IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ イモデュロン セラピューティクス リミテッドの特許一覧

特表2023-552674がん治療のためのマイコバクテリア免疫療法
<>
  • 特表-がん治療のためのマイコバクテリア免疫療法 図1
  • 特表-がん治療のためのマイコバクテリア免疫療法 図2
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-19
(54)【発明の名称】がん治療のためのマイコバクテリア免疫療法
(51)【国際特許分類】
   A61K 35/74 20150101AFI20231212BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20231212BHJP
   A61P 35/04 20060101ALI20231212BHJP
   A61K 39/04 20060101ALI20231212BHJP
   A61P 37/04 20060101ALI20231212BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20231212BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20231212BHJP
【FI】
A61K35/74 A
A61P35/00
A61P35/04
A61K39/04
A61P37/04
A61K45/00
A61P43/00 121
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023527652
(86)(22)【出願日】2021-11-05
(85)【翻訳文提出日】2023-07-10
(86)【国際出願番号】 GB2021052881
(87)【国際公開番号】W WO2022096896
(87)【国際公開日】2022-05-12
(31)【優先権主張番号】2017554.3
(32)【優先日】2020-11-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(31)【優先権主張番号】2104427.6
(32)【優先日】2021-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516178402
【氏名又は名称】イモデュロン セラピューティクス リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】マーティン、グレン
(72)【発明者】
【氏名】カンピンガ、ヤコブ
(72)【発明者】
【氏名】クレーン、トーマス
【テーマコード(参考)】
4C084
4C085
4C087
【Fターム(参考)】
4C084AA19
4C084MA02
4C084MA52
4C084MA55
4C084MA56
4C084MA59
4C084MA66
4C084NA05
4C084NA14
4C084ZB09
4C084ZB26
4C084ZC75
4C085AA02
4C085BA09
4C085CC07
4C085EE01
4C085EE03
4C085GG02
4C085GG03
4C085GG05
4C085GG06
4C085GG08
4C085GG10
4C087AA01
4C087MA52
4C087MA55
4C087MA56
4C087MA59
4C087MA66
4C087NA05
4C087NA14
4C087ZB09
4C087ZB26
4C087ZC75
(57)【要約】
本発明は、腫瘍切除術及び/又は1若しくは複数の追加の抗がん治療若しくは抗がん剤、好ましくはチェックポイント阻害剤療法を受けたことがある、又は受ける予定である患者における、がんの、アジュバント療法、ネオアジュバント療法、又はペリアジュバント療法による治療、低減、阻害、又は制御で使用するための、免疫調節剤を提供する。本発明はまた、アジュバント療法的、ネオアジュバント療法的、又はペリアジュバント療法的な状況における、1又は複数の追加の抗がん治療又は抗がん剤の使用、並びに、使用のためのプロトコル及び投与レジメンについても記載している。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
腫瘍切除術及び/又は1若しくは複数の追加の抗がん治療若しくは抗がん剤の実行/投与(administration)を受けたことがある、又は受ける予定である患者における、原発腫瘍を含むがんの、アジュバント療法、ネオアジュバント療法、若しくはペリアジュバント療法、治療、低減、阻害、又は制御において使用するための免疫調節剤であって、
非病原性の非生存マイコバクテリウムを含む、
免疫調節剤。
【請求項2】
前記患者が、原発腫瘍から遠隔にあるいかなる臓器にも転移を呈しておらず、且つ、R2切除状態によって示される、腫瘍切除術後の肉眼的(macroscopic)残存疾患も呈していない、請求項1に記載の使用のための免疫調節剤。
【請求項3】
前記1又は複数の追加の抗がん治療又は抗がん剤が、養子細胞療法(adoptive cell therapy)、手術療法、化学療法、放射線療法、ホルモン療法、チェックポイント阻害剤療法(checkpoint inhibitor therapy)、メトホルミン(meltforin)などの小分子療法、チロシンキナーゼ阻害剤療法などの受容体キナーゼ阻害剤療法、温熱療法、光線療法、ラジオ波アブレーション療法(RFA)、抗血管新生療法、サイトカイン療法、寒冷療法、生物学的療法、HDAC阻害剤、例えばOKI-179、BRAF阻害剤、MEK阻害剤、EGFR阻害剤、VEGF阻害剤、P13Kδ阻害剤、PARP阻害剤、mTOR阻害剤、低メチル化剤、腫瘍溶解性ウイルス、リンタトリモド(rintatolimod)などの、TLR2作動薬、TLR3作動薬、TLR4作動薬、TLR7作動薬、TLR8作動薬、若しくはTLR9作動薬、又はMRx0518(4Dファーマ社)などのTLR5作動薬を含むTLR作動薬、STING作動薬(MIW815及びSYNB1891を含む)、ミファムルチド(mifamurtide)、及びGVAX又はCIMAvaxなどのがんワクチン、並びにこれらの組み合わせから選択され、好ましくは、前記患者は腫瘍切除術及び/又はチェックポイント阻害剤療法を受けたことがある、又は受ける予定である、請求項1又は請求項2に記載の使用のための免疫調節剤。
【請求項4】
前記がんが、膀胱がん(筋層非浸潤性膀胱がん(non-muscle invasive bladder cancer)を含む)、前立腺がん、肝臓がん、腎がん、肺がん、乳がん、結腸直腸がん、結腸がん、直腸がん、膵がん、脳がん(グリア芽腫を含む)、肝細胞がん、リンパ腫、白血病、胃がん、子宮頸がん、卵巣がん、甲状腺がん、メラノーマ、頭頚部がん、皮膚がん、並びに軟部組織肉腫及び/又は骨肉腫(膵管腺癌(PDAC)及び膵神経内分泌腫瘍(PNET)を含む)から選択される、請求項1~請求項3のいずれか一項に記載の使用のための免疫調節剤。
【請求項5】
前記がんが転移性である、請求項4に記載の使用のための免疫調節剤。
【請求項6】
前記がんがTNM分類基準によって臨床的に定義され、前記基準において、前記患者がT1~T4の原発腫瘍(T)、及び/又は、N0、N1、若しくはN2の節転移(Node designation)を有するか、又は、前記がんがI期、II期、若しくはIII期であると臨床的に定義される、請求項1~請求項5のいずれか一項に記載の使用のための免疫調節剤。
【請求項7】
前記患者が、TNM分類基準で定義される転移(M0)のエビデンスを有さない、請求項6に記載の使用のための免疫調節剤。
【請求項8】
前記患者が、腫瘍切除術を受けたことがあるか、又は受ける予定であり、前記腫瘍切除術がリンパ節切除をさらに含む、請求項1~請求項7のいずれか一項に記載の使用のための免疫調節剤。
【請求項9】
前記患者が、腫瘍切除術を受けたことがあるか、又は受ける予定であり、転移性膵管腺癌(mPDAC)などの転移性疾患が存在する場合には、前記腫瘍切除術が転移性腫瘍切除をさらに含む、請求項1~請求項8のいずれか一項に記載の使用のための免疫調節剤。
【請求項10】
前記がんが、PCRベースアッセイで測定された場合に、高頻度マイクロサテライト不安定性(MSI)若しくは低頻度MSIであると判定されるか、及び/又は、前記がんが、DNAミスマッチ修復機能欠損型(dMMR)若しくは非欠損型(proficient)(pMMR)のタンパク質発現に関するIHC染色を受け、好ましくは、前記がんが高頻度MSI且つdMMRである、請求項1~請求項9のいずれか一項に記載の使用のための免疫調節剤。
【請求項11】
前記がんが高頻度MSI又はMMR欠損型のIII期結腸直腸がんであり、好ましくは、前記患者がオキサリプラチンをベースにした化学療法に非適応であるか、又は、前記がんが、(節病変を有する又は有しない)局所進行膵がん、切除可能膵がん、切除可能境界膵がん、切除不能膵がん、チェックポイント抵抗性膵がん、化学療法抵抗性膵がん、オリゴ転移性膵がん、膵管腺癌(PDAC)、及び転移性膵管腺癌(mPDAC)から選択される膵がんである、請求項1~請求項10のいずれか一項に記載の使用のための免疫調節剤。
【請求項12】
非病原性の非生存マイコバクテリウムが、受託番号NCTC11659及びSRL172、SRP299、IMM-201、DAR-901などの関連する名称の下で寄託された株、並びにATCC95051として寄託された株(Vaccae(商標))を含む、マイコバクテリウム・バッカエ(M.vaccae);マイコバクテリウム・オブエンス(M.obuense)、マイコバクテリウム・パラゴルドネ(M.paragordonae)(49061株)、マイコバクテリウム・パラフォルトゥイタム(M.parafortuitum)、マイコバクテリウム・パラツベルクローシス(M.paratuberculosis)、マイコバクテリウム・ブルマエ(M.brumae)、マイコバクテリウム・オーラム(M.aurum)、マイコバクテリウム・インディカス プラニイ(M.indicus pranii)、マイコバクテリウム・w(M.w)、マイコバクテリウム・マンレセンシス(M.manresensis)、マイコバクテリウム・キョガエンセ(M.kyogaense)(DSM107316/CECT9546として寄託)、マイコバクテリウム・フレイ(M.phlei)、スメグマ菌(M.smegmatis)、結核菌青山B(M.tuberculosis Aoyama B)又はH37Rv、RUTI、BCG、VPM1002BC、SMP-105、Z-100、並びにこれらの組み合わせから選択され、好ましくは、受託番号NCTC13365としてブダペスト条約に基づいて寄託されたマイコバクテリウム・オブエンス(Mycobacterium obuense)の菌株である、請求項1~請求項11のいずれか一項に記載の使用のための免疫調節剤。
【請求項13】
前記非病原性の非生存マイコバクテリウムがマイコバクテリウム・オブエンス(M.obuense)NCTC13365であり、好ましくは、ラフ型であり、及び/又は、画分、断片、細胞内成分(subcellular component)、溶解化液、ホモジネート、超音波処理物として、若しくは実質的に全細胞の形態で提示される、請求項12に記載の使用のための免疫調節剤。
【請求項14】
前記免疫調節剤が、10~10個の細胞を含む投与量で、又は0.0001~1.0mg、好ましくは0.5mg~1.0mg投与される、請求項1~請求項13のいずれか一項に記載の使用のための免疫調節剤。
【請求項15】
腫瘍切除術及び/又は前記1若しくは複数の追加の抗がん治療若しくは抗がん剤(好ましくはチェックポイント阻害剤療法)の実行/投与(administration)の前に少なくとも1~3回投与される、請求項1~請求項14のいずれか一項に記載の使用のための免疫調節剤。
【請求項16】
腫瘍切除術及び/又は前記1若しくは複数の追加の抗がん治療若しくは抗がん剤(好ましくはチェックポイント阻害剤療法)の実行/投与(administration)の前に3回投与される、請求項15に記載の使用のための免疫調節剤。
【請求項17】
腫瘍切除術又は前記1若しくは複数の追加の抗がん治療若しくは抗がん剤(好ましくはチェックポイント阻害剤療法)の後に投与され、所望により、前記投与は12か月間以上の期間に亘るものである、請求項1~請求項16のいずれか一項に記載の使用のための免疫調節剤。
【請求項18】
免疫調節剤と前記1又は複数の追加の抗がん治療又は抗がん剤(好ましくはチェックポイント阻害剤療法)との両方が、腫瘍切除術の前及び/又は後に投与され、所望により、前記免疫調節剤と前記1又は複数の追加の抗がん治療又は抗がん剤(好ましくはチェックポイント阻害剤療法)の両方の実行/投与(administration)は、前記腫瘍切除術後の12か月間以上の期間に亘るものである、請求項1~請求項17のいずれか一項に記載の使用のための免疫調節剤。
【請求項19】
非経口経路、経口経路、舌下経路、経鼻経路、又は経肺経路を介して投与される、請求項1~請求項18のいずれか一項に記載の使用のための免疫調節剤。
【請求項20】
前記非経口経路が皮下投与、皮内投与、リンパ節内投与、筋肉内投与、真皮下投与、腹腔内投与、又は静脈内投与から選択され、前記非経口経路が所望により腫瘍内投与、腫瘍近傍(peritumoral)投与、病変近傍(perilesional)投与、又は病巣内投与を含む、請求項19に記載の使用のための免疫調節剤。
【請求項21】
腫瘍内投与又は病巣内投与に続いて、皮内注射が順次行われる、請求項20に記載の使用のための免疫調節剤。
【請求項22】
前記1又は複数の抗がん剤が、ベバシズマブ、シクロホスファミド、メトトレキサート、5-フルオロウラシル、ドキソルビシン、ムスチン、ビンクリスチン、プロカルバジン、プレドニゾロン、ブレオマイシン、ビンブラスチン、ダカルバジン、エトポシド、シスプラチン、エピルビシン、カペシタビン、ロイコボリン、フォリン酸、カルボプラチン、オキサリプラチン、ゲムシタビン、フォルフィリノックス、フォルフォックス、mフォルフィリノックス、ナリリフォックス、パクリタキセル、nab-パクリタキセル、ペメトレキセド、イリノテカン、テモゾロミド、及びこれらの組み合わせから選択され、前記1又は複数の追加の抗がん治療又は抗がん剤が、腫瘍内に、動脈内に、静脈内に、血管内に、胸膜内に、腹腔内に、気管内に、鼻腔内に、経肺的に、髄腔内に、筋肉内に、内視鏡下で、病巣内に、経皮的に、皮下に、局所的に、定位的に、経口的に、又は直接注射若しくは灌流により投与される、請求項1~請求項21のいずれか一項に記載の使用のための免疫調節剤。
【請求項23】
前記1又は複数の追加の抗がん治療又は抗がん剤の実行/投与(administration)が、好ましくは、イピリムマブ、ニボルマブ、ペンブロリズマブ、アテゾリズマブ(azetolizumab)、BI754091(抗PD-1剤)、バビツキシマブ(抗PS IgG3モノクローナル抗体)、ビントラフスプアルファ、デュルバルマブ、ドスタルリマブ、トレメリムマブ、スパルタリズマブ、アベルマブ、シンチリマブ、トリパリマブ、プロルゴリマブ(prolgolimab)、チスレリズマブ、カムレリズマブ、MGA012、MGD013(現在はテボテリマブ(tebotelimab)として知られている)、MGD019、エノブリツズマブ、MGD009、MGC018、MEDI0680、ミプテナリマブ(miptenalimab)(BI754111、抗LAG-3剤)、ニモツズマブ、PDR001、FAZ053、TSR022、MBG453、レラトリマブ(BMS986016)、LAG525(IMP701)、IMP321(エフティラギモドアルファ)、REGN2810(セミプリマブ)、REGN3767、ペキシダルチニブ(PLX3397)、LY3022855、FPA008、BLZ945、GDC0919、エパカドスタット、エマクツズマブ(CSF-1Rを標的とするRG1755)、FPA150、インドキシミド(indoximid)、BMS986205、CPI-444、MEDI9447、PBF509、FS118(LAG-3及びPD-L1に対して二重特異性)、リリルマブ、Sym023、TSR-022、A2Ar阻害剤(例えば、EOS100850、AB928)、モナリズマブなどのNKG2A阻害剤、及びこれらの組み合わせから選択されるチェックポイント阻害剤療法である、請求項1~請求項22のいずれか一項に記載の使用のための免疫調節剤。
【請求項24】
1又は複数のチェックポイント阻害剤がそれぞれ治療量未満及び/又は治療期間未満で投与される、請求項23に記載の使用のための免疫調節剤。
【請求項25】
前記1又は複数の追加の抗がん治療又は抗がん剤が、3週間毎に1200mg又は2週間毎に840mgの投与量で、最大計12サイクル又は最大24回投与される、ゲムシタビン、nab-パクリタキセル、抗PD-1抗体、抗CTLA-4抗体、抗PD-L1抗体、及び/又はmTOR阻害剤、好ましくはアテゾリズマブから選択される、請求項23又は請求項24のいずれか一項に記載の使用のための免疫調節剤。
【請求項26】
前記1又は複数の抗がん治療又は抗がん剤より前に最初に投与され、所望により、前記1又は複数の抗がん治療又は抗がん剤と組み合わせて、又はその後に投与される、請求項23~請求項25のいずれか一項に記載の使用のための免疫調節剤。
【請求項27】
前記1又は複数の抗がん治療又は抗がん剤が、チェックポイント阻害剤療法であり、好ましくは3回以上投与される、請求項26に記載の使用のための免疫調節剤。
【請求項28】
腫瘍切除術又は前記1若しくは複数の追加の抗がん治療若しくは抗がん剤(好ましくはチェックポイント阻害剤療法)の実行/投与(adiminstration)の後に投与されることとされ、所望により、前記投与は3か月間以上、又は6か月間、又は12か月間の期間に亘るものである、請求項1~請求項27のいずれか一項に記載の使用のための免疫調節剤。
【請求項29】
免疫調節剤と前記1又は複数の追加の抗がん治療又は抗がん剤、好ましくはチェックポイント阻害剤療法との両方が、腫瘍切除術の前及び/又は後に投与されることとされ、所望により、前記免疫調節剤と前記1又は複数の追加の抗がん治療又は抗がん剤、好ましくはチェックポイント阻害剤療法との両方の投与が、前記腫瘍切除術後の3か月間、又は6か月間、又は12か月間以上の期間に亘るものである、請求項1~請求項28のいずれか一項に記載の使用のための免疫調節剤。
【請求項30】
前記治療、低減、阻害、又は制御が1又は複数のバイオマーカーの測定に基づいて監視される、請求項1~請求項29のいずれか一項に記載の使用のための免疫調節剤。
【請求項31】
前記1又は複数のバイオマーカーが、前立腺特異的抗原(PSA);癌胎児抗原(CEA);CA19.9、PNR、INR、予後栄養指数(PNI);全身性免疫炎症指数(SII);及び全身性炎症スコア(SIS)のうちのいずれか1つ又は複数を含む、請求項30に記載の免疫調節剤。
【請求項32】
原発腫瘍を含む前記がんの前記治療、低減、阻害、又は制御が、(好ましくは手術の12か月後又は治療終了時に)評価された場合の、(i):全生存期間、(ii):無増悪生存期間、(iii):無病生存期間、(iv):全奏効率、(v):原発腫瘍サイズ及び/又は転移性疾患の低減、(vi):炭水化物抗原19.9(CA19.9)及び癌胎児抗原(CEA)などの腫瘍抗原、又は腫瘍に応じた他の腫瘍抗原の血中濃度、(vii)栄養状態(体重、食欲、血清アルブミン)、(viii):疼痛管理又は鎮痛剤使用、(ix)CRP/アルブミン比、(x)改善されたクオリティオブライフ、(xi)除脂肪体重の維持、並びに(xii)ctDNAの減少又は消失、のうちの1又は複数から選択される疾病状態及び疾病進行の1又は複数のマーカーにおける臨床的に意義のある改善をもたらす、請求項1~請求項31のいずれか一項に記載の使用のための免疫調節剤。
【請求項33】
原発腫瘍を含むがんの前記アジュバント療法、ネオアジュバント療法、若しくはペリアジュバント療法、治療、低減、阻害、又は制御が、免疫関連効果判定基準(irRC)、iRECIST、RECIST1.1、若しくはirRECISTによって評価された場合、(好ましくは手術の12か月後又は治療終了に評価された場合において)前記原発種王の腫瘍生検若しくは切除腫瘍中に存在する生腫瘍細胞が10%未満であることにより示されるほぼ完全な(subtotal)退縮、安定病態(SD)、完全奏効(CR)、若しくは部分奏効(PR);及び/又は、1若しくは複数の非標的腫瘍の安定病態(SD)若しくは完全奏効(CR)をもたらす、請求項1~請求項32のいずれか一項に記載の使用のための免疫調節剤。
【請求項34】
原発腫瘍を含むがんの前記アジュバント療法、ネオアジュバント療法、若しくはペリアジュバント療法、治療、低減、阻害、又は制御が、(1)原発腫瘍若しくはがんから、前記原発腫瘍若しくはがんと異なる1若しくは複数の他の部位、位置、若しくは領域に生じる転移の形成若しくは確立の低減若しくは阻害;(2)転移が形成若しくは確立された後の、前記原発腫瘍若しくはがんと異なる1若しくは複数の他の部位、位置、若しくは領域における成長若しくは増殖若しくは転移の低減若しくは阻害、又は、(3)転移が形成若しくは確立された後の、さらなる転移の形成若しくは確立の低減若しくは阻害、をもたらす、請求項1~請求項33のいずれか一項に記載の使用のための免疫調節剤。
【請求項35】
腫瘍切除術を受けたことがあるか、又は受ける予定である患者における、原発腫瘍を含むがんを治療又は制御する方法であって、(i)非病原性の非生存マイコバクテリウム、(ii)腫瘍切除術、及び(iii)1又は複数の追加の抗がん治療又は抗がん剤、を前記対象に同時に、別々に、又は順次に実行/投与(administer)することを含み、非病原性の非生存マイコバクテリウムの単独投与、1若しくは複数の追加の抗がん治療若しくは抗がん剤の単独投与、又は腫瘍切除術単独と比べて治療有効性の増強をもたらす、方法。
【請求項36】
(好ましくは手術の12か月後又は治療終了時に評価された場合に)免疫関連効果判定基準(irRC)、iRECIST、RECIST1.1、若しくはirRECISTによって評価された場合の、前記原発腫瘍の腫瘍生検若しくは切除腫瘍中に存在する生腫瘍細胞が10%未満であることにより示されるほぼ完全な(subtotal)退縮、安定病態(SD)、完全奏効(CR)、若しくは部分奏効(PR);及び/又は、1若しくは複数の非標的腫瘍の安定病態(SD)若しくは完全奏効(CR)をもたらす、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
(1)原発腫瘍又はがんから、前記原発腫瘍又はがんと異なる1又は複数の他の部位、位置、又は領域に生じる転移の形成又は確立の低減又は阻害;(2)転移が形成又は確立された後の、前記原発腫瘍又はがんと異なる1又は複数の他の部位、位置、又は領域における成長又は増殖又は転移の低減又は阻害、(3)転移が形成又は確立された後の、さらなる転移の形成又は確立の低減又は阻害、(4)全生存期間の延長、(5)無増悪生存期間の延長、(6)疾患安定化、(7)クオリティオブライフの向上、及びこれらの組み合わせ、をもたらす、請求項36に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はがん治療の分野に関する。特に、本発明は、新補助(neoadjuvant)療法、補助(adjuvant)療法、及びペリアジュバント(peri-adjuvant)療法によるレジメン及び治療法を含むアジュバント療法を通じて、対象における、腫瘍及び/又は転移の発生を、予防、治療、又は阻害する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
がんを有するヒトにおいては、治療レジメンに、腫瘍の外科的処置、化学療法、放射線療法、又は免疫療法の各形態が含まれる場合が多い。進行性症状であるがんにおいては、炎症促進性シグナルと抗炎症性シグナル、免疫刺激シグナルと免疫抑制シグナルの綿密に制御された相互作用のために、抗腫瘍免疫の効果がない場合が多い。昨今、免疫系は新たな形質転換細胞の監視と排除を絶えず行っていると考えられている。そこで、がん細胞は、攻撃を回避(免疫編集)し、阻害シグナルの発現をアップレギュレートするために、免疫圧に応答してその表現型を変化させる場合がある。免疫編集及び他の破壊プロセスを通じて、原発腫瘍及び転移は自身の生存を維持する。
【0003】
PD-1、並びに細胞傷害性Tリンパ球抗原4(CTLA-4、B及びTリンパ球アテニュエータ(BTLA;CD272)、T細胞免疫グロブリン及びムチンドメイン-3(TIM-3)、リンパ球活性化遺伝子-3(LAG-3;CD223)などの共抑制受容体は、しばしばチェックポイント制御因子と呼ばれる。これらのチェックポイント制御因子は、分子の「料金所(tollbooth)」としての働きをし、細胞外情報による、細胞周期進行やその他の細胞内シグナル伝達プロセスが進行するべきかどうかの指示が行われる。
【0004】
T細胞受容体(TCR)を通じた特異的抗原認識に加えて、T細胞の活性化は、共刺激受容体によってもたらされる正のシグナルと負のシグナルのバランスを通じて制御される。これらの表面タンパク質は、典型的には、TNF受容体スーパーファミリー又はB7スーパーファミリーのメンバーである。活性化共刺激分子に対するアゴニスト抗体及び負の共刺激分子に対する阻止抗体が、T細胞刺激を増強して、腫瘍の破壊を促進し得る。
【0005】
PD-1に対し特異的なリガンドが2つ特定されている:プログラム死-リガンド1(PD-L1、別名B7-H1又はCD274)及びPD-L2(別名B7-DC又はCD273)。PD-L1及びPD-L2は、マウス系及びヒト系の両方で、PD-1に結合後、T細胞の活性化をダウンレギュレートすることが示されている(Okazaki et al., Int Immunol., 2007; 19: 813-824)。PD-1と、そのリガンドである、抗原提示細胞(APC)及び樹状細胞(DC)上に発現したPD-L1及びPD-L2との相互作用が、負の制御刺激を伝達することで、活性化されたT細胞免疫応答が下方調節される。PD-1の遮断は、この負のシグナルを抑制し、T細胞応答を増幅する。
【0006】
PD-L1/PD-1シグナル伝達経路は、いくつかの理由から、がんの免疫回避の主要機構となっている。第一に、最も重要なこととして、この経路が、末梢に存在する活性化エフェクターT細胞の免疫応答の負の調節に関与している点。第二に、PD-L1ががん微小環境においてアップレギュレートされており、PD-1も活性化腫瘍浸潤性T細胞上でアップレギュレートされていることから、阻害の悪循環を強めている可能性がある点。第三に、この経路が、二方向性のシグナル伝達を通じて自然免疫制御及び適応免疫制御の両方に複雑に関与している点。これらの要因が、PD-1/PD-L1複合体を、それを通じてがんが免疫応答を操作し、それ自体の進行を促進することができる中心点としている。
【0007】
臨床試験で試験されることになった最初の免疫チェックポイント阻害剤は、CTLA-4モノクローナル抗体であるイピリムマブ(ヤーボイ、ブリストル・マイヤーズスクイブ社)であった。抗CTLA-4モノクローナル抗体は、未感作細胞及び抗原経験細胞の両方から「ブレーキ」を取り除く、強力なチェックポイント阻害剤である。治療法では、CD8+T細胞の抗腫瘍機能を増強し、Foxp3+制御性T細胞に対するCD8+T細胞の割合を増加させ、制御性T細胞の抑制機能を阻害する。抗CTLA-4モノクローナル抗体療法の主な欠点は、自己免疫性の毒性が生じることである。
【0008】
TIM-3は、疲弊したCD8+T細胞によって発現される別の重要な抑制性受容体として特定された。マウスのがんモデルにおいて、最も機能障害性の腫瘍浸潤性CD8+T細胞が、実際に、PD-1及びTIM-3を共発現していることが示されている。
【0009】
LAG-3は、エフェクターT細胞機能を制限し、制御性T細胞の抑制活性を増強する働きをする、別の最近特定された抑制性受容体である。マウスにおいて、PD-1及びLAG-3が腫瘍浸潤性T細胞によって大規模に共発現されていること、並びに、マウスがんモデルにおいて、PD-1の遮断とLAG-3の遮断を組み合わせることで、強力で相乗的な抗腫瘍免疫応答が誘発されることが、最近明らかにされた。
【0010】
免疫チェックポイント阻害剤療法は特にメラノーマにおいて成功しており、メラノーマに対し現在承認された治療としては、抗PD-1レジメン(ニボルマブ及びペンブロリズマブ)、抗CTLA-4レジメン(イピリムマブ)、及び抗PD-1/CTLA-4併用レジメン(ニボルマブ-イピリムマブ)が挙げられる。イピリムマブ(抗CTLA-4)で治療されたメラノーマ患者の長期生存データでは、治療開始から5~10年後に、継続的な耐久性のある疾病制御又は奏効のエビデンスを示している患者は20%であることが示されている。ペンブロリズマブ(抗PD-1)で治療されたメラノーマ患者の奏功率は3年時点で33%であり、70~80%の初期奏効患者が臨床応答を維持した。
【0011】
しかし、外科的処置を介したがんの管理だけでなく、免疫療法が進歩し続ける一方で、多くの被験者が極めて悪い予後に尚も直面している。例えば、マイクロサテライト不安定性(MSI)を有するミスマッチ修復欠損(dMMR)がんが、依然として問題となっており、メチル化されたhMLH1遺伝子プロモーターの割合が高いことから、特に高齢患者に蔓延している。結腸直腸がん(colorectal cancer)と新たに診断される患者の年齢中央値が70歳を超えていることを考えると、このようなdMMRがんは、結腸直腸がん特有のものでもある。ドイツのColoPredictレジストリでは、dMMR腫瘍の割合は、II期結腸直腸がんでは最大25%であり、III期結腸直腸がんでは20%である。III期結腸直腸がんの標準的治療は、現行のオキサリプラチン及びフルオロピリミジンをベースとしたアジュバント療法的化学療法である。しかし、75歳を超える患者を含む、多くの患者にとって、オキサリプラチンはいくつかのガイドラインに推奨されておらず、高齢患者の根底にある(underlining)共存症のために実行可能ではない場合が多い(Nitsche et al. 2017, Gastrointest Tumours 4(1-2): 11-19)。オキサリプラチンをベースにしたアジュバント療法的化学療法による治療を受けていないIII期結腸直腸がん患者の再発率は比較的高く、3年無病生存率及び5年全生存率はそれぞれたった60%及び67%である(Gill et al. 2014, Indian J Med Paediatr Oncol. 35(3): 197-202)。
【0012】
したがって、オキサリプラチンをベースにしたアジュバント療法的化学療法に非適応の、III期dMMR結腸直腸がん患者の好ましくない予後を改善し、実際には他の治療困難且つ/又は再発率が高いがんを有する患者の予後も改善する、代替的な治療選択肢が必要とされている。
【0013】
よって、本発明の目的は、腫瘍切除術又はチェックポイント阻害剤療法を受けている患者におけるがんを治療するための治療法を提供することである。この治療法は、手術又はチェックポイント阻害剤療法の有効性を最大化することを目的として、ネオアジュバント療法的、ペリアジュバント療法的、又はアジュバント療法的な薬剤又は治療法として使用される、非生存(non-viable)マイコバクテリウムを含む。
【発明の概要】
【0014】
本発明は、腫瘍切除術又は1若しくは複数の追加の抗がん治療若しくは抗がん剤の実行/投与(administration)、好ましくはチェックポイント阻害剤療法を受けたことがある、又は受ける予定である患者における、がん及び/又は転移の確立を、前記手術又はチェックポイント免疫療法の後及び/又は前に、非病原性の非生存マイコバクテリウムを含む免疫調節剤を投与することにより、治療、低減、阻害、制御、及び/又は予防する効果的な方法を提供する。
【0015】
すなわち、本発明の第1の態様において、腫瘍切除術、及び1又は複数の追加の抗がん治療又は抗がん剤の実行/投与(administration)、好ましくはチェックポイント阻害剤療法を受けたことがある、又は受ける予定である患者における、原発腫瘍を含むがんの、アジュバント療法、ネオアジュバント療法、又はペリアジュバント療法による治療、低減、阻害、又は制御で使用するための、非病原性の非生存マイコバクテリウムを含む、免疫調節剤であって、所望により、前記患者は原発腫瘍から遠隔のいかなる臓器にも転移を呈していない、免疫調節剤が提供される。
【0016】
本発明の第2の態様において、腫瘍切除術を受けたことがある、又は受ける予定である患者における、原発腫瘍を含むがんを治療又は制御する方法であって、(i)非病原性の非生存マイコバクテリウム、(ii)腫瘍切除術、及び(iii)1又は複数の追加の抗がん治療又は抗がん剤、を前記対象に同時に、別々に、又は順次に投与することを含み、非病原性の非生存マイコバクテリウムの単独投与、1若しくは複数の追加の抗がん治療若しくは抗がん剤の単独投与、又は腫瘍切除術単独と比べて治療有効性の増強をもたらす、方法が提供される。
【0017】
以下の図面を参照しながら、本発明を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1は、オキサリプラチンに非適応である、又は前記薬剤を拒否し、且つ、0、1、又は2のECOGパフォーマンスステータスを呈する、III期、R0切除後、高頻度MSI/dMMR患者の治療における、本発明の組み合わせ、具体的にはマイコバクテリウム・オブエンス(M.obuense)とチェックポイント阻害剤(抗PD-L1)アテゾリズマブの、アジュバント療法的(術後)使用を検討する臨床試験の模式図を示している(実施例3を参照)。
図2図2は、オキサリプラチンに非適応である、又は前記薬剤を拒否し、且つ、0、1、又は2のECOGパフォーマンスステータスを呈する、III期、切除可能、高頻度MSI/dMMR患者の治療における、本発明の組み合わせ、具体的にはマイコバクテリウム・オブエンス(M.obuense)とチェックポイント阻害剤(抗PD-L1)アテゾリズマブの、ネオアジュバント療法的(術前)使用及びアジュバント療法的(術後)使用、それらを併せたペリアジュバント療法的なレジメンを検討する臨床試験の模式図/フローチャートを示している(実施例4を参照)。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明は、非病原性の非生存マイコバクテリウムと、所望により1又は複数の化学療法薬剤とを投与することを含む、腫瘍切除術又は免疫療法を受けている対象における、新形成、腫瘍、又はがんを治療、低減、阻害、又は制御する方法を提供する。前記方法は、所望によりさらなる化学療法薬剤と組み合わせた、手術又はチェックポイント阻害剤療法(CPI)の前の、ネオアジュバント療法としての、非病原性の加熱殺菌マイコバクテリウムの投与が、手術又はCPIを単独で受けるよりも強力な、増強された抗腫瘍活性(anti-tumour activity)及び/又は抗腫瘍活性(antitumor activity)をもたらすという、驚くべき発見に基づくものである。さらに、マイコバクテリウムによる治療は、治療された患者の、有効且つ持続的な病理学的奏効及び生存をもたらすことが示された。
【0020】
膵管腺癌(PDAC)患者を含む第II相臨床試験において、化学療法薬剤ゲムシタビンと組み合わせた、多様式のネオアジュバント療法的な治療レジメンにおいて、非病原性加熱殺菌マイコバクテリウムを投与した場合、特に転移性患者において、ゲムシタビン単独と比べて、驚くほどに有効且つ持続的な、病理学的奏効及び生存がもたらされることが分かった。
【0021】
そこで、切除術又は他のがん治療を補助するために、いくつかのネオアジュバント療法が当該技術分野で知られているが、本明細書で開示される本発明は、手術及び/又はチェックポイント免疫療法を受けるより大きな割合の対象における治療有効性、すなわち奏効を改善するように最適化された、特定の免疫調節剤をベースにした、ネオアジュバント療法的プロトコル、ペリアジュバント療法的プロトコル、及びアジュバント療法的プロトコルを提供する。本発明を理解し易くするために、まず特定用語の定義を行う。追加の定義については、発明を実施するための形態の全体を通じて記載を行う。
【0022】
「ネオアジュバント療法的」又は「ネオアジュバント療法」という語は、「術前治療」と同義的に使用される場合があるが、主要な治療又は手術の前の、1又は複数の治療薬又はモダリティの投与を指す。そのような治療法の目的は、より広範な外科的処置の難易度及び手術合併症を効果的に低減し、前記外科的処置の全体的有効性を増強することである。
【0023】
「アジュバント療法」及び「ペリアジュバント療法」という語も、本明細書で使用されるが、治療法が、手術若しくは治療の間、若しくは好ましくは後、又は、手術若しくは治療の前及び後のそれぞれ両方に施されることを指す。
【0024】
「腫瘍切除術」とは、単に「手術」又は「外科的処置」と称される場合があるが、腫瘍、好ましくは原発腫瘍若しくはリンパ節、又は孤立性の単一の腫瘍若しくはリンパ節、の全部又は一部を物理的に取り除くことを目的にした処置を指す。腫瘍切除術は、化学療法又は放射線の前に用いられる場合が多く、アジュバント療法を含むレジメンで用いられる場合が多い。腫瘍切除術という語は、様々な形態の腫瘍切除術を定義するために使用されており、リンパ節切除術などの、リンパ節切除を行う性質のものを含む、補助的な手術をさらに含む場合がある。腫瘍切除術という語は、限局性の転移性腫瘍に対する手術を包含する場合もある。
【0025】
「チェックポイント阻害剤」は、表面タンパク質に対し作用する薬剤であって、CTLA-4、PD-1、PD-L1、PD-L2、B7-H3、B7-H4、B7-H6、A2AR、IDO、TIM-3、BTLA、VISTA、TIGIT、LAG-3、CD40、KIR、CEACAM1、GARP、PS、CSF1R、CD94/NKG2A、TDO、TNFR、DcR3、及び/又はこれらの各リガンド(PD-L1を含む)から選択される負の共刺激(共抑制)分子に結合する薬剤を含む、TNF受容体スーパーファミリー又はB7スーパーファミリーのメンバーである、薬剤である。「遮断剤」とは、上記の負の共刺激分子及び/又はそれらの各リガンドに結合する薬剤である。「チェックポイント阻害剤」と「遮断剤」は、全体を通じて同義的に使用されている。
【0026】
固形癌効果判定基準(RECISTに基づく)は、無増悪生存期間(PFS)測定の基礎を形成するものであり、病態進行を、試験内の最小和を基準として、最大5個の標的病変(2病変/臓器)の直径和が少なくとも20%増加し、病変絶対量が少なくとも5mm増大するか、又は新規病変が出現することと定義している。完全奏効は全ての標的病変の消失であり、部分奏効(PR)は標的病変の合計の少なくとも30%の減少と定義される。安定病態は、病態進行とPRのどちらの基準にも当てはまらないことと定義される。PFSは、無作為化から進行又は死亡までの時間と定義される。無増悪期間は、関連した、あまり好ましくないエンドポイントであり、進行のない死亡は、イベントとしてカウントされず、中途打ち切り例とされる。
【0027】
本発明において定義される非病原性の非生存マイコバクテリウムは、Th1及びマクロファージ活性化/極性化、並びに細胞傷害性細胞活性、並びに独立して、免疫調節機構を介した不適切な抗Th2反応のダウンレギュレーションを含む、自然免疫及びI型免疫を刺激する成分である。IMM-101は、加熱殺菌されたマイコバクテリウム・オブエンス(Mycobacterium obuense)を含む治験用の全身性免疫調節剤である。IMM-101は、樹状細胞(DC)様の自然免疫細胞上のToll様受容体(TLR)1/2を含む病原体認識受容体(PRR)の明確な選択を活性化する微生物関連分子パターン(MAMP)を含有する(Bazzi et al. 2017, Galdon et al. 2019)。未成熟DCのIMM-101による活性化は、活性化cDC1の偏った成熟をもたらし、そのうち、活性化は、効果的な腫瘍細胞殺傷に必要な、IFN-γ、パーフォリン、及びグランザイム産生CTL(Galdon et al., 2019)の発生及び成熟によって定義される、1型免疫応答を主に誘導する。IMM-101誘導cDC1活性化はまた、活性化されたIFN-γ産生Th-1細胞 NK細胞、NKT細胞、及びγδ-T細胞の発生をもたらし(Fowler et al., 2014; Galdon et al., 2019)、これらは異なる機構によって腫瘍細胞を殺傷することができる。活性化されたγδ-T細胞は効率のよい抗原提示細胞であり(Moser et al., 2017)、抗腫瘍反応をさらにブーストし得る。IMM-101は、単球を含む他の自然免疫細胞も活性化し、単球は、抗腫瘍反応を増強し、免疫抑制M2マクロファージの形成を抑制することができるM1マクロファージへと成熟する(Bazzi et al. 2015)。
【0028】
「腫瘍」、「がん」、及び「新形成」という語は、同義的に使用され、成長、増殖、又は生存が正常な対応細胞の成長、増殖、又は生存よりも大きい細胞又は細胞集団を指す(例えば細胞増殖障害又は細胞分化障害)。通常、上記成長は制御されない成長である。「悪性腫瘍」という語は、周辺組織の浸潤を指す。「転移」という語は、腫瘍、がん、又は新形成の対象内の他の部位、位置、又は領域への拡散又は伝播を指し、この部位、位置、又は領域は原発腫瘍、リンパ節、又はがんとは異なっている。
【0029】
「非転移性」という語は、患者における原発腫瘍、リンパ節、又はがんに関して、2-デオキシ-2-[フッ素-18]フルオロ-D-グルコース(18F-FDG)スキャン法による、CT、MRI、又は陽電子放射断層撮影法(PET)で判定された場合に、遠隔転移も残存病変もないことを言う。
【0030】
「プログラム細胞死1(Programmed Death 1)」、「プログラム化細胞死1(Programmed Cell Death 1)」、「PD-1タンパク質」、「PD-1」、及び「PD1」という語は、同義的に使用され、ヒトPD-1のバリアント、アイソフォーム、種相同体(species homolog)、及びPD-1と共通のエピトープを少なくとも1つ有する類似体を包含する。
【0031】
本明細書で使用される場合、「治療量未満用量(sub-therapeutic dose)」とは、がんの治療のために単独で投与された場合に、治療化合物の通常若しくは典型的な用量よりも少ない、又は、より治療期間の短い、治療化合物(例えば、抗体)の用量又は治療の期間を意味する。公知の治療化合物の典型的な用量は当業者に公知であり、あるいは、通例の実験研究を通して求めることができる。
【0032】
「治療有効量」という語は、がん病徴の重症度の減少、無がん病徴期間の頻度及び持続期間の増加、又は罹患による機能障害若しくは能力障害の予防をもたらすものであることが好ましい、非病原性の非生存マイコバクテリウムと組み合わされた、チェックポイント阻害剤の量と定義される。
【0033】
「有効量」又は「薬剤有効量」という語は、所望の生物学的結果又は治療結果を与えるのに十分な薬剤の量を指す。その結果は、がんの徴候、症状、若しくは原因のうちの1若しくは複数の抑制、改善、一時的緩和、軽減、遅延、及び/若しくは低減、又は生物系のあらゆる他の望ましい変化とすることができる。がんに関しては、有効量は、腫瘍を縮小させるのに、及び/又は腫瘍の成長速度を減少(腫瘍成長の抑制など)させるのに、又は他の望まれない細胞増殖を防止若しくは遅延するのに、十分な量を含むものとしてもよい。いくつかの実施形態では、有効量は、がん又は腫瘍の、発生を遅延する、又は生存を延長する、又は安定化を誘導するのに十分な量である。好ましくは、治療有効性は、標的腫瘍の安定病態(SD)、完全奏効(CR)、若しくは部分奏効(PR);及び/又は、1若しくは複数の非標的腫瘍の安定病態(SD)若しくは完全奏効(CR)を含む、RECIST1.1によって定義される、1又は複数の前記腫瘍の腫瘍サイズの減少又は安定化によって測られる。あるいは、治療有効性は、当業者には知られているように、免疫関連効果判定基準(irRC)、iRECIST、又はirRECISTによって評価される。あるいは、本明細書に記載の本発明の治療有効性は、好適には手術の完了又は前記マイコバクテリウムの最後の投与から3、4、又は5週間以上経過後に測定される、病理学的な完全な又はほぼ完全な退縮によって示される。
【0034】
いくつかの実施形態では、治療有効量は、再発を防止又は遅延するのに十分な量である。治療有効量は、1回又は複数回の投与で投与することができる。単独の、又は好ましくは手術前及び/若しくは手術後に手術と併用された、治療有効量のマイコバクテリウムは、以下のうちの1又は複数をもたらし得る:(i)がん細胞数の減少;(ii)腫瘍サイズの減少;(iii)末梢器官へのがん細胞浸潤の阻害、遅滞、ある程度の減速、好ましくは停止;(iv)腫瘍転移の阻害(すなわち、ある程度の減速、好ましくは停止);(v)腫瘍増殖の阻害;(vi)腫瘍の発生及び/若しくは再発の抑制又は遅延;並びに/又は、(vii)がんと関連した症状のうちの1若しくは複数のある程度の軽減。例えば、腫瘍の治療の場合、「治療有効量」は、ベースライン測定値に対して、少なくとも約10%、又は約20%、又は約60%、又はそれ以上など、少なくとも約5%の腫瘍退縮を誘導し得る。ベースライン測定値は、未治療対象から得られ得る。
【0035】
単独の、又は好ましくは手術前及び/若しくは手術後に手術と併用された治療有効量のマイコバクテリウムは、腫瘍サイズを減少することができ、あるいは、対象における症状を改善することができる。当業者であれば、このような量を、対象のサイズ、対象の症状の重症度、及び選択された特定の組成物又は投与経路などの要因に基づいて求めることができる。
【0036】
「免疫応答」という語は、がん性細胞に対するダメージ、がん性細胞の破壊、又はがん性細胞の人体からの排除を選択的にもたらす、例えば、リンパ球、抗原提示細胞、食細胞、顆粒球、及び上記細胞又は肝臓によって産生された可溶性高分子(抗体、サイトカイン、及び補体を含む)の作用を指す。
【0037】
「チェックポイント阻害剤」又は「免疫療法」という語は、本発明を実施する際、細胞、ウイルス、可溶化液、ベクター、遺伝子、mRNA、DNA、核酸、タンパク質、ポリペプチド、ペプチド、抗体、二重特異性抗体、多重特異性抗体、ADC(抗体薬物複合体)、Fabフラグメント(Fab)、F(ab′)2フラグメント、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ、プロボディ、一本鎖可変領域フラグメント(scFv)、ジスルフィド安定化可変領域フラグメント(dsFv)、又は他のその抗原結合性フラグメントの使用をさらに含む場合がある。
【0038】
「抗体」という語は、本明細書で用いられる場合、抗体全体及びその任意の抗原結合性フラグメント(すなわち、「抗原結合性部分」)又は一本鎖を含み、モノクローナル抗体を含む。
【0039】
抗体に加えて、他の生体分子がチェックポイント阻害剤として働く場合があり、適切な標的に対し結合親和性を有するペプチド又は融合タンパク質が挙げられる。
【0040】
「非生存(non-viable)」とは、マイコバクテリウムが特定の殺細胞手段を通じて微生物学的に不活化されていることを意味する。そのような非生存性を可能にする、又は強制する方法は、加熱殺菌、拡張型(extended)凍結乾燥(トレリス株式会社(Tolerys SA))、ガンマ波若しくは電子ビームによる照射、又は、ホルムアルデヒドなどの化学物質へのマイコバクテリウムの暴露を含む場合がある。製造時にこのような準備を行うことで、当該生物は、生きている生物又は減弱された生物を送達することからの、既知の副作用を伴わないこととなる。
【0041】
「治療」又は「治療法」という語は、統計的に有意に、状態(例えば、疾患)、状態の症状を解消、治癒、緩和、軽減、変化、軽快、緩解、改善、若しくは影響を与える目的で、又は、症状、合併症、生化学的な病徴の発生を防止若しくは遅延する目的で、又は、疾患、状態、若しくは障害のさらなる発達を抑止若しくは阻害する目的で、活性薬剤を投与することを指す。
【0042】
本明細書で使用される場合、「対象」又は「患者」という語は、ヒト及びヒト以外の動物を包含することを意図している。好ましい対象としては、免疫応答の増強を必要としているヒト患者が挙げられる。上記方法は、T細胞媒介性免疫応答を増強することで治療可能である障害を有するヒト患者を治療するのに特に好適である。特定の実施形態では、上記方法は、インビボでの、がん細胞の治療に特に好適である。
【0043】
本明細書で使用される場合、「併用投与」、又は「併用して」、又は「同時の」という語は、投与が同日に行われることを意味する。「順次投与」又は「順次に」又は「別々の」という語は、投与が異なる日に行われることを意味する。
【0044】
「同時」投与は、本明細書で定義されるように、互いに約2時間以下又は約1時間以下の内に、非生存マイコバクテリウム及び1又は複数の追加の抗がん治療又は抗がん剤の投与を行うことを含む。好ましくは、「同時」投与は、非生存マイコバクテリウム及び1又は複数の追加の抗がん治療又は抗がん剤を同じ時間に投与することを指す。
【0045】
「個別」投与は、本明細書で定義されるように、非生存マイコバクテリウム及び1又は複数の追加の抗がん治療又は抗がん剤を、約12時間超、又は約8時間超、又は約6時間超、又は約4時間超、又は約2時間超離して投与することを含む。
【0046】
「順次」投与は、本明細書で定義されるように、非生存マイコバクテリウム及び1又は複数の追加の抗がん治療又は抗がん剤のそれぞれを、複数のアリコート及び/若しくは投与回数で、並びに/又は別々の機会に、投与することを含む。非生存マイコバクテリウムは、1又は複数の追加の抗がん治療又は抗がん剤の投与の前及び/又は後に患者に投与される場合がある。あるいは、非生存マイコバクテリウムは、1又は複数の追加の抗がん治療又は抗がん剤による治療の後、患者に適用され続ける。
【0047】
択一(例えば、「又は」)の使用は、択一物の一方、両方、又はそのあらゆる組み合わせを意味すると理解されたい。本明細書で使用される場合、不定冠詞「a」又は「an」は、記載又は列挙された任意成分が「1又は複数」であることを指すと理解されたい。
【0048】
本明細書で使用される場合、「約」という語は、当業者によって決定されるような、特定の値に関する許容可能な誤差範囲内であることを意味し、その値がどのように測定又は定量されたか、すなわち測定系の限界に部分的に依存することとなる。例えば、「約」は、当該技術分野の慣行に従えば、標準偏差が1以内であることを意味することもあれば、1より大きいことを意味することもある。あるいは、「約」は最大20%の範囲を意味することもある。本願及び特許請求の範囲において特定の値が与えられている場合、特に記載がない限り、「約」の意味は、その特定の値の許容誤差範囲内であると考えられるべきである。
【0049】
マイコバクテリウム・バッカエ(M.vaccae)及びマイコバクテリウム・オブエンス(M.obuense)は、宿主において複雑な免疫応答を誘導することが示されている。これらの製剤による治療は、Th1及びマクロファージの活性化、並びに細胞傷害性細胞活性を含む、自然免疫及びI型免疫を刺激することとなる。これらの製剤はまた、独立して、免疫調節機構を介して、不適切なTh2反応のダウンレギュレートも行う。
【0050】
がんとの関連では、膵がんモデルでCD8+T細胞を枯渇させることで、観察されたIMM-101の抗腫瘍効果を完全に抑制できたことから、IFN-yを産生するCTLの形成が、IMM-101治療から得られる最も重要な結果である可能性が高い。
【0051】
IMM-101のマクロファージを活性化する能力は、炎症誘発性マクロファージ由来サイトカイン(DCを1型免疫応答に傾かせるのに必要なIL-12など)の放出を通じてDCの活性化を助けるだけではなく、腫瘍関連免疫抑制2型マクロファージを腫瘍侵襲性1型マクロファージに変化させることにおいても重要であり得る。後者の特徴は、類似の加熱殺菌マイコバクテリウム、マイコバクテリウム・インディカス プラニイ(M.indicus pranii)の場合でも示された。
【0052】
IMM-101の重要な特徴は、DCを活性化し、cDC1として知られる樹状細胞サブクラス(すなわち、1型免疫応答に必要なDC)に成熟させる能力である。CPIが有効であるためには、十分な数のcDC1の活性化が必須であることが示されている。
【0053】
高頻度マイクロサテライト不安定性(MSI)結腸直腸がんにおけるチェックポイント阻害剤の術前短期投与は、高い割合の病理学的退縮を誘導することが示されている。最近発表された小規模探索的第II相試験(Chalabi et al. 2018, immunotherapy of cancer 29:8)では、CTLA-4抗体であるイピリムマブとPD-1抗体であるニボルマブ(nivolimumab)の6週間の術前投与が、完全又は亜全の病態寛解をもたらすことが示されたが、このことは、ネオアジュバント療法が一部のがん症状に特に効果的であり得ることを示唆している。
【0054】
そこで、本発明は、がんに対する腫瘍切除術又はチェックポイント阻害剤療法を受ける予定である患者の好ましくない予後を改善するための、他の化学療法薬剤の使用を含む又は含まない、驚くほどに好ましいネオアジュバント療法、又はアジュバント療法としての、IMM-101を使用するためのプロトコルを提供する。そのような患者は、結腸直腸がん、特に、マイクロサテライト不安定性(MSI)を有するミスマッチ修復欠損型(dMMR)結腸直腸がんを有する患者を含む場合がある。
【0055】
本発明のさらなる態様では、前記がんは、PCRベースアッセイで測定された場合に、高頻度マイクロサテライト不安定性(MSI)であると判定されるものであり、及び/又は、前記がんは、DNAミスマッチ修復(MMR)タンパク質発現を解析するためのIHC染色にかけられる。
【0056】
本発明の一態様において、非病原性の非生存マイコバクテリウムは、非病原性の加熱殺菌マイコバクテリウムを含む。本発明で使用するためのマイコバクテリア種の例としては、マイコバクテリウム・バッカエ(M.vaccae)、マイコバクテリウム・サーモレジスティバイル(M.Thermoresistibile)、マイコバクテリウム・フラベセンス(M.flavescens)、マイコバクテリウム・デュバリイ(M.duvalii)、マイコバクテリウム・フレイ(M.phlei)、マイコバクテリウム・オブエンス(M.obuense)、マイコバクテリウム・パラフォルトゥイタム(M.parafortuitum)、マイコバクテリウム・スファグニ(M.sphagni)、マイコバクテリウム・アイキエンセ(M.aichiense)、マイコバクテリウム・ローデシアエ(M.rhodesiae)、マイコバクテリウム・ネオオーラム(M.neoaurum)、マイコバクテリウム・チュブエンセ(M.chubuense)、マイコバクテリウム・トーカイエンス(M.tokaiense)、マイコバクテリウム・コモッセンス(M.komossense)、マイコバクテリウム・オーラム(M.aurum)、マイコバクテリウム・w(M.w)、結核菌(M.tuberculosi)、マイコバクテリウム・ミクロティ(M.microti);マイコバクテリウム・アフリカナム(M.africanum);マイコバクテリウム・カンサシ(M.kansasii)、マイコバクテリウム・マリヌム(M.marinum);マイコバクテリウム・シミエ(M.simiae);マイコバクテリウム・ガストリ(M.gastri);マイコバクテリウム・ノンクロモゲニカム(M.nonchromogenicum);マイコバクテリウム・テラエ(M.terrae);マイコバクテリウム・トリビアレ(M.triviale);マイコバクテリウム・ゴルドネ(M.gordonae);マイコバクテリウム・スクロフラセウム(M.scrofulaceum);マイコバクテリウム・パラフィニカム(M.paraffinicum);マイコバクテリウム・イントラセルラーレ(M.intracellulare);トリ型結核菌(M.avium);マイコバクテリウム・ゼノピ(M.xenopi);マイコバクテリウム・ウルセランス(M.ulcerans);マイコバクテリウム・ディエルンホフェリ(M.diernhoferi)、スメグマ菌(M.smegmatis);マイコバクテリウム・サムノフェオス(M.thamnopheos);マイコバクテリウム・フラベセンス(M.flavescens);マイコバクテリウム・フォーチュイタム(M.fortuitum);マイコバクテリウム・ペレグリナム(M.peregrinum);マイコバクテリウム・セロネイ(M.chelonei);マイコバクテリウム・パラツベルクローシス(M.paratuberculosis);らい菌(M.leprae);ネズミらい菌(M.lepraemurium)、及びこれらの組み合わせが挙げられる。
【0057】
非病原性の非生存イコバクテリアは、受託番号NCTC11659及びSRL172、SRP299、IMM-201、DAR-901などの関連する名称の下で寄託された株、並びにATCC95051として寄託された株(Vaccae(商標))を含む、マイコバクテリウム・バッカエ(M.vaccae);マイコバクテリウム・オブエンス(M.obuense)、マイコバクテリア・パラゴルドネ(M.paragordonae)(49061株)、マイコバクテリウム・パラフォルトゥイタム(M.parafortuitum)、マイコバクテリウム・パラツベルクローシス(M.paratuberculosis)、マイコバクテリウム・ブルマエ(M.brumae)、マイコバクテリウム・オーラム(M.aurum)、マイコバクテリウム・インディカス プラニイ(M.indicus pranii)、マイコバクテリウム・w(M.w)、マイコバクテリウム・マンレセンシス(M.manresensis)、マイコバクテリウム・キョガエンセ(M.kyogaense)(DSM107316/CECT9546として寄託)、マイコバクテリウム・フレイ(M.phlei)、スメグマ菌(M.smegmatis)、結核菌青山B(M.tuberculosis Aoyama B)又はH37Rv、RUTI、MTBVAC、BCG、VPM1002BC、SMP-105、ミファムルチド、Z-100、並びにこれらの組み合わせから選択されることが好ましく、好ましくは、受託番号NCTC13365としてブダペスト条約に基づいて寄託されたマイコバクテリウム・オブエンス(Mycobacterium obuense)株である。
【0058】
別の最も好ましい実施形態において、非病原性の非生存マイコバクテリウムは、NCTC11569として寄託されたものを含む、マイコバクテリウム・バッカエ(M.vaccae)、又は、NCTC13365として寄託されたものなどの、マイコバクテリウム・オブエンス(M.obuense)である。別の好ましい実施形態において、非病原性の非生存マイコバクテリウムはラフ型である。本発明の好ましい実施形態において、非病原性の非生存マイコバクテリウムはラフ型であり、好ましくはマイコバクテリウム・オブエンス(M.obuense)のラフ型である。
【0059】
本発明の他の実施形態において、非病原性の非生存マイコバクテリウムは、ラフ型及び/又は全細胞であり、好ましくは受託番号NCTC13365としてブダペスト条約に基づいて寄託されたマイコバクテリウム・オブエンス(Mycobacterium obuense)のラフ型株である。
【0060】
本発明の別の実施形態において、非病原性の非生存マイコバクテリウムは、高圧蒸気殺菌法などの熱、拡張型凍結乾燥、ホルムアルデヒドなどの化学物質暴露、又はγ線照射若しくは電子ビームなどの照射によって不活性化されたものである。
【0061】
本発明の別の実施形態において、非病原性の非生存マイコバクテリウムは、生きた弱毒化型のBCGを含まない。
【0062】
別の実施形態において、非病原性の非生存マイコバクテリウムは、ラフ型であり、及び/又は、画分、断片、細胞内成分(subcellular component)、溶解化液、ホモジネート、超音波処理物として、若しくは実質的に全細胞の形態で提示される。
【0063】
本発明の好ましい実施形態において、非病原性の非生存マイコバクテリウム、好適にはマイコバクテリウム・オブエンス(Mycobacterium obuense)は、懸濁液中の50%以上を超える(more than 50% or more)マイコバクテリアが、レーザー回析法(例えば、D50値又は平均粒径)で測定された場合に直径1~10ミクロン超であるなどの、実質的に全細胞の形態であるか、又は、かなりの細胞溶解を誘導するための高圧処理などの条件に暴露されていない形態である。
【0064】
当業者には理解されることであろうが、例えば、マイコバクテリウム・オブエンス(M.obuense)のラフ型は、Roux et al. 2016, Open Biol 6: 160185に記載されているように、細胞表面結合型糖ペプチド脂質(GPL)を欠いており、その結果、非運動性且つ非生物膜形成性の粗い形態を特徴とするものであろう。本発明で患者に投与されるマイコバクテリアの量は、患者の免疫系が効果的な免疫応答を開始できるような、患者の防御免疫応答を誘導するのに十分な量であろう。
【0065】
別の最も好ましい実施形態において、がんは、結腸直腸がん(CRC)であると判定されたものであり、前記がん又は腫瘍は、上行、下行、及び/又は下行結腸、並びに/又は直腸に存在するものである。
【0066】
いくつかの実施形態において、がんは、結腸がん、所望により転移性の結腸がんと判定されたものである。
【0067】
他の実施形態において、がんは、直腸がん、所望により転移性の直腸がんと判定されたものである。
【0068】
患者に投与されるマイコバクテリアの量は、患者の免疫系ががん又は腫瘍に対し効果的な免疫応答を介しできるような、患者の免疫応答を誘導するのに十分な量である。本発明の特定の実施形態において、本発明で使用するための有効量のマイコバクテリアを含む収容手段が提供され、典型的には、10~1011個の生物、好ましくは10~1010個の生物、より好ましくは10~1010個の生物、さらにより好ましくは10~10個の生物であり得る。最も好ましくは、本発明で使用するためのマイコバクテリアの量は、10~10個の細胞又は生物である。典型的には、本発明の組成物は、ヒト用及び動物用に、10~10細胞の用量で投与され得る。あるいは、前記用量は、0.0001mg~5mg又は0.001mg~5mgの生物、好ましくは、0.01mg~2mg又は0.1mg~2mgの生物であり、例えば、前記用量は約0.5mg又は約1mg又は約0.5mg又は約1mgの生物である。前記用量は、懸濁製剤又は乾燥製剤として製剤化され得る。
【0069】
本発明の特定の実施形態において、投与される非病原性の非生存マイコバクテリウムの量は、単位用量当たり0.0001mg~1mgであり、所望により、前記単位用量は、少なくとも7日間又はそれ以上の日数離された2回以上の別々の機会に投与され、例えば、0日目、14日目(±1日、3日、5日、又はそれ以上)の各々と、所望により、30日目(±5日、7日、10日、又はそれ以上)又は45日目(±7日、10日、又は14日、又はそれ以上)に、投与される。
【0070】
いくつかの実施形態において、投与される非病原性の非生存マイコバクテリウムの量は、用量当たり0.0001mg~1mgである場合があり、前記用量は、1回、2回、3回、4回、5回、6回、10回、20回、又はそれ以上の回数、何日間、何週間、又は何か月間もかけて投与され、好適には、前記マイコバクテリウムはマイコバクテリウム・オブエンス(M.obuense)である。
【0071】
本発明の他の実施形態において、投与される非病原性の非生存マイコバクテリウムの量は、用量当たり0.0001mg~1mgである場合があり、前記用量は、最初に、一方の三角筋への1mgの1回の注射、又はそれぞれの三角筋における0.5mgの2回の注射、又はそれぞれの三角筋における1.0mgの2回の注射を含み、その後、7日後、14日後、又はそれ以上の日数後に、0.5mg又は1.0mgの第2の用量を含む。
【0072】
本発明の特定の実施形態において、投与される非病原性の非生存マイコバクテリウムの量は、単位用量当たり0.0001mg~1mgであり、例えば約0.5~約1mgなどであり、前記単位用量は、手術前に、少なくとも7日間又はそれ以上の日数離された2回以上の別々の機会に投与され、例えば、手術に対して(すなわち手術前の)-35日目、-21日目、及び-5日目のそれぞれに投与され、所望により、前記-35日目の用量は1mgであり、前記-21日目の用量は0.5mgであり、前記-5日目の用量は0.5mgである。アテゾリズマブ、ペンブロリズマブ、又はセミプリマブであることが好適である、抗PD-L1モノクローナル抗体などの、前記チェックポイント療法は、前記マイコバクテリウムの単位用量の同日に、又はその間に、例えば前記手術に対して(すなわち前記手術前の)-28日目と-7日目などに、投与され得る。
【0073】
本発明の別の実施形態において、投与される非病原性の非生存マイコバクテリウムの量は、単位用量当たり0.0001mg~1mgであり、例えば約0.5~約1mgなどであり、前記単位用量は、手術後に、少なくとも7日間又はそれ以上の日数離された2回以上の別々の機会に投与され、例えば、前記手術後の21日目、35日目、49日目、及びそれ以降のそれぞれに投与され、所望により、前記21日目の用量は1mgであり、前記35日目の用量は0.5mgであり、前記49日目以降の用量は0.5mgである。アテゾリズマブ、ペンブロリズマブ、又はセミプリマブであることが好適である、抗PD-L1モノクローナル抗体などの、前記チェックポイント療法を、前記マイコバクテリウムの単位用量の同日に、又はその間に、例えば前記手術後の28日目、42日目、56日目、及びそれ以降などに、投与してもよい。
【0074】
本発明のさらに別の実施形態において、投与される非病原性の非生存マイコバクテリウムの量は、単位用量当たり0.0001mg~1mgであり、例えば約0.5~約1mgなどであり、前記単位用量は、手術前に、少なくとも7日間又はそれ以上の日数離された2回以上の別々の機会に投与され、例えば、手術に対して(すなわち手術前の)-35日目、-21日目、及び-5日目のそれぞれに投与され、所望により、前記-35日目の用量は1mgであり、前記-21日目の用量は0.5mgであり、前記-5日目の用量は0.5mgである。アテゾリズマブ、ペンブロリズマブ、又はセミプリマブであることが好適である、抗PD-L1モノクローナル抗体などの、前記チェックポイント療法を、前記マイコバクテリウムの単位用量の同日に、又はその間に、例えば前記手術に対して(すなわち前記手術前の)-28日目と-7日目などに、投与してもよく、単位用量は、手術後に、少なくとも7日間又はそれ以上の日数離された2回以上の別々の機会に投与され、例えば、前記手術後の21日目、35日目、49日目、及びそれ以降のそれぞれに投与され、所望により、前記21日目の用量は1mgであり、前記35日目の用量は0.5mgであり、前記49日目以降の用量は0.5mgである。
【0075】
アテゾリズマブ、ペンブロリズマブ、又はセミプリマブであることが好適である、抗PD-L1モノクローナル抗体などのチェックポイント療法を、前記マイコバクテリウムの単位用量の同日に、又はその間に、例えば、前記手術後の28日目、42日目、56日目、及びそれ以降に投与してもよい。本発明は、固形がん又は非固形がんなどの、腫瘍性疾患を治療するために使用されてもよい。
【0076】
本明細書で使用される場合、「治療」は、原発腫瘍の退縮若しくは安定化、及び/又は1以上の転移(one or metastases)の退縮若しくは安定化、又は1若しくは複数の転移若しくは微小転移巣の予防若しくは阻害を含む、腫瘍性疾患の予防、低減、制御、及び/又は阻害を包含する。
【0077】
新形成、腫瘍、及びがんは、良性、悪性、転移性、及び非転移性の種類を包含し、あらゆるステージ(I、II、III、IV、又はV)若しくはグレード(G1、G2、G3など)の新形成、腫瘍、若しくはがん、又は、進行中、増悪中、安定化した、若しくは寛解した新形成、腫瘍、がん、若しくは転移を包含する。好ましくは、本発明の実施開始時のがんは、I期、II期、又はII期と臨床的に定義される。本発明に従って治療され得るがんとしては、膀胱、血液、骨、骨髄、脳、乳房、結腸、食道、胃腸管、歯茎、頭部、腎臓、肝臓、肺、鼻咽頭、頚部、卵巣、前立腺、皮膚、胃、精巣、舌、又は子宮が挙げられるが、これらに限定はされない。加えて、がんは、具体的には、以下の組織学的種類のものであってもよく、ただし以下に限定はされない:新生物、悪性癌;未分化癌腫;巨大紡錘細胞癌;小細胞癌;乳頭状癌;扁平上皮癌;リンパ上皮癌;基底細胞癌;毛母癌;移行上皮癌;乳頭状移行上皮癌;腺癌;ガストリノーマ、悪性胆管癌;肝細胞癌;肝細胞癌及び胆管癌の組み合わせ;索状腺癌;腺様嚢胞癌;腺腫性ポリープにおける腺癌;家族性大腸ポリポーシス腺癌;固形癌;カルチノイド腫瘍、悪性細気管支肺胞腺癌;乳頭状腺癌;色素嫌性癌;好酸性癌;好酸性腺癌;好塩基性癌;明細胞腺癌;顆粒細胞癌;濾胞腺癌;乳頭状濾胞腺癌;非被包性硬化性癌;副腎皮質癌;類内膜癌(endometroid carcinoma);皮膚付属器癌;アポクリン腺癌;皮脂腺癌;耳垢腺癌;粘表皮癌;嚢胞腺癌;乳頭状嚢腺癌;乳頭状漿液性嚢胞腺癌;粘液性嚢胞性癌;粘液性腺癌;印環細胞癌;浸潤性乳管癌;髄様癌;小葉癌;炎症性癌;乳房パジェット病;腺房細胞癌;腺扁平上皮癌;扁平化生を伴う腺癌;胸腺腫;悪性卵巣間質腫瘍、悪性莢膜細胞腫、悪性顆粒膜細胞腫、悪性セルトリ間質細胞腫瘍、悪性セルトリ細胞癌;ライディッヒ細胞腫、悪性脂質細胞腫、悪性傍神経節腫、悪性乳房外傍神経節腫、悪性褐色細胞腫;血管球血管肉腫;悪性黒色腫;無色素性黒色腫;表在拡大型黒色腫;巨大色素性母斑における悪性黒色腫;転移性黒色腫、悪性黒子、悪性黒子型黒色腫、皮膚扁平上皮癌、結節性黒色腫、末端性黒子性黒色腫、線維形成性黒色腫、類上皮細胞黒色腫;青色母斑、悪性肉腫;線維肉腫;線維性組織球腫、悪性粘液肉腫;脂肪肉腫;平滑筋肉腫;横紋筋肉腫;胎児性横紋筋肉腫;胞巣状横紋筋肉腫;未分化多形肉腫;間質性肉腫;混合腫瘍;ミュラー管混合腫瘍;腎芽細胞腫;肝芽腫;癌肉腫;間葉細胞腫、悪性ブレンナー腫瘍、悪性葉状腫瘍、悪性滑膜肉腫;中皮腫、悪性未分化胚細胞腫;胎生期癌;悪性奇形腫;悪性卵巣甲状腺腫;絨毛癌;中腎腫、悪性血管肉腫;血管内皮腫、悪性カポジ肉腫;血管周囲細胞腫、悪性リンパ管肉腫;骨肉腫;傍骨性骨肉腫;軟骨肉腫;軟骨芽細胞腫、悪性間葉性軟骨肉腫;骨巨細胞腫;ユーイング肉腫;歯原性腫瘍、悪性エナメル上皮歯牙肉腫;エナメル上皮腫、悪性エナメル上皮線維肉腫;松果体腫、悪性脊索腫;神経膠腫、悪性上衣腫;星状細胞腫;原形質性星状細胞腫;線維性星細胞腫;星状芽細胞腫;多形神経膠芽腫;乏突起膠腫;乏突起神経膠芽細胞腫;原始神経外胚葉性(primitive neuroectodermal);小脳肉腫;神経節芽細胞腫;神経芽細胞腫;網膜芽細胞腫;嗅覚神経原性腫瘍;髄膜腫、悪性神経線維肉腫;神経鞘腫、悪性顆粒細胞腫、悪性リンパ腫;ホジキン病;ホジキン側肉芽腫;悪性リンパ腫、小リンパ球性悪性リンパ腫、びまん性大細胞型;悪性濾胞性リンパ腫;菌状息肉腫;他の特定された非ホジキンリンパ腫;悪性組織球増殖症;多発性骨髄腫;マスト細胞肉腫;免疫増殖性小腸疾患;白血病;リンパ様白血病;形質細胞性白血病;赤白血病;リンパ肉腫細胞性白血病;骨髄性白血病;好塩基球性白血病;好酸球性白血病;単球性白血病;マスト細胞白血病;巨核芽球性白血病;骨髄肉腫;及び毛様細胞性白血病。好ましくは、がんは、膀胱がん(筋層非浸潤性膀胱がんを含む)、前立腺がん、肝臓がん、腎がん、肺がん、乳がん、結腸直腸がん、結腸がん、直腸がん、膵がん、脳がん(グリア芽腫を含む)、肝細胞がん、リンパ腫、白血病、胃がん、子宮頸がん、卵巣がん、甲状腺がん、黒色腫、頭頚部がん、皮膚がん、及び軟部組織肉腫、並びに/又は他の形態の癌腫から選択される。
【0078】
より好ましくは、がんは、膵がん、結腸直腸がん、脳がん、前立腺がん、皮膚がん、軟部組織肉腫、骨肉腫、肺がん、又は卵巣がんであり、膵管腺癌(PDAC)を含む。
【0079】
本発明のいくつかの実施形態において、初期がんは、TNM分類システムなどの、ステージ分類基準によって定義される。TNM分類システムは、固形腫瘍に由来するがんのステージを、英数字コードを用いて表すものである。Tは、サイズや成長を含む、元の原発腫瘍の各側面を表し;Nは、浸潤されている可能性がある隣接リンパ節又は所属リンパ節を表し;Mは、腫瘍の広がり、すなわち転移のレベルを表す。TXという分類は、腫瘍が測定不可であることを当業者に伝えるものであり;T0は、原発腫瘍のエビデンスがないことを表し;T1、T2、T3、及びT4は、腫瘍のサイズ及び/又は腫瘍の成長若しくは近傍構造への広がりの量が増加していくことを連続した番号で表しており、Tの番号が高いほど、腫瘍、並びに/又は腫瘍の成長及び広がりが大きくなる。NXという分類は、同様に、近傍のリンパ節が評価不可であったことを意味し;N0は、近傍のリンパ節ががんを含んでいないことを意味し;N1、N2、及びN3は、影響を受けた近傍のリンパ節のサイズ、場所、及び/又は数が増加していくことをそれぞれ表しており。最後に、M0は、遠隔へのがんの広がりが確認されなかったこと、又は、腫瘍が転移性ではないことを意味しており、一方、M1は、がんが広がって、転移したことを意味している。
【0080】
好ましい実施形態において、初期がんは、特にTがT1~T4であることにより、所望によりMがM0であることにより定義され、一方で、NはN0、N1、又はN2などの任意の分類であってよい。あるいは、前記がんは、I期、II期、又はIII期と臨床的に定義される。言い換えれば、がんは、記録されたサイズ及び任意のサイズの成長によって定義され、さらに、所望により腫瘍は非転移性である。
【0081】
本発明のさらなる好ましい実施形態又は方法において、患者は、原発腫瘍から遠隔のいかなる臓器にも転移を呈していないが、一次新生物若しくは原発腫瘍に近い1若しくは複数のリンパ節に転移を呈していてもよく、及び/又は、1又は複数の近傍の臓器に転移を呈していてもよい。あるいは、前記患者は、R2切除状態によって示されるような、腫瘍切除術後の肉眼的(macroscopic)残存疾患を呈していないものである。
【0082】
本発明のさらなる好ましい実施形態又は方法において、患者は、非転移性と臨床的に定義されるものである。
【0083】
本発明のさらに好ましい実施形態又は方法において、新形成、腫瘍、又はがんは、肉腫に関連したものであり、好ましくは軟部組織肉腫又は非軟部肉腫である。特に好ましい非軟部肉腫として、骨肉腫(オステオサルコーマ、ユーイング肉腫)及び軟骨肉腫が挙げられる。特に好ましい肉腫として、多形性未分化肉腫(UPS)、血管肉腫、平滑筋肉腫、非子宮平滑筋肉腫(non-uterine leiomyosarcoma)、脱分化型脂肪肉腫(DDL)、滑膜肉腫、横紋筋肉腫、類上皮肉腫、粘液性脂肪肉腫、胞状軟部肉腫、傍脊索腫/筋上皮腫、多形性脂肪肉腫、骨外性粘液型軟骨肉腫、又は悪性末梢神経鞘腫が挙げられる。患者は、50歳未満、又は20~30歳未満、又はティーンエイジャー若しくは青年(16歳未満)、又は子供(0~14歳)であり得る。所望により、1又は複数の肉腫は、PD-L1又はPD-1の染色/発現の増加を示す。所望により、非生存マイコバクテリウム及び/又はチェックポイント阻害剤及び/又は共刺激性結合体は、腫瘍内投与、腫瘍近傍(peritumoral)投与、病変近傍(perilesional)投与、又は病巣内投与を介して投与される。
【0084】
本発明は、腫瘍切除術又はチェックポイント阻害剤療法を受けたことがある、又は受ける予定であるがん患者に関する。「受ける予定である」という語は、健康管理及び/又はケアプランのプロトコルの一部として前記腫瘍切除術又はチェックポイント阻害剤療法を受けることとなるような、助言及び/又は管理を受けた患者を指す場合がある。いくつかの実施形態において、本発明で使用するための免疫調節剤は、将来最大1年間の、腫瘍切除術又はチェックポイント阻害剤療法を受ける予定である患者における初期がんの治療、低減、阻害、又は制御において、使用される場合がある。他の実施形態において、前記患者は、将来最大6か月間の、腫瘍切除術又はチェックポイント阻害剤療法を受ける予定であるものである場合がある。好ましい実施形態において、前記患者は、将来最大6週間の、腫瘍切除術又はチェックポイント阻害剤療法を受ける予定であるものである場合がある。
【0085】
本発明は、チェックポイント阻害剤療法を受けたことがある、又は受ける予定である対象に関するものであり、前記チェックポイント阻害療法は、CTLA-4、PD-1、PD-L1、PD-L2、B7-H3、B7-H4、B7-H6、A2AR、IDO、TIM-3、BTLA、VISTA、TIGIT、LAG-3、CD40、KIR、CEACAM1、GARP、PS、CSF1R、CD94/NKG2A、TDO、TNFR、DcR3、及びこれらの組み合わせに対する、細胞、タンパク質、ペプチド、抗体、ADC(抗体薬物複合体)、Fabフラグメント(Fab)、F(ab′)2フラグメント、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ、プロボディ、一本鎖可変領域フラグメント(scFv)、ジスルフィド安定化可変領域フラグメント(dsFv)、又は他のその抗原結合性フラグメントから選択される、1又は複数の遮断剤の投与を含む場合がある。
【0086】
本発明の実施形態において、チェックポイント阻害療法は、治療量未満及び/又は治療期間未満の前記1又は複数の遮断剤の投与を含む場合がある。
【0087】
本発明の実施形態において、1又は複数の遮断剤は、イピリムマブ、ニボルマブ、ペンブロリズマブ、アテゾリズマブ(azetolizumab)、BI754091(抗PD-1剤)、バビツキシマブ(抗PS IgG3モノクローナル抗体)、ビントラフスプアルファ、ドスタルリマブ、デュルバルマブ、トレメリムマブ、スパルタリズマブ、アベルマブ、シンチリマブ、トリパリマブ、プロルゴリマブ(prolgolimab)、チスレリズマブ、カムレリズマブ、MGA012、MGD013(現在はテボテリマブ(tebotelimab)として知られている)、MGD019、ニモツズマブ、エノブリツズマブ、MGD009、MGC018、MEDI0680、ミプテナリマブ(miptenalimab)(BI754111、抗LAG-3剤)、PDR001、FAZ053、TSR022、MBG453、レラトリマブ(BMS986016)、LAG525(IMP701)、IMP321(エフティラギモドアルファ)、REGN2810(セミプリマブ)、REGN3767、ペキシダルチニブ(PLX3397)、LY3022855、FPA008、BLZ945、GDC0919、エパカドスタット、エマクツズマブ(CSF-1Rを標的とするRG1755)、FPA150、インドキシミド(indoximid)、BMS986205、CPI-444、MEDI9447、PBF509、FS118(LAG-3及びPD-L1に対して二重特異性)、リリルマブ、Sym023、TSR-022、A2Ar阻害剤(例えば、EOS100850、AB928)、モナリズマブなどのNKG2A阻害剤、及びこれらの組み合わせから選択される。
【0088】
本発明の実施形態において、1又は複数の遮断剤は、好ましくは、イピリムマブ及び/又はニボルマブである。
【0089】
本発明の実施形態において、共刺激チェックポイント療法(co-stimulatory checkpoint therapy)は、ウトミルマブ、ウレルマブ、MOXR0916、PF04518600、MEDI0562、GSK3174988、MEDI6469、RO7009789、CP870893、BMS986156、GWN323、JTX-2011、バルリルマブ、MK-4166、NKT-214、及びこれらの組み合わせから選択される1又は複数の結合体の投与を含む。
【0090】
本発明の実施形態において、1又は複数の遮断剤又はチェックポイント阻害剤は、最も好ましくは、アテゾリズマブである。
【0091】
本発明の実施形態において、チェックポイント阻害剤療法は、CTLA-4、PD-1、PD-L1、PD-L2、B7-H3、B7-H4、B7-H6、A2AR、IDO、TIM-3、BTLA、VISTA、TIGIT、LAG-3、CD40、KIR、CEACAM1、GARP、PS、CSF1R、CD94/NKG2A、TDO、TNFR、DcR3、及びこれらの組み合わせに対する、細胞、タンパク質、ペプチド、抗体、ADC(抗体薬物複合体)、Fabフラグメント(Fab)、F(ab′)2フラグメント、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ、プロボディ、一本鎖可変領域フラグメント(scFv)、ジスルフィド安定化可変領域フラグメント(dsFv)、又は他のその抗原結合性フラグメントから選択される1又は複数の遮断剤を、非生存マイコバクテリウムと組み合わせて投与することで、原発腫瘍若しくは原発がんの他の部位への転移、又は、原発腫瘍若しくは原発がんから遠位の他の部位における転移性腫瘍若しくは転移性がんの形成若しくは確立を低減又は阻害して、腫瘍若しくはがんの再発又は腫瘍若しくはがんの進行を阻害又は低減することを含む。
【0092】
本発明の実施形態において、腫瘍切除術又はチェックポイント阻害剤療法を受けたことがある、又は受ける予定である対象における、1又は複数の腫瘍の、アジュバント療法、ネオアジュバント療法、又はペリアジュバント療法による治療、低減、阻害、又は制御で使用するための、非病原性の非生存マイコバクテリウムであって、標的腫瘍の安定病態(SD)、完全奏効(CR)若しくは部分奏効(PR);及び/又は、1若しくは複数の非標的腫瘍の安定病態(SD)若しくは完全奏効(CR)を含む、RECIST1.1、又はiRRC、又はiRECIST、又はirrRECISTによって定義されるような、好ましくは1又は複数の前記腫瘍の腫瘍サイズの減少又は安定化によって測られた場合に、単独の手術又は治療法と比較して治療有効性が増強された強力で耐久性のある免疫応答を誘導する可能性がある、非病原性の非生存マイコバクテリウムが提供される。
【0093】
いくつかの実施形態において、本発明のチェックポイント阻害剤療法は、CD27、CD28、CD40、CD122、CD137、OX40、GITR、ICOS、及びこれらの組み合わせに対する、細胞、タンパク質、ペプチド、抗体、ADC(抗体薬物複合体)、Fabフラグメント(Fab)、F(ab′)2フラグメント、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ、プロボディ、一本鎖可変領域フラグメント(scFv)、ジスルフィド安定化可変領域フラグメント(dsFv)、又は他のその抗原結合性フラグメントから選択される1又は複数の結合体の投与を含む、共刺激チェックポイント療法である場合がある。
【0094】
本発明の実施形態において、共刺激チェックポイント療法は、ウトミルマブ、ウレルマブ、MOXR0916、PF04518600、MEDI0562、GSK3174988、MEDI6469、RO7009789、CP870893、BMS986156、GWN323、JTX-2011、バルリルマブ、MK-4166、NKT-214、及びこれらの組み合わせから選択される1又は複数の結合体の投与を含む。
【0095】
いくつかのさらなる実施形態において、チェックポイント阻害療法は、以下の受容体標的組み合わせのいずれか1つに対する2つ以上の遮断剤の投与を含む場合がある:CTLA-4とPD-1、CTLA-4とPD-L1、PD-1とLAG-3、又はPD-1とPD-L1。
【0096】
好適な具体的な組み合わせとしては、デュルバルマブ+トレメリムマブ、ニボルマブ+イピリムマブ、ペンブロリズマブ+イピリムマブ、MEDI0680+デュルバルマブ、PDR001+FAZ053、ニボルマブ+TSR022、PDR001+MBG453、ニボルマブ+BMS986016、PDR001+LAG525、ペンブロリズマブ+IMP321、REGN2810(セミプリマブ)+REGN3767、及び他の好適な組み合わせが挙げられる。
【0097】
いくつかの実施形態において、チェックポイント阻害剤療法は、以下の組み合わせのいずれか1つに対する、共刺激チェックポイント療法をさらに含む場合がある:CTLA-4とCD40、CTLA-4とOX40、CTLA-4とIDO、OX-40とPD-L1、PD-1とOX-40、CD27とPD-L1、PD-1とCD137、PD-L1とCD137、OX-40とCD137、CTLA-4とIDO、PD-1とIDO、PD-L1とIDO、PD1とA2AR、PD-L1とA2AR、PD1とGITR、PD-L1とGITR、PD1とICOS、PD-L1とICOS、PD1とCD27、PD-L1とCD27、PD1とCD122、PD-L1とCD122、PD1とCSF1R、PD-L1とCSF1R、及び他のこのような好適な組み合わせ。
【0098】
好適な具体的な組み合わせとしては、アベルマブ+ウトミルマブ、ニボルマブ+ウレルマブ、ペンブロリズマブ+ウトミルマブ、アテゾリズマブ(Atezolimumab)+MOXR0916±ベバシズマブ、アベルマブ+PF-04518600、デュルバルマブ+MEDI0562、ペンブロリズマブ+GSK3174998、トレメリムマブ+デュルバルマブ+MEDI6469、トレメリムマブ+MEDI0562、ウトミルマブ+PF-04518600、アテゾリズマブ(Atezolimumab)+RO7009789、トレメリムマブ+CP870893、ニボルマブ+BMS986156、PDR001+GWN323、ニボルマブ+JTX-2011、アテゾリズマブ+GDC0919、イピリムマブ+エパカドスタット、イピリムマブ+インドキシミド(indoximid)、ニボルマブ+BMS986205、ペンブロリズマブ+エパカドスタット、アテゾリズマブ+CPI-444、デュルバルマブ+MEDI9447、PDR001+PBF509、ニボルマブ+バルリルマブ、アテゾリズマブ+バルリルマブ、ニボルマブ+NKTR-214、デュルバルマブ+ペキシダルチニブ(PLX3397)、デュルバルマブ+LY3022855、ニボルマブ+FPA008、ペンブロリズマブ+ペキシダルチニブ、PDR001+BLZ945、トレメリムマブ+LY3022855が挙げられる。
【0099】
別の実施形態において、チェックポイント阻害剤療法は、AMP-224(アンプリミューン社(Amplimmune,Inc))、BMS-986016(レラトリマブ)又はMGA-271、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される抗体である遮断剤の投与を含む。
【0100】
ある実施形態において、共刺激チェックポイント療法は、細胞免疫系をアップレギュレートするものであり、前記共刺激チェックポイント療法は、BMS-663513(ウレルマブ、抗CD137ヒト型化モノクローナル抗体作動薬、ブリストル・マイヤーズスクイブ社)を含むがこれに限定はされないCD137作動薬;CP-870,893(a-CD40ヒト型化モノクローナル抗体、ファイザー社)などのCD40作動薬;OX40(CD134)作動薬(例えば、抗OX40ヒト型化モノクローナル抗体、アゴンオクス社(AgonOx)、及び米国特許第7,959,925号に記載のもの)、及びヒト化OX40作動薬であるアストラゼネカ社製MEDI0562;マウスOX4作動薬であるMEDI6469;及びOX40作動薬であるMEDI6383;又は、CDX-1127(a-CD27ヒト型化モノクローナル抗体、セルデックス社(Celldex))などのCD27作動薬などの、CD27、OX40、GITR、又はCD137に対する、細胞、タンパク質、ペプチド、抗体、又はその抗原結合性フラグメントから選択される結合体、及びこれらの組み合わせ、の投与を含む。好適な抗GITR抗体としては、TRX518(トラークス社(Tolerx))、MK-1248(メルク社)、CK-302が挙げられ、本発明で使用するための好適な抗4-1BB抗体としては、PF-5082566(ファイザー社)が挙げられる。
【0101】
本発明で使用するための最も好ましいTLR3作動薬は、リンタトリモド(アンプリゲン)である。
【0102】
本発明の実施形態において、チェックポイント阻害療法及び/又は共刺激チェックポイント療法は、マイコバクテリウムと相乗的に作用する。
【0103】
本発明のいくつかの実施形態において、初期がんの治療、低減、阻害、又は制御は、1又は複数の追加の抗がん治療又は抗がん剤の投与をさらに含む。
【0104】
1又は複数の追加の抗がん治療又は抗がん剤は、養子細胞療法、手術療法、化学療法、放射線療法、ホルモン療法、チェックポイント阻害剤療法、メトホルミンなどの小分子療法、チロシンキナーゼ阻害剤療法などの受容体キナーゼ阻害剤療法、温熱療法、光線療法、ラジオ波アブレーション療法(RFA)、抗血管新生療法、サイトカイン療法、寒冷療法、生物学的療法、HDAC阻害剤、例えばOKI-179、BRAF阻害剤、MEK阻害剤、EGFR阻害剤、VEGF阻害剤、P13Kδ阻害剤、PARP阻害剤、mTOR阻害剤、低メチル化剤、腫瘍溶解性ウイルス、TLR2作動薬、TLR3作動薬、TLR4作動薬、TLR7作動薬、TLR8作動薬、若しくはTLR9作動薬、又はMRx0518(4Dファーマ社)などのTLR5作動薬を含むTLR作動薬、STING作動薬(MIW815及びSYNB1891を含む)、ミファムルチド、及びGVAX又はCIMAvaxなどのがんワクチン、並びにこれらの組み合わせから選択してよい。
【0105】
本発明の別の実施形態において、1又は複数の追加の抗がん治療は、国際出願第2013/07998号に記載されているような、免疫原性細胞死療法をもたらす。この治療法は、アポトーシス(1型)、オートファジー(2型)、及び壊死(3型)を含む、腫瘍における免疫原性細胞死の誘導を引き起こし、その際に、細胞傷害性CD8+T細胞及びNK細胞の活性化を含む、免疫応答の誘導が可能であり、且つ、抗原を樹状細胞にとってアクセスし易くすることを含む、標的としての作用が可能である、腫瘍抗原の放出がある。この免疫原性細胞死療法は、腫瘍の完全な除去又は根絶は意図していないが、一部の腫瘍細胞や腫瘍組織を壊死に至らしめるように、準最適レベルで実施され得る(すなわち、非治癒的な治療法)。当業者であれば、使用される手法、患者の年齢、疾患の状態、並びに、特に腫瘍又は転移のサイズ及び位置に応じて、これを達成するために必要な治療の程度を評価することができるであろう。特に好ましい治療としては、マイクロ波照射、体幹部定位照射(SABR)などの標的放射線療法、塞栓療法、寒冷療法、超音波、高密度焦点式超音波、サイバーナイフ、温熱療法、ラジオ波アブレーション療法、凍結融解壊死療法、電気メス加熱、熱水注入、アルコール注入、塞栓療法、放射線暴露、光線力学的療法、レーザー光照射、及びこれらの組み合わせが挙げられる。
【0106】
本発明の別の実施形態において、TLR作動薬としては、MRx0518(4Dファーマ社(4D Pharma))、ミファムルチド(メパクト)、クレスチン(PSK)、IMO-2125(チルソトリモド)、CMP-001、MGN-1703(レフィトリモド)、エントリモド、リンタトリモド(アンプリゲン)、SD-101、GS-9620、イミキモド、レシキモド、MEDI4736、ポリイノシン・ポリシチジン、CPG7909、DSP-0509、VTX-2337(モトリモド)、MEDI9197、NKTR-262、G100、又はPF-3512676、及びこれらの組み合わせが挙げられる。
【0107】
本発明の別の実施形態において、化学療法は、シクロホスファミド、メトトレキサート、5-フルオロウラシル、ドキソルビシン、ムスチン、ビンクリスチン、プロカルバジン、プレドニゾロン、ブレオマイシン、ビンブラスチン、ダカルバジン、エトポシド、シスプラチン、エピルビシン、カペシタビン、ロイコボリン、フォリン酸、カルボプラチン、オキサリプラチン、ゲムシタビン、フォルフィリノックス、改変フォルフィリノックス(modified FOLIFIRINOX)、フォルフォックス、パクリタキセル、ペメトレキセド、イリノテカン テモゾロミド、及びこれらの組み合わせから選択される1又は複数の薬剤の投与を含む。
【0108】
本発明の別の実施形態において、前記治療法は、好適にはIII期dMMR及び/又は高頻度MSI結腸直腸がん(CRC)患者におけるアジュバント療法、ネオアジュバント療法、又はペリアジュバント療法として、アテゾリズマブと、フォリン酸、フルオロウラシル、及びオキサリプラチン(フォルフォックス)、並びにベバシズマブの組み合わせを含む。あるいは、患者は、アテゾリズマブと、フォルフォックス及びベバシズマブを、マイコバクテリウム有り又はなしで、6か月間投与された後、アテゾリズマブ(azetolizumab)を、ベバシズマブ有り若しくはなしで、及び/又は、マイコバクテリウム有り若しくはなしで、さらに6か月間以上投与されてもよい。
【0109】
本発明の別の実施形態において、前記治療法は、好適にはIII期dMMR及び/又は高頻度MSIのCRC患者におけるアジュバント療法、ネオアジュバント療法、又はペリアジュバント療法として、アテゾリズマブと、フォリン酸、フルオロウラシル、及びオキサリプラチン(フォルフォックス)の組み合わせを含む。あるいは、患者は、アテゾリズマブと、フォルフォックスを、マイコバクテリウム有り又はなしで、6か月間投与されてもよい。
【0110】
本発明の別の実施形態において、前記組み合わせは、pMMR-低頻度MSIのCRC腫瘍、すなわち、ミスマッチ修復機能非欠損型且つ低頻度マイクロサテライト不安定性の腫瘍、の治療に好適なものであり、フォルフォックスを含む又は含まない、ペムブロリズマブ(pemobrolizumab)及び/若しくはアテゾリズマブ、又は、デュルバルマブ及び/若しくはトレメリムマブなどのチェックポイント阻害剤の組み合わせを、マイコバクテリウムと組み合わせたものなどである。他の組み合わせとしては、アテゾリズマブとベバシズマブを、マイコバクテリウムと一緒にしたものが挙げられる。
【0111】
本発明の別の実施形態において、前記組み合わせは、pMMR-低頻度MSIのCRC腫瘍の治療に好適なものであり、非病原性の非生存マイコバクテリウムは以下の組み合わせのうちの1又は複数と組み合わせて投与される:RFA及び/又はEBRT及び/又はペンブロリズマブ;RFA及び/又はデュルバルマブ及び/又はトレメリムマブ;アテゾリズマブ及び/又はベバシズマブ及び/又はフォルフォックス;アテゾリズマブ及びコビメチニブ;ニボルマブ+イピリムマブ+コビメチニブ;アテゾリズマブ+コビメチニブ+ベバシズマブ;アテゾリズマブ+CEA-BTC抗体;ペンブロリズマブ+インドキシモド;ニボルマブ+エパカドスタット;デュルバルマブ+ペキシダルチニブ。
【0112】
本発明の別の実施形態において、前記組み合わせは、マイコバクテリウムと組み合わせて、ペムブロリズマブ(pemobrolizumab)及び/若しくはアテゾリズマブ、又はデュルバルマブ及び/若しくはトレメリムマブなどのチェックポイント阻害剤と共に、CRC患者におけるラジオ波アブレーション療法(RFA)又は外照射療法(EBRT)のいずれかを含む。
【0113】
本発明の別の実施形態において、本明細書で開示されるアジュバント療法、ネオアジュバント療法、又はペリアジュバント療法は、III期dMMR及び/又は高頻度MSIの結腸直腸がん又は結腸がん又は直腸がんを有する患者に適用され、前記患者は0(PS0)、1(PS1)若しくはPS1-、又は2(PS2)のECOGパフォーマンスステータスを呈するものである。
【0114】
本発明の別の実施形態において、本明細書で開示されるアジュバント療法、ネオアジュバント療法、又はペリアジュバント療法は、0(PS0)、1(PS1)若しくはPS1-、又は2(PS2)のECOGパフォーマンスステータスを呈する患者に適用され、前記パフォーマンスステータス値は、術後又は治療終了時に評価された場合に同値であるか又は改善される。
【0115】
本発明の別の実施形態において、本明細書で開示されるアジュバント療法、ネオアジュバント療法、又はペリアジュバント療法は、III期pMMR/低頻度MSIの結腸直腸がん又は結腸がん又は直腸がんを有する患者、すなわち、結腸直腸がん又は結腸がん又は直腸がんを有する患者におけるミスマッチ修復機能非欠損型且つ低頻度マイクロサテライト不安定性の腫瘍に適用され、前記患者は、0(PS0)、1(PS1)若しくはPS1-、又は2(PS2)のECOGパフォーマンスステータスを呈するものである。
【0116】
いくつかの好ましい実施形態において、1又は複数の追加の抗がん治療又は抗がん剤は、チェックポイント阻害剤を含む場合がある。そのようなチェックポイント阻害剤は、イピリムマブ、ニボルマブ、ペンブロリズマブ、アテゾリズマブ、ビントラフスプアルファ、ドスタルリマブ、デュルバルマブ、トレメリムマブ、スパルタリズマブ、アベルマブ、シンチリマブ、トリパリマブ、プロルゴリマブ(prolgolimab)、チスレリズマブ、カムレリズマブ、MGA012、MGD013、MGD019、エノブリツズマブ、MGD009、MGC018、MEDI0680、PDR001、FAZ053、TSR022、MBG453、レラトリマブ(BMS986016)、LAG525、IMP321、REGN2810(セミプリマブ)、REGN3767、ペキシダルチニブ、LY3022855、FPA008、BLZ945、GDC0919、エパカドスタット、インドキシミド(indoximid)、BMS986205、CPI-444、MEDI9447、PBF509、及びこれらの組み合わせから選択してよい。
【0117】
本発明の別の実施形態において、1若しくは複数の追加の抗がん治療若しくは抗がん剤、及び/又はマイコバクテリウムは、腫瘍内に、動脈内に、静脈内に、血管内に、胸膜内に、腹腔内に、気管内に、鼻腔内に、リンパ節内に、経肺的に、髄腔内に、筋肉内に、内視鏡下で、病巣内に、病変周囲に、腫瘍周囲に、経皮的に、皮下に、局所的に、定位的に、経口的に、又は直接注射若しくは灌流により、投与される。
【0118】
1又は複数の追加の抗がん治療又は抗がん剤のそれぞれに適した、適切な用量範囲及び投与プロトコルは、当該技術分野内では理解されていることであろう。例として、アテゾリズマブの適切な投与プロトコルとしては、3週間毎に1200mgとしてよい。いくつかの実施形態において、アテゾリズマブは、最大12か月間又はそれ以上、3週間毎に1200mgの用量で、静脈内投与される場合がある。別の実施形態において、アテゾリズマブは、腫瘍切除術又はさらなるチェックポイント阻害剤療法に先立って6~8週間、3週間毎に静脈内投与される場合がある。
【0119】
いくつかの実施形態において、アテゾリズマブを、腫瘍切除術の7日前及び28日前に、3週間毎(±3日)に1200mgの用量で静脈内投与し、マイコバクテリウムを、同じ日に、又は、切除術の35日前及び/若しくは21日前及び/若しくは5日前などの異なる日に、投与する場合がある。あるいは、アテゾリズマブを、腫瘍切除術の28日後に開始して、2週間毎(±3日)に840mgの用量で、静脈内投与し、マイコバクテリウムを、同じ日に、又は、前記腫瘍切除術後21日目、35日目、42日目、及びそれ以降(et seq)などの異なる日に投与してもよい。
【0120】
別の実施形態において、アテゾリズマブを、腫瘍切除術の7日前及び28日前に、3週間毎(±3日)に1200mgの用量で静脈内投与し、マイコバクテリウムを、同じ日に、又は、切除術の35日前、21日前、及び5日前などの異なる日に、投与する場合がある。さらに、アテゾリズマブを、腫瘍切除術の28日後に開始して、2週間毎(±3日)に840mgの用量で、静脈内投与し、マイコバクテリウムを、同じ日に、又は、前記腫瘍切除術後21日目、35日目、42日目、及びそれ以降(et seq)などの異なる日に投与することとなる。
【0121】
本発明の好ましい実施形態において、前記腫瘍切除術は、顕微鏡下で原発腫瘍部位にがん細胞が見られない、R0切除縁;又は、顕微鏡下で原発腫瘍部位にがん細胞が存在する、R1切除縁;又は、原発性がん部位及び/若しくは所属リンパ節に肉眼的(macroscopic)残存腫瘍が発見される、R2切除縁などの、AJCC第8版に従って定義されるような腫瘍断端をもたらす。
【0122】
別の実施形態では、本発明の組み合わせ又はマイコバクテリウムが、腫瘍切除術の1日以内、2日以内、5日以内、10日以内、20日以内、30日以内、40日以内、50日以内、60日以内、又は70日以内に投与され、前記腫瘍切除術は適宜R0切除、R1切除、又はR2切除であり、好ましくはR0であり、70日後以降は投与されない。あるいは、本明細書に記載の本発明の組み合わせ又はマイコバクテリウムが、計画されたR0、R1、又はR2腫瘍切除術、最も好ましくはR0切除術の前の1日以内、2日以内、5日以内、10日以内、20日以内、30日以内、40日以内、50日以内、60日以内、又は70日以内に、1回又は複数回の投与で投与される。さらに別の実施形態では、本明細書に記載の本発明の組み合わせ又はマイコバクテリウムが、計画されたR0、R1、又はR2腫瘍切除術、最も好ましくはR0切除術の前の1日以内、2日以内、5日以内、10日以内、20日以内、30日以内、40日以内、50日以内、60日以内、又は70日以内に、1回又は複数回の投与で投与され、その後、本発明の組み合わせ又はマイコバクテリウムが適用され、一方又は両方が、前記腫瘍切除術の後の1日以内、2日以内、5日以内、10日以内、20日以内、30日以内、40日以内、50日以内、60日以内、又は70日以内に投与される。
【0123】
別の実施形態では、腫瘍切除術後の70日以内に、まずマイコバクテリウムを1.0mgの初回量で皮内投与し、14±2日後に、アテゾリズマブの初回注入液を投与し、その後、前記腫瘍切除術後の12か月間、アテゾリズマブを、2週間毎に840mgの用量で静脈内投与し、併せて、マイコバクテリウムを、1か月間、2週間毎に0.5mgの用量で投与し、その後、マイコバクテリウムを、11か月間、4週間毎に0.5mgの用量で投与する場合があり、前記アテゾリズマブ点滴と同じ日であっても異なる日であってもよく、好ましくは、前記マイコバクテリウムはマイコバクテリウム・オブエンス(M.obuense)NCTC13365である。
【0124】
別の実施形態では、アテゾリズマブを、腫瘍切除術の28日前及び7日前に、1200mgの用量で静脈内投与し、マイコバクテリウムを、腫瘍切除術の35日前に、1.0mgの用量で皮内投与し、その後、マイコバクテリウムを、腫瘍切除術の21日前及び5日前に、0.5mgの用量で投与する場合があり、好ましくは、前記マイコバクテリウムはマイコバクテリウム・オブエンス(M.obuense)NCTC13365である。
【0125】
別の実施形態では、手術後(アジュバント療法背景)、アテゾリズマブを、前記腫瘍切除術後の12か月間以上、2週間毎に840mgの用量で静脈内投与し、マイコバクテリウムを、前記腫瘍切除術後に、まず1.0mgの用量で皮内投与し、その後、マイコバクテリウムを、1か月間、2週間毎に0.5mgの用量で投与し、その後、マイコバクテリウムを、11か月間、4週間毎に0.5mgの用量で投与する場合があり、前記アテゾリズマブ点滴と同じ日であっても異なる日であってもよく、好ましくは、前記マイコバクテリウムはマイコバクテリウム・オブエンス(M.obuense)NCTC13365である。
【0126】
別の実施形態では、本発明は、ペリアジュバント療法的レジメンを含み、アテゾリズマブを、腫瘍切除術の28日前及び7日前に、1200mgの用量で静脈内投与し、マイコバクテリウムを、腫瘍切除術の35日前に、1.0mgの用量で皮内投与し、その後、マイコバクテリウムを、腫瘍切除術の21日前及び5日前に、0.5mgの用量で投与する場合があり(ネオアジュバント療法的背景)、且つ、前記手術後(アジュバント療法的背景)、アテゾリズマブを、前記腫瘍切除術後の12か月間以上、2週間毎に840mgの用量で静脈内投与し、マイコバクテリウムを、前記腫瘍切除術後に、まず1.0mgの用量で皮内投与し、その後、マイコバクテリウムを、1か月間、2週間毎に0.5mgの用量で投与し、その後、マイコバクテリウムを、11か月間、4週間毎に0.5mgの用量で投与する場合があり、前記アテゾリズマブ点滴と同じ日であっても異なる日であってもよく、好ましくは、前記マイコバクテリウムはマイコバクテリウム・オブエンス(M.obuense)NCTC13365である。
【0127】
別の実施形態では、本発明は、ヒト対象における、ネオアジュバント療法的、アジュバント療法的、又はペリアジュバント療法的レジメンを含み、前記非病原性の非生存マイコバクテリウム及び1又は複数の追加の抗がん治療又は抗がん剤が、所望により同じ日又は異なる日に、同じ投与経路又は異なる投与経路を介して投与され、ヒト対象は、術後若しくは治療終了後5週間以降に、病理学的な完全奏効若しくは部分(particle)/亜全奏効若しくは腫瘍退縮を示し、及び/又は、術後若しくは治療終了後1年、2年、3年、若しくは5年以降に、無病生存期間(DFS)若しくは全生存(OS)の延長を示し、及び/又は、クオリティオブライフの改善(EORTC QLQ-C30アンケート及びPRO-CTCAEアンケートで評価)を示し、及び/又は、術後12か月以降若しくは治療終了後に、検出可能なctDNAを示さず、好ましくは、前記マイコバクテリウムはマイコバクテリウム・オブエンス(M.obuense)NCTC13365である。
【0128】
血中循環腫瘍DNA(「ctDNA」)は血流中に存在しており、がん性細胞及び腫瘍に由来するDNAを指す。ctDNAの測定は、進行性がん患者の疾病状態を監視するための有望な血液ベースバイオマーカーとして注目されるようになった。血液中にctDNAが存在しているのは、生物学的プロセス、すなわち腫瘍細胞のアポトーシス及び/又は壊死、の結果であり、がん特異的な変異をターゲットにすることにより様々ながんの監視に利用することができる。
【0129】
本発明の別の実施形態において、所望により1又は複数の追加の抗がん剤又は抗がん治療の投与をさらに含む、腫瘍切除術又はチェックポイント阻害剤療法を受けたことがある、又は受ける予定である、所望により原発腫瘍から遠隔のいかなる臓器にも転移を呈さない患者におけるがんの、アジュバント療法、ネオアジュバント療法、又はペリアジュバント療法による治療、低減、阻害、又は制御で使用するための免疫調節剤であって、免疫に対する以下の免疫賦活作用のうちの少なくとも1つの任意の組み合わせを仲介する非病原性の非生存マイコバクテリウムを含み、好ましくは前記マイコバクテリウムはマイコバクテリウム・オブエンス(M.obuense)NCTC13365である、免疫調節剤が提供される:(i)免疫応答の増大、(ii)T細胞活性化の増大、(iii)細胞傷害性T細胞活性の増大、(iv)NK細胞活性の増大、(v)Th17活性の増大、(vi)T細胞抑制の軽減、(vii)炎症誘発性サイトカイン分泌の増加、(viii)IL-2分泌の増加;(ix)T細胞によるインターフェロン-y産生の増加、(x)Th1反応の増大、(xi)Th2反応の減少、(xii)制御性T細胞(Treg)、骨髄由来抑制細胞(MDSC)、iMC、間葉系間質細胞、TIE2発現単球のうちの少なくとも1つの減少若しくは除去、(xiii)調節細胞活性、及び/若しくは骨髄由来抑制細胞(MDSC)、iMC、間葉系間質細胞、TIE2発現単球のうちの1若しくは複数の活性の低減、(xiv)M2マクロファージの減少若しくは除去、(xv)M2マクロファージ腫瘍形成促進活性の低減、(xvi)N2好中球の減少若しくは除去、(xvii)N2好中球腫瘍形成促進活性の低減、(xviii)T細胞活性化の阻害の低減、(xix)CTL活性化の阻害の低減、(xx)NK細胞活性化の阻害の低減、(xxi)T細胞の疲弊の回復、(xxii)T細胞応答の増大、(xxiii)細胞傷害性細胞の活性の増大、(xxiv)抗原特異的記憶応答の刺激、(xxv)がん細胞のアポトーシス若しくは溶解の誘導、(xxvi)がん細胞に対する細胞傷害性作用若しくは細胞静止作用の刺激、(xxvii)直接的ながん細胞死滅の誘導、及び/又は(xxviii)補体依存性細胞傷害の誘導、及び/又は(xxix)抗体依存性細胞媒介性細胞傷害の誘導。
【0130】
本発明のいくつかの実施形態において、免疫調節剤は、腫瘍切除術又はチェックポイント阻害剤療法の間及び/又は後のアジュバント療法として投与される場合がある。この術後療法又はアジュバント療法は、患者にとって適切な期間に亘って使用される場合がある。いくつかの実施形態において、免疫調節剤は、腫瘍切除術又はチェックポイント阻害剤療法の後に、最大2年又はそれ以上の期間に亘ってさらに投与される場合がある。好ましい実施形態において、免疫調節剤は、手術又はチェックポイント療法の後、12か月間の期間に亘ってさらに投与される場合がある。
【0131】
いくつかのさらなる実施形態において、腫瘍切除術又はチェックポイント阻害剤療法の後、患者は、免疫調節剤を伴って又は伴わずに、前述のような1又は複数の追加の抗がん治療又は抗がん剤を、さらに投与される場合がある。いくつかの実施形態において、前記1又は複数の追加の抗がん治療又は抗がん剤は、腫瘍切除術又はチェックポイント阻害剤療法の後に、最大2年間又はそれ以上の期間に亘って投与される場合がある。好ましい実施形態において、前記1又は複数の追加の薬剤又は治療は、手術又はチェックポイント療法の後、12か月間の期間に亘って投与される場合がある。いくつかの実施形態において、前記1又は複数の追加の抗がん治療又は抗がん剤は、手術又はチェックポイント療法の後、免疫調節剤と組み合わせて投与される場合がある。
【0132】
当業者には理解されることであるが、本明細書に記載されているようなアジュバント療法の投与量及びプロトコルは、特定の患者及び/又は治療にとって適切であることに依存して異なる場合がある。例として、本発明の免疫調節剤及び/又は追加の抗がん治療若しくは抗がん剤のアジュバント療法的投与は、手術又は治療の後に、毎日、毎週、2週間毎、3週間毎、4週間毎、毎月、又は2か月毎投与される場合がある。いくつかの好ましい実施形態において、免疫調節剤及び/又は追加の抗がん剤は、手術又は治療の後に、4週間毎に投与される場合がある。最も好ましい実施形態において、免疫調節剤及び/又は追加の抗がん剤は、手術又は治療の後に、4週間毎に合計12か月間、投与される場合がある。
【0133】
他の実施形態において、免疫調節剤及び/又は追加の抗がん治療若しくは抗がん剤は、ペリアジュバント療法的プロトコルで、すなわち、手術及び/又は治療の前後両方で、投与される場合がある。このようなペリアジュバント療法的プロトコルは、本明細書において開示されるネオアジュバント療法及び/又はアジュバント療法のいずれかの組み合わせを含んでもよい。
【0134】
免疫調節剤及び/又は追加の抗がん治療若しくは抗がん剤のペリアジュバント療法的投与は、がん若しくは腫瘍が患者に存在する間、又は、がんが退縮若しくは安定化するまで(例えば、RECIST1.1若しくは同様の基準でSD若しくはPR)、実施される場合があり、あるいは、さらに、がん又は腫瘍が退縮又は安定化してからも、患者への投与が継続される場合もある。
【0135】
別の実施形態において、本発明の方法は、以下のうちの1又は複数を含む:1)転移の可能性がある、又は転移を起こす腫瘍細胞又はがん細胞の成長、増殖、移動、又は浸潤の低減又は阻害、2)原発腫瘍又はがんから、前記原発腫瘍又はがんと異なる1又は複数の他の部位、位置、又は領域に生じる転移の形成又は確立の低減又は阻害;3)転移が形成又は確立された後の、前記原発腫瘍又はがんと異なる1又は複数の他の部位、位置、又は領域における成長又は増殖又は転移の低減又は阻害、4)転移が形成又は確立された後の、さらなる転移の形成又は確立の低減又は阻害、5)全生存の延長、6)無増悪生存期間の延長、7)疾患安定化、8)クオリティオブライフの向上。
【0136】
別の実施形態において、本発明の方法は、所望により、標的腫瘍の安定病態(SD)、完全奏効(CR)、若しくは部分奏効(PR);及び/又は、1若しくは複数の非標的腫瘍の安定病態(SD)若しくは部分奏効(PR)若しくは完全奏効(CR)を含む、RECIST1.1によって定義されるような、1又は複数の前記腫瘍の腫瘍サイズの減少又は安定化、例えば、切除腫瘍中に存在する生腫瘍細胞が10%未満であることにより示されるほぼ完全な(subtotal)退縮、によって測られる治療有効性の増強をもたらす。
【0137】
別の実施形態において、本発明は、腫瘍切除術を受けたことがある、又は受ける予定である患者における、原発腫瘍を含むがんを治療又は制御する方法であって、(i)非病原性の非生存マイコバクテリウム、(ii)腫瘍切除術、及び(iii)1又は複数の追加の抗がん治療又は抗がん剤、を前記対象に同時に、別々に、又は順次に投与することを含み、非病原性の非生存マイコバクテリウムの単独投与、1若しくは複数の追加の抗がん治療若しくは抗がん剤の単独投与、又は腫瘍切除術単独と比べて治療有効性の増強をもたらす、方法を提供する。
【0138】
別の実施形態において、本発明は、免疫関連効果判定基準(irRC)、iRECIST、RECIST1.1、又はirRECISTによって評価された場合、(好ましくは手術の12か月後又は治療終了時に評価された場合に)前記原発腫瘍の腫瘍生検若しくは切除腫瘍中に存在する生腫瘍細胞が10%未満であることにより示されるほぼ完全な(subtotal)退縮、安定病態(SD)、完全奏効(CR)、若しくは部分奏効(PR);及び/又は、1若しくは複数の非標的腫瘍の安定病態(SD)若しくは完全奏効(CR)をもたらす方法を提供する。
【0139】
腫瘍の10%超、又は20%超、又は好ましくは30%超における、病理学的著効(major pathological response)を、臨床的に有意とみなすことができる。病理学的著効とは、好ましくは腫瘍生検又は切除腫瘍中に存在する生腫瘍細胞が10%未満であることにより示される、完全な又はほぼ完全な(subtotal)退縮と定義される。
【0140】
別の実施形態において、本発明は、(1)原発腫瘍又はがんから、前記原発腫瘍又はがんと異なる1又は複数の他の部位、位置、又は領域に生じる転移の形成又は確立の低減又は阻害;(2)転移が形成又は確立された後の、前記原発腫瘍又はがんと異なる1又は複数の他の部位、位置、又は領域における成長又は増殖又は転移の低減又は阻害、(3)転移が形成又は確立された後の、さらなる転移の形成又は確立の低減又は阻害、(4)全生存の延長、(5)無増悪生存期間の延長、(6)疾患安定化、(7)クオリティオブライフの向上、及びこれらの組み合わせ、をもたらす、方法を提供する。
【0141】
本発明の実施形態において、本明細書で開示される組み合わせ及び方法は、以下のうちの1又は複数(one of more)を含む、irRC(タイムポイント応答評価に由来し、腫瘍量に基づく)に従った、検出可能又は測定可能な改善又は総合効果(overall response)を与える:(i)irCR:測定可能か否かに関わらず、全ての病変の完全な消失、及び新たな病変なし(最初に記録されたデータから4週間以上の反復的な連続評価による確認)、(ii)irPR:ベースラインと比較して50%以上の腫瘍量の減少(最初の記録後少なくとも4週間の連続評価によって確認)。本発明の方法は、即時には奏効しない場合がある。例えば、治療後に、新形成、腫瘍、又はがん細胞の数又は質量の増加が起こる場合があるが、時間をかけて最終的には、所与の対象における腫瘍細胞質量、サイズ、又は細胞数の安定化又は低減がその後に起こり得る。
【0142】
本発明の実施形態において、本明細書で開示される組み合わせ及び方法は、好ましくは手術の12か月後若しくは治療終了時に評価される、以下のうちの1又は複数から選択される疾病状態及び疾病進行の1又は複数のマーカーにおける臨床的に意義のある改善をもたらす:(i):全生存期間、(ii):無増悪生存期間、(iii):全奏効率、(iv):転移性疾患の低減、(v):炭水化物抗原19.9(CA19.9)、癌胎児抗原(CEA)、前立腺特異的抗原(PSA)、又は腫瘍に応じた他の腫瘍抗原などの腫瘍抗原の血中濃度、(vii)栄養状態(体重、食欲、血清アルブミン)、(viii):全身性免疫炎症指数(SII)又は全身性炎症スコア(SIS)、(ix):疼痛管理又は鎮痛剤使用、又は(x):CRP/アルブミン比若しくは予後栄養指数(PNI)、又は(xi)クオリティオブライフの改善、又は(xii)ctDNAの低減若しくは除去。
【0143】
いくつかの実施形態において、上記の列挙から選択される疾病状態及び疾病進行の1又は複数のマーカーが、本発明の治療プロトコル、低減プロトコル、阻害プロトコル、又は制御プロトコルを監視するために測定される場合がある。いくつかの好ましい実施形態において、1又は複数のバイオマーカーは、前立腺特異的抗原(PSA);癌胎児抗原(CEA);予後栄養指数(PNI);全身性免疫炎症指数(SII);及び全身性炎症スコア(SIS)のうちのいずれか1つ又は複数を含む場合がある。
【0144】
免疫調節剤及び/又は1若しくは複数の追加の抗がん剤は、同時又は異なる時点に投与するための別々の医薬として提供される場合がある。
【0145】
好ましくは、非生存マイコバクテリウム及び/又は1若しくは複数の追加の抗がん剤は、異なる時点に投与するための別々の医薬として提供される。別々に且つ異なる時点に投与される場合、非生存マイコバクテリウム及び/又は1若しくは複数の追加の抗がん剤は、最初に投与されてもよいが;チェックポイント阻害剤及び/又は共刺激性チェックポイント結合体を投与した後、非生存マイコバクテリウムを投与することが好適である。また、両方を同じ日又は異なる日に投与することもでき、治療サイクル中、同じスケジュール又は異なるスケジュールを用いて投与することもできる。
【0146】
本発明の実施形態において、治療サイクルは、所望により毎週又は2週間毎又は3週間毎又は4週間毎又はそれ以上の間隔の抗がん剤又はチェックポイント阻害剤及び/又は共刺激性チェックポイント結合体と同時に、毎日、毎週、隔週、又は毎月の非生存マイコバクテリウムのネオアジュバント療法的、アジュバント療法的、又はペリアジュバント療法的な投与からなる。あるいは、非生存マイコバクテリウムは、追加の抗がん剤の投与の前及び/又は後に、手術又は治療の前、並びに所望によりさらに手術又は治療の後に、投与される。
【0147】
本発明の別の実施形態において、非生存マイコバクテリウムは、追加の抗がん剤の投与の前及び後に、患者に投与される。すなわち、1つの実施形態において、非病原性の非生存マイコバクテリウムは、前記追加の抗がん剤の前及び後に、患者に投与される。
【0148】
あるいは、1又は複数の追加の抗がん剤の投与は、非生存マイコバクテリウムの有効量の投与と同時に行なわれてもよい。
【0149】
本発明のチェックポイント阻害療法又は手術を受ける予定の対象は、非生存マイコバクテリウムの投与と同時に、別々に、又は順次に、それを行ってもよい。
【0150】
本発明の1つの態様において、有効量の非病原性の非生存マイコバクテリウムが、単回投与として投与される場合がある。あるいは、有効量の非生存マイコバクテリウムは、複数回(反復)投与で、例えば2回以上、3回以上、4回以上、5回以上、10回以上、又は20回以上の反復投与で、投与されてもよい。マイコバクテリウムの反復投与が施行される場合、投与間に、1週間、2週間、3週間、4週間という期間、又は前記期間の組み合わせが存在してもよい。
【0151】
非病原性の非生存マイコバクテリウムは、チェックポイント阻害療法又は手術前の、約8週間、約6週間、若しくは約4週間の間、及び/又は約1日間、例えば、約4週間~約1週間の間、又は約3週間~約1週間の間、又は約3週間~2週間の間など、投与される場合がある。投与は単回投与で行われてもよく、あるいは、より好ましくは、複数回投与で行われてもよい。好ましい実施形態において、免疫調節剤は、治療又は手術前に少なくとも3回投与される場合がある。
【0152】
本発明の1つの実施形態において、非生存マイコバクテリウムは、投薬形態で患者に投与される医薬の形態である場合がある。
【0153】
特定の例における本発明の容器は、バイアル、アンプル、注射器、カプセル、錠剤、又はチューブである場合がある。一部の例において、マイコバクテリウムは、投与前に再懸濁するために、凍結乾燥及び製剤化される場合がある。しかし、他の例では、マイコバクテリウムは、ある体積の薬剤的に許容できる液体中に懸濁される。最も好ましい実施形態の一部において、薬剤的に許容できる担体中に懸濁された1回分単位用量のマイコバクテリウムを含む容器が提供され、前記単位用量は、約1×10~約1×1012個の生物、又は約1×10~約1×10個の生物を含む。一部の非常に特殊な実施形態において、懸濁されたマイコバクテリウムを含む前記液体は、約0.01ml~約10mlの体積、又は約0.03ml~約2mlの体積、又は約0.1ml~約1mlの体積で提供される。上記組成は、本明細書に記載の免疫療法的適用に理想的な単位を提供する。
【0154】
本発明の方法及び/又は組成物の文脈で論じられた実施形態は、本明細書に記載の任意の他の方法又は組成物に関して、使用されてもよい。つまり、ある方法又は組成物に関する実施形態は、本発明の他の方法及び組成物にも適用されてもよい。
【0155】
本発明のマイコバクテリウム組成物は、典型的には薬剤的に許容できる担体中に分散された有効量のマイコバクテリウムを含む。「薬剤的に許容できる又は薬理学的に許容できる」という表現は、分子種及び組成物が、例えばヒトなどの動物に適宜投与された場合に、有害反応も、アレルギー反応も、他の不都合な反応も引き起こさないことを指す。
【0156】
好ましい実施形態において、非病原性の非生存マイコバクテリウムは、皮下注射、皮内注射、真皮下注射、腹腔内注射、静脈内注射、及び膀胱内注射、又は腫瘍内投与、腫瘍近傍(peritumoral)投与、病変近傍(perilesional)投与、若しくは病巣内投与から選択される非経口経路を介して投与される。皮内注射は、免疫監視機構にアクセス可能な真皮の層への全割合のマイコバクテリウム組成物の送達を可能にするため、抗がん免疫応答を惹起(elect)し、局所リンパ節における免疫細胞増殖を促進することができる。
【0157】
別の実施形態において、免疫調節剤は、参照により本明細書に援用される国際公開第2021/136933号に開示された、複数のマイクロニードルを含むマイクロニードルデバイスを介して、患者の皮膚内に投与されることとなる。
【0158】
本発明に従って使用するための他の好ましいマイクロニードルデバイスとしては、ノースカロライナ州大学(国際公開第2017/151727号に記載)、デバイオジェクト(Debioject)マイクロニードル(デバイオテック社(Debiotech)、スイス)、ミクロンジェクト(Micronject)600(ナオパス社(NaoPass)、イスラエル、国際公開第2008/047359号に記載)、ナノパッチ(Nanopatch)(バクサス社(Vaxxas)、米国)、SOFUSA(キンバリークラーク社(Kimberly-Clark)、米国、国際公開第2017/189259号及び同第2017/189258号に記載)、ミクロン・バイオメディカル社(Micron Biomedical)製の溶解マイクロアレイ、及びMIMIX溶解制御放出マイクロアレイ(バクサス社、米国)が挙げられる。
【0159】
上記明細書に記載された全ての刊行物は、参照により本明細書に援用される。本発明の要旨を逸脱しない範囲で、本発明の説明された方法及びシステムの様々な修正及び変更が、当業者には明白であろう。本発明を特定の好ましい実施形態に関連させて説明したが、特許請求された本発明が、そのような特定の実施形態に過度に限定されるべきではないことは、理解されるべきである。実際には、生化学及び免疫学又は関連分野の当業者には明らかである、説明された本発明を実施するための形態の様々な修正が、下記の特許請求の範囲内であることが意図される。
【0160】
以下の非限定例を参照して本発明をさらに説明する。
【0161】
実施例1
オキサリプラチンをベースにした化学療法に非適応の、高頻度MSIのIII期結腸直腸がん患者における、マイコバクテリウム・オブエンス(M.obuense)の加熱殺菌全細胞製剤(IMM-101)と組み合わせたアテゾリズマブの、アジュバント療法的効果を調べるための試験を、そのような治療の安全性及び効力の試験と併せて、開発した。
【0162】
治療対象の患者は、病理学的病期がIII期の組織学的な確認が行われた結腸又は直腸の腺癌を示し、オキサリプラチンをベースにしたアジュバント療法的化学療法に非適応である、又はそれを拒否したものである。
【0163】
本試験は、IMM-101とアテゾリズマブのアジュバント療法的併用が忍容性良好であるかどうかを調べ、当該併用の有効性シグナルを調べ、さらに、12か月の時点の無セルフリーDNA(cfDNA)生存率(12 months cfDNA free rates)を測定することを目的としている。
【0164】
計100人の患者を組入れ、50人はコホートAに、50人はコホートBに組入れる。サンプルサイズがN=50であると、前記実験的併用療法の、12か月無cfDNA生存率(12 months cfDNA free rate)のまずまず信頼できる推定が得られると考えられ、ColoPredictレジストリにおけるdMMR患者の前向き登録コホートに対する、実際に確認された生存率(rate)の計測が可能となる。
【0165】
コホートAは、1回量1200mgのアテゾリズマブを、3週間毎に12か月間静脈内投与される。コホートBは、1回量1200mgのアテゾリズマブを、3週間毎に12か月間静脈内投与され、それと併用して、IMM-101を2週間毎に3回、その後4週間毎で合計12か月間投与される。
【0166】
IMM-101は、0.1mLのIMM-101単回皮内注射(10mg/mL;ホウ酸緩衝生理食塩水中の加熱殺菌マイコバクテリウム・オブエンス(M.obuense)NCTC13365の無菌懸濁液)として、三角筋を覆う皮膚内に投与され、投与毎に腕を交代する。治験責任医師は、皮内注射の技術を、適切に事前訓練されているものとする。
【0167】
IMM-101を用いた事前の臨床実験により、この用量が安全で忍容性良好であることが示唆された。注射部位に発生する皮膚反応は、紅斑、局所腫脹、時に軽度の潰瘍化を特徴とする。全ての症状は、前記製品の既知の薬理作用及び以前の臨床実験を前提として、予想されるものである。さらに、IMM-101を用いた安全性試験及び忍容性試験から得られたデータによって、皮膚反応が時間と共に十分に解消し、日常の活動を損なわないことが明らかとなった。
【0168】
医師の管理下、予防措置として利用できる蘇生設備と共に、試験で各患者に投与されるIMM-101の初回投与の後、バイタルサインのモニタリングを少なくとも2時間行う。
【0169】
治療レジメンは、最初の3回については、IMM-101を2週間毎に1回投与し、その後4週間の休薬期間を経た後、次の3回については2週間毎に1回投与する。これに続いて、4週間毎に1回投与され、±2日間の時間枠が許容される。手術前のIMM-101の初回量は、1.0mgの後に0.5mgとなるよう意図されており、及び/又は、手術後のIMM-101の初回量は、1.0mgの後に0.5mgとなるよう意図されている。
【0170】
1200mgのアテゾリズマブが3週間毎に12か月間静脈内投与される。
【0171】
両コホート中の患者に対する治療は、12か月間、又は以下を条件として疾患増悪(固形癌効果判定基準[RECIST]1.1で評価)まで、継続される:許容できない副作用、治験責任医師による治療中止の決定、患者の同意の撤回、又は18か月間のIMM-101治療のうちの、いずれか早いもの。完全奏効が2回のスキャンに亘り維持された患者は、治験責任医師がこれを患者の最善の利益ではないと見なさない限り、治療を継続するべきである。疾患増悪を記録したコホートA及びコホートBの患者は、臨床的利益があり、パフォーマンスステータスが低下していない、治験責任医師により判断された場合に試験治療による臨床的に関連した有害作用がない、又は代替治療を必要としていると見なされない場合に、試験中の治療を継続してよい。
【0172】
実施例2
6週間の治療後の病理学的完全退縮(pCR)又はほぼ完全な(subtotal)退縮(生腫瘍細胞が10%未満)に関して、術前CTスキャンに基づいて高頻度MSI、臨床病期III期の結腸直腸がんを有する患者における、IMM-101を伴う又は伴わないネオアジュバント療法的アテゾリズマブの効力を評価するための、並びに、そのような治療プロトコルの安全性及び忍容性を評価する、実施例1に対する予備的なサブスタディを開発した。
【0173】
術前CTスキャンに基づいて臨床病期III期の疾患を有する実施例1の100人の患者のうち20人を、1:1に無作為化し、ネオアジュバント療法的なアテゾリズマブ及び/又はIMM-101を6週間受けさせる。切除後、これらの患者は、実施例1のアジュバント療法をさらに12か月間受けることとなる。
【0174】
コホートA(10人の患者)は、1200mgのアテゾリズマブを、術前に3週間毎に6週間、及び切除後に12か月間、静脈内投与される。コホートB(10人の患者)は、0.1mlの10mg/ml IMM-101溶液を、術前に2週間毎に3回、その後4週間毎に計12か月間、実施例1のアジュバント療法的設定で、皮内投与される。
【0175】
実施例3
オキサリプラチンレジメンが実行可能な治療法の選択肢ではない、MSI-H/dMMRのIII期結腸直腸がん患者における、マイコバクテリウム・オブエンス(M.obuense)の加熱殺菌全細胞製剤(IMM-101)と組み合わせたアテゾリズマブの、アジュバント療法的効果を調べるための試験を開発した。
【0176】
治療対象の患者は、ECOGステータスが0~2であり、R0腫瘍切除を受けたことがあり、高頻度MSI且つdMMRの、病理学的病期がIII期の、組織学的な確認が行われた結腸又は直腸の腺癌を呈し、オキサリプラチンをベースにしたアジュバント療法的化学療法に非適応である、又はそれを拒否したものである。
【0177】
本試験は、IMM-101とアテゾリズマブのアジュバント療法的併用が忍容性良好であるかどうかを調べること、及び、前記併用の有効性シグナルを調べること、並びに、IMM-101とアテゾリズマブのアジュバント療法的併用が3年無病生存率を有意に改善できるかどうかを確認すること、並びに、アジュバント療法的治療の12か月後の検出可能なctDNAを有していない患者の割合として定義される、無ctDNA率を評価することを目的とする。
【0178】
計100人の患者を組入れ、50人はコホートAに、50人はコホートBに組入れる。サンプルサイズがN=50であると、前記実験的併用療法の、3年無病生存率のまずまず信頼できる推定が得られると考えられ、ColoPredictレジストリにおけるIII期dMMR腫瘍患者の前向き登録コホートに対する、実際に確認された生存率(rate)の計測が可能となる。
【0179】
コホートAは、アジュバント療法的設定で、1回量840mgのアテゾリズマブの静脈内投与を、2週間毎に12か月間受ける。
【0180】
コホートBは、アジュバント療法的設定で、アテゾリズマブ治療開始の14±2日前の時点で、初回量として1.0mgのIMM-101の皮内投与を1回受ける。その後、患者は、1回量840mgのアテゾリズマブを、2週間毎に12か月間静脈内投与され、それと併用して、IMM-101を、1回量0.5mgの皮内投与で2週間毎に1か月間、その後、1回量0.5mgの皮内投与で4週間毎に計12か月間、投与される。
【0181】
IMM-101の1回量体積は、最初は0.1mL(1.0mg)で、その後は0.05mL(0.5mg)であり、三角筋を覆う皮膚に皮内投与され、投与毎に腕を交代する。治験責任医師は、皮内注射の技術を、適切に事前訓練されているものとする。
【0182】
IMM-101を用いた事前の臨床実験により、この用量が安全で忍容性良好であることが示唆された。注射部位に発生する皮膚反応は、紅斑、局所腫脹、時に軽度の潰瘍化を特徴とする。全ての症状は、前記製品の既知の薬理作用及び以前の臨床実験を前提として、予想されるものである。さらに、IMM-101を用いた安全性試験及び忍容性試験から得られたデータによって、皮膚反応が時間と共に十分に解消し、日常の活動を損なわないことが明らかとなった。医師の管理下、予防措置として利用できる蘇生設備と共に、試験で各患者に投与されるIMM-101の初回投与の後、バイタルサインのモニタリングを少なくとも2時間行う。患者は治療の最後の投与後の3年間追跡調査され、プライマリーエンドポイントは3年マイルストーン時点のDFS率の評価であり、セカンダリーエンドポイントは、1年、2年、及び5年時点のDFS/OS、安全性、QoL、並びに治療終了から12か月後の時点の無ctDNA患者の割合を含む(図1参照)。
【0183】
患者選択規準としては、少なくとも9g/dLのヘモグロビン;2.5以下のAST(SGOT)/ALT(SGPT)値が含まれ;エンドポイントとしては、無作為化の3年後の任意の原因による死亡がさらに含まれる。
【0184】
実施例4
5週間の治療後の病理学的完全退縮(pCR)又はほぼ完全な(subtotal)退縮(生腫瘍細胞が10%未満)に関して、並びに無病生存期間及び全生存に関して、オキサリプラチンレジメンが実行可能な治療法の選択肢ではない(又は拒否された)、高頻度MSI/dMMR臨床病期III期結腸直腸がん患者における、周術期/ペリアジュバント療法的なアテゾリズマブ+IMM-101の効力を評価するための、実施例3に対する予備的なサブスタディを開発した。
【0185】
合計20人の患者を組入れる。治療対象の患者は、オキサリプラチンをベースにしたアジュバント療法的化学療法に非適応である、又はそれを拒否した、高頻度MSI/dMMR臨床病期III期の組織学的に確認された結腸又は直腸の腺癌を呈するものであり、ECOGステータスが0~2であり、切除可能な原発腫瘍を呈する。切除後、これらの患者は、実施例3、コホートBのアジュバント療法をさらに12か月間受けることとなる。
【0186】
具体的には、組入れられた患者は、腫瘍切除術の28日前及び7日前に1回量1200mgのアテゾリズマブの静脈内投与を受け、それと併用して、腫瘍切除術の35日前に1回量1.0mgのIMM-101の皮内投与を受け、その後、切除術の21日前及び5日前に1回量0.5mgのIMM-101の投与を受ける。
【0187】
切除術後70日以内に、アテゾリズマブ治療開始の14±2日前の時点で、患者は、初回量として1.0mgのIMM-101の皮内投与を1回受けることとなる。これに続いて、実施例3、コホートBのアジュバント療法設定に準じて、1回量840mgのアテゾリズマブの静脈内投与を2週間毎に12か月間、それと併用して、1回量0.5mgのIMM-101を、2週間毎に1か月間、続いて4週間毎に計12か月間、投与する。患者は治療の最後の投与後の3年間追跡調査され、プライマリーエンドポイントは3年マイルストーン時点のDFS率の評価であり、セカンダリーエンドポイントは、1年、2年、及び5年時点のDFS/OS、安全性、QoL、並びに治療終了から12か月後の時点の無ctDNA患者の割合を含む(図2参照)。
図1
図2
【国際調査報告】