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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-18
(54)【発明の名称】試料の存在の検出方法及び関連装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 35/00 20060101AFI20231211BHJP
【FI】
G01N35/00 F
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023535270
(86)(22)【出願日】2021-12-09
(85)【翻訳文提出日】2023-08-03
(86)【国際出願番号】 EP2021084981
(87)【国際公開番号】W WO2022122911
(87)【国際公開日】2022-06-16
(31)【優先権主張番号】20213492.0
(32)【優先日】2020-12-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.QRコード
(71)【出願人】
【識別番号】304043936
【氏名又は名称】ビオメリュー
【氏名又は名称原語表記】BIOMERIEUX
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】カリニャーノ, アンドレア
(72)【発明者】
【氏名】カラドンナ, ジョナサン
(72)【発明者】
【氏名】トラヴェルシ, アンドレア
(72)【発明者】
【氏名】サルバドーリ, マルコ
【テーマコード(参考)】
2G058
【Fターム(参考)】
2G058CC01
2G058GE10
(57)【要約】
試料の存在の検出方法及び関連装置
本発明は、in vitro検出及び/又は定量のための装置で実施される分析が意図された、透明又は半透明の支持体のウェル内部の液体の存在の検出方法に関し、液体の存在は、イメージャの視野内で予想されるパターンが判読可能である確率を表す可視パターン尤度の指数に基づいて評価される。前記発明は、試料なしでのアッセイ実行を防止することを可能にし、試料ウェルがユーザによって充填されていない場合、試料又は試料ウェル支持体を無駄にすることなく適用することができる。さらに、この方法は、低反射率で透明又は半透明の試料の正確な検出を可能にする。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
例えばin vitro検出及び/又は定量のために装置内で実施される分析が意図された透明又は半透明支持体のウェル内部の液体存在の検出方法であって、
A.システム(100)を提供するステップであって、前記システム(100)が、
分析するための液体で充填されるように構成された少なくとも1つのウェル(111)を備える支持体(110)と、
例えばin vitro検出及び/又は定量のための装置(120)であって、前記装置(120)が、
・少なくとも1つの支持体(110)を受け入れるように構成された基部(121)、
・少なくとも1つの基準画像を記憶する1つの制御ユニット(122)、及び
・視野を有する1つのイメージャ(123)であって、前記制御ユニットによって制御され、前記視野の少なくとも1つの画像を取得するように構成され、前記制御ユニットは、前記イメージャによって取得された前記少なくとも1つの画像を処理するように構成される、イメージャ(123)
を備える、装置(120)と、
少なくとも1つの線形部(131)を含む少なくとも1つのパターン(130)であって、前記パターン(130)が、前記ウェルが充填されたときに、前記分析対象の液体が少なくとも部分的に重複するように配置され、前記基準画像は、前記支持体及び前記パターンと重複する液体なしで取得された前記パターンの少なくとも1つの画像に対応する、少なくとも1つのパターン(130)と
を備える、システム(100)を提供するステップと、
B.前記支持体(110)を前記装置(120)の前記基部(121)に装填するステップであって、前記支持体(110)の前記少なくとも1つのウェル(111)は前記視野内に位置決めされる、ステップと、
C.前記イメージャ(123)によって前記視野の少なくとも1つの画像を取得するステップと、
D.前記取得した画像を前記制御ユニット(122)に送信するステップと、
E.前記取得した画像内の前記パターンの位置を、
E1.第1の方向に沿って走査する少なくとも複数回の第1の走査を実施することであって、前記第1の方向とは異なる方向において前記第1の走査は分散している、少なくとも複数回の第1の走査を実施すること、
E2.前記第1の走査が前記パターンの前記線形部を横切ったかどうかを表す複数の一致記述子を決定すること、
E3.第2の方向に延び、互いに離れて第1の方向において分散している少なくとも複数回の第2の走査を実施することであって、前記第2の走査は前記第1の方向に沿って走査する、少なくとも複数回の第2の走査を実施すること、
E4.前記第2の走査が前記パターンと少なくとも部分的に重複するかどうかを示す少なくとも1つの線類似度記述子を決定すること
によって決定するステップと、
F.前記視野内で予測される前記パターンの前記線形部が判読可能である確率を表す可視パターン尤度のパーセント指数に基づいて、前記支持体(110)の前記ウェル(111)内の前記液体の存在を評価するステップであって、可視パターン尤度の前記パーセント指数は、一致記述子及び線類似度記述子の関数である、前記液体の存在を評価するステップと
を少なくとも含む、検出方法。
【請求項2】
前記第1の走査は垂直方向に沿った走査であり、前記第1の走査は所定の位置で実施され、少なくとも1回の第1の走査は前記視野の中央で行われる、請求項1に記載の検出方法。
【請求項3】
前記サブステップE2において、前記制御ユニットは、各第1の走査の階調ピークが同じ座標及び同じ振幅を有する場合、前記第1の走査が前記パターンの前記線形部を横切ったと見なす、請求項1又は2に記載の検出方法。
【請求項4】
前記一致記述子の中には位置記述子及び振幅記述子がある、請求項1から3のいずれか一項に記載の検出方法。
【請求項5】
前記位置記述子は、(i)決定された範囲内の各第1の走査の階調ピークの位置を表す絶対位置記述子を少なくとも含み、(ii)第2の特徴が、各第1の走査の各階調ピーク間の距離を表す相対位置記述子である、請求項4に記載の検出方法。
【請求項6】
第1の走査の前記絶対位置記述子は、前記第1の走査の前記階調ピークの前記位置と、他の第1の走査の前記ピークの前記位置から独立した基準位置との比較から得られ、前記絶対位置記述子の値は、前記第1の走査の前記階調ピークが決定された範囲内で前記制御ユニットによって見出された場合、かつ各第1の走査が階調ピークを有する場合、決定されたスコア、例えば1だけ増加する、請求項5に記載の検出方法。
【請求項7】
前記相対位置記述子は、各第1の走査の前記階調ピークの位置と、各第1の走査の階調ピークの各位置の平均に対応する平均ピーク位置との比較から得られ、画素単位で、前記階調ピークの前記位置と前記平均ピーク位置との間の距離が予想範囲内である場合、前記相対位置記述子は所定のスコアを有し、画素単位で、各ピークと前記平均ピーク位置との間の距離が前記予想範囲外である場合、前記相対位置記述子は0のスコアを有する、請求項4又は5のいずれか一項に記載の検出方法。
【請求項8】
前記振幅記述子は、以下の式:
に従って各階調ピークについて計算される、請求項4から7のいずれか一項に記載の検出方法。
【請求項9】
前記第2の走査は水平方向に沿った走査であり、前記第2の走査は所定の位置で実施され、少なくとも1回の第2の走査は前記視野の中央で行われる、請求項1から8のいずれか一項に記載の検出方法。
【請求項10】
少なくとも1つの線類似度記述子を決定することであるサブステップE4は、
(iii)前記第2の中央で行われた走査の階調値と、少なくとも1つの他の第2の走査の階調値との間のポイントツーポイント比較に基づいて、n個の階調関数を決定するサブステップと、
(iv)以前に決定された前記階調関数に基づいて前記線類似度記述子の前記値を決定するサブステップと
を含む、請求項1から9のいずれか一項に記載の検出方法。
【請求項11】
前記ステップFは、全体記述子及び前記線類似性記述子を正規化するサブステップF1を含む、請求項1から10のいずれか一項に記載の検出方法。
【請求項12】
前記ステップFは、前記正規化された全体記述子及び前記正規化された線類似度記述子を、以下:
可視パターン尤度指数=正規化された線類似度記述子/2+正規化された全体記述子/2
のように平均化するサブステップF2を含む、請求項11に記載の検出方法。
【請求項13】
生物学的試料中の少なくとも1つの被分析物のin vitro検出及び/又は定量のためのシステム(100)であって、
a.液体を保持するように構成された少なくとも1つのウェル(111)を備える、少なくとも部分的に透明又は半透明の支持体(110)と、
b.装置(120)であって、
少なくとも1つの支持体(110)を受け入れるように構成された基部(121)、
1つの制御ユニット(122)、及び
視野を有する1つのイメージャ(123)であって、前記制御ユニットによって制御され、前記支持体の少なくとも1つのウェルの少なくとも1つの画像を取得するように構成される、イメージャ(123)
を備える、装置(120)と
を備え、
前記システムが、少なくとも1つの線形部(131)を含み、かつ前記液体によって少なくとも部分的に重複するように意図された少なくとも1つのパターン(130)を含むこと、前記イメージャが、前記視野の少なくとも1つの画像を取得するように構成されること、及び前記制御ユニットが、請求項1から12に記載の検出方法に従って前記イメージャによって取得された前記少なくとも1つの画像に基づいて前記ウェル内の前記液体の存在を決定するように構成されることを特徴とする、システム(100)。
【請求項14】
前記パターン(130)は、前記装置(120)の前記基部(121)上に直接エッチングされる、請求項13に記載のシステム。
【請求項15】
前記イメージャ(123)は、前記視野内にフレーミングしたときに前記支持体(110)の識別コード(114)を取得して復号するように構成され、前記イメージャは、前記復号された識別コード(114)を前記制御ユニットに送信するように構成される、請求項13又は14のいずれか一項に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウェル内の液体の存在を、分析装置における前記液体の分析前に検出するための検出方法に関する。より具体的には、液体は生物学的試料であり得、前記検出方法を実施する装置は、前記生物学的試料中の少なくとも1つの被分析物のin vitro検出及び/又は定量のために構成することができる。したがって、本発明は、臨床分野及び産業分野におけるin vitro診断のための自動化装置に使用することができる。特に、本発明は、本出願人による市販の機器VIDAS(登録商標)の範囲に適用することができる。
【背景技術】
【0002】
生物学的アッセイを行う場合、生物学的アッセイの種類に応じて、微生物/被分析物の検出及び定量などの任意の以下の操作の実行を開始する前に、ユーザは試料ウェルに試料を予め充填しなければならない。いくつかのアッセイの結果は、単に、試料の手動導入のステップが省略されるか又は誤って行われ、前記試料を分析することになっている装置がこの種類のエラー(試料の欠落又は不足又は不十分)を検出することができないため、正しくない可能性がある。
【0003】
国際公開第10029471号から、試料受容面上の試料の存在を決定する方法であって、(i)試料受容面と近接場接触して配置された光学素子を使用して、試料受容面上に入射光ビームを誘導するステップと、(ii)光検出器を使用して、光学素子の内部で全反射された出射光における反射光強度を決定するステップと、(iii)反射光強度を所定の光強度と比較するステップとを含み、比較の結果は試料受容面上の試料の存在を示す、方法が公知である。
【0004】
光反射分析によって分析装置内部の試料の存在を検出するための多くの異なる方法が存在する。問題は、試料が透明で、低反射率である場合である。実際、ウェル内部の試料の存在を検出することは非常に困難である。さらに、ウェルが透明なプラスチックで作製されている場合、反射率の干渉により存在検知が複雑になる。
【発明の概要】
【0005】
本発明の主な目標の1つは、透明又は半透明であり得る、少なくとも部分的に低反射率の少なくとも1つのウェル内の液体の存在を検出することを可能にする検出方法を提供することである。明らかに、本発明によるこの検出方法は、任意の種類のウェル及び任意の種類の液体に適用することができるが、反射率の問題を引き起こし、先行技術では容易に検出することができない液体について以下で具体的に詳述する。この方法の目的は、分析において欠陥のあるウェルを開始することを回避するための単純な自動化プロセスを可能にし、分析開始前にエラーを修正することを可能にする。
【0006】
したがって、本発明の目的は、例えばin vitro検出及び/又は定量のために自動化装置内で実施される分析が意図された透明又は半透明支持体のウェル内部の液体存在の検出方法であって、
A.システムを提供するステップであって、前記システムが、
分析するための液体で充填されるように構成された少なくとも1つのウェルを備える支持体と、
例えばin vitro検出及び/又は定量のための装置であって、前記装置が、
・少なくとも1つの支持体を受け入れるように構成された基部、
・少なくとも1つの基準画像を記憶する1つの制御ユニット、及び
・視野を有する1つのイメージャであって、制御ユニットによって制御され、視野の少なくとも1つの画像を取得するように構成され、制御ユニットは、イメージャによって取得された少なくとも1つの画像を処理するように構成される、イメージャ
を備える、装置と、
少なくとも1つの線形部を含む少なくとも1つのパターンであって、前記パターンが、ウェルが充填されたときに、分析対象の液体が少なくとも部分的に重複するように配置され、基準画像は、支持体及びパターンと重複する液体なしで取得された前記パターンの少なくとも1つの画像に対応する、少なくとも1つのパターンと
を備える、システムを提供するステップと、
B.支持体を装置の基部に装填するステップであって、支持体の少なくとも1つのウェルが視野内に位置決めされる、ステップと、
C.イメージャによって視野の少なくとも1つの画像を取得するステップと、
D.取得した画像を制御ユニットに送信するステップと、
E.取得した画像内のパターンの位置を、
E1.第1の方向に沿って走査する少なくとも複数回の第1の走査を実施することであって、第1の方向とは異なる方向において前記第1の走査は分散している、複数回の第1の走査を実施すること、
E2.第1の走査がパターンの線形部を横切ったかどうかを表す複数の一致記述子を決定すること、
E3.第2の方向に延び、第1の方向において互いに離れて分散している少なくとも複数の第2の走査を実施することであって、前記第2の走査は第1の方向に沿って走査する、少なくとも複数の第2の走査を実施すること、
E4.第2の走査がパターンと少なくとも部分的に重複するかどうかを示す少なくとも1つの線類似度記述子を決定すること
によって決定するステップと、
F.視野内で予測されるパターンの線形部が判読可能である確率を表す可視パターン尤度のパーセント指数に基づいて、支持体のウェル内の液体の存在を評価するステップであって、可視パターン尤度のパーセント指数は、一致記述子及び線類似度記述子の関数である、液体の存在をステップと
を少なくとも含む、検出方法を提供することである。
【0007】
まず、本発明の検出方法は、例えば、試料なしでのアッセイ実行を防止することを可能にし、ユーザがウェルを充填していない場合、液体又は支持体を浪費することなく適用することができる。さらに、この方法は、透明又は半透明で、低反射率の液体の正確な存在検出を可能にする。実際、この方法では、ウェル内の液体の存在によって引き起こされるパターンの任意の変形又は消失を検出することが可能である。この種の方法は、ウェル内にあるときに見ることが非常に困難な任意の試料に適用することができる。有利には、本方法は、不透明な液体の場合にはパターンが検出できない(液体の不透明度によって完全にマスクされる)ので、不透明な液体で効果的であることができる。
【0008】
この検出方法の別の利点は、検出が非接触であることである。実際、検出は支持体を介して実施され、液体、より具体的には生物学的試料を汚染する可能性があるプローブ又は他の装置は使用されない。
【0009】
本発明の方法は、単独で、又はそれらの様々な可能な組み合わせに従って、以下の異なる特徴によって有利に完成される。
【0010】
本発明の1つの特徴によれば、液体は生物学的試料であり、少なくとも1つのウェルは試料ウェルである。
【0011】
有利には、制御ユニットは、支持体及び前記パターンと重複する液体なしで取得されたパターンの少なくとも1つの画像に対応する基準画像を記憶し、これは、液体で充填された支持体の部分的又は全体的な重複がないこと、好ましくは少なくとも、液体で充填されてパターンと重複する支持体のウェルがないことを意味する。この基準画像の目的は、材料又は任意の媒体によって引き起こされ得る任意の変形なしにパターンの画像を取得することである。基準画像は、パターンの予想される空間的位置及び特性(形状、階調)を決定することを可能にし、すなわち、制御ユニットのアルゴリズムは、本発明による検出方法中に視野内のパターンを探すことになる。
【0012】
好ましくは、基準画像は、Otsuの方法に従って、画像のヒストグラムのクラス間バリアンスを最小化することによって予め決定された閾値のおかげでバイナリにされる。基準画像のパターンは、ピクチャの画素が1に設定された領域に配置される。
【0013】
本発明の1つの特徴によれば、本方法は、任意の機械的ドリフトを考慮に入れるために、基準画像から既知のパターンの位置を調整する較正手順を実施することであるステップを含むことができる。
【0014】
本発明の1つの特徴によれば、第1の走査は垂直方向に沿った走査であり、前記第1の走査は所定の位置で実施され、少なくとも1回の第1の走査は視野の中央で行われる。
【0015】
本発明の1つの特徴によれば、第1の走査は水平方向において分散している。
【0016】
本発明の1つの特徴によれば、第1の走査は互いに離れて分散している。
【0017】
本発明の1つの特徴によれば、各第1の走査の各走査領域は別個である。
【0018】
本発明の1つの特徴によれば、複数回の第1の走査は、少なくとも3回の第1の走査を含み、「中央で行われた第1の走査」と呼ばれる、イメージャの視野の中央で行われるものを含む。
【0019】
好ましくは、他の第1の走査は、視野内に完全に位置決めされる。
【0020】
好ましくは、他の第1の走査は、中央で行われた第1の走査と比較して、決定された距離に分散している。より優先的には、他の第1の走査は、中央で行われた第1の走査に対して対称的に配置される。
【0021】
本発明の1つの特徴によれば、各第1の走査は、少なくとも1画素の幅である。好ましくは、2~5画素の幅が選択されるが、これは、2~5画素の幅がアーチファクトに対して十分に堅牢であり、平均化ステップのために画像に関する情報を失うことを回避することを可能にするためである。各第1の走査から、前記各第1の走査の幅が1画素より大きい場合、同じ高さにあるその画素の平均値を計算して線形アレイが得られる。
【0022】
本発明の1つの特徴によれば、各第1の走査は、少なくとも1画素の幅である画素のラインを走査し、走査された各ラインについて、前記走査されたラインの画素の階調の平均を計算することによって階調値が決定される。
【0023】
本発明の1つの特徴によれば、サブステップE2において、制御ユニットは、各第1の走査の階調ピークが同じ座標及び同じ振幅を有する場合、第1の走査がパターンの線形部を横切ったと見なす。
【0024】
本発明によれば、パターンの線形部が視野内にあると仮定されるので、中央で行われた第1の走査は、少なくとも1つの階調ピークを有するように制限される。中央で行われた第1の走査に対する階調ピークが存在しない場合、制御ユニットは、パターンの線形部が視認不能であると見なし、したがって、視野内に液体があると見なす。中央で行われた第1の走査に対する階調の少なくとも1つのピークが存在するが、他の第1の走査のうちの1つに対する階調ピークが存在しない場合、前記他の第1の走査が繰り返され、X座標は、決定された画素数だけ調整される。
【0025】
本発明の1つの特徴によれば、新たな垂直走査の画素数の調整は、画素の値だけシフトを実施することによって決定され、これは、イメージャの分解能、及びパターンがエッチングされる表面に対するその近さのうちのいくつかの要因に依存する。
【0026】
本発明の1つの特徴によれば、一致記述子の中には、位置記述子及び振幅記述子がある。少なくとも2つの異なる種類の一致記述子、特に位置記述子及び振幅記述子を有することの利点は、液体の存在を検出し、情報を交差させて正確さを有する効率的なシステムを有することである。実際、方法が位置記述子のみに基づいていた場合、又は振幅記述子のみに基づいていた場合、方法は有効性を失う可能性があり、液体はパターンの限られた部分の階調を変更する可能性があり、位置記述子のみが使用された場合、検出の失敗につながる可能性がある。
【0027】
パターンの位置は、較正手順から及び/又は基準画像に基づいて既知であるため、各走査の平均ピーク位置は、決定された範囲内にあると予想され、実際に、パターン位置は実験的に評価された許容範囲内に位置決めされる。
【0028】
本発明の1つの特徴によれば、位置記述子は、(i)決定された範囲内の各第1の走査の階調ピークの位置を表す絶対位置記述子を少なくとも含み、(ii)第2の特徴は、各第1の走査の各階調ピーク間の距離を表す相対位置記述子である。
【0029】
本発明の1つの特徴によれば、第1の走査の絶対位置記述子は、第1の走査の階調ピークの位置と、他の第1の走査のピークの位置から独立した基準位置との比較から得られ、絶対位置記述子の値は、第1の走査の階調ピークが決定された範囲内で制御ユニットによって見出された場合、かつ各第1の走査が階調ピークを有する場合、決定されたスコア、例えば1だけ増加する。
【0030】
これは、各第1の走査及び予想範囲内にピークを有する各第1の走査に適用される。
【0031】
本発明の1つの特徴によれば、この記述子の値が0である場合は、n回の走査のいずれにおいてもピークが見出されず、液体が、パターンをイメージャにとって視認不能にするものとして検出されることを意味する。
【0032】
本発明の1つの特徴によれば、相対位置記述子は、各第1の走査の階調ピークの位置と、各第1の走査の階調ピークの各位置の平均に対応する平均ピーク位置との比較から得られ、画素単位で、階調ピークの位置と平均ピーク位置との間の距離が予想範囲内である場合、相対位置記述子は所定のスコアを有し、画素単位で、各ピークと平均ピーク位置との間の距離が予想範囲外である場合、相対位置記述子は0のスコアを有する。これは、各第1の走査及び予想範囲内にピークを有する各第1の走査に適用される。
【0033】
本発明の1つの特徴によれば、振幅記述子は、以下の式に従って各階調ピークについて計算される。
【0034】
各ピークと平均ピーク振幅との間の階調での差が予想範囲内にある場合、振幅記述子の値は1のスコアだけ増加する。予想範囲の限界は、階調が正規化され、事前に画像を前処理することによって全範囲(0~255)にわたって分散しているので、階調の絶対値である。
【0035】
各ピークと平均ピーク振幅との間の階調での距離が予想範囲外である場合、結果として得られる振幅記述子のスコアは0である。
【0036】
本発明の1つの特徴によれば、すべての一致記述子を、一緒に合計して、第1の走査に関する「全体記述子」とする。
【0037】
本発明によれば、液体の存在に起因するパターン又はグレアの起こり得る並進は、階調ピークの外れ値を引き起こす可能性がある。
【0038】
本発明の1つの特徴によれば、階調ピークが、予想範囲内に見出されるピークの平均振幅の所定の閾値x%、例えば50%を上回る振幅で予想範囲外に見出される場合、全体記述子は、見出された各ピーク外れ値について1の値だけ減少する。
全体記述子=絶対位置記述子+相対位置記述子+振幅記述子+外れ値記述子
【0039】
本発明の1つの特徴によれば、第2の走査は水平方向に沿った走査であり、前記第2の走査は所定の位置で実施される。
【0040】
本発明の1つの特徴によれば、第2の走査は垂直方向において分散している。
【0041】
本発明の1つの特徴によれば、第2の走査は互いに離れて分散している。
【0042】
本発明の1つの特徴によれば、各第2の走査の各走査領域は別個である。
【0043】
本発明の1つの特徴によれば、複数回の第2の走査は少なくとも3回の第2の走査を含み、「中央で行われた第2の走査」と呼ばれる、イメージャの視野の中央で行われるものを含む。
【0044】
好ましくは、他の第2の走査は、視野内に完全に位置決めされ、中央で行われた第2の走査と比較して決定された距離に分散している。より好ましくは、他の第2の走査は、中央の第2の走査に対して上方及び下方に配置される。
【0045】
本発明の1つの特徴によれば、各第2の走査は、少なくとも1画素の高さである少なくとも1行の画素を走査し、走査された各行について、前記走査された行の画素の階調の平均を計算することによって階調値が決定される。走査された行の高さが1画素より大きい場合、走査された行の平均値が計算される。
【0046】
本発明の1つの特徴によれば、ステップE1及びE2は、ステップE3及びE4の前に実施される。代替的に、ステップE3及びE4は、ステップE1及びE2の前に実施される。
【0047】
本発明の1つの特徴によれば、n個の階調関数は、中央で行われた第2の走査の階調値と別の第2の走査とを、ポイントツーポイントで比較することによって決定される。
【0048】
本発明の1つの特徴によれば、少なくとも第1の階調関数は、中央の第2の走査の階調値と、少なくとも1つの上方の第2の走査の階調値との間のポイントツーポイント差によって決定される。
【0049】
本発明の1つの特徴によれば、少なくとも第2の階調関数は、中央の第2の走査の階調値と、少なくとも1つの下方の第2の走査の階調値との間のポイントツーポイント差によって決定される。
【0050】
本発明の1つの特徴によれば、上方の第2の走査が複数ある場合、階調の平均値が最も高い上方の第2の走査のみを考慮することができる。
【0051】
本発明の1つの特徴によれば、下方の第2の走査が複数ある場合、階調の平均値が最も高い下方の第2の走査のみを考慮することができる。
【0052】
本発明の1つの特徴によれば、少なくとも1つの線類似度記述子を決定することであるサブステップE4は、
(i)第2の中央で行われた走査の階調値と、少なくとも1つの他の第2の走査の階調値との間のポイントツーポイント比較に基づいて、n個の階調関数を決定するサブステップと、
(ii)以前に決定された階調関数に基づいて線類似度記述子の値を決定するサブステップと
を含む。
【0053】
本発明の1つの特徴によれば、すべての階調関数が負である場合、線類似度記述子はnullと見なされ、少なくとも1つの階調関数が正である場合、線類似度記述子はnullではないと見なされ、したがって、取得された画像のパターンの線形部はイメージャによって判読可能であり得る。
【0054】
本発明の1つの特徴によれば、本方法は、各階調関数の平均階調を互いに比較することである、パターンの線形部のプロファイルを決定するステップE5を含み、最大の平均階調値を有する階調関数が、制御ユニットによって、取得された画像のパターンの線形部に関する最も可能性の高いプロファイルを表すと見なされる。有利には、階調関数の平均値は、関数のすべての点の合計を関数の点の数で割ったものである。いくつかの階調関数がある場合、アルゴリズムのステップで使用されるものが他のものよりも選択され、具体的には、最大の平均値を有するもののみが次のステップに進む。
【0055】
有利には、制御ユニットが視野内に液体が存在しないことと適合性であると見なす場合、それは制御ユニットがウェル内に液体が存在しないと見なすことを意味する。有利には、制御ユニットが視野内に液体が存在しないことと適合性ではないと見なす場合、それは制御ユニットがウェル内に液体が存在すると見なすことを意味する。
【0056】
本発明の1つの特徴によれば、ステップFは、全体記述子及び線類似度記述子を正規化するサブステップF1を含む。
【0057】
本発明の1つの特徴によれば、全体記述子の正規化は、[-N,3*n回の第1の走査]範囲を[0,100]範囲に変換することによって実施され、ここで、
・絶対位置記述子について+1、相対位置記述子について+1、振幅記述子について+1が与えられ得るため、3は、n回の第1の走査の各々の記述子の最大値であり、
・Nは、それぞれ-1を寄与する外れ値記述子の数である。
【0058】
本発明の1つの特徴によれば、線類似度記述子の正規化は、[0~MAX]範囲を[0~100]範囲に変換することによって実施され、ここで、MAX=走査のN箇所の点*1,5であり、MAXは線類似度記述子の可能な最大値である。
【0059】
本発明の1つの特徴によれば、ステップFは、正規化された全体記述子及び正規化された線類似度記述子を、以下:
可視パターン尤度指数=正規化された線類似度記述子/2+正規化された全体記述子/2
のように平均化するサブステップF2を含む。
【0060】
本発明の1つの特徴によれば、可視パターン尤度指数が決定された範囲内にある場合、取得された画像のパターンは、基準画像に基づいた予想位置にあり、したがって、制御ユニットは、視野内に液体が存在しないことと適合性であると見なす。
【0061】
本発明の1つの特徴によれば、パーセント指数が前記決定された範囲外である場合、取得された画像のパターンは、基準画像に基づいた予想位置になく、制御ユニットは、視野内に液体が存在しないことと適合性がないと見なす。
【0062】
本発明の1つの特徴によれば、可視パターン尤度指数の決定された範囲は、65%~85%である。
【0063】
本発明の別の目的は、生物学的試料中の少なくとも1つの被分析物のin vitro検出及び/又は定量のためのシステムであって、
a.液体を保持するように構成された少なくとも1つのウェルを備える、少なくとも部分的に透明又は半透明の支持体と、
b.装置であって、
少なくとも1つの支持体を受け入れるように構成された基部、
1つの制御ユニット、及び
視野を有する1つのイメージャであって、制御ユニットによって制御され、支持体の少なくとも1つのウェルの少なくとも1つの画像を取得するように構成される、イメージャ
を備える、装置と
を備え、
システムが、少なくとも1つの線形部を含み、かつ液体によって少なくとも部分的に重複するように意図された少なくとも1つのパターンを含むこと、イメージャが視野の少なくとも1つの画像を取得するように構成されること、及び制御ユニットが、イメージャによって取得された少なくとも1つの画像に基づいてウェル内の液体の存在を決定するように構成されることを特徴とする、システムを提供することである。
【0064】
本発明によれば、パターンの線形部は、直線を形成する点によって構成されるパターンの部分である。
【0065】
有利には、それを介してイメージャが見る開口部は、円形ではなく、むしろ楕円形であり、したがって、パターンの線形部は、線形部が垂直方向に沿ってではなく水平方向に沿って延びているときに見られる可能性が高い。
【0066】
有利には、パターン内の線形部は、画像の垂直走査、並びに「白」から「黒」への及びその逆の遷移のチェックのような基本的なコンピュータビジョン機構を適用することができるので、パターン内の他の部分よりもアルゴリズムを単純化する。
【0067】
本発明の1つの特徴によれば、パターンは、装置の基部上に直接位置決めされる。
【0068】
代替的に、本発明の1つの特徴によれば、パターンは、支持体の背面に直接位置決めされる。好ましくは、支持体の少なくとも1つのウェルの背面にある。
【0069】
本発明の1つの特徴によれば、パターンは、レーザエッチングによって彫刻されるか、又は公知の任意の適切な技術によってマーク付け若しくは彫刻される。
【0070】
本発明の1つの特徴によれば、階調ピークの外れ値は、パターンの少なくとも一部の変形を表す。
【0071】
本発明の目的のために、取得される画像は、画素の複数のライン及び行から構成されることに留意されたい。さらに、取得される画像は、ビットマップ形式又はjpeg形式である。
【0072】
本発明の1つの特徴によれば、パターンは基部の全長に沿って延びるか、又はパターンは基部の全長に沿って繰り返される。
【0073】
本発明の1つの特徴によれば、支持体が基部上に位置決めされるとき、パターン又はパターンの一部は、支持体の少なくとも1つのウェル、好ましくは各ウェルにおいて視認可能である。これらの構成は、対応する関心領域を選択することによって、支持体のウェルのいずれかに検出を適用することを可能にする。
【0074】
本発明の1つの特徴によれば、パターンは、水平方向に延びる少なくとも1つの線形部を含む。
【0075】
有利には、パターンの形状及び幾何学的形状は、適切に選択され、画像歪みの影響が増幅され、すべての機械的公差(カメラの位置、エッチングされたマークの位置、VIDASストリップの位置、ストリップ製造公差など)に堅牢性を与える。例えば、グリッドは平面パターンであり、画像がXY位置の誤差及び公差の影響を受けないような幾何学的形状を有する。具体的には、関心領域全体をカバーするグリッド形状パターンは、カメラがX、Y方向にある程度移動しても依然として視認可能であることができる。パターンの別の可能な選択肢は、ある種の三重交差、又は平面パターンのように見えるが、サイズの変化を検出することを可能にし得る中央要素(ピラー)を有するものであり得る。
【0076】
本発明の1つの特徴によれば、イメージャは2Dカメラ装置である。
【0077】
本発明の1つの特徴によれば、イメージャは、視野内にフレーミングしたときに支持体の識別コードを取得して復号し、復号された識別コードを制御ユニットに送信するように構成される。イメージャはまた、有利には、視野の画像を取得し、視野の画像をパターン認識のためのコンピュータビジョンアルゴリズムが設けられた制御ユニットに送信するように構成される。
【0078】
本発明の1つの特徴によれば、識別コードは、線形又は2Dコードであり得る。
【0079】
本発明の1つの特徴によれば、イメージャは、画像全体内に関心領域をフレーミングするために、支持体の試料ウェルの上方に設置される。
【0080】
本発明の1つの特徴によれば、イメージャは、搭載されて組み立てられ、部分的又は全体的な環境光曝露の場合であっても、堅牢な組込み用途を可能にする照明システムを備える。したがって、追加の外部照明システムは無用になる。パターンが存在するウェルの下方の位置は、イメージャ照明器によって提供されない迷光にわずかに曝されるだけなので、環境光に対する耐性が促進される。
【0081】
本発明の1つの特徴によれば、イメージャは、イメージャの光軸が装置の基部と角度(a)を形成する軸上に向けられるように位置決めされ、前記の角度は67°~77°の範囲内である。光軸が基部に対して垂直であるため、90°の角度は除外され、照明システムの光は反射され、したがって、試料ウェルが空であるときのパターンの認識を妨げる。選択された角度の範囲は、パターン及びウェルの底部を適切にフレーミングすることを可能にする。
【0082】
例えば、識別コードは、試薬の種類及び/又は製造ロット番号を示す。
【0083】
制御ユニットは、イメージャが接続される電子ボードのファームウェアに組み込まれたコンピュータビジョンアルゴリズムを備える。
【0084】
本発明の1つの特徴によれば、システムの支持体は、生物学的試料が入れられることが意図される少なくとも1つの試料ウェルを備える。
【0085】
本発明の1つの特徴によれば、試料ウェルは、画像全体内の視野内にフレーミングするために、イメージャの視野内に位置決めされる。
【0086】
本発明の1つの特徴によれば、試料ウェルは透明又は半透明である。
【図面の簡単な説明】
【0087】
本発明は、非限定的な例として与えられ、添付の概略図を参照して説明される、本発明による実施形態に関する以下の説明により、よりよく理解されるであろう。添付の概略図を以下に列挙する。
図1】本発明のシステムの装置の図である。
図2】本発明のシステムの概略図である。
図3】支持体を上に有する本発明の装置の基部の部分図である。
図4】本発明の装置の基部の部分図である。
図5】本発明の装置の基部にエッチングされた可能なパターンの図である。
図6】本発明の装置の基部にエッチングされた可能なパターンの図である。
図7】本発明の装置の基部にエッチングされた可能なパターンの図である。
図8】支持体のない本発明の装置の基部の、イメージャの視野内で撮影された画像である。
図9】空の支持体を上に有する本発明の装置の基部の、イメージャの視野内で撮影された画像である。
図10】液体で充填された支持体を上に有する本発明の装置の基部の、イメージャの視野内で撮影された画像である。
図11】本発明の方法のステップの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0088】
本発明は、液体の存在を検出する方法及びこの検出方法を実施するシステム100に関する。
【0089】
まず、図1図4を参照して、本発明のシステム100について説明する。
【0090】
本発明によれば、本発明のシステム100は、生物学的試料中の少なくとも1つの被分析物のin vitro検出及び/又は定量のためのシステムである。したがって、本発明の検出方法は、in vitro検出及び/又はin vitro定量を処理する前に、システム内の液体形態の生物学的試料の存在を検出するために実施されることが好ましい。
【0091】
システム100は、支持体110及び装置120を備える。
【0092】
支持体110は、有利には、いくつかのウェル111を備えるストリップである。1つのウェル111は、試験対象の生物学的試料の受け入れ専用であり、試料ウェルと呼ばれる。試料ウェル111は、少なくとも底部において透明又は半透明である。好ましくは、本発明によれば、支持体は完全に半透明又は透明である。分析対象の生物学的試料は、手動で試料ウェル111に入れられる液体の形態である。支持体は、支持体110を密封して覆う箔112を備え、前記箔112は、ウェル111の前に配置された破壊可能な窓113を備える。支持体110は、図3に示すように、箔112のラベルにマークされたQRコード又はバーコードなどの少なくとも1つの識別コード114を備える。例えば、識別コードは、試薬の種類及び/又は製造ロット番号を示す。
【0093】
窓113は、ウェルの内容物を一緒に混合するために、又は液体を洗浄するために、又は液体をあるウェルから別のウェルに移送するために、少なくとも1つのピペットツール(図示せず)によって穿孔されることが意図されている。
【0094】
装置120は、図1に示されており、図2に示すように、複数の支持体110を受け入れるように構成された基部121と、1つの制御ユニット122と、視野を有する1つのイメージャ123とを備える。
【0095】
本発明によれば、イメージャ123は、制御ユニット122によって制御され、支持体110がイメージャ123の視野内にあるときに、視野の、したがって前記支持体110の少なくとも1つのウェル111の少なくとも1つの画像を取得するように構成される。イメージャ123は、好ましくは、支持体110の識別コード114又は使い捨てコーン(図示せず)のデータ行列を、いずれかがフレーミングされると取得して復号し、復号されたテキストを制御ユニット122に送信するように構成された2Dカメラ装置である。イメージャ123は、図2に示すように照明システム1231を備える。図2に示す実施形態及び本発明によれば、イメージャ123は、イメージャ123の光軸が軸X-X上に向けられるように位置決めされ、軸X-Xは、装置120の基部121と角度を形成し、前記角度は67°~77°の範囲にある。
【0096】
制御ユニット122には、パターン認識のためのコンピュータビジョンアルゴリズムが設けられており、前記コンピュータビジョンアルゴリズムは、イメージャ123が接続される電子ボードのファームウェアに組み込まれている。有利には、コンピュータビジョンアルゴリズムは、存在する液体が既知のパターンの画像に影響を及ぼす方法を活用し、その透明度に応じて、不透明な液体の存在下ではマークは単に視認不能になり、むしろウェル内の透明又は半透明の液体では、マークの画像は歪んで及び/若しくはシフトするか、又は単に視認不能になり(図10を参照)、液体はレンズセットとして作用する。さらに、液体は、存在する場合、カメラの照明システムによって放射された光を反射し、画像に現れるグレアがパターンの認識を妨げる可能性がある。
【0097】
本発明によれば、システム100は、図5図8に示すように、水平に延びる少なくとも1つの線形部131を含む少なくとも1つのパターン130を備える。パターン130は、イメージャ123の視野内のウェル111内にあると考えられる液体によって少なくとも部分的に重複するように意図されている。イメージャ123は、視野の少なくとも1つの画像を取得するように構成され、制御ユニット122は、イメージャ123によって取得された少なくとも1つの画像に基づいてウェル111内の液体の存在を決定するように構成される。
【0098】
可能なパターンを図5図7に示す。
【0099】
図5は、本発明によるパターン130を表し、パターンの線形部131に対応し、支持体の全幅に延びる1本の水平線のみを有する。
【0100】
図6は、本発明によるパターン130に可能な別の実施形態を示し、2つの線、したがって互いに距離を置いて配置された2つの線形部を有する。2つの線形部131は、水平方向に延び、上下方向に分散している。
【0101】
図7は、本発明によるパターン130の別の実施形態を示し、中央にある1つの線形部131と、線形部131に対して対称に位置決めされた2つの垂直線とを有する。
【0102】
有利には、図7の垂直要素は、検出アルゴリズムによってフレーミングされず、装置の組み立て中にカメラのセンタリングを容易にするために使用される。
【0103】
パターン130は、図9に示すように、支持体110が基部上に位置決めされ、前記窓が穿孔されたときに、支持体の窓113を通して見ることができる。
【0104】
図3及び図4に示す実施形態では、図3に示すように、パターン130が装置の基部121上に直接エッチングされ、支持体110がその上に位置決めされる。さらに、支持体110のウェル111のいずれかの内部の任意の液体を検出するために、パターン130は、有利には、基部の全長にわたって繰り返される。支持体110が基部121上に位置決めされると、ウェル内に液体が存在しない場合の図9に見られるように、パターンの一部又はパターン130が少なくとも1つのウェル111内において視認可能である。ウェル内に液体が存在する場合、グレアが現れる可能性があり、パターンの歪みもまた、図10に示すように現れる可能性がある。
【0105】
本発明による検出方法は、図11を参照して以下に説明される。
検出方法は、少なくとも以下のステップを含む:
【0106】
・ステップA:本発明による上述のシステム100を提供する。
・ステップB:装置120の基部121上に支持体110を装填し、支持体110の少なくとも1つのウェル111がイメージャ123の視野内に位置決めされる。
・ステップC:イメージャ123によって、視野の少なくとも1つの画像を取得する。
・ステップD:取得した画像を制御ユニット122に送信する。
・ステップE:取得された画像内のパターン130の位置を決定する。
【0107】
ステップEは、第1の方向に沿って走査する少なくとも複数回の第1の走査を実施することである少なくとも1つの第1のサブステップE1を含み、前記第1の走査は、第1の方向とは異なる方向において分散している。
【0108】
本発明の好ましい実施形態では、第1の走査は垂直方向に沿った走査であり、前記第1の走査は所定の位置で実施され、少なくとも1回の第1の走査は視野の中央で行われる。有利には、第1の走査は、互いに離れて水平に分散し、各々が別個の領域を走査する。非常に好ましい実施形態では、少なくとも3回の第1の走査があり、「中央で行われた第1の走査」と呼ばれる、イメージャの視野の中央で行われるものを含む。好ましくは、他の第1の走査は、視野内に完全に位置決めされ、中央で行われた第1の走査と比較して決定された距離に分散している。
【0109】
本発明の好ましい実施形態では、各第1の走査は、少なくとも1画素の幅である画素のラインを走査し、走査された各ラインについて、前記走査されたラインの画素の階調の平均を計算することによって階調値が決定される。各第1の走査から、前記各第1の走査の幅が1画素より大きい場合、同じ高さにあるその画素の平均値を計算して線形アレイが得られる。
【0110】
ステップEは、サブステップE1の後に実施され、走査がパターンの線形部を横切ったかどうかを表す複数の一致記述子を決定することである、少なくとも1つの第2のサブステップE2を含む。サブステップE2において、制御ユニットは、各第1の走査の階調ピークが同じ座標及び同じ振幅を有する場合、第1の走査がパターンの線形部を横切ったと見なす。本発明によれば、一致記述子の中には、位置記述子及び振幅記述子がある。
【0111】
本発明によれば、位置記述子は、(i)決定された範囲内の各第1の走査の階調ピークの位置を表す絶対位置記述子、及び(ii)各第1の走査の各階調ピーク間の距離を表す相対位置記述子を少なくとも含む。
【0112】
第1の走査の絶対位置記述子は、第1の走査の階調ピークの位置と他の第1の走査のピークの位置から独立した基準位置との比較から得られ、絶対位置記述子の値は、第1の走査の階調ピークが決定された範囲内で制御ユニットによって見出され、かつ各第1の走査が階調ピークを有する場合、決定されたスコア、例えば1だけ増加し、一方、この記述子の値が0である場合は、n回の走査のいずれにおいてもピークが見出されず、液体がパターンをイメージャに視認不能にするものとして検出されることを意味する:
【0113】
本発明によれば、相対位置記述子は、各第1の走査の階調ピークの位置と、各第1の走査の階調ピークの各位置の平均に対応する平均ピーク位置との比較から得られ、画素単位で、階調ピークの位置と平均ピーク位置との間の距離が予想範囲内である場合、相対位置記述子は所定のスコアを有し、画素単位で、各ピークと平均ピーク位置との間の距離が予想範囲外である場合、相対位置記述子は0のスコアを有する。
【0114】
本発明の1つの特徴によれば、振幅記述子は、以下の式に従って各階調ピークについて計算される。
【0115】
各ピークと平均ピーク振幅との間の階調での差が予想範囲内にある場合、振幅記述子の値は1のスコアだけ増加する。予想範囲の限界は、階調が正規化され、事前に画像を前処理することによって全範囲(0~255)にわたって分散しているので、階調の絶対値である。
【0116】
各ピークと平均ピーク振幅との間の階調での距離が予想範囲外である場合、結果として得られる振幅記述子のスコアは0である。
【0117】
本発明の1つの特徴によれば、すべての一致記述子を、一緒に合計して、第1の走査に関する「全体記述子」とする。
【0118】
本発明によれば、液体の存在に起因するパターン又はグレアの起こり得る並進は、階調ピークの外れ値を引き起こす可能性がある。
【0119】
本発明の1つの特徴によれば、階調ピークが、予想範囲内に見出されるピークの平均振幅の所定の閾値x%、例えば50%を上回る振幅で予想範囲外に見出される場合、全体記述子は、見出された各ピーク外れ値について1の値だけ減少する。
全体記述子=絶対位置記述子+相対位置記述子+振幅記述子+外れ値記述子
【0120】
ステップEは、E1及びE2の後に実施され、第2の方向に延び、互いに離れて第1の方向に分散している少なくとも複数回の第2の走査を実施することであり、前記第2の走査は第1の方向に沿って走査する第3のサブステップE3を含む。好ましい実施形態では、第2の走査は水平方向に沿った走査であり、所定の位置で実施され、少なくとも1回の第2の走査が視野の中央で行われる。さらに、第2の走査は、垂直方向において互いに離れて分散し、各第2の走査の各走査領域は別個である。
【0121】
好ましい実施形態では、複数回の第2の走査は、少なくとも3回の第2の走査を含み、「中央で行われた第2の走査」と呼ばれる、イメージャの視野の中央で行われるものを含む。好ましくは、他の第2の走査は、視野内に完全に位置決めされ、中央で行われた第2の走査と比較して決定された距離に分散している。より好ましくは、他の第2の走査は、中央の第2の走査に対して上方及び下方に配置される。さらに、各第2の走査は、少なくとも1画素の高さである少なくとも1行の画素を走査し、走査された各行について、前記走査された行の画素の階調の平均を計算することによって階調値が決定される。走査された行の高さが1画素より大きい場合、走査された行の平均値が計算される。
【0122】
ステップEは、E3の後に実施され、走査が少なくとも部分的にパターンと重複するかどうかを示す複数の線類似性記述子を決定することである第4のサブステップE4を含む。
【0123】
サブステップE4は、少なくとも第1の階調関数を、中央の第2の走査の階調値と、少なくとも1つの上方の第2の走査の階調値との間のポイントツーポイント差によって決定し、かつ少なくとも第2の階調関数を、中央の第2の走査の階調値と、少なくとも1つの下方の第2の走査の階調値との間のポイントツーポイント差によって決定することであるサブステップを含む。
【0124】
すべての階調関数が負である場合、線類似度記述子はnullと見なされ、少なくとも1つの階調関数が正である場合、線類似度記述子はnullではないと見なされ、したがって、取得された画像のパターンの線形部はイメージャによって判読可能であり得る。
【0125】
ステップEは、各階調関数の平均階調を互いに比較することである、パターンの線形部のプロファイルを決定する第5のサブステップE5を含み、最大の平均階調値を有する階調関数が、制御ユニットによって、取得された画像のパターンの線形部に関する最も可能性の高いプロファイルを表すと見なされる。有利には、制御ユニットが視野内に液体が存在しないことと適合性であると見なす場合、それは制御ユニットがウェル内に液体が存在しないと見なすことを意味する。有利には、制御ユニットが視野内に液体が存在しないことと適合性ではないと見なす場合、それは制御ユニットがウェル内に液体が存在すると見なすことを意味する。
【0126】
本発明の好ましい実施形態では、ステップE1及びE2はステップE3及びE4の前に実施されるが、代替的な実施形態では、ステップE3及びE4はステップE1及びE2の前に実施されてもよい。
【0127】
理想的には、試料が存在しない場合、パターンの線形部に関する最も可能性の高いプロファイルは、中央で行われた第2の走査と非常に類似しているべきであり、実際に、中央で行われた第2の走査から減算される他の第2の走査では、0又は非常に低い値(ほぼ黒い点)が入力されると考えられる。
【0128】
最も可能性の高いプロファイルの各点が、中央で行われた第2の走査からどれだけの範囲にあるかが評価される。具体的には、複数の範囲が存在し、各範囲について、最も可能性の高いプロファイルの各点に応じてスコアが割り当てられ、線類似度記述子を算出するために合計が累積される。
【0129】
そのような範囲は、階調が正規化され、事前に画像を前処理することによって全範囲(0~255)にわたって分散しているので、絶対値で定義することができる。代替的に、正規化が行われない場合、予想範囲は、中央走査の値の特定の割合として決定することができる。
【0130】
本発明によれば、検出方法は、視野内で予測されるパターンの線形部が判読可能である確率を表す可視パターン尤度のパーセント指数に基づいて支持体のウェル内の液体の存在を評価することであるステップFを含み、可視パターン尤度のパーセント指数は、一致記述子及び線類似度記述子の関数である。
【0131】
ステップFは、全体記述子及び線類似度記述子を正規化するサブステップF1を含む。全体記述子の正規化は、[-N,3*n回の第1の走査]範囲を[0,100]範囲に変換することによって実施され、ここで、
・3は、絶対位置記述子に+1、相対位置記述子に+1、振幅記述子に+1を与えることができるため、n回の第1の走査のそれぞれの記述子の最大値であり、
・Nは、それぞれ-1を寄与する外れ値記述子の数である。
【0132】
さらに、ステップFは、正規化された全体記述子及び正規化された線類似度記述子を、以下:
可視パターン尤度指数=正規化された線類似度記述子/2+正規化された全体記述子/2
のように平均化するサブステップF2を含む。
【0133】
可視パターン尤度指数が決定された範囲内にある場合、取得された画像のパターンは、基準画像に基づいて予想される位置にあり、したがって、制御ユニットは、視野内に液体が存在しないことと適合性であると見なす。パーセント指数が65%~85%の前記決定された範囲外であり、取得された画像のパターンが基準画像に基づく予想位置にない場合、制御ユニットは、視野内に液体が存在しないことと適合性がないと見なす。
【0134】
制御ユニットがウェル内の液体の不足を検出した場合、少なくとも1つの支持体(いくつかの支持体が基部に装填されている場合)において、全体の装填(すべての支持体)が停止され、識別された空のウェルを直して再充填するために、ディスプレイ又は音声警報又はその両方によってユーザに警告する。ウェルが充填されると、プロセスは継続することができる。
【0135】
当然のことながら、本発明は、記載及び添付の図面に図示された実施形態に限定されない。特に様々な要素の構成の観点から、又は技術的等価物の置換によって、特許請求の範囲によって定義される本発明の保護範囲から逸脱することなく、変更は依然として可能である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
【国際調査報告】