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特表2023-552664抗FSHR抗体及びその抗体-薬物複合体の製造並びに使用
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  • 特表-抗FSHR抗体及びその抗体-薬物複合体の製造並びに使用 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-18
(54)【発明の名称】抗FSHR抗体及びその抗体-薬物複合体の製造並びに使用
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/13 20060101AFI20231211BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20231211BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20231211BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20231211BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20231211BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20231211BHJP
   C07K 16/30 20060101ALI20231211BHJP
   C12P 21/08 20060101ALI20231211BHJP
   A61K 47/68 20170101ALI20231211BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20231211BHJP
   A61K 38/07 20060101ALI20231211BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20231211BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20231211BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20231211BHJP
【FI】
C12N15/13 ZNA
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C07K16/30
C12P21/08
A61K47/68
A61K39/395 D
A61K39/395 N
A61K38/07
A61K45/00
A61P35/00
A61P43/00 121
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023557475
(86)(22)【出願日】2021-11-18
(85)【翻訳文提出日】2023-06-02
(86)【国際出願番号】 CN2021131515
(87)【国際公開番号】W WO2022116853
(87)【国際公開日】2022-06-09
(31)【優先権主張番号】202011417088.9
(32)【優先日】2020-12-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523210434
【氏名又は名称】康威(▲広▼州)生物科技有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】余 ▲寧▼▲輝▼
(72)【発明者】
【氏名】江 旭▲亮▼
【テーマコード(参考)】
4B064
4B065
4C076
4C084
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4B064AG27
4B064CA10
4B064CA19
4B064CC24
4B064DA05
4B064DA14
4B065AA01X
4B065AA57X
4B065AA72X
4B065AA87X
4B065AB01
4B065BA02
4B065CA25
4B065CA44
4B065CA46
4C076AA95
4C076CC27
4C076CC41
4C076EE59
4C084AA02
4C084AA19
4C084BA01
4C084BA10
4C084BA14
4C084BA23
4C084MA02
4C084NA14
4C084ZB261
4C084ZB262
4C084ZC751
4C085AA13
4C085AA14
4C085BB11
4H045AA11
4H045BA10
4H045BA72
4H045DA83
4H045EA28
4H045EA51
4H045FA72
4H045FA74
(57)【要約】
抗FSHR抗体及びその抗体-薬物複合体の製造並びに使用を提供する。具体的には、本発明は抗体又はその抗原結合断片を提供し、前記抗体又はその抗原結合断片は、可変領域を含み、ヒト卵胞刺激ホルモン受容体FSHRに特異的に結合し、SEQ ID NO:6、7、5、10、11及び12に示されるアミノ酸配列を有するCDRから選択される1つ、2つ、3つ、4つ、5つ又は6つを含む。提供される抗FSHR抗体及びその抗体-薬物複合体は、癌の検出、スクリーニング、予防及び治療において広い範囲の使用の可能性を有している。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
可変領域を含み、ヒト卵胞刺激ホルモン受容体FSHRに特異的に結合し、SEQ ID NO:6、7、8、10、11及び12に示されるアミノ酸配列を有するCDRから選択される1つ、2つ、3つ、4つ、5つ又は6つを含む、抗体又はその抗原結合断片。
【請求項2】
軽鎖可変領域及び/又は重鎖可変領域を含み、SEQ ID NO:6、7及び8に示されるアミノ酸配列を有する軽鎖CDRから選択される1つ、2つ又は3つを含み、及び/又は、
SEQ ID NO:10、11及び12に示されるアミノ酸配列を有する重鎖CDRから選択される1つ、2つ又は3つを含む、ことを特徴とする請求項1に記載の抗体又はその抗原結合断片。
【請求項3】
SEQ ID NO:6、7及び8に示されるアミノ酸配列を有する軽鎖CDRと、SEQ ID NO:10、11及び12に示されるアミノ酸配列を有する重鎖CDRと、を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の抗体又はその抗原結合断片。
【請求項4】
軽鎖可変領域及び重鎖可変領域を含み、
前記軽鎖可変領域は、SEQ ID NO:5に示されるアミノ酸配列、又はSEQ ID NO:5に示されるアミノ酸配列と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列、又はSEQ ID NO:5に示されるアミノ酸配列と比較して1つ以上の保存的アミノ酸置換を有するアミノ酸配列を含み、及び/又は、
前記重鎖可変領域は、SEQ ID NO:9に示されるアミノ酸配列、又はSEQ ID NO:9に示されるアミノ酸配列と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列、又はSEQ ID NO:9に示されるアミノ酸配列と比較して1つ以上の保存的アミノ酸置換を有するアミノ酸配列を含む、ことを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合断片。
【請求項5】
軽鎖及び重鎖を含み、
前記軽鎖は、SEQ ID NO:3に示されるアミノ酸配列、又はSEQ ID NO:3に示されるアミノ酸配列と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列、又はSEQ ID NO:3に示されるアミノ酸配列と比較して1つ以上の保存的アミノ酸置換を有するアミノ酸配列を含み、及び/又は、
前記重鎖は、SEQ ID NO:4に示されるアミノ酸配列、又はSEQ ID NO:4に示されるアミノ酸配列と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列、又はSEQ ID NO:4に示されるアミノ酸配列と比較して1つ以上の保存的アミノ酸置換を有するアミノ酸配列を含む、ことを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載の抗体又はその抗体結合断片。
【請求項6】
10個以下のアミノ酸置換、欠失及び/又は付加を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合断片の変異体。
【請求項7】
下記B1)又はB2)である、請求項1-5のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合断片又は請求項6に記載の変異体に関連する生体材料:
B1): 請求項1~5のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合断片又は請求項6に記載の変異体をコードする核酸分子;
B2): B1)に記載の核酸分子を含有する発現カセット、組換えベクター、組換え細胞又は組換え微生物。
【請求項8】
請求項7に記載の生体材料であって、前記B1)の核酸分子は下記1)又は2)又は3)に示す核酸断片を含む、ことを特徴とする生体材料:
1):以下のDNA分子:
SEQ ID NO:1における第130位~第168位の核酸断片、
SEQ ID NO:1における第214位~第234位の核酸断片、
SEQ ID NO:1における第331位~第357位の核酸断片、
SEQ ID NO:2における第154位~第168位の核酸断片、
SEQ ID NO:2における第211位~第261位の核酸断片、
SEQ ID NO:2における第358位~第378位の核酸断片、
SEQ ID NO:1における第64位~第405位に示される核酸断片、
SEQ ID NO:2における第64位~第441位の核酸断片、
SEQ ID NO:1に示す核酸断片、又は
SEQ ID NO:2に示す核酸断片;
2):1)において限定された核酸断片とハイブリダイズし、かつ請求項1~5のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合断片又は請求項6に記載の変異体をコードする核酸断片;
3):1)又は2)において限定されたDNA分子と90%以上の同一性を有し、かつ請求項1~5のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合断片又は請求項6に記載の変異体をコードする核酸断片。
【請求項9】
請求項1~5のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合断片又は請求項6に記載の変異体を製造する方法であって、
請求項7における前記B1)の核酸分子を発現させることができる条件下で、培地中で前記核酸分子を含有する組換え細胞を培養することにより、前記抗体又はその抗原結合断片又は変異体を製造することを含む、方法。
【請求項10】
請求項1~5のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合断片又は請求項6に記載の変異体がリンカーを介して細胞毒性薬物と結合することにより得られる抗体-薬物複合体。
【請求項11】
前記細胞毒性薬物は化学療法剤又は毒素であり、前記毒素は好ましくはアウリスタチンであり、より好ましくはモノメチルアウリスタチンFである、ことを特徴とする請求項10に記載の抗体-薬物複合体。
【請求項12】
前記リンカーは、マレイミドアセチル又はその類似体から選択されることを特徴とする請求項10に記載の抗体-薬物複合体。
【請求項13】
1~30の範囲内にある平均薬物抗体比DARを有する、ことを特徴とする請求項10~12のいずれか一項に記載の抗体-薬物複合体。
【請求項14】
前記リンカーを前記薬物に連結することにより、前記リンカー-薬物部分を前記抗体に結合させ、前記抗体-薬物複合体を精製することを含む、請求項10~13のいずれか一項に記載の抗体-薬物複合体を製造する方法。
【請求項15】
請求項1~5のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合断片又は請求項6に記載の変異体又は請求項10~13のいずれか一項に記載の抗体-薬物複合体と、薬学的に許容される担体と、を含む医薬組成物。
【請求項16】
請求項1~5のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合断片又は請求項6に記載の変異体又は請求項10~13のいずれか一項に記載の抗体-薬物複合体の、以下(1)と(2)のいずれかの製品の製造における使用:
(1)ヒト卵胞刺激ホルモン受容体の発現を検出する製品;
(2)癌を検出、スクリーニング、予防及び/又は治療する製品。
【請求項17】
前記癌は、前立腺癌、乳癌、結腸癌、膵臓癌、膀胱癌、腎臓癌、肺癌、肝臓癌、胃癌、精巣癌及び卵巣癌である、ことを特徴とする請求項16に記載の使用。
【請求項18】
癌細胞の増殖を抑制する方法であって、前記細胞を請求項10~13のいずれか一項に記載の抗体-薬物複合体と接触させることを含む、方法。
【請求項19】
前記癌細胞は、前立腺癌細胞、乳癌細胞、結腸癌細胞、膵臓癌細胞、膀胱癌細胞、腎臓癌細胞、肺癌細胞、肝臓癌細胞、胃癌細胞、精巣癌細胞及び卵巣癌細胞である、ことを特徴とする請求項18に記載の方法。
【請求項20】
癌患者を治療する方法であって、前記患者に治療有効量の請求項10~13のいずれか一項に記載の抗体-薬物複合体を投与することを含む、方法。
【請求項21】
さらに前記患者に他の治療剤を投与することを含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記治療剤は細胞毒性剤である、ことを特徴とする請求項21に記載の方法。
【請求項23】
癌を有すると疑いがある対象を診断する方法であって、検出可能な標識が結合した請求項1-5のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合断片又は請求項6に記載の変異体を前記対象に投与し、標識された抗体又はその抗原結合断片又は変異体の前記対象における分布を検出することを含む方法。
【請求項24】
前記癌は前立腺癌、乳癌、結腸癌、膵臓癌、膀胱癌、腎臓癌、肺癌、肝臓癌、胃癌、精巣癌及び卵巣癌である、請求項20~23のいずれかの一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイオテクノロジー分野に属し、抗FSHR抗体及びその抗体-薬物複合体の製造並びに使用に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒト卵胞刺激ホルモン受容体(FSHR)は80kDのGタンパク質が結合する膜受容体である。FSHR細胞外ドメインは、1つの9-ロイシンリッチリピート(LRR)ドメイン、1つの細胞外ヒンジ、1つの7-へリックス膜貫通ドメイン及び細胞質ドメインを含む。LRRドメインはFSHの高親和性結合に機能し、ヒンジは受容体活性化を機能し、膜貫通ドメイン及び細胞質ドメインは受容体信号伝導を機能する(非特許文献1~4)。
【0003】
ヒトFSHRは主に卵巣顆粒細胞及び精巣支持細胞において発現する(非特許文献5)。FSHRの天然タンパク質リガンド組換え卵胞刺激ホルモン(FSH)は臨床において男性及び女性の不妊症を治療するために用いられている。FSHR小分子アロステリックモジュレーターもいくつか発見された(非特許文献6~9)。
【0004】
最近では、生殖腺外の一部の正常組織や腫瘍組織におけるFSHR発現が検出されている。FSHRは、人間の女性の生殖管、胎盤(非特許文献10)、破骨細胞(非特許文献11)、脂肪細胞(非特許文献12)、軟骨細胞(非特許文献13)、良性前立腺肥大、前立腺癌(非特許文献13)及び卵巣癌(非特許文献14)において転写される。FSH受容体は、内皮細胞により前立腺、乳腺、結腸、膵臓、膀胱、腎臓、肺臓、肝臓、胃、精巣及び卵巣に位置する様々な腫瘍を患う患者の組織サンプルにおいても発現する(非特許文献15)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Jiang,X.et al.Structural predictions for the ligand-binding region of glycoprotein hormone receptors and the nature of hormone-receptor interactions.Structure 3,1341-1353(1995).
【非特許文献2】Jiang,X.et al.Structure of follicle-stimulating hormone in complex with the entire ectodomain of its receptor.Proc.Natl.Acad.Sci.109,12491-12496(2012).
【非特許文献3】Jiang,X.,Dias,J.A.&He,X.Structural biology of glycoprotein hormones and their receptors:Insights to signaling.Mol.Cell.Endocrinol.382,424-451(2014).
【非特許文献4】Jiang,X.et al.Evidence for follicle-stimulating hormone receptor as a functional trimer.J.Biol.Chem.289,14273-14282(2014).
【非特許文献5】Sprengel,R.,Braun,T.,Nikolics,K.,Segaloff,D.L.&Seeburg,P.H.The Testicular Receptor for Follicle Stimulating Hormone:Structure and Functional Expression of Cloned cDNA.Mol.Endocrinol.4,525-530(1990).
【非特許文献6】Henry,N.Y.et al.Discovery of substituted benzamides as follicle stimulating hormone receptor allosteric modulators.Bioorg.Med.Chem.Lett.24,2168-2172(2014).
【非特許文献7】Sriraman,V.et al.Investigation of a thiazolidinone derivative as an allosteric modulator of follicle stimulating hormone receptor:evidence for its ability to support follicular development and ovulation.Biochem.Pharmacol.89,266-275(2014).
【非特許文献8】Nataraja,S.G.,Yu,H.N.&Palmer,S.S.Discovery and development of small molecule allosteric modulators of glycoprotein hormone receptors.Front.Endocrinol.(Lausanne).6,142(2015).
【非特許文献9】Vannier,B.,Loosfelt,H.,Meduri,G.,Pichon,C.&Milgrom,E.Anti-human FSH receptor monoclonal antibodies:immunochemical and immunocytochemical characterization of the receptor.Biochemistry 35,1358-1366(1996).
【非特許文献10】Stilley,J.A.W.et al.FSH receptor(FSHR)expression in human extragonadal reproductive tissues and the developing placenta,and the impact of its deletion on pregnancy in mice.Biol.Reprod.91,71-74(2014).
【非特許文献11】Sun,L.et al.FSH Directly Regulates Bone Mass.Cell 125,247-260(2006).
【非特許文献12】Liu,P.et al.Blocking FSH induces thermogenic adipose tissue and reduces body fat.Nature 546,107(2017).
【非特許文献13】Kong,D.et al.Expression of FSHR in chondrocytes and the effect of FSH on chondrocytes.Biochem.Biophys.Res.Commun.495,587-593(2018).
【非特許文献14】Perales-Puchalt,A.et al.Follicle-stimulating hormone receptor is expressed by most ovarian cancer subtypes and is a safe and effective immunotherapeutic target.Clin.Cancer Res.23,441-453(2017).
【非特許文献15】Radu,A.et al.Expression of follicle-stimulating hormone receptor in tumor blood vessels.N.Engl.J.Med.363,1621-1630(2010).
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
腫瘍周囲の血管、前立腺癌及び卵巣癌に共通するFSHR標識のため、抗FSHRヒト化抗体は原則として様々な腫瘍タイプに好適なものであるべきである。現在、市場では承認されているFSHRを対象とする癌治療用の抗体薬物が存在しない。明らかに、様々な癌を効果的に治療できる新規な抗FSHR抗体を発明する必要がある。したがって、癌の検出、スクリーニング及び治療に用いられ、より低い毒性や副作用、より優れた臨床薬効を有する新規な抗FSHRモノクローナル抗体及びその抗体-薬物複合体(ADC)の開発が急務となっている。それにより、患者にはより多くの薬物の選択が提供される。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一態様では、本発明は抗体又はその抗原結合断片を提供し、前記抗体又はその抗原結合断片は、可変領域を含み、ヒト卵胞刺激ホルモン受容体FSHRに特異的に結合し、SEQ ID NO:6、7、8、10、11及び12に示されるアミノ酸配列を有するCDRから選択される1つ、2つ、3つ、4つ、5つ又は6つを含む。
【0008】
いくつかの実施形態では、前記抗体又はその抗原結合断片は、軽鎖可変領域及び/又は重鎖可変領域を含み、前記抗体又はその抗原結合断片は、SEQ ID NO:6、7及び8に示されるアミノ酸配列を有する軽鎖CDRから選択される1つ、2つ又は3つを含み、及び/又は、
前記抗体又はその抗原結合断片は、SEQ ID NO:10、11及び12に示されるアミノ酸配列を有する重鎖CDRから選択される1つ、2つ又は3つを含む。
【0009】
いくつかの実施形態では、上記いずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合断片おいて、前記抗体又はその抗原結合断片は、SEQ ID NO:6、7及び8に示されるアミノ酸配列を有する軽鎖CDRと、SEQ ID NO:10、11及び12に示されるアミノ酸配列を有する重鎖CDRと、を含む。
【0010】
いくつかの実施形態では、前記抗体又はその抗原結合断片は単離された抗体又はその抗原結合断片である。
【0011】
いくつかの実施形態では、前記抗体又はその抗原結合断片はマウス抗体、キメラ抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体又はその抗原結合断片である。
【0012】
いくつかの実施形態では、上記いずれか一形態の抗体又はその抗原結合断片は、軽鎖可変領域及び重鎖可変領域を含み、
前記軽鎖可変領域は、SEQ ID NO:5に示されるアミノ酸配列、又はSEQ ID NO:5に示されるアミノ酸配列と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列、又はSEQ ID NO:5に示されるアミノ酸配列と比較して1つ以上の保存的アミノ酸置換を有するアミノ酸配列を含み、及び/又は、
前記重鎖可変領域は、SEQ ID NO:9に示されるアミノ酸配列、又はSEQ ID NO:9に示されるアミノ酸配列と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列、又はSEQ ID NO:9に示されるアミノ酸配列と比較して1つ以上の保存的アミノ酸置換を有するアミノ酸配列を含む。
【0013】
いくつかの実施形態では、前記抗体又はその抗原結合断片は、IgG1サブクラス、IgG2Aサブクラス、IgG2Bサブクラス、IgG2Cサブクラス又はIgG3サブクラスから選択されるマウスIgGアイソタイプであり、従来の方法でヒト化を行うことができる。
【0014】
いくつかの実施形態では、前記抗体又はその抗原結合断片は、軽鎖と重鎖を含み、
前記軽鎖は、SEQ ID NO:3に示されるアミノ酸配列、又はSEQ ID NO:3に示されるアミノ酸配列と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列、又はSEQ ID NO:3に示されるアミノ酸配列と比較して1つ以上の保存的アミノ酸置換を有するアミノ酸配列を含み、及び/又は、
前記重鎖は、SEQ ID NO:4に示されるアミノ酸配列、又はSEQ ID NO:4に示されるアミノ酸配列と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列、又はSEQ ID NO:4に示されるアミノ酸配列と比較して1つ以上の保存的アミノ酸置換を有するアミノ酸配列を含む。
【0015】
別の態様では、本発明は、上記いずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合断片の変異体であって、10個以下のアミノ酸置換、欠失及び/又は付加を含み、例えば1つ、2つ又は3つの保存的アミノ酸置換、欠失及び/又は付加を含み、例えばFR領域でのアミノ酸置換、欠失及び/又は付加を含み、又は少なくとも1つの置換、欠失及び/又は付加がCDR領域にある、抗体又はその抗原結合断片の変異体をさらに提供する。
【0016】
いくつかの実施形態では、前記アミノ酸の置換、欠失及び/又は付加は、オリゴヌクレオチド誘発部位特異的突然変異、カセット突然変異、縮重オリゴヌクレオチドプライマーPCR、エラープローンPCR、DNAシャッフリング及び細菌ミューテーター株から選択される方法で行われるオリゴヌクレオチド突然変異により実現される。
【0017】
別の態様では、本発明は、下記B1)又はB2)である、上記いずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合断片又は上記変異体に関連する生体材料、をさらに提供する。
B1): 上記いずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合断片又は上記変異体をコードする核酸分子
B2): B1)に記載の核酸分子を含有する発現カセット、組換えベクター、組換え細胞又は組換え微生物
いくつかの実施形態では、上記生体材料において、B1)に記載の核酸分子は、cDNA、ゲノムDNA又は組換えDNAなどのDNAであってもよい。前記核酸分子は、mRNA又はhnRNAなどのRNAであってもよい。
【0018】
当業者は、既知の方法、例えば定向進化及び点突然変異の方法で、容易に本発明のヌクレオチド配列を突然変異させることができる。人工的に修飾された、本発明のヌクレオチド配列とある程度の同一性を有するヌクレオチドは、前記抗体又はその抗原結合断片又は変異体をコードし、かつ前記抗体又はその抗原結合断片又は変異体の機能を有するものであれば、いずれも本発明のヌクレオチド配列から誘導され、本発明の配列と同等である。
【0019】
本明細書において使用される「同一性」という用語は、核酸配列との配列類似性を意味する。「同一性」は、肉眼又はコンピュータソフトウェアで評価することができる。コンピュータソフトウェアを使用して、二つ又は複数の配列の間の同一性を百分率(%)で表すことができ、それは関連配列間の同一性を評価するために用いることができる。
【0020】
いくつかの実施形態では、上記生体材料において、B2)に記載の、B1)に記載の核酸分子を含有する発現カセットは、宿主細胞において前記抗体又はその抗原結合断片又は変異体を発現することができるDNAを指し、該DNAが前記抗体又はその抗原結合断片又は変異体をコードする遺伝子転写を開始するプロモーターを含むこともできるだけでなく、前記抗体又はその抗原結合断片又は変異体をコードする遺伝子転写を停止するターミネーターを含むこともできる。さらに、前記発現カセットはエンハンサー配列を含んでもよく、
従来の発現ベクターを用いて、前記抗体又はその抗原結合断片又は変異体をコードする核酸分子を含有する組換えベクターを構築することができ、従来の発現ベクターは、例えばpcDNA 3.1ベクターがあり、軽鎖発現ベクターはpcDNA3.1_CAN001 LCであってもよく、重鎖発現ベクターはpcDNA3.1_CAN001 HCであってもよく、
前記ベクターは、プラスミド、コスミド、ファージ又はウイルスベクターであってもよい。
【0021】
前記組換え微生物は、具体的には細菌、藻類及び真菌であってもよく、細菌は大腸菌であってもよく、
前記組換え細胞は非繁殖材料である。
【0022】
いくつかの実施形態では、上記生体材料において、前記核酸分子は下記1)又は2)又は3)に示す核酸断片を含む。
【0023】
1):以下のDNA分子:
SEQ ID NO:1の第130位~第168位に示す核酸断片、
SEQ ID NO:1の第214位~第234位に示す核酸断片、
SEQ ID NO:1の第331位~第357位に示す核酸断片、
SEQ ID NO:2の第154位~第168位に示す核酸断片、
SEQ ID NO:2の第211位~第261位に示す核酸断片、
SEQ ID NO:2の第358位~第378位に示す核酸断片、
SEQ ID NO:1の第64位~第405位に示す核酸断片、
SEQ ID NO:2の第64位~第441位に示す核酸断片、
SEQ ID NO:1に示す核酸断片、又は
SEQ ID NO:2に示す核酸断片
2):1)において限定された核酸断片とハイブリダイズし、かつ上記いずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合断片又は上記変異体をコードする核酸断片
3):1)又は2)において限定されたDNA分子と90%以上の同一性を有し、かつ上記いずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合断片又は上記変異体をコードする核酸断片
別の態様において、本発明は上記いずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合断片又は上記変異体を製造する方法を提供する。前記方法は、
上記B1)に記載の核酸分子を発現させることができる条件下で、培地中で前記核酸分子を含有する組換え細胞を培養することにより、前記抗体又はその抗原結合断片又は変異体を製造することを含む。
【0024】
いくつかの実施形態では、軽鎖発現ベクターpcDNA3.1_CAN001 LCと重鎖発現ベクターpcDNA3.1_CAN001を共にHEK293T細胞にトランスフェクトし、トランスフェクトされたHEK293T細胞を培養し、上清を収集して、前記抗体又はその抗原結合断片又は変異体を得る。好ましくは、CAN001重鎖及び軽鎖をコードするベクターpcDNA3.1_CAN001 HC及びpcDNA3.1_CAN001 LC(質量比1:2)と、25kD線状PEIポリマー(polyscience)とを用いて、ベクターのポリマー対する質量比が1:3という比率で、HEK 293 T細胞をコトランスフェクトする。
【0025】
いくつかの実施形態では、上清を収集した後にさらに精製して前記抗体又はその抗原結合断片又は変異体を得ることができ、精製はprotein-Aアフィニティークロマトグラフィー(Genscript)を採用することができる。
【0026】
別の態様では、本発明は、上記いずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合断片又は上記変異体がリンカーを介して細胞毒性薬物と結合することにより得られる抗体-薬物複合体をさらに提供する。前記抗体-薬物複合体により、前記抗体又はその抗原結合断片又は変異体が、標的細胞の表面のヒト卵胞刺激ホルモン受容体FSHRに標的に結合し、前記抗体又はその抗原結合断片又は変異体が薬物と共に標的細胞の内部に取り込まれる。
【0027】
本明細書において使用される「薬物」又は「D」という用語は、細胞毒性薬物を指し、実例は化学療法剤及び毒素を含む。特に、「薬物」は以下(a)~(o)から独立して選択することができる。(a)カンプトテシン誘導体及び代謝産物(例えば、SN-38)。他には、ジフテリア毒素、ボツリヌストキシン、テタヌストキシン、赤痢毒素、コレラ毒素、アマニチン、O-アマニチン、アマニチン誘導体、ピロロベンゾジアゼピン、ピロロベンゾジアゼピン誘導体、テトロドトキシン、ブレベトキシン、シガトキシン、リシン、AM毒素、ツブリシン、ゲルダナマイシン、メイタンシノール、カリケアマイシン、ダウノマイシン、ドキソルビシン、メトトレキサート、ビンデシン、SG2285、ドラスタチン、ドラスタチン類似体、アウリスタチン類(例えばモノメチルアウリスタチンE及びモノメチルアウリスタチンF)、クリプトフィシン、カンプトテシン、リゾキシン、リゾキシン誘導体、CC-1065、CC-1065類似体又は誘導体、デュオカルマイシン、エンジイン抗生物質、ラマイシン、エポチロン、アゾナフィド(azonafide)、アプリジン(aplidine)、類毒素、又は上記のいずれかの組合せを含む;(b)エルロチニブ、ボルテゾミブ、フルベストラント、スーテント、レトロゾール、メシル酸イマチニブ、PTK787/ZK 222584、オキサリプラチン、5-フルオロウラシル、フォリン酸、ラパマイシン、ラパチニブ、ロナファルニブ(lonafarnib)、ソラフェニブ、ゲフィチニブ、AG1478、AG1571、チオテパ、シクロホスファミド、ブスルファン、インプロスルファン、ピポスルファン、ベンゾドーパ(benzodopa)、カルボクオン、メツレドーパ(meturedopa)、ウレドーパ(uredopa)、エチレンイミン、アルトレタミン、トレタミン、トリエチレンホスホルアミド(trietylenephosphoramide)、riethiylenethiophosphoramide、トリメチロールメラミン(trimethylolomelamine)、ブラタシン、ブラタシノン、amptothecin、トポテカン、ブリオスタチン、カリスタチン(callystatin)、CC-1065、アドゼレシン、カルゼレシン、ビゼレシン、クリプトフィシン1、クリプトフィシン8、ドラスタチン、デュオカルマイシン、KW-2189、CB1-TM1、エリュテロビン、パンクラチスタチン(pancratistatin)、サルコジクチイン(sarcodictyin)、スポンジスタチン、クロラムブシル、クロルナファジン、コロホスファミド(cholophosphamide)、エストラムスチン、イホスファミド、ナイトロジェンマスタード、メルファラン、ノベンビチン、フェネステリン、プレドニムスチン、トロホスファミド、ウラシルマスタード、カルムスチン、クロロゾトシン、フォテムスチン、ロムスチン、ニムスチン、ラニムスチン、カリケアマイシン、カリケアマイシンγ1、カリケアマイシン ω1、ダイネミシン、ダイネミシン A、クロドロネート、ラマイシン、ネオカルジノスタチンクロモフォア、アクラシノマイシン(aclacinomysins)、アクチノマイシン、アンチマイシン、アザセリン、ブレオマイシン、アクチノマイシンC、カラビシン、カルニノマイシン(carninomycin)、カルジノフィリン(carzinophilin)、クロモマイシン、アクチノマイシンD、ダウノマイシン、デトルブシン(detorubucin)、6-ジアゾ-5-オキソ-L-ノルロイシン、ドキソルビシン、モルホリノ-ドキソルビシン、シアノモルホリノ-ドキソルビシン、2-ピロリノ-ドキソルビシン、リポソームドキソルビシン、デオキシドキソルビシン、エピルビシン、エソルビシン、マルセロマイシン、マイトマイシンC、ミコフェノール酸、ノガラマイシン、オリボマイシン、ペプロマイシン、ポトフィロマイシン(potfiromycin)、ピューロマイシン、ケラマイシン(quelamycin)、ロドルビシン、ストレプトニグリン、ストレプトゾトシン、ツベルシジン、ウベニメクス、ジノスタチン、ゾルビシン、5-フルオロウラシル、デノプテリン、メトトレキサート、プテロプテリン、トリメトレキサート、フルダラビン、6-メルカプトプリン、チアミプリン、チオグアニン、アンシタビン、アザシチジン、6-アザウリジン、カルモフール、シタラビン、ジデオキシウリジン、ドキシフルリジン、エノシタビン、フロクスウリジン、カルステロン、プロピオン酸ドロモスタノロン、エピチオスタノール、メピチオスタン、テストラクトン、アミノグルテチミド、ミトタン、トリロスタン、フォリン酸、アセグラトン、アルドホスファミドグリコシド(aldophosphamide glycoside)、アミノレブリン酸、エニルウラシル、アムサクリン、ベストラブシル(bestrabucil)、ビサントレン、エダトレキサート、デフォファミン(defofamine)、デメコルシン、ジアジクオン、エルフォルニチン、酢酸エリプチニウム、エトグルシド、硝酸ガリウム、ヒドロキシ尿素、レンチナン、ロニダイニン(lonidainine)、メイタンシン、アンサマイトシン、ミトグアゾン、ミトキサントロン、モピダンモール(mopidanmol)、ニトラエリン、ペントスタチン、フェナメット(phenamet)、ピラルビシン、ロソキサントロン、2-エチルヒドラジド、プロカルバジン、ポリサッカライドK、ラゾキサン、リゾキシン、シゾフィラン、スピロゲルマニウム、テヌアゾン酸(tenuazonic acid)、トリアジコン、2,2’,2’’-トリクロロトリエチルアミン、T-2トキシン、ベラキュリンA、ロリジンA、アングイジン、ウレタン、ビンデシン、ダカルバジン、マンノムスチン、ミトブロニトール、ジブロモズルシトール、ピポブロマン、ガシトシン、アラビノシド、シクロホスファミド、チオテパ、パクリタキセル、パクリタキセルのアルブミン改変ナノ粒子製剤、ドセタキセル、クロラムブシル、ゲムシタビン、6-チオグアニン、メルカプトプリン、シスプラチン、カルボプラチン、ビンブラスチン、白金、エトポシド、イホスファミド、ミトキサントロン、ビンクリスチン、ビノレルビン、ミトキサントロン、テニポシド、エダトレキサート(edatrexate)、ダウノマイシン、アミノプテリン、ゼローダ、イバンドロネート、CPT-11、トポイソメラーゼ阻害剤 RFS 2000、ジフルオロメチルオルニチン、レチノイン酸、カペシタビン、又は上記の何れかの薬学的に許容される塩類、溶媒和物若しくは酸類;(c)親和性リガンドであって、基質、阻害剤、刺激剤、神経伝達物質、放射性同位体又は上記のいずれかの組合せであるもの;(d)放射性標識「P」、「S」、蛍光色素、電子密度試薬、酵素、ビオチン、ストレプトアビジン、ジゴキシン、ハプテン、免疫原性タンパク質、標的に相補的な配列を有する核酸分子、又は上記のいずれかの組合せ;(e)免疫調節化合物、抗癌剤、抗ウイルス剤、抗細菌剤、抗真菌剤及び抗寄生虫剤又は上記のいずれかの組合せ;(f)タモキシフェン、ラロキシフェン、ドロロキシフェン、4-ヒドロキシタモキシフェン、トリオキシフェン、ケオキシフェン(keoxifene)、LY117018、オナプリストーン(onapristone)、又はトレミフェン;(g) 4(5)-イミダゾール、アミノグルテチミド、酢酸メゲステロール、エキセメスタン、レトロゾール又はアナストロゾール(astrozole);(h)フルタミド、ニルタミド、ビカルタミド、ロイプロリド、ゴセレリン又はトロキサシタビン(i)アロマターゼ阻害剤(j)プロテインキナーゼ阻害剤(k)脂質キナーゼ阻害剤(l)アンチセンスオリゴヌクレオチド(m)リボザイム(n)ワクチン(o)血管新生阻害剤いくつかの実施形態では、前記毒素は好ましくはアウリスタチンであり、より好ましくはモノメチルアウリスタチンF(MMAF)である。
【0028】
いくつかの実施形態では、上記いずれか一項に記載の抗体-薬物複合体において、前記リンカーはマレイミドアセチル(mc)又はその類似体から選択される。
【0029】
いくつかの実施形態では、上記いずれか一項に記載の抗体-薬物複合体において、前記抗体-薬物複合体は、1~30の範囲内にある平均薬物抗体比DARを有し、例えば1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30及び任意の2つの上記数値の間にある平均薬物抗体比DAR、例えば5~6の平均薬物抗体比DARを有する。
【0030】
別の態様では、本発明は、さらに上記いずれか一項に記載の抗体-薬物複合体を製造する方法をさらに提供する。前記方法は、前記リンカーを前記薬物に連結することにより、前記リンカー-薬物部分を前記抗体に結合させ、前記抗体-薬物複合体を精製することを含む。
【0031】
抗体-薬物複合体を製造するための他の方法は、様々な出版物において記載されている。例えば、コンジュゲーション反応を発生させるために、鎖間のジスルフィド結合を還元することによって活性化されたシステインスルフヒドリル基を通じて化学修飾を行うことができる。
【0032】
いくつかの実施形態では、上記抗体-薬物複合体において、前記細胞毒性薬物はMC-MMAF(Maleimidocaproyl monomethylauristatin F,マレイミドカプロイル-モノメチルアウリスタチンF)であり、それが上記いずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合断片又は上記変異体のシステインのS原子に連結することで、抗体-薬物複合体が得られる。好ましくは、上記いずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合断片又は上記変異体を、TCEP(トリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン)の作用で還元させ、システインのS原子を露出させ、さらに薬物リンカーMC-MMAFを該硫黄原子に連結することにより、結合を実現し、サンプルを、illustra NAP-10カラム(GE Healthcare社から購入)により精製する。
【0033】
別の態様では、本発明は、上記いずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合断片又は上記変異体又は上記いずれか一項に記載の抗体-薬物複合体と、薬学的に許容される担体と、を含む医薬組成物をさらに提供する。
【0034】
別の態様において、本発明はさらに、上記いずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合断片又は上記変異体又は上記いずれか一形態に記載の抗体-薬物複合体の、以下(1)と(2)のいずれかの製品の製造における使用を提供する。
【0035】
(1)ヒト卵胞刺激ホルモン受容体の発現を検出する製品
(2)癌を検出、スクリーニング、予防及び/又は治療する製品
いくつかの実施形態では、上記使用において、前記癌は前立腺癌、乳癌、結腸癌、膵臓癌、膀胱癌、腎臓癌、肺癌、肝臓癌、胃癌、精巣癌及び卵巣癌である。
【0036】
別の態様では、本発明は、上記いずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合断片又は変異体又は上記いずれか一項に記載の抗体-薬物複合体を含むキットをさらに提供する。
【0037】
別の態様において、本発明は、癌細胞の増殖を抑制する方法であって、前記細胞を上記いずれか一項に記載の抗体-薬物複合体と接触させることを含む方法、をさらに提供する。
【0038】
いくつかの実施形態では、前記癌細胞は、前立腺癌細胞、乳癌細胞、結腸癌細胞、膵臓癌細胞、膀胱癌細胞、腎臓癌細胞、肺癌細胞、肝臓癌細胞、胃癌細胞、精巣癌細胞及び卵巣癌細胞である。
【0039】
別の態様では、本発明は、癌患者を治療する方法であって、前記患者に治療有効量の上記いずれか一項に記載の抗体-薬物複合体を投与することを含む方法、をさらに提供する。
【0040】
いくつかの実施形態では、上記方法において、前記癌は、前立腺癌、乳癌、結腸癌、膵臓癌、膀胱癌、腎臓癌、肺癌、肝臓癌、胃癌、精巣癌及び卵巣癌である。
【0041】
いくつかの実施形態では、上記いずれか一項に記載の方法はさらに前記患者に他の治療剤を投与することを含む。好適な治療剤は従来の特定の使用(例えば癌)のための薬物及び/又は手術療法を含む。例えば、前記抗体-薬物複合体を一種又は複数の他の化学療法又は抗腫瘍剤と併用する。又は、他の治療剤は放射線療法である。
【0042】
いくつかの実施形態では、前記治療剤は細胞毒性剤である。
【0043】
他の態様では、本発明は、癌を有すると疑いがある対象を診断する方法を提供し、前記方法は、検出可能な標識が結合した上記いずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合断片又は変異体を前記対象に投与し、標識された抗体又はその抗原結合断片又は変異体の前記対象における分布を検出することを含む。
【0044】
当業者であれば、本発明の抗体又はその抗原結合断片又は変異体又は抗体-薬物複合体が様々な用途を有し、例えば、本発明の抗体-薬物複合体が治療剤として用いられ、本発明の抗体又はその抗原結合断片又は変異体が診断キットにおける試薬又は診断ツールとして用いられることを理解すべきであろう。
【0045】
本発明に係る抗FSHR抗体CAN001はFSHRと特異的に結合することができ、それに基いて得られたCAN001抗体-薬物複合体CAN001-MC-MMAFは、癌細胞に対して顕著な殺傷効果を有する。本発明に係る抗FSHR抗体及びその抗体-薬物複合体は、癌の検出、スクリーニング及び治療において広い範囲の使用の可能性を有している。
【図面の簡単な説明】
【0046】
図1】pMSGβ3_FSHRプラスミドプロファイルである。
図2】CAN001抗体を含有する上清がFSHR発現細胞を特異的に染色するが、GFP発現細胞を染色しないことを示す。
図3】最適なCAN001上清のスクリーニング。
図4】CAN001による人胎盤に対するIHC染色。
図5】CAN001による卵巣癌組織及び隣接組織に対するIHC染色。
図6】CAN001-MC-MMAFの疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)である。
図7】CAN001-MC-MMAFのサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)である。
【発明を実施するための形態】
【0047】
以下、特定の具体的な実施形態により本発明を説明するが、当業者は本明細書に開示された内容から本発明の利点及び効果を容易に理解することができる。本発明は、さらに他の異なる具体的な実施形態で実施又は使用してもよく、本明細書における各詳細も、異なる観点及び使用に基づいて、本発明の主旨から逸脱することなく様々な修飾又は変更を行うことができる。本発明の保護範囲は下記特定の具体的な実施形態に限定されないことは、理解されるであろう。また、本発明の実施例において使用される用語は特定の具体的な実施形態を説明するためのものであり、本発明の保護範囲を限定するためのものではないことも、理解されるであろう。
【0048】
実施例において数値範囲を示した場合、理解すべきことは、本発明が他の説明をしない限り、各数値範囲の両端及び両端間の任意の数値が選択可能である。特に定義しない限り、本発明に使用されるすべての技術及び科学用語は当業者が一般的に理解する意味と同じである。実施例で使用された具体的な方法、装置、材料以外に、当業者の従来技術に対する把握及び本発明の記載に基づき、本発明の実施例に記載の方法、装置、材料と類似又は同等の、従来技術による任意の方法、装置及び材料を使用して本発明を実現することもできる。
【0049】
特に断らない限り、本発明において開示された実験方法、検出方法、製造方法は、いずれも本技術分野の一般的な分子生物学、生物化学、染色質構造及び分析、分析化学、細胞培養、組換えDNA技術及び関連分野の通常の技術を採用する。これらの技術は従来の文献において完備して説明され、具体的には、Sambrookら,MOLECULAR CLONING:A LABORATORY MANUAL,第二版,冷泉港実験室出版社,1989及び第三版,2001、Ausubelら,CURRENT PROTOCOLS IN MOLECULAR BIOLOGY,John Wiley&Sons,ニューヨーク,1987及びperiodic updates:the series METHODS ENZYMOLOGY,学術出版社,サンティアゴ、Wolffe,CHROMATIN STRUCTURE AND FUNCTION,第三版,学術出版社,サンティアゴ,1998、METHODS IN ENZYMOLOGY,第304巻,Chromatin(P.M.Wassarman及びA.P.Wolffe、eds.),学術出版社,サンティアゴ,1999、及びMETHDS IN MOLECULAR BIOLOGY,第119巻,Chromatin Protocols(P.B.Becker、ed.),ヒューマナ出版,トトワ,1999、等、を参照することができる。
【0050】
本明細書において使用される「抗体」という用語は、免疫グロブリン(Ig)分子と、免疫グロブリン分子の免疫学的に活性な部分、すなわち抗原に特異的に結合する(それと免疫反応する)抗原結合部位を含む分子、を意味する。「特異的に結合」又は「免疫反応が発生」又は「対象とする」とは、抗体が標的抗原の1つ又は複数の抗原決定クラスターとは反応するが、他のポリペプチドとは反応しないか又は非常に低い親和性(Kd>10-6g/ml)で他のポリペプチドと結合することを意味する。抗体はモノクローナル抗体、キメラ抗体、dAb(ドメイン抗体)、一本鎖抗体、Fab、Fab’及びF(ab’)2断片、Fv及びFab発現ライブラリーを含むがこれらに限定されない。
【0051】
基本的な抗体構造単位は四量体を含むことが知られている。各四量体(又は「全抗体」と呼ばれる)は二対の同じポリペプチド鎖で構成され、各対は一本の「軽」鎖及び一本の「重」鎖を有する。各鎖のアミノ末端部分は約100~110個以上のアミノ酸の可変領域を含み、主に抗原認識を担う。各鎖のカルボキシル末端部分は、主にエフェクター機能を担う定常領域を規定する。一般的に、ヒトから取得された抗体分子はIgG、IgM、IgA、IgE及びIgDのうちの何れかクラスに関し、これらは分子中に存在する重鎖の性質により互いに異なる。特定のクラスは、IgG1、IgG2、及び他のサブクラスのようなサブクラスを更に有する。また、ヒトでは、軽鎖はκ鎖又はλ鎖でありうる。
【0052】
本明細書において使用される「モノクローナル抗体」(mAb)という用語は、特別な軽鎖遺伝子産物と特別な重鎖遺伝子産物とから構成された抗体分子の1つの分子種のみを含有する抗体分子の集団のことを意味する。具体的には、モノクローナル抗体の相補決定領域(CDR)は集団の分子のすべてで同じである。mAbは、抗原の特定のエピトープと免疫反応することが可能な抗原結合部位を含有する。
【0053】
本明細書において使用される「特異的に結合」という用語は、免疫グロブリン分子と、その免疫グロブリンが特異的である抗原との間に起こるタイプの非共有相互作用を言及する。免疫学的結合相互作用の強度又は親和性は、相互作用の解離定数(Kd)で表すことができ、Kdが小さいほど大きい親和性を表す。選択されたポリペプチドの免疫学的結合特性は、当該技術分野では周知の方法を用いて定量化することができる。
【0054】
本明細書において使用される「相補決定領域」及び「CDR」という用語は、抗体のHC及びLCペプチドの可変領域内において見出される非隣接的な抗原結合部位を意味することを意図する。これらの特定の領域について、Kabatら,Ann.NY Acad.Sci.190:382-93(1971)、Kabatら,J.Biol.Chem.252:6609-6616(1977)、Kabatら,Sequences of Proteins of Immunological Interest,第5版,U.S.Department of Health and Human Services、NIH Publication No.91-3242(1991)、Chothiaら,J.Mol.Biol.196:901-917(1987)、MacCallumら,J.Mol.Biol.、262:732-745(1996)、及びNorthら,J.Mol.Biol.、406、228-256(2011)を含む他者によって記載されており、ここで、定義は、互いに比較した場合のアミノ酸残基の重複又はサブセットを含む。
【0055】
CDRは、フレームワーク領域(「FR」)と呼ばれる、より保存される領域に散在している。各LCVR及びHCVRは、3つのCDR及び4つのFRで構成され、FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4という順にアミノ末端からカルボキシル末端まで配列される。軽鎖の3つのCDRは「LCDR1、LCDR2及びLCDR3」と称され、重鎖の3つのCDRは「HCDR1、HCDR2及びHCDR3」と称される。CDRは、抗原と特異的な相互作用が発生する大多数の残基を含む。本発明におけるLCVR及びHCVR領域内のCDRアミノ酸残基の番号及び位置はKabatの定義に従う。
【0056】
「単離された」抗体は、その天然の環境の成分から単離及び/又は回収された抗体である。その天然の環境の夾雑成分は、診断又は治療における抗体の使用を阻害する物質であり、かつ酵素、ホルモン、及び他のタンパク質性若しくは非タンパク質性溶質を含むことができる。いくつかの実施形態では、(1)前記抗体の重量百分率が95%超、例えばLowry法により99%超と測定されるまで、(2)スピニングカップシーケネーターを使用してN末端アミノ酸配列若しくは内部アミノ酸配列の少なくとも15残基を得るのに充分な程度まで、又は(3)クマシーブルー若しくは銀染色を用いた還元又は非還元条件下でのSDS-PAGEにより均一性が測定されるまで、前記抗体を精製する。単離された抗体は、組換え細胞内のインサイチュ抗体を含む。一般的に、単離された抗体は少なくとも1つの精製工程により調製される。いくつかの実施形態では、単離された抗体の純度は少なくとも約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、約95%、約99%、又はこれらの数値のうちの任意の2つの値の間の範囲(終点を含む)又はそのうちの任意の値である。
【0057】
「配列同一性」という用語は、2個のポリヌクレオチド又はアミノ酸配列同士が比較ウインドウにわたって同一である(すなわちヌクレオチド対ヌクレオチド又は残基対残基で同一である)ことを意味する。「配列同一性百分率」という用語は、2個の最適に整列された配列同士を比較ウインドウにわたって比較し、同じ核酸塩基(例えばA、T、C、G、又はU)又はアミノ酸残基が両方の配列に生じる位置の数を求めることにより、一致した位置の数を得て、一致した位置の数を比較ウインドウ内の位置の総数(すなわちウインドウサイズ)で割り、その結果に100を掛けて配列同一性百分率を得ることによって計算される。
【0058】
抗体又は免疫グロブリン分子のアミノ酸配列のわずかな変異は、アミノ酸配列の変異が少なくとも75%、例えば少なくとも80%、90%、95%、又は99%の同一性を維持しているという条件で、本開示に包含されるものとみなされる。いくつかの実施形態では、変化は保存的アミノ酸置換である。保存的アミノ酸置換は、その側鎖において関連するアミノ酸ファミリー内で起こる置換である。遺伝子にコードされるアミノ酸は、大きく以下の種類に分けられる。(1)酸性アミノ酸は、アスパラギン酸塩、グルタミン酸塩であり、(2)塩基性アミノ酸は、リジン、アルギニン、ヒスチジンであり、(3)非極性アミノ酸は、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファンであり、及び(4)極性無電荷アミノ酸は、グリシン、アスパラギン、グルタミン、システイン、セリン、トレオニン、チロシンである。アミノ酸の他のファミリーについて、(i)脂肪族-ヒドロキシファミリーであるセリン及びトレオニン、(ii)アミド含有ファミリーであるアスパラギン及びグルタミン、(iii)脂肪族ファミリーのアラニン、バリン、ロイシン及びイソロイシン、並びに(iv)芳香族ファミリーであるフェニルアラニン、トリプトファン、及びチロシン、が挙げられる。いくつかの実施形態では、保存的アミノ酸置換群は、バリン-ロイシン-イソロイシン、フェニルアラニン-チロシン、リジン-アルギニン、アラニン-バリン、グルタミン酸-アスパラギン酸、及びアスパラギン-グルタミンである。例えば、イソロイシン若しくはバリンによるロイシンの単独の置換、グルタミン酸塩によるアスパラギン酸塩の置換、セリンによるトレオニンの置換、又は構造的に関連したアミノ酸によるあるアミノ酸の同様の置換が、特にこうした置換には結合部位内のアミノ酸が参加しない場合、得られる分子の結合又は性質に大きな影響を及ぼさないであろうと予想することは合理的である。アミノ酸の改変が機能性ペプチドを産生するか否かは、ポリペプチド誘導体の比活性を測定することにより容易に判定することができる。前記測定は本明細書において詳細に述べている。抗体又は免疫グロブリン分子の断片若しくは類似体は、当業者によって容易に調製することができる。
【0059】
「薬学的に許容される」という用語は、ヒト及び/又は動物の使用に適して、かつ、合理的な利益/リスク比に相当する過剰な副作用(例えば毒性、刺激及びアレルギー反応)がない成分を意味する。
【0060】
「担体」という用語は、活性成分と共に使用される治療用の希釈剤、アジュバント、賦形剤又は担体を意味する。このような薬物担体は、例えば石油、動植物又は合成に由来するものを含む油、水などの無菌液体であってもよく、例えば、ピーナッツ油、大豆油、鉱油、ゴマ油などであってもよい。いくつかの実施形態では、医薬組成物を静脈内に投与する場合、担体は水であってもよい。塩水溶液及びグルコース水溶液とグリセリン溶液を、液体担体として、特に注射液に利用できる。好適な薬物担体の実例は、E.W.MartinのRemington’s Pharmaceutical Sciencesに記載され、ここで引用により本発明に組み込まれる。このような組成物は、患者に適切な投与形態を提供するように、好適な担体と共に、臨床的有効量の抗体又は抗体断片を含有する。該製剤は投与モードに好適なものであるべきである。製剤は、アンプル、使い捨て注射器又はガラス若しくはプラスチックで製の多回投与バイアルの中に封入され得る。
【0061】
「遺伝子」という用語は、機能性タンパク質、ポリペプチド又はペプチドをコードするユニットを指すために使用される。当業者に理解されるように、該機能性用語は、ゲノム配列、cDNA配列又はその断片又は組み合わせ、及び遺伝子産物を含み、人間の手によって変化され得た遺伝子産物を含む。精製された遺伝子、核酸、タンパク質及び類似体は、一般的に関連している少なくとも1つの汚染核酸又はタンパク質から同定及び単離された場合に、これらの実体を指すために使用される。
【0062】
本明細書において使用される「ベクター」という用語は、ヌクレオチド又はアミノ酸を指し、天然のものであっても加工したものであってもよく、例えば修飾された核酸又はアミノ酸である。
【0063】
いくつかの実施形態では、アミノ酸置換は、(1)加水分解作用に対するタンパク質の感受性を低下させ、(2)酸化作用に対する感受性を低下させ、(3)タンパク質複合体を形成するための結合親和性を変更させ、(4)結合親和性を変更させ、及び(5)このような類似体の他の物理化学又は機能特性を付与又は改善する、という効果を有する。類似体は、配列が天然に存在するペプチド配列とは異なる様々な変異タンパク質を含むことができる。例えば、天然に存在する配列(好ましくは分子間接触を形成するドメイン以外のポリペプチド部分)において単一又は複数のアミノ酸置換(好ましくは保存的アミノ酸置換)を行うことができる。保存的アミノ酸置換は、親配列の構造的特性を大きく変えるものであってはならない(例えば、置換アミノ酸は親配列中に存在する螺旋構造を破壊したり、親配列を特徴付ける他の種類の二次構造を破壊する傾向を有してはならない)。人工的に認識されたポリペプチドの二次構造及び三次構造の例については、Proteins,Structures and Molecular Principles(Creighton編集,W.H.Freeman and Company,New York(1984));Introduction to Protein Structure(C.Branden及びJ.Tooze編集,Garland Publishing,New York,N.Y.(1991));及びThorntonらNature 354:105(1991)に述べられている。
【0064】
抗体は、例えばタンパク質A又はタンパク質Gを使用したアフィニティークロマトグラフィーなどの周知の方法によって精製され、主に免疫血清のIgG画分が与えられる。また、免疫グロブリンの標的である特異的抗原、又はそのエピトープをカラム上に固定することにより、免疫アフィニティークロマトグラフィーにより免疫特異的抗体を精製することができる。免疫グロブリンの精製については、D.Wilkinsonの文章(The Scientist、The Scientist、Inc.、Philadelphia Pa.出版,第14巻,第8期(2000年4月17日),第25~28ページ)を参照することができる。
【0065】
本明細書において使用される「薬学的に許容される担体」という用語は、薬物投与に適合する任意及びすべての溶媒、安定剤、緩衝剤、分散媒、コーティング、静菌剤、等張化剤及び吸収遅延剤等を含むことを意図する。適切なベクターは最新版のRemington’s Pharmaceutical Sciencesにおいて述べされている。このような担体又は希釈剤として、水、塩水、リンゲル液、グルコース溶液及び5%のヒト血清アルブミンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0066】
「投与」及び「治療」は、動物、ヒト、実験対象、細胞、組織、器官又は生物学的液体を言及する場合は、外因性薬物、治療剤、診断剤又は組成物を、動物、ヒト、治療対象、細胞、組織、器官又は生物学的液体に接触させることを意味する。「投与」及び「治療」とは、例えば、治療方法、薬物動態学的方法、診断方法、研究方法及び実験方法を意味し得る。細胞を治療することは、試薬を細胞と接触させること及び試薬を流液と接触させることを含み、ここで前記流液は細胞と接触する。「投与」及び「治療」とは、例えば、試薬、診断剤、結合組成物、又はその他の細胞による、細胞に対するインビトロ治療及びエクスビボ治療を意味する。
【0067】
本明細書において使用される「抑制」又は「治療」とは、疾患に関連する症状の進行の遅延、及び/又は前記疾患で発症する若しくは発症が予測される症状の重症度の低減を含む。前記用語は、さらに、既存の症状を緩和し、他の症状を防止し、かつこれらの症状の潜在的な原因を緩和又は防止することを含む。したがって、前記用語は、疾患に罹患している脊椎動物対象、例えばヒトに有益な結果を与えていることを意味する。
【0068】
本明細書において使用する「治療有効量」又は「有効量」という用語は、抗体-薬物複合体を単独で又は他の治療剤と組み合わせて、細胞、組織又は治療対象者に投与する場合、それが治療すべき疾患又は病症を効果的に防止又は軽減する量を指す。治療上有効な用量は、さらに、例えば関連する医学的状態の治療、治癒、予防若しくは緩和である症状緩和、又は、前記症状の治療率、治癒率、予防率若しくは緩和率の向上に十分な、前記抗体-薬物複合体の量を指す。具体的な治療対象についての有効量は、治療される疾患、患者の健康全般、投与の方法経路及び副作用の重症度などの要因に依存して変化できる。有効量は、顕著な副作用又は毒性作用を避ける最大用量又は投与計画であってもよい。個体に単独で投与される活性成分を投与する場合、治療有効量は該単独の成分を意味する。組み合わせて投与する場合、治療有効量は、それが組み合わせ投与、連続投与又は同時投与かにかかわらず、治療効果を生じる活性成分の組み合わされた量を意味する。治療有効量では一般的に、症状を少なくとも10%軽減させ、一般的に、少なくとも20%、好ましくは少なくとも約30%、より好ましくは少なくとも40%、最も好ましくは少なくとも50%軽減させる。
【0069】
モノクローナル抗体
本分野の知識及び技能に基づいてFSHRを対象とするモノクローナル抗体を製造することができる。
【0070】
従来の方法でモノクローナル抗体のDNA(例えば軽鎖DNA及び重鎖DNA)を容易に合成することができる。前記DNAを発現ベクター(例えば構築して得られる軽鎖発現ベクター及び重鎖発現ベクター)に配置し、次にこれらのベクターを宿主細胞にトランスフェクトすることにより、組換え宿主細胞においてモノクローナル抗体の合成を実現することができ、前記宿主細胞として、例えばHEK293T細胞、CHO細胞、NS0細胞、又は、免疫グロブリンを別途生成しない骨髄腫細胞が挙げられる。抗体の組換え産生は、より詳細に以下に記載される。
【0071】
抗体-薬物複合体
FSHRのモノクローナル抗体は薬物リンカー(例えばMC-MMAF)と結合することができ、一般的に抗体のシステインのS原子に接続する。
【0072】
本発明の抗体及びその抗体-薬物複合体の治療における使用
FSHRと特異的に結合する本発明の抗体又は抗原結合断片又は抗体-薬物複合体は、FSHRを発現する細胞、組織等を特異的に認識するために用いることができる。
【0073】
いくつかの実施形態では、本発明はさらに疾患を治療する方法を提供する。前記方法は、それを必要とする患者に本発明に係る前記治療有効量の抗体-薬物複合体を投与することを含む。いくつかの実施形態では、前記疾患は癌である。
【0074】

本発明の抗体-薬物複合体は、癌の治療(すなわち腫瘍細胞の増殖又は生存の抑制)に用いることができる。いくつかの実施形態では、本発明の抗体-薬物複合体を使用して、その成長を抑制可能な癌は一般的に前立腺癌、乳癌、結腸癌、膵臓癌、膀胱癌、腎臓癌、肺癌、肝臓癌、胃癌、精巣癌及び卵巣癌を含む。
【0075】
本発明の抗体及びその抗体-薬物複合体の非治療性使用
本発明の抗体及びその抗体-薬物複合体は診断測定に用いることができ、例えばFSHRの特定の細胞、組織又は血清における発現を検出することに用いることができる。診断使用のために、一般的に検出可能な部分で(直接的又は間接的に)抗体を標識する。様々な標記物を使用することができ、一般的に、ビオチン、蛍光色素、放射性ヌクレオチド、酵素、ヨウ素および生合成マーカーに分けられる。
【0076】
本発明の抗体は、体内診断測定に用いることができる。一般的に放射性核種(例えば111In、99Tc、4C、125I、3H、32P、35S又は18F)で抗体を標識することにより、イムノシンチグラフィー(immunoscintiography)または陽電子イメージング法で抗原又は抗体を発現する細胞を位置決めすることができる。
【0077】
医薬組成物
本発明はさらに医薬組成物を提供する。このような組成物は、有効用量の抗体-薬物複合体及び薬学的に許容される担体を含有する。
【0078】
いくつかの実施形態では、「薬学的に許容される担体」という用語は、政府の規制機関によって承認されている又は他の一般的に認識されている薬局方に列挙された動物(特にヒト)に用いられる物質を意味する。また、「薬学的に許容される担体」とは、一般的に、任意の種類の非毒性固体、半固体、又は液体充填剤、希釈剤、封入材又は製剤助剤である。
【0079】
実施例1: マウス抗ヒトFSHRモノクローナル抗体CAN001
1、Genscriptにより、抗ヒトFSHRモノクローナル抗体の軽鎖及び重鎖をコードするコドン最適化DNA断片(それぞれSEQ ID NO:1とSEQ ID NO:2に示すとおりである)を合成し、合成されたDNA断片のヌクレオチド配列を配列決定した。
【0080】
SEQ ID NO:1:軽鎖DNA配列
ATGGCCCTCCCTGTCACCGCCCTGCTGCTTCCGCTGGCTCTTCTGCTCCACGCCGCTCGGCCCCAGATAGTACTTACGCAATCACCCGTCATAATGAGCGCATCCCCTGGTGAAAAGGTTACTCTGACATGCTCTGCGTCTTCCAGCGTGAGTAGTTCTTATCTCTATTGGTATCAGCAAAAACCCGGATCTTCTAGTAAATTGTGGATATATTCTACGTCTAATCTTGCGTCAGGAGTGCCTGCTCGGTTTTCTGGGTCCGGGTCCGGGACCAGCTATAGTTTGACTATAAGTAGTATGGAGGCGGAGGACGCAGCTAGCTACTTTTGCCATCAATGGAGCTCCTATCCTCCTACCTTTGGGGGCGGAACCAAATTGGAAATCAAAAGAGCCGACGCGGCACCCACTGTATCTATCTTCCCACCCTCATCAGAACAGCTCACTTCAGGCGGCGCCAGTGTGGTGTGTTTCCTCAACAACTTCTATCCTAAAGACATAAATGTAAAATGGAAAATAGACGGTAGCGAGCGGCAAAACGGGGTGCTGAACTCATGGACGGACCAAGATTCCAAGGATTCTACCTATTCAATGAGTTCTACATTGACACTTACGAAAGACGAATACGAGCGCCACAATTCCTATACGTGCGAAGCAACGCACAAAACCTCCACTTCCCCGATTGTGAAGTCCTTCAATAGGAATGAATGTTGATAA
軽鎖可変領域のDNA配列は、SEQ ID NO:1の第64位~第405位であり、軽鎖CDR1のDNA配列は、第130位~第168位であり、軽鎖CDR2のDNA配列は、第214位~第234位であり、軽鎖CDR3のDNA配列は、第331位~第357位である。
【0081】
SEQ ID NO:2:重鎖DNA配列
ATGGAGTTTGGGCTCAGTTGGGTCTTTCTCGTGGCACTGTTTCGCGGGGTACAGTGCGCTAGCCAAGTACAACTGCAACAACCAGGCGCGGAGCTCGTTAAACCGGGGGCGAGCGTCAACCTTAGCTGCAAAGCCTCCGGTTATACCTTTACAAGTTACTGGATGCACTGGGTGAAGCAGCGACCAGGGCAAGGACGCGAATGGATCGGGGAAATAAATCCAAGGAACGGCAGAACGAATTACAACGAGAAGTTCAAATCCAAGGCGACGTTGACGGTGGACAAATCCTCTTCAACTGCTTATATGCAGCTCAGTTCTCTGACAAGCGAGGATAGTGCCGTGTACTGTTGCGCCAGGTTGTCTGTGGGGTTCGCCTACTGGGGGCAGGGCACGCTCGTTACAGTCTCTGCGGCCAAGACGACTGCGCCTTCAGTATATCCACTGGCTCCGGTGTGCGGAGATACGACAGGTAGTTCTGTAACTTTGGGATGCCTCGTTAAGGGTTATTTCCCGGAGCCGGTCACCTTGACGTGGAACTCCGGATCACTCTCCTCAGGGGTACATACATTTCCAGCGGTTTTGCAGAGCGACCTCTACACACTCAGTAGCAGTGTAACCGTTACCTCATCCACATGGCCTAGCCAGAGTATCACGTGCAATGTTGCACACCCGGCAAGTTCTACCAAGGTGGACAAAAAAcTCGAGCCTAGAGGACCGACGATAAAGCCCTGTCCGCCTTGCAAATGTCCGGCACCTAACGCTGCTGGTGGCCCCTCTGTTTTTATATTTCCGCCAAAAATTAAGGACGTCCTCATGATCAGTCTGAGCCCTATAGTCACGTGTGTGGTGGTAGATGTCTCTGAAGACGATCCCGACGTACAGATTTCATGGTTCGTGAACAATGTGGAGGTTCACACAGCCCAAACACAGACACACCGCGAAGATTACAATAGTACACTGCGGGTAGTCTCTGCCCTCCCAATACAACACCAGGACTGGATGAGCGGGAAAGAGTTCAAGTGCAAAGTCAATAACAAAGACCTGGGAGCGCCGATAGAAAGAACTATAAGTAAACCAAAGGGGAGCGTAAGAGCGCCCCAAGTGTATGTCCTCCCTCCTCCCGAAGAGGAAATGACCAAGAAACAAGTTACTCTCACATGCATGGTAACCGATTTCATGCCTGAAGACATATACGTAGAGTGGACCAACAACGGGAAGACAGAATTGAACTACAAGAATACAGAGCCCGTTCTCGATTCTGATGGCTCCTACTTTATGTATAGCAAACTCCGGGTGGAAAAAAAGAATTGGGTCGAAAGAAACAGTTATTCATGTTCTGTTGTTCACGAGGGTTTGCATAACCATCATACGACGAAATCTTTTTCCAGAACCCCAGGAAAATGA
重鎖可変領域のDNA配列は、SEQ ID NO:2の第64位~第441位であり、重鎖CDR1のDNA配列は、第154位~第168位であり、重鎖CDR2のDNA配列は、第211位~第261位であり、重鎖CDR3のDNA配列は、第358位~第378位である。
【0082】
2、In-Fusionクローニング法により、軽鎖のDNA配列を、pcDNA3.1(Thermo Fisherから購入)のHind III部位とEcoR I部位との間にクローニングして、軽鎖発現ベクターpcDNA3.1_CAN001 LCを構築した。
【0083】
3、In-Fusionクローニング法により、重鎖のDNA配列を、pcDNA3.1のHind III部位とEcoR I部位との間にクローニングして、重鎖発現ベクターpcDNA3.1_CAN001 HCを構築した。
【0084】
SEQ ID NO:3:軽鎖アミノ酸配列
MALPVTALLLPLALLLHAARPQIVLTQSPVIMSASPGEKVTLTCSASSSVSSSYLYWYQQKPGSSSKLWIYSTSNLASGVPARFSGSGSGTSYSLTISSMEAEDAASYFCHQWSSYPPTFGGGTKLEIKRADAAPTVSIFPPSSEQLTSGGASVVCFLNNFYPKDINVKWKIDGSERQNGVLNSWTDQDSKDSTYSMSSTLTLTKDEYERHNSYTCEATHKTSTSPIVKSFNRNEC
Kabatナンバリングシステム従ったナンバリングによれば、軽鎖可変領域のアミノ酸配列はSEQ ID NO:3の第22位~第135位(SEQ ID NO:5)であり、軽鎖CDR1のアミノ酸配列は第44位~第56位(CSASSSVSSSYLY(SEQ ID NO:6))であり、軽鎖CDR2のアミノ酸配列は第72位~第78位(STSNLAS(SEQ ID NO:7))であり、軽鎖CDR3のアミノ酸配列は第111位~第119位(HQWSSYPPT(SEQ ID NO:8))である。
【0085】
SEQ ID NO:4:重鎖アミノ酸配列
MEFGLSWVFLVALFRGVQCASQVQLQQPGAELVKPGASVNLSCKASGYTFTSYWMHWVKQRPGQGREWIGEINPRNGRTNYNEKFKSKATLTVDKSSSTAYMQLSSLTSEDSAVYCCARLSVGFAYWGQGTLVTVSAAKTTAPSVYPLAPVCGDTTGSSVTLGCLVKGYFPEPVTLTWNSGSLSSGVHTFPAVLQSDLYTLSSSVTVTSSTWPSQSITCNVAHPASSTKVDKKLEPRGPTIKPCPPCKCPAPNAAGGPSVFIFPPKIKDVLMISLSPIVTCVVVDVSEDDPDVQISWFVNNVEVHTAQTQTHREDYNSTLRVVSALPIQHQDWMSGKEFKCKVNNKDLGAPIERTISKPKGSVRAPQVYVLPPPEEEMTKKQVTLTCMVTDFMPEDIYVEWTNNGKTELNYKNTEPVLDSDGSYFMYSKLRVEKKNWVERNSYSCSVVHEGLHNHHTTKSFSRTPGK
Kabatナンバリングシステム従ったナンバリングによれば、重鎖可変領域のアミノ酸配列は、SEQ ID NO:4の第22位~第147位(SEQ ID NO:9)であり、重鎖CDR1のアミノ酸配列は第52位~第56位(SYWMH(SEQ ID NO:10))であり、重鎖CDR2のアミノ酸配列は第71位~第87位(EINPRNGRTNYNEKFKS(SEQ ID NO:11))であり、重鎖CDR3のアミノ酸配列は第120位~第126位(LSVGFAY(SEQ ID NO:12))である。
【0086】
実施例2: ヒトFSHR遺伝子のクローニング及び発現ベクターの構築
OVCAR3細胞株(ATCC社から購入、製品カタログ番号がhtb-161)のRNAを抽出してcDNAに逆転写し、cDNAをテンプレートとしてFSHR-F及びFSHR-RをプライマーとしてPCR増幅を行ってFSHR遺伝子を含有する断片を得た。
【0087】
FSHR-F:5’-gtttCCACAACCatggccctgctcctgg-3’(SEQ ID NO:13);
FSHR-R:5’-ggttgattaactcgagttagttttgggctaaatgacttagagggacaag-3’(SEQ ID NO:14)。
【0088】
FSHR遺伝子を含有する断片をクローニングベクターpJET2.1(Thermo Fisherから購入、製品カタログ番号がSO501)にクローニングし、pJET2.1-FSHRプラスミドを構築した。配列決定した後、挿入断片をpMSGβ3のNco IとXho I部位の間にサブクローニングし、pMSGβ3_FSHRプラスミドを構築した。pMSGβ3_FSHRのプラスミドプロファイルは図1に示すとおりである。
【0089】
実施例3:HEK293T細胞に抗体CAN001を産生
CAN001抗体を作製するために、HEK293T細胞を無血清培地で培養し、CAN001重鎖及び軽鎖をコードするベクターpcDNA3.1_CAN001 HC及びpcDNA3.1_CAN001 LC(質量比1:2)と、25kD線形PEIポリマー(polyscience)とを用いて、ベクターのポリマー対する質量比が1:3という比率で、HEK293T細胞をコトランスフェクトした。トランスフェクトした後にHEK293T細胞を72時間培養し、培養上清を収集し、すなわちCAN001抗体を含有する上清である。
【0090】
実施例4: CAN001抗体のフローサイトメトリー分析
pMSGβ3_FSHRプラスミドでHEK293T細胞をトランスフェクトし、FSHRを発現するHEK293T細胞を得て、実験群とする。pmaxGFP(Lonza)でHEK293T細胞をトランスフェクトし、GFPタンパク質を発現するHEK293T細胞を得て、陰性対照群とする。実験群と陰性対照群の細胞をそれぞれ実施例3で得られたCAN 001抗体を含有する上清と共にインキュベートした後、CAN001抗体で被覆された細胞を洗浄し、かつAPC結合ヤギ抗マウスIgG二次抗体とインキュベートする。BD caliburを用いてフローサイトメトリーを行い、かつCellquestソフトウェアを用いて分析する。結果は、図2に示すように、CAN001抗体を含有する上清で、FSHRを発現する細胞を特異的に染色し、GFPを発現する細胞を染色しないことを示す。
【0091】
さらに最適なCAN 001上清をスクリーニングするために、異なる比率によるプラスミドpcDNA3.1_CAN001 HC及びpcDNA3.1_CAN001 LCの混合物(図3において左から右へpcDNA3.1_CAN001 HCとpcDNA3.1_CAN001 LCの質量比はそれぞれ1:2、1:1及び1:3である)と、25kD線形PEIポリマーとを用いて、ベクターのポリマー対する質量比が1:3という比率で、HEK293T細胞をコトランスフェクトした。トランスフェクトして72時間後、上清を収集し、FSHRを発現するHEK293T細胞を染色するために用いて、GFPタンパク質を発現するHEK293T細胞を陰性対照とした。ステップは上述したとおりである。フローサイトメトリー分析結果は図3に示され、結果によると、pcDNA3.1_CAN001 HCとpcDNA3.1_CAN001 LCの質量比が1:2である場合、HEK293T細胞の染色される陽性率が最も高く(38.3%)、pcDNA3.1_CAN001 HCとpcDNA3.1_CAN001 LCの質量比が1:1、1:3である場合、HEK293T細胞の染色される陽性率がそれぞれ30.02%と34.75%である。pcDNA3.1_CAN001 HCとpcDNA3.1_CAN001 LCの質量比を1:2にして、CAN001抗体を含有する上清を調製する。
【0092】
実施例5:CAN001抗体でヒト胎盤及び腫瘍組織に対してIHC染色を行った。
【0093】
実験試薬:
PBS緩衝液(pH=7.4):1000mlの蒸留水、8.0gのNaCl、0.2gのKCl、1.149gのNaHPO、0.2gのNaHPO
【0094】
0.01Mクエン酸緩衝液(pH 6.0):
A液:29.41gのクエン酸三ナトリウム-2HO+1000mlの蒸留水
B液:21gのクエン酸+1000mlの蒸留水
抗原賦活化液の調製:82mlのA液+18mlのB液+900mlの蒸留水
ヘマトキシリン発色液(光で酸化するため、暗所で保存する):配合比率はヘマトキシリンキット(福州邁新バイオテクノロジー開発有限公司から購入、製品カタログ番号がCTS1097)の説明書を参照した。最適な染色を達成するために、予備実験で得られた試験結果に基づいて比率を調整してもよい。通常の配合比率:1mlのヘマトキシリン原液+4mlの蒸留水
GTVisionIII抗マウス/ウサギ汎用型免疫組織化学検査キットは遺伝子科学技術(上海)股フン有限公司から購入され、製品カタログ番号がGK500705であり、A液(二次抗体液):HRP標識ポリマー(抗マウス、ウサギ)、B液:DAB緩衝希釈液C液:DAB原液。DAB発色液の調製:1 mlのB液+20μlのC液。発色結果:褐色。該キットは、アビジン、ストレプトアビジンを含まず、内因性ビオチンに干渉されない。
【0095】
実験ステップ:
1)脱パラフィン及び水和
ヒト胎盤又は卵巣癌組織のパラフィン包埋切片して70℃の恒温箱で約40分間ベークする。次に切片をキシレンに入れて15分間浸漬し、次に無水エタノール、95%エタノール、75%エタノールにそれぞれ5分間浸漬して勾配的に水和する。
【0096】
2)内因性ペルオキシダーゼの除去
切片を3%の過酸化水素に約15分間浸漬し、組織内因性カタラーゼを除去し、次にPBS緩衝液で毎回5分間×3回洗浄する。
【0097】
3)抗原賦活化
沸騰水に抗原賦活化液(pH 6.0)を加える。切片を賦活化溶液内に入れ、最高圧力で、約10分間加熱した後に蓋を開け、室温まで自然冷却させる。
【0098】
4)ブロッキング、抗体インキュベート
スライドが室温まで冷却した後、PBS緩衝液で毎回5分間×3回洗浄し、10%のヤギ血清/PBSブロッキング液を標本に滴下し、ウェットボックス内において室温で1時間静置してブロッキングする。その後に、サンプルに標的タンパク質抗体CAN001(1:200-800)を、各標本に約50μL滴下し、ウェットボックスに置いて4℃で一晩越した後にPBS緩衝液で毎回5分間×3回洗浄し、ヤギ抗マウス二次抗体50μL(1:200)を滴下し、ウェットボックスに置いて室温で1時間静置し、PBS緩衝液で毎回5分間×3回洗浄する。
【0099】
5)DAB発色
各切片組織に1、2滴のDAB発色液を滴下し、同時に顕微鏡で染色程度を観察し、程度が適切である場合にPBS緩衝液で反応を停止し、その後にヘマトキシリンで細胞核を30秒間対比染色し、PBS緩衝液で反応を停止する。
【0100】
6)封入
封入剤を組織の近傍に滴下し、方形カバーガラスをかける。気泡の発生を回避するために、まず片側を平らに下ろしてから、他側を平らに下ろし、最後にカバーガラスを数回軽く押さえ、封入後24時間乾燥させる。
【0101】
CAN001抗体によるヒト胎盤に対するIHC染色は図4に示すとおりである。
【0102】
CAN001抗体による卵巣癌組織及び隣接組織に対するIHC染色は図5に示すとおりである。
【0103】
実施例6:CAN001抗体-薬物複合体の調製
PBS緩衝液(660.0μL、pH=7)で抗体溶液CAN001(1039.2μL、7.66mg/mL)を希釈し、濃度が4.68mg/mLのCAN001抗体溶液を1699.2μL得た。上記CAN001抗体溶液に、TCEP(トリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン)を含有するPBS溶液(14.7μL、2.5mM、pH=7)を添加し、得られた溶液を軽く均一にボルテックスミックスした後に37℃で2時間インキュベートした。3.5mMの薬物リンカーMC-MMAF(Maleimidocaproyl monomethylauristatin F,マレイミドカプロイル-モノメチルアウリスタチンF)を含有するDMSO溶液を136.5μL添加し、溶液を軽くボルテックスミックスし、25℃で1時間保持し、反応から粗試料を得た。粗試料をillustra NAP-10カラム(GE Healthcare社から購入)にかけて精製し、かつ0.25μmの精密フィルターで濾過して、最終的な抗体-薬物複合体CAN001-MC-MMAFを、3.1mL、2.56mg/mL、DAR(薬物抗体比)=5.95、UmAb%(未結合抗体百分率)=1.3%、Agg%(重合抗体百分率)=1.6%で得た。
【0104】
CAN001-MC-MMAFの構造式は式1に示すとおりである。
【0105】
CAN001-MC-MMAFの疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)は図6に示すとおりである。
【0106】
CAN001-MC-MMAFのサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)は図7に示すとおりである。
【0107】
【化1】
実施例7: CAN001抗体-薬物複合体の細胞殺傷実験
本実施例は、96ウェルプレートを用いてCellTiter-Glo細胞活力測定法により、CAN001抗体-薬物複合体の癌細胞株に対する作用を測定する。
【0108】
ヒト卵巣癌細胞株OVCAR-3、A2780、3AOは、いずれもATCCから購入された。
【0109】
細胞を、1000細胞/ウェルで、96ウェル細胞培養プレートに接種し、各ウェルの培地の総量を200μLに制御した。細胞が容器壁に付着した後、対応する薬物を投与して細胞を処理し、異なる時点(0h、24h、48h、72h、96h)で薬物を除去し、かつMTS測定溶液(MTS試薬10μL+190μL完全培地)(MTS細胞増殖アッセイキット(比色法)が艾美捷社の製品である)を添加し、その後に96ウェルの細胞培養プレートをCO細胞恒温インキュベータに置いて光を避けて約2時間インキュベートし、その後に細胞培養プレートを取り出し、マイクロプレートリーダーに配置し、各群の細胞の492nmでの吸光度を測定する。
【0110】
各化合物の%抑制率及びIC50を、XLFitカーブフィッティングソフトウェアにより計算した。結果を表1に示す。
【0111】
表1
【表1】
表1から分かるように、MMAFに比べて、CAN001抗体-薬物複合体CAN001-MC-MMAFは卵巣癌細胞に対して顕著に向上した殺傷効果を有する。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【配列表】
2023552664000001.app
【手続補正書】
【提出日】2023-06-06
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0028
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0028】
いくつかの実施形態では、上記いずれか一項に記載の抗体-薬物複合体において、前記リンカーはマレイミドカプロイル(mc)又はその類似体から選択される。
【手続補正2】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
可変領域を含み、ヒト卵胞刺激ホルモン受容体FSHRに特異的に結合し、SEQ ID NO:6、7、8、10、11及び12に示されるアミノ酸配列を有するCDRから選択される1つ、2つ、3つ、4つ、5つ又は6つを含む、抗体又はその抗原結合断片。
【請求項2】
軽鎖可変領域及び/又は重鎖可変領域を含み、SEQ ID NO:6、7及び8に示されるアミノ酸配列を有する軽鎖CDRから選択される1つ、2つ又は3つを含み、及び/又は、
SEQ ID NO:10、11及び12に示されるアミノ酸配列を有する重鎖CDRから選択される1つ、2つ又は3つを含む、ことを特徴とする請求項1に記載の抗体又はその抗原結合断片。
【請求項3】
SEQ ID NO:6、7及び8に示されるアミノ酸配列を有する軽鎖CDRと、SEQ ID NO:10、11及び12に示されるアミノ酸配列を有する重鎖CDRと、を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の抗体又はその抗原結合断片。
【請求項4】
軽鎖可変領域及び重鎖可変領域を含み、
前記軽鎖可変領域は、SEQ ID NO:5に示されるアミノ酸配列、又はSEQ ID NO:5に示されるアミノ酸配列と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列、又はSEQ ID NO:5に示されるアミノ酸配列と比較して1つ以上の保存的アミノ酸置換を有するアミノ酸配列を含み、及び/又は、
前記重鎖可変領域は、SEQ ID NO:9に示されるアミノ酸配列、又はSEQ ID NO:9に示されるアミノ酸配列と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列、又はSEQ ID NO:9に示されるアミノ酸配列と比較して1つ以上の保存的アミノ酸置換を有するアミノ酸配列を含む、ことを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合断片。
【請求項5】
軽鎖及び重鎖を含み、
前記軽鎖は、SEQ ID NO:3に示されるアミノ酸配列、又はSEQ ID NO:3に示されるアミノ酸配列と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列、又はSEQ ID NO:3に示されるアミノ酸配列と比較して1つ以上の保存的アミノ酸置換を有するアミノ酸配列を含み、及び/又は、
前記重鎖は、SEQ ID NO:4に示されるアミノ酸配列、又はSEQ ID NO:4に示されるアミノ酸配列と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列、又はSEQ ID NO:4に示されるアミノ酸配列と比較して1つ以上の保存的アミノ酸置換を有するアミノ酸配列を含む、ことを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載の抗体又はその抗体結合断片。
【請求項6】
10個以下のアミノ酸置換、欠失及び/又は付加を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合断片の変異体。
【請求項7】
下記B1)又はB2)である、請求項1-5のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合断片又は請求項6に記載の変異体に関連する生体材料:
B1): 請求項1~5のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合断片又は請求項6に記載の変異体をコードする核酸分子;
B2): B1)に記載の核酸分子を含有する発現カセット、組換えベクター、組換え細胞又は組換え微生物。
【請求項8】
請求項7に記載の生体材料であって、前記B1)の核酸分子は下記1)又は2)又は3)に示す核酸断片を含む、ことを特徴とする生体材料:
1):以下のDNA分子:
SEQ ID NO:1における第130位~第168位の核酸断片、
SEQ ID NO:1における第214位~第234位の核酸断片、
SEQ ID NO:1における第331位~第357位の核酸断片、
SEQ ID NO:2における第154位~第168位の核酸断片、
SEQ ID NO:2における第211位~第261位の核酸断片、
SEQ ID NO:2における第358位~第378位の核酸断片、
SEQ ID NO:1における第64位~第405位に示される核酸断片、
SEQ ID NO:2における第64位~第441位の核酸断片、
SEQ ID NO:1に示す核酸断片、又は
SEQ ID NO:2に示す核酸断片;
2):1)において限定された核酸断片とハイブリダイズし、かつ請求項1~5のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合断片又は請求項6に記載の変異体をコードする核酸断片;
3):1)又は2)において限定されたDNA分子と90%以上の同一性を有し、かつ請求項1~5のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合断片又は請求項6に記載の変異体をコードする核酸断片。
【請求項9】
請求項1~5のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合断片又は請求項6に記載の変異体を製造する方法であって、
請求項7における前記B1)の核酸分子を発現させることができる条件下で、培地中で前記核酸分子を含有する組換え細胞を培養することにより、前記抗体又はその抗原結合断片又は変異体を製造することを含む、方法。
【請求項10】
請求項1~5のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合断片又は請求項6に記載の変異体がリンカーを介して細胞毒性薬物と結合することにより得られる抗体-薬物複合体。
【請求項11】
前記細胞毒性薬物は化学療法剤又は毒素であり、前記毒素は好ましくはアウリスタチンであり、より好ましくはモノメチルアウリスタチンFである、ことを特徴とする請求項10に記載の抗体-薬物複合体。
【請求項12】
前記リンカーは、マレイミドカプロイル又はその類似体から選択されることを特徴とする請求項10に記載の抗体-薬物複合体。
【請求項13】
1~30の範囲内にある平均薬物抗体比DARを有する、ことを特徴とする請求項10~12のいずれか一項に記載の抗体-薬物複合体。
【請求項14】
前記リンカーを前記薬物に連結することにより、前記リンカー-薬物部分を前記抗体に結合させ、前記抗体-薬物複合体を精製することを含む、請求項10~13のいずれか一項に記載の抗体-薬物複合体を製造する方法。
【請求項15】
請求項1~5のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合断片又は請求項6に記載の変異体又は請求項10~13のいずれか一項に記載の抗体-薬物複合体と、薬学的に許容される担体と、を含む医薬組成物。
【請求項16】
請求項1~5のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合断片又は請求項6に記載の変異体又は請求項10~13のいずれか一項に記載の抗体-薬物複合体の、以下(1)と(2)のいずれかの製品の製造における使用:
(1)ヒト卵胞刺激ホルモン受容体の発現を検出する製品;
(2)癌を検出、スクリーニング、予防及び/又は治療する製品。
【請求項17】
前記癌は、前立腺癌、乳癌、結腸癌、膵臓癌、膀胱癌、腎臓癌、肺癌、肝臓癌、胃癌、精巣癌及び卵巣癌である、ことを特徴とする請求項16に記載の使用。
【請求項18】
癌細胞の増殖を抑制する方法であって、前記細胞を請求項10~13のいずれか一項に記載の抗体-薬物複合体と接触させることを含む、方法。
【請求項19】
前記癌細胞は、前立腺癌細胞、乳癌細胞、結腸癌細胞、膵臓癌細胞、膀胱癌細胞、腎臓癌細胞、肺癌細胞、肝臓癌細胞、胃癌細胞、精巣癌細胞及び卵巣癌細胞である、ことを特徴とする請求項18に記載の方法。
【請求項20】
癌患者を治療する方法であって、前記患者に治療有効量の請求項10~13のいずれか一項に記載の抗体-薬物複合体を投与することを含む、方法。
【請求項21】
さらに前記患者に他の治療剤を投与することを含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記治療剤は細胞毒性剤である、ことを特徴とする請求項21に記載の方法。
【請求項23】
癌を有すると疑いがある対象を診断する方法であって、検出可能な標識が結合した請求項1-5のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合断片又は請求項6に記載の変異体を前記対象に投与し、標識された抗体又はその抗原結合断片又は変異体の前記対象における分布を検出することを含む方法。
【請求項24】
前記癌は前立腺癌、乳癌、結腸癌、膵臓癌、膀胱癌、腎臓癌、肺癌、肝臓癌、胃癌、精巣癌及び卵巣癌である、請求項20~23のいずれかの一項に記載の方法。
【国際調査報告】