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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-18
(54)【発明の名称】電力管理方法及びシステム
(51)【国際特許分類】
   H02J 3/32 20060101AFI20231211BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20231211BHJP
【FI】
H02J3/32
H02J7/00 L
H02J7/00 B
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023534381
(86)(22)【出願日】2021-12-03
(85)【翻訳文提出日】2023-06-01
(86)【国際出願番号】 EP2021084127
(87)【国際公開番号】W WO2022117794
(87)【国際公開日】2022-06-09
(31)【優先権主張番号】20315483.6
(32)【優先日】2020-12-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523207537
【氏名又は名称】トタルエナジーズ リニューアブルズ
【氏名又は名称原語表記】TOTALENERGIES RENEWABLES
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】マティアス、ローラン
(72)【発明者】
【氏名】ギヨン、クレマン
【テーマコード(参考)】
5G066
5G503
【Fターム(参考)】
5G066HB03
5G066HB09
5G066JA01
5G066JB03
5G503AA01
5G503BA04
5G503BB01
5G503CA08
5G503EA05
5G503GB06
(57)【要約】
本発明は、送電網に結合されたエネルギー貯蔵システム(1)の電力管理方法に関し、エネルギー貯蔵システム(1)は、所定数のエネルギー貯蔵デバイス(A~K)と、少なくとも1つの関連付けられたエネルギー貯蔵デバイス(A~K)にそれぞれ結合された電力変換システム(PCS1、PCSn)と、を含む。本方法は、エネルギー貯蔵デバイス(A~K)をそれぞれの充電状態に基づいて順序付けることと、電力を吸収又は供給する要求を決定することと、要求された電力及び当該電力閾値の設定に応じて、エネルギー貯蔵デバイスごとに吸収又は供給される少なくとも1つの電力閾値を設定することと、起動されるエネルギー貯蔵デバイスの数を計算することと、シーケンスランキングに従って、計算された数のエネルギー貯蔵デバイス及びエネルギー貯蔵デバイスに関連付けられた電力変換システム(PCS1、PCSn)を起動することと、を含む。本発明はまた、当該方法を実装するためのシステムに関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
送電網に結合されたエネルギー貯蔵システム(1)の電力管理方法であって、前記エネルギー貯蔵システム(1)が、所定数のエネルギー貯蔵デバイス(A~K)と、少なくとも1つの関連付けられたエネルギー貯蔵デバイスにそれぞれ結合された電力変換システム(PCS1、PCSn)とを含み、
-前記エネルギー貯蔵デバイス(A~K)をそれぞれの充電状態に基づいて順序付けることと、
-電力を吸収又は供給する要求を決定することと、
-エネルギー貯蔵デバイスごとに吸収又は供給される少なくとも1つの電力閾値を設定することと、
-前記要求された電力及び前記電力閾値の設定に応じて、起動されるエネルギー貯蔵デバイスの数を計算することと、
-シーケンスランキングに従って、計算された数の前記エネルギー貯蔵デバイス及び前記エネルギー貯蔵デバイスに関連付けられた前記電力変換システム(PCS1、PCSn)を起動することと、を含む、方法。
【請求項2】
前記要求が電力を吸収することである場合、充電されるべき最も低い充電状態(A)を有する計算された数の前記エネルギー貯蔵デバイスを起動することと、
前記要求が電力を提供することである場合、放電されるべき最も高い充電状態(E、D)を有する計算された数の前記エネルギー貯蔵デバイスを起動することと、を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
すべての前記エネルギー貯蔵デバイス及びすべての前記エネルギー貯蔵デバイスに関連付けられた前記電力変換システムが起動されている場合、
前記要求された電力が前記電力閾値にエネルギー貯蔵デバイスの総数を乗じた値を超える場合、
各前記エネルギー貯蔵デバイスに対して吸収又は供給する電力を均等に増加させる、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
下限(SOC平均-x%)及び上限(SOC平均+x%)を有する所望の充電状態範囲を設定することと、
充電状態が限界(SOC平均+x%、SOC平均-x%)のうちの1つに達すると、以前に起動されたエネルギー貯蔵デバイス(A、E)を起動停止し、次のエネルギー貯蔵デバイス(B、D)をシーケンスランキングに従って起動することと、を含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
すべての前記エネルギー貯蔵デバイスの平均充電状態(SOC平均)を計算することを含み、
前記所望の充電状態範囲の前記下限(SOC平均-x%)が、前記平均充電状態(SOC平均)から所定の割合(x)を減算することによって設定され、前記上限(SOC平均+x%)が、前記平均充電状態(SOC平均)に前記所定の割合(x)を加算することによって設定される、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記所定の割合が、前記平均充電状態(SOC平均)の約5%である、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記平均充電状態(SOC平均)が、所定の時間間隔で計算される、請求項5又は6に記載の方法。
【請求項8】
前記所定の時間間隔が約10秒である、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記要求された電力が減少する場合、前記所望の充電状態範囲の前記限界(SOC平均+x%、SOC平均-x%)のうちの1つに達する前に、現在起動されている前記エネルギー貯蔵デバイスのうちの少なくとも1つが起動停止される、請求項4から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
シーケンスランキングに従って起動される第1のエネルギー貯蔵デバイス(A、E)が、最初に起動停止されるエネルギー貯蔵デバイスである、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記エネルギー貯蔵デバイスが、充電状態(A~K)を増加させることによって順序付けられる、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記少なくとも1つの電力閾値が、前記エネルギー貯蔵デバイスの最大電力の40%から80%の間に設定される、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記少なくとも1つの電力閾値が、2.5MWの最大電力に対して2MW未満である、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記起動されるエネルギー貯蔵デバイスの前記計算された数が、前記要求された電力を前記電力閾値で割った値以上の全数である、請求項1から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
送電網に結合された少なくとも1つのエネルギー貯蔵システム(1)を備える電力管理システムであって、前記エネルギー貯蔵システム(1)が、所定数のエネルギー貯蔵デバイス(A~K)と、少なくとも1つの関連付けられたエネルギー貯蔵デバイス(A~K)にそれぞれ結合された電力変換システム(PCS1、PCSn)とを含み、前記電力管理システムが、請求項1から14のいずれか一項に記載の電力管理方法を実装するように構成されている、電力管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、送電網に結合されたエネルギー貯蔵システムの電力を管理するためのシステム及び方法に関する。
【0002】
送電網は、複数の電気エネルギー源に接続される。電気は、不確実な需要を満たすために絶えず生成されなければならず、それは頻繁に、供給と需要との間の不均衡をもたらし、すなわち頻度の変動をもたらす。送電網の信頼性及び安全性は保証されなければならない。例えば、送電網の頻度を調整する必要がある。
【0003】
更に、環境への影響を低減するために、汚染する発電形態をクリーンな発電形態に置き換えることができる。しかしながら、太陽光発電、水力発電、風力発電などの再生可能発電源を含む特定のタイプのエネルギー源は、送電網の安定性に対するそれらの断続的かつ予測不可能な性質の影響を最小限に抑えるために、特別な形態の調整を必要とする場合がある。
【0004】
バッテリコンテナなどの複数のエネルギー貯蔵デバイスを含むエネルギー貯蔵システムを使用して、生成された電力の変動を調整する補助サービスを提供することができる。全体的なバランスは、頻度調整によって確保することができる。
【0005】
送電網の送電システムオペレータからの信号に基づいて、エネルギー貯蔵システムは、すべてのエネルギー貯蔵デバイスを充電するか放電するかのいずれかによって応答してもよい。処理中、エネルギー貯蔵デバイスは、時折、過熱するか、満杯に近づくか、空に近づくか、又はエネルギー貯蔵デバイスを損傷する可能性がある何らかの他の状態に遭遇する可能性がある。
【0006】
エネルギー貯蔵システムは、一般に、エネルギー貯蔵デバイスから供給される直流(DC)電力を交流(AC)電力に変換し、送電網に結合された接続点に供給するように構成された電力変換システムを含む。通常、エネルギー貯蔵デバイスを充電するために、接続点に達する電力は、すべてのエネルギー貯蔵デバイス及びすべてのエネルギー貯蔵デバイスに関連付けられた電力変換システムに均等に分配され、エネルギー貯蔵デバイスを放電するときにその逆も同様である。
【0007】
しかしながら、供給不足の期間中、例えば、要求された電力が1日中の電力変換システムの動作率の30%未満である場合、電力変換システム全体は、それらの有用な動作範囲内で動作せず、これは一般にエネルギー損失につながる。
【0008】
本発明の目的は、従来技術のこれらの問題を少なくとも部分的に補償することである。したがって、本発明の目的は、送電網の不安定性を考慮し、エネルギー貯蔵システムの損傷を防止するために、電力を管理する解決策を提供することである。エネルギー貯蔵デバイス及び電力変換システムの両方が、それらの寿命を最大にしながら、最も高い性能スコアを得ることを可能にすることも目的である。
【0009】
この目的は、本発明によれば、送電網に結合されたエネルギー貯蔵システムの電力管理方法によって達成され、エネルギー貯蔵システムは、所定数のエネルギー貯蔵デバイスと、少なくとも1つの関連付けられたエネルギー貯蔵デバイスにそれぞれ結合された電力変換システムとを含み、本方法は、
-エネルギー貯蔵デバイスをそれぞれの充電状態に基づいて順序付けることと、
-電力を吸収又は供給する要求を決定することと、
-少なくとも1つの電力閾値を設定することと、
-要求された電力及び当該電力閾値の設定に応じて、起動されるエネルギー貯蔵デバイスの数を計算することと、
-シーケンスランキングに従って、計算された数のエネルギー貯蔵デバイス及びエネルギー貯蔵デバイスに関連付けられた電力変換システムを起動することと、を含む。
【0010】
電力閾値の設定は、エネルギー貯蔵デバイスごとに吸収又は供給される電力閾値である。このような閾値は、起動電力閾値とも呼ばれる。
【0011】
エネルギー貯蔵システムは樹枝状であり、本方法は、限られた数の分岐に要請を集中させることを可能にする。電力閾値は、バッテリの経年劣化の加速を最小限に抑えることによって良好な性能を提供するように選択される。起動された分岐は、エネルギー貯蔵デバイス及び電力変換システムの両方の有用な動作範囲内にある。これにより、システムの性能損失が最小限に抑えられる。
【0012】
更に、この方法では、エネルギー貯蔵デバイスの起こり得る故障又はメンテナンス中の故障が考慮される。最小量のエネルギー貯蔵デバイスを分配して起動するロジックは、利用できないデバイスを考慮に入れるように適合する。
【0013】
電力管理方法はまた、以下の特徴のうちの1つ以上を別々に又は組み合わせて含んでもよい。
【0014】
一実施形態によれば、本方法は、
-要求が電力を吸収することである場合、充電されるべき最も低い充電状態を有する計算された数のエネルギー貯蔵デバイスを起動することと、
-要求が電力を提供することである場合、放電されるべき最も高い充電状態を有する計算された数のエネルギー貯蔵デバイスを起動することと、を含んでもよい。
【0015】
すべてのエネルギー貯蔵デバイス及びすべてのエネルギー貯蔵デバイスに関連付けられた電力変換システムが起動され、要求された電力がエネルギー貯蔵デバイスの総数を乗じた当該電力閾値を超える場合、本方法は、各エネルギー貯蔵デバイスに対して吸収又は供給する電力を均等に増加させることを含んでもよい。
【0016】
一実施形態によれば、本方法は、下限及び上限を有する所望の充電状態範囲を設定することを含んでもよい。
【0017】
以前に起動されたエネルギー貯蔵デバイスは、充電状態が限界のうちの1つに達すると、起動停止されてもよく、次いで、シーケンスランキングに従って次のエネルギー貯蔵デバイスが起動されてもよい。
【0018】
これは、エネルギー貯蔵デバイスのローテーションが起動されることを可能にし、同じエネルギー貯蔵デバイスが常に起動され、システムの残りの部分と比較してより速く経年劣化することを防止する。
【0019】
すべてのエネルギー貯蔵デバイスの平均充電状態が計算されてもよい。
【0020】
例えば、所望の充電状態範囲の下限は、平均充電状態から所定の割合を減算することによって設定される。上限は、平均充電状態に所定の割合を加算することによって設定される。
【0021】
エネルギー貯蔵デバイス全体の充電状態は均一化され、平均充電状態ブラケットに維持される。
【0022】
好ましくは、所定の割合は、平均充電状態の約5%である。
【0023】
平均充電状態は、所定の時間間隔で計算されてもよい。例えば、所定の時間間隔は約10秒である。
【0024】
要求された電力が減少する場合、現在起動されているエネルギー貯蔵デバイスのうちの少なくとも1つは、所望の充電状態範囲の限界のうちの1つに達する前に起動停止される場合がある。
【0025】
有利には、シーケンスランキングに従って起動される第1のエネルギー貯蔵デバイスは、最初に起動停止されるエネルギー貯蔵デバイスである。
【0026】
エネルギー貯蔵デバイスは、充電状態を増加させることによって順序付けられてもよい。
【0027】
当該少なくとも1つの電力閾値は、エネルギー貯蔵デバイスの最大電力の40%から80%の間に設定されてもよい。
【0028】
例えば、2.5MWの最大電力に対して、当該少なくとも1つの電力閾値は2MW未満である。当該電力閾値は、特に1MWと1.8MWの間である。
【0029】
好ましくは、起動されるエネルギー貯蔵デバイスの計算された数は、要求された電力を当該電力閾値で割った値以上の全数である。
【0030】
本発明はまた、送電網に結合された少なくとも1つのエネルギー貯蔵システムを備える電力管理システムに関し、エネルギー貯蔵システムは、所定数のエネルギー貯蔵デバイスと、少なくとも1つの関連付けられたエネルギー貯蔵デバイスにそれぞれ結合された電力変換システムとを含み、当該電力管理システムは、前述の電力管理方法を実装するように構成される。
【図面の簡単な説明】
【0031】
本発明の他の特徴及び利点は、非限定的な例示的な例として与えられる以下の説明及び添付の図面を読むことによってより明らかになるであろう。
図1】送電網に接続され、エネルギー貯蔵デバイスと、関連付けられた電力変換システムとを含む、エネルギー貯蔵システムの一実施形態を示す。
図2】要求された電力の関数として起動されるエネルギー貯蔵デバイスの数を示すグラフである。
図3】充電されたときのエネルギー貯蔵デバイスの充電状態の2つの限界の間の展開と、シーケンスランキングの優先順位の変化とを示す。
図4】放電されたときのエネルギー貯蔵デバイスの充電状態の2つの限界の間の展開と、シーケンスランキングの優先順位の変化とを示す。
【0032】
これらの図において、同一の要素は同じ参照番号を有する。
【0033】
以下の実施形態は一例である。本説明は1つ以上の実施形態を言及しているが、これは、各言及が同じ実施形態に関すること、又は特徴がただ1つの実施形態にのみ適用されることを必ずしも意味しない。異なる実施形態の単一の特徴はまた、他の実施形態を提供するために組み合わせられるか又は交換され得る。
【0034】
説明において、例えば第1の要素又は第2の要素など、いくつかの要素にインデックス付けすることが可能である。この場合、類似しているが同一ではない要素を区別して命名するのは単純なインデックス付けである。このインデックス付けは、1つの要素の別の要素に対する優先順位を意味するものではなく、そのような名称は、本明細書の範囲から逸脱することなく交換することができる。このインデックス付けは、時間的な順序を意味しない。
【0035】
図1を参照すると、本開示は、送電網に結合されたエネルギー貯蔵システム1の電力を管理するための方法及びシステムに関する。動作環境内では、異なるエネルギー源が送電網に結合される場合がある。特に、太陽光、水力、風力、バイオマスエネルギー、地熱などの自然エネルギー(再生可能エネルギー)源を使用してもよい。
【0036】
エネルギー貯蔵システム1は、接続点5を介して送電システムオペレータなどの送電網3のオペレータに接続されてもよい。
【0037】
エネルギー貯蔵システム1は、一般に、所定数のエネルギー貯蔵デバイスA、B、...、J、Kと、電力変換システムPCS1、...、PCSnとを含む。
【0038】
エネルギー貯蔵デバイスA、B、...、J、Kは、電力を貯蔵するように構成される。
【0039】
エネルギー貯蔵デバイスは、少なくとも1つのバッテリコンテナを含む。一実施形態によれば、エネルギー貯蔵システム1は、11個のバッテリコンテナを含む。バッテリコンテナは、同じ構成を有してもよい。バッテリコンテナは、一般に、複数のバッテリセルを含む。バッテリコンテナの構成は公知であり、これ以上説明しない。
【0040】
電力変換システムPCS1、...、PCSnは、少なくとも1つの関連付けられたエネルギー貯蔵デバイスA、B、...、J、Kにそれぞれ結合される。したがって、エネルギー貯蔵システム1は、図1に示すように樹枝状である。
【0041】
電力調整システムPCS1、...、PCSnは、1つ以上の関連付けられたエネルギー貯蔵デバイスA、B、...、J、Kから供給される直流(DC)電力を、当該デバイスの出力電圧と比較して上昇した電圧を有する交流(AC)電力に変換するように、及びその逆に変換するように構成される。
【0042】
1つの電力調整システムPCS1、...、PCSnに関連付けられた、バッテリコンテナなどのエネルギー貯蔵デバイスA、B、...、J、Kの数は、特に、電力調整システムPCSの技術及びバッテリコンテナの電力に依存する。1つのエネルギー貯蔵デバイスA、B、...、J、Kは、1つの電力調整システムPCS1、...、PCSnに関連付けられてもよい。図1に示される別の非拘束的な実施形態によれば、2つのエネルギー貯蔵デバイスが、単一の電力調整システムPCS1、...、PCSnに関連付けられてもよい。
【0043】
電力管理システムは、送電網に結合された少なくとも1つのエネルギー貯蔵システム1を備えてもよく、以下で説明する電力管理方法を実装するように構成される。言い換えれば、電力管理システムは、本方法を実装するための1つ以上の処理手段を備える。
【0044】
エネルギー貯蔵システム1は、エネルギー貯蔵デバイスA、B、...、J、Kを充電又は放電することによって、送電網のグローバルバランスを提供するように動作させることができる。
【0045】
エネルギー貯蔵デバイスA、B、...、J、Kを充電又は放電するための動作は、限定はしないが、送電システムオペレータなどの送電網3のオペレータによって設定されるルールを含む、市場に応じて、複数の調整パラメータ、ルール、及び入力に基づくことができる。ルールは、市場のニーズに従って確立される場合がある。
【0046】
電力管理方法は、電力を吸収又は供給する要求を決定するステップを含む。この要求は、送電網オペレータ3から来てもよいが、必ずしもそうでなくてもよい。代替的に、エネルギー管理システムは、一般に送電網3のオペレータによって設定されるルールに基づいて、及び/又は国の委員会によって定義されたエネルギー規制フレームワークに基づいて、吸収又は供給する電力を定義することができ、次いで要求を送信する。
【0047】
電力管理方法は、エネルギー貯蔵デバイスA、B、...、J、Kをそれぞれの充電状態に基づいて順序付けるステップを含む。
【0048】
より正確には、エネルギー貯蔵デバイスA~Kは、充電状態を増加させることによって順序付けられる。これは、充電又は放電を動作させるために、呼び出されるか又は起動されるデバイスの優先順位を定義する。
【0049】
要求が電力を吸収することである場合、優先順位は、充電されるべき最も低い充電状態を有する1つ以上のエネルギー貯蔵デバイスを呼び出すか又は起動することを可能にする。
【0050】
逆に、要求が電力を提供することである場合、優先順位は、放電されるべき最も高い充電状態を有する1つ以上のエネルギー貯蔵デバイスを呼び出す又は起動することを可能にする。
【0051】
バッテリコンテナなどの11個のエネルギー貯蔵デバイスを有する例(図2)に関して、シーケンスA、B、C、D、E、F、G、H、I、J、Kによれば、エネルギー貯蔵デバイスAは、充電が最も少なく、要求が電力を吸収することである場合に充電されるように起動される最初のエネルギー貯蔵デバイスである。反対に、エネルギー貯蔵デバイスKは、充電が最も多く、要求が電力を提供することである場合に放電されるように起動される最初のエネルギー貯蔵デバイスである。
【0052】
電力管理方法は、少なくとも1つの電力閾値を設定するステップを含む。この閾値は、エネルギー貯蔵デバイスごとに吸収又は供給される電力閾値である。このような閾値は、以下、起動閾値とも呼ばれる。
【0053】
これは、要求される電力に応じて、いつ新しいデバイスを呼び出すか、又はいつ以前に起動されたデバイスを起動停止するかを決定するための閾値である。言い換えれば、一旦設定されると、起動閾値は、起動するエネルギー貯蔵デバイスの数を決定するために使用される。要求が電力を吸収することである場合、起動閾値は、充電が最も少ないエネルギー貯蔵デバイスのうちのいくつが充電されるべきかを決定するために使用される。要求が電力を提供することである場合、起動閾値は、充電が最も多いエネルギー貯蔵デバイスのうちのいくつが放電されるべきかを決定するために使用される。
【0054】
起動閾値は、電力変換システムPCS1、...、PCSnの効率、バッテリコンテナの要請、及び電力消費の間の妥協点として選択される。起動閾値は、バッテリ寿命及び補助消費を最適化するように定義される。
【0055】
特に、起動閾値は、エネルギー貯蔵デバイスの最大電力の40%から70%の間、又は40%から80%の間に設定されてもよい。例えば、2.5MWの最大電力に対して、起動閾値は、2MW未満、特に1MWから1.8MWの間に選択される。
【0056】
電力管理方法は、起動されるエネルギー貯蔵デバイスの数を計算するステップを更に含む。
【0057】
この数は、要求された電力及び設定された起動閾値に依存する。この数は、要求された電力を起動電力閾値で割った値以上の全数である。
【0058】
次いで、シーケンスランキングに従って、計算された数のエネルギー貯蔵デバイス及びエネルギー貯蔵デバイスに関連付けられた電力変換システムPCS1、...、PCSnが起動される。すなわち、要求が電力を吸収することである場合、最も低い充電状態を有する計算された数のエネルギー貯蔵デバイスが充電されるように起動される。要求が電力を提供することである場合、最も高い充電状態を有するエネルギー貯蔵デバイスが放電されるように起動される。
【0059】
これにより、エネルギー貯蔵デバイスを次々に起動することを可能にする。要求された電力が起動電力閾値未満である限り、1つのエネルギー貯蔵デバイスが呼び出され、起動される。要求された電力が閾値を上回るとき、第2のエネルギー貯蔵デバイスが呼び出され、同様に起動される。
【0060】
図2の例を参照すると、エネルギー貯蔵デバイスは2.5MWの最大電力を有し、所定の起動閾値は1MWである。例えば、要求が1MW以下を吸収することである場合、バッテリコンテナ1つのみが起動される。前述のシーケンスに従って、充電が最も少ないエネルギー貯蔵デバイスAが充電されるように呼び出される。他のデバイスB~Kは待機モードのままである。
【0061】
要求が例えば3.5MWを吸収することである場合、4つのバッテリコンテナが起動される。4つの充電が最も少ないデバイスA、B、C及びDは、充電されるように呼び出される。他の7つのデバイスE~Kは待機モードのままである。
【0062】
反対に、要求が例えば2MWを提供することである場合、最も高い充電状態を有する2つのバッテリコンテナが放電されるように起動される。
【0063】
すべてのエネルギー貯蔵デバイスA~K及びすべてのエネルギー貯蔵デバイスに関連付けられた電力変換システムPCS1、...、PCSnが起動される場合、要求された電力が、エネルギー貯蔵デバイスの総数、例えば11MWを乗じた当該起動閾値を超える場合、各エネルギー貯蔵デバイスに対して吸収又は供給する電力を均等に増加させる。
【0064】
常に同じエネルギー貯蔵デバイスを呼び出すことを回避するために、起動ロジックは、バッテリコンテナなどのエネルギー貯蔵デバイスA~Kのローテーションルールを含み、その結果、シーケンスの優先順位が変化する。
【0065】
好ましい実施形態によれば、ローテーションルールは、エネルギー貯蔵デバイスA~Kの充電状態に基づく。したがって、充電状態に応じて優先順位が変化する。
【0066】
この目的のために、所望の充電状態範囲が設定される。所望の充電状態範囲は、下限及び上限を有する。
【0067】
下限及び上限は設定可能である。好ましくは、所望の充電状態範囲は、すべてのエネルギー貯蔵デバイスの平均充電状態に加算又は減算する割合として設定される。
【0068】
したがって、本方法は、すべてのエネルギー貯蔵デバイスの平均充電状態を計算する1つ以上のステップを含む。
【0069】
当然ながら、1つ以上のエネルギー貯蔵デバイスを充電又は放電するとき、平均充電状態は変化する。平均充電状態は、所定の時間間隔、例えば10秒ごとに計算されてもよい。
【0070】
下限は、平均充電状態から所定の割合を減算することによって設定されてもよい。上限は、平均充電状態に所定の割合を加算することによって設定されてもよい。
【0071】
所定の割合は、エネルギー貯蔵デバイスの起動頻度と充電状態の均一化との間の妥協点として選択される。割合が低すぎる場合、起動頻度が速すぎる可能性があり、別のモジュールを呼び出す必要があるモジュールが呼び出されることはほとんどない。しかし、割合が高すぎる場合、充電状態は均一ではない。
【0072】
例えば、所定の割合は、平均充電状態の約5%である。この例では、5%は、エネルギー貯蔵デバイスをあまりにも頻繁にオン及びオフにする時間を費やすことを回避し、同時に、すべてのデバイスの充電状態の偏りが過度に大きくなることを回避する。
【0073】
更に、ロジックは電力変換システムPCS1、...、PCSnによって行われる。特に、図1の例に戻って参照すると、同じ電力変換システムPCS1、...、PCSnに接続されたエネルギー貯蔵デバイスのセット、例えばデバイスA及びB、又はJ及びKに対して同じ充電状態が保たれる。第1の電力変換システムPCS1に接続されたエネルギー貯蔵デバイスのセット、例えばA、Bと、第2の電力変換システムPCSnに接続されたエネルギー貯蔵デバイスのセット、例えばJ、Kとの間に充電状態のわずかな差があり得る。
【0074】
以前に起動された第1のエネルギー貯蔵デバイスの充電状態が限界のうちの1つに達すると、起動停止され、次いで第2のデバイスが呼び出され、以下同様である。次に起動されるエネルギー貯蔵デバイスは、シーケンスランキングに従って選択される。一般に、次に呼び出されるエネルギー貯蔵デバイスは、平均充電状態から最も遠いエネルギー貯蔵デバイスである。
【0075】
例えば、充電が最も少ない第1のデバイスが充電されるように呼び出される場合、上限に達すると、現在充電が最も少ない第2のデバイスが充電されるように呼び出される。逆に、充電が最も多い第1のデバイスが放電されるように呼び出される場合、下限に達すると、現在充電が最も多い第2のデバイスが放電されるように呼び出される。
【0076】
これにより、すべてのエネルギー貯蔵デバイスの充電状態を均一に保つことが可能になり、平均充電状態ブラケットに維持され、均一な充電状態になる。実際、エネルギー貯蔵デバイスは、起動されると、充電状態が限界に達するまでエネルギーを吸収又は放出するが、待機モードではエネルギー貯蔵システム1の残りのデバイスから発散しない。
【0077】
要求された電力が減少する場合、現在起動されているエネルギー貯蔵デバイスの少なくとも1つは、所望の充電状態範囲の限界のうちの1つに達する前に起動停止される。シーケンスランキングに従って起動される第1のエネルギー貯蔵デバイスは、最初に起動停止されるエネルギー貯蔵デバイスである。起動される第2のエネルギー貯蔵デバイスは、2番目に起動停止されるエネルギー貯蔵デバイスであり、以下同様である。
【0078】
図3の例を参照すると、5つのエネルギー貯蔵デバイスA、B、C、D、Eがあり、各々が電力変換システム(図示せず)に関連付けられている。まず、線L1に示すように、AからEの順に順序付けされ、Aの充電が最も少なく、Eの充電が最も多い。平均充電状態SOC平均_1、下限SOC平均_1-x%、及び上限SOC平均_1+x%が計算される。
【0079】
要求された電力及び起動閾値に関して、起動されるエネルギー貯蔵デバイスの数は、例えば、1つである。
【0080】
例えば、要求が電力を吸収することである場合、矢印7によって示されるように、充電が最も少ないエネルギー貯蔵デバイスAが充電されるように呼び出される。他のデバイスB~Eは待機モードのままである。
【0081】
エネルギー貯蔵デバイスAが充電するとき、エネルギー貯蔵デバイスAはエネルギーを吸収し、その結果、線L2に示すように、充電状態が変化する。結果として、平均充電状態が変化する。前述したように、平均充電状態は、例えば10秒後に再び計算することができ、SOC平均_2と呼ばれる。限界SOC平均_2-x%、限界SOC平均_2+x%も再び計算される。これは概略的かつ簡略化された表現である。充電状態は、いくつかのエネルギー貯蔵デバイスが存在するので、起動されたエネルギー貯蔵デバイス1つのみが存在するときにわずかに変化する。平均充電状態は、いくつかのエネルギー貯蔵デバイスが同時に起動されるとき、より大きく変化する。
【0082】
線L3に示すように、エネルギー貯蔵デバイスAはエネルギーを吸収し続け、充電状態は変化する。平均充電状態は再び計算することができ、SOC平均_3と呼ばれる。限界SOC平均_3-x%、限界SOC平均_3+x%も再び計算される。エネルギー貯蔵デバイスAの充電状態が起動停止限界、ここでは上限SOC平均_3+x%に達すると、エネルギー貯蔵デバイスAは起動停止される。
【0083】
充電されるべきエネルギー貯蔵デバイスの新しい優先順位は、B、C、D、E、Aである。充電が最も少ないエネルギー貯蔵デバイスは、ここではエネルギー貯蔵デバイスBであり、矢印9によって示されるように充電されるように次に起動される。他のデバイスC~E及びAは待機モードのままである。エネルギー貯蔵デバイスBが充電されると、最終的に起動停止限界に達するまでエネルギーを吸収する。
【0084】
逆に、図4の例を参照すると、エネルギー貯蔵デバイスは、線L5に示されるように、AからEまで順序付けされ、Aの充電が最も少なく、Eの充電が最も多い。平均充電状態SOC平均、下限SOC平均-x%、及び上限SOC平均+x%が計算される。要求された電力及び起動閾値に関して、起動されるエネルギー貯蔵デバイスの数は、例えば、2つである。
【0085】
要求が電力を提供することである場合、充電が最も多いエネルギー貯蔵デバイスD、Eは、矢印11によって示されるように、放電されるように呼び出される。両方のエネルギー貯蔵デバイスD、Eは同時に起動されるが、アルゴリズムに関して、充電が最も多いエネルギー貯蔵デバイスEが最初に呼び出され、次いでエネルギー貯蔵デバイスDが呼び出される。他のエネルギー貯蔵デバイスA~Cは待機モードのままである。
【0086】
放電時、エネルギー貯蔵デバイスD及びEはエネルギーを放出し、その結果、線L6に示されるように、それらの充電状態が変化する。結果として、平均充電状態が変化する場合がある。前述したように、平均充電状態は、10秒後に再び計算することができ、SOC平均’と呼ばれる。限界SOC平均’-x%、限界SOC平均’+x%も再び計算される。
【0087】
両方のエネルギー貯蔵デバイスD、Eが起動されている間に要求された電力が低下し、その結果、1つのみが起動されたままである必要がある場合、それらのうちの1つが起動停止される。最初に起動されたエネルギー貯蔵デバイスが、最初に起動停止されるエネルギー貯蔵デバイスである。この例では、線L7に示されるように、デバイスEが最初に起動され、最初に起動停止される。エネルギー貯蔵デバイスDは、唯一呼び出されたままである。エネルギー貯蔵デバイスDは、矢印13によって示されるようにエネルギーを放出し続け、充電状態が変化する。
【0088】
図4の線L7における非拘束的な例によれば、放電されるべきエネルギー貯蔵デバイスの新しい優先順位は、E、C、B、Aである(Dは既に起動されている)。
【0089】
平均充電状態を再び計算することができる。限界も再び計算される。エネルギー貯蔵デバイスDの充電状態が起動停止限界、ここでは下限に達すると、エネルギー貯蔵デバイスDは起動停止される。
【0090】
電力が依然として要求される場合、次に充電が多いエネルギー貯蔵デバイスは、最終的に起動停止限界に達するまで、放電されるように起動されることができる。
【0091】
更に、エネルギー貯蔵システム1のエネルギー貯蔵デバイスの一部が停止中又はメンテナンス中である場合、起動ロジックが適合する。例えば、1つのエネルギー貯蔵デバイスが停止している場合、それが考慮され、電力が残りのデバイスに分配される。言い換えれば、エネルギー貯蔵システム1がN個のエネルギー貯蔵デバイスを含み、1つが停止している場合、電力はN-1個のエネルギー貯蔵デバイスに分配される。
【0092】
本発明の実施形態は、ハードウェア及び/又はソフトウェアの形態で実行され得ることが理解される。任意のそのようなソフトウェアは、揮発性又は不揮発性記憶デバイス、例えば、消去可能又は再書き込み可能であるか否かにかかわらず、ROMのような記憶デバイスの形態で、或いは、例えば、RAM、メモリチップ、デバイス又は集積回路、若しくは光学的又は磁気的に読み取り可能な媒体などのメモリの形態で記憶することができる。記憶デバイス及び記憶媒体は、実行されると、本発明の実施形態を実装する1つ以上のプログラムを記憶するのに適した機械可読記憶デバイスの実施形態であることが理解される。したがって、実施形態は、説明されるようなシステム又は方法を実装するためのコードを備えるプログラム、及びそのようなプログラムを記憶する機械可読記憶デバイスを提供する。更に、本発明の実施形態は、有線接続又は無線接続を介して搬送される通信信号などの任意の媒体を介して電子的に搬送されてもよく、実施形態はそれを適切に包含する。
【0093】
したがって、本方法及びシステムは、エネルギー貯蔵システム1の様々な電力変換分岐内の電力分配の管理を可能にする。
【0094】
要請は、限られた数の分岐に集中され、各分岐は、1つの電力変換システムPCS1、PCSnと、1つの関連付けられたエネルギー貯蔵デバイス又はエネルギー貯蔵デバイスA、B、...、J、Kのセットとを備える。起動された分岐は、それらの有用な動作範囲で動作し、他の分岐はオフになっている。バッテリコンテナ及び電力変換システムPCS1、...、PCSnの分岐の全体的な効率が最適化される。
【0095】
あるコンテナが他のコンテナよりも頻繁に呼び出され、他のコンテナと比較して非常に早く経年劣化することが回避される。
【0096】
最後に、エネルギー貯蔵デバイスA~Kの充電状態は、可能な限り均一で均質なままである。
図1
図2
図3
図4
【国際調査報告】