(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-18
(54)【発明の名称】新規カンプトテシン誘導体、それを含む組成物およびその使用
(51)【国際特許分類】
C07D 495/22 20060101AFI20231211BHJP
A61K 47/68 20170101ALI20231211BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20231211BHJP
A61K 31/437 20060101ALI20231211BHJP
C07D 491/22 20060101ALI20231211BHJP
【FI】
C07D495/22 CSP
A61K47/68
A61P35/00
A61K31/437
C07D491/22
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023535475
(86)(22)【出願日】2021-12-09
(85)【翻訳文提出日】2023-08-09
(86)【国際出願番号】 CN2021136769
(87)【国際公開番号】W WO2022121981
(87)【国際公開日】2022-06-16
(31)【優先権主張番号】202011463704.4
(32)【優先日】2020-12-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519416819
【氏名又は名称】ウィゲン・バイオメディシン・テクノロジー・(シャンハイ)・カンパニー・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】WIGEN BIOMEDICINE TECHNOLOGY (SHANGHAI) CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】BUILDING 11, LIBING ROAD 67, ZHANGJIANG HI‐TECH PARK, SHANGHAI 201203, CHINA
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】シエ,ユリ
(72)【発明者】
【氏名】ツアオ,ガン
(72)【発明者】
【氏名】ファン,ホウシン
(72)【発明者】
【氏名】チエン,リュイ
【テーマコード(参考)】
4C050
4C071
4C076
4C086
【Fターム(参考)】
4C050AA01
4C050BB07
4C050CC07
4C050DD01
4C050EE03
4C050FF02
4C050GG02
4C050GG04
4C050HH01
4C071AA01
4C071BB03
4C071CC02
4C071CC21
4C071EE13
4C071FF06
4C071GG01
4C071HH01
4C071HH05
4C071HH08
4C071HH17
4C071JJ05
4C071KK01
4C071LL01
4C076AA95
4C076CC27
4C076CC41
4C076EE41
4C076EE59
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086CB05
4C086GA16
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZB26
(57)【要約】
本発明は、カンプトテシン誘導体、それを含む組成物およびその使用を提供する。具体的には、本発明は、一般式(1)の化合物およびその調製方法、ならびに癌を治療するための医薬の調製における、一般式(1)の化合物およびその光学異性体、結晶形体および薬学的に許容可能な塩の使用を提供する。
【化1】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1)のカンプトテシン誘導体化合物またはその光学異性体、その結晶形体、薬学的に許容可能な塩、水和物、もしくは溶媒和物。
【化1】
(ここで、一般式(1)において、
mは0、1または2の整数であり、
Xは、-O-、-S-、-S(O)-、-S(O
2)-、および-N(R
4)-から選択され、
R
1およびR
2は、独立して、H、ハロゲン、OH、C
1~6アルキル、C
1~6アルコキシ、C
1~6ハロアルキル、C
3~6シクロアルキル、NH
2、NO
2、およびCNから選択されるか、あるいはR
1およびR
2は、それらに結合したフェニル環と一緒に、環化により、
【化2】
を形成し、
R
3は、C
1~6アルキル、C
2~6アルケニル、C
1~3アルコキシ置換C
1~3アルキル、およびC
1~6ハロアルキルから選択され、
R
4は、H、C
1~6アルキルおよびC
1~6ハロアルキルから選択され、
R
5は、H、C
1~6アルキルおよびC
3~6シクロアルキルから選択され、
R
6およびR
7は、独立して、H、C
1~6アルキル、C
1~6ハロアルキル、およびC
3~6シクロアルキルから選択されるか、あるいはR
6およびR
7は、それらに結合している炭素原子と一緒に、環化によりC
3~6シクロアルキルまたは4~7員ヘテロシクロアルキルを形成するか、あるいはR
6およびR
5は、結合して5~7員ラクタム環を形成し、
R
7は、H、C
1~6アルキル、C
1~6ハロアルキル、およびC
3~6シクロアルキルから選択され、
R
8は、OHおよびNR
9R
10から選択され、R
9およびR
10は、独立して、H、C
1~6アルキルおよびC
3~6シクロアルキルから選択されるか、あるいはR
9およびR
10は、それらに結合しているN原子と一緒に、環化により4~7員ヘテロシクロアルキルを形成し、前記4~7員ヘテロシクロアルキルは、置換されていないか、あるいはC
1~6アルキル、ハロゲン、OH、CN、およびNH
2から選択される1~3個の基で置換されている。)
【請求項2】
式(1)において、R
8が、OHである、請求項1に記載の、式(1)のカンプトテシン誘導体化合物またはその光学異性体、その結晶形体、薬学的に許容可能な塩、水和物、もしくは溶媒和物。
【請求項3】
式(1)において、R
1およびR
2が、独立して、H、ハロゲン、OH、Me、Et、OMe、OEt、CF
3、NH
2、NO
2、およびCNから選択されるか、あるいは、R
1およびR
2が、それらに結合したフェニル環と一緒に、環化により、
【化3】
を形成する、請求項1または請求項2のいずれか一項に記載の、式(1)のカンプトテシン誘導体化合物またはその光学異性体、その結晶形体、薬学的に許容可能な塩、水和物、もしくは溶媒和物。
【請求項4】
式(1)において、R
3が、Me、Et、
【化4】
から選択される、請求項1から3のいずれか一項に記載の、式(1)のカンプトテシン誘導体化合物またはその光学異性体、その結晶形体、薬学的に許容可能な塩、水和物、もしくは溶媒和物。
【請求項5】
式(1)において、Xが、-O-、-S-、-S(O)-、-S(O
2)-、-N(H)-、および-N(Me)-から選択される、請求項1から4のいずれか一項に記載の、式(1)のカンプトテシン誘導体化合物またはその光学異性体、その結晶形体、薬学的に許容可能な塩、水和物、もしくは溶媒和物。
【請求項6】
式(1)において、R
5が、H、Me、Et、および
【化5】
から選択される、請求項1から5のいずれか一項に記載の、式(1)のカンプトテシン誘導体化合物またはその光学異性体、その結晶形体、薬学的に許容可能な塩、水和物、もしくは溶媒和物。
【請求項7】
式(1)において、R
6およびR
7が、独立して、H、Me、Et、CHF
2、CF
3、CH
2CF
3、
【化6】
から選択される、請求項1から6のいずれか一項に記載の、式(1)のカンプトテシン誘導体化合物またはその光学異性体、その結晶形体、薬学的に許容可能な塩、水和物、もしくは溶媒和物。
【請求項8】
式(1)において、
【化7】
が、
【化8】
から選択される、請求項1に記載の、式(1)のカンプトテシン誘導体化合物またはその光学異性体、その結晶形体、薬学的に許容可能な塩、水和物、もしくは溶媒和物。
【請求項9】
式(1)において、R
8が、OHであり、かつ
【化9】
が、
【化10】
から選択される、請求項2に記載の、式(1)のカンプトテシン誘導体化合物またはその光学異性体、その結晶形体、薬学的に許容可能な塩、水和物、もしくは溶媒和物。
【請求項10】
前記化合物が、以下の構造:
【化11】
のうちの1つを有する、請求項1から9のいずれか一項に記載の、式(1)のカンプトテシン誘導体化合物またはその光学異性体、その結晶形体、薬学的に許容可能な塩、水和物、もしくは溶媒和物。
【請求項11】
前記化合物が、以下の構造:
【化12】
のうちの1つを有する、請求項1から9のいずれか一項に記載の、式(1)のカンプトテシン誘導体化合物またはその光学異性体、その結晶形体、薬学的に許容可能な塩、水和物、もしくは溶媒和物。
【請求項12】
前記化合物が、以下の構造:
【化13】
のうちの1つを有する、カンプトテシン誘導体化合物またはその光学異性体、その結晶形体、薬学的に許容可能な塩、水和物、もしくは溶媒和物。
【請求項13】
前記化合物が、以下の構造:
【化14】
のうちの1つを有する、カンプトテシン誘導体化合物、またはその光学異性体、結晶形体、薬学的に許容可能な塩、水和物、もしくは溶媒和物。
【請求項14】
抗体薬物複合体の調製における小分子毒素としての、請求項1から13のいずれか一項に記載の、一般式(1)のカンプトテシン誘導体化合物またはその光学異性体、その結晶形体、薬学的に許容可能な塩、水和物、もしくは溶媒和物の使用。
【請求項15】
薬学的に許容可能な賦形剤または担体と、
有効成分としての、請求項1から13のいずれか一項に記載の、一般式(1)のカンプトテシン誘導体化合物、またはその光学異性体、その結晶形体、薬学的に許容可能な塩、水和物、もしくは溶媒和物と、を含む医薬組成物。
【請求項16】
癌疾患を治療するための医薬の調製における、請求項1から13のいずれか一項に記載の、一般式(1)のカンプトテシン誘導体化合物またはその光学異性体、その結晶形体、薬学的に許容可能な塩、水和物、もしくは溶媒和物、或いは、請求項15に記載の医薬組成物の使用。
【請求項17】
抗体と、小分子毒素と、リンカーとを含む抗体薬物複合体であって、
ここで、前記小分子毒素が、請求項1から13のいずれか一項に記載の、一般式(1)のカンプトテシン誘導体化合物またはその光学異性体、その結晶形体、薬学的に許容可能な塩、水和物、もしくは溶媒和物であり、
前記リンカーが、共有結合を介して前記抗体と前記小分子毒素とを結合する、抗体薬物複合体。
【請求項18】
前記抗体薬物複合体が、以下の構造
【化15】
のうちの1つを有し、
式中、Abが、モノクローナル抗体、好ましくは抗her2抗体、より好ましくはトラスツズマブを表し、nが、2~8、好ましくは4~8、より好ましくは7~8である、請求項17に記載の抗体薬物複合体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、その全体が参照により本明細書中で援用される、2020年12月11日に出願された中国特許出願第2020114637044に対する優先権を主張する。
【0002】
本発明は、医薬化学の分野に関し、特に新規カンプトテシン誘導体、それを含む組成物およびその使用に関する。
【背景技術】
【0003】
DNAトポイソメラーゼは、DNAを基質として細胞核に存在し、細胞の複製、転写、有糸分裂に関与する。トポイソメラーゼの主な役割は、DNAのスーパーコイル構造を破壊することである。トポイソメラーゼは、トポイソメラーゼI(TopoI)およびトポイソメラーゼII(TopoII)に分類される。トポイソメラーゼが阻害されると、腫瘍細胞内に壊れたDNAが大量に蓄積し、腫瘍細胞の死滅が誘導される。DNAトポイソメラーゼI阻害剤は、カンプトテシンおよびその誘導体を含み、悪性腫瘍の治療に臨床的に使用されている。
【0004】
カンプトテシンは、カンレンボク(Camptotheca acuminata Decne)(ヌマミズキ科(Nyssaceae))から初めて分離され、比較的強い細胞毒性を有し、消化器系腫瘍(胃癌、結腸癌、直腸癌)、肝臓癌、乳癌、膀胱癌、白血病などの悪性腫瘍に対して優れた治療効果を示す。カンプトテシンには、溶解性と安定性が比較的悪く、毒性が高いという主な欠点があるため、臨床応用への使用は限定される。前記カンプトテシン誘導体は、水溶性基を導入するかプロドラッグを調製することによって水溶性を高め、それにより創薬可能性(druggability)を向上させることができる。トポテカン、およびそのカルバメートプロドラッグであるイリノテカンなど、溶解性を大幅に高めたカンプトテシン誘導体が、数多く市販されている。
【0005】
カンプトテシン誘導体は、腫瘍を治療するための化学療法薬として使用されるだけでなく、抗体薬物複合体(ADC)の小分子毒素(ペイロード)として抗体に結合させるためにも使用される。ADCは抗体と小分子毒素とを結合させている。このADCは、腫瘍細胞の表面抗原に結合する抗体の特異性と、腫瘍細胞を阻害して死滅させるための細胞傷害性薬剤の高い活性との両方を有する。従来の化学療法薬と比較して、ADCは腫瘍細胞をより正確に死滅させることができるため、正常細胞への影響が軽減される。近年、小分子毒素としてカンプトテシン誘導体を選択するADCの開発が盛ん行われている。DS-8201a(トラスツズマブ デルクステカン)は、第一三共株式会社が日本で初めて開発し、製造販売承認を取得したADCである。このADCは、小分子毒素としてカンプトテシン誘導体デルクステカンを選択し、カテプシンBによって加水分解可能でありリンカーとして自己切断構造を有するGGFGテトラペプチド、を取り入れている。
【0006】
【0007】
ただし、小分子毒素としてカンプトテシン誘導体を用いるADCは通常、一般的に比較的大きな薬物対抗体比(DAR)を必要とし、製造が困難であり、不安定になりやすい。したがって、より高い活性を有する新規カンプトテシン誘導体は、抗腫瘍薬またはADCの小分子毒素として幅広い応用の可能性を秘めている。本発明で提供される新規カンプトテシン誘導体は、デルクステカンなどの公知化合物と比較して、細胞活性が大幅に改善されており、新規抗腫瘍薬およびADCの開発にとって重要な意義を有する。
【0008】
(発明の概要)
本発明は、一般式(1)のカンプトテシン誘導体化合物、またはその光学異性体、結晶形体、薬学的に許容可能な塩、水和物、もしくは溶媒和物を提供する。
【化2】
ここで、一般式(1)において、
mは0、1または2の整数であり、
Xは、-O-、-S-、-S(O)-、-S(O
2)-、および-N(R
4)-から選択され、
R
1およびR
2は、独立して、H、ハロゲン、OH、C
1~6アルキル、C
1~6アルコキシ、C
1~6ハロアルキル、C
3~6シクロアルキル、NH
2、NO
2、およびCNから選択されるか、あるいはR
1およびR
2は、それらに結合したフェニル環と一緒に、環化により、
【化3】
を形成し、
R
3は、C
1~6アルキル、C
2~6アルケニル、C
1~3アルコキシ置換C
1~3アルキル、およびC
1~6ハロアルキルから選択され;
R
4は、H、C
1~6アルキルおよびC
1~6ハロアルキルから選択され;
R
5は、H、C
1~6アルキルおよびC
3~6シクロアルキルから選択され;
R
6およびR
7は、独立して、H、C
1~6アルキル、C
1~6ハロアルキル、およびC
3~6シクロアルキルから選択されるか;あるいはR
6およびR
7は、それらに結合している炭素原子と一緒に、環化によりC
3~6シクロアルキルまたは4~7員ヘテロシクロアルキルを形成するか;あるいはR
6およびR
5は、結合して5~7員ラクタム環を形成し、R
7は、H、C
1~6アルキル、C
1~6ハロアルキル、およびC
3~6シクロアルキルから選択され;
R
8は、OHおよびNR
9R
10から選択され、R
9およびR
10は、独立して、H、C
1~6アルキルおよびC
3~6シクロアルキルから選択されるか;あるいはR
9およびR
10は、それらに結合しているN原子と一緒に、環化により4~7員ヘテロシクロアルキルを形成し、前記4~7員ヘテロシクロアルキルは、置換されていないか、あるいはC
1~6アルキル、ハロゲン、OH、CN、およびNH
2から選択される1~3個の基で置換されている。
【0009】
別の好ましい実施形態では、式(1)において、R8は、OHである。
【0010】
別の好ましい実施形態では、式(1)において、R
1およびR
2は、独立して、H、ハロゲン、OH、Me、Et、OMe、OEt、CF
3、NH
2、NO
2、およびCNから選択され;R
1およびR
2は、独立して、好ましくは、H、F、Cl、Me、Et、OMe、OEtまたはCF
3であり;R
1およびR
2は、独立して、より好ましくは、H、F、Me、EtまたはOMeであり;R
1およびR
2は、独立して、より好ましくは、FまたはMeであり;あるいはR
1およびR
2は、それらに結合したフェニル環と一緒に、環化により、
【化4】
を形成する。
【0011】
別の好ましい実施形態では、式(1)において、R
3は、Me、Et、
【化5】
から選択され;R
3は、好ましくは、Et、
【化6】
であり;R
3は、より好ましくはEtである。
【0012】
別の好ましい実施形態では、式(1)において、Xは、-O-、-S-、-S(O)-、-S(O2)-、-N(H)-および-N(Me)-から選択され;Xは、好ましくは、-O-、-S-、-S(O)-、-S(O2)-または-N(Me)-であり;Xは、より好ましくは-S-である。
【0013】
別の好ましい実施形態では、式(1)において、R
5は、H、Me、Et、および
【化7】
から選択され;R
5は、好ましくはHまたはMeであり、R
5は、より好ましくはHである。
【0014】
別の好ましい実施形態では、式(1)において、R
6およびR
7は、独立して、H、Me、Et、CHF
2、CF
3、CH
2CF
3、
【化8】
から選択され;R
6およびR
7は、独立して、好ましくは、H、Me、CF
3、
【化9】
であり;R
6およびR
7は、独立して、より好ましくは、H、または
【化10】
であり;R
6およびR
7は、独立して、より好ましくは、Hであり;R
6およびR
7は、独立して、より好ましくは、
【化11】
である。
【0015】
別の好ましい実施形態では、式(1)において、
【化12】
は、
【化13】
から選択され、好ましくは、
【化14】
であり、より好ましくは、
【化15】
である。
【0016】
別の好ましい実施形態では、式(1)において、R
8は、OHであり、かつ
【化16】
は、
【化17】
から選択され、好ましくは、
【化18】
であり、より好ましくは、
【化19】
である。
【0017】
本発明のいくつかの実施形態において、カンプトテシン誘導体化合物またはその薬学的に許容可能な塩が、提供され、ここで、前記化合物は、以下の構造:
【化20】
のうちの1つを有する。
【0018】
本発明のいくつかの実施形態において、カンプトテシン誘導体化合物またはその薬学的に許容可能な塩が、提供され、ここで、前記化合物は、以下の構造:
【化21】
のうちの1つを有する。
【0019】
本発明のいくつかの実施形態において、一般式(1)の化合物、またはその異性体もしくは薬学的に許容可能な塩は、以下の構造:
【化22】
のうちの1つを有する。
【0020】
本発明のいくつかの実施形態において、一般式(1)の化合物、またはその異性体もしくは薬学的に許容可能な塩は、以下の構造:
【化23】
のうちの1つを有する。
【0021】
本発明のいくつかの実施形態において、本発明は抗体薬物複合体を提供し、ここで前記抗体薬物複合体は、以下の構造:
【化24】
のうちの1つを有し、式中、Abは、モノクローナル抗体、好ましくは抗her2抗体、より好ましくはトラスツズマブ(trastuzumab)を表し、nは、2~8、好ましくは4~8、より好ましくは7~8、例えば7.2または7.3である。
【0022】
本発明の目的は、抗体薬物複合体(ADC)の調製における、小分子毒素としての本発明の化合物、またはその光学異性体、結晶形体、薬学的に許容可能な塩、水和物もしくは溶媒和物の使用を提供することである。
【0023】
本発明の別の目的は、薬学的に許容可能な賦形剤または担体と、有効成分としての本発明の化合物またはその光学異性体、薬学的に許容可能な無機塩もしくは有機塩と、を含む医薬組成物を提供することである。
【0024】
本発明のさらに別の目的は、腫瘍および関連疾患を治療するための医薬の調製における、本発明の化合物、またはその光学異性体またはその薬学的に許容可能な無機塩もしくは有機塩、または前記医薬組成物の使用を提供することである。
【0025】
本発明のさらに別の目的は、抗体薬物複合体(ADC)を提供することであり、ここで前記抗体薬物複合体は、抗体と、小分子毒素と、リンカーとを含み、前記小分子毒素は、本発明の化合物であり、前記リンカーは、共有結合を介して前記抗体と前記小分子毒素とを結合する。
【0026】
上記の一般的な説明および以下の本発明の詳細な説明は、いずれも例示的かつ説明的なものであり、特許請求される本発明のさらなる説明を提供することを意図するものと理解されたい。
【0027】
(化合物の合成)
本明細書に開示される一般式(1)の化合物の調製方法を以下に具体的に記載するが、これらの具体的方法は本発明を何ら限定するものではない。
【0028】
上記の式(1)の化合物は、本明細書に記載の方法と組み合わせた標準的な合成技術、周知の技術を使用して、合成され得る。さらに、本明細書に記載される溶媒、温度および他の反応条件は異なっていてもよい。化合物の合成のための出発物質は、合成的にまたは商業的に入手することができる。本明細書に記載の化合物および異なる置換基を有する他の関連化合物は、March,ADVANCED ORGANICCHEMISTRY,4th Ed.,(Wiley 1992);CareyおよびSundberg,ADVANCED ORGANICCHEMISTRY,4th Ed.,Vols.AおよびB(Plenum 2000、2001)、ならびにGreenおよびWuts、PROTECTIVE GROUPS IN ORGANICSYNTHESIS,3rd Ed.,(Wiley 1999)に見出される方法を含む、周知の技術および出発物質を用いて合成され得る。化合物を調製するための一般的な方法は、本明細書で提供される式に様々な基を導入するための適切な試薬および条件を使用することによって、変更され得る。
【0029】
1つの態様において、本明細書に記載された化合物は、当該技術分野で周知の方法に従って調製される。ただし、反応物、溶媒、塩基、使用する化合物の量、反応温度、反応に要する時間などの方法に関わる条件は、以下の記載に限定されない。また、本発明の化合物は、本明細書に記載のまたは当技術分野で公知の種々の合成方法を任意に組み合わせて簡便に調製され得、このような組み合わせは、本発明が関連する当業者によって容易に決められ得る。1つの態様において、本発明は、下記一般反応スキーム1を用いて調製される、一般式(1)の化合物の調製方法も提供する。
【0030】
一般的な反応スキーム1
【化25】
【化26】
式中、R
1、R
2、R
3、R
5、R
6、R
7、R
8およびXは上記で定義した通りである。
【0031】
化合物A1を出発物質として用い、求核置換反応を行うと化合物A2が得られ、化合物A2を、鉄粉と塩酸との条件下でニトロ還元し、次いで加水分解して化合物A3が得られ、化合物A3を、フリーデル・クラフツアシル化反応に供して化合物A4が得られ、化合物A4をアセチル化して化合物A5が得られ、化合物A5を、ニトロ化、還元、アセチル化に供して化合物A6が得られ、化合物A6においてアニリン上のアセチルを除去して中間化合物A7が得られる。
【0032】
化合物B1を出発物質として用い、臭素化して化合物B2が得られ、化合物B2をキラルアミノ酸と反応させて化合物B3が得られ、化合物B3をアフィニティー置換(affinity substitution)反応させて化合物B4が得られ、化合物B4をシアノ還元して化合物B5が得られ、化合物B5をジアゾ化および求核反応させて化合物B6が得られ、化合物B6を最終的に環化して中間体化合物B7が得られる。
【0033】
中間体化合物A7と中間体化合物B7とを環化して中間体化合物B8を得、中間体化合物B8を脱アセチル化して化合物B9を得、化合物B9を最後にアミノ修飾または官能基変換して本発明の目的化合物を得る。
【0034】
化合物のさらなる形態
本明細書において「薬学的に許容可能な」とは、化合物がその生物学的活性または特性を消失する原因とならない担体や希釈剤などの物質を指す。それは、比較的無毒であり、例えば、個体に、ある物質を投与する場合、それは、望ましくない生物学的作用、またはその含有成分のいずれかと有害な相互作用を、引き起こさない。
【0035】
用語「薬学的に許容可能な塩」は、薬物投与に対して生物体に著しい刺激を与えず、または化合物の生物学的活性および特性を排除しない化合物の形態を指す。ある特定の態様において、薬学的に許容可能な塩は、一般式(1)の化合物を、酸、例えば、塩酸、臭化水素酸、フッ化水素酸、硫酸、リン酸、および硝酸などの無機酸、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、シュウ酸、トリフルオロ酢酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸、マレイン酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、ピクリン酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、およびp-トルエンスルホン酸などの有機酸、アスパラギン酸、およびグルタミン酸などの酸性アミノ酸、と反応させることによって得られる。
【0036】
薬学的に許容可能な塩は、溶媒付加形態または結晶形態、特に溶媒和物または多形体を含むことを理解されたい。溶媒和物は、化学量論的または非化学量論的量の溶媒を含み、水およびエタノールなどの薬学的に許容可能な溶媒との結晶化の際に選択的に形成される。溶媒が水の場合は水和物が、溶媒がエタノールの場合はアルコラートが形成される。一般式(1)の化合物の溶媒和物は、本明細書に記載の方法に従って好都合に調製または形成される。例えば、一般式(1)の化合物の水和物は、水/有機溶媒の混合溶媒からの再結晶によって好都合に調製され、使用される有機溶媒は、テトラヒドロフラン、アセトン、エタノールまたはメタノールを含むが、これらに限定されない。さらに、本明細書で言及される化合物は、非溶媒和形態および溶媒和形態の両方で存在することができる。一般に、溶媒和形態は、本明細書で提供される化合物および方法の目的のために、非溶媒和形態と同等であると考えられる。
【0037】
他の特定の例では、一般式(1)の化合物は、非晶質、粉砕、およびナノ粒子形態を含むが、これらに限定されない異なる形態で調製される。さらに、式(1)の化合物は、結晶形態を含み、また、多形体であってもよい。多形体は、化合物の同じ元素の異なる格子配列を含む。多形体は、通常、異なるX線回折パターン、赤外スペクトル、融点、密度、硬度、結晶形態、光学的特性、電気的特性、安定性、および溶解性を有する。再結晶溶媒、結晶化速度、保存温度などの様々な要因により、単結晶が優勢になる場合がある。
【0038】
別の態様では、一般式(1)の化合物は、キラル中心および/または軸不斉を有し得、したがって、ラセミ体、ラセミ混合物、単一エナンチオマー、ジアステレオマー化合物、単一ジアステレオマーおよびシス-トランス異性体の形態で存在し得る。各キラル中心または軸不斉は、独立して2つの光学異性体を生成し、すべての可能な光学異性体、ジアステレオマー混合物および純粋または部分的に純粋な化合物が、本発明の範囲に含まれる。本発明は、これらの化合物のすべてのそのような異性体を含むことを意味する。
【0039】
本発明の化合物は、このような化合物を構成する原子の1つ以上において、不自然な割合の原子同位体を含んでいてもよい。例えば、前記化合物は、トリチウム(3H)、ヨウ素-125(125I)およびC-14(14C)などの放射性同位体で標識され得る。他の例として、重水素を用いて水素原子を置換して重水素化化合物を形成することができ、重水素と炭素とによって形成される結合は、一般的な水素と炭素とによって形成される結合よりも強く、重水素化されていない医薬と比較して、一般に、重水素化医薬は、毒性および副作用を低減する、医薬の安定性を高める、治癒効果を高める、医薬のin vivo半減期を延長するなどの利点を有している。本発明の化合物のすべての同位体バリエーションは、放射性であるか否かにかかわらず、本発明の範囲に包含されることが意図される。
【0040】
用語の説明
特に明記しない限り、本明細書および特許請求の範囲において使用される用語は、以下のように定義される。本明細書および添付の特許請求の範囲において、単数形の「1つの(a)」および「1つの(an)」は文脈において特に明記しない限り、複数の意味を含むことに留意されたい。特に明記しない限り、質量分析法、核磁気共鳴分光法、HPLC、タンパク質化学、生化学、組換えDNA技術および薬理学のような従来の方法が用いられる。本明細書において、「または」または「および」は、特に明記しない限り、「および/または」を意味する。
【0041】
特に指定しない限り、「アルキル」は、1~6個の炭素原子を有する直鎖状および分岐状の基を含む飽和脂肪族炭化水素基を意味する。メチル、エチル、プロピル、2-プロピル、n-ブチル、イソブチルまたはtert-ブチルなどの、1~4個の炭素原子を有する低級アルキルが好ましい。本明細書で使用される場合、「アルキル」は、非置換および置換アルキル、特に1つ以上のハロゲンで置換されたアルキルを含む。好ましいアルキルは、CH3、CH3CH2、CF3、CHF2、CF3CH2、CF3(CH3)CH、iPr、nPr、iBu、nBuおよびtBuから選択される。
【0042】
特に指定しない限り、「アルキレン」は、上記で定義した2価のアルキルを指す。アルキレンの例としては、メチレン、エチレンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0043】
特に指定しない限り、「アルケニル」は、炭素-炭素二重結合を含む不飽和脂肪族炭化水素基を指し、1~14個の炭素原子を含む直鎖状または分枝状の基を含む。ビニル、1-プロペニル、1-ブテニルまたは2-メチルプロペニルなどの1~4個の炭素原子を含む低級アルケニルが、好ましい。
【0044】
特に指定しない限り、「アルキニル」は、炭素-炭素三重結合を含む不飽和脂肪族炭化水素基を指し、1~14個の炭素原子を含む直鎖状および分枝状の基を含む。エチニル、1-プロピニルまたは1-ブチニルなどの1~4個の炭素原子を含む低級アルキニルが、好ましい。
【0045】
特に指定しない限り、「シクロアルキル」は、非芳香族炭化水素環系(単環式、二環式、または多環式)を指し、部分的に不飽和のシクロアルキルは、炭素環が少なくとも1つの二重結合を含む場合、「シクロアルケニル」、または炭素環が少なくとも1つの三重結合を含む場合、「シクロアルキニル」と呼ばれることがある。シクロアルキルは、単環式基または多環式基、およびスピロ環(例えば、2、3、または4個の縮合環を有する)を含み得る。いくつかの実施形態において、シクロアルキルは単環式である。いくつかの実施形態において、シクロアルキルは、単環式または二環式である。シクロアルキルの環炭素原子は、任意に、酸化されてオキソ基またはスルフィド基を形成し得る。シクロアルキルは、シクロアルキレンをさらに含む。いくつかの実施形態において、シクロアルキルは、0、1または2個の二重結合を含む。いくつかの実施形態において、シクロアルキルは、1または2個の二重結合を含む(部分不飽和シクロアルキル)。いくつかの実施形態において、シクロアルキルは、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、およびヘテロシクロアルキルと縮合していてもよい。いくつかの実施形態において、シクロアルキルは、アリール、シクロアルキル、およびヘテロシクロアルキルと縮合していてもよい。いくつかの実施形態において、シクロアルキルは、アリールおよびヘテロシクロアルキルと縮合していてもよい。いくつかの実施形態において、シクロアルキルは、アリールおよびシクロアルキルと縮合していてもよい。シクロアルキルの例としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロペンテニル、シクロヘキセニル、シクロヘキサジエニル、シクロヘプタトリエニル、ノルカンファニル、ノルピナニル、ノルカルニル、ビシクロ[1.1.1]ペンチル、ビシクロ[2.1.1]ヘキシルなどが挙げられる。
【0046】
特に指定しない限り、「アルコキシ」は、エーテル酸素原子を介して分子の残りの部分に結合するアルキル基を指す。代表的なアルコキシ基は、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、イソブトキシ、sec-ブトキシおよびtert-ブトキシなどの1~6個の炭素原子を有するものである。本明細書で使用される場合、「アルコキシ」は、非置換および置換アルコキシ、特に1つ以上のハロゲンで置換されたアルコキシを含む。好ましいアルコキシは、OCH3、OCF3、CHF2O、CF3CH2O、i-PrO、n-PrO、i-BuO、n-BuOおよびt-BuOから選択される。
【0047】
特に指定しない限り、「アリール」は、単環式または多環式である芳香族炭化水素基を指す。例えば、単環式のアリール環は、1つ以上の炭素環式芳香族基と縮合し得る。アリールの例としては、フェニル、ナフチル、およびフェナントリルなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0048】
特に指定しない限り、「ヘテロシクロアルキル」は、ホウ素、リン、窒素、硫黄、酸素、およびリンから独立して選択される少なくとも1つのヘテロ原子環員を有する、環構造の部分(moiety)として任意に1つ以上のアルケニレンを含み得る非芳香族環または環系を指す。部分不飽和ヘテロシクロアルキルは、ヘテロシクロアルキルが少なくとも1つの二重結合を含む場合、「ヘテロシクロアルケニル」と呼ばれることがあり、ヘテロシクロアルキルが少なくとも1つの三重結合を含む場合、「ヘテロシクロアルキニル」と呼ばれることがある。ヘテロシクロアルキルは、単環式、二環式、スピロ環式、または多環式系(例えば、2つの縮合環または架橋環を有する)を含み得る。いくつかの実施形態において、ヘテロシクロアルキルは、窒素、硫黄および酸素から独立して選択される1、2または3個のヘテロ原子を有する単環式基である。ヘテロシクロアルキルの環炭素原子およびヘテロ原子は、任意に、酸化されて、オキソ基もしくはスルフィド基または他の酸化結合(例えば、C(O)、S(O)、C(S)もしくはS(O)
2、N-オキシドなど)を形成していてもよく、または窒素原子は4級化されていてもよい。ヘテロシクロアルキルは、環炭素原子または環ヘテロ原子を介して結合していてもよい。いくつかの実施形態において、ヘテロシクロアルキルは、0~3個の二重結合を含む。いくつかの実施形態において、ヘテロシクロアルキルは、0~2個の二重結合を含む。また、ヘテロシクロアルキルの定義には、ヘテロシクロアルキル環に縮合した(すなわち、結合を共有する)1つ以上の芳香族環を有する部分、例えば、ピペリジン、モルホリン、アゼピン、チエニルなどのベンゾ誘導体も含まれる。縮合芳香環を含むヘテロシクロアルキルは、縮合芳香環の環原子を含む任意の環原子を介して結合していてもよい。ヘテロシクロアルキルの例としては、アゼチジニル、アゼピニル、ジヒドロベンゾフリル、ジヒドロフリル、ジヒドロピラニル、N-モルホリニル、3-オキサ-9-アザスピロ[5.5]ウンデシル、1-オキサ-8-アザスピロ[4.5]デシル、ピペリジニル、ピペラジニル、オキソピペラジニル、ピラニル、ピロリジニル、キニニル(quininyl)、テトラヒドロフリル、テトラヒドロピラニル、1,2,3,4-テトラヒドロキノリニル、トロパニル、4,5,6,7-テトラヒドロチアゾロ[5,4-c]ピリジニル、4,5,6,7-テトラヒドロ-1H-イミダゾ[4,5-c]ピリジン、N-メチルピペリジニル、テトラヒドロイミダゾリル、ピラゾリジニル、ブチロラクタム、バレロラクタム、イミダゾリジノニル(imidazolidinonyl)、ヒダントイニル、ジオキソラニル、フタルイミジル、ピリミジン-2,4(1H,3H)-ジオン、1,4-ジオキサニル、モルホリニル、チオモルホリニル、チオモルホリニル-S-オキシド、チオモルホリニル-S,S-オキシド、ピペラジニル、ピラニル、ピリドニル、3-ピロリニル、チオピラニル、ピロニル、テトラヒドロチエニル、2-アザスピロ[3.3]ヘプタニル、インドリニル、
【化27】
が挙げられるが、これらに限定されない。
【0049】
特に指定しない限り、「ハロゲン」(またはハロ)は、フッ素、塩素、臭素、またはヨウ素を指す。基名の前の用語「ハロ」(または「ハロゲン化」)は、その基が部分的または完全にハロゲン化されていること、すなわち、F、Cl、BrまたはI、好ましくはFまたはClによって任意の組み合わせで置換されていることを示す。
【0050】
「任意の」または「任意に」は、その後に記載される事象または状況が生じる可能性があるが、必ずしも生じないことを意味し、その記載には、その事象または状況が生じる例および生じない例が含まれる。
【0051】
置換基「-O-CH
2-O-」は、置換基中の2個の酸素原子が、ヘテロシクロアルキル、アリールまたはヘテロアリール中の2個の隣接する炭素原子に結合していることを意味し、例えば、以下のとおりである。
【化28】
【0052】
リンカー基の番号が-(CH2)0-のように0である場合、そのリンカー基が単結合であることを意味する。
【0053】
変数の1つが化学結合から選択される場合、この変数によってリンクされる2つの基が直接リンクされることを意味する。例えば、X-L-YのLが化学結合を表す場合、実際にはX-Yの構造であることを意味する。
【0054】
特に記載のない限り、立体中心の絶対配置はくさび形実線結合
【化29】
およびくさび形破線結合
【化30】
で表され、立体中心の相対配置は直線実線結合
【化31】
および直線破線結合
【化32】
で表される。
【0055】
波線
【化33】
は、くさび形実線結合
【化34】
またはくさび形破線結合
【化35】
を表し、あるいは波線
【化36】
は直線実線結合
【化37】
または直線破線結合
【化38】
を表す。
【0056】
特に記載のない限り、単結合または二重結合は、
【化39】
により表される。
【0057】
具体的な医薬品・医療用語
本明細書で使用される「許容可能な」という用語は、処方成分または活性成分が、一般的な治療対象の健康に過度に有害な作用を及ぼさないことを意味する。
【0058】
本明細書で使用される用語「処置」、「処置経過」、または「治療」は、疾患の症状または状態を緩和、阻害、または改善すること、合併症の発生を阻害すること、根底となるメタボリック症候群を改善または予防すること、疾患または状態の発生を阻害すること(例えば、疾患または状態の進行を制御すること)、疾患または症状を緩和すること、疾患または症状を軽減すること、疾患または症状によって引き起こされる合併症を緩和すること、または疾患もしくは症状によって引き起こされる兆候を予防もしくは処置することを含む。本明細書で使用される場合、化合物または医薬組成物は、投与されると、疾患、症状、または状態を改善することができ、特に、疾患の重症度を改善させる、発症を遅らせる、進行を遅らせる、または持続期間を短縮することができる。固定投与もしくは一時投与、または継続投与もしくは間欠投与は、投与に起因するか、または投与に関連し得る。
【0059】
「有効成分」とは、一般式(1)の化合物、および一般式(1)の化合物の薬学的に許容可能な無機塩または有機塩を指す。本発明の化合物は、1つ以上の不斉中心(キラル中心または軸不斉)を含んでいてもよく、したがって、ラセミ体、ラセミ混合物、単一エナンチオマー、ジアステレオマー化合物、および単一ジアステレオマーの形態で存在し得る。存在し得る不斉中心は、分子上の様々な置換基の特性に依存する。これらの不斉中心はそれぞれ独立して2つの光学異性体を生成し、すべての可能な光学異性体、ジアステレオマー混合物および純粋または部分的に純粋な化合物が、本発明の範囲に含まれる。本発明は、これらの化合物のすべてのそのような異性体形態を含むことを意味する。
【0060】
本明細書では、「化合物」、「組成物」、「薬剤」または「医薬または医薬品」などの用語は、互換的に用いられ、いずれも、個体(ヒトまたは動物)に投与されると、局所および/または全身作用により所望の薬理的および/または生理学的反応を誘発することができる化合物または組成物を指す。
【0061】
「投与される、投与する、または投与」という用語は、本明細書では化合物もしくは組成物の直接投与、または活性化合物のプロドラッグ、誘導体、アナログ等の投与を指す。
【0062】
本発明の広い範囲を定義する数値範囲およびパラメータは近似値であるが、特定の実施形態に示される関連する値は、可能な限り正確に本明細書に示されている。しかし、どのような数値も本質的に、ある種の試験方法から必然的に生じる標準偏差を含んでいる。ここで、「約」とは、一般に、実際の数値が特定の数値または範囲±10%、5%、1%、または0.5%以内であることを意味する。あるいは、「約」という用語は、当業者が考えるように、実際の数値が平均値の許容できる標準誤差の範囲内にあることを示す。実験例を除きまたは特に明記されない限り、本明細書で使用されるすべての範囲、量、値および百分率(例えば、材料の量、時間の長さ、温度、運転条件、量の割合などを記載するために)は、用語「約」によって修正されことが理解される。したがって、特に明記されない限り、本明細書および添付の特許請求の範囲に記載された数値パラメータは、すべて所望により変化し得る近似値である。少なくとも、これらの数値パラメータは、示された有効数字または従来の丸め規則を使用して得られた数値と解釈されるべきである。
【0063】
本明細書で使用される科学技術用語は、本明細書で別途定義されない限り、当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。さらに、本明細書で使用される単数形の名詞は、文脈と矛盾しない限り、それらの複数形を包含し、使用される複数形の名詞は、それらの単数形も包含する。
【0064】
治療用途
本発明は、本発明の化合物、抗体-薬物複合体または医薬組成物を用いて、癌を含むがこれらに限定されない疾患を処置する方法を提供する。
【0065】
いくつかの実施形態では、癌を処置する方法であって、それを必要としている個体に、前述の化合物および抗体薬物複合体のいずれかの有効量の医薬組成物を投与することを含む方法、が提供される。他の実施形態において、癌は、血液癌および固形腫瘍であり、白血病、乳癌、肺癌、膵臓癌、結腸癌、膀胱癌、脳腫瘍、尿路上皮癌、前立腺癌、肝臓癌、卵巣癌、頭頸部癌、胃癌、中皮腫、またはすべての癌転移巣を含むが、これらに限定されない。
【0066】
投与経路
本発明の化合物およびその薬学的に許容可能な塩は、安全かつ有効な量の、本発明の化合物またはその薬学的に許容可能な塩と、薬学的に許容可能な賦形剤または担体とを含む種々の製剤に調製することができ、ここで「安全かつ有効な量」とは、重篤な副作用を引き起こすことなく状態を著しく改善するのに充分な化合物の量を意味している。化合物の安全かつ有効な量は、処置される対象の年齢、状態、処置の経過、および他の特定の状態に従って決定される。
【0067】
「薬学的に許容可能な賦形剤または担体」とは、ヒトでの使用に適し、かつ、充分な純度および低毒性を有していなければならない、1つ以上の適合性のある固体または液体の充填剤またはゲル物質を指す。ここで「適合性」とは、組成物の成分が、化合物の医薬的効力を著しく低下させることなく、本発明の化合物と相互混合することが可能であることを意味する。薬学的に許容可能な賦形剤または担体の例としては、セルロースおよびその誘導体(例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロースナトリウムまたは酢酸セルロース)、ゼラチン、タルク、固体潤滑剤(例えば、ステアリン酸またはステアリン酸マグネシウム)、硫酸カルシウム、植物油(例えば、大豆油、ゴマ油、落花生油、オリーブ油など)、ポリオール(例えば、プロピレングリコール、グリセロール、マンニトール、ソルビトールなど)、乳化剤(Tween(登録商標)など)、湿潤剤(ラウリル硫酸ナトリウムなど)、着色剤、香料、安定剤、酸化防止剤、防腐剤、発熱物質を含まない水などが挙げられる。
【0068】
本発明の化合物を投与する場合、経口、直腸、非経口(静脈内、筋肉内、もしくは皮下)または局所的に投与することができる。
【0069】
経口投与のための固形剤形には、カプセル、錠剤、丸剤、散剤(pulvises)および顆粒が含まれる。これらの固形剤形において、前記活性化合物は、クエン酸ナトリウムまたはリン酸二カルシウムなどの少なくとも1つの従来の不活性賦形剤(または担体)、または以下の成分:(a)デンプン、ラクトース、スクロース、グルコース、マンニトールおよびケイ酸などの充填剤または増量剤;(b)ヒドロキシメチルセルロース、アルギン酸塩、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、スクロースおよびアカシアなどの結合剤;(c)グリセロールなどの保湿剤;(d)寒天、炭酸カルシウム、ジャガイモデンプンもしくはタピオカデンプン、アルギン酸、ある種の複合ケイ酸塩、および炭酸ナトリウムなどの崩壊剤;(e)パラフィンなどの溶液遅延剤;(f)第四級アンモニウム化合物などの吸収促進剤;(g)セチルアルコールおよびモノステアリン酸グリセロールなどの湿潤剤;(h)カオリンなどの吸着剤;および(i)タルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固体ポリエチレングリコールおよびラウリル硫酸ナトリウムなどの潤滑剤、またはこれらの混合物と混合される。カプセル、錠剤および丸剤の場合、前記剤形は、緩衝剤を更に含んでもよい。
【0070】
錠剤、糖衣錠、カプセル、丸剤および顆粒などの固体剤形は、腸溶性コーティングおよび当技術分野で周知の他の材料などのコーティングおよびシェルを用いて、調製され得る。これらは不透明化剤を含んでもよく、そのような組成物中の活性化合物または化合物は、消化管の特定の部分で遅延して放出され得る。使用され得る埋め込み成分の例としては、高分子物質およびワックス系物質が挙げられる。必要に応じて、前記活性化合物は、1つ以上の上記賦形剤と共にマイクロカプセルを形成し得る。
【0071】
経口投与のための液体剤形には、薬学的に許容可能なエマルジョン、溶液、懸濁液、シロップ、エリキシルなどが含まれる。活性化合物に加えて、前記液体剤形は、水または他の溶媒、可溶化剤および乳化剤、例えば、エタノール、イソプロパノール、炭酸エチル、酢酸エチル、プロピレングリコール、1,3-ブタンジオール、ジメチルホルムアミド、および油、特に綿実油、落花生油、トウモロコシ胚芽油、オリーブ油、ヒマシ油およびゴマ油、またはこれらの物質の混合物などの、当該技術分野で一般的に使用される不活性希釈剤を含み得る。
【0072】
このような不活性希釈剤に加えて、前記組成物は更に、湿潤剤、乳化剤、懸濁剤、甘味剤、香味剤、および香料などのアジュバントを含み得る。
【0073】
懸濁液は、活性化合物に加えて、エトキシル化イソステアリルアルコール、ポリオキシエチレンソルビトールおよびソルビタンエステル、微結晶セルロース、アルミニウムメチラート、ならびに寒天、またはこれらの物質の混合物などの、懸濁剤を含み得る。
【0074】
非経口注射用組成物は、生理学的に許容可能な滅菌水溶液または非水性溶液、分散液、懸濁液またはエマルジョン、および滅菌注射用溶液または分散液に再構成するための滅菌粉末を含み得る。適切な水性および非水性担体、希釈剤、溶媒または賦形剤には、水、エタノール、ポリオール、およびそれらの適切な混合物が含まれる。
【0075】
本発明の化合物を局所投与するための剤形としては、軟膏、散剤、パッチ、スプレー、および吸入剤などが挙げられる。前記有効成分は、生理学的に許容可能な担体、および必要に応じて要求され得る任意の保存剤、緩衝剤または噴霧剤と無菌条件下で混合される。
【0076】
本発明の化合物は、単独で、または他の薬学的に許容可能な化合物と組み合わせて投与され得る。本発明の医薬組成物が使用される場合、処置対象となる哺乳動物(ヒトなど)に対して、安全かつ有効な量の本発明の化合物が投与され、ここで、その投与量は、薬学的に有効な投与量である。体重60kgのヒトの場合、1日の投与量は、通常1~2000mg、好ましくは50~1000mgである。なお、具体的な投与量の決定にあたっては、投与経路、患者の健康状態等も考慮されるが、これらは当業者には周知である。
【0077】
本発明で述べた上記の特徴、または実施形態において上述した特徴は、任意に組み合わせることができる。本明細書に開示される全ての特徴は、任意の組成物の形態で使用することができ、本明細書に開示される様々な特徴は、同一、同等または類似の目的を提供する任意の代替の特徴で置き換えることができる。従って、特に明記しない限り、開示された特徴は、同等または類似の特徴の一般的な例に過ぎない。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【
図1】本発明による実施例11のマウスにおける抗腫瘍活性の結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0079】
(詳細な説明)
上記の化合物、方法および医薬組成物の様々な特定の態様、特徴および利点は、以下のように詳細に記載され、これにより本発明の内容が非常に明確になるであろう。以下の詳細な説明および実施例は、参考のために特定の実施形態を記述していることを理解されたい。本発明の説明を読んだ後、当業者は、本発明に対して様々な変更または修正を加えることができ、そのような均等物も、本明細書で定義される本発明の範囲内に入る。
【0080】
すべての実施例において、1H-NMRスペクトルをVarian Mercury400核磁気共鳴装置で記録し、化学シフトをδ(ppm)で表した;分離用シリカゲルは特に指定がなければ200~300メッシュのシリカゲルを使用し、溶離液の比率は体積比であった。
【0081】
本発明では、以下の略号を使用する:室温(RT、rt);水溶液(aq.);石油エーテル(PE);酢酸エチル(EA);ジクロロメタン(DCM);1,4-ジオキサン(ジオキサン);メタノール(MeOH);メチルtert-ブチルエーテル(MTBE);エタノール(EtOH);テトラヒドロフラン(THF);ジメチルホルムアミド(DMF);N-メチルピロリドン(NMP);ジメチルスルホキシド(DMSO);トリエチルアミン(TEA);ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA);4-ジメチルアミノピリジン(DMAP);四塩化炭素(CCl4);パラジウム炭素(Pd/C);イートン試薬(Eaton reagent、7.7重量%の五酸化リンのメタンスルホン酸溶液);鉄粉(Fe);亜鉛粉末(Zn);ラネーニッケル(Ranyi Ni);塩化アセチル(AcCl);酢酸(AcOH);無水酢酸(Ac2O);m-クロロ過安息香酸(m-CPBA);亜硝酸ブチル(n-BuNO);亜硝酸ナトリウム(NaNO2);水素化ナトリウム(NaH);硫酸マグネシウム(MgSO4);N-ブロモスクシンイミド(NBS);p-トルエンスルホン酸一水和物(TsOH.H2O);炭酸ナトリウム(Na2CO3);炭酸カリウム(K2CO3);当量(eq);グラム/ミリグラム(g/mg);モル/ミリモル(mol/mmol);リットル/ミリリットル(L/mL);分(min(s));時間(h、hr、hrs);窒素(N2);核磁気共鳴(NMR);液体質量分析(LC-MS);薄層クロマトグラフィー(TLC);分取液体クロマトグラフィー(pre-HPLC)。
【実施例】
【0082】
調製例1:N-(5-アミノ-7-フルオロ-8-メチル-4-オキソチオクロマン-3-イル)アセトアミド(A7-a)の合成
【0083】
【0084】
ステップ1:メチル3-((3-フルオロ-2-メチル-5-ニトロフェニル)チオ)プロパノアートの合成
【化41】
【0085】
50mLの三ツ口フラスコにA1-a(1.73g、10mmol、1当量)、メチル3-メルカプトプロパノアート(1.8g、15mmol、1.5当量)およびNMP(10mL)を加え、系が溶解した後、炭酸カリウム(2g、15mmol、1.5当量)を加え、アルゴン雰囲気下、60℃で8時間撹拌した。系を室温まで冷却した後、水(30mL)を加えて系を希釈し、析出した固体を濾過し、水で洗浄した。濾過ケークをカラムクロマトグラフィー(PE/EA=1/12-1/7)で分離し、黄色固体A2-a(1.55g、収率56.8%)を得た。LC-MS: 274.2 [M+H]+。
【0086】
ステップ2:3-((3-フルオロ-2-メチル-5-アミノフェニル)チオ)プロピオン酸の合成
【化42】
【0087】
250mLの三ツ口フラスコに、A2-a(1.55g、5.67mmol、1当量)、鉄粉(1.27g、22.69mmol、4当量)、エタノール(80mL)、塩化アンモニウム水溶液(2.8M、28mL、5当量)を加え、アルゴン雰囲気下、系を90℃で16時間撹拌した。系を室温まで冷却した後、セライトでろ過し、エタノールで洗浄した。ろ液を濃縮し、粗生成物を水(30mL)で希釈し、EA(30mL×2)で抽出した。有機相を飽和塩水で洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥し、濃縮して粗生成物(1.5g、当量収率)を得た。LC-MS: 244.3 [M+H]+。
【0088】
50mLの三ツ口フラスコに、上記粗生成物(1.5g、5.67mmol、1当量)および1,4-ジオキサン(15mL)を加え、系が溶解した後、濃塩酸(37%、10mL)を加え、アルゴン雰囲気下、65℃で4時間撹拌した。系を室温まで冷却した後、3N炭酸ナトリウム水溶液を加えてpHを5に調整した。系をEA(30mL×2)で抽出し、有機相を飽和塩水で洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥し、濃縮した。粗生成物をスラリー化(EA/PE=1/5)し、白色固体A3-aを得た(985mg、2段階収率75.8%)。LC-MS: 228.2 [M-H]-。
【0089】
ステップ3:5-アミノ-7-フルオロ-8-メチルチオクロマン-4-オンの合成
【化43】
【0090】
50mLの三ツ口フラスコに、A3-a(985mg、4.3mmol、1当量)およびイートン試薬(15mL)を加え、アルゴン雰囲気下、60℃で1時間撹拌した。系を室温まで冷却した後、反応液を氷水に注ぎ、3N炭酸ナトリウム水溶液を加えてpHを8に調整した。系をEA(30mL×2)で抽出し、有機相を飽和塩水で洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥し、濃縮して粗生成物A4-a(1.05g、当量収率)を得た。LC-MS: 212.3 [M+H]+。
【0091】
ステップ4:N-(7-フルオロ-8-メチル-4-オキソチオクロマン-5-イル)アセトアミドの合成
【化44】
【0092】
50mLの三ツ口フラスコに、A4-a(1.05g、4.3mmol、1当量)、DMAP(52.5mg、0.43mmol、0.1当量)およびDCM(15mL)、塩化アセチル(674mg、8.6mmol、2当量)およびトリエチルアミン(869mg、8.6mmol、2当量)を氷浴下で順次加えた。系を自然に室温に戻し、次いで、出発物質が完全に消費されるまで1時間撹拌した。系を水(20mL)でクエンチし、次いで分離した。水相をDCM(20mL×2)で抽出し、有機相を合わせ、飽和塩水で洗浄し、乾燥し、濃縮した。残渣をカラムクロマトグラフィー(EA/PE=1/1)にかけ、黄色固体A5-a(910mg、2段階収率89%)を得た。LC-MS: 254.3 [M+H]+。
【0093】
ステップ5:N,N’-(7-フルオロ-8-メチル-4-オキソチオクロマン-3,5-ジイル)ジアセトアミドの合成
【化45】
【0094】
50mLの三ツ口フラスコに、-20℃でカリウムtert-ブトキシド(191mg、1.7mmol、1.1当量)および無水THF(5mL)、A5-a(375mg、1.48mmol、1当量)および亜硝酸ブチル(190mg、1.85mmol、1.25当量)を順次加えた。系を5℃に加熱し、出発物質が完全に消費されるまで2時間撹拌した。系に希釈用MTBE(15mL)を加え、濾過し、固体を酢酸(5mL)に溶解し、亜鉛粉末(200mg、3.1mmol、2.1当量)を加え、室温で5分間撹拌し、無水酢酸(1mL)を加え、2時間撹拌した。系をMeOH/DCM(3/30mL)で洗浄し、濃縮し、粗生成物をカラムクロマトグラフィー(EA/DCM=1/10~1/5)で分離し、淡褐色固体A6-a(175mg、41%)を得た。LC-MS: 311.1 [M+H]+。
【0095】
ステップ6:N-(5-アミノ-7-フルオロ-8-メチル-4-オキソチオクロマン-3-イル)アセトアミドの合成
【化46】
【0096】
50mLの三ツ口フラスコに、A6-a(175mg、0.56mmol、1当量)およびメタノール/1,4-ジオキサン(4/8mL)を加え、系が溶解した後、濃塩酸(37%、4mL)を加え、アルゴン雰囲気下、40℃で2時間撹拌した。系を室温まで冷却した後、3N炭酸ナトリウム水溶液を加えてpHを8に調整した。系を濾過し、固体を乾燥してA7-a(137mg、91%収率)を得た。LC-MS: 269.2 [M+H]+。
【0097】
A7-aの合成と同様に、以下の表に示す中間体が得られる。
【0098】
【0099】
調製例2:(S)-4-(2-フルオロエチル)-4-ヒドロキシ-7,8-ジヒドロ-1H-ピラノ[3,4-f]インドリジン-3,6,10(4H)-トリオン(B7-a)の合成
【化47】
【0100】
ステップ1:エチル2-ブロモ-2-(6-シアノ-5-オキソ-2,3-ジヒドロ-5H-スピロ[インドリジン-1,2’-[1,3]ジオキソラン]-7-イル)アセテートの合成
【化48】
【0101】
B1-a(3g、9.9mmol、1当量)をDMF(75mL)に溶解し、NBS(1.5g、12mmol、1.2当量)およびm-CPBA(170mg、1mmol、0.1当量)を加え、系を室温で一晩撹拌した後、氷水500mLに注ぎ、濾過した。固体を水で洗浄し、乾燥させて灰色の固体B2-a(3.8g、当量収率)を得た。LC-MS: 383.2 [M+H]+。
【0102】
ステップ2:1-(6-シアノ-5-オキソ-2,3-ジヒドロ-5H-スピロ[インドリジン-1,2’-[1,3]ジオキソラン]-7-イル)-2-エトキシ-2-オキソエチルトシル-D-プロリナートの合成
【化49】
【0103】
B2-a(1g、2.6mmol、1当量)、トシル-D-プロリン酸ナトリウム(1g、3.9mmol、1.5当量)およびK2CO3(362mg、2.6mmol、1当量)をDMF(20mL)に溶解し、系をアルゴン雰囲気下、出発物質が完全に消費されるまで65℃で2時間撹拌した。系に水(100mL)を加えて希釈し、EA(100mL×3)で抽出し、有機相を合わせて水で2回洗浄し、飽和塩水で洗浄し、乾燥し、濃縮した。残渣をカラムクロマトグラフィー(EA/DCM=1/6)で分離し、白色固体B3-aを得た(1.1g、収率74%)。LC-MS: 572.2 [M+H]+。
【0104】
ステップ3:(S)-2-(6-シアノ-5-オキソ-2,3-ジヒドロ-5H-スピロ[インドリジン-1,2’-[1,3]ジオキソラン-7-イル)-1-エトキシ-4-フルオロ-1-オキソブタン-2-イル トシル-D-プロリナートの合成
【化50】
【0105】
B3-a(1g、1.7mmol、1当量)をDMF(20mL)に溶解し、氷浴下でNaH(101mg、60%、2.5mmol、1.5当量)を加えた。系を室温に戻し、1時間撹拌した後、氷浴下で2-フルオロヨードエタン(1.5g、8.6mmol、5当量)を加え、自然に室温に戻し、一晩撹拌した。反応終了後、系を氷水(100mL)に注ぎ、EA(100mL×3)で抽出し、有機相を合わせ、水で2回洗浄し、飽和塩水で洗浄し、乾燥し、濃縮した。残渣をカラムクロマトグラフィー(EA/DCM=1/6)で分離し、粗生成物743mgを得た。これをPre-HPLCにかけ、白色固体B4-a(150mg、70%de、収率15%)を得た。LC-MS: 618.2 [M+H]+。
【0106】
ステップ4:(S)-2-(6-(アセトアミドメチル)-5-オキソ-2,3-ジヒドロ-5H-スピロ[インドリジン-1,2’-[1,3]ジオキソラン]-7-イル)-1-エトキシ-4-フルオロ-1-オキソブタン-2-イル トシル-D-プロリナートの合成
【化51】
【0107】
50mLの三ツ口フラスコに、ラネーニッケル(600mg、含水率50%)を加え、系をHOAcで3回洗浄し、アルゴン雰囲気下、B4-a(150mg、0.24mmol、1当量)のAc2O/HOAc(4/1mL)溶液を加え、水素で3回パージし、65℃で3時間反応させ、濾過した。固体をAcOHで洗浄し、濾液を濃縮し、カラムクロマトグラフィー(MeOH/DCM=1/20)で分離して、無色油状溶液B5-a(130mg、収率83%)を得た。LC-MS:664.2[M+H]+。
【0108】
ステップ5:(S)-2-(6-(アセトキシメチル)-5-オキソ-2,3-ジヒドロ-5H-スピロ[インドリジン-1,2’-[1,3]ジオキソラン]-7-イル)-1-エトキシ-4-フルオロ-1-オキソブタン-2-イル トシル-D-プロリナートの合成
【化52】
【0109】
B5-a(130mg、0.2mmol、1当量)をAc2O/HOAc(3/1mL)に溶解し、氷浴下でNaNO2(68mg、1mmol、5当量)を加えた。系を室温に戻し、1時間撹拌した。反応終了後、系を濾過し、固体をAcOHで洗浄し、濾液を濃縮し、CCl4(15mL)を加え、還流下で一晩撹拌した。系を水で洗浄し、飽和食塩水で洗浄し、乾燥し、濃縮した。残渣をカラムクロマトグラフィー(MeOH/DCM=1/20)で分離し、90mgの無色油状溶液を得、これをPre-HPLCにかけ、白色固体B6-a(90mg、収率69%)を得た。LC-MS:665.2 [M+H]+。
【0110】
ステップ6:(S)-4-(2-フルオロエチル)-4-ヒドロキシ-7,8-ジヒドロ-1H-ピラノ[3,4-f]インドリジン-3,6,10(4H)-トリオンの合成
【化53】
【0111】
B6-a(90mg、0.14mmol、1当量)をEtOH(3mL)に溶解し、1N炭酸ナトリウム水溶液(1mL)を加えた。出発物質が完全に消費されるまで系を室温で1時間撹拌し、室温で濃縮し、凍結乾燥した。粗生成物を85%TFA水溶液(5mL)に溶解し、85℃で1時間撹拌した。反応終了後、系を濃縮し、粗生成物をPre-HPLCで分離し、白色固体B7-a(7mg、収率17%、68%de)を得た。LC-MS:282.2 [M+H]+.
【0112】
B7-aの合成と同様に、以下の表に示す中間体が得られる。
【0113】
【0114】
実施例1:(9S)-1-アミノ-9-エチル-5-フルオロ-9-ヒドロキシ-4-メチル-1,9,12,15-テトラヒドロ-13H-ピラノ[3’,4’:6,7]インドリジノ[1,2-b]チオピラノ[4,3,2-de]キノリン-10,13(2H)-ジオン(化合物1)の合成
【化54】
【0115】
ステップ1:N-((9S)-9-エチル-5-フルオロ-9-ヒドロキシ-4-メチル-10,13-ジオキソ-1,2,9,10,13,15-ヘキサヒドロ-12H-ピラノ[3’,4’:6,7]インドリジノ[1,2-b]チオピラノ[4,3,2-de]キノリン-1-イル)アセトアミドの合成
【化55】
【0116】
50mLの三ツ口フラスコに、A7-a(108mg、0.4mmol、1当量)、B7-b(156mg、0.6mmol、1.5当量)、p-トルエンスルホン酸一水和物(45mg、0.24mmol、0.6当量)、無水硫酸マグネシウム(1g)および酢酸(10mL)を加え、系をアルゴン雰囲気下、出発物質が完全に消費されるまで105℃で24時間撹拌した。系を濾過し、濾過ケークをEAで洗浄し、濃縮した。粗生成物をカラムクロマトグラフィー(MeOH/DCM=1/40-1/20)で分離し、淡褐色固体B8-a(131mg、67%)を得た。LC-MS: 496.2 [M+H]+。
【0117】
ステップ2:(9S)-1-アミノ-9-エチル-5-フルオロ-9-ヒドロキシ-4-メチル-1,9,12,15-テトラヒドロ-13H-ピラノ[3’,4’:6,7]インドリジノ[1,2-b]チオピラノ[4,3,2-de]キノリン-10,13(2H)-ジオンの合成
【化56】
【0118】
50mLの三ツ口フラスコに、B8-a(131mg、0.26mmol、1当量)および1,4-ジオキサン(5mL)を加え、系が溶解した後、濃塩酸(37%、5mL)を加え、アルゴン雰囲気下、80℃で24時間撹拌した。系を室温まで冷却した後、濃縮した。粗生成物をACN/EA(1/1)でスラリー化し、褐色固体1(塩酸塩)(107mg、収率84.6%)を得た。LC-MS:454.2 [M+H]+。
【0119】
化合物1の合成と同様に、以下の表に示す化合物が得られる。
【0120】
【0121】
実施例2:化合物1のキラル分離
化合物1は一対のジアステレオマー混合物であり、塩化、再結晶、またはpre-HPLCによる分離精製の方法を採用することにより、化合物1の2つのジアステレオ異性体1-1およびジアステレオ異性体1-2が得られる。
【化57】
【0122】
クロマトグラフィーの条件:
Shimadzu LC-20APを備えた分取液体クロマトグラフ;クロマトグラフィーカラム:Waters SunFire Prep C18 OBD(50×150mm、5μm);移動相:アセトニトリル-0.5‰ トリフルオロ酢酸水溶液=66:34;流量:48.0mL/分;検出波長:254nm;注入量:3000μm。
【0123】
実験手順は以下の通りである:
1を適量採取し、50%アセトニトリル水溶液を用いて一定量にした。濃度25mg/mLの被験試料溶液を調製した。この試験試料溶液を採取し、本発明のクロマトグラフィーの条件に従って検出用の分取液体クロマトグラフに置き、データを記録した。
【0124】
その結果、上記溶液をpre-HPLCで分離し、1-1(33mg)および1-2(31mg)を得た。この2成分の保持時間はそれぞれ5.419分および7.614分であり、その純度は、それぞれ99.38%および99.21%であった。
【0125】
化合物1のキラル分離法と同様に、以下の表に示す化合物が得られる。
【0126】
【0127】
実施例3:化合物32-1および化合物32-2の合成
【化58】
【0128】
50mLの三ツ口フラスコに、氷浴下で、保持時間の長い成分1-2(98mg、0.2mmol、1当量)、2-ヒドロキシ酢酸(18.4mg、0.24mmol、1.2当量)、無水DCM(5mL)、HATU(84mg、0.3mmol、1.5当量)およびDIPEA(90.3mg、0.7mmol、3.5当量)を順次加えた。温度を0.5時間維持した後、系に水(5mL)を加えて希釈し、続いてDCM(5mL×2)で液分離抽出した。有機相を飽和塩水で洗浄し、乾燥し、濃縮した。残渣をカラムクロマトグラフィー(MeOH/DCM=1/40)にかけ、化合物32-2(75mg、収率73%)を得た。
【0129】
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ: 8.21 (dd, J = 13.3, 8.5 Hz, 1H), 7.78 (d, J = 10.6 Hz, 1H), 7.31 (d, J = 1.2 Hz, 1H), 6.53 (s, 1H), 5.89-5.79 (m, 1H), 5.56-5.49 (m, 1H), 5.43 (s, 2H), 5.38 (s, 1H), 5.31 (d, J = 4.8 Hz, 1H), 3.90 (d, J = 4.7 Hz, 2H), 3.50 -3.35 (m, 3H), 2.44 (s, 3H), 1.91-1.80 (m, 2H), 0.87 (t, J = 6.5 Hz, 3H), LC-MS: 512.2 [M+H]+。
【0130】
化合物32-2の合成と同様に、保持時間の短い別の成分1-1を用いることにより、化合物32-2のジアステレオ異性体32-1が得られる。
【0131】
化合物32-1および化合物32-2の合成と同様に、異なる中間体を使用することにより、以下の表に示す化合物が得られる。
【0132】
【0133】
実施例4:抗体薬物複合体(ADC-1)の調製
【化59】
【0134】
【0135】
50mLの一ツ口フラスコに、L-1(76mg、0.12mmol、1.0当量)、保持時間の長い成分化合物1-2(55mg、0.12mmol、1.0当量)、NMI(50.6mg、0.62mmol、5.0当量)、およびDMF(2mL)を加え、系をよく撹拌した後、0℃に冷却した。反応液にTCFH(41.5mg、0.15mmol、1.2当量)を加え、30分間撹拌した後、LC-MSで検出した。反応終了後、反応液を逆相C18カラムクロマトグラフィー(MeCN/水=0-60%)で精製し、目的物質の画分を凍結乾燥し、黄色固体L-D-1(80mg、61.5%収率)を得た。
【0136】
1H-NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ: 8.56 (t, J = 6.4 Hz, 1H), 8.30 (dd, J = 14.0, 8.3 Hz, 2H), 8.11 (d, J = 7.9 Hz, 1H), 8.06 (t, J = 5.7 Hz, 1H), 7.99 (t, J = 5.7 Hz, 1H), 7.76 (d, J = 10.7 Hz, 1H), 7.31 (d, J = 2.8 Hz, 1H), 7.27-7.12 (m, 5H), 6.98 (s, 2H), 6.54 (d, J = 1.8 Hz, 1H), 5.84-5.83 (m, 1H), 5.49-5.31 (m, 3H), 5.27-5.21 (m, 1H), 4.66-4.53 (m, 2H), 4.48-4.41 (m, 1H), 3.98 (s, 2H), 3.75-3.54 (m, 6H), 3.42 (s, 2H), 3.36-3.35 (m, 2H), 3.04-2.98 (m, 1H), 2.80-2.74 (m, 1H), 2.42 (s, 3H), 2.08 (t, J = 7.4, 2H), 1.93-1.79 (m, 2H), 1.50-1.41 (dd, J = 13.2, 5.9 Hz, 4H), 1.25-1.12 (m, 2H), 0.88-0.84 (m, 3H), LC-MS: 1052.1 [M+H]+, 1050.1 [M-H]-。
【0137】
ステップ2:ADC-1の調製
【0138】
抗体トラスツズマブのPBS緩衝液(pH=6.5の0.05PBS緩衝液、2.5mL、9.96mg/mL、0.168nmol)に、調製したトリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン水溶液(10mM、0.082mL)を37℃で加え、系を水槽振盪器(water bath shaker)に入れ、37℃で3時間振盪反応させた後、反応を停止した。反応液を水浴下で25℃に冷却し、5.0mg/mLに希釈した。
【0139】
化合物L-D-1(2.02nmol)をDMSO(0.10mL)に溶解し、上記溶液2.0mLに加え、系を水槽振盪器に入れ、25℃で3時間振盪反応させた後、反応を停止した。反応液を脱塩し、Sephadex G25ゲルカラム(溶出相:0.001M EDTAを含むpH6.5の0.05M PBS緩衝液)で精製し、ADCのPBS緩衝液(5.0mg/mL、1.1mL)を得、これを凍結し、4℃で保存した。UV-HPLCで算出した平均値:n=7.2。
【0140】
実施例5:抗体薬物複合体(ADC-2)の調製
【化61】
【0141】
【0142】
50mLの一ツ口フラスコに、L-1(76mg、0.12mmol、1.0当量)、保持時間の短い成分化合物1-1(55mg、0.12mmol、1.0当量)、NMI(50.6mg、0.62mmol、5.0当量)およびDMF(2mL)を加え、系をよく撹拌した後、0℃に冷却した。反応液にTCFH(41.5mg、0.15mmol、1.2当量)を加え、30分間撹拌した後、LC-MSで検出した。反応終了後、反応液を逆相C18カラムクロマトグラフィー(MeCN/水=0~60%)で精製し、目的物質の画分を凍結乾燥し、黄色固体のL-D-2(80mg、61.5%収率)を得た。
【0143】
1H-NMR (400 MHz, DMSO-d6) 1H-NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ: 8.56 (t, J = 6.4 Hz, 1H), 8.30 (dd, J = 14.0, 8.3 Hz, 2H), 8.11 (d, J = 7.9 Hz, 1H), 8.06 (t, J = 5.7 Hz, 1H), 7.99 (t, J = 5.7 Hz, 1H), 7.76 (d, J = 10.7 Hz, 1H), 7.31 (d, J = 2.8 Hz, 1H), 7.30-7.16 (m, 5H), 6.98 (s, 2H), 6.54 (d, J = 1.8 Hz, 1H), 5.90-5.86 (m, 1H), 5.46-5.30 (m, 3H), 5.26-5.21 (m, 1H), 4.68-4.53 (m, 2H), 4.46-4.41 (m, 1H), 3.98 (s, 2H), 3.75-3.54 (m, 6H), 3.42 (s, 2H), 3.36-3.35 (m, 2H), 3.04-2.98 (m, 1H), 2.80-2.74 (m, 1H), 2.42 (s, 3H), 2.08 (t, J = 7.4, 2H), 1.93-1.79 (m, 2H), 1.50-1.41 (dd, J = 13.2, 5.9 Hz, 4H), 1.25-1.12 (m, 2H), 0.88-0.84 (m, 3H), LC-MS: 1052.1 [M+H]+, 1050.1 [M-H]-。
【0144】
ステップ2:ADC-2の調製
抗体トラスツズマブのPBS緩衝液(pH=6.5の0.05PBS緩衝液、2.5mL、9.96mg/mL、0.168nmol)に、調製したトリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン水溶液(10mM、0.082mL)を37℃で加え、系を水槽振盪器(water bath shaker)に入れ、37℃で3時間振盪して反応させた後、反応を停止させた。反応液を水浴下で25℃に冷却し、5.0mg/mLに希釈した。
【0145】
化合物L-D-2(2.02nmol)をDMSO(0.10mL)に溶解し、上記溶液2.0mLに加え、系を水槽振盪器に入れ、25℃で3時間振盪して反応させた後、反応を停止させた。反応液を脱塩し、Sephadex G25ゲルカラム(溶出相:0.001M EDTAを含むpH6.5の0.05M PBS緩衝液)で精製し、ADCのPBS緩衝液(5.0mg/mL、1.1mL)を得、これを凍結し、4℃で保存した。UV-HPLCで算出した平均値:n=7.2。
【0146】
実施例6:抗体薬物複合体(ADC-3およびADC-4)の調製
【化63】
【0147】
ステップ1:化合物L-D-3および化合物L-D-4の調製
【化64】
【0148】
50mLの一つ口フラスコに、L-2(80mg、0.12mmol、1.0当量)、保持時間の短い成分化合物1-1(55mg、0.12mmol、1.0当量)、NMI(50.6mg、0.62mmol、5.0当量)およびDMF(2mL)を加え、系内をよく撹拌した後、0℃に冷却した。反応液にTCFH(41.5mg、0.15mmol、1.2当量)を加え、30分間撹拌した後、LC-MSで検出した。反応終了後、反応液を逆相C18カラムクロマトグラフィーで精製し、保持時間の短い画分をL-D-3、および保持時間の長い画分をL-D-4として2つの画分を得た。目的物質の画分を凍結乾燥し、黄色固体L-D-3(20mg)およびL-D-4(25mg)を得た。LC-MS: 1092.4 [M+H]+。
【0149】
クロマトグラフィーの条件:Thermo Fisherのセミ分取液体クロマトグラフU3000;クロマトグラフィーカラム:Welch Ultimate XB-Phenyl;移動相:0.1%ギ酸を含むアセトニトリル-0.1%ギ酸水溶液=50:50;流量:30.0mL/分;検出波長:370nm;注入量:100μL。
【0150】
実験手順は次のとおりである:L-D-3とL-D-4との混合物を適量採取し、DMFに溶解した。濃度10mg/mLの試験試料溶液を調製した。試験試料溶液を採取し、本発明のクロマトグラフィーの条件に従って検出用の分取液体クロマトグラフに置き、データを記録した。注入を複数回行った。
【0151】
その結果、L-D-3およびL-D-4はpre-HPLCにより分離され、両成分の保持時間はそれぞれ5.29分および5.87分であり、その純度はそれぞれ99.38%および99.21%であった。
【0152】
ステップ2:ADC-3およびADC-4の調製
抗体トラスツズマブのPBS緩衝液(pH=6.5の0.05M PBS緩衝液;2.5mL、9.96mg/mL、0.168nmol)に、調製したトリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン水溶液(10mM、0.082mL)を37℃で加え、系を水槽振盪器に入れ、37℃で3時間振盪して反応させた後、反応を停止した。反応液を水浴下で25℃に冷却し、5.0mg/mLに希釈した。2つのアリコートを並行して調製した。
【0153】
化合物L-D-3(2.0nmol)をDMSO(0.10mL)に溶解し、上記溶液2.0mLに加え、系を水槽振盪器に入れ、25℃で3時間振盪して反応させた後、反応を停止した。反応液を脱塩し、Sephadex G25ゲルカラム(溶出相:0.001M EDTAを含むpH6.5の0.05M PBS緩衝液)で精製し、ADCのPBS緩衝液(5.0mg/mL、1mL)を得、これを凍結し、4℃で保存した。UV-HPLCにより算出した平均値:n=7.3。
【0154】
ADC-4を、化合物L-D-4を用いて同様に調製した(n=7.3)。
【0155】
実施例7:抗体薬物複合体(ADC-5およびADC-6)の調製
【化65】
【0156】
ステップ1:化合物L-D-5および化合物L-D-6の調製
【化66】
【0157】
50mLの一口フラスコに、L-2(80mg、0.12mmol、1.0当量)、保持時間の長い成分化合物1-2(55mg、0.12mmol、1.0当量)、NMI(50.6mg、0.62mmol、5.0当量)、およびDMF(2mL)を加え、系をよく撹拌した後、0℃に冷却した。反応液にTCFH(41.5mg、0.15mmol、1.2当量)を加え、30分間撹拌した後、LC-MSにより検出した。反応終了後、反応液を逆相C18カラムクロマトグラフィーで精製し、保持時間の短い画分をL-D-5、保持時間の長い画分をL-D-6として2つの画分を得た。目的物質の画分を凍結乾燥し、黄色固体のL-D-5(20mg)およびL-D-6(23mg)を得た。LC-MS: 1092.4 [M+H]+。
【0158】
クロマトグラフィーの条件:
Thermo Fisherのセミ分取液体クロマトグラフU3000;クロマトグラフィーカラム:Welch Ultimate XB-Phenyl;移動相:0.1%ギ酸を含むアセトニトリル-0.1%ギ酸水溶液=50:50;流量:30.0mL/分;検出波長:370nm;注入量:100μL。
【0159】
実験手順は次のとおりである:
L-D-5とL-D-6との混合物を適量採取し、DMFに溶解した。濃度10mg/mLの試験試料溶液を調製した。試験試料溶液を採取し、本発明のクロマトグラフィーの条件に従って検出用の分取液体クロマトグラフに置き、データを記録した。注入を複数回行った。
【0160】
その結果、L-D-5およびL-D-6はpre-HPLCにより分離され、両成分の保持時間はそれぞれ6.04分および6.48分であり、その純度はそれぞれ98.58%および99.13%であった。
【0161】
ステップ2:ADC-5およびADC-6の調製
抗体トラスツズマブのPBS緩衝液(pH=6.5の0.05PBS緩衝液;2.5mL、9.96mg/mL、0.168nmol)に、調製したトリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン水溶液(10mM、0.082mL)を37℃で加え、系を水槽振盪器に入れ、37℃で3時間振盪して反応させた後、反応を停止した。反応液を水浴下で25℃に冷却し、5.0mg/mLに希釈した。2つのアリコートを並行して調製した。
【0162】
化合物L-D-5(2.0nmol)をDMSO(0.10mL)に溶解し、上記溶液2.0mLに加え、系を水槽振盪器に入れ、25℃で3時間振盪して反応させた後、反応を停止した。反応液を脱塩し、Sephadex G25ゲルカラム(溶出相:0.001M EDTAを含むpH6.5の0.05M PBS緩衝液)で精製し、ADCのPBS緩衝液(5.0mg/mL、1.1mL)を得、これを凍結し、4℃で保存した。UV-HPLCにより算出した平均値:n=7.3。
【0163】
化合物L-D-6を用いて同様に、ADC-6を調製した(n=7.3)。
【0164】
実施例8:他のADC
L-D-1、L-D-2、L-D-3、L-D-4、L-D-5またはL-D-6(本出願のカンプトテシン誘導体は小分子毒素である)に類似した他の化合物も、同様の方法で調製され得る。L-D-1、L-D-2、L-D-3、L-D-4、L-D-5またはL-D-6、および類似の化合物を、抗体トラスツズマブまたは他の類似の抗体とさらに組み合わせて、本出願のカンプトテシン誘導体を小分子毒素として含む抗体薬物複合体を調製することができる。
【0165】
実施例9:SK-BR-3細胞に対する抗増殖活性のアッセイ
本発明の抗体-薬物複合体の活性は、SK-BR-3細胞に対する小分子毒素としてのカンプトテシン誘導体のin vitro抗増殖活性のアッセイによって、測定され得る。
【0166】
1ウェル当たり3000細胞で、SK-BR-3細胞を384ウェルプレート(Fisher142762)に播種した。翌日、連続希釈した化合物を添加し、添加72時間後にCellTiter-Lumi(Beyotime C0068XL)を添加して細胞内のATP含量を測定した。細胞の増殖を評価し、細胞増殖に対する化合物の相対IC50値を算出した。スクリーニング結果を表6に示す。
【0167】
【0168】
市販されているカンプトテシン医薬であるエキサテカン、デルクステカン、および、トポテカンと比較して、本発明の化合物は、SK-BR-3細胞に対して強いin vitro抗増殖活性を有し、特に一般式(1)におけるXがSまたはOである場合、細胞に対して強い抗増殖活性を有する。例えば、化合物1-2はエキサテカンより2倍活性が高く、化合物32はデルクステカンより3倍活性が高い。特に、側鎖にOHまたはNH2などの結合しやすい基を有し、強い細胞活性を有する一般式(1)の化合物は、ADCの小分子毒素として使用するのに適している。
【0169】
実施例10:本発明の抗体薬物複合体のin vitro抗腫瘍活性
HER2を高発現しているSK-BR-3細胞を、実験におけるin vitro活性検出のための細胞株として選択し、細胞死滅に対する本発明の抗体薬物複合体(ADC)の用量効果関係を評価するために使用した。各タイプの細胞のプレーティング密度は、最初に1500~2000細胞数/ウェルとなるように選択し、細胞細胞傷害性のアッセイを、12時間後に行った。ADCを開始濃度として10nMで添加し、3~10倍連続希釈して最終濃度を得て、死滅効果が144時間観察された。化学発光染色にはCellTiter-Glo@Luminescent Cell Viability Assayを用い、蛍光データを読み取った後にIC50を算出した。
【0170】
活性試験の結果、すべてのADCが一定の抗腫瘍活性を示し、一部のADCの活性はDS-8201aの活性よりも高かった。
【0171】
【0172】
活性試験の結果、すべてのADCが一定の抗腫瘍活性を示し、一部のADCの活性はDS-8201aの活性よりも高かった。
【0173】
実施例11:本発明の抗体薬物複合体のインビボ抗腫瘍活性
100μLのPBS溶液に溶解したヒト胃癌細胞(NCI-N87)を、6~8週齢の雌性Balb/cヌードマウスの首または背の右側に皮下注射した。平均腫瘍体積が約150~200mm
3になった時点で、32匹のヌードマウスを腫瘍の大きさに応じて無作為に4群に分け、各群8匹とし、尾静脈より注射投与を行い、01をブランク対照群、02をDS-8201a(4.5mg/kg)群、03をADC-1(4.5mg/kg)群、04をADC-2(4.5mg/kg)群とした。実験動物の体重および腫瘍体積を週2回測定し、実験プロセスにおける動物の生存状態を観察した。各群の腫瘍体積の変化の具体的な結果を
図1に示す。
【0174】
図1から分かるように、本発明のADC試料は両方とも、DS-8201aと同等のインビボ抗腫瘍活性を示した。
【0175】
以上、本発明の具体的な実施形態について説明したが、これらの実施形態は単なる例示であり、本発明の原理および趣旨から逸脱することなく、これらの実施形態に多くの変更または修正を加えることができることは、当業者には理解されよう。したがって、本発明の保護範囲は、添付の特許請求の範囲によって定められる。
【国際調査報告】