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特表2023-552524二次電池用分離膜及びこれを含む二次電池
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-18
(54)【発明の名称】二次電池用分離膜及びこれを含む二次電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/443 20210101AFI20231211BHJP
   H01M 50/44 20210101ALI20231211BHJP
   H01M 50/417 20210101ALI20231211BHJP
   H01M 50/414 20210101ALI20231211BHJP
   H01M 50/423 20210101ALI20231211BHJP
   H01M 50/42 20210101ALI20231211BHJP
   H01M 50/429 20210101ALI20231211BHJP
【FI】
H01M50/443 C
H01M50/443 D
H01M50/44
H01M50/417
H01M50/414
H01M50/423
H01M50/42
H01M50/429
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023531686
(86)(22)【出願日】2022-11-14
(85)【翻訳文提出日】2023-05-24
(86)【国際出願番号】 KR2022017905
(87)【国際公開番号】W WO2023085892
(87)【国際公開日】2023-05-19
(31)【優先権主張番号】10-2021-0157028
(32)【優先日】2021-11-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521065355
【氏名又は名称】エルジー エナジー ソリューション リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】チョン・ピル・イ
(72)【発明者】
【氏名】ジ・フン・リュ
(72)【発明者】
【氏名】ドン・キュ・キム
【テーマコード(参考)】
5H021
【Fターム(参考)】
5H021CC02
5H021CC03
5H021EE04
5H021EE06
5H021EE07
5H021EE08
5H021EE11
5H021HH00
5H021HH01
5H021HH03
5H021HH10
(57)【要約】
本発明は二次電池用分離膜であって、多孔性構造を有する分離膜本体と、前記分離膜本体に内蔵された粒子型高分子とを含み、前記粒子型高分子は前記分離膜本体より耐熱性が高い材料からなる二次電池用分離膜に関するもので、熱収縮率が向上した薄膜分離膜を提供することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
二次電池用分離膜であって、
多孔性構造を有する分離膜本体と、
前記分離膜本体に内蔵された粒子型高分子と、
を含み、
前記粒子型高分子は前記分離膜本体より耐熱性が高い材料からなる、二次電池用分離膜。
【請求項2】
前記分離膜本体は多孔性膜または不織布からなる、請求項1に記載の二次電池用分離膜。
【請求項3】
前記粒子型高分子の少なくとも一部は前記分離膜本体の気孔内に挿入されている、請求項1に記載の二次電池用分離膜。
【請求項4】
前記粒子型高分子の重量は、前記分離膜本体の重量を基準に、10%~80%である、請求項1に記載の二次電池用分離膜。
【請求項5】
前記粒子型高分子の体積は、前記分離膜本体の気孔の総容積を基準に、10%~80%である、請求項1に記載の二次電池用分離膜。
【請求項6】
前記分離膜本体のみの通気度を基準に、前記粒子型高分子が内蔵された分離膜本体の通気度増加は30%以下である、請求項1に記載の二次電池用分離膜。
【請求項7】
前記分離膜本体の気孔サイズは前記粒子型高分子の粒径の110%~1,000%である、請求項1に記載の二次電池用分離膜。
【請求項8】
前記分離膜本体は、ポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート(polyethyleneterephthalate)、ポリブチレンテレフタレート(polybutyleneterephthalate)、ポリエステル(polyester)、ポリアセタール(polyacetal)、ポリアミド(polyamide)、ポリカーボネート(polycarbonate)、ポリイミド(polyimide)、ポリエーテルエーテルケトン(polyetheretherketone)、ポリエーテルスルホン(polyethersulfone)、ポリフェニレンオキサイド(polyphenyleneoxide)、ポリフェニレンスルフィド(polyphenylenesulfide)、ポリアクリロニトリル(polyacrylonitrile)、セルロース(cellulose)、ポリエチレンナフタレン(polyethylenenaphthalene)及びこれらの混合物からなる群から選択される1種以上である、請求項1に記載の二次電池用分離膜。
【請求項9】
前記粒子型高分子の材料は、前記分離膜本体の材料よりガラス転移温度(Tg)または融点(Tm)が高い範囲で、ポリエチレンテレフタレート(polyethylene terephthalate)、ポリイミド(polyimide)、ポリアミド(polyamide)、ポリスルホン(polysulfone)、ポリエーテルエーテルケトン(polyetheretherketone)、ポリフェニレンスルフィド(polyphenylene sulfide)、ポリテトラフルオロエチレン(polytetrafluoroethylene)、ポリエーテルイミド(polyetherimide)、及びポリアミドイミド(polyamid-imide)からなる群から選択される1種以上である、請求項1に記載の二次電池用分離膜。
【請求項10】
前記粒子型高分子を含まない分離膜本体の厚さと前記粒子型高分子を含む分離膜本体の厚さとは同一の大きさである、請求項1に記載の二次電池用分離膜。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか一項に記載の二次電池用分離膜を含む、二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は2021年11月15日付の韓国特許出願第10-2021-0157028号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示されたすべての内容はこの明細書の一部として含まれる。
【0002】
本発明は二次電池用分離膜及びこれを含む二次電池に関するものである。具体的には、多孔性分離膜に耐熱性高分子を導入して熱的特性が向上した二次電池用分離膜及びこれを含む二次電池に関するものである。
【背景技術】
【0003】
リチウム二次電池は、正極と負極との間に分離膜を介在することで、前記正極と負極との接触による短絡を防止している。リチウム二次電池は正常な充電及び放電の過程で熱が発生するだけでなく、外部衝撃などによっても正極と負極との間の短絡が発生し得る。よって、分離膜の耐熱性を向上させるために、多孔性構造を有する分離膜基材の外面に無機物などを含むコーティング層を付け加えて使っている。
【0004】
しかし、前記リチウム二次電池は高温で電解液の副反応による安全性問題及び低出力などの欠点があるので、これに対する代案となることができる技術を確保する必要性が高くなっている。
【0005】
また、二次電池の高エネルギー密度を達成するために、厚さの薄い分離膜を製造するための試みが行われており、これと共に、分離膜の強度を向上し、熱収縮率は低めることで、内部ショートが発生することを防止するための多様な研究が行われている。
【0006】
これに関連して、特許文献1は、融点180℃以上の物質から構成される多孔質基材とその少なくとも一面及び/または内部に設けられた樹脂構造体とから構成され、180℃以上の融点を有するかまたは実質的に融点を有しないフィラー粒子を含む電子部品用セパレーターを開示する。
【0007】
特許文献1は、過熱時の熱収縮が非常に少なく、信頼性が高い電子部品用セパレーターを提供しているが、特許文献1のセパレーターは多孔質基材上に多孔質樹脂構造体を付加して一体化した構造を形成している。したがって、薄い分離膜を製造することで、エネルギー密度が向上した二次電池を製造しにくい。
【0008】
特許文献2は、多孔性不織布基材の気孔に圧力可塑性の高分子パウダーが陥入され、二次電池の組立の際に圧着されて気孔が詰められた形態の二次電池用分離膜を開示する。
【0009】
特許文献2は、二次電池用分離膜を正極と負極との間に介在し、ホットプレス工程で圧着することで、圧力可塑性高分子パウダーが多孔性不織布基材から脱着することを防止し、分離膜と電極との間に決着力を付与することができる。
【0010】
しかし、特許文献2の分離膜は、200℃以下の高温で圧力可塑性高分子の一部が溶けて多孔性不織布基材の気孔を塞ぐことで内部短絡を防止することができるが、このような場合、圧力可塑性高分子が溶けるため分離膜の強度を確保しにくい問題がある。
【0011】
したがって、分離膜基材の外面に付加されていたコーティング層を付加しないことで、分離膜の全厚を低めることができるとともに、分離膜の強度及び熱収縮率を確保することができる技術の必要性が高い実情である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2005-302341号公報
【特許文献2】韓国公開特許第2018-0075003号公報
【特許文献3】特開2013-145717号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は前記のような問題を解決するためのものであり、多孔性構造を有する分離膜本体に高耐熱性の粒子型高分子を内蔵するようになることで、分離膜の全厚の増加を最小化しながら、強度は向上し耐熱特性に優れた二次電池用分離膜及びこれを含む二次電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
このような目的を達成するための本発明による二次電池用分離膜は、多孔性構造を有する分離膜本体と、前記分離膜本体に内蔵された粒子型高分子とを含み、前記粒子型高分子は前記分離膜本体より耐熱性が高い材料からなることができる。
【0015】
前記分離膜本体は多孔性膜または不織布からなることができる。
【0016】
前記粒子型高分子の少なくとも一部は前記分離膜本体の気孔内に挿入されることができる。
【0017】
前記粒子型高分子の重量は、前記分離膜本体の重量を基準に、10%~80%とすることができる。
【0018】
前記粒子型高分子の体積は、前記分離膜本体の気孔の総容積を基準に、10%~80%とすることができる。
【0019】
前記分離膜本体のみの通気度を基準に、前記粒子型高分子が内蔵された分離膜本体の通気度増加は30%以下とすることができる。
【0020】
前記分離膜本体の気孔サイズは前記粒子型高分子の粒径の110%~1,000%とすることができる。
【0021】
前記分離膜本体は、ポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート(polyethyleneterephthalate)、ポリブチレンテレフタレート(polybutyleneterephthalate)、ポリエステル(polyester)、ポリアセタール(polyacetal)、ポリアミド(polyamide)、ポリカーボネート(polycarbonate)、ポリイミド(polyimide)、ポリエーテルエーテルケトン(polyetheretherketone)、ポリエーテルスルホン(polyethersulfone)、ポリフェニレンオキサイド(polyphenyleneoxide)、ポリフェニレンスルフィド(polyphenylenesulfide)、ポリアクリロニトリル(polyacrylonitrile)、セルロース(cellulose)、ポリエチレンナフタレン(polyethylenenaphthalene)及びこれらの混合物からなる群から選択される1種以上とすることができる。
【0022】
前記粒子型高分子の材料は、前記分離膜本体の材料よりガラス転移温度(Tg)または融点(Tm)が高い範囲で、ポリエチレンテレフタレート(polyethylene terephthalate)、ポリイミド(polyimide)、ポリアミド(polyamide)、ポリスルホン(polysulfone)、ポリエーテルエーテルケトン(polyetheretherketone)、ポリフェニレンスルフィド(polyphenylene sulfide)、ポリテトラフルオロエチレン(polytetrafluoroethylene)、ポリエーテルイミド(polyetherimide)、及びポリアミドイミド(polyamid-imide)からなる群から選択される1種以上とすることができる。
【0023】
前記粒子型高分子を含まない分離膜本体の厚さと前記粒子型高分子を含む分離膜本体の厚さとは同一の大きさであってもよい。
【0024】
本発明は、前記二次電池用分離膜を含む二次電池を提供する。
【0025】
また、本発明は、前記課題の解決手段を多様に組み合わせた形態としても提供することが可能である。
【発明の効果】
【0026】
以上で説明したように、本発明による二次電池用分離膜は多孔性構造を有する分離膜本体にある気孔の内部に粒子型高分子を含むので、前記粒子型高分子が含まれる前の分離膜本体と前記粒子型高分子が含まれた分離膜本体とを比較するとき、厚さ増加が最小化した薄膜分離膜を製造することができる。
【0027】
また、前記粒子型高分子は耐熱性に優れた材料からなるので、熱収縮率が向上した分離膜を製造することができる。
【0028】
また、前記粒子型高分子が多孔性構造を有する分離膜本体内に介在されるので、分離膜の強度が向上することができる。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明が属する技術分野で通常の知識を有する者が本発明を容易に実施することができる実施例を詳細に説明する。ただし、本発明の好適な実施例に対する動作原理を詳細に説明するにあたり、関連した公知の機能または構成についての具体的な説明が本発明の要旨を不必要にあいまいにする可能性があると判断される場合にはその詳細な説明を省略する。
【0030】
明細書全般で、ある部分が他の部分と連結されていると言うとき、これは直接的に連結されている場合だけでなく、その中間に他の素子を挟んで間接的に連結されている場合も含む。また、ある構成要素を含むというのは、特に反対の記載がない限り、他の構成要素を除くものではなく、他の構成要素をさらに含むことができることを意味する。
【0031】
また、構成要素を限定するか付け加えて具体化する説明は、特別な制限がない限り、すべての発明に適用可能であり、特定の発明に限定されない。
【0032】
また、本発明の説明及び特許請求の範囲全般にわたって単数で表示したものは、別に言及しない限り、複数の場合も含む。
【0033】
また、本発明の説明及び特許請求の範囲全般にわたって「または」は、別に言及しない限り、「及び」を含むものである。したがって、「AまたはBを含む」はAを含むか、Bを含むか、またはA及びBの両者を含む3種の場合を意味する。
【0034】
本発明による二次電池用分離膜は、多孔性構造を有する分離膜本体とこれに内蔵された粒子型高分子とを含み、前記粒子型高分子は前記分離膜本体よりも耐熱性が高い材料からなる。
【0035】
このように、分離膜本体よりも耐熱性が高い粒子型高分子を含むので、前記分離膜本体のみから構成される場合よりも耐熱性が向上し、よって高温で分離膜の熱収縮性が減少することができる。
【0036】
また、前記分離膜本体は多孔性構造からなるので、前記耐熱性が高い粒子型高分子の少なくとも一部は前記分離膜本体の気孔の内部に挿入されて位置することができる。したがって、従来の多孔性構造の分離膜基材の外面にコーティング層が付加された形態の分離膜よりも厚さが小さい形態の分離膜を提供することができる。
【0037】
前記分離膜本体は高いイオン透過度及び機械的強度を有する絶縁性の薄膜であり、例えばポリオレフィン系多孔性膜(membrane)またはポリオレフィン系材料からなる不織布を使うことができるが、これに特に限定されるものではない。
【0038】
前記ポリオレフィン系多孔性膜の例としては、高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、超高分子量ポリエチレンのようなポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブチレン、ポリペンテンなどのポリオレフィン系高分子をそれぞれ単独でまたはこれらを混合した高分子から形成した膜(membrane)を挙げることができる。
【0039】
前記不織布の材料としては、前記ポリオレフィン系材料の他に、例えば、ポリエチレンテレフタレート(polyethyleneterephthalate)、ポリブチレンテレフタレート(polybutyleneterephthalate)、ポリエステル(polyester)、ポリアセタール(polyacetal)、ポリアミド(polyamide)、ポリカーボネート(polycarbonate)、ポリイミド(polyimide)、ポリエーテルエーテルケトン(polyetheretherketone)、ポリエーテルスルホン(polyethersulfone)、ポリフェニレンオキサイド(polyphenyleneoxide)、ポリフェニレンスルフィド(polyphenylenesulfide)、ポリアクリロニトリル(polyacrylonitrile)、セルロース(cellulose)、ポリエチレンナフタレン(polyethylenenaphthalene)及びこれらの混合物からなる群から選択される1種以上を含む不織布を挙げることができる。
【0040】
前記不織布は、長繊維から構成されたスパンボンド不織布またはメルトブローン不織布とすることができる。
【0041】
前記粒子型高分子は前記分離膜本体よりも耐熱性が高い材料から構成され、前記粒子型高分子の材料は、前記分離膜本体の材料よりもガラス転移温度(T)または融点(T)が高い範囲で、ポリエチレンテレフタレート(polyethylene terephthalate)、ポリイミド(polyimide)、ポリアミド(polyamide)、ポリスルホン(polysulfone)、ポリエーテルエーテルケトン(polyetheretherketone)、ポリフェニレンスルフィド(polyphenylene sulfide)、ポリテトラフルオロエチレン(polytetrafluoroethylene)、ポリエーテルイミド(polyetherimide)、及びポリアミドイミド(polyamid-imide)からなる群から選択される1種以上とすることができる。
【0042】
前記粒子型高分子の重量は、前記分離膜本体の気孔容積、通気度などを考慮して決定することができる。詳細には、前記分離膜本体の重量を基準に、10%~80%とすることができ、より詳細には20%~30%とすることができる。
【0043】
前記粒子型高分子の重量が、前記分離膜本体の重量を基準に、10%よりも少ない場合には熱収縮性向上の効果を期待しにくく、80%よりも多い場合にはイオン伝導度が問題になることがあるので好ましくない。
【0044】
前記粒子型高分子の少なくとも一部または全部は前記分離膜本体の内部気孔に挿入されて配置され、前記粒子型高分子の体積は、前記分離膜本体の気孔全体の容積を基準に、10%~80%とすることができる。
【0045】
前記粒子型高分子の体積が10%よりも小さい場合には耐熱性向上の効果を得にくく、前記粒子型高分子の体積が80%よりも大きい場合にはイオン伝導度及び抵抗増加の問題があり得るので好ましくない。
【0046】
このように、本発明は粒子型高分子の少なくとも一部が分離膜本体の気孔の内部に挿入されるように構成され、粒子型高分子全体が分離膜本体の気孔の内部に挿入される場合、前記粒子型高分子を含まない分離膜本体の厚さと前記粒子型高分子を含む分離膜本体の厚さと同じサイズとすることができる。もしくは、粒子型高分子の少なくとも一部が分離膜本体の表面に位置し、残りは分離膜本体の気孔の内部に挿入される形態を有することができる。このような場合には、粒子型高分子を含まない分離膜本体の厚さは粒子型高分子を含む分離膜本体の厚さよりも小さくてもよい。
【0047】
前記分離膜本体の気孔サイズは、前記粒子型高分子の粒径の110%~1、000%とすることができる。前記粒子型高分子が前記分離膜本体の気孔に挿入されることで、分離膜本体の気孔サイズが均一になることができる。よって、分離膜全体で電解液含浸性及びイオン伝導度が均一になることができる。
【0048】
前記粒子型高分子と溶媒の重量比は1:1~1:10とすることができる。
【0049】
また、前記溶液は、前記粒子型高分子が均一な分散状態を維持するように、分散剤をさらに含むことができる。前記分散剤は、例えば、ポリビニルピロリドン(polyvinylpyrrolidone)、ポリアクリル酸ヒドラジド(polyacrylic acid hydrazide)、ポリ-N-ビニル-5-メトキサゾリドン(poly-N-vinyl-5-methoxazolidon)、N-アルキルポリイミン(N-alkyl polyimine)、ポリビニルアルコール(polyvinylalcohol)、N-アセチルポリイミン(N-acetyl polyimine)、ポリアクリルアミド(polyacrylamide)、ポリ-L-リシンヒドロブロマイド(poly-L-lysinhydrobromide)、ポリアクロレイン(polyacroleine)、ベンジル-ドデシル-ジメチルアンモニウムクロライド(benzyl-dodecyl-dimethylammonium chloride)、ポリアクリル酸(polyacrylic acid)、ポリエチレンイミン(polyethylenimine)、4-ビニルピリジン(4-vinylpyridine)及びメチルビニルケトン(methylvinylketone)からなる群から選択される1種またはこれらのオリゴマーからなるものとすることができる。
【0050】
以下では、本発明の実施例を参照して説明するが、これは本発明のより容易な理解のためのものであり、本発明の範疇がそれによって限定されるものではない。
【0051】
<実施例1>
粒子型高分子としてポリエーテルエーテルケトン(PEEP)をアセトンに投入して粒子型高分子分散液を製造する。
【0052】
不織布からなるポリオレフィン(PO)材料の多孔性分離膜本体に前記粒子型高分子溶液をドクターブレードコーティング法でコーティングして分離膜を製造する。
【0053】
前記分離膜を押圧ロールで押圧することで、粒子型高分子が分離膜本体の内部気孔に挿入された形態の分離膜を製造した。
【0054】
このように製造された分離膜の厚さは前記分離膜本体の厚さと同一になるように製造された。
【0055】
前記ポリエーテルエーテルケトンは、前記分離膜本体の重量に対して20%の重量比でコーティングした。
【0056】
<実施例2>
粒子型高分子としてポリエーテルエーテルケトンを、前記分離膜本体の重量に対して30%の重量比でコーティングしたことを除き、前記実施例1と同様な方法で分離膜を製造した。
【0057】
<実施例3>
粒子型高分子としてポリフェニレンスルフィドを、前記分離膜本体の重量に対して20%の重量比でコーティングしたことを除き、前記実施例1と同様な方法で分離膜を製造した。
【0058】
<比較例1>
分離膜として延伸ポリオレフィン(PO)材料の分離膜を単独で使った。
【0059】
<比較例2>
分離膜として前記実施例1で使用した分離膜本体を単独で使った。
【0060】
<比較例3>
粒子型高分子分散液のコーティングの代わりに、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)を、分離膜本体の重量に対して20%の重量比でコーティングしたことを除き、前記実施例1と同様な方法で分離膜を製造した。
【0061】
<実験例1>通気度測定
通気度はJIS P8117に従って通気度測定機(Asahi Seiko社製、EGO-IT)を使って測定した。
【0062】
【表1】
【0063】
比較例1と比較例2とを比較すると、延伸分離膜よりも不織布の気孔サイズが大きいので、通気度が小さく測定された。
【0064】
実施例と比較例2とを比較すると、実施例で不織布の気孔内に粒子型高分子が挿入されても通気度は大きく変わらない。これは、分離膜に付加された高分子が粒子型高分子形態であるので、気孔チャネル自体を全て塞ぐことができないからである。
【0065】
一方、比較例3のように粒子型ではない場合には、気孔チャネルの一部または多くの部分を塞ぎ得るので、高い値の通気度を示している。
【0066】
したがって、比較例2のような分離膜本体のみの通気度と、粒子型高分子が内蔵された分離膜本体の通気度とを比較すると、増加量が30%以下と現れることを確認することができる。
【0067】
一方、比較例3のように、粒子型高分子ではないポリビニリデンフルオライドがコーティングされた場合には、比較例2のような分離膜本体のみの通気度を基準に、約70%以上通気度が増加することが分かるので、イオン伝導度低下及び抵抗増加が問題となることがある。
【0068】
<実験例2>熱収縮性測定
全長65mm、全幅40.5mm、面積2,632.5mmの試料を準備し、130℃及び150℃で30分間熱収縮処理を行い、熱収縮処理の後、試料の面積を測定して面積減少率を収縮率に計算した。
【0069】
【表2】
【0070】
比較例1と比較例2とを比較すると、不織布は延伸分離膜に比べて熱収縮特性に優れる。これは、延伸品の場合、製作の後に残った残留応力によって、熱に露出されるとき、加工以前の状態に戻ろうとする性質があるからである。一方、不織布は、製作の際に応力が加わらないので、基本的に熱収縮特性に優れる。
【0071】
したがって、不織布を分離膜本体として使い、耐熱性に優れた粒子型高分子を使った実施例1~3で熱収縮性が著しく増加することが分かる。
【0072】
一方、低いガラス転移温度(T)または融点(T)を有する高分子を使った比較例3の場合には、不織布のみを適用した比較例2に比べて熱収縮性の改善が小さい水準に止まることを確認することができる。
【0073】
したがって、本発明のように、不織布材料からなる分離膜本体に高耐熱性の粒子型高分子を挿入して使用する場合、耐熱性が著しく向上した分離膜を提供することができる。
【0074】
本発明が属する分野で通常の知識を有する者であれば、前記内容に基づいて本発明の範疇内で多様な応用及び変形が可能であろう。
【手続補正書】
【提出日】2023-05-24
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0051
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0051】
<実施例1>
粒子型高分子としてポリエーテルエーテルケトン(PEE)をアセトンに投入して粒子型高分子分散液を製造する。



【国際調査報告】