(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-18
(54)【発明の名称】塩素含有原料を蒸気分解するためのプロセス
(51)【国際特許分類】
C10G 9/36 20060101AFI20231211BHJP
C10G 1/10 20060101ALI20231211BHJP
【FI】
C10G9/36
C10G1/10
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023535479
(86)(22)【出願日】2021-10-12
(85)【翻訳文提出日】2023-08-07
(86)【国際出願番号】 IB2021059340
(87)【国際公開番号】W WO2022123338
(87)【国際公開日】2022-06-16
(32)【優先日】2020-12-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】508171804
【氏名又は名称】サビック グローバル テクノロジーズ ベスローテン フェンノートシャップ
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】ファラジャデ・ビバラン,サファ
(72)【発明者】
【氏名】ビニ,ローラ
【テーマコード(参考)】
4H129
【Fターム(参考)】
4H129AA03
4H129BA04
4H129BB03
4H129BC37
4H129CA04
4H129CA22
4H129CA29
4H129FA02
4H129MA01
4H129NA01
4H129NA22
4H129NA26
4H129NA44
4H129NA46
(57)【要約】
プラスチックを処理する方法及びプラスチック由来のパイオイルを処理する方法。蒸気分解ユニットの一つ以上のプロセスストリーム中の塩素含有量と前記蒸気分解ユニットのフィードストリーム中の炭化水素対蒸気比との間の相関関係の数値モデルを構築する。パイオイル及びナフサのブレンドを前記モデルから得られた炭化水素対蒸気比で蒸気と混合して、蒸気分解ユニット用の前記フィードストリームを生成する。前記フィードストリームを前記蒸気分解ユニットにおいて処理して、オレフィンを生成する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
パイオイルを処理する方法であって、
プラスチックの熱分解によって得られたパイオイルをナフサと混合して、前記パイオイルの塩素含有量よりも低い塩素含有量を有する炭化水素ストリームを生成し;
前記炭化水素ストリームを蒸気と混合してフィードストリームを形成し;そして
オレフィンを生成するために充分な反応条件下で前記フィードストリームを蒸気分解することを含む、方法。
【請求項2】
前記パイオイルが、60ppm超の塩素を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記炭化水素ストリームが1~3ppmの元素塩素を含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記フィードストリームが、前記炭化水素ストリームの塩素含有量よりも少ない塩素含有量を有する、請求項1または2に記載の方法。
【請求項5】
前記炭化水素ストリームを蒸気と0.35超の質量比で混合する、請求項1または2に記載の方法。
【請求項6】
前記プラスチックが、ポリオレフィン,ポリエチレンテレフタレート(PET),ポリアミド(PA)及びポリ塩化ビニル(PVC),ポリスチレン(PS),アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)又はそれらの組み合わせを含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項7】
前記ナフサ及び前記パイオイルを、最大167:1、好ましくは50:1の質量比で混合する、請求項1または2に記載の方法。
【請求項8】
プラスチックを処理する方法であって、
(a)炭化水素と60ppm超の塩素とを含むパイオイルを生成するために充分な熱分解条件下でプラスチックを処理し;
(b)前記パイオイルをナフサと混合して、1~3ppmの塩素を含む炭化水素ストリームを生成し;
(c)前記炭化水素ストリームを蒸気と第一蒸気対炭化水素比で混合して、第一フィードストリームを生成し;
(d)蒸気分解装置において、前記第一フィードストリームを、オレフィンと芳香族化合物と蒸気とを含む廃液ストリームを生成するために充分な反応条件下で蒸気分解し;
(e)分離ユニットにおいて前記廃液ストリームを分離して、エチレンストリームとプロピレンストリームとC
4ストリームと熱分解ガスストリームとを含む一つ以上の生成物ストリームを生成し;
(f)ステップ(d)及び(e)で生成した一つ以上のプロセスストリームの塩素含有量を決定し;
(g)ステップ(c)~(f)を繰り返すが、ステップ(c)では第二蒸気対炭化水素比を使用して、前記一つ以上のプロセスストリームの蒸気対炭化水素比及び塩素含有量のデータを得;
(h)前記一つ以上のプロセスストリームの蒸気対炭化水素比と塩素含有量との間の相関関係の数値モデルを構築し;
(i)前記一つ以上のプロセスストリームの前記塩素含有量がそれぞれ3ppmより低くなるように前記数値モデルを使用して最終蒸気対炭化水素比を決定し;そして
(j)前記最終蒸気対炭化水素比を使用して前記蒸気分解装置を作動させて、前記炭化水素ストリームを処理すること、を含む、方法。
【請求項9】
ステップ(e)での前記分離が、前記蒸気分解装置からの廃液ストリームを分離して、C
1~C
8炭化水素と蒸気とを含む上部ストリームと、C
9~C
12炭化水素を含む分解留出油と、C
12+炭化水素を含むカーボンブラック油とを生成することを含み得る、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
ステップ(e)が、上部ストリームをクエンチして、0.1~20ppmの塩素を含むクエンチ水ストリームと、エチレンとプロピレンとC
4炭化水素とC
5+炭化水素とを含むクエンチ廃水ストリームと、C
5+炭化水素を含むパイガスストリームとを生成することをさらに含む、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記パイガスストリームをクエンチ廃液ストリームの圧縮液体フラクションと組み合わせて、複合熱分解ガスストリームを形成する、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記複合熱分解ガスストリームが0.1~1ppmの塩素を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記プラスチックが、ポリオレフィン,ポリエチレンテレフタレート(PET),ポリアミド(PA)及びポリ塩化ビニル(PVC),ポリスチレン(PS),アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)又はそれらの組み合わせを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項14】
前記プラスチックが、ポリオレフィン,ポリエチレンテレフタレート(PET),ポリアミド(PA)及びポリ塩化ビニル(PVC),ポリスチレン(PS),アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)又はそれらの組み合わせを含む、請求項4に記載の方法。
【請求項15】
前記プラスチックが、ポリオレフィン,ポリエチレンテレフタレート(PET),ポリアミド(PA)及びポリ塩化ビニル(PVC),ポリスチレン(PS)、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)又はそれらの組み合わせを含む、請求項5に記載の方法。
【請求項16】
前記プラスチックが、ポリオレフィン,ポリエチレンテレフタレート(PET),ポリアミド(PA)及びポリ塩化ビニル(PVC),ポリスチレン(PS),アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)又はそれらの組み合わせを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項17】
前記プラスチックが、ポリオレフィン,ポリエチレンテレフタレート(PET),ポリアミド(PA)及びポリ塩化ビニル(PVC),ポリスチレン(PS),アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)又はそれらの組み合わせを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項18】
前記プラスチックが、ポリオレフィン,ポリエチレンテレフタレート(PET),ポリアミド(PA)及びポリ塩化ビニル(PVC),ポリスチレン(PS),アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)又はそれらの組み合わせを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項19】
前記プラスチックが、ポリオレフィン,ポリエチレンテレフタレート(PET),ポリアミド(PA)及びポリ塩化ビニル(PVC),ポリスチレン(PS),アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)又はそれらの組み合わせを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項20】
前記プラスチックが、ポリオレフィン,ポリエチレンテレフタレート(PET),ポリアミド(PA)及びポリ塩化ビニル(PVC),ポリスチレン(PS),アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)又はそれらの組み合わせを含む、請求項11に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、その全体が参照により本明細書中に組み込まれる、2020年12月10日に出願された米国特許仮出願第63/123,998号の優先権の利益を主張する。
【0002】
本発明は、概して、蒸気分解プロセスに関する。より具体的には、本発明は、プラスチック由来の熱分解油(「パイオイル(pyoil)」)を処理して、蒸気分解装置用のフィードストリームを生成する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
混合プラスチック廃棄物のケミカルリサイクリングは、認証された循環型ポリマーを製造するための新規経路になっている。前記リサイクルプロセスは、廃プラスチックの熱分解を含み、これにより、典型的には、有機塩素、有機窒素、及び含酸素添加剤をはじめとする高レベルの汚染物質を含むパイオイルストリームが生じる。蒸気分解ユニットの前記原料中に塩素が存在することは、前記蒸気分解ユニットの炉のラジアントコイルの腐食につながる。さらに、前記オレフィン製造プラントの下流では、塩素が応力亀裂腐食をもたらす可能性がある。
【0004】
プラスチック由来のパイオイル中の塩素含有量を低下させる従来法は、ナフサ及び/又はガスコンデンセートとブレンドすることを含む。ナフサ又はガスコンデンセートは、通常、0.2~1.6ppmの有機塩化物を含む。パイオイルは、67ppm~521ppmの有機塩化物を含む。したがって、汚染物質の前記影響を低減し、前記パイオイルをそれ以降の石油化学ユニットにとって安全にするために、前記パイオイルをナフサ又はガスコンデンセートと約1:167(パイオイル:ナフサ)の質量比でブレンドする。しかしながら、ナフサ対パイオイルブレンド比が高いナフサを使用するのはコストがかかり、その結果、パイオイルからのオレフィンや他の有益な化学物質の製造コストが高くなる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
全体として、プラスチック由来のパイオイル中の塩素レベルを低下させるためのシステム及び方法は存在するが、前記従来法の少なくとも前記欠点に照らしてこの分野における改善の必要性は依然として存在する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
発明の概要
ヘテロ原子汚染物質含有量を低下させるための方法に関連する少なくとも前述の問題に対する解決策を見出した。前記解決策は、パイオイルをナフサ及び蒸気と混合することを含む、パイオイルを処理するための方法にある。これは、大量のナフサを用いることなく前記パイオイル中の前記汚染物質を希釈し、それによって、従来法と比較して製造コストを低減するのに有益であり得る。さらに、前記開示された方法は、従来法と比較して、前記パイオイルの蒸気分解のための低い製造コストを維持しつつ、蒸気分解ユニットにおいて前記汚染物質の前記影響を最小限に抑えるために最適化された蒸気対炭化水素比を決定できるように蒸気対炭化水素比と塩素含有量との間の相関関係についての数値モデルを構築することをさらに含み得る。したがって、本発明の前記方法は、プラスチック由来のパイオイル中の汚染物質を低減するための前記従来法に関連する前記問題に対する技術的解決策を提供する。
【0007】
本発明の実施形態は、パイオイルを処理する方法を含む。前記方法は、プラスチックの熱分解によって得られたパイオイルとナフサとを混合して、前記パイオイルの塩素(元素)含有量よりも低い塩素(元素)含有量を有する炭化水素ストリームを生成することを含む。前記方法は、前記炭化水素ストリームを蒸気と混合して、フィードストリームを形成することを含む。前記方法は、オレフィンを生成するために充分な反応条件下で前記フィードストリームを蒸気分解することを含む。
【0008】
本発明の実施形態は、パイオイルを処理する方法を含む。前記方法は、プラスチックの熱分解によって得られたパイオイルをナフサと混合して、1~3ppmの塩素を含む炭化水素ストリームを生成することを含む。前記パイオイルは60ppm超の塩素を含む。前記方法は、前記炭化水素ストリームを蒸気と、0.35超の蒸気対炭化水素質量比で混合して、前記炭化水素ストリームの塩素含有量よりも低い塩素(元素)含有量を有するフィードストリームを形成することを含む。前記方法は、オレフィンを生成するために充分な反応条件下で前記フィードストリームを蒸気分解することを含む。
【0009】
本発明の実施形態は、プラスチックを処理する方法を含む。前記方法は、(a)炭化水素と60ppm超の塩素とを含むパイオイルを生成するために充分な熱分解条件下でプラスチックを処理することを含む。前記方法は、(b)前記パイオイルをナフサと混合して、1~3ppmの塩素を含む炭化水素ストリームを生成することを含む。前記方法は、(c)前記炭化水素ストリームを蒸気と第一蒸気対炭化水素比で混合して第一フィードストリームを生成することを含む。前記方法は、(d)蒸気分解装置において、オレフィン、芳香族化合物及び蒸気を含む廃液ストリームを生成するために充分な反応条件下で前記フィードストリームを蒸気分解することを含む。前記方法は、(e)分離ユニットにおいて前記廃液ストリームを分離して、エチレンストリームとプロピレンストリームとC4ストリームと熱分解ガスストリームとを含む一つ以上の生成物ストリームを生成することを含む。前記方法は、(f)ステップ(d)及び(e)で生成した一つ以上のプロセスストリームの塩素含有量を決定することを含む。前記方法は、(g)ステップ(c)~(f)を繰り返すが、ステップ(c)では第二蒸気対炭化水素比を使用して、前記一つ以上のプロセスストリームの蒸気対炭化水素比及び塩素含有量のデータを得ることを含む。前記方法は、(h)前記一つ以上のプロセスストリームの蒸気対炭化水素比と塩素含有量との間の相関関係の数値モデルを構築することを含む。前記方法は、(i)前記一つ以上のプロセスストリームの前記塩素含有量がそれぞれ3ppmより低くなるように、前記数値モデルを用いて最終蒸気対炭化水素比を決定することを含む。前記方法は、(j)前記最終蒸気対炭化水素比を使用して前記蒸気分解装置を操作して、前記炭化水素ストリームを処理することを含む。
【0010】
以下に、本明細書全体に亘って使用される様々な語句の定義を挙げる。
【0011】
「約」又は「およそ」という用語は、当業者には理解されるように、近い状態と定義される。非限定的な一実施形態において、前記用語は、10%以内、好ましくは5%以内、さらに好ましくは1%以内、そして最も好ましくは0.5%以内であると定義される。
【0012】
「wt.%」、「vol.%」又は「mol.%」という用語は、それぞれ、成分を含む材料の総重量、総体積、又は総モル量に基づいた、前記成分の重量パーセンテージ、体積パーセンテージ、又はモルパーセンテージを指す。非限定例において、100モルの前記材料中10モルの成分は、10mol.%の成分である。
【0013】
「実質的に」という用語及びその変形は、10%以内,5%以内,1%以内又は0.5%以内の範囲を含むと定義される。
【0014】
「阻害する」若しくは「低減する」若しくは「防止する」若しくは「回避する」という用語又はこれらの用語の任意の変形は、特許請求の範囲及び/又は前記明細書中で使用される場合、所望の結果を達成するための任意の測定可能な減少又は完全な阻害を含む。
【0015】
前記明細書及び/又は特許請求の範囲で使用される「有効な」という用語は、所望の、期待される、又は意図される結果を達成するために適切であることを意味する。
【0016】
「循環型ポリマー」という用語は、前記明細書及び/又は特許請求の範囲で使用する場合、熱分解油を蒸気分解することによって生成される、エチレン又はプロピレンから作製されるポリマーを意味する。
【0017】
「塩素含有量」という用語は、前記明細書及び/又は特許請求の範囲で使用される場合、塩素元素の濃度を意味する。前記塩素元素は、塩素化化合物の分子構造中に存在する。
【0018】
「a」又は「an」という語の使用は、前記特許請求の範囲、又は前記明細書において「含む(comprising)」、「包含する(including)」、「含有する(containing)」、又は「有する(having)」という前記用語とあわせて使用される場合、「一つ」を意味する可能性があるが、「一つ以上」、「少なくとも一つ」、及び「一つ又は複数」の前記意味とも一致する。
【0019】
「含む(comprising)」(並びに「comprise」及び「comprises」などのcomprisingのあらゆる形態)、「有する(having)」(並びに「have」及び「has」などのhavingのあらゆる形態)、「包含する(including)」(並びに「includes」及び「include」などのincludingのあらゆる形態)、又は「含有する(containing)」(並びに「contains」及び「contain」などのcontainingのあらゆる形態)という前記語は、包括的又は無制限であり、追加の記載されていない要素又は方法ステップを除外するものではない。
【0020】
本発明の前記プロセスは、前記明細書全体を通して開示された、特定の構成要素、成分、組成物等を「含む」、特定の構成要素、成分、組成物等「から本質的になる」又は特定の構成要素、成分、組成物等「からなる」可能性がある。
【0021】
「主に」という語は、前記明細書及び/又は特許請求の範囲で使用される場合、50wt.%、50mol.%、及び50vol.%のいずれかよりも多いことを意味する。例えば、「主に」には、50.1wt.%~100wt.%並びにその間のすべての値及び範囲、50.1mol.%~100mol.%並びにその間のすべての値及び範囲、又は50.1vol.%~100vol.%並びにその間のすべての値及び範囲が含まれ得る。
【0022】
本発明の他の目的、特徴及び利点は、以下の図、詳細な説明、及び実施例から明らかになるであろう。しかしながら、前記図、詳細な説明、及び実施例は、前記発明の特定の実施形態を示すが、例示のためだけに提示され、限定することを意味するものではないと理解されたい。さらに、前記発明の主旨及び範囲内の変更及び修飾は、この詳細な説明から当業者には明らかになることが企図される。さらなる実施形態において、特定の実施形態からの特徴は、他の実施形態の特徴と組み合わせることができる。例えば、一実施形態からの特徴は、他の実施形態のいずれかからの特徴と組み合わせることができる。さらなる実施形態において、さらなる特徴を、本明細書中で記載する前記特定の実施形態に追加することができる。
【0023】
より完全に理解するために、前記添付の図面とあわせて以下の説明が参照される。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】発明の実施形態によるプラスチックを処理する方法の概略を示すフローチャートである。
【
図2】発明の実施形態による分解ユニットの模式図である。
【
図3】発明の実施形態によるパイオイルを処理する方法の概略を示すフローチャートである。
【
図4】蒸気分解ユニットのプロセス水における塩素レベルの測定値とモデルの塩素レベルの予測値との比較を示す図である。
【
図5】蒸気分解ユニットの水蒸気/液体水セパレータ底部ストリームにおける塩素レベルの測定値とモデルの塩素レベルの予測値との比較を示す図である。
【
図6】蒸気対油(炭化水素)比の関数としてのプロセス水中の予想される塩素濃度を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
現在、塩素を含む高レベルのヘテロ原子汚染物質を含むプラスチック由来のパイオイルは、最大1:167までのパイオイル対ナフサ質量比で前記パイオイルを大量のナフサとブレンドすることによって処理される。ナフサのコストが高いためにこれはコストがかかる可能性があり、その結果、前記プロセス全体の経済的実現可能性が低くなる。本発明は、この問題に対する解決策を提供する。前記解決策は、パイオイルを処理する方法を前提とする。パイオイル処理の前記開示された方法は、前記パイオイルをナフサとブレンドして炭化水素ストリームを形成し、前記炭化水素ストリームを蒸気でさらに希釈して、前記蒸気分解ユニットにとって安全な塩素レベルを有する蒸気分解装置用のフィードストリームを生成することを含む。これにより、パイオイルとブレンドするために必要なナフサの前記量を大幅に低減することができ、それによって、パイオイル中の塩素レベルを低下させるための前記全体的なコストが低減される。前記開示された方法は、蒸気分解ユニットにおける一つ以上のプロセスストリームの炭化水素ストリーム対蒸気質量比と塩素含有量とを相関させる数値モデルを構築することを含み得る。前記数値モデルを使用して、前記蒸気分解ユニットにおける生産効率及び低い塩素レベルを確保できる最適化された炭化水素対蒸気質量比を得ることができ、その結果、パイオイルからの生産効率が改善され、パイオイル処理の安全性レベルが増大する。本発明のこれらや他の非限定的な態様を、以下のセクションでさらに詳細に考察する。
【0026】
A.プラスチックの処理方法
【0027】
本発明の実施形態において、プラスチックを処理するための前記方法は、蒸気分解ユニットにおけるプロセスストリーム中の炭化水素対蒸気比と塩素レベルとを相関させる数値モデルを構築することを含む。
図1を参照すると、プラスチックを処理する方法100のフローチャートが示されている。
【0028】
本発明の実施形態によると、ブロック101に示すように、方法100は、炭化水素と60ppm超の塩素とを含むパイオイルを生成するために充分な熱分解条件下でプラスチックを処理することを含む。発明の実施形態において、前記プラスチックは、ポリオレフィン,ポリエチレンテレフタレート(PET),ポリアミド(PA)及びポリ塩化ビニル(PVC),ポリスチレン(PS),アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)又はそれらの組み合わせを含む。前記熱分解条件は、300~700℃、並びに300~350℃,350~400℃,400~450℃,450~500℃,500~550℃,550~600℃,600~650℃及び650~700℃の範囲を含む、その間の全ての範囲と値の熱分解温度を含む。前記熱分解条件には、1~5barの熱分解圧力がさらに含まれる。本発明の実施形態において、前記パイオイルは、60~600ppmの塩素、並びに60~120ppm,120~180ppm,180~240ppm,240~300ppm,300~360ppm,360~420ppm,420~480ppm,480~540ppm及び540~600ppmの範囲を含む、その間の全ての範囲と値を含む。
【0029】
本発明の実施形態によると、ブロック102に示すように、方法100は、前記パイオイルをナフサと混合して炭化水素ストリームを生成することを含む。前記炭化水素ストリームは、1~3ppmの塩素、並びに0.1~0.3ppm,0.3~0.6ppm,0.6~0.9ppm,0.9~1.2ppm,1.2~1.5ppm,1.5~1.8ppm,1.8~2.1ppm,2.1~2.4ppm,2.4~2.7ppm及び2.7~3.0ppmの範囲を含む、その間の全ての範囲と値を含み得る。本発明の実施形態において、前記パイオイル及び前記ナフサを、1:400~1:60並びにその間の全ての範囲と値のパイオイル対ナフサ質量比で混合する。本発明の実施形態において、前記ナフサは、軽質バージンナフサ、及び/又はフルレンジナフサを含む。本発明の実施形態において、ナフサは、C4~C10炭化水素を含み得る。
【0030】
本発明の実施形態によると、ブロック103に示すように、方法100は、前記炭化水素ストリームを第一蒸気対炭化水素比で蒸気と混合して第一フィードストリームを生成することを含む。前記本発明の実施形態において、前記蒸気は180~300℃の温度である。前記第一蒸気対炭化水素比は、0.35~1.0の範囲内、並びに0.35~0.40,0.40~0.45,0.45~0.50,0.50~0.55,0.55~0.60,0.60~0.65,0.65~0.70,0.70~0.75,0.75~0.80,0.80~0.85,0.85~0.90,0.90~0.95,0.90~0.95及び0.95~1.0の範囲を含む、その間の全ての範囲と値であり得る。
【0031】
本発明の実施形態によると、ブロック104に示すように、方法200は、蒸気分解装置において、前記第一フィードストリームを、オレフィンと芳香族化合物と蒸気とを含む廃液ストリームを生成するために充分な反応条件下で蒸気分解することを含む。本発明の実施形態において、ブロック104で、前記反応条件は、780~870℃の分解温度と、10~700msの前記蒸気分解装置の滞留時間とを含み得る。
【0032】
本発明の実施形態によると、ブロック105に示すように、方法100は、分離ユニットにおいて前記廃液ストリームを分離して、主にエチレンを含むエチレンストリームと、主にプロピレンを含むプロピレンストリームと、主にC4炭化水素を含むC4ストリームと、熱分解ガスを含む熱分解ガスストリームとを含む一つ以上の生成物ストリームを生成することを含む。
【0033】
本発明の実施形態において、ブロック104での前記蒸気分解及びブロック105での分離は、
図2に示すように、蒸気分解ユニット200において実施される。分解ユニット200は、ブロック103で得られたフィードストリーム11を受け取り、フィードストリーム11を分解して、オレフィンと芳香族化合物と蒸気とを含む廃液ストリーム12を生成するように構成された蒸気分解装置201を含み得る。分解ユニット200は、廃液ストリーム12を分離して、オレフィンと芳香族化合物と蒸気とを含む第一上部ストリーム13と、主にカーボンブラック油を含むカーボンブラック油ストリーム14と、主にナフタレンを含む分解留出油ストリーム15とを形成するように構成された精留塔202を主に含み得る。分解ユニット200は、第一上部ストリーム13をクエンチして、主に水と0.1~20ppmの塩素とを含むクエンチ水ストリーム16と、主にC
1~C
5炭化水素を含むクエンチ廃液ストリーム18と、C
5+熱分解ガソリンを含むパイガス(pygas)ストリーム17とを生成するように構成された水クエンチカラム203をさらに含み得る。本発明の実施形態において、水クエンチカラム203の出口は、クエンチ水ストリーム16が水クエンチカラム203から水蒸気/液体水セパレータ220へと流れるように水蒸気/液体水セパレータ220の入口と流体連通している。蒸気液体水セパレータ220は、クエンチ水ストリーム16を分離して、(1)水と塩素を含む汚染物質とを含むパージストリーム42と、(2)蒸気を含むリサイクルストリーム41とを生成するように構成することができる。リサイクルストリーム41は、蒸気分解装置201に戻るように流すことができる。
【0034】
分解ユニット200は、クエンチ廃液ストリーム18を圧縮して、圧縮廃液ストリーム19とさらなるパイガスストリーム20とを生成するように構成されたコンプレッサー204を含み得る。さらなるパイガスストリーム20は、クエンチ廃液ストリーム18の液体フラクションを含み得る。本発明の実施形態において、パイガスストリーム17及びさらなるパイガスストリーム20は、複合パイガスストリーム38を形成できる。本発明の実施形態において、複合パイガスストリーム38は0.1~1ppmの塩素元素を含む。発明の実施形態によると、分解ユニット200は、圧縮廃液ストリーム19から酸を除去して、一つ以上の酸を含む酸ストリーム21と酸フリー廃液ストリーム22とを生成するように構成された酸除去ユニット205を含み得る。酸フリー廃液ストリーム22を第二コンプレッサー206中で圧縮し、次いでコールドボックス207中で冷却して、主にメタンと水素とをあわせて含む軽質ストリーム23と、脱メタン化装置フィードストリーム24とを形成できる。分解ユニット200は、脱メタン化装置フィードストリーム24からメタンを除去して、メタンストリーム25と脱エタン化装置フィードストリーム26とを形成するように構成される脱メタン化装置208をさらに含み得る。本発明の実施形態において、メタンストリーム25はコールドボックス207にリサイクルされる。脱エタン化装置フィードストリーム26は、脱エタン化装置209においてさらに処理して、主にC2炭化水素を含むC2ストリーム27と脱プロパン化装置フィードストリーム28とを生成することができる。C2ストリーム27を、アセチレン抽出ユニット210においてさらに処理して、主にアセチレンを含むアセチレンストリーム29を除去し、次いで、C2スプリッター211においてさらに処理して、主にエチレンを含むエチレンストリーム30と主にエタンを含むエタンストリーム31とを生成することができる。
【0035】
分解ユニット200は、脱プロパン化装置フィードストリーム28を分離して、主にC3炭化水素を含むC3ストリーム32と、脱ブタン化装置フィードストリーム33とを形成するように構成された脱プロパン化装置212をさらに含み得る。C3ストリーム32をMAPDリアクター213及びC3スプリッター214においてさらに処理して、主にプロピレンを含むプロピレンストリーム34とプロパンを含むプロパンストリーム35とを生成することができる。MAPDリアクター213は、C3スプリッターに入る前にメチルアセチレン及びプロパジエン(MAPD)を除去するように構成することができる。本発明の実施形態において、分解ユニット200は、脱ブタン化装置フィードストリーム33を分離して、C4炭化水素を含むC4ストリーム36と、主にC5+炭化水素を含むC5+ストリーム37とを生成するように構成された脱ブタン化装置215をさらに含むことができる。本発明の実施形態において、複合パイガスストリーム38をC5+ストリーム37と組み合わせて、最終パイガスストリーム39を形成することができる。本発明の実施形態において、脱メタン化装置208,脱エタン化装置209,C2スプリッター211,脱プロパン化装置212,C3スプリッター214及び脱ブタン化装置215の各々は、蒸留カラムを含む。
【0036】
本発明の実施形態によると、ブロック106に示すように、方法100は、ブロック104及び105で生成された一つ以上のプロセスストリームの塩素含有量を決定することを含む。前記本発明の実施形態において、ブロック106での前記プロセスストリームは、分解留出油ストリーム15,フィードストリーム11,クエンチ水ストリーム16,酸ストリーム21,複合パイガスストリーム38,脱ブタン化装置フィードストリーム33,最終パイガスストリーム39又はそれらの組み合わせを含み得る。本発明の実施形態において、ブロック106での塩素含有量の前記決定は、Cl質量バランスにしたがって前記プラントの入口及び下流のサンプリングによって実施される。本発明の実施形態において、前記塩素取込量の約80%は前記プロセス水(クエンチ水ストリーム16)中にある。
【0037】
本発明の実施形態によると、ブロック107に示すように、方法100は、ブロック103から106を繰り返すが、ブロック103では第二蒸気対炭化水素比を使用して、分解ユニット200における前記一つ以上のプロセスストリームの蒸気対炭化水素比及び塩素含有量のデータを得ることを含む。本発明の実施形態において、前記蒸気対炭化水素比は、0.35~1.0の範囲、並びに0.35~0.40,0.40~0.45,0.45~0.50,0.50~0.55,0.55~0.60,0.60~0.65,0.65~0.70,0.70~0.75,0.75~0.80,0.80~0.85,0.85~0.90,0.90~0.95,0.90~0.95及び0.95~1.0の範囲を含む、その間の全ての範囲と値で制御される。
【0038】
本発明の実施形態によると、ブロック108に示すように、方法100は、前記一つ以上のプロセスストリームの蒸気対炭化水素比と塩素含有量との間の相関関係の数値モデルを構築することを含む。本発明の実施形態において、前記数値モデルは、Clの質量バランスにしたがって前記プラントの入口及び下流のサンプリングを使用して構築される。本発明の実施形態では、最終的に前記プロセス水(クエンチ水ストリーム16)に至るフィードストリーム中のClについて変換率88%が得られた。本発明の実施形態において、前記数値モデルは、入力として蒸気対炭化水素比を使用して分解ユニット200の前記一つ以上のプロセスストリーム中の塩素含有量を予測するように構成される。
【0039】
本発明の実施形態によると、ブロック109に示すように、方法100は、分解ユニット200の前記一つ以上のプロセスストリームの前記塩素含有量が各々、予め決められたレベルよりも低くなるようにブロック108で構築された前記数値モデルを使用して最終蒸気対炭化水素比を決定することを含む。前記予め決められたレベルは、分解ユニット200における腐食速度を最小限に抑えるように構成される。前記予め決められたレベルは3ppmであり得る。本発明の実施形態において、前記決定は、フィードストリーム11から前記プロセス水(クエンチ水ストリーム16)へのClの変換率の計算値(例えば、88%)を使用することにより、目標塩素レベルを代入することを含む。本発明の実施形態において、前記目標塩素レベルはブロック108で得られる。本発明の実施形態によると、ブロック110に示すように、方法100は、ブロック109で得られた前記最終蒸気対炭化水素比を用いて前記蒸気分解装置(分解ユニット200の蒸気分解装置201)を作動させて、前記炭化水素ストリームを処理することを含む。
【0040】
B.パイオイルの処理方法
【0041】
図3に示すように、本発明の実施形態は、パイオイルを処理する方法300を含む。本発明の実施形態によると、ブロック301に示すように、方法300は、プラスチックの熱分解によって得られたパイオイルをナフサと混合して、前記パイオイルの塩素(元素)含有量よりも低い塩素(元素)含有量を有する炭化水素ストリームを生成することを含む。本発明の実施形態において、前記プラスチックは、ポリオレフィン,ポリエチレンテレフタレート(PET),ポリアミド(PA)及びポリ塩化ビニル(PVC),ポリスチレン(PS),アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)又はそれらの組み合わせを含む。
【0042】
前記パイオイルは、60ppm超の元素塩素を含み得る。本発明の実施形態において、ブロック301において、ナフサ及びパイオイルを最大167:1、好ましくは50:1の質量比で混合する。本発明の実施形態では、前記ナフサは、35~200℃の沸点範囲を有する炭化水素を含む。前記パイオイルは、35~390℃の沸点範囲を有する炭化水素を含む。前記パイオイルは、60ppm超の塩素元素、好ましくは、60~600ppmの塩素並びに60~120ppm,120~180ppm,180~240ppm,240~300ppm,300~360ppm,360~420ppm,420~480ppm,480~540ppm及び540~600ppmの範囲を含む、その間の全ての範囲と値を含む。前記炭化水素ストリームは、1~3ppmの塩素元素並びに1~1.2ppm,1.2~1.4ppm,1.4~1.6ppm,1.6~1.8ppm,1.8~2.0ppm,2.0~2.2ppm,2.2~2.4ppm,2.4~2.6ppm,2.6~2.8ppm及び2.8~3ppmの範囲を含む、その間の全ての範囲と値を含む。
【0043】
本発明の実施形態によると、ブロック302に示すように、方法300は、前記炭化水素ストリームを蒸気と混合して、フィードストリームを形成することを含む。本発明の実施形態では、ブロック302において、前記炭化水素ストリームを、0.35超、好ましくは、0.35~1並びに0.35~0.40,0.40~0.45,0.45~0.50,0.50~0.55,0.55~0.60,0.60~0.65,0.65~0.70,0.70~0.75,0.75~0.80,0.80~0.85,0.85~0.90,0.90~0.95及び0.95~1の範囲を含む、その間の全ての範囲と値の蒸気対炭化水素質量比で蒸気と混合する。本発明の実施形態において、前記フィードストリームは、0.2~1.6ppmの塩素(元素)、好ましくは、0.2~0.8ppm並びに0.2~0.3ppm,0.3~0.4ppm,0.4~0.5ppm,0.5~0.6ppm,0.6~0.7ppm及び0.7~0.8ppmの範囲を含む、その間の全ての範囲と値を含む。本発明の実施形態では、ブロック302において、前記蒸気は、180~300℃、並びに180~190℃,190~200℃,200~210℃,210~220℃,220~230℃,230~240℃,240~250℃,250~260℃,260~270℃,270~280℃,280~290℃及び290~300℃の範囲を含む、その間の全ての範囲と値の温度である。
【0044】
本発明の実施形態によると、ブロック303に示すように、方法300は、オレフィンを生成するために充分な反応条件下で前記フィードストリームを蒸気分解することを含む。本発明の実施形態において、ブロック303での前記蒸気分解は、分解ユニット200において実施される。ブロック303で生成される前記オレフィンは、エチレン,プロピレン,C4オレフィン又はそれらの組み合わせを含む。ブロック303での蒸気分解は、780~870℃、並びに780~790℃,790~800℃,800~810℃,810~820℃,820~830℃,830~840℃,840~850℃,850~860℃及び860~870℃の範囲を含む、その間の全ての範囲と値の分解温度で実施できる。ブロック303での蒸気分解は、10~700msの範囲、並びに10~50ms,50~100ms,100~150ms,150~200ms,200~250ms,250~300ms,300~350ms,350~400ms,400~450ms,450~500ms,500~550ms,550~600ms,600~650ms及び650~700msの範囲を含む、その間の全ての範囲と値の滞留時間で実施される。
【0045】
本発明の実施形態を、
図1及び3のブロックを参照して説明してきたが、前記本発明の動作は、
図1及び3に示された前記特定のブロック及び/又は前記ブロックの前記特定の順序に限定されないことを理解されたい。したがって、本発明の実施形態は、
図1及び3のものとは異なるシーケンスで様々なブロックを使用して本明細書中に記載するような機能を提供し得る。
【0046】
本明細書中で説明する前記システム及びプロセスはまた、示されていないが、化学処理の当業者には公知の様々な装置も含み得る。例えば、一部のコントローラ,パイプ,コンピュータ,バルブ,ポンプ,ヒータ,熱電対,圧力インジケータ,ミキサー,熱交換器などは図示されていない場合がある。
【0047】
本発明の前記開示の一部として、具体的な実施例を以下に挙げる。当該実施例は例示のみを目的とし、前記発明を限定することを意図するものではない。当業者であれば、本質的に同じ結果を得るために変更又は修正できるパラメータを容易に認識するであろう。
【実施例】
【0048】
(蒸気分解ユニットにおけるプロセス水ストリームの塩素含有量)
50~226ppmの塩素を含むパイオイルを、ナフサとブレンドして、前記ブレンド中の前記塩素濃度を1~3ppmまで低減させる。ガスコンデンセートやナフサなどの通常の蒸気分解装置原料は、塩素を0.1~1.0ppm未満のレベルで含む。したがって、前記入口での塩素を測定することによって、前記プラントの塩素取込量をkg/hrで計算することが可能である。前記塩素取込量の88%が最終的にプロセス水(
図2のクエンチ水ストリーム16)に至ると仮定して、下流のプロセス水中の塩素濃度を予測することが可能である。前記結果を
図4及び
図5に示す。
図4及び5に示すように、サンプリングを実施することによってプロセス水(
図2のクエンチ水ストリーム16)中で測定される塩素濃度と前記予測値(前記塩素入口に基づいて推定)とは許容可能に一致する。
【0049】
図6は、蒸気対油比の関数としての前記プロセス水中の前記予測される塩素濃度を示す。グラフの作成に際して、全ての前記炉は、3ppmの最大塩素含有量の原料を処理すると仮定する。前記同じアプローチで、二つの炉で処理される前記原料(ナフサ/パイオイルブレンド)中の最大塩素及び前記通常のガスコンデンセートの残りの最大塩素を決定することが可能になるであろう。
【0050】
本発明の関連で、少なくとも以下の12の実施形態を開示する。実施形態1はパイオイルを処理する方法である。前記方法は、プラスチックの熱分解によって得られたパイオイルをナフサと混合して、前記パイオイルの塩素含有量よりも低い塩素含有量を有する炭化水素ストリームを生成することを含む。前記方法は、前記炭化水素ストリームを蒸気と混合して、フィードストリームを形成することをさらに含む。前記方法は、オレフィンを生成するために充分な反応条件下で前記フィードストリームを蒸気分解することをさらに含む。実施形態2は、前記パイオイルが60ppm超の塩素を含む、実施形態1に記載の方法である。実施形態3は、前記炭化水素ストリームが1~3ppmの元素塩素を含む、実施形態1及び2のいずれかに記載の方法である。実施形態4は、前記フィードストリームが前記炭化水素ストリームの塩素含有量よりも少ない塩素含有量を有する、実施形態1~3のいずれかに記載の方法である。実施形態5は、前記炭化水素ストリームを0.35超の質量比で蒸気と混合する、実施形態1~4のいずれかに記載の方法である。実施形態6は、前記プラスチックが、ポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリアミド(PA)及びポリ塩化ビニル(PVC)、ポリスチレン(PS)、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)、又はそれらの組み合わせを含む、実施形態1~5のいずれかに記載の方法である。実施形態7は、前記ナフサ及び前記パイオイルが最大167:1、好ましくは50:1の質量比で混合される、実施形態1~6のいずれかに記載の方法である。
【0051】
実施形態8はプラスチックを処理する方法である。前記方法は:(a)炭化水素と60ppm超の塩素とを含むパイオイルを生成するために充分な熱分解条件下でプラスチックを処理し;(b)前記パイオイルをナフサと混合して、1~3ppmの塩素を含む炭化水素ストリームを生成し;(c)前記炭化水素ストリームを蒸気と第一蒸気対炭化水素比で混合して、第一フィードストリームを生成し;(d)蒸気分解装置において、オレフィンと芳香族化合物と蒸気とを含む廃液ストリームを生成するために充分な反応条件下で前記第一フィードストリームを蒸気分解し;(e)分離ユニットにおいて前記廃液ストリームを分離してエチレンストリームとプロピレンストリームとC4ストリームと熱分解ガスストリームとを含む一つ以上の生成物ストリームを生成し;(f)ステップ(d)及び(e)で生成した一つ以上のプロセスストリームの塩素含有量を決定し;(g)ステップ(c)~(f)を繰り返すが、ステップ(c)では第二蒸気対炭化水素比を使用して、前記一つ以上のプロセスストリームの蒸気対炭化水素比及び塩素含有量のデータを得;(h)前記一つ以上のプロセスストリームの蒸気対炭化水素比と塩素含有量との間の相関関係の数値モデルを構築し;(i)前記一つ以上のプロセスストリームの前記塩素含有量がそれぞれ3ppmより低くなるように前記数値モデルを使用して最終蒸気対炭化水素比を決定し;(j)前記最終蒸気対炭化水素比を使用して前記蒸気分解装置を作動させて、前記炭化水素ストリームを処理することを含む。実施形態9は、ステップ(e)での前記分離が、前記蒸気分解装置からの廃液ストリームを分離して、C1~C8炭化水素と蒸気とを含む上部ストリームと、C9~C12炭化水素を含む分解留出油と、C12+炭化水素を含むカーボンブラック油とを生成することを含み得る、実施形態8に記載の方法である。実施形態10は、ステップ(e)が、前記上部ストリームをクエンチして、0.1~20ppmの塩素を含むクエンチ水ストリームと、エチレンとプロピレンとC4炭化水素とC5+炭化水素とを含むクエンチ廃液ストリームと、C5+炭化水素を含むパイガスストリームとを生成することをさらに含む、実施形態8及び9のいずれかに記載の方法である。実施形態11は、前記パイガスストリームを前記クエンチ廃液ストリームの圧縮液体フラクションと組み合わせて複合熱分解ガスストリームを形成する、実施形態8~9のいずれかに記載の方法である。実施形態12は、前記複合熱分解ガスストリームが0.1~1ppmの塩素を含む、実施形態8~10のいずれかに記載の方法である。上記及び本明細書中で記載する実施形態はすべて、明示的に除外されない限り、任意の方法で組み合わせることができる。
【0052】
本願の実施形態とその利点を詳細に説明してきたが、前記添付の特許請求の範囲により定義される前記実施形態の精神及び範囲から逸脱することなく、様々な変更、置換、及び改変を本明細書中で行うことができることを理解されたい。さらに、前記本願の前記範囲は、前記明細書に記載する前記プロセス、機械、製造、組成物、手段、方法及びステップの前記特定の実施形態に限定されることを意図しない。当業者であれば前記開示から容易に理解できるように、本明細書中で記載する前記対応する実施形態と実質的に同じ機能を果たすか、又は実質的に同じ結果を達成する、現在存在しているか又は後に開発されるプロセス、機械、製造、組成物、手段、方法、又はステップを利用することができる。したがって、前記添付の特許請求の範囲は、その範囲内に、そのようなプロセス、機械、製造、組成物、手段、方法、又はステップを含むことが意図される。
【国際調査報告】