IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ バイオコープ プロダクション ソシエテ アノニムの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-18
(54)【発明の名称】ペン注射システム用自動針挿入器
(51)【国際特許分類】
   A61M 5/32 20060101AFI20231211BHJP
【FI】
A61M5/32 500
A61M5/32 510K
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023535505
(86)(22)【出願日】2020-12-10
(85)【翻訳文提出日】2023-08-04
(86)【国際出願番号】 IB2020001075
(87)【国際公開番号】W WO2022123281
(87)【国際公開日】2022-06-16
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519266638
【氏名又は名称】バイオコープ プロダクション ソシエテ アノニム
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】マルコス、アラン
【テーマコード(参考)】
4C066
【Fターム(参考)】
4C066BB01
4C066CC01
4C066EE14
4C066FF05
4C066NN04
(57)【要約】
ペン注射器用の自動針挿入器が提供される。自動針挿入器は長尺な挿入器本体を有し、長尺な挿入器本体は、ペン注射器を長尺な挿入器本体の長手方向孔にその近位端を介して導入される際に受けるように寸法付けられて構成される。また、自動挿入器本体は、ペン注射システムが挿入器本体の遠位端を介して長手方向孔から出るのを防ぐように構成される。自動針挿入器には、長尺な挿入器本体の少なくとも一部を中心長手方向軸の周りで第1の非ロック位置から少なくとも1つ以上の第2のロック位置まで回転させることによってペン注射器を長手方向孔内の軸方向位置にロックするための回転作動式ロック手段が設けられる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
近位端及び遠位端を有する長尺な挿入器本体と、前記長尺な本体を貫通して前記近位端から前記遠位端まで延びる長手方向孔とを備え、前記長手方向孔が中心長手方向軸を有し、前記長尺な挿入器本体は、前記挿入器本体の前記近位端を介して前記孔内に導入されるペン注射システムを受けるように寸法付けられて構成されるとともに、前記ペン注射システムが前記遠位端を介して前記長手方向孔から出るのを防ぐように更に構成されて寸法付けられ、
前記長尺な挿入器本体は、
前記長尺な挿入器本体の少なくとも一部を前記中心長手方向軸の周りで第1の非ロック位置から少なくとも1つ以上の第2のロック位置まで回転させることによって前記ペン注射システムを前記長手方向孔内の軸方向位置にロックするように構成される回転作動式ロック手段を更に備える、
ペン注射システム用の自動針挿入器。
【請求項2】
前記長尺な挿入器本体は、少なくとも第1の長尺な外側本体構成要素と、少なくとも第2の長尺な外側本体構成要素とを備え、前記少なくとも第1の長尺な外側本体構成要素及び前記少なくとも第2の長尺な外側本体構成要素のうちの少なくとも一方は、ロック中に少なくとも他方の長尺な外側本体構成要素に対して前記中心長手方向軸の周りで回転するように構成される、請求項1に記載の自動針挿入器。
【請求項3】
前記長尺な挿入器本体は、少なくとも第1の長尺な外側本体構成要素と、少なくとも第2の長尺な外側本体構成要素とを備え、前記少なくとも第1の長尺な外側本体構成要素及び前記少なくとも第2の長尺な外側本体構成要素は、ロック中に前記中心長手方向軸の周りで互いに対して反対方向に回転するように構成される、請求項1又は2に記載の自動針挿入器。
【請求項4】
前記回転作動式ロック手段は、公称厚さ、中心孔を画定する公称内径を有する圧縮リングを備え、前記圧縮リングは、前記長尺な挿入器本体の前記長手方向孔と同軸的に位置される、請求項1に記載の自動針挿入器。
【請求項5】
前記圧縮リングが前記公称内径に対して可変の内径を有する、請求項4に記載の自動針挿入器。
【請求項6】
前記圧縮リングは、公称直径に対して増大した内径を有する少なくとも1つの部分を備える、請求項4又は請求項5に記載の自動針挿入器。
【請求項7】
前記圧縮リングは、前記公称直径に対して減少した内径を有する少なくとも1つの部分を備える、請求項4から6までのいずれか一項に記載の自動針挿入器。
【請求項8】
増大した内径を有する前記圧縮リングの前記少なくとも1つの部分は、前記減少した内径を有する前記圧縮リングの部分に向かって内径が徐々に減少する状態で、前記圧縮リングの前記内径の周囲にわたって延在する、請求項4から7までのいずれか一項に記載の自動針挿入器。
【請求項9】
前記圧縮リングは、中心孔内へと内側に延びる、前記リングの公称厚さに対して増大した厚さを有する少なくとも1つの部分を備える、請求項4に記載の自動針挿入器。
【請求項10】
前記圧縮リングは、中心孔内へと内側に延びる、前記リングの公称厚さに対して減少した厚さを有する少なくとも1つの部分を備える、請求項4及び請求項9に記載の自動針挿入器。
【請求項11】
増大した厚さを有する前記圧縮リングの前記少なくとも1つの部分は、前記減少した厚さを有する前記圧縮リングの部分に向かって厚さが徐々に減少する状態で、前記圧縮リングの外周から中心孔内へと内側に周囲で延びる、請求項4、9、及び10に記載の自動針挿入器。
【請求項12】
前記回転作動式ロック手段が弾性材料の圧縮可能な膜を更に備える、請求項1に記載の自動針挿入器。
【請求項13】
前記弾性材料の圧縮可能な膜が前記圧縮リングの前記孔内に同軸的に位置される、請求項4及び請求項12に記載の自動針挿入器。
【請求項14】
前記圧縮可能な膜は、前記第1の非ロック位置から前記1つ以上の第2のロック位置までの前記中心長手方向軸周りでの前記圧縮リングの回転移動によって弛緩状態から圧縮状態に圧縮される、請求項13に記載の自動針挿入器。
【請求項15】
前記圧縮可能な膜の内方に面する表面は、前記第1の非ロック位置から前記1つ以上の第2のロック位置までの前記中心長手方向軸周りでの前記圧縮リングの回転移動によって前記ペン注射システムの本体の外面と接触される、請求項14に記載の自動針挿入器。
【請求項16】
前記圧縮リングは、前記圧縮リングを前記中心長手方向軸に沿って非装備位置から装備位置まで並進させるように構成される摺動可能なキャリッジ・アセンブリに取り付けられる又は装着される、請求項4に記載の自動針挿入器。
【請求項17】
前記摺動可能なキャリッジ・アセンブリは、前記圧縮リングの前記孔と同軸的に位置合わせされる孔を備える、請求項16に記載の自動針挿入器。
【請求項18】
前記摺動可能なキャリッジ・アセンブリの少なくとも一部は、前記圧縮リングと共に前記中心長手方向軸の周りで共回転するように構成される、請求項16又は請求項17に記載の自動針挿入器。
【請求項19】
前記摺動可能なキャリッジ・アセンブリ及び圧縮リングはそれぞれ、前記圧縮リングを前記摺動可能なアセンブリと共に前記非装備位置から前記装備位置まで並進させることができるようにするべく、第1の長尺な外側本体構成要素と摺動係合するように構成される表面係合手段を備える、請求項16から18までのいずれか一項に記載の自動針挿入器。
【請求項20】
前記摺動可能なキャリッジ・アセンブリの前記表面係合手段は、前記摺動可能なキャリッジ・アセンブリから径方向外側に延びる少なくとも1つの突出接触部材を備える、請求項19に記載の自動針挿入器。
【請求項21】
前記摺動可能なキャリッジ・アセンブリから径方向外側に延びる前記少なくとも1つの突出接触部材は、前記第1の長尺な外側本体構成要素に設けられる少なくとも1つの対応するラネルと軸方向で摺接して係合する、請求項20に記載の自動針挿入器。
【請求項22】
前記摺動可能なキャリッジ・アセンブリから径方向外側に延びる前記少なくとも1つの突出接触部材は、前記摺動可能なキャリッジ・アセンブリの近位端を越えて近位側にも延びる、請求項20又は請求項21に記載の自動針挿入器。
【請求項23】
前記摺動可能なキャリッジ・アセンブリは、前記キャリッジ・アセンブリの遠位部分から前記中心長手方向軸と平行に遠位側に延びる少なくとも1つのスライダ・アームを備える、請求項16に記載の自動針挿入器。
【請求項24】
前記少なくとも1つのスライダ・アームは、第2の長尺な外側本体構成要素に設けられる少なくとも1つの対応するラネルと軸方向で摺接して係合する、請求項23に記載の自動針挿入器。
【請求項25】
前記少なくとも1つのスライダ・アームは、前記摺動可能なキャリッジ・アセンブリが前記装備位置にあるときに、前記第2の長尺な外側本体構成要素に設けられる前記対応するラネル内へと遠位側に延びて該ラネルとの摺動係合接触状態を維持するのに十分な長さを有する、請求項24に記載の自動針挿入器。
【請求項26】
前記圧縮リングは、該圧縮リングから径方向外側に延びる少なくとも1つの突出接触部材を備える、請求項19に記載の自動針挿入器。
【請求項27】
前記圧縮リングから径方向外側に延びる前記少なくとも1つの突出接触部材は、前記第1の長尺な外側本体構成要素に設けられる少なくとも1つの対応するラネルと軸方向で摺接して係合する、請求項26に記載の自動針挿入器。
【請求項28】
前記摺動可能なキャリッジ・アセンブリは、トリガ部材を有する解放可能なトリガ手段を更に備え、該トリガ手段は、前記トリガ部材が解放されるまで前記摺動可能なキャリッジ・アセンブリを前記装備位置に保持するように構成される、請求項16に記載の自動針挿入器。
【請求項29】
前記トリガ部材は、前記非装備位置における第1の長手軸方向位置合わせ平面から前記装備位置における第2の長手軸方向位置合わせ平面へと移動可能な弾性変形可能なアームを備える、請求項28に記載の自動針挿入器。
【請求項30】
前記第1の長尺な外側本体構成要素は、前記弾性変形可能なアームを前記第2の長手軸方向位置合わせ平面から前記第1の長手軸方向位置合わせ平面へと移動させることによって前記トリガ部材を前記装備位置から解放するように構成される解放ボタンを備える、請求項29に記載の自動針挿入器。
【請求項31】
前記長手方向孔の前記中心長手方向軸に沿う、前記長尺な挿入器本体の前記長手方向孔内への前記ペン注射システムの挿入時に、前記ペン注射システムの遠位端に当接するように構成される選択的に作動可能なペン遠位端当接手段を更に備える、請求項1に記載の自動針挿入器。
【請求項32】
前記選択的に作動可能なペン遠位端当接手段は、第1の非当接位置から第2の当接位置まで移動可能である、請求項31に記載の自動針挿入器。
【請求項33】
前記選択的に作動可能なペン遠位端当接手段は、前記長尺な挿入器本体の遠位端に隣接又は近接して位置される、請求項31又は請求項32に記載の自動針挿入器。
【請求項34】
前記選択的に作動可能なペン遠位端当接手段は、前記中心長手方向軸と平行に位置合わせされた軸の周りで回転するように構成される関節アーム部材を備え、前記関節アーム部材は、前記第1の非当接位置から前記第2の当接位置まで前記平行な回転軸の周りで回転可能である、請求項31に記載の自動針挿入器。
【請求項35】
前記関節アーム部材は、前記第1の非当接位置では前記長尺な挿入器本体と面一に位置し、前記第2の当接位置では前記長手方向孔内へと延在する、請求項34に記載の自動針挿入器。
【請求項36】
前記ペン注射システムの回転作動式ロックは、前記当接手段の選択的動作による前記ペン注射システムの当接後にのみ生じる、請求項31から35までのいずれか一項に記載の自動針挿入器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、注射ペンシステム用の付属品に関する。
【背景技術】
【0002】
注射ペンシステムは、それ自体良く知られており、一般に近位側に位置された用量設定ホイール及び注射アクチベータを備えており、用量設定ホイールはペン注射システムの中心長手方向軸を中心に回転可能である。ホイールは、投与されるべき薬剤の用量を選択するためにユーザにより回転される。ペンは、一般に、注射アクチベータの作動時に注射を行うように機械的又は電気機械的に構成される。そのような注射アクチベータは、非常に一般的には、ペン注射システム内に位置される分配機構と機械的又は電気的に接触する単純な押圧ボタン又はプッシュボタンであり、これを押すと、注射機構が点火し、ペン注射システム内に含まれる薬剤が注射される。一部のペン注射器システムにおいて、用量設定ホイールは、用量設定中だけでなく注射中にも回転するように構成される。これは、一般に、注射ペンシステムのハウジング本体内に位置されて用量設定ホイールに物理的に結合される螺旋状に巻回された駆動ばねなどの1つ以上の金属部品を含めることによって達成される。
【0003】
前述したタイプの注射ペンシステムは、医学的な訓練を受けたユーザと医学的な訓練を受けていないユーザの両方によって使用される。医学的な訓練を受けたユーザは、適切な訓練を受けてそのような装置の操作に慣れているが、患者自身など、医学的な訓練を受けていない個々のユーザは、依然としてこれらの装置を正しく及び/又は適切に使用するのに苦労することがある。更に、そのようなペン注射システムの製造業者は、時間をかけて、そのようなシステムをできるだけ簡単且つ確実に使用できるようにしようと試みてきた。
【0004】
ペン注射システム技術における上記の発展にもかかわらず、少なくとも一部のユーザにとっては、そのようなペン注射システムを正しく使用することが困難なままである。例えば、そのような注射ペンシステムで提供される薬剤を投与する必要がある一部のユーザは、神経及び/又は筋肉の調整に困難を抱えており、ペン注射システムの操作が不完全、不正確、又は不的確になる。他のユーザは、針を見ること、扱うこと、又は体内に針を挿入することを含むその他の針操作に恐怖を抱いており、そのため、最も一般的に入手可能な市販の注射ペンシステムを使用しようとすると、使い易さが相対的に改善されているにもかかわらず、重大な心理的課題に直面している。そのような課題は、患者の健康に影響を与える可能性があり、更に重要なことに、装置のユーザである患者が従うべきそのようなペン注射システムを含む治療計画の遵守にも影響を与える可能性がある。
【0005】
結果として、自動又は半自動の針挿入器を提供することによって上記の困難を克服しようとする試みが幾つかなされてきた。それ自体が別個の装置及び付属品の両方であると見なされ得るそのような針挿入器装置の目的は、注射ペンシステムの針を注射部位において体内への正しい穿刺角度で提示し易くすることであるとともに、それを、ユーザが、自動針挿入器内でペンの位置を特定して、注射ペンシステムがいつでも注射できるように自動針挿入器を装備し、その後、ユーザがペン注射システムの針で自分自身を刺さなければならない光景に直接直面することから解放されるように装備した注射ペンシステムの解放を許容できるようにすることによって行うことである。
【0006】
例えば、公開された米国特許US5980491(A)号及びUS6537252(B1)号はいずれも、ペン型注射器用の自動針挿入装置に関するものであり、この装置は、注射ペンが管状ペンホルダ内に装着される管状ハウジングを備え、ペンホルダは、その後に解放されてペンと共にペンホルダを設定距離だけ遠位側方向に駆動するばねをコックするべく、ペン及び自動針挿入装置の長手方向軸に沿って、近位側方向で、すなわち、ユーザの手及び/又は身体に向かって軸方向に移動可能である。注射ペンは、薬剤含有カートリッジの遠位側に接続されており、薬剤含有カートリッジの遠位端に針が装着される。このシステムは、これらの特許の出願人によって製造及び商品化された製品に特有のものである。
【0007】
更に、公開されたフランス特許出願FR3079422(A1)号は、インスリン注射ペンなどの注射ペンシステムを受けるように構成された他の自動針挿入器装置に関するものであり、針挿入器装置は、注射システム用のホルダを伴う本体を備え、本体は、コマンド部材の作動を介して、装備位置から非装備位置に移動し、それにより、ホルダの軸方向の変位を可能にするように構成される。自動針挿入器本体は、自動針挿入器本体内への注射ペンシステムの挿入を可能にするねじ込み締め付けリングシステムを備える。ねじ込み締め付けリングシステムは、近位側円錐台形内面を有する係合面を備え、この係合面は、中空変形可能部品の対応する形状の円錐台形外面に対する締め付けリングのねじ込み作用を介して徐々に係合して、ひいては、プラスチックリングを圧縮し、それにより、開口の直径を、ペン注射システムの自由な軸方向移動が許可される第1のより幅広直径位置から、プラスチックリングがペン注射システムの本体に押し付けられるようにして本体を保持する第2の幅狭直径位置まで減少させる。
【0008】
本明細書で使用される「ペン注射システム」及び「注射ペンシステム」という用語は、一般に手持ち式のペン型注射システムを指すために置き換え可能に使用され、そのようなシステムはそれ自体容易によく知られており、多くの様々な医学的適応症の治療に使用するために市販されている。これらのシステムは、一般に、所与の医学的適応症の治療が必要なユーザによる薬剤の自己注射用に設計されている場合もよくある。これは、例えば、糖尿病の治療に使用するために様々な形で供給されるインスリンの場合に当てはまる。しかしながら、同様に構成された注射ペンシステムは、アドレナリン、エピネフリン、メトトレキサート、組換えモノクローナル抗体、ヒト成長ホルモン、ヒアルロン酸などの有効成分を含む様々な注射可能な製剤を使用して、他の生理学的及び/又は病理学的状態の治療にも利用可能である又はそのような治療に使用されていることに留意すべきである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許US5980491(A)号
【特許文献2】米国特許US6537252(B1)号
【特許文献3】フランス特許出願FR3079422(A1)号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって、本発明の1つの目的は、現在使用されている様々な形状及び寸法の注射ペンシステムを受けて機能させるようになっているペン注射システム用の自動針挿入器を提供することである。
【0011】
本発明の他の目的は、既知の解決策よりも使用及び取り扱いがより容易で、より安全で、より確実なペン注射システム用の自動針挿入器を提供することである。
【0012】
本発明のこれら及び他の目的は、本明細書を完全に読むことにより容易に明らかになる。
【課題を解決するための手段】
【0013】
したがって、上記の目的のいずれかによれば、上記で概説したペン注射システムに適合及び構成された自動針挿入器が提供され、この自動針挿入器は、
近位端及び遠位端を有する長尺な挿入器本体と、長尺な本体を貫通して近位端から遠位端まで延びる長手方向孔とを備え、長手方向孔が中心長手方向軸を有し、長尺な挿入器本体は、挿入器本体の近位端を介して当該孔内に導入されるペン注射システムを受けるように寸法付けられて構成されるとともに、ペン注射システムが遠位端を介して長手方向孔から出るのを防ぐように更に構成されて寸法付けられ、
長尺な挿入器本体は、
長尺な挿入器本体の少なくとも一部を中心長手方向軸の周りで第1の非ロック位置から少なくとも1つ以上の第2のロック位置まで回転させることによってペン注射システムを長手方向孔内の軸方向位置にロックするように構成される回転作動式ロック手段を更に備える。
【0014】
前述したように、長尺な挿入器本体は、挿入器本体の近位端を介して当該孔内に導入されるペン注射システムを受けるように寸法付けられて構成される。そのような構成は、長尺な挿入器本体の近位端にある孔の開口が、ペン注射システムの少なくとも遠位端を当該開口及び長手方向孔に挿入できるようにするのに十分な寸法であることを前提とする。長尺な挿入器本体の一般的な全体形状は円筒形であるが、ペン注射システムの形状に応じて、挿入器本体の長さに沿って孔の適切な寸法、形状及び構成の拡大及び/又は縮小を提供することも可能である。
【0015】
更に、長尺な挿入器本体は、ペン注射システムが挿入器本体の遠位端を介して長手方向孔から出るのを防ぐように適切に構成されて寸法付けられる。これは、例えば、長尺な挿入器本体の内面から内側に突出する1つ以上の当接肩部、又は挿入器本体の軸方向長さに沿ったペン注射システムの過剰な挿入を防止する他の形態の適切な当接部を設けることによって、様々な方法で達成することができる。特に有利な解決策は、本明細書の他の箇所でより詳細に提供される。
【0016】
また、前述したように、長尺な挿入器本体は、中心長手方向軸の周りの長尺な挿入器本体の少なくとも一部の第1の非ロック位置から少なくとも1つ以上の第2のロック位置への回転によって、ペン注射システムを長手方向孔内の軸方向位置にロックするように構成される回転作動式ロック手段を更に備える。前述の文言から分かるように、長尺な挿入器本体には、長尺な挿入器本体の孔の長さに沿った孔内の所定の軸方向位置にペン注射システムを回転方向でロックするための手段が設けられる。孔の長さに沿う軸方向の移動に対するペン注射システムのそのような回転ロックは、長尺な挿入器本体と考えられるものの近位端の外側に取り付けられる追加のねじ込みリングを使用する従来技術で提供される解決策とは対照的に、長尺な挿入器本体自体の一部の回転によって達成される。フランス特許出願FR3079422(A1)号から知られる従来技術の解決策と本発明の提案される解決策との間の機能的な違いは明らかである。どちらの解決策も注射ペンのロックを達成するために回転を伴うが、現在提案されている解決策は、操作されるべき更なる要素ではなく、長尺な挿入器本体自体の一部の回転を伴う、はるかに単純で使いやすい態様で動作する。この点において、本発明に従って提案される解決策は、ペッパーグラインダと同様の態様で機能し、長尺な挿入器本体自体の一部が、長手方向軸の周りで第1の方向に回転し、ペンのロックを操作し、その後、注射後に逆回転して、長尺な挿入器本体から注射ペンを解放する。
【0017】
更に、本目的によって想定される構成は、第1の非ロック位置から少なくとも1つ以上の第2のロック位置までの回転動作も提供する。少なくとも1つ以上の第2のロック位置は、現在使用されている注射ペンの主直径に対応するように設定される。その結果、本発明に係る自動針挿入器のユーザには、ねじ込み締め付けリングが正しく適切な範囲で締め付けられているか、又はねじ山が締められすぎていて、1つ以上の構成要素に障害が発生する可能性があるか否かをユーザが決定しなければならないことを伴う従来技術の解決策のような当て推量を必要としない、非常に使いやすく信頼性の高い機能的な解決策が提供される。ねじ込み動作が不十分な場合、従来技術の注射ペンシステムは、挿入器本体から引き抜かれる危険性があり、それにより、ユーザはやり直しを余儀なくされ、或いは、更に悪いことに、挿入器装置が壊滅的に破損し、ペンが挿入された装置から突然引き抜かれて、場合により注射針が望ましくない状況でユーザと偶発的に接触する危険がある。更に、本明細書に記載されて提供される目的は、上記の従来技術の他の欠点の幾つか、とりわけ、注射ペンの直径と同数の異なる締め付けリングを提供するという従来技術の解決策の要件を回避する。更に、フランス特許出願FR3079422(A1)号に記載の従来技術の解決策は、そこに記載の挿入器装置が注射ペンの機械的に動く部分の一部を物理的にロックし、これと干渉する可能性があるため、注射ペンの故障のリスクが増大する。これは、例えば、ペンのカートリッジホルダの外面及び/又は薬剤カートリッジの外面などの注射ペンシステムの非変形部分と相互作用して当接する代わりに、ペン注射システムの可動部分との物理的なロック接触を回避し、それによって、注射ペンシステムの選択及び/又は注射機構の変更のリスクを回避するように構成される、本明細書で説明されて提示される目的とは全く対照的である。
【0018】
他の目的によれば、長尺な挿入器本体は、少なくとも第1の長尺な外側本体構成要素と、少なくとも第2の長尺な外側本体構成要素とを備え、少なくとも第1の長尺な外側本体構成要素及び少なくとも第2の長尺な外側本体構成要素のうちの少なくとも一方は、ロック中に少なくとも他方の長尺な外側本体構成要素に対して中心長手方向軸の周りで回転するように構成される。この構成において、長尺な挿入器本体は、好適には、2つの外側本体構成要素、例えば、挿入器本体の近位端から遠位端の方向に延びる実質的に近位側に位置される長尺な外側本体構成要素と、挿入器本体の遠位端から近位端の方向に延びる実質的に遠位側に位置される長尺な外側本体構成要素とを有し、2つの外側本体構成要素は長手方向軸に沿った適切なポイントで互いに回転可能に出会って相互接続される。好適には、そのような構成は、対応する遠位側に位置される外側本体が近位方向に延びる距離よりも長い距離にわたって挿入器本体の遠位端に向かって延びる近位外側本体構成要素を提供する。したがって、そのような構成では、近位外側本体は遠位側外側本体よりも長い。
【0019】
したがって、また更なる目的では、長尺な挿入器本体は、少なくとも第1の長尺な外側本体構成要素と、少なくとも第2の長尺な外側本体構成要素とを備え、少なくとも第1の長尺な外側本体構成要素及び少なくとも第2の長尺な外側本体構成要素は、ロック中に中心長手方向軸の周りで互いに対して反対方向に回転するように構成される。そのような目的によれば、長尺な挿入器本体はペッパーグラインダに似た態様で機能し、例えば、ユーザが、各外側本体構成要素を別々の手で保持し、その後、一方の外側本体構成要素を他方の外側本体構成要素に対して回転させ、或いは、両方の外側本体構成要素を中心長手方向軸の周りでそれぞれ反対方向に第1の位置から1つ以上の第2の位置まで回転させる。
【0020】
本明細書で使用するとき、長尺な本体に関する「外側」への言及は、自動挿入器装置を全体として考慮したときに、中心長手方向軸に関して、これらの本体構成要素が径方向の最も外側にあることを意味する。ひいては、結果として、「内部」、「内側」、又は「内側に面する」と称される任意の要素は、当該外側本体構成要素によって形成された孔内に含まれる又はその中に位置される、或いは外側本体構成要素によって形成された孔内へとほぼ内側に方向付けられる装置の部分を指す。
【0021】
他の目的によれば、回転作動式ロック手段は、公称厚さ、中心孔を画定する公称内径を有する圧縮リングを備え、圧縮リングは、長尺な挿入器本体の長手方向孔と同軸的に位置される。圧縮リングは、長尺な本体の孔内に同軸的に位置され、当該長尺な本体が近位外側本体構成要素と遠位外側本体構成要素とを備える場合、圧縮リングは、好適には、当該近位外側本体構成要素の内側に面する表面が圧縮リングの外側に面する表面と接触するように、近位外側本体構成要素によって完全に覆われて取り囲まれる。そのような構成において、圧縮リングの外側に面する表面は、近位外側本体構成要素の中心長手方向軸の周りの任意の回転が圧縮リングに伝達されて圧縮リングを中心長手方向軸の周りで近位外側本体構成要素と同じ度合い又は回転角度まで回転させるように、近位外側本体構成要素の内側に面する表面と係合するように形成されて構成される。この機能を達成するために、例えば、圧縮リングの外側に面する表面には、圧縮リングの外側に面する表面から突出する1つ以上の径方向で離間する隆起部を設けることができる。これらの隆起部は、近位外側本体構成要素の内側に面する表面に設けられる対応して適切に形成及び構成された相補的凹部と係合し、凹部は、近位外側本体構成要素の遠位端又はその近くに位置される。同様に、及び代わりに、同じ又は類似の機能的結果を達成するための手段、例えば、外側本体構成要素の内側に面する表面から長尺な外側本体の孔内へと内側に延びる適切な突出スピゴットを想定することができ、当該スピゴットは、圧縮リングの外側に面する表面に設けられた、対応する形状の相補的な溝、切り欠き、又は凹部と係合し、それにより、近位外側本体構成要素が回転されると、突出するスピゴットが、圧縮リングの外側に面する表面上の対応する相補的に構成された溝、切り欠き、又は凹部と係合し、それにより、圧縮リングを中心長手方向軸の周りで回転駆動させる。
【0022】
更に他の目的によれば、圧縮リングは、公称内径に対して可変の内径を有する。「可変の内径」とは、例えば、内側に面する表面の形状に起因して、又は圧縮リングの孔内へと内側に延びる圧縮リングの厚さの対応する変化に起因して、圧縮リングが圧縮リングの孔全体にわたって一定の内径を有さないと理解されるべきである。
【0023】
更に他の目的によれば、圧縮リングは、公称内径に対して増大した内径を有する少なくとも1つの部分を備える。
【0024】
更に他の目的によれば、圧縮リングは、公称直径に対して減少した内径を有する少なくとも1つの部分を備える。
【0025】
更に他の目的によれば、増大した内径を有する圧縮リングの少なくとも1つの部分は、減少した内径を有する圧縮リングの部分に向かって内径が徐々に減少する状態で、圧縮リングの内径の周囲にわたって延在する。これは、当該内径が、例えば公称内径よりも大きい直径を有する圧縮リングの部分から本質的に移行して、当該周囲に沿うあるポイントで公称内径を通過し、その後、公称内径よりも小さい内径の圧縮リングの他の部分で終わるように、内径が圧縮リングの内径の周囲にわたって徐々に変化されることを意味すると理解することができる。そのような移行部は、例えば、内径の円周の曲率半径を適切に変更することによってもたらすことができる。
【0026】
更に他の目的によれば、可変の内径について前述した一般的な概念を適切に提供することができ、圧縮リングは、中心孔内へと内側に延びる、リングの公称厚さに対して増大した厚さを有する少なくとも1つの部分を備える。
【0027】
更に他の目的によれば、前段落と同様の補足的な態様で、圧縮リングは、中心孔内へと内側に延びる、リングの公称厚さに対して減少した厚さを有する少なくとも1つの部分を備える。
【0028】
更に他の目的によれば、増大した厚さを有する圧縮リングの少なくとも1つの部分は、減少した厚さを有する圧縮リングの部分に向かって厚さが徐々に減少する状態で、圧縮リングの外周から圧縮リングの中心孔内へと内側に周囲で延びる。
【0029】
更に他の目的によれば、回転作動式ロック手段は、弾性材料の圧縮可能な膜を更に備える。弾性材料の圧縮可能な膜は、圧縮リングの内側に面する表面のための接触表面として設けられる。圧縮可能な膜の弾性材料は、エラストマー、例えば一般にSEBSエラストマーと一般に称されるスチレン-エチレン-ブチレン-スチレン共重合体などの熱可塑性ポリマーをベースとするエラストマーなどの利用可能な材料の範囲から適切に選択される。そのようなエラストマーは、加硫を受ける必要なくゴムと同様の挙動を示し、そのようなSEBSエラストマーの殆どは、一般にスチレン-ブタジエン-スチレン共重合体の選択的水素化によって得られる。
【0030】
更に他の目的によれば、弾性材料の圧縮可能な膜は、それ自体の孔を伴うほぼリング形状の圧縮リングの孔内に同軸的に位置される。
【0031】
更に、更に他の目的によれば、圧縮可能な膜は、第1の非ロック位置から1つ以上の第2のロック位置までの中心長手方向軸の周りでの圧縮リングの回転移動によって弛緩状態から圧縮状態に圧縮される。
【0032】
したがって、上記の様々な目的で表現された圧縮リングの可変の内径は、圧縮リングの内側に面する表面と圧縮可能な膜の外側に面する表面との係合接触の程度の可変性及び制御の両方を与えるために使用される。このようにして、その可変の内径を伴う圧縮リングの回転により、圧縮リングの内側に面する表面が圧縮可能な膜の外側に面する表面との面圧縮接触を増大させ、それにより、圧縮可能な膜の孔内にたまたま位置する物体の周りで当該圧縮可能な膜が収縮して圧縮する。
【0033】
したがって、更に他の目的によれば、圧縮可能な膜の内側に面する表面は、第1の非ロック位置から1つ以上の第2のロック位置への中心長手方向軸の周りでの圧縮リングの回転移動によってペン注射システムの本体の外面と接触させられる。
【0034】
以上から分かるように、また、本明細書で想定されるように、圧縮可能な膜と当接させられる圧縮リングの内径の変化に関連して、圧縮リングが中心長手方向軸の周りで回転されるときの圧縮可能な膜の制限及び圧縮により、圧縮可能な膜の内面が、圧縮されて、自動針挿入器の長尺な本体に挿入される注射ペンシステムの本体の外面上へと収縮される。ペン注射システムが長尺な外側本体の孔内で中心長手方向軸の周りをある程度自由に依然として移動できる第1の非ロック位置から第2のロック位置まで圧縮リングが回転された場合、圧縮リングが外側の長尺な本体と共に回転し、圧縮リングの内面は、圧縮可能な膜の外面と係合し、ペン注射システムの本体の周囲で当該圧縮可能な膜の圧縮及び収縮を引き起こし、それにより、ペン注射システムを所定の位置にロックする。本明細書の目的によって想定される1つ以上の第2の位置は、現在利用可能な主要なタイプのペン注射システムの相対外径に関連し、それによって指標付けされる。したがって、装置は、将来の代わりのペン直径を含めることができ、現在想定されている針挿入器装置の様々な構成でロックできるように構成することもできる。
【0035】
更に他の目的によれば、第1の非ロック位置及び1つ以上の第2のロック位置は、対応する視覚的又は聴覚的な指標を備え、それにより、ユーザは、いつ特定の位置に到達したかを知ることができる。そのような視覚的又は可聴的な指標は、例えば、長尺な外側本体の対応する関連部分に、例えば、近位外側本体構成要素と遠位外側本体構成要素とが交わる接合部に位置される視覚的マーキングによって、有益に与えられ得る。そのような視覚的マーキングは、例えば、1つ以上の外側本体構成要素の外側に面する表面に設けられた切り欠きによって表され、任意選択的に、予期される位置のそれぞれを示すためにエッチングされた番号又は文字によって補足され得る。可聴指標が実装される場合、これらは、第1及び第2の長尺な外側本体構成要素の対応する表面の可聴係合によって与えられ得るものであり、当該可聴係合表面は、例えば、1つの外側構成要素の第1の表面が第2の長尺な外側本体構成要素との着座接触又は位置決め接触の状態になるときに可聴クリック音を生成する。一般に、このような可聴指標マーカーは、外側本体構成要素の一方の内側に面する表面から延びる突出部と、他方の外側本体構成要素上の対応する溝又は相補的な凹部とを備えることができ、それにより、突出部と凹部とが互いに接触するときに、突出部が溝に収まる際、及び/又はその逆の際に、2つの表面の一方の他方に対する摩擦によって可聴音が発生される。例えば、本装置の1つの目的によって想定されるように、一連の連続的に増大する数字又は文字を、例えば、文字AからE、又は数字の0から4までを、外側本体構成要素のうちの一方の外面に設けることができ、各数字又は文字は、中心長手方向軸の周りでの外側本体構成要素の一方の所定の回転に対応する位置を表し、各回転位置は、圧縮可能な膜上の圧縮リングの作用によって孔内にペン注射システムの本体を維持及び保持するのに十分な必要な圧縮度に対応するとともに、ペン注射システム本体の所定の外径に対応する。
【0036】
更に、ユーザによる相対的な指標付きの非ロック位置及びロック位置のそれぞれの視覚化を容易にするために、そのようなマーキングが設けられていない外側本体構成要素には、そこから当該マーキングが設けられる他の外側本体構成要素の外側に面する表面の領域にわたって延びる拡大面を、例えば凸レンズ又は拡大レンズなどを介して有益に設けることができる。外側本体構成要素が対応するロック解除位置又はロック位置に移動されると、適切に指標付けされた拡大面が、他の外側本体構成要素に設けられた視覚的マーキング上にわたって位置され、それにより、当該マーキングが当該拡大面を介して拡大され、その結果、ユーザにすぐに見える位置マーカーがもたらされる。
【0037】
更に他の目的によれば、圧縮リングは、圧縮リングを中心長手方向軸に沿って非装備位置から装備位置まで並進させるように構成される摺動可能なキャリッジ・アセンブリに取り付けられ又は装着される。そのような摺動可能なキャリッジの目的は、針挿入器の自動挿入機能を与えることである。したがって、摺動可能なキャリッジ・アセンブリは、注射が不可能であり注射が行われない第1の非装備位置から、通常は非装備位置に対して近位側方向にある第2の装備位置まで、中心長手方向軸に沿って移動可能であり、移動可能となるように構成され、非装備位置では、ペン注射システムは、いつでも解放されてその後に装備方向とは反対の方向、通常は遠位方向に移動できる状態にプライミングされる。
【0038】
更に他の目的によれば、摺動可能なキャリッジ・アセンブリは、圧縮リングの孔と同軸的に位置合わせされた孔を備える。摺動可能なキャリッジ・アセンブリ、及びそこに装着される又は取り付けられる圧縮リングは、それによって、共通の長手方向孔を有する単一の摺動可能な部材を形成する。
【0039】
更に他の目的によれば、摺動可能なキャリッジ・アセンブリの少なくとも一部は、特に、長尺な外側本体の回転移動中に、第1の非ロック位置から1つ以上の第2のロック位置へと圧縮リングと共に中心長手方向軸の周りで共回転するように構成される。換言すれば、摺動可能なキャリッジ・アセンブリは、長尺な本体の孔内に挿入された注射ペンシステムのロック回転中及び対応するロック解除中に圧縮リングが中心長手方向軸の周りで回転できるように、圧縮リングを受けるべく形成されて寸法付けられる。したがって、圧縮リングと共回転するように構成される摺動可能なキャリッジ・アセンブリの部分は、圧縮リングと同軸的に位置合わせされる孔を備える長尺な実質的に円筒形の本体を備える。これを達成する1つの方法は、回転可能な圧縮リング部分と摺動可能なキャリッジ・アセンブリの回転可能な部分との両方を組み合わせた単一の回転可能な成形円筒体を提供することである。或いは、圧縮リングと摺動可能アセンブリの回転可能部分とは、例えば一方の本体、例えば圧縮リングの回転が、他方の本体、すなわち、摺動可能なキャリッジ・アセンブリの回転可能部分の対応する等しい回転を、中心長手方向軸の周りで同じ回転方向で引き起こすように、例えば、圧縮リング又は摺動可能アセンブリの回転可能部分のいずれかに設けられた、適切に形成されて構成される弾性変形可能なクリップ又はフックと、弾性変形状態のそのようなクリップと係合するように対応して形成されて構成される凹部とを介して、一方が他方と一緒に装着され得る。
【0040】
他の目的によれば、摺動可能なキャリッジ・アセンブリは、圧縮リングから中心長手方向軸に沿って近位方向と遠位方向の両方にそれぞれ延在する。摺動可能なキャリッジ・アセンブリの近位側に延びる部分は、圧縮リングに関して前述した回転可能部分である。したがって、摺動可能なキャリッジ・アセンブリは、近位部分と遠位部分との間に圧縮リングが位置される、近位部分と遠位部分とのアセンブリと見なすことができる。そのような構成において、第1の近位部分は、前述したように中心長手方向孔を伴う円筒形状の本体を有し、圧縮リングと共回転する。また、近位部分は、例えば内側に面する環状溝を備える遠位端も備える。環状溝は、摺動可能なキャリッジ・アセンブリの第2の遠位部分から近位方向に延在して径方向外側に突出するスパー又はフック部分で終わる、径方向に離間した2つ以上の突出弓形壁を受けるように適切に構成されて寸法付けられる。装置の組み立て中、キャリッジ本体の第2の遠位部分の突出弓形壁は、圧縮リングの孔に挿通されて、摺動可能なキャリッジ・アセンブリの第1の近位側の回転可能な部分の同軸的に位置合わせされた孔に挿入され、それにより、弓形壁の近位端に設けられた外側に突出するスパー又はフックが、摺動可能なキャリッジ・アセンブリの第1の近位部分の環状溝に係合する。弓形壁及びその近位端の外側に突出するフック部分は、非回転阻止係合状態で環状溝と係合し、すなわち、突出フック部は、圧縮リング及び摺動可能なキャリッジ・アセンブリの第1の近位部分が中心長手方向軸の周りで対応する時計回り又は反時計回りの方向に回転される際に、溝に沿って時計回り又は反時計回りの方向に自由に移動できる。
【0041】
摺動可能なキャリッジ・アセンブリの第2の遠位部分には、径方向外側に突出する隆起部が更に設けられ、当該隆起部は、圧縮リングの遠位端のための近位側に面する遠位当接面を形成する。キャリッジ本体の第1の近位側の回転可能部分と第2の遠位部分とが互いに軸方向に相対的に離間した状態に維持されるため、圧縮リングは長手方向軸に沿った独立した軸方向移動に対して捕捉される。これは、圧縮リング及び摺動可能なキャリッジ・アセンブリの近位側回転可能部分が単一の成形円筒体から構成される場合に更に当てはまる。キャリッジ本体の第2の遠位部分の突出弓形壁は、凸状の湾曲した外側に面する表面を有利に提供し、当該表面に対して、注射ペン本体の位置ロック中及びロック解除中に圧縮リングが回転できる。摺動可能なキャリッジ・アセンブリの第2の遠位部分から延在する径方向に離間された突出弓形壁の他の有利な特徴は、当該延在する弓形壁間に設けられた空間が、圧縮可能な弾性膜の材料のそれぞれの対応する径方向外側に延びる突出部を側方への圧縮によって受けて保持するように寸法付けられることである。圧縮可能な弾性膜を構成する材料のそのような径方向外側に延びる突出部は、圧縮リングの回転中に圧縮リングと接触するとともに圧縮リングによって徐々に加えられる圧縮力を適切に伝達することにより膜を圧縮させてペン注射システムの本体上の圧縮可能な膜の孔の直径を減少させる外側に面する接触面に対応する。圧縮可能な膜には、2つ以上、例えば4つ、6つ、又は8つの、外側に延びて径方向に離間される圧縮性材料の突出部が適切に設けられ得る。特に有利な一実施例では、圧縮性材料を、弓形壁の内側に面する表面上に、中心孔と同軸的に位置合わせされる対応する長手方向孔を伴う円筒体として成形することができる。
【0042】
以上から分かるように、摺動可能なキャリッジ・アセンブリが軸方向に移動する場合、これが近位方向であるか遠位方向であるかに関係なく、圧縮リングは同じ程度だけ軸方向に移動してキャリッジ・アセンブリと共に並進移動することを強いられる。
【0043】
更に他の目的によれば、摺動可能なキャリッジ・アセンブリ及び圧縮リングはそれぞれ、第1の長尺な外側本体構成要素の孔内で圧縮リング又は摺動可能なキャリッジ・アセンブリのいずれかの回転を伴うことなく、摺動可能なキャリッジ・アセンブリと共に、非装備位置から装備位置への圧縮リングの並進を可能にするべく、第1の長尺な外側本体構成要素と摺動係合状態で係合するように構成される表面係合手段を備える。一般に互いに相補的であるそのような表面係合手段は、多くの方法で適切に設けられ得る。
【0044】
例えば、他の目的によれば、摺動可能なキャリッジ・アセンブリの表面係合手段は、摺動可能なキャリッジ・アセンブリから径方向外側に延びる少なくとも1つの突出接触部材を備える。
【0045】
他の目的によれば、摺動可能なキャリッジ・アセンブリから径方向外側に延びる少なくとも1つの突出接触部材は、第1の長尺な外側本体構成要素に設けられた少なくとも1つの対応するラネルと軸方向摺動接触状態で係合する。本明細書で予見される少なくとも1つの対応するラネルは、第1の外側本体構成要素の内側に面する表面の少なくとも一部に沿って、長手方向軸に平行に延びる。摺動可能なキャリッジ・アセンブリの突出接触部材を受けるラネルは、キャリッジ・アセンブリが非装備位置から装備位置に移動する際に、突出接触部材を取り囲み、中心長手方向軸の周りのキャリッジ・アセンブリの回転を防止する。
【0046】
他の目的によれば、摺動可能なキャリッジ・アセンブリから径方向外側に延びる少なくとも1つの突出接触部材は、摺動可能なキャリッジ・アセンブリの近位部分の近位端を越えて近位側にも延びる。このことから分かるように、少なくとも1つの径方向外側に突出する突出接触部材は、好適には、例えば、摺動可能なキャリッジ・アセンブリの第1の近位部分の外側に面する表面上に位置されて、キャリッジ・アセンブリの第1の近位部分の近位端を越えて中心長手方向軸と平行にキャリッジ・アセンブリの当該第1の近位部分に沿って更に延在する、一連の径方向に離間されて外側に突出する脚部として表され得る。キャリッジ本体の近位端を越えて延びる突出脚部の長さは、例えば、キャリッジ本体の近位端と外側長尺本体の近位端との適切な当接距離を与えるように、或いは代わりに、外側本体の近位端の孔内に位置される圧縮ばねなどの付勢要素との近位側係合面を与えるように、更にキャリッジ本体の近位方向への移動距離を制限するように設定される。
【0047】
摺動可能なキャリッジ・アセンブリに設けられた突出接触部材と同様に、更に他の目的によれば、圧縮リングは、圧縮リングから径方向外側に延びる少なくとも1つの突出接触部材を備える。近位外側本体構成要素に関連して圧縮リングを説明するときに前述したように、圧縮リングの外側に面する表面には、圧縮リングの外側に面する表面から突出する径方向に離間した1つ以上の隆起部を設けることができる。これらの隆起部は、近位外側本体構成要素の内側に面する表面に設けられた、対応して適切に形成されて構成された相補的な径方向に離間した凹部又はラネルと係合し、凹部又はラネルは、近位外側本体構成要素の遠位端からその近位端まで、長手方向中心軸と平行に、近位外側本体構成要素の内側に面する表面に沿って延在する。
【0048】
更に他の目的によれば、圧縮リングから径方向外側に延びる少なくとも1つの突出接触部材は、第1の長尺な外側本体構成要素に設けられた少なくとも1つの対応するラネルと軸方向摺動接触状態で係合する。
【0049】
他の目的によれば、摺動可能なキャリッジ・アセンブリは、中心長手方向軸から径方向に離間して中心長手方向軸と平行にキャリッジ・アセンブリの遠位部分から遠位側に延びる少なくとも1つのスライダ・アームを備える。そのようなスライダ・アームを1つだけ有する本明細書に係る自動針挿入器を構成することは可能であるが、長手方向軸に沿った摺動可能なキャリッジ・アセンブリの並進移動を安定させるためには、キャリッジ・アセンブリの遠位端から延在するそのようなスライダ・アームを2つ以上設けることが有用であることが分かっており、そのようなアームは、一般に、中心長手方向軸の周囲に径方向に等距離で位置される。スライダ・アームは、好適には、摺動可能なキャリッジ・アセンブリの第2の遠位部分に設けられた径方向に突出する隆起部から遠位側に延在するとともに、中心長手方向軸の周りに径方向に離間して実質的に互いに反対側に位置される。更に、当該スライダ・アームは、キャリッジ本体の第2の遠位部分から近位方向に延びる径方向に離間した弓形突出壁に対して角度をなして対向して位置されるのも有利である。言い換えれば、スライダ・アームと弓形壁とが配設される時計の文字盤の点を考慮すると、スライダ・アームは12時と6時の位置にそれぞれ位置され、文字盤から前方に延び、弓形突出壁は、時計の文字盤から後方に文字盤の周りで延びる3時と9時の位置に配置されることになる。3対以上の弓形壁が摺動可能なキャリッジ・アセンブリの第2の遠位部分に設けられる場合、遠位方向に延びるスライダ・アームは、近位側に延びる弓形壁のこれらの対のいずれかの間の角度位置又は時計の位置に適切に配置され得る。
【0050】
他の目的によれば、少なくとも1つのスライダ・アームは、第2の長尺な外側本体構成要素に設けられた少なくとも1つの対応するラネルと軸方向摺動接触状態で係合する。第2の長尺な外側本体構成要素に設けられた対応する1つ又は複数のラネルは、第2の長尺な外側本体構成要素の近位端から当該第2の外側本体構成要素の遠位端に向かって延在するとともに、当該第2の外側本体構成要素の内側に面する表面に適切に設けられる。1つ又は複数のスライダ・アームは、対応して位置された1つ又は複数のラネル内に摺動可能に係合し、それにより、キャリッジ・アセンブリの近位方向及び遠位方向の両方への摺動又は並進移動を可能にし、同時に、当該第2の外側本体構成要素が中心長手方向軸の周りで回転するのを防止する。長手方向軸に沿う遠位方向のキャリッジ・アセンブリの摺動又は並進移動は、スライダ・アーム及び対応するラネルの長さによって制限され、スライダ・アームの遠位端は、第2の外側本体構成要素に設けられる対応するラネルの遠位端との当接ストッパを形成する。
【0051】
他の目的によれば、少なくとも1つのスライダ・アームは、摺動可能なキャリッジ・アセンブリが装備位置にあるときに、第2の長尺な外側本体構成要素に設けられた対応するラネル内へと遠位側に延びてこのラネルとの摺動係合接触を維持するのに十分な長さを有する。
【0052】
更に他の目的によれば、摺動可能なキャリッジ・アセンブリは、トリガ部材を有する解放可能なトリガ手段を更に備え、当該トリガ手段は、トリガ部材が解放されるまで摺動可能なキャリッジ・アセンブリを装備位置に保持するように構成される。解放可能なトリガ部材は、ユーザがペン注射システムを装備位置からペン注射システムの針が皮膚などの注射表面を貫通する注射位置へと遠位方向に正しい及び/又は望ましい刺入深さまで移動させることができるようにするべく設けられる。通常、注射操作によってペン注射システムを装備位置から非装備位置に移動させるための推進力は、例えば圧縮ばねなどの付勢要素によって与えられる。本明細書で想定されるように、摺動可能なキャリッジ・アセンブリは、圧縮リングがロック位置に回転された後、例えば、圧縮リング及び圧縮可能な膜によって摺動可能なキャリッジ・アセンブリ内に保持されるペン注射システムを引っ張ったり牽引力を加えたりする挿入器装置のユーザによって装備位置に移動され、当該牽引力は近位方向に加えられる。本質的には、自動針挿入器のユーザは、解放可能なトリガのトリガ部材が係止されて装備位置が設定されるまで、付勢要素に抗してペン本体を後方に近位方向で引っ張り、付勢要素を挿入器本体の近位端に対して押し付ける。
【0053】
したがって、更に他の目的によれば、トリガ部材は、非装備位置における第1の長手軸方向位置合わせ平面から装備位置における第2の長手軸方向位置合わせ平面へ移動可能な弾性変形可能なアームを備える。弾性変形可能なアームは、好適には、摺動可能なキャリッジ・アセンブリの近位部分から近位方向に延在することができ、それにより、例えば、摺動可能なキャリッジ・アセンブリの当該近位部分から長手方向軸に沿って直接延在し、又は代わりに、中心長手方向軸を横切って、摺動可能なキャリッジ・アセンブリの近位部分の外面から直角に延びるとともに、弾性変形可能なアームを当該中心長手方向軸に位置合わせする突出スパーの先端から浮遊して延在する。弾性変形可能なアームは、変形前の非装備状態では中心長手方向軸と平行である第1の長手方向平面に沿って位置する。摺動可能なキャリッジ・アセンブリが近位方向に移動されると、弾性変形可能なアームは、長尺な外側本体の近位端に隣接して当該近位端の内側に面する表面に設けられた傾斜肩部などの当接部に接触する。弾性変形可能なアームと同じ長手方向平面内にある当接部は、アームを、変形させるとともに、第1の長手方向平面から、第1の長手方向平面から径方向に離間する第2の長手方向平面内へと移動させる。摺動可能なキャリッジ・アセンブリの近位側への移動によりアームが近位側に移動されると、アームは、第1の外側本体構成要素の傾斜肩部を偏向させ又は傾斜肩部と変形接触するようになる。アームは、アームの近位端、例えばフック形状の部分が肩部及び近位外側本体の内面に設けられた対応する逆形状のフック部分を通過するまで、第1の平面から第2の平面に至るまで変形される。次いで、アームのフックは、肩部の対応する逆形状のフックと係合し、それにより、トリガ部材は、摺動可能なキャリッジ・アセンブリを当該第2の長手方向平面内の装備位置にロックさせ、この装備位置では、アームのフックが継続的な機械的変形拘束を受ける。
【0054】
更に他の目的によれば、第1の長尺な外側本体構成要素は、弾性変形可能なアームを第2の長手軸方向位置合わせ平面から第1の長手軸方向位置合わせ平面へと移動させることによってトリガ部材を装備位置から解放するように構成される解放ボタンを備える。
【0055】
前述したように、そのような機能を達成する1つの方法は、トリガ部材にラッチ又はフックを設けることであり、ラッチ又はフックは、長尺な外側本体に設けられた解放ボタンと係合するとともに、例えば、ユーザが解放ボタンを押すことによって解放ボタンが作動するときまで、第2の長手方向平面内でトリガ部材のアームを機械的拘束下に維持する。装備位置にある弾性変形可能なアームは、第1の平面から第2の平面への移動によって強制された弾性機械的拘束下にあったため、解放ボタンが作動されると、弾性変形可能なアームは、そのような弾性拘束から解放され、もう一度第1の長手方向平面内のその通常の位置をとる。そうすることで、キャリッジ・アセンブリは、圧縮ばねによって蓄えられたエネルギーによって遠位方向に自由に移動できるようになり、キャリッジ・アセンブリを加速し、それに応じて注射ペンを保持して、注射針を正しく設定された刺入深さまで移動させることができる。
【0056】
他の目的によれば、自動針挿入器は、長手方向孔の中心長手方向軸に沿う、長尺な挿入器本体の長手方向孔内へのペン注射システムの挿入時に、注射ペンシステムの遠位端に当接するように構成される選択的に作動可能なペン遠位端当接手段を備える。本明細書で使用される「選択的に作動可能な」という用語は、ペン遠位端当接手段が、長尺な挿入器本体内に導入されたときに、選択的に作動する態様で、すなわち、長尺な挿入器本体に関する意図的なユーザ作用又は当接手段との相互作用によって、中心長手方向軸に沿ってペン注射システムの遠位端に当接するように機能することを意味すると理解されるべきである。換言すれば、当接手段は、永続的に作動する、又は任意の導入された注射ペンシステムに常に当接作用を及ぼす挿入器本体の一部を形成する要素又は物体ではなく、むしろ、必要に応じて作動又は非作動にすることができる。一般に、ペン遠位端当接手段は、ペン注射システムを挿入器の長尺な本体に導入する前に作動され、本明細書の他の箇所で説明されるような非ロック位置からロック位置への長尺な外側本体の一部の回転によって注射ペン本体が第2のロック位置にロックされた後に作動停止される。
【0057】
したがって、更に他の目的によれば、ペン注射システムの回転作動によるロックは、ペン遠位端当接手段の選択的動作によるペン注射システムの当接後にのみ生じる。
【0058】
更に他の目的によれば、選択的に作動可能なペン遠位端当接手段は、第1の非当接位置から第2の当接位置まで移動可能である。そのような移動は、例えば、ユーザが指又は親指の動き、又は指と親指の動きの組み合わせによって与えることができる。同様に、ペン遠位端当接手段は、第2の当接位置から第1の非当接位置まで、逆方向又は反対方向に選択的に動作可能である。このようにして、ペン遠位端当接手段は、ペン注射システムが所定の位置にロックされた時点で当接手段を非当接位置に再配置できるように構成される。
【0059】
更に他の目的によれば、選択的に作動可能なペン遠位端当接手段は、ペン注射システムの遠位端に可能な限り近接して、より詳細には、例えば当該針装着部との螺合によって注射針が装着されるそのような注射ペンの遠位端に一般に位置する針装着肩部に可能な限り近接して当接が生じるように、長尺な挿入器本体の遠位端に隣接又は近接して位置される。このようにして、ペン遠位端当接手段は、作動されると、注射ペンが装備位置から解放されて圧縮ばねなどの付勢要素の衝撃を受けて非装備位置に向かって移動される際に、注射部位、例えば患者の皮膚への針の刺入深さを規定する注射ペンシステムの一部と相互作用する。したがって、この刺入深さは、そのような針装着部に装着された注射針の長さが一般に標準化されており、挿入器装置の装備前にペン注射システムの針装着部の当接部が将来の注射部位から既知の所定の軸方向距離を隔てて位置されるため、事前に制御して事前に決定することができる。
【0060】
更に他の目的によれば、選択的に作動可能なペン遠位端当接手段は、中心長手方向軸に対する平行な位置合わせ状態で回転軸周りで回転するように構成される関節アーム部材を備え、関節アーム部材は、当該平行な回転軸の周りで第1の非当接位置から第2の当接位置まで回転可能である。そのような目的によれば、関節アーム部材は、中心長手方向軸と平行に位置する回転軸上に適切に装着され得るとともに、アームを、例えば、長尺な外側挿入器本体に対して本質的に同一平面にある非当接係合から、アームが長尺な外側挿入器本体の孔内に突出する当接位置まで移動させるべく、例えば指又は親指とアームとの相互作用による回転によって移動可能となるように当該平行な装着軸の周りで回転可能である。
【0061】
したがって、更に他の目的によれば、関節アーム部材は、第1の非当接位置では長尺な挿入器本体と同一面に位置し、第2の当接位置では長手方向孔内へと延びる。
【0062】
そのような選択的に動作可能で回転可能なアーム形態は、レバー・アームによって適切に与えられ得る。例えば、レバー・アームは、非当接位置において長尺な挿入器本体の外側に面する表面と実質的に同一平面上に位置する第1の把持できる端部と、当該非当接位置において長尺な外側挿入器本体の内側に面する表面と本質的に同一平面上に位置する第2の当接端部とを備えることができる。例えば、ユーザがレバー・アームの第1の把持できる端部に加える持ち上げ動作により、レバー・アームは、アームが装着される長手方向回転軸の周りで回転するとともに、レバー・アームの第2の端部を、挿入器の長尺な外側本体の内側に面する表面上の本質的に同一面の位置から、当該長尺な挿入器本体の孔内へと移動させる。レバー・アームを非当接位置又は当接位置のいずれかに維持するために、レバー・アームは、例えば、レバー・アームが挿入器本体上に位置する平面から外側に直交して延びてレバー・アーム上に適切に位置される、少なくとも1つの位置決め小節を更に備えることができ、それにより、少なくとも1つの位置決め小節は、長尺な挿入器本体内に設けられた少なくとも1つの対応する位置決め凹部内に収まり、その結果、回転軸の周りのレバー・アームの移動角度を決定し、ひいては、レバー・アームの第2端が長尺な挿入器本体の孔内へと移動される度合いを決定する。
【0063】
本発明のこれら及び他の目的は、図面及び例示的な監視モジュールに関する以下の説明で明らかとなり、より詳細に説明される。
【0064】
ここで、説明及び例示の目的で提供される添付図面に関して本発明をより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0065】
図1】本発明に係る自動針挿入装置の概略分解斜視図である。
図2A】非装備位置にある、図1に係る自動針挿入装置の概略斜視図である。
図2B】非装備位置にある、図1に係る自動針挿入装置の概略断面図である。
図3A】いつでも注射できる装備位置にある、図1に係る自動針挿入装置の概略斜視図である。
図3B】いつでも注射できる装備位置にある、図1に係る自動針挿入装置の概略断面図である。
図4A図1に係る自動針挿入装置の詳細の概略的な分解斜視図である。
図4B図1に係る自動針挿入装置の詳細の概略的な組み立て斜視図である。
図5A図1に係る自動針挿入装置の他の詳細の概略断面図である。
図5B図1に係る自動針挿入装置の他の詳細の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0066】
次に図を参照すると、図1は、本発明に係る自動針挿入器装置(1)の概略分解斜視図を示す。自動針挿入器(1)は、近位端(3)及び遠位端(4)を有する長尺な挿入器本体(2a、2b)と、近位端(3)から遠位端(4)まで長尺な本体(2a、2b)を貫通して延びる長手方向孔(5)とを備え、長手方向孔(5)は中心長手方向軸(6)を有し、長尺な挿入器本体(2a、2b)は、挿入器本体(2a、2b)の近位端(3)を介して当該孔(5)内へ導入されるペン注射システム(7)を受けるように寸法付けられて構成される。長尺な挿入器本体(2a、2b)は、ドット(・)の符号が付けられた第1の非ロック位置(8)から一連の視覚マーカー(A、B、C、D、E)の符号が付けられた少なくとも1つ以上の第2のロック位置まで長尺な挿入器本体(2a、2b)の少なくとも一部を中心長手方向軸(6)の周りで回転させることによって長手方向孔(5)内の軸方向位置にペン注射システム(7)をロックするように構成される、本明細書でより詳細に説明する回転作動式ロック手段を更に備える。各視覚マーカーは、第2のロック位置のうちの1つに対応し、より詳細には、注射ペンの本体の所定の外径を有する注射ペンシステムにおける回転ロック位置を表す。本質的に、各視覚マーカーは、例えば、回転ロック位置ごとに15°の増分に設定される、中心長手方向軸の周りの回転角度に対応する。長尺な挿入器本体の近位端(4)は、外周環状壁(11)から孔(5)内へと内側に延びて開口(12)を画定する環状肩部(10)を有する閉鎖キャップ(9)によって閉じられ、開口(12)を通じてペン注射システム(7)が挿入器本体(2a、2b)に導入される。外周環状壁(11)は、環状肩部(10)から遠位方向に延在し、長尺な本体(2a)に設けられた対応する凹部(14)又はリップと弾性クリップ係合状態で係合するために少なくとも1つの弾性係合クリップ、ラッチ又はフック(13)を備え、外周環状壁(11)は、それを孔(5)内に挿入できるように寸法付けられる。また、キャップ(9)は解放ボタン(15)も備え、当該解放ボタン(15)により、ユーザは、挿入器装置の解放を作動させて、ペン注射器の針を注射部位、例えば患者の皮膚に導入することができ、その機能については後で更に詳しく説明する。
【0067】
図1から明らかなように、長尺な挿入器本体(2a、2b)は、第1の近位外側本体構成要素(2b)と第2の遠位外側本体構成要素(2b)の2つの構成要素を備える。第1の外側本体構成要素(2a)及び第2の外側本体構成要素(2b)は、例えば図示されるように、それぞれの遠位端(16)及び近位端(17)で互いに連結され、突出する弾性的に係合する歯(18)又はフックが第2の外側本体構成要素(2b)の近位端から延在し、対応する環状リップ又は溝(19)が第1の外側本体構成要素(2a)の遠位端(16)に設けられる。弾性的に係合する歯(18)は、環状溝(19)と係合して、第1及び第2の外側本体構成要素(2a、2b)のいずれか又は両方が中心長手方向軸(6)の周りで互いに対して回転できるようにする。第2の本体構成要素(2b)には、第1及び第2の本体構成要素(2a、2b)が互いに対して回転された位置の決定を支援するために、拡大レンズなどの回転位置識別補助具(20)が更に設けられる。
【0068】
また、図1には圧縮ばね(21)が示されており、この圧縮ばねは、孔(5)内に導入され、長尺な外側本体(2a)の近位端(3)に、少なくとも部分的にキャップ(9)内に位置されて着座されるとともに、以下に更に詳細に説明するように、注射針を注射部位に導入して自動針挿入器装置(1)を戻すとともにそれに対応して注射ペン(7)を非装備位置に保持するために注射ペン(7)が挿入器内の装備位置から解放されるときに、圧縮後にエネルギーを放出するべくエネルギー貯蔵装置を提供するのに役立つ。
【0069】
第2の外側本体構成要素(2b)の遠位端(4)は、トランペットの出口端に似るように更に形成され、そのために外側に突出する環状肩部又はスカート(22)を備え、スカートは、第2の外側本体構成要素(2b)の外面から径方向外側に延びる。これにより、スカートは、自動針挿入器を患者又はユーザの注射部位に位置決めするのに適した安定した位置決め面を形成する。更に、レバー・アーム(23)の形態のペン遠位端当接手段が、第2の外側本体構成要素(2b)の遠位端(4)に位置され、レバー・アームは、第1の把持可能端部(24)と、第2の当接端部(25)とを備え、これらについては、以下で詳細に説明する。
【0070】
最後に、図1は、圧縮リング(26)と摺動可能なキャリッジ・アセンブリ(27)によって表される自動針挿入器のロックシステム及び装備システムの更なる詳細も示し、その詳細については、他の図を参照する際に与えられる。
【0071】
図2A及び図2Bはそれぞれ、図1に係る自動針挿入器装置の2つの類似しているが僅かに異なる図を示す。図2Aは、注射ペンシステム(7)が、閉鎖キャップ(9)の開口(12)を介して長尺な挿入器本体(2a、2b)の孔内に導入されて、非装備位置にある、すなわち、注射ペンシステム(7)の針の自動挿入を行うように位置されないのが分かる概略斜視図である。ここに示されている注射ペンシステム(7)は、現在市販されている他の多くの同様のペンと同様に、用量設定ホイール(28)、用量視覚化ウィンドウ(29)、及び注射起動ボタン(30)を備えており、これらは全てユーザが目視可能且つアクセス可能であり、近位本体構成要素(2a)の近位端(3)を越えてキャップ(9)の開口(12)を通じて長尺な挿入器本体(2a、2b)の外側に突出する。解放ボタン(15)は、長尺な挿入器本体(2a、2b)の近位端(4)にも見える。近位外側本体構成要素(2a)及び遠位外側本体構成要素(2b)は、それらのそれぞれの対応する遠位端(17)及び近位端(17)で互いに接続されて、閉鎖キャップ(9)の開口(12)を越えて延びる本体の近位突出部を除く注射ペン(7)の本体(31)の大部分を取り囲んで受ける長尺な円筒体を形成する。注射ペン(7)のこの突出部は、ユーザによって保持されるとともに、自動挿入器装置(1)を装備する際に、ユーザが近位長尺外側本体構成要素(2a)を保持しながら、ユーザに向かって近位方向に引っ張られる又は引き込まれる。また、図2Aは、第1の非当接位置にある第1の把持可能端部(24)を有するレバー・アーム(23)を備える、注射ペン用のペン遠位端当接機構も示し、第1の非当接位置では、レバー・アーム(23)の把持可能端部(24)が遠位外側本体構成要素(2b)の外面(32)と本質的に同一平面上に位置する。針ガード(33)で覆われた針(図示せず)が、長尺な本体(2a、2b)の遠位外側本体構成要素(2b)の遠位端(4)から突出しているのが分かる。
【0072】
図2Bは、図1及び図2Aに示される自動針挿入器装置の概略断面図を示す。図2A図2Bとの間の1つの顕著な違いは、ペン遠位端当接手段のレバー・アーム(23)が、把持可能端部(24)を操作することによって回転され、中心長手方向軸(6)と平行に位置する回転軸(34)の周りでレバー・アームを回転させ、それにより、レバー・アームの当接端(25)がペン注射システムの(7)の遠位端に位置する針装着部(36)の外面(35)に接触してこれに押し付けられることである。長尺な本体(2a、2b)の遠位外側本体構成要素(2b)には、作動時にレバー・アーム(23)が回転できる支点として機能する、適切に構成されて寸法付けられる対向する凹部(37、38)が設けられる。レバー・アーム(23)には、レバー・アームの本体から外向きに直角に延びる対応する相補的な突出部(図示せず)が適切に設けられ、凹部(37、38)と共に平行な回転軸(34)を規定する。以上から分かるように、ユーザが平行な回転軸(34)の周りで把持可能端部(25)を持ち上げることによって加えられる回転によってレバー・アーム(23)を作動させると、レバー・アーム(23)の当接端部(25)は、当接端部(25)が遠位外側本体構成要素(2b)の内面(39)と実質的に同一平面上にある非当接位置から、当接端部(25)が針装着部(36)の外面(35)と接触してこれに押し付けられる当接位置まで移動する。このようにして、注射ペンシステム(7)は、以下により詳細に説明するように、中心軸(6)に沿った軸方向位置に回転方向でロックされる前に、中心長手方向軸(6)に沿って当接される。
【0073】
図2Bは、図5A及び図5Bにも更に詳細に示されるように、自動針挿入器の回転作動式ロック手段の概略断面図を示し、その構成要素の1つは、公称厚さ及び中心孔(40)を画定する公称内径を有する圧縮リング(26)である。図2Bから分かるように、圧縮リング(26)は、長尺な挿入器本体(2a、2b)の長手方向孔(6)と同軸的に位置され、針挿入器装置(1)の非装備位置では、近位外側本体構成要素(2a)の遠位端(16)に近い、近位外側本体構成要素(2a)の遠位領域に位置される。非装備位置では、圧縮リング(26)が中心長手方向軸(6)の周りを自由に回転できる。
【0074】
図5A及び図5Bに更に詳細に示されるように、近位外側本体構成要素(2a)が、第1のロック解除位置から、現在入手可能な様々な注射ペンの外径に対応して適切に指標付けられるとともに自動針挿入器装置に導入されるようになっている1つ以上の第2のロック位置までの回転ロックを開始するべく中心長手方向軸の周りで回転されると、近位外側本体構成要素(2a)の内側に面する表面(41)は、図5A及び図5Bに示される1つ以上の径方向外側に面する突出部(42、43、44)と相互作用して係合する。近位外側本体構成要素(2a)の内側に面する表面(41)には、1つ以上の離間する径方向内側に面する隆起部(45、46、47、48、49、50)が設けられ、当該隆起部は、近位外側本体構成要素(2a)の近位端(16)の近位側に位置されて各対の隆起部間で対応する溝又はラネル(51、52、53)を画定する位置から、中心長手方向軸(6)に沿って少なくとも部分的に平行に軸方向に延在する。圧縮リングの孔(40)は、孔(40)内に摺動可能なキャリッジ・アセンブリ(27)の少なくとも一部を受けることができ且つ非装備位置において近位外側本体構成要素(2a)の孔内での中心長手方向軸(6)周りの圧縮リングの回転を可能にするのに十分な寸法の内径を有する。
【0075】
図4A及び図4Bに示される実施例において、摺動可能なキャリッジ・アセンブリ(27)は、近位部分(72)及び遠位部分(73)を備えるキャリッジ本体(72、73)を有する。近位部分(72)及び遠位部分(73)は、中心長手方向軸と同軸にそれに沿って組み立てられ、周囲に圧縮リング(26)が位置される弓形領域を画定する。図4Aから分かるように、キャリッジ・アセンブリの近位部分(72)には、内側に突出する環状肩部又はスカート(75)を備える遠位端(74)が設けられ、肩部(75)が遠位側に面する表面(76)を画定する。キャリッジ本体の遠位部分(73)には、好適には、遠位側に位置されて径方向外側に突出する隆起部(79)から近位方向に延びる直径方向で対向して径方向に離間される一対の弓形壁(77、78)が設けられる。対向する弓形壁(77、78)のそれぞれの長手方向縁部は、少なくとも一対、好ましくは少なくとも二対、直径方向に対向する空間(80、81)を間に画定し、弓形壁(77、78)の近位端(82、83)は、環状肩部(75)に設けられた環状溝(図示せず)に受けられる。弓形壁の近位端(82、83)は、径方向外側に延びるフック(84)を適切に備えることができ、例えば肩部(75)の対応する環状溝に受けられる。このようにして、隆起部(79)の近位側に面する表面(86)及びスカート(75)の遠位側に面する表面(76)は、弓形壁(77、78)と共に、圧縮リング(26)を受けて位置決めする領域を画定する。特に有利な態様において、近位部分(72)及び圧縮リング(26)は、一体であり、同軸的に位置合わせされるとともに、回転ロック中に中心長手方向軸(6)の周りで一緒に回転するように構成される。
【0076】
回転ロック手段は、本明細書の他の箇所で説明するように、例えばSEBSエラストマーなどの、エラストマーなどの弾性材料の圧縮可能な膜(87)も備える。圧縮可能な膜は、好適にはリングの形状に形成され、孔(88)を有する。圧縮可能な膜リング(87)は、摺動可能なキャリッジ・アセンブリ(27)の孔内に位置され、より詳細には、弓形壁(77、78)間でキャリッジ本体の近位部分(73)の孔内に非回転係合状態で着座される。圧縮可能な膜リング(87)は、少なくとも一対、好ましくは一対、二対、三対、更には四対の、直径方向で対向して径方向外側に延びる圧縮性材料の突出部(89、90)を更に備え、これらの突出部は、より好適には、圧縮可能な膜リングの残りの部分よりも低い圧縮率又はより高いショア硬度を有するSEBSエラストマーから形成され得る。直径方向で対向して径方向外側に延びる圧縮性材料の突出部(89、90及び89’、90’)を形成することができ、当該突出部は、例えば、リング(87)の外周にわたって少なくとも部分的に延びる突出部と比べて厚さが薄い肩部(91)から延び、肩部(91)は、好適には、弓形壁(77、78)の外面と同一平面上に位置して連続した弓形表面を形成する。肩部(91)は、弓形壁(77、78)の外周縁部と係合する接触面として機能し、それにより、圧縮可能な膜リング(87)が弓形壁(77、78)に対して回転できないように、径方向外側に延びる突出部(89、90)を、弓形壁の縁部によって形成される空間(80、81)内に径方向で位置決めする。
【0077】
以上から分かるように、したがって、非ロック位置から1つ以上の第2のロック位置への回転中の圧縮リング(26)は、圧縮可能な膜リング(87)の露出した径方向外側に延びる突出部(89、90;89’、90’)と接触される。圧縮リング(26)の内径は、当該内径を規定する内周にわたって可変である。例示的な図示の実施例において、この変化は、公称内径より大きい内径の部分(図5A、94)から、公称内径よりも小さい又は減少した直径の部分まで、中心軸(6)の周りで圧縮リングのリングが徐々に厚くなることによって表され、当該部分(95)は増大した厚さを有し、好適には内側に面する突出部(96)を有する。同様に、圧縮リングの直径方向に対向した漸次的な薄肉化は、公称内径と比較して減少した内径、すなわち増大した厚さを有するとともに対応する厚い内側に面する突出部(98)を有する圧縮リングの部分(97)から、公称内径と比較してより大きな内径、すなわち減少した厚さを有する圧縮リングの部分(99)までなされる。内径の漸次的な変動に起因して、圧縮リング(26)は、圧縮リング(26)が中心軸(6)の周りで第1の方向に回転されると、圧縮リング(26)の内周面と近位外側本体構成要素(2a)の径方向内側に突出する隆起部(89、90)との係合によって、圧縮可能な膜(87)の径方向外側に面する突出部(89、90)に徐々に圧縮を加える。このようにして加えられた径方向の圧縮により、圧縮可能な膜(87)は、径方向内側に変形されて、圧縮可能な膜の内側に面する表面をペン注射システム(7)の本体の外面と弾性摩擦係合接触させるように移動させる。圧縮可能な膜(87)の過回転、ひいては過圧縮は、内側に面する突出部(96、98)によって防止することができ、これらの突出部には、圧縮可能な膜の外側に面する突出部(89、90)と接触する対応する回転当接面が設けられ、これにより、圧縮リング(26)の中心軸(6)周りの回転角度が制限される。以上から分かるように、圧縮リングを反対方向に回転させると、圧縮可能な膜(87)に加えられる圧縮が緩和され、それによって圧縮可能な膜とペン注射システム(7)の本体との弾性摩擦係合接触が除去され、これにより、例えば将来の注射に備えてペンを保管又は交換するために、ペン注射システム(7)の本体を自動針挿入器装置から取り外すことができる。
【0078】
摺動可能なキャリッジ・アセンブリ(27)は、遠位側に延びるとともに摺動可能なキャリッジ・アセンブリの遠位部分(73)から遠位側に径方向に等距離で離間して、摺動可能なキャリッジ・アセンブリの遠位部分にも設けられる外側に突出する隆起部(79)において遠位部分(73)に取り付けられる2つのスライダ・アーム(100、101)も備える。スライダ・アーム(100、101)は、中心長手方向軸(6)と平行に延在するとともに、当該軸(6)の周りで径方向に位置される。スライダ・アーム(100、101)は、対応する一対の当接縁部(102、103)で終端する。2つのスライダ・アーム(100、101)は、中心長手方向軸(6)に沿った摺動可能なキャリッジ・アセンブリの並進移動を安定させるのに役立つとともに、回転ロックが行われた後、摺動可能アセンブリを非装備位置から装備位置に移動するときに、中心長手方向軸(6)の周りでスライダ・アセンブリが回転するのを防ぐ。更に、スライダ・アーム(100、101)は、好適には、キャリッジ本体の遠位部分(73)から近位方向に延びる径方向に離間した弓形突出壁(77、78)に対して角度的に対向して位置される。言い換えると、中心軸(6)を時計の文字盤の中心として、スライダ・アームと弓形壁とが配設される時計の文字盤の点を考慮すると、スライダ・アーム(100、101)は、時計の文字盤から前方に延びる12時と6時の位置にそれぞれあり、弓形突出壁(77、78)は、時計の文字盤から後方に時計の文字盤の周りで延びる3時と9時の位置にそれぞれある。そのような想像上の投影では、弓形壁(77、78)が時計の文字盤の周囲で延びて、約1時から約5時、及び約7時から約11時までそれぞれ弓形の表面を形成し、その間のギャップは、圧縮可能な膜(87)の径方向外側に延びる突出部(89、90)を受けるように構成される空間(80、81)に相当する。キャリッジ本体の遠位部分(73)の遠位端を形成する隆起部(79)は、一連の隆起部(104)と溝(105)を備え、隆起部は径方向外側に突出する。遠位端隆起部(79)の隆起部(104)及び溝(105)は、外側本体構成要素(2a)の内側に面する表面(41)上に設けられた対応する形状の溝又はラネル及び隆起部と摺動接触状態で係合し、近位外側本体構成要素(2a)の孔内での摺動可能なキャリッジ・アセンブリの並進を容易にするが、回転ロック及びロック解除中に近位外側本体構成要素(2a)と圧縮リング(26)との回転及び回転係合を妨げることはない。近位外側本体構成要素(2a)の溝及び隆起の異なる分布及び延在は、回転ロックとロック解除とを行いつつ装備及び針挿入及び/又は装備解除を行うために圧縮リング(26)と共に中心軸(6)に沿った摺動可能なキャリッジ・アセンブリ(27)の並進も行うべく、中心軸を中心とした圧縮リング(26)の回転を可能にするように選択される。
【0079】
ペン注射システム(7)及び摺動可能なキャリッジ・アセンブリの様々な構成要素を示す図3Aに示されるように、装備位置において、スライダ・アーム(100、101)は、長尺な遠位外側本体構成要素(2b)に設けられる対応するラネル(106、107)と軸方向で摺動接触して係合する。ラネル(106、107)は、長尺な遠位外側本体構成要素(2b)の近位端(17)から当該遠位外側本体構成要素の遠位端(4)に向かって延在するとともに、当該遠位外側本体構成要素の内側に面する表面(108)上に適切に設けられる。スライダ・アーム(100、101)は、対応して位置されるラネル(106、107)内に摺動可能に係合し、それにより、キャリッジ・アセンブリ(27)の近位方向と遠位方向の両方への並進移動を可能にする。キャリッジ・アセンブリの遠位部分(73)が弓形壁(77、78)の近位端を介してキャリッジ・アセンブリの近位部分(72)に並進可能に結合され、弓形壁(77、78)がそれらの対応する外側に突出するフック又はスパーを介して環状溝(84)に係合すると仮定すると、摺動可能に係合したアームは、挿入器装置の装備中に、遠位外側本体構成要素(2b)が近位外側本体構成要素(2a)に対して中心長手方向軸(6)周りで回転するのを防止するとともに、摺動可能なキャリッジ・アセンブリの非装備位置への解放を防止する。長手方向軸に沿う遠位方向のキャリッジ・アセンブリ(27)の摺動又は並進移動は、スライダ・アーム(100、101)及び対応するラネル(106、107)の長さによって更に制限され、各スライダ・アームは、遠位外側本体構成要素(2b)に設けられた対応するラネル(106、107)の対応する遠位端(109、110)と当接ストッパを形成する遠位端(102、103)を有する。したがって、以上から分かるように、スライダ・アーム(100、101)は、ペン注射システムを保持するキャリッジ・アセンブリ(27)の中心軸(6)周りでの回転を防止し続けるべく、摺動可能なキャリッジ・アセンブリが装備位置にあるときに、長尺な遠位外側本体構成要素(2b)に設けられた対応するラネル(106、107)内へと遠位側に延在してラネル(106、107)との摺動係合接触を維持するのに十分な長さを有する。
【0080】
摺動可能なキャリッジ・アセンブリ(27)は、トリガ部材(112)を有する解放可能なトリガ手段(111)を更に備え、このトリガ手段は、トリガ部材(112)が解放されるまで摺動可能なキャリッジ・アセンブリ(27)を装備位置に保持するように構成される。解放可能なトリガ部材(112)は、ユーザが注射を行えるようにするために設けられ、トリガを解放すると、ペン注射システム(7)は、装備位置から、ペン注射システムの針が皮膚などの注射面に刺入する注射位置へと遠位方向に移動する。注射操作を介してペン注射システム(7)を装備位置から非装備位置に移動させるための推進力は、例えば圧縮ばねなどの付勢要素(21)によって与えられる。このように、摺動可能なキャリッジ・アセンブリは、本明細書の他の箇所で説明されるようにペン注射システムの回転作動式ロック後に、圧縮リング(26)及び圧縮可能な膜(87)によって摺動可能なキャリッジ・アセンブリ(27)に保持されるペン注射システム(7)を挿入器装置(1)のユーザが引っ張る又はユーザがペン注射システム(7)に牽引力を及ぼすことによって装備位置に移動され、当該牽引力は近位方向で及ぼされる。本質的に、自動針挿入器のユーザは、解放可能なトリガのトリガ部材(112)が係止されて装備位置が設定されるまで、付勢要素(21)に抗してペン本体を近位方向で後方に引っ張って付勢要素(21)を圧縮する。トリガ部材(112)は、非装備位置における第1の長手軸方向位置合わせ平面から、装備位置における異なる第2の長手軸方向位置合わせ平面へと移動可能な弾性変形可能なアームを備える。弾性変形可能なアーム(112)は、キャリッジ・アセンブリ(27)の近位本体部分(72)から径方向外側に近位方向で延びる。弾性変形可能なアーム(112)は、変形前の非装備状態では中心長手方向軸(6)と平行である第1の長手方向平面に沿って位置する。摺動可能なキャリッジ・アセンブリ(27)が近位方向に移動されると、弾性変形可能なアーム(112)は、近位外側本体構成要素(2a)の近位端に隣接して設けられた当接部(113)と接触する。図3Bは、装備位置に係合された弾性変形可能なアーム(112)の位置の断面図を示す。弾性変形可能なトリガ・アーム(112)と同じ長手方向平面内にある当接部(113)により、アームは、弾性的に変形し、第1の長手方向平面から、第1の長手方向平面から径方向に離れた第2の長手方向平面へと移動する。本明細書に例示されて例えば図3Bに示される実施例において、トリガ・アーム(112)は、近位外側本体構成要素(2a)の内側に面する表面に設けられた切り欠きチャネル(114)の近位端内へと延びて当該近位端を画定する適切な形状の傾斜突出部(113)を介して第1の長手方向平面から弾性変形される。切り欠き(114)は傾斜した突出当接部(113)を画定し、この当接部には、トリガ・アーム(112)に設けられた対応する相補的なフック端部(116)と相互作用して係合する近位フック端部(115)が更に設けられる。傾斜した突出当接部(113)によってトリガ・アームが第1の長手方向平面から第2の長手方向平面へと弾性変形されると、トリガ・アーム(112)のフック端部(116)は、当接部のフック端部(115)の周囲で移動され、その後、近位方向の更なる移動によって、トリガ・アーム(112)のフック端部(116)は、傾斜した突出当接部(113)のフック端部(115)を捕捉する。この位置に達した時点では、トリガが解放されるまで挿入器装置が装備位置にある。
【0081】
トリガ解放部は、近位外側本体構成要素(2a)上に位置された解放ボタン(15)によってもたらされ、図の例示的な実施例では、閉鎖キャップ(9)上に位置されるが、例えば近位外側本体構成要素(2a)の適切な成形によって直接一体化することもできる。解放ボタン(15)は、遠位方向に延びてトリガ・アーム(112)上にわたって位置される弾性変形可能な舌部(117)を備える。また、解放ボタン(15)は、トリガ・アームの近位端上にわたって位置される検査オリフィス(118)も備え、この検査オリフィスは、トリガ・アームが適切な位置にあること、つまり、挿入器装置が正しく装備されていることをユーザが一目で確認できるようにする。そのような視覚化は、例えば、検査オリフィス(118)を通じて見える色をトリガ・アームに与えることによって容易にすることができる。解放ボタンの弾性変形可能な舌部(117)は、近位外側本体構成要素の外面と実質的に同一平面上に位置するが、挿入器装置(1)の解放を作動させて摺動可能なキャリッジ・アセンブリを遠位方向に送ることにより予め装着されて露出された針を注射のために標的部位に刺入したい場合には、ユーザによって行われる下方への押し込みによって変形可能である。したがって、舌部(117)を下向きに押すと、舌部(117)の内側に面する表面は、トリガ・アーム(112)の近位端と接触するとともに、アームが静止時の通常の弾性拘束を取り戻すことにより、弾性変形可能なアーム(112)を第2の長手軸方向位置合わせ平面から元の第1の長手軸方向位置合わせ平面へと移動させ、それにより、トリガ部材(112)を装備位置から解放する。トリガ部材(112)は、圧縮ばね(21)がその非拘束位置まで再び拡張する際に、圧縮ばね(21)に蓄えられた戻り止めエネルギーの推進力を受けて、切り欠きチャネル(114)を自由に摺動して戻る。
【0082】
もう一度、摺動可能なキャリッジ・アセンブリ(27)に戻って参照すると、当該アセンブリには、摺動可能なキャリッジ・アセンブリから近位方向で摺動可能なキャリッジ本体の近位部分(72)の近位端を越えて径方向外側に延びる少なくとも1つの突出接触部材(図3A、4A、119)を備える表面係合手段が設けられている。この接触部材(119)は、本明細書の他の箇所に記載されて近位外側本体構成要素(2a)に設けられた対応するラネル又は溝のうちの少なくとも1つと軸方向に摺動接触して係合する。当該ラネルは、突出接触部材(119)を取り囲むことによりキャリッジ・アセンブリ(27)が非装備位置から装備位置に及びその逆に並進する際に中心長手方向軸(6)周りのキャリッジ・アセンブリの回転を防止するのに役立つように寸法付けられて構成される。接触部材(119)は、好適には、キャリッジ本体の第1の近位部分(72)の外側に面する表面上に位置されるとともにキャリッジ本体の近位端を越えて中心長手方向軸(6)と平行に当該キャリッジ本体に沿って延びる、一連の径方向に離間して外側に突出する脚部(119)として表され得る。キャリッジ本体の近位端を越えて延びる突出脚部の長さは、キャリッジ本体の近位端と外側長尺本体(2a、2b)の近位端(3)との適切な当接距離を与えるように設定され、それにより、キャリッジ本体の近位方向への移動距離を制限する。更に、当該接触部材の脚部は、付勢ばね(21)の遠位端と係合するように寸法付けられて形成され、摺動可能なキャリッジ・アセンブリが非装備位置から装備位置に移動されるときにばね(21)を押し、針挿入器装置の解放ボタンが作動されるときに摺動可能なキャリッジ・アセンブリを逆方向に駆動するための接触面としての役割を果たす。
【0083】
ここで、自動針挿入器装置(1)の使用について簡単に説明する。ペン遠位端当接レバー・アーム(23)が把持可能端部(24)を介して操作され、それにより、レバー・アームは、その回転軸の周りで回転するとともに、レバー・アームの当接端部(25)を中心長手方向孔内(5)へと移動させる。ペン注射システムは、閉鎖キャップ(9)の開口(12)を通じて、組み立てられた近位外側本体構成要素(2a)及び遠位外側本体構成要素(2b)を備える長尺な外側本体(2a、2b)の孔(5)内に挿入される。注射ペンに設けられた針装着部の針装着面が当接レバー・アーム23の当接端部(25)に当接接触する。当接端部(25)は、注射ペン(7)の本体の回転ロックが行われるまで孔(5)内の所定の位置に留まる。回転作動によるロックは、近位外側本体構成要素を中心長手方向軸(6)の周りで回転させることによって発生し、それによって圧縮リング(26)と摺動可能なキャリッジ・アセンブリ(27)の近位部分(72)とを回転駆動させる。それに対応して圧縮リング(26)の回転は、圧縮可能な膜(87)を注射ペン(7)の本体上に押し付ける。注射ペンの本体に及ぼされる圧縮により、ペン本体(7)が孔(5)内の軸方向位置にロックされる。この位置は、長尺な近位本体構成要素(2a)の外面に設けられた対応する標示又は視覚マーキング(A、B、C、D、E)を介してユーザに示される。この段階では、針挿入器装置は、回転的にロックされているが、依然として非装備位置にある。レバー・アーム(23)は、遠位外側本体構成要素(2b)の外面及び内面のそれぞれと面一の位置に戻され、それにより、当接端部(25)は挿入器の孔(5)内に突出しなくなる。その後、ユーザは、針ガードを取り外し、注射針を露出させる。圧縮リング(26)と圧縮可能な膜とによって注射ペン(7)の本体に及ぼされる圧縮は、片手でペン本体を握り、もう一方の手で長尺な外側本体(2a、2b)を押さえておくのに十分であり、その後、ペン本体(7)が近位方向に移動されて、自動針挿入器が装備される。ペン注射器(7)は、トリガ部材(112)が切り欠きチャネル(114)によって画定される傾斜した当接突出部によってその最初の長手方向平面から第2の長手方向平面へと偏向されて対応するフック(115、116)が互いに係合して挿入器装置(1)を装備位置に設定するまで、摺動可能なキャリッジ・アセンブリ(27)及び圧縮リング(26)と共に近位方向に並進する。ユーザは、遠位端(4)と遠位側に面する表面(22)を注射予定の部位に適用する。解除ボタン(15)の舌部(117)を押すと、トリガ部材(112)が第2の長手方向平面から再び元の第1の長手方向平面へと移動し、フック(115、116)が互いに解放され、これにより、圧縮ばね(21)に蓄えられた放出エネルギーの推進力を受けて、トリガ部材、摺動可能なキャリッジ・アセンブリ(27)、及び圧縮リング(26)を遠位方向に推進させることができる。ばねによって与えられる推進力により、注射ペン(7)とその上に装着された針は、事前の軸方向のロックと注射ペンの軸方向の当接とに起因して、挿入器装置の遠位端(4)を越えて正確に正しい深さで注射部位に突出する。この段階で、ユーザは、通常の態様で注射ペン(7)の起動ボタンを押すことによって、注射されるべき物質の注射を行うことができる。注射が完了すると、近位外側本体構成要素(2a)を中心軸(6)周りでロック移動の方向とは逆の方向に回転させることによって、自動針挿入器装置(1)を注射部位から取り外すことができ、回転ロック手段のロックを解除することができる。これにより、圧縮リング(26)によって圧縮可能な膜(87)に及ぼされる圧縮が解放され、ペン注射システム(7)がそのロックされた軸方向位置から解放される。その後、注射ペン(7)は、その後の注射の必要に応じて取り外し及び/又は交換できる。
図1
図2A
図2B
図3A
図3B
図4A
図4B
図5A
図5B
【国際調査報告】