装置及び前記第2のスタッド引張り装置を同時に作動させて複数の前記閉鎖スタッドを張力付与/張力解除するステップを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記第1のスタッド引張り装置を回転させるステップは、前記第1のスタッド引張り装置を前記原子炉容器の周囲の取付け構造に取り付け、前記スタッド引張り装置を前記取付け構造に沿って移動させるステップを含む、請求項15~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記スタッド引張り装置は、マルチスタッド引張り装置である、請求項10~18のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、原子炉圧力容器(RPV:reactor pressure vessel)のスタッドを張力付与(tensioning)及び/又は張力解除(detensioning)するための方法及びシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
原子力発電プラントは、原子炉の炉心に含まれる燃料集合体に含まれる核分裂性物質(fissile material)の原子核崩壊(nuclear decay)による熱エネルギーを電気エネルギーに変換している。加圧水型原子炉(PWR:pressurised water reactor)及び沸騰水型原子炉(BWR:boiling water reactor)プラント等の水冷式原子炉原子力発電プラントは、原子炉の炉心/燃料集合体を収容する原子炉圧力容器と、蒸気(燃料集合体からの熱によって生成される)から発電するためのタービンとを含む。
【0003】
PWRプラントは、RPVを通って流れ、熱エネルギーを二次回路内の1つまたは複数の蒸気発生器(熱交換器)に伝達する加圧された一次冷却材回路(primary coolant circuit)を有している。(低圧の)二次回路は、発電のための発電機を駆動する蒸気タービンを含む。原子力発電プラントのこれらの構成要素は、従来、コンクリート構造の形態の気密格納建屋(airtight containment building)内に収容されている。
【0004】
RPVは、典型的には、原子炉(すなわち、燃料集合体を含む)を収容するためのキャビティを画定している本体と、キャビティへの上部開口を閉鎖するための閉鎖ヘッド(closure head)とを備えている。閉鎖ヘッドは、シュラウド内に収容された制御ロッド駆動機構(control rod drive mechanism)を更に含む一体型ヘッドパッケージ(IHP:integrated head package)(または一体型ヘッドアセンブリ)の一部を形成することができる。制御ロッド駆動機構は、閉鎖ヘッドを貫通し、炉心内に収容された制御ロッドに接続された駆動ロッド(drive rod)を備えている。制御ロッドは、炉心内の中性子線(neutron radiation)を吸収し、炉心内の核反応を制御するために設けられている。制御ロッド駆動機構内の駆動ロッドは、炉心内の制御ロッドを上昇及び下降させるために垂直方向に平行移動する(translate)ように電源によって駆動されている。炉心は、制御ロッドのためのガイドコラムを更に含み、これらは、関連する電子機器と共に、典型的には「上部内部構造物(upper internals)」と呼ばれる。原子力発電システムの運転には、保守と燃料補給(refueling)が重要な役割を果たしている。システムの古い部品や破損した部品を交換する等、定期的なメンテナンスが必要である。燃料集合体中の使用済み燃料ロッドを交換するためには、定期的に(例えば、18~24ヶ月ごとに)燃料補給が必要である。
【0005】
炉心の保守/燃料補給を行う際には、RPVからIHPを取り外し、炉心を露出させる必要がある。IHPは、通常、複数の(ナット及びボルトで形成される)閉鎖スタッド(closure stud)によって、本体に取り外し可能に取り付けられる。IHP及び本体の各々は、RPVの周りに延在するように円周方向に間隔を置いて配置された複数の穴を有する外向きに突出する円周方向フランジを備えている。IHPをボディに取り付ける際には、穴の位置を合わせ、穴にボルトを通し、ボルトにナットを締結して穴に固定する。次に、ボルトを引き伸ばして(即ち、伸張させて)、ナットがボルトに沿ってフランジに向かって更に移動することを可能にするスタッド引張り装置(stud tensioning device)によって、閉鎖スタッドを引っ張ることができる。このようにして、一旦解放されると、ボルトは、引き伸ばされた(すなわち、引っ張られた)状態のままである。その後、スタッドを(スタッド引張り装置を使用して)伸長させ、フランジからナットを緩めることによって、スタッドの張力を解除することができる。これにより、(その後のヘッドの取り外しのため)スタッドを取り外すことができる。
【0006】
原子力発電システムにおいて保守及び燃料補給作業を行うために、円形の滑走路を有する旋回式ガントリークレーン(polar gantry crane)のような天井クレーン装置(overhead crane arrangement)が、典型的には、システムの格納構造内に設けられる。旋回式クレーンは、原子力発電システムの重量部品を持ち上げることを可能にするために、必然的に大きくて重い構造である。このため、旋回式クレーンの設置には費用がかかる。
【0007】
燃料補給の間、旋回式クレーンは、通常、IHPを本体に取り付けるボルトの張力付与/張力解除のために、スタッド引張り装置をRPVと係合するように移動させるために使用される。その後、旋回式クレーンは典型的には、RPV本体からIHPを垂直上方に持ち上げ、IHPを水平に動かしてRPV本体から離した後、格納建屋内の作業床に設置された格納スタンド上にIHPを降ろす。次に、旋回式クレーンを使用して、通常約15~50トンの重さがあり、放射性のある上部内部構造物を持ち上げる。旋回式クレーンは、内部構造物を垂直に持ち上げ、次に水平に移動させてから、内部構造物を浸漬するための水の貯蔵プールに下降させる。これは、燃料補給中に内部構造物の周囲にガンマ遮蔽(gamma shielding)を提供するためである。原子炉容器本体内の露出した炉心の上方に燃料補給キャビティを設けるために、原子炉容器本体は、通常、格納構造の作業床のかなり下方に配置されている。IHPを原子炉容器本体から取り外す間、駆動ロッドは制御ロッドに接続されたままであり、原子炉容器のキャビティから燃料補給キャビティ内に突出しており、燃料補給キャビティは、駆動ロッドからのあらゆる放射性放出物を封じ込めるために水で満たされている。
【0008】
燃料補給キャビティ内の水はまた、露出した炉心内の使用済燃料ロッドを遮蔽し、冷却するように作用している。効果的なガンマ線遮蔽のためには、燃料ロッド/燃料集合体の上に4メートルの高さの水が必要である。従って、燃料補給キャビティを充填することは、非常に大量の水を必要とし、従って、時間がかかる。
【0009】
上部内部構造物は、水平に移動して貯蔵プールに下降する前に、駆動ロッド/燃料補給キャビティの垂直高さをクリアしなければならないので、突出した駆動ロッド及び燃料補給キャビティの垂直範囲(vertical extent)は、旋回式クレーンによって上部内部構造物の必要な揚程(lift height)を駆動している。
【0010】
旋回式クレーンのリフト高さは、少なくとも部分的に格納構造の高さ(従って、格納構造の構築に関連するコスト/時間)を決定している。かなりの高さから炉心に機器を落下させることに伴うリスクは非常に高い。天井走行クレーンは必然的に大きくて重く、格納構造内でそれを支持するために大きなコンクリート構造物を必要とする。このため、このようなクレーンを設置するには費用がかかる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開平8-122479号公報
【特許文献2】米国特許第4873760号明細書
【特許文献3】英国特許出願公開第2100496号明細書
【特許文献4】英国特許出願公開第1346337号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
既知のシステムに関連する問題の少なくともいくつかを軽減する改良された原子力発電システムが必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
第1の態様では、原子炉容器の閉鎖スタッドを張力付与/張力解除する方法であって、閉鎖スタッドは、原子炉容器の一体型ヘッドパッケージを原子炉容器の本体に取り付けるために、原子炉容器の周囲に間隔を置いて配置されており、当該方法は、
第1のスタッド引張り装置をトロリー上に支持するステップと、
離れた格納位置(stored position)から原子炉容器に隣接する展開位置(deployment position)まで、移動表面を横切ってトロリーを移動させるステップと、
第1のスタッド引張り装置を、1つ又は複数の閉鎖スタッドに係合させるステップと、
第1のスタッド引張り装置を作動させて、1つ又は複数の閉鎖スタッドを張力付与/張力解除するステップと、
を含む方法が提供される。クレーンの代わりにトロリーを使用してスタッド引張り装置を移動させることにより、(原子炉容器がその一部を構成する)原子力発電プラントはクレーンを必要としない。これにより、原子炉容器を収容する格納建屋の高さを減少させることができ、格納建屋の建設をより迅速に(且つより費用対効果が高く)行うことができる。トロリーを使用することで、安全問題を引き起こす恐れのあるスタッド引張り装置の(少なくとも重大な高さまでの)持ち上げを回避することもできる。
【0014】
更に、トロリーの可搬性(transportability)は、例えば恒久的に固定されたクレーンよりも一般に良好である。従って、クレーンとは異なり、トロリーは、複数の原子力発電プラントのメンテナンスプロセスで使用するために、それらの原子力発電プラントに(例えば、軌道/レールによって、または車両に積み込まれて)輸送することができる。
【0015】
次に、本開示の任意的な特徴を説明する。これらは、単独で、または本開示のあらゆる態様とのあらゆる組み合わせで適用可能である。
【0016】
トロリーの移動は、移動表面上であっても良い。移動は、トロリーが格納位置と展開位置との間で移動表面と実質的に接触したままであるようにすることができる。この移動は、トロリーが格納位置から展開位置に移動するときに、移動表面とトロリーに支持された第1のスタッド引張り装置との間の垂直距離が一定に維持されるようなものであっても良い。
【0017】
トロリーの移動は、原子炉容器に対して略横方向に(例えば、半径方向に)延在する経路に沿っても良い。「横方向」という用語は、ここでは、原子炉の長手方向軸線(すなわち、長手方向軸線は、存在する場合、原子炉の燃料集合体の細長い軸線に平行である)に略垂直な方向を説明するために使用されている。移動表面は、原子炉容器と交差している場合があり、一部の実施形態では、原子炉容器のIHPと交差している場合がある基準面(例えば、水平基準面)を画定することができる。基準面は、原子炉本体の上部開口(すなわち、炉心が収容される)と略垂直に整列されていても良い。トロリーが移動する経路は、原子炉容器本体及び/または原子炉容器のIHPへの開口部と垂直に整列されていても良い。
【0018】
原子力発電システムの規模を考慮すると、「略垂直に整列され」という用語は、作業床と空洞への開口部(原子炉容器本体の上端によって画定される)との間の垂直間隔が2メートル未満、例えば1メートル又は0.5メートルであることを意味する。トロリーの移動は、1つ以上の軌道またはレールに沿って行うことができる。従って、移動表面は、例えば、1つまたは複数の軌道またはレールのうちの、ある軌道またはレールの外面によって規定されても良い。トロリーが複数の軌道またはレールに沿って移動される場合、トロリーは、対応する複数の移動表面(すなわち、軌道またはレールの外面)を横切って移動される。トロリーの移動は、2つの平行な軌道または2つの平行なレールに沿って行うことができる。
【0019】
トロリーを軌道またはレールに沿って移動させることによって、トロリーを所定の経路(例えば、軌道またはレールによる所定の経路)に沿って移動させることができ、これにより、移動の(一貫した)再現性を確保することができる。これは、方法の自動化を容易にし得る。1つまたは複数の軌道またはレールは、トロリーへの案内機能を単独で提供しても良く(すなわち、所定の経路に沿ってトロリーを誘導する)、またはトロリーを追加的に支持しても良い。トロリーは、1つまたは複数の軌道またはレールの上に支持されても良く、または1つまたは複数の軌道またはレールから吊り下げられても良い。
【0020】
トロリーは、格納位置から展開位置まで略直線的な経路に沿って移動することができる。この点に関して、トロリーは、略直線状の軌道またはレールに沿って移動することができる。代替的に、トロリーは、例えば、直線及び非直線(例えば、曲線)部分から形成される複合経路に沿って移動されても良い。
【0021】
この方法は、トロリーが展開位置に移動した後に、第1のスタッド引張り装置を原子炉容器に取り付けることを含むことができる。原子炉容器は、第1のスタッド引張り装置を受け入れるための取り付け構造を含むことができ、この方法は、第1のスタッド引張り装置を取り付け構造に取り付けることを含むことができる(取り付け構造は、例えば、原子炉容器の周りに円周方向に延在することができるレールまたはフランジの形態であって良い)。第1のスタッド引張り装置の取り付けは、第1のスタッド引張り装置を原子炉容器のヘッドまたは原子炉容器の本体、あるいはその両方に取り付けることを含むことができる。
【0022】
第1のスタッド引張り装置を原子炉容器に取り付けることは、第1のスタッド引張り装置をトロリーから原子炉容器に移動させることを含むことができる。この点に関して、取り付けは、第1のスタッド引張り装置をトロリーに対して移動させることを含むことができる。このような移動は、トロリーまたは原子炉容器の一部を形成するハンドリング装置によって、またはトロリー及び原子炉容器とは別のハンドリング装置(例えば、ハンドリング装置はトロリー及び原子炉容器の外部にあっても良い)によって行うことができる。
【0023】
第1のスタッド引張り装置は、複数の連結されたスタッド引張りユニットを含むことができる。この点において、第1のスタッド引張り装置は、マルチスタッド引張り装置であっても良い。連結された複数のスタッド引張りユニットは、原子炉容器に取り付けられたときに、原子炉容器の周りに弧を描くように配置することができる。第1のスタッド引張り装置は、マルチスタッド引張り装置の形態である場合、劣弧(180°未満の範囲及び角度)、優弧(180°を超える範囲の角度)の形態であっても良く、または略半円の形態であっても良い。
【0024】
この方法は、第1のスタッド引張り装置を1つまたは複数の閉鎖スタッド上に下降させることを含むことができる(すなわち、閉鎖スタッドの係合及び張力付与/張力解除のため)。下降は、トロリー、第1のスタッド引張り装置、原子炉容器、またはこれらの組み合わせによって行うことができる。例えば、原子炉容器の取付構造は、第1のスタッド引張り装置を下降させるための油圧リフト又はウィンチを含むことができる。
【0025】
この方法は、更に、第1のスタッド引張り装置をスタッドと係合させる前に、第1のスタッド引張り装置を原子炉容器の周囲に沿って回転または移動させるステップを含むことができる。第1のスタッド引張り装置は、原子炉容器の長手方向の(例えば、略垂直な)軸線の周りを回転又は移動させることができる。第1のスタッド引張り装置は、原子炉容器の外周の周りに約180°回転させることができる。いくつかの実施形態では、スタッド引張り装置を原子炉容器の円周の周りで回転又は移動させることは、スタッド引張り装置を原子炉容器の周りに円周方向に延在するレール又はフランジに取り付けること、及びスタッド引張り装置をフランジ又はレールに沿って移動させることを含むことができる。
【0026】
第1のスタッド引張り装置が(例えば、チェーン状の構造を形成するように)複数の連結された要素から形成される場合、スタッド引張り装置は、原子炉容器の周りを徐々に包囲する(または蛇行する)ように、原子炉容器の上及び周囲に移動/前進させることができる。この場合、第1のスタッド引張り装置は、原子炉容器の全周に亘って移動させる(すなわち、包囲する)ことができる。
【0027】
他の実施形態では、本方法は、スタッドを係合させた後に第1のスタッド引張り装置を回転させ、スタッドを張力付与/張力解除することを含むことができる。この場合、この方法は、続いて、第1のスタッド引張り装置と位置合わせされたスタッド(すなわち、第1のスタッド引張り装置によってまだ張力付与または張力付与解除されていないスタッド)を係合させ、スタッドを張力解除/張力付与させることを含むことができる。第1のスタッド引張り装置が半円の形態でない場合には、原子炉容器のヘッドを原子炉容器の本体に取り付けている全てのスタッドが第1のスタッド引張り装置によって張力付与/張力解除されるまで、このプロセスを繰り返すことができる。この方法は、第2のスタッド引張り装置をトロリー上に支持すること(すなわち、第1及び第2のスタッド引張り装置の両方がトロリー上に支持されるようにすること)を更に含むことができる。他の実施形態では、第2のスタッド引張り装置を別のトロリー上に支持することができる。第2のスタッド引張り装置は、第1のスタッド引張り装置に関して上述したものとすることができる。第2のスタッド引張り装置は、第1のスタッド引張り装置が原子炉容器の周囲を回転した後、原子炉容器に取り付けることができる。従って、第1のスタッド引張り装置の回転は、第2のスタッド引張り装置を原子炉容器に取り付けるための空間を原子炉容器に提供するように行うことができる。
【0028】
他の実施形態では、第1のスタッド引張り装置は、原子炉容器の周りで回転されなくても良い。このような実施形態では、第1のスタッド引張り装置が原子炉容器の周りに完全には延在しない場合、この方法は、第2のスタッド引張り装置を第2のトロリー上に支持することを含むことができる(すなわち、第1のスタッド引張り装置が支持されるトロリーが第1のトロリーである)。第2のトロリーは、原子炉容器の第1のトロリーとは反対側に設けられても良い。従って、本方法は、別のトロリーを格納位置から原子炉容器に隣接した展開位置(例えば、原子炉容器の他方のトロリーと反対側)に移動させることを含むことができる。
【0029】
第1のトロリーに関して上述した方法は、第2のトロリーと共に用いることができる。従って、この方法は、第2のスタッド引張り装置を原子炉容器に取り付け、第2のスタッド引張り装置を1つまたは複数のスタッドと係合させることを含むことができる。この方法は、第2のスタッド引張り装置を作動させて、1つまたは複数のスタッド(例えば、第2のスタッド引張り装置と位置合わせされた)を張力付与/張力解除するステップを更に含むことができる。
【0030】
この方法は、第1及び第2のスタッド引張り装置を互いにロックすることを含むことができる。一旦互いにロックされると、第1及び第2のスタッド引張り装置は、対応する閉鎖スタッド上に降ろされ得る。この方法は、第1及び第2のスタッド引張り装置を同時に作動させて、閉鎖スタッドの張力を解除することを含むことができる。これにより、閉鎖スタッドの均一な張力付与/張力解除が可能になる。
【0031】
この方法は、更に、スタッドを原子炉容器から取り外すこと(例えば、ボルト及びナットを原子炉容器から取り外すこと)を含んでも良い。このボルト及びナットの取り外しは、各スタッド引張り装置によって実施することができる。この方法は、スタッドを格納することを含むことができる。例えば、スタッドは、張力が解除された後、スタッド引張り装置または各スタッド引張り装置によって格納されても良い。この方法は、原子炉容器のヘッドを原子炉容器の本体から取り外すことを含むこともできる。スタッド引張り装置が原子炉容器のヘッドに取り付けられている場合、スタッド引張り装置は原子炉容器のヘッドと共に原子炉容器から取り外す(すなわち、原子炉容器のヘッドに取り付ける)ことができる。その後、原子炉容器のヘッドを原子炉容器に戻し、(スタッド引張り装置が依然としてそこに取り付けられている状態で)原子炉容器の本体に取り付けることができる。
【0032】
理解されるように、この方法は、スタッド引張り装置を原子炉容器から取り外すために、逆に実行されても良い。従って、この方法は、その後、スタッド引張り装置を1つ又は複数のスタッドから係合解除し、スタッド引張り装置を原子炉容器から取外してトロリー上に支持することを含むことができる。トロリーまたは各トロリーを展開位置から格納位置に移動させても良い。
【0033】
スタッド引張り装置が(上述のように)チェーン状構造の形態である場合、取り外しプロセスは、スタッド引張り装置を、それが原子炉容器を包囲している位置から、それがトロリー上に支持されている位置まで引き戻すことを含むことができる。
【0034】
原子炉容器の本体は、制御ロッドアセンブリ及び制御ロッドアセンブリを案内するための上部内部構造物を収容することができる炉心を含むことができる。IHPは、シュラウド内に収容された閉鎖ヘッド及び制御ロッド駆動機構を含むことができる。制御ロッド駆動機構は、閉鎖ヘッドを通って延在している少なくとも1つの駆動ロッド(及び好ましくは複数の駆動ロッド)を含むことができる。この方法は、(例えば、IHPのスタッドが取り外された後に)少なくとも1つの駆動ロッドを制御ロッドアセンブリから連結解除(decoupling)することを更に含むことができる。この方法は、続いて、少なくとも1つの駆動ロッドを、それがIHP内に格納されているメンテナンス/燃料補給位置に移動させるステップと、少なくとも1つの駆動装置をメンテナンス/燃料補給位置にして、IHPを本体から持ち上げるステップとを含むことができる。
【0035】
このようにして、IHPが除去されたときに炉心から突出したままの放射性駆動ロッドが無いので、浸水した燃料補給キャビティの必要性が除去され得る。
【0036】
原子炉容器は、加圧水型原子炉(PWR)の原子力発電プラントの一部を形成する原子炉圧力容器であっても良い。PWRのプラントは、原子炉容器から横方向に間隔を置いて配置された複数の蒸気発生器を備えることができる。格納位置から展開位置へのトロリーの移動は、2つの(隣接する)蒸気発生器の間でトロリーを移動させることを含むことができる。従って、レールまたは軌道は、2つの(隣接する)蒸気発生器の間を通過することができる。第2の態様では、原子力発電プラントにおいて1つ以上のスタッド引張り装置を輸送するためのトロリーが開示され、このトロリーは、スタッド引張り装置を支持するための支持フレームと、フレームに回転可能に取り付けられた複数のホイールと、フレームに対して移動可能であるようにフレームに取り付けられたハンドリング装置とを備え、ハンドリング装置は、支持フレームに対してスタッド引張り装置を係合させて移動させるように構成されている。
【0037】
理解されるように、第2の態様のトロリーは、第1の態様の方法を実施するために使用されても良い。この点に関して、トロリーにハンドリング装置を設けることにより、(フレームに支持された)スタッド引張り装置をトロリーから原子炉容器に(原子炉容器に取り付けられるように)移動させることができる。このようにして、スタッド引張り装置を取り付ける工程(スタッド引張り装置を原子炉容器に移動させる工程を含む)を自動化することができる。これにより、(より安全なプロセスをもたらし得る)スタッド引張り装置の手動操作を回避する(または少なくとも低減する)ことができる。
【0038】
更に、上述したように、トロリーの可搬性は、例えば、恒久的に固定されたクレーンよりも一般に良好である。従って、クレーンとは異なり、トロリーは、複数の原子力発電プラントのメンテナンスプロセスで使用するために、それらの原子力発電プラントに(例えば、軌道/レールによって、または車両に積み込まれて)輸送することができる。
【0039】
支持フレームは、ハンドリング装置がガントリの長手方向軸線に沿って移動可能であるように取り付けられた細長いガントリを含むことができる。ハンドリング装置はホイールを含むことができ、ガントリは、ハンドリング装置がそれに沿って移動することを可能にするレールまたは軌道を含むことができる。この点に関して、ハンドリング装置は、支持フレームに対して略直線状の軸線に沿って移動することができる。ガントリは、略水平方向に延在することができる。
【0040】
支持フレームは、スタッド引張り装置を支持するためのベースを含むことができる。フレームに回転可能に取り付けられたホイールは、ベースに取り付けられても良い。ガントリは、ベースの上方に配置することができ、ベースから間隔を置いて配置することができる。
【0041】
支持フレームに回転可能に取り付けられたホイールは、ホイールをベースに取り付けるためのホイールアセンブリの一部を形成することができる。ホイールアセンブリは、それぞれ、アクスル、ベアリング等を含むことができる。トロリーは、互いに間隔を置いた2組のホイール(例えば、前方ホイールペアと後方ホイールペア)で構成しても良い。他の実施形態では、支持フレームのホイールは、地面(または床面)より上に懸架されたレールと係合するように構成されても良い。この点に関して、ホイールは、支持フレームのベースの上に取り付けられても良い。ホイールは、トロリーが使用時にレールまたは軌道から吊り下げられるように、トロリーの上に配置されたレールまたは軌道と係合する(すなわち、レールまたは軌道を横切って転がる)ように構成されても良い。
【0042】
ハンドリング装置は、ウィンチを含むことができる。ウィンチは、スタッド引張り装置と係合し、略垂直な軸線に沿ってスタッド引張り装置を移動させるための係合部材を含むことができる。ガントリと組み合わされると、ハンドリング装置は、スタッド引張り装置を(支持フレームに支持されないように)持ち上げ、支持フレームに沿って(例えば、原子炉容器に向かって移動させるように)スタッド引張り装置を移動させることができる。ウィンチは、電子的に(例えば、遠隔的にまたは所定の自動化された方法で)制御することができるようにモータを含むことができる。
【0043】
あるいは、ハンドリング装置は、ロボットアーム(例えば、トロリーの支持フレームに取り付けられた)を備えても良い。あるいは、ハンドリング装置は、トロリーに対してスタッド引張り装置を移動させるためのコンベヤ(例えば、コンベヤーベルト)を含むことができる。スタッド引張り装置がチェーン状構造(すなわち、複数の連結要素から形成される)を有する場合、ハンドリング装置は、スタッド引張り装置をトロリーから原子炉容器まで漸進的に移動させる(すなわち前進させる)ように構成されたスタッド引張り装置取り外し手段(unloading means)を備えることができる。例えば、取り外し手段は、スタッド引張り装置を原子炉容器に漸進的に(例えば、押すことによって)取り付けるための(スタッド引張り装置と係合するための)1つ以上の被駆動ローラを含むことができる。
【0044】
トロリーは、ホイールを駆動するための駆動手段(例えば、1つまたは複数のモータ)を備えても良い。前記トロリーは、前記駆動手段を制御するコントローラを更に備えても良い。コントローラは、(例えば、遠隔ユーザインターフェース及び有線または無線接続を介して)遠隔操作されても良く、及び/またはメモリに記憶された所定の命令に従って操作されても良い。ハンドリング装置は、同様の方法で(すなわち、遠隔制御される1つまたは複数のモータによって、または所定の指示に従って)移動されても良い。このようにして、トロリーは、自動化プロセスの一部として使用することができる。
【0045】
トロリーは折り畳み式(collapsible)でも良い。すなわち、トロリーは、折り畳まれた構成と拡張された構成(expanded configuration)との間で移動可能に構成されても良い。これは、例えば、入れ子式、ピボット式、またはヒンジ式の構成要素を含むトロリーの構造(フレーム等)によって容易にすることができる。トロリーは、折り畳まれた構成と拡張された構成との間でトロリーを変形するためのアクチュエータを含むことができる。折り畳まれた構成では、トロリーの高さ及び/または幅は、拡張された構成よりも小さくても良い。トロリーは、折り畳まれた状態で移動可能(例えば、駆動可能)であっても良い。このようにして、例えば、原子炉容器を収容する構造物の壁の開口を通って、及び/又は格納構造の内外にトロリーを移動させる必要がある場合、開口のサイズ(すなわち、装置を収容するためのサイズ)を最小化することができる。従って、トロリーは、折り畳まれた構成で輸送され、拡張された構成で張力付与/張力解除動作を実行することができる。第3の態様では、原子炉容器であって、
原子炉を収容するための空洞と、前記空洞への開口部を閉鎖するためのIHPと、を画定している本体であって、
前記IHPは、前記原子炉容器の周囲に間隔を置いて配置され、前記本体及びIHPのそれぞれの外向きに突出している円周方向フランジに形成された開口を通って延在している複数の閉鎖スタッドによって前記本体に取り外し可能に取り付けられている、
本体と、
前記閉鎖スタッドの上方で前記IHPの周りに円周方向に延在しているマルチスタッド引張り装置を支持するための取り付け構造と、
を備えている原子炉容器が提供されている。
【0046】
取り付け構造は、IHPの周りに円周方向に延在しているレール、軌道、フランジ、または突起を含むことができる。取り付け構造は、IHPのフランジの上方に垂直方向に間隔を置いて配置することができる。取り付け構造は、レールの形態であっても良い。レールは、半径方向に延在している支持体によって原子炉容器から間隔を置いて配置することができる。
【0047】
取り付け構造は、マルチスタッド引張り装置が原子炉容器に取り付けられたときに、原子炉容器の周りの周方向にマルチスタッド引張り装置を移動させることができるように構成することができる。取付け構造は、例えば、取り付けられたスタッド引張り装置のホイールと係合して、IHPの周りの円周方向の動きでスタッド引張り装置を案内するための軌道又はレールを含むことができる。代替的または追加的に、取り付け構造は、それに取り付けられたスタッド引張り装置の軌道またはレールと係合するためのホイールを含むことができる。
【0048】
原子炉容器は、スタッド引張り装置が取り付けられたときに、スタッド引張り装置を原子炉容器の周りで円周方向に(例えばIHPの周りで円周方向に)移動させるための駆動手段を含むことができる。駆動手段は、1つまたは複数のモータまたはアクチュエータの形態であっても良い。駆動手段は、取り付けられたスタッド引張り装置に直接または例えば取り付け構造を介して係合可能であっても良い。駆動手段は、例えば、ウィンチと、スタッド引張り装置と係合するためのケーブルとを含むことができ、それによって、(ウィンチによる)ケーブルの引き込みがそのような動きを提供している。代替的に、駆動手段は、装着構造をIHPの周りに移動させるように構成されても良い。取付け構造は、ギア配列を介して(すなわち、取付け構造の円周方向移動のために)IHPに動作可能に接続されても良い。
【0049】
原子炉容器は、スタッド引張り装置を原子炉容器の1つ以上のスタッドと係合させるために、取り付けられたスタッド引張り装置(すなわち、取り付け構造に取り付けられた)を垂直方向に移動させるための下降装置を更に備えることができる。下降装置は、スタッド引張り装置と直接係合しても良く(例えば、取り付け構造の一部を形成しても良い)、または取り付け構造自体を下降させて、取り付けられたスタッド引張り装置を、例えば、原子炉容器の1つまたは複数のスタッド上に下降させても良い。下降装置は、1つ以上のウィンチの形態であっても良い。
【0050】
第4の態様では、マルチスタッド引張り装置であって、
原子炉容器上のスタッドを張力付与/張力解除するための複数のスタッド引張り装置であって、弧を形成するように構成された複数のスタッド引張り装置と、
原子炉容器にマルチスタッド引張り装置を取り外し可能に取り付けるように構成された取り付け構造と、
を備えるマルチスタッド引張り装置が提供されている。
【0051】
マルチスタッド引張り装置は、それが取り付けられた原子炉容器の周りを円周方向に移動するように構成することができる。従って、マルチスタッド引張り装置は、原子炉容器の周りでマルチスタッド引張り装置を移動させるためのホイール又は軌道又はレールを含むことができる。
【0052】
マルチスタッド引張り装置は、原子炉容器に取り付けられたときに、この原子炉容器の周りでマルチスタッド引張り装置を円周方向に移動させるための駆動手段を備えることができる。この点に関して、マルチスタッド引張り装置は、マルチスタッド引張り装置を原子炉容器の周りで円周方向に移動させるための1つ又は複数のアクチュエータ又はモータを含むことができる。アクチュエータまたはモータは、マルチスタッド引張り装置を移動させるために、ホイールに動作可能に接続することができる。
【0053】
マルチスタッド引張り装置は、付加的に又は代替的に、チェーン状構造を形成するように、複数の連結された(直列に連結された)チェーン要素を含むことができる。各要素は、リンクによって隣接する要素に回転可能にまたは枢動可能に連結されても良い。従って、各要素は、(1つまたは複数の軸線に関して)回転可能であっても良く、または隣接する要素に対して枢動可能であっても良い。各要素は、1つ以上のスタッド引張り装置を含むことができる。このようにして、スタッド引張り装置は、原子炉容器上に移動されるときに、原子炉容器の周りを包囲する(または蛇行する)ことができる。すなわち、複数のチェーン要素の先導要素(leading element)は、原子炉容器の軌道またはレールと係合することができ、後続のチェーン要素は、原子炉容器上に進められ、先導要素が原子炉容器の周りを移動するときの先導要素の円周方向の移動に(例えば、軌道またはレールとの係合によって)追従することができる。
【0054】
あるいは、(チェーン状の)マルチスタッド引張り装置は自立型であっても良く、各要素は、隣接するチェーン要素に対して要素を移動させる(例えば、回転または枢動させる)ように構成されたアクチュエータを備えても良い。マルチスタッド引張り装置は、アクチュエータを制御してチェーン要素を原子炉容器の周りで包囲又は蛇行させるように構成されたコントローラを含むことができる(又はコントローラに接続可能である)。別の実施形態では、チェーン要素は、マルチスタッド引張り装置を原子炉容器に保持するように(例えば、バネによって)付勢されていても良い。
【0055】
マルチスタッド引張り装置は、原子炉容器に取り付けられたときにマルチスタッド引張り装置を垂直方向に移動させるための下降装置を含むことができる。下降装置は、マルチスタッド引張り装置が原子炉容器のスタッド上に下降する(及びスタッドと係合する)ことを可能にすることができる。下降装置は、1つ以上のウィンチの形態であっても良い。
【0056】
マルチスタッド引張り装置は、張力が解除されたスタッドを原子炉容器から取り外すためのスタッド取り外し機構を含むことができる。スタッド取り外し機構は、取り外された1つ以上のスタッドを格納するための格納区画を含むことができる。
【0057】
第5の態様では、原子力プラントシステムが提供されており、この原子力プラントシステムは、
- 原子炉容器であって、
原子炉の炉心を収容するための空洞と、前記空洞への開口部を閉鎖するためのIHPと、を画定している本体であって、前記IHPは、前記原子炉容器の周囲に間隔を置いて配置され、前記本体及びIHPのそれぞれの外向きに突出している円周方向フランジに形成された開口を通って延在している複数の閉鎖スタッドによって、前記本体に取り外し可能に取り付けられている、本体と、
スタッド引張り装置を受け入れるための取付け構造であって、前記円周方向フランジの上方に間隔を置いて配置され、前記IHPの周りに円周方向に延在している取付け構造と、
を備えた原子炉容器と、
- 前記第2の態様によるトロリーであって、格納位置から前記原子炉容器に隣接する展開位置まで移動可能なトロリーと、
- 前記閉鎖スタッドを張力付与/張力解除するように構成され、前記原子炉容器の前記取付け構造に取り付けるための取り付け部分を備えているスタッド引張り装置と、
- 前記原子炉容器を囲む格納構造であって、格納場所と前記原子炉容器との間に延在している1つ又は複数の軌道又はレールを備え、前記格納場所と前記原子炉容器との間で前記トロリーを移動させるために、前記トロリーのホイールが前記1つ又は複数の軌道又はレールと係合している、格納構造と、
を備えている。
【0058】
格納構造は、原子炉容器を収容している一次エンクロージャと、格納場所を画定している二次エンクロージャとを含むことができる。一部の実施形態では、二次エンクロージャは、格納構造の外部にあっても良い(例えば、付属物(annex)であっても良い)。一次エンクロージャ及び二次エンクロージャは、格納構造の分離壁によって分離することができる。1つまたは複数の軌道またはレールは、分離壁の開口部を通って、二次エンクロージャから原子炉容器まで延在していて良い。格納構造は、分離壁の開口部を密閉するためのドアを含むことができる。トロリー及び/またはマルチスタッド引張り装置は、トロリー及び/またはマルチスタッド引張り装置が車両と共に使用できるように、二次エンクロージャから取り外し可能とされている。
【0059】
第5の態様のシステムは、更なる原子炉容器と、格納場所から更なる原子炉容器まで延在している1つ又は複数の軌道とを含む、更なる格納構造を含んでも良い。このようにして、トロリー(及びマルチスタッド引張り装置)は、格納場所から更なる原子炉容器に移動され、マルチスタッド引張り装置は、更なる原子炉容器に取り付けられる。従って、トロリー及びマルチスタッド引張り装置は、複数の原子炉容器を使用可能にする(service)ことができる。格納場所は、原子炉容器に対して中央に配置することができる。
【0060】
原子炉容器のIHP及び本体の各々は、本体にIHPを取り付けるための取り付け部分を含むことができる。各取付け部分は、外側に突出する円周フランジを含むことができる。各フランジは、フランジ(従って、IHP及び本体)を一緒に取り付けるために、閉鎖スタッドを受け入れるための貫通穴を含むことができる。IHPは、本体の上端でIHPを密閉するために、その下端に圧力シールを含むことができる。
【0061】
第1の態様に関して上述したように、炉心は、制御ロッドアセンブリと、制御ロッドアセンブリを案内するための上部内部構造物とを含むことができる。IHPは、シュラウド内に収容された閉鎖ヘッド及び制御ロッド駆動機構を含むことができる。制御ロッド駆動機構は、閉鎖ヘッドを通って延在している少なくとも1つの駆動ロッド(及び好ましくは複数の駆動ロッド)を含むことができる。各駆動ロッドは、炉心内の制御ロッドアセンブリに解放可能に連結するための連結要素(例えば、空気圧式連結要素)を含むことができる。少なくとも1つの駆動ロッドは、メンテナンス/燃料補給位置に移動可能であって良く、この位置では、少なくとも1つの駆動ロッドは、制御ロッドアセンブリから連結解除され、IHP内(例えば、シュラウド内)に少なくとも部分的に(好ましくは完全に)引き込まれている。IHPは、少なくとも1つの駆動ロッドをメンテナンス/燃料補給位置にロックするための少なくとも1つのロック要素(locking element)を更に含むことができる。
【0062】
本発明は、原子炉発電プラント(nuclear reactor power plant)を含んでも良く、原子炉発電プラントの一部として含まれても良く、または原子炉発電プラント(本明細書では原子炉(nuclear reactor)と呼ぶ)と共に使用されても良い。特に、本発明は、加圧水型原子炉に関する。原子炉発電プラントは、250~600MWまたは300~550MWの出力を有することができる。原子炉発電プラントは、モジュール式原子炉(modular reactor)であっても良い。モジュール式原子炉は、現場外(例えば、工場内)で製造された多数のモジュールから構成される原子炉と考えることができ、次いで、モジュールは、モジュールを互いに接続することによって現場で原子炉発電プラントに組み立てられる。一次回路、二次回路及び/または三次回路のいずれも、モジュール構造で形成することができる。
【0063】
原子炉は、原子炉圧力容器と、1つまたは複数の蒸気発生器と、1つまたは複数の加圧器(pressurizer)とを備える一次回路を備えることができる。一次回路は、原子炉圧力容器を通して媒体(例えば水)を循環させ、炉心での核分裂によって発生した熱を抽出し、その熱は蒸気発生器に送られ、二次回路に伝達される。一次回路は、1つから6つの蒸気発生器、または2つから4つの蒸気発生器、または3つの蒸気発生器、または前述の数値のいずれかの範囲の蒸気発生器を備えていて良い。一次回路は、1つ、2つ、または2つ以上の加圧器を備えることができる。一次回路は、原子炉圧力容器から蒸気発生器の各々にまで亘っている回路を含むことができ、回路は、高温媒体を原子炉圧力容器から蒸気発生器に搬送し、冷却媒体を蒸気発生器から原子炉圧力容器に戻すことができる。媒体は、1つまたは複数のポンプによって循環されても良い。いくつかの実施形態では、一次回路は、一次回路内の蒸気発生器当たり1つまたは2つのポンプを備えることができる。
【0064】
いくつかの実施形態では、一次回路内を循環する媒体は、水を含んでも良い。いくつかの実施形態において、媒体は、媒体に添加された中性子吸収物質(例えば、ホウ素、ガドリニウム)を含んでも良い。いくつかの実施形態では、一次回路内の圧力は、全出力動作中に少なくとも50、80、100または150バールであり、圧力は、全出力動作中に80、100、150または180バールに達しても良い。一部の実施形態では、水が一次回路の媒体である場合、原子炉圧力容器を出る水の温水温度は、全出力運転中に540Kから670Kの間、560Kから650Kの間、又は580Kから630Kの間であっても良い。水が一次回路の媒体であるいくつかの実施形態では、原子炉圧力容器に戻る水の冷水温度は、全出力運転の間、510~600K、または530~580Kとすることができる。
【0065】
原子炉は、タービンを駆動するために水を蒸気に変換するために蒸気発生器内の一次回路から熱を抽出する水の循環ループを備える二次回路を備えることができる。実施形態において、二次ループは、1つまたは2つの高圧タービンと、1つまたは2つの低圧タービンとを備えることができる。二次回路は、蒸気が蒸気発生器に戻されるときに蒸気を水に凝縮する熱交換器を備えることができる。熱交換器は、ヒートシンクとして作用するための大量の水を含むことができる三次ループに接続することができる。
【0066】
原子炉容器は、鋼圧力容器を含むことができ、圧力容器は、高さ5~15m、または9.5~11.5mであっても良く、直径は、2~7m、または3~6m、または4~5mであっても良い。圧力容器は、原子炉本体と、原子炉本体の垂直上方に配置された原子炉ヘッド(reactor head)とを備えることができる。原子炉ヘッドは、原子炉ヘッド上のフランジと原子炉本体上の対応するフランジとを貫通する一連のスタッドによって原子炉本体に接続することができる。
【0067】
原子炉ヘッドは、原子炉の構造の多数の要素が単一の要素に統合された一体型ヘッドアセンブリを含むことができる。統合された要素には、原子炉容器のヘッド、冷却シュラウド、制御ロッド駆動機構、ミサイルシールド(missile shield)、リフティングリグ(lifting rig)、ホイストアセンブリ、及びケーブルトレイアセンブリが含まれる。
【0068】
炉心は、燃料ロッドを含む燃料集合体を有する多数の燃料集合体から構成することができる。燃料ロッドは、核分裂性物質のペレットで形成することができる。燃料集合体はまた、制御ロッドのための空間を含むことができる。例えば、燃料集合体は、17×17グリッドのロッド、すなわち合計289の空間のためのハウジングを提供することができる。これらの合計289個の空間のうち、24個は原子炉の制御ロッドのために確保することができ、その各々はメインアームに接続された24個の制御ロッドから形成することができ、1個は計装管のために確保することができる。制御ロッドは、核分裂中に放出された中性子を吸収することによって、燃料が受ける核分裂プロセスの制御を提供するために、炉心の内外に移動可能である。炉心は、100~300個の燃料集合体を含むことができる。制御ロッドを完全に挿入すると、通常、原子炉が停止する未臨界状態になる可能性がある。炉心内の燃料集合体の100%までが制御ロッドを含むことができる。
【0069】
制御ロッドの移動は、制御ロッド駆動機構によって行うことができる。制御ロッド駆動機構は、燃料集合体の内外で制御ロッドを下降及び上昇させ、炉心に対する制御ロッドの位置を保持するように、アクチュエータに指令及び動力を与えることができる。制御ロッド駆動機構は、制御ロッドを迅速に挿入して、原子炉を迅速に停止(すなわち、スクラム)させることができる。
【0070】
一次回路は、事故の場合に一次回路からの蒸気を保持するために、格納構造内に収容することができる。格納構造は、直径15~60m、または直径30~50mとすることができる。格納構造は、鋼若しくはコンクリート、または鋼で裏打ちされたコンクリートから形成することができる。格納構造は、原子炉の緊急冷却のための水タンクを内部または外部支持体に含むことができる。格納構造は、原子炉への燃料補給、燃料集合体の格納及び格納構造の内部と外部との間で燃料集合体の輸送を可能にするための設備及び施設を含むことができる。
【0071】
発電プラントは、外部の危険(例えば、ミサイル攻撃)及び自然の危険(例えば、津波)から原子炉要素を保護するために、1つ又は複数の土木構造物(civil structure)を含むことができる。土木構造物は、鋼、またはコンクリート、またはその両方の組み合わせから作製され得る。
【図面の簡単な説明】
【0072】
図1A】第1の実施形態による、トロリー及び原子炉容器の側面図である。
図1B】第1の実施形態によるトロリーの上面図である。
図1C】第1の実施形態による原子炉容器へのマルチスタッド引張り装置の取付方法を示す上面図である。
図1D】第1の実施形態による原子炉容器へのマルチスタッド引張り装置の取付方法を示す上面図である。
図1E】第1の実施形態による原子炉容器へのマルチスタッド引張り装置の取付方法を示す上面図である。
図1F】第1の実施形態による原子炉容器へのマルチスタッド引張り装置の取付方法を示す上面図である。
図2】第2の実施形態によるトロリー、マルチスタッド引張り装置及び原子炉容器を示す概略上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0073】
次に、図面を参照して、実施形態を例としてのみ説明する。
【0074】
図1は、トロリー10及び原子炉圧力原子炉容器(RPV)12を示しており、図示の実施形態では、加圧水型原子炉(PWR)原子力発電プラントの一部を形成している。RPVは、原子炉本体14及び一体型ヘッドパッケージ(IHP)16を含む。RPV12は、IHP16のみが床構造の上に延在するように、床構造に形成された開口を通して配置されている。IHP16は、RPV12の周囲に間隔を置いて配置された複数のスタッド18によって、原子炉本体14に取り外し可能に取り付けられる。スタッド18は、原子炉本体14及びIHP16のそれぞれの外向きに突出する円周フランジ20、22に形成された開口を通って垂直に延びる。以下でより詳細に説明するように、IHP16は、マルチスタッド引張り装置をIHP16に取り付けるための、更に外側に突出する取り付けフランジ24の形態の取り付け構造を更に含む。
【0075】
トロリー10は、図示の実施形態では、第1のマルチスタッド引張り装置(MST)28a及び第2のマルチスタッド引張り装置28bを支持する支持フレーム26を備えている。これらについては、以下で更に詳しく説明する。トロリー10は更に、支持フレーム26のベース32に回転可能に取り付けられた4つのホイール30(矩形状に間隔を置いて配置される)を含む。ホイール30は、床構造に形成された平行な溝の形態である一対の離間した直線軌道34(軌道34の一部のみが図に示されている)に収容されている。このようにして、トロリー10の移動は、軌道34によって規定される経路に制限されている。図示されていないが、ホイール30は、ホイール30を軌道に沿ってRPV12に向かって、及びRPV12から離れるように移動させるために、ホイール30を駆動するモータに動作可能に接続することができる。
【0076】
図示の実施形態では、支持フレーム26は、箱状のフレームに形成された複数の水平及び垂直の細長い部材36を含む。しかし、支持フレーム26は多くの異なる形態をとることができることを理解されたい。支持フレーム26のベース32は、2つのMST28a、28bを支持することができる複数のプラットフォーム38も含む。
【0077】
支持フレーム26はまた、ベース32の上方に垂直に間隔を置いて配置され、トロリー10の対向する横方向側面の間でほぼ中央に延びる水平方向に延びるガントリ40を含む。ガントリ40は、ベース32を越えて延在している(すなわち、張り出している)。以下で更に説明するように、これは、トロリー10からRPV12へのMST28a、28bの移動を容易にしている。
【0078】
ハンドリング装置42は、ガントリ40にローラを介して移動可能に取り付けられており、ガントリ40に沿って水平方向に移動可能である。ハンドリング装置42は、MST28a、28bを係合するための係合部材44(例えば、電磁石、ロック機構またはフック)を有するウィンチ46を含む。ウィンチ46は、係合部材44を(例えばワイヤを介して)垂直軸線に沿って移動させるよう動作可能である。従って、ガントリ40とウィンチ46との組合せによって、ハンドリング装置42は、MST28a、28bに係合し、2つの軸線に沿って移動させることができる。図示の実施形態では、第2のMST28bは、係合部材44によって係合されている。第2のMST28bは、ウィンチ46によって持ち上げられ、ハンドリング装置42によってガントリ40に沿って移動されている。ハンドリング装置42のこの移動は、ハンドリング装置42及び/またはガントリ40の一部を形成する(例えば、遠隔制御されるか、または所定の指示に従う)1つまたは複数のモータによって提供されても良い。
【0079】
従って、トロリー10は、IHP16を原子炉本体14から取り外す目的で、MST28a、28bをRPV12に取り付けるために使用することができる。MST28a、28bは、RPV12の閉鎖スタッド18を張力付与/張力解除するように構成されている。各MST28a、28bは、互いに連結され半円形に配置された複数のスタッド引張りユニットを備えている。このようにして、各MST28a、28bは、RPV12に取り付けられたとき、RPV12の閉鎖スタッド18の半分を張力付与/張力解除することができる。
【0080】
これを行うための例示的な方法は、図1C図1Fに示されている。明確にするために、これらの図は、RPV12の閉鎖スタッド18又はフランジ20、22、24を示していない。
【0081】
図1Cにおいて、トロリー10は、格納位置(図示せず)から平行軌道34に沿って移動される過程にある。トロリー10は、支持フレーム26のベース32においてプラットフォーム38上に2つのMST28a、28bを支持している。上述したように、トロリー10は、遠隔的に制御されても良いし、所定の指示に従って(すなわち、自動化された方法で)軌道34に沿って移動しても良い。
【0082】
図1Dでは、トロリー10がRPV12に隣接する位置に到達している。ウィンチ46は、プラットフォーム38から第2のMST28bを持ち上げるために使用されており、第2のMST28bをRPV12に向かって移動させるようにガントリ40に沿って水平に移動されている。
【0083】
図1Eにおいて、第2のMST28bは、RPV12のフランジ24(図1A及び図1B参照)に取り付けられており、RPV12の周囲に対して180°回転されている。この回転は手動で行っても良いし、第2のMST28bを駆動手段(モータ、ウィンチ、ギヤード機構等)により移動させても良い。この図では、ウィンチ46もRPV12から第1のMST28aまでガントリ40に沿って水平方向に移動されている。次いで、ウィンチ46は、プラットフォーム32から第1のMST28aを持ち上げるために使用され、RPV12に近接するガントリ40上の位置に戻されている。
【0084】
図1Fでは、第1のMST28aがRPV12に取り付けられており、両方のMST28a、28bが一緒にロックされている。図示されていないが、MST28a、28bは、次に、閉鎖スタッド18と係合され(例えば、その上に下げられ)、スタッド18を張力付与/張力解除するために使用され得る。続いて、スタッド18を取り外すことができ、これにより、RPV12のヘッド16を本体14から取り外すことができる。図2は、第2の実施形態によるトロリー10’及びマルチスタッド引張り装置28’を示す。マルチスタッド引張り装置28’は、リンク50によって互いに連結された複数のチェーン要素48を含む。各チェーン要素48(前チェーン要素48及び後チェーン要素48を除く)は、2つのリンク50と枢動可能に係合している。このようにして、チェーン要素48は、互いに対して枢動可能である。従って、マルチスタッド引張り装置28’は、(図に示すように)原子炉容器12の周りを包囲するか、蛇行させることができる。
【0085】
本実施形態では、反応容器12の周りのこの包囲は、トロリー10’に設けられた取り外し手段54によって容易にされている。取り外し手段54は、リニアガイド構造(例えば、レール、軌道等)54と、マルチスタッド引張り装置28’をガイド構造54に沿って漸進的に移動または前進させるためのアクチュエータまたはローラ(図示せず)とを含む。
【0086】
図示されていないが、トロリー10’は、(例えば、マルチスタッド引張り装置28’を巻き付けることによって)マルチスタッド引張り装置28’を格納するための手段を備えても良い。
【0087】
図中の矢印によって示されているように、マルチスタッド引張り装置28’は、反応容器12上に前進し、次に、取り外し手段54がマルチスタッド引張り装置28’をトロリー10’から押し出すことによって、反応容器12の周りを徐々に包囲している。反応容器12の周りを包囲するために、マルチスタッド引張り装置28’は、湾曲した/円形の形状を形成するように個々のチェーン要素48を互いに対して枢動させるアクチュエータを含む。これらのアクチュエータは、マルチスタッド引張り装置28’、トロリー10’の一部を形成するコントローラによって制御されても良く、またはトロリー10’及びマルチスタッド引張り装置28’から離れていても良い。
【0088】
マルチスタッド引張り装置28’の各チェーン要素48は、2つの引張り装置52を備えている。従って、マルチスタッド引張り装置28’が原子炉容器12を完全に取り囲むと(引張り装置52が原子炉容器12のスタッドと垂直に整列するように)、マルチスタッド引張り装置28’を原子炉容器12のスタッド上に下降させて、スタッドを張力付与/張力解除することができる。
【0089】
本発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、本明細書に記載された概念から逸脱することなく、様々な修正及び改良を行うことができることが理解されるであろう。相互に排他的な場合を除いて、任意の特徴は、別個に、または任意の他の特徴と組み合わせて使用されても良く、開示は、本明細書に記載される1つまたは複数の特徴の全ての組み合わせ及びサブ組み合わせに拡張され、それらを含む。
図1A
図1B
図1C
図1D
図1E
図1F
図2
【国際調査報告】