(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-18
(54)【発明の名称】骨整復キット
(51)【国際特許分類】
A61B 17/56 20060101AFI20231211BHJP
A61B 17/80 20060101ALI20231211BHJP
A61B 17/28 20060101ALI20231211BHJP
【FI】
A61B17/56
A61B17/80
A61B17/28
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023557826
(86)(22)【出願日】2021-12-08
(85)【翻訳文提出日】2023-06-30
(86)【国際出願番号】 EP2021084867
(87)【国際公開番号】W WO2022122860
(87)【国際公開日】2022-06-16
(32)【優先日】2020-12-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523214513
【氏名又は名称】オドネル,トゥーロッホ
(71)【出願人】
【識別番号】523214524
【氏名又は名称】オケリー,マルコム
(74)【代理人】
【識別番号】110001656
【氏名又は名称】弁理士法人谷川国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】オドネル,トゥーロッホ
(72)【発明者】
【氏名】オケリー,マルコム
【テーマコード(参考)】
4C160
【Fターム(参考)】
4C160GG06
4C160LL21
4C160LL32
(57)【要約】
骨固定プレートを骨に固定している間、少なくとも部分的に整復された骨(16)の所定の位置に骨固定プレート(20)を保持する骨整復キットが記載される。このキットは、骨に当接する表面と、裏面(21)と、複数のネジ受け貫通孔とを有する骨固定プレート(20)と、骨整復鉗子(1)とを含んでなる。鉗子は、ハンドル(6A)からなる近位部分(5)と、第1の遠位足状部(9A)を有する第1の分岐部(8A)、および第2の遠位足状部(9B)を有する第2の分岐部(8B)を有する二股になった遠位部分とを有する第1のアーム(2)、およびハンドル(6B)を有する近位部分(10)と、骨(16)の第2の表面(24)に係合するよう構成される骨係合顎状部(13)を含んでなる遠位部分(11)とを有する第2のアーム(3)を含んでなる。第2のアームは、第1および第2のアームのそれぞれの近位部分と遠位部分との間に配置される第1の継ぎ手部(4)によって、第1のアームに枢動可能に取り付けられる。骨固定プレート(20)の裏面(21)は、鉗子の第1および第2の遠位足状部(9A,9B)と嵌合するように位置決めされ寸法決めされた、二つの離間した窪み部(22)を含んでなり、それによって、部分的に整復された骨およびプレートを鉗子で挟持する場合に、骨に対するプレートの側方移動が防止される。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
骨に当接する表面および裏面(21)と、複数のネジ受け貫通孔と、を有する骨固定プレート(20);および
骨整復鉗子(1)であって;
ハンドル(6A)を含んでなる近位部分(5)と、遠位端に第1の遠位足状部(9A)を有する第1の分岐部(8A)、および遠位端に第2の遠位足状部(9B)を有する第2の分岐部(8B)を有する、二股になった遠位部分と、を有する第1のアーム(2);
ハンドル(6B)を含んでなる近位部分(10)と、骨(16)の第2の表面(24)に係合するように構成される骨係合顎状部(13)を含んでなる遠位部分(11)と、を有する第2のアーム(3)であって;
それぞれ前記第1および第2のアームの近位部分と遠位部分との間に配置された第1の継ぎ手部(4)によって前記第1アームに枢動可能に取り付けられた第2のアーム(3);
を含んでなる骨整復鉗子(1)
を含んでなる、骨固定板を骨に固定している間、少なくとも部分的に整復された骨(16)上の所定の位置に骨固定プレート(20)を保持する骨整復キットであって;
前記骨固定プレート(20)の裏面(21)が、前記鉗子の第1および第2の遠位足状部(9A,9B)と嵌合するように位置付けられ寸法決めされた二つの離間した窪み部(22)を含んでなり、それによって、部分的に整復された骨および前記プレートを前記鉗子で挟持する場合に、骨に対するプレートの側方移動を防止することを特徴とする、骨整復キット。
【請求項2】
前記第1および第2の遠位足状部(9A,9B)が、弾性変形可能なエラストマー材料を含んでなる、請求項1に記載の骨整復キット。
【請求項3】
前記第1および第2の遠位足状部(9A,9B)が、ゴム製の材料を含んでなる、請求項2に記載の骨整復キット。
【請求項4】
前記窪み部(22)の少なくとも一つが、皿孔または座グリ孔である、請求項1から3のいずれか一項に記載の骨整復キット。
【請求項5】
前記窪み部(22)の両方が、皿貫通孔または座グリ貫通孔である、請求項1から4のいずれか一項に請求項に記載の骨整復キット。
【請求項6】
前記第1および第2の遠位足状部(9A,9B)が、切頭体形状を有する、請求項1から5のいずれか一項に記載の骨整復キット。
【請求項7】
前記第1および第2の遠位足状部(9A,9B)が、円錐台形状を有する、請求項1から6のいずれか一項に記載の骨整復キット。
【請求項8】
前記窪み部が、それぞれの第1および第2の遠位足状部の切頭体形状に一致する切頭体形状を有する、請求項6に記載の骨整復キット。
【請求項9】
前記窪み部が、それぞれの第1および第2の遠位足状部の円錐台形状に一致する円錐台形状を有する、請求項8に記載の骨整復キット。
【請求項10】
部分的に整復された骨およびプレートを鉗子で挟持する場合に、前記第1および第2の遠位足状部が、骨固定プレート(20)の中間三分の一を係合するように位置決めされる、請求項3に記載の骨整復キット。
【請求項11】
前記骨係合顎状部が、第1および第2の遠位足状部の間の位置に対向する、請求項1から10のいずれか一項に記載の骨整復キット。
【請求項12】
骨係合顎状部(13)が複数の歯(25)を含んでなる、請求項1から11のいずれか一項に記載の骨整復キット。
【請求項13】
前記第1および第2のアームの一方に取り付けられたラチェット機構(15A,15B)を含んでなる、請求項1から12のいずれか一項に記載の骨整復キット。
【請求項14】
骨固定プレート(20)が、整復されたヒト鎖骨(16)の上面(23)または下面(24)に適合するように構成される鎖骨固定プレートである、請求項1から13のいずれか一項に記載の骨整復キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、骨整復キットに関する。また、本発明は、骨整復キットを採用する、骨折した骨をプレーティングする方法に関する。
【背景技術】
【0002】
鎖骨(clavicleまたはcollarbone)は、肩甲骨と胸骨との間の支柱として機能する長い骨である。ヒトは、左右二つの鎖骨を有する。これは、身体のうちで最も一般的に骨折する骨であり、全骨折の5%を占める。世界的規模で毎日、約17,000件の鎖骨骨折が報告されている。鎖骨の骨折は、骨への直接的な衝撃に起因して、または拡げた腕にかかる落下の力に由来する肩への衝撃に起因して生じる可能性がある。正面から見た(前方視の)場合には、骨は概ね直線的な外観を有しており、上方から見た(上方視の)場合には、胸骨端から肩峰端にかけて二つに湾曲した構成、いわゆる「レイジーS(lazy S)」字形状を有している。鎖骨骨折の約5%は胸骨端で起こり(内側骨折)、10~15%は肩峰端で起こり(側方骨折)、骨折の大部分は中軸で起こる(80~85%)。鎖骨骨折の処置は、保存的処置(手術をしない処置)を含む。これは、2パート鎖骨骨折が変位していない場合には成功する処置である。しかし、骨折が著しく変位していたり、(二つより多い骨片に)粉砕されていたりすると、保存的処置では骨折の非癒合または癒合不良の発生率が高くなり、これは、骨折が治癒しても脆弱性および能力障害の著しい持続の原因となる可能性がある。概して、骨折の外科的処置は、粉砕骨折、大きく変位し短くなった骨折、分節骨折、および「Z型」骨折に必要であるとされている。重度の鎖骨骨折に対する最も一般的な外科的処置は、上方プレート固定法または前下方プレート固定法の使用を伴っている。これらのプレートは、骨固定用ネジを受ける一連の孔を有する単一平面プレートである。ねじり剛性および曲げ剛性に耐えられる必要な強度を持たせるために、これらのプレートは長さ方向に沿って少なくとも4mmの厚さを有することが必要であり、これは、骨格のこの領域における移植物としてはかなり大きく、患者にとって不快である。加えて、近年ある程度受け入れられている経皮的髄内ネジを使用することも可能である。
【0003】
粉砕骨折、分節骨折、Z型骨折の場合には、骨片を整復してプレートで定位置に固定することは極めて困難であり、固定用のワイヤーまたはネジを定位置に固定しつつ骨片どうしを次々に整復する必要がある。また、筋肉の変形力によって、定位置での整復保持が妨げられることが多く、骨折が変位する前にプレートを骨に固定することは極めて困難である。上方プレート固定法が最も一般的に利用されており、これは、骨片の整復が若干容易になるためであるが、しかしプレートの曲げ剛性が弱い傾向にあり、プレートが曲がって固定が失敗する危険性が大きいので、肩の早期可動化はできない。また、プレートはかなり表層にあり、通常は皮膚を通して触知可能である。骨折がいったん治癒すると、患者がプレートの除去を要求することも珍しいことではない。
【0004】
前下方プレート固定法は、面積慣性モーメントを増加させるため、より良好な曲げ剛性を提供するが、前方プレートを使用して鎖骨骨折を正確に整復することは、技術的に極めて困難である。加えて、いったんプレートが装着されると、粉砕された骨片を整復することは不可能である。また、前下方プレートは骨折部位のところの骨の脈管遮断の原因にもなる。髄内ネジまたはピンによる固定も技術的に難しく、特に骨折の整復が困難である。これは、粉砕した骨片の固定においては満足のいくものではなく、これは、骨折部位のところで適切な安定性が得られないからである。実際、上方プレート固定法と前下方プレート固定法の両方だけでなく、髄内ネジ固定法も困難であることに起因して、多くの整形外科医は、保存的、非外科的処置を選択しており、これは一般的に、非癒合または癒合不良の原因となっている。これは、長期的な肩帯機能に有害な影響を及ぼす。
【0005】
上述のとおり、鎖骨骨折のプレーティングは、骨片を整復し、次いで、整復された位置に骨を維持しつつ、整復された骨にプレートを固定することを必要とする難しい治療である。この治療を行っている間、骨整復鉗子が使用される場合があるが、従来の骨整復鉗子は二点式鉗子である傾向があり、この鉗子は、プレーティング治療中に骨をしっかりと把持できない結果、治療中に骨片が変位して骨折の癒合不良および処置の失敗となる可能性がある。
【0006】
本発明の目的は、上記の問題の少なくとも一つを克服することである。
【0007】
本発明の特定の目的は、骨にプレートを固定している間、整復された骨と固定プレートを確実な係合状態に保持することができる、そして骨に対するプレートの側方移動を防止することができる骨整復鉗子を提供することである。
【発明の概要】
【0008】
第1の態様では、本発明は:
骨に当接する表面および裏面と、複数のネジ受け貫通孔と、を有する骨固定プレート;および
骨整復鉗子であって;
ハンドルを含んでなる近位部分と、第1の遠位足状部を有する第1の分岐部、および第2の遠位足状部を有する第2の分岐部を有する、二股になった遠位部分と、を有する第1のアーム;
第2のアームであって、ハンドルを含んでなる近位部分と、骨折した骨の第2の表面に係合して第1のアームと第2のアームとの間に骨を挟持するように構成される骨係合顎状部を含んでなる遠位部分と、を有し;
それぞれ第1および第2のアームの近位部分と遠位部分との間に配置された第1の継ぎ手部によって第1のアームに枢動可能に取り付けられた第2のアーム;
を含んでなる、骨整復鉗子、
を含んでなる、骨固定プレートを骨に固定している間、少なくとも部分的に(または完全に)整復された骨の上の所定位置に骨固定プレートを保持する骨整復キットを提供する。
【0009】
概して、骨固定プレートの裏面は、鉗子の第1および第2の遠位足状部と嵌合するように位置決めされ寸法決めされた二つの離間した窪み部を含んでなり、それによって、部分的に整復された骨およびプレートを鉗子で挟持する場合に、骨に対するプレートの側方移動が防止される。
【0010】
二つの遠位足状部を有する二股になった第1のアームを有する骨整復鉗子と、鉗子の遠位足状部と嵌合するように寸法決めされた裏面上の離間した窪み部を有する固定プレートとを提供することで、プレーティング操作中に骨に対するプレートの著しい側方移動なしに骨上の定位置にプレートを確実に固定する機構が得られる。
【0011】
いずれの実施形態でも、窪み部は、プレートの裏面の中央部、例えば、
図3に例示されるとおり、プレートの裏面の中央三分の一に配置される。
【0012】
いずれの実施形態でも、第1および第2の遠位足状部は、第1および第2の分岐部の遠位端に配置される。
【0013】
いずれの実施形態でも、第1および第2の遠位足状部は、弾性変形可能なエラストマー材料を含んでなる。
【0014】
いずれの実施形態でも、第1および第2の遠位足状部は、ゴム製の材料を含んでなる。
【0015】
いずれの実施形態でも、窪み部の少なくとも一つまたは両方は、ネジ受け貫通孔である。ネジ受け貫通孔は、皿孔または座グリ孔であってもよく、この場合、窪み部は、ネジ孔の皿孔状または座グリ孔状の上部によって提供される。
【0016】
いずれの実施形態でも、第1および第2の遠位足状部は、それぞれの窪み部の内部にぴったりと入れ子になるように寸法決めされる。いずれの実施形態でも、第1および第2の遠位足状部のそれぞれは、足状部の遠位先端部に向かって内方に先細りする形状(例えば、切頭体形状の足状部)である。いずれの実施形態でも、窪み部は、内方に先細りする形状(例えば、切頭体形状の窪み部)である。
【0017】
いずれの実施形態でも、そのまたはそれぞれの窪み部の側壁は、典型的には約60°~120°の面取り角度で、面取りされる場合がある。
【0018】
いずれの実施形態でも、第1および第2の遠位足状部の一方または両方は、円錐台形状を有する。
【0019】
いずれの実施形態でも、窪み部は、それぞれの第1および第2の遠位足状部の円錐台形状に随意に一致する円錐台形状を有する。
【0020】
いずれの実施形態でも、第1の遠位足状部および第2の遠位足状部は、約2~10cmだけ側方に離間している。
【0021】
いずれの実施形態でも、窪み部(例えば、皿孔または座グリ孔は、約0.5から3.0cm、0.5から2.0cm、または0.5から1.5cmの直径を有する場合がある。
【0022】
いずれの実施形態でも、骨係合顎状部は、第1の遠位足状部と第2の遠位足状部との間の位置に対向する。
【0023】
いずれの実施形態でも、骨係合顎状部は、複数の歯を含んでなる。
【0024】
いずれの実施形態でも、鉗子は、第1および第2のアームのうちの一つに取り付けられたラチェット機構を含んでなる。ラチェット機構は、アームのうちの一つに取り付けられたラチェットラックを含んでなる場合がある。
【0025】
いずれの実施形態でも、骨固定プレートは、整復されたヒト鎖骨の上面または下面に適合するように典型的には構成される鎖骨固定プレートである。
【0026】
いずれの実施形態でも、第2のアームは、二股になっており、二つの分岐部と二つの骨係合顎状部とを含んでなる。
【0027】
別の態様では、本発明は:
骨片を少なくとも部分的に整復するステップと;
少なくとも部分的に整復された骨の表面に骨固定プレートを付けるステップと;
骨整復鉗子を、骨固定プレートおよび骨と位置合わせし、この位置合わせを、鉗子の第1および第2の遠位足状部が、プレートの裏面内の窪み部の上に配置されるようにして、そして骨係合顎状部が骨の第2の表面に隣接して配置されるようにしておこなうステップと;
骨整復鉗子を作動させて、少なくとも部分的に整復された骨に骨固定プレートを挟持して、第1および第2の遠位足状部をそれぞれの窪み部に確実に嵌合させた状態にするステップと;
骨整復鉗子が、骨とプレートをともに確実に保持している間に、骨固定プレートを骨に固定するステップと;
骨整復鉗子を解放して骨から取り外すステップと、
を含んでなる、本発明による骨整復キットを採用する、骨折した骨をプレーティングする方法を提供する。
【0028】
いずれの実施形態でも、骨は鎖骨であり、骨固定プレートは鎖骨固定プレートである。
【0029】
いずれの実施形態でも、骨折は鎖骨の中軸の粉砕骨折である。別の態様では、本発明は:
ハンドルを含んでなる近位部分と、第1の遠位足状部を有する第1の分岐部、および第2の遠位足状部を有する第2の分岐部を有する二股になった遠位部分とを有する第1のアーム;
第2のアームであって、ハンドルを含んでなる近位部分と、骨折した骨の第2の表面に係合して第1のアームと第2のアームとの間に骨を挟持するように構成される骨係合顎状部を含んでなる遠位部分と;
を有し、第1および第2のアームのそれぞれの近位部分と遠位部分との間に配置された第1の継ぎ手部によって第1のアームに枢動可能に取り付けられた第2のアーム、
を含んでなる骨整復鉗子を提供する。
【0030】
いずれの実施形態でも、第1および第2の遠位足状部は、弾性変形可能なエラストマー材料を含んでなる。
【0031】
いずれの実施形態でも、第1および第2の遠位足状部は、ゴム製の材料を含んでなる。
【0032】
いずれの実施形態でも、第1および第2の遠位足状部は、骨固定プレートの裏面上に設けられた皿孔または座グリ孔とそれぞれ嵌合するように構成される。孔は、貫通孔、例えばネジ孔であってもよい。
【0033】
いずれの実施形態でも、第1および第2の遠位足状部の一方または両方は、円錐台形状を有する。
【0034】
いずれの実施形態でも、第1の遠位足状部および第2の遠位足状部は、約2~10cmだけ側方に離間している。
【0035】
いずれの実施形態でも、骨係合顎状部は、第1の遠位足状部と第2の遠位足状部との間の位置に対向する。
【0036】
いずれの実施形態でも、骨係合顎状部は、複数の歯を含んでなる。
【0037】
いずれの実施形態でも、第2のアームは、二股になっており、二つの分岐部と二つの骨係合顎状部とを含んでなる。
【0038】
いずれの実施形態でも、鉗子は、第1および第2のアームのうちの一つに取り付けられたラチェット機構を含んでなる。ラチェット機構は、アームのうちの一つに取り付けられたラチェットラックを含んでなる場合がある。
【0039】
本発明の他の態様および好ましい実施形態は、添付される他の特許請求の範囲に定められ記載される。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【
図1】
図1は、遠位(右手側)から近位(左手側)に向かって示される、本発明によるキットの一部を形成する骨整復鉗子の側立面図である。
【
図2】
図2は、
図1の骨整復鉗子の前立面図(遠位から近位方向に見たもの)である。
【
図3】
図3は、骨折した鎖骨の上面に鎖骨固定プレートを保持しているのが示される、
図2の骨整復鉗子の断面立面図(遠位から近位方向に見たもの)である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
本明細書に記載されるすべての公開文献、特許、特許出願、およびその他の参考文献は、あらゆる目的のために参照によってその全体が組み込まれるが、これは、個々の公開文献、特許、または特許出願が、参照およびその内容によって細大漏らさず具体的かつ個別に組み込まれているとあたかも示されているかの如くになされる。
定義および一般的な優先順位
【0042】
本明細書で使用される場合、別途具体的に指示があるのでない限り、以下の用語は、そうした用語が当技術分野において享受し得るよりも広義(または狭義)のあらゆる意味に加えて、以下の意味を有することが意図される:
【0043】
文脈によって別途要求されない限り、本明細書における単数の使用は、複数を含むとして解釈されるものとし、逆もまた然りである。ある実体に関して使用される用語「a」または「an」は、その実体の一つまたは複数を指すとして解釈されるものとする。このように、用語「a」(または「an」)、「一つまたは複数」、および「少なくとも一つ」は、本明細書では交換可能に使用される。
【0044】
本明細書で使用されるとおり、用語「含んでなる(comprise)」、または「含んでなる(comprises)」もしくは「含んでなる(comprising)」などその変形形態は、いずれかの列挙された完全体(例えば、特徴、構成要素、特徴、特性、方法/工程ステップ、または制限)または完全体(例えば、特徴、構成要素、特徴、特性、方法/工程ステップ、または制限)の群を含むが、他のいかなる完全体または完全体の群をも除外しないことを示していると解釈されるものとする。よって、本明細書で使用されるとおり、用語「含んでなる(comprising)」は、包括的または非限定的であり、追加の、そして列挙されていない完全体または方法/工程ステップを除外するものではない。
【0045】
第1(または第2)のアームの遠位部分に適用される「二股になった」という用語は、アームが分岐点で二つの分岐部に分岐することを意味する。概して、分岐部は対称となるようにして分岐する。典型的には、分岐部は互いの鏡像である。本明細書に記載の実施形態は、二股になった遠位部分を有する第1のアームを示しているが、第2のアームも二股になっていてもよいことは理解されよう。同様に、本発明は、二股になった第1および/または第2のアームに限定されるものではなく、用途に応じて、三つ以上のアームに分岐する遠位部分を有するアームを用いて具現化される場合がある。
【0046】
用語「骨固定プレート」は、骨折した骨に取り付けて、骨に構造的支持を与え、骨を解剖学的に整復された位置に保ち、治癒過程を助けるために整形外科で使用されるプレートを指す。骨固定プレートの一例は、動的圧縮プレートである。概して、骨固定プレートは、プレートをネジで骨に固定できるようにする複数の孔を含む。多くの場合、孔は皿孔である。プレートは、特定の骨の形状に合わせた曲線が付いている場合がある。概して、プレートは単一平面である。プレートは、鉗子の第1のアームの第1および第2の足状部を受けるように寸法決めされた窪み部を含んでなる。窪み部は、プレートの皿孔の上部を形成する場合がある。窪み部は、完全にまたは一部のみプレートを貫通して延在する場合がある。窪み部は、内方に先細りした形状の側壁を有する場合がある。その、もしくはそれぞれの窪み部、またはその一部分は概して、足状部と窪み部がぴったりと嵌合するように寸法決めされる。これは、遊びの少ない緊密な嵌合配置で互いに入れ子になることを意味しており、鉗子が骨とプレートとに係合する際に、足状部に対するプレートの相対移動を防止するのに役立つ。
【0047】
用語「ハンドル」は、外科医が鉗子を保持して使用するのを容易にする、各アームの近位端上の形成物、例えば指または掌と係合する輪状部またはハンドルを指す。
【0048】
上に定義された処置および有効量の文脈では、対象という用語(文脈から許される場合、「個体」、「動物」、「患者」、または「哺乳類」を含むと解釈される)は、指示された治療の対象となるいずれの被験体、特に哺乳類の対象をも定義するものである。哺乳類の対象には、ヒト、飼育動物、家畜、動物園の動物、スポーツ用動物、犬、猫、モルモット、ウサギ、ラット、マウス、ウマ、ラクダ、バイソン、畜牛、乳牛などのペット動物;無尾猿、有尾猿、オランウータン、チンパンジーなどであるがこれらには限定されない霊長類;イヌ、オオカミなどのイヌ科、ネコ、ライオン、トラなどのネコ科、ウマ、ロバ、シマウマなどのウマ科、乳牛、ブタ、ヒツジなどの食用動物;シカ、キリンなどの有蹄類;そしてマウス、ラット、ハムスター、モルモットなどのげっ歯類などが挙げられるがこれらには限定されない。好ましい実施形態では、対象はヒトである。本明細書で使用されるとおり、用語「ウマ科」は、ウマ、ロバ、ペルシアノロバ、チベットノロバ、およびシマウマを含む、ウマ科の哺乳類を指す。
【実施例】
【0049】
以下、特定の実施例を参照しつつ、本発明を説明する。これらは単に例示目的のものであり、説明のためのものであって、これらが、いかなる形であっても、請求された独占権の範囲にまたは記載の発明に限定されることを意図するものではない。これらの実施例は、本発明を実施するために現在勘案されている最良の態様を構成するものである。
【0050】
諸図面を参照し、そして最初に
図1および
図2を参照すると、参照数字1によって全体として示される、本発明による骨整復鉗子が記載されている。このこの鉗子は、第1のアーム2と、第2のアーム3と、アームの枢動するはさみ状関節接合部を提供する枢動継ぎ手部4とを含んでなる。
【0051】
第1のアーム2は、ハンドル6Aを有する近位区画5と、広がった分岐部8A、8Bをそれぞれ遠位足状部9A、9B内で終端させる二股になった遠位端7とを有する。図示の実施形態では、足状部9A、9Bは、側方に約7cm離間しているが、処置されている骨および骨折の種類に応じて間隔を変えてもよいことは理解されよう。各足状部9A、9Bはゴムから形成され、約1.5cmの高さと、底部のところでの約2.5cmの直径とを有する円錐台形状を有している。
【0052】
第2のアーム3は、ハンドル6Bを有する近位区画10と、骨係合顎状部13において終端する遠位端11とを有する。骨係合顎状部は、足状部9A、9Bに対向しているがそれらの中心に対してずれており、足状部の中間の位置に対向する。顎状部の骨係合面は、骨の表面の差し渡しに延在するようにわずかに弧状であり、鉗子が骨を把持するのを容易にする一連の鋸歯状歯25を含んでなる。
【0053】
枢動継ぎ手部4は、整形外科用鉗子に使用される従来型の枢動継ぎ手部であるので、さらに詳細には記載しないことにする。
【0054】
鉗子1はまた、対向するラチェットラック15A、15Bを含んでなるラチェット機構を含み、これらのラチェットラックは、二つのアームを互いに対して相対的にロッキングし、それによって、鉗子が外科医の手から離れた後に骨片をともに保持するよう各アームの顎状部の間の力を維持する。アームの弾性変形は概して、力を提供する。
【0055】
図3を参照すると、整復された位置にあるヒトの鎖骨16をプレーティングするのに使用されている状態での、本発明による骨整復キットが記載されている。このキットは、
図1および
図2を参照しつつ記載された骨整復鉗子1と、この場合には曲線を付けた鎖骨プレートである骨固定プレート20とを含んでなる。プレート20は、ゴム製の遠位足状部9A、9Bの形状に一致する円錐台形状を有する複数の皿孔22を有する裏面21を含んでなる。プレート20は鎖骨の上面23に置かれており、プレート20の曲線の付いた表面は、鎖骨の上面の外形線に一致している。次いで、遠位足状部9A、9Bが皿孔22と整列し、骨係合顎状部13が、遠位足状部の間の位置に対向する鎖骨の下面24の下に位置している状態で、鉗子をプレート20および鎖骨16に整列させる。鉗子を作動させる結果、ゴム製の足状部9A、9Bが皿孔22と嵌合し、顎状部13が鎖骨の下面に係合し、その結果、整復された鎖骨上の所定の位置にプレートがしっかりと保持される。鉗子は、ラチェットラック15A、15Bを使用してこの位置にロッキングすることができることで、外科医がプレートを鎖骨に取り付けることが可能になる。
【0056】
本発明の鉗子は、整復された位置に骨片を保持するために、および/または、プレートを骨に固定している間、プレートを骨の所定の位置に保持するために採用してもよい。特に、鎖骨のプレーティング、特に鎖骨の中軸プレーティングに適用可能である。
【0057】
例示の実施形態は、三点式鉗子(第1のアームは二股になっており、二つの骨係合顎状部を担持している)を示している。しかし、第2のアームもまた二股になって、二つの分岐部と二つの骨係合顎状部とを有してもよい(すなわち、四点式鉗子であってもよい)ことは理解されよう。さらには、第1のアームが、三つ以上の分岐部および関連する遠位足状部を含んでいてもよいことは理解されよう。好ましい実施形態は、二つの遠位足状部と、一つの骨係合顎状部とを有する三点式鉗子である。顎状部は、骨の長さに、例えば骨の長さの5~20%、20~30%、30~40%、40~50%、または50~60%の長さに沿って骨と係合するように、骨の軸に沿って細長いものであってもよい。
【0058】
均等物
先の記載は、本発明の現状で好ましい実施形態を詳細に記載したものである。これらの説明を考慮すると、当業者には、その実施における多数の修正形態および変形形態が想起されることが予想される。それらの修正形態および変形形態は、本明細書に添付された特許請求の範囲に包含されることが意図される。
【国際調査報告】