(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-18
(54)【発明の名称】集中分散型機能材料層を有するパティキュレートフィルター、及びその調製方法
(51)【国際特許分類】
B01J 35/04 20060101AFI20231211BHJP
B01J 37/02 20060101ALI20231211BHJP
B01J 23/63 20060101ALI20231211BHJP
B01D 53/94 20060101ALI20231211BHJP
B01D 46/00 20220101ALI20231211BHJP
F01N 3/035 20060101ALI20231211BHJP
【FI】
B01J35/04 301L
B01J37/02 301Z
B01J23/63 A ZAB
B01D53/94 222
B01D53/94 245
B01D53/94 280
B01D46/00 302
F01N3/035 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023534137
(86)(22)【出願日】2021-12-01
(85)【翻訳文提出日】2023-08-01
(86)【国際出願番号】 US2021061319
(87)【国際公開番号】W WO2022119874
(87)【国際公開日】2022-06-09
(31)【優先権主張番号】PCT/CN2020/133915
(32)【優先日】2020-12-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】505470786
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【氏名又は名称】江藤 聡明
(74)【代理人】
【識別番号】100167106
【氏名又は名称】倉脇 明子
(74)【代理人】
【識別番号】100194135
【氏名又は名称】山口 修
(74)【代理人】
【識別番号】100206069
【氏名又は名称】稲垣 謙司
(74)【代理人】
【識別番号】100185915
【氏名又は名称】長山 弘典
(72)【発明者】
【氏名】チヤン,チュン コン
(72)【発明者】
【氏名】チー,ユン フェイ
(72)【発明者】
【氏名】ヴァルツ,フロリアン
(72)【発明者】
【氏名】ジームント,シュテファン
(72)【発明者】
【氏名】シェン,イエ
(72)【発明者】
【氏名】ジアニ,アッティリオ
(72)【発明者】
【氏名】シュミッツ,トマス
(72)【発明者】
【氏名】イン,シヤオ ミン
【テーマコード(参考)】
3G190
4D058
4D148
4G169
【Fターム(参考)】
3G190BA17
3G190BA26
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4G169FB80
(57)【要約】
本開示は、内燃機関からの排ガスを処理するためのパティキュレートフィルターに関し、ここで、パティキュレートフィルターが機能材料層を含み、パティキュレートフィルターの中心軸全体の周囲であり、前記パティキュレートフィルターの総体積の11.1体積%を占める領域中の機能材料層の量が、前記機能材料層の総質量に基づいて13~40質量%の範囲である。本開示は、パティキュレートフィルターを調製する方法、及び内燃機関からの排気ガスを処理する方法に関する。本発明によるパティキュレートフィルターは、半径方向で集中分布型機能材料層を有し、優れた濾過効率及び低い背圧を示す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関からの排気ガスを処理するためのパティキュレートフィルターであって、前記パティキュレートフィルターが機能材料層を含み、前記パティキュレートフィルターの中心軸全体の周囲であり、前記パティキュレートフィルターの総体積の11.1体積%を占める領域中の機能材料層の量が、前記機能材料層の総質量に基づいて13~40質量%の範囲である、パティキュレートフィルター。
【請求項2】
前記パティキュレートフィルターの中心軸全体の周囲であり、前記パティキュレートフィルターの総体積の11.1体積%を占める領域中の前記機能材料層の量が、前記機能材料層の総質量に基づいて15~30質量%の範囲である、請求項1に記載のパティキュレートフィルター。
【請求項3】
前記パティキュレートフィルターの中心軸全体の周囲であり、前記パティキュレートフィルターの総体積の25体積%を占める領域中の前記機能材料層の量が、前記機能材料層の総質量に基づいて、28~60質量%、好ましくは31~55質量%の範囲である、請求項1又は2に記載のパティキュレートフィルター。
【請求項4】
前記パティキュレートフィルターの中心軸全体の周囲であり、前記パティキュレートフィルターの総体積の44.4体積%を占める領域中の前記機能材料層の量が、前記機能材料層の総質量に基づいて、40~90質量%、好ましくは56~80質量%の範囲である、請求項1から3のいずれか一項に記載のパティキュレートフィルター。
【請求項5】
前記パティキュレートフィルターの中心軸全体の周囲であり、前記パティキュレートフィルターの総体積の11.1体積%を占める領域中の機能材料層の含有量が、前記パティキュレートフィルターの中心軸全体の周囲であり、前記パティキュレートフィルターの総体積の25体積%を占める領域中の前記機能材料層の含有量より高い、請求項1から4のいずれか一項に記載のパティキュレートフィルター。
【請求項6】
前記パティキュレートフィルターの中心軸全体の周囲であり、前記パティキュレートフィルターの総体積の25体積%を占める領域中の前記機能材料層の含有量が、前記パティキュレートフィルターの中心軸全体の周囲であり、前記パティキュレートフィルターの総体積の44.4体積%を占める領域中の前記機能材料層の含有量より高い、請求項1から5のいずれか一項に記載のパティキュレートフィルター。
【請求項7】
前記パティキュレートフィルターの中心軸全体の周囲であり、前記パティキュレートフィルターの総体積の44.4体積%を占める領域中の前記機能材料層の含有量が、前記パティキュレートフィルターの残余の領域中の前記機能材料層の含有量より高い、請求項1から6のいずれか一項に記載のパティキュレートフィルター。
【請求項8】
フィルターが入口側及び出口側を有し、前記機能材料層が、前記パティキュレートフィルターの入口側、出口側、又は両側にコーティングされている、請求項1から7のいずれか一項に記載のパティキュレートフィルター。
【請求項9】
前記機能材料層の平均担持量が、0.5~20g/L、好ましくは1~10g/L、より好ましくは1.5~7.5g/L又は1.5~4.5g/Lの範囲である、請求項1から8のいずれか一項に記載のパティキュレートフィルター。
【請求項10】
前記機能材料層が少なくとも1種の無機材料を含み、前記無機材料が無機酸化物及び無機塩から選択される、請求項1から9のいずれか一項に記載のパティキュレートフィルター。
【請求項11】
前記無機材料が、アルミナ、ジルコニア、セリア、シリカ、チタニア、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化マンガン、酸化カルシウム、シリケートゼオライト、アルミノシリケートゼオライト、セリア以外の希土類金属酸化物、Al、Zr、Ti、Si及びCeの2種以上を含む混合酸化物、セリウムジルコニウム混合酸化物、水和アルミナ、炭酸カルシウム、及び炭酸亜鉛、好ましくはアルミナから選択される、請求項10に記載のパティキュレートフィルター。
【請求項12】
前記無機材料が微粒子形態であり、好ましくは、無機材料が、0.1~50μm、好ましくは1~20μmのD90、より好ましくは3~10μmのD90を有する、請求項10又は11に記載のパティキュレートフィルター。
【請求項13】
前記パティキュレートフィルターが触媒ウォッシュコートをさらに含み、前記触媒ウォッシュコートが、選択的触媒還元(SCR)触媒、ディーゼル酸化触媒(DOC)、三元変換(TWC)触媒、AMOx触媒、NOxトラップ、NOx吸収触媒、炭化水素トラップ触媒のうちの1つ以上を含む、請求項1から12のいずれか一項に記載のパティキュレートフィルター。
【請求項14】
前記触媒ウォッシュコートが、前記機能材料層の適用前に前記パティキュレートフィルターに適用される、請求項13に記載のパティキュレートフィルター。
【請求項15】
i)フィルターを提供する工程、及び
ii)フィルターの片側を通してガスキャリアを介して、微粒子形態の機能材料を前記フィルターにコーティングする工程
を含む、内燃機関からの排気ガスを処理するためのパティキュレートフィルターを調製する方法であって、
工程ii)の前及び/又は後に、前記フィルターの前記側面の縁部分がカバーで覆われ、前記フィルターの前記側面の覆われていない部分を通してガスキャリアを介して微粒子形態の前記機能材料をコーティングし、その後カバーを取り外す、方法。
【請求項16】
前記フィルターの前記側面の覆われていない表面積が、前記フィルターの前記側面の表面積の20~80%、好ましくは30~70%である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記カバーが、前記フィルターの前記側面に同軸に配置される、請求項15又は16に記載の方法。
【請求項18】
前記パティキュレートフィルターが請求項1から14のいずれか一項に記載のパティキュレートフィルターである、請求項15から17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
内燃機関からの排気ガスを、請求項1から14のいずれか一項に記載のパティキュレートフィルター又は請求項15から18のいずれか一項に記載の方法によって調製されたパティキュレートフィルターに流すことを含む、内燃機関からの排気ガスを処理する方法。
【請求項20】
前記排気ガスが、未燃焼炭化水素、一酸化炭素、窒素酸化物、及び粒子状物質を含む、請求項19に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関からの排気ガスを処理するためのパティキュレートフィルターに関し、ここで、このパティキュレートフィルターが集中分散型機能材料層を有する。本発明は、このパティキュレートフィルターの調製方法、及び内燃機関からの排気ガスの処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関からの排気ガスは、窒素、水蒸気、二酸化炭素を比較的多く含有しているが、不完全燃焼からの一酸化炭素、燃え残った燃料からの炭化水素、過度燃焼の温度からの窒素酸化物(NOx)、及び粒子状物質(PM)などの有害及び/又は有毒の物質も比較的少量で含有する。
【0003】
特定の内燃機関、例えばリーンバーンエンジン、ディーゼルエンジン、天然ガスエンジン、発電所、焼却炉、及びガソリンエンジンは、かなりの量の煤煙及び他の粒子状物質を含む排気ガスを発生する傾向がある。通常、粒子状物質の排出は、粒子含有排気ガスをパティキュレートフィルターに通すことによって改善することができる。
【0004】
ディーゼルパティキュレートフィルターは、ディーゼルエンジンの排気ガスから炭素煤煙を効率よく除去することが証明されている。最も広く使用されているディーゼルパティキュレートフィルターはウォールフローフィルターであり、このフィルターが、フィルター本体の多孔質壁に煤煙を捕捉することによりディーゼル排気ガスを濾過する。ウォールフローフィルターは、排気ガスの流れを大きく妨げることなく、煤煙をほぼ完全に濾過できるように設計されている。
【0005】
煤煙の層がフィルターの入口側の表面に集まると、煤煙層の透過性が低下するため、フィルター全体に圧力降下が生じ、エンジンに対するフィルターの背圧が徐々に上昇し、エンジンの働きが悪くなり、エンジンの運転効率に影響する。最終的には、圧力降下が許容できなくなり、フィルターの再生が必要になる。
【0006】
ガソリンエンジンの粒子放出は、Euro6(2014年)基準を含む規制の対象となっている。一部のガソリン直噴(GDI)エンジンは、その運転方式によって微粒子が生成するものが開発されている。ガソリンエンジンの後処理装置は、粒子物質の基準を満たす必要がある。ディーゼルの希薄燃焼エンジンから生成する粒子とは対照的に、GDIエンジンのようなガソリンエンジンから生成する粒子は、より細かく、より少ない量である傾向がある。これは、ガソリンエンジンと比較して、ディーゼルエンジンの燃焼条件が異なるためである。例えば、ガソリンエンジンはディーゼルエンジンよりも高温で運転される。また、ガソリンエンジンの排出ガスとディーゼルエンジンの排出ガスでは、炭化水素成分が異なる。
【0007】
自動車メーカーは、ガソリンパティキュレートフィルター(GPF)に高いフレッシュ濾過効率と低い背圧の両方を要求している。しかしながら、エンジンから排出される粒子状物質の量はほとんどなく、ガソリンエンジンからの排気ガスの温度が高いため、テスト前の後処理システムのプレコンディショニング中に生成される煤煙ケーキは多くの場合無視できる。この煤煙ケーキは、ディーゼルパティキュレートフィルターの高いろ過効率の少なくとも一因であり、ディーゼルエンジンでは、10~20kmの走行で有効な煤煙ケーキを形成することができる。この効果はガソリンエンジンでは一般的に達成できないため、目標とするフレッシュ濾過効率は一般的に高いウォッシュコート増量を使用することで達成され、これによりフィルターの圧力損失が増加する。この検討は、OEMでのライン終了テストの要件を満たすためのフレッシュフィルターにのみ適用される。
【0008】
2016年12月23日、中華人民共和国環境保護部(MEP)は、中国5号排出ガス基準よりもはるかに厳しい、小型車両からの排出ガスに関する中国6号排出ガス基準値及び測定方法(GB18352.6-2016;以下、中国6号とも呼ばれる)の最終法規を公表した。特に、中国6b号では、粒子状物質(PM)の規制が組み込まれ、オンボード診断(OBD)の要件が採用されている。さらに、乗用車等の国際調和試験サイクル(WLTC;World Harmonized Light-duty Vehicle Test Cycle)の下で車両をテストすることが実施されている。WLTCでは、急加速及び長時間の高速走行要件が含まれており、高い出力が求められるため、リッチ(ラムダ<1)又はディープリッチ(ラムダ<0.8)の条件下で長時間(例えば5秒超)「オープンループ」状態(燃料パドルを全開にする必要があるため)になる可能性があった。
【0009】
国民及び政府は移動発生源から排出される粒子状物質について真剣に懸念しているため、優れた濾過効率及び低い背圧を有する改良されたパティキュレートフィルターを提供する必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、優れた濾過効率及び低背圧を示す、半径方向に集中分布した機能材料層(functional material layer)を有するパティキュレートフィルターを提供することである。
【0011】
本発明の他の目的は、内燃機関からの排気ガスを処理するためのパティキュレートフィルターを調製する方法を提供することである。
【0012】
本発明のさらなる目的は、内燃機関からの排気ガスを処理するための方法を提供することであり、この方法は、内燃機関からの排気ガスを本発明によるパティキュレートフィルターに流すことを含んでいる。
【課題を解決するための手段】
【0013】
驚いたことには、上記課題は、以下の実施形態により達成できることが見出された:
1.内燃機関からの排気ガスを処理するためのパティキュレートフィルターであって、前記パティキュレートフィルターが機能材料層を含み、前記パティキュレートフィルターの中心軸全体の周囲であり、前記パティキュレートフィルターの総体積の11.1体積%を占める領域中の機能材料層の量が、前記機能材料層の総質量に基づいて13~40質量%の範囲である、パティキュレートフィルター。
【0014】
2.前記パティキュレートフィルターの中心軸全体の周囲であり、前記パティキュレートフィルターの総体積の11.1体積%を占める領域中の前記機能材料層の量が、前記機能材料層の総質量に基づいて15~30質量%の範囲である、請求項1に記載のパティキュレートフィルター。
【0015】
3.前記パティキュレートフィルターの中心軸全体の周囲であり、前記パティキュレートフィルターの総体積の25体積%を占める領域中の前記機能材料層の量が、前記機能材料層の総質量に基づいて、28~60質量%、好ましくは31~55質量%の範囲である、請求項1又は2に記載のパティキュレートフィルター。
【0016】
4.前記パティキュレートフィルターの中心軸全体の周囲であり、前記パティキュレートフィルターの総体積の44.4体積%を占める領域中の前記機能材料層の量が、前記機能材料層の総質量に基づいて、40~90質量%、好ましくは56~80質量%の範囲である、請求項1から3のいずれか一項に記載のパティキュレートフィルター。
【0017】
5.前記パティキュレートフィルターの中心軸全体の周囲であり、前記パティキュレートフィルターの総体積の11.1体積%を占める領域中の機能材料層の含有量が、前記パティキュレートフィルターの中心軸全体の周囲であり、前記パティキュレートフィルターの総体積の25体積%を占める領域中の前記機能材料層の含有量より高い、請求項1から4のいずれか一項に記載のパティキュレートフィルター。
【0018】
6.前記パティキュレートフィルターの中心軸全体の周囲であり、前記パティキュレートフィルターの総体積の25体積%を占める領域中の前記機能材料層の含有量が、前記パティキュレートフィルターの中心軸全体の周囲であり、前記パティキュレートフィルターの総体積の44.4体積%を占める領域中の前記機能材料層の含有量より高い、請求項1から5のいずれか一項に記載のパティキュレートフィルター。
【0019】
7.前記パティキュレートフィルターの中心軸全体の周囲であり、前記パティキュレートフィルターの総体積の44.4体積%を占める領域中の前記機能材料層の含有量が、前記パティキュレートフィルターの残余の領域中の前記機能材料層の含有量より高い、請求項1から6のいずれか一項に記載のパティキュレートフィルター。
【0020】
8.フィルターが入口側及び出口側を有し、前記機能材料層が、前記パティキュレートフィルターの入口側、出口側、又は両側にコーティングされている、請求項1から7のいずれか一項に記載のパティキュレートフィルター。
【0021】
9.前記機能材料層の平均担持量が、0.5~20g/L、好ましくは1~10g/L、より好ましくは1.5~7.5g/L又は1.5~4.5g/Lの範囲である、請求項1から8のいずれか一項に記載のパティキュレートフィルター。
【0022】
10.前記機能材料層が少なくとも1種の無機材料を含み、前記無機材料が無機酸化物及び無機塩から選択される、請求項1から9のいずれか一項に記載のパティキュレートフィルター。
【0023】
11.前記無機材料が、アルミナ、ジルコニア、セリア、シリカ、チタニア、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化マンガン、酸化カルシウム、シリケートゼオライト、アルミノシリケートゼオライト、セリア以外の希土類金属酸化物、Al、Zr、Ti、Si及びCeの2種以上を含む混合酸化物、セリウムジルコニウム混合酸化物、水和アルミナ、炭酸カルシウム、及び炭酸亜鉛、好ましくはアルミナから選択される、請求項10に記載のパティキュレートフィルター。
【0024】
12.前記無機材料が微粒子形態であり、好ましくは、無機材料が、0.1~50μm、好ましくは1~20μmのD90、より好ましくは3~10μmのD90を有する、請求項10又は11に記載のパティキュレートフィルター。
【0025】
13.前記パティキュレートフィルターが触媒ウォッシュコートをさらに含み、前記触媒ウォッシュコートが、選択的触媒還元(SCR)触媒、ディーゼル酸化触媒(DOC)、三元変換(TWC)触媒、AMOx触媒、NOxトラップ、NOx吸収触媒、炭化水素トラップ触媒のうちの1つ以上を含む、請求項1から12のいずれか一項に記載のパティキュレートフィルター。
【0026】
14.前記触媒ウォッシュコートが、前記機能材料層の適用前に前記パティキュレートフィルターに適用される、請求項13に記載のパティキュレートフィルター。
【0027】
15.i)フィルターを提供する工程、及び
ii)フィルターの片側を通してガスキャリアを介して、微粒子形態の機能材料を前記フィルターにコーティングする工程
を含む、内燃機関からの排気ガスを処理するためのパティキュレートフィルターを調製する方法であって、
工程ii)の前及び/又は後に、前記フィルターの前記側面の縁部分がカバーで覆われ、前記フィルターの前記側面の覆われていない部分を通してガスキャリアを介して微粒子形態の前記機能材料をコーティングし、その後カバーを取り外す、方法。
【0028】
16.前記フィルターの前記側面の覆われていない表面積が、前記フィルターの前記側面の表面積の20~80%、好ましくは30~70%である、請求項15に記載の方法。
【0029】
17.前記カバーが、前記フィルターの前記側面に同軸に配置される、請求項15又は16に記載の方法。
【0030】
18.前記パティキュレートフィルターが請求項1から14のいずれか一項に記載のパティキュレートフィルターである、請求項15から17のいずれか一項に記載の方法。
【0031】
19.内燃機関からの排気ガスを、請求項1から14のいずれか一項に記載のパティキュレートフィルター又は請求項15から18のいずれか一項に記載の方法によって調製されたパティキュレートフィルターに流すことを含む、内燃機関からの排気ガスを処理する方法。
【0032】
20.前記排気ガスが、未燃焼炭化水素、一酸化炭素、窒素酸化物、及び粒子状物質を含む、請求項19に記載の方法。
【0033】
本発明によるパティキュレートフィルターは、半径方向で集中分布型機能材料層を有し、機能材料層の担持量が低い場合でも優れた濾過効率を示し、さらに低背圧を示す。さらに、本発明による方法は、径方向で集中分布型機能材料層を有するパティキュレートフィルターを、非常に簡単かつ効率的に製造することを可能にした。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1】
図1(a)は、例示的なウォールフローフィルターを示す。
図1(b)は、例示的なウォールフローフィルターを示す。
【
図2】
図2は、実施例1、2、3で調製したパティキュレートフィルターの背圧特性を示す図である。
【
図3】
図3は、実施例1、2、3で調製したパティキュレートフィルターのテールパイプ(TP)PN放出を示す図である。
【
図4】
図4は、実施例7、8、9、10で調製したパティキュレートフィルターの背圧特性を示す図である。
【
図5】
図5は、実施例7、8、9、10で調製したパティキュレートフィルターのテールパイプ(TP)PN放出を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
未定義の冠詞「a」、「an」、「the」は、当該冠詞に続く用語によって指定される種の1つ以上を意味する。
【0036】
本開示の文脈では、特徴について言及された任意の具体的な値(終点としての範囲に言及された具体的な値を含む)を再結合して新しい範囲を形成することができる。
【0037】
本開示の文脈において、そのように定義された各態様は、反対のことが明確に示されない限り、任意の他の態様又は複数の態様と組み合わせることができる。特に、好ましい又は有利であると示された任意の特徴は、好ましい又は有利であると示された任意の他の特徴又は複数の特徴と組み合わせることができる。
【0038】
本発明の一態様は、内燃機関からの排気ガスを処理するためのパティキュレートフィルターに関し、ここで、このパティキュレートフィルターが機能材料層を含み、パティキュレートフィルターの中心軸全体の周囲であり、パティキュレートフィルターの総体積の11.1体積%を占める領域中の機能材料層の量が、機能材料層の総質量に基づいて13~40質量%の範囲である。
【0039】
典型的には、パティキュレートフィルターは多孔質基材で形成される。多孔質基材は、セラミック材料、例えば、コージェライト、炭化ケイ素、窒化ケイ素、ジルコニア、ムライト、スポジュメン、アルミナ-シリカ-マグネシア、ケイ酸ジルコニウム、及び/又はチタン酸アルミニウム、典型的にはコージェライト又は炭化ケイ素を含んでもよい。多孔質基材は、内燃機関の排出ガス処理システムにおいて典型的に使用されるタイプの多孔質基材であってよい。
【0040】
内燃機関は、リーンバーンエンジン、ディーゼルエンジン、天然ガスエンジン、発電所、焼却炉、又はガソリンエンジンであってもよい。
【0041】
多孔質基材は、従来のハニカム構造を示すことができる。フィルターは、従来の「スルーフローフィルター」の形態をとることができる。あるいは、フィルターは、従来の「ウォールフローフィルタ」(WFF)の形態をとることができる。このようなフィルターは、当技術分野で知られている。
【0042】
パティキュレートフィルターは、好ましくは、ウォールフローフィルターである。
図1(a)及び
図1(b)を参照すると、例示的なウォールフローフィルターが提供される。ウォールフローフィルターは、排気ガス(13)(粒子状物質を含む)の流れを、多孔質材料で形成された壁に強制的に通過させることによって機能する。
【0043】
典型的には、ウォールフローフィルターは、その間に長手方向を規定する第1面及び第2面を有する。使用時には、第1面及び第2面のうちの一方は、排気ガス(13)のための入口面となり、他方は、処理された排気ガス(14)のための出口面となる。従来のウォールフローフィルターは、長手方向に延びる第1及び第2の複数の流路(channels)を有する。第1の複数の流路(11)は、入口面(01)で開いており、出口面(02)で閉じている。第2の複数のチャネル(12)は、出口面(02)で開いており、入口面(01)で閉じている。流路は、好ましくは、流路間で一定の壁厚を提供するために、互いに平行である。その結果、入口面から複数の流路のうちの1つに入ったガスは、入口面(21)から出口面(22)へ流路壁(15)を通って他の複数の流路に拡散せずにモノリスを出ることができない。流路は、流路の開放端にシーラント材料を導入することで閉じられる。好ましくは、第1の複数の流路の数は、第2の複数の流路の数と等しく、それぞれの複数の流路は、モノリス全体に均等に分布している。好ましくは、長手方向に直交する面内において、ウォールフローフィルターは、1平方インチあたり100~500個、好ましくは200~400個の流路を有する。例えば、入口面(01)において、開放チャネルおよび閉鎖チャネルの密度は、1平方インチあたり200~400個の流路である。流路は、長方形、正方形、円形、楕円形、三角形、六角形、又は他の多角形の形状である断面を有することができる。
【0044】
パティキュレートフィルターの中心軸全体の周囲であり、パティキュレートフィルターの総体積の11.1体積%を占める領域中の機能材料層の量は、機能材料層の総質量に基づいて、13~40質量%の範囲、例えば14質量%、15質量%、16質量%、18質量%、20質量%、22質量%、25質量%、28質量%、30質量%、32質量%、35質量%、38質量%である。上記のように、特徴について言及された具体的な値(終点としての範囲に言及された具体的な値を含む)は、再結合して新しい範囲を形成することができ、例えば、13~35質量%又は16~25質量%の新しい範囲が挙げられる。
【0045】
好ましい実施形態において、パティキュレートフィルターの中心軸全体の周囲であり、パティキュレートフィルターの総体積の11.1体積%を占める領域中の前記機能材料層の量は、機能材料層の総質量に基づいて15~30質量%の範囲である。
【0046】
本発明の文脈では、「中心軸全体の周囲である領域」とは、当該領域がフィルターと同じ中心軸を共有していることを意味する。Rの半径及びHの高さを有する円柱(1)の形態のパティキュレートフィルターを例とすれば、「パティキュレートフィルターの中心軸全体の周囲であり、パティキュレートフィルターの総体積の11.1体積%を占める領域」という表現は、円柱(1)と同じ中心軸を共有し、1/3のRの半径及びHの高さを有する小さな円柱を意味する。また、辺の長さがAの立方体(1)のパティキュレートフィルターの場合、「パティキュレートフィルターの中心軸全体の周囲であり、パティキュレートフィルターの総体積の11.1体積%を占める領域」という表現は、立方体(1)と同じ中心軸を共有する小さな立方体を指し、ここで、その立方体の長さと幅は両方とも1/3のAであり、その高さはAである。
【0047】
パティキュレートフィルターの中心軸全体の周囲の領域における機能材料層の量は、元素分析により決定することができる。例えば、まず、規定されたサンプル領域の元素分析により、機能材料層の半径方向の分布を決定することができる。次に、機能材料の半径方向の分布に応じて、その領域における機能材料層の量を決定することができる。
【0048】
例えば、フィルターの規定された半径内のコアをフィルターから採取することができる。その後、Malvern Panalytical Axios FAST波長分散型蛍光X線(XRF)分光計で分析することができる。
【0049】
本発明によれば、パティキュレートフィルターの中心軸全体の周囲であり、パティキュレートフィルターの総体積の25体積%を占める領域中の機能材料層の量は、機能材料層の総質量に基づいて、28~60質量%、例えば30質量%、32質量%、35質量%、40質量%、45質量%、50質量%、55質量%、好ましくは31~55質量%の範囲であることができる。
【0050】
パティキュレートフィルターがRの半径及びHの高さを有する円柱(1)の形態である場合、パティキュレートフィルターの中心軸全体の周囲であり、パティキュレートフィルターの総体積の25体積%を占める領域は、円柱(1)と同じ中心軸を共有し、1/2のRの半径及びHの高さを有する小円柱に対応する。パティキュレートフィルターが、辺の長さがAの立方体(1)の形態である場合、パティキュレートフィルターの中心軸全体の周囲であり、パティキュレートフィルターの総体積の25体積%を占める領域は、立方体(1)と同じ中心軸を共有する小さな立方体に対応し、ここで、その立方体の長さと幅は両方とも1/2のAであり、その高さはAである。
【0051】
好ましい実施形態において、パティキュレートフィルターの中心軸全体の周囲であり、パティキュレートフィルターの総体積の44.4体積%を占める領域中の機能材料層の量は、機能材料層の総質量に基づいて、40~90質量%の範囲、例えば45質量%、50質量%、55質量%、60質量%、65質量%、70質量%、75質量%、80質量%、85質量%、好ましくは56~80質量%の範囲である。
【0052】
パティキュレートフィルターがRの半径及びHの高さを有する円柱(1)の形態である場合、したがって、パティキュレートフィルターの中心軸全体の周囲であり、パティキュレートフィルターの総体積の44.4体積%を占める領域は、円柱(1)と同じ中心軸を共有し、2/3のRの半径及びHの高さを有する小円柱に対応する。パティキュレートフィルターが、辺の長さがAの立方体(1)の形態である場合、パティキュレートフィルターの中心軸全体の周囲であり、パティキュレートフィルターの総体積の44.4体積%を占める領域は、立方体(1)と同じ中心軸を共有する小さな立方体に対応し、ここで、その立方体の長さと幅は両方とも2/3のAであり、その高さはAである。
【0053】
好ましい実施形態によれば、パティキュレートフィルターの中心軸全体の周囲であり、パティキュレートフィルターの総体積の11.1体積%を占める領域中の機能材料層の含有量は、パティキュレートフィルターの中心軸全体の周囲であり、パティキュレートフィルターの総体積の25体積%を占める領域中の機能材料層の含有量より高い。
【0054】
好ましい実施形態によれば、パティキュレートフィルターの中心軸全体の周囲であり、パティキュレートフィルターの総体積の25体積%を占める中の機能材料層の含有量は、パティキュレートフィルターの中心軸全体の周囲であり、パティキュレートフィルターの総体積の44.4体積%を占める領域中の機能材料層の含有量より高い。
【0055】
さらに好ましい実施形態によれば、パティキュレートフィルターの中心軸全体の周囲であり、パティキュレートフィルターの総体積の44.4体積%を占める領域における機能材料層の含有量は、パティキュレートフィルターの残余の領域中の機能材料層の含有量よりも高い。
【0056】
領域中の機能材料層の含有量は、その領域における機能材料層の量をその領域の体積で除した値で算出することができる。
【0057】
一実施形態では、フィルターは入口側及び出口側を有し、機能材料層は、パティキュレートフィルターの入口側、出口側、又は両側にコーティングされている。
【0058】
パティキュレートフィルターにおける機能材料層の平均担持量は、0.5~20g/L、例えば、1g/L、1.5g/L、2g/L、2.5g/L、3g/L、3.5g/L、4g/L、4.5g/L、5g/L、8g/L、10g/L、15g/L、18g/L、好ましくは1~10g/L、より好ましくは1.5~7.5g/L又は1.5~4.5g/Lの範囲であることができる。
【0059】
本発明によれば、機能材料層は、少なくとも1種の無機材料を含み、好ましくは、無機材料は、無機酸化物及び無機塩から選択される。
【0060】
無機材料は、アルミナ、ジルコニア、セリア、シリカ、チタニア、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化マンガン、酸化カルシウム、シリケートゼオライト、アルミノシリケートゼオライト、セリア以外の希土類金属酸化物、Al、Zr、Ti、Si及びCeの2種以上を含む混合酸化物、セリウムジルコニウム混合酸化物、水和アルミナ、炭酸カルシウム、炭酸亜鉛、好ましくはアルミナ、例えばガンマアルミナから選択することができる。
【0061】
一実施形態において、無機材料は、0.1~50μm、例えば0.2、0.5、0.8、1、1.5、2、3、4、5、6、7、8、9、10、12、15、18、20、25、30、35、40、45μm、好ましくは1~20μmのD90、より好ましくは3~10μm、例えば4、5、6、7、8又は9μmのD90を有する。
【0062】
一実施形態において、無機材料は、1.2~8μm、好ましくは1.8~6μm、例えば、2、3、4又は5μmのD50を有する。
【0063】
一実施形態において、無機材料は、0.5~2.2μm、好ましくは0.8~1.5μmのD10を有する。
【0064】
「D90」、「D50」及び「D10」は、累積粒径分布において、小粒径側からの累積質量が90%、50%及び10%に達する点を指す通常の意味である。D90は、それぞれ、粒径分布を測定することによって決定した値である。粒径分布は、レーザー回折式粒径分布測定装置を用いて測定される。
【0065】
一実施形態において、無機材料は、77K窒素吸着によって特徴づけられる、100~250m2・g-1の範囲、好ましくは120~200m2・g-1の範囲の高いBET比表面積を有する。好ましい実施形態において、無機材料は、1000℃空気中で4時間焼成した後、50~120m2・g-1、好ましくは60~95m2・g-1の範囲の、77K窒素吸着によって特徴づけられる比表面積を有する。
【0066】
一実施形態において、機能材料層は、好ましくは白金(Pt)、パラジウム(Pd)及びロジウム(Rh)、及びそれらの混合物からなる群から選択される白金族金属(PGM)をさらに含む。PGMは、排気ガス中のNOx、CO及び炭化水素をN2、CO2及びH2Oに変換し、パティキュレートフィルター上に捕捉された粒子状物質の酸化を引き起こすために触媒的に有効な量で存在する。好ましい実施形態において、機能材料層は、PGM含有無機材料を含む。PGM含有無機材料は、PGM含有液体、例えばアミン錯体溶液又はPGMの硝酸塩(例えば硝酸白金、硝酸パラジウム、及び硝酸ロジウム)の溶液を無機材料に含浸させることにより調製することができる。含浸後、混合物を焼成することができる。
【0067】
一実施形態において、パティキュレートフィルターは、触媒ウォッシュコートをさらに含む。触媒ウォッシュコートの使用は、例えば、未燃炭化水素、一酸化炭素及び/又は窒素酸化物などの内燃排気ガスの成分を処理する役割を果たし得る。触媒ウォッシュコートは、選択的触媒還元(SCR)触媒、ディーゼル酸化触媒(DOC)、三元変換(TWC)触媒、AMOx触媒、NOxトラップ、NOx吸収触媒、炭化水素トラップ触媒のうちの1つ以上を含む。触媒ウォッシュコートは、機能材料層の適用前にパティキュレートフィルターに適用される。触媒ウォッシュコートは、パティキュレートフィルター上の別個のコーティングとして存在することができ、又は触媒ウォッシュコートはパティキュレートフィルターと一体であることができ、例えば、触媒ウォッシュコートは溶液又はスラリーとしてバージンパティキュレートフィルターの材料に含浸させることができ、又は触媒ウォッシュコートは、基材モノリスの構造を形成する成分と組み合わせることができ、その後、フロースルーモノリスに押し出され、乾燥及び焼成される。チャネルの交互の端は、基材モノリスの一端でチェッカーボードパターン配置でブロックされ、ブロックされていないチャネルは、反対側の端で同様の配置で交互にブロックされる。この後者の配置では、乾燥及び焼成後の押出物の多孔度がウォールフローフィルターとして機能するのに十分であること、すなわち基材モノリスの多孔度が少なくとも40%、例えば少なくとも45%、例えば50%、又は少なくとも55%又は最大75%であることが必要である。
【0068】
本明細書で使用される「選択的触媒還元」及び「SCR」という用語は、窒素還元剤を使用して窒素の酸化物を窒素(N2)に還元する触媒プロセスを意味する。SCR触媒は、以下から選択される少なくとも1種の材料を含んでもよい:MOR;USY;ZSM-5;ZSM-20;β-ゼオライト;CHA;LEV;AEI;AFX;FER;SAPO;ALPO;バナジウム;酸化バナジウム;酸化チタン;酸化タングステン;酸化モリブデン;酸化セリウム;酸化ジルコニウム;酸化ニオブ;鉄;酸化鉄;酸化マンガン;銅;モリブデン;タングステン;及びこれらの混合物。SCR触媒の活性成分のための担持構造は、任意の好適なゼオライト、ゼオタイプ、又は非ゼオライト化合物を含んでもよい。あるいは、SCR触媒は、活性成分として、金属、金属酸化物、又は混合酸化物を含んでもよい。遷移金属を担持したゼオライト(例えば、銅-チャバザイト又はCu-CHA、及び銅-レビン又はCu-LEV、及びFe-β)及びゼオタイプ(例えば、銅-SAPO又はCu-SAPO)は、好ましい。
【0069】
本明細書で使用される「三元変換」及び「TWC」という用語は、ガソリンエンジンの排気ガスからHC、CO及びNOxを実質的に除去できる触媒プロセスを意味する。典型的には、TWC触媒は、主に、白金族金属(PGM)、酸素貯蔵成分(OSC)、及び耐火性金属酸化物担体を含む。
【0070】
本明細書で使用される「白金族金属」及び「PGM」という用語は、白金、パラジウム、ロジウム、オスミウム、イリジウム、及びルテニウム、及びそれらの混合物を含む元素周期表で定義される1種以上の化学元素を意味する。
【0071】
いくつかの実施形態において、TWC触媒の白金族金属成分は、白金、パラジウム、ロジウム、又はそれらの混合物から選択される。特定の実施形態において、TWC触媒の白金族金属成分は、パラジウムを含む。
【0072】
いくつかの実施形態において、TWC触媒は、追加の白金族金属を含んでいない(すなわち、TWCは、1種の白金族金属のみを含んでいる)。他の実施形態において、TWC触媒は、追加の白金族金属を含む。一実施形態において、存在する場合、追加の白金族金属は、白金、ロジウム、及びそれらの混合物から選択される。特定の実施形態において、追加の白金族金属成分は、ロジウムを含む。1つ以上の特定の実施形態において、TWC触媒は、パラジウムとロジウムの混合物を含む。他の実施形態において、TWC触媒は、白金、パラジウム、及びロジウムの混合物を含む。
【0073】
好ましい実施形態において、TWC触媒は、1:10~10:1、好ましくは1:5~5:1のモル比でのパラジウムとロジウムの混合物を含む。
【0074】
パティキュレートフィルターにおける「PGM」の担持量は、0.05~5g/L、好ましくは0.1~2g/Lの範囲、例えば0.2g/L、0.5g/L、1g/L、又は1.5g/Lであることができる。
【0075】
本明細書で使用される「酸素貯蔵成分」及び「OSC」という用語は、多価の状態を有し、還元条件下でCO又は水素などの還元剤と積極的に反応し、次に酸化条件下で酸素又は窒素酸化物などの酸化剤と反応することができるエンティティを指す。酸素貯蔵成分の例には、セリアに加えて、希土類酸化物、特にセリア、ランタナ、プラセオディミア、ネオディミア、ニオビア、ユーロピア、サマリア、イッテルビア、イットリア、ジルコニア、及びこれらの混合物が含まれる。希土類酸化物は、バルク(例えば、粒子状)の形態であってもよい。酸素貯蔵成分は、酸素貯蔵特性を示す形態のセリアを含むことができる。セリアの格子酸素は、リッチA/F条件下で一酸化炭素、水素、又は炭化水素と反応することができる。一実施形態において、TWC触媒のための酸素貯蔵成分は、セリア-ジルコニア複合体、又は希土類安定化セリア-ジルコニアを含む。
【0076】
本明細書で使用される「耐火性金属酸化物担体」及び「担体」という用語は、追加の化学化合物又は元素がその上に担持される下層の高表面積材料を意味する。担体の粒子は、20Aより大きい細孔及び広い細孔分布を有する。本明細書で定義されるように、そのような担体、例えば、金属酸化物担体は、分子ふるい、具体的には、ゼオライトを除外する。特定の実施形態において、高表面積の耐火性金属酸化物担体、例えば、通常、60平方メートル/グラム(「m2/g」)を超え、しばしば最大約200m2/g又はそれ以上のBET表面積を示す、「ガンマアルミナ」又は「活性化アルミナ」とも呼ばれるアルミナ担体材料を利用することができる。このような活性化アルミナは、通常、アルミナのガンマ相とデルタ相の混合物であるが、相当量のエタ相、カッパ相、及びシータ相も含んでもよい。活性化アルミナ以外の耐火性金属酸化物は、所定の触媒における触媒成分の少なくとも一部の担体として使用することができる。例えば、バルクセリア、ジルコニア、アルファアルミナ、シリカ、チタニア、及び他の材料が、そのような使用のために知られている。
【0077】
いくつかの実施形態において、TWC触媒のための耐火性金属酸化物担体は、アルミナ、ジルコニア、アルミナ-ジルコニア、ランタン-アルミナ、ランタン-ジルコニア-アルミナ、アルミナ-クロミア、セリア、アルミナ-セリア、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、活性化しているか、安定化しているか、又はその両方の化合物を独立して含む。
【0078】
本明細書で使用される「ディーゼル酸化触媒」及び「DOC」という用語は、当技術分野で周知のディーゼル酸化触媒を指す。ディーゼル酸化触媒は、COをCO2に、気相HC及びディーゼル粒子の有機画分(可溶性有機画分)をCO2及びH2Oに酸化させるように設計されている。典型的なディーゼル酸化触媒は、アルミナ、シリカ-アルミナ、チタニア、シリカ-チタニア、及びゼオライトなどの高表面積の無機酸化物担体上に白金、及び任意にパラジウムも含む。本明細書で使用する場合、この用語は、発熱を生じるDEC(Diesel Exotherm Catalyst、ディーゼル発熱触媒)を含む。
【0079】
本明細書で使用される「アンモニア酸化触媒」及び「AMOx」という用語は、排気ガス流からアンモニアを除去するのに有効な、担持された貴金属成分、例えば1種以上の白金族金属(PGM)を少なくとも含む触媒を指す。特定の実施形態において、貴金属には、白金、パラジウム、ロジウム、ルテニウム、イリジウム、銀又は金が含まれる。特定の実施形態において、貴金属成分は、貴金属の物理的混合物、又は化学的又は原子的にドープされた組み合わせを含む。
【0080】
貴金属成分は、典型的に、高表面積の耐火性金属酸化物担体上に堆積される。好適な高表面積の耐火性金属酸化物の例には、アルミナ、シリカ、チタニア、セリア、及びジルコニア、マグネシア、酸化バリウム、酸化マンガン、酸化タングステン、及び希土類金属酸化物、卑金属酸化物、並びにそれらの物理的混合物、化学的及び/又は原子的にドープされた組み合わせが含まれる。
【0081】
本明細書で使用される「NOx吸着触媒」及び「NOxトラップ(リーンNOxトラップ、略称LNTとも呼ばれる)」という用語は、吸着によってリーンバーン内燃機関からの窒素酸化物(NO及びNO2)排出を低減するための触媒を指す。典型的なNOxトラップは、内燃機関からの排気ガスの浄化に使用されているアルミナ担体に分散させた白金などの貴金属触媒と組み合わせた、アルカリ土類金属酸化物、例えばMg、Ca、Sr及びBaの酸化物、アルカリ金属酸化物、例えばLi、Na、K、Rb及びCsの酸化物、希土類金属酸化物、例えばCe、La、Pr及びNdの酸化物を含む。NOxの貯蔵には、リーンエンジン運転時に硝酸塩を形成し、リッチ条件下で比較的容易に硝酸塩を放出することから、通常バリアが好ましい。
【0082】
本明細書で使用される「炭化水素トラップ」という用語は、低温運転期間中に炭化水素を捕捉し、高温運転期間中に酸化のためにそれらを放出するための触媒を指す。炭化水素トラップは、様々な炭化水素(HC)を吸着するための1種以上の炭化水素(HC)貯蔵成分によって提供されてもよい。典型的には、貴金属及び材料との最小限の相互作用を有する炭化水素貯蔵材料、例えば、ゼオライト又はゼオライト様材料(zeolite-like material)のような微多孔質材料を使用することができる。好ましくは、炭化水素貯蔵材料は、ゼオライトである。ベータゼオライトは、ベータゼオライトの大きな細孔開口により、ディーゼル由来の炭化水素分子を効果的に捕捉することができるので、特に好ましい。コールドスタート運転におけるHC貯蔵を高めるために、ベータゼオライトに加えて、他のゼオライト、例えばフォージャサイト、チャバザイト、クリノプチロライト、モルデナイト、シリカライト、ゼオライトX、ゼオライトY、超安定ゼオライトY、ZSM-5ゼオライト、オフレタイトを使用することができる。
【0083】
触媒ウォッシュコートの担持量は、10~170g/L、好ましくは25~130g/L、より好ましくは45~100g/Lの範囲ですることができる。
【0084】
ウォッシュコートは、パティキュレートフィルターの入口側、出口側、又は両面にコーティングすることができる。
【0085】
本発明の別の態様は、
i)フィルターを提供する工程;及び
ii)フィルターの片側を通してガスキャリアを介して、微粒子形態の機能性材料をフィルターにコーティングする工程
を含む、内燃機関からの排気ガスを処理するためのパティキュレートフィルターを調製する方法に関し、
ここで、工程ii)の前及び/又は後に、フィルターの前記側面の縁部分がカバーで覆われ、フィルターの前記側面の覆われていない部分を通してガスキャリアを介して微粒子形態の機能材料を粒コーティングし、その後カバーを取り外す。
【0086】
好ましい実施形態において、フィルターの前記側面の覆われていない表面積は、フィルターの前記側面の表面積の20~80%、例えば30%、40%、50%、60%、70%、好ましくは30~70%である。
【0087】
好ましい実施形態において、カバーは、フィルターの前記側面に同軸に配置される。カバーは、リング状のカバーとすることができる。
【0088】
コーティング後、機能材料層でコーティングされたフィルターは、乾燥及び焼成に付すことができる。焼成は、350~600℃、又は400~500℃で、15分~2時間、又は20分~1時間、例えば25分、30分、40分又は50分行うことができる。
【0089】
好ましい実施形態において、本発明の方法によって調製されるパティキュレートフィルターは、本発明によるパティキュレートフィルターである。
【0090】
本発明のさらなる態様は、内燃機関からの排気ガスを、本発明によるパティキュレートフィルター又は本発明による方法によって調製されたパティキュレートフィルターに流すことを含む、内燃機関からの排気ガスを処理する方法に関する。排気ガスは、未燃炭化水素、一酸化炭素、窒素酸化物、及び粒子状物質を含む。
【実施例】
【0091】
本発明は、以下の実施例によってさらに説明されるが、これらは本発明を説明するために記載されたものであり、その限定として解釈されるものでない。特に明記しない限り、すべての部及びパーセントは質量によるものであり、すべての質量パーセントは、特に明記しない限り、水分を除いた意味の乾燥基準で表される。各実施例において、フィルター基材はコージェライト製であった。
【0092】
実施例1-比較用
実施例1で調製したパティキュレートフィルターは、10g/ft3のPGM担持量を有するPd/Rh触媒層(Pd/Rh=1/1)を有していた。ウォールフローフィルター基材の入口側からの単一コートを用いて、実施例1のパティキュレートフィルターを調製した。ウォールフローフィルター基材は、132.1mm(D)*146mm(L)のサイズ、2.0Lの体積、300セル/平方インチのセル密度、約200μmの壁厚、65%の気孔率、及び水銀圧入測定による直径において18μmの平均孔径を有していた。
【0093】
基材上にコーティングされたPd/Rh触媒層は、先行技術の三元変換(TWC)触媒複合体を含有した。この触媒層は、以下のように調製した:
遊星型ミキサーで、硝酸パラジウム溶液の形態のパラジウムを、耐火性アルミナ、及び約40質量%のセリアを有する安定化セリア-ジルコニア複合体に含浸させて、初期の湿分を達成しながら湿潤粉末を形成させた。遊星型ミキサーで、硝酸ロジウム溶液の形態のロジウムを、耐火性アルミナ、及び約40質量%のセリアを有する安定化セリア-ジルコニア複合体に含浸させて、湿潤状態を達成しながら湿潤粉末を形成させた。上記の粉末を水中に添加し、次いで水酸化バリウム及び硝酸ジルコニウム溶液を添加することにより、水性スラリーを形成した。次に、このスラリーを、90%が5μmである粒径に粉砕した。次に、このスラリーをウォールフローフィルター基材の入口側からコーティングし、当該技術分野で知られている堆積方法を用いて基材全長を覆った。コーティング後、フィルター基材+触媒層を150℃で乾燥させ、その後、550℃の温度で約1時間焼成した。焼成したPd/Rh触媒層は、24.8質量%のアルミナ、68.6質量%のセリア-ジルコニア複合体、0.29質量%のパラジウム、0.29質量%のロジウム、4.6質量%の酸化バリウム及び1.4質量%の酸化ジルコニアを有していた。触媒層の総担持量は0.99g/in3であった。
【0094】
実施例2
実施例1に従って、Pd/Rh触媒層を有するパティキュレートフィルターを調製し、その上にフィルターの入口側から機能材料層を適用した。
【0095】
高表面積のガンマアルミナを適用して、機能材料層を形成した。アルミナは、90%が5ミクロン、50%が2.5ミクロン、10%が1ミクロンの粒径に乾式粉砕したものであり、その比表面積(BETモデル、77K窒素吸着測定)は、フレッシュ状態で147m2・g-1であり、1000℃の空気中で4時間焼成後に70m2・g-1であった。粉末形態の高表面積のガンマアルミナを、ガスキャリアと混合し、室温でフィルター中に吹き込んだ。
【0096】
半径方向で不均一のアルミナ担持量を達成するため(この場合、中心部のアルミナ担持量がより多い)、吹き込みプロセスを以下の工程で行った:(1)パティキュレートフィルターの前面に「O」型ゴム板(中央の穴の直径:90mm)を同軸に配置し、フィルターの中央部のみをガスが通過するようにする工程;(2)アルミナの第1部分をガスキャリアと混合し、ゴム板でフィルターに吹き込み、0.025g/in3、すなわち1.5g/Lの機能材料層の平均担持量を達成する工程;(3)ゴム板を表面から取り除く工程;及び、(4)アルミナの第2部分をガスキャリアと混合し、ゴム板なしでフィルターに吹き込み、0.041g/in3、すなわち2.5g/Lの機能材料層の平均担持量を達成する工程。工程(2)及び(4)におけるガスキャリアの総流速は750kg/時間であった。パティキュレートフィルターにおける機能材料層の総平均担持量は0.066g/in3、すなわち4g/Lであった。
【0097】
コーティング後、フィルター+機能材料層を乾燥させ、その後、450℃の温度で30分間焼成した。
【0098】
実施例3
実施例1に従って、Pd/Rh触媒層を有するパティキュレートフィルターを調製し、その上にフィルター入口側から機能材料層を適用した。
【0099】
適用した機能材料層は、高表面積のガンマアルミナであった。アルミナは、90%が5ミクロン、50%が2.5ミクロン、10%が1ミクロンの粒径に乾式粉砕したものであり、その比表面積(BETモデル、77K窒素吸着測定)は、フレッシュ状態で147m2・g-1であり、1000℃の空気中で4時間焼成後に70m2・g-1であった。粉末形態の高表面積のガンマアルミナを、ガスキャリアと混合し、室温でフィルター中に吹き込んだ。フィルターの入口側で均一な分布を達成するように、流れはディストリビューターを介して導かれた。ガスキャリアの流速は750kg/時間であった。パティキュレートフィルターにおける機能材料層の平均担持量は0.066g/in3、すなわち4g/Lであった。
【0100】
コーティング後、フィルター+機能材料層を乾燥させ、その後、450℃の温度で30分間焼成した。
【0101】
実施例4-機能材料層分布の特性評価
定義されたサンプル領域の元素分析によって、機能材料層の放射状分布を決定した。
【0102】
触媒ガソリンフィルターの規定の半径内のコア(コアの長さはフィルターの長さと同じであった)をフィルターから穿孔し、60μmより小さい粒径の微粉末に粉砕した。典型的に10gのこの微粉末を1.7gのセルロースワックス(結合剤)と混合した後、20~30Tのダイでペレット化し、均質なサンプルペレットを作製した。その後、このペレットをMalvern Panalytical Axios FAST波長分散型蛍光X線(XRF)分光計で分析した。
【0103】
対象元素(この場合はアルミニウム)の担持量は、あらかじめ設定した標準曲線によって定量化し、機能材料層のないフィルターサンプル(すなわち実施例1)を同じ方法で分析することによって、バックグラウンドのアルミニウム担持量を差し引いた。次に、この定義された半径内の機能材料層のパーセンテージを、以下の式を適用して計算した:
【数1】
【0104】
(式中、パーセンテージ(r)は、定義された半径r内の機能材料層のパーセンテージを意味し、
量(r,t)は、機能材料層を有するパティキュレートフィルターのXRF法で測定した、定義された半径r内の機能材料層の量を意味し、
量(r,b)は、機能材料層のないパティキュレートフィルターのXRF法で測定した、半径r内の元素のバックグラウンドを意味し、
量(合計)は、パティキュレートフィルターに適用される機能材料層の合計を意味する)。
【0105】
実施例2及び3のパティキュレートフィルターの機能材料層分布を、上述の方法に従って3つの定義された半径で分析し、結果を表1に示した。
【0106】
【0107】
実施例5-背圧及び効率のテスト
上記パティキュレートフィルターの実施例(実施例1~3)の背圧特性を、600立方メートル/時間(cmh)の冷気流下で調べた。その結果を
図2に示している。機能材料層を適用したフィルター(実施例2及び3)は、機能材料の分布が異なるにもかかわらず、非常によく似た背圧を示し、機能材料層を適用のないパティキュレートフィルター(実施例1)と比較して、いずれも高い背圧を示した。
【0108】
SGE 1.5Lターボガソリン直噴エンジンを用いて、これらのパティキュレートフィルターの排気ガス中の粒子状物質を除去する効率を評価した。フレッシュ状態(0km、又は未使用状態)のパティキュレートフィルターを密結合位置に置き、PNカウンターを用いて、フィルター後の微粒子数(PN)を測定した。WLTCサイクルでフィルターのないエンジンからのPNは、4.0×10
12♯/kmであった。
図3に示すように、機能材料層を有するフィルター(実施例2及び3)は、実施例1と比較して、テールパイプ(TP)PN排出量が大幅に減少していることを示している。そして、より驚くべきことに、半径方向中央領域における機能材料層の含有量が高い実施例2のパティキュレートフィルターは、機能材料層の均質な分布を有する実施例3のパティキュレートフィルターと比較して、PN排出量が半分しか示されなかった。
【0109】
実施例6-比較用
実施例6で調製したパティキュレートフィルターは、7g/ft3のPGM担持量を有するPd/Rh触媒層(Pd/Rh=2/5)を有していた。ウォールフローフィルター基材の最初の出口側及び次に入口側からの二重コートを使用して、実施例6のパティキュレートフィルタートを調製した。ウォールフローフィルター基材は、143.8mm(D)*152.4mm(L)のサイズ、2.47Lの体積、300セル/平方インチのセル密度、約200μmの壁厚、65%の気孔率、及び水銀圧入測定による直径において16μmの平均孔径を有していた。
【0110】
基材上にコーティングされたPd/Rh触媒層は、先行技術の三元変換(TWC)触媒複合体を含有した。この触媒層は、以下のように調製した:
遊星型ミキサーで、硝酸パラジウム溶液の形態のパラジウムを、耐火性アルミナ、及び約40質量%のセリアを有する安定化セリア-ジルコニア複合体に含浸させて、初期の湿分を達成しながら湿潤粉末を形成させた。遊星型ミキサーで、硝酸ロジウム溶液の形態のロジウムを、耐火性アルミナ、及び約40質量%のセリアを有する安定化セリア-ジルコニア複合体に含浸させて、湿潤状態を達成しながら湿潤粉末を形成させた。上記の粉末を水中に添加し、次いで水酸化バリウム及び硝酸ジルコニウム溶液を添加することにより、水性スラリーを形成した。次に、このスラリーを、90%が5μmである粒径に粉砕した。スラリーをフィルター基材にコーティングすることは、以下の工程を含んでいた:1)当該技術分野で知られている堆積方法を用いて、ウォールフローフィルターの出口側から、基材全長の55%を覆うように、スラリーをコーティングする工程;2)フィルター基材+第1触媒層を150℃で乾燥する工程;3)ウォールフローフィルター基材の入口側から、再び基材全長の55%を覆うように、同じスラリーをコーティングする工程;4)150℃で再び乾燥する工程、及び5)550℃の温度で約1時間焼成する工程。焼成したPd/Rh触媒層は、24.9質量%のアルミナ、68.8質量%のセリア-ジルコニア複合体、0.09質量%のパラジウム、0.23質量%のロジウム、4.6質量%の酸化バリウム及び1.4質量%の酸化ジルコニアを有していた。触媒層の総担持量は1.23g/in3であった。
【0111】
実施例7
実施例6に従って、Pd/Rh触媒層を有するパティキュレートフィルターを調製し、その上にフィルター入口側から機能材料層を適用した。
【0112】
適用した機能材料層は、高表面積のガンマアルミナであった。アルミナは、90%が5ミクロン、50%が2.5ミクロン、10%が1ミクロンの粒径に乾式粉砕したものであり、その比表面積(BETモデル、77K窒素吸着測定)は、フレッシュ状態で147m2・g-1であり、1000℃の空気中で4時間焼成後に70m2・g-1であった。粉末形態の高表面積のガンマアルミナを、ガスキャリアと混合し、室温でフィルター中に吹き込んだ。
【0113】
半径方向で不均一のアルミナ担持量を達成するため(この場合、中心部のアルミナ担持量がより多い)、吹き込みプロセスを以下の工程で行った:(1)パティキュレートフィルターの前面に「O」型ゴム板(中央の穴の直径:96mm)を同軸に配置し、フィルターの中央部のみをガスが通過するようにする工程;(2)アルミナの第1部分をガスキャリアと混合し、ゴム板でフィルターに吹き込み、0.018g/in3、すなわち1.1g/Lの機能材料層の平均担持量を達成する工程;(3)ゴム板を表面から取り除く工程;及び、(4)アルミナの第2部分をガスキャリアと混合し、ゴム板なしでフィルターに吹き込み、0.031g/in3、すなわち1.9g/Lの機能材料層の平均担持量を達成する工程。工程(2)及び(4)におけるガスキャリアの総流速は750kg/時間であった。パティキュレートフィルターにおける機能材料層の総平均担持量は0.049g/in3、すなわち3g/Lであった。
【0114】
コーティング後、フィルター+機能材料層を乾燥させ、その後、450℃の温度で30分間焼成した。
【0115】
実施例8
実施例6に従って、Pd/Rh触媒層を有するパティキュレートフィルターを調製し、その上にフィルター入口側から機能材料層を適用した。
【0116】
適用した機能材料層は、高表面積のガンマアルミナであった。アルミナは、90%が5ミクロン、50%が2.5ミクロン、10%が1ミクロンの粒径に乾式粉砕したものであり、その比表面積(BETモデル、77K窒素吸着測定)は、フレッシュ状態で147m2・g-1であり、1000℃の空気中で4時間焼成後に70m2・g-1であった。粉末形態の高表面積のガンマアルミナを、ガスキャリアと混合し、室温でフィルター中に吹き込んだ。フィルターの入口側で均一な分布を達成するように、流れはディストリビューターを介して導かれた。ガスキャリアの流速は750kg/時間であった。パティキュレートフィルターにおける機能材料層の平均担持量は0.049g/in3であった。
【0117】
コーティング後、フィルター+機能材料層を乾燥させ、その後、450℃の温度で30分間焼成した。
【0118】
実施例9
実施例6に従って、Pd/Rh触媒層を有するパティキュレートフィルターを調製し、その上にフィルター入口側から機能材料層を適用した。
【0119】
適用した機能材料層は、高表面積のガンマアルミナであった。アルミナは、90%が5ミクロン、50%が2.5ミクロン、10%が1ミクロンの粒径に乾式粉砕したものであり、その比表面積(BETモデル、77K窒素吸着測定)は、フレッシュ状態で147m2・g-1であり、1000℃の空気中で4時間焼成後に70m2・g-1であった。粉末形態の高表面積のガンマアルミナを、ガスキャリアと混合し、室温でフィルター中に吹き込んだ。
【0120】
半径方向で不均一のアルミナ担持量を達成するため(この場合、中心部のアルミナ担持量がより多い)、吹き込みプロセスを以下の工程で行った:(1)パティキュレートフィルターの前面に「O」型ゴム板(中央の穴の直径:96mm)を同軸に配置し、フィルターの中央部のみをガスが通過するようにする工程;(2)アルミナの第1部分をガスキャリアと混合し、ゴム板でフィルターに吹き込み、0.025g/in3、すなわち1.5g/Lの機能材料層の平均担持量を達成する工程;(3)ゴム板を表面から取り除く工程;及び、(4)アルミナの第2部分をガスキャリアと混合し、ゴム板なしでフィルターに吹き込み、0.025g/in3、すなわち1.5g/Lの機能材料層の平均担持量を達成する工程。工程(2)及び(4)におけるガスキャリアの総流速は750kg/時間であった。パティキュレートフィルターにおける機能材料層の総平均担持量は0.049g/in3、すなわち3g/Lであった。
【0121】
コーティング後、フィルター+機能材料層を乾燥させ、その後、450℃の温度で30分間焼成した。
【0122】
実施例10
実施例6に従って、Pd/Rh触媒層を有するパティキュレートフィルターを調製し、その上にフィルター入口側から機能材料層を適用した。
【0123】
適用した機能材料層は、高表面積のガンマアルミナであった。アルミナは、90%が5ミクロン、50%が2.5ミクロン、10%が1ミクロンの粒径に乾式粉砕したものであり、その比表面積(BETモデル、77K窒素吸着測定)は、フレッシュ状態で147m2・g-1であり、1000℃の空気中で4時間焼成後に70m2・g-1であった。粉末形態の高表面積のガンマアルミナを、ガスキャリアと混合し、室温でフィルター中に吹き込んだ。
【0124】
半径方向で不均一のアルミナ担持量を達成するため(この場合、中心部のアルミナ担持量がより多い)、吹き込みプロセスを以下の工程で行った:(1)パティキュレートフィルターの前面に円形ゴム板(直径:60mm)を同軸に配置し、フィルターの中央部のみをガスが通過するようにする工程;(2)アルミナの第1部分をガスキャリアと混合し、ゴム板でフィルターに吹き込み、0.008g/in3、すなわち0.5g/Lの機能材料層の平均担持量を達成する工程;(3)ゴム板を表面から取り除く工程;及び、(4)アルミナの第2部分をガスキャリアと混合し、ゴム板なしでフィルターに吹き込み、0.041g/in3、すなわち2.5g/Lの機能材料層の平均担持量を達成する工程。工程(2)及び(4)におけるガスキャリアの総流速は750kg/時間であった。パティキュレートフィルターにおける機能材料層の総平均担持量は0.049g/in3、すなわち3g/Lであった。
【0125】
コーティング後、フィルター+機能材料層を乾燥させ、その後、450℃の温度で30分間焼成した。
【0126】
実施例11-機能材料層分布の特性評価
実施例4に記載したのと同様の方法で、実施例7~10の機能材料層の分布を分析した。また、サンプルを採取して分析し、その結果を表2に示している。
【0127】
【0128】
実施例12-背圧及び効率のテスト
上記パティキュレートフィルターの実施例(実施例7~10)の背圧特性を、600立方メートル/時間(cmh)の冷気流下で調べた。その結果を
図4に示している。これらの触媒フィルターの半径方向の機能材料の分布は異なっているが、テスト条件下では非常に類似した背圧を示した。
【0129】
SGE 1.5Lターボガソリン直噴エンジンを用いて、これらのパティキュレートフィルターの排気ガス中の粒子状物質を除去する効率を評価した。フレッシュ状態(0km、又は未使用状態)のパティキュレートフィルターを密結合位置に置き、PNカウンターを用いて、フィルター後の微粒子数(PN)を測定した。WLTCサイクルでフィルターのないエンジンからのPNは、4.0×10
12♯/kmであった。
図5に示すように、半径方向中央領域における機能材料層の含有量が高いフィルター(実施例7及び9)は、機能材料層のより均質な分布を有するフィルター(実施例8)と比較して、テールパイプ(TP)PN排出量が約33%低下することを示した。
【国際調査報告】