(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-15
(54)【発明の名称】耐熱曝露用に構成された液体レンズおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
G02B 7/02 20210101AFI20231208BHJP
G02B 7/04 20210101ALI20231208BHJP
G02B 3/14 20060101ALI20231208BHJP
【FI】
G02B7/02 F
G02B7/04 Z
G02B7/02 Z
G02B3/14
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023534165
(86)(22)【出願日】2021-12-03
(85)【翻訳文提出日】2023-08-04
(86)【国際出願番号】 US2021061767
(87)【国際公開番号】W WO2022125389
(87)【国際公開日】2022-06-16
(32)【優先日】2020-12-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】397068274
【氏名又は名称】コーニング インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100073184
【氏名又は名称】柳田 征史
(74)【代理人】
【識別番号】100175042
【氏名又は名称】高橋 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100163050
【氏名又は名称】小栗 眞由美
(74)【代理人】
【識別番号】100224775
【氏名又は名称】南 毅
(72)【発明者】
【氏名】アンデュラン,ジュリー コレット
(72)【発明者】
【氏名】ブルタン,ジェローム ルネ
(72)【発明者】
【氏名】サンぺール,ニコラス ギルバート ジョゼ
【テーマコード(参考)】
2H044
【Fターム(参考)】
2H044AH11
2H044AJ04
2H044BF00
(57)【要約】
液体レンズデバイスは、エレクトロウェッティングによって移動可能な界面を画定する第1および第2の非混和性流体;キャップ部;ベース部;キャップ部とベース部との間に配置されたガスケット;キャップ部内に配置された上部ウインドウ;およびベース部内に配置された下部ウインドウを備え、各ウインドウは、互いに対向し、かつ実質的に互いに平行である。下部ウインドウは、対向する主面と縁部とを備える。下部ウインドウは、接着剤でベース部に接合されており、接着剤は、主面および縁部のうち1つ以上の部分と接するように配置されている。流体は、キャップ部、ベース部、ガスケットおよび各ウインドウ内に封止されている。さらに、下部ウインドウの縁部の高さは、0.3mm超でかつ1.2mm未満である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体レンズデバイスであって、前記液体レンズデバイスは、
エレクトロウェッティングによって移動可能な界面を画定する第1および第2の非混和性流体;
キャップ部;
ベース部;
前記キャップ部と前記ベース部との間に配置されたガスケット;
前記キャップ部内に配置された上部ウインドウ;および
前記ベース部内に配置された下部ウインドウ
を備え、前記各ウインドウは、互いに対向し、かつ実質的に互いに平行であり、
前記下部ウインドウは、対向する主面と縁部とを備え、
前記下部ウインドウは、接着剤で前記ベース部に接合されており、前記接着剤は、前記主面および前記縁部のうち1つ以上の部分と接するように配置されており、
前記流体は、前記キャップ部、前記ベース部、前記ガスケットおよび前記各ウインドウ内に封止されており、
さらに、前記下部ウインドウの前記縁部の高さは、0.3mm超でかつ1.2mm未満である、液体レンズデバイス。
【請求項2】
前記デバイスが、105℃で750時間の熱曝露試験の際に無欠陥であることを特徴とする、請求項1記載のデバイス。
【請求項3】
前記下部ウインドウの前記主面および前記縁部のうち1つ以上の前記部分が、それぞれ少なくとも7.0mm
2および2.0mm
2の表面積を有する、請求項1または2記載のデバイス。
【請求項4】
前記下部ウインドウの直径が、少なくとも4mmである、請求項1から3までのいずれか1項記載のデバイス。
【請求項5】
前記下部ウインドウの前記縁部の高さが、0.3mm超でかつ0.6mm以下である、請求項1から4までのいずれか1項記載のデバイス。
【請求項6】
液体レンズデバイスであって、前記液体レンズデバイスは、
エレクトロウェッティングによって移動可能な界面を画定する第1および第2の非混和性流体;
キャップ部;
ベース部;
前記キャップ部と前記ベース部との間に配置されたガスケット;
前記キャップ部内に配置された上部ウインドウ;および
前記ベース部内に配置された下部ウインドウ
を備え、前記各ウインドウは、互いに対向し、かつ実質的に互いに平行であり、
前記下部ウインドウは、対向する主面と縁部とを備え、
前記下部ウインドウは、接着剤で前記ベース部に接合されており、前記接着剤は、前記主面および前記縁部のうち1つ以上の部分と接するように配置されており、
前記流体は、前記キャップ部、前記ベース部、前記ガスケットおよび前記各ウインドウ内に封止されており、
さらに、前記接着剤は、硬化剤とポリマーとを前記硬化剤:前記ポリマー=約0.4:10~約0.9:10の比で含む熱硬化性ポリマーである、液体レンズデバイス。
【請求項7】
前記デバイスが、105℃で1000時間の熱曝露試験の際に無欠陥であることを特徴とする、請求項6記載のデバイス。
【請求項8】
前記下部ウインドウの直径が、少なくとも4mmである、請求項6または7記載のデバイス。
【請求項9】
液体レンズデバイスであって、前記液体レンズデバイスは、
エレクトロウェッティングによって移動可能な界面を画定する第1および第2の非混和性流体;
キャップ部;
ベース部;
前記キャップ部と前記ベース部との間に配置されたガスケット;
前記キャップ部内に配置された上部ウインドウ;および
前記ベース部内に配置された下部ウインドウ
を備え、前記各ウインドウは、互いに対向し、かつ実質的に互いに平行であり、
前記下部ウインドウは、対向する主面と縁部とを備え、
前記下部ウインドウは、接着剤で前記ベース部に接合されており、前記接着剤は、前記主面および前記縁部のうち1つ以上の部分と接するように配置されており、
前記流体は、前記キャップ部、前記ベース部、前記ガスケットおよび前記各ウインドウ内に封止されており、
前記接着剤は、硬化剤とポリマーとを前記硬化剤:前記ポリマー=約0.4:10~約0.9:10の比で含む熱硬化性ポリマーであり、
さらに、前記下部ウインドウの前記縁部の高さは、0.3mm超でかつ1.2mm未満である、液体レンズデバイス。
【請求項10】
前記下部ウインドウの直径が、少なくとも4mmである、請求項9記載のデバイス。
【請求項11】
前記下部ウインドウの前記縁部の前記部分が、少なくとも0.15mmの高さを有する、請求項9または10記載のデバイス。
【発明の詳細な説明】
【関連出願】
【0001】
本願は、米国特許法第119条のもと、2020年12月8日に出願された米国仮特許出願第63/122,569号明細書の優先権の利益を主張し、その内容が依拠され、その内容全体を参照により本明細書に援用するものとする。
【技術分野】
【0002】
本開示は、耐熱曝露用に構成された液体レンズに関し、より具体的には、液体レンズデバイスであって、該液体レンズデバイスが様々な自動車用途や軍事用途で受ける曝露のような熱曝露への耐久性が最大化されるように寸法決めされたウインドウとそのように処理された接着剤とを備えた液体レンズデバイスに関する。
【背景技術】
【0003】
液体レンズは、総じて、チャンバ内に配置された2つの流体を含む。流体に印加される電界を変化させることにより、チャンバ壁に対する一方の流体の濡れ性を変化させることができ、これには、2つの液体の間に形成されるメニスカスの形状を変化させる効果がある。さらに、様々な用途においてメニスカスの形状を変化させることで、レンズの焦点距離を制御して変化させることができる。
【0004】
このような液体レンズの多くは、電圧印加によって焦点距離が変化するオートフォーカスレンズである。こうした液体レンズは、携帯電話や他の様々な用途での使用が可能であり、これには、バーコードリーダー、監視カメラ、交通カメラ、また医療用途が挙げられる。総じて、こうしたレンズは、小型で堅牢な設計であり、手ブレによるアーチファクトを除くのに十分な速さで反応する。これらの用途の液体レンズの信頼性は、一般に良好であり、それは、これらの液体レンズが総じて、不具合や性能劣化を生じることなく製品内で数年の保管可能期間を有しているためである。
【0005】
液体レンズの新たな用途としては、要求の厳しい熱環境を伴う自動車用途や軍事用途が挙げられる。例えば、これらの用途の中には、105℃の温度で少なくとも1000時間の熱曝露に耐え得る液体レンズが要求されるものもある。従来の液体レンズは、このような熱曝露要求下では不具合を生じるおそれがある。多くの場合、これらのレンズの金属基部に透明なウインドウや基材を結合する接着剤は、このような温度への絶え間ない曝露によって機能を失う。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、耐熱曝露用に構成された液体レンズの設計およびデバイスが必要とされている。より具体的には、液体レンズであって、該液体レンズが様々な自動車用途や軍事用途で受ける曝露のような熱曝露への耐久性が最大化されるように寸法決めされたウインドウとそのように処理された接着剤とを備えた液体レンズが必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示のいくつかの態様によれば、液体レンズデバイスであって、該液体レンズデバイスは、エレクトロウェッティングによって移動可能な界面を画定する第1および第2の非混和性流体;キャップ部;ベース部;キャップ部とベース部との間に配置されたガスケット;キャップ部内に配置された上部ウインドウ;およびベース部内に配置された下部ウインドウを備え、各ウインドウは、互いに対向し、かつ実質的に平行である、液体レンズデバイスが提供される。下部ウインドウは、対向する主面と縁部とを備える。下部ウインドウは、接着剤でベース部に接合されており、接着剤は、主面および縁部のうち1つ以上の部分と接するように配置されている。流体は、キャップ部、ベース部、ガスケットおよび各ウインドウ内に封止されている。さらに、下部ウインドウの縁部の高さは、0.3mm超でかつ1.2mm未満である。
【0008】
本開示の他の態様によれば、液体レンズデバイスであって、該液体レンズデバイスは、エレクトロウェッティングによって移動可能な界面を画定する第1および第2の非混和性流体;キャップ部;ベース部;キャップ部とベース部との間に配置されたガスケット;キャップ部内に配置された上部ウインドウ;およびベース部内に配置された下部ウインドウを備え、各ウインドウは、互いに対向し、かつ実質的に平行である、液体レンズデバイスが提供される。下部ウインドウは、対向する主面と縁部とを備える。下部ウインドウは、接着剤でベース部に接合されており、接着剤は、主面および縁部のうち1つ以上の部分と接するように配置されている。流体は、キャップ部、ベース部、ガスケットおよび各ウインドウ内に封止されている。さらに、接着剤は、硬化剤とポリマーとを硬化剤:ポリマー=約0.4:10~約0.9:10の比で含む熱硬化性ポリマーである。
【0009】
本開示のさらなる態様によれば、液体レンズデバイスであって、該液体レンズデバイスは、エレクトロウェッティングによって移動可能な界面を画定する第1および第2の非混和性流体;キャップ部;ベース部;キャップ部とベース部との間に配置されたガスケット;キャップ部内に配置された上部ウインドウ;およびベース部内に配置された下部ウインドウを備え、各ウインドウは、互いに対向し、かつ実質的に平行である、液体レンズデバイスが提供される。下部ウインドウは、対向する主面と縁部とを備える。下部ウインドウは、接着剤でベース部に接合されており、接着剤は、主面および縁部のうち1つ以上の部分と接するように配置されている。流体は、キャップ部、ベース部、ガスケットおよび各ウインドウ内に封止されている。さらに、接着剤は、硬化剤とポリマーとを硬化剤:ポリマー=約0.4:10~約0.9:10の比で含む熱硬化性ポリマーである。さらに、下部ウインドウの縁部の高さは、0.3mm超でかつ1.2mm未満である。
【0010】
前述の全般的な説明および以下の詳細な説明は、いずれも単なる例示であり、本開示および添付の特許請求の範囲の本質および特徴を理解するための概要または枠組みの提供を意図したものであることを理解されたい。
【0011】
添付の図面は、本開示の原理のさらなる理解を提供するために含まれるものであり、本明細書に組み込まれ、本明細書の一部を構成する。図面は、1つ以上の実施形態を示し、本明細書とともに例示として本開示の原理および動作を説明する役割を果たす。本明細書および図面に開示された本開示の様々な特徴は、あらゆる組み合わせで使用できることを理解されたい。非限定的な例として、本開示の様々な特徴は、以下の実施形態に従って互いに組み合わせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
以下は、添付図面の各図の説明である。各図は、必ずしも縮尺通りではなく、各図の特定の特徴および特定の画像は、明瞭性および簡潔性の観点から縮尺的に誇張してまたは概略的に示される場合がある。
【
図1】本開示の一実施形態による液体レンズの概略断面図である。
【
図1A】
図1に示す液体レンズの部分の拡大図である。
【
図2A】本開示の一実施形態による液体レンズの流体の熱膨張が生じている際の、該液体レンズの概略断面図である。
【
図2B】本開示の一実施形態による液体レンズの流体の熱膨張が生じている際の、該液体レンズの概略断面図である。
【
図3A】本開示の一実施形態による液体レンズの流体の熱膨張に起因するモデル化された応力を受けた際の、該液体レンズの下部ウインドウの概略透視図である。
【
図3B】本開示の一実施形態による液体レンズの流体の熱膨張に起因するモデル化された応力を受けた際の、該液体レンズの下部ウインドウの概略透視図である。
【
図3C】本開示の一実施形態による液体レンズの流体の熱膨張に起因するモデル化された応力を受けた際の、該液体レンズの下部ウインドウの概略透視図である。
【
図3D】本開示の一実施形態による液体レンズの流体の熱膨張に起因するモデル化された応力を受けた際の、該液体レンズの下部ウインドウの概略透視図である。
【
図3E】異なる下部ウインドウ高さを採用した、比較例の液体レンズ、および本開示の一実施形態による本発明による液体レンズの、105℃での熱曝露時間に対する不良率のプロットである。
【
図4】比較例の接着剤配合物を採用した液体レンズ、および本開示の一実施形態による接着剤配合物を採用した液体レンズの、105℃での熱曝露時間に対する不良率のプロットである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
追加の特徴および利点は、以下の詳細な説明に示され、当業者には、この説明から明らかとなるか、または特許請求の範囲および添付の図面とともに以下の説明に記載される実施形態を実施することによって認識されるであろう。
【0014】
本明細書で使用される場合、「および/または」という用語が2つ以上の項目の列挙において使用される際には、この用語は、列挙された項目のいずれか1つを単独で採用することも、列挙された項目の2つ以上の任意の組み合わせを採用することも可能であることを意味する。例えば、組成物が成分A、Bおよび/またはCを含むと記載されている場合、この組成物は、A単独;B単独;C単独;AおよびBの組み合わせ;AおよびCの組み合わせ;BおよびCの組み合わせ;またはA、BおよびCの組み合わせを含むことができる。
【0015】
当業者および本開示を製造または使用する者は、本開示の修正形態に想到するであろう。したがって、図面に示された、および上述された実施形態は、単に例示を目的とするものであり、均等論を含む特許法の原則に従って解釈される以下の特許請求の範囲によって規定される本開示の範囲を限定することを意図するものではないことが理解される。
【0016】
本明細書で使用される場合、「約」という用語は、量、サイズ、配合、パラメータならびに他の数量および特性が、正確ではなく、また正確である必要はないが、公差、換算係数、丸め処理、測定誤差などや当業者に公知の他の因子を反映した近似値である場合があり、かつ/または所望に応じて大きい場合も小さい場合もあることを意味する。値または範囲の端点を説明する際に「約」という用語が使用される場合、本開示は、言及される特定の数値または端点を含むと理解されるべきである。本明細書における数値または範囲の端点に「約」が記載されているか否かにかかわらず、数値または範囲の端点は、「約」によって修飾されたものと、「約」によって修飾されていないものとの2つの実施形態を含むことを意図している。さらに、各範囲の端点は、他の端点との関係においても、他の端点から独立しても有意であることが理解されよう。
【0017】
本明細書で使用される「実質的な」、「実質的に」という用語およびその変更形態は、記載された特徴がある値または記述と等しいかまたはほぼ等しいことを注記することを意図している。例えば、「実質的に平坦な」面とは、平坦なまたはほぼ平坦な面を示すことを意図している。さらに、「実質的に」とは、2つの値が等しいかまたはほぼ等しいことを示すことを意図している。いくつかの実施形態では、「実質的に」とは、互いの約10%以内、例えば互いの約5%以内、または互いの約2%以内の値を示すことがある。
【0018】
本明細書で使用される場合、「the」、「a」または「an」という用語は、「少なくとも1つ」を意味し、反対のことが明示されていない限り、「1つのみ」に限定されるべきではない。したがって、例えば、「1つの構成要素」への言及には、そうでないことが文脈上明確に示されていない限り、その構成要素を2つ以上有する実施形態が含まれる。
【0019】
本明細書で使用される場合、「熱曝露試験」という用語は、液体レンズデバイスの用途に応じた試験であって、液体レンズデバイスを実質的に一定の温度、例えば105℃に所定の期間(例えば、1000時間、2000時間、またはさらに長時間)曝し、不良率が所定の限界値未満(例えば、不良率ゼロ、5%未満など)となる試験を指す。典型的には、このような試験中の熱曝露に起因する不具合は、接着剤と、各ウインドウのうちの一方、およびレンズのキャップ部またはベース部のうち1つ以上のうちのいずれかまたは複数との結合の不具合に現れる。
【0020】
本開示の様々な実施形態において、液体レンズデバイスであって、他の特徴のうち特に、エレクトロウェッティングによって移動可能な界面を画定する第1および第2の非混和性流体と、キャップ部と、ベース部と、ベース部内の下部ウインドウと、キャップ部内の上部ウインドウと、キャップ部とベース部との間に配置されたガスケットとを備えた液体レンズデバイスが提供される。さらに、下部ウインドウは、接着剤でベース部に接合されており、流体は、キャップ部、ベース部、ガスケットおよび各ウインドウ内に封止されている。さらに、下部ウインドウの縁部の高さは、0.3mm超でかつ1.2mm未満となるように構成されていてよい。いくつかの事例では、下部ウインドウの縁部の高さは、非常に高くすることができ、例えば、0.3mm超でかつ約5mm(またはさらには10mm)以下とすることができる。さらに、いくつかの実施形態では、接着剤は、硬化剤およびポリマーを含む熱硬化性ポリマーであってよい。熱硬化性ポリマーは、硬化剤:ポリマー=約0.4:10~約0.9:1の比で硬化可能である。
【0021】
本開示において詳述される液体レンズデバイスは、これらの液体レンズの各実装形態を採用したデバイスの様々な技術的要件および性能面の達成を可能にするか、またはさもなければ、これに好影響を与えることができる。本開示の液体レンズデバイスは、以下の利益または利点のうちの1つ以上を提供することができる。例えば、本開示の液体レンズデバイスは、そのそれぞれの接着剤および下部ウインドウ(および/または上部ウインドウ)が曝される応力レベルがより低くなるように構成されており、これにより、該デバイスの長期信頼性を向上させることができる。特に、応力レベルは、液体レンズがその用途に伴う環境から熱曝露を受ける際の流体の熱膨張に関連しているが、こうした応力レベルは、該デバイスの設計上の考慮事項、例えば、下部ウインドウの縁部の高さおよび/または接着剤において採用される硬化剤対ポリマー比によって低減される。さらに、該液体レンズデバイスの信頼性が、特に熱曝露の点で改善されるため、該デバイスは、典型的には液体レンズデバイスをより厳しい熱環境に曝す自動車用途や軍事用途など、より要求の厳しい用途で用いることができる。別の例として、本開示の液体レンズデバイスは、さらなる開ループ安定性を提供する。すなわち、温度変化は、従来の液体レンズの光学性能に、その非混和性流体の熱膨張およびその結果として生じるその透明ウインドウの湾曲により悪影響を及ぼしかねないが、本開示の液体レンズデバイスは、こうした温度変化の影響を受けない。
【0022】
図1および
図1Aを参照すると、可変焦点距離で構成可能な液体レンズデバイス10が提供されている。液体レンズデバイス10は、エレクトロウェッティングによって移動可能な界面を画定する第1および第2の非混和性流体(
図1および
図1Aには図示せず)を備える。デバイス10はまた、キャップ部30;ベース部16;およびキャップ部30とベース部16との間に配置されたガスケット50を備える。さらに、デバイス10は、キャップ部30内に配置された上部ウインドウ38;およびベース部16内に配置された下部ウインドウ24を備え、ウインドウ24,38は、互いに対向し、かつ実質的に互いに平行である。下部ウインドウ24は、対向する主面21,22と縁部23とを備える。
図1および
図1Aに示すように、下部ウインドウ24は、接着剤40でベース部16に接合されており、接着剤は、それぞれ主面21および縁部23の部分21a,23aの双方と接するように配置されている。液体レンズデバイス10のいくつかの実施形態では、接着剤40は、部分21a,23aおよび主面22の部分(
図1および
図1Aには図示せず)のうち1つ以上と接している。流体は、キャップ部30、ベース部16、ガスケット50およびウインドウ24,38内に封止されている。いくつかの実装形態において、下部ウインドウ24は、少なくとも4mm、5mm、7.5mm、または最大約10mmの直径27を有するように構成されている。
【0023】
再び
図1および
図1Aを参照すると、液体レンズデバイス10は、上部および下部を備えており、この上部および下部は、互いに別個に製造されており、組み立てられたときに第1および第2の非混和性流体(
図1および
図1Aには図示せず)を含む内部体積15を画定する。「上」および「下」という用語は、図面に関してのみ用いられており、それというのも、液体レンズデバイス10は使用中に任意の向きを取り得るためである。デバイス10の内部体積15と開口部との間に、透明材料製の、例えばガラス製の下部ウインドウ24のような円筒状部材が挿入されることによって、該円筒状部材は開口部を覆い、かつ接着剤40によってベース部16に固定されている。
【0024】
液体レンズデバイス10の上部は、キャップ部30を備え、キャップ部30の中央部を円筒状開口部が通り、キャップ部30は、第1の円筒状側壁34によって延長され、第1の円筒状側壁34の直径は、ベース部16の第2の円筒状側壁20の直径よりも大きい。液体レンズデバイス10のいくつかの実施形態によれば、円筒状側壁34の直径は、約5mm~約200mm、約10mm~約200mm、約10mm~約150mm、約10mm~約100mm、および前述の範囲内の直径値の全範囲内で変動し得る。キャップ部30は、開口部と円筒状側壁34との間に設けられた弾性部36を備える。さらに、弾性部36は、波状部からなることができ、波状部は、軸線Δを中心とする回転対称性を示し、かつ軸線Δを含む面の断面は、(ほぼ)「S」字形を有する。
【0025】
図1および
図1Aを参照すると、開口部とデバイス10の内部体積15との間に、透明材料製の、例えばガラス製の上部ウインドウ38が挿入されることによって、上部ウインドウ38は開口部を覆い、かつ接着剤40によってキャップ部30に固定されている。実施形態では、接着剤40を主面の1つ以上の部分および上部ウインドウ38の外縁部(
図1および
図1Aには図示せず)と接するように配置することにより、キャップ部に上部ウインドウ38が設けられている。有利には、キャップ部30は、上部ウインドウ38と円筒状側壁34とに接続された上壁31を備え、上壁31は、液体レンズデバイス10の光軸(Δ)を中心とする回転対称性を示す弾性部36を備える。例えば、キャップ部30は金属材料製であってよく、該金属材料は、例えば、型打加工や機械加工などにより形成されたステンレス鋼や真鍮であってよい。第1および第2の非混和性流体の膨張の影響を補償するために、キャップ部30の上壁31の厚さは、予想される体積の変動に依存する。例えば、約0.05mm~0.25mmの上壁31の典型的な厚さは、外径が約20mm以下の液体レンズデバイスで良好な結果を示している。
【0026】
図1および
図1Aに示すように、液体レンズデバイス10は、互いに対向し、かつ互いに平行である下部および上部ウインドウ24,38を備える。2つのウインドウ24,38は、第1および第2の非混和性流体を収容する内部体積15の境界を少なくとも部分的に定めており、第1および第2の非混和性流体は、異なる光学指数を有し、かつ界面(
図1および
図1Aには詳細に図示せず)を画定する。図示のように、ウインドウ24,38は、光学的に透明な材料、例えば非晶質材料(例えば、ガラスまたはポリマー)、半結晶質材料(例えば、ガラスセラミック)または結晶質材料(例えば、サファイアまたは石英)製のプレートである。一変形例によれば、ウインドウ24,38の少なくとも一方は、可変焦点レンズの光軸(Δ)を中心とする固定光学長のレンズとすることができる。
【0027】
図1および
図1Aにも示すように、液体レンズデバイス10は、上部ウインドウ38に接続されたキャップ部30を備え、このキャップ部30は、第1の円筒状側壁34を備える。本デバイスはまた、ベース部16を備え、このベース部16は、好ましくは回転対称性を示し、回転軸線は、レンズの光軸(Δ)を画定する。ベース部16は、下部ウインドウ24に接続されており、第1の円筒状側壁34の直径よりも小さい直径の第2の円筒状側壁20を備える。さらに、液体レンズデバイス10の上部電極は、キャップ部30を備え、デバイス10の下部電極は、ベース部16を備える。ガスケット50は、液体レンズデバイス10の構成部品の気密性を確保するために設けられている。デバイス10の実装形態において、ガスケット50は、第1および第2の円筒状側壁34,20の間で圧縮される。
図1および
図1Aに示す実施形態では、ガスケット50は、第1および第2の円筒状側壁34,20の間で圧縮されたスカート部54と、キャップ部30と中間部42との間で圧縮された部分52とを備え、中間部42は、本例では、ベース部16と一体的に形成されており、かつ第1および第2の非混和性流体間の界面が移動可能な円錐状または円筒状の面48を画定する開口部を備える。
【0028】
図1および
図1Aに示す液体レンズデバイス10の実施形態によれば、レンズデバイス10は、第1および第2の流体の圧力の変化に応じて変形可能な弾性部36をさらに含む。本実施形態では、弾性部36は、キャップ部30の上壁31に湾曲状の構成で形成されており、非直線部分は、レンズの光軸(Δ)を中心とする回転対称性を示す。例えば、弾性部36の湾曲態様は、レンズの光軸(Δ)を中心とする少なくとも1つの円弧状の、好ましくは円状の湾曲を含む。本例でも、キャップ部30は、好ましくは、プレス加工された金属、例えばステンレス鋼製であってよい。非混和性流体の膨張の影響を補償するために、キャップ部30の上壁31の厚さは、予想される体積の変動に依存する。例えば、約0.05mm~0.25mmの上壁31の典型的な厚さは、外径が約20mm以下のレンズで良好な結果を示している。
【0029】
再び
図1および
図1Aに示す液体レンズデバイス10を参照すると、第1の円筒状側壁34は、キャップ部30をベース部16に封止するためにベース部16に圧着されたリム56を備える。キャップ部30をベース部16に封止するための他の方法も可能であり、例えば、キャップ部30をベース部16に接着することができる。
【0030】
図1および
図1Aに示す液体レンズデバイス10のいくつかの実施形態では、下部ウインドウ24の縁部23の高さ26は、0.3mm超でかつ1.2mm未満である。液体レンズデバイス10のいくつかの実施形態によれば、下部ウインドウ24の高さ26は、3mm超でかつ1.2mm未満、または0.3mm超でかつ約1.15mm、1.1mm、1.05mm、1.0mm、0.95mm、0.9mm、0.85mm、0.8mm、0.75mm、0.7mm、0.65mm、0.6mm、0.55mm、0.5mm、0.45mm以下、ならびに先行する値の間の高さ26の全範囲および部分範囲内で変動し得る。例えば、下部ウインドウ24の縁部23の高さ26は、0.32mm、0.33mm、0.34mm、0.35mm、0.4mm、0.45mm、0.5mm、0.55mm、0.6mm、0.65mm、0.7mm、0.75mm、0.8mm、0.85mm、0.9mm、0.95mm、1.0mm、1.05mm、1.1mm、1.15mm、およびこれらの値の間の他の高さ値とすることができる。さらに、液体レンズデバイス10のいくつかの実装形態によれば、下部ウインドウの高さ26は、0.3mm超でかつ10mm以下、0.3mm超でかつ7.5mm以下、0.3mm~5mm、ならびに先行する値の間の高さ26の全範囲および部分範囲にわたることができる。さらに、
図1および
図1Aに示す液体レンズデバイス10の実施形態はまた、下部ウインドウ24の高さ26の前述の値と一致した様式で上部ウインドウ38の高さを制御することによって、本開示の利益および利点を実現することができる。
【0031】
図1および
図1Aに示す液体レンズデバイス10の別の実施形態によれば、接着剤40は、熱硬化性ポリマー(例えば、エポキシ)、メタクリレート系接着剤、ポリウレタン系接着剤、シリコン系接着剤および/またはアクリル系接着剤として構成されていてよい。接着剤40に熱硬化性ポリマーを採用したそのような実施形態では、熱硬化性ポリマーは、1つ以上の硬化剤およびポリマー成分を含むことができる。(熱硬化性ポリマーとしての)接着剤40の硬化剤およびポリマー成分は、硬化剤:ポリマー=約0.4超:10でかつ約1未満:10の比に従って構成されていてよい。液体レンズデバイス10のいくつかの実施形態では、接着剤40の硬化剤およびポリマー成分は、約0.4超:10~約0.95:10、約0.9:10、約0.85:10、約0.8:10、約0.75:10、約0.7:10、約0.65:10、約0.6:10;約0.5:10~約0.7:10の比、および先行する比の範囲の間のすべての比に従って構成されていてよい。例えば、接着剤40の硬化剤およびポリマー成分は、0.45:10、0.5:10、0.55:10、0.6:10、0.65:10、0.7:10、0.75:10、0.8:10、0.85:10、0.9:10、0.95:10、および前述の比の間のすべての比に従って構成されていてよい。
【0032】
図1および
図1Aに示す液体レンズデバイス10の実施形態によれば、デバイスは、105℃で500時間、750時間、1000時間、1500時間、2000時間、またはさらに長時間の熱曝露試験の際に、無欠陥(または、いくつかの実施形態では、不良率が5%未満または10%未満)であることを特徴とすることができる。いくつかの実装形態において、液体レンズデバイス10は、105℃で少なくとも500時間、600時間、700時間、800時間、900時間、1000時間、1250時間、1500時間、1750時間、2000時間、およびこれらの時間を上回るかまたはこれらの期間の間の他の曝露の熱曝露試験に供された際に、無欠陥となる(または不良率が低く、10%未満となる)ように構成されている。例えば、液体レンズデバイス10は、105℃で500時間、550時間、600時間、650時間、700時間、750時間、800時間、850時間、900時間、950時間、1000時間、1100時間、1200時間、1300時間、1400時間、1500時間、1600時間、1700時間、1800時間、1900時間、2000時間、およびこれらの期間の間のすべての値の熱曝露試験に供された際に、無欠陥となる(または不良率が10%未満となる)ように構成することができる。
【0033】
図1および
図1Aに示す液体レンズデバイス10のいくつかの実装形態によれば、下部ウインドウ24の主面21の部分21aは、例えば、第1および第2の非混和性流体の熱膨張に付随する接着剤40の応力を最小限に抑えつつ、下部ウインドウ24をベース部16に接着剤40で接合するための最適な表面積を提供するために、少なくとも7.0mm
2の表面積を有するように構成されていてよい。いくつかの実装形態では、下部ウインドウ24の主面21の部分21aの表面積は、少なくとも7.0mm
2、7.5mm
2、8.0mm
2、8.5mm
2、9.0mm
2、9.5mm
2、10.0mm
2、および先行する下限を上回るすべての表面積値よりも大きい値とすることができる。同様に、下部ウインドウ24の縁部23の部分23aの表面積は、例えば、第1および第2の非混和性流体の熱膨張に付随する接着剤40の応力を最小限に抑えつつ、下部ウインドウ24をベース部16に接着剤40で接合するための最適な表面積を提供するために、少なくとも2.0mm
2の表面積を有するように構成されていてよい。いくつかの実装形態では、下部ウインドウ24の縁部23の部分23aの表面積は、少なくとも2.0mm
2、2.5mm
2、3.0mm
2、3.5mm
2、4.0mm
2、4.5mm
2、5.0mm
2、および先行する下限を上回るすべての表面積値よりも大きい値とすることができる。さらに、いくつかの実施形態によれば、下部ウインドウ24の縁部23の部分23aは、少なくとも0.15mm、少なくとも0.25mm、または少なくとも0.5mmの高さを有するように構成されていてよい。いくつかの実施形態では、例えば、下部ウインドウ24の縁部23の部分23aは、0.15mm、0.2mm、0.25mm、0.3mm、0.35mm、0.4mm、0.45mm、0.5mm、およびこれらのレベルの間のすべての高さの値を有するように構成されていてよい。
【0034】
ここで
図2Aおよび
図2Bを参照すると、液体レンズデバイス10の概略断面図が提供されている。本開示の液体レンズデバイス10は、熱曝露試験に供される際の長期信頼性が得られるように構成されている。これらの図に示すように、デバイス10内の非混和性流体の圧力は、大気圧を超えるべきであり、典型的には、圧着および加圧プロセスによって約2バール(約200kPa)に設定されている。デバイス内の圧力が大気圧より低いと、流体内に気泡が発生するという状況が起こり得るため、前記の設定により、確実に流体内に気泡が発生しないようにする。しかし、温度の上昇は、非混和性流体の熱膨張を引き起こしかねず、これにより、
図2Aに示す圧力「P」がさらに増加する可能性がある。非混和性流体の熱膨張によって圧力Pが増加すると、下部ウインドウ24が
図2Bに示すように湾曲することがある。この湾曲によって、2つの結果が生じる。第一に、液体レンズデバイス10の屈折力が、下部ウインドウ24の形状の変化によって悪影響を受ける可能性がある。第二に、下部ウインドウ24の湾曲は、「WP」と表記される、下部ウインドウ24とベース部16との間の接着剤40の点に、高い応力を生じさせるおそれがある。点WPにおける応力レベルが高いと、ウインドウ24および/またはベース部16からの接着剤40の脱結合および/または剥離が生じる可能性がある。それにもかかわらず、本開示の液体レンズデバイス10は、システムの全体的な剛性を増加させることによって(例えば、下部ウインドウ24の高さ26を増加させることによって、および/または硬化剤対ポリマー比の制御により接着剤40の機械的特性を調整することによって)、これらの影響を最小限に抑えるかまたは排除するものである。
【実施例】
【0035】
本開示の項目の例示である以下の実施例によって、様々な実施形態がさらに明らかとなる。
【0036】
例1
本例では、本開示の当業者により広く採用されている有限要素解析(FEA)技術を用いて、下部ウインドウとベース部との接着接合部をモデル化した。ここで、
図3Aおよび
図3Bを参照すると、液体レンズの下部ウインドウ(例えば、
図1および
図1Aに示す液体レンズデバイス10の下部ウインドウ24)の概略透視図が示されており、これは、ウインドウを採用した液体レンズデバイスの非混和性流体の熱膨張に起因するモデル化された応力を受けた際のものである。
図3Aおよび
図3Bに示すように、下部ウインドウ24の直径27、高さ26、縁部23の部分23a、および主面21の部分21aの各々を、本例のモデル化において変化させた。さらに、
図3Aおよび
図3Bに示す矢印で示されるように、これらのデバイスの流体の熱膨張に付随する応力をシミュレートするために、本例の液体レンズデバイスの各ウインドウ24に10N/mm
2の一定の圧力(「P」と表記)を加えた。
【0037】
図3Cおよび
図3Dに関して、比較例の液体レンズデバイス(「比較例1A」と表記)のウインドウのモデル化のFEA結果が示されている。本サンプルでは、ウインドウ24の高さ26を0.3mm;ウインドウ24の直径27を4.15mm;主面21の部分21aの表面積を7.4mm
2;およびウインドウ24の縁部23の部分23aの表面積を2.0mm
2とした。
図3Cに示すように、ウインドウ24において認められた最大応力レベルである約372.9N/m
2は、ウインドウ24の中央とその縁部23との間の、縁部23により近接した位置にある。
図3Dに示すように、加えられた圧力は、ウインドウ24の中央で最大変位量をもたらす。さらに、本サンプル(比較例1A)の場合、下部ウインドウ24の下方への変位量は4.5×10
-9mmと推定された。理論に束縛されるものではないが、デバイスの熱曝露によって引き起こされるこのような変位量は、ウインドウ24の湾曲に現れ得るものであり、この湾曲によって、その光学性能が損なわれ、かつ/または下部ウインドウとベース部との間の接着接合部の早期の不具合が生じる。
【0038】
従来の液体レンズデバイスおよび本開示の原理と一致する液体レンズデバイスについて、追加のモデル化を行った。特に、下部ウインドウ24の直径27、高さ26、縁部23の部分23a、および主面21の部分21aの各々を、本例のサンプル(「比較例1A~比較例1C」および「実施例1A~実施例1D」と表記)について、以下の表1に列挙するように変化させた。表1のデータから明らかなように、最大応力レベルは、下部ウインドウの外径、ウインドウの縁部の接着剤を有する部分の高さおよび表面積、ならびにウインドウの主面の部分の表面積の変化には比較的影響を受けない。さらに、下部ウインドウの高さが約0.3mmであるサンプル、すなわち、比較例1A~比較例1Cは、比較的高い最大応力レベルおよび最大変位量レベルを示した。対照的に、下部ウインドウの高さが約0.55mmであるサンプル、すなわち、実施例1A~実施例1Dは、比較的低い最大応力レベルおよび変位量レベルを示し、これは、対照群である比較例1A~比較例1Cの各値の約2分の1であった。
【0039】
【0040】
ここで、
図3Eを参照すると、異なる下部ウインドウ高さを採用した、比較例の液体レンズおよび本発明による液体レンズ(すなわち、比較例1A、比較例1Bおよび実施例1B)の、105℃での熱曝露時間に対する不良率のプロットが提供されている。
図3Eから明らかなように、熱曝露試験結果は、表1のモデル化結果と一致している。特に、下部ウインドウの高さが小さい(0.3mm)比較例の液体レンズは、下部ウインドウの高さが大きい(0.55mm)本発明による液体レンズよりも性能が著しく劣悪である。さらに、
図3Eおよび表1には示されていないが、実施例1A~実施例1Dのように構成されたウインドウを有するが、ただし下部ウインドウの高さが0.7mmおよび0.9mmである液体レンズに対する追加の熱曝露試験により、高さの大きい下部ウインドウを有するこれらのレンズは、105℃で1250時間までの試験を通じて現在までに不具合が発生していないことが実証されている。
【0041】
例2
本例により、一組の従来の液体レンズデバイスサンプルと、本開示の原理による1つの液体レンズデバイスとを製造した。特に、本例の液体レンズデバイスはすべて、以下の各特徴が同一の大きさを有するように製造した:下部ウインドウの直径、下部ウインドウの高さ、ウインドウの縁部の接着剤を有する部分の高さ、および下部ウインドウの主面の接着剤を有する部分の高さ。これらのサンプルに採用した接着剤は、熱硬化性ポリマーであり、その組成および微細構造は様々であった。特に、比較例の液体レンズデバイスサンプルは、以下の硬化剤対ポリマー比を有する熱硬化性ポリマー接着剤を用いて調製した:0.25:10、0.4:10、1:10、および1.5:10。これらのサンプルは、
図4において以下のように表記されている:「比較例2A(0.25:10)」;「比較例2B(0.4:10)」;「比較例2C(1:10)」;および「比較例2D(1.5:10)」。さらに、硬化剤対ポリマー比が0.5:10である熱硬化性接着剤を用いて、本開示の原理に従って液体レンズデバイスサンプルを製造し、これを「実施例2A(0.5:10)」と表記した。次に、この本例の各サンプルを、105℃で200~1000時間の熱曝露試験に供した。
【0042】
再び
図4を参照すると、本例の液体レンズデバイスの105℃での熱曝露時間(すなわち、200時間~1000時間)に対する不良率のプロットが提供されている。
図4から明らかなように、本開示の原理に従って配合された接着剤を用いて製造された液体レンズデバイスである実施例2Aのみが、105℃での熱曝露の期間が200時間、400時間、600時間、800時間および1000時間で無欠陥を示した。理論に束縛されるものではないが、ポリマーの量に対する接着剤中の硬化剤の量を最適化することが、接着剤の最終的な機械的特性において重要な役割を果たすと考えられる。より具体的には、硬化剤対ポリマー比=約0.4:10~約0.9:10で配合された熱硬化性ポリマーを採用することにより、105℃で750時間以上の熱曝露試験の際に無欠陥であることを特徴とする信頼性の高い液体レンズデバイスに使用するための最適な特性を有する接着剤が得られると考えられる。
【0043】
本開示の趣旨および諸原理から実質的に逸脱することなく、本開示の上述の実施形態に変更および修正を加えることができる。このような修正形態および変更形態はすべて、本明細書において本開示の範囲に包含され、かつ以下の特許請求の範囲によって保護されることが意図される。例えば、本開示の様々な特徴は、以下の実施形態に従って組み合わせることができる。
【0044】
実施形態1.第1の実施形態によれば、液体レンズデバイスが提供される。該液体レンズデバイスは、エレクトロウェッティングによって移動可能な界面を画定する第1および第2の非混和性流体;キャップ部;ベース部;キャップ部とベース部との間に配置されたガスケット;キャップ部内に配置された上部ウインドウ;およびベース部内に配置された下部ウインドウを備え、各ウインドウは、互いに対向し、かつ実質的に互いに平行である。下部ウインドウは、対向する主面と縁部とを備える。下部ウインドウは、接着剤でベース部に接合されており、接着剤は、主面および縁部のうち1つ以上の部分と接するように配置されている。流体は、キャップ部、ベース部、ガスケットおよび各ウインドウ内に封止されている。下部ウインドウの縁部の高さは、0.3mm超でかつ1.2mm未満である。
【0045】
実施形態2.第2の実施形態によれば、第1の実施形態であって、デバイスが、105℃で750時間の熱曝露試験の際に無欠陥であることを特徴とする、実施形態が提供される。
【0046】
実施形態3.第3の実施形態によれば、第1の実施形態であって、デバイスが、105℃で1000時間の熱曝露試験の際に無欠陥であることを特徴とする、実施形態が提供される。
【0047】
実施形態4.第4の実施形態によれば、第1の実施形態から第3の実施形態までのいずれか1つであって、下部ウインドウの主面および縁部のうち1つ以上の部分が、それぞれ少なくとも7.0mm2および2.0mm2の表面積を有する、実施形態が提供される。
【0048】
実施形態5.第5の実施形態によれば、第1の実施形態から第4の実施形態までのいずれか1つであって、下部ウインドウの直径が、少なくとも4mmである、実施形態が提供される。
【0049】
実施形態6.第6の実施形態によれば、第1の実施形態から第5の実施形態までのいずれか1つであって、下部ウインドウの縁部の高さが、0.3mm超でかつ0.6mm以下である、実施形態が提供される。
【0050】
実施形態7.第7の実施形態によれば、第1の実施形態から第6の実施形態までのいずれか1つであって、下部ウインドウの縁部の部分が、少なくとも0.15mmの高さを有する、実施形態が提供される。
【0051】
実施形態8.第8の実施形態によれば、液体レンズデバイスが提供される。該液体レンズデバイスは、エレクトロウェッティングによって移動可能な界面を画定する第1および第2の非混和性流体;キャップ部;ベース部;キャップ部とベース部との間に配置されたガスケット;キャップ部内に配置された上部ウインドウ;およびベース部内に配置された下部ウインドウを備え、各ウインドウは、互いに対向し、かつ実質的に互いに平行である。下部ウインドウは、対向する主面と縁部とを備える。下部ウインドウは、接着剤でベース部に接合されており、接着剤は、主面および縁部のうち1つ以上の部分と接するように配置されている。流体は、キャップ部、ベース部、ガスケットおよび各ウインドウ内に封止されている。接着剤は、硬化剤とポリマーとを硬化剤:ポリマー=約0.4:10~約0.9:10の比で含む熱硬化性ポリマーである。
【0052】
実施形態9.第9の実施形態によれば、第8の実施形態であって、デバイスが、105℃で750時間の熱曝露試験の際に無欠陥であることを特徴とする、実施形態が提供される。
【0053】
実施形態10.第10の実施形態によれば、第8の実施形態であって、デバイスが、105℃で1000時間の熱曝露試験の際に無欠陥であることを特徴とする、実施形態が提供される。
【0054】
実施形態11.第11の実施形態によれば、第8の実施形態から第10の実施形態までのいずれか1つであって、比が、硬化剤:ポリマー=約0.5:10~約0.7:10である、実施形態が提供される。
【0055】
実施形態12.第12の実施形態によれば、第8の実施形態から第11の実施形態までのいずれか1つであって、下部ウインドウの直径が、少なくとも4mmである、実施形態が提供される。
【0056】
実施形態13.第13の実施形態によれば、液体レンズデバイスが提供される。該液体レンズデバイスは、エレクトロウェッティングによって移動可能な界面を画定する第1および第2の非混和性流体;キャップ部;ベース部;キャップ部とベース部との間に配置されたガスケット;キャップ部内に配置された上部ウインドウ;およびベース部内に配置された下部ウインドウを備え、各ウインドウは、互いに対向し、かつ実質的に互いに平行である。下部ウインドウは、対向する主面と縁部とを備える。下部ウインドウは、接着剤でベース部に接合されており、接着剤は、主面および縁部のうち1つ以上の部分と接するように配置されている。流体は、キャップ部、ベース部、ガスケットおよび各ウインドウ内に封止されている。接着剤は、硬化剤とポリマーとを硬化剤:ポリマー=約0.4:10~約0.9:10の比で含む熱硬化性ポリマーである。下部ウインドウの縁部の高さは、0.3mm超でかつ1.2mm未満である。
【0057】
実施形態14.第14の実施形態によれば、第13の実施形態であって、デバイスが、105℃で750時間の熱曝露試験の際に無欠陥であることを特徴とする、実施形態が提供される。
【0058】
実施形態15.第15の実施形態によれば、第13の実施形態であって、デバイスが、105℃で1000時間の熱曝露試験の際に無欠陥であることを特徴とする、実施形態が提供される。
【0059】
実施形態16.第16の実施形態によれば、第13の実施形態から第15の実施形態までのいずれか1つであって、下部ウインドウの主面および縁部のうち1つ以上の部分が、それぞれ少なくとも7.0mm2および2.0mm2の表面積を有する、実施形態が提供される。
【0060】
実施形態17.第17の実施形態によれば、第13の実施形態から第16の実施形態までのいずれか1つであって、下部ウインドウの直径が、少なくとも4mmである、実施形態が提供される。
【0061】
実施形態18.第18の実施形態によれば、第13の実施形態から第17の実施形態までのいずれか1つであって、下部ウインドウの縁部の高さが、0.3mm超でかつ0.6mm以下である、実施形態が提供される。
【0062】
実施形態19.第19の実施形態によれば、第13の実施形態から第18の実施形態までのいずれか1つであって、下部ウインドウの縁部の部分が、少なくとも0.15mmの高さを有する、実施形態が提供される。
【0063】
実施形態20.第20の実施形態によれば、第13の実施形態から第19の実施形態までのいずれか1つであって、比が、硬化剤:ポリマー=約0.5:10~約0.7:10である、実施形態が提供される。
【0064】
例示的な実施形態および実施例を説明のために示したが、前述の説明は、本開示および添付の特許請求の範囲を限定することを何ら意図するものではない。したがって、本開示の趣旨および諸原理から実質的に逸脱することなく、上述の実施形態および実施例に変更および修正を加えることができる。このような修正形態および変更形態はすべて、本明細書において本開示の範囲に包含され、かつ以下の特許請求の範囲によって保護されることが意図される。
【0065】
以下、本発明の好ましい実施形態を項分け記載する。
【0066】
実施形態1
液体レンズデバイスであって、前記液体レンズデバイスは、
エレクトロウェッティングによって移動可能な界面を画定する第1および第2の非混和性流体;
キャップ部;
ベース部;
前記キャップ部と前記ベース部との間に配置されたガスケット;
前記キャップ部内に配置された上部ウインドウ;および
前記ベース部内に配置された下部ウインドウ
を備え、前記各ウインドウは、互いに対向し、かつ実質的に互いに平行であり、
前記下部ウインドウは、対向する主面と縁部とを備え、
前記下部ウインドウは、接着剤で前記ベース部に接合されており、前記接着剤は、前記主面および前記縁部のうち1つ以上の部分と接するように配置されており、
前記流体は、前記キャップ部、前記ベース部、前記ガスケットおよび前記各ウインドウ内に封止されており、
さらに、前記下部ウインドウの前記縁部の高さは、0.3mm超でかつ1.2mm未満である、液体レンズデバイス。
【0067】
実施形態2
前記デバイスが、105℃で750時間の熱曝露試験の際に無欠陥であることを特徴とする、実施形態1記載のデバイス。
【0068】
実施形態3
前記デバイスが、105℃で1000時間の熱曝露試験の際に無欠陥であることを特徴とする、実施形態1記載のデバイス。
【0069】
実施形態4
前記下部ウインドウの前記主面および前記縁部のうち1つ以上の前記部分が、それぞれ少なくとも7.0mm2および2.0mm2の表面積を有する、実施形態1から3までのいずれか1つ記載のデバイス。
【0070】
実施形態5
前記下部ウインドウの直径が、少なくとも4mmである、実施形態1から4までのいずれか1つ記載のデバイス。
【0071】
実施形態6
前記下部ウインドウの前記縁部の高さが、0.3mm超でかつ0.6mm以下である、実施形態1から5までのいずれか1つ記載のデバイス。
【0072】
実施形態7
前記下部ウインドウの前記縁部の前記部分が、少なくとも0.15mmの高さを有する、実施形態1から6までのいずれか1つ記載のデバイス。
【0073】
実施形態8
液体レンズデバイスであって、前記液体レンズデバイスは、
エレクトロウェッティングによって移動可能な界面を画定する第1および第2の非混和性流体;
キャップ部;
ベース部;
前記キャップ部と前記ベース部との間に配置されたガスケット;
前記キャップ部内に配置された上部ウインドウ;および
前記ベース部内に配置された下部ウインドウ
を備え、前記各ウインドウは、互いに対向し、かつ実質的に互いに平行であり、
前記下部ウインドウは、対向する主面と縁部とを備え、
前記下部ウインドウは、接着剤で前記ベース部に接合されており、前記接着剤は、前記主面および前記縁部のうち1つ以上の部分と接するように配置されており、
前記流体は、前記キャップ部、前記ベース部、前記ガスケットおよび前記各ウインドウ内に封止されており、
さらに、前記接着剤は、硬化剤とポリマーとを前記硬化剤:前記ポリマー=約0.4:10~約0.9:10の比で含む熱硬化性ポリマーである、液体レンズデバイス。
【0074】
実施形態9
前記デバイスが、105℃で750時間の熱曝露試験の際に無欠陥であることを特徴とする、実施形態8記載のデバイス。
【0075】
実施形態10
前記デバイスが、105℃で1000時間の熱曝露試験の際に無欠陥であることを特徴とする、実施形態8記載のデバイス。
【0076】
実施形態11
前記比が、前記硬化剤:前記ポリマー=約0.5:10~約0.7:10である、実施形態8から10までのいずれか1つ記載のデバイス。
【0077】
実施形態12
前記下部ウインドウの直径が、少なくとも4mmである、実施形態8から11までのいずれか1つ記載のデバイス。
【0078】
実施形態13
液体レンズデバイスであって、前記液体レンズデバイスは、
エレクトロウェッティングによって移動可能な界面を画定する第1および第2の非混和性流体;
キャップ部;
ベース部;
前記キャップ部と前記ベース部との間に配置されたガスケット;
前記キャップ部内に配置された上部ウインドウ;および
前記ベース部内に配置された下部ウインドウ
を備え、前記各ウインドウは、互いに対向し、かつ実質的に互いに平行であり、
前記下部ウインドウは、対向する主面と縁部とを備え、
前記下部ウインドウは、接着剤で前記ベース部に接合されており、前記接着剤は、前記主面および前記縁部のうち1つ以上の部分と接するように配置されており、
前記流体は、前記キャップ部、前記ベース部、前記ガスケットおよび前記各ウインドウ内に封止されており、
前記接着剤は、硬化剤とポリマーとを前記硬化剤:前記ポリマー=約0.4:10~約0.9:10の比で含む熱硬化性ポリマーであり、
さらに、前記下部ウインドウの前記縁部の高さは、0.3mm超でかつ1.2mm未満である、液体レンズデバイス。
【0079】
実施形態14
前記デバイスが、105℃で750時間の熱曝露試験の際に無欠陥であることを特徴とする、実施形態13記載のデバイス。
【0080】
実施形態15
前記デバイスが、105℃で1000時間の熱曝露試験の際に無欠陥であることを特徴とする、実施形態13記載のデバイス。
【0081】
実施形態16
前記下部ウインドウの前記主面および前記縁部のうち1つ以上の前記部分が、それぞれ少なくとも7.0mm2および2.0mm2の表面積を有する、実施形態13から15までのいずれか1つ記載のデバイス。
【0082】
実施形態17
前記下部ウインドウの直径が、少なくとも4mmである、実施形態13から16までのいずれか1つ記載のデバイス。
【0083】
実施形態18
前記下部ウインドウの前記縁部の高さが、0.3mm超でかつ0.6mm以下である、実施形態13から17までのいずれか1つ記載のデバイス。
【0084】
実施形態19
前記下部ウインドウの前記縁部の前記部分が、少なくとも0.15mmの高さを有する、実施形態13から18までのいずれか1つ記載のデバイス。
【0085】
実施形態20
前記比が、前記硬化剤:前記ポリマー=約0.5:10~約0.7:10である、実施形態13から19までのいずれか1つ記載のデバイス。
【国際調査報告】