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特表2023-552621抗LAG-3のモノクローナル抗体、その抗原結合性断片及びその使用
<図1>
  • 特表-抗LAG-3のモノクローナル抗体、その抗原結合性断片及びその使用 図1
  • 特表-抗LAG-3のモノクローナル抗体、その抗原結合性断片及びその使用 図2
  • 特表-抗LAG-3のモノクローナル抗体、その抗原結合性断片及びその使用 図3
  • 特表-抗LAG-3のモノクローナル抗体、その抗原結合性断片及びその使用 図4
  • 特表-抗LAG-3のモノクローナル抗体、その抗原結合性断片及びその使用 図5
  • 特表-抗LAG-3のモノクローナル抗体、その抗原結合性断片及びその使用 図6
  • 特表-抗LAG-3のモノクローナル抗体、その抗原結合性断片及びその使用 図7
  • 特表-抗LAG-3のモノクローナル抗体、その抗原結合性断片及びその使用 図8
  • 特表-抗LAG-3のモノクローナル抗体、その抗原結合性断片及びその使用 図9
  • 特表-抗LAG-3のモノクローナル抗体、その抗原結合性断片及びその使用 図10
  • 特表-抗LAG-3のモノクローナル抗体、その抗原結合性断片及びその使用 図11
  • 特表-抗LAG-3のモノクローナル抗体、その抗原結合性断片及びその使用 図12
  • 特表-抗LAG-3のモノクローナル抗体、その抗原結合性断片及びその使用 図13
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-18
(54)【発明の名称】抗LAG-3のモノクローナル抗体、その抗原結合性断片及びその使用
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/13 20060101AFI20231211BHJP
   C07K 16/28 20060101ALI20231211BHJP
   C07K 16/46 20060101ALI20231211BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20231211BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20231211BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20231211BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20231211BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20231211BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20231211BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20231211BHJP
   A61P 17/06 20060101ALI20231211BHJP
   A61P 1/04 20060101ALI20231211BHJP
   A61P 19/02 20060101ALI20231211BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20231211BHJP
   A61P 1/16 20060101ALI20231211BHJP
   A61P 37/02 20060101ALI20231211BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20231211BHJP
   A61P 37/06 20060101ALI20231211BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20231211BHJP
【FI】
C12N15/13
C07K16/28 ZNA
C07K16/46
C12N15/63 Z
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
A61K39/395 N
A61P35/00
A61P35/02
A61P17/06
A61P1/04
A61P19/02
A61P29/00 101
A61P1/16
A61P37/02
A61P25/00
A61P37/06
A61P43/00 121
A61K39/395 T
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023535502
(86)(22)【出願日】2021-11-29
(85)【翻訳文提出日】2023-06-09
(86)【国際出願番号】 CN2021133941
(87)【国際公開番号】W WO2022121720
(87)【国際公開日】2022-06-16
(31)【優先権主張番号】202011436581.5
(32)【優先日】2020-12-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】512320009
【氏名又は名称】北京東方百泰生物科技股▲ふん▼有限公司
【住所又は居所原語表記】Room 406,Building 1,No.2 Rongjing East Road,Beijing Economic-Technological Development Area,Beijing 100176,CHINA
(71)【出願人】
【識別番号】517058510
【氏名又は名称】北京精益泰翔技▲術▼▲発▼展有限公司
【住所又は居所原語表記】Room 01-101,Floor 1,Building 1,No.2 Rongjing East Road, Beijing Economic-Technological Development Area Beijing 100176,China
(74)【代理人】
【識別番号】100158920
【弁理士】
【氏名又は名称】上野 英樹
(72)【発明者】
【氏名】バイ,イー
(72)【発明者】
【氏名】シュウ,ジェンジェ
(72)【発明者】
【氏名】リュー,シ
【テーマコード(参考)】
4B065
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA01X
4B065AA72X
4B065AA90X
4B065AA92Y
4B065AA94Y
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065CA25
4B065CA44
4C085AA14
4C085AA16
4C085BB01
4C085BB36
4C085CC23
4C085EE01
4C085EE03
4H045AA11
4H045AA30
4H045DA76
4H045EA28
4H045FA74
(57)【要約】
生物医学技術の分野に関し、具体的には、抗LAG-3のモノクローナル抗体、その抗原結合性断片及びその使用を提供し、重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含み、モノクローナル抗体又はその抗原結合性断片は、A-1、A-2、A-3、A-4から選択されるいずれか1つである。提供されるモノクローナル抗体は、LAG-3と特異的に結合でき、親和性が高く、且つ非常に良い生物学的活性を有し、複数種類のがん症又は免疫疾患の治療に使用でき、がんには、白血病、肺がん、胃がん、食道がん、卵巣がん、頭頸部がん、黒色腫、腎がん、乳がん、結腸直腸がん、肝臓がん、膵臓がん、又は膀胱がんが含まれ、免疫疾患には、乾癬、クローン病、リウマチ性関節炎、原発性胆汁性肝硬変、全身性紅斑性狼瘡、多発性硬化症、潰瘍性結腸炎、及び自己免疫性肝炎が含まれる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含むモノクローナル抗体又はその抗原結合性断片であって、前記重鎖可変領域は、それぞれHCDR1、HCDR2及びHCDR3で表される3つの重鎖相補性決定領域を含み、前記軽鎖可変領域は、それぞれLCDR1、LCDR2及びLCDR3で表される3つの軽鎖相補性決定領域を含み、前記モノクローナル抗体又はその抗原結合性断片は、A-1~A-4から選択されるいずれか1つであることを特徴とする抗LAG-3のモノクローナル抗体又はその抗原結合性断片。
A-1:前記重鎖相補性決定領域HCDR1は配列番号1に示されるアミノ酸配列を含み、前記重鎖相補性決定領域HCDR2は配列番号2に示されるアミノ酸配列を含み、前記重鎖相補性決定領域HCDR3は配列番号3に示されるアミノ酸配列を含み、前記軽鎖相補性決定領域LCDR1は配列番号4に示されるアミノ酸配列を含み、前記軽鎖相補性決定領域LCDR2は配列番号5に示されるアミノ酸配列を含み、前記軽鎖相補性決定領域LCDR3は配列番号6に示されるアミノ酸配列を含む。
A-2:前記重鎖相補性決定領域HCDR1は配列番号1に示されるアミノ酸配列を含み、前記重鎖相補性決定領域HCDR2は配列番号2に示されるアミノ酸配列を含み、前記重鎖相補性決定領域HCDR3は配列番号3に示されるアミノ酸配列を含み、前記軽鎖相補性決定領域LCDR1は配列番号4に示されるアミノ酸配列を含み、前記軽鎖相補性決定領域LCDR2は配列番号7に示されるアミノ酸配列を含み、前記軽鎖相補性決定領域LCDR3は配列番号8に示されるアミノ酸配列を含む。
A-3:前記重鎖相補性決定領域HCDR1は配列番号9に示されるアミノ酸配列を含み、前記重鎖相補性決定領域HCDR2は配列番号10に示されるアミノ酸配列を含み、前記重鎖相補性決定領域HCDR3は配列番号11に示されるアミノ酸配列を含み、前記軽鎖相補性決定領域LCDR1は配列番号12に示されるアミノ酸配列を含み、前記軽鎖相補性決定領域LCDR2は配列番号13に示されるアミノ酸配列を含み、前記軽鎖相補性決定領域LCDR3は配列番号14に示されるアミノ酸配列を含む。
A-4:前記重鎖相補性決定領域HCDR1は配列番号15に示されるアミノ酸配列を含み、前記重鎖相補性決定領域HCDR2は配列番号16に示されるアミノ酸配列を含み、前記重鎖相補性決定領域HCDR3は配列番号17に示されるアミノ酸配列を含み、前記軽鎖相補性決定領域LCDR1は配列番号18に示されるアミノ酸配列を含み、前記軽鎖相補性決定領域LCDR2は配列番号19に示されるアミノ酸配列を含み、前記軽鎖相補性決定領域LCDR3は配列番号20に示されるアミノ酸配列を含む。
【請求項2】
前記モノクローナル抗体又はその抗原結合性断片は、マウス由来抗体分子であり、前記マウス由来抗体分子は、MA-1~MA-4から選択されるいずれか1つであり、
好ましくは、前記マウス由来抗体分子はMA-1である、
ことを特徴とする請求項1に記載の抗LAG-3のモノクローナル抗体又はその抗原結合性断片。
MA-1:前記重鎖可変領域は配列番号21に示されるアミノ酸配列を含み、前記軽鎖可変領域は配列番号22に示されるアミノ酸配列を含む。
MA-2:前記重鎖可変領域は配列番号21に示されるアミノ酸配列を含み、前記軽鎖可変領域は配列番号23に示されるアミノ酸配列を含む。
MA-3:前記重鎖可変領域は配列番号24に示されるアミノ酸配列を含み、前記軽鎖可変領域は配列番号25に示されるアミノ酸配列を含む。
MA-4:前記重鎖可変領域は配列番号26に示されるアミノ酸配列を含み、前記軽鎖可変領域は配列番号27に示されるアミノ酸配列を含む。
【請求項3】
前記マウス由来抗体分子は、重鎖定常領域及び軽鎖定常領域をさらに含み、前記重鎖定常領域は、マウスのIgG1型、IgG2a型、IgG2b型、IgG3型のうちの1つであり、前記IgG1型の重鎖定常領域アミノ酸配列は配列番号29に示され、前記IgG2a型の重鎖定常領域アミノ酸配列は配列番号30に示され、前記IgG2b型の重鎖定常領域アミノ酸配列は配列番号31に示され、前記IgG3型の重鎖定常領域アミノ酸配列は配列番号32に示され、前記軽鎖定常領域は、アミノ酸配列が配列番号28に示されるマウス由来C鎖であり、
好ましくは、前記重鎖定常領域は、マウスのIgG1型である、
ことを特徴とする請求項2に記載の抗LAG-3のモノクローナル抗体又はその抗原結合性断片。
【請求項4】
前記モノクローナル抗体又はその抗原結合性断片はキメラ抗体分子であり、前記キメラ抗体分子は、前記マウス由来抗体分子の重鎖可変領域、前記マウス由来抗体分子の軽鎖可変領域、及びヒト由来抗体定常領域を含み、前記ヒト由来抗体定常領域は、ヒト由来抗体重鎖定常領域及びヒト由来抗体軽鎖定常領域を含み、前記ヒト由来抗体重鎖定常領域は、ヒトのIgG1型、IgG2型又はIgG4型のうちの1つであり、前記IgG1型の重鎖定常領域アミノ酸配列は配列番号39に示され、前記IgG2型の重鎖定常領域アミノ酸配列は配列番号40に示され、前記IgG4型の重鎖定常領域アミノ酸配列は配列番号41に示され、前記ヒト由来抗体軽鎖定常領域は、アミノ酸配列が配列番号42に示されるヒトのC鎖であり、
好ましくは、前記ヒト由来抗体重鎖定常領域は、ヒトのIgG4型である、
ことを特徴とする請求項2に記載の抗LAG-3のモノクローナル抗体又はその抗原結合性断片。
【請求項5】
前記モノクローナル抗体又はその抗原結合性断片はヒト化抗体分子であり、前記ヒト化抗体分子は、HA-1~HA-5から選択されるいずれか1つであり、
好ましくは、前記ヒト化抗体分子は、HA-1である、
ことを特徴とする請求項1に記載の抗LAG-3のモノクローナル抗体又はその抗原結合性断片。
HA-1:前記重鎖可変領域は配列番号33に示されるアミノ酸配列を含み、前記軽鎖可変領域は配列番号34に示されるアミノ酸配列を含む。
HA-2:前記重鎖可変領域は配列番号33に示されるアミノ酸配列を含み、前記軽鎖可変領域は配列番号35に示されるアミノ酸配列を含む。
HA-3:前記重鎖可変領域は配列番号36に示されるアミノ酸配列を含み、前記軽鎖可変領域は配列番号35に示されるアミノ酸配列を含む。
HA-4:前記重鎖可変領域は配列番号36に示されるアミノ酸配列を含み、前記軽鎖可変領域は配列番号34に示されるアミノ酸配列を含む。
HA-5:前記重鎖可変領域は配列番号37に示されるアミノ酸配列を含み、前記軽鎖可変領域は配列番号38に示されるアミノ酸配列を含む。
【請求項6】
前記ヒト化抗体分子は、重鎖定常領域及び軽鎖定常領域をさらに含み、前記重鎖定常領域は、ヒトのIgG1型、IgG2型又はIgG4型のうちの1つであり、前記IgG1型の重鎖定常領域アミノ酸配列は配列番号39に示され、前記IgG2型の重鎖定常領域アミノ酸配列は配列番号40に示され、前記IgG4型の重鎖定常領域アミノ酸配列は配列番号41に示され、前記軽鎖定常領域は、アミノ酸配列が配列番号42に示されるヒトのC鎖であり、
好ましくは、前記重鎖定常領域は、ヒトのIgG4型である、
ことを特徴とする請求項5に記載の抗LAG-3のモノクローナル抗体又はその抗原結合性断片。
【請求項7】
前記ヒト化抗体分子は、全長抗体又は抗体断片であり、前記ヒト化抗体分子は、Fab、F(ab)2、Fv又はScFvのうちの一種又は数種の組合せを含む、
ことを特徴とする請求項5に記載の抗LAG-3のモノクローナル抗体又はその抗原結合性断片。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項に記載の抗LAG-3のモノクローナル抗体又はその抗原結合性断片を含む、
ことを特徴とするポリペプチド又はタンパク質。
【請求項9】
請求項1~7のいずれか1項に記載の抗LAG-3のモノクローナル抗体又はその抗原結合性断片のアミノ酸配列をコードする、
ことを特徴とするポリヌクレオチド配列又は組合せ。
【請求項10】
請求項9に記載のポリヌクレオチド配列又は組合せを含む、
ことを特徴とする組換えDNA発現ベクター。
【請求項11】
請求項10に記載の組換えDNA発現ベクターをトランスフェクションする宿主細胞であって、前記宿主細胞は、原核細胞、酵母細胞、昆虫細胞又は哺乳動物細胞を含み、
好ましくは、前記宿主細胞は、哺乳動物細胞であり、前記哺乳動物細胞は、HEK293E細胞、CHO細胞又はNS0細胞である、
ことを特徴とする宿主細胞。
【請求項12】
請求項1~7のいずれか1項に記載の抗LAG-3のモノクローナル抗体又はその抗原結合性断片を含む、
ことを特徴とする医薬又は医薬組成物。
【請求項13】
請求項1~7のいずれか1項に記載の抗LAG-3のモノクローナル抗体又はその抗原結合性断片の、がん治療用薬又は免疫疾患用薬の製造における使用であって、
好ましくは、前記がんには、白血病、肺がん、胃がん、食道がん、卵巣がん、頭頸部がん、黒色腫、腎がん、乳がん、結腸直腸がん、肝臓がん、膵臓がん、又は膀胱がんが含まれ、
前記免疫疾患には、乾癬、クローン病、リウマチ性関節炎、原発性胆汁性肝硬変、全身性紅斑性狼瘡、多発性硬化症、潰瘍性結腸炎、及び自己免疫性肝炎が含まれる、
抗LAG-3のモノクローナル抗体又はその抗原結合性断片の、がん治療用薬又は免疫疾患用薬の製造における使用。
【請求項14】
請求項1~7のいずれか1項に記載の抗LAG-3のモノクローナル抗体又はその抗原結合性断片と抗PD-1モノクローナル抗体との組み合わせの、がん治療用薬又は免疫疾患用薬の製造における使用。
【請求項15】
前記抗PD-1モノクローナル抗体は、DFPD1-9、DFPD1-10、DFPD1-11、DFPD1-12、DFPD1-13、Nivolumab、Pembrolizumab、トリパリマブ(Toripalimab)、シンチリマブ(Sintilimab)、チスレリズマブ(Tislelizumab)、カムレリズマブ(Camrelizumab)、ペンプリマブ(Penpulimab)又はジンベレリマブ(Zimberelimab)から選択される、
ことを特徴とする請求項14に記載の使用。
【請求項16】
前記抗PD-1モノクローナル抗体は、配列番号45に示される軽鎖可変領域及び配列番号43に示される重鎖可変領域を含むDFPD1-10である、
ことを特徴とする請求項15に記載の使用。
【請求項17】
前記抗PD-1モノクローナル抗体は、Nivolumabである、
ことを特徴とする請求項15に記載の使用。
【請求項18】
前記がんは、白血病、肺がん、胃がん、食道がん、卵巣がん、頭頸部がん、黒色腫、腎がん、乳がん、結腸直腸がん、肝臓がん、膵臓がん、又は膀胱がんから選択され、前記免疫疾患には、乾癬、クローン病、リウマチ性関節炎、原発性胆汁性肝硬変、全身性紅斑性狼瘡、多発性硬化症、潰瘍性結腸炎、及び自己免疫性肝炎が含まれる、
ことを特徴とする請求項15に記載の使用。

【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本願は、2020年12月10日に提出された中国特許出願202011436581.5の優先権を主張し、その内容の全てが参照によって本願に組み込まれる。
【技術分野】
【0002】
本発明は、生物医学技術の分野に関し、特に、抗LAG-3のモノクローナル抗体、その抗原結合性断片及びその使用に関する。
【背景技術】
【0003】
免疫療法は、現在最もホットな話題のがん治療法であり、がん治療の三次革命とも呼ばれている。いわゆる「がん免疫治療」とは、ヒト体自身の免疫系を利用して、がん細胞を攻撃する治療方法である。免疫系とがん細胞との拮抗は、長期にわたる動的な過程であり、正面勝負をするだけでなく、互いに交わる。健康な身体の免疫細胞は、がん細胞を発見して殺すことができるが、様々な先天及び後天の要因に誘導され、免疫系は、絶対的な優位性を失い、さらにはがん細胞に「扇動」されて、がんの発生及び進行に役立つ。標的薬は、その正確性が原因で大きな期待が寄せられていたが、がん細胞の変わりやすさ及び複雑さのせいで、がん細胞に薬剤耐性が生じやすく、正確性も役に立たなくなりやすい。そのため、CTLA-4及びPD-1が発見されてから、免疫チェックポイント阻害によるがんの治療は、徐々に研究の焦点となっている。
【0004】
免疫抗がん療法の登場に伴い、LAG-3は、かなりの可能性のある免疫チェックポイント受容体として次第に認識されており、報道によれば、LAG-3は、調節性T細胞の活性を促進すること及びT細胞の活性化と増殖を低く調節することにおいて重要な役割を果たす(Workman CJら、J.Immunol.2005;174:688-695)。LAG-3(Lymphocyte-activation gene 3)は、CD223とも呼ばれ、当該遺伝子は、8つのエクソンを含み、エクソンは、ヒトの12番染色体(マウスの6番染色体)に位置し、免疫グロブリンスーパーファミリに属し、細胞外領域、膜貫通領域及び細胞質領域これら3つの部分からなり、498個のアミノ酸から構成されるI型膜貫通タンパク質をコードする。LAG-3は、活性化されたNK細胞、T細胞などの免疫細胞表面で広く発現し、リンパ細胞機能をマイナス方向に制御することができ、且つ、腫瘍及び自己免疫性疾患の両方において重要な役割を果たすことが一部の研究によって証明されている。
【0005】
臨床前の研究から次のことが分かる。LAG-3を阻害することは、T細胞に細胞毒性を再回復させることができ、それにより、腫瘍の成長を制限し、さらに腫瘍に対する殺傷効果を強化し、また、LAG-3を阻害することは、T細胞を調節して免疫反応を阻害する機能を低下させることもでき、そのため、LAG-3は、T細胞の機能を調節できる免疫チェックポイント受容体であり、LAG-3を阻害することは、患者、特にLAG-3を発現する免疫細胞が腫瘍に含まれている患者により多くの利点をもたらすようにするのに役立ち、このため、LAG-3は、他の免疫チェックポイントタンパク質よりも魅力的な標的であると考えられている。現在、免疫チェックポイントの二世代標的において、LAG-3は、臨床データが多く、創薬可能性が比較的確定されている標的である。LAG-3存在の上記重要性に鑑み、中国国内外の腫瘍又は他の免疫疾患患者のニーズを満たすために、高い生物学的活性を有する抗LAG-3のモノクローナル抗体を開発することが急務となっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、国内の市場のニーズを満たすために、免疫ライブラリーのスクリーニングにより、LAG-3と特異的に結合することができ、且つ高い生物学的活性を有する抗LAG-3のモノクローナル抗体又は抗原結合性断片を得る。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の具体的な技術案は、下記のとおりである。
本発明は、重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含む抗LAG-3のモノクローナル抗体又はその抗原結合性断片を提供し、前記重鎖可変領域は、それぞれHCDR1、HCDR2及びHCDR3で表される3つの重鎖相補性決定領域を含み、前記軽鎖可変領域は、それぞれLCDR1、LCDR2及びLCDR3で表される3つの軽鎖相補性決定領域を含み、前記モノクローナル抗体又はその抗原結合性断片は、A-1~A-4から選択されるいずれか1つであり、
A-1:前記重鎖相補性決定領域HCDR1は配列番号1に示されるアミノ酸配列を含み、前記重鎖相補性決定領域HCDR2は配列番号2に示されるアミノ酸配列を含み、前記重鎖相補性決定領域HCDR3は配列番号3に示されるアミノ酸配列を含み、前記軽鎖相補性決定領域LCDR1は配列番号4に示されるアミノ酸配列を含み、前記軽鎖相補性決定領域LCDR2は配列番号5に示されるアミノ酸配列を含み、前記軽鎖相補性決定領域LCDR3は配列番号6に示されるアミノ酸配列を含み、
A-2:前記重鎖相補性決定領域HCDR1は配列番号1に示されるアミノ酸配列を含み、前記重鎖相補性決定領域HCDR2は配列番号2に示されるアミノ酸配列を含み、前記重鎖相補性決定領域HCDR3は配列番号3に示されるアミノ酸配列を含み、前記軽鎖相補性決定領域LCDR1は配列番号4に示されるアミノ酸配列を含み、前記軽鎖相補性決定領域LCDR2は配列番号7に示されるアミノ酸配列を含み、前記軽鎖相補性決定領域LCDR3は配列番号8に示されるアミノ酸配列を含み、
A-3:前記重鎖相補性決定領域HCDR1は配列番号9に示されるアミノ酸配列を含み、前記重鎖相補性決定領域HCDR2は配列番号10に示されるアミノ酸配列を含み、前記重鎖相補性決定領域HCDR3は配列番号11に示されるアミノ酸配列を含み、前記軽鎖相補性決定領域LCDR1は配列番号12に示されるアミノ酸配列を含み、前記軽鎖相補性決定領域LCDR2は配列番号13に示されるアミノ酸配列を含み、前記軽鎖相補性決定領域LCDR3は配列番号14に示されるアミノ酸配列を含み、
A-4:前記重鎖相補性決定領域HCDR1は配列番号15に示されるアミノ酸配列を含み、前記重鎖相補性決定領域HCDR2は配列番号16に示されるアミノ酸配列を含み、前記重鎖相補性決定領域HCDR3は配列番号17に示されるアミノ酸配列を含み、前記軽鎖相補性決定領域LCDR1は配列番号18に示されるアミノ酸配列を含み、前記軽鎖相補性決定領域LCDR2は配列番号19に示されるアミノ酸配列を含み、前記軽鎖相補性決定領域LCDR3は配列番号20に示されるアミノ酸配列を含む。
【0008】
本発明にて提供される上記抗LAG-3のモノクローナル抗体又はその抗原結合性断片は、LAG-3と特異的に結合することができ、結合活性がよりよく、LAG-3を遮断すると、LAG-3のT細胞に対する阻害作用を逆転することができ、T細胞の活性を増強し、調節性T細胞の数を減らし、T細胞免疫応答の感度を向上させることもでき、それにより、免疫疾患又はがん疾患を治療するために用いられる。
【0009】
さらに、前記モノクローナル抗体又はその抗原結合性断片は、マウス由来抗体分子であり、前記マウス由来抗体分子は、MA-1~MA-4から選択されるいずれか1つであり、
MA-1:前記重鎖可変領域は配列番号21に示されるアミノ酸配列を含み、前記軽鎖可変領域は配列番号22に示されるアミノ酸配列を含み、
MA-2む。前記重鎖可変領域は配列番号21に示されるアミノ酸配列を含み、前記軽鎖可変領域は配列番号23に示されるアミノ酸配列を含み、
MA-3む。前記重鎖可変領域は配列番号24に示されるアミノ酸配列を含み、前記軽鎖可変領域は配列番号25に示されるアミノ酸配列を含み、
MA-4む。前記重鎖可変領域は配列番号26に示されるアミノ酸配列を含み、前記軽鎖可変領域は配列番号27に示されるアミノ酸配列を含み、
好ましくは、前記マウス由来抗体分子はMA-1である。
【0010】
本発明では、マウス免疫用のLAG-3抗原でマウスを免疫させることにより、免疫方法を最適化し、ファージディスプレイライブラリーを作成し、上記親和性が高く、活性が良く且つ安定的なマウス由来抗体分子をスクリーニングして、大量の細胞レベル実験の検証により、他の3つのマウス由来抗体分子に比べ、MA-1がより高い生物学的活性を有することが発見され、そのため、本発明では、MA-1を選択することが好ましい。
【0011】
さらに、前記マウス由来抗体分子は、重鎖定常領域及び軽鎖定常領域をさらに含み、前記重鎖定常領域は、マウスのIgG1型、IgG2a型、IgG2b型、IgG3型のうちの1つであり、前記IgG1型の重鎖定常領域アミノ酸配列は配列番号29に示され、前記IgG2a型の重鎖定常領域アミノ酸配列は配列番号30に示され、前記IgG2b型の重鎖定常領域アミノ酸配列は配列番号31に示され、前記IgG3型の重鎖定常領域アミノ酸配列は配列番号32に示され、前記軽鎖定常領域は、アミノ酸配列が配列番号28に示されるマウス由来C鎖であり、
好ましくは、前記重鎖定常領域は、マウスのIgG1型である。
【0012】
さらに、前記モノクローナル抗体又はその抗原結合性断片はキメラ抗体分子であり、前記キメラ抗体分子は、前記マウス由来抗体分子の重鎖可変領域、前記マウス由来抗体分子の軽鎖可変領域、及びヒト由来抗体定常領域を含み、前記ヒト由来抗体定常領域は、ヒト由来抗体重鎖定常領域及びヒト由来抗体軽鎖定常領域を含み、前記ヒト由来抗体重鎖定常領域は、ヒトのIgG1型、IgG2型又はIgG4型のうちの1つであり、前記IgG1型の重鎖定常領域アミノ酸配列は配列番号39に示され、前記IgG2型の重鎖定常領域アミノ酸配列は配列番号40に示され、前記IgG4型の重鎖定常領域アミノ酸配列は配列番号41に示され、前記ヒト由来抗体軽鎖定常領域は、アミノ酸配列が配列番号42に示されるヒトのC鎖であり、
好ましくは、前記ヒト由来抗体重鎖定常領域は、ヒトのIgG4型である。
【0013】
キメラ抗体分子は、マウス由来抗体分子の可変領域配列及びヒト由来抗体定常領域を含み、キメラ抗体分子の設計は、本発明の定常領域がヒト化された後にCDRの機能が変化しないことを検証するために用いられ、ヒト化抗体分子のさらなる研究開発のために基礎を提供する。
【0014】
さらに、前記モノクローナル抗体又はその抗原結合性断片は、HA-1~HA-5から選択されるいずれか1つであるヒト化抗体分子であり、
HA-1:前記重鎖可変領域は配列番号33に示されるアミノ酸配列を含み、前記軽鎖可変領域は配列番号34に示されるアミノ酸配列を含み、
HA-2:前記重鎖可変領域は配列番号33に示されるアミノ酸配列を含み、前記軽鎖可変領域は配列番号35に示されるアミノ酸配列を含み、
HA-3:前記重鎖可変領域は配列番号36に示されるアミノ酸配列を含み、前記軽鎖可変領域は配列番号35に示されるアミノ酸配列を含み、
HA-4:前記重鎖可変領域は配列番号36に示されるアミノ酸配列を含み、前記軽鎖可変領域は配列番号34に示されるアミノ酸配列を含み、
HA-5:前記重鎖可変領域は配列番号37に示されるアミノ酸配列を含み、前記軽鎖可変領域は配列番号38に示されるアミノ酸配列を含み、
好ましくは、前記ヒト化抗体分子は、HA-1である。
【0015】
本発明は、ヒト化とスクリーニングによりヒト化抗体分子を取得し、体内と体外での実験検証により、本発明にて提供される5種類のヒト化抗体分子のうち、HA-1が、活性が高く、薬効が最も顕著であることが発見され、そのため、本発明では、HA-1が好ましい。
【0016】
さらに、前記ヒト化抗体分子は、重鎖定常領域及び軽鎖定常領域をさらに含み、前記重鎖定常領域は、ヒトのIgG1型、IgG2型又はIgG4型のうちの1つであり、前記IgG1型の重鎖定常領域アミノ酸配列は配列番号39に示され、前記IgG2型の重鎖定常領域アミノ酸配列は配列番号40に示され、前記IgG4型の重鎖定常領域アミノ酸配列は配列番号41に示され、前記軽鎖定常領域は、アミノ酸配列が配列番号42に示されるヒトのC鎖であり、
好ましくは、前記重鎖定常領域は、ヒトのIgG4型である。
【0017】
さらに、前記ヒト化抗体分子は、全長抗体又は抗体断片であり、前記ヒト化抗体分子は、Fab、F(ab)2、Fv又はScFvのうちの一種又は数種の組合せを含む。
【0018】
本発明は、前記抗LAG-3のモノクローナル抗体又はその抗原結合性断片を含むポリペプチド又はタンパク質をさらに提供する。
【0019】
本発明は、前記抗LAG-3のモノクローナル抗体又はその抗原結合性断片のアミノ酸配列をコードする、ポリヌクレオチド配列又は組合せをさらに提供する。
【0020】
本発明は、前記ポリヌクレオチド配列又は組合せを含む組換えDNA発現ベクターをさらに提供する。
【0021】
本発明は、前記組換えDNA発現ベクターをトランスフェクションする宿主細胞をさらに提供し、前記宿主細胞は、原核細胞、酵母細胞、昆虫細胞又は哺乳動物細胞を含み、
好ましくは、前記宿主細胞は、哺乳動物細胞であり、前記哺乳動物細胞は、HEK293E細胞、CHO細胞又はNS0細胞である。
【0022】
本発明は、前記抗LAG-3のモノクローナル抗体又はその抗原結合性断片を含む医薬又は医薬組成物をさらに提供する。
【0023】
本発明は、前記抗LAG-3のモノクローナル抗体又はその抗原結合性断片の、がん治療用薬又は免疫疾患用薬の製造における使用をさらに提供し、
好ましくは、前記がんには、白血病、肺がん、胃がん、食道がん、卵巣がん、頭頸部がん、黒色腫、腎がん、乳がん、結腸直腸がん、肝臓がん、膵臓がん、又は膀胱がんが含まれ、
前記免疫疾患には、乾癬、クローン病、リウマチ性関節炎、原発性胆汁性肝硬変、全身性紅斑性狼瘡、多発性硬化症、潰瘍性結腸炎、及び自己免疫性肝炎が含まれる。
【0024】
本発明は、前記抗LAG-3のモノクローナル抗体又はその抗原結合性断片と抗PD-1モノクローナル抗体との組み合わせの、がん治療用薬又は免疫疾患用薬の製造における使用をさらに提供する。
【0025】
さらに、前記抗PD-1モノクローナル抗体には、DFPD1-9、DFPD1-10、DFPD1-11、DFPD1-12、DFPD1-13、Nivolumab、Pembrolizumab、トリパリマブ(Toripalimab)、シンチリマブ(Sintilimab)、チスレリズマブ(Tislelizumab)、カムレリズマブ(Camrelizumab)、ペンプリマブ(Penpulimab)又はジンベレリマブ(Zimberelimab)が含まれる。
【0026】
好ましくは、前記抗PD-1モノクローナル抗体は、配列番号45に示される軽鎖可変領域及び配列番号43に示される重鎖可変領域を含むDFPD1-10である。
【0027】
好ましくは、前記抗PD-1モノクローナル抗体は、Nivolumabである。
【0028】
好ましくは、前記がんは、白血病、肺がん、胃がん、食道がん、卵巣がん、頭頸部がん、黒色腫、腎がん、乳がん、結腸直腸がん、肝臓がん、膵臓がん、又は膀胱がんから選択され、前記免疫疾患には、乾癬、クローン病、リウマチ性関節炎、原発性胆汁性肝硬変、全身性紅斑性狼瘡、多発性硬化症、潰瘍性結腸炎、及び自己免疫性肝炎が含まれる。
【発明の効果】
【0029】
本発明の有益な効果は、次のとおりである。本発明にて提供される抗LAG-3のモノクローナル抗体又はその抗原結合性断片は、LAG-3と特異的に結合でき、親和性が高く、且つ非常に良い生物学的活性を有し、複数種類のがん症又は免疫疾患の治療に使用でき、がんには、白血病、肺がん、胃がん、食道がん、卵巣がん、頭頸部がん、黒色腫、腎がん、乳がん、結腸直腸がん、肝臓がん、膵臓がん、又は膀胱がんが含まれるが、これらに限定されず、免疫疾患には、乾癬、クローン病、リウマチ性関節炎、原発性胆汁性肝硬変、全身性紅斑性狼瘡、多発性硬化症、潰瘍性結腸炎、及び自己免疫性肝炎が含まれるが、これらに限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】本発明の実施例2における、pScFv-Disb-HSベクターのプラスミドマップである。
図2】本発明の実施例3における、勾配希釈ELISA抗LAG-3ファージモノクローナル抗体の相対的な親和性を比較した図である。
図3】本発明の実施例5における、ベクターpTSEのマップある。
図4】本発明の実施例5における、マウス由来抗体分子の変性ポリアクリルアミドゲル電気泳動図である。
図5】本発明の実施例6における、マウス由来抗体のLAG-3との結合能力の比較図である。
図6】本発明の実施例7における、混合リンパ細胞反応においてマウス由来抗体のサイトカインIL-2に対する分泌状況図である。
図7】本発明の実施例12における、ヒト化抗体分子の変性ポリアクリルアミドゲル電気泳動図である。
図8】本発明の実施例15における、ヒト化抗体分子のLAG-3との結合能力の比較図である。
図9】本発明の実施例16における、混合リンパ細胞反応(MLR)テストにおける抗LAG-3ヒト化抗体分子活性を示す。
図10】本発明の実施例17における、抗LAG-3モノクローナル抗体のマウス体内MC38結腸直腸がんに対する阻害試験の効果図である。
図11】本発明の実施例18における、抗LAG-3モノクローナル抗体HA-1タンパク質分子の熱安定性の評価図である。
図12】本発明の実施例22における、抗LAG-3モノクローナル抗体と抗PD-1モノクローナル抗体との組合せの、MC38結腸直腸がんモデルへの適用における腫瘍体積成長のグラフである。
図13】本発明の実施例22における、抗LAG-3モノクローナル抗体と抗PD-1モノクローナル抗体との組合せの、MC38結腸直腸がんモデルへの適用における腫瘍重量の柱状グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本発明の理解をより容易にするために、実施例について説明する前に、本発明の一部の技術用語及び科学用語について下記のように説明する。
【0032】
本明細書に使用される「LAG-3」という用語は、リンパ細胞活性化因子3をいい、ここのLAG-3は、活性化されたT細胞、NK細胞及びB細胞表面上の二量体が発現するLAG-3(例えば、当分野で知られているCD223)並びにヒト血清から発見されたLAG-3の可溶性形態を含むが、これらに限定されず、本明細書では、いずれもLAG-3と呼ばれる。
【0033】
本明細書に使用される「抗体」という用語は、完全抗体及びそのいずれかの抗原結合性断片を含み、抗体には、マウス由来抗体、ヒト化抗体、二重特異性抗体又はキメラ抗体が含まれ、抗体は、Fab、F(ab)2、Fv又はScFv(一本鎖抗体)であってもよく、抗体は、天然に存在する抗体であっても、変更(例えば、突然変異、欠失、置換等)された抗体であってもよい。
【0034】
本明細書に使用される「可変領域」及び「定常領域」という用語は、抗体重鎖及び軽鎖のNセグメントに近い配列領域が可変領域(V領域)であり、Cセグメントに近い残りのアミノ酸配列は比較的安定して、定常領域(C領域)であり、可変領域は3つの相補性決定領域(CDR)及び4つのフレーム領域(FR)を含み、各軽鎖可変領域及び重鎖可変領域は、いずれも3つのCDR領域及び4つのFR領域からなり、重鎖の3つのCDR領域は、それぞれHCDR1、HCDR2及びHCDR3で表され、軽鎖の3つのCDR領域は、それぞれLCDR1、LCDR2及びLCDR3で表される。
【0035】
本明細書に使用される「マウス由来抗体分子」という用語は、LAG-3抗原をマウスに免疫注射した後に得られた抗体に由来するものである。
【0036】
本明細書に使用される「キメラ抗体分子」という用語は、マウス由来抗体の可変領域とヒト由来抗体の定常領域とを融合してなる抗体であり、マウス由来抗体によりヒトの体内に誘発される免疫応答反応を軽減することができるものである。キメラ抗体は、DNA組換え技術を利用して、マウス由来モノクローナル抗体の軽、重鎖可変領域遺伝子をヒト抗体の定常領域を含む発現ベクターに挿入するものであり、このように発現された抗体分子において、軽、重鎖の可変領域は、マウス由来であり、定常領域はヒト由来であり、抗体分子全体の2/3近くがヒト由来である。このように生成された抗体は、抗原と特異的に結合する親抗体の能力を維持しながら、マウス由来抗体の免疫原性を低下させる。
【0037】
本明細書に使用される「ヒト化抗体分子」という用語は、ヒト由来抗体にマウス由来モノクローナル抗体の抗原結合特異性を取得させるとともに、その異種性を低下させるために、ヒト由来抗体CDRの代わりに、マウス由来モノクローナル抗体のCDRをヒト由来抗体可変領域に移植したものである。
【0038】
「CHO細胞」という用語は、中国ハムスター卵巣細胞(chinese hamster ovary cell)であり、「HEK293E細胞」という用語は、ヒト胎児腎臓細胞293E細胞(human embryonic kidney 293E cell)であり、「NS0細胞」という用語は、マウスNS0胸腺腫細胞である。
【0039】
以下では、以下の実施例を参照して、本発明についてさらに詳細に説明する。
【0040】
実施例1
本発明の実施例1は、抗LAG-3のモノクローナル抗体又はその抗原結合性断片を提供し、具体的には重鎖可変領及び軽鎖可変領域を含み、重鎖可変領域は、それぞれHCDR1、HCDR2及びHCDR3で表される3つの重鎖相補性決定領域を含み、軽鎖可変領域はそれぞれLCDR1、LCDR2及びLCDR3で表される3つの軽鎖相補性決定領域を含み、モノクローナル抗体又はその抗原結合性断片は、以下から選択されるいずれか1つである。
【表1】
【0041】
実施例2 マウス由来抗体分子のスクリーニング
本発明は、LAG-3抗原でマウスを免疫し、免疫方法を最適化し、ファージディスプレイライブラリーを作成し、具体的には、ファージディスプレイライブラリーの構築とスクリーニング同定は、下記のとおりである。
【0042】
ステップ1:LAG-3抗原でのマウスの免疫
1、実験動物
種族:BALB/c、雌、マウス、
体重:18~20g、
実験動物の供給業者:北京華阜康生物科技股フン有限公司。
2、免疫において、マウスを免疫し、免疫抗原はヒトLAG-3(南京金斯瑞生物科技有限公司の合成遺伝子、当社は、ベクターを構築し、発現して精製する)である。
【0043】
ステップ2:ファージ抗体ライブラリーの構築
力価の高いマウス脾細胞を取り、Trizol試薬(Ambionから購入、製品番号:15596026)を利用して、マウス脾細胞中の総RNA、RT-PCRを抽出してcDNAを取得し、cDNAをテンプレートとして、縮重プライマー(使用される縮重プライマーの参考文献:Journal of Immunological Methods 233(2000)167~177)を用いてPCR増幅を行い、それにより、免疫マウス抗体重鎖可変領域遺伝子ライブラリー(VH)及び軽鎖可変領域遺伝子ライブラリー(VL)を取得し、軽、重鎖はそれぞれ二重切断され、同様にステップ分けて切断処理されたベクターに連結されて、pScFv-Disb-HS-VH-VL遺伝子ライブラリーを構築し、PscFv-DisB-HSベクターは、一連の遺伝子クローニングの方法を用いて、ベクターであるpComb3ベクター(中国プラスミドベクター菌株細胞株遺伝子寄託センターから購入)を、ファージ一本鎖抗体ライブラリーの構築及び発現に使用するように改造したものである。改造後のベクターを、pScFv-Disb-HSベクターと命名し、取得したプラスミドマップは、図1に示されるとおりであり、このベクターを基に、マウス免疫ファージ抗体ライブラリーを構築した。
【0044】
ステップ3:LAG-3を抗原として免疫管を5μg/500μL/管の量でコーティングし、4℃で一晩コーティングし、続いて、4%の脱脂粉乳/PBSTを使用して免疫管及び免疫ファージ抗体ライブラリーをそれぞれブロッキングし、室温で1hブロッキングした。ブロッキングした後の免疫ファージ抗体ライブラリーを免疫管に加えて抗原抗体結合を行い、ファージ投入量は約10~1012個であり、室温で1h反応した後、PBST-PBSを使用して結合しなかったファージを洗浄し、0.1MのpHが2.2であるGlycine-HClで溶出し、最後に1.5MのpHが8.8であるTris-HClを使用して溶出されたファージ抗体溶液をpH7.0程度まで中和した。
【0045】
ステップ4:上記中和後のファージを10mlの対数期に成長したTG1菌液に感染させ、37℃のインキュベーター30min静置し、菌液の一部をとって勾配希釈を行って、2YTAGプレートに塗り、ファージ生成量の計算に使用された。残りの菌液を遠心分離して上澄みを捨て、菌体沈殿物を少量の培地に再懸濁し、吸引した後に2YTAGの大きいプレートに塗って、次回のスクリーニングに備えた。
【0046】
ステップ5:上記感染後にプレートに塗った菌体を大きいプレートから掻き取り、2YTAG液体培地に接種し、対数期まで揺らした後、M13KO7ヘルパーファージを加えて重複感染し、28℃の条件で、220rpmで一晩培養して、ファージを製造し、PEG/NaClを沈殿して精製されたファージを次回のスクリーニングに使用して、ファージライブラリリッチスクリーニングを計1回行った。
【0047】
ステップ6:LAG-3ファージ一本鎖抗体陽性クローンのスクリーニングであって、スクリーニングを1回行った後、良好に分離されたモノクローナルコロニーを選別して、2YTAG液体培地が加えられた96ウェルのディープウェルプレートに接種し、37℃、220rpmの条件で、対数増殖期まで培養し、ウェル当たり約1010のヘルパーファージM13KO7を加え、37℃の温度条件で、30min静置感染した。4000rpmで、15min遠心分離して、上澄みを捨て、菌体を2YTAKで再懸濁して沈殿し、28℃、220rpmの条件で一晩培養した。4000rpm、4℃の条件で、15min遠心分離した後、増幅後のファージ上澄みを吸引してELISA同定を行い、最後にスクリーニングして、4つの親和性の高い抗LAG-3のマウス由来抗体分子を取得し、それぞれMA-1、MA-2、MA-3及びMA-4と命名し、上記得られたモノクローナル抗体に対して遺伝子配列決定を行って、正確な抗体配列と決定し、配列決定したところ、上記スクリーニングで得た4つのモノクローナル抗体の配列は次のとおりである。
【表2】
【0048】
具体的に、配列番号21(MA-1及びMA-2の重鎖可変領域のアミノ酸配列):
【化1】
配列番号22(MA-1の軽鎖可変領域のアミノ酸配列):
【化2】
配列番号23(MA-2の軽鎖可変領域のアミノ酸配列):
【化3】
配列番号24(MA-3の重鎖可変領域のアミノ酸配列):
【化4】
配列番号25(MA-3の軽鎖可変領域のアミノ酸配列):
【化5】
配列番号26(MA-4の重鎖可変領域のアミノ酸配列):
【化6】
配列番号27(MA-4の軽鎖可変領域のアミノ酸配列):
【化7】
【0049】
実施例3 勾配希釈ELISAによる抗LAG-3ファージモノクローナル抗体の親和性の比較
実施例2で得られた4つのマウス由来抗体分子(MA-1、MA-2、MA-3及びMA-4)に対してモノクローナルファージのディスプレイ及び精製を行い、その後、ファージ勾配希釈ELISA実験を行って親和性を同定し、対照抗体として特許CN105992595Aの抗LAG-3のモノクローナル抗体を選択し、具体的な方法は下記のとおりである。
【0050】
pH9.6の炭酸塩緩衝液を使用して、100ng/ウェル/100μlでLAG-3をコーティングし、4℃の温度条件で一晩コーティングし、PBSTで3回洗浄し、実施例2のスクリーニングで得られた4つのファージモノクローナル抗体を、それぞれPBSTで3倍に勾配希釈し、希釈した後のサンプルをウェル当たり100μl加えて室温で1時間静置した。PBSTでELISAプレートを洗浄し、PBSTで希釈した後のHRP-anti-M13モノクローナル抗体をELISAプレートに加え、室温で1h置いた。TMB発色キットを室温で10分間発色させ、2MのHSOで終了させた後、450nm/630nmで数値を読み取って、対応するEC50値を計算し、具体的なデータは、次のとおりである。
【表3】
【0051】
上記データにより、且つ図2に示すように、実施例2でスクリーニングにより得られた4つの異なるマウス由来抗体分子は、いずれもLAG-3と結合することができ、本発明にて提供されるモノクローナル抗体は、いずれもLAG-3との高い親和性を有する。
【0052】
実施例4
本発明の実施例4では、実施例2を基に、マウス由来抗体分子は重鎖定常領域及び軽鎖定常領域をさらに含むとさらに限定し、重鎖定常領域は、マウスのIgG1型、IgG2a型、IgG2b型、IgG3型のうちの1つであり、IgG1型の重鎖定常領域アミノ酸配列は配列番号29に示され、IgG2a型の重鎖定常領域アミノ酸配列は配列番号30に示され、IgG2b型の重鎖定常領域アミノ酸配列は配列番号31に示され、IgG3型の重鎖定常領域アミノ酸配列は配列番号32に示され、軽鎖定常領域は、アミノ酸配列が配列番号28に示されるマウス由来C鎖であり、具体的な配列は下記のとおりである。
【0053】
配列番号28(マウス由来C鎖の軽鎖定常領域配列):
【化8】
配列番号29(マウスのIgG1型の重鎖定常領域配列):
【化9】
配列番号30(マウスのIgG2a型の重鎖定常領域配列):
【化10】
配列番号31(マウスのIgG2b型の重鎖定常領域配列):
【化11】
配列番号32(マウスのIgG3型の重鎖定常領域配列):
【化12】
【0054】
実施例5 抗LAG-3マウス由来抗体分子の製造
本発明の実施例5では、実施例4を基に好ましくはマウス由来抗体分子の重鎖定常領域はマウスのIgG1型であると限定し、IgG1型は配列番号29に示されるアミノ酸配列を含み、軽鎖定常領域はマウス由来C鎖であり、マウス由来C鎖は配列番号28に示されるアミノ酸配列を含む。抗体の製造方法は、具体的には、下記のとおりである。
【0055】
1、実施例2でスクリーニングして得られた4つのモノクローナル抗体の重鎖VH及び軽鎖VLのコード遺伝子をそれぞれ重鎖及び軽鎖の定常領域を含む遺伝子のベクターpTSEにクローニングし(図3に示すように)、好ましくは、重鎖定常領域はマウスのIgG1型である定常領域(アミノ酸配列は、配列番号29に示される)であり、軽鎖定常領域はマウス由来C鎖(アミノ酸配列は、配列番号28に示される)であり、pTSEベクター構造は、図3に示されるようである(pTSEベクター製造プロセスは、CN103525868Aの明細書第3ページの第[0019]段参照)。
【0056】
2、HEK293E細胞(中国医学科学院基礎医学研究所から購入、製品番号はGNHu43)を一過性にトランスフェクションして、抗体を発現し、AKTA機器を使用してprotein A親和性カラムで精製して、4つのモノクローナル抗体を取得するとともに、BCAキット(北京匯天東方科技有限公司から購入、製品番号:BCA0020)を使用してタンパク濃度度測定を行った後、SDS-PAGEによりタンパク質のサイズを同定し、結果は図4に示すとおりであり、左側から右側の順に非還元MA-1、MA-2、MA-3及びMA-4及びタンパク質の分子量Marker1、Marker2、並びに還元MA-1、MA-2、MA-3及びMA-4マウス由来抗LAG-3モノクローナル抗体であり、バンド当たりの分子量サイズは理論と一致した。
【0057】
実施例6 マウス由来抗体とLAG-3との結合実験
pH9.6の炭酸塩緩衝液を使用してLAG-3を100ng/ウェル/100μlでコーティングし、4℃の温度条件で、一晩コーティングした。300μl/ウェルのPBSTで5回洗浄し、続いて、1%のBSA-PBSTを加えて、37℃の温度条件で、1hブロッキングし、異なる希釈濃度のMA-1、MA-2、MA-3及びMA-4マウス由来抗体を加え、4種類の完全抗体の初期最高濃度はいずれも5μg/mlであり、それぞれ3倍に希釈した後、抗体ごとに12個の勾配を作り、37℃の温度条件で、1hインキュベートした。300μl/ウェルのPBSTで5回洗浄し、続いて、1%のBSA-PBSTを使用して1:10000に希釈したAnti-Mouse Fc-HRPを加え、37℃の温度条件で、1hインキュベートした。TMB発色キットを100μl/ウェルで、室温で、8min発色させ、その後、2MのHSOを用いて発色を終了した。450nm/630nmで読み取って、対応するEC50値を計算し、具体的なデータは次のとおりである。
【表4】
【0058】
上記データにより、及び図5に示すように、スクリーニングで得られた4つの異なるマウス由来抗体は、いずれもLAG-3と結合でき、さらに、この4つのマウス由来抗体分子のうち、MA-1のEC50値が最も低く、これは、LAG-3との結合能力が最もよく、親和性が最も高いことを示す。
【0059】
実施例7 混合リンパ細胞反応において、マウス由来抗体のサイトカインIL-2分泌量に対する影響
密度勾配遠心分離法にしたがって新鮮な末梢血PBMCを分離し、電磁ビーズでCD14T細胞を選別し、20ng/mLのGM-CSF及び10ng/mLのIL-4の培地を使用してCD14T細胞を培養し、2日毎に液体交換し、7~10日で樹状DC細胞に誘導した。DCを使用する2日前に、25ng/mLのTNF-αを加えてDCを成熟DC細胞に誘導し、成熟DC細胞を回収し、細胞密度が1x10個/mLの細胞懸濁液に調製した。新鮮な末梢血PBMCから電磁ビーズでCD4T細胞を選別して、カウントし、細胞密度が1x10個/mLの細胞懸濁液に製造した。CD4T細胞及びDC細胞を、それぞれ100μLとって、10:1の比で96ウェルプレートに加えた。
【0060】
実施例5で製造したMA-1、MA-2、MA-3及びMA-4マウス由来抗体をそれぞれ4倍に勾配希釈し、抗体あたりに6個の勾配を設定し、それぞれ50μlを取って96ウェルプレートに加えて、5日培養した後、IL-2の濃度を検出し、450nmで読み取って、対応するEC50値を計算し、具体的なデータは次のとおりである。
【表5】
【0061】
上記データにより、及び図6に示すように、本発明のスクリーニングで得られた4つのマウス由来抗体分子は、いずれも良い活性を有し、さらに、上記データにより、さらに、本発明のスクリーニングで得られた4つのモノクローナル抗体のうち、MA-1のEC50値が最も低いため、その活性が最もよいという結論を得ることもでき、そのため、本発明は、マウス由来抗体分子MA-1に対してヒト化処理を行うことができる。
【0062】
実施例8
本発明の実施例8は、モノクローナル抗体又はその抗原結合性断片はキメラ抗体分子であるとさらに限定し、キメラ抗体分子は、実施例2におけるマウス由来抗体分子の重鎖可変領域、マウス由来抗体分子の軽鎖可変領域及びヒト由来抗体定常領域を含み、ヒト由来抗体定常領域は、ヒト由来抗体重鎖定常領域及びヒト由来抗体軽鎖定常領域を含み、ヒト由来抗体重鎖定常領域は、ヒトのIgG1型、IgG2型又はIgG4型のうちの1つであり、IgG1型の重鎖定常領域アミノ酸配列は配列番号39に示され、IgG2型の重鎖定常領域アミノ酸配列は配列番号40に示され、IgG4型の重鎖定常領域アミノ酸配列は配列番号41に示され、ヒト由来抗体軽鎖定常領域は、アミノ酸配列が配列番号42に示されるヒトのC鎖である。
【0063】
配列番号39(ヒトのIgG1型の重鎖定常領域アミノ酸配列):
【化13】
配列番号40(ヒトのIgG2型の重鎖定常領域アミノ酸配列):
【化14】
配列番号41(ヒトのIgG4型の重鎖定常領域アミノ酸配列):
【化15】
配列番号42(ヒトのC鎖の軽鎖定常領域アミノ酸配列):
【化16】
【0064】
実施例9 キメラ抗体分子抗体の製造
本発明の実施例9は、実施例8を基に、キメラ抗体分子の重鎖定常領域は、ヒトのIgG4型であるとさらに限定し、IgG4型の重鎖定常領域アミノ酸配列は配列番号41に示され、キメラ抗体の軽鎖定常領域は、アミノ酸配列が配列番号42に示されるヒトのC鎖である。
【0065】
具体的な製造方法は、下記のとおりである。
実施例2で免疫ファージ抗体ライブラリーのスクリーニングにより得られた抗体分子MA-1の重鎖可変領域VH(配列番号21)及び軽鎖可変領域VL遺伝子(配列番号22)は、マウス由来配列をそのままにし、それぞれ重鎖定常領域及び軽鎖定常領域遺伝子を含むベクターpTSE(図3に示すように)にクローニングされ、重鎖定常領域は、ヒトのIgG4型(アミノ酸配列は配列番号41に示される)であり、軽鎖定常領域は、ヒトのC鎖(アミノ酸配列は配列番号42に示される)である。HEK293E細胞(中国医学科学院基礎医学研究所から購入、製品番号はGNHu43)を一過性にトランスフェクションして、抗体発現を行って、キメラ抗体CA-1を得た。
【0066】
実施例10 マウス由来抗体分子MA-1に対するヒト化
まず、実施例2におけるマウス由来抗体分子MA-1の配列のヒト抗体生殖系列データベース(v-base)との比較を使用して、相同性の高いヒト抗体の軽、重鎖生殖系列を探して候補配列とし、その後、マウス由来抗体分子MA-1のCDRの配列をヒト由来候補配列に移植して、相同性モデリングを行った。その後、3次元構造シミュレーションにより、CDRループ構造の維持に重要な役割を果たし得る肝心なフレームアミノ酸残基を計算し、それによりヒト化抗体の回復突然変異を設計した。設計済みの回復突然変異を含むヒト化抗体の軽、重鎖可変領域は、それぞれ南京金斯瑞生物科技有限公司により最適化と合成され、その後、一過性発現ベクターに連結され、ヒト化で得られた軽重鎖組合せを分析して、ヒト化抗体分子:HA-1、HA-2、HA-3、HA-4、HA-5を得、上記スクリーニングで得られた5個のモノクローナル抗体配列は次のとおりである。
【表6】
【0067】
具体的に、配列番号33(HA-1及びHA-2の重鎖可変領域のアミノ酸配列):
【化17】
配列番号34(HA-1及びHA-4の軽鎖可変領域のアミノ酸配列):
【化18】
配列番号35(HA-2及びHA-3の軽鎖可変領域のアミノ酸配列):
【化19】
配列番号36(HA-3及びHA-4の重鎖可変領域のアミノ酸配列):
【化20】
配列番号37(HA-5の重鎖可変領域のアミノ酸配列):
【化21】
配列番号38(HA-5の軽鎖可変領域のアミノ酸配列):
【化22】
【0068】
実施例11
本発明の実施例11は、実施例10を基に、ヒト化抗体分子は、重鎖定常領域及び軽鎖定常領域をさらに含むとさらに限定し、重鎖定常領域は、ヒトのIgG1型、IgG2型又はIgG4型のうちの1つであり、IgG1型の重鎖定常領域アミノ酸配列は配列番号39に示され、IgG2型の重鎖定常領域アミノ酸配列は配列番号40に示され、IgG4型の重鎖定常領域アミノ酸配列は配列番号41に示され、軽鎖定常領域は、アミノ酸配列が配列番号42に示されるヒトのC鎖である。
【0069】
実施例12 ヒト化抗体分子の製造
本発明の実施例12は、実施例11を基に、ヒト化抗体分子の重鎖定常領域は、ヒトのIgG4型であるとさらに限定し、IgG4型の重鎖定常領域アミノ酸配列は配列番号41に示され、軽鎖定常領域は、アミノ酸配列が配列番号42に示されるヒトのC鎖である。
【0070】
上記実施例10において、ヒト化で得られた5個のヒト化抗体分子の重鎖VH及び軽鎖VLのコード遺伝子をそれぞれ重鎖定常領域及び軽鎖定常領域遺伝子を含むベクターpTSE(図3に示すように)にクローニングし、重鎖定常領域は、ヒトのIgG4型(アミノ酸配列は配列番号41に示される)であり、軽鎖定常領域はC鎖(アミノ酸配列は配列番号42に示される)である。
【0071】
キメラ抗体CA-1及びヒト化抗体をHEK293E細胞(中国医学科学院基礎医学研究所から購入、製品番号はGNHu43)に一過性にトランスフェクションし、抗体発現を行って、AKTA機器を使用してprotein A親和性カラムにより精製して、モノクローナル抗体を取得するとともに、BCAキット(北京匯天東方科技有限公司から購入、製品番号:BCA0020)を使用してタンパク質濃度測定を行い、その後、SDS-PAGEによりタンパク質サイズを同定し、結果は図7に示すとおりであり、左側から右側の順に非還元タンパク質分子量Marker1、HA-1、HA-2、HA-3、HA-4、HA-5、実施例9で製造したキメラ抗体CA-1、並びにコア特許CN105992595Aにて提供される抗LAG-3モノクローナル抗体及び還元タンパク質分子量Marker2、HA-1、HA-2、HA-3、HA-4、HA-5、キメラ抗体CA-1、並びにコア特許CN105992595Aにて提供される抗LAG-3モノクローナル抗体であり、バンド当たりの分子量サイズは理論と一致した。
【0072】
実施例13
本発明の実施例13は、上記実施例を基に、ヒト化抗体分子は、全長抗体又は抗体断片であり、ヒト化抗体分子は、Fab、F(ab)2、Fv又はScFvのうちの一種又は数種の組合せを含むとさらに限定した。
【0073】
実施例14
本発明の実施例14は、上記実施例を基に、下記の解決手段をさらに限定した。
ポリペプチド又はタンパク質をさらに限定し、ポリペプチド又は前記タンパク質は、上記いずれか1つの実施例に限定される抗LAG-3のモノクローナル抗体又はその抗原結合性断片を含む。
【0074】
ポリヌクレオチド配列又は組合せをさらに限定し、ポリヌクレオチド配列又は組合せは、上記いずれか1つの実施例に限定される抗LAG-3のモノクローナル抗体又はその抗原結合性断片のアミノ酸配列をコードする。
【0075】
組換えDNA発現ベクターをさらに限定し、組換えDNA発現ベクターは、上記ポリヌクレオチド配列又は組合せを含む。
【0076】
上記限定された組換えDNA発現ベクターをトランスフェクションする宿主細胞をさらに限定し、宿主細胞は、原核細胞、酵母細胞、昆虫細胞又は哺乳動物細胞を含み、
好ましくは、宿主細胞は、哺乳動物細胞であり、哺乳動物細胞は、HEK293E細胞、CHO細胞又はNS0細胞である。
【0077】
医薬又は医薬組成物をさらに限定し、医薬又は医薬組成物は、上記いずれか1つの実施例に限定される抗LAG-3のモノクローナル抗体又はその抗原結合性断片を含む。
【0078】
本発明は、抗LAG-3のモノクローナル抗体又はその抗原結合性断片の、がん治療用薬又は免疫疾患用薬の製造における使用をさらに提供し、
好ましくは、がんには、白血病、肺がん、胃がん、食道がん、卵巣がん、頭頸部がん、黒色腫、腎がん、乳がん、結腸直腸がん、肝臓がん、膵臓がん、又は膀胱がんが含まれるが、これらに限定されず、免疫疾患には、乾癬、クローン病、リウマチ性関節炎、原発性胆汁性肝硬変、全身性紅斑性狼瘡、多発性硬化症、潰瘍性結腸炎、及び自己免疫性肝炎が含まれるが、これらに限定されない。
【0079】
実施例15 ヒト化抗体分子とLAG-3との結合実験
pH9.6の炭酸塩緩衝液を使用してLAG-3を100ng/ウェル/100μlでコーティングし、4℃の温度条件で、一晩コーティングした。300μl/ウェルのPBSTで5回洗浄し、続いて1%のBSA-PBSを加えて、37℃の温度条件で、2hブロッキングし、異なる希釈濃度のヒト化抗体HA-1、HA-2、HA-3、HA-4、HA-5と、実施例9で製造したキメラ抗体CA-1と、特許CN105992595Aの抗LAG-3抗体とを加え、7個の抗体の初期最高濃度は、いずれも5μg/mlであり、それぞれ5倍に希釈した後、抗体あたりに8個の勾配を作り、37℃の温度条件で、1hインキュベートした。300μl/ウェルのPBSTで5回洗浄し、続いて1%のBSA-PBSを使用して1:10000で希釈したAnti-Human Fc-HRPを加え、37℃の温度条件で、1hインキュベートした。TMB発色キットを100μl/ウェルで、室温で、8min発色させ、その後、2MのHSOで発色を終了した。450nm/630nmで読み取って、対応するEC50値を計算し、具体的なデータは次のとおりである。
【表7】
【0080】
上記データ及び実験結果により、且つ図8に示すように、5個の異なるヒト化抗体分子は、いずれもLAG-3と結合でき、本発明にて提供される5個の異なるモノクローナル抗体のEC50値は、いずれも特許CN105992595Aの抗LAG-3抗体より明らかに低く、本発明にて提供されるモノクローナル抗体は、LAG-3との結合能力が強く、親和性が高く、さらに、図8及び上記データから次のようなことが分かり、さらに5個の異なるモノクローナル抗体のうち、HA-1のEC50値が最も低く、これは、LAG-3との結合能力が最もよく、親和性が最も高いことを説明し、また、HA-1のEC50値がキメラ抗体CA-1に類似し、これは、ヒト化された後のHA-1は、マウス由来親抗体MA-1のLAG-3との高い親和性を維持し、親和性が低下しなかったことを示す。
【0081】
実施例16 混合リンパ細胞反応(MLR)で抗LAG-3ヒト化抗体分子の活性をテスト
密度勾配遠心分離法にしたがって新鮮な末梢血PBMCを分離し、電磁ビーズでCD14T細胞を選別し、20ng/mlのGM-CSF及び10ng/mlのIL-4の培地を使用してCD14T細胞を培養し、2日毎に液体交換し、7~10日で樹状DC細胞に誘導した。DCを使用する2日前に、25ng/mLのTNF-αを加えてDCを成熟DC細胞に誘導し、成熟DC細胞を回収し、細胞密度が1×10個/mLの細胞懸濁液に調製した。新鮮なPMBCから電磁ビーズでCD14T細胞を選別して、カウントし、細胞密度が1×10個/mLの細胞懸濁液を製造した。CD14T細胞及びDC細胞をそれぞれ100μLとって、10:1の比で96ウェルプレートに加えた。
【0082】
実施例12で製造した5個の抗LAG-3ヒト化抗体分子、実施例9で製造したキメラ抗体CA-1及び特許CN105992595Aにて提供される抗LAG-3抗体を陽性対照として、それぞれ4倍に勾配希釈し、抗体当たり8個の勾配を作り、それぞれ50μLを取って96ウェルプレートに加え、5日後、CCK8でCD14T細胞増殖をテストし、450nm/630nmで読み取って、対応するEC50値を計算し、具体的なデータは次のとおりである。
【表8】
【0083】
上記データにより、及び図9に示すように、本発明のスクリーニングで得られた5個の異なる抗LAG-3抗体のEC50値は、いずれも特許CN105992595Aにて提供される抗LAG-3の抗体より明らかに低く、これは、本発明にて提供される抗LAG-3抗体の活性がいずれも高いことを説明し、また、本発明のスクリーニングで得られた5個のモノクローナル抗体のうち、抗LAG-3完全抗体HA-1のEC50値が最も低く、これは、その活性が最も高いことを説明し、さらに、図9からさらに分かるように、キメラ抗体CA-1の親和性は、抗LAG-3抗体HA-1のEC50値に近く、これは、ヒト化抗体HA-1は、マウス由来親抗体MA-1の生物学的活性をそのままに維持し、生物学的活性が低下しなかったことを示す。
【0084】
実施例17 抗LAG-3モノクローナル抗体HA-1のマウス体内MC38結腸直腸がんに対する阻害試験
1、実験動物:
種族:Mus Musculus、NCG、マウス、
週齢:6~8週、
実験動物の供給業者:江蘇集粋薬康生物科技有限公司。
【0085】
2、細胞培養において、MC38腫瘍細胞(普如汀生物技術(北京)有限公司(Biovector NTCC Inc.)から購入、製品番号:NTCC-MC38)を使用した。不活化された10%ウシ胎児血清(ExCell Bio、製品番号:FND500)、100U/mlのペニシリン、100μg/mlのストレプトマイシン及び2mMのグルタミンを含有するDMEM培地(サーモフィッシャーサイエンティフィック(中国)有限公司(Gibco)から購入、製品番号:10566-016)を使用して、37℃、5%COのインキュベーター中で腫瘍細胞を培養し、3~4日おきに細胞が満杯に成長した後、フラスコを分けて続代させ、対数増殖期にある腫瘍細胞を体内腫瘍の接種に使用した。
【0086】
3、腫瘍細胞の接種と群分けにおいて、PBSで再懸濁したMC38腫瘍細胞は、濃度が1.0×10/mlであり、実験動物の右側の胸部側面皮下に100μL/匹で接種し、腫瘍が61mm程度に成長したとき、群分けして投薬し、1群当たり8匹で計3つの群あり、それぞれ溶媒対照群、HA-1(10mg/kg,i.p.,biw×3w)、HA-1(30mg/kg,i.p.,biw×3w)である。
【0087】
4、検出指標において、毎週、ノギスを使用して、腫瘍体積に対して測定を2回行い、腫瘍の長径及び短径を測定し、その体積計算式は、体積=0.5×長径×短径であり、腫瘍体積の変化と投薬時間との関係を記録し、実験結果は、図10に示すとおりである。
【0088】
図10のデータから分かるように、抗LAG-3モノクローナル抗体HA-1は、腫瘍の成長を阻害することができ、且つ、用量依存性反応が示された。
【0089】
実施例18 抗LAG-3モノクローナル抗体HA-1のタンパク質分子の熱安定性の評価
抗LAG-3モノクローナル抗体HA-1のタンパク質分子を限外濾過してPBSバッファ系に液体を変え、12000rpm、4℃の条件で、5min遠心分離し、多機能タンパク質熱安定性分析システム(Unchained Labsから購入)を使用して、抗LAG-3モノクローナル抗体HA-1のタンパク質分子の熱安定性を評価した。温度変化(25℃から始まり、0.3℃/minの昇温速度で95℃まで昇温する)に伴うタンパク質内因性蛍光を監視することにより、タンパク質配座の変化を検出し、それによりタンパク質溶解温度Tmを決定し、タンパク質配座の安定性を評価した。サンプルに凝集が発生すると、散乱光波に干渉が発生し、散乱光信号が増加し、静的光の散乱によりタンパク質のコロイド安定性(Taggで特徴付けられる)を測定し、結果は、下表及び図11に示すとおりである。
【表9】
【0090】
上表及び図11から分かるように、抗LAG-3モノクローナル抗体HA-1のタンパク質分子の温度は、66.6℃であり、平均Taggは68.0℃であり、よい配座安定性及びコロイド安定性を示した。
【0091】
実施例19
本発明の実施例19は、上記実施例を基に、下記の解決手段をさらに限定した。
本発明は、抗LAG-3のモノクローナル抗体又はその抗原結合性断片と抗PD-1モノクローナル抗体との組み合わせの、がん治療用薬又は免疫疾患用薬の製造における使用をさらに提供する。
【0092】
さらに、抗PD-1モノクローナル抗体は、DFPD1-9、DFPD1-10、DFPD1-11、DFPD1-12、DFPD1-13、Nivolumab、Pembrolizumab、トリパリマブ(Toripalimab)、シンチリマブ(Sintilimab)、チスレリズマブ(Tislelizumab)、カムレリズマブ(Camrelizumab)、ペンプリマブ(Penpulimab)又はジンベレリマブ(Zimberelimab)から選択される。
【0093】
ここで、Nivolumab、Pembrolizumab、トリパリマブ(Toripalimab)、シンチリマブ(Sintilimab)、チスレリズマブ(Tislelizumab)、カムレリズマブ(Camrelizumab)、ペンプリマブ(Penpulimab)又はジンベレリマブ(Zimberelimab)は、いずれも市販されている製品である。
【0094】
ここで、DFPD1-9、DFPD1-10、DFPD1-11、DFPD1-12、DFPD1-13は、出願番号がCN201510312910.8である特許にて提供される抗PD-1のモノクローナル抗体であり、DFPD1-9は配列番号44に示される軽鎖可変領域及び配列番号43に示される重鎖可変領域を含み、DFPD1-10は、配列番号45に示される軽鎖可変領域及び配列番号43に示される重鎖可変領域を含み、DFPD1-11は配列番号44に示される軽鎖可変領域及び配列番号46に示される重鎖可変領域を含み、DFPD1-12は配列番号44に示される軽鎖可変領域及び配列番号47に示される重鎖可変領域を含み、DFPD1-13は、配列番号45に示される軽鎖可変領域及び配列番号46に示される重鎖可変領域を含み、具体的な配列は、下記のとおりである。
【0095】
配列番号43、配列は次のとおりである。
【化23】
配列番号44、配列は次のとおりである。
【化24】
配列番号45、配列は次のとおりである。
【化25】
配列番号46、配列は次のとおりである。
【化26】
配列番号47、配列は次のとおりである。
【化27】
【0096】
また、抗PD-1モノクローナル抗体は、重鎖定常領域及び軽鎖定常領域をさらに含み、重鎖定常領域及び軽鎖定常領域の配列は、出願番号がCN201510312910.8である特許にて提供される抗PD-1のモノクローナル抗体の重鎖定常領域及び軽鎖定常領域と同じである。
【0097】
さらに、がんは、白血病、肺がん、胃がん、食道がん、卵巣がん、頭頸部がん、黒色腫、腎がん、乳がん、結腸直腸がん、肝臓がん、膵臓がん、又は膀胱がんから選択され、免疫疾患には、乾癬、クローン病、リウマチ性関節炎、原発性胆汁性肝硬変、全身性紅斑性狼瘡、多発性硬化症、潰瘍性結腸炎、及び自己免疫性肝炎が含まれる。
【0098】
実施例20
本発明の実施例20は、実施例19の基に、抗PD-1モノクローナル抗体は、配列番号45に示される軽鎖可変領域及び配列番号43に示される重鎖可変領域を含むDFPD1-10であるとさらに限定した。
【0099】
実施例21
本発明の実施例21は、実施例19の基に、抗PD-1モノクローナル抗体は、Nivolumabであるとさらに限定した。
【0100】
実施例22 抗LAG-3モノクローナル抗体と抗PD-1モノクローナル抗体とを組み合わせてMC38結腸直腸がんモデルの体内薬効実験に適用する
1、試験用薬
(1)上記実施例10にて提供される抗LAG-3のモノクローナル抗体HA-1は、番号がJY03であり、
供給会社:北京東方百泰生物科技股フン有限公司、
数:11mL/管、4.9mg/mL、計7管、
(2)実施例20にて提供される抗PD-1モノクローナル抗体はDFPD1-10であり、実験中の番号がJY034であり、
供給会社:北京東方百泰生物科技股フン有限公司、
数:10ml、10mg/ml、3瓶、計300mg、
(3)Opdivo(Nivolumab)
メーカ:百時美施貴宝
数:100mg/10ml、1管。
【0101】
2、実験動物
種族:MusMusculus,B6/JGpt-Pdcd1em1Cin(hPDCD1)Lag3em1Cin(hLAG3)/Gpt
性別:雌
週齢:6~8週
体重:18~22g
数:75匹
実験動物の供給業者:江蘇集粋薬康生物科技有限公司
生産ライセンス番号:SCXK(蘇)2018-0008
【0102】
3、実験方法
(1)細胞培養
不活化された10%ウシ胎児血清、100U/mLのペニシリン、100μg/mLのストレプトマイシン、及び2mMグルタミンのDMEMを含有する培地を使用して、37℃、5%CO2のインキュベーターでMC38腫瘍細胞を培養し、3~4日おきに細胞が満杯に成長した後、フラスコを分けて続代させ、対数増殖期にある腫瘍細胞を体内腫瘍の接種に使用した。
(2)腫瘍細胞の接種と群分け
PBSで再懸濁したMC38腫瘍細胞は、濃度が1×10/mLであり、それを実験動物の右側の胸部側面皮下に1×10/100μL/匹で接種し、腫瘍が50mm程度まで成長したとき、群分けして投薬し(当日をPG-D0と記録する)、1群当たり10匹で計8つの群ある。
(3)マウスの体重の測定及び実験指標
毎週、ノギスを使用して、腫瘍体積に対して測定を2~3回行い、電子天秤でマウスの体重を秤量して、腫瘍の長径及び短径を測定し、その体積の計算式は、体積=0.5×長径×短径である。腫瘍体積に応じてT/C値を計算し、ここで、Tは、被検物処理群の腫瘍体積(RTV)に対する平均値であり、Cは、対照群の腫瘍体積(RTV)に対する平均値であり、RTVは、投薬した後と投薬する前との腫瘍体積の比である。腫瘍成長阻害率TGITV(%)=(1-T/C)×100%である。
【0103】
実験が終了すると、動物を安楽死させ、腫瘍を剥離して秤量し整然と配置して撮影し、腫瘍重量阻害率TGITW(%)を計算し、公式は(1-T/C)×100%であり、ここで、T/C=治療群TW平均値/対照群TW平均値である。
【0104】
原則として、評価基準は、T/C(%)>40%であると無効にし、T/C(%)≦40%であり、且つ統計学的処理P<0.05であると有効にする。
4、投薬計画
【表10】
注:*は、各群投薬容積であり、動物体重に応じて10μL/gで投薬し、体重が15~20%低減すると投薬量を調節でき、i.p.は、腹腔注射を示し、biwx3wksは、毎週2回、3週間投薬して、合計6回投薬することを示し、#は、JY03を2回目に投薬するときから投薬し始め、実際の投薬回数は、3週間で合計5回であることを示す。
【0105】
5、統計学的分析
IBM SPSS Statistics 22.0統計学ソフトウェアを適用し、One-Way ANOVA検定を適用して、腫瘍体積、腫瘍重量に対して群間統計学的分析を行い、p<0.05は、有意差があると考えられる。
【0106】
6、データ結果は、次のとおりである。
(1)腫瘍成長の阻害結果
【表11】
注:各群に対してOne-Way ANOVA単一因子分散分析を行い、LSD(least significant difference)を用いて事後多重比較を行い、a.は、平均±標準誤差を示し、b.は、Vehicle群との比較を示し、c.は、Opdivo群との比較を示し、d.は、JY03群との比較を示し、e.は、JY03+JY034群との比較を示し、f.は、JY03+Opdivo群との比較を示す。JY034治療群間の比較は、いずれも統計学的差異(p>0.05)を示していない。ここで、JY034群、Opdivo群、JY03+JY034群及びJY03+Opdivo群には、それぞれ、腫瘍が完全になくなったマウスが3匹、5匹、1匹、4匹ある。
【0107】
(2)腫瘍重量
【表12】
注:各群に対してOne-Way ANOVA単一因子分散分析を行い、LSD(least significant difference)を用いて事後多重比較を行い、a.は、平均±標準誤差であり、b.は、Vehicle群との比較を示し、c.は、Opdivo群との比較を示し、d.は、JY03群との比較を示し、e.は、JY03+JY034群との比較を示し、f.は、JY03+Opdivo群との比較を示す。
【0108】
上記をまとめると、上記データにより、並びに図12及び13に示すように、被検薬JY03群、JY034群、Opdivo群、JY03+JY034群及びJY03+Opdivo群は、いずれも、PD-1及びLAG3両標的のヒト化結腸直腸がんMC38モデルの治療に対して明確な抗腫瘍効果をもたらし、ここで、JY03+JY034群の腫瘍に対する阻害効果は、単一薬JY03群及び単一薬JY034群より明らかに強く、JY03+Opdivo群の腫瘍に対する阻害効果は、単一薬JY03群及び単一薬Opdivo群より明らかに強く、そのため、抗LAG-3モノクローナル抗体は、抗PD-1モノクローナル抗体の腫瘍に対する阻害作用を向上させることができることを説明でき、また、各群で動物耐性は良好であり、明らかな有害反応は見られなかった。
【0109】
本発明は、上記最適な実施形態に限定されるものではなく、誰でも本発明の示唆の下で他の様々な形式の製品を得ることができるが、その形状又は構造にいかなる変更を加えても、本願と同一又は近似する技術的解決手段を有するものは、いずれも本発明の保護範囲内に含まれる。

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
【手続補正書】
【提出日】2023-06-15
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0006
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0006】
本発明は、市場のニーズを満たすために、免疫ライブラリーのスクリーニングにより、LAG-3と特異的に結合することができ、且つ高い生物学的活性を有する抗LAG-3のモノクローナル抗体又は抗原結合性断片を得る。
【手続補正2】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含むモノクローナル抗体又はその抗原結合性断片であって、前記重鎖可変領域は、それぞれHCDR1、HCDR2及びHCDR3で表される3つの重鎖相補性決定領域を含み、前記軽鎖可変領域は、それぞれLCDR1、LCDR2及びLCDR3で表される3つの軽鎖相補性決定領域を含み、前記モノクローナル抗体又はその抗原結合性断片は、A-1~A-4から選択されるいずれか1つであることを特徴とする抗LAG-3のモノクローナル抗体又はその抗原結合性断片。
A-1:前記重鎖相補性決定領域HCDR1は配列番号1に示されるアミノ酸配列を含み、前記重鎖相補性決定領域HCDR2は配列番号2に示されるアミノ酸配列を含み、前記重鎖相補性決定領域HCDR3は配列番号3に示されるアミノ酸配列を含み、前記軽鎖相補性決定領域LCDR1は配列番号4に示されるアミノ酸配列を含み、前記軽鎖相補性決定領域LCDR2は配列番号5に示されるアミノ酸配列を含み、前記軽鎖相補性決定領域LCDR3は配列番号6に示されるアミノ酸配列を含む。
A-2:前記重鎖相補性決定領域HCDR1は配列番号1に示されるアミノ酸配列を含み、前記重鎖相補性決定領域HCDR2は配列番号2に示されるアミノ酸配列を含み、前記重鎖相補性決定領域HCDR3は配列番号3に示されるアミノ酸配列を含み、前記軽鎖相補性決定領域LCDR1は配列番号4に示されるアミノ酸配列を含み、前記軽鎖相補性決定領域LCDR2は配列番号7に示されるアミノ酸配列を含み、前記軽鎖相補性決定領域LCDR3は配列番号8に示されるアミノ酸配列を含む。
A-3:前記重鎖相補性決定領域HCDR1は配列番号9に示されるアミノ酸配列を含み、前記重鎖相補性決定領域HCDR2は配列番号10に示されるアミノ酸配列を含み、前記重鎖相補性決定領域HCDR3は配列番号11に示されるアミノ酸配列を含み、前記軽鎖相補性決定領域LCDR1は配列番号12に示されるアミノ酸配列を含み、前記軽鎖相補性決定領域LCDR2は配列番号13に示されるアミノ酸配列を含み、前記軽鎖相補性決定領域LCDR3は配列番号14に示されるアミノ酸配列を含む。
A-4:前記重鎖相補性決定領域HCDR1は配列番号15に示されるアミノ酸配列を含み、前記重鎖相補性決定領域HCDR2は配列番号16に示されるアミノ酸配列を含み、前記重鎖相補性決定領域HCDR3は配列番号17に示されるアミノ酸配列を含み、前記軽鎖相補性決定領域LCDR1は配列番号18に示されるアミノ酸配列を含み、前記軽鎖相補性決定領域LCDR2は配列番号19に示されるアミノ酸配列を含み、前記軽鎖相補性決定領域LCDR3は配列番号20に示されるアミノ酸配列を含む。
【請求項2】
前記モノクローナル抗体又はその抗原結合性断片は、マウス由来抗体分子であり、前記マウス由来抗体分子は、MA-1~MA-4から選択されるいずれか1つであ
ことを特徴とする請求項1に記載の抗LAG-3のモノクローナル抗体又はその抗原結合性断片。
MA-1:前記重鎖可変領域は配列番号21に示されるアミノ酸配列を含み、前記軽鎖可変領域は配列番号22に示されるアミノ酸配列を含む。
MA-2:前記重鎖可変領域は配列番号21に示されるアミノ酸配列を含み、前記軽鎖可変領域は配列番号23に示されるアミノ酸配列を含む。
MA-3:前記重鎖可変領域は配列番号24に示されるアミノ酸配列を含み、前記軽鎖可変領域は配列番号25に示されるアミノ酸配列を含む。
MA-4:前記重鎖可変領域は配列番号26に示されるアミノ酸配列を含み、前記軽鎖可変領域は配列番号27に示されるアミノ酸配列を含む。
【請求項3】
前記マウス由来抗体分子は、重鎖定常領域及び軽鎖定常領域をさらに含み、前記重鎖定常領域は、マウスのIgG1型、IgG2a型、IgG2b型、IgG3型のうちの1つであり、前記IgG1型の重鎖定常領域アミノ酸配列は配列番号29に示され、前記IgG2a型の重鎖定常領域アミノ酸配列は配列番号30に示され、前記IgG2b型の重鎖定常領域アミノ酸配列は配列番号31に示され、前記IgG3型の重鎖定常領域アミノ酸配列は配列番号32に示され、前記軽鎖定常領域は、アミノ酸配列が配列番号28に示されるマウス由来C鎖であ
ことを特徴とする請求項2に記載の抗LAG-3のモノクローナル抗体又はその抗原結合性断片。
【請求項4】
前記モノクローナル抗体又はその抗原結合性断片はキメラ抗体分子であり、前記キメラ抗体分子は、前記マウス由来抗体分子の重鎖可変領域、前記マウス由来抗体分子の軽鎖可変領域、及びヒト由来抗体定常領域を含み、前記ヒト由来抗体定常領域は、ヒト由来抗体重鎖定常領域及びヒト由来抗体軽鎖定常領域を含み、前記ヒト由来抗体重鎖定常領域は、ヒトのIgG1型、IgG2型又はIgG4型のうちの1つであり、前記IgG1型の重鎖定常領域アミノ酸配列は配列番号39に示され、前記IgG2型の重鎖定常領域アミノ酸配列は配列番号40に示され、前記IgG4型の重鎖定常領域アミノ酸配列は配列番号41に示され、前記ヒト由来抗体軽鎖定常領域は、アミノ酸配列が配列番号42に示されるヒトのC鎖であ
ことを特徴とする請求項2に記載の抗LAG-3のモノクローナル抗体又はその抗原結合性断片。
【請求項5】
前記モノクローナル抗体又はその抗原結合性断片はヒト化抗体分子であり、前記ヒト化抗体分子は、HA-1~HA-5から選択されるいずれか1つであ
ことを特徴とする請求項1に記載の抗LAG-3のモノクローナル抗体又はその抗原結合性断片。
HA-1:前記重鎖可変領域は配列番号33に示されるアミノ酸配列を含み、前記軽鎖可変領域は配列番号34に示されるアミノ酸配列を含む。
HA-2:前記重鎖可変領域は配列番号33に示されるアミノ酸配列を含み、前記軽鎖可変領域は配列番号35に示されるアミノ酸配列を含む。
HA-3:前記重鎖可変領域は配列番号36に示されるアミノ酸配列を含み、前記軽鎖可変領域は配列番号35に示されるアミノ酸配列を含む。
HA-4:前記重鎖可変領域は配列番号36に示されるアミノ酸配列を含み、前記軽鎖可変領域は配列番号34に示されるアミノ酸配列を含む。
HA-5:前記重鎖可変領域は配列番号37に示されるアミノ酸配列を含み、前記軽鎖可変領域は配列番号38に示されるアミノ酸配列を含む。
【請求項6】
前記ヒト化抗体分子は、重鎖定常領域及び軽鎖定常領域をさらに含み、前記重鎖定常領域は、ヒトのIgG1型、IgG2型又はIgG4型のうちの1つであり、前記IgG1型の重鎖定常領域アミノ酸配列は配列番号39に示され、前記IgG2型の重鎖定常領域アミノ酸配列は配列番号40に示され、前記IgG4型の重鎖定常領域アミノ酸配列は配列番号41に示され、前記軽鎖定常領域は、アミノ酸配列が配列番号42に示されるヒトのC鎖であ
ことを特徴とする請求項5に記載の抗LAG-3のモノクローナル抗体又はその抗原結合性断片。
【請求項7】
前記ヒト化抗体分子は、全長抗体又は抗体断片であり、前記ヒト化抗体分子は、Fab、F(ab)2、Fv又はScFvのうちの一種又は数種の組合せを含む、
ことを特徴とする請求項5に記載の抗LAG-3のモノクローナル抗体又はその抗原結合性断片。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項に記載の抗LAG-3のモノクローナル抗体又はその抗原結合性断片を含む、
ことを特徴とするポリペプチド或いはタンパク質、又は医薬
【請求項9】
請求項1~7のいずれか1項に記載の抗LAG-3のモノクローナル抗体又はその抗原結合性断片のアミノ酸配列をコードする、
ことを特徴とするポリヌクレオチド
【請求項10】
請求項9に記載のポリヌクレオチド含む、
ことを特徴とする組換えDNA発現ベクター。
【請求項11】
請求項10に記載の組換えDNA発現ベクターをトランスフェクションする宿主細胞であって、前記宿主細胞は、原核細胞、酵母細胞、昆虫細胞又は哺乳動物細胞を含み、
好ましくは、前記宿主細胞は、哺乳動物細胞であり、前記哺乳動物細胞は、HEK293E細胞、CHO細胞又はNS0細胞である、
ことを特徴とする宿主細胞。
【請求項12】
請求項1~7のいずれか1項に記載の抗LAG-3のモノクローナル抗体又はその抗原結合性断片の、がん治療用薬又は免疫疾患用薬の製造における使用であって、
好ましくは、前記がんには、白血病、肺がん、胃がん、食道がん、卵巣がん、頭頸部がん、黒色腫、腎がん、乳がん、結腸直腸がん、肝臓がん、膵臓がん、又は膀胱がんが含まれ、
前記免疫疾患には、乾癬、クローン病、リウマチ性関節炎、原発性胆汁性肝硬変、全身性紅斑性狼瘡、多発性硬化症、潰瘍性結腸炎、及び自己免疫性肝炎が含まれる、
抗LAG-3のモノクローナル抗体又はその抗原結合性断片の、がん治療用薬又は免疫疾患用薬の製造における使用。
【請求項13】
請求項1~7のいずれか1項に記載の抗LAG-3のモノクローナル抗体又はその抗原結合性断片と抗PD-1モノクローナル抗体との組み合わせの、がん治療用薬又は免疫疾患用薬の製造における使用。
【請求項14】
前記抗PD-1モノクローナル抗体は、DFPD1-9、DFPD1-10、DFPD1-11、DFPD1-12、DFPD1-13、Nivolumab、Pembrolizumab、トリパリマブ(Toripalimab)、シンチリマブ(Sintilimab)、チスレリズマブ(Tislelizumab)、カムレリズマブ(Camrelizumab)、ペンプリマブ(Penpulimab)又はジンベレリマブ(Zimberelimab)から選択される、
ことを特徴とする請求項13に記載の使用。
【請求項15】
前記抗PD-1モノクローナル抗体は、配列番号45に示される軽鎖可変領域及び配列番号43に示される重鎖可変領域を含むDFPD1-10である、
ことを特徴とする請求項14に記載の使用。
【請求項16】
前記がんは、白血病、肺がん、胃がん、食道がん、卵巣がん、頭頸部がん、黒色腫、腎がん、乳がん、結腸直腸がん、肝臓がん、膵臓がん、又は膀胱がんから選択され、前記免疫疾患には、乾癬、クローン病、リウマチ性関節炎、原発性胆汁性肝硬変、全身性紅斑性狼瘡、多発性硬化症、潰瘍性結腸炎、及び自己免疫性肝炎が含まれる、
ことを特徴とする請求項14に記載の使用。
【国際調査報告】