(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-18
(54)【発明の名称】ポリオレフィン製造中の吸収媒体中のアルファ-オレフィン凝縮を制御する方法
(51)【国際特許分類】
C08F 2/00 20060101AFI20231211BHJP
B01D 53/14 20060101ALI20231211BHJP
【FI】
C08F2/00
B01D53/14 100
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023526066
(86)(22)【出願日】2021-11-02
(85)【翻訳文提出日】2023-05-12
(86)【国際出願番号】 US2021057647
(87)【国際公開番号】W WO2022094442
(87)【国際公開日】2022-05-05
(32)【優先日】2020-11-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】502141050
【氏名又は名称】ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【氏名又は名称】大森 規雄
(72)【発明者】
【氏名】ギャンブレル、ティモシー ダブリュ.
(72)【発明者】
【氏名】ヘバート、ジョン ディ.
【テーマコード(参考)】
4D020
4J011
【Fターム(参考)】
4D020AA10
4D020BA01
4D020BA02
4D020BA06
4D020BA08
4D020BA10
4D020BB01
4D020CA05
4D020CD03
4D020DA03
4D020DB03
4D020DB20
4J011AB02
4J011AB04
4J011AC03
4J011DA04
4J011DA06
4J011DB13
4J011DB30
(57)【要約】
方法であって、ポリマー又はインターポリマー、溶媒及び塩酸を含む生成物流を反応器から吸収器に排出することと、吸収器内で生成物流から塩酸を吸収することと、実質的にすべての塩酸を含まない生成物流を第1の熱交換器に排出することであって、第1の熱交換器は、吸収器からの塩酸を含まない生成物流を凝縮するように動作可能である、ことと、第1の熱交換器から凝縮物を受け取るように動作可能である収集ドラムに、第1の熱交換器から凝縮物を排出することと、収集ドラム内の凝縮物をスリップ流と第2の流れとに分割することと、スリップ流を圧縮器に排出することであって、圧縮器は、スリップ流を吸収器に再循環させる前にスリップ流を加圧するように動作可能である、ことと、を含む、方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
システムであって、
吸収器と流体連通する反応器であって、前記反応器は、モノマー、コモノマー、溶媒及び触媒を含む反応流を受け取り、前記モノマー及びコモノマーをポリマー又はインターポリマーに変換し、前記吸収器は、前記反応器から受け取った生成物流から塩酸を吸収するように動作可能である吸収床を含む、反応器と、
前記吸収器の下流に配置され、前記吸収器と流体連通する第1の熱交換器であって、前記第1の熱交換器は、前記吸収器からのガス状出力を凝縮するように動作可能である、第1の熱交換器と、
前記第1の熱交換器から凝縮物を受け取るように動作可能である収集ドラムであって、前記収集ドラム内の前記凝縮物は、スリップ流と第2の流れとに分割される、収集ドラムと、
圧縮器であって、前記圧縮器は、前記収集ドラムの下流に位置し、前記圧縮器は、前記スリップ流を前記吸収器に再循環させる前に前記スリップ流を加圧するように動作可能である、圧縮器と、
を備える、システム。
【請求項2】
前記圧縮器は、前記スリップ流を、前記吸収器の入口で受け取られる前記生成物流の温度よりも少なくとも20度高い温度まで加熱する、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記圧縮器の下流かつ前記吸収器の上流に位置する第2の熱交換器を更に備え、前記第2の熱交換器は、前記圧縮器から受け取った前記加圧されたスリップ流の温度を低下させるように動作可能である、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記収集ドラムの下流に位置する位置インジケータを更に備え、前記位置インジケータは、前記吸収器内のモノマー及び/又はコモノマーの凝縮効率を決定するように動作可能であり、前記凝縮効率は、前記凝縮物の流量によって、又はバルブ位置によって決定される、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記収集ドラムは、前記ポリマー又は前記インターポリマーを生成するために使用されるモノマー及び/又はコモノマーの凝縮を防止する際の前記吸収器の凝縮効率を示すように動作可能であり、前記効率は、前記収集ドラム内の凝縮物のカラムの高さによって決定される、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記温度は、前記吸収器で受け取られる前記生成物流の温度よりも少なくとも20~40度高い、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記システムは、前記吸収床における前記生成物流からの前記モノマー及び/又はコモノマーの凝縮を防止しながら、前記生成物流から実質的にすべての塩酸を除去するように動作可能である、請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
方法であって、
ポリマー又はインターポリマー、溶媒及び塩酸を含む生成物流を反応器から吸収器に排出することと、
前記吸収器内で前記生成物流から前記塩酸を吸収することと、
実質的にすべての塩酸を含まない前記生成物流を第1の熱交換器に排出することであって、前記第1の熱交換器は、前記吸収器からの塩酸を含まない前記生成物流を凝縮するように動作可能である、ことと、
前記第1の熱交換器から凝縮物を受け取るように動作可能である収集ドラムに、前記第1の熱交換器から凝縮物を排出することと、
前記収集ドラム内の前記凝縮物をスリップ流と第2の流れとに分割することと、
前記スリップ流を圧縮器に排出することであって、前記圧縮器は、前記スリップ流を前記吸収器に再循環させる前に前記スリップ流を加圧するように動作可能である、ことと、
を含む、方法。
【請求項9】
前記圧縮器は、前記スリップ流を、前記吸収器の入口で受け取られる前記生成物流の温度よりも少なくとも20度高い温度まで加熱する、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記圧縮器から第2の熱交換器に前記加圧されたスリップ流を排出することを更に含み、前記第2の熱交換器は、前記圧縮器の下流かつ前記吸収器の上流に配置されており、前記第2の熱交換器は、前記圧縮器から受け取った前記加圧されたスリップ流の温度を、前記吸収器の入口で受け取った前記生成物流の温度よりも少なくとも20度高い温度まで低下させるように動作可能である、請求項8に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2020年11月02日に出願された米国出願第63/108,638号の利益を主張し、その全体は参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
ポリオレフィンの製造中に吸収媒体中のα-オレフィンの凝縮を制御する方法が本明細書に開示される。
【0003】
アルファオレフィンコモノマー(例えば、1-オクテン、1-ヘキセン、1-ブテンなど)は、溶液中(又はスラリー中)でエチレンモノマーと共重合されて、ポリエチレンコポリマーを製造する。ジーグラー・ナッタ触媒を用いてこれらのモノマー及びコモノマーの重合を触媒する場合、触媒失活プロセスの副生成物として塩酸が生成される。塩酸は望ましくなく、吸収剤を含む吸収床において塩を形成する化学反応によって除去される。
【0004】
塩酸を除去するための吸収プロセスの間に、いくつかのガス状モノマー及びコモノマーは、吸収剤の細孔内で凝縮する可能性があり、したがって溶液又はスラリーから塩酸を除去する際のその有効性が低下する。この結果、吸収剤床の耐用年数が短くなり、保守停止が増加し、生産性が低下し、製品コストが増加する。
【0005】
したがって、吸収床におけるモノマー及びコモノマーの凝縮を防止するシステム及びプロセスを開発することが望ましい。
【発明の概要】
【0006】
本明細書では、システムが開示され、吸収器と流体連通する反応器であって、反応器は、モノマー、コモノマー、溶媒及び触媒を含む反応流を受け取り、モノマー及びコモノマーをポリマー又はインターポリマーに変換し、吸収器は、反応器から受け取った生成物流から塩酸を吸収するように動作可能である吸収床を含む、反応器と、吸収器の下流に配置され、吸収器と流体連通する第1の熱交換器であって、第1の熱交換器は、吸収器からのガス状出力を凝縮するように動作可能である、第1の熱交換器と、第1の熱交換器から凝縮物を受け取るように動作可能である収集ドラムであって、収集ドラム内の凝縮物は、スリップ流と第2の流れとに分割される、収集ドラムと、圧縮器であって、圧縮器は、収集ドラムの下流に位置し、圧縮器は、スリップ流を吸収器に再循環させる前にスリップ流を加圧するように動作可能である、圧縮器と、を備える。
【0007】
本明細書では、方法も開示され、ポリマー又はインターポリマー、溶媒及び塩酸を含む生成物流を反応器から吸収器に排出することと、吸収器内で生成物流から塩酸を吸収することと、実質的にすべての塩酸を含まない生成物流を第1の熱交換器に排出することであって、第1の熱交換器は、吸収器からの塩酸を含まない生成物流を凝縮するように動作可能である、ことと、第1の熱交換器から凝縮物を受け取るように動作可能である収集ドラムに、第1の熱交換器から凝縮物を排出することと、収集ドラム内の凝縮物をスリップ流と第2の流れとに分割することと、スリップ流を圧縮器に排出することであって、圧縮器は、スリップ流を吸収器に再循環させる前にスリップ流を加圧するように動作可能である、ことと、を含む。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】吸収剤中のモノマー及びコモノマーの凝縮を防止するシステムの例示的な概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
用語「エチレン系溶媒重合」は、1つ以上の溶媒及び配位触媒を利用する重合プロセスを指す。「エチレン系溶媒重合」プロセスは、フリーラジカル系、高圧及び気相重合プロセスを除外する。
【0010】
「重合反応器」という用語は、並列若しくは直列の1つ以上のループ反応器、等温反応器、パイプフロー反応器、撹拌タンク反応器、バッチ反応器、及び/又は任意の組み合わせを含む、エチレン系溶媒重合において有用な任意の反応器又は反応器の組み合わせを指す。
【0011】
用語「配位触媒」は、ジーグラー・ナッタ触媒などの付加重合において使用される触媒、拘束幾何触媒などの分子触媒、又はそれらの組み合わせを意味する。
【0012】
「ポリマー」という用語は、同じ又は異なる種類の「コモノマー」にかかわらず、モノマーを重合することによって調製されたポリマー化合物を指す。したがって、ポリマーという総称は、1種類のみのモノマーから調製されたポリマーを指すために非常に用いられるホモポリマーという用語、及び本明細書に定義されるようなインターポリマーという用語を包含する。
【0013】
「インターポリマー」という用語は、少なくとも2つの異なる種類のモノマーの重合によって調製されるポリマーを指す。インターポリマーという総称は、通常、2種類の異なるモノマーから調製されるポリマーを指すために用いられるコポリマー、及び3種類以上の異なるモノマーから調製されるポリマーを含む。「エチレン/α-オレフィンインターポリマー」という用語は、エチレンに由来する単位及びα-オレフィンコモノマーから誘導される単位を有するポリマーを意味する。
【0014】
「エチレン系ポリマー」という用語は、(重合可能モノマーの全量に基づいて)エチレンに由来する50モルパーセントを超える単位を含み、及び任意で、少なくとも1つのコモノマーを含み得るポリマーを指す。
【0015】
「エチレン/α-オレフィンインターポリマー」という用語は、(重合可能なモノマーの全量に基づいて)エチレン及び少なくとも1つのα-オレフィンに由来する50モルパーセントを超える単位を含むインターポリマーを指す。
【0016】
用語「重合副生成物」は、塩酸、触媒副生成物、酸中和剤、酸中和剤副生成物、水、水素、エチレン及びコモノマーを含むがこれらに限定されない、重合反応器内で生成される意図されたインターポリマー生成物以外の任意の化合物を意味する。
【0017】
(ポリマー又はインターポリマーを製造するための)吸収器と流体連通している反応器を含む溶液重合システムが本明細書に開示される。反応器は、溶液中でモノマー及び/又はコモノマー供給流を重合し、吸収器は、反応器から反応生成物を受け取り、塩酸(重合プロセス中に副生成物として生成される)を除去する。吸収器はまた、(塩酸の除去に使用される他の従来の吸収器と比較して)より高い温度及び圧力でスリップ流を生成し、吸収器にフィードバックされる再循環ループの一部である。より高い圧力及び温度でのスリップ流の使用は、吸収剤の細孔中でのモノマー及びコモノマーの凝縮を防止する。これは、吸収器内で使用される吸収床の耐用年数を増加させ、製造コストを低減する。
【0018】
ポリマー溶液を反応器から吸収器に排出することを含む、溶液中でポリマー又はインターポリマーを製造する方法も本明細書に開示される。吸収器は、反応中に反応器内で生成される塩酸を除去するように機能する。吸収器で生成された生成物から生じるスリップ流は、熱交換器及び圧縮器に供給されて、その温度及び圧力を上昇させる。次いで、スリップ流は、吸収剤中のガス状モノマー及びコモノマーの凝縮を防止するのに有効な流量、温度及び圧力で吸収器に再循環される。これは、反応流から塩酸を除去しながら、吸収器のライフサイクルを増加させる。
【0019】
図は、吸収器104と流体連通している反応器102、複数の熱交換器106、112、圧縮器110、液体収集ドラム108(以下、収集ドラム108)、及び液体流位置バルブインジケータ116(以下、位置インジケータ116)を含む重合システム100の例示的な概略図である。吸収器104は反応器102の下流に位置する。
【0020】
吸収器104の下流には、複数の熱交換器106、112、収集ドラム108、及び圧縮器110が配置されている。第1の熱交換器106は、吸収器104の下流かつ収集ドラム108の上流に位置する。収集ドラム108は、圧縮器110及び第2の熱交換器112の上流に位置する。第2の熱交換器112によって排出された流体は、吸収器104に戻される。したがって、吸収器104、第1の熱交換器106、収集ドラム108、圧縮器110、及び第2の熱交換器112は、再循環ループ内にある。
【0021】
反応物は流れ202を介して反応器102に供給される。反応器102からの反応生成物は、流れ204を介して吸収器104に供給される。吸収器104は、塩酸を吸収し、ガス状の反応生成物(塩酸を含まない)を第1の熱交換器106に(流れ206を介して)排出する吸収剤を含み、第1の熱交換器106は、ガスを冷却して凝縮物を形成する。凝縮物は、流れ208を介して第1の熱交換器106から液体ドラム108に排出され、そこでスリップ流210と二次流218とに分割される。二次流218は排出され、最終的に反応器に再循環され、そこでモノマー及び/又はコモノマーは更なる重合に供される。位置インジケータ116又は収集ドラム108内の液体レベル上昇を使用して、吸収器104内の吸収床から凝縮性ガスを押し出す有効性を決定してもよい。
【0022】
スリップ流210は、圧縮器110で圧縮され、流れ212を介して第2の熱交換器112に排出される。第2の熱交換器112は任意であり、その選択性は、圧縮器110がスリップ流210を加熱するために使用される温度に依存する。圧縮器110がスリップ流を吸収器104に入るための所望の温度に加熱することができる場合、第2の熱交換器112は必要ない。しかしながら、圧縮器がスリップ流を所望の温度よりも高い温度に加熱する場合、第2の熱交換器112を配備して、スリップ流を吸収器に入るための所望の温度に冷却する。好ましい実施形態において、重合システム100は、第2の熱交換器112を使用する。
【0023】
第2の熱交換器112は、スリップ流を所望の温度に冷却し、スリップ流を流れ214を介して吸収器104に供給する。使用されないスリップ流214の任意の部分は、更なる重合のために流れ216を介して反応器に戻される。第2の熱交換器112から出る流れ214は、一般に、第1の熱交換器106から出る流れ208よりも温度が高い。
【0024】
収集ドラム108は、任意選択のポンプ114を介して位置インジケータ116と流体連通している。位置インジケータ116及び収集ドラム108の両方を使用して、吸収器104内の生成物流から凝縮性ガスを除去する際のシステム100の有効性(例えば、効率)を測定することができる。溶液重合システム100内の吸収器から除去される凝縮ガスを定量化するために、108内の収集ドラム液体レベル又は位置インジケータ116のいずれかを使用することができる。別の言い方をすれば、それらは、吸収器からの凝縮ガスの除去を示すために、単独で又は組み合わせて使用することができる。
【0025】
液体収集ドラム108の蒸気流は、スリップ流を生成するために使用される。ドラム液体レベルの変化は、媒体から押し出された液体の量のプロセスインジケータとして使用され、吸収器104の液体収集効率の尺度である。位置インジケータ116は、吸収器104からモノマー及び/又はコモノマーを抽出するプロセスの効率を測定するためにも使用され得るので、収集ドラム108を使用する吸収器の効率の測定は任意選択である。換言すれば、溶液重合システム100が位置インジケータ116を含む場合、収集ドラム108は、必要に応じてスリップ流を生成するためだけに使用されてもよい。ここで、プロセスの他の特徴と共に反応物の詳細を提供する。
【0026】
供給流202は、触媒及び溶媒(複数可)と共に反応物を反応器102に運ぶ。反応物は、オレフィンモノマー及びコモノマーを含む。好適なオレフィンモノマーとしては、3~12個の炭素原子を有するエチレン及びアルファオレフィンが挙げられる。このようなアルファ-オレフィンモノマーの例示的な例は、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン、及び1-デセンのうちの1つ以上である。1-ブテンが好ましい。
【0027】
オレフィンモノマー及び/又はコモノマーは、供給流202の総重量に基づいて、3重量%~65重量%の量で供給流202中に存在する。好ましい実施形態では、オレフィンモノマー及び/又はコモノマーは、供給流202の総重量に基づいて6重量%~45重量%の量で供給流202中に存在する。
【0028】
重合反応は、不活性炭化水素溶媒の存在下で行われる。不活性炭化水素溶媒の例には、C5-12炭化水素が含まれ、これは、非置換であっても、又はペンタン、メチルペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン及び水素化ナフサなどのC1-4アルキル基で置換されてもよい。適切な溶媒の例は、「ISOPAR登録商標E」(Exxon Chemical Co.から市販されているC8~12脂肪族溶媒)である。
【0029】
溶媒は、供給流202の総重量に基づいて、52重量%~82重量%の量で供給流202中に存在する。好ましい実施形態では、溶媒は、供給流202の総重量に基づいて68重量%~74重量%の量で供給流202中に存在する。
【0030】
使用される触媒は、ジーグラー・ナッタ触媒、ビスメタロセン触媒、拘束幾何触媒、多価アリールオキシエーテル複合体、ホスフィニミン、又はそれらの組み合わせであることができる。好ましい触媒はジーグラー・ナッタ触媒である。
【0031】
触媒は、供給流202の総重量に基づいて、0.2ppm~2.4ppmの量で供給流202中に存在する。好ましい実施形態では、触媒は、供給流202の総重量に基づいて0.25ppm~0.40ppmの量で供給流202中に存在する。
【0032】
モノマー及び/又はコモノマーは、流れ202を介して反応器102に供給される前に、水素と混合され、溶媒に溶解/分散される。混合前に、水、酸素、又は他の極性不純物などの潜在的な触媒毒を除去するために、溶媒及びモノマー(「原料」と称されることもある)は一般的に精製される。原料精製は、分子ふるい、アルミナベッド、又は酸素除去触媒を使用してもよい。溶媒も、同様の様式で精製されてもよい。反応器システム102への供給物は、概して、40℃未満、好ましくは20℃未満の温度まで冷却される。冷却は、反応器システム内で、又は反応器システムに入る前に行うことができる。好ましい実施形態では、供給物の冷却は、反応器に入る前に実施することができる。
【0033】
一般に、触媒成分は、反応のために溶媒中で予め混合されてもよく、又は反応器102内の1つ以上の反応器に別々の流れとして供給されてもよい。反応器102は、連続撹拌槽型反応器(CSTR)、ループ反応器(例えば、単一ループ反応器、二重ループ反応器)、沸騰反応器であってもよく、一段又は多段の反応器であることができる。一実施形態では、このプロセスは、1つ以上の反応器において複数の触媒を用いてもよい。
【0034】
一実施形態では、反応器102は、40重量キログラム/平方センチメートル(kgf/cm2)よりも高い圧力、好ましくは45kgf/cm2よりも高い圧力、より好ましくは50kgf/cm2よりも高い圧力で作動する。一実施形態では、反応器102は、155~210℃の範囲の温度で作動する。一実施形態では、流れ204を介して反応器102から出るポリマー溶液は、165~215℃、好ましくは185~205℃の温度を有することができる。
【0035】
このプロセスは、エチレンホモポリマー及びインターポリマーなどのオレフィン系ポリマー、他のアルケンとのインターポリマー(例えば、コポリマー又はターポリマー)、及び任意選択で、ジエン(例えば、EPDMターポリマー)を作製するために使用することができる。
【0036】
一実施形態において、反応器を出る生成物流204は、反応器102と吸収器104との間の生成物流204の内容物に基づいて、0.75~5.5重量パーセント(wt%)の量のエチレン、最大65重量%の量のアルファ-オレフィン、最大75重量%の量の炭化水素溶媒、及び最大80百万分率(ppm)の量の塩酸を含む。
【0037】
好ましい実施形態では、反応器102を出る生成物流204は、反応器102と吸収器104との間の生成物流204の内容物に基づいて、モノマー形態で0.75~5.50重量パーセント(wt%)の量のエチレン、最大15重量%の量の1-ブテン、最大75重量%の量の炭化水素溶媒、及び10~30百万分率(ppm)の量の塩酸を含む。
【0038】
生成物流204は、吸収剤の床(図示せず)を含む吸収器104に排出される。吸収剤は、重合反応の間に副生成物として生成される塩酸ガスを効率的に吸収することができる、150~2000平方メートル/グラム(m2/g)、好ましくは200~1000m2/gの表面積(BET窒素ポロシメトリーを用いて測定)を有する多孔質材料を含む。塩酸ガスは反応して吸収剤の細孔内に塩を形成する。吸収剤が被吸収剤で飽和している場合、吸収剤の床を新しい床と交換することができる。吸収剤は、752~753キログラム/立方メートル(kg/m3)のかさ密度を有する。吸収剤は12~15重量%の動的塩化物能力を有する。
【0039】
吸収剤の好適な例は、アルミナ、シリカ、粘土(例えば、カオリン)、剥離粘土(例えば、バーミキュライト)、硫酸カルシウムなど、又はこれらの組み合わせである。好ましい吸収剤は、アルミナ(酸化アルミニウム)である。
【0040】
吸収剤が、ポリマーを製造するために使用され得る他のモノマー又はコモノマーを吸収することは望ましくない。これらのモノマー及びコモノマーは、ポリマー製造において消費され得る反応器に再循環されることが望ましい。しかしながら、ポリオレフィンを製造するための他の溶液ベースの従来のプロセスでは、ガス状コモノマー、例えば、1-ブテン、1-オクテン、1-ヘキセンなども、ガス状塩酸に加えて吸収剤の細孔中で凝縮する可能性がある。モノマー及びコモノマーが吸収剤の細孔中で凝縮するのを防止するために、吸収器104から出る流れ206の一部は、反応器102から出る元の生成物流204よりも高い温度及び圧力で吸収器104に再循環して戻される。吸収器104に再循環される元の流れのこの部分は、スリップ流と呼ばれる。元の生成物流204よりも高い圧力及び温度を有するスリップ流の使用は、混合流205(混合流205は流れ204及び再循環流214(後に詳述)を含む)中に存在するモノマー及び/又はコモノマーが吸収剤の細孔中で凝縮することを防止する。
【0041】
吸収器104から排出される流れ206は、(生成物流204と比較して)低減された量の塩酸を含有し、第1の熱交換器106に排出される。一実施形態において、吸収器104を出る流れ206は、吸収器104と第1の熱交換器106との間の流れ206の内容物に基づいて、60~100重量%の量のエチレン、最大40重量%の量のアルファ-オレフィン、最大10重量%の量の炭化水素溶媒、及び最大1ppmの量の塩酸を含む。
【0042】
好ましい実施形態において、吸収器104を出る流れ206は、吸収器104と第1の熱交換器106との間の流れ206の内容物に基づいて、70~100重量%の量のエチレン、最大40重量%の量の1-ブテン、最大10重量%の量の炭化水素溶媒、及び0~1ppmの量の塩酸を含む。一実施形態において、流れ206は、吸収器104から排出された後に塩酸を含有しない。
【0043】
第1の熱交換器106は、好ましくは、流れ206を冷却し(それによってガスを液体に凝縮し)、それを液体収集ドラム108に排出する。収集ドラム108内のガスが液体に凝縮すると、ドラム108から圧縮器110に排出される材料の体積が減少する。これにより圧縮器負荷が低減される。
【0044】
熱交換器106は、シェルアンドチューブ熱交換器、プレート熱交換器、プレートアンドフィン熱交換器、又はプレートアンドシェル熱交換器のうちの少なくとも1つである。好ましい実施形態では、熱交換器106は、冷却されたエチレングリコールを使用して吸収器104から出るガスを液体に凝縮するシェルアンドチューブ熱交換器である。
【0045】
上述したように、第1の熱交換器106から出る凝縮流208は、液体収集ドラム108に排出される。液体収集ドラム108内の液体のカラムの高さ(又は体積)を使用して、プロセス中の吸収器104からのガス除去の効率を測定することができる。収集ドラムは、-20℃~+20℃、好ましくは-10℃~+10℃の温度で動作する。これらの温度は、第1の熱交換器106内で凝縮を受けなかった可能性がある任意のガスの凝縮を促進する。
【0046】
単位時間当たりに液体収集ドラム108内に収集された液体の量は、吸収器104の性能に関する情報を提供する。かなりの量のモノマー及び/又はコモノマーが吸収剤の細孔内で凝縮する場合、液体収集ドラム108内に収集される液体の量は、モノマー及び/又はコモノマーが吸収剤の細孔内で実質的に凝縮しない場合に収集される量よりも少なくなる。別の言い方をすれば、収集ドラム108は、スリップ流210の選択された圧力、温度、及び流量の有効性を決定するために使用され得る。これらについては以下で詳細に説明する。
【0047】
図に見られるように、収集ドラム108内の凝縮された液体の一部は、スリップ流214として吸収器に戻されて排出され、一方、残りは排出され、最終的に位置インジケータ116及び任意のポンプ114を介して反応器に戻されて再循環される。位置インジケータ116は、質量流量計であってもよいし、流量を示すためにバルブの位置が使用される液体流量バルブ位置インジケータであってもよい。位置インジケータ116によって示されるようなより大きい流量は、より低い流量と比較して、実質的により少量のモノマー及び/又はコモノマー凝縮が吸収剤の細孔内で生じることを意味する。
【0048】
スリップ流210は、収集ドラム108に入る流れ208の70~80重量%を含む。スリップ流210は圧縮器110に排出され、そこで15~20キログラム/平方センチメートル(kg/cm2)、好ましくは17~18キログラム/平方センチメートル(kg/cm2)の圧力に圧縮される。圧縮中、スリップ流212の温度は、90~250℃、好ましくは110~120℃の範囲であってよい。圧縮器110は、圧縮中にスリップ流210を加熱する。
【0049】
スリップ流温度が、圧縮中に、吸収器入口における生成物流204の温度よりも20℃~250℃、好ましくは20~40℃高い温度に上昇する場合、第2の熱交換器112は任意選択の機能である。一方、圧縮が、吸収器入口における所望の温度よりも大きい温度上昇をもたらす場合、第2の熱交換器112を使用して、生成物流204の温度よりも20℃~250℃、好ましくは20~40℃高い所望の値まで温度を低下させることができる。
【0050】
加圧されたスリップ流212は、圧縮器110から第2の熱交換器112に排出され、そこでその温度は、生成物流204の温度よりも20~250℃高い値に低下する。したがって、第2の熱交換器112は、加圧されたスリップ流212の温度を下げるように機能する。好ましい実施形態では、第2の熱交換器112から排出される再循環スリップ流214は、15~20kg/cm2、好ましくは17~18kg/cm2の圧力を有する。再循環スリップ流214の温度は、好ましくは、反応器102から吸収器104に入る生成物流204の温度よりも20~40℃高い。
【0051】
生成物流204の圧力に対する再循環スリップ流214の増加した圧力は、吸収器204に入る混合流205の流量の増加を促進する。流れ205は、反応器102から出る生成物流204と第2の熱交換器112から出るスリップ流214との組み合わせである。流れ205は、混合流と呼ばれる。(再循環されたスリップ流214の温度、圧力及び流量の上昇による)吸収器104に入るガスの温度の上昇と共に、混合流205のこの流量の増加は、(吸収床に含まれる)吸収剤中のガス状モノマー及びコモノマーの凝縮を防止する。図から、再循環されないスリップ流214の一部が排出され、最終的に更なる処理のために反応器に再循環されて戻されることが分かり得る。スリップ流214のこの部分は、流れ216として示される。
【0052】
再循環スリップ流214は、再循環流214の総重量に基づいて、55~100重量%の量のエチレン、最大40重量%の量のアルファ-オレフィン、最大1重量%の量の炭化水素溶媒、及び最大1ppmの量の塩酸を含む。
【0053】
好ましい実施形態において、再循環流214は、再循環流214の総重量に基づいて、55~100重量%の量のエチレン、最大40重量%の量の1-ブテン、最大1重量%の量の炭化水素溶媒、及び0~1ppmの量の塩酸を含む。
【0054】
ガス状塩酸の吸収は、(上昇した温度及び圧力が使用されない従来のシステムと比較して)上昇した温度及び圧力によって悪影響を受けず、ガス状塩酸に対して吸収剤細孔内で起こる化学反応は、従来のシステムで使用される吸収剤と比較して同じままであるか、又は改善される。ガス状モノマー及び/又はコモノマーは、開示されたシステムにおいて吸収剤中で凝縮しないため、吸収床の有用な耐用年数(すなわち、ライフサイクル)は、温度、圧力及び流量の増加が使用されない従来の吸収床(従来の吸収プロセスにおいて使用される)よりも増加する。
【0055】
一実施形態では、有用な耐用年数は、従来の吸収プロセスで展開される従来の吸収床よりも少なくとも10%、好ましくは少なくとも25%、より好ましくは少なくとも40%増加する。従来の吸収プロセスは、吸収器に再循環されるスリップ流が存在しないプロセスである。従来の吸収プロセスにおいて、吸収器への供給物は、スリップ流を含む開示されたプロセスにおける供給物よりも少なくとも20℃低く、好ましくは少なくとも30℃低く、より好ましくは少なくとも35℃低い。
【0056】
いくつかの実施形態を参照して本発明を説明してきたが、当業者には、本発明の範囲から逸脱することなく、様々な変更を加えることができ、その要素の代わりに同等物を使用できることが理解される。更に、本発明の本質的な範囲から逸脱することなく、特定の状況又は材料を本発明の教示に適合させるために多くの修正を行うことができる。したがって、本発明は、本発明を実施するために企図される最良の様式として開示される特定の実施形態に限定されず、本発明は、添付の特許請求の範囲に含まれるすべての実施形態を含むことが意図される。
【国際調査報告】