(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-18
(54)【発明の名称】音響吸収または減衰のためのエアレイドブランク、ならびにそれを生成するための方法および装置
(51)【国際特許分類】
D04H 1/732 20120101AFI20231211BHJP
G10K 11/162 20060101ALI20231211BHJP
【FI】
D04H1/732
G10K11/162
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023534642
(86)(22)【出願日】2021-12-07
(85)【翻訳文提出日】2023-08-04
(86)【国際出願番号】 IB2021061409
(87)【国際公開番号】W WO2022123439
(87)【国際公開日】2022-06-16
(32)【優先日】2020-12-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】501239516
【氏名又は名称】ストラ エンソ オーワイジェイ
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】トルンブロム, マリア
【テーマコード(参考)】
4L047
5D061
【Fターム(参考)】
4L047AA07
4L047AA08
4L047AB02
4L047AB06
4L047BA09
4L047BA12
4L047BA13
4L047BB09
4L047BC03
4L047BC05
4L047BC07
4L047BC10
4L047BC11
4L047BC12
4L047CA12
4L047CB03
4L047EA03
5D061AA02
5D061AA12
5D061AA22
5D061BB21
5D061DD11
(57)【要約】
エアレイドブランク(10)は、天然繊維およびポリマー結合剤を含む。エアレイドブランク(10)は、エアレイドブランク(10)の残りの部分(13)の繊維配向分布とは異なる局所繊維配向分布を有する多数の部分(11)を含む。エアレイドブランク(10)は、音響吸収または減衰物品(20)を生成するのに使用することができる。本発明は、そのようなエアレイドブランク(10)を生成するための方法および装置(100)にも関する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
天然繊維と、
ポリマー結合剤と
を含むエアレイドブランク(10)であって、
エアレイドブランク(10)の残りの部分(13)の繊維配向分布とは異なる局所繊維配向分布を有する多数の部分(11)を含む、エアレイドブランク(10)。
【請求項2】
多数の部分(11)が、エアレイドブランク(10)の第1の主面(12)からエアレイドブランク(10)の第2の反対側の主面(14)まで、エアレイドブランク(10)の厚みの少なくとも一部分を通して拡がっている、請求項1に記載のエアレイドブランク。
【請求項3】
多数の部分(11)が、エアレイドブランク(10)内に延びる空洞(15)またはチャネルを含み、
空洞(15)またはチャネルに隣接する多数の部分(11)の局所繊維配向分布が、エアレイドブランク(10)の残りの部分(13)の繊維配向分布とは異なる、
請求項1または2に記載のエアレイドブランク。
【請求項4】
多数の部分(11)の局所繊維配向分布が、エアレイドブランク(10)の残りの部分(13)の繊維配向分布と比較して、より高いレベルの等方性を有する、請求項1から3のいずれか一項に記載のエアレイドブランク。
【請求項5】
エアレイドブランク(10)の残りの部分(13)の繊維の大部分が、エアレイドブランク(10)の第1の主面(12)および第2の主面(14)と平行にまたは実質的に平行に配向する、請求項1から4のいずれか一項に記載のエアレイドブランク。
【請求項6】
多数の部分(11)が、エアレイドブランク(10)に規則的なグリッドまたはマトリックスを形成する、請求項1から5のいずれか一項に記載のエアレイドブランク。
【請求項7】
多数の部分(11)が、エアレイドブランク(10)にランダムに分布される、請求項1から5のいずれか一項に記載のエアレイドブランク。
【請求項8】
天然繊維が、10mmまで、好ましくは8mmまで、より好ましくは6mmまで、および最も好ましくは5mmまでの長さ加重平均繊維長、例えば1mmから最長10mmまでの間隔内、好ましくは1mmから最長8mmまでの間隔内、より好ましくは1mmから最長6mmまでの間隔内、および最も好ましくは1mmから最長5mmまでの間隔内で選択された長さ加重平均繊維長を有する、請求項1から7のいずれか一項に記載のエアレイドブランク。
【請求項9】
エアレイドブランク(10)が、
エアレイドブランク(10)の少なくとも70重量%の濃度での天然繊維と、
エアレイドブランク(10)の2.5から最大30重量%までの間隔内で選択された濃度でのポリマー結合剤と
を含む、請求項1から8のいずれか一項に記載のエアレイドブランク。
【請求項10】
天然繊維が、木質繊維、好ましくはセルロースおよび/またはリグノセルロース繊維、より好ましくは、軟材および/または硬材の化学的、機械的、および/または化学機械的パルプ化によって生成されたセルロースおよび/またはリグノセルロースパルプ繊維を含む、請求項1から9のいずれか一項に記載のエアレイドブランク。
【請求項11】
天然繊維が、硫酸塩パルプ、亜硫酸パルプ、熱機械的パルプ(TMP)、高温熱機械的パルプ(HTMP)、中密度繊維板が意図される機械的繊維(MDF-繊維)、化学熱機械的パルプ(CTMP)、高温化学熱機械的パルプ(HTCTMP)、およびこれらの組合せからなる群から選択される形をとる、セルロースおよび/またはリグノセルロースパルプ繊維である、請求項10に記載のエアレイドブランク。
【請求項12】
ポリマー結合剤が、ポリマー粉末、ポリマー繊維、およびこれらの組合せからなる群から選択される、好ましくは熱可塑性ポリマー粉末、熱可塑性ポリマー繊維、およびこれらの組合せからなる群から選択される、請求項1から11のいずれか一項に記載のエアレイドブランク。
【請求項13】
熱可塑性ポリマー繊維が、一成分熱可塑性ポリマー繊維、二成分熱可塑性ポリマー繊維、およびこれらの混合物からなる群から選択され、好ましくは二成分熱可塑性ポリマー繊維から選択される、請求項12に記載のエアレイドブランク。
【請求項14】
ポリマー結合剤が、i)ポリエチレン(PE)、エチレンアクリル酸コポリマー(EAA)、エチレン-酢酸ビニル(EVA)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)、ポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)、ポリコハク酸ブチレン(PBS)、ポリ乳酸(PLA)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリ(2-エチル-2-オキサゾリン)(PEOX)、ポリビニルエーテル(PVE)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリアクリル酸(PAA)、ポリメタクリル酸(PMAA)、ポリ酢酸ビニル(PVAc)、ポリウレタン(PU)、これらのコポリマー、およびこれらの混合物からなる群から選択される材料と、ii)任意選択で1種または複数の添加剤とから作製される、請求項1から13のいずれか一項に記載のエアレイドブランク。
【請求項15】
天然繊維および熱可塑性ポリマー結合剤、および/または天然繊維と熱可塑性ポリマー結合剤との混合物を、形成ヘッド(110)の少なくとも1つの入口(111)に導入すること(S1)、
天然繊維および熱可塑性ポリマー結合剤、および/または混合物を、形成ヘッド(110)の出口(113)に輸送すること(S2)、
天然繊維および熱可塑性ポリマー結合剤、および/または混合物を、非結合エアレイドウェブ(30)として、形成ヘッド(110)の出口(113)に接続して配置構成された収集器(120)上に獲得すること(S3)、
非結合エアレイドウェブ(30)の多数の部分(31)上に気体パルスを適用して、多数の部分(31)に繊維配向の局所歪みを誘導すること(S4)、ならびに
非結合エアレイドウェブ(30)を熱処理して、熱可塑性ポリマー結合剤を少なくとも部分的に溶融し、エアレイドブランク(10)を形成すること(S5)
を含む、エアレイドブランク(10)を生成する方法。
【請求項16】
熱処理すること(S5)が、非結合エアレイドウェブ(30)を熱処理して熱可塑性ポリマー結合剤を少なくとも部分的に溶融し、エアレイドブランク(10)の残りの部分(13)の繊維配向分布とは異なる局所繊維配向分布を有する多数の部分(11)を含むエアレイドブランク(10)を形成すること(S5)を含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
収集器(120)が、空気透過性収集器(120)であり、
天然繊維および熱可塑性ポリマー結合剤、および/または混合物を獲得すること(S3)が、天然繊維および熱可塑性ポリマー結合剤、および/または混合物を、表面に真空が適用された空気透過性収集器(120)上に獲得すること(S3)を含む、
請求項15または16に記載の方法。
【請求項18】
収集器(120)が、駆動ローラー(122、124)の間を走るベルト収集器(120)であり、
気体パルスを適用すること(S4)が、形成ヘッド(110)の下流でベルト収集器(120)上に置かれた非結合エアレイドウェブ(30)の多数の部分(31)上に気体パルスを適用すること(S4)を含む、
請求項15から17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
気体パルスを適用すること(S4)が、i)形成ヘッド(110)の下流に配置構成された多数の固定気体ノズル(132)、および/またはii)形成ヘッド(110)の下流に配置構成され、かつベルト収集器(120)上に置かれたエアレイドブランク(10)に対して選択的に移動可能である、少なくとも1つの可動気体ノズル(132)を使用して、気体パルスを選択的に適用すること(S4)を含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
天然繊維を形成ヘッド(110)の少なくとも1つの入口(111)に導入すること(S10)、
天然繊維を形成ヘッド(110)の出口(113)に輸送すること(S11)、
天然繊維を、天然繊維のウェブ(40)として、形成ヘッド(110)の出口(113)に接続して配置構成された収集器(120)に獲得すること(S12)、
収集器(120)上の天然繊維のウェブ(40)の多数の部分(41)上に気体パルスを適用して、多数の部分(41)に繊維配向の局所歪みを誘導すること(S13)、
天然繊維上にポリマー結合剤を適用すること(S14)、ならびに
天然繊維のウェブ(40)およびポリマー結合剤を熱処理して、エアレイドブランク(10)を形成すること(S15)
を含む、エアレイドブランク(10)を生成する方法。
【請求項21】
熱処理すること(S15)が、天然繊維のウェブ(40)およびポリマー結合剤を熱処理して、エアレイドブランク(10)の残りの部分(13)の繊維配向分布とは異なる局所繊維配向分布を有する多数の部分(11)を含むエアレイドブランク(10)を形成すること(S15)を含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
方法が、請求項1から14のいずれか一項に記載のエアレイドブランク(10)を生成するためである、請求項15から21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
天然繊維および熱可塑性ポリマー結合剤、および/または天然繊維と熱可塑性ポリマー結合剤との混合物を受容するよう構成された少なくとも1つの入口(111)と、出口(113)とを含む、形成ヘッド(110)、
駆動ローラー(122、124)の間を走り、形成ヘッド(110)の出口(113)に接続して配置構成され、天然繊維および熱可塑性ポリマー結合剤および/または混合物を非結合エアレイドウェブ(30)として獲得するよう構成された、ベルト収集器(120)、
形成ヘッド(110)の下流に配置構成され、かつベルト収集器(120)上に置かれた非結合エアレイドウェブ(30)の多数の部分(31)上に気体パルスを適用して、多数の部分(31)に繊維配向の局所歪みを誘導するよう構成された少なくとも1つの気体ノズル(132)を含む、ノズルシステム(130)、ならびに
ノズルシステム(130)の下流に配置構成され、かつ非結合エアレイドウェブ(30)を熱処理して熱可塑性ポリマー結合剤を少なくとも部分的に溶融しエアレイドブランク(10)を形成するよう構成された、結合炉(150)
を含む、エアレイドブランク(10)を生成するための装置(100)。
【請求項24】
結合炉(150)が、ノズルシステム(130)の下流に配置構成され、非結合エアレイドウェブ(30)を熱処理して熱可塑性ポリマー結合剤を少なくとも部分的に溶融しかつエアレイドブランク(10)の残りの部分(13)の繊維配向分布とは異なる局所繊維配向分布を有する多数の部分(11)を含むエアレイドブランク(10)を形成するよう構成される、請求項23に記載の装置。
【請求項25】
ベルト収集器(120)上に置かれた非結合エアレイドウェブ(30)の多数の部分(31)上に気体パルスを選択的に適用するため、少なくとも1つの気体ノズル(132)を制御するよう構成された制御器(140)をさらに含む、請求項23または24に記載の装置。
【請求項26】
ベルト収集器(120)上に置かれた非結合エアレイドウェブ(30)に対して少なくとも1つの気体ノズル(132)を移動させるように、かつベルト収集器(120)上に置かれた非結合エアレイドブランク(30)の多数の部分(31)上に気体パルスを選択的に適用するように構成された制御器(140)をさらに含む、請求項23または24に記載の装置。
【請求項27】
天然繊維を受容するよう構成された少なくとも1つの入口(111)と、出口(113)とを含む、形成ヘッド(110)、
駆動ローラー(122、124)の間を走り、形成ヘッド(110)の出口(113)に接続して配置構成され、天然繊維を天然繊維のウェブ(40)として獲得するよう構成された、ベルト収集器(120)、
形成ヘッド(110)の下流に配置構成され、かつベルト収集器(120)上に置かれた天然繊維のウェブ(40)の多数の部分(41)上に気体パルスを適用して、多数の部分(41)に繊維配向の局所歪みを誘導するよう構成された少なくとも1つの気体ノズル(132)を含む、ノズルシステム(130)、
天然繊維のウェブ(40)上にポリマー結合剤を適用するよう構成されたデバイス(160)、および
ノズルシステム(130)およびデバイス(160)の下流に配置構成され、かつ天然繊維およびポリマー結合剤を熱処理してエアレイドブランク(10)を形成するよう構成された、結合炉(150)
を含む、エアレイドブランク(10)を生成するための装置(100)。
【請求項28】
結合炉(150)が、ノズルシステム(130)およびデバイス(160)の下流に配置構成され、かつ天然繊維およびポリマー結合剤を熱処理して、エアレイドブランク(10)の残りの部分(13)の繊維配向分布とは異なる局所繊維配向分布を有する多数の部分(11)を含むエアレイドブランク(10)を形成するように構成される、請求項27に記載の装置。
【請求項29】
請求項1から14のいずれか1つに記載のエアレイドブランク(10)を含むかまたはこのエアレイドブランク(10)から作製される、音響吸収または減衰物品(20)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は一般に、エアレイドブランクとそのようなエアレイドブランクを生成するための方法および装置、ならびにそのようなエアレイドブランクから作製された、音響吸収または減衰物品に関する。
【背景技術】
【0002】
今日、人々が集まるほとんどの建物は、通常なら内部で時間を費やさなければならない者にストレスおよび疲労を引き起こし得る、騒々しく混沌としたサウンドスケープを防ぐため、何らかの音響減衰または吸収構造を備える必要がある。音響減衰および吸収構造は、典型的には多孔質材料からなる。
【0003】
現在、そのような音響減衰および吸収構造に最も一般的に使用される材料は、熱硬化性樹脂と一緒に保持され、しばしば視覚的印象を強化するために可視面が塗料の多孔質層で覆われた、ガラスまたはミネラルウールである。これらの材料は、リサイクルされたガラス容器からしばしば作製され、新興しつつある「低廃棄物」エコノミーに十分うまく組み入れられている。問題は、それらの廃棄時に生ずる。塗料および樹脂などの有機添加剤に起因して、ガラスまたはミネラルウールを再度溶融することは安全ではない。したがって有機添加剤は、新しい音響減衰または吸収構造を生成する、材料のリサイクルを妨げる。さらに、ガラスまたはミネラルウールは燃焼しない。したがって、それらの廃棄時の唯一の選択肢は、埋立て地に埋めることである。
【0004】
したがって、音響減衰および吸収構造で使用することができ、かつ同じタイプ、場合によっては他の用途のための新しい材料にリサイクルすることができ、それらの廃棄時にエネルギーを得るために焼却することができまたは堆肥化することができる、その他の材料が求められている。そのような材料はさらに、良好な音響減衰および吸収特性を有するだけでなく、同時に、建築構造に一体化するためにまたは自立型音響減衰もしくは吸収構造として使用するために、強度および剛性に関する要求も満たす。
【0005】
US 2018/0044825は、植物または動物繊維を含む、使用済み織布または編地からの製品の製造を開示する。収集された、使用済み織布または編地は、平均繊維長3.6から5.5mmを有する繊維へと造粒され、剤熱可塑性繊維をベースにした結合剤と混合され、不織マットに形成される。製品は、吸音板の形をとってもよい。
【発明の概要】
【0006】
目的は、音響吸収または減衰物品を生成するのに使用することができる、エアレイドブランクを提供することである。
【0007】
このおよびその他の目的は、本発明の実施形態によって満たされる。
【0008】
本発明は、独立クレームで定義される。本発明のさらなる実施形態は、従属クレームで定義される。
【0009】
本発明の態様は、天然繊維およびポリマー結合剤を含む、エアレイドブランクに関する。エアレイドブランクは、エアレイドブランクの残りの部分の繊維配向分布とは異なる、局所繊維配向分布を有する多数の部分を含む。
【0010】
本発明の別の態様は、エアレイドブランクを生成する方法に関する。方法は、天然繊維および熱可塑性ポリマー結合剤、および/または天然繊維および熱可塑性ポリマー結合剤の混合物を、形成ヘッドの少なくとも1つの入口に導入することを含む。方法は、天然繊維および熱可塑性ポリマー結合剤および/または混合物を、形成ヘッドの出口に輸送することも含む。方法はさらに、天然繊維および熱可塑性ポリマー結合剤および/または混合物を、形成ヘッドの出口に接続して配置構成された収集器上に非結合エアレイドウェブとして獲得することを含む。方法はさらに、非結合エアレイドウェブの多数の部分に気体パルスを適用して、多数の部分において繊維配向の局所歪みを誘導することを含む。方法はさらに、非結合エアレイドウェブを熱処理して、熱可塑性ポリマー結合剤を少なくとも部分的に溶融し、エアレイドブランクの残りの部分の繊維配向分布とは異なる局所繊維配向分布を有する多数の部分を含む、エアレイドブランクを形成することを含む。
【0011】
本発明の関連ある態様は、エアレイドブランクを生成する方法を定める。方法は、天然繊維を形成ヘッドの少なくとも1つの入口に導入すること、天然繊維を形成ヘッドの出口に輸送すること、および天然繊維を、天然繊維のウェブとして、形成ヘッドの出口に接続して配置構成された収集器上に獲得することを含む。方法は、収集器上の天然繊維のウェブの多数の部分に気体パルスを適用して、多数の部分に繊維配向の局所歪みを誘導することも含む。方法はさらに、ポリマー結合剤を天然繊維上に適用し、天然繊維およびポリマー結合剤のウェブを熱処理して、音響吸収または減衰エアレイドブランクの残りの部分の繊維配向分布とは異なる局所繊維配向分布を有する多数の部分を含むエアレイドブランクを形成することを含む。
【0012】
本発明の他の態様は、音響吸収または減衰エアレイドブランクを生成するための装置に関する。装置は、天然繊維および熱可塑性ポリマー結合剤、および/または天然繊維および熱可塑性ポリマー結合剤の混合物を受容するよう構成された少なくとも1つの入口と、出口とを含む、形成ヘッドを含む。装置は、駆動ローラーの間を走り、形成ヘッドの出口に接続して配置構成され、天然繊維および熱可塑性ポリマー結合剤および/または混合物を、非結合エアレイドウェブとして獲得するよう構成された、ベルト収集器も含む。装置はさらに、形成ヘッドの下流に配置構成され、かつベルト収集器上に置かれた非結合エアレイドウェブの多数の部分に気体パルスを適用して、多数の部分に繊維配向の局所歪みを誘導するよう構成された少なくとも1つの気体ノズルを含む、ノズルシステムを含む。装置はさらに、ノズルシステムの下流に配置構成され、かつ非結合エアレイドウェブを熱処理して熱可塑性ポリマー結合剤を少なくとも部分的に溶融し、音響吸収または減衰エアレイドブランクの残りの部分の繊維配向分布とは異なる局所繊維配向分布を有する多数の部分を含む音響吸収または減衰エアレイドブランクを結合するよう構成された、結合炉を含む。
【0013】
本発明の関連する態様は、音響吸収または減衰エアレイドブランクを生成するための装置を定める。装置は、天然繊維を受容するように構成された少なくとも1つの入口と出口とを含む、形成ヘッドを含む。装置は、駆動ローラーの間を走り、形成ヘッドの出口に接続して配置構成され、天然繊維を天然繊維のウェブとして獲得するよう構成された、ベルト収集器も含む。装置はさらに、形成ヘッドの下流に配置構成され、かつ多数の部分に繊維配向の局所歪みが誘導されるようにベルト収集器上に置かれた天然繊維のウェブの多数の部分に気体パルスを適用するよう構成された、少なくとも1つの気体ノズルを含む、ノズルシステムを含む。装置はさらに、ポリマー結合剤を天然繊維のウェブに適用するように構成されたデバイスと、ノズルシステムおよびデバイスの下流に配置構成されかつ天然繊維およびポリマー結合剤を熱処理して、エアレイドブランクの残りの部分の繊維配向分布とは異なる局所繊維配向分布を有する多数の部分を含むエアレイドブランクを形成するよう構成された、結合炉とを含む。
【0014】
本発明のさらに別の態様は、上記定義されたエアレイドブランクを含むまたはこのエアレイドブランクから作製された、音響吸収または減衰物品に関する。
【0015】
本発明のエアレイドブランクは、騒々しく混沌としたサウンドスケープを防止するように構成された、音響減衰または吸収構造または物品を生成するのに使用することができる。天然繊維から作製されたエアレイドブランクは、同じまたは異なる用途のための新しい材料にリサイクルすることができ、それらの廃棄時にエネルギーのために焼却され堆肥化されるという点で、音響減衰または吸収構造または物品で使用される伝統的な材料、即ち熱硬化性樹脂と一緒に保持されるガラスまたはミネラルウールに勝る利点を有する。本発明のエアレイドブランクは、包装品の緩衝材に使用することもできる。
【0016】
実施形態は、そのさらなる目的および利点と一緒に、添付図面と一緒に解釈される以下の記述を参照することによって最も良く理解され得る。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】実施形態による繊維配向分布の局所歪みを導入する前のエアレイドブランクの横断面図である。
【
図2】実施形態による、局所的に歪んだ繊維配向分布を持つエアレイドブランクの横断面図である。
【
図3】別の実施形態による、局所的に歪んだ繊維配向分布および形成された空洞を持つ、エアレイドブランクの横断面図である。
【
図4】加熱下で圧縮した後の、
図3によるエアレイドブランクの横断面図である。
【
図5】実施形態による、エアレイドブランクを生成する方法を例示するフローチャートである。
【
図6】別の実施形態による、エアレイドブランクを生成する方法を例示するフローチャートである。
【
図7】実施形態による、エアレイドブランクを生成するための装置の上流部分の図式的概観図である。
【
図8】
図7に示される装置のノズルシステムの近接図である。
【
図9】縦断面図でエアレイドブランクを示す、実施形態によるエアレイドブランクを生成するための装置の図式的概観図である。
【
図10】縦断面図でエアレイドブランクを示す、別の実施形態によるエアレイドブランクを生成するための装置の図式的概観図である。
【
図11A-11C】音響吸収または減衰物品の、例示的な実施例である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の実施形態は一般に、エアレイドブランクと、そのようなエアレイドブランクを生成するための方法および装置と、そのようなエアレイドブランクから作製された音響吸収または減衰物品とに関する。
【0019】
本発明のエアレイドブランクは、騒々しく混沌としたサウンドスケープを防止するよう構成されまたは設計された、音響減衰または吸収物品を生成するのに使用することができる。天然繊維から作製されたエアレイドブランクは、同じまたは異なる用途のための新しい材料にリサイクルすることができ、それらの廃棄時にエネルギーのために焼却されまたは堆肥化できることに関し、音響減衰または吸収構造または物品に使用される伝統的な材料、即ち熱硬化性樹脂と一緒に保持されるガラスまたはミネラルウールに勝る利点を有する。
【0020】
音響減衰または吸収のためのエアレイドブランクの使用による難題は、材料が、多孔質であるなどの良好な音響減衰および吸収特性を有するべきであるだけでなく、同時に、建築物に一体化され得るまたは自立型構造として使用され得る音響減衰および/または吸収物品に必要とされる強度および剛性に関して、要求を満たすべきであることである。
【0021】
エアレイドブランクは、時にドライレイドブランク、エアレイドマット、ドライレイドマット、エアレイドウェブ、またはドライレイドウェブとも呼ばれ、一般に、天然繊維およびポリマー結合剤またはより典型的にはこれらの混合物を、エアレイ装置の形成ヘッドに導入することを一般に含む、エアレイプロセスで生成される。天然繊維およびポリマー結合剤は、形成ヘッドを通して輸送され、空気と混合されて多孔質繊維混合物を形成し、これは典型的にはベルトまたはワイヤー収集器の形をとる収集器上に堆積されかつ収縮器により獲得される。このエアレイプロセスは典型的にはエアレイドブランクを生成し、このエアレイドブランクでは、天然繊維の大多数が、ベルトまたはワイヤー収集器の平面にほぼ平行なそれらの長軸に対して配向しており、エアレイドブランク10の主面12、14(
図1において、x-y平面)には、この平面に垂直に配向した、即ち
図1のz軸に沿って配向した繊維がほとんどない。したがってエアレイドブランク10の繊維構造は、z軸に垂直な平面内でほとんど階層化されまたは層状化されるようになる。それほど一般的ではないが、一部のエアレイプロセスは、大多数の天然繊維が
図1のz軸にほぼ平行なそれらの長軸に対して配向する、エアレイドブランクを生成し得る。これらのエアレイプロセスは、比較的長い天然繊維を必要とし、したがって木材または木材パルプ繊維に適していない。
【0022】
図1に示されるエアレイドブランク10の階層化繊維配向は、エアレイドブランク10の強度および剛性の特性に関して良好であり得るが、音響吸収に関しては最適ではない。したがって良好な音響吸収を実現するために、エアレイドブランク10の内部繊維構造は、三次元で等方性であるなど、より無秩序であるべきである。しかしながら繊維配向のそのような無秩序は、エアレイドブランク10の強度および剛性の特性を保存するために、エアレイドブランク10全体にわたって導入されるべきではない。
【0023】
本発明のエアレイドブランクは、良好な音響減衰および吸収特性を有するが、それでも音響減衰または吸収構造または物品として使用するのに十分な強度および剛性を有する。このことは、エアレイドブランクの残りの部分の繊維配向分布とは異なる繊維配向分布を持つエアレイドブランクに不連続部分を導入することによって実現される。エアレイドブランクの長さ伸長(
図1におけるx軸)およびエアレイドブランクの幅伸長(
図1におけるy軸)の両方に沿って不連続な、より高い等方性を持つ別々の部分を持つエアレイドブランクは、材料を構造的に支持するための当初のより強力な階層化繊維配向を持ち、それによって必要とされる強度および剛性を提供する、連続的な残りの部分を有する。それによってエアレイドブランクは多数の不連続部分を含み、そのそれぞれは、エアレイドブランクの残りの連続部分の繊維配向分布とは異なる局所繊維配向分布を有している。
【0024】
したがって本発明の態様は、エアレイドブランク10に関し、
図2の横断面図を参照されたい。エアレイドブランク10は、天然繊維およびポリマー結合剤を含む。エアレイドブランク10は、エアレイドブランク10の残りの部分13の繊維配向分布とは異なる局所繊維配向分布を有する、多数の部分11を含む。
【0025】
したがってエアレイドブランク10は、エアレイドブランク10の残りの部分13の繊維配向分布とは異なる局所繊維配向分布を有する、多数の、即ち少なくとも2つの、しかし典型的には複数の部分11を含む。多数の部分11は、本明細書でさらに記述されることになるが、
図2のx-y平面内でエアレイドブランク10の全体にわたってランダムに、擬似的にランダムに、または規則的に分布されて、エアレイドブランク10のメインのバルクまたは連続部分13と比較して異なる繊維配向分布を持つ個別のまたは不連続な部分11を構成する。実施形態では、多数の部分11は、エアレイドブランク10において所定のパターンで分布される。これらの多数の部分11は、
図1に示されるエアレイドブランク10と比較して、
図2におけるエアレイドブランク10の音響減衰および吸収特性を著しく改善し、それと同時に、
図1に示されるエアレイドブランク10の強度および剛性の特性または特徴のほとんどを維持する。
【0026】
本明細書で使用される局所繊維配向分布は、エアレイドブランク10のそれぞれの多数の部分11での繊維配向分布に関し、それに対してエアレイドブランク10の残りの部分13の繊維配向分布は、エアレイドブランク10の残りにおける繊維配向分布に関し、多数の部分11を除くエアレイドブランク10の平均(averageまたはmean)繊維配向分布として見なされ得る。
【0027】
実施形態では、エアレイドブランク10の残りの部分13の繊維配向分布は、好ましくは、エアレイドブランク10の残りの部分13の繊維の主な部分が、エアレイドブランク10の第1の主面12および第2の主面14に対して少なくとも実質的に平行に、即ち平行にまたは実質的に平行に配向するようなものである。このことは、エアレイドブランク10の残りの部分の繊維の主な部分が、
図2のx-y平面でまたは
図2のx-y平面に実質的に平行な平面で配向することを意味する。
【0028】
エアレイドブランク10の残りの部分13の繊維配向分布は、好ましくは、エアレイドブランク10の第1のおよび第2の主面12、14に平行にまたは実質的に平行に配向したその繊維の主要な部分を持つが、エアレイドブランク10の残りの部分13における個々の繊維は、別の方向に、即ちエアレイドブランク10の第1および第2の主面12、14に必ずしも平行または実質的に平行ではない方向に配向し得る。しかしながら、この残りの部分13における繊維の大部分は、
図2のx-y平面内で、または
図2のx-y平面に実質的に平行な平面内で、または
図2のx-y平面に対して低い角度(≦15°、好ましくは≦10°、およびより好ましくは≦5°)で角度が付けられた平面において、方向付けられる。
【0029】
本明細書で使用されるエアレイドブランク10の第1の主面12および第2の主面14に平行とは、エアレイドブランク10の残りの部分13の繊維の大部分が、第1および第2の主面12、14に平行な平面で配向することを意味する。本明細書で使用されるエアレイドブランク10の第1の主面12および第2の主面14に実質的に平行とは、エアレイドブランク10の残りの部分13の繊維の大部分が、平面内で、または第1および第2の主面12、14に対して15°を超えない、好ましくは10°を超えない、より好ましくは5°を超えない角度を付けて、配向することを意味する。したがって実施形態では、エアレイドブランク10の残りの部分13の繊維の大部分は、第1および第2の主面12、14に平行な平面内で、または15°を超えない、好ましくは10°を超えない、より好ましくは5°を超えない角度で第1および第2の主面12、14に対して角度を付けて、配向する。
【0030】
実施形態では、繊維配向分布は、エアレイドブランク10の多数の部分11におけるまたは残りの部分13における種々の個別の繊維の縦軸の方向の、空間における角度分布を意味する。
【0031】
別のそれほど一般的ではない実施形態では、エアレイドブランク10の残りの部分13の繊維の大部分は、エアレイドブランク10の第1の主面12および第2の主面14に実質的に垂直に配向する。このことは、繊維の大部分が
図2のz軸に沿ってまたは実質的に沿って配向することを意味する。
【0032】
実施形態では、多数の部分11の局所繊維配向分布は、エアレイドブランク10の残りの部分13の繊維配向分布と比較して、より高いレベルの等方性を有する。このことは、局所繊維配向分布が、エアレイドブランク10の残りの部分13の繊維配向分布と比較して、より無秩序化すること、即ちそれほど階層化されず、より等方的であることを意味する。それによって多数の部分11の繊維は、三次元でさらに分布され、即ち、三次元全てにわたってさらに高度に分布される。したがって多数の部分11は、エアレイドブランク10の残りの部分13としてx-y平面において拡がる繊維だけではなく、z軸などのその他の方向にも拡がる、またはz軸に対して0°よりも大きいが90°よりも小さい角度で拡がる繊維も有し、または実質的に全ての方向に拡がる繊維を有していてもよい。
【0033】
実施形態では、エアレイドブランク10の残りの部分13は、階層化繊維配向分布または構造を有し、それに対して残りの部分11は、この残りの部分13と比較してそれほど階層化されておらずさらに三次元で無秩序化される、局所的に無秩序化された繊維配向分布を有する。
【0034】
実施形態では、多数の部分11の全ては、実質的に同じ局所繊維配向分布を有する。しかしながら実施形態はこれに限定されない。概ね無秩序化した繊維配向分布など、エアレイドブランク10の種々の部分11で種々の局所繊維配向分布を有することを可能とすることもできる。
【0035】
実施形態では、多数の部分11は、エアレイドブランク10の第1の主面12からエアレイドブランク10の第2の反対側の主面14まで、エアレイドブランク10の厚みの少なくとも一部分を通して拡がる。したがって多数の部分11は、エアレイドブランク10の全厚を通して、または単に第1の主面12から厚みの一部分に至るまで拡がることができる。前者の場合、第1および第2の主面12、14の間のエアレイドブランク10の多数の部分11に存在する天然繊維は、好ましくは、エアレイドブランク10の残りの部分13の繊維配向分布とは異なる局所繊維配向分布を有する。後者の場合、第1の主面12に最も近いエアレイドブランク10の部分11に存在するような天然繊維のみが、エアレイドブランク10の残りの部分13の繊維配向分布とは異なる局所繊維配向分布を有する。次いでこの部分11の下に存在しかつ第2の主面14にさらに近い天然繊維は、代わりに、エアレイドブランク10の残りの部分13の繊維配向分布にさらに類似した繊維配向分布を有することになる。したがって繊維配向分布における局所的な無秩序は、エアレイドブランク10の全厚を通して存在しない。
【0036】
多数の部分11の局所繊維配向分布は、第1の主面12から第2の主面14へとエアレイドブランク10の厚みを通るとき、実質的に均一であってもよい。したがって、実質的に同じ局所繊維配向分布が、多数の部分11の全体を通して存在し得る。あるいは、多数の部分11の局所繊維配向分布は、第1の主面12から第2の主面14へとエアレイドブランク10の厚みを通るとき、変化してもよい。例えば、第1の主面12に最も近い天然繊維は、高度に無秩序であってもよく、等方的であってもよく、それに対して無秩序および等方性のレベルは変化してもよく、例えば第2の主面14に近付くにつれて低減してもよい。したがって第2の主面14にさらに近付く天然繊維は、エアレイドブランク10の残りの部分13の繊維配向分布にさらに類似した繊維配向分布を有していてもよく、例えば、第1の主面12にさらに近い天然繊維と比較して、繊維のごく少量の部分がその他の方向に配向した状態で実質的にx-y平面内にあってもよい。
図2は、この概念を概略的に示す。
【0037】
繊維配向分布の局所的無秩序は、本明細書でさらに記述されるように、気体パルスをエアレイドブランク10に、またはより正確には、熱処理を経てエアレイドブランク10に形成された非結合のもしくは結合されていないエアレイドウェブに、特にエアレイドブランク10のもしくは非結合エアレイドウェブの第1の主面12に適用することによって実現され得る。このことは、この第1の主面12に最も近い天然繊維が、第2の主面14にさらに近い天然繊維と比較してさらに強力な気体パルスに一般的に曝露されることを意味する。その結果、無秩序および等方性のレベルは、エアレイドブランク10の残りの部分13の繊維配向分布とは異なる局所繊維配向分布を有する多数の部分11を創出するためそのような気体パルスを使用するときに、エアレイドブランク10の厚みを通して変化し得る。
【0038】
気体パルスは、空洞15またはチャネルを、
図2および3に示されるエアレイドブランク10に創出してもよい。したがって実施形態では、多数の部分11は、エアレイドブランク10の全厚に拡がるまたはその全厚を通過するのではなく入りこんで後退するそれぞれの空洞15、あるいはエアレイドブランク10の厚さの内部におよび通過して延びるそれぞれのチャネルを含む。そのような場合、空洞15またはチャネルに隣接する局所繊維配向分布は、エアレイドブランク10の残りの部分13の繊維配向分布とは異なる。そのような実施形態では、局所繊維配向分布を有する多数の部分11は、空洞15の下にあるエアレイドブランクの部分と一緒に空洞15またはチャネルを含むエアレイドブランク10の部分(
図2)、および/または空洞15またはチャネルを取り囲むエアレイドブランク10の隣接部分(
図3)に該当し、その内部での繊維配向は、図に示されるように歪んでいる。
【0039】
エアレイドブランク10内への空洞15の深さは、気体パルスの力に依存する。深さは、
図2に示される第1の主面12における浅い窪みから
図3に示されるような深い細孔にまで至る可能性がある。そのような空洞15を含むエアレイドブランク10の多数の部分11は、エアレイドブランク10の残りの部分13と比較して、より低い繊維密度を有する。このことはさらに、エアレイドブランク10の音響減衰および吸収能力を高めることになる。したがって、隣接する局所的に歪んだ繊維配向を持つエアレイドブランク10の空洞15またはチャネルは、さらになお、エアレイドブランク10の音響減衰および吸収能力を改善し得る。
【0040】
適用された気体パルスの力が十分に高い場合、空洞15は実際に、エアレイドブランク10の全厚を貫通し、それによってエアレイドブランク10の厚さを通るチャネルが形成される。そのようなチャネルは、エアレイドブランク10の残りの部分13と比較して、より低い繊維密度を有するエアレイドブランク10の部分11を構成する。チャネルは、チャネルと一緒に局所繊維配向分布を有する多数の部分11を構成する、局所的に歪んだ配向を持つ繊維によって取り囲まれる。
【0041】
実施形態では、気体パルスの力は、いかなるチャネルも形成されないように、しかし空洞15はエアレイドブランク10に形成され得るように制御される。別の実施形態では、気体パルスの力は、エアレイドブランクにいかなるチャネルもまたはいかなる空洞15も形成しないように制御される。
【0042】
エアレイドブランク10に空洞15およびチャネルの混合物を有することも可能である。そのような場合、エアレイドブランク10の多数の部分11のいくつかはそれぞれの空洞15を含み、それに対して多数の部分11のその他はそれぞれのチャネルを含む。
【0043】
多数の部分11は、
図2および3のx-y平面における規則的なグリッドまたはマトリックスなど、エアレイドブランク10に所定のパターンなどの規則的なパターンを形成するよう分布することができる。あるいは、多数の部分11は、エアレイドブランク10内に概ねランダムに分布され得る。
【0044】
実施形態では、多数の部分11は、好ましくは100mmを超えない、好ましくは75mmを超えない、より好ましくは50mmを超えない、例えば25mmに等しいまたは短い、第1および第2の主面12、14に平行な平均辺長または平均直径などの平均伸長を有していてもよい。
【0045】
多数の部分11は、辺長または直径など、実質的に同じ伸長を有していてもよく、あるいはエアレイドブランク10は、種々の辺長または直径など、種々の伸長を有する様々にサイズ決めされた部分11を含むことができる。さらに、多数の部分11の全体的な形状は、例えば限定するものではないが例示されるような円筒形状を有するなど、実質的に同じにすることができる。しかしながら実施形態はこれらに限定されない。したがってエアレイドブランク10は、種々の全体形状および形を持つ多数の部分11を含むことができる。
【0046】
上記にて述べたように、多数の部分11は、エアレイドブランク10の個別の部分11である。実施形態では、エアレイドブランク10内で隣接する部分11の間の距離は、好ましくは多数の部分11の平均辺長または平均直径の少なくとも2倍であり、または種々にサイズ決めされた多数の部分11を有する場合には最大辺長または直径の少なくとも2倍である。距離は、第1および第2の主面12、14に平行な中心間距離と定義される。特定の実施形態では、エアレイドブランク10での隣接部分11間の距離は、好ましくは多数の部分11の平均辺長または平均直径の少なくとも3倍である。
【0047】
実施形態では、多数の部分11の全ては、エアレイドブランク10の第1の主面12の面積の40%以下、好ましくは30%以下、より好ましくは25%以下、例えば20%、15%、10%、または5%以下を占有する。一般に、多数の部分11が占有するエアレイドブランク10の第1の主面12での面積がより高いパーセンテージになるほど、エアレイドブランク10の音響減衰および吸収能力はより良好になる。しかしながら、これはエアレイドブランク10のより低い強度および剛性も犠牲にする。このことは、多数の部分11によって占有されるエアレイドブランク10の第1の主面12の面積のパーセンテージは、エアレイドブランク10から製造するために音響減衰または吸収物品または構造の特定のタイプに基づいて選択することができ、それによって強度および剛性に対する需要ならびに特定の音響減衰または吸収物品または構造の音響吸収および減衰効果に対する需要にも基づいて、選択できることを意味する。
【0048】
一般に、エアレイドブランク10の天然繊維は、少なくとも、ガラスまたはミネラルウールの繊維と比較して短いことが好ましい。比較的短い天然繊維は多孔質エアレイドブランク10の形成を促進させており、エアレイドブランク10の音響減衰および吸収能力を促進させ得る。より詳細には、そのような短い天然繊維は、エアレイドブランク10に気体パルスを適用して多数の部分に繊維配向の局所歪みを誘導する本発明の実施形態での使用に適している。
【0049】
本明細書で言及される天然繊維などの繊維の長さは、長さ加重平均繊維長である。長さ加重平均繊維長は、例えばISO 16065-1またはISO 16065-2に記載されるように個々の繊維長の平方の合計を個々の繊維長の合計で割った数として計算される。
【0050】
実施形態では、天然繊維は、10mmまでの、好ましくは8mmまでの、より好ましくは6mmまでの、最も好ましくは5mmまでの長さ加重平均繊維長を有する。特定の実施形態では、天然繊維は、1mmから10mmまでの間隔内で選択される、好ましくは1mmから8mmまでの間隔内で選択される、より好ましくは1mmから6mmまでの間隔内で選択される、最も好ましくは1mmから5mmまでの間隔内で選択される、長さ加重平均繊維長を有する。
【0051】
10mmまたはそれよりも長い長さ加重平均繊維長を有する、より長い繊維の、少量の部分を含むことも可能である。
【0052】
実施形態では、エアレイドブランンク10は、エアレイドブランク10の少なくとも70重量%の濃度で天然繊維を、およびエアレイドブランク10の2.5から30重量%までの間隔内で選択される濃度でポリマー結合剤を含む。
【0053】
好ましい実施形態では、エアレイドブランク10は、エアレイドブランク10の少なくとも72.5%、より好ましくは少なくとも75%、例えば少なくとも77.5%、少なくとも80%、少なくとも82.5%、少なくとも85重量%の濃度で天然繊維を含む。一部の適用例では、エアレイドブランク10の少なくとも87.5%、または少なくとも90%、少なくとも92.5%、少なくとも95%、または少なくとも97.5重量%など、さらに高い濃度の天然繊維が使用されてもよい。
【0054】
一部の実施形態では、エアレイドブランク10は、エアレイドブランク10の5から30重量%までの間隔内で、好ましくは10から25%までの間隔内で、例えばエアレイドブランク10の12.5から22.5重量%まで、またはエアレイドブランク10の15から20重量%までの間隔内で選択される濃度でポリマー結合剤を含む。
【0055】
別の実施形態では、天然繊維が木質繊維である。特定の実施形態では、天然繊維はセルロースおよび/またはリグノセルロース繊維である。したがって実施形態では、天然繊維は、セルロースおよび/またはリグノセルロースの形をとるなどのセルロース、即ちセルロースおよびリグニンの混合物を含有する。天然繊維は、リグノセルロースの形をとるなどのリグニンを含有していてもよい。天然繊維はさらに、ヘミセルロースを含有していてもよい。特定の実施形態では、天然繊維は、軟材および/または硬材の化学的、機械的、および/または化学機械的パルプ化によって生成されたセルロースおよび/またはリグノセルロースパルプ繊維である。例えばセルロースおよび/またはリグノセルロースパルプ繊維は、硫酸塩パルプ、亜硫酸パルプ、熱機械的パルプ(TMP)、高温熱機械的パルプ(HTMP)、中密度繊維板が意図される機械的繊維(MDF-繊維)、化学熱機械的パルプ(CTMP)、高温化学熱機械的パルプ(HTCTMP)、およびこれらの組合せからなる群から選択される形をとる。
【0056】
セルロースおよび/またはリグノセルロースパルプ繊維などの天然繊維は、漂白されても漂白されなくてもよい。
【0057】
天然繊維は、その他のパルプ化法によっておよび/またはその他のセルロースもしくはリグノセルロース原材料、例えば亜麻、ジュート、麻、ケナフ、バガス、綿、竹、麦藁、または籾殻から生成することもできる。木質および上述の材料のいずれかの混合物など、種々の原材料からの繊維の混合物である天然繊維を使用することも可能である。
【0058】
エアレイドブランク10は、天然繊維と混合された合成材料または繊維の少量を含んでいてもよい。天然繊維と混合され得るそのような合成材料または繊維には、例えばガラスまたはミネラルウールが含まれる。任意のそのような合成材料または繊維は、エアレイドブランク10の10%(w/w)以下、好ましくは8%(w/w)以下、例えば6%(w/w)以下、または好ましくはエアレイドブランク10の4%(w/w)以下の量で添加されてもよい。
【0059】
天然繊維材料は、ガラスまたはミネラルウールと比較して一般に比較的短い繊維を有するので、音響減衰および吸収の用途に十分適している。それらは水分を吸収することができる追加の利益も有し、湿度の変動を均一にすることになり、それによってさらに良好な屋内気候が創出されかつ結露が防止される。
【0060】
ポリマー結合剤は、エアレイドブランク10を一緒に結合しかつその形および構造を使用、取扱い、および保管中に保存するため、エアレイドブランク10に含まれる。別の実施形態では、ポリマー結合剤は、エアレイドブランク10のフォーム様構造を構築するのも支援し得る。ポリマー結合剤は、そのような実施形態において、繊維混合物を形成するエアレイプロセス中に天然繊維と混ざり合う。ポリマー結合剤は、粉末の形で添加されてもよいが、より頻繁に、エアレイプロセスにおいて天然繊維と混ざり合った繊維の形で添加される。あるいは、またはさらに、ポリマー結合剤は、
図6に関連して以下にさらに記述されるように、エアレイプロセス中、溶液、エマルジョン、または分散体として、およびエアレイドブランク10の内部および表面に添加されてもよい。
【0061】
特定の実施形態では、ポリマー結合剤は、ポリマー粉末、ポリマー繊維、およびこれらの組合せからなる群から選択される。
【0062】
ポリマー結合剤は、天然もしくは合成ポリマー結合剤、または天然ポリマー結合剤の混合物、合成ポリマー結合剤の混合物、または天然および合成ポリマー結合剤の混合物とすることができるが、好ましくは熱可塑性ポリマー結合剤である。
【0063】
実施形態では、ポリマー結合剤は、i)ポリエチレン(PE)、エチレンアクリル酸コポリマー(EAA)、エチレン-酢酸ビニル(EVA)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)、例えばスチレン-ブタジエンゴム(SBR)、またはスチレンアクリレートコポリマー、ポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)、ポリコハク酸ブチレン(PBS)、ポリ乳酸(PLA)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリ(2-エチル-2-オキサゾリン)(PEOX)、ポリビニルエーテル(PVE)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリアクリル酸(PAA)、ポリメタクリル酸(PMAA)、ポリ酢酸ビニル(PVAc)、ポリウレタン(PU)、これらのコポリマー、およびこれらの混合物と、ii)任意選択で1種または複数の添加剤とから作製される。
【0064】
したがって実施形態では、ポリマー結合剤は、上述の群から選択される材料で作製される。別の実施形態では、ポリマー結合剤は、上述の群から選択される材料および1種または複数の添加剤で作製される。
【0065】
実施形態では、ポリマー結合剤は、熱可塑性ポリマー結合剤であり、好ましくは熱可塑性ポリマー粉末、熱可塑性ポリマー繊維、およびこれらの組合せからなる群から選択される。
【0066】
実施形態では、ポリマー結合剤は、一成分および/または二成分熱可塑性ポリマー繊維でありまたはこれらを含み、例えばこれらからなる。バイコ繊維としても公知である二成分熱可塑性ポリマー繊維は、第1のポリマー、コポリマー、および/またはポリマー混合物と、第2の異なるポリマー、コポリマー、および/またはポリマー混合物とを含む。最も頻繁には、二成分熱可塑性ポリマー繊維は、第1のポリマー、コポリマー、および/またはポリマー混合物で作製されたコアと、第2のポリマー、コポリマー、および/またはポリマー混合物で作製されたシースとを含むが、2種またはさらに多くのポリマー、コポリマー、および/またはポリマー混合物のその他の組合せが可能である。
【0067】
特定の実施形態では、熱可塑性ポリマー結合剤は、i)PE、EAA、EVA、PP、PS、PBAT、PBS、PLA、PET、PCL、PVA、PEG、PEOX、PVE、PVP、PAA、PMAA、PVAc、PU、これらのコポリマー、およびこれらの混合物からなる群から選択される材料と、ii)任意選択で1種または複数の添加剤とで作製された一成分熱可塑性ポリマー繊維であり、またはこれらを含み、例えばこれらからなる。別の特定の実施形態では、熱可塑性ポリマー結合剤は、i)PE、EAA、EVA、PP、PS、PBAT、PBS、PLA、PET、PCL、PVA、PEG、PEOX、PVE、PVP、PAA、PMAA、PVAc、PU、これらのコポリマー、およびこれらの混合物ならびにii)任意選択で1種または複数の添加剤で作製されたコアなどの第1の材料と、i)PE、EAA、EVA、PP、PS、PBAT、PBS、PLA、PET、PCL、PVA、PEG、PEOX、PVE、PVP、PAA、PMAA、PVAc、PU、これらのコポリマー、およびこれらの混合物からなる群からから選択される第2の材料、典型的には異なる材料ならびにii)任意選択で1種または複数の添加剤で作製されたシースなどの第2の材料を有する、二成分熱可塑性ポリマー繊維であり、これらを含み、例えばこれらからなる。さらなる実施形態では、熱可塑性ポリマー結合剤は、i)PE、EAA、EVA、PP、PS、PBAT、PBS、PLA、PET、PCL、PVA、PEG、PEOX、PVE、PVP、PAA、PMAA、PVAc、PU、これらのコポリマー、およびこれらの混合物からなる群から選択される材料ならびにii)任意選択で1種または複数の添加剤で作製された、一成分熱可塑性ポリマー繊維と、i)PE、EAA、EVA、PP、PS、PBAT、PBS、PLA、PET、PCL、PVA、PEG、PEOX、PVE、PVP、PAA、PMAA、PVAc、PU、これらのコポリマー、およびこれらの混合物からなる群から選択されるコアおよび/またはシースなどの材料ならびにii)任意選択で1種または複数の添加剤を有する二成分熱可塑性ポリマー繊維との組合せまたは混合物であり、またはこれらを含み、例えばこれらからなる。
【0068】
熱可塑性ポリマー結合剤は、単一タイプの熱可塑性ポリマー繊維で作製することができ、即ち一成分熱可塑性ポリマー繊維の場合には同じ材料で作製することができ、または二成分熱可塑性ポリマー繊維の場合には同じ材料で作成することができる。しかしながら、1種または多数の、即ち種々の材料で作製された2種またはそれよりも多くの種々の一成分熱可塑性ポリマー繊維で作製された、および/または種々の材料で作製された1種または多数の種々の二成分熱可塑性ポリマー繊維で作製された、熱可塑性ポリマー結合剤を使用することも可能である。
【0069】
二成分熱可塑性ポリマー繊維を使用する利点は、結合操作中にその繊維形態を保つ、より高い融点を持つコアを有することができ、それに対してシースは溶融し粘性を持つようになることである。無傷のコアは、エアレイドブランク10の三次元構造を支持することになり、したがって多孔度を推進させ、一方、溶融しまたは粘性になったシースは、天然繊維に取着しかつエアレイドブランク10の強度を保存することになる。
【0070】
実施形態では、ポリマー結合剤がポリマー粉末であり、好ましくは、i)PE、EAA、EVA、PP、PS、PBAT、PBS、PLA、PET、PCL、PVA、PEG、PEOX、PVE、PVP、PAA、PMAA、PVAc、PU、これらのコポリマー、およびこれらの混合物からなる群から選択される材料と、ii)任意選択で1種または複数の添加剤とで作製された熱可塑性ポリマー粉末である。
【0071】
また、これまで述べてきたように、熱可塑性ポリマー繊維と熱可塑性ポリマー粉末との組合せである熱可塑性ポリマー結合剤を使用することも可能である。
【0072】
したがって音響吸収または減衰エアレイドブランク10は、天然繊維およびポリマー結合剤に加えて1種または複数の添加剤を含んでいてもよい。1種または複数の添加剤は、ポリマー結合剤に添加することができ、および/またはポリマー結合剤を生成するときに添加することができる。あるいは、またはさらに、1種または複数の添加剤を天然繊維に添加することができる。あるいは、またはさらに、1種または複数の添加剤を、エアレイプロセス中など、天然繊維およびポリマー結合剤に添加することができる。
【0073】
そのような添加剤の例示的であるが非限定的な例は、導電性または半導電性の充填剤、カップリング剤、難燃剤、染料、衝撃改良剤などを含む。
【0074】
特定の実施形態では、ポリマー結合剤は、デンプン、寒天、グアールガム、ローカストビーンガム、カラギナン、およびセルロース、例えば小繊維、微小繊維、またはナノフィブリルセルロースからなる群から選択される天然ポリマーである。
【0075】
実施形態では、ポリマー結合剤は、ポリマー結合剤の水系(水性)溶液、エマルジョン、懸濁液、または分散体の形をとってもよい。
【0076】
本発明の別の態様は、エアレイドブランク10を生成する方法に関し、エアレイドブランク10を生成するための装置100の実施形態を示す
図5ならびに
図7および9を参照されたい。方法は、工程S1において、天然繊維および熱可塑性ポリマー結合剤、および/または天然繊維と熱可塑性ポリマー結合剤との混合物を、形成ヘッド110の少なくとも1つの入口111に導入することを含む。方法は、工程S2において、天然繊維および熱可塑性ポリマー結合剤、および/または混合物を、形成ヘッド110の出口113に輸送することも含む。方法はさらに、工程S3において、天然繊維および熱可塑性ポリマー結合剤、および/または混合物を、非結合エアレイドウェブ30として、形成ヘッド110の出口113に接続して配置構成された収集器120上に獲得することを含む。方法はさらに、工程S4において、気体パルスを非結合エアレイドウェブ30の多数の部分31に適用して、多数の部分31に繊維配向の局所歪みを誘導することを含む。方法はさらに、工程S5において、非結合エアレイドウェブ30を熱処理して、熱可塑性ポリマー結合剤を少なくとも部分的に溶融し、エアレイドブランク10を形成することを含む。
【0077】
実施形態では、工程S5は、非結合エアレイドウェブ30を熱処理して、熱可塑性ポリマー結合剤を少なくとも部分的に溶融し、エアレイドブランク10の残りの部分13の繊維配向分布とは異なる局所繊維配向分布を有する多数の部分11を含むエアレイドブランク10を形成することを含む。
【0078】
エアレイドブランク10の音響減衰および吸収能力を改善するのにエアレイドブランク10にさらに高い無秩序度を導入するために、気体流またはパルスを工程S4において非結合エアレイドウェブ30の表面または内部に適用して、非結合エアレイドウェブ30の繊維を局所的に歪ませ、かつそれらを再配向させて、局所的にさらに歪んだまたは等方性の繊維配向分布を実現する。
【0079】
工程S2での形成ヘッド110における天然繊維および熱可塑性ポリマー結合剤、および/または混合物の輸送は、個々の繊維に分離するのに寄与し、それによって収集器120上で多孔質非結合エアレイドウェブ30が促進される。
【0080】
エアレイドブランク10を生成するために使用される装置100は、当技術分野で形成チャンバーとも呼ばれる形成ヘッド110を含む。天然繊維および熱可塑性ポリマー結合剤は、1つもしくは複数の個別の入力流として、および/または1つもしくは複数の混合入力流として、1つまたは複数の入口111で、形成ヘッド110に入力されまたは導入される。例えば形成ヘッド110は、その上端112と接続してまたは形成ヘッド110でのさらなる降下など、天然繊維用の1つの流れ入口および熱可塑性ポリマー結合剤用の1つの流れ入口を含んでいてもよい。別の実施形態では、形成ヘッド110は、天然繊維用の多数の流れ入口および熱可塑性ポリマー結合剤用の1つの流れ入口、天然繊維用の1つの流れ入口および熱可塑性ポリマー結合剤用の多数の流れ入口、または天然繊維用の多数の流れ入口および熱可塑性ポリマー結合剤用の多数の流れ入口を含む。これらの例示的な実施例において、天然繊維および熱可塑性ポリマー結合剤は、形成ヘッド110を経た輸送中に混合されブレンドされ、最終的には収集器120上にエアレイドブランク10が形成される。
【0081】
天然繊維用の1つもしくは複数の入力流、および/または熱可塑性ポリマー結合剤用の1つもしくは複数の入力流を有する代わりに、またはそれらを有することを補完して、天然繊維と熱可塑性ポリマー結合剤との事前に形成された混合物を、1つまたは多数の流れ入口111で形成ヘッド110に導入してもよい。
【0082】
形成ヘッド110は、形成ヘッド110を経た輸送中の、天然繊維および熱可塑性ポリマー結合剤および/またはそれらの混合物の、分離および混合を促進させるため、形成ヘッド110内に配置構成された設備を含んでいてもよい。そのような設備は、例えば連動スパイクを備えたロール、1つまたは複数のドラム、例えばスリットドラム、および/または1つもしくは複数の濾し器を含んでいてもよい。
【0083】
実施形態では、収集器120は、空気透過性収集器120である。そのような実施形態では、工程S3は、天然繊維および熱可塑性ポリマー結合剤および/または混合物を、表面に真空が適用された空気透過性収集器120上に獲得することを含む。
【0084】
天然繊維および熱可塑性ポリマー結合剤および/またはそれらの混合物は、空気によって形成ヘッド110まで輸送され、形成ヘッド110の上端112に接続して配置構成されたような少なくとも1つの入口111で形成ヘッド110に進入し、またはさらに形成ヘッド110内を降下する。次いで天然繊維および熱可塑性ポリマー結合剤および/またはそれらの混合物は、形成ヘッド110内を、形成ヘッド110の下端114に接続して配置構成されたような出口113まで輸送される。次いで天然繊維および熱可塑性ポリマー結合剤および/または混合物は、少なくとも部分的に、形成ヘッド110の出口113に接続して配置された空気透過性収集器120上に適用された真空、即ち空気吸引または減圧によって、空気透過性収集器120上に獲得される。
【0085】
したがって空気透過性収集器120上に適用された真空は、天然繊維および熱可塑性ポリマー結合剤および/またはそれらの混合物を、空気透過性収集器120上に引き降ろす。
【0086】
収集器120は、その表面に真空を適用して天然繊維および熱可塑性ポリマー結合剤を空気透過性収集器120上に引き寄せることが可能になるように、好ましくは空気透過性である。例えば空気透過性収集器120は、空気透過性収集器120を通して空気を吸引するまたは引き寄せることを可能にする、複数の開口、スルーホール、またはチャネルを含むことができる。例示的な、しかし非限定的な例として、空気透過性収集器120は、複数の微細なスルーホールを含むメッシュ収集器120とすることができる。しかしながら任意のそのような開口は、好ましくは、天然繊維および熱可塑性ポリマー結合剤が空気透過性収集器120を通過しないように、十分小さい。したがって天然繊維および熱可塑性ポリマー結合剤は、代わりに、非結合エアレイドウェブ30の形で、空気透過性収集器120上に混合物として堆積される。
【0087】
収集器120は、形成ヘッド110の出口113に接続して配置構成されたプレート、ディスク、メッシュ、または類似の平面収集器120とすることができる。非結合エアレイドウェブ30が収集器120上に形成されたら、収集器120は、その表面に置かれた非結合エアレイドウェブ30と共に形成ヘッド110から移送されて、ノズルシステム130で気体パルスに供されてもよい。
【0088】
エアレイドブランク10の連続製造が可能な別の実施形態では、収集器120は、ベルトまたはワイヤー収集器120の形をとることができ、好ましくは空気透過性ベルトまたはワイヤー収集器120であって、
図9に示される駆動ローラー122、124の間を走る収集器の形をとることができる。そのような実施形態では、工程S4は、形成ヘッド110の下流のベルト収集器120に置かれた非結合エアレイドウェブ30の多数の部分31に気体パルスを適用することを含む。
【0089】
下流は、駆動ローラー122から駆動ローラー124に向かうベルト収集器120の移動方向に関係する。したがって気体パルスは、非結合エアレイドウェブ30が形成ヘッド110から出たら、工程S4で非結合エアレイドウェブ30上に適用される。
【0090】
実施形態では、気体パルスは、形成ヘッド110の下流に配置構成された
図8に見られる1つまたは複数の列にあるような、多数の固定気体ノズル132を使用して気体パルスを選択的に適用することにより、工程S4で適用される。あるいは、またはさらに、気体パルスは、形成ヘッドの下流に配置構成されており、かつベルト収集器120上に置かれた非結合エアレイドウェブ30に対して選択的に移動可能である、少なくとも1つの可動型気体ノズル132を使用して、工程S4で選択的に適用することができる。
【0091】
図8は、非結合エアレイドウェブ30の幅に沿ってまたは非結合エアレイドウェブ30の幅の少なくとも一部分に沿って分布された、多数の気体ノズル132を含むノズルシステム130を概略的に示す。次いでこれらの気体ノズル132を使用して気体パルスを工程S4で選択的に適用して、非結合エアレイドウェブ30の多数の部分に繊維配向の局所歪みを誘導することができる。本明細書で使用される、選択的に適用するとは、実施形態では、
図7および9に見られる制御器140などによって気体ノズル132が制御されて、非結合エアレイドウェブ30がベルト収集器120上でノズルシステム130を通過するときに、選択された時間間隔または期間で気体パルスが適用されることを示唆する。実施形態では、全ての気体ノズル132を、同時に気体パルスを適用するように制御器140によって操作することができる。別の実施形態では、制御器140は、ノズルシステム130の一部の気体ノズル132が同時に気体パルスを適用するように、気体ノズル132を選択的に作動させて気体パルスを適用することができる。このことは、非結合エアレイドウェブ30において局所的に歪んだ繊維配向を持つ部分31のマトリックスまたはグリッドなど、概ね規則的なパターンの発生を可能にする。
【0092】
固定型気体ノズル132を持つノズルシステム130を有する代わりに、またはそれらを有することを補完して、1つまたは複数の移動型気体ノズル132を、形成ヘッド110の下流に配置構成することができる。そのような場合、制御器140は、非結合エアレイドウェブ30に対して移動するように、かつ非結合エアレイドウェブ30上に気体パルスを選択的に適用するように、少なくとも1つの移動型気体ノズル132を制御することができる。そのような場合、少なくとも1つの移動型気体ノズル132は、好ましくは、少なくとも非結合エアレイドウェブ30の幅に沿って移動可能である。
【0093】
工程S5で適用される熱処理は結合操作を行ない、非結合エアレイドウェブ30が
図9に見られる結合炉路150に導入され、加熱空気の形をとる場合などで熱が非結合エアレイドウェブ30を経て循環して、熱可塑性ポリマー結合剤を溶融しまたは部分的に溶融する。それによって熱可塑性ポリマー結合剤は、粘着性になり、天然繊維に接着し、したがって繊維材料を一緒に保持し、それによってエアレイドブランク10が得られる。
【0094】
工程S5の熱処理は、熱可塑性ポリマー結合剤の少なくとも部分的な溶融を引き起こし、それによって粘着性になりかつ非結合エアレイドウェブ30の天然繊維に接着する。その結果、天然繊維および熱可塑性ポリマー結合剤は一緒に保持され、エアレイドブランク10を形成する。工程S5におけるこの熱処理は、気体パルスを適用することにより、工程S4で導入された局所繊維配向分布を保存する。したがってエアレイドブランク10は、エアレイドブランク10の残りの部分13の繊維配向分布とは異なる局所繊維配向分布を有する多数の部分11を含む。
【0095】
結合操作は、繊維構造内にさらに多数の結合点を創出するための稠密化、したがってさらに強力で稠密なエアレイドブランク10を創出することを含んでいてもよく、および/または伴っていてもよい。そのような稠密化操作は、エアレイドブランク10が結合炉150の後で冷まされる前、または加熱カレンダーなどにおける新たな加熱後の、いずれかで適用することができる。結合炉150内で、例えば加熱および稠密化操作の組合せなどの稠密化操作を行なうことも可能である。稠密化は、カレンダー掛けおよび/または加圧操作を含むがこれらに限定されない様々なタイプの操作を含むことができる。
図4は、熱処理および稠密化後のエアレイドブランク10の横断面図を概略的に示す。
図4に示されるように、エアレイドブランク10の残りの部分13とは異なる局所繊維配向分布を持つ多数の部分11は、熱処理および稠密化操作後にエアレイドブランク10で保存される。
【0096】
上述の実施形態では、エアレイドブランク10は、天然繊維および熱可塑性ポリマー結合剤の両方を形成ヘッド110に導入することによって生成される。
図6は、エアレイドブランク10を生成する方法の別の実施形態を示すフローチャートであり、
図10も参照されたい。方法は、工程S10で、天然繊維を形成ヘッド110の少なくとも1つの入口111に導入することを含む。方法は、工程S11で、天然繊維を形成ヘッド110の出口113に輸送し、工程S12で、天然繊維を天然繊維のウェブ40として、形成ヘッド110の出口113に接続して配置構成された収集器120上に獲得することも含む。方法はさらに、工程S13で、収集器120上の天然繊維のウェブ40の多数の部分41に気体パルスを適用して、多数の部分に繊維配向の局所歪みを誘導することを含む。この実施形態では、方法は、工程S14で天然繊維上にポリマー結合剤を適用することも含む。方法はさらに、工程S15で、天然繊維のウェブ40およびポリマー結合剤を熱処理して、エアレイドブランク10の残りの部分13の繊維配向分布とは異なる局所繊維配向分布を有する多数の部分11を含むエアレイドブランク10を形成することを含む。
【0097】
方法のこの実施形態では、ポリマー結合剤が工程S10で形成ヘッド110に導入されない点が、
図5に関連して上記にて論じられたものとは異なる。明らかに対照的に、天然繊維の1つもしくは多数の流れおよび/またはこれらの混合物は、工程S10で、形成ヘッド110の1つまたは多数の入口111を通して導入される。天然繊維は、工程S11で形成ヘッド110を通して輸送され、次いで天然繊維のウェブ40として、工程S12で収集器上で獲得される。次いで気体パルスがこの天然繊維のウェブ40に工程S13で、
図5の工程S4に類似の手法で適用されて、天然繊維のウェブ40の多数の部分41に繊維配向の局所歪みを誘導する。次いでこの実施形態では、ポリマー結合剤は、天然繊維のウェブ40およびポリマー結合剤を下流結合炉150の熱に曝露する前に、天然繊維のウェブ40に適用される。
【0098】
したがってこの実施形態では、装置100は、ポリマー結合剤を適用するための、ノズルシステム130の下流であるが結合炉150の上流に配置構成されたデバイス160を含む。このデバイス160は、工程S14で、例えば溶液、エマルジョン、懸濁液、または分散体としてポリマー結合剤を天然繊維のウェブ40の内部および表面に適用してもよい。例えばポリマー結合剤は、工程S14で天然繊維のウェブ40上に噴霧されてもよい。例示的な実施形態では、ポリマー結合剤は、1種もしくは複数の合成ポリマーおよび/または1種もしくは複数の天然ポリマーの形をとる少なくとも1種のポリマー結合剤の、水をベースにした(水性)溶液、エマルジョン、懸濁液、または分散体の形をとる。そのような場合、ポリマー結合剤は、これまで記述してきたポリマー結合剤材料の中から選択することができる。
【0099】
図6の下記の工程S15は、
図5の工程S5と同じ手法で行われる。しかしながら、工程S14で適用されたポリマー結合剤の材料に応じて、工程S15で適用される熱処理は必ずしも結合炉150内のポリマー結合剤を少なくとも部分的に溶融せず、ポリマー結合剤が水をベースにした溶液、エマルジョン、懸濁液、または分散体の形をとる場合、水をすっかり乾燥してエアレイドブランク10を形成し得る。そのような乾燥操作は、ポリマー結合剤用の水以外の溶媒の使用にも適用される。
【0100】
上述の工程S1からS5の様々な実施形態は、工程S10でいかなるポリマー結合剤も導入しないこと以外、
図6に示される方法を準用することができる。
【0101】
図5および6に示される2つの記述される実施形態を、組み合わせてもよい。したがって熱可塑性ポリマー結合剤は、
図5の工程S1に関連する上述の形成ヘッドに導入されてもよく、次いで追加のポリマー結合剤が、
図6の工程S14に記述されるように非結合エアレイドウェブ30に適用されて、例えば得られるエアレイドブランク10の表面を強化してもよい。
【0102】
上述の、ならびに
図5および6のフローチャートに示される方法は、
図2から4などに示されるように、本発明によるエアレイドブランク10を生成するのに適している。したがってエアレイドブランク10は、上述のおよび
図5または6のフローチャートに示される方法によって得ることが可能でありまたは得られる。
【0103】
本発明のさらなる態様は、エアレイドブランク10を生成するための装置100に関し、
図7および9を参照されたい。装置100は、天然繊維および熱可塑性ポリマー結合剤、および/または天然繊維と熱可塑性ポリマー結合剤との混合物を受容するように構成された少なくとも1つの入口111と、出口113とを含む形成ヘッド110を含む。装置100は、駆動ローラー122、124の間を走り、形成ヘッド110の出口113に接続して配置構成され、天然繊維および熱可塑性ポリマー結合剤および/または混合物を非結合エアレイドウェブ30として獲得するように構成された、ベルト収集器120も含む。装置100はさらに、形成ヘッド110の下流に配置構成され、かつベルト収集器120上に置かれた非結合エアレイドウェブ30の多数の部分31に気体パルスを適用して、多数の部分31の繊維配向の局所歪みを誘導するように構成された少なくとも1つの気体ノズル132を含む、ノズルシステム130を含む。装置100は、ノズルシステム130の下流に配置構成された、かつ非結合エアレイドウェブ30を熱処理して熱可塑性ポリマー結合剤を少なくとも部分的に溶融しエアレイドブランク10を形成するよう構成された、結合炉150も含む。
【0104】
実施形態では、装置100の結合炉150は、ノズルシステム130の下流に配置構成され、かつ非結合エアレイドウェブ30を熱処理して熱可塑性ポリマー結合剤を少なくとも部分的に溶融すると共にエアレイドブランク10の残りの部分13の繊維配向分布とは異なる局所繊維配向分布を有する多数の部分11を含むエアレイドブランク10を形成するよう構成される。
【0105】
実施形態では、空気流が、形成ヘッド110の上流で、および任意選択で形成ヘッド110において上端112から下端114に向かって適用されて、天然繊維および熱可塑性ポリマー結合剤、および/または天然繊維と熱可塑性ポリマー結合剤の混合物を出口113およびベルト収集器120に向けて輸送する。
【0106】
形成ヘッド110は、形成ヘッド110を経た輸送中に、天然繊維および熱可塑性ポリマー結合剤および/または混合物の分離および混合を促進するように配置構成された設備を、任意選択で含んでいてもよい。そのような設備は、例えば、連動スパイクを持つロール、スリットドラム(複数可)などの少なくとも1つのドラム、および/または少なくとも1つの濾し器を含んでいてもよい。この設備は、好ましくは個々の繊維を互いに分離し、天然繊維および熱可塑性ポリマー結合剤を含む入力成分の混合を促進するように配置構成される。
【0107】
実施形態では、ベルト収集器120は、空気透過性ベルト収集器120である。例えば、空気透過性ベルト収集器120は、空気透過性ベルト収集器120を通して空気を吸引するまたは引き寄せる複数の開口、スルーホール、またはチャネルを含むことができる。例示的であるが非限定的な例として空気透過性収集器120は、メッシュ収集器120とすることができる。しかしながら任意のそのような開口は、好ましくは、天然繊維および熱可塑性ポリマー結合剤が空気透過性ベルト収集器120を通過するのを防止するように、十分小さい。したがって天然繊維および熱可塑性ポリマー結合剤は、代わりに、混合物として、非結合エアレイドウェブ30の形で空気透過性ベルト収集器120上に堆積される。
【0108】
そのような実施形態では、形成ヘッド110を経て、少なくとも1つの入口111が位置決めされる場所に応じて上端112からまたは形成ヘッド110に沿ったさらに下の位置から下端114まで輸送される、天然繊維および熱可塑性ポリマー結合剤、および/またはそれらの混合物は、少なくとも部分的に、形成ヘッド110の出口113に接続して配置された空気透過性ベルト収集器120上に適用された真空、即ち空気吸引または減圧によって、空気透過性ベルト収集器120上に獲得される。
【0109】
ノズルシステム130の少なくとも1つの気体ノズル132は、非結合エアレイドウェブ30に気体パルスを適用して、非結合エアレイドウェブ30の部分31で天然繊維を歪ませかつそれらを再配向させて、好ましくは局所的にさらに無秩序化したまたは等方的な繊維配向分布を有するように構成される。気体パルスは、典型的には空気パルスであるが、天然繊維および熱可塑性結合剤と適合性のある、即ち天然繊維または熱可塑性結合剤のいかなる劣化も引き起こさない、任意の気体または気体混合物のパルスとすることができる。そのようなその他の気体の例示的であるが非限定的な例には、N2およびCO2が含まれる。本明細書で使用される気体は、N2およびCO2などの単一元素または化合物で作製された共に純粋な気体、ならびに空気などの気体混合物である。
【0110】
ノズルシステム130は、気体配管を経て加圧気体供給源に接続されてもよい。実施形態では、加圧気体供給源は、空気などの気体を、少なくとも1つの気体ノズル132を使用して気体パルスとして適用することができる圧縮気体に圧縮する圧縮器の形をとる。別の実施形態では、加圧気体供給源は、加圧気体を含む気体シリンダーまたは容器などの加圧気体供給器である。
【0111】
実施形態では、装置100は、ベルト収集器120上に置かれた非結合エアレイドウェブ30の多数の部分31上に気体パルスを選択的に適用するため、少なくとも1つの気体ノズル132を制御するよう構成された制御器140を含む。
【0112】
次いでそのような実施形態では、制御器140は、加圧気体供給源から少なくとも1つの気体ノズル132への気体流を制御して、計画されたまたは選択された時間間隔で気体パルスを非結合エアレイドウェブ30に適用することができる。例えば、ノズルシステム130は、多数の気体ノズル132と気体接続している制御可能な気体弁を含むことができる。次いで制御器140は、制御可能な気体弁の開放および閉鎖を制御して、それによって多数の気体ノズル132への加圧気体流を制御することができる。そのような実施形態では、加圧気体流は、多数の気体ノズル132に同時に分配される。そのような実施形態では、加圧気体流は、上流の制御可能な気体弁(図示せず)から、ノズルシステム130の少なくとも1つのアレイまたは列に配置構成された多数の気体ノズル132へと分配される。これらの多数の気体ノズル132は、それによって気体パルスを同時に非結合エアレイドウェブ30上に適用する。
【0113】
別の実施形態では、ノズルシステム130の各気体ノズル132またはその少なくとも一部分もしくは群は、個々に制御可能な気体弁を有していてもよい。そのような実施形態では、制御器140は、各気体ノズル132または気体ノズル132の各群への気体流を別々に制御し、それによって気体パルスの適用を別々に制御するために、これらの個々に制御可能な気体弁の開放および閉鎖を制御することができる。この実施形態は、非結合エアレイドウェブ30における多数の部分31の、より複雑なパターンの形成を可能にし、それによって非結合エアレイドウェブ30における多数の部分31を、全ての気体ノズル132に関して単一の制御可能な気体弁を有する場合と比較してさらに複雑な規則的または不規則なパターンをも分布させることが可能になる。
【0114】
例えば、1列の気体ノズル132がノズルシステム130内でエアレイドブランク10の全面にわたり規則的な距離で配置構成され、かつ気体パルスが気体ノズル132から同時に適用される場合、歪んだ繊維配向を持つ多数の部分31は、非結合エアレイドウェブ30で規則的な正方形のグリッドパターンに配置されてもよい。
図11Aは、そのような非結合エアレイドウェブ30から得られたエアレイドブランク10から作製された音響吸収または減衰物品20を示す。
図11Aに示されるように、音響吸収または減衰物品20は、音響吸収または減衰物品20の残りの部分23の繊維配向分布とは異なる局所繊維配向分布を有する、多数の部分21の規則的な正方形のグリッドパターンを含む。例えばノズルシステム130内に配置構成された等距離の気体ノズル132の多数の列を有することにより、かつ互いに対して非結合エアレイドウェブ30の幅方向に配置された等距離の気体ノズル132の種々の列を備えることで、
図11Bに示される多数の部分21のより複雑な規則的パターンを形成することが可能である。一方、気体ノズル132までの気体流は、個々に制御しかつランダムな時間間隔で送出することができ、歪んだ繊維配向を持つ多数の部分21のランダムなパターンは、
図11Cで音響吸収または減衰物品20に関して概略的に示されるように形成することができる。
図11Aから11Cの音響吸収または減衰物品20における歪んだ繊維配向を持つ多数の部分21および残りの部分23は、エアレイドブランク10の歪んだ繊維配向を持つ多数の部分11および残りの部分13に該当する。
【0115】
音響吸収能力ならびに強度および剛性の組合せが、得られたエアレイドブランク10において多数の部分11のランダムな分布または多数の部分11のさらに複雑なパターンを有することが、有利となり得る。
【0116】
ノズルシステム130内に多数の気体ノズル132の群を有すること、ならびに気体ノズル132のそのような群のそれぞれが個々に制御可能な気体弁を有することも、可能である。
【0117】
別の実施形態では、制御器140は、ベルト収集器120上に置かれた非結合エアレイドウェブ30に対して少なくとも1つの気体ノズル132を移動させるように、およびベルト収集器120上に置かれた非結合エアレイドウェブ30の多数の部分31上に気体パルスを選択的に適用するようにも構成される。例えば、ノズルシステム130は、少なくとも1つの気体ノズル132を含むロボットアーム(図示せず)を含むことができる。次いで制御器140は、少なくとも1つの気体ノズル132からの気体パルスの適用だけでなく、ロボットアームの移動も制御することができ、それによって非結合エアレイドウェブ30に対する少なくとも1つの気体ノズル132の位置を制御することができる。このことは、少なくとも1つの気体ノズル132が、非結合エアレイドウェブ30上を移動し、そこに気体パルスを適用することを意味する。この実施形態は、多数の部分31のランダムな分布を含む多数の部分31の規則的および複雑なパターンの両方の創出を可能にする。
【0118】
装置100は、ノズルシステム130の下流に配置構成された結合炉150を含む。結合炉150は、非結合エアレイドウェブ30を熱処理して、熱可塑性ポリマー結合剤を少なくとも部分的に溶融し粘着性にするように構成される。結合炉150は、熱処理中に非結合エアレイドウェブ30を圧縮することなどにより、非結合エアレイドウェブ30を稠密化するための設備を任意選択で含んでいてもよい。
【0119】
装置100は、さらに下流に、限定するものではないが鋸引き、切断、または打抜きデバイス、カレンダー掛けデバイス、高温加圧デバイス、糸屑防止デバイス、表面処理デバイスなどの、加工デバイスを含んでいてもよい。そのような下流処理デバイスは、結合炉150の下流に配置構成されてもよい。
【0120】
鋸引き、切断、または打抜きデバイスは、エアレイドブランク10を、音響吸収または減衰物品20として使用される所望の形状およびサイズに鋸引きし、切断し、または打ち抜くために使用することができ、
図11Aから11Cを参照されたい。
【0121】
カレンダー掛けまたは高温加圧デバイスは、エアレイドブランク10を稠密化してその強度および剛性を増大させるのに使用することができる。高温加圧デバイスは、エアレイドブランク10に三次元(3D)幾何構造および/または刻み目を含んでいても創出してもよく、それによって音響吸収または減衰物品20が得られてもよい。次いで高温加圧デバイスは、少なくとも1つの突起を有する雄型工具および/または少なくとも1つの刻み目もしくは凹部を含む雌型工具を含んでいてもよい。次いで雄型工具をエアレイドブランク10に圧入し、エアレイドブランク10を雌型工具に圧入し、それと共に加熱してエアレイドブランク10を圧縮し、必要に応じてエアレイドブランク10に任意の3D幾何構造を創出する。
【0122】
一部の適用例では、表面(複数可)からの毛羽立ちを防止するため、エアレイドブランク10または音響吸収もしくは減衰物品20の表面の一部または全てを、例えば熱によってシールすることが望ましいと考えられる。高温加圧デバイスなど、以前の加工デバイスで熱により加工された表面は、シールされることになり、追加のいかなる(ヒート)シールも必要としない。例えば、エアレイドブランク10または音響吸収もしくは減衰物品20の端面は、加工されなくてもよく、またはエアレイドブランク10の鋸引き、切断、または打抜きによって生成されて、これらの端面を生成してもよい。そのような場合、毛羽立ちを防止しまたは少なくとも抑制しまたは阻止するため、これらの表面をヒートシールすることが好ましいと考えられる。
【0123】
いくつかの適用例では、エアレイドブランク10または音響吸収もしくは減衰物品20、または少なくともこれらの一部分は、熱可塑性ポリマーフィルム、織布、または布織布など、表面層と積層することができる。このことは、毛羽立ちを防止できると共に、表面強度、水分障壁、触覚特性、色、およびデザインなどの追加の機能を表面に加えることができる。フィルムまたは織物は、任意の一般的な熱可塑性または天然ポリマーから作製することができる。例には、結合剤および綿、羊毛として使用するための、既に述べた熱可塑性、合成、または天然ポリマー材料が含まれる。この層は、エアレイドブランク10上に熱で積層しまたは押し出すことができ、および/または音響吸収もしくは減衰物品20上に直接積層することができる。
【0124】
フィルム、織物、または表面層は、エアレイドブランク10または音響吸収もしくは減衰物品20に、ホットメルト接着剤の薄層の助けにより、追加の接着剤フィルムにより、ポリマー結合剤により、または熱積層プロセス中に半溶融および粘着性になったそれ自体により取着されてもよい。この操作は、任意の高温加圧操作の前、後、または同時に行なうことができる。
【0125】
エアレイドブランク10または音響吸収もしくは減衰物品20の表面(複数可)上に噴霧することによって表面層を適用することも可能である。次いで層は、溶液、エマルジョン、懸濁液、または分散体、例えば塗料;熱可塑性ポリマー;天然ポリマー、例えばデンプン、寒天、グアールガム、ローカストビーンガム、またはカラギナン、小繊維、微小繊維、またはナノフィブリルセルロース、またはリグノセルロース、またはこれらの混合物として調製できる任意の物質(複数可)を含有していてもよい。表面層は、さらに、表面層およびエアレイドブランク10または音響吸収もしくは減衰物品20に追加の機能を提供する乳化剤、安定化剤、着色剤、塗料用含量、光学分散剤、充填剤、導電剤などのその他の物質を含んでいてもよい。
【0126】
図10は、別の実施形態によるエアレイドブランク10を生成するための装置100を概略的に示す。装置100は、天然繊維を受容するように構成された少なくとも1つの入口111と、出口113とを含む形成ヘッド110を含む。装置100は、駆動ローラー122、124の間を走り、形成ヘッド110の出口113に接続して配置構成され、天然繊維を天然繊維のウェブ40として獲得するように構成された、ベルト収集器120も含む。装置100はさらに、形成ヘッド110の下流に配置構成され、かつベルト収集器120上に置かれた天然繊維のウェブ40の多数の部分41上に気体パルスを適用して、多数の部分41に繊維配向の局所歪みを誘導するよう構成された少なくとも1つの気体ノズル132を含む、ノズルシステム130を含む。装置100はさらに、ポリマー結合剤を天然繊維のウェブ40上に適用するよう構成されたデバイス160と、ノズルシステム130およびデバイス160の下流に配置構成されかつエアレイドブランク10を形成するために天然繊維およびポリマー結合剤を熱処理するよう構成された結合炉150とを含む。
【0127】
実施形態では、結合炉150は、ノズルシステム130およびデバイス160の下流に配置構成され、エアレイドブランク10の残りの部分13の繊維配向分布とは異なる局所繊維配向分布を有する多数の部分11を含むエアレイドブランク10を形成するために天然繊維およびポリマー結合剤を熱処理するよう構成される。
【0128】
したがってこの実施形態では、装置100は、ポリマー結合剤を適用するため、ノズルシステム130の下流であるが結合炉150の上流に配置構成されたデバイス160を含む。デバイス160は、工程S14で、例えば溶液、エマルジョン、懸濁液、または分散体として、好ましくは水をベースにした溶液、エマルジョン、懸濁液、または分散体として、ポリマー結合剤を天然繊維のウェブ40の内部および表面に適用してもよい。例えばデバイス160は、ポリマー結合剤を天然繊維のウェブ40上に噴霧してもよい。
【0129】
実施形態では、結合炉150で適用された熱処理は、溶液、エマルジョン、懸濁液、または分散体から水などの溶媒を完全に乾燥して、エアレイドブランク10を形成する。
【0130】
図7から9に関連して上記にて論じた装置100の様々な実施形態は、
図10に示される装置100の実施形態にも適用される。
【0131】
本発明は、音響吸収または減衰物品20にも関し、
図11A~
図11Cを参照されたい。音響吸収または減衰物品20は、本発明のエアレイドブランク10を含みまたはこのエアレイドブランク10で作製される。したがって実施形態では、エアレイドブランク10は、音響吸収または減衰物品20を生成するのに適しており、それによって音響吸収または減衰エアレイドブランク10と呼ぶことができる。
【0132】
図11A~
図11Cに示される音響吸収または減衰物品20は、この物品がそこから作製されるエアレイドブランク10として、音響吸収または減衰物品20の残りの部分23の繊維配向分布とは異なる局所繊維配向分布を有する多数の部分21を含む。
【0133】
音響吸収または減衰物品20は、上記にて具体化された鋸引き、切断、または打抜きデバイス、カンレンダー掛けデバイス、高温加圧デバイス、糸屑防止デバイス、および/または表面処理デバイスにおけるエアレイドブランク10の任意の加工に従い、得ることができる。
【0134】
音響吸収または減衰物品20は、音響吸収および/または減衰に使用される任意の物品、構造、または生成物とすることができる。そのような音響吸収または減衰物品20の例示的であるが非限定的な例には、音響吸収または減衰パネル、例えば音響吸収または減衰シーリングパネル、音響吸収または減衰ウォールパネル、あるいは音響吸収または減衰フロアパネル;音響吸収または減衰スタンド;音響減衰装飾要素;音響吸収または減衰ボードなどが含まれる。
【0135】
本発明のエアレイドブランク10は、音響吸収または減衰物品20の基盤としての使用に適しているだけではない。エアレイドブランク10は、代わりに、緩衝材包装品に使用することができる。エアレイドブランク10およびそれから作製された物品または生成物は、包装品の緩衝材に非常に適しており、優れた衝撃吸収および減衰特性を提供する。したがって保管および/または輸送中に包装品を保護するのに使用することができる。
図3および4に示されるようにエアレイドブランク10内に拡がる空洞または細孔15、あるいは確かにエアレイドブランク10の厚みを通して拡がるチャネルを有するエアレイドブランク10、ならびにそのようなエアレイドブランク10から作製された物品および生成物は特に、包装品の緩衝材に適している。
【0136】
上述の実施形態は、本発明のいくつかの例示的な実施例として理解されたい。本発明の範囲から逸脱することなく、実施形態に様々な修正、組合せ、および変更を行ってもよいことが、当業者に理解されよう。特に、異なる実施形態における異なる部分の解決策は、技術的に可能な場合にはその他の構成と組合せることができる。
【国際調査報告】