(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-15
(54)【発明の名称】新生児低酸素性虚血性脳症における神経保護のための組成物及び方法
(51)【国際特許分類】
A61K 31/232 20060101AFI20231208BHJP
A61P 9/10 20060101ALI20231208BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20231208BHJP
A61K 9/107 20060101ALI20231208BHJP
A61K 47/12 20060101ALI20231208BHJP
A61K 47/14 20170101ALI20231208BHJP
A61K 47/24 20060101ALI20231208BHJP
A61K 47/10 20170101ALI20231208BHJP
A61K 47/26 20060101ALI20231208BHJP
A61K 47/22 20060101ALI20231208BHJP
【FI】
A61K31/232
A61P9/10
A61P25/00
A61K9/107
A61K47/12
A61K47/14
A61K47/24
A61K47/10
A61K47/26
A61K47/22
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023534312
(86)(22)【出願日】2021-12-07
(85)【翻訳文提出日】2023-08-04
(86)【国際出願番号】 US2021062102
(87)【国際公開番号】W WO2022125484
(87)【国際公開日】2022-06-16
(32)【優先日】2020-12-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】306018457
【氏名又は名称】ザ・トラスティーズ・オブ・コロンビア・ユニバーシティ・イン・ザ・シティ・オブ・ニューヨーク
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】デッケルバウム リチャード ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】ジルポリ ヒュルデ
(72)【発明者】
【氏名】ダール ソーレン ヴェイス
(72)【発明者】
【氏名】テン ヴァディム エス.
【テーマコード(参考)】
4C076
4C206
【Fターム(参考)】
4C076AA17
4C076BB13
4C076BB25
4C076CC01
4C076CC11
4C076DD38D
4C076DD41
4C076DD41F
4C076DD43
4C076DD46
4C076DD49
4C076DD59S
4C076DD63F
4C076DD67D
4C076FF14
4C076FF16
4C076FF51
4C206AA01
4C206AA02
4C206DB09
4C206DB47
4C206DB48
4C206MA01
4C206MA04
4C206MA42
4C206MA79
4C206MA86
4C206NA14
4C206ZA02
4C206ZA36
(57)【要約】
本開示の様々な態様及び実施形態では、本発明は、低酸素性虚血性脳症(HIE)に関連する脳損傷から保護するための医薬組成物及び方法を提供する。この組成物及び方法は、オメガ-3脂肪酸(n-3 FA)ジグリセリド(DG)及び/またはトリグリセリド(TG)エマルジョンを使用し、単独でまたは治療的低体温療法(HT)と組み合わせて使用してもよい。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
新生児低酸素性虚血性脳症(HIE)に関連する脳損傷から保護するための方法であって、オメガ3脂肪酸(FA)ジグリセリド(DG)エマルジョン及び/またはオメガ-3FAトリグリセリド(TG)エマルジョンを必要とする対象に、オメガ3脂肪酸(FA)ジグリセリド(DG)エマルジョン及び/またはオメガ-3FAトリグリセリド(TG)エマルジョンを投与することを含む前記方法。
【請求項2】
前記対象がHIEの危険性がある出生前対象であり、前記DG及び/または前記TGエマルジョンが妊娠中の母親に投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記対象が分娩中であり、前記DGまたは前記TGエマルジョンが、分娩開始前または分娩開始後に母親に静脈内または経鼻胃管によって投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記エマルジョンが、1回以上のボーラス注射として、もしくは連続注入により、または1回以上のボーラス負荷用量とそれに続く1回以上の追加の静脈内用量の注入の組み合わせとして静脈内投与される、請求項2または3に記載の方法。
【請求項5】
前記対象が新生児であり、前記DG及び/または前記TGエマルジョンが分娩の約12時間以内に前記新生児に最初に投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記新生児が早産児または正期新生児である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記エマルジョンの少なくとも第1用量が、分娩の約6時間以内、または分娩の約4時間以内、分娩の約2時間以内に投与される、請求項5または6に記載の方法。
【請求項8】
前記エマルジョンが、1回以上のボーラス注射及び/または持続注入として、経鼻胃(NG)チューブを介して、または静脈内に投与される、請求項5~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記新生児が治療的低体温療法(HT)で処置される、請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記エマルジョンが、HTの前、最中、または後に最初に投与される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記HTが分娩の約12時間以内に開始される、請求項9または10に記載の方法。
【請求項12】
前記HTが分娩の約10時間以内に開始される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記HTが分娩の約8時間以内に開始される、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記HTが分娩の約6時間以内に開始される、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
前記HTが、分娩の約6時間後、または分娩の約8時間後、または分娩の約10時間後、または分娩の約12時間後に開始される、請求項11に記載の方法。
【請求項16】
オメガ-3 FA TGエマルジョンが投与される、請求項1~15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
オメガ-3 FA DGエマルジョンが投与される、請求項1~15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
前記FAが、前記脂肪酸の少なくとも約50重量%のエイコサペンタエン酸(EPA)及び/またはドコサヘキサエン酸(DHA)を含む、請求項16または17に記載の方法。
【請求項19】
前記脂肪酸が少なくとも約60重量%のEPA及び/またはDHAを含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記脂肪酸が少なくとも約70重量%のEPA及び/またはDHAを含む、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
前記脂肪酸がEPA及びDHAの両方を含む、請求項18~20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
EPA:DHAの比が約4:1~約1:4である、請求項20に記載の方法。
【請求項23】
EPA:DHAの比が約2:1~約1:2であり、任意選択で約1:1である、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記FAがドコサペンタエン酸(DPA)をさらに含む、請求項16~23のいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
前記FAがアラキドン酸(ARA)をさらに含む、請求項15~24のいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
前記FAが約1~約40重量%のARAを含む、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記DGもしくは前記TG、またはそれらのエマルジョンが、1つ以上の特殊な分解促進メディエーター(SPM)をさらに含む、請求項1~25のいずれか1項に記載の方法。
【請求項28】
前記SPM(複数可)が、1つ以上のリポキシン、(ニューロ)プロテクチン、レゾルビン、及びマレシンを含む、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記エマルジョンが、遊離FAとして、またはTG及び/またはDGとしてエステル化された中鎖脂肪酸(MCFA)をさらに含む、請求項15~28のいずれか1項に記載の方法。
【請求項30】
前記MCFAが、前記TG及び/または前記DGエマルジョン中の前記脂肪酸の約1%~約20%である、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記エマルジョンが、組成物の約10重量%~約30重量%のTG及び/またはDGを含む、請求項1~30のいずれか1項に記載の方法。
【請求項32】
前記エマルジョンが、前記組成物の約15重量%~約25重量%のDGを含む、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記エマルジョンの平均粒径が200nm以下である、請求項1~32のいずれか1項に記載の方法。
【請求項34】
前記エマルジョンが、約-40mV以上のマイナスのゼータ電位を有する、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記対象が、前記エマルジョンの単回投与を受ける、請求項1~34のいずれか1項に記載の方法。
【請求項36】
前記対象が少なくとも2回、最大6回まで前記エマルジョンの投与を受ける、請求項1~35のいずれか1項に記載の方法。
【請求項37】
前記エマルジョンが、12時間ごとに約1回以下の頻度で投与される、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記エマルジョンが約1日~約1週間にわたって投与される、請求項36に記載の方法。
【請求項39】
前記エマルジョンがほぼ毎日投与される、請求項36に記載の方法。
【請求項40】
各投与が、体重1kg当たり約0.05~約5gという乳化DGまたは乳化TGの用量である、請求項1~39のいずれか1項に記載の方法。
【請求項41】
各投与が体重1kg当たり約0.5~約4gという前記乳化DGまたは前記乳化TGである、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
新生児における低酸素性虚血性脳症(HIE)に関連する脳損傷から保護するための方法であって、HIEの危険性がある子供を抱えている妊娠中の母親に、出生前または分娩中にオメガ3 FA DGまたはTGエマルジョンの静脈内注射を投与することと、任意選択で、治療的低体温療法(HT)レジメン及び/またはオメガ-3 FA DGもしくはTGエマルジョン療法で分娩後の前記新生児を治療することとを含む、前記方法。
【請求項43】
前記DGまたは前記TGエマルジョンが、分娩開始後に前記母親に静脈内投与される、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
出産が正期産または早産である、請求項42または請求項43に記載の方法。
【請求項45】
前記エマルジョンが、ボーラスとして、もしくは連続注入により、または1回以上のボーラス負荷用量とそれに続く1回以上の追加の静脈内用量の注入の組み合わせとして静脈内投与される、請求項42~44のいずれか1項に記載の方法。
【請求項46】
n-3 FA DGエマルジョンが分娩の約12時間以内に前記新生児に投与される、請求項42~45のいずれか1項に記載の方法。
【請求項47】
前記n-3 FA DGエマルジョンが、分娩の約6時間以内、または分娩の約4時間以内、分娩の約2時間以内に投与される、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
前記n-3FA DGまたは前記TGエマルジョンが、ボーラス及び/または持続注入として、前記新生児にNGチューブを介してまたは静脈内に投与される、請求項46または47に記載の方法。
【請求項49】
前記新生児が治療的低体温療法(HT)で処置される、請求項42~48のいずれか1項に記載の方法。
【請求項50】
前記HTが分娩の約12時間以内に開始される、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
前記HTが分娩の約10時間以内に開始される、請求項49に記載の方法。
【請求項52】
前記HTが分娩の約8時間以内に開始される、請求項49に記載の方法。
【請求項53】
前記HTが分娩の約6時間以内に開始される、請求項49に記載の方法。
【請求項54】
前記HTが、分娩の約6時間後、または分娩の約8時間後、または分娩の約10時間後、または分娩の約12時間後に開始される、請求項49に記載の方法。
【請求項55】
脂肪酸が少なくとも約50重量%のEPA及び/またはDHAを含む、請求項42~54のいずれか1項に記載の方法。
【請求項56】
前記脂肪酸が少なくとも約60重量%のEPA及び/またはDHAを含む、請求項55に記載の方法。
【請求項57】
前記脂肪酸が少なくとも約70重量%のEPA及び/またはDHAを含む、請求項55に記載の方法。
【請求項58】
前記脂肪酸がEPA及びDHAの両方を含む、請求項55~57のいずれか1項に記載の方法。
【請求項59】
EPA:DHAの比が約4:1~約1:4である、請求項58に記載の方法。
【請求項60】
EPA:DHAの比が約2:1~約1:2であり、任意選択で約1:1である、請求項59に記載の方法。
【請求項61】
前記脂肪酸がDPAをさらに含む、請求項55~60のいずれか1項に記載の方法。
【請求項62】
前記脂肪酸がARAをさらに含む、請求項55~61のいずれか1項に記載の方法。
【請求項63】
前記脂肪酸が約1重量%~約40重量%のARAを含む、請求項62に記載の方法。
【請求項64】
前記DGもしくは前記TG、またはそれらのエマルジョンが、1つ以上のSPMをさらに含む、請求項42~63のいずれか1項に記載の方法。
【請求項65】
前記SPM(複数可)が、1つ以上のリポキシン、(ニューロ)プロテクチン、レゾルビン、及びマレシンを含む、請求項64に記載の方法。
【請求項66】
前記エマルジョンが、遊離脂肪酸として、またはジグリセリドとしてエステル化された中鎖脂肪酸(MCFA)をさらに含む、請求項42~65のいずれか1項に記載の方法。
【請求項67】
前記MCFAが、前記エマルジョン中の前記脂肪酸の約1重量%~約20重量%である、請求項66に記載の方法。
【請求項68】
前記エマルジョンが、組成物の約10重量%~約20重量%のDGオイルを含む、請求項42~67のいずれか1項に記載の方法。
【請求項69】
前記エマルジョンが、前記組成物の約15重量%~約25重量%のDGまたはTGオイルを含む、請求項68に記載の方法。
【請求項70】
前記エマルジョンの平均粒径が200nm以下である、請求項42~69のいずれか1項に記載の方法。
【請求項71】
前記エマルジョンが、約-40mV以上のマイナスのゼータ電位を有する、請求項70に記載の方法。
【請求項72】
前記新生児が、前記エマルジョンの単回ボーラス注射または連続注入を受ける、請求項42~71のいずれか1項に記載の方法。
【請求項73】
前記新生児が、少なくとも2回、及び最大6回の前記エマルジョンのボーラス注射またはボーラス注入を受ける、請求項42~71のいずれか1項に記載の方法。
【請求項74】
前記ボーラス注射または前記ボーラス注入が、12時間ごとに約1回以下の頻度で投与される、請求項73に記載の方法。
【請求項75】
注射が約1日~約1週間にわたって投与される、請求項73に記載の方法。
【請求項76】
前記注射がほぼ毎日投与される、請求項75に記載の方法。
【請求項77】
前記ボーラス投与が、体重1kg当たり約0.05~約5gの乳化DGもしくは乳化TGである、請求項42~76のいずれか1項に記載の方法。
【請求項78】
前記ボーラス投与が体重1kg当たり約0.5~約4gの前記乳化DGまたは前記乳化TGである、請求項77に記載の方法。
【請求項79】
低酸素性虚血性脳症(HIE)に関連する脳損傷から保護するための方法であって、必要とする新生児対象に、分娩から約12時間以内にオメガ-3FA DGまたはTGエマルジョンを投与することと、治療的低体温(HT)レジメンで前記対象を処置することとを含む前記方法。
【請求項80】
前記新生児対象が、HTの前、最中、または後に前記エマルジョンで最初に処置される、請求項79に記載の方法。
【請求項81】
前記新生児対象が早産児または正期産新生児である、請求項79または80に記載の方法。
【請求項82】
DGまたはTGエマルジョンの少なくとも第1用量が、分娩の約6時間以内、または分娩の約4時間以内、分娩の約2時間以内に投与される、請求項79~81のいずれか1項に記載の方法。
【請求項83】
前記DGまたは前記TGエマルジョンが、ボーラス及び/または持続注入として、NGチューブを介して、または静脈内に投与される、請求項79~82のいずれか1項に記載の方法。
【請求項84】
前記HTが分娩の約12時間以内に開始される、請求項79~83のいずれか1項に記載の方法。
【請求項85】
前記DGまたは前記TGエマルジョンの用量が分娩の約4時間以内に送達され、前記HTが分娩の約10時間以内に開始される、請求項84に記載の方法。
【請求項86】
前記DGまたは前記TGエマルジョンの用量が分娩の約4時間以内に送達され、前記HTが分娩の約8時間以内に開始される、請求項84に記載の方法。
【請求項87】
前記DGエマルジョンの用量が分娩の約4時間以内に送達され、前記HTが分娩の約6時間以内に開始される、請求項84に記載の方法。
【請求項88】
前記DGエマルジョンの用量が分娩の約2時間以内に送達され、前記HTが分娩の約6時間後、または分娩の約8時間後、または分娩の約10時間後、または分娩の約12時間後に開始される、請求項84に記載の方法。
【請求項89】
前記DGまたは前記TGエマルジョンが、ボーラスとして、もしくは連続注入により、またはボーラス負荷用量とそれに続く1回以上の追加の用量の注入の組み合わせとして静脈内投与される、請求項80~88のいずれか1項に記載の方法。
【請求項90】
脂肪酸が少なくとも約50重量%のEPA及び/またはDHAを含む、請求項80~89のいずれか1項に記載の方法。
【請求項91】
前記脂肪酸が少なくとも約60重量%のEPA及び/またはDHAを含む、請求項90に記載の方法。
【請求項92】
前記脂肪酸が少なくとも約70重量%のEPA及び/またはDHAを含む、請求項91に記載の方法。
【請求項93】
前記脂肪酸がEPA及びDHAの両方を含む、請求項90~92のいずれか1項に記載の方法。
【請求項94】
EPA:DHAの比が約4:1~約1:4である、請求項93に記載の方法。
【請求項95】
EPA:DHAの比が約2:1~約1:2であり、任意選択で約1:1である、請求項94に記載の方法。
【請求項96】
前記脂肪酸がDPAをさらに含む、請求項90~95のいずれか1項に記載の方法。
【請求項97】
前記脂肪酸がARAをさらに含む、請求項90~96のいずれか1項に記載の方法。
【請求項98】
前記脂肪酸が約1重量%~約40重量%のARAを含む、請求項97に記載の方法。
【請求項99】
前記DGもしくは前記TG、またはそれらのエマルジョンが、1つ以上のSPMをさらに含む、請求項90~98のいずれか1項に記載の方法。
【請求項100】
前記SPM(複数可)が、1つ以上のリポキシン、(ニューロ)プロテクチン、レゾルビン、及びマレシンを含む、請求項99に記載の方法。
【請求項101】
前記エマルジョンが、遊離FAとして、またはDGもしくはTGとしてエステル化されたMCFAをさらに含む、請求項90~100のいずれか1項に記載の方法。
【請求項102】
前記MCFAが、前記DGもしくは前記TGエマルジョン中の前記脂肪酸の約1重量%~約20重量%である、請求項101に記載の方法。
【請求項103】
前記エマルジョンが、約10重量%~約30重量%のDGオイルまたはTGオイルを含む、請求項79~102のいずれか1項に記載の方法。
【請求項104】
前記エマルジョンが、約15重量%~約25重量%のDGまたはTGオイルを含む、請求項103に記載の方法。
【請求項105】
前記エマルジョンの平均粒径が200nm以下である、請求項79~104のいずれか1項に記載の方法。
【請求項106】
前記エマルジョンが、約-40mV以上のマイナスのゼータ電位を有する、請求項105に記載の方法。
【請求項107】
前記対象が、前記エマルジョンの単回ボーラス注射または注入を受ける、請求項79~106のいずれか1項に記載の方法。
【請求項108】
前記対象が、少なくとも2回、及び最大6回の前記エマルジョンのボーラス注射またはボーラス注入を受ける、請求項79~106のいずれか1項に記載の方法。
【請求項109】
前記ボーラス注射または前記ボーラス注入が、12時間ごとに約1回以下の頻度で投与される、請求項108に記載の方法。
【請求項110】
前記ボーラス注射または前記ボーラス注入が、約1日~約1週間の経過にわたって投与される、請求項108に記載の方法。
【請求項111】
前記ボーラス注射または前記ボーラス注入がほぼ毎日投与される、請求項108に記載の方法。
【請求項112】
単回投与が体重1kg当たり約0.05~約5gの乳化DGまたは乳化TGを含む、請求項79~111のいずれか1項に記載の方法。
【請求項113】
単回投与が体重1kg当たり約2g~約4gの前記乳化DGまたは前記乳化TGを含む、請求項112に記載の方法。
【請求項114】
1つ以上の乳化剤で乳化された有効量のオメガ-3 DGまたはTGオイルを含む医薬組成物であって、前記DGまたは前記TGオイルが、少なくとも約50重量%のEPA及びDHA、及び1重量%~約30重量%のARAであるエステル化FAを含む、前記医薬組成物。
【請求項115】
前記FAが少なくとも約60重量%のEPA及びDHAを含む、請求項114に記載の医薬組成物。
【請求項116】
前記FAが少なくとも約70重量%のEPA及びDHAを含む、請求項114に記載の医薬組成物。
【請求項117】
EPA:DHAの比が約4:1~約1:4である、請求項114~116のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項118】
EPA:DHAの比が約2:1~約1:2であり、任意選択で約1:1である、請求項117に記載の医薬組成物。
【請求項119】
前記FAがDPAをさらに含む、請求項114~118のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項120】
前記DGもしくは前記TG、またはそれらのエマルジョンが、1つ以上のSPMをさらに含む、請求項114~119のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項121】
前記SPM(複数可)が、1つ以上のリポキシン、(ニューロ)プロテクチン、レゾルビン、及びマレシンを含む、請求項120に記載の方法。
【請求項122】
前記エマルジョンが、遊離FAとして、またはDGもしくはTG中でエステル化されたMCFAをさらに含む、請求項114~121のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項123】
前記MCFAが、前記エマルジョン中の前記FAの約1重量%~約20重量%である、請求項122に記載の医薬組成物。
【請求項124】
前記エマルジョンが、約10重量%~約30重量%のDGまたはTGオイルを含む、請求項114~123のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項125】
前記エマルジョンが約15重量%~約25重量%のDGまたはTGオイルを含む、請求項124に記載の医薬組成物。
【請求項126】
前記エマルジョンの平均粒径が200nm以下である、請求項114~125のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項127】
前記エマルジョンが、約-40mV以上のマイナスのゼータ電位を有する、請求項126に記載の医薬組成物。
【請求項128】
前記乳化剤が、リン脂質乳化剤、ホスホグリセリド乳化剤、ならびに中鎖及び/または長鎖FA乳化剤のうちの1つ以上を含む、請求項114~127のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項129】
前記乳化剤が、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルセリン、及びホスファチジン酸から選択される少なくとも1つを含む、請求項128に記載の医薬組成物。
【請求項130】
前記乳化剤が、1つ以上の中鎖または長鎖FAをさらに含む、請求項128に記載の医薬組成物。
【請求項131】
前記乳化剤が、任意選択でラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、及びステアリン酸から選択される飽和FAを含む;ならびに/または任意選択でオレイン酸もしくはリノレン酸から選択される不飽和FAを含む、請求項130に記載の医薬組成物。
【請求項132】
前記乳化剤がホスファチジルコリン及びオレイン酸ナトリウムを含む、請求項131に記載の医薬組成物。
【請求項133】
前記組成物がヒトの血液とほぼ等張であり、任意選択でグリセロール、ソルビトール、キシリトール、及び/またはグルコースなどの1つ以上のポリオールを含む、請求項114~132のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項134】
α-トコフェロール、β-トコフェロール、γ-トコフェロール、及びアスコルビルエステルのうちの1つ以上など、1つ以上の抗酸化剤を含む、請求項114~133のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項135】
任意選択でEDTAまたはEGTAである金属キレート剤をさらに含む、請求項114~134のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項136】
本質的にDGオイル、水、グリセロール、EDTAまたはEGTA、ホスファチジルコリン、及びオレイン酸ナトリウムからなる、請求項135に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
低酸素性虚血性脳症(HIE)は、新生児に発生する重篤な疾患であり、死亡または脳性麻痺などの長期にわたる重大な発達障害及び神経障害を引き起こすことがよくある。HIEは、出生前、出生中、出生後など、新生児の脳に酸素欠乏をもたらすさまざまな状態によって引き起こされる。現在、HIEに対して確立された唯一の治療法は治療的低体温療法(HT)である。HTでは、新生児の全身または脳を72時間、約33~34℃に冷却することを含む。前臨床研究及び小規模臨床試験では、HTが神経損傷の程度を軽減し、死亡率を低下させ、神経機能の回復を改善し得ることが示されている。
【0002】
しかし、HTは少数のHIE患者(約8人に1人)の長期的な神経障害の軽減にしか成功しておらず、その使用は一般に三次医療施設に限定されている。したがって、HTでは新生児の搬送が必要となり、重要な時期に処置が遅れる場合がある。HTは通常、虚血事象から6時間以内に開始する必要がある。
【背景技術】
【0003】
したがって、HIEを経験している新生児、またはHIEの危険性がある新生児に神経保護を提供する組成物及び方法が喫緊に必要とされている。
【発明の概要】
【0004】
様々な態様及び実施形態では、本発明は、低酸素性虚血性脳症(HIE)に関連する脳損傷から保護するための医薬組成物及び方法を提供する。この組成物及び方法は、エマルジョンに配合可能であるオメガ-3脂肪酸(n-3 FA)ジグリセリド(DG)及び/またはトリグリセリド(TG)を使用する。様々な態様及び実施形態に従って、本開示は、出生前、分娩中、または出生後の期間中の酸素欠乏及び/または血流制限によって引き起こされる乳児の脳損傷を予防または軽減するための組成物及び方法を提供する。
【0005】
様々な実施形態では、赤ん坊は出生前または分娩中であり、HIEの危険性があり、n-3FA DGまたはTGエマルジョンが妊娠中の母親に静脈内投与される。例えば、いくつかの実施形態では、HIEを誘発する可能性のある虚血性事象が予測または検出される場合、例えば、子癇前症またはHIEリスクに関連する他の妊娠状態の検出時に、n-3FA DGまたはTGエマルジョンが母親に静脈内投与される。いくつかの実施形態では、エマルジョンは、長期分娩を含む分娩中、または臍帯圧迫により新生児がHIEの危険にさらされていると判断された場合、または胎盤早期剥離など胎盤への血流が障害されている場合に投与される。
【0006】
他の実施形態では、投与対象は、HIEが疑われる新生児(すなわち、新生児)である。n-3FA DGまたはTGエマルジョンは、分娩の約12時間以内、または分娩の約10時間以内、または分娩の約8時間以内、または分娩の約6時間以内、または分娩の約4時間以内、または分娩の約2時間以内に新生児に投与される。新生児への送達の場合、エマルジョンは経鼻胃(NG)チューブを介して投与されても、または静脈内に投与されてもよい。
【0007】
様々な実施形態では、新生児は、n-3FA TGまたはDGエマルジョンでの処置の前、処置の間、または処置後のいずれかに、HTでさらに処置される。HTは通常、分娩の約6時間以内など、できるだけ早く開始する必要がある。しかし、いくつかの実施形態では、HTは、分娩の約12時間以内、または分娩の約10時間以内、または分娩の約8時間以内に開始される。いくつかの実施形態では、出生直後のTGまたはDGエマルジョンの投与によって、HTが脳損傷ならびに長期及び/または生涯にわたるHIEの合併症を回避するために利益をもたらす範囲が拡大され得る。
【0008】
本発明によれば、DGまたはTGの脂肪酸は主にn-3 FAである。いくつかの実施形態では、n-3 FAは、ドコサヘキサエン酸(DHA)、エイコサペンタエン酸(EPA)、及びドコサペンタエン酸(DPA)のうちの1つ以上を含む長鎖n-3 FAである。いくつかの実施形態では、n-3 FAは、DHA及びEPAを含む。EPA及びDHAは、任意選択で、約4:1~約1:4(例えば、約1:1)の比で存在してもよい。さらに他の実施形態では、FAは、アラキドン酸(ARA)または中鎖脂肪酸(MCFA)をさらに含んでもよい。いくつかの実施形態では、DGまたはTG(またはエマルジョン)は、主にAA、EPA、DPA、及びDHAに由来する酸素化代謝産物である、1つ以上の特殊な分解促進メディエーター(SPM)をさらに含む。それらとしては、リポキシン、(ニューロ)プロテクチン、レゾルビン、及びマレシンが含まれ、ナノモルからピコモルの範囲の濃度で強力な抗アポトーシス効果、抗炎症効果、及び免疫調節効果を有し得る。
【0009】
様々な実施形態では、エマルジョンは、1つ以上の乳化剤とともに、組成物全体の約10重量%~約30重量%のTGオイル及び/またはDGオイルを含む。例えば、エマルジョンは、1つ以上の乳化剤とともに、全組成物の約15重量%~約30重量%のDGオイル、または約15重量%~約25重量%のDGオイル(例えば、約20%のDGオイル)を含んでもよい。
【0010】
様々な実施形態では、対象(例えば、HIEを経験しているまたはHIEの危険性がある新生児対象など)は、エマルジョンの1回以上のボーラス注射もしくは注入、または経鼻胃(NG)チューブを介して受ける。いくつかの実施形態では、対象は少なくとも2回、最大6回のエマルジョンの投与を受けてもよい。様々な実施形態では、エマルジョンは、1日~約1週間にわたって投与され、1日1回以上(例えば、ほぼ毎日)投与されてもよい。
【0011】
例示的な実施形態として、本開示は、新生児におけるHIEに関連する脳損傷に対して防御するための方法を提供し、この方法は、HIEの危険性がある子供を抱えている妊娠中の母親に、出生前または分娩中に、n-3FA DGまたはTGエマルジョンの静脈内注射を投与することを含む。分娩後、新生児は任意選択で、HT療法及び/またはDGもしくはTGエマルジョン療法でさらに処置されてもよい。いくつかの実施形態では、一旦、HIEが予想されるか、または重大な危険性がある場合、DGまたはTGエマルジョンは、分娩前または分娩中に母親に静脈内投与される。
【0012】
他の例示的な実施形態では、神経保護のための方法は、必要とする新生児対象に、分娩の約12時間以内、または分娩の約10時間以内、または分娩の約8時間もしくは6時間以内(またはそれ未満)以内にn-3FA DGエマルジョンを投与すること、及びHTレジメンで新生児対象を処置することを含む。エマルジョンは、HTレジメンの前、最中、及び/または後に投与してもよい。例えば、エマルジョンの少なくとも最初の用量は、分娩の約6時間以内、または分娩の約4時間以内、分娩の約2時間以内に投与されてもよく、それによって新生児がHTを開始するために輸送されている間に神経保護を提供し得る。このエマルジョンは、経鼻胃(NG)チューブまたは静脈内に投与される。これらの実施形態によれば、HTは、一般に望まれるよりも遅く開始されてもよく、それでも予想外の治療効果を提供し得る。さらに他の実施形態では、HTが最初に開始され、続いてn-3FA TGまたはDGエマルジョンが投与される。
【0013】
他の態様では、本開示は、本明細書に記載の様々な方法に使用され得る医薬組成物を提供する。様々な実施形態では、医薬組成物は、有効量のn-3FA DGエマルジョンを含み、ここで、DGは、少なくとも約50%のEPA及びDHAを含み、(重量による総FA含量に対して)1%~約40%のアラキドン酸(ARA)及び/または中鎖脂肪酸(MCFA)、ならびに1つ以上の乳化剤を含む。
【0014】
いくつかの実施形態では、エマルジョンは、約10重量%~約30重量%のジグリセリドオイルを含む。いくつかの実施形態では、エマルジョンは、約15重量%~約25重量%のジグリセリドオイルを含む。組成物は、所望の物理的特性を得るために、1つ以上の乳化剤をさらに含む。様々な実施形態では、乳化剤には、リン脂質乳化剤、ホスホグリセリド乳化剤、及び中鎖及び/または長鎖脂肪酸乳化剤のうちの1つ以上を含んでもよい。ホスホグリセリド乳化剤は、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルセリン、及びホスファチジン酸から選択され得る。共乳化剤としての中鎖または長鎖FAは、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、及びリノレン酸から選択され得る。例示的な共乳化剤はオレイン酸ナトリウムである。
【0015】
様々な実施形態では、組成物は、任意選択で、グリセロールなどの1つ以上のポリオールを含む。例えば、組成物は、組成物の約2重量%~約10重量%のグリセロールを含んでもよい。いくつかの実施形態では、組成物は、α-トコフェロール、β-トコフェロール、γ-トコフェロール、及びアスコルビルエステルのうちの1つ以上など、1つ以上の抗酸化剤をさらに含む。いくつかの実施形態では、組成物は、任意選択でEDTAまたはEGTAである金属キレート剤をさらに含む。
【0016】
本開示のさらなる態様及び実施形態は、以下の詳細な説明によってここに記載される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1A】梗塞容積に対する低体温(HT)及びtri-DHAの影響:低酸素虚血(HI)損傷直後(0時間)から開始する正常体温(NT)+生理食塩水(n=21)、HT+生理食塩水(n=20)、tri-DHA(n=21)またはHT+tri-DHA(n=11)で処置したマウスの梗塞容積(A)及び代表的なTTC染色大脳切片(B)(梗塞容積%:NT+生理食塩水-33.2±4.8、HT+生理食塩水-14.9±4.8、0時間tri-DHA-14.9±4.5、0時間HT+tri-DHA-15.0±7.0);HI損傷直後(0時間)から開始してNT+生理食塩水、HT+生理食塩水またはHT+tri-DHAで処置したマウスの代表的なニッスル染色大脳冠状切片(C)。値は平均値±SEMである。*p<0.05、NT+生理食塩水群と比較。
【
図1B】梗塞容積に対する低体温(HT)及びtri-DHAの影響:低酸素虚血(HI)損傷直後(0時間)から開始する正常体温(NT)+生理食塩水(n=21)、HT+生理食塩水(n=20)、tri-DHA(n=21)またはHT+tri-DHA(n=11)で処置したマウスの梗塞容積(A)及び代表的なTTC染色大脳切片(B)(梗塞容積%:NT+生理食塩水-33.2±4.8、HT+生理食塩水-14.9±4.8、0時間tri-DHA-14.9±4.5、0時間HT+tri-DHA-15.0±7.0);HI損傷直後(0時間)から開始してNT+生理食塩水、HT+生理食塩水またはHT+tri-DHAで処置したマウスの代表的なニッスル染色大脳冠状切片(C)。値は平均値±SEMである。*p<0.05、NT+生理食塩水群と比較。
【
図1C】梗塞容積に対する低体温(HT)及びtri-DHAの影響:低酸素虚血(HI)損傷直後(0時間)から開始する正常体温(NT)+生理食塩水(n=21)、HT+生理食塩水(n=20)、tri-DHA(n=21)またはHT+tri-DHA(n=11)で処置したマウスの梗塞容積(A)及び代表的なTTC染色大脳切片(B)(梗塞容積%:NT+生理食塩水-33.2±4.8、HT+生理食塩水-14.9±4.8、0時間tri-DHA-14.9±4.5、0時間HT+tri-DHA-15.0±7.0);HI損傷直後(0時間)から開始してNT+生理食塩水、HT+生理食塩水またはHT+tri-DHAで処置したマウスの代表的なニッスル染色大脳冠状切片(C)。値は平均値±SEMである。*p<0.05、NT+生理食塩水群と比較。
【
図2A】低体温(HT)及びtri-DHAの治療範囲:低酸素虚血(HI)損傷の2時間後から開始した、正常体温(NT)+生理食塩水(n=22)、HT+生理食塩水(n=22)またはHT+tri-DHA(n=21)で処置したマウスの梗塞容積(A)及び代表的なTTC染色大脳切片(B)(梗塞容積%:NT+生理食塩水-31.4±4.1、2時間遅延HT+生理食塩水-18.8±4.6、2時間遅延HT+tri-DHA-12.7±4.0);低酸素虚血(HI)傷害の4時間後に開始して正常体温(NT)+生理食塩水(n=19)、HT+生理食塩水(n=23)またはHT+tri-DHA(n=10)で処置したマウスの梗塞容積(C)及び代表的なTTC染色大脳切片(D)(梗塞容積%:NT+生理食塩水-30.7±5.0、4時間遅延HT+生理食塩水-31.3±5.6、4時間遅延HT+tri-DHA-41.3±5.5)。値は平均値±SEMである。*p<0.05、**p<0.01、NT+生理食塩水群と比較。
【
図2B】低体温(HT)及びtri-DHAの治療範囲:低酸素虚血(HI)損傷の2時間後から開始した、正常体温(NT)+生理食塩水(n=22)、HT+生理食塩水(n=22)またはHT+tri-DHA(n=21)で処置したマウスの梗塞容積(A)及び代表的なTTC染色大脳切片(B)(梗塞容積%:NT+生理食塩水-31.4±4.1、2時間遅延HT+生理食塩水-18.8±4.6、2時間遅延HT+tri-DHA-12.7±4.0);低酸素虚血(HI)傷害の4時間後に開始して正常体温(NT)+生理食塩水(n=19)、HT+生理食塩水(n=23)またはHT+tri-DHA(n=10)で処置したマウスの梗塞容積(C)及び代表的なTTC染色大脳切片(D)(梗塞容積%:NT+生理食塩水-30.7±5.0、4時間遅延HT+生理食塩水-31.3±5.6、4時間遅延HT+tri-DHA-41.3±5.5)。値は平均値±SEMである。*p<0.05、**p<0.01、NT+生理食塩水群と比較。
【
図2C】低体温(HT)及びtri-DHAの治療範囲:低酸素虚血(HI)損傷の2時間後から開始した、正常体温(NT)+生理食塩水(n=22)、HT+生理食塩水(n=22)またはHT+tri-DHA(n=21)で処置したマウスの梗塞容積(A)及び代表的なTTC染色大脳切片(B)(梗塞容積%:NT+生理食塩水-31.4±4.1、2時間遅延HT+生理食塩水-18.8±4.6、2時間遅延HT+tri-DHA-12.7±4.0);低酸素虚血(HI)傷害の4時間後に開始して正常体温(NT)+生理食塩水(n=19)、HT+生理食塩水(n=23)またはHT+tri-DHA(n=10)で処置したマウスの梗塞容積(C)及び代表的なTTC染色大脳切片(D)(梗塞容積%:NT+生理食塩水-30.7±5.0、4時間遅延HT+生理食塩水-31.3±5.6、4時間遅延HT+tri-DHA-41.3±5.5)。値は平均値±SEMである。*p<0.05、**p<0.01、NT+生理食塩水群と比較。
【
図2D】低体温(HT)及びtri-DHAの治療範囲:低酸素虚血(HI)損傷の2時間後から開始した、正常体温(NT)+生理食塩水(n=22)、HT+生理食塩水(n=22)またはHT+tri-DHA(n=21)で処置したマウスの梗塞容積(A)及び代表的なTTC染色大脳切片(B)(梗塞容積%:NT+生理食塩水-31.4±4.1、2時間遅延HT+生理食塩水-18.8±4.6、2時間遅延HT+tri-DHA-12.7±4.0);低酸素虚血(HI)傷害の4時間後に開始して正常体温(NT)+生理食塩水(n=19)、HT+生理食塩水(n=23)またはHT+tri-DHA(n=10)で処置したマウスの梗塞容積(C)及び代表的なTTC染色大脳切片(D)(梗塞容積%:NT+生理食塩水-30.7±5.0、4時間遅延HT+生理食塩水-31.3±5.6、4時間遅延HT+tri-DHA-41.3±5.5)。値は平均値±SEMである。*p<0.05、**p<0.01、NT+生理食塩水群と比較。
【
図3】低酸素性虚血(HI)損傷を受け、ビヒクルとして生理食塩水、n-3 トリグリセリド(TG)、n-3 ジグリセリド(DG)エマルジョンで処置された新生仔マウス(10日齢)の梗塞容積。n=15~17。値はSD付きの平均値である。用量=0.375mg/g(体重)。
【
図4】低酸素性虚血(HI)損傷を与え、ビヒクルとして生理食塩水、または1匹あたり10もしくは20ngの濃度のDHA(PD1)由来のニューロプロテクチン と、比較した1匹あたり10ngのDPA由来のニューロプロテクチン(PD1 n-3 DPA)で処置した新生仔マウス(生後10日)の梗塞容積(n=15-17)。値はSD付きの平均値である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
様々な態様及び実施形態では、本発明は、低酸素性虚血性脳症(HIE)に関連する脳損傷から保護するための医薬組成物及び方法を提供する。この組成物及び方法は、エマルジョンに配合されるオメガ-3脂肪酸(n-3 FA)ジグリセリド(DG)及び/またはトリグリセリド(TG)を使用する。
【0019】
様々な態様及び実施形態に従って、本開示は、出産前、分娩中、または出生後の期間中の酸素欠乏及び/または血流制限によって引き起こされる脳損傷を予防または軽減するための組成物及び方法を提供する。このような状態は、臨床的には(新生児)低酸素性虚血性脳症(HIE)として説明される場合が多く、これには新生児脳症出生時仮死、分娩中仮死及び周産期仮死が挙げられる。HIEはさまざまな種類の組織損傷を引き起こす可能性があり、とりわけ脳性麻痺、認知障害、てんかん、聴覚障害、及び視覚障害などの長期障害を引き起こし得る。
【0020】
妊娠中のHIEの原因(すなわち、新生児がHIEのリスクにさらされる)としては、子癇前症、子癇、妊娠糖尿病、及び感染症が挙げられる。新生児がHIEのリスクにさらされる妊娠中または分娩中のその他の状態としては、常位胎盤早期剥離、前置胎盤、胎盤機能不全、子宮破裂、及び臍帯合併症が挙げられる。臍帯合併症には臍帯の圧迫が含まれ、これは、例えば長時間の分娩中に発生し得る。分娩前の胎児心拍数または子宮頻収縮の変化は、HIEの予測因子であり得る。新生児期の未熟児は肺が未発達である場合があるので、特にHIEのリスクが高い。一般に、新生児におけるHIEのリスクを示す症状には、呼吸困難、黄疸、及び新生児低血糖が挙げられる。HIEの兆候としては、呼吸障害、摂食障害、反射神経の欠如、発作、及び意識レベルの低下が挙げられる。
【0021】
新生児のHIEまたはHIEのリスクは、アプガースコアを使用して診断または評価され得る。Apgarスコアで評価される5つの基準は次のとおりである:(1)外観(すなわち、肌の色/色合い);(2)パルス;(3)しかめっ面(すなわち、刺激に対する反応);(4)活動(すなわち、筋緊張/活動レベル)、及び(5)呼吸。一般に、5つの基準はそれぞれ0、1、または2(2つが最高)としてスコア付けされ、合計スコアは5の値を加算することによって計算される。0~3のスコアは、特に正期産または正期産間近に生まれた赤ちゃんでは重要とみなされる。特に5分後のスコアが4~6の場合は、正常以下とみなされ、HIEのリスクを示す場合があり、医療介入が必要になる場合がある。7+のスコアは正常とみなされる。
【0022】
あるいは、またはさらに、HIEのリスクは、出生直後に臍帯血を採取することによって評価され得る。血液のpH及び塩基欠損(BD)は、虚血性事象が発生したか否かを評価するための公知の手段である。HIEの他の予測因子としては、脳特異的クレアチンキナーゼ(CK-BB)、プロテイン S-100B、ニューロン特異的エンドラーゼ、及び他の炎症性マーカー、例えば、インターロイキンなどの脳損傷の公知の血清マーカーが挙げられる。Nagdyman N.,et al.Early biochemical indicators of hypoxic-ischemic encephalopathy after birth asphyxia.Pediatr Res.2001 Apr;49(4):502-6。他の画像検査及び神経生理学的検査も、早期リスク評価を決定し、長期予後を提供するために使用可能であり、これらとしては、振幅積分脳波( Amplitude-integrated EEG)、T1強調MRI(T1-weighted MRI)及びT2強調MRI(T2-weighted MRI)、視床磁気共鳴分光法(Thalamic Magnetic Resonance Spectroscopy)(MRS)、及び深部灰白質乳酸塩/N-アセチルアスパラギン酸(Lac/NAA)ピーク/面積比が挙げられる。Pang R.,et al.,Proton Magnetic Resonance Spectroscopy Lactate/N-Acetylaspartate within 48 h Predicts Cell Death Following Varied Neuroprotective Interventions in a Piglet Model of Hypoxia-Ischemia With and Without Inflammation-Sensitization.Front Neurol.2020;11:883.
【0023】
いくつかの実施形態における本開示は、急性治療のための安定なオメガ3DGまたはTG水中油型エマルジョンを使用する医薬組成物及び方法を提供する。様々な実施形態におけるDGまたはTGエマルジョンは、DHA及びEPA、及び任意選択でDPAを含む、約50%~約100%のオメガ3脂肪酸(脂肪酸の総重量に対して)を含む。いくつかの実施形態では、総脂肪酸には、ARAまたはMCFAがさらに含まれる。DGエマルジョンは、静脈内(iv)経路などの非経口送達に適しており、DG及びTGエマルジョンの物理的特性により、損傷した脳組織へのオメガ3脂肪酸の迅速な送達が促進される。いくつかの実施形態では、DGまたはTGエマルジョンは、一般に、組成物の約10重量%~約30重量%である。すなわち、100mLのエマルジョン当たり約10~約30gのDGオイルまたはTGオイルが存在する。エマルジョンの例示的な組成物は、本明細書の他の箇所に記載されている。
【0024】
本明細書に記載のエマルジョン(例えば、n-3 FA DGエマルジョン)の投与は、治療的低体温療法(HT)との相乗的保護を提供し得るか、またはHTの代替として作用し得る。HTは現在 HIEの治療法として受け入れられている。HTは、HIEに関連する損傷プロセスを遅らせるために使用される手順である。HTには、赤ん坊を約33.5~34.5℃に約72時間冷却することが含まれる。理想的には、出生後または酸素欠乏事象の約6時間以内に開始される。HTでは、脳を選択的に冷却するために冷却キャップを使用してもよく、全身を冷却するために冷却ブランケットを使用してもよい。処置中は、呼吸、酸素化、心拍数、及び脳波活動などのバイタルサインが監視される。HTの後、身体は1時間あたり約0.5℃の速度でゆっくりと(少なくとも 4時間かけて)再加温される。
【0025】
本開示は、新生児マウスモデルにおいて、HT及びトリグリセリド-DHA(tri-DHA)による同時治療が、HI損傷から脳を保護する際に相乗効果を達成するか否かを調査する。HI損傷直後に開始したHTは、tri-DHA処置と同様に脳梗塞容積を減少させた(約50%)ことが観察された。これらの結果、HTがtri-DHA処置と比較して、HI損傷に対して同程度の神経保護を提供することが示される。HTは三次医療センターでのみ提供可能であり、徹底したモニタリングが必要であり、悪影響を及ぼし得る。対照的に、tri-DHA処置は、HI損傷直後の新生児に実行可能かつ効果的な代替戦略を提供するのに有利であり得、新生児を病院から専門施設に搬送する必要がない。したがって、いくつかの実施形態では、対象はHT療法を受けず、TGまたはDGエマルジョンが代替療法として提供される。他の実施形態では、TGまたはDGエマルジョンは、HTの前、例えばHTの準備中、またはHTを実施できる専門施設への対象の搬送前もしくは搬送中に対象に提供される。DGエマルジョンは、TGよりも驚くほど効果的な処置を提供し、その高レベルの有効性を考慮すれば、HTと比較して改善された効果、またはHTとの相乗効果をもたらす。他の実施形態では、TGまたはDGエマルジョンは、HT中またはHT後に最初に投与される。
【0026】
HIEの機構的経路の一部は成人の脳卒中と類似しているが、HIE損傷の病理生物学は成人の脳卒中の病理生物学とは異なると考えられている。実際、成人の脳損傷を改善するように設計された治療法は、おそらくアポトーシスを促進することにより、新生児の転帰を悪化させる場合がある。
【0027】
例えば、新生児の脳では髄鞘形成がまだ起こっており、新生児の脳の水分含有量が成熟した脳の水分含有量よりも多いので、新生児の脳では損傷の外観及び時間経過が成人の脳とは異なる。細胞死の機構は、成人の脳と比較して発達中の脳では異なることが示されている(Zhu C,et al.The influence of age on apoptotic and other mechanisms of cell death after cerebral hypoxia-ischemia.Cell Death Differ.2005,12,162-176)。ミトコンドリアの透過化の機構は年齢に依存しており、成人の脳ではシクロフィリンDが重要であるが、未熟な脳ではBax関連の機構が支配的である(Wang X,et al.Developmental shift of cyclophilin D contribution to hypoxic-ischemic brain injury)。J.Neurosci.2009,29,2588-2596)。成人と比較して、未熟な脳では多くのアポトーシス促進タンパク質(Bax、カスパーゼ-2、-3、-8、及び-9を含む)の発現が高く、アポトーシスがミトコンドリア外膜透過化(MOMP)後に起こる。アポトーシス誘導因子(AIF)に依存する経路(Zhu C,et al.Involvement of apoptosis-inducing factor in neuronal death after hypoxia-ischemia in the neonatal rat brain.J.Neurochem.2003,86,306-317)、及びカスパーゼは成人の脳よりも未熟な脳でより強く活性化されるようであり(Hu BR,et al.Involvement of caspase-3 in cell death after hypoxia-ischemia declines during brain maturation.J.Cereb. Blood Flow Metab.2000,20,1294-1300)、ミトコンドリアの透過性化は、未熟な脳の低酸素性虚血性損傷における復帰不能点を知らせると提唱されている(Hagberg H.Mitochondrial impairment in the developing brain after hypoxia-ischemia,J.Bioenerg. Biomembr.2004,36,369-373)。未熟な脳では、シクロフィリンD遺伝子欠損は、成体マウスと比較して低酸素性-虚血性損傷を軽減するどころか悪化させる(Wang et al.,2009;Schinzel AC,et al.Cyclophilin D is a component of mitochondrial permeability transition and mediates neuronal cell death after focal cerebral ischemia.Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.2005,102,12005-12010)。代わりに、BAX阻害ペプチド(Wang X.et al.Neuroprotective effect of Bax-inhibiting peptide on neonatal Brain injury.2010,Stroke 41,2050-2055)及びBAX欠損症(Gibson ME,et al.BAX contributes to apoptotic-like death following neonatal hypoxia-ischemia: evidence for distinct apoptosis pathways.Mol.Med.2001,7,644-655)は、新生児マウスの未熟な脳を実質的に保護する。
【0028】
さらに、脳卒中は成人と新生児の両方の脳で強力な炎症反応を引き起こす。成人モデルからの実験的証拠によって、脳損傷によりミクログリアが急速に活性化され、貪食活動の増加ならびにサイトカイン及び活性酸素代謝物の産生の変化を引き起こすことが示されており(Hanisch UK.Microglia as a source and target of cytokines.2002,Glia 40,140-155)、これは、新生児の低酸素性虚血(HI)損傷でもよく記録されている特徴である(Hedtjarn M,et al.Inflammatory gene profiling in the developing mouse brain after hypoxia-ischemia.J.Cereb. Blood Flow Metab.2004,24,1333-1351。しかし、成人と比較して、新生児におけるミクログリアの活性化は、虚血性損傷後の方がはるかに急速である。成人の脳では、脳卒中損傷後の脳への末梢免疫細胞の浸潤も大きく寄与している(Iadecola C and Anrather J.The immunology of stroke:from mechanisms to translation.2011,Nat.Med.17,796-808)。対照的に、新生児脳卒中後の急性では末梢細胞の浸潤はほとんど見られない(Denker SP,et al.Macrophages are comprised of resident brain microglia not infiltrating peripheral monocytes acutely after neonatal stroke.J.Neurochem.2007,100,893-904)。したがって、これらの発見は、損傷に対する新生児と成人の中枢神経系免疫反応の違いを示唆している。
【0029】
さらに、急性虚血性脳損傷後の新生児の血液脳関門は、成体動物よりも著しくインタクトであるが、その理由の一部は、基底層及び密着結合タンパク質の示差的発現及び好中球の挙動によるものである(Fernandez-Lopez D,et al.Blood-brain barrier permeability is increased after acute adult stroke but not neonatal stroke in the rat.J Neurosci.2012 7 11;32(28):9588-600)。
【0030】
したがって、様々な実施形態では、対象は出生前または分娩中であり、HIEの危険性があり(すなわち、HIEが予想される)、n-3FA DGまたはTGエマルジョンを妊娠中の母親に、例えば静脈内に投与する。例えば、n-3 FA DGまたはTGエマルジョンは、子癇前症またはHIEリスクに関連する他の妊娠状態の検出時に母親に静脈内投与され得る(既に記載したように)。いくつかの実施形態では、エマルジョンは、長時間の分娩を含む分娩前もしくは分娩中、または臍帯圧迫により新生児がHIEの危険にさらされていると判断される場合に投与される。本明細書でより詳細に記載されるように、エマルジョンは、1回以上のボーラス用量として、もしくは連続注入によって、または1回以上のボーラス負荷用量とその後の1回以上の追加用量の注入の組み合わせとして静脈内投与されてもよい。例えば、静脈内投与される用量(複数可)は、ボーラスとして(0~60分間にわたって)、もしくは注入によって(60分~24時間にわたって)、または1つ以上のボーラス負荷用量とそれに続く1つ以上の追加用量の注入の組み合わせとして投与され得る。あるいは、エマルジョンはNGチューブによって投与してもよい。
【0031】
他の実施形態では、対象は新生児(neonate)(すなわち、新生児(newborn))であり、HIEが疑われる。様々な実施形態では、新生児は早産児または正期産である。n-3FA DGまたはTGエマルジョンは、分娩の約12時間以内、または分娩の約10時間以内、または分娩の約8時間以内、または分娩の約6時間以内、または分娩の約4時間以内、または分娩の約2時間以内に新生児に投与される。新生児への送達の場合、エマルジョンはNGチューブを介して投与してもよいし、またはボーラス投与量及び/もしくは持続注入として静脈内投与してもよい。
【0032】
様々な実施形態では、新生児は、n-3FA DGまたはTGの投与前、投与中、または投与後のいずれかに、HTでさらに治療される。HTは一般に、分娩の約6時間以内、または分娩の約4時間以内など、できるだけ早く開始されるべきである。しかし、いくつかの実施形態では、HTは、分娩の約12時間以内、または分娩の約10時間以内、または分娩の約8時間以内に開始される。いくつかの実施形態では、特にDGまたはTGエマルジョンの投与によって、HTが脳損傷ならびに長期及び/または生涯にわたるHIEの合併症を回避するために利益をもたらす範囲が拡大され得る。したがって、そのような実施形態では、HTは、分娩の約6時間後、または分娩の約8時間後、または分娩の約10時間後、または分娩の約12時間後に開始されるが、これは、HIEの検出、または病院からHT用の設備を備えた三次医療施設への新生児の搬送の遅れに起因する場合がある。
【0033】
様々な実施形態では、DGもしくはTGエマルジョン及び/またはHTによる処置後、新生児患者は、オメガ3FAを含む非経口栄養でさらに処置され得る。これらとしては、約1g/kg/日のTGエマルジョンの注入が含まれ得、これは約10%の魚油(例えば、約25%~約60%のEPA及びDHA)から調製され得る。このようなエマルジョンは、オメガベン(Omegaven)という名前で市販されている。オメガベンは、非経口栄養関連胆汁うっ滞、すなわちPNACの小児患者にカロリーと抗炎症効果のある脂肪酸を提供する静脈内脂質エマルジョンである。このような非経口栄養は、数週間から数ヶ月、例えば2週間~約20週間、または約4週間~約16週間提供してもよい。
【0034】
様々な実施形態では、本発明は、n-3 FAを安定なDGまたはTGエマルジョンとして細胞に送達する。「n-3 FA」という用語は、炭素-炭素二重結合の1つが炭化水素鎖の遠位端から3番目と4番目の炭素原子の間にある多価不飽和FAを意味する。n-3 FAの例としては、α-リノレン酸(18:3n-3;α-ALA;Δ3、6、9)、エイコサペンタエン酸(20:5n-3;EPA;Δ5、8、11、14、17)、ドコサヘキサエン酸(22:6n-3;DHA;Δ4、7、10、13、16、19)及びドコサペンタエン酸(22:5n-3;DPA;Δ7、10、13、16、19)が挙げられる。少なくとも20個の炭素原子を有するn-3 FAは、「長鎖n-3 FA」と呼ばれる。n-3 FAの供給源は、魚油、藻類油及び他の油などの任意の適切な供給源に由来する場合があり、または合成してもよい。
【0035】
DGは、三価アルコールグリセロールにエステル化された2つのFAで構成される。DG分子の合成方法の例は、n-3長鎖FAを用いたリパーゼ触媒グリセロール分解(すなわち、エステル交換)によるものである。DGオイルを調製するための例示的なプロセスは、国際公開第2019/234057号に記載されており、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。本明細書で使用する場合、DGオイルとは、グリセリドの少なくとも約75%がジアシルグリセリドであるオイルを指す。しかし、いくつかの実施形態では、グリセリドの少なくとも約80%、または少なくとも約90%(例えば、約100%)がジアシルグリセリドである。同様に、TGエマルジョンが使用される場合、TGオイルとは、グリセリドの少なくとも約75%がトリアシルグリセリドであるオイルを指す。しかし、いくつかの実施形態では、グリセリドの少なくとも約80%、または少なくとも約90%(例えば、約100%)がトリアシルグリセリドである。
【0036】
本発明によれば、DGまたはTGのFAは主にn-3 FAであり得る。様々な実施形態では、DGまたはTGは、少なくとも約50%のn-3 FA(総脂肪酸の重量で)、または少なくとも約75%のn-3 FA、または少なくとも約90%のn-3 FA、または約100%のn-3 FAを含む。いくつかの実施形態では、n-3 FAは、DHA、EPA、及びDPAのうちの1つ以上を含む長鎖n-3 FAである。興味深いことに、DPA由来の神経保護D1は、DHA由来の神経保護D1よりも低い濃度で神経保護的である(低酸素性虚血性脳損傷後の梗塞サイズの減少によって測定される)(
図4)。
【0037】
様々な実施形態では、n-3 FAはDHAを含む。いくつかの実施形態では、n-3 FAは、少なくとも約50%のDHA、または少なくとも約60%のDHA、または少なくとも約75%のDHA、または少なくとも約90%のDHAである。いくつかの実施形態では、n-3 FAは、EPAを含む。例えば、n-3 FAは、少なくとも約50%のEPA、または少なくとも約60%のEPA、または少なくとも約75%のEPA、または少なくとも約90%のEPAであり得る。いくつかの実施形態では、n-3 FAはDHA及びEPAを含む。例えば、FAは、少なくとも約50%のEPA及びDHA、または少なくとも約60%のEPA及びDHA、または少なくとも約70%のEPA及びDHA、または少なくとも約80%のEPA及びDHA、または少なくとも約90%のEPA及びDHAを含んでもよい。EPA及びDHAは、任意選択で、約4:1~約1:4、例えば、約3:1~約1:3、または約2:1~約1:2(例えば、約1:1)の比で存在してもよい。様々な実施形態では、DG分子は、1,2-DGまたは1,3-DGのうちの1つ以上である。いくつかの実施形態では、DGは主に1,3-DGである。
【0038】
さらに他の実施形態では、脂肪酸は、ARA、例えば、約1%~約40%のARA(グリセリド中の全脂肪酸の重量基準)、またはいくつかの実施形態では、約1%~約30%、または約5%~約25%、または約5%~約20%、または約10%~約20%のARAをさらに含む。ARAは、乳児の脳の成長に重要な肝要なn-6脂肪酸である。これらまたは他の実施形態では、エマルジョンは、遊離FAとして、またはTG及び/もしくはDGとしてエステル化されたMCFAをさらに含む。MCFAが豊富なTGは、細胞膜へのオメガ3脂肪酸の効率を高める。いくつかの実施形態では、MCFAは、TG及び/またはDGエマルジョン中の脂肪酸の約1重量%~約20重量%の範囲で存在する。いくつかの実施形態では、組成物は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第9,675,572号に記載されている中鎖トリグリセリド(MCT)を含む。
【0039】
いくつかの実施形態では、DGまたはTG(またはそれらのエマルジョン)は、1つ以上のSPMを含む。SPMは、主にAA、EPA、DPA、及びDHAに由来する酸素化代謝産物である。それらとしては、リポキシン、(ニューロ)プロテクチン、レゾルビン、及びマレシンが挙げられ、ナノモルからピコモルの範囲の濃度で強力な抗アポトーシス効果、抗炎症効果、及び免疫調節効果を有し得る。SPMは、n-3 FA及びn-6 FA前駆体からの二酸素依存性酸化によって生成される。SPMとしては、特定のAA由来リポキシン(LXA4及びLXB4)、EPA由来Eシリーズレゾルビン(RvE1~3)、DHA由来Dシリーズレゾルビン(RvD1~6)、プロテクチン/ニューロプロテクチン(PD1/NPD1及びPDX)、マレシン(MaR1及びMaR2)、及びDPA由来13シリーズレゾルビン(RvT1~4)が挙げられる。SPMは免疫溶媒として機能し得る。
【0040】
いくつかの実施形態では、DGまたはTG(またはそのエマルジョン)は、レゾルビンE1、レゾルビンE2、及びレゾルビンE3などのEPA由来の少なくとも1つのSPMを含む。いくつかの実施形態では、DGまたはTG(またはそのエマルジョン)は、DHA由来の少なくとも1つのSPM、例えば、レゾルビンD1、レゾルビンD2、レゾルビンD3、レゾルビンD4、レゾルビンD5、レゾルビンD6、またはそれらの立体異性体を含む。いくつかの実施形態では、DGまたはTG(またはそのエマルジョン)は、レゾルビンT1、レゾルビンT2、レゾルビンT3、レゾルビンT4、レゾルビン1n-3DPA、レゾルビン2n-3DPA、レゾルビン5n-3DPA、プロテクチン1n-3DPA、プロテクチン2n-3DPA、マレシン1n-3DPA、マレシン2 n-3 DPA、及びマレシン3 n-3 DPAなどのDPAに由来する少なくとも1つのSPMを含む。いくつかの実施形態では、DGまたはTG(またはそのエマルジョン)は、リポキシンA4、リポキシンB4、またはそれらの立体異性体などのアラキドン酸(AA)に由来する少なくとも1つの生理活性脂質を含む。
【0041】
様々な実施形態では、エマルジョンは、組成物全体の重量あたり約10重量%~約30重量%のTGオイル及び/またはDGオイルを含む。例えば、エマルジョンは、全組成物の約15重量%~約25重量%(例えば、約15重量%、約20重量%、または約25重量%)のDGオイルを含んでもよい。エマルジョンの他の成分(例えば、乳化剤)は、本明細書の他の箇所に記載されている。
【0042】
様々な実施形態では、対象(例えば、HIEを経験しているまたはHIEの危険性がある新生児対象など)は、エマルジョンの単回ボーラス注射もしくは注入、またはNGを介して投与される。例えば、対象は、エマルジョンのボーラス注射または注入を少なくとも2回、及び最大6回(例えば、2回から4回)受けてもよい。様々な実施形態では、ボーラス注射または注入は、12時間ごとに約1回以下の頻度で投与される。しかし、様々な実施形態では、投与は、約1時間、約2時間、約3時間、約6時間、約12時間、または約24時間から独立して選択される間隔で行うことができる。様々な実施形態では、エマルジョンは、1日~約1週間にわたって投与され、ほぼ毎日投与されてもよい。様々な実施形態では、ボーラス投与は、体重1kg当たり約0.05g~約5gの乳化DGもしくはTG、または体重1kg当たり約0.5~約5gである。例えば、ボーラス投与は、体重1kg当たり約2g~約4gの乳化DGまたはTGであり得る。
【0043】
例示的な実施形態として、本開示は、新生児における低酸素性虚血性脳症(HIE)に関連する脳損傷に対して防御するための方法を提供し、この方法は、HIEの危険性がある子供を抱えている妊娠中の母親に、出生前または分娩時に、n-3FA DGまたはTGエマルジョンの静脈内注射を投与することを含む。分娩後、新生児は任意選択で、HT療法及び/またはDGもしくはTG療法でさらに処置されてもよい。いくつかの実施形態では、一旦、HIEが予想されるか、または重大な危険性がある場合、エマルジョンは、分娩前または分娩中に母親に静脈内投与される。投与及びエマルジョンの組成は、本明細書の他の箇所に記載されている通りである。新生児は早産児であっても正期産新生児であってもよい。
【0044】
いくつかの実施形態では、出生後、分娩(すなわち出生)の約12時間以内もしくは約10時間以内、または分娩の約6時間以内もしくは約8時間以内、または分娩の約4時間以内、分娩の約2時間以内に、さらなるn-3DGまたはTGエマルジョン用量が新生児に投与される。分娩後のHTのタイミングは、一般にできるだけ早く、既に述べた通りである。様々な実施形態では、新生児は、エマルジョンの単回ボーラス注射または注入を受ける(またはNG経路による)。しかし、いくつかの実施形態では、新生児は、少なくとも2回、最大6回(例えば、2~4回)のエマルジョンのボーラス注射または注入を受ける。これらは一般に約1週間にわたって投与され、静脈内及び/またはNG経路によりほぼ毎日投与されてもよい。
【0045】
他の例示的な実施形態では、神経保護のための方法は、必要とする新生児対象に、分娩から約10時間以内にn-3 DGまたはTGエマルジョンを投与すること、及び新生児対象をHTレジメンで処置することを含む。N-3 DGまたはTGエマルジョンは、HTの前、最中、または後に最初に投与される。例えば、エマルジョンの少なくとも最初の用量は、分娩の約6時間以内、または分娩の約4時間以内、分娩の約2時間以内に投与され、それによって新生児がHTを開始するため専門施設に輸送されている間に神経保護を提供し得る。DGまたはTGエマルジョンは、既に記載したように、ボーラス及び/または持続注入として、経鼻胃(NG)チューブを介して、または静脈内に投与される。
【0046】
これらの実施形態によれば、HTは、一般に望まれるよりも遅く開始してもよく、それでも予想外の治療効果を提供し得る。例えば、いくつかの実施形態では、DGまたはTGエマルジョンの用量は分娩の約4時間以内に投与され、HTは分娩の約10時間以内に開始される。いくつかの実施形態では、DGまたはTGエマルジョンの用量は分娩の約4時間以内に投与され、HTは分娩の約8時間以内または分娩の約6時間以内に開始される。
【0047】
さらに他の実施形態では、DGまたはTGエマルジョンの用量は、分娩の約2時間以内(または分娩の約1時間以内)に投与され、HTは、分娩の約6時間後、または分娩の約8時間後、または分娩の約10時間後、または分娩の約12時間後に開始される。様々な実施形態では、対象は、エマルジョンの単回のボーラス注射または注入を受けるが、他の実施形態では、対象は、エマルジョンの少なくとも2回及び最大6回(例えば、2~4回)のボーラス注射または注入を受ける。これらは一般に、約1日~1週間にわたって、例えばほぼ毎日投与されてもよい。
【0048】
他の態様では、本開示は、本明細書に記載の様々な方法に使用できる医薬組成物を提供する。様々な実施形態では、医薬組成物は、有効量のn-3 DGまたはTGエマルジョンを含み、ここで、DGまたはTGは、少なくとも約50%のEPA及びDHA、ならびに1%~約40%、または1%~約30%、または1%~約20%、または1%~約10%のARA(重量による総FA含量に対して)、及び1つ以上の乳化剤を含む。いくつかの実施形態では、DGまたはTGは、FAの約5重量%~約25重量%、または約5重量%~約20重量%、または約10重量%~約20重量%のARAを含む。いくつかの実施形態では、FAは、少なくとも約60%のEPA及びDHA、または少なくとも約70%のEPA及びDHA、または少なくとも約80%のEPA及びDHAを含む。いくつかの実施形態では、EPA:DHAの比は、約4:1~約1:4、または約3:1~約1:3、または約2:1~約1:2、及び任意選択で約1:1である。一般に、組成物は、モノアシルグリセリド、ジアシルグリセリド、及びトリアシルグリセリドの合計に対して、少なくとも約75%のDGまたはTGを含む。
【0049】
いくつかの実施形態では、脂肪酸は、遊離FAとして、またはDGもしくはTGとしてエステル化された、DPA及び/またはMCFAをさらに含む。様々な実施形態では、MCFAは、ジグリセリドエマルジョン中の脂肪酸の約1%~約20%(総FA重量に対して)である。いくつかの実施形態では、エマルジョンは、約10重量%~約30重量%のDGまたはTGオイルを含む。いくつかの実施形態では、エマルジョンは、約15重量%~約25重量%(例えば、約15%、約20%、または約25%)のDGまたはTGオイルを含む。
【0050】
本明細書に記載の組成物及び方法によれば、組成物は、緊急時に使用するために安定な形態で保存できる安定なエマルジョンである。本明細書に記載されるエマルジョンは、4℃で少なくとも6ヶ月間、または少なくとも1年間、実質的に安定である。様々な実施形態では、このエマルジョンは、4℃で、またはいくつかの実施形態では、室温(すなわち、約22℃)で、約1年を超えて(例えば、約18ヶ月または約2年)安定である。この組成物は、静脈内または動脈内送達などの非経口送達経路、またはNG経路を介するのに適している。さらに、いくつかの実施形態では、エマルジョンの物理的特性は、脳組織へのn-3 FAの送達及び/または脳組織による取り込みを促進する。
【0051】
エマルジョンは本質的に不安定であるため、自然には形成されない。エマルジョンを形成するには、例えば、振盪、撹拌、均質化などによるエネルギーの投入が必要である。時間が経つと、エマルジョンはエマルジョンを構成する相の安定した状態に戻る傾向がある。ただし、ナノエマルジョンは速度論的に安定している場合がある。
【0052】
エマルジョンの液滴のサイズ及び分散が、所望の期間(少なくとも約6ヶ月など)にわたって実質的にまたは顕著に変化しない場合、エマルジョンは安定であると言われる。すなわち、エマルジョンの安定性とは、時間の経過に伴う特性の変化に耐えるエマルジョンの能力を指す。エマルジョンの不安定性は、例えば、凝集、クリーミング/沈降、及び合体として観察され得る。凝集は、液滴間に引力があり、凝集を形成するときに発生する。合体は、液滴が結合してより大きな液滴を形成するときに発生し、その結果、時間の経過とともに平均液滴サイズが増加する。エマルジョンは、たとえば浮力の影響で、液滴がエマルジョンの上部に上昇するクリーミングも受ける場合がある。沈降はクリーミングの逆の現象であり、油中水型エマルジョンで通常観察される。沈降は、分散相が連続相よりも密度が高く、重力によって密度の高い小球がエマルジョンの底部に向かって引っ張られるときに発生する。クリーミングと同様に、沈降はストークスの法則に従う。安定性に関するその他の指標としては、エマルジョン中の遊離FA量または酸化生成物の増加がないこと、または長期間(たとえば、6~24か月)にわたりトコフェロール濃度の減少がないことが含まれる。
【0053】
乳化剤とは、エマルジョンの動力学的安定性を高めることによりエマルジョンを安定化させる物質である。乳化剤には、表面活性剤またはサーファクタントが挙げられる。サーファクタントは、液滴のサイズが時間の経過とともに有意に変化しないように、エマルジョンの速度論的安定性を高め得る。エマルジョンの安定性は、液滴または粒子間の反発力を示すゼータ電位の観点から評価され得る。乳化剤とは、通常、極性または親水性(すなわち、水溶性)部分と、非極性(すなわち、疎水性または親油性)部分とを有する化合物である。界面活性剤は乳化剤の一種であり、油と水の両方と物理的に相互作用し、懸濁液中の油と水の液滴間の界面を安定化させる。
【0054】
様々な実施形態では、エマルジョンは、200nm以下の平均粒径、及び約-40mV以上のマイナスのゼータ電位を有する。いくつかの実施形態では、エマルジョンの平均粒子サイズは、約180nm以下、または約150nm以下、または約120nm以下、または約100nm以下、または約90nm以下、または約80nm以下である。いくつかの実施形態では、平均粒径は約120nm、または約110nm、または約100nmであり、多分散指数は約0.3未満または約0.2未満である。様々な実施形態では、エマルジョンのゼータ電位は、少なくとも約-45mVと同じくらいマイナス、または少なくとも約-50mVと同じくらいマイナス、または少なくとも約-55mVと同じくらいマイナス、または少なくとも約-60mVと同じくらいマイナスである。これらの実施形態によるエマルジョンは安定であり、これは、これらのパラメータが少なくとも6か月間、またはいくつかの実施形態では少なくとも1年間維持されることを意味する。この開示によれば、安定性は、約5℃または室温(すなわち、約25℃)での保存により測定される。
【0055】
安定したエマルジョンは、例えば、n-3 FAを脳に迅速に送達するための静脈内投与に適している。脂質相は一般に、組成物の約10重量%~約50重量%である。いくつかの実施形態では、脂質相は、組成物の約10重量%~約40重量%、または組成物の約15重量%~約40重量%、または約15重量%~約30重量%、または約15重量%~約25重量%、または約20重量%~約25重量%である。例えば、脂質相は、組成物の約20重量%、または組成物の約25重量%、または組成物の約30重量%であり得る。いくつかの実施形態では、脂質相の少なくとも約10重量%がDGもしくはTGであるか、または脂質相の少なくとも約15重量%がDGもしくはTGであるか、または脂質相の少なくとも約20重量%がDGもしくはTGであるか、または脂質相の約30重量%がDGもしくはTGであるか、または脂質相の少なくとも約40重量%がDGもしくはTGであるか、または脂質相の少なくとも約50%がDGもしくはTGである。いくつかの実施形態では、DG自体が乳化特性を提供するため、TGエマルジョンと比較して必要な乳化剤が少なくなる。例えば、いくつかの実施形態では、乳化剤は、組成物の約0.5~約2重量%、例えば、組成物の約1.2重量%、または組成物の約1重量%、または約0.8%、または約0.6重量%である。
【0056】
多分散指数(PDI)は、所定のサンプル内の粒子サイズ分布の尺度である。PDIの数値の範囲は、0.0(完全に均一な粒子サイズ分布を有するサンプルの場合)から1.0(複数の粒子サイズ集団を有する高度に多分散のサンプルの場合)におよぶ。エマルジョンなどの脂質ベースの担体では、0.3のPDIが望ましく、これは十分に均一な粒径分布を示している。いくつかの実施形態では、エマルジョンのPDIは約0.3未満、例えば約0.2以下、または約0.1以下である。
【0057】
組成物は、所望の物理的特性を得るために、1つ以上の乳化剤をさらに含む。様々な実施形態では、乳化剤には、リン脂質乳化剤、ホスホグリセリド乳化剤、ならびに中鎖及び/または長鎖脂肪酸乳化剤のうちの1つ以上が含まれ得る。様々な実施形態では、組成物は、約0.6重量%~約10重量%の乳化剤、及び任意選択で約0.6重量%~約7重量%の乳化剤、及び任意選択で約0.6重量%~約5重量%の乳化剤、及び任意選択で約0.6重量%~約3重量%の乳化剤を含む。
【0058】
いくつかの実施形態では、エマルジョンは、1つ以上のリン脂質乳化剤及び/または1つ以上のホスホグリセリド乳化剤を含む。ホスホグリセリド乳化剤は、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルセリン、及びホスファチジン酸から選択され得る。いくつかの実施形態では、組成物はホスファチジルコリン乳化剤を含む。
【0059】
様々な実施形態では、リン脂質及び/またはホスホグリセリド乳化剤対DGまたはTGの比は、約1:4~約1:12であり、いくつかの実施形態では、約1:10以下である。いくつかの実施形態では、乳化剤は少なくとも約70%のホスファチジルコリンを含むか、または少なくとも約80%のホスファチジルコリンを含む。例えば、乳化剤(任意の共乳化剤を含む)は、約60%~約80%のホスファチジルコリンを含み得る。
【0060】
この組成物はさらに、共乳化剤として1つ以上の中鎖または長鎖FAを含んでもよい。例えば、組成物は、任意選択でC16~C24 FAから選択され、任意選択でC18 FAである長鎖FAを含んでもよい。いくつかの実施形態では、共乳化剤は、任意選択でラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、及びステアリン酸から選択される飽和FAを含む。いくつかの実施形態では、共乳化剤は、任意選択でオレイン酸またはリノレン酸から選択される不飽和FAを含む。この共乳化剤は、任意選択でオレイン酸ナトリウムを含むアルカリ金属塩として添加されてもよい。例示的な実施形態では、共乳化剤は、組成物の総重量の約0.01%~5%で存在する。例えば、共乳化剤は、組成物の総重量の約0.01~2重量%、または組成物の総重量の約0.01重量%~約1重量%、または組成物の約0.01重量%~約0.05重量%で存在し得る。
【0061】
様々な実施形態では、組成物はヒトの血液とほぼ等張であり、任意選択でグリセロール、ソルビトール、キシリトール、及び/またはグルコースなどの1つ以上のポリオールを含む。例えば、組成物は、組成物の約2重量%~約10重量%、または組成物の約2重量%~約7重量%のグリセロールを含んでもよい。
【0062】
いくつかの実施形態では、この組成物は、α-トコフェロール、β-トコフェロール、γ-トコフェロール、及びアスコルビルエステルのうちの1つ以上など、1つ以上の抗酸化剤を含む。例示的な実施形態では、抗酸化剤は、α-トコフェロール及び/またはアスコルビルエステルを含み、これは任意選択でパルミチン酸アスコルビルである。
【0063】
いくつかの実施形態では、この組成物は、任意選択でEDTAまたはEGTAである金属キレート剤を含む。例えば、エマルジョンは、約0.1mM~約5mM、または約0.1mM~約1mMのEDTAまたはEGTAを含んでもよい。例えば、いくつかの実施形態では、エマルジョンは約0.25mMのEDTAを含む。
【0064】
様々な実施形態では、安定なエマルジョンは、以下を含むプロセスに従って調製され得る:(1)約50℃~約80℃(例えば、約60℃)の温度を有する水、グリセロール、及びEDTAの混合物を調製すること;(2)ホスファチジルコリン乳化剤(例えば、卵黄レシチンに由来し得る少なくとも約75%のPC)、共乳化剤(例えばオレイン酸ナトリウム)、及びDGまたはTGオイルを添加する;(3)約50℃~約80℃(例えば、約60℃)の温度で均質化する;(4)マイクロフルイダイザーによるプロセス。このプロセス中に適用される圧力は、300~2000バールの範囲であり得、いくつかの実施形態では、約600~約900バールなど、約500~約1000バールの範囲であり得る。例えば、混合物は、約60℃で約800バールの圧力でマイクロフルイダイザーを通して処理され得る。エマルジョンは、目標の粒子サイズを満たすために必要な時間の長さ及び条件下で処理され得る。
【0065】
様々な実施形態では、組成物のpHは、約6~約9、及び任意選択で約6.5~約8.5、及び任意選択で約7~約8である。
【0066】
様々な実施形態では、組成物は、約500mL以下の容積、または約300mL以下の容積、または約50mL以下の容積、または約25mL以下の容積を有する。様々な実施形態では、組成物は、必要に応じて約1mL~約50mLの注射用容積を有する、プレフィルドシリンジ内に含まれる。
【0067】
組成物は一般に、静脈内または動脈内などの非経口的に送達される。いくつかの実施形態では、組成物は鼻腔内に投与され、脳への迅速な送達を可能にする。
【0068】
本明細書で使用される場合、「約」という用語は、関連数値の±10%を意味する。
【0069】
例示的な実施形態を以下の実施例によって説明する。
【実施例】
【0070】
実施例1:オメガ3トリグリセリドエマルジョンの急性注射は、新生児マウスモデルにおける脳低酸素性虚血性損傷に対する低体温療法と同様の神経保護を提供する
低酸素性虚血性(HI)脳損傷は、新生児と成人の両方において、頻繁に死亡または長期にわたる重大な神経学的障害を引き起こす重篤な出来事である(1-3)。現在、治療的低体温療法(HT)は、HI脳症の新生児に対する唯一確立された処置である(4)。前臨床研究及び小規模臨床試験では、HTが神経損傷の程度を軽減し、死亡率を低下させ、神経機能の回復を改善し得ることが示されている(7、8)。
【0071】
HTの影響を受ける主な分子機構としては、フリーラジカル生成の減少、血液脳関門破壊の制限、興奮性アミノ酸放出の減少、及び脳虚血に対する細胞媒介炎症反応の減弱が挙げられる(9、10)。さらに、HTは、ミトコンドリアに基づく内因性経路と受容体媒介外因性経路の両方を介してニューロンのアポトーシスの阻害を誘導する(11)。しかし、HTは厳密なモニタリングが必要であり、三次医療センターでのみ利用できるので、依然として複雑な医療アプローチである(12)。脳卒中におけるHTに関するパイロット研究では、成人患者は新生児よりも冷却に対する耐性が低く、HTは震え、免疫抑制、及び肺炎などの好ましくない全身作用も誘発し得ることが示されている(13、14)。HTを他の処置と組み合わせることで、HTによる悪影響を軽減するだけでなく、HI傷害の状況において複数の分子標的に到達して、治療時間範囲の増加及び長期回復における修復の強化を図ることが目的となり得る(15)。
【0072】
脳内の主要なオメガ3多価不飽和FAの1つとして、DHAは、脳の発達及び機能に不可欠である(16)。DHAは、HI損傷のさまざまな動物モデルにおいて、炎症、興奮毒性を軽減し、脳容積の減少を防ぐことが示されている(17~19)。この実施例は、HT及びトリグリセリドDHA(「tri-DHA」)エマルジョンによる同時処置が、HI損傷から脳を保護する際に相乗効果を達成するか否かを調査する。この実施例では、tri-DHAとは、TG脂肪酸の>98%がDHAであるトリグリセリドオイルである。本発明者らは、以前に記載された新生児モデルにおけるHI損傷に対するHTの神経保護効果を確認した(20、22)。これらの結果によって、tri-DHAがHTと同程度の神経保護を提供し、HTとtri-DHAエマルジョンを組み合わせても HI損傷に追加の治療効果が得られないことが示されている。
【0073】
材料及び方法
DHA TGオイルは、Nu-Chek Prep,Inc.(Elysian,MN)から購入した。卵黄ホスファチジルコリンは、Avanti Polar-Lipids,Inc.(Alabaster,AL)から入手した。放射性標識[3H]-コレステリルヘキサデシルエーテルは、PerkinElmer(Boston,MA)から購入した([3H]CEt)(NET 85900)。
【0074】
tri-DHAエマルジョン(TG重量で10g/エマルジョン100mL)は、DHA TGオイルと卵黄リン脂質(PL)を用いて、以前に詳述したように超音波処理によって作成した(20)。市販のキット(Wako Chemicals USA,Inc.,Richmond,VA)を使用して、エマルジョンのTG及びPLの量を分析した。TG:PL質量比は5.0±1.0で、VLDLサイズの粒子と同様であった。放射性標識エマルジョンを調製するために、超音波処理の前に[3H]CEtをTG-PL混合物に添加した(22)。
【0075】
生後3日のC57BL/6J新生仔マウスを、生みの母とともにJackson Laboratories(Bar Harbor)から購入した。雄マウスと雌マウスの両方を実験に使用した。本発明者らは、以前に記載されているように(20)、生後10日(p10)マウスの軽度のHI脳損傷というRice-Vannuci法を使用した。簡単に言うと、HI脳損傷は、右総頚動脈の永久結紮によって誘発した。1.5時間の回復後、マウスを 37±0.3℃で15分間、低酸素傷害(加湿8%O2/ 92%N2、Tech Air Inc.,NY)に曝露した。
【0076】
HI損傷の直後、子犬をHTまたは正常体温(NT)の温度制御室で4時間飼育し、直腸温はそれぞれ31~32℃または37℃に達した(23)。27℃に設定された循環空気室に入れられた子犬は、目標の直腸温を31~32℃に維持していることが観察された。NT群の場合、以前の研究(20、21)のプロトコルに基づいて、子犬を32℃に設定したチャンバーに入れた。新生マウスのHI脳損傷は、内因性の中核体温の低下と関連している(23)。したがって、低酸素状態の間に37℃に保たれた子犬は低体温には供されていない。新生仔げっ歯類の中核体温は母犬からの距離によって影響を受ける可能性があるので(24)、4時間のHTまたはNT処置期間中、子犬は母犬から離して保管した。低酸素状態(0時間)の直後、続いてHT中の1、2、3及び4時間に連続的な温度測定を取得した(プローブタイプ:RET-4;Physitemp Instruments,Clifton,NJ)。tri-DHA処置(0.375g tri-DHA/kg 体重、腹腔内(i.p.)、1時間間隔で2回の注射)は以前のプロトコルに基づいていた(20、21)。
【0077】
tri-DHAエマルジョンによるHTの併用治療がHI障害における神経保護を強化するか否かを調べるために、HTを受けた動物に、HTの開始時とHT開始1時間後にtri-DHAエマルジョン(0.375g tri-DHA/kg 体重、2回注射、腹腔内)を投与した。NTまたはHT対照動物には生理食塩水を注射した。4時間のNT後、対照群の子犬を母犬に戻した。HT群の子犬は、直腸温が37℃に達するまで部屋の温度を1分あたり0.1~0.2℃の速度で上昇させることによってゆっくりと再加温を受け、その後母犬に戻された。
【0078】
放射性標識したtri-DHAエマルジョンを使用して、HTが腹腔内注射後のエマルジョン粒子の吸収及び分布に影響を与えるか否かを決定した。放射性標識tri-DHAエマルジョン(0.375g tri-DHA/kg 体重、腹腔内、単回注射)を注射したナイーブ新生仔マウスを、直ちにHT(n=3)またはNT(n=7)のいずれかに4時間供した。エマルジョンの分布を研究するための単回ボーラス注射の使用は、以前に確立されたプロトコルに基づいていた(22、25)。4時間のHTまたはNT後に動物を屠殺し、腹水、血液、器官及び組織中の放射能を[3H]CEtのレベルを測定することによって評価した。
【0079】
組織及び器官は、Polytron Tissue Disruptor(Omni TH,Kenneswa,GA)を使用して均質化し、放射能を液体シンチレーション分光法で測定した(26)。サンプルをシンチレーション流体(Ultima Gold シンチレーション流体、PerkinElmer、Boston、MA)に懸濁し、混合し、PerkinElmer Tri-Carb液体シンチレーション分光計5110 TRで3H dpmアッセイした。組織取り込みは、分析したすべての臓器について、臓器あたりの総回収量のパーセントとして表した。
【0080】
本発明者らは、マウスにおけるHI損傷後のHTの治療範囲を決定した:(1)2時間遅延HT-HI後2時間母犬と一緒に置かれ、その後HTを受けた子犬;(2)4時間遅延HT-HI後4時間母犬と一緒に置かれ、その後HTを受けた子犬。tri-DHAエマルジョンによるHTの併用治療がHI損傷の治療範囲を延長するか否かを調べるために、HTを行った動物(HI後2時間または4時間遅らせる)に、HTの開始時及びHT開始の1時間後にtri-DHAエマルジョン(0.375 g tri-DHA/kg 体重、2回注射、腹腔内)を投与した。NTまたはHT対照動物には生理食塩水を投与した。処置期間後、NTまたはHT群の子犬を上記のように母犬に戻した。
【0081】
HI傷害の24時間後、動物を屠殺し、脳を採取した。ブレインスライサーマトリックスを使用して、1mmの冠状スライスを切断した。スライスを2%塩化トリフェニルテトラゾリウム(TTC)を含むPBS溶液に37℃で25分間浸漬した。TTCは生きたミトコンドリアに取り込まれ、赤色に変わる。白く見える非染色領域は梗塞領域として定義され、一方、生存領域は赤く見える。Adobe Photoshop及びNIH Image J イメージングアプリケーションを使用して、連続切片上の梗塞の平面領域を合計して、梗塞組織の容積(mm3)を求めた。梗塞面積は、同側半球の総面積の%として表した(21)。HI直後にHTまたはHT+tri-DHAで処置したマウスの別のコホートでは、HI損傷後7日目に脳萎縮がニッスル染色によって検出された。脳全体を200μmごとに切断し、各冠状スライスの厚さは50μmであった。次に、切片を0.1%のクレシルバイオレット(Sigma-Aldrich,St.Louis,MO,USA)の溶液中で7分間インキュベートした。H2Oで素早くすすいだ後、スライドを数滴の酢酸を含む70%(v/v)エタノールで分化し、続いて段階的エタノールで脱水し、キシレンを2回交換した。次に、切片をFisher Chemical(商標)Permount(商標)Mounting Mediaでマウントした。結果は、対側半球と比較した同側半球容積(脳残存組織)の%として表した(27)。
【0082】
値は平均値±SEMである。一元配置ANOVAに続いて事後Newman-Keuls多重比較検定を適用して、群間の相違を評価した。
【0083】
結果
NTまたはHTプロトコルを受けた動物には死亡はなかった。表1は、HT動物の連続的な体温測定の結果をまとめたものである。放射性標識実験では、腹腔内注射後4時間で、注射されたエマルジョンの約96%がNTマウスとHTマウスの両方で腹腔から出たことが示された。さらに、NT対HTマウスにおけるtri-DHAエマルジョン粒子の器官分布に有意差は観察されなかった。NTマウスとHTマウスの両方において、エマルジョン粒子の最も高い取り込みは肝臓(放射性標識エマルジョンの回収用量の44~47%)で、次いで筋肉(20~23%)と心臓(8~9%)であった。エマルジョン粒子の取り込みが最も低かったのは、NT動物とHT動物の両方で脳であった(回収用量の0.3%未満)。
【0084】
本発明者らは、HI損傷直後から開始するHT+tri-DHA処置の神経保護効果を評価した。HTまたはtri-DHAは、生理食塩水で処置したNT動物と比較して、脳梗塞容積の有意な減少(約50%)を示した(
図1A及び1B)。HI損傷直後のHT及びtri-DHAによる処置の併用は、HT処置療単独と比較して追加の利点をもたらさなかった。
【0085】
HI損傷直後に開始したHT+tri-DHAの投与による神経保護は、虚血性傷害後7日目でも維持された。ニッスル染色は、対照群と比較して、HTまたはHT+tri-DHA処置マウスにおける同側半球のより良好な保存を示した。しかし、この併用は、HT治療単独と比較して治療上の利点を提供しなかった。代表的なニッスル染色切片を
図1Cに示す。
【0086】
この実施例では、虚血性損傷後の神経保護の治療範囲を決定するために、遅延型HT処置プロトコルを実行した。HI後2時間遅延したHTは、NT動物と比較して脳梗塞容積の減少を示した。さらに、HT+tri-DHA処置は、HI損傷の2時間後から始まるHT単独によって提供される保護よりも有意な追加の保護を提供しなかったが、梗塞サイズがわずかにさらに減少する傾向であった(梗塞容積%:31.4±4.1NT+生理食塩水対18.8±4.6HT+生理食塩水対12.7±4.0HT+tri-DHA)(
図2A及び2B)。HI傷害後4時間後にHT処置を遅らせても、虚血性損傷に対する保護は得られなかった。HI損傷後4時間遅れてHTとtri-DHA処置とを組み合わせても、HTの治療範囲は拡張されなかった。4時間遅延HT+tri-DHAの組み合わせで処置した動物では梗塞容積の増加が観察されたが、その差はNTまたはHT単独と比較して有意ではなかった(
図2C及び2D)。したがって、本発明者らの結果によって、tri-DHAエマルジョンとHTとの併用処置は、虚血性損傷における神経保護において追加の有意な利点をもたらさないことが示される。
【0087】
考察
この研究では、HT投与がtri-DHAと同程度の神経保護を発揮するという結果が示されている。さらに、tri-DHAエマルジョンとHTの併用処置では、追加の神経保護は得られない。
【0088】
治療的HTは、心停止後の酸素欠乏性脳症及び周産期仮死などの急性虚血性脳損傷の管理において十分に確立された神経保護手段である(28)。無作為化治験では、HTが外傷性脳損傷患者の神経学的転帰の改善にも有効であることが示されている(29)。虚血性脳卒中後の全身性HTの神経保護の利点が臨床試験で報告されている(7)。しかし、急性脳卒中処置におけるHTの使用には依然として議論の余地があり、ロジスティックな課題によって制限されている(7、30)。
【0089】
HI傷害の直後に開始されるHTには神経保護作用があり、神経保護の程度は冷却開始の遅れに伴って直線的に減少する(31、32)。HI損傷の新生児マウスモデルでは、HIの0時間後または2時間後に始まるHTが神経保護を提供し(23)、一方で、マウスで2時間を超えて遅れた場合のHTの効果を評価した研究はなかった。ここで示した結果によって、HTはHI損傷後2時間までは神経保護作用があり、処置が4時間遅れると保護が失われることが示される。新生児ラットモデルでは、Sabir et al.(32)によって、HI傷害後最大6時間遅延HTは、神経保護を提供することが示された。これは、マウス対ラットにおける虚血性損傷の進行及び神経保護の経路の違い、ならびに/または代謝率の違いに関連している場合がある(33)。本発明者らは、HI損傷後2時間までにtri-DHAを投与すると脳梗塞容積が有意に(約50%)減少したが、HI損傷後4時間遅れて投与したtri-DHAでは予防効果が認められなかったことを報告した(20)。これらの本発明の結果によって、HTがtri-DHA処置と非常によく似た治療範囲を提供することが示唆される。HI脳症の新生児では、冷却キャップを使用した選択的頭部冷却、または受動冷却(放射加温器/保育器をオフにする)による全身冷却、クールパック及び/または市販の冷却ブランケットが処置に使用される(34、35)。新生児HI脳症の治療範囲は6時間未満であることが示唆されている。(36、37)。しかし、出生後6~24時間以内に開始されたHTには効果がある可能性があるが、その有効性には不確実性がある(38)。体重1kgあたりの基礎代謝率はマウスではヒトの7倍であり(39)、これがHI損傷に対するヒトのHTの処置範囲を長くする上で重要な役割を果たしている場合がある。したがって、マウスにおける本発明者らのプロトコルにおける2時間遅延処置による神経保護は、ヒトにおけるHTではより長い時間範囲に変換され得る。
【0090】
本発明者らは、HI損傷後のHTの有効性を高めるための補助療法として、DHAがより優れた神経保護を追加する可能性があるか否かを試験した。本発明者らの結果によって、HTとtri-DHAとを組み合わせても、神経保護を強化することもなく、HI損傷後の処置の治療範囲を拡大することもないことが示唆される。これは、HI損傷の新生児子豚モデルの研究で得られた最近の発見と同様であり、HTとDHAとの併用処置は、HI傷害後の脳損傷及び炎症マーカーの減少において、個別の処置よりも追加の利点がないことが示された(40)。しかし、HI損傷の新生児ラットモデルを用いた別の研究では、HT+DHAが相乗的に脳梗塞容積を減少させ、行動能力を改善することが示された(41)。興味深いことに、本発明者らの放射性標識実験で実証されたように、HT+tri-DHA処置によって神経保護を顕著に強化できないのは、tri-DHAエマルジョン粒子の吸収及び分布の減少に起因するものではなかった。さらに、脳内でのtri-DHAエマルジョン粒子の取り込みが低いことは、HI神経保護を提供する際のtri-DHAの有効性を説明するものではなかった。最近のデータでは、注射されたtri-DHAエマルジョンが肝臓に取り込まれ、代謝されてリゾホスファチジルコリンと非エステル化脂肪酸の血漿プールに分泌され、DHAの脳輸送が促進されることが示されている(22)。
【0091】
DHAとHTとは両方とも、HI損傷に対する神経保護の共通の経路を共有している。DHAとHTは、アポトーシス促進性B細胞リンパ腫2(BCL-2)関連X(BAX)を下方制御し、抗アポトーシスBCL-2を上方制御し、その結果、シトクロムc放出の減少及びカスパーゼ活性化の減少をもたらす(17、42)。さらに、DHAとHTは、細胞増殖を刺激するAKTの活性化を促進する(43、44)。さらに、実験的な脳卒中において、DHA及びHT処置はミクログリアの活性化、ならびにインターロイキン1β(IL-1β)、IL-6、及び腫瘍壊死因子α(TNF-α)などの炎症促進性サイトカインを減少し得ることが報告されている(45、46)。さらに、両方の処置とも、多くの炎症性シグナル伝達経路を活性化する転写因子である核因子カッパB(NF-κB)を阻害する(47、48)。さらに、DHA及びHTは、グルタミン酸などの興奮毒性アミノ酸の蓄積または放出を防ぐことも示されている(49、50)。DHAとHTは両方とも、ミトコンドリアROS放出の再灌流による加速を制限し、ミトコンドリア膜の透過性化を防ぐ(21、51)。したがって、HT及びDHAは同様の神経保護経路を通じて作用しており、併用処置が脳損傷をさらに軽減する効果を無効にし得ると考えられる。
【0092】
現在、HTは乳児の中等度から重度の脳症に対して確立された唯一の処置であり(52)、成人の脳卒中治療に関してはまだ研究中の有望な戦略である(53)。脳卒中に対するHTの臨床応用を成功させるには、発症時間、持続時間、HTの深さ、復温速度などのHT治療のさまざまな主要パラメータを制御する必要がある(11)。患者の冷却は概念としては単純であるが、HTで発生し得る管理上の問題への備えとともに、特別な訓練を受けた医療スタッフによる取り組みの調整が必要となる複雑な医療処置である(12、54)。脳卒中の処置としてHTを使用するには、通常、三次医療病院での治療が必要であり、高額な経済的コストを伴う(55)。本発明者らの知見は、HTまたはtri-DHAエマルジョンの注射が梗塞容積を減少させ、神経保護の程度が両方の治療で同等であることを示している。オメガ3脂肪酸は安全であり、重大な副作用もなくヒトに十分に許容される(56-58)。静脈注射は一般的な実行可能な手順であり、プライマリケアの現場で簡単に実行され得る。
【0093】
実施例2:オメガ3ジグリセリドエマルジョンの急性注射は、オメガ3トリグリセリドエマルジョンよりも新生児マウスモデルにおける脳の低酸素性虚血性損傷に対して優れた保護を提供する。
EPAとDHAの両方を含むトリグリセリド脂質エマルジョン、またはDHA単独(tri-DHA)による急性処置は、再灌流の最初の数分/時間以内に作用することにより、低酸素性虚血性脳損傷後の神経保護を提供する。tri-DHA及びその生理活性メディエーターによって影響を受ける生物学的機構としては、(i)ミトコンドリア活性酸素種(ROS)の生成の減少;(ii)Ca2+取り込み及び恒常性の維持によって実証されるミトコンドリア機能の保存;(iii)再灌流後30分以内の脳ミトコンドリアにおけるフリーラジカル生成の遮断、及び(iv)ミトコンドリア関連のアポトーシス経路の阻害、が挙げられると考えられる。tri-DHAの急性投与によってもたらされる神経保護は、脳ミトコンドリア内のDHA含有量の増大、及び脳組織内のニューロプロテクチンD1(NPD1)及びDシリーズレゾルビンなどのDHA由来の生理活性メディエーターの含有量の増大とも関連していた。したがって、低酸素性虚血性傷害後のNPD1の直接投与によってもたらされる神経保護作用をさらに調査した。本発明者らは、NPD1処置が対照群と比較して脳梗塞容積の有意な減少を誘導し、これがミトコンドリアCa2+緩衝能の維持とミトコンドリア関連細胞死経路の減少との両方に関連していることを観察した。
【0094】
データによってさらに、DGエマルジョン(総脂肪酸の90%を超えるEPA及びDHAを含む)に含まれるオメガ-3 FAで治療された新生児マウスは、脳梗塞容積の有意な減少を示し、新生児HIモデルにおいてオメガ-3 DGエマルジョンがオメガ-3 TGエマルジョンよりもはるかに効果的であることが示される。
図3。
【0095】
本発明者らは、DGエマルジョンに含まれるオメガ-3 FAの化学物理的特性を特徴付け、それらをTGエマルジョンと比較した。本発明者らは、NMR分光法によりDGと細胞膜のin vitroモデルとの相互作用を評価した。本発明者らは、(i)DGは膜構造に悪影響を及ぼさず、(ii)TG よりも効率的に生体膜系に取り込まれることを観察した。急速な加水分解がジグリセリドエマルジョンのクリアランスを促進するか否かを確立するために、リポタンパク質リパーゼ(LpL)媒介加水分解による脂肪酸放出を評価することにより、インビトロ脂肪分解研究を実施した。オメガ-3 DGエマルジョンは、オメガ-3 TGと比較してより効率的に加水分解されることを本発明者らは、観察した。これは、虚血性脳損傷におけるDGのより速い取り込み及び迅速な神経保護を説明する/寄与する場合がある。これらの知見によって、乳児を含む低酸素性虚血性脳損傷における強力な神経保護剤として、脂質エマルジョン中で送達されるオメガ-3 FAの可能性が強調される。
【0096】
さらなる研究では、
図4に示すように、低酸素性虚血性(HI)損傷を与え、動物1匹あたり5、10、または20ngの濃度のビヒクルとして生理食塩水またはPD1 n-3 DPAで処理した新生仔マウス(生後10日)の梗塞容積を測定した(n=15-17)。値はSD付きの平均値である。梗塞容積の減少は用量依存性であった。
【0097】
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【国際調査報告】