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特表2023-552544脳血行動態の較正のためのMETOHD及びシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-18
(54)【発明の名称】脳血行動態の較正のためのMETOHD及びシステム
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/055 20060101AFI20231211BHJP
   A61B 5/026 20060101ALI20231211BHJP
【FI】
A61B5/055 380
A61B5/026 130
A61B5/055 382
A61B5/055 390
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023533870
(86)(22)【出願日】2021-12-14
(85)【翻訳文提出日】2023-06-02
(86)【国際出願番号】 EP2021085573
(87)【国際公開番号】W WO2022128970
(87)【国際公開日】2022-06-23
(31)【優先権主張番号】20214003.4
(32)【優先日】2020-12-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】590000248
【氏名又は名称】コーニンクレッカ フィリップス エヌ ヴェ
【氏名又は名称原語表記】Koninklijke Philips N.V.
【住所又は居所原語表記】High Tech Campus 52, 5656 AG Eindhoven,Netherlands
(74)【代理人】
【識別番号】100122769
【弁理士】
【氏名又は名称】笛田 秀仙
(74)【代理人】
【識別番号】100163809
【弁理士】
【氏名又は名称】五十嵐 貴裕
(74)【代理人】
【識別番号】100145654
【弁理士】
【氏名又は名称】矢ヶ部 喜行
(72)【発明者】
【氏名】フエイベルス ウィレム
(72)【発明者】
【氏名】ファン ドーレン マリーケ
(72)【発明者】
【氏名】ファン エー レイモンド
(72)【発明者】
【氏名】ラメリス ルドルフ マティアス ヨハネス ニコラース
(72)【発明者】
【氏名】ルーフケンス ティミー ロベルトス マリア
(72)【発明者】
【氏名】マッテルス マルコ
(72)【発明者】
【氏名】ウェステリンク ヨアネ ヘンリエッテ デジレ モニーク
(72)【発明者】
【氏名】デニッセン アドリアヌス ヨハネス マリア
【テーマコード(参考)】
4C017
4C096
【Fターム(参考)】
4C017AA11
4C017AB06
4C017AC40
4C017BC11
4C017CC01
4C096AA18
4C096AD14
4C096DC19
4C096DC28
4C096DC32
(57)【要約】
脳のより正確な較正を可能にするために、脳血行動態の較正のための血行動態脳アトラスを作成するためのシステムが提供される。システムは、非侵襲性経頭蓋神経刺激装置、非侵襲性神経監視装置、及びコンピューティング装置を備える。非侵襲性経頭蓋神経刺激装置は、神経活動を誘発して、人間の被検体の脳の前記標的関心領域(関心領域)における血行動態応答を誘発するように構成される。非侵襲性神経監視装置は、前記標的関心領域における誘発血行動態応答を監視するように構成される。コンピューティング装置は前記標的関心領域における誘発血行動態応答の血行動態応答関数血行動態応答関数を表すパラメータのセットを決定し、血行動態応答関数のパラメータのセットを前記標的関心領域に関連付けて血行動態脳アトラスを形成するように構成される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
脳血行動態の較正のための血行動態脳アトラスを作成するためのシステムであって、
非侵襲性経頭蓋神経刺激装置であって、人間の被検体の脳の標的関心領域において血行動態応答を誘発するように神経活動を誘導するように構成され、前記非侵襲性経頭蓋神経刺激装置は、経頭蓋機能超音波刺激を有する、非侵襲性経頭蓋神経刺激装置と、
前記標的関心領域における誘発血行動態応答を監視するように構成される非侵襲性神経監視装置と、
前記標的関心領域における誘発血行動態応答の血行動態応答関数を表すパラメータのセットを決定し、前記血行動態応答関数のパラメータのセットを前記標的関心領域に関連付けて前記血行動態脳アトラスを形成するように構成されるコンピューティング装置と
を有する、システム。
【請求項2】
前記非侵襲性経頭蓋神経刺激装置は、複数の前記標的関心領域において複数の血行動態応答を誘発するように構成され、各血行動態応答は各標的関心領域において誘発され、
前記コンピューティング装置は各誘発血行動態応答について、前記対応する血行動態応答関数を表すパラメータの各セットを決定し、パラメータの各セットを前記対応する標的関心領域に関連付けて、前記血行動態脳アトラスを形成するように構成される、
請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記非侵襲性神経監視装置は、前記標的関心領域との十分に強い興奮性接続性を有する一つ又はそれより多くの脳領域におけるさらなる誘発血行動態応答を監視するように構成され、
前記コンピューティング装置は、前記一つ又はそれより多くの脳領域におけるさらなる誘発血行動態応答の血行動態応答関数を表すパラメータのセットを決定し、前記パラメータのセットを前記一つ又はそれより多くの脳領域に関連付けて前記血行動態脳アトラスを形成するように構成される、
請求項1又は2に記載のシステム。
【請求項4】
前記標的関心領域において血行動態応答を誘発するために神経活動を誘導するために、人間の被験体に少なくとも1つの感覚刺激を適用するように構成される感覚刺激装置
を有し、
前記コンピューティング装置は、前記非侵襲性経頭蓋神経刺激装置によって誘発される血行動態応答と、前記感覚刺激装置によって誘発される血行動態応答との間の比較を実行して、前記血行動態応答関数上の潜在的な神経刺激誘発性交絡を補正するように構成される、
請求項1乃至3の何れか一項に記載のシステム。
【請求項5】
前記非侵襲性経頭蓋神経刺激装置は、前記標的関心領域における血行動態応答のシーケンスを誘発するように構成され、
前記非侵襲性神経監視装置は、前記標的関心領域における誘発血行動態応答のシーケンスを監視するように構成され、
前記コンピューティング装置は、血行動態応答関数上の潜在的な神経刺激誘発性交絡を補正するために、前記誘発血行動態応答のシーケンスの間の比較を実行するように構成される、
請求項1乃至3の何れか一項に記載のシステム。
【請求項6】
前記標的関心領域は、較正脳領域のセットから選択され、
前記脳の他の脳領域における血行動態応答関数は、前記較正脳領域のセットにおける血行動態応答関数から導出可能である、
請求項1乃至5の何れか一項に記載のシステム。
【請求項7】
前記非侵襲性経頭蓋神経刺激装置は、
経頭蓋電気刺激、及び
経頭蓋磁気刺激
の一つ又はそれより多くを更に有する、請求項1乃至6の何れか一項に記載のシステム。
【請求項8】
前記非侵襲性神経監視装置は、
脳血行動態を神経監視するための装置と、
脳活動を測定するためにニューロンによって生成される電気信号を測定するための装置と
の一つ又はそれより多くを更に有する、請求項1乃至7の何れか一項に記載のシステム。
【請求項9】
脳血行動態の較正のための装置であって、
(i)非侵襲性神経監視装置によって取得される人間の被検体の脳の関心領域における血行動態応答、及び(ii)血行動態脳アトラスを受信するように構成される入力ユニットであって、前記血行動態脳アトラスは複数の脳領域を含み、各脳領域は、パラメータのセットによって表される各血行動態応答関数に関連付けられる、入力ユニットと、
前記取得される血行動態応答を前記血行動態脳アトラスで較正するように構成される処理ユニットと、
前記較正される血行動態応答を出力するように構成される出力ユニットと
を有する、装置。
【請求項10】
前記血行動態脳アトラスは、
前記人間の被検体の以前の血行動態応答関数測定値、
健康成人のグループの以前の血行動態応答関数測定値、
特定の患者グループの以前の血行動態応答関数測定値、及び
脳領域が較正されている可能性のある単一の患者の以前の血行動態応答関数測定値
の一つ又はそれより多くから導出可能である、請求項9に記載の装置。
【請求項11】
前記関心領域は、前記血行動態脳アトラスの複数の脳領域と異なる、請求項9又は10に記載の装置。
【請求項12】
神経監視システムであって、
人間の被検体の脳の関心領域における血行動態応答を取得するための非侵襲性神経監視装置と、
前記取得される血行動態応答を較正するための、請求項9乃至11の何れか一項に記載の装置と
を有する、装置。
【請求項13】
脳血行動態の較正のための血行動態脳アトラスを作成するための方法であって、
非侵襲性経頭蓋神経刺激装置によって、人間の被検体の脳の標的関心領域における血行動態応答を誘発するために神経活動を誘導するステップであって、前記非侵襲性神経監視装置は経頭蓋機能超音波刺激を有する、ステップと、
前記非侵襲性神経監視装置によって、前記標的関心領域における誘発血行動態応答を監視するステップと、
コンピューティング装置によって、前記標的関心領域における誘発血行動態応答の血行動態応答関数を表すパラメータのセットを決定するステップと、
前記コンピューティング装置によって、前記血行動態応答関数のパラメータのセットを前記標的関心領域に関連付けて、前記血行動態脳アトラスを形成するステップと
を有する、方法。
【請求項14】
脳血行動態の較正のためのコンピュータ実装方法であって、
入力ユニットによって、(i)非侵襲性神経監視装置によって取得される人間の被検体の脳の関心領域における血行動態応答、及び(ii)血行動態脳アトラスを受信するステップであって、前記血行動態脳アトラスは一つ又はそれより多くの脳領域を有し、各脳領域は、パラメータのセットによって表される、各血行動態応答関数に関連付けられる、ステップと、
処理ユニットによって、前記取得される血行動態応答を前記血行動態脳アトラスで較正するステップと、
出力ユニットによって、前記較正される血行動態応答を出力するステップと
を有する、方法。
【請求項15】
プロセッサによって実行されるとき、請求項13又は14に記載の方法を実行するように構成される、請求項1乃至8の何れか一項に記載のシステム又は請求項9乃至11の何れか一項に記載の装置を制御するためのコンピュータプログラム要素。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は脳血行動態の較正に関し、特に、脳血行動態の較正のための血行動態脳アトラスを作成するためのシステム、脳血行動態の較正のための装置、神経監視システム、血行動態脳アトラスを作成するための方法、脳血行動態の較正のためのコンピュータ実施方法、及びコンピュータプログラム要素に関する。
【背景技術】
【0002】
機能的磁気共鳴撮影法(fMRI)は、脳を横切る標準的な血行動態応答機能(HRF)の使用によって制限される。1つの単一のカノニカルHRF(これは脳全体にわたって、及び個々にわたって同じ)の使用は制限であり得る。標準HRFの制限は、事象に応答したHRFパラメータの推定(HRF較正)によって部分的に緩和することができる。しかしながら、この較正は、事象と誘発される神経活動、すなわち視覚皮質との間に密接な結合を有する脳領域においてのみ行うことができる。
【0003】
US 2017/340260 A1は、脳刺激に対する神経血管反応性を決定するためのシステムを記載している。米国特許出願公開第2014/058247号明細書は、視覚刺激が与えられた生体から脳活動情報を取得する情報取得方法を記載している。Suh M らの "Blood volume and haemoglobin oxygenation response following electrical stimulation of human cortex"(NeuroImage, Elsevier, Amsterdam, NL, vol. 31, no. 1, 15 May 2006, pages 66乃至75)には、ヒトにおける脱酸素化ヘモグロビンの高い空間的及び時間的分解能での最初の測定が報告されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
脳血行動態較正の精度を改善する必要があり得る。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の目的は独立請求項の主題によって解決され、さらなる実施形態は従属請求項に組み込まれる。本発明の以下に記載される態様は、脳血行動態の較正のための血行動態脳アトラスを作成するためのシステム、脳血行動態の較正のための装置、神経監視システム、血行動態脳アトラスを作成するための方法、脳血行動態の較正のためのコンピュータ実施方法、及びコンピュータプログラム要素にも適用されることに留意される。
【0006】
本発明の第1の態様によれば、脳血行動態の較正のための血行動態脳アトラスを作成するためのシステムが提供される。システムは、非侵襲性経頭蓋神経刺激装置、非侵襲性神経監視装置、及びコンピューティング装置を備える。非侵襲性経頭蓋神経刺激装置は、神経活動を誘発して、人間の被検体の脳の標的関心領域(ROI)における血行動態応答を誘発するように構成される。非侵襲性経頭蓋神経刺激装置は、経頭蓋機能超音波刺激(tFUS)を含む。非侵襲性神経監視装置は、標的ROIにおける誘発血行動態応答を監視するように構成される。コンピューティング装置は標的ROIにおける誘発血行動態応答の血行動態応答関数HRFを表すパラメータのセットを決定し、HRFのパラメータのセットを標的ROIに関連付けて血行動態脳アトラスを形成するように構成される。
【0007】
言い換えれば、経頭蓋神経刺激としてtFUSを使用し、神経活動を誘発し、その後、様々な他の脳領域にわたるHRFを推定することが提案されている。神経刺激は任意の特定の脳領域を標的とすることができるが、複数の異なる脳領域を標的とすることもできるという利点を有する。これは、個人だけでなく、特定の脳領域に対しても、fMRIのより正確な較正を可能にし得る。
【0008】
TFUSは、低強度超音波を使用して神経活動を誘発する非侵襲性技術である。TFUSは、動物及びヒトにおいて神経活動(ニューロン活性)を安全かつ効果的に調節することができる。tFUSを使用する神経刺激は、アブレーションに使用される高い焦点超音波(HIFU)と比較して、はるかに少ないエネルギーを必要とする。TFUSは皮質の表層に限定されず、深部脳構造も同様に標的とすることができ、非侵襲的には以前は不可能であった、高度に焦点であり得る。経頭蓋直流刺激(tDCS)及び経頭蓋磁気刺激(TMS)などの従来の技法は頭蓋に近い領域、皮質表面においてのみ神経活動を誘導することができ、調節領域のサイズが大きい(例えば、数センチメートル程度)。加えて、皮質及び深部脳構造におけるtFUSの有効性は、局所的な深部脳構造に余分なエネルギーを集中させることができる複数の超音波トランスデューサを使用するtFUSシステムの出現によって改善され得る。したがって、tFUSでは、脳全体にわたるHRFを決定して、血行動態脳アトラスを作成することが可能である。これは、感覚領域(例えば、感覚運動、視覚又は聴覚皮質)だけでなく、脳全体にわたるHRFの較正を可能にする。
【0009】
複数の脳領域を含む血行動態脳アトラスを開発することも提案される。各脳領域は、パラメータのセットによって表されるそれぞれの血行動態応答関数(HRF)に関連付けられる。したがって、血行動態脳アトラスは、複数の局所的に較正されるHRFを含む。例示的な血行動態脳アトラスを図2Cに示す。このアトラスはfMRI測定の精度を改善することができ、神経刺激及び神経監視の他の方法によって拡張することができる。
【0010】
標的ROIは解剖学的に、機能的に、又は臨床的に定義され得る。標的ROIは運動皮質、視覚皮質、扁桃体、アトラス座標における体積、又は皮質における脳領域の特定の部分(例えば、左半球におけるMTの皮質IV層)、皮質下領域(例えば、黒質、視床、海馬)、又は小脳における領域として解剖学的に定義され得る。標的ROIはfMRI(運動、言語など)におけるローカライザタスクを使用して、機能的に定義することができ、機能的接続性を使用して、機能的アトラスを使用して、又はPET(陽電子放出断層撮影)トレーサを使用して定義することができる。標的ROIは臨床的に、例えば、てんかん発作又は脳卒中の病巣であり得る。
【0011】
HRFを表すパラメータのセットは、ピーク振幅、トラフ振幅、ピークまでの時間、下降までの時間、上昇勾配、下降勾配、FWHM(半値全幅、又は曲線下面積)などのうちの1つ又は複数を含み得る。
【0012】
本発明の一実施形態によれば、非侵襲性経頭蓋神経刺激装置は複数の標的ROIにおいて複数の血行動態応答を誘発するように構成され、各血行動態応答はそれぞれの標的ROIにおいて誘発される。コンピューティング装置は各誘発血行動態応答について、対応するHRFを表すパラメータのそれぞれのセットを決定し、血行動態脳アトラスを形成するために、パラメータの各セットを対応する標的ROIに関連付けるように構成される。
【0013】
例えば、非侵襲性経頭蓋神経刺激装置は、複数のトランスデューサによって、複数の異なる脳領域を連続的に又は同じ標的にすることができる。
【0014】
本発明の一実施形態によれば、非侵襲性神経監視装置は、標的ROIとの十分に強い興奮性結合性を有する1つ又は複数の脳領域におけるさらなる誘発血行動態応答を監視するように構成される。コンピューティング装置は1つ又は複数の脳領域におけるさらなる誘発血行動態応答のHRFを表すパラメータのセットを決定し、パラメータのセットを1つ又は複数の脳領域に関連付けて血行動態脳アトラスを形成するように構成される。
【0015】
したがって、HRFは、刺激されるROIにおいて推定されるだけでなく、刺激後に一貫したBOLD応答を示し得る他の領域においても推定される。
【0016】
例えば、tFUSはまた、強い興奮性結合性を有する遠位脳領域において、ニューロンを誘発し、BOLD応答を確実にし得る。
【0017】
本発明の一実施形態によれば、システムは標的ROIにおける血行動態応答を誘発するために神経活動を誘発するために、少なくとも1つの感覚刺激を人間の被検体に印加するように構成される感覚刺激装置をさらに備える。コンピューティング装置は、非侵襲性経頭蓋神経刺激装置によって誘発される血行動態応答と、感覚刺激装置によって誘発される血行動態応答との間の比較を実行して、HRF上の潜在的な神経刺激誘発性交絡を補正するように構成される。
【0018】
言い換えれば、このシステムは例えば、tFUS誘発HRFと感覚/運動誘発HRFとの比較を介して、HRFに対する潜在的な神経刺激誘発性交絡を補正することもできる。1つの単一の別個の脳領域について、神経刺激誘発HRFのデコンボリューションは、感覚誘発HRFのデコンボリューションと比較され得る。
【0019】
感覚刺激は、視覚刺激、聴覚刺激、触覚刺激、熱刺激などのうちの1つ又は複数を含み得る。
【0020】
本発明の一実施形態によれば、非侵襲性経頭蓋神経刺激装置は、標的ROIにおける一連の血行動態応答を誘発するように構成される。非侵襲性神経監視装置は、標的ROIにおける誘発血行動態応答のシーケンスを監視するように構成される。コンピューティング装置はHRF上の潜在的な神経刺激誘発性交絡を補正するために、誘発血行動態応答のシーケンス間の比較を実行するように構成される。
【0021】
一例では、非侵襲性神経監視装置はMRIであってもよい。MRIは、特定のfMRIシーケンスを使用して、血管空間占有率(VASO)依存性BOLD fMRI、又は温度変化及びBOLDの影響のより良好な推定を可能にするFMRシーケンスなど、脳血流及びBOLDの変化の影響をより良好に分離することができる。
【0022】
本発明の一実施形態によれば、標的ROIは、較正脳領域のセットから選択される。脳の他の脳領域におけるHRFは、較正脳領域のセットにおけるHRFから導出可能である。
【0023】
較正領域の最適なセットは、脳領域にわたって規則性を探索することによって定義することができる。HRFは脳領域によって異なるが、規則性がある(例えば、半球間)。十分な数の患者が血行動態脳アトラスにマッピングされると、これらの規則性を利用することができ、最適な較正領域のセットを定義することができる。
【0024】
個々の較正領域の小さなセット、例えば、各葉に1つを使用して、本方法は、全脳血行動態を推測することができる。
【0025】
本発明の一実施形態によれば、非侵襲性経頭蓋神経刺激装置は、経頭蓋電気刺激(tDCS/tACS)及び経頭蓋磁気刺激(TMS)のうちの1つ又は複数をさらに備える。
言い換えれば、経頭蓋磁気刺激(TMS)及び経頭蓋直流刺激(tDCS)などの他の非侵襲性脳刺激方法が、神経活動を誘発するためにtFUSと共に使用され得る。
【0026】
本発明の一実施形態によれば、非侵襲性神経監視装置は、脳血行動態の神経監視のための装置、及び脳活動を測定するためにニューロンによって生成される電気信号を測定するための装置のうちの1つ又は複数を備える。
【0027】
血行動態神経イメージング装置は例えば、MRI、低強度焦点式超音波イメージング(LIFU)、及び近赤外分光法(NIRS)を含み得る。
【0028】
非侵襲的な神経監視の他の方法、例えば脳波記録法(EEG)、脳磁図法(MEG)、光励起磁力計(OPM)、又は運動誘発応答を使用して、神経刺激によって誘発される神経活動の量を推定することができる。
【0029】
本発明の第2の態様によれば、脳血行動態の較正のための装置が提供される。装置は、入力ユニット、処理ユニット、及び出力ユニットを備える。入力ユニットは、(i)非侵襲性神経監視装置によって取得される人間の被検体の脳関心領域(ROI)における血行動態応答、及び(ii)血行動態脳アトラスを受信するように構成される。血行動態脳アトラスは複数の脳領域を備え、各脳領域はパラメータのセットによって表されるそれぞれの血行動態応答関数HRFに関連付けられる。処理ユニットは、取得される血行動態応答を血行動態脳アトラスを用いて較正する。出力ユニットは、較正される血行動態応答を出力するように構成される。
【0030】
言い換えれば、新しく正確に較正されるHRFを使用して、例えばMRIシステム上で、血行動態脳アトラスを展開するためのシステムが提案される。
【0031】
この血行動態脳アトラスは、健康な成人のグループからの、特定の患者グループからの、及び/又は多くの脳領域が較正される単一の患者からの平均を含み得る。この外部アトラスはまた、様々な脳領域のための異なる個人から導出されるHRFパラメータを含み得る。
【0032】
本発明の一実施形態によれば、血行動態脳アトラスは、人間の被検体の以前のHRF測定値、年齢、性別又は他の要因によって任意選択的に層別化される健康な成人のグループの以前のHRF測定値、特定の患者グループの以前のHRF測定値、及び脳領域が較正されている可能性がある単一の患者の以前のHRF測定値のうちの1つ又は複数から導出することができる。
【0033】
本発明の一実施形態によれば、標的ROIは、血行動態脳アトラスの複数の脳領域とは異なる。
【0034】
較正されるHRFは、較正中に応答を示した脳領域以外の脳領域に適用されてもよい。例えば、左半球からの較正されるROIのセットを有する血行動態脳アトラスを使用して、反対側の半球における脳活動を推定することができる。
【0035】
本発明の第3の態様によれば、神経監視システムが提供される。神経監視システムは、人間の被検体の脳の関心領域(ROI)における血行動態応答を取得するための非侵襲性神経監視装置と、第2の態様による装置と、取得される血行動態応答を較正するための任意の関連する例とを備える。
【0036】
本発明の第4の態様によれば、脳血行動態の較正のための血行動態脳アトラスを作成するための方法であって、
非侵襲性経頭蓋神経刺激装置によって、人間の被検体の脳の標的関心領域における血行動態応答を誘発するために神経活動を誘導するステップであって、前記非侵襲性神経監視装置は経頭蓋機能超音波刺激を有する、ステップと、
前記非侵襲性神経監視装置によって、前記標的関心領域における誘発血行動態応答を監視するステップと、
コンピューティング装置によって、前記標的関心領域における誘発血行動態応答の血行動態応答関数を表すパラメータのセットを決定するステップと、
前記コンピューティング装置によって、前記血行動態応答関数のパラメータのセットを前記標的関心領域に関連付けて、前記血行動態脳アトラスを形成するステップと
を有する、方法が提供される。
【0037】
本発明の第5の態様によれば、脳血行動態の較正のためのコンピュータ実装方法であって、
入力ユニットによって、(i)非侵襲性神経監視装置によって取得される人間の被検体の脳の関心領域における血行動態応答、及び(ii)血行動態脳アトラスを受信するステップであって、前記血行動態脳アトラスは一つ又はそれより多くの脳領域を有し、各脳領域は、パラメータのセットによって表される、各血行動態応答関数に関連付けられる、ステップと、
処理ユニットによって、前記取得される血行動態応答を前記血行動態脳アトラスで較正するステップと、
出力ユニットによって、前記較正される血行動態応答を出力するステップと
を有する、方法が提供される。
【0038】
本発明の別の態様によれば、第1の態様及び任意の関連する例によるシステム、又は第2の態様及び任意の関連する例による装置を制御するためのコンピュータプログラム要素が提供され、このコンピュータプログラム要素はプロセッサによって実行されるとき、第3又は第4の態様による方法を実行するように構成される。
【0039】
以下でより詳細に論じられる前述の概念及び追加の概念のすべての組合せ(そのような概念が相互に矛盾しないことを条件として)は、本明細書で開示される発明の主題の一部であると企図されることを諒解される。特に、本開示の末尾にあるクレームの対象は、本明細書に開示される発明対象の一部であることが意図される。
【0040】
本発明のこれら及び他の態様は以下に記載される実施形態から明らかであり、それらを参照して説明される。
【0041】
図面において、文献のように、同様の参照符号は概して異なる図面を通じて同一の部分を指す。また、図面は必ずしも縮尺通りではなく、本発明の原理を例示することに重点が置かれている。
【図面の簡単な説明】
【0042】
図1】脳血行動態の較正のための血行動態脳アトラスを作成するためのシステムの一例を概略的に示す。
図2A】血行動態脳アトラスを作成するためにtFUSMRIシステムを使用する動作例を概略的に示す。
図2B】血行動態脳アトラスを作成するためにtFUSMRIシステムを使用する動作例を概略的に示す。
図2C】血行動態脳アトラスを作成するためにtFUSMRIシステムを使用する動作例を概略的に示す。
図3】脳血行動態の較正のための血行動態脳アトラスを作成するためのシステムのさらなる例を概略的に示す。
図4】脳血行動態の較正のための装置を概略的に示す。
図5】神経監視システムの一例を概略的に示す。
図6】脳血行動態の較正のための血行動態脳アトラスを作成するための方法のフローチャートを示す。
図7】脳血行動態の較正のための方法のフローチャートを示す。
【発明を実施するための形態】
【0043】
機能的磁気共鳴撮影法(fMRI)は、刺激、課題、又は静止状態条件に応答して神経活動を測定するために使用される非侵襲性ツールである。残念ながら、fMRIはニューロンの活性、すなわち、単一細胞ニューロンの活動電位を直接測定しないが、ニューロン代謝と血流との間の結合に依存する。機能的MRIシーケンスは、典型的には脳活動を推定するために血中酸素レベル依存性(BOLD)コントラストを使用する。したがって、fMRIは脳内の血管の応答に依存し、したがって、脳の血管系の血行動態によって制限され、一時的にフィルタリングされる。
【0044】
事象関連fMRI検討により、脳の標準的な血行動態応答機能(HRF)が同定される。イベント、例えば、短い視覚刺激の提示は、視覚皮質におけるほぼ瞬時ニューロン活動を誘発する。神経活動とは対照的に、HRFは遅延する。視覚皮質では、刺激が血管の拡張及び酸素化される血液の大量の流入に起因して、BOLD信号の遅延増加を誘発する。この信号の大幅な増加は、fMRIの主なソースである。HRFは、典型的には視覚刺激の約6秒後にピークに達する。約15乃至20秒後、HRFはゆっくりとベースラインに戻る。HRFは、刺激又はタスク事象との畳み込みによって、タスクfMRIにおける脳活動を推定するために使用され得る。さらに、HRFを使用して、fMRI時系列をデコンボリューションし、脳の結合性におけるニューロン事象及びタスク誘発変化を推定することができる。要するに、HRFはBOLD信号の変化をイベントに結びつけるために、fMRIの臨界コンポーネントであり、逆もまた同様である。
【0045】
単一のカノニカルHRFの使用は、脳全体にわたって、及び個々にわたって同じであるので、制限と見なされる。さらに、HRF関数も年齢依存性であることが示されている。
【0046】
上述の制限、例えば、脳全体にわたる、及び個々にわたる1つの単一の正準HRFの使用は、特定の事象、すなわちHRF較正に応答したHRFパラメータの推定によって部分的に軽減され得る。しかしながら、この較正は、これらの事象と誘発神経活動との間に密接な結合を有する脳領域においてのみ行うことができる。例えば、視覚皮質は、視覚刺激に対する信頼できる応答を示す。fMRI及び視覚刺激の提示を用いて、HRFを視覚皮質においてデコンボリューションすることができ、個別化されるHRFパラメータを導出することができる。同様の方法で、聴覚及び感覚モータ領域についてHRFを推定することができる。しかしながら、ほとんどの脳領域は、刺激に応答して神経活動を確実に調節しない。その結果、HRFは、脳の大部分について較正することができない。
【0047】
上述の制限のうちの少なくとも1つに対処するために、図1は、脳血行動態の較正のための血行動態脳アトラスを作成するためのシステム100の一例を示す。システム100は、非侵襲性経頭蓋神経刺激装置10と、非侵襲性神経監視装置12と、コンピューティング装置14とを備える。標的ROIは例えば、扁桃体、アトラス座標における体積、又は脳領域の特定の部分(例えば、左半球におけるMTの皮質IV層)であり得る。
【0048】
非侵襲性経頭蓋神経刺激装置10は、神経活動を誘発して、人間の被検体の脳の標的関心領域(ROI)における血行動態応答を誘発するように構成される。
【0049】
図1に示す例では、非侵襲性経頭蓋神経刺激装置10が経頭蓋焦点式超音波(tFUS)装置である。TFUSは、低強度超音波を使用して神経活動を誘発する非侵襲性技術である。TFUSは、動物及びヒトにおいて神経活動を安全かつ効果的に調節することができる。tFUSを使用する神経刺激は、アブレーションに使用される高い焦点超音波(HIFU)と比較して、はるかに少ないエネルギーを必要とする。TFUSは皮質の表層に限定されず、深部脳構造も標的とすることができ、高度に焦点であり得る。加えて、皮質及び深部脳構造におけるtFUSの有効性は、局所的な深部脳構造に余分なエネルギーを集中させることができる複数の超音波トランスデューサを使用するtFUSシステムの出現によって改善されている。
【0050】
図1に示されるように、tFUS装置は、パルス状低強度FUSをROIに経頭蓋的に送達するように構成され、それによって、同様の周波数範囲がヒトの脳活動を調節し、頭蓋を通る適切な経頭蓋伝送を達成するために使用され得る。図1に示す例では、tFUS装置がMRIシステム20内のMRヘッドコイル16の内側に配置され、超音波処理経路の図は破線で示されている。tFUSは、ポリビニルアルコール(PVA)ヒドロゲルなどのカップリングヒドロゲル18を介してROIに適用することができる。結合ヒドロゲル18は頭皮に対して可能な限り垂直な超音波処理エントリの配向を維持しながら、緊密な音響結合を達成するために、皮膚の輪郭の周りにあってもよい。図1の例では、tFUS装置が単一の標的ROIにおいて血行動態応答を誘発するように構成される単一のFUSトランスデューサ19を備える。他の例(図示せず)では、tFUSが複数の標的ROIにおいて複数の血行動態応答を誘発するように構成され得る。各血行動態応答は、それぞれの標的ROIにおいて誘発される。これは、単一のFUSトランスデューサ19を用いてパルス状低強度FUSを複数のROIに連続的に送達することによって、又は複数のトランスデューサ(図示せず)を用いて複数のパルス状低強度FUSを複数のROIに同時に送達することによって行うことができる。言い換えれば、神経刺激は任意の特定の脳領域を標的とすることができるが、(所望であれば)複数の異なる脳領域を標的とすることもできる。
【0051】
経頭蓋磁気刺激(TMS)及び経頭蓋直流刺激(tDCS)などの他の非侵襲性脳刺激方法(図示せず)が、神経活動を誘発するためにtFUSと共に使用され得る。しかしながら、変調領域のサイズは大きくてもよく(例えば、数センチメートル程度)、一方、深い皮質/皮質下領域における特定の領域に到達する能力は、tFUSと比較して制限されてもよい。
【0052】
非侵襲性神経監視装置12は、標的ROIにおける誘発血行動態応答を監視するように構成される。
【0053】
いくつかの例では、機能的磁気共鳴撮影法(fMRI)及び陽電子放出断層撮影法(PET)などの機能的神経画像診断モダリティを使用して、FUS媒介脳刺激に対する神経応答の空間的及び時間的特徴を特徴付けることができる。
【0054】
図1に示す例では、非侵襲性神経監視装置12がtFUSの定位ガイダンスに使用可能な高解像度解剖学的MRIを提供するMRIシステム20を備える。MRIシステム20はまた、非侵襲性神経監視装置12として使用されてもよい。例えば、fMRIは、刺激に応答して神経活動を測定するために使用され得る。機能的MRIシーケンスは、典型的には脳活動を推定するために血中酸素レベル依存性(BOLD)コントラストを使用する。したがって、fMRIは脳内の血管の応答に依存し、したがって、脳の血管系の血行動態によって制限され、一時的にフィルタリングされる。
【0055】
いくつかの例(図示せず)では、非侵襲性神経監視装置12が低強度焦点式超音波(LIFU)イメージング又は近赤外分光法を用いて血行動態イメージングを実行することができる。両方の方法は、神経監視及び/又は定位ナビゲーションの両方のためにMRIと組み合わせることもできる。LIFUの場合、超音波イメージングのドップラー態様は、リアルタイムで(絶対)血流の測定値を得るために使用され得る。LIFU画像はまた、高感度、高い時空間分解能(典型的には100μm及び10ms)、及び大きな視野(正方形cmから数十正方形cmの範囲)で、リアルタイムで血流を測定するために使用され得る。LIFUは、機能的超音波画像と呼ばれることがある。それによって、LIFUはHRFをデコンボリューションし、新規なfMRI又はLIFU測定のための較正を改善するために、代わりに、又はfMRI測定と一緒に使用され得る。さらに、LIFUを使用して、関心血管内の血流を、tFUS刺激の前(Fmin)及びピーク(Fmax)で測定することが可能である。LIFU画像は流速の絶対値を提供するが、これは血管のサイズの解剖学的画像を使用して、血液量の総変化を計算することによって改善され得る。例えば、視覚刺激の例では、血管のサイズが血管の初期領域(Amin)から変化し、6秒後にその最大サイズ(例えば、血管Amaxの領域)に達することが予想され得る。したがって、6秒後に第2のより専用の走査(すなわち、より高い分解能など)が行われる場合、(絶対)血流の変化は、
Vmax=Vmin×(Fmax×Amax)/(Fmin×Amin)
と表される。
【0056】
これは、LIFU及びfMRI測定を使用してBOLD応答を較正する別の方法である。加えて、刺激によって引き起こされる熱事象(すなわち、血液粘度の変化)から生じる任意の変化も、例えば近赤外分光法を使用することによって同定され得る。
【0057】
いくつかのさらなる例(図示せず)では、非侵襲性電気監視装置12が脳の電流を測定して、非侵襲性経頭蓋電気刺激装置10によって誘導される電気活動の量を推定することができる。例示的な非侵襲性神経監視方法としては脳波記録法(EEG)、脳磁図法(MEG)、光励起磁力計(OPM)、及び運動誘発応答が挙げられるが、これらに限定されない。神経活動の追加の推定値は、予想されるHRFを推測するために使用され得る。神経活動のこれらの独立した推定値は較正プロシージャをさらに改善し、例えば、tFUSの強度、周波数又は持続時間を含むtFUSパラメータを知らせるのに役立ち得る。
【0058】
コンピューティング装置14は、標的ROIにおける誘発血行動態応答の血行動態応答関数(HRF)を表すパラメータのセットを決定するように構成される。コンピューティング装置14は血行動態脳アトラスを形成するために、HRFのパラメータのセットを標的ROIに関連付けるようにさらに構成される。HRFを表すパラメータのセットはピーク振幅、トラフ振幅、ピークまでの時間、立ち下がりまでの時間、立ち上がり傾き、立ち下がり傾き、FWHMなどのうちの1つ又は複数を含み得る。
【0059】
薬物療法の前後に血行動態脳アトラスが取得される場合、例えば薬物療法の効果を調査するために、いくつかの領域又はネットワークに対するこの薬物療法の影響を登録することができる。これは、脳活動に対する薬物療法、例えば、精神活性薬の影響を評価するために使用することができる。これは個人的な投薬をその完全な可能性まで可能にすることができ、各人は脳の投薬に対して異なる感受性を有する。脳内投薬の副作用は高く、前もって予測することができる。
【0060】
tFUSMRIシステムを使用する動作例を図2A乃至2Cに示す。患者は、MRIシステム20の内部に配置される。まず、図2(a)に示すように、tFUSの定位ガイダンスのための高分解能解剖学的MRIを作成し、種々の測定値を登録する。次いで、1つ又は複数のtFUS装置を使用して、1つ又は複数の標的ROI(例えば、扁桃体、アトラス座標における体積、又は脳領域の特定の部分)におけるHRFを誘発する。経頭蓋神経刺激の間及び直後に、誘発血行動態応答をfMRIを用いて測定する。これは、刺激又は擬似なしのベースライン測定値と比較することができる。スキャナは血行動態応答の形状をサンプリングし、潜在的交絡因子をフィルタリングするために、高い時間的及び空間的分解能でROIを監視するように最適化される。各測定から、HRFをデコンボリューションし、関数パラメータを推定することができる。このプロシージャはノイズを減少し、HRFにおける分散を推定するために、数回繰り返されてもよい。例示的なHRFデコンボリューションを図2Bに示す。HRFデコンボリューションは刺激される脳ROIのための個別化されるHRFパラメータ(例えば、ピーク振幅、トラフ振幅、ピークまでの時間、立ち下がりまでの時間、立ち上がり傾き、立ち下がり傾き、及び/又はFWHM)をもたらす。解剖学的MRIの情報を使用して、HRFパラメータは、血行動態脳アトラス上にマッピングされる。例示的な血行動態脳アトラスが図2Cに示されており、これは定位空間上にマッピングされ、デジタルファイルに記憶される。
【0061】
図2A乃至2Cの例では、ROI及びtFUS(及びfMRI)の空間分解能によって決定される単一の脳領域が存在する。同じ較正プロシージャを繰り返して、一連の他の脳領域についてHRFを較正することができ、血行動態脳アトラスをもたらす。
【0062】
血行動態脳アトラスに基づく局所的に較正されるHRFは、新規fMRI測定値の取得中に使用され得る。新しいfMRI活動の推定は現在の統計的パラメトリックマッピング研究と同様に機能するが、標準HRFの代わりに、局所的に較正されるHRFを畳み込み、fMRI活動を推定する。したがって、患者の脳活動のより正確な推定が得られ、これは、正確な結論又は診断のフォーメーションを支持する。
【0063】
任意選択で、標的ROIは、較正脳領域のセットから選択されてもよい。脳の他の脳領域におけるHRFは、較正脳領域のセットにおけるHRFから導出可能であり得る。HRFは脳領域によって異なるが、規則性がある(例えば、半球間)。例えば、十分な数の患者が血行動態脳アトラスにマッピングされると、これらの規則性が利用され得、較正領域の最適なセットが定義され得る。例えば、刺激後、内嗅皮質中のHRFは海馬中のHRFよりも2分の1後に、平均してピーク半分になり得る。また、ある患者では、HRFが別の患者よりも20%大きい振幅を有し得る。較正脳領域のセットは、脳領域と個人との間のこれらの規則性を考慮に入れることができる。単一の(又は最適なセットの)脳領域においてHRFを較正することによって、HRFパラメータは、較正されていない脳領域について推測される。このようにして、血行動態脳アトラスは、伝達関数を使用して拡張される。この手段は個々の較正領域の小集合、例えば、各葉に1つを使用することにより、全脳血行動態を推測する。
【0064】
任意選択で、非侵襲性神経監視装置12は、標的ROIとの十分に強い興奮性接続性を有する1つ又は複数の脳領域におけるさらなる誘発血行動態応答を監視するように構成され得る。コンピューティング装置14は1つ又は複数の脳領域におけるさらなる誘発血行動態応答のHRFを表すパラメータのセットを決定し、パラメータのセットを1つ又は複数の脳領域に関連付けて血行動態脳アトラスを形成するように構成され得る。言い換えれば、HRFは、刺激されるROIにおいて推定されるだけでなく、刺激後に一貫したBOLD応答を示し得る他の領域においても推定される。これは、神経活動が高密度の興奮性結合を有する脳領域に伝播することが知られているからである。したがって、いくつかの例では、神経刺激はまた、強い興奮性結合性を有する遠位脳領域において、ニューロンを誘発し、BOLD応答を確実にし得る。刺激なしで行われたベースライン測定との比較を使用して、システムは、単一のROI又は少数のROIの神経刺激のみを使用して、複数の脳領域を較正することができる。
【0065】
任意選択で、非侵襲性経頭蓋神経刺激装置10は、標的ROIにおける一連の血行動態応答を誘発するように構成されてもよい。非侵襲性神経監視装置12は、標的ROIにおける誘発血行動態応答のシーケンスを監視するように構成される。コンピューティング装置14はHRF上の潜在的な神経刺激誘発性交絡を補正するために、誘発血行動態応答のシーケンス間の比較を実行するように構成される。例えば、非侵襲性経頭蓋神経刺激装置は、MRIであってもよい。MRIはfMRIシーケンスを使用して、血管空間占有依存fMRIなどの脳血流及びBOLDの変化の影響をより良く分離することができ、又は、温度変化及びBOLDの影響をより良く推定することができるFMRシーケンスを使用することができる。
【0066】
図3は、脳血行動態の較正のための血行動態脳アトラスを作成するためのシステム100のさらなる例を示す。この例では、システム100が標的ROIにおける血行動態応答を誘発するために神経活動を誘発するために、少なくとも1つの感覚刺激を人間の被検体に印加するように構成される感覚刺激装置22をさらに備える。
【0067】
図3に示す例では、感覚刺激装置22が視覚刺激装置である。視覚刺激装置は、スクリーンの所定の領域上に所定の期間の間、静止画像及びビデオの任意の組み合わせを表示するための、コンピュータモニタ又はテレビのようなスクリーンであってもよい。視覚刺激は、ミラー構成を使用してスキャナにもたらされ、患者にMRI適合ヘッドマウントディスプレイなどを提供することによって、患者がミラー内の(反転される)ディスプレイを見ることを可能にすることができる。
【0068】
別の例(図示せず)では、感覚刺激装置22がオーディオソースに接続され、制御信号に従って所定のタイミングで所定の音を出力するスピーカなどの聴覚刺激装置であってもよい。
【0069】
さらなる例(図示せず)では、感覚刺激装置22が被検体に接触し(又は非常に近くにあり)、制御信号に応答して、所定の振動強度及び周波数で、所定のタイミングで振動する振動装置などの触覚刺激装置であってもよい。
【0070】
コンピューティング装置14は、非侵襲性経頭蓋神経刺激装置によって誘発される血行動態応答と、感覚刺激装置によって誘発される血行動態応答との間の比較を実行して、HRF上の潜在的な神経刺激誘発性交絡を補正するように構成され得る。
【0071】
言い換えれば、1つの単一の別個の脳領域について、神経刺激誘発HRFのデコンボリューションは、感覚誘発HRFのデコンボリューションと比較され得る。この直接的な比較により、システムは、HRFに対する神経刺激誘導交絡を制御することができる。組織のわずかな加熱(安全マージン内)は、より大きなHRF応答をもたらし得る。較正プロシージャは同じ脳領域における感覚誘発HRFの比較を含み、それによって、追加の基準を作成する。例えば、視覚皮質は図3に示されるように、プロジェクタを介して視覚刺激を使用し、tFUSを使用して、2回較正されてもよい。両方のタイプの刺激間の比較は、HRFに対するtFUS誘導影響の推定及び補正を可能にする。
【0072】
図4は、脳血行動態の較正のための装置200を概略的に示す。装置200は、入力ユニット210と、処理ユニット220と、出力ユニット230とを備える。
【0073】
入力ユニット210は、(i)非侵襲性神経監視装置によって取得される人間の被検体の脳の関心領域(ROI)における血行動態応答、及び(ii)血行動態脳アトラスを受信するように構成される。
【0074】
いくつかの例では、血行動態応答がfMRI及びPETなどの機能的神経画像診断モダリティを使用して取得され得る。いくつかの例では、血行動態応答が低強度集束超音波撮像又は近赤外分光法を用いた血行動態撮像を使用して取得され得る。
【0075】
血行動態脳アトラスは、複数の脳領域を含む。各脳領域は、ピーク振幅、トラフ振幅、ピークまでの時間、下降までの時間、上昇勾配、下降勾配、FWHMなどのパラメータのセットによって表されるそれぞれの血行動態応答関数(HRF)に関連付けられる。例示的な血行動態脳アトラスを図2Bに示す。
【0076】
いくつかの例では、血行動態脳アトラスが同じ患者についてより早い時間に行われた測定値からの以前の情報に基づくパラメータを含み得る。例えば、数週間又は数年の過程にわたって同じ人の同じ脳領域で行われるいくつかのHRF測定値を組み合わせることが可能である。これは、それ自体診断ツールと考えることもでき、特定の脳領域におけるHRFの形状及びタイミングが経時的にどのように変化するか、又は悪化するかを示すことができる。
【0077】
いくつかの例では、血行動態脳アトラスが他の患者においてより早い時期に行われた測定値からの以前の情報に基づくパラメータを含み得る。そのような血行動態脳アトラスは、「外部アトラス」と呼ばれることもある。例えば、血行動態脳アトラスは、年齢、性別又は他の要因によって任意に層別化される健常成人のグループの以前のHRF測定値、特定の患者グループの以前のHRF測定値、及び脳領域が較正される単一の患者の以前のHRF測定値から導出することができる。この外部アトラスはまた、様々な脳領域のための異なる個人から導出されるHRFパラメータを含み得る。例えば、視覚皮質は1人の患者において推定されるが、別の患者における扁桃体などであった可能性がある。適用前に、システム又はオペレータは様々な患者特性(例えば、年齢、性別、診断)を使用して、最も適切な血行動態脳アトラスを選択することができる。
【0078】
入力ユニット210は、一例ではイーサネット(登録商標)インターフェース、USB(登録商標)インターフェース、WiFi(登録商標)もしくはBluetooth(登録商標)などのワイヤレスインターフェース、又は入力周辺機器と処理ユニット220との間のデータ転送を可能にする任意の同等のデータ転送インターフェースとして実装される。
【0079】
処理ユニット220は、取得される血行動態応答を血行動態応答アトラスを用いて較正するように構成される。血行動態脳アトラスに基づく較正されるHRFは、新規fMRI測定値の取得中に使用される。例えば、fMRI活動の推定は現在の統計的パラメトリックマッピング研究と同様に機能するが、標準HRFの代わりに、局所的に較正されるHRFを畳み込み、fMRI活動を推定する。したがって、患者の脳活動のより正確な推定が得られ、これは、正確な結論又は診断のフォーメーションを支持する。
【0080】
いくつかの例では、標的ROI(複数可)が血行動態脳アトラスの複数の脳領域とは異なり得る。言い換えれば、血行動態脳アトラスにおける較正されるHRFは、較正中に応答を示した脳領域以外の他の脳領域に適用されてもよい。例えば、左半球からの較正されるROIのセットを有する血行動態脳アトラスを使用して、反対側の半球における脳活動を推定することができる。新規のfMRI取得の間、これらの追加の領域がROIの刺激後に誘発されるBOLD応答を示したかどうかにかかわらず、反対側の半球の脳領域を含むより大きな領域のセットが使用され得る。
【0081】
処理ユニット220は、特定用途向け集積回路(ASIC)、電子回路、1つ又は複数のソフトウェア又はファームウェアプログラムを実行するプロセッサ(共有、専用、又はグループ)及び/又はメモリ(共有、専用、又はグループ)、組合せ論理回路、及び/又は説明した機能を提供する他の適切なコンポーネントを指す、それらの一部で又はそれらを含み得る。さらに、そのような処理ユニット14は当業者に知られているように、揮発性又は不揮発性記憶装置、表示インターフェース、通信インターフェースなどに接続され得る。
【0082】
出力ユニット230は、較正される血行動態応答を出力するように構成される。
【0083】
図5は、神経監視システム300の一例を概略的に示す。神経監視システム300は図4に関して説明したように、非侵襲性神経監視装置310及び装置200を備える。
【0084】
非侵襲性神経監視装置310は、人間の被検体の脳の関心領域(ROI)における血行動態応答を取得するように構成される。
【0085】
図5の例では、非侵襲性神経監視装置310はMRI装置である。他の例(図示せず)では、非侵襲性神経監視装置310がPETを用いて機能的神経イメージングを実行することができる。
【0086】
装置200は例えば、fMRI活動を推定するために、血行動態脳アトラス内の局所的に較正されるHRFを畳み込むことによって、取得される血行動態応答を較正するように構成される。
【0087】
図6は、脳血行動態の較正のための血行動態脳アトラスを作成するための方法400のフローチャートを示す。
【0088】
ステップ410において、非侵襲性経頭蓋神経刺激装置は、神経活動を誘発して、人間の被検体の脳の標的関心領域(ROI)における血行動態応答を誘発する。
【0089】
非侵襲性経頭蓋神経刺激装置は、tFUS、tDCS/tACS、及びTMSのうちの1つ又は複数を含み得る。
【0090】
標的ROIは解剖学的に、機能的に、又は臨床的に定義され得る。ROIは運動皮質、視覚皮質、扁桃体、アトラス座標における体積、又は皮質における脳領域の特定の部分(例えば、左半球におけるMTの皮質IV層)、皮質下領域(例えば、黒質、視床、海馬)、又は小脳における領域として解剖学的に定義され得る。ROIはfMRI(運動、言語など)におけるローカライザタスクを使用して、機能的に定義することができ、機能的接続性、機能的アトラスを使用して、又はPETトレーサを使用して定義することができる。ROIは臨床的に、例えば、てんかん発作又は脳卒中の病巣としてであり得る。
【0091】
必要に応じて、非侵襲性経頭蓋神経刺激装置は単一のトランスデューサで連続的に、又は複数のトランスデューサによって同時に、複数の異なる脳領域を標的とすることができる。
【0092】
ステップ420において、非侵襲性神経監視装置は、標的ROIにおける誘発血行動態応答を監視する。
【0093】
非侵襲性神経監視装置は、fMRI、PET、機能性超音波、LIFU、NIRS、EEG、MEG、及びOPMのうちの1つ又は複数を含み得る。
【0094】
ステップ430において、コンピューティング装置は、標的ROIにおける誘発血行動態応答のHRFを表すパラメータのセットを決定する。パラメータのセットはピーク振幅、トラフ振幅、ピークまでの時間、立ち下がりまでの時間、立ち上がり傾き、立ち下がり傾き、FWHMなどのうちの1つ又は複数を含み得る。
【0095】
ステップ440において、コンピューティング装置は、HRFのパラメータのセットを標的ROIに関連付けて、血行動態脳アトラスを形成する。したがって、血行動態脳アトラスは、複数の局所的に較正されるHRFを含む。
【0096】
図7は、脳血行動態の較正のための方法500のフローチャートを示す。
【0097】
ステップ510において、入力ユニットは、非侵襲性神経監視装置によって取得される人間の被検体の脳の関心領域(ROI)における血行動態応答、及び(ii)血行動態脳アトラスを受信する。血行動態脳アトラスは複数の脳領域を含み、各脳領域は、パラメータのセットによって表されるそれぞれの血行動態応答関数(HRF)に関連付けられる。
【0098】
いくつかの例では、血行動態脳アトラスが同じ患者についてより早い時間に行われた測定値からの以前の情報に基づくパラメータを含み得る。
【0099】
いくつかの例では、血行動態脳アトラスが外部アトラスとも呼ばれる、他の患者における測定値からの事前情報に基づくパラメータを含み得る。この外部血行動態脳アトラスは、健康な成人の群、特定の患者群、又は多くの脳領域が較正されている単一の患者からの平均からなることができる。
【0100】
ステップ520において、処理ユニットは、取得される血行動態応答を血行動態脳アトラスを用いて較正する。
【0101】
ステップ530において、出力ユニットは、較正される血行動態応答を出力する。
【0102】
全ての定義は本明細書中で定義されかつ用いられるように、辞書的定義、引用により援用される書類中の定義、及び/又は定義される用語の通常の意味を支配すると理解されるべきである。
【0103】
不定冠詞「a」及び「an」は明細書及び特許請求の範囲において、ここに用いられるように、明瞭に反対のことが示されるのでなければ、「少なくとも1つ」を意味すると理解されるべきである。
【0104】
フレーズ「及び/又は」、明細書及び特許請求の範囲において、ここに用いるように、そのように連結されるエレメント、すなわち、いくつかの場合には同時に存在し、及び他の場合には同時でなく存在するエレメントの「いずれか又は双方」を意味すると理解されるべきである。「及び/又は」でリストされる多数のエレメントは同じように、すなわち、そのように連結されるエレメントの「1以上」と解釈されるべきである。他のエレメントは所望により、具体的に特定されるそれらのエレメントに関連するか関連しないかを問わず「及び/又は」節によって具体的に同定されるエレメント以外で存在してもよい。
【0105】
明細書及び特許請求の範囲において、ここに用いるように「又は」は先に定義される「及び/又は」と同一の意味を有すると理解されるべきである。例えば、リスト中で項目を分離する場合、「又は」又は「及び/又は」は包括的ですなわち、エレメントの数又はリスト及び、所望により、さらなるリストされていない項目の、少なくとも1、また1を超えたものを含めると解釈されるべきである。「のうちの1つのみ」又は「のうちの正確に1つ」など、又は特許請求の範囲で使用される場合、「からなる」など、反対に明確に示される用語のみが、要素の数又はリストの正確に1つの要素を含むことを指す。一般に、用語「又は」は本明細書中で用いるように、「いずれか」、「の1つ」、「の1つのみ」又は「の正確に1つ」のような排他性の用語が先行する場合、排他的代替物(すなわち、「1つ、またもう一方、しかし双方ではない」)を示すように単に解釈されるべきである。
【0106】
明細書及び特許請求の範囲においてここに用いられるように、フレーズ「少なくとも1つ」は1以上のエレメントのリストへの参照において、エレメントのリスト中のいずれかの1以上のエレメントから選択される少なくとも1つを意味すると理解されるべきであるが、エレメントのリスト内に具体的にリストされる各及びあらゆるエレメントの少なくとも1つを必ずしも含まず、かつエレメントのリスト中のエレメントのいずれかの組合せを排除しない。この定義は、具体的に確認されるエレメントに関連するか又は関連しないかを問わず、フレーズ「少なくとも1つ」が言及するエレメントのリスト内で具体的に確認されるエレメント以外で、エレメントが所望により存在してもよいことを許容する。
【0107】
特許請求の範囲、ならびに明細書中において「含む」、「含めた」、「運ぶ」、「有する」、「含有する」、「関係する」、「維持する」、「から構成される」等のような全ての移行フレーズはオープンエンデッドですなわち、限定されるものではないが含めることを意味すると理解されるべきである。「からなる(consisting of)」及び「から本質的になる(consisting essentially of)」という移行句のみが、それぞれ、閉じた又は半閉じた移行句である。
【0108】
本発明の別の例示的な実施形態では、前述の実施形態のうちの1つによる方法の方法ステップを適切なシステム上で実行するように適合されることを特徴とする、コンピュータプログラム又はコンピュータプログラム要素が提供される。
【0109】
したがって、コンピュータプログラム要素は、本発明の実施形態の一部であってもよいコンピュータユニットに記憶されてもよい。この計算ユニットは、上述の方法のステップの実行を実行又は誘発するように適合され得る。さらに、それは、上述の装置の構成要素を動作させるように適合され得る。計算ユニットは自動的に動作するように、及び/又はユーザの順序を実行するように適合され得る。コンピュータプログラムは、データプロセッサの作業メモリにロードされ得る。したがって、データプロセッサは、本発明の方法を実行するように装備されてもよい。
【0110】
本発明のこの例示的な実施形態は、最初から本発明を使用するコンピュータプログラムと、アップデートの手段によって既存のプログラムを本発明を使用するプログラムに変えるコンピュータプログラムの両方を包含する。
【0111】
さらに、コンピュータプログラム要素は、上述のプロシージャの例示的な実施形態の手順を満たすために必要なすべてのステップを提供することができる。
【0112】
本発明のさらなる例示的な実施形態によれば、CDROMなどのコンピュータ可読媒体が提示され、コンピュータ可読媒体はその上に記憶されるコンピュータプログラム要素を有し、そのコンピュータプログラム要素は、前のセクションによって説明される。
【0113】
コンピュータプログラムは他のハードウェアと共に、又は他のハードウェアの一部として供給される光記憶媒体又はソリッドステート媒体などの適切な媒体上に記憶及び/又は配布され得るが、インターネット又は他の有線もしくは無線通信システムを介してなど、他の形態で配布されてもよい。
【0114】
しかしながら、コンピュータプログラムはまた、ワールドワイドウェブのようなネットワークを介して提示されてもよく、そのようなネットワークからデータプロセッサの作業メモリにダウンロードされてもよい。本発明のさらなる例示的な実施形態によれば、ダウンロードのためにコンピュータプログラム要素を利用可能にするための媒体が提供され、このコンピュータプログラム要素は、本発明の前述の実施形態のうちの1つによる方法を実行するように構成される。
【0115】
いくつかの本発明の実施形態が本明細書に記載され例示されてきたが、当業者は本明細書に記載される機能を実行するための、及び/又は本明細書に記載される結果のうちの1つ又は複数を得るための様々な他の手段及び/又は構造を容易に想定し、そのような変形及び/又は修正の各々は本明細書に記載される本発明の実施形態の範囲内であるとみなされる。より一般的には当業者であれば、本明細書中で記載される全てのパラメータ、寸法、材料、及び構成は例示的であることを意図し、及び現実のパラメータ、寸法、材料、及び/又は構成は具体的な適用、又は発明の教示が用いられる適用に依存するのであろうことは容易に認識するのであろう。当業者であれば、ルーチン的実験を超えないものを用いて、本明細書中で記載される具体的な発明的実施形態に対する多くの同等物を認識し、又はそれを確認することができよう。従って、これまでの実施形態は例のみによって提示され、添付の特許請求の範囲及びその同等物内で、発明的実施形態は、具体的に記載され、及び特許請求されるものとは異なるように実施することができると理解されるべきである。本開示の発明的実施形態は、本明細書中で記載される各個々の特徴、系、製品、材料、キット及び/又は方法に向けられる。加えて、2以上のそのような特徴、系、製品、材料、キット、及び/又は方法のいずれの組合せも、もしそのような特徴、系、製品、材料、キット、及び/又は方法が相互に矛盾しないならば、本開示の発明的範囲内に含まれる。
図1
図2A
図2B
図2C
図3
図4
図5
図6
図7
【国際調査報告】