(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-18
(54)【発明の名称】2-ヒドロキシ-5-[2-(4-(トリフルオロメチルフェニル)エチルアミノ)]安息香酸を製造する方法
(51)【国際特許分類】
C07C 227/18 20060101AFI20231211BHJP
A61K 31/606 20060101ALI20231211BHJP
A61P 25/28 20060101ALI20231211BHJP
A61P 25/16 20060101ALI20231211BHJP
C07C 229/60 20060101ALI20231211BHJP
【FI】
C07C227/18
A61K31/606
A61P25/28
A61P25/16
C07C229/60
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023534971
(86)(22)【出願日】2021-12-06
(85)【翻訳文提出日】2023-08-07
(86)【国際出願番号】 CN2021135804
(87)【国際公開番号】W WO2022121853
(87)【国際公開日】2022-06-16
(31)【優先権主張番号】202011445339.4
(32)【優先日】2020-12-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523028105
【氏名又は名称】ジーエヌティー ファーマ カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】シュ,シンリァン
(72)【発明者】
【氏名】ズァン,チェンハン
(72)【発明者】
【氏名】ワン,レイ
(72)【発明者】
【氏名】ル,シン
(72)【発明者】
【氏名】ザン,ボ
(72)【発明者】
【氏名】クァク,ビョン ジュ
(72)【発明者】
【氏名】アン,チュン サン
(72)【発明者】
【氏名】ジン,ジン ユ
【テーマコード(参考)】
4C086
4H006
【Fターム(参考)】
4C086AA01
4C086AA04
4C086DA17
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZA02
4C086ZA16
4H006AA02
4H006AC46
4H006BA66
4H006BB17
4H006BB31
4H006BC10
4H006BD70
4H006BE60
4H006BJ50
4H006BM10
4H006BM71
4H006BN30
(57)【要約】
本発明は、薬物の合成方法の技術分野に関するものであり、2-ヒドロキシ-5-[2-(4-(トリフルオロメチルフェニル)エチルアミノ)]安息香酸を製造する方法に関する。同方法は、保護、縮合および加水分解などのステップを含む。出発物質、すなわち、2-(4-トリフルオロメチル)フェネチルアルコールのためのヒドロキシル保護試薬のスクリーニングおよび他の工程パラメーターの最適化を通じて、目的生成物においてメタ異性体不純物および二価置換された不純物の含量を効果的に制御して、生成物の品質が格段に向上し、反応歩留まりも大幅に向上して、向上した生成物の品質は、製造研究の関連する要求事項を満たすことができる(
図1)。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
次のステップを含む、2-ヒドロキシ-5-[2-(4-(トリフルオロメチルフェニル)エチルアミノ)]安息香酸を製造する方法:
1)化合物Iを保護試薬と保護反応させて化合物IIを得るステップ、
【化1】
2)化合物IIをメチル5-アミノサリチレートと縮合反応させて化合物IIIを得るステップ、および
【化2】
3)化合物IIIを加水分解反応させて目的化合物IVを得るステップ。
【化3】
ここで、Rは、p-メチルベンゼンスルホニル、p-ニトロベンゼンスルホニル、ベンゼンスルホニル、トリフルオロメタンスルホニル、およびアセチルのうちのいずれか1種であり、好ましくは、p-メチルベンゼンスルホニルまたはベンゼンスルホニルであり、より好ましくは、p-メチルベンゼンスルホニルである。
【請求項2】
保護反応は、0~30℃、好ましくは、20~25℃の温度で行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
保護反応は、溶媒中で行われ、前記溶媒は、トルエン、エチルベンゼン、キシレン、メチレンクロリド、およびクロロホルムのうちの少なくとも1種であり、好ましくは、トルエンである、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
ステップ1)は、粗化合物IIを精製するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記精製は、結晶化によって行われ、これは、40~80℃での溶解および0~40℃での断熱結晶化によって行われ、好ましくは、50~60℃での溶解および20~30℃での断熱結晶化によって行われ、
前記結晶化に用いられる溶媒は、エチルアセテート、n-ヘキサン、n-ヘプタン、トルエン、メチレンクロリド、メタノール、エタノール、イソプロパノール、および水のうちの少なくとも1種であり、好ましくは、n-ヘプタンである、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記縮合反応は、30~100℃、好ましくは、80~90℃の温度で行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
ここで、前記縮合反応は、溶媒中で行われ、前記溶媒は、トルエン、アセトニトリル、N,N-ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、およびテトラヒドロフランのうちの少なくとも1種であり、好ましくは、トルエンである、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
縮合反応は、塩基の存在下で行われ、前記塩基は、トリエチルアミン、N,N-ジイソプロピルエチルアミン、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン、およびピリジンのうちの少なくとも1種であり、好ましくは、トリエチルアミンである、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
ステップ2)は、酸またはこの水溶液を用いて粗化合物IIIの塩を形成するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
塩の形成は、無機酸を用いて行われ、前記無機酸は、塩酸、硫酸、硝酸、およびリン酸のうちの少なくとも1種であり、好ましくは、硫酸である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記加水分解反応は、60~100℃、好ましくは、80~85℃の温度で行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記加水分解反応は、酸の存在下で行われ、これは、硫酸である、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記加水分解反応は、窒素バブリングによって行われる、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬物の合成方法の技術分野に関し、抗アルツハイマー病の薬物の合成に関するものであり、特に、2-ヒドロキシ-5-[2-(4-(トリフルオロメチルフェニル)エチルアミノ)]安息香酸を製造するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
本出願は、2020年12月8日付けで中国国家知識産権局に提出され、「2-ヒドロキシ-5-[2-(4-(トリフルオロメチルフェニル)エチルアミノ)]安息香酸を製造する方法」という名称を有する中国発明特許出願第202011445339.4号に基づく優先権を主張し、当該出願の明細書及び図面に開示された内容は、すべて本出願に組み込まれる。
【0003】
2-ヒドロキシ-5-[2-(4-(トリフルオロメチルフェニル)エチルアミノ)]安息香酸は、韓国の製薬会社GNTファーマによって開発された新規な細胞壊死抑制剤であって、アルツハイマー病およびパーキンソン症候群などの神経系疾患を効果的に治療することができ、臨床で高く評価されている。
【0004】
現在のところ、この化合物の合成方法に関する報告はほとんどなく、関連する工程が複雑であり、原料物質が高価である他、実用性に乏しい。呉玉良ら(Wu Yuliang et al.)は、量産に適用された目的生成物の製造のために、2-(4-トリフルオロメチル)フェネチルメタンスルホネート(化合物4)とメチル5-アミノサリチレート(化合物6)との縮合および加水分解により実現された、産業的に拡張可能な合成ルートを報告した(Wu Yuliang, Lu Xin et al.,Synthesis of an anti-Alzheimer’s disease drug 2-hydroxy-5-[2-(4-(trifluoromethylphenyl)ethylamino)]benzoic acid [J], Chinese Journal of New Drugs, 2012, 21 (16): 1930-1932).
しかしながら、このようなルートの最も大きな問題は、2-(4-トリフルオロメチル)フェネチルメタンスルホネートが不良な安定性、低い融点(27~28℃)を有し、精製(refine)と純化(purify)が決して容易ではないということである。特に、メタ異性体不純物の2-(3-トリフルオロメチル)フェネチルメタンスルホネートは取り除き難く、縮合反応から二価置換された不純物メチル2-ヒドロキシ-5-[N,N-ビス(2-(4-(トリフルオロメチル)フェニル)エチル)アミノ]ベンゾエートの含量が高く、その加水分解物が最終生成物に流れ込んで、最終生成物の品質に影響を及ぼす。最近、医薬品有効成分(API:Active Pharmaceutical Ingredient)に関する品質管理の基準が益々高まりつつあることに伴い、2-(4-トリフルオロメチル)フェネチルメタンスルホネートを用いた合成に多くの問題がある。
【0005】
現在の工程に存在する問題について、上記の問題を解決し、かつ、高い品質の生成物を得るために、2-(4-トリフルオロメチル)フェネチルメタンスルホネートに取って代わる好適な中間体を見出すことが切望されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
[技術的な問題点]
以上において述べた欠点を克服するために、本発明は、高い歩留まりと高純度を有する2-ヒドロキシ-5-[2-(4-(トリフルオロメチルフェニル)エチルアミノ)]安息香酸を製造する方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
[技術的な解決手段]
具体的には、本発明は、次のステップを含む、2-ヒドロキシ-5-[2-(4-(トリフルオロメチルフェニル)エチルアミノ)]安息香酸を製造する方法を提供する:
1)化合物Iを保護試薬と保護反応させて化合物IIを得るステップ、
【0008】
【0009】
2)化合物IIをメチル5-アミノサリチレートと縮合反応させて化合物IIIを得るステップ、および
【0010】
【0011】
3)化合物IIIを加水分解反応させて目的化合物IVを得るステップ。
【0012】
【0013】
ここで、Rは、p-メチルベンゼンスルホニル、p-ニトロベンゼンスルホニル、ベンゼンスルホニル、トリフルオロメタンスルホニル、およびアセチルのうちのいずれか1種であり、好ましくは、p-メチルベンゼンスルホニルまたはベンゼンスルホニルであり、より好ましくは、p-メチルベンゼンスルホニルである。
【0014】
上記の製造方法において、前記保護反応は、0~30℃、好ましくは、20~25℃で行われる。
【0015】
上記の製造方法において、前記保護反応は、溶媒中で行われ、前記溶媒は、トルエン、エチルベンゼン、キシレン、メチレンクロリド、およびクロロホルムのうちの少なくとも1種であり、好ましくは、トルエンである。
【0016】
好ましくは、上記の製造方法において、ステップ(1)は、粗化合物IIを精製するステップをさらに含む。
【0017】
より好ましくは、上記の製造方法において、精製は、結晶化によって行われ、これは、40~80℃での溶解および0~40℃での断熱結晶化によって行われ、好ましくは、50~60℃での溶解および20~30℃での断熱結晶化によって行われ、前記結晶化に用いられる溶媒は、エチルアセテート、n-ヘキサン、n-ヘプタン、トルエン、メチレンクロリド、メタノール、エタノール、イソプロパノール、および水のうちの少なくとも1種であり、好ましくは、n-ヘプタンである。
【0018】
上記の製造方法において、前記縮合反応は、30~100℃、好ましくは、80~90℃の温度で行われる。
【0019】
上記の製造方法において、前記縮合反応は、溶媒中で行われ、前記溶媒は、トルエン、アセトニトリル、N,N-ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、およびテトラヒドロフランのうちの少なくとも1種であり、好ましくは、トルエンである。
【0020】
上記の製造方法において、前記縮合反応は、塩基の存在下で行われ、前記塩基は、トリエチルアミン、N,N-ジイソプロピルエチルアミン、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン、およびピリジンのうちの少なくとも1種であり、好ましくは、トリエチルアミンである。
【0021】
好ましくは、上記の製造方法において、ステップ(2)は、酸またはこの水溶液を用いて粗化合物IIIの塩を形成するステップをさらに含む。
【0022】
より好ましくは、上記の製造方法において、前記塩の形成は、無機酸を用いて行われ、前記無機酸は、塩酸、硫酸、硝酸、およびリン酸のうちの少なくとも1種であり、好ましくは、硫酸である。
【0023】
上記の製造方法において、前記加水分解反応は、60~100℃、好ましくは、80~85℃の温度で行われる。
【0024】
上記の製造方法において、前記加水分解反応は、酸の存在下で行われ、これは、硫酸である。
【0025】
上記の製造方法において、前記加水分解反応は、窒素バブリングによって行われる。
【発明の効果】
【0026】
他の工程パラメーターの最適化とともに、化合物I(すなわち、2-(4-トリフルオロメチル)フェネチルアルコール)のヒドロキシ基を保護するための特定の保護試薬を用いて、本発明の方法は、ステップ(1)においてメタ異性体不純物を、かつステップ(2)において二価置換された不純物を効果的に取り除くことができて、2-ヒドロキシ-5-[2-(4-(トリフルオロメチルフェニル)エチルアミノ)]安息香酸を高い歩留まりと高純度で得ることにより、製造研究におけるAPIに関する高い品質基準の条件を満たす。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】実施例1において製造された目的生成物の高速液体クロマトグラフ法(HPLC)によるクロマトグラムを示す。
【
図2】実施例2において製造された目的生成物の高速液体クロマトグラフ法(HPLC)によるクロマトグラムを示す。
【
図3】実施例3において製造された目的生成物の高速液体クロマトグラフ法(HPLC)によるクロマトグラムを示す。
【
図4】実施例4において製造された目的生成物の高速液体クロマトグラフ法(HPLC)によるクロマトグラムを示す。
【
図5】比較例において製造された目的生成物の高速液体クロマトグラフ法(HPLC)によるクロマトグラムを示す。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下に記載されている技術的な特徴についての説明は、本発明の代表的な実施形態および具体的な実施形態に基づくものであるが、本発明は、これらの実施形態および具体的な実施形態に何ら限定されない。
【0029】
この開示において明らかに定義しない限り、本明細書中で使われた用語「化合物」は、化合物のあらゆる立体異性体の形態、幾何異性体(シス・トランス異性体)の形態、互変異性体の形態、および同位元素で標識された形態を網羅する。
【0030】
この開示において明らかに定義しない限り、本明細書中で使われた「数値A-数値B」と表わされる数値範囲は、終点値AおよびBを含む範囲を意味する。
【0031】
この開示において明らかに定義しない限り、本明細書中で使われた「上(above)」または「下(below)」と表わされる数値範囲は、その数字を含む数値範囲を意味する。
【0032】
この開示において明らかに定義しない限り、本明細書中における「一部の具体的な/好ましい実施形態」、「他の具体的な/好ましい実施形態」、「実施形態」などについての言及は、その実施形態と関わる特定の要素(例えば、特徴、構造、性質および/または特性)がここで説明する少なくとも1つの実施形態に含まれ、他の実施形態には存在してもよいし、あるいは、存在しなくてもよいということを意味する。なお、要素は、任意の好適な方式により様々な実施形態において組み合わせられ得るということを理解されたい。
【0033】
この開示において明らかに定義しない限り、本明細書中で使われた「複数(plurality)」は、用語が指し示す項目が2つ以上存在するということを意味する。
【0034】
以下、本発明を詳述する。
【0035】
本発明は、高い歩留まりと高い純度を有する2-ヒドロキシ-5-[2-(4-(トリフルオロメチルフェニル)エチルアミノ)]安息香酸を製造する方法を提供する。
【0036】
前記方法は、次のステップを含む:
(1)化合物Iを保護試薬と保護反応させて化合物IIを得るステップ、
【0037】
【0038】
(2)化合物IIをメチル5-アミノサリチレートと縮合反応させて化合物IIIを得るステップ、および
【0039】
【0040】
(3)化合物IIIを加水分解反応させて目的化合物IVである2-ヒドロキシ-5-[2-(4-(トリフルオロメチルフェニル)エチルアミノ)]安息香酸を得るステップ。
【0041】
【0042】
ここで、Rは、p-メチルベンゼンスルホニル、p-ニトロベンゼンスルホニル、ベンゼンスルホニル、トリフルオロメタンスルホニル、およびアセチルのうちのいずれか1種であり、好ましくは、p-メチルベンゼンスルホニルまたはベンゼンスルホニルであり、より好ましくは、p-メチルベンゼンスルホニルである。
【0043】
[ステップ(1)]
ステップ(1)は、化合物I(すなわち、2-(4-トリフルオロメチル)フェネチルアルコール)を保護試薬と保護反応させて、化合物II(すなわち、2-(4-トリフルオロメチル)フェネチルスルホネートまたはカルボキシレート)を得るステップである。
【0044】
ステップ(1)において、保護基の選択は、このステップにおいてメタ異性体不純物を取り除き、ステップ(2)において二価置換された不純物を制御する上で重要な役割を果たす。
【0045】
本発明の一実施形態において、前記ステップ(1)の化合物Iを保護するために用いられる保護試薬は、p-メチルベンゼンスルホニルクロリド、トリフルオロメタンスルホニルクロリド、アセチルクロリド、ベンゼンスルホニルクロリド、およびp-ニトロベンゼンスルホニルクロリドのうちのいずれか1種であり得るか、あるいは、これらの当該無水物(anhydride)のうちのいずれか1種であり得る。したがって、化合物IIの保護基(すなわち、R基)は、p-メチルベンゼンスルホニル、トリフルオロメタンスルホニル、アセチル、ベンゼンスルホニル、およびp-ニトロフェニルスルホニルのうちのいずれか1種であり得る。
【0046】
本発明の好ましい一実施形態において、ステップ(1)において化合物Iを保護するために用いられる前記保護試薬は、p-メチルベンゼンスルホニルクロリドまたはベンゼンスルホニルクロリドであり得る。
【0047】
本発明のさらに好ましい一実施形態において、ステップ(1)において化合物Iを保護するために用いられる前記保護試薬は、p-メチルベンゼンスルホニルクロリドであり得る。
【0048】
先行技術において用いられた中間体の2-(4-トリフルオロメチル)フェネチルメタンスルホネートは、不良な安定性、低い融点を有し、精製および純化(prify)が決して容易ではない。特に、異性体不純物は、取り除き難く、縮合反応において二価置換された不純物の含量が高くなって、最終生成物の品質に影響を及ぼす。これに対し、叙上の保護試薬を用いて、本発明において得られる中間体は、2-(4-トリフルオロメチル)フェネチルp-メチルベンゼンスルホネート、2-(4-トリフルオロメチル)フェネチルトリフルオロメタンスルホネート、2-(4-トリフルオロメチル)フェネチルアセテート、2-(4-トリフルオロメチル)フェネチルベンゼンスルホネート、および2-(4-トリフルオロメチル)フェネチルp-ニトロベンゼンスルホネートのそれぞれであり、これらは、前述した2-(4-トリフルオロメチル)フェネチルメタンスルホネートの欠点を克服したものである。その結果、最終生成物の2-ヒドロキシ-5-[2-(4-(トリフルオロメチルフェニル)エチルアミノ)]安息香酸を高純度かつ高い歩留まりで製造することができる。
【0049】
本発明の一実施形態において、ステップ(1)における前記保護反応は、低い温度で行われる。
【0050】
本発明の好ましい一実施形態において、ステップ(1)における前記保護反応は、0~30℃で行われる。
【0051】
本発明の好ましい一実施形態において、ステップ(1)における前記保護反応は、20~25℃で行われる。
【0052】
本発明の一実施形態において、ステップ(1)における前記保護反応は、溶媒中で行われ得る。
【0053】
本発明の好ましい一実施形態において、ステップ(1)における前記保護反応は、有機溶媒中で行われ得、前記溶媒は、トルエン、エチルベンゼン、キシレン、メチレンクロリド、およびクロロホルムのうちの少なくとも1種であり得る。
【0054】
本発明の好ましい一実施形態において、ステップ(1)における前記保護反応は、トルエン中で行われ得る。
【0055】
ステップ(1)における前記保護反応が終わった後、系に水が加えられ、層分離のために攪拌され、次いで、分離された有機相を減圧濃縮して粗(crude)化合物IIを得られ、これは、高純度の化合物IIを得るためにさらに精製される。
【0056】
本発明の一実施形態において、ステップ(1)は、粗化合物IIを精製するステップをさらに含み得る。一般に、前記精製ステップは、結晶化によって行われ得る。そして、結晶化に用いられる溶媒の選択は、ステップ(1)におけるメタ異性体の取り除きに大きな影響を及ぼす。
【0057】
本発明の好ましい一実施形態において、結晶化に用いられる溶媒は、エチルアセテート、n-ヘキサン、n-ヘプタン、トルエン、メチレンクロリド、メタノール、エタノール、イソプロパノール、および水のうちの少なくとも1種であり得る。
【0058】
本発明のさらに好ましい一実施形態において、結晶化に用いられる溶媒は、n-ヘプタンであり得る。
【0059】
また、結晶化方法を用いて粗化合物IIを精製するに際して、不純物の取り除きおよび目的生成物の沈殿を行い易くするために結晶化温度も制御され得る。前記結晶化温度が高すぎると、歩留まりに影響を及ぼす虞があり、もし、前記結晶化温度が低すぎると、化合物IIの純度を減少させる虞がある。
【0060】
本発明の一実施形態において、前記結晶化は、40~80℃での溶解および0~40℃での断熱結晶化によって行われ得る。
【0061】
本発明の好ましい一実施形態において、前記結晶化は、50~60℃での溶解および20~30℃での断熱結晶化によって行われ得る。
【0062】
[ステップ(2)]
ステップ(2)は、化合物IIをメチル5-アミノサリチレートと縮合反応させて、化合物III(すなわち、メチル2-ヒドロキシ-5-[2-(4-(トリフルオロメチルフェニル)エチルアミノ)]ベンゾエート)を得るステップである。
【0063】
ステップ(2)において、反応温度は、二価置換された不純物に多大な影響を及ぼし、温度が高くなると、二価置換された不純物の含量を大幅に増加させるであろう。
【0064】
本発明の一実施形態において、ステップ(2)における前記縮合反応は、30~100℃の温度で行われ得る。
【0065】
本発明の好ましい一実施形態において、ステップ(2)における前記縮合反応は、80~90℃の温度で行われ得る。
【0066】
本発明の一実施形態において、ステップ(2)における前記縮合反応は、溶媒中で行われ得る。
【0067】
本発明の好ましい一実施形態において、ステップ(2)における前記縮合反応は、有機溶媒中で行われ得、前記溶媒は、トルエン、アセトニトリル、N,N-ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、およびテトラヒドロフランのうちの少なくとも1種であり得る。
【0068】
本発明のさらに好ましい一実施形態において、ステップ(2)における前記縮合反応は、トルエン中で行われ得る。
【0069】
本発明の一実施形態において、ステップ(2)における前記縮合反応は、塩基の存在下で行われ得、前記塩基は、トリエチルアミン、N,N-ジイソプロピルエチルアミン、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン、およびピリジンのうちの少なくとも1種であり得る。
【0070】
本発明の一実施形態において、ステップ(2)における縮合反応は、トリエチルアミンの存在下で行われ得る。
【0071】
ステップ(2)における前記縮合反応が終わった後、水が系に加えられ、層分離のために攪拌され、次いで、前記分離された有機相を減圧濃縮して粗化合物IIIを得られる。
【0072】
前記粗化合物IIIは、固体の形態で存在し難く、直ちに結晶化されることができないため、固体として得、結晶化を通じた分離および精製の目的を成し遂げる上で有利になる塩の形態に転換されなければならない。
【0073】
本発明の一実施形態において、ステップ(2)は、酸(または、この溶液、好ましくは、この水溶液)を用いて、粗化合物IIIの塩を形成するステップをさらに含む。一般に、前記塩の形成ステップは、無機酸または有機酸を用いて行われ得る。通常の無機酸は、塩酸、硫酸、硝酸、およびリン酸を含むが、これらに何ら限定されない。通常の有機酸は、酢酸、乳酸、クエン酸、リンゴ酸、および酒石酸を含むが、これらに何ら限定されない。
【0074】
本発明の好ましい一実施形態において、塩の形成に用いられる前記酸は、塩酸、硫酸、硝酸、およびリン酸のうちのいずれか1種であり得、あるいは、これらの任意の濃度の水溶液であり得る。
【0075】
本発明のさらに好ましい一実施形態において、塩の形成に用いられる前記酸は、硫酸、またはこの任意の濃度の水溶液であり得る。
【0076】
したがって、塩の形成に用いられる酸が硫酸であるとき、前記化合物IIIの酸付加塩は、好ましくは、ヘミスルフェート(hemisulfate)である。
【0077】
[ステップ(3)]
ステップ(3)は、化合物III(すなわち、メチル2-ヒドロキシ-5-[2-(4-(トリフルオロメチルフェニル)エチルアミノ)]ベンゾエート)またはこの酸付加塩(例えば、ヘミスルフェート)を加水分解反応させて、目的化合物IV(すなわち、2-ヒドロキシ-5-[2-(4-(トリフルオロメチルフェニル)エチルアミノ)]安息香酸)を得るステップである。
【0078】
本発明の一実施形態において、ステップ(3)における前記加水分解反応は、60~100℃で行われ得る。
【0079】
本発明の好ましい一実施形態において、ステップ(3)における前記加水分解反応は、80~85℃で行われ得る。
【0080】
本発明の一実施形態において、ステップ(3)における前記加水分解反応は、酸の存在下で行われ得、これは、硫酸またはこの任意の濃度の水溶液であり得る。
【0081】
本発明の一実施形態において、加水分解に用いられる前記酸は、硫酸であり得る。
【0082】
製造された化合物IVの純度をさらに高めるために、脱色(decolorization)のための活性炭(activated carbon)がさらに加えられ得る。
【0083】
本発明の一実施形態において、ステップ(3)における前記加水分解反応は、窒素バブリングによって行われ得、これは、反応時間をさらに短縮させることができ、しかも、反応転換率を向上させることができる。
【0084】
また、特に留意すべき点は、この開示において特に定義しない限り、本発明の製造方法において、各ステップは、HPLC方法を用いて反応の終点を検出し、反応原料は、一般に、化学反応化学量論比または過剰に応じて反応させたということであり、また、反応溶媒および/または触媒の量は、反応原料の量に応じて調整可能であり、具体的には、反応原料が多くなれば多くなるほど増加し、反応原料が少なくなれば少なくなるほど減少され得るということである。
【0085】
本発明の技術的な解決方法についての理解を深めるために、本発明について以下の特定の実施例を挙げてさらに詳しく説明するが、通常の技術者であれば、本発明がこのような実施例に何ら限定されないということを認識されたい。
【実施例】
【0086】
実施例1:
(1)2-(4-トリフルオロメチル)フェネチルp-メチルベンゼンスルホネートの製造:
【0087】
【0088】
500mLの定量フラスコにトルエン(230g)およびp-メチルベンゼンスルホニルクロリド(100g、0.53mol)を加え、攪拌して溶解した後、別途に保管しておいた。1Lの反応フラスコにトルエン(140g)、40wt%の水酸化ナトリウム水溶液(140g、1.4mol)、および2-(4-トリフルオロメチル)フェネチルアルコール(95g、0.5mol)を加え、0~10℃まで冷却させた。次いで、p-メチルベンゼンスルホニルクロリドのトルエン水溶液を滴下して加えた。次いで、20~25℃で6時間かけて反応させ、ガスクロマトグラフ(GC)にてモニターリングした。反応が終わった後、飲用水を加え、層分離のために攪拌した。有機相を減圧濃縮して濃縮された粗生成物を得た。温度を50~60℃まで上げ、n-ヘプタン(170g)を滴下して加えた。次いで、20~25℃まで冷却させ、結晶化させ、吸引ろ過し、かつ乾燥させてHPLC純度が99.6%であり、メタ異性体不純物の含量が0.03%であり、かつ歩留まりが95%である目的化合物の乾燥物(163g)を得た。
【0089】
(2)メチル2-ヒドロキシ-5-[2-(4-(トリフルオロメチルフェニル)エチルアミノ)]ベンゾエートヘミスルフェートの製造:
【0090】
【0091】
1Lの反応フラスコに2-(4-トリフルオロメチル)フェネチルp-メチルベンゼンスルホネート(68g、0.20mol)、メチル5-アミノサリチレート(35g、0.21mol)、トルエン(200g)、およびトリエチルアミン(24g、0.24mol)を加えた。これを加熱して80~90℃で保持し、14時間かけて反応させた。サンプルを採取して試験を通過した後、前記反応を中断した。次いで、飲用水を加え、攪拌して層分離した。有機相を蒸留物がなくなるまで減圧濃縮した。メタノール(160g)をここに加えて、攪拌して溶解し、35~40℃まで加熱して、50wt%の硫酸水溶液(23g、0.12mol)を滴下して加えた。次いで、15分間攪拌し、徐々に25~30℃まで冷却させ、1時間かけて断熱結晶化させ、吸引ろ過し、かつ乾燥させて、99%のHPLC純度および86.3%の歩留まりを有する化合物IIIのヘミスルフェートを得た(67g、0.17mol)。
【0092】
(3)2-ヒドロキシ-5-[2-(4-(トリフルオロメチルフェニル)エチルアミノ)]安息香酸の製造:
【0093】
【0094】
500mLの反応フラスコに40wt%の硫酸水溶液(300g)、氷酢酸(100g)、および化合物IIIのヘミスルフェート(77g)を加えた。反応溶液に窒素を投入しながら、温度を80~85℃まで上げ、4時間かけてバブリング反応を行った。試料の採取および試験の通過が終わった後、脱色のために活性炭を加え、ろ過した。ろ液(filtrate)を徐々に-5~5℃まで冷却させ、吸引ろ過および乾燥させて、99.957%のHPLC純度および93%の歩留まりを有する化合物IVの乾燥物(58.4g)を得た。二価置換された不純物およびメタ異性体不純物は検出されなかった(
図1に示す)。
【0095】
実施例2:
(1)2-(4-トリフルオロメチル)フェネチルベンゼンスルホネートの製造:
【0096】
【0097】
500mLの定量フラスコにトルエン(230g)およびベンゼンスルホニルクロリド(93g、0.53mol)を加え、攪拌して溶解し、別途に保管しておいた。1Lの反応フラスコにトルエン(140g)、40wt%の水酸化ナトリウム水溶液(140g、1.4mol)、および2-(4-トリフルオロメチル)フェネチルアルコール(95g、0.5mol)を加え、0~10℃まで冷却させた。次いで、ベンゼンスルホニルクロリドのトルエン溶液を滴下して加えた。次いで、20~25℃で8時間かけて反応させ、GCにてモニターリングした。反応が終わった後、飲用水を加え、層分離のために攪拌した。有機相を減圧濃縮して濃縮された粗生成物を得た。温度を50~60℃まで上げ、エチルアセテートおよびn-ヘプタンの混合溶媒(150g)を滴下して加えた。次いで、20~25℃まで冷却させ、結晶化、吸引ろ過、および乾燥させて、98%のHPLC純度および89%の歩留まりを有する目的化合物の乾燥物(145g、0.44mol)を得た。
【0098】
(2)メチル2-ヒドロキシ-5-[2-(4-(トリフルオロメチルフェニル)エチルアミノ)]ベンゾエートヘミスルフェートの製造:
【0099】
【0100】
1Lの反応フラスコに2-(4-トリフルオロメチル)フェネチルベンゼンスルホネート(66g、0.20mol)、メチル5-アミノサリチレート(35g、0.21mol)、トルエン(200g)、および24gのトリエチルアミン(24g、0.24mol)を加えた。これを加熱して90~100℃で保持し、12時間かけて反応させた。試料の採取および試験の通過が終わった後、前記反応を停止した。次いで、飲用水を加え、層分離のために攪拌した。有機相は、蒸留液がなくなるまで減圧濃縮された。メタノール(168g)をここに加えて、攪拌して溶かし、35~40℃まで加熱し、50wt%の硫酸水溶液(23g、0.12mol)を滴下して加えた。次いで、15分間攪拌し、25~30℃まで徐々に冷却させ、1時間かけて断熱結晶化させ、吸引ろ過し、かつ乾燥させて、98.5%のHPLC純度および80%の歩留まりを有する化合物IIIのヘミスルフェート(62g)を得た。
【0101】
(3)2-ヒドロキシ-5-[2-(4-(トリフルオロメチルフェニル)エチルアミノ)]安息香酸の製造:
500mLの反応フラスコに40wt%の硫酸水溶液(240g)、氷酢酸(80g)および化合物IIIのヘミスルフェート(60g)を加えた。反応溶液に窒素を投入しながら温度を80~85℃まで上げ、4時間かけてバブリング反応を行った。試料の採取および試験の通過が終わった後、脱色のために活性炭を加え、ろ過した。ろ液(filtrate)を-5~5℃まで徐々に冷却させ、1時間かけて保持し、吸引ろ過し、かつ乾燥させて、HPLC純度が99.831%であり、二価置換された不純物の含量が0.025%であり、かつメタ異性体不純物の含量が0.033%(
図2に示す)である化合物IVの乾燥物(44.5g)を91%の歩留まりで得た。
【0102】
実施例3:
(1)2-(4-トリフルオロメチル)フェネチルアセテートの製造:
【0103】
【0104】
500mLの定量フラスコにトルエン(230g)およびアセチルクロリド(41.6g、0.53mol)を加え、攪拌して溶解し、別途に保管しておいた。1Lの反応フラスコにトルエン(140g)、40wt%の水酸化ナトリウム水溶液(140g、1.4mol)、および2-(4-トリフルオロメチル)フェネチルアルコール(95g、0.5mol)を加え、0~10℃まで冷却させた。次いで、アセチルクロリドのトルエン溶液を滴下して加えた。次いで、20~25℃で8時間かけて反応させ、GCにてモニターリングした。反応が終わった後、飲用水を加え、層分離のために攪拌した。有機相を減圧濃縮して濃縮された粗生成物を得た。温度を50~60℃まで上げ、エチルアセテートおよびn-ヘプタンの混合溶媒(150g)を滴下して加えた。次いで、20~25℃まで冷却させ、結晶化、吸引ろ過、および乾燥させて、98%のHPLC純度および80%の歩留まりを有する目的化合物の乾燥物(93g、0.4mol)を得た。
【0105】
(2)メチル2-ヒドロキシ-5-[2-(4-(トリフルオロメチルフェニル)エチルアミノ)]ベンゾエートヘミスルフェート:
【0106】
【0107】
1Lの反応フラスコに2-(4-トリフルオロメチル)フェネチルアセテート(46.4g、0.20mol)、メチル5-アミノサリチレート(35g、0.21mol)、トルエン(200g)、および24gのトリエチルアミン(24g、0.24mol)を加えた。これを加熱して90~100℃で保持し、12時間かけて反応させた。試料の採取および試験の通過が終わった後、前記反応を停止した。次いで、飲用水を加え、層分離のために攪拌した。有機相は、蒸留液がなくなるまで減圧濃縮された。メタノール(168g)をここに加えて、攪拌して溶かし、35~40℃まで加熱し、50wt%の硫酸水溶液(23g、0.12mol)を滴下して加えた。次いで、15分間攪拌し、25~30℃まで徐々に冷却させ、1時間かけて断熱結晶化、吸引ろ過、および乾燥させて、98.5%のHPLC純度および77%の歩留まりを有する化合物IIIのヘミスルフェート(60g、0.15mol)を得た。
【0108】
(3)2-ヒドロキシ-5-[2-(4-(トリフルオロメチルフェニル)エチルアミノ)]安息香酸の製造:
500mLの反応フラスコに40wt%の硫酸水溶液(240g)、氷酢酸(80g)および化合物IIIのヘミスルフェート(60g)を加えた。反応溶液に窒素を投入しながら温度を80~85℃まで上げ、4時間かけてバブリング反応を行った。試料の採取および試験の通過が終わった後、脱色のために活性炭を加え、ろ過した。ろ液(filtrate)を-5~5℃まで徐々に冷却させ、1時間かけて保持し、吸引ろ過し、かつ乾燥させて、HPLC純度が99.639%であり、二価置換された不純物の含量が0.128%であり、かつメタ異性体不純物の含量が0.097%(
図3に示す)である化合物IVの乾燥物(40g)を82%の歩留まりで得た。
【0109】
実施例4:
(1)2-(4-トリフルオロメチル)フェネチルトリフルオロメタンスルホネートの製造:
【0110】
【0111】
500mLの定量フラスコにトルエン(230g)およびトリフルオロメタンスルホン酸無水物(150g、0.53mol)を加え、攪拌して溶解し、別途に保管しておいた。1Lの反応フラスコにトルエン(140g)、トリエチルアミン(64g、0.63mol)、および2-(4-トリフルオロメチル)フェネチルアルコール(95g、0.5mol)を加え、0~10℃まで冷却させた。次いで、トリフルオロメタンスルホン酸無水物のトルエン溶液を滴下して加えた。次いで、20~25℃で8時間かけて反応させ、GCにてモニターリングした。反応が終わった後、飲用水を加え、層分離のために攪拌した。有機相を減圧濃縮して濃縮された粗生成物を得た。温度を50~60℃まで上げ、エチルアセテートおよびn-ヘプタンの混合溶媒(150g)を滴下して加えた。次いで、20~25℃まで冷却させ、結晶化、吸引ろ過、および乾燥させて、98.5%のHPLC純度および80%の歩留まりを有する目的化合物の乾燥物(129g、0.4mol)を得た。
【0112】
(2)メチル2-ヒドロキシ-5-[2-(4-(トリフルオロメチルフェニル)エチルアミノ)]ベンゾエートヘミスルフェートの製造:
【0113】
【0114】
1Lの反応フラスコに2-(4-トリフルオロメチル)フェネチルトリフルオロメタンスルホネート(64.5g、0.20mol)、メチル5-アミノサリチレート(35g、0.21mol)、トルエン(200g)、および24gのトリエチルアミン(24g、0.24mol)を加えた。これを加熱して90~100℃で保持し、12時間かけて反応させた。試料の採取および試験の通過が終わった後、前記反応を停止した。次いで、飲用水を加え、層分離のために攪拌した。有機相は、蒸留液がなくなるまで減圧濃縮された。メタノール(168g)をここに加えて、攪拌して溶かし、35~40℃まで加熱し、50wt%の硫酸水溶液(23g、0.12mol)を滴下して加えた。次いで、15分間攪拌し、25~30℃まで徐々に冷却させ、1時間かけて断熱結晶化、吸引ろ過、および乾燥させて、98.5%のHPLC純度および78.3%の歩留まりを有する化合物IIIのヘミスルフェート(61g)を得た。
【0115】
(3)2-ヒドロキシ-5-[2-(4-(トリフルオロメチルフェニル)エチルアミノ)]安息香酸の製造:
500mLの反応フラスコに40wt%の硫酸水溶液(240g)、氷酢酸(80g)および化合物IIIのヘミスルフェート(60g)を加えた。反応溶液に窒素を投入しながら温度を80~85℃まで上げ、4時間かけてバブリング反応を行った。試料の採取および試験の通過が終わった後、脱色のために活性炭を加えてろ過した。ろ液(filtrate)を-5~5℃まで徐々に冷却させ、1時間かけて保持し、吸引ろ過し、かつ乾燥させて、HPLC純度が99.762%であり、二価置換された不純物の含量が0.023%であり、かつメタ異性体不純物の含量が0.068%(
図4に示す)である化合物IVの乾燥物(40.5g)を83%の歩留まりで得た。
【0116】
比較例:
(1)2-(4-トリフルオロメチル)フェネチルメチルスルホネートの製造:
【0117】
【0118】
500mLの定量フラスコにトルエン(230g)およびメチルスルホニルクロリド(60g、0.53mol)を加え、攪拌して溶解し、別途に保管しておいた。1Lの反応フラスコにトルエン(140g)、40wt%の水酸化ナトリウム水溶液(140g、1.4mol)、および2-(4-トリフルオロメチル)フェネチルアルコール(95g、0.5mol)を加え、0~10℃まで冷却させた。次いで、メチルスルホニルクロリドのトルエン溶液を滴下して加えた。次いで、20~25℃で10時間かけて反応させ、GCにてモニターリングした。反応が終わった後、飲用水を加え、層分離のために攪拌した。有機相を減圧濃縮し、次いで、n-ヘキサン(200g)を加えた。次いで、-10~0℃まで冷却させ、結晶化、吸引ろ過、および0~10℃で真空下で乾燥させて、97%のHPLC純度および0.3%のメタ異性体の含量を有する目的化合物の乾燥物(116g、0.43mol)を86%の歩留まりで得た。
【0119】
(2)メチル2-ヒドロキシ-5-[2-(4-(トリフルオロメチルフェニル)エチルアミノ)]ベンゾエートヘミスルフェートの製造:
【0120】
【0121】
1Lの反応フラスコに2-(4-トリフルオロメチル)フェネチルメチルスルホネート(53.6g、0.20mol)、メチル5-アミノサリチレート(35g、0.21mol)、トルエン(200g)、およびトリエチルアミン(24g、0.24mol)を加えた。これを加熱して80~90℃で保持し、18時間かけて反応させた。試料の採取および試験の通過が終わった後、前記反応を停止した。次いで、飲用水を加え、層分離のために攪拌した。有機相は、蒸留液がなくなるまで減圧濃縮された。メタノール(160g)をここに加えて、攪拌して溶かし、35~40℃まで加熱し、50wt%の硫酸水溶液(23g、0.12mol)を滴下して加えた。次いで、15分間攪拌し、25~30℃まで徐々に冷却させ、1時間かけて断熱結晶化、吸引ろ過、および乾燥させて、HPLC純度が97.3%であり、メタ異性体の含量が0.24%であり、二価置換された不純物の含量が1.8%である化合物IIIのヘミスルフェート(57g)を73%の歩留まりで得た。
【0122】
(3)2-ヒドロキシ-5-[2-(4-(トリフルオロメチルフェニル)エチルアミノ)]安息香酸の製造:
500mLの反応フラスコに40%の硫酸水溶液(300g)、氷酢酸(100g)および化合物III(77g)を加えた。温度を80~95℃まで上げ、24時間かけて保持した。試料の採取および試験の通過が終わった後、脱色のために活性炭を加えてろ過した。ろ液(filtrate)を-5~5℃まで徐々に冷却させ、1時間かけて保持し、吸引ろ過し、かつ乾燥させて、HPLC純度が99.388%であり、二価置換された不純物の含量が0.285%であり、かつメタ異性体不純物の含量が0.155%(
図5に示す)である化合物IVの乾燥物(52g)を81%の歩留まりで得た。
【0123】
上記の実施例1において、p-メチルベンゼンスルホニルクロリドを保護試薬として用いる(すなわち、p-メチルベンゼンスルホニルを保護基として用いる)ことにより、最終生成物において二価置換された不純物およびメタ異性体不純物が検出されず、したがって、2-ヒドロキシ-5-[2-(4-(トリフルオロメチルフェニル)エチルアミノ)]安息香酸を99.957%の非常に高純度でかつ93%の高い歩留まりで得た。
【0124】
上記の実施例2において、ベンゼンスルホニルクロリドを保護試薬として用いる(すなわち、ベンゼンスルホニルを保護基として用いる)ことにより、最終生成物において二価置換された不純物およびメタ異性体不純物がせいぜい0.04%未満の含量でしか検出されず、したがって、2-ヒドロキシ-5-[2-(4-(トリフルオロメチルフェニル)エチルアミノ)]安息香酸を99.831%の高純度でかつ91%の高い歩留まりで得た。
【0125】
上記の実施例3において、アセチルクロリドを保護試薬として用いる(すなわち、アセチルを保護基として用いる)ことにより、最終生成物において二価置換された不純物およびメタ異性体不純物がせいぜい0.13%未満の含量で検出され、したがって、2-ヒドロキシ-5-[2-(4-(トリフルオロメチルフェニル)エチルアミノ)]安息香酸を99.639%の高純度でかつ82%の歩留まりで得た。
【0126】
上記の実施例4において、トリフルオロメタンスルホン酸無水物を保護試薬として用いる(すなわち、トリフルオロメタンスルホニルを保護基として用いる)ことにより、最終生成物において二価置換された不純物およびメタ異性体不純物がせいぜい0.07%未満の含量で検出され、したがって、2-ヒドロキシ-5-[2-(4-(トリフルオロメチルフェニル)エチルアミノ)]安息香酸を99.762%の高純度でかつ83%の歩留まりで得た。
【0127】
しかしながら、比較例においては、保護試薬としてメチルスルホニルクロリドを用いたため、低い安定性を有する中間体の2-(4-トリフルオロメチル)フェネチルメチルスルホネートが形成され、二価置換された不純物の含量が0.285%であり、メタ異性体不純物の含量が0.155%であり、純度がせいぜい99.388%であり、かつ歩留まりがせいぜい81%である最終産物が製造された。
【0128】
上記の比較から明らかなように、特定の保護試薬を用いることにより、本発明は、最終生成物の2-ヒドロキシ-5-[2-(4-(トリフルオロメチルフェニル)エチルアミノ)]安息香酸の二価置換された不純物および異性体不純物を効果的に制御し、前記生成物の品質が格段に向上し、しかも、反応歩留まりも大幅に向上する。
【0129】
以上では、特定の実施形態に挙げて本発明について説明したが、本発明の保護範囲はこれらの実施形態に何ら限定されるものではない。本発明の概念から逸脱しないあらゆる変更または同等の代替は、本発明の保護範囲内に含まれる。
【国際調査報告】