(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-18
(54)【発明の名称】光硬化性で接着性の組成物
(51)【国際特許分類】
C08G 59/02 20060101AFI20231211BHJP
C08L 71/02 20060101ALI20231211BHJP
C08L 53/00 20060101ALI20231211BHJP
C08L 63/00 20060101ALI20231211BHJP
C09D 5/00 20060101ALI20231211BHJP
C09D 163/00 20060101ALI20231211BHJP
C09D 153/00 20060101ALI20231211BHJP
C09J 163/00 20060101ALI20231211BHJP
C09J 153/00 20060101ALI20231211BHJP
【FI】
C08G59/02
C08L71/02
C08L53/00
C08L63/00 A
C09D5/00 Z
C09D163/00
C09D153/00
C09J163/00
C09J153/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023535474
(86)(22)【出願日】2021-12-10
(85)【翻訳文提出日】2023-08-08
(86)【国際出願番号】 EP2021085188
(87)【国際公開番号】W WO2022123004
(87)【国際公開日】2022-06-16
(32)【優先日】2020-12-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】501305888
【氏名又は名称】ボスティク エス アー
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】上野 精記
【テーマコード(参考)】
4J002
4J036
4J038
4J040
【Fターム(参考)】
4J002AF024
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4J002CD02Y
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4J040KA32
4J040KA36
4J040KA38
4J040KA42
4J040LA02
(57)【要約】
光硬化性で接着性の組成物、接着性の組成物で被覆された少なくとも1つの表面を備える物品およびその使用が提供される。光硬化性で接着性の組成物は、良好な貯蔵安定性および良好な接着性を示し、同時にそれは、満足のいく硬化時間を確実にする。それは、高い可撓性を呈する良質な物品を得ることを可能にする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光硬化性で接着性の組成物であって、少なくとも2個のエポキシ基を含むエポキシ化合物の全重量に基づいて:
- 少なくとも2個のエポキシ基を含むエポキシ化合物;
- 25~50重量%、好ましくは35~45重量%の、少なくとも2つのメタクリレート末端ブロックおよびアクリレート中間ブロックを含むブロック共重合体;
- 10~30重量%、好ましくは10~30重量%の粘着付与樹脂;ならびに
- 4~15重量%、好ましくは6~12重量%の光カチオン重合開始剤
を含む、組成物。
【請求項2】
前記メタクリレート末端ブロックが、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、メタクリル酸、プロピルメタクリレート、n-ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、ペンチルメタクリレート、ヘキシルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、イソボルニルメタクリレート、メトキシエチルメタクリレート、2-アミノエチルメタクリレート、400~10,000g/molの範囲内のモル質量を有するポリエチレングリコール(PEG)基を有するPEGメタクリレート、およびそれらの混合物からなる群から選択されるメタクリレートモノマーから得られ;好ましくは前記メタクリレートブロックが、メチルメタクリレートから得られる、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記アクリレート中間ブロックが、アクリレート、ブチルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、およびそれらの混合物からなる群から;好ましくはブチルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、およびそれらの混合物から選択されるアクリレートモノマーから得られる、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
ブロック共重合体が、0℃以下の;好ましくは-30℃以下のガラス転移温度を有する、請求項1から3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
組成物の全重量に対して30~50重量%の、少なくとも2個のエポキシ基を含むエポキシ化合物を含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
少なくとも2個のエポキシ基を含むエポキシ化合物が、グリシジルエーテルエポキシ樹脂、グリシジルエステルエポキシ樹脂、グリシジルアミンエポキシ樹脂、脂肪族エポキシ樹脂およびそれらの混合物からなる群から選択される、請求項1から5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
少なくとも2個のエポキシ基を含むエポキシ化合物の全重量に対して好ましくは5~20重量%、より好ましくは8~15重量%の少なくとも1種のオキセタン化合物をさらに含む、請求項1から6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
光カチオン重合開始剤が、オニウムカチオンおよびヘキサフルオロホスフェートアニオンを含むオニウム塩である、請求項1から7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
少なくとも2個のエポキシ基を含むエポキシ化合物の全重量に対して好ましくは30~80重量%、より好ましくは45~55重量%の、1個のエポキシ基を含む少なくとも1種のエポキシ化合物をさらに含む、請求項1から8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
少なくとも2個のエポキシ基を含むエポキシ化合物の全重量に対して好ましくは5~50重量%、より好ましくは20~30重量%の、少なくとも1種のポリオールをさらに含む、請求項1から9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
少なくとも2個のエポキシ基を含むエポキシ化合物の全重量に対して好ましくは4~15重量%、より好ましくは6~12重量%の、少なくとも1種の増感剤を含む、請求項1から10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
少なくとも2個のエポキシ基を含むエポキシ化合物の全重量に対して好ましくは5~30重量%、より好ましくは15~30重量%の、少なくとも1種の粘度調整剤を含む、請求項1から11のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項13】
重合阻害剤、顔料、接着プロモーター、抗酸化剤、硬化促進剤、充填剤、可塑剤、界面活性剤、潤滑剤、帯電防止剤、難燃剤およびそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1種の補助添加剤を含む、請求項1から12のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項14】
請求項1から13のいずれか一項に記載の接着性の組成物で被覆された少なくとも1つの内部表面または外部表面を備える物品。
【請求項15】
2つの基材を互いに結合するための接着剤としての、または基材の表面上の被覆としての、請求項1から13のいずれか一項に記載の組成物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光硬化性で接着性の組成物、接着性の組成物で被覆された少なくとも1つの表面を備える物品およびその使用に関する。光硬化性で接着性の組成物は、良好な貯蔵安定性および良好な接着を示し、それは、満足のいく硬化時間を同時に確実にする。それは、不透明基材を硬化すること、および高い可撓性を呈する良質な物品を得ることを可能にする。
【背景技術】
【0002】
光硬化性で接着性の組成物は、エレクトロニクス、電子機器、包装およびシーリング用途またはさらに塗装用途などの多種多様な用途において使用することができる。そのような組成物については、接着、貯蔵安定性、機械的特性および硬化時間などの特性の組合せが満たされなければならない。
【0003】
光硬化性で接着性の組成物の硬化を達成する一般的な機構はラジカル重合による。しかし、組成物はエネルギー源(光または熱など)を照射されると、硬化が瞬時に行われる。これは、非透明(不透明)基材において適用された組成物を硬化することを困難に、不可能にすらする。
【0004】
光硬化性で接着性の組成物の硬化を達成する別の機構はカチオン重合による。この場合、基材は十分な量のエネルギーを照射されたとき、組成物の硬化は瞬時には行われず、それは、組成物を不透明基材に適用し、硬化を達成することを可能にする。
【0005】
加えて、特に、硬化組成物の可撓性を向上させるために、架橋性ケイ素基を含む重合体がエポキシ樹脂と組み合わせて使用されるとき、組成物の異なる構成成分間の分離が起こることが観察されている。この場合、適合性を向上させるために、樹脂の脆性プロファイルが改変されなければならない。しかし、脆性変更および貯蔵安定性を同時に確保することができないように脆性変更は貯蔵安定性に影響するようである。
【0006】
文書JP2015038182は、架橋性ケイ素基含有(メタ)アクリル重合体、少なくとも2個のエポキシ基を有するエポキシ化合物、ヒドロキシル基を有するオキセタン化合物およびカチオン光重合開始剤を含む速硬化光硬化性組成物に関する。
【0007】
文書JP2015078314は、架橋性ケイ素基含有(メタ)アクリル重合体、少なくとも2個のエポキシ基を有するエポキシ化合物、芳香族ヨードニウムであるカチオン部分およびカチオン重合開始剤を含む光硬化性組成物に関する。
【0008】
文書JP2014156585は、平均0.8個以上の架橋性シリル基を有する(メタ)アクリル酸エステルベースの重合体、(メタ)アクリロイル基含有化合物、硬化促進剤、光ラジカル開始剤、および(I)1~150μmの平均粒径を有する樹脂充填剤を含む光硬化性組成物に関する。
【0009】
したがって、良好な貯蔵安定性および良好な接着を呈し、かつ満足のいく硬化時間および組成物の異なる成分間の良好な適合性を同時に確実にする光硬化性で接着性の組成物が必要とされている。加えて、高い可撓性を呈する良質な物品を得ることを可能にする光硬化性で接着性の組成物を提供することが必要とされている。
【発明の概要】
【0010】
本発明の第1の目的は、光硬化性で接着性の組成物であって、少なくとも2個のエポキシ基を含むエポキシ化合物の全重量に基づいて:少なくとも2個のエポキシ基を含むエポキシ化合物;25~50重量%、好ましくは35~45重量%の、少なくとも2つのメタクリレート末端ブロックおよびアクリレート中間ブロックを含むブロック共重合体;10~30重量%、好ましくは10~30重量%の粘着付与樹脂;ならびに4~15重量%、好ましくは6~12重量%の光カチオン重合開始剤を含む、組成物を提供することである。
【0011】
いくつかの実施形態において、メタクリレート末端ブロックは、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、メタクリル酸、プロピルメタクリレート、n-ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、ペンチルメタクリレート、ヘキシルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、イソボルニルメタクリレート、メトキシエチルメタクリレート、2-アミノエチルメタクリレート、400~10,000g/molの範囲内のモル質量を有するポリエチレングリコール(PEG)基を有するPEGメタクリレート、およびそれらの混合物からなる群から選択されるメタクリレートモノマーから得られ;好ましくはメタクリレートブロックは、メチルメタクリレートから得られる。
【0012】
いくつかの実施形態において、アクリレート中間ブロックは、アクリレート、ブチルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、およびそれらの混合物からなる群から;好ましくはブチルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、およびそれらの混合物から選択されるアクリレートモノマーから得られる。
【0013】
いくつかの実施形態において、ブロック共重合体は、0℃以下の;好ましくは-30℃以下のガラス転移温度を有する。
【0014】
いくつかの実施形態において、組成物は、組成物の全重量に対して30~50重量%の、少なくとも2個のエポキシ基を含むエポキシ化合物を含む。
【0015】
いくつかの実施形態において、少なくとも2個のエポキシ基を含むエポキシ化合物は、グリシジルエーテルエポキシ樹脂、グリシジルエステルエポキシ樹脂、グリシジルアミンエポキシ樹脂、脂肪族エポキシ樹脂およびそれらの混合物からなる群から選択される。
【0016】
いくつかの実施形態において、組成物は、少なくとも2個のエポキシ基を含むエポキシ化合物の全重量に対して好ましくは5~20重量%、より好ましくは8~15重量%の、少なくとも1種のオキセタン化合物を含む。
【0017】
いくつかの実施形態において、光カチオン重合開始剤は、オニウムカチオンおよびヘキサフルオロホスフェートアニオンを含むオニウム塩である。
【0018】
いくつかの実施形態において、組成物は、少なくとも2個のエポキシ基を含むエポキシ化合物の全重量に対して好ましくは30~80重量%、より好ましくは45~55重量%の、1個のエポキシ基を含む少なくとも1種のエポキシ化合物を含む。
【0019】
いくつかの実施形態において、組成物は、少なくとも2個のエポキシ基を含むエポキシ化合物の全重量に対して好ましくは5~50重量%、より好ましくは20~30重量%の、少なくとも1種のポリオールを含む。
【0020】
いくつかの実施形態において、組成物は、少なくとも2個のエポキシ基を含むエポキシ化合物の全重量に対して好ましくは4~15重量%、より好ましくは6~12重量%の、少なくとも1種の増感剤を含む。
【0021】
いくつかの実施形態において、組成物は、少なくとも2個のエポキシ基を含むエポキシ化合物の全重量に対して好ましくは5~30重量%、より好ましくは15~30重量%の、少なくとも1種の粘度調整剤を含む。
【0022】
いくつかの実施形態において、組成物は、重合阻害剤、顔料、接着プロモーター、抗酸化剤、硬化促進剤、充填剤、可塑剤、界面活性剤、潤滑剤、帯電防止剤、難燃剤およびそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1種の補助添加剤を含む。
【0023】
本発明の第2の目的は、本明細書に記載されるような接着性の組成物で被覆された少なくとも1つの内部表面または外部表面を備える物品を提供することである。
【0024】
本発明の第3の目的は、2つの基材を互いに結合するための接着剤としての、または基材の表面上の被覆としての、本明細書に記載されるような組成物の使用を提供することである。
【0025】
本発明は、上述の必要に対処することを可能にする。特に、本発明は、良好な貯蔵安定性および良好な接着を呈し、かつ満足のいく硬化時間および組成物の異なる成分間の良好な適合性を同時に確実にする光硬化性で接着性の組成物を提供する。加えて、本発明は、高い可撓性を呈する良質な物品を得ることを可能にする光硬化性で接着性の組成物を提供する。
【0026】
これは、本発明の組成物により可能になる。特に、驚くべきことに、本発明による光硬化性で接着性の組成物は、満足のいく硬化時間を実現することを可能にする一方、良好な適合性および良好な接着を同時に維持することが見出された。この組成物は、不透明基材上で硬化するのに特に適している。さらに、驚くべきことに、ブロック共重合体、少なくとも2個のエポキシ基を含むエポキシ化合物、粘着付与樹脂および光カチオン重合開始剤の組合せは、高い可撓性を呈する物品を得ることを可能にすることが見出された。
【発明を実施するための形態】
【0027】
ここで、本発明を以下の説明において限定することなくさらに詳細に説明する。
【0028】
定義
「光硬化性組成物」により、熱または光などのエネルギー源に曝露されたとき硬化される組成物を意味する。
【0029】
「ブロック共重合体」により、共有結合により互いに結合された少なくとも3つの単独重合体サブユニットを含む共重合体を意味する。
【0030】
光硬化性で接着性の組成物
第1の態様において、本発明は、ブロック共重合体、少なくとも2個のエポキシ基を含むエポキシ化合物、粘着付与樹脂および光カチオン重合開始剤を含む光硬化性で接着性の組成物に関する。それは、他の追加の成分を含んでもよい。
【0031】
ブロック共重合体
光硬化性で接着性の組成物は、2つのメタクリレート末端ブロックおよびアクリレート中間ブロック中間ブロックを含むブロック共重合体を含む。1つの実施形態において、ブロック共重合体は、メタクリレート末端ブロック-)およびアクリレート中間ブロック以外の他の部分またはユニットを全く含まず、したがって、2つのメタクリレート末端ブロックおよびアクリレート中間ブロックからなるブロック共重合体と一致する。
【0032】
光硬化性で接着性の組成物は、少なくとも2個のエポキシ基を含むエポキシ化合物の全重量に対して25~50重量%、好ましくは35~45重量%のブロック共重合体を含む。例えば、光硬化性で接着性の組成物は、少なくとも2個のエポキシ基を含むエポキシ化合物の全重量に対して25~30重量%または30~35重量%;または35~40重量%;または40~45重量%;または45~50重量%のブロック共重合体を含んでもよい。
【0033】
光硬化性で接着性の組成物は、組成物の全重量に対して5~30重量%、好ましくは5~20重量%、より好ましくは5~18重量%のブロック共重合体を含んでもよい。例えば、光硬化性で接着性の組成物は、組成物の全重量に対して5~10重量%、または10~15重量%、または15~20重量%、または20~25重量%、または25~30重量%のブロック共重合体を含んでもよい。
【0034】
メタクリレートブロックは、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、メタクリル酸、プロピルメタクリレート、n-ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、ペンチルメタクリレート、ヘキシルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、イソボルニルメタクリレート、メトキシエチルメタクリレート、2-アミノエチルメタクリレート、400~10,000g/molの範囲内のモル質量を有するポリエチレングリコール(PEG)基を有するPEGメタクリレート、およびそれらの混合物からなる群から;好ましくはメチルメタクリレート、およびその混合物からなる群から;より好ましくはメチルメタクリレートから選択されるメタクリレートモノマーから得られてもよい。
【0035】
アクリレートブロックは、アクリレート、ブチルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、およびそれらの混合物からなる群から;好ましくはブチルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、およびそれらの混合物から選択されるアクリレートモノマーから得られてもよい。
【0036】
1つの実施形態において、ブロック共重合体は、2つのポリ(メチルメタクリレート)末端ブロックおよびポリ(ブチルアクリレート)中間ブロックを含む。別の実施形態において、ブロック共重合体は、2つのポリ(メチルメタクリレート)末端ブロックおよびポリ(ブチルアクリレート/2-エチルヘキシルアクリレート)中間ブロックを含む。
【0037】
適したブロック共重合体は、クラレから商品名Kurarity(登録商標)、特にLAおよびLKシリーズで市販されている。
【0038】
ブロック共重合体は、0℃以下の、好ましくは-30℃以下のガラス転移温度を有してもよい。ガラス転移温度は、動的機械分析(DMA)および動的走査熱量測定法(DSC)により測定される。
【0039】
ブロック共重合体は、120,000g/mol以下の平均分子量を有してもよい。平均分子量はおよそ100,000g/molである。
【0040】
少なくとも2個の基を含むエポキシ化合物
光硬化性で接着性の組成物は、少なくとも2個のエポキシ基を含む少なくとも1種の化合物を含む。オキシラン基とも呼ばれるエポキシ基は、2個の炭素原子および1個の酸素原子を含む3員環である。光硬化性で接着性の組成物を硬化すると、エポキシ化合物は架橋され、それによって硬化組成物の耐熱性を改善し、異なる基材に対する組成物の良好な濡れ性を実現し、そのような基材への良好な接着を維持する。
【0041】
光硬化性で接着性の組成物は、組成物の全重量に対して30~50重量%、好ましくは34~50重量%の、少なくとも2個のエポキシ基を含むエポキシ化合物を含んでもよい。例えば、光硬化性で接着性の組成物は、組成物の全重量に対して30~35重量%、または35~40重量%、または40~45重量%、または45~50重量%の、少なくとも2個のエポキシ基を含むエポキシ化合物を含んでもよい。
【0042】
光硬化性で接着性の組成物中に存在する化合物の割合は、少なくとも2個のエポキシ基を含むエポキシ化合物の全重量の割合に対して、すなわち、少なくとも2個のエポキシ基を含む100%のエポキシ化合物を基準にして定義することができる。
【0043】
少なくとも2個のエポキシ基を含むエポキシ化合物は、グリシジルエーテルエポキシ樹脂、グリシジルエステルエポキシ樹脂、グリシジルアミンエポキシ樹脂、脂肪族エポキシ樹脂およびそれらの混合物で構成される群から選択されてもよい。
【0044】
グリシジルエーテルエポキシ樹脂は、ビスフェノールベースの樹脂、ノボラックベースの樹脂、およびそれらの混合物であってもよい。例えば、ビスフェノールは、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、テトラ-ブロモ-ビスフェノールA、水素化ビスフェノールA、ビスフェノールAのビスフェノールAプロピレンオキシド付加物、ビスフェノールAのエチレンオキシド付加物、それらの誘導体、およびそれらの混合物からなる群から選択されてもよい。ノボラックは、フェノールノボラック、クレゾールノボラック、それらの誘導体、およびそれらの混合物からなる群から選択されてもよい。グリシジルエステルエポキシ樹脂は、ヘキサヒドロフタル酸ジグリシジルエステル、ダイマー酸ジグリシジルエステル、およびそれらの混合物からなる群から選択されてもよい。グリシジルアミンエポキシ樹脂は、トリグリシジルイソシアネートジアミノ-ジフェニルメタン、テトラグリシジルジアミノ-ジフェニルメタン、およびそれらの混合物の群から選択されてもよい。脂肪族エポキシ樹脂は、エポキシ化ポリブタジエン、エポキシ化大豆油、脂環式ジエポキシアセタール、脂環式ジエポキシアジペート、脂環式ジエポキシカルボキシレート、ビニルシクロヘキセンオキシド、およびそれらの混合物からなる群から選択されてもよい。
【0045】
オキセタン化合物
光硬化性で接着性の組成物は、少なくとも2個のエポキシ基を含むエポキシ化合物に加えて、少なくとも2個のオキセタン基を含む少なくとも1種の化合物を含んでもよい。オキセタン基は、3個の炭素原子および1個の酸素原子を含む4員環である。
【0046】
光硬化性で接着性の組成物は、少なくとも2個のエポキシ基を含むエポキシ化合物の全重量に対して5~20重量%、好ましくは8~15重量%のオキセタン化合物を含んでもよい。例えば、光硬化性で接着性の組成物は、少なくとも2個のエポキシ基を含むエポキシ化合物の全重量に対して5~10重量%、または10~15重量%、または15~20重量%のオキセタン化合物を含んでもよい。
【0047】
光硬化性で接着性の組成物は、組成物の全重量に対して3~10重量%、好ましくは3.5~8重量%のオキセタン化合物を含んでもよい。例えば、光硬化性で接着性の組成物は、組成物の全重量に対して3~4重量%、または4~5重量%、または5~6重量%、または6~7重量%、または7~8重量%、または8~9重量%、または9~10重量%のオキセタン化合物を含んでもよい。
【0048】
粘着付与樹脂
光硬化性で接着性の組成物は、粘着付与樹脂(タッキファイヤー)を含む。タッキファイヤー樹脂の目的は、接着強さおよび組成物の異なる成分間の適合性を向上させるために光硬化性で接着性の組成物の接着を与えることである。
【0049】
光硬化性で接着性の組成物は、少なくとも2個のエポキシ基を含むエポキシ化合物の全重量に対して10~30重量%、好ましくは15~25重量%の粘着付与樹脂を含む。例えば、光硬化性で接着性の組成物は、少なくとも2個のエポキシ基を含むエポキシ化合物の全重量に対して10~15重量%、または15~20重量%、または20~25重量%、または25~30重量%、または25~30重量%の粘着付与樹脂を含んでもよい。
【0050】
光硬化性で接着性の組成物は、組成物の全重量に対して5~15重量%、好ましくは6~10重量%の粘着付与樹脂を含んでもよい。例えば、光硬化性で接着性の組成物は、組成物の全重量に対して5~6重量%、または6~7重量%、または7~8重量%、または8~9重量%、または9~10重量%、または10~11重量%、または11~12重量%、または12~13重量%、または13~14重量%、または14~15重量%の粘着付与樹脂を含んでもよい。
【0051】
適した粘着付与樹脂は、重合体成分と適合性であり、接着特性を拡大し、かつ固有接着を改善するものである。本明細書において使用されるとき、「粘着付与樹脂」という用語は以下を含む:
- ASTM法E28-58Tにより決定されるような95℃~160℃の環球軟化点を有する脂肪族および環状脂肪族石油炭化水素樹脂、後者の樹脂は、脂肪族および/または環状脂肪族オレフィンならびにジオレフィンから主としてなるモノマーの重合の結果生じる;同じく含まれるのは、水素化脂肪族および環状脂肪族石油炭化水素樹脂であり、このタイプのC5オレフィン留分に基づくそのような市販の樹脂の例は、Eastman chemicalにより販売されるPiccotac 95粘着付与樹脂およびExxonMobil Chemical Companyにより販売されるEscorez 1310LCである;
- 芳香族石油炭化水素樹脂およびその水素化誘導体;
- 脂肪族/芳香族石油由来炭化水素樹脂およびその水素化誘導体;
- 芳香族変性環状脂肪族樹脂およびその水素化誘導体;
- 95℃~140℃の軟化点を有するポリテルペン樹脂後者のポリテルペン樹脂は、フリーデル・クラフツ触媒の存在下、適度に低い温度でのピネンまたはジペンテンとして既知のモノ-テルペンなどのテルペン炭化水素の重合の結果一般に生じる;水素化ポリテルペン樹脂も含まれる;
- 天然テルペンの共重合体および三元重合体、例えばスチレン/テルペン、α-メチルスチレン/テルペンおよびビニルトルエン/テルペン;天然および変性ロジン、例えば、ガンロジン(gun rosin)、ウッドロジン、トール油ロジン、蒸留ロジン、水素化ロジン、二量化ロジンおよび重合ロジンなど;
- 天然および変性ロジンのグリセロールおよびペンタエリスリトールエステル、例えば、ペールウッドロジンのグリセロールエステル、水素化ロジンのグリセロールエステル、重合ロジンのグリセロールエステル、ペールウッドロジンのペンタエリスリトールエステル、水素化ロジンのペンタエリスリトールエステル、トール油ロジンのペンタエリスリトールエステル、およびロジンのフェノール変性ペンタエリスリトールエステルなど;ならびに
- フェノール変性テルペン樹脂、例えば、テルペンおよびフェノールの酸性媒体中の縮合の結果生じる樹脂生成物など;
- インデンおよびクマロンの混合物の重合により生成されるクマロン-インデン樹脂。
【0052】
2種以上の上記の粘着付与樹脂の混合物が使用されてもよい。
【0053】
本発明に有用である粘着付与樹脂には極性粘着付与樹脂が含まれ得る。しかし、極性樹脂の多くがポリオレフィン重合体と部分的にのみ適合性であるように見受けられることを考えると、利用可能な極性粘着付与樹脂の選択は限られる。
【0054】
あるいは、粘着付与樹脂は、非極性タイプのいずれかから選択することができ、それらは市販されている。好ましい樹脂の1つのクラスは脂肪族石油炭化水素樹脂であり、その例はC5オレフィンに基づく。最も好ましいのは、95℃を上回る軟化点を有する水素化ジ-シクロ-ペンタジエン(DCPD)ベースである非極性生成物またはその芳香族変性誘導体である。そのような樹脂の例は、ExxonMobil Chemical Companyにより販売されるEscorez 5340、Escorez 5400およびEscorez 5600、Kolonにより販売されるSukorez SU-120ならびにJinhaiから販売されるJH6130である。
【0055】
好ましくは、粘着付与樹脂は、80~130℃の軟化点を有するべきであり、より好ましくは粘着付与樹脂は、80~130℃の軟化点を有するロジンエステルであるべきである。
【0056】
光カチオン重合開始剤
光硬化性で接着性の組成物は、光カチオン重合開始剤を含む。エネルギー(UV光)を照射されたとき、それは、フラグメンテーション解離反応を経て、ルイスまたはブレンステッド酸の1個または複数の分子を生成し、次いで、それは、架橋を形成するためにエポキシ化合物の開環および付加を触媒する。
【0057】
光硬化性で接着性の組成物は、少なくとも2個のエポキシ基を含むエポキシ化合物の全重量に対して4~15重量%、好ましくは6~12重量%の光カチオン重合開始剤を含む。例えば、光硬化性で接着性の組成物は、少なくとも2個のエポキシ基を含むエポキシ化合物の全重量に対して4~6重量%、または6~8重量%、または8~10重量%、または10~12重量%、または12~15重量%の光カチオン重合開始剤を含んでもよい。
【0058】
光硬化性で接着性の組成物は、組成物の全重量に対して0.1~10重量%、好ましくは0.5~5重量%の光カチオン重合開始剤を含んでもよい。例えば、光硬化性で接着性の組成物は、組成物の全重量に対して0.1~1重量%、または1~2重量%、または2~3重量%、または3~4重量%、または4~5重量%、または5~6重量%、または6~7重量%、または7~8重量%、または8~9重量%、または9~10重量%の光カチオン重合開始剤を含んでもよい。
【0059】
光カチオン重合開始剤は、カチオンおよび対アニオンを含む。
【0060】
適したカチオンは、有機オニウムカチオン、例えば、参照により本明細書に組み込まれるUS4250311、US3708296、US4069055、US4216288、US5084586、US5124417、US5554664に記載されたものであり得る。カチオンは、脂肪族または芳香族第IVA~VIIA族(CASバージョン)中心オニウム塩から;好ましくはI-、S-、P-、Se- N-およびC-中心オニウム塩(スルホキソニウム、ヨードニウム、スルホニウム、セレノニウム、ピリジニウム、カルボニウムおよびホスホニウム塩から選択される塩など)から;より好ましくはI-およびS-中心オニウム塩(スルホキソニウム、ジアリールヨードニウム、トリアリールスルホニウム、ジアリールアルキルスルホニウム、ジアルキルアリールスルホニウム、およびトリアルキルスルホニウムから選択される塩などから選択されてもよい。「アリール」および「アルキル」により、最大4個の独立して選択される置換基を有する非置換もしくは置換芳香族または脂肪族部分をそれぞれ意味する。アリールまたはアルキル部分上の置換基は、好ましくは、30個未満の炭素原子およびN、S、非ペルオキシドO、P、As、Si、Sn、B、Ge、Te、Seから選択される最大10個のヘテロ原子を有することになる。例には、メチル、エチル、ブチル、ドデシル、テトラコサニル、ベンジル、アリル、ベンジリデン、エテニルおよびエチニルなどのヒドロカルビル基;メトキシ、ブトキシおよびフェノキシなどのヒドロカルビルオキシ基;メチルメルカプトおよびフェニイメルカプト(phenyimercapto)などのヒドロカルビルメルカプト基;メトキシカルボニルおよびフェノキシカルボニルなどのヒドロカルビルオキシカルボニル基;ホルミル、アセチルおよびベンゾイルなどのヒドロカルビルカルボニル基;アセトキシおよびシクロヘキサンカルボニルオキシなどのヒドロカルビルカルボニルオキシ基;アセトアミドおよびベンズアミドなどのヒドロカルビルカルボンアミド基;アゾ;ボリル;クロロ、ブロモ、ヨードおよびフルオロなどのハロ基;ヒドロキシ;オキソ;ジフェニルアルシノ;ジフェニルスチルビノ;トリメチルゲルマノ;トリメチルシロキシ;ならびにシクロペンタジエニル、フェニル、トリル、ナフチル、およびインデニルなどの芳香族基が含まれる。スルホニウム塩に関して、置換基をジアルキル-またはジアリールスルホニウムカチオンでさらに置換することが可能であり;これの一例は1,4-フェニイエン(phenyiene)ビス(ジフェニルスホニウム)であろう。
【0061】
光カチオン重合開始剤における対アニオンの性質は、エポキシ基のカチオン付加重合の速度および程度に影響し得る。例えば、J.V.Crivello、およびR.Narayan、Chem.Mater.、4、692、(1992)は、一般に使用される非求核アニオン間の反応性の順序がSbF6
->AsF6
->PF6
->BF4
-であることを報告している。反応性に対するアニオンの影響は、以下の3つの主要因によるとされている:(1)生成されるプロトン酸またはルイス酸の酸性度、(2)カチオン連鎖の成長におけるイオン対分離の程度ならびに(3)フッ化物引抜きに対するアニオンの感受性および結果的な連鎖停止。
【0062】
適したオニウム塩は、ジアゾニウム塩(アリールジアゾニウム塩など);ハロニウム塩(ジアーリーヨードニウム(diarlyiodonium)塩など);スルホニウム塩(トリアリールスルホニウム塩など);セレノニウム塩(トリアリールセレノニウム塩など);スルホキソニウム塩(トリアリールスルホキソニウム塩など);および他の種々のクラスのオニウム塩(トリアリールホスホニウムおよびアルソニウム塩など)、ピリリウム塩、チオピリリウム塩、ならびにそれらの混合物から選択されてもよい。
【0063】
適した光カチオン重合開始剤は、ビス(4-t-ブチルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート、トリアリールスルホニウム塩(ジフェニル(4-フェニルチオ(phenyllthio))フェニルスホニウムヘキサフルオロアンチモネート、ビス(4-(ジフェニルスルホニオ)フェニル)スルフィドヘキサフルオロアンチモネート)の混合物、(4-メトキシフェニル)フェニルヨードニウムトリフレート、ビス(4-tert-ブチルフェニル)ヨードニウムカンファースルホネート、ビス(4-tert-ブチルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート、ビス(4-tert-ブチルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、ビス(4-tert-ブチルフェニル)ヨードニウムテトラフェニルボレート、ビス(4-tert-ブチルフェニル)ヨードニウムトシレート、ビス(4-tert-ブチルフェニル)ヨードニウムトリフレート、([4-(オクチルオキシ)フェニル]フェニルヨードニウムヘキサフルオロホスフェート)、([4-(オクチルオキシ)フェニル]フェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート、(4-イソプロピルフェニル)(4-メチルフェニル)ヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ビス(4-メチルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、4-(2-ヒドロキシ-1-テトラデシクロキシ(tetradecycloxy))フェニル]フェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、ジフェニル(4-フェニルチオ)フェニルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート、ビス(4-(ジフェニルスルホニオ)フェニル)スルフィドビス(ヘキサフルオロホフェート(hexafluorophophate)、ジフェニル(4-フェニチオ(phenythio))フェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、ビス(4-(ジフェニルスルホニオ)フェニル)スルフィドヘキサフルオロアンチモネート、およびこれらのトリアリールスルホニウム塩のブレンドからなる群から選択されてもよい。
【0064】
1個のエポキシ基を含むエポキシ化合物
光硬化性で接着性の組成物は、1個のエポキシ基のみを含む少なくとも1種のエポキシ化合物を含んでもよい。
【0065】
光硬化性で接着性の組成物は、少なくとも2個のエポキシ基を含むエポキシ化合物の全重量に対して30~80重量%、好ましくは45~55重量%の、1個のエポキシ基を含むエポキシ化合物を含んでもよい。例えば、光硬化性で接着性の組成物は、少なくとも2個のエポキシ基を含むエポキシ化合物の全重量に対して30~35重量%、または35~40重量%、または40~45重量%、または45~50重量%、または50~55重量%、または55~60重量%、または60~65重量%、または65~70重量%、または70~75重量%、または75~80重量%の、1個のエポキシ基を含むエポキシ化合物を含んでもよい。
【0066】
光硬化性で接着性の組成物は、組成物の全重量に対して10~30重量%、好ましくは15~25重量%の、1個のエポキシ基を含むエポキシ化合物を含んでもよい。例えば、光硬化性で接着性の組成物は、組成物の全重量に対して10~15重量%、または15~20重量%、または20~25重量%、または25~30重量%の、1個のエポキシ基を含むエポキシ化合物を含んでもよい。
【0067】
1個のエポキシ基を含むエポキシ化合物は、グリシジルエーテルエポキシ樹脂、グリシジルエステルエポキシ樹脂、グリシジルアミンエポキシ樹脂、脂肪族エポキシ樹脂およびそれらの混合物で構成される群から選択されてもよく;好ましくは1個のエポキシ基を含むエポキシ化合物はグリシジルエーテルエポキシ樹脂である。
【0068】
ポリオール
光硬化性で接着性の組成物は、少なくとも1種のポリオールを含んでもよい。
【0069】
光硬化性で接着性の組成物は、少なくとも2個のエポキシ基を含むエポキシ化合物の全重量に対して5~50重量%、好ましくは20~30重量%のポリオールを含んでもよい。例えば、光硬化性で接着性の組成物は、少なくとも2個のエポキシ基を含むエポキシ化合物の全重量に対して5~10重量%、または10~15重量%、または15~20重量%、または20~25重量%、または25~30重量%、または30~35重量%、または35~40重量%、または40~45重量%、または45~50重量%のポリオールを含んでもよい。
【0070】
光硬化性で接着性の組成物は、組成物の全重量に対して10~30重量%、好ましくは15~20重量%のポリオールを含んでもよい。例えば、光硬化性で接着性の組成物は、組成物の全重量に対して10~15重量%、または15~20重量%、または20~25重量%、または25~30重量%のポリオールを含んでもよい。
【0071】
ポリオールは、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリオレフィンポリオール、ポリエーテルポリオール、およびそれらの混合物からなる群から選択されてもよい。
【0072】
ポリエステルポリオールは、多価アルコールおよび多塩基性カルボン酸の縮合生成物である。多価アルコールは、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ジエチレングリコール、グリセリン、ヘキサントリオール、ヘキサングリコール、およびトリメチロールプロパンからなる群から選択されてもよい。多塩基性カルボン酸は、アジピン酸、グルタル酸、セバシン酸、アゼライン酸、フマル酸、マレイン酸、フタル酸、テレフタル酸、これらの酸のダイマー(ダイマー酸)、およびピロメリト酸からなる群から選択されてもよい。
【0073】
ポリエーテルポリオールは、2個以上の活性水素を有する化合物への1つまたは1つを超えるタイプのアルキレンオキシドの付加/重合により得られる生成物である。アルキレンオキシドは、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、およびテトラヒドロフランからなる群から選択されてもよい。2個以上の活性水素を有する化合物は、上述の多価アルコールおよび多塩基性カルボン酸、エチレンジアミンおよびヘキサメチレンジアミンなどのアミン、ならびにエタノールアミンおよびプロパノールアミンなどのアルカノールからなる群から選択されてもよい。
【0074】
ポリカーボネートポリオールは、有機カーボネートおよび1つまたは複数のタイプのジオール、例えば脂肪族ジオールなどのエステル交換反応により得られる生成物である。脂肪族ジオールは、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、および1,6-ヘキサンジオールからなる群から選択されてもよい。
【0075】
ポリオレフィンポリオールは、ポリオレフィン飽和炭化水素骨格および両方の末端鎖の反応性一級ヒドロキシル基を有するポリオールである。
【0076】
増感剤
光硬化性で接着性の組成物は、少なくとも1種の増感剤を含んでもよい。
【0077】
光硬化性で接着性の組成物は、少なくとも2個のエポキシ基を含むエポキシ化合物の全重量に対して4~15重量%、好ましくは6~12重量%の増感剤を含んでもよい。例えば、光硬化性で接着性の組成物は、少なくとも2個のエポキシ基を含むエポキシ化合物の全重量に対して4~6重量%、または6~8重量%、または8~10重量%、または10~12重量%、または12~15重量%の増感剤を含んでもよい。
【0078】
光硬化性で接着性の組成物は、組成物の全重量に対して0.1~10重量%、好ましくは0.5~5重量%の増感剤を含んでもよい。例えば、光硬化性で接着性の組成物は、組成物の全重量に対して0.1~1重量%、または1~2重量%、または2~3重量%、または3~4重量%、または4~5重量%、または5~6重量%、または6~7重量%、または7~8重量%、または8~9重量%、または9~10重量%の増感剤を含んでもよい。
【0079】
増感剤は、カルコン誘導体、ジベンザルアセトンによって代表される不飽和ケトン、ベンジルカンファーキノンによって代表される1,2-ジケトン誘導体、ベンゾイン誘導体、フルオレン誘導体、ナフトキノン誘導体、アントラキノン誘導体、キサンテン誘導体、チオキサンテン誘導体、キサントン誘導体、チオキサントン誘導体、クマリン誘導体、ケティッククマリン(keticcoumarin)誘導体、シアニン誘導体、メロシアニン誘導体、オキソノール誘導体、および他のポリメチン色素、アクリジン誘導体、アジン誘導体、チアジン誘導体、オキサジン誘導体、インドリン誘導体、アズレン誘導体、アズレニウム誘導体、スクアリリウム誘導体、ポルフィリン誘導体、テトラフェニルポルフィリン誘導体、トリアリールメタン誘導体、テトラベンゾポルフィリン誘導体、テトラピラジノポリフィラジン誘導体、フタロシアニン誘導体、テトラアザポルフィラジン誘導体、テトラキノサリロポルフィラジン(tetraquinosalyloporphyrazine)誘導体、ナフタロシアニン誘導体、サブフタロシアニン誘導体、ピリリウム誘導体、チオピリリウム誘導体、テトラフィリン誘導体、アヌレン誘導体、スピロピラン誘導体、スピロオキサジン誘導体、チオスピロピラン誘導体、金属アレーン錯体、有機ルテニウム錯体、ならびにそれらの混合物からなる群から選択されてもよい。
【0080】
粘度調整剤
光硬化性で接着性の組成物は、少なくとも1種の粘度調整剤を含んでもよい。
【0081】
光硬化性で接着性の組成物は、少なくとも2個のエポキシ基を含むエポキシ化合物の全重量に対して5~30重量%、好ましくは15~30重量%の粘度調整剤を含んでもよい。したがって、光硬化性で接着性の組成物は、少なくとも2個のエポキシ基を含むエポキシ化合物の全重量に対して5~10重量%、または10~15重量%、または15~20重量%、または20~25重量%、または25~30重量%の粘度調整剤を含んでもよい。
【0082】
光硬化性で接着性の組成物は、組成物の全重量に対して0.1~20重量%、好ましくは5~10重量%の粘度調整剤を含んでもよい。例えば、光硬化性で接着性の組成物は、組成物の全重量に対して0.1~2重量%、または2~4重量%、または4~6重量%、または6~8重量%、または8~10重量%、または10~12重量%、または12~14重量%、または14~16重量%、または16~18重量%、または18~20重量%の粘度調整剤を含んでもよい。
【0083】
粘度調整剤は、ホワイトカーボン、コロイド状シリカ、珪砂(珪石粉)、親水性ヒュームドシリカ(Aerosil(登録商標)RY-200など)、珪藻土、疎水性炭酸カルシウム、ガラスバルーン、ガラスビーズ、ポリビニルピロリドン、ハイパーブランチポリエステル、アミドワックス、およびそれらの混合物からなる群から選択されてもよく;好ましくは粘度調整剤は親水性ヒュームドシリカである。これらの粘度調整剤は、単独で、または2種類以上の組合せで使用されてもよい。好ましい粘度調整剤には、親水性ヒュームドシリカなどの無機粘度調整剤が含まれる。
【0084】
補助添加剤
光硬化性で接着性の組成物は、少なくとも1種の補助添加剤を含んでもよい。
【0085】
光硬化性で接着性の組成物は、少なくとも2個のエポキシ基を含むエポキシ化合物の全重量に対して0.01~5重量%、好ましくは0.1~3重量%の補助添加剤を含んでもよい。
【0086】
光硬化性で接着性の組成物は、組成物の全重量に対して0.01~5重量%、好ましくは0.1~3重量%の補助添加剤を含んでもよい。
【0087】
補助添加剤は、重合阻害剤、顔料、接着プロモーター、抗酸化剤、硬化促進剤、充填剤、可塑剤、界面活性剤、潤滑剤、帯電防止剤、難燃剤およびそれらの混合物からなる群から選択されてもよい。
【0088】
物品
第2の態様において、本発明は、上記のような光硬化性で接着性の組成物で被覆された少なくとも1つの内部表面または外部表面を備える物品に関する。いくつかの実施形態において、本発明は、本発明による少なくとも1種の光硬化性で接着性の組成物により結合された少なくとも2つの基材を含む組立品に関する。
【0089】
本発明の光硬化性組成物を適用するための基材は、石英、ガラス、光学フィルム、セラミック材料、蒸着フィルム、磁気フィルム、反射フィルム、Ni、Cu、Cr、Feなどの金属基材、紙、SOG、ポリエステルフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリイミドフィルムなどの重合体基材、TFTアレイ基材、PDP電極板、ガラスまたは透明プラスチック基材、ITOまたは金属などの導電性基材、絶縁基材、シリコーン、窒化(nitriding)から選ばれ得る。好ましい実施形態において、基材は不透明である。「不透明」により、ガンマ線、X線、紫外線、可視光線、赤外線、および電波などの0.1~106nmの範囲内の電磁波が通過することができない基材を意味する。
【0090】
基材は、様々な形態(層またはフィルム、ストランド、フラッフ)で、異なっていても、同じ性質のものでもよい。
【0091】
本発明の光硬化性で接着性の組成物は、電気およびエレクトロニクス、自動車、建設、家電、医療、ならびにテキスタイルの分野に適用され得る。例えば、光硬化性で接着性の組成物は、スマートフォン、ウェアラブルデバイス、デジタルカメラ、コネクタ、自動車用インストルメントパネル、ECU、バックモニタカメラ、冷蔵庫、洗浄機、空調装置などの部品、電子ボード、心拍数モニタ、血圧計および他の医療機器、テキスタイル加工に適用され得る。
【0092】
使用
第3の態様において、本発明は、基材を被覆するための、または2つの基材を互いに結合するための、上記のような光硬化性で接着性の組成物の使用に関する。
【0093】
本発明の光硬化性組成物を硬化するためのエネルギー源は特に限定されない。そのような源には、高エネルギー電離放射線、近紫外、遠紫外、可視、赤外、または放射線の領域内の波長を有する光が含まれ得る。述べられた高エネルギーは電離放射線源から生じることができるため、コッククロフト加速器、ハンダグラーフ(handagraaf)加速器、線形加速器、ベータトロン、またはサイクロトロンなどの加速器により加速された電子ビームが工業的に最も簡便かつ経済的に使用される。しかし、放射性同位体または原子炉から放出されるγ線、X線、α線、中性子線、陽子線などの放射線も使用することができる。紫外線源の例には、紫外蛍光灯、低圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、キセノン灯、カーボンアーク灯、および太陽灯が含まれ得る。放射線には、例えば、マイクロ波および極紫外線(EUV)が含まれ得る。また、LED、半導体レーザー光、または248nm KrFエキシマレーザー光もしくは193nm ArFエキシマレーザーなどの半導体微細加工において使用されるレーザー光を本発明において適切に使用することができる。これらの光は、単色光でもよく、または異なる波長を有する複数の光(混合光)であってもよい。
【0094】
好ましくは、本発明において使用されるエネルギー源は、200~500nmの波長を有するUV光である。組立品(または積層品)を製造するプロセスは以下を含んでもよい:
- 前記組成物を第1の基材上に被覆する工程(i);
- 組成物で被覆された基材をエネルギー源に曝露する工程(ii)、および
- 任意選択で、2つの基材を結合する接着継手を形成するように第1の基材の被覆された表面を第2の基材の表面と接触させる工程(iii)。
【実施例】
【0095】
以下の実施例は、本発明を限定することなく本発明を説明する。
【0096】
材料
エポキシ樹脂A:Mitsubishi Cheminal製Epikote(登録商標)828
エポキシ樹脂B:Mitsubishi Cheminal製Epikote(登録商標)834
エポキシ樹脂C:共栄社化学製400P(登録商標)
オキセタン樹脂:Toa Gossei製Aron oxetane OXT-221(登録商標)
反応性希釈剤:Sakamoto Yakukin製SY-OCG(登録商標)
ブロック共重合体:クラレ製Kurarity(登録商標)LA-3320
粘度調整剤:日本アエロジル製Aerosil(登録商標)RY-200(登録商標)
光開始剤:Aceto製AT6992(登録商標)
粘着付与樹脂A:荒川化学製KE-100(登録商標)
粘着付与樹脂B:ヤスハラケミカル製YS polystar G125(登録商標)
【0097】
組成物の調製
本発明の光硬化性で接着性の組成物は、遊星型ミキサー内で調製することができる。
【0098】
エポキシ樹脂A、タッキファイヤー樹脂A、およびブロック共重合体を遊星型ミキサーに投入することにより組成物1(C1)を調製した。混合物を160~170℃の間の温度で1時間撹拌後、そしてブロック共重合体の溶解後、温度を約120℃まで下げ、反応性希釈剤およびオキセタン樹脂を混合物に加えた。次いで、混合物を100~120℃の間の温度で1時間撹拌した。次いで、温度を徐々に下げ、粘度調整剤をおよそ50~60℃で加え、混合物を約1時間撹拌した。最後に、光開始剤を加え、混合物をおよそ25~40℃で30分間撹拌した。次いで、それを取り出し、3ロールミルを用いて2回通して、組成物1(C1)を得た。
【0099】
組成物C2~C4(本発明による)および組成物C5~C8(比較組成物)も同じ調製方法により調製した。
【0100】
光硬化性で接着性の組成物中に存在する化合物の割合は、少なくとも2個のエポキシ基を含むエポキシ化合物の全重量の割合に対して、すなわち、少なくとも2個のエポキシ基を含む100%のエポキシ化合物を基準にして定義される。
【0101】
方法論
粘度(Pa.s、25℃)は、以下の方法にしたがって評価する:消泡されたUV樹脂試料(12g)を得、ブルックフィールドHBタイプ回転粘度計内にセットする。液体温度を25℃に保ちながら、No.27ローターを使用して粘度を測定する。UV樹脂を25℃で10分間静置し、次いで、0.5rpmで回転させる。粘度ディスプレイがピークを示した後、第1の測定を2分後に実施する。回転速度を0.5rpmから5.0rpm(高速など)まで増加し、第2の測定を1分回転後に実施する。
【0102】
オープンタイム(分)は、以下の方法にしたがって評価する:UV樹脂をアルミニウム基材(A6061P)上で6.25cm2の面積に200μmの被覆量で適用する。次いで、適用された樹脂にUV-A(1,500~2,000mJ/cm2の波長)を照射する。照射後、もはや粘着性ではなく、かつ反対の基材に付着することができない被覆された表面を得るために必要な時間(オープンタイム)を測定する。
【0103】
ショアA硬さは、以下の方法にしたがって評価する:UV照射(1,500~2,000mJ/cm2のUV-A波長)を使用して樹脂を硬化する。約10mmの厚さを有する試験片を調製するために、硬化シートを重ね合わせる。高分子計器株式会社により供給されるAsker硬度計を使用して、50±5%の相対湿度および23±3℃の温度で試験片の硬さ(タイプA)を測定する。
【0104】
引張強さ(MPa)および伸び(%)は、以下の方法にしたがって評価する:UV照射(1,500~2,000mJ/cm2のUV-A波長)を使用して樹脂を硬化する。試験片を調製するために、硬化シートをダンベルNo.3型に打ち抜く。株式会社オリエンテックにより供給される装置Tensilon RTC-1310を使用して100mm/分の引張速度で50±5%の相対湿度および23±3℃の温度で試験片のフィルム特性を測定する。引張強さ(MPa)は、以下のように計算する:破壊強さ/断面積。伸び(%)は、以下のように計算する:(破壊伸び/基準長さ[20mm])×100。
【0105】
重ね剪断強さ(MPa)は、以下の方法にしたがって評価する:200μmの厚さおよび6.25cm2の面積を得るためにドクターブレードを使用して指定の基材(100mm×25mm×1mm)の上に硬化樹脂を適用する。ヘレウス株式会社により供給されるLight Hammer6(無電極メタルハライドランプ)UV照射装置を所定の積算光量(1,500~2,000mJ/cm2)で使用する。UV照射後30秒以内に、ベース材料が互いに結合されて、試験片を形成する。それを50~65%の相対湿度および23℃の温度で2日間以上放置した後、株式会社オリエンテックにより供給されるTensilon RTC-1310を使用して20mm/分の引張速度で、株式会社オリエンテックにより供給されるTensilon RTC-1310を使用して50~65%の相対湿度および23℃の温度で引張剪断強さを測定する。
【0106】
貯蔵安定性は、以下の方法にしたがって評価する:200gのUV樹脂をPPカップ内に置いた後、蓋を閉め、50±5%の相対湿度および23±3℃の温度の静止環境に放置する。測定された粘度が2回を超えて初期粘度を超える(貯蔵寿命)まで、一定の間隔(月数)で粘度を測定する。
【0107】
【0108】
組成物C1~C4(本発明による)は、良好な接着特性および硬化特性を示す。上記の表に基づいて、これらの組成物は、良好な物理的特性、2時間後の高い接着強さ、および高い貯蔵安定性を呈することが示されている。
【0109】
他方で、タッキファイヤー樹脂を含まないC5(比較組成物)は、十分な貯蔵安定性を呈するが、2時間後の低い接着強さを呈する。
【0110】
少なくとも2個のエポキシ基を含むエポキシ化合物の重量に対して100重量%のブロック共重合体を含むC6(比較組成物)は、2時間後の低い接着強さだけでなく、低い貯蔵安定性も呈する。
【0111】
C7およびC8(比較組成物)は、少なくとも2個のエポキシ基を含むエポキシ化合物の重量に対してそれぞれ1および20重量%の量の光開始剤を含む。一方でC7は、十分な貯蔵安定性を呈するが、2時間後の低い接着強さを呈し、他方でC8は、2時間後の低い接着強さだけでなく、低い貯蔵安定性も呈する。したがって、本発明による組成物は、良好な接着特性および良好な貯蔵安定性を同時に達成することを可能にする。
【国際調査報告】