(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-18
(54)【発明の名称】固定化抗菌ペプチド模倣物を利用する表面処理
(51)【国際特許分類】
A01N 37/46 20060101AFI20231211BHJP
C09D 201/00 20060101ALI20231211BHJP
A01P 3/00 20060101ALI20231211BHJP
【FI】
A01N37/46
C09D201/00
A01P3/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023534325
(86)(22)【出願日】2022-02-02
(85)【翻訳文提出日】2023-06-06
(86)【国際出願番号】 US2022014993
(87)【国際公開番号】W WO2022120393
(87)【国際公開日】2022-06-09
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523207364
【氏名又は名称】マクスウェル バイオサイエンシーズ, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ラウ, キン ハン アーロン
(72)【発明者】
【氏名】バロン, アナリーズ イー.
(72)【発明者】
【氏名】フォートコート, ジョン
【テーマコード(参考)】
4H011
4J038
【Fターム(参考)】
4H011AA03
4H011AA04
4H011BB06
4H011DD07
4J038NA27
4J038PB01
4J038PC03
(57)【要約】
複数の官能基を含有する表面を処理するための方法が提供される。本方法は、複数の官能基を連結基と反応させ、それによって複数の連結基を含有する表面を作成することと、第1のペプトイドを複数の連結基のそれぞれに結合させ、それによって第1の処理表面を得ることと、を含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理表面であって、
基材と、
連結基によって前記基材に結合した第1のペプトイドと、を含む、処理表面。
【請求項2】
前記連結基が、エチレングリコール連結基である、請求項1に記載の処理表面。
【請求項3】
前記連結基が、ジエチレングリコールセグメントを含有する、請求項1に記載の処理表面。
【請求項4】
前記基材が、ガラス基材である、請求項1に記載の処理表面。
【請求項5】
前記連結基が、エチレングリコール連結基である、請求項1に記載の処理表面。
【請求項6】
前記連結基が、ジエチレングリコールセグメントを含有する、請求項1に記載の処理表面。
【請求項7】
前記基材が、ガラス基材である、請求項1に記載の処理表面。
【請求項8】
前記複数の官能基のそれぞれが、酸素を含有する、請求項1に記載の処理表面。
【請求項9】
前記複数の官能基のそれぞれが、窒素を含有する、請求項1に記載の処理表面。
【請求項10】
前記複数の官能基のそれぞれが、硫黄を含有する、請求項1に記載の処理表面。
【請求項11】
前記複数の官能基のそれぞれが、リンを含有する、請求項1に記載の処理表面。
【請求項12】
前記複数の官能基のそれぞれが、ホウ素を含有する、請求項1に記載の処理表面。
【請求項13】
前記複数の官能基のそれぞれが、金属を含有する、請求項1に記載の処理表面。
【請求項14】
前記金属が、Mg、Li及びAlからなる群から選択される、請求項13に記載の処理表面。
【請求項15】
前記複数の官能基のそれぞれが、ヒドロキシ基である、請求項1に記載の処理表面。
【請求項16】
前記複数の官能基のそれぞれが、ヒドロキシル、カルボニル、アルデヒド、ハロホルミル、カーボネートエステル、カルボキシル、カルボアルコキシル、メトキシ、ヒドロペルオキシ、ペルオキシ、エーテル、ヘミアセタール、ヘミケタール、アセタール、オルトエステル、メトレンジオキシ(methlenedioxy)、オルトカーボネートエステル及び無水カルボン酸基からなる群から独立して選択される、請求項1に記載の処理表面。
【請求項17】
前記複数の官能基のそれぞれが、カルボキシアミド、一級アミン、二級アミン、三級アミン、アンモニウム、一級ケチミン、二級ケチミン、一級アルジミン、二級アルジミン、イミド、アジド、アゾ、シアネート、イソシアネート、ニトレート、ニトリル、イソニトリル、イソニトロソオキシ、ニトロ、ニトロソ、オキシム、ピリジル、及びカルバメート基からなる群から独立して選択される、請求項1に記載の処理表面。
【請求項18】
前記複数の官能基のそれぞれが、スルフヒドリル、スルフィド、ジスルフィド、スルフィニル、スルホニル、スルフィノ、スルホ、チオシアネート、イソチオシアネート、カルボチオイル、カルボチオS-酸、カルボチオO-酸、チオールエステル、チオノエステル、カルボジチオイン酸、及びカルボジチオ基からなる群から独立して選択される、請求項1に記載の処理表面。
【請求項19】
前記複数の官能基のそれぞれが、ホスフィノ、ホスホノ、及びホスフェート基からなる群から独立して選択される、請求項1に記載の処理表面。
【請求項20】
前記複数の官能基のそれぞれが、ボロノ、O-[ビス(アルコキシ)アルキルボロニル]、ヒドロキシボリノ、及びO-[アルコキシジアルキルボロニル]基からなる群から独立して選択される、請求項1に記載の処理表面。
【請求項21】
前記複数の官能基のそれぞれが、アルキルリチウム、アルキルマグネシウムハライド、アルキルアルミニウム、及びシリルエーテル基からなる群から独立して選択される、請求項1に記載の処理表面。
【請求項22】
前記複数の官能基のそれぞれが、アルケン及びアルキンからなる群から独立して選択される、請求項1に記載の処理表面。
【請求項23】
前記複数の官能基のそれぞれが、ラジカルを含有する基からなる群から独立して選択される、請求項1に記載の処理表面。
【請求項24】
前記複数の官能基のうちの少なくとも1つが、カルボン酸アシルラジカルである、請求項23に記載の処理表面。
【請求項25】
イオン結合、共有結合、水素結合、及びファンデルワールス力からなる群から選択される結合によって前記第1のペプトイドに結合した第2のペプトイドを含む、請求項1に記載の処理表面。
【請求項26】
前記第1及び第2のペプトイドが、ミセルアセンブリの構成要素である、請求項25に記載の処理表面。
【請求項27】
前記第2のペプトイドが水溶性である、請求項25に記載の処理表面。
【請求項28】
前記連結基によって前記表面に結合した前記第1のペプトイドの複数の例を更に含む、請求項1に記載の処理表面。
【請求項29】
前記第1のペプトイドの前記複数の例の隣接するものの間の平均最小距離が、約20nm未満である、請求項28に記載の処理表面。
【請求項30】
前記第1のペプトイドの前記複数の例の隣接するものの間の平均最小距離が、約10nm未満である、請求項28に記載の処理表面。
【請求項31】
前記第1のペプトイドの前記複数の例の隣接するものの間の平均最小距離が、約5nm未満である、請求項28に記載の処理表面。
【請求項32】
前記第1のペプトイドの前記複数の例の隣接するものの間の平均最小距離が、少なくとも約1nmである、請求項28に記載の処理表面。
【請求項33】
前記第1のペプトイドの前記複数の例の隣接するものの間の平均最小距離が、少なくとも約2nmである、請求項28に記載の処理表面。
【請求項34】
複数の官能基を含有する表面を処理するための方法であって、
前記複数の官能基を連結基と反応させ、それによって、複数の連結基を含有する表面を作成することと、
第1のペプトイドを前記複数の連結基のそれぞれに結合させ、それによって、第1の処理表面を得ることと、を含む方法。
【請求項35】
前記連結基が、エチレングリコール連結基である、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記連結基が、ジエチレングリコールセグメントを含有する、請求項34に記載の方法。
【請求項37】
前記基材が、ガラス基材である、請求項34に記載の方法。
【請求項38】
前記複数の官能基のそれぞれが、酸素を含有する、請求項34に記載の方法。
【請求項39】
前記複数の官能基のそれぞれが、窒素を含有する、請求項34に記載の方法。
【請求項40】
前記複数の官能基のそれぞれが、硫黄を含有する、請求項34に記載の方法。
【請求項41】
前記複数の官能基のそれぞれが、リンを含有する、請求項34に記載の方法。
【請求項42】
前記複数の官能基のそれぞれが、ホウ素を含有する、請求項34に記載の方法。
【請求項43】
前記複数の官能基のそれぞれが、金属を含有する、請求項34に記載の方法。
【請求項44】
前記金属が、Mg、Li、及びAlからなる群から選択される、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
前記複数の官能基のそれぞれが、ヒドロキシ基である、請求項34に記載の方法。
【請求項46】
前記複数の官能基のそれぞれが、ヒドロキシル、カルボニル、アルデヒド、ハロホルミル、カーボネートエステル、カルボキシル、カルボアルコキシル、メトキシ、ヒドロペルオキシ、ペルオキシ、エーテル、ヘミアセタール、ヘミケタール、アセタール、オルトエステル、メトレンジオキシ、オルトカーボネートエステル及び無水カルボン酸基からなる群から独立して選択される、請求項34に記載の方法。
【請求項47】
前記複数の官能基のそれぞれが、カルボキシアミド、一級アミン、二級アミン、三級アミン、アンモニウム、一級ケチミン、二級ケチミン、一級アルジミン、二級アルジミン、イミド、アジド、アゾ、シアネート、イソシアネート、ニトレート、ニトリル、イソニトリル、イソニトロソオキシ、ニトロ、ニトロソ、オキシム、ピリジル、及びカルバメート基からなる群から独立して選択される、請求項34に記載の方法。
【請求項48】
前記複数の官能基のそれぞれが、スルフヒドリル、スルフィド、ジスルフィド、スルフィニル、スルホニル、スルフィノ、スルホ、チオシアネート、イソチオシアネート、カルボチオイル、カルボチオS-酸、カルボチオO-酸、チオールエステル、チオノエステル、カルボジチオイン酸、及びカルボジチオ基からなる群から独立して選択される、請求項34に記載の方法。
【請求項49】
前記複数の官能基のそれぞれが、ホスフィノ、ホスホノ、及びホスフェート基からなる群から独立して選択される、請求項34に記載の方法。
【請求項50】
前記複数の官能基のそれぞれが、ボロノ、O-[ビス(アルコキシ)アルキルボロニル]、ヒドロキシボリノ、及びO-[アルコキシジアルキルボロニル]基からなる群から独立して選択される、請求項34に記載の方法。
【請求項51】
前記複数の官能基のそれぞれが、アルキルリチウム、アルキルマグネシウムハライド、アルキルアルミニウム、及びシリルエーテル基からなる群から独立して選択される、請求項34に記載の方法。
【請求項52】
前記複数の官能基のそれぞれが、アルケン及びアルキンからなる群から独立して選択される、請求項34に記載の方法。
【請求項53】
前記複数の官能基のそれぞれが、ラジカルを含有する基からなる群から独立して選択される、請求項34に記載の方法。
【請求項54】
前記複数の官能基のうちの少なくとも1つが、カルボン酸アシルラジカルである、請求項53に記載の方法。
【請求項55】
第2のペプトイドを前記第1の処理表面に塗布し、それによって、第2の処理表面を得ることを含む、請求項34に記載の方法。
【請求項56】
前記第2のペプトイドが、イオン結合、共有結合、水素結合、及びファンデルワールス力からなる群から選択される結合によって前記第1のペプトイドに結合される、請求項55に記載の方法。
【請求項57】
前記第1及び第2のペプトイドが、ミセルアセンブリの構成要素である、請求項55に記載の方法。
【請求項58】
前記第2のペプトイドが水溶性である、請求項55に記載の方法。
【請求項59】
前記第1の処理表面が、前記連結基によって前記表面に結合した前記第1のペプトイドの複数の例を含有する、請求項34に記載の方法。
【請求項60】
前記第1のペプトイドの前記複数の例の隣接するものの間の平均最小距離が、約20nm未満である、請求項59に記載の方法。
【請求項61】
前記第1のペプトイドの前記複数の例の隣接するものの間の平均最小距離が、約10nm未満である、請求項59に記載の方法。
【請求項62】
前記第1のペプトイドの前記複数の例の隣接するものの間の平均最小距離が、約5nm未満である、請求項59に記載の方法。
【請求項63】
前記第1のペプトイドの前記複数の例の隣接するものの間の平均最小距離が、少なくとも約1nmである、請求項59に記載の方法。
【請求項64】
前記第1のペプトイドの前記複数の例の隣接するものの間の平均最小距離が、少なくとも約2nmである、請求項59に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2020年12月2日に出願され、同じ発明の名称を有し、同じ発明者を有し、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、米国仮特許出願第63/120,686号の利益を主張する。
【0002】
本開示は、広義には、抗菌表面処理に、より具体的には、抗菌ペプトイド組成物を含有する抗菌表面処理に関する。
【背景技術】
【0003】
移植可能な生物医学デバイス上の細菌の接着及びコロニー形成及びそれに伴う感染は、院内感染(HAI)の40~70%を占める。[J.W.Costerton,P.S.Stewart,E.P.Greenberg,Science 1999,284,1318-1322、E.M.Hetrick,M.H.Schoenfisch,Chem.Soc.Rev.2006,35,780-789、及びC.Desrousseaux,V.Sautou,S.Descamps,O.Traore,J.Hosp.Infect.2013,85,87-93]。浄水システム、食品包装、及び海上作業も、微生物汚染によって損なわれる可能性がある。[R.Chmielewski,J.Frank,Compr.Rev.Food Sci.Food Saf.2003,2,22-32、X.Z.Zhao,C.J.He,ACS Appl.Mater.Interfaces 2015,7,17947-17953、及びD.W.Wang,X.Wu,L.X.Long,X.B.Yuan,Q.H.Zhang,S.Z.Xue,S.M.Wen,C.H.Yan,J.M.Wang,W.Cong,Biofouling 2017,33,970-979]。実質的な研究にもかかわらず、表面上の細菌の接着及び増殖の予防は依然として困難である。[C.D.Nadell,K.Drescher,K.R.Foster,Nat.Rev.Microbiol.2016,14,589]。粗さ及びトポロジー、化学及び濡れ性、並びに表面分子配置などの表面特性は、バイオファウリングに影響を及ぼす多くの要因うちの代表例である。[K.Bazaka,R.J.Crawford,E.P.Ivanova,Biotechnol.J.2011,6,1103-1114、D.Perera-Costa,J.M.Bruque,M.L.Gonzalez-Martin,A.C.Gomez-Garcia,V.Vadillo-Rodriguez,Langmuir 2014,30,4633-4641、K.W.Kolewe,J.Zhu,N.R.Mako,S.S.Nonnenmann,J.D.Schiffman,ACS Appl.Mater.Interfaces 2018,10,2275-2281、及びA.Hasan,S.K.Pattanayek,L.M.Pandey,ACS Biomater.Sci.Eng.2018,4,3224-3233]。
【0004】
細菌による表面の汚れを克服するための提案された戦略として、ポリマーブラシとしてポリ(エチレングリコール)(PEG)を表面グラフティングすることなどにより、非特異的なタンパク質吸着及び細菌の付着を阻害する「汚れ防止」コーティングが挙げられる。[C.Blaszykowski,S.Sheikh,M.Thompson,Chem.Soc.Rev.2012,41,5599-5612、A.D.White,A.K.Nowinski,W.Huang,A.J.Keefe,F.Sun,S.Jiang,Chem.Sci.2012,3,3488-3494、及びS.Lowe,N.M.O’Brien-Simpson,L.A.Connal,Polym.Chem.2015,6,198-212]。他の戦略として、既存の抗生物質及び抗生物質放出性コーティングの固定化が挙げられる。[F.Costa,I.F.Carvalho,R.C.Montelaro,P.Gomes,M.C.L.Martins,Acta Biomater.2011,7,1431-1440;A.Andrea,N.Molchanova,H.Jenssen,Biomolecules 2018,8,27;and S.R.Palumbi,Science 2001,293,1786-1790]。しかしながら、多くの既存の抗菌剤は、狭い範囲の活性及びそれらの活性に対する耐性の強化という問題がある。[A.Andrea,N.Molchanova,H.Jenssen,Biomolecules 2018,8,27、及びS.R.Palumbi,Science 2001,293,1786-1790]これらの問題を克服するために抗菌ペプチド(AMP)が研究されている[上記のCosta et al.and Andrea et alを参照]が、それらは、ヒト宿主及び細菌の両方によって分泌されるプロテアーゼによって分解される。[N.Molchanova,P.R.Hansen,H.Franzyk,Molecules 2017,22,1430、M.Sieprawska-Lupa,P.Mydel,K.Krawczyk,K.Wojcik,M.Puklo,B.Lupa,P.Suder,J.Silberring,M.Reed,J.Pohl,Antimicrob.Agents Chemother.2004,48,4673-4679、及びM.Xiao,J.Jasensky,J.Gerszberg,J.Chen,J.Tian,T.Lin,T.Lu,J.Lahann,Z.Chen,Langmuir 2018,34,12889-12896]。
【0005】
ポリ(N置換グリシン)「ペプトイド」は、AMPの欠点に対処するために開発された有望なクラスのペプチド模倣物の代表である。それらは、プロテアーゼ耐性及び増強された脂質膜透過性を提供する、主鎖アミド窒素原子に結合された側鎖を有する非天然ポリグリシン主鎖を有する。[K.H.A.Lau,Biomater.Sci.2014,2,627-633、及びA.S.Knight,E.Y.Zhou,M.B.Francis,R.N.Zuckermann,Adv.Mater.2015,27,5665-5691]。二次構造は、特定の側鎖を有する特定の配列で誘導される。[Knight et al.上記、及びM.El Yaagoubi,K.M.Tewari,K.H.A.Lau in Self-assembling Biomaterials,Elsevier-Woodhead,Amsterdam,2018,pp.95-112を参照]。
いくつかのグループは、高い活性を示すペプトイドAMP模倣物を実証している。[上記のAndrea et al.及びMalchanova et al.を参照。また、N.P.Chongsiriwatana,J.A.Patch,A.M.Czyzewski,M.T.Dohm,A.Ivankin,D.Gidalevitz,R.N.Zuckermann,A.E.Barron,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 2008,105,2794-2799、及びJ.A.Patch,A.E.Barron,J.Am.Chem.Soc.2003,125,12092-12093を参照]。そのようなペプトイドの1つは、表面移植ペプトイドブラシの一部として合成されているが、全体的に高いレベルの細菌付着が観察された。[A.R.Statz,J.P.Park,N.P.Chongsiriwatana,A.E.Barron,P.B.Messersmith,Biofouling 2008,24,439-448]。hLf1-11、LL-37、及びメラミンなどの天然AMPもまた固定化され、様々な結果が得られている。[上記のCosta et al.、Andrea et al.及びXiao et al.を参照。また、J.He,J.Chen,G.Hu,L.Wang,J.Zheng,J.Zhan,Y.Zhu,C.Zhong,X.Shi,S.Liu,J.Mater.Chem.B 2018,6,68-74も参照。]これらの研究は、マレイミド-チオール、アミド、及びアルキン-アジド「クリック」カップリングなどのバイオコンジュゲーション技術を適用して、共有結合性の表面固定化を可能にする。アルキン-アジドカップリングは、AMP上で一般的に見られる反応性基と直交するため、特に好適であるが、そのアプローチは、特化した化学リンカーの利用可能性によってしばしば制約を受ける。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】J.W.Costerton,P.S.Stewart,E.P.Greenberg,Science 1999,284,1318-1322
【非特許文献2】E.M.Hetrick,M.H.Schoenfisch,Chem.Soc.Rev.2006,35,780-789
【非特許文献3】C.Desrousseaux,V.Sautou,S.Descamps,O.Traore,J.Hosp.Infect.2013,85,87-93
【非特許文献4】R.Chmielewski,J.Frank,Compr.Rev.Food Sci.Food Saf.2003,2,22-32
【非特許文献5】X.Z.Zhao,C.J.He,ACS Appl.Mater.Interfaces 2015,7,17947-17953
【非特許文献6】D.W.Wang,X.Wu,L.X.Long,X.B.Yuan,Q.H.Zhang,S.Z.Xue,S.M.Wen,C.H.Yan,J.M.Wang,W.Cong,Biofouling 2017,33,970-979
【非特許文献7】C.D.Nadell,K.Drescher,K.R.Foster,Nat.Rev.Microbiol.2016,14,589
【非特許文献8】K.Bazaka,R.J.Crawford,E.P.Ivanova,Biotechnol.J.2011,6,1103-1114
【非特許文献9】D.Perera-Costa,J.M.Bruque,M.L.Gonzalez-Martin,A.C.Gomez-Garcia,V.Vadillo-Rodriguez,Langmuir 2014,30,4633-4641
【非特許文献10】K.W.Kolewe,J.Zhu,N.R.Mako,S.S.Nonnenmann,J.D.Schiffman,ACS Appl.Mater.Interfaces 2018,10,2275-2281
【非特許文献11】A.Hasan,S.K.Pattanayek,L.M.Pandey,ACS Biomater.Sci.Eng.2018,4,3224-3233
【非特許文献12】C.Blaszykowski,S.Sheikh,M.Thompson,Chem.Soc.Rev.2012,41,5599-5612
【非特許文献13】A.D.White,A.K.Nowinski,W.Huang,A.J.Keefe,F.Sun,S.Jiang,Chem.Sci.2012,3,3488-3494
【非特許文献14】S.Lowe,N.M.O’Brien-Simpson,L.A.Connal,Polym.Chem.2015,6,198-212
【非特許文献15】F.Costa,I.F.Carvalho,R.C.Montelaro,P.Gomes,M.C.L.Martins,Acta Biomater.2011,7,1431-1440
【非特許文献16】A.Andrea,N.Molchanova,H.Jenssen,Biomolecules 2018,8,27
【非特許文献17】S.R.Palumbi,Science 2001,293,1786-1790
【非特許文献18】N.Molchanova,P.R.Hansen,H.Franzyk,Molecules 2017,22,1430
【非特許文献19】M.Sieprawska-Lupa,P.Mydel,K.Krawczyk,K.Wojcik,M.Puklo,B.Lupa,P.Suder,J.Silberring,M.Reed,J.Pohl,Antimicrob.Agents Chemother.2004,48,4673-4679
【非特許文献20】M.Xiao,J.Jasensky,J.Gerszberg,J.Chen,J.Tian,T.Lin,T.Lu,J.Lahann,Z.Chen,Langmuir 2018,34,12889-12896
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
一態様では、基材と、連結基によって該基材に結合した第1のペプトイドとを含む、処理表面が提供される。
【0008】
別の態様では、複数の官能基を含有する表面を処理するための方法が提供される。本方法は、複数の官能基を連結基と反応させ、それによって、複数の連結基を含有する表面を作成することと、ペプトイドを複数の連結基のそれぞれに結合させることと、を含む。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】(kss)
4抗菌配列並びにそのC及びN修飾の化学構造を示す。B)CuAAC「クリック」カップリングのための修飾配列の化学構造。赤い丸印を、
図2Aで使用する。
【
図2】PEGテザーによる(kss)
4(すなわち、スキームA:GOPTS-PEG-N3-(kss)
4)及び(kss)
4を表面上に直接固定化したもの(すなわち、スキームB:APTMS-N
3-(kss)
4)の生成のための表面修飾スキームを示す。B)連続的な修飾ステップの後で測定した水接触角度。
【
図3】GOPTS-PEG-N
3-(kss)
4を得るための各表面修飾ステップの後の高解像度C1s(A)及びN1s(B)XPSスペクトルである。
【
図4】生存(緑色)及び死滅/損傷(赤色)P.aeruginosaの一連の共焦点顕微鏡画像である:A)非修飾ガラス、B)APTMS、C)APTMS-N3-(kss)4、及びD)GOPTS-PEG-N3-(kss)4、並びにE)共焦点測定に対応する定量化された付着データ。実際のカバレッジ(q被覆率)及び非修飾ガラス上の付着により正規化されたカバレッジ(qnorm)の両方を示し、#及び##は、それぞれp<0.005及びp<0.05を示す(一方向ANOVA)。
【
図5】(A)未修飾基材(ガラス又はTi)上のレベルにより正規化された生存細菌付着、及びB)(A)に示される死滅/損傷細菌付着対生存付着の比を示す一連のグラフである。インセットには、元の死滅付着データを表示する。白四角(&)は、P.aeruginosaの本発明における試験を示す。他の記号は、P.aeruginosa(&)、E.coli(*)、S.aureus(^)、L.salivarius(~)、及びS.sanguinis(*)の文献データを示す。付着を、イメージング染色された細胞又は付着した細菌の再培養のいずれかによって測定した。
【
図6】抗菌ペプトイド(AMP)分離の関数としての死滅/損傷細菌対生存付着の比率のグラフである。
【
図7】(A)AMP分離の関数としての正規化された生存付着、及び(B)AMP分離の関数としての正規化された死滅付着の一連のグラフである。
【
図8】(A)2k PEG、及び(B)20k PEGのテザーの、生存付着に対する死滅/損傷細菌(P.aeruginosa)の相対量を示す、異なる表面についてのペプトイドの正規化された表面被覆率の一連のグラフである。
【
図9】(A)2k PEG、及び(B)20k PEGのテザーの、生存付着に対する死滅/損傷細菌(S.aureus)の相対量を示す、異なる表面についてのペプトイドの正規化された表面被覆率の一連のグラフである。
【
図10】異なる表面についてのペプトイドの正規化された表面被覆率のグラフであり、生存付着に対する死滅/損傷細菌(P.aeruginosa)の相対量を示す。
【
図11】異なる表面についてのペプトイドの正規化された表面被覆率のグラフであり、生存付着に対する死滅/損傷細菌(S.aureus)の相対量を示す。
【
図12】本明細書に開示されるタイプの様々な連結されたAMPで修飾された同じ表面と比較した、未修飾表面についての生存/死滅細菌数を示す一連の顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本開示では、表面抗菌活性に対する固定化設計の影響を調査するためのモデルAMP模倣物として、Barron et al.,[11]によって最初に報告された両親媒性らせん構造を有する12-mer(Nlys-Nspe-Nspe)4抗菌ペプトイドを用いる。まず、ペプトイドのN末端及びC末端をジエチレングリコールセグメントで修飾することの、溶液中の最小阻害濃度(MIC)に対する効果を試験した。次に、2kDaポリエチレングリコール(PEG)テザーの有無にかかわらず、表面固定化アミンの、ペプトイドの銅(I)触媒アルキンアジド環状結合(CuAAC)表面カップリングのためのアジドへの変換を実証した。本発明者らは、水接触角(WCA)分析及びX線光電子分光(XPS)によって表面修飾ステップを特徴付け、最終的にタンパク質吸着及び生存/死滅細菌付着のために表面をアッセイした。本発明者らは、AMP間の十分な空間的分離、したがって、PEGテザーによって可能になるような分子配置の柔軟性が、細菌の付着に抵抗し、表面上に抗菌活性を保持するために、必要であると仮定した。
【0011】
(Nlys-Nspe-Nspe)4親配列は、k及びsが、それぞれ、LysアナログN-(4-アミノブチル)グリシン(Nlys)及びa-キラル(S)-N-(1-フェニルエチル)グリシン(Nspe)(
図1A)である反復「kss」モチーフから構成される。この配列は、Aが陽イオン性であり、Bが疎水性である(多くの場合、Nspeがヘリシティを誘導する)典型的なABB三量体モチーフを表す。ペプトイド合成は、十分に確立された「サブモノマー」固相合成(SSPS)を使用して実行され[9b]、全ての配列修飾は、市販のビルディングブロックを使用して樹脂上で実施した(ESIを参照)。精製された配列のHPLC及びLC-MSの特性評価を
図S1及びS2に示す。
【0012】
まず、C末端アミド又は(kss)
4のN末端アミンがその殺菌効果に重要であるかどうかを検証した。培養した細菌((5×10
7CFUmL
-1))を、C末端又はN末端のいずれかでジエチレングリコール(EG
2)リンカーで修飾した増殖培地中でインキュベートして、それぞれ(kss)
4-EG
2及びEG
2-(kss)
4(
図1A)を得た。EG
2リンカーは、後に、表面カップリング基からの間隔(kss)
4のためにも使用した(下記参照)。試験したグラム陰性及びグラム陽性株(すなわち、Pseudomonas aeruginosaに対して16~20mm(PA01)、Escherichia coliに対して5~9mm(ATCC25922)、Staphylococcus aureusに対して1~6mm(NCTC4135);完全データについては
図S3を参照)について、末端修飾の有無において、同様のMICを観察した。小分子金属キレート剤を用いて(kss)
4のN末端を修正した以前の報告でも、E.coliに対するMICの変化はほとんど見られなかった[14]。(kss)
4に類似したペプトイドのC末端を修正した別の報告では、非機能的な20残基ペプトイドの活性(すなわち、増加したMIC)が菌株に応じて2~10倍低下した[12]。全体的なデータは、ペプトイドのN末端及びC末端構造が活性に不可欠ではないが、修正の立体的な大部分が重要である可能性があることを示唆している。表面固定化のために、我々は更に、通常のペプトイドSSPSを使用してペンチン側鎖を有する残基を用いてC末端を修飾して、(kss)
4-EG
2-ペンチンを生成した(
図1B)。並行して、確立されたプロトコル(ESIを参照)に従って、ジアミノ-PEG
2kにより更に官能化された(3-グリシジルオキシプロピル)トリメトキシシラン(GOPTS)でシラン化された[15]、又は単に(3-アミノプロピル)トリメトキシシラン(APTMS)でシラン化された、ガラススライドを調製した(
図2A)。[16]次いで、両方の表面上の末端アミンを、イミダゾール-1-スルホニルアジド(ESIを参照)との一晩のインキュベーションによってアジドに変換した。[17]これにより、(kss)
4-EG
2-pentyneのCuAACカップリング[18]を、PEG
2kテザーの有無において、ペプトイド官能化表面、すなわち、
図2Aの、それぞれ、スキームA:GOPTS-PEG-N
3-(kss)
4及びスキームB:APTMS-N
3-(kss)
4として行った。
【0013】
図2Bは、各修正ステップ後の表面濡れ性の予想される変化と一致する水接触角(WCA)データを示す。スキームAについては、WCAは最初のGOPTS修飾で増加し(オルガノシランはガラスよりも疎水性が高い)、次にジアミノ-PEG
2Kのカップリング後に減少した(PEG-アミンは親水性である)。PEG末端アミンの非カチオン性アジド(N
3)へのその後の変換、次いで多数の疎水性Nspe基を有する(kss)
4のCuAACカップリングは、WCAを連続的に増加させた。同様に、スキームBについては、ガラスをオルガノシランAPTMSでシラン化し、最終的に(kss)
4で官能化した後、WCAの連続的な増加が観察された。
【0014】
表面修飾を、XPSによって更に確認した。C1sスペクトル(
図3A)では、エポキシド基中のC-O結合の予測される付加を示す、286.5eVafter GOPTSシラン化でピークが現れた。PEG付着を、PEG中のエーテル結合の存在から生じるこのC-Oピークの更なる増加によって、また使用されるPEGの末端アミンから生じるN1s N-Cピーク(401eV)の出現によって、いずれも検証された(
図3B)。その後のアジド誘導体化を、402.3eVでのN-N=N
-ピークの出現によって確認した。[13、19]。最終的なペプトイドカップリングを、(kss)
4:C1s C-C(284.8eV)及びアミド(288.3eV)、[19]及びN1s N-C=O(399.5eV)及びNH
2(400.8eV)に起因するピークの実質的な増加によって確認した。[20]。SiO
2基材からのSi2pシグナルの減衰を分析することにより、最終的なペプトイド表面密度を0.3鎖/nm
2と推定する(表S1及び関連する議論)。
【0015】
本発明に係るPEGテザーは、本質的にポリマーブラシを形成し、非特異的な生体分子吸着に対する耐性を付与し、したがって細菌の付着を減少させるはずである。[5a、c]。この防汚特性の初期評価のために、GOPTSPEG-N
3-(kss)
4サンプルを10%FBS中でインキュベートした(2時間、RT)。確立されたプロトコルに従って、[21]、エリプソメトリー測定は、インキュベーションの前後のアドレイヤー厚さのほとんど変化を示さず(
図S4:3.5:0.6nm対3.7:0.5nm、n=3)、PEGでテザーされたペプトイド表面上のタンパク質吸着が少ないことを示す。
【0016】
次に、HAIでの関連性が高く、バイオフィルム形成に関連するリスクがあるため、ペプトイド官能化表面のP.aeruginosa(PA01)に対する抗菌活性の評価に焦点を当てた。[22]。
図4A~Dは、24時間の付着アッセイ(1,378Cで5V107CFUmL)後にSyto 9及びヨウ化プロピジウム(PI)によってそれぞれ染色された、付着した生存及び死滅/損傷細菌の典型的な画像を示す。
図4Eは、このデータを、実際の表面被覆率(θ
coverage)及び正規化被覆率(θ
norm;未修飾ガラス制御に対する)の観点から要約している。
【0017】
未修飾ガラスでは、比較的高い生存P.aeruginosaのθ
coverage=10.5%
【数1】
が観察され、生存細菌のみが見出された(
図4A)。対照的に、PEGテザー(kss)
4(すなわち、GOPTS-PEG-N
3-(kss)
4)では、はるかに低いθ
norm=0.21が観察され、そのうちのわずかな部分のみが生存細菌で構成されていた(θ
norm-生存=0.02)(
図4D及びE)。対照的に、PEGなしで固定化された(kss)
4(すなわち、APTMS-N
3-(kss)
4)で同様の全体的な付着(θ
norm-合計=0.23)が観察されたが、これらの細胞のほとんどは依然として生存していた(θ
norm-生存=0.20)(
図4C及びE)。したがって、2kDaのPEGテザーは、高い表面活性を達成するのに有用であった。
【0018】
本発明では、アミン末端表面(
図2A、スキームB、工程[i])を得たAPTMS修飾ガラスを用いて更なる制御を行い、(kss)
4表面上で予想される正電荷を模倣した。
図4B及びEは、APTMS上のθ
coverage=6.5%を示し、主に生存細菌からなる。この付着レベルは対照(θ
norm=0.62)よりも適度に低く、アミノシラン表面で時折観察されている現象である(
図S5)。[23]しかし、これは(kss)
4の官能化表面よりも約3倍高かった。これは、陽イオン性の性質にもかかわらず、付着を抑制する抗菌配列の役割を示唆しており、これは、同様に短い表面移植されたペプトイドがバイオファウリングに抵抗する能力に関連している可能性がある。[21a、b]。死滅/損傷付着細胞のマイナーな部分(θ
norm-dead=0.06)に関しては、細菌膜の流動性及び完全性を損なう静電表面接着の役割が可能である。
【0019】
本発明ではまた、E.coli(ATCC25922)に対して付着アッセイを行ったが、付着はほとんど観察されず、統計的に有意なデータは得られなかった。本発明の条件下で何らかの分離が発生した可能性がある。それにもかかわらず、P.aeruginosa(
図S3)よりもE.coli(及びS.aureus)に対する本発明の修飾されたペプチドに対して測定された更に低いMICに基づいて、GOPTS-PEG-N
3-(kss)
4表面修飾がこれらの株に対して有効であると予想される。全体的に、本発明のPEGテザリングされたペプトイドの結果は、低い生存細菌付着及び高い割合の死滅/損傷細胞によって特徴付けられた。固定化(横方向)密度0.3鎖/nm2(XPS分析を参照)は、PEG N
3-(kss)
4の20nmの輪郭長さによって許容される横方向及び垂直方向の両方の動きの柔軟性を考慮すると、固定化(kss)
4シーケンス間の約5nmの最大「体積的」分離を意味する(計算についてはESIを参照)。これは、25mm溶液中に見出される平均分子分離に相当し、これは(kss)
4のMICよりも桁違いに大きい。したがって、表面固定化は、非常に高い局所濃度のAMPを生成することができる。
【0020】
実際、過去の研究では、AMPの固定化密度の増加に焦点が当てられている。[12,23-25]。しかしながら、AMPは一般に疎水性及びカチオン性基を有し、どちらも望ましくない細菌付着を促進する。AMP分離を計算するためのデータが利用可能である過去の研究(ESIを参照)と一緒に結果をプロットすると、特に比較的短いAMP分離(すなわち、高AMP密度)を有する高生存付着の多くの報告が示される(
図5A)。シラン化により高密度の表面カップリング基が得られるため、シラン化された表面上で直接固定化すると、一般的に最短の分離が得られる。本発明の設計を含め、ポリマーブラシの先端でAMPをテザリングすることは、ポリマー鎖が密接なパッキングを防止し、ポリマーテザーのアンカーポイントの周りの横方向及び垂直方向の移動を可能にするため、一般的に分離を増加させた。しかし、いくつかの研究では、固定化密度を高めるためにポリマー鎖の長さに沿って複数のAMPを付着させており[23b,24]、AMP分離を減少させていた。全体として、
図5Aは、調査された多様な細菌の種類及びアッセイプロトコルにもかかわらず、AMP分離を増加させることによって生存付着を減少させ得ることを示す。更に、PEG
2kに単一のAMPをカップリングする本発明の設計は、最大のAMP分離で最も低いアタッチメントを提供した。この低下した汚れは、観察された低いFBS吸着によって裏付けられた(
図S6)。
【0021】
損傷した/死滅細菌付着に目を向けると、
図5Bの挿入図は、ブラシ上の中間(3~4nm)の分離で結合されたAMPが、最も高い見かけ上の表面活性(すなわち、最も高い死滅付着)を示したことを示す。これは、ポリマーテザーが、強化された膜相互作用のための分子配列及び配向に柔軟性をもたらすことができるという仮説と一致する。しかしながら、付着した死滅細菌は、依然としてバイオフィルムの形成及び急性免疫応答につながる可能性がある。
図5Bは、生存付着と比べ同じデータをプロットし、全体的な付着が低く、比較的高い活性を有するケースを強調する。これは、比較された多様な実験にもかかわらず、増大するAMP分離と相対的活性との間の顕著な相関関係を明らかにする。実際、APTMS-N
3-(kss)
4の設計では、他のシラン表面と同様に相対活性が低いことが示されていたが、GOPTS-PEG-N
3-(kss)
4のブラシ設計では、相対活性が最も高いだけでなく、分離も最も高く(5nm)なった。当然のことながら、相対的活性は非常に大きなAMP分離で減少すると予想することもでき、これは、細菌の膜を破壊するのに不十分な非常に低い密度のAMPを意味する。したがって、最適な相対活性を示すために、中間AMP分離が存在するべきである。
【0022】
結論として、本発明では、モデル抗菌ペプトイドAMP模倣物がそのC及びN-末端の両方の修飾に適していることを示し、CuAAC「クリック」表面カップリングのためにアジド末端をアミノ官能化表面に導入するためのワンステッププロトコルを実証した。これらの実証により、AMP固定化設計の研究が可能になり、表面活性がポリマー(PEG2k)テザーによって強く強化され、空間的柔軟性と細菌との好適な表面相互作用のための垂直リーチの重要性と一致していることが示された。更に、固定化されたAMPのバイオファウリング防止を特徴付けるための新しいパラメータとして、AMP分離を紹介する。このパラメータは、表面固定によって達成される非常に高い局所AMP濃度を強調する。また、文献データと比較して、AMP分離の増加と相対的な表面活性の増加との間に強い相関関係があることが明らかになり、低レベルの付着を示す死滅/損傷細菌の割合が高いことが示されている。実際、本発明のPEGカップリング設計は、最大のAMP分離及び最高の相対活性を示した。したがって、本結果は、固定化密度ではなく、AMP分離を最適化して、表面活性及び細菌付着の減少の両方を可能にする可能性を強調する。
【0023】
本明細書に開示される製品及び方法論のいくつかの実施形態において、処理されたペプトイド含有表面は、好適な官能基を含有する表面に由来し得る。かかる官能基は、酸素、窒素、硫黄、リン、ホウ素、又は金属を含有し得る。かかる金属は、例えば、Mg、Li、Cu、及びAlを含み得る。かかる官能基の例としては、限定されないが、ヒドロキシル基、カルボニル基、アルデヒド、ハロホルミル、炭酸エステル、カルボキシル、カルボアルコキシル、メトキシ、ヒドロペルオキシ、ペルオキシ、エーテル、ヘミアセタール、ヘミケタール、アセタール、オルトエステル、メトレンジオキシ(methlenedioxy)、オルトカーボネートエステル及び無水カルボン酸基;カルボキシアミド、一級アミン、二級アミン、三級アミン、アンモニウム、一次ケチミン、二次ケチミン、一級アルジミン、二次アルジミン、イミド、アジド、アゾ、シアンネート、イソシアネート、ニトレート、ニトリル、イソニトリル、ニトロソオキシ、ニトロ、ニトロソ、オキシム、ピリジル及びカルバメート基;スルフヒドリル、スルフィド、ジスルフィド、スルフィニル、スルホニル、スルフィノ、スルホ、チオシアネート、イソチオシアネート、カルボノチオイル、カルボチオ酸S-酸、カルボチオ酸O-酸、チオールエステル、チオノエステル、カルボジチオ酸、及びカルボジチオ基;ホスフィノ、ホスホノ及びホスフェート基;ボロノ、O-[ビス(アルコキシ)アルキルボロニル]、ヒドロキシボリノ及びO-[アルコキシジアルキルボロニル]基;アルキルリチウム、アルキルマグネシウムハロゲン化物、アルキルアルミニウム及びシリルエーテル基;アルケン及びアルキン;並びに1つ以上のラジカル、例えば、カルボン酸アシルラジカルなどを含有する基が挙げられ得る。
【0024】
本明細書に開示される製品及び方法のいくつかの実施形態において、処理されたペプトイド含有表面は、異なる場合がある2つ以上のペプトイドを含み得る。例えば、そのような表面は、第1の繋がれたペプトイドを含有する表面を作成し、第2のペプトイドを第1のペプトイドに共有結合、イオン結合、水素結合、又はファンデルワールス力を介して結合する表面に適用することによって導出することができる。
【0025】
本発明の上記の説明は例示であり、限定することを意図するものではない。したがって、本発明の範囲から逸脱することなく、上記の実施形態に種々の付加、置換及び変更が行われ得ることを理解されたい。したがって、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲を参照して解釈されるべきである。便宜上、特許請求される発明のいくつかの特徴は、特定の従属又は独立の特許請求の範囲で別々に記載され得る。しかしながら、これらの特徴は、本開示の範囲から逸脱することなく、様々な組み合わせ及び副組み合わせで組み合わせることができることを理解されたい。限定ではなく例として、2つ以上の従属特許請求の範囲の制限は、本開示の範囲から逸脱することなく、互いに組み合わされ得る。
【0026】
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【国際調査報告】