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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-15
(54)【発明の名称】車両構造体
(51)【国際特許分類】
   B60K 1/04 20190101AFI20231208BHJP
   H01M 50/249 20210101ALI20231208BHJP
   H01M 50/227 20210101ALI20231208BHJP
   H01M 50/242 20210101ALI20231208BHJP
   H01M 50/209 20210101ALI20231208BHJP
【FI】
B60K1/04 Z
H01M50/249
H01M50/227
H01M50/242
H01M50/209
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023534161
(86)(22)【出願日】2021-12-02
(85)【翻訳文提出日】2023-07-21
(86)【国際出願番号】 US2021061569
(87)【国際公開番号】W WO2022125367
(87)【国際公開日】2022-06-16
(31)【優先権主張番号】63/122,066
(32)【優先日】2020-12-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】000003001
【氏名又は名称】帝人株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】518153036
【氏名又は名称】テイジン オートモーティブ テクノロジーズ, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】弁理士法人信栄事務所
(72)【発明者】
【氏名】柏木 良樹
(72)【発明者】
【氏名】新井 司
(72)【発明者】
【氏名】永田 章太
(72)【発明者】
【氏名】宮内 裕司
(72)【発明者】
【氏名】手島 雅智
(72)【発明者】
【氏名】フォーラン,ヒュー
(72)【発明者】
【氏名】神山 マックス
【テーマコード(参考)】
3D235
5H040
【Fターム(参考)】
3D235AA02
3D235BB07
3D235BB17
3D235CC15
3D235DD35
3D235FF06
3D235FF07
3D235FF09
3D235FF12
3D235HH16
3D235HH26
3D235HH62
5H040AA14
5H040AS04
5H040AT02
5H040AY03
5H040AY10
5H040CC20
5H040LL06
(57)【要約】
車両構造体は、車体の中央下部に配置されたバッテリートレイと、車幅方向に延在し、バッテリートレイに挿入されるクロスメンバとを含む。バッテリートレイは、第1底部と、第1底部の外周に立設された周壁と、第1底部に接続された第1内壁と、第1底部に接続された第2内壁と、第1内壁と第2内壁の両方に接続され、第1底部から底上げされた第2底部を有し、これらが一体成形された繊維強化プラスチックで構成される。車幅方向に延びる凹部が第1内壁、第2内壁および第2底部によって形成されている。クロスメンバは凹部の少なくとも1箇所に挿入される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両構造体であって、
車体中央下部に配置されたバッテリートレイと、前記バッテリートレイに挿入された車幅方向に延びるクロスメンバと、を備え、
(1)前記バッテリートレイは、第1底部と、前記第1底部の外周に立設された周壁と、前記第1底部に接続された第1内壁と、前記第1底部に接続された第2内壁と、前記第1内壁及び前記第2内壁の両方に接続され、前記第1底部から底上げされた第2底部と、を備え、
(2)前記第1底部、前記周壁、前記第1内壁、前記第2内壁、および前記第2底部は、一体成形された繊維強化プラスチックで構成され、
(3)前記第1内壁、前記第2内壁および前記第2底部とによって車幅方向に延びる凹部が形成され、前記クロスメンバが前記凹部の少なくとも1箇所に挿入される、車両構造体。
【請求項2】
前記クロスメンバは、前記凹部に沿って凸状に屈曲している、請求項1に記載の車両構造体。
【請求項3】
前記クロスメンバは、平板状の金属板を、前記凹部に沿って凸状にプレス加工し、折り曲げることにより形成された、請求項2に記載の車両構造体。
【請求項4】
前記クロスメンバの厚さが、0.5mm以上6.0mm以下である、請求項1~3のいずれかに記載の車両構造体。
【請求項5】
前記クロスメンバと前記第2底部との間に空間が設けられる、請求項1~4のいずれか一項に記載の車両構造体。
【請求項6】
前記クロスメンバは、前記凹部に嵌合されている、請求項1~5のいずれか一項に記載の車両構造体。
【請求項7】
前記車両構造体は、複数のクロスメンバを含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の車両構造体。
【請求項8】
前記クロスメンバが、金属又は連続繊維強化複合材料からなる、請求項1~7のいずれか一項に記載の車両構造体。
【請求項9】
前記バッテリートレイは、シートモールディングコンパウンドを用いて一体成形された繊維強化プラスチックで構成される、請求項1~8のいずれか一項に記載の車両構造体。
【請求項10】
前記繊維強化プラスチックに含有される前記強化繊維の重量平均繊維長が1mm以上である、請求項9に記載の車両用構造体。
【請求項11】
前記車両構造体の断面を車幅方向から観察したとき、前記第1内壁、前記第2内壁部、前記第2底部、及び前記クロスメンバにより閉断面構造が形成される、請求項1~10のいずれか一項に記載の車両構造体。
【請求項12】
前記バッテリートレイの一次モードの固有振動数が25Hz以上である、請求項1~11のいずれか一項に記載の車両構造体。
【請求項13】
前記凹部の少なくとも1箇所に、前記バッテリートレイと一体成形されたリブが設けられている、請求項1~12のいずれか一項に記載の車両構造体。
【請求項14】
第1底部と第1内壁とのなす角度と、第1底部と第2内壁とのなす角度とが、90°以上135°以下である、請求項1~13のいずれか一項に記載の車両構造体。
【請求項15】
車両構造体において、前記第1底部の上面には、バッテリーを固定するためのリブ又はボスが設けられている、請求項1~14のいずれか一項に記載の車両構造体。
【請求項16】
前記第1内壁及び前記第2内壁の少なくとも一方が、バッテリー形状に従った形状を有する、請求項1~15のいずれか一項に記載の車両構造体。
【請求項17】
前記第1内壁及び前記第2内壁は、少なくとも車幅方向に沿って延びている、請求項1~16のいずれかに記載の車両構造体。
【請求項18】
不連続繊維が、第1底部と第1内壁との境界領域、第1底部と第2内壁との境界領域、及び第1底部と周壁との境界領域に連続して分散している、請求項1~17のいずれか一項に記載の車両構造体。
【請求項19】
前記バッテリートレイは、前記第1内壁及び前記第2内壁の両方に接続されかつ前記第1底部から底上げされたスタッドボルト台を含み、
前記スタッドボルト台は、前記第1底部、前記周壁、前記第1内壁、前記第2内壁、及び前記第2底部と一体成形された繊維強化プラスチックで構成される、請求項1~18のいずれか一項に記載の車両構造体。
【請求項20】
バッテリーブラケットを取り付けるためのスタッドボルトが、前記スタッドボルト台上に設けられる、請求項19に記載の車両構造体。
【請求項21】
前記スタッドボルト台は、非貫通の挿入孔を有し、前記スタッドボルトは、前記挿入孔に挿入される、請求項20に記載の車両構造体。
【請求項22】
車体中央下部に配置されたバッテリートレイであって、
(1)前記バッテリートレイは、第1底部と、前記第1底部の外周に立設された周壁と、前記第1底部に接続された第1内壁と、前記第1底部に接続された第2内壁と、前記第1内壁及び前記第2内壁の両方に接続され、前記第1底部から底上げされた第2底部と、を備え、
(2)前記第1底部、前記周壁、前記第1内壁、前記第2内壁及び前記第2底部は、一体成形された繊維強化プラスチックで構成され、
(3)第1内壁、第2内壁及び第2底部によって車幅方向に延びる凹部が形成され、
(4)前記凹部の少なくとも一箇所には、前記バッテリートレイと一体成形されたリブが設けられている、
バッテリートレイ。
【請求項23】
一次モードにおけるバッテリートレイの固有振動数が25Hz以上である、請求項22に記載のバッテリートレイ。
【請求項24】
前記バッテリートレイの周壁の外側に、エネルギー吸収部材を更に備え、
前記エネルギー吸収部材の最下部は、前記バッテリートレイの最下部よりも低い位置に位置する、請求項1~20のいずれか1つに記載の車両構造体。
【請求項25】
前記エネルギー吸収部材の最下部は、前記バッテリートレイの前記第1底部の下方にあり、
前記エネルギー吸収部材の最上部は、前記バッテリートレイの前記第1底部の上方にある、請求項24に記載の車両構造体。
【請求項26】
前記バッテリートレイの下に保護壁を更に含み、
前記保護壁が前記エネルギー吸収部材に接続される、請求項24又は25に記載の車両構造体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の中央下部に配置されたバッテリートレイ、及び、車幅方向に延びるクロスメンバがバッテリートレイに挿入された車両構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
電気自動車において、車載バッテリーは、かなりの重量及び搭載スペースを占めるので、車載バッテリーの構造について多数の研究がなされている。
特許文献1では、バッテリーを収容するケースが繊維強化プラスチックで構成されており、バッテリートレイの軽量化が図られている。
特許文献2には、バッテリーボックスの下方において、車体の横方向に延びる複数のクロスメンバが記載されている。
特許文献3には、複数のバッテリーが収容され、バッテリーが互いに接続されてバッテリートレイに固定されたバッテリーパックが記載されている。
特許文献4には、金属フレーム状のフレームにより、バッテリートレイの強度及び剛性を高めたバッテリーケースが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013-201112号公報
【特許文献2】特開2014-012524号公報
【特許文献3】特開2018-156825号公報
【特許文献4】特開2011-124101号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載のバッテリートレイを用いた場合、形状が平坦であるため、クロスメンバを挿入することができる空間がない。特許文献1に記載のバッテリートレイは、バッテリートレイの両側に大きなバッテリーブラケットを設ける必要があるため、バッテリートレイが大きくなる。このような大型のバッテリーブラケットを設ける場合、同量同数のバッテリーを設置するためには、車両自体の幅を広げる必要がある(車両設計の自由度が低下する)。
【0005】
また、特許文献2に記載のバッテリートレイを用いた場合にも、クロスメンバをバッテリートレイに挿入するためのスペースがない。このため、クロスメンバは、バッテリートレイの下方に配置され、クロスメンバは、バッテリートレイではなく、車体側に固定される。このため、車両の側面が衝突したとき、クロスメンバが車体に衝撃を伝達し、バッテリートレイの構造的剛性を全く利用することができない。
【0006】
特許文献3に記載のバッテリートレイの場合、バッテリー間に補強部材であるクロスメンバが設けられ、バッテリーがクロスメンバに固定される。バッテリーはバッテリートレイに対して移動しないが、別途クロスメンバを設ける必要があり、バッテリートレイが重くなる。また、別部品であるクロスメンバを取り付ける工程が必要となり、製造工程が煩雑になる。クロスメンバは、平板状のバッテリートレイ上に配置されるので、車両の側面が衝突したときのバッテリートレイの構造剛性を利用することができない。そのため、クロスメンバのみで衝撃を吸収する必要がある。
【0007】
特許文献4に記載のバッテリートレイの場合、バッテリートレイを金属製の枠体で補強する必要があり、バッテリーボックスの重量を低減することができない。車両の側面に衝撃が加わった場合、衝撃は、金属製の枠体のみで吸収される必要がある。すなわち、バッテリートレイの構造剛性が利用されない。
【0008】
本発明は、上述した従来技術の課題に鑑み、一体成形可能な繊維強化プラスチックをバッテリートレイに用い、クロスメンバをバッテリートレイの外側から挿入して、バッテリートレイを補強する車両構造体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
発明者らは、鋭意検討の結果、上述の課題を以下の手段により解決することができることを見出し、本発明を完成した。
【0010】
1.車両構造体であって、
車体中央下部に配置されたバッテリートレイと、前記バッテリートレイに挿入された車幅方向に延びるクロスメンバと、を備え、
(1)前記バッテリートレイは、第1底部と、前記第1底部の外周に立設された周壁と、前記第1底部に接続された第1内壁と、前記第1底部に接続された第2内壁と、前記第1内壁及び前記第2内壁の両方に接続され、前記第1底部から底上げされた第2底部と、を備え、
(2)前記第1底部、前記周壁、前記第1内壁、前記第2内壁、および前記第2底部は、一体成形された繊維強化プラスチックで構成され、
(3)前記第1内壁、前記第2内壁および前記第2底部によって、車幅方向に延びる凹部が形成され、
前記クロスメンバが前記凹部の少なくとも1箇所に挿入される、車両構造体。
【0011】
2.前記クロスメンバは、前記凹部に沿って凸状に折り曲げられている、上記1に記載の車両構造体。
【0012】
3.前記クロスメンバは、平板状の金属板を、前記凹部に沿って凸状にプレス加工及び折り曲げ加工することにより形成される、上記2に記載の車両構造体。
【0013】
4.前記クロスメンバの厚さが0.5mm以上6.0mm以下である、上記1~3のいずれか1つに記載の車両構造体。
【0014】
5.前記クロスメンバと前記第2底部との間に空間が設けられる、上記1~4のいずれか1つに記載の車両構造体。
【0015】
6.前記クロスメンバが、前記凹部に嵌合されている、上記1~5のいずれか1つに記載の車両構造体。
【0016】
7.前記車両構造体が、複数のクロスメンバを含む、上記1~6のいずれか1つに記載の車両構造体。
【0017】
8.前記クロスメンバが、金属又は連続繊維強化複合材料からなる、上記1~7のいずれか1つに記載の車両構造体。
【0018】
9.バッテリートレイが、シートモールディングコンパウンドを用いて一体成形された繊維強化プラスチックで構成される、上記1~8のいずれか1つに記載の車両構造体。
【0019】
10.繊維強化プラスチックに含有される強化繊維の重量平均繊維長が1mm以上である、上記9記載の車両構造体。
【0020】
11.車両構造体の断面を車幅方向から観察したとき、前記第1内壁、前記第2内壁部、前記第2底部、及び前記クロスメンバにより閉断面構造が形成される、上記1~10のいずれか1つに記載の車両構造体。
【0021】
12.一次モードにおける前記バッテリートレイの固有振動数は、25Hz以上である、1~11のいずれか1つに記載の車両構造体。
【0022】
13.前記バッテリートレイと一体成形されたリブが、前記凹部の少なくとも1箇所に設けられている、上記1~12のいずれか1つに記載の車両構造体。
【0023】
14.前記第1底部と前記第1内壁とのなす角度、および、前記第1底部と前記第2内壁とのなす角度が、90°以上135°以下である、上記1~13のいずれか1つに記載の車両構造体。
【0024】
15.前記第1底部の上面に、バッテリーを固定するためのリブ又はボスが設けられている、上記1~14のいずれか1つに記載の車両構造体。
【0025】
16.前記第1内壁及び前記第2内壁の少なくとも一方が、バッテリー形状に従った形状を有する、上記1~15のいずれか1つに記載の車両構造体。
【0026】
17.前記第1内壁及び前記第2内壁は、少なくとも車幅方向に沿って延びる、上記1~16のいずれか1つに記載の車両構造体。
【0027】
18.前記第1底部と前記第1内壁との境界領域、前記第1底部と前記第2内壁との境界領域、及び前記第1底部と前記周壁との境界領域に連続して不連続繊維が分散している、上記1~17のいずれか1つに記載の車両構造体。
【0028】
19.前記バッテリートレイは、前記第1内壁および前記第2内壁の両方に接続され、前記第1底部から底上げされたスタッドボルト台を含み、
前記スタッドボルト台は、前記第1底部、前記周壁、前記第1内壁、前記第2内壁、及び前記第2底部と一体成形された繊維強化プラスチックで構成される、上記1~18のいずれか1つに記載の車両構造体。
【0029】
20.バッテリーブラケットを取り付けるためのスタッドボルトが、前記スタッドボルト台上に設けられる、上記19に記載の車両構造体。
【0030】
21.前記スタッドボルト台は、非貫通の挿入孔を有し、前記スタッドボルトが前記挿入孔に挿入される、上記20記載の車両構造体。
【0031】
22.車体中央下部に配置されたバッテリートレイであって、
(1)前記バッテリートレイは、第1底部と、前記第1底部の外周に立設された周壁と、前記第1底部に接続された第1内壁と、前記第1底部に接続された第2内壁と、前記第1内壁及び前記第2内壁の両方に接続され、前記第1底部から底上げされた第2底部と、を備え、
(2)前記第1底部、前記周壁、前記第1内壁、前記第2内壁及び前記第2底部は、一体成形された繊維強化プラスチックで構成され、
(3)前記第1内壁、前記第2内壁及び前記第2底部によって車幅方向に延びる凹部が形成され、
(4)前記凹部の少なくとも一箇所には、前記バッテリートレイと一体成形されたリブが設けられている、バッテリートレイ。
【0032】
23.一次モードにおけるバッテリートレイの固有振動数が25Hz以上である、上記22に記載のバッテリートレイ。
【0033】
24.前記バッテリートレイの前記周壁の外側に、エネルギー吸収部材を更に備え、
前記エネルギー吸収部材の最下部は、前記バッテリートレイの最下部よりも低い位置に位置する、上記1~20のいずれか1つに記載の車両構造体。
【0034】
25.前記エネルギー吸収部材の最下部は、前記バッテリートレイの第1底部の下方にあり、前記エネルギー吸収部材の最上部は、前記バッテリートレイの第1底部よりも上方にある、上記24記載の車両構造体。
【0035】
26.前記バッテリートレイの下方に保護壁を更に含み、前記保護壁が前記エネルギー吸収部材に接続される、上記24又は25記載の車両構造体。
【発明の効果】
【0036】
本発明の車両構造体において、クロスメンバは、繊維強化プラスチックと一体成形されたバッテリートレイの形状の自由度を利用することにより、バッテリートレイに設けられた凹部の少なくとも1箇所に挿入することができる。これにより、凹部を含むバッテリートレイの上下方向の撓みの弱さを補強することができる。
また、車両の側面に衝撃が加わったとき、車体に加えてバッテリートレイの構造的剛性を利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1】バッテリートレイを用いた車両構造体の一例を示す分解斜視図である。
図2】バッテリートレイの一例を示す概略斜視図である。
図3】バッテリートレイの一例の概略断面図(図2の202-202線に沿った断面、及びスタッドボルト台が設けられていない位置の断面)である。
図4】バッテリートレイの一例の概略断面図(図2の203-203線に沿った断面、スタッドボルト台が存在する位置の断面)である。
図5A】バッテリートレイの一例の概略断面図である。
図5B図5Aにおける第1底部303と第1内壁206との境界領域、及び第1底部303と第2内壁207との境界領域の拡大図である。
図5C図5Aにおける第1底部303と周壁205との境界領域の拡大図である。
図6】バッテリーカバーを用いた車両構造体の一例を示す概略図である。
図7A図6の線601-601に沿った断面を示す概略図である。
図7B】クロスメンバを観察できるようにした図7Aの拡大模式図(リブが設けられていない位置の観察)である。
図7C】クロスメンバ及びリブが観察されるように図7Aを拡大した概略図である。
図8】バッテリーカバーの一例を内側から見た模式図である。
図9】バッテリートレイが曲がりやすい方向を示す模式図である。
図10】バッテリートレイの下方に保護壁を含む車両構造体の一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明するが、本発明はこれに限定されない。
【0039】
図示の車両構造体は、車体中央下部に配置され、バッテリートレイ105およびバッテリーカバー102を含むバッテリーボックス101と、エネルギー吸収部材108とを含む。バッテリートレイ105には、クロスメンバ701が挿入されている。バッテリートレイ105及びバッテリーカバー102は、それぞれ、一体成形された繊維強化プラスチックで構成されている。エネルギー吸収部材108は、衝撃エネルギーを吸収するために用いられる。バッテリーボックス101は、バッテリー103を収容している。
【0040】
また、バッテリートレイ105には、温度制御用の冷却機構104が設けられていてもよい。
バッテリー蓋102、バッテリートレイ105、及びエネルギー吸収部材108は互いに固定されている。締結状態が図6に示されている。図7B及び図7Cに示すように、クロスメンバ701は、バッテリートレイ105の図2に示す凹部208に挿入される。
【0041】
[バッテリートレイ]
バッテリートレイ105は、自動車を運転するためのバッテリートレイであり、車両を運転するためのバッテリー103が搭載される。車両を駆動するためのバッテリー103は、バッテリートレイ105及びバッテリーカバー102を含むバッテリーボックス101に収容されている。バッテリートレイ105は、強化繊維及び樹脂を含有する強化繊維プラスチックを用いて形成される。
【0042】
バッテリートレイ105は、第1底部303と、第1底部303の外周に立設された周壁205とを有する。バッテリートレイ105は更に、第1底部303に接続された第1内壁206、第1底部303に接続された第2内壁、及び第1内壁206及び第2内壁207の両方に接続され、第1底部から底上げされた第2底部301を含む。
第1底部303、周壁205、第1内壁206、第2内壁207、及び第2底部301は、一体成形された繊維強化プラスチックで構成されている。
【0043】
このように、第1内壁206と第2内壁207とにより内隔壁107が形成されるので、内隔壁が底面から高く形成されていても、補強繊維を先端まで含む壁を容易に製造することができる。
【0044】
[フランジ]
バッテリートレイ105は、例えば、図4に示すフランジ402を有する。バッテリートレイ105のフランジは、バッテリーカバー102とエネルギー吸収部材108とを互いに固定するために用いられる。
【0045】
[第1底部]
第1底部303の下面は、バッテリートレイ105の最下面である。第1底部303の上面には、バッテリーが配置されていてもよいし、バッテリーと第1底部との間に設けられた空間に、冷却機構104又は通気機構が設けられていてもよい。また、第1底部は、完全に平板状である必要はなく、波状であってもよいし、曲面であってもよい。
【0046】
[周壁]
周壁205は、第1底部303の外周に立設されており、第1底部303の表面と連続して形成されていることが好ましい。
【0047】
[第1内壁及び第2内壁]
第1内壁206は、第1底部303に接続されている。バッテリートレイを形成する繊維強化プラスチックは、第1内壁206と第1底部303との間で曲げられる。第1底部303は、第1内壁206に連続的に接続され、第1底部303と第1内壁206は、継ぎ目なく一体成形される。
【0048】
同様に、第2内壁207は、第1底部303に接続されている。バッテリートレイを形成する繊維強化プラスチックは、第2内壁207と第1底部303との間で折り曲げられる。第1底部303は、第2内壁207に連続的に接続され、第1底部303と第2内壁207は、継ぎ目なく一体成形される。繊維強化プラスチックを用いた場合、継ぎ目を設けることなく、一体成形を容易に行うことができる。
第1内壁206及び第2内壁207は、バッテリートレイを形成する繊維強化プラスチックを曲げることにより形成される。
【0049】
[内部隔壁]
第1内壁206及び第2内壁207は、図1に示す内部隔壁107を形成し、バッテリートレイ105の内部を区画する。このような内部隔壁107は、2個以上存在してもよい。図1図2では、内側隔壁107がY軸方向に形成され、合計4個の内側隔壁107が延びている。図1図2中のX軸は車軸方向(車両の進行方向)を表し、Y軸は車幅方向を表すことが好ましい。
【0050】
[スタッドボルト台]
バッテリートレイ105は、第1内壁206及び第2内壁207の両方に接続され、第1底部303から底上げされたスタッドボルト台407を含み得る。スタッドボルト台407は、第1底部303、周壁205、第1内壁206、第2内壁207、及び第2底部301と一体成形された繊維強化プラスチックである。スタッドボルト台407は、第1内壁206及び第2内壁207の両方に接続され、第1底部303から隆起していることが好ましい。第1内壁206及び第2内壁207は、スタッドボルト台407を介して互いに接続され得る。
【0051】
すなわち、バッテリートレイ105は、フランジ402と、第1底部303と、第1底部303の外周に立設された周壁205と、第1底部303に接続された第1内壁206と、第1底部303に接続された第2内壁207と、第1内壁206と第2内壁207の両方に接続され、第1底部303から底上げされたスタッドボルト第407を有する。
【0052】
スタッドボルト台407がバッテリートレイ105に設けられる場合、スタッドボルト台407を別部品として設ける必要はない。バッテリーボックス101の構成要素であるバッテリートレイ105は、一体成形された繊維強化プラスチックであり、繊維強化プラスチックの成形が完了するとすぐにスタッドボルト台407が設けられる。
【0053】
[一体成形]
第1底部303、周壁205、第1内壁206、第2内壁207、及び第2底部301は、一体成形された繊維強化プラスチックで構成されている。好ましい実施形態において、バッテリーを固定するためのスタッドボルト台407も一体成形することができ、更に、フランジ402、第1底部303、周壁205、第1内壁206、第2内壁207、及びスタッドボルト台407は、一体成形された繊維強化プラスチックで構成される。
【0054】
ここで、一体成型とは、これらの部品が継ぎ目なく連続成型され、別々の部材を接合して成型されないことをいう。かかる一体成形は、繊維強化プラスチックを1回の成形で製造することにより、好ましくはプレス成形により実施することができる。繊維強化プラスチックは、シートモールディングコンパウンド(SMCとも呼ばれる)を一体成形することにより製造され得る。
【0055】
部品が一体成形により形成されるので、別々の部品を1つの部品として加工することができ、部品単価を低減することができる。また、組み立て工程数が削減され、部品点数を削減することにより、在庫に係るコストを削減することができる。
【0056】
[第2底部]
第1内壁206と第2内壁207は、第2底部301を介しても互いに接続されており、第2底部301は、好ましくは、第1内壁206と第2内壁207とにより隆起している。換言すれば、第1内壁206及び第2内壁207は、内側隔壁107を形成し、第2底部301は、内側隔壁107の頂部である。
【0057】
図3は、図2の202-202線に沿った断面図であり、第2底部301は、第1内壁206及び第2内壁207により形成される内側隔壁107の上部の底面部に描かれている。
【0058】
図3は、スタッドボルトの挿入孔412を設ける必要がなく、スタッドボルト台407が描かれていない位置の断面図である。
【0059】
第2底部301の反対側の面は、金属カバー304で覆われており、剛性が向上している。
【0060】
[第2底部の高さ]
第1底部からフランジまでの高さh1と、第1底部から第2底部の上面までの高さh3とは、h1×0.3<h3<h1×2.0の関係を満たすことが好ましい。高さh1及びh3が図3に示されている。第2底部が曲面等である場合、h3が最大となる長さが測定される。
【0061】
h1×0.3<h3の場合、内側隔壁の高さが高くなるので、バッテリー(103、410)を安定して保持することができる。h3の下限値に関して、h1×0.5<h3がより好ましく、h1×0.6<h3が更に好ましく、h1×0.7<h3が一層好ましい。
【0062】
h3の上限値に関して、h3<h1×1.8がより好ましく、h3<h1×1.5が更に好ましく、h3<h1×1.2が一層好ましく、h3<h1×1.0が最も好ましい。
【0063】
[クロスメンバ]
本発明の車両構造体において、図7B及び図7Cに示すように、クロスメンバ701は、バッテリートレイ105に挿入される。なお、用語「クロス」は、車幅方向(図1におけるY軸方向)の部材を指す。
【0064】
[クロスメンバ:配置]
具体的には、車幅方向に延びる凹部208は、第1内壁206、第2内壁部207、及び第2底部301により形成され、クロスメンバ701は、凹部208の少なくとも1箇所に挿入されることが好ましい。凹部208は、第1内壁206、第2内壁206、及び第2底部301により囲まれた空間領域313を形成する。
【0065】
クロスメンバ701が凹部208に挿入された後、クロスメンバ701と第2底部301との間に空間703が設けられることが好ましい。空間703を設けることにより、クロスメンバ701とバッテリートレイ105による打撃音を回避することができる。
【0066】
複数のクロスメンバ701が存在することが好ましく、第1内壁206、第2内壁207、及び第2底部301により形成される車幅方向に延びる凹部208の2箇所以上にクロスメンバ701が挿入されることがより好ましい。クロスメンバ701は、全ての凹部208に挿入されることがより好ましい。
【0067】
クロスメンバ701は、バッテリートレイ105の車幅方向に延びており、図2に示すように、バッテリートレイ105の車幅方向の端部から反対側の端部に延びていてもよい。
【0068】
[クロスメンバ:形状]
クロスメンバ701の形状は特に限定されないが、クロスメンバ701の断面を車幅方向(図2におけるY軸方向)から見たとき、断面はT字形、L字形、又はこれらの組み合わせであってもよい。クロスメンバ701は、第1内壁206、第2内壁207、及び第2底部301により形成される凹部208に沿って、車幅方向に延びるように、凸状に折り曲げられている。すなわち、車両構造体の車両側面方向の断面を観察するとき、クロスメンバは、上方に突出した形状となるように折り曲げられ、凹部208に挿入されることが好ましい。図7B及び7Cは、曲げられたクロスメンバ701を示す。クロスメンバ701は、平板状の金属板を押圧することにより、凹部208に沿って凸状に折り曲げられることが好ましい。ここで、「凹部に沿って」とは、完全に凹部に沿っている必要はなく、実質的に凹部に沿っていてもよいことを意味する。
【0069】
車両構造体の断面を車幅方向から観察すると、図7B及び図7Cに示すように、第1内壁206、第2内壁207、第2底部301、及びクロスメンバ701により、閉じた断面構造703が形成されることが好ましい。クロスメンバ701と第2底部301との衝突音を避けるため、クロスメンバ701の突出形状の高さは、クロスメンバ701が第2底部301に接触しない程度に設定することが好ましい。
【0070】
[クロスメンバ:嵌合]
クロスメンバ701は、車幅方向に延び、凹部208に嵌め込まれることが好ましい。この場合、クロスメンバ701は、図7B及び図7Cに示すように、凸形状を有することが好ましい。すなわち、クロスメンバ701の突出部は、第1内壁206、第2内壁207、及び第2底部301により形成される、車幅方向に延びる凹部208に嵌合することが好ましい。
【0071】
[クロスメンバ:接合]
クロスメンバ701は、第1底部303に接合されることが好ましく、接着剤で第1底部303に接着されてもよい。接着の場合、バッテリートレイ105に穴をあける必要がなく、締結の場合と比較して気密性が向上する。
【0072】
[クロスメンバ:材料]
クロスメンバ701は、好ましくは、金属又は連続繊維強化複合材料である。連続繊維強化複合材料が用いられるとき、繊維は、好ましくは、車幅方向(図2のY軸方向)に配向される。金属は合金であってもよい。
【0073】
[クロスメンバ:厚さ]
クロスメンバ701の厚さは、好ましくは0.5mm以上6.0mm以下、より好ましくは1.0mm以上5.0mm以下、更により好ましくは1.0mm以上4.0mm以下である。
【0074】
[クロスメンバ配置の効果]
バッテリートレイ105は、凹部208を有し、凹部208は、第1内壁206、第2内壁207、及び第2底部301により囲まれた空間領域313を形成する。凹部208が設けられているので、バッテリートレイ105は上下方向に折れ曲がりやすい。具体的には、上下方向の湾曲は、図9の矢印901方向の湾曲であり、バッテリートレイ105の車両前後方向の端部の湾曲である。
【0075】
クロスメンバ701は、バッテリートレイ105の凹部208に挿入され、第1底部303がクロスメンバ701に接合されることにより、振動による上下方向(図9の矢印901方向)の撓みが規制される。クロスメンバ701が車幅方向に延び、凹部208に嵌合して接合されることにより、クロスメンバ701の撓みを更に抑制することができる。
【0076】
[バッテリートレイの凹部のリブ]
本発明の車両構造体において、図7Cに示すように、凹部208の少なくとも1箇所には、バッテリートレイ105と一体に形成されたリブ702が設けられていることが好ましい。換言すれば、リブ702は、第1内壁206、第2内壁207、及び第2底部301により形成される、車幅方向に延びる凹部208のうち、延在する凹部208の少なくとも1箇所に設けられることが好ましい。複数のリブ702は、延在する凹部208の延在方向に断続的に設けられることがより好ましい。図7Cは、リブ702がバッテリートレイ105の凹部に存在する部分を示し、図7Bは、リブ702がバッテリートレイ105の凹部に存在しない部分を示す。
【0077】
バッテリートレイ105の凹部208におけるリブ702の厚さは、1mm以上4mm以下であることが好ましく、2.5mm以上3mm以下であることがより好ましい。リブ702の高さは、10mm以上30mm以下であることが好ましい。リブ702の厚さは、図7においてY軸方向の厚さであり、リブ702の高さは、図7においてZ軸方向の高さである。
【0078】
バッテリートレイ105の凹部208にリブ702を設けることにより、振動による上下方向(図9の矢印901方向)の撓みを抑制することができる。
【0079】
[バッテリートレイの一次モードの固有振動数]
バッテリートレイ105の一次モードの固有振動数は、25Hz以上であることが好ましい。一般に、車体の固有振動数は25Hz以下であるため、バッテリートレイ105は車体と共振しないように設計することが好ましい。バッテリートレイ105の一次モードの固有振動数は、30Hz以上であることがより好ましく、35Hz以上であることがより好ましく、40Hz以上であることが更に好ましい。
【0080】
より具体的には、バッテリートレイ105と一体成形されたリブ702は、凹部208の少なくとも1箇所に設けられることが好ましく、これにより、バッテリートレイ105の一次モードの固有振動数は25Hz以上となる。バッテリートレイ105は、凹部208を有するので、一次モードの固有振動数を25Hz以上にすることが容易である。あるいは、リブ702が更に凹部208に設けられ、これにより、バッテリートレイ105の一次モードの固有振動数がより容易に25Hz以上となる。
【0081】
リブ702とクロスメンバ701とは、接触せず、隙間があることが好ましい。リブ702とクロスメンバ701とは接触しないので、リブ702とクロスメンバ701との衝突音を回避することができる。
【0082】
振動制御のみに着目すると、クロスメンバ701がなくても問題はない。そこで、以下では、クロスメンバ701を本発明の車両構造体から除いたバッテリートレイ105として説明する。
【0083】
[リブを設けたバッテリートレイ]
バッテリートレイは、車体中央下部に配置されたバッテリートレイ105であり、
(1) バッテリートレイ105は、第1底部303と、第1底部303の外周に立設された周壁205と、第1底部303に接続された第1内壁206と、第1底部303に接続された第2内壁207と、第1内壁206及び第2内壁207の両方に接続され、第1底部303から底上げされた第2底部301と、を含む。
(2) 第1底部303、周壁205、第1内壁206、第2内壁207、及び第2底部301は、一体成形された繊維強化プラスチックにより形成される。
(3) 第1内壁206、第2内壁部207、及び第2底部301により、車幅方向に延びる凹部208が形成されている。
(4) バッテリートレイ105と一体成形されたリブは、凹部208の少なくとも1箇所に設けられている。
【0084】
[角度]
第1底部303と第1内壁206とにより形成される角度は、図4にαで示されている。第1底部303と第2内壁207とにより形成される角度は、図4においてβで示されている。
【0085】
第1底部303と第1内壁206とのなす角度α、及び第1底部303と第2内壁207とのなす角度βは、90°以上135°以下であることが好ましい。角度α、βが90°以上であると、成形時にバッテリートレイを成形型から取り出しやすくなる。一方、角度α、βが135度以下である場合、バッテリー103の形状が直方体又は立方体であっても、第1内壁206及び第2内壁207の形状をバッテリー103の形状に容易に合わせることができる。
【0086】
すなわち、第1底部303と第1内壁206とのなす角度αと、第1底部303と第2内壁207とのなす角度βとが90°以上135°以下であると、単位体積当たりのバッテリートレイ105に対するバッテリー103のサイズを大きくすることができる。
【0087】
第1底部303と第1内壁206とにより形成される角度α、及び第1底部303と第2内壁207とにより形成される角度βは、より好ましくは90°以上120°以下、更により好ましくは90°以上100°以下である。
【0088】
第1底部303と第1内壁206とにより形成される角度α、及び第1底部303と第2内壁207とにより形成される角度βを測定するために、バッテリートレイ105の断面が観察され得る。断面観察の方向は、第1内壁206又は第2内壁207に垂直な方向であることが好ましい(例えば、図4の断面観察)。
【0089】
断面観察において、第1底部303、第1内壁206、又は第2内壁207が湾曲した形状を有する場合、曲線に接線を引いて接線との角度を測定し、最大角度及び最小角度を平均して角度α又は角度βを算出する。
【0090】
[スタッドボルトおよびスタッドボルト台]
本発明のバッテリートレイ105は、好ましくは、スタッドボルト台407上に、バッテリーブラケットを取り付けるためのスタッドボルト409を含む。第1内壁206と第2内壁207は、スタッドボルト台407を介して互いに接続されている。換言すれば、スタッドボルト台407は、内側隔壁208の上部に設けられることが好ましい。
【0091】
また、スタッドボルト台407は、非貫通の挿入孔412を有し、スタッドボルト409が挿入孔412に挿入されてもよい。
【0092】
スタッドボルト409は、両端にねじ部が形成されたボルトであり、その一端がスタッドボルト台407の挿入孔にねじ込まれている。反対側には、バッテリーを固定するためのバッテリーブラケット411が固定されている。スタッドボルト409の形状は特に限定されない。
【0093】
図5Aに示すスタッドボルト台407の厚さt1と、図3に示す第2底部301の厚さt2とは、t2<t1を満たすことが好ましい。すなわち、第1内壁206と第2内壁207とにより形成される内側隔壁208の頂部201の厚さは、Y軸方向(車幅方向)に向けて凹凸構造を形成するのに寄与することが好ましい。頂部201は、好ましくは、スタッドボルト台407と第2底部301の繰り返し構造である。第2底部の厚さt2は、スタッドボルト台の厚さt1(肉厚とも呼ばれる)よりも小さく設計されているので、バッテリートレイ105の重量を低減することができる。t2×0.8<t1を満たすことがより好ましく、t2×0.5<t1を満たすことが更により好ましい。
【0094】
フランジ402、第1底部303、周壁205、第1内壁206、第2内壁207、スタッドボルト台407、及び第2底部301は、一体成形された繊維強化プラスチックにより形成されている。
【0095】
[バッテリー固定用スルーホール]
バッテリーをバッテリートレイに固定するために、従来技術によるバッテリートレイの場合、バッテリートレイに貫通孔を設け、バッテリーブラケットをバッテリートレイに固定する必要がある。
【0096】
本発明の好ましい実施形態において、スタッドボルト台407は、バッテリートレイ105と一体成形された繊維強化プラスチックで構成され、厚みのある凹凸構造である。すなわち、第1内壁206、第2内壁207、第1底部303、及びスタッドボルト台407に、バッテリー103を固定するための貫通孔を設けることができない。このような貫通孔を設けないことにより、バッテリーボックス101のシール性を向上させることができ、バッテリーボックス101内の湿度を安定させることができ、バッテリーの寿命を延ばすことができる。また、周壁205には、バッテリー103を固定するための貫通孔が設けられていないことが好ましい。
【0097】
[スタッドボルト台の高さ]
第1底部303からフランジ402までの高さh1、及び第1底部303からスタッドボルト台407の上面までの高さh2は、h1×0.3<h2<h1×2.0を満たすことが好ましい。
【0098】
第1底部303は厚さを有するので、高さh1は、第1底部303の垂直中心を基準にして測定される。第1底部303が波状又は曲面を有する場合、h2が最大となる長さが測定される。
【0099】
高さh1及びh2が図4に示されている。
h1×0.3<h2を満たす場合、スタッドボルト台407の位置が第1底部303より高くなるので、バッテリーブラケット411を取り付けるためのスタッドボルト409の位置を高くすることができる。これにより、バッテリーを固定するためのバッテリーブラケット411の固定位置が上がり、バッテリーブラケット411の長さを短くすることができる。バッテリーブラケット411は、一般に、アルミニウムなどの金属で構成されるので、バッテリーブラケット411の長さを短くすることにより、軽量化に寄与することができる。
【0100】
h2の下限値に関して、h1×0.5<h2がより好ましく、h1×0.6<h2が更により好ましく、h1×0.7<h2が更により好ましい。
h2の上限値に関して、h2<h1×1.8がより好ましく、h2<h1×1.5が更に好ましく、h2<h1×1.2が一層好ましく、h2<h1×1.0が最も好ましい。
【0101】
h1×0.3<h2<h1×2.0を満たすと、図4に示すように、第1内壁206、第2内壁207、及びスタッドボルト基部407により囲まれた空間領域313が大きくなる。スペース面積313が大きい場合、スタッドボルト台407を設けても、クロスメンバ701を容易に挿入することができる。
【0102】
第1底部303からスタッドボルト基部407の上面までの高さh2と、第1底部303から第2底部301の上面までの高さh3との関係は、好ましくはh2×0.8<h3<h1×1.2、より好ましくはh2×0.9<h3<h1×1.1、更により好ましくはh2=h3である。
【0103】
[バッテリーを固定するためのリブおよびボス]
バッテリートレイ105の第1底部303の上面には、バッテリー103を固定するためのリブ又はボスが設けられている。第1底部の上面は、バッテリートレイ105のバッテリーが載置される面である。下面は、上面の反対側の面である。リブ又はボスは、バッテリーだけでなく、電線や冷却機構104も固定することが好ましい。
ここで、用語「固定」は、バッテリーの移動を禁止することに言及し、完全な固定を意味しない。
【0104】
リブの高さhrとバッテリーの高さhbとの関係は、hb×0.3<hrであることが好ましく、hb×0.5<hrであることがより好ましい。より具体的には、リブの高さhrは、20~70mmであることが好ましく、30~60mmであることがより好ましく、40~50mmであることが更に好ましい。この範囲であれば、バッテリートレイ105の剛性も向上させることができる。
【0105】
また、バッテリーを固定するためのリブ又はボスは、繊維強化プラスチックとして一体成形されていることが好ましい。リブ又はボスは、繊維強化プラスチックと一体成形することにより設けられるので、バッテリーの固定を容易に補強することができる。
【0106】
[第1内壁及び第2内壁の形状]
1. バッテリー形状に従った形状
第1内壁206及び第2内壁207の少なくとも一方は、バッテリー形状に従った形状を有することが好ましい。第1内壁206及び第2内壁207は、バッテリー形状に従った形状を有することがより好ましい。すなわち、内側隔壁208は、バッテリー形状に追従した形状を有することがより好ましい。
【0107】
バッテリー形状に従う形状は、第1内壁206又は第2内壁207の形状がバッテリーの形状に沿って設計されることを意味する。例えば、バッテリー103が立方体又は直方体である場合、第1内壁206又は第2内壁207は直線状の壁である。
第1内壁及び第2内壁は、1つのバッテリーがバッテリーの形状に従うように(バッテリーの周囲に従うように)設けられ得る。各バッテリーには、(第1内壁と第2内壁とで形成される)内部隔壁が設けられており、1つのバッテリーに燃焼等の問題が生じても、他のバッテリーに影響を与えないことが好ましい。
【0108】
図2において、第1内壁(206)及び第2内壁(207)は、車幅方向(図2におけるY軸方向)のみ図示されているが、進行方向(図2におけるX軸方向)に延びていてもよい。
【0109】
2. 車体下部への取り付け
本発明におけるバッテリートレイ105は、電気自動車の車体下部に取り付けられ、車幅方向に沿って第1内壁206及び第2内壁207を含むことが好ましい。これにより、クロスメンバを車幅方向に容易に設置することができる。
【0110】
ここで、車幅方向は、例えば、図1におけるY方向であり、車幅方向である。車幅方向は、車体の左右方向とも呼ばれる。例えば、図1において、第1内壁及び第2内壁である内側隔壁107は、車幅方向に延びている。
【0111】
[繊維強化プラスチック]
1. 強化繊維
繊維強化プラスチックに含有される強化繊維は、特に限定されないが、炭素繊維、ガラス繊維、アラミド繊維、ホウ素繊維、及び玄武岩繊維からなる群から選択される1本以上の強化繊維であることが好ましい。強化繊維は、より好ましくはガラス繊維である。強化繊維としてガラス繊維を用いる場合、ガラス繊維の平均繊維径は、1μm~50μmであることが好ましく、5μm~20μmであることがより好ましい。平均繊維径が大きいと、樹脂の繊維への含浸が容易になり、平均繊維径が上限以下であると、成形性及び加工性が向上する。
【0112】
2. 不連続繊維
強化繊維は、好ましくは、不連続繊維を含有する。不連続繊維を用いた場合、連続繊維のみを用いた繊維強化プラスチックと比較して、成形性が向上し、複雑な成形品を形成することが容易になる。
【0113】
3. 強化繊維の重量平均繊維長
強化繊維の重量平均繊維長は、好ましくは1mm以上、より好ましくは1mm以上100mm以下、更に好ましくは1mm~70mm、一層好ましくは1mm~50mmである。
【0114】
近年、車載バッテリーは大型化し、バッテリーボックスの縦横寸法は1m×1m、1.5×1.5mなどである。重量平均繊維長が1mm以上であると、このような大型のバッテリー箱を製造した場合であっても、大型のバッテリーを収納するための機械的特性が確保されやすい。本発明のバッテリートレイにおいて、強化繊維の重量平均繊維長が1mm以上であると、バッテリートレイ自体に構造的剛性を付与しやすい。
【0115】
射出成形により製造される繊維強化プラスチックにおいて、強化繊維の重量平均繊維長は、約0.1~0.3mmである。従って、強化繊維の重量平均繊維長が1mm以上100mm以下である場合、繊維強化プラスチックは、プレス成形により製造されることが好ましい。
【0116】
補強繊維の重量平均繊維長が100mm以下であると、流動性に優れるので好ましい。
本発明において、繊維長の異なる不連続強化繊維を組み合わせて用いてもよい。換言すれば、本発明において用いられる不連続強化繊維は、重量平均繊維長の分布において、1個又は複数個のピークを有していてもよい。
【0117】
4. 繊維体積割合
強化繊維の繊維体積割合Vfは、特に限定されないが、好ましくは20%~70%、より好ましくは25%~60%、更に好ましくは30%~55%である。
繊維体積割合(Vf単位:体積%)は、強化繊維及びマトリックス樹脂のみならず、他の添加剤も含む繊維強化プラスチック全体の体積に対する強化繊維の体積の比率である。
【0118】
5. 樹脂
本発明において、樹脂の種類は特に限定されず、熱硬化性樹脂又は熱可塑性樹脂が用いられる。熱硬化性樹脂を用いる場合、熱硬化性樹脂は、不飽和ポリエステル系樹脂、ビニルエステル系樹脂、エポキシ系樹脂、又はフェノール系樹脂であることが好ましい。
樹脂としては、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0119】
6. その他の剤
本発明において用いられる繊維強化プラスチックは、本発明の目的を損なわない限り、添加剤(例えば、有機繊維又は無機繊維の種々の繊維状又は非繊維状充填剤、無機充填剤、難燃剤、UV耐性剤、安定剤、剥離剤、顔料、軟化剤、可塑剤、及び界面活性剤)を含有してもよい。
熱硬化性樹脂を用いる場合、増粘剤、硬化剤、重合開始剤、重合禁止剤等を含有してもよい。
添加剤としては、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0120】
7. シート成形材料
本発明の繊維強化プラスチックは、好ましくは、強化繊維を用いてシートモールディングコンパウンド(SMCとも呼ばれる)を成形することにより得られる。シートモールディングコンパウンドは、成形性が高いため、バッテリートレイやバッテリー蓋などの複雑な形状であっても容易に成形することができる。
【0121】
すなわち、シート成形材料を成形して繊維強化プラスチックを製造し、凹凸を有するバッテリートレイを製造することができる。シート成形材料は、連続繊維よりも流動性及び成形性が高く、リブ及びボスを容易に製造することができる。
【0122】
シートモールディングコンパウンド(SMC)を用いた繊維強化プラスチックとしては、コンチネンタル構造プラスチックス(Continental Structural Plastics)(略称:CSP)製のシートモールディングコンパウンドを用いることができる。
【0123】
[境界領域における不連続繊維の分散]
不連続繊維は、第1底部303と第1内壁206との境界領域、第1底部303と第2内壁207との境界領域、及び第1底部303と周壁205との境界領域に連続して分散していることが好ましい。
【0124】
第1底部303、周壁205、第1内壁206、及び第2内壁207は、一体成形された繊維強化プラスチックにより形成されているので、不連続繊維を境界領域に容易に連続的に分散させることができる。
【0125】
「強化繊維が境界領域に連続的に分散される」という文章は、強化繊維が境界領域の少なくとも一部に連続的に分散されてもよく、境界領域全体に連続的に分散される必要はないことを意味する。
【0126】
境界領域において、補強繊維が面内方向に連続的に分散していると、境界領域の機械的特性が従来に比べて改善される。
第1内壁206又は第2内壁207に対応する隔壁が、バッテリーボックス101の構成要素を一体成形することなく、別個の構成要素として取り付けられる場合、隔壁を第1底部303に固定する必要がある。しかしながら、内部隔壁を一体成形せずに別部品として取り付けると、第1底部303との締結力が必然的に低下し、締結力が不安定になる。
【0127】
[繊維強化プラスチックの最小厚さ]
本発明において、繊維強化プラスチックの最小厚さは、好ましくは1.0mm以上5mm未満、より好ましくは1.5mm以上5mm未満、より好ましくは5mm未満、更に好ましくは2mm以上5mm以下、一層好ましくは3mm以上5mm以下である。最小厚さが5mm以下であることは、バッテリー箱の軽量化の観点から好ましい。繊維強化プラスチックの最小厚さが1.0mm以上であると、バッテリー温度が外気温の影響を受けにくい。
【0128】
バッテリートレイの場合、繊維強化プラスチックの最小厚さは、好ましくは2mm以上5mm未満、より好ましくは3mm以上5mm未満である。
バッテリー蓋の場合、繊維強化プラスチックの最小厚さは、1mm以上4mm未満であることが好ましく、1mm以上3mm未満であることがより好ましい。
【0129】
[内側コーナー部の曲率半径]
第1底部303と周壁205との境界領域には、曲率半径1mm以上10mm以下の内側コーナー部が形成されることが好ましい。曲率半径は、より好ましくは1mm以上7mm以下、更に好ましくは2mm以上4mm以下である。
第1底部303と周壁205との境界領域における内側コーナー部は、図5CにおいてR501で表される。
【0130】
また、第1底部303と第1内壁206との境界領域に、曲率半径1mm以上10mm以下の内側コーナー部を形成することが好ましい。第1底部303と第1内壁206との間の境界領域における内側コーナー部は、図5BにおいてR520で示されている。曲率半径は、より好ましくは1mm以上7mm以下、更に好ましくは2mm以上4mm以下である。
【0131】
また、第1底部303と第2内壁207との境界領域に、曲率半径1mm以上10mm以下の内側コーナー部を形成することが好ましい。第1底部303と第2内壁207との間の境界領域における内側コーナー部は、図5BにおいてR530により示されている。曲率半径は、より好ましくは1mm以上7mm以下、更に好ましくは2mm以上4mm以下である。
【0132】
[外側コーナー部の曲率半径]
第1底部303と周壁205との境界領域には、曲率半径2mm以上11mm以下の外側コーナー部が形成されていることが好ましい。曲率半径は、より好ましくは2mm以上8mm以下、更に好ましくは3mm以上7mm以下である。
第1底部303と周壁205との境界領域における外側コーナー部は、図5CにおいてR502で示されている。
【0133】
また、第1底部303と第1内壁206との境界領域に、曲率半径2mm以上11mm以下の外側コーナー部を形成することが好ましい。第1底部303と第1内壁206との間の境界領域における外側コーナー部分は、図5CにおいてR521により示されている。曲率半径は、より好ましくは2mm以上8mm以下、更に好ましくは3mm以上7mm以下である。
【0134】
また、第1底部303と第2内壁207との境界領域に、曲率半径2mm以上11mm以下の外側コーナー部を形成することが好ましい。第1底部303と第2内壁207との間の境界領域における外側コーナー部分は、図5BにおいてR531により示されている。曲率半径は、より好ましくは2mm以上8mm以下、更に好ましくは3mm以上7mm以下である。
外側コーナー部分の曲率半径は、好ましくは、内側コーナー部の曲率半径より大きい。
【0135】
[エネルギー吸収部材]
本発明の車両構造体は、好ましくは、バッテリートレイ105の周壁の外側に、エネルギー吸収部材であるエネルギー吸収部材108を含む。
自動車用バッテリーの搭載量の増大に伴い、バッテリーボックス101のサイズは年々増大している。バッテリーボックス101の車幅方向の長さは、自動車の幅の70%以上であることが多く、自動車の幅の80%以上であってもよい。このため、大型のバッテリーボックス101が自動車の下部に搭載されると、衝突時に従来よりも大きな負荷がバッテリーボックス101に入力される。そのため、バッテリー自体を保護するためのエネルギー吸収構造を有することが好ましい。
【0136】
エネルギー吸収部材であるエネルギー吸収部材108は、車幅方向からのエネルギーを吸収するために設けられることが好ましく、周壁の車体前後方向外側に沿って設けられることが好ましい。
【0137】
クロスメンバ701は、エネルギー吸収部材であるエネルギー吸収部材108に接合されてもよい。これにより、車両の一方の側面に衝撃が加わったとき、衝撃受け側のエネルギー吸収部材に加えて、衝撃受け側と反対側のエネルギー吸収部材も衝撃エネルギーの吸収に寄与することができる。
【0138】
エネルギー吸収部材108の最下部は、バッテリートレイ105の最下部よりも低い位置にあることが好ましい。より好ましくは、エネルギー吸収部材108の最下部は、バッテリートレイ105の第1底部303の下方にあり、エネルギー吸収部材108の最上部は、車幅方向から見て、バッテリートレイ105の第1底部303の上方にある。
【0139】
車幅方向から見たとき、バッテリートレイ105の第1底部303がエネルギー吸収部材108で覆われていると、衝突時に、バッテリートレイ105の第1底部303をエネルギー吸収部材108により保護することができる。
【0140】
また、エネルギー吸収部材108の上下方向の位置(高さ)を調整することにより、後述する保護壁1001を設けた際に、バッテリートレイ105が受ける下方からの衝撃から保護することができる。
【0141】
[保護壁]
車両構造体は、バッテリートレイの下に保護壁を含み得る。
1. 詳細は以下の通りである。
バッテリートレイと、バッテリートレイの下方に設けられた保護壁とを含む車両構造体が提供される。バッテリートレイ及び保護壁のそれぞれは、繊維強化プラスチックで作られる。保護壁は、締結ロッドによりバッテリートレイの少なくとも1つの位置に締結される。バッテリートレイには、締結用の挿入孔が一体成形されている。
保護壁の一例は、図10において1001で表される。図10において、締結ロッドは1002で表され、挿入孔は1003で表される。
バッテリートレイ105の下部の保護壁1001は、好ましくは、エネルギー吸収部材108に接続される。保護壁1001は、バッテリートレイ105を下方から受ける衝撃から保護することができる。
【0142】
2. 挿入孔
バッテリートレイから保護壁に向かって突出する挿入台(図10の1004)が設けられ、挿入孔が挿入台の内側に配置されることが好ましい。
【0143】
3. 衝撃吸収部材
衝撃吸収部材(図10の1005)が、好ましくは、バッテリートレイと保護壁との間に配置される。また、衝撃吸収部材は、ハニカム構造を有することがより好ましい。かかる衝撃吸収部材を設けることにより、車両下部からの衝撃に対する耐性が向上する。
【0144】
4. 空気流を調整するための空気力学プレート
保護壁は、一体成形により気流を規制するための空気力学的プレートが設けられた繊維強化プラスチックであることが好ましく、気流を規制するための空気力学的プレートは、保護壁の下方に設けられてもよい。空気流を調整するための空気力学的プレートを設けることにより、空気力学的抗力が低減され、車両の走行安定性が改善される。
【0145】
5. 電磁波シールド層
保護壁とバッテリートレイとの間に電磁波シールド層を設けることが好ましい。より具体的には、電磁波シールド層は、保護壁の上面に設けられてもよい。この場合、衝撃吸収部材は、電磁波シールド層の上方に配置されることが好ましい。
【0146】
6. 保護壁用材料
6.1 保護壁は、強化繊維と熱硬化性樹脂とを含有するシート成形材料を成形することにより得られる繊維強化プラスチックであってもよい。
6.2 保護壁は、強化繊維と熱可塑性樹脂とを含有する複合材料を成形することにより得られる繊維強化プラスチックであってもよい。
【0147】
7. 保護壁の厚さ
保護壁の厚さは、好ましくは1mm以上、より好ましくは3mm以上、更に好ましくは5mm以上である。
【符号の説明】
【0148】
101: バッテリーボックス
102: バッテリーカバー
103: バッテリー
104: 温度制御系(冷却機構)
105: バッテリートレイ
106: 補強フレーム
107: 第1内壁と第2内壁とにより形成される内側隔壁
108: エネルギー吸収部材(エネルギーを吸収することができる部材)
201: 内側隔壁の上部
205: 周辺壁
206: 第1内壁
207: 第2内壁
208:車幅方向に延びる凹部
301: 第2底部
302: 冷却機構
303: 第1底部
304: 金属カバー
313: 第1内壁、第2内壁、及び第2底部(又はスタッドボルト台)により囲まれた空間領域
402: フランジ
407: スタッドボルト台
408: スタッドボルト台上面
409: スタッドボルト
411: バッテリーブラケット
412: 挿入孔
α:第1底部と第1内壁とにより形成される角度
β:第1底部と第2内壁とにより形成される角度
h1: 第1底部からフランジまでの高さ
h2: スタッドボルト台の第1底部から上面までの高さ
h3: 第1底部から第2底部までの高さ
R501: 第1底部と周壁との境界領域における内側コーナー部
R502: 第1底部と周壁との境界領域における外側コーナー部
R520: 第1底部と第1内壁との境界領域における内側コーナー部
R521: 第1底部と第1内壁との境界領域における外側コーナー部
R530: 第1底部と第2内壁との境界領域における内側コーナー部
R531: 第1底部と第2内壁との境界領域における外側コーナー部
701: クロスメンバ
702: リブ
703: クロスメンバが凹部に挿入されたときに形成される、クロスメンバと第2底部との間の空間
801: バッテリーカバー
802: リブ
1001: 保護壁
1002: 締結ロッド
1003: 挿入孔
1004: 挿入台
1005: 衝撃吸収部材
図1
図2
図3
図4
図5A-5C】
図6
図7A-7C】
図8
図9
図10
【国際調査報告】