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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-15
(54)【発明の名称】発酵ホワイトレンティル飲料
(51)【国際特許分類】
   A23L 11/60 20210101AFI20231208BHJP
   A23L 11/50 20210101ALI20231208BHJP
【FI】
A23L11/60
A23L11/50
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023557846
(86)(22)【出願日】2021-12-05
(85)【翻訳文提出日】2023-07-13
(86)【国際出願番号】 IB2021061346
(87)【国際公開番号】W WO2022123418
(87)【国際公開日】2022-06-16
(31)【優先権主張番号】2020904517
(32)【優先日】2020-12-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523214982
【氏名又は名称】マッセイ・ベンチャーズ・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100196597
【弁理士】
【氏名又は名称】横田 晃一
(72)【発明者】
【氏名】アセヴェド・ファニ,アレハンドラ
(72)【発明者】
【氏名】ワン,イーラン
(72)【発明者】
【氏名】ナグ,アラップ
(72)【発明者】
【氏名】ロイ,デバスリー
(72)【発明者】
【氏名】デーヴ,アナン
(72)【発明者】
【氏名】シング,ハーレンドラ
【テーマコード(参考)】
4B020
【Fターム(参考)】
4B020LB18
4B020LC07
4B020LG09
4B020LK04
4B020LK18
4B020LK19
4B020LP02
4B020LP08
4B020LP12
4B020LQ06
4B020LQ10
(57)【要約】
本発明は、熱的に安定な発酵ホワイトレンティル飲料及びその調製プロセスに関する。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
発酵ホワイトレンティル飲料を調製するプロセスであって、
ホワイトレンティルを水に少なくとも約30分間浸漬するステップ(a)と、
前記ステップ(a)からの前記水を除去し、新たな水を加えて、重量比が約1:20~約1:1であるホワイトレンティルと水との混合物を提供するステップ(b)と、
前記ステップ(b)の前記混合物を加圧下で約10分間~約40分間調理するステップ(c)と、
前記調理されたレンティル混合物からペーストを形成し、得られたスラリーを湿式粉砕する前に、前記ペーストの固形分を約7重量%~約20重量%に調整するステップ(d)と、
前記ステップ(d)の前記湿式粉砕されたスラリーを10~150ミクロンのメンブレンでろ過し、前記スラリーをアミラーゼ酵素とともに、前記酵素が活性化して前記スラリーの澱粉含有量を低下させる温度において、インキュベートするステップ(e)と、
前記アミラーゼ酵素を加熱により不活性化させてホワイトレンティル飲料を製造するステップ(f)と、
前記ホワイトレンティル飲料に乳酸菌培養物を接種し、pHが約4.3~約4.6になるまでインキュベートするステップ(g)と、を含む、プロセス。
【請求項2】
前記ステップ(a)において完全な前記ホワイトレンティルを約95℃の水に少なくとも30分間浸漬するか、又は前記ステップ(a)において破砕された前記ホワイトレンティルを約4℃~約50℃の水に少なくとも30分間浸漬する、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記ステップ(b)の前記混合物は、前記ステップ(c)において、約100℃~約140℃、好ましくは約110℃~約130℃、より好ましくは約115℃~約125℃で調理される、請求項1又は2に記載のプロセス。
【請求項4】
前記ステップ(d)における前記ホワイトレンティルペーストは、コロイドミルで湿式粉砕される、請求項1から3のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項5】
前記ステップ(e)において、前記アミラーゼ酵素を約0.01w/v%~0.5w/v%、好ましくは0.1w/v%添加する、請求項1から4のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項6】
前記スラリーは、前記ステップ(e)において65℃で加熱される、請求項1から5のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項7】
前記ステップ(d)の前記湿式粉砕されたスラリーは、前記ステップ(e)において100ミクロンのメンブレンでろ過される、請求項1から6のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項8】
前記澱粉含有量は、前記ステップ(e)において約5重量%未満に低減される、請求項1から7のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項9】
前記ステップ(f)の前又は後に、食用油を約0.1w/v%~約4w/v%、好ましくは約0.1w/v%~約3w/v%添加する、請求項1から8のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項10】
前記ホワイトレンティル飲料は、ラクトコッカス・ラクチス、ラクトバシラス属菌、ストレプトコッカス・サーモフィルス、ビフィドバクテリウム属菌、及びロイコノストック属菌からなる群より選択される乳酸菌培養物とともにインキュベートされる、請求項1から9のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項11】
前記ホワイトレンティル飲料は、ラクトバシラス・ブルガリカス及びストレプトコッカス・サーモフィルスバクテリアの選択された株を含む商業用ヨーグルト培養物とともにインキュベートされる、請求項1から10のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項12】
請求項1から11のいずれか1項に記載のプロセスにより調製された、発酵ホワイトレンティル飲料。
【請求項13】
約5重量%~約15重量%の炭水化物と、約2重量%~約4.5重量%の食用油と、約1.0重量%~約2.5重量%のホワイトレンティルタンパク質とを含む、約4.3~約4.6のpHを有する、発酵ホワイトレンティル飲料。
【請求項14】
約7重量%~約10重量%の炭水化物と、2重量%~約3.5重量%の食用油とを含む、請求項13に記載の発酵ホワイトレンティル飲料。
【請求項15】
約1.2重量%~約2.0重量%のホワイトレンティルタンパク質、好ましくは約1.5重量%~約1.8重量%、約1.5重量%~約1.9重量%、又は約1.5重量%~約2.0重量%のホワイトレンティルタンパク質を含む、請求項13又は14に記載の発酵ホワイトレンティル飲料。
【請求項16】
前記ホワイトレンティルタンパク質は実質的に非凝集である、請求項13から15のいずれか1項に記載の発酵ホワイトレンティル飲料。
【請求項17】
平均粒子サイズは100μm未満である、請求項13から16のいずれか1項に記載の発酵ホワイトレンティル飲料。
【請求項18】
安定剤を一切含まない、請求項13から17のいずれか1項に記載の発酵ホワイトレンティル飲料。
【請求項19】
約3~5分間かけて約90~95℃に加熱された場合に安定である、請求項13から18のいずれか1項に記載の発酵ホワイトレンティル飲料。
【請求項20】
約3~5分間かけて約90~95℃に加熱された場合に、前記発酵ホワイトレンティル飲料のタンパク質は実質的に凝集しない、請求項13から19のいずれか1項に記載の発酵ホワイトレンティル飲料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発酵ホワイトレンティル飲料及びその調製プロセスに関する。
【背景技術】
【0002】
乳糖不耐症やミルクアレルギーなどの医学的理由から、植物ベース飲料は乳製品の代替品として人気が高まっている。また、牛乳ホルモン、動物愛護問題、乳製品産業の環境への悪影響に対する消費者の懸念も、植物ベースの肉/乳製品の代替品に対する世界的な需要を押し上げている。
【0003】
植物ベースのミルク代替品は、マメ科植物、ナッツ、種子、穀類又は擬穀類の水抽出物であり、牛乳に類似した外観を有する。植物ベースのミルク代替品の発酵は、飲用ヨーグルトや、ヨーグルト及びチーズの非乳製品代替品などの飲料を生成する。
【0004】
植物ベースのミルク代替品は、溶解され、分解された植物材料からなるコロイド懸濁液又はエマルジョンを含む。これらは通常、植物材料を粉砕してスラリーにし、ろ過して粗大粒子を除去することによって調製される。材料が糊化温度以上に加熱される場合に厚いスラリーを形成する澱粉を除去するために、アミラーゼなどの酵素を添加してもよい。保存安定性を向上させるために、甘味料、油、調味料、ビタミン、安定剤などの他の成分の標準化及び/又は添加に続いて均質化及び低温殺菌/UHT処理を行ってもよい。
【0005】
残念ながら、多くの植物ベースのミルク代替品には、それらの消費者の魅力を低下させる多くの問題がある。
【0006】
まず、マメ科植物ベースの製品は、主として植物脂質の酸化により生成されたn-ヘキサナールやn-ヘキサノールなどの揮発性の化合物のため、豆や土のような匂いや味がする傾向がある。多くの消費者はこれらの異臭を望ましくないものと考えている。その他の感覚的な問題には、フラボノイドなどのポリフェノールによって引き起こされる不快な後味;緑や灰色、茶色がかった色;チョークや砂のような質感;薄い食感が含まれる。
【0007】
次に、多くの植物ベースのミルクは栄養面で牛乳に劣る。特に、これらのミルク代替品はタンパク質含有量がかなり低い可能性がある。一般的に、精選大豆ベースのミルク代替品のみが、牛乳のタンパク質レベルに達する。植物タンパク質は通常、低品質で消化しにくく、必須アミノ酸が限られている。また、ビタミンDとB12は低いレベルでしか存在しないか、あるいは存在しないことがある。
【0008】
3つ目の問題は、植物ベースのミルク代替品の多くが加熱されると凝固(あるいは凝結)することである。加熱されたタンパク質が展開されると、非極性アミノ酸残基が水に曝され、タンパク質の表面疎水性が増大する。これにより、タンパク質間の相互作用が強まり、タンパク質が集まるようになる。ランダムで急速な凝集は通常、凝固を引き起こす(即ち、沈殿は水相とタンパク質相の分離を引き起こす)。低温殺菌又は超高温(UHT)加工形態での加熱は、植物ベース飲料の賞味期限を延長するために日常的に使用されているものであるので、熱誘導凝固は問題となっている。
【0009】
乳酸発酵(乳酸菌による発酵)は通常、植物ベースのミルク代替品に見られる感覚的及び栄養的な問題の一部を緩和するために用いられる。発酵により、豆臭さやその他の異臭が低減され、望ましい揮発性香味が得られる。このような天然のビタミン産生微生物による強化は、合成による強化よりも望ましい解決策と考えられている。
【0010】
したがって、ヨーグルトやケフィアなどの発酵植物ベース飲料は通常、非発酵植物ベースミルク代替品よりも感覚的及び栄養的な特性に優れる。
【0011】
残念ながら、凝固の問題は、発酵植物ベース飲料のような低pH製品において特に深刻である。植物ベースのミルク代替品は、中性pHで安定なコロイド懸濁液である。しかし、pH値がタンパク質の等電点に向かって低下するにつれて、タンパク質の正味電荷がゼロとなり(反発力がない場合)、懸濁液が不安定になる。不安定化により、均一性がなくなり、タンパク質が沈殿する。
【0012】
低pH発酵植物ベース飲料は加熱時に凝固する傾向が強いことから、通常、低メトキシペクチン及び/又はジェランガムなどの安定剤を配合する必要がある。これらの薬剤はゲルネットワークを安定化させ、凝固やシネレシスを防止する。消費者は安定剤の存在を望ましくないものと見なし、多くの製造業者がその使用を省略した代替品を求めるようになっている。
【0013】
したがって、本技術分野では、熱的に安定で、タンパク質の凝集や凝固の問題を伴うことなく、低温殺菌やUHT処理が可能な発酵植物ベースミルク代替品が必要である。
【0014】
そのため、本発明の目的は、本技術分野における少なくともいくつかの欠点を克服する、及び/又は公衆のために有用な選択肢を提供する、発酵植物ベース飲料の調製プロセスを提供することである。
【0015】
本明細書では、通常、発明の特徴を説明するための背景を提供するために、特許明細書及びその他の書類を含む外部情報源が参照されている。別段の記載がない限り、いかなる国・地域においても、そのような情報源への引用は、そのような情報源が技術水準又はその分野の公知技術の一部を構成することを認めるものと解釈してはならない。
【発明の概要】
【0016】
本発明者らは、非常に美味しく、比較的高いタンパク質含有量を有し、熱的に安定な発酵植物ベース飲料の調製プロセスを開発した。
【0017】
一態様では、本発明は、発酵ホワイトレンティル飲料を調製するプロセスであって、
【0018】
ホワイトレンティルを水に少なくとも約30分間浸漬するステップ(a)と、
【0019】
前記ステップ(a)からの前記水を除去し、新たな水を加えて、重量比が約1:20~約1:1であるホワイトレンティルと水との混合物を提供するステップ(b)と、
【0020】
前記ステップ(b)の前記混合物を加圧下で約10分間~約40分間調理するステップ(c)と、
【0021】
前記調理されたレンティル混合物からペーストを形成し、得られたスラリーを湿式粉砕する前に、前記ペーストの固形分を約7重量%~約20重量%に調整するステップ(d)と、
【0022】
前記ステップ(d)の前記湿式粉砕されたスラリーを10~150ミクロンのメンブレンでろ過し、前記スラリーをアミラーゼ酵素とともに、前記酵素が活性化して前記スラリーの澱粉含有量を低下させる温度において、インキュベートするステップ(e)と、
【0023】
前記アミラーゼ酵素を加熱により不活性化させてホワイトレンティル飲料を製造するステップ(f)と、
【0024】
前記ホワイトレンティル飲料に乳酸菌培養物を接種し、pHが約4.3~約4.6になるまでインキュベートするステップ(g)と、を含むプロセスに関する。
【0025】
一実施形態では、前記ホワイトレンティルは、前記ステップ(a)において、約30~60分間浸漬される。一実施形態では、前記ホワイトレンティルは完全なレンティル種子であり、前記ステップ(a)における前記水の温度は約95℃である。
【0026】
一実施形態では、前記ホワイトレンティルは、破砕されたレンティル種子(ホワイトレンティル粉末)であり、前記ステップ(a)における前記水の温度は、約4℃~約50℃、好ましくは約30℃である。
【0027】
一実施形態では、前記ステップ(a)における前記ホワイトレンティルと前記水との重量比は、約1:20~約1:1、好ましくは1:10~約1:2、より好ましくは約1:5~約1:3である。
【0028】
一実施形態では、前記ステップ(b)における前記ホワイトレンティルと前記水との重量比は、約1:10~約1:2、好ましくは約1:5~約1:3である。
【0029】
一実施形態では、前記ステップ(b)の前記混合物は、前記ステップ(c)において、約100℃~約140℃、好ましくは約110℃~約130℃、より好ましくは約115℃~約125℃で調理される。
【0030】
一実施形態では、前記ステップ(b)の前記混合物は、前記ステップ(c)において約15分間~約30分間調理される。
【0031】
一実施形態では、前記ステップ(d)における前記ホワイトレンティルペーストは、約9重量%~約18重量%の固形物、好ましくは約10重量%~約15重量%の固形物に調整される。一実施形態では、前記ステップ(d)における前記ホワイトレンティルペーストは、約13重量%の固形物に調整される。
【0032】
一実施形態では、前記ステップ(d)における前記ホワイトレンティルペーストは、コロイドミルで湿式粉砕される。
【0033】
一実施形態では、前記ステップ(e)において、前記アミラーゼ酵素を約0.01w/v%~0.5w/v%、好ましくは0.1w/v%添加する。一実施形態では、前記アミラーゼ酵素はAMG1100である。一実施形態では、前記スラリーは約65℃で加熱される。
【0034】
一実施形態では、前記ステップ(d)の前記スラリーは、前記ステップ(e)において100ミクロンのメンブレンでろ過される。一実施形態では、前記澱粉含有量は、前記ステップ(e)において約5重量%未満に低減される。
【0035】
一実施形態では、前記ステップ(f)の前又は後に、食用油を約0.1w/v%~約4w/v%添加する。一実施形態では、前記ホワイトレンティルスラリーと前記食用油とを200~300Paで均質化する。
【0036】
一実施形態では、前記アミラーゼ酵素は、前記ステップ(f)において90~100℃で3~5分間加熱されることにより不活性化される。
【0037】
本発明はまた、本発明のプロセスにより調製された発酵飲料に関する。
【0038】
一態様において、本発明は、約5重量%~約15重量%の炭水化物と、約2重量%~約4.5重量%の食用油と、約1.0重量%~約2.5重量%のホワイトレンティルタンパク質とを含む、約4.3~約4.6のpHを有する発酵ホワイトレンティル飲料に関する。
【0039】
一実施形態では、前記発酵ホワイトレンティル飲料は、約7重量%~約10重量%の炭水化物を含む。一実施形態では、前記発酵ホワイトレンティル飲料は、約2重量%~約3.5重量%の食用油を含む。
【0040】
一実施形態では、前記発酵飲料は、約1.2重量%~約2.0重量%のホワイトレンティルタンパク質を含む。一実施形態では、前記発酵飲料は、約1.5重量%~約1.8重量%、約1.5重量%~約1.9重量%、又は約1.5重量%~約2.0重量%のホワイトレンティルタンパク質を含む。
【0041】
一実施形態では、前記食用油が植物油である。
【0042】
一実施形態では、前記ホワイトレンティルタンパク質は実質的に非凝集である。
【0043】
一実施形態では、平均粒子サイズは100μm未満である。
【0044】
一実施形態では、前記発酵ホワイトレンティル飲料は、乳製品を含まない。
【0045】
一実施形態では、前記発酵ホワイトレンティル飲料は、常温で保存される場合に少なくとも6ヶ月間安定である。一実施形態では、前記発酵飲料は、常温で保存される場合に少なくとも9ヶ月間安定である。一実施形態では、前記発酵飲料は、常温で保存される場合に少なくとも12ヶ月間安定である。
【0046】
一実施形態では、前記発酵飲料は、添加される安定剤を一切含まない。
【0047】
上述した本発明の異なる態様の様々な実施形態も、以下の発明を実施するための形態に記載されているが、本発明はそれらに限定されるものではない。
本発明の他の態様は、例としてのみ与えられる以下の説明から明らかにすることができる。
【0048】
本発明は、以下の図面を参照して、例としてのみ説明される。
【図面の簡単な説明】
【0049】
図1図1は、実施例5で説明する発酵プロセスにおけるゲル強度(G’)の発展を示すグラフである。
図2図2は、実施例5で説明するような6時間発酵後の発酵植物ベース飲料の最終貯蔵弾性率(G’)の値を示すグラフである。
図3a図3aは、実施例5で説明する発酵プロセスにおけるホワイトレンティル飲料の粒度分布の変化を示すグラフである。
図3b図3bは、実施例5で説明する発酵プロセスによるエンドウ豆飲料の粒度分布の変化を示すグラフである。
図3c図3cは、実施例5で説明する発酵プロセスによるひよこ豆飲料の粒度分布の変化を示すグラフである。
図3d図3dは、実施例5で説明する発酵プロセスによる緑豆飲料の粒度分布の変化を示すグラフである。
図4図4は、発酵プロセスの前後に実施例5で調製されたサンプルの一連の写真である。
図5図5は、実施例6に示すような、異なる時間の95℃での加熱処理によるホワイトレンティル飲料の粒度分布の変化を示すグラフである。
図6図6は、実施例6に示すような、異なる時間の95℃での加熱処理による緑豆飲料の粒度分布の変化を示すグラフである。
図7図7は、実施例6の加熱処理された発酵緑豆飲料のサンプルにおけるシネレシスを示す写真である。
図8図8は、実施例6の加熱処理された発酵ホワイトレンティル飲料のサンプルには、明らかに検出可能なシネレシスがないことを示す写真である。
図9図9は、実施例6に示すような、熱処理及びそれに続いた一晩保存による発酵ホワイトレンティル飲料の粘度変化を示すグラフである。
図10図10は、実施例6に示すような、熱処理及びそれに続いた一晩保存による発酵緑豆飲料の粘度変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0050】
定義と略語
本明細書で使用されるように、用語「含む」とは、「少なくとも部分的に含む」を意味する。本明細書及び各請求項における各「包含」という用語を解釈するときに、その項又はその項目の前面にあるもの以外の特徴も存在することがある。「含む(comprise)」と「含む(comprises)」などの関連用語は、同じ解釈で解釈される。
【0051】
本明細書で使用される用語「約」とは、最終的な結果に有意な変化がないように修正された用語の合理的な偏りの量を意味する。例えば、ある値に適用する場合、この用語は、その値の+/-5%の偏差を含むと解釈されるべきである。
【0052】
本明細書で使用される用語「ホワイトレンティル」とは、ケツルアズキ(Vignamungo)植物の、脱皮したレンズ状の種子(完全形態又は破砕形態(レンティル粉)のいずれか)を意味する。殻付きのホワイトレンティルの種子は、「ブラックレンティル(blacklentil)」「ブラックグラム(blackgram)」「ウラドビーン(uradbean)」「ミナパパプ(minapapappu)」「ムンゴビーン(mungobean)」「ブラックマッペビーン(blackmatpebean)」とも呼ばれる。「ホワイトレンティルタンパク質」は、脱皮種子中に存在するタンパク質、又は脱皮種子由来のタンパク質である。
【0053】
本明細書で開示されている数値範囲(例えば、1~10)の参照は、この範囲内のすべての有理数(例えば、1、1.1、2、3、3.9、4、5、6、6.5、7、8、9及び10)及びこの範囲内の任意の有理数範囲(例えば、2~8、1.5~5.5及び3.1~4.7)をも含むので、本明細書で明示的に開示されているすべての範囲のすべてのサブ範囲は、本明細書で明示的に開示されている。これらは特定の意図の一例にすぎず、列挙された最低値と最高値との間の可能なすべての数値の組み合わせは、同様の方法で本明細書に明示的に記載されているものとみなされるべきである。
【0054】
範囲、例えば、温度範囲、時間範囲、又は成分範囲が本明細書で与えられているときはいつでも、すべての中間範囲及びサブ範囲、ならびに与えられた範囲に含まれるすべての単一値は、本開示に含まれることが意図されている。本開示及び特許請求の範囲において、「及び/又は」は、追加的又は代替的なものを表す。また、単数形での用語の使用には複数形も含まれる。
【0055】
本発明のプロセス
本発明者らは、非常に美味しく、比較的高いタンパク質含有量を有し、熱的に安定な発酵植物ベース飲料の調製プロセスを開発した。飲料は、脱皮したブラックレンティル(マメ科植物)(本明細書では「ホワイトレンティル」という)の抽出物中で乳酸菌を培養することにより形成された発酵物を含む。
【0056】
本明細書に開示されているように、本発明者らは驚くべきことに、そのような抽出物の発酵により独特な性質を有する飲料が製造されることを見出した。
【0057】
ホワイトレンティルは、ブラックレンティル/グラムを脱皮することによって用意される。脱皮は種皮を取り除くことである。ブラックレンティル/グラムは主に調理目的で使用され、通常は植物ベース飲料/ミルク代替品には使用されない。栽培されて供給される一般的なレンティル(レッド、ライト・ミディアム・ダークグリーン、イエローメキシカン、カナディアンベルーガ)に比べ、脱皮したブラックレンティル(ホワイトレンティル)は色が白く、味のプロフィールが比較的甘く、よりまろやかでクリーミーである。
【0058】
本発明の発酵飲料を調製するためのプロセスは、他の植物ベースのミルク代替品と同様であるが、最終的な製品は、発明者によって特定され、操られたホワイトレンティル自体のある独特な性質のため、著しく異なっている。
【0059】
本発明のプロセスのステップ(a)において、ホワイトレンティルは少なくとも30分間浸漬される。通常、約30~60分間浸漬することが最適である。浸漬時間を長くすると、加工時間が長くなる可能性があるが、実際には何のメリットも得られない。
【0060】
ホワイトレンティルが完全(種子)形態であれば、浸漬水は沸騰に近いほうが好ましい。沸騰温度に近いということは、約90℃又はそれ以上であることを意味する。一実施形態では、完全なホワイトレンティルは約95℃の水に浸漬される。
【0061】
ホワイトレンティルが破砕形態(レンティル粉)であれば、温度は約50℃を下回るべきである。それ以上の温度は、粉を糊化し得る。
【0062】
一実施形態では、破砕されたホワイトレンティルは、約4℃~約50℃、好ましくは約30℃の水に浸漬される。
【0063】
一実施形態では、レンティルと水との比率は、約1:20~約1:1、好ましくは1:10~約1:2、より好ましくは約1:5~約1:3である。
【0064】
浸漬ステップ(a)により、リポキシゲナーゼ酵素及びヒドロペルオキシドリアーゼ酵素を不活性化させる。これらの酵素は、豆臭さを持つ酸化反応生成物を生成する。上記二種類の酵素はいずれも、マメ科植物の水和及び破砕の過程で活性化されるが、72℃以上の温度での加熱により不活性化され得る。
【0065】
ステップ(b)において、浸漬水は水和ホワイトレンティルから除去されて廃棄される。このステップにおいて、フラボノイドやフィトケミカルなどの他の水溶性物質も除去される。これらの化合物のいくつかは、植物ベースのミルクに見られる豆臭さや生の風味/青臭さの原因となることが知られている。
【0066】
その後、ホワイトレンティルと水との重量比が1:20~約1:1である水和レンティル混合物を提供するために、浸漬水は新鮮な水で置き換えられる。一実施形態では、ステップ(b)におけるホワイトレンティルと水との重量比は、約1:10~約1:2、好ましくは約1:5~約1:3である。レンティルと水との比率は、ステップ(a)においてレンティル中に吸収された水を考慮すべきであり、すなわち、ステップ(a)において添加されたホワイトレンティルの乾燥重量を用いて比率を計算すべきである。
【0067】
その後、レンティル混合物は、加圧下で約10分間~約40分間、好ましくは約15分間~約30分間調理される。一実施形態では、ステップ(b)の混合物は、ステップ(c)において、約100℃~約140℃、好ましくは約110℃~約130℃、より好ましくは約115℃~約125℃で調理される。
【0068】
一実施形態では、水和ホワイトレンティルは、直接蒸気注入能力を備えた圧力容器内で調理される。一実施形態では、密閉システムが15~30分間保持される前に、蒸気注入は、圧力容器の内容物を約115~125℃に加熱するために用いられる。
【0069】
実施例2と3に示すように、前処理ステップ(a)~(c)は重要である。これらのプロセスは、本来の味のプロフィールを低下させ、レンティルタンパク質の消化率を向上させる。また、これらのプロセスによって、レンティル全体が柔らかくなり、このレンティル材料のペーストやスラリーの形成が容易になる。プロセスからステップ(a)~(c)のいずれかを省略すると、不良品となる。
【0070】
前処理ステップ(a)~(c)に続いて、軟質水和ホワイトレンティルは粉砕プロセスに付される。
【0071】
ステップ(d)において、まず、調理されたレンティル混合物からペーストが形成される。レンティル粉が使用された場合には、ペーストが自発的に形成される。
【0072】
完全なホワイトレンティルが使用される場合には、2ステップの粉砕プロセスが施される。水和した完全なホワイトレンティルはまず、ペースト状に破砕される。一実施形態では、第1の粉砕は、フードプロセッサー内で完全なホワイトレンティルを破砕することを含む。この第1の粉砕ステップは粒子のサイズを小さくし、第2の粉砕ステップにおける湿式粉砕に適したレンティルペーストとする。
【0073】
スラリーを形成するために、ホワイトレンティルペーストの固形分は水の添加により約7重量%~約20重量%に調整される。一実施形態では、ステップ(d)におけるホワイトレンティルペーストは、約9重量%~約18重量%の固形物、好ましくは約10重量%~約15重量%の固形物に調整される。一実施形態では、ステップ(d)におけるホワイトレンティルペーストは、約13重量%の固形物に調整される。
【0074】
この段階におけるホワイトレンティルスラリーの水分量は重要である。水分量が低いと、スラリーが粘りすぎてしまうが、水分量が高いと、タンパク質の含有量が低下するだけでなく、コロイド懸濁液の不安定性を引き起こす可能性がある。
【0075】
その後、ホワイトレンティルスラリーは湿式粉砕される。湿式粉砕は、コロイド懸濁液中の粒子を剪断、衝撃、又は摩擦により液体中に分散させるプロセスである。ミルは、小さなビーズや球体などの媒体を備え、高速攪拌機軸によって作動されて個々の粒子を分離する。攪拌機の回転は運動エネルギーを媒体に伝達する。このエネルギーは、コロイド懸濁液中に懸濁している固形物に作用し、それらを破砕したり引き裂いたりする。最終粒子サイズは、研磨媒体の大きさ、スラリーが研磨室内で費やす時間、ミルを通過する回数、及び攪拌速度に依存する。
【0076】
どのような種類のホワイトレンティルを使用するか(完全なものか破砕されたものか)にかかわらず、湿式粉砕は重要なステップである。細かく研磨されたホワイトレンティル粉は平均粒子サイズが小さくなるが、浸漬及び調理プロセスにおけるレンティルタンパク質の水和により粒子サイズが大きくなる。
【0077】
ステップ(d)における湿式粉砕は、コロイドミルや円錐ミル、高剪断分散機を含むがこれらに限定されない、当該技術分野で知られている任意の適切なデバイスを使用して達成されてもよい。当業者は、本開示で提供されたガイダンスに従って、それに当該技術分野で知られ、使用されているものを組み合わせることで、適切な湿式ミル及びその使用条件を選択して滑らかなレンティルスラリーを得ることができるであろう。
【0078】
一実施形態では、ホワイトレンティルスラリーは、コロイドミルで湿式粉砕される。コロイドミルは、液体に高いレベルの液圧剪断を加えることにより、懸濁液中の固体粒子のサイズを小さくするデバイスである。
【0079】
ステップ(e)において、ホワイトレンティルスラリーは、アミラーゼ酵素とともにインキュベートされる前又は後に、好ましくは後に、10~150ミクロンのメンブレンでろ過される。
【0080】
ろ過により、最終製品の口当たりが改善される。ろ過は、スラリーを加圧下で10μm~150μmの細孔径の任意のろ過デバイスを通過させることによって達成することができる。適切なろ過デバイスとして、ポーラスメンブレン、ストレーナ、フィルタープレスが挙げられる。
【0081】
ろ過メンブレンのサイズが重要である。10~150ミクロンのメンブレンによるろ過は、官能検査で知覚されやすく、ザラザラ感を引き起こすため好ましくないと考えられている比較的大きな粒子を除去する(https://onlinelibrary.wiley.com/doi/abs/10.1111/j.1745-4603.1995.tb00804.x。
【0082】
より細い孔径を有するろ過メンブレンを使用すると、より滑らかな製品が得られるが、製品の歩留まりに悪影響を及ぼす可能性がある。
【0083】
ろ過前の湿式粉砕は、飲料中の粒子の平均サイズを小さくするとともに、狭い粒度分布を確保する。これらの特性は、本発明の飲料中に存在するホワイトレンティルタンパク質粒子の重要な特徴であり、その独特な熱安定性に寄与する。
【0084】
一実施形態では、ホワイトレンティルスラリーは、100μmのポーラスメンブレンを通過する。典型的には、工業規模のフィルタープレス設備がこの目的で使用される。
【0085】
湿式粉砕スラリーはまた、制御されたpH及び温度条件下でアミラーゼ酵素で処理される。アミラーゼはろ過前に添加されてもろ過後に添加されてもよいが、前者のほうが好ましい。ろ過前に添加される場合には、アミラーゼはステップ(d)で作られた湿式粉砕スラリーに添加される。
【0086】
アミラーゼは、レンティルスラリー中に存在する澱粉をデキストリンやデキストロースなどの誘導体に加水分解するために使用される。このステップにより、製品の粘度とザラザラ感も低下する。このステップのもう1つの目的は、デキストロースを、プロセスの後半で使用される細菌培養物のための発酵基質として使用することを可能にすることである。ヨーグルト製造用細菌培養物は、ミルク中に存在する乳糖をグルコースに分解した後、そのグルコースを利用して増殖し、それと同時に酸及び風味化合物を生成する。この澱粉加水分解ステップは、発酵培養物のための基質として炭水化物を追加的に補充する必要を回避することで、製品成分ラベルをよりきれいにするのに役立つ。
【0087】
一実施形態では、澱粉を分解するためのアミラーゼは、α-アミラーゼ、β-アミラーゼ、及びアミログルコシダーゼ(AMG)からなる群より選択される。
【0088】
異なる商用グレードのアミラーゼ酵素は、最適な活性を得るために異なる最適なpHと温度の組み合わせを有する。例えば、AMG1100は、50~70℃の最適温度、4.5~7.0の最適pHで澱粉成分を分解するために使用され得る。
【0089】
一実施形態では、ステップ(e)において、アミラーゼ酵素を約0.01w/v%~0.5w/v%、好ましくは0.1w/v%添加する。一実施形態では、アミラーゼ酵素はAMG1100である。一実施形態では、スラリーは約65℃で加熱される。
【0090】
酵素処理に要する実際の時間は、添加される酵素の量、スラリー中の澱粉含有量、温度、pHによって異なる。当業者は、本明細書で提供された本開示に基づいて、それに当該技術分野で知られ、使用されているものを組み合わせることで、pH及び/又は温度を如何に変化させて最適な活性を得るか、並びに非最適な条件を如何に補償するかを理解することができるであろう。
【0091】
一実施形態では、澱粉を十分に分解するために、pHは調整されず、反応時間は延長される。
【0092】
一実施形態では、アミラーゼ酵素は、乾燥ベースで測定されたスラリーの澱粉含有量が5重量%未満になるまで、湿式粉砕されたホワイトレンティルスラリーとともにインキュベートされる。
【0093】
当業者は、グルコースオキシダーゼ/ペルオキシダーゼ試薬を用いてグルコース濃度の変化を判定するなど、スラリーの澱粉含有量を測定する方法を理解することができるであろう。純粋な澱粉の判定のための標準的な分析アッセイは、AOAC996.11及び2014.10で定義されている。
【0094】
一実施形態では、0.1w/v%のAMG1100は15%(全固形分)のホワイトレンティルスラリーに添加され、混合物は65℃で5時間加熱される。
【0095】
澱粉の大部分が分解されるか、スラリーが所望の粘度に達すると、アミラーゼを加熱により不活性化させる。
【0096】
一実施形態では、ホワイトレンティルスラリーは、アミラーゼ酵素で処理される前にろ過される。別の実施形態では、ホワイトレンティルスラリーは、アミラーゼ酵素で処理された後にろ過される。後者の選択が好ましい。
【0097】
ステップ(e)で行われるろ過と澱粉加水分解に続いて、ホワイトレンティルスラリーを食用油で均質化してもよい。このオプショナルなステップは、ステップ(f)におけるアミラーゼ酵素の不活性化の前又は後に行われ得る。
【0098】
任意の配合飲料の不可欠な主要栄養素は、良好な栄養品質を有するタンパク質、炭水化物及び脂質である。乾燥のホワイトレンティルは約20~25重量%のタンパク質を含有する。脂質は2重量%しかなく、残りの大部分は炭水化物で構成されている。そのため、10重量%のホワイトレンティルスラリーには、約0.2%の脂質しか含まれていない。その脂質は、他のソースから補充することで増加され得る。
【0099】
ホワイトレンティル飲料に必要な脂肪酸プロフィールに応じて、任意の食用油(植物油、魚油、動物油を含む)をこの目的に使用し得る。通常、食用油は植物油である。一実施形態では、油は、大豆油、キャノーラ油、ココナッツ油、ヒマワリ油、落花生油、オリーブ油、サフラワー油、菜種油、コーン/トウモロコシ油、綿実油、又はそれらの混合物からなる群より選択される。
【0100】
添加する油の量は、最終製品が低脂肪か全脂肪かという意図される分類によって異なる。一実施形態では、ステップ(f)の前又は後に、食用油を約0.1w/v%~約4w/v%、好ましくは約0.1w/v%~約3w/v%添加する。
【0101】
含油植物ベース飲料の均質化は、適切な乳化剤の存在下で、安定な水中油型エマルションを生成する。
【0102】
天然形態の乳タンパク質及び卵タンパク質は、様々な液体及び半固体の用途において優れた乳化剤として作用する。通常、植物性タンパク質は同じ特性を持っていない。
【0103】
しかしながら、本発明において、ホワイトレンティルタンパク質は、飲料の油分を乳化して、目に見える相分離のない安定なエマルジョンを形成することに成功したことが見出された。
【0104】
一実施形態では、均質化は、200~300Paの圧力下で行われる。一実施形態では、ホワイトレンティルスラリーは、250Paで均質化されてエマルジョンを形成する。
【0105】
あるいは、プロセスは、油の添加や均質化ステップを省略してもよい。
【0106】
ステップ(e)に続いて、ホワイトレンティルスラリーを加熱してアミラーゼ酵素を不活性化させる。一実施形態では、ホワイトレンティルスラリーは、約3~5分間かけて約90~95℃に加熱される。
【0107】
実際には、酵素不活性化のための最終混合物の均質化とその後の熱処理は、均質化器に接続された連続HTST式熱交換器において、油が添加された状態で同時に行われる。
【0108】
その後、上記のプロセスによって形成されたホワイトレンティル飲料を乳酸菌培養物で発酵させて、飲用ヨーグルトやプロバイオティックドリンク、ケフィアなどの発酵ホワイトレンティル飲料を提供する。
【0109】
得られる発酵飲料の性状は、発酵プロセスで使用される特定の乳酸菌培養物に依存する。一実施形態では、乳酸菌は、ラクトコッカス・ラクチス、ラクトバシラス属菌、ストレプトコッカス・サーモフィルス、ビフィドバクテリウム属菌、及びロイコノストック属菌からなる群より選択される。
【0110】
一実施形態では、ラクトバシラス・ブルガリカス及びストレプトコッカス・サーモフィルスバクテリアの選択された株を含む商業用ヨーグルト培養物をホワイトレンティル飲料に接種する。
【0111】
ヨーグルト培養物は、炭水化物(ミルクの場合には乳糖)を分解して、ヨーグルトの独特な風味プロフィールの原因となる風味化合物を生成する。本明細書に記載されている本発明のプロセスでは、同タイプの風味を製造することが望ましい。これらの風味は、残った豆臭さを隠すのに役立ち、新たな混合風味プロフィールに寄与する。この新たな風味プロフィールは、未発酵ホワイトレンティル飲料(実施例5)と比較して、より優れた官能特性を有する。例えばケフィア培養物、チーズ培養物、プロバイオティクスなどの他の種類の培養物を選択してそれらと組み合わせることにより、より斬新な風味プロフィールを生成することができる。
【0112】
特定の菌株の選択は、最終製品の意図される特徴に依存する。
【0113】
接種が行われたホワイトレンティル飲料を、所望の酸性度レベル(約4.30~4.60のpH)に達するまで乳酸菌培養物とともにインキュベートして、本発明の発酵ホワイトレンティル飲料を提供する。
【0114】
当業者は、本発明の発酵ホワイトレンティル飲料を製造するために、使用される培養物の量、及びその特定の培養物をインキュベートするのに最適な温度を知っているであろう。また、当業者は、好ましくない味のプロフィールを発生させることなく所望のpH値を達成するために、どの程度の期間インキュベートすればよいのかも知っているであろう。
【0115】
発酵ホワイトレンティル飲料を冷蔵保存しようとする場合には、それを今包装して培養物のさらなる成長を阻止するために4℃以下に冷却してもよい。環境に対して安定な製品が必要である場合には、室温に冷却し、無菌包装のために設計された専門設備を使用して容器に無菌包装する前に、本発明の発酵ホワイトレンティル飲料をさらに加熱処理して、コマーシャルな滅菌を達成する。
【0116】
例えば、本発明の発酵ホワイトレンティル飲料は、HTST殺菌装置中で74℃で20秒間加熱され得る。本発明の発酵ホワイトレンティル飲料は、比較可能な低pH植物ベース飲料とは異なり、この種の加熱処理の悪影響を受けない。
【0117】
本発明の発酵ホワイトレンティル飲料
本発明のプロセスは、独特な性質を有する発酵ホワイトレンティル飲料を製造する。特に、加熱しても当該飲料は非常に安定している。
【0118】
植物ベースのミルク代替品は、脂肪球、原料由来の固体粒子、タンパク質、澱粉粒などの、水性液相(分散媒)中に懸濁している大きな分散粒子から形成されるコロイド系である。植物ベースのミルク代替品の安定性は、分散相中の粒子のサイズに依存する。サイズの大きい粒子ほど沈殿物の傾向が強く、分散相の分散媒からの分離につながる。タンパク質の凝集は、それらの粒子サイズを大きくして、それらの分散媒からの分離をもたらす。
【0119】
本発明の発酵ホワイトレンティル飲料は、他の発酵植物ベース製品や発酵乳製品に比べてタンパク質の凝集傾向が小さいことが特徴である。
【0120】
タンパク質-水ネットワークが安定剤で安定化されていない場合、ヨーグルトなどの発酵乳製品は保存中にシネレシスを経る傾向がある。安定剤なしでは、冷凍条件下でも乳タンパク質は等電点(pH4.5)付近で凝集して凝固塊を形成する傾向がある。
【0121】
ホワイトレンティル飲料の乳酸発酵は、凝固タンパク質を生成しない。したがって、この製品は、他の発酵植物ベースミルク代替品及び発酵乳製品と同様に、ペクチン及び/又はジェランガムのようなハイドロコロイド剤で安定化する必要がない。
【0122】
さらに珍しいことに、本発明の発酵ホワイトレンティル飲料は、凝結しない保存安定性製品を製造するために発酵培養物及び他の望ましくない微生物を破壊するのに必要なタイプの加熱処理に耐え得る。実施例6に示すように、このような特徴は、他の品種のレンティルを用いて調製する場合でも、類似の発酵植物ベース飲料には見られない。
【0123】
理論的制約なしに、本発明の飲料の珍しい熱安定性は、(a)ホワイトレンティルタンパク質の固有の特徴(例えば、それらの電荷密度分布及び表面疎水性)と、(b)本発明のプロセスにおけるレンティル粒子構造の変更、特に、調理されたホワイトレンティル材料の湿式粉砕及びろ過によって達成される平均粒子サイズの減少及び粒度分布の狭小化との組み合わせに起因すると考えられる。US2016/0192682に記載されているような他の発酵ホワイトレンティル飲料は、これらの特性を有していないため、高温で不安定である。
【0124】
本発明の発酵ホワイトレンティル飲料によって示される低pHでの高い熱安定性は、ハイドロコロイド安定剤を必要とせずに、常温で長期間保存できることを意味する。
【0125】
他の発酵レンティルミルク代替品を含む比較可能な製品には、一般的に消費者にとって望ましくないものと考えられている澱粉、ペクチン、カラギーナン、グアーガム、キサンタンガム等のハイドロコロイド安定剤が含まれなければならない。
【0126】
独特の安定性に加えて、本発明の発酵ホワイトレンティル飲料は、比較可能な製品と比較して粘度が低下し(実施例6参照)、非常にマイルドな豆の風味、マイルドな甘味、滑らかな食感を有する。その風味プロフィールは、ヨーグルト、カルチャードミルク、飲用ヨーグルトなどの発酵乳製品の風味プロフィールに非常に似ている。
【0127】
もう一つの利点は、本発明の発酵ホワイトレンティル飲料のタンパク質含有量が比較的高い(約2.5重量%まで)ことである。豆乳やアーモンドミルクなどの市販の植物ベース飲料は、通常、約0.8~1.0重量%のタンパク質を含有する。
【0128】
さらなる利点は、本発明の発酵ホワイトレンティル飲料の色である。実施例5に示すように、この製品は、比較可能な発酵植物ベース飲料よりも白くなり、消費者にとってより魅力的である。
【0129】
一態様において、本発明は、約5重量%~約15重量%の炭水化物と、約2重量%~約4.5重量%の食用油と、約1.0重量%~約2.5重量%のホワイトレンティルタンパク質とを含む、約4.3~約4.6のpHを有する発酵ホワイトレンティル飲料を提供する。
【0130】
一実施形態では、発酵ホワイトレンティル飲料は、約7重量%~約10重量%の炭水化物を含む。一実施形態では、発酵ホワイトレンティル飲料は、約2重量%~約3.5重量%の食用油を含む。
【0131】
一実施形態では、発酵飲料は、約1.2重量%~約2.0重量%のホワイトレンティルタンパク質を含む。一実施形態では、発酵飲料は、約1.5重量%~約1.8重量%、約1.5重量%~約1.9重量%、又は約1.5重量%~約2.0重量%のホワイトレンティルタンパク質を含む。
【0132】
一実施形態では、食用油が植物油である。
【0133】
一実施形態では、ホワイトレンティルタンパク質は実質的に非凝集である。
【0134】
一実施形態では、平均粒子サイズは100μm未満である。
【0135】
一実施形態では、発酵ホワイトレンティル飲料は、乳製品を含まない。
【0136】
一実施形態では、発酵ホワイトレンティル飲料は、約3~5分間かけて約90~95℃に加熱された場合に安定である。
【0137】
一実施形態では、約3~5分間かけて約90~95℃に加熱された場合に、発酵ホワイトレンティル飲料のタンパク質は実質的に凝集しない。
【0138】
一実施形態では、発酵ホワイトレンティル飲料は、常温で保存される場合に少なくとも6ヶ月間安定である。一実施形態では、発酵飲料は、常温で保存される場合に少なくとも9ヶ月間安定である。一実施形態では、発酵飲料は、常温で保存される場合に少なくとも12ヶ月間安定である。
【0139】
一実施形態では、発酵飲料は、寒天、グアーガム、微結晶セルロース、変性澱粉などの、添加される安定剤を一切含まない。
【0140】
一実施形態では、変更された味のプロフィールを有する中性pH飲料を製造するために、発酵ホワイトレンティル飲料は、食品レベルのアルカリ性薬剤の添加によりpH6.8~7.0に中和される。
【0141】
以下の実施例を参照して、本発明の様々な態様を非限定的に説明する。
【実施例
【0142】
実施例1:本発明の発酵ホワイトレンティル飲料の調製
脱皮したブラックレンティル/グラム(450g)を2リットルの沸騰に近い水に1時間浸漬した後、加圧下で121℃において15分間調理した。その後、調理されたレンティルをフードプロセッサー内で破砕した。水を添加することによって固形分を15重量%に調整した後、レンティルペーストをコロイドミルを通過させて滑らかなスラリーとした。その後、スラリーを100ミクロンのポリプロピレン(PP)のクロスフィルターでろ過した。ろ過されたスラリーは、約8.5重量%の固形物及び約1.9重量%のタンパク質を含んでいた。AMG1100(0.1w/v%)を65℃で加え、5時間インキュベートした。ヒマワリ油(3w/v%)を加え、混合物を250/50バールで均質化した。最後に、均質化されたスラリーを90~95℃で3~5分間加熱して酵素を不活性化させ、低温殺菌した。
【0143】
均質化された混合物を、ラクトバシラス・ブルガリカス及びストレプトコッカス・サーモフィルスバクテリアの選択された株を含む商業用ヨーグルト培養物とともに42℃で6時間インキュベートして、発酵ホワイトレンティル飲料を得た。飲料のpHは4.30であった。
【0144】
本発明の発酵ホワイトレンティル飲料は、乳製品ベースの飲用ヨーグルトの植物ベース代替品を含む。
【0145】
本発明の発酵ホワイトレンティル飲料の一部を74℃で20秒間加熱し、冷却した後、滅菌容器に無菌充填することにより、保存安定性を有する乳製品ベースの飲用ヨーグルトの植物ベース代替品を提供した。
【0146】
実施例2:前処理ステップの発酵ホワイトレンティル飲料への影響
訓練されたパネリストにより、官能検査を使用して、(a)完全なホワイトレンティルの沸騰に近い温度での浸漬、及び(b)高圧・高温処理の、未発酵ホワイトレンティル組成物の風味と味のプロフィールの調節への影響を評価した。
【0147】
実施例1で説明したように、本発明のプロセスのステップ(a)~(g)に従ってホワイトレンティル飲料(サンプルA)を調製した。
【0148】
サンプルBについて、室温で水を使用して浸漬を行った以外は、同様のプロセスで、類似の2つの製品(サンプルBとサンプルC)を調製した。サンプルCについて、浸漬水は室温であり、浸漬されたビーンはステップ(b)の高温・高圧調理プロセスを受けなかった。使用されたプロセスを次の表1にまとめる。
【0149】
【表1】
【0150】
官能評価は、パネリストにサンプルの試飲と、豆臭さ、青臭さ/生の風味及び/又は苦味への判定とを依頼することにより行われた。パネリストは、最弱のプロフィールである1から最強のプロフィールである5までのスケールでサンプルを採点するよう求められた。風味の強さは弱から強まで1~5で表される。結果を次の表2に示す。
【0151】
【表2】
【0152】
上記の結果から、熱水浸漬及びそれに続いた加圧調理は、ホワイトレンティル飲料によく見られる望ましくない風味と味の属性を発酵前に低減するのに役立ったことが明らかになった。本発明のプロセスにより調製されたサンプルAは、豆臭さが最も弱いことが見出された。サンプルCは、多くの植物ベース飲料に固有の典型的な豆臭さ、青臭さ、及び苦味を保持していた。サンプルBは中レベルの豆臭さを有することが見出された。
【0153】
豆臭さと青臭さは、レンティル中のリポキシゲナーゼ及びヒドロペルオキシドリアーゼによる脂質の酸化によって生成されたアルデヒド、ケトン、フランなどの揮発性化合物に由来する。この酸化は、ホワイトレンティルが水和された後に破砕される時に発生する。本発明のプロセスは、浸漬及び加圧加熱を使用してプロセスの開始時にリポキシゲナーゼ及びヒドロペルオキシドリアーゼを不活性化させることによって、予備発酵ホワイトレンティル組成物中の豆臭さ及び青臭さを低減する。当業者が想定できるように、このような豆臭さ/青臭さの低減は、プロセスの残りのステップを実施して製造された発酵ホワイトレンティル飲食品においても観察されることができる。
【0154】
実施例3:浸漬水の廃棄の発酵ホワイトレンティル飲料への影響
圧力調理プロセスにおいて浸漬水を廃棄して新鮮な水を補充することによって、最終製品中の望ましくない豆臭さと青臭さを低減するか否かを判定するために、2セットのサンプルを調製した。実施例1で説明したように、本発明のプロセスのステップ(a)~(g)に従ってサンプルAを調製した(浸漬水を廃棄して、ホワイトレンティルと水との比率が1:5~1:1になるように新鮮な水を加えることを含む)。ホワイトレンティルと水との比率を1:4にするのに必要な浸漬水の量のみを廃棄した以外は類似の方法でサンプルBを調製した。
【0155】
使用された調製プロセスを次の表3にまとめる。
【0156】
【表3】
【0157】
官能評価プロトコルは、実施例2で説明したものと同じであり、次の表4にまとめられる。
【0158】
【表4】
【0159】
表4に示した結果から、浸漬水の置き換えは豆臭さに影響を与えなかったが、最終飲料の青臭さと苦味の低減に寄与したことが明らかになった。理論的制約なしに、これらの望ましくない風味は、ホワイトレンティル中のアルデヒド、ケトン、フランなどの浸漬水に完全に溶解している特定の水溶性異臭化合物の存在によるものであると考えられている。
【0160】
当業者が想定できるように、このような青臭さと苦味の低減は、プロセスの残りのステップを実施して製造された発酵ホワイトレンティル飲料においても観察されることができる。
【0161】
実施例4:発酵の影響
ホワイトレンティル飲料の全体的な官能プロフィールへの発酵の影響を判定するために、実施例3からのサンプルAを、ラクトバシラス・ブルガリカス及びストレプトコッカス・サーモフィルスの株を含む商業用ヨーグルト培養物(YC-380、CheHansen、Denmark)の種菌0.024%(w/v)とともに発酵させた。
【0162】
発酵は、飲料を45℃で8時間インキュベートすることによって行われた。2時間ごとに、2h、4h、6h、8hの時間間隔でサンプルを採取した。
【0163】
各時点でpHを測定した。その結果を表5に示す。
【0164】
その後、発酵ホワイトレンティル飲料を、豆臭さ、青臭さ、及び苦味を含む幅広い官能検査のために評価パネリストに提供した。異臭の強さを1から5のスケールで弱から強まで評価した。評価される所望の特性、すなわち全体的な香りと酸味についても、測定スケールは1~5であったが、好み/見込みの昇順であった。結果を表5に示す。
【0165】
【表5】
【0166】
上記の結果から、全体的な香りのプロファイルは発酵により改善されたことが明らかになった。発酵中において、pHと酸味が増加し、甘味が低下した。これらは、望ましい変化であった。6時間発酵したサンプルは最も許容できることが見出された。これらのサンプルでは、pHは4.56に達し、酸性度と甘味のバランスが比較的良好であった。
【0167】
豆臭さと苦味も発酵中において少なくなり、両方とも6時間の発酵の後に非常にマイルドに保たれていた。6時間を超えた場合には、過度な培養活性は、好ましくない味のプロフィールをもたらした。
【0168】
実施例5:発酵植物ベース飲料の凝固
本発明の発酵ホワイトレンティル食品は、加熱しても目に見えるタンパク質の凝固/カードの形成が発生しないことが特徴である。理論的制約なしに、この有利な特性はホワイトレンティルに存在する特定のタンパク質の機能であると考えられている。
【0169】
この実験において、緑豆、白エンドウ豆、及びひよこ豆をホワイトレンティル成分に置き換えて3種類の比較発酵植物ベース飲料を作るために、本発明の基本的なプロセスを用いて様々なレンティル/ビーンから発酵飲料を作った。発酵プロセスにおいて、これらの飲料の凝固傾向が観察された。
【0170】
澱粉スターラーセル(ST24-2D/2V/2V-30)を備えた回転式AntonPaarPhysicaMCR301応力制御型レオメーター(AntonPaar、Graz、Austria)において、貯蔵弾性率と損失弾性率(G’&G’’の値)で表されるゲル強度を測定した。
【0171】
実施例2で調製されたサンプルAであるホワイトレンティル飲料20mlと、ヨーグルト培養物YC-380(ChrHansen、Denmark)を0.002%(w/v)で予備混合し、澱粉セルカップにロードした。
【0172】
カードの形成を監視するために、温度を45℃に維持したまま、周波数1Hz、歪み1%で時間掃引測定を行った。G’及びG’’の値を、6時間にわたって2分ごとに記録した。実験終了時にすべてのサンプルのpHを測定した。
【0173】
結果を図1図2に示す。図1は、検査期間における発展しているG’値を示しており、G’値は、凝固物の形成の程度を示すサンプルのゲル強度を直接表す。図2は、実験終了時のサンプルの絶対G’値を示す。
【0174】
すべてのサンプルの時間0における初期値がゼロに近かったことが観察され、未発酵飲料の加工による凝固がなかったことが示された。発酵が進み、培養活性によりpHが低下し始めるにつれて、2時間以降、ひよこ豆のサンプルに独特のカードの形成が観察された。緑豆とエンドウ豆のサンプルについて、カードの形成はほぼ3時間以降、始まった。6時間後、ひよこ豆のサンプルについて最大ゲル強度(最終G’212.1Pa、図2)を記録し、次いでエンドウ豆(G’134.7Pa)と緑豆(G’50.4Pa)について記録した。発酵ホワイトレンティルのサンプルは、最も弱く、おそらく無視できるゲル強度を有し、最終的なG’値がわずか6.3Paであったことから、発酵培養物の酸性度(pH~4.5)の顕著な発展にもかかわらず、凝固物が存在しないことが明らかになった。
【0175】
発酵前と発酵後の粒子サイズの変化を調べることで、ホワイトレンティル以外のサンプルにおけるカードの形成も発酵プロセスにおいて確認した。
【0176】
Mastersizer2000(MalvernInstrumentsLtd.,Worcestershire、UK)装置において発酵サンプルと未発酵サンプルの粒度分布を測定した。各サンプルを蒸留水で5倍に希釈し、均一に攪拌した。希釈されたサンプルを数滴、循環蒸留水(2000rpm、10-12%遮蔽)に加え、液滴サイズを測定した。1.53の屈折率を基準とした。1サンプルにつき3回測定した。図3a~3dは粒度分布、さらに重要なことに、このプロセスにおける平均粒子サイズのシフトを示す。
【0177】
図3a~3dは、発酵ホワイトレンティル飲料を除くすべてのサンプルにおいて、分布ピークが右にシフトしたことを明確に示しており、サンプルの平均粒子サイズが高くなったことを意味する。これは、タンパク質の凝集が、それらのサンプルにおけるカードの形成の原因となったことを示す。ホワイトレンティルのサンプルは発酵前後の分布パターンや平均粒子サイズに有意差がなかった。この知見により、本発明の発酵ホワイトレンティル飲料中に凝固物が存在しないことが再確認された。
【0178】
【表6】
【0179】
図4は、発酵プロセス前後のサンプルの写真を示す。
【0180】
この写真のホワイトレンティルと緑豆のサンプルでは、目に見えるカードの形成は観察されなかった。しかし、以前に提案されたレオロジー研究により、発酵緑豆サンプル中のカードの形成が確認された。
【0181】
エンドウ豆とひよこ豆の未発酵サンプルと発酵サンプルの両方で強いカード形成が見られた。未発酵サンプル中のカードの形成は、加圧調理プロセスにおけるタンパク質の熱凝固によるものであり得る。
【0182】
図4から観察できるように、発酵ホワイトレンティル飲料もサンプルの中で最も白い。比色原理(MinoltaCR-400、MinoltaCameraCo.、Osaka、Japan)を用いて、各発酵飲料と未発酵飲料の反射色をクロマメーターにおいて測定した。対照として全乳(フル脂肪牛乳)を使用した。
【0183】
サンプルを厚さ2cmの透明プラスチックシャーレにロードした。サンプルがロードされたシャーレを測色計のモニターに配置して、反射を測定して記録した。各サンプルは異なる位置で3回測定された。
【0184】
CIELABカラーシステム(L*、a*、b*)を使用して、各サンプルの色を表5に定義して表示する。CIELAB色空間(CIEL*a*b*とも呼ばれる)は、1976年に国際照明委員会(CIE)によって定義された色空間である。このシステムは、色を3つの値で表現する。L*は黒(0)から白(100)までの明るさを表し、a*は緑(-)から赤(+)を表し、b*は青(-)から黄(+)を表す。CIELABは、これらの値の同じ量の数値変化が、ほぼ同じ量の視覚的に知覚される変化に対応するように設計された。
【0185】
これらのサンプルのそれぞれの色パラメータの機器による測定値を次の表7に示す。
【0186】
【表7】
【0187】
表7に示すように、L*の値で測定されたすべてのサンプルの白色度は、狭い範囲内で互いに近かった。牛乳が最も白いことが見出されたが、エンドウ豆のサンプルは両方とも最も白くなかった。残りのサンプルは互いに近かったが、牛乳よりもはるかに白くなかった。ネガティブなa*の値は緑がかった色調を示しており、それによると、ホワイトレンティルとエンドウ豆のサンプルは最も緑がなかったのに対し、緑豆は最も緑であった。
【0188】
最も重要な発見は黄色度を表すb*の値であった。ホワイトレンティルのサンプルは、牛乳を含む他のすべてのサンプルに比べて黄色味が著しく少ないことが見出された。エンドウ豆、ひよこ豆、緑豆のサンプルの黄色度は、カロテンの存在による黄色度で知られている牛乳よりもはるかに高かった。
【0189】
総じて、本発明の発酵ホワイトレンティル飲料は、白色度が良好であり、緑色と黄色の色調も少ないので、外観がミルクに近くなると結論することができる。
【0190】
実施例6:本発明の発酵ホワイトレンティル飲料の熱安定性
実施例1により、発酵ホワイトレンティル飲料のサンプルを調製した。その後、サンプルを95℃に加熱し、その温度で10分間保持した。
【0191】
1分、5分、10分間間隔でサンプルを取り出した。加熱されたサンプルを4℃で一晩保存した。対照として、実施例5で調製された発酵緑豆飲料も検査した。実施例5に示したように、エンドウ豆とひよこ豆の飲料は発酵プロセス自体において非常に強いカードを形成したので、シネレシスがさらなる加熱処理において顕著であった。したがって、本研究では、エンドウ豆とひよこ豆の飲料を使用しなかった。
【0192】
実施例5では、粒度分布の変化とピークシフト現象は、タンパク質の凝集によるカード形成作用について良好な知見を提供したことが示された。したがって、これらのパラメータは、ゲル強度の増加を示すレオロジー研究の良好なプロキシとして機能すると考えられるようになった。そこで、この実験では、熱処理前後の発酵飲料サンプルの粒度分布のみを検討した。測定プロトコルは、上述した実施例5で説明したものと同じであった。
【0193】
図5は、異なる時間の95℃での加熱処理による発酵ホワイトレンティル飲料の粒度分布の変化を示す。
【0194】
表8に示すように、ホワイトレンティル飲料の平均粒子サイズ(表面ベース、体積ベース)は加熱プロセスによりわずかに増加した。より長い時間保持すると、平均サイズがわずかに大きくなり、タンパク質の凝集レベルがわずかに高くなったことが示された。
【0195】
全体的な粒度分布を示した図5もこの発見と一致しており、右側へのわずかなシフトが注目された。
【0196】
【表8】
【0197】
しかし、加熱された発酵緑豆飲料のサンプル(表7及び図6)は、平均粒子サイズが大幅に増加し、タンパク質の凝集、カードの形成、及びそれに伴うエマルション不安定性のより高いレベルが示された。
【0198】
【表9】
【0199】
異なる時間の95℃での熱処理に続いて、図6における粒度分布グラフも右に大幅にシフトした。
【0200】
この場合におけるエマルジョン不安定性も、加熱された発酵緑豆飲料(図7)が一晩保存された後に水の分離(シネレシス)が観察された図7及び図8における写真により確認された。加熱された発酵ホワイトレンティル飲料の場合(図8)に、このようなシネレシスは無視できることが見出された。
【0201】
これらの結果から、発酵ホワイトレンティル飲料のより良い熱安定性及びより低いシネレシス特性が確認され、市場で非常に人気のある飲用ヨーグルトと同様に、保存安定性のある植物ベース発酵飲料として適していることが示された。
【0202】
粒度分布測定に加えて、上記したものと同一セットのサンプルの粘度変化も熱処理前後に測定した。そのために、標準的なペルチェ共軸円筒型システム(半径15mmのカップと半径14mmのローターを組み合わせたもの)を備えたAR-G2磁気軸受レオメーター(TAInstruments、Crawley、WestSussex、UK)を使用した。測定を15℃で行い、50s-1の一定剪断速度を適用した。実験を3分間続けている間、10秒ごとに粘度を記録した。各サンプルを3回ずつ測定した後、平均値を図9図10に示す。
【0203】
図9は、熱処理及びそれに続いた一晩保存による発酵ホワイトレンティル飲料の粘度変化を示す。加熱処理及び一定時間の保持、並びにそれらに続いた一晩保存の後、ホワイトレンティル飲料のサンプルの粘度は、加熱されなかったサンプルと比較してほとんど変化せず(図9)、近ニュートン流体性質及び安定したエマルションが示された。
【0204】
エマルション安定性は、所望の特性であり、固体(ビーン/レンティル由来)と液体(水)が混合された植物ベース飲料では実現が困難である。液体最終製品の安定性は、成分の固有の性質(例えば、使用される植物性タンパク質の乳化特性)に大きく依存する。不安定又は不適切なエマルションシステムは、保管中に相分離又はシネレシスを引き起こす可能性があり、いかなる犠牲を払っても避けるべきである。発酵ホワイトレンティル飲料のサンプルの粘度には有意な変化はなく、極端な加熱処理によるエマルション安定性の変化がないことが示された。これは、図7に示すように、視覚的な相分離がないことによっても裏付けられた。
【0205】
発酵ホワイトレンティル飲料に相分離がないことは、粘度変化が顕著な発酵緑豆飲料(図10)とは対照的である。理論的制約なしに、タンパク質の水和は、遊離水を結合し、所望の安定性を与えるのに十分ではないと考えられている。このことは、図9からも明らかなように、明確な相分離につながった。発酵緑豆飲料では、タンパク質が発酵プロセスにおいて既に不安定化し、軽い凝固物を形成した(実施例4で説明したとおりである)。このタンパク質の天然状態の破壊により、緑豆タンパク質の乳化特性と安定化特性が失われる可能性がある。
図1
図2
図3a
図3b
図3c
図3d
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
【国際調査報告】