(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-15
(54)【発明の名称】少なくとも1つのワークピースの熱接合のためのトーチネック、トーチネックを有するトーチ及び溶接装置
(51)【国際特許分類】
B23K 9/29 20060101AFI20231208BHJP
【FI】
B23K9/29 E
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023534320
(86)(22)【出願日】2021-12-01
(85)【翻訳文提出日】2023-06-06
(86)【国際出願番号】 EP2021083724
(87)【国際公開番号】W WO2022122497
(87)【国際公開日】2022-06-16
(31)【優先権主張番号】102020132821.4
(32)【優先日】2020-12-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516126791
【氏名又は名称】アレクサンダー ビンツェル シュヴァイステヒニーク ゲーエムベーハー ウント コー.カーゲー
【氏名又は名称原語表記】ALEXANDER BINZEL SCHWEISSTECHNIK GMBH & CO. KG
(74)【代理人】
【識別番号】100080816
【氏名又は名称】加藤 朝道
(74)【代理人】
【識別番号】100098648
【氏名又は名称】内田 潔人
(72)【発明者】
【氏名】ローゼ、サッシャ
(72)【発明者】
【氏名】ビッケルハウプト、マティアス
【テーマコード(参考)】
4E001
【Fターム(参考)】
4E001LB06
4E001LD03
4E001LE01
4E001LH02
4E001MB02
(57)【要約】
【課題】溶接部位へプロセスガスを溶接ワイヤの周りに均一に供給可能にする。
【解決手段】少なくとも1つのワークピースを熱接合するためのトーチネック。トーチネックは、トーチネックに配される電極又はワイヤであって、該電極又は該ワイヤと前記ワークピースとの間にアークを生成するための電極又はワイヤ;ガスノズル(1)であって、該ガスノズル(1)のガス出口(2)からシールドガス流を流出させるためのガスノズル(1);内部中空空間(7)と、前記ガスノズル(1)のガス出口(2)と流体結合する少なくとも1つのガス流出開口(8)とを有するガスノズル連結器(3);及び前記ガス連結器(3)の前記内部中空空間(7)に配され、前端部(23)及び後端部(24)を有するガス連結器インサート部材(20)を有する。前記ノズル連結器インサート部材(20)の外壁(22)はシールドガス流のための流動空間(11)を形成するために少なくとも一部の領域において前記ノズル連結器(3)の内壁(9)から離隔されており、及び、前記流動空間(11)は前記ノズル連結器(3)の前記ガス流出開口(8)と流体結合している。前記ノズル連結器インサート部材(20)の前記前端部(23)及び/又は前記後端部(24)には前記流動空間(11)内へシールドガスを導入するための前側及び/又は後側ギャップ(25、26)によって形成される前側及び/又は後側流入領域が設けられている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのワークピースを熱接合するための、とりわけアーク接合するための、好ましくはアーク溶接又はアークろう付けするための、トーチネックであって、
前記トーチネックは、
前記トーチネックに配される電極又はワイヤであって、該電極又は該ワイヤと前記ワークピースとの間にアークを生成するための電極又はワイヤと、
ガスノズル(1)であって、該ガスノズル(1)のガス出口(2)からシールドガス流を流出させるためのガスノズル(1)と、
内部中空空間(7)と、前記ガスノズル(1)のガス出口(2)と流体結合する少なくとも1つのガス流出開口(8)とを有するノズル連結器(3)と、
前記ノズル連結器(3)の前記内部中空空間(7)に配され、前端部(23)及び後端部(24)を有するノズル連結器インサート部材(20)と
を有し、
前記ノズル連結器インサート部材(20)の外壁(22)は、シールドガス流のための流動空間(11)を形成するために、少なくとも一部の領域において、前記ノズル連結器(3)の内壁(9)から離隔されており、及び、前記流動空間(11)は前記ノズル連結器(3)の前記ガス流出開口(8)と流体結合していること、
前記ノズル連結器インサート部材(20)の前記前端部(23)及び/又は前記後端部(24)には、前記流動空間(11)内へシールドガスを導入するための、前側及び/又は後側ギャップ(25、26)によって形成される前側及び/又は後側流入領域が設けられていること
を特徴とする、トーチネック。
【請求項2】
請求項1に記載のトーチネックにおいて、
前記ノズル連結器インサート部材(20)の前記前端部(23)は、前記前側ギャップ(25)によって形成される前側流入領域を形成するために、前記ノズル連結器(3)の前側ストッパ(28)に対して離隔されていること
を特徴とする、トーチネック。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のトーチネックにおいて、
前記ノズル連結器インサート部材(20)の前記後端部(24)は、前記後側ギャップ(26)によって形成される後側流入領域を形成するために、前記トーチネック(10)のインナーパイプ(18)の前端部に対して離隔されていること
を特徴とする、トーチネック。
【請求項4】
請求項1~3の何れかに記載のトーチネックにおいて、
前記後側ギャップ(26)は、直線的なガス流を形成するために、シールドガスの流動方向に見て、前記ノズル連結器(3)の前記ガス流出開口(8)の前方にあること
を特徴とする、トーチネック。
【請求項5】
請求項1~4の何れかに記載のトーチネックにおいて、
前記前側ギャップ(25)は、シールドガス流の反転流を形成するために、流動方向に見て、前記ノズル連結器(3)の前記ガス流出開口(8)の後方にあること
を特徴とする、トーチネック。
【請求項6】
請求項1~5の何れかに記載のトーチネックにおいて、
シールドガスは、前記ノズル連結器インサート部材(20)の外周面(27)上及び/又は前記ノズル連結器インサート部材(20)の内部で流動すること
を特徴とする、トーチネック。
【請求項7】
請求項1~6の何れかに記載のトーチネックにおいて、
前記ノズル連結器インサート部材(20)は、前記ノズル連結器(3)に結合されている、とりわけ圧入されていること
を特徴とする、トーチネック。
【請求項8】
請求項1~7の何れかに記載のトーチネックにおいて、
前記流動空間(11)は、実質的に、前記ノズル連結器(3)の前記内壁(9)と前記ノズル連結器インサート部材(20)の前記外壁(22)との間の少なくとも1つのリニアギャップ(12)であること
を特徴とする、トーチネック。
【請求項9】
請求項8に記載のトーチネックにおいて、
前記リニアギャップ(12)は、前記ノズル連結器インサート部材(20)の前記外壁(22)上において前記ノズル連結器インサート部材(20)の長手方向に実質的に延在する溝(13)によって形成されていること、前記溝(13)は、好ましくは、周方向において互いに対しほぼ同じ間隔をなすよう配されていること
を特徴とする、トーチネック。
【請求項10】
請求項1~9の何れかに記載のトーチネックにおいて、
前記流動空間(11)は、前記ノズル連結器インサート部材(20)の前記外壁(22)上において実質的に長手方向に延伸するネジ山、とりわけ台形ネジ、によって形成されるヘリックスギャップによって実質的に形成されること
を特徴とする、トーチネック。
【請求項11】
請求項1~10の何れかに記載のトーチネックにおいて、
前記ノズル連結器インサート部材(20)の対向して位置する第1端部(23;24)と第2端部(24;23)は、前記ノズル連結器インサート部材(20)の軸線に沿って当該両端部(23、24)間の長さを以って延在し、前記ノズル連結器インサート部材(20)の直径はその長さに沿って変化すること
を特徴とする、トーチネック。
【請求項12】
請求項1~11の何れかに記載のトーチネックにおいて、
前記ノズル連結器インサート部材(20)は、前記流動空間(11)のリング状チャンネルを形成するために、前記ガスノズル(1)の前記ガス出口(2)の側に指向されたその前端部(23)に、前記ガス出口(2)から離隔する側に指向された前記ノズル連結器インサート部材(20)の前記後端部(24)と比べてより小さい横断面を有すること
を特徴とする、トーチネック。
【請求項13】
請求項1~12の何れかに記載のトーチネックにおいて、
シールドガス流の流動方向は、前記ガスノズル(1)の内部におけるシールドガス流の流動時間ないし流動経路が長くされるよう、リング状チャンネルにおいて少なくとも一回変化されること
を特徴とする、トーチネック。
【請求項14】
請求項1~13の何れかに記載のトーチネックにおいて、
前記ノズル連結器インサート部材(20)は、前記電極ないし前記ワイヤと前記ワークピースとの間にアークを生成するために前記電極ないし前記ワイヤを貫通させて案内するための内部貫通路(21)を有すること
を特徴とする、トーチネック。
【請求項15】
請求項1~14の何れかに記載のトーチネックにおいて、
ガス流は、インナーパイプ(18)から前記ノズル連結器インサート部材(20)内へ流入すること
を特徴とする、トーチネック。
【請求項16】
請求項1~15の何れかに記載のトーチネックにおいて、
電流コンタクトチップ(17)は、前記ノズル連結器(3)の前記内部中空空間(7)内へ延在し、かつ、好ましくは前記ノズル連結器インサート部材(20)の反対側で前記ノズル連結器(3)から外方へ向かう方向において延在するよう、前記ノズル連結器(3)の前記内部中空空間(7)に位置付けられていること
を特徴とする、トーチネック。
【請求項17】
請求項1~16の何れかに記載のトーチネックにおいて、
前記ノズル連結器インサート部材(20)、電流コンタクトチップ(17)及び前記ノズル連結器(3)は導電性材料で構成され、及び、前記ノズル連結器インサート部材(20)は好ましくは前記電流コンタクトチップ(17)と接触していること
を特徴とする、トーチネック。
【請求項18】
請求項1~17の何れかに記載のトーチネック(10)を有するトーチ。
【請求項19】
請求項18に記載のトーチにおいて、
前記ノズル連結器インサート部材(20)は、軸線方向において、前記ノズル連結器(3)の中空空間(7)の、前記トーチネック(10)と電流コンタクトチップ(17)との間に配置されていること
を特徴とする、トーチ。
【請求項20】
請求項18又は19に記載のトーチを有する溶接装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の上位概念部に記載の少なくとも1つのワークピースの熱接合のためのトーチネック、請求項18に記載のそのようなトーチネックを有するトーチ及び請求項20に記載の溶接装置に関する。
【背景技術】
【0002】
熱接合法は、ワークピース(加工対象物)(複数)を溶融し、それらを結合するために、エネルギを使用する。金属加工においては、標準的に、“MIG”溶接、“MAG”溶接及び“WIG”溶接が使用される。
【0003】
シールドガスに支援される消耗電極式(溶極式)アーク溶接法(MSG)では、“MIG”は“Metall-Inertgas(金属-不活性ガス)”の略称であり、“MAG”は“Metall-Aktivgas(金属-活性ガス)”の略称である。シールドガスに支援される非消耗電極式(非溶極式)アーク溶接法(WSG)では、“WIG”は“Wolfram-Inertgas(タングステン-不活性ガス)”の略称である。本発明に応じた溶接装置は、ロボットアームに取り付けられる機械操縦式溶接トーチとして構成可能である。尤も、手動操作式トーチも考えられる。
【0004】
通常、アーク溶接装置は、溶接材料を溶融するために、ワークピースと消耗式又は非消耗式溶接電極の間にアークを生成する。溶接材料及び溶接部位は、シールドガス流によって雰囲気ガスに対して遮蔽される。
【0005】
この場合、溶接電極は、アーク溶接機に結合されている溶接トーチのトーチボディに配される。トーチボディは、通常、内部に位置し溶接電流を導く一群の構造要素(複数)を含み、これらの構造要素は、溶接電流をアーク溶接機の溶接電源(電流源)からトーチヘッドの尖端の方の溶接電極へと導き、そして、そこからワークピースへのアークが生成される。
【0006】
シールドガス流は、溶接電極、アーク、溶融池及びワークピース(母材)の熱作用ゾーンの周囲を流れるが、その際、これらの領域には溶接トーチのトーチボディを介して導かれる。ガスノズルはシールドガス流をトーチヘッドの前端部へと導き、そこで、シールドガス流はほぼリング状に溶接電極を取り囲んでトーチヘッドから噴射する。
【0007】
溶接のために生成されるアークは、溶接工程中、溶接されるべきワークピース及び場合により供給される溶接材料(溶加材)を加熱し、その結果、これらは溶融される。
【0008】
溶接の他、金属板部材(複数)の結合のために、ロウ付け(ロウ接合)も考慮される。溶接の場合とは異なり、この場合は、ワークピースではなく、付加材料(溶加材)のみが溶融される。その理由は、ロウ付けの場合、2つの辺(エッジ)は付加材料としてのロウによって互いに結合されることである。ロウの材料の融点と部材の材料の融点は大きく異なっており、そのため、加工の際、ロウのみが溶融する。ロウ付けには、WIGトーチ、プラズマトーチ及びMIGトーチの他、LASERも適する。
【0009】
本発明に応じたトーチネックないしトーチはこの種の溶接装置において使用可能である。溶接ワイヤ及びプロセスガス供給装置を有するそのような装置は既に多くの種類・方法で知られている。
【0010】
一般的に、そのような装置は溶接ワイヤチャンネルを有するワイヤ供給(案内)ノズルを有するが、ワイヤ供給ノズルはノズル連結器(Duesenstock)に分離可能に結合されている。ノズル連結器もまた、溶接ワイヤチャンネルに結合されかつ溶接ワイヤ送給装置に結合されているプロフィール部材(Profil)に分離可能に結合されている。
【0011】
ノズル連結器は、トーチの電流チップ(Stromduese)とインナーパイプとの間の結合部材としても役立ち、電流チップを機械的に固定(安定化)し、ワイヤ送りの方向において前方へ電流チップないしアークへと電流を導く。付加的に、ノズル連結器は、シールドないしプロセスガスを複数の孔を介してインナーパイプの内部からシールドガスノズルの方向において外部へ導き、以って、それに続けて最終的に溶接プロセスへともたらす。付加的に、ノズル連結器は、電流チップからトーチないしトーチパイプの後部領域へと熱エネルギを導く。
【0012】
水冷式トーチの場合、プロセス熱は多部分からなるパイプ(複数)内の冷却水によって排出されるのに対し、空冷式トーチの場合は、インナーパイプの熱容量もシールドガスの熱容量も使用されることができる。
【0013】
更に、この種の装置は、一般的に少なくとも1つのプロセスガスチャンネルを有するプロセスガス供給装置を有するが、このプロセスガス供給装置はプロセスガス溜め(貯蔵器)に結合されている。プロセスガス供給装置は、既知の装置装置の場合、ガスノズルを備えており、該ガスノズルは、プロセスガスが直接的にノズル連結器を介して噴出するよう、ノズル連結器に配設されている。プロセスガスは、実質的に、溶接時に発生する溶接煙を吹き飛ばすために役立つ。不活性ガスがプロセスガスとして使用される場合、プロセスガスによって、シールドガス釣鐘状バリア(Schutzgasglocke)も形成され、これによって、極めて良好な溶接結果が達成可能である。
【0014】
スワンネック、拡散スリーブ、インサート部材、電流コンタクトチップ及びノズルを有する溶接装置は、WO 2015/148656 A1から既知である。これらの部材は、これらが共通の軸線を共有するよう、通常の方法で、互いに結合されている。
【0015】
インサート部材は、内部貫通路と、インサート部材の両端部間に延在する壁部とを有する。この壁部は内部貫通路との流体結合のための少なくとも1つの穴を有する。拡散スリーブは、内部中空空間と、その両端部間に延在する壁部とを有する。この壁部は内部中空空間との流体結合のための少なくとも1つの穴を有することができる。
【0016】
インサート部材は、スワンネックと電流コンタクトチップとの間に配置されている拡散スリーブの内部中空空間内にある。インサート部材の壁部と拡散スリーブの壁部は、最終(完成)装置の長手軸線に沿って軸線方向において並置され、かつ、最終装置の長手軸線に対しほぼ直角をなす方向において互いに対し離隔されており、そのため、インサート部材の壁部と拡散スリーブの壁部との間にはチャンバ(Kammer)が形成されている。拡散スリーブの壁部の穴及びインサート部材の壁部の穴は該チャンバと流体結合している。
【0017】
この種の溶接装置は、EP 3 112 072 A1及びUS 9,950,386 B2からも既知である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【特許文献1】WO 2015/148656 A1
【特許文献2】EP 3 112 072 A1
【特許文献3】US 9,950,386 B2
【特許文献4】US 5,313,046
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
これらの溶接装置の欠点は、電流コンタクトチップと拡散スリーブとの間の温度(熱)印加領域における2つのハーフシェルの適合(整合)正確性(精度)を要求する大掛かりな構造である。この既知の溶接装置におけるインサート部材は電流チップと直接的に結合されており、そのため、伸び(膨張)を生成する高温に晒される。とりわけ、摩耗部材としての電流コンタクトチップの後端部の半球状の形状(Auspraegung)はコストの観点から適切ではない。更に、不利なことに、(上記の)穴(複数)は例えばギャップないしリング状ギャップよりもより容易に閉塞されるため、チャンバへの接続(部)はより早期に汚染される傾向がある。更に、シールドガス流は、これらの穴によって極めて強く加速されるため、プロセス(加工)領域に至るまでに低減消滅され得ない乱流になり得るが、そのため、雰囲気酸素は渦巻かれ(乱れ)、シールドガスのバリアは不利な影響を受け得る。これらの穴は、更に、より大きな圧力低下、従ってシールドガスの量の減少を引き起こし、或いは、同じシールドガス量を達成するためにより高い与圧を必要とする。
【0020】
更に、US 5,313,046から、溶接装置の溶接ワイヤ及びプロセスガス案内のための装置が既知である。しかしながら、この装置は、プロセスガスの満足できる程の均一な案内を確保(保証)することができない。なぜなら、プロセスガスを案内する当該部位の孔(複数)の配置のために、不均一性が回避できないからである。
【0021】
既知のトーチないし溶接装置の欠点は、更に、プロセス熱の吸収及び排出がされないか又は適切にはされないことである。
【0022】
従って、本発明の課題は、溶接部位ないし溶接領域へ向かってプロセスガスを溶接ワイヤの周りに均一に供給することを可能にするトーチネックないしトーチ及び溶接装置を利用可能にすることである。
【0023】
更に、本発明の課題は、プロセス熱を吸収及び排出するために、シールドガスを適切に使用することである。
【課題を解決するための手段】
【0024】
この課題は、請求項1の特徴を有するトーチネックによって解決される。本発明の有利な形態は従属請求項において明らかになる。
【0025】
更に、この課題は、請求項18に記載された、このようなトーチネックを有するトーチによって、及び、請求項20に記載された、トーチを有する溶接装置によっても解決される。
【発明を実施するための形態】
【0026】
【0027】
少なくとも1つのワークピースを熱接合するための、とりわけアーク接合するための、好ましくはアーク溶接又はアークろう付けするための、本発明のトーチネックは、トーチネックに配され、電極又はワイヤとワークピースとの間にアークを生成するための電極又はワイヤを有する。
【0028】
更に、ガスノズルのガス出口からシールドガス流を流出させるためのガスノズルが設けられ、内部中空空間と、ガスノズルのガス出口と流体結合する(in Fluidverbindung steht)少なくとも1つのガス流出開口とを有するノズル連結器が設けられ、ノズル連結器の内部中空空間に配され、前端部及び後端部を有するノズル連結器インサート部材が設けられている。
【0029】
ノズル連結器インサート部材の外壁は、シールドガス流のための流動空間を形成するために、少なくとも一部の領域において(bereichsweise)、ノズル連結器の内壁から離隔されている。
【0030】
流動空間はノズル連結器のガス流出開口と流体結合している。
【0031】
ノズル連結器、ノズル連結器インサート部材及びガスノズルは、これらが共通の軸線を共有するよう、互いに結合されている。ノズル連結器とガスノズルは分離可能に互いに結合可能である。
【0032】
ノズル連結器インサート部材は、この場合、ノズル連結器内に存在する(配置される)ことができる。ノズル連結器インサート部材とガスノズルは、この場合、ノズル連結器を介して互いに結合されることができる。
【0033】
本発明に応じ、ノズル連結器インサート部材の前端部及び/又は後端部には、流動空間内へシールドガスを導入するための、前側及び/又は後側ギャップによって形成される前側及び/又は後側流入領域が設けられている。
【0034】
ガス流は、ガス貯蔵器と流体結合しているトーチネックのインナーパイプを通ってノズル連結器インサート部材へ導かれる。そこで、ガス流は、前側ギャップによって形成される流入領域へ流入し、ノズル連結器のガス流出開口に至るまで流動空間内へ更に導かれることができる。最後に、ガス流は、溶接プロセスのために、ガスノズルのガス出口から流出する。
【0035】
とりわけ、シールドガスは、前側流入領域を通って横方向に、好ましくはノズル連結器の長手軸線に対しほぼ直角に、流動空間内へ導入されることができ、そして、シールドガスは、ノズル連結器インサート部材の内部において流動方向と逆向きに、即ち後方へ流れ、そして、ノズル連結器のガス流出開口を通り抜けて再びガスノズルのガス出口へ向かって前方へ導かれることができる。
【0036】
本発明に応じ、代替的に又は付加的に、流入領域は後側ギャップによって形成されることも考えられる。この後側ギャップは、シールドガスの流動方向に見てノズル連結器のガス流出開口の前方に(上流側に)位置することができる。このようにして、直線的(リニア)ガス流が生成される。なぜなら、シールドガスは、トーチネックのインナーパイプから、後側ギャップによって形成される後側流入領域内へと流れ、流動空間内へ導かれ、そして、ノズル連結器のガス流出開口を通り抜けてガス出口においてガスノズルから導き出されるからである。
【0037】
前側及び/又は後側流入領域を形成することによって、固形物体とシールドガスとの間の熱伝達を高めるシールドガス流の乱流(乱流的流動)が生成される。
【0038】
とりわけ、ノズル連結器の内壁には乱流が生成されるが、このことは、横断面ないし横断面変化の減少を介して、高い流動速度ないし流動速度変化と結びつけられる(これにより、横断面ないし横断面変化の減少を介して、高い流動速度ないし流動速度変化がもたらされる)。
【0039】
ノズル連結器インサート部材はノズル連結器の開孔内へ配されるが、ノズル連結器インサート部材はその外壁とノズル連結器の内壁との間にギャップを形成することができ、(トーチないしトーチネックの)組立状態において、該ギャップは、ノズル連結器の前側ストッパに対して離隔されている及び/又は取り付けられたインナーパイプに対して即ち後方へ離隔されている。該ギャップは、全周にわたって即ち360°にわたって又は部分的にのみ形成されることができる。シールドガス又はプロセスガスは、ノズル連結器の孔(複数)の方向において形成されるギャップを通って流れることができる。
【0040】
本トーチネックは、好ましくは空冷式トーチ(バーナー)システムで使用可能である。尤も、本発明の枠内において、水冷式トーチ(バーナー)システムにおける使用も考えられる。
【0041】
このようにして、流動空間は、ノズル連結器に対する相対的なノズル連結器インサート部材の配置のみによって形成される。例えば貫通孔(Durchgangsloecher)等のような、付加的な構成をノズル連結器インサート部材自体に設ける必要はない。
【0042】
かくして、プロセスガスは、ガスノズルないしワイヤ供給ノズルへ流出する前に既に、ノズル連結器の周囲で均一に(一様に)分散可能であること、及び、ガスノズルの直前で初めてノズル連結器から出て来るのではないことが達成される。かくして、溶接部位ないし溶接領域の領域における溶接ワイヤの周りのプロセスガスの均一性(一様性)が保証(確保)される。
【0043】
更に、汚染感受性(汚染され易さ)は容易に塞がれる従来技術から既知の複数の穴ないし複数の孔を使用する場合と比べてより小さくなり、シールドガス流の局所的加速が強く形成されることはより小さくなる。
【0044】
本発明の有利な第1形態によれば、ノズル連結器インサート部材の前端部は、前側ギャップによって形成される前側流入領域を形成するために、ノズル連結器のガス流出開口の前側ストッパに対して離隔されている。
【0045】
本発明の有利な一発展形態によれば、ノズル連結器インサート部材の後端部は、後側ギャップによって形成される後側流入領域を形成するために、トーチネックのインナーパイプの前端部に対して離隔されている。
【0046】
これらの更なる形態によって、固形物体とシールドガスとの間の熱伝達を高める拡散的な即ち乱流的な流動が達成される。
【0047】
しかしながら、従来技術の場合のような貫通孔ないし穴は、本発明のトーチネックにおいては必須ではない。かくして、設計(構成)上の手間は著しく低減される。
【0048】
本発明の更なる有利な一形態では、ノズル連結器インサート部材の外壁は、少なくとも一部の領域においてノズル連結器の内壁から離隔されており、そのため、簡単な方法で、流動空間が形成されることができる。
【0049】
シールドガス流ないしプロセスガス流は、前側及び/又は後側流入領域を介して、流動空間内へ導かれるが、該流動空間は、ノズル連結器とノズル連結器インサート部材との間の間隔によって簡単な設計(構成)方法で形成されている。ガスは、ノズル連結器の中から外にガス流出開口を通って、ガスノズルのガス出口の方向へ流れる。
【0050】
本発明の有利な一変形形態によれば、後側ギャップは、直線的ガス流を形成するために、シールドガスの流動方向に見て、ノズル連結器のガス流出開口の前方に(上流側に)ある(形成されている)。
【0051】
流入領域が後側ギャップによって形成されるこの形態では、このギャップは、シールドガスの流動方向に見て、ノズル連結器のガス流出開口の前方に(上流側に)ある(形成されている)。この方法で、直線的(リニア)ガス流(ガス流動)が生成される。なぜなら、シールドガスはトーチネックのインナーパイプから、後側ギャップによって形成される後側流入領域内へと流れ、流動空間内へ導かれ、そして、ノズル連結器のガス流出開口を通り抜けてガス出口においてガスノズルから導き出されるからである。
【0052】
直線的ガス流は、順流(Vorwaertsstroemung)とも称される。
【0053】
更なる一形態に応じ、前側ギャップは、シールドガス流の反転流(環状流:Umkehrstroemung)を形成するために、流動方向に見て、ノズル連結器のガス流出開口の後方に(下流側に)ある(形成されている)。
【0054】
代替的に、前側ギャップは、シールドガス流の反転流が形成されるよう、流動方向に見てノズル連結器のガス流出開口の後方に(下流側に)ある(形成される)ことも考えられる。なぜなら、ガス流は、インナーパイプを通ってノズル連結器インサート部材の内部へと導かれ、そして、前側ギャップによって形成される流入領域内へ入り込み、更に流動空間内へ導かれてノズル連結器のガス流出開口に至り、そして、ガス流出開口を通って、ガスノズルのガス出口まで導かれるからである。
【0055】
この方法で、プロセスガスないしシールドガスは、溶接中に、溶接部位ないし溶接領域に衝突する前に既に、高温状態にあるガスないしワイヤ供給ノズルによって不必要に(余計に)加熱されない。かくして、ガスの熱的に条件付けられた流動は最小化され、そのため、ガスは格別に均一に溶接部位ないし溶接領域へと導かれることができる。この場合、溶接シームに関し極めて良好な結果が達成されることが判明した。
【0056】
直線流即ち順流と反転流は組み合わせることも可能である。
【0057】
前側ギャップを有するこの変形形態では、ノズル連結器インサート部材をインナーパイプに直接的に接触させることが可能であり、これは、熱がインナーパイプをも介して前方から後方のトーチへと排出ないし分配されるという利点を有する。
【0058】
格別に有利な一形態では、シールドガスは、ノズル連結器インサート部材の外周面上及び/又はノズル連結器インサート部材の内部で流動する。
【0059】
本発明の更なる一形態に応じ、ノズル連結器インサート部材は格別に簡単な方法で組付けられることができるよう、ノズル連結器インサート部材は、ノズル連結器に結合される、とりわけ圧入される。
【0060】
流動空間は、実質的に、ノズル連結器の内壁とノズル連結器インサート部材の外壁との間においてノズル連結器インサート部材の長手方向に延伸する少なくとも1つのリニアギャップであることが可能である。
【0061】
ガスは、この場合、後側ギャップによって形成される後側流入領域から、少なくとも1つのリニアギャップを有するノズル連結器インサート部材の表面を介して流動する。そして、ガスは、ノズル連結器のガス流出開口を通って、ガスノズルのガス出口の方向へ導かれる。
【0062】
リニアギャップは、例えば規格化(標準化)されたプロフィール(輪郭:Normprofilen)を使用することによって、製造技術的に簡単に製造されることができる。本発明に応じ、プロフィールの外側形状は、丸い又は角のある横断面を有することができる。
【0063】
本発明の更なる有利な一形態では、リニアギャップは、ノズル連結器インサート部材の外壁上においてノズル連結器インサート部材の長手方向に実質的に延在する溝(複数)によって形成され、該溝(複数)は、好ましくは、周方向において互いに対しほぼ同じ間隔をなすよう配される。
【0064】
壁ないしインサート部材における従来技術から既知の貫通孔(複数)は、表面に設けられる溝と比べて製造の手間はより大きい。これらの孔は、ガスノズル支持部材の孔(複数)に対し相対的に(関係付けられて)(立設的に)配され、それらの配向はずらされることが可能である。換言すれば、2つのスリーブないしパイプボディは入れ子式に嵌め合わされている。両者は、周においてリング状にないし縦方向に分散配置されたある個数の孔を有する。尤も、この場合、内側スリーブ即ちインサート部材の孔(複数)は外側スリーブ即ちガスノズル支持部材の孔(複数)と整列状態にあることは保証されない。
【0065】
本発明の一代替形態に応じ、流動空間は、ノズル連結器インサート部材の外壁上において実質的に長手方向に延伸するネジ山、とりわけ台形ネジ、によって形成されるヘリックスギャップよって実質的に形成される。この方法で、流動チャンネル、従ってシールドガス流の流路及び流動時間は顕著に長くされ、これにより、熱吸収及び熱の更なる伝達(輸送)もより良好になる。
【0066】
更に、シールドガスないしプロセスガスの、溶接領域において擾乱(妨害)的に作用することになり得る予期せぬ乱流は回避される。
【0067】
インサート部材の周り又はノズル連結器内における、直線的なガス流案内の場合よりもより長いガスの経路が実現されている。ネジ山フランク(Gewindeflanken)によって、ガスは、全体としてより大きな表面の周りも流れる。
【0068】
本発明の更なる一変形形態に応じ、ノズル連結器インサート部材は(互いに)対向して位置する第1端部と第2端部を有し、該第1端部と該第2端部はノズル連結器インサート部材の軸線に沿って当該両端部間の長さを以って延在し、ノズル連結器インサート部材の直径はその長さに沿って変化する。
【0069】
有利には、ノズル連結器インサート部材は、流動空間のリング状チャンネルを形成するために、ガスノズルのガス出口の側に指向されたその前端部に、ガス出口から離隔する側に指向されたノズル連結器インサート部材の後端部と比べてより小さい横断面を有する。この場合においても、溶接部位ないし溶接領域におけるシールドガスないしプロセスガスの均一性の持続性は保証(確保)される。
【0070】
本発明の有利な更なる一形態に応じ、シールドガス流の流動方向は、ガスノズルの内部におけるシールドガス流の流動時間ないし流動経路が全体として長くされるよう、リング状チャンネルにおいて少なくとも一回変化される。この形態によって、熱吸収及び熱伝達(輸送)は更に改善される。
【0071】
本発明の更なる有利な一形態に応じ、ノズル連結器インサート部材は、電極ないしワイヤとワークピースとの間にアークを生成するために該電極ないし該ワイヤを貫通させて案内するための内部貫通路を有する。
【0072】
本発明の更なる一形態に応じ、ガス流は、トーチネックのインナーパイプからノズル連結器インサート部材内へ流入する。
【0073】
本発明の有利な更なる一形態に応じ、電流コンタクトチップは、ノズル連結器の内部中空空間内へ挿し込まれ、かつ、好ましくはノズル連結器インサート部材の反対側でノズル連結器から外方へ向かう方向において延在するよう、ノズル連結器の内部中空空間に位置付けられる。
【0074】
ノズル連結器インサート部材と電流コンタクトチップは、直接的に互いに接触しているのではなく、ノズル連結器を介して互いに結合されることも考えられる。尤も、ノズル連結器インサート部材と電流コンタクトチップは組立後にトーチにおいて接触し合うことができること、即ち直接的に互いに境を接すること(ができること)も考えられる。ノズル連結器インサート部材はノズル連結器内にあり、ノズル連結器はトーチに固定されている。
【0075】
本発明の有利な一形態では、
ノズル連結器インサート部材、電流コンタクトチップ及びノズル連結器は導電性材料で構成され、及び、ノズル連結器インサート部材は電流コンタクトチップと接触している。導電性材料は、銅又は銅合金、例えば黄銅(真鍮)とすることができる。
【0076】
本発明の独自の技術的思想に応じ、トーチは上記のトーチネックを備える。
【0077】
トーチの第1の有利な形態では、ノズル連結器インサート部材は、軸線方向において、ノズル連結器の中空空間内の、トーチネックと電流コンタクトチップとの間に配置される。
【0078】
本発明の更なる目的、利点、特徴及び応用可能性は図面を用いた一実施例についての以下の説明から明らかになる。この場合、説明される及び/又は図示されるすべての特徴はそれら自体で又は意味のある任意の組み合わせにおいて、特許請求の範囲(各請求項)又は請求項の参照引用(Rueckbeziehung)におけるそれらの関係とは独立に、本発明の対象を構成する。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【
図1】第1実施形態に応じた、ガスノズル、ノズル連結器及びノズル連結器インサート部材を有するトーチネックの一例の一部分の断面図。
【
図3】第2実施形態に応じた、ガスノズル、ノズル連結器及びノズル連結器インサート部材を有するトーチネックの一例の一部分の断面図。
【
図4】第3実施形態に応じた、ガスノズル、ノズル連結器及びノズル連結器インサート部材を有するトーチネックの一例の一部分(の断面図)。
【
図5】リニアギャップを有するノズル連結器インサート部材の一例の斜視図。
【実施例】
【0080】
同じないし同じ機能の部材は、以下において一実施形態を用いて説明される図面の各図においては、可読性を改善するために、(同じ)図面参照符号が付記されている。
【0081】
図1には、少なくとも1つのワークピースの熱接合のための、とりわけアーク接合のための、好ましくはアーク溶接又はアークろう付けのための、トーチネック10の一例が示されている。トーチネック10は溶接装置の―不図示の―トーチの部分であり得る。
【0082】
トーチネック10には、電極又はワイヤとワークピースとの間にアークを生成するための電極又はワイヤが配されている。
【0083】
ガスノズル1は、ガスノズル1のガス出口2からシールドガス流を流出するために設けられている。
【0084】
ガスノズル1を支持するノズル連結器3は、シールドガスのための少なくとも1つのガス流出開口8を有し、該ガス流出開口8はガスノズル1のガス出口2と流体結合している。
【0085】
向い合って位置するノズル連結器3の第1端部4と第2端部5は第1端部4と第2端部5の間の所定の長さを以ってノズル連結器の軸線に沿って延在する。
【0086】
更に、
図1から、更には
図2~
図4からも明らかなように、ノズル連結器3には、前端部23と後端部24を有するノズル連結器インサート部材20が配される内部中空空間7が形成されている。
【0087】
ノズル連結器インサート部材20はノズル連結器3と機械的に結合され、とりわけノズル連結器3に圧入される。ノズル連結器インサート部材20は、電極ないしワイヤとワークピースとの間にアークを生成するために電極ないしワイヤを貫通させて案内するための内部貫通路21を有する。
【0088】
電流コンタクトチップ17は、とりわけ
図6及び
図7の分解斜視図にも示されているように、ノズル連結器3の内部中空空間7内へ挿し込まれ、好ましくはノズル連結器インサート部材20と向い合って(の反対側で)ノズル連結器3から外方へ(ノズルの先端側へ)向かう方向において延在するよう、ノズル連結器3の内部中空空間7に配される。
【0089】
ノズル連結器3、ノズル連結器インサート部材20及びガスノズル1は、
図1~
図7から明らかなように、共通の軸線を共有するよう、互いに結合される。
【0090】
同様に
図1~
図5から見出すことができるように、ノズル連結器インサート部材20の外壁22は、シールドガス流のための流動空間11を形成するために、少なくとも一部の領域において(bereichsweise)ノズル連結器3の内壁9から離隔されている。この流動空間11はノズル連結器3のガス流出開口8と流体結合(Fluidverbindung)している。
【0091】
ノズル連結器インサート部材20の前端部23及び/又は後端部24には、シールドガスを流動空間11内へ案内するための、前側ギャップ25及び/又は後側ギャップ26によって形成される前側及び/又は後側流入領域が形成される。
【0092】
これらのギャップ25、26は、本実施例においては、ノズル連結器3ないしノズル連結器インサート部材20の長手軸線に対し実質的に直角(をなす方向)に延在している。
【0093】
図1に応じたトーチネックの第1実施形態は、ノズル連結器インサート部材20の前端部23にのみ、前側ギャップ25によって形成される流入領域が設けられている。前側ギャップ25及び前側流入領域を形成するために、ノズル連結器インサート部材20の前端部23は、ノズル連結器3の前側ストッパ(Anschlag)ないしエッジ28から離隔されて配置される。この実施形態では、後端部24は、ギャップを形成することなく、直接的に即ちダイレクトにトーチネック10のインナーパイプ18に境を接して密接配置されている。
図2はこの実施形態の一細部を示し、
図6及び
図7はこの実施形態を分解斜視図で示す。
【0094】
ガスは、ガス溜めからインナーパイプ18内を通ってノズル連結器インサート部材20の方向へ流れる。
【0095】
図3にはトーチネックの第2実施形態が示されており、この場合、ノズル連結器インサート部材20の後端部24にのみ、後側ギャップ26によって形成される流入領域が設けられて(形成されて)いる。後側ギャップ26は、この例では、ノズル連結器インサート部材20の後端部24がトーチネック10のインナーパイプ18の前端部から離隔されて配置されることによって形成されている。前端部23は、この場合、ギャップを形成することなく、トーチネック10のノズル連結器3のストッパ28に直接的に密接配置されている。
【0096】
図4は、ノズル連結器インサート部材20の前端部23及び後端部24の両方に夫々ギャップ25、26が設けられており、これらのギャップが夫々流動空間11内へのシールドガスの流入領域を形成している第3実施形態を示す。
【0097】
図5の斜視図には、トーチネック10の一実施例が示されているが、この場合、流動空間11は、ノズル連結器3の内壁9とノズル連結器インサート部材20の外壁22との間の複数のリニアギャップ12によって形成されており、これらのリニアギャップ12は、ノズル連結器インサート部材20の外周面27上においてインサート部材20の長手方向に延伸している。
【0098】
この場合、リニアギャップ12は、ノズル連結器インサート部材20の外壁22上においてノズル連結器インサート部材20の実質的に長手方向に延伸する溝13によって形成され、これらの溝13は周方向において互いに対しほぼ同じ間隔をなして配されることが好ましい。
【0099】
シールドガスは、インナーパイプ18から(ノズル連結器インサート部材20を介し)溝13を通ってノズル連結器3のガス流出開口8の方向へ流れ、次いで、ガスノズル1のガス出口2へと更に流れる。
【0100】
不図示の代替的一形態では、流動空間11は実質的にヘリックス状ギャップによって形成されることが可能であり、ヘリックス状ギャップは、ノズル連結器インサート部材20の外壁22上において実質的に縦方向に延在するネジ山、とりわけ台形ネジ、によって形成される。
【0101】
流入領域が後側ギャップ26によって形成されている
図3の実施形態では、このギャップ26は、シールドガスの流動方向に見て、ノズル連結器3のガス流出開口8の前方に(上流側に)位置する。この方法で直線(リニア)ガス流動が生成される。なぜなら、シールドガスはトーチネック10のインナーパイプ18から、後側ギャップ26によって形成される後側流入領域内へと流れ、流動空間11内へ導かれ、そして、ノズル連結器3のガス流出開口8を通り抜けてガス出口2においてガスノズル1から導き出されるからである。
【0102】
代替的に、
図1及び
図2から明らかなように、前側ギャップ25は、流動方向に見て、ノズル連結器3のガス流出開口8の後方に(下流側に)位置することも考えられる。この方法でシールドガス流の反転流(環状流)が形成される。なぜなら、ガス流は、インナーパイプ18を通ってノズル連結器インサート部材20の内部へと導かれ、そして、前側ギャップ25によって形成される流入領域内へ入り込み、更に流動空間11内へ導かれてノズル連結器3のガス流出開口8に至り、そして、ガス流出開口8を通って、ガスノズル1のガス出口2まで導かれるからである。
【0103】
従って、
図1に示されているように、シールドガスは、まず、ノズル連結器インサート部材20の内部においてトーチネック10ないしガスノズル1の前端部の方向へ流れる。次いで、シールドガスは、ノズル連結器3の縦軸線6に対し横方向に前側流入領域を通って流動空間11内へと導かれ、そして、シールドガスは、ノズル連結器インサート部材20の内部における流動方向と反対方向へ、即ち後側へと流れ、ノズル連結器3のガス流出開口8を通過した後、再び、ガスノズル1のガス出口2へと前方へ導かれることにより、反転流が形成される。
【0104】
この実施形態では、シールドガスはノズル連結器インサート部材20の内部で流動する。これに対し、シールドガス流は、代替的に又は付加的に、ノズル連結器インサート部材20の外周面27上を流動することも考えられる。
【0105】
不図示の一実施形態に応じ、向い合って位置する第1端部23と第2端部24は第1端部23と第2端部24との間の(所定の)長さを以ってノズル連結器インサート部材20の軸線5に沿って延在し、ノズル連結器インサート部材20の直径はその長さに沿って変化することも可能である。とりわけ、ノズル連結器インサート部材20は、流動空間11のリング状チャンネルを形成するために、ガスノズル1のガス出口2の側に指向されたその前端部23に、ガス出口2から離隔する側に指向されたノズル連結器インサート部材20の後端部24と比べてより小さい横断面を有することが考えられる。とりわけ、シールドガス流の流動方向は、リング状チャンネルにおいて、少なくとも一回変化され、それによって、ガスノズル1の内部におけるシールドガス流の流動時間ないし流動経路が長くされることができる。
【0106】
ノズル連結器インサート部材20、電流コンタクトチップ17及びノズル連結器3は、導電性材料で構成されることができ、とりわけ、銅又は銅合金で製造されることができる。ノズル連結器インサート部材20は、電流コンタクトチップ17と接触状態にあることが可能である。尤も、ノズル連結器インサート部材20と電流コンタクトチップ17は、組立後に、トーチネック10において接触可能であること、即ち直接的に互いに境を接する(隣接する)ことも考えられる。ノズル連結器インサート部材20は、トーチネック10に固定(結合)されているノズル連結器3(内)に存在する(配されている)。
【0107】
トーチネック10は、同様に溶接装置の一部であるトーチ(内)に配設されることができる。
【0108】
【符号の説明】
【0109】
1 ガスノズル
2 ガス出口
3 ノズル連結器
4 ノズル連結器の第1端部
5 ノズル連結器の第2端部
6 ノズル連結器の長手軸線
7 ノズル連結器の中空空間
8 ノズル連結器のガス流出開口
9 ノズル連結器の内壁
10 トーチネック
11 流動空間
12 リニアギャップ
13 溝
17 電流コンタクトチップ
18 インナーパイプ
19 アウターパイプ
20 ノズル連結器インサート部材
21 ノズル連結器インサート部材の内部貫通路
22 ノズル連結器インサート部材の外壁
23 ノズル連結器インサート部材の前端部
24 ノズル連結器インサート部材の後端部
25 前側ギャップ
26 後側ギャップ
27 ノズル連結器インサート部材の外周面
28 ノズル連結器の前側ストッパないしエッジ
【国際調査報告】