(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-18
(54)【発明の名称】ポリマーの溶解と洗浄による精製とによる使用済みプラスチックの処理方法
(51)【国際特許分類】
C08J 11/08 20060101AFI20231211BHJP
B01D 11/04 20060101ALI20231211BHJP
【FI】
C08J11/08 ZAB
B01D11/04 C
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023535663
(86)(22)【出願日】2021-12-02
(85)【翻訳文提出日】2023-08-14
(86)【国際出願番号】 EP2021083871
(87)【国際公開番号】W WO2022128488
(87)【国際公開日】2022-06-23
(32)【優先日】2020-12-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591007826
【氏名又は名称】イエフペ エネルジ ヌヴェル
【氏名又は名称原語表記】IFP ENERGIES NOUVELLES
(74)【代理人】
【識別番号】100106091
【氏名又は名称】松村 直都
(74)【代理人】
【氏名又は名称】渡邉 彰
(74)【代理人】
【識別番号】100199369
【氏名又は名称】玉井 尚之
(74)【代理人】
【識別番号】100228175
【氏名又は名称】近藤 充紀
(72)【発明者】
【氏名】ラインクーゲル ル コック ダミアン
(72)【発明者】
【氏名】ヴェイス ウィルフリード
(72)【発明者】
【氏名】アフマディ-モトラグ アミール ホセイン
(72)【発明者】
【氏名】アルーン ヤシン
【テーマコード(参考)】
4D056
4F401
【Fターム(参考)】
4D056AB17
4D056AC02
4D056BA06
4D056CA06
4D056CA18
4D056CA20
4D056CA33
4D056DA01
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4F401AA08
4F401AA10
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4F401EA54
4F401FA01Z
4F401FA02Z
4F401FA07Z
(57)【要約】
開示されるのは、プラスチック供給原料を処理するための方法であって、以下の工程を含む方法である:(a)供給原料を溶解溶媒と溶解温度100℃~300℃および溶解圧力1~20.0MPaで溶解溶媒と接触させることを含む溶解工程であって、溶解溶媒が有する沸点は、-50℃~250℃である工程;粗ポリマー溶液を得る;(b)粗ポリマー溶液を吸着剤と、温度100~300℃、圧力1.0~20.0MPaで接触させる吸着工程;精製済みポリマー溶液を得る;次いで(c)ポリマーを回収する工程;少溶媒フラクションと、精製済みポリマーのフラクションとを少なくとも得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラスチック供給原料を処理するための方法であって、以下の工程を含んでいる方法:
a) プラスチック供給原料を、溶解溶媒と、溶解温度100℃~300℃および溶解圧力1.0~20.0MPa(絶対)で接触配置することを含む溶解工程;少なくとも1種の粗ポリマー溶液を得る;
b) 工程a)から得られた粗ポリマー溶液を、濃厚溶液と、温度100℃~300℃、圧力1.0~20.0MPa(絶対)および濃厚溶液の質量流量と工程b)に給送する粗ポリマー溶液の質量流量との間の質量比0.05~20.0で接触配置することによる洗浄の工程;少なくとも1種の洗浄済みポリマー溶液と、少なくとも1種の洗浄流出物とを得る;次いで
c) ポリマーを回収する工程;少なくとも1種の溶媒フラクションと、少なくとも1種の精製済みポリマーフラクションとを得る。
【請求項2】
溶解溶媒は、有機溶媒から選ばれ、該有機溶媒が有する沸点は、-50℃~250℃、好ましくは-15℃~150℃、好ましくは20℃~110℃である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
溶解溶媒が有する臨界温度は、90~400℃、好ましくは130~300℃、好ましくは180~290℃であり、臨界圧力は、1.5~5.0MPa(絶対)、好ましくは2.0~4.3MPa(絶対)、好ましくは2.4~4.2MPa(絶対)である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
工程a)における溶解温度は、150~250℃であり、溶解圧力は、1.5~15.0MPa(絶対)、大いに好ましくは2.0~10.0MPa(絶対)である、請求項1~3のいずれか1つに記載の方法。
【請求項5】
工程b)において用いられる濃厚溶液が有する密度は、0.85以上、好ましくは0.9以上、優先的には1.0以上である、請求項1~4のいずれか1つに記載の方法。
【請求項6】
工程b)において用いられる濃厚溶液は、水溶液であり、これは、好ましくは最低50重量%の水、好ましくは最低75重量%の水、好ましくは最低90重量%の水、大いに好ましくは最低95重量%の水を含む、請求項1~5のいずれか1つに記載の方法。
【請求項7】
洗浄工程b)を、溶解温度および溶解圧力で行う、請求項1~6のいずれか1つに記載の方法。
【請求項8】
ポリマー回収工程c)は、溶媒回収セクションを含み、そこでの温度は、0~350℃、好ましくは5~300℃、好ましくは10~250℃であり、そこでの圧力は、0.1~20.0MPa(絶対)、好ましくは0.1~15.0MPa(絶対)、大いに好ましくは0.1~10.0MPa(絶対)である、請求項1~7のいずれか1つに記載の方法。
【請求項9】
ポリマー回収工程c)は、溶解溶媒の超臨界条件下になるように調節された温度および圧力の条件下での、少なくとも1個の溶媒回収セクションを含む、請求項1~8のいずれか1つに記載の方法。
【請求項10】
洗浄済みポリマー溶液を抽出溶媒と、温度100℃~300℃、圧力1.0~20.0MPa(絶対)および抽出溶媒の質量流量と洗浄済みポリマー溶液の質量流量との間の質量比0.05~20.0で接触配置する抽出の工程E2)を含み、抽出溶媒は、好ましくは有機溶媒であり、これが有する臨界温度は、90~400℃、好ましくは130~300℃、好ましくは180~290℃であり、臨界圧力は、1.5~5.0MPa(絶対)、好ましくは2.0~4.3MPa(絶対)、好ましくは2.4~4.2MPa(絶対)であり、少なくとも1種の抽出済みポリマー溶液と、少なくとも1種の使用済み溶媒とを得る、請求項1~9のいずれか1つに記載の方法。
【請求項11】
抽出溶媒は、溶解溶媒と同一であり、少なくとも部分的に、好ましくは完全に超臨界の形態にある、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
固体-液体分離によって不溶性物質を、温度100℃~300℃、圧力1.0~20.0MPa(絶対)で分離除外する工程E1)を含み、前記工程E1)は、溶解工程a)とポリマー回収工程c)との間で、かつ、洗浄工程b)の上流または下流、好ましくは、洗浄工程b)の上流に位置し、不溶性物質を分離除外する工程E1)は、好ましくは、静電分離器および/またはフィルタおよび/またはサンドフィルタを含む、請求項1~11のいずれか1つに記載の方法。
【請求項13】
吸着工程E3)を含み、該工程E3)は、溶解工程a)と、ポリマー回収工程c)との間に位置し、少なくとも1種の吸着剤の存在中で操作する吸着セクションを含み、操作の際の温度は、100~300℃であり、圧力は、1.0~20.0MPa(絶対)である、請求項1~12のいずれか1つに記載の方法。
【請求項14】
請求項1~13のいずれか1つに記載の方法であって、以下の工程を含む、方法:
a) プラスチック供給原料を溶解溶媒と、溶解温度100℃~300℃および溶解圧力1.0~20.0MPa(絶対)で接触配置する溶解工程;少なくとも1種の粗ポリマー溶液を得る;
b) 工程a)から得られた粗ポリマー溶液を濃厚溶液と、温度100℃~300℃、圧力1.0~20.0MPa(絶対)および濃厚溶液の質量流量と粗ポリマー溶液の質量流量との質量比0.05~20.0で接触配置することによる洗浄の工程であって、前記濃厚溶液は、好ましくは、水溶液である工程;少なくとも1種の洗浄済みポリマー溶液と、少なくとも1種の洗浄流出物とを得る;
E2) 工程b)から得られた洗浄済みポリマー溶液を抽出溶媒と、温度100℃~300℃、圧力1.0~20.0MPa(絶対)および抽出溶媒の質量流量と洗浄済みポリマー溶液の質量流量との質量比0.05~20.0で接触配置することによる抽出の工程;少なくとも1種の抽出済みポリマー溶液と、少なくとも1種の使用済み溶媒とを得る;次いで
c) ポリマー回収工程;少なくとも1種の溶媒フラクションと、少なくとも1種の精製済みポリマーフラクションとを得る;好ましくは、溶解溶媒の超臨界条件下になるように調節された温度および圧力の条件下での、少なくとも1個の溶媒回収セクションを含む。
【請求項15】
請求項1~14のいずれか1つに記載の方法であって、以下の工程を含む、方法:
a) プラスチック供給原料を溶解溶媒と、溶解温度100℃~300℃および溶解圧力1.0~20.0MPa(絶対)で接触配置する溶解工程;少なくとも1種の粗ポリマー溶液を得る;
b) 工程a)から得られた粗ポリマー溶液を濃厚溶液と、温度100℃~300℃、圧力1.0~20.0MPa(絶対)および濃厚溶液の質量流量と粗ポリマー溶液の質量流量との質量比0.05~20.0で接触配置することによる洗浄の工程であって、前記濃厚溶液は、好ましくは、水溶液である工程;少なくとも1種の洗浄済みポリマー溶液と、少なくとも1種の洗浄流出物とを得る;
E3) 工程b)から得られた洗浄済みポリマー溶液を給送し、少なくとも1種の吸着剤の存在中、温度100℃~300℃、圧力1.0~20.0MPa(絶対)で操作される吸着セクションを含む吸着工程;少なくとも1種の精済み製ポリマー溶液を得る;次いで、
c) ポリマー回収工程;少なくとも1種の溶媒フラクションと、少なくとも1種の精製済みポリマーフラクションとを得る;好ましくは、溶解溶媒の超臨界条件下になるように調節された温度および圧力の条件下での、少なくとも1個の溶媒回収セクションを含む。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使用済みプラスチックを処理して、新しいプラスチック物体として例えば利用され得るプラスチックの精製済みの流れを得るための方法に関する。より具体的には、本発明は、プラスチック供給原料、とりわけプラスチック廃棄物から得られるもの、特に熱可塑性プラスチック、例えばポリオレフィンを含んでいるものを処理するための方法に関し、前記方法は、濃厚溶液、例えば、水溶液によりポリマー溶液を洗浄して、不純物、特に、プラスチックをベースとする材料において従来から用いられている添加物、例えば、染料、顔料、有機および無機の充填剤を少なくとも部分的に除去するようにする工程を含み、前記供給原料が含有するポリマー、特に、熱可塑性プラスチックを分離除外することによって、プラスチック供給原料をグレードアップすることができるようにし、それらを回収しかつそれらを再使用することができるようにする。
【背景技術】
【0002】
回収・選別チャネルから得られたプラスチックは、種々のチャネルによりグレードアップされ得る。
【0003】
「機械的」リサイクルにより、所定の廃棄物を、直接的に新しい物体において、または機械的に選別されたプラスチック廃棄物の流れを未使用ポリマーの流れと混合することによって、部分的に再使用することが可能になる。このタイプのグレードアップが限定されるのは、機械的選別により、所与のタイプのポリマーの流れの純度を改良することが可能になるが、それにより一般的に、ポリマーマトリクス中に少なくとも部分的に捕捉されている不純物、例えば、添加物、例えば、充填剤、染料、顔料および金属を十分に除去することが可能にならないからである。
【0004】
「化学的」リサイクルは、一般に複雑な一連の工程を介してモノマーを少なくとも部分的に改質することの方に向けられている。例えば、プラスチック廃棄物は、熱分解工程を経る場合があり、回収された熱分解油は、一般に精製後に、水蒸気分解によって例えばオレフィンに少なくとも部分的に転化される場合がある。これらのオレフィンは、次に、ポリマー化される場合がある。このタイプの配列は、ほとんど選別を経ていない供給原料または選別センターの廃棄物には適しているかもしれないが、それは、一般に、特に高温処理のために、大きなエネルギー消費を必要とする。
【0005】
プラスチック廃棄物をリサイクルするための別のルートは、プラスチック、特に、熱可塑性プラスチックを少なくとも部分的に溶解させることからなり、これは、標的にされたもの(1種または複数種)以外の供給原料のポリマーおよび/または不純物、例えば、添加物、例えば、充填剤、染料、顔料および金属を除去することによってそれらを精製することを目的とするものである。
【0006】
いくつかの研究は、それ故に、溶解および精製によってプラスチック廃棄物を処理するための種々の方法を提示している。特許文献1には、ポリマー供給原料、特にプラスチック廃棄物から得られるポリマー供給原料を、特定の温度および圧力の条件下に、ポリマーを溶媒に溶解させ、次いで、得られたポリマー溶液を固体と接触配置することにより精製するための特定の方法が記載されている。
【0007】
特許文献2には、それの一部について、溶媒の沸点に近い溶解温度でプラスチックを溶媒に溶解させるための方法が提案されている。しかしながら、特許文献2の方法によっては、ポリマー以外の不純物を効率的に処理することは可能ではない。
【0008】
特許文献3には、熱可塑性プラスチックを溶媒中で液化した後、不溶性物質および/またはガスを分離除外することによる処理方法が提案されている。特許文献3の方法によっては、溶媒に可溶な不純物を効率的に処理することは可能とならない。
【0009】
本発明は、これらの欠点を克服し、プラスチック、特に熱可塑性プラスチックのリサイクルに資することの方に向けられている。より詳細には、本発明は、プラスチック供給原料、とりわけ、プラスチック廃棄物から得られたものを処理して、不純物、とりわけ、プラスチック材料に従来から添加されていた添加物、より特定的には、有機溶媒に特に可溶な不純物の少なくとも一部を効率的に除去するようにして、プラスチック供給原料、特に、プラスチック廃棄物を、ポリマー、特に熱可塑性プラスチックを分離除外および,回収することによってグレードアップすることができるようにし、それらを、例えば、新しいプラスチック物体のためのポリマーベースとして用いることができるようにするための方法を提案することの方に向けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許出願公開第2017/002110号明細書
【特許文献2】国際公開第2018/114047号
【特許文献3】米国特許出願公開第2018/0208736号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0011】
(発明の概要)
本発明は、プラスチック供給原料を処理するための方法であって、以下を含んでいる方法に関する:
a) プラスチック供給原料を溶解溶媒と、溶解温度100℃~300℃および溶解圧力1.0~20.0MPa(絶対)で接触配置することを含む溶解工程;少なくとも1種の粗ポリマー溶液を得る;
b) 工程a)から得られた粗ポリマー溶液を濃厚溶媒と、温度100℃~300℃および圧力1.0~20.0MPa(絶対)および濃厚溶媒の質量流量と工程b)に給送する粗ポリマー溶液の質量流量との間の質量比0.05~20.0で接触配置することによる洗浄の工程;少なくとも1種の洗浄済みポリマー溶液と、少なくとも1種の洗浄流出物とを得る;次いで
c) ポリマーを回収する工程;少なくとも1種の溶媒フラクションと、少なくとも1種の精製済みポリマーフラクションとを得る工程。
【0012】
本発明の方法の利点は、プラスチック、特に、プラスチック廃棄物、とりわけ、収集・選別チャネルから得られたプラスチック廃棄物を含んでいる供給原料を効率的に処理して、ポリマー、特に、熱可塑性プラスチックを回収するための方法を提案することにあり、それらを任意のタイプの適用にリサイクルできるようにすることを含んでいる。本発明による方法により、精製済みポリマー、特に精製済み熱可塑性プラスチック、とりわけ、精製済みポリオレフィン、例えば、ポリエチレンおよびポリプロピレンの流れ、有利には、無視することができるかまたは前記精製済みポリマー、特に、精製済み熱可塑性プラスチックの前記流れが、未使用ポリマー樹脂の代わりに任意のプラスチック配合物に導入され得るのに十分に少なくとも小さい含有率の不純物を含んでいるものを得ることが実際に可能になる。例えば、本発明による方法の終結の際に得られた、精製済みポリマーの流れ、特に、精製済み熱可塑性プラスチックの流れ、とりわけ、精製済みポリオレフィンの流れは、有利には、5重量%未満の不純物、大いに有利には1重量%未満の不純物を含む。
【0013】
本発明による方法により、それ故に、プラスチック廃棄物からその不純物、とりわけ、添加物の少なくとも一部を除去し、精製済みポリマーを回収して、前記精製済みポリマーをリサイクルすることによってプラスチック廃棄物をグレードアップすることができるようにする一連の操作が提案される。有利には、本方法の工程において用いられる条件に応じて、プラスチック供給原料中に存在する化合物は、本発明による方法の全体を通して用いられる溶媒(1種または複数種)に可溶性であっても不溶性であってもよく、ポリマーの効率的な精製を可能にする。
【0014】
本発明は、プラスチックのリサイクルおよび化石資源の保護に資するというさらなる利点を有するが、これは、プラスチック廃棄物のグレードアップを可能にすることによるものである。具体的には、不純物の含有率が低下し、特に脱色および脱臭された精製済みポリマーフラクションを得るという目的でプラスチック廃棄物の精製が可能になり、新しいプラスチック物体を形成するために再使用されてよい。得られた精製済みポリマーフラクションは、それ故に、直接的に配合物において添加物、例えば、染料、顔料または他のポリマーとの混合物として、未使用ポリマー樹脂の代わりにまたはそれとの混合物として用いられる場合がある。それらの再使用およびそれらのグレードアップを容易にする美的、機械的またはレオロジー的な加工特性を有するプラスチック生成物を得るという目的のためである。
【0015】
本発明により、本方法のプラスチック供給原料を処理するために用いられた溶媒(1種または複数種)を回収し、本方法における精製の後にそれらをリサイクルすることも可能となり、溶媒(1種または複数種)の過剰消費が回避される。
【0016】
それ故に、本発明は、プラスチック供給原料、特にプラスチック廃棄物を精製して、ポリマー、特に熱可塑性プラスチック、より具体的にはポリオレフィン、例えば、ポリエチレンおよびポリプロピレンを得ることの方に向けられ、これらは精製されて、任意の適用、とりわけ未使用ポリマーについての代替においてそれらを用いることができるようにする。本発明は、それ故に、標的ポリマーを溶解させることによる、すなわち、それらを分離除外し、それらを精製することによる、精製方法を提案する。より詳細には、本発明は、溶解工程と、その次の、少なくとも1回の特定の精製工程、より詳細には、ポリマー溶液を洗浄する少なくとも1回の工程b)とを、場合によっては、他の中間精製工程との組み合わせで含み、精製済みポリマー溶液を得、そこから精製済みポリマーが回収されてよい方法を提案することの方に向けられる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(実施形態の説明)
本発明によると、表現「AとBの間に含まれる(comprised between ... and ...)」および「AとBの間、またはA~B(between ... and ...)」は同等であり、間隔の両限界値は記載された値の範囲に含まれることを意味する。そうでなかった場合、および両限界値が記載された範囲に含まれていなかった場合、そのような明確化が本発明によって与えられることになる。
【0018】
本発明の目的のために、所与の工程についての種々の範囲のパラメータ、例えば、圧力範囲および温度範囲が、単独でまたは組み合わせで用いられてよい。例えば、本発明の目的のために、好適な圧力値の範囲が、より好適な温度値の範囲と組み合わされ得る。
【0019】
以下の本文において、本発明の特定の実施形態が記載されてよい。それらは、別個にまたは一緒に組み合わせて実施されてよく、これが技術的に実現可能である場合に組み合わせに制限はない。
【0020】
本発明によると、圧力は、絶対圧力であり、MPa(絶対)(またはMPa abs)で与えられる。
【0021】
用語「上流」および「下流」は、本方法における考慮下の流体(1種または複数種)または流れ(1種または複数種)の一般的な流れに応じて理解されるべきである。
【0022】
用語「添加物」は、ポリマーの分野、特にポリマー配合物の分野において慣用的に用いられている用語である。ポリマー配合物に導入される添加物は、例えば、可塑剤、充填剤(ポリマー材料の物理的、熱的、機械的および/または電気的な特性を改変するため、またはそのコスト価格を低下させるために用いられる有機または無機の固体化合物である)、補強剤、染料、顔料、硬化剤、難燃剤、燃焼抑制剤、安定剤、抗酸化剤、紫外線吸収剤、静電防止剤等であってよい。
【0023】
添加物は、処理されるべきプラスチック供給原料の不純物の一部に相当し、本発明による処理方法により少なくとも部分的に除去することが可能となるものである。他のタイプの不純物は、使用関連不純物またはプラスチック材料、例えば金属不純物、紙/段ボール、バイオマス、他のポリマー、例えば熱硬化性または熱可塑性のタイプのものなどであってよい。
【0024】
それ故に、本発明によると、本発明による方法により、標的ポリマーの流れから少なくとも部分的に除去することが可能となる不純物は、ポリマー配合物において従来から用いられている添加物と、プラスチックの物体および材料のライフサイクルに由来する一般的使用関連の不純物、並びに/または廃棄物の収集・選別回路に由来する不純物とを含む。前記不純物は、金属、有機または鉱物のタイプの不純物であってよい;それらは、包装残留物、食品残留物または堆肥化可能残留物(バイオマス)であってよい。これらの使用関連の不純物は、ガラス、木材、段ボール、紙、アルミニウム、鉄、金属、タイヤ、ゴム、シリコーン、硬質ポリマー、熱硬化性ポリマー、家庭用品、化学製品、化粧品、使用済み油および水を含んでもよい。
【0025】
本発明によると、ポリマー溶液は、溶解溶媒と、前記溶解溶媒に溶解した少なくともポリマー、好ましくは標的ポリマー、特に標的熱可塑性プラスチック、とりわけ、標的ポリオレフィンとを含んでいる溶液であり、溶解したポリマーは、供給原料中に最初に存在するものである。ポリマー溶液は、可溶性および/または不溶性の不純物を含んでいる場合もある。経た本発明による方法の工程に応じて、前記ポリマー溶液は、前記ポリマー溶液中に有利に懸濁している不溶性粒子の形態にある不純物、溶解溶媒中に溶解した可溶性不純物、および/または場合によっては前記ポリマー溶液と非混和性の別の液相を含んでいる場合がある。
【0026】
溶媒、特に溶解溶媒および/または抽出溶媒の臨界温度および臨界圧力は、前記溶媒に固有のものであり、それぞれ、溶媒の臨界点の温度および圧力である。当業者に周知であるように、臨界点以上では、溶媒は、超臨界の形態にあるかまたは超臨界の状態にあり、温度および圧力の操作条件は、溶媒の超臨界条件である;それは、超臨界流体と呼ばれることがある。
【0027】
本発明は、プラスチック供給原料、好ましくは、プラスチック廃棄物から構成され、有利には、ポリマー、好ましくは熱可塑性プラスチック、特にポリオレフィンを含んでいるプラスチック供給原料を調製するための方法に関し、前記方法は、以下の工程を含み、好ましくは、それらからなる:
a) 供給原料を溶媒と接触配置することを含む溶解工程;少なくとも1種の粗ポリマー溶液を得る;および次に
E1) 場合によっては、不溶性物質を分離除外する工程;少なくとも1種の清澄化済みポリマー溶液と、少なくとも1種の不溶性フラクションとを得る、
b) 濃厚溶液との接触による洗浄工程;少なくとも1種の洗浄流出物と、少なくとも1種の洗浄済みポリマー溶液とを得る、
E2) 場合によっては、抽出溶媒との接触による抽出工程;少なくとも1種の抽出済みポリマー溶液と、少なくとも1種の使用済み溶媒とを得る、
E3) 場合によっては、吸着剤固体との接触による不純物の吸着の工程;少なくとも1種の精製済みポリマー溶液を得る、および最後に
c) ポリマーを回収する工程;少なくとも1種の溶媒フラクションと、少なくとも1種の精製済みポリマーフラクションとを得る。
【0028】
(供給原料)
本発明による方法の供給原料は、プラスチック供給原料として知られているものであり、プラスチックを含み、プラスチック自体が、より詳細にはポリマーを含む。好ましくは、プラスチック供給原料は、50重量%~100重量%、好ましくは70重量%~100重量%のプラスチックを含む。
【0029】
本発明による方法の供給原料中に含まれるプラスチックは、一般に、製造不合格品および/または廃棄物、特に家庭廃棄物、建築廃棄物または電気・電子機器廃棄物である。好ましくは、プラスチック廃棄物は、収集・選別チャネルに由来する。プラスチックまたはプラスチック材料は、一般に、ポリマーであり、形状に成形した後に、種々の材料および物体(射出成形部品、菅、フィルム、繊維、布、マスティック、コーティングなど)を構成するという目的のために、通常、添加物と混合される。プラスチックにおいて用いられる添加物は、有機化合物または無機化合物であってよい。それらは、例えば、充填剤、染料、顔料、可塑剤、物性改良剤、燃焼遅延剤などである。
【0030】
本発明による方法の供給原料は、それ故に、ポリマー、特に熱可塑性プラスチックを含む。プラスチック供給原料中に含まれるポリマーは、アルケンポリマー、ジエンポリマー、ビニルポリマーおよび/またはスチレンポリマーであってよい。好ましくは、プラスチック供給原料中に含まれるポリマーは、ポリオレフィン、例えばポリエチレン(polyethylene:PE)、ポリプロピレン(polypropylene:PP)および/またはエチレンとプロピレンとのコポリマーである。大いに好ましくは、プラスチック供給原料のポリマーは、供給原料の全重量に相対して最低80重量%、好ましくは最低85重量%、好ましくは最低90重量%、大いに好ましくは最低94重量%のポリオレフィンを含む。本発明による方法は、それ故に、最も具体的には、供給原料中に含有されるポリオレフィンを精製・回収して、それらを種々の用途に再使用することができるようにすることの方に向けられる。
【0031】
プラスチック供給原料は、ポリマーの混合物、特に熱可塑性樹脂の混合物および/または熱可塑性樹脂と他のポリマーとの混合物、および不純物、特に、プラスチック材料と一般的使用関連不純物を配合するために有利に用いられる添加物を含む場合がある。一般的使用関連不純物は、材料およびプラスチック物体のライフサイクルを起源としかつ/または廃棄物の収集・選別回路を起源とするものである。本発明による方法の供給原料は、一般に、50重量%未満の不純物、好ましくは20重量%未満の不純物、好ましくは10重量%未満の不純物を含む。
【0032】
プラスチックを含んでいる前記供給原料は、有利には、本方法に先立って、前処理されて、「粗い」不純物、すなわち、10mm以上、好ましくは5mm以上、さらには1mm以上のサイズの粒子の形態にある不純物、例えば、木材、紙、バイオマス、鉄、アルミニウム、ガラス等の不純物の全部または一部を少なくとも除去し、かつ、それを、一般的には、分割された固体の形態に成形して、本方法における処理を容易にするようにしてよい。この前処理は、粉砕工程、大気圧で洗浄する工程および/または乾燥工程を含んでよい。この前処理は、異なるサイト、例えば廃棄物収集・選別センターにおいて行われてよく、あるいは、本発明による処理方法が行われるのと同じサイトで行ってもよい。好ましくは、この前処理により、不純物の含有率を6重量%未満に低下させることが可能である。前処理の終結の際に、供給原料は、一般に、分割された固体の形態で、例えば、粉砕された材料または粉体の形態で貯蔵され、ハンドリングおよび本方法への輸送を容易にする。
【0033】
(溶解工程a))
本発明によると、本方法は、溶解工程a)を含み、溶解工程a)において、プラスチック供給原料は、溶解溶媒と溶解温度100℃~300℃および溶解圧力1.0~20.0MPa(絶対)で接触配置され、少なくとも1種の、好ましくは1種の粗ポリマー溶液を得る。具体的には、この工程により、ポリマー、好ましくは熱可塑性プラスチック、最も好ましくはポリオレフィン、例えばポリエチレンおよび/またはポリプロピレンの少なくとも一部、好ましくは全部の溶解が有利に可能となる。
【0034】
用語「溶解」は、少なくとも1種のポリマー溶液、すなわち、溶媒、より詳細には溶解溶媒中に溶解したポリマーを含んでいる液体の生成につながる任意の現象を意味するとして理解されるべきである。当業者は、ポリマーの溶解に関与し、ポリマー鎖、特に熱可塑性プラスチック鎖の混合、分散、均質化および解離を少なくとも含む現象を十分に知っている。
【0035】
溶解工程a)の過程および終結の際に、圧力および温度の条件により、溶解溶媒を、溶解溶媒の少なくとも一部、好ましくは全部を液体の形態に維持することが可能である一方で、供給原料の可溶性フラクション、特に標的ポリマー、好ましくは標的熱可塑性プラスチック、好ましくは標的ポリオレフィン、および不純物の少なくとも一部は、有利には少なくとも部分的に、好ましくは完全に溶解させられる。
【0036】
溶解溶媒とプラスチック原料とを接触配置して、プラスチック供給原料のポリマーを溶解溶媒中に少なくとも部分的に、好ましくは完全に溶解させることは、ラインおよび/または機器中および/または2つの機器の間で行われてよい。それ故に、工程a)は、有利には、少なくとも1基の溶解機器、および場合によっては、少なくとも1基の供給原料調製デバイス、混合デバイスおよび/または輸送デバイスを含む。これらの機器および/またはデバイスは、例えば、静的ミキサ、押出機、ポンプ、反応器、並流または向流のカラム、あるいはラインおよび設備の組み合わせであってよい。輸送のためのデバイス、特に流体、例えばガス、液体または固体の輸送のためのデバイスは、当業者に周知である。非限定的な態様において、輸送デバイスは、コンプレッサ、ポンプ、押出機、振動管、エンドレススクリューまたはバルブを含んでよい。機器および/またはデバイスは、溶解に必要とされる条件を達成するために、加熱システム(例えばオーブン、交換器、トレースなど)を含んでも、またはそれと組み合わされてもよい。
【0037】
溶解工程a)は、少なくともプラスチック供給原料、特にプラスチック供給原料の1種または複数種の流れの形態にあるプラスチック供給原料、および溶解溶媒、特に、溶解溶媒の1種または複数種の流れの形態にある溶解溶媒を、有利には、1基または複数基の輸送デバイスによって給送される。プラスチック供給原料の流れ(1種または複数種)は、溶解溶媒の流れ(1種または複数種)と異なっていてよい。プラスチック供給原料の一部または全部は、溶解溶媒の一部または全部との混合物として工程a)に給送されてもよく、溶媒および/または供給原料の残部は、適切な場合には、給送工程a)に別個に供給されてもよい。
【0038】
プラスチック供給原料を溶解溶媒と接触配置している間に、溶解溶媒は、有利には、少なくとも部分的に、好ましくは完全に液体の形態にある一方で、ポリマー、特に熱可塑性プラスチック、とりわけポリオレフィンを含んでいるプラスチック供給原料は、固体または液体の形態にあってよく、場合によっては固体粒子を懸濁状で含んでいる。プラスチック供給原料は、場合によっては、溶解溶媒との混合物として、溶解溶媒中の懸濁の形態で溶解設備に注入されてもよく、懸濁液の調製および注入は、連続式であってもバッチ式であってもよい。
【0039】
好ましくは、工程a)は、少なくとも1基の押出機および溶解設備を含む。この場合、プラスチック供給原料は、押出機に給送し、その結果、押出機の出口のところで、供給原料中に含まれる標的ポリマー、特に標的熱可塑性プラスチック、特にポリオレフィンの少なくとも一部、好ましくは、全部は、溶解形態にある。プラスチック供給原料は、少なくとも部分的に溶融した形態で溶解設備内に注入される。少なくとも部分的に溶融した形態にあるプラスチック供給原料は、メルトポンプまたはギアポンプとしてよく知られている粘性流体専用のポンプによって汲み上げられてもよい。少なくとも部分的に溶融した形態にあるプラスチック供給原料は、場合によっては、メルトポンプに加えて、最も粗い粒子を除去するという目的のために、押出機出口のところで、ろ過デバイスを用いてろ過されてもよい;一般に、このフィルタのメッシュサイズは、10ミクロン~1mm、好ましくは20~200ミクロンである。
【0040】
好ましくは、工程a)は、押出機を含み、この押出機に、溶解溶媒が、有利にはいくつかの点で注入され、せん断を促進し、それ故に、溶解溶媒とプラスチック供給原料との間の緊密な混合を促進するようにし、このことは、ポリマー、特に、熱可塑性プラスチック、特にポリオレフィンを溶解させることの方に寄与する。
【0041】
溶解工程a)において用いられる溶解溶媒は、有利には、有機溶媒または溶媒(好ましくは有機性である)の混合物である。好ましくは、溶解溶媒は、有機溶媒から選ばれ、好ましくは、1種または複数種の炭化水素を含んでおり、優先的には、それらからなり、その沸点は、-50℃~250℃、好ましくは-15℃~150℃、好ましくは20~110℃である。好ましくは、溶解溶媒は、1種または複数種の炭化水素を含み、好ましくは、それらからなり、大いに好ましくは、1種または複数種のアルカンを含み、3~12個の炭素原子、優先的には4~8個の炭素原子、大いに好ましくは5~7個の炭素原子を含有しており、例えば、ペンタン、ヘキサンおよびヘプタンの異性体である。溶解溶媒は、大いに有利には、有機溶媒、好ましくは、炭化水素であるところ、好ましくは、溶解溶媒が有する臨界温度は、90~400℃、好ましくは130~300℃、好ましくは180~290℃であり、臨界圧力は、1.5~5.0MPa(絶対)、好ましくは2.0~4.3MPa(絶対)、好ましくは2.4~4.2MPa(絶対)である。特定の実施形態によると、溶解溶媒の沸点は、70℃超、好ましくは80℃~220℃であり、かつ/または、溶媒は、少なくとも7個の炭素原子を含有しているアルカンを含み、好ましくはそれからなる。別の好適な実施形態によると、溶解溶媒の沸点は、50℃未満または150℃超である。
【0042】
有利には、溶解が行われる際の溶解温度は、100℃~300℃であり、その際の溶解圧力は、1.0~20.0MPa(絶対)である。より詳細には、温度および圧力は、工程a)を通じて、周囲条件、すなわち、プラスチック供給原料の温度10~30℃および大気圧1バール(0.1MPa)から、溶解条件、より詳細には、溶解温度および溶解圧力に達するまで進展する。特に、溶解温度は、100~300℃、好ましくは150~250℃であり、溶解圧力は、1.0~20.0MPa(絶対)、好ましくは1.5~15.0MPa(絶対)、大いに好ましくは2.0~10.0MPa(絶対)である。大いに有利には、溶解工程a)の終結の際に、溶解済みポリマーの流れは、溶解温度および溶解圧力にある。好ましくは、プラスチック供給原料と溶解溶媒との間の重量比は、0.01~5.0、好ましくは0.05~3.0、好ましくは0.10~1.0である。
【0043】
工程a)における温度を、300℃以下、好ましくは250℃以下の温度に制限することにより、ポリマー、特に熱可塑性プラスチック、より詳細にはポリオレフィンの熱劣化を防止または制限することが可能となる。好ましくは、溶解温度は、ポリマー、特に熱可塑性プラスチック、より詳細にはポリオレフィンの融点以上であり、それらの溶解を促進するようにする。好ましくは、溶解工程a)における温度は、溶解溶媒の臨界温度以下であり、溶解工程a)中の溶解を妨害しやすい超臨界相の形成を避けるようにする。
【0044】
並行して、溶解圧力は、溶解温度において、溶解溶媒の飽和蒸気圧よりも高く、溶解溶媒は、溶解温度において、少なくとも部分的に、好ましくは完全に液体の形態にある。有利には、溶解圧力は、溶解溶媒の臨界圧力以上であり、溶媒の少なくとも一部が超臨界の形態にある条件下に回収工程c)を特に実施することができるが、工程a)、特に工程a)の出口と工程c)との間の圧力をかなり高めることが必要ではないようにする。工程a)における溶解圧力が溶解溶媒の臨界圧力以上である場合、溶解温度は、溶解溶媒の臨界温度未満であり、溶解溶媒を少なくとも部分的に液体の形態に保つようにする。
【0045】
大いに有利には、工程a)において到達した溶解の温度および圧力の条件は、混合物(溶解溶媒+標的ポリマー)が1相の混合物となるように調節される。
【0046】
有利には、前記溶解工程a)は、1~600分、好ましくは2~300分、好ましくは2~180分の滞留時間にわたって行われる。滞留時間は、溶解温度および溶解圧力での滞留時間、すなわち、溶解温度および溶解圧力での溶解溶媒によるプラスチック供給原料の工程a)における実施の時間であるとして理解される。
【0047】
有利には、工程a)において用いられる溶解溶媒は、フレッシュな溶媒の供給および/または回収工程c)から得られるリサイクル溶媒の流れを含み、好ましくは、これらからなる。
【0048】
場合によっては、本処理方法は、中間吸着工程a’)を含んでよい。この中間吸着工程a’)は、溶解工程a)の間または溶解工程a)の直接下流に位置し、吸着剤固体、好ましくは、例えばアルミナ、シリカ、シリカ-アルミナ、活性炭または脱色土の、分割された粒子の形態での、工程a)の終結の際または場合によっては溶解工程a)の間に得られた粗ポリマー溶液への導入を含んでいる。吸着剤固体は、洗浄工程b)の間に、および/またはほかに、任意選択の中間精製工程の1つの間に、例えば、不溶性物質の分離の任意選択の工程E1)の間に除去されてよい。この吸着の任意選択の工程a’)により、分割された形態にある吸着剤固体の存在中で、ポリマー溶液の精製を最適にすることが可能となる。
【0049】
溶解工程a)の終結の際に得られた粗ポリマー溶液は、溶解溶媒と、溶解溶媒中に溶解したポリマー、特に本発明が回収精製しようとする標的ポリマーとを少なくとも含む。 一般に、粗ポリマー溶液は、溶解溶媒中に同様に溶解する可溶性不純物および/または懸濁状の不溶性の不純物または化合物も含む。工程a)の終結の際に得られた粗ポリマー溶液は、場合によっては、標的ポリマー以外のポリマーを、例えば溶融形態で含んでもよい。
【0050】
(不溶性物質を分離除外する任意選択の工程E1))
本処理方法は、場合によっては、固体-液体分離によって不溶性物質を分離除外する工程E1)を含んでもよく、これは、追加の精製工程であってよく、少なくとも1種の清澄化済みポリマー溶液と、少なくとも1種の不溶性フラクションとを有利に得る。本発明による方法にそれが組み込まれる場合、不溶性物質を分離除外する工程E1)は、溶解工程a)とポリマー回収工程c)との間で、洗浄工程b)の上流または下流に、好ましくは、洗浄工程b)の上流に位置している。得られた不溶性フラクションは、有利には、不溶性不純物の少なくとも一部、好ましくは全部を、工程a)から得られた粗ポリマー溶液中に特に懸濁状で含んでいる。
【0051】
不溶性物質を分離除外する工程E1)により、工程a)の温度および圧力の条件下に溶解溶媒中の不溶性化合物の粒子の少なくとも一部、好ましくは全部を除去することがこのように可能となる。これらの粒子は、工程a)または任意選択の工程a’)から得られたポリマー溶液、好ましくは粗ポリマー溶液中に懸濁状で存在する場合があるものである。不溶性物質を分離除外する任意選択の工程E1)の間に除去された不溶性不純物は、例えば、顔料、鉱物化合物、包装残留物(ガラス、木材、段ボール、紙、アルミニウム)および不溶性ポリマーである。
【0052】
それが実施される場合、この分離工程E1)により、有利には、下流の方法工程の操作上の問題、特に、例えば、目詰まりおよび/または腐食を制限することが可能となる一方で同時に、プラスチック供給原料の精製の方に寄与する。
【0053】
本方法にそれが組み込まれる場合、不溶性物質を分離除外する工程E1)は、有利には、温度100~300℃、好ましくは150~250℃、圧力1.0~20.0MPa(絶対)、好ましくは1.5~15.0MPa(絶対)、大いに好ましくは2.0~10.0MPa(絶対)で行われる。大いに有利には、不溶性物質を分離除外する任意選択の工程E1)は、溶解の温度および圧力の条件下に、すなわち、工程a)の出口における温度および圧力の条件下に行われる。
【0054】
本方法にそれが組み込まれる場合、不溶性物質を分離除外する前記工程E1)は、好ましくは、工程a)から得られたかまたは任意選択の中間吸着工程a’)から得られた粗ポリマー溶液を給送される。別の実施形態によると、任意選択の工程E1)は、洗浄工程b)から得られた洗浄済みポリマー溶液を給送されてよい。
【0055】
本方法にそれが組み込まれる場合、工程E1)は、有利には、少なくとも1基の固体-液体分離機器、例えば、分離フラスコ、デカンタ、遠心デカンタ、遠心分離機、フィルタ、サンドフィルタ、渦電流分離器、静電分離器、摩擦電気分離器、好ましくはデカンタ、フィルタ、サンドフィルタおよび/または静電分離器を含んでいるセクションを含む。
【0056】
不溶性フラクションの除去は、不溶性フラクション中に存在する可能性のある痕跡量の溶媒を輸送および/または除去するための設備、例えばコンベア、振動管、エンドレススクリュー、押出機またはストリッパによって促進される場合がある。工程E1)は、それ故に、不溶性フラクションを除去するために痕跡量の溶媒を輸送および/または除去するための設備を含んでよい。
【0057】
任意選択の工程E1)の特定の実施形態によると、不溶性物質を分離除外する工程E1)は、少なくとも2基、一般に5基未満の固体-液体分離機器を直列および/または並列に含む。少なくとも2基の固体-液体分離機器が直列に存在することにより、不溶性物質の除去を改善することが可能となる一方で、設備が並列に存在することにより、前記設備のメンテナンスおよび/または目詰まり解消作業を管理することが可能となる。
【0058】
設備、特に静電分離器またはフィルタの目詰まり解消は、バックフラッシュ注入溶媒を用いて行われてよい。目詰まり解消溶媒は、水溶液または有機溶液であってよく、好ましくは、溶解工程a)および/または洗浄工程b)において用いられたものと同一の性質の有機溶媒である。特定の実施形態によると、目詰まり解消溶媒は、洗浄工程b)において用いられた濃厚溶液と同一の性質のものである。
【0059】
いくつかの不溶性化合物、特に、ポリマーの配合の間に従来から添加されているいくつかの顔料および鉱物充填材は、1μm未満のサイズの粒子の形態で導入されてよい。これは、例えば、二酸化チタン、炭酸カルシウムおよびカーボンブラックについてのケースである。任意選択の工程E1)の特定の実施形態によると、不溶性物質を分離除外する前記工程E1)は、有利には、静電分離器を含み、これにより、1μm未満のサイズの不溶性粒子の少なくとも一部、好ましくは全部を効率的に除去することが可能である。任意選択の工程E1)の別の特定の実施形態によると、不溶性物質を分離除外する工程E1)は、サンドフィルタを含み、異なるサイズの粒子、特に1μm未満のサイズの粒子を除去する。
【0060】
供給原料の性質に応じて、工程E1)に給送するポリマー溶液、好ましくは粗ポリマー溶液は、場合によっては、第2の液相を含んでいてもよく、これは、例えば溶融ポリマーからなる。任意選択の工程E1)の別の特定の実施形態によると、工程E1)は、有利には、この第2の液相を分離除外するための設備を含み、好ましくは少なくとも1基の三相分離器によって行われる。
【0061】
(洗浄工程b))
本発明によると、本処理方法は、濃厚溶液により洗浄する工程b)を含み、少なくとも1種の洗浄流出物と、少なくとも1種の洗浄済みポリマー溶液とを有利に得る。工程b)の終結の際に得られた洗浄済みポリマー溶液は、有利には、本発明が回収精製しようとする標的ポリマーを溶解溶媒中に溶解されて含む。場合によっては、それは、溶解溶媒中に特に可溶である残留不純物および/または痕跡量の洗浄溶媒を依然として含む。
【0062】
有利には、洗浄工程b)は、濃厚溶液およびポリマー溶液、好ましくは工程a)から得られたかまたは任意選択の中間吸着工程a’)から得られた粗ポリマー溶液を、あるいはほかに、任意選択の工程E1)から得られた清澄化済みポリマー溶液を給送される。任意選択の工程b)に給送するポリマー溶液は、場合によっては、ポリマー溶液との混合物として吸着剤を添加することによって特に行われる任意選択の吸着工程E3)から得られた精製済みポリマー溶液であってよい。好ましくは、洗浄工程b)は、濃厚溶液、および、ポリマー溶液、好ましくは工程a)から得られたかまたは任意選択の中間吸着工程a’)から得られた粗ポリマー溶液、あるいはほかに、任意選択の工程E1)から得られた清澄化済みポリマー溶液を給送される。洗浄工程b)に給送するポリマー溶液、より具体的には粗ポリマー溶液または清澄化済みポリマー溶液は、懸濁状の不溶性化合物および/または溶解した化合物の形態にある不純物を含んでいる場合がある。これらの懸濁状または溶解した化合物は、部分的または全体的に、洗浄工程b)の間に、溶解または沈殿によっておよび/または濃厚溶液中の同伴によって除去されてよい。それ故に、工程b)は、プラスチック供給原料の処理、より詳細にはポリマー溶液の精製の方に寄与する。
【0063】
洗浄工程b)は、有利には、工程b)に給送する粗ポリマー溶液または清澄化済みポリマー溶液を、濃厚溶液と接触配置することを含む。有利には、濃厚溶液は、ポリマー溶液(すなわち、標的ポリマーと、標的ポリマーが溶解している溶解溶媒とを少なくとも含んでいる混合物)より高い密度を有する。特に、濃厚溶液の密度は、0.85以上、好ましくは0.9以上、優先的には1.0以上以上である。濃厚溶液は、有利には、極性であるか、または、溶解溶媒よりも少なくとも極性であるものであってもよく、ポリマー溶液の洗浄の効率は、特に極性不純物の方に高まる。
【0064】
濃厚溶液は、水溶液であってよく、これは、最低50重量%の水、優先的には最低75重量%の水、好ましくは最低90重量%の水、大いに好ましくは最低95重量%の水を好ましく含む。水溶液のpHは、酸または塩基を用いて調節されて、所定の化合物の溶解を促進するようにしてよい。濃厚溶液は、場合によっては、密度が有利には0.85以上、好ましくは0.9以上、優先的には1.0以上である有機溶媒を含み、好ましくはそれらからなる溶液であってもよく、プラスチック供給原料のポリマーは、任意選択の工程b)の温度および圧力の条件下に不溶性のままであり、例えば、有機溶媒は、場合によっては、水との混合物として、スルホランまたはN-メチルピロリドン(N-methylpyrrolidone:NMP)から選ばれる。好ましくは、洗浄工程b)の濃厚溶液は、水溶液であり、好ましくは最低90重量%の水、大いに好ましくは最低95重量%の水を含んでいる。
【0065】
洗浄工程b)が有利に行われる際の温度は、100~300℃、好ましくは150~250℃であり、その際の圧力は、1.0~20.0MPa(絶対)、好ましくは1.5~15.0MPa(絶対)、大いに好ましくは2.0~10.0MPa(絶対)である。大いに有利には、洗浄工程b)は、溶解温度および溶解圧力で行われる。
【0066】
有利には、濃厚溶液の質量流量と工程b)に給送する粗ポリマー溶液または清澄化済みポリマー溶液の質量流量との間の質量比は、好ましくは0.05~20.0、好ましくは0.1~10.0、好ましくは0.5~3.0である。粗ポリマー溶液または清澄化済みポリマー溶液と濃厚溶液との接触配置は、用いられた設備中のいくつかの点で、すなわち、設備に沿う異なる点における粗ポリマー溶液または清澄化済みポリマー溶液および/または濃厚溶液のいくつかの注入を介して行われてよい:比の計算において考慮に入れられるのは、注入された流れの合計である。
【0067】
工程b)は、濃厚溶液と接触配置することができる1基または複数基の洗浄機器においておよび/または少なくとも1種の洗浄流出物と、少なくとも1種の洗浄済みポリマー溶液とを回収することを可能にする分離設備により行われてよい。この設備は、周知であり、例えば、撹拌反応器、静的ミキサ、デカントミキサ、二相または三相の分離フラスコ、並流または向流の洗浄カラム、プレートカラム、撹拌カラム、充填カラム、パルスカラム等が挙げられ、設備の各タイプは、単独でまたは別のタイプの設備との組み合わせで用いられる1基または複数基の機器を含む可能性がある。
【0068】
好適な実施形態によると、洗浄工程b)は、向流洗浄カラムにおいて行われ、一方で、濃厚溶液が、カラムの頂部に最も近いカラムの好ましくは半分、好ましくは三分の一に注入され、他方で、粗ポリマー溶液または透明化済みポリマー溶液が、カラムの底部に最も近いカラムの好ましくは半分、好ましくは三分の一に注入される。この実施形態によると、少なくとも1種の洗浄済みポリマー溶液と、少なくとも1種の洗浄流出物とを回収することが可能である。
【0069】
非常に特定的な実施形態によると、洗浄カラムの入口および/または出口における流れは、分割されて、カラムに沿ったいくつかの注入点で注入され、かつ/またはカラムに沿ったいくつかの抜出点で抜き出されてよい。
【0070】
別の実施形態によると、洗浄工程b)は、ミキサ-デカンタにおいて行われ、これは、濃厚溶液と粗ポリマー溶液または清澄化済みポリマー溶液とを接触配置するための撹拌混合ゾーンと、洗浄済みポリマー溶液と洗浄流出物とを回収することを可能にするデカンテーションゾーンとを含んでいる。
【0071】
洗浄工程b)の終結の際に、得られた洗浄流出物は、有利には、濃厚溶媒中に溶解した化合物および/または洗浄流出物中に同伴された不溶性化合物を含む。洗浄流出物は、洗浄処理セクションにおいて再処理される場合があり、一方で、溶解した化合物および/または同伴された化合物を少なくとも部分的に分離除外して、場合によっては洗浄流出物を精製して精製済み濃厚溶液を得、他方で、精製済み洗浄溶液の一部を少なくとも部分的にリサイクルする。この洗浄処理セクションは、固体-液体分離について周知である1基または複数基の機器を含んでよく、例えば、分離フラスコ、デカンタ、遠心分離デカンタ、遠心分離機またはフィルタがある。洗浄流出物は、本方法の外部、例えば、濃厚溶液が水溶液である場合には、使用済み水処理ステーションに送られてもよい。
【0072】
特定の実施形態によると、本発明による方法が任意選択の工程E1)を含む場合に、工程E1)において場合によっては発生する目詰まり解消流れ(工程E1)から得られた不溶性フラクションを少なくとも部分的に含む)は、洗浄流出物と少なくとも部分的に混合され、工程E1)およびb)において除去された不溶性不純物を共通のセクションにおいて除去するようにする。
【0073】
(任意選択の抽出工程E2))
本発明による方法は、場合によっては、抽出溶媒と接触配置することによる抽出の工程E2)を含んでよく、少なくとも1種の抽出済みポリマー溶液と、少なくとも1種の使用済み溶媒、特に、不純物を含むものとを得る。任意選択の工程E2)の終結の際に得られた抽出済みポリマー溶液は、有利には、本発明が回収精製しようとする標的ポリマーを、溶解溶媒中に溶解されて含む。場合によっては、それは、溶解溶媒中に特に可溶である残留不純物および/または痕跡量の抽出溶媒、および/または工程E2)が行われるならば痕跡量の抽出溶媒を依然として含む場合がある。
【0074】
本発明による方法にそれが組み込まれる場合、抽出工程E2)は、有利には、洗浄工程b)と、ポリマー回収工程c)との間に位置している。任意選択の抽出工程E2)は、有利には、ポリマー溶液、好ましくは工程b)から得られた洗浄済みポリマー溶液または場合によっては任意選択の吸着工程E3)から得られた精製済みポリマー溶液、および抽出溶媒を給送される。
【0075】
任意選択の工程E2)に給送するポリマー溶液、好ましくは工程b)から得られた洗浄済みポリマー溶液または任意選択の工程E3)から得られた精製済みポリマー溶液は、それ故に、場合によっては、溶解した化合物または溶解した不純物を含んでよい。これらの溶解した化合物は、抽出工程E2)の間に、抽出溶媒と接触配置することにより、部分的または全体的に除去されてよい。大いに有利には、洗浄工程b)と抽出工程E2)との組み合わせにより、濃厚溶媒と必要に応じて極性溶媒、および抽出溶媒の両方に対する不純物の親和性を用いることにより、ポリマー溶液の改善された精製が可能となる。
【0076】
任意選択の抽出工程E2)は、有利には、少なくとも1個の抽出セクション、好ましくは1~5個の抽出セクション、大いに好ましくは1個の抽出セクションを含む。任意選択の抽出工程E2)が好ましく行われる際の温度は、100~300℃、好ましくは150~250℃である。任意選択の抽出工程E2)が好ましく行われる際の圧力は、1.0~20.0MPa(絶対)、好ましくは1.5~15.0MPa(絶対)、大いに好ましくは2.0~10.0MPa(絶対)である。任意選択の抽出工程E2)の好適な実施形態によると、抽出工程E2)は、工程a)の温度および圧力の条件とは異なる温度および圧力の条件下に行われる。
【0077】
抽出溶媒の質量流量と工程E2)に給送するポリマー溶液の質量流量との間の質量比は、有利には0.05~20.0、好ましくは0.1~10.0、好ましくは0.2~5.0である。任意選択の工程E2)に給送するポリマー溶液と抽出溶媒との間の接触配置は、抽出セクション中のいくつかの点で、すなわち、ポリマー溶液および/または抽出溶媒のいくつかの注入を介して、抽出溶媒に沿った異なる点において行われてよい:比率の計算において考慮に入れられるのは、注入された流れの合計である。
【0078】
任意選択の抽出工程E2)において用いられる抽出溶媒は、有利には、有機溶媒または溶媒(好ましくは有機性である)の混合物である。好ましくは、抽出溶媒は、有機溶媒から選ばれ、有機溶媒は、好ましくは、1種または複数種の炭化水素を含んでおり、優先的には、それらからなり、-50℃~250℃、好ましくは-15℃~150℃、好ましくは20~110℃の沸点を有している。好ましくは、抽出溶媒は、1種または複数種の炭化水素、大いに好ましくは1種または複数種のアルカンを含んでおり、好ましくは、それらからなり、3~12個の炭素原子、優先的には4~8個の炭素原子、大いに好ましくは5~7個の炭素原子を含有しており、例えば、ペンタン、ヘキサンおよびヘプタンの異性体である。好ましくは、抽出溶媒(大いに有利には、有機溶媒、好ましくは炭化水素である)の臨界温度は、90~400℃、好ましくは130~300℃、好ましくは180~290℃であり、抽出溶媒の臨界圧力は、1.5~5.0MPa(絶対)、好ましくは2.0~4.3MPa(絶対)、好ましくは2.4~4.2MPa(絶対)である。特定の実施形態によると、抽出溶媒の沸点は、70℃超、好ましくは80℃~220℃であり、および/または溶媒は、少なくとも7個の炭素原子を含有する。別の好適な実施形態によると、抽出溶媒の沸点は、50℃未満または150℃超である。
【0079】
大いに好ましくは、任意選択の工程E2)において用いられる抽出溶媒は、工程a)において用いられた溶解溶媒と同一の溶媒であり、場合によっては、異なる物理的状態(例えば、抽出溶媒が超臨界状態にあるのに相対して、溶解溶媒は液体の形態にある)にあり、溶媒の管理、とりわけ、それらの精製およびそれらのリサイクル、特に、溶解工程a)および場合によっては抽出工程E2)へのリサイクルを容易にする。同一の溶解溶媒および抽出溶媒を同一または異なる物理的状態において用いる別の利点は、本発明による方法に関与する溶媒の技術的な管理を容易にすることに加えて、特に溶媒の回収、それらの処理および方法の工程の少なくとも1つへのそれらのリサイクル、ならびに溶媒の処理および精製によって特に生じるエネルギー消費およびコストを制限するという利点にある。
【0080】
任意選択の工程E2)の抽出セクション(1個または複数個)は、1基または複数基の抽出機器を含んでよく、抽出溶媒および/または少なくとも1種の使用済み溶媒、特に、不純物を含む溶媒、および抽出済みポリマー溶液を回収するための分離設備との接触配置を可能にする。この設備は、周知であり、例えば、撹拌反応器、静的ミキサ、デカントミキサ、二相または三相の分離フラスコ、並流または向流の洗浄カラム、プレートカラム、撹拌カラム、充填カラム、パルスカラム等があり、各タイプの設備は、単独でまたは別のタイプの設備との組み合わせで用いられる1基または複数基の機器を含む場合がある。
【0081】
任意選択の工程E2)の好適な実施形態によると、抽出は、向流抽出カラムにおいて行われ、そこで、一方で抽出溶媒が注入され、他方で工程E2)に給送するポリマー溶液が注入される。この実施形態によると、一方で少なくとも1種の抽出済みポリマー溶液を、他方で使用済み溶媒、とりわけ不純物を含む使用済み溶媒を回収することが可能である。好ましくは、工程E2)に給送するポリマー溶液は、向流抽出カラムの頂部に最も近いカラムの半分、好ましくは三分の一に注入される一方で、抽出溶媒は、向流抽出カラムの底部に最も近いカラムの半分、好ましくは三分の一に注入される。
【0082】
向流抽出カラムの入口および/または出口のところにおける流れは、カラムに沿ったいくつかの注入点および/または抜き出し点で分割されてよい。
【0083】
別の実施形態によると、抽出は、ミキサ-デカンタにおいて行われ、これは、有利には、抽出溶媒と、ポリマー溶液、好ましくは、洗浄済みポリマー溶液または場合によっては精製済みポリマー溶液とを接触配置するための撹拌型混合ゾーンと、一方で抽出済みポリマー溶液を、他方で使用済み溶媒を回収することを可能にするデカンテーションゾーンとを含む。
【0084】
任意選択の工程E2)の好適な実施形態によると、工程E2)は、液/液抽出セクションを含む。この実施形態において、抽出溶媒は、好ましくは、ペンタン、ヘキサンおよびヘプタンの異性体から、好ましくは、ペンタンおよびヘキサンの異性体から、大いに好ましくは、ペンタンの異性体から選ばれる。好ましくは、液/液抽出セクションが操作される際の温度は、100℃~300℃、好ましくは150℃~250℃であり、その際の圧力は、1.0~20.0MPa(絶対)、好ましくは1.5~15.0MPa(絶対)、大いに好ましくは2.0~10.0MPa(絶対)である。いずれにしても、この実施形態において、温度および圧力の条件は、抽出溶媒が液体の形態にあるように調節され、溶解溶媒自体も、好ましくは、液体の形態にある。大いに有利には、液/液抽出は、特に、抽出溶媒が溶解溶媒と同一である場合に、工程a)において達成された溶解条件とは異なる温度および圧力の条件下に、特に、溶解温度より高い温度および/または溶解圧力より下の圧力で行われ、それ故に、対応するポリマー-溶媒混合図の二相ゾーンになるようにする。
【0085】
任意選択の工程E2)の別の好適な実施形態によると、工程E2)は、特定の温度および圧力の条件下での抽出のためのセクションを含み、抽出溶媒は、有利には、少なくとも部分的に超臨界の形態にある。このような抽出は、超臨界抽出と称されてよい。この実施形態において、抽出は、工程b)に給送するポリマー溶液、好ましくは洗浄済みポリマー溶液または場合によっては精製済みポリマー溶液を、抽出溶媒と、有利には、抽出溶媒から圧倒的に(すなわち、好ましくは最低50重量%、優先的には最低70重量%、好ましくは最低90重量%)構成される超臨界相を得ることを可能にする温度および圧力の条件下に接触配置することによって行われる。言い換えれば、この実施形態において、抽出は、工程b)に給送するポリマー溶液、好ましくは洗浄済みポリマー溶液または精製済みポリマー溶液を、少なくとも部分的に、好ましくは完全に超臨界の形態にある抽出溶媒と接触配置することにより行われる。このような超臨界抽出工程E2)により、有利には、ポリマー溶液の効率的な精製が可能となるが、これは、有機不純物、例えば、添加物の一部、とりわけ、所定の染料、可塑剤等の超臨界相に対する非常に高い親和性に特に起因するものである。超臨界形態にある抽出溶媒の使用により、超臨界相と液体の形態にあるポリマー溶液との間に実質的な密度差を作り出すことも可能となり、超臨界相と液相との間のデカンテーションによる分離が容易になり、その結果、ポリマー溶液の精製の方に寄与する。
【0086】
この特に好適な実施形態において、任意選択の抽出工程E2)は、臨界温度が好ましくは130~300℃、好ましくは180~290℃であり、臨界圧力が好ましくは2.0~4.3MPa(絶対)、好ましくは2.4~4.2MPa(絶対)である抽出溶媒を用いる。大いに有利には、このような超臨界抽出工程E2)において、抽出溶媒は、炭化水素であって、優先的には4~8個の炭素原子、好ましくは5~7個の炭素原子を含有しているものから選ばれる。超臨界抽出のための抽出溶媒は、例えば、ペンタン異性体、ヘキサン異性体、ヘプタン異性体、またはシクロペンタン、シクロヘキサンまたはメチルシクロペンタンであってよい。
【0087】
有利には、任意選択の超臨界抽出工程E2)が行われる際の温度は、好ましくは150℃~300℃、好ましくは180℃~280℃であり、その際の圧力は、好ましくは2.0~20.0MPa(絶対)、好ましくは2.0~15.0MPa(絶対)、大いに好ましくは3.0~10.0MPa(絶対)である。いずれにしても、この実施形態において、温度および圧力の条件は、とりわけ、抽出工程の上流で抽出工程E2)に含まれる調節セクションにおいて調節されて、抽出溶媒が抽出セクションにおいて少なくとも部分的に超臨界の形態にあるようにする。
【0088】
任意選択の抽出工程E2)の大いに好適な実施形態において、抽出工程E2)は、超臨界抽出を含み、抽出溶媒は、抽出溶媒が少なくとも部分的に超臨界相にあるという事実を除き、溶解溶媒と同一である。超臨界抽出のこの非常に有利なケースにおいて、溶解溶媒は、少なくとも部分的に超臨界の形態になってよく、抽出工程中のデカンテーションを有利に最適化し、より具体的には各抽出相またはプラトーにおいて、液相と超臨界相との間で、精製を最大にすることがそれ故に可能となる。
【0089】
有利には、抽出工程E2)の終結の際に、得られた使用済み溶媒は、特に不純物を含む。それは、有機処理セクションにおいて再処理されてよく、このセクションにより、一方で、不純物を少なくとも部分的に分離除外し、溶媒を精製して精製済み抽出溶媒を得ることが可能となり、他方で、精製済み抽出溶媒の少なくとも一部を、任意選択の抽出工程E2)の入口に、および/または、溶解溶媒と抽出溶媒が同一である場合には溶解工程a)の入口にリサイクルすることが可能となる。使用済み溶媒は、当業者に知られている任意の方法に従って処理されてよく、例えば、蒸留、蒸発、抽出、吸着、結晶化および不溶性物質の沈殿の中からの1個または複数個の方法またはパージによるものがある。
【0090】
(任意選択の吸着工程E3))
本処理方法は、場合によっては、任意選択の吸着工程E3)を含んでもよく、溶解工程a)とポリマー回収工程c)の間に位置している。出発プラスチック供給原料およびそれが含有する不純物の質に応じて、実際に、少なくとも1種の精製済みポリマー溶液を得ることが可能となる任意選択の吸着工程E3)によりポリマー溶液の精製を完了することが有利である場合がある。
【0091】
本発明による方法にそれが組み込まれる場合、吸着工程E3)は、溶解工程a)の下流およびポリマー回収工程c)の上流で、有利には、洗浄工程b)の上流または下流で行われる。任意選択の吸着工程E3)は、場合によっては、任意選択の抽出工程b)の上流または下流で行われてよい。
【0092】
前記任意選択の吸着工程E3)は、有利には、吸着セクションを含み、少なくとも1種の吸着剤(好ましくは固体である)の存在中で操作され、特に、固定床、同伴床(またはスラリー、すなわち精製されるべき流れに導入され、かつ、この流れと同伴される粒子の形態)の形態または沸騰床の形態にある。吸着セクションは、有利には、少なくとも1種の吸着剤、好ましくはアルミナ、シリカ、シリカ-アルミナ、活性炭または脱色土タイプの吸着剤の存在中、好ましくは固定床または同伴床の形態で操作され、流れの循環は場合によっては上昇または下降する。本発明による方法が、洗浄工程b)の上流に任意選択の吸着工程E3)を含む場合、吸着セクションは、好ましくは、同伴床の形態(すなわち、ポリマー溶液に導入された分割された粒子の形態)にある吸着剤の存在中で操作される。本発明による方法が、洗浄工程b)の下流に吸着工程E3)を含む場合、吸着セクションは、大いに好ましくは、固定床の形態にある吸着剤の存在中で操作される。
【0093】
前記任意選択の吸着工程E3)が有利に行われる際の温度は、100~300℃、好ましくは150~250℃であり、その際の圧力は、1.0~20.0MPa(絶対)、好ましくは1.5~15.0MPa(絶対)、大いに好ましくは2.0~10.0MPa(絶対)である。大いに有利には、工程E3)は、溶解の温度および圧力の条件下に、すなわち、工程a)において到達した溶解温度および溶解圧力で行われる。好ましくは、工程E3)において、毎時空間速度(hourly space velocity:HSV)は、工程E3)に給送するポリマー溶液の容積流量と、吸着剤の容積との間の比に対応するものであり、0.05~10h-1、優先的には0.1~5.0h-1である。
【0094】
任意選択の工程E3)の特定の実施形態によると、吸着セクションは、吸着剤の1基または複数基の固定床を含んでよく、例えば、吸着カラム、好ましくは少なくとも2個の吸着カラム、優先的には2~4個の吸着カラムの形態にあり、前記吸着剤を含有している。吸着セクションが2個の吸着カラムを含む場合、1つの操作様式は、専門用語に従って「スイング」操作と呼ばれるものであってよく、カラムの一方は、オンライン、すなわち、インサービスである一方で、他方のカラムは、インリザーブである。オンラインのカラムの吸着剤が消耗した場合、このカラムは隔離される一方で、インリザーブのカラムがオンライン、すなわちインサービスとされる。使用済みの吸着剤は、次いで、現場内再生され、かつ/または、フレッシュな吸着剤と交換され、それを含有しているカラムは、一旦他方のカラムが隔離されたところで、再度、オンラインとされ得る。
【0095】
工程E3)のこの特定の実施形態の機能化の別の様式は、吸着剤の1個または複数個の固定床を含んでいるものであり、直列で機能している少なくとも2個のカラムを有することにある。先頭のところに置かれたカラムの吸着剤が使い古された場合、この第1のカラムは、隔離され、使用済み吸着剤は、現場内再生されるかまたはフレッシュな吸着剤と交換されるかのいずれかである。カラムは、次いで、最後部の位置においてオンラインに戻され、これが繰り返される。この操作様式は、配列可変様式として、または、permutable reactor system(配列可変反応器システム)についてのPRSあるいはほかに専門用語に従って「リードアンドラッグ(lead and lag)」として知られている。少なくとも2個の吸着カラムの組み合わせにより、処理されるべき流れ中に存在する場合がある不純物、汚染物質および不溶性物質の結合作用に起因する吸着剤の可能なかつ潜在的な迅速な被毒および/または目詰まりを克服することが可能になる。これについての理由は、少なくとも2個の吸着カラムの存在により、吸着剤の交換および/または再生が、有利には、方法を停止することなく容易になり、コストをコントロールすることおよび吸着剤の消費を制限することも可能となるからである。
【0096】
大いに有利には、洗浄工程b)と任意選択の吸着工程E3)との組み合わせは、濃厚溶媒とさらに吸着剤固体の両方に対しての残留不純物の親和性を用いることによって、ポリマー溶液の改善された精製を可能とする。
【0097】
任意選択の工程E3)の吸着セクションは、別の実施形態によると、ポリマー溶液、特に粗ポリマー溶液に吸着剤粒子を添加することからなってよく、前記粒子は、前記吸着セクションの下流に位置する吸着剤粒子を取り除く工程を介して、例えば、任意選択の工程E3)が工程b)の上流に位置している場合には洗浄工程b)の間に、ポリマー溶液から分離される可能性がある。任意選択の吸着工程E3)のこのような実施は、吸着剤粒子を導入することに続いて固/液分離を行うことによって、有利には、任意選択の中間吸着工程a’)に対応し、これは、本明細書において前述したものである。
【0098】
(ポリマーの回収の工程c))
本発明によると、本方法は、ポリマーを回収する工程c)を含み、少なくとも1種の溶媒フラクションと少なくとも1種の精製済みポリマーフラクションとを得る。
【0099】
ポリマー回収工程c)は、有利には、少なくとも1個の溶媒回収セクションを含み、好ましくは1~5個の溶媒回収セクションを含む。ポリマー回収工程c)は、洗浄済みポリマー溶液または場合によっては抽出済み若しくは精製済みのポリマー溶液を給送される。
【0100】
ポリマー回収工程c)は、それ故に、第1に、工程c)に給送するポリマー溶液、すなわち、洗浄済みポリマー溶液または場合によっては抽出済みポリマー溶液または精製済みポリマー溶液中に含有される溶媒(1種または複数種)、特に、溶解溶媒および場合によっては洗浄溶媒、またはさらには抽出溶媒を少なくとも部分的に、好ましくは圧倒的に分離除外することの方に向けられ、少なくとも部分的に、好ましくは圧倒的に優先的には完全に、工程c)に給送するポリマー溶液中に依然として存在する場合がある溶解溶媒および本方法において用いられた他の溶媒(1種または複数種)を含まないポリマーを回収する。用語「圧倒的に(predominantly)」は、工程c)に給送するポリマー溶液中に含有される溶媒(1種または複数種)、特に工程c)に給送するポリマー溶液中に含有される溶解溶媒および場合によっては洗浄溶媒の重量に相対して最低50重量%、優先的に好ましくは最低70重量%、好ましくは最低90重量%、大いに好ましくは最低95%であることを意味するとして理解されるべきである。当業者に知られているポリマーから溶媒を分離するための任意の方法が行われてよく、とりわけ、ポリマーまたは溶媒(1種または複数種)の相変化を可能にする任意の方法がある。溶媒(1種または複数種)は、分離除外されてよく、例えば、蒸発、ストリッピング、脱混合、密度における差、特にデカンテーションまたは遠心分離などによって行われる。
【0101】
得られた精製済みポリマーフラクションは、濃縮済みポリマー溶液または固体精製済みポリマーに対応してよい。好ましくは、ポリマー回収工程c)は、ポリマーを、固体の形態、より詳細には固体顆粒の形態でコンディション調整するためのコンディショニングセクションも含む。
【0102】
ポリマー回収工程c)は、工程c)に給送する洗浄済みポリマー溶液または場合によっては抽出済みまたは精製済みのポリマー溶液中に含有される溶媒(1種または複数種)、特に、溶解溶媒および場合によっては洗浄溶媒、さらには同様に抽出溶媒を少なくとも部分的に、好ましくは圧倒的かつ優先的に全体的に回収することの方にも向けられる。ポリマー回収工程c)は、場合によっては、回収された溶媒フラクションを、とりわけ、溶解工程a)の上流および/または洗浄工程b)および/または抽出工程E2)の上流で精製・回収することの方にも向けられる。用語「圧倒的に」は、工程c)に給送する洗浄済みポリマー溶液または場合によっては抽出済みまたは精製済みのポリマー溶液中に含有される溶媒(1種または複数種)の重量に相対して、最低50重量%、優先的に好ましくは最低70重量%、好ましくは最低90重量%、大いに好ましくは最低95%であることを意味するとして理解されるべきである。
【0103】
前記ポリマー回収工程c)は、有利には、少なくとも1個の溶媒回収セクションを含み、そこでの温度は、0~350℃、好ましくは5~300℃、好ましくは10~250℃であり、そこでの圧力は、0.1~20.0MPa(絶対)、好ましくは0.1~15.0MPa(絶対)、大いに好ましくは0.1~10.0MPa(絶対)である。
【0104】
有利には、ポリマー回収工程c)は、少なくとも1個の溶媒回収セクションを含み、それぞれ、好ましくは、少なくとも1種の溶媒フラクションと、少なくとも1種の精製済みポリマーフラクションとを得るという目的のために、異なる温度および異なる圧力で操作される設備を含んでいる。いくつかの異なる溶媒が本発明による処理方法において、特に、溶解工程a)および洗浄工程b)、場合によっては、抽出工程E2)において用いられたケースにおいて、工程c)は、いくつかの溶媒回収セクション、例えば、2、3または4個の溶媒回収セクションを含んでよく、種々の溶媒、特に、溶解溶媒、洗浄溶媒および場合によっては抽出溶媒を、別々に、順次におよび/または連続的に回収するようにする。
【0105】
本発明の特定の実施形態によると、本発明の方法は、有利には連続的にまたは同時に、以下のものを含む:
- 溶媒回収セクションc1);ポリマー溶液が、ポリマーの融点超の温度に好ましくは加熱されて、溶媒フラクションと、精製済みポリマーフラクションとを得る、
- コンディショニングセクションc2);精製済みポリマーフラクション(有利には、溶媒(1種または複数種)から分離されたもの)が、ポリマーの融点未満の温度に有利に冷却され、固体の形態にあるポリマーを含むフラクションを得る。
【0106】
本発明の好適な実施形態によると、工程c)は、工程c)の溶媒を、超臨界条件下になるように調節された温度および圧力の条件下に、すなわち、分離除外されるべき溶媒(1種または複数種)の臨界点超、特に、溶解溶媒の臨界点超で回収するためのセクションを含み、溶媒、特に溶解溶媒の少なくとも一部を容易に分離除外および回収することが有利には可能となる。この実施形態において、前記溶媒回収セクションは、溶媒、特に溶解溶媒を圧倒的に含んでいる超臨界相と、ポリマーを含んでいる液相とからなる流体の系を特に含む。用語「圧倒的に」は、ここでは、考慮下の流れ、すなわち超臨界相の重量に相対して、最低50重量%、好ましくは最低70重量%、好ましくは最低90重量%、大いに好ましくは最低95重量%を意味する。分離は、溶媒(1種または複数種)の超臨界分離と呼ばれることがある。溶媒(1種または複数種)の超臨界分離により、一方で、溶媒(1種または複数種)、特に溶解溶媒、他方で、ポリマーまたは場合によっては濃縮済みポリマーの溶液を効率的に分離することが可能となり、超臨界分離は、有利には、2つの相の間の密度における有意な相違によって許容される。さらに、溶媒(1種または複数種)の超臨界分離により、溶媒の単純な気化に相対して著しく低下したエネルギーおよび環境コストが有利に可能となる。超臨界状態への移行の間に、気化の潜熱がないためである。
【0107】
本発明の特定の実施形態によると、工程c)の終結の際に得られた精製済みポリマーフラクションの少なくとも一部は、溶解工程a)にリサイクルされてよく、再度、処理サイクルを経て、ポリマー精製効率を高める。
【0108】
大いに有利には、工程c)の終結の際に回収された溶媒フラクションは、工程c)の終わりに位置する有機処理セクションにおいて処理されてよく、それを精製し、かつ、精製済み溶媒、特に、精製済み溶解溶媒を得て、溶解工程a)および/または場合によっては洗浄工程b)および/または任意選択の抽出工程E2)にそれを有利にリサイクルすることができるようにする。工程c)の終わりにおける前記任意選択の有機処理セクションは、当業者に知られている任意の方法を用いてよく、例えば、蒸留、蒸発、液-液抽出、吸着、結晶化および不溶性物質の沈殿の中からの1個または複数個の方法がありまたはパージによるものがある。
【0109】
本発明による方法により、プラスチック廃棄物から、ポリマー、特に熱可塑性プラスチック、より詳細にはポリオレフィンの精製済みの流れを得ることがそれ故に可能となり、これは、任意の用途において用いられてよく、例えば、未使用形態にある同一のポリマーとの代替がある。本発明による方法を介して得られたポリマーの精製済みの流れ、すなわち精製済みのポリマーフラクションがそれ故に有する不純物含有率は、任意の適用において用いられ得るように十分に低い。
【0110】
本発明の好適な実施形態によると、プラスチック供給原料を処理するための方法は、以下の工程:
- 溶解溶媒中の溶解の工程a);少なくとも1種の粗ポリマー溶液を得る;
- 濃厚溶液との接触により粗ポリマー溶液を洗浄する工程b);少なくとも1種の洗浄流出物と、少なくとも1種の洗浄済みポリマー溶液とを得る;
- 抽出溶媒による洗浄済みポリマー溶液の抽出の工程E2)であって、好ましくは超臨界抽出を含む、工程E2);少なくとも1種の抽出済みポリマー溶液と、少なくとも1種の使用済み溶媒とを得る;および
- 抽出済みポリマー溶液からポリマーを回収する工程c)であって、好ましくは、溶媒(1種または複数種)の超臨界分離、特に、溶解溶媒の超臨界分離を含む工程c);溶媒フラクションと、精製済みポリマーフラクションとを得る;
を含み、好ましくは、それらからなり、溶解溶媒と抽出溶媒は、好ましくは同一である。
【0111】
本発明の別の好適な実施形態によると、プラスチック供給原料を処理するための方法は、以下の工程:
- 溶解溶媒中の溶解の工程a);少なくとも1種の粗ポリマー溶液を得る;
- 粗ポリマー溶液を給送し、不溶性物質を分離除外する工程E1);少なくとも1種の清澄化済みポリマー溶液と、少なくとも1種の不溶性フラクションとを得る;
- 濃厚溶液との接触により清澄化済みポリマー溶液を洗浄する工程b);少なくとも1種の洗浄流出物と、少なくとも1種の洗浄済みポリマー溶液とを得る;
- 抽出溶媒による洗浄済みポリマー溶液の抽出の工程E2)であって、好ましくは超臨界抽出を含む工程E2);少なくとも1種の抽出済みポリマー溶液と、少なくとも1種の使用済み溶媒とを得る;および
- 抽出済みポリマー溶液からポリマーを回収する工程c)であって、好ましくは、溶媒(1種または複数種)の超臨界分離を含む工程c);溶媒フラクションと、精製済みポリマーフラクションとを得る;
を含み、好ましくは、それらからなり、溶解溶媒と抽出溶媒は、好ましくは同一である。
【0112】
本発明の好適な代わりの実施形態によると、プラスチック供給原料を処理するための方法は、以下の工程:
- 溶解溶媒中の溶解の工程a);少なくとも1種の粗ポリマー溶液を得る;
- 濃厚溶液との接触により粗ポリマー溶液を洗浄する工程b);少なくとも1種の洗浄流出物と、少なくとも1種の洗浄済みポリマー溶液とを得る;
- 洗浄済みポリマー溶液を給送し、不溶性物質を分離除外する工程E1);少なくとも1種の清澄化済みポリマー溶液と、少なくとも1種の不溶性フラクションとを得る;
- 抽出溶媒による清澄化済みポリマー溶液の抽出の工程E2)であって、好ましくは超臨界抽出を含む工程E2);少なくとも1種の抽出済みポリマー溶液と、少なくとも1種の使用済み溶媒とを得る;および
- 抽出済みポリマー溶液からポリマーを回収する工程c)であって、好ましくは溶媒(1種または複数種)の超臨界分離を含む工程c);溶媒フラクションと、精製済みポリマーフラクションとを得る:
を含み、好ましくは、それらからなり、溶解溶媒と抽出溶媒は、好ましくは同一である。
【0113】
本発明の別の特定の実施形態によると、プラスチック供給原料を処理するための方法は、以下の工程:
- 溶解溶媒中の溶解の工程a);少なくとも1種の粗ポリマー溶液を得る;
- 粗ポリマー溶液を給送し、不溶性物質を分離除外する工程E1);少なくとも1種の清澄化済みポリマー溶液と、少なくとも1種の不溶性フラクションとを得る;
- 濃厚溶液との接触により清澄化済みポリマー溶液を洗浄する工程b);少なくとも1種の洗浄流出物と、少なくとも1種の洗浄済みポリマー溶液とを得る;
- 抽出溶媒による洗浄済みポリマー溶液の抽出の工程E2)であって、好ましくは超臨界抽出を含む工程E2);少なくとも1種の抽出済みポリマー溶液と、少なくとも1種の使用済み溶媒とを得る;
- 抽出済みポリマー溶液を、吸着剤と、好ましくは固定床において接触配置することによる吸着の工程E3);少なくとも1種の精製済みポリマー溶液を得る;および
- 工程E3)から得られた精製済みポリマー溶液からポリマーを回収する工程c)であって、好ましくは溶媒(1種または複数種)の超臨界分離を含む工程c);溶媒フラクションと、精製済みポリマーフラクションとを得る:
を含み、好ましくは、それらからなり、溶解溶媒と抽出溶媒は、好ましくは同一である。
【0114】
本発明の別の特定の実施形態によると、プラスチック供給原料を処理するための方法は、以下の工程:
- 溶解溶媒中の溶解の工程a);少なくとも1種の粗ポリマー溶液を得る;
- 濃厚溶液との接触により粗ポリマー溶液を洗浄する工程b);少なくとも1種の洗浄流出物と、少なくとも1種の洗浄済みポリマー溶液とを得る;
- 洗浄済みポリマー溶液を給送し、不溶性物質を分離除外する工程E1);少なくとも1種の清澄化済みポリマー溶液と、少なくとも1種の不溶性フラクションとを得る;
- 抽出溶媒による洗浄済みポリマー溶液の抽出の工程E2)であって、好ましくは超臨界抽出を含む工程E2);少なくとも1種の抽出済みポリマー溶液と、少なくとも1種の使用済み溶媒とを得る;
- 抽出済みポリマー溶液を、吸着剤と、好ましくは固定床において接触配置することによる吸着の工程E3);少なくとも1種の精製済みポリマー溶液を得る;および
- 工程E3)から得られた精製済みポリマー溶液からポリマーを回収する工程c)であって、好ましくは溶媒(1種または複数種)の超臨界分離を含む工程c);溶媒フラクションと、精製済みポリマーフラクションとを得る;
を含み、好ましくは、それらからなり、溶解溶媒と抽出溶媒は、好ましくは同一である。
【0115】
以下の実施例および図は、本発明、特に本発明の特定の実施形態を例証するものであるが、本発明の範囲を限定するものではない。
【0116】
(図面のリスト)
図1~3において参照される要素に関する情報は、本発明のより良い理解を可能にするものであり、前記発明を
図1~3に示される特定の実施形態に限定するものではない。提示される種々の実施形態は、単独でまたは互いの組み合わせで用いられてよく、その組合せに対していかなる制限もない。
【0117】
図1は、本発明の方法の1つの実施形態のスキームを表し、以下のものを含んでいる:
- プラスチック供給原料(1)の溶解の工程a);プラスチック供給原料(1)は、溶解溶媒(2)中にポリマーを含み、粗ポリマー溶液(3)を得る;
- 濃厚溶液(6)、好ましくは水溶液(6)により粗ポリマー溶液(3)を洗浄する工程b);洗浄済みポリマー溶液(8)と、洗浄流出物(7)とを得る;
- 工程b)から得られた洗浄済みポリマー溶液(8)からポリマーを回収する工程c)、溶媒フラクション(13)と、精製済みポリマーフラクション(14)とを得る。
【0118】
図2は、
図1に表された本発明による方法の実施の変形であり、以下の工程を含んでいる:
- プラスチック供給原料(1)の溶解の工程a);プラスチック供給原料(1)は、溶解溶媒(2)中にポリマーを含み、粗ポリマー溶液(3)を得る;
- 粗ポリマー溶液(3)を給送し、不溶性物質を分離除外する工程E1);清澄化済みポリマー溶液(5)と、不溶性フラクション(4)とを得る;
- 清澄化済みポリマー溶液(5)を、濃厚溶液(6)との接触により洗浄する工程b);洗浄流出物(7)と、洗浄済みポリマー溶液(8)とを得る;
- 抽出溶媒(9)による洗浄済みポリマー溶液(8)の抽出の工程E2);抽出済みポリマー溶液(11)と、使用済み溶媒(10)とを得る;
- 抽出済みポリマー溶液(11)を吸着剤と接触配置することによる吸着の工程E3);精製済みポリマー溶液(12)を得る;
- 工程E3)から得られた精製済みポリマー溶液(12)からポリマーを回収する工程c);溶媒フラクション(13)と、精製済みポリマーフラクション(14)とを得る。
【0119】
図3は、
図2に表された本発明による方法の実施の変形である。
図3に示される実施形態において、本方法は、工程a)と工程E1)との間に中間工程a’)を含む。粗ポリマー溶液(3)は、分割された固体の形態にある吸着剤と接触配置される。吸着剤を懸濁状で含むポリマー溶液(21)を得て、分離工程E1)に給送するという目的のためである。工程a’)に予め導入された吸着剤は、不溶性物質フラクション(4)中に分離除外され、取り除かれる。
【0120】
主要な工程のみを主要な流れとともに
図1~3に示し、本発明のより良好な理解を可能とする。たとえ示されていないとしても、機能化に必要な全ての設備(容器、ポンプ、交換器、炉、カラムなど)が存在することは明確に理解される。
【0121】
(実施例)
(実施例1(本発明に合致する))
n-ペンタン250mLおよびプラスチック供給原料23gを、スターラーを備えた500mLのオートクレーブに導入する。プラスチック供給原料は、5mm径のピンク-紫着色のビーズの形態にあり、ポリプロピレンをベースとする。
【0122】
オートクレーブを、次いで、密閉し、分当たり2℃の速度で180℃に、500回転/分(revolutions per minute:rpm)で撹拌しながら加熱する。一旦180℃の温度に達したところで、温度および撹拌を3時間にわたって、26bar(または2.6MPa)の自発性圧力に維持する。3時間後に、全てのポリプロピレンをn-ペンタン中に溶解させる。溶解工程の終わりに、高度に着色された液相である粗ポリマー溶液を得る。
【0123】
水125mLを、次いで、温度180℃および圧力2.6MPaおよび500rpmでの撹拌を維持しながら系に加える。これらの温度、圧力および撹拌の条件を、次いで、5分にわたって維持した後、撹拌を停止する。撹拌を停止した後、沈降により系を分離させる。放置して5分の後に、オートクレーブ内の流体系は沈降により分離し、洗浄工程の終わりに2つの相を形成する。ポリマーを含有しており、洗浄済みポリマー溶液に相当する上相は、洗浄工程前の混合物よりも色が薄くなっている。
【0124】
洗浄済みポリマー溶液を15mL取り、結晶皿中に置く。結晶皿を、次いで、オーブン中、180℃および大気圧で、窒素によりフラッシュしながら、6時間にわたって置く。
【0125】
わずかにピンクがかった白色の固体を、次いで、結晶皿中に得る。
【0126】
(実施例2(本発明に合致しない))
n-ペンタン250mLおよびプラスチック供給原料23gを、スターラーを備えた500mLのオートクレーブに導入する。プラスチック供給原料は、5mm径のピンク-紫着色のビーズの形態にあり、ポリプロピレンをベースとする。
【0127】
オートクレーブを、次いで、密閉し、分当たり2℃の速度で180℃に、500回転/分(rpm)で撹拌しながら加熱する。一旦180℃の温度に達したところで、温度および撹拌を3時間にわたって、2.6MPaの自発性圧力に維持する。3時間後に、全てのポリプロピレンをn-ペンタン中に溶解させる。高度に着色された液相である粗ポリマー溶液を得る。
【0128】
粗ポリマー溶液を15mL取り、結晶皿中に置く。結晶皿を、次いで、オーブン中、180℃および大気圧で、窒素によりフラッシュしながら、6時間にわたって置く。
【0129】
ピンク-紫着色の固体を結晶皿中にこのように得る。得られた固体が有する色は、最初の供給原料のビーズの色に近い。
【図面の簡単な説明】
【0130】
【
図1】本発明の方法の1つの実施形態のスキームを表す。
【
図2】
図1に表された本発明による方法の実施の変形である。
【
図3】
図2に表された本発明による方法の実施の変形である。
【国際調査報告】