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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-18
(54)【発明の名称】テナパノルの経口製剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/4725 20060101AFI20231211BHJP
   A61P 1/00 20060101ALI20231211BHJP
   A61P 7/00 20060101ALI20231211BHJP
   A61K 47/12 20060101ALI20231211BHJP
   A61K 47/14 20170101ALI20231211BHJP
   A61K 47/38 20060101ALI20231211BHJP
   A61K 47/04 20060101ALI20231211BHJP
   A61K 9/20 20060101ALI20231211BHJP
   A61K 9/30 20060101ALI20231211BHJP
   A61K 47/32 20060101ALI20231211BHJP
【FI】
A61K31/4725
A61P1/00
A61P7/00
A61K47/12
A61K47/14
A61K47/38
A61K47/04
A61K9/20
A61K9/30
A61K47/32
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023534127
(86)(22)【出願日】2021-12-06
(85)【翻訳文提出日】2023-06-21
(86)【国際出願番号】 US2021062069
(87)【国際公開番号】W WO2022120287
(87)【国際公開日】2022-06-09
(31)【優先権主張番号】63/199,078
(32)【優先日】2020-12-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】514156138
【氏名又は名称】アルデリックス, インコーポレイテッド
(71)【出願人】
【識別番号】391008951
【氏名又は名称】アストラゼネカ・アクチエボラーグ
【氏名又は名称原語表記】ASTRAZENECA AKTIEBOLAG
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】グンナルソン, セシリア
(72)【発明者】
【氏名】スヴェンソン, マグヌス
(72)【発明者】
【氏名】マティック, ハンナ
(72)【発明者】
【氏名】サロモンソン, ヨーン
(72)【発明者】
【氏名】カールソン, エヴァ
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA29
4C076AA36
4C076AA44
4C076BB01
4C076CC14
4C076CC16
4C076DD29
4C076DD41C
4C076DD43Z
4C076DD45S
4C076EE07H
4C076EE31A
4C076EE32B
4C076FF02
4C076FF06
4C076FF09
4C076FF21
4C076FF51
4C076FF61
4C076GG03
4C076GG09
4C076GG14
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC30
4C086GA13
4C086MA02
4C086MA03
4C086MA05
4C086MA35
4C086MA44
4C086MA52
4C086NA10
(57)【要約】
本発明は、化学的に安定な可溶性テナパノルの医薬錠剤製剤を提供しており、当該製剤は、約6%w/wを超える非晶質テナパノルのビス-HCl形態、酸性化剤、抗酸化剤、崩壊剤、潤滑剤、流動促進剤、増量剤、及び即効型コーティングを含み、また、当該活性成分の総塩化物含有量が5.82%を超え、かつ、粒子径分布D50が約18μm~約22μmである。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
活性成分としての約6%w/w超のテナパノルビス-HCl、及び医薬として許容可能な賦形剤を含む医薬製剤であって、前記活性成分の総塩化物含有量が、5.82%を超える、前記医薬製剤。
【請求項2】
前記塩化物含有量が、約6.0%~約6.8%w/wである、請求項1に記載の医薬製剤。
【請求項3】
前記塩化物含有量が、約6.2%である、請求項1に記載の医薬製剤。
【請求項4】
前記塩化物含有量が、約6.4%である、請求項1に記載の医薬製剤。
【請求項5】
前記塩化物含有量が、6.4%である、請求項1に記載の医薬製剤。
【請求項6】
約6%w/w以上のテナパノルのビス-HCl塩を含む医薬製剤であって、前記製剤でのHClの総量が、テナパノルに対して2倍を超えるモル比である、前記医薬製剤。
【請求項7】
前記製剤での前記HClの総量が、テナパノルに対して2.1~3倍のモル比である、請求項6に記載の医薬製剤。
【請求項8】
前記製剤での前記HClの総量が、テナパノルに対して2.3倍のモル比である、請求項6に記載の医薬製剤。
【請求項9】
前記製剤での前記HClの総量が、テナパノルに対して2.4倍のモル比である、請求項6に記載の医薬製剤。
【請求項10】
前記製剤での前記HClの総量が、テナパノルに対して2.5倍のモル比である、請求項6に記載の医薬製剤。
【請求項11】
前記製剤での前記HClの総量が、テナパノルに対して2.6倍のモル比である、請求項6に記載の医薬製剤。
【請求項12】
前記製剤での前記HClの総量が、テナパノルに対して2.7倍のモル比である、請求項6に記載の医薬製剤。
【請求項13】
前記製剤での前記HClの総量が、テナパノルに対して2.8倍のモル比である、請求項6に記載の医薬製剤。
【請求項14】
前記製剤での前記HClの総量が、テナパノルに対して2.9倍のモル比である、請求項6に記載の医薬製剤。
【請求項15】
前記テナパノルが、非晶質形態である、請求項1または6に記載の医薬製剤。
【請求項16】
前記テナパノルは、噴霧乾燥分散物である、請求項1または6に記載の医薬製剤。
【請求項17】
前記テナパノルが、約6%~10%w/wの量で存在する、請求項1、6及び16のいずれか1項に記載の医薬製剤。
【請求項18】
前記テナパノルが、実質的に遊離塩基である、請求項17に記載の医薬製剤。
【請求項19】
前記テナパノルが、ビス-HCl形態である、請求項1、6及び16のいずれか1項に記載の医薬製剤。
【請求項20】
前記テナパノルが、約10%w/wの量で存在する、請求項1、6及び16のいずれか1項に記載の医薬製剤。
【請求項21】
前記テナパノルが、ビス塩酸塩形態である、請求項20に記載の医薬製剤。
【請求項22】
酸性化剤をさらに含む、請求項1、6、16、及び20のいずれか1項に記載の医薬製剤。
【請求項23】
前記酸性化剤が、クエン酸、酒石酸、フマル酸、コハク酸、アスコルビン酸、アジピン酸、ソルビン酸、グルタル酸、またはリンゴ酸である、請求項22に記載の医薬製剤。
【請求項24】
前記酸性化剤が、酒石酸である、請求項22記載の医薬製剤。
【請求項25】
前記酒石酸が、約0.5%w/w~約3%w/wの量で存在する、請求項24に記載の医薬製剤。
【請求項26】
前記酒石酸が、約1%w/wの量で存在する、請求項24に記載の医薬製剤。
【請求項27】
前記酒石酸が、1%w/wの量で存在する、請求項24に記載の医薬製剤。
【請求項28】
抗酸化剤をさらに含む、請求項1、6、16、21、及び26のいずれか1項に記載の医薬製剤。
【請求項29】
前記抗酸化剤を、パルミチン酸アスコルビル、ブチル化ヒドロキシアニソール、ブチル化ヒドロキシトルエン、ステアリン酸カルシウム、無水クエン酸、クエン酸一水和物、システイン、メタ重亜硫酸カリウム、没食子酸プロピル、メタ重亜硫酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム五水和物、ビタミンE、及び3,4-ジヒドロキシ安息香酸からなる群から選択する、請求項28に記載の医薬製剤。
【請求項30】
前記抗酸化剤が、没食子酸プロピルである、請求項28に記載の医薬製剤。
【請求項31】
前記没食子酸プロピルが、約0.1~0.2%w/wの量で存在する、請求項30に記載の医薬製剤。
【請求項32】
前記没食子酸プロピルが、約0.2%w/wの量で存在する、請求項30に記載の医薬製剤。
【請求項33】
崩壊剤をさらに含む、請求項1、6、16、21、26及び32のいずれか1項に記載の医薬製剤。
【請求項34】
前記崩壊剤が、ヒドロキシプロピルメチルセルロースである、請求項33に記載の医薬製剤。
【請求項35】
前記ヒドロキシプロピルメチルセルロースが、約5%w/w~約15%w/wの量で存在する、請求項34に記載の医薬製剤。
【請求項36】
前記ヒドロキシプロピルセルロースが、約5%w/wの量で存在する、請求項34に記載の医薬製剤。
【請求項37】
潤滑剤をさらに含む、請求項1、6、16、21、26、32、及び36のいずれか1項に記載の医薬製剤。
【請求項38】
前記潤滑剤が、ステアリン酸である、請求項37に記載の医薬製剤。
【請求項39】
前記ステアリン酸が、約1%w/w~約3%w/wの量で存在する、請求項38に記載の医薬製剤。
【請求項40】
前記ステアリン酸が、約2%w/wの量で存在する、請求項38に記載の医薬製剤。
【請求項41】
流動促進剤をさらに含む、請求項1、6、16、21、26、32、36及び40のいずれか1項に記載の医薬製剤。
【請求項42】
前記流動促進剤が、コロイド状二酸化ケイ素である、請求項41に記載の医薬製剤。
【請求項43】
前記流動促進剤が、約0.1%w/w~約0.5%w/wの量で存在する、請求項42に記載の医薬製剤。
【請求項44】
前記流動促進剤が、約0.25%w/wの量で存在する、請求項42に記載の医薬製剤。
【請求項45】
増量剤をさらに含む、請求項1、6、16、21、26、32、36、40、及び44のいずれか1項に記載の医薬製剤。
【請求項46】
前記増量剤が、微結晶セルロースである、請求項45に記載の医薬製剤。
【請求項47】
テナパノルが、約18μm~約22μmの粒子径分布D50を有する、請求項1に記載の医薬製剤。
【請求項48】
前記粒子径分布が、約19μm~約21μmである、請求項47に記載の医薬製剤。
【請求項49】
前記粒子径分布が、約19μmである、請求項47に記載の医薬製剤。
【請求項50】
前記粒子径分布が、約20μmである、請求項47に記載の医薬製剤。
【請求項51】
前記粒子径分布が、約21μmである、請求項47に記載の医薬製剤。
【請求項52】
錠剤形態である、請求項1に記載の医薬製剤。
【請求項53】
前記錠剤が、即効型フィルムコーティングを有する、請求項52に記載の医薬製剤。
【請求項54】
前記即効型フィルムコーティングが、ポリ酢酸ビニルを含む、請求項53に記載の医薬製剤。
【請求項55】
テナパノルの量が約10mgである、請求項1に記載の医薬製剤。
【請求項56】
テナパノルの量が約20mgである、請求項1に記載の医薬製剤。
【請求項57】
テナパノルの量が約30mgである、請求項1に記載の医薬製剤。
【請求項58】
テナパノルの量が約50mgである、請求項1に記載の医薬製剤。
【請求項59】
約6~10%w/wの非晶質テナパノル、約1%w/wの酒石酸、及び約0.2%w/wの没食子酸プロピルを含む、請求項1に記載の医薬製剤。
【請求項60】
請求項1に記載の医薬製剤を製造するプロセスであって、
前記テナパノル、没食子酸プロピル及び酒石酸を、ヒドロキシプロピルセルロースと混合して第1のブレンドを提供することと、
前記第1のブレンドを粉砕して塊状物を除去することと、
前記粉砕ステップの間または後に、ステアリン酸を前記第1のブレンドに添加して第2のブレンドを提供すること、及び、任意に、前記第2のブレンドを混合することと、
を含む、前記プロセス。
【請求項61】
前記第2のブレンドを打錠して錠剤にすることをさらに含む、請求項60に記載のプロセス。
【請求項62】
前記錠剤が、約30mgのテナパノルを含む、請求項61に記載のプロセス。
【請求項63】
前記錠剤が、約50mgのテナパノルを含む、請求項61に記載のプロセス。
【請求項64】
前記第2のブレンドを圧縮することをさらに含む、請求項60に記載のプロセス。
【請求項65】
前記第2のブレンドをローラー圧縮する、請求項64に記載のプロセス。
【請求項66】
前記圧縮した第2のブレンドを粉砕する、請求項65に記載のプロセス。
【請求項67】
前記粉砕した第2のブレンドにさらにステアリン酸を添加して、第3のブレンドを提供する、請求項66に記載のプロセス。
【請求項68】
前記第3のブレンドを打錠して錠剤にすることをさらに含む、請求項67に記載のプロセス。
【請求項69】
前記テナパノルを噴霧乾燥する、請求項60に記載のプロセス。
【請求項70】
前記テナパノルを、水エタノール溶媒混合物を使用して噴霧乾燥する、請求項69に記載のプロセス。
【請求項71】
前記テナパノルが、非晶質形態のビス-HCl塩である、請求項60に記載のプロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本出願は、2020年12月4日に出願した米国仮出願第63/199,078号の優先権を主張する。上記した出願の全内容は、本明細書で参照によって完全に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
本発明の分野
本発明は、医薬組成物の分野に関する、具体的には、錠剤組成物の分野、さらに具体的には、速効性錠剤組成物の分野に関する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
発明の背景
消化管(GI)の主な機能は、分泌機構と吸収機構とのバランスを介して腸内水分/ナトリウム(Na+)恒常性を維持することにある。ナトリウム水素交換体3(NHE3)と称するNa+/水素(H+)アンチポーターは、ナトリウム取り込みプロセスにおいて中心的な役割を果たす。テナパノルは、最小限の全身性バイオアベイラビリティで消化管に局所的に作用して、内腔からのナトリウムの吸収を阻害するNHE3阻害剤である。
【化1】
【0004】
ナトリウムの取り込みが減少すると、消化管内の体液量が増加し、その結果、動物と人間の両方で、糞便の粘稠度が落ちて、GI通過が速くなる。また、テナパノルが、ビス-HCl塩の形態であれば、便秘を伴う過敏性腸症候群(IBS-C)患者の腹痛を軽減することが臨床的に示されている。IBS様結腸過敏症の動物モデルでは、テナパノルは、内臓痛覚過敏を緩和させ、及び、結腸感覚ニューロンの興奮性、及び一過性受容体電位バニロイド1(TRPV1)電流を正常化した。TRPV1は、様々な有害な刺激に応答する周知の疼痛受容体である。テナパノルは、サイトカインまたはヒト糞便上清が生産する高分子に対するヒト結腸上皮単層の透過性の増大を抑制した。IBS-C患者の腹痛に対するテナパノルの有益な効果は、感覚ニューロンの過興奮性を低下させ得る内腔高分子に対する結腸透過性を低下させる能力の結果であり得る。
【0005】
また、テナパノルは、高リン血症患者の血清リン酸塩を低下させることが臨床的に示されている。高リン血症は、血中のリンレベルが異常に上昇する(5.5mg/dLを超える)深刻な状態であり、リンの除去に関与する臓器である腎臓病の併存症であることが多い。テナパノルによるNHE3の阻害は、GI上皮細胞接合部の立体構造変化を招き、リン酸塩吸収の一次経路でのリン酸塩の傍細胞取り込みを有意に減少させる。単剤療法として、及びリン酸塩結合剤を使用した二重メカニズム手法の一部として、リン酸塩レベルを低下させるテナパノルの能力を実証する成功した三例の第3相試験を報告している。
【0006】
リン酸塩結合剤(高リン血症に関して承認された唯一の治療法)による治療にもかかわらず、透析を受けているCKD患者の約70%は、いずれの時点でも、リンレベルの上昇が続いている(Spherix Global Insights:RealWorld Dynamix、Dialysis 2018)。5.5mg/dLを超えるリンレベルは、透析を必要とする患者の心血管罹患率、及び死亡率の独立した危険因子であることを示しており(Block 2004)、及び、国際的に認められた治療ガイドラインは、正常範囲(<4.6mg/dL)に向けて上昇したリン酸塩レベルを下げることを推奨している。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】15mgのテナパノルHCl錠剤、及びテナパノル遊離塩基錠剤のFeSSIF培地 pH5.0への溶解。溶解方法:USP装置II(パドル)、75rpm、37℃での900mLの培地。
図2】カプセルI、純テナパノルHCl粉末を含むHPMCカプセル(Capsugel(登録商標)由来のVcaps(登録商標))、FaSSIF培地 pH6.5、FeSSIF培地 pH5、及び0.1N HClの溶解。溶解方法:USP装置II(パドル)、75rpm、37℃での900mLの培地。
図3】VカプセルでのカプセルI(純品)及びカプセルII(テナパノルHClとブレンドした賦形剤)を含むFeSSIF培地 pH5での溶解比較。
図4】FeSSIF pH6.5培地、FeSSIF pH5培地、及び14mgのテナパノルHClを含む0.1N HCl(a);14mgのテナパノル遊離塩基(b);及び、50mgのテナパノルHCl(c)を含む0.1N HClでのプロトタイプII錠剤の溶解。発現したテナパノルHClの量は、塩基当量である。
図5】テナパノル遊離塩基、及びテナパノルHClを含む15mgプロトタイプII、及びFeSSIF pH5.0を含むプロトタイプIII錠剤の溶解比較。
図6】プロトタイプIII錠剤に含まれる多量(60mg)及び少量(5mg)のテナパノル遊離塩基、及びテナパノルHClのFeSSGF培地 pH5.0での溶解比較。
図7】25℃/60%相対湿度、及び40℃/75%相対湿度で、6ヶ月間保存したプロトタイプIb錠剤製剤の0.1N HClでの溶解性能の低下。
図8】45mg(a)及び1mg(b)を加えたプロトタイプII錠剤でのテナパノルに関して、2~8℃、25℃/60%相対湿度、及び40℃/75%相対湿度で認められた不純物の経時的比較。
図9】乾燥剤と酸素吸収乾燥剤(PharmaKeep(登録商標))を使用して40℃/75%RHで経時的に保存したコーティングした、及びコーティングしていない5mgテナパノルプロトタイプIII錠剤の不純物の比較。
図10】プロトタイプIIIテナパノルHCl錠剤製剤での塩化物含有量を6%及び10%にして、40℃/30%相対湿度で、1か月開放保存した後の総不純物の変化率。それぞれの錠剤製剤は、1%の酒石酸、及び0.02%の没食子酸プロピルを含んでいた。
図11】テナパノルHClの噴霧乾燥分散物の熱重量分析であって、t(0)(パネルA)、及び周囲温度と湿度に5日間曝した後(パネルB)のものである。トレース図の間に有意差が認められなかったことは、テナパノルHClの噴霧乾燥分散物が、水と平衡状態にあることを示す。
図12】テナパノルの製剤化及び打錠に関する工程のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
詳細な説明
定義:
「%w/w」は、製剤の特定の成分の割合、または、特記されている場合は、原薬(API)の成分の割合を意味する。
【0009】
特定の製剤成分の量の文脈における用語「約」は、それが指し示す値のプラスマイナス5%を意味する。例えば、約1%は、0.95%~1.05%を意味する。
【0010】
CSDは、コロイド状二酸化ケイ素を意味する。
【0011】
原薬とは、医薬有効成分、テナパノルを意味しており、別名、APIまたは医薬有効成分とも称する。
【0012】
FeSSGFは、USP装置と互換可能な高脂肪FDAの食事を終えた後の胃液を模倣するFed State Simulated Gastric Fluid培地を意味する。
【0013】
FaSSIFとは、USP装置と互換可能な絶食状態の腸液を模倣するFasted State Simulated Intestinal Fluid培地を意味する。
【0014】
FeSSIFとは、USP装置と互換可能な食後の腸液を模倣するFed State Simulated Intestinal Fluid培地を意味する。
【0015】
FSは、フュームドシリカ、例えば、Cab-O-Sil(登録商標)を意味する。
【0016】
L-HPCは、低置換度ヒドロキシプロピルセルロースを意味しており、及び、別名、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)であり、これは、溶解を補助する崩壊剤(disintegrant)、または、崩壊剤(disintegrating agent)である。
【0017】
MCCは、微結晶セルロース、例えば、Avicel(登録商標)を意味する。
【0018】
PVPは、N-ビニル-2-ピロリドン架橋ホモポリマー、例えば、Polyplasdone XL(登録商標)を意味する。
【0019】
SSFは、フマル酸ステアリルナトリウム(例えば、Pruv(登録商標))を意味する。
【0020】
テナパノルは、遊離塩基化合物である1-[2-[2-[2-[[3-[(4S)-6,8-ジクロロ-2-メチル-3,4-ジヒドロ-1H-イソキノリン-4-イル]フェニル]スルホニルアミノ]エトキシ]エトキシ]エチル]-3-[4-[2-[2-[2-[[3-[(4S)-6,8-ジクロロ-2-メチル-3,4-ジヒドロ-1H-イソキノリン-4-イル]フェニル]スルホニルアミノ]エトキシ]エトキシ]エチルカルバモイルアミノ]ブチル]尿素を意味する。テナパノルのビス-HCl(ジ-HCl)塩形は、別名、テナパノル塩酸塩またはテナパノルHClと互換可能に称されており、次の化学構造を有する。
【化2】
【0021】
薬力学的(PD)試験(第1相、単一施設、無作為化、三元配置、非盲検試験)は、オメプラゾールを服用している健康なボランティアにおけるテナパノルの様々な製剤の薬力学を評価して、同等の錠剤製剤でのテナパノルの遊離塩基と塩酸塩との間のPD効果の差異を調べるために実施した。テナパノルは、局所的に作用して、腸を標的とするNHE3阻害剤であるので、ナトリウムの吸収に影響を与え、その結果、尿とは対照的に糞便から排泄されるナトリウムのレベルが高くなると考えられた。非晶質塩(15mg、14mg遊離塩基に相当する)及び結晶遊離塩基(14mg)の錠剤は、プロトンポンプ阻害剤としてオメプラゾールも服用していた健康なボランティアのPDマーカーとして糞便及び尿ナトリウムを使用して、製剤開発期間中にも直接に比較をした。これら2つの錠剤製剤は、pH5.0で異なる溶解プロファイルを示した(図1)。非晶質HCl塩の高い溶解度は、結晶性遊離塩基と比較して、pH5.0での溶解の程度が大きかった。強力価の遊離塩基(60mg)錠剤の溶解も、培地のpHに依存していることを示した。
【0022】
溶解
幾つかのカプセル及び錠剤のプロトタイプを調製し、及び様々な特性について試験したが、特に、溶解性及び安定性は不十分であることが判明した。以下は、0.1N HCl、pH5 FeSSIF培地、及びpH6 FaSSIF培地で認められた一部のカプセル及び錠剤製剤の組成、ならびに最大溶解性である。同じプロトタイプ指定の錠剤は、テナパノル負荷及び塩/遊離塩基形態が異なるが、同じ%w/wでは、同じ崩壊剤、流動促進剤、及び潤滑剤という賦形剤を備えているが、錠剤の残余の部分を構成するテナパノルと増量剤の%w/wは変化していた。
【0023】
表1(a)~1(m):カプセル及び錠剤のプロトタイプ成分、及び0.1N HCl溶液、pH5 FeSSIF培地、及びpH6.5 FaSSIF培地で認められた最大溶解率。
【表1-1】

【表1-2】

【表1-3】

【表1-4】

【表1-5】
【0024】
表1(a)~1(m)のカプセル及び錠剤製剤の溶解実験から、次の事項が認められた。
【0025】
図2に示したように、テナパノルが、許容可能な溶解を達成するには製剤化が必要であり、純テナパノルの約40%だけが、低pHで120分後に溶解した。pH5.0では、純テナパノルカプセルは、ごくわずかな溶解を示したが、同一のカプセルで流動促進剤、潤滑剤、及び増量剤(カプセルII)と混合したテナパノルは約85%の溶解を示した。
【0026】
-テナパノルは、低pHで、よく溶解した。
【0027】
-テナパノルHCl塩形態は、図1に示したように、遊離塩基と比較して、高いpHで優れた溶解を示した。このことは、高いpH5及び6.5でのプロトタイプII錠剤(図4aと図4b)、及びプロトタイプIII錠剤(図5)でも実証された。
【0028】
-テナパノルの大きな用量は溶解に悪影響を及ぼした。例えば、22.2%w/wの60mgプロトタイプIII錠は、pH5の培地でごくわずかな溶解を示したが、5%w/wの5mgプロトタイプIII錠は、遊離塩基バージョンで約40%、HClバージョンで約95%の溶解を示した。
【0029】
以上の結果から、プロトタイプIIIは、図5に示すように、プロトタイプIIと比較して優れた溶解特性を有するものと判断され、及び、さらなる開発と安定性研究に供された。プロトタイプI錠剤は、0.1N HCl(60分後に約95%)で合理的な溶解を示したが、図7に示すように、製剤の経年劣化によって溶解性は大幅に減少した。
【0030】
化学的安定性
プロトタイプIII錠剤製剤を、化学的安定性について研究した。5mgテナパノルプロトタイプIII錠剤製剤を、高温及び相対湿度の加速安定性条件下で保存した。2ヵ月後、製剤は著しく分解が進んでおり、不純物を含んでいた。逆相液体クロマトグラフィーで分析したところ、以下の不純物が同定された。
【化3】
【0031】
これらの研究を行うにあたって、酸素吸収剤も含む乾燥剤キャニスターの存在は、これらの条件下では2ヶ月間も化学的に安定であったのに対し、酸素吸収剤を使わない乾燥剤キャニスターの存在下では、同じ錠剤が、分解不純物含有量を有意に上昇していたことが認められた。図9を参照されたい。この知見に基づいて、抗酸化剤を含有するプロトタイプIII錠剤を作って、試験をした。また、テナパノル錠の化学的安定性に関する塩化物レベルの影響も調査した。表2及び表3は、高温及び相対湿度下で、1ヶ月、及び2.5月かけて開放保存した後のテナパ-B、テナパ-D、テナパ-N-オキシド、及びイソキノリニウムと表記した有機不純物の変化率を示す。
【表2】

【表3】
【0032】
抗酸化剤の効果
薬剤用量が小さく(6%w/w)、かつ、原薬の塩化物含有量が小さい(5.6%w/w)場合、抗酸化剤の存在は、安定性を改善するが、薬物用量が大きい(10%w/w)場合ほどの大きな安定化効果は認められなかった。例えば、0.2%没食子酸プロピルを含み、かつ薬物用量が小さいN3錠剤では、1か月後には0.35%の不純物増加を示したが、抗酸化物質を使用しない以外は同一であるN28錠剤では、不純物が2.23%増加した。しかしながら、10%w/wの薬物用量では、没食子酸プロピルを0.05%及び0.4%含むN26及びN27錠剤では、没食子酸プロピル不含のN2錠剤よりも改善が認められなかった。
【0033】
さらなる酸性化剤の効果
酸性化剤を添加すると、原薬塩化物含有量が化学量論的である場合に、化学的安定性を改善することが認められた。例えば、1%酒石酸を含むN5錠剤は、1か月後と2.5か月後に、不純物の増加は、それぞれ、0.51%及び2.23%の増加を示したが、酒石酸を含まないN28錠剤では、2.23%及び3.68%にまで高まった。しかしながら、超化学量論的塩化物含有量を有する原薬を錠剤にした場合、酸性化剤を添加しても、化学的安定性には影響を及ぼさなかった。例えば、塩化物含有量6.5%w/w、及び酒石酸1%の原薬を使用したN21錠は、酒石酸を含まない同じ錠剤製剤と同じく、1ヶ月後及び2.5ヶ月後には、同様の不純物の増加を示した。
【0034】
塩化物含有量の影響
テナパノル原薬での塩化物の化学量論的含有量、すなわち、テナパノルに対する2:1の比率は、5.82%w/wである。化学量論比を超える原薬塩化物含有量は、時間の経過とともに有機不純物の出現を減らすことが認められた。特に、6.4%の原薬塩化物含有量は、薬物用量、抗酸化剤、またはさらなる酸性化剤の有無に関係なく、顕著な安定性を示した。例えば、N28錠剤と同じ薬物用量を含むが(及び、抗酸化剤、またはさらなる酸性化剤を含まない)、原薬塩化物含有量が大きいN2錠剤は、1か月後でも総不純物の増加は認められず、2.5か月後には0.07%の増加しか示さなかった。一方で、原薬塩化物含有量の小さいN28錠剤は、1ヶ月後に2.23%、2.5ヶ月後に3.68%の増加をそれぞれ示した。抗酸化剤(N7錠とN21錠)または酸性化剤(N6錠とN20錠)を添加しても同様の効果が認められた。
【0035】
表1~3に示す結果は、2:1の化学量論を超える塩化物含有量を有する約6%w/w超のテナパノルHClを含有する錠剤製剤で、溶解特性及び安定性特性の最適なバランスが達成されたことを示している。2:1の化学量論は、原薬の5.82%の塩化物含有量に相当する。したがって、提示の態様は、活性成分及び医薬として許容可能な賦形剤として約6%w/w超のテナパノルビス-HClを含む医薬組成物であり、また、当該活性成分の総塩化物含有量は、5.82%を超える。一実施形態では、当該原薬の塩化物含有量は、約6.0%~約6.8%w/wである。一実施形態では、塩化物含有量は、約6.1%である。一実施形態では、塩化物含有量は、約6.2%である。一実施形態では、塩化物含有量は、約6.3%である。一実施形態では、塩化物含有量は、約6.4%である。一実施形態では、塩化物含有量は、約6.5%である。一実施形態では、塩化物含有量は、約6.6%である。一実施形態では、塩化物含有量は、約6.7%である。一実施形態では、塩化物含有量は、約6.8%である。一実施形態では、塩化物含有量は、約6.9%である。一実施形態では、塩化物含有量は、6.4%である。
【0036】
本発明の別の態様では、約6%w/w超のテナパノルのビスHCl塩を含む医薬製剤を提供しており、また、製剤でのHClの総量は、テナパノルに対するモル比で2倍を超える。一実施形態では、製剤中のHClの総量は、テナパノルに対するモル比の2.1~3倍である。一実施形態では、製剤中のHClの総量は、テナパノルに対するモル比の2.1倍である。一実施形態では、製剤中のHClの総量は、テナパノルに対するモル比の2.2倍である。一実施形態では、製剤中のHClの総量は、テナパノルに対するモル比の2.3倍である。一実施形態では、製剤中のHClの総量は、テナパノルに対するモル比の2.4倍である。一実施形態では、製剤中のHClの総量は、テナパノルに対するモル比の2.5倍である。一実施形態では、製剤中のHClの総量は、テナパノルに対するモル比の2.6倍である。一実施形態では、製剤中のHClの総量は、テナパノルに対するモル比の2.7倍である。一実施形態では、製剤中のHClの総量は、テナパノルに対するモル比の2.8倍である。一実施形態では、製剤中のHClの総量は、テナパノルに対するモル比の2.9倍である。一実施形態では、製剤中のHClの総量は、テナパノルに対するモル比の3倍である。
【0037】
本発明の医薬製剤の一実施形態では、テナパノルは、非晶質固体形態である。別の実施形態では、テナパノルは噴霧乾燥分散物である。テナパノルは、遊離塩基固体形態である。別の形態では、テナパノルは、ビス塩酸塩形態である。別の実施形態では、テナパノルは、ビス塩酸塩形態の非晶質固体である。
【0038】
本発明の医薬製剤の別の実施形態では、テナパノルは、約6%~10%w/wの量で存在する。別の実施形態では、テナパノルは、約6%w/wの量で存在する。別の実施形態では、テナパノルは、約7%w/wの量で存在する。別の実施形態では、テナパノルは、約8%w/wの量で存在する。別の実施形態では、テナパノルは、約9%w/wの量で存在する。別の実施形態では、テナパノルは、約10%w/wの量で存在する。別の実施形態では、テナパノルは、約11%w/wの量で存在する。別の実施形態では、テナパノルは、約12%w/wの量で存在する。別の実施形態では、テナパノルは、約13%w/wの量で存在する。別の形態では、テナパノルは、約14%w/wの量で存在する。別の実施形態では、テナパノルは、約15%w/wの量で存在する。別の実施形態では、テナパノルは、約20%w/wの量で存在する。別の実施形態では、テナパノルは、約25%w/wの量で存在する。
【0039】
別の実施形態では、本発明の医薬製剤は、酸性化剤をさらに含む。一実施形態では、酸性化剤は、約0.5%w/w~約3%w/wの量で存在する。一実施形態では、酸性化剤は、クエン酸、酒石酸、フマル酸、コハク酸、アスコルビン酸、アジピン酸、ソルビン酸、グルタル酸、及びリンゴ酸である。
【0040】
一実施形態では、酸性化剤は、酒石酸である。一実施形態では、酒石酸は、約0.5%w/w~約3%w/wの量で存在する。一実施形態では、酒石酸は、約1%w/wの量で存在する。一実施形態では、酒石酸は、1%w/wの量で存在する。
【0041】
別の実施形態では、本発明の医薬製剤は、抗酸化剤をさらに含む。一実施形態では、抗酸化剤を、アスコルビルパルミテート、ブチル化ヒドロキシアニソール、ブチル化ヒドロキシトルエン、ステアリン酸カルシウム、無水クエン酸、クエン酸一水和物、システイン、ピロ亜硫酸カリウム、没食子酸プロピル、ピロ亜硫酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム五水和物、ビタミンE、及び3,4-ジヒドロキシ安息香酸からなる群から選択する。一実施形態では、抗酸化剤は、没食子酸プロピルである。一実施形態では、抗酸化剤は、約0.01~約1.0%w/wの量で存在する。一実施形態では、抗酸化剤は、没食子酸プロピルである。一実施形態では、没食子酸プロピルは、約0.1~0.5%w/wの量で存在する。一実施形態では、没食子酸プロピルは、約0.05%w/wの量で存在する。一実施形態では、没食子酸プロピルは、約0.2%w/wの量で存在する。一実施形態では、没食子酸プロピルは、約0.4%w/wの量で存在する。一実施形態では、没食子酸プロピルは、0.2%w/wの量で存在する。
【0042】
別の実施形態では、本発明の医薬製剤は、崩壊剤をさらに含む。一実施形態では、崩壊剤を、クロスポビドン、クロスカルメロースナトリウム、デンプンナトリウム、グリコール酸塩、ゼラチン、セルロース、セルロース誘導体、及びスクロースからなる群から選択する。一実施形態では、崩壊剤は、セルロース誘導体である。一実施形態では、崩壊剤は、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース(L-HPC)、あるいは、別名、ヒドロキシプロピルメチルセルロースと称する。一実施形態では、崩壊剤は、約1%w/w~約20%w/wの量で存在する。一実施形態では、崩壊剤は、約5%w/w~約15%w/wの量で存在する。一実施形態では、崩壊剤は、約5%w/wの量で存在するヒドロキシプロピルメチルセルロースである。一実施形態では、ヒドロキシプロピルメチルセルロースは、5%w/wの量で存在する。
【0043】
別の実施形態では、本発明の医薬製剤は、流動促進剤をさらに含む。一実施形態では、流動促進剤は、ヒュームドシリカであり、あるいは、別名、コロイド状二酸化ケイ素と称する。一実施形態では、コロイド状二酸化ケイ素は、約0.1%w/w~約0.5%w/wの量で存在する。一実施形態では、コロイド状二酸化ケイ素は、約0.25%w/wの量で存在する。一実施形態では、コロイド状二酸化ケイ素は、約0.26%w/wの量で存在する。一実施形態では、コロイド状二酸化ケイ素は、0.25%w/wの量で存在する。一実施形態では、コロイド状二酸化ケイ素は、0.26%w/wの量で存在する。
【0044】
別の実施形態では、本発明の医薬製剤は、潤滑剤をさらに含む。一実施形態では、潤滑剤は、ステアリン酸である。一実施形態では、ステアリン酸は、約1%w/w~約3%w/wの量で存在する。一実施形態では、ステアリン酸は、約2%w/wの量で存在する。
【0045】
別の実施形態では、本発明の医薬製剤は、増量剤をさらに含む。一実施形態では、増量剤は、微結晶セルロースである。一実施形態では、微結晶セルロースは、テナパノルを含む残余の成分が関係する、錠剤の残りの割合を構成する量で存在する。
【0046】
本発明の医薬製剤の別の実施形態では、テナパノル原薬(APIまたは活性医薬成分)は、約18μm~約22μmの粒子径分布D50を有する。一実施形態では、粒子径分布D50は、約19μm~約21μmである。一実施形態では、粒子径分布D50は、約19μmである。一実施形態では、粒子径分布D50は、約20μmである。一実施形態では、粒子径分布D50は、約21μmである。
【0047】
別の実施形態では、本発明の医薬製剤は、錠剤形態である。一実施形態では、錠剤は、即効型フィルムコーティングを含む。一実施形態では、即効型フィルムコーティングは、ポリ酢酸ビニルを含む。
【0048】
一実施形態では、錠剤に含まれるテナパノルの量は、約10mgである。一実施形態では、錠剤に含まれるテナパノルの量は、約20mgである。一実施形態では、錠剤に含まれるテナパノルの量は、約30mgである。一実施形態では、錠剤に含まれるテナパノルの量は、約40mgである。一実施形態では、錠剤に含まれるテナパノルの量は、約50mgである。一実施形態では、錠剤に含まれるテナパノルの量は、約60mgである。一実施形態では、錠剤に含まれるテナパノルの量は、約70mgである。一実施形態では、錠剤に含まれるテナパノルの量は、約80mgである。一実施形態では、錠剤に含まれるテナパノルの量は、約90mgである。一実施形態では、錠剤に含まれるテナパノルの量は、約100mgである。
【0049】
特定の実施形態では、本発明の医薬製剤は、10%w/wの非晶質テナパノルビス-HCl、1.0%w/wの酒石酸、及び0.2%w/wの没食子酸プロピルを含む。別の実施形態では、医薬製剤は、5.0%w/wの低置換度ヒドロキシプロピルセルロースをさらに含む。別の実施形態では、医薬製剤は、0.26%w/wのコロイド状二酸化ケイ素をさらに含む。別の実施形態では、医薬製剤は、2.0%w/wのステアリン酸をさらに含む。別の実施形態、医薬製剤は、80.5%w/wの微結晶セルロースをさらに含む。
【0050】
別の特定の実施形態では、医薬製剤は、約10mgの塩酸テナパノル、約0.2mgの没食子酸プロピル、約1.0mgの酒石酸、約1.2mgのステアリン酸、約3.0mgの低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、約0.26mgのコロイド状二酸化ケイ素、及び約81mgの微結晶セルロースを含む。
【0051】
別の特定の実施形態では、医薬製剤は、10.64mgの塩酸テナパノル、0.20mgの没食子酸プロピル、1.00mgの酒石酸、1.20mgのステアリン酸、3.00mgの低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、0.26mgのコロイド状二酸化ケイ素、及び80.96mgの微結晶セルロースを含む。
【0052】
別の特定の実施形態では、医薬製剤は、約20mgの塩酸テナパノル、約0.4mgの没食子酸プロピル、約2.0mgの酒石酸、約2.4mgのステアリン酸、約6.0mgの低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、約0.52mgのコロイド状二酸化ケイ素、及び約162mgの微結晶セルロースを含む。
【0053】
別の特定の実施形態では、医薬製剤は、21.28mgの塩酸テナパノル、0.40mgの没食子酸プロピル、2.00mgの酒石酸、2.40mgのステアリン酸、6.00mgの低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、0.52mgのコロイド状二酸化ケイ素、及び161.92mgの微結晶セルロースを含む。
【0054】
別の特定の実施形態では、医薬製剤は、約30mgの塩酸テナパノル、約0.6mgの没食子酸プロピル、約3.0mgの酒石酸、約3.6mgのステアリン酸、約9.0mgの低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、約0.78mgのコロイド状二酸化ケイ素、及び約243mgの微結晶セルロースを含む。
【0055】
別の特定の実施形態では、医薬製剤は、31.92mgの塩酸テナパノル、0.60mgの没食子酸プロピル、3.00mgの酒石酸、3.60mgのステアリン酸、9.00mgの低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、0.78mgのコロイド状二酸化ケイ素、及び242.88mgの微結晶セルロースを含む。
【0056】
別の特定の実施形態では、医薬製剤は、約50mgの塩酸テナパノル、約1.0mgの没食子酸プロピル、約5.0mgの酒石酸、約10.0mgのステアリン酸、約25mgの低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、約1.3mgのコロイド状二酸化ケイ素、及び約405mgの微結晶セルロースを含む。
【0057】
別の特定の実施形態では、医薬製剤は、53.2mgの塩酸テナパノル、1.0mgの没食子酸プロピル、5.0mgの酒石酸、10.0mgのステアリン酸、25.0mgの低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、1.3mgのコロイド状二酸化ケイ素、及び404.8mgの微結晶セルロースを含む。
【実施例
【0058】
実施例1 テナパノルFB及びテナパノルHClの合成
【化4】
【0059】
2-(2-(2-アミノエトキシ)エトキシ)エタンアミン(30.4g、205.41mol、8.01当量)を含むジクロロメタン(1000mL)に、トリエチルアミン(5.2g、51.49mmol、2.01当量)を加えた。これに続いて、(S)-3-(6,8-ジクロロ-2-メチル-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-4-イル)ベンゼン-1-スルホニルクロリド塩酸塩(10g、23.42mmol、1.00当量;中間体244.1、及び実施例1に記載した手順から調製したもの)を、10℃で、1時間かけて、分けて添加した。得られた溶液を、室温で15分間撹拌した。得られた混合物を、3×500mLの生理食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウム上で乾燥し、真空下で濃縮した。残渣を以下の条件で、Flash-Prep-HPLCで精製した:カラム、C18シリカゲル;移動相、メタノール/水/TFA(4/100/0.0005)は、30分以内に8/10/0.0005に増加する;検出器、紫外線254nm。その結果、7.2g(42%)の中間体(SまたはR)-N-(2-(2-(2-アミノエトキシ)エトキシ)エチル)-3-(6,8-ジクロロ-2-メチル-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-4-イル)ベンゼンスルホンアミドビス(2,2,2-トリフルオロ酢酸塩)を白色固体として得た。
【0060】
上記した中間体(500mg、0.69mmol、1.00当量)を含むDCM(10mL)に、トリエチルアミン(138mg、1.37mmol、1.99当量)を添加し、続いて、1,4-ジイソシアナトブタン(48mg、0.34mmol、0.50当量)を分けて加えた。得られた溶液を、室温で、10分間撹拌し、次いで、粗テナパノル遊離塩基生成物(500mg)を、以下の条件で、Flash-Prep-HPLCで精製した:カラム、C18シリカゲル;移動相、メタノール/水=0.05/100、30分以内に90/100に増加する;検出器、紫外線254nm。
【0061】
テナパノル遊離塩基生成物に、0.2mLの塩酸(2N)を添加し、及び、溶液を凍結乾燥して、246.7mg(59%)の非晶質テナパノルビス-HClを白色固体として得た。1H-NMR(400MHz, CD3OD, ppm): 7.92 (d, J=7.2Hz,2H), 7.83 (s, 2H), 7.69-7.65 (m, 2H), 7.60-7.55 (m, 4H), 6.81 (s, 2H), 4.87-4.83(m, 4H), 4.54-4.50 (m, 2H), 3.94-3.91 (m, 2H), 3.69-3.49 (m, 18H), 3.39-3.32 (m,4H), 3.21-3.15 (m, 10H), 3.08-3.05 (m, 4H), 1.57 (s, 4H). LCMS (ES, m/z): 1145 [M-2HCl+1]+.
【0062】
実施例2 噴霧乾燥テナパノル遊離塩基による非晶質テナパノルビス-HClの調製
粗テナパノル遊離塩基を、メタノール/水の溶液に溶解し、次いで、テナパノル遊離塩基種結晶を添加して結晶化を誘導する。得られたスラリーを冷却し、及び、生成物を濾過して回収し、メタノール/水で洗浄し、次いで、乾燥して、純粋なテナパノル遊離塩基を得る。純粋な結晶性テナパノル遊離塩基の撹拌混合物に、メタノールにおいて、pHが≦0.6になるまで濃塩酸を添加する。溶液を噴霧乾燥し、レーザー回折によって粒子サイズを評価し、及び、必要に応じて噴霧乾燥パラメータを調整して、粒度分布d(v,50)≦20μm及びd(v,90):20~40μmを確保する。得られた粉末を二次乾燥してメタノール含有量≦3,000ppmを達成して、塩酸テナパノルを得る。
【0063】
実施例3 錠剤N1~N28の溶解実験
溶解は、USP2溶解装置(パドル)を使用して75rpm及び37℃で行った。溶解媒体(500mL)は、pH4のクエン酸緩衝液、イオン強度0.1Mを使用した。試料を関連する時点で回収し、及び、溶解量を逆相液体クロマトグラフィー勾配システムで分析し、及び、完全に特徴決定した参照標準に対する210nmでのUV応答によって定量した。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
【国際調査報告】