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特表2023-552481酸化イットリウムで被覆された耐熱金属部品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-15
(54)【発明の名称】酸化イットリウムで被覆された耐熱金属部品
(51)【国際特許分類】
   C23C 26/00 20060101AFI20231208BHJP
【FI】
C23C26/00 C
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023535585
(86)(22)【出願日】2021-11-25
(85)【翻訳文提出日】2023-07-31
(86)【国際出願番号】 AT2021060447
(87)【国際公開番号】W WO2022126158
(87)【国際公開日】2022-06-23
(31)【優先権主張番号】GM50251/2020
(32)【優先日】2020-12-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AT
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】390040486
【氏名又は名称】プランゼー エスエー
(74)【代理人】
【識別番号】110003317
【氏名又は名称】弁理士法人山口・竹本知的財産事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100075166
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 巖
(74)【代理人】
【識別番号】100133167
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100169627
【弁理士】
【氏名又は名称】竹本 美奈
(72)【発明者】
【氏名】シフトナー,ロベルト
(72)【発明者】
【氏名】クニットル,カリン
(72)【発明者】
【氏名】フーバー,トーマス
(72)【発明者】
【氏名】マルク,ミヒャエル
【テーマコード(参考)】
4K044
【Fターム(参考)】
4K044AA06
4K044AB02
4K044AB05
4K044BA12
4K044BB01
4K044BC11
4K044CA53
(57)【要約】
本発明は、耐熱金属からなる部品であって、その表面が、少なくとも部分的に、Yからなる層で被覆されていることを特徴とする部品、前記被覆された部品の製造、及び、高温適用での剥離剤としてのYの使用、に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
耐熱金属からなる部品であって、その表面が、少なくとも部分的に、Yからなる層で被覆されていることを特徴とする、部品。
【請求項2】
前記耐熱金属が、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、バナジウム、ニオブ、タンタル、クロム、モリブデン、タングステン及びレニウム並びにこれらの金属の合金からなる群から選択される金属である、請求項2に記載の部品。
【請求項3】
前記耐熱金属が少なくとも70重量%のモリブデンからなる、請求項1又は2に記載の部品。
【請求項4】
前記部品が、ねじ、ナット、ピン、ノックピン、ワッシャー、ボルト、鋼板、クランプ、パイプ、ロッド又はUレールである、請求項1~3のいずれか1項に記載の部品。
【請求項5】
前記部品が、溶接及び/又はリベット留めされた個別部品からのアセンブリである、請求項1~3のいずれか1項に記載の部品。
【請求項6】
前記Y層が10μm~150μmの範囲の厚さを有する、請求項1~5のいずれか1項に記載の部品。
【請求項7】
前記部品の前記表面が完全に被覆されている、請求項1~6のいずれか1項に記載の部品。
【請求項8】
前記部品の前記表面が部分的に被覆されている、請求項1~6のいずれか1項に記載の部品。
【請求項9】
前記層が、スラリーコーティングによって塗布されたYからなることを特徴とする、請求項1~8のいずれか1項に記載の部品。
【請求項10】
高温適用のための部品のための剥離剤としてのYの使用。
【請求項11】
以下のステップを含む、被覆された部品を製造するための方法。
- 耐熱金属からなる部品を提供するステップ
- スラリーコーティングによってYからなる層を前記部品の表面の少なくとも一部に塗布するステップ
【請求項12】
前記スラリーコーティングのためにエタノールベースのYスラリーを使用する、請求項11に記載の方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐熱金属からなる部品であって、その表面が少なくとも部分的にYの層で被覆されていることを特徴とする、部品に関する。
【0002】
本発明は、更に、前記被覆された部品の製造及び高温用途における剥離剤としてのYの使用に関する。
【0003】
高温設備、例えば、焼結炉、熱処理設備及び石英溶融設備では、又は照明設備及び蒸発設備でも、複数回の温度負荷及び応力負荷の後でも取り外し可能である必要のある部品が使用される。1000℃~1400℃の範囲の高温に曝された後のそのような部品の取り外し性は、特に課題となる。というのは、典型的な金属製部品は、その接触面と対向接触面で焼結する傾向、即ち、焼き付き現象の傾向、があるためである。もし、例えば、ねじ接続の場合等のように、接触面が圧力にも曝されると、接触面同士の冶金学的結合が更に促進される。その後は、接触面同士は、もはや破壊せずに互いに分離することができなくなり、分離によって、少なくとも1つの部品の損失がもたらされる。
【背景技術】
【0004】
この問題を回避するために、異なる材料の組み合わせ又はスリーブ若しくは塗布されたペースト分離層などの補助手段及び分離手段が使用される。しかしながら、これらの方法は、極端な条件下では直ぐにそれらの限界に達する。例えば、一部の補助手段及び分離手段は、それらの成分が蒸発するリスクがあるため、真空中では使用できず、及び/又は、分解を理由にそれらの使用温度が限定されている。現在、炉の建設には、例えば、Al、ZrO又は窒化ホウ素のスプレー又は粉末が使用されている。しかしながら、これらの変形例は、部品と補助手段及び分離手段との間の相互汚染が特に問題となるため、1400℃前後の温度での適用には不適切である。
【0005】
粗粒で耐クリープ性のモリブデン製装填鋼板(Chargierblechen)の製造では、1700℃~1900℃の温度での再結晶アニールが必要であり、そこでは、鋼板がスタック中で部分的に焼結するため、アニール後に、最早、分離可能ではなくなる。これまでは、タングステン製薄鋼板が分離補助手段として使用されてきた。しかしながら、タングステン製薄鋼板は一度しか使用することができないため、それによって、装填鋼板の製造コストが著しく高くなる要因となることが欠点である。
【0006】
特許文献1は、雄ねじを有するねじと雌ナットねじを有する部品とを備えた真空適用のためのねじ接続であって、部品若しくはねじのいずれか一方又は両方が防錆オーステナイト鋼から形成されており、基材とは異なる被覆材料で部品/ねじを被覆することによって異なる接触面対が作製され、それによって、真空を損なう潤滑剤なしで相互に滑動することを可能にする、ねじ接続に関する。
【0007】
特許文献2では、第2の要素を選択的に係合するのに適切な第1の要素であって、被覆を有し、第1の要素の少なくとも係合部分がこの被覆内に被覆されており、この被覆が蒸着によって形成されていて、800℃までの温度に対して熱化学的に安定した層を提供するものである、第1の要素が提供されている。被覆は、チタン、クロム又はアルミニウムの1種以上の窒化物、酸化物又は炭化物を含み得る。例えば、被覆は、窒化チタン、窒化クロム、窒化アルミニウム、酸化チタン、酸化クロム、酸化アルミニウム、炭化チタン、炭化クロム又は炭化アルミニウムのうちの1種以上を含み得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】独国特許出願公開第102013213503号明細書
【特許文献2】英国特許出願公開第201110939号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
高温処理の分野では、1400℃~1900℃の特に高い温度の使用がますます求められている。同時に、処理された製品の純度に対する要件もますます厳しくなっている。
【0010】
従って、本発明の課題は、1000℃~1400℃、特に1900℃まで、の範囲の温度での使用後でも取り外し可能であり、他の部品若しくは処理された製品との相互汚染が生じない、被覆された部品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この課題は、その表面がYの層で少なくとも部分的に被覆されている、耐熱金属からなる請求項1に記載の部品、その製造、及び高温適用における分離手段としてのYの使用によって、解決される。本発明の有利な構成は従属請求項の対象であり、これらは互いに自由に組み合わせることができる。
【0012】
層の使用によって、相互汚染又は分解を計算する必要なく、水素又は真空中等の様々な雰囲気における部品の使用が可能になる。これらの層の塗布は、更に、部品を破壊せずに交換すること及び破壊せずに開けることをも保証する。それによって、個別部品の焼結を防止することができ、従って、これらが取り外し可能なままであることが保証される。Y層によって、不純物汚染リスク/有害物質汚染リスク又は焼き付きなしで、1000℃~1400℃、特に1900℃まで、の温度適用範囲をカバーすることができ、部品/機械要素の取り外しを達成することが可能になった。
【0013】
本発明によると、互いに直接接触している部品の表面を、部品を損傷することなく、再び互いに分離することができる場合は、接続は取り外し可能であり、接触している表面を再び互いに分離するために、部品を少なくとも部分的に破壊する必要がある場合は、接続は取り外し可能ではない。
【0014】
本発明による被覆された部品は、特に高温適用、即ち、1000℃~2000℃、ここでは特に1400℃~1900℃の温度に適切である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
これらの温度に耐えるために、本発明の部品は耐熱金属からなる。
【0016】
本発明の文脈において、耐熱金属とは、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、バナジウム、ニオブ、タンタル、クロム、モリブデン、タングステン及びレニウムからなる群から選択される金属、並びに、本明細書では耐熱金属合金とも呼ばれる上記金属の合金である。耐熱金属合金は、上述の金属のうちの1種以上を、少なくとも50原子%、好ましくは少なくとも70原子%、更に好ましくは少なくとも90原子%、なおも更に好ましくは少なくとも95原子%、有する合金を意味する。
【0017】
上で定義した耐熱金属の融点は、部品が使用目的の温度に適するように、選択されることは言うまでもない。好適には、耐熱金属は、1400℃超、更に好ましくは1800℃超、更に好ましくは2000℃超、の融点を有する。
【0018】
一実施形態では、部品は、不可避的不純物を伴うモリブデンを、又はモリブデン合金を、含有する。
【0019】
一実施形態では、合金が、モリブデンのみならず、30重量%までの上述の更なる耐熱金属元素を含有することが更に好ましい。
【0020】
更なる実施形態では、モリブデンのほか、以下の重量パーセントで記載されている比率の元素からなる組成物が好ましい:
0.5重量%のTi及び0.08重量%のZr並びに0.01重量%~0.04重量%のC。1.2重量%のHf及び0.01重量%~0.04重量%のC。0.3重量%のLa。0.7重量%のLa。0.47重量%のY及び0.08%のCe。0.005~0.1重量%のK及び0.005~0.1重量%のSi並びに0.01~0.2重量%のO。5重量%のRe又は41重量%のRe。30重量%のW。更に、ここに記載されている比率が10%まで逸脱している組成も含まれる。
【0021】
比率の記載及びデータは、それがモリブデン基材中に元素形態で存在するか結合形態で存在するかに関係なく、その都度参照される元素(例えば、Mo、C又はW)に関連する。様々な元素の比率は化学分析によって決定される。
【0022】
本発明の意味合いにおける部品という用語は、個別部品(機械要素、部品)、特に、機械要素の交換又は可逆的な固定及び緩めに適切な構築手段、並びに個別部品から構成されるアセンブリを含む。適切な個別部品としては、特に、ねじ、ナット、ピン、ノックピン、ワッシャー、ボルト、鋼板、クランプ、パイプ、ロッド及びUレールが挙げられる。アセンブリとしては、特に、ガス入口パイプ、ヒーター懸架体(Heizungsaufhaengungen)並びに装填ラック等の溶接及びリベット留めされた部品が挙げられる。本発明の意味合いにおける部品という用語は、切削工具の切断部品を明示的に除外する。
【0023】
製造補助手段としての好ましい部品は、分離鋼板及びワッシャー等の接触部品である。
【0024】
ねじ又はナット等の、ねじ山を有する部品が構築補助手段として特に好ましい。ねじが特に好ましい。
【0025】
本発明によると、部品の被覆はYからなる。Y層は、典型的には、Y懸濁液を刷毛塗り、噴霧、印刷又は浸漬することによって部品に塗布され、その後、乾燥させられる。好適には、Y懸濁液は、エタノールベースの懸濁液である。
【0026】
好ましくは、Y懸濁液は、水素雰囲気中、約1800℃で2~6時間かけて部品上に焼結される。これによって、初期層接着性が改善される。
【0027】
被覆された部品は、10μm~150μm、好ましくは20μm~110μm、更に好ましくは40μm~80μm、尚も好ましくは50μm~70μmの範囲の厚さを有するY層を有する。層の厚さは、被覆された部品の断面の横方向でのREM測定によって決定することができる。部品は、典型的には、他の材料からなる更なる層を有しない。例えば促進するために追加の層が存在する場合、Y層は、被覆された部品の最外層である。
【0028】
典型的には、この層は、他の部品と接触する、被覆された部品の表面に完全に被覆されている。部品の改善された取り外し性を達成するためには、この層を、被覆された部品の、他の部品と接触する表面に部分的にだけ適用すれば、既に十分である。
【0029】
他の部品と接触する、被覆された部品の表面の20~100%、更に好ましくは50~100%、が、この層で被覆されていることが好ましい。
【0030】
本発明は、高温領域で部品が使用された後に、その部品の他の部品からの良好な取り外し性が要求される場合には、どこででも、使用することができる。従って、高温適用における部品の取り外し性を改善するための分離手段としてのYの使用も同様に本発明の対象である。好適には、酸化イットリウムは、好適には耐熱金属からなる部品上で、スラリーコーティングによって塗布された層の形態で使用される。
【0031】
本発明の更なる利点は、実施例の以下の説明に基づいて明らかとなる。
【実施例
【0032】
[実施例1:ねじ接続]
TZMプレート(0.5のTi及び0.08のZr並びに0.01~0.04のCの重量分率を有するモリブデン)140×80×9mm、M6ねじ山を有するフライス加工した長さ9mmの貫通穴
モリブデンワッシャー:18×6、4×1.5mm
モリブデンねじ:M6×12mm
【0033】
複数のねじを、Y懸濁液(本発明によるもの)、ZrO懸濁液、TaC懸濁液又はZrC懸濁液でスラリーコーティングによって被覆し、その後、乾燥させた。これらの層は、50~70μmの範囲の厚さを有していた。
【0034】
下表に記載されているように、様々な条件下で、Y層を比較層と比べて評価するために、複数の試験を実施した。この目的のために、ワッシャーを有するそれぞれ3本のねじ(S1~S3)を選択し、12Nmの締め付けトルクでプレートにねじ込んだ。400℃~1400℃の温度(T(℃))及び様々な雰囲気(A)(水素(H)、真空10-6mbar(V))で、2時間の保持時間を掛けて、高温処理を実施した。高温処理後に開放トルク(L(Nm))を測定し、ねじ山を目視で焼き付き(F)について検査し、必要に応じてねじの破壊(B)を確認した。
【0035】
【表1】
【0036】
上表に基づいて明らかなように、ZrOで被覆されたねじ及びTaCで被覆されたねじは、400℃以降の比較的低い温度で既に焼き付きを示し、従って、高温適用には不適切である。ZrC被覆されたねじは、1000℃から焼き付きを示し、従って、同様に、高温適用に適切ではない。
【0037】
対照的に、本発明によるY被覆では、ねじ接続の焼き付きは生じない。そのため、コーティングは、接触する耐熱金属部品の取り外し性を達成することができる。更に、部品間の相互汚染は確認することができなかった。
【0038】
[実施例2:被覆された分離鋼板の製造及び評価]
鋼板のスタックアニールのための可能な分離手段として、様々な製品を試験し評価した。この目的のために、様々な分離手段を鋼板の間に導入した。噴霧又は懸濁液を厚さ1mmのモリブデン鋼板(面積約40×20mm)の片面に塗布した。塗布された層は、50~70μmの厚さを有していた。25枚の鋼板をスタックにして水素雰囲気において1900℃で1時間かけてアニールした。
【0039】
評価結果は、以下に要約されている:
【0040】
ポンプ噴霧としての腐食実験室(ISTO)経由でのZrOスラリー:分離は工具によってのみ可能;スラリーが鋼板上で「焼き入れられる」;不適切。
【0041】
腐食実験室(ISTO)経由でのAl固形物、セラミック、純度99.7%:分離は工具によってのみ可能;部分的に鋼板のエッジ痕を有するセラミックス;不適切。
【0042】
窒化ホウ素の噴霧(スプレー:Henze HeBoCoat 21E):
鋼板はアニール後に分離可能であるが、アニール中に厚さ10~20μmのホウ化モリブデン層が形成される;不適切。
【0043】
ZrOの噴霧(ZYP Coatings Inc.のスプレー:98%のZrO、0.7%のMgO、1.2%のSiO):
鋼板はアニール後に分離可能ではあるものの、噴霧層は鋼板において主に緩んでいるだけである。ZrO噴霧層の剥離による設備の汚染;不適切。
【0044】
CeramTec 3YSZのZrO固形物80μmセラミック:
固体が鋼板に貼り付いており、鋼板は抵抗なしに分離することができない;固形物は、取り除くのが非常に困難であり、部分的には、もはや完全には取り除くことができない;不適切。
【0045】
CeramTec 5YSZのZrO固形物300μmセラミック:
固形物が鋼板に貼り付いており、鋼板は抵抗なしに分離することができない。固形物は、取り除くのが非常に困難であり、部分的には、もはや完全には取り除くことができず、固形物の痕が反対側に見られる;不適切。
【0046】
Sindlhauser MaterialsのタイプZr-W-37のZrO懸濁液:
懸濁液は、刷毛塗布方法において、鋼板への濡れが不良である。鋼板は、アニール後にサンドイッチ状に強固に貼り付いており、層は、塗られた鋼板から取り除くことはできない。部分的に、非塗布鋼板側に層の残留物が存在する;不適切。
【0047】
Sindlhauser MaterialsのタイプY-E-32のY懸濁液:
懸濁液は、刷毛塗布方法において、鋼板に良好な濡れを示す。鋼板は、アニール後に良好に分離することができる。非塗布鋼板側には層の残留物は存在しない。追加的な断面分析によって、鋼板への表面拡散が起こらないことが分かった;適切。
【0048】
上記評価から分かるように、いくつかの製品は、高温適用での分離手段としては適切でない。ZrOの噴霧及び窒化ホウ素の噴霧は、鋼板の取り外し性を維持することができるが、高温使用後のZrO噴霧層の剥離には焼結設備での特別な洗浄が必要であり、窒化ホウ素の噴霧はアニールされた材料の表面をホウ化するため、装置及び製品の汚染が生じる。更に、連続生産を伴う製造環境では、噴霧の使用は、限定的にしか適切ではない。
【0049】
対照的に、Y懸濁液を用いて塗布された層の使用によって、1900℃でアニールされたMo鋼板の容易な分離が可能になる。層は鋼板から剥離せず、鋼板の表面への拡散もない。従って、Yは、高温適用での分離手段として非常に適切である。
【0050】
更なる一連の試験では、1mmのモリブデン製鋼板(面積265mm×265mm)の両面をY懸濁液で塗布し、モリブデン製装填鋼板(それぞれ隣接して対になっている;2mm×130mm×260mm)間の分離鋼板として、水素雰囲気における1850℃での6時間の複数回のスタックアニールに使用した。スタックに際して、Mo-Y分離鋼板の次に、隣接して配置された2枚の装填鋼板が続き、その次に分離鋼板が続き、これが繰り返される。装填鋼板層を交互に90°回転させて、交差層構造が生じるようにした。スタックは、20~25層の装填鋼板層を含んでいた。分離鋼板は、13回の適用後も依然として使用可能であった。
【0051】
層のおかげで、装填鋼板の焼結は生じない。ここでも、スタックされた鋼板は、アニール後に問題なく再び分離することができた。Y層は、複数回の適用後も分離鋼板上に安定して接着している。熱処理後に、鋼板は、常に容易に互いに分離することができる。更に、汚染による基材及び焼結炉への悪影響は確認されなかった。より薄いY層を両面に有するMo担体鋼板は、装填鋼板の高温処理に非常に良好に適切であることが示される。特に、そのようなY被覆されたモリブデン製分離鋼板の複数回の使用可能性によって、タングステン製薄鋼板と比較して、かなりの経済的及び環境的な利点が生じる。

【国際調査報告】